時雨「こんな雨の日には、提督と一緒に」 (235)


時雨「いい雨だね」

提督「そうだね。こんな雨の日は久しぶりだね」

時雨「雨はいいよね。見ていると心が洗われるみたいだ」

提督「この雨音もいいよね。すごく落ち着く」

時雨「うん」

提督「……」

時雨「……」

時雨「……提督、こっちにきてくれる?」

提督「……?」スッ

時雨「これ。窓から見える景色も、なかなか素敵だよ」

提督「本当だ。いい眺めだね」

時雨「ふふっ」

提督「どうしたの?」

時雨「提督と一緒に雨の日を過ごせて幸せだな、って思ってさ」

時雨「なんだか、とても心地いい」

提督「……」ギュッ

時雨「提督?」

提督「なんとなく、抱きしめたくなったから。ダメ?」

時雨「ううん、そんなことないよ」

時雨「提督、おっきいんだね」

提督「時雨はまだ子供だからな」

時雨「子供扱いしないでよ」

提督「……そうだな、ごめんな」

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時雨「別に、怒ってなんかないさ」

提督「うん。わかってる」

時雨「……」ギュッ

提督「時雨は暖かいな」

時雨「提督も、暖かいね」

時雨「ずっと、こうしていたいね」

提督「夏は暑苦しいんじゃないかな?」

時雨「それもまた、いいものかもね」

時雨「っくちゅん!」

提督「大丈夫?」

時雨「うん、少し身体が冷えてるみたい」

提督「もう春だけど、まだまだ寒い日もあるからね」

提督「こんな雨の日なんかだと、知らないうちに冷えてるのかも」

時雨「風邪引かないように気をつけないと」

提督「だね。季節の節目は風邪を引きやすいからね」

時雨「夜も遅いし、そろそろお風呂に入ろうかな」

提督「ゆっくり浸かって、暖まってきな?」

時雨「そうするよ」

時雨「……提督も、一緒にどうかな」

提督「時雨から誘うなんて珍しい。何かいいことあった?」

時雨「そんなんじゃないよ。ただ、一緒に入りたいなって思ったから」

時雨「ダメだったかな?」

提督「とんでもない。じゃあいこっか」

時雨「うん、ありがとう」










提督「温度はいつもと同じなのに熱く感じた分、やっぱり冷えてるんだろうね」ホカホカ

時雨「みたいだね」

時雨「雨音に癒されながら入浴したのはいつぶりだろう……」ホカホカ

提督「いい湯だったね」

時雨「うん、気持ちよかったね。冷えないうちに、お布団入らなきゃ」

提督「ここで湯冷めしたら元も子もないもんね」

時雨「僕も、提督と一緒に寝てもいいかな?」

提督「ダメって言ったら?」

時雨「提督が後悔しないなら、自分の部屋で寝るよ?」

提督「ごめんなさい」

時雨「素直なのはいいことさ」

時雨「それじゃあ寝ようか」モソモソ

提督「そうだな。今日一日お疲れ様」モソモソ

時雨「提督も、お疲れ様」ナデナデ

提督「はぁー……。どっと疲れが沸いてきた」

時雨「ずっと座ってるのも、意外と疲れるものだからね」

提督「時雨たちみたいに、外で戦闘をしてるわけでもないのに」

提督「こんなことで疲れただなんて言ってて申し訳ない」

時雨「僕は気にしないさ。お互いすべきことを全うしているだけだよ」

時雨「そんなこと気にしないでほら、もう寝よう?」

提督「ん。ありがと」ギュッ

時雨「……」ギュ


時雨「朝起きたときに」

時雨「隣に提督がいて、外は雨が降ってたら」

時雨「それはすごい幸せなことなんだろうなって」

提督「……俺も」

提督「想像しただけで幸せになる」

提督「二人とも一緒に目が覚めて、寝ぼけたまま見つめ合って」

提督「そのとき時雨から仄かにいい匂いがして、温もりが伝わってきたりなんかして」

提督「どちらからともなく、そのまま……」

時雨「ふふ、提督の変態さん」

提督「その後は一緒にシャワーを浴びて、朝ご飯を食べてって」

時雨「……そうだね」

時雨「そんな朝も、僕は好きかも」

提督「一度もそんなことしたことないのにね」

時雨「そのうちきっと、そうなるよ」

時雨「でも今は、この距離感のほうが好きかな」

時雨「もどかしい、この感じが……」

提督「そっか」

時雨「うん。焦らず、ゆっくり……」

提督「……寝ようか」

時雨「……うん」

時雨「おやすみなさい」

提督「おやすみ」




……




提督「ん……」

提督(あれ、朝だ……)ムニャ…

時雨「」zzZ

提督(かわいい寝顔)

提督(やっぱり、時雨はいい匂いがするなぁ)クンカクンカ

提督(もう少しだけ……)ギュッ

提督(うん、時雨の身体は柔らかくて気持ちいい……)

提督「」zzZ




……





時雨(……あれ)パチリ

時雨「ぁ……」

時雨(なんかきついと思ったら、提督か……)

提督「」ギュー

時雨(普段はちゃんとしてるのに)

時雨(だらしない寝顔してる)ツンツン

提督「……」モゾモゾ

時雨(このままにしておいてあげよう)モゾモゾ

時雨(朝ご飯作らなきゃ)




……





提督「ンアッ!」ガバッ

提督「あれ、寝坊した……?」キョロキョロ

提督「時雨、時雨は……!?」ノソノソ

提督「……執務室のほうから音がする」ガチャ

提督「あ……。 おはよう」

時雨「おはよう、提督。朝ご飯ができてるよ」

提督「あ、ありがとう。時雨は?」

時雨「これからだよ。一緒に食べようか」

提督「ちょっとトイレ行ってきてもいい?」

時雨「うん、待ってるよ」




……




提督「ごちそうさまでした」

時雨「お粗末さまでした」

提督「食べるたびに上手になってるのがわかるよ」

提督「おいしかったよ、時雨」

時雨「そんな、大げさだよ」

時雨「でも、ありがとう。すごく嬉しいよ」ニコニコ

提督「また頼むな」ナデナデ

時雨「うん!」

提督「じゃあ仕事しようか」

時雨「僕は珈琲を淹れるね」

提督「砂糖とミルクもお願いな」

時雨「了解したよ」






提督「そういえば、雨は止んじゃったのかな」

時雨「ぽつぽつ降ってるみたいだよ」

提督「そっか。雨の日はなんだか集中しやすいから」

提督「お昼には仕事が終わりそう」

時雨「あんまり仕事量もないからね」

提督「そうだね。毎日演習と開発、建造くらいしかしないからね」

提督「出撃する必要なんてないんだし、ゆっくりでいいんだよ」

時雨「さすがにマイペースすぎると思うけど」

提督「向こうから襲ってくるわけでもないんだし、いいんじゃないかな」

時雨「……そうだね」

時雨「それじゃあ仕事、始めようか」

提督「うん。時間を見て、頃合になったらお昼にしよう」




……





提督「お昼前に終わっちゃったね」

時雨「お疲れ様」

提督「時雨も、お疲れ様。お茶でも淹れるね」

時雨「……雨、止んだみたい」

提督「ん、晴れてるな。気がつかなかった」

時雨「桜、昨日の雨でだいぶ散っちゃったね」

提督「うわ、本当だ。花見したかったなぁ……」

時雨「全部散らないうちにやればいいさ」

時雨「なんなら、葉桜でもいい」

提督「……うん。近いうちに、五人で」

提督「できたらやろう」




……





時雨「ふう、お腹いっぱい」

提督「間宮さんの作るご飯もおいしいから」

提督「時雨のご飯もおいしいし、食べ過ぎて太っちゃいそう」

時雨「そう言うけど、一向に太る気配はないよね」

提督「体質なのかな」

時雨「羨ましいよ」

提督「時雨は太りやすいの?」

時雨「そうじゃないと思うけど、さすがに気にするさ」

時雨「必要以上に食べたら太るかな、とか」

提督「大丈夫だよ、まだ育ち盛りなんだから」

提督「いっぱい食べて、大きくなりな?」

時雨「……なんでそこで胸を見るのかな」

提督「もしかしたら、栄養が全部胸にいくんじゃないかなって思って」

時雨「そんな都合のいい話があったら皆いっぱい食べてるよ」

提督「……まぁ。胸が全てじゃないからね」

時雨「まったくだよ」




……



ザアアアアアアアアア…。




提督「あれ、すごい降ってきた」

時雨「夕立かな?」

提督「さっきまであんなに晴れてたのに」

時雨「今日は天気が不安定だって言ってたからね」

提督「なんか風も出てきたね。風の音がすごいよ」

時雨「今日も冷えるかな……」

提督「だろうね」

提督「まだまだこたつも現役かな」

提督「そろそろしまおうと思ったけど、まだ出しておいていいかな」

時雨「それが正解だと思うよ」

時雨「提督、そっちに行ってもいいかな」

提督「ん、おいで」ポンポン

時雨「……ふぅ」モソモソ

提督「……昼寝しよっか」ナデナデ

時雨「もう夕方だけどね。今寝たら、夜起きれるかな?」

提督「起きれなかったら、それはそれで」

時雨「自堕落な生活だね」

時雨「だけど、それもいいね」

提督「先に起きたほうが起こすって事で、じゃあおやすみ……」

時雨「うん、おやすみ」




……




提督「時雨、起きて?」

時雨「……あれ」

時雨「んぅ……っ、今何時?」

提督「七時過ぎだよ。そろそろご飯にしようか」

時雨「結構寝た気がしたんだけど……」

提督「熟睡してたからね。起こしてごめんね」

時雨「いや、いいんだ。ありがとう」

提督「食堂行く途中に、工廠に寄ろうか」

時雨「出来てるといいね」

提督「ん、そうだね」

時雨「顔を洗うから、少し待っててほしいな」

提督「ん」




……





妖精「提督さん、やっとだよ」

提督「お、まさか?」

妖精「五月雨と涼風の艤装をやっと作れたよ」

時雨「ありがとう、妖精さん」

妖精「遅くなっちゃってごめんなさいね」

提督「こればっかりは運だからしょうがないさ」

提督「ありがとな」ナデナデ

妖精「もっと褒めてもいいんだよー」

提督「そうだなぁ……。後で間宮さんのアイスクリームを奢るよ」

妖精「本当? へへ、約束だからね」

提督「時雨も一緒に食べような」

時雨「うん。皆で一緒に食べたいかな」

提督「二人が着たら、歓迎会でもしようか」

時雨「うん、いいね」

提督「白露と夕立にも知らせないと」




……


食堂。


夕立「本当なの!?」ガタッ

時雨「落ち着いて、夕立」

白露「これでやっと皆揃うねー!」

村雨「いつ以来かしらね?」

時雨「もうだいぶ経つよね。養成学校以来だから」

提督「姉妹だから特に問題はないと思うけど」

提督「慣れるまではよろしく頼むな」

村雨「はいはーい。カワイイ妹の為よ」

白露「それより提督、いい加減秘書を私にしてよー!」

提督「だってさ、時雨?」

時雨「まだなってすぐじゃないか」

夕立「そう言ってもう一週間はくっついてるっぽい」

夕立「そろそろ構ってほしいよー……」

時雨「そのうち替わるから、もう少しだけ提督と一緒に居させてよ?」

提督「あとちょっとで錬度が上限値に届くから、そしたら交代しようか」

村雨「そういえば姉さんだけ指輪してないもんねー」

白露「じゃあ仕方ないねぇ……」

夕立「むぅー」




……

執務室。




提督「五月雨と涼風がきたら、また錬度を上げないと」

時雨「でも提督、演習しかしないから時間かかっちゃうよね」

提督「出撃は効率っていうか、演習より経験値が低いし」

提督「何よりお前さんたちが傷ついて帰ってくるのがつらい」

時雨「本当に軍人さん?」

提督「ごめんな」

時雨「ううん、別にいいんだよ。僕も痛い思いはしたくないから」

提督「深海棲艦の討伐なんてしなくても普通に生活できてるんだしさ」

提督「それに、うちには四人しかいないんだから」

提督「近いうちに、六人に増えるけどね」

時雨「いいの?」

提督「?」

時雨「うちは増やさないの?」

提督「あぁ。どうだろうね……」


提督「時雨や白露たちが増やしたいって言うなら、増やすよ?」

提督「時雨はどうかな」

時雨「僕は、どっちでもいいかな」

時雨「このままでも居心地はいいよ」

時雨「でも、強い人が居たほうが頼りになるよね」

提督「強いかー」

提督「やっぱり雷巡、戦艦、空母、潜水艦は必須なんだろうね」

時雨「出撃してもほとんどが駆逐艦相手の僕たちには必要ないんだろうけどね」

提督「まだそこらへんの海にしか出してないからね」

提督「資材はたんまり余ってるし、艤装もある程度とってあるから」

提督「欲しいって意見でまとまったら作るか呼ぶかしようか」

時雨「呼ぶときは姉妹揃って?」

提督「そのつもりだよ。作るときも、なるべく揃えるかな」

時雨「じゃあ出来ないまんま資材がなくなることも?」

提督「そのときは、そのときさ」

提督「とりあえず、五月雨と涼風を迎えてからだね」

時雨「……うん」

提督「よし、そろそろ寝ようか」

時雨「今日は夕立も呼んでいいかな?」

時雨「だいぶ飢えてるというか、提督にくっつきたがってたから……」

提督「俺はいいけど、三人で一つの布団は無理があるんじゃないか?」




……




提督「結局夕立が布団持ってくるって言い出したから羽毛布団を買うことに」

夕立「提督さぁん♡」スリスリスリスリスリスリ

提督「夕立、少しくっつきすぎ」

時雨「くっつくっていうより、のしかかってるよね」

提督「寝れないから大人しくしような?」

夕立「だって久しぶりの提督さんなんだもん!」クンカクンカ

提督「よしよし、わかったから」ナデナデ

夕立「んぅーっ、もっと撫でて!」

時雨「……」ギュ

提督「時雨もよしよし」ナデナデ

時雨「♪」

夕立「どうしよう」

提督「ん?」

夕立「夕立、興奮しすぎて眠れそうにないっぽい!」

提督「寝なさい、まずは離れなさい」

時雨(添い寝くらいならいいよね?)ギュー

提督(暑苦しい……)


