ビアンカ「ゴレムスー!ギーガー!ごはんよー!!」 (479)

・タイトル通り、ドラクエSSですが「ある作品」との"クロスオーバー"となります。
・そういった作品に嫌悪感を覚える方は引き返しをオススメします。
・両作品を誹謗中傷するような作品ではございません。

それでは完結まで宜しくお願いいたします。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397748761

ごはんよー!…ごはんよー!…ごはんよー!…………


>しかし こえは むなしくあたりに ひびきわたった…。


???「……?ヘンね……」

???「どうしたんだい?ビアンカ」

ビアンカ「あ、アナタ…。ゴレムスがね、水汲みからまだ戻ってないみたいなのよ。様子を見に行ったギーガも…」










Ⅴ主人公「…なんだって?」


―――、一方その頃。



ゴレムス「ゴー(ドーモ。ゴーレムのゴレムスでーす)」


ギーガ「ギガー(ギガンテスのギーガでーす)」


ゴレムス「ゴー(さっそくですけど僕等)」


ギーガ「ギガー(ご主人様達からはぐれちゃいまして)」


ゴレムス「ゴー(途方に暮れております)」


ギーガ「ギガー(もうはぐれメタルならぬはぐれンテスとはぐーレムってカンジで)」


ゴレムス「ゴー(…ギーガ。割と笑えない…)」


ギーガ「ギガー(……ゴメン)」





ゴレムス「ゴー(そもそも、何でこんな事になったんだっけ?)」


ギーガ「ギガー(えーっとねー……)」



>水汲みの帰り道、ゴレムスが崖から足を滑らせて。
>咄嗟にギーガが支えようと駆け寄ったんだけど。
>慌てたあまりに今度はギーガがずっこけて両者共に崖下にすってんころりん。
>そしたら二人の身体よりもでっかい大穴があって―――……。



ゴレムス「ゴー(…で、気が付いたら二人共森の中に倒れていた、と)」


ギーガ「ギガー(んだ)」


ゴレムス「ゴー(ってか元々俺の責任っぽい。ごめん…)」


ギーガ「ギガー(ゴレムス気にするな。ギーガ、気にしない)」





ゴレムス「ゴー(しかし、穴を抜けた先が森というのは)」


ギーガ「ギガー(旅の扉の一種だったのかな?)」


ゴレムス「ゴー(それにしては入り口すら消えているのはおかしいだろう)」


ギーガ「ギガー(戻る方法、あるのかなあ…)」


ゴレムス「ゴー(戻る……待てよ?)」





―――ゴソゴソ……。



>ゴレムスは キメラのつばさを とりだした!



ゴレムス「ゴー(ご主人から預かっていた物の一枚だ)」


ギーガ「ギガー(おー)」パチパチ


ゴレムス「ゴー(これで帰れる筈……よっと!)」



>ゴレムスは キメラのつばさを てんたかくほうりなげた!
>しかし なにもおこらなかった…。



ギーガ「ギガー(……?)」


ゴレムス「ゴー(……あれ?)」





その後、何度試してもゴレムス達の身体が宙に浮く事は無かった。



ギーガ「ギガー(壊れてるのかなあ?)」


ゴレムス「ゴー(そんな筈無いんだけどなあ…)」


ギーガ「ギガー(これからどうする?)」


ゴレムス「ゴー(……とりあえず……)」



ゴレムス「ゴー(歩くか)」





だが、二人の眼前に広がるのは行けども行けども森ばかり……。



ギーガ「ギガー(ゴレムス、ギーガもう疲れちゃったよ)」


ゴレムス「ゴー(頑張れたいりょく510)」


ギーガ「ギガー(ゴレムスは岩の身体だから疲れそうに無くていいよねえ)」


ゴレムス「ゴー(馬鹿言うなよ。これでも人(?)並みに疲労は感じるんだぞ……お?)」



遂に二人は森を抜け、開けた平原へと辿り着く。そして……。





ゴレムス「ゴー(おい、あれって街の外壁じゃないか?)」


ギーガ「ギガー(…本当だ)」



地平線の向こうに、不自然な程に聳え立つ壁のようなオブジェを発見した。

―――同時に。



ゴレムス「ゴー(街の人俺達を見ても大丈夫かなあ?……"ぼくたち わるい ゴーレムとギガンテス じゃ ないよう!"って説明すれば―――)」


ギーガ「ギガー(ゴレムス)」


ゴレムス「ゴー(……ん?)」


ギーガ「ギガー(煙が立ち昇ってる)」


ゴレムス「ゴー(……本当だ)」



壁の向こうから。そこかしこで揺らめく白煙が、幾筋も空へと向かっていた。





ゴレムス「ゴー(でも、人間が暮らしてるんだから…)」


ギーガ「ギガー(火の手も挙がってる)」


ゴレムス「ゴー(……えっ?)」



良く見ればギーガの言うように、その街一帯の空だけ、赤いペンキを落としたような不自然な茜色。
壁面の切れ目から漏れ出しているのは火の粉か。



ゴレムス「ゴー(……魔物が攻めて来ているのか?)」


それにしては自分達以外の魔物の気配を一切感じない。
でも街が大変な事になっているのなら、このまま黙って見ている訳にもいかないと、立ち上がろうとして。





ギーガ「ギガー(ゴレムス)」


ゴレムス「ゴー(……解ってる。だけど俺達にも何か出来る事が―――)」


ギーガ「ギガー(違う。……あれ見て)」


ゴレムス「ゴー(……ん?)」



―――ギーガに指差された方を注視する。すると。





ゴレムス「ゴー(…人、間…?)」



そこには人間と思しき姿をした一団が、我先にと―――何かによって破壊された―――外壁に出来た大穴へと詰め掛けていた。
街の人達を救おうとしているのだろうか?……いや。



ゴレムス「ゴー(なあギーガ)」


ギーガ「ギガー(何だいゴレムス)」


ゴレムス「ゴー(人間って……服を着ないで辺りを歩いていいんだったっけか?)」


ギーガ「ギガー(ギガンテス一族だってそんなことしないよ)」



見れば、門前に詰め掛ける"集団"の、その一人一人に至るまでが一糸纏わぬ姿のままで中の街へと繰り出そうとしていた。

異様なのはそれだけではない。



ゴレムス「ゴー(なあギーガ)」


ギーガ「ギガー(何だいゴレムス)」


ゴレムス「ゴー(……………………人間って、俺達みたいに大きかったっけ?)」


ギーガ「ギガー(ギーガ、ドラゴラム使ったタバサお嬢さん以外で見た事無い)」



遠目からでは良く解らなかったが、門に詰め掛けている"人間"の縮尺が。
どう見ても、(ゴレムス達の知る人間のサイズから)"逸脱して"いた。





―――時は、845年。

今から100年以上前、人類にある天敵が現れた。
彼らと人類の間には圧倒的な力の差が存在し、たちまち人類は絶滅の危機を迎えた。
生き残った人類は「マリア」、「ローゼ」、「シーナ」の3つの壁を築き、そこで100年の平和を実現させた。

……けれどその日、人類は思い出した。






―――ウォール・マリア内部南端:シンガシナ区。






エレン「―――チクショウ!離せ、離せよハンネスさん!!」


ミカサ「……ッッ!!」


ハンネス「(……すまねえ。すまねえ……!!カルラさん……!!)」









カルラ「(エレン……ミカサ……)」



遠くへと運び出される息子と娘を、カルラ・イェーガーはおぼろげに見つめていた。
その足と身体は倒壊した家の瓦礫に潰されており、迅速に助け出す事も、また助け出した所で"奴等"の追跡を逃れることなど出来はしない。
ならばと、知人にせめて息子のエレンと娘のように接してきたミカサだけでも逃がして貰いたかった。





カルラ「…………ぐっ!!」



"―――行かないで"

心の内より染み出した弱い言葉を必死に飲み込んだ。
その代わりに。



カルラ「……るのよ」


二人に聞こえる訳はなかった。
しかし。
それでも。

自分が居なくなった後でも強く生きていられるように。
挫けず二人寄り添って生きていけるように願わずにはいられなかった。





―――瞬間、ふっと自分の周辺が薄暗くなった。

日没ではない。陽が雲に隠れたワケでも無い。



カルラ「……あ。ああ……」


瓦礫に固定されている為、後ろを振り向けない。
だが彼女にはそこに何が居るのかも、これから自分がどうなるのかも解っていた。

怖かった。

怖くて歯の根が合わずガチガチという音がどうにも止められなかった。

そして。





カルラ「―――っっ!!」


瓦礫に埋もれていた身体が、上空から現れた丸太のような"何か"によって容易く掴み出された。


カルラ「……かはっ!!」


加減を知らない圧迫感に、女性の肉体が苦痛に悶えたが、それで緩まる"相手"ではない。
彼女の身体を締め付けるのは"指"。
そこから伸びるのは常人の何倍にもなろうかという太い"腕"。
それに指令を送るのは。




巨人「………………」



巨大な、人間(ヒト)を彷彿とさせるような、頭。



彼等が何処から来たのかは知らない。
何の目的があってこんな事をしているのかも解らない。

唯、解っている事は。



―――1つ、それは人間の姿をしておりながら人間よりも何倍もの巨躯を誇り。
―――1つ、それは人間を襲い、時には捕食する程の獰猛さを持ち。
―――1つ、それは集団を以ってして人類の拠点を襲うある程度の理性を持ち合わせていた。



それらを纏めて、人類は「これら」に対して畏怖の念を込めてこう呼称した。





―――"巨人"、と。







カルラ「(もう……ダメね、私……)」


眼前の巨人からの圧迫は尚も続いており、骨が軋む嫌な音が耳奥に響く。
こちらを見ているのか、いないのか。
大きな穴のような瞳を持つ、
巨人の顎が―――開いた。

頬を撫でる生暖かい風が、カルラに最後の時を告げる鐘の音のように聞こえた。
せめて苦しまず逝ける様にと目を閉じようとして―――

何事かを喚き散らす息子の顔が、映った。





カルラ「(……あの子ったら……)」


そんな所で一体何をやっているの。
ハンネスさんが困っているじゃないの。
私はもうダメだけど、まだお父さんが居るじゃない。
最後まで言う事を聞かないんだから。
そんなんじゃあミカサも先が思いやられるわね。


カルラ・イェーガーはしっかりと目を見開き、全ての力を振り絞って息子に対して言い放つ。


―――生き延びなさい。
―――何があっても生き延びるのよ。




その言葉は、果たして届いたのだろうか。







エレン「―――止めろ」



そして。

巨人によって高々と持ち上げられたカルラの身体が。

その口内に向けて、放り投げられた。





エレン「止めろおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」





母の身体は、そのままスローモーションのように、吸い込まれ―――









―――ることは無かった。






ギーガ『―――■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!』



>ギーガの こうげき



>か い し ん の い ち げ き !










巨人「―――――――――!!??」ドゴオオオオン!!





エレン「」
ミカサ「」
ハンネス「」





>きょじんA を たおした!



テレレレー♪





ハンネス「なん……え?……は……!?」

エレン「…………」ポカーン
ミカサ「…………」ポカーン




カルラ「―――、」


ギーガ「ギガー(間一髪キャッチ。だけど……)」


巨人「―――っ、っ、っ、」ビクンビクン


ギーガ「ギガー(こいつら何だろう?魔物でも、人間でもないみたいだ)」


ギーガ「ギガー(大丈夫かなあ?ゴレムス…)」






―――ウォール・マリア:破損外壁周辺。


兵団員A「…………なあ」


兵団員B「…………なんだよ」


兵団員A「……俺、夢でも見てるのかな?」


兵団員B「……巨人にやられた怪我が痛くねえんだってんならそうだろうよ」


兵団員A「馬鹿!滅茶苦茶痛えよ!!死ぬかと……死ぬかとばかり思ってたのに、もう駄目だと思ってたのによ……」






最初は何が起こったか解らなかった。
超大型の巨人が"壁"をぶち壊した時だって半信半疑だった。
そこからわらわらと入ってくる巨人共を見ても悪い夢としか思えなかった。
居住区への被害を抑えようと俺達が必死になって巨人を相手取っても、一人、また一人と引き裂かれて飲み込まれていく様は悪夢そのものだった。
そして今度は俺の番。地面に叩き付けられて死ぬほどの痛みを味わってる最中に、それは起こった。


―――突如、小型の巨人が急に宙へ舞ったかと思ったら、地面へと激突し、ピクリとも動かなくなった。
それを皮切りに、その周辺の巨人共が次々に……上空に吹き飛ばされては地面のオブジェへと変化して行った。
まるで、とんでもなく"硬くて早い何か"で殴られたような痕を残して。







―――ブォン……!ブォォン……!!


最初俺はその音が穴の開いた外壁から漏れ出た風かなんかだと思った。
でも違う。違ったんだ。
死ぬ気でそこを這い出て、仲間と合流する直前。俺は見た。



―――ブォン……!ブォォン……!!





"自ら"が巻き起こした噴煙の中心に、―――"そいつ"は居たんだ。








ゴレムス「ゴー(―――ふんっ!)」




>ゴレムス の こうげき
>きょじんA は ふきとんだ

>ゴレムス の こうげき
>きょじんB は めりこんだ

>ゴレムス の こうげき
>きょじんC は ばらばらになった







ゴレムス「ゴー(ぬおおおおおおおおおおおおっ!!)」



>ゴレムス の こうげき
>こうげき
>こうげき
>こうげき
>こうげき
>こうげき………………


>きょじんたち を やっつけた!

>しかしきょじんH I J K が あらわれた!



巨人「―――!―――!!」ゴオオッ!!


ゴレムス「ゴー(……きりが無いな)」


ゴレムス「ゴー(あの壊れた外壁を塞げればなあ……)」ゴレムスノコウゲキ


巨人「―――アベシ!!」


ゴレムス「ゴー(ギーガの奴、早くこちらに来てくれないかなあ……)」









―――その頃。



カルラ「―――ゴホッ……ゴボッ!!」


ギーガ「ギガー(……!!酷い怪我だ。早く何とかしないと……)」ゴソゴソ…



―――バシッ!バキッ!!



ギーガ「ギガー(……??)」



ギーガは足元にくすぐったい様な変な感覚を覚え、目線を下方へと向けた。
するとそこには……。


エレン「―――この、化け物、野郎!!その手を、離し、やがれ!!!」







―――バシッ!バキッ!!


小さな男の子が、何処からか拾った木の棒をギーガに向けて必死に打ちつけていた。



エレン「返せよ……母さんを返せよぉっ!!」



>しかし ギーガは ダメージを うけていない。



ギーガ「ギガー(……おかあ、さん?)」


カルラ「……ッはあ……ッ、はあ……ッ」


ギーガ「…………」






その時、ギーガの脳裏に浮かんだのは。




『―――レックス!ギーガ!二人ともごはんよー。こっちへいらっしゃーい!!』

『―――ご飯だってさ。ねぇギーガ、どっちが馬車に着くのが早いか競争しようよ!』




ギーガ「…………」


エレン「離せよ!はな―――!」


ハンネス「この馬鹿野郎が!エレン、何してやがる!!」ガッ!!


エレン「だって!この一つ目野郎が母さんを!!」


ハンネス「お前までやられちまうぞ!俺はカルラさんからお前達二人を―――!おい、ミカサお前からも何とか―――」


ミカサ「…………、」


エレン「……?ミカサ……」







ギーガ「…………」ゴソゴソ…





>ギーガは ふところから せかいじゅのしずく を とりだした
>ギーガは せかいじゅのしずく を つかった
>なんと カルラの ケガが かいふくした







カルラ「……?ん、う、ううん……!」


ギーガ「ギガー」


カルラ「―――ひいっ!!??きょじ……!」


ギーガ「…………」



―――スッ。



エレン「…………えっ」

ハンネス「な―――!」

ミカサ「…………!!」



ギーガは、カルラの身体を静かに地面に下ろした。








カルラ「………………あっ」


カルラ「(足が、私、歩ける。それに身体も……)」


ギーガ「ギガー」


カルラ「(さっき何か口に……この、巨人が何か……?)」



―――ガッ!



カルラ「……!……ッ、ミカサ……エレン?」


エレン「……!!……!!母さん……母さん……うわああああああ!!!」


ミカサ「お母さん……!!」


カルラ「エレン、ミカサ―――!!」ギュッ!!









ハンネス「……………………、」


ハンネス「………………ハッ!?」





ハンネス「カルラさん、失礼!おい、お前達も早く来い!!」グイッ!!


カルラ「キャッ!?」


エレン「な、何すんだよハンネスさん!!」


ハンネス「巨人なんだ!!いつ俺達を襲ってくるか解らないんだぞ!?今は、兎に角ここから離れるんだ!」


エレン「あ……でも、だってよ!」


ハンネス「いいから!言う事を聞け!!!」ダッ!!


エレン「あ―――!」









―――その後、俺達はハンネスさんに手を引かれるまま、他の皆が集まる避難所へ身を寄せる事になった。
母さんは、とても瓦礫の下敷きになったとは思えないほどピンピンしていて、後に合流した父さんもしきりに「信じられない」と呟いていた。
あの"一つ目の巨人"は、どうしてか逃げ去る俺達を追いもしなかった。しかも…。
言っても誰も信用してくれそうにないから、俺の心の中にしまって置きたい事なんだけど。あー……。



俺達を見下ろしていた目が、何というか。





―――とても、嬉しそうにしていたのだ。








ギーガ「ギガー(おかあさんが助かって良かったなー)」シミジミ


巨人「ゴアアアアアアアアアアッ!!」


ギーガ「!?」ガキィッ!!


巨人「―――ガジガジ」





ギーガ「ギガー(お前……)」ジロリ


ギーガ「ギガー(キライだ)」





>ギーガ は もっているぶきを はげしく ふりまわした……。






―――破損城壁前。



ゴレムス「ゴー(……ん?)」バキィッ!


巨人「―――ガフッ!」



―――ドスン!ドスン!ドスン!



ギーガ「ギガー(お待たせー)」ブォン!!


巨人「―――パキィッ!」








兵団員A「うわああああっ!?な、何だあ!!??」


兵団員B「こ、今度は一つ目の奴だぞ!!」


兵団員「また新手かよ!もう勘弁してくれぇ!!」








ゴレムス「ゴー(今まで何処ほっつき歩いてた。独りは結構辛かったぞ)」


ギーガ「ギガー(うーん、一言で言うなら……人助け?)」


ゴレムス「ゴー(そうか、そりゃあ御主人も喜ぶ。……じゃなくて)」





兵団員A「な、何か喋ってるみたいだぞ?」


兵団員B「仲間なのか奴等?」


兵団員C「何するつもりだ?」







ゴレムス「ゴー(あの穴からこの人間もどきが侵入しているみたいなんだ。お前、ちょっとそこらでアレを塞げる岩か何か持ってきてくんない?)」ユビサシ


ギーガ「ギガー(オーケー。まかされてー。……持ってくるのは1個だけでいいんだよね?)」


ゴレムス「ゴー(……いや)」



―――警戒!警戒!!正門にて新手の巨人と交戦中!!
―――何だコイツ……武器が……効かな……!!



ドゴオオオォォォォォォォン……!!




鎧の巨人「――――――、」フシュウウウウウウウウ!!









兵団員D「正門が破られた!?」


兵団員E「もう、オシマイだ……この街は……」


兵団員F「馬鹿野郎!気をしっかり持て―――!」




ゴレムス「ゴー(……少なくとも2個だな)」ボキボキ







鎧の巨人「―――、―――、」キョロキョロ



―――ブオォォン!

>ゴレムス の こうげき



鎧の巨人「―――!!??」



>よろいきょじん は ぼうぎょした



ゴレムス「ゴー(成る程。他の奴等とは一味違うな)」


鎧の巨人「……!?……!?」


ゴレムス「ゴー(立て。時間稼ぎに付き合って貰うぞ)」クイックイッ



>ゴレムス の ちょうはつ
>よろいきょじん は いきりたった



鎧の巨人「―――!!!」ゴオッ!!



