理樹「学校を卒業してから5年が経った」 (53)







真人「…もう許せねえっ!恭介の奴をぶん殴って目を覚まさせてやるよ…」

理樹「ま、真人…」

真人「止めるなよ?行くぞ謙吾…」

謙吾「ああ…」

ザッ

理樹(どうしてこんな事になったんだ…)


少し前

理樹(学校を卒業して五年の月日が流れた、あれからどうなったかを語るにはこの1レスでは余りにも余白が足りないので次から記すことにする)




今日は話じっくり考えるからこれで終わり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398255283

リトルバスターズの方でさぁ

>今日は話じっくり考えるからこれで終わり
じっくり考えてからスレ立てればいいのに

>>4習慣みたいになってるんです…すいませんね

理樹(この学生寮を出てからリトルバスターズの皆は思い思いの道へ進んだ)

理樹(小毬さんは老人ホームで働き(もちろんあの小次郎さんがいる病院だ)クドはJAXAとかいう宇宙学校に入って西園さんはなんと小説家になった!)

理樹(謙吾はお父さんの道場のあとを継いで真人は工事現場で働いている。そして葉留佳さんは短期大学へ進学した、来ヶ谷さんはというと未だにどうしたのか教えてくれない…本人曰く「少なくともこの美貌が活躍する所ではない」だそう)

鈴「理樹、大変だ!焦げてるぞっ」

理樹「ええっ!?」

理樹(僕はというと学校を出たので両親の財産を自由にできる事になり、思い切って鈴と小さなパン屋を始めた。今思うとなんでパン屋なんかにしようかとしたのかは分からないけど近所の人からはそれなりに好評だ)

鈴「それはそうとだ理樹」ズイッ

理樹「なに?」

鈴「新作のパンを作った」

理樹「げっ!」

理樹(鈴は二週間に一度は新作を思いつく、いつも柔軟な発想はいいんだけど…)

鈴「そうだろぉ~、パンにうなぎパイを挟んだからな」ドヤァ

理樹(相変わらず不味い、それでも鈴を気に入ってくれているお客さんは買っていってくれるけど)

ニャーン

鈴「おおメル、お前も食うか?」

理樹(「メル」というのはウチの店の看板猫、実はこのネコの親はレノンとテヅカだ(二匹は寿命で死んでしまった…))

理樹「ダメだ!食べたら無事では済まなくなるっ!…あ」

ゴゴゴゴ

鈴「……理樹なんか嫌いじゃボケー!」ダダダ

理樹「ごめん、つい!待ってよ鈴っ!!」ダダダ

次の日

真人「三枝、そっちにボール行ったぜ!」

葉留佳「はるちんスーパーミラクルタクティコウキャッチー!」ズサァ

理樹(日曜日、僕らは集まり相変わらず野球をやっていた。草野球という形でだけど)

恭介「どうする理樹、このまま練習を続けるか?」

理樹「じゃあ少し休憩しようか」

西園「皆さんジンジャエールが入りましたよ」スッ

真人「ジンジャエールは胃に良いからな!」グビクビ

恭介「さあお前らくつろぎながらでいいから聞いてくれ!なんと次の週に大学の野球チームと交流試合だ!」

来ヶ谷「それはまた唐突だな」

クド「わふー!今日が終わったら、もう本番ですか!?」

謙吾「そもそもこんな草野球チームと何を交流するんだ…」

理樹(恭介は今も昔も変わらない、ミッションを出す事は無くなったけどこうしてリーダーシップを発揮している)

恭介「くれぐれも無理はしてくれるなよっ!」



理樹「今日はお刺身だよ」

鈴「本当かっ?それならメルにも食わせなくてはな」

ニャーン

理樹(鈴とは交際も続いているので同棲している…。両親は想像していたよりかなりの額を僕に残していてくれたのでパン屋と家を合体させたような作りの建物を建ててしまった。意外にも親戚からの反対は無く、でも決してどうでもいいと考えている訳ではない様子だった)

鈴「ふふっ、美味いか?…そーかそーか」ナデナデ

理樹(学生の頃は「ずっとこんな日が続けばいいのに…」と思っていたがこうやって前に進むのも悪くない、幸せそうな鈴を見るとそう感じさせる)

