集「姉さん!朝だよ起きて!」真名「むぅー・・・」 (626)

このスレは、スレタイの通り、
2011年末から放送されたノイタミナのアニメ作品、
「ギルティクラウン [ GUILTY CROWN ]」
のSSとなります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396859829

集「ほら、父さんに母さんも!みんな遅刻しちゃうよ!」

玄周「うぁ…」

春夏「あと5分…」

集「朝ごはんもうできてるよ!」

『起きる!』ガバッ

集「…はぁ」

『いただきます!』

春夏「ちょっと時間大丈夫なの真名!?今日入学式でしょう!準備があるから今日早く出なきゃいけないんじゃなかった!?」

真名「うん、でも大丈夫!全力疾走すれば何とか…」

玄周「いやー、大変そうだね」

集「父さん達だって遅刻寸前じゃないか!ほら、早く食べて!」

『ごちそうさまでした!』

集「はい、お粗末さまでした」

玄周「母さん、荷物は準備しておくから、先に身支度を整えてきたらどうだい?」

春夏「ありがとう!」バタバタ

真名「しゅーうー!寝癖がどうしても直らないの!手伝って!」

集「はーい!まったく…」スタタタ


玄周「それじゃ、行ってくるよ、集、真名」

春夏「行ってきます!」ガチャ

集「あぁ待って!弁当、弁当ー!」

真名「私も行くわ!集、お弁当はあとで届けて頂戴!朝に持って行ったら中身がぐちゃぐちゃになっちゃうから…」

集「そんなに慌てるくらいなら朝もう5分早く起きればいいのに…」

真名「その5分が気持ちいいのよ。それじゃ、お先に!学校でね!」タタタッ

集「うん、いってらっしゃい」



集「さて、電気良し、ガスの元栓良し、カーテン良し…その他諸々よし!それじゃぁ僕も…」



集「行ってきます!」

桜の舞う坂道を自転車で駆け降りる。

♪咲いた野の花よ、ああ、どうか教えておくれ♪

気分がよくなったから歌ってみた。

♪人は何故、傷つけあって、争うのでしょう?♪

風を切って走る感覚が気持ちいい。

♪凛と咲く花よ、そこから何が見える♪

更にスピードを上げる。

♪人は何故、許しあうこと、出来ないのでしょう?♪

もっと、もっと早く…!

「雨がー過ぎて…!」

集「じ、自転車!?」

しまった!人!

「っ!!!」

慌ててブレーキをかける。なんとかぶつからずに済んだ。
けれど、勢いを殺しきることはできず、私は自転車から放り出されてしまった。
放り出された先には、固いアスファルトが…

集「あ、危ない!」

え?
さっきの人?
そんなところに居たら、ぶつかっちゃう…

ドサァ!

むにっ…

(痛く…ない)

集「っ…うぅ」

「…大丈夫?」

集「あ…うん、君の方こそ…」

身を起こすと、自分がその人を押し倒すような格好になっていることに気付く。

「ごめんなさい。私、急いでて…本当に、ごめんなさい」

急いで自転車を起こして飛び乗り、そこから走り去る。
同じことを繰り返さないように安全運転で、でも出来る限り急いで。


集「えっと、僕のクラスは…」

颯太「集ー!」ガバッ!

集「うわ、そ、颯太?」

颯太「俺たち今年も同じクラスだってよ!よろしくな!」

集「あぁ…よ、よろしく」

祭「あ、あの、集…」

集「祭、おはよう」

祭「おはよう。あの、私も、同じクラスなの。また一年間よろしくね」

集「うん、よろしく」

祭「…///」

谷尋「同好会メンバーが全員同じクラスか…珍しいこともあるもんだな」

集「谷尋!え、ってことは…」

花音「私も寒川君も、皆同じクラスよ」

颯太「いやー!偶然ってあるもんだな!な!」

集「そ、そうだね…ていうか、テンション高いね、颯太」

颯太「そういうお前はテンション低いなぁ…何かあったのか?」

集「それは…」


『むにっ』


集「ないないない!何にもないって!」ブンブン

颯太「怪しい…素直に吐いちまえよー、なー」グイグイ

集「ほ、本当に何でもないんだって!」

谷尋「ま、集に話すつもりはないみたいだし、その辺にしとけよ」

颯太「むぅ…」

花音「ほら!早くいかないと、遅れちゃうわよ!」

颯太「はいはーい、委員長」

花音「まだ委員長じゃないわよ!」

祭「まだってことは、なる予定なんだね…あはは」

颯太「にしても、どんな奴が来るんだろうな!」

花音「は?」

集「あれのことじゃないかな。第二とここが合併するっていう…」

祭「あぁ、全体の生徒数が少なくなったから、天王洲第一、第二高校が合併することになったって…」

谷尋「それで、あっちの生徒がこっちに来るらしいな」

颯太「そうそう!あー可愛い女の子とか来たらいいなー」

祭「私は怖いかな…あまり、良い噂聞かないし」

花音「そうねぇー、ヤンキーとか不良とかその手の人が多いって聞くし」

谷尋「その話だが…そういう奴らを束ねる奴が表れたって聞いたぞ。番長みたいな」

花音「番長って…いつの時代の話よ」

祭「それを言ったら、ヤンキーとか不良とかって表現も十分時代錯誤だと思うけど…」

集「まぁ、所詮噂は噂だし、話半分に聞いておこうよ」

祭「そうだね。集がそう言うなら…きゃっ!」ドン!

祭「あ、あいたた…ぴぃ!」



「…あぁ?」ゴゴゴゴゴゴ


「ちょうどよかった…第一の生徒か?ちょっと」

祭「ご、ごめんなさいいいいぃぃぃぃ!!!」ピュー!

花音「は、祭!ちょっと待って」スタタタタ

颯太・谷尋「!」バッ!


「…」

集「…え?」

「…なぁ」

集「は、はい!なんでしょう!?」ビクビク

「体育館って、どっちだ?」

集「体育館でしたらそのまま進んでいただいて、突き当りを左に曲がったところです!」

「そうか…ついでにもう一つ聞いていいか?」

集「はいぃ!」ビクッ!

「俺って、そんな怖ぇ面してるか?」

集「え、えっと…」

「…」ジーッ

集「…あ、あはは」

「その反応で大体わかったよ…何はともあれありがとよ。助かったぜ」

集「い、いえ!」

「はぁ…」トボトボ

集「…なんか、悪いことしちゃったかな」

祭「大丈夫だった、集!?」

集「うん、道が聞きたかっただけみたい」

颯太「そっか…いやー怖かった」

集「僕の方が怖かったよ!皆、僕を置いて逃げちゃうし…」

花音「ご、ごめんごめん!つい、ね」

谷尋「まぁまぁ…ほら、俺たちも行かないと」

集「…なんか釈然としない」

祭「あれ、あの人…」

集「どうしたの…って」

花音「車椅子…あの入口からじゃ入れないんじゃないかしら?段差あるし」

集「…ちょっと手伝ってくる!」

祭「あ、集!」

集「あの…」

「何?」ギロ

集「え、あ、いや…何か、手伝えないかと思って…」

「結構よ」

集「でも、この段差、車椅子じゃ乗り越えられないですよね?」

「っ…うるさい!」

ガッ!

集「え」

ドサァ!

「ふん!」

「ねぇ!あっちに段差ない入口あったよー」

「ありがとう!今行くわ!」

集「あいっててて…」

谷尋「集、大丈夫か?」

集「うん、なんとか…ていうか、僕今何されたの?」

花音「車椅子の車輪で足を払われたのよ」

祭「本当に大丈夫?結構な勢いで回転してたけど…」

集「ちょっと、腰が痛むけど…まぁ、そのくらいだよ」

颯太「まったく…折角集が親切にしてやろうとしたってのに…」

集「ま、まぁ、僕の方もちょっと無神経だったし…しょうがないよ。それよりほら!急がないと…時間ぎりぎりだよ!」

真名『今日この日、新たな出会いを与えられたことに感謝し…』

颯太「やっぱいいよなぁー、お前の姉ちゃん」ヒソヒソ

谷尋「眉目秀麗、成績優秀、品行方正…そんな形容詞が当てはまるような完璧超人だもんな」

集「あはは…(三つのうちの最後の一つは違うと言いたい…)」

颯太「お前とは大違いの、な」ニヤ

集「うるさいなぁ…静かにしてろよ」

祭「集だって、かっこいいし、やさしいし…」ボソボソ

花音「…本人にそう言えばいいのに」

祭「で、できるわけないよぉ…恥ずかしい…///」

花音「はぁ…」

真名『以上、旧天王洲第一高校代表、桜満真名』

パチパチパチパチ………

司会『では続いて、旧天王洲第二高校代表からの挨拶をお願いします』

カツ…カツ…

カッ!

『世界は常に選択を迫る!』

『この世界は、正解を選び続けたもののみが生き残る適者生存の世界だ!』

ザワ…ザワ…

颯太「何言ってんだ?あいつ…」

集「さ、さぁ…」

『ここで与えられる貴重な時間を、無駄にするのかそれとも活かすのか!』

『それがここで、世界からお前らに与えられた『問』だ!』

『俺は、ここでお前らにその『問』に対する『解』を与えてやる!』

ザワ…ザワ…

涯『以上、旧天王洲第二高校代表、恙神涯』

…パチ

…パチ…パチ…

パチパチパチパチパチ……


本日はここまで

ギルクラか
支援

珍しいな
期待

ギルクラssとか珍しすぎ
頑張れ

レアSS発見
期待

ギルクラが好きだなんて言えない
世間の評判的に

腕のいいコックが最高の食材を最低のレシピで作った結果があのアニメ

でも、ギルクラ大好きです

俺得

ゲームは面白かったし、アニメは何がダメだったのだろうか

集はよくクズって言われるけどキャラとして好きだった

僕の王の力がぁぁぁぁぁ・・・

祭たんと綾瀬たんとつぐみたんとβiosだけは最高でした


颯太「本当になんだったんだろうな?あの演説」

集「僕に聞かれても…」

祭「この後は?」

花音「お昼休みを取ってその後ホームルーム…そしたら帰るだけね」

颯太「うーん、どんな子がいるのかなー?楽しみだなー!」

祭「気楽でいいね、颯太君は…私は、朝会ったあの不良みたいな人がいないか心配だよ」


颯太「おっはよー!」ガララ!

「あぁん?」←朝出会った不良みたいな人

ガララ…ピシャン!

颯太「…」ガクガクブルブル

集「颯太?どうしたの?そんなに震えて…」

颯太「…」グイグイ

集「ねぇ颯太、なんで無言で僕を前に押し出すの?」

颯太「…」ジーッ

集「…僕が開けろってこと?…まぁ、いいけど」

ガララ

「…よう」

集「………あ」

「朝は助かったぜ、ありがとな」

集「あ、えっと…どう、いたしまして」

「お前もこのクラスか。一年間よろしくな」スッ

集「…よ、よろしくお願いします」ギュ


颯太「怖ぇ!怖ぇよ!俺らあの人と一年間同じ教室に通うの!?」

谷尋「…どうやらそうらしいな」

祭「でも、集は普通に接してるし…あ、今握手した。意外といい人?」

花音「祭!騙されちゃだめよ!お菓子上げるって言われてもついて行っちゃだめだからね!」

祭「わ、私お菓子でつられるほど子供じゃないもん!」


「あ…あなたは」

集「え?…あ」

「なんだ?知り合いか?」

「うん、朝、少し…」

集「えっと…初めまして、じゃないのか。僕は桜満集。君は…?」


いのり「いのり。楪いのり」


集「同じクラスだったんだね。これからよろしく」

いのり「うん、よろしく」


『むにっ』


集「っ///」

いのり「…?」

颯太「なんだよ集!お前この子と知り合いなのか?!」

集「し、知り合いっていうか…朝、ちょっと」

いのり「今朝、集に抱かれたの」



一同『…………………………』


颯太「はあああああああああああああああああああああ!?!?!?」

祭「しゅ、集!?どういうこと!?ねぇ、どういうこと!?」

集「ま、待って!誤解、誤解だよ!ていうか、楪さんもわざわざそんな言い方…」

いのり「…違った?」

集「いや、その通りではあるんだけど…」

祭「そうなの!?そういうことなの?集!」

集「いやだから、そうだけど、そうじゃなくて…」

颯太「てめぇ!羨ましすぎるぞこの野郎!」

集「だからちょっと落ち着いて…」

花音「不潔!不潔よ桜満君!」

集「僕の話を…」

「うるせぇ落ち着け」

シーン…

「…で、なんだって?」

集「あぁ、えっと…」

集「だから誤解だって言ったのに…」

祭「ごめん…」

花音「楪さんも、わざわざあんな言い方したら誤解されでもしょうがないわよ?」

いのり「誤解?どんな?」

花音「え、どんなって…そりゃぁ…///」

いのり「…?」ジーッ

花音「うっ…」

颯太「えっと、俺、魂館颯太!よろしく、いのりちゃん!」

いのり「よろしく」

谷尋「寒川谷尋だ」

花音「私は草間花音。よろしくね!」

祭「校条祭です」

(ここしかねぇ!)

アルゴ「俺は月島アルゴだ」キリッ

颯太「あ…」

アルゴ(…なんでこいつまだ居るんだみたいな顔された)

集「アルゴさんていうんですね。よろしくお願いします」ペコリ

アルゴ「…お前、いいやつだな」

集「え?」

祭「うんうん」

集「え?」

「…」ブスッ

集「あ」

颯太「あ、お前車椅子の…」

「…ふん」

颯太「な、なんだよその態度は!」

「うるさいわね、話しかけないで」

颯太「なんだとぅ!」

集「ちょっとやめなよ颯太!」

アルゴ「お前もお前だ。ていうかなんでそんなつっかかるんだ?」

「…今朝こいつにナンパされたのよ」ビシッ

集「え?僕!?いや、僕はそんなつもりじゃ」
祭「集はそんなつもりであなたに話しかけたわけじゃありません!」
集「…」

「どうだか…」

花音「いやー、桜満君に限ってそれはないわ」

谷尋「うんうん」

集「ありがとう…?ねぇ、そこはかとなく馬鹿にしてない?」

颯太「集はヘタレだからな」

集「直球!?」

アルゴ「俺もそれはないと思うぜ」

「む…」

いのり「自意識過剰」

「むぐぐ…あぁもうわかったわよ!私が悪かったです!すいませんでした!」

綾瀬「…私は篠宮綾瀬。よろしく」

集「こちらこそ、よろしく、あ、僕は…」

綾瀬「桜満集、よね?さっきの自己紹介は聞いてたわ」

集「あ、そう…」

ユウ「さて、1-B・・・このSSの中心となるクラスのメンバーが紹介されたところで、今回はここまで」

ユウ「自己紹介をさせていただきましょう」

ユウ「僕はユウ。ダァトの墓守にしてアニメにおけるラスボス的立ち位置にいた太い眉毛がチャームポイントの男(?)の子です」

ユウ「何故僕が出てきたのか…それは、>>1が直接後書き、コメントに対する返信を書くと、どうしても馴れ合いのような印象が拭えないからなのです」

ユウ「ここ千年、そういう概念が流行っていることは知っていますけどね。しかしやはりそれも度が過ぎれば不快な気分になるもの」

ユウ「しかしかと言って、このような季節外れを通り越して時代遅れと言うのがふさわしいようなSSにわざわざレスしてくださる方々に何の反応もしない・・・ということもしたくない」

ユウ「そのため>>1は、『僕』という緩衝材を挟むことによって、過度な馴れ合いを避けようとした、というわけです」

ユウ「僕が選ばれた理由としては、あまり本編の話にはかかわらない、メタ的な発言をすることに違和感がない、話し方が丁寧、という3つの理由が挙げられます」

ユウ「話すべきことはこのくらいでしょうか?何か質問があればどうぞ。出来うる限り真摯に返答させていただきます」

ユウ「それでは、注意事項について今更ながら話させていただきましょう」

ユウ「更新日は未定。今のところ、2,3回分程の書き溜めがありますので、その分を投下するまでは数日に一度程度」

ユウ「それらを投下し終えてからは一週間に一度程度を予定しています」

ユウ「といっても、ネタが尽きていけばそれだけ書くことができなくなってしまうので、日にちが経てば経つほど更新頻度は下がるかと思いますが…」

ユウ「そうそう、>>1は皆さんから提示されたネタを拾うことも考えています」

ユウ「~~~という展開がミタイナー(チラッチラッ)というようなことがあれば、もしかしたら活用させていただくこともあるかもしれません」

ユウ「それと、このSSに『王の力』・・・ヴォイドゲノムなどの非現実的な要素は出てきません。あくまで「理論上現実で可能な範囲」のみが存在する世界観となります」

ユウ「登場キャラクターに関しては、1期メインメンバーには全員出番があり、2期から参入したメンバーにも出番があることがおおよそ確定しています」

ユウ「そして、ニトロプラスより発売された「ギルティクラウン-ロストクリスマス(LC)」、
及び現在電撃G's magazineにて連載中で単行本が2巻まで発売されている「ギルティクラウン-ダンシング・エンドレヴス(DE)」のキャラクターなどの起用も予定しています」

ユウ「まぁ、LCとDEのキャラクターは登場するとしても大分先になるでしょうが・・・」

ユウ「注意事項はこのくらいでしょうか?何か質問があればどうぞ。注意事項に関してももちろん出来うる限り真摯に返答させていただきます」

ユウ「最後にレスに関してですね」

ユウ「皆さんからのレスは大変励みになっております。ありがとうございます」

ユウ「このSSに直接関係なくとも、ギルティクラウンに関するコメントであればレスしていただいて一向に構いません」

ユウ「そのような意見を聞けるのもとても嬉しいですからね」

ユウ「しかし、明らかな荒らし目的であったり、中身がなくただ単に罵倒するだけのレスであった場合は…」

ユウ「そのレス主を「皆が罵倒してるからこれ駄作だな!批判してる俺カッケェーwwwwww」な人だと勝手に判断させていただきます」

ユウ「そのような人はスルー安定なので、僕が反応しない荒らしレスにはできるだけ反応しないよう、皆様のご協力をお願いいたします」

ユウ「では、ここからレス返しです」

>>19
ユウ「支援、ありがとうございます」

>>20
ユウ「ご期待に沿えるよう努力します」

>>21
ユウ「はい、頑張ります」

>>22
ユウ「ご期待に(ry」

>>23
ユウ「言っても何も問題はありませんよ?まぁ友達と盛り上がることも一切ありませんでしたが(体験談」

>>25
ユウ「僕ははレシピもよかったと思っているのですがねぇ…ともあれ、僕も大好きです、ギルクラ」

>>26
ユウ「何がダメだったんでしょうかねぇ…ギルクラ好きに聞いてもわからないともいます」

>>27
ユウ「彼のような未熟なキャラクターが成長していく様子は見ていてとてもわくわくしたのですが…僕のような意見を持つ人は少数派なようです」

>>28
ユウ「あのシーンだけやけに有名になりましたね」

>>29
ユウ「僕的には緑川雅火さんが一番だと思います」

ユウ「…実際にレス返しをして見て思ったのですが…意外と量が多いですね」

ユウ「スレ立てをしたばかりだというのもあるのだと思いますが、もし毎回これくらいのレスがあるようでしたら、返答するレスを選ぶことも考えさせていただこうかと思います」

集と祭のデートがみたい



集「それじゃ、お昼にしようか」

祭「そうだね」

颯太「あ、いのりちゃん!こっちで一緒にご飯食べない?」

いのり「私達は、購買で買って食べるから…」

アルゴ「そういうわけでな」

谷尋「なら急いだ方がいいぞ。ただでさえあそこは混む上に、今日は第二の生徒もいるからな…」

綾瀬「ご忠告どうも。それじゃ」


花音「…大丈夫かな」

集「…僕、姉さんにお弁当渡してくるから、そのときついでに様子見てくるよ」


真名「んー!もうお昼かぁ…」

亞理沙「桜満さん、よろしかったらお昼一緒にどう?」

真名「いいわよ。あ、でも私今お弁当なくて…集が届けに来てくれるはずなんだけど…」

亞理沙「いいわ、それくらいは待ちましょう」

真名「ありがとう」


涯「久しぶりだな、真名」

真名「…何の御用かしら。いえ、それよりも…『久しぶり』?」

涯「俺が解らないか。そうだろうな」

真名「えぇ申し訳ないけれどあなたのような人とは一度も会った覚えがないわ」

涯「そうか。だが俺はお前のことを忘れた日はなかったよ」

ザワ…

真名「…は?」ギロ

涯「…ふっ」ニヤリ

ガララ

集「すいませーん」

真名「集ーーー!!!」ダッ!

ダキッ

集「うわ!姉さん!?」

真名「丁度いいところに来てくれたわ!」

集「え、なに!?なに!?」

真名「亞理沙も!こっちこっち!」

亞理沙「え、えっと…」チラッ

涯「…」

亞理沙「い、今行くわ!」タッタッタ

真名「さ、行きましょう!集!」

集「え?あの、僕いまいち状況が…」

涯「桜満集…お前が?」

集「え、あ、はい。そうです、けど…」


涯「…」ジーッ

集(うわ何この人凄い睨んでくるんだけど!)

真名「気にしないで、集。さっさと行きましょう!」

集「う、うん…」スタスタスタ

真名「あ、最後に一つだけ…」

涯「なんだ?」


真名「集に何かしたら、許さないから」


真名「じゃぁね☆」ピュー

真名「まったく…一体なんなのかしら!」

亞理沙「本当に会った覚えはないの?真名さん」

真名「えぇ。というか、あんな強烈な人、一度会ったら忘れないわよ…」

亞理沙「…確かに」

真名「あんなののことはさっさと忘れて…集ーぅ!お昼にしましょう!」

集「ごめん姉さん、僕寄るところがあるから…」

真名「…え」

集「はいこれお弁当」

真名「…うん、ありがとう」

集「それじゃ姉さん、また後で!失礼します、亞理沙先輩」ペコリ

タッタッタッタ…

真名「…」グスン

亞理沙「あの…どんまい」ポン


―購買前―

いのり「…」ポカーン

集「あれ、楪さん、どうしたの?そんなところで…て」

『全品売り切れ』

集「え、嘘!?売り切れ!?そんなまさか…」

綾瀬「第二の生徒がどれだけ来るのか、予想できてなかったみたいね」

アルゴ「とってこれたのは…」

つ焼きそばパン
つコロッケパン

アルゴ「…この二つだけだ。まったく、あんたがちょっと手伝ってくれれば3人分取れたのに…なぁ、大雲」

大雲「そんなことはできませんよ」

集(う、うわでか!この人アメフト選手か何か!?ウチの体育教師と似たような体してるなぁ…)

大雲「…それで、こちらの少年は?」

アルゴ「あぁ、同じクラスの…」

集「お、桜満集です」ペコ

大雲「どうも。こちらで用務員をすることになりました、大雲です。以後、お見知りおきを。以前は第二の方に務めていました」

集「用務員?…それがなんで、購買に?」

大雲「一体どこの紛争地帯だと言いたくなるような惨状だったので、生徒の鎮圧を手伝っていたんですよ」

集「ち、鎮圧って…」

アルゴ「知り合いのよしみで、見逃してくれればよかったのによ」

大雲「それとこれとは話が別です」

アルゴ「まったく融通が利かねぇんだから…」


アルゴ「で、どうすんだよ?焼きそばパンかコロッケパンのどっちかを半分にわけるか?あぁ、両方を3等分って手もあるな」

綾瀬「あの、私は良いわよ?たべなくても…」

ぐぅ~

アルゴ「…じゃぁその腹の音はなんだ?」

綾瀬「う…///」

いのり「…」ズーン

集「…あの、楪さん、よかったら…」

いのり「…?」



いのり「モグモグ…」

集「…おいしい、かな?」

いのり「…おいしい」

集「よかった」

いのり「これ、集が作ったの?」

集「うん、まぁ…」

いのり「凄い…凄くおいしい」

集「そう言って貰えると、作った甲斐があるよ」

いのり「モフモフ…」

集「楪さん、食べたいおかずとか」
いのり「いのりでいい」

集「え?」

いのり「いのりでいいよ、集」ニコッ

集「あ、うん、いのり…さん」ドキッ

いのり「その卵焼きも貰っていい?」

集「うん、どうぞ…というか、全部食べる?」

いのり「え、でもそれじゃぁ集の分が…」

集「僕、もともと食が細いんだ。この後はホームルームだけだし、帰ってから何か食べることにするよ」

いのり「…ありがとう、集!」

集「どういたしまして」

いのり「モフモフ…」


綾瀬「…なーんか、いい雰囲気ね」モグモグ

アルゴ「ま、そうだな」

大雲「しかしいいのですか?あのままにしておいて。涯から頼まれているんでしょう?あの子のこと」

アルゴ「俺が頼まれたのは、妙なやつがいのりにちょっかい掛けないようにってことだけだ。集なら別に問題ねぇだろ」

綾瀬「でも、あいつがいのりに妙なことしないって保証は…」

アルゴ「じゃ、いのりが昼飯食えない、なんてことになったほうがよかったか?」

綾瀬「…そうじゃないけど」

アルゴ「ま、変な気を起こさない限りは放っておくさ。そんな度胸ある奴にも見えないしな」

大雲「あぁ、それは確かに」

\ハハハハハ/

集(…なんだか馬鹿にされてる気がする)



ガララ

祭「集、おかえり」

集「うん、ただいま」

花音「あ、楪さん、お昼食べた?」

いのり「集から貰った」

颯太「え、お前それで腹減らないのか?」

集「うん、大丈夫。もうすぐ帰るしね」

谷尋「早く席ついた方がいいぞ。もうそろそろ…」

ガララ

「はいはーい、皆さん席についてくださーい」

谷尋「おっと、噂をすれば…」


嘘界「今年、このクラスの担任を務めることとなりました、嘘界=ヴァルツ・誠です。皆さんよろしくお願いします」

嘘界「では、連絡事項をお伝えしますね」

颯太「…あの先生か。俺、あの人何考えてるかわからないから苦手なんだよなぁ…」ヒソヒソ
集「うん、まぁ…そうだn」
ヒュン!

颯太「ひっ!」
集(…チョーク飛んできた)

嘘界「私語は慎みなさい。聞き逃しても知りませんよ。ではまずは、明日からの日程に関してですが…」



嘘界「と、連絡事項はこんなものですね。なにか、ご質問のある方は?」

…………

嘘界「特になし、と。では、本日はお疲れ様でした。起立」

ガラガラガラ…

嘘界「注目、礼」


嘘界「では皆さん、気を付けてお帰りください」

-1-C-

ガララッ

ダリル「はぁ…まだ帰っちゃだめなの?」

「は、はい。しかし、この後はホームルームだけですから!もうすぐですよ!すぐ!」

ダリル「面倒くさいなぁ…ん?」

「…」ピコピコピコ…

「…」ピコピコピコ…

ダリル「あっれぇー?なーにやってんの?そこの二人ー」

「…」ピコピコピコ…

「…」ピコピコピコ…

ダリル「…」ビキッ

「お、おいお前ら!ダリルさんが呼んでらっしゃるだろうが!」

「…」ピコピコピコ…

「…」ピコピコピコ…

ダリル「こいつらぁ…!おい、聞いてんのかよ!」ガシッ

ピチュン

「あ」You lose…

「へっへぇー」You win!


「あああああああああああああ!!!ちょっとあんた!なにしてくれてんのよ!」

ダリル「は?お前らが僕を無視するのが悪いんだろ?」

「これで僕の勝ちー。ツグミ、とっととジュース買ってきてよ」

ツグミ「ふっざけんじゃないわよ研二!こいつが邪魔してきたから負けたのよ!今の勝負は無効よ無効!」ビシッ

ダリル「人を指さすなよ失礼だな!」

ツグミ「失礼なのはどっちよ!いきなり邪魔してきて侘びの一つもなしだなんて!」

ダリル「あぁん!?お前、僕が誰だかわかってるのか!?僕はこの学園の理事長の息子の」
ツグミ「知るかボケェ!」ドゲシャァ!

ダリル「うごっふ」

「ひぃ!お、お前なんてことを!」


ダリル「ふ、ふふ、ふふふふふ蹴ったな?僕を蹴ったな?この僕をォ!」

ツグミ「親父にもぶたれたことないのに、とでもいうつもり?」

ダリル「こんのちんちくりん!絶対許さない…ぐちゃぐちゃにしてやるよぉ!!!」

「ど、どうか落ち着いてくださいダリルさん!」

ツグミ「ネイ!発展途上中よ!来るなら来なさい!あんたみたいな萌やしっ子☆ボディにやられるほど落ちぶれちゃいないわよ!」

「あんたも煽るようなこと言ってんじゃねぇ!」

研二「ねー、ジュースはー?」

「この状況で何言ってんだおい!そんなことよりどうにかしてとめてくれよ!」

研二「あ、じゃージュース買ってきて。君の奢りで」

「だからこの状況でんなことしてられるかぁぁぁぁあああああ!!!」


「はぁ、心配だ…まさか僕のクラスにあの理事長の息子のダリル君が入ってくるなんて…」

「しかも、第二ですら持て余す問題児、なんていう噂のある生徒もいるらしいし…」

「…愚痴っていても仕方ないか。流石に初日くらいはおとなしくしてるだろうし…まぁ、何かあったらその時考えよう」


ガララッ

「皆、ホームルームを始めるから席に」
ヒュッ…ガコン!
「ごふっ」

どったんばったんどんがらがっしゃん!!!…

「な、何が…」

ダリル「ギャーギャー!」
ツグミ「わーわー!」
研二「ZZZzzz…」


「す、既に学級崩壊が…」
ヒュッ!
「うわ危なっ!?え?椅子!?なんでこんなのが飛んでくるの!?」

「ローワン先生止めてください!」

ローワン「え?」

「私達じゃ手に負えません!お願いします!」

ローワン「あ、あぁ…うん、そ、そうだな!」

ローワン「君たち!いい加減にしないか!」

ダリル・ツグミ「うるさい眼鏡!!!」

ドゴォ!

ローワン「ご…がぁ!?」

ローワン(眼鏡で…何がいけないんだ…)

バタッ

ローワン「」

「きゃー!先生も倒れたわ!」

「頼むから誰か止めてくれぇ!」

「もう無理だ…おしまいだぁ…」

―職員室―

「…はぁ」

嘘界「おや、お疲れのようですね、ローワン先生」

ローワン「あぁ、嘘界先生。…実は、私の担当クラスにダリル君が居まして…」

嘘界「あのヤン理事長のご子息の…それはそれは」

ローワン「初日早々問題を起こして…その巻き添えでちょっと…保健室で治療を受けて来ました」

嘘界「クラスは大丈夫なんですか?」

ローワン「えぇ。なんだかよくわかりませんが、僕が気絶している間に何かあったようで…さっき今後の予定を説明に行ったときにはすっかり落ち着いていました」

嘘界「それは重畳」


四分儀「ローワン先生の担当クラスは、確か1-Cでしたよね?」

ローワン「…申し訳ありません、あなたは?」

四分儀「これは失礼いたしました。私、第二のほうから来ました、四分儀と申します」ペコリ

ローワン「あぁ、これはどうもご丁寧に。ローワン・アンドレイです」ペコリ

嘘界「嘘界=ヴァルツ・誠です」

ローワン「それで、私のクラスが何か…?」

四分儀「確か、第二の生徒の、ツグミと研二がいたはずだと思うのですが…」

ローワン「あぁ、あの二人ですか」

嘘界「おや、何か含みのある言い方ですね」

ローワン「いえ、そのダリルと問題を起こした生徒というのがその二人らしくて…」

四分儀「…ご愁傷様です」

ローワン「えぇ!?」


四分儀「その二人は、こちらのほうでも持て余してしまうような問題児でして…ローワン先生には、胃薬を持ち歩くことをお勧めします」

嘘界「おやおや、そんなにひどいんですか?」

四分儀「それはもう」

ローワン「…噂は本当だったんですね」ゲンナリ

四分儀「…私も、及ばずながらサポートいたしますから、お互い頑張りましょう」

ローワン「…はい」

ダン「はっはー!なんだいローワン先生!元気がないなぁ!ガッツが足りてないんじゃないか!?」

嘘界「…(暑苦しい)」

四分儀「初めまして、第二より異動してきました、四分儀と申します。あなたは?」

ダン「ダン=イーグルマンだ!担当科目は体育!よろしく!」
胸板<ムキムキ!
二の腕<ムキムキ!
太股<ムキムキ!

四分儀(…見ての通り、という感じですね)

四分儀「よろしくお願いします」スッ

ダン「おう!よろしく」ガシィ

放送<これから緊急の職員会議を行います。教職員は全員、職員室に集まってください。繰り返します。これから…

ローワン「何かあったんでしょうか?」

四分儀「あぁ、これはおそらく…」

ガララッ

「今、ここにいるだけでどれくらいだ?」

嘘界「校長先生、どうかしたんですか?」

校長「緊急の職員会議を始める。今いる人間だけでいい。とりあえず席についてくれたまえ」



校長「これより、グエン先生の処遇に関する会議を始める」


ユウ「と、物語に登場するメンバーがおおよそ集まったところで、今回はここまで」

ユウ「今回は特に言うこともありませんね。ですのでコメ返しだけ」

>>41
ユウ「集と他のヒロイン達とのイチャイチャラブコメは書く予定です。具体的な中身は全く決まっていませんが…」

ユウ「では、またの機会に」

―時は遡り、同日・HR・3-B―


グエン「おいお前!なにをやっている!」

「や、やべ…」

グエン「私の話の最中に携帯をいじる余裕があるとは…随分と舐め腐った態度を取ってくれるな、えぇ?」

「す、すいませ」
グエン「謝ればいいというものではない!」

「ひっ」

真名(よりにもよってこいつが担任だなんて…ついてないわ)

亞理沙(自分の価値観が絶対立ち信じて疑わないタイプの人間…今年は大変な年になりそうね)


グエン「まったく、これだからガキは…おいお前ら!勘違いしている奴がいるようだから言っておく!」

グエン「今のお前らは社会に出ることもできん、一人では何もできないクズだ!」

グエン「そんなお前らを育ててくださる教師には常に感謝し、平伏し、服従すること!」

グエン「そうしなければこの厳しい社会で生き残る術を身に着けることなど」
涯「その口を閉じろ、不愉快だ」

グエン「…今言ったのは誰だ?」

涯「俺だ」

真名「!?」

真名(ちょっとなにやってるのよ!あんなの放っとけば治まるんだから余計なちょっかい出さなくても…)

グエン「入学式の挨拶で大見得切ったバカか…何と言ったんだ?もう一度言ってみろ」

涯「不愉快だと言った」

グエン「…貴様、社会に対して斜めに構えるのがそんなに気持ちいいか?え?」

グエン「そうやって教師に楯突けばかっこいいとでも思っているんだろう?」

涯「俺は相手が教師だからという理由で楯突いたりも服従したりもしない」

涯「俺はあんたが気に入らない。だからこうしている。それだけだ」

グエン「…貴様にはこの社会の上下関係というものを叩き込む必要がありそうだな」

涯「お前には人としての常識を教えてやる必要がありそうだ」

グエン「っ!」


ガッ!


「ひっ…」

「お、おい、殴ったぞ…」

亞理沙「先生!それは流石に」
グエン「黙れぇ!」

亞理沙「っ…」

一同『………』

グエン「この私に口答えするとこうなるのだ!お前らもよく覚えて」
涯「おい、その程度か?」

グエン「な、なに…!?」

涯「まったく、図体の割には随分と軽いパンチだ」

グエン「貴様ぁ!」


ドガ!ガッ!

グエン「生徒!ごときが!この!私に!楯!突こうなど!10年!早い!のだ!」

ドゴッ!グシャ!

「だ、誰か止めろよ…」

「無茶言わないでよ…」

「せ、せめて誰か呼んで…」


「何をしているのですか?」


「…誰?」

「あんな先生居たっけ?」

グエン「…誰だ貴様は」


四分儀「旧第二天王洲高校から異動してきた、四分儀と申します」

四分儀「もう一度聞きます。あなた、今何をしていたのですか?」

グエン「…」

四分儀「私が見たところ、あなたはどうやら生徒に暴力をふるっていたようですが…」

グエン「ふん!言ってわからないガキにはこうするしかあるまい」

四分儀「日本の教育制度は体罰を認めてはいませんよ」

グエン「それは私の知ったことではない!」

四分儀「…教師のセリフとは思えませんね」

涯「同感だ」

グエン「!?」


グエン「貴様、なぜ立ち上がれる!」

涯「ふん。あの程度…何発喰らおうが問題にはならん」

グエン「なん…だと!?」

涯「まったく、やはりお前の国の人間はどいつもこいつも態度ばかりで全く中身が伴って…」

グエン「我が祖国を馬鹿にするなぁ!!!」

涯「ふん」

ガッ!

グエン「ごっ…はぁ…」

バタン


「今のは…クロスカウンター?」

「あぁ。けど俺、あんな綺麗なクロスカウンター初めて見たぜ」

「ていうか、大丈夫なの?教師殴って」

「グエンの奴起き上がってこないけど、気絶してんの?」


四分儀「…どうしたものでしょうか。教師を殴るのはもちろん問題ですが、しかしこれは明らかに正当防衛…ふぅむ、私の一存では決めかねますね」

四分儀「…とりあえずこの一連の騒動は、報告させていただきます」

涯「えぇ、構いません」

四分儀「では、これは持って行きますね。とりあえずは保健室でしょうか」

グエン「」←これ

涯「では、手伝いましょう」

四分儀「お願いします」

ガシッ、スタスタスタ………

亞理沙「なんだか、大変なことになってしまったわね…」

真名「えぇ…」


涯「…ここまでは予定通り、だな」

四分儀「涯、お怪我は?」

涯「見ての通りだ…何の問題もない」

四分儀「…流石です、涯」

涯「後は頼んだぞ、四分儀」

四分儀「はい、お任せを」


真名「はぁ~…なんだか今日はどっと疲れたわ…」

集「何かあったの?」

真名「それがね…グエンの奴が…」

――――――――――

真名「最終的には、そいつのクロスカウンターが見事にグエンにヒット!グエンは気絶して、とりあえずは収まったわ」

集「…そんなことが…その涯って人大丈夫なの?仕方なくとはいえ、教師殴っちゃったんでしょ?しかも気絶させるような力で」

真名「さぁ…一応正当防衛ってことだし…いやでもこんなこと初めてだし、やっぱりわからないわ

集「退学とかにならないといいけど…」

真名「えぇ…ねぇ集。私達って、あいつに昔会ったことあったかしら?」

集「え?」

真名「あいつ言ったのよ。私に、『久しぶりだな』…って」

集「うーん…いや、ないと思うけど…」

真名「そうよねー。あんなのに会ったことあったら忘れないわよねー…うーん…」


真名「ま、いいわ!気にしても仕方がないし。集ー、マッサージしてー」

集「はいはーい」タタタタ…

ユウ「

恙神涯が一つ伝説を作ったところで本日はここまで。

そうそう、一々 ユウ「」 と書くのが面倒になったので、投下後コメントの書き方のこのような形にしてみました。

そして今日は謝らなければいけません。

書き溜めが底を尽きかけています。

ですので、これからは更新頻度が週に1度程度となります。ご了承ください。

ではこの辺りで、レス返しを…え?レスがない?

………では、また会う日まで

まあ、マイナーな作品だからな
見てるだけで書き込まない人もいるし気長にやるといいよ

見てるよー。ギルクラ懐かしいから思い出しながら読んでるよ。
お待ちしてます!

再現度が高いですな。原作でこういう日常譚が少なかっただけに期待

~オマケ~

1-C<ドッタンバッタン!…

四分儀「おや、何か騒がしいですね」(グエン搬送中)

涯「あそこは確か研二達がいるクラス…様子を見てみよう」(グエン搬送中)


ツグミ「オルァ!」ブン!

机→ヒューッ→四分儀

四分儀「おっと」スッ

机→ヒューッ→グエン:四分儀

グエン「おぶぇ」

ドサッ

ツグミ「げ」

四分儀「ツグミ…あなたはいったい何をしているんですか?」

ツグミ「あ、いや、それは…」

ダリル「あぁ!?誰だお前!」

四分儀「…」ジーッ

ダリル「なんだよその眼は!何か僕に文句でもあんのかよ!」

四分儀「…」ジーッ

ダリル「何とかいえよ!あぁん!?」

四分儀「…」ジーッ

ダリル「…な、なんだってんだよ!僕は悪くないぞ!そもそもあいつが…」

四分儀「…」ジーッ

ダリル「ぼ、僕が誰だかわかってるのか!?この学校の理事長の息子だぞ!お前みたいなただの教師なんて、パパの権限があれば…」

四分儀「…」ジーッ

ダリル「う…ぐっ…」

四分儀「…」ジーッ

ダリル「う、うわあああああああああああああああああああああああああん!!!」ダッ

ツグミ「あ、逃げた」

研二「いや、そりゃ逃げるでしょ」

四分儀「ツグミィ…」ギロリ

ツグミ「ヒッ!…い、いや!ごめんってシブっち!反省してる!私反省してるから!もう二度とこんなことしないから!だからそれだけは勘弁してぇ!」

四分儀「…いいでしょう。今回はその言葉を信じることにします」

ツグミ「ほっ…」

涯「…ところで、そこで一人のびてるのもお前らのせいか?」

研二「あぁ、涯も居たんだ。そうだよー、そこにいるのは巻き添え喰らった哀れな一般教師ちゃんだね」

涯「ふむ…なら、お前らでこいつを運べ」

ツグミ「えー、なんで…」
四分儀「…」ジーッ
ツグミ「運びます!」ピシッ

研二「何で僕まで…」

涯「どうせ面倒だからと放っておいたんだろう?そうしてサボった分くらいは働け」

研二「ちぇー…」

―2-A―

嘘界「みなさん、朝のホームルームを始めますよー、席についてくださーい」


嘘界「既に知っている方もたくさん居るようですが、3-Bの担任になるはずだったグエン先生が問題を起こして首になることが決定しました。そのため、旧天王洲第二高校からいらした四分儀先生がその後任となるそうです。
皆さんには社会科の授業の担当が変わる、という形で影響があると思います。覚えておいてください」

集「く、首かー…それはそうか」

颯太「え、なに?お前何か知ってるの?」

集「あ、うん。昨日姉さんから」
ヒュン!

嘘界「お喋りは後にしてください」ギョロッ

集・颯太「はい!すいません!」ピシッ

颯太(あ、あとで、な)ヒソヒソ

集(うん…)ヒソヒソ


嘘界「それでは、まずは席決めから始めましょうか」

嘘界「特に指定がなかったので、皆さん自由に席に座っているようですが、その席では不便だ、という人もいるでしょうし…」

嘘界「それに、私は皆さんがより多くの人と関係を持ち、皆さんの人間性が育つことを期待しています」

嘘界「ですから私、関わる人間ができるだけランダムになるようにくじを作ってきました。とりあえずこれで席を決めてみようと思います」

嘘界「目が悪い、前の人が大きくて黒板が見えないなどの問題については、くじを引き終えてから対処しようと思います」

嘘界「さて、なにか意見、もしくは異存のあるかたはいらっしゃいますか?」

………

嘘界「ないようですね。では、みなさんくじを引いていってください」


~くじの結果~

花音「よろしくね」

谷尋(花音の隣)「あぁ、よろしく」


颯太「ふふーん♪」

いのり(颯太の隣)「…」


祭「えっと、よろしくお願いします…」

綾瀬(祭の隣)「…なんで敬語?」

集(綾瀬の隣)「…(よりにもよって篠宮さんの隣か…あまりよく思われてないみたいだし…少し気が重いな)」

アルゴ(集の隣)「…(やべぇなんて話しかけたらいいのかわかんねぇ)」


嘘界「では、この席では不都合がある、という方はいらっしゃいますか?」

颯太(いやー、いのりちゃんの隣とは、ついてるな~)

颯太(教科書見せてもらったり、落とした消しゴム拾って貰ったり…)

颯太(むふふ…期待で胸が膨らむぜ!)
いのり「先生、前の人が大きくて前が見えません」

嘘界「おやそうですか。では、アルゴ君、替わってもらっても?」

アルゴ(いのりの前)「あぁ、別にかまわないぜ」

颯太「…ぇ?」

アルゴ(集の隣→颯太の隣)「…」ゴゴゴゴゴゴ

颯太(ヒィイーーー!)ビクビク

谷尋(颯太…)

花音(ご愁傷様…)

いのり(颯太の隣→集の隣)「よろしく、集」

集「あ、うん!よろしく!いのりさん」

綾瀬(あのエロガキ…いのりに手を出したら容赦しないんだから!)

祭(楪さんが集の隣に…こ、これは…マズイかもしれない…)

嘘界「では、朝のホームルームはこれで終了とします。それでは皆さん、また後で。放課後にはちょっとしたイベントも用意してあるので、楽しみにしていてください」

キーンコーンカーコーン

嘘界「起立、注目、礼!」


颯太「それでどういうことなんだよ集!グエンが起こしたっていう問題のことで何か知ってんのか!?」

集「うん、姉さんから聞いたんだけど…」

――――――――――

谷尋「それは…その涯ってのは、凄い奴なんだな」

アルゴ「だろ?」

颯太「ひっ!」ビクッ

アルゴ「…」ショボン

集「あ、アルゴさん」

アルゴ「さんづけなんていらねぇよ。タメだしな。それに敬語もよ」

集「あ…えっと、う、うん」

アルゴ「…いや、無理にとは言わねぇけどよ」


アルゴ「こっちのほうでも色々やらかしててなぁ…第二の奴らにとってはもう涯は伝説級の存在なんだぜ?」

集「そうなんですか…」

綾瀬「そうよ。私も、涯に助けられたことがあってね」

いのり「涯はすごい」コクッコクッ

集「…そうなんだ」


キーンコーンカーンコーン


ガララ

ダン「皆!早く更衣室で着替えて校庭に集合だ!遅れたものには罰としてガッツを入れて校庭を10周してもらうから、そのつもりでな!」

ガララ、バタン!

アルゴ「っと…まぁ、また今度時間があるときにでも話してやるよ。流石にここの校庭を10周もするのは御免だ」

集「うん」

ユウ「

本日は少ないですがここまで。

さてさて、席順が決まりましたが、はてさてこれから皆さんの関係はどうなっていくのか…

それは僕にもまだわかりません(問題発言)

それではここから、レス返しのコーナーです。

>>76
はい、気長にやらせていただきます。

>>77
ギルティクラウンを懐かしんでくれる同士が一人でも多くいることをうれしく思います。

>>78
ふふ、やはりこのようなことを言われるとうれしくなってしまいますね。
ご期待に沿えるよう努力いたします。

では、また会う日まで。



…後書きに書く内容がレス返しくらいしか思いつかないというのは内緒です。

がんばれー!

ギルクラ好きとしてはとても面白い
これからも期待



ー放課後ー

颯太「イベントってなんなんだろうな」

集「さぁ…?あの先生の考えてることなんてわからないよ」

ガララッ

嘘界「皆さん座ってください。これから放課後のHRを始めますよ」


嘘界「さて、これから皆さんにはこれをやっていただきます」ピラッ

花音「…クロスワードパズル、ですか?」

嘘界「えぇ。私、これが大好きでして」

綾瀬「…あの、それ、枠だけで問題がないように見えるんですけど…」

嘘界「おや、よく気づきましたね。その通り。このクロスワードパズルには問題がありません。指定されているのは文字数だけです」

嘘界「今からこれを奇数列の皆さんに一枚ずつ配ります。そして、隣の人とペアになって、奇数列側が横の、偶数列側が縦のカギを埋めて、このクロスワードパズルを完成させてください」

嘘界「書き込む言葉はなんでもかまいません。自分の好きなものを書いてください」

谷尋「好きなもの?」

嘘界「映画、ドラマ、本、音楽などのタイトル、ことわざ、人名、地名…なんでも、です」

嘘界「作られたパズルは、教室の後ろにでも貼っておきますので、自分と趣味が合いそうだと思う人に声をかけてみるのもいいでしょう」


集「あの、なんで二人一組でやるんですか?」

嘘界「それはもちろん、皆さんに仲良くなってもらいたいからです。そのための一歩として、まずは隣の人と仲良くなってもらおうと思いまして」

祭「なんで、クロスワードパズルなんですか?」

嘘界「少しは遊び心があった方がやりがいが出るだろうと思いましてね。あと私の趣味です」

祭「趣味…」

嘘界「さて、質問は以上でよろしいですか?…では、配りますので始めてください」


①楪・桜満ペア

集「よ、よろしく、いのりさん」

いのり「…」コク

集「どうしようか…とりあえず、適当に埋めていってみる?」

いのり「うん」グイッ

集「っ!」

いのり「…どうかした?集」

集「い、いや、なんでもない!なんでもないよ!うん!」

いのり「…?」

集(ち、近い近い!いのりさん近いよ!め、目の前にいのりさんの顔が…しかもなんかいい匂いするし…あ、目線ちょっとずらしたらシャツの中見えそ…って何考えてるんだ僕は!そうだ素数だ!素数を数えよう!1…あれ、1って素数だっけ?違うんだっけ?)※1は素数ではありません

集「…って、いのりさん」

いのり「何?」

いのりの担当
①おにぎり
②さけおにぎり
③めんたいこ
④おかか
⑤のり
⑥つなまよおにぎり

集「…なんか、おにぎり一色だね」

いのり「うん」コクッ

集「…おにぎり、好きなの?」

いのり「うん」コクッ

集「…あの、もしよかったら、だけど…」

いのり「?」

集「僕が作ってこようか?お昼ご飯。購買で買うよりはいいと思うけど…」
いのり「いいの?」ズズイッ

集「う、うん。一人分くらいなら増えても特に問題ないし。ていうか、いのりさん顔近…」

いのり「…ありがとう!集!」ニコッ

集(かわいい)


②篠宮・校条ペア

綾瀬(あいつ…一体何してるのかしら…もしいのりに手を出したらただじゃおかない…ん?)

祭「…」ジーッ

祭(うー、楪さん、集となに話してるんだろう?気になる…集も、珍しくあんまり嫌がってないし…いいなぁ、集の隣…)

綾瀬「ねぇ」

祭「はひ!?あ、すいません!なんか、ボーっとしちゃって…」

綾瀬「もしかして、だけどさ…あなた…校條さん、で良かったわよね?」

祭「あ、はい」

綾瀬「あいつのこと好きなの?」ピシッ

集←あいつ

祭「…」

綾瀬「…」

祭「ひゃん!!!」カーッ

綾瀬(何この子可愛い)

祭「な、何で、そんな、え!?私そんなにわかりやすいですか!?」

綾瀬「いや、半分くらいは鎌かけのつもりだったんだけど…」

祭「あうあうあう…」

綾瀬「わっかんないわねぇ…なんであんなのがいいんだか…」

祭「…あ、あんなのなんて言わないでください!集は…」
集「え、なに?」

祭「あ、何でもない何でもない!何でもないから!」ワタワタ

集「そ、そう…?」

祭「…あぁ、びっくりした」

綾瀬「…告白しないの?」

祭「できるわけないですよぉ!うぅ…」

綾瀬「なんでよ?好きなんでしょ?それなら…」

祭「そ、それよりもほら!そんなことよりクロスワードパズルやりましょう!」

綾瀬「いいのよそんなの放っておけば。それよりも…」
嘘界「それはいけませんねぇ」

祭・綾瀬「ひゃぁ!?」

嘘界「完成させなければいけない、とまでは言いませんが、できるだけはやっていただきたいものです」

祭「せ、先生…一体いつから?」

嘘界「…」ニッコリ

スタスタスタ

綾瀬「えっと…」

祭(聞かれた聞かれた聞かれた聞かれた聞かれた…………)ズーン

綾瀬「…パズル、やりましょうか」

祭「…そうしましょう」


③草間・寒川ペア

花音「4文字…「ちつじょ」かしら」

谷尋「それならここは「つじぎり」にするか」

花音「あら、「じかんげんしゅ」がはいるわね」

谷尋「…「かま」、でいいか」

花音「「ま」で始まる6文字…「マッカーサー」?」

谷尋「あ、ここに「ハサミ」がいれられるな」

※その後、特に何事もなく普通に完成


④魂館・月島ペア

颯太「…」ガクガクブルブル

アルゴ「…」ゴゴゴゴゴゴゴ

颯太「…」ガクガクブルブル

アルゴ「…」ゴゴゴゴゴゴゴ

颯太「…」ガクガクブルブル

アルゴ「…」ゴゴゴゴゴゴゴ

颯太「…」ガクガクブルブル

アルゴ「…」ゴゴゴゴゴゴゴ

颯太「…」ガクガクブルブル

アルゴ「…」ゴゴゴゴゴゴゴ

颯太・アルゴ(助けてくれ、集!)

嘘界「さて、それではチェックしてみましょうか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

嘘界「おや、魂舘君と月島君のは真っ白ですね。何度か声をかけたのですが、結局書けなかったのですか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

嘘界「次は草間さんと寒川君。おお、見事に完成しています!素晴らしいですね。流石は幼馴染と言ったところでしょうか。それにしても、寒川君…見た目によらず、ややバイオレンスな嗜好があるようですね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

嘘界「校條さんに篠宮さん…おや、これもまた完成しています。あまり気が合わなそうだと心配していたのですが…これは、思ったよりも良い関係を築けているかもしれませんね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

嘘界「これが最後ですか。楪さんと桜満君…ふむ、楪さんはライスボール関連ばかりですね。これはこれで立派な個性なのでしょうが…どうにもキャラクターが見えてきません。そして桜満君…」



嘘界「私の初恋の彼は、一体何が好きなのでしょうか?…むふふふふふふふふふ…」



クラス全体を巻き込んだこのゲームが、ただ単に、「好きな人の好みを知りたい」、と思う担任の思惑ゆえであったということは、誰も知らない…。


集「~♪」

真名「…なんだか上機嫌ね、集」

集「え、あ、そう?」

真名「えぇ、鼻歌歌いながら家事してるのなんて初めて見たわ」

真名「学校で何かあった?」

集「う、うん、まぁ…」

真名「言いにくいことなの?」

集「い、いやぁ…あはは」


真名「…恋か」

集「!」ビクゥ!

真名「あら?当たっちゃった?」

集「ち、違う!違うから!全然そんなんじゃないって!///」ブンブン


真名「…」


真名「へぇー…相手は?どんな子なの?」


集「だ、だから、そうじゃなくて…えと、クラスの子に、お昼に購買行く子がいるんだけど、その子のお弁当を作ることになって…」

真名「まったく…そういうことはちゃんと断らないとだめよ?」

集「いや、僕の方から申し出たんだ」

真名「…」ポカーン

集「…え、なに?その顔は…」

真名「だって…集は頼まれたら断れない人だけど、頼まれない限り助けもしない人だから」

集「そんなことは!…ないとは言いづらいけど」

真名「意外だわ…もしかして熱でもある?」

集「いや、体調悪い感じはしないけど…」

真名「へぇー…あの集がねぇ…」


集「…ねぇ、姉さん、『楪いのり』っていう子、知ってる?」

真名「?…知らないわね」

集「そっか」

真名「何?その女の子の名前?」

集「え、えと、そうなんだけど…なんか、初めて会った気がしないというか…だから、なんとなく気になるというか…」

『むにっ』

集(…気になるのはあの日の朝の出来事も関係してるんだろうけど…)

集「ずっと前に、会ったことがある気がするんだ」

真名「何それ?…あの涯って奴に続いて集も?最近男子で流行ってるの?そういうの」

集「いや、そういうわけじゃないけど…」

真名「ふーん、まぁいいわ。それじゃぁ私は寝るわね」

集「あれ、今日は早いね」

真名「なんだか眠くなっちゃって…おやすみ、集」

集「うん、おやすみ、姉さん」

バタン

集「~♪」

















真名「集に…好きな人?」

真名「クスクス…」

真名「でもね、集…あなたを一番愛してるのはあたしなのよ?」

真名「クスクス…」

真名「集…私の弟…可愛い弟」

真名「クスクス…」

真名「私の、愛しい弟…」


真名「ぜったいだれにもわたさない」


真名「クスクス…」

真名「クスクス…」

真名「クスクス…」




ユウ「

本日はここまで。

なかなかに不穏な空気が漂ってきました。さて、桜満集はゲイとブラコンという二人の変態から逃げ切れるのか?

・・・なんて展開にはなりませんよ、おそらくはね。

えぇ、全くないと言い切れないところが怖いところです。あくまで予定は未定ですから。

ところで、この「桜満」ですが、「おうま」では変換できないので、いちいち「さくらみちる」で変換しているのですが、
その度に、なんか、「さくらみちる」ってそれだけでフルネームでも通じそうだな、なんて思ってます。

はい?「それで?」いえ、それだけです。

それでは最後に、コメ返しをば。

>>88
はい、頑張らせていただきます。

>>89
ギルクラ好きがまだまだたくさんいるとわかるのは嬉しいですね。スレ立てした甲斐もあったというものです。
ご期待に沿えるよう努力いたします。

では、また会う日まで

―放課後―

花音「ねぇ桜満君。そろそろ活動しなくていいの?」

集「え?」

花音「『え?』…じゃないわよ。現代映像研究同好会!年度変わってから一度も活動してないじゃない!」

集「あー…そうだった。い、いやでも、今のところは特に依頼もないし…」

花音「あのねぇ…別に同好会ってそういう依頼とかあった時だけ動く万屋みたいなものじゃないのよ?」

花音「新入生に向けての宣伝とか、部屋の掃除だってしてないし、備品の確認とかも…」

集「う…」

綾瀬「何の話?」

祭「あぁ、私たちが入ってる同好会…『現代映像研究同好会』っていって、『現映研』なんてよばれてるんですけど…そのことでちょっと」

谷尋「そうだな…一度くらい、ちゃんとミーティングを開いて、色々と決めておかないと」

颯太「えぇー…めんどくさ」

花音「文句言わない!はい、そうと決まればさっさとローワン先生に部屋のカギを借りに行きましょう!」

綾瀬「…ねぇ、私もついて行ってみていい?邪魔はしないから」

祭「勿論!見学、入会は大歓迎ですよ!」

綾瀬「アルゴたちもどう?どうせ暇でしょ?」

アルゴ「その言い方は気に入らねぇが…まぁ、その通りだな」

いのり「行く」


花音「失礼します!ローワン先生は…」

ローワン「」チーン

花音「あ、あれ…?ローワン先生…?」

ローワン「あぁ、草間さん…こんにちは」ゲッソリ

花音「あのー…体調がすぐれないようですけれど…日を改めましょうか?」

ローワン「いや、大丈夫…大丈夫…」フラフラ

四分儀「ローワン先生に、何か御用でも?」

花音「はい?」

ローワン「四分儀先生…いらっしゃったんですか」

四分儀「…ご無理はなさらないでください、ローワン先生。今は休んでいた方が…」

ローワン「いや、しかし…」

四分儀「ふむ…君は確か…草間花音さん、っであっていますか?」

花音「はい。第二からいらっしゃった、四分儀先生…ですよね?」

四分儀「おやおや、私のことも知っていましたか。それなら話は早い。ローワン先生への頼み事というのは、私にはできない類のものですか?」

花音「え?えっと、これから、同好会のミーティングを開こうと思ったので、その部屋の開け閉めをお願いしに」

四分儀「ふむ…それくらいでしたら、私がやっておきましょう」

ローワン「そんな!そこまで気を使っていただかなくても…」

四分儀「ローワン先生。そんなひどい顔色をした人に働かれていると、こちらとしても困るのですよ。今日はもう帰って、ゆっくり休んでください」

四分儀「私のことはお気になさらず。研二とツグミの二人の面倒をあなたが見てくれているおかげで、体力が有り余っているくらいなのです」

ローワン「………わかりました、お言葉に甘えさせていただきます。これがその同好会室のカギになります」スッ

四分儀「はい、確かにお預かりしました」


四分儀「お待たせしました。では、行きましょうか。案内をお願いします」

花音「はい、任せてください!」


花音「ここです」

四分儀「扉の前にいるのは他の部員の方ですか?」

花音「えぇ。あと、まだ部員じゃないけど興味があるから見せてほしい、っていうクラスメイトも混ざってますけど」

四分儀「なるほど…おや?」

アルゴ「あん?」

綾瀬「四分儀?」

いのり「…」

四分儀「あなたたちでしたか…」

花音「お知り合い…あぁ、そういえば全員第二から来てるんですよね」

アルゴ「あぁ。この人とは第二からの付き合いだ」

四分儀「あなたたちが同好会に興味を…ふふ」

綾瀬「…何よ、私たちがそんなことしてるのがおかしい?」

四分儀「いえいえ、喜んでいるんですよ。君たちが青春を楽しんでくれていることが」ニコッ


四分儀「さて、立ち話もなんですし、鍵を開けますから道を開けてください」

颯太「なぁなぁ委員長、この人だれ?」ヒソヒソ

花音「第二から新しく来た四分儀先生よ。ローワン先生の代わりに来てくださったの」

ガチャリ

四分儀「開きましたよ」

花音「ありがとうございます!」ペコリ

四分儀「では私はこれで。職員室で仕事をしていますから、鍵を閉める際はまた来てください。完全下校時刻…6時には閉めなければならないので、どれだけ遅くなってもそれより早く私の所へ報告に来るように」

花音「はい、わかりました」

四分儀「では」



綾瀬「…それで、ここって具体的にはどんなことをする同好会なワケ?」

祭「えーっと、パソコンを使って、動画を作ったり…とか」

綾瀬「…あとは?」

集「いや、本当にそれだけなんですよ。まぁ、その動画を作るための素材を集めたりなんかもしますけど、基本的には、それだけですね」

綾瀬「なんか…暗っ」

颯太「な、なんだとぅ!お前、俺たちが作った動画見て腰抜かすんじゃねぇぞ!」

花音「何が『俺たち』よ。同好会を作ろう、って言ったのに肝心の動画作りのほとんどを集君に任せてるくせに」

颯太「お、おれだって色々…そう!色んな所へ行って素材を撮ってきたりしてるじゃん!」

花音「この部屋で遊ぶ片手間に…ね。それに関しちゃ祭のほうが働いてるじゃない。会長職まで私に押し付けるし…見切り発車でやるからこんなことになるのよ」

颯太「むぐぐぐぐ…」

谷尋「その辺にしとけよ。そういうことは去年にもうやってるだろ?」

花音「…そうね。今日は見学者もいるし。桜満君、去年作ったあれ、見せてくれる?学校の奴」

集「わかった、ちょっと待ってて」

祭「あ、私も手伝うよ!」


アルゴ「一体何を見せようってんだ?」

一同『!』ビクッ

アルゴ(集って本当にいいやつだよな。俺みたいなやつにもおびえずにちゃんと接してくれるし…)

いのり「…」ポンポン

アルゴ「…」ズーン

綾瀬「…えーっと、で、『あれ』っていうのは何?」

花音「去年実際に作った動画よ。学校のPRを目的とした動画でね。まぁ、そういうわかりやすい成果とかがあった方が印象がいいだろうってローワン先生にアドバイスされて」

花音「…ていうか、そうでもしないと会がつぶされそうだって言われたんだけど」

花音「まぁ、そういうわけで、作ってみたらこれが思いのほか好評でね。学校のHPで採用されたりもしてるの。もしかしたら見たことあるかもね」

綾瀬「へぇー…」

集「委員長、準備できたよ!」

花音「はーい!じゃ、映しちゃってー!」

集「わかった!」


『天王洲第一高校。ここでは…』

綾瀬「あー、そういえばこれ、ツグミに見せられたわねー…」

アルゴ「こういうのはよくわかんねーけどよ…結構よくできてる方なんじゃねーのか?」

いのり「…この声、聴いたことある」

花音「あぁ、ナレーションには、桜満君のお姉さんの真名先輩に協力してもらったのよ。ほら、第一の代表で挨拶した…」

綾瀬「あぁ、あの人ね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アルゴ「ん、もうスタッフロールか」

花音「はい!ご視聴ありがとうございました!」

綾瀬「うーん、動画ねぇ…」

アルゴ「お前にはあわねぇんじゃないか?どっちかっつーと体動かすほうが好きだろ」

綾瀬「そうはいっても、これじゃぁねぇ…」トントン

アルゴ「あぁ、足な…だからって、これやりたいと思うか?」

綾瀬「それは…」

谷尋「別に嫌なら嫌でいいんだぞ?あまりポピュラーな活動じゃないっ、ていうのは俺たちだってわかってるしな」

綾瀬「…ごめんなさい。ここまで案内してもらって申し訳ないけど、入会は遠慮させてもらうわ」

アルゴ(…入っても空気悪くするだけだろうし、俺も断ろうか…というかそもそも俺も誘われてるのか…ん?)チラッ

アルゴ「あそこにあるのは?」

集「あぁ、あれは参考にしてるアニメや映画のDVDです」

アルゴ「へぇ…お、Gガンか!いい趣味してるじゃねーか!」

颯太「!」ピクッ

集「あれ、アルゴさんもそういうの見るんですか?」

アルゴ「あぁ。つっても、こういう熱血ものとかばっかだけどな」

集「へぇー…」

アルゴ「意外だろ?」

集「え?えーっと…」

アルゴ「いいんだよ、自覚はあるから…にしてもグレンラガン、ガオガイガー、ゲッターロボ、スクライド…俺のお気に入りがそろい踏みだな」

颯太「本当ですか!?」ガバッ

アルゴ「あん?」

颯太「本当に、こういうの好きなんですか!?」

アルゴ「あぁ、そうだけどよ…」

颯太「じゃぁじゃぁ!アレ!あれやってもらえませんか!Gガンダムラストの東方不敗とドモンの伝説のやり取り!」

アルゴ「ほぉう…いいぜ!やろうじゃねーか!」

アルゴ「答えろ、ドモン!流派!東方不敗は!!」

颯太「王者の風よ!」

アルゴ「全新!」

颯太「系烈!」

アルゴ「天破侠乱!!」

二人『見よ!東方は赤く燃えているぅぅぅぅ!!!』


颯太「俺、あなたのこと今まで誤解してました!あなたは最高だ!」ヒシィ!

