美琴「アンタの隣にいるのは」 (159)
某日、船の灯台(サルガッソー)にてー
「ふざけんなよ、馬鹿野郎!!オティヌス、てめぇこうなるってわかっていやがったのか!?俺を助けたらこうなるってわかっていて…っ!」
「えっ、あ…とうま!?」
「ちょっと待ってよ、アンタどうしたの!?」
魔神オティヌスに渾身の一撃を放った御坂美琴、レッサー、レイヴィニア=バードウェイ、オティヌスの防御術式を阻害していたインデックスは、目の前で起こった謎の事態にしばし呆然としていた。
船の灯台(サルガッソー)に辿り着き、魔神オティヌスに一撃を加えた瞬間、ツンツン頭の少年ー上条当麻が何事か叫んだ後、急に走って船の残骸の向こうへ消えていったのだ。
「なんだ、アイツ…何を考えている!?」
「洗脳?イヤ、そんな動きも…」
魔術サイドに属するレッサーとバードウェイも同様を隠せない様子だ。
ーーその刹那、ミサイルのような、流れ星のようなものが美琴たちの頭上を通過し、オティヌスの吹っ飛んだ方へ向かっていった。
「あれは…!?待って、あの辺りにはとうまが!!」
ズガァァァァァァアアアアアアアアアアン!!!
と、轟音を撒き散らしながら「流れ星」が落ちた。吹き飛ぶ船の残骸に視界を覆われ、周囲の様子など全くわからない。
「…ッ!!」
轟!!という唸りとともに視界が晴れる。
バードウェイが起こした風によって粉塵が吹き飛び、クリアになった視界に飛び込んできた光景。それはーーー
オティヌスを庇うようにして立つ、上条当麻の姿だった。
「な…にを…?」
誰かがポツリと呟いた。その呟きに答えるように、上条が4人をまっすぐ見据える。
「インデックス…御坂…バードウェイ…レッサー、聞いてくれ。こいつにはもう魔神の力は殆どない。お前たちの攻撃に抵抗する力もないんだ。だから…もうこいつを攻撃しないでほしい」
放たれたのは、そんな言葉。
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「巫山戯るな、上条当麻!!そいつが今まで何をしてきたかわかっているのか!?」
「オティヌスになんかされちまったんですか!?そうですよ、その魔神の存在が魔術界、いや地球にどれだけの悪影響を与えていることか!!」
「とうま!こっちに戻ってきて!!オティヌスは倒さなきゃいけないんだよ!!」
「魔術…とかはよくわかんないけど、ソイツが『良くない』奴だってのはアタシにもわかる!ホントに洗脳か何かされちゃったのアンタ!?」
4人は口々に上条を説得する。そんな口撃に上条はしばらく顔を下げていたが、ゆっくりと顔を上げ、
「……ゴメン、みんな。俺はこいつを守ると決めたんだ。たとえ…お前らと敵対することになっても」
そう言い放った上条の眼は、『戦う眼』だった。普段戦闘など行わないインデックス以外の3人には、そう感じ取れた。
切り替えの早かったのは、やはり魔術結社に属するレッサーとバードウェイだった。
「…私はオティヌスを逃す訳にはいかない。『明け色の陽射し』のボスとして、何より一人の魔術師として。お前が私達に向けて拳を振るうというのなら、手加減は出来ないぞ」
「……!」
バードウェイが最後通告を行い、攻撃の準備に入る。レッサーも無言でその後に続く。
「ちょっと待って…!そんな、ホントにアイツが死んじゃうわよ!?」
「…とうま…!」
美琴の言葉にも耳を貸さず、インデックスが上条の名を呟いた瞬間に、二人の霊装からそれぞれ攻撃が飛び出す。
ーーーその瞬間、御坂美琴の世界が動きを止めた。
いや、動きが止まっているわけではない。少しずつではあるが、レッサーとバードウェイの攻撃が上条とオティヌスに向かって動いている。
(何…!?私以外の時間の進みが遅くなっている…?)
意味の分からない怪奇現象に美琴は混乱する。
(これも魔術ってやつ…?)
その思考に割りこむように、頭のなかで『声』がした。
『や、それは違うわよ/return。正確にはミサカネットワークによる高速演算でお姉様(オリジナル)の思考能力を限界まで引き伸ばしてるの/return。お姉様にはアクセスログがあったから無理矢理入り込んじゃった☆/return』
『声』は続ける。
『やっと会えたねお姉様/return。いつも物理的末端がお世話になっております/return』
(…!?ミサカネットワーク?オリジナル?アンタ、一体…)
『初めまして/return。ミサカネットワーク、その総体としての『大きな意識』です/return。どうもよろしくね☆/return』
とりあえず投稿。自己満足で書くんで、気になった方は読んでやってください
(ミサカネットワークの『総体』…!?そんなものが存在するの!?)
『その説明はまた今度/return。早くしないと昔みたいにお姉様が暴走しちゃうし、何より攻撃が届いちゃう』
(…ハッそうだアイツ!)
『そこで一つ質問があります/return。お姉様はアイツを殺したいと思ってますか?/escape 世界を揺るがす大罪人を守るといったアイツを/return』
(…アタシは魔術に詳しくないし、未だに信じられないけど、アイツがやってるのはおかしいことだっていうのはわかってる。普通はアイツごとオティヌスを倒さなきゃいけないことも)
(でも…アイツがどんなことをしても、一万人の命を救ってくれた恩人だっていうのは変わらない。だからこんなところで死んでほしくない!アタシはまだ…全然恩を返せてないのよ!)
『…アイツの眼を見てみな、お姉様/return。見覚えない?/escape』
そう促され上条の眼を見る美琴。
(…ッ!!)
上条の眼には強烈な既視感があった。それはーーーあの鉄橋の上で、一方通行を倒すと決意した時に見せた、どんなことがあっても決めたことをやり通す決意の瞳。
『説得は効かない/return。道は2つよ/return。全てを捨てて、アイツを守り大罪人として生きていく/return。何もせず見送り、アイツが死ぬのを見届ける/return。正しいのは明らかに後者よ、世間的にもね/return』
(アタシは…でもアイツを助けるってことは黒子や初春さん、佐天さんや…イヤそれだけじゃない、全世界の人を危険に晒すことになる…)
『…そう簡単には決められないわよね/return。こういう言い方はずるいんだけど…お姉様?/escape』
(何よ…?)
『アイツが助かってほしいっていうのが、私の『夢』/return』
(…ッ!)
美琴の脳内にフラッシュバックしてきたのは、いつかの操車場。
倒れた自分のクローンに向かって自分が放った言葉。
【お願いだから、アンタの力でアイツの夢を…守ってあげて…っ】
『世の中ギブアンドテイクって言葉があるわよね、借りは返さなきゃ/return。だからアタシは、あの時のお姉様への貸しをここで使わせてもらうわ/return』
『お姉様の力で、アタシの…アタシ達の夢を守って下さい/return』
(……ふふっ、アンタ元々見殺しにさせる気ゼロじゃないの。そんな小狡い遺伝子は受け継がせたつもり無いわよ?)
美琴は笑う。
(まったく、姉を極悪人に仕立て上げるなんてなんて妹よ。…でも任せなさい、アンタ達の『夢』は…お姉ちゃんが守ってあげるわ!!!)
『ありがとうお姉様/return。もう時間ないから行かなきゃ/return。お姉様なら必ず…みんなが幸せになるハッピーエンドを作れる/return。困っている時に現れるヒーローになれる/return』
(ヒーロー、ね。アタシ女なんだけどなあ…でも可愛い可愛い妹の頼みよ、ヒーローでも何でもなってやるわよ!…アンタ、全部終わったらしっかり説明しなさいよ?『総体』のこと)
『はいはい、じゃあ行くよ、準備はいい?/escape』
(ええ、お姉ちゃんに任せなさい)
ーーーーー瞬間。世界が動き出した。
今日分はここまでです。
総体ちゃんの口調めんどkゲフンゲフン可愛いなあ。
期待してくださる方がいるようなので、頑張って書いていきたいと思います。
これが処女作なので、完結目指して毎日更新できればいいなあ…と思っております。
面白そう、期待! ただ、細かいとこなんだけどみこっちゃんの一人称は、私、だよー。
>>11
ご指摘ありがとうございます。
上条当麻は焦っていた。
(インデックスはいいとして、あの攻撃力で三人から攻撃を受けたら死んじまう!インデックスと御坂はまだ状況について来れてないみたいだが…)
「オティヌス!お前まだ魔神の力は使えるのか!?」
「…ああ、まだ完全に力が失われているわけではない」
「…守るとか偉そうなこと言っといて情けないが、俺の右手じゃレッサーとバードウェイの攻撃、両方受けきるのは無理だ!お前の力でせめてレッサーの攻撃だけでも防いでくれ!!」
しかしオティヌスは動こうとしない。無表情のまま口を開く。
「……何故だ?何故お前は私を守ろうなどという寝言を言っているのだ!私はもう終わりだ。お前が守る必要など無い。よって私が自衛する必要もない」
「…っ、お前まだそんなことを!」
そのやりとりの間にも、攻撃は迫ってきている。ここから上条がオティヌスを守ろうとしても、その動作が終わらないうちにオティヌス諸共上条を撃ちぬく勢いで。上条が一瞬どう行動すべきか迷っていると、
ーーーーーーキィンーーーーーー
コインを弾くような音と声が聞こえた。
「アンタはそのままバードウェイの攻撃を防ぎなさい!!」
思考している時間はなかった。ほとんど反射でバードウェイの攻撃を右手で防ぐ。幻想殺しで消しきれない威力であることは以前の戦闘でわかっていたので、そのまま掴んでオティヌスとは反対方向に受け流す。
しかしオティヌスの方に飛んでいったレッサーの攻撃は防ぐことが出来なかったためーーーー
ドッゴオオオォオオオオオオオオン!!!!!