取り合えず本日はここまでです。
ちなみに二人のレベリングはそれぞれ


ゴレムス:レベル50
ギーガ:レベル7


…となっております。
そうびはまあ、いろいろと…。
描写出来る展開があるといいんですがーねー。

モンスターはスライムナイトぐらいしか使ってなかった……ごめんよ。

期待。

成る程乙

期待乙

おつおつ
けっこうドラクエのモンスターってデカかったりするよな
主人公達しれっと倒すが

そうだ…ドランゴは5じゃないんだ…

乙!
この発想はなかった

物凄く期待してる。
ドラクエ側はこの2匹だけなのかな?

レベルマックスじゃねぇか




ギーガ「ギガー(うーん。大きさはこのくらいでいいかなあ?……よっと)」



>ギーガ は おおきないわを もちあげた



巨人「―――!!」グワッ



>きょじん の こうげき
>ミス! ギーガに ダメージを あたえられない



ギーガ「ギガー(くすぐったいなあ)」



>ギーガ は おおきなあしで ふみつけた



巨人「―――ギャンッ!」



>きょじん は ぺしゃんこ に なった






―――もうダメだ、他の街と同じように、この街も巨人に…。


強固とされていた外壁が、超巨大な巨人によってあっけなく破られた時、僕…"アルミン・アルレルト"はポツリとそう漏らした。

そうなる前に、いっそ一目だけでも"敵"の事を見てやろうと、避難民で固められた施設を人知れず抜け出して"外壁"へと赴いた。

だけど、そこで僕の目に飛び込んで来た光景は―――。



アルミン「あ―――ああ……!」



―――僕の想像を、遥かに超えていた。






ゴレムス「ゴー(―――ふんっ!)」



>ゴレムス の こうげき
>よろいきょじん に 40のダメージ



鎧の巨人「―――!!!」グオッ!



>よろいきょじん の こうげき
>ゴレムス に 20のダメージ



ゴレムス「ゴー(…重い攻撃だな。メタルキングよろいを着込んでるというのに)」





アルミン「きょ、巨人が……巨人と戦ってる……!?」



刹那、僕が隠れていた民家の周辺がフッと暗くなった。



アルミン「……?」



おずおずと頭を上げると、そこには―――
青銅の様な青い肌を持った、一つ目の巨人が、大岩を担いでいた。



ギーガ「……ギガー」


アルミン「ひいいいいいいいいいいっ!?」






思わず上げた叫び声に、幸いにも?無反応のまま、大岩の巨人はドスンドスンと外壁の方に向かって歩を進めていた。



アルミン「(何をするつもりなんだ……?)」



巨人の歩む方先に、知らず瞳を向けたその先には―――超巨大巨人に開けられた外壁の穴。



アルミン「―――!まさか!?」



僕が考え付くのが先か、一つ目の巨人が辿り着くのが先立ったか。



ギーガ「ギガー(よい……しょっと!)」



ズウゥゥゥゥゥ……ン!!



一つ目巨人は、その大岩を以ってして、巨人達の侵入路を塞いだのだった。





兵団員A「おい、アレ見ろよ」


兵団員B「信じられねえ……巨人が穴を塞いだぞ?」


兵団員C「アイツだって巨人じゃねえのか?」



周辺がにわかにざわつき、それは小さな波となって外壁周辺へと流れた。
しかしソレを聴いたのは人間だけでは無い。





鎧の巨人「―――!!!」バッ!



"異変"を察した鎧の巨人が、身を翻して騒ぎの原因の方へと向かおうとして。



ゴレムス「ゴー(おおっと何処へ行くんだ?お前の相手は俺だぞ?)」ガシッ!



大岩の巨人に、その体躯をガッシリと羽交い絞めにされた。



鎧の巨人「―――!!―――!!」



離しやがれとでも言わんばかりに鎧の巨人は、両腕をゴレムスの身体に打ち据える。



―――ゴッ!ガッ!!バギッ!!!



ゴレムス「ゴー(早くしてくれよギーガ……こっちもそう長くはやってられなさそうだ)」







ギーガ「―――■■■■■■■―――!!」


巨人「―――ガブッ!」
巨人「―――ゲベッ!」
巨人「―――ブゲッ!」
巨人「―――ゴベッ!」



ギーガは持っている棍棒で群がる巨人を打ちすえていくものの、それを行いながら正門を塞ぐような大岩を持つことは不可能に近い。
巨人達はそれを解っているのかいないのか、周辺に散らばって人間を捕食しようとしていた連中も、今や総出でギーガへと群がっていた。



ギーガ「ギガー(ううーん、これじゃあ岩を持っていけないなあ)」



いっそのことぶん投げてしまおうかとも考えたが、これ程の大岩はギーガの腕力を以ってしても正確に飛ばせるか、ちょっと怪しい部分が残る。
下手をしてずれてしまえば負傷し動けなくなっている人間がどうなるか解らない。



ギーガ「ギガー(……どうしようか)」



思案するものの30しかないかしこさでは如何ともし難く。
これがマーリンやライオウ、アンクルやバトラーだったら大呪文で一発なんだろうが。
ダメージは全く無いものの、このままでは時間稼ぎをしているゴレムスや街の人間達が危ない。

……すると。





兵団員A「…………」



ギーガ達の戦いを遠目で見ていた兵団員の一人が、すっくと立ち上がった。



兵団員B「……?おい、お前、何やって―――」


兵団員A「―――そこの立体起動装置にガスまだ入ってるか?」


兵団員C「……何しに行くつもりだよ?そんな身体で」


兵団員A「まだ武器の切れ味は落ちちゃいねえ。数さえ減らせばいいんだろう?あの一つ目に群がる虫共の」


兵団員D「……正気かよテメエ。死ぬ気か?」


兵団員A「……イザって時にゃあ、それもアリかもな。囮にでもなれればしめたモン―――」






兵団員B「おい、目を覚ませ馬鹿!お前自分が何言ってるか解ってんのか!?」


兵団員F「イカれてやがるぜ。奴ぁ巨人だ。俺達の敵だぞ?」



―――ズイッ!





兵団員A「―――そりゃ、こっちの台詞だよ腰抜け共」







兵団員E「んだと―――!?」


兵団員A「―――俺達ゃ、"何"だ?」


兵団員C「……ああん?」


兵団員F「……"何"かって、そりゃあお前……」


兵団員A「―――"兵団"だろうが。外壁と住民の安全を守る駐屯兵団!!お前も、そこのテメエも、テメエもだ!!」





兵団員B「…………」
兵団員C「…………」
兵団員D「…………」
兵団員E「…………」
兵団員F「…………」









兵団員A「―――そりゃあ最初はよ、身の不運を嘆いてたぜ?今日までの100年間平和だったってえのに急に巨人だのなんだのとよ」

兵団員A「昨日まで笑い会ってた同僚は殆どが巨人の腹の中、俺が今ここでこうしていられるのは偶々運が良かっただけって話さ」

兵団員A「その自分の身体だって無事な箇所は一つたりとも無え。片腕は骨が折れちまってるし胸がギシギシと痛え。足だって正直感覚が怪しいしよ。いいとこ食われてお仕舞いが関の山だろうな」

兵団員A「それでも……それでもよ……」








―――グググ……!




彼は、折れているであろう腕を曲げ、砕けた指などお構い無しに拳を握り。

それを、己の胸へと掲げた。




―――"心臓を、捧げよ"







兵団員A「―――俺は、誇り高き"兵団"の一員だ……!」

兵団員A「少なくともよ、入った最初はそう思っていたんだよ……!」

兵団員A「なのに、なのによお……」



死地から這い出て仲間と合流した時。
その後、現れた謎の巨人が他の巨人を一掃し始めた時。

それは、確かに自分の身の内に芽生えていた。


―――ああ、これで俺は、助かるかもしれない。








兵団員A「違うだろ……ッ!!そうじゃねえ……ッ!!そうじゃねえだろうがよ……ッ!」

兵団員A「このままじゃ、このままじゃあ俺は、兵団に入った意味さえ見失っちまう……!」

兵団員A「誰も言わねえんなら俺が言ってやるよ―――!!」



兵団員Aは、群がる巨人を薙ぎ払う"一つ目"と。
鎧の巨人の攻撃を一身に受け続ける岩の巨人を指差して、叫ぶ。









兵団員A「―――あいつ等は、俺達を救おうとしてるんだぞ!?」





兵団員「「「――――――!!!」」」









それは誰もが言いたかった言葉であり、聴きたく無かった言葉でもあった。
否定したい言葉であり、肯定したい言葉でもあった。

それぞれが、それぞれの胸の内に、Aの言葉が突き刺さっていった。



兵団員A「…………なあ」


兵団員A「本当にいいのかよ、このままで」


兵団員A「巨人なんかに、人類の平和を任せたまんまで、俺達は本当に、いいのかよ―――!」


兵団員「「「…………。」」」



ポツリと放ったAの言葉は茜色の空に、空しく溶けて、消えた。








ギーガ「ギガー(何とかしないとこのままじゃ本当に……)」


巨人「―――ギャーギャー!!」
巨人「―――ゲーゲー!!」
巨人「―――グーグー!!」



棍棒を振るい続ける腕にも若干の焦りが見え始め、ジリ貧の考えがギーガの脳裏を掠めた……その時だった。


―――シュン……ッ!


ギーガ「ギガー(……ん?)」


ギーガの視界の片隅に、"何か黒いモノ"が写った。
それはどんどんと大きくなり、ギーガに群がる巨人の一体に―――矢のように突き刺さった。








巨人「―――グエッ!?」


兵団員C「―――はははっ!やってやったぜ!!」



その正体は、人間。
巨人との戦闘により負傷し、後方へと退避していた人間だった。


しかもそれは、一人では無かった。


巨人「―――ブゥェッ!?」


兵団員D「よっしゃあ!一体撃破マークもらいー!!」


巨人「―――ブガッ!?」


兵団員E「まだまだ居るぜぇー!!」



彼等は己の兵装を以ってして、一体、また一体と……ギーガに集中していた巨人達を数を削いで行った。
だが。







兵団員C「やっ―――ぐはっ……!」


巨人「―――!!」バクウッ!!


兵団員D「!―――くそ―――ぎゃっ!!」


巨人「―――!!」ガジィッ!!



飛来する人間よりも巨人の数の方が圧倒的に多い。
その殆どが、モノのついでとばかりに巨人の歯に、爪に、己の肉体を傷つけられ、血飛沫が舞う。







ギーガ「ギガー(……あっ……!!)」


無論ギーガはそんな光景を見過ごすことなど出来ず、彼等が致命を負うその直前に棍棒を振るい、巨人を屠って行く。
両断された首ごと地面へと激突し、倒れる人間達。
そんな彼等を助けようと、ギーガは駆け寄った、その寸前で。






兵団員C「な、に―――してやがんだこのウスラトンカチ!!」


ギーガ「―――ビクゥッ!!」


兵団員D「コイツ、本当に俺達を助けようと、してるってか……信じらんねえ、クソッタレ……!」


兵団員B「そんな元気があるんだったらあよぉ……さっさとあの忌々しい穴を、塞いできやがれってんだ……」


負傷し、息も絶え絶えになったその声で、彼等はギーガに思いの丈をぶちまけた。

そして、また一人―――。


兵団員A「―――ぐはあっ!!??」


ギーガ「―――!?」


―――ドサッ!


兵団の一人が、巨人の反撃に合い、倒れた。
その腹部と口腔からはからは夥しい血が流れ、重症なのは見た目にも明らかだった。



兵団員A「はあ―――はあ―――ゴブッ」



泡交じりの吐血と共に、彼は己の最後を覚悟した。
だが、不思議と―――。







巨人「―――!」ゴッ!


―――ブォォン!!


自分に最後の止めを刺すべく飛び掛った巨人の一体が、ギーガの一振りによって吹き飛んだ。



兵団員A「―――よぉ」


視界の半分は血に塗れて見えない。
けれども彼の視界にはハッキリと写っていた。
たった一つしかない瞳を歪ませて、いまにも泣きそうになっている青き巨人の姿を。








兵団員A「なんて―――情けねえツラ―――してやがる―――はあっ―――これが、あんだけ強かった巨人なんてよ―――はあっ―――」


憎まれ口を叩きつつも、彼の心は晴れやかだった。
悔いは無かった。最後の最後で、自分は"兵団"としての心を取り戻す事が出来たのだから。


兵団員A「だけどよぉ―――」


しかしその要員が、よりにもよって"巨人のおかげ"だというのだから、何という皮肉だ。
あの世に神様が居るならば、そのツラを思い切りぶん殴ってやろう。


兵団員A「―――なあ、一つ目の……」


ギーガ「ギガー(……?)」





兵団員A「別によう―――言葉が通じなくったって―――かまわねえんだけどよぅ―――」


兵団員A「俺―――よぅ、この冬、ガキが生まれんだよ―――」


ギーガ「……!」


兵団員A「自分でも思ってんだよ―――馬鹿なことしたってよぉ―――」


兵団員A「あそこで大層な演説なんぞしなくったって―――」


兵団員A「お前に、協力なんぞしなくったって―――」


兵団員A「結果は何にも―――変わらなかったかもしれねえけどよぉ―――」


兵団員A「―――それでも、よ―――」






兵団員A「巨人のおまえにゃ、わかんねえかもしんねえけど―――」ヒュー…ヒュー…


兵団員A「今度生まれてくる自分のガキに―――」


兵団員A「人間―――死ぬ事よりも大切な事があるんだ、って教えておきたくてな―――」


ギーガ「………………。」


兵団員A「俺がこうなってちゃあ教えらんないってか?ははは……ごふっごふっ!」


ギーガ「……!!!」


兵団員A「まったくだな―――おい」


ギーガ「……?」ビクッ










兵団員A「お前等が、何者かなんて、わからねえ」

兵団員A「どうして、俺達人間を助けてくれようとしたのかもわからねえ」

兵団員A「こんなこと、頼める義理でもなんでもねえ」

兵団員A「けど、けどよ」

兵団員A「もし、できることなら―――」












兵団員A「俺等が命を賭けて護ろうとした物を―――……護り……切っ、て……く……」











ギーガ「……?」

ギーガ「……??」

ギーガ「…………!!!」ダッ!!


>ギーガ は へいだんいんの からだを ゆすった
>しかし へんじがない ただの……。


ギーガ「……、……、……、……、……、」







兵団員G「―――追加の兵員はまだなのか!!もう突撃すんのも限界だぞ!?」

兵団員H「その、強力な助っ人ってのは本当に来るのかよ……!!」


巨人「―――!」バッ!!

巨人「―――!!」ゴウッ!!


兵団員I「しまった!?掴まれた!」


兵団員J「ひいいいい!?喰われるぅぅうぅ!!??」













『―――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!!!!!!!!!!!!』












>どこから ともなく ぶきみな さけびごえが こだました…。

>きょじんKは みがすくんだ
>きょじんLは みがすくんだ
>きょじんMは みがすくんだ
>きょじんNは…。


兵団員K「―――な、何だあ!?!?」

兵団員L「天変地異か!?この世の終わりか!?」





―――ウォール・マリア:避難民収容所




―――オォォォォォォォォォォ……!!




老人「ひいいいいいっ!!何の声じゃあ!?」

男「―――おい、ここは本当に大丈夫なんだろうな!?」

女性「巨人がここに近づいてるんじゃないかしら……」

男「―――もしそうなら、大変だぞ……」


憲兵「落ち着いてください、そんな事はあり得ません……!!」




カルラ「……エレン、ミカサ……こっちにいらっしゃい」ギュッ!

ミカサ「―――大丈夫」

カルラ「……えっ?」

エレン「大丈夫だよ、母さん」


男「……ふんっ、ガキは気楽でい―――」


エレン&ミカサ「―――ギロリ」


男「ぐ……。」タジッ 


ミカサ「エレン……」

エレン「ああ……」











エレン「―――きっと、アイツだ」












―――オォォォォォォォォォォ……!!






鎧の巨人「―――!!??」


ゴレムス「ゴー(……"鬼"が吼えたな)」


鎧の巨人「…………???」


ゴレムス「ゴー(お前にゃ解らんだろうが)」


ゴレムス「ゴー(どっかの馬鹿がギーガのヤツを本気で怒らせやがった)」





さっき「本日はこれにて」と言ったな?スマンありゃ嘘だった。
……いやほんとごめんなさい。

寝れなくてもう少しと思ったら筆が乗ってしまいまして、これが本当に最後です。続きはまた今度。
多分次か次の次ぐらいで「ウォール・マリア編」は終わります、多分。

皆さんはドラクエ5での(モンスター限定で)ベストメンバーって何ですか?
自分はギーガ、ゴレムス、シーザー、ロビンです。
※(SFCだと上記からシーザーが抜けます)

……夢も希望もあったもんじゃねえ。ネタなくてすんまそん。

>>49>>51>>52
乙アリです。なんとか完結までは頑張ります。

>>50
ピエールは俺も一線級です。何せケシゴムとバトエンまで持ってましたから……古いか?

>>53
こいつらならともかく城とか恐竜とか色々いますしねえ……。

>>54
6はですねー。物語に使えそうな魔物がですねー。少なくてですねー。
ドランゴ出したかったですよ。その代わり……。

>>55
乙ありです。
クロスオーバーこそ我が人生。(ぇ

>>56
一応ドラクエっぽくパーティーみたいな?
後1匹か2匹ほど考えてはおりますが……
ちなみに片方は「しゃくねつ」がイカすアイツ。

>>57
ギーガがおりますので、大体原作終了後がその直前ぐらいで。

モンスター限定ならエスターク戦で闇のトロフィー獲得にお世話になったピエールとバトラー
あとはやっぱりゴレムスとプックル
序盤でボスにメガンテ撃つだけの簡単なお仕事してくれたばくだんベビーもようがんまじんまでは使ってた


ゴレムスなら稲妻で雑魚巨人は一掃できそうだな
瞑想もあるからめっちゃ安心
ギーガのすばやさ255は活かされる場面あるのだろうか

っと書き忘れ
個人的最高パーティーはゴレムス、シーザー、ピエール(+アーサー)っす

乙です。
めっちゃ面白い、進撃ssでしか知らんけど楽しめる。
5の自分的ベストメンバーはやっぱり。
スラリン、ロビン、シーザーと、ピエールかプックルのどちらかかな?
コドラン好きだけど終盤は流石にキツい。

思った以上に面白くて困った…

ギガンテスをどこで仲間に出来るかもはや覚えてないわ、やり直すか…

魔界

進撃あまり知らないけど凄く面白い
続き超期待

ドランゴはザオリク使えるからあかん

おもしろい

面白い

初めてのミルドラース戦、ゴレムス以外倒されたけど、きあいだめ→攻撃だけでミルドラース倒したのは良い思い出

ピエールゴレムスオークスは鉄板






―――その時ギーガは何も考えなかった。

ゴレムスの事も、負傷した人間達の事も、巨人の事も。

全て思考の外に追いやり、その頭は"ただ一つの行動"を行う事に終始した。

そしてギーガは本能のままに―――



>ギーガ は りょううでを ふかく じめんに つきいれた







ギーガ「ギガー(……!……!!……!!!」


―――メリメリメリメリ……!


硬い物が引き裂かれる独特の音が辺りに響き渡り。


巨人「―――!」ハッ!


そこでようやく、身が竦んでいた巨人達の動きが解かれた。
慌てて彼等はギーガを止めようとするも……手遅れだった。




ギーガ「―――■■■■■■■■■■―――!!」



ただ岩を投げるだけでは正門の穴を塞ぎきれないし、ともすれば流れ弾が人間に当たってしまう。
ならば、どうするか。

考え付いたわけではない、本能のままに彼が選択したベストな行動。それは。



兵団員O「……おいおいおい」

兵団員P「―――マジかよ……」



正門に地続きになった舗装路。それが逆回しの映像の如く、家の床板を引き剥がすかのように捲くれ上がって……。







>ギーガ の 岩石……巨石……否

>ギーガ の てんちがえし!


