アニ「アルミンを殺した」(95)
アニ「ら、化けて出てきた」
アルミン『やあ』フワフワ
アニ「…」
アニ「どうしよう」
アルミン『恨めしや~』ヒュ~ドロドロ
アニ「まあ、私が叩き潰したのが悪いんだと思うけどね」
アルミン『うん、虫みたいにね』
アニ「だって私は見逃すつもりだったのに、アルミンが「アニ?」って呟くんだもの」
アルミン『あれは僕の一生の不覚だったね、まさしく』
アニ「全くだよ」
アルミン『でも恥ずかしいぐらい反応したアニも悪いと思うんだ』
アニ「それは私の一生の不覚だったね」
アニ「やっぱりあの時の格好のままなんだね」
アルミン『うん、立体機動装置はおろか上着も脱げないよ』
アニ「いや、そうじゃなくて。もっと血まみれかと…」
アルミン『ああ、そういうこと? 確かに僕の身体は死んだ時グシャグシャになって骨という骨がボキボキに』
アニ「やめて、忘れかけてたのに」
アルミン『やだね』
アニ「私のこと、恨んでるよね?」
アルミン『ん~どうかな。自分でもよく分かんないや』
アニ「? 恨んでるから私の目の前に来たんじゃないのかい」
アルミン『うん、とても恨んでると思うよ。こうやって化けてでてるくらいなんだからさ』
アニ「自分の感情でしょ。はっきりしなよ」
アルミン『…例えばさ、好きな人が目の前にやって来たとするじゃない? すると人によっては胸がドキドキしたり、緊張したり、気分が高揚したりする』
アルミン『これを人は「感情」って呼んでるけど、実態は脳が分泌したとある物質が肉体に作用して心臓の鼓動を速めたり、体を強張らせてたりしてるだけだ』
アルミン『つまり、「感情」は肉体の反応に過ぎないんだ。でも僕の肉体は遥かウォール・マリアの真ん中で腐り始めている』
アルミン『だから僕の感情は頭で推測することは出来ても、感じることは出来ないんだ』
アニ「…でもさっき『恨めしや~』って言ったよね」
アルミン『あれはノリ』イチドヤッテミタカッタ
アニ「でも何でアンタだけが化けて出てきたんだろうね? その…私、たくさん殺したし」
アルミン『多分、アニの正体がわかったのが僕だけだからだろうね。相手が分からないと恨めないよ』
アニ「そう、それじゃあすっきりした所で…」
アニ「私の上からどいてくれない? 寝にくいから」ベッドノナカ
アルミン『やだね』フワフワ
翌朝
アルミン『へぇ、これが憲兵団の人達か』フワフワ
アニ「…ついて来ないでよ」
アルミン『大丈夫だよ、君以外の人間には僕は見えないから』
アニ「そういうことじゃなくて」
アルミン『それにしても憲兵団の腐敗具合は噂以上だね。まともな仕事をしてないじゃないか』
アニ「…実際クズだけど、それも普通の人間さ」
アルミン『マルコがいたら幻滅しただろうね…おっと』
アニ「…」
アルミン『エレン、どうしてるかなあ』
アニ「……」
アルミン『君がここにいるってことは、君の作戦は失敗したんだろうけど、人類も何の成果も上げられなかったんだろうなあ』
アニ「……」
アルミン『とするとエレンは調査兵団からはずされて憲兵団の下で解剖されちゃうのかな』
アニ「……」
アルミン『エレンは僕が死んで悲しんでくれてるかな? あとミカサも』
アニ「もう…やめてよ、お願いだから…私を苦しめないで」
アルミン『…やだね』
アルミン『やあアニ! 起きてる?』フワフワ
アニ「…アンタのおかげでね。寝れやしない」ベッドノナカ
アルミン『幽霊になってから毎晩暇でね。こうやって君に嫌がらせすることしかやることがないんだ』
アニ「フン…、で今晩はどんな嫌がらせだい?」
アルミン『今日はちょっとした実験だよ。せっかく幽霊になったんだから幽霊らしいことしないとね』
アニ「もう十分幽霊らしいけどね…。で、どんな?」
アルミン『うん、こーやって君の上に乗っかってね…』ドッカ
アニ「何を…。うッ…!」
アルミン『苦しいでしょ 俗に言う「金縛り」って奴だよ。息が苦しいのに身動きも出来ないのはどんな感じ? ほら、動いてごらんよ』
アニ「調…子に、乗るんじゃないよッ!」
ちょっとケータイに移る
アニ『もう頭にきた。罪悪感があったから黙ってたけど、こうなりゃ塩をまいてでもアンタを...』
アニ『...』
アニ『...えっ』
アニ『私が...、ベッドで寝てる』
アルミン『「幽体離脱」っていうやつだよ。大丈夫、君はまだ生きている』