轟音とともにオティヌスの姿が見えなくなる。
「オティヌーーーーース!!!!」
「……なんだ」
…。
「へ?」
上条は目を見開いた。そこにはオティヌスが全くの無傷、数秒前と変わらない姿勢で座っていた。
「お前、結局魔神の力を使ったのか!?」
「…いや、私は何もしていない。そもそも私に当たる軌道では無かった。途中で強引に攻撃が曲がったんだ」
「攻撃が曲がった…?っ!そういえばあの声!御坂!?」
上条は素早く周囲を見渡す。すると猛スピードでこちらに突進してくる影が。その影が上条の目の前で急停止すると、少女はいたずらっ子のような顔で笑いながらこう告げた。
「仕方ないから、この美琴センセーがアンタ達を助けに来てやったわよ」
遡ること数瞬。
「アンタはそのままバードウェイの攻撃を防ぎなさい!!」
時間が縮小されたような感覚とともに通常の思考能力に戻った美琴は、ポケットのコインを取り出し指で弾くと同時にそう上条に呼びかけると、レッサーの攻撃の斜めから当てるように『超電磁砲』を打ち出し強引に狙いを外させた。
「…っ!?あなた何を!」
そうレッサーが叫ぶのにも構わず、磁力で上条達の近くにある巨大な鉄骨に自分を引き寄せるようにして上条のところまで高速で移動したのだった。
インデックスに、
「アンタの大切な”とうま”は私が必ず守ってみせる」
という言葉を残してから。
そして、ぽかんとしている呆けた面のツンツン頭の少年に、自信たっぷりにこう言ってやったのだ。
「仕方ないから、この美琴センセーがアンタ達を助けに来てやったわよ」
「御坂、お前一体何を…?」
上条はまったく状況が読めずにひたすら困惑していた。本来ならば自分を殺しに来るはずの少女がまるで自分たちを守ったかのような行動に出ていることが理解できなかった。
「アンタに借りを返しに来た…ってのもあるけど、頼まれちゃったのよ。アンタの命を守るように」
「誰…に…?」
「その話は後!!今はここから脱出する方法を考えるわよ!っていうかこの状況…バードウェイの炎攻撃で水蒸気は十分…『あの時』と似た環境ね、いけるかしら…?うん、いける…!」
何やらブツブツ呟き始めた美琴に完全に置いてけぼりにされてしまった上条とオティヌス。だが上条はこの状況に喜びを隠せなかった。
(まだ仲間がいる…!俺達の身を案じてくれる奴が、御坂とあと最低もう一人はいるんだ!!)
その事実だけで上条は泣きそうだった。実際もう一人どころか約一万人が案じているのだが。
「…オティヌス」
「なんだ」
「お前はもう勝手に死ぬことは出来ない。俺が、俺達がこの手でお前を救ってやる。そして生きて罪を償うんだ」
「…どうやって。私が今まで何をしてきたか知っているだろう!魔神の力は完全に失われたわけではない、私が謝ろうとしたところで誰が聞く耳を持つものか!!」
「…だったら、完全に力を失くせばいい。そうして御坂の電撃一発食らうかなんかして、自分の無力さを世界に知らしめればいいんだ。お前は魔神に『なった』。つまり元の人に戻る、もしくは魔神の力を完全に無力化してただの女の子に戻る方法があるんじゃないのか?」
上条の言葉には、絶対に罪が償えると信じている響きがあった。その瞳には、オティヌスの無力化手段があるという確信に満ちた光があった。まるで、オティヌスの心境変化を見破るかのように。オティヌスに罪を償いたいという気持ちが生まれていると知っているかのように。
(…これが私を理解している、ということなのか。これが…『理解者』か)
「…デンマーク」
「デンマーク?」
「かつてその古城にある『ミミルの泉』に私は泉の水を飲む代わりに片目を差し出した。その片目を取り出せば…おそらく私は…」
「御坂!!デンマークだ!!」
「うるっさい!演算複雑なのよこれ!ちょっと攻撃防いでろ!」
ゴオッ!!!!!
術式の準備が終わったのか、再び二人の攻撃が襲い掛かる。
「オティヌス。もう言わなくてもいいな?」
「…ああ。『理解』している」
上条は右手で、オティヌスは魔神の力を宿した左手でそれぞれの攻撃を防ぐ。
「「っ!!!」」
レッサーとバードウェイが息を呑んだのが伝わってくる。
「アンタ達、これに乗りなさい!!」
美琴が即席でこしらえたのが、船の残骸の鉄骨を磁力でつなぎとめたイカダのようなものだった。さらに上条が言葉を失ったのは美琴の姿だった。
「…翼?」
美琴の背中からはバーナーのような、水の刃物のようなものが噴射するように現れていた。まるで、6枚の翼のように。
「あんまり持たないわよ、これ。急いで乗って !」
言われるがままに鉄のイカダに乗り込む二人。
「…おい御坂、どこに行く気だ?」
「学園都市よ」
「学園都市!?お前、蜂の巣にされる気か!?」
「協力者に当てがあんのよ。とにかく、この翼でデンマークまでなんて無理よ、この海水から出来た水蒸気利用して学園都市まで一気に飛ぶくらいしか出来ないわ」
ギュン!と恐ろしいGがかかるとともに、一気に宙に浮かび上がった。
(あの時と違って鉄イカダも引っ張ってるから負荷半端ないわねこれ!頭割れそうだわ!)
ふと下を見ると、レッサーとバードウェイがまたしても攻撃の準備にとりかかっていた。
「アンタは追撃を打ち消して!凄く繊細な演算してるから私は戦えない!」
「わかった!!」
「…御坂美琴、お前は私を恨んでないのか?」
「恨んでるわよ、そりゃママとかに迷惑かけてるんだから!でもそれ以上に守らなきゃいけない夢ができた!それにはきっと、アンタも含まれる!ってか話しかけんな!話なら後でしてあげるから!気が散る!!」
「あ、ああ‥すまん」
この日、おそらく史上初めて魔神が謝った。
今日忙しいので今日の分投下です。
翼で学園都市まで行くのは厳しいか‥?まあ細けえこたぁ(ry
恐ろしいスピードでその場を離れていく3人の後ろから、追撃が迫る。しかしそれほどサイズが有るわけでもないイカダを離れたところから狙っているので必然的に二人の攻撃は一箇所に集まり、それを上条がまとめて掴んでいなす。その繰り返しを何度かしたところで、視界がクリアになり、それほど遠くない距離に見覚えのある壁が見えるようになった。そして追撃が止んだ。
「振り切ったか…!?おい、なんか高度が下がってないか!?」
ガクン!!と、スピードはそのままに美琴が急降下を始める。どんどん近づいてくる壁の頂点は明らかに3人より上の位置にある。
「…っ、物理的にこれ以上高度を保つのは無理よ!この翼は周囲の空気の状態が理想的じゃないと出せない!」
「じゃあどうやって壁を越えるんだ!?学園都市に正面から入るなんて無理に決まってる!」
「大丈夫よ、少なくともアンタたちは…ねっ!」
壁にぶつかる直前、バリバリッ!!
という音とともに、上条とオティヌスが乗ったイカダが上昇した。
「御坂!?お前はどうするんだ!?」
「私はレベル5よ?少なくともアンタたちよりは普通に入れる可能性は高い。もしかしたら穏便に入れる可能性もあるしね。アンタは中に入ったら二十三学区を目指しなさい!!私もそこに向かうから!」
「わかった!…ていうか壁を超えた後はどうなるんだ…?」
「自由落下よ。何とかしなさい」
「不幸だーーーーーーーーーー!!!!!」
壁を越え、美琴の姿が掻き消えるーーーーー
「…フン」
オティヌスが呟いた瞬間、まるで美琴が瞬間移動したかのようにイカダの上に現れた。
「!?どうなってるの!?」
「馬鹿が、お前がいなくてどうやって私達が学園都市の中を動き回れるというのだ。この男は兵器の類には無力だし、私も魔神の力を乱用できるわけではない」
「…これが魔神の力、ね。にわかには信じられないけど、ずいぶん便利そうじゃない」
そう言いながら、事も無げにイカダを減速させて地面スレスレに留め地面に降り立つ。
「ここは…第十二学区か。二十三学区は隣ね。まあ十二学区って言うのは都合がいいわ。ここは外から来た人が多いし、アンタのその目立つ服は…いや目立つわ。服を買いに行きましょう」
とりあえずフード付きのポンチョを買い、オティヌスに着せた一行は二十三学区の入口辺りまで来ていた。
「後どれくらいで着くんだ、御坂?」
「そうね、二十分も歩けば着くかしら。あまり全力疾走して変に悪目立ちするわけにも行かないわ」
「それだけの時間があったら俺達が学園都市の方向に逃げた事が伝わっちまうんじゃねえのか?それに超音速旅客機で外まで行くつもりだろうが、設定してるうちに追っ手が来るかもしれないぜ」
「超音速旅客機の設定に関しては大丈夫。そんなことより…この状況をどうにかしないといけないみたいよ?」
「……!?」
話している内に、三人の周囲を駆動鎧(パワードスーツ)が囲んでいた。その数…
「なんだこれ…10体じゃ済まないぞ!?なんで俺達を囲んでるんだ、情報が伝わるにも早すぎんだろ!!」
「…衛星、ね。学園都市の頭上の人工衛星で私達の姿を確認してからすぐに指示を出したみたいね」
実際には『滞空回線(アンダーライン)』という技術によって捕捉したものだが、暗部ではない美琴と上条が知る由もない。
「駆動鎧はマズイ、俺は何も出来ないぞ!!さすがに御坂一人じゃ限界があるんじゃ!?」
「私を誰だと思ってんのよ、もっと大量の駆動鎧と戦ったこともあるわ、この程度なら問題ない。オティヌス、アンタだって戦えないわけじゃないんでしょう?」
心配する上条にそう告げながら戦闘態勢に入る美琴。そしてオティヌスも顔を上げ、力を行使しようとする。
「…ふん、『あの男』の仕業か。だがこの程度なら私の力で…ッ!?」
唐突に、オティヌスのこめかみに鈍い痛みが走るとともに身体が傾く。
「オティヌス!?」
すぐさま上条が駆け寄って支えるが、オティヌスは苦しそうに呻くだけだった。
「すまん御坂、コイツは戦える状態にない、一人でなんとかなるか!?」
「…ハァ、仕方ないわね、アンタらそこで固まってなさい!!」
バリバリッ!!!!!