―――ズウゥゥゥゥ……ン!



舗装路はそのまま、ウォール・マリアの破壊された正門に覆いかぶさるようにして……。



兵団員一同「「「「「――――――、、、、」」」」」












―――巨大な穴は、完全に、蟻の子一匹這い出る隙間無く、塞がった。







一瞬、この一瞬のみ、全ての刻が止まり……。

そして。



兵団員Q「…………や」


兵団員R「や―――」










「「「「「「―――やった!やったぞおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」








その光景の一部始終を見ていた兵団員達から、歓喜の声が上がった。
それはあっという間に辺りに波及して行き……。


兵団員S「もう巨人の増援は来ないぞおおおおおおお!」


兵団員T「こうなりゃあもうこっちのモンだぜええええ!!」ザシュッ!


兵団員U「ってえかよ!口臭えんだよこの巨人野郎!!」ズシュウッ!!


巨人達「―――!―――!?!?」



折れかかっていた人類の闘志に、再び火が灯る。
一体、また一体と、今度は巨人達がその数を減らして行く。



そしてこちらも、また。



―――外壁周辺部。



―――ズウゥゥゥゥゥゥゥン……!!



鎧の巨人「―――!?」

鎧の巨人「……、……、……、」



ギーガの起こした所業に、あっけにとられたように硬直する鎧の巨人だったが。



鎧の巨人「……!!……!!??」



直後、まるで"何かを呼ぶ"ように辺りに向かって激しく首を動かした。…が。





ゴレムス「ゴー(……何を待っている?)」


鎧の巨人「……!!!」


ゴレムス「ゴー(当てが外れたようで残念だが、大勢はもう決したぞ)」


鎧の巨人「…………、」


ゴレムス「ゴー(お前達が何者かは解らない。が、少々俺達をナメすぎたな)」













―――あれが、ギーガ。
魔王直轄地エビルマウンテンにその名ありと言われた強力無双の"巨人"一族、ギガンテス。












ゴレムス「ゴー(惜しむらくは少々優しすぎるキライがある所だが……)」


だが。
だからこそ"あの人達と"一緒に旅をする事が出来たのだ。






鎧の巨人「……!!!」ズアッ!!


ゴレムス「ゴー(せめて俺だけでもといった所か?―――止めておけ)」


ゴレムスは羽交い絞めしていた腕を解き、鎧の巨人を自由にした。


鎧の巨人「―――!?」


ゴレムス「ゴー(もう十分だろう?ここから大人しく去れ)」


鎧の巨人「――――――、」ギリッ


ゴレムス「ゴー(去るならば俺達は追わない。人も……魔物も……はぐれメタルも)」




鎧の巨人「―――――――――」

鎧の巨人「――――――!!!」ゴッ!!!


ゴレムス「ゴー(それでも。か……。だったら―――」


>ゴレムス は こしをふかくおとし…。










ゴレムス「ゴー(―――お前の、負けだよ)」


>まっすぐ うでを てんたかくつきだした






鎧の巨人「――――――!!!???」


>ゴレムス の あっぱーかっと(せいけんづき亜種)





>か い し ん の い ち げ き!







鎧の巨人「―――ゴバアッッ!!??」



>よろいきょじん は (あごをこなごなにしながら)もんのそとまで ふっとんだ…。
>よろいきょじん を たおした

テレレレー♪






ゴレムス「ゴー(やれやれ。俺が何の勝算も無しにターンを渡してたと思ったのかね…)」ゴキ、ゴキン


>よろいきょじん の こうげき
>ゴレムスは ジッと たえている…。




>ゴレムス は ちからを ためている…。







ゴレムス「ゴー(生きていたら覚えておけ、これが"きあいため"だ)」

ゴレムス「ゴー(それに……)」

ゴレムス「ゴー(正門警護でゴーレムが敗北したとあっちゃ一族の面汚しになるんでね」

ゴレムス「ゴー(祖先の良い……あれ?先祖じゃなくてか?……祖先になるんだっけか?)」







ゴレムス「ゴー(どうもナンバリングタイトルの時系列というのは解りづらい)」


―――台無しである。





―――ウォール・マリア:正門前


未だ戦闘は続いていたが、もう間もなく決着という所であった。
そんな折、正門の隅の方では。



ギーガ「……、……、……、グス……グス……」


ゴレムス「ゴー(よお、お疲れさん……どうした?)」


ギーガ「ギガー(ゴレムスうううううううう!!)」ブワワッ


ゴレムス「ゴー(……本当にどうした?)」







兵団員Aその他「「「「「「―――、―――」」」」」」チーン




ゴレムス「ゴー(……うん、こりゃあ……どうにもこうにも……完璧に……)」

ゴレムス「ゴー(死んでるな)」







ギーガ「ギガー(うわああああああああああああああ!!)」


ゴレムス「ゴー(ええい、煩いな!泣くなよ一つ目!多いな一つなのに涙!!)」


ギーガ「ギガー(どおしてゴレムスそんな事言う!ゴレムス悲しくないのか!ギーガ悲しい!ゴレムス岩だから血が通って無い!れーけつかん!おに!あくま!残りHP1で逃走するメタルキング!!)」


ゴレムス「ゴー(ワケの解らん事を喚くな!何処でそんな言葉を覚えたまったく……)」


ギーガ「ギガー(だってだって……)」ヒックヒック


ゴレムス「ゴー(それにな、ギーガ)」



―――ゴソゴソ……!





ゴレムス「ゴー(お前は大事なことを忘れている)」ニヤリ


>ゴレムス は おおきなふくろを とりだした



ま、まさかせかいじゅのは……持っているというかッ!?

戦闘はこれにて終了。次回終了後とエピローグとなりまーす。
で、これからちょいと日付跨いで出かけてくるので次回投稿は結構後になります。すみません。

……メルキドのゴーレムはトラウマ(ボソッ

>>95
やはりモンスターという思い入れは一入ですよねえ。
……流石にわしゃニトロはその頃スタメン落ちでしたわい。

>>96
ギーガ「ギガー(ゴレムス身体ボロボロ、あのヨロイのでっかいの。強かったのか?)」

ゴレムス「ゴー(……ああ。これか?)」ボロッ

―――ゴレムス は しずかに めいそうを はじめた

ゴレムス「ゴー(こんなもんよ)」ピカーン

ギーガ「ギガー(ですよねー)」


>>97
矢張りスライムナイトは大勢の友のようで……。(ニッコリ

>>98
有難うございます、ありがとうございます。
プックル……いや自分はゲレゲレでしたが、も使ってたなあ。

>>99
ありがとうございますありがとうございますがんばります。

>>100>>101
そうです。魔王直轄地のエビルマウンテンです。
シーザーもロビンもそこ(ジャハンナ周辺ですが)でねー。

>>102
進撃も面白いですよ。
……自分のSSは時期列メチャクチャですけど。

>>103
ごめんなさい……ザオリクよりももっと酷いオチに……
???「でえじょぶだ。ドラゴン○ールでよみがえる!」

>>104
ありがとうございますはげみになります。

>>105
ゴレムスのタフさはありがたかったですよねえー。
自分もここぞというときの時間稼ぎでした。

>>106
逆にオークスはすばやさに難があったので自分はあんまりだったかと……。
すまぬ……すまぬ……オークス……。

>>127
……ニヤリ。









『―――ン……』



『―――ミン……』



『ア―――ミン……!』



『―――ルミン……!!』



『―――ア ル ミ ン!!!』









アルミン「……ん?う、んん……??」


エレン「こんなこったろうと思ったぜ……―――起きろ。この馬鹿」ユサユサ






アルミン「―――ッッ!!??ひいああああああああ!!岩のおおおお!!巨人がああああ!!一つ目のおおおおお!!声があああああ!!」
(※ギーガの絶叫で気絶しておりました)


エレン「……寝ぼけてんのか阿呆」ベシッ


アルミン「―――痛っっ!?え……エレン……ここは……?僕、何をして……?」

アルミン「―――ハッ!!そ、そうだ……!!巨人は!?戦闘はどうなったの!?」






エレン「……ああ。戦いなら……見ろよ」



エレンがスッと指差した方を見やれば、巨人によって破壊させられていた外壁も正門も……物の見事に瓦礫によって塞がれていた。
……これを、あの二体の巨人がやったというのだろうか?(※気絶していたため良く解ってない)



アレミン「……あ。あの二体の……"一つ目"と"岩"の巨人は……?」


エレン「……さあ?俺が知るかよ」




―――後から兵団の人に聞いた話によると、あの謎の2体の巨人達は、後方で残党巨人の掃討を行っていた人員が正門に集結した時には、既にその姿を忽然と消していたそうだ。
複数人による調査の結果、うず高く積まれた瓦礫の幾つかに"巨大な足跡"が刻まれていたという話だったが……詳細は不明だ。



アルミン「じゃあ、終わったんだ……本当に……」



あれだけの数の巨人が攻めて来たというのに、堅牢だった門も外壁も破られてしまったというのに。



アルミン「ほ―――ぅっ……」



一際大きな溜息と共に、尻餅を付いてしまいそうになったがどうにか堪えた。
先刻まではこの世の終わりだとばかり思っていたというのに。
肩の力が楽になったら、今度は思考が勝手に回転を始めてしまい……。





アルミン「……今回の戦いは、どのぐらいの人が犠牲になったんだろう?」


エレン「…………」



勝手に口をついて出た僕の言葉に、エレンは答えなかった。
単純に知らないのか、それとも……。
口にするのも憚れるぐらいの―――凄惨さであったのだろうか。



アルミン「―――そうだ、エレン。君……家は……?」



超巨大巨人が外壁を吹き飛ばした際、破片がシガンシナへと幾つか降り注いだ。
エレンは家の無事を信じて確認しに行って……僕はそこで別れてから今漸くに再会出来たのだ。
衝撃的な事がありすぎて思考の埒外だったが、思い出した瞬間尋ねずにはおれなかった。







エレン「……家は、瓦礫で粉々になっちまった」


アルミン「…………!!!」



―――その時僕は、一瞬最悪の報告を覚悟した。



エレン「でも―――母さん、な」



だけど、振り返ったエレンの表情に悲壮なモノは無くて。








エレン「―――生きてるよ。"おかげさん"で」







アルミン「あ―――、」


エレン「父さんとも避難所で合流出来てさ……今は難民の怪我人を治すので手一杯みたいだけどな。んでミカサはその手伝いに残ってる」



堪えていた足が、二度の重圧からか、開放された途端にヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。
良かった……本当に良かった……。







アルミン「うううっ……うううううううっ……」ポロポロ…


エレン「泣くなよ、馬鹿……大変なのはこれからだってのに」


アルミン「そ、そうだね……家も建て直さなきゃいけないだろうし……壁の復旧作業だって……」


エレン「………………」


アルミン「……?エレン……?」









何故だろう。
戦いも終わって、巨人達も居なくなって、家族も無事で。
全ては終わった筈だ。

なのに。



その時初めて、エレンの表情に曇りが見えた。







エレン「―――今、無事な人たちは居住区から船に積める生活物資の選定をしている」


アルミン「……え?」


船?
ここでどうして船が必要になるんだろう?


エレン「兵団の人達は生きている家畜と"向こう"でも使える資材の運搬に借り出されてる、らしい」


アルミン「―――"向こう"?」


エレン「大人も子供も総出で手伝えだと。手が多いに越した事は無いし、お前もへたってないでさっさと―――」





アルミン「―――待って、待ってくれよエレン!」






エレン「…………」


アルミン「"向こう"って、何処の"向こう"なんだい!?ここからそんな多くの物資を、一体何処に運び出すって言うのさ!?何の目的で!?」



一息に言ってのけてから、僕は自分の浅慮に舌打したくなった。



そんなこと。





容易に想像つくだろうに……!












エレン「………………俺は、父さんから聞いたばかりで詳しい事は何も解らねえ。だけど―――」












エレン「―――中央は、ウォール・マリア(ここ)を放棄するんだとさ―――」




―――船舶停留港前。



『―――おい、こいつは使えそうか?』

『どうれ……ああ、駄目だ。曲がっちまってるから持って行っても廃棄が関の山だろうよ』

『こっちはどうだ―――?』

『積載量には限界がある。本当に必要なモノ以外は全部置いていけ』

『……しかしなあ、居住者が増えるというのに手土産も無しというのは……』

『そんなものは王都にでも任せておけ。俺達が今やるべき事は―――』



日が傾き、夜の帳が空を覆おうとする最中。
港では、兵団によって次々と物資の選定と運搬がなされていた。




……そんな喧騒から離れた所では。




「―――やってらんねえ」プハー


「ああ、全くだぜ」


「俺たちのしてきた事が全部パーになるなんてよ」


「理屈は解らないまでも無いんだがな」


「死にそうな思いまでしたってのに……」


「王都の連中がそんな機微まで考慮するかよ。連中にとっては"巨人に攻められた"この一文だけが大事なんだろうさ」


「っつーか実際問題俺らあの時絶対によう……」


「止めろ馬鹿。思い出したくもねえ」



港にて荷運びを行っていた兵団の内数人が、紫煙を燻らせていた。
するとそこに。






憲兵「ん?―――おい貴様等何処の所属だ!王都からの辞令を聞いて無かったのか!?住民及び兵団は総出で物資の運搬に当たられたしという発令だぞ!!」


「……やっべ、見つかったか」


「お前が"サボッちまえ"だなんて言うからだぜ……」


「俺、しーらねっと」


「憲兵さーん。罰するならこいつだけにしてくだせーよー」


「……お、お前等なあ……っ!」






憲兵「黙れ黙れ!不敬者共が!!王都をなんだと思っている!見た所駐屯兵団のようだが…戦勝に明け暮れるのは結構だが時期と場合を考えて貰おう!」


「…………」イラッ


「……戦勝ったって、なあ?」


「……俺達が勝ったワケじゃあなし……」


「むしろ全滅寸前って言った方が……」






憲兵「何をぼそぼそ言っておる!?貴様等あすこで真面目に動く同僚達に申し訳が立たぬと―――」


「―――る、せえ……!」ボソリ


憲兵「―――今、何と言うた?」


「―――うるせええええええええっつったんだよこのトウヘンボク野郎が!!」


「……あ、切れやがった」


「(まあ、無理もねえかなあ)」






憲兵「なっ……なっ……!?」ピクピク


「何が戦勝だあ!?何が真面目に動けだあ!?そもそも俺達ゃな…………!」













兵団員A「―――半死半生の重傷者だったんだっつーの!!片足突っ込みかけたあの世から戻ってきたっつーのに何でここでこんなことやってなきゃならねーんだっつーの!!」









憲兵「―――何処の世界に両足でしかと立って両腕を振り回す重傷人がおると言うのだ!!貴様、詐病罪でしょっ引いてくれるぞ!?」



兵団員A「ああやれよ、やってみろよ!!!死出の旅から帰ってきた人間様嘗めんじゃねえぞオラァ!!」





―――ギャーギャー!!
―――ワー!!ワー!!






兵団員B「おーおー。吼えるねえ」


兵団員C「最早怖いもん無しって感じだな」


兵団員D「"アレ"を経験しちまうとなあ。今この場に居る事自体に実感が沸かないんだろうよ」


兵団員E「で、無闇やたらに吼えて不安を紛らわせてるってか?」


兵団員F「……気持ちは痛いくらい解るけどな。俺なんてまだ正直夢じゃねえかと……」


兵団員B「―――実際、なんで生きてるんだろうなあ……俺達」ポツ…




―――目が覚めた時、俺達は"傷一つ無く"正門前に横たわっていたそうだ。
あんまりにも外面が綺麗なもんで、後方から来た連中は俺達が居眠りしてるのかと勘違いされた一面もあった。




……そんな訳あるか。
今でも目を瞑ると思い出す。

己が裂いた巨人の首筋の肉の感触も。

この身を裂いた巨人の爪の……肉にめり込んで来る歯の感触も。

全身を濡らす巨人の唾液と己から絶え間なく出る出血。





無事な人間などあの場には一人も居なかった筈だ……そう、ただの一人も。




その筈だった。


兵団員B「(その中でも特に……)」チラッ


兵団員A「―――ギャーギャー!!」


兵団員B「(アイツは、ほぼ即死だった筈だ……)」


兵団家業を長くやってると人体の怪我の程度というのが何となく理解して来る。
その経験が、"あの時"告げていた。


―――俺達は助からない、ここで死ぬ。


……と。




だが現実に、俺達は誰一人欠ける事無くここでこうして荷運びに従事している。
……仮に、手当てが間に合ったとしても向こう数年間は病院のベッドが伴侶となるだろう。



それなのに……ある筈の怪我は無く、またある筈の死体も唯の1体も無い。
ある筈の死体第1号のAが、混乱するのも無理はなく。



俺達だってそうだ。
冷たい棺桶と友達になるのを回避出来たのは喜ばしいかったのかそうでないのか……今をもってしても実感が沸かない。





兵団員C「―――やっぱ夢なのかねえ?」


兵団員D「どっちがだ?ここで俺達が生きてるのがか?あの戦いがか?」


兵団員E「後者。と言いたい所だけどよお……俺っちは3番目の選択肢を取ろうかねえ」


兵団員F「……やっぱそうなんのか?」


兵団員E「他に何があるよ?」


兵団員D「けどよ、何のメリットがあるんだってんだよ」


兵団員F「それを言うならあの戦闘の何もかもがだぜ?」


兵団員D「―――でも、"巨人"だぜ?それがなんで―――」










―――俺達"全員"を救ったってんだ?