アルゴ「お前も、なかなかいい根性してるようだな!ははははは!!」ヒシィ!


祭「…何?あれ」

谷尋「あいつ、同じ趣味のやつがいないってずっと愚痴ってたからな…」

綾瀬「アルゴがあんなにハイテンションになってるの初めて見たわ…ていうか、あなたたちはああいうの見ないの?」

谷尋「あー、見るは見るんだが、ジャンルが全然違うから話が合わないんだよな。俺が見るのはホラーとかバイオレンスばっかりだし」

集「僕は、半分以上勉強のために見るから、映像とか音楽とか…演出の評価が高いやつを」

花音「祭はラブコメとか日常系とか…ほんわかしたやつしか見ないもんねー」

祭「うん…こうしてみると、みんな見事にばらばらだよね」

綾瀬「色々あるのねー…」

花音「綾瀬さんは、そういうの見ないんだ」

綾瀬「子供のころアン○○マンを見てた記憶しかないわ」

颯太「なぁなぁ!アルゴも入れていいだろ!なぁ!」

集(既に呼び捨てになってる…)

アルゴ「まぁ、機械には滅法弱ぇから、そっち方面では役に立てねぇけど、それ以外のことなら役に立つからよ!」

花音「え、あ…はい。じゃぁ、今度ローワン先生から入会希望届貰っておきますね」

颯太・アルゴ「イェーイ!」パシーン!

谷尋(ハイタッチ…)

祭(一瞬で仲良くなった…)

花音(男子って単純すぎ…いや。魂舘君だけか)

集「あの…いのりさんは?入る?」

いのり「…その動画作成って、歌は使う?」

集「歌?まぁ、BGMに使うことはあるかな。実際、合唱部の人とかにも手伝ってもらったこともあるし…」

いのり「じゃぁ、入る」

集「いのりさんは、音楽編集とかの趣味があるの?」

いのり「…」フリフリ

集「…?」

いのり「スゥー…」

♪Euterpe-エウテルペ-♪

咲いた野の花よ
ああ どうか教えておくれ
人は何故 傷つけあって
争うのでしょう

凜と咲く花よ
そこから何が見える
人は何故 許しあうこと
できないのでしょう

雨が過ぎて夏は
青を移した
一つになって
小さく搖れた
私の前で
何も言わずに



いのり「…」ペコリ


集「今のは…いの」
颯太「…す、すげぇ!いのりちゃん、歌すっごい上手いんだな!」

いのり「ねぇ集、私の歌は、ここで役に立つ?」

集「あ…うん」

集(…今の、聞いたことがある気がする。やっぱり、昔どこかで…?)

いのり「わかった。じゃぁ、入る」

綾瀬「涯から聞いてたけど…本当に歌がうまいのね。こんなに上手いなら、聴かせてくれてもよかったのに」

いのり「私は、歌いたいときしか歌わない。そうじゃないと、心が窮屈」

集「で、でも、歌いたいなら、それこそ合唱部とかのほうが…」

いのり「…」フリフリ

集「…なんで?」



いのり「だって、ここには集がいるもの」



集「っ!」ドキッ

祭「!」ガタッ

いのり「…」

集「い、いのりさん、それって、どういう…」


いのり「ご飯のお礼」

集「あぁ…そういうことですか」ガクッ

集(なんか、いのりさんのなかで、僕=ご飯をくれる人、という図式が成り立ってるような気がしてならない…)

祭「ほっ…」

花音「よかったわねー。ライバル出現ってことにならなくて」

祭「ひゃぁ!か、花音ちゃん!聞こえちゃうって!」

花音「んふふー」ニヤニヤ


ガチャ

「すいません…兄さんはいますか?」ヒョコ

アルゴ「ん?」ギロリ

「ひっ」

綾瀬「アルゴ、ちょっと奥にいってて!」 

アルゴ(…俺ってやつは)ズーン

颯太「大丈夫だアルゴ!お前の良さは俺がよくわかってるからな!そんなに落ち込むことはない!」グッ

綾瀬「で、君は…」

谷尋「潤!」

潤「兄さん!」

ダキッ

谷尋「よく来たなー潤!さぁ入れ!」

潤「うん、兄さん」

集「あ、潤君!久しぶり」

潤「お久しぶりです、集さん!」

花音「いらっしゃい、潤君」

潤「あ、おね…花音さん!こんにちは!」

花音「あら、呼びにくかったらいつもみたいに『お姉ちゃん』て言ってもいいのよー」ニヤニヤ

潤「そ、そんなの…恥ずかしい…///」カァ

祭(相変わらず可愛いなー潤君は…)ポケー

綾瀬「えっと、君は谷尋の『妹』?それとも委員長の?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

颯太「このバカ!」

綾瀬「は?何よいきなり…」

潤「…ヒグッ」

綾瀬「え」

潤「これでも…僕は、男ですぅ…うぅ、ひっく」ウルウル

綾瀬「え、あ、ご、ごめんなさい!私ったら、勘違いを…」

潤「いいんです…どうせ僕はナヨナヨしてるし、女みたいなのだってわかってますもん…よく間違われますし…」ズーン

花音「だ、大丈夫よ潤君!高校一年生くらいなら、まだ間違われる人も結構いるもの!もう1,2年もすればちゃんと男らしくなるから!ね!」

祭「そ、そうだよ!気にすることないって!」

アルゴ「つか、ちゃんと男子の制服着てるじゃねーか。なんで間違えたんだよ」

綾瀬「いや、つい…」

ポン

綾瀬「?」クルリ


谷尋「 潤 を 泣 か せ た な ? 」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


綾瀬「」ゾクッ

集「わー!谷尋!ストップストップ!」ガシッ

颯太「そうだ谷尋!落ち着け!それはマズイ!な!」ガシッ

谷尋「ぬぅ…!放せ!」ジタバタ


潤「えっと…ご迷惑をおかけしました」ペコリ

綾瀬「いや、こちらこそごめんなさい」ペコリ

集「あぁ…危なかった」

颯太「本当だよ…勘弁してくれよマジで」

谷尋「ハハハっ、悪い悪い」

祭「全然悪びれてないよ…」

アルゴ「…なぁ、兄貴があんなだから弟があんなんになったんじゃないのか?」

花音「…その通りです」


潤「改めまして、寒川潤です」

綾瀬「篠宮綾瀬よ」

アルゴ「月島アルゴだ」

潤「ひっ!」ビクッ

アルゴ「…」ズーン

綾瀬「えっと、アルゴは、あんな顔してるけどいい人だから。そんなに怖がらなくて大丈夫よ」

潤「あ…はい」

いのり「楪いのり」

潤「よろしくお願いします!」ペコリ


潤「…」ソワソワ

谷尋「ん?どうした、潤」

潤「いや、なんか…ここにいる女の人みんな美人だな、って思って…」ヒソヒソ

谷尋「…まぁ、そうだな」

潤「…なんか…だからどうってわけじゃないけど…緊張する」モジモジ

谷尋(まぁ一番可愛いのはお前だけどな)


綾瀬「寒川さんって…ブラコン、よね?それも重度の」

颯太「あぁ。あいつは内の学校で『天王洲のブラコンコンビ』の片割れだ」

集「え?コンビ?それは初耳だけど…もう一人って誰?」

颯太「…」ジーッ

集「え?何?」

颯太(お前の姉ちゃんだよ…とは、言えないよなぁ)

花音「潤君も、入部希望?」

潤「うん!それで、入部ってどうすればいいのかな?」

花音「あー、今必要な用紙がないのよ。明日にはもってきておくから、また来てちょうだい」

潤「わかった!」

花音「さって、と…色々やってたらもう時間が…」

集「結局、何も話さなかったね…」

花音「その代わり、新入部員3人も確保できたわけだから、まぁいいでしょ。それじゃぁ今日の所はこの辺りで解散!また明日、集まりましょう!」

ユウ「

月島アルゴが皆と打ち解け、桜満集と楪いのりとの関係が見え隠れし、更に潤君という新たな癒し要素を迎えたところで、今回はここまで。

月島アルゴの扱いをどうするかというのは、最後の最後まで悩んだのですが、結局はこのような形に落ち着きました。

スレ終了まで、ずっと恐れられては落ち込むということを繰り返す…というのもおもしろいかとも思いましたが、

何度もやっていればマンネリ化は避けられませんし、話に絡めにくくもなり、なにより見ていて不憫になりますからね。

無理矢理な感はどうしても否めませんが、このような処置を取らせていただきました。

さて、ところで次回の主人公は桜満集ではないとのこと。いったいどんな物語が繰り広げられるのか?

次回、『生ける伝説、涯!伝説その①、驚異の身体能力!』

お楽しみに。


真名「次は体育か…どうしても汗かいちゃうから嫌なのよねー」パサッ

亞理沙「しょうがないわよ、体育だもの」シュル

真名「しかも、担当があのイーグルマン先生だから…手も抜くに抜けないし」ゴソゴソ

亞理沙「手を抜いてるのがばれたら、『ガッツが足りないぞ!』って言って校庭を走らされるものね」キュッ

真名「イーグルマン先生が女性を尊重する気持ちを忘れない人だっていうのが唯一の救いね。あれで更に男女平等を掲げていたらと思うとぞっとするわ」スルスル

亞理沙「まったく、その通りね」ファサッ

真名「…にしても、相変わらず大きいわね」ジーッ

亞理沙「え?なにが…っ!///」

ボインボイン

亞理沙「突然何よ!?」ササッ


真名「いや、何度も言ってるけれど…高三でその大きさは異常よ?一体何食べたらそんな風になるの?」

亞理沙「し、知らないわよ!勝手に、こうなったんだもの…」

真名「羨ましくなるセリフね…私だってあんまり小さい方じゃないけど…やっぱりあなたに比べたらまだまだ貧乳の域よ」ムニムニ

真名「時間が経てばこれくらい大きくなるって言葉を信じてたけど、3年生になった今でもその差は縮まることはなし…ていうか、むしろ亞理沙の方が成長してない?」

亞理沙「いや、流石にそれはない…と思うのだけれど」

真名「うーむ…」ワキワキ

亞理沙「ちょ、何?その手の動きは…そこはかとなく嫌な予感がするのだけれど…」

真名「いやいや、やっぱりこういうときは揉んでみるのが一番かと」
亞理沙「そんなわけないでしょう!発想が変態的すぎるわよ!?」

真名「むぅ、残念」

亞理沙「…というか、女の子なのに他人の胸を揉んで嬉しいの?」

真名「もち!」グッb

亞理沙「とてつもなく良い顔でサムズアップしてきたわね…でも、大きければいいというものではないと思うのだけれど」

真名「まぁ、それはその通りだけどね。邪魔になる上に重さで肩がこって、それだけの代償を払って得られるのは女子の嫉妬とエロガキの視線だけだもの」

真名「あーあ。今日は一体何人の男子がぶるんぶるん震える亞理沙のおっぱいに目を奪われて校庭を走らされる羽目にあるのかしら」

亞理沙「…私、だんだん欠席したくなってきたわ」

真名「補習として放課後一人で校庭走る気があるならどうぞ」

亞理沙「はぁ…憂鬱だわ」



ダン「さぁ皆!今日もサッカーだ!ガッツ入れていこうぜ!!」

一同「おー」

ダン「声が小さぁい!もっとガッツを入れろー!」

一同「おー!」

ダン「いいぞ!その調子だ!もう一声ー!」

一同「おおおおお!!!」

真名(なんなのよこのノリは…)

亞理沙(疲れるわ…)

ダン「さて、今まではシュートやらドリブルやらの練習ばかりだったが、今日からはとうとう試合を始めるぞ!」

一同「おおおおおおおおおお!!!」

ダン「男女別でのチーム分けを発表するから、ガッツを入れてちゃんと聞いておけよ!」


真名「さーて、いっちょ行きますか」←エースストライカー

亞理沙「頑張ってー」←ゴールキーパー

真名(まったく他人事だと思って…あとで絶対キーパー変わってもらうんだから!)

ダン「男子も女子も、準備はできたな?ではよーい」


ピーッ!


真名「やっ!」ヒュッ
「きゃ!」

真名「ほい!」バッ
「むぅ…」

真名「もう一丁!」シュバッ
「もう!」


亞理沙「相変わらずの運動神経ね…もうあの子一人でいいんじゃないかしら」

亞理沙「こうなってしまうとここは暇ね…男子の方はどうなって…」

ピーッ!

真名「…え?」


ダン「男子Aチーム、得点だ!いいガッツだぞー!」


ダン「涯!」


涯「…」

難波「こいつ…化け物かよ…」

数藤「一人で十一人抜きやがった…」

涯「ふん…どいつもこいつも雑魚ばかり、だな。十一対一ではどうにも役不足な感が否めない」

涯「先生」

ダン「ん?なんだ?」

涯「一つ、提案があるのですが…」


涯「…」涯チーム メンバー:涯のみ

難波「くそがっ…舐めやがって…」難波チーム メンバー:涯以外の男子

涯「さぁ、そっちからだ」

難波「…行くぞォ!」

「「「おおおおおおおおお!!!」」」


ピィーッ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

涯「まったく…二十一対一でもまだ足りんか」ファサッ

難波「こんな…バカな…」グテー

数藤「くっ…はぁ、はぁ…」グテー


真名「なんていう規格外…あっちのチームにはサッカー部もいるっていうのに…」
ダン「こらー!」

真名「あ、やば…」

ダン「試合中だぞ!何ボーっと突っ立てるんだ!女子は全員校庭3周!!」

真名「うぇー…」 

ダン「男子もだ!21人で挑んで負けるとは、ガッツが足りない証拠だ!校庭30周!!」

数藤「はぁ!?30周!?そんなの…」
難波「やめろ。言うだけ無駄だ」

ダン「涯、待ってる間はどうせ暇だろうから、ついでに走っておくといい!ペースは自分で決めていいからな!」

涯「はい、先生」


真名「さー再開するわよー!先生、笛お願いしまーす!」

ダン「うむ!では…」

ピィー!

真名「さぁ、かかって来なさい!」ゴールキーパー

ダン「あ、言い忘れていたが、負けたほうは校庭1周な!」

敵チーム女子(あの二人が組んでるのに勝てるかぁ!)


亞理沙(…男子はまだ走ってるのね。ま、授業が終わるのが先か、走り終わるのが先か、と言ったところかしら)ストライカー

亞理沙「…それで何で、一人で二十一人を相手にした誰よりも疲れているはずの恙神さんが誰よりも速く走っているのかしら」


涯「………」タッタッタッタ…

数藤「あいつ、マジモンのバケモンかよ…」

難波「くっ…このままでは済まさんぞ…」ギリッ

涯「………」タッタッタッタ…



「すごいわね!どうしてあんなことできるの!?」

涯「日々の努力の賜物だ」

「サッカーやってるの?」

涯「サッカーもだが、バスケやテニス…メジャーなスポーツには大体手を出している」

「本当に高校生?」

涯「あぁ、ちなみにまだ18歳だ」

キャーキャー!

真名「そりゃ、あれだけやればあーなるわよね」

亞理沙「スポーツ万能のイケメン君、ねぇ…あなたが男だったらあんな感じなのかしらね」

真名「その言い方はやめて。なんか気持ち悪いから…」


「彼女は居るの?」

涯「いない…今のところは、な」

「じゃぁじゃぁ、作る予定はあるってこと!?」

涯「さぁ、どうだろうな…」チラッ


真名「!」ビクッ

亞理沙「どうかした?」

真名「…今、こっちを見た気がするんだけど…」

亞理沙「え?…気のせいじゃない?」

真名「…そう、よね。うん、きっとそうだわ」




集「…その人、一体何者?」

真名「さぁ?女子を11人抜きくらいなら私もやってるけど、サッカー部含めた男子を21人抜きしてそのまま授業を受けるなんてことは流石にできないわね。もしかしたら人間じゃないかも」

集「あはは…冗談に聞こえないね」

真名「半分くらいは本気よ。…本当になんなのかしら?得体がしれないったらありゃしない」

集「なんだか棘のある言い方だね。姉さんらしくない気がするよ」

真名「ああいう人、私苦手だわ。押しの強い人っていうの?…やっぱり私は、ちょっと弱々しくて可愛らしくて、でもちゃんと相手のことを思ってくれるような人がいいなー。家事とかしてくれる人だったらもう最高ね!」チラッチラッ

集「へぇ…姉さんの好みって、そういえば初めて聞いた気がする」

真名「あら、そうだったかしら?」

集「うん」

真名「………」

集「………」

真名「………」

集「………」

真名「…ねぇ集、友達から鈍感って言われたことない?」

集「え?うん、あるけど…何でわかったの?」

真名「なんとなく、よ…ハァ」

ユウ「

恙神涯が一つ、伝説を作り終えたところで今日はここまで。

桜満真名のブラコンが治るのが先か、桜満集の鈍感が治るのが先か…気になるところです。

ところで、今回の話ではダン・イーグルマンの方針故、何度も『校庭を○周』という言葉が出てきましたが…

この、『周』という言葉を変換するとき、どうしても最初に『集』に変換されてしまうんですよね。

こうすると意味が変わってくる、というか、訳がわからなくなりますね。特にこの物語の中では。

だからどうしたって?いえいえ、前回と同じく、ただの雑談ですよ。掛け値なくね。

それでは、また会う日まで。

今回も面白かったぜ!
真名と集のデートが見たいなぁ(チラッ



ダリル「おいちんちくりん!行くぞ!」

ツグミ「…えー」

ダリル「なんだその顔は!さっさと準備しろよ!」

ツグミ「…ねぇ、すでに30連敗よ?もう諦めたら?」

ダリル「ハァ!?何言ってんだ!僕が勝つまでやるって言っただろうが!」

ツグミ「言ったけどさぁ…」

ダリル「ゴチャゴチャ言うな!いいからさっさと行くぞ!」

ツグミ「えー…」

研二「とかなんとか言いつつ毎日付き合ってるツグミマジツンデレー」

ツグミ「うっさい!」

ツグミ(あれから、とりあえずこのモヤシ子は暴力で挑んでくることはなくなった)

ツグミ(けど、やっぱり私のことは気に入らないみたいで、何かと因縁をつけてくる)

ツグミ(それを鬱陶しく思った私は、ある賭けをすることになった)

ツグミ(ゲームで勝負して、私が負けたら何でも言うことを聞く。私が勝ったら二度とつっかかってこない)

ツグミ(それがいけなかった…)

ツグミ(それから、こいつは毎日毎日私に挑んでは負けるを繰り返している。もうすでに30連敗しているにも関わらず、その闘志が燃え尽きることはない。むしろ負ければ負けるほど燃え上がるようだった。もしかしてマゾ?)

ツグミ(この「つっかかってこない」を厳密に定義しないのもまずかった…こいつの中では、「勝負を挑むこと」=「つっかかる」ではないらしい)

ツグミ(その上、この状況を面白がる研二が、やたら私たちを勝負させようとするから、余計逃げにくいし…)

ツグミ(初日に四分っちが釘を指したおかげで、まぁ、割かし平和的な勝負が続いてはいるんだけど…)

ツグミ(いい加減、こいつの相手はめんどくさい)

ツグミ(しっかしどうすればいいかなー…)

ツグミ「!」ピコーン

ツグミ「わかった…じゃぁいつものゲーセンで待ってなさい」

ダリル「ハァ?僕を一人で待たせる気?そう言って逃げるつもりじゃないの?」

ツグミ「どうせ逃げてもまた明日挑んでくるんでしょ?安心しなさい。準備はすぐ済むから」

研二「まぁ来なかったら四分儀に報告するから」

ツグミ「それはやめてマジで」

ダリル「…わかった。できるだけ急げよ!」



ツグミ「そ・れ・でーっと…あやねぇは一体どこに…お、居た居た。あやね…」


綾瀬「へぇー、それじゃぁ委員長は通い妻みたいなことをやってるわけねー」

花音「通い妻って…そこまでじゃないわよ。ただ、幼馴染のよしみとして、たまーにご飯を作ってあげたり洗濯をしてあげたり掃除してあげたりしてるだけよ」

祭「…そういうのを、通い妻っていうんだと思うんだけど…」


ツグミ「あ、あやねぇに友達がいるゥーーーッ!?」ガビーン

いのり「あ、ツグミ」

花音「…誰?」

祭「…えっと、篠宮さんたちの知り合い?」

綾瀬「えぇ…ねぇツグミ、今の叫びはどういう意味かしら?」

ツグミ「いやだって、あやねぇが女の子と一緒にお喋りなんて…これは明日は雪が降るかも」

綾瀬「あんたはぁ!」ダッ!

ツグミ「にゃっはは!」ヒョイ

綾瀬「待ちなさいツグミィ!」

ツグミ「待てと言われて待つバカがいる?いや、いない!」

花音「ちょ、篠宮さん!そんなに走ったら危ないって!」

綾瀬「待ーてー!」

ツグミ「捕まえてごらんなさ…やばっ!あやねぇストップ!」

綾瀬「え?」
集「え?」

ドゴシャァ!

綾瀬・集「「いっつつ…」」

颯太「おぉ!?なんだなんだ!?」

谷尋「おいおい、大丈夫か?…って」

集「あぁ、僕は大丈夫。それより…」

『むにっ』

綾瀬「っ!///」

集(…あれ、こんな感じの感触、前にもどこかで)
綾瀬「き」





綾瀬「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」

      バ チ ☆ コ ー ン 





潤「…大丈夫ですか?集さん」

集「う、うん、大したことはないよ」

綾瀬「…」ツーン

ツグミ「いやぁはっはっは。まさかあんな見事なラッキースケベが起きるとは…お主、神に愛されておるな」

アルゴ「運が良かったな集。綾瀬の理性があともう少し飛んでいたら張り手じゃなくて右ストレートが飛んできてたところだ。そうなったら頬に紅葉程度じゃすまなかったろうな」

集「こ、怖いこと言わないでください…」

綾瀬「…」ツーン

颯太「羨ましい…」ボソッ

谷尋「お前、それ絶対に篠宮に言うなよ…?」

綾瀬「…」ツーン

祭「…!…!」オタオタワタワタ←何か言うべきだと思うけど何と言ったらいいかわからずに混乱中

花音「あんたはちょっと落ち着きなさい」


ツグミ「何はともあれ、さっきはごめんよ、少年。ついつい悪ふざけが過ぎて…ほら、あやねぇも」

綾瀬「は?何?」

ツグミ「何?じゃないでしょ。気持ちはわかるけど、この少年は完全に純粋に巻き込まれただけなんだから、車椅子で激突した分くらいは謝んなよ」

綾瀬「…」ブスーッ

ツグミ「いや、その『あんたが言うな』って言いたげな顔は尤もだけどさ、だからってこの子に謝るかどうかっていうのとは別問題でしょ?」

綾瀬「それは…そうだけど…むぅ…ごめんなさい」ペコリ

集「い、いや、いいよ。別に…あんなことがあったら、つい張り手をしてもしょうがないしね。アルゴさ…の言い草じゃないけど、本来なら右ストレート貰ってもおかしくないし…」


ツグミ「それで少年、どうだった?柔らかかった?あやねぇのおっ」
綾瀬「ツグミィ!それ以上喋ったらあんたにグーパンくらわすわよ!」

ツグミ「おぉ怖い怖い。というわけで、ツグミと言います!以後、お見知りおきお、ってね!」

綾瀬「…それで、何か用?わざわざ2年の校舎まで来るってことは、何か急ぎのようでもあったんじゃないの?」

ツグミ「え?………あ」



ダリル「遅いぞチンチクリンコラァ!」ウガー!

ツグミ「メンゴ♪」キャハッ

ダリル「っ!」イラァッ

研二「…何そのギャラリー。多っ」

ツグミ「あぁ、あやねぇの友達だって」

祭「ど、どうも…」

集「は、初めまして…」

研二「…は?綾瀬に友達?冗談も大概にしてよ」

綾瀬「殴るわよ」

研二「で、綾瀬を連れてきたってことは、今日はあれなわけ?」

ツグミ「そうそう。そうだ、あやねぇには私がつくから、モヤシ子の方にはあんたがついてちょうだい」

研二「めんどくさっ」

ツグミ「いままでずっと観戦してたんだから、働きなさいよ。観戦料にしたら安いくらいでしょ」

綾瀬「ねぇ、言われるままについてきたけど、私は何すればいいの?それでそもそもこちらはだれ?」

ツグミ「まぁまぁ、細かいことは気にせずに!とりあえず、あやねぇは私に協力してくれればいいから!」

綾瀬「…まぁ、最近忙しくて来れてなかったから、丁度いいと言えば丁度いいんだけど…」

アルゴ「ていうか、なんでこんな着いてきたんだ?別に付き合う必要はねーだろうに」

祭「いやだって気になりますし…」

集「僕はなんとなく」

潤「あ、僕もです」

谷尋「潤が行くって言ったからな」

颯太「俺は面白そうだから!」

花音「一人じゃ会議も何もできないですし」

いのり「だって」

アルゴ「…そうかい」


颯太「…あぁ、そういえばこんなのあったなーこのゲーセン。なんかよくわかんねーからスルーしてたけど」

ツグミ「エンドレイヴVSエンドレイヴ。エンドレイヴの正式名称は "Endoskeleton remote slave armor" 。和訳すると「内骨格型遠隔操縦式装甲車両」。それに実際に乗り込んで戦う3Dアクション対戦型ゲーム」

ツグミ「ロボットとプレイヤーの意識を直にリンクさせるっていう10年は先の技術を使っていて、全ゲームプレイヤーの夢、「ゲームの中に入る」、を可能にするこのシステムは、稼働当初はそれはもうすさまじい勢いがあった…んだけど」

ツグミ「無理して未来の技術使ったせいで、CPU戦すらまともに実装できなかったから、できるのは対人戦のみ。初心者が入ろうものなら最初っから熟練者に振るぼっこにされる。
開発が難航していて、稼働から2年経った今でも、プレイできる機体は2種類のみ。
操作方法が未来的すぎてまともにプレイできる人がそもそも少ない上に専用の機材が大量に必要になるからコストパフォーマンスも最悪…」

ツグミ「などなど問題が山積みで、今じゃもう稼働してる店自体も少なくなって、プレイしてる人は相当にコアなファンだけになってるんだよね」

颯太「へぇー」

谷尋「…で、篠宮はその相当にコアなファンの一人ってわけだ」

綾瀬「まぁね」

ツグミ「今回はこれよー。文句はないわよね」

ダリル「あぁ、いいよ。じゃぁ、僕は先に着替えてくるから」スタスタスタ

ツグミ「…?なーんかやけにあっさりしてるわね…ま、いいか。駄々こねられるよりは楽だし。じゃ、あやねぇ!私たちも行こっか!」

綾瀬「…やっぱり、着替えるのよね?」

ツグミ「当たり前でしょー?じゃないとプレイできないじゃん」

綾瀬「…………………………うぅ」

祭「あの、着替えって?」

ツグミ「あぁ、これ、プレイするのに専用のパイロットスーツに着替える必要があるのよ。じゃないとプレイできないの」

綾瀬「こいつらの前であれ着るのぉ…?」

集「…こいつらって、僕達のこと?」

ツグミ「いいから観念しなさい!ほら、手伝ってあげるから!」グイグイ

綾瀬「はぁ…憂鬱だわ」


更衣室<これ着るのも久々ねぇ…

更衣室<はーいじゃぁ脱がすわよー

更衣室<…なんか、前着てた時よりも胸がきついような…

更衣室<なーにー?あやねぇったらまだ成長してるの?どれどれ…

更衣室<ひゃぁ!?どれどれじゃないわぁ!いきなりどこ触ってるのよ!!

ドゴシャァ!

ツグミ「ぎゃふん!」

花音「あの、大丈夫?」

ツグミ「うぐぐ…更衣室なんて狭い場所で迂闊にセクハラするんじゃなかった…鳩尾…モロ…」プルプル

綾瀬「…まったくもう」シャッ

颯太「うほっ!」
集「うっ…///」
潤「ひゃぁ…///」


綾瀬「…あんまジロジロ見るんじゃないわよ」

谷尋「それ…恥ずかしくないのか?」

綾瀬「は、恥ずかしいに決まってるでしょ!もう…///」

祭「わ、わぁ…全身にぴったり…ボディラインがくっきりはっきり…」

花音「というか、なんというワガママボディ…祭といい勝負ね」

祭「花音ちゃん!?いきなり何言ってるの!?」

綾瀬「っ~~~///…とりあえずそこの男子ども後で殴る」

颯太「え」

集「僕もですか…」

潤「うぅ…」



綾瀬「ツグミ!さっさと始めるわよ!」

ツグミ「アイアーイ。あ、そういえばあのモヤシ子のほうは…」

ダリル「とっくに準備はできてるよ!さっさとしろよ!…ったく、待ち合わせでも待たされたってのに…日本人は時間に厳しいんじゃなかったのかよ…くそっ!くそっ!」

ツグミ「ちょっとちょっと、また台バンしたりしないでよー?今度こそ出禁くらうわよあんた」

ダリル「誰のせいだと思ってやがるゴラァ!」

ツグミ「あらあらそれはゴメンアソバセー(棒)」

ダリル「っ…!っ…!」ビキビキ

研二「まぁまぁどうどう」

ダリル「僕は馬じゃない!」ウガー!



ツグミ「コイン投入!設定は店内ローカル対戦、フィールドはランダム…それじゃぁ行くわよあやねぇ!ゲームスタート!」

綾瀬「了解!」


ダリル「サポートなんて別にいらないんだけど…」

研二「まぁそう言わずに。綾瀬が相手ってだけでも十分やばいのに、その上ツグミのサポートが着いてたんじゃ勝ち目はないよ?」

ダリル「僕をのその辺の素人と一緒にするなよ」ピッ

研二「あれ、それメンバーズカード?結構このゲームやりこんでるんだ」

ダリル「…まぁね」

研二「…!?へぇー、これはこれは…こりゃ、どっちが勝つかわからないな…にしし」

ダリル「さーて…それじゃぁ…始めようか」


ダリル「ゲームスタート!」


ツグミ(むふふ…ここであやねぇがモヤシ子をフルボッコにすれば、当然あいつの標的は私からあやねぇに変わる!)

ツグミ(そうすれば私はもう二度と付きまとわれることはなくなる!)

ツグミ(あぁ、なんて完璧な作戦なのかしらー。自分の才能が怖いわ―)

綾瀬「ちょ…何、これ…?」

ツグミ「んー?どうかしたー?あやねぇ…」


VS Massacre 階級:元帥 戦績:8,568戦8,568勝


ツグミ「…何このふざけたデータ…いやちょっとまって…Massacre<皆殺し>って…」

綾瀬「…なにはともあれ、油断できない相手ってのは確かね。ツグミ!気合い入れていくわよ!」

ツグミ「アイ!当然!」


VS Ogre 階級:元帥 戦績:5,238戦 5,238勝

ダリル「余計な手出しはするなよ」

研二「わかってますよー」

ダリル「さぁ…グチャグチャのミンチにしてやるよ!」





―――READY―――


「篠宮綾瀬、ジュモウ、出撃します!」


「ダリル・ヤン、ゴーチェ、行くよ!」



―――FIGHT!―――





FIELD:六本木

「…あいつはどこに?」

「センサーに反応!2時の方向、距離300!」

「オーケイ!」

立ち並ぶ建物を避けながら、敵の元へとジュモウを走らせる。

「200…100…来るよ!」

最後の角を曲がった瞬間、ガトリングガンを構えて飛び出す。

が、

「いない…?どこに」

「あやねぇ!上!」

「え!?」

その瞬間、空からパイルバンカーを構えたゴーチェが襲いかかる。

「ははっ!つぶれちゃいなよ!」

「お断りよ!」

ジュモウを急発進させるも、ぎりぎり間に合わず、ガトリングガンを構えた右手を貫かれてしまう。

「痛っつぅ…」

「あやねぇ!一回離れて!こいつ、近接戦闘(舐めプ)して勝てる相手じゃない!」

「っ…わかった!」

勢いを殺さないままにその場からの離脱を計る。

「逃がすと思ってんのかよォ!」

ゴーチェを形態変化させて戦車のような形になり、ジュモウを猛追する。

「くっ、離せない…」

「基本スピードはあっちの方が上だからね。障害物をうまく使って!」

「ええ!」

ジュモウを急激に方向転換させて建物の密集地へ入ろうとする。
しかしそれを阻むようにゴーチェからレールガンが発射される。
それを避けるために止むを得ず道の中央へと戻る。

「だよなぁ!ジュモウがゴーチェから離れようと思ったら、そうやって障害物利用するしかないもんなぁ!けど、そんな見え見えの逃亡、僕が許すわけないだろうがァ!」

「だったら!」



迫りくるゴーチェに向かってミサイルを発射する。
多数のミサイルが風を切ってゴーチェへと降りかかる。

「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」

しかし、ゴーチェは戦車形態からもう一度人型の形態に戻り、軽やかな動きでそれを躱し切る。

「うっそ、あれを全部避けたの!?」

「こなくそぉ!」

「!ダメ、あやねぇ!接近戦は…」

「ハハッ!」

近づいてきたゴーチェを殴りつけようとするも、今度はまた戦車形態になり、背を低くすることで交わされる。
そしてそのまま腰のあたりに突進を受け、ビルの壁へと叩きつけられる。

「あぐっ…」

衝撃によって硬直を余儀なくされるジュモウ。そしてゴーチェのパイロットはその隙を見逃さなかった。

「逝っちゃいなよ」

人型の形態に戻ると同時に、ジュモウのコックピットに向けてパイルバンカーが叩き込まれた。



―――GAME OVER―――

Massacre WIN!

Ogre Lose…



綾瀬「そんな…」

ダリル「はん!弱すぎるね。肩慣らしにもならないよ」HAHAHA

研二「そんなこと言って、あのミサイル撃たれたときはぶっちゃけ危なかったでしょ?感謝してよねーあれの着弾点割り出してあげたの僕なんだからさ」

ダリル「う、うるさい!あれくらい、お前のサポートなんてなくても避けれたさ!」

研二「はいはいソウデスネー」

ダリル「なんだ喧嘩売ってるのか?今度はお前をぐちゃぐちゃにしてやろうか?」ビキビキ

研二「そんなことより、どうするのー?「なんだそんなことよりって!大体お前は」君、勝ったんだよ?賭けの内容、忘れたわけじゃないでしょ?ねぇー、ツーグーミー」ニタニタ

ツグミ「…」ブスッ

研二「随分とすごい賭けをしてたよねー?僕が『そんな賭けで大丈夫なの?』って聞いても、『私が負けるわけないでしょ!』って言って…」

ツグミ「…」

研二「『私が負けるわけないでしょ!』『私が負けるわけないでしょ!』『私が負けるわけないでしょ!』」

ツグミ「…」

研二「ねえねえどんな気持ち?初めて負けたけど今どんな気持ち?ねぇねぇ」プークスクス

ツグミ「だぁぁぁぁあああああ!!!うるっさいわよ研二ィ!いい加減黙りなさい!」

研二「わーい負け組が怒ったー」ピュー

ツグミ「あ、こら待て研二!」

ダリル「待つのはお前だちんちくりん」ガシッ

ツグミ「…モヤシ子」

ダリル「お前言ったよなぁ?自分が負けたら、『なんでも言うこと聞く』ってさ」

ツグミ「えっちぃのはダメだかんね!」ササッ

ダリル「だ、誰がそんなことするかぁ!ましてお前みたいなちんちくりんに!」

ツグミ「モヤシ子のあんたに言われたくないわよ!」



綾瀬「…」ズーン

祭「えっと…」

花音「これは…」

アルゴ「あれで綾瀬今まで負けたことなかったからな…ショックはでかいだろ」

谷尋「掛ける言葉が見つからん…」


颯太「ねえねぇ今どんな気持ち?どんな気持ち?」プークスクス

集「ちょ、やめなよ颯太…」

綾瀬「…」ブチィ


綾瀬「そういえば…あんたたちにこの恰好見られたお礼をまだしてなかったわね」

颯太「え?」

綾瀬「ふん!」

ドゴォ!

颯太「…!…!」ピクピク

谷尋「鳩尾に一発…良いパンチだ」

綾瀬「次ィ!」

集「え、ちょ待ってせめて心の準備を」

ドゴシャァ!

集「」チーン

祭「きゃー!集ー!」

花音「車椅子による加速+肘…何という仕打ち」

綾瀬「ふぅ、ちょっとはすっきりしたかな…ん?」

潤「あわわわわわわわ」ガクガクブルブル

綾瀬「えーっと…」

潤「ひ!す、すいませんでした!ごめんなさい!覚悟はできてます!」ガチガチ

綾瀬「…え、えい」

デコピン☆

潤「いたっ」

綾瀬「…今度からは、気を付けてね?」

潤「は、はいぃ!」パァ

綾瀬(あぁもう可愛いわね殴れるわけないじゃないこんな子)ポエー

谷尋「…ふぅ、流石潤。激昂した綾瀬をああも簡単に落ち着かせてしまうとは、やはり俺の弟は天才か」スチャ

アルゴ「…おい、今しまったハサミはなんだ」



綾瀬「じゃぁ、着替えないと…って、ツグミの方もなんだか取り込み中ね」

祭「あの…もしよかったら、手伝いますか?」

綾瀬「え?」

祭「あ、いや、嫌だったら断ってもらって全然いいんですけど!でも、ツグミちゃんのほうも、いつまでかかるか解らないし…」

綾瀬「…じゃぁ、お願いできる?」

祭「はい!篠宮さん!」

綾瀬「綾瀬」

祭「…え?」

綾瀬「綾瀬で良いわよ。それと、敬語もいらないわ。同い年なんだし…」

祭「…うん!綾瀬さん!」


ツグミ「モヤシ子のくせに生意気よ!」

ダリル「なんだよそれは!お前こそ負けたくせに生意気だぞ!」

ツグミ「うるさいモヤシ子黙れモヤシ子口答えするなモヤシ子その口を閉じろモヤシ子ひざまずけモヤシ子モヤシ子モヤシ子モヤシ子モヤシ子」

ダリル「だぁーーーー!そのモヤシ子というのをやめろォ!」
ツグミ「アイ!じゃぁ今回のお願いはそれね!」

ダリル「…ハァ?」

ツグミ「まさかあんた、一度言ったことを撤回するような男らしくない真似をするわけないわよね?」

ダリル「ちょ、ちょっと待て!今のは…」




ツグミ「じゃあね、『ダリル』!」




ダリル「…」

ツグミ「アディオース」ピュー

<帰るよあやねぇー!

<あ、ちょっとツグミ!?待ちなさい…



ダリル「…」

ダリル「…」

ダリル「…」

ダリル「…くそっ///」

研二「ドキッとした?」

ダリル「のわああああああああああああああああああああああああ!?!?」

研二「顔赤ーくしちゃって…初心だねぇ~」ニヤニヤ

ダリル「う、ううううるさい!もうお前も帰れ!そのにやけた面ぶっつぶすぞ!」

研二「おぉー怖い怖い」スタコラサッサ


ダリル「まったく…なんなんだよ、あいつら」


綾瀬「はぁ…」

ツグミ「まぁそう落ち込まないでよ、あやねぇ。相手があの『皆殺し』じゃぁ仕方がないって」

綾瀬「…あいつ、そんなに有名なの?」

ツグミ「そりゃぁもう!というか、現時点で最強のプレイヤーって呼ばれてるんだよ?いくらあやねぇでもあれに勝つのは難しいっしょ。経験だって3000戦以上差があったし…」

綾瀬「うぅー…でもくーやーしーいー!」ジタバタ

ツグミ「はぁ…」

綾瀬「決めた!」

ツグミ(…嫌な予感)

綾瀬「今度あいつにリベンジマッチを申し込むわ!セッティングお願いね!ツグミ!」

ツグミ「え"」

綾瀬「 お ね が い ね ? 」

ツグミ「………ァィ」

ツグミ(…やっちまった)



ダリル「………」

『ダリルさん!荷物持ちます!』

ダリル「………」

『喉渇きませんか?今すぐ俺が買ってきますよ!』

ダリル「………」

『ダリルさんかっこいい!』

『本当にダリルさんてイケメンですよね!』

『うんうん!流石理事長の息子!』

ダリル「………」



『じゃぁね、ダリル!』



ダリル「………///」


ダリル「むわああああああああああああああああああああああああああああ!!!」ゴロゴロゴロゴロゴロ

ユウ「

ダリル・ヤンが枕に顔をうずめてごろごろしたところで、今回はここまで。

いやはやしかし、他人のラブコメほど見ていて心躍るものはありませんね。

そしてラブコメと言えば >>138 のレスですが…ふむ、桜満集と桜満真名のデート、ですか…

そろそろネタが尽きそうなので、採用させていただくかもしれません。

そのときはどうぞ、よしなに。

それでは、また会う日まで







嘘界「さて、とうとうこの時期がやってきました…」

集「…」

いのり「…」

祭「…」

花音「~♪」

谷尋「…」

颯太「…ゴクリ」

アルゴ「…」

綾瀬「…ハァ」


嘘界「来週からテストが始まります。楽しみな人、不安な人、特に何も感じていない人、色々いるようですが…何はともあれ、頑張ってください。では」

ガラガラ、ピシャン





颯太「うわあああああああああああああああああ!!!もう駄目だぁ!」

集「早!?早いよ颯太!まだテスト始まってすらいないよ!?」

颯太「戦争ってのは始まる前に決着がついてるモノなんだよ!」

祭「戦争って…大げさな」

谷尋「まぁ、お前にとっちゃ戦争みたいなものだろうが…」

花音「悲鳴を上げてる暇があるなら勉強すればいいのに」

颯太「いやだ!意地でも勉強はしない!したくない!」

花音「だ、ダメ人間…」

アルゴ「ま、なるようになるさ」

颯太「達観してるなー、アルゴは…」

アルゴ「別に騒いだからって成績が変わるわけじゃないだろうが。だったら、のんびりしてた方がマシってもんだ。なぁ?綾瀬」

綾瀬「…」ズーン

アルゴ「…綾瀬?」

綾瀬「え、あ、そうね!うん!別に落ち込んだからって成績は変わらないものね!」

アルゴ「…そういえば、お前って成績どうなんだ?見せてもらったことなかったけどよ」

綾瀬「ふふふ普通よ普通!別に変な点は取ってないわよ!?」

アルゴ「………」

集「…そういえば、いのりさんは?」

いのり「大丈夫」

集「あ、そう…」

花音「ま、とりあえず部活動は休みね!今は勉強を頑張りましょうか!」



~テスト前日の様子・魂舘颯太の場合~

颯太「むぅ…勉強はしたくない…が、しかし…」

颯太「…そうも言ってられないか」

颯太「よし!勉強するぞぉ!」

颯太「…その前に少し机片づけるか…これじゃぁゴチャゴチャしすぎて教科書どころかシャーペン一本置けないし…」



ガサゴソ



颯太「ふぅ、ちょっときゅうけーい…菓子とジュースでも持ってこよう」

颯太「あ、そうだ、そういえば片づけてる途中でこの前買ったグレンラガンのBlu-rayBOX見つけたんだった」

颯太「うーむ…ま、息抜きにちょっとだけ見るか。ちょっとだけちょっとだけ…」

颯太「気持ちを盛り上げておけば、勉強にも精が出るだろうしな!」




~テスト前日の様子・草間花音・寒川兄弟の場合~

花音「はい、お夜食持ってきたわよ」

潤「ありがとう、お姉ちゃん」

谷尋「悪いな」

花音「いいのよ、好きでやってるんだから。それで、わからないところあったりしない?何でも聞いてちょうだいね!」

谷尋「それはありがたいが…いいのか?お前は自分の勉強しなくて」

花音「必要ないわよ、常日頃からやってるもの」

潤「凄いなぁ…」

花音「そんなことないわ、たいして勉強もしないのに毎回高得点とってるあなたのお兄ちゃんの方が凄いわよ」

谷尋「昔から、要領だけは良いもんでな。あ、その問題多分出るぞ。よく覚えておけ」

潤「うん、お兄ちゃん!…って、わからない…お姉ちゃん、この問題教えて!」

花音「うぅん?どれどれ…」


~テスト前日の様子・篠宮綾瀬、ツグミの場合~

ツグミ「ほらここ、ここも間違ってる」

綾瀬「え、また?」

ツグミ「こんな調子じゃ、赤点確定だよ、あやねぇ・・・」

綾瀬「そんな…あれ、ここもわかんない」

ツグミ「…あやねぇ、それさっきも教えたよ?」

綾瀬「う、嘘!?」

ツグミ「ホント。ほら、ここの…」

綾瀬「…?……?」

ツグミ「だから、ここを…こう、して…」カキカキ

綾瀬「あ、あぁ!あーあーあー!なるほどね!うんうんわかった!」

ツグミ(そこまで難しい問題じゃないんだけど…あやねぇ、大丈夫かなぁ…?)


~テスト前日の様子・桜満姉弟の場合~

真名「しゅーう!どう?調子は」

集「まぁまぁ、かな。いつもくらいの点数はとれそうだよ。姉さんは?」

真名「私もいつも通りかなー」

集「つまり満点かぁ…」

真名「まぁね♪」

集「…やっぱり凄いな、姉さんは」

真名「そりゃぁそうよ、だってお姉ちゃんだもの」

集「ははっ、わけわかんないよ、それ」

真名「…」ギュッ

集「ちょ、姉さん、いきなりどうしたの?」

真名「んー?…んふふー…」

集「そ、そんなにくっつかないでよ…」

真名「集?姉っていうのはね?弟と仲良くすればするほど強くなれるものなのよー?」

集「それは姉さんだけなような…」

真名「集に起こしてもらうたびに、集の作った朝ごはんを食べる度に、集に髪を梳かしてもらう度に、集に朝見送ってもらう度に、集の作ったお弁当を食べる度に、集が玄関で迎えてくれる度に、集が作ったお夕飯を食べる度に、集がわかしてくれたお風呂に入る度に、集にマッサージしてもらう度に、集におやすみって言ってもらう度に」

真名「私はどんどん強くなるの」

集「姉、さん…?」

真名「私がこんなに頑張れるのは、集のおかげなの。だからね?集」



真名「ずっと、一緒に居ようね」



集「…うん」


~テスト終了後~


集「皆、どうだった?」

花音「ふふーん♪ま、いつも通りね!」学年一位

祭「うーん、ちょっと微妙かな…」普通に平均レベル

いのり「ん…」学年トップクラス

谷尋「そういうお前は?」学年トップクラス

集「僕もまぁ、いつも通りかな」普通に高得点

祭「それにしても…こういったら失礼かもしれないけど、楪さんって凄く頭いいんだね」

いのり「…いい専属教師がいるから」

谷尋「あぁ、集みたいにか」

いのり「集も?」

集「うん、ここの3年で学年トップクラスのお姉ちゃんが居てね」

谷尋「トップクラス、じゃなくて、学年トップの、だろ?全科目全テストで100点以外とったことがないって、委員長とお前の姉と生徒会長以外には知らん」

花音「それに比べて…」


颯太「」チーン<赤点多数。馬鹿確定
綾瀬「」チーン<赤点多数。阿呆確定


花音「…ハァ」

アルゴ「…まぁ、元気出せ」ポンポン

颯太「アルゴぉー…」

アルゴ「テスト前にも言ったろ?別に落ち込んだって何もかわりゃしないんだからさ」

颯太「…そうだな、うん、アルゴの言うとおりだ。これから補習漬けの毎日だけど、一緒に頑張ろうな!」グッ

アルゴ「ん?俺は別に補習はないぞ」

颯太「え」

アルゴ「ほれ」ピラッ<学年トップクラス

颯太「え」

アルゴ「…あー、なんか…悪いな」

颯太「あ、アルゴの裏切者ぉぉぉぉおおおおお!!!」ダダダッ

アルゴ「そ、颯太!?」


谷尋「何やってんだあいつは…」

集「あはは…というか、凄いね、アルゴ」

アルゴ「ま、勉強は別に嫌いじゃねーしな」

谷尋(じゃぁその見た目はなんだとすごくツッコみたい…) 




祭「…あの、綾瀬、さん?」

花音「大丈夫?」

綾瀬「…大丈夫じゃないわ…予想はしてたけど…これで私は補習確定…ふ、ふふふ…」ズーン

祭「で、出来る限り私たちも手伝うから!頑張ろう?ね?」

綾瀬「でも…私なんか…」

花音「そこで諦めたら、あれと一緒になるわよ?」


颯太「さっきは生意気なこと言ってすんませんでした手伝ってください!」<土下座

アルゴ「わ、わかったわかった手伝ってやるから…」

集「まぁ、いつものことだし…」

谷尋「まったく仕方のない…」


綾瀬「…うわぁ」

花音「ね?やでしょ?あれと一緒は」

綾瀬「…うん、頑張る」

いのり「綾瀬、ふぁいと」ポン

祭(…魂館君の扱いがひどい…いや、いつものことだけど)



~3年組~

キャーキャー!

「す、すげぇ!涯全問正解かよ!」

「どうやったらそんなことできるの!」

「ねえねぇ今度勉強教えてくれる?」

「キャー!ガイサマー!ケッコンシテー!」



真名「まさか、スポーツ万能で成績も優秀だとはね…どこの出木○君だって感じ」<全テスト満点。やはり天才か

亞理沙「本当ね…一体何者なのかしらね、彼」<全テスト満点。流石お嬢様

生徒一同(お前らも十分謎だよ…!)


涯(体育の授業では類稀な身体能力を発揮し)

涯(テストにおいては他者を圧倒する高得点を取る)

涯(正体不明の転校生…)

涯(その存在は噂となって学校全体に伝播する)

涯(仕掛けは上々…)

涯(さて、本格的に…動くとしよう)


~1年組~

研二「いっせーの…せ!」

ダリル<学年トップクラス

ツグミ<全テスト満点

ダリル「なん…だと…?」

ツグミ「ハッ!あんたが私に頭の出来で勝負しようなんて100年早いのよ!」

研二「はい、じゃぁ今回の勝負はダリルの負けー」

ダリル「くそがぁぁぁぁああああ!!!」


研二「…ねぇねぇ、そろそろ賭けの条件変えない?」

ダリル「…は?何言ってんだ?」

研二「だってさー、最近エンドレイヴばっかりやってるから、二人とも勝ったり負けたりしてるでしょ?なのにダリルが勝った時は見返りがあってツグミが勝った時はなんもなしじゃ不公平じゃない?」

ツグミ「それも…そうねぇ…ふっふふーん♪」ニタァ

ダリル「なっ…お前、何を…」

ツグミ「まぁそう怖がりなさんな。最初の一個目ってことで軽めなのにしてあげるから、さ」

ダリル「そ、そうか…」

ツグミ「つーわけであんた椅子になりなさい」

ダリル「は?」



ツグミ「♪」(ダリルに座ってる)

ダリル「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ(床に四つん這いになってる)

取り巻き’s(ななななんちゅう恐ろしいことをぉぉぉおおお!!!)

ツグミ「うーん、なんかごつごつして座り心地悪いわねぇ…やっぱりあんた痩せすぎよ?」

ダリル(絶対…ずぇったいにグチャグチャにしてやる…っ!!!)ビキビキビキ…

研二「平和だなー」ポケー

ユウ「

さて、各々の頭の良さ、頭の悪さが明らかになったところで、今回はここまで。

>>1が各キャラに持っているイメージが露骨に浮き彫りになる回でしたね。


さて、今日は皆さんに謝らなければならないことがあります。

今回ですべての書き溜めが底を尽き、そして…

>>1がリアルでテスト期間に入ってしまったので、来週、再来週はおそらく更新できません。

>>1は馬鹿なので、少しでも勉強しておかないと本当に卒業が危ぶまれるので…

重ねて謝罪します。申し訳ありません。


では、また会う日まで。

集「…」


颯太『悪い、集!もう既に俺一人じゃ処理しきれない量の課題が…』

アルゴ『つーわけで、ちょいと颯太の事手伝ってから行くわ』


祭『私、綾瀬さんの課題手伝うって約束しちゃったから…』

綾瀬『うぅ…ごめんなさい』


集「…」


花音『私達、テストを一通り確認しておきたいから』

谷尋『そういうわけだ。悪いな、集』

潤『終わったら僕たちも必ず行きますから!』


集「…」


いのり(の書置き)『小腹がすいたので購買に行ってきます』


集「そして結局…僕一人、か」

集「いや、別にいいんだけども」



集「そうだな…みんなが来る前に軽く部室の掃除でも…」

<…!……っ

集「ん?」


数藤「なぁ、お前舐めてんの?何様のつもりだあぁん?」

「そんな!ぶつかってきたのはそっちの方じゃないですか!」

難波「おいおい、先輩に口答えとは、礼儀がなってないな」

「む、無茶苦茶だ!こんなことしてただで済むと…」

数藤「あぁ~ん?どうなっちゃうのかなー?教えてくれよ…なぁ!!」

ガッ!(壁ドン)

「っ!…」 ビクッ

数藤「あんま調子乗ってんなよ?切れちゃうよ?ん?」


集(う、うわ…ど、どうしよう…た、助けないと…でも…)

集(僕が、行ったって…)

集(そ、そうだ、先生!いや、先生じゃなくてもいい、誰か人を…)




涯「見捨てるのか?」




集「…え?」

涯「…」

集「あ、あなたは…」

涯「答えろ」

集「っ…だって、僕じゃ、どうしょうも…」

涯「…チッ」

集「っ!」ビクッ

涯「そこで見ていろ」

集「え、ちょ!」


涯「随分とご機嫌斜めだな。数藤、難波」

数藤「っ!てめ…涯!」

涯「俺に負けて悔しいから、下級生に八つ当たり…といったところか。まったく、くだらん」

難波「…いい加減にしろよ?さもないと…」

涯「ふん、俺がお前らに臆する理由が一つでもあると思うのか?」

数藤「テメェ!」


   省 ☆ 略 


数藤「ひ、ひぃぃぃいいい~~~!」ダダダッ

難波「お前、覚えてろよ!いつかこの借り、倍にして返してやるからな!脅しじゃないぞ!絶対だからな!」ダダダッ

涯「…ふん」

集(す…凄い)



「あ、ありがとうございました!恙神先輩」

涯「いや、気にするな。もとはと言えば俺が蒔いた種だ。それより怪我はないか?」

「あ、ハイ!大丈夫です!」

涯「そうか、よかった。…名は?」

梟「僕、梟(きょう)って言います!」

涯「梟、か。しかし梟、お前はいい根性をしているな」

梟「え?」

涯「あの状況…普通なら萎縮して何も言えないか、とりあえず謝ってその場を凌ごうとするものだと思うが?」

梟「…僕は、なにも間違ったことはしてませんから。だから、怖がる理由も謝る理由もありません!」

涯「…良い答えだ」

梟「えへへ。ありがとうございます、恙神先輩」

涯「涯、だ」

梟「え?」

涯「俺のことは『涯』と呼べ。仲間は皆、俺のことをそう呼ぶ」

梟「あ、あの…」

涯「なんだ?不服か?」

梟「い、いいえ!そんなことなないです!…涯!」

涯「ふっ…ならばいい」

クルリ、スタスタスタ…

涯「梟は本当にいい根性をしている」



涯「お前と違ってだ、桜満集」


集「っ!…」

涯「…まったく、失望させてくれる」

ザッザッザッザ……

集(…なんだよ、それ)

集「僕に、何ができたっていうんだ…っ!」


集「はぁ…」

集(結局あの後、委員長に鍵を預けて、用事ができたって言って帰ってきちゃった…)

集(なんであの人、僕のことを目の敵にするんだろ…いや、ああいう人が僕みたいなのを見てイラつくっていうのはわからなくはないけど…)

集(…何より嫌なのは、実際あの人の言ったことが正しいってことだ)

集(僕があの場に割って入って何かできたとはとても思えないけれど…)

集(僕があの梟って子を『見捨てて』…そして『逃げよう』とした…それはその通りだ)

集「…結局、図星をつかれて自己嫌悪してるってだけなんだけど」


ガチャ

真名「ただいまー」

集「あぁ、お帰り、姉さん」

真名「あら?集、帰ってたの」

集「ん…うん、まぁ」

真名「…何かあったみたいね」

集「!い、いや、そんな…」

真名「…無理に聞こうとは思わないわ。けど、これだけは覚えときなさい」


真名「私は…何があってもあなたの味方だからね、集」


集「…ありがとう、姉さん」

真名「わかればよし!話したくなったらいつでも話しなさい。いくらでも力になるから!」

集「うん、そうする」


真名「あ、ところでメール見た?今日、父さんと母さんが…」

ガチャ

春夏・玄周「「ただいまー」」

集「あれ、父さん、母さん、今日は早いね。最近はいつも遅かったのに…」

春夏「えぇ。そろそろ二人とも夏休みでしょ?それに合わせて私たちも休みをとれるように、って頑張ってたのよ」

玄周「ちょっと張り切り過ぎて、今でさえ既にもうやることが少ないくらいでね」

春夏「それで二人とも、今年は久しぶりにお墓参りもかねて実家に行ってみようと思うんだけど…」

集「実家って…大島の?」

玄周「そう。いい加減そろそろ行かないとね。いつまでも放って置きっぱなしじゃ、家も傷んじゃうだろうし」

真名「いつ以来かしら…10年ぶりくらい?」

集「…既に大分傷んでそうだけど。あそこもう誰も住んでないんでしょ?」

春夏「ええそうね。兄さんが帰ってるわけないし…」

真名「近所の不良の溜まり場にされてたり、心霊スポットにされてたりしてね♪」

玄周「え、それは困るなぁ…どうしよう」

集「いや、姉さんの冗談だから、真に受けないでよ…」

玄周「え?あ、冗談ね。あはは…」

集「…でも、10年も放置してたのに…4人で掃除できる?」

春夏「そうそう、その話をしたかったのよ。もしよかったら、二人の友達を何人か誘えないかしら?」

真名「友達を?」

玄周「うん。家の掃除を手伝うだけで、大島への旅行権をプレゼント!みたいな」

集「どことなく怪しそうなフレーズだね、それ…」

真名「亞理沙、来れるかしら…」

春夏「ま、そういうわけで、少し声をかけてみて!あそこ、無駄に広さだけはあるから、ちょっとくらい多くても大丈夫よ♪」


集「と、いうわけなんだけど…」

祭「集の…実家…」

颯太「おぉ!いいないいな!俺はもちろん参加するぜ!」

谷尋「どうする?潤」

潤「もし行っていいなら…」

花音「んー、いっそ、同好会の合宿、っていう形にしたらどうかしら?」

祭「合宿?」

花音「その大島を撮って、動画にしたら、それなりにいいものになるんじゃないかと思ったんだけど…どう?桜満君」

集「そうだね。ビーチもあれば自然もあるし…うん、いいと思うよ」

颯太「決まりだな!我ら現代映画研究同好会は、夏休みには大島へ旅行…じゃなくて、合宿!」


アルゴ「…悪いが、俺は無理だぜ」

颯太「え…なんでだよ、アルゴ!?」

アルゴ「先約があるんだ。夏休みの予定は開けとくように言われててな…」

颯太「そんな…」

アルゴ「すまねぇな…」

いのり「…私も」

集「え…」

いのり「夏休みは用事がある。だから行けない」

集「あ…そうなんだ…」

いのり「…」

谷尋「…ま、用事があるなら仕方ないさ。行けるメンバーだけで行こう」

花音「そうね。じゃ、私たちは参加ってことで。ご両親に伝えておいて!」

集「うん、わかった」

花音「さーて、それじゃぁローワン先生にも話を通しておかないと…」



真名「それで…どう?」

亞理沙「…申し出は、ありがたいんだけれど…」

真名「…やっぱり、ダメ?」

亞理沙「えぇ、お爺様が…」

真名「はぁ、残念」

亞理沙「ごめんなさいね…」

真名「謝らないでよ、あなたが悪いわけじゃないんだから」

亞理沙「…えぇ」


涯(…ふふふ)

ユウ「 い つ か ら 更 新 で き な い と 錯 覚 し て い た ?

いえ、本当は更新している暇はないんですけれども…

しかしまぁ、書いてしまったものはしょうがありません。

というわけで、葬儀社メンバーを除いた現映研会員が、夏休みに大島へ行くことが決定しました。

そして、桜満集の家族、桜満真名、桜満春夏、桜満玄周(クロス(笑))…

残念なことに、供奉院亞理沙は参加できないとのこと…ですが、

恙神涯が何かを考え付いたようですが…はてさて、一体どうなることやら


いのりさん、安定の空気ww

~供奉院家所有クルーザー(供奉院家主催パーティ会場)~

ウフフ…ハハハ…


「僕と一曲、如何でしょうか?ミス供奉院」

「いえいえ、僕と是非お願いします」

「いや、私こそが」

亞理沙「あ、あの…」

亞理沙(ふぅ…まったく疲れるわ。一体いつまでこんなことを続ければ…)

亞理沙(こんなこと…私は望んでいないというのに…)

亞理沙(でも…)


供奉院扇『お前も参加しておけ。今のうちに少しでも顔を売っておくのも悪くない』

供奉院扇『直にお前も供奉院の名を継ぐことになるのだ』


亞理沙(…お爺様には、逆らえない)



「初めまして…と、言うべきかな?供奉院亞理沙」

亞理沙「!?」


涯「こうやって面と向かって話すのは初めてだな」


亞理沙「あなた…どうやって!?」

涯「ふん、どうでもいいだろう。手段なんていくらでもあるんだからな」

亞理沙「そんな…ここには並の一流ホテルなんて目じゃないくらいの警備が…」

涯「だから、どうでもいいことだろう?」

亞理沙「…答える気はないのね」

涯「ふん。では、改めて…ミス供奉院」

涯「私と、一曲踊っていただけませんか?」

亞理沙「…は?」


「き、貴様、突然現れていきなり…」

涯「…」スッ

ガシッ

亞理沙「きゃっ!」

「何をする!」

涯『こいつらの相手は疲れるだろう?あしらうのを手伝ってやるから少し俺に付き合え』ボソッ

亞理沙「…」

「貴様、その手を…」

亞理沙「いえ、いいのです」

「み、ミス供奉院?」

亞理沙「こちらの方は私の学友なのです。知人の頼みを無碍にはできません。では」

「あ、そ、そんな!」



~♪

亞理沙「…あら、上手いのね」

涯「ふん、下手だと思ったのか?」

亞理沙「いいえ。…ねぇ、あなた、どうしてここに?」

涯「言っただろう?方法はいくらでもあると」

亞理沙「そうじゃなくて、ここに来た目的はなんなの?」

涯「気が向いたから来た…というのは?」

亞理沙「そんな街の喫茶店のように気軽に来れる場所ではないわ」

涯「では、光に誘われて…」

亞理沙「あなたは蛾か何かなの?」

涯「それなら、何がいいだろうな」

亞理沙「真実。そうでなければ納得しないわ」

涯「ほう?君は何が真実だと思う?」

亞理沙「…わからないから聞いているのよ」

涯「ふん、少しは自分で考えてみろ。すぐに他人に頼るのは最近の若者の悪い癖だ」

亞理沙「そんなことを言える立場だと思うの?私がその気になれば、あなたをつまみ出すくらい簡単なことなのよ?」

涯「ふん、穏やかじゃないな」

亞理沙「もう一度聞くわ。あなたの目的は何?」

涯「…君に会いに来たんだ。と、言ったらどうする?」

亞理沙「っ!」

ガッ!


涯「…そういきり立つな。軽いジョークだろう」

亞理沙「もういい加減に…!」

涯「…怖い顔だな」

亞理沙「これが最後通告よ。あなたの目的を言いなさい。でなければ…」

涯「つまみ出すぞ、か?それは困るな…仕方がない」

涯「しかし、その前に質問をしてもいいかな?」

亞理沙「またくだらない時間稼ぎ?」

涯「物事には順序というものがあるんだ。さぁ、そろそろもう一度踊り始めよう。あまり長く足を止めていると、またあいつらが君に擦り寄って来るぞ?」

亞理沙「…」

~♪


亞理沙「あなたとこうしているくらいならあの方たちと踊っていた方がいいんじゃないかと思えてきたわ」

涯「そうか。だが安心しろ。ここからの話は、君にもメリットがある話だ」

亞理沙「…」

涯「信じていない顔だな…まぁいい。直に信じたくなる」

亞理沙「なんですって?」

涯「それにしても豪勢なパーティだな。流石供奉院家主催、といったところか」

涯「ありとあらゆる分野において日本最大を誇る、供奉院グループ…そのトップの孫娘が、あんな平凡な高校に通い、あまつさえ友人さえ作っている。これが異常に見えるのは俺だけかな?」

亞理沙「…品のいいお嬢様なんて、お爺様は望んでいないわ。お爺様が欲しいのは、あなたの言う、『平凡』な人間を自由に操る才を持った跡継ぎよ」

涯「ほう?お前の祖父は、お前にグループを継がせようと思っているんだな」

亞理沙「えぇ。供奉院は、供奉院の血族が次ぐべきだ…そう考えていらっしゃるようで、ね」


涯「不満そうだな」

亞理沙「…」

涯「学校で真名といるお前の方が、幾分マシな顔をしていたぞ」

亞理沙「…」

涯「本当は、こんなところで祖父の人形になっている自分が嫌なんじゃないのか?」

亞理沙「…」

涯「何も言わない、か…そうしていると本当に操り人形のようだな」

亞理沙「…」


涯「もし今の状況を変える方法も俺は持っている、と言ったら、お前はどうする?」


亞理沙「!?」


涯「…」

亞理沙「できるわけがないわ、そんなこと…お爺様の力は私が一番よく知ってる。どれだけ常人離れしていても、所詮は高校生であるあなたに何ができるとういうの?」

涯「そうだな。少なくとも、そのお爺様が作り上げた警備を掻い潜って忍び込むことぐらいはできたぞ?」

亞理沙「それは…」

涯「お前の祖父はお前が思っているほど絶対ではないし、俺はお前が思っているほど『平凡』ではないさ」

亞理沙「…」

涯「さぁ、どうする?選択するのは…お前だ」

翁「…む?亞理沙、誰だその男は」

亞理沙「私のクラスメイトで、恙神涯と言います」

翁「クラスメイト…?貴様のような輩が居れる場所ではないぞ。…よもやお前が招き入れたのではないだろうな、亞理沙」ギロッ

亞理沙「っ…」ビクッ

涯「ふん、俺がどこに居て何をするかというのは俺が決める。あんたにはそれを止めることなどできないさ」

翁「…ほぅ?」

亞理沙(お、お爺様になんて口のきき方を…!)