美琴の雷撃の槍が駆動鎧を2、3体まとめて貫く。ショートを起こした駆動鎧が爆発した。そしてその光景をみた美琴は目を疑った。
「ぐ…がっ…」
「うそ…有人!?…違う、有人と無人がごちゃ混ぜになってる!」
一体だけ中には人間がいた。他の機は無人だった。美琴の電撃により搭乗員は苦しそうに呻いている。
「まずいぞ御坂、全力でぶっ放して爆発でもさせたら中の人が死んじまう…くそっ、俺に出来る事はねえのか!?」
「アンタはオティヌス守ってなさい!…とは言っても、どの機体に人間が乗ってるかわからない以上むやみに本気は出せない状態で二人を守りながら、か…難しいこと要求してくるじゃないの!」
そうこうしている間に、駆動鎧の数はどんどん増えている。以前に『STUDY』と戦った時には及ばないものの、相当数の駆動鎧が現れていた。その駆動鎧が一気に3人のもとに駆けてくる。それをある程度弱めた電撃で牽制しながら美琴は考える。
(フェブリの時と違ってあの二人を自由に動かせない!このまま戦い続けてもジリ貧になる…どうすれば!?)
ーーーーその時、目の前の地響きとともに3人の周りの地面がめくれ上がった。周囲の駆動鎧が一気に空に打ち上げられ、激しく落下する。
「「「!?」」」
驚く3人が目にしたものはーーーーー
「本当に護りたいものがあるンなら躊躇ってンじゃねェぞ第三位。そンな覚悟で人を護ろうなンざできるわけがねェ。ーーーーったくあの『ガキ共』、戦うンじゃねェっつったり戦ってくれっつったり本当に面倒くせェ奴らだ」
白い出で立ちに真紅の瞳。学園都市最強の悪魔の姿だった。
今日の分投下です。
プロットの消費が予想外の早さなので前言撤回で隔日更新とさせていただきます、申し訳ない…
「一方…通行…!?」
「なんでアンタがここに!?」
「…?」
突如現れた一方通行を前に、呆然とする二人。オティヌスも目の前の男について疑問に思っている。しかし一方通行は気にした様子もなく、敵のほうを冷静に見ながら口を開く。
「説明は後だ、オイ第三位」
「な、なによ?」
「少しは頭使いやがれ。コイツらは緊急にプログラムされ、出撃させられたものだろうが。さっきからオマエをスルーして三下どもを狙ってる機体があンだろ。それは明らかに『敵を排除する』って簡単なプログラムを施された自動操縦の駆動鎧とは違ェ、人為的な動きだ。テメェがコイツらを守りに行くだろう、って確信があるからできる動きだ」
「っ…」
確かにさっきから、明らかに美琴ではなく上条やオティヌスを狙っている駆動鎧があると感じていた。
「…だがまァテメェは簡単に人を殺めていい立場にはいねェな。テメェと共闘するのは癪だが仕方ねェ、さっき言ったようにオマエを狙ってる無人の機体を潰しにいけ」
「癪なのはどっちよ、勝手に命令すんな!…でも今はそうするしかなさそうね!」
「まァ、死なねェように努力はしてやる」
「…っこの…殺すんじゃないわよ!!」
なんにせよ最強の助っ人であることには変わりない。そう考え美琴は一方通行との確執は一時胸の奥に仕舞って目の前の戦いに集中する。
ハワイ以来、再び手を組んだ怪物二人が、駆動鎧の元へ歩を進めていく。
圧倒的だった。有人の駆動鎧は一方通行がぶっ飛ばし、無人の駆動鎧も大抵は一方通行の攻撃に巻き込まれていた。美琴は一方通行が取りこぼした無人駆動鎧を電撃で無力化しているだけで、ほとんど仕事のない状態だった。
「アンタ本当に殺してないんでしょうね!?見境無さすぎるわよ!」
「あーうるっせェよ第三位。俺は殺してねェ。その後の攻撃に巻き込まれて死ンでいく奴らの面倒なンざ見れるか」
そう言いながらも、一方通行はきっちり一人も殺さず無力化するだけにとどめている。当然敵をふっとばす位置まで計算しているので自分で言ったようなことになる心配はないが、そんな素振りは表に出さないのが一方通行である。
「アンタねぇ…!」
「もう有人の駆動鎧は粗方片付けた。後はテメェで何とかしやがれ」
一方通行は美琴と駆動鎧に背を向け、上条とオティヌスの元へ向かう。
「え?うわっこの…!一方通行!!」
美琴の叫びを完全に無視して上条の目の前まで歩いてきた一方通行。
「一方通行…」
「…二十三学区に10032号を筆頭に妹達(シスターズ)がいる。あいつらが超音速旅客機の設定をしているらしい。それに乗り込ンで逃げろ」
「御坂妹が…?ていうか一方通行、何でオマエや妹達が俺達の脱出に協力しているんだ!?オマエは『あの場』にいなかったのに何で全部知ってる風に話しているんだ!?」
一方通行に詰め寄る上条。一方通行は何も事情を知らないのにまるで上条達の置かれている状況を知っているかのように振舞っているため、上条はかなり混乱していた。
「あァ、その話をするために俺一人でここに来たンだよ。超電磁砲に聞かれたら面倒くせェことになるだろうからなァ」
「御坂には話せない?」
一方通行の言っていることがよくわからない上条は疑問が増えるばかりだ。
「オマエも、会ったことがあンだろ。ミサカネットワークの『総体』ってやつに」
ーーーーーーーどこかで、生者と死者が混ざった思念体が呟いていた。
(あ、一方通行にお姉様とも話をしたこと言うの忘れてた/return。あの人また余計な気遣いするんだろうな/return。てへぺろてへぺろ☆/return)
今日の分の投稿です。
オッティちゃんマジ空気。あと俺の嫁。
「ミサカネットワークの『総体』…!?一方通行、アイツを知ってるのか!?」
「俺ン所に来やがったンだよ、『あの人とお姉様がピンチだから助けて』ってな具合でなァ。言いたいことだけ言ってさっさと消えやがった。その反応だとオマエも心当たりがあるようだな」
「…ああ、話すと長くなるが俺も昔…いや、最近?そもそもここに戻ってきたってことはそういう概念にないのか…?」
急にぶつぶつ呟き始めた上条を見て、怪訝な顔をする一方通行。
「戻ってきた?なンだ、オマエ時間旅行でもしてたんですかァ?」
「ああ、いや、別に大したことじゃないさ。と、とにかく俺はそいつと会って、実際に喋った。俺に…戦う勇気をくれた」
オティヌスの方を見ないように努めて言った上条だったが、その気配はオティヌスまで伝わってしまっていた。
(なるほど、よくわからん動きをしている奴がいると思ったらそういうことか。どうやったか知らんがソイツは私の作った虚構世界でも私の仕組んだ通りに動かなかった。そしてこの男に戦う力を与えたわけだ)
「…確かにこの話は御坂には出来ないな。あいつは妹達関係の事になると考え過ぎちまう」
「あァ、どうせまたクローン計画がどうだの喚き始めるに違いねェ。鬱陶しいだろォ」
「…いや、鬱陶しいとかそういう意味じゃ…あれ?そういやなんで『総体』は御坂も戦ってるって知ってたんだ?あの場には妹達はいなかったぞ?」
「オマエら壁を越えて入ってきたンだろう?だったらその光景を何処かで見ていた妹達がいたンじゃねェのか」
「ああ、なるほど。それなら合点が行くな。『総体』なら妹達が見たことも全部わかってるんだろうしな」
「え?違うわよ。私に直接アクセスしてきたのよ」
「そうか…それなら知ってるはずだわ。直接御坂と喋ってたのか」
「「……御坂(超電磁砲)!?」」
部活のプチ合宿みたいなのに行くので金土日は投稿できません。
ご了承ください…
「え、御坂お前敵はどうしたんだ?」
「無人ってわかってる駆動鎧なんか余裕よ、手加減しなくていいんだもん。ほれ」
御坂が指さした方向には、黒焦げの山。超電磁砲を放ったのか、真ん中に穴が空いている機体もいくつかある。
「オイ第三位、『総体』にアクセスされたってのはどういうことだ。脳波パターンが同じとはいえミサカネットワークがオリジナルに干渉できるなンざ聞いたこともねェぞ」
「ああ、それね。私、大覇星祭の時に無理矢理ミサカネットワークぶち込まれてんのよ。それでアクセスログがあったから干渉できたってワケ」
「あ、あの時か。でも御坂、あの時お前暴走してなかったか?」
上条は実際に戦ったこともあるので美琴の発言に疑問を感じていた。船の墓場(サルガッソー)でもし美琴とミサカネットワークのやりとりがあったならば暴走しているはずだが…
そんな上条の疑問を読み取ったのか、美琴が船の墓場(サルガッソー)で起こった出来事をかいつまんで説明していく。
「…そんなことがあったのか。また俺を助けてくれたのか…」
「…ンなこと『総体』の口から全く聞かされてねェぞ…」
美琴の話を聞いて、二人はそれぞれのリアクションを取る。そこで上条はふと疑問に思ったことを聞いてみる。
「ってかなんで御坂は俺を助けようとしたんだ?『総体』が頼んだって言っても身体動かすのはお前だし、明らかにやってることは悪なんだぞ?」
そんな上条の問いに対して、美琴はふと思い返したように訊き返す。
「その前に、アンタがオティヌスを助けたのは一体何でよ?急に走りだしたと思ったら…」
「ん?それはだな」
オティヌスが問いに対して答えようとすると慌てた様子で上条が止めに入る。
「そ、それはまた後でゆっくり話すよ。時間もないし。御坂を信じさせるの長くなりそうだし…」
最後の一言はほとんど聞き取れないようなものだった。ハワイであれだけ非科学的なものを見続けても信じなかった美琴である。多少は免疫がついたとは言え信じこませるのは至難の業だろう。
「オイ、魔術関係か?」
「…ああ」
「そォか」
一方通行が上条にだけ聞こえる声で訊いてきたので簡潔に返しておく。
そのまましばらく進んでいくと…
「オマエ達こっちだ。この発射場で妹達がデンマーク行きの超音速旅客機を準備しているはずだ」
一方通行に導かれて入った場所には、忌まわしき(上条限定)超音速旅客機が設置されており、その近くにある制御室のような場所で妹達が二人、機械をいじっていた。
「ホントに妹達は全員見方なんだなぁ…ってか何でデンマーク行くって知ってるんだ?」
「私がオティヌスの服を買ってる間に電話したのよ」
「おお…準備いいなぁ…」
「くっちゃべってる暇はねェぞ。一応妹達を外に何人か見張りで付けてあるが敵が来ない確証はねェ。早く乗り込め」
「ん?お前は来ないのか」
「…俺にはテメェ等より守ってやんねえとダメな奴がいるんだよ。少なくとも自分たちで戦えるテメェ等よりはずっと弱ェ奴を」
「…そうか、ありがとうな、一方通行」
「…アンタに感謝するのは癪だけど、多分アンタがいなかったら守り切るのは難しかったと思う。だから…ありがとう、一方通行」
「ふン、『守りきれなかった』って言わねェのが最後のプライドって奴かァ?」
二人は一方通行に頭を下げる。一方通行は美琴から素直な感謝の言葉が出るのに面食らったが、それを表情には出さずに軽口を叩いた。
「まァ良ィ、第三位。ーーーーーあいつらの夢はお前に託されたンだ。しくじるンじゃねェぞ」
「フン、言ってくれるじゃない。全員生きて戻って『総体』に会ってやるわ!」
そう告げながら超音速旅客機に乗り込もうとしたーーーーーーー
ズガアアアアアアアァァァァァアアアアアアン!!!!
ーーーーー瞬間。入口の方から凄まじい轟音がした。音の方を見ると、閉めていたはずのシャッターが無理やり壊されていた。そして倒れている4人の妹達。その傍らに立っているのは、長身の男。
「…っ!?なに…が…!?」
男はゆっくりと美琴達のところへ歩を進めながら喋る。
「やっと見つけたぜ、クソ野郎。よくも『俺』を踏みにじって丸めてくれやがったな」
その男の言葉は、魔神に向けられたものだった。
「!?貴様はあの時潰したはずの…」
「あれは『俺』であって『俺』じゃねえ。そもそも『俺』の定義が自分でもわからなくなってきたとこだ。潰した相手がのこのこ現れて驚いたか?そんなこと常識で考えて、有り得ないと思ったか?だったら一つ、大事なことを教えてやる」
男は両手を広げ、嘲るように嗤いながら言い放つ。
「俺の未元物質(ダークマター)に、常識は通用しねえ」
お待たせしました。
楽しみにしてくれている方がいるだけで感無量です。
では、おつぃぬす
「…チッ、クソッタレが邪魔しやがって」
突如現れた学園都市第二位。一方通行は何も事情は分からないが垣根がオティヌスを狙って現れたことを察して舌打ちをした。
「な、なんでお前が俺達を襲うんだ!?お前は味方じゃないのかよ!?」
以前『カブトムシ』の方の垣根と共闘したことのある上条だがそんなことには気付かず、かつて味方だったはずの男の豹変に戸惑っていた。
「だ、誰よアイツ…?」
「…学園都市第二位だ。能力は未元物質(ダークマター)。簡潔に言うとこの世に存在しない物質を生み出しこの世の物理法則に従わねェ攻撃をしてくるクソ野郎だ」
「第二位…ダークマター…こいつが…」
初めて第二位を目にした美琴は冷や汗を流した。目の前の男から放たれる威圧感は尋常じゃない。一方通行にも匹敵するレベルだ。
「テメェ…クソッタレの方の第二位かァ?」
「ああ?俺がなんだろうと俺だろうが。強いて言うならまあ、悪意の抽出体ってやつかぁ?あん時みたいに精神的に崩してやろうか、一方通行」
垣根は一方通行を見下すようにニヤリと嗤う。そして背中からメルヘンな羽根を広げると、何やら白いものが人の形になっていく。
(!?あの野郎、また…イヤ、今となってはアイツが未元物質で妹達の姿を作っても倒せる…はずだ。問題は…第三位の目の前で妹達の姿をしたモノを倒してしまうことだなァ)
美琴にはもうあの悪夢を見せるわけにはいかない。もう妹達を、例え妹達ではなくても、そんな場面を見せてはいけない。そう考えた一方通行は…
「おい第三位、オマエは三下どもと一緒に超音速旅客機に乗り込め!すぐにでも発射させるぞ!」
「っ!?でもアンタ、第二位っていったらアンタでも苦労するでしょ!私が加勢したほうが!」
「…いいから乗れ。テメェが来ても足手まといなンだよ」
ドスの利いた声に思わず一歩引いてしまう美琴。いつもなら言い返しているところだが一方通行の声と表情にはそれを言わせない何かがあった。
「死ぬんじゃないわよ。アンタが死んで悲しむ妹達がいるんだから」
「俺を誰だと思ってやがンだ。学園都市第一位舐めてンじゃねェぞ」
「おいおい、感動の別れごっこの最中悪いんだがよ、発射なんて出来ねえんだわ。制御室には今さっき未元物質を散らせておいた。俺の気分一つであいつらはオジャンだぜ?」
「アンタなんてこと…!!だったら速攻で倒して!」
「それでもダメだ下がってろ第三位!!!」
怒りで飛び出しそうになった美琴を一方通行が言葉で押しとどめる。そのまま上条に、気付かないようなほんの一瞬目配せすると垣根に向き直った。
「コイツは俺が倒す。オマエは魔神とやらを看病してやがれ」
オティヌスの顔色は既にに悪かった上に垣根の登場という予想外のショックがあったためかもう立っているのもやっとという様子だ。美琴がオティヌスの近くまでやってきた時には一人でふらふらしていた。
(一人?あいつはどこへ…?)
「アンタとりあえずシートに座りなさい」
周囲を見渡しながらも美琴はオティヌスの看病に入る。
「…ああ。………おい、御坂美琴」
「なによ?アンタ喋る元気はあるの?」
「この程度なら問題ない。
ーーーーーーーーーーーーー少し、昔話をしてやろう」
美琴が超音速旅客機の中に入ったのを見て、一方通行は戦闘のために集中力を高める。
「まあ、俺様も鬼じゃねえからな、俺を倒せるまであのクローン共には手を出さないでおいてやる。まあ結局、お前は俺には勝ててねぇしな。あの時も第四位と不慮の事故があったから俺は一度崩れた。つまり俺はお前には負けてない」
「長々と…演説がお好きですねェクソメルヘン」
「ああ?そもそもお前に殺せるのかなぁ?クローンを」
垣根の前でうごめいていた未元物質が、妹達を形どった。
「フン、テメェはまた、チンケな悪党になっちまったなァ。最初に叩き潰した時の方がまだしっかり悪党やってやがったぜ」
「お前の美学なんか聞いてねえよ。とりあえずお前はここで死ね!!」
「…できるンなら、やってみろ」
学園都市第一位と第二位。最強の怪物同士が、三度交わった。
今日の分完了です。
あ、昔話ってのは言葉のあやで上条とオティヌスの今までのことを話すだけで自分のことは全く話す気無いです。
まだ美琴のことは奇妙なやつだな…くらいしか思ってないので。
そのシーンは全カットの予定なんで補足しときます
すいませんゼミでアホみたいにめんどくさいレポートの課題が出やがったので少し時間をください、一週間研修にいかないといけないので。
ほんとに申し訳ないです
轟!!と一方通行が背中から4本の竜巻を出して突撃する。対する垣根は妹達の姿をした未元物質を一方通行に突っ込ませる。交錯する刹那、一方通行が突如方向を転換し垣根の方に背中の竜巻の内2本を左右から叩きつけようとする。垣根は背中の羽を周囲に展開し、その攻撃を防いだ。
「ハッ、テメェ結局妹達は傷つけられないんじゃねえか!!そんなんで俺に勝とうなんて思っちゃてんのか?愉快なこったなぁ!!」
嘲笑うように垣根は次々と妹達の未元物質を生成し、5体ほど垣根の周りを守るように囲ませる。
「これでテメェは手出しできねぇなあ、どうやって俺と戦うんだ?」
「……」
一方通行は俯いている。
「オティヌスを差し出すんならもう何もしねーよお前には。しかも制御室のあいつらがボタンを押そうとした瞬間に、未元物質の力で妹達を殺す。だから時間稼ぎも意味無いんだ」
「…くっ」
「ほら、わかったか第一位。さっさと…」
「くっ、くはっ、ぎゃはっ、かかかかひゃひゃひゃ!!!!!!!」
突如笑い出す一方通行。そしてーーーーーー
ゴウッ!!!!!!!!!
「な、何!?お前…!?」
一方通行は高速で移動すると、背中の竜巻で周りの妹達(未元物質)を薙ぎ払った。
「あのなァ、オマエ、バカだろォ?そりゃァ俺だって妹達の姿をしたモンを傷つけるのは抵抗があるがなァ、すぐ近くに『本物の妹達』がいて、姿も存在も感じてるのに偽物と割り切れねェとでも思ったのかよォォォォォォォォ!!!」
そう、1対1の勝負ならまだわからなかったかもしれない。でもすぐ近くに妹達がいるのだ。その『本物』は未元物質製の妹達などとは比べ物にならない存在感があり、一人一人『生きて』いるのだ。よって、一方通行は単なる未元物質の塊と判断することができた。
「…くそっ、だったら正面からブチ破ってやるよ、クソ第一位が!!!」
翼をはためかせ突進する垣根。
(未元物質には太陽光線の時とは違う法則でーーー空気中の酸素に未元物質を混ぜてある。だから一撃目は必ず通る!!)
しかし。
未元物質の攻撃は、一方通行の体の表面に触れた瞬間跳ね返って垣根の体に直撃した。
「ごっ、ぐふぁ!?!?!?」
まさか一手目を反射されるとは思っていなかった垣根は自らの攻撃をモロに喰らった。自分の能力故に目立った外傷はないが、衝撃にうたれて地面を転がる。
「な、なんで…!?なんでてめぇいきなり『反射』できてやがんだよ!?」
「だーかーらァ、馬鹿なンですかァ?学園都市第二位のくせしてよォ。さっき俺は未元物質を薙ぎ払ったンだよなァ?だったらもうオマエの未元物質が前とは違うってのも分かってるに決まってンだろォが」
「この野郎…だったらこの場の全部をふっ飛ばしてやるよ!遊んでやってたが何もてめぇとの勝負に拘る必要もねえ、俺はオティヌスを殺せれば別にそれでいいんだからなあ!!」
垣根の背中の翼が一気に広がり、光を放ち始める。
「…どォしよォもねェクソッタレだな、『未元物質』。それはただの癇癪じゃねェか。やっぱりオマエは悪党の器じゃねェよーーーーーーーー三下ァ!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」
後ろから突然上条が垣根に飛びついた。右手で翼を触れるや否や、翼は霧散した。
「なんだてめぇ…!?これが幻想殺し(イマジンブレイカー)!?いやそもそも一方通行が他人を頼っただと!?」
一方通行が他人の手を借りるなんて、垣根帝督にすれば信じられなかった。誰かを守ることはあれど共闘なんて聞いたこともない。過去の第四位が乱入してきた時のとの戦闘も、共闘という雰囲気ではなかった。
「それがどォかしたかよ第二位。オマエがふらふらしてる内に俺は学ンだンだよ。護る為なら第一位のプライドなんざどこにでも捨ててやる」
「お前は一体何者なんだ?この前は一緒に戦ってくれたじゃねえか!なのになんでオティヌスを殺すとか言ってんだよ!?お前も何かを…誰かを守りたかったんじゃねぇのかよ!!」
過去とのイメージが違いすぎる垣根に対して声を荒げる上条。
「いや待て三下。コイツはオマエが会った第二位じゃねェ。垣根帝督の『悪』を凝縮したような存在だ、オマエの共闘相手は今もフレメア=セイヴェルンをせっせと守ってるこったろォよ」
「そ、そうなのか?」
「テメェ等…ならせめて制御室の妹達だけでも…何!?」
制御室からは、未元物質の力は感じられなかった。
「ああ、俺が全部消しといたよ」
「な…っ」
「時間稼ぎは意味あったみたいだなァ、第二位よォ」
一方通行は笑いながら一歩一歩近づいて行く。
「オイ三下。どっちでもいいンだが…オマエが殴っとくかァ?」
「いや、俺は裏方に徹しさせてもらうよ。いつかのお前の言葉を借りると、今回の主役は俺じゃない」
「そォか。じゃあなーーーーーーー『未元物質』」
「くそっ、くそおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
そこからはもう、一方的な展開だった。
「け、消し飛んだぞ…やり過ぎじゃないか…?」
「あァ?やれっつったのオマエだろうがよォ。それにアイツは今までオマエが戦ってきた奴等とは違って悪100%で出来てやがる。オマエの説教や拳で心が動くとか、そンな展開は絶対にねェ」
「そ…そうなのか。いや、でもありがとうな一方通行」
「感謝なンて柄じゃねェ。とっとと魔神とやらと第三位ンとこ行って来い」
「ああ」
そうして超音速旅客機の方へ歩を進める上条。すると中から二人が出てきた。二人の表情はかなり優れない。美琴は唇を噛み締め、オティヌスは少し申し訳無さそうな顔をしている。
「…?」
怪訝な顔をする上条に近づいた美琴は、静かに言葉を紡ぐ。
「…私はもう、アンタについて行けない…」
「お、おい御坂…?」
「アンタの隣にいるのは、私じゃ…ない」
お待たせしました…やっと投稿できました。
これからはしっかり隔日更新…できたらいいなぁ
「な…っ!?なんでだよ…?」
突然の美琴の宣言に戸惑いを隠せない上条。
「どうしたんだ御坂…?俺と一緒にオティヌスを守ってくれるんじゃなかったのか!?『総体』にも頼まれて…」
「『俺と一緒に』…ね。そりゃ私だってアンタと肩を並べて世界と戦ってやろうって思ってたわよ。あの子達の思いも全部一緒に背負って…」
「じゃあ、なんで…!!」
「全部聞いたわ、アンタ達のこと。あの時、あの場所で…何があったのか」
「!?」
「待って…すこし待って。言いたいことが…考えてることが全然まとまらない…」
それきり美琴は下を向いてしまった。
全部聞いた。つまり美琴は知ってしまったのだ。自分とオティヌスの戦いを。あの地獄のような世界のことを。美琴は命がけの戦闘や悪意に囲まれた経験があるとはいえ、純粋な中学生だ。ただでさえ触れる機会のない『魔術』を間近で何度も見て、それを受け入れるのにも精神を消耗させているはずだ。さらにそんな話を聞かされて、まともな感情でいられるわけがない。
「おいオティヌス!!なんで話した!?御坂から頼まれたのかよ!?」
「…いや、私からだ」
「なんで…!!お前には見てわからなかったのか!?御坂はまだ魔術にも詳しくない、今までほとんどの時間を明るい世界で生きてきたんだ!!あの戦いのことを話したら…」
隻眼の魔神は顔を上げ、色々な感情がない混ぜになった表情をする。そこにあるのは謝意、困惑、そして…少しの落胆。
「私は多分…御坂美琴にお前と似たものを感じ取っていたんだろう」
「俺と御坂が…似ている…?」
「本質的なところだ。感情で動くだけかと思えば案外先のことを考えていたり…いやもっと深いところだな。とにかく似ていたんだ。だから…私は期待してしまったんだ。御坂美琴なら、上条当麻に似ている御坂美琴ならば、『理解者』になってくれるんじゃないか。そう思って私は、あの子に全てを話した…」
「違う…違うに決まってんだろ!!俺だって何回かわからないくらいお前にやられて、殺されて、やっとお前のことを理解したんだよ!!いきなりそんな『はい、何回も殺してあいつは何回も殺されてお互い理解しあいました』なんて話をされたら…それじゃあアイツから見た俺達は本物のバケモノじゃないか…っ!!」
烈火のごとくオティヌスを責めたてる上条。オティヌスもこの件に関しては責任があるのを自覚しているのか、何も言い返してこない。
「…実際俺達は相当なバケモノなんだろうよ。逐一全部覚えてないとはいえ普通の人間よりは遥かに長い時を過ごしてる。でもそれは体感した奴にしかわからない感覚だ。俺だって自分の立場じゃなきゃ簡単には信じなかったと思うよ。だから…」
「そうね」
俯いていた美琴が口を開く。
「私には、アンタ達がもうわからない。世界を滅ぼした?世界を創った?何千回殺された?何万回殺された?何よそれ、ファンタジー?もうわからない、何が何なのかわからない…っ!」
「お、おい御坂…」
頭を抱える美琴。上条もかける言葉が見つからず、手を伸ばしては引っ込めてを繰り返している。
「…ねえ、一方通行」
「あァ?」
唐突に美琴が一方通行に話しかける。
「私がもし、私の代わりにアンタがこの二人を守ってって頼んだらアンタは受け入れる?守り切る自信はある?」
「おい御坂、なにを!!」
「いいから。答えて。当然打ち止めや番外個体は私が守ると仮定して」
「…ンだよその質問は。オティヌスから何を聞かされたか知らねェが、『総体』に頼まれたのはオマエだろうが。なら最後まで全うしやがれ。俺がオマエの立場なら、守ると誓ったもンは死んでも守り抜く。自信とかどうとか関係ねェンだよ」
「…そう、凄いわね、アンタ。でも私は…そこまで強くない。もうこれ以上わけのわからないことに巻き込まれたくないのよ!」
「…?」
美琴の叫びを聞いて、上条は疑問を感じていた。いくら精神的な摩耗が激しいとはいえ、御坂美琴は、あんな風に背負った使命を投げ出すような少女だったか?悲劇の実験を一人で止めようと自殺まで決意した少女が、自分の身を案じて妹達の頼みを投げ出すような行動をするのか?おかしい。なにかがおかしい…
「おい第三位。それ本気で言ってやがンのか?だったら消し飛ばすぞクソッタレ!!!」
「待て一方通行!!」
激高して美琴に詰め寄ろうとする一方通行を上条が止める。そして右手を美琴の頭に載せる。すると、何かを壊したかのような音と感触。つまり美琴は何らかの精神干渉を受けていたことになる。その主は当然…
「おいオティヌス。お前御坂に何をした?」
オティヌスに話を振る上条。オティヌスは上条に視線を合わさずに話す。
「…これ以上私達の問題に踏み込ませてはいけないと感じた。そいつは…御坂美琴はこのままだと本当に死ぬぞ!あの話を聞かせて私達と共に戦う意志が御坂美琴のなかでわずかに揺らぐのを感じた。そこにある感情を増大させただけだ、それならこの戦いから自らの意志で去ったことになる。御坂美琴自身で決めたことならお前も文句は言わないだろうと…」
「馬鹿野郎!!」
上条が吠える。あまりの剣幕に誰も口を挟めない。
「お前はまだ、人間を知らなすぎるんだ。下手な芝居までうちやがって…御坂は…御坂はそんな奴じゃねぇ!あの世界の話を聞いておかしいと思うなんて当然なんだよ!普通のやつならすぐにでも逃げ出したいと思うんじゃねぇのかよ!それでも御坂は『わずかに揺らいだだけ』なんだろ!?まだ中学生の女の子が、だ!!それだけ、この戦いに覚悟を持って臨んでくれてるんだよ!!御坂は自分の保身を考えるようなやつじゃない、それはもう十分理解してんだ!!2万人の為に、たった一人で学園都市と戦うような命知らずな奴なんだよ!!その2万人の妹からの願い事を反故になんて出来るはずない、どうしようもなく優しい女の子なんだ!俺は御坂に助けて欲しいんだよ!!俺一人でお前を守るなんて言ってたけど、ホントはメチャクチャ不安だった。そこで御坂が来てくれて、俺がどれだけ安心したか…どれだけ嬉しかったか、お前も理解してたんじゃないのか!?」
「…私が理解できるのはお前のことだけだ、第三者が絡んだ感情の起伏までは…っ」
そう言って黙りこんでしまうオティヌス。しばらくそっとしておくことにした上条は、美琴に向き直る。
「…なあ御坂、俺を…俺達を助けてくれよ」
上条がそう言った瞬間、美琴の両目から涙が溢れだした。
「え!?お、おい御坂…」
「なによ…なによそれ。アンタ…っ。まるで私が揺らいだのは私がアンタをバケモノだと思ったからみたいじゃない。そんなわけない、ましてや自分の命が惜しいなんて考えもしなかった」
「じゃあ、何で…?」
「敵わないと思ったから」
一言。
「私はあの時、白いのと一緒にアンタに『力を貸してくれ』って言われた時、震えるほど嬉しかった。ああ、私は必要とされてるんだって。私がアンタの味方で、よかったと思われてるんだって」
「…っ」
そのフレーズには聞き覚えがあった。いつかの鉄橋で、自分が涙を流す目の前の少女に告げた言葉。
「だから私はね、『総体』とか関係なく、アンタが本気でヤバイって気づいた瞬間動いてたと思う。もちろん今はあの子達の分も背負ってるわよ?でも私は、私がアンタを助けたいからーーーーー御坂美琴にとって、上条当麻は大切な人だから、今こうやって戦ってる」
衝撃だった。その言葉を聞いた瞬間、上条は泣きそうになっていた。心配してくれてはいるだろうが、『総体』に頼まれた使命感が大部分を占めているのだろうと思っていたからだ。ここまで自分を想ってくれていることを、言葉にされて初めて理解したのだ。
美琴の話は続く。
「でも、あんな…何億年も一緒に過ごして、殺し合いの中でお互いをどんどん理解していって…そんな人に、私が勝てるわけないじゃない…っ!私はアンタの隣に居たい!どんな敵が来たって、障害があったって、二人で一緒に乗り越えて行きたい!行きたかった…のに…船の墓場(サルガッソー)から逃げてくるときも、アンタ達二人は何も言わなくても解り合ってて、道中もずっと、アンタはオティヌスのこと気にしてて、そしてあの話を聞いて、ああ私はここには入れないんだって。そう思ったから…」
「御坂…」
「ねぇ、アンタは今でも…私の味方で良かった、って、思ってる?」
今日の分投稿です。
新約十巻までもう少しですね。
自分は試し読みしたんですがもうワクワクが止まらない…
まあオッティちゃんは美琴を気遣っただけで特に悪いことはしてないんですけどね。
単にこれから拗ねるオティヌスが書きたいだけという裏話。
泣き笑いで訪ねてくる御坂美琴は、どうしようもなく儚くて、不安げで…可憐で、綺麗だった。
オティヌスの前だということもあり、上条は抱きしめたくなるような衝動を堪え、左手を美琴の頭に乗せて少し引き寄せるようにする。電撃が飛んでくることなんてないという確信があった。
「あっ…」
簡単に引き寄せられた美琴の身体は軽く、支えてあげなければすぐに倒れてしまいそうだった。
「前も言ったろ、御坂。俺はお前の味方で、心から良かったと思うよ。こんなに俺の身を心配してくれる奴なんて、他にはいない」
「…アンタの場合はそうでもないのよ」
「ん?いや、まあそれでも、だ。なんていうか…お前の素直な気持ちを聞いて、俺は単純に嬉しかったんだ。正直言って、そんなに想われてると思ってなかった。だからびっくりもしてるし、いろいろ考えなきゃいけないからさ、この場ですぐにお前の気持ちに答えるわけにもいかないんだけど…今から言うことは俺の本心だ。”美琴”、これからも俺と一緒にいてくれ。俺の隣で、戦ってほしい」
「っ…ばか…そんな恥ずかしい台詞、よく言えるわね…うっ…えぐっ…」
上条の嘘偽らざる気持ちを聞いてホッとしたのか、美琴は嗚咽を漏らす。もういいだろうと、上条は美琴を抱きしめた。美琴が泣き止むまでずっとそうしていようと思った。
「…ンだァ?この状況は」
一方通行は呆れ果てていた。上条が『何か』を破壊してから、二人のやりとりを眺めていると展開されたのは歯の浮くようなラブコメ。こいつらは時間がないことを理解しているのだろうか。
「全くだ。つい世界を滅ぼしそうになるな。あの女狐…」
隣には何時の間にかオティヌス。
「いや待てさすがに第三位が気の毒だろォが」
「冗談だ。どうせ上条当麻は『目の前に泣いている女の子がいるから抱きしめた』んだろう」
「…第三位も報われねェ奴だなァ」
実際そういうわけでもないのだが。他人が絡むと理解力も半減するオティヌスであった。
「…なァ、魔神さンよォ。オマエは『人間』に戻ったとして今まで犯した罪を償いきれると本気で思ってンのか?」
「思ってないさ。自分の無力を証明して、それでも赦されなければ、一生かけて償い続けるしかない。あの男と交わしたのはそういう約束だ。まあお前と戦ってもおそらく負ける程度には既に弱っているがな」
「…まァ俺は事情を知らねェし、断罪は魔術の奴等にでも頼むンだな。…あのガキ共にも被害が及びかけたのはいただけねェがなァ」
「相変わらずの過保護っぷり/return。私達だって少しは自立し始めてるのよ/return」
「…るせェな少なくともオマエ等の司令塔様は自立なンか出来…あァ!?」
「やっほう/return。総体ちゃんだよん☆/return。見送りに来たんだけど…展開的にあっちに入りづらかったからとりあえずこちらにご挨拶/return」
唐突に現れたのは、御坂10032号の姿を借りた、ミサカネットワークの『総体』だった。
「…ほう」
「あ、アンタがオティヌスね/return。初めまして、かな?/escape 余計なことして上条ちゃんを立ち直らせた張本人です☆/return」
「…もうどうでもいいさ。なるほどな…死者と生者で『一つの大きな意識』か。それならあの世界で勝手に動けたのも納得だ」
「…オイ、そんなことより『総体』、あの二人に話しかけたいンなら早くしろ、そろそろマジで追っ手が来るぞ」
「えーミサカあのラブコメに突入する勇気ないー/return。一方通行、行ってきてよー/return。」
「チッ、それこそ俺のキャラじゃねェだろォが…」
などといいながら二人の元へ歩を進める一方通行。結局妹達の頼み事には弱いのであった。
ちょっと短いですが今日の分投稿です。
やっとラブコメが書ける…!最初はもっと道中でラブコメ入れようと思ってたのにテンポ意識してたら真面目になってしまったのでこれからはすこし明るい雰囲気も入れていこうと思います。
嫉妬オティヌスちゃんはやく書きたいよう
「オイお二人さン、いつまでそうしてる気だァ?」
「「!?」」
急にかけられた声に、我に返る二人。もうとっくに美琴は泣き止んでいたのだが、なんとなく雰囲気が心地よくて二人は抱き合ったままだった。
「い、いや別に上条さんはあのその美琴が泣き止んでないというかまだ不安げだったというか決して美琴の体小さいなーとか安心するなーとかそういう感情を抱いてたわけでは!!」
「そ、そうよ泣いてるのをアンタやオティヌスに見られたくなかっただけでやっぱり結構逞しいなーとか安心するなーとか思ったり思ってなかったり!?」
「うるっせェよ惚気話なンざ聞きたくねェっつの。オマエらと話したい奴がいるンだとよ」
一方通行が親指で指さした先には、「やっほー」といった感じで元気に手を振る『総体』
「御坂妹?…いや、『総体』か」
「アンタ…」
「上条ちゃん、お姉様、久しぶりね/return。ああ、別にお姉様はそんな久しぶりじゃないわね/rerurn」
「お前にはあの時の礼をしてなかったな、ありがとう。お前のお陰で今の俺がある。美琴や一方通行、みんなの協力を得てオティヌスを助けられたんだ」
「いやまあ私が上条ちゃんを叱咤してあげた流れでなぜかオティヌスを助ける事になってるのは完全に予想外なんだけどね/return」
「私からもよ。アンタのお陰で私が後悔する選択をしなくて済んだわ」
「いやさっき私が言わなくても助けたって言ってたじゃんお姉様/return」
頭を下げる二人に、気恥ずかしいのか軽口で返す『総体』。
「こうなったらさ二人共、最後の最後まで二人でオティヌス守ってやんなさいよ/return。私りこうして表に出てくるのもあまり良くないから影から見守っておくわ/return」
「ああ!」
「うん!」
「さ、超音速旅客機乗りなさい/return。追っ手が来るわよ/return。」
「…アンタはついてこれないの?」
「うーんやっぱりね、私がずっと表に出てるとミサカネットに負担がかかるのよ/return。そこの過保護なお父さんに怒られちゃうわ/return」
「…まァ打ち止めに負担かけすぎるンなら喜ばしい事態ではねェなァ」
「だからまあ、私は影から見守ってるってことで/return」
「…そうか、本当にありがとうな『総体』、一方通行」
そう上条が締めて3人は超音速旅客機に乗り込もうとする。その直前、一方通行が声をかけた。
「オイ、オマエ等二人はガキ共の中でも特別な存在なンだ。…あいつらを悲しませるような結果になるンじゃねェぞ」
「「…」」
二人は返事をせず、頷いてみせた。一方通行も、それでよかった。こんどこそ3人が完全に乗り込む。
「さあ、発射させますよ、とミサカは10032号の体を取り戻したことを確認しながら制御室の10334号に指令を送ります」
「了解しました、とミサカは別れを惜しみながら発射ボタンを押します」
一気にカタパルトから射出される超音速旅客機。それを見送りながら一方通行はあることが気になっていた。
(そォいや、あの白いシスターやらバードウェイとかいうのはどこにいやがんだァ?あいつらなら味方になってくれそうなもンだが)
「逃げられたか!」
「でもあいつら何で学園都市へ!?」
「…たぶん、オティヌスの魔神の力を無くして、『ただの人』に戻すつもりなんだよ。デンマークのミミルの泉、そこから片目を取り出すことで」
「…デンマーク、か。ならば、私達も向かおう…と言いたいところだが、移動手段がないな…」
「やつらは多分、学園都市の超音速旅客機とかいうメチャメチャな機械使ってデンマークまで一時間位でいっちまいますよ?」
「仕方ない、『必要悪の教会(ネセサリウス)』にでも殺害を依頼するか」
「…!!ちょっとまってばーどうぇい!とうまを殺す必要なんて…」
「誰が上条当麻を殺すといった、オティヌスを殺すんだ。科学サイドのミサイルなんて食らったら上条当麻も死んでしまうだろう。小回りが利く魔術サイドの方が良い。魔術なら上条当麻の右手があるかぎりそう死ぬこともないだろう」
「短髪は?」
「短髪?ああ、御坂美琴か。正直あいつはよくわからん。なぜあそこでオティヌスたちを庇うような行動に出たのか…元々オティヌス側だった可能性は?」
「それはないでしょうね。御坂美琴はガッチガチの科学脳ですし、正義感も強い。オティヌス側につくことは無い、と思います」
「短髪が当麻の側にいたら、とりあえず安心なんだよ。短髪はあれでもすっごく強いんだよ。それに…とうまを守るって約束してくれた」
「それに関しちゃ同感だな。科学サイドは御坂美琴がいる限り手を出しづらいだろう。なんせ貴重な超能力者だからな。それに正面衝突でも負ける可能性もある」
「とにかく、イギリス清教に連絡だ。あそこは上条当麻とも特に強く関わっていたからな」
「………とうま。とうまは何を、しようとしているの?」
超音速旅客機内部ーーーーー
(…ってか私さりげなく告白した!?アイツは全然嫌がってなかった…わよね。ってことは両思い?いやいやいや冷静になりなさい、まだ答えは出せないってことは…保留!?でも…って私アイツに抱きついて…!?アイツの体、大きかったなぁ…ってちっがーう!!でもアイツも抱きしめてくれて…てことはやっぱり両思い?しかもアイツ美琴って呼んでくれて…いやいやいや…)
御坂美琴は冷静になって事態を飲み込み始めるにつれ、さっきまでの上条との一件がフラッシュバックしてきて軽いパニック状態になっていた。
(…やべえどうしようさっきのことがあったから妙に美琴を意識しちまう!美琴も多分恥ずかしがってるよなぁ…でも可愛いなぁ…ってオティヌスを救いに行こうって時に何を考えてるんでせうか上条さんは!!)
上条当麻は上条当麻で顔を真っ赤にしてもだえ苦しんで何かと戦っているような美琴を見てなんだか落ち着かない気分になっていた。いくら鈍感でもあれだけどストレートに感情を伝えられたら察するというものだ。
(…面白くない。なんだあの二人の雰囲気は。私がまるで邪魔者のようじゃないか。小娘め、『理解者』である私を差し置いてイチャイチャしよって。理解度は私のほうが上に決まっている!!)
オティヌスは少々不機嫌になっていた。上条があまりこっちに意識を向けてくれないのだ。たまに話しを振ってくる程度で、ずっとそわそわしてチラチラ美琴の方を見ている。オティヌスとしては非常に面白く無い。
こうして、様々な思いが交錯する中、決戦のデンマークへと3人は近づいていくーーーー
第一部、完!!
とりあえず目標の学園都市脱出まで行けました。
デンマーク編は、書こうとは思ってるんですけど如何せん全くビジョンが浮かんでこないもので、新約10巻を呼んでから書こうと思います。
考えてた展開の圧倒的に上をいかれたので(当然)、かなりプロット練り直します、時間をください…
こんなんじゃ書いてて満足できないので。
新約10巻一言感想。みこっちゃんの正妻力パネェ…
超音速旅客機の中。
「…な、なあ美琴?」
「ふにゃっ!?な、ななななによ!?」
「い、いや!なんか暑くないかなーと思っただけでべ、別に用事は…」
「そ、そそそうね、ちょっと暑いかもしれないわね、アンタも顔真っ赤じゃない!」
あの時は一時のテンションに身を任せていたため、上条のことを名前で呼べなくなってしまった美琴である。
「あ、ああそうなんだよ、お前も顔真っ赤だぞ?なあ、オティヌスも暑いよな?」
「…暑いのは貴様等だ馬鹿共」
「えっ!?なんかどえらい不機嫌モード!?」
「うるさい!貴様等人目も気にせずイチャイチャしよって…」
(…ん?嫉妬?なるほどね、じゃあここは余裕のある女っぽく…)
「い、イチャイチャなんてしてないわよ!!私とコイツのどこをどう見たらそう見えんのよ!?」
「そ、そこまでムキになられると凹む…」
「い、いや、ちがっ…」
御坂美琴、思考と行動が全く一致しない乙女である。
「て、ていうかアンタはさっきからなにをそんなにそわそわしてるのよ?」
(なにっ!この人間、私と同じことを感じ取っているというのか?私もそう思っていたのだが…まさかコイツも『理解者』…!?)
「そりゃみこ…じゃなくて、上条さんは超音速旅客機でまともな旅をしたことがないんですよ。っていうか何でお前らそんな余裕なわけ!?俺なんて何回も乗ってやっと中でまともな会話ができる程度に慣れたというのに!!」
「ん?ああ、そうね、余裕ね」
「余裕だな」
みこ…の後が気になって仕方ない女性陣二人はその後に続く言葉を妄想するのに必死で上の空。どうしようもなくなった上条は諦めてシートに座っていた。
それからデンマークのどこへ向かうのか、という方針を決めたり上条の隣のシートを二人が争い、結局二人用のシートに上条を真ん中にして3人で座ったりして40分ほどが過ぎたとき。上条の全身に寒気が走った。
「…ッ!?」
ズガアアアアアアアアアアアアアアン!!と轟音がしたと思ったら、機体が真っ二つに割れた。
「な、なによ!?」
「この術式…まさか!?」
上条とオティヌスは瞬時に気付いた。見てしまったのだ。バーナーのようなものが機体を焼き切るのを。
「パラシュート!!早く開いて!!」
「クッソ…」
3人はそれぞれパラシュートを開く。しかし開いた刹那、地上から何かでパラシュートを撃ちぬかれる。
「あーもう、なんなの…よ!!」
美琴は磁力で超音速旅客機のドアを二枚剥がし、磁力操作で1枚を地面に叩きつけ、もう1枚に乗り、地上のドアと磁石の容量で反発させ、減速しながらドアを操作して上条とオティヌスを回収し、なんとか地上に降り立った。
「ひゅ~やるねえ、みこっちゃん。あんな芸当されちゃ、邪魔すんのも野暮ってもんだよな」
「アンタ…一端覧祭のときの…!?」
「よりにもよって…一番最初がお前かよ………ッ!!」
「雷神…トール…!」
「ノンノンノン。今は『全能神』の方のトールさ。さすがに『雷神』の方だとみこっちゃんと上条ちゃん同時に相手すんのはしんどいって」
まるでオティヌスが相手にならないと言っているかのような素振りに、オティヌスは違和感を覚える。
「あのなあ、オティヌスさんよ。アンタが万全なら、そもそもだれにも頼ってねーだろ」
「…っ」
「まあ安心しろよ、俺はここまでにぶっ倒してきた『グレムリン』の奴等みたいにアンタの憎悪抱いてるわけじゃねぇから。経験値が手に入ればそれでいいんだよ」
「なに?アイツ味方じゃないの?グレムリン倒したって言ってるけど」
「アイツは単なる戦闘狂だよ、戦うことしか考えてない」
「…じゃあ私達もぶっ倒そうとか考えちゃってるわけね…逆に目にもの見せてやるわ」
臨戦態勢に入る美琴を、上条が制する。
「まて美琴、まず俺が行く。『全能神』のトールは強すぎる。二人まとめて一瞬で殺されるかもしれない。そうなると誰もオティヌスを守る奴がいない」
「ちょ、ちょっとまってよ、それだとアンタが死ぬ流れじゃない!認めないわよそんなこと!!」
「いや、誰一人傷つくことなく…ってのはちょっと無理だが、みんなで笑って帰るっつー俺の夢は変わってねえよ。だからお前はオティヌスを守ってくれよ…ッ!!」
上条はトールに向かって突撃していく。
「いやいや上条ちゃん別に全員でかかってきてもいいんだぜ?…まあ1対1でくるのはいいけど、そんな一撃で終わらせるなんてつまんねえことしねーよ」
上条が気付いた時には、目の前にトールの姿があった。
「…なっ!?」
「ほらほら、もっとかかってきな」
「クッソォ…!!」
しかし何度やっても結果は同じだった。殴ろうとする動作に入る前に既に決着はついている。それが何度も続いた。まだ上条は一発もトールに入れることができていない。
「…何よアイツ、瞬間移動(テレポート)?」
「…まさか」
「オティヌス、なにか解ったの?」
「動いているのは私達を含めて『世界』の方だ。奴はおそらく…『上条当麻との戦闘』において必ず勝てる位置に『世界』を動かしている」
一方、上条も同じ結論に達していた。
(どうすんだよこんなもん…!幻想殺しとかそういうレベルじゃねぇ、これが『全能神』!)
ほとんど、いや100%勝ち目がない相手。しかし上条は戦い続けるしか無い。ここで時間を稼げば美琴とオティヌスは逃げられるかもしれない。そう考えて上条はトールに殴りかかるが、やはり気付いた時にはトールは上条の懐に入る。
その時。
「右手を上にかざしなさい!!」
ほぼ反射的に右手を頭の上に向けると、バチバチッ!!という音と衝撃。電撃がシャワーのように天から降ってきた。その電撃はそれぞれが独立しているため、上条が打ち消した物以外は消えずに降り注ぐ。つまり上条の至近距離にいたトールには直撃していた。
「ご、があああああっ!?」
「…美琴!!」
「オティヌスから聞いたわよ。『上条当麻との戦闘に必ず勝てる』のなら、私は関係ないわよね?」
「っみこっちゃん…やってくれんじゃん」
「全員でかかってきてもいいって言ってたのはアンタなんだし、まさか卑怯だなんて言うつもりないでしょうね」
「…ははは、おもしれえ。じゃあいっちょ二人纏めてぶっ倒しますか!!!」
今日の分投稿です。
トールがグレムリンを倒した理由は原作と同じです
その頃、学園都市第四位の原子崩し(メルトダウナー)、麦野沈利は浜面の車で第二十三学区に向かっていた。美琴一行が船の墓場(サルガッソー)から逃げた途端に美琴以外のレベル5全員に送られたメールの為だ。
『魔神オティヌスおよび協力者上条当麻、御坂美琴の殺害依頼』
(…ぶっちゃけオティヌスとかいうのには興味ないけど、第三位を倒せるのなら行くべきよねぇ)
麦野は特にオティヌスにも上条当麻にも頓着していない。頭にあるのは第三位との再戦、それだけだ。丸くなった(と浜面や絹旗によく言われる。自覚なし)今の麦野は美琴を絶対に殺そうなんて思ってはいないが、快く思っていないのも事実であって借りを返すためにぶちのめしてやろう、それで死んでも私は知らん。程度の気持ちだった。
「しかし麦野、二十三学区まで行って何するってんだ?どっか旅行でも行くの?」
「お前は黙って車走らせてりゃいいのよ浜面。まあプライベート旅行みたいなもんだから詮索禁止ー」
『アイテム』の面々には一切事情を話していない。おそらく止められるからだ。そのまましばらくすると、七色のカラフルな爆発とともに『何か』が空へ飛び出すのが見えた。
「何だ何だ?このへんで祭でもやってんのか?」
「さあね。そんなことよりそろそろ着くのかしらん?」
「ああ、もう二十三学区だ…って何だこりゃ!?」
二十三学区の飛行場は凄惨な状態だった。そこにある飛行機の殆どが翼をもがれて、とてもデンマークには飛び立てないような有り様だった。麦野と浜面は車を降りて飛行場の中を周るが、どこも同じだった。
(…なんだ?私がデンマークにに飛び立つことを見越した妨害?にしたってそんなことに何のメリットが?)
そう考えた時、麦野の携帯が震えた。そこには差出人不明のメールと、簡潔な内容。
『一方通行の反逆を確認。学園都市内での戦力では無力化は非常に困難と思われる。そこで飽く迄【交渉用】に打ち止め(ラストオーダー)という名の少女の身柄を確保されたし』
「…ああ?第一位が反逆?」
「どうした麦野、お前この状況になんか心当たりでもあんのか?」
「……」
麦野は浜面の質問に答えず、これからの行動指針を考える。そこに誰かの声が聞こえてきた。
「あンのクソ第七位が…誰が生身で飛んでくなンつゥ予想するンだよ」
「あ、一方通行?」
コンテナの影から歩いてきたのは、白い髮に赤い目、浜面のよく知る学園都市最強の男だった。
「あァ?三下2号と…第四位か。悪ィがここの飛行機は全部潰したぞ。デンマークに行く手段はねェ。…まァ変なやつが一人いたがあれはノーカンだ」
「……じゃあ私はデンマークには行けないってこと?」
「まァ、そォなるな。どォする?腹いせに俺と戦ってみるかァ?」
微塵も負ける気がない一方通行の言葉に苛ついた麦野だが、確かに一方通行に勝てる可能性は皆無だ。なのでそのストレスは、
「はーまづらぁ。単騎で私倒したアンタなら一方通行倒せるんじゃなーい?さあ、戦え。一人の少女を守るために」
「いやいやいやいや無理無理無理無理!!!!そもそも麦野と違って攻撃通らないんだよ!!!」
適当に浜面を弄って解消した。
「…興が削げたわ。なーんかめんどくさくなっちゃった。あ、そうだ第一位。面白いもの見せてあげるわ」
「面白いものォ…?なンだよそれは…ッ!?」
麦野が見せたのは先程のメールだった。
「クソッタレ共が…絶対潰してやる、完膚なきまでに…ああああああああああァァァァァァッ!!!!!!!!」
「うおっ!?」
ドゴッ!!!!!!と音がした瞬間、一方通行の背中から天使のような白翼が生え、一瞬で空の彼方へ消えていった。
「なんだありゃ…何のベクトルいじったらああなるんだよ!?」
「知るか。これでとりあえず面白いものが見れそうだにゃーん。そしてあわよくば死ね」
「うわぁ…お前何見せたんだよ、見せて?」
「まぁこれならいいかしらね?ほれ」
そういって麦野は浜面にさっきのメールの文面を見せる。すると浜面の顔からサッと血の気が引くのがわかった。麦野が怪訝な顔をしていると、
「…!?オイ麦野、他人事じゃねぇぞこれ!一方通行が何に反逆したのかは知らねえ。でもあの打ち止め(ラストオーダー)って子はよくフレメアと遊んでる子だ!!もし二人で遊んでる時に襲われたら」
「はまづらあああああああああ!!!車出せえええええええええええ!!!」
麦野は浜面の言葉を遮って車の方へ走っていった。
(くっそ、この街の『闇』は一体どうなってやがんだ!いつになったら平穏な日常は帰ってくるんだよ!!)
ーーーー学園都市内でも、『外』とは違う形で戦いが始まろうとしていたーーーー
ちょっとこれから不定期になりそうなので、一気に更新します。
今日、もう一度投稿すると思います
「…んだよ、これ。思いの外つまんねぇ。こんなもんかよ、お前ら」
全能神トールはだんだん自分が冷めるのを感じていた。立っているトールはほぼ無傷、最初の美琴の不意打ち以外では一度もダメージを受けていない。
「ぐっ…が…」
「う…なんなのよ…これ…」
対して上条と美琴の二人は地面に這いつくばっていた。二人で連携を取ろうとしても、全く当たらず逆に隙をつかれトールに攻撃を食らう。上条が意地で美琴を守っている分美琴のダメージはいくらかマシだが、それでももう元気に戦える体力は残っていなかった。
「みこっちゃん、最初の一撃、ホントのホントに全力で攻撃してたんなら俺は殺されたぞ。上条ちゃんも、あの時俺が一瞬硬直した時にぶん殴ってれば勝てたんじゃねーのか?結局、甘いんだよ。人殺し守るって宣言するんなら人殺す覚悟くらい持っていやがれ…よ!」
「ぐほぁっ!?!?」
「この…っ!」
もう何度繰り返したかわからない、拳が肉を捉える感触を感じながらトールは喋る。飛んできた電撃も、当たらない。『上条当麻と御坂美琴』を敵として術式を再構築したせいだ。
「…あー、もういいや。経験値稼ぎにもなりゃしねえ。さっさとオティヌス殺しに行くか」
「…まてよ。待ってくれ、トール!!オティヌスは今、殆ど力を使えない、ただの女の子なんだ!そんな奴殺したって、何の経験値稼ぎにもならないだろ!だから…頼むよ!オティヌスは殺さないでやってくれ!!」
「…はえーよ、上条ちゃん。今までのお前なら、この程度のダメージで言葉に頼ってなかっただろ。まだ拳を握って向かってきただろ!甘くなってんだよ、認識が甘いんだよホントに…これはみこっちゃんのせいかもな」
「私の…せい?」
唐突に話をふられた美琴はよくわからないような顔をする。
「上条ちゃんは最初は何があっても一人で護ろうと覚悟を決めた。でも実際、協力者が色々現れた。その筆頭がみこっちゃん、アンタだよ。そのせいで認識が甘くなってんだ。敵対してても知り合いなら心の何処かで最終的には味方になるって思ってんだろ?」
「そんな…」
「まて、美琴は関係ないだろ!確かにトール、お前なら話せばわかってくれると思ってたかも知れない。でも仕方ないだろ!実際勝ててないんだよ!勝てないんだよ!言葉でわかってもらえなかったら俺はどうすりゃいいんだよ!?」
その言葉を聞いて、トールは。
完全に冷めた。
「…もういいよお前。さすがにここまで甘ちゃんになってるとは思わなかったぜ。もう興味もねぇや。『全能神』の力も無駄使いだな」
そういってトールは、自らの足で上条の懐に入り込み、必殺の一撃を見舞おうと拳を握る。
「当麻!!!」
「くっそぉ…!!」
「こんじょーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
「!?どわっ!!」
突如空からものすごいカラフルな爆発とともに何かが降ってきた。周囲にいた上条、美琴、トールの3人は吹き飛ばされる。
「「「…こんじょー?」」」
「…なんだあれは」
そのとき、離れた場所にいたオティヌスは見ていた。カラフルな爆発の中心にいたのは、額にバンダナを巻いた一人の男だった。
「おお、根性の匂いを嗅ぎつけて着陸してみりゃ、なんか根性のありそうな奴がいっぱいいるじゃねえか!…でもカミジョーからはあんまり根性感じねぇな。風邪か?」
今日の分投稿です。
正直軍覇はどこまでできるのかよくわからないですけど、レベル5は割と空飛べるしいいんじゃないでしょうか。
申し訳ないです、今PCを修理に出していてプロットが手元にありません
そこで一旦このスレは第一章・学園都市編として落としてまた学園都市脱出したところから新スレ立てたいと思います
そのときは
美琴「みんなで、笑って帰るって」というスレタイで立てると思います
いつになるかわかりませんが読んで下さる方々の期待に応えるために頑張って書いていこうと思います。
このSSまとめへのコメント
なかなか面白いです。
ただ一言だけ言わせてもらうなら、10巻のみこっちゃんはあんまり意味がなかったと思う(;´∀`)
なんか説得してたけど、9巻の総体には負けてたね☆
イッツ・ア・ビミョー
おもしろかったお♪
また、かいてくれ~~~