雪ノ下「何、タバコ何て吸ってるの!?」 (35)
比企谷君は慌てて、タバコの箱を拾い上げ、ポケットに押し込んだ。
「雪ノ下、頼む。忘れてくれ。」
「そんのものに頼らないといけない程、傷ついていたのね。ごめんなさい。気が…つかなくて」
急に泣きそうになったのをこらえる。ああ、今迄だって、比企谷君が傷ついていたのは知っていた。知っていたはずなのに、それを受け入れる強さがあると、心の何処かで期待していたのだ。
「何を謝っているんだ。雪ノ下、お前は何も悪くないだろう。」
「でも、」
胸が苦しい。自分が比企谷君を理解してあげているという自負は、ただの思い上がりだったのだ。偽物だったのである。只々、悔しくて、次の言葉を紡げなかった。
「はあ…何も心配はいらない。全部、自分で完結している。お前に迷惑はかからないはずだ。…小町にも言うなよ。忘れてくれ。これは、雪ノ下を信用しているから、頼むんだ。」
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今まで見た、比企谷君の目は確かに腐っていた。だが今の彼の目は、人でも殺せそうな。鋭い目だった。
「おかしい」
「は?」
確かに高校生で煙草を吸っていることなど人に知れたら、退学ということも考えられる。だが、どうやら彼はタバコを吸っていることを知られたにしては、あまりに必死に見えた。何か知られまいとする意思が垣間見えた。確かに心配されるのは、彼にとってはうっとうしいことだろうが、適当に受け流すこともできただろう。
「何か隠しているのでしょう?比企谷君。」
「いや、だから、知られたら困ることだろ。第一、こうやって物を見られるまで気がつかれなかったんだ。匂いも吸い殻も完璧に処理できていた。今回たまたま、鞄に紛れ込むハプニングがなければ、小町にも悟られなかっただろうよ。いくらお前でもこれ以上の詮索はやめてくれ。」
「何があったの」
「いや、なにもないって」
「話して」
「この話は」
比企谷君は持っている本を机に叩き付けた。ダンという大きな音に私は思わず肩をすくめる。
「ここまでだ」
部室から去っていく彼の背を、追うこともできず。呆然と見送った。
>>1「イーモバイルだから、連投出来ません。積極的に指摘、雑談等をしてください。要望のあるネタも適当に盛り込みます。」
ベッドの中で天井を見つめながら、今日のことを考える。
結局、今日のことは誰にも、もちろん小町ちゃんのも話せていない。唯一の彼の望みなのだから、私にはできない。
「明日は由比ケ浜さんも来るでしょう。彼女に相談するべきかしら」
それはだめだと結論した。彼女はこの件を話すには直情的すぎだ。きっと、彼のために苦しみ。彼を癒そうと、彼の心に踏み込んでいくのではないか。彼女に苦しんでほしくないのはもちろん。何より、比企谷くんの触れてほしくない何かに触れてしまう事態をさけたかった。
「無理ね」
比企谷君の部活での深刻そうな顔が思い浮かんだ。この問題は繊細だ。危険は犯せない。
「明日、二人の前で今まで通り、振る舞えるかしら。」
とにかく、比企谷君の秘めているその何かを確かめるまで、自分の胸の内にしまっておこうと決心した。
「よし」
本人から聞き出すのは望み薄だ。ならば、先ずは自分単独で、彼の闇を調べてやろう。そう、決心した。
「今度は私が、あなたを救ってみせるわ。・・八幡」
>>8確認
翌日の授業は上の空で過ごした。話半分も聞けていないが、授業を受けているフリはうまくできていたといえる。指名されたときの機転も完璧だった。そう、自分で自分をほめたくなるほどに。
「やっはろー」
「相変わらず、馬鹿っぽい挨拶だな」
「こんにちは。由比ケ浜さん」
ついにこの時間がやってきた。比企谷君は何事もなかったように振る舞っている。私もうまくやらないと。
得な会話もなく、読書で時間をつぶす。今日も依頼はないようだ。知らせがないのはいい知らせ、という様に、依頼がないのは良い依頼ということか。
「ふふっ」
「どうしたの!?ゆきのん」
”良い依頼ってなんだよ”と心の中で突っ込みを入れる。
「なんでもないわ」
「そう」
なんだかうまく隠し通せそうだ。ただ変なことを考えないように注意しなければならないが。
「もう、時間だな」
「あ、そうだね」
「戸締まりは任せて頂戴」
「じゃあな、雪ノ下、由比ケ浜」
「あ、待って!明日は私、部活出れないから。比企谷君、留守番頼めるわね?」
「は?なんで俺が・・」
「たのめるわね!」
「はあ、わかったよ・・雪ノ下」
明日は小町さんにアポとって、比企谷君の家にお邪魔しよう。そして、タバコのことは伏せて、過去のことを聞き出そう。とりあえずは、比企谷君に悟られず、やり取りができる時間を聞き出さないと。
Gesus!