一週間後

理樹「それっ!」カキン

恭介「走れ真人、来ヶ谷!」

真人「いよっしゃぁぁぁ!!!!」ダダダッ

ズサァ

審判「セーフ!」

来ヶ谷「む…」

大学生「よし、奴を挟んだ…っ!これでやっとスリーアウツ…!」

シュン

来ヶ谷「誰をどうしたと?」タンッ

審判「せ、セーフ…」

葉留佳「やったー!次ヒットだったら私達の勝ちですヨ!」

恭介「かっ飛ばしてこい、謙吾!」

謙吾「俺を誰だと思っている?」




ザッ

謙吾「…」キッ

投手「くっ…!」ビュッ

ドガッ

謙吾「!?」



夕方

謙吾『すまなかったな、俺のせいでせっかくの試合が台無しになってしまった』

理樹「そんな事ないよ!怪我はどうだったの?」

謙吾『ああ、それはアバラにヒビが入った程度で済んだ』

理樹「今度皆でお見舞いに行くからね…」

謙吾『悪いな、でも鈴のパンだけは食わせてくれるなよ?』

理樹「あはは…。じゃあもう切るね」

謙吾『ああ、鈴とネコによろしく』

ガチャ

更に一週間後

ガラッ

恭介「おーい怪我は大丈夫か大統領!」

葉留佳「果物持ってきましたヨー!」

ガヤガヤ

謙吾「病院で騒ぐなお前ら…それに見ろ!」バサッ

真人「んだそれ?…腹巻か?」

謙吾「腹に巻くギプスだバカ」

真人「なんだとォ!?腹に巻いてるなら腹巻でもいいじゃねーかよっ!」

看護婦「すいませェん、病院では静かにしてもらえますか?」

理樹「すいません…」

謙吾「ま、とりあえず退院の許可はでた。もう病院のメシは食わずにすみそうだな」

西園「それは良かったですね、それでは来週からは完全に治るまで私と見学ですか?」

謙吾「いいや…そうも言ってられない、実はもうすぐ剣道の大会があるんだ。ウチの道場の子供達も気合いが入ってる時期に俺が休む訳には行かないだろう」

小毬「ええ~っ!ダメだよ宮沢君!無理しちゃダメだよぉ?」

謙吾「ああ分かってるさ」

恭介「…」

チーン

恭介「では皆で謙吾の退院祝いに飯を食いに行くぞぉ!」

真人「ひゃっほー!」

葉留佳「来た来た来たっ!!」

来ヶ谷「当然恭介氏の奢りなのであろう?」

恭介「げっ…」

スッ

理樹「…!」

沙耶「…」トコトコ

理樹(見間違いに決まっている…だけど今通り過ぎていったのはまさしく…朱鷺戸沙耶。かつてのパートナーだった女の子だ)

理樹(沙耶さんはあの世界で共に影と闘った少女だ、しかしその影に勝った後僕の前から…いいや世界の前から忽然と姿を消したはず。それも偽りの世界で)

鈴「理樹、なにそんな所で立ってるんだ?早くこい」

理樹「あ、ああ…うん。そうだね…」


車内

恭介「さあお前らどこに行きたい?あまり高い所は勘弁してくれよな」

葉留佳「じゃあ試合のブイアイピーの謙吾君に決めてもらいましょーっ!」

クド「私もそれがいいと思いますっ!」

謙吾「俺か?ううーん…>>22なんかどうだ?」

満貫全席

テンポ悪くなるし安価ない方がいいっすかね



バーン

恭介「俺の諭吉達が…」

葉留佳「近くにまさか出せる店があるだなんてラッキーですネ!」

来ヶ谷「というより…食べ切れるのかこれは…」

真人「んまぁぁーい!!」ガツガツ




理樹「ふぅ…お腹いっぱいだよ」

鈴「…」クー

理樹「こんな所で寝たら風邪引くよ鈴…」バサッ






理樹「鈴、悪いけど今日は店をお休みさせるよ」

鈴「何処か行くのか?」

理樹「まあそんな所…」

病院

ウィーン

理樹(杞憂だと良いんだけど確かめずには居られなかった)

受付「どのようなご用事でしょうか?」

理樹「この病院に朱鷺戸沙耶という人は居ませんか?」

受付「失礼ですがご親族の方ですか?」

理樹「いいえ…」

受付「ではすいませんが本人との約束がございませんでしたら面会は許可できません、規則ですので」

理樹「えっ…」

理樹(冷たい表情でそう言ったけどあくまで事務的な口調でこう付け加えた)

受付「しかし病院内で偶然会う分には問題はありません」

理樹「…!ありがとうございますっ!」




5時間後

理樹(昨日沙耶さんと出会った所で待ったけどいくら待っても姿が見えない、やはり見間違いか…と帰ろうとしたその時だった)

アハハ

青年「そこで俺がこう言ったのさ「お前はショートケーキみたいに甘い奴だなっ!」って」

沙耶「もー、それは傑作ねっ」

理樹(間近で見たらそれは確かに沙耶さんだった、その瞬間顔に何かが触れた。手を当ててみる。顎が濡れていた、そこで近くにいた同じく患者を待っているのであろう人に驚いて聞いてみた)

