P「プロデューサーマスター」 (42)

P「……」テクテク

高木「ん? ……ちょっとキミ、いいかね」

P「……俺ですか?」

高木「……うん……うん。ティンときた」

P「はぁ」

高木「私はこういうものだが……君、うちでアイドルやってみないかね?」

P「えっ」

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P改めI(……という出来事が一週間前にあった)

I(やりたい事もなかったし、二つ返事でオーケーしたものの……まさか)

春香「アイドルさん! 今日はレッスンですよ、レッスン!」

千早「まだ歌唱力が絶対的に足りてないから、重点的に行いましょう」

響「ちょっと待ったー! 足りないのはダンスだぞ! ダンスレッスンに行くさー!」

雪歩「あ、あのぅ私と一緒に……い、いえやっぱり一人で行きますぅ」

真「雪歩、一人でどこ行くんだろ……おっと、アイドルは体力が大事です。まずはマラソンですよ!」

貴音「いいえ。体力づくりならばらぁめん屋巡りに……」

真美「お姫ちん、そーいうのは仕事として取ってこようよ」

美希「あふぅ。メンドくさいのはヤだし、皆に任せるのー」

やよい「美希さん、そういうのは良くないかなーって。仮にもお給料貰ってるんですから」

I(俺の担当プロデューサーが9人もいるなんて……)

I(しかも大半が学業と両立してるという……正直、この事務所が不安です)

I(彼女達も社長に声をかけられてプロデューサーになったそうだが……この釈然としない感じは何なのか)

律子「そっちは相変わらず大変そうですね」

I「ハハハ……」

I(彼女……律子は元々アイドル志望だったそうだが、プロデューサーとしての腕を買われて入社したらしい)

I(が、肝心のアイドルがいなかったので晴れてアイドルに転向になったと聞いた)

伊織「ほら、律子行くわよ。今度のライブ、絶対に成功させるんだから!」

あずさ「その為にも練習をもっと……あら? このホワイトボードに書いてある撮影って何かしら?」

亜美「ゴメンゴメン。この前仕事取ってきたの、皆に言うの忘れてたよー」

伊織「どーすんのよ! 今日はもうレッスンの予定が……」

律子「うーん、レッスンの時間と撮影時間を考えて……ギリギリなんとかなりそうね」

あずさ「本当にギリギリですよ」

律子「道のりをああしてこうすれば……大丈夫だと思います。何とかします」

I(その律子のプロデューサーが竜宮小町と呼ばれる三人組……)

I「はぁ……それでも俺よりはマシだよなぁ」

小鳥「どうしたんです? そんなため息なんか吐いて」

I「あぁ、いえ。何でもないですよ」

I(彼女は音無小鳥さん。ただの事務員だ)

