ほむら「まどかが、ミスチルに凝り出したわ」(51)


~教室~


まどか「ふふ~ん♪」

まどか「ふんふ~ん♪」


…スタスタ


ドンッ

まどか「あ、ご、ごめんなさいっ」

ほむら「…いいえ、私のことは気にしないで」

まどか「あ…ほ、ほむらちゃん…」

ほむら「それより、あなたは大丈夫?ケガはない?」

まどか「…う、うん」


ほむら「ちゃんと前を向いて歩かないと、ケガするわよ」

まどか「ご、ごめんなさい…」

ほむら「何かに見とれていたの?」

まどか「ううんっ、そういうわけじゃないんだけど…」

ほむら「…?」

まどか「…恥ずかしい話なんだけど、鼻歌歌ってて…」

ほむら「ふふ、まどからしいわね…」

まどか「うんっ、最近ね、ミスチルをよく聞くんだあ」

ほむら「…そうなの」

まどか「ほむらちゃんも聞いてみて、本当にいい曲ばっかりだからっ」

ほむら「そうね、時間があれば」


放課後 
 ~マミの家~


まどか「でね、この『もっと』って曲は……」

さやか「まどかは本当にミスチル好きだよねえ」

まどか「だって、良い曲ばっかりなんだもん」

杏子「アタシは『しるし』くらいしかわかんないなあ」

杏子「でも確かにあれだけ、有名だからすごんだろーな」

杏子「アタシももっと聞いてみよっかなあ」

まどか「うんっ!せひ聞いてみてっ、杏子ちゃんっ」


さやか「あたしは、『渇いたkiss』とか好きだなあ」

まどか「さやかちゃんも結構知ってるじゃん」

さやか「いやあ、お母さんがね、一枚だけアルバム持っててさあ」

さやか「その中では、一番好きかなあ」

まどか「多分『IT’S A WONDERFUL WORLD』じゃないかな」

まどか「うぇひひっ、なんだか『渇いたKiss』ってさやかちゃんにピッタリ」

さやか「どーゆー意味だよー、それはー」


マミ「…ふっ、あなたたちも皆、まだ子供ね…」

マミ「ミスチル最高のアルバムは『深海』に決まってるじゃない」

まどか「うわあ、マミさん、大人っ」

マミ「ふふっ、当然よ」

マミ「最近のだと、私は『いつでも微笑み』とか素敵ね」

まどか「なんだかマミさんっぽくて、すっごくいいですっ」


翌日
 ~教室~


まどか「ふふ~ん♪」

まどか「ふふふ~ん~ん~♪」



さやか「おっ、それは『名もなき詩』だなあ!」

まどか「さやかちゃんっ、よくわかったね!」

さやか「そりゃ、まどかみたいに気持ちよさそうに鼻歌歌ってたら、ねえ」

まどか「えっ…」

まどか「そ、そんなに聞こえてた…!?」

さやか「まあ、それなりには」

まどか「は、恥ずかしいっ」



ほむら「……」



ほむら(まどか…また、あの子は鼻歌なんか歌って、大丈夫かしら…)

ほむら(ミスチルなんて名前ぐらいしか知らないけど、そんなにいいのかしら…)


放課後
 ~帰宅路~


ほむら「……」

スタスタ…


まどか「ほむらちゃ~んっ」

ダダダダッ



ほむら「…まどか」


まどか「良かった、間に合って…」

まどか「ちょうど後ろ姿が見えたから、もし良かったら一緒に帰ろうかなって」

ほむら「……そう」


……スタスタ


まどか「そう言えば、ほむらちゃんは音楽聞いたりしないの?」

ほむら「…あんまり聞かないわね」

ほむら「流行りの曲すら知らないかもね、私…」

まどか「そっかあ、じゃあ好きなアーティストさんとかもいないの?」

ほむら「…まあ」

まどか「それは勿体ないよ~、音楽はいいよ~」

まどか「歌詞に共感したり、私なんて、聞いてて泣いちゃうことだってあるんだもんっ」

ほむら「……」


ほむら(相変わらずまどかは純粋そのものね、この子の将来がとても不安だわ…)