翁「礼儀のなっておらん小僧だ。胆が据わっているのか、それともただの馬鹿なのか…」

翁「この場で儂に無礼を働くことがどういうことか…わかっておらぬようじゃの」クイッ

ボディガードA・B「「…」」チャキチャキ

涯「…流石は天下の供奉院家。銃刀法違反なんぞ歯牙にもかけないか」

亞理沙「お、お爺様!おやめくださ」
翁「お前は黙っておれ!」

亞理沙「っ…!」


涯「しかし、供奉院家トップの人間がどんなものかと期待していたが…拍子抜けだな」

翁「…このような場では撃てない、とでも思っておるのか?ふん、浅ましいな」

涯「なぜ俺がここまで余裕を保っていられるのか、それすらも見抜けないのか?噂の供奉院翁も、耄碌してしまったと見える」

ボディガード「貴様、その口を閉じろ!」

翁「よい、まだ…な。貴様のような世界を知らん若造何ぞの考えることなど知らぬ。そして、知る必要もないの」

涯「…そうか。ならば教えてやろう」スッ

翁「貴様、何を…」

涯「…」

パチンッ!

亞理沙(!?明かりが…)

翁「ぬ!?」

パッ

涯「答えは単純明快」

翁「!」


涯「俺があんたより上だからだ」


翁「なん…じゃと…?」

ボディガードA「い、いつのまに、俺たちの銃を…」

ボディガードB「いったい、どうやって…」

涯「形勢逆転、だな」

翁「貴様っ!…どうやって儂の背後を…!」

涯「ふん。あんたも孫娘と同じように、わからないことを他人に聞くんだな…少しは自分で考えたらどうだ?」

翁「ぐっ…ぬぅ…何が望みだ?金か?名誉か?それとも力か?何故、こんなことをする!?」

涯「今のところ要求は二つだ」

翁「…なんじゃ?言ってみろ」

涯「まず一つ目。供奉院亞里沙の、友人との夏休みの旅行を許可すること」

翁「なにぃ?」

亞理沙「!」

翁「…そうか。貴様、あれに惚れたか」

亞理沙「…え?」

翁「ふん。愛に走った男というのは恐ろしいのぉ…何も恐れず、すべてを手に入れようとどこまでも貪欲になる…身をもって知っておったはずなのに…」

亞理沙(そんな…まさか…でも)

涯『…君に会いに来たんだ。と、言ったらどうする?』

亞理沙(あれはまさか、彼の本心…?)


涯『久しぶりだな、真名』


亞理沙(っ!…そうだわ)

涯『そうか。だが俺はお前のことを忘れた日はなかったよ』

亞理沙(彼が、愛しているのは…)

涯「…感慨にふけっているところ悪いが、それは」
亞理沙「それは違います、お爺様」

翁「亞里沙…?」


亞里沙「そうでしょう?恙神涯」

涯「…その通りだ」

亞里沙「…あなたは、あの子のために動いているのね」

涯「中々聡いな。それも、その通りだ」

亞里沙「…そう」

翁「…」

涯「…それで、要求は呑んでもらえるのかな?」

翁「それを儂が受け入れる利点はなんだ?」

涯「俺はあんたを殺さない…老い先短いとはいえ、まだ死にたくはないだろう?」

翁「…」

涯「…」


翁「ぶわっはっはっはっは!」

ボディガードA・B・亞里沙「!?」

翁「面白い小僧よ…いいだろう。亞里沙」

亞里沙「は、はいっ!」

翁「友人と旅行に行くことを許可する。目一杯羽を伸ばして来い」

亞里沙「え…?よ、よろしいのですか?」

翁「許可する、と言った」

亞里沙「…あ、ありがとうございます」

翁「ふん…で、もう一つの要求は?」


翁・亞里沙・ボディガードA・B「…」ポカーン

涯「…揃いも揃って、何をそんなアホ面を曝している」

亞里沙「だ、だってあなた、それは…」

涯「これでも俺は学生なんでね。あくまで本分は学業なんだ。それを疎かにするわけにはいかない。妥当な要求だと思うが?」

亞里沙「それは…そうかもしれないけれど…」

翁「…いいだろう」

亞里沙「お爺様!?」

翁「こんなことで命が拾えるのなら安いものじゃ。そんな扱いを受けることを、苛立たしく思う気持ちもないではないがの」

涯「…感謝する。では、また会おう」



翁「…本当に、面白い小僧だ」


涯『バイトを紹介してもらいたい』


翁「…まさか、天下の供奉院家をハローワーク扱いとはの」

翁「だが不思議と悪い気はせん」

翁「これだけコケにされてもなお」

翁「まだ、殺すには惜しい、と感じている」

翁「いやはや本当の本当に面白い小僧じゃ…」

翁「…恙神涯」



trrrrrrrrrr…trrrrrrrrrrrr…

涯「あぁ、俺だ。よくやってくれた」

研二『あいあーい。まぁ、これくらいどうってことないよ。で、どう?供奉院家とのパイプは持てた?』

涯「あぁ」

研二『おーよかったじゃん。てことは、バイトも紹介してもらえることになったってことでしょ?』

涯「そうだ」

研二『んじゃ、こんどご飯でも食べに行こーよ。もちろん、涯のおごりで』

涯「あぁ、そうしよう。研二」

研二『んじゃ、バイビー』

ピッ

亞里沙「…」

亞里沙(恙神涯…)

亞里沙(あんな人は初めてだわ)

亞里沙(お爺様を目前にしても臆することはなく)

亞里沙(逆にお爺様を圧倒してしまった)

トクン…

亞里沙(彼と一緒に居られればもしかしたら)

トクン…

亞里沙(お爺様から逃れることも…)

トクン!…

亞里沙「…ダメよ」

亞里沙「彼が愛しているのは、私じゃない」

亞里沙「だから、ダメ。こんな気持ちになっては…」

亞里沙「ダメよ、ダメ!だめ…なのに…」


亞里沙「私、どうしたら…っ!」

ユウ「



いえ、違うんです。

勉強はしていたんです。

ただ、勉強すればするほど妄想してしまっていただけなんです。

別にテストをないがしろにしていたとか勉強?なにそれおいしいの?状態だったというわけでは…わけでは…

まぁ、あるんですけれども。

しかし、本日をもって予定されていた全てのテストが終了。とりあえずしばらくは、これらの問題に悩まされることもなさそうです。

というわけで、今回。恙神涯は、バイト先を探すために供奉院家に喧嘩を売りましたね。

…恐ろしいほどのハイリスクロウリターン。流石は恙神涯。

本当に恐ろしいのは、その恙神涯がその供奉院家をどうやら味方につけたらしいということですね

安易に味方と言ってしまえるような簡単な関係ではありませんが…

恙神涯は一体どこに向かっているのか…

ところで、>>201のコメントですが…メインヒロインである楪いのりが空気ですって?

…その通りです。

いえ、ただ見せ場がないだけです。本当はこんなものではないんです。

というわけで、来週はデート回!誰と誰の?それは、桜満集と桜満真名の…え?楪いのり?

…ははっ

やっぱギルクラ最高や。ギルクラは生きる指針や


花音「…」


颯太「うっしあがりぃ!」

アルゴ「げっ、しまった!」

谷尋「おっと、じゃぁ俺もだな」

アルゴ「また負けた…」

颯太「アルゴ、こういうの苦手すぎだろ…」

アルゴ「いや、苦手というより単純に運が悪いんじゃねーか?なんか、絵札以上のカード全然引かねーし、引いたと思ったら開幕革命喰らうし…」

颯太「んー…あ、じゃぁポーカーやるか!」

谷尋「謎チョイス過ぎるだろ。なんで運が悪いって話してたところに更なる運ゲーを提案してくるんだ?」


花音「…」


祭「で、これが集が去年作ったやつなんだけど…」

潤「わぁ…」

いのり「…きれい」

集「あ、あはは…そんな…大したものじゃないよ」

潤「いえ、凄いと思います!なんか、こう、心が温かくなるような、切なくなるような…」

いのり「…」ジーッ

集「あはは…照れるな///」



花音「…」


花音「このままじゃ駄目よ!」ダンッ!


祭「きゃっ!と、突然どうしたの?花音ちゃん」

花音「どうしたもこうしたもないわよ!いつまでこんな風にただ遊びほうけてるつもり!?」

颯太「えー、いいじゃん別にー。今はまだ依頼も特にないんだしさー」

花音「うちは万屋じゃないのよ!?依頼があってから活動するっていうほうがおかしいの!」

谷尋「ま、まぁいいじゃないか。去年みたいに切羽詰ってるっていうこともないんだし…」

花音「じゃぁ去年みたいになるまで放っておくつもり!?」

集「去年、かー…ふぅ」

潤(集さんが突然すごく遠い目に!?)

アルゴ「去年、一体何があったんだ?」


花音「…ここは、もともと潰れる予定だったって言ったでしょ?」

アルゴ「あぁ。それで慌ててあの学校紹介のビデオ作ったって言ってたっけか」

花音「えぇ。だけどその後、そのPVを見た陸上部の生徒から、『うちの部活を紹介する動画も作ってくれ!』って言われて…」

谷尋「最初のうちはよかったんだがな。忙しくもあったが、それまでと違ってちゃんと活動しているっていう充実感もあったし…」

花音「でも、そのうちに噂が広まって、サッカー部もテニス部もバスケ部も…」

颯太「まったく勝手な話だよなー。自分の部活動の紹介くらい自分たちでしろっつーの」

花音「あんたが言うなぁ!魂館君が次から次へと安請け合いしてくるから私たちの分のPV作る余裕がなくなったんでしょうがぁ!!」

颯太「…いやぁ」

祭「褒められてないよ?」

谷尋「加えて、俺たちもある程度手伝っちゃいたが、動画を本格的に作れるのが集だけだったからな…負担のほとんどが集にいっちまって」

祭「動画制作で疲れているうえに、ほら、その…」

集「…僕は、頼まれたら断れない性格だったから」

潤「集さん?」




集「でもだからってあの量はないでしょあれ
僕あの時どれくらい眠っていたっけ
動画編集音楽切り取り貼り付け転送
ごめんなさい
映像変換効果写真
ごめんなさい
もう少し待ってまだできていないんだ
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい………」



いのり「集…」オロオロ

祭「しゅ、集!だ、大丈夫!大丈夫だから、ね?今はゆっくりしてていいから。ほら、お水飲んで」

潤「…あの頃、動画制作してなかったおにいちゃ…兄さんや姉さんまで、帰ってくるのが遅かったもんね…」

谷尋「…またあんなことになるのは確かにやばいな…主に集が」


集「…だから、大島で合宿するんでしょ?」

花音「なら、ある程度計画くらいたてておくべきじゃない?たてておくべきなのよ!」

颯太「えー、いいじゃんそんなめんどくさいこと」

花音「魂舘君に発言権はありません!」

颯太「…ヒデェ」

谷尋「いや、妥当だろ」

花音「と、いうわけで!今から大島合宿に向けての会議を執り行います!」


花音「…で、結局どんな動画をつくるの?」

颯太「そりゃ、大島の雄大な自然とかをこう、いい感じに編集して…集が」

集「…まぁ、動画編集できるのが僕だけだから仕方ないけど」

潤「あ、あの…」

集「ん、何?潤君」

潤「僕に、動画編集について教えてくれませんか?」

集「え?」

潤「さ、最初は足を引っ張っちゃうかもですけど…いずれ、必ず集さんの役に立ちますから!」

集「えと、じゃぁ…お願いできる?」

潤「は、はい!」ニコッ

一同(かわいい)

谷尋(やはり俺の天使は弟だったか…)


花音「えーこほん!それで、撮影担当は…」

颯太「はーい!」

花音「魂舘君、と…あ、機材とかは?」

颯太「俺が自前のを持ってくよ。あ、でも一人で運ぶのにはちょっと多いかもしんないから、手伝いが一人欲しいかな」

谷尋「んじゃ、そいつは俺が手伝うか」

花音「それじゃぁ撮影及び機材搬入が魂舘君に寒川君、っと…あ、桜満君の方に手伝いはいるかしら?」

集「んー…僕の場合は、パソコン一つあればとりあえずそれでいいから」

花音「うん、わかった。あと必要なのは…そうねぇ…」


集「あ、合宿中の寝床はウチで用意するってことだったけど、食事とかはどうしようか?」

祭「それなら、私がやろうかな?あまり、出来ることはなさそうだし…」

花音「ん、そういうことなら、私もそうしようかな」

颯太「おぉ!合宿中は毎日女子の手料理が食べれるのか!こりゃ楽しみだ!」

祭・花音「…」

颯太「なんでそんな露骨に嫌そうな顔すんの!?」

祭「だって…」

花音「ねぇ…」

颯太「うっ…お、お前らも楽しみだよな!集!谷尋!」

集「あ、うん。いつもは作る側だから、作ってもらうっていうのは楽しみかな」

谷尋「委員長の料理は上手いからな」

祭「うん!私頑張る!」

花音「腕によりをかけて作るわ!」

颯太「…この扱いの差はなんだ」

アルゴ「…どんまいだ、颯太」


いのり「…私は、いつ歌えばいい?」

花音「え?そうねぇ…動画を作った後、それに合わせてもらうような形になるのかしら?」

いのり「わかった」

アルゴ「…悪いな、部員だってのに手伝えなくてよ」

颯太「仕方ないって!先に予定が入ってたんだろ?」

アルゴ「まぁ、そりゃそうなんだが…帰ってきたら、手伝えることがあったら言ってくれよ?」

颯太「おう!そんときは存分に手伝ってもらうからな!」

花音「ふぅ…ま、こんなもんかしらね…あと、何か話しておきたいことがある人ー」

一同「…」

花音「それじゃ、何か思いついたらまた言ってちょうだい。今日はこれで会議はおしまい!おつかれさまー」

一同「おつかれさまー」

ユウ「

今日はデートだと言ったな。あれは嘘だ。

いえ、嘘ではありません。確かにもともとはその予定だったのですが…

今の時点でこれをやってしまうと、展開に無理が出てしまうので…

オウマシュウとオウママナのデートは、また後日ということに…

というわけで、今回は現映研におけるとある日常を…え、ユズリハイノリの出番が相変わらず少ない?

…もう少し、もう少しだけお待ちください。もうしばらくしたら出番が増える予定ですので…

ところで今日、ギルティクラウンをノベライズ化したもので、トクマ・ノベルズより出版されている作品、
『ギルティクラウン・レクイエムスコア』を見たのですが…

僕はフルネーム呼びをするときは、漢字ではなくカタカナ表記でしたね。

正直こちらのほうが楽なので、今度からはこのような形にさせていただきます。

そして、>>220さん、ありがとうございます。このような言葉を見るだけで、>>1は明日を生きていけます

それでは、また会う日まで


ダリル「~♪」

ダリル(ふぅ、勝った勝った♪)

ダリル(あの綾瀬って奴も中々やるけど…ま、やっぱり僕には敵わないね!)

ダリル(…相変わらず他のゲームでは負けっぱなしなのが腹立つけど)

ダリル(ていうかあの綾瀬って奴、エンドレイブは週一までしかしないってなんだよ!)

ダリル(おかげで勝率はあのチンチクリンの方が上…くそっ、思い出したらイラついてきちゃった)

ダリル(…まぁ、親との約束ならしょうがないけどさ)

ダリル(今日はエンドレイブだったから僕の勝ちだったけど…)

ダリル「今度こそ、あのチンチクリンをケチョンケチョンに…」グッ
「ミャー」

ダリル「…?」


黒猫「ミャー」

ダリル「なんだこいつ…首輪がないな、野良猫か?」

黒猫「…」ジーッ

ダリル「随分小っちゃい…たぶん子供だよね。お前、パパとママはどうしたんだよ?」

黒猫「ニーニー」

ダリル「…いないのか?」

黒猫「…?」

ダリル(野良猫なんて汚いの、普段なら蹴り飛ばしてるけど…)


ダリル「…」ソーッ

ダリル(…こんなのに触りたくなるなんて、我ながら今日の僕はよっぽど機嫌がいいらしい)

ダリル「…」ナデナデ

黒猫「…♪」スリスリ

ダリル「野良猫にしちゃ人懐っこいな、こいつ」カリカリ

黒猫「…ゴロゴロ♪」

ダリル「あはっ!お腹むき出しにしてるよ!油断しすぎだろ、こいつ!」ナデナデ

黒猫「ゴロニャーン♪」

ダリル「あは…あはは…♪」
ローワン「…………」ポカーン

ダリル「…」クルッ

ローワン「…」

ダリル「…」ダラダラ

ローワン「…あの」

ダリル「ふん!」ブン!

ローワン「あ、危なっ!?ちょ、待って!待ってってヤン君!」

ダリル「死ね!死ね!死んじゃえ!そして全てを忘れろぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!」ウワーッ!


ローワン「…落ち着いた?」ボロッ←結局何発か蹴られた

ダリル「はぁ…はぁ…」←蹴り疲れた

ローワン「えと、この猫は、ヤン君のかな?」

ダリル「違うよ。首輪もついてないんだからわかるだろ?野良猫だよ」

ローワン「そ、そう…」

ダリル「…じゃ」

ローワン「え?その猫はどうするの?」

ダリル「あ?どうするって何がさ」

ローワン「いや、随分君に懐いているようだけど…」

ダリル「拾っていけっての?馬鹿言わないでよ。こいつに構ってやったのはただの気紛れ。僕にそこまでする義理はないでしょ?」

ローワン「いや、でも…」

ダリル「何?」

ローワン「その猫は、着いて行く気満々みたいだけど…」

ダリル「は?」

黒猫「…」スリスリ

ダリル「…」タッタッタ

黒猫「…」トテトテトテ

ダリル「…」タッタッタ

黒猫「…」トテトテトテ

ダリル「…」

黒猫「ニーニー♪」ジーッ

ローワン「…どうするの?」

ダリル「しょ、しょうがないなぁ、全く!そこまで言うなら拾ってってやるよ!それでいいだろ!」

ローワン「え、いや別にそこまでって言うほど言ってな」
ダリル「い・い・よ・な!?」

ローワン「アッハイ」


ローワン「しかし、あのヤン君にあんな一面があるとは…ふふ、意外と子供っぽいところもあるんだな」

ローワン「あの傍若無人な態度も、どっちかっていうとやんちゃって言ったほうが正しいのかも」

ローワン「ヤン理事長の元でかなり甘やかされて育てられたらしいから、そのせいなのかな?…っと」

ローワン「げっ、ボールペンのインクが…参ったな。書かなきゃならない書類がまだあるのに…」

ローワン「仕方ない。コンビニにでも行って買ってくるか…」


<イラッシャイマセー

<コレクダサイ

<アリガトウゴザイマシター


ローワン「さっさと戻って書類の続き…ん?」



ダリル「…」トボトボ


ローワン「あれは、ヤン君?どうしたんだろ、こんな時間に…」


ダリル「…」

黒猫「…?」

ダリルパパ『そんなものを拾ってきて…捨てて来なさい!』

ダリル「…パパに怒られちゃったな」

黒猫「ニーニー」

ダリル「…くそっ!」


ダリル(飼えないんなら、いっそ…ぶち殺してやろうかっ!)ガッ!

ローワン「ちょちょちょ!何してるの!?」

ダリル「…は?」

ローワン「そんな強く掴んだらその猫死んじゃうよ!?」

ダリル「あんた、なんで…」

ローワン「それはこっちの台詞だよ!一体何してるの!」

ダリル「…パパが捨てて来いって。どうせ捨てるんだから…憂さ晴らしにぶち殺したって別にいいだろ」

ローワン「なっ…!」

ダリル「何?文句あるの?」

ローワン(この子…殺すことに、命を奪うことに躊躇がない!)

ローワン(いや、知らないんだ!命がどんなものなのか…だからここまで残酷になれる…純真無垢ゆえの残虐性…)

ローワン(この子をこのままにしておいちゃだめだ!一教師として、なんとかしないと…だから…)

ローワン「ダリル君、そんなことをしたら駄目だ…駄目なんだよ」

ダリル「…けど」

ローワン「生きていればまた会える。けど、死んでしまったらもう二度と、絶対に会うことはできないんだ」

ダリル「絶対に…」

ローワン「そうだ。死んでしまった人や物が生き返ることはない。死というのはそういう、『絶対に取り返しのつかないもの』なんだ」

ダリル「…」

ローワン「だから…」

ダリル「…わかったよ」

ローワン「ダリル君…!」


ダリル「ん」

ローワン「…へ?」

ダリル「じゃぁ、あんたがこいつ預かって」

黒猫「?」

ローワン「…え、えぇ!?」

ダリル「あぁん?いいだろ別に」

ローワン「え、いや、でも…」

ダリル「なんだよ。こいつ野良猫で、子供なのに親もいないんだぜ?このまままた捨ててったら死んじゃうよね?」

ローワン「う…」

ダリル「死んだらもう会えないんだろ?だったら…さぁ」

ローワン「うぐ…はぁ、わかったよ」

ダリル「よっし!よろしく、ローワン!」

ローワン「…一応、僕教師なんだけど…」

ダリル「は?何?預かる代わりにアンドレイ先生とでも呼べって言いたいの?やだよ」

ローワン「うん、まぁ、いいよ…別に…はぁ」


ダリル「んじゃ、僕は帰るから」

ローワン「あ、待って!この子の名前は?」

ダリル「…名前?」

ローワン「君が拾ったんだ。君が名付けるべきだろう?」

ダリル「…『クロ』」

ローワン「…えと、わかりやすくて、いい名前だね!」

ダリル「お前、今安直すぎると思っただろ!」

ローワン「え!?いいいやそんなこと思ってないよ!」ススーッ

ダリル「あ!今目ぇそらしたよね!やっぱそう思ったんだ!」

ローワン「わ、ちょ!ごめん!謝る!謝るから蹴らないで!」


クロ「…ミャー♪」ポリポリ



~後日~

キーンコーンカーンコーン…

ツグミ「…で、今日はどうすんの?」

研二「お、やる気だねぇツグミ」

ツグミ「…どうせ何したって結局勝負するはめになるんだもん。だったら少しでも早くぶちのめした方がいいでしょ」

ダリル「今日は僕忙しいんだ。だから今日は勝負はなし!」

ツグミ「…え?」

ピュー!

研二「あるぇー?怖気づいちゃったのかなー?逃げるのかなー?…ってあれ?もういないし」

ツグミ「…いつもは逃げようとしても追いかけてくるくらいなのに。まして研二が煽ってもノッテこないなんて…」

研二「まぁ、煽る云々はただ単に聞いてなかっただけみたいだけど…」

ツグミ「むぅ…後つけるわよ!研二!」

研二「…ツグミチャンマジツンデレ」

ツグミ「あぁ!?なんか言ったかこるぁ!」

研二「ナンデモナイデスヨー」ピューピュー♪

ツグミ「これは別にあいつのことを気にしてるとかそういうわけじゃないんだから!ただあいつが勝負を投げ出すくらいだから知っておけば弱みになるかもとか思ってるだけなんだからね!」

研二(…セリフから漂うツンデレ臭が凄まじいなぁ)


『で』


ツグミ「ここは…あの眼鏡の担任の家よね?」

研二「ローワンだよ。人の名前くらいちゃんと覚えときなよ」

ツグミ「私に常識を説く前に自分を見つめなおしなさいよ。なんで教師を下の名前で呼び捨てにしてるのよ…ふむ、これは侵入する必要がありそうですな…っと!」ヒュバ!

研二「頑張ってねー」

ツグミ「あれ?あんたは来ないの?」

研二「別にそこまで興味ないし」

ツグミ「あっそ」



ローワン「…ホントに来たんだ」

ダリル「なんだよ。来ちゃまずかったのか?」

ローワン「いやまずいでしょ。教師の家にその生徒が来るって…」

ダリル「クロは?」

ローワン「ん、クロー!」

クロ「ミャー!」トテトテシュバ!

ダリル「お、っとっと…」ダキッ

クロ「ミャオーン♪」スリスリ

ダリル「本当に人懐っこいな、こいつ…」

ローワン「はは、僕には君ほど懐いていないけどね」

ダリル「あ?そうなの?」

ローワン「うん、どうしてか…さて、じゃぁ行こうか」

ダリル「ん」


ツグミ「…」シュタッ

研二「どう?面白いもの見れた?」

ツグミ「…羨ましい」プクゥ

研二「?」


~ペットショップ~

「初めて猫を…では、色々と必要になってきますね。まずは…」


ローワン(う…流石に高い)

ローワン(…でも、生徒のためと思えば、我慢できる…うん)

ローワン(さようなら、僕の給料…)

ローワン「…お願いします」ドサッ

ダリル「あ、支払いはカードで」

ローワン「!?」

「かしこまりました」

ローワン「え…いいの?」

ダリル「あ?何が?」

ローワン「あの、支払い…」

ダリル「これっぽっちの額でギャーギャー騒ぐほど僕の懐は狭くないよ」

ローワン(流石お坊ちゃま)

ダリル「あ、そうだ。ついでにこれとか、あとこれも…これ、追加ね」ドチャ

店員「か、かしこまりました。(いっぱい買うなー)」

ローワン(…流石お坊ちゃま)


研二「ねー帰ろうよー。流石に飽きたよ、もう」

ツグミ「むぐぐ…でも、ここまで来た以上、何か収穫が欲しいの!」

研二「でもだからって、車で追いかけることもできないし、いつ帰ってくるかもわからないのを待ってるのはだるいし…」

ツグミ「けど…あ」

研二「ん?」

ツグミ「帰ってきた!ほら、もっとちゃんと隠れなさい!見つかるでしょうが!」

研二「へいへーい」




ローワン「それでどうする?少しクロと遊んでいくかい?」

ダリル「んー、あ、あんたがどうしてもっていうなら少しくらい相手してやっててもいいけど」チラッチラッ

ローワン「…ま、僕にも仕事があるし、相手してもらえると助かるかな。『どうしても』頼むよ、ダリル君」

ダリル「しょ、しょうがないなぁ!そこまで言うんだったらやってやるよ!うん!」

ローワン「あはは…」



ダリル「クロ、帰ったぞ」

クロ「ミャ!」シュタッ

ダリル「お前にいいもの持ってきてやったぞー?ほれ!」つ猫じゃらし風おもちゃ

クロ「!」キュピーン!

ダリル「ほれほーれ」フリフリ

クロ「ニャ!ニャ!」シュバ!シュバ!

ダリル「~♪」

クロ「ニャンニャン!」シュババババ

ダリル「むふふ…」
ツグミ「…」ニヨニヨニヨ
研二「…」ニタニタニタ

ダリル「…」クルッ

ツグミ「…」ニヨニヨニヨ
研二「…」ニタニタニタ

ダリル「…ふぅ」

ダリル「またかこんちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!」グワァ!


ツグミ「…」←ダリルに蹴られた

ダリル「…」←ツグミに蹴り返された

研二「…」←見てた

ローワン「…で、こんなところで何してるの?」

研二「そいつの事が気になってしょうがないツグミが後をつけようと言いだしましたー。僕はツグミについてきただけでーす」

ツグミ「誤解しか招かない言い方してんじゃないわよ!それじゃまるで私がストーカーみたいな言い方じゃない!」

ローワン「いや、やってることはまるっきりストーカーなんだけど」

ツグミ「…まぁ、つけてきた甲斐はあったけどね」チラッ

ダリル「…///」ツ-ン

ツグミ「ねえねえ、あの猫何?ローワンの飼い猫?」

ローワン「えっと、成り行きで飼うことになったんだけど、もともとはダリル君が拾った野良猫で」
ダリル「ローワン!余計なこと言うなよ!」

ツグミ「ほっほーぅ…つまりあんたは、道端に捨てられていた可哀そうな子猫を見捨てられず、つい拾ってしまったと…なかなか可愛いところもあるのねー」ニヤニヤ

ダリル「…バカにしてるのか?」

ツグミ「ソンナコトナイデスヨー。私の目を見て!この顔が人を馬鹿にしてるような顔に見える?」ニヤニヤ

ダリル「むしろ馬鹿にしてるようにしか見えねぇよ!」

ツグミ「そんなに怒鳴らないでよ。猫ちゃん恐がっちゃうでしょ!…ねー?」ソソーッ

クロ「…」


がぷ!

ツグミ「…」

クロ「ガジガジ」

ツグミ「…イタイ」グス

研二「ぷっ、嫌われてやんのー。だっさーい」プークスクス

ツグミ「う、うるさい!初対面なんだからしょうがないじゃない!」

ローワン「おかしいな…僕やダリル君には一瞬で懐いたのに」

ツグミ「え」

研二「うーん…おいでおいで。チチチ…」

クロ「…ゴロニャーン」トテトテ

研二「お、こっちきた」

ツグミ「そんなぁ…」


ダリル「きっと性格の悪さが自然と伝わったんだろ」ニヤニヤ

ツグミ「なぁんですってぇ!?それじゃぁ私の性格が悪いみたいじゃない!」

ダリル「はっ、自覚がないってのは悲しいねぇ…ぷぷっ」

ツグミ「あんたにだけは言われたくないわよ!」

ダリル「僕の性格が悪いってのか!?」

ツグミ「ふん、『自覚がないってのは悲しい』、のよね?」

ダリル「こんの…」プルプル

ツグミ「何?もっかいやろうっての?いいわよ、来なさいよ。今度こそ完膚なきまでに叩きのめしてあげるわ!HEY!来いよダリル!武器なんか捨ててかかって来い!」

ローワン「あの、既に遅いような気もするけど、あんまり騒ぐと近所迷惑だから…」オロオロ

研二「…平和だねー」ナデナデ

クロ「ニャーン♪」

ユウ「

ローワン・アンドレイの家に可愛らしいマスコットが住み着いたところで、今回はここまで。

マスコットであるクロの出現によってダリル・ヤンの人格は少しはまともになるのか?

ツグミは本当にツンデレなのかはたまたただのツンツンなのか?

キドケンジはいつになったらやる気を出すのか?

どうなのでしょうね。

そんなところで次回予告。

次回、とうとうあの変態の私生活が露わに…!?

メインヒロイン()

嘘界=ヴァルツ・誠の朝は早い。
もはや習慣となり目覚ましも必要としなくなった朝5時の起床。

「…おはようございます」

誰にともなくそうつぶやく。それ一つで思考は切り替わり、睡眠状態から覚醒する。やることは多い。
まず、そしてスリープ状態にしておいたノートパソコンをつけ、仕掛けておいた盗聴器、監視カメラ(当然無断)のデータを拝見する。仕掛けられている場所は様々だ。それはとある生徒の家であったり学校に数多くある部室の内の一つであったり一教師のいきつけの店であったりする。

録画されている動画の内の一つをクリックし、画面を拡大化する。そこには表紙にR-18と書かれた如何わしい本を見ながらハァハァを息を荒げる少年が映っている。嘘界はこういった他人の私生活を覗き見ることに強い興奮を憶える性癖を持っていた。

少年はハァハァしていた。
少年を見る嘘界もハァハァしていた。
二人で一緒にハァハァしていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ふぅ…」

その少年はいったい誰だったのか、嘘界は一体何を見たのか、それを見た嘘界は何をしていたのか、それは個人情報保護の観点から秘匿させていただくとして。

ひとしきり楽しんだ後、嘘界はモーニングコーヒーを一杯淹れる。
そしてパソコンから先ほどとは別の、彼の恋するある少年の部屋に仕掛けられた盗聴器からの音声を流し始める。

『ふぁ、ぁーあ…』

嘘界ほどではないが、その少年の朝も早い。
その少年は、家族の中で一番年が若いにもかかわらず、いやそれ故なのか、家族全員分の家事を任されている。

『さーてっと…』

ごそごそと衣擦れの音が聞こえる。
彼に恋している嘘界はその音をおかずにご飯3杯イケるほどの高揚感を覚えていたが、朝食を食べるにはまだ早かったので、それは自重しコーヒーを一杯を飲むのみにとどめた。

その後少年は家族の昼食と朝食の準備に取り掛かるために部屋から出、台所へと向かう。それと同時に嘘界もまた、出勤のための準備を始める。
無論、嘘界はその少年の行動は逐一もらさず見ていても飽きないほどその少年に執心していたので、着替えを行う少年以外の少年も見たいと思っていて、実際に少年の部屋以外にも盗聴器を仕掛けていたが…


『集に手を出したら許さないから』

と、彼の少年の姉に、巧妙に隠されていたはずの盗聴器から忠告を受けて以来、その少年の部屋以外へ設置することをあきらめている。何故少年の部屋にだけは盗聴器を仕掛けているのかと言えば、嘘界がそれでも少年の私生活を覗くことを諦めきれなかったことと、その少年が思春期の少年らしく自分の姉が部屋に入ることを快く思っていないことの二つが理由である。
…実際、その姉はその少年が居ぬ間に部屋にこっそり入って少年のベッドの上でクンカクンカハァハァしていたりするのだが。ちなみに少年の部屋への盗聴器の設置は発覚してはいない。少年の部屋ではその姉は興奮のあまりそれどころではないのであろう、というのが今のところの嘘界の推測である。
だが、これはむしろ好都合かもしれない。あまり少年の私生活を覗きすぎてしまうと、それに夢中になりすぎて自らの私生活が疎かになってしまう恐れがある。


さて、ここから出勤するまでの嘘界の行動は至極常識的な範囲内のソレなので、箇条書きで済まさせていただこう。
まず朝食(ふりかけご飯+α)をとり、
他の監視カメラの映像を一通りチェックし、
シャワーを浴びて身なりを整え、
時間が余ったのでクロスワードパズル(R-18単語縛り)をして暇をつぶし、
出発する。

「行ってきます」

誰にともなくそう言い、嘘界は学校へ向けて出発する。



「おはようございます、皆さん」

嘘界は学校において、礼儀正しい紳士として通っている。
実際、それは嘘界の本質からそうずれているわけではない。
ただ、それに加えて嘘界は重度の変態であるというだけである。
しかしその礼儀正しさは、他人行儀とも取れるため、生徒や他の先生方に「頭の中では何を考えているかわからない人」という印象を与えてしまっていることを、嘘界は知っていた(監視カメラと盗聴器で)。
そのため嘘界は、

「やぁ皆!今日もniceな天気だな!よし!今日もguts出してstudyしていこうぜ!」

という某有名人的キャラクターを演じようかとも考えていたが、余計な混乱を生むだけであることは容易に想像がついたので、それはやめておくことにした。そんな性格の教師が既にいるため、二番煎じ感が否めないというのも理由の一つである。



ともあれそういうキャラクターとして振る舞っている教師としての嘘界・ヴァルツ=誠はやや特異な印象を与えるもののこれといって悪い教師というわけでもなくましてや低能でなどあり得ない、「良い教師」であると言えよう。
たとえその裏で、難しい問題に頭を悩ませるツンツン頭の少年に嗜虐心を抱いていようと、恋する少年に熱い視線を注いでいる胸の大きな少女を見ながらわずかばかりの対抗心を燃やしていようと、暑苦しい同僚を前にしてこの無駄に着いた筋肉が突然爆発してはくれないだろうかと期待してしまっているとしても。
それは誰にもわからなかったので、嘘界は「良い先生」として教師としての仕事をそつなくこなしていた。



「しかし…退屈ですねぇ」

嘘界は前述の通り他人の私生活を覗き見ることに強い興奮を覚える性癖を持っているが、そのなかでも優先順位の違いはあり、とりわけ思春期の少年少女達が織りなす『青春』が最上だと考えていた。
テスト直後であることもあり、補習に悩む少年たちを見るのもそれはそれで嘘界なりに大いに楽しんではいたが、いまいち物足りない感覚があったことも確かである。

「では久々に見せていただくとしましょうか。彼の魂の輝きを…んふっ」



嘘界が望むのは自然体のままの少年少女達から生まれる化学反応にも似た不可思議な現象であり、そこに自らの意思が介入することを快くは思っていない。
しかしかと言って放っておくだけではどうしても生まれない状況というのも少なからずあり、あまりにも欲求不満状態が続いた場合のみ、嘘界自らが働きかけることが稀にある。
そしてその結果が、

『なぁ、お前舐めてんの?何様のつもりだあぁん?』

『そんな!ぶつかってきたのはそっちの方じゃないですか!』

『おいおい、先輩に口答えとは、礼儀がなってないな』

これである。


嘘界が流した情報によって、三人の生徒が集められた。もちろん、嘘界の意図があったことなど三人の知るところではない。
絡んでいるのは三年の難波、数藤という生徒。絡まれているのは一年の梟という生徒である。
仮にも教師であるはずの嘘界が、何故このような問題を誘発するようなことを行うのか?
それはもちろん、嘘界が愛する『彼』の雄姿を見たいと望むからである。
そう、2年前のあの時のような…

が、

「…期待外れでしたね」


愛しの彼は変わってしまっていた。
2年前の彼は、たとえ自分が叩きのめされることが目に見えていようとも、恐怖ゆえに全身が震えていても、勇気を振り絞って前へと進み出た。
その様に嘘界は達してしまったのである。
だが現在の彼にそんな勇気はなかった。彼は脅威にさらされる少年を前にして背を向けたのである。
代わりに前へ進み出たのは、最近巷で有名な金髪の、少年とは言えないような少年である。
その少年は、二人と一人の間に割って入ると、瞬く間に二人を打倒してみせた。
それが劣等感故なのか、罪悪感故なのか、はたまたその両方なのかはわからないが、嘘界の愛する彼は、そのまま何をするでもなく、拳を握りしめ、歯を食いしばって、ただ…立っていた。
その様を(隠しカメラ越しに)見て嘘界は思う。


「これはこれで、いいですね…ふぅ」


…世界は今日も平和だった。そして、嘘界はいついかなる時も『嘘界=ヴァルツ・誠』である

ユウ「

さて、本日はセガイ=ヴァルツ・マコトの日常を切り出してみましたが…いかがでしたでしょうか?

僕の中ではセガイというのはこれくらいの、否、これ以上の変態なのですが…

そのイメージが皆さんに伝われば幸いです。

そんなところで、レス返し。

>>256
…もう少し、もう少しだけ待ってください。具体的には夏休み辺りまで。

というわけで、そろそろ伸びに伸びていた…ユズリハイノリの出番?いいえ。

その前に、オウマシュウとオウママナのデートです


真名「デートをしましょう、集」

集「…え?何?突然どうしたの?」

真名「実は朝見た占いで、ラッキーアイテムは『家事ができる茶髪で優しい弟』っていうのがあったの!」

集「ラッキーアイテムがピンポイントすぎるよ!そこは普通、知り合いとか友達とか…」

真名「あ、大丈夫大丈夫。これブラコン通信っていう弟好き向けの雑誌だから」

集「そもそも雑誌がニッチでピンポイントなジャンルだった!」

真名「…ふふ、冗談冗談。ただ、もうすぐ夏休みでしょ?そろそろ色々買っておこうかなーって。服とか水着とか色々…」

集「あぁ、そうなんだ…そりゃそうだよね。ブラコン通信なんて雑誌いくらなんでもあるわけ…」

真名「あ、それは本当。ネットでの定期購読だけだけど」

集「あるんだ!?ていうか姉さん、なんでそんなの知ってるの?」

真名「それはおいといて」

集(…これ、おいといていい話題かな?)

真名「それで、一緒に行かない?」

集「別にいいけど…でも、おめかしする余裕なんてあるの?今でさえこんなに暑いのに…」

※ほぼ真夏日

真名「…そこは、まぁ…頑張るわよ」

集「適当なうえに不安要素いっぱいの答えだ…」

真名「むー、仕方ないじゃない。女の子っていうのはいかに自分を可愛く見せるかを考えていないと死んじゃう生き物なんだから」

集「死んじゃうって…大げさすぎるでしょ」

真名「あら、じゃぁ自分を可愛く見せることをあきらめた人を集は女の子って呼べる?」

集「…うーん」

真名「ね?可愛さの追求をやめた瞬間、その人は女の子としての死を迎えるのよ!」

集「…ん?姉さんの理論で行くと、可愛さを追求してたら男も女も関係ないみたいに聞こえるけど」

真名「あら、言われてみればそうね。まぁ、男性の場合は男の娘って書くんでしょうけど」

集「…すごく、どうでもいいね」

真名「…そうね」


―服屋―

真名「集、何がいいと思う?」

集「どう…って言われても。僕、服とか全然わかんないし…」

真名「いいのよ。私は集の意見が聞きたいの!」

集「んー…これ、とか?」

※お着換え中※

真名「どう?」

集「…ちょっと着崩し過ぎじゃない?その…見えるよ?色々///」

真名「ん、ちょっと刺激が強すぎたかしら…それじゃぁ…」

※お着換え中※

真名「これは?」

集「うーん、姉さんって、あんまり暗い色って合わない気がする」

真名「あー確かに…私髪の色がこんなんだしねー。黒髪だったら大丈夫だったのかしら?」

集「それだと、肌が白いのも相まって貞子みたいになりそう…」

真名「うーん…次!」

※お着換え中※

真名「ほい!」

集「ぶっ!」

真名「どう?」

集「いやどう?じゃないよ!なんで水着なのさ!しかもそんな布面積の少ない…」

真名「必要になるだろうからついでにと思って。集はこういうの嫌い?」

集「いいから!人が来る前にさっさと着替えて!」

真名「はぁーい♪」

集「まったくもう…」

<なんかこっちから大きな声が…って

祭「しゅ、集!?こんなところで何してるの!?」

集「あ、祭。奇遇だね」

祭「う、うん…じゃなくて!なんで集がここに?」

※現在地は女性服売り場です

集「え、あ…いや、僕は、ただの付き添いで…」

祭「付き添い…」

祭(女性服売り場に付き添い…ってことは、当然それは女の人なわけで、つまり集は女の子と買い物に来てるわけで…)

祭(集…女の子…買い物…休日…服…)

ピキーン!

祭「まさか集、女の子とデートに来てるの!?」

集「そうとも言えるかな」


<ダダダダーン!>♪ベートーベン交響曲第五番 『 運 命 』 


祭「そんな…集が、デート…女の子と、デート…」ズーン

花音「祭!こんなとこに居たの?お手洗いに行くだけで一体どれだけ…ってあら、桜満君じゃない」

集「あ、委員長、こんにちは」

花音「うん、こんにちは桜満君。で…なんで祭がこんなことになってんの?」

祭「」チーン

花音「桜満君、なんかした?」

集「い、いや別に…」

花音「ていうかそもそも、なんで桜満君がこんなとこに…」

シャッ!

真名「集は私とデートしているの♪」

花音「あ、桜満先輩。こんにちは」

真名「こんにちは、草間さん」

花音「なるほどそういうことだったんですか。いやー、一瞬桜満君が女装に目覚めたのかと」
集「最初に思いつく発想がそれ!?委員長は僕をなんだと思ってるのさ!」

祭「あ、デートの相手って真名さんだったんですか」

花音「あ、戻った」

真名「うん、そういうこと」

祭「あーびっくりした。私てっきり、集に彼女ができたのかと…」

真名「ふふ、違うわよ。もしそんなことがあったら…」

祭「…?」

真名「うふ」ニコッ

祭「…」ゾクッ

花音(え、なんだったの今の間)



祭「ってあれ?花音ちゃん一人?」

花音「ん?あれ…いなくなってる…」

集「誰か一緒に来てるの?」

花音「うん、一体どこに」タタタ…

花音「…そんなところで何してるの?」

<だ、だって、こんな恰好初めてで…

集「あれ、今の声…篠宮さん?」

<ビクッ

祭「大丈夫大丈夫!よく似合ってるから!」

<待って待って待ってちょっと待ってやだやだやだこんなの見られたくないのほんとにやめてお願いだから!
花音「まぁまぁまぁ」
祭 「まぁまぁまぁ」
綾瀬「うぅ…///」

真名「あら可愛い!二人が選んだの?いいセンスしてるわねー。ね?集」

集「え?あ…うん、よく似合ってると思うよ」

綾瀬「…変態」

集「なんで!?」

綾瀬「うぅぅぅぅぅぅぅ…やっぱり着替える!私の着替え返して!祭、着替えるの手伝って!」

祭「えぇー?勿体ないよ!可愛いのに…」

真名「えーっと、初めまして、よね。私は桜満真名、集のお姉さんよ。あなたは?」

綾瀬「え、あ…篠宮、綾瀬…です」

真名「篠宮さん、ね。うん、これからよろしく!」

綾瀬「ど、どうも…」

真名「うーん…」ジーッ

綾瀬「な、なんですか…?」

真名「…」ジーッ

祭「へ?」

真名「…やっぱり、少しくらいは分けてほしくなるわね」

綾瀬・祭「?」

真名「私の友達もそうなんだけど…一体どうしたらこんなになるのかしらね」

花音「友達…あぁ、生徒会長ですか。本当に謎です。まったくもって謎です。いくら勉強してもこれだけはわかる気がしません」

集(生徒会長ってことは、亞里沙先輩…それに、祭、篠宮さん…姉さんと委員長にはわからない…あ)ピコーン!

集「何考えてるのさ二人とも!!!///」

綾瀬・祭「?」

真名「あら、直接的な表現は避けてたんだけど…気付いちゃった?仕方ないか、集も男の子だ死ね」

花音「やっぱり桜満君も大きいほうがいいのか死らね?」

集「ふ、二人とも、言葉に殺気がこもってるよ…?」ビクビク

祭「一体、何の話…?」

綾瀬「…さぁ?」


花音「それじゃ桜満先輩、私たちはもうちょっと篠宮さんで遊んで、じゃなくて、篠宮さんの服選びに付き合うので…」

綾瀬「え、今遊ぶって言った?ねぇ?」

祭「またね、集」

綾瀬「待って!いいから!これ以上いいから!本当に!お願いだからやめて!」

<イーヤー! ズルズルズル

真名「またねー」ノシノシ

集(篠宮さん…南無)合掌


<アリガトウゴザイマシター

真名「ふぅー、買った買った!」

集「思いのほか早く終わったね」

真名「何言ってるの?まだ回るわよ」

集「えっ」

真名「折角来たんだもの!目一杯楽しまなくちゃね!」

集「…はぁ、しょうがないなぁ。じゃ、荷物寄越しなよ」

真名「え?いいの?」

集「そのために連れてきたんでしょ?持ってあげるよ、少しくらい」

真名「…ありがとう!集!私そういう集の優しいところ大好き!」

集「はいはい…」

真名「じゃ、はいこれ!」ドサッ

集「え、なんで、全部…」

真名「うーん、軽い軽い!ほら、しゅーうー!早くー!」

集「ちょ、待ってよ姉さん!」フラフラ



アルゴ「おいおい、大丈夫か?集」

集「あれ、アルゴ?」

アルゴ「よっ」

颯太「俺もいるぞ!」

集「颯太も…」

颯太「こんにちはっす!真名先輩」

真名「えぇ、こんにちは。魂舘君…あなたは魂舘君のお友達かしら?」

集「あぁ、最近現映研に入った人で、クラスメイトのアルゴ。今年第二から来た人の一人だよ」

アルゴ「月島アルゴです、よろしく」

真名「集の姉の真名です。よろしく、月島君」ニコッ

アルゴ「…」

颯太「どうしたんだ?アルゴ」

アルゴ「いや…初対面でびびられねぇってのが久々でな…」グスッ

真名「集のお友達みたいだし…だったら悪い人じゃないんでしょ?なら、怖がる理由なんてないじゃない」

アルゴ「…」ジーン

アルゴ「集!お前、いい姉ちゃん持ったな!」ガシッ

集「え、あ、うん…あはは」

真名「あら、そんなこと言われたら照れちゃうわ…うふふ」

颯太「あの、真名先輩たちは何してるんですか?」

真名「私達?」

颯太「よ、よかったら俺たちも一緒にっ」

真名「えーっと…」

アルゴ「やめろって颯太。折角の姉弟水入らずなんだ。邪魔しちゃ悪いだろ?」

颯太「あ、そっか…」

真名「…あ、そうだ!今度の合宿、二人とも来るのよね?」

颯太「俺は行きますけど」

アルゴ「俺は予定があるんで…」

真名「あらそうなの。残念ね…」

集「しょうがないよ、先約があるらしいし、ね?」

アルゴ「まぁ、そうなんだが…」

真名「そうなの…それじゃ、颯太君、また合宿で。アルゴ君も、またね!」

颯太「は、はい!さようなら!」
アルゴ「うっす!」


真名「集!あそこにクレープ屋台があるわよ!食べましょう!」

集「…太るよ?」

メキョァ!!

真名「 な ん で す っ て ? 」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

集「何でもございません」<アイアンクロー

真名「よろしい」



真名「あんまぁーい♪」パクッ

集「うん、おいしいね」ハムハム

真名「…ねぇ、集のバナナも一口味見させて?」

集「別にいいよ。はい」スッ

真名「ありがと。ん」パクッ

真名「んー!集のもおいしい!」

集「でしょ?あ、ほっぺにクリームついてる」

真名「あら、私としたことが…」ペロッ(舌で頬を舐める)

集「逆だよ、こっち」スッ、ペロ(頬についていたクリームを指ですくいとって食べる)

真名「あ…」

集「どうかした?」

真名「な、なんでもない…あむっ///」




谷尋「なんだこの凄まじいピンク色空間…」

潤(今の二人、恋人みたいだったなぁ…)

集「あれ、谷尋。それに潤君も…」

谷尋「おう、奇遇だな、集。お前らも買い物か?」

真名「えぇ。夏に色々入用になりそうなものを、ね」

谷尋「あぁ、そうだったんですか」

潤「僕たちもそうなんです。実は、部活の合宿って初めてなので、今から楽しみで…えへへ///」

集(可愛い)
真名(可愛い)
谷尋(天使)

潤「?」


真名「あら、潤君もクレープ買ったのね」

谷尋「えぇ、潤がクレープ屋台を見つめて離れないもので」
潤「ちょ、お兄ちゃん!」

集「あはは…」

ドン!

ベチャ

難波A「っ!おいお前、何してくれてんだよ!」

潤「ぇ…ぁ…」

数藤A「あぁーこれっべーわー。兄貴の最高にカッケェシャツがテメェのクレープでべとべとだよー。あーこれは弁償コースだわーマジねーわー」

潤「あ、あの…」

難波A「なんだ?人にぶつかったらまずごめんなさいだろうが!」

潤「ひっ」

集「ぶ、ぶつかってきたのはそっちじゃ…」

数藤「あぁん!?」

集「っ…」

真名「やめなさい。これ以上ことを荒立てるならこちらも相応の手段をとりますよ」

難波A「ふぅん…ま、確かにこんなもの、クリーニングに出せばそれでいい程度のものだ…」

数藤A「あれ、兄貴?」

難波A「でもま、ただで帰るってわけにもいかないなぁ…そのクリーニング代金分、君が払ってくれるかな?」

真名「…うふふ、優しくエスコートしてくださるのかしら?」

集「ね、姉さん!?」

真名「大丈夫。ここはお姉ちゃんに任せて」

数藤A「さっすが兄貴ィ!冴えてるぅ!」

難波A「じゃ、場所を移そうか。いいところを知ってるんだ」

真名「えぇ、わかったわ」

集「ね、ねえさ…」

真名「大丈夫。集は何も心配しなくていいの、ね?」

集「…」

真名「じゃ、行ってくるわね」チラッ

谷尋「…」コクッ



真名「ここでいいかしら」

数藤A「あれ?外でいいの?変わってるねぇ」

難波A「ふ、まぁ、それはそれでいいさ…」


真名の先制攻撃!難波Aは不意を打たれた!
真名の膝蹴り!急所にあたった!

難波A「あぐぉぁ!?…~~~ッ!」プルプル

数藤A「なんだぁ?テメェ舐めてんのかあぁん!?」チャキ

真名の攻撃!真名は回し蹴りを放った!数藤Aの持っていたナイフの刀身は折れてどこかへ消え去った!

数藤A「…はい?」

真名「疾っ!」

真名の二回目の攻撃!真名のつま先が数藤Aの鳩尾にクリーンヒットした!

数藤A「ぐへぇ!」

真名の三回目の攻撃!真名の踵落しが数藤Aの脳天を揺らした!

難波A「な、なんだこいつは!?ひ、ひぃ!」

難波Aは逃げ出した!

谷尋「逃がすわけないだろう?」

しかし回り込まれてしまった!

難波A「お、お前…」

谷尋「お前は、潤を泣かせた…その罪、万死に値する!」

谷尋はハサミを投げつけた!難波Aに多数のハサミが突き刺さった!

難波A「あ、あぐぅ…」

谷尋の追加行動!突き刺さったハサミに的確に蹴りを打ち込んだ!ハサミはさらに深々と突き刺さった!

難波A「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」

難波Aは痛みのせいで動けない!

谷尋の追加行動!ハサミを素早く難波Aの股間へ突き刺
難波A「ま、待て!待ってくれ!降参だ!」

谷尋「!」ピタッ

難波A「わ、悪かった!俺たちが悪かった!もうあんたらにちょっかい出そうとは思わん!だから…」

真名の18回目の攻撃!数藤Aは既に満身創痍だった!

数藤A「」ボロッ

真名「…これにこりたら、もう二度とあんな下らない真似をしないことね。もしまたあなたたちを見かけたら…」

難波A「ゴクッ」

真名「…」ニコッ

難波A「」ゾワッ

真名「それじゃ」

谷尋「ふん…」

難波A「ヒ、ヒィ~!」スタコラサッサ
数藤A「ま、待って…くれ…」トボトボ



集「…」


涯『見捨てるのか?』


集「…っ」

潤「真名さんと兄さん、大丈夫かな…」

集「…ごめん、潤君」

潤「え?」

集「僕がもっとしっかりしていれば…」

潤「そ、そんな!そんなこといったら僕のがそもそも気を付けていれば…」

集「ごめん、潤君…ごめん…」

潤「集、さん?」


真名「ただいま、集♪」

集「姉さん!だ、大丈夫だった?」

真名「ふん!あんな奴ら、人目さえなければ軽ーく返り討ちよ!ぶい!」

集「さ、流石だね…って姉さん!血が!」

真名「うん?あぁこれ?大丈夫、返り血だから」

集「えっ」

谷尋「待たせたな」

潤「兄さん!」ダキッ

谷尋「ん、怖かったな、潤。もう大丈夫だからな」ポンポン

潤「ごめんなさい…」

谷尋「お前が謝るなよ。ぶつかってきたあいつらが悪いんだ」

集「!」



梟『…僕は、なにも間違ったことはしてませんから。だから、怖がる理由も謝る理由もありません!』



集「…そう、だよね」

谷尋「ではまた、真名先輩」

潤「集さん!さようなら!」ペコリ

集「うん、さようなら…」フリフリ

真名「気を付けて帰るのよー」フリフリ

集「…はぁ」

真名「…」


真名「♪」

集「…ねぇ、まだ?」

真名「何がー?」

集「いやだって…もう3軒目…」

真名「まだまだこれからよ。ふふ、この辺は服屋さんが多いから嬉しいわ♪」

集「はぁ…」

真名「…そんな風に溜息ついてると、幸せが逃げちゃうわよ?折角のデートなんだから楽しまないと!」

集「いやデートって…僕ただの荷物持ちだし…」

真名「むぅ…でも、集の言うとおりかも」

真名「付き合わせてばっかりも悪いし…そうだわ!集の服、見繕ってあげる!」

集「え、いいよ別に。どうせ暑くなるだろうから、着る服選んでる余裕なんてないだろうし…」

真名「いいからいいから!こんなのどう?」

集「いやだから別に…ねぇ、姉さん、僕にはこれが女性服に見えるんだけど」

真名「嫌だった?」

集「好みの問題じゃない気がするけど…」

真名「じゃぁこんなのは?」

集「いやだからシックがいいとかフリフリが嫌だったとかそういう以前の問題だって!」

真名「うふふ、大丈夫、大丈夫よ、集。あなた可愛いから、こんな服もきっと似合うわ」

集「え、ちょ、ま」

真名「恐がらないで。恥ずかしいのは最初だけ…すぐにきっと気持ちよくな」

ダッ!!!

集「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」ダダダダダダッ・・・・・・・・・・


真名「…あら、からかい過ぎちゃったかしら」

集「はぁッ!…はぁッ!…お、思わず全力で逃げ出してきちゃった」

「集?」

集「え?」

いのり「やっぱり…集」

集「え、あ、い、いのり、さん!?どうしてここに!?」

いのり「どうしてって…買い物?」

集「そ、そうなんだ。奇遇だね」

いのり「うん。…その袋は?」

集「あ、これ?姉さんの服。買い物するからって荷物持ち頼まれちゃってさ」

いのり「…重そう」

集「まぁ、量が量だからそれなりに…中身は服だから、見た目ほどじゃないけど」

いのり「座る?」

集「え?」

いのり「あそこにベンチがあるの」

集「あ…うん」



いのり「集にはお姉ちゃんがいるんだよね…どんな人?」

集「えっと…いのりさんも聞いたことあるよね。内の学校では結構な有名人なんだけど…」

いのり「桜満真名」

集「うん。成績優秀で運動も得意で、優しくて…」

いのり「…それは、学校での評判。集は、どうなの?」

集「え?」

いのり「集は、お姉ちゃんのこと、どう思ってる?」

集「僕は…そうだなぁ」

集「姉さんは、家だと結構我が儘で、性質の悪い冗談で僕をからかったりもするし、学校で言われてるほど聖人君子じゃないんだ」

集「でも、やっぱり、頭も良くて運動もできて…優しい、っていうことは本当で」

集「そんな姉さんのこと尊敬してて…」

いのり「…集はお姉ちゃんのことが大好きなんだね」

集「え、あ、いや!大好きとか、そんなんじゃ…」

いのり「違うの?」

集「んぐ…っ…はぁ、敵わないなぁ、いのりさんには」ポリポリ

いのり「…?」

集「そうだね、いのりさんの言うとおりだ。僕は…」

いのり「…」

集「ははは。なんで僕こんなこと言ってるんだろ。こんな話、誰ともしたことないのに」

集「…あの、いのりさん」

いのり「何?集」

集「…も、もしよかったら、この後…」



「探したぞ、いのり」



集「…!」

涯「こんなところに…ん?お前は…」

集「恙神…涯、先輩」

涯「…こんなところで何をしている?」

集「な、何って…別に…」

涯「…ふん、まぁいい。行くぞ、いのり」

いのり「うん」

集「いのり、さん…買い物って、涯先輩と来てたの?」

いのり「うん」

集「…!は、はは。そ、そうだったんだ…邪魔しちゃったね」

いのり「…集?」

集「っ!」

ダッ!

涯「…ふん」

集「はぁ…はぁ…っ!…はぁ…」

集「何っ…やってるんだろ…僕…はぁ…」


真名「しゅーう」ギュ

集「姉、さん?」

真名「やーっと見つけた。もう、ずっと探してたのよ?」

集「…ごめん」

真名「それで見つけたと思ったら、なんだか女の子といい雰囲気になってて…」

集「…見てたんだ」

真名「うん。流石に何話してるかは聞かなかったけど」

集「…バカみたいだよね、僕」

集「勝手に舞い上がって、勝手に落ち込んで」

集「一体、何を勘違いしてたんだろ…」

真名「…大丈夫。集には私がいるじゃない」

集「…」

真名「大丈夫。集の傍には、私がいるから」

真名「集のそばに居るのは、私だけでいい」

真名「ね?そうでしょう…?」



真名「しゅう」



集「…うん、姉さん」

ユウ「

と言ったところで、今回はここまで。

…やっと、ユズリハイノリの出番を作ることができました。

これでもう、メインヒロイン(笑)なんていわれることは…え?既に寝取られているですって?



それにしても最近暑くなってきましたね。長袖でいるのが流石に辛くなってきました。

更に加えて梅雨の時期ということで湿度の方も…

やっかいですねぇ、四季というものは。

さて、雑談もそこそこに次回予告。

ユズリハイノリを寝取られ(そもそも恋仲になってすらいないのでこの表現は不適切ですが)、意気消沈するオウマシュウ。
それでも月日は変わらず移ろい続ける。とうとう合宿の日がやってきた。
後輩たちの前で理想の姉を演じるオウママナ、その親友であるクホウインアリサは理想のお嬢様を演じる。
様子のおかしいオウマシュウを心配するメンジョウハレとサムカワジュン。
その二人を応援するクサマカノンとサムカワヤヒロ。
全てをまったく気に掛けず二人でイチャイチャするオウマクロスとオウマハルカ。
水着美少女に浮かれるタマダテソウタ。

少年少女(と大人二名)は、それぞれの思いを胸に、大島へと降り立った。

その一行の前に現れたのは…!?


「あら、早いのね」

「おはようございます!真名先輩」

「おはよう、草間さん」

僕達が集合場所の船着き場につくと、そこには既に委員長と潤君、谷尋…そして意外なこと颯太も到着していた。

「…なんで颯太が?」

「え!?俺も行くっつってたじゃん!なにそれいじめ?」

「あ、いや、だって、颯太って集合するときいっつも遅刻してくるから…」

「あぁ、そっちね。ま、俺だってたまには遅刻しないことだってあるさ!」

「…俺が行かなかったらいつも通り遅刻してきたくせに」

「んぐ…」

颯太は一瞬得意気になったけれど、谷尋からの突込みを受けて即座にバツの悪そうな顔へと変わる。

「谷尋が迎えに行ったの?」

「あぁ。朝、こいつの機材持ってくの手伝いに言ったら、案の定まだ眠っていやがってな…かなり早めに行って正解だったよ」

「い、いや、俺だって一応時間に間に合うように目覚ましセットしてあったし…」

「あれ、目覚ましオフになってたぞ」

「え、嘘!?」

なんか最近起きれないと思ったら…などと颯太がぶつぶつ言っていると、僕たちのすぐ傍に黒塗りの大きな…明らかに高級車とわかる車が停車する。
そこから、亞理沙先輩が下りてきた。

「どうもありがとう」

運転手に礼を述べると、柔らかな微笑みを浮かべてこちらへと歩み寄ってくる。

「おはよう、亞里沙!」

「おはよう、真名さん。お久しぶりです、春夏博士、玄周博士」

「えぇ、お久しぶりです、亞理沙さん」

「ど、どうも…」

いつもと違ってキリッとした態度で挨拶を返す母さんと、いつもと同じく頼りなさげな雰囲気を醸し出す父さん。それはともかく、久しぶりとはどういうことだろう?

「あれ、亞理沙に母さんと父さん紹介したこと会ったっけ?」

「あぁ、違うのよ。供奉院財閥が研究のスポンサーになっていて、以前供奉院家主催のパーティに出席したときに、ね」

「…あの、そんなに固くならないでください。今回は真名さんの友人として来たのですから、そのように扱って頂いて結構ですから」

「あらそう?じゃぁよろしくね、亞理沙ちゃん!」

「…え、えぇ、よろしくお願いします」

亞理沙先輩の微妙な表情からは、いくらなんでもいきなり馴れ馴れしくし過ぎじゃないかという声にならない訴えが聞こえてくるようだったけれど、母さんはああいう性格だから、慣れてもらうしかないだろう。



「ごめんなさい!遅くなりました!」

そう言って駆け足で駆けてくるのは祭。これで全員がそろったことになる。
けど祭、そんな恰好で走ったら…

「い、いや、大丈夫だよ。まだ集合時間前だし」

夏の暑さに負けたのか結構な薄着になっているせいで、どことは言わないが祭の体の一部がそれはそれは大胆に揺れてしまっていたので、思わず僕は目をそらしてしまう。

「あ、あの…私の恰好、変だったかな?」

僕が目をそらしたのをどう解釈したのか、不安気にこちらを見上げてくる祭。
そんなことはないと言いたいが、かと言って「じゃぁなんで目をそらしたの?」と聞かれては困ると思い答えに窮していると、

「校条さんの恰好が可愛かったから照れてるのよ。ね?集」

「あ、いや…」

姉さんからの助け舟…いや、助け舟とは言えない。そんなことを言われても肯定も否定もできないので、結局なんとも微妙な反応を返すことになった。
祭のほうを見てみると、彼女も何と言ったらいいのかわからないのか項垂れて地面を見つめている。
…それにしても顔が随分赤いようだけれど、暑いのだろうか?

「これで全員よね?じゃ、出発しましょう」

母さんからの呼びかけにそれぞれが思い思いに返答し、僕たちは大島行のフェリーへと乗り込んだ。

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「ついに来たーーー!大島ァーーー!」

島に降り立って早々、颯太が叫び声をあげる。
周りにはシーズンなのもあって多くの観光客も居るけれど、そんなことはお構いなしだ。
その観光客の人たちも、テンションの上がった子供がはしゃぐことなど当たり前であるかのように、ちらりと横目に見るくらいで足を止めることはなかった。

「颯太、一応他の人も居るんだから…」

「いいじゃないかこれくらい!テンションが上がってんだよ俺は!それとも集!お前は全然テンションが上がってないとでもいうのか!?」

「そんなことは…」

ないんだけども。

「まぁま、とりあえず荷物置いて来ちゃいましょ。その後は、海に入るなりなんなり好きにするといいわ」

「よっしゃぁ!!!」

海という単語を聞いて更にテンションが上がったのか、颯太は今にも走り出したそうにしている。
かくいう僕も、そして多分他の皆も、颯太ほどじゃないにしろ、気分の高揚は抑えられないけど。

「あ~あ。アルゴもいのりちゃんも来ればよかったのになー…」

「仕方がないでしょ。先約があるって言ってたし」

「ッ…」

思い出すのは彼女の事。

楪いのり。

あの日、彼女は、あの先輩と何をしに、街へ来ていたんだろう?