休養が入ってしまったので、続きは明日になります。
すいません、書きだめしときます。
>>12
急用でした。
休養じゃないです、ベリーベリービジーです。
すごくどうでもいいけどガハマさんの漢字はヶじゃなかったか
>>14
マイコンピュータで変換するとそうなるんです。どうにかしてみます。
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翌日、放課後
「こんにちは、小町さん」
「こんにちは。雪乃さん!」
いつも通りの元気だ。この人なつっこさはどこか姉さんに似ているが、毒気が全くない。とても同じ笑顔だとは思えなかった。(こんな無垢な笑顔があるのね。)
「ささ、あがってください。それにしてもお兄ちゃんのアルバムが見たいなんて。ついにお兄ちゃんにも春が来たんですね。」
私は玄関を通され、リビングへと小町さんの後ろを歩いていく。
「いいえ、比企谷君のことを部長としてよく知っておく必要があるの」
「またまた~、小町にはお見通しですからね。雪乃さんってツンデレだなぁ。」
「ツ、ツンデレって・・・」
正直面倒くさいと思った。しかし、ここはこらえなければならない。この際、演技でも何でもいいから、小町さんと結託して情報を引き出そう。そう、これはべつに比企谷君に気があるとか、そういうことでは決してないのだから。
「外堀から埋めていくのって、案外正攻法だと思うんですよ。特にゴミいちゃんみたいな捻デレに対しては」
もう、そういうことにしてしまおう。
「ゴクッ」
(何を緊張しているの!?つば飲む音絶対聞こえてるわよ!)
「そう・・と、ところで小町さん、あなたは私のことをどう思う?」
小町さんはリビングの扉にかけかけていた手を止めた。
「え?・・雪乃さんだったら、小町はウェルカムですよ。きっとお兄ちゃんを裏切らないで想ってくれるって信用できますから。あ、今のって小町的にポイント高い!」
「そ、そう?ありがとう///」
「あ、ちょっとここで待っていてください。アルバム出してきますから。ええと、麦茶でいいですね。」
「ありがと」
渡されたコップに口を付ける。うむ、麦茶だ。小町さんはとてとてとリビングから早足で出て行った。4人がけのテーブルからイスを引き出し腰掛けた。
(比企谷君のお家・・・)
キッチンで小町さんと一緒に料理をする比企谷君。テーブルで食事をする比企谷君。風呂上がりに冷蔵庫の前で牛乳を飲む比企谷君。もちろん手は腰に添えている。比企谷君の私生活を一通り妄想し終わったちょうどその頃、リビングの扉が開いた。
「お待たせしました~」
小町さんがとたとたとリビングに入ってきた。
「う~ん、小学生まではいっぱいお兄ちゃんの写真あるんですけど、中学入ってからはめっきりないですね。」
「ええ、それで大丈夫よ。」
「じゃあ、お兄ちゃん、”爆誕!”の章から見ましょうか」
「・・・」
保育器の中の赤ん坊の写真、母親に抱かれている写真。壁に手をついてかろうじてたっている写真。何ページかそんな写真がつづく。
「お兄ちゃんの目も澄んでいる時期があったんですね」
「ええ、そうね。でも、純真無垢な時期は誰にでもあるものよ」
「あ、ここから小町ですよ。」
分娩室?で母親に抱かれている写真。保育器の写真。親子4人で写っている写真。小町さんの誕生から、明らかに写真の枚数が増えた。両親の娘への溺愛ぶりが如実に現れているといえる。主に小町さん中心でアルバムは進んでいった。小町さん5:比企谷君2くらいの割合だ。
「あれ?この娘誰?」
比企谷君が3年生位になったところで、知らない女の子が写真に写りだした。年齢は当時の比企谷君と同じくらいだ。私にはさすがに負けるにしても結構な美人である。小町さんを真ん中に挟んで3人で手をつないでいるのが気に食わない。