まどか「ほむらちゃんも誰の曲でもいいから、まずは聞いてみなよっ」

ほむら「そうね…機会があれば…」

まどか「うんっ、私はミスチルをオススメするよっ」


ほむら「…まどかは、どうしてそんなにミスチルが好きなの…?」

ほむら「何かきっかけがあったの?」

まどか「…うん、あのね…ちゃんと理由はあるんだ」

まどか「ただ有名だから聞いてるとか、そういうのじゃないんだよ」

ほむら「…どうして?」


まどか「ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど…」

まどか「ほむらちゃんには特別に教えてあげるね…」


まどか「私のね、ママが昔から好きだったんだ、ミスチル」

まどか「だから、私もママの車の中とかそういうとこでしか聞いたことなかったの」

まどか「それでね、私のママはお風呂が好きで、よく長湯するんだけど」

まどか「長湯するために、ママがお風呂場にね、CDラジカセを置いてたんだ」

ほむら「……」

まどか「ここからが、ちょっと恥ずかしい話なんだけど…」


まどか「私ね、タツヤが生まれてすぐくらいまで、一人で怖くてお風呂に入れなかったんだ…」

まどか「タツヤがお風呂に入れるようになってからは、私もお姉ちゃんらしくしなきゃ」

まどか「ってことで、もちろん大丈夫だったんだけど…」

まどか「それで、一人でお風呂に入るの怖かったから、その怖いのを紛らわすために」

まどか「ママが使ってたCDラジカセでCDを鳴らしてたの」

まどか「そして、そのCDの一曲目がね、ミスチルの『HERO』って曲だったんだ」

まどか「今も普通に聞くんだけど、なんだかその曲聞くとね、怖いのが一気に」

まどか「吹き飛んじゃうって感じで、勇気が出るんだあ」

ほむら「ふふっ、まどからしいわね…」

まどか「それが、私がミスチルを好きになったきっかけなの」


ほむら「なんだか意外だわ…」

まどか「うぇひひっ、私の場合は本当に特別だよっ」

まどか「でも、音楽を聞き出すとか、どんなアーティストさんを好きになるのかは」

まどか「みんなそれぞれ何かきっかけとか、あるんじゃないかな…」

ほむら「…そうね」

ほむら「それで、まどかがミスチルを好きになるきっかけにになった」

ほむら「その『HERO』って曲はどんな曲なの?」

ほむら「私も、ぜひその曲聞いてみたいわ…」


まどか「うんっ、聞いてみて!とってもいい曲だよっ」

まどか「私はね、その曲の歌詞が好きなの」

まどか「後で調べて、わかったことなんだけど、ミスチルってね、基本的に恋愛系の歌詞が多いんだけど…」

まどか「この曲はね、櫻井さん自身が大変な時期に書いた家族愛の歌詞らしいの」

ほむら「…どんな歌詞なの?」

まどか「私はね、この歌い出しの歌詞が一番好きなんだ」



まどか『例えば 誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとして』


まどか『僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ』



まどか「って、歌詞なんだあ」

ほむら「…!」


ほむら(この歌詞…!)


まどか「いい歌詞でしょ?なんだかね、私…この歌詞聞くと……」

まどか「あ、あれ…なんだか、よく読み直すと、この歌詞って、私も………」


キラー
シュイーン!

ほむら「!」


ほむら(やっぱり…!まどかの目が金色に…!)


ギュッ…

ほむら「…ダメっ!」
ダキッ!


まどか「え…」

まどか「ほ、ほむらちゃんっ!?」


ほむら「それ以上は…!ダメよ…!!」

ほむら「まどか…!」


まどか「え……」

まどか「あ、あれ…わ、私は……」




ほむら「……」


ほむら(ミスチルだかなんだか知らないけど…)

ほむら(こんな歌詞を書いて…許せないわ…!)


その後
 ~ほむほ~む~


ほむら「……」


ほむら(このままミスチルにまどかが凝り出すと危険だわ…)

ほむら(いつ円環の理の力を取り戻すことか…)


ほむら(でも、まどかにミスチルを聞くなとも言えないし…)

ほむら(とりあえず、歌詞を調べてみて、他にも危険な歌詞がないか調べてみましょう…)


…カタカタ
カチカチ…

ほむら「…グーグルで…」

カタカタ…
カチッ

ほむら「ミスチル…歌詞っと…」

カタカタ…
カチチ


………


ほむら「…結構多いのね、ミスチルの曲って」

ほむら「ん?」

ほむら「…『終わりなき旅』?」


ほむら(なんだか印象に残る曲名ね…)

ほむら「あ、動画があったわ、PVかしら…?」

カチ…


♪~~

櫻井「息を切らしてさ 駆け抜けた道を 振り返りはしないのさ」



ほむら「……」



♪~~~


櫻井「大きな声で 声を枯らして 愛されたいと歌ってるんだよ」



ほむら「…」

ほむら(この歌詞…)



♪~~~


櫻井「閉ざされたドアの向こうに 新しい何かが待っていて」

櫻井「きっと きっとって 僕を動かしてる」



ほむら「……っ」


ほむら(どうしてかしら、なんだか胸に響くわ…)


♪~~~~~


櫻井「難しく考え出すと 結局全てが嫌になって」

櫻井「そっと そっと 逃げたしたくなるけど」




ほむら「……ううっ」


ほむら(こんな、こんな…歌詞…!)