(…嫌なこと、思い出しちゃったな)

「集先輩?どうかしましたか?」

「あ、いや、なんでもないんだ。気にしないで」

「顔色悪いよ?暑くて疲れちゃった?」

「熱中症?じゃぁ、そこの自販機で飲み物でも…」

「本当になんでもないって!早く行こう!」

僕のちっぽけで自分勝手な悩みにそこまで気を使われるのが苦しくて、鬱陶しいと思ってしまう自分が情けなくて…無理矢理話を打ち切って、僕は前へと走り出す。


「見えてきたわよ」

そう言って母さんが指差すのは、十年前と何一つ変わっていないあの家だった。

「へぇー、大きいっすね!」

「あれだけ大きかったら、泊まろうと思えばもう十人くらい泊まれちゃいそうですね」

「…あそこには、管理人か誰かが居るんですか?」

「え?いや、そんなことはないと思うけど…どうしてだい?」

「…音が聞こえる」

その姉さんの言葉を聞いて、耳を澄ませてみると、確かにあの家から音が聞こえてくる。

「ま、まさか…真名の言うとおり、本当に不良か何かが…」

「それは…いや、確かに10年もほったらかしだったから…」

でもまさか…と、言いつつ扉に母さんが扉を開けると、






「あぁ?」

不良が居た。

「あ、あなた誰!?人の家に勝手に上り込んで…」

「…そいつはこっちの台詞だ。あんたら一体…て、なんでお前らがここに?」

訂正。アルゴが居た。

「…あ、アルゴ!?どうしてここに!?夏休みは用事があったんじゃ…」

「いや、俺もまさか行先が偶然重なるだなんて思ってなくてな。一応、颯太にメール送っておいたんだが…」

「え、嘘!?」

即座に携帯を取り出して確認をする。どうやら本当にそういうメールが来ているようだった。
僕があまりにも奇跡的な偶然に驚いていると、状況のわかっていない母さんから質問が飛んできた。

「あの、集の知り合い?」

「うん、会員のアルゴ。この合宿には、用事があって来れないって聞いてたんだけど…」


「まったく、来るときは一報くらい寄越せ。春夏、玄周」


混乱する僕たちの前に、一人の壮年の男が現れる。
この人は…

「修一郎!?」
「兄さん!?」
「おじさん!」
「校長先生!?」

三者三様ならぬ四者四様にその人を呼ぶ。
そう、そこに居たのは誰であろう、父さんの最高の親友だと語り、母さんが苦手だと評する兄であり、僕たちの叔父であり、天王洲第一高校の校長である…

茎道修一郎が居た。

けど、それだけではなかった

「…集?」

「ほう、奇遇だな」

その人に連れられて出てきた二人の人物を見て、僕は更なる困難に陥ることになる。

「いのりさん…恙神、先輩…」

「…とりあえず、居間へ行こう。積もる話もあることだしな」



その後、僕たち四人は居間へ連れられて行って、他のメンバーはその隣の部屋に集めれらることとなった。
ちなみにアルゴだけでなく、そこには篠宮さんにあの梟という少年、それにゲームセンターの一件で知り合ったツグミさんと研二君も居た。
「一体どういうことなんだ?」という意図のこもった視線を隣からひしひしと感じるけれど、それを知りたいのは僕も同じなので、その視線に関しては考えず、僕は校長先生…もとい、修一郎おじさんたちのほうへ目を向ける。

「久しぶりだね、修一郎!全然連絡もしてくれないし…」

全員が着席したところで、最初に口を開いたのは父さんだった。母さんが憎々しげにおじさんを睨みつけているのも姉さんが警戒心むき出しで恙神先輩に視線を合わせているのもまったく意に介さず、というか気付きすらせず普通に世間話を始めてしまう。

「連絡に関してはお互い様だろう」

「い、いやぁ…まぁまぁ!こうして会えたんだし、良しとしようじゃないか!うん!」

「まったく、お前も変わらんな…」

「あはは…教職というのはどうなんだい?もう業務には慣れたのかな?」

「あぁ、おかげさまでな。最近になってようやく、という感じだが」

「あはは、まさか君が先生だなんてねぇ…想像もつかないなぁ」

「俺だって昔はそんなこと考えもしなかったさ」

「…じゃないわよ!一体どういうことなの!?」

世間話ばかりで肝心なことは一切話さない二人に母さんがとうとう痺れを切らした。

「なんで兄さんがこんなところに居るの!?この二人とあの子たちは誰!?なんで今の今まで連絡の一つも寄越さなかったのよ!」

「ふむ。まぁ、それらの質問には後ろから順に答えていくとしよう」

「…聞こうじゃない」

「まず第一に、連絡に関してだが、これは単純に忙しくてな。教師職というものに慣れるのに、思いのほか時間がかかってしまった。まぁ、研究職を離れた今、お前達と何を話せばいいのかわからなかったというのもあるんだが…。
しかし、連絡に関してはお前達に言われる筋合いはないぞ?そっちだって、今の今まで電話の一つも寄越さなかったじゃないか…」

「そ、それは…」

「大方、研究に夢中になっていたんだろうが…まったく、お前たちは二児の親となっても変わらんな。
どうせ集や真名が優秀なのをいいことに研究ばかりしていたんだろう?
今回の旅行は気まぐれか、それとも流石に家族サービスをしていなさすぎるのをまずいと感じ始めたか?それは確かにいい傾向だが、継続しなければ意味はないぞ?これを機会にもう少し親としての責任を全うしてだな…」

「そ、その辺にしておいて、次の質問に答えてよ!この子たちは一体兄さんの何?」

流石に説教を喰らうのは母さんも御免だったのか、隙を見て先を促そうとする。
ちなみに父さんは今の説教で普通にしょんぼりしてしまっていた。



「まだ言い足りないことは山ほどあるが…まぁいい。後にしよう」

(後にするだけで結局するんだ、説教…)

「まぁ、この子たちは…うん、そうだな…」

いのりさんに関しての話題ということで、僕は少しだけ身を乗り出してしまう。
けれど、今まですらすらと話していたおじさんの口が急に重くなってしまった。
一体どうしたのだろうか?そんなに話しにくいことが…?

「構わない、父さん。俺から話そう」

そういったのは恙神先輩だった。いやそれよりも…

「父…さん?」

「ま、まさか、兄さん結婚して子供まで!?い、いくらなんでもそんなことまで連絡せずに隠して…」

「まぁまぁ落ち着かんか。順を追って説明する」

「…」

不服であることを隠そうともしなかったが、一応、母さんは黙って立ち上がりかけていたところをゆっくりと座りなおす。

「考えてみればわかるだろう。もし本当に俺がこの子たちの親なのだとすれば、お前たちと時期を同じくして結婚していたことになる。いくらなんでも隠し通せるわけないだろう。いや、伝えはしなかったが特に隠そうと思って隠していたわけではないのだが…それに、苗字も全く違う。」

「それは…まぁ、そうね」

「では、改めて自己紹介を。私は恙神涯…元は孤児院に居ました。父さんに拾って頂き、今現在も尚、父さんの元で暮らさせていただいています」

「同じく、楪いのりです。」

恙神先輩といのりさんが…孤児?

「孤児だった二人を兄さんが引き取った…?」

「信じられない、という顔だな。」

「…まぁね」

「色々事情があってな。そもそもはその孤児院というのが私の知り合いが経営していたもので、それが経営難に陥り…ということでな。最初は私も渋ったが、行く宛のない子供を放っておくほど、俺も人間を捨ててはいない」

「…ふぅん」

それでも母さんは納得しきれない感じだったけれど、一応筋は通っていたから、それ以上の追求はしなかった。
孤児なんていうデリケートな過去を持った二人について、更に突っ込んだ話をするのをためらった、というのもあるんだろう。

「えと、じゃぁ、この前二人でいたのは…」

「あぁ、あのときか?あれは今回の一件に入用なものを色々揃えていたんだ。…だから、俺といのりが付き合っている、なんていうことはないぞ?」

そう言ってにやりと笑う恙神先輩。僕の勝手な勘違いを見透かされていたようで、思わず顔が赤くなってしまう。
恥ずかしくてたまらなかったけど、でも…それ以上に嬉しくて、顔がほころぶのを抑えきれない。

(そうか…じゃぁ、いのりさんは…!)

「それで最初の質問だが、これはただ単に夏休みを利用して、今年に限らず毎年帰省していた、というだけの話でな。問題ないだろう?ここは一応、俺とお前の共有財産として父から受け継いだものだからな」

「まぁ…そうだけど」

「さ、質問はもういいだろう。折角ここまで来たんだ…皆で海にでも行ってくるといい。そちらで待っている子達も、待たされてうずうずしているようだしな」

そのセリフを受けて、がたん!と隣の部屋へと繋がる扉が音を立てる。
恐らくは颯太辺りが聞き耳を立てていたんだろう。

「折角の青春なんだ、思う存分楽しんできなさい」

ユウ「

と言ったところで、今回はここまで。

今回は地の分をを使用した形にしたのですが、如何でしたでしょうか?

今後の事を考えると、元の形態では苦しいと思い、試験的に導入してみたのですが…

そうそう前回言い忘れてしまったことがあるんです。

前回出てきた不良のキャラクター「難波A、数藤A」に関して。

あれはあくまでイメージしやすいように名前を借りているだけで、ツツガミガイとクラスを同じくする「難波、数藤」とは別人物となります。

今後も、難波、数藤という名前はこのような方法で使用する予定です。

今日の後書きはこの辺りでお終いとしましょうか。

では、また会う日まで


颯太「青い海!」

颯太「白い砂浜!!そして…」



颯太「めくるめく水着美女達!!!」



颯太「海に来たぞーーーー!!!!」


と、そんな風にこれまでの比じゃないくらいにハイテンションになっている颯太に対して、僕たちのテンションは見る見る下がっていった。
それに反比例して颯太を見る目もどんどん冷たくなっていく。


颯太「え、なにその目は…折角の海だぜ!?もっと楽しめよ!さぁ、ハリーハリー!」

集「…ハリーに楽しもう的な意味はないよ、颯太…」

花音「ていうか、誰のせいでこんなにテンション下がってると思ってるのよ…」

祭「水着美女達って…」

颯太「えっ、えっ…」

そう、つい一瞬前までは、僕達だって海を前にして気分が高揚するのを抑えきれなかったというのに、颯太のせいで上がった分が今度は下がっていってしまっている。
…いや、本当に自重しようよ颯太。
人間ができてる姉さんや谷尋辺りは苦笑いで済ませてるけど、潤君達明らかにどん引いてるし篠宮さんやツグミさんに至っては生ごみを見る目だってもう少し温かいだろうと思われるような視線を送ってるじゃないか。

颯太「わ、悪かったって!ほら!海は目の前だぜ?行こう行こうー!」

集「全く…」


あれから。


あれから、というのは、僕たちが校長先生からの話を聞き、とりあえずどちらもあの家を使うのに対して正当な権利があるということが明らかにされ、一応ギリギリ泊まれるくらいの人数であるというお母さんの判断の元、僕たちはこの夏休みは一つ屋根の下で暮らす運びとなってから、ということだけども。

あれから僕たちは校長先生の勧めの元、海へ行こうという話になった。
というわけで、僕たちは夏服から水着へと着替えることになって…。


颯太「しっかし、お前と校長先生が親戚だったなんてな」

集「うん。一応、母さんから聞いてはいたんだけどね。最後にあったのが小っちゃい頃で、気難しそうな人だったっていうのだけは覚えてたんだけど…逆に言えば、覚えてるのがそれくらいだから、あんまり伯父さんっていう感じはしないんだけどね」

これと言って、甥っ子だからどうということもなかった。まぁ、変に意識されたり優遇されたりしてもそれはそれで困るから、僕としてはあんまり接点がなかったのは幸いなくらいだったけれど。

アルゴ「しかしよぉ、涯。行先が大島だってんなら教えてくれたってよかったじゃねーか。そうすりゃぁ、颯太たちと一緒に来ることだって出来ただろうに」

涯「すまん、少し驚かせようと思ってな」


谷尋「あの、恙神先輩」

涯「ん?」

谷尋「とりあえず、これからしばらく、共同生活ということになりそうですし…よろしくお願いします。二年の寒川谷尋です」

潤「お、弟の寒川潤と言います!一年です!」

梟「あ、君も一年生?僕も!梟っていうんだ、よろしく!」

潤「よ、よろしく…」

涯「もう知っているだろうが…三年の恙神涯だ」

颯太「あ、俺は魂舘颯太っす!二年っす!どうぞよろしく!」

集「ええっと、桜満集、二年です。よろしく」

と、皆が皆思い思いに自己紹介を…いや、まだ終えてない人がいる。
というわけで皆でその誰かさんの方を見つめると…

アルゴ「…いや、俺はいらねぇだろ。全員知ってるんだから」

颯太「まぁまぁ、ノリだよノリ。折角だからさ」

アルゴ「ハァ…二年の月島アルゴだ、よろしく」

と、これで本当に皆自己紹介を終えた。あとは女性陣だけど…まぁ、着替え終わってからでいっか。

潤「それにしても…あの、凄いですね。鍛えてるんですか?」

そう言って涯の良く鍛えられ、くっきりと割れている腹筋や胸板をジーッと見つめる潤君。
…やっぱり、自分が男らしくないことを気にしてるんだな。

涯「ああ。まぁな」

颯太「あ、あの!聞きたいことがあるんですけどいいですか!?」

涯「なんだ?」

颯太「体育のサッカーで、クラス全員を相手に一人で勝利を収めたって本当っすか?」

涯「おいおい、その噂には尾ひれがついてるな。流石に俺だってそんなことはしていない」

颯太「そ、そうっすよね…なんだ」

涯「クラスの全男子を相手にしただけだ」

颯太「スッゲェー!」

潤「一体どうしたらそんなことできるんですか!?」

涯「人が確実かつ継続的に結果を得る方法は一つ…努力することだ」

颯太「カッケェー!」

潤「…僕も筋トレ位してみようかな」

集(なんか、無愛想だけど…思ってたより良い人だな)

噂とか、第一印象とか、いのりさんと仲良さげにしてることとかが手伝って、僕はこの人が少し苦手だったけど…今の感じを見る限り、それは思い込みが過ぎるっていうものだったかもしれない。この人と一緒の夏休みなんてゾッとするなんて思ってたけど、この分なら、なんとか上手くやれそうだ。



颯太「いよっし!じゃ、そろそろ行きますか!」

集「うん、海に!」

颯太「いや覗きに」

谷尋「…は?」

覗きに?どこを?

…姉さんたちのところ?

集「い、いや颯太何言ってんの!?そんなの…」

潤「そうですよ!もし見つかったら…」

颯太「いや!男ならやっぱり行くべきだろう!誰も着いてこなかろうと、俺は一人でも行くぜ!」

アルゴ「セリフはカッコイイが言ってることは最低だぞ…」

颯太「なんだよ、アルゴも来ないのか?…ふん、いいもんね!俺一人だけでいい思いしてくるもんね!」

集「ちょ」

涯「止めなくていい」

梟「涯さん?」

涯「どうせ無理だろうしな」

集「え?」


その後、颯太はすぐに帰ってきた。意気消沈した顔からは、どうやら覗くことはできなかっただろうことがうかがえる。原形をとどめているし、見つかってしまったわけでもないようだけど…

颯太「…通路に校長先生が陣取ってた」

校長先生何やってんの?

颯太「なんか、お前の姉ちゃんに頼まれたらしいぞ?」

集「姉さんが?」

そういえば、姉さんは校長先生とそれなりに仲が良かったっけ。何でなのかは知らないけど…。

颯太「…こ、怖かった。校長先生に素行不良の現場目撃されるところだった」

アルゴ「お前、ただでさえ成績最悪だもんな」

涯「だから言ったろう?無理だと」

梟「涯はこうなるのがわかってたから颯太さんを止めなかったんですね」

涯「あぁ…流石に父さんを使うとは思っていなかったが、まぁ、真名なら何らかの対策を打っているだろうとは予想できる」

集「…真名?」

姉さんを下の名前で、しかも呼び捨て?亞里沙先輩でさえさん付けだっていうのに…
そういえば、


真名『あいつ言ったのよ。私に、『久しぶりだな』…って』


集「…あの」

涯「なんだ?」

僕達は、昔会ったことがあるの?そう聞きたかったけれど。

集「あ、いえ、なんでもないです」

なんとなく気後れして、聞く気にはなれなかった。

涯「さて、じゃぁ今度こそ海に向かおうか」

集「あ、じゃぁ、とりあえず、一声だけかけてきますね」

そう言って僕は、逃げるようにしてその場を走り去った。


廊下に来てみると、本当に校長先生が通路の真ん中に仁王立ちしていた。
…聞いてはいたけど、これ凄い威圧感だな…。

茎道「ん?集君か。何か用かね?」

集「あ、いえ、僕達の方が着替えは終わったので、そのことを姉さんたちに伝えておこうと思って」

茎道「そうか。女性は着替えに時間がかかるというしな…先に行ってしまうというのも一つの手かもしれん…さ、通るといい」

集「ありがとうございます」

道を開けてくれた校長先生にお礼を言って、女性陣が着替えに使っている部屋へと進む。
近づくにつれて、皆が楽しげに話している声が聞こえる。
初対面だろう人たちもいるから、少し心配してたけど、仲良くなれたようでよかった。

拳を作って、ノックし…ようとした。

その瞬間だった。

扉が開いて、何かが…いや、誰かが僕へとぶつかってきた。


その扉の奥には、少し困ったような顔をしているいのりさんと、
呆然としている委員長に、
後転に失敗しましたみたいな風になっている姉さんと、
お尻を突き出すようにして倒れているツグミさん、
顔を真っ赤にしている篠宮さんと亞理沙先輩が居て、
何が何だかわからないままに視線を下に落とすと、
そこには、一糸まとわず、こぼれるのを防ごうとするかのように自分の胸を支えている涙目の祭が…

祭「い」



祭「いやああああああああああああああああああああああ!!!!!!」





僕の意識は、そこで途切れた。


ユウ「CMです」



「取って、集…」

あのときは取れなかったけど…今度こそ

「…さようなら」

「これは、まさか…」

君の、心…!

命…!








嫌だ!

行かないで!


いのり!!!



「っ!?」

そこに広がっていたのは、忘れもしない、あのときの六本木…

僕が初めて、「王の力(ヴォイド・ゲノム)」に目覚めた場所

「ここは…なんで…」

ずしりとした重みを感じて自らの腕へと目を向けると、

左手には、僕に別れを告げた彼女の姿が。

右手にはその彼女に宿る禍々しい「剣」が。

無粋な機械音の響く方へと目をやれば、パイルバンカーを構えこちらへと特攻してくるエンドレイブの姿!


何が何だかわからない。


わからないけれど…!



僕は何も理解しないままに、その力を振るう。





それは、友達を武器に戦う、僕が戴きし、罪の王冠





集「強くてニューゲーム?」


誰か書いてください。








時刻は少し遡り。








私達が別室へ移動して、集のお姉さんが自己紹介をしようと言い出した。

真名「言い出しっぺの法則っていうことで…私は桜満真名。集の姉よ」

亞里沙「私は供奉院亞里沙。生徒会長をやらせていただいてるわ」

ツグミ「アイ!じゃぁ次は私!ツグミっていうの!ぴっかぴかの一年生よ!よろしく!」

花音「草間花音です。映研で会長やってます」

祭「えと、校条祭です」

綾瀬「篠宮綾瀬です」

いのり「…楪いのりです」

最後に私が自己紹介したところで、当たり障りのない世間話をしながら、みんなはそれぞれ着替え始める。
抵抗がある人も居たようだけれど、周りが着替えだすのを見てその人たちも着替え始めた。


会話の中心は集のお姉さん。噂通りの人で、みんなが仲良くなれるように会話を上手くコントロールしている。あまり話すのが得意じゃない綾瀬も、多少ぎこちないながらもそれなにり溶け込めているみたい。

だったのに。

花音「やっぱり総合力なら祭の胸が…」
ツグミ「ネイ!あやねぇのおっぱいに決まってるじゃん!」
真名「ふふん!私の亞理沙が一番でしょう!」

どうしてこうなった。

切っ掛けはほんの数十秒前。ツグミの放った一言だった。


ツグミ『誰のおっぱいがいちばんなのかな?』


一体どういう会話をしていたらそんな話の流れになるのか…。着替えに集中していた私にはてんでわからないけど、とりあえず、今の戦況を説明するなら。
可愛さ余って愛しさ百倍!校条祭!
健康的で犯罪的!?篠宮綾瀬!
外人の遺伝子はやはりすごい!供奉院亞里沙!

至極どうでもよかった。

しかも争ってるのは(胸の大きい)本人ではなく(胸の小さい)外野。
当の本人達はと言えば、いきなり後ろから抱きつかれてその上無理矢理胸部を強調させられているため、当惑していたり怒っていたり両方だったり…。

真名「あらあら、見れば一目瞭然でしょう?亞里沙の胸が一番大きいじゃない。やっぱり亞理沙のが…」

ツグミ「ハッ!笑わせるんじゃないわよ!胸の価値は胸自体の大きさだけで決まるもんじゃないわ!見なさい、このあやねぇの引き締まった健康的な体を!これによりオッパイの大きさが更に際立つってものよ!」

花音「甘いわね!私の祭を舐めるんじゃないわ!これだけの張りと艶を持ってるのは祭だけ!さっさと負けを認めなさい!」

虎の威を借る狐ならぬ、巨乳の威を借る貧乳。
ひどく哀愁漂う絵面だった。

祭・亞里沙・綾瀬「「「いい加減に…」」」

と、とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、亞里沙と綾瀬は額に青筋を浮かべて、祭は目に涙を浮かべて…

祭「してぇ!」
亞里沙「しなさい!」
綾瀬「しろぉ!」

祭は花音の魔手を逃れて入口へと走り出し、綾瀬はツグミに向かって(車椅子で)足払いをかけ、亞理沙は自分の胸をもんでいる集のお姉さん…真名の腕をひっつかんで見事な一本背負いを決めた。

その瞬間、祭が入口へと到達し、扉を開いて外へと出る。
自分がほとんど全裸だということを忘れるほど、自分の胸をいじられるのが嫌だったらしい。
けれど、祭にとってはその方がマシだっただろう。

扉を開けた先には、集が居たから。


祭「い」



祭「いやああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




祭の悲痛な叫びとともに、綺麗なアッパーカットが集の顎へと決まる。

いのり「…ナイスパンチ」

私が思わずそうつぶやくのと、集が廊下に倒れ伏すのは、ほぼ同時だった。

ユウ「というわけで、今回はここまで。


…本来の予定では、本日中に海まで行く予定だったのですが。

着替えだけで終わってしまいました…本当に、申し訳ありません。

というか、おっぱいネタでゴリ押ししすぎている感が否めませんね。

男なんておっぱいの話振ればそれで連れる簡単な生き物…そんなことは考えていませんが。

しかし、登場女性キャラクター全てが魅惑的な肉体を持っている…そのため、どうしてもその手の話題についつい思考が移行してしまうのです。どうかご勘弁を。

来週こそ本当の水着回。今回のような流れがもう少しだけ続きます。

で、また会う日まで。


あの後。

悲鳴を聞きつけたお父さんからの心配の声を「なんでもない」とやりすごし、調子に乗りすぎましたと外野組が謝り、部屋の隅っこで泣いている祭を説得し、それぞれがいそいそと着替え終えて、集の記憶はどうやら部屋の前まで来たところまでしか残っていないことを確認し、玄関で男性陣と合流する。

やけに時間がかかった集が主に颯太に問い詰められたり(「覗いたのか!?お前だけいい思いしやがって!」などと言われていた。当の集は訳が分からないという風だった)、祭が集から妙に距離を取るので怪しまれたり、綾瀬が裸を見られた腹いせに「ごちゃごちゃうるさい!」と言って颯太を投げ飛ばしたりと、一悶着あったけれど、何はともあれ。







僕たちは海へ到着した。


あの後。

悲鳴を聞きつけたお父さんからの心配の声を「なんでもない」とやりすごし、調子に乗りすぎましたと外野組が謝り、部屋の隅っこで泣いている祭を説得し、それぞれがいそいそと着替え終えて、集の記憶はどうやら部屋の前まで来たところまでしか残っていないことを確認し、玄関で男性陣と合流する。

やけに時間がかかった集が主に颯太に問い詰められたり(「覗いたのか!?お前だけいい思いしやがって!」などと言われていた。当の集は訳が分からないという風だった)、祭が集から妙に距離を取るので怪しまれたり、綾瀬が裸を見られた腹いせに「ごちゃごちゃうるさい!」と言って颯太を投げ飛ばしたりと、一悶着あったけれど、何はともあれ。







僕たちは海へ到着した。


祭「あれ、綾瀬さん、どこに行くの?」

あの人数で固まっていてもしょうがないということで、段々とばらばらに別れていくなかで、
綾瀬さんが、みんなと違って海と逆方向へと向かうのを呼び止める。

綾瀬「ん?海の家に浮き輪借りにくのよ」

祭「あの…危なくないの?」

綾瀬「大丈夫よ。これでも結構泳ぐの好きなのよ?こんなのでも、」

と言って、ポンポンと自分の足をたたく。

綾瀬「浮くくらいはできるから。何度かプールにも行ってるし、心配なんていらないわよ」

祭「…それじゃ、私も」

綾瀬「気を遣わなくていいのよ?」

祭「別にそういうんじゃないよ。ただ、私も精一杯泳いだりとかってあんまり好きじゃないし…綾瀬さんと一緒にのんびり漂うのも良いかなって思っただけ」

綾瀬「…折角水着姿になってるんだから、愛しの彼でも誘惑してきたらいいのに」

祭「っ!!!」

一瞬で、火がついたかのように顔が熱くなる。鏡がなくてもわかる。多分、今の私の顔はきっと真っ赤だ。

祭(誘惑…?しゅ、集を?…水着で!?)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

祭「あひゅぅ!」

綾瀬(あひゅぅ?)

祭「そ、そんな、こと…でも、こんなチャンス二度とあるか…でもだからって、そんなはしたない…はっ!」

気付くと、綾瀬さんがこちらを見てにやにやと意地悪そうに笑っていた。

祭(うぅ、すっかり遊ばれてる…。)

祭「からかわないでよ、もう!」

綾瀬「ごめんごめん、ふふっ」


数藤B「ねえ、君たち今暇?よかったら俺らと一緒に泳がない?」

そんないい気分に水を差す、品のない声が私達に掛けられる。

祭(う、うわ…ナンパだ…)

実際に声をかけられるのは初めてだった。いや、私じゃなくて綾瀬さんが目当てなんだろうから、私が声をかけられたっていうのは違うかもしれないけど…。
綾瀬さんは尋常じゃなく表情が厳しくなっていてもう鬼の形相とでも言ってしまえるような顔になっていた。
…ナンパしてきた男の人よりも綾瀬さんの顔の方が怖いと思ってしまったのは秘密にしておこう。

数藤B「ねぇいいじゃん一緒に泳ごうよー」

祭「い、いやあの、他にもたくさんの友達と来ているので」

難波B「なんなら、その子たちと一緒でも構わないよ。だから、そんなつれないこと言わずに…」

綾瀬「こんのっ!」

綾瀬さんの表情がどんどん厳しくなっていく。人の顔というのがここまで変化するものだということを初めて知った。このままだと、騒ぎになるのも構わず綾瀬さんが暴走してしまいかねない。その前にどうにかして追い払わないと…でも、どうやって…?


涯「…オイ」


難波B・数藤B「?」



そのとき、私たちとの間にあの人が…恙神先輩が立ちふさがった。

涯「こいつらは俺の知り合いでな。ナンパなら他を当たれ」

数藤B「ハァ?知ったこっちゃねーよ。邪魔なんだよ、どけろよ」

涯「…意味が通じなかったようだな。見逃してやるからさっさと行けと言っているんだ」

難波B「なんだと、このっ!」

涯「ふん」

挑発されて、思わずナンパの人は恙神先輩の顔面に向かって拳を繰り出してきた。
けれど、恙神先輩は軽く上体を右にずらすことによってその拳を難なく避け、その攻撃に合わせるようにして膝蹴りをナンパの人の腹に叩き込む。

難波B「っ!が、ふぅ、おぇ…」

数藤B「てんめ!」

仲間がやられたのを見て、もう一人のナンパの人も襲い掛かってくる。
恙神先輩は、その人が足を一歩踏み出す前にもう行動を起こしていた。
ナンパの人の首根っこを引っ掴み、

数藤B「お、ぉ?うぉぉ!?」

柔道の一本背負いのような軌道を描いて、力任せに叩きつけた。

涯「…」


祭(す…凄い)

絡んできた二人を、あっという間に、一撃も貰うことなく撃退してしまった。しかも、息一つ乱れていない。
コテンパンにやられたナンパの人達は立ち上がると振り返ることなく全力でその場を立ち去った。

涯「さて、怪我はないか?」

祭「え、あ、はい…大丈夫です」

涯「そうか、それは何よりだ」

それだけ言って、自分の役目は終わったと言わんばかりに、背中を向けて歩き出す。
と、そんな背中を、熱のこもった瞳で見つめる視線に気付く。

綾瀬「…」

祭「…おぉ?」

これは…もしかして、もしかすると…?

祭「あの人の事、好きなんですか?」

綾瀬「っ!!!」

瞬く間に綾瀬さんの顔が真っ赤に染まり、「え、あの、いや、その…」なんて言いながら意味もなく手を振り乱したりキョロキョロと辺りを見回す。なんとわかりやすい。

祭「なるほどなるほど…へぇー、綾瀬さんの好きな人は…」

綾瀬「ちょ、ちょっとちょっと!違う!違うのよ!祭は勘違いをしているわ!そんなこと、全然そんなことないから本当に!うん!」

祭(集のことでからかわれてる時の私もこんな感じなのかぁ…)

その後、気の動転した綾瀬さんから海に向かって割と冗談にならないような力で突き飛ばされるまで、私は綾瀬さんをからかい続けた。



谷尋「行くぞー潤!」

潤「う、うん!兄さん!」

ポン、と弱々しくとすら言えそうなほど優しく、谷尋君がボールを弾く。

花音(あからさまに手加減してるなぁ…そりゃぁ、私も本気でやろうとは思わないけど。あの二人相手に)

潤「え、えい!」

梟「おりゃ!」

潤「て、てぇい!」

そう、私は谷尋君と組んで潤君と梟君を相手にビーチバレーを楽しんでいる。
…正直に言わせてもらえれば、ビーチバレーを楽しんでいるというよりは、ビーチバレーをするあの二人の姿を楽しんでいるという感じだけど。

私は大して大柄というわけじゃない。むしろ小柄なほうだと思う。
おい今胸のこと考えたやつちょっとこっち来い。
…コホン。
二人は、そんな私が見下ろせるくらいの背丈しかなく、しかもこれと言って筋肉質というわけでもない。
潤君はよく自分が女子に間違われることを気にしているようだけれど、それもさもありなんというものである。そして梟君もそんな潤君と大して変わらない。
年が一つ違うことを考えても、やっぱり私よりも小さいということは、同年代の男子の中でもあの二人は特に小柄なほうなんだろう。
そんな二人から放たれる…と、言う表現を使うことすら憚られ、まさにパスのように送られてくるかのような打球は、これがビーチバレーだというのもあるにしても、あまりにも弱々しい。

花音(うん、これは…なんというか…こう)

恐らく、谷尋君も私と同じ気持ちだろう。

花音(癒される…)

輝く太陽よりも。
煌めく海よりも。
眩しい砂よりも。

なによりも、そんな光景を美しいと思った。


ダリル「へぇー、結構きれいじゃん」

ローワン「気に入って貰えたかな?」

ダリル「ばっ、子供じゃあるまいし、海の一つや二つではしゃぐかよ!」

ダリル「…まぁ、悪かないけどさ」

ボソリと付け加えられたその一言に、どうやら機嫌は直ったようだと安堵する。
僕が何故ここに居るかと言えば、話は夏休み直前まで遡る。

いつものように、ダリル君は突然僕の家を訪れた。
けど、その日はどうも様子がおかしかった。上機嫌のときはニコニコしているし、イライラしているときは仏頂面を浮かべるが、そのときダリル君はそのどちらでもなく、どうにも落ち込んでいる風で、しょんぼりとした表情を浮かべていた。
嫌なことがあれば当り散らして発散するダリル君にしては、とても珍しい状態だったと言える。少なくとも、僕がそんなダリル君を見たのはその日が初めてだった。
どうしたのかと聞くのも憚られて、とりあえず家に上げる。その後、クロを撫でながらポツリポツリと漏らした言葉をつなげてみると、こういうことらしい。

夏休みを利用して父、つまりは理事長と一緒に旅行に行こうと誘ったら、仕事が忙しいからと言って断られてしまった。

とのこと。
父親と一緒に居れないことを淋しいと思うダリル君は、年相応に…否、年齢よりもより幼いのだと思うのと同時に、そんなダリル君を見ていられないとも思った。
だからこう言ったのだ。

ローワン「えと、もしよかったら…僕と一緒に旅行にでも行くかい?」

ローワン(何はともあれ、元気になってくれてよかった)

ローワン(しかし、理事長も息子と、旅行とは言わないまでも、少しくらい一緒に居る時間を作って差し上げればいいのに。いくらなんでも、それすら出来ないほど忙しいということはないだろうし…)

ダリル「何ぼーっとしてんだよ!ほら、さっさと行くぞ!」

ローワン「あ、ちょ、待って!僕運動は苦手…」

ローワン(…まぁ、たまにはいいか)

しかし大島か。
確か、現映研のあの子たちの合宿先も大島だったな。一応、部活動もするっていうだけで、実際は桜満君の旅行に着いていくという形を取るから、顧問の僕は必要ないという話だったけど…。
ダリル君と一緒に居るのを見られたら、あらぬ誤解を受けるかもしれないし、できればあんまり会いたくはないな。
まぁ、日程が被ると決まっているわけでもないし、仮にそうだったとしても、こんな人の多い中で偶然ばったりなんてあるわけ…

ツグミ「あれ、ローワンじゃん!なんで居るの!?」

ローワン「…つ、ツグミさん!?」

あの子たちよりも会いたくない子に出会っちゃった!
ま、まずいぞ、もしここにダリル君が来たら、どう考えても厄介なことに…

ダリル「あ、お前ら!」

ツグミ「げっ」
研二「やほー」

ローワン「…ゴクッ」<無言で胃薬を飲む

ダリル「ここであったが百年目!勝負だチンチクリン!海らしく水泳でな!」

ツグミ「えー、せっかく旅行に来てるのにまたあんたと勝負するのー?めんどくさー」

ダリル「はっ!なんだよ、お前カナヅチだったのか?」

ツグミ「…は?」

ダリル「あぁ、そういえばお前には女にはあるはずの二つの浮き袋がついてないもんなぁ…ぷっ」

ぶちぃ!という何かが切れる音が聞こえた気がした。

ツグミ「発展途上中だっつってんでしょうが!いいわ、受けて立つわよ!私が勝ったら今言った言葉訂正して土下座してもらうかんね!」

ダリル「いいぜやってやるよ!じゃぁもし僕が勝ったら今度はお前が僕の椅子になるんだな!」

研二「あぁ、あのときの何気に根に持ってたんだねー」

ローワン「…はぁ」

この旅行、僕の気が休まることはなさそうだ。



アルゴ「よ、大雲」

大雲「あぁ、アルゴ、こんにちは」

俺は颯太を連れて、大雲の所まで来ていた。
一応、晩飯のときになったら会えると涯から聞いちゃいたが、もう来てるってことなら会わねぇ理由はねーだろう。

アルゴ「颯太、こいつ、俺のダチの大雲。旦那、こいつ、俺のダチの颯太。」

颯太「こんにちはっす」

大雲「初めまして、私は大雲…おや、もしかして天王洲高校の生徒ですか?」

颯太「あ、そっす。どうも」

大雲「なるほど、通りで見覚えがあると思いました…ところで、そんなに固くならなくても大丈夫ですよ?」

颯太「あ、はい…」

颯太の奴、緊張してるな。まぁ、こいつはやたらガタイがいいから、萎縮しちまうのもわからねーじゃねーけどよ。

大雲「それにしても、あなたにも友達が…」

と、言って慈愛に満ちた眼差しを向けてきやがる大雲。
普段は普通に友達なんだが、やっぱり実際に一児のパパやってる大雲は、時々こうやって俺を子供みたいに見る時がある。まぁ、実際ギリギリ親子って言えるくらいには年が離れてるから、しょうがないっちゃしょうがないんだが…。

アルゴ「そういう目で見んなよ。いい気分しねぇぜ」

大雲「ははは、これは失礼」

アルゴ「ったく…」

「あら、アルゴ君。こんにちは」

アルゴ「あ、ママさん、こんにちは」

「こんにちはー!」

アルゴ「おう、こんにちは!」

颯太「えっと、もしかして…」

大雲「ええ、妻と娘です」

アルゴ「またでっかくなったんじゃないかー?おい!」

「えへへー」

「あら、初めまして。あなた、この子は?」

大雲「アルゴの友人で、颯太君と言うそうです」

颯太「は、初めまして!」

「初めまして」

大雲「…むっ」

「どうしたの?」

突然、大雲の旦那の纏う空気が変わる。キリッとした表情である一点を凝視している。
その視線の先には…


ダン「…」

大雲「…」








ダン「 サ イ ド ト ラ イ セ ッ プ ス ! 」ムキムキ!





大雲「 ダ ブ ル バ イ セ ッ プ ス !」ムキムキ!




ダン「やぁ、Mr.大雲!」

大雲「奇遇ですねダン先生!こんなところで会えるとは!」


颯太・アルゴ「なんだ今の…」

「…え、えっと、いわゆる一種の肉体言語と言う奴じゃないかしら?」

「にくたいげんごー?」

まぁ、筋肉ダルマ同士、通じ合うところがあるんだろう。

ダン「…なぁ、大雲!折角の機会だ!ここらでいっちょ、力比べでもやってみないかい!?」

大雲「力比べ、ですか…?」

ダン「そうだ!やっぱり、男である以上、こういうことはきっぱりさせとかないと、すっきりしないだろう?」

大雲「…いえ、そんなことはありませんが…」

ダン「いや!ある!」

大雲「えぇー…」

ダン「さぁ、そこの君!ジャッジを頼むよ!」

颯太「え、あ、はい!」

ダンとかいう奴の強引な誘いを断りきれず、大雲の旦那とあいつとで、力比べをすることになっちまったようだ。適当に砂に円を描いて、その中に二人が拳を砂に着けて睨みあう。日本人のよく知る相撲のような体制だ。

颯太「位置について…はじめ!」

ダン「ふんッッッ!!!」
大雲「ぬんッッッ!!!」

颯太の掛け声と同時にがっちりと組みあう二人。そしてそのまま微動だにしない。
いや!僅かに旦那の方が押されている!ジリジリと円の外へと追いやられる旦那…。
旦那の…負け?

その瞬間だった。

「ぱぱ、がんばれ!」

その声を聴いた瞬間、苦しげだった旦那の表情が、サッと変わる。

大雲「ぬぅぅぅぅぉぉぉぉおおおおお!!!!」

思わず俺でさえ一歩退いてしまうような鬼気迫る掛け声とともに、思いっきりダンとかいう奴を投げ飛ばした!

ダン「うごぁ!?」

颯太「あ、えと…大雲さんの勝利!」



ダン「…いやー参った参った!負けちまうとはねー…俺もまだまだ、ガッツと鍛え方が足りないな!」

大雲「いえ、本来なら負けていたのは私の方だったでしょう。しかし…」

「ぱぱー!」

大雲「…家族が居る。だから私は強くなれる」

にこにこと笑う娘を軽々と持ち上げて、自信満々にそう言い放つ旦那を見て思う。

アルゴ(はーあ…まったく、敵わねーなぁ)

真名「しゅーうー!日焼け止め塗ってー!」

集「…はいはい」

海に着ての姉さんの第一声がこれだった。
まぁ、姉さんの我が儘はいつもの事だし、別にいいか…。なんて思いながら、姉さんから渡された日焼け止めを背中に塗っていく。

真名「あー…ひんやりして気持ちいい…」

集「亞理沙先輩にでも塗ってもらえばよかったじゃない。なんで僕が…」

真名「んふふー、ぶつくさ文句言いながらもちゃんと塗ってくれるあなたが大好きよー集ー」

集「…はぁ」

いのり「…集」

と、そんな風に姉さんにいつものごとく奉仕していると、いのりさんから声をかけられた。

そしていのりさんの手には、ちょこんと日焼け止めクリームが載っていた。

集「えと…どうしたの?いのりさん」

いのり「私も、塗ってほしい」

集「…何を?」

いのり「これ」

集「誰が?」

いのり「集が」

集「誰に?」

いのり「私に」

集「…えぇ!?」

びっくりして思わず日焼け止めを落としてしまった。いきなりの冷たい感触に姉さんが悲鳴を上げたけれど、そんなことより!(ひどい)

僕が、いのりさんに、日焼け止めクリームを…塗る?

集「い、いや、そんな、それなら、他にも…祭とか、委員長とかに…」

いのり「皆もう遊びに行っちゃった」

集「じゃ、じゃぁほら、恙神先輩とか…」

いのり「涯もどこかに行っちゃった」

集「えと、それなら…」

いのり「…嫌?」

集「そんなことはないけど!」

いのり「じゃぁ、お願い」

集「え、あ、うん」

あ。

頷いちゃった。

というわけで。

今僕は、日焼け止めクリームを片手に、いのりさんの病的なほど白い肌を凝視していた。
どうしてなんだろう。どっちも同じ綺麗な背中なのに、姉さんに塗るときは何も感じなくて、いのりさんが相手だとこんなに緊張するのは…。

集「…じゃ、じゃぁ、塗るよ…?」

こくりといのりさんが頷くのを確認して、僕はクリームをつけた手でそっといのりさんの背に触れる。ゆっくりとそのクリームを広げていく。バクバクとなる心臓がうるさい。背中の中心部分は塗り終えた。いのりさんの胸が地面とサンドイッチにされて変形し端の部分が脇からちらりとのぞいている。脇の方まで塗るんだろうか?今アクシデントを装って胸に触れてもばれないんじゃないか?

集(無心だ…無心になるんだ…)

自分の奥底から湧き上がる邪念を振り払おうとひたすらクリームを塗ることに集中しようとするが、それはつまりいのりさんの背中に、もっと言えばいのりさんの体に集中するということであって、それはむしろ逆効果なようだった。



集「っ…はぁ!」

やりきった!
とうとう、自分の欲望との戦いに打ち勝ち、いのりさんの背中すべてに満遍なくしっかりとクリームを塗ることができた。
…度胸がないだけだったとも言えるかもしれないけど。

集「あの、塗り終わった…よ?」

いのり「スー…スー…」

集(寝てる!?)

そう、いのりさんはぐっすりと眠ってしまっていた。
警戒心ないなぁ…それとも、信用されているんだろうか?だったら嬉しいけど。
それにしても無防備な寝顔だ。目を閉じて、腕に顔を載せ、静かに寝息を立てている。
少しくらいいたずらしても起きないんじゃないかと思うくらいぐっすりと寝入って…

集(い、いや何を考えているんだ僕は!折角クリームを塗るときは我慢したっていうのに!)

でも、と思う。少しくらい、と。
そう、頬をぷにっとつつくくらい、ね?
ほら、だってクリーム塗ってあげたし?
それくらいの見返りはあってもいいんじゃないかな?

よからぬ考えが頭をよぎる。正常な思考を既に失った僕は、人差し指を立て、そっといのりさんの頬に手を近づける。

あと少し。
あと数センチ。
あと数ミリ…。


嘘界「いけませんねぇ」

集「う」

うわああああああああああああああああああ!!!!

と、絶叫しそうになったところを突然現れたその男…嘘界先生が口を抑えることによって防がれる。

嘘界「シーッ。彼女が起きてしまいますよ、桜満集君」

集「せせせせせせ嘘界先生!どうしてここに!?」

いのりさんを起こさないように声を潜めて嘘界先生に詰め寄る。
ていうか、今のばっちりみられてたよね!?
先生に!クラス担任に!
その前に今僕何しようとしてた!?
寝ている女の子を頬をつつこうとするなんて!
変態か僕は!颯太の事責められないじゃないか!

嘘界「私がここにいるのはただの旅行です。『偶然』、本当に『偶々』、ここに旅行に来たのですが…見知った顔を見かけたので声をかけようとしていたところ、青少年としてあるまじき行為に走ろうとしていたので…」

集「…そ、そうですか」

嘘界「わかっているとは思いますが…不純異性交遊は校則で禁じられていますので」

集「は、はい!」

嘘界「わかればよろしい。では、縁があれば、また」

にっこりと、寒気がするような笑みを浮かべて、嘘界先生はどこかへ行ってしまった。
とうとう何もできなかったことを残念に思う僕も確かにいるけれど、一線を越えずに済んでよかった、とほっとしたというのが偽らざる本音だった。

集(あれ、そういえば、姉さんはどこに行ったんだろう?)


真名「…」

桜満真名は、少し離れたところから、そんな風に慌てふためく桜満集を観察していた。

真名「なんで?」

真名「なんでなんでなんで…集の傍には私が居るのに」

真名「集の傍には、私しかいちゃいけないのに。なんで…?」

真名「渡さない」

真名「集は絶対に渡さない」

真名「集は私のものなの」

真名「私は集のものなの」

真名「あんな女に…やるもんですか」

自らの弟を見るその目には、狂気の色が宿っていた。





涯「頃合いか。もう少しもつかと思っていたがな」

四分儀「…とうとう、ですか」

涯「あぁ…恐らくは、今夜だ」

四分儀「ご武運を」

涯「ありがとう、四分儀」

ユウ「

そんなところで、今回はここまで。

…いやしかし、この人数を描写しきるのは骨ですね。何度も心が折れそうになりました。

そうそう、皆さんに報告しなければならないことがあります。

>>1が来週の月曜日から金曜日まで、企業研修<インターンシップ>へ行く事が決定しました。

なので、来週、もしかすると再来週まで、更新ができない可能性があります。

以前のテストのときは結局更新してしまいましたが、今回はテストではなくインターンシップ。流石に更新する余裕はないでしょう。

…フラグとかではありませんよ?


この辺りで次回予告を。

楪いのりと親睦を深める桜満集。
その様子を見て自らの狂気を加速させる桜満真名。
そんな彼女がとうとう行動を起こす。
そしてそれを見守る恙神涯が下した決断とは!?


では、また会う日まで。



集「どうしたの?姉さん。こんなところに連れてきて…」

僕達は、海で日が沈むまで遊んだ。もう少しだけ、という颯太の声を無視して、皆で帰っていたところを、途中で姉さんに呼び止められて、今僕は、皆から離れて人気のない林の中を歩いている。
目の前を歩く姉さんの背中を見ながら。

真名「ねぇ、集。私の事…好き?」

集「え?」

突然の質問に戸惑う。
いつもの悪ふざけ…?

違う。

そんなんじゃない。

次に姉さんが発した言葉は、僕のそんな感覚を裏付けるものだった。

真名「私は好きよ。集。あなたのことが。あなたという人が。あなたという男が。」

何を…。

何を、言って…。

真名「愛してる、しゅう」

にっこりと微笑んで、姉さんは僕にそんなことを言う。


集「何を…言ってるの…?僕達、姉弟じゃないか。」

真名「関係ないわ。」

集「でも、そんなの…」

真名「私が聞きたいのはそんなことじゃないのよ」

真名「私はあなたが好き。私はあなたを愛してる。」

集「姉さん…」

真名「ねぇ、集。」

真名「あなたは、私が好き?」

姉さんが少しずつ近づいてくる。

真名「私があなたのものになる」

僕が、姉さんのものに。

真名「あなたは私のものになる」

姉さんが、僕のものに。

真名「そうして、ずっと一緒に居るの」

ずっと…一緒に。

真名「そんなことができたら…とっても素敵だと思わない?」

それは…とても…素敵なこと?


体が密着するほど近くまで姉さんは迫ってきた。
そして僕の頬に手を当て、目を閉じ、顔を近づける。

そして、


集「やめて!」


どん、と、僕は姉さんを突き飛ばした。

真名「しゅう…?」

姉さんの顔からあの微笑みが消える。
まるで、僕が姉さんを受け入れるのが当たり前のように。
まるで、僕と姉さんが結ばれると信じて疑わないかのように。
まるで、僕が姉さんを拒絶することが間違っているかのように。
混乱と不安がないまぜになっているような、そんな表情。

なんだ…。

なんなんだよ…。

なんなんだよ、これ!?

僕は走り出した。

真名「ま、待って、集!お願い!私は…」

そんな風に僕をどうしようもなく求める姉さんが怖くて。
一瞬、それを受け入れそうになってしまった自分も怖くて。
何もかも怖くて。何もわからなくて。何も考えたくなくて。

僕はその場から、全てを投げ出して、逃げ出した。


集「ここ…どこ?」

流石に足に限界を感じて止まると、目の前には大きな渓流が広がっていた。
とても高くて、下が川なのも関係なく落ちたら余裕で死んでしまうであろう高さ。
あともう少しだけ、無我夢中で走っていたらと思うとぞっとする。

集「…ふぅ」

なんて一息ついてみたものの、思考はいまだに混乱の極致にあった。

姉さんが僕のことを好き。

それは知っていた。そんなセリフは聞き飽きるほどに聞いていた。
けれど、それは勿論、家族としてとか、弟としてとか、日頃の感謝を込めた言葉だとか、そういう意味だとばかり思っていた。

真名『私は好きよ。集。あなたのことが。あなたという人が。あなたという男が。』

集「ッ!…」


集「一体、どうすれば…」


その問いにいつも答えをくれる、頼りの姉さんは、もう…傍にはいない。












涯「よう、桜満集」

傍に居たのは、この男。

集「が、涯…先輩」


真名「どうして…どうして…どうして…」

真名「どうして私を拒むの?集」

真名「そんなの…だめ、だめよ、集。わた、私は、あなたが居ないと…」

…涯の言った通り。

真名は、集に拒絶されたその場所で、自分の体を抱きしめたまま動くことはなかった。
まるで、そうでもしていないと自分の存在を保てないかのように。
ぶつぶつと、どこを見ているかもわからない虚ろな目で、何事かを呟いている。
そこには、自慢できるような姉も、美しいと評されるほどの少女も、学校一と目されている秀才もいなかった。
そこに居たのは、ただ好きな人にフラれて落ち込むだけの哀れな女の子。

そんな彼女の前に、私は姿を現した。


真名「楪、いのり…!」

足音を聞きつけたのだろう、ゆっくりと彼女がこちらを向く。
私の姿を目にした瞬間、絶望の色に染まっていた彼女の顔が醜くゆがむ。
その表情に現れた感情は…怒り。

真名「アンタがぁ!」

直後、それまでの落胆が嘘だったかのような俊敏さで、私の方へ飛びかかってきた。
その豹変に、私は対応できず、反応が一瞬遅れてしまった。首根っこをつかまれ、後ろにあった木の幹へと叩きつけられ、そのまま宙づりにされる。

真名「アンタさえ、アンタさえいなければ!
集は私のものになったのに!私は集のものになれたのに!
なんで邪魔をするのよ!なんで、なんで…なんで!!!
そんなに私から集を奪いたいの?そんなに私から集を取り上げたいの!?
一番集を理解してるのは私!一番集を幸せにできるのは私!一番集を愛してるのも私!
私を一番幸せにしてくれるのは集なの!集じゃなくちゃだめなの!
なのになんで!?なんであなたなんかに、集を奪われなくちゃいけないの!?」

激昂する。声を荒げて、泣き叫び、何も繕わず。
だからこそ、これがありのままの本音だとわかる。
でも、この人は一つ勘違いをしてる。

いのり「ちが、う…」

真名「…?」

首を絞められているせいで声を出すのがつらい。
でも、伝えないと…

いのり「集、は…あなたの事が、好きだって」

真名「………は?」

いのり「頭も良くて、運動もできて、優しくて…そんな、あなたのこと、を、尊敬して、いるって」

はっきりと言葉にしてたわけじゃないけどわかる。集は、あなたのことが…


いのり「あなたの事が、好きだって」


真名「う、嘘よ」

驚いた表情になった彼女が、木に向かって押し付けていた私から手を放す

いのり「けほっ、けほっ…ふぅ」


真名「なら、なんで集は、私を受け入れてくれなかったの?なんで…?」

いのり「きっと、集は、『姉である』あなたが好きだった。」

いのり「自分よりも頭が良くて、自分よりも強くて、困っているときには助けてくれて、迷っているときには導いてくれる、そんなあなたに誰より憧れて、そんなあなたを誰より尊敬して…誰よりも、好きだったのは、きっと、集。」

真名「あなたが…あなたが、わかったような口をきくな!何も知らないくせに!」

いのり「知らなくてもわかる」

真名「っ!こんの…」
いのり「だって」

いのり「だって、私も、集と同じだから」

真名「…同、じ?」

いのり「私も、涯が大好き。」
涯は、私を助けてくれた。
涯は、私を導いてくれた。
涯は、私に人生をくれた。
私は、そんな涯の事が好き。でも、その好きは、『あんな風になりたい』って、そういう気持ち」

いのり「あなたは、どう?あなたの好きは、一体どんな気持ち?」

真名「私の、気持ちは…」



集「なんで、こんなところに…」

涯「…少し、歩こうか」

それだけ言って、僕の質問にも答えず、僕の返事も待たずに、さっさと歩きだす。

集(…今は、何も考えたくない)

僕は、彼の背を見ながら歩き出す。



そうしてしばらく歩いたころ、彼は唐突にある場所で歩みを止める。
そこには、壊れかけの鉄橋がかかっていた。


『はやくおいでよ!』


集「ッ…」

何だ?今の…。
最近にも、こういうのがあったような…。
そうだ、いのりさんだ。
あの、「どこかで見たことがあるような」既視感。
じゃぁ、僕は以前にもここに…?
10年前、僕が大島に来ていた頃に、ここに訪れていたことがあるということだろうか?
いや、それよりも、今フラッシュバックした記憶の中に、誰かいなかったか…?

涯「…懐かしいな」

集「え?」


戸惑う僕を気に掛けることもなく、そのまま彼は橋を渡ろうとする。
でも、それはさっき言った通り壊れかけていて、中央にぽっかりと穴が開いている。
けっして大きなそれではないけれど、落ちた時のことを思えば、迂闊に足を踏み出せるような橋じゃ、

涯「ふっ!」

不安がる僕を笑い飛ばすかのように、彼はその穴を軽々と飛び越えて見せた。

涯「どうした、早く来い」

集「え、来いって…」

来いと言うならそれは当然、この橋に開いた穴を飛び越えろということだろうけれど…

集「あ、危ないじゃないか!もし、落ちたら…」

涯「なんだ?怖いのか?」

集「…」

もちろん、怖い。
何だ、この程度のことでビクビクと情けない。なんて実際に言われたわけではないけれど、にやつくという表現がぴったり似合う彼のその顔は、明らかに僕のことをそんな風に嘲笑っていた。
彼は怖くはないのだろうか?
確かに、そんなに大きな穴ではない。踏み外して落ちることなど、万に一つ程度の可能性しかないだろう。
けれど、その万に一つを引き当ててしまえば、その先にあるのは、死。
彼は、死ぬのが怖くないのだろうか?

涯「…立ち止まるのか」

集「…」

涯「問題から逃げ、恐怖に向き合わず、ただ呆然と立ち尽くすだけ。案山子にも劣るその姿が、お前の本質か?」

集「っ…」


その通りだ。
彼は事実しか言っていない。
僕には何もできない。
僕は…臆病者だ。






涯「そんなことはないはずだ」

集「…え?」

涯「子供の頃のお前は、決断力があって、勇敢で、強くて、俺はお前のようになりたいと思っていた。」

子供の頃の…僕?


『海から来たんだもの!あなたは――――よ!素敵な名前でしょう?』


集「まさか…君は…」


集「トリ…トン…?」


涯「…やっと思い出したか」

そうだ、やっと思い出した。

昔、まだこの大島に居た頃、海岸を姉さんと一緒に歩いていたとき。
海辺で倒れている子供を見つけて、その子を姉さんが助けた。
その子は名前を名乗らなかったから、姉さんが海で見つけたことにちなんで『トリトン』と名付けた。
それから、僕はトリトンを引き連れて、この大島を探検した。
そうしていく内に、トリトンは僕にとって、『親友』と言える存在になっていった。
トリトンが島を離れるまで、ずっとずっと、僕たちは一緒に遊んでいた。
そうだ、思い出してみれば、なんで忘れていたのかと思うほどの楽しい記憶。


涯「俺が目指したのはお前だ。だから、お前は、いつだって俺の目指したお前になれる。」

彼は…トリトンは、僕に向かって手を伸ばす。

なれるかな。僕は。
君みたいに。
君の目指した僕みたいに。

僕は、飛んだ。




集「…ふふっ」

涯「…ハハッ」

やったことと言えば、ただ、少し大きな穴を乗り越えただけ。
ただそれだけなのに。
何かを変えれた気がした。
何かを変えれる気がした。
それはきっと、この手が感じる手の感触が、そうさせているんだろう。

僕達は手をつないだまま、ひとしきり、笑い合った。

友達みたいに。



集「けど、本当に驚いたよ。昔と全然違うから…一体何があったの?」

涯「あぁ…話したいことは山ほどある。思い出話に花を咲かせたいという気持ちもないわけじゃない」

涯「だが…まずは、解決しなきゃならない問題がある、そうだろう?」

…そうだ。
僕は、僕が解決しなきゃいけない問題から逃げて、ここまで来たんだった。
トリトンは、僕を通り越したその先へと視線を向ける。

真名「…しゅう」

集「姉、さん…」

そこには、いのりさんに連れられて、目に絶望の色を宿した姉さんが居た。



重い沈黙がこの場を支配する。
何と言ったらいいのかわからない。
どうすればいいのか見当もつかない。
そうしているうちに、ついトリトンの方へと助けを求めようとして、

集(ダメだ!)

変えれるって思ったんだ!
変わるって決めたんだ!
だから…今度は、僕が…一人で!


集「姉さん」

真名「ッ!…」



集「ごめん」



まず最初に口をついて出たのは、謝罪の言葉だった。




真名「…え?」

集「いつまでも姉さんに頼りっぱなしで…僕はいつも、困ったことがあれば姉さんに答えを求めてた。
姉さんは凄いよ。正しくて、立派で、頭も良くて、運動もできる。僕はそんな姉さんに憧れてた。
でも、僕は憧れるだけで、姉さんみたいになろうとなんて全然思わなかった。
それだけで…僕は、満足してしまってたんだ。
勝手に、僕は僕を、姉さんが居なきゃ何もできない駄目なやつだと思ってた。
でも、それじゃ駄目なんだよね。
家族だからって、姉だからって、頼ってばかりで、僕は…姉さんの足を引っ張ってばかりだった」

真名「違う!」

集「え?」

真名「それは、私よ…。私は、集が居ないと何もできなかった。
集が居たから、私はこんなに頑張れたの。
集が居てくれたから、集がずっと支えてくれたから、私はこんな風になれたの。
集が「ありがとう」って言ってくれるのが嬉しくて、集に「凄い」って褒められたくて、私はずっと頑張ってた。」

姉さんは、僕を。
こんな僕を、そんな風に思ってくれてたのか。
嬉しい…な。

真名「だから…私は、集を束縛しようとした。
私のものにしようとした。
誰にもとられないように。
私は…集の自由を奪おうとしたの。」



真名「ごめんなさい!」


姉さんもまた、謝罪の言葉を口にした。


真名「ごめんね、集…こんな、ダメなお姉ちゃんで…私、あなたがいないと何もできないの…あなたが居てくれないと…あなたに憧れられるような、立派なお姉ちゃんじゃないの…わ、私…ひぐっ…私、は…一人じゃ何もできない寂しがり屋で…自分勝手な理由で、弟の人生を台無しにしてしまうような…そんな、駄目なお姉ちゃんなの…」

集「…いいんだよ、姉さん」

僕は、そんな風に泣きじゃくる姉の涙をそっと拭う。

集「僕が悪かったんだ。僕が、もっとしっかりしていれば…」

真名「しゅ、う…」

集「結局、僕が、『姉離れ』できていなかった…そういうことなんだよ」

真名「違う、違うわ。私が『弟離れ』できていなかったのよ…」

集「いやだから、悪いのは僕で…」

真名「そんなことない!お姉ちゃんなんだから、私が…」


涯「…いつになったら終わるんだ?」

集・真名「………あ」

涯「もういいだろう。責任の所在なんてどうでもいいことだ。
問題は見つかった。原因も解明した。なら、やることは一つだろう?」

集「…うん、そうだね」

真名「…えぇ、そうね」




集「姉さん、僕はこれから、しっかり生きていくよ。姉さんに頼らなくてもいいように。姉さんみたいに立派になれるように」

真名「集、私はこれから、強くなる。孤独に耐えられるように。集がいなくても大丈夫なように。」


いのり「…これで、一件落着?」

集「…うん、そうだね」

真名「…一件落着…ね!」










涯「と、いうわけにはいかないな」

ユウ「

といったところで、今回はここまで

皆様、お久しぶりです。

今回は、2週間を間に挟んでの更新となりました。
先々週は、なんだかんだいいつつも、まぁ結局更新しちゃうんだろうなー…などと甘いことを考えていましたが。
えぇ舐めていました。甘く見ていましたよ、インターンシップを。社会を。
まぁそんな近況報告はどうでもいいとして。

今回とうとう恙神涯が桜満集の旧友、トリトンであることが明らかとなりました。
次回の更新を以て、とうとう折り返し地点(予定)となります。
…えぇ本当に呆れることに、このスレを立てた時点で、>>1は1年に渡る長期更新を考えていたのです。
まぁ、長期更新と言っても、更新頻度は週に一度ですので、一年での話数はたったの48話。さらに忙しいときは更新しないと来ている。
よくよく考えてみればそんなに大したものではないですね。

ですのでもっと増えていいんですよ?ギルクラSS。

といった願望入り混じったお話はさておき、次回予告。


トリトンこと恙神涯、そしてその妹(義理)である楪いのりによって、桜満集の『シスコン脱却』と桜満真名の『ブラコン脱却』が宣言され、一件落着かと思われた。
しかし、それではまだ終わらないという恙神涯。
一体恙神涯が望む未来とは一体何なのか。
更に、桜満集と楪いのりの関係にも進展が…!?



真名「何?話って」

いのりには集を連れて先に戻るように言っておいた。
ここから先は、俺と真名と、一対一で話さなければならない。

涯「…やはり、思い出さないか?真名」

真名「…えぇ。悪いけれど、あなたのような人とは会った覚えはないわ」

冷たくあしらうような口調に、思わず膝をつきそうになってしまう。
耐えろ、俺…そうだ、こう考えるんだ、俺は俺の思うように変わることができたということだと。あまりにも変わっているから気付いてもらえないだけだと…。
ただ単に昔の俺が真名の中で取るに足りない存在だったという説が急激に湧き上がってくるが、そんなことはないと思おう。うん。
じゃないと立っていることすら難しそうだ。正直かなりショックだ。これが二度目じゃなったらこの場で倒れている自信がある。
表面上は不敵な笑みを浮かべているがな。

涯「トリトン」

真名「!」

涯「…思い出してくれたか?」

真名「え…あ…はぁ!?」



どうやら思い出してくれたようだ。
その表情はどんな言葉よりも雄弁に語っていた。
「信じられない!」、と。

真名「た、確かにあの子は金髪だったし、私と同い年くらいではあったけれど…でも、私の覚えてるあの子は、集の後をペンギンみたいによちよちついていく可愛らしいとか弱々しいとか幼いとかそういう表現が似合うような子よ?あなたとは全然違う!」

ペンギンみたいにとは…。当時の俺のイメージはそんなだったのか。
まぁ、俺の感想だって似たようなものだが。

涯「もう、あれから10年だぞ?俺だってずっと子供でいるわけじゃぁないさ」

真名「でも、今のあなたとはあまりにも…この10年間に、何があったの?」

涯「何もなかったさ。特別なことなんて何もなかった」





涯「真名、ただお前のことを想って、ずっと努力してきた…それだけだ」





真名「私の…ことを?」

涯「そうだ。俺は10年前、お前に助けられ、集とともにこの島を巡った。
そんな俺たちを、お前はずっと見守ってくれていた。そんなお前に、俺は…」

真名「…じゃぁ、がっかりしたでしょう?」

涯「…」

真名「さっき見た通りよ。私は、あなたに憧れられるような人間じゃない。
あなたの持つ私への想いは…ただの、幻想よ」

涯「…いいや、違うさ」

真名「…え?」

涯「真名、今の俺はお前にはどう見える?」

真名「どう、って…」

涯「眉目秀麗、成績優秀、品行方正…これはすべて、お前に充てられた言葉だ。そんなお前の傍に居られる男に、俺は成れているか?」

真名「…そうね。あなたは、本物の天才だわ。私のような紛い物とは比べるべくもない…」

涯「そんなことはないさ。俺を本物だと思うのなら、お前は俺に騙されているということだ。
俺は…偽物だよ。」

真名「…どういうこと?」

涯「情報を操作して意図的に俺に有利な噂を流し、綿密な作戦を立て気が遠くなるほどの検証のもとあらゆる失敗を考慮して、派手なパフォーマンスで大衆を欺き、傲岸不遜な態度でそれがさも当たり前であるかのように思わせる。…そうして作られるのがこの、『恙神涯』という…虚像だ」

真名「虚像…」

涯「それもこれもすべては…お前に愛されるためだ」

涯「真名、どうか…」


















俺と一生を共にしてくれないか?
