理樹「すいません、僕の顔に何か付いてますか?」

髭の男「…あなたは泣いているんですよ」

理樹(言われるまで分からなかっ、すると沙耶さんがこちらの目線に気付いた)

沙耶「ど、どうしたのあなた!?もしかして私何かした!?」

理樹(沙耶さんは僕の事を覚えていなかったのだ)


お休み

理樹「さ、沙耶さん…!僕だよっ、覚えてないの?直枝理樹だ!」ガシッ

沙耶「えっ…?」

青年「あのね~言っておくけどこの子の名前はサヤじゃなくてアヤだよ?人違いなんじゃない?」

理樹「そんなはずは!?だって…」

理樹(顔も髪も全部昔の沙耶さんをそのまま成長させたような彼女。神に誓っても人違いなんかじゃない)

青年「…行こう、多分こいつ頭が…」

沙耶「いきなり失礼な事言ってんじゃないわよ!」

理樹(そう僕をフォローするとメモに何かを書いて手渡ししてくれた)

沙耶「ねぇ、あなた直枝さんって言うのよね?これ私の番号だからいつでもかけて来て、しばらく病院に居続けだから…」

青年「あっ!おい、そんな初対面の奴にいきなり番号渡す奴がいるかよ!?」

沙耶「いいじゃないのよ、彼なんだか面白そうだし」スタスタ

理樹(病院服の彼女と付き添っていた僕と同い年ぐらいの青年は奥へと消えて行った。僕はしばらくその場で呆然としていたが鈴の晩ご飯と恭介に相談することを思い出してやっとこの白い建物から脱出した)







カチャカチャ

鈴「お掃除ング~♪」

プルルル

ガチャ

理樹「もしもし恭介?」

恭介「なんだ?えらく疲れたような声じゃないか」

理樹「当たり前さ、実は昨日病院でとある人に会ったんだ…」

理樹(恭介にありのままの事を話した)

恭介『…そうか、もう無理だと思ったんだがな』

理樹「恭介は何か知ってるの!?」

恭介『落ち着けよ、理樹…慌てても何も良い事はない。隠す気なんてないさ』

理樹(ちょうど子供をあやす様な口調で言ったあとゆっくりと真実を伝えてくれた)

恭介『実はあの世界でのアヤ、いいや沙耶は事故に遭っていた』

理樹(幼い頃、父の職の関係で世界のあちこちを飛んでいた沙耶さんはある日事故に会った…しかし親が医療関係の事もあり一命は取り留めたものの、いわゆる植物人間になってしまった。父親は娘を日本の大きな病院に預けて今も沢山の人を救い続けているらしい…そして6年前、その病院の近くで例のバス衝突事故が起きた)

理樹(そこに恭介達が作った世界で沙耶さんというイレギュラーが入った、そこは強い想いを持った人間が介入できるだったからだ。恭介達は困ったが話し合って結局彼女の「願い」を叶える事にしたのだった)

理樹(そしてその「願い」というのがあの世界で過ごした僕と彼女の戦いの日々その物だ。そして僕らが無事助かったあとも恭介は何度かその病院へ足を運んだそう)

恭介『だが一向に意識が戻る気配を見せなかったんだけどな…多分俺と真人と謙吾、それに理樹があの病院に居たから彼女の何かが目覚めたんじゃないか?』

理樹「そこでだよ、沙耶さんの本名はアヤって言うの?」

恭介『なんだ…こっちの話には驚かずにそんな所が気になるんだな?ちなみに答えはYESだ。とにかく電話番号教えてもらったんだろ?今度かけてみろよっ!』ニヤニヤ

理樹(恭介のニヤついた顔が頭に浮かび上がる)

理樹「ええっ!で、でもこれからどう接せればいいのか…」

恭介『そこはお前に任せる、新しく初対面の友人としてスタートするかこの突拍子もない話を言って一か八か思い出させるか』

理樹(思い出すことが必ずしも良いことではない…僕は彼女の新しい友人になることにした)

次の日

プルルル

沙耶『はいはーい?』

理樹「も、もしもし!?」

沙耶『その声は確かこの前の…』

理樹(僕は彼女に「昔の友人にそっくりな人を見かけたから思わず喋りかけてしまった、出来れば友人になりたい」という旨を伝えた)

沙耶『ええ、いいわよ~!最近意識取り戻したばっかりだから話す相手が1人しか居なくて暇してた所だから』

理樹「そういえばあの人は誰?」

沙耶『彼は病院で偶然会った人よ、色々話してくれて面白いんだけど多分彼私に惚れてるわ…』

理樹(くっくっくっと押し殺したような笑い声を出しながら教えてくれた、そして何か僕の胸にグサッと刺さったような幻覚にかかった…)

理樹「そ、その人の事をどう思うの?」

沙耶『別に~?特にどうとも思ってないわね、ただ一緒にいると笑っちゃうような人かな』

理樹(少しホッとした自分がいる、ダメだ直枝理樹!僕には鈴がいるじゃないか!)