アルミン『ただちょっと魂が散歩しているだけさ』
アニ『アンタ、何のためにこんな...』
アルミン『散歩といえば...これからちょっと出かけないかい? 今夜は散歩日和だよ。足は使わないけどね』
アニ『...でも』ネマキ
アルミン『大丈夫、誰も見てないよ』ギユッ
アルミン『僕以外にはね』フワー
アニ『...』フワー
アニ『まさかウォール・シーナの壁を立体機動装置なしで登る日が来るとは思わなかったよ』
アルミン『生きてる時にも何度も壁に登ったけど、いい景色だよね』
アルミン『トロスト地区と違って立派な建物が多いね』
アニ『...』
アルミン『貴族や富裕層がほとんどだから当然か』
アニ『...』
アルミン『トロスト地区と違って立派な建物が多いね』
アニ『...』
アルミン『貴族や富裕層がほとんどだから当然か』
アニ『...』
アルミン『あっ、あそこにあるの、ウォール教の教会だ。でっかいなあ』
アニ『アンタは...』
アルミン『うん?』
アニ『どうやったら、成仏するの』
アルミン『...これは推測だけど、僕の恨みを完全に精算するか...』
アルミン『君が死ぬか、だね』
アルミン『アニこそ、何のために人類を滅ぼそうとするのさ』
アニ『...』
アニ『...そう、命令されたからだよ』
アルミン『...そう』
アニ『...』
アルミン『...』
アニ『...』
アルミン『明日でしょ、エレンがここへ連行されるのは。新聞で見たよ』
アルミン『多分、アニはそれを狙ってまたエレンを誘拐しようと考えている、違う?』
アニ『...』
アルミン『でも、エレンがどういうルートで運ばれるか分からないし』
アルミン『それに僕がいるからうかつに行動できない』
アニ『...』
アルミン『僕も君に協力するよ』
アニ『えっ...』
アルミン『勘違いしないでよ』
パソコンに戻るね
アルミン『僕には恨みを晴らす力はない。せいぜい嫌がらせ程度で限界だ』
アルミン『ということは恨みを晴らすためには、君の正体を他人に知らせてその人に頼るのがいいんだけど、それもままならない』
アルミン『だから君の正体を知らしめる唯一の方法は君のミス…、つまり君のエレン誘拐の失敗だけだ』
アルミン『そこで君が行動にでないのは、僕にとって一番困ることなんだ』
アニ『…私がもし、エレンを攫うことに成功したらアンタどうするつもりだい』
アルミン『別に。ここからエレンを連れて逃げることが出来ても、マリアの外に出るまでは時間がかかる』
アルミン『君が生きている限り、僕にもチャンスがある。そう思わないかい?』
>>45をちょい訂正する
アルミン『僕には恨みを晴らす力はない。せいぜい嫌がらせ程度で限界だ』
アルミン『ということは恨みを晴らすためには、君の正体を他人に知らせてその人に頼るのがいいんだけど、それもままならない』
アルミン『だから君の正体を知らしめる唯一の方法は君のミス…、つまり君がエレンを誘拐しに行動して、そして失敗した時だけだ』
アルミン『そこで僕にとって一番困ることは、君がエレン誘拐に行動を起こすことすらままならなずに終わってしまうことだ』
アルミン『だから君に協力しよう、君が動くように。そして祈ろう、君が失敗するように』
アニ『…全く、嫌になるよ。こんなか弱い乙女に味方してくれるのは、私に恨みを抱えた幽霊だけなんてね』
アニ『しかもそんな奴に頼らざるを得ない状況と来てる』
アニ『いいだろう、アンタの力を借りるよアルミン。でもね、アンタの思惑通りにはならないから』
アルミン『はは、そうだといいね。さて、僕はもう行くよ。エレンの護送ルートから憲兵の数、時刻まで全て調べてくるよ』
アルミン『ちゃんと帰り道は分かるよね、アニ? 一人でも帰れる?』
アニ『…帰り道はよく分かってる。たとえ一人でも、帰れる』
アルミン『そう、か。それじゃあ、また…ね』
アニ『ああ。また、ね』
あと少しだけど、一旦切る というか寝る
とりあえず、書き溜めた分だけ
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「…お前、アニ!? 何してんだ!」
「はあ!? 助けに来た? そんなことしたらお前も危ないぞ!」
「お、俺はもう、仲間を喪いたくない…。いまならまだ…」バシン!