「ああ、これ彩花(あやか)ちゃんっていう子で、昔近所に住んでいたんですよ。お兄ちゃんと同級生で、私が3年生の時だから・・5年生のときに急に引っ越しちゃったんです。」
(戸塚さんに似てるわね)
「それ、もっと詳しく聞かせてくれないかしら」
「あれ、ジェラシー感じちゃいました?」
「冷やかさないで頂戴。比企谷君が捻くれてしまった原因がそこにあるかもしれないじゃない」
「ははーん。急に昔のお兄ちゃんを知りたいって、そういうことだったんですね。確かにお兄ちゃんがおかしくなり始めたのは、中学入った頃ですし、関係があるのかもしれません。」
「なんか、怪しいのよね」
これは本当のことだ。嫉妬とかそういうのではない。
「あれあれ?女の勘ってやつですか?・・・確かに、あんなに仲が良かったのに、家族ぐるみの付き合いって感じだったのに・・急に引っ越すなんて、おかしい・・ですよね。」
「でも、彩花ちゃんのことってなんかタブーって感じで、話すとみんな、それとなく嫌がるんですよね。」
「みんなってご両親とか?」
「はい・・」
小町さんは何やらつらそうな顔をしている。
「そう、確か、6年前・・・お兄ちゃんと彩花ちゃんで3人で遊んでた時に私が大けがしたんです。町外れの公園で・・・そう・・どこだったか思い出せないんですけど・・。しばらく意識を失っていて、何ヶ月も後に退院できたんです。そしたら・・・彩花ちゃんは転校していて・・・・・いや・転校したのは私・・私?」
急に小町さんは急にえずきはじめた。
「大丈夫!?」
小町さんの背をさすりながら、トイレへと連れて行く。トイレには間に合わず、廊下を汚してしまった。小町さんはまだ吐き続けている。
一通りの掃除が済み、私は帰ることにした。
「ありがとう。もう無理して話さなくてもいいのよ。」
「ごめんなさい取り乱してしまって。何か小町混乱しちゃって。」
「それじゃ、私は帰るわ。さようなら。お大事に。」
「バイバイ、雪乃さん」
結局、それ以上のことは聞けなかった。いったい彼らに何がおこったのだろう。
急な引っ越し、小町さんの怪我、同級生の女の子、タバコ、引っ越したのは私、比企谷君のトラウマ。
点はだいぶそろってきたと思う。ただ、このままではそれを紡いで線にすることはできそうもない。
やはり、本人に聞くしかないのだろうか。いや、それはしたくない。彼との関係を壊したくないからだ。
とりあえず、一度整理してみなくてはならない。
「待っていなさい、比企谷君。必ず、あなたを理解してみせる。」
(とりあえず、寝ながら考えましょう。今日は疲れたわ)
「あれは・・雪ノ下か。・・小町と会っていたのか」
「ふう…」
ベッドに飛び込み、仰向けになった。エアコンの廃棄が直接顔に当たった。少しカビ臭い。
「まず、比企谷君の異変…いいえ、元々おかしかったのだから、異変ではないわね。…彼の秘密。これが、小5の時の彩花さんの引越しにあるのは明白ね。」
ブランケットを引っ張り出し、ミノムシの様に身体に巻き込む。柔軟剤の甘い香りが、精神を落ち着け思考を安定させる。
「おかしいのは小町さんの反応ね。6年前のことを思い出そうとすると、パニックを起こした。…彼女は思い出せない、いいえ…思い出さない程の何かが起こったのよ。」
「これ以上、小町さんから聞き出すことはできないわ。誰か、比企谷君の事を知っている人…同級生とか……そう、折本とかいう女が居たわね…あの子から何か聞き出せないかしら。」
携帯を取り出した。連絡先のリストをスクロールすると、程なくして目的の名前まで来た。葉山隼人…
「正直、気に入らないけれど、彼に頼むしかないわね」
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To:葉山隼人
From:雪ノ下雪乃
Title:比企谷君の秘密