時雨「提督、明日は何をするの?」

提督「お昼までに仕事は終わるから……」

提督「午後は釣りに行こうと思ったけど、雨がたくさん振ったからいけそうにもないし」

提督「また部屋でごろごろかな」

夕立「提督さん、夕立も一緒にごろごろしたいよぉ……」

提督「時雨がいいならいいよ」

時雨「僕は大丈夫だよ」

時雨「むしろ、秘書じゃない時って皆一人でどうしてるの? 暇じゃない?」

夕立「外出たり、集って何かしたり、本読んだり……」

夕立「でも、それも暇すぎて結構溜まってるっぽい」

夕立「毎日演習しかないし……」

提督「やっぱり出撃したほうがいいのかなぁ」

時雨「提督はランキングとか気にならないの?」

提督「あれは他所の頑張ってる提督の為のものだよ」

提督「自分は気にしないかな」

夕立「でもここも提督入れても、たった五人しかいないし」

夕立「夕立、演習相手の編成を見る度に羨ましく思うの」

提督「さすがに艦娘四人だけでやっていくには限界か」

時雨「演習だけとはいえ、よく四人だけでやってこれたよね」

提督「負担かけさせてたかな、ごめん」

夕立「負担はないけど、四人じゃさすがに寂しいっぽい……」


提督「ぼちぼち、増やしていくか」

夕立「本当!? 夕立、格好いいお姉さんがいいな!」

提督「格好いいお姉さん、か」

提督「時雨は?」

時雨「僕は……。優しいお姉さんがいいな」

提督「二人ともお姉さんがいいのか」

時雨「同い年は駆逐艦か潜水艦娘しかいないからね」

時雨「戦艦とか空母の人は、皆お姉さんだから」

提督「なるほど」

夕立「提督さんはどんな人がいいの?」

提督「どんな人って言われてもな」

時雨「胸が大きいとか、なんかないの?」

提督「いや、そんなの求めても仕方ないしな」

提督「そーだなぁ」


提督「お前さんたちと仲良くしてくれる人なら、誰でもいいや」

提督「まったり、和やかにやっていけるような人ならね」

時雨「無難な回答だね」

提督「どんな答えが欲しかったんだ」

時雨「時雨みたいな可愛い駆逐艦、とか?」

提督「」

時雨「冗談だよ、真に受けないでおくれ」

夕立「本当に冗談なのかしら?」

時雨「もう……」

提督「そうだな。時雨も夕立も、白露型は皆可愛いけど」

提督「可愛い駆逐艦娘がこれ以上増えたら、お前さんたちの面倒を見るのが疎かになりそうだしな」

提督「それでもいいなら増やすけど」

夕立「夕立、駆逐艦はいらないっぽい」

時雨「うん、やっぱり呼ぶならお姉さんだ」

提督「はいはい。粗方決まったし遅いからもう寝ようか」

提督「おやすみ、二人とも」

夕立「おやすみなさい、提督さん」フニフニ

提督「こらこら胸を押し付けないの」

時雨「……」フニフニ

提督「お前ら誘ってるな?」

夕立「いつでも襲っていいんだよ?」

提督「手を出したが最後、逆に襲われて食べられるのは俺だからいい」

時雨「……意気地なし」ボソッ

提督「何か?」

時雨「ううん、なんでもないよ」




……


翌朝。





白露「スピー……」zzZ

村雨「……」zzZ

時雨「スゥスゥ…」zzZ

夕立「ジュルッ…」zzZ

提督(なんで二人増えてんの……)

提督(身動き取れないし、なんか腕と足に絡み付いてるし)

提督(でも暖かい……)

提督(どうせ寝坊しても困ることはないし)

提督(二度寝しちゃおう……)zzZ




……



提督「で、なんで白露と村雨はここに?」モグモグ

村雨「五月雨と涼風からメールがあったのよ」モグモグ

白露「午後一番にくるみたい!」モグモグ

提督「そうなのか、ありがとう」

村雨「それを知らせようと思ってきてみたら、三人で仲良く寝てたから」

白露「一緒に寝ようと思って」

提督「はぁ……」

時雨「夕立、お味噌汁のおかわりいる?」

夕立「いるっぽい! お願いね」

時雨「じゃあもらってくるから少し待っててね」

提督「白露、村雨。ご飯食べながらでいいんだけどさ、聞いてくれる?」

村雨「私に何の相談かしら?」

白露「白露かもよ?」

提督「二人ともになんだ」

提督「二人は、うちに他の艦娘を招き入れても大丈夫かな?」


村雨「村雨は大丈夫よ?」

白露「白露も平気だよ! どんな子にするの!」

提督「いや、どんな子かはわからないけど」

提督「よかった、涼風と五月雨が着たら一応訊くけど、入れる方針で話を進めようか」

白露「白露は陸奥さんみたいな人、好きかも」

提督「そうなの? どこら辺が好きなの」

白露「すごい落ち着いた雰囲気の人だったし、白露は長女だから年上の人がいいなー」

夕立「それ、いつ会った時の陸奥さんなの?」

白露「さぁ。でもどの艦隊でも、その艤装の適性がある人って大体似たような人じゃない?」

時雨「確かにね。夕立とか僕とか、似てない人を見たことないね」

夕立「言われてみれば、外見も中身もそっくりっぽい……」

村雨「村雨は妹が欲しいかな。大人しくて聞き分けのいい妹が欲しいかも」

夕立「それ、どういう意味?」

村雨「あら、なんでもないわよ?」

提督「他所のところの艦娘も、皆似たようなものなのか」

提督「軽巡から色々種類はあるし、どの艦種の姉妹を選ぼうか迷うなぁ」

提督「とりあえずご飯食べたら仕事しよっか」

時雨「そうだね」




……





提督「で……」

夕立「提督さんの膝の上、とても心地いいー……」

白露「白露が一番お仕事頑張ってるんだから、後でご褒美お願いね!」

時雨「静かにしないと、提督が疲れちゃうよ」

村雨「提督、元気ないの?」

提督「元気ないっていうか、なんていうか……」

村雨「そうなの? なら元気分けてあげる!」カタモミ

提督「あー気持ちいいー……。じゃなくて」

提督「なんで皆執務室にいるのさ」

白露「一番に妹を迎えようと思ったら、ここしかなくてさー」

夕立「どうせ集るっぽいし?」

提督「まぁいいか」

時雨「提督、珈琲を淹れたよ」

提督「ありがとさん」ナデナデ

時雨「どういたしまして」

夕立「夕立、紅茶飲みたいっぽい」

時雨「うん、淹れてあるよ。少し、休憩にしようか」

提督「そーだね。そろそろ来るはずだし、それまで休憩にしようか」




……



コンコン カチャリ


五月雨「」ソーッ…

涼風「何してんのさ、早く入りなよ」ドカッ

五月雨「ちょ、ちょっと!」

五月雨「……あ」

提督「お?」

提督「はじめまして。五月雨と涼風でいいのかな?」

涼風「そうだよ、こんちは! 提督」

五月雨「はじめまして、五月雨っていいます」

提督「よろしくな」

涼風「あいよ! ところで提督、そこで寝てる姉貴たちは……」

提督「あぁ、お前さんたちを待ってたらしいんだけど」

提督「お菓子食べてごろごろしてたら。ほら、この部屋って日当たりがよくて」

五月雨「寝ちゃったんですね」

提督「最近いい陽気だしね。二人とも、疲れてない?」

涼風「あたいは大丈夫だけど……。それにしてもすごいや」

提督「?」

涼風「いや、姉貴たちを手なずけてるって言うのか、人前でここまで晒させるなんて」

五月雨「信頼、されているんですね?」

提督「そうなのかな。そうだといいね」


提督「適当にくつろいでおくれよ。今お茶を淹れるから」

五月雨「あ、あたしが淹れますので!」

涼風「勝手もわからないのにそんなこと言わないの」

提督「そうそう。そんなに気を遣わないで欲しいな」

五月雨「はい……」

五月雨(いいのかなぁ)

提督「緑茶と、紅茶と珈琲があるんだけど。ココアも用意できるかな」

涼風「あたいは緑茶で頼むよー」

五月雨「あたしはココアでお願いしますね」

提督「あいよ。ちょっと膝枕してる時雨を降ろすから待っててね」ヨイショ

時雨「んぅ……。てーとく……」ギュ

提督「ありゃ。困った」ポンポン

時雨「……」zzZ

提督「よしよし」ナデナデ

五月雨「……いい提督の下に着けてよかったね」

涼風「そーだね! 大事にされてるってよく伝わってくるよ」

提督「後で鎮守府内を案内してもらって、それが終わったらこの部屋に戻ってきてくれるかい?」

涼風「がってんだよー!」




……



夕立「それじゃ提督さん、ちょっといってくる!」

白露「案内するところは多くないし、すぐ戻ると思うよー」

提督「ん、お願いな」ナデナデ

白露「へへぇ……。久しぶりの提督のなでなで」ウットリ

涼風(すごい嬉しそう……)

村雨「はいはーい、じゃあ二人とも行きましょうね~」


ゾロゾロ… パタン




時雨「いっちゃったね」

提督「時雨も行きたかった?」

時雨「ううん、あんまり大人数で行っても意味ないしね」

時雨「僕はこうしていたいかな」ギュッ

提督「……そっか」サスサス

時雨「……戻ってくるまで、このままでいてくれるかな?」スリスリ

提督「うん、いいよ」




……





時雨「提督、暇だね」

提督「そーだね……」

時雨「提督、眠いの?」

提督「ん、あぁ……。少しね」

時雨「提督」スッ

提督「どうした?」

時雨「布団においでよ。膝枕してあげるから、少し寝たらどうかな?」

提督「別に、大丈夫だよ」

時雨「ううん、ダメだよ。昼間は僕たちが邪魔してるから夜中にお仕事してるんだよね?」

時雨「ちゃんと寝ないと、体調崩したらどうするのさ」

提督「別に邪魔なんかじゃないし、時雨たちと一緒にいる時間のほうが大切だから」

提督「どうしてもやらなきゃいけない書類の処理とかは夜中に回してるけど、それでも仮眠くらいはとってるよ」

提督「それに、一緒に寝てるときはちゃんと寝てるから」

時雨「そうなの……?」

提督「うん。ただ、そうだな。今回は甘えてもいいかな」

時雨「うん! 甘えてもいいし、もっと頼ってよ?」

提督「悪いことしたな、ごめん」

時雨「これからは、もう少しわがまま言って欲しいかな」

提督「ん。わかった」

時雨「よし、じゃあいこっか」

時雨「ふふ、ついでに耳掃除もしてあげるね」ニコニコ

提督(この可愛らしい笑顔、まさに天使のようだ……。癒されるなぁ)