小鳥「本当ですか? 何か悩みでもあるなら遠慮なく言ってくださいよ」

I「悩みとはちょっと違いますが……うちの事務所ってバランス悪くないですか?」

小鳥「バランスですか?」

I「ほら、アイドル一人にプロデューサーの数が……」

小鳥「なるほど。でも、そういう事務所が一つくらいあってもいいんじゃないですかね?」

I「そういうもんですかね」

春香「ほらほら、アイドルさん! ボイスレッスン行きますよー」

響「違うぞ! ダンスレッスンに行くんだぞ!」

真「二人とも、まずは体力づくりからだって言ってるじゃないか」

春香「でも、歌の一つも歌えないと仕事にならないし」

響「多少歌が下手でもダンスで魅せれば問題ないさー!」

真「響のいう事は分かるよ。だからこそ、先に基礎を固めておくべきだよ」

I「……何でもいいから決めてくれないかなー」

千早「とりあえず、私のほうで楽曲を用意しました。後で確認をお願いします」

真美「えー、その歌シリアス過ぎだよ。もっとポップな感じがいいよー」

美希「ミキはカッコいい感じの歌がいいと思うな」

千早「真美の言うポップな感じというのは、年齢的に合わないのではないかしら」

真美「最初は親しみを持ってもらう感じのがいいって!」

美希「カッコいい歌が一番キラキラすると思うよ」

I「デビュー曲が三曲同時リリースとかになりそうだな……」

貴音「そういえば来週、そば屋さんの食れぽの仕事が取れそうなんです」

雪歩「え、その時間って……私が取ってきた撮影のお仕事と被っちゃうかも……」

やよい「はわっ!? ど、どうしましょう」

貴音「止むを得ませんね。ここは分身の術を習得していただきましょう」

雪歩「な、なるほど。これで解決ですぅ!」

やよい「それなら私も他の仕事見つけてきますね!」

I「おーい、無茶言うなよー」

I(というわけで……俺は毎日、先行き不安な日々を送っています)