日曜日

謙吾「ぐっ…」ズキッ

理樹「謙吾、無茶はダメだって…」

理樹(前に見た時よりも痛そうな謙吾だった、脂汗も浮かんでいる…この平日ずっとその大会の子供達に剣道を教えていたからだろう)

真人「お前このままだとマジで身体ぶっ壊すぞ!?」

謙吾「俺の勝手だ…」

真人「んな訳に行くかよっ!そんなただの大会でもっと酷くなったらどうする気だテメェ!!」

謙吾「「ただの」…だと?」ギロ

理樹(久しぶりに見る本気で怒った時の謙吾だ、でも真人も引かない)

真人「…」

謙吾「俺はな、あの大会に賭けているんだ…ウチの道場に金の卵がいる。それもあと1世紀はお目にかかれない奴をだ」

理樹(謙吾の道場に1人才能を持った子供がいるという、このまま剣道を続けて行くならば自分を大きく超える存在になるのは間違いないそうだ。しかし親は勉強の為にそれを辞めさせると言ってきたらしい、そこで謙吾は「ならせめて次の大会でこの子が優勝したらウチに置き続けて下さい」と頼んだ。だから次の大会までへばる訳には行かないという)

理樹「だからって謙吾が…」

プルルル

葉留佳「あっ、ごめんなさい!…えっ…?」

理樹(初めは直ぐに消そうと思った葉留佳さんだったが電話の相手を見てそんな余裕は無くなったようだ)

葉留佳「も、もしもし?……………そんな…お、お姉ちゃんが!?…あ、ありがとうございました」ピッ

理樹「何だって…?二木さんがどうかしたの!?」

葉留佳「お姉ちゃんが…婚約者の人と…!」




続く

葉留佳「お姉ちゃんが婚約者の人に手伝ってもらって…逃げようとしたって!」サァ

理樹(血の気が引いてる…無理もない、その情報が家からかかってきたということは…)

来ヶ谷「それを家の人間が伝えてきたということは失敗したんだな?」

葉留佳「うん…」

恭介「何で今頃逃げようとしたんだ?」

葉留佳「そ、それは」

恭介「二木は5年間も政略結婚に耐えてきたのに何故今頃逃げようとした?…何か決まったんだろう?」

葉留佳「実は…」

理樹(それは「後継を産め」というものだった、葉留佳さん達の親は2夫1妻だったから痛い反撃を受けたが今度はそうさせないよう早めに手を打とうと考えたって訳だ)

理樹(婚約相手はこの結婚に疑問を持っていて、反撃こそしないものの行為に迫ろうとはしなかった…しかしその誤魔化しが効かない所まで来てしまったのでせめて二木さんだけでも逃がそうとしたのが今回の騒ぎの一連の出来事だ)

葉留佳「あいつらはどう処分するか考えてるって…。多分他のなんでも言う事を聞く男に産ませるかもしれない…いやあいつらはの事だからその可能性の方が高いかも」

理樹「あ…?」

真人「この……性根まで腐ってやがる!!」ギリギリ

恭介「………今日は帰れ、解散だ」

真人「恭介、お前何言って…」

恭介「帰ろっ、つってんのが聞こえねえのか!!」

真人「っ!?」

クド「恭介さん…」

恭介「お前達もだ…。とにかくここに居ても意味がないだろう」




理樹家

プルルル

理樹「恭介?」

恭介『理樹か…今日の事だな?』

理樹「当たり前だよ!どうするのさ?」

恭介『どうもこうも何も出来ない…コイツはマフィアの世界にイタリア人以外は関わるとこが出来ないように俺達には関係の無い事だからどうすることも出来ない』

理樹「そんな!関係が無くったって…」

理樹(昔だって僕たちで解決させたじゃないか…とは最後まで言わせてくれなかった)

恭介『馬鹿野郎!そりゃ昔だったら助けに行ったさ…でも今はどうだ?家庭があるだろうが!もう子供じゃない、周りの人々まで巻き込むことになるんだぞ!?』

理樹「……」

恭介『謙吾の事もそうだ、あれは謙吾が好きにやっているんだ。生易しく諭して止めたとして一生後悔するだろう』

理樹「…!」

理樹(何も言い返せなかった…恭介も僕達リトルバスターズも、もう無茶が出来る子供じゃない。だからと言って見過ごすわけにもいかないのに…)