「……」
「そう、だな。俺らしく、なかったよな」
「行こう。そしてたとえ一人でも巨人を一匹残らず…ッ!」
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「…なんとかここまで誰にも見つからずに来れたな」ハァハァ
「ああ、おれはもう、大丈夫だ」
「思えばお前には助けられっぱなしだな、俺。この恩は、一生かけてでも返すよ、必ず!」
「…なんだよ、顔色が悪いぞ? お前こそ無理してないか」
「…ああ、そうだな。アルミンの分まで生きて、そして外の世界を……」
「……なんでお前、アルミンが死んだことを知ってんだ? 俺…、言ってないぞ」
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「そういえば何で俺を助ける? いくら同期でも脱走幇助は重罪、普通はやらない」
「それにまだ行き先を聞いてなかったな。俺をどこに連れて行く気だ?」
「おい…、答えろよ。何黙りこくってんだよ…。答えろッ!」
「まさかお前…。お前が」
「お前がぁッ!!」
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「放せッ、放せこの糞巨人野郎ッ!」
「があアアッ よくもみんなを、アルミンを、殺しやがったなッ!」
「殺す! 殺してやる! てめえは、てめえだけは俺が…ッ」
「俺がぶっ殺してやるッ!!」ガリィッ
カッ!!!!
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憲兵a「なあ、信じられるか? お前」
憲兵b「いや、さあな。これはもう俺の理解を超えているよ」
憲兵a「そうだよなあ。いきなり壁内に出現した巨人が二体、大暴れして市街地に甚大な被害を与えた挙句」
憲兵a「片方がもう一匹の巨人を取り押さえたと思ったら、うなじからコイツが逃げ出してきたんだよな」
憲兵b「あぁ、こんなちっぽけがガキがな。しかもコイツ俺らと同じ憲兵団だろ」
憲兵a「新人だけどな。しかしその後は間抜けだよな、立体機動で逃げてる途中で壁にぶつかって転落とは…」
憲兵b「で、捕まえようとした寸前でこれだ。まるでガラスケースに収まったお人形さんじゃねーか」コンコン
憲兵a「ついてねえよな俺らも。こんな奴の見張りなんてよぉ。しかも生きてるのか死んでるのかわかりゃしねえ」
アルミン『生きてるに決まってるよ』
アルミン『生きてるに決まってる。僕がまだこの世にいるんだから』
アルミン『でも誤算だったなあ。単純に恨みを晴らせば成仏できると思ったのに』
アルミン『やっぱりアニには死んでもらわないといけないけど、これじゃあどうしようもないね』
アルミン『退屈だなあ、ただ待つのは』
アルミン『どうせなら話し相手になってよ、アニ。さっきから僕の声、聞いてるんだろ?』
アニ(……)
悪いけど、ここまで 我ながらみじけえ
今日こそ終わらせる
アルミン『あんなに早くボロを出すとは思わなかったよ。結構アニも抜けてるんだね』
アニ(よく言うよ。耳元であんなに喋られたら、混乱するに決まってるじゃないか)
アルミン『でも、「あんたはアルミンの分まで生きて、外の世界を見に行きなよ」はないよ』
アニ(私の一生は、不覚だらけだ)
アルミン『はは、そうだね』
アニ(…ッ痛ぅ…)
アルミン『…? どこか痛むの?』
アニ(落ちた時の怪我が治ってないんだよ。治る前に結晶体で体を覆ったから)
アルミン『ああ、確か十数mの高さから落ちたよね。あれは見てて痛そうだったよ』
アニ(まさか立体機動中に目隠しされるとはね。盲点だったよ)
アルミン『単純で幼稚だけど、効果覿面だったでしょ』
アニ(恨めしいほどにね)
アルミン『エレン、ものすごく怒ってたね。嬉しかったよ、本当に。僕のために、あんなに』
アニ(始めに会ったときは腑抜けてたくせにね)
アルミン『エレンらしいよ。多分吹っ切れたと思うし、もうエレンに心配はいらないね』
アニ(そりゃそうでしょ。なんせ頭をふっ飛ばしても私に組み付いてくる位なんだからね)
アルミン『あれはちょっとキモかったな』
アルミン『ねえ、アニ』
アニ(…なに?)