真名「だーめ♪」




既に時刻は夜。
木々の間から差し込む光は夕暮れ時の橙から月明かりから生まれる蒼白いそれへと変わる頃。
集といのりは、涯と真名の二人よりも先に帰路へついていた。
が、突然、木々がまばらになり僅かに開けた場所でいのりがその歩みを止める。

集「?…いのりさん?」

いのり「…集、約束」

集「約束?」

いのり「いつか…あなたのためだけに、歌うって…約束した」

集「…したっけ?」

もしそんな約束がしていたのならば忘れるはずはないだろう。
それはつまり、いのりの歌を、あの神秘的で美しい響きを独り占めできるということである。
本当にそんな約束を結べたというのなら、集は小躍りして喜んでいてもおかしくはない。
…はずなのだが。
集にはそんな約束をした覚えは全くなかった。

いのり「10年前、多分、この場所で」

集「…え?」

10年前、それはつまり、涯…トリトンと共にこの島を冒険していた頃の話で…。



――10年前――

~♪

集(6歳)『きれいなうた…』

?『…だれ?』

集『あ、ごめん。ジャマしちゃったかな?』

?『…』

集『えと、ぼくはシュウっていうんだけど…あ、これたべる?ねえさんがつくってくれたおにぎり。ぼくのおひるごはんだけど』

?『…おに、ぎり?』

集『あ、もしかしてきみ、ガイジン?えーごだと、らいすぼうる、っていうんだっけ?』

?『…わたしはがいじんじゃない』

集『なのにおにぎりしらないの?』

?『…うん』

集『うーん…じゃぁたべてみなよ!すごくおいしいから!』

?『…あむ』

?『おいしい…!』

集『よかった。じゃぁぼくも…あむ』



?『おれい、する』

集『おれい?』

?『おいしいもの…おにぎり、くれた、そのおれい』

集『べつにそんなの…あ、そうだ!じゃぁ、歌って!』

?『うた…』

集『うん!きみのうた、もっとちゃんとききたいな!』

?『…わかった。じゃぁ、うたうね?』

集『うん!』

?『スゥー…』

………リー…

?『!』ビクッ

集『うん?いまのこえ…おじさん…?』

?『よばれてる…いかないと』

集『え…』

?『…いつかかならず、あなたのそばで、あなたのために…あなたのためだけにうたうから。だから…』

集『うー………わかった!たのしみにまってるからね!ぜったいだよ!やくそく!』

?『うん…やくそく』


集「…………………………………………………………………………………はぁぁぁぁ…」

その記憶が蘇って、思う。
何故こんな大事なことを忘れていた…っ!

集「いつから気付いてたの?」

いのり「教室で会って、すぐわかった。名前、聞いてなかったこと、ずっと後悔してたから…名前を知れて、嬉しかったよ?」

集「ほぼ最初から!?ならなんで…言ってくれてもよかったのに」

いのり「気付いてなかったの?」

集「う、うん…」

いのり「だって、集、妙に優しくしてくれたから…てっきり」

集「あ、なるほど…」

いのり「…あれ?気付いてなかったなら、何で集、優しかったの?」

集「…それは」

その質問に、集は返答に詰まる。
もし今までの集であれば、このまま押し黙ってしまうか、適当に誤魔化して有耶無耶にしていただろう。
だが、姉との決別は、確かに少年を成長させていた。


集「…いのりさんが、その…凄く、綺麗だったから」

いのり「………?………///」

その意味を理解するのにたっぷり30秒。そして理解した上で、更に沈黙が30秒。
いのりは自らの胸が高鳴るのを感じる。
頬には熱が宿り、集の顔を直視することが難しい。
いままで感じたことのないこの感覚に戸惑う。
けれど…いまなら、最高の歌を歌える。そんな気がしていた。

♪Departures ~あなたにおくるアイの歌~♪

もうあなたから愛されることも
必要とされることもない
そして私はこうして一人ぼっちで
あの時あなたはなんて言ったの?
屆かない言葉は宙を舞う
わかってるのに今日もしてしまう
叶わぬ願いごとを

離さないで
ぎゅっと手を握っていて
あなたと二人 続くと言って
繋いだその手は温かくて
優しかった


パチ、パチ、パチ…

拍手を送るのは、たった一人。
惜しみない大歓声もなければ、讃頌の嵐が吹き荒れるわけでもない。
淋しさすら感じられるほどの小さな拍手。
けれどそれは、紛れもなくいのりが求めていたものだった。

集「よかったよ、凄く。いのりさんの声、本当に綺麗だね」

いのり「…いのり」

集「え?」

いのり「いのり、で、いいよ?集」

集「…うん、いのり」




帰路の途中で、並んで歩く二人の人影に追いつかれる。
四つの影は一度バラバラになり、自然と、少年は少年に、少女は少女に惹かれ、もう一度人影は二人と二人になる。


「フラれてしまったよ」

少年の友人である彼は語る。
自らが想い人に拒絶されたという事実を。
さながら、失恋に慰めを求める、情けないただの男の子のように。

『あなたの気持ちは凄く嬉しいし、それに応えたいとも思う。
だけど、私は集と約束したの。
孤独に耐えられる立派なお姉ちゃんになるって。
一人じゃ何もできない私が、誰かと二人になるわけにはいかないの。
だから…

ごめんなさい。



「だとさ」

だが、その友の瞳に絶望も失望もなかった。
あるのは希望と、自らの進化を確信する強い意志と、それを絶対に成そうという決意。
いつのまにかずっと先を行かれていたことに、少年は自らの心に火が灯ったのを感じる。
けれどそれは決して不愉快な熱さではなく。
自らの決意もまた、より強固なものとする…そんな感情だった。



「私達より先に行ったはずなのに、何でまだこんなところに居たの?何かあった?」

集の姉である彼女は問う。

「…歌を、聞いてもらったの」

「歌?」

「約束、だったから」

「…ふーん?」

少年の姉である彼女には、詳しいことはわからない。
けれど、少年との出来事を語り頬を赤く染めるその少女を見て、少年の姉は、今までと違った感情を抱く自分に気付く。
自らを支配していたどす黒い感情は既になく、美しい水槽の中を覗いているときのような安らかな思いが胸を満たすのを、少年の姉は感じていた。

「今度、私にも聞かせてくれる?」

「…うん」




春夏「集!真名!一体どこに行ってたの!?」

綾瀬「がーい!もう晩御飯の準備できてますよー!」

ツグミ「まるであやねぇが準備したかのような言い様だね~…お皿運んだけなのに」

花音「なにも手伝ってないツグミちゃんが責められることじゃないでしょ」

茎道「だから言ったろう。心配する必要はないと」

嘘界「いやはや、そこは流石に父上殿と言ったところでしょうか」

そこには、姿を消した集らを心配する桜満春夏や、
砂浜から戻ってきていた集の友人。
いつのまにやらするりと混ざっていた嘘界をはじめとする天王洲学校の教師達。
その他多種多様なメンツが揃っていた。

集「あはは…随分心配かけちゃったみたいだね」

涯「さっさと戻るぞ」

いのり「うん」

真名「そうね」

で、

集「どうしてこうなるのおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?」

玄周・茎道・ローワン・アルゴ「」チーン

颯太「よーし!お兄さんユードピアかましちゃうぞー!」ウェーイ!
谷尋「ま、待て颯太!落ち着け!脱ぐのは流石にマズイ!」

梟「う、んぅ…えへへぇー…がいさんにあたまなでられるの…しゅきぃー…」
潤「やったぁー…てすとで100てんとったよー?ほめてよにいちゃぁん…」

集「だ、誰だよ一体こっそり僕らの飲み物にアルコール混ぜたのは…っ!」

ツグミ「てへぺろ♪」
研二「んじゃ、僕は逃げるから、あとよろぴくー」ピュー
ダリル「なんでだよぉー…なんで旅行きてくれなかったんだよぉ…パパァ…ひっく」

集「ど、どうしよう…なんとかしないと…ねぇ、涯、手伝って…」ドン!

涯「…」フラァ…
バタァン!!!
集「ガァァァイ!!!君アルコール弱すぎだよ!」
涯「」チーン
集「だ、ダメだ…もう涯は使えない…そうだ、姉さん!」

真名「うへへーここか!?ここがええんか?ううん!?」
亞里沙「ン…や、ちょ、…だめぇ…!」
真名「よいではないかよいではないか!!!」

集「…///」(無言で目をそらす)
集「あと、頼りになるのはなるのは…そうだ残っている大人に!」

春夏「ふふふ、あなた中々ね。私と飲み比べてここまで持ったのはあなたが初めてよ」ゴクゴク
ダン「ふ、ふふふ、あなたも、女性にしては…ウェップ」チビチビ
大雲「」チーン(※すでに酔いつぶされている)
大雲妻「まったくもう…お酒弱いのに見栄張るから…」パタパタ
大雲娘「ままー、おみずとタオルもってきたー!」

集「こうなったら、僕と谷尋だけで…」

谷尋「ちょ、待て、委員長。少し様子がおかしいぞ?」
花音「…」ツーン
谷尋「委員長?」
花音「やっ」
谷尋「え?」
花音「名前で呼んでくれなきゃやだ!やだやだやぁーだー!」
谷尋「えーっと、草間サン?」
花音「むーっ」プクー
谷尋「…花音」
花音「…えへへー。やーひろ♪」
谷尋「な、なんだ?」
花音「よんだだけー♪」スリスリ

集「あぁ、ダメだ、谷尋も酔っ払いにつかまった…」
いのり「…」チョイチョイ
集「あ、いのりさん?うん、もう駄目みたいだよ。どうにもならない。巻き込まれなうちに避難を」


いのり「ちゅぅ」


集「………………・・・ ・・・ ・・ …・・・・・・・・・・・…・・…・・・ ・・…・ぷはぁ?」

いのり「しゅう、すき」
パタッ
集「…///」ポカーン


嘘界「…これはこれは」●REC
四分儀「あまり、いい趣味とは言えませんね」
嘘界「ご安心を。自覚はあります」




集「…ふぅ」

祭「す、凄かったね…あはは」

集「うん…えと、片付け手伝ってもらえるかな?」

祭「うん、もちろん!」

集「ありがとう、祭」

祭「えへへ…///」

綾瀬「…私、もしかしてお邪魔だったかしら」

祭「ひゃぁ!?」

集「あ、綾瀬さんも無事だったんだ」

綾瀬「無事って…大げさな言い草…」

宴会跡--死屍累々-- <チーン

綾瀬「…でも、ないわね」

集「さて、このままってわけにもいかないし…できるだけのことはしようか」

祭「うん、そうだね」


祭(あれは…)

いのり『しゅう、すき』

祭「…ねぇ、集」

集「うん?」

祭「さっき、いのりさんに…き…ス、されてたけど」
集「」ビクッ

祭「…」
集「…」

祭「その…付き合ってる、の?」

集「そ、そういうわけじゃ…ないけど…」

祭「じゃぁ、なんで…?」

集「さ、さぁ?それは僕にもわからないけど…いのりも、酔っ払ってたみたいだし…キス魔っていうやつなんじゃないかな?」

祭「あはは…颯太君が聞いたら喜びそうな話だね」

集「うわぁ…容易に想像できる」

祭「…呼び捨て」

集「え?」

祭「楪さんのこと、呼び捨てにしてる」

集「あ…」

祭「…やっぱり、何かあったんだ」

集「んーっと、まぁ、ね…」

祭「…ごめん、ちょっと夜風にあたってくる」

集「は、祭?」

祭「…」タタタ…



綾瀬「…何やらかしたの?」

集「い、いや…わからないけど」

綾瀬「はぁ…ま、丁度いいわ。私もあなたに話があったし」

集「話?」

綾瀬「涯の事」

集「涯の?」

綾瀬「そう、それよ」

集「…どれ?」

綾瀬「なんで、涯の事いきなり呼び捨てにするようになったの?」

集(…さっきも似たような質問されたな)

綾瀬「どうなのよ」

集「えと…僕は今の今まで忘れてたんだけど…昔、涯に会ったことがあったんだ。
そのとき、僕たちは親友同士でさ。だから…かな?」

綾瀬「へー」

集「…凄く興味なさげだね」

綾瀬「いやまぁ、ぶっちゃけあんたのことはどうでもいいのよ」

集「ぶっちゃけるねー…」

綾瀬「私が気になるのは…その…あ、あんたのお姉さんってさ…涯と、付き合って、るの?」

集「…それが気になるの?なんで?」

綾瀬「ななななななんでもいいでしょ!?いいからさっさと答えなさい殴るわよ!?」

集「それって脅迫…ご、ごめん言う!言うからその握った拳をこっちに向けないで!?」

集「…付き合ってるわけじゃないよ」

綾瀬「…ほっ」




集「まだ」

綾瀬「…え?」

集「ほら、僕と涯は昔は親友だったって言ったでしょ?そのときに、涯は姉さんとも会ってて…
その時から、姉さんに憧れてて…あ、やばっ、考えてみたらこれ、あんまり言いふらしていいようなことじゃ…」

綾瀬「もういい」

集「…綾瀬さん?」

綾瀬「…私も、夜風にあたってくるわ」


集「…また、何か機嫌を損ねるようなことっちゃったかな…?って」


集「もしかして僕、この後片づけ一人でやんなきゃいけない…?うへぇ…」

ユウ「

といったところで、今回はここまで。

久々に地の分なし台詞のみの文体で書きましたが…この方がやはり楽ではありますね。

情景描写は皆様の脳内保管に頼ってしまう形になりますが…。

なにはともあれ。

今回は酒盛りではっちゃけるメンバーを描くことができてとても楽しかったです。

やはり、シリアス(笑)よりも、こういったものの方が筆の進みは軽快ですね。…まぁ、多少所でなくカオスになってしまった感は否めませんが。

そんなこんなで次回予告をば。

10年前の記憶を取り戻し、恙神涯、楪いのり、桜満真名、桜満集の4名は急速に仲を深めていく。
しかし、その様子を不安気に見守る者たちが…。
そんな中、桜満春夏より、今宵、夏祭りがあるとのお達しが。
その心に熱き炎をともした恋する乙女たちの戦いが…今、始まる。


春夏「はーい、皆ちょっと聞いてくれる?」

集「どうしたの?」

春夏「うん、実は今晩お祭りがあるらしいのよ。だから、昼間の内に色々準備とかしておいた方じゃないかと思って」

颯太「なんだって!!!」ガタッ

アルゴ「落ち着け」

春夏「花火なんかもあるらしいから、各々、準備をしておくように!」



花音「…で、どうするの?」

祭「え?何が?」

花音「決まってるでしょ!桜満君よ桜満君!」

祭「集…の…」シュン

花音「…やっぱり何かあったの?」

祭「…実は、ね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

花音「あの桜満君がそんなことをねぇ…で、どうするの?」

祭「…なんだか、二人ともいい雰囲気だし…私なんかが割り込んだりしたら…迷惑なんじゃって…思っちゃって」

花音「だから、諦めるの?」

祭「…っ」

花音「諦めたくないんでしょ?」

祭「でも」
花音「じゃぁ、決まりね。祭、今晩のお祭り、桜満君を誘って二人で行きなさい」

祭「えぇっ!?」

花音「安心して。楪さんは綾瀬さんと一緒に誘っておくから」

祭「むむむ無理だよぉ!だ、だってそんなの…」

花音「安心しなさい!あの桜満君の事だもの!それくらいのことじゃぁずぇったいに祭の気持ちに感づいたりしないから!」

祭「…えと、それはそれで、悲しい…かなぁ…でも、いいの?」

花音「いいのいいの!まっかせなさい!」

祭「本当に?本当に谷尋君とお祭り行かなくていいの?」

花音「」ピキッ

花音「え、えと、あの…うん。今は、ね。…もう少しだけ日を置かせてください。」



涯「何?校条に祭りに誘われた?」

集「うん、それで、皆も一緒にどうかなって」

涯・真名「…はぁー」

集「…え?何?」

真名「ねぇ集?誘ってくれた時の校條さんの様子でおかしいところはなかった?」

集「おかしいところ?」

集(暑さのせいなのか妙に顔が赤かった気がするし、どうにも噛み噛みで要件を理解するまで3回も聞き直してしまったりしたけれど、まぁ祭と喋るときはよくあることだし…)

集「別になかったけど」

涯・真名「…はぁぁぁあああ」

集「…言いたいことがあるならはっきり言ってよ」

涯「…いや、これはお前が自分で気づくべきことだろう。俺たちからは何も言えん」

集「…?…???」

いのり「私は…いけない」

集「え、あ、そう?」

いのり「うん。さっき、花音から誘われた」

集「そっか、なら仕方ない…ん?なら結局一緒に行く事になるんじゃない?」

いのり「…そう?」

涯・真名「…(もう放っておこう)」

真名「まぁ、いいんじゃない?行ってあげたら?じゃぁ私は亞理沙を誘いに行ってくるわ」

涯「…なら俺はアルゴか研二辺りを誘ってみるとしよう」



涯(…正直真名を誘いたかった)ショボーン


―お祭り会場―


集「あれ?祭一人?」

祭「え、うん…言ってなかったっけ?」

集「うん…」

祭「ご、ごめん…」

集「あ、いや別にいいんだよ!ただ、委員長や篠宮さんも一緒だろうなーと思ってたから面喰っちゃっただけで!」アタフタ

祭「そっか…花音ちゃんは、楪さんと話したいことがあるって言ってたの。綾瀬さんはあの恙神先輩と一緒に来るらしくて」

集「あぁ、涯は篠宮さんと…」

集(委員長はいのりと話したい×あまり他人には聞かれたくない+篠宮さんは涯と居る=祭は一人→とりあえず僕を誘った)

集「なるほど!そういうことね!」

祭(今すごい勘違いをされた気がする…)

集「で、どうしよっか?どこか見たい店とか…」

祭「そういうのはないけど…」

集「それじゃぁ、適当にふらふらしよっか」

祭「う、うん…///」

祭(う、うわぁ…これってやっぱりデートだよね…うぅ、緊張してきたぁ…)

集(祭りの屋台って綺麗だなー)ポケー


※そのころあいつは…

ダリル「…なんだよこれ」

ローワン「これかい?水飴といって昔からあるお菓子だよ」

ダリル「ふーん…うわ、なんだこれ!?なんか柔らかく…お、落ちる落ちる!!」

ローワン「おわ!?だ、ダリル!こう、こうやって二つの割り箸を合わせてこう…」ネリネリネリネリ

ダリル「こ、こう?」ネリネリネリネリ

ローワン「そうそう!上手いじゃないか」

ダリル「そ、そうか…?」テレテレ

ダリル「…で、これどうするんだよ。こうやって遊ぶおもちゃなのか?」

ローワン「いや、だから言ったろ?お菓子だって。こうやって…あむ」

ダリル「!?」ギョッ

ローワン「アムアム…うん、美味しい!」

ダリル「うぇぇー…これ、食べるのか?」

ローワン「まぁまぁ、騙されたと思って」

ダリル「………っ」パクッ

ダリル「!」ニヘラ

ローワン「ど、どう?」

ダリル「あっ、ふん!まぁ、安モノにしちゃぁマシなほうだね!…レロレロ」ニヘラ

ローワン(…よかった。気に入ってくれたみたいだ)

クロ「…ニー!」

ダリル「なんだよ、食べたいのか」

クロ「…」コクコク

ダリル「…むぅ」

クロ「…ニー」ジーッ

ダリル「しょ、しょうがないなぁ!ちょっとだけだぞ!」スッ<割り箸の片方にちょっとだけつけて差し出す

クロ「ニャ~ン…♪」ペロペロ

ローワン(…平和だなー)


綾瀬(嵌められたっ!!!)

涯「やはり人の多いところは辛いか?綾瀬」

綾瀬「はいっ!?あ、いえ!そんなことは…」

涯「無理はしなくていいからな」

綾瀬(こんなことになったのも全部ツグミのせいよ…っ!)


―今から少し前―

ツグミ『やほー!ちょっとあやねぇ借りていい?』

花音『え?構わないけど…』

ツグミ『ありがと!じゃ、あやねぇこっち来てー』

綾瀬『…?わかった。じゃぁ祭、頑張りなさいよ!』

祭『が、頑張りますぅ…』

ツグミ『んふふー…他人のこと心配してる場合かな?』

綾瀬『…?』

―――――

綾瀬(しかも二人っきりって…ツグミもどっか行っちゃうし、アルゴは?四分儀は?研二は?なんで私以外誰もいないの!?)



涯「…」

カチャッ

『From:ツグミ

あやねぇのこと、お願いね



涯「ふぅ…」

涯(俺自身が蒔いた種…だからこそ、俺が摘み取らなければならない、か)

涯「考えてみれば、こうして二人っきりになるということはなかったな」

綾瀬「えっ!?あ、はい、そうですね!」

涯「…もう少し肩の力を抜いたらどうだ?」

綾瀬「えっと…ど、努力します」

涯「…ふふっ。さぁ、せっかくの祭りだ。少し見て回ろうか」

綾瀬「…はい!」


※そのころあいつは…

谷尋「本当にすごい人だかりだな…はぐれるなよ、二人とも」

潤「うん!」
梟「はい!」

谷尋「さて、来ては見たもののどうするか…二人は、何かお目当ての屋台とかはあるのか?」

潤「えと…その…」

梟「……あの」

谷尋「ん?」

潤・梟「わ、綿あめ…」オズオズ

谷尋「…」

谷尋(かわいい)



<あ

谷尋「うん?」

いのり「…偶然」

花音「や、谷尋…君…」

谷尋「かの…委員長」

花音(…安心したような、がっかりしたような…)

潤・梟「…」

梟「いのりさん!一緒に綿あめ買いに行きませんか?」

いのり「行く」

梟「じゃぁ早速行きましょう!」

潤「というわけで、僕達綿あめ買いに行ってくるね!」

谷尋「!?い、いや、二人だけだと危ないし、俺も…」

潤「大丈夫だよ!そんなに心配しないで!」

梟「そうですよ!いのりさんもいますし!」

いのり「…」コクッ

潤・梟「じゃ!」

タッタッタッタ…

谷尋・花音「…………………………」



真名「あ、リンゴ飴よリンゴ飴!食べない?」

亞里沙「…」

真名「亞里沙?」

亞里沙「え?」

真名「…ずっと上の空ね、ここ最近」

亞里沙「ご、ごめんなさい」

真名「別に責めてるわけじゃないわよ。

…恙神涯」

亞里沙「っ!」ビクッ

真名「…やっぱり、あの子なのね」

亞里沙「…なんで、そう思うの?」

真名「無意識だった?あなた、いつからかあの子を『恙神さん』じゃなくて『涯』って呼んでたわよ」

亞里沙「…我ながら馬鹿みたいにわかりやすかったわね」

真名「えぇそうね…私に相談はしてくれないの?」

亞里沙「…ごめんなさい」

真名「いやだから責めてるわけじゃ…うーん…とりあえずはい!」

亞里沙「え?」

真名「リンゴ飴。おいしいよ?」

亞里沙「あ…いつの間に」

真名「話せないって言うなら仕方がないわ。話してくれるまでずっと待つだけのことよ。でも忘れないでよね」


真名「私、あなたのこと友達だと思ってるのよ?」


亞里沙「…ふふっ、私もよ」

真名「よーし笑ったわね!そのテンションのまま行きましょう!今日は表情筋ひきつるほど楽しむわよ!」

亞里沙「えぇ、付き合いましょう」


亞里沙「…」


亞里沙(…私は、どうすればいいの?)


※そのころあいつは

ぱきっ

颯太「あああああああああ!!!」

カタヌキ屋店主「残念だったな、兄ちゃん」

颯太「ちくしょー…あともう少しで300円だったのに…マズイ」ポリポリ

店主「ガッハッハ!そう簡単にできてもらっちゃぁこっちも商売あがったりなんでね」

颯太「ちぇー…ん?」

アルゴ「………………………」カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

颯太「アル…ゴ…?」

アルゴ「ふっ」

店主「ま、まさか…」

アルゴ「どうだいオヤジ。500円、くりぬいてやったぜ」スッ

店主「な、なに!?」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

颯太「すげぇ!すげぇよアルゴ!」

アルゴ「はっはっは!そう褒めんなよ!照れるぜ!」

店主「カァーッ!兄ちゃんやるねぇ!ほれ、500円」

アルゴ「あいよ、ごっそさん!」



涯「…楽しかったか?」

綾瀬「はい!とても!」

涯「それはよかった」

綾瀬「…」

涯「…」

綾瀬「…でも、いいんですか?私なんかと一緒に居て」

涯「何?」

綾瀬「涯の目的は、あの集のお姉さんなんでしょう?」

涯「…既に知っていたか。誰から…いや、言わなくていい。大体予想はつく」

綾瀬「本当の事…なんですね」

涯「…そうだ」

綾瀬「っ!!!」ダッ!

涯「綾瀬っ!」

………

涯(駆け寄って…どうするつもりだ?)


涯「…まったく。俺という奴は…」ギリッ

ガサガサ

涯「やはり見ていたのか、ツグミ」

ツグミ「おりょ、気付かれてたか。てへへ…ま、心配だったし」

涯「…すまない」

ツグミ「涯が謝ることじゃないでしょ…きちんと振ってくれただけまだマシよ」

涯「こんなことを言える立場じゃないのは重々承知だが…綾瀬のことを頼む」

ツグミ「アイ。こっから先は私に任せなさいな」


集「ん、そろそろ花火の時間だね」

祭「あ…本当だ、もうこんな時間」

祭(うぅ~…本当にお祭り回るだけで終わっちゃう!いや、これはこれで凄く楽しかったけど…ど、どうしよう…何か、何かないかな…?)

集「あ、そうだ」

祭「?」

集「祭、ちょっと歩くけど、いいかな?行きたいところがあるんだ」

祭「…うん、いいけど…?」


集「よいしょ…っと」

祭「ここは…?なんだか、お祭り会場からは結構離れちゃったけど」

集「変わらずあってよかったよ。この空地、昔この島を探検した時に見つけてね。ここからならよく見えるし、人も居ないだろうって思って」

祭「見えるって、もしかして…」

集「あ、来た!」

ヒュー… ド ー ー ー ン ! 

祭「わぁ…!」

集「た~まや~!」

祭「あ…か、か~ぎや~!」

集「…あはは」

祭「…ふふふ」

集「…綺麗だね」

祭「…う、うん」

集「~♪」

祭「スゥー…ハァー…」

祭(言うの、言うのよ校条祭!今言わなきゃ…今…!)

祭「集っ!!!」

集「え!?何!?」ビクッ

祭「あ、あのね、集。私、集に言わなきゃならないことがあるの…」

集「…え?」

祭「わ、私…私は、集の事が…っ」

集「…は、れ…?」

ヒュー……


祭「―――!」
ド ― ― ― ― ― ン ! ! ! ! ! 


集「ごめん祭。花火に重なってよく聞こえなかったからもう一回言ってくれる?」

祭「…」


祭「…」ポカーン


祭「…」グッ

祭「…」

 バ チ ☆ コ ー ン 


※その頃あいつは

ド ー ー ー ン !

春夏「…綺麗ね」

玄周「そうだね~」

春夏「もう、ここは君の方が綺麗だよっていう場面じゃない?」

玄周「え、あ、ごめん…」

春夏「ふふっ。良いわよ別に…」ススッ

ピトッ

玄周「…」

春夏「…」

玄周「また、来年も来れるかな?」

春夏「来れるわよ、きっと。…いえ、絶対に来ましょう…ねぇ、玄周さん」ススッ

玄周「…あ、あの、近いよ?」

春夏「…ねぇ、玄周さん…」

玄周「…春、夏」

春夏「…」ススッ

玄周「…」ススッ


茎道「うぉっほん!!!」


玄周・春夏「うっひゃぁ!?」ビクン!

茎道「…」ジトー

春夏「に、兄さん!?なんでそんなとこにいるのよ!覗き!?趣味悪いわよ!」

茎道「そうは言うがな。花火を見ようと縁側に来たら友人と妹の情事を見せられる私の立場にもなってみろ。ハッキリ言って今とてつもなく微妙な心境だぞ」

玄周「あ、あはは…」

春夏「むぅー…」

茎道「ともかく、ほどほどにしておけ。あの子らもいつ帰ってくるかわからないんだからな」スタスタスタ…

玄周「あれ、どこかに行くのかい?」

茎道「少し、外を歩いてくる」



集「…はぁ」

集(まだ頬が痛い…あの祭にぶたれるなんて…よっぽど大事なこと聞き逃したんだな。
でも一体何なんだろう?)

祭『わ、私…私は、集の事が…っ』

集(あの続きは…もしかしたら)

集「…なわけないよねー。颯太辺りに話したら『自意識過剰だー』って馬鹿にされちゃいそうだ。あはは…はぁ」

集(にしてもどうしよう。凄く帰り辛い。なんだかんだで…)

集「こんなところまで来ちゃったな」

―――思い出の壊れた橋―――

集「…あれ?」


集「篠宮さん?」

綾瀬「っ!!」グシグシ

集「あの、なんで、泣いて」
綾瀬「うるさい!!!」

集「っ…ご、ごめん」

綾瀬「…」

集「…あの、ここ危ないよ?もし落ちたりしたら」

綾瀬「放っておいて」

集「で、でも…」

綾瀬「放っておいてって言ってるでしょ!!!」バッ



がたん



綾瀬「…え?」

綾瀬(落ち…死…でも)

涯『』

綾瀬「それでも、いいかな」





集「篠宮さん!!!」

ガッ

綾瀬「…あ」

集「っ…うぅ…」

綾瀬「あ、あんた死にたいの!?そんなことしたらあんたまで…」

集「だか、らって…放っておけ、ないでしょ…くっ…」

綾瀬「いいから放しなさい!このままじゃ二人で落ちるだけよ!」

集「だめ…だよ」

綾瀬「なんで…そこまで…」

集「篠宮さんが死んだら…いのりが、祭が、委員長が…皆が悲しむ」

綾瀬「…っ!!!」

集「そんなの、…は…絶対、駄目なんだ…!」

綾瀬「…」ガッ

集「し、篠宮さん?」




綾瀬「ふんぬぉるぁぁぁあああああ!!!」





集「ハァ・・・ハァ・・・」

綾瀬「ハァ・・・ハァ・・・」

集「わ、腕力だけで…登っちゃうなんて…凄いね」

綾瀬「…鍛えてる、から、ね」

集「…で、でも、さっきの、掛け声は…あの、女の子として…どうなの?」

綾瀬「う、うるさい!いいでしょおかげでお互い死なずに済んだんだから!」


綾瀬「…目が覚めたわ」

集「え?」

綾瀬「そうよね。…失恋一つでこんなに思いつめることなんてなかったのかも。何も、涯だけが私の全てじゃないものね…うん」

綾瀬「立ち直れたのは…まぁ、あんたのおかげだわ」

綾瀬「…だ、だから…その…」


綾瀬「…リ…ガと」

集「え?何?」

綾瀬「…うっさい馬鹿!」

集「いた、痛い!なんでぶつのさ!?」

綾瀬「うるさいうるさいうるさい!もう黙れ!私は帰…」

集「…あの、篠宮さん?」

綾瀬「っ………車椅子は谷底に落ちたんだった」

集「…」

綾瀬「…」

集「…あの、手、貸します?」

綾瀬「なんで敬語なのよ…ま、貸してもらうけど」

集「えっと…」

ガサゴソガサゴソ…モニュン

集「…///」

綾瀬「…」ツネリ

集「痛い痛い痛いごめんなさい!」

綾瀬「…非常事態だからこれくらいで許してあげるわ」

集「…手を貸してるのは僕のほうなのに」

綾瀬「ふんっ!!」ドゴォ

集「おぐっ」

綾瀬「いいから!きりきり歩く!」

集「…はい、篠宮さん」

綾瀬「…綾瀬でいいわよ」

集「え?」

綾瀬「…一応、命の恩人だし。そもそもあまり、さん付けで苗字ってよそよそしくてあんまり好きじゃないのよ」

集「えっと…わかったよ、綾瀬」

綾瀬「ん」



ツグミ「うー…あやねぇどこ行ったんだろ…ま、まさか、勢い余って飛び降り自殺を試みたり…!?」

綾瀬「なわけあるかっつの」ポコ

ツグミ「あ!あやねぇ!今までどこ行ってたの!?すっごい心配したんだ、か…ら」

集「…ど、どうも」

ツグミ「………あやねぇ、一体何がどうなってんの?」

綾瀬「あーそれは…」

祭「…」ジトー

集「あ、祭…」

祭「ふん」プイ

集「!?」ガーン

綾瀬「あーとりあえず肩貸して頂戴。流石に家の中とはいえ這って回るわけにはいかないし」


祭「それであの…どういうことなの?」

綾瀬「うーんとまぁ、色々あったのよ」

ツグミ「おーう、見事に説明する気皆無だねー…ま、あやねぇがそれでいいならいいけど」

綾瀬「それより祭よ!あんたの方はどうなったの?ま、集の顔に張り付いてた紅葉マーク見れば大体予想がつくけど」

祭「聞いてよ!それがね!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ツグミ「き、聞き直したぁ!?!?その状況で!?」

祭「そうなの!酷いと思わない!?」

綾瀬「予想はしてたけど、その遥か上を行ってくれたわね…」

花音「あー…まぁ、桜満君ならそうなるわよね~…」

ツグミ「これでも予想の範囲内だというのか…」

祭「ほんっとに信じられない!もうっ…」

綾瀬「あー…まぁ、怒る気持ちもわからなくはないけど…見限るにはまだ早いんじゃないの?」

祭「…!」ピクッ

ツグミ「なぁにぃ?あやねぇあいつの肩持つの?何?なんかあったの?」

綾瀬「あ、いや、その…」

花音「そういえば一緒に帰ってきたらしいわね。何があったの?」

綾瀬「…そ、その…も、黙秘権を行使するわ!」

ツグミ「サイバンチョ、ご判断を」

花音「却下!」

綾瀬「え、ちょ」

祭「綾瀬さん…話してくれますよね?」ユラー

綾瀬「アッ、ハイ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ツグミ「…あの少年、やりおる」

花音「…で、どうなんですか?綾瀬さん」

綾瀬「…な、何が?」

花音「命を救ってくれて心も救ってくれた桜満君を、どう思いましたか?!」

綾瀬「ど、どうって…」

花音「ま、まさか…祭と綾瀬さんの二人が好敵手と書いて友と呼ぶ関係に!?」

綾瀬「な、ないないない!絶対ないから!」

花音「負けるわけにはいかないわよ祭!私がついてるからね!」

ツグミ「ネイ!こっちこそ!私とあやねぇのコンビに勝てる者はいないわよ!」

祭「…」プシュー<許容限界を超えた

綾瀬「…誰か助けて」



集「はぁ…」

涯「なんだ、浮かない顔だな」

集「…涯」

涯「とりあえず」

ゴンッ!

集「…痛い。今日はいろんな人からぶたれるなぁ…」

涯「お前、口が軽すぎるぞ。綾瀬に俺の目的を話しただろう」

集「…あ」

涯「まぁ、いつかは話さなければならない事だったが…」

集「ご、ごめん…」

涯「それはそれとして、だ。お前の方はどうだったんだ?ツグミから聞く限り、一波乱二波乱あったようだが…」

集「うん、まぁ…」

涯「…色々、大変だったみたいだな」

集「…」



涯「…もうすぐ、休みも終わりだな」

集「…うん」

ユウ「こんなところで、今回はここまで

今回はお祭りを舞台とした夏休みの内の一幕ですね。

八月が終わっても尚夏休みとは…流石に引き延ばし過ぎな気がしますが。

ところでこのお祭りですが、最初は「マツリ」と打っていたりしたのですが、

それですと『祭』となり何やら紛らわしい感じに…。

そんなところで次回予告…おや、誰か来たようですね。



「…」

「どしたの?」

「いや…なんでもない」

「なーにー?転校するのに緊張してるの?君らしくもない」

「何でもないと言っているだろう…」

「あぁ、できれば君と一緒のクラスになりたいものだけどね」

「るっさいわよ。つかいつのまに私たちの愛の巣に潜り込んでるのよ」

「何が愛の巣だ」

「彼の言うとおりだよ。ここは僕と彼の愛の巣だ」

「だから愛の巣じゃない」

「…いい加減どっちが上かをわからせてあげましょうか?」

「…いいだろう。買った方がここに居る権利を得る、ということでいいね」

「…いいわけあるか!両方出ていけ!」


「んむ…ちゅ…れろ…ぷはぁ」

「ねぇねぇ、そんなにおいしいの?それ」

「えぇ、とっても」

「僕も食べていい?」

「いいわよ」

「やったぁ♪」

「…どう?」

「うん!とってもおいしいね!この飴!」

「でしょー?うふふ…ちゅぱ……………ガリッ」


集「おはよー」

颯太「ぉー…」グテー

集「…随分だらけてるね」

颯太「だって夏休み明け初日だぜー?テンションあがるわけねぇだろ…」

谷尋「やれやれ…」

集「あぁ谷尋、おはよう」

谷尋「おう、おはよう集」

アルゴ「ほらそんな机に張り付いてんなよ颯太。もうすぐ始業ベル鳴るぞ?」

颯太「んー…」

アルゴ「…ダメだこりゃ」



祭「…あ」
集「…あ」

集「え、えと…おはよう、祭」

祭「…」メソラシ

集「!」ガビーン

颯太「…なんだ集、まだ祭とちゃんと話してないのか?」

集「う、うん…」

アルゴ「…ま、早めに仲直りしとけよ…あんな感じに」

集「え?」


花音「おはよう、谷尋」

谷尋「あぁ、おはよう花音」

花音「…えへへ」ニカッ

谷尋「…ふふっ」ニコッ


アルゴ「…な?いや、流石にあれを目指すのは色々無理があるだろうが」

集「僕達が目を離した隙に一体何があったんだろうね…?」

颯太「ホントにな」

綾瀬「女の子の事情に首ツッコむんじゃないわよ?」

集「綾瀬、おはよう。まぁ、下手に聞くつもりはないけど…」

綾瀬「おはよう。まぁそれはそれとして、祭も今では結構落ち着いてるから、話せばちゃんと元に戻れるはずよ」

集「そ、そう…?」

綾瀬「そ。ま、今日の放課後、部室で少し話しなさい。私と花音も手伝うから」

集「…ありがと、綾瀬」ニコッ



綾瀬「っ…うるさい!///」ドゴッ
集「なんで!?」ゴハァ!


いのり「…」

アルゴ「ん?よぉいのり。どした?」

いのり「…出番、なかった」

アルゴ「…あ?」



集「えーと、涯が言ってたのは…これかな?」

『初心者のための格闘術!応用編』

集「…初心者、ねぇ…いや、別に上級者気取るつもりじゃないけど」


――夏休みのある日――

涯『何?体を鍛えたい?』

涯『ふむ…確かに苦手意識を克服するのは精神的な面から見ても効果的だが…まぁ、いいだろう』

涯『ならば、とりあえず体の基礎を作るところからだな。明日から俺の筋力トレーニングに付き合ってみるか?頃合いを見てアルゴと組み手をやってみるのもいいかもしれん』

涯『あぁそうだ、夏休みが明けたら、図書室に行ってみるといい。体術の指南書もいくつか置いてあったはずだ』

涯『お前のレベルならば…』


――――――――――

集「…へぇー、こんな感じなのか…あ、これ涯が見せてくれたあれかな?ふーん…一通り読んだらアルゴに頼んでまた組手でも…」パラパラ


<「す、すいません!」


集「っ!…なんだ?」



数藤「あのさぁ…仕事ほっぽって本を読みふけるってどうなのよ?図書委員でしょ?ちゃーんとしてくれないとさぁ…」

「す、すいません…」

数藤「すいません、ねぇ…?それだけ?謝ってそれで終わり?ホントに反省してるのかなぁ?」

「あ、えと…うぅ」


集「何をしてるんですか?」

数藤「あぁん?」




集「…ここは図書室ですよ?そんな風に騒ぐのは…」

難波「…そういうつもりじゃないさ。ただ本を借りようとしたら、この子が本を読みふけっていて気付いてくれなくてね。その勤務態度を咎めていただけさ」

集「だからって、そんな絡むようにしなくたって…」

数藤「何?文句でもあんの?」

集「っ…」

難波「ん?君は…あぁ、あの真名さんの弟君か」

集「!」

数藤「え、あの?…にしてはパッとしねーなぁ」

難波「ふっ、仕方ないだろうさ。姉があれだからね。弟君としては、さぞ肩身の狭い思いをしただろう」

集「…は?」ピクッ

難波「どうなんだい?姉がああ優秀だと、君も結構苦労しているんじゃないかな?」

集「…知った口を聞かないでください」

難波「…何?」


集「あなたなんかが…僕のことを…姉さんのことを語るな!」


難波「っ」イラッ

難波「…口のきき方がなっていないなぁ!」スッ



ガッ

――――――――――
涯『ふん、この程度でもうギブアップか?』

涯『まったく、根性が足りん』

涯『そら走れ走れ!置いていくぞ!』

涯『もう終わりか?俺はもう後10セットはいけるぞ』

涯『体で覚えろ。何よりもそれが一番手っ取り早い』

涯『俺が今から全力でお前をねじ伏せる。そうすれば自然と覚えるだろう』

涯『なんだその顔は。怖いのか?』
――――――――――

集(僕だって…やればできるんだ!)

難波「ほぁ?」

ドゴシャァ!

難波「がっ…はぁ!?」


数藤「て、てめ!」バッ

集「っ!」サッ

――――――――――
アルゴ『オラどうしたァ!!!』クワッ!

アルゴ『腰が引けてんぞォ!!!』クワッ!

アルゴ『やる気あんのかァ!!!』クワッ!

アルゴ『まだ立てんだろほらもっかい来い!!!』クワッ!

アルゴ『軽い軽いなんだそれは俺の腸ぶちまけるつもりで撃ってみろォ!!!』クワッ!
――――――――――

集「っ…!(アルゴに比べたらこの程度!)」

ドゴォ!
メリメリ…!

数藤「あっ…がっ…」ドサッ


難波「く、くそ!覚えてろ!」

数藤「これくらいでいい気になるんじゃねーぞ!」

ピュー…

集(…アルゴや涯に比べたら話にならなかったな…いや、あの二人が別次元なだけか)


集「ってやば、勢いに任せてあんなことしちゃったけど…どうしよ、暴力沙汰とかで問題になったら…」

「あ、あの…」

集「あ、はい?」

「あ、ありがとうございました」ペコリ

集「え?」

「た、助けていただいて…」

集「あ、あぁいや、あれは、僕が我慢できなくてついやっちゃっただけだから…」

「それでも、あの…おかげで、無事に済みましたし…」

集「…まぁ、僕が無事に済むかどうかは微妙なところだけど」

「あぅ…ご、ごめんなさい」

集「え?あ、いや!そういう意味で言ったんじゃないんだ!気にしないで、ホント」

「で、でも…」

集「あ、えと、とりあえず、これの貸し出しお願いしていいかな?」

「あ…はい」


「はい、これで大丈夫です。返却期限は2週間ですので…」

集「ありがとう、それじゃ!」

「あ…」


「桜満集…さん」



祭「うぅー…」

花音「ほーら、いつまでもこのままじゃダメでしょ?」

綾瀬「そうよ。集の方だって、祭とは仲直りしたいって思ってるみたいだし…」

祭「で、でもぉー…」

綾瀬「だーもう!女は度胸って言うでしょ!さっさと行きなさい!」

花音「そうそう。私たちも一緒に居るから、ね?」

祭「…わ、わか」
「あの!!!」

祭「ひゃぁ!?」
「ひぃ!?」

花音「あ、えと…」

「あの、ここって、現代映像研究会の部室でいいんでしょうか…?」

ガチャ

集「誰か来た?」カタカタ…

谷尋「随分遅かったな」

花音「約一名、気まずいって言って来るのを躊躇う子がいてね」

祭「ご、ごめんなさい…」

綾瀬「アルゴと…あと颯太も居ないわね」



「…」

潤「…あれ?その人は」

「あ、あの…」

集「ん、その声…」クルリ

「こ、こんにちは…」

集「あぁ、昼休みの」

「どうも…」

集「こんにちは」ニコッ

「…///」カァ

祭・綾瀬「!」ピュキーン

花音「…なんと」

いのり「?」



集「どうしてここに?」

「じ、実は、その…入会希望で」

集「へぇ!そうなんだ!でもどうしてこんな時期に?」

「あ、えと、前から興味はあったんですけど…あの、そう!決心がつかなかったんです!はい!」

集「なるほどねー」ポケー

潤『ねぇ兄さん、あの人もしかして…』ヒソヒソ

谷尋『もしかする…だろうな』

潤『集さん、気付いてるかな?』

谷尋『…ないだろ』

潤『だよねぇ…』

集「委員長!確か、前に貰った入部希望の紙の予備あったよね?どこにある?」

花音「それなら、今桜満君が座ってる机の一番上の引きだしよ」

集「ありがと」

集<エート…ガサゴソ


花音「で、お昼休みのってどういうこと?」ズズイッ

「え?」

祭・綾瀬「…」ソワソワ

花音「あんたたちもそんな風にそわそわするくらいならこっち来なさい」

祭「い、いやでも…」
綾瀬「は?べ、別に気になんてならないし。無問題だし」

花音「あっそ。それで、昼休み何があったの?そういえば今日は図書室に行くとかで桜満君いなかったけど…」

「えと…」

集「お待たせ。はいこれ入会希望書。あと、シャーペン」

「あ、ありがとうございます…」サラサラ


花音「むぅ…で、桜満君、こちらの彼女とはどういうお知り合い?」

集「え?知り合いってほどじゃないけど…昼休みに本を借りに行って、その時当番だった図書委員で…」

花音「…それだけ?」

集「そ、それだけ」メソラシ

花音「…へぇー…へぇー、へぇー…?」

集「べ、ベツニナニモナカッタヨー?」

花音「…ふーーーん?」

集(委員長に暴力沙汰の当事者と書ばれたら絶対ただじゃすまない…ここは白を切るしか…っ!)

「あの、集さんに、助けてもらったんです…」

祭「…」ピクッ


「私、図書委員の当番だったんですけど…本を読んでて、本を借りに来た人に気付かなくて…」

花音「ふんふん」

「それで、その人が絡んできて…悪いのは私ですからもちろん謝ったんですけど、でも、許してもらえなくて…」

綾瀬「………」

「そこに、集さんが現れて…それで、助けてもらったんです…///」

花音「…ホント?」

集「いやまぁ、大体あってる…かな?そんな大したことはしてないけど」

花音「へぇー…なんか変わったわね、桜満君」

集「そ、そう?」

谷尋「あぁ、そうだな」

潤「そう?集さんは昔からそういう人だったと思うけど」

祭(うぅ、羨ましい…私そういうエピソード全然ないよぉ…)

綾瀬(わ、私なんて命を救ってもらったし…い、いや別にだからどうってわけじゃないけど)

「あ、書けました」スッ

集「はい、えーと…へぇ、珍しい読み方だね」

「よ、よく言われます…」

集「何はともあれ…現映研へようこそ、縁川さん」

縁川「はい!よろしくお願いします!」




――オマケ――

数藤「くそっ、いってぇ…」

難波「あいつ…調子に乗りやがって…こうなったら」

真名「『こうなったら』…どうするの?」

難波「…あ、ま、真名さん…?」

真名「うふふ、自立するとは言ったけど…まぁ、姉として、弟は大切にしなきゃいけないわよねぇ…家族だし」

難波「…いつからそこに?」

真名「あなたたちがあの図書委員の子に因縁吹っかけたあたりから」

難波「さ、最初から…っ!あ、いや…そんな言い方はないんじゃないかな?僕は正しいことを言ったつもりだけど?」

真名「そうねー。言ってること自体は正論だったけど…でも、正論振りかざして他人を威圧して優越感に浸るような子悪党じみた真似は見過ごせないわよねー」

難波「なっ…!」

真名「ま、それ相応の裁きは集が執行してくれたみたいだけど」

数藤(こりゃ分が悪い…逃げ)

涯「どこに行くつもりだ?」

数藤「げっ、涯!」キキーッ

涯「顔を見たとたんそんな声を上げるとは…ご挨拶だな、まったく」

数藤「そ、そこをどいてくれよ」

涯「断る」

数藤「な、何?」

涯「お前達を行かせるわけにはいかない。お前たちは、たった一つ間違いを犯した。それは…」


真名「あなたたちは集に手を出した。私たちはあなたたちを許さない」
涯「お前たちは集に手を出した。俺たちはお前達を許さない」



難波・数藤「た、たすけ」






真名「うーん、それにしても集もかっこよくなっちゃって…あなたにお礼を言った方がいいのかしらね?」

涯「俺がやったのは最初の一歩を踏み出せるように手を差し伸べただけだ。その手をつかみ、歩き出そうと決めたのはあいつ自身だ」

真名「うふふっ、そうね。でも、ありがとう!」

涯「…///」

真名「あ、今照れた!?」

涯「そんなことはない」キリッ

真名「えー…もう、意地っ張りなんだから。そんなところも可愛いけどね♪」

涯「…お前には敵わないな」

スタスタスタ………


難波・数藤「」チーン

ユウ「そんなところで本日はここまで。

今回は誠に申し訳ありません。今まで一切崩さずに保ってきた毎週水曜日更新というのをとうとう崩してしまいました。

…まぁ、にもかかわらず反応が全くないということがこのスレの状態を物語っている気がしますが。

そんなことより。

今回は僕お気に入りの人物、縁川雅の登場回となっています。

前回の伏線風次回予告は一体何だったのでしょうね。

次回こそ、彼ら、彼女らの出番がある…と、信じましょう。

その次回ですが。

もしかしたら来週は更新できないかもしれません。

はい、例によって(と言ってもまだ2回目ですが)、テスト期間です。

前回のテスト期間では結局更新してしまいましたが、今回更新が遅れてしまったように、次回こそは、更新せずに勉学に集中できるかもしれません。

どうかあらかじめご了承いただくよう、お願い申し上げます。

では、また会う日まで。

~時系列を少し戻し~

四分儀「えー…本日は皆さんのお知らせがあります。
既に噂になっているようなので、知っている人も居るようですが…
夏休み明けからくる転校生の内二人が、このクラスに所属する運びとなりました。」

「先生!その人は男子ですか女子ですか!?」

四分儀「一人ずつです」

おぉー…と、にわかにクラスが騒がしくなる。
が、それとは対照的に、四分儀の顔は険しくなる。
…元から十分険しい顔ではあるがそれはさておき。
「だったのですが」と前置きをし、その「転校生」について話し始める。

四分儀「どうやら、遅刻のようでして…」



「もーぉ!初日から遅刻とか勘弁してよー!」

銀髪に金色の眼という日本人離れした、小柄でまだ幼さの残る少女が叫ぶ。

「全くだ。一体誰のせいでこんなことになったんだろうね」

金髪蒼眼という日本人離れした容姿をした少女がそれに連なるように言葉を重ねる。

「ぐっ…」

その二人を背に背負ったまま風を切って全力疾走する目つきが異様に鋭い少年は、その言葉に顔をしかめる。

「本当にねー。誰かさんが寝坊しなければこんなことにはならなかったのにねー」

「君はお寝坊さんだなぁー…ん?これはいわゆるギャップ萌えというやつでは…」

「振り落すぞ」

「ははは、冗談だよ。ところで、こんな風に君に密着できる機会なんて早々無いよねぇ…折角だから、君のうなじをペロッてもいいかな?」

「…」

身の危険を感じた少年は咄嗟に肩に乗っていたその少女を振り落した。

「あぎ!?…つぅ。ひどいなぁ」

「ここまで送ってやっただけでもありがたく思え!あとは自分で走るんだな!」

「冷たいなぁ…ぞくぞくするよ」

妖艶な笑みから目を逸らし微かに耳に届いたその言葉には聞かなかったふりをすることを決め、少年はさらに速度を上げて校門へ向かう。

「よし、このまま乗り込むぞ」

「あいあ…ちょっと待ってこのままって?乗り込むってどういう」

「クラスはどこの教室だ?」

「2階で、右端から二つ目…ちょ、ま!?」

少年の走行速度と方向から嫌な予感を感じ取った少女は咄嗟に少年を止めに入るが時はすで遅し。


少年は二階の教室の窓に向かって思いっきり跳躍した


「…ここは、3-Bで間違いないか」

四分儀「…その通りです。が、今度からはきちんと扉から入ってくるように」

「…気を付ける」

窓を乗り越えて教室の床に着地した少年に、突如ばしぃ!と張り手が繰り出された。

「…なんだ」

「なんだじゃないわよ!いきなり窓から入る奴があるかぁ!ほら見なさいよ!クラスのみんなポカーンとしてるじゃない!」

「…む」

四分儀「…えー、では改めて…こちらが、転校生の…」

キャロル「はいはーい、キャロルっていいます!よろしく!」

スクルージ「…スクルージ」

四分儀「…キャロルさん、スクルージ君、あとで職員室に来るように」


真名「いやー、インパクト大だったわね、今日の転校生」

亞理沙「というか、軽くみんなスルーしてるけど、ここ二階よ?彼はどうやって…」

真名「…それくらいならできそうな子が一人居るしねぇ」チラッ

涯「俺なら確かにそれくらいならできるが…人一人抱えてとなると…難しいだろうな」

亞理沙「二階まで飛べるのは確定なうえに人一人抱えても不可能とは言い切らないのね…」


<ガララッ


涯「…噂をすれば、だな」



キャロル「えーと私達の席は…」

スクルージ「…」

真名「そこよ」

キャロル「おぉ!どうもありがとう!」

真名「私の名前は桜満真名。これからよろしくね、キャロルさん、それにスクルージ君も」

キャロル「うん!よろしくね!」

スクルージ「…あぁ」

亞理沙「私は生徒会長の供奉院亞里沙よ。困ったことがあったらなんでも言ってちょうだい」

キャロル「ありがと!」


ダン「やぁ皆久しぶり!ガッツのある夏休み過ごしてたか!?それはともかく、今日も今日とてガッツ全開で行くぞー!」

おぉー!
亞里沙「おぉー!」
真名「おぉー!」
涯「おぉー」

キャロル「暑っ苦し…」

スクルージ「…」

ダン「む!なんだそこの二人は!見ない顔だな!転校生か!?ガッツが足りないぞぉ!そらもう一回!おぉー!」

ほぼ全員「おぉー!!!」
キャロル「お、おぉー!」
スクルージ「おー」


ダン「さて、準備運動はしっかり終わったか?なら、もう始めていいぞ!」

※現在の種目はテニス


亞里沙「じゃぁよろしくね、真名さん」

真名「うん、亞里沙」

キャロル「何?適当に始めちゃっていいの?」

亞里沙「あ、キャロルさんは今回が初めての授業だものね…テニスの経験は?」

キャロル「皆無ー」

真名「じゃぁ、私達と…」

「だ、駄目よキャロルちゃん!」

「そうよ!その二人に混ざるのは自殺行為だわ!」

「ほら、私たちが一緒にやるから…」

キャロル「お、おぉ、おー?」ズルズル


真名「…いや、私達だって手加減くらいできるんだけど」

亞里沙「えぇ。流石に初心者相手に本気でやらないわよねぇ…」

真名「ま、いいわ。それならいつも通りやりましょうか」

亞里沙「えぇ」


数藤「お前等ぁ!今日こそあの涯に一泡吹かせてやるぞぉ!」

おぉーーー!!!

ダン「うんうん!男子どもはガッツに溢れてるなー…その調子だ!」

スクルージ「…なんなんだこれは」

難波「あぁ、君は参加は初めてだったね。まぁ、見てればわかるよ」

スクルージ「…何だ?あいつ一人に…こっち側は三人?」

難波「通称恙神ルール。こうやって人数差でハンデをつけないと試合にならないんだ」

パァン!

「かーっ!くそっ!」

「ダメかぁ…」

涯「ははっ。俺も簡単に負けてやるわけにはいかないんでな。しかし、今回は結構良い線いってたぞ?」

「次は絶対勝つからな!」

「ほらほら、負けたらなら出た出た!」

「次は俺たちだぜ」

スクルージ「…一瞬で交代したな」

難波「…まぁ、それでも、試合になっているとは言い難いんだけど」




タン!タン!カッ・・・コン・・・バシュゥ!ダン!

亞里沙「あ…」

真名「ふふ、今回は私の勝ちね」

亞里沙「そうね、次は負けないわよ?」

真名「こっちだって!」


キャロル「…何あの二人、頭一つ抜けてるどころの騒ぎじゃないんだけど」

「うん、そうなのよー…音からしてまるで違うしね」

「私達とかいまだにボールが相手のコートに届いたり届かなかったりするレベルなのにね」

「あれに勝てるのって男子含めても涯様くらいじゃないかしら」

キャロル「涯…様?」

「そうそう、ほら、金髪で、内のクラスの…ほら、あの」ススッ

キャロル「ん…?」チラッ

「内のクラスの超有名人。天王洲高校で知らない生徒はいないわよ?」

「ねー。22対1でサッカーやって完封勝ちするとか、テストで全教科満点取るとか、その上で人当たりも良くて勉強教えてくれたりするのよねー」

キャロル「うわー、凄いね。そりゃ様付けも納得だよ」

「本当に完璧よ完璧。天才っていうのはああいう人の事言うんだよねー」

キャロル「あー…悪いんだけど、その天才…」

キャロル「ちょっとやばいかも」





  バ  ゴ  ォ  ン  !  




「「「っ…!」」」

「な、何?今の音…」

キャロル「うわっ…スクルージやりすぎ…」




スクルージ「ふー…」

涯「何だ、今のは…!?」







ユウ「CMです」


エレン「これは俺が手に入れた…王の力!」

少年は新たな力をその手に宿した

アルミン「僕は…強くなる。強くなるよ、エレン」

またある少年は、新たな決意をその胸に宿した

ミカサ「エレン、私を…」

またある少女は

「使って」

少年のものとなることを望む。



近日執筆…したいけど余裕がないので無理です。



油断はなかった。
スクルージという転校生…彼のポテンシャルは軽く見ただけで感じ取れる。
あの筋肉のつき方は異常だ。相当に鍛えなければあそこまではならないだろう。
一挙手一投足を観察する限りにおいて、その力を完全に制御下においているとみて間違いない。
ラケットの握り方からしてテニス自体は素人のようだが、しかしそんなものは油断する理由にはなり得ないだろう。
そう、油断はなかった。
全神経を集中させ、そのサーブに備えた。

だが、

涯「何だ…今のは…!?」

彼の手からボールが離れ、大きくラケットを振りかぶり、次の瞬間。
恐らくボールだろう黄色い何かが俺へと迫り、反射的に腕を伸ばしてそれを捉えた。
だがボールはそのまま返されることなく、俺の腕からラケットを弾き飛ばして、
後ろのフェンスに激突して、やっと止まった。

スクルージ「大丈夫か?」

涯「…問題ない」

そう、ここで片膝を着いている暇はない。

涯「すまない、彼とシングルスで勝負させてくれ」


他のメンバーをコート内からどかし、彼と一対一で対峙する。
授業を長時間妨害するわけにもいかないということで、一球勝負ということになった。
…彼に勝つ方法は『ある』。既にそれは思いついている。だがこの方法は、長期戦にならなければ効力を発揮しない。
勝てるのか…?本当に…。
嫌な汗が背中を伝う。
今が、『恙神涯』という虚像を崩すべき時なのではないか。
そんな思考が頭をよぎる。

真名「トリトーン!」

涯「!」

真名「頑張ってー!これに勝ったら


あなたの言うことなんでも一つ聞いてあげる!」


涯「…」

あなたの言うことなんでも一つ聞いてあげる!

あなたの言うことなんでも一つ聞いてあげる!

あなたの言うことなんでも一つ聞いてあげる!

涯「すまない、スクルージ」

スクルージ「…?」


涯「この戦い、勝たせてもらう」


何を弱気になっているんだ俺は。
この程度の窮地、俺は何度も潜り抜けてきただろう。
しっかりしろ、恙神涯!


彼の手からボールが離れる。
ついさっき取り損ねたあのサーブが来る!
見てからでは遅い!今あるすべてを観測し、来るであろう打球予測しろ!
凄まじいポテンシャルを秘めていようとあくまで素人。恐らく回転をかけたトリッキーな球は来ない。力任せの一直線な打球。相手の立ち位置から来る可能性のあるルートを絞る。それでもまだ不十分。まだだ、まだ観察も思考も全く足りていない。よく見ろ、ラケットの構え方、筋肉の動き、骨格、息遣い、目線、足の開き、風、ネット、今振りかぶって、ボールの落下速度とラケットのスイング速度から打点を算出、ラケットの角度と向きから落下地点を予測して、「う」この速度では片手で返すのは「お」不可能「おおおお」だが両手ならば問題「おおおおおおおおお」いける!「おおおおおおおおお!!!」

返した!

だがそれだけではまだ足りない。跳ね上げられたボールはネットにほど近い場所で空高く舞い上がる。
スマッシュを打つのに絶好のボール。当然、スクルージはサービスラインから走って一瞬のうちにネット際まで駆け寄り、直感で適当な位置を感じ取りそこで一度止まってボールを追って空を舞う。
大きく振りかぶってスマッシュの体勢へ。体重を乗せた一撃が涯へと迫る!
が、それも涯は予測していた。
今度はその打球を受け流すようにして掬い上げる。
天高く飛んだボールは風にあおられてライン際へと向かう。その間、スクルージはまだ空に居る。
着地にわずかな差があるとはいえそのわずかな差でライン際まで駆け寄りなおかつボールを打ち返すなど不可能…だと思われたが。
スクルージは着地と同時に全力で真後ろに飛ぶ。ボールの着地音がコートに響く。たったの2歩でライン際まで到達し、大きくラケットを振りかぶる。
観衆の顔に驚愕が浮かぶ。驚くこともなく、ただ不敵に笑うのはスクルージの勝利を疑うことすらなかったキャロル。

そして、恙神涯の勝利を信じている桜満真名だけだった。



涯は、そこまで見届けて相手に背を向ける。
勝負は、既に決していた。

スクルージ「…っ!」

スクルージは思わず苦悶の表情を浮かべる。
その時点で、涯の狙いを察したのだ。
無茶な動作を重ねた結果、スクルージのフォームは滅茶苦茶に崩れていた。

スクルージ「が、ぁぁあああ!!」

それでも、意地と根性だけでスクルージはラケットを振りぬく。
しかし、スクルージによって打ち返されたボールは、相手コートを飛び越え、フェンスも通りこし、
数百メートル離れた校舎へと打ち込まれた。

静寂が辺りを包む。

ダン「勝者、恙神涯!」

一転、歓声が辺りに溢れた。




キャロル「いやー凄かったね!まさかスクルージに勝てる人類が居るとは思わなかったよー」

スクルージ「お前は俺をなんだと思ってるんだ…」

「ふふっ、だが安心したまえ。君に対する僕の評価は変わることはない」

亞里沙「あの、さらっと話に入ってきたけれど、あなた、内のクラス…というか、内の生徒じゃないわよね?」

キャロル「あーっ!プレゼント!なんであんたがここに居るのよ!」

プレゼント「おいおいキャロル。スクルージがスポーツにいそしむと聞いて黙っている僕だと思うのかい?あ、生徒会長のミス供奉院ですね?初めまして。今日転校してきた、プレゼントと言います。以後よろしく」

亞里沙「あ、そうだったんですか。これはとんだ失礼を…」

涯「いや待て。あんたの転校先は2-Aだろう。何でここに居る」

プレゼント「あぁ、ミスター恙神。どうもありがとう。君のおかげで久々に全力で動くスクルージを撮ることができた。これで一月はオカズに困らなくてすむよ」

真名「いやあの、そろそろ質問に答えてほしいんだけど…」

プレゼント「ん?あぁ、オカズというのは当然オナ」
真名「違うわよ何でここに居るのかって事よそこはスルーしたのよ察してよ!」

キャロル「こいつは筋肉フェチの変態なのよ。だから、ことあるごとにスクルージに絡んできて…」

プレゼント「おいキャロル、誤解を招くことを言うな。僕は筋肉ならば何でもいいわけではない。力強く、かつしなやかさを秘めた獣的で人類の限界に迫らんとするほどの筋肉…つまりスクルージの筋肉こそが理想であり至高で故に僕の性欲の対象はスクルージのみだ。つまり僕は筋肉フェチなのではなくスクルージフェチなんだよ」キリッ

キャロル「『キリッ』じゃないわよ!さっさと自分のクラスに帰りなさい!」

プレゼント「断る!」

キャロル「帰れ!」

プレゼント「嫌だ!」

キャロル・プレゼント「ギャー!ギャー!」


スクルージ「全くこいつらは…」

涯「大丈夫か?」

スクルージ「…」ギロッ

涯「そう睨むなよ」

スクルージ「俺はもともとこういう顔だ」

涯「そうかい、それは失礼」



涯「…あんた、それだけの力をどうやって手に入れた?」

スクルージ「…」

涯「俺だってそれなりに鍛えているという自負はある。もちろん、アスリートというわけではないから俺よりも身体能力が高いこと自体は不思議なことじゃない。だが問題はその筋肉の質と練度だ。一体どんな人生送ったらそんなことになるんだ?」

スクルージ「…」

涯「…」

スクルージ「…これくらいしないと、生き残れなかった。命懸けなら、人間だってこれくらいできるのさ」

涯「…そうか。悪かったな、いきなりこんな不躾な質問を…」

スクルージ「構わんさ。別に隠すほどの事じゃない。まぁ、悪く思うっていうなら」


キャロル「この芋女!そういう視線を私のスクルージに向けないでくれる?正直鬱陶しいんだけど。冗談はその真っ平らな胸だけにしてもらえる?ぶっちゃけあんた女子の服着てないと女か男か判別できないのよ!」

プレゼント「はっ!ほざくなよ神話生物が!そんなこと言ったら君なんていまだに高校生には見えないじゃないか!どうせあれだろう?映画とか電車の切符とか中学生料金でなんんだろう?その姿でスクルージは私の物?冗談を言っているのはどっちだ!」

真名「あの、二人とも落ち着いて…」

亞里沙「そろそろ先生が来てしまうわよ?」


スクルージ「…あれを止めるのを手伝ってくれ」

涯「…お安い御用だ」

ユウ「そんなところで、今回はここまで

まずは、レスありがとうございます。おかげでもう少し続けられそうです

今回は、「ギルティクラウン・ロストクリスマス」より、「スクルージ」、「キャロル」、「プレゼント」の3名が登場です

…本来、夏休み終了時から僕が本編に参加し、代わりにプレゼントがこの後書きを務める予定だったりしたのですが…

紆余曲折の末、プレゼントは変態要因として本編に参加する運びとなりました。

今更ながら注意させていただきますが、このSSはフィクションです。実在または架空の人物との関係があったりなかったりします。ご注意ください。

しかし、ロストクリスマスのキャラクターを出して思ったのですが、

…このSS、もう半年ほど続いているんですね。

だからどうということでもありませんが…何というか、感慨深いです。

では、また会う日まで

おつ

最初から読ませていただきました
ギルクラ大好きだったんでこんな感じのSSはありがたいです
続き楽しみにしています。


真名「キャロルちゃん、もしよかったら一緒にお昼食べない?」

キャロル「ん?あー、お誘いは嬉しいんだけど…」チラッ

スクルージ「…む」

真名「あら、そういうこと?うふふ、なら仕方ないわね。無粋な真似をしちゃってごめんなさいね」

キャロル「いやいや、こっちこそ断っちゃってごめんねー」

スクルージ「…気にしなくてもいいんだぞ」

キャロル「気にするよー。だって私が居ないとスクルージ速攻でぼっち確定でしょ?それに…」

スクルージ「それに?」

バァン!