♪~~~~~~



櫻井「誰の真似もすんな 君は君でいい」

櫻井「生きる為のレシピなんてない ないさ」



ほむら「…ううっ、ぐすっ、ひくっ…」


♪~~~~~~~


櫻井「胸に抱え込んだ迷いが プラスの力に変わるように」

櫻井「いつも 今日だって 僕らは動いてる」


櫻井「嫌なことばかりではないさ さあ次の扉をノックしよう」

櫻井「もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅」




ほむら「う、うう…」

ほむら「…うわああんんっ」


ほむら(私は…私がしてきたことは…!!)


翌日
 ~教室~

ガヤガヤ…


ほむら「……」

まどか「あ、ほむらちゃん、おはよう」

ほむら「まどか…」


ほむら「…ううっ、ぐすっ、ひくっ」

ほむら「まどかあっ…」


まどか「えっ!?」

まどか「えっ、ほ、ほむらちゃん!?」

まどか「どうしたの!?」



………


まどか「そっかあ、ほむらちゃんもミスチルの曲で泣いちゃったのかあ」

まどか「でも、その気持ち、すっごくわかるよっ」

まどか「私も…気付いたら泣いてることとか今でもあるし…」


ほむら「……」

ほむら「…まどか」


ほむら(で、でも、このままじゃ…あなたは…!)


スタスタ…


さやか「なになに、ほむらもミスチルの良さ、わかったって?」

杏子「そんなに急に変わるものなのかよ」

まどか「ミスチルは聞けば、変わるよ、杏子ちゃんっ」

杏子「へえ~」

杏子「アタシも何か聞いてみよっかなあ」


さやか「それにみんなの趣味が合うっていいことだよ、杏子」

さやか「そうだ!ライブいこうよ!ライブ!」

まどか「いいねっ!」

さやか「マミさんも喜んで来るだろうし、みんながミスチル好きなら問題ないじゃん」

まどか「うんっ!みんなでいこっ!」



ほむら「……」


ほむら(確かにライブで『終わりなき旅』とか聞きたいけど…)

ほむら(もし『HERO』なんかライブで歌われたら、まどかが…!)

ほむら(仕方ないわ…ここは、『HERO』だけでも…)


~放課後~


ほむら「…まどか、ちょっと話があるの、一緒に帰りましょう」

まどか「えっ、う、うん」




…スタスタ


まどか「それで…話ってなに…?ほむらちゃん」

ほむら「率直に言うわ…」

まどか「うん…」


ほむら「『HERO』を聞くのをやめないさい…」

まどか「えっ」

まどか「…『HERO』って、ミスチルの?」

ほむら「ええ」

まどか「ど、どうして…」

ほむら「どうしても、よ」

まどか「な、なんで……ほむらちゃんがそんなこと言うんだから」

まどか「き、きっと理由があるんでしょ…」


ほむら「……」

まどか「理由がはっきりしないなら、私は聞くのをやめないよ…」

ほむら「……!」

ほむら「聞きわけのない子ね…」

まどか「ほむらちゃんだって、何か隠してるんでしょ…」

まどか「本当は何か隠してるんでしょ…!」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃんは悪い人なんかじゃないから…」