アルミン『なんでそこまでして生きたいの? 機密保持のためなら死んだほうが確実なのに』
アニ(言ったでしょ、あんたの思惑通りには行かないって)
アルミン『9割9分僕の思惑通りだけどね。でもそれだけじゃないだろ、本音をいいなよ』
アニ(…いやだね)
アルミン『……』
アニ(…何さ)
アルミン『ま、いやならいいよ。時間は無限にある。君が言うまで待つまでさ』
アニ(無限…)
アルミン『今さら怖くなった? そうだよ、無限。永久、永遠、ずっと』
アルミン『君がどれほど閉じ篭っていられるか知らないけど、そう言っても過言じゃない時間が流れるだろうね』
アニ(…)
アニ(アルミン。私、死んだらどうなるのかな)
アルミン『そんなことを考える人間はいないよ』
アニ(死人が何言ってんの、茶化さないで。本気で聞いてるの)
アルミン『…僕は、僕以外の幽霊に会った事はない。だから、普通は死んだらどこかへ消えちゃうんだと思う』
アニ(消える? 天国とか地獄とかに行くんじゃなくて?)
アルミン『うん、直感だけどね。でも悪い感じはしないんじゃないかな。少なくとも化けて出てくるよりもずっと健全だよ』
アニ(…)
アルミン『ちょっと死ぬ気になったでしょ。地獄行きはないって聞いて』
アニ(…少し)
アニ(わかったよ、アルミン。私の完全な負けだ)
アルミン『認めるのに随分とかかったね。コニーとチェスしてる気分だったよ』
アニ(でも、あんまり苦しまずに死にたいな)
アルミン『我侭だなあ。ま、君が死ぬ気なら、僕も苦しまずに君を死なせる事ができるよ』
アニ(頼むよ)
アルミン『うん、まず全身の力を抜いて…』
アニ(…少し、怖い)
アルミン『死ぬのは一瞬さ。僕の時もそうだった』
アニ(…これで終わりか、私の人生も)
アニ(悔いは多い。だけど仕方ないね、生き続けるには罪が大きすぎる)
アニ(…それでも、それでもせめて…)
アニ(父さん…)
アニ『…』
アニ『…えっ』フワフワ
アルミン『…』ニヤニヤ
アニ『…あんた、こうなるって分かっててわざと私を死なせたね』フワフワ
アルミン『なんとなくね。未練たらしい感じだったから、素質は十分にあると思ってたよ』
アニ『…怒る気も失せたよ』
アルミン『そりゃそうだよ、死んでるもの。で、なにが未練なのかな、アニは?』
アニ『あんたに教える義理はないね、私はもう行くよ。あんたも早くどこかへ消えちまいな。望みは達成したでしょ』
アルミン『そうはいかないよ。形はどうあれ君はまだこの世にいる。僕もいる。だから君に憑いて行くよ、どこまでも』
アニ『…やめて、って言ってもやめないだろうね、あんたなら』
アルミン『もちろん、やだね』
アニ『もうあんたの望みがなんなのか分かんなくなってきたよ』
アルミン『(僕の望み…。それが単純な復讐ではないことは、今はもうはっきりと分かっている)』
アルミン『(いや、初めから気づいていたんだ。ただ認めたくなかっただけで)』
アルミン『(女型の巨人の正体を知ったあの瞬間、僕の心臓の鼓動は止まった)』
アルミン『(君の前ではあれほど治まらなかった鼓動が、止まったんだ)』
アルミン『(そして幽霊になってから悟った、こんな形でなければ君とは一緒にいられないと)』
アルミン『(だから、相変わらず僕の心臓は動かないけど…)』
アルミン『(結構、しあわせ、かな)』
アルミン『ほら、アニ行こう。君が動かなきゃ僕も動けない。こんな辛気臭い所から早くおさらばしよう』
アニ『あんたの命令は受けないよ、私の自由さ。そうでしょ?』
アルミン『はは、そうだね。僕たち、初めて自由になれた。そうだね』
アニ『? 意味の分からないことを言うね』
アルミン『気にしない気にしない。ほら、君の未練を晴らさないと僕、永久に君に憑きまとうことになるよ』
アニ『それは勘弁するよ。もうこれ以上あんたと一緒にいるのはごめんだからね』
アルミン『それじゃあ、出発だ!』フワ~
アニ『フン…』フワ~
終わり
終わった おまえら、ss投下中に他スレを覗きながらやるんじゃないぞ、誤爆るから
アルアニに幸あれ レスありがとうね
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