次の日

理樹「ちょっと出かけてくる…」

鈴「うん、今日は卓球日にするか?」

理樹「定休日にはしないと思うよ、もしかするとすぐに意味がなくなるだろうし…じゃあ行ってきます」

鈴「…行ってらっしゃい……」





病院

沙耶「来てくれたのね?」

理樹「うん…」

青年「なんだ元気なさそうじゃん?」

理樹「昨日野球でさ…」

沙耶「えっ、草野球でもやってるの?」

理樹(僕はこのどうしようもない現実から離れるように(来ヶ谷さんの言葉を借りると)コンクリートの箱の中に逃げてきた、そこで沙耶さんと付き添いの人(名前は確かスノハラさん)との会話を楽しんだ)

理樹「僕が高校の時少し変わったクラブに入っててさ…」

理樹(話す内容はもっぱら過去の事だった、それで沙耶さんが思い出さないかという微かな期待と出来るだけ僕が今を思い出さしたくないからだ)

沙耶「へぇー!」

スノハラ「じゃあ今度は俺の番だな!アヤとは出会ったのは偶然だったんだ、実は俺も出会った日病院にお世話になっててね…さあ退院って時にアヤとぶつかっちゃってさぁー…」

理樹(そこからはよくあるナンパというかドラマの出会いというか…とにかくウマがあったらしかった、それよりもこのスノハラさんが沙耶さんを下の名前で呼ぶと少し心が重たかった)

理樹「沙耶さんは…あっ」

沙耶「もー、良いわよ!それが自然なら沙耶でもアヤでも好きに呼んでちょうだい」ニコッ

スノハラ「なあハニー?」

沙耶「死ね」

スノハラ「直球ですかー!?」

理樹(それから重い足取りで帰った僕は鈴と会話の無い夕食をとった…)

鈴「…」スタスタ

理樹「鈴、もう寝るの?」

鈴「もうお風呂入ったからな、お休み」

理樹「うっ、うん…」

理樹(心なしか沙耶さん達と喋る分鈴との距離が離れていっている気がする、しかしそれでも仕事や今の生活を続けなくてはならない…)

理樹(こうして夜は老けて行く…)




お休み

理樹「いらっしゃいませー!」

鈴「よく来たな」

客「じゃあ今日はこれを貰おうかね~」

鈴「まあ、少し待て…新作だ」

客「せ、せっかくだからそれも買おうかしら…」

プルルルル

理樹「もしもし、パン屋の直枝です」

クド『大変なのです!み、宮沢さんがっ!』




理樹「ええっ!?分かった、今すぐ行くよ!」ガチャン

鈴「どうしたんだ?」




病院

謙吾「ぐっ…」

理樹「いったい何が…」

謙吾「それがな…いつものように剣道を教えていたら恭介が…」


道場

ガラッ

謙吾「む?」

恭介「…よう」

謙吾「素振り止めぇ!!」

ガタガタ

謙吾「どうしたんだ恭介?言っておくが俺は休む気はないぞ」

恭介「今は時風瞬瞬と呼んでもらおうか?ま、今日はそんな事を言いにきたんじゃあない」

謙吾「……竹刀を持ってきたということはそういうことなんだろうな」

恭介「道場破りだ」




謙吾「奴は強かった、そして負けを認めても俺を…俺を……!」ギュッ

来ヶ谷「もう一週間は動けなくしたってことだな」

西園「お医者様がおっしゃるには治りかけていた肋を酷使していたのもあり大会当日まで退院さえも叶わなそうですね」

真人「ちくしょうっ!なんで恭介の奴!!」

理樹(なんで恭介は謙吾の所へ道場破りをしようと…?その後いくら電話をかけても繋がらなかった)

日曜日

理樹(あれからなんとか謙吾は大会を見届けることが出来たようだ、結果は見事優勝!金の卵は無事孵化できるだろう)

葉留佳「今日も恭介サン来ませんでしたネ…」

真人「あんな奴来なくてもいい…」

来ヶ谷「…」

プルルルル

葉留佳「ま、またまたごめん…。…!!」

来ヶ谷「また家の人間か…」

理樹「と、とにかく出よう!」

ピッ

葉留佳「もしもし…」





葉留佳「えっ!?じゃあお姉ちゃんはどうなるの…?うん…うん、分かった…」ガチャ

真人「…何だって?」

葉留佳「本家の奴らが詐欺にあったって…」



理樹(一昨日の夜…とあるセールスマンが家に来たらしい、追い払われそうになっても挫けないので何を売り込みに来たのかと問うと「建物のリフォーム」だと言ったらそう。時風瞬と名乗る男は巧みな話術であっという間に契約を結ぶと「明日の朝に振り込みをして下さい」と言うと帰っていった)