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彼の抱えるトラウマの原因がわかるかもしれない。
それには、非常に、非常に、不覚なのだけど貴方の力が必要なの。
折本さんって人とアポ取っておいてくれないかしら。話があるの。
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「こんなので食いつくかしら。」
エアコンがタイマーで切れて、部屋が温まってきた。色々と思案を巡らせていると、次第にまどろんできた。
ブーブーブーブー。
携帯のバイブがなった。
ーーーーー
To:雪ノ下雪乃
From:葉山隼人
Title: Re. 比企谷君の秘密
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僕は、こういう余計な詮索はいただけないと思う。
でもね、興味があることもまた本心なんだ。
協力しよう。土曜の午後一時、駅前のファミレスで会おう。
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「やっぱり食いついたわね。」
幸先の良いスタートに安堵すると、途端に睡魔が襲ってきた。
「今日はよく眠れそうね。」
翌日、比企谷君は学校を休んだ。彼のいない、2人だけの奉仕部は冬の畑の様に寂しい空間だ。
「ゆきのん……ゆきのんっ!!」
私は昨日の小町さんの話を思い出していた。
「ごめんなさい。考え事していたの。」
「やっぱり、ゆきのんもヒッキーもおかしいよ!ヒッキー学校休んじゃうし。風邪だって言ってたけど、きっと嘘だもん!」
彼女が案外鋭い事に驚くべきところだが、今はどうでもよかった。
「…ごめんなさい。心配かけて…本当に何もないのよ」
「…やっぱり、嘘だよ…ゆきのん…私には話してくれないの?私は信用できないの?」
またこれだ。彼女には勝てないのだ。姉さんとは違って、打算も悪意もなく、私を惑わせる。
「土曜日…13時…駅前のファミレスよ……それまで、比企谷君と接触しないで…とてもデリケートな問題なの」
「うん…うんありがと、分かったよ、明日は奉仕部はやすむ」
屈託のない笑みに心が現れる様だ。その天使の様な笑顔に女でも惚れてしまいそうだった。
(結局、彼女も巻き込んでしまったわ。…いいえ、彼女をのけ者にしようとしたのが、最初から間違いだったのね。)
「はっちまーんっっぬ!!我の新作が遂に、遂に!決したぞーーんな!!」
ドカーンと扉を開け放って現れたのは、何時もの2倍増しでウザい、中2、2次作家の材木座義輝だ。
「チッ」
彼の余りの空気のよめなさに、淑女たるものならば、決してしてはいけない侮蔑の呪文、"舌打ち"を使ってしまった。
「あ、ヒッキーなら休みだよ…」
「なぁっっにぃぃ!!…まあ、良い、代わりに雪ノ下女史よ!!!我が処女作を読んでたもれ!!」
「何を言っているのか、全く!分からないのだけれど…貴方がここに小説もとい、作文を持ってくるのは初めてではないわよね?確かに、出版経験がないのだから、ここへ持ってくる全ての作品は処女作と言えるかもしれないけれど、そもそも作品として読めるものが仕上がっているのかしら?」
「あふーんっ。まあまあ、女史よ!読まずして語るのは早計というもの……すぐにとは言わん。ただの中2の戯言だと罵ってもかまわーん!先ずは読んで下さい、お願いします。」
比企谷君には遠く及ばないけれど、美しい土下座フォームだった。随分頭が軽い男だ…いや、ただハイになっているだけなのだろう。
「別にそんなに下手に出なくても、読んであげるわ」
「ははぁー!あ!り!が!た!き!幸せ!しかと受け取りましたぞ!ではさらば!」
彼がここまで、徹頭徹尾うざいのも珍しい。余程の自信作とみえた。
作文の内容は以下の様だった。