プレゼント「さぁスクルージ!一緒にお昼ご飯を食べよう!人気のない体育倉庫辺りで!」


キャロル「…あれを放っておくわけにはいかないしね」ガルルル…

スクルージ「…ハァ」


涯「なんだ?俺たちと一緒に食わないのか?」

スクルージ「あんた…」

涯「そういえば自己紹介がまだだったな。恙神涯だ、よろしく」スッ

スクルージ「…スクルージだ」ガシッ

スクルージ「…まぁ、あれを放っておくわけにもいかないんでな」

キャロル・プレゼント「ギャー!ギャー!」←あれ

涯「そうか、残念だな」

スクルージ「…というかさっき『俺達』と言っていたが…まさか」

涯「ん?あぁ、俺はいつも昼食はあの二人と摂っているが」

スクルージ「両手に花か。羨ましい限りだ」

涯「それをお前が言うのか」

プレゼント「何!?スクルージにもハーレムを羨ましがる程度の性欲はあるのか!?」

スクルージ「どういう意味だ。というか性欲とかいうなこの万年発情期」

プレゼント「おかしい…ならば何故今まで僕は一度も手を出されていないんだ…」

スクルージ「おかしいのはお前の頭だ」

プレゼント「時々隙を見ては媚薬入りコーヒーを淹れたりとかもしているのに…」

スクルージ「もう二度とお前から出されたものは食わん」


真名「ふふっ、微笑ましいわね」

亞里沙(…色々な意味でかなりギリギリ会話なような気もするのだけれど)


バァン!

「失礼するわよ」

キャロル「ん?誰?」

スクルージ「知らん」

真名「私も初めてみるわね…」

亞里沙「三年への転校生は四人と聞いているけれど…もしかしたら彼女が最後の?」

プレゼント「…引き千切ってやりたくなる胸をしているな」

キャロル「うわーい洗濯板がなんか言ってるー」

プレゼント「あ”?」

キャロル「あん?」

スクルージ「やめんか」

カツ,カツ,カツ…

「ん…」チュポ・・・クチュ、ジュブ・・・クッヂュ・・・

<何?あの子。

<なんでアイス舐めてるんだろ?

<お、お前知ってる?

<さ、さぁ…?でも、なんつーか…エ、エロイ…な///(モゾモゾ

<…あ、あぁ、うん、そうだな///(モゾモゾ


涯「…久しぶりだな」


涯「エルミール・フルノー」

エルミー「ハァーイ♪お久しぶりね、涯」



涯「何の用だ」

エルミー「あら、冷たいのね」チロチロ

涯「温かく出迎えてくれるとでも思っていたのか?」

エルミー「まぁ、それはないわよね。でも、「何の用だ?」…なんて白々しい。要件なんてもうとっくにわかってるでしょ?…んぅ」チュゥ

涯「…もしお前が、2年前のことを言っているのなら、その答えは今も変わらない。お引き取り願おう」

エルミー「お断りするわ」レロレロ

涯「…これでは平行線だな」

エルミー「えぇ、やっぱりこうなるわよね…だから、ゲームを用意してきたわ」ジュルル

涯「ゲーム?」

エルミー「エンドレイヴ…あれ、知ってるでしょう?」チュル

涯「あぁ、あのゲームか。確かに知っている。俺達であれをやるのか?」

エルミー「んー、それはそれで面白そうだけど…遠慮しておくわ。今回は代理を用意してきたの。あなたにはそれと戦ってもらうわ」チュー

涯「…それで俺に何のメリットがある」

エルミー「別に断ってくれてもいいけど…乗らないなら私はあなたがうんと言うまでまとわりつき続けるわよ?」グポッ

涯「…」

エルミー「ほれひぃ…へんはのはいさまが、ほんはおほはほはふへほうふほはへはひはひはー(それにぃ…天下の涯様が、女の子が怖くて勝負を投げ出しましたー)チュパッ…なんて、噂されたくはないでしょう?」

涯「…いいだろう。ただし、こちらも俺の人脈の中から代理を立てさせてもらう。流石にその手のプロフェッショナルを連れてこられては敵わないからな」

エルミー「あら、怖気づいたの?」チュウ

涯「身の程は弁えているというだけだ。俺は万能家(ゼネラリスト)ではあっても専門家(スペシャリスト)ではない」

エルミー「そんなのつまんなーい」

涯「それなら、この勝負はなしだ」

エルミー「…」

涯「…」

エルミー「…ハァ。ま、仕方ないわよね。いいわ、じゃぁ…」

エルミー「待ってるわよ♪」

ガリッ!



真名「…で、あれはどちら様?亞理沙に負けず劣らずのセクシーな子だったけど」

キャロル「もしかして元カノ~?」

亞里沙「…」ピクッ

涯「…あいつは、俺が高校一年の頃、俺をあいつのものにしようとしてきた」

プレゼント「おや…つまり、惚れた腫れたの話…なのかい?」

亞里沙「…」ソワソワ

涯「だったら、苦い思い出程度で済んだのだがな…そういう人間じゃないよ、あいつは。ただ単に、優秀な手駒が欲しかっただけさ。無論、断ったがね」

亞里沙「…」ホッ

スクルージ(さっきから何やってんだこいつ)

涯「その後、あいつは家庭の事情で転校することになったらしいんだが…」

キャロル「また転校し直して、ここまで戻ってきたと。いやー、結構な執念だねー」

プレゼント「それにしても…」チラッ

数藤「…///」モジモジ

難波「…///」キョロキョロ

プレゼント「歩く18禁みたいな女だったな」

スクルージ「お前にだけは言われたくないだろうよ」



涯「さて、それはそれとして、昼食にしよう。急いで食べないと昼休みが終わってしまう」

スクルージ「しまった、購買…!」

亞里沙「こんな時間じゃぁ、もうほとんど売れてしまっていると思うわよ?」

スクルージ「何!?」

キャロル「げぇ、今日昼飯抜き?うわー、参ったなー…」

プレゼント「ふふふ、しょうがないなぁ…実は今日、スクルージ用に弁当を」
スクルージ「いらん」

プレゼント「!?何故だい、丹精込めて作ったのに…!」

スクルージ「どうせ媚薬が入ってるんだろう?そんな弁当が食えるか!」

プレゼント「…チッ」

亞里沙(本当に入れてたのね…)

真名「あの、よかったら私の食べる?」

キャロル「え、いいの!?」

真名「えぇ。今日はサンドイッチにしてみたの。お箸がなくても食べられるし…丁度いいんじゃないかしら?」

キャロル「おぉ!ありがとう!」

スクルージ「…すまん、恩に着る」

真名「ふふっ、良いわよ別に。じゃぁトリトン、あなたのお弁当少し分けてもらっていいかしら?」

涯「…構わんが」

真名「ありがとう」

プレゼント「どれ、それじゃぁ僕もお言葉に甘えて」

キャロル「何自然と混ざってんのよ」

スクルージ「お前はその媚薬入り弁当があるだろうが。自分でちゃんと処理しておけよ」

プレゼント「(´・ω・`)」



真名「はいトリトン、あーん…」

涯「ま、待て真名。流石にそれは恥ず…」

真名「しょうがないでしょ?箸は一膳しかないんだし」

涯「それなら交互に使えば…」

真名「効率が悪いでしょ?こうした方が楽じゃない。大丈夫よ、あーんは集で慣れてるから」

涯「…あーん」

真名「どう?おいしい?」

涯「3倍増しで美味い気がしてくる」キリッ

真名「そう?よかった。じゃぁ私も…あむ。あらおいしい………私のよりも」ズーン

涯「仕方ないさ。こればっかりは、経験が必要になるからな」

真名「昔からお料理を?…あむ」

涯「あぁ。何せ「はい、あーん」あーん、パクッ。モグモグ…ゴクン。料理できるのが俺くらいだったからな」

真名「…あ、そうか、トリトンと一緒に住んでるのって、いのりちゃんと伯父さん…」

涯「…命がかかわってるせいか、妙に上達が早かったよ」(遠い目

真名「…」(同情の眼差し






亞里沙「…」

涯『と、いうわけで…綾瀬とお前の力を借りたい』

ツグミ「ふーん…あやねぇの方には?」

涯『これから向かうところだ…が』

ツグミ「ん?」

涯『正直気が重い。あれ以来、綾瀬とはまともに話せていなくてな…』

ツグミ「あらら、珍しいじゃない。涯が弱音なんて」

涯『…』

ツグミ「それくらいの事でしょんぼりするなんてホントにらしくないよ。むしろ、話すのにいい口実ができた、くらいのことを考える奴でしょ?」

涯『…そうだな、その通りだ』

ツグミ「弱音なんて吐いてる場合じゃないでしょー。これもいい機会だと思って利用しちゃいなよ。うじうじ悩むようなら、私からのミサイルキックをプレゼントしちゃうぞ♪」

涯『…いや、それはまたいつかに取っておこう。もしまた俺が妙なことを言いだしたら、その時こそ頼む』

ツグミ「アイ!その時は容赦せずにドギツイの一発かましてやるから覚悟しといてよね!」

涯『ふふっ、その時が来ないように努力するとしよう。では、先に向かっていてくれ、ツグミ』


涯「綾瀬、いるか?」

<あいあれ恙神先輩じゃね?
<うわ、まじで?あれが…
<どうする?あ、握手とかしてもらっちゃう?

ザワ・・・ザワ・・・

綾瀬「ぁ…涯」

涯「綾瀬…君に頼みがある」

綾瀬「ぇと…あの、なんでしょう…?」

涯「昔の俺の知り合いが、エンドレイブでの対戦を申し込んできた。それで、君の力を借りたい」

綾瀬「…」

花音「あの、恙神先輩」

涯「…」チラッ

花音「篠宮さんに対して、言うことはそれだけですか?」

涯「…あぁ」

花音「ッ!…あなたは」
綾瀬「いいの、花音」

花音「…篠宮さん?」
 
綾瀬「わかりました」

祭「え、綾瀬さん?でも…」

綾瀬「…正直、断ろうとも一瞬思った。けど、やっぱり、涯は恩人で…大切な、仲間だから」

祭「綾瀬さん…」

綾瀬「行きましょう、涯」

涯「あぁ」





涯「ありがとう、綾瀬」

綾瀬「!…はい」




エルミー「あー…ぷっ、んぶぅ…んふぅ?」ズチュルルル…

エルミー「ぱぁ…あら、やっときたの?レロッ…って」

エルミー「…ねぇ、ギャラリー多くない?」

涯「…言うな」

祭「な、なんかすいません…」

アルゴ「俺は涯に呼ばれたからなんだが…」

谷尋「俺は、花音が行くっていうから…」

梟「僕らも大体そんな感じだね…」

潤「そうだね…」

真名「綾瀬さん!ふぁいと!」

キャロル「いやー、ゲームセンターなんて入ったの初めてだよ!なんかワクワクするね、スクルージ!」

スクルージ「…暑い」

プレゼント「暑いのかい?なら涼みにいかないかい?女子トイレ辺りに」

亞里沙「どう考えても目的は涼むことじゃないわよね?それ…」


颯太『おい集!あの人だれ!?』ヒソヒソ

集『なんか、涯と因縁があるとかなんとかって聞いたけど…』ヒソヒソ

颯太『シュークリーム食べるだけであんなエロい人俺初めて見たぞ!?』

集『あ、あぁ、そう…』

ピチャ…

エルミー「あ、垂れちゃった。んちゅぅ…」←胸元に落ちたクリームを直接舐める

颯太・集・梟・潤「…///」

花音「…教育に悪すぎでしょあの人」



エルミー「で、あなたの代理人はその子?」

涯「あぁ。それと、サポーターも一人つけさせてもらう。どうせそちらにはお前がサポートに回るんだろう?」

エルミー「まぁね♪で、そのサポーターはどこに居るの?まだ姿が見えないようだけど…」

涯「先に来てるかと思ったんだが…いや、姿が見えないというならお前の方もだろう。お前のパートナーはどうした?」

エルミー「あーあの子まだ来てないのよ…やっぱり私がついてるべきだったかしらねー…?」


ツグミ「だから!今回戦うのはあんたとじゃないっての!」

ダリル「ハァ!?ふっざけんなよ!夏休み初日から逃げてんなこのちんちくりん!」

研二「ほらほら痴話喧嘩もその辺にして、もう着いちゃったよ」

ツグミ・ダリル「痴話喧嘩じゃない!」

「えへへー、仲良いねー」

ツグミ・ダリル「良くない!!!」


涯「…来たようだな」

エルミー「えぇ、こちらもね」


エルミー「ポー!」

ポー「あ、エルミー!」

トテトテトテ

エルミー「紹介するわ。今回戦うのはこの子、ポーレット・ハーシェル。ポーって呼んでね」

ポー「ポーだよ!よろしく!」

ツグミ「ハァ!?あんたあたしたちの対戦相手だったわけ!?」

ポー「ん?そうなの?」

エルミー「えぇ、そうよ。初めまして、ブラックスワン」

ツグミ「!」

集「…ブラックスワン?」

アルゴ「あぁ、あいつが昔ネットでつかってたハンドルネームだとか…しかし、なんであいつが知ってやがんだ?」

エルミー「あなたのうわさは聞いてるわよ?子供の頃、結構やんちゃしてたんですってね…そのせいで…ねぇ?」

ツグミ「人の過去こそこそ嗅ぎまわってんじゃないわよこのアバズレ。叩き潰すわよ?」

エルミー「くすくす…あら、怖い」

ツグミ「こんのっ!」
涯「待て」ガシッ

ツグミ「涯…っ!」

涯「その辺にしておいてもらおうか、フルノー。さっさと始めよう」

エルミー「…えぇ、いいわよ」

ツグミ「あやねぇ、絶対勝つわよ」

綾瀬「もとよりそのつもりよ」


ダリル「…待てよ!」

エルミー「…は?」

ダリル「邪魔なんだよ!ここはこれから僕たちが使うんだからさっさとどけよ!」

エルミー「何言ってんのよお坊ちゃん。順番ってものがあるのを知らないの?」

ダリル「あぁ知らないね!そんなのどうでもいいからさっさとどけよ!」

エルミー「…邪魔くさいわね」

ダリル「あぁん!?なんだって!?」

エルミー「…あぁもうわかったわよ。じゃぁ、一戦してあなたが勝ったらおとなしく退いてあげるわ。ただし、私たちが勝ったら二度とこの店来るんじゃないわよ」

ダリル「…いいぜ、その条件のった!30秒でぐちゃぐちゃにしてやるよ!」

エルミー「じゃぁ、涯?もうちょっとだけ待ってもらうけれど、いいかしら?」

涯「…いや、いっそすぐに終わらそう」

エルミー「は?」

涯「綾瀬、君から見て、彼は強いか?」

綾瀬「え?あの…そう、ですけど…」

涯「ならば賭けの条件を変更だ。俺は彼に賭けよう。」

ダリル「ん?」

エルミー「…ちょっと本気?こんなお坊ちゃんに私たちが負けるとでも?」

涯「あぁ。お前達は彼に負けてここから出ていく。ならば綾瀬との対戦は実現しない。ならば、今のうちに賭けを成立させてしまおうと思ってな」

エルミー「…おもしろいじゃない!行くわよ、ポー!」

ポー「はーい♪」

綾瀬「涯、いいんですか?」

涯「あぁ。彼の強さは君が保障してくれるんだろう?」

綾瀬「…まぁ」

涯「なら、大丈夫だろう。君を信じるさ。」

綾瀬「…はい///」



ツグミ「はぁ!?なんで私がこいつのサポートを…」

研二「だって、もともとツグミがサポートやる予定だったんでしょ?ならいいじゃん」

ツグミ「私がやる予定だったのはあやねぇのサポートよ!こいつのサポートはいつもあんたがやってるんだからあんたがやればいいでしょ!?」

研二「えーだるい」

ツグミ「~~~~っ!わかったわよ!行くわよダリル!」

ダリル「別にお前のサポートなんてなくても勝てるっての!」

ツグミ「るっさいわね!あたしだってあんたのサポートなんかいやよ!でも涯の事もあるし万が一にも負けられないの!わかったら黙ってサポートされてなさい!」

エルミー「…どうでもいいからさっさと準備してくれない?待ちくだびれちゃいそうなんだけど」

ダリル「…邪魔だけはするなよ!」

ツグミ「そっちこそ、油断して足元救われるんじゃないわよ!」



エルミー(ふふふ、これは思わぬ好機だわ)

エルミー(ポーの実力を知らない涯は油断しきってる)

エルミー(あの涯の仲間だっていう綾瀬って子より、こんなお坊ちゃんの方が強いわけない)

エルミー(ま、あの綾瀬っていう子より、ポーの方が強いに決まってるけど…万が一ってこともあるしね)

エルミー「行くわよ、ポー!」

ポー「うん!ポーレット・ハーシェル、ゴーチェ!いっきまーす♪」

VS Massacre 階級:元帥 戦績:8,668戦8,635勝




VS po 階級:元帥 戦績****戦****勝

ツグミ「うぇ、戦績カンストしてるし…初めて見たわ、こんなの」

ダリル「ふん!関係ないね!ダリル・ヤン、ゴーチェ、出るよ!」



FIELD:森林

開始と同時にダリルが仕掛ける。
森林ステージと言う名の通りそこら中に木々が生えており、視界も悪ければ足場も悪い。
が、そんなものはものともせず、最大速度でポーへと迫る。

ポー「もーせっかちなんだから…舐めないでよね!」

最大速度で突貫してきたダリルに向けてパイルバンカーの照準を合わせ、

ダリル「ハァ?とろいんだけど。やる気あるの?」

ようとしたところを弾かれる。

ポー「…え?」

そのまま懐に潜り込んだダリルがパイルバンカーを打ち込まんと拳を叩きつけるがそれをポーが避け、ることができず直撃はしなかったものの衝撃を受けて倒れた「ちょ」ところに更にレールガンが打ち込まれ「ま」、一度距離を取ろうとポーがホイールを回転させて加速したところに合わせたダリルの蹴りが見事に直撃し「待っ」立ち上がることすら敵わずもう一度ダウンした「たんま」ところに嬉々として迫りパイルバンカーの照準を合わせたダリルの顔には笑みが浮かんでいて「やめてぇ!」

ダリル「イヤだ」


―――GAME OVER―――

Massacre WIN!

po Lose…



エルミー「どういうことよ!」バン!

ダリル「あ、お前、台バンっていけないんだぞ!あんまり悪質だと出禁くらうんだからな!」

ツグミ「それをあんたが言うのか…」

ポー「ひ、ひぐっ…うぇぇぇえええええん!!!」

綾瀬「あ、ご、ごめんね?あいつ、手加減知らないのよ…大丈夫、あなたも良くやったわ…ほら、ダリル!あんたもなんか言いなさい!」

ダリル「あァ!?何で僕が…」

綾瀬「あんたが叩きのめしたからこの子泣いちゃったんでしょうが!」

ダリル「はっ!これは遊びじゃなくてれっきとした勝負だよ?しかも仕掛けてきたのはそいつでしょ?そのくせ負けたら泣きわめくってのはちょっと筋が通らないんじゃないの?」

研二「うわー、ダリルがまともなこと言ってるー。驚きだー」

ダリル「テメッ!それはどういう意味だァ!?」

ポー「びえええええええん!!!」

祭「よ、よしよし、泣かないで泣かないで…?」オロオロ

花音「ど、どうしたら…あの、あなたも何か…」

エルミー「…うるさいッ!!!」

ポー「ひぐっ…!」ビクッ

エルミー「何負けてるのよ!しかもあんなお坊ちゃんにこんなボロ負けして!あなたがもっとしっかりしていれば」
涯「やめろ」
エルミー「っ!…」

涯「相手の力量を見誤ったお前のミスだ。それでパートナーに八つ当たりなどするなよ…見苦しいにもほどがある」

エルミー「涯ィ…!」ギリッ

涯「…ふん」

エルミー「ッッッ!!!クソッ!」

ポー「ぁ…」

カツッカツッカツッ…

ポー「える、みー…」



真名「大丈夫かしらね、あのポーって子」

集「まぁ、涯が『大丈夫』って言うなら大丈夫なんじゃないかな?出来ないことを無責任に引き受けるようなことはしないだろうし…」

真名「そりゃぁ、そうだけど…」

クロイテツーゴウシノナカデ、ワターシハー、ウマレテキタンダ♪

真名「あら、メール?」ガサゴソ

集「…!姉さん、下がって」

真名「ふむふむ…え?何?」

集「…何の用ですか、あなたたち」



難波C「いやなに、君には用はないよ。君の後ろに居るその人にちょっとね」

数藤C「だからぁ、てめーはもう帰ってもらっていいんだぜ?」

集「…姉さん、行こう」グイッ


難波D「どこに行こうというんだい?」

集「!(回り込まれてる!)」

数藤D「連れないこと言うなよー。俺らと遊んで行こうぜ?」

難波E「そうそう。大丈夫、損はさせないから」

数藤E「でぇ?いいのかい?もうやっちゃって」

エルミー「えぇ、いいわよ」

集「あなたは!」

エルミー「はぁーい♪さっきぶりね」

集「どういうつもりですか!」

エルミー「どうもこうも、プランBよ。ポーが負けて賭けがダメになっちゃったからね」

集「だから、姉さんを使って涯に脅しをかけようと?」

エルミー「ふふっ、違うわよ。あれがそんなことで屈するような男じゃないもの」

集「?…なら、なんで」

エルミー「別に?ただの腹いせよ」

集「は、腹いせ!?」

エルミー「そ。だってあいつ、全然私の思い通りにならないんですもの。だったら、あいつが大切にしてるモノを踏みにじるくらいしないと気が済まないじゃない」

集「ふざけないでください!そんな理屈…」

エルミー「アーハイハイ。そういうの良いから別に。で、あなたさっさとどっか行ってくれない?お姉ちゃんと一緒にぶちのめされたいっていうならそこに居てもいいけど」

集「…」ザッ

エルミー「何?やる気?ちょっとちょっと笑わせないでよ。君みたいなナヨナヨした子が、どうにかできるような人数差じゃないくらいわかってるでしょ?」

集「…それでも、姉さん一人置いていく事なんて僕はできない…いや、しない!」

真名「集…」キュン

エルミー「あっそ…じゃ、やっちゃって」



数藤F「ひゃは!」

集「正拳突き!」

数藤F「あふぁ!?」ドゴァ!

難波F「す、数藤F!?」

難波G「お、おい、こいつ、見た目の割に強いぞ!」

エルミー「あーもうイライラするわね!この人数差よ!勝てるわけないわ!さっさとやっちゃいなさい!」

数藤G「う、おおおおお!」

集「背負い投げ!」

数藤G「が!?」

集「アッパー!」

数藤E「ぐぁ!?」

集「からの、CQC!」

難波EFG「ぎゃぁ!!!」

数藤C「調子乗ってんじゃねぇ!!!」

集「っ!(しまった、対応、できな…)」


真名「60点ね、集」

ゴッキィア!!!

数藤C「…が」

ドサァ!

集(今、凄いエグイ音が聞こえた…)

数藤D「数藤C!」

難波D「な、なんだ!?この女も強いぞ!」

真名「んふふー…あの啖呵、かっこよかったわよー?お姉ちゃんきゅんと来ちゃった。それに、流石にトリトンとアルゴ君に指導を受けただけあるわね。この人数差でもそれなりに戦えるようになるなんて…けど、これじゃぁ満点はあげられないわね」

真名「まだまだフィジカルもテクニックも鍛えきれてない。視野も狭いから簡単に後ろを取られる。それと、」

グシャァ!

数藤F「」

真名「止めはさしておかないと、ね?」

「「「す、数藤Fゥゥゥウウウウーーー!!!」」」

数藤E「な、なんて奴だ!こいつ、躊躇なく数藤Fの股間を踏みつけやがった!」

数藤G「ひ、ひぃ!あ、悪魔かお前は!お前には人の心って奴がないのか!!!」

真名「あら、こんな可愛い女の子を指して悪魔だなんて…失礼しちゃうわね!」プンプン

集(可愛い女の子は男の股間を躊躇なく踏みつけたりしないよ!)ブルブル


難波D「こ、こんなところに居られるか!俺は逃げるぞ!」バッ










アルゴ「…よォ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

難波D「ァ、ァノ、ドチラサマデ」
アルゴ「ダァラッシャァ!」

難波D「ひでぶ!」

難波C「だ、誰だアンタ!」

涯「通りすがりのお前達の敵だ」

難波F「な、まだ居たのか!?」

真名「あらトリトン、着いてきていたの?」



涯「当然だ。お前を危険にさらすような真似を俺がするわけないだろう。それより集、20点」

集「採点が厳しい!?」

涯「素人の十人程度一人で制圧できるようにしろ。そしたら及第点をくれてやる」

集「そ、そんな無茶な…」

涯「何が無茶なものか。真名一人ならこの程度5分もあれば十分、俺かアルゴなら1分あれば制圧できる」

集「それは涯たちが無茶苦茶なだけだよ!」

涯「その無茶苦茶を可能にしなければならないだろう、お前は。」

涯「真名より強くなりたいのなら、な」ボソッ

集「うっ…」


アルゴ「終わったぜ」

涯「ありがとう、アルゴ」

チンピラ’s「」チーン

集「ホントに1分かかってない…」

エルミー「う、嘘よ、こんなの…どういうこと!?」

涯「どうもこうも、どうやらお前が襲撃をするための準備をしているようだったのでな…お前の目的を考えれば、標的の方も見当がつく。それで、集に実戦の経験積ませるためにはちょうどいいと思って放置していたんだ」