理樹(次の日振り込むとなんとそれから1時間もしないうちに本家が温めておいた財産全てが消えていた!…そこでようやく詐欺にあったと気付いた両家は警察に通報しようと思ったが他の人達の評判を気にして出来なかった、そこを犯人が狙っていたのかは知らないが一文無しになったと知った二木さんの婚約相手は即時離婚話を突き付け賠償金を求めた)

理樹(なので当然二木さんの跡取り問題は無くなったが二木さん自身も借金を背負うことになった)

来ヶ谷「被害額は到底私達が賄える量じゃないらしいな」

真人「…」ギリッ

理樹「恭介…なんで急に…?」

来ヶ谷「……とにかく今日は解散だ、思う所もあるだろうが焦ってもっと酷い事態にしたくはない。これはどうすることも出来ないんだ」

理樹(来ヶ谷さんがいつもと様子が違う、いつもなら「色々解決する手立てを考えよう」と言うだろうと思ったのに…何か知っているのか?)

来ヶ谷「…今は言うわけには行かないんだよ少年、まだ確信があるわけでもないが邪魔することもしたくはない」シュン

理樹(心を見透かされたようだけどその答えは良く分からない物だった)

次の日

ガチャ

鈴「…今日も行くんだな?」

理樹「うん…」

鈴「理樹、行く前に話がある」ギュッ

理樹(なんだろう?鈴から何かを提案するなんて初めてだ)

理樹「話って?」

鈴「私達別れよう」

理樹「えっ…」

鈴「いつもは私が落ち込んでた時も理樹のほうがしょげてた時もいっぱい話して元気になってた…でも今はどうなんだ」

理樹「今は…」

理樹(そうだ、リトルバスターズにとってこれ以上に無い危機に面していても僕は鈴と何も話し合おうとはしなかった、するといえば沙耶さんと所へ行って呑気なお喋りをするか電話越しに来ヶ谷さんや恭介の頼れる人に相談していただけだった)

理樹(今は僕と同じ…いや、実の兄が敵に回ってる分僕以上に寂しいはずだった、なのに僕は!)

理樹「鈴…」

鈴「行け、今行くことだけ怒らない」

理樹「いや、鈴のそばに…」

鈴「行け!理樹なんか…理樹なんか!」シュッ

理樹「いっ、痛いよ鈴!」

理樹(鈴は力任せに近くにあった物を僕に投げてきた…今日はほとぼりが冷めるまでこの家には居ない方がいいだろう)

病院

理樹「はぁ…」トボトボ

沙耶「あら?なんだか今日は人生に絶望したような顔ね」

理樹「いやいやいや…何でもないよ…」ニコッ

沙耶「げっ、元気なさすぎ…!?」

スノハラ「おい沙耶!ちょっと直枝借りて行くぜ!」ガシッ

理樹「ちょっ」

沙耶「えっ?別にいいけど…」

理樹「僕は物じゃ…うわぁ!?」ビューッ







喫煙室

理樹「いきなり何なのさ?」

スノハラ「いや実はさ、ちゅっと相談に乗ってもらいたい事があって…」

理樹「相談?」

理樹(その内容は薄々気付いていた、それを僕に相談するであろう事も)

スノハラ「沙耶と俺が付き合えるよう協力してくれないか?」

理樹(予想外ではなかった、前々から彼の沙耶さんに対する反応を見ていれば小毬さんでも分かるほど彼女を好きなのが伺えた)

スノハラ「なっな!どうなんだよ!?」

理樹(僕は……)

理樹「うん、分かった…どうすればいい?」

理樹(鈴を裏切る訳には行かなかった、例え付き合ってなかったとしてもまだ僕は鈴のそばに居る義務がある。恭介との約束だ)

スノハラ「よっしゃあ!じゃあ具体的な事は決まってないが俺を全体的にサポートしてくれよな!」

理樹「全体的にってどういう事さ!?」

沙耶「あら、もう戻ってきたの?」

スノハラ「ああ、思ったよりも契約を早く結べてね」

沙耶「何よそれ…?」ジト

理樹「えっ」

スノハラ「絶対言うなよな!?」

理樹「わ、分かってるよ!」





理樹「ただいまー…」ガチャ

シーン

理樹(電気を付けると机に手紙が置いてあった、内容は至極単純で一般的なものだ)

理樹「実家に帰る…か」

ゴロンゴロン

理樹「あー!なんて嫌な奴なんだ僕は!」






チュンチュン

理樹「誰も居ない……」

理樹(その日から1人でパン屋を切り盛りする事になった、鈴が居ないだけでこんなに違うなんて…)