兵団員B「…………」フー


兵団員D「上に挙げる報告書を読んだんだけどよ……王都の連中も目を丸くして驚くだろうさ。なんせ……」




―――被害はシンガシナ区に及ぶウォール・マリア全域。
―――正門大破及び壁の一部に重大な欠損。
―――住宅地への被害甚大。修繕費用総額算出現在を持って不明。
―――しかしながら。




―――この戦闘による人的被害……ほぼ0。




兵団員D「……だもんな」


兵団員F「救われたのは……俺達だけじゃねえって事か」


兵団員D「ほぼ"ゼロ"だぜ?こんな数、巨人との戦闘を起こした人類史の中で極めて異例の数値だよ」


兵団員B「……というか、史上初だろうよ恐らく」


兵団員E「全く、誰が信じるってえのかね……こんな与太話」






兵団員E「―――"我々は巨人の強襲を許し、壁を壊され門を壊され多数の巨人が侵入しましたが……無事怪我人も死人も出す事なく敵を退けました"」




兵団員F「ついでに"壁と正門も塞いでおきました"って書いておけ」

兵団員F「"偶然瓦礫と大岩が空から降って参りましてそれにより巨人の侵入を防ぐ事に成功しました!"……ってな」




兵団員D「……犠牲になった先人達に謝ったほうがいいな。俺が監察官だったらそんな報告書間違いなく偽証罪で終身刑直行だ」







兵団員C「じゃあ正直に言うか?巨人により部隊のほぼ全てが胃袋に直行。危うく人類最後の砦をみすみす巨人共に明け渡す所でした―――ですが」


兵団員C「―――何を思ったか巨人同士で仲間割れを始めて、その中の2体が巨人を全滅させて破損箇所も埋めてくれておまけに兵団の人間も治療して、最後は礼も言わせずに去って行きました……格好いいねえ」




兵団員C「………………」
兵団員D「………………」
兵団員E「………………」
兵団員F「………………」




兵団員B「……確実に。揉み消されるか直接消されるかのどっちかだろうな」プカー






兵団員D「でもよ……事実だぜ?目撃者だって何人も……」




兵団員B「……Eも言ったろうが。"誰も信じない与太話"だってな」

兵団員B「たった数人の目撃証言だけで"巨人の中に味方が居る"なんて事を声高らかに発言して―――」

兵団員B「一体何処の誰が鵜呑みにするってんだよ……特に、今のこの"鳥篭"の中で暮らしている人間が」

兵団員B「言った奴は良くて村八分にされるか、悪けりゃ袋叩きの末壁の外に放り出されるだろうよ」






兵団員D「……"鳥籠"ねえ、上手い表現だわ」


兵団員B「―――人類は今日この日、思い知らされたろうさ」





―――俺たちの平和が、鳥篭の中での小さな営みである事を。
―――今も直、巨人の脅威に晒されている屈辱を。







兵団員C「その結果が……ウォール・マリアの放棄、か」


中央王都は、本日の戦闘の経緯の報告を受けた際。ウォール・マリア全ての住民、勤務している兵団に向け、



「直ちに居住区をウォール・マリアからウォール・ローゼへと後退させよ」



という発令を出した。
但しこれは飽くまでも再び巨人が出現するかもしれないという懸念を考慮した物であり、決して敗北から背を向けての逃走ではないとし、
住民には安全が確認されるのと壁と正門の破損が完璧に修繕され次第直ぐにでも帰参が許されると告げられていた。
……だが、住民は兎も角戦闘に参加した兵団の人間の何割が、ソレを信じただろうか。





兵団員E「―――んで、コイツはその被害を最小限に抑えるための免罪符ってか……?」ピラッ


―――それは、王都の中でも限られた人物にしか発行出来ない特別な用紙であった。
内容はウォール・マリアでの戦闘及び修繕行為において「人間の力のみ」においてこれを成した事誠に大儀である……等々。
殊更に人類の勝利を強調しており、兵団及び全ての居住区へと撒かれていた。



しかし……そこには、人間を救った2体の巨人の情報は微塵も書かれては居なかった。


何も知らない人間が見れば、今回の戦闘は人類側の大勝利であり、再び自由を手にする日も近いだろうという希望を抱かせる。

だが。


兵団員F「んでもま、良かったんじゃねえの?」


兵団員E「……何がだよ?」





兵団員F「そりゃおめえ、こんだけ活躍したって事が大々的に流れたっつーことはよ?」

兵団員F「―――王都に申請すりゃあ危険な戦地じゃなくて安全な内地勤務への転属も夢じゃね―――」




兵団員B「…………ジトー」
兵団員C「…………ジトー」
兵団員D「……(しまったその手があったか!?)」
兵団員E「…………コノヤロウ」





兵団員F「あ、いやあね…………それやったら人間御仕舞いだよな…………」




兵団員B「……ま、気持ちは解るがよ……」

兵団員B「―――そういうのは、本当に人類が巨人に打ち勝った時にでもしとくんだな」

変団員B「―――何が栄光の勝利だっての……!」



そう言って、Bは煙草の火を用紙に押し当てた。
薄く脆い特別紙はそれだけで端から消し炭へと変わって行く。



兵団員C「あーあー。勿体ねえ」


兵団員D「額縁にでも入れておけばウォール・ローゼの連中にも一目おかれたかもしれねえぜ?」


兵団員B「白々しい事言ってんじゃねえよ。こんなもん―――」











兵団員B「文字通り、紙屑みてえな勝利だよ」



兵団員B「(お前等は―――満足だったのかよ?)」

兵団員B「(こんなクソみてえな閉ざされた世界で、戦って、感謝も、理解もされずにまた地獄みたいな日々が始まる)」

兵団員B「(そんな連中を助けた事によ…………)」





そう心中でポツリと漏らした彼は、口腔一杯に吸い込んだ煙を―――深く、空中に向けて吐き出した。
それが、Bなりの餞だったのかもしれない。
ロクに言葉を交さぬ内に別れた、或いは"戦友"と呼べたかもしれない2体への―――……








憲兵「―――おぃい!!増援を寄越せぇ!!この神をも恐れぬ不敬者を私の手で裁いてくれるぁ!!」



兵団員A「―――手前らぁ!!ボサっとしてねえで手を貸せよおおおおおお!!!こいつぶん殴ってやらああああ!!」










兵団員C「……あ、忘れてた」


兵団員D「正直どうでもいいって言うか」


兵団員E「どうすんべ?」


兵団員F「面白いから放って置いて後でアイツのカミさんにチクろう。……そしてアイツのガキにも将来チクってやろう」








兵団員B「(…………)」フー


兵団員B「(……台無しだよ)」チキショウメ




―――壁の外:郊外の森




???「……やれやれ、ここまで登ってくれば大丈夫だろう」ドサッ


???「○×△○■#%&$#!!??」ゲボハァ!!


???「……何だって?」


???「$%&$#○■○!!!」ブバァ!!





???「……うん、顎が砕けてるから何言ってるか全然解らないけど言いたいことは解るよ」

???「でもしょうがなかったんだ、僕は"変身"すると体力の大部分を使っちゃうから―――」


???「%&><#※○△▼!!!」ドボァ!!


???「今回は"探し出す"事が出来なかったけど大丈夫。機会はきっとまた―――」


???「▼△○××%#&%!!!」ドボドボ


???「……うん、早い所ソコ治した方がいいと思う」


???「○△▼○×△○!!!!!」ブッシャア!!
(※"野郎!!今度会ったらぶっ殺してやらあああああ!!"と言っている)




―――壁の外:大地



ゴレムス「ゴー(―――へえっぷしっ!)」


ギーガ「ギガー(ゴレムス風邪か?寒いのか?)」


ゴレムス「ゴー(いや、そんな訳ないんだがなあ)」


ギーガ「ギガー(きっと誰か噂してるんだよきっと)」


ゴレムス「ゴー(あまりいい話題じゃなさそうだがな)





ギーガ「ギガー(あの街、あのままにしてきて良かったのかなあ?)」


ゴレムス「ゴー(仕方無いだろう……。どうもあそこの人間はあの大きな"人間モドキ"の脅威にさらされているみたいだし……)」


ギーガ「ギガー(ギーガ達そんなんじゃないのに……)」


ゴレムス「ゴー(……オラクリベリーやジャハンナの人達なら兎も角、あそこでは解って貰う事は絶望的だろうな……)」


ギーガ「ギーガ(これからどうする?)」


ゴレムス「ゴー(……ここら辺を歩きつつ、ご主人様達の情報を探すしかないだろう)」





ギーガ「ギガー(どうやって?)」


ゴレムス「ゴー(ソレはアレだよお前……誰かに聞くとか)」


ギーガ「ギガー(だから、どうやって?)」


ゴレムス「ゴー(…………言葉通じるだろうか)」


ギーガ「ギーガ(モンスターじいさんや武器防具道具屋さん達みたいな人が居るといいんだけどねー)」


ゴレムス「ゴー(……何かに文字を書くとか)」


ギーガ「ギガー(ギーガ書くもの持ってない。そもそも持ったら壊れる)」





ゴレムス「ゴー(………………)」


ギーガ「ギガー(っていうか、ゴレムス。ギーガ達そもそも―――)」





ギーガ←かしこさ30
ゴレムス←かしこさ50

※平均より聊か下。





ギーガ「ギガー(―――字、書けないよ?)」


ゴレムス「ゴー(…………………………、)」ヒュウウウウウ…。





ゴレムス「ゴー(サンチョさんにきちんと教わっておけば良かったか…………)」


ギーガ「ギガー(ショギョムッジョ)」


―――――――――ガサガサ…………!!


ゴレムス「ゴー(…………ん?)」


ギーガ「ギガー(何…………?)」





巨人「―――キシャアアアアアアアアア!!!」
巨人「―――モシャアアアアアアアアア!!!」
巨人「―――ゲシャアアアアアアアア!!!」



>きょじん A B C があらわれた!



ゴレムス「ゴー(………………)」


ギーガ「ギガー(………………)」







ゴレムス「ゴー(……ま、何はともあれ)」


ギーガ「ギガー(うん…………)」


ゴレムス「ゴー(いつも通りのスタイルで良いというのは―――)」ポキポキ


ギーガ「ギガー(―――ヨカッタ、ヨカッタ)」グルングルン



※4~5マス歩いたら凶暴なドラゴンやら悪魔やらが日常的に襲い掛かってくる世界の住人です。





>コマンド……


>ゴレムス の こうげき
>ギーガ の こうげき
















>か い し ん の い ち げ き ! !




その頃……。

―――ウォール・マリア:港



憲兵「―――それでは、この便は只今より出向致します!」



―――ボオオオオオオオッ!!



汽笛の音が鳴り終わると同時に、数十人を乗せた船は川を下って行く。
ここを通り過ぎればウォール・ローゼ湾内は直ぐソコだ。
すぐ、とはいえ。




住み慣れたウォール・マリアが遠ざかるのは、紛れも無い現実である。






男「―――チクショウ。折角商売が軌道に乗り始めたばかりだってえのに……!!」

老人「あそこは婆さんとの思い出が詰まっておったのにのう……」

女性「新しい土地なんかでやっていけるのかしら……」



失意、後悔、絶望……船を取り巻く環境は、暗く沈んでいる。

でも、俺は……。







カルラ「―――寒くないかい?エレン?ミカサ……」ギュッ…


エレン「―――大丈夫だって。子供扱いは止めてくれよ……!!」


ミカサ「エレン。本当は嬉しい癖に…」


エレン「あんだと!?そういうミカサは―――」


ミカサ「私は嬉しい」


エレン「…………!」


ミカサ「……家族が皆無事だったから」


エレン「…………」






俺、エレン・イェーガーは。
何一つ失う事無く。
思い出の詰まったウォール・マリアを捨てて出て行く。



エレン「…………」



船の端から街を覗けば。
所々破壊の痕が残っているものの、その大部分は無事なままの町並みを残していた。
……中央は人類の勝利を謳っているが。
そんなもの嘘っぱちだ。





「ううう……」
「お母さん……」
「家に帰りたい……」



あちこちから、怨嗟の声が聞こえてくる。
同乗している兵団の人間は、沈痛な面持ちで、片腕を胸へと持ってきていた。
これの。
こんなのの、一体何が勝利だっていうんだ。



何も失ってないだって……いや、違う!



このまま何もしなかったら俺は、人類(おれたちは)……。




一つ目の巨人「―――ギガー」

岩の巨人「―――ゴー」





―――負けたまんまに、なっちまう!






エレン「("借り"を返せないまんまで……逃げるなんて、卑怯だよな……!)」ギュッ…!



―――壁による平和を得てから約100年後。人類は巨人の脅威を忘れ、平和な日々の生活に埋没していた。
だがその日より、彼等は再び思い出した。
己の晒されている脅威の重さと、平穏の脆弱さを。



それを思い知る物あった筈の戦いは。
人類の大勝という結末で一先ずの幕をここに下ろした。



……だが、この戦いから前後する形で、一部の人間の間で実しやかに囁かれる、"ある噂話が"出回る事となる。

それは天の彼方より現れた2体の巨人が、他の巨人を駆逐したおかげで、人類は本当の危機から回避することが出来たのだという荒唐無稽な御伽噺。


誰が名付けたかは不明ながらも。

この話を行う際に当たって、必ず名を呼ばれるその題名は―――。











―――「ウォール・マリアの奇跡」



と呼ばれた。

「ウォール・マリア編」……ならぬ「ウォール・マリアの奇跡編」はこれにて終了となります。

ギーガとゴレムスの珍道中はもう少しだけ続くんじゃ……。

そして本当の最後の最後に次回予告だけ投下して終わりにしたかったんですが……ね・む・い……。

少しだけ眠って、「850年編」の最初だけサラっとやって、終わりにしますです……。

レスは控えろと仰る方がいらっしゃったので、投下しきってからまた改めて……それではおやすみなさい……。

>>1です。
長らく放置大変申し訳ありません。どんだけ寝てたっつー話で…。
あの直ぐ後にPCが壊れてしまいまして、本日修理工場から帰ってまいりました。
データの方もバックアップ取ってなかった為に今書き直しております。
そしてエピローグが書き終わりそうなので、少なくとも本日には投下致します。

……いやほんとうに長くてすいません。

エピローグ書き終わり。
投下開始しますー。




―――人類が「ウォール・マリア」を放棄してから、更に幾日もの月日が流れた。

当初危惧されていた、各所への食糧供給や現地住民との衝突等と言った問題は、ウォール・マリアからの持ち込んだ資材の多さと中央王都の迅速な対応により然程表面化せず。

新たなる居住地となった「ウォール・ローゼ」への生活に四苦八苦しながらも、ウォール・マリアの人々はそれぞれの生活の基盤を新しく造って行く事となった。

しかし、その中にありながら、





―――ウォール・ローゼ、居住区。イェーガー家。



カルラ「―――、―――、」コックリ…コックリ…



―――母さん。俺さ、今度誕生日を迎えたら…!



カルラ「…………エレン」ウツラウツラ


???「―――カルラ…」ユサユサ


カルラ「―――!!……あ、あなた……?帰ってたの?」



テーブルで夢現になっていたカルラを起こしたのは、良く見知った顔。
医者であり、自分の夫である―――グリシャ・イェーガーその人であった。





グリシャ「良く寝てたね。悪いとは思ったんだが腹が減ってね」


カルラ「あ―――ごめんなさい。わたしったら……すぐ用意するわね」


グリシャ「カルラ」


カルラ「?」


グリシャ「……お皿」


カルラ「あっ……」



夫に指摘されて漸く気づいた。
無意識の内にスープの皿を4人分出している自分に。





カルラ「…………、」


グリシャ「君の料理は確かに美味いが、4皿は流石に食べられないなあ」


カルラ「……芋と野菜のお粗末なシロモノだけどね」



わざとおどけて言う夫に、妻も皮肉で返す。

いい加減、二人で取る食事という物に慣れたつもりだったのだが。
"あんな夢"を見てしまったせいだろうか。

未だ息子と娘が居た頃の……。





グリシャ「……すまない」


カルラ「……え?」


グリシャ「君の気持ちも解ってたつもりだったんだが―――」


カルラ「―――"人間の探究心とは誰かに抑えられるものじゃない"」


グリシャ「―――!」


カルラ「だったかしら?」クス


グリシャ「…………、」




カルラ「正直、言うとね。最初の頃は何が何でも反対し続けるつもりだったわ」

カルラ「門の前で帰りを待って待って、帰ってきた結果が『肉片だけでした、すみませんでした!』……なんて、冗談じゃないわ」

カルラ「そうでなくてもエレンには昔から何かこう、親の私が言うのも何だけど、どこか危なっかしすぎる所があるのよね。貴方に似て」


グリシャ「(いや、エレンの性格はどちらかと言えば君に……)」


カルラ「何か言ったかしら?」


グリシャ「いや何も」


カルラ「兎に角そんなエレンに対してYESだなんてとても言えなかったわ。言えばミカサだって付いていくだろうし」

カルラ「折角、"あの日"から無事に逃げられたのに、万が一がありでもしたら私は天国のアッカーマンさん達にとても顔向け出来ないわ」


グリシャ「だが君は最終的には頷いた」




カルラ「そうね。…けどあの子の熱意にほだされたとかじゃあないわよ?ただ…」


グリシャ「ただ?」


カルラ「あの子の瞳がね……」


そこまで言ってから、カルラは"あの日"に思いを馳せた。
巨人が飛ばした瓦礫の下敷きになり、巨人に捕らえられあわや胃袋へと行く直前に救い出された時の事を。
……最も、仔細は良く覚えていないのだが。

そこから、危なっかしげだけだった息子が、ほんの少し。
ほんの少しだけ、何処か和らいだ雰囲気で自分の夢を語りだした。





―――俺……やっぱりどうしても外の世界をこの目で見たい!
―――正直言いうと巨人は怖いよ。恐ろしいよ。
―――母さんが食われそうになったあの瞬間を思い出すと今でも震えちまう。



―――けど、俺は―――!!





それと同時に思い起こされるのは。


―――自分を見つめる一個しかない瞳。
―――居並ぶ牙と頭頂部に一つだけ生えた角。
―――血など通って無いと錯覚させるかのような青銅の肌。





カルラ「(不思議ね……)」



最初は怖くて堪らなかった。
さもありなん。
自分を握りつぶして食おうとした巨人と同じであるのだから。
その筈だったのに。
後になればなるほど、どうしてかあの巨人にだけは恐怖が薄れて行くのを実感するのだ。

息子は私を助けてくれたのだとしきりに言っていた。
あの時は(周囲の目もあり)その事を言い触らすのを硬く禁じたが、こうして考えてみるとそうなのか?という得心も沸いてくる。

"ウォール・マリアの奇跡"なんて、唯の下らない噂話の筈なのに、まるで本当の事のように思える。
そしてそれが本当の事のように思えてくると。


不思議と、息子と娘の無事を信じられて来るのだ。

だから、渋々ながらも子供達を見送れた。




―――スッ。


カルラ「キャッ!?……あ、あなた??」


そんな事を考えていたカルラに対して、グリシャは気づかれぬよう背後に回り。
その手を以って彼女の身体を包み込んだ。



グリシャ「…………」


カルラ「…………」



急にどうしたというのだろうか。
突然の夫の行動にワケもわからず硬直してしまう。
照れ臭くもどうしたものかと思案する彼女の耳に。

それは、届いた。




グリシャ「ありがとう……」


カルラ「え……?」


グリシャ「君が今、何を考えていたのかは何となく察せる」


カルラ「……」


グリシャ「"あの時"の事は、私も今を以ってして忘れる事は出来ない」

グリシャ「世間では人類の大勝利と流布されているが、そんなものはあの場を経験した事のない者の戯言だ」

グリシャ「だがそれを指摘すれば反逆罪で投獄……下手をすれば死罪だ」

グリシャ「それでも私は―――」





次の瞬間、カルラの頬に暖かいモノが滴り、塗らした。
後ろ向きで抱きしめられているから顔は見えない。
だがカルラにはそれが何なのか察する事が出来た。







グリシャ「今、ここでこうして変わらず君を抱きしめていられる事を……例え巨人だろうが、その事には、深く感謝を捧げたい……」









ポロポロと滴る液体は留まらずに降り注ぎ。
妻はそんな夫を剥がすでもなく、宥めるでもなく。

ただ、己の掌をその頭に置いて、一言。



カルラ「―――馬鹿ね」



失ったモノは数多くあれど、失わなかったモノも確かにあった。ここにこうして。
そして、変わらぬモノも、また。





カルラ「(―――エレン。―――ミカサ。―――そしてアルミンも)」

カルラ「(今、貴方達はどうしているのかしらね……)」







胸中で子供達の名を呟くと、同じ壁の中とはいえ今は遠い地に居る彼等の顔を思い出していた。









―――ウォール・ローゼ、兵団訓練所




教官「―――諸君等も知っての通り。壁内部100年の平和は5年前、巨人の侵攻により打ち破られた」

教官「しかしながら先人達による尊い犠牲と勇敢なる戦いにおいてこれを見事退けた……しかし」

教官「その結果はウォール・マリアの一時放棄を選択せねばならぬ程の激戦であった。それは人類(われわれ)の大勝とは言い難きモノだ」

教官「更に言うのならば今、この瞬間にもあの『超大型巨人』が再び現れ壁を破壊しに来たとしても不思議では無い」

教官「その時こそ諸君等は―――」





エレン「(―――とうとう、か)」

エレン「(とうとうここまで、来た)」



―――その職務として生産者に代わり―――



ミカサ「―――、」



―――自らの命を捧げて巨人という脅威に―――



アルミン「―――、」


エレン「(今度は、人類(おれたち)の番だ)」

エレン「(俺は絶対に調査兵団に入って、敵を全部倒して、そして……)」





―――では、諸君。傾注!!
―――心臓を……





―――捧げよ!―――







少年は命じられるがままに硬く握った拳を己の胸へと押し当てた。
胸に秘めた思いを、逃さまいとする鉄の意志を以って。

少年の名はエレン・イェーガー。

外の世界の探究と、自分達を救ってくれた5年前の巨人を何としても探し出す。

その幼き頃からの思いを変えぬままに、彼は兵団の門を叩いたのだ。







―――壁外:草原



ギーガ「ギガー(ねぇ、ゴレムスぅ~)」


ゴレムス「ゴー(何だいギーガ)」


ギーガ「ギガー(ギーガ達いつになったら帰れるんだろうね……)」


ゴレムス「ゴー(さぁなぁ……)」





ギーガ「ギガー(あの壁の街を離れてから大分経つけど、どうして)」








ギーガ「ギガー(―――行けども行けども他の街が一つも無いんだろうね?)」





ゴレムス「(…………)」






ギーガ「ギガー(代わりに人間モドキには沢山襲われたけど……)」


ゴレムス「(…………)」


ギーガ「ギガー(もしかして、皆あの人間モドキに滅ぼされちゃったのかな……?)」


ゴレムス「ゴー(可能性はあるが、俺達じゃそれを断定する事は出来ないな)」


ギーガ「ギガー(マーリンやレネウスだったら何か解ったのかなあ)」


ゴレムス「ゴー(今ここに居ない奴を当てには出来ないしな)」


ギーガ「ギガー(かしこさが低いのが辛いです……)」





ゴレムス「ゴー(……なら、いっその事)」


ギーガ「?」


ゴレムス「ゴー(戻ってみるか。あの、壁に囲まれた街に)」


ギーガ「ギガー(それはいいけど、ギーガ達怖がられたりしないかな?)」



ゴレムス「ゴー(大丈夫とは言えんが、そうなったらそうなったで構わんさ。何しろこの世界を知る手がかりはもうあそこぐらいしか無いからな)」

ゴレムス「ゴー(それに……)」

ゴレムス「ゴー(今回は秘密兵器があるからな)」ニヤリ





ギーガ「ギガー(ああ、"アレ"かあ……でもギーガ達まだマスターしたとはいえないよ?通じるかな?)」


ゴレムス「ゴー(サンチョさんが言っていた。『世の中真心をこめれば大丈夫』ってな)」


ギーガ「ギガー(それって確か料理の心得だった筈じゃあ……)」


ゴレムス「ゴー(細かい事は気にするな。さて、それじゃあ)」



>ゴレムスは ふくろから かぜのぼうしを とりだした。





ゴレムス「ゴー(飛ぶぞ。準備はいいか?)」


ギーガ「ギガー(ギーガはいつでもオッケーだよ)」


ゴレムス「ゴー(ちゃんと掴まっておけよ?よっと―――)」



>ゴレムスは かぜのぼうしを てんたかく ほうりなげた!