霊能力者の主人公が、死んだ幼馴染の霊と対話しながら、彼女の死の真相へと迫るミステリーものだ。結構面白かったのは内緒である。
主人公は霊能力者というものの、大した力はない。幼馴染、彼女との対話は言葉によるものではなく、表情の微妙な機微によるものだけで、捜査には足を使うしかない。
捜査の中で、彼女の死が事故によること、そもそも自分の母校にはそんな人物はいなかったことを知る。彼女は前の学校の同級生で、彼女の死後に主人公は東京に引っ越してきたのだ。
「うーん、なかなかやるわね、あの男。でももう一捻り欲しいところね。」
「うん!短くて読みやすかったよ!」
「…」
「あとは、このしつこい倒置法さえなければいいのだけれど。」
「あ、そろそろ、下校時間だよ。」
「…そうね。帰りましょう。」
「明後日の1時にファミレスだよね?」
「そうよ。比企谷君には何も悟られない様に」
「分かってるよ。ゆきのん!」
部室に鍵をかけた。今日も終わってしまった。でも、私にできることは限られているのだ。
(焦りは禁物ね)
翌日も比企谷君は休みだった。今日は由比ヶ浜さんも部活には来ない。部を休みにしたいところだけど、元々は一人でやっていたのだ。閉める訳にはいかない。
途中で、材木座義輝が来た。相変わらずウザいが。素直に面白いと伝えるとバカみたいに騒ぎ始めた。
「我の時代がキターーーーっっんぬ!!」
この男は褒められると調子に乗るタイプのようだ。飴と鞭できちんとしつけなければなるまい。まるで、編集者になった様な気持ちだった。文法や、キャラ背景の稚拙さをズバズバと指摘すると、あっという間に自称剣豪将軍は弱っていった。
「改訂版ができたら、持って来なさい。あと、2,3回推敲したら、十分、出す所に出しても恥ずかしくないレベルになるわ。」
「それは誠か!?雪ノ下女史よ!」
「その女史ってのはやめて頂戴。」
「御意にござる。雪ノ下様!雪ノ下大明神!」
「ああっ!うっとおしい!もういいから出てって頂戴!私はもう、帰るの!」
「ああん、御怒りをお鎮め下さい!我はもう、帰りますゆえ!」
久々にキレてしまった。雪ノ下雪乃らしくもない。もっと、冷静さを持たなければならない。
「そんなに睨まないで…ごめんなさい、大人しく帰ります。」
材木座義輝を追っ払い、部室を閉めた。いつもより1時間程早いが、依頼はこなしたのだ、何もかまうまい。
今週も終わりだ。一先ずの肩の荷が降りた反動からか、翌日は珍しく寝坊してしまった。
ピリリリリリッ
何度目のアラームだろう。寝覚めが悪かったので、昼近くまで寝てしまった。
気分が悪い。それもそうだ。10分おきの覚醒と睡眠を繰り返せば、休むはずの睡眠で消耗するのは必然である。
「10時半」
「13時まではまだ余裕ね。……シャワーでも浴びよう。」
シャワーで汗を流す。お湯はやや冷たい位に設定した。それでもなかなか目は覚めない。
「ご飯どうしましょう…」
何もかもが面倒だった。風呂から上がると下着のまま、朝と昼を兼ねた食事をとる。
11時20分。そろそろ出発して、本屋で時間を潰すことにした。
マンションを出る、日差しが目に痛い。目覚ましの散歩代わりに、駅まで歩いてゆく。
ファミレスに着くと由比ヶ浜さんが既にいた。トーストをかじっている。
「やっはろーゆきのん」
「やっ、…こんにちは、由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜さんの向かいに腰掛けた。
このSSまとめへのコメント
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面白いよ
続きはよ!頑張れ
続きが気になる…(。>ω<。)
面白い続きハヨハヨ
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