……



時雨「加減はどうかな?」カリカリ

提督「すごく気持ちいいー……」ポケポケ

時雨「痛かったらすぐ言ってね?」コショコショ

提督「んー……」

提督「時雨の太もも……ぷにぷに……」

時雨「提督、くすぐったいよ?」

提督「んぅ……」

時雨「……提督」ナデナデ

提督「なーにー……」

時雨「……ううん、なんでもない」ナデナデ

提督「」zzZ

時雨「彼女たちが戻ってきたら起こすね」

提督「スピー」zzZ




……



提督「おかえり、みんな」

涼風「なぁ提督、この鎮守府ってさぁ」

五月雨「他の子はいないのですか?」

提督「いないよ」

提督「最初に白露がここにきて、とりあえず姉妹は一緒にしようと思って」

提督「他の艦の艤装が出来る中、白露型だけまずは揃える事にしたからね」

五月雨「提督、白露姉さん。あの件ではご迷惑おかけしました」

夕立「なんかあったっぽい?」

提督「五月雨がここにくるはずだったんだけど、風邪引いてて白露が代わりに着たんだ」

白露「へへー、そのおかげで一番だよ!」

白露「指輪を最初に通したのも一番なんだからね」キラン

提督「まぁそれは……。とにかく、そういうことで」

提督「俺も白露も気にしてないから大丈夫だよ」

村雨「でもさでもさ、これで六人揃ったじゃない?」

提督「そうだね。どうしよっか」

時雨「やっぱり増やすの?」


提督「そうだね。増やそうか」

提督「艦型を一つ選んでその姉妹を呼ぼうか」

白露「いよいよ深海棲艦の討伐に出るんだね!」

涼風「えっ?」

提督「ん?」

涼風「その口ぶりだと深海棲艦を倒してないみたいな」

提督「してないよ」

涼風「なんでさ!」

提督「なんでもなにも」

涼風「だって、それがあたいたちの仕事じゃないか」

提督「でも無理にやらなくてもいいし」

五月雨「いいのでしょうか?」

提督「お前さんたちが出たくてどうしようもないって以外は出すつもりはないかな」

涼風「なんか拍子抜け……」

提督「良くない考えかもしれないが、俺たちが命を懸けなくても戦争は終わるかなって」

提督「終わるまでの間まったりしてればいいさ」

時雨「完全に提督が言うべきことじゃないよね……」

夕立「でもそんな提督さんのことが夕立は大好きよ」

村雨「それは四人ともでしょ?」


五月雨「でも、すごいですね」

五月雨「演習だけで三人が一回目の錬度の上限値に達してるって」

涼風「時雨姉もそろそろって感じだし」

提督「一日十回、きちんとこなしてれば割と早いもんだよ」

提督「二人とも、そう長くはかからないんじゃないかな」

提督「それで、演習で思い出したんだけど、午後の演習がまだなんだ」

提督「六人で行ってこれるかい?」

白露「大丈夫だよー!」

村雨「二人にはお姉さんたちから教えてあげるでいいのよね?」

提督「立ち回りとか、そうだね。放任しててすまないが頼めるか?」

夕立「任せてね!」

時雨「いつ頃いけばいいのかな?」

提督「みんなの都合に任せよう。あと、新しい子たちは誰を選べばいいのかな」

時雨「そうだね、個人的な要望も出したけど……」

涼風「まだきたばっかりだし、あたいたちには……」

夕立「誰でもいいっぽい?」

村雨「みたいね?」

提督「じゃあ、演習行ってる間に決めちゃうな?」

時雨「うん。任せるよ」




……




時雨「そろそろ行くね」

提督「うん。頼んだ」

白露「最初の相手は勝てそうにないけどねー」

村雨「空母四人でうち三人が正規空母だもんね」

夕立「あとは戦艦と駆逐艦が一人ずつ。でも頑張ってくるっぽい!」

時雨「どの子も指輪してて驚いたよ。これは経験値が高そうだね」

五月雨「演習は、学校でもやってたから何とかなりそうな気がします」

涼風「着任して最初の演習かー、気張っていくぜぇ!」

提督「ん、頑張ってらっしゃい」



ゾロゾロ……パタン。



提督「さて、演習は五回あるし」

提督「終わるまでの間にゆっくり選ぶかね」

提督「まずはどの艤装がとってあるか見てから考えないとかな」




……


時雨「ただいま、提督。五回とも終わったよ」

提督「おかえり。お疲れ様」

時雨「どれを選ぶか決まった?」

提督「結局決められなかった」

時雨「あらら」

提督「とりあえず、お茶でも淹れるよ」

時雨「うん。お願いするね」




……



夕立「でねでね、提督さん! 最初に演習した人たち、わざと負けてくれたの!」

提督「へぇ。そんなこともあるんだな……」

村雨「経験値はいいから早く終わらせて雑談がしたかったみたいよ?」

提督「それはまた珍しい」

白露「なんか向こうの提督、寝たっきりで起きないんだって」

時雨「それで、解決策を探してるそうなんだ」

夕立「もう二ヶ月は経ってるー、とか?」

夕立「提督さんも、急にいなくならないでね?」

提督「こらこら、まだ亡くなっちゃったわけじゃないんだから」

提督「大丈夫、きっとそのうち治るさ」

時雨「うん、そうだといいね」

村雨「他は潜水艦と、単艦放置だったからすぐに終わったわよ」

提督「うん、お疲れ様。五月雨と涼風も、どうだった?」

五月雨「はい、この調子でうまくやっていけそうです」

涼風「錬度というか、レベルはどんどん上がっていくけどいいのかねぇ……」

提督「上げられるうちに上げちゃうのが楽だからね」


村雨「それで? 村雨たちが頑張ってる間、提督は何をしてたのかしら~?」

提督「どれにしようか悩んでるだけで終わりました」

白露「はいはーい、じゃあ白露が一番に決めてあげようか?」

提督「もうそれでいいかな」

提督「他の子はどうかな?」

夕立「それで構わないっぽい?」

時雨「どんな人が来ても、仲良くやっていけそうだから大丈夫かな」

五月雨「お任せしますね」

涼風(ココアおいし……)ズズーッ

提督「じゃあ白露、頼むね」

白露「まっかせてよー!」


白露「じゃあ提督、工廠いってるねー!」ガチャッ

村雨「私も暇だしついていくわよー」

夕立「えーと、えーと……」

夕立「夕立は、提督さんと一緒にいたいかな……」ペッタリ

提督「はいはい。演習、お疲れ様」ナデナデ

夕立「ふひひぃ~……」ニッコリ

時雨「僕も、提督と一緒にいるよ」

提督「ん」

涼風「あたいたち、何しようか」

提督「それなら、食堂へ行ってごらん?」

五月雨「食堂ですか?」

提督「そこに間宮さんって綺麗な女性がいるから、挨拶しておいで?」

提督「あと、そこでアイスクリームでも食べてきなよ」

涼風「間宮さんってあの!」ガチャッ

五月雨「行ってきます!」バタンッ

提督「間宮さんのこと知ってたんだ」

夕立「学校じゃ唯一の癒しって教わったっぽい」

提督「そうなのか?」

時雨「学校だとあんまりね……」

提督「?」

時雨「その話は、今度するよ。今はこうして、ゆっくりしていたいから」ギュー

提督「じゃあ、今度。気が向いたら、ね?」

夕立「っぽい~……」スリスリ




……



白露「提督ー!」バタン

提督「おかえり」

白露「決まらないよー……」

提督「あらら」

村雨「ここまで煮え切らない姉さんも久しぶりよね」

提督「まぁ、今すぐに決めなくたって大丈夫だよ」

提督「五月雨と涼風も着たばっかりなんだしさ」

白露「うん……」

提督「気が向いたときにでも、工廠覗いてみてさ。気分で決めちゃえば?」

夕立「そのほうが手っ取り早いっぽい?」

白露「でもね、早いうちに選びたいから困ってるかな……」

提督「満足いくまで考えなよ。それでダメなら明日また考えればいいしさ」

提督「揃ってないのでも、ちゃんと建造で作るから大丈夫だよ」

白露「本当!? 白露ってば、揃ってる中から選ぼうとしてたっぽい!」

夕立「口癖とられたっぽい」

白露「それなら、いいなーって思ってたのがあったんだー!」

提督「へぇ、名前は?」

白露「>>49だよ!」



新しい艦娘(とその姉妹)を追加して下さい。

五十鈴


白露「長良型軽巡洋艦だよ!」

提督「長良型っていうと……」

時雨「六人だね」

夕立「軽巡洋艦ってことは……」

時雨「僕たちより、少し年上のお姉さんだね」

提督「一気に賑やかになるな?」

村雨「それでも艦娘だけだと十二人だもんね。ちょうどいいくらいじゃない?」

提督「とりあえず、間宮さんには今後少し人が増えるかもって言っておこうか」

五月雨「いきなりは対応できませんもんね」

提督「そうだな」

涼風「それで、うちにはどの艤装がないんだい?」

提督「確か阿武隈がなかったかなー」

提督「阿武隈が建造できるまで一応呼ばないことにするよ」

提督「二人の錬度がそこそこ上がるか、揃うまで。いいかな?」

涼風「大丈夫だよ!ばんばん鍛えちゃってよ!」

五月雨「よろしくお願いしますね」

提督「よし、それじゃ解散で」

時雨「ね、提督。よかったら一緒にご飯食べよう?」

提督「そうだな。どっちが作ろうか」

時雨「一緒に作るのはダメかな?」

提督「……うん、そうしようか」




……



提督「ん、おいし」ズルズル

時雨「提督、汁作るのうまいね」ズルズル

提督「時雨も、麺のゆで具合が上手だな。ちょうどいいよ」

時雨「ふふっ、でも僕は汁を作るのがあんまりうまくないんだ」

時雨「二人一緒だと、よりおいしいものが作れるね」

提督「そうだね」

提督「時雨、あーん」

時雨「ん……」

時雨「提督も、ほら。あーん、してくれる?」

提督「あー……。ん」

提督「うん、おいしい」

時雨「食べたら、横になろうか」

提督「食べてすぐ横になると牛になっちゃうんだって」

時雨「そうなんだ」

時雨「じゃあ提督。僕が牛になっても、愛してくれるかな?」

提督「もちろん。そしたら俺も牛になろう」

時雨「提督はやっぱり、提督だね。そんな提督が好きだよ」

提督「ありがとな」

時雨「うん!」


提督「これからしばらくは、五月雨と涼風の錬度を上げるので二人を秘書にするから」

提督「ごめんな、もうそろそろで時雨もケッコンカッコカリできるのに」

時雨「ううん、大丈夫。長いこと秘書やってたからね」

時雨「寂しくなったら、ここにきて甘えるから」

提督「うん、そうしてくれたら助かる」

時雨「それに、ケッコンカッコカリなんてどうせ仮なんだし」

提督「そうだけど、さ」

時雨「これから大変だね。二人の錬度を上げて、新しい子を迎えて」

提督「そうかもね……」

時雨「ふふ、疲れたらいつでも僕のところにおいでよ」

時雨「そのときは……」

時雨「……ううん、なんでもない」

提督「なんだ? 気になる」

時雨「そのときのお楽しみってことで」

提督「気になって、疲れてなくても時雨のところに行っちゃいそうだな」

時雨「提督が疲れてるように見えなかったら、追い返しちゃうかもね」クスクス

提督「じゃあ迂闊に頼ることは出来ないな」

提督「疲れることなんてないだろうけど、そのときは時雨のところに行くから」

時雨「……うん」

時雨「それじゃあ、僕はそろそろ部屋に戻るとするよ」


提督「まってくれ」

時雨「?」

提督「その、最後ってわけでもないんだけどさ」

提督「今日は一緒に寝てくれないか?」

時雨「今日も、でしょ?」

提督「まぁ、そうだけど」

時雨「ふふ、提督も甘えん坊なんだね」

提督「時雨が好きだから」

時雨「僕が居ないとき、他の子にも同じこと言ってたりしないかい?」

提督「言うと思うか?」

時雨「ごめん、少しいぢわるだったね」

時雨「うん。今日くらいは、ね」

時雨「じゃあ、まずはお風呂から……」


時雨「いい湯だったね」ホカホカ

提督「ん、そうだな」

時雨「寝る前に、提督。アイスでも食べない?」

提督「いいね。少し暑いし、食べようか」

時雨「間宮さんから貰っておいたんだ」

提督「さすが。抜け目がないね」

時雨「……提督が」

時雨「提督が、喜んでくれると思って」ニコ

提督「……」

時雨「……?」

提督「……あぁ、すまん」

時雨「どうしたの?」

提督「アイスより時雨を食べそうになっちゃって」

時雨「え?」

提督「いや、その」

提督「……アイス、食べよっか」

時雨「うん」

時雨「ね、提督」スッ

時雨「僕はいつでも大丈夫だから」ボソッ

提督「」

時雨「あぁ、アイスが溶けちゃう。早く食べないと」




……

………




時雨「そういえば……」

提督「?」