ゴレムス「ゴー(前々から思うんだがこれどういう原理なんだろうな)」


ギーガ「ギガー(ゴレムス。考えたら負け)」





そのまま二人の巨体は宙へ浮き続け、小さな点となって雲間に消えた。
―――彼らが目指すは壁の街。

人類がかつて、「ウォール・マリア」と呼んでいた場所。



―――時は850年。


ウォール・マリアの事件より5年。
物語はここから、再び―――





―――壁外:平原





調査兵団員A「―――ハアッ、―――ハアッ、―――ハアッ」


巨人「―――ガシュ、ガシュ……」


調査兵団員A「くそが……もう、腰まで……グッ!!」


巨人「―――ガシュ、ガシュ……」





調査兵団員A「嘗めやがって糞野郎……いいか。例えこの場で俺が食われて死んだとしても」

調査兵団員A「リヴァイ兵長が居る。……リヴァイ兵長が来ればテメエなんか数秒で……ガッ!?」


巨人「―――ガシュ、ガシュ……」


調査兵団員A「聞けよこの……ああ、駄目だ……目が霞んできやがった……」

調査兵団員A「ここで、終わりかよ……俺の人生」





―――シュンッ!!


調査兵団員A「―――!」



その時、Aの視界の片隅にこちらに飛来する何かの影が映った。



調査兵団員A「(リヴァイ、兵長―――!)」



彼は霞んだ視界の最中、影の正体をそう断じた。
そうするとどうか、巨人に噛み付かれ全身を蝕む激痛が和らぎ。勇気が湧いてくる。
自分はもう駄目だとしても、リヴァイ兵長が仇を取ってくれる。
ならば一瞬一秒でも抗って兵長の為の隙を作ってやる。





調査兵団員A「(兵長、今です!今の内にコイツのうなじを……!!)」


リヴァイ?「…………」バッサバッサ


調査兵団員A「(俺の事は気にしないで下さい兵長、だから早くコイツを―――!)」


リヴァイ?「…………」キョロキョロ


調査兵団員A「(何やってんです兵長、もう俺体力の限界です!これ以上我慢が聞きません早く―――)」


リヴァイ?「…………」ジ~ッ





調査兵団員A「(兵長!!暢気に見てないで早く……あれ?)」


調査兵団員A「(兵長?いつの間にそんな背が高くなったんです?)」


リヴァイ?「…………?」





調査兵団員A「(ハハハ嫌だな兵長。幾ら他の団員から背について揶揄された事があるにしたって巨人程背を伸ばすだなんてあなたそんな)」

調査兵団員A「(兵長?何ですかその金色の皮膚は?イメチェンですか?イメチェンなんですか?任務において何か迷彩効果でもあるんですか?)」

調査兵団員A「(って、いうか凄いですね兵長。その爪とか牙とか鱗とか。どこから調達して来たんです?新兵器ですか?確かにそれならば巨人どもは一溜りもありませんね)」


リヴァイ?「……グルル」


調査兵団員A「(おっとすいません兵長。背の事は触れておりませんすいません、ですからその肉食獣めいた唸り声で威嚇するのは止めて下さい)」

調査兵団員A「(あとその後ろの翼どうしたんですか?立体機動装置は置いて来てしまったんですか?でもそれなら上空からこいつらを、こいつらを、つらを―――)」





リヴァイ?「―――グォォン(`・ω・´)」


調査兵団員A「―――ッッッって、テメエ誰だあああああああああああああああああ!?!?!?兵長じゃねえええええええええええ!!??」


リヴァイ?「―――ビクウッ!:(;゙゚'ω゚'): 」


調査兵団員A「トカゲ!?トカゲか!?でっけえ爬虫類がこんな所で何を―――」


巨人「―――ガッシュ!ガシュッ!ガシュッ!」


調査兵団員A「痛ええええええええええ!!しまったあああああああ!!気を抜いたら食い込んで、ギャアアアアアアア!!」





でっかいトカゲ「―――?( ゜Д゜)」


調査兵団員A「呆然としてんじゃねええええ!!いで、いでええええええ!!やめろおおおおお!!」


巨人「―――ガシュッ、ガシュッ、ガシュッ!」


でっかいトカゲ「…………、(ナンダカヨクワカラナイケド)」

でっかいトカゲ「グォン!(モウヤメルンダ、イタガッテルジャナイカ!)(`・ω・´)」


―――ギギギギギギギギ……!





巨人「―――!―――!!!」ギリギリ…!!


調査兵団員A「馬鹿野郎おおおおおおおお!!無理矢理引き剥がすんじゃねえええええええ!!食い込む、食い込んでるうううううう!!」


でっかいトカゲ「グォン!(ボクノトッテオキノ"魔物のエサ"アゲルカラ、ハナシナサイ)(`・ω・´)」


巨人「―――!!―――!!!」ゴリゴリ…!


調査兵団員A「あがががががががががががががががgっry」


でっかいトカゲ「グォン!(ア。ボク、"グレイトドラゴン"ノ"シーザー"ッテイイマス、オニイサン(*´ω`*)」


調査兵団員A「知るかああああああああああ!!殺せえええええ!!いっそ殺してくれえええええええ!!!!」





ペトラ「………………、」


リヴァイ「………………、」


ペトラ「…………あの、兵長?」


リヴァイ「……何だ?」


ペトラ「あれって―――」


リヴァイ「知らん」


ペトラ「でも―――」


リヴァイ「知らん」


ペトラ「………………」


リヴァイ「………………」





―――ウォール・ローゼ居住区:放牧地帯。



お爺さん「―――よしよし。今日の餌やりはこんなもんかね」


牛A「モー」モシャモシャ
牛B「モー」モシャモシャ
牛C「モー」モシャモシャ





お爺さん「ウォール・マリアから追加の家畜が運搬されると聞かされた時は餌が足りなくなるんじゃないかと思っておったが、杞憂じゃったのう……」

お爺さん「お前達が無事育ってくれさえすれば、今年も問題なく肉にありつけるじゃろうて」

お爺さん「のう、お前もそう思うじゃろ?」

お爺さん「―――アクべえや」









アクデン「―――ウッシッシッシ(そうですねぇ、お爺さん)」モシャモシャ





お爺さん「……しかしアクべえ。お前は相変わらず良く食うのう」


アクデン「ウッシッシッシ(何と言うか、血が騒ぐモノで……主に牛の)」


お爺さん「まあその分牧場を手伝ってくれる分こちらは大助かりなんじゃがな」

お爺さん「(それにしても二本足で歩く牛がこの世におるなんての。長生きはするもんじゃて)」シミジミ


アクデン「ウッシッシッシ(さて、今日も一日頑張りましょう!……はて、そういえばワタクシ何か忘れているような……?)」



物語は―――再び、始まろうとしていた。


役者は揃った。(真顔)

ウォールマリア編エピローグと850年編プロローグはここまでです。
同時に入れてしまったんですがどう見ても詰め込みすぎですねすいません。

時系列も色々バランバランです。

ああ、次は「トロスト区防衛戦」だ…。

DQPTメンバーはこんなもんで。(酷いガチパもあったもんだ)

本当はもっと後の合流にしたかったんですが、そこまでダラダラするわけにもいかなかったので……。

後で各キャラクターの本編との差異をちょこっと記載して終わりに致します。

それではこれにて。

まずは進撃キャラクターから(名有りのみ)


「エレン・イェーガー」
(人間側の)主人公。一応。ヒロインではない、筈。
本編と違って母・カルラと死に別れしていないので巨人に対する憎しみ全となってはいない。(怒りはある)
更に自身の夢に対する姿勢も変わらず。

「ミカサ・アッカーマン」
ヒロイン。一応。
本編と主義主張行動、何も変わらず。(エレンが中心)
無論エレンが"あの巨人"(ギーガ)を探しに行くなら付いていくまで。

「アルミン・アルトレルト」
ヒロ……エレンの友人。
ゴレムスの戦いとギーガの行動を間近で見た数少ない人間。
……最も途中失神したが。

「カルラ・イェーガー」
エレンの母。ギーガのおかげで見事死亡フラグをへし折って存命。
ウォール・ローゼの新住居にてエレン等子供達の帰りを待つ。

「グリシャ・イェーガー」
エレンの父。こちらもカルラ存命の為行方不明とならずにウォール・ローゼの医者として日夜働いている。
「地下室」や「注射」の事については次回。

ドラクエメンバーは次回が終ってからで。

それでは、今度こそ本当におやすみなさい。
お目汚し失礼しました。

今日の分若干出来たんで投下します。
でも防衛戦まで行きません。前夜って感じで。すんまっせーん。

あ、後DQメンバー一応この4匹だけなんすよ……。
他モンスファンの皆さんすいません、後で理由説明しますんで。
ギーガとゴレムスの回想とかには名前だけ出たりするんで許して下さい!何でもしますから!

「トロスト区防衛戦



『―――エレン。お前がどうしても調査兵団に行くというのなら、私もカルラも止める言葉はもう無い』

『だが、その為には、お前に"ある二つの事"を選択して貰わなければならない……』

『一つは、ウォール・マリアに放置している昔の家の地下室』

『そしてこれがもう一つ目』



そう言って父、グリシャ・イェーガーが取り出したモノは、普段患者の治療に使う投薬用の小さな……注射器。




グリシャ『お前はコレを選んでも構わないし、選ばなくても良い』

グリシャ『―――さあ、エレン。もしお前が選ぶというのであれば…』







グリシャ『腕を―――出しなさい』







エレン『…………、』








あの時。
自分は一体、何と言ったんだっけか?





―――ン……。

―――エ……ン……。

―――エレン。



エレン「―――……あん?」


ミカサ「……どうしたの、ボーッとして?」


エレン「……ここ、は……?」




意識が返ってくると同時に、ガヤガヤとした喧騒も耳に蘇った。
テーブルには何時もの粗末な食事ではなく、多少豪華な肉入りのスープなどが置かれ、手には並々と注がれたエールの杯。
周囲に居る人間は、それを美味そうに飲み干しながら思い思いの話に耽っていた。


エレン「ああ、そうだ。俺、今日で―――」







教官『―――本日はこれにて、第104期訓練兵団解散式を終える……!』









エレン「(訓練兵を卒業して、ここでパーティーやってたんだっけか……)」

エレン「(それにしても、どうして)」



グリシャ『エレン。腕を―――』



エレン「(あんな、昔の夢なんて見たんだ……夢?昔……あれ?昔、俺、何かあったんだっけか……?)」



"また"だ。
頻繁という訳では無いが、昔の事に思いを馳せると、ある一部分だけがぽっかりと喪失するようなこの感覚。
正体を掴もうとしても頭の奥が霧がかったようにボーっとしてしまい……。





ミカサ「―――エレン」ユサユサ


エレン「ハッ!!―――あ、ああ。何だよミカサ」


ミカサ「また、ボーッとしてた」


エレン「…………」


ミカサ「例の発作?」


エレン「教官には言うなよ?……前線から外されちまうかもしれねえからな」


ミカサ「……しないわ。そんなこと」


エレン「どうだか……」グイッ



ミカサ「…………」ジ~ッ


エレン「……なんだよ?」


ミカサ「また、泣き出さないかと思って」


エレン「バッ―――!」



"―――カ、言ってんじゃねえ!"
何年前の話だ。そこまで喉に出掛かって。







―――やっとこのクッソ息苦しい最前線の街から脱出出来るぜハッハー!
―――内地での安全で快適な任務が俺達を待ってるぜ!!






エレン「……あん?」



ぼーっとしてた頭が一気に覚醒する程のデカい声。
能天気極まりない癇に障る文。



???「……お、おいジャン!恥を知れよ!少なくとも、俺は―――」

ジャン「あー、悪かったなマルコ。お前は確か優等生だったな?」





ジャン「―――だが!お前等はどうだね!?」





エールを片手に揚々と声を上げる切れ目の男……「ジャン・キルシュタイン」は嗜めようとする同期のマルコの言葉を意に介せず続ける。
食堂に居る104期生全員に語りかけるように、歌でも諳んじるかのように。






ジャン「"人類の自由と平和の為"と言えば聞こえは良いが、俺達一兵卒が内地勤務なんて機会はそうそう無いぜ?」

ジャン「……それともそんな毒にも薬にもならない美名だけの為に最前線に残るかね?んん?」






一同「「「…………、」」」




一瞬食堂全体を静寂が包む。
本来ならば彼の言葉は責められて然るべき類の筈だ。
その筈なのに。



同期A「……そ、そりゃあ……」

同期B「俺達だって好きでこんな僻地に居るワケじゃあ……ないしな」

同期C「…………」



細々とした声だが、ジャンの言葉に賛同するものもちらほら居た。
それもまた、人間として正しい側面の一つだ。
だが。




エレン「―――おい。さっきから黙って聞いてりゃあ好き勝手言ってるけどよ」



それに対して異を唱える者が居た。他でもない、エレンだ。





エレン「内地が安全とかどうとか言ってたがな……この街(ウォール・ローゼ)だって5年前はその安全な内地だったんだぜ?」

エレン「俺が保障してやるよ、ジャン……」ギロリ

エレン「そんなとこに行かなくったって、お前の脳内は"快適"そのものだよ……!」


エレンはジャンの言葉を真っ向から叩き切る。
……何がおかしいのか、背後の方で何やら吐き出す音とアルミンの悲鳴が聞こえてきたが、無視した。
静止しようとしたミカサも同様だ。





ジャン「……俺が頭のメデタイ奴と、そう言いたいのかエレン?」






ジャン「―――そりゃ違うぜ。俺は誰より"現実"って奴を見てるだけだ」





だがジャンは自身を否定するエレンに対し、憤るでもなく、それどころか何処か達観したような表情になり。





ジャン「その5年前を例にして考えてみろよ」グイッ

ジャン「これまで人類は巨人に対して何ら有効な対抗手段を打ち立てられていないんだぜ?」

ジャン「巨人一体を討伐するのに必要な人的被害数。お前なら知らんわけは無いだろう?」

ジャン「"平均30人"。それが、俺達(人類)が巨人を倒すのに必要な人数だ」

ジャン「……にも関わらずウォール・マリアの一件は、"人類側の勝利""人的被害はほぼゼロ"……」





エレン「…………、」




ジャン「別に俺は上が嘘を言ってるとか正面きって言うつもりはねえよ。ただな……」

ジャン「……だったら何故中央は"ウォール・マリアの放棄"なんて選択をしたんだ?」

ジャン「5年たった今でも住民の帰参が行えないのは、どうしてだ?」

ジャン「その気になれば、兵団全軍で偵察でもなんでもすりゃいいってのによ」





エレン「…………、」





ジャン「……解ってるだろ。本当はお前だって、」

ジャン「……茶番なんだよ、こんなのはよ」

ジャン「前の戦いで俺達が得たモノなんて何も無い。唯失っただけだ。……そしてこれからもそれが戻る事は無い」

ジャン「その事実を隠して悪戯に命を消耗する真似なんて、俺には出来んね」



一同「「「「「………………」」」」


皆、何も言わなかった。
ただ黙って俯き、ジャンの言葉を無言で肯定していた。



ジャン「……見ろよ。お前がヘンに突っかかるから、まるで御通夜になっちまったじゃねえか」



ジャン自身も、ここまで場を白けさせるつもりは無かったからか、バツが悪そうに目をそらした。



エレン「―――俺には、」

ジャン「あん?」





エレン「―――俺には、夢がある」



だが、それでもエレンは、エレンだけ俯かず真っ直ぐ前を向きながら、食堂全体に聞こえるように宣言する。





エレン「俺は、巨人を全部駆逐して……この狭い壁を出て、世界を探検する」

エレン「それが、俺の夢だ」





幼い頃からずっと考えていた。
壁の無効に広がる世界と、自分の今居る世界の狭さを。




ジャン「―――はあ……?」


"巨人を駆逐する"
そんな単語は英雄を夢見た幼児期に捨てておく類のモノだとばかり考えていた。
目の前の男はそんな簡単な事すら解らん馬鹿かと、今度はジャンがエレンを否定する側に回る。



ジャン「こりゃ驚いた。……メデタイ頭なのはお前の方じゃねえか。―――見ろよ!」



一同「「「………………、」」」シーン…。




ジャン「―――誰もお前に賛同なんかしてねえだろうが!」


エレン「…………、」



そんな事は、そんな事は解りきっていた。
だがここで黙ってジャンの話を聞く事は、エレンにとって何よりも我慢が出来ない事だった。





―――コイツの言っている事は、ある側面では正しい事だろう。





エレン自身だって、それは理解出来る。だが。





―――それを認めてしまったら、人間は、本当に終る。





それがエレンの根っことも言える、信念だった。





ジャン「だんまりか?なあおいエレン君よ?巨人を駆逐するだなんて大層勇ましい言葉を吐いてくれたが、具体的な作戦でもあんのか?」

ジャン「あるなら即聞かせて貰いたいねえ。そうすればお前はあっという間に兵団の総司令官様だよ」

ジャン「それとも、何か?お前―――」



無言のエレンに、反論出来なくなったかと考えたジャンは、これでもかと捲くし立てた。
だが、再びテンションが上がってしまった彼はつい。





―――この場に居る誰も彼にも、ある種タブーめいた"ある単語"を言い放ってしまう。











ジャン「―――"ウォール・マリアの奇跡"なんて戯言を真に受けてる類じゃあるまいよな―――!?」








エレン「―――!!」

ミカサ「―――!!」

アルミン「―――!!」







エレン、ミカサ、アルミンの心臓が、ほぼ同時にドクリと跳ね上がる。





―――ザワ……!!ザワザワ……!!