集「え、そうなの?」

真名「そりゃそうよ。と言っても私もさっきのメールで知ったんだけどね。あれがなかったらお姉ちゃんが全員倒してたわよ」

集「えぇー…」



涯「それにしても…考えなしなところは相変わらずだな」

エルミー「!」

涯「もし俺たちがこなかったらどうするつもりだったんだ?」

エルミー「ッ…!」

集「どういう意味?」

涯「こいつは中学のときにも同じようなことをやろうとしてな」

エルミー「ちょ、あんた」
涯「ツグミ」ユビパッチン

ツグミ「アイアイ」

エルミー「な、何を」

~~~~~~~~~~~

ツグミ「一丁上がり!」

エルミー「んー!んー!」ジタバタ

真名「いいの?あんな風に縛っちゃって。何か言いたそうだけど」

涯「構わん」

集(…でもなんでよりにもよって亀甲縛りなんだろう)


涯「話を戻すぞ。そのとき狙われたのは俺だったんだが、こいつはクラスの男子どもを使ってけしかけてきた。色仕掛けを使ってな」

涯「と言っても集まったのは3人程度で、当然全員苦も無く撃退したんだが…」

集(できたんだ…)

涯「でまぁ、問題はその後でな。俺に撃退されたそいつらが、腹いせに今度はこいつを襲おうとしたんだ」

真名「…それって」

涯「あぁ、お前の想像で間違っていないだろうよ」

真名「ふん、気分の悪い話ね。」

涯「全くだ…放っておくのも気分が悪いし、ほとんど自業自得とはいえ、俺に責任がないとも言い切れないような事態だったしな。ぎりぎりの所でその3人を半殺…止めることには成功したんだが」

集(今半殺しって言いかけた!?)

涯「そのときのこいつが傑作でな」

エルミー「んー!!!んー!!!」

ツグミ「ちょ、あんま暴れないでよ疲れるから」

エルミー「んんんーーー!!!」

涯「こいつ、半べそかきながらプルプル震えてたんだよ」

エルミー「」

アルゴ「あ?どういうことだ?その三人逆に手籠めにするくらいしそうな感じだが…」

涯「だから、ただのポーズなんだよ。こいつは、卑猥な言動や妖艶な行動で装ってはいるが実際は…」



涯「処女だ」


エルミー「」

真名「うわ…ホント?それ…うわー…ないわー」

アルゴ「くはっ!まじかよ!そいつぁ確かに傑作だ!ハハハハハ!」

エルミー「…///」

ツグミ「そりゃぁ死にたいほど恥ずかしいわよねーあれだけやっといて本当はただの耳年増だったなんて…プークスクス」

集(…こんな時でも処女と言う単語に恥じらいを覚える僕は意外と良い奴なんじゃないかと思った)

涯「俺も最初は面喰ってな。その時からこいつはこんな感じだったが、それが泣きながら縋りついてくるものだからな。振り払うのもためらってしまうような豹変ぶりだったよ」

涯「昔からこいつはこういうところがあるんだ。熱中すると目の前の事しか考えられないような、な。
今回のことだって、もし俺たちが来なければ、襲撃が成功しても失敗してもこいつが襲われる公算は高かった。にもかかわらず…」

アルゴ「こんなことを、ね。確かに、涯の言うとおりだな」


涯「さて、襲撃に対する制裁はこれくらいでいいか」

真名「あぁ、なんでそんなことばらしたのかと思ったらそういうことね。まぁ、面白い話も聞けたし、これで襲撃はなかったことにしてあげてもいいかしら。」

アルゴ「ま、そうだな。俺もいい運動になったし。こんな面白れぇネタを持ってるとくれば、また襲ってくるなんてこともねーだろ」

ツグミ「んじゃ、帰りましょうか。あ、これどうする?」

エルミー(亀甲縛り)「」←これ

涯「あぁ、そこにそのまま置いておいてくれ」

エルミー「ん!?」

集「え!?」

涯「もう少しで迎えが来るはずだからな」

エルミー「んん!!」

涯「安心しろ、悪いようにはしない」

エルミー「んー!」ジタバタ


エルミー(…一体、これから私どうなるの?)

エルミー(涯たちも本当に行っちゃうし…)

エルミー(…こ、恐くなんてっ!)プルプル

<…ミー!

エルミー(!誰かこっちにくる!?)

<…ルミー!どこー!?

エルミー(この声…)

ポー「あ、えるってうわ!?何その恰好!大丈夫!?」

エルミー(…ポー)

ポー「待ってて、今ほどくから…えーっと」

いのり「使う?」つハサミ

ポー「あ、ありがとう」

いのり「うん。よく切れるから、気を付けて使って」

ポー「うん!」チョキチョキ

いのり「じゃぁ、私はこれで」

ポー「あちがとね!いのりお姉ちゃん!」

いのり「私からも、ありがとう…あなたのおかげで、出番がもらえた」

ポー「…?」

いのり「気にしないで、こっちの話」

ポー「う、うん…?」




ポー「ふぃー、やっと全部切れたね」

エルミー「…何しに来たの」

ポー「え?」

エルミー「だって…私、あなたに…ひどいこと」

ポー「…」

エルミー「なのに、なんで…」

ポー「…だって、ポーはエルミーのこと好きだもん」

エルミー「!…」

それに、そもそもポーが負けちゃったのが悪いんだし…あ、ほらこれ!」スッ

エルミー「…キャンディ」

ポー「いのりお姉ちゃんに手伝ってもらって買ってきたの!あの、これで…許してくれる?」ウルウル

エルミー「…まったく、しょうがない子ね。今回だけよ?」ナデナデ

ポー「!あ、ありがとうエルミー!次こそは勝てるように頑張るね!」

エルミー「えぇ、期待しているわ…フフッ」


エルミー「…メンナサイ」ボソッ

ポー「なーに?」

エルミー「な、なんでもないわよ!///」



ポー「さぁ勝負だぁ!」ビシィ!

ダリル「…ア”?」

エルミー「昨日のようにはいかないわよ。今度こそうちのポーが勝つんだから!」

ダリル「…昨日僕言ったよな?負けたらここから出て行けってさ」

エルミー「えぇ、でももう一度来ないなんて言ってないわ」シレッ

ダリル「…」ビキビキ

ポー「さぁ!わかったらもう一度ポーと勝負するのだ!」

ダリル「上等だよ!その減らず口二度と叩けないようにしてやる!!!」


研二「…いいの?あれ」

ツグミ「…いいんじゃない?」

ユウ「といったところで、今回はここまで。

今回初登場したのは、

葬儀社のエースエンドレイブパイロットである篠宮綾瀬が葬儀社に入るまでを描いた、

ギルティクラウンの外伝コミックスである「ギルティクラウン・DANCING ENDLAVES」より、

エルミール・フルノー、及び、ポーレット・ハーシェル、でした。

一巻600円前後で全三巻、つまり全巻制覇に2000円かからないという風にとてもお安くなっていますので、もし興味のある方はお近くの書店まで。

恐らく店頭に置いてある店舗はほぼないと思われますので、書店員さんにお取り寄せしてもらうことをオススメしますよ(露骨な宣伝)。

ところで、何故エルミール・フルノーにあんな設定を追加したかと言いますと…

このスレッドは全年齢対象を目指しておりますので、あのような存在が18禁と言われてしまうようなキャラクターをそのまま出すわけにはいかなかったのです。

そのための救済措置ですね。え?プレゼントは?…ハハッ。

そして>>422さん、>>423さん、レスありがとうございます。皆様のレスが僕の励みとなってくれています。

では、そんなところで、また会う日まで。

ダリル「~♪」

ローワン「…随分機嫌がいいね。何かいいことでもあったのかい?」

ダリル「は?何言ってんの?そんなことないけど?」

ローワン「そ、そう?」

ダリル「いいことはさぁ、これからあるんだよ!」

研二「?」

ダリル「ふっふーん…明日が何の日だか知ってる?」

ポー「んー?なんだっけ?…クロちゃーん、こっちおいでー…」

クロ「…ニャ"」プイッ

ポー「(´・ω・`)」ショボーン

ダリル「まったくお前等って奴は…明日はさ、僕の誕生日なんだよ!」

エルミー「…は?」

ダリル「それでさそれでさ!普段は忙しくて会えないんだけど、明日はパパが僕の誕生日を祝ってくれるんだよ!きっと今頃、僕へのプレゼントと誕生日パーティの用意をしてくれてるはずさ!」



ツグミ「…ばっかみたい」

ダリル「あ?」

ツグミ「なによパパって…そーんなにはしゃいじゃってさ。子供みたい」

ダリル「あぁん!?誰が子供だよ!」

ツグミ「アンタよあんた。ダリルお坊ちゃま。高一にもなって誕生日ではしゃぐなんて…恥ずかしいと思わないの?ていうか、子供の誕生日如きでパーティなんか開くその親の方もどうかしてるわ」

ダリル「っ!!!」

ガシッ!

ダリル「訂正しろよ…パパを馬鹿にすると許さないぞ!」

ツグミ「なに?怒っちゃった?…ファザコン坊や」

ダリル「テメェ!」

ローワン「や、やめろダリル!流石に女の子を殴るのはまずいって!」ガシッ

ダリル「離せよローワン!こいつ、一発殴らないと気が済まない…!」ジタバタ

ツグミ「はっ!返り討ちにしてやるからさっさと…」



ペチン

ツグミ「…!」キッ

研二「頭冷やしなよ。ダリルに八つ当たりしたってしょうがないでしょ?」

ツグミ「…………わかってるわよ」

ツグミ「じゃ、私帰るから」スッ

ダリル「あ、おい待てよ!おいこら!」ジタバタ

ポー「…エルミー」

エルミー「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫よ、ポー」ナデナデ


ツグミ「…」プイッ

ダリル「…」プイッ

ピリピリ…

クラスメイト(((居辛れぇ!!!)))

ポー「研二、あの二人、大丈夫かなぁ…?」

研二「んー…ま、明日になったら仲直りできるだろうし、そっとしときなよ」

ポー「でもぉ…」

研二「それよりも、君、用意したの?」

ポー「え?」

研二「うーん…じゃ、どうせだから一緒に買いに行く?あぁ、どうせならエルミーも…ローワンは…立場的に微妙かな…?」

ポー「…何を買うの?」

ダリル「…たくっ!なんだよあいつ!わっけわかんねー!」

そう叫んで、着替えを終えた僕はベッドに倒れ込む。
父さんはまだ帰ってきていない。うっかりそのまま寝過ごさないようにしながら、あの女について思考する。
喧嘩するのはいつもの事だけど、こんな風に後に尾を引くような形で終わったことは今までなかった。
それにどうにも、いつもと何かが違った気がする。

ダリル(…パーティ、呼んだら来てくれたのかな)

一瞬、そんなことを考えて、慌てて僕は頭を振ってその思いつきを追い出す。
随分と変なことを考えてしまった。

ダリル「な、何考えてんだよ僕は!くそっ!」

ダリル「…ふぅ。あぁーもうやめやめ!もうすぐパパが来るんだし、笑顔笑顔!こんな仏頂面してたら、パパに心配されちゃうからね!」

鏡で自分の顔を見て、眉間にしわが寄った顔を無理矢理笑顔にする。これで、優秀で可愛い愛する息子、ダリルの完成だ。
普段会えない分、きっと今日はうんとサービスしてくれるはずだ!
料理は何が出るのかな?ケーキは何にしたんだろう?プレゼントは何を買ってくれたのかな?
パパ、今頃どこに居るんだろう?パーティは家で開くのかな?いや、そんな感じはないし、どこかのレストランを予約して…。

そんな想像を膨らませていた僕の耳に、こんこんというノックの音が届く。

ダリル「?…何?」

「お坊ちゃま…今、旦那様から連絡がありまして…」

ダリル「!う、うん!それで?」




「本日は、忙しくて来れないと」



ダリル「…は?」

ダリル「う、嘘だ!嘘をつくな!だ、だって、パパは…僕の、パパは…」

なんで…なんでだよぉ…僕は、大切な息子じゃないのかよ…愛してるんじゃないのかよ!なんで、なんでいつも!僕の誕生日に仕事が忙しくなるんだよ!」
去年も!一昨年も!ずっとずっと!
最後に誕生日を祝ってくれたのは?そういえば、最近は声も聴いていない気がする。直接話したのなんて何時だ?最後に微笑みかけてくれた日も思い出せない。

ダリル「あ…う、あ、……あああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

僕は、扉を蹴破って外に出た。後ろから使用人たちの声が聞こえた気がするけど、それも気のせいかもしれない。
家を飛び出し、庭を走り抜けて、目的地も定まらないまま、走り続ける。


雨が降り出した。
もう、走る気力も残ってない。
でも、雨にあたっていると少し気分がすっとする。

ダリル「…今の僕には、丁度いい」

走ったせいで暖まった体が急激に冷える。
でも体以上に、心が冷え切っていた。
無茶苦茶に走り回っていたせいで、今どこに居るのかもわからない。どこに行こうかと考えて、家に帰りたくないとだけ思った。家に帰れなければどこでもいいと思った。だから、僕はまた歩き始めた。

どれくらいそうしていただろう?

ただ歩く。考えることすら億劫だ。何もしたくない。何も考えたくない。何も…。

そんな風にボーっとしていたから、僕は目の前からくる人影に気付かなかった。


数藤H「っ!なんだ!どこ見て歩いてやがる!」

ダリル「…」

数藤H「くそ…何なんだよお前!俺の服がびしょびしょになったじゃねーか!どうしてくれんだよおい!」

ダリル「…うるさい」

絶望と悲しみが、怒りへと変わる。
とめどなく溢れるそれが、ぶつける対象を見つけて歓喜に震える。

難波H「謝ったらどうなんだ?…おい、聞いてるのか?」

グチャグチャにしてやるよ。

全部!

全部全部全部!

皆!消えてなくなればいいんだ!!!

ダリル「ああああああああああああ!!!!」

数藤H「がっ!」

目の前の男に殴りかかる。殴った手が痛かったけど、それもすぐにどうでもよくなった。

難波H「うわっ!?いきなりなんだこいつッ…!」

頭の中にはただただ純粋な破壊衝動だけがあった。
眼に映る全てが敵に思えた。人も、物も、何もかも。
感情に任せてただ拳をふるう。無茶苦茶に足を振り下ろす。
それでも、流れ出るこのどす黒い感情が枯れることはない。

数藤H「いい加減にしろゴラァ!!」

困惑から立ち直った片方が反撃してきた。
体格ではあっちのほうが上だったし、しかも僕は走り続けた後で体力も残っていなかった。
なにより、一発喰らって頭が冷えて、その時点で僕はもう殴る気力すら失ってしまった。

難波H「くそっ!なん、なんだよ、お前、は!」

固い靴底の感触が頭にある。
いつもなら、そんなことをする奴が居たら半殺しにしているところだけど、今回ばかりはそんなことはしなかった。
冷たいアスファルトの感触も、蹴られて熱を持った頬も、僕の心を動かすことはなかった。
段々と意識が遠くなる。
もしかしたら死ぬかもしれない。

ダリル(…別に、いいかなぁ…)







ツグミ「ミサイルゥゥゥ…キィィィィックウウウウ!!!」

意識が闇に落ちる寸前、僕は、雨音を突き破って響くそんな声を聴いた気がした。




ダリル「…!」

ツグミ「気が付いたのね」

見慣れない部屋で目を覚ました僕が最初に見たのは、そんなことを言って冷たい目で僕のことを見下ろすちんちくりんの姿だった。

ダリル「お前、なんで…?」

ツグミ「そりゃこっちの台詞よ。あんた一体あんなところで何してたの?」

ダリル「僕は…」

あぁ、そうだ。
僕は、パパに誕生日を祝ってもらえるのを楽しみにしていて…。
でも、パパは帰ってこなくて…。
それで、やけになった僕を…。

ダリル「お前が、助けてくれたのか…?」

ツグミ「いやまぁ…流石に雨の中放置していくのは寝覚めが悪いしね。たとえそれがあんたでも」

ダリル「…そうかよ」

なんでだろう。
いつもなら、こんなことを言われたら憎まれ口を返すのに…今は、
そんな言葉が、少しだけ心地いい。

僕は部屋をぐるりと見回してみる。
どうやら僕は部屋の中央辺りに適当に寝かされていたらしい。その適当さ加減からすると、寝かされていたっていうより置かれてたって感じだけど。
部屋には以外にもパソコンなんかの実用的なもの以外にもぬいぐるみが置いてあったり、カーテンやカーペットなんかも見てみると元々あったものをそのまま使っているのではなくピンクを基調とした可愛らしいものになっていて、全体的に女子っぽさを漂わせるような部屋だ。

ツグミ「ちょっと、あんまり人の部屋ジロジロ見ないでもらえる?」

ダリル「なっ!み、見てないっつの…」


そういえば、と言って慌てて話題を変える。

ダリル「…なぁ、お前んとこの両親は?働いてんの?」

ツグミ「いないわよ」

ダリル「…は?」

ツグミ「私は独り暮らしよ。それがどうかした?」

独り暮らし?女子高生が?

ダリル「な、なんで…そんなこと…」

ツグミ「私が捨てたのよ。親を」

ダリル「…」

そこから紡がれたのは、僕なんかには信じられないような話だった。

ツグミ「
いや、ちょっとかっこつけちゃったかな。確かに私は親を捨てて家を飛び出してきたけど、それはあの人たちが私を捨てたからで、捨てた捨てられたの話になったら、捨てられた方が早いわけだし。
昔、私は結構内向的で、部屋の中で一日中お人形とお喋りしてるような子だったの。
パソコンの使い方憶えてからは、お喋りの相手が人形じゃなくてコンピューターになったわ。
あの人たちは、そんな私を気味悪がって…ま、衣食住くらいは保証してくれたけど、でも親らしいことは何もしてこなかった。
学校にも行かず一日家にこもってる私を叱りもせず、かと言って甘やかしてくるでもなく、ただ距離を置いて放っておかれたの。
それで、愛想を尽かして家を飛び出したのが中二のとき。それ以来、まぁ、涯とかにも手伝ってもらって、だけど…今では立派に、独りで生きているわ。


そんな風に、大したことなんて何もなかったと言うように、にっこりと笑う。

ダリル「…なんでだよ」

ツグミ「んー?」

ダリル「なんで、そんな風に笑っていられんだよ!!!」

僕は、耐えられなかった。


ダリル「僕にはわからない!親に愛されずに育ったお前の気持ちも!親を簡単に捨てられるその心も!こんなところで独りで生きて行かなきゃいけない境遇も!親のことを『あの人たち』だなんて他人行儀に呼ぶ理由も!」

ダリル「僕には全然わかんないよ!」

ツグミ「…そーね。あんたにはわかんないでしょうよ。私だって、『親に祝ってもらえることが当たり前』なあんたの気持ちなんてわかんないし」

ダリル「ぁ…」

そうだ、こいつがあんな風に機嫌が悪くなったのはこのせいだったのか。
僕が、何も考えず無神経にあんなことを言ったから…。

ダリル「っ…」

ツグミ「ちょっとちょっと、同情とかやめてよね。私は現状に満足してるし、それなりに幸せなんだから…別にそんな顔させたくて話したんじゃないし」

ダリル「…そうかよ」

ツグミ「で、結局質問に答えてもらってないんだけど。あんた、一体何があったわけ?」

ダリル「…僕は」


聞かれて、僕は話す。今日の事、去年の事、一昨年の事、今までの事を。


ツグミ「へぇー」

その結果がこれだよ。

ダリル「なんだよその顔…むかつくな」

ツグミ「うん、話させといてなんだけど凄くどうでもよかったから」

ダリル「…」

ちょっとでもしんみりしたのが馬鹿みたいだった。
あぁ、今ものすごくこいつを殴りたい。
というか、いつもだったらこの時点で確実に大乱闘が発生している。

ツグミ「だって、さ…っと」

そして呆れ顔のまま話を続けようとしたちんちくりんの声を遮るように、傍に置かれていた携帯が鳴動する。

ツグミ「あーもしもし?」

そのまま電話で話し始める。居づらくなった僕は、かと言って何もすることがないので何をするでもなくその通話が終わるのをただ待った。長電話になったらどうしようかと危惧していたけど、そんなことはなく、二言三言話してすぐにそれは終了した。

ツグミ「じゃ、行きましょうか」

ダリル「は?」

ダリル「…なんでここなんだよ」

連れてこられたのはローワンの家だった。
今は、誰かに会う気分じゃないってのに。

ツグミ「いいからいいから!ほらさっさと進みなさい!」

ダリル「ちょ、押すなよ!おい!」

そうして押し出されるままに玄関をくぐった瞬間、


『ハッピーバースデイ!ダリル!』


そんな言葉と、クラッカーから出される乾いた音と紙飾りに、
満面の笑みを浮かべた4人の笑顔が僕を出迎えた。

ダリル「…何だよ、これ」

ローワン「まぁ、折角の誕生日なんだし、祝ってあげたいと思ってね」

研二「本当は明日に一日遅れでやる予定だったんだけど…さっき突然ツグミからメールが来て、今日に繰り上げるから急いで準備しろってさ」

エルミー「ちなみに、そもそも誕生日パーティしようって言ったのも、ツグミなのよ?」

ツグミ「ちょ、あんた余計なこと言うなぁ!」

ダリル「…そうなのか?」

ツグミ「うっ…」

そう言われて、こいつはバツの悪そうな表情を浮かべて、指先をもじもじと合わせながらぼそぼそと喋りだした。

ツグミ「私にだって、八つ当たりしたことを悪く思うくらいの良心はあるわよ…」

研二「ツグミに良心(笑)」

ツグミ「ちょっとあんた表出ろ」

ポー「ほら!主役が来ないとケーキが食べれないでしょ!早く早くぅ!」

ダリル「あっ…」

引っ張られていった居間にあったのは、
『誕生日おめでとう!ダリル』と手書きで書かれた横断幕。折り紙で作られた紙飾り。この人数んで分け合ったらそれで終わってしまいそうな小さなケーキ。

ツグミ「だから言ったでしょ、どうでもいいって。あんたの誕生日を祝うくらいの事、私達だってやってあげられるんだし、さ」

ダリル「…な、なんなんだよ、お前等は…」

ダリル「これだけで、僕の誕生日祝うとか…」

ダリル「ふ、ふざ…ふざけん、なよ…あぐっ…」

僕の想像していたものとは全然違ったけど。

その瞬間、確かに僕は。


幸せだった。



~パーティが終わって~

ツグミ「どうよ?落ち着いた?」

ダリル「…あぁ」

ツグミ「楽しかった?」

ダリル「……全然なっちゃいないよ!ケーキもプレゼントも全部安物だし、飾りは手作りだし…僕の誕生日を祝うんだったら劇団の一つでも雇えってんだ」

ツグミ「まぁ大目に見てあげなさいよ。今回のスポンサーはローワンだったんだから。あいつの安月給でこれ以上要求したら泣かれるわよ?」

ダリル「ふん!…でも」

ツグミ「ん?」

ダリル「…悪くは、なかったかな。




ありがとう、ツグミ」




ツグミ「…」ポカーン

ダリル「な、なんだよ、なんか言えよ」

ツグミ「…いや、びっくりしすぎて」

ダリル「だぁーもう!いいだろこの話は!」

ツグミ「むふふーそうね。いやーしかしいいもん撮れたわ」

ダリル「そうかy…おいちょっとまて、『撮れた』ってどういうことだ!?ちょ、おま、お前!今の撮ったのか!?

ツグミ「そりゃもうばっちり」b

ダリル「ふ、ふざけんな!消せ!消せよ!今すぐ!!」バッ

ツグミ「やだよー!べぇーっだ!」

ダリル「け、携帯か!それで撮ったんだな!よこせ!」グイッ

ツグミ「誰が渡すもんで…ちょ、近っとと」

トサッ

ダリル「…ぁ」

ツグミ「…ぇっと」





研二『●REC』

ダリル・ツグミ「ぐわあああああああああああああああ!?!?!?」

研二「あ、ばれちった」

ツグミ「あ、アンタいつからそこに!?」

研二「君らがくんずほぐれつ始めたあたりから。ちなみに僕だけじゃないよ」

エルミー「あ、ばらさないでよ。もうちょっと見てたかったのに」

ポー「あ、ポー達のことは気にしないで!」

ダリル「お、お前ら…」

ツグミ「こんのぉ!全員とっちめたるわぁあ!」グァ!

ローワン「なぁ、暇なら君たちも片づけ手伝って…はぁ、こりゃ無理かな」

ローワン(…でもま、いっか)

ユウ「と言ったところで、今回はここまで。

今回は、劇中でも実際にあった話、ダリル・ヤンのお誕生日イベントです。

え?誕生日は8月23日?実際はもう一月以上前、ですって?…ハハッ。

ところで、このダリル・ヤン、思いのほか言葉遣いが丁寧ですよね。

性格がアレなのであまりそういうイメージはないのですが、

育ちがいいせいか言葉遣いが乱れるということがあまりないのだな、なんてことを思いました。

それでは、また会う日まで。


乙!
集と綾瀬の絡みがみたい



綾瀬「『一泊二日、秋の紅葉狩りツアー?』」

ツグミ「そ、涯からのプレゼント。この前、エルミー戦で手伝ってくれたお礼だってさ」

綾瀬「…私、ほとんど何もやってないんだけど」

ツグミ「まぁ、でも元々はあやねぇがやる予定だったんだし…それに、もうあるものはあるわけだし…あげつっていうことならもらっちゃっていいんじゃない?」

綾瀬「…うーん」

ツグミ「涯だって、わざわざ用意したのに断られたらいい気はしないでしょ。おとなしく受け取っておきなよ」

綾瀬「………そうね、涯にありがとうって伝えておいて」

ツグミ「アイ!あ、ちなみにこれ5人分あるから、あと4人適当に誘っておきなよ」

綾瀬「あら、ツグミは来ないの?」

ツグミ「んー…なんか私は私で何か用意してくれてるらしいんだけど…教えてくれないのよねー。サプライズとかなんとか…」

綾瀬「…へぇー」

ツグミ「ん?何、嫉妬してんの?大丈夫!涯に限って、そういうアブナイ事になることはないって!」

綾瀬「い、いや別に、そういうわけじゃ…」

ツグミ「…!そっかー、そうだよねー…あやねぇの王子様は、今はもう…いっそ、あいつ誘っちゃったら?」

綾瀬「っ!誰が、あんな奴…!」

ツグミ「あっれぇー?私『あいつ』としか言ってないんだけどなー?…あやねぇ、今誰想像した?」

綾瀬「~~~!あぁもう!ツグミるっさい!」ブン!

ツグミ「おっと危ない。(ヒョイ)…ま、せいぜい楽しんできなよ!んじゃねー♪」

綾瀬「まったくもう…あの子はいつもいつも…」

綾瀬(…集を、か)



綾瀬「と、いうわけなんだけど…どう?」

祭「いいね!紅葉狩り!行こうよ、皆で!」

花音「そうねー…綾瀬さん、祭、私、それに楪さん…か」

いのり「…あと一人」

祭「あ、それなら縁川さんはどうかな?」

綾瀬「…誰だっけ?」

花音「あぁ、最近内に入会してきた子なんだけど…まだ打ち解けてない感じがあるのよ。丁度いいかもしれないわね。篠宮さん、いい?」

綾瀬「あぁ、あの子ね。もちろんいいわよ。これで丁度5人ね!」

花音「…ところで、桜満君は誘わなくてよかったの?」

祭「っ!?」
綾瀬「!!」
いのり「あ」

綾瀬「ななななななななななんであいつを誘うのよ!」

花音「だ、だって、ねぇ…」

祭「や、やっぱりこういうのは女の子同士の方がいいと思うな!ほら、集だって、男の子一人だと気まずいだろうし!ね!」

いのり「…集、来ないの?」ショボン

綾瀬「そ、そんな顔しないでよ…ほら、誰か一人外すっていうのもしたくないし…」

いのり「…うん」

花音「ま、しょうがないわよ。桜満君とはまた今度っていうことで、ね。詳しい日程とか、教えてもらえる?」

綾瀬「あぁ、うん」











花音「んふふ」ニヤッ

TRRRRR…TRRRRR…ガチャ

花音「あ、もしもし草間ですけど…」



綾瀬「時間ぎりぎりね…もうみんな来ちゃってるかしら…ってはぁ!?」

祭「あ、綾瀬さん、おはよう」

縁川「お、おはようございます…」

いのり「…あ、来たみたい」



集「あ、おはよう綾瀬」



綾瀬「な、なんであんたがここに!?」

集「あぁ、涯が、今度の休みを使って強化合宿しようって…でもまさか、皆と行先が一緒だとは思わなかったよ」

綾瀬「あ、あぁ、そういうことなの…?」

祭「うん!そうなんだって!私もびっくりしちゃった!」

いのり「…それにしても、委員長、遅い」

縁川「そう、ですね…誰よりも早くついてそうなものですけど…」

綾瀬「あれ、委員長まだ来てないの?」

祭「おかしいよね。花音ちゃん、今まで遅刻してきたことなんて一度も…(TRRRRR…)あれ、メール」
綾瀬「あ、私にも…」
縁川「すいません、私もです」
いのり「…」パカッ(無言で携帯を開く

送信者:花音
件名:楽しんできてね♪
本分:
用事があるので、私の分のチケットは桜満君に渡しておきました!
皆で存分に、 色 々 な 意 味 で楽しんできてね!

4人「……………」

3人「ええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

いのり「…?」

集「うわ!?突然何…?」


花音「ふふっ、今頃皆どうしてるのかしら」

谷尋「お前も、少し意地が悪いな」

花音「気が利くって言ってよ」

谷尋「そうとも言えるかもしれないな…ま」

ギュッ

花音「んぅ…///」

谷尋「どちらでもいいさ。これで…二人っきりだな、花音」

花音「ま、待って…もし潤君に見つかったら…」

谷尋「潤なら梟君と一緒に遊びに行くってさ。少し、気を使わせてくれたみたいでな」

花音「い、いいの?潤君と一緒にいなくて」

谷尋「大丈夫だ。何かあれば連絡が来るし、防犯ブザーも持たせた。暗くなる前には帰るようによく言い聞かせてあるし、いざとなれば携帯のGPSを使えば居場所は一発でわかる」

花音「…過保護」

谷尋「まぁな。けど、ここまですれば俺も安心してお前と二人っきりになれる」

花音「…谷尋///」

谷尋「…花音///」


※※※見せられないよ!※※※




綾瀬「ちなみにあんた、誰からそのチケット貰ったの?」

集「これ?委員長から、涯からだって言って渡されて…そういえば涯もいないね。先に行ってるのかな…?」

綾瀬(委員長ォ…一体何考えてんのよ…!)

祭(ど、どうしよう!?これってもしかしなくても大チャンス!?)

縁川(…も、もしかしてあんなことやこんなことな展開に!?)

いのり(そんなことよりおにぎり食べたい)

ブロロロロ…

集「あ、バス来ちゃった!どうしよう、委員長は…」

祭「あ、今のメールが花音ちゃんからで、自分は行けないからって」

集「あ、そうなの?」

綾瀬「どうやらそうらしいわ…置いていかれる前に乗りましょう」

集(…綾瀬、少し機嫌悪い?)

祭「…」

集「…」

祭(…ど、どうしよう。折角集の隣の席になれたのに、何話したらいいのかわからない。いつも私集と何の話してたっけ?うぅ、花音ちゃんが余計なこと言うから変に意識しちゃうよ…)

祭「ぁ、あの、集…?」

集「…」カクッ…カクッ…

祭「…集?」チョイチョイ

集「!」ビクッ

集「え、あ、ごめん祭!…何?」

祭「いや別に、何かあったわけじゃないけど…眠いの?」

集「ん…ちょっと、ね」

祭「そうなんだ…私の方こそごめんね、起こしちゃって」

集「いや、そんな…」

祭「眠いなら寝てなよ。このバス、目的地まで2時間くらいかかるらしいし…ついたら、そのときまたちゃんと起こすから」

集「あ、…そう?…ごめんね。じゃぁ、お願い」

集「ありがと、祭」

祭「う、うん…///」

集「ん……スゥー…ZZZzzz」

祭(もう寝ちゃった…そんなに疲れてたのかな?)

祭(…集とお話しできないのは寂しいけど、無理に起きててもらうのも悪いし…あれ?)

集「ZZZzzz…」

祭(これもしかして、集の寝顔覗き放題?)


祭「………」キョロキョロ

祭(うん、綾瀬さんも楪さんも縁川さんも、席の関係でここは見えない…はず)

祭「…ゴクッ」

祭(…ちょ、ちょっとくらい、いいよね…?)

祭「…」ジーッ

祭(…集の寝顔、可愛い…///)

キキーッ!

祭「キャッ!」

ドサッ

祭「び、びっくりしたぁ…いきなり」
集「祭?」

祭「はひゃぁ!?」ビクッ!

集(はひゃぁ…?)「あの、大丈夫…?」

祭「え、あ…うん。だいじょ…っ!」

祭(な、なんかこの体勢、私が集に抱きついたみたいになって…っ!!!)

祭「ごごごごめんなさい!お…起こしちゃった?」

集「そ、それくらい別にいいよ!……………それにしてもやわらかいな///」ボソッ

祭「え?」

集「え!?あ、いや!なんでも!なんでもないから!!!」

祭「あ…う、うん…?」

集「…ふぅ」



綾瀬「…祭、上手くやっているかしら」

綾瀬(…っ!…別に、羨ましいわけじゃ…ない!)

綾瀬(なのに…なんで、こんなっ…もやもやするのよ!)

?「あよっこいせ…おや、篠宮さん」

綾瀬「え?」

嘘界「どうも」

綾瀬「せ、嘘界先生!?ど、どうしてここに…?」

嘘界「それは勿論このツアーに参加するからですが…まさか、生徒と会うとは思いもしませんでしたよ」

綾瀬「え、あ、そうですか…」

嘘界「そんなに固くならないでください。私も、教師としてここに来たわけではありませんから、そんなに堅苦しいことは言いはしませんよ。お互い、この旅行を楽しみましょう」

綾瀬「あ、はい…」

嘘界「ところで、お一人ですか?」

綾瀬「あ、いや、他の友達…祭といのりと…あと、もとは委員長も来るはずだったんですけど…代わりに、集が。それに縁川雅っていう他のクラスの子も…」

嘘界「…なるほど。情報の通りですね」ボソッ

綾瀬「え?」

嘘界「苦労して時間を作った甲斐がありましたよ…ふふふ…ぐふふふふ…」ニタァ…

綾瀬「あ、あの…嘘界先生?」

嘘界「ジュルッ…おっとと、はい、なんでしょう?」

綾瀬「っ!」ゾワッ

綾瀬「…いえ、なんでも、ありません」



集「ここにもいない…涯ってば、どこにいるんだろ…ちょっと電話して…」TRRRRR…

ガイド「では、代表者名と人数をお願いいたします」

綾瀬「あ、はい。篠宮綾瀬、人数はえと、5人…?で、それで一人が急用で来られなくなると…」

ガイド「篠宮様…あ、ありました。篠宮綾瀬様、楪いのり様、校条祭様、縁川雅さま、それと…」



ガイド「桜満集様、ですね?」

『…は?』

集「え」

『えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?』


ガチャ

涯『よう、集。そろそろ来るころだと思っていたぞ』

集「ちょ、涯!どういうこと!?」

涯『あぁ。強化合宿というのは嘘だ』

集「え!?」

涯『お前は少し、体を酷使しすぎだ。健全なる肉体と健全なる精神のためには休息も必要。
というわけで、騙して悪いが、お前には無理矢理慰安旅行に言って貰うことにした』

集「あ、あぁ、そうなんだ…って、それはいいとしても!どういうことだよ!僕、なんでか委員長の代わりの枠に入れられてるんだけど!?」

涯『ちょっとしたサプライズだ』

集「ちょっとどころじゃないよ!」


綾瀬「あの、すいません。これって、一人につき一部屋あるっていうわけじゃ…」

ガイド「いえ、一団体様につき一部屋となっていますが…」

祭「も、もしかして…泊まる部屋も一緒!?」

縁川「こ、これは…///」

いのり(あのお土産おいしそう…)

集「ど、どうにかしてよ!涯!」

涯『はっはっはー』

集「はっはっはーぁ!?」

涯『ともかく、なんにしても、お前はそこで一泊二日の旅程を終わらせなければ帰って来れないだろう?そこには送迎バス以外の交通手段はないしな』

集「な、なんだって…!?」

涯『諦めろ。そして、選択し、適応するんだな』

ブチッ…

『………』

集「と、いうわけで…よろしくお願いします…?」


綾瀬「ずぇったいに無理!」

集「ダヨネー」

祭「で、でも…そしたら集はどうなるの?」

集「あの、すいません、他の宿泊先とか…」

ガイド「いえ、この辺りに宿はここだけで…ツアーのせいで部屋もすべて埋まっていますし…」

集「…最悪野宿かな」

縁川「そ、そんなの駄目です!危ないですよ!」

集「いやまぁ、かと言って、皆と一緒になんて…」

嘘界「でしたら、私の部屋に来ませんか?」

集「せ、嘘界先生!?どうしてここに!」

嘘界「いえいえ、偶然にも私もこのツアーに参加していたというだけの話ですよ。それでその話ですが…もしよろしければ、私の部屋に来てもよろしいですよ。桜満集君」

集「え、いいんですか?」

嘘界「もちろんですよ。5人まで泊まれるような大部屋を、一人で使うことに心苦しさすら覚えていたところだったのです。それに、あまり堅いことは言いたくありませんが、やはり教師としてもそのような状況を見過ごすわけにはいきませんし、ね」

嘘界「…ジュル」

綾瀬「っ!!!」ゾワワッ!

集「ありがとうございます!嘘界せ」
綾瀬「待って」ガシッ

集「…綾瀬?」

綾瀬「…」ジーッ

嘘界「…」ニコニコ

綾瀬「…いえ、結構です。先生に迷惑をかけるわけにはいきません」

集「あ、綾瀬!?何を言って…」

綾瀬「行きましょう、皆」

集「ちょ、綾瀬!待ってってば!」




嘘界「随分、嫌われたものですねぇ…桜満君が来てくれたらよかったのですが…」

嘘界「…ふふふ。しかし、これはこれで予定通り。さぁて、美少女4人に囲まれた彼は一体どんな行動に出るのでしょうねぇ…うふふふふ」ルン♪



集「なんで先生の提案を断ったのさ」

綾瀬「集、あいつには気を許さないで」

集「え?」

綾瀬「いいわね?」

集「え、でも…」

綾瀬「 い い わ ね ! ? 」ギロッ

集「はい!」ビシッ

祭・縁川「…///」モンモン

いのり「…お腹すいた」


集「荷物はこれで良しっと…で」

『……………』

(ど、どうしよう…)

集(い、勢いに押されて結局承諾しちゃったけど、これやっぱりまずいよね?)

綾瀬(今更出て行けとは言えないし…き、きまずい…)

縁川(これはもしかして、夜になったら…い、いやまさか…でも…///)

祭(しゅ、集に限って妙なことはしないと思うけど…いやでもむしろそれはしてもらった方が…な、何考えてるの私!これじゃぁ私、エッチな子みたいだよぉ…///)

いのり「…外」

4人『え!?何!?』

いのり「!?」ビクッ

いのり「外…行こ?紅葉、綺麗だから」

ユウ「といったところで、次回に続きます

今回は桜満集と彼に好意を持つ5人のヒロイン達とのやり取り、その一部を描かせていただきました。

…しかし、やはり人の恋路ほど面白いものはありませんね。存分に楽しんで書かせていただきました。

楽しみすぎて量が少々多くなってしまいましたので、分割2話という形を取らせていただきました。

>>474さんの要望である篠宮綾瀬との話は、また次回ということで…

では、また会う日まで


祭「わぁ…!」

縁川「本当に綺麗…」

綾瀬「…良い景色ね。来てよかったわ」

いのり「…~♪」

縁川「あ、上の方に、展望台があるみたいですよ?」

祭「ホントだ!あ、でも…階段が…」

綾瀬「…え?あぁ、いいわよ気にしないで。皆で行ってきて」

祭「でも…」

いのり「あ、じゃぁ集。私が車椅子を持つから、集は綾瀬を持って」

綾瀬「へ?」
集「え?」

いのり「お願い」ジッ

集「あ、うん、わかった」

グイッ

綾瀬「え、ちょ、ま…///」

縁川「…お姫様抱っこ」

祭「う、うらやま…っ!」


綾瀬「しゅ、集!いいって!こんなの…///」ジタバタ

集「あんまり暴れないでよ!危ないじゃないか!」

綾瀬「そ、そんなこと言ったって…ていうか、なんでこんな軽々と持ち上げられるのよ!私、そんな軽くないわよ!?」

集「え?そうかな。十分軽いと思うけど…」

綾瀬「ぇ…///」キュン

綾瀬(…そういえば、こいつ、見た目にはわからないけど、腕とか結構がっしりしてるし…胸板も結構厚…ハッ!)

綾瀬(何堪能してるのよ私は!あぁもう!それもこれも全部集のせいよまったくもう!)

綾瀬(初めて会った時にはなんか気弱そうな奴だって印象だったのに…命は助けられるし、たまにこういう風に良いかっこするし、無自覚なのか知らないけど時々きゅんと来るような言葉を言うし、今じゃ体もすっかり男らしく…って)

綾瀬(だぁから何考えてるのよ私は!もういい加減にしてぇ!)


集「ついたよ、綾瀬」

綾瀬「…這って上った方がまだマシだったかもしれないわ」グデー

集「え、ごめん!何か運び方まずかったかな…?」

綾瀬「…いいわよ。何でもいいわ…もう」

ツグミ「いやーお熱いことで、お二人さん」

いのり「あ、ツグミ」

綾瀬「え、なんであんたがここに!?」

ツグミ「はろー、いのりん祭っちあやねぇあと集に…あなたは、はじめまして?」

縁川「あ、えと、縁川雅と言います」ペコリ

ツグミ「アイアイ、みやびんね。よろしく!」

縁川「(み、みやびん…?)よ、よろしくお願いします」

祭「ツグミさん、なんでここに?居たなら声かけてくれたらよかったのに…」

ツグミ「いやぁー、声かけるよりも見てた方が楽し…ゲフンゲフン、皆楽しそうだったから声かけづらくてさ」


綾瀬「あんたも涯にチケットを貰って…?」

ツグミ「うん、まぁね。…余計なのもつれてくることになったけど」

綾瀬「?」

ダリル「おいちんちくりん!」

縁川「…あの人は?」

綾瀬「涯の言ってたサプライズってもしかして…」

ツグミ「…はぁ、何よ」

ダリル「勝手にどっか行くなよ!探すこっちの身にもなれってんだ!」

ツグミ「なーにー?ダリルお坊ちゃまは独りじゃ散歩もできないんですかぁ?」

ダリル「部屋のカギ持ってるのお前だろうが!お前にはぐれられたら僕は旅館の部屋に入れないんだよ!」

ツグミ「だぁーもういちいち怒鳴らないでようっさいわねぇ!」

いのり「…仲、良いね」

ツグミ・ダリル「良くない!!!」


祭「皆!こっち来て!」

縁川「どうかしたんですか?」

祭「景色!すっごい綺麗だよ!」

いのり「…本当に、綺麗」

集「…そうだね」

綾瀬「一面紅葉一色…壮観ね」

ツグミ「上ってきてよかったでしょー?…お姫様抱っこも経験できて一石二鳥だね、あやねぇ♪」

綾瀬「ッ!ツグミィ!」ダッ!

ツグミ「にゃっははー!」ヒョイ

祭「あーもう、またあの二人は…」

集「ははは…」


集「じゃぁ、そろそろ降りようか。晩御飯の時間ももう近いし…」

いのり「晩御飯…!」ジュルリ

集「じゃぁあ綾瀬…えっと…」

綾瀬「…やっぱり降りもよね…はぁ」

祭・縁川(う、羨ましい…とは、言えない…)

綾瀬(正直ちょっと役得とか思ってる自分を殴りたい…)



綾瀬「…にしても」

集「何?」

綾瀬「本当に随分とたくましくなったわね、あんた。いつから人一人軽々と持ち上げられるような筋力付けたのよ…」

集「あぁ、夏以来、結構頑張ってるからね。…まだまだ足りないけど」

綾瀬「あの涯がストップをかけるくらいだもの。むしろ頑張りすぎてるくらいなんじゃないの?」

集「…でも、涯や姉さんに追いつくには、まだ足りないよ…全然…」シュン

綾瀬「…」

ベチッ

集「痛っ!?なんでぶつの!?」

綾瀬「あんたは欲張り過ぎなのよ。たった数か月くらいの努力であんなのに追いつけるわけないでしょう!」

集「うっ…」

綾瀬「焦る必要なんてないから、自分のペースでしっかり進めばいいのよ。頑張りすぎて体壊したら、元も子もないんだから」

綾瀬「それに…あんたには、あんたなりのょ…良さが、あるんだから…さ」

集「…」

綾瀬「…な、何よ。人の顔じっと見つめて…」

集「あ、いや…綾瀬の言うとおりだと思って…だから」



集「…ありがとう、綾瀬」



綾瀬「~~~…だからそういうのやめなさい!///」ドン!

集「ちょ」グラッ…

綾瀬「っ!しま」

ドンガラガッシャン!

いのり「!」ダッ

祭「二人とも!大じょ…あ」
縁川「け、怪我は…あ」

集「いっつつ…僕は、なんとも…」

もにゅん

綾瀬「…っっっ!!!///」グッ

集「い、言い訳を」
綾瀬「問答無用!」











綾瀬「こんのど変態がぁぁぁあああ!!!」   バ チ ☆ コ ー ン 











――旅館の部屋――

いのり「…集、大丈夫?」

集「う、うん、だいじょぶ」

いのり「…本当に?」

集「なんともないって!ホントに、大丈夫だから…」

綾瀬「…集、ちょっと来なさい」

集「え…」

綾瀬「いいから!」

集「は、はいぃ!」

タタタ…

集「えと、なんでしょう…?」

綾瀬「そんなに怖がらなくてもいいわよ。怒ってるわけじゃないから」

集「あ、そう…なの…?」

綾瀬「…あんた、本当に大丈夫なの?」

集「いや、本当になんとも…」

綾瀬「あんた、あのとき咄嗟に私を庇ったでしょ」

集「うっ…な、なんで」

綾瀬「そりゃ気づくわよ。階段から転げ落ちたっていうのに、私には傷一つないんだもの。運が良かったって考えるより、あんたが庇ってくれたって考える方が自然でしょ?」

集「…」

綾瀬「救急箱くらいなら持ってきてるわ。怪我したところ出しなさい」

集「え、でも」

綾瀬「さっさとしなさい!」

集「は、はいです!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

綾瀬「…終わったわよ」

集「うん、だいぶ楽になったよ。ありがとう」ニコッ

綾瀬「…っ///べ、別にお礼なんて言われる筋合いないわよ!私を庇ったせいであんたが怪我したんだし…これで、貸し借りなしだからね!わかった!?///」

集「う、うん…わかった。ありがとう、綾瀬」

綾瀬「だからお礼なんて///…あぁもう!どうしてあんたはいつもそうやって…///」

集「…?」



縁川「晩御飯、美味しかったですね」

祭「うん!えーっと、この後は、何かあったっけ?」

集「後は、温泉くらいかな」

いのり「温泉…♪」

綾瀬「あ、そういえば鍵はどっちが持ってた方がいいのかしら…?」

集「鍵?」

綾瀬「…あんたと私達、お風呂で別れるでしょ?片方は、もう片方が持ってくるまで入れないことになるじゃない」

集「うーん…僕は、やめておこうかな。傷に染みるとまずいかもしれないし…」

綾瀬「…っ」

集「確か、部屋にも簡単なシャワー室くらいあったよね?僕はそれで済ませることにするよ」

祭「え、でも…」

集「いいからいいから、皆で楽しんできて!ね?」





綾瀬「…」ザプン…

祭「綾瀬さん?」

綾瀬「あ、いや…今頃、集はどうしてるかなって…」

いのり「…あれは、集が自分で選んだこと。綾瀬は気にする必要、ない」

綾瀬「いのり…でも、私のせいで、集が…」

縁川「…あの、いのりさんの言うとおりだと思います。集さんは、『楽しんできて』と言っていました。ですから…」

綾瀬「…うーブクブクブク…」

いのり「ふにゅー…」ダラーッ

ツグミ「お、皆さんお揃いで!」

祭「あ、ツグミさん!」

ツグミ「こんにちは、はれっち!…ふぁー…気持ちいい…」ダラ-ッ


ツグミ「…」チラッ

綾瀬「…」たぷんたぷん
祭「…」たぷんたぷん
いのり「…」ちゃぷちゃぷ
縁川「…」ぺたーん

ツグミ「大きさではあやねぇと祭っちのツートップ…あーでもいのりんとみやびんも肌艶では負けていない…うーん、やっぱりこういう時は男子の意見が気になりますなぁ…うへへ」

綾瀬「…アンタは何ジロジロ見てんだこらぁ!」ブン!

ツグミ「おっと(ヒョイ)…そぉれ!」ガシッ

綾瀬「ぁん///」

ツグミ「うーん、良い声…どうせ女湯だしぃ…恥ずかしがらなくてもいいのよーあやねぇ…」モミモミ

綾瀬「悪ふざけもいい加減に…///」

ツグミ「おっと殴られるのは勘弁!」ピュー!

綾瀬「ツグミィ!待ちなさい!」バシャバシャ

ツグミ「にゃっふふー!」バシャバシャ

祭「ふ、二人とも!他のお客さんに迷惑だから…ね?」

いのり「ふにゃー…」ダラーッ

縁川「…う」

ザバァ…

いのり「あれ、もう出るの?」

縁川「えぇ…もう、のぼせちゃいそうなので…」

いのり「ん、わかった」


縁川「ふぅ、あっつい…」

ギィ…

集(タオル一枚)「あ」

縁川「え」

集「え、あ、縁川さん!?なんでこんな早く!?」

縁川「あ、えとあの、その、あ、…ふぁ…」オタオタ

集「ご、ごめん!今すぐ着るから、ちょ、ちょっとだけ外で待ってて!」

縁川「は、はいぃ!」

バタン!

縁川「あわわ…見ちゃった///」




コン、コン<もういいよ

縁川「し、失礼します」

集「…う、うん」

縁川「…」

集「…」

縁川・集(気まずい…!)


縁川・集「あの」

縁川・集「…」

集「へ、縁川さんから…どうぞ?」

縁川「あ、ありがとうございます。あの…集さんに聞きたいことがあるんですけど…」

集「な、何かな?」

縁川「なんで私の事、苗字で呼ぶんですか?」

集「え?」

縁川「だ、だって、他の皆さんは、全員名前で呼び捨てにしてますよね?」

集「…縁川さんとは、知り合ってそんなに経ってないし、あまり、いきなり親しげにするのって、慣れてなくて」

縁川「…そうなんですか。あの、じゃぁ、特に理由があるわけじゃ、ないんですよね?」

集「うん、そうだけど…」

縁川「そ、それなら私の事も、み、『雅』と呼んでいただけないでますでしょうか!?」

集「お、落ち着いて?なんか、口調が変だよ?」

縁川「え、あ、…すいません…」ショボーン

集「い、いや別にいいけど…で、でも…いいの?本当に」

縁川「はい!もちろん!」

集「えと、じゃぁ…雅、さん」

縁川「…」シュン

集「…雅」

雅「!…はい!」パァ

集「…なら、僕の事も集でいいよ。それに敬語も…同級生なんだし」

雅「え、でも…は、恥ずかし…///」

集「いや、別に嫌ならいいんだ!無理強いは僕だって嫌だし…」

雅「い、嫌なわけじゃないんです!でも…えっと…じゃぁ…集」

集「うん、ありがとう」ニコッ

雅「…えへへ///」

集「…あはは」



雅「…あ、その浴衣、持ってきてたの?」

集「え?あぁいや、これは、この部屋に置いてあったんだ。旅館からのサービスみたいで…」

雅「そんなものが…」

集「興味があるなら、着てみる?僕、部屋の外で待ってるから」

雅「え、でも…いいの?」

集「いいよ別に、それくらい」

雅「じゃ、じゃぁ…ちょっとだけ」

集「うん。それじゃ」

スタスタスタ…ガチャ、ギィ…バタン!



雅「えーっと…ここを…あれ?」

雅「ど、どうやって着るんだろう…あ、そういえば、浴衣着るときって下着を外す、とか…」

雅「…///」




シュル…パサッ…

雅「よ、よし!それで…えーっと…あれ?あれれ?」

雅「も、もうなにがなんだか…紐も絡まってきてるし…きゃっ!?」



集「…雅、結構時間かかってるな…着方が分からないのかな?」

<キャッ!?ドン!

集(!?…悲鳴!それに今の音…!)

集「雅!大丈夫!?」ガチャ








雅(かなりあられもない姿)「ぁ…」

集「…え」

雅「きゃぁぁぁぁぁああああああ!!!///」

集「あ、ごごごごめん!!!」

バタン!

集「…やっちゃった」ズーン

ひゅん!

集「あいて!?」ゴツン

集「え、なになに!?…あ」



綾瀬「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

祭「あの、集?何が、あったの?」

いのり「…綾瀬、コーヒー牛乳投げちゃダメ。危ない」

ツグミ「…」ニヤニヤ

集「…話を」
綾瀬「聞かない!!!」

ドゴォ!



集「」チーン

雅「す、すいません!紛らわしいことを…」

祭「しょ、しょうがないよ。誰だって悲鳴くらい上げるって!そんなことがあったら…」

綾瀬「…」メソラシ

いのり「…綾瀬、お詫びのコーヒー牛乳、もう一個買って来たら?」

綾瀬「う…」

祭「ま、まぁ、今回は集にも非がないとは言えなくもないような気がしないでもないし…」

雅「あんまり気にしても、集が逆にそれを気にしちゃうと思いますから…」

いのり「うん」

綾瀬「…そ、そうかもしれないけど…ん?今何か…違和感が」

雅「え?」

ツグミ「…みやびんって、集は呼び捨てにしてるの?」

雅「あ」

綾瀬「…ま、まさか何かあったの!?」

雅「い、いやそういうわけじゃ…」

祭「本当に!?本当に何もない!?」

雅「え、えっと…」

やんややんや…………

いのり「…集、起きない」

集「」チーン


祭「…じゃぁ、本っっっ当にお互いに呼び捨てするようになっただけなのね!?」

雅「そ、そうですぅ…」

綾瀬「…そ、そうなの。あ、ごめんなさい!なんだか、責めるような感じに…」

雅「あ、いや、大丈夫ですから…」

雅(…でも、こんなに必死になるなんて…校條さんも篠宮さんも、もしかして集の事が…?

雅(でも、そんなこと聞けないよね…うぅ)

いのり「…」チョイチョイ

集「」チーン

綾瀬「あ…それで、どうする?」

祭「え?」

綾瀬「いやだから…一緒に寝るの?こいつと…///」

雅「ぁっ…///」

祭「それは…///」

ツグミ「あぁそうそう!それで相談があって来たのよ!」

いのり「相談…?」


ガチャ

ダリル「あ、お前どこ行ってたんだよ!鍵閉められないから、僕ずっとこの部屋の中で過ごす羽目に…」

ツグミ「あーはいはい。じゃこれ鍵ね」スッ

ダリル「は?あ、おう」

ツグミ「であとついでに…これっ!」

ドサッ

集「」チーン

ダリル「は?」

ツグミ「あ、私あやねぇの所行ってるから。さて、私の荷物持ってかないと…」

ダリル「え…あ、ちょ、待てお前!一体どういう…」

ツグミ「んふふー…なぁにぃ?私と一緒に寝たいの?」ニヤッ

ダリル「なっ!?…そ、そんなわけあるか!馬鹿ァ!さっさとどっか行け!」

ツグミ「アイアーイ♪」ピュー



ツグミ「と、言うわけで!一晩お世話になりまーす♪」

綾瀬・祭・雅「…」(微妙な表情)

ツグミ「…いやまぁ、集と一緒に寝れなくて残念なのはわかるけどさぁ…」

祭・綾瀬・雅「そんなんじゃないってば!(ない!)(ありません!)」クワッ

ツグミ「そ、そう…?んじゃまぁとりあえずお話ししようよー♪女子会よ女子会!当然一晩オールでね!」

いのり「…ふぁ」コクッ…コクッ…

ツグミ「あれ、いのりんもうおねむ?」

いのり「…規則正しい生活をしろって…涯が」

ツグミ「涯が言うなら仕方ないね。んじゃ、お休みいのりん」

いのり「ん…お休み…zzzZZZ…」

綾瀬「…私達も寝ましょう。いのりが寝てる傍であまり騒ぐわけにもいかないし」

祭「私も、夜更かしって得意じゃないし…」

雅「あ、なら私も…」

ツグミ「えーお話ししようよー折角だしさぁー。たとえば…集の話とか」

綾瀬・祭・雅「!」ビクッ

ツグミ「へっへー…これで全員目も覚めたでしょ?」

祭「うぅー、ツグミちゃんの意地悪っ…」

綾瀬「………」

ツグミ「あやねぇ、無理して寝なくてもいいんだよー?」

綾瀬「…」プイッ

雅「…私、ちょっと聞きたいです。集の、話…///」

ツグミ「お、ノッテくるねぇ…じゃぁ、思う存分語り明かすとしましょうか!」




~その頃隣では~

集・ダリル「…」

集・ダリル「…」

集・ダリル「…」

集・ダリル「…」

集・ダリル「…」

集・ダリル(…誰!?)

集「えっと…桜満集です」

ダリル「あ…だ、ダリル・ヤンだ」

集・ダリル「…」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雅「…で、そのとき集のから揚げを貰ったんですけど、それが凄くおいしくて…私の作るものよりも」ズーン

祭「え、えっと、今は集のお姉さんが作ってるから…」

ツグミ「いやでも、確か料理では…というか家事全般に関しては集の方が上だって聞いたよ?」

雅「…」ズーン

祭「…うん、まぁ、そっち系のスキルで集に勝つのは難しいよ…うん」ズーン

綾瀬「勝負できるだけ祭や雅はまだマシよ!私なんて、料理したことすらないもん…」ズーン

ツグミ「…ははは」

綾瀬「何よ、笑うなら笑いなさいよ。好きなだけ嗤えばいいじゃない。この無様な私の姿を…」

ツグミ「どんだけ卑屈になってんのよ、あやねぇ…いやそうじゃなくて、すっかり仲良くなっちゃったね、ってさ」

祭「そういえば…そうだね」

ツグミ「あやねぇとはれっちだって、こんな風に話すようになったのは最近でしょ?みやびんに至っては、出会って一月くらい?」

雅「…ですね」

ツグミ「それが、いつの間にかお布団かぶって皆でガールズトークする仲になるなんて…と思ったらおかしくってさ!」

綾瀬「…言われてみれば、確かにそうかも」

ツグミ「ホントよ!ましてあのあやねぇが…ねぇ…ぷっ」

綾瀬「ど、どういう意味よ!」

雅「…ふふ、なんかこういうの、楽しいですね」

祭「…そうだね、縁川さん」
ツグミ「ツグミちぇーっく!」ビシィ!

祭「え?なに?」

ツグミ「はれっちとみやびん他人行儀すぎ!ここまで来たんだし、普通に名前で呼びなよ!」

雅「え…」

祭「そ、それはなんか…恥ずかしい、し…」

ツグミ「えーい乙女かおのれらは!」

綾瀬「いや、実際乙女でしょうが」

ツグミ「そんくらいの事で恥ずかしがっててどうすんのさ!ほらほら!」

祭「え、えっとじゃぁ…これからよろしく、『雅』、『綾瀬』」

雅「こ、こちらこそ…『祭』、『綾瀬』」

綾瀬「えぇよろしく!『祭』、『雅』!」

祭・雅「…///」

綾瀬「…確かにちょっと、恥ずかしいかも…あはは///」




ツグミ(にしても皆、お互い一人の男を奪い合う『ライバル』だってこと、忘れてそうだなぁ…)

いのり「zzzZZZ………」



~その頃~

集「へぇー可愛いね、この猫」

ダリル「ま、まぁな!どうしてもっていうなら、今度ローワン家に僕が連れて行ってやるぜ?」

集「え、いいの?」

ダリル「あ、あぁ…」

集「ふふっ、楽しみだなぁ…僕の家ってマンションだから、ペットって飼ったことなくて…」

ワキアイアイ…

ダリル(なんか…こいつって…普通に良い奴?)

集(ダリル君って結構いい子だなぁ…)







嘘界「残念ですねぇ…もっと狼狽える桜満君を見たかったのですが…仕方がありません。今回はこれで引き上げるとしましょう」

嘘界「さて、帰ったら早速、桜満君のシャワーシーンがきちんと撮れているか確認を…」

ユウ「といったところで、今回はここまで

最近寒くなってきましたね。我が家でもとうとう炬燵が仕事を始めました。

しかし、最低温度でも少々暑いくらいで、かと言って完全に消すとそれはそれで寒いという…どうにも、悩みどころです。

そんなところで今回のお話。

今回は桜満集とサブヒロインたちの恋愛模様描き、そしてサブヒロイン達の友人関係を構築する回となりました。

やはり人の恋路ほど見ていて楽しいものはありません。そうは思いませんか?

え?サブヒロインが居るのにメインヒロインが居ないと?

…ははっ。

と言って誤魔化すのも今日まで。

とうとう、今まで空気やメインヒロイン(笑)と言われてきた楪いのりにスポットが当たる!?

では、また会う日まで。

~オマケ~

翌日早朝・温泉

集「ふぅー…」ホッコリ

集(やっぱり来たからには一回くらい入っておきたいよね…一晩寝たら傷もだいぶふさがったみたいだし、あんまりしみないな。)

集「来てよかったー…」グデー…

嘘界「おや、奇遇ですね」

集「あれ、嘘界先生!先生も朝風呂に?」

嘘界「えぇ、まぁ」

集「………」

嘘界「………ハァ、ハァ」

集「ん?」

嘘界「はい?」キリッ

集「あ、いやなんでもないです」

嘘界「そうですか」

集「………」

嘘界「………」ススッ

集「あれ?」

嘘界「何でしょう?」

集「…少し、近づいてきてません?」

嘘界「…?そんなことはありませんが…」キョトン

集「…ですよね、すいません。変なこと言って…」

嘘界「いえ、気にしてませんよ」

集「………」

嘘界「………」グッ

ガララッ

ダリル「あ、あっれー?あんたも来てたんだ。奇遇ジャン!」

集「ダリル君!君も来たんだね。あれ、テーブルの上に一応書置き残しておいたんだけど…見なかった?」

ダリル「へ、へぇー。そんなのがあったのかー。ぜんぜんきづかなかったよー。」

嘘界「…」ニコニコ

ダリル(う、あいつもいるのか…なんとなくこいつって苦手なんだよな)

嘘界(…うーむ、惜しかった)


いのりパート待ってた

祭パートもみたい

ツグミかわいい

思ったんだけどさ、集の名前の由来って茎道の下の名前から取ったんじゃね?

乙 次回も楽しみです。


次の更新も楽しみです


集「ガッハァ!」ドグシャ!

涯「ふぅ…これで、十本目だな。アルゴ」

アルゴ「おう、タイムは1時間28分44秒…しっかしすげぇ成長ぶりだな。前は一時間で百本は取られてるぞ」

涯「ふん、だがまだ足りないな…だろう、集」

集「コヒュー、コヒュー、…げほっ」

涯「返事もまともにできないか…」

アルゴ「十回も叩きつけられりゃぁこうもなるわな…いや、意識あるだけまだましだと思うべきか?」

涯「…まぁいい。適当に休んだら着替えておけ。今日はここまでだ」

集「はぁ、はぁ…へ?」



涯「でだ、集。この後お前には頼みがある」

集「頼み?そりゃもちろん構わないけど…珍しいね、君が頼み事なんて」

涯「む、まぁ…な」

集「…?」

涯「それでその内容なんだが…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

集「えぇ!?」

涯「なんだ、嫌なのか?」

集「い、いやってわけじゃ…ない、けど…」

涯「なら、やってくれるな?」

集「…わかったよ」




いのり「じゃぁ、行ってきます」

涯「あぁ、気を付けてな。いのりのことは頼んだぞ、集」

集「…う、うん///」ドキドキ




涯『そろそろ冬に備える必要が出てくる時期だろう?だが、いのりの奴はあまり冬服を持っていなくてな』

涯『いつもなら俺が行くところなんだが、今日は俺も用事があって行く事が出来ない』

涯『あまり悠長にしていると本格的に寒くなってしまうし、かと言ってあいつを一人で行かせるのには不安がある』

涯『そこで…お前に行ってもらおうというわけだ』

集「…って聞いてるけど…どこか、いきつけのお店とか、あるの?」

いのり「…」フルフル

集「…もしかして、ノープラン?」

いのり「…集に任せろって、涯が」

集「…が、がんばります」



集「で、とりあえず街中にまで来てみたけど…」チラッ

いのり「…?」クビカシゲ

集「えっと…いのりは、いつも服を買うときはどうしてるの?」

いのり「涯に連れてきてもらって…あとは、勘で」

集「か、勘…?」

いのり「…」コクッ

集「じゃぁ…その辺の服屋さん、適当に覗いてみようか」

いのり「うん」


集「どれがいいかな…?」キョロキョロ

いのり「…」テクテク

集(うーん、そういえばいのりの私服姿ってあまり見たことないんだよな。会うときは大体制服だし。夏休みのときくらい?でも、冬服を買うっていうのに夏服参考にするのもなぁ…)

集(…今着てる服は)ジーッ

いのり「…?」ジーッ

集「…///」

集(む、無理!いのりをじっと見つめるとか無理っ!///)

集「い、いのりさんは…」

集(はっ!こ、ここでいのりに聞くのはありなのか?いわゆるこれは、「デートの主導権を女性に任せる甲斐性なし」なんじゃ…ま、待て僕!そもそもこれはデートなのか?僕は単純に涯の代わりに来ただけだし、でも、二人っきりで服を買いに来るとか完全にカップルだよね?いや、別に僕たちは付き合ってるわけじゃないんだし…)モンモン

「…」

集「うん?」チラッ



集「気のせいかな…?ってあれ、いのりは!?」


いのり「こっち」

集「え、あぁ、ごめん、ちょっと考え事、を…」

いのり「…どう?これ」

集(…真っ白で、もこもこで…なんというか、これは…凄く…)

集「もふりたい…」ボソッ

いのり「ん、何?」

集「へぁ!?あ、うん、良いと思うよ!凄く!///」

いのり「わかった。じゃ、着替え直してくる」

集「うん、待ってる」

いのり「…」シャッ

集「…あ、危なかった…ん?」

カーテンの向こう<スルスル…パサッ…

集(アーアーキコエナーイ…///)モンモン



いのり「…どうしたの?集」キョトン

集「…お願いだから気にしないで///」

いのり「…?」



いのり「…」ガサゴソ

集「…」キョロキョロ

いのり「…むーん」

集「…」チラッ

いのり「…違う」プイ

集「…」ガサゴソ

いのり「…!」ピコーン

集「あ、良いの見つかった?」

いのり「うん、着替えてみる」

集「わかった」

集(…これ、僕居る意味あるんだろうか…?)


集「ん…」

集(これ、いのりに似合いそう…かも)ジーッ

いのり「…集、こういうの、好き?」

集「え!?あ、いや…その…」

いのり「…嫌い?」

集「そ、そんなことはないよ!」

いのり「わかった…じゃぁ、これも買う」

集「…え?あの、着てみたり、とか…」

いのり「…」フルフル

集「でも…」


いのり「だって、集の選んでくれたものだから」


集「…」

いのり「じゃぁ、買ってくるね?」タタタッ…

集(…落ち着け、落ち着くんだ、僕!///)ドキドキ




集「っていのり、お金はあるの?」

いのり「涯から貰ってる」つカード

集(…流石です、涯)




四分儀「む」

大雲「どうかしましたか?」

四分儀「いえ、私の決め台詞を取られたような気が…」

大雲「はい?」



集「ふぅー…これで、いいのかな?」

いのり「うん」

集「…そっか」

集(なら、もう帰るのかな…そうだよね。元々、僕は涯の代わりに買い物に着いてきただけだったんだし…)

集(でも、できるなら…もう少しだけ…)

いのり「じゃぁ、集」

集(でも、そんな我が儘は…言えない、よね)



いのり「次はどこに行く?」


集「…え?」

いのり「?」

集「えと、買い物は、終わったんだよね?」

いのり「…」コクッ

集「ほかに、何か欲しいものがあるの?」

いのり「…」フルフル

集「…???」

いのり「買い物が終わったら、後は集と好きなだけ、遊んできていいって、涯が」

集「!…もしかして」

集(…変だと思ったんだ!涯が僕に頼み事なんて…涯の目的は、最初から…)

集「はぁ…まったく。いつまでたっても僕は涯の掌の上、か…」

いのり「?」

集(でも今だけは…)

集「それじゃぁ…おやつでも食べに行かない?」


~クレープ屋~

集「アムアム…」

いのり「ハムハム…」

集・いのり「おいしい」ホッコリ

集「はは、よかった。気に入ってもらえて。ここ、何度か姉さんと来たことがあってさ」

いのり「…真名と?」

集「うん。よく、こういう風に姉さんの買い物に付き合って…その帰りに」

いのり「…」

集「…いのり?どうかした?」

いのり「ん…なんでもない。はむ…」



~デパート~

いのり「…このカップ、可愛い」

集「金魚のイラスト?…いのり、金魚好きなの?」

いのり「…うん」

集「それなら確か、あっちのアクセサリー店の方で、金魚をモチーフにしたのを見たことがあるけど…」

いのり「本当?」

集「うん、随分前に、祭の買い物に付き合って来たときに見て…まだあるかどうかはわからないけど…」

いのり「…祭」

集「うん?うん、そう。祭と来た時に…それで、見に行く?」

いのり「…いい」トボトボ

集「…?」


~とある並木道~



いのり「…綺麗」

集「そうだね…この前行った山も凄かったけど…」

いのり「…もしかして、ここにも誰かと来たことあるの?」

集「え?あぁ、いや」

いのり「…」ホッ

集「ただ、綾瀬が時々散歩に来るらしくて、ここの紅葉も綺麗だって…ってあれ、いのり?」

いのり「…」スタスタスタ

集「ちょ、いのり?どこに行くの?ねぇ、待ってよ!」タタタッ



いのり「…」ムーン

集「え、あの…お、怒って…る?」

いのり「…」ムーン

集「うっ…」

いのり「…集」

集「は、はい!なんでしょう!?」

いのり「一緒に来て」

集「…?」ビクビク


~町はずれの高台~

集「…えっと、ここに、何が…?」

いのり「見て」

集「え?…わぁ!」

いのり「…どう?」

集「綺麗だよ、凄く!」

いのり「よかった…ここは、私のお気に入りの場所なの。自分の住んでいる街を見渡せるところ。心が苦しいときは、よくここに来るの」

集「あ…ご、ごめん、僕が怒らしちゃったから…」

いのり「ち、違う。そうじゃないの」

集「え?」

いのり「…ただ、私は…集との思い出が欲しかったの。私と集との…二人だけの思い出が」

集「…いのり」

いのり「今日一日、集と一緒にいれて楽しかった。でも、集は、他の女の子の事を想ってた」

集「へ?」キョトン

いのり「…」ジトーッ

集「え、あ、いやそんなことは…」

いのり「クレープ屋は真名との思い出。デパートは祭との思い出。並木道は綾瀬との…」

集「うっ…」

いのり「…友達を大事にするのは大切なこと。それはわかってる」

いのり「でも、それでも…どうしても、心が苦しかったの。だから、ここに来たかった」

集「そう、だったんだ…」

いのり「ね、集」

集「え…何?」

いのり「聞いてくれる?私の歌を。今、この場所で」

集「…うん!喜んで!」

いのり「…」ニコッ

~♪



集「日も、落ちちゃったね」

いのり「…うん」

集「うぅ、寒っ…流石に今の時期、日も落ちちゃうと…」

いのり「…なら」

集「え?」

ギュ

いのり「こうすればいい」

集「え、あ、あの、こ、これ…って」

いのり「温かい、ね///」

集「…うん///」








嘘界(いやはや、若いですねぇ。手をつなぐだけであんなに顔を真っ赤にして…)

嘘界(え?いつから私が居たかって?それは勿論最初から…具体的には、>>526における謎の気配の正体は私です。楪さんと桜満君の初デートの一部始終、全てカメラにおさめさせていただきました)

嘘界(そんな彼らも、もう帰路に着き…ふむ、別れ際にキスの一つくらいしてもいいと思うのですが、「さようなら」の一言でお別れですか。まぁ、その辺のヘタレ具合も彼らしいですがね。最後まで手を繋いだままにするくらいが、今の彼の限界ですか)

嘘界(さて、では楪さんと別れを惜しみながらもかと言って道を戻る勇気も持てない彼の如何とも表現しがたい顔を思う存分撮り終えたら、私も退散するとしましょう。…ジュルリ)

ユウ「

嘘界=ヴァルツ・誠落ちが段々定番になってきたところで、今回はここまで。

メインヒロインの面目躍如、もう空気なんて言わせない。

今回は楪いのりと桜満集のデート回。如何でしたでしょうか?

ちなみに、次回はどうやら恙神涯と桜満真名が何やら企んでいるようですが…?

そんなところで、複数のレスがついたようなので久々にレス返しを…

>>516
お待たせして本当に申し訳ありません…。

>>517
どうかご勘弁を。この上でまた新たに校条祭パートをつくろうものなら、メインヒロイン(笑)が冗談でなくなってしまうので…

>>518
アイ!

>>519
そ の 発 想 は な か っ た 。 そう考えてみると面白いかもしれません…。ただ、シュウイチロウと桜満集には直接の接点はほとんどないんですよね…

>>520>>521
ありがとうございます。次回も頑張らせていただきます。


では、また会う日まで…。



涯「…全員集まったようだな」
真名「…全員集まったようね」

集「…」

いのり「…」

祭「…」

綾瀬「…」

雅「…」

ダリル「…」

ツグミ「…」

エルミー「…」

ポー「…」

スクルージ「…」

キャロル「…」

プレゼント「…」

谷尋「…」

潤「…」

梟「…」

花音「…」

研二「…」

難波「…」

数藤「…」

亞里沙「…」



 涯「それではこれより、学園祭出店、執事喫茶『葬儀社』、開店だ!」
真名「それではこれから、学園祭出店メイド喫茶『あぽかりぷす』、開店よ!」




集「じゃぁ、早速料理の準備始めておくね!」

涯「あぁ、頼む」

スクルージ「俺はどうする?念のため、着替えて店に待機しておくか?」

涯「いいや、シフトは午後からだろう?せっかくの祭りだ、少しくらい楽しんで来い」

梟「うぅ、なんか…恥ずかしい」

潤「こんなの似合わないよぉ…」

谷尋「大丈夫だ。需要はある」グッb

ダリル「…」プルプル

研二「そんな緊張しなくても大丈夫だよー所詮学祭なんだしさー」

ダリル「は、はぁ!?僕が緊張とかするわけないじゃん!」プルプル

研二「なら、いいけどね」

難波「で?涯。俺たちはもう行っていいのか?」

涯「いや、もう少し人が集まってからでいい。…頼んだぞ」

数藤「はっ!任せとけっての!」



真名「はいはーい!早速始めるわよー!」

いのり「…あの」

真名「何?いのりちゃん」

いのり「…恥ずかしがってる人が、数名」ビシッ

祭・雅・綾瀬・花音「…///」

真名「もう、大丈夫よ皆可愛いから」

花音「だ、だってこれ…露出多すぎないですか?」

雅「あ、足がすーすーする…///」

綾瀬「…こんな服、今まで一度も来たことないもん///」

プレゼント「全く君たちはだらしがないなぁ…淑女を名乗るならそれくらい許容したまえよ。むしろぎりぎりまで見せてそしてそれを快感に感じるくらいの度胸を…」

キャロル「いやそれ変態じゃん」

祭「ぷ、プレゼント先輩はいいじゃないですか!そっちの服だから…そ、それにこれ、油断すると…ぶ、ぶらが」

プレゼント「………それは嫌味かな?あまりにも未発達すぎてブラすらつけられない僕に対しての…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

祭「え」

エルミー「うっそ、あなたブラまだなの?」

ポー「ポーですらつけてるのに…」

プレゼント「なん…だと…?」

亞里沙(…お気の毒に)


~時は遡り~


真名「そういえば、しばらくしたら学園祭ね」

キャロル「あーもうそんな時期かぁ…ねぇねぇ、このクラスって何か出し物するの?」

亞里沙「いいえ、もうすぐ卒業だから勉強に集中したいという人が多くて…」

スクルージ「なるほど」

プレゼント「まぁ、学生の本分は勉強だからね。それも致し方ない…」

エルミー「ていうかナチュラルに混ざってんじゃないわよ。あんた他クラスじゃないの」

ポー「そんなこと言ったらエルミーも他クラスだし、ポーなんか他クラスどころか他学年だけどねー」

涯「…興味があるのか?学園祭に」

キャロル「ん?まぁ、色々あってそういうのに関わる機会がなかったからねー」

涯「ふむ…ならば、参加してみるか?」

スクルージ「?…出し物はないんだろう?」

涯「このクラスでは、な…」



涯「邪魔するぞ」ガラガラ

集「あ、涯。…もしかして、学園祭の?」

涯「もうできているか?」

集「大体は…あとは、素材を撮ってそれを含めて微調整すれば…」

涯「十分だ」

颯太「…あれ、なんかいっぱい来た?」

キャロル「おっじゃまっしまーす!」

スクルージ「ここはなんだ…?」

プレゼント「それで…説明してもらえるのかな?」

涯「まぁもう少し待て…来たか」


難波「ここか…一体何の用なんだ、涯…あ!?」

集「あ」

雅「!」ススッ

真名「あら」

数藤「お、おい…このメンバーはまずいんじゃないのか…?」ヒソヒソ

難波「…だ、大丈夫。ここに呼んだのは涯だ。いざとなったらあいつに全責任を押し付ければ…」


ツグミ「ちょっとちょっと、入り口で止まらないで。邪魔よ」

数藤「あぁ!?なんだこの…」
難波「待て」

数藤「何で止めるんだよ!」

難波「よく見ろ」

ダリル「ごちゃごちゃくっちゃべってんなよ!早く退け!」

難波「理事長の息子だ。逆らわん方がいい」

数藤「!…こりゃ、失礼」ススッ

涯「…これで集まったな」



涯「お前達に集まってもらったのは他でもない。今度の学園祭に向けて俺は前々から『ある計画』を推し進めていた」

涯「計画もすでに最終段階…そこで、お前達が必要だ。どうか力を貸してほしい」

スクルージ「計画?」

涯「そう」



涯「俺は今度の学園祭で、『執事・メイド喫茶』を開き、この学園祭最優秀店舗の座を手にする!!!」



難波「…は?」

キャロル「メイド喫茶!?おっもしろそー!やるやる!やらせて!」

スクルージ(…また面倒なことになりそうだ)

数藤「い、いや、最優秀店舗はともかくよ…なんで、『執事・メイド喫茶』?」

涯「周りをよく見てみろ」

数藤「ん?」キョロキョロ

涯「これだけレベルの高い人材が居て、むしろ『執事・メイド喫茶』以外の選択肢がありうるか?否だ!!!」キリッ

梟「かっこいいです、涯!」キラキラ

花音(ダメだこの子早く何とかしないと)

涯「ここに集まってもらったお前達は、俺の目で以て、この学園有数の美男美女と断定された者達だ!お前達と力を合わせて出店を行えば、必ずや学園祭最優秀店舗の座を勝ち取ることができると確信している!」

涯「だからどうか頼む!」





涯「皆の力を…貸してほしい」










真名「お断りするわ」



涯「!?」

集「ね、姉さん!?どうして…」

真名「んふふー…だって、こんな面白そうなことを、誰かの指示のもとでやるなんて、もったいないじゃない?」

涯「…何?」

真名「こうしましょう?これだけ人数が居るんだもの。男子と女子に分かれて、二店舗出すことも可能。なら、私が女子チーム代表として、あなたが男子チーム代表として…どちらが最優秀店舗の座に座るのか…」

涯「それを競って勝負すると?…なるほど、確かにそれは面白い」

真名「なら決まりね!覚悟しておきなさい、トリトン!本気になった私は、ちょっと凄いわよ!」

涯「受けてたとう。俺はいつものようにいつもの如く、勝利をこの手におさめるだけだ」

真名-バチバチバチ-涯




祭「…あ、あの、お二人で火花を散らしているところ悪いんですけど、これって強制参加なんですか…?」

いのり「…真名に立ち向かう勇気があるなら、降りてもいい」

雅「む、無茶言わないでくださいよぉ…」

谷尋「どうする、潤?嫌なら兄ちゃんが断ってくるが…」

潤「う、うん…でも、ちょっと僕も…興味、ある…かも///」モジモジ

谷尋「任せろ全力でサポートする(潤可愛い)」キリッ

ユウ「

といったところで、短いですが本日はここまで。

最近私用で少々立て込んでおりまして、そのせいであまり余裕がなかったのです。どうかご勘弁を…。

なのでこの後書きコーナーもこれにて閉めさせていただきます。

では、また会う日まで

ユウ「

皆さんに残念なお知らせがあります。

先週の更新の際伝え忘れていたのですが、明日から4日間に渡る『研修旅行』なる行事が始まります。

そのため、今週は更新できません。

たくさんのレスと期待をかけてくださったにもかかわらず、それに背くことになってしまい、申し訳ありません。



客A「…凄まじい眺めだ」

 _____________________

|←メイド喫茶「あぽかりぷす♪」  |
|     執事喫茶「葬儀社」→   |
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





~メイド喫茶「あぽかりぷす」・店内~ 


エルミー「おかえ…あら、あなた同じクラスの」

客B「ど、どうも(うはぁ、やっぱエルミーさんエロい)…」

エルミー「…視線がやらしいわよ?」

客B「あ、い、いやその…///」

エルミー「ふふっ、安心して。それくらいで怒るほど私は狭量じゃないわ…でも、じっくり見た分、注文してくれるとありがたいわね」

客B「ど、努力します…」


花音「…うぅ///」

谷尋「そんなに恥ずかしがるなよ…」

潤「可愛いよ、お姉ちゃん!」

花音「や、谷尋君も、そう思う…?」

谷尋「あぁ可愛いぞ、委員長」

花音「…むぅ」プクー

谷尋「…花音」

花音「うん!それじゃ改めまして…」

花音「お帰りなさいませ、ご主人様!」

潤(いい笑顔だなー)ポエー

谷尋(…いかん、新しい性癖に目覚めそうだ)ゾクゾクッ


ポー「お帰りなさいませ、ご主人様!」

「「「…」」」ジーッ

ポー「…?」

同志A『ロリですぞ!完全無欠のロリですぞ!』ヒソヒソ

同志B『その上褐色…大変よろしいと思います』ヒソヒソ

同志C『ハァハァ…褐色幼女hshsしたいお』ヒソヒソ

同志A『なりませぬぞ同志C!我々はあくまで紳士、「Yesロリータ、Noタッチ!」の精神を忘れては…』ヒソヒソ

同志B『同志Aの言うとおりですな。無論、この極上のつるぺたむっちり褐色幼女をhshsprprだっこぎゅーしたいのは我々も同じ…しかし!』ヒソヒソ

同志C『う、うむ、そうでござるな…しかしそれにしてもレベルの高い幼女…流石、キドケン殿の情報には外れがないでござる』ヒソヒソ

ポー(なんだろ、ポーのこと見ながらずっとひそひそ話してるけど…まぁ、いっか)

ポー「では、ご案内いたします、ご主人しゃま…あ、噛んじゃった…えへへ///」ニコニコ

同志A(可愛い)

同志B(天使)

同志C「結婚したい」



~メイド喫茶「あぽかりぷす」・厨房~

亞里沙「正直、学園祭でメイド喫茶はどうかと思っていたけど…思いの外盛況なようで安心したわ」

真名「ええ!でもまだまだこんなもんじゃないわよ…」

亞里沙「…ねぇ、やっぱり私達は『これ』で出るの?」

真名「うん。あら、もしかしてメイド服の方が良かったかしら?」

亞里沙「そんなことは…」

亞里沙(ちょっとだけ、あったりするけれど)

真名「…なんだかごめんね、亞里沙」

亞里沙「いいのよ、こちらのほうが似合っているという自覚はあるから」


キャロル「ねぇねぇ!そろそろきつくなってきたから、人員増やしてくれる?」

真名「む、思いのほかいいペースね…よし!では…」

真名「バトラー部隊、出撃!」


亞里沙「了解したわ」

プレゼント「…不服だよ、とてもね」


~メイド喫茶「あぽかりぷす」前・廊下~

客C「ねぇねぇ、次どこ行くー?」

客D「んー、この執事喫茶って…」


プレゼント(E:執事服)「お嬢様、お疲れでしたらこちらへどうぞ」ニッコリ

客C「あ…///(い、イケメン!)」※女です

客D「あれ、でも、ここメイド喫茶…」

プレゼント「ふふっ、その通りですが…見ての通り私のような執事も居るのですよ。いかがでしょう?」

客C「い、いいんじゃない…?」

客D「うん…入ってみようか」

プレゼント「ありがとうございます、 お嬢様」


亞里沙(はまり役ね…あの笑顔の裏で、どれだけ憎悪の炎を燃やしてるかと思うと、素直に喜べないけれど)


~数日前~

真名「うーん…似合わないわねぇ」

亞里沙(E:メイド服)「…」

祭「なんというか…人に媚びるっていうのが似合わないんじゃないですか?」

雅「それに…背が高いから、でしょうか?どうしても、こういうふりふり感たっぷりの服装は…」

キャロル「後あっちも問題だよねぇ…」

プレゼント「…何が問題なのかな?」ゴゴゴゴゴゴ…

エルミー「いや問題しかないでしょ。胸余りすぎて…これちょっと屈んだら中見えるんじゃないの?」

プレゼント「別にいいじゃないか」シレッ

ポー「え、いいの?」

花音「いいわけないじゃないですか!まず間違いなく苦情が来るか罰則が付きますよこんなの認めたら!」

真名「そうよねぇ…うーん、何かいい案は…あ」

いのり「何か、思いついた?」

真名「ちょーっとねぇ…えーっと(ピピピ…トゥルルルルル…ガチャ)あ、集?もうコスプレ用の服って…うん、あるのね?じゃぁ…」

~   ~

亞里沙(それにしても…メイド服、そんなに似合わなかったかしら)ズーン

客E「み、見て。あれ、生徒会長じゃ…」ボソボソ

客F「噂には聞いてたけど、本当にやってるんだ…」ボソボソ

亞里沙「お帰りなさいませ、お嬢様」ニッコリ

客E「あ、えと…」

亞里沙「…ふふふっ、そんなに緊張なさらないで。折角の学園祭なんですから、思いっきり楽しみましょう、ね?」ニコッ

客F「…は、はい!お姉さま!」

亞里沙(お、お姉さま…?)「では、こちらへどうぞ」


キャロル「おかえ…あ」

スクルージ「…よう」

キャロル「なーにースクルージ…私のメイド服姿でも見に来た?」

スクルージ「そんなわけあるか」

キャロル「そんなこと言って…ほーれほれ、ちらっとめくれば見えそうだよー?」パタパタ

プレゼント「そんなことするくらいならこうやってすっかりめくってしまえばいいのに」バサッ

キャロル「いっ!…ぷ、プレゼントォ!!!」ブン!

プレゼント「なんだいなんだい、自分からめくって見せる癖に他人にめくられると怒るのかい?それはちょっと理不尽というものじゃ…」ヒョイ

キャロル「もうお前は○ね!」ブン!

スクルージ(…見ちまったじゃねーか///)

客B(きゃ、キャロルさんの…白!)

同志A・B・C(感謝しますぞ、見知らぬ貧乳少zy)
プレゼント「ふん!!!」

ドグシャァ!

亞里沙「ちょ、プレゼントさん!一体何をして…」

プレゼント「こいつらが何か失礼なことを考えているような気がしたのでね」

亞里沙「何をわけのわからないことを…あ、申し訳ありません!なんとお詫びをしたらいいのか…」

同志A・B・C『ご心配なく。我々の業界ではご褒美です』キリッ

亞里沙「…は?」



~執事喫茶「葬儀社」・店内~

ガラン…

涯「…」

集「…人、来ないね」

涯「…」

ダリル「おいどうすんだよ!このままだと負けちまうだろうが!」イライラ

涯「…問題ない。想定の範囲内だ」

ダリル「想定の範囲内!?これがかよ!」ダンッ!

梟「…メイド喫茶のほうでは、一部の女子に執事役をやらせているみたいですね…ただでさえ少ない女性客を、あちらに取られてしまってる…」

涯「安心しろ。何のために、数藤と難波の二人を外に行かせたと思っている」

集「そういえば、あの人達色々言ってたのに、今日はやけに素直だよね…一体何をしたの?涯」

涯「…」


~~~

難波「断る。なんで僕等が君に協力しなければいけないんだ」

アルゴ「あぁん?」ギロ

数藤「ひっ!」ビクッ

難波「ななななんだ?暴力に訴える気か?ふ、ふん!それが人にものを頼む態度か、涯!」プルプル

アルゴ(別にそんなつもりじゃ…)ズーン

集「あ、アルゴ…元気出して、ね?」

アルゴ「うん…」

涯「勘違いするな。そんなことはしない…場所を移そう」


涯「何故、俺がお前達を選んだと思う?」

数藤「ハァ?んなもん俺らが知るかよ」

涯「お前達が、俺が認める数少ないイケメンの一人だからだ」

難波「…信用できないな。適当な事言って、僕等を利用しているんじゃないのかい?」

涯「ふん、それならもっと扱いやすい奴を選ぶ。…一度しか言わんから良く聞いてくれ」

涯「今まで数多くの偉業を達成してきた俺だが…」

難波(前置きの時点でイラッとするな)

数藤(まぁでもただの事実だけどな)

涯「しかし、そのせいか皆俺にへりくだるばかりで俺を追い越そうとする野心を持つ奴はいない…そんなことを考えるのは、お前達 『 だけ 』 だ」

難波「…僕達…だけ?」ピクッ

涯「厄介な 『 ライバル 』 というものは、時に味方よりも心強い働きをしてくれる」

数藤「ライバル…」ピクッ

涯「俺はお前達の存在を最も警戒していると同時に、お前達の能力を最も信頼している」

難波・数藤「…」

涯「だからこそ、俺は数ある候補の中から、迷わずお前達を選んだんだ」


難波「…ふん、そうやって僕達を焚き付けるからには相応の見返りはあるんだろうな?」

涯「もちろんだ。このプランに関わる直接関わる人間は10人。この10人に報酬として渡す金額の割合だが…平等になどと野暮なことはしない。お前達にはそれぞれ売り上げの2割を渡そうと思っている」