時雨「あのね、この間まで期間限定の海域あったじゃない?」

提督「あったね、そんなのも」

時雨「僕たちはいかなくてよかったの?」

時雨「演習の子から聞いたんだけど、最新の装備や艤装が手に入るんだって言ってたよ」

時雨「なんでも明石さんの艤装まで手に入るんだとか」

提督「あー……。明石さんのは少しだけ欲しかったかもなぁ」

時雨「よかったの?」

提督「良かったもなにも、別段喉から手が出るほど欲しかったってわけでもないしね」

提督「お前さんたちを危険に晒してまで欲しいとは思わないし、そもそもうちは駆逐艦しかいないからね」

時雨「攻略自体無理だったかな?」

提督「どうだろうな」

提督「ただ、血眼になって時雨たちを出撃させて、その間は一人で留守番してるなんて嫌だから」

提督「俺にとっては時雨たちと一緒にまったりしてる時間のほうが大切だから」

時雨「提督……」

提督「言ってて恥ずかしくなるよ。でも、本当のことだしね」

時雨「……ありがとう」

提督「おう。時雨もありがとな」

提督「さて、あの二人の錬度を上げないとだからしばらく寂しくなるな」

時雨「あの二人はいい子だから。きっと大丈夫さ」

提督「そうだな。おかげで順調にいくと思うよ」

提督「その後は長良型の子を迎えないとだ。艤装が出来ればの話なんだけどね」

時雨「……うん」

時雨「提督」ギュウ…

提督「なん──」

時雨「──っ、ふふ……」

時雨「これで当分、寂しくならないかな」

時雨「大丈夫、別に離れるわけじゃないんだし」

提督「……そうだな」

時雨「たまには、部屋にきてね?」

提督「毎日行こうかな」

時雨「大歓迎さ」

提督「うん、暇なときは寄るから」ナデナデ

時雨「うん。……またね」




……



五月雨「秘書が二人でいいんですか?」

提督「演習のたびに一々呼び出して旗艦にするのは億劫でね、許して欲しい」

涼風「別に問題はないけどさぁ……。いいの?」

提督「あぁ。それに、秘書の仕事を一緒にやってもらえば覚えるのも、仕事が終わるのも早くなる」

涼風「そうじゃなくて、姉貴たちのこと」

五月雨「特に時雨姉さんとか……。一緒にいなくていいんですか?」

提督「そりゃ、皆とは一緒に居たいよ?」

提督「でも原則としてこの部屋には、基本的には秘書しか居ちゃいけないし」

提督「今は特別二人に居てもらってるだけだから」

涼風「ふーん? じゃあ仕事が終わったら、姉貴たちのところに毎日通うこと」

提督「通うって」

五月雨「二人でやれば、夕方くらいにはお仕事も終わりそうですしね」

涼風「あたいたちも姉貴と一緒に遊んだりとか、自由な時間が欲しいからね」

五月雨「まだ日も浅いので、提督のことをよく知っているわけではありませんけれども」

五月雨「とても信頼に足るお方だということだけはわかりました」

涼風「姉貴たちがあれだけ慕ってるのに放置は流石に可哀想だしな」

涼風「毎日二人きりで一緒になれる時間を作ってくれたら妹として嬉しいなぁ」

涼風「空いてる姉貴たちとあたいらは遊んでるからさ」

提督「……そうだな。時雨はまだしも、他の子はあんまり構ってなかったしな」

提督「……ありがとな、二人とも」

涼風「こちらこそ、あんがとな!」

五月雨「よろしくお願いしますね」




……



白露「へぇー、それで白露のところにきたんですかー?」

提督「そうだよ。嫌だった?」

白露「んふふー……」

白露「嫌だと思いますか?」

提督「嫌そうにはとても見えないな」

白露「だって嬉しいんだもん!」

提督「……思えば、白露は嫌そうな顔一つもしないな」

提督「他の子も見たことはないけど……」

白露「ご飯でグリンピース出たときは嫌そうな顔してるかも」

提督「……あぁ」

提督「そうじゃなくて、俺と一緒に居てさ」

提督「今まで仕事頼んだりとか、色々ある中でそんな顔したことなかったから」

白露「して欲しいの?」

提督「うーん……。理由があるんだったらして欲しい」

提督「何か嫌なこととかあっても、笑ってられてると辛いから」

白露「なんだ、そういうこと」


白露「なら大丈夫だよ、提督」

白露「好きな人と一緒にいて、嫌な気分になるわけないじゃない!」

白露「だから、今はとっても幸せだよ」

白露「それに、提督にも笑顔でいて欲しいから……」

提督「白露……」

白露「提督が幸せなら、皆も幸せだから」

白露「提督は、皆の一番なんだからね?」

提督「……」ギュ

白露「んん? 提督に抱きしめられるの久しぶり♪」

提督「……」ギュー

白露「ふふ、よしよーし」サスサス

提督「……ちょっと、そんな気分になった」ポンポン

提督「ありがと。白露と二人きりっていうのも、久しぶりだな」

白露「そうだね。だから今日は、いっぱい甘えちゃうぞー?」

白露「たまには、皆のお姉ちゃんじゃなくて、ね?」

提督「あぁ、満足いくまで好きにしていいから」

白露「じゃあまずはマッサージしてもらって、それから、えーと、アレもしたいし……」ウーン

提督「ちゃんとやるから大丈夫だよ。一つずつな?」

白露「あはは、つい欲張っちゃった……。うん、じゃあマッサージお願いしまーす」ゴロン

提督「了解しました、白露お嬢様」




……



白露「もう夜だねー」

提督「あっという間だね」

白露「白露はお風呂はいるけど、提督はどーする?」

提督「俺も風呂はいって寝ようかな」

白露「一緒に入る?」

提督「時雨に怒られそうだな」

白露「大丈夫、大丈夫。そんなことじゃ怒らないよ、きっと」

提督「白露はどうしたいの」

白露「一緒に入りたいなぁ」

提督「まぁ、いっか」

白露「いいじゃない、たまには背中を流し合ってさ」

白露「特に苦労してるわけじゃないけど、労ってよ?」

提督「……そうだな。今度、皆で入るのもいいな」

白露「露天風呂なんかいいよねー」

提督「ゆっくり浸かって、上がったらビン牛乳を飲んで」

白露「白露はフルーツ牛乳派かなー」

提督「ラムネもいいね」

白露「いいねぇー……」

提督「よし、お風呂いこうか」

白露「うん!」




……



白露「いい湯だったねー」ホカホカ

提督「そうだね、牛乳もうまかったし満足」ホカホカ

白露「提督、雨降ってきたよ」

提督「本当だ。いい雨だな」

白露「時雨もよく言うけど、いい雨ってどんな雨なの?」

提督「どんな雨か、と申されますと」

提督「ただ、目を瞑って雨音を聞いてると心が安らいでくるんだよね」

白露「それはわかるかも」

提督「だからかな?」

白露「なんとなくだけど、わかった気がするよ」

提督「そっか。うまく伝えられなくてすまない」

白露「ううん、大丈夫」

白露「ね、寒くなってきたからお布団入ろう?」

提督「一緒に寝るの?」

白露「寝るの」

提督「了解しました」

白露「へへっ、初めての提督との同衾だよー!」

提督「同衾て。間違いを起こす気は当方にはございません」

白露「白露にはあるけど?」

提督「いけません。ほら、さっさと寝るよ」

白露「ああん、いけずー」ブーブー




……



五月雨「本日の演習が終了しました」

提督「ご苦労様」

涼風「お茶でも淹れるよ、提督」

提督「あぁ、ありがとう」

提督「演習のほうはどうだい? もう慣れた?」

五月雨「はい。お友達も出来て、毎日楽しいですよ」

涼風「演習のあとにおやつ食べながら雑談とかするんだよ」

提督「どんな話してるの?」

五月雨「鎮守府でのお話とか、休日に遊びに行こうとか……」

涼風「今日は誰が提督の夜伽をしてるだとか……」

提督「そんな話もしてるの?」

涼風「いや、相手側の奴らが勝手に喋ってるだけだけど」

五月雨「こっちの鎮守府じゃそういうのがないのかって訊かれる事は結構あります」

提督「爛れてんな、まったく」

涼風「本当だよなー」

五月雨「そういうのは私たちには、まだ早いですしね……」

涼風「でもある艦隊じゃ駆逐艦にも普通に手を出してるって言ってたぞ」

提督「……一度その話し合いを聞いてみたいわ」


五月雨「でもさっき、白露姉さんがぼやいてたよ?」

五月雨「提督と寝たのに手を出してくれなかった、って」

涼風「相手の艦娘ビックリしてたぞ」

提督「驚くようなことじゃないだろ……」

涼風「ケッコンカッコカリしてるんだったら普通手を出すだろって」

提督「そういう問題なのか?」

五月雨「煎餅布団とかあからさまなものが贈られてきますし」

五月雨「それだけ信頼しあっていれば当然だと」

提督「お前さんたちはどう思うの?」

五月雨「……まだ、よくわからないです」

涼風「まあ責任とりゃいいんじゃねーの?」

提督「まぁ、とりあえずその話題はおいておこうか」

涼風「あ、逃げたな」

提督「他になんかないの? もっと普通の話で」

五月雨「そういえば、よその白露型は全員が同じ姉妹じゃないとかありましたね」

涼風「涼風と五月雨の艦娘が他人だったとか、色々あるんだって」

提督「うちは全員が同じで良かったな?」

五月雨「そうですね、私たちは比較的仲がいいほうだと思いますし」


提督「今度新しく呼ぶ子たちも全員同じ姉妹にするか」

涼風「そんなことできんの」

提督「まーね」

五月雨「私たちも?」

提督「色々考えて、そうしたんだけどダメだった?」

涼風「あたいは良かったと思うよ」

涼風「どこと比較してとかじゃなくて、単純にここが気に入ったからさ」

涼風「見ず知らずの場所でも、家族がいれば大体のこともどうにかなるしね」

五月雨「私も良かったと思いますよ」

提督「ならいいんだ」

涼風「じゃ、あたいはぼちぼち部屋に戻るからさ」

五月雨「姉さんを頼みますね」

涼風「今日は村雨だろ?」

提督「いや、特に誰のところに行こうとか考えてないけど」

涼風「村雨の姉貴、寂しい寂しい言ってたぞ?」

五月雨(姉さんたちはいつでも提督と一緒にいたいとか、色々なこと呟いてますけどね……)

提督「そう言われたら行かざるを得ないな」

涼風「だろ? じゃあ頼むな」

提督「はいはい。お疲れ様、ゆっくり休んでな」

涼風「おう!」

五月雨「失礼しますね」ペコリ


バタン

提督「演習がまさか情報交換の場だったとは」

提督「あんまり余計なこと吹き込まれないといいんだけど……」

提督「……まぁいいか」




……



村雨「あらあら、提督じゃない?」

提督「おう。お暇になったもので」

村雨「お仕事はどうしたの?」

提督「三人いるからもう終わっちゃって。ちょっと邪魔してもいいかな?」

村雨「あらあら、どうぞどうぞ♪」

提督「なんでも、村雨が俺に用があるみたいなことを五月雨たちが言っててな」

村雨「? ふーん……」

村雨「村雨、提督分が不足してたから提督のことを呼んだのよ?」

提督「なんだそりゃ」

村雨「提督と一緒にいると補える成分よ」

村雨「こう、抱きついたりなんかしてるとすごいのよねぇ……」ギューッ

村雨「補給、だーいすきっ♡」

提督「暑い暑い暑苦しい、ただでさえ今日は暑いってのに」

提督「おまけにエアコン入れてないの」

村雨「あら、汗でぐっしょり濡れるのもいいじゃない?」

村雨「だから、しばらくこのままでいさせて?」

提督「うーん……」

村雨「そしたら一緒にシャワー浴びて、すっきりした後にエアコン入れるから」

提督「あー、ならいいよ……」

村雨「だからって放置はダメですからねー?」

提督「どうしろと……。好きにしてくれ」

村雨「そんなこと言うと本当に好き勝手しちゃいますよ?」

村雨「久しぶりに提督と二人きりなんですから……」

村雨(ふふ、あの子たちには感謝しないとね)

提督「……」グッタリ




……



提督「……んあっ」ビクン

提督「んぅあ……喉痛いな、今何時よ」ムニャ

提督「汗が気持ち悪い……」グッショリ

提督「あれ、なんでパンツ一丁に……」キョロキョロ

村雨「」zzZ

提督(なんで村雨もパンツ一丁なの……)

提督「おーい、村雨さーん」

提督「村雨さーん、おっぱい丸出しで寝てないで、風邪引いちゃうよー」

村雨「んぅ~……」モゾモゾ

村雨「ふへへ……」ジュルッ

提督「あぁもうよだれが!」

提督「っていうか、一体何があってどんな状況なのよこれ」

提督「ほら、村雨。起きて、説明して」

村雨「あと8分だけー……」

提督「なんか中途半端だな……」

村雨「ほら、提督も一緒にぃ」ギュー

提督(背中越しに村雨の生乳が……!)