"ウォール・マリアの奇跡"
その言葉を聞いた全員が、ハッとしたように囁きあう。
それは一つとなって食堂全体に波及し、重なり合った声で建物が揺れるほどだった。



ジャン「―――やべっ……!!」



流石のジャンもしまったと言った表情で口を押さえるが、広がってしまったざわつきは止め様が無かった。




それは5年前の事、ウォール・マリアの事件が収束したと同時に現れた、ある一つの噂話に端を発する。



―――人間に味方をする2匹の巨人が、天より現れ、壁を塞ぎその場を後にした。



という、この世界の人間からしてみれば到底信じられない御伽噺の類である。
意図はどうであれ巨人を信奉するような内容からか、これを流布する者及び信じようとする者は、壁内の宗教家、或いは中央王都からは逆賊の扱いを受けた。
その刑罰も苛烈極まりない物で良くて終身刑とも言われる程だった。

しかし、人の口に戸は立てられないとは良く言ったモノで。
5年経った今を以ってして、この噂は絶えることなく語り継がれている。





ジャン「こんの……テメエの所為で言わなくても良い事を……!!責任取りやがれエレン!!」



もしこれを言った事をチクられれば内地行き取り消しだって有り得る話だ。
ほぼ八つ当たりも良い所だが、ジャンは行き場の無い怒りをエレンにぶつけるべく胸倉を掴み、引き寄せようとして。



エレン「……信じてると言うか、な」


ジャン「ああ!?」





すう。と一呼吸してから。



エレン「―――助けて貰った。実際、母親の命をな」


そう発言した。


目を閉じれば今でも思い出す。
ハンネスさんに連れられてその場を離れる時に見た青銅色の肌と大きな大きな、丸い瞳。
それが嬉しそうに笑っていたあの表情を。





ジャン「…………………………は?」



余りの言葉に、ジャンは胸倉を掴んだ耐性のまま硬直してしまう。
ざわついていた同期達もそうだ。
それ程にエレンの言った一言は衝撃と共に浸透した。



エレン「(ああ、言っちまった……)」



4年前初めて同期と顔合わせをした時だって言わないようにしていたのに。
ちらりと顔を向けると、ミカサとアルミンが顔面を蒼白にしながらこちらを見ていた。





エレン「(んな表情されたってしょうがねえだろうが)」



夢を話した。
今まで他の誰にも離した事の無かった胸中を。
その夢の話を途中で終らすなんて出来なかった。



エレン「そいつらを探す。ってのも先刻話した夢に含まれるんだけどよ……」



もう止まらなかった。
眼前のジャンは「こいつ何言ってんだ?」といった顔のままポカンしとていた。
周りも同じように、エレンという男から目を離せなくなっていた。





エレン「以上。……質問は?」


ジャン「……………………、」


一同「「「………………」」」


エレン「無いみてえだな。……だったらよ―――!!」



―――ドボオッ!!





ジャン「……がっ!!??」


エレン「何時までも馬鹿みてえに掴んでるその手をどけろよ?クソ野郎が!!」



至近距離から放たれたエレンの拳がジャンのみぞおちに綺麗に直撃した。
ほぼ力を抜いていたジャンは突然の衝撃に苦悶の表情となり手を離した。



同期A「おお!?」

同期B「また始まったぜ!!」


同期C「いいぞー!二人ともー!!」



それを皮切りに、同期達が二人を囃し立てるように立ち上がった。
エレンとジャン。水と油である二人の争いはある種のセレモニーとして最早104期生の間でも名物と化していた。

が、その殴り合いも。



ミカサ「―――いい加減にしなさい、エレン」



ミカサの水入りもあってすぐに沈静化した。





エレン「おい、コラ!離せよミカサ!!」



興奮冷めやらぬエレンは何とかしてミカサの拘束から逃れようともがくがビクともしない。
ジャンの方も同期のフランツとハンナが説得に回っており、両者ドローという裁定だ。



???「……さしものエレン(対人格闘1位)もミカサにゃ勝てないか」


アルミン「……二人ともすぐああなるんだから……」


???「だが流石にこれでお開きになるだろ。でよ、アルミン。ホッとしてるトコ悪いんだが、パンのおかわり要らないか?」


アルミン「……またぁ?ライナー、パンが駄目なんて変わってるね」


ライナー「全部じゃないんだが、このライ麦パン固くてなあ……アゴに来るんだよ」


アルミン「怪我でもしてるの?」


ライナー「……ちょっと、昔の後遺症でな」ナデナデ


アルミン「?……ふうん」





―――ウォール・マリア、壁内。





ゴレムス「ゴー(へーぶしんっっ!!」


ギーガ「ギガー(ゴレムス、やっぱり風邪なんじゃないの?)」


ゴレムス「ゴー(岩石族なのに風邪ってなあ……)」グシュグシュ


ギーガ「ギガー(誰かが噂してるとか?)」


ゴレムス「ゴー(……知ってる人だといいんだけどな。それよりも……)」


ギーガ「ギガー(うん……)」




ゴレムス「ゴー(人っ子一人―――)」


ギーガ「ギガー(―――居ないね)」



―――ガラ~ン。



ゴレムス「ゴー(確かに人が住んでいた記憶があるんだけどなあ?)」


ギーガ「ギガー(ここ、ギーガが塞いだ穴あるし、確かに間違いないよ)」


ゴレムス「ゴー(何処かに引っ越したのかね?)」


ギーガ「ギガー(もっと奥の方行ってみようか?)」


ゴレムス「ゴー(そうするか……が、その前に!)」


ギーガ「ギガー(???)」





―――……。



>ゴレムスは タンスのなかを しらべた!
>しかし カラッポだった……。

>ギーガはツボのなかを しらべた!
>しかし カラッポry





ゴレムス「ゴー(……昔を思い出すなあ)」ゴソゴソ


ギーガ「ギガー(いいのかなあ、こんな泥棒みたいな真似して……)」ゴソゴソ




ゴレムス「ゴー(何言ってんだ、ご主人様だって積極的にやりなさいって言ってただろ)」


ギーガ「ギガー(そういえば……)」





>主人公は タンスのなかを しらべた!
>なんと ふくびきけんを みつけた!


ピロリン♪




5主人公『ようし皆、今日こそゴールドパス※を当てるぞー!!』


※……ゴールドパス:買い物する時、2割引で商品を買える。ふくびきじょでしか手に入らない。



ゴレムス「ゴー(……だったろ?だから問題ナッシングだ)」ゴソゴソ


ギーガ「ギガー(そうだったー。問題ないねー)」ゴソゴソ



※大有りです。よいこは決してマネしないで下さい、いやマジで。





―――ウォール・ローゼ、兵員食堂。





殴り合いを強制的に中断させたミカサは、エレンを背負ったままスタスタと出口に向かって歩き出した。
周りから嘲笑したり口笛を吹いたりする音が聞こえるが、我関せずといった風に歩を進める。
無論、背のエレンの抗議も基本無視で。



ジャン「―――おい、エレン!そうやってミカサにおんぶに抱っこでいい身分だな!!」

ジャン「そうやってテメエはミカサも巻き込んで行くんだろうよ!!」


その背に向けて、ジャンが負け惜しみ染みた中傷を言い放ち、担がれたエレンが尚も反論しようとした時。
ミカサがくるりと振り向いた。





ミカサ「―――ジャン」


ジャン「……な、何だよミカサ。悪ぃけど俺は別に間違った事は……」



その、ビックリするほど優雅な仕草についドキマギしながら答えるジャンだったが。



ミカサ「さっき、エレンが言った事だげど。―――あれ、本当の事よ」



三度、喧騒がピタリと止んだ。

ミカサ「私も、その場に居たもの」


ジャン「………………!!」


同期D「―――お、おい、ミカ……!!」



ざわめきを置き去りにして、ミカサはバタリと食堂のドアを閉めた。





エレン「……おい」


ミカサ「……何?」


エレン「いい加減おろ―――」



"せ!"
と言う前にエレンの身体が宙を舞い、そのまま屋根を支える支柱に激突した。



エレン「いってー……」


ミカサ「頭、冷えた?」


エレン「最初っから俺は冷静だ!!……お前こそどういうつもりだ!!」


ミカサ「何が?」


エレン「"何が?"って、お前な……!」



ミカサ「…………」


エレン「…………」グヌヌ


エレン「……………………確かに、冷静じゃなかった所もあったさ」


ミカサ「……素直ね、よろしい」


エレン「(ムッ)……だけどよ、お前までその、あれだ……俺に付き合うことなんて無かったじゃあねえかよ」



同期の前であれだけ大々的に宣言してしまった。
自分が禁忌とされている噂を信じていることを。
もし万が一これが教官に告げ口されれば……。





ミカサ「言わなきゃ良かったって後悔してる?」


エレン「まさか!!!」



嘘偽り無い気持ちだった。
嘘をついてまで他人に自分の夢を聞いて欲しくなんてなかった。



ミカサ「じゃあいいじゃない。……もしもの時は、」



ミカサは口元にマフラーを巻きつつ、エレンの隣に座った。



ミカサ「逃げればいい。壁の外でもどこでも。私はそれに着いて行くだけよ」


エレン「……お前、簡単に言ってのけるけどなあ。ってか、いつまで続けるつもりだよそれ」



二言目には"エレンに着いて行く"だの"エレンと一緒に行く"だの…。
小さい頃からの腐れ縁と諦めているがここまで来ると度を越している。


ミカサ「……人生が、続くまで」


エレン「―――人生、ね……」


答えになっているような、いないような。
何気なく呟いた"人生"という二文字。

……果たして自分は、これからの人生をどう生きていくのだろうか。

満足の行く生か、それとも無念の死か。



それを答えてくれる人間は何処にも居ない。

……いや、或いは。

それを知る為に自分は、"あの巨人"を求めているのだろうか?




―――結局、それからエレンが上層部に呼び出しを受ける事はなく、夜は更けて行き。

朝を、迎えた。

本日はここまで。すいませんやっぱりクドくて。
後ただの1巻の焼き直しになっちゃいました。
でもウォールマリアの奇跡の下りをどうしても入れたかったのです……。


後窃盗ダメ絶対。許されるのはドラクエとFFと大貝獣物語と……結構あるな。

次はいよいよ開戦。に、なるといいっすねえ……。


今日初めて読んだけど俺得なSSだぜ!
灼熱の炎と聞いてスラりんを思い浮かべたのが俺だけじゃなくてよかったわw
つーか調査兵団員Aはシーザーの言葉分かるのかよw

ピエールかゲレゲレには出て欲しかったけどなあ
あいつらサイズ的に厳しいか

>>326
彼らは 人間よりも優れた身体能力や
強力な爪・牙、剣技・魔法を持っている それが弱いとでも?

ドーモ、ミナ=サン。>>1です。

……ちょっと筆安めに番外編書いたので投下します。

そして、

>>325
あれはちょっとしたニュアンスというか「何か言ってるのは解るけどそれどころじゃない」的な緊急時のノリツッコミというか。

>>326>>327
……ソウダネ、ニンゲンサイズがヨワイワケナイヨネ?(某

故にこそこの番外編。どうぞ。

―――何とも、間の抜けた話だ。

霞のように消えた仲間の探索を行っていた。

ただ、それだけの筈であった。

言い訳をするならば、その日が非常に濃い霧であった為、センサーの類を通常モードにしていなかった。

……しかし、この私が足を取られて穴に落ちるなどといった愚を行ってしまった事、主人が知れば如何に思うであろう。




最悪は、続けて起こった。

落下のショックで運動部分に重篤なダメージを負ってしまったのか、落ちた先では指一本動かす事も出来なかった。

助けを呼ぼうにも周辺に仲間の気配は無く……せめて、予備動力のスイッチを入れられれば。

そんな考えが電子頭脳に過ぎった所で何が出来る訳でもなく。

不幸中の幸いは、前述の通り思考回路は無事だった事。

現状を打破するべく、打開策を練りだす。

……が、やはり運動部位が使えなければどうしようもないという結論に至る。






人間の言葉に直すならば、"八方手塞がり"と言った所か。

……私の手足は合計6本だが、それは今論ずるべき所では無いか。


そんな、らしくもない事まで思考し始めていた時だった。



『―――おい、ちょっとコレ見てみろよ……!』

『はん?どうせまたガラクタでも……!?』

『こりゃ一体何だ!?人形……にしちゃ聊か物々し過ぎだぜ?』

『"工場"の奴ら、こんなもんまで作ってやがるのか……?』





私の身体をたいまつらしき灯火が明るく照らし出し、それに伴い出現する人、人、人……。

街からそう遠くは無い場所だったのだろうか。それを問い質したくとも、今の私には不可能なのだが。

……いや、そもそも。



『硬えな。一体何で出来てやがるんだ?』コンコン

『背中に背負ってるのは剣と……弓か?こんなもん人形に持たせてどうしようってんだ?』

『―――痛ッ!お、おいこれ真剣だぜ!?』

『おい大丈夫かよ?……それにしても、のっぺらぼうで気味の悪ぃ人形だよなあ……』ジロジロ





人間達は思い思いに私の身体を探る。が、手触りを確かめたり私の装備品に興味を示すだけだったりと、実に単純極まりない探索のみ。
……妙だった。

如何に外界の人間とはいえ、私のボディを見て無警戒に近寄ってくるなど、凡そ考えられない事だ。



『おい!いい事考えたんだけどよ!!……この人形、"アイツ"と一緒に売りに出さねえか!?』

『……ああ、あの"呪い子"の事か?またぞろ何でだ?』

『だってよ……コイツのツラ、のっぺらだが中心が赤く輝いてよ……まるで暗闇に輝く"奴等の瞳"みてえじゃねえか?』

『なぁるほど、適当に異名でもでっちあげで抱き合わせた上で二倍の料金をふんだくるって腹か?』

『そりゃあいいな!何てったって元手はゴミ置き場から拾ってきた人形1体だけだしなあ!』

『"忌子"に引っ付く"呪いの人形"ってか?よくそこまで悪知恵が回るもんだぜまったく!』ゲラゲラ





何がそこまでおかしいのか、私を取り囲んだ人間達は下卑た笑い声を隠しもせずに悪巧みを行う。

この手が動こうものなら、真っ先に剣を振るっていた所だったが、それはやはり叶わぬ行為で。





そうして動かない身体のまま、私は人間達によって引きずり出された。


その中の一人が言っていたように、私を"売りに出す"べく連れて来られたのは小さな小さな、小屋の中。

薄暗闇の中で、ついに始まった売買の掛け声。

飛び交う怒号と金の単位、人間の欲望渦巻くその空間で、遂に私の番……いや。








"私達"の番が来た。





司会「―――さて!お次はいよいよメインディッシュのお披露目となります!!」

司会「人類史770年代に起こった惨劇!シンガシナ区で起こった地獄絵図の最中、何と巨人の胎内から生まれ出た赤子!!」






司会「―――その名も!!"キュクロ"!!」





次の瞬間小屋を振るわせたのは、特別な品を買う人間のソレではない。

呪い、怨念、恐怖、怒り……人間の負の感情のありとあらゆるモノを凝縮させた感情を口々に汚くぶちまけていた。

それも、



キュクロ「………………」



同じ、人間に対して。





司会「更にぃ!そのキュクロと共に出品されますは、何と壁外で発掘された古代の人形!!」

司会「真っ黒の顔の中心に輝くは赤い宝石のような怪しい光!4本の足と背負われた剣と弓!!」

司会「触れるもの全てを切り裂かんばかりの禍々しさを放つ~」



だが、周辺の人間は司会のうさんくさい解説など聞いては居なかった。

尚も、"キュクロ"と呼ばれた人間に対して呪詛を吐く事に終始する。


―――[ピーーー]!!
―――化け物!!
―――お前の所為で皆死んだ!!


爛々と輝かせた瞳、歪んだ口とそこから吐かれる汚い言葉。

不正とはいえ物を売買する会場の空気では到底無い。

……違和感を感じる事はそれだけではなかった。



キュクロ「…………」



この"キュクロ"という人間は。

どうして、そんなにも、自分に中傷を向ける人間達の事を無関心そうに見ているのだろうか?

いや、或いは……"ソレ自体"を理解できて居ないのか?

どちらにしても、動けぬ身の私ではどうする事も出来はしない。

ただ思考を繰り広げるだけの、文字通りの人形(デク)としてのみ、この場に存在しているのだから。

……しかし。



―――似ている。



ボンヤリと、らしくもなく私は考えた。

彼が、誰に似ているというのか。

何も理解出来ていないその頭で。

心無い人間による産物と思しき無数の傷跡の残るその体で。

尚も力強く輝くその"瞳"を見たからだろうか。




ああ、そういえば、いつだったか―――。



旅を続ける中でのほんのひと時の一幕。

私の主人が、その昔ひょんな事からどん底に落ちて、尚親友と共に生きる事を諦めなかった事を聞かされた。








その時の主人の顔と、眼前の少年の顔が何処か―――似ていたのだ。







結局、それから私とキュクロは、会場に来ていた"ダリオ"という嫌味な男に買われて行った。





"ウォール・シーナ"という、私のメモリーバンクに該当しない街に住んでいるその男は、一人息子への歪な玩具として、私とキュクロを与えた。

"シャビィ"と名乗っていたそいつは、父親であるダリオに輪をかけて……私が言うのもアレだが、"嫌な奴"であった。

当初は物珍しさで私を殴ったり蹴飛ばしたり、或いは解体しようとしていたが、全く反応を見せない(見せたくても見せられないのだが)のに飽きたのか、今度はその矛先をキュクロに向けた。




……見るも聞くも耐えない選民思想と歪んだコンプレックスの掃き溜め。

しかし、それでも尚キュクロの瞳は力強く輝いていた。

彼は言葉をロクに喋れない為、彼をそこまで奮い立たせている原動力が何であるのかうかがい知れない。

が、私は己でも知らない内に、この"呪われた子"に対して強く興味を抱いていた。




―――地獄のような日々だったが、その中にあって、か細い蜘蛛の糸のような……そんな出会いもあった。




シャビィの妹にしてダリオの娘、名を"シャルル"と言った。



……最初の時こそ、ぶっそうな出会いであった。



だが、二人は気が合ったのか直ぐに交流を深めて行った。

シャルルのおかげでキュクロは"言葉"を、"知識"を、そして"常識"を身に付けて行く事となった。

そんな二人の会話を傍らで聞く。そんな日々。




それを聞きながら私は、自分の身に降りかかった出来事が少々以上に厄介な代物である事を知った。





―――"壁"に覆われた街と人類を脅威に陥れている"巨人"という怪物。




魔物の魔の字もありはしない。
一体私は何処へ流れ着いてしまったというのか。
ミイラ取りがミイラになるといういにしえの言葉があったが正にその表現がピッタリだ。


動けぬ我が身をこれ程じれったく思った事は無いと、ジリジリと焦がれるような日々を更に積み重ねて行く。



そんな、ある日の事。


俄かにダリオ亭が騒がしくなり、私とキュクロが居る部屋に突然の闖入者が現れた。

……全身をローブで覆った奇怪な姿をした人間は、どうやらキュクロを求めていたようであった。

目元は見えないが、露出した口元はやはり奇妙な形に歪み、その口内からはしきりに"巨人様""巨人様"とキュクロではないこの場に居ない何者かを称える声を漏らしていた。


キュクロは黒服を殴り倒し、服を奪い取って部屋を飛び出していった。



キュクロ「―――シャルル!!」



どうやらシャルルの身を案じての事だろうが、無謀に過ぎる。







―――せめて、この身体が……。




そんな風に考えた、その矢先の事。




―――ピカッ!!!!



外は嵐。
雷もしきりに鳴り響き、だからこそ容易く進入されたのだろうが、兎に角その雷の内の一本がダリオ邸の近くに落雷し……。



―――補助動力・チェック。
―――メインシステム・通常モード……起動します!