~それからしばらく経って~


春香「さぁ、今日はバラエティ番組の収録ですよ! 収ろ……うわっ!?」ツルッ

I「おっと。何もない所で転ぶなんて……危なかったな」サッ

春香「あ、ありがとうございます。でも今の技を使えば現場で注目集める事間違いナシですよ!」

I「俺、そーいうスキルは覚えてないなぁ……」



千早「今日は新曲発表です。気合を入れてください」

I「任せろ。おかげさまで歌唱力に自信がついたからな」

千早「あとは気持ちを込める事だけ忘れずに」

I「しんみりした曲だからな……まぁ、頑張るよ」

真美「にーちゃん! 次はドッキリの収録だぜー」

I「それを受ける側の俺に言っちゃうのどうなんだ?」

真美「まぁまぁ。にーちゃんの演技力なら大丈夫だって」

I「自分のミスを誤魔化す技術は上手いよなぁ、真美」



貴音「さて、今日は待ちに待ったらぁめん食べ歩き番組の日です」

I「言っとくけど食べるのは俺で、貴音じゃないからな」

貴音「なんと!?」

I「何故気付かなかったのか」

響「今日は動物園でレポートだぞ!」

I「おお、凄い芸達者な動物達だな」

響「むっ。自分の家族の方がずっと凄いぞ!」

I「そんなに言うならそっち売り込むべきじゃないか?」



やよい「うっうー! 今日は料理番組ですよ」

I「家庭料理で良かった……調理はそんな上手くないからな」

やよい「うーん、でもちょっと食材多いかな。残ったのはどうするんだろう……」

I「後で貰えるかどうか聞いてくるよ」

雪歩「あ、あのお茶のCM取ってきました」

I「お茶か。あんまり味の違いとか詳しくないんだが」

雪歩「大丈夫です。ペットボトルのなんてどれも大した味じゃないですから」

I「うん。それスポンサーの前で言うなよ?」



真「今日はドラマ撮影です」

I「個人的にはアイドルと俳優は別物って思ってるんだが……まぁ、そうも言ってられんか」

真「チョイ役ですけどいい役取ったんで、お願いしますね」

I「白馬に乗った王子……どんなドラマなんだこれ」

美希「あふぅ。今日はライブなの」

I「凄く適当だな」

美希「何とかなってるからいいと思うな」

I「プロデューサーが言うべき台詞じゃないなぁ」



伊織「ふぅん、あっちも中々やるみたいね。負けてられないわ」

亜美「というわけでりっちゃん! 今日はゲーム雑誌のグラビアだぜー!」

あずさ「それとカーナビの音声収録のオーディションもありますよ~」

律子「了解です。では、車を用意しますので待っててください」

~数日後~


I「はぁ……」

小鳥「また、ため息ですか。どうしたんです、最近は調子いいみたいですけど」

I「調子いいって……まぁ、ローカルばかりとはいえそこそこ仕事はありますけど」

小鳥「疲れちゃいました?」

I「いえ……小鳥さん、俺って何なんですかね?」

小鳥「アイドルでしょう」

I「どういう?」

小鳥「どういう……とは?」

I「方向性がね、分からないんですよ」

小鳥「方向性ですか」

I「えぇ。プロデューサー全員、目指してる方向が違いすぎて……何というかチグハグなんです」

小鳥「それでも何とかこなせちゃうのが凄いと思いますよ。オールマイティって感じでいいじゃないですか」

I「オールマイティ……か。でもそれは……」

小鳥「それは……?」

I「…………」

小鳥「突然黙って、どうしたんですかー?」

I「……」

小鳥「もしもーし?」

I「……そうか」

小鳥「はい?」

I「そうだったのか。小鳥さん、すいません。俺ちょっと用事思い出しましたんで」タタタ

小鳥「行っちゃった……なんだったのかしら」

???「「…………」」

~社長室~


高木「それで、話とは何だね?」

I「単刀直入に申し上げます。俺をプロデューサーにしてください」

高木「何だって? いや、しかしだねぇ、キミィ……」

I「それと律子も同様に」

高木「待ちたまえ! それではうちの事務所からアイドルがいなくなってしまう!」

I「代わりに現プロデューサー全員をアイドルにします」

高木「な、何だって!? ……ちょ、ちょっと待ってくれたまえ。一体どういう事なんだね?」

I「社長。このままでは遠からずうちの事務所は潰れます。現状を打開するにはこれしかありません」

高木「何故そう思うんだ。今のところ、順調に仕事も増えてきているようじゃないか」

I「確かに今までは増えていました。が、恐らくこれ以上は伸びません」

高木「何故かね」

I「皆の方向性が違い過ぎるんです……いえ、個性と言い換えましょうか」

I「それぞれに理想の姿があり、目標がある。なればこそ期待に答えたいとは思いますが、俺一人では限界がある」

I「現状のままではいずれ破綻します。しかし、彼女らの個性を一つに絞るには魅力があり過ぎる」

I「でも、プロデューサーとアイドルという立場を入れ替えれば上手くいくんです。アイドルにとって個性は武器ですから」

I「ずっと傍で彼女達を見てきましたが、あれは俺なんか霞むほどの原石だらけです。トップアイドルも夢じゃない」

高木「……君の言いたい事は分かった。だが、何故律子君もプロデューサーにする必要があるんだ?」

I「問題点は俺と変わりません。それに加えて律子にはプロデューサーとしての才能があります」