村雨「つかまえたー……」zzZ

提督「あぁもうどうにでもなれ」

提督(あぁ、時雨……すまない。俺もうダメかもしれん)




……


シャアアアアア……



提督「なんだ、ただ暑くて脱いでただけなのか」ワシャワシャ

村雨「そうよ、提督ったら早とちりなんだから」ウットリ

提督「いやいや、さすがにあんな状じゃ何か間違いを犯したのかと」

村雨「犯したかった?」

提督「やめてください」

村雨「もうちょっと、度胸が欲しいわよねー……」

村雨「そんなんじゃ時雨が可哀想よ?」

提督「なんのことだ?」

村雨「いやね、時雨とラブラブなのにいつまで経っても手を出さないから」

村雨「他の子に手を出すくらい積極性がないとね」

提督「いやダメだろ。それにまだ早いし、時雨だってそう言ってるし」

村雨「そうなの?」

提督「そりゃあもう」

村雨「なんだ、余計な心配だったの」ハァ

提督「村雨個人がそういうことしてもらいたいなら、また別だけどな」

村雨「してくれるの?」

提督「すると思った?」

提督「ほら、さっさと流して出るよ」ザバー

村雨「むぅ……」






提督「こんな具合に最近お前さんたちの姉妹が酷いのだが」

涼風「良かったじゃん、このこの!」グリグリ

五月雨「姉さんたち、よっぽど提督のことが好きなんですね」

提督「好きってレベルじゃないだろう」

五月雨「はいはい、惚気はそれくらいにしてお仕事しましょう」

提督「うん、すっかり五月雨も馴染んだようで良かった」

五月雨「はい、とても居心地いい鎮守府です」

涼風「そーいや提督、さっき阿武隈の艤装ができたぞー」

提督「おぉ、やっと呼べるな」

涼風「おうよ。あとさ、あたいたちもすっかり忘れてたんだけど」

五月雨「そろそろ改造してもらってもいいでしょうか?」


提督「あれ、今どんくらいだっけ」

涼風「もうレベル50とかそんなんだけど」

提督「ありゃ。やっぱり演習はうまいな」

五月雨「それ以上に、ここに来てそれだけ経ってるんですよね……」

提督「あっという間だったな」

提督「許可は出しておくから、演習が終わったら艤装を妖精さんに預けておいて欲しい」

涼風「あいよー!」

提督「さて、許可出したら本日のお仕事はお終い」

五月雨「今日は夕立さんのところですね?」

提督「まぁ、順番に回ってるからな」

涼風「おう、まぁ頑張ってくれよな」

提督「ん?」

五月雨「ほら、夕立姉さんって元気じゃないですか?」

提督「元気というかなんというか……」

提督「たまには構ってあげないとだしな」

涼風「じゃ、お疲れ様ー」ガチャ

五月雨「お疲れ様です」バタン







提督「今晩は夕立さんのお部屋にお邪魔いたします」

夕立「はーい!」

提督「それで私はなぜ拘束されているのでしょう」

夕立「つい嬉しくて、逃げないように?」

提督「おかしい」

夕立「飛んで火にいる夏の虫っぽい」

夕立「普段どれだけ提督さんに愛してアピールとかしてるの」

夕立「不思議に思わなかったっぽい?」

提督「迂闊でした。なのでとりあえず縄外して下さい」ギシギシッ

夕立「んー」

夕立「無理」キッパリ

提督「あぁ……」

夕立「ほら提督さん、雨が降ってきたよ?」

夕立「冷えてきたから、とりあえず暖まりましょう?」ヌギヌギ

提督「風邪引くからおへそ出すのやめなさい」

夕立「あっ、服着たままがいいの?」モドシ

提督「いやもう。話聞いて?」

夕立「大丈夫よ」

夕立「痛くしないから、ね?」

提督(どうしてこうなった)


夕立「提督さん、痛くない?」グリグリ

提督「あぁ、すごい気持ちいいー……」ウットリ

夕立「座ってお仕事してばっかりだから、身体硬いよ?」

提督「いや、たまに運動はしてるんだけどどうにも……。歳かね」

夕立「そんな歳でもないくせに」

提督「あー次腰をお願い……」

夕立「はいはい、終わったら夕立のマッサージよろしくね?」

提督「あいよー」

夕立「んふふー」

提督「どうかした?」

夕立「提督のいろんなところ触ってるって思っただけでニヤケが止まらなくって」

提督「危なく聞こえるんですけど」

夕立「本当はもっともっと、ね……」

提督「もっと、なんでしょう」

夕立「なんでもないっぽい!」

提督「?」


夕立「提督さんの身体鈍りすぎだからね」

夕立「今後、定期的にマッサージしてあげようかなって」

提督「それは有難いなぁ」

夕立「でしょ?」

提督「たまにお願いしてもいいかな?」

夕立「大丈夫よ!」

夕立「夕立、提督さんの為なら何だってできるから」

夕立「マッサージ以外のことも、ね?」

提督「できる、じゃなくてしたいの間違いじゃないのか?」

夕立「そうとも言うっぽい」

提督「困ったなぁ」

夕立「時雨にはいいよって言われてるんだけど」

提督「いいのかよ……」


夕立「なんかこう、罪悪感というか背徳感というか……」

提督「一応遠慮はしてるんだ?」

夕立「当たり前じゃない。姉なんだし」

夕立「それに提督さんの気持ちだってあるしさ」

夕立「こうやってベタベタしてるの、内心嫌がってたりしてたらって思うと……」

提督「……こうでもしないとお前はわからないか」ギュー

夕立「ひゃっ?!」

提督「嫌なんかじゃないし、いい歳した男がこういうのも変態臭いけど」

提督「お前たちみたいな可愛い子に擦り寄られて嫌だなんて、少なくとも俺はそう思わない」ナデナデ

夕立「提督さん……」

提督「ただ、戦争が終わればお前たちも軍人から民間人に戻って」

提督「女としての幸せを探して生きていかなきゃならないんだから」

提督「だから、下手に手出しができないってだけ」

夕立「夕立たちの将来を考えて?」

提督「そうだよ。まだ若いんだから」

提督「むしろ、今までそんなふうに思いながらよくベタベタできたな」

夕立「だって提督さんのこと好きだし、我慢できなかったからそれくらいならって」

提督「まぁ、他所じゃ提督を襲っちゃう子とかいるらしいしね。いろんな意味で」


夕立「……決めた」

提督「お?」

夕立「夕立、提督さんのお嫁さんになる!」

提督「おぉう……」

夕立「時雨と被っちゃうけど、頑張るよ」

提督「いや、なんて言えばいいのか。言葉が出てこない」

夕立「だって提督さん、夕立たちの幸せを考えてるんでしょ?」

夕立「だったらどうしたらいいか、提督さんわかるよね?」

提督「それを実現させたらどろどろな未来しか待ってないと思うんだが」

夕立「私たち仲が良いから平気でしょ?」

提督「そういう問題じゃ……」

夕立「それに新しくやってくる人たちに先を越されたらと思うと、うかうかしてられないよ」

夕立「提督さんの気持ちもわかったから、遠慮はしないっぽい」

提督「そりゃ夕立の大切だけどさ。こう、家族みたいな……」

夕立「提督さんは、夕立のこと嫌い? 好き?」

提督「そりゃ大好きだけど」

夕立「へぇ……。じゃあ、いいんじゃない?」ニヤニヤ

夕立「ねぇ、提督さん……?」

提督「なんか怖いんだけど……」

夕立「…………」

提督「……夕立?」

夕立「時雨姉さん、ごめんなさい」

夕立「夕立、先に女になります」

提督「こら、ちょっと!」ギッシギッシ

夕立「夕立はもう覚悟を決めたから、提督さんも観念するっぽい」

夕立「ほら、大人しくして」ガシッ!