誰も居なくなった地下室の底で、赤い閃光が辺りを照らした。




シャビィ「―――意外だな?……いやそれともやはり、と言った方が正しいか?ん?」


キュクロ「……………………、」


シャルル「…………、」ブルブル



ダリオ邸の一室に、三人は居た。
シャビィとシャルルの二人を襲っていた黒服はキュクロの手によって斃されたが……シャビィはそんなキュクロを見て何を思ったか、彼の顔面を切りつけたのだ。

突然の兄の凶行に恐怖し硬直してしまうシャルル。
キュクロは間一髪で致命傷を免れたが、右目付近はパックリと切り裂かれ夥しい出血が彼の顔半分を濡らしていた。





シャビィ「父の死体を見たか?……見ただろうな?」

シャビィ「無念だったかな?……無念だったろうな?」

シャビィ「さて、私は図らずともイノセンシオの家を継いでしまった。その私がまずやらなければならない事は、この騒動の責任者の処罰だ。そうだろう?」



シャビィはうろんな瞳で、血に塗れた剣を床に転がる黒服の死体へと向ける。





シャビィ「"巨人信奉者"の愚か者共は私の剣の錆に変えた。……後はこいつらを釣る事となった"餌"の処分をすれば全ては終わりだ、そう……」



そのまま、剣を苦痛で蹲るキュクロの方へと振り上げ。



シャビィ「貴様さえ―――」

シャビィ「貴様さえ―――居なければ……!!!」



断罪の刃とばかりに、それを勢い良く振り下ろした。





シャルル「―――!?兄さん、ダメ―――!!」



漸く硬直が解けたシャルルが静止するも、時既に遅く。
白刃はキュクロの首筋に向かって正確に突き進み。








刹那、鈍い金属音と共に中心部から真っ二つに折れた。





シャビィ「……へ?」



勢いづいた金属の破片は、シャビィの柔肌を掠めるように飛んでいくと背後の壁に突き刺さった。



シャビィ「なっ……なっ……!」



わなわなと震えならがも、頬から流れる血を放置して何事かと彼は顔を上げた。

それに呼応するかのように、シャルルも、蹲っていたキュクロも。







―――そして彼等は、見た。




窓から入り込む稲光に照らし出される青き鎧。
チキチキと細かな音と共に駆動するのは昆虫のような4本足。
そして、シャビィを見つめる鬼火のように輝く真っ赤な丸い瞳。



シャビィ「お、お、お、……」



シャビィには"コレ"に見覚えがあった。彼だけではない。
傍に居るキュクロも、シャルルにも。



この部屋に居る誰にも、目の前に鎮座する乱入者の事を知っていた。





シャビィ「お、お前……お前は……!」



"影"はキュクロを庇う様に突き出した手を握り締めると。



シャビィ「お前は、パパに買って貰った―――ガッ!?」



驚愕に顔を歪める彼の顔面に、それを突き入れた。
2、3度床を跳ね上がった後、ピクリとも動かなくなった彼を尻目に。





キュクロ「!?……ウワッ!」


シャルル「キャッ……!?」


"影"はキュクロとシャルルと抱かかえると、





―――飛ぶぞ、掴まってろ。




窓に向かって猛スピードで走り抜けた。

硝子の砕け散る音と同時に落雷が響き渡り。




そのまま"三人"の姿は夕闇の中に消えて行った。





キュクロ「……オ、オマエ……!!」



大風が顔を殴りつけながらも、キュクロは自分を抱かかえる影に問うた。



キュクロ「オレとイッショにウラレテキタ……!!」



影……キュクロと共に売られた"人形"は、



―――お前じゃない。



―――"ロビン"だ。



赤い瞳をキュクロとシャルルに向け、答えた。

ロビン「ガラクタと申したか」

シャビィ「せ、拙者はかような―――」パキィ

ロビン「口は災いの元」


キラーマシンを嘲うことなど不可能でry

……と、いうわけで如何でしたでしょうか?番外編700年代後半~800年代前半編となります。

続けません。こんなん書いてる暇あったら本編やれ?その通りですすんません。

ただ、どうしても等身大モンスで何かしたかったんどす。

え?巨人と戦って無い?……お、おぉん……。

でも多分勝ちますね、勿論ロビンが。理由としては巨人の歯の方が多分……。ロビン「ちと、カルシウム不足の歯だったようだな」


そして何故ロビンなのかっつーと、キュクロの元ネタのが"キュクロプス"(一つ目の巨人)だったからでして。

だったそれこそギーガだったんじゃね?とも思ったんですが、そうなってくっと出会いが逆に面倒になるんで、等身大かつ暫く身動きが取れない理由も無理なく入れられてキュクロと一緒に売られて戦闘力も高くオマケに一つ目。

というマシマシの要望に応えられるのがロビンしか居なかったもんで。

フリーズ状態でありながら色々景色が入ってくるのはDQ5のジージョのイベントのオマージュ入ってます多分。

……それではこれにて、本編はよやらんとなー。

>>1です。
すいません、本編書いてたつもりだったんですが……何でかロビン第2話が書きあがってしまってて……。
な、何を言ってるか(ry

もし需要とかそういうのあれば、今日の夜にでも投下しますです……(勿論、トロスト区防衛戦とも平行してやってます、一応……)

ただいま仕事から戻りました。それでは投下します。




―――カチャ、カチャ、カチャ……。



薄暗い室内で鳴り響く金属音。

ロビンは、手に持つ螺旋回しで己のパーツの具合を確かめていた。



ロビン「(―――……精々70%が良い所、か)」



調子を確かめるように掌を握ったり閉じたりしながら、断を下す。
自己修復機能が壊れていないのは幸いだった。
すぐに、とは行かないがこれならば戦闘が行える程にまで回復するにはそう時間は掛からないだろう。




ロビン「(……うん?)」


シャルル「………………、」ジ~ッ



傍のベッドに目をやれば、そこには物珍し気に自分を見つめるシャルル。



ロビン「……すまない、起こしてしまったか?」チキチキ


シャルル「はっ?え……う、ううん」フルフル



ロビンが声をかけると、驚きかけつつも慌てて首を横に振った。
が、矢張り興味が尽きぬような眼差しは相変わらずで。





ロビン「(……無理もない)」



今の今まで物言わぬ人形として過ごして来た。(不可抗力なのだが)
ロビンにとっての彼等は既知の人物でも、逆はそうでない。

人間で無いモノが突如動き出した上に人間の言葉を解し、話す。

普通ならば衛兵なりなんなりを呼び出されて大層面倒な事になっていた事だろう。(まあ、衛兵如き敵では無いが)
幸いにも、(と表現して良いのか曖昧な所だが)普通の事情が当て嵌まる様な事態では無い為それは免れている。

そう。


3者を取り巻く環境も。
彼等の精神状態も。
何もかもが唐突に失っては現れた。

その結果が今の状態であった。





ロビン「………………、」カチャカチャ



―――今、彼等が居る場所はダリオ邸が存在していた"ウォール・シーナ"ではなく、そこからもっと奥の地域……。
"ウォール・マリア"と呼称され、更にその南端に位置する区域、"シガンシナ"。
その居住区の宿屋を仮の拠点としていた。



何故、このような僻地に来たかと言うと……。





ロビン「………………」チラリ



キュクロ「―――ハア、―――ハア、―――ハア」



シャルルより一つ奥、窓際のベッドではキュクロが寝息を立てている。
顔半分は血の滲んだ包帯で覆われ、傷口が痛むのか、時折苦しそうな呻き声が漏れていた。



シャルル「痛むの、キュクロ?……待ってて、今包帯と濡れ布を取り替えるから―――」


ロビン「―――私がやろう」


シャルル「……えっ?」





シャルルを制止し、キュクロのベッドの傍まで移動すると、



―――シャキン!



ロビンは指先から針を出し。
そして中の液体を、キュクロの首筋に注入した



キュクロ「―――ハア、―――ハ、…………すぅ、……すぅ……」



するとどうか、苦しそうだったキュクロの表情がみるみる穏やかになり、健やかな寝息に変わった。





シャルル「凄い……!何をしたの?」


ロビン「やくそう※を精製した鎮痛剤を注射した。これで朝まで持つだろう」



※やくそう……道具屋で購入できる。体力を30程度回復させる。



シャルル「……ロビンって何でも出来るのね。キュクロの怪我も処置してくれて」


ロビン「―――処置、か……」


ここ(シガンシナ)に着いた時には、既にキュクロの右目は取り返しのつかない事態になっていた。
直ぐにでも医者の下へ駆け込むべきだったのだが、ソレを止めたのは他でも無い、キュクロだった。



キュクロ『シガン、シナへ―――!』


キュクロ『シガンシナ、へ……向かってクレ、ロビン……!』


キュクロ『あそこハ俺ノ―――俺ガ生まれタ―――!!』



そう請われた。
かなりの距離ではあったが嵐に乗じての進入は容易だった。
だがその代償に……。


ロビン「(私は医者では無い)」



古代の知識として医療に関わる呪文や薬品を精製する方法は記録されている。
だがそれがこの世界においても通用するモノかどうかまでのデータは存在しない。
そんな私に出来る事は精々用を成さなくなった眼球を取り出し傷口を熱閃で焼き閉じるぐらいのモノだった。

これがもし、ご主人様達か回復に長けた他の仲間であったなら、もっと上手くやれていたのであったのだろうか。



ロビン「…………、」



いかんな。
また無意味な思考を繰り広げている。

後悔も早々に、ロビンはシャルルを就寝するよう促すと、再び自身のメンテナンスに向かった。



―――カチャ、カチャ、カチャ……。



ロビン「(兎に角一刻も早く身体を本調子にしなければ)」






―――そして、朝を迎えた。


女将「―――ちょっと、御二階の方々!!悪いんだけど今日もお願いできないかしら!?」



時刻は昼時を回り、ロビン達が拠点としている宿は俄かに活気付き、食事をしたり或いは昼から飲んだくれている客で満席になる。
そんな中。





ロビン「―――イラッシャイマセ。チュウモンヲ、ドウゾ。ギギギ」チュイーンチュイーン




客A「うわっ!何だコイツ!?」


客B「お前この店初めてか?コイツはココの名物ウェイターだよ。何でもウォール・シーナの"工場"で造られた一級品のゼンマイ人形なんだと」


客C「喋りの方は荒が目立つが注文は正確だし動きも早いんでそこは信頼していいそうだぜ?」


客A「はー……。たまげたもんだねぇ、工場の人間もど偉いモン造ってんだな」





ロビン「(……んなワケ、無かろうが)」


宿の女将は素性の知れない若い男女(とプラスα)を格安で止める替わりにと、忙しい時間帯には労働力としてロビンとシャルルを駆り出していた。
……無論、ロビンの方は怪しまれるといけないので表向きは"高性能なゼンマイ人形"と言う設定で通して、喋りもそれに準じてワザとメカっぽさ演出していた。

正直屈辱極まりないが、これも出費を節約する為と、涙を呑んで(泣く機能は無いが)演技する。



ロビン「カシコマリマシタ。"Aせっと"ヲみっツ、デスネ。少々オマチクダサイ」チュイーンチュイーン



厨房に注文を伝えに行く傍ら。



シャルル「……!……!!」



シンクの方で多数の汚れた食器と格闘するシャルルの姿を見る。
箱入り娘とばかり思っていたが、中々どうして堂に入ってる。





ロビン「(これならば、監視をせずとも心配なさそうだな)」



寧ろ、心配と言えるのは二階に居る"残り一人"の方だ。
ロビンの記憶回路に、今朝の台詞がリピートされる。



キュクロ『―――自由にナッテモ、俺はマダ縛らレタままダ―――』



包帯を取り替える際、そんな事をポツリと呟いていた。





ロビン「…………、」



生れ落ちてから数十年。
自由であった事など唯の一つもなかったキュクロにとって、いきなり突きつけられた自由の二文字。
過去に対してのトラウマも伴い、戸惑いを覚えても無理もない事かもしれない。
だがそうであったとしても、彼の瞳からは力強い輝きは失われておらず、寧ろドンドンと大きくなっているように思えてならなかった。
いい傾向である、筈なのに。



ロビン「(……何故私の回路にざわつきを感じるのだろう)」



それは世間一般で言う"虫の知らせ"というべきモノであったのだが。
その知識を、私は持っていなかった。



―――ウォール・マリア、工場区域。



ロビン「(さて、と―――)」



書入れ時も終了し、時間が空いた私は二人を宿に残してウォール・マリアの人口が最も集中している場所に来ていた。
無論警備の数も住宅街に比べて格段に厳しくなっているが……私には意味を為さない。

胸にあるボタンの一つに、指を伸ばした。
カチリという乾いた音と共に、



―――ECM、起動。



すぅ、と己の身体が景色と一体化して行く。




警備兵A「―――ん?今何か音がしなかったか?」


警備兵B「何だって……何も居ないぞ、猫か何かだろう?」


ロビン「(…………)」



太古の昔に絶滅した特殊な植物、"きえさりそう※"の成分を解析した粉で全身をコーティングする。


※きえさりそう……ふりかけると一定時間透明になる。5には存在しない。道具として扱えるのは3。


その効果で透明となった私は悠々と警備の目をすり抜けてエリアに侵入する。
目的は情報の収集だ。人が多く集まれば得られるモノも多くなる。



……その中に、"私のようなモノ"の目撃情報でもあればしめたものだ。





ロビン「(とはいえ何処に目星をつけたモノか……)」



そう思考していた時だった。



―――フゥハハハーハァー!!いいぞベイベー!!



ロビン「…………?」



ある区画から上がった素っ頓狂な叫び声。


………………機械の身である私には、99・9%の解析率でその声を分析してしまう。

して、しまった。





ロビン「………………、」





馬鹿正直にも私は、己の解析結果を確かめるべく取り付けられた天窓からその区画を覗き見た。
すると。






エミリー「―――槌を振るう度に沸き起こるパワー!!震える筋肉!!」

エミリー「突き合う金属と金属!!迸る汗と涙とその他諸々の体液!!」

エミリー「本当この鍛冶屋ってのは天職だぜえええええええええ!!!!我が世の春が来たああああああああああああああ!!」ムキィィィンッ!!










ロビン「…………………………………………………………………………、」





―――バタン!



シャルル「……おかえりなさい、ロビ……ン?」


ロビン「………………………………、」


シャルル「あの、お友達の情報、何か解っ―――」


ロビン「―――!」ギュイン!


シャルル「…………っ!」ビクッ


ロビン「そんなモノは、ナイ」


シャルル「……えっ?」


ロビン「そんな事実は存在しない」




シャルル「え、いや、でも出かける前―――」



ロビン「―――私は何処にも出掛けていないし何も見てない。イイネ?」



シャルル「……………………アッ、ハイ…………」






>ロビンは でかけたことを きれいさっぱりわすれた!






ロビン「(気を取り直して)……シャルル。キュクロが居ないが、出かけているのか」



怪我が治ったばかりだというのに、出歩けない程というワケではないが……。



シャルル「…………っ」サッ


ロビン「…………?」



妙だ。
居場所を聞いただけだというのに、どうして視線を逸らすのか。



ロビン「シャルル、キュクロは何処に行ったのだ?」


シャルル「…………、」





問うてみた所で沈黙。
しかしその表情は何かを噛み潰しているようなモノで。

―――私は自身の回路がざわつくのを感じた。



ロビン「シャルル」


シャルル「―――っ!」ビクッ



一呼吸置いて、努めて冷静に、だが力強い口調で。



ロビン「―――キュクロは、何処だ?」



のっぺらぼうの赤い瞳が、金髪の少女を射抜いた。





―――壁外、舗装路。




ロビン「……………………、」



ウォール・マリアの正門を抜けた地点。
ロビンはそこに立っていた。

その機械仕掛けの瞳は、遥か向こうの地平線を覗いており、チュイン!チュイン!という音と共に景色をズームアップするも。



ロビン「………………見当たらない、か」




―――……。




ロビン『―――壁の外へ向かっただと、馬鹿な。外は確か―――』


シャルル『ええ。巨人の巣窟よ。……だけどその生態を調査する一団が数年ぶりに再編成されたの。キュクロはそれに密航する形で……』


ロビン『何の為に?』


シャルル『それは―――』






ロビン「("巨人に会う"為、……か)」



ロビンはその意味を、自らの電子頭脳で噛み砕いて理解しようとした。
だが得られる解はどれも"理解不能"及び"非効率"そんな解りきった単語の羅列であった。

未だダリオの屋敷で身動きが取れなかった頃、シャルルとキュクロの会話のデータをロビンは持っている。

その中には無論巨人に関するものもある。

それらを合算した結果、どんなに甘い見積もりを出そうとも結果は一つ。



―――絶対的な死。ただそれだけだった。





キュクロの、目的を達成する事自体は容易いだろう。
だが巨人と交戦して彼が無事に戻ってくる可能性となると話は別だ。

この身体が有機的なものであったなら、自分は今確実にめまいを誘発させていただろう。

キュクロもそうだが、己自身のうかつさにも対して。


話を聞いていれば、自分は必ず止めただろう。
いや、それどころか、同行する事であってもやぶさかではなかった。


そんなロビンに、シャルルは。



シャルル『―――駄目よ!ロビンまで死ぬ事になったら、私……!!』





彼女の瞳から流れ出た一滴の涙。
父、ダリオが死んだ事を聞かされた時に流したのと同等のモノ。
それが、彼女の頬を濡らした。

死ぬ。

全身機械の自分にとって、それは最も遠い世界の言葉であった。
機械に死ぬという概念は無い、唯壊れ朽ちてゆくのみである。
にも関わらず、彼女は私の喪失を畏れ、それを悲しんでくれた。




嘗て"殺戮機械"と呼ばれていた、こんな私に。

その姿を見た時、私は。



―――ロビンは強いね!今度ボクに剣技を教えてよ!いいでしょ!?

―――ロビンが録音してくれた子守唄があるから、私、夜もちっとも怖くないよ。



今は何処にいるかも解らない、私に"感情"といえるモノを教えてくれた主人達の姿を幻視した。






―――キミの力を僕達に貸してくれないか?
―――他人を傷付けるだけの為じゃない。
―――キミが喪ってしまった、大切である筈のモノの為に。









―――キミの力を僕達に貸してくれないか?
―――他人を傷付けるだけの為じゃない。
―――キミが喪ってしまった、大切である筈のモノの為に。







ロビン「………………、」カチッ!



そして私は大地に立つ。
今は私にとっての大切となった者の為に。



―――システム・スキャンモード。



視界を変更すると、荷車による多数の轍と馬の蹄が遥か彼方に向かって続いている。
他でもない、キュクロが密航したという調査兵団の物だろう。







ロビン「さて……」



方角は解った。後はそこに向かうまで。



―――シャコン!



ロビンは背部に開いた穴から多量の空気を機体内部へと吸収し―――それを、解き放った。



―――ヒュゴオオオオオオオオオッ!!



轟音と共に身体を浮かせると、引き絞られた矢のように空を切り、飛んだ。

平地から森へ、森から草原へ―――。

目まぐるしく景色を変えながらも、その視点は調査兵団のモノをしっかりと捉える。



ロビン「(何とか到着するまでは……)」



"無事でいて欲しい"
つくづく機械らしくないと思いつつ、ロビンは距離を詰め続けた。


―――だが、そんなロビンの願いとは裏腹に。






調査兵団員A「うおあああああああああああ!!??は、離せ!離せええええええ!!!」


キュクロ「―――……!!!」



天地逆の視界の最中、キュクロは込み上げる嘔吐感と恐怖を必死に堪えていた。
今現在、彼の身体は巨大なモノに吊り上げられ逆さまのまま宙を舞っていた。
その"巨大なモノ"が何であるのかなど。



巨人「……………………、」ズオオ




―――愚問であった。



数刻前、キュクロは忍び込んだ荷台にあった信号弾を知らずに触った結果、ソレが暴発。
自身の密航が調査兵団にバレたのはおろか、その轟音で巨人をも呼び寄せてしまったのだ。

交戦状態になった兵団は当初の予定通り、陣を敷いて応戦にあたろうとした。

だが、結果は陰惨たるモノであった。

精鋭とはいえ実戦経験のない新兵同然の集団。
しかも最悪な事に、囮として使用する筈だった爆薬は開戦時に全て紛失してしまった。
必然的に近接武器のみの戦いを強いられる事となった兵団は、





巨人「………………!!」



―――ブオオオオオッ!!