チリーン

理樹「いらっしゃいませー!」

客「あら…今日は鈴ちゃんいないの?」

理樹「えっ、まあはい…実家に用事があるとかで…」

客「あらそうなの…残念ね、いつも鈴ちゃんが作ってくるパンが近所の話のタネだったのに…」

理樹「あはは…」

客「ちゃんと大事にしてあげるのよ?」

理樹「…はい」シュン



理樹(そんな生活を続けてやっと次の日曜日になった)

グラウンド

来ヶ谷「今日は鈴君も休みか…」

真人「あのさ…」

理樹(真人の方を向くと直視し難いほど怒りに燃えた顔が見えた)

真人「足らねえ脳みそ使って一週間考えたんだけどよぉ…」

クド「…」

真人「…もう許せねえっ!恭介の奴をぶん殴って目を覚まさせてやるよ…」

理樹「ま、真人…」

真人「止めるなよ?行くぞ謙吾…」

謙吾「ああ…」

ザッ

理樹(どうしてこんな事になったんだ…)

真人「場所は実家から動いていないそうだな…鈴から聞いた」

理樹(!?何故鈴は恭介を売り渡すようなマネを?…とにかく)

理樹「来ヶ谷さん!2人を止めないとっ!」

小毬「そうだよぉ~!喧嘩はダメですよっ!」

来ヶ谷「言ったろう、私はこの問題について干渉してはならないと…どうしても止めたいなら自分で気付くんだ、恭介氏が何故あんな行為に走ったのかをな」

理樹「気付く…?」

理樹(考えろ…確かに恭介の行動はおかしい、それも謙吾が怪我した時から。………待てよ、謙吾の怪我が原因?違うそれだけじゃない!二木さんの跡取りの話も…………まさか!!)

理樹「2人を止めなくちゃ…!」

来ヶ谷「分かったか、それなら良い…それで良いんだ」




実家

ガラッ

恭介「よう…来たか」

真人「……おめえ俺よりもバカになったらしいな…?」

恭介「俺がバカに?…ふっ」

恭介「かもな?」ニヤ

謙吾「恭介ぇぇぇぇ!!!」ダッ

理樹「待って!!」

謙吾「理樹…」

鈴「…」チラッ

真人「ッチ、止めるなって言っただろうがよ…」

理樹「違うんだ…やっと分かった、恭介はやっぱり僕らのリーダーだって」

バタバタ

西園「一体なにが…」

恭介「…ふっ」

恭介「あーはっはっは!いきなり何を言うかと思えばどうしたんだ理樹?金を奪って謙吾を負傷させた俺が誰の何だって!?」ククク

真人「野郎…」

葉留佳「……」キュッ

理樹「何でそんな事を言うのかって?…それはよく考えたら最初から分かってた事なんだ」

理樹「まず最初に謙吾の道場破りの件、謙吾は医者から運動を極力止めるよう言われてたよね」

謙吾「ああ…それがどうした?」

理樹「理由は身体が完全に治り切っていなかったから…だから恭介は事態が悪化するまえに動けなくしようと道場に踏み込んだんだ」

真人「何だと?」

理樹「根拠ならある!だって謙吾が恭介から受けた傷は全部足だったじゃないか…!」

葉留佳「あっ!」

理樹「そして医者がもう一度検査したら攻撃は食らってないのに肋がダメになりかけていた、大会当日には行けるようにしたのもきっとそう加減をしたんだよ」

恭介「ほぉ…随分と俺をフォローしてくれるんだな?だが二木の件はどう説明する?」

理樹「それも同じさ、だって恭介が詐欺を行ったのは二木の跡取りの問題を聞いてからすぐだったじゃないか」

理樹「家の看板が泥を塗られたらとなればまず跡取りの事を考える余裕はない…というかそもそも結婚さえ続けれるか怪しい」

恭介「だから犯したと…ふっ、なかなかの名推理だが考えすぎじゃないかね?」

理樹「それだけじゃない、もう一つだけ気になるのが何故ここを動かないのか」

西園「…なるほど」

理樹「ここからあの家までいくら遠いと言っても県を跨ぐほどじゃあない、見つかる危険性が高いっていうのに」

恭介「言っただろう見つかってもどうせ裁判じゃ無罪なんだからな、と」

理樹「まだまだそれだけじゃない、恭介の靴だよ」

謙吾「靴だと…?」

理樹「そこまでボロボロなのはおかしい…そんなに多額の金を手に入れたのならそれぐらい新調すればいいのに…大きな詐欺や強盗を行なった人達は足がつかないように一気に金を使う事は決してないというけどこれは許容範囲のはず」