提督「夕立に大人しくなんて言われる日がくるとは……」

夕立「別に、暴れてもいいんだけどね」

夕立「提督さんの力じゃ、夕立には敵わないから」メガスワッテル

提督「ちょっと、っおい、アッ」

夕立「ふふ、素敵なパーティしましょう……?」ペロリ

提督「っ──!」




……




五月雨「提督、大丈夫ですか?」

涼風「頭抱えて溜息吐いても、仕事は終わらないぞ?」

提督「あぁ、すまない……」

涼風「ヤっちまったもんは仕方ないさ」

提督「もう姉妹の耳にも届いているのか……」

五月雨「すごい嬉しそうだったので、つい訊いてみたら」

涼風「雰囲気もいつもと違ったしねぇ」

涼風「別に、提督も嫌じゃなかったんでしょ?」

提督「そりゃ、まぁ。むしろ俺なんかで、って感じ」

提督「周り見ればもっといい男なんているだろうに……」

五月雨「なら、気にしなくてもいいんじゃないでしょうか?」

涼風「うんうん。とりあえずお茶でも飲んですっきりしようか。淹れてくるね」

提督「ありがと」

五月雨「お仕事終わらせて、ゆっくりしましょう?」

提督「そうだな……」




……



時雨「……また、雨が降ってきたね」

提督「さっきまでは止んでたのにな」

時雨「今日はどうして僕のところに?」

提督「……時雨と一緒に過ごしたくなったから」

時雨「嬉しいこと言ってくれるね」

提督「時雨とばっかりいるから、それもどうかと思ったんだけど」

提督「やっぱりここが一番落ち着くかな」

時雨「……お部屋、綺麗にしておいてよかった」クスクス

時雨「珈琲でも淹れようか」

提督「手伝うよ」

時雨「じゃあ、豆を挽くのを頼んでもいい?」

提督「ん」






時雨「ここ最近の雨は、あんまりいい雨じゃないね」

提督「……どんな風によくないの?」

時雨「べたつくし、雨脚が忙しないんだ」

時雨「梅雨とか夏特有の雨って感じがして、それはそれでいいんだけどね」

提督「湿気が不快なら、除湿機でも買おうか」

時雨「いいよ。大丈夫」

時雨「ただ、代わりに提督が居てくれたら嬉しいかな」

提督「代わりって」

時雨「環境はどうあれ、提督と一緒だったら何事も心地よくなるから」

時雨「それこそ……」

時雨「こんな雨の日には、提督と一緒に居たい」

提督「時雨……」

時雨「提督……」

提督「……お湯、沸いたみたいだ」

時雨「……うん。淹れるから待っててよ」

提督「頼むな」



……



提督「珈琲おいしい」ズズー…

時雨「提督の挽き加減が絶妙だったからね」

提督「時雨の淹れ方がうまいから」

時雨「……ありがとう」ズズー

提督「こちらこそ」

時雨「それでさ、提督」

提督「んー」

時雨「夕立が迷惑掛けたみたいで、ごめんね」

提督「あぁ。色々溜まってたんだろうな……」

提督「出撃させることもないしね」

時雨「そうなのかな」

提督「適度にガス抜きしてあげなかったのが悪かったのかなと」

時雨「あはは、したところであの子は遅かれ早かれ襲ってたよ」

提督「……なんか夕立と一悶着あったみたいなこと聞いたけど」

時雨「そういうのじゃないよ」

時雨「皆、提督のことが大好きだからね」

時雨「抜け駆けはよくないって思ったから……」


提督「優しいんだな」

時雨「提督のおかげさ」

時雨「それにね」

提督「?」

時雨「僕は提督の彼女でもなければ、奥さんでもないからね」

時雨「僕にどうこう言えるものじゃないと思って」

提督「それは……。すまない」

時雨「いや、ううん! そういう意味で言ったんじゃないんだ」

提督「いや、言われてみたらさ」

提督「一応、自分の中では時雨が一番大事なはずなのに」

提督「付き合ってくれとも、結婚して欲しいとも言ってなかったから」

提督「そう思われても仕方ないか、って」

提督「……ごめんな」

時雨「僕のほうこそ、卑怯な言い方をしてごめん」

提督「時雨のことが大事だって言う割には、皆と同じように接してただけだし」

提督「だからかな、距離感っていうか、こういうこと言うタイミングがわかんなくなってたよ」


提督「時雨、結婚しよう」

時雨「うん、いいよ」

提督「お、おう」

時雨「うん?」

提督「いや、なんていうか、こうあっさりしてると……」

時雨「それこそ今更じゃない?」

時雨「今まで通り、提督と一緒に歩いていくだけだよ」

提督「うん、そうなんだけど」

時雨「なに? 『はい、私なんかで良ければ喜んで──』」

提督「やめて、なんか気持ち悪い」

時雨「でしょ?」

提督「……時雨の言うとおりだな」

時雨「ふふん」

提督「今すぐじゃなくてもいいから、今度指輪でも探しに行こうか」

時雨「いいね。まだケッコンカッコカリの指輪も貰ってないけどさ」

時雨「おかげで経験値無駄になっちゃってるよ?」

提督「……もう本当に頭が上がりません」


時雨「そっちのは仮初のものだし、あってもなくてもいいんだ」

時雨「僕からしたら、私的に指輪を用意してくれようとしたことのほうが嬉しいかな」

提督「そりゃ当然だろうよ、なんたって大事な嫁さんなんだから」

時雨「そう言うと思った」

提督「……なんか嬉しそうだな」

時雨「そういう提督こそ、口元が緩んでるよ?」

提督「そりゃ嬉しいからな」

時雨「……」ギューッ

提督「……」ナデナデ

時雨「……」スリスリ

提督「……」ギュー

時雨「はぁ……。幸せ」

提督「俺も、これ以上なく幸せだ」

時雨「……雨、止んでるね」

提督「降ったり止んだりで村時雨だな」

時雨「……ね。この後って、何かある?」

提督「やることもないから、時雨とまったりしたいな」

時雨「決まりだね。まずは晩御飯の準備から一緒にやろう?」

提督「あいよー」





……



提督「ごちそーさま」ゲップ

時雨「美味しかったね」

提督「カレーは簡単に作れて、おいしい上にあんまり飽きないからね」

時雨「入れる具も毎回変えれば味が違うしね」

提督「ん、また雨が降ってきた」

時雨「土砂降りだね」

提督「外にも出れないし、夜だから出ることもないんだけど」

時雨「テレビでも見る?」

提督「そーだね……。なんか映画でも観ようか?」

時雨「いいね。間宮さんからアイス貰ってきて、食べながら観ようか」

提督「貰ってくるから、準備してもらっていい?」

時雨「うん、お願い」







時雨「こう、もう少し密着するように……」

提督「こう? でもこれだとアイス食べられない……」

時雨「観終わった後に食べようか?」

提督「どっちでもいいよ」

時雨「決まり。今は提督とくっついて観るのが先決かな」グイグイ

提督「今日はまた一段とべったりしてくるね」ギュ

時雨「ん……」

提督「すっぽり収まったな」

時雨「……うん、いい感じ」

時雨「照明も消してもらってもいい?」

提督「いいけど寝落ちするかも」

時雨「そしたら僕も一緒に寝ようかな」

提督「大丈夫だと思うけどね」

提督「よし、じゃあ再生するか」






……



時雨「……終わっちゃったね」

提督「そうだな」

時雨「どうだった?」

提督「面白かったよ。これぞSFって感じで」

時雨「面白そうだったから録画しておいたんだけど、正解だったかな」

提督「あぁ、ただ……」

時雨「?」

提督「見てるときに時雨に太ももとか色々撫でられてるほうが気になったかな」

時雨「そういう提督もお返しと言わんばかりに結構激しくしてきたよね」

提督「時雨が誘ってるのかと思って」

時雨「……間違ってはないかも」

提督「……」

時雨「……何か言ってよ、小っ恥ずかしいじゃないか」

提督「いや、今はまだいいや」

時雨「?」

提督「……まぁ、もう遅いしアイス食べたらお風呂入ろうか」

時雨「あとで教えてね?」

提督「言われなくても大丈夫だよ」










提督「はぁーあ……。いい湯」カポーン

時雨「うん……」

時雨「ね、提督」

提督「ん?」

時雨「僕ね、ここに来られて本当によかった」

提督「急にどうしたの」

時雨「ここに来る前、僕たちが艦娘の養成学校にいたことは?」

提督「知ってるよ?」

時雨「そこで何を教わってたと思う?」

提督「……知らない」

時雨「知りたい?」

提督「聞いてもいいなら聞きたい」


時雨「別にね、疚しいことを教わってたわけじゃないんだよ」

時雨「戦い方とか装備のこととかが大体で、他に艦娘としての在り方とか、鎮守府での振舞いについて」

時雨「その鎮守府での振舞いっていうのでね、提督の命令は絶対だって教わったんだ」

提督「おかしな話だな」

時雨「命令に背いて不興を買えば解体させられることがあるって」

時雨「解体で済めばまだ良い方で、下手したら捨て駒にされたりとか」

時雨「そういうことがあるから、なるべく提督には媚び諂っておくのがいいって」

時雨「皆がおかしいと思ってたんだろうけど、そうなるのは嫌だから従うしかないのかなって」

時雨「でも、実際配属されてみたら全然違ってさ」

時雨「ここでよかったなって」

時雨「他のところに配属されて、酷い目にあってる子が居たら申し訳ない気もするけど……」

提督「そう言って貰えると、なんだかすごい嬉しいよ」


提督「ただ少しでも無理してる子がいたら、それは俺のせいだからどうにかしないと」

時雨「無理してそうな子がいると思う?」

提督「いや……。むしろその逆な気がする」

時雨「提督なら、何をしても許されそうだからね」

提督「何をしても、っていうのは……。まぁそうなんだろうけど」

時雨「早いうちに提督と出逢えて本当に良かったよ」

時雨「もし遅れていたら、僕じゃない誰かとくっついてたかもしれないって思うとね」

時雨「それこそ夕立とか」

提督「最初に時雨が俺に好きだって言って、それを意識するようになって……」

提督「気がつけば時雨を好きになってて、こんな有様に」

提督「その後だっけな、姉妹からも好きだって言われて……好きのニュアンスがまた違うんだと思うけど」

時雨「最初は提督もやんわり断るような感じだったよね。嫌いじゃないけどって」

時雨「ダメだと思ってたんだけど、段々提督のほうから声を掛けてもらって、好きだって言ってくれて」

時雨「一緒にご飯食べたり、ぎゅってされたり、こうしてお風呂に入ったり、添い寝するようになって」

時雨「すごく、嬉しかった」チャプ…


提督「……」

時雨「それで、提督に一緒になろうって言われて」

時雨「口じゃあんなだったけど、心の中じゃ舞い上がってて」

時雨「もう、どうにかなりそうな気持ちだった」

時雨「だってあの提督のほうから言ってくれたんだから」

提督「……すごい待たせてたみたいで、その。すまん」

時雨「どうしても、提督の口から欲しかった言葉だったから」

時雨「ごめんね、勝手に期待しておいてこんなこと言って」

提督「いや、やっぱり男から言うもんだろう」

提督「だかた、待たせたお詫びっていうわけじゃないけどさ」

時雨「うん」

提督「今晩、いいか?」

時雨「……うん」


時雨「それも、ずっと待ってた」

時雨「今まで本気で誘ってたのに、ずっと流すんだもん」

提督「いや、さすがに婚前交渉というのは」

時雨「妙なところで硬いんだから」

時雨「じゃあ提督、もしかして夕立に襲われたのが……」

提督「言わないでください……」

時雨「……少し、惜しいことしたかな」ボソッ

提督「ん?」

時雨「ううん、なんでもないよ」

時雨「もう上がろうか、って」ザバァ

提督「ん、わかった」ザバー

提督「時雨、ありがとな」

時雨「?」

提督「俺も同じ分だけ時雨から色んなものを貰ってたからさ」

提督「……これからも頼むな」

時雨「僕のほうこそ。あ、背中拭いてあげるね」

提督「ん、さんきゅ」





……



時雨「提督」

提督「ん」

時雨「その、優しくして欲しいなって」

提督「極力努力してみるよ」

時雨「ありがと……。あ、でもね」モソモソ

時雨「提督に気持ちよくなって貰いたいから、その……」モジモジ

提督「……一緒に気持ちよくなれるように頑張るよ」ギュッ

時雨「ん……それが一番だね」

時雨「いざってなると、興奮するより緊張しちゃって」

提督「俺も。すごい緊張してる」

時雨「ふふ、一緒だね……?」

提督「だからこそ焦らないで、ゆっくり」ナデナデ

提督「お互いしたいことをしていけばいいんじゃないかな」

提督「まだまだ、夜は長いんだしさ。明日だって……」

時雨「うん……。そうだよね」

時雨「ん……」ペロ

時雨「んんっ……ふ、ぁ──」チュー…

提督「──時雨の唇、すごく柔らかいな」ナデナデ

時雨「提督のもぷにぷにしてて……ね、もっと頂戴……──」






……





提督「ん……まぶし……」

時雨「……提督、おはよう」

提督「あ……」

時雨「お寝坊さんだね」クスクス

提督「あれ、今……」

提督「もう九時か」

時雨「五月雨と涼風の二人から、書置きを貰ってるよ」

時雨「今日一日ごゆっくり、だって」

提督「あらら……。悪いことしたな」

時雨「後でお礼言っておかないとね」

提督「ん、そうだな」


時雨「どうする?」

提督「どうしよっか」ギュ

時雨「えっと……朝からするの?」

提督「いや、ただ抱きたくなっただけ……」

提督「それに、痛むだろう?」

時雨「まぁ、しょうがないさ」

時雨「……僕もなんだか、提督に抱きつきたい気分だ」スリスリ

提督「二度寝しちゃおうか。その後にシャワーでも浴びてお昼にしよう」

時雨「贅沢な休日だね」

提督「いいじゃん、今日は至福の一時を満喫するの」

提督「時雨の身体が柔らかくて気持ちいいからダメになりそう」サスサス

時雨「提督の身体は暖かくて心地良いからダメになりそう」ウットリ…

提督「二人して、もうダメになっちゃってるよね」

時雨「ふふっ」チュ

提督「寝ようか」ナデナデ

時雨「うん、おやすみ……」








……



提督「いや、昨日は悪かった」

五月雨「悪気はなかったのですが、その」

涼風「起こしにいったらまっぱで二人とも寝てるんだもん」アッハッハ

涼風「ま、いいんじゃないの?」

提督「おかげですごい充実した一日を過ごせました」

五月雨「充実……」

提督「うん?」

涼風「今日はきちんと仕事してもらうからなー」

提督「ん」



それからしばらくして。







五月雨「提督、やっとですね」

提督「なんだっけ」

涼風「先週あたいたちの分の指輪と書類を本営から取り寄せてたじゃん」

提督「あぁ、そうだったね。あと長良型の皆が来るんだったな」

五月雨「演習はちょうどその六人で回せそうですね」

提督「皆錬度なんてないから、それやっちゃうと最初は負けてばっかりだろうけどね」

涼風「負けないとどこが悪いか気づかないぞ?」

提督「そうだな。いい経験になるだろうしその六人でやらせるか」

提督「そして遠征をお前さんたちに頼もうと思ったのはいいんだが」

提督「別に遠征いってもらってまで資材がいるわけでもないし、どうしたものかと」

五月雨「そしたら毎日が自室で待機ですか?」

提督「それも暇だろうしな、どうしたものかと」

涼風「後で皆集めて決めればいいんじゃないの?」

提督「そうするか……」




……


コンコン カチャッ


時雨「提督、呼んだ?」

提督「おう、呼んだよ。皆の錬度も充分に上がったから、そろそろね」

提督「また、時雨に秘書を頼みたいなって。ダメかな?」

時雨「もう……」

提督「ごめんごめん」ギュ

時雨「ん……もっと撫でて?」

提督「言われなくても触っちゃう」モフモフ

時雨「そうだ、提督」

時雨「夕立も一緒に居ちゃダメかな?」

提督「……ダメなんて言うと思うか?」

時雨「ダメなんて提督は言わないよ」

時雨「だから、提督の気持ちが聞きたいんだ」

提督「……正直、どうすればいいのかわからない」

時雨「夕立はさ、僕たちのことを知ってて提督に素直に気持ちを伝えたんだから」

時雨「あとは僕たちがどうすればいいか、決めたらいいだけだよ」


提督「時雨はどうしたいんだ?」

時雨「僕は夕立となら一緒でもいいと思うんだ」

時雨「夕立に限らず姉妹だったら、ね」

時雨「提督は何か困ることがあるかい?」

提督「……時雨一人を愛せなくなる」

時雨「そんなこと?」

提督「そんなことって」

時雨「なら他の子を相手にしながら僕のこともちゃんと見てくれたらいいじゃない?」

時雨「何も、セックスだけが愛することじゃないんだからさ」ギュ

提督「いいのか?」

時雨「僕が一番だってわかってる分、文句はないかな」ナデナデ

提督「ん。なら俺も、夕立とも一緒に居たいな」

時雨「姉さんとかにも聞いてみるよ。提督のこと慕ってたみたいだし」

時雨「どっちにとっても悪い話じゃないからね」

提督「爛れてるなぁ」

時雨「一線越えてなかっただけで、前から爛れてるでしょ?」

提督「仰るとおりでございます」

提督「まぁ、なんだ。今は二人っきりなんだから」ダッコ

提督「しばらく、このままで居させて欲しい」ギュー

時雨「うん。僕も、今は同じ気持ちかな」ギュー




……


提督「そろそろ来るはずなんだけどなー」

時雨「長良型の子?」

提督「そうそう……」

<コンコン

提督「って言ってたら」

時雨「噂をすればって奴だね」

提督「そうだな。どうぞー」

長良「失礼します……」カチャリ

提督「おっ、これはまた……」

時雨「……」

提督「冗談だよ、時雨。だからそんな目で見ないで」

時雨「何が冗談なのかな? ぜひ教えて欲しいな?」ニコニコ

提督(目が笑ってないんですけど)