高木「しかし、彼女はアイドルであることを望んでいる」

I「プロデュース業は一時的なものです。事務所の地盤が確立するまでの。その後は俺が責任を持ってプロデュースします」

高木「一時的なものとはいえ、失った人気を取り戻す自信が君にあるのか」

I「今程度の人気なら問題ありません。それに、このままでは成長が見込めない事は律子が一番実感しているはずです」

I「……ハッキリと言いましょう。社長のティンは大きな間違いがあるんですよ」

高木「間違い?」

I「社長の、才能を見る目は認めます。だが、貴方はアイドルの才能とプロデューサーの才能を入れ違えて見てしまっている!」

高木「……」

I「社長!」

高木「……分かった。だが、幾ら私が社長とはいえ、今の話は私一人で決められるものではない」

I「それは分かっています。特に未成年者には親の同意も必要でしょう」

高木「だから皆に聞こう。その上で判断する……それでいいかね?」

I「構いません。俺も全力で説得しますから。では早速皆を集めて――」

律子「その必要はありません」

I「律子!? ……それに、皆も」

真美「まさかにーちゃんがそんな事を考えてたなんてね」

亜美「ビックリだよ。っていうかさ、亜美たちがアイドル?」

春香「ごめんなさい。何か凄く真剣な顔つきだったから、気になって……」

響「こっそり皆で聞いてたんだ。思いつめてたみたいだったから」

I「俺、そんな顔してたか……」

貴音「もしや、事務所を辞めてしまうような事になってはいないかと不安だったのです」

真「それがまさかボクたちをアイドルにするつもりだったなんて」

やよい「アイドル……伊織ちゃんと一緒にテレビに出ちゃうのかな」

伊織「ま、まぁやよいが一緒なら別に構わないけど?」

雪歩「で、でもこんなちんちくりんな私がアイドルなんて無理ですよぉ」

美希「あふぅ。メンドくさいのはヤって思うな」

I「……確かに不安も面倒もあるだろう。けど、それ以上に楽しい事も、キラキラも保証する」

あずさ「アイドル……そうね、その方が運命の人が見つかるかも……」

千早「アイドルになる……それは私自身が歌うという事……」

律子「……私は」

I「律子……聞いていたなら、答えてほしい。お前は今のままで満足か?」

律子「その前に教えてください。あなたの目的はなんですか。本当にそれだけの才能があるんですか」

I「皆をトップアイドルに導く事。足りない分の才能は努力で補う」

律子「私をプロデュースして……トップアイドルにしてくれるんですか?」

I「誓うよ。絶対に律子を……いや、全員をトップアイドルにしてみせる」

律子「……分かりました。約束ですよ?」

I「あぁ。約束だ」

高木「……ふむ」

I「社長。そういう事です。ご決断を」

高木「最後に一つだけ聞かせてほしい。何が君をそこまで駆り立てるのか、教えてくれないか」

I「決まっています」

高木「それは?」

I「彼女達が好きだから。多くの人に知ってもらいたいから。何より、俺がプロデュースしたいと思ったからです」

高木「……そうか。やはりこれが運命なのか」

~数ヵ月後~


P「よし、全員準備できてるな!」

春香「バッチリです! いつでもいけますよ、プロデューサーさん!」

千早「喉の調子も万全です。問題ありません」

やよい「765プロ全員でのライブ……ドキドキしてきた」

亜美「別に今回が初めてってわけじゃないんだし、やよいっち緊張しすぎ」

真美「まぁ、気持ちは分かるけどね。でも楽しまなきゃソンっしょ」

伊織「アンタたちは楽観的過ぎるのよ! 特に亜美は私とあずさが見てないとダメなんだから」

あずさ「うふふ。伊織ちゃんもなんだかんだいって楽しそうね~」

真「それにしてもこの衣装……何度見てもいいなぁ」

雪歩「真ちゃん、すっごく可愛いよ」

響「ダンスも完璧さー。みんな釘付けにしちゃうぞ!」

貴音「ふふ、響はいつでも元気ですね」

美希「ハニー! ちゃんと見ててね!」

P「当たり前だ。さ、みんな行って来い!」

アイドル一同「「おおーっ!」」

律子「……プロデューサー殿」

P「ど、殿? 何だよ律子、改まって」

律子「いつかの約束……忘れてませんよね」

P「あのなぁ、何のためにここに衣装がもう一つあると思ってるんだ」

律子「トップアイドルにしてくれるって方ですよ」

P「俺の腕を疑うのか?」

律子「いえ……その時を楽しみにしてますから」

P「俺もだ……さ、そろそろファンのみんなにアイドル復帰を教えてやれよ」

律子「はい……いってきます」

高木「ふむふむ。みんな輝いてるねぇ」

小鳥「……はぁ」

高木「おや? 音無君、ため息かね」

小鳥「私だけ何にも変わらないんですよ。ため息の一つも出ますよぉ」

高木「なるほど。なら、試しに私と交換してみるかね」

小鳥「ピヨッ!?」

高木「じゃ、明日から社長業よろしく。事務は任せたまえ」

小鳥「ええぇぇぇぇっ!?」




終わり

読んでくれた方、ありがとうございます。
やっぱりアイドルマスターが一番だねって話でした。

……本音言うと出オチ過ぎてシリアスっぽいのに日和らないと終わらなかっただけ。反省。

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