西園「恭介さんは金に一切手を付けていないということですね?」

理樹「そうさ、最初から恭介はあの家に何らかの形でお金を返すつもりだったんだ」

来ヶ谷「家に居続けるのもそれが理由だな」

真人「嘘だろ…?」

恭介「……まったく理樹には叶わねぇなぁ!全部見透かしてやがる」

理樹「…そんな事はないよ、来ヶ谷さんがヒントをくれたお陰さ」

理樹「鈴は知ってたんでしょ?」

鈴「…なんとなくな…」

恭介「あの家には金ではなく張りぼてのプライドが無くなることが大事だったのさ、今頃いろんな所から金を借りてその誇りを無くしている事だろう…もう返済出来たとしても修復される事はない」

クド「あの~…」

恭介「なんだ能美?」

クド「恭介さんはなんでその事を黙っていたんですか?」

恭介「もしもこの事を話していたとしてお前らは無理やりにでも俺を止めるだろう?それに下手すると犯罪の共犯者になっちまう」

真人「き、恭介…すま」

恭介「謝らなくていい、お前が正しいんだ!むしろ怒らなかったら謙吾をお前ごとボコボコにしてるぜ」

理樹「これから返しに行くの?」

恭介「ああ…これで決着だ」

理樹(こうしてなんと家の前に現金をそのまま置いてミッションを完了させた僕たちは仲直りをした、後日訴えられたりするかと心配したが話し合いを盗み聞きした葉留佳さんによると「これ以上何かしても見苦しいだけだから大人しく身を引こう」と流石に懲りたようだ。そして…)


病院

スノハラ「じゃあ告白してくるよ…」ドキドキ

理樹「がんばってね」

理樹(いいんだ…これでいい、スパイとしての彼女、あの世界の記憶を思い出しても幸せとは限らない…それにパートナーだったのに長年忘れていた僕を軽蔑するだろうから。きっと彼は沙耶さんを幸せに出来る、なんたって良い人だから…)

スタスタ

沙耶「あら、今日は2人とも遅かったわね?」

スノハラ「ああ…実は沙耶に伝えたい事があって…」

沙耶「何よ?」

ダダダダッ

理樹(どうか2人とも良い仲……!?)

理樹「あっ、あれは…!」

スノハラ「実は俺ずっと沙耶のこt」

斎藤「はりゃほれうまうー!!」バーン

沙耶「な、な、な…何あれ!?」

理樹(そこには懐かしい5年振りに見るインディアンな仮面を被った恭介がいた)

斎藤「ある時は草野球のリーダー…またある時は日本一の斎藤…その正体は!」カチャッ

時風「俺だ…!」

理樹「その仮面は…」

理樹(恭介は仮面を二重に被っていた、そして現れたもう一つの仮面は時風瞬の物だった)

スノハラ「なんだよさっきからアンタ!?せっかくのムードをぶち壊しにすんなよ!」

沙耶「あっ…うう、アレは…あの仮面は…!」ズキッ

理樹(まさか…記憶を取り戻すのか!?)

時風「俺の名前は時風瞬!そして貴様は学園の秘宝を見事手に入れることが出来た一流のスパイ、朱鷺戸沙耶だ!…そしてここに立っているのは……直枝理樹、お前のパートナーだ」

沙耶「あ、ああ!」ガタッ

スノハラ「どっ、どうした!?」

沙耶「……ふっふっふ…」

沙耶「そうよ、自称一流のスパイだとかなんとか言っておきながらさあ病気が回復して復活したかと思えばその大切なパートナーをすっかり忘れちゃってる間抜けよ!笑っちゃうわね!笑なさいよ!アーハッハッハって」

沙耶「アーハッハッハ!……ヒグっ」グスッ

理樹「沙耶さん…」

沙耶「り、理樹君…」

理樹、沙耶「「ごめん(なさい)」」

理樹、沙耶「「えっ?」」

恭介「…ミッションコンプリートだな…そうは思わないか?」ポンッ

スノハラ「えっと……なんの話でしょうか?」

理樹(こうして記憶を戻した沙耶さんと一通り状況を把握したあと、帰って鈴と仲直りした。「仲直り」といってもまた付き合い直すというわけではなく更に女の人を連れ込んだんだからもっとややこしい事になった)

理樹(あれからどうなったかと言うとスノハラ君は降られたと自覚すると5分後には別の女性を追っかけていた、沙耶さんはこれから退院しても彼女のお父さんとまた一緒に海外へ飛ぶ訳にもいかないので僕の店で働くことになった、寝床も居候という形で三人で住むことに決定された。かくしてリトルバスターズはまだまだバラバラにはなりそうにないのである)

チリーン

沙耶「あっ、いつもの人来たわよ?」

鈴「うん」

理樹「せーの…」

「「「いらっしゃいませー!」」」




終わり

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