まどか「だって、ミスチルを聞いて泣くような人に悪い人なんていないもん」

まどか「だから、何か理由があるんでしょ…」


ほむら「……」

まどか「……」


ほむら「……じだからよ」

まどか「え…?」

ほむら「…大事だからよ」

ほむら「貴女が大事だからよ…!」


まどか「…え」


ほむら「私が今までしてきたことは全部あなたの為だったの…!!」

ほむら「あなたの意志を否定したのも、私が理に叛いたのも、何度も時間を遡ったのも」

ほむら「全てはあなたのため…!」

ほむら「それで、ようやく…ようやく、それに答えが出たの…」

ほむら「でも、正しいのか、間違ってるのか…自分でもわからなくなって」


まどか「……ほむらちゃん」


ほむら「ごめんね、わけわかんないよね…」


ほむら「でも、そんな時にまどかが教えてくれたミスチルの『終わりなき旅』に出会ったの…」

ほむら「まるで、まるで…私のことを歌ってくれたような歌詞だった…!」


ほむら「だから、だから…私は、今のこの選択を信じたいの…」


ほむら「今まで、息を切らして駆け抜けた道を振り返りたくない…」

ほむら「ただ、あなたとの未来へ夢を乗せて…」


まどか「…大丈夫だよ、ほむらちゃん」


まどか「私も今が一番幸せだよ…」

まどか「何も失いたくなし、何も変わってほしくない…」

まどか「私だって、どこにもいったりしないよ、ほむらちゃん」


まどか「私にはね、今のありふれた時間が愛しく思えるんだ…」

まどか「多分ね、それは愛の仕業って、思うの」


ほむら「まどか…!」


まどか「まだ残された時間があるから、私たちには」

まどか「だから大切にしようよ、ほむらちゃん」

ほむら「ううっ、ぐすっ、ひくっ…」

まどか「…そうやって、暮らしていこうよ」

ほむら「う、うんっ…」


同じころ
 ~さやかの家~



杏子「ふんふ~ん♪」



さやか「はい、これ、借りてきたミスチルのCD」
さやか「あんたが聞きたいって言うから借りてきたんだからね」
ドサッ


杏子「あ、そこ置いといて」


…数分後


杏子「ふんふ~ん♪」



杏子「ん?」

杏子「なあなあ、さやか、ちょっといいか?」

さやか「何?」


杏子「このさあ『ファスナー』って曲のさ」

杏子「”およそ期待した通りのアレ”ってなんなんだ?」


さやか「っ///」

さやか「そ、そういうのは自分で考えなよ」


杏子「はあ?意味わかんねーぞ」


……また数分後



杏子「ふんふ~ん♪」


杏子「ん?」

杏子「なあなあ、さやか、ちょっといいか?」

さやか「今度は何?」


杏子「このさあ『マシンガンをぶっ放せ』って曲のさ」

杏子「”僕にコンドームをくれ”のコンドームってなんなんだ?」


さやか「…はあ!///」

さやか「あ、あんたねえ…!」


杏子「んだよ?」

さやか「そ、そういうのも自分で考えなよ…」


杏子「はあ?意味わかんねー歌詞ばっかだなあ…」


……またまた数分後



杏子「ふんふ~ん♪」


杏子「ん?」

杏子「なあなあ、さやか、ちょっといいか?」

さやか「……何?」

杏子「このさあ『フェイク』って曲のさ」

杏子「”ホック外してる途中で気付いていたって ただ腰を振り続けるよ”のホックってブラか?」


さやか「な…///」

さやか「そ、そうだけど…」


杏子「だよな!で、そこまではわかんだけどさ…次の”腰を降り続ける”ってどういう意味なんだ?」

杏子「コイツはブラのホックを外して腰振って、一体何してんだよ」



さやか「…もう!ばかっ///」

さやか「アンタはもうミスチル聞くなっ!」


杏子「はあ?なんで怒ってんだよ、さやか」


さやか「もう知らないっ」
スタスタ…



杏子「あ、おい!ちょっと待てって!」

杏子「まだ『こんな風にひどく蒸し暑い日』の”流れ出したもの”とか」

杏子「他にも聞きたいことは…」




杏子「お~い!待てって!さやかあ~」


翌日
 ~教室~


ガヤガヤ…


さやか「って感じだったんだよ~、昨日ね」

さやか「いくらなんでも知らなさ過ぎでしょ、杏子は!」

まどか「ま、まあ仕方ないよ、私もまだわからない歌詞とかあるし…」


ほむら「!」

ほむら「…それは私が教えてあげるわ、まどか」


まどか「えっ」

まどか「そ、そんな…ちょ、ちょっと恥ずかしいよ、ほむらちゃんっ」


ほむら「…じゃあ早速だけど、まどか」

ほむら「『Sign』の歌詞の”でもいつかは裸になり甘い体温に触れて 優しさを見せつけ合う”」

ほむら「って意味わかるかしら」

まどか「…も、もうっ、ほむらちゃん///」



さやか「なんであんたたちまでそんなことしんてのさ!」


まどか「うぇひひっ」


まどか(今日も櫻井さんのお陰で、私たちは平和です)

まどか(ありがとう、櫻井さん)

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