五十鈴「なに? なんなのこれ」

阿武隈「さぁ……」








提督「大変見苦しいところを見せてしまって申し訳ない」

提督「よろしければ自己紹介を軽くお願いするよ」

長良「はい! 軽巡、長良です。よろしくお願いします!」

五十鈴「五十鈴です。水雷戦隊の指揮ならお任せ。全力で提督を勝利に導くわ。よろしくね?」

名取「名取といいます。ご迷惑をおかけしないように、が、頑張ります!」

由良「長良型軽巡四番艦の由良です。どうぞ、よろしくお願いいたしますっ!」

鬼怒「来た来たぁ!鬼怒、いよいよ到着しましたよ!」

阿武隈「こ、こんにちは、軽巡、阿武隈です」

提督「皆元気があっていいね。こちらこそよろしく頼む」

時雨「秘書を務める時雨だよ」ペコリ

提督「早速だが、まずはここのことを知ってほしい」

提督「時雨、他の子たちと一緒に案内頼めるか?」

時雨「任せてよ」

提督「そういうことだ。二日、三日かけても構わないからゆっくり覚えていって欲しい」

長良「はい、わかりました」

時雨「こっちだよ、ついてきてね」





……



五十鈴「なに? 本当にこの鎮守府って貴方達しかいないの?」

夕立「そうよ?」

名取「戦い、しなくてもいいのでしょうか……?」

鬼怒「でも、そしたらなんの為に配属されたのかわからないよね」

由良「平和であるに、越したことはないのですけどね」

白露「そうそう! まったりしながら過ごすのが一番だよね」

五十鈴「おまけに出撃歴ゼロだなんて、腑抜けた提督なのね」

時雨「腑抜けてなんかいないさ……」

村雨「それは私たちの心配をしてよ?」

五十鈴「ふーん……」

阿武隈「あたしは別に、出撃がなくても……」

涼風「まーそのへんは提督に直談判すればいいじゃん?」

涼風「とりあえず食堂でご飯でも食べようよ、お腹空いちゃってさぁ」

長良「食堂の案内よろしくね?」

五月雨「おまかせください」




……



食堂。




由良「本物の間宮さんだわ……」

阿武隈「六人しかいない鎮守府にも間宮さんがいるなんて」

間宮「私が望んでこちらに来たのですよ」

間宮「前の鎮守府では一人で激務をこなさなくてはいけなかったので持たなくて……」

五十鈴「本来、間宮の肩書きを持つ艦娘は戦闘で疲労した艦娘を労う為に料理を揮うのではなくて?」

長良「ちょっと、五十鈴」

間宮「仰るとおりです」

白露「あたしたち、間宮さんに癒されてるけど?」

五十鈴「演習しかしなくて疲れることのない子がねぇ……?」

五月雨(五十鈴さんって、キツい方ですね……)ボソボソ

涼風(だな……)

間宮「でもここにきてからは余裕があるので、時間があれば新しい甘味を開発してるのです」

間宮「本営に評価されて、他所でもメニューに載るようになってるんですよ」

村雨「いくつも評価されてて、うちの間宮さんはすごい方なのよ?」

間宮「まだ発表してない新作があるのだけれど、お時間大丈夫でしたら如何でしょうか?」

鬼怒「間宮さんのおやつ食べたいなぁ! 学校で一度しか食べられなかったんだよね」

五十鈴「……ご好意に甘えさせて頂きます」

夕立「おやつ♪おやつっ♪」ピョコピョコ







鬼怒「あー! 間宮さんのスイーツマジパナかった!」

由良「毎日食べてもいいくらいね」

阿武隈「毎日ここでゆっくりしながら、間宮さんのおやつ食べていたいなー……」

五十鈴「毎日食べるのはいいけど、出撃しないのはダメよ」

時雨「五十鈴さん……はさ、出撃に拘ってるように見えるけど」

五十鈴「? 艦娘なら当たり前じゃない?」

村雨「別に出撃しなくてもいいなら、出なくていいんじゃない?」

五十鈴「何か履き違えてない?」

五十鈴「艦娘は、深海棲艦を倒す為にいるの。もしそれがなければ、私たちは……」

夕立「確かにそうだけど、ここじゃまだ一回も戦闘したことないし、実は必要ないっぽい?」

五十鈴「だから後で提督に訊いてみるわ。どういうことなのか」

長良「まぁまぁ、そこまで深く追求しなくてもいいじゃない。上官の命令は絶対よ?」

名取「一通りの施設案内が終わってからでもいいのではないでしょうか……」

涼風「だねぇ。とりあえず、遅くならないうちに済ませちゃおうよ」

時雨「そうだね。でも、五十鈴さんもきっとわかってくれると思う」

五十鈴「何に?」

時雨「艦娘の在り方というのかな。戦うことが、僕たちの存在意義じゃないんだって」

五十鈴「……」

五十鈴(学校で聞かされていた最前線の様子とは、かけ離れた現実に戸惑ってるのは確かだけど)

五十鈴(言われなくても、私の目で見て、話を聞いて見極めるわよ)