数藤「へぇ…」

涯「もちろん、お前達が加わってくれれば、渡せる額は 『 格段に 』 増すだろう…どうだ?」

難波「…いいだろう。僕達のライバルである君が、他の誰かに負けるなんて…そんなの気に入らないからね」キリッ

数藤「今回ばかりは協力してやんよ…あの桜満真名に目にもの見せてやるさ」キリッ

涯「…ありがとう」







涯(チョロイ)

~~~

涯「頼んだのさ、誠心誠意…な」

集(絶対嘘だ…)


~学園・廊下~

数藤「こんちはー!」

客G「え、あ…なんですか?」

数藤「いや、実はさ、執事喫茶っていうのやってるんだけど、興味ない?」

客G「執事喫茶…?」

数藤「そーそ!あ、料理もうまいから、お腹が空いたときに来てもらってもいいよ?」

客G「は、はぁ…」


難波「と、いうわけなんだけど、どうかな?」

客H「えー執事喫茶ですかー?」

客I「どうする?行く?」

難波「内の学校でもトップクラスのイケメンたちが、君たちを誠心誠意もてなしてくれるよ」

客H「へぇー…じゃ、気が向いたら行ってみよっかなー」

難波「ありがとう、君たちが来てくれるのを、楽しみにしている」



<ガララ

涯「お帰りなさいませ、お嬢様」ニッコリ

客G「あ、えっと…ここ、軽食もとれるって聞いたんですけど…」

涯「はい、メニューはこちらになります。お決まりになりましたら及びくださいませ」


涯「忙しくなるぞ、心の準備をしておけ」ボソッ

梟「は、はい!」
ダリル「?…あぁ」

涯(…さぁ、そろそろ反撃と行こうか)


<すいませーん!

梟「はーい!今お伺いしますー!」トコトコ

研二「申し訳ございません、ただいま大変混雑しておりまして…」

集「はいこれ!2番テーブル!あぁ、注文がどんどん溜まっていく…」

涯「お帰りなさいませお嬢様…ご注文をお伺いいたします…」シュバババババ

ダリル(あいつ早っえぇ…)


客J「すいませーん」

梟「はーい!」

トコトコトコ…

梟「ご注文はお決まりですか?お嬢様!」ニコニコ

客J「…」ジーッ

梟「…あの、お嬢様?」クビカシゲ

客J「はうー!お持ち帰りー!」ギュッ

梟「へ!?あ、あの…///」

客J「くぁいいよくぁいいよぉ~…」スリスリ

梟「が、涯ー!助けてくださーい!///」

涯(…もうちょっとだけ見ていよう)


客K「ほ、本当にここで働いてたんですね、ダリル様…」

ダリル「あ?お前誰」

客K「え」

研二「同じクラスの子だよ…なんで覚えてないのさ」

ダリル「あ、そうなのか?」

研二「はいこれ、持ってってあげて。それと、敬語と笑顔。客商売なんだから、そんな態度じゃダメでしょー?」

ダリル「あ、あぁ…」

ダリル「(え、笑顔…?)お、お待たせいたしました、お嬢様…」ギギギ

客K「え、えと、ありがとうございます…」オソルオソル


研二「ちょっとー、笑顔ひきつりすぎじゃない?お客さん怖がってるよー」

ダリル「るっさい!しょうがないだろこんなことしたことないんだから!」

研二「でもそんな調子じゃぁツグミに勝てないよ?」

ダリル「ぐっ…」

研二「このままじゃ、またダリルの戦績に黒星が増えることになるかなぁ」ヤレヤレ

ダリル「っ…あぁもう!愛想よくやればいいんだろ!やってやろうじゃないか!あいつにできて僕にできないわけが…」

研二「おーおーやる気だねー。でもそんな殺気立った状態で接客に行かないでよね」



キャロル「…むー、段々暇になってきたね」

エルミー「そうね…お客をすっかりあっちに取られちゃったし…」

キャロル「残ってるのは…」


ポー「…」ジーッ

同志A「…食べたいでござるか?」

ポー「え、でも、ポーまだお仕事中だし…」

同志B「他に人もおらぬでござるし、一口くらい大丈夫でござるよ」

ポー「え、えっとじゃー…あーん」

同志C「!?」

同志A「あ、あーん」

ポー「あむ…おいしー!」

同志C「ず、ずるいでござるよ同志A!このようなパーッフェクッツ!なロリにあーんプレイなど…」

同志B「ぽ、ポーたん?拙者ゼリーも一口いかがでござるか?」

同志C「同志B!き、貴様までも…」

ポー「あーん…」

同志C「くっ、拙者は何故一口分残しておかなかった…すまぬ!オーダー追加を求むでござるよ!」

花音「はーい!今お伺いします!」

同志A「おやおや同志C。大丈夫でござるか?財布ポイントはすでにほとんど0では…」

同志C「か、帰りに一駅分あるけばなんとか…それだけの価値があるでござるよ。一口目をポーたんに与えれば残りのデザートはポーたんのあーんに使ったフォークで食べることに…」

同志B「そこに気付くとはやはり天才か」

ポー「うまー」ホクホク


エルミー「…ごめん花音ちゃん、私に行かせてもらえる?あとついでにあそこの三人しばいてくるから」



研二「お待たせいたしました」スッ

客「これは…!」

客「い、いただきます!」

パクッ

客「「おいしい!」」テレレテッテレー!


涯「…大盛況だな、集」

集「うん!もう大忙しだよ!」

涯「の、割には楽しそうだな」

集「ははっ、まぁね!…よっと!やっぱり、自分の作った料理をおいしいって言ってもらえるのが、最高の喜びだからね!」

涯「…そうか。よし、そろそろこっちも手伝おう。昼飯時で、人の出入りも多くなってきた」

集「え、でも接客は…?」

涯「これ以上客を呼び込んでも、今の人員じゃ捌ききれんだろう。料理と配膳に専念しよう」



真名「やっぱり完全に流れを保ち続けるのは無理だったか…」

亞里沙「…集君の力、かしらね」

真名「でしょうね。あの子の料理の腕は本物だから。集の料理は、そこらのファミレスなんて目じゃないくらいおいしいのよ」


涯(そして味だけじゃない)

涯(店を開くのに必要な設備一式を学校から借り入れられるこの学園祭という環境…)

涯(かかった主な費用は、店内の装飾、食材、執事服のレンタル代程度…)

涯(その結果、高品質の料理を低価格で提供することが可能となる)


亞里沙「あなたも、最近は料理をしてるって聞いてるけど…」

真名「そんなの、一朝一夕でできたら苦労しないわよ…うぅ、普段私に力をくれる集が、敵に回るとここまで恐ろしいだなんて…」

真名「…ともかく、一旦お昼休憩!その後はメンバー交代よ!まだまだ学園祭は終わらないわ、気を引き締めていきましょう!」

ユウ「

といったところで、今回はここまで。

…えぇ、一回で終わりませんでした、学園祭編。来週は後半戦となります。

それと、名前の件は申し訳ありませんでした。途中で気づいて入れたのですが、途中数レスが名無しとなっていましたね。

まぁ、酉なんてつけなくともこんなところでわざわざ乗っ取りをする方がいるとは思いませんが…。

おっと、そうそう実は先週報告させていただいた研修旅行の件ですが、ハリー・ポッターで有名なあのユニバーサルスタジオジャパンに行ってきました。

中でも特にコースター系のアトラクションに乗りまして…非常にスリリングな体験をさせていただきました。

ただ、待ち時間が本当に長く…あの寒空の下で震えながら待つことに…。

なので、もし皆さんが行くときは、エクスプレスパスを買っていくとよいでしょう。費用に見合うだけの効果は、この僕が保障いたします(露骨な宣伝)

来年には「モンスターハンター」、「バイオハザード」、「エヴァンゲリオン」、「進撃の巨人」などのアトラクションも追加されるそうです。楽しみですねぇ。

…それにしてもこの「進撃の巨人」、凄まじい成り上がりっぷりですね。主人公は同じ声なのにこの差は一体…。

こほん。少々最後が愚痴っぽくなってしまいましたね。申し訳ありません。

では、また会う日まで。

ストーリーを裏付けるのに必要な設定が足りなかったんでしょうか。個人的にギルクラの方が好きなんですが



真名「さぁ!午後も張り切っていくわよー!」ビシッ!

いのり「おー」(無表情)
祭「お、おー///」(照れ)
綾瀬「おー…」(仏頂面)
雅「う、うぅ…」(臆病)

プレゼント「…明らかに、配分間違えていないかい?」

亞里沙「見事に接客に不向きな面々が偏ったわね」

真名「い、いやぁ、色々調節したらこういう形に…」

プレゼント「なんで調節した結果がこれなんだい…?」

真名「こ、細かいことは気にしない!さっきまでお客は取られちゃってたけど、それもお昼時のピークを過ぎれば落ち着くはず!まだまだ挽回は可能よ!改めて、えい、えい、おー!」

『おー!』



涯「着替えたか?」

スクルージ「…少しきつい」

涯「一番デカいサイズでそれなんだ。悪いが我慢してくれ」

潤「ど、どうかな?兄さん。どこかおかしくない?」

谷尋「大丈夫だ。似合っているぞ、潤」

潤「え、えへへ…///」

涯(…正直寒川潤と梟の二人をメイド服で出そうと割合真面目に検討していたが…ま、言うまい)

集「もうお客さん入れていい?」

涯「あぁ!開けてくれ!」


~その頃~

颯太「…お、アルゴ!」

アルゴ「ん、颯太か」

颯太「今暇?よかったら一緒にあぽかりぷす行こうぜ!今ちょうどいのりちゃんがメイド服になってるはずだし…うへへ」

アルゴ「まったくお前は…ま、暇なら一緒にいっても良かったんだが…ほれ」

颯太「ん?…『臨時風紀委員』…?」

アルゴ「涯から頼まれてな。多分、手が足りなくなるだろうから、手伝ってやってくれってさ」

颯太「あーそっか。休憩とかは?」

アルゴ「今ちょうど終わったところだ」

颯太「あちゃー…もう少し早く声かけりゃよかったな」

アルゴ「つーわけで俺は行けん。他の奴誘ってくれや」

颯太「…誘えそうな奴は皆葬儀社で働いてるんだよ」

アルゴ「…なんか、すまん」

颯太「いや、そりゃ俺だって自分がイケメンだって思うほどうぬぼれちゃいねーけどさ…ここまでくっきりハブられると流石に応えるわぁ…」ズーン

アルゴ「…ま、月並みな言葉だが、人間は中身だろ?そう落ち込むこたぁ…」ポンポン

<ちょ、ちょっとやめてください!

アルゴ「!」ピクッ



数藤I「いいジャン別にー。暇何でしょ?ここであったのも何かの縁だしさぁ…」

トントン

難波I「あ?何…」



アルゴ「ちょいと着いてきてもらおうか…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

難波・数藤I「」



<え、いや、ちょ…

<ったく、楽しい楽しい祭りに水を差しやがって…

<ま、待ってくれ!お、おれたちまだ死にたく…

<安心しろ。ちょいときついお灸据えるだけだ。

<イーーーヤーーー!!!

颯太「やっぱ、眼トばす時のアルゴは怖ぇなぁ…」



スクルージ「…お帰りなさいませ、お嬢様」

キャロル「暗っ!?暗いよスクルージ!」

スクルージ「なんだ?テンションを上げていい笑顔で接客する俺を見れるとでも思っていたのか?」

キャロル「いやまぁ全くそんなことはないんだけど」

スクルージ「…(他人に言われると腹が立つな)」

キャロル「どれにしよっかなー♪」

スクルージ「…そういえば、着替えたんだな」

キャロル「ん?あぁうん。あれを着たまま動き回るわけにもいかないしね。…なーにー?もしかしてもっと見たかったの?」ニヤニヤ

スクルージ「ッ…///」プイッ

キャロル「…スクルージ?」

スクルージ「ご注文は?」

キャロル「え?」

スクルージ「 ご 注 文 は ? 」ズズイッ

キャロル「あ、えーっとじゃぁ、これを…」

スクルージ「かしこまりました、お嬢様」スタスタスタ

キャロル「…」


キャロル「…何よ、もう///」








[壁]_・)プレゼント「…」



潤「あ!?」バシャ

客H「きゃっ!」

客I「ちょっと、何すんのよ!」

潤「あ、ご、ごめんなさい!」
谷尋「申し訳ございませんお嬢様!こちらタオルでございます」ササッ

客H「あ、はい…」フキフキ

集「大変失礼いたしました。こちらのゼリーを一品サービスさせていただきますので…もしご希望であればこちらでクリーニング代を建て替えさせていただきますが?」

客H「い、いや、まぁ、洗濯すれば大丈夫だし…」

集・谷尋「ありがとうございます、お嬢様」ペコリ


潤「ご、ごめんなさい、二人とも…」

集「どんまいどんまい。次から気を付けよう」

谷尋「まぁ、多少の事はフォローしてやるから安心しろ」

潤「う、うん!ありがとう!」パァー

集・谷尋(可愛い)


涯「…」←フォローしようと思ったけどその必要がなくてやや手持無沙汰気味

研二(涯がフォローすることすらできないとは、流石の天使っぷり…寒川潤、恐ろしい子!)



ツグミ「あら」

ダリル「ふーん、意外と似合ってんじゃん。ちんちくりんのくせに」ニヤニヤ

ツグミ「…お還りなさいませ、ご主人様」

ダリル「おい、言葉に悪意を感じるぞ」

ツグミ「気のせいではございませんか?」メソラシ

ダリル「ふん、まーいいや。メニュー頂戴」

ツグミ「こちらでございます」スッ

ダリル「んー…じゃぁショートケーキ一つ」

ツグミ「かしこまりました」

綾瀬「そうそう、実は+100円であーんのサービス!っていうのを始めたんですけど、どうですか?」ニコニコ

ツグミ「ちょ、あやねぇ!?」

綾瀬「ふふん、普段私をいじって遊ぶ罰よん♪」

ダリル「へぇ!おもしろそうだね!じゃぁそれも」ニヤニヤ

ツグミ「くっ、この…」ギリギリ

真名「はいはいツグミちゃん、笑顔笑顔!あ、これご注文の品ね?」スッ

ツグミ「ぐっ…お、お待たせいたしました、ご主人様」ヒクヒク

ダリル「はいよっ…っと。じゃ、よろしくねー」

ツグミ「…」スッ

ダリル「…」ジーッ

ツグミ「あ、あーん」スッ

ダリル「…っ///」

ツグミ「…何照れてんのよ」

ダリル「だ、誰がッ!」

ツグミ「ほら、ならさっさと口開けなさい」


ダリル「…あーん///」

ツグミ「…///」

パクッ


真名「いやぁ…初々しいわね」ホッコリ

亞里沙「仕事をなさい」ガンッ!

真名「あいた!?」


谷尋「おかえりなさ…あ!?」

嘘界「こんにちは、寒川君」ニコニコ

谷尋「せ、嘘界、先生…」

嘘界「ふふ、私が来るのがそんなに意外でしたか?」

谷尋「え、えぇ、まぁ…」

嘘界「まぁ、似合わないという自覚はありますがね。さて、どこの席に座ればよろしいでしょうか?」

谷尋「あ、はい。こちらになります」


集「こんにちは、嘘界先生」

嘘界「こんにちは、桜満君」

集「先生でも、こういうところ来るんですね」

嘘界「えぇまぁ…桜満君達が参加していると聞いたので…それに、料理も天下一品だと聞きましたよぉ?ねぇ、シェフ?」

集「はは、期待に添えればいいんですけど…こちら、ご注文のコーヒーになります」

嘘界「ありがとうございます…では…ゴク」


嘘界「おぉ、これは…いいですね」

集「ありがとうございます!」

嘘界「ふむ…しかし、意外と執事服が似合いますね、桜満君」

集「そ、そうですかね…?」

嘘界「えぇ…ジュル」

集「ん?」

嘘界「はい?」

集「…あ、もう仕事に戻りますね!」

嘘界「はい、頑張ってください」

スタスタ…………パシャッ

集「ん?」

嘘界「ズズーッ…ゴクッ…おや、まだ何か?」

集「いえ、なんでもないです。………気のせいかな?」




嘘界(これでコレクションがまた増える…むふふ)



<現時刻を以て、学園祭は終了となります!皆さん、速やかに片づけを始めてください!


『終わったぁ…』グデー

真名「はい、皆お疲れ様」

いのり「…(片付か片づけ…)」ガサゴソ

真名「あ、片付はいいから、いのりちゃんと祭ちゃんと綾瀬ちゃんと雅ちゃんの四人は、葬儀社の方に行ってくれる?」

祭「え?なんで…」

真名「いいからいいから!」ニコニコ




綾瀬「…はぁ」

祭「どうしたの?綾瀬。溜息なんかついて…」

綾瀬「いや、はやくこの服着替えたかったのに…って思ってね」

雅「綾瀬は、この服特に嫌がってたものね…でも、だからってお客様投げ飛ばすのは…」

綾瀬「あ、あれはあっちが悪いのよ!客だからって調子に乗って…」

いのり「でも、あれが颯太じゃなかったら、一大事だった」

綾瀬「う…わ、わかったわよ。今度から気を付ける」

雅(魂舘さんって、昔からこんな扱い…?)


祭「それにしても、何で私達だけこっちに回されるんだろ?」

雅「人手の問題でしょうか?確か、こっちの方が人数的には多いはずですし…」

綾瀬「涯がわざわざ私たちに頼るようなことがあるとは思えないけど…いのりは?何か聞いてない?」

いのり「特に何も…開けるね?」

ガラガラ



集「お帰りなさいませ、お嬢様」ペコリ

いのり「あ、集」

祭「え、集!な、なんで集が!?」

集「いや、僕も良くわからないんだけど…皆をもてなすようにって姉さんから言われてて…ま、とりあえず入って」


集「ていうか、なんでみんなそのままなの…?」

綾瀬「そのままって…ッ!!」

いのり「…メイド服?」

集「う、うん…着替えてくればよかったのに…」

綾瀬「だ、だって真名先輩がそのまま行けっていうから…///」

集「まったくもう、姉さんは…はぁ」

祭「あの…変、かな?///」

集「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど…ただ、ちょっと…目のやり場が…あ、あははは…///」

雅「…///」

綾瀬「…変な気ィ起こしたら殴るからね」

集「うっ、す、すいません…」ショボン

いのり「…」


雅「あの、他の皆さんは…?」

集「皆は他の団体の手伝いに行ってる」

綾瀬「ちょ、ちょっと待って。じゃぁ、ここの片づけは一体だれが…」

集「ここの片づけはもう大体終わってるよ?」

綾瀬「え、でも内装とか、結構凝ってたような気がしたけど…あれ全部片づけたの?」

集「うん、あれだけ人数が居れば、あれくらいは10分で終わるって。ははは」

祭(…多分、8割がた集がやったんだろうなぁ)

集「じゃぁ、ちょっと待っててね。すぐ持ってくるから」



集「どうぞ、召し上がれ」コトッ

祭「これって…」

集「ここで作ってたデザート。自信作なんだ」

雅「あの集さんの…自信作」

綾瀬「よくできてるわね…お店のみたい」

いのり「…ゴクリ」

祭「それじゃぁ、いただくね、集」

パクッ

『おいしい!』

集「…よかった、喜んでもらえて」ニコッ




涯「…」

真名「あら、愛する義妹が誰かに取られるのが不満?」

涯「ふん。あいつなら問題はないさ…お前こそ、どうなんだ?その辺りは」

真名「まーねー…淋しくないと言えば嘘になるけど…前みたいに、『あの薄汚い泥棒猫どうやってぶち○してやろうかしら』とかは、思ってないわね♪」

涯(以前はそんなことを思っていたのか)

真名「ま、そういうわけで、あの子たちの恋路もまた一歩前進かしら?」

涯「全員足並みそろえての一歩…だがな。状況は大して動いていない」

真名「それが問題よねぇ…いのりちゃんはマイペースだし、他の3人は理由は違えど奥手であることに変わりはないし…」

涯「なら、もう少しつついてみるか?」

真名「いいえ?もう少し楽し…ゲフンゲフン…見守っておくとするわ」

涯「…そうか。お前がそういうなら、俺もそうするとしよう」

真名「んー!しっかし、今回は私の負けかー!悔しいなぁ…」

涯「そう思うのなら、また挑戦するがいいさ。俺はいつでも受けて立つぞ?」

真名「…そうね、その時を楽しみにしていなさいね?」



真名「 涯 」



涯「!」

真名「ふふ…じゃぁ、またね」

涯「…あぁ、また!」

ユウ「

と言ったところで、今回はここまで。

最近は冷え込みが一段と辛くなってきましたね。

空から降るのが雨から雪へと変わるのも、もう少しと言ったところでしょうか。

皆さんはどうお過ごしでしょうか?

我が家ではもう随分前から、炬燵が自らの仕事をヒーターへと譲り渡しました。

どうか、体調にはお気をつけて…。

では、また会う日まで。


プレゼントの執事コス見たいな



集「元天王洲第二高校で幽霊騒ぎ?」

アルゴ「近所に住んでる奴らから連絡があったんだよ、そういう噂が立ってるってな。だから、なんとかしてくれって涯が頼まれたらしい」

谷尋「なんとかって…また随分と漠然とした頼みだな」

アルゴ「まぁ、でも涯自身気にはなってるらしくてな…とりあえず調べてみるっつってたぜ」

颯太「ふーん…あ、ならさ、俺たちも行かね?肝試しもかねて手伝いにさ!」

花音「肝試しって…季節外れにもほどがあるでしょう…」

颯太「いいじゃん!今年の夏は祭りやら海やらで忙しくて、それ系のイベントは全くなかったし…折角だからやりたいんだよ!」

綾瀬「肝試し云々のアホな発言はともかく」颯太「あほってなんだよ!」「私達にも立手伝えることがないか、涯に聞いてみましょ」

いのり「私たちが通った学校に妙な噂があるのは…いい気は、しない」

アルゴ「確かにな。これが人がいないの良いことにたむろす不良が出たとかいう落ちだったら犯人全員ぶちのめしてやる…」ニィ

祭「あ、あの…できるだけ、平和的に…ね?」


涯「…集まり過ぎだろう」

梟「さぁ皆さん、頑張っていきましょー!」

潤「な、なんか、真っ暗な学校って…怖いなぁ…」

谷尋「大丈夫だ、何があっても兄ちゃんが居るからな!」

花音(私も怖いって言ったら手くらいならつないで…い、いや、恥ずかしいからやめよう、うん)

颯太「何か出るかな~♪」

祭「あ、あまりそういうこと言わないでよ…」

雅「そ、そうですよ…本当に何か出たりしたら…」

綾瀬「全く臆病ねぇ…幽霊なんているわけないでしょ?どうせアルゴが言ったみたいに不良が居るとかそんな感じよ」

ツグミ「いや、そっちはそっちで十分怖いと思うけど…まぁあやねえの場合はとりあえず殴れれば問題ないんだろうけどさ」

綾瀬「ちょっとそれどういう意味よ!」

ダリル「(ちんちくりんがあの調子なのに僕だけ恐がるわけには…い、いや別に?全然怖くないし。震えてるのはちょっと肌寒いせいだし)」ブルブル

集「まさかこんなに来るとは…」

真名「いいんじゃない?人数が多いほうが楽しいだろうし♪」

涯「遊びに来たわけじゃないんだがな…」


涯「これだけ集まったのは予想外だったが、集まってしまったものはしょうがない。流石にこの人数でぞろぞろ歩きまわるのは無理があるだろうし、適当に分かれてくれ」


涯「別れたな?なら、これから皆で一斉に校舎に入り、今から言う割り当て箇所に向かってくれ。異常がなければそれはそれでよし。何かあれば、無理はせず大声を上げるなりして誰かを呼ぶこと。いいな?」

涯「よし。では、いくぞ!」


潤「…うぅ」ブルッ

谷尋「どうした、潤。寒いのか?」

潤「い、いや、なんか…夜の学校って結構怖いな…って」

花音「そうねー…立ち入りの許可が取れたなら、ついでに電気も点けさせてもらえばよかったのに」

谷尋「いや、そもそも電気が通ってないんじゃないか?多分」

潤「な、何で二人ともそんなに平気なの?」

谷尋「なんで、と言われても…なぁ?」←スプラッタホラー好き

花音「暗いとはいえ、学校は学校だし…ねぇ?」←ザ・委員長

潤「凄いなぁ…」

谷尋「ふふっ、そんなに怖いなら手でもつなぐか?」

潤「………ぅん///」オズオズ

谷尋(頼るのは恥ずかしいけど恐怖に勝てずに手を伸ばしちゃう俺の弟マジ天使)

花音(いいなぁ、潤君…あんなに素直に甘えられて…)

潤「あの、お姉ちゃん?」

花音「ん?何?」

潤「………」オズオズ

花音「え?…あぁ、そういうこと」



潤「…ふふ♪」

谷尋「ははっ…」

花音人潤人谷尋「…」テクテク

花音(…まぁ、今はこれだけでもいっか♪)


颯太「………」ブルブル

アルゴ「おおおい、どうした颯太?さっきから震えてるみたいだけどよ」

颯太「え!?い、いや別に!ちょっと寒いなーと思ってさ!やっぱり肝試しは夏に限るよな!うん!」

アルゴ「そ、そうなのか。ってっきり俺ぁ自分で言いだしといていざ来てみたら怖くなっちまったのかと思ったぜ」

颯太「そそそんなわけないじゃん!そりゃぁ肝試しなんだし、ちょっとくらい怖がらなくちゃとは俺だって思うぜ?けどさぁ、幽霊の一人や二人で怖がるなんて、男子高校生としちゃぁちょいと胆が細すぎるってもんさ!」

アルゴ「ははは、まったくだぜ!何が楽しくてこんな薄暗いだけのところを徘徊するのか」

ガンッッ!!

アルゴ・颯太「」ビビクゥ!

梟「あいたた、扉にぶつかっちゃった…やっぱり暗いと危ないなぁ。あれ、お二人とも何してるんです?そんなところで抱き合って…」

アルゴ・颯太「んぇ?」

バッ

アルゴ「い、いや別に?突然響いてきたデカい音にびびったとかそんなわけはないぜ?」

颯太「そ、そうそう!ちょっと寒いから雪山的な暖の取り方をちょっと試してみただけっつーか…」

梟「…お二人とも、もしかして怖」
アルゴ・颯太「怖くなんてねーし!」

梟「…」ジトー

颯太「さ、さぁ行こうぜアルゴ!この騒動の犯人をさっさと見つけによ!」

アルゴ「お、おうよ!全員ぶちのめしてこんな寒いとこから早くおさらばしようぜ!」


祭「…」ビクビク

雅「…」オドオド

綾瀬「…ねぇ、動きづらいんだけど。もう少し離れてくれない?」ガッチリ

祭「だ、だって…もし離れたところを狙って幽霊が…」

綾瀬「別に誰かがひどい目にあったとか、そういうことではないんでしょ?心配するだけ損だと思うけど…」

雅「そ、そうですけど、私たちが最初の被害者にならないなんて保証はどこにもないんですよ!?」

綾瀬「まったくもう…だからいるわけないじゃない幽霊なんて…」

雅「ひっ!」

祭・綾瀬「!」ビクッ

祭「み、雅?どうしたの…?」

雅「い、今、あそこを子供の影が横ぎったような…」

綾瀬「…目の錯覚よ。そんなことあるわけ」


ガンッッ!!

祭・雅「いやっ!」バッ

祭・雅「…?」

祭「何も…起きないね」

雅「一体何だったんでしょう?今の音…あれ、綾s…」


綾瀬(;∩>д<)「ユウレイナンテイナイ、ユウレイナンテイナイ、ユウレイナンテ…」ガクガクブルブル

祭・雅「…」ボウゼン

綾瀬(;∩゜д゜)「…はっ!?」

祭「…あの、もしかして綾瀬、幽霊が怖」
綾瀬「そうよ怖いわよ悪い!?///」

雅(開き直った…)

綾瀬「だってあいつらって殴れないんでしょ!?一方的に呪ってきたりするのよね!?どう対処しろっていうのよ!不良の方がまだマシよ!」

祭(そこはツグミちゃんの言う通りなんだ)

綾瀬「うぅ…うぅー…」ブルブル

雅「だ、大丈夫よ。今は私たちが居るから、ね?」ヨシヨシ

祭「さ、3人も居れば幽霊だって逆に怖がって出てこないよ!うん!」ヨシヨシ

綾瀬「ウン…」


ツグミ「…」スタスタスタ…

ダリル「お、おい待てよちんちくりん!」

ツグミ「何よもう。こんな寒いトコでのイベントなんてさっさと終わらせて帰りたいのよ私は」

ダリル「そんなの僕だって同じだ!僕が言いたいのは一人で勝手に行くなってことだよ!」

ツグミ「…怖いの?」ニヤッ

ダリル「なっ、だ、誰が怖いもんか!危ないって言いたいんだよ!こんな真っ暗な中明かりもなしに歩けるか!行くならせめてその懐中電灯こっちに渡せよ!」

ツグミ「それじゃぁ私が歩けなくなるじゃない!」

ダリル「僕はどうなってもいいってのかよ!」

ツグミ「あーうっさいわねぇ!ていうか、私を呼んだ研二本人はなんでいないのよ!もう、イライラするわね!…これであいつだけ暖房のきいた部屋で遊んでるとか言ったら殴り飛ばしてやる…」

ダリル「そいつは僕も同感だけどね。…ていうかなに?そっちもあいつに呼ばれてきたわけ?」

ツグミ「そーよ。肝試しやるから来いって…まったく、我ながら安い挑発に乗っちゃったものだわ…」

∨ガンッッ!!

ダリル「ッ!…」ビクッ
ツグミ「きゃっ!」バッ

ダリル「…」

ツグミ「…///」

ダリル「…ふっ」

ツグミ「な、何よあんたその笑いはぁ!」

ダリル「いやー何、随分可愛らしい悲鳴を上げるもんだなーと思ってサ」ニヤニヤ

ツグミ「あ、あんただって今びくってなってたじゃない!」

ダリル「あるぇー?そうだったかなー?ちんちくりんがあまりにも似合わない声を上げるもんだから忘れちゃったなぁ~…くっ、くく…くは!」プークスクス

ツグミ「~~~ッ!」

ドゴ!

ダリル「おぶぇ!?」

ツグミ「ふん!あんたはそのままそこでうずくまってなさい!」ズンズンズン…

ダリル「がっ、は…!鳩…尾…つか、待て…ら、ライト…ゴフッ」バタッ


真名「…ハァ」

涯「浮かない顔だな、真名」

真名「えぇ、まぁね。…亞里沙、来てくれなかったなって思って」

涯「…」

真名「あなたのおかげで、家の縛りからは解放されたけど…」

涯「また新たな鎖に絡め取られてしまった…か」

真名「あなたもわかってるんでしょう?何が原因なのかは」

涯「…だが、解決策は見つからないままだ」

真名「前にも、同じことがあったって聞いてるけど?」

涯「あのとき彼女を救ったのは集だ、俺じゃない。結局俺は、彼女を傷つけることしかできなかった」

真名「…でも、あのときはもう猶予がなかったじゃない。だから、できるだけ傷が浅く済んだことを喜ぶべきでしょう」

涯「傷を残してしまった時点で、喜ぶことなどできんさ」

真名「…厳しいのね」

涯「…ふん」

真名「…わかった。私は私で、色々考えてみる。だから、力が必要になったら言ってちょうだい」

涯「…あぁ」


真名「…それはそれとして、暗い空間の中男女二人きり…間違いでもおきそうなシチュエーションね♪」

涯「発言と思考が変態(プレゼント)的だぞ…しかも、それはここが夜の学校でなければ、の話だろう」

真名「あら、背徳というのも一種のスパイスじゃないかしら?」

涯「…ますます、変態(プレゼント)的だな///」プイッ

真名「想像しちゃった?…意外と初心よね、あなた」

涯「…自覚は、ある」

真名「あなたでその調子なら、集の方はどうなってるかしらねぇ…」


集「…」

いのり「…」

集(…や、やばい…なんか緊張してしょうがない!)バクバク

集「て、ていうかいのり…?なんで、腕組んでるの?」

いのり「暗いから」

集「そ、それにしたって、そんなにくっつかなくても…」

いのり「寒いから」

集「え、えーっと…」

いのり「…嫌?」

集「そ、そんなことはない!…けど」

いのり「なら、よかった」ニコッ

集「…///」

いのり「…いない」

集「え?何が?」

いのり「幽霊」

集「あ、あぁ、そういえば肝試しだったっけこれ…いや、それは颯太が勝手に言ってるだけだった。元々は、幽霊が出たっていう『騒ぎ』の真相を確かめるため…うーん、一体なんでそんな噂がたったんだろう?」

いのり「わからない。でも、涯が言ってた。何かがあるなんていう確証はないけど、ただの噂話にしては抽象的すぎる。って」

集「あぁそっか。怖がらせるなら、もっと具体的で恐怖をあおるようなストーリーとかがあるはずだもんね。なるほど…だから何かあるかもって涯は考えてるわけだ」

いのり「ん」コクン

集「…うーん、とは言っても、何も見つからないなぁ…最近誰かが使ったような形跡もないみたいだし、不良がたむろしてるみたいなこともないと思うけど…」

いのり「…!しっ、集」

集「え?」

………

いのり「何か、聞こえる」

集「え、ちょ、ちょっとやめてよ、いのり…まさか…」

…カツ

集「!…足音?」

…カツ…カツ

集「…いのり、下がって」

いのり「え、でも…」

集「大丈夫、僕が守るから」キリッ

いのり「しゅう…///」キュン





嘘界 「 ば ぁ 」 

集「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」

いのり「…あ、嘘界先生」

集「へ?あ、あぁ…あぁ!?」

嘘界「どうもこんばんは。こんなところで会うとは、奇遇ですねぇ…」

集「せ、嘘界先生!?なんでこんなところに…」

嘘界「ふふっ、実は私も、幽霊騒動の件は聞き及んでいたのですよ。ですので、幽霊と言うのが居るのならぜひとも一度会ってみたいと思いまして…」

嘘界「そんなわけで来てはみたものの何も見つからず…と、思っていたところ、見知った顔を見かけたものですから」

集「あ、あぁ…そうなんですか。で、でも、それならそうと…何もあんな登場の仕方しなくても」

嘘界「ははは、どうもすいません。折角なのでびっくりさせようと思いまして…こう見えても私、人を驚かせたりするのが好きなんです」

いのり(…見た目どおりだと思う)

タッタッタ…

綾瀬「集!だいじょ…って嘘界先生!?」

颯太「うげ…なんでこんなとこに」

嘘界「おや、悲鳴を聞きつけて駆けつけて来ましたか。良い友達を持ちましたね、桜満君」

集「あ、あはは…」

嘘界「さてみなさん、もう今日はたっぷり堪能したでしょう?ここらでお開きにしてはいただけませんか?興味本位でこんなところまで来た私が言うのもなんですが、教師として、あなたたちを放置するわけにもいかなのでね」


涯「…では、失礼します。嘘界先生」

嘘界「えぇ。どうぞ皆さんお気を付けてお帰りください」


集「…ごめん、いのり。肩貸してもらっちゃって…」

いのり「腰を抜かしたならしょうがない。けど…」

集「うん?」

いのり「今の集、かっこわるい」

集「…ホントに、ごめん」ズーン

真名「何してるの?もう行きましょう?」

涯「…本校舎の方は調べたが、特別棟のあたりは…」

真名「名残惜しいのもわかるけど、流石に先生の居るところで調べるのも気が引けるでしょ。今日の所は諦めましょう」

涯「…そうだな」

嘘界「…」ニコニコ





「行ったようだな」

嘘界「えぇ。とりあえずこれで、このプロジェクトに参加させていただけるんですよね?」

「あぁ」

「しっかしあんたも凄いよねー。自力で僕らの所までたどり着くなんてさ」

嘘界「これでも、優秀なもので。それより、気を付けてくださいよ?あなた、油断して一度見つかりかけたでしょう?」

「はいはい、気を付けますよー」

「…あなたには、確固たる自信があるのですね」

嘘界「はい?あぁ、先ほど言ったのはただの事実ですよ。しかし、あなたの台詞とも思えませんねぇ…それではまるで、あなたには自信がないように聞こえますよ?」

「…」

嘘界「だんまりですか。まぁ、構いません。私は私なりに、彼の選択を見届けさせてもらえればそれで、ね…ふふふ」

ユウ「

といったところで、今回はここまで

更新が一日遅れてしまって申し訳ありません。

しかし、また嘘界=ヴァルツ・誠なにやら企んでいるようですが。

3人の協力者…イッタイナニモノナノデショウ(棒)

といったところで、今回は久々のレス返し。


>>乙
たくさんの乙、ありがとうございます。

>>572
そう言っていただけで、僕も嬉しく思います。

>>588
そうですね、僕も見てみたいのですが…絵心がないもので。誰か心得のある方、書いてはいただけないものでしょうか…(チラッチラッ



…ここで、皆様にお伝えすることがあります。

次回の更新日は12月24日…「ギルティクラウン」にとっても馴染み深い、クリスマス・イブでの更新となる予定です。

何故かと言うと、実は明後日発売の大乱闘スマッシュブラザーズforWiiUを予約して…え?あ、こっちが本音ですか。建前の方は…

あー、こほん。

何故かと言うと…実は最終回の構想はおおよそできているのですが…その分量が今までに比べて大きく増加することが予想されるのです。

分割して更新すればいいじゃないかと思うでしょうが、それはやはり雰囲気作りのため。どうしてもすべてをクリスマス・イブに投下したいのです。

というわけで、次回の更新はおよそ三週間後…どうか、ご了承いただきますようお願いいたします。

では、また会う日まで

「…うぅ」

桜満集は悩んでいた。

本日はクリスマス・イブ。
かの有名なキリストの生誕を祝う日であるというのを口実に、家族が団欒の場を設け企業が我先にと利益を追い求め…そして交際する男女が互いに愛を囁きあう日である。

彼の手元にはスマートホンが握られていて、開かれているのはメール作成画面。
本分は、今日の予定は空いているか、もし空いているならば出かけないか、という問いを伝えるだけの簡素なもの。
件名には「桜満集です」とだけ。
そして「To」の項目に綴られた名は―――「楪いのり」。

「…どうしよう」

この「どうしよう」、本日実に25回目である。

事の起こりは既に3時間も前の事。いや、彼が楪いのりを誘おうかと頭を悩ませていたのはもう何日も前からなので、実際には更に以前から時を数えるべきなのかもしれないが…それはともかく。

この少年、「誘おう!」と決意し、小一時間掛けてメールの内容を考えに考え抜き、後は送信するのみとしてから、実に3時間もの間悩み続けているのである。

時刻は既に夕方言っていい時間であり、季節も相まってもう日も落ちようという時間帯。

この少年、優柔不断にもほどがある。


その時、不意になったチャイムの音が、3時間にわたった彼の思考を遮ることになる。

「?…はーい」

この時間に我が家を訪ねるのは誰だろうか?
両親は、なんとしてでも明日は必ず家で過ごすと約束した。その言葉は、逆に言えば今日はどうあっても家には帰れないだろうという予想の表れでもある。
ならば恐らく姉であろうと考える。昼の頃に出かけたきり帰ってこない姉。
もしかしたら、今日自らが思い描いていたように、彼女もまた誰かと共にこの聖なる夜を過ごそうと考えていたのかもしれないと思ったため、今日は帰ってこないのか、とも思っていたのだが…。

だが、少年の予測は裏切られ、扉を開けた先には、姉の姿はなかった。
というか、誰の姿もなかった。

「…いたずら?」

当然、そう思う。
今まで受けたことはなかったが、少年とてこの世に「ピンポンダッシュ」なる遊戯が存在することは承知している。その類であろうかと思いつつも、念のため扉から一歩出て周りを見回そうとして、感触が、いつも踏みしめている堅い廊下のものと異なることに気付く。

そこにあったのは白い長方形の物体。どうやら封筒のようである。
宛名も送り主の名もないそれから、数枚の紙がひらひらと舞い落ちる。
それらを拾い上げ、確認した瞬間。

「っ!!!」

少年は走り出す。

そこに、3人の人影が集まった。

栗色の髪をし、赤い瞳に不安の色を宿した少年―桜満集。
静かに佇むその姿は冷静なように見えるが、その目には確かな怒りが燃えている―恙神涯。
苛立ちと敵意を隠そうともせず、獰猛な気配を振りまく―ダリル・ヤン

「…お前達も、か?」

そう言って涯が取り出したのは真っ白な長方形の物体。集の元にも届いた、あの封筒と同じものだった。

「くそっ、ふざけやがって!」

自らのものを取り出し、地面へと叩きつけるダリル。
そこから出てきた写真には、目を瞑って眠っているツグミの姿が映っている。

「っ…」

それを見て、桜満集は察する。
涯の封筒には、恐らく真名の写真が入っていたのだろう。もしかしたら、亞里沙のものもあったかもしれない。

集の元に届いたものには、祭、綾瀬、雅―そしていのりの姿があったように。


―――状況が状況なのでこれはいま言うべきところではないのだろうが、集だけやけに届いた写真の枚数が多い理由は…皆の察するところであろう。


そして同封されていた紙には、ただの一単語…「天王洲第二高等学校」と書かれていた。


「…まさか、まだ他にもここに呼ばれた人間は居るのか?」

「いや、これで全員だ」

涯の独白に応える声があった。
振り向いた先に居た人物に、そこに居た三人が驚きの色を見せる。

「義父、さん…!?」

そこに居たのは、涯の義理の父にして集とダリルの通う天王洲第一高校の校長職に就く、茎道修一郎。

「父さんの仕業なのか!?」

「あぁ、そうだ」

信じられないという風の涯。
集にとって、ここまで動揺した『涯』を見るのは初めてだ。
その頼りない姿は、はるか昔に置き去りにしたはずの『トリトン』の姿を彷彿とさせる。
その動揺が伝播し、集もまた萎縮してしまう…が、それらを意にも介さず、ダリルただ感情を爆発させる。

「ごちゃごちゃうるさいんだよ!あの写真はどういうことだ!今、ちんちくりんはどうなってる!」

「ツグミならどこかで眠ってるはずだよ」

そこに割り込んできたのはまた別の声。

「研二!何故お前がここに…」

「決まってるでしょ?僕もこのイベントに参加することにしたのさ」

いつもと変わらない感情の読めない無表情でそう嘯く研二。

「彼だけではありませんよ」

更に、降り積もった雪を踏みしめながら向かってくるのは、嘘界。

「…あんたもか」

「おやおや、あまり驚かれないんですね」

「いや、驚いてはいるさ。だが同時に、あんたが居ることに妙な納得を覚えてもいる」

それだけ言って、スッと一度目を閉じる涯。
次に目を開いたときには、その瞳からは動揺の色は消えていた。

「では、涯。私に着いてきなさい」

「集君は私に」

「っつーわけで君の案内は僕だよ、ダリル」

一方的に宣言して、三人は背を向けて別々の方向へと歩き出す。

「待っ…!」

目的はなんなのか?
なぜこんなことをしたのか?
皆は無事なのか?

聞きたいことは山ほどある。このまま唯々諾々としたがうことに、それでいいのかと問う自分が居る。
だがそれでも、今は黙って、離れていくその背中を追うしかない。
愛する者達を失いたくないのならば。


「それで君に出す課題の内容ですが、他のお二人とは少々趣が異なります」

体育館。
全国において単体でこれよりも大きな設備を有する学校と言うのはごく僅かであろう。
多分に漏れず広々とした空間を持つその施設の中央で、いつもと変わらず飄々とした笑みを浮かべる嘘界と、珍しく真剣な表情をした集が向き合っていた。

「他の二人は、それぞれ自分たちに宛がわれた番人と戦い、その勝負に勝利すれば、彼らの求める人の所在を知ることができます。が、桜満君。君の場合は、たった一つ決断をするだけでいい」

「決断?」

嘘界は懐から、4つの鍵が連なる鍵束を取り出し、見せびらかすように高く掲げる。

「この4つはそれぞれ、別々の部屋の扉を開錠するためのカギとなっています。ですからあなたは…」


「楪いのり、校条祭、篠宮綾瀬、縁川雅。この4名の中から、1人だけを選んでください」


「な、なんですって!?」

「おやおや、何をそんなに驚くことがあるんです?」

「何をって…!」

分かったうえで言っている。集はそう直感した。
1人を選ぶということは他の3人は選ばれないということで、それはつまり、集が自分自身の意思で『友達を見捨てる』ということである。
それをこの男は、こともあろうに笑みさえ浮かべたまま要求しているのだ。

「ふむ、迷うのならそれもいいでしょう。選択肢は4つもあるのです、すぐに決めろと言われても難しいでしょうからねぇ…しかしこの寒さの中あまり待たせてしまうのも悪いですからね。できるだけ急ぐことをお勧めしますよ。」

「っ!…」

その言葉を聞き届け、集は戦闘態勢へと入る。
もはや言葉は必要ない。
冗談で済まされる範囲などとうに超えている。

「…どういうつもりですか?」

「…選択肢はもう一つある」

「ほう?」

「あなたから4つのカギを力尽くで奪って…全員助ける!」


「おい…おい待てよ!待てって言ってんだろうが!」

ついに堪えきれなくなったダリルは、前を行く研二に掴み掛る。

「ちんちくりんはどこだ!教えろ!」

「だからぁ、これから向かう先でのゲームをクリアしたら教えてあげるって言ったでしょ?」

「もうお前の遊びになんて付き合ってられるか!今ここでお前をグチャグチャにして聞き出してもいいんだぞ!」

「おー怖い怖い。でもま、もうちょっとだけ付き合ってよ。会場もすぐそこだからさ」

「!」

そうしてダリルは指示された扉を乱暴に開け放つ。

「…おい、これ」

「お、大分改造したんだけど、わかる?」

「まさか」

「察しがついたみたいだね。君が勝ったら僕はツグミの場所をちゃんと教えてあげるよ。まさか君も、こいつを前にして逃げ出したりはしないよね?“皆殺しの―Massacre―ダリル”君?」

「…ハッ、上等じゃん」

そこにあったのは、鋼の巨人を繰る者達には既に見慣れた『棺桶』。

エンドレイブのコックピットが設置されていた。


「さて、着いたぞ」

多少広いとは言っても所詮は一つの学校の中。程なくして茎道はその歩みを止める。

「…武道場?」

そこは体育において柔道や空手、相撲と言った競技を学ぶための別館だった。
授業以外にも、その手の部活動においても使われていた。

「さぁ、入れ。私の役目はここまでだ」

「…ここに真名が居るのか」

「いや。だが真名の居場所を知る者がここに居る」

「…なるほど、そういうシステムなわけか」

つまり、俺たちにそれぞれ門番とでも言うべき相手が存在する。
その相手を見事打ち倒せば、救い出すべき彼女たちの居場所を知ることができる、と。

「…待っていろ、真名」




ちなみに、武道場で行われる競技はもう一種ある。

それは、『剣道』

武道場の中に光源はなかった。
室内を照らすのは窓から差し込む月明かりのみ。
月光を受けて輝くものは二つ。

銀色の輝きを放つ床に突き立てられた一本の日本刀。
金色の輝きを放つ、和装に身を包んだ供奉院亞理沙の金髪だった。

「…そういうことか」

涯は確信する。
義父の意図。
真名の真意。

それらが何処にあるのか、目の前に立つ亞理沙の姿から確信する。

「…真名はどこだ、亞里沙」

「彼女ならこの校舎の中のある一室に閉じ込められているわ。そしてその部屋の扉は、これ」

そう言って懐から鍵を取り出し、すぐさま元の場所へとしまう。

「なるほど。それをお前から奪うえば俺の勝ち、できなければ負け…ということか」

「いいえ、違うわ」

「…何?」

怪訝な表情をする涯に対して、亞理沙の目はどこまでも冷たく、人間らしい感情の発露などは一切認められない。
自らの腰に差していた日本刀を引き抜いても、それは変わらなかった。

「さぁ、あなたも取りなさい…涯」

「…俺と、剣道の試合でもするつもりか?」

「いいえ、そんな堅苦しいものではないわ。

殺した者が勝利し、

死んだ者が敗北する、

ただ単純な―――



―――殺し合いよ」



次の瞬間、凍えるほどの恐怖が背筋に走り、首元で冷たい鉄の感触を味わっていた。


――3――

ステージは深い森の奥にある怪しげな研究所を背景にした広場。
障害物はなし。だだっ広い土の地面が広がっている。

――2――

ダリルの駆る来たいは、流線型のボディに、白を基調としたカラーリング。
機体名は―――『シュタイナー』。

相対するは、そのシュタイナーが見上げるほどの巨体。
更にはその巨体を上回るほどの大きなアーム。しかしその手先には、パイルバンカーやレールガンと言った武装の類はなく、工事現場で見るようなショベルが取り付けられている。
完成すらしていないのか、各部をつなげるコードがむき出しになっている。
機体名は―――『ケストナー』。

――1――

なるほど、「かなり改造した」と言うのだてではないらしい。

見たこともないステージ、新しい機体…そして、対戦AIの導入。
どれも既存の物からは大きくかけ離れた技術だ。


――START――

その宣言がなされた瞬間、ケストナーが轟音と共にシュタイナーへと迫る。

『チィッ…!こいつ、巨体の割に早い!』

大振りな起動と共に繰り出された左腕を後ろに下がることで間一髪避ける…つもりで動いたダリルは、しかし違和感に気付く。

むしろ気付かない方がおかしいだろう。間一髪で避けるつもりだったケストナーの左腕から、『数十メートル』離れた地点まで一瞬にして移動していたのだから。

『…クハッ!』

今、シュタイナーを通して何が起こったのかを理解し、ダリルは思わず破顔する。
あぁ、駄目だ。ずっと我慢していたのに。
おもしろくてしょうがない、笑わずになんていられない、こんな最高の『玩具』があるのに、喜ばない方がどうかしてる!

『さぁ、グチャグチャのミンチにしてやるよ!』

真っ直ぐケストナーへと突撃するシュタイナー。対するケストナーは自らのアームを横薙ぎに振る。
次の瞬間、シュタイナーが『消えた』。

もしケストナーを操っていたのがAIではなく人間であったなら、その思考を驚愕が支配していたであろう。
被照準。
その照準を、ケストナーは真後ろ数センチという地点から受けた。
何が起こったのかと言えばそれは至極単純明快。『シュタイナーがその全速を以て移動した』というだけの話である。
ケストナーは即座にその上半身をひねりそれに対応しようとする、が。

『遅いね』

何もかもが徹底的に手遅れだった。
戦闘終了を示すブザーが鳴り響く。




『準備運動にもならないね』

コフィンに横たわったままダリルがそうつぶやく。
シュタイナーから離れることを多少名残惜しく思いながらも、同時にここから戻ったらあの研二にパンチの一発でも打ち込んでやろうとも考えていた。
が、

「安心しなよ。そのうちそうも言ってられなくなる」

次の瞬間、ダリルはシュタイナーに乗ったまま、今度は屋根に聖十字があしらわれた教会の目前へとステージが映る。
周りへと目を向ければ、そこにはまた新たな機体――フライシュマン――があった。

「さぁ、第二回戦だよ。準備はいい?」

『…ハッ!それ、誰に言ってるかわかってるの?』

「いい返事だ。じゃぁ…」



「スタートだ」



涯は亞理沙の刀によって自らの首元に押し付けられていた自らの刀に力を込めて亞理沙の刀を押し返した。

いつ以来だろうか、と涯は思う。
俺が『殺意』で冷や汗をかくなど。

今の一撃は確実に涯の首元を通過する軌道上にあり、涯の超人的な反応によって床に突き立てられた刀を引き抜いて防がなければ、今頃涯の首は畳の上に転がっていただろう。

首元にあてられた刀の感触は固く冷たく、しかし亞理沙の殺意はそれ以上に研ぎ澄まされていた。

もはや語ることなどない、などと言う暇も惜しむように、もう一度亞理沙が刀を構えて迫る。
逆袈裟に斬り上げられた亞理沙の一太刀によって涯の刀が宙へと舞う。無防備になった銅を薙ぐ軌道で亞理沙が刀を振るうがしかしそれは涯の蹴りによって軌道の変更を余儀なくされ、空を切る。
直後、宙を舞っていた刀をその手に取り、今度は涯が亞理沙へと切りかかる。無論、涯に亞理沙を斬る意思などなく、狙うはその刀。へし折るか、せめて亞理沙の手から叩き落とせればと思い刃をふるう。
しかしその一閃を難なく受け流す亞里沙。

涯は戦いを終わらせるために、
亞理沙は涯を殺すために。

互いに自らの刃をふるい続ける。


力尽くで、とは言ったものの、集には本気で嘘界と戦うつもりなどなかった。
涯やアルゴとの組手、不良たちとの実践を経て、集には体術に関しての自信が付き、そしてその自信は決して過信と言えるほどに間違った認識ではなかった。
一歩踏み込み、その勢いを拳に乗せて嘘界の顎へと掌底を一撃叩き込む。
それだけのことで、この戦いは終わる―――

「甘いですねぇ」

―――そう、思っていた。

集の掌はむなしく宙を切り、次の瞬間、その掌を追うように、今度は体ごと宙を舞った。

「なっ!?」

馬鹿な、と思う。
確かに得体の知れないところはあったが、あくまで嘘界はただの教師であるはずだった。
少なくとも、武道の心得があるような素振りは全く見られなかった。
その嘘界が、それなりの速度で迫った集の掌底をあっさりと見切り、あまつさえ投げ飛ばすなど。
しかし、今の一連の動きには明らかに体術の片鱗が見えた。少なくとも素人の動きでは絶対にない。

集は認識を改める。
この嘘界という男は自らの脅威たりうると。

背中が冷え切った体育館の床へと叩きつけられるその瞬間、受け身を取ってダメージを最小限に抑えると同時に体勢を整えようと片膝をつき、

「そんな暇があるとお思いですか?」

嘘界の踵が迫る。

「がっ!?」

咄嗟に腕を出して防ぎ、だが勢いは殺し切らず逆に利用することで、無様に転がると同時に嘘界との距離を開くことに成功した。やっとのことで体勢を整える。
しかし改めたはずの想像をさらに超えて重く鋭く繰り出された蹴りは、集へ甚大なダメージを与えていた。立ち上がったその姿は頼りない。視線は安定せず、足元はふらついていて、出血を拭い取る様は痛ましくさえある。

「素晴らしい、随分と立派になられましたねぇ…昔の君なら今の一撃で確実に意識を手放していました。」

白々しくも笑顔でそう評価する嘘界。

(まだ…倒れるわけには…!)

そう、倒れるわけにはいかない。
ふらつく足で、もう一度一歩を踏み出す。
勝てるなどとはもう思っていない。力の差が歴然であることなど承知の上だ。
だがそれでも、皆を助け出すまでは―――!


『なるほど、確かに準備運動にもならない、とはもう言えないね』



『準備運動くらいにはなったかな』

ケストナーとの戦闘も、フライシュマンの猛攻も、三対一で行われたレクナグルとの乱戦も、異形の巨兵エデン・ベベも、その全てに『無傷で勝利した』ダリルが自慢げにそう呟いた。

凄まじい。
ダリル・ヤンのプレイテクニックは、その一言に尽きる。
確かに元々、シュタイナーは速度に特化したその分装甲は薄くなっている。
故に、被弾数が極端に少なくなるのも当然ではある。
かと言って、これだけのバトルをパーフェクトで飾るのが如何に難しいか。
それは、機体とAIの設計に関わった研二もよく理解していた。

『で?次は?まさかもう終わりじゃぁないよね』

「…随分余裕そうだね。休憩はいらないの?」

『ハッ、だから言ったろ?準備運動くらいにしかなってないさ』

「…そうかい」

なら、存分に後悔するといい。

「次で最後だから、まぁ気合い入れてやって頂戴」

『あぁん?もう終わりなのかよ。ちぇー…』

「さぁ出ておいで」





「ゲシュペンスト」




瞬間、またもダリルの見る景色が切り替わる。
そこは無機質な鋼鉄の壁に囲まれた地下室のようだった。
ただ、その壁は幻想的な蒼白い光を放っている。

その壁を背にして立っていたのは、ケストナー程の大きな巨体に、シュタイナーの美しい流線型のボディに相反するように、戦意を具現化したような刺々しい装甲に身を包んだ機体。
その名を、『ゲシュペンスト』。

「さぁ、バトルスタートだ!」


ゲシュペンストが動き出す。

『ヒュー♪中々かっこいい機体だね…けど!』

余りに遅い。その動きはケストナーよりもさらに遅く、駆け回るシュタイナーを捉えることはできない。

『イっちゃいなよ!』

そのあまりに無防備な巨体に向かってマシンガンを打ち放つダリル。

だが。

『がっ…!?』

その弾がゲシュペンストの体を抉ることは叶わず、

逆に『反射された』その弾が、シュタイナーに牙をむく

(一体…何、が…!)

ダリルの頭の中は驚愕に支配されていた。
自分の撃った弾が自分に返ってきたこと、にではなく。
自分の足を抉る感覚が、あまりにリアルであったことに、である。

エンドレイブには確かに、感覚のフィードバック機能がある。
足を踏みしめ、大地を走り、引き金を引く感覚が、機体を通して伝わってくるというのは、ダリルも十分に承知していた。

(けど、何で、こんなに…!)

ダリルとて、今までエンドレイブに乗ってきて一度も攻撃を受けなかったわけではない。
特にここ最近は綾瀬との戦闘でいくつかの黒星をつけられることもあり、機体が攻撃を受ける感覚は既に知っている。
しかしその時の痛みとは比べものにならない痛みが、ダリルを襲っていた。

「ほらほら、止まってる暇があるの?」

そこに、もう一度ゲシュペンストが迫る。
ゲシュペンストの容赦のない拳が、シュタイナーを吹き飛ばす。

『があああああああああああああああああ!!!』

ダリルの頭の中が、今度は痛みで埋め尽くされる。
全速力で壁に激突したような痛みが全身を駆け巡る。
その痛みに耐えきれず、意識を手放しそうにすらなるが、それをゲシュペンストが繋ぎ止める。
シュタイナーの腕を、握りつぶさんばかりの力で掴みあげることで。

『あぁ、が、あ、いた、痛い!痛いよぉ…くそ…なん、で…こんな』

意識を闇にゆだねることも許さず、無理矢理覚醒させる中で、研二が囁く。

『…ねぇ。リタイアする?』

『な、に…?』

『別にいいじゃん。セッティングしてあげるから、また来なよ。勝負はそん時にまたってことでさ。別に今この勝負にこだわる必要はないでしょ?それに、どうも初見殺しっぽくてアンフェアな感じもあるしね』

『…あ』

それなら、と。
もはや痛みのせいで思考もまとまらない。敗北に対する屈辱も確かにある、が。この痛みから解放されるなら…。



どれほどの時間が経っただろうか。

既に両者の呼吸は荒くなっており確実に疲労の色が見える。
その疲れが先に剣筋に乗ったのは涯の方だった。

「ッ!…」

とうとう、繰り返される剣戟の内の一閃が、涯へと届いた。
亞理沙の刃を防ぎきれず、涯の左腕には赤い筋が刻まれ、真っ黒なコートに紅のアクセントを加える。
痛みは思考を鈍らせ、思考の鈍りはまた新たな傷を生み、その果てに待つのは―――死。
それをよく理解していた涯は、その瞬間に全力で距離を取った。
荒くなった息と、乱れた思考を整えなければならない。
無論、そんな隙を逃す亞理沙ではない―――

「…?」

はずだったのだが。
果たして亞理沙からの追撃はなかった。涯の血が滴る刃を構えたまま、一瞬…揺れる。

今まで一切震えることのなかった切っ先が振るえ、その目に宿る冷徹で強固な殺意がほんの一瞬だけ綻びを見せたのだ。

それを見て、涯は一つの作戦を思いついた。
とはいうものの作戦と言えるような立派なものではない。
失敗すれば即、死。成功したとしても、間違いなく大きな傷を負う。もし推測が外れていれば成功したとしても待っている末路は同じく死だ。
命を賭けた大博打。だが、やらざるを得ないだろう。

覚悟を決める。

涯はもう一度刀を構え直し、亞理沙と正対する。
もはや亞理沙に一瞬だけ垣間見えた迷いは消え、低い構えから、必殺の突きを繰り出してくる。
対する涯は、



刀を捨て、迫りくる切っ先を素手でつかみ、自らの体内へと、その冷え切った殺意と鉄の塊を招き入れた。



「…しつこいですねぇ」

「クッ…!」

「いい加減、諦めてはいかがですか?」

「がっ!」

一体もう何度目だろうか。
集の体が床へと叩きつけられる音が響き渡る。
幾度となく立ち上がり、しかしまた倒れるいうことを繰り返す。
叩きつけられようと、投げ飛ばされようと、臓腑に一撃を見舞われようと。
集は諦めることなく再度立つ。

たとえどれだけ傷つこうと、心が折れることはない。
それが、『桜満集』という人間だった。
痛々しいほどの自己犠牲。
自罰的とすら受け取られかねない献身的な姿勢。

彼女たちは、そんな彼に心惹かれたのだろう。

「…もう、いいでしょう」

だが、それではいけません、桜満集君。
あなたは、『選択しない事』がどれだけ残酷であるかということをわかっていない。

「あなたはいつまで、そんな事を続けるつもりですか?」

「…まだだ、まだ…皆を、助けるまで、は…!」

「…それは、傲慢というものですよ、桜満集君」

「…え?」

なるほど彼は、どれだけ肉体を傷つけられようと這い上がるのだろう。
ならば、直接心を叩き折ればいいだけの話である。

「何故あなたが助けなければいけないのです。何故あなた一人で助けなければならないのです。」

「っ…それは」

「もう、気付いているのではないですか?誘拐された彼女たちの人選の意味を」

「…」

沈黙。
それは、時に何より強い肯定の意を表すもの。

「一体いつからでしょうかねぇ…姉との決別した日?皆と共に行った旅行?もしくはもっと以前でしょうか。
あなたは彼女たちの心に気付きながらそれでも選択せず、変化に恐怖し、徹底的に現状を維持しようとしてきた…。」

「それの、それの何がいけないんですか!誰かを切り捨てて、傷つけて…そんなこと、僕は…っ!」

「その甘い理想が、彼女たちをどれだけきつく縛り上げているのか、理解していないのですか?
いつか摘み取ることが分かっているのに、希望を与えることの残酷さが分からないと?」

「でも、でも…!」

その先の言葉が、出ない。
集もわかったいるのだ、嘘界の言葉が正しいことなど。
あまりにも優しすぎる彼は、選択することができない。
しかし優しすぎる故に、選択しなければならないとも思う。
相反する二つの想いの板挟みになり、顔には苦渋の色を浮かべ、俯く集。

その様を満面の笑みで見下ろしながら、最後の一言を口にする。

「さぁ、あなたは誰を選択するのですか?」


『ダリル!』

その瞬間、痛みに苛まされていたダリルの思考が一気に覚醒する。

『あんた、一体何してんのよ!』

『おま、え…』

憔悴しきり、もはや返事をする事すら覚束なくなったダリル。
その様子を見かねて、ツグミは質問する相手を切り替える。

『研二!』

『はいはーい』

狼狽する二人に対して、研二はあくまでもいつも通り飄々と対応する。
その態度に、ツグミの怒りはさらに加速させられる。

『あんた一体どういうつもり!?ダリルに一体何をしたの!』 

『ただ、ゲームをしてるだけだよ…ただ、フィードバックの設定のリミットを外しただけさ』

『そんな!…そんなことしたら、痛みでショック死したっておかしくないわよ!やめなさい!今すぐに!』

『それを決めるのはツグミじゃないよ…ねぇ、ダリル』

『っ…そう、だな…さっさと続けようぜ』

『何言ってるのよ!言ったでしょ死ぬかもしれないって!なのに…』

『はん、僕が、お前の言うこと、聞いたこと、あったかよ…?』

『下らない意地張ってんじゃないわよ!あんた、これ以上戦ったら本当に』
『うるさい!!!』

その瞬間、ブツリと通信が途切れる。
映像は掻き消え、声も届かない。

『おい…どうしたんだよ、おい!』

『いやなーに、うるさいってことだから消してあげたんだよ、僕が』

『…お前』

『さて、じゃぁ邪魔者も消えたことだし、さっさと再開しよっか』

『その前に一つだけ聞かせろ』

『ん?』

『お前…あいつに何をしたッ!!』

その声には、隠しようもない怒気が含まれていた。

『…何にもしてないよ。ただ、今ツグミは真っ暗な部屋の中独りぼっちでいるってだけさ』

『…』

『心配かな?今ツグミがどこに居るのか、どんな目に合っているのか、どんな目に合うのか、それが心配で気になってしょうがない?それとも…』


『泣いてるツグミを見て怒っちゃった?』


『ぶち殺す!!!』

訂正しよう。
ダリルの抱く感情は怒りではない。
これ以上なく明確で荒々しい、

『殺意』だ。


シュタイナーの左手が放った斬撃が、シュタイナーを捕えているゲシュペンストの腕へと迫る。
ゲシュペンストはシュタイナーの腕をあっさりと放し、仕切り直しと言わんばかりに後退して距離を取る。
そして再度、黒い巨人と白い閃光が交錯する。

シュタイナーが撃った弾丸は、やはりゲシュペンストに届くことはない。それでもシュタイナーは―――ダリルは攻撃の手を休めない。
たとえその攻撃がそのまますべて自分に返ってこようとも。
何が何でもこいつをぶち殺すという執念が、シュタイナーに引き金を引かせ続けていた。

『無駄無駄無駄ぁ!』

反射される攻撃を避けながら走るシュタイナーに、風を引き裂く音を響かせながらゲシュペンストの剛腕が迫る。
疲労からか、苦痛からか、それとも怒りからか。シュタイナーの動きには以前ほどの速度も精細さもなく、回避しきれない攻撃が増え始める。

『く、そ…がッ!』

一旦攻撃を中止し、距離を取るシュタイナー。
そのタイミングを頃合いと捉えた研二がダリルへと語りかける。

『ねぇ君、なんでそんなに必死になるのさ?』

『…決まってるだろ。お前に負けるのが気に入らないからさ』

息も絶え絶えになりながら答えるその声に力はない。
荒々しい殺意は消えることはないまでも幾分か弱まってしまっていた。

『それが見栄だっていうことなんて丸わかりだよ。
君は、イラつくとすぐにそれを発散しようとするよね?状況が不利になってる時ほど冷静さを欠いてどつぼに嵌まって自滅するタイプだ。
けど、さっきから君の攻撃はどうにもいつもよりもずっとマシに見える。無茶苦茶なようでその実シールドの穴を探すために様子見のような弾幕ばらまいたり、攻撃をさばききれないと見ると距離を開いて回避に専念したり…ね。
今までの君なら既に一度ゲームオーバーになって再戦を申し込んでいるはずだよ。
いや、フィードバックのリミッターを外したことや、機体の性能差に難癖付けて仕切り直しを要求してたっておかしくない』

『…』

『君は、どうしてこの勝負ではそこまで冷静に勝ちを考えられるんだろうね?
さぁ、いつものバトルとの違いを考えてみよう。
場所の違いかな?けど、結局乗ってるのはいつものコフィンだ。君に影響を及ぼすほどの差異はない。成長した?いいや、数か月にわたって何度か対戦を観戦してたけど、プレイングスタイルは全く変わってないようだし、今突然変化する理由となるとわからない。これも違いそうだね。
さーてなんでだろうなー?どうしてだろうなー?あぁ、そうそう、そういえばいつもと違うことがもう一つだけあったよね。』

明らかに明言を避けてきたその要素を、わざとらしく勿体ぶって口にする。

『この勝負に負けたら、ツグミがどうなるのかわからない』

『…』

『でも、そんなに君にとってツグミは大切な存在なのかな?
出会って1年も経ってないし、言葉を交わせば口げんか、目を合わせれば取っ組み合いとその関係はどう控えめに言ってもいい関係だったとは言いにくい。ましてお坊ちゃんとして育てられた君には、ツグミみたいなタイプは水と油のように気が合わなかっただろうね。さて、そんなツグミを、果たして命を賭けて助ける価値は…』

『うるさい…』

『…何?』

『うるさいって、言ってるんだよォ!』

『…』

『あぁそうだ!僕はあいつが大っ嫌いだ!全然僕の言うこと聞かないし、偉そうだし、反抗してくるし、あいつの罰ゲームのせいで、どれだけストレスが溜まったか知れないさ!』

『じゃぁさっさと見捨てればいいじゃないか』

『嫌だね!』

『…どうして?』

『そんなあいつの事が大嫌いでッ…』


『そんなあいつの事が大ッ好きなんだからさぁ!!!』


『…くは、いい啖呵だよ』

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!』

咆哮するダリルと共に、シュタイナーが地を駆ける。
何の策もないただの特攻。

『その意気に免じて、ここは勝ちを譲ったげるよ』

だが、魂を込めたその一撃が、この戦いに幕を下ろした。


「はぁーいお疲れ様!よく頑張ったねぇお兄さん感動しちゃったよ」

「…」

コフィンから降りたダリルは、疲弊した様子でふらふらと頼りなさげに歩きながらも、研二の事をキッと睨みつけている。

「なんだい?納得いかない?安心しなよ。戦いたいならまた今度セッティングしてあげるから。ほら、さっさと迎えに行って上げなよ。これがお姫様の居るところの鍵…」

と、鍵を取り出した研二の顔面に、
ダリルの握りこぶしが深々と突き刺さる。

「あっ…がぁっ!!」

「…今日は疲れてるから、これくらいで勘弁してやる。次に会ったとき、絶対グチャグチャにしてやるから覚悟しておきなよ。」

そう言って、ダリルはさっさと部屋から出て行ってしまった。



「いっつぅ…あいつ、全然手加減しないでやんの…まさか、鼻折れてないよね?うげ、鼻血出てきた…」

「全く、こんなことされたら…」


「報復したくなっちゃうじゃない」


そう言った研二の手元には、「送信済み」という画面が表示された携帯端末が握られていた。



刃を伝ってポタポタと、涯の胸元から流れ出る血が滴り落ちる。
血で染まった畳が、月明かりに照らされて赤黒い色を発する。

その血だまりに、―――亞理沙の涙が、混じる

「…何故」


「何故、私を殺してくれなかったの」


やはり、そうだったのか。
疑問に思っていた。もし本気で俺を殺すつもりなら、なぜこんな真正面から挑むようなことをしたのかと。
わからなかった。ここまでたやすく真名が誘拐を可能にする手段が。
理解できなかった。義父さんが俺と敵対する理由が。
目の前で、『俺を殺したくなるほど追いつめられている亞里沙』を見るまでは。

「…殺せるわけ、ないだろう」

胸元から伝わる激痛に耐えながら、涯は言葉を紡ぎだす。

「お前は、真名の…大切な、友人だろう、が」

「…でも、私は!その大切な友人から、あなたを…奪おうと…」

「…」

「でも、そんなことは出来ないとわかっていた。あの子を傷つけることも、あなたの心を奪うことも、私にはできないっ…でもだからって諦められなかった!!!」

「だから!愛する人たちと共にに生きられないなら、せめて!」


「…愛する人の手にかかって死にたかった」


演技などではない。あれは本物の殺意だった。
けれど、それくらいでなければ、涯が亞理沙を殺さざるを得ないほど追いつめられはしないと、わかっていたのだろう。

「何故だ…何故お前は、そこまで…」

「私は、『供奉院』だから。供奉院名を持つ人間は、供奉院のために生まれ、供奉院のために生き、供奉院のために死ぬ。それ以外の道はないのよ…。これ以上生きていても、私はお爺様の道具として生き、死ぬしかない。でも、そうでない可能性を示してくれたのはあなたよ、涯」

「…」

「あなたは、供奉院という鎖から私を開放してくれた。おかげで私は、ほんの少しの間だけだけど、人としての生を楽しむことができた…だからお願い。私を殺して。私をどうか…人のまま死なせてほしいの」

「…それは、お前の勘違いだ、亞里沙」

「…え?」

「お前、は、俺を過小評価、しすぎだ。何故一言、俺に「助けてくれ」と言わなかった」

「でも、でもあなたの心は…!」

「それが、なんだ…俺が、一人の女を愛するので手一杯な、不器用な男だと、思っていた、のか?
ふん。全く…女を愛する片手間に、『友達』の頼みを聞いてやる、ことくらい、わけないさ」

「そんな!相手は、あのお爺様なのよ!いくらあなたでも…」

「ふん、二度同じ、ことを…俺に言わせるな。お前の祖父は、お前が思っているほど絶対ではないし…俺は、お前が思っているほど平凡では、ないぞ」

「そんな…でも…」


「俺を信じろ、亞里沙」


「……けて」

「助けて、涯!」

「…あぁ、わかった」

そこで、涯の意識は途切れた。


「ぐっ…はぁ、はぁ…ここか」

息も絶え絶えになりながら行き着いたそこで、研二から半ば奪うようにして得た鍵を使い、その部屋へと入る。

「…おい、いるのか?」

そう言ったダリルに応える声はない。
が、



僕はあいつが大っ嫌いだ!全然僕の言うこと聞かないし、偉そうだし、反抗してくるし、あいつの罰ゲームのせいで、どれだけストレスが溜まったか知れない!

じゃぁさっさと見捨てればいいじゃないか



そんな声が聞こえてくる。
どうにも聞き覚えがある、と思ったが、これは今さっきダリル自身が研二と交わした会話だと思いだす。



嫌だね!

…どうして?

そんなあいつの事が大嫌いでッ…



そういえば、自分はこの後何と言った?
痛みでぼうっとしていたせいで、とんでもないことを口走った気がする。
そうだ、あのとき…


『そんなあいつの事が大ッ好きなんだからさぁ!!!』


その台詞を、ツグミが聞いていた。

「…ふ、ふふふ」

顔が熱くなるのを感じる。
ここが真っ暗でよかったと心から思う。
もし僅かでも光があったら、今の真っ赤に染まった自分の顔を見られていただろうから。

「お、おま、お前…!」

手にしていた携帯端末を手放して歩み寄ってくるツグミ。

「へぇー、あんたがあたしをそんな風に思ってくれてたなんて…ぷはっ!!!」

「ち、ちが!それは、た、ただ、痛みとかで頭がおかしくなってたからっ!」

「そう遠慮しなさんなって!死ぬほどの思いをしてわざわざ助けに来てくれたナイト様には…お姫様としてはご褒美を上げないと、さ!」

「う、うるさいうるさいうるさい!もういい!僕は帰る!帰るからな!鍵も開けてやったし、もう勝手に…」

ふわりと、柔らかい感触が頬から伝わる。
それが、ツグミの唇の感触だと気付くまでにどれだけの時間がかかっただろう?

「ありがと、ダリル」

ツグミは自分の顔が熱くなるのを感じる。
この部屋が真っ暗でよかったと今だけは思う。
もし僅かでも光があったら、今の真っ赤に染まった自分の顔を見られていただろうから。


「…知らない天井だ」

「あら、起きたの?涯」

目が覚めて辺りを見回すと、すぐ傍に真名が居た。
どうやら涯はベッドに寝かされているらしいと気付く。
胸元にまだ痛みを感じるが、多少の違和感程度のものだ。どうやら既に治療は終わっているらしい。

「すべてはお前の掌の上…か?」

何故、誘拐されていたはずの真名がここに居るのか。
答えは簡単だ。この一連の騒動は、全ては真名の策略だったということだろう。
通りで研二や義父さんまで協力しているはずだ。

「そこまでは言わないわ。でも、きっとあなたなら、亞理沙のことをなんとかしてくれるって思ってたから」

それが、俺を呼び出した目的。
真名を餌にして俺を呼び出し、亞理沙と対面させて、亞理沙の問題を解決すること。

「…だが、問題はここからだ。今日の事はただの始まりに過ぎない。」

そうだ。これから涯は、あの供奉院グループと真っ向から戦うことになる。
無論、これまでにいくつもの布石は打ってきた。不可能では決してない。
だが、そう簡単にいくわけもないだろう。本当の戦いは…これからだ。

「でも、もう少しだけ休んでいなさい。あなた、日本刀で胸を突き貫かれたのよ?」

「…きちんと急所は外してあるさ」

「それでも、よ」

「しかし…」

「あなたが無茶をして何かあったら元も子もないわ。亞理沙を確実に助けるためにも、今は休みなさい。そのときは私も手伝うから」

その言葉は、流石に予想外だった。

「相手はあの供奉院グループだぞ!そこいらのちんぴらとは違う!危険すぎる!」

「だから何?きっかけはあなただったけれど、そもそも亞理沙をあそこまで追いつめた原因は供奉院グループにあるんでしょ?ただで済ますわけないじゃない…うふふふふふ」

一瞬、真名の目に宿った狂気に気おされ、「こいつならやりかねないと」思ってしまったが…。

「…真名、俺は」

「まったくもう、うるさいわねぇ…あんまり騒がしくしてると…」


「その口、私の口で封じちゃうわよ?」

そういうや否や、真名は涯の上に覆いかぶさってきた。

「真っ!ぐっ…」

突然の出来事に驚き、反射的に真名を押し返そうとするも、しかしそれは真名の手によって防がれる。
まだ閉じきっていない傷口を弄られ、涯も流石に痛みに顔をしかめ、動きを止めざるを得なかった。

「おとなしくしてて…ね?」

「………あ」

あぁ、義父さん。
俺は今日、大人の階段を昇ります。




月明かりを頼りに、廊下を進む。
手にした鍵はたった一つだけ。
そのカギで、目の前の扉を開け放つ。

「…集」

「…お待たせ、いのり」

桜満集は、校条祭を選ばなかった。
桜満集は、篠宮綾瀬を選ばなかった。
桜満集は、縁川雅を選ばなかった。

桜満集は、楪いのりを選んだ。

「皆は?」

「嘘界先生が送り届けるって…いやでも、流石に予想外だったよ。この一連の騒動が…まさか、皆で仕掛けた狂言誘拐だったなんて」

すっかりだまされた、というように朗らかに、しかし乾ききった笑い声をあげる集。

「ちなみに発案は、真名」

「…うん、まぁ、そんな気はしてたよ」


「でも、これで良かったのかな」

そう、思わずにはいられない。
確かに、選択しなかったことは、残酷なことだったのだろう。
もっと他に選択肢はなかったのだろうか?
誰も傷つけず、みんなが幸せになれる、そんな方法が、何か・・・。

思い悩む集の手を、いのりがにぎる。

「いのり…?」

「私は、嬉しかった、よ?集に、選んでもらえて…だから、」

この選択が正しいのか、間違っていたのか、それは今はわからない。

「ありがとう、集」

けれど、その言葉で、ほんの少しだけ、救われたような気がした。


二人で薄暗い校舎の中を歩く。
互いに手を握って。
外に出ると、雪が降っていた。

「…あぁ、そういえば」

今日が何の日だったのかを、今になって思い出す。

「メリークリスマス、いのり」

「…うん」

「ねぇいのり、聞いてくれる?」

「うん」

「僕は君を選んだ。けどそれは、きっと選ばれなかった彼女たちを、傷つけたことだろうと思う。
だからこそ、僕は、僕が選んだ君を、絶対に幸せにして見せる。
勝手な言い分だって言われるかもしれいけど…でも、僕は、決めたから」

「…集」

その言葉を合図にして、いのりを目を閉じて、そっと唇を突き出す。
その仕草の意味が解らないほど、集はもう鈍くはない。
優しく腰の辺りを抱き、そっといのりを引き寄せて。

唇と、

唇が。




ユウ「

 申 し 訳 あ り ま せ ん で し た 。

最終回にして最後の後書き第一声が謝罪というのもどうかと思いましたが…。

しかしやはり、クリスマス・イブに上げると言っておいてこの体たらく。謝罪せずにはおれませんでした。

さて、というわけで本SS、「集「姉さん!朝だよ起きて!」真名「むぅー・・・」」は、完結となります。

如何でしたでしょうか?

もしよろしければ、感想なんかを寄せていただければ幸いです。

さて、最終回ですからなにか気の利いたことの一つでも言いたいところですが…何も思い浮かびませんね。

では、ここまでお付き合いいただき、皆様、本当にありがとうございました。



さようなら。























また会う日まで。

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