巨人の腕の一振り、足の一踏み。ただそれだけで陣形と、戦う意思を崩されてしまった。
死人こそ未だ出てないが、このままではそれも時間の問題であろう。
そして。
何よりも。



巨人「………………、」



光を宿さない目、目の前の生命を踏み潰す事に何の感慨も浮かんでいない腐った魚のような目。
それが、キュクロを射抜いた。





キュクロ「―――!!」ビクッ



その圧倒的な迫力に、身が竦む。
ソレと同時に生まれ出でるは。



キュクロ「(―――違ウ……!!)」



巨人の子と忌み嫌われた。
オレはコレから生まれたと聞かされ育った。
それを確かめたくて密航してまでここに来た。
だが。
これは。





キュクロ「違ウ……!」



胎の底からそう感じた。
自分には恐怖がある、怒りがある。
それに何よりも。



―――私、シャルル。貴方は……?



温もりを感じられる"心"がある。
こんな目の前のモノのようなのと同じなんかじゃ断じて無い。





巨人「――――――ガパアッ……!!」






キュクロ「…………!!!!」



まるでそれは、地獄の穴だった。
ぽっかりと開いた何処までも真黒の穴が、まるでキュクロを手招きするようにこちらを向いた。



キュクロ「(死ヌ―――)」



あの穴に放り込まれて、ゴミの様に食われて、それで終わり。
そんな。
そんなのは。





キュクロ「(厭だ―――)」



自分は人間なのか、巨人なのか。
その答えを掴みかけたというのに。



キュクロ「(イ、ヤだ―――)」



しかし現実に死は最も残酷な形でキュクロに迫り来る。
抗いようの無い形で。
その最後の視界の最中、思ったのは。




キュクロ「(シャルル。ロビン……)」



今ここにはいない、友達二人の顔だった。



キュクロ「ごメン……俺モウ、帰レナイ……」

キュクロ「―――ダケど!!」カッ!!



迫り来る奈落に対し、逆に目を見開いたキュクロが手にしたのは旅立ちの直前、シャルルに渡された御守りの小刀。
かつて、自分の命を奪おうとしたモノを握り締め、彼は叫ぶ。


キュクロ「うおおおおおおおおおおおお!!!」



一人では死なない。お前も道連れだ。
叶わぬ悲壮な願いであっても、彼はその直前まで強き意志を捨てようとはしなかった。
そして!



―――ザシュッ……!!






肉が擦り切れるような独特の、嫌な音が周辺に響き渡った……。





キュクロ「――――――、」

キュクロ「(―――あレ?)」



何処も痛くない。確かに音がしたというのに。
キュクロは恐る恐る強く閉じた瞳を開けると、そこには……。



キュクロ「…………?」



矢張り宙に浮いている自分の身体。
否、先程よりも地面に近くなってるような。
更に、自分の真横に何か赤黒いモノが置かれている事に気づいた。
周辺からはシュウシュウと蒸気が吹き出ており、まるで宿で出された上質なステーキのようで……。





キュクロ「(―――肉?)」



自分より遥かに大きい肉の塊が、地面に落ちていた。
何故?どうやって?……そもそも何の?

様々な疑問が頭に浮かんでは消えた。

だが、最後の疑問だけは、直ぐに明かされた。




巨人「―――――――――■■■■■■――――――!!!」



突然の咆哮に、何事かと目線を向ける。
キュクロも、戦意が折れかかっていた調査団員達も。
見れば、先程までキュクロを持ち上げていた部分、手首から先の部分が―――消えて失せていた。

正確には、キュクロの傍に転がっている肉の塊こそ。





キュクロ「(巨人の、手―――?)」





手が勝手に落ちたというのだろうか、なら、だとすると。
俺を掴んでいるこの手は一体……誰のだ。
そう思ったキュクロが後ろを振り向く直前。





「―――追いついたぞ。間一髪といった所か」


キュクロ「…………!!」




この声には聞き覚えがある。
今まさに頭の中に思い描いた友人の片割れ。
いや、でもまさか、そんな。

咄嗟に振り向くと、そこにあるのは先程の真黒とは間逆の青。
その装甲の上に載るのは目や口もないのっぺらぼう。
だがその中心に輝くは血の様に紅い真紅の宝石。



キュクロ「ロビ―――」



"ン!"
と二の句を告げる前に、足を離されたキュクロはそのまま真っ逆さまに地面に激突した。





キュクロ「~~~~~~~~~~ッッッ!!!」



余りの痛みに目を白黒させもんどり打つ。
一頻りもがいた後。



キュクロ「何ヲ―――するンだよ!!」



涙目になりながら抗議を入れる。
しかしのっぺらぼうは何処吹く風で。





ロビン「……何故こんな真似をした?」


キュクロ「………………!」


ロビン「シャルルから理由は聞いたが、余り利口なやり方とは思えんな」


キュクロ「………………」



キュクロは答えず、唯黙ってロビンを見返そうとして―――驚愕に目を見開いた。
そしてロビンに知らせようと口を開こうとしたが。



―――ガキィィィッ!!



手遅れとなった。





ロビン「―――!」



ロビンが視点を向けると、そこには残ったもう片方の手でロビンを鷲掴みにした巨人。



―――ギギギギギギギギ……!!



並の人間ならば数秒でひき肉になりかねない圧迫感がロビンに襲い掛かり、金属が軋みを上げる。
そのまま巨人は、何のためらいもなくロビンのボディを、






己の口内に放り投げた。








キュクロ「――――――ロビイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!」







一瞬の出来事にどうする事も出来なかったキュクロは、力なくその場に崩れ落ちた。。





―――俺のセイダ。
―――俺が、巨人を見ニ行コウだなんテ思わなケレバ……。





キュクロ「うっ……ぐ、う……ッ!」



隻眼となった目からは大粒の涙が幾筋も溢れ出し、彼の頬を伝った。
……だが。



調査兵団員B「……お、おい……」


調査兵団員C「ありゃ一体何だ……」



周辺の兵団員から微かな驚きの声が上がった。
それに促されるようにキュクロが顔を上げると、





―――巨人の首、人間で言う所の喉仏に相当する部分から白く光る"何か"が突き出ていた。




先程吊り上げられていた時、あんな部分は存在してなかった。
では、あれは一体。



キュクロ「(……まさか)」



キュクロの思考がある解を出した瞬間、変化は起こった。



巨人「……、!!……!?……!?!?!?」



邪魔者を排除し、今度こそこちらを仕留めようと歩を進めた巨人の歩みがピタリと止まった。
それだけでは無い。
まるで水に溺れた人間のように、喉の部分を掻き毟り始めたのだ。
すると。




"―――シャクンッ!!"



浮かび出た"白いモノ"がほんの一瞬だけ揺れた。
同時に響くは先程と同じ肉を擦り切る独特の音。
一拍の間を置いて。



巨人「―――、―――、―――、」



巨人の、先程までの力強い歩みはまるで見る影も無く。
ペタリ、ペタリと薄い足音を数歩残して、




首が、転げ落ちた。





一同「!!!!!!!??????」



その直ぐ後に。



"―――ズウウウウウウウウゥゥゥゥ……ン……!!"



山のように大きな巨体も、また地面に倒れ付した。

ボールのように無軌道に転がった首はそのまま、調査兵団の真前で止まり、"シュウウウウウウウ……!"と空気の抜けた風船宜しく蒸気を上げ始めた。



一同「………………、」



兵団員達も、キュクロも、その光景を何処か遠い世界の出来事のように見ていた。
思考が理解に追いついていなかった。
一時は全滅すら覚悟したというのに、それほどの力を持っていた敵であった。
それなのに。





「―――首を切られて生きている生命は居ない、とは誰の台詞だったかな」



遅れて蒸気の噴出した身体から聞こえる声は何処までも冷静だった。



「嘗てそうして巨人(これら)を倒した人間が居たそうだが、データが合っていて助かった」








「―――細切れにする手間が省けたからな」


ガチャリ、ガチャリと金属が擦れる音と共に、蒸気の向こうからひょっこりと顔を出すは。



キュクロ「………………………………ロビン」



巨人の発する熱気に当てられたのか、一瞬でカラカラになった口内で、友人の名を反芻するキュクロ。
だが、喉は乾きを訴えているのに、何故だろう。








―――体の震えが止まらなかった。




ロビン「終ったぞ。さあ帰ろうキュクロ、シャルルが心配している」



それを知ってか知らずか、ロビンはキュクロを助け起こそうとして。
―――その手を、止めた。



ロビン「………………、」


キュクロ「…………?」



急に別方向に視線を向けたロビンにキュクロも倣う。
そうすると。





―――。



――――――。





―――――――――ドド……ド……!!

確かに聞こえた、微かに地面を鳴らす足音。
先程のヤツと同じ、これは巨人の足音だ。
しかも今度は……一体だけじゃない。



調査兵団員D「あ―――け、警報……警報ー!!」



呆けから復帰した兵団員の一人が、周囲の索敵を行った際、それは視界に入った。
刻一刻と揺れが激しくなり、地平線の向こうから人よりも遥かに大きな影。





それが1、2、3、4、……5つ。






調査兵団員E「ご……5体だとぉ!?」


調査兵団員F「何かの間違いじゃないのか!?」


調査兵団員G「馬鹿野郎!もう肉眼でも見えてやがるじゃねえか!!」


調査兵団員H「このままここに居たら俺たち全員お陀仏だぞ!!」



新たな敵の出現と共に、麻痺していた恐怖も同時に蘇り、あわや兵団はパニック寸前にまで陥る。



ロビン「――――――、」ズチャリ


キュクロ「…………!」



が、そんな絶望の空気に逆らうかのように、ロビンは一歩前に身体を出した。
何をするかなんてもう決まりきっている。





キュクロ「た、戦うのカ……?」


ロビン「………………」



その無言は肯定の証。
機械仕掛けの胸に去来するのは―――……。





ロビン「(ご主人……申し訳ない)」

ロビン「(今一度だけ、昔に戻らせて頂く……!)」






それは彼が主人と出会う前の話。
魔王直轄地・エビルマウンテンにその名を轟かせた殺戮自動人形、キラーマシン。
その名が示すとおり。



敵に死と殺戮を振りまくべく。


―――カチリ。





首筋のスイッチを、押した。







―――メインシステム・戦闘モード……起動します!




右手に剣を。
左手には弓を。




異世界の平原に、今、魔界の死神が降り立つ。

一先ずここで中断。
コンビニ夜勤に行ってきます。

……キラーマシンがウェイターをする食事処か……。

>>1です。長らく待機状態ですいません。
実は入院しておりまして、最近漸く家に帰って来れました。
リハビリがてらそう遠くない日程でロビン&キュクロの続きを投下します。

……どうでもいい話ですが風邪が治ったのに咳が止まらないという方、要注意です。自分のようになります故。
それではこれにて。

>>454
無事の帰還を歓迎します。
自分の友人も同じような感じでもう2ヶ月は入院してるんで自分も気を付けます。
あまり無理はなさらぬよう気を付けてください

肺炎か

えー、大変長らくお待たせしました。
キュクロ&ロビンの、>>442からの続きとなっております。

それではどうぞ。




―――消えた。


キュクロはロビンの機動をそう表現するしか出来なかった。
頬を撫ぜる風の、その流れのままに目線を向けると。

居た。
全速力で迫り来る5体の巨人の内、最も近い距離に居る1体。
その鼻先に一瞬で移動したロビンは、


"―――シュパァン!!"


顔面に向け、引き絞った矢を放った。



巨人A「―――!?!?」



ビックボウガン※による一撃は巨人の眼球へ深々と突き刺さり、その突然の衝撃にスピードを殺しきれず、転倒。


※ビックボウガン……ジャハンナで購入できる。攻撃翌力110。



ロビン「(―――まず、一匹……)」



隙を逃さず、すぐさま剣で首を大きく刈り取った。



巨人B「―――!?」


巨人C「―――!!」



Aの両隣に居た二匹は、突如現れた小さなハエを払おうと手を伸ばす。
"普通の人間"であれば即死は免れない速度と凶悪な質量の兵器。
それを。



ロビン「………………、」




ロビンは真正面から受けた。





―――ズドン!!




重々しい打撃音と共に、巨人の掌に挟み込まれる。
しかし。



―――ズシュシュシュシュシュシュシュ!!!



断続して"何か"をすり潰す音が響く。
ソレが何から発されているかが判明する前に―――巨人の掌は小さな肉の破片となって消滅した。



巨人B&C「―――!!!!」



ロビンは衝掌による攻撃を受けても尚平然と右手を身体と肉の壁の前へ突き出すと、



>ロビンは もっているぶきを はげしく ふりまわした!



鋭い刃はスライサーの如く巨人の手を切り刻むと、彼の身体を自由にする。





巨人B「―――!?」ズシュウッ!!



その勢いのままに空中に躍り出たロビンは巨人Bの首を刈り取ると、返す刀で巨人Cへと向き直る―――直前、横合いからの拳に前を阻まれた。



巨人D「―――!」

巨人E「―――!!」


ここに至り、漸く強襲されている事実に気づいた残りの巨人達が全力の膂力を以って障害の排除に当たろうとしたが。



ロビン「(―――邪魔だ)」



剣一閃。
巨人Dの二の腕が見事に両断され、物のついでとばかりに強弩を巨人Eに向け放つ。



巨人E「―――!!―――?」



しかし、矢は巨人を素通りして地面に突き刺さる。
外してしまったのだろうか、否。

巨人Eは気づいて居なかった。
矢尻から伸びた、薄く輝く"糸の様なモノ"の存在に。





ロビン「―――、」



ロビンが左腕を思い切り振り上げると、糸は巨人の足に絡みついたと思いきや、すっぱりとそれを輪切りにしてしまった。



ロビン「(鋼鉄をも易々と切り裂く、強鞭グリンガム※にも使用される特殊繊維だ。一溜まりもあるまいよ)」



※グリンガムの鞭……カジノのコインで入手可能。敵1グループを攻撃出来る。



巨人E「―――!!」



体勢を崩した巨人Eは、ロビンに向かって倒れ込み、格好の標的となる。
最後の抵抗だろうか、口を大きく開けて彼を飲み込もうとするも、その顎ごと十文字に顔面を切り裂かれてしまう。



巨人C「―――!!!」



巨人Eの残りの身体が丁度ロビンから死角となり、そこを突いた巨人Cが仲間の肉体ごと彼を圧壊させるべく拳を繰り出すが。



ロビン「(―――ふん)」



それを見切っていたロビンは背面から圧縮空気を噴き出すと、猛スピードで巨人の身体を突き破り逆に拳に対してカウンターを叩き付けた。




巨人C「―――!!!」



無残に空中に舞う腕を見ても、感情を持ち寄らない巨人は闇雲に攻撃を再開するしかなかった。
もし、今現在の彼等の思考を推測するならば……こう思ったに違いない。




―――何故だ。何故、身体が再生しない?―――




巨人の両腕、いやさ片腕部分は先刻より切り取られてから時間が大分経過しているというのに、未だ再生の兆しを見せず悪戯に蒸気を噴出させているだけであった。

人間達の剣戟は即座に修復されてしまったというのに、一体何故であろうか。

……良く見れば、腕の傷口付近が薄っすら"真白に"発光していた。

それが彼等の再生速度を極限まで遅くしているのであろう。





―――地下室生活においてのキュクロとシャルルが話していた巨人の生態には、こういうのもあった。




巨人の恐怖の一つとして数えられる、驚異的な回復力。
それを行う際、周辺の空気が沸騰したかのように熱を発するのだ、と。



コレは飽くまでもデータによる仮説だが。

もしも熱量と回復力がイコールだと仮定するのならば、傷口の体温を極限まで低くしてしまえば或いは……。



―――結果は重畳の極み。

ロビンが狙って切り付けた傷は即座に"凍結"し、熱再生を封じられた巨人は残った部位による単調な攻撃を繰り返すしかなくなってしまっている。



ロビン「(流石だな)」



手に持った刀身が、その賞賛に答えるように青白く輝く。


―――善の心を持った魔族により造られた街・"ジャハンナ"。
そこでのみ口伝されたとされる、ある"特殊技法"によってのみ造られた魔剣の一振り。


刀身は見る者を魅了する、透き通った青色。
それを一振りすれば地獄の業火すら封じ込めると噂された。





―――その銘は、人呼んで……「ふぶきのつるぎ※」。





※ふぶきのつるぎ……ジャハンナで購入出来る。攻撃翌力105。ヒャド系に弱い敵に大ダメージ。




巨人(てき)はロビンという個を知らず。
そしてロビンにとっては、己よりも巨大な個体との戦闘は日常であった。


グレイトドラゴン、ギガンテス、セルゲイナス、メカバーン、スカルドン……。
他にも挙げればキリは無い。


それらと共に人間の命を効率良く刈り取るべく、多様な改造を施された種族が自分達"キラーマシン"である。





―――ただ身体がデカいだけの、思考もロクに出来ないデク人形に、敗北する筋合いが何処にあろうか―――





巨人C「―――!?!?」ズシュッ…!



ロビン「(排除。後は残り1……!)」



首を切り、最後の一匹に身体を向けるロビン。
だが。



巨人D「―――!―――!!―――!!!」ドスドスドス……!!



それは奇行種故の気紛れか。
それとも生物としての本能がそうさせたのか。







調査兵団員A「に……―――」

調査兵団員A「―――逃げやがった……?」






最後の一匹は背を向け一目散に一団から距離を取り始めた。
全長の巨大さも相まった歩幅により、刻一刻の間にその姿はどんどん小さくなって行く。



―――あの巨人が、人類(我々)を前にして、逃走した―――?



その事実は大きな波となって兵団員達に波及し、俄かに周辺がどよめく。

が、そんな弛緩し始めた空気を他所に。



ロビン「―――、」キリキリキリキリキリ……。



狩人は最後の仕上げをするべく、腕の弓を最大限引き絞り―――放った。
強大な力を以ってして絞られた矢は大きな放物線を描きながら空気を引き裂き、見事巨人の首筋に着弾した。
しかし。



巨人D「―――、―――、―――、」ドスドスドス……。



獲物の歩みは止まらない。
当然だろう。近接斬撃ならまだしも、あれだけ離れてしまっていてはいかなビックボウガンでも首を削ぎ落とすには威力不足となってしまう。
……無駄弾だったのであろうか?






―――否。





巨人D「―――!!!!!」



―――ドゴオオオオオオオオン!!!



突如、刺さっていた矢の周辺が眩い閃光に包まれ……爆発した。
衝撃により巨人の首は容易く千切れ飛び、そのまま何処かへと飛んで行った。
最後の瞬間まで己の消失を感じ取れぬままに。





ロビン「……………………、」



狩人は獲物を決して逃がさない。
最後に放った矢は「ばくだんいし※」を矢尻に付着させた特別製。

※ばくだんいし……どうぐとして使うとイオラの効果。

しかもマヌハーン族が所持する高純度。
少なくとも、この世界の人類が所有する火薬とは比べ物にならない。


ともあれ、これで。

終わった。



ロビン「(…………ふぅ)」



カチリと。
首筋のスイッチを押すと全身の部品が弛緩して行く。


―――ターゲットの消滅を確認しました。システム・通常モードに移行します。

>>きょじんのむれを やっつけた! テレレレ~♪


「傷口は?」「焼いて潰した!!」ならぬ「凍らせて封じる」戦法。
……2、3度気絶するってレヴェルじゃあねーですなー。

此度からポチポチ不定期に再開して行きます故。今しばらくのご容赦を……。

>>455>>456
ありがとうございます。肺炎というか……咳が続いた結果肺炎になったというか。
入梅から若者の間で増え続けているそうですので不可思議な咳をしているなと思ったら近くの病院で検査受けたほうがいいですガチで。

それではこれにて、残りはエピローグめいた小話となっております。

このSSまとめへのコメント

1 :  トレバーミサイル!!   2015年01月25日 (日) 22:55:01   ID: XR2N7hvA

俺もSFC ドラクエV持ってるけどギガンテスは入れてない。

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