白露「お話ひと段落ついたなら次いこ?」

五月雨「そうですね」






……



夕立「たーだいまー!」

提督「おかえり」

長良「鎮守府を一通り案内して貰いました」

鬼怒「とりあえず寝るところと食堂がわかったから、あとは順番に覚えていけばいいかなー」

名取「やっぱり広いのですね」

五十鈴「広いのはいいのだけど……提督」

提督「なんだい?」

五十鈴「色々貴方には聞きたいことがあるの。お時間いいかしら?」

提督「いいよ」

提督「……他の子たちは好きにしてて欲しい」

提督「話が終わったら食堂で歓迎会をしようと思う」

涼風「あいよー」

村雨「……じゃあ私たち、先に部屋に戻ってるね」

提督「ん、頼んだ」






提督「さて」

提督「一つだけ言わせて欲しい」

五十鈴「何かしら?」

提督「上下関係なんてつまらないものは気にせず、言いたいことをバッサリと言って欲しい」

五十鈴「……」

五十鈴「大丈夫、元からそのつもりよ」

五十鈴「まずこの鎮守府にはなんで六人、しかも駆逐艦しかいないのかしら?」

五十鈴「せっかくの広い鎮守府で、工廠にはほとんどの艦娘の艤装が揃っているのに」

五十鈴「これじゃまともな戦隊も組めないじゃない」

五十鈴「やる気、あるのかしら?」

提督「……お前たちが自身を守れるように、戦えるようにする意味でのやる気はあるが」

提督「深海棲艦を殺す気はない」

五十鈴「へぇ」

五十鈴「何かしらの形で軍に貢献しているのならまだわかるわ」

五十鈴「でもその形跡もない。何がしたいの?」

提督「言わないといけないことなのか?」

五十鈴「言ってもらわないと納得がいかないわ」

提督「……わかった」

提督「話す前に、五十鈴。お前さんが艦娘になった理由はなんだ?」

五十鈴「……五十鈴はね──」





……



時雨「提督!」

提督「時雨か」

時雨「歓迎会が終わった途端、姿が見えなくなって」

時雨「鎮守府内を探しても見つからないんだもん」

時雨「……こんなところでどうしたの?」

提督「少し、風に当たりたかった」

時雨「……呼んでよ」

時雨「一人で抱え込むのは悪い癖だよ」

提督「ごめん」

時雨「……」

提督「……」

時雨「やっぱり、五十鈴さん?」

提督「……うん」

提督「言ってることは間違ってないんだ」

提督「でも、正しいとも思えなくて」


提督「五十鈴はさ、親友が深海棲艦に目の前で殺されたらしいんだ」

提督「海で遊んでたときのことだったらしい」

提督「以来、敵を討つことを考えて艦娘になったって話を聞いてさ」

時雨「……」

提督「……俺の父さんもさ、提督をやっていたんだ」

提督「あるとき出撃させた艦隊が、どういうわけだか撤退できず」

提督「深海棲艦に囲まれて蜂の巣にされたんだ」

提督「それから少ししてから、俺の父さんは深海棲艦に襲われて死んだ」

提督「その深海棲艦は、その蜂の巣にされた艦娘たちの成れの果てだったらしい」

提督「艦娘が沈んだら深海棲艦になるのは有名な話だけど」

提督「恨み、買ってたんだろうなぁ」

提督「……結局のところ、深海棲艦を殺すにはそれだけ犠牲が出るんだ」

提督「大破進軍しなければ沈まないとか、艦娘は沈んでも消えるだけって本営は謳うけど」

提督「そんな都合のいい話は実際ないんだ」

提督「艦娘が沈めば沈むほど、深海棲艦が増える一方で、何の得もない」

提督「いたちごっこで、ただただ不毛なだけなんだ」

提督「だから俺は、五十鈴に出撃させる気はないって言ったんだけど」

提督「納得いかないって」

時雨「……そっか」

時雨「出撃しなくてもお咎めなしなのは」

提督「プラスもなければマイナスもないから、とりあえずは問題ないってところじゃないのかな」


提督「でも、マイナスを出さずにプラスを出し続ければいいだけでしょ?って」

提督「彼女はそう言った」

時雨「その言葉だけを聞けばそうだね」

提督「でも実際はそんなこと無理だ。必ず犠牲は出る」

提督「沈んだ艦娘がどんな深海棲艦になるかもわからない」

提督「それに、自分自身が誰も沈ませないなんて自信がない臆病者なんだ」

提督「……今までやってきたことが間違ってるとは思わないが、正しいかと言われると」

提督「不安で仕方がない」

時雨「……大丈夫」

時雨「提督、正しいことなんて何一つないんだ」

時雨「強いて言うなら、戦いが終わったあとで皆が無事なら、それは正しかったって思えるよ」


時雨「今の提督のやり方でも、少なくとも僕は間違ってると思ったことはないから」

提督「時雨……」

時雨「だから、もう部屋に戻ろう?」

時雨「暗いし寒いから風邪引いちゃうよ、ね?」

提督「……ありがとな」

時雨「うん。それと、今度こんな水臭いことをしたら……」

提督「したら?」

時雨「……そのときはリコンカッコカリだね」

提督「え、あ、いや……」

時雨「ふふ、冗談だよ。カッコカリって言っても、そんなの僕も耐えられないし」

時雨「……だからさ、もっと頼ってよ?」

提督「ん、ありがとう。次からは相談するな」

時雨「よろしい。それじゃ、戻ってお風呂でゆっくりしよっか」




……




時雨「いい湯だね」カポーン

提督「そうだな……」

時雨「しとしと雨が降ってて、すごい気持ちいい」

提督「ふー……」

時雨「まだ元気でない?」

提督「悩んでも仕方がないんだけどね」

提督「ほら。俺ってねちねちしてるからさ」

時雨「うーん……」

時雨「思ってることをそのまま伝えて、それでも納得しないんでしょ?」

時雨「だったらさ、一度痛い目を見るのもアリなんじゃないかなって思うよ」

提督「痛い目って、例えば……」

時雨「気が済むまで出撃させればいいんじゃないかな?」

提督「それでもし帰ってこなかったら、自分を一生恨むからしない」

時雨「……そっか」


時雨「僕はさ」

時雨「別に、帰ってこなくてもいいんじゃないかなって思ってた」

時雨「提督にそう言われるまで」

提督「……?」

時雨「提督がそのことで悩んでる様子を、あの人は腑抜けと吐き捨てたんだ」

時雨「僕は提督のことを応援してるから、その一言がすごく障った」

提督「……ごめんな」ナデナデ

提督「もうちょっとしゃっきりしてれば、時雨もそんな不快にならずに済んだだろうに」

時雨「いいんだ。僕は、提督が好きだから」

時雨「それにごめんって言われるよりありがとうのほうが、すごく嬉しい」

提督「……ありがとう」ギュ

時雨「うん、やっぱりそっちのほうがいいね」

提督「時雨、こっち向いて?」

時雨「どうしたの?」チャプ…

提督「なんか、つらかったり悩んでるときに」

提督「時雨の顔を見るとすごく落ち着くからさ」

提督「見ていたいなって」

時雨「じゃあ、上がるまでずっとこうしているよ」


時雨「……」

提督「……」

時雨「元気、出た?」

提督「時雨のおかげで、だいぶ」

時雨「よかった」フフッ

時雨「さっきから、こっちは元気なのに顔は全然だったから」ギュ

提督「いや、それは……」

提督「時雨のお尻の位置がいい具合に刺激してて」

提督「……耐えられるわけないだろ」

時雨「わざとやってたんだけどね」

提督「やっぱり」

時雨「……ね、ここでしちゃおうか」

提督「いつからこんな大胆な子に」

時雨「提督がそうしたのかもね?」

時雨「……どうしよっか」

提督「……時雨、愛してる」チュッ

時雨「うん、知ってるよ」

時雨「僕も、同じ気持ちだから」チュ-…

時雨「ンン──」





……



提督「よし、明日から頑張るか」ナデナデ

時雨「人も、やることも一気に増えたもんね」ツヤツヤ

提督「時雨たちには演習の手ほどきを任せてもいいかな」サラサラ

時雨「大丈夫だよ」

提督「お願いな」

提督「……前から思ってたんだけどさ」サラサラ

時雨「どうしたの?」

提督「髪を下ろした時雨もいいなーって」

提督「いつも三つ編みで下げてるじゃん?」

時雨「うん、そうだね」

時雨「さすがに寝る前になると解くけど……」

提督「それにこの耳というか、はねてる部分もまた」ピョコッ

提督「白露たちも改二になったらこんな感じになるのかな」ナデナデ

時雨「夕立もそうだし、もしかしたらなのかもね」

提督「はぁー……。幸せ……」

時雨「眠そうだね……僕も、眠いな……」

提督「おやすみー……」zzZ

時雨「うん……」





……


チュンチュン…



時雨「て・い・と・くー……」

提督「んー……」ゴロン

提督「」zzZ

時雨「もう朝だよー……?」

提督「ん」ギュ

時雨「……起きないの?」ポンポン

提督「……いや、起きるよ」

提督「時雨の身体、ふにふに……」モミモミ

時雨「もう、提督ってば」


時雨「……ぁ」ビクッ

提督「?」

時雨「……朝から、すごく元気なんだね、うん」ツンツン

提督「……ごめん」

時雨「えっと、どうしたらいいかな?」ナデナデ

提督「放っておいて、そのうちなんとかなるから」

時雨「そうなの……」

提督「夜に、ね」

時雨「ふふっ……。提督のえっち♡」チュ

提督「お互い様だよ」

提督「寝汗がすごいな。天気いいし、布団干してシャワー浴びようか」

時雨「賛成。すっきりしたいな」

提督「そしたらお仕事始めますか。今日からの予定なんだけどさ」

提督「長良型の子を二人執務室に置いて、秘書の仕事をやってもらおうかと」

提督「その際、時雨も一緒に居てくれたら有難い」

時雨「僕が?」

提督「なんか俺だけだとすごく気を遣わせそうだし、慣れるまで」

提督「時雨だけじゃなくて、夕立や村雨たちにもお願いしようかなって」

時雨「うん、わかった」

提督「ありがと」

提督「それで六人順番に回して、錬度上げていけばいいかなー」

時雨「今まで通りだね」








提督「よっこいしょっと」バサッ

提督「これでよし。昼過ぎにはふかふかの布団に仕上がるな」

時雨「干してあげないとカビが生えちゃうもんね」

提督「うん。今日は雨も降らないから大丈夫かな」

時雨「なら安心だね」

時雨「……もう、梅雨が明けるね」

提督「そうだなぁ。暑くなるけど頑張ろう」

時雨「紫陽花の花、枯れちゃったね」

提督「半月前は、綺麗に咲いていたのにね」

提督「大丈夫、また来年綺麗に咲いてくれるよ」

時雨「そうだね、また来年」

提督「さて、じゃあ戻ろうか」

提督「時雨、俺の首に手を回せる?」スッ

時雨「え? うん」ギュ


提督「よっ、と」ダッコ

提督「お姫様抱っこ、どう?」

時雨「は、恥ずかしくて降ろして欲しい、かな///」カァァ

提督「誰にも会わないだろうしいいじゃん」

時雨「急にどうしたのさ?」

提督「嫁さんできたらぜひ一度はやってみたいなっていうの思い出して」

時雨「そうなの……?」

提督「あぁ、夢が叶って良かった。時雨も嬉しそうだし」

時雨「へ?」

提督「違った? すごく顔が緩んでるから、嬉しいのかなって」

時雨「……えへへ、よくわかったね」

提督「そりゃもう。それくらい愛してると思ってくれたら」

提督「さて、時間も押してるしお風呂いきますか」

時雨(やられたままだと、なんだか悔しいな)

時雨(僕も何か提督にしてあげようかな?)

時雨(吃驚するかな? 喜んでくれるかな?)

時雨「うふふ♪」

時雨「楽しみにしてて、ね?」ニコッ

提督「? おう」





……



提督「今日から長良と五十鈴の二人と、白露と時雨の四人に仕事を手伝って貰おうと思う」

提督「一週間ごとに、二人ずつ交代していく予定でいいかな」

長良「問題ありません」

五十鈴「さすがに五人で仕事するってどうなのかしら?」

五十鈴「提督と秘書の二人が原則って聞いてるのだけれど」

提督「そうなんだけど、早めに仕事の引継ぎをしたいっていうのと」

提督「早くに仕事を終わらせて、自由な時間を増やせたらと思って」

五十鈴「そうなの? それなら仕方ないわね」

提督「すまないな、よろしく頼むよ」

夕立「夕立の出番はいつかしら?」

提督「交代のタイミングで白露も村雨に変わってもらうつもりだから」

提督「夕立は来週かな……」

夕立「ちょっと最近、暇を持て余し気味だけど我慢する……」

提督「ごめんな、構ってやれなくて」

夕立「ううん、提督さんもお仕事頑張ってね」

提督「ありがとな」

提督「それじゃ、今日からよろしく頼む」

由良「それじゃあ提督さん、私たちは失礼いたします」ペコリ

鬼怒「何かあったら呼んでね!」ノシ


提督「長良は白露と、五十鈴は時雨と組んで仕事のやり方を教わって欲しい」

提督「資材の発注と、開発、建造で作ったものの報告書あたりを頼もうかな」

提督「そんなに難しいものでもないし、量もそこまでないから頼んだよ」

長良「提督は何をするの?」

提督「今日の演習の相手に挨拶をしてくるよ」

提督「あと工廠に行って、妖精さんに開発と建造のお願いでも」

提督「書類に関しては、最終的な確認と承認は自分がしないとだから最後にそれだけ」

五十鈴「本当にそれだけでいいの?」

提督「これくらいしかすることないからね」

五十鈴「出撃は?」

提督「少なくとも、充分な錬度に達するまではさせる気はない」

提督「それに五十鈴は二度改装ができるから、それをするまではさせないつもり」

五十鈴「遠すぎない?」

提督「わかってくれとは言わないけど、お前たちが心配なんだ」

提督「充分な錬度に、出来るだけの近代化改修。加えて応急修理要員を一つは積まないと行かせない」

五十鈴「やりすぎじゃない……?」

提督「沈んでからでは遅いんだから、そこは譲れないよ。できれば二つか三つ、積ませたいけどね」

五十鈴「……それもそうね」

五十鈴「死んでからでは、遅いものね……」

時雨「……」

提督「じゃあ仕事、頑張ろう」




……



長良「頼まれた仕事も演習も、すぐに終わっちゃったね」

五十鈴「これだけでいいの? 午前中にはやることなくなるじゃない?」

時雨「僕たちのお仕事はね」

白露「仕事量が少ないのもあるんだけど、そんなに私たちにやらせたくないんだって」

白露「お手伝いしてくれるくらいでいいよって」

時雨「午後は演習時間以外は好きにしていいって」

五十鈴「そうなの? なら提督に一言挨拶してから戻りたいわね」

白露「多分そこまで律儀にしなくても気にないと思うよー」

長良「ちょっと待ったら戻ってきそうだし、待ってるわ」

時雨「そうだね、そろそろ戻ってくるはずだよ」

時雨「一息つきたいし、お茶でも淹れるよ。皆も飲む?」

五十鈴「ごちそうになるわ」

長良「はい、言われてみたら喉が渇いてきちゃいました」

白露「私のもお願いね、時雨」

時雨「うん、いいよ」


提督「ただいま」

時雨「提督、おかえり」

白露「噂をすればって奴だね」

時雨「提督もお茶いかが?」

提督「もらおうかな、頼むよ」

時雨「うん、わかった」

提督「仕事のほうはどうだい?」

五十鈴「もう終わったわ」

長良「残りは午後ある演習だけと聞きましたけど」

提督「飲み込みが早くて助かるよ」

提督「午後の演習も、今日からはいいかな」

五十鈴「ちょっと、どういうこと?」

提督「他所の鎮守府はAL/MI作戦の攻略に取り組んでて忙しいみたいなんだ」

提督「演習をしている暇も資材もないって突っぱねられちゃったよ」

白露「あらら……」

提督「退屈かもしれないけど、終わるまでは我慢してくれないか?」

長良「相手が見つからないのは仕方ないね」

五十鈴「タイミング悪すぎよ……」


提督「別に鎮守府にいなくてもいいんだし、好きに動いてもらって構わないよ」

提督「そろそろ盆だし、実家に顔を出すのもありだよ。休暇が欲しかったら言って欲しい」

長良「うーん、そう言われると欲しい服とか色々あるし外に出たいかも……」

白露「私はよく妹を連れてスイーツ食べ放題とか行ってるよー」

提督「艦娘とはいえ年頃の娘なんだから、九月入るまでは夏休み期間でいいと思うよ」

提督「その辺はその鎮守府の提督の采配だからなんとも言えないけど」

白露「うちは毎日夏休みだよね」

提督「そう言われると、うん……なんかごめん」

長良「文句がないなら別にいいと思います」

提督「だから五十鈴、すまない」

五十鈴「え?」

提督「いや、出撃も演習もさせられないのが申し訳なくってね」

提督「色々建前を並べているけど、させないのは俺の勝手だからさ」

五十鈴「別に、気にしてないわよ」

五十鈴「私も特に文句はないわ」

提督「……ありがとう」

提督「それじゃ後は好きにして、また明日の朝からよろしく頼む」


提督「そうだ、五十鈴」

五十鈴「なに?」

提督「明日さ、花火大会が近所であるみたいなんだ」

提督「お前さんの姉妹に伝えておいてくれないか?」

五十鈴「お祭りがあることくらい知ってるわよ、名取から聞いてるわ」

提督「そっか。姉妹で行っておいで」

五十鈴「……なんで提督にそんなこと言われないといけないのよ」

提督「いや、別に。何でもないよ」

五十鈴「なんなのよ……フン」

提督「時雨たちは明日は暇か?」

時雨「僕はいつでも」

白露「私たちも大丈夫じゃないかしら?」

提督「じゃあ皆で見に行こうか」

白露「みんなで? 時雨と二人きりじゃなくて?」

時雨「僕はどっちでも楽しめるから……」

提督「人数多いほうが楽しめるかなって」

白露「よっし、なら決まりだね!」

長良「……私たちは失礼しますね」ペコリ

五十鈴「このロリコン」ボソッ


バタン


時雨「あははっロリコンだって」

提督「否定できないからなぁ」

白露「別にいいじゃない?」

時雨「提督はロリコンなんじゃなくて、僕たちが好きなだけでしょ?」

提督「そうだけど、そうだと思いたい」

白露「ロリコンでよかったね!」

提督「複雑な気持ちだ」

時雨「明日は夕方に執務室に集まればいいかな?」

提督「そうだね、暗くなる前に出よう」

白露「持ってる浴衣、まだ着れるかなー?」

時雨「着付けは提督に頼もうかな、うん」

時雨「提督も浴衣で行くんだからね?」

提督「こんな格好では行けないもんな、そうする」

白露「ていうか、真っ白い軍服だと風情がないよね」

時雨「浴衣を着たほうが色気も出るしね?」

提督「野郎の色気って需要あるのか」

白露「ありまくりかも」コクコク

時雨「出来たら鎖骨は露出して欲しいかな」

提督「……お前さんたちが喜ぶなら、まぁ……減るもんじゃないし」

白露「やったー!」

時雨「言ってみるものだね、楽しみにしてる」

提督(そんなに期待してたの)





……



提督「これでよし、と。きつくない?」

時雨「うん、ちょうど良くて気持ちいい」

白露「下駄が慣れないかなー」

提督「祭り行く前にサンダルでも買うか?」

白露「じゃじゃーん! 実は既に買ってあるのです!」

夕立「夕立も一緒に買ってきたのよ?」エヘン

提督「準備がいいな、えらいぞ」ナデナデ

夕立「んふふー、だって提督さんと一緒に行くお祭りだもん!」

村雨「おめかしなんてしちゃって、気合入ってるわね」

提督「いっぱい楽しんでいい思い出にしような」

提督「時雨は下駄で大丈夫なのか?」

時雨「うん。僕はこのほうがいいかな」

提督「もし足が痛くなったら負ぶってあげるから言ってな」

時雨「そのときは、遠慮なく頼んじゃおうかな」

夕立「……夕立も下駄にすればよかったかな」

提督「夕立が歩き疲れても、同じようにするさ」

提督「一緒には出来ないから、交互になっちゃうかもしれないけど」

夕立「それでも嬉しいな、提督さんに抱っこして貰えるなら……」

村雨「そろそろ出ましょうか。準備も出来たのだし、ね?」


涼風「おう、おっせーからきちゃったぞー」ガチャ

五月雨「もう大丈夫ですか?」

提督「ごめん、お待たせ。大丈夫だよ」

時雨「皆、準備万端で揃ったね」

提督「だね。行こうか」






……



時雨「提督、どうかな?」クルリ

提督「妙に色っぽくてドキドキするな。とても似合ってて綺麗だよ」

時雨「うん、ありがとう……/// たまになら、浴衣もいいかな」テレテレ

夕立「提督さん、夕立はどうかしら?」

提督「普段しない化粧のおかげでより大人っぽくなったな」

提督「元々が整ってるから、夕立も綺麗……っていうより、可愛いな」

夕立「綺麗より可愛い……少し複雑っぽい」ムスー

提督「夕立は可愛いほうが俺は好きかな。いつもみたいに元気で可愛い夕立が一番だ」

夕立「そ、そう? ならいいの……///」ウツムキ

白露「白露はどう?」グイ

村雨「ねぇねぇ村雨は?」グイ

提督「こら、一気に抱きつくなって」

涼風「両手に花どころじゃないねぇ」

五月雨「提督は本当に人気ですね」


時雨(提督も浴衣で……言ったの守ってくれたんだ)

夕立(胸元の肌色が、鎖骨が……)

時雨「これは予想以上にすごいね」

夕立「そうっぽい……ううん、そう。断言する」

提督「え?」

時雨「提督の浴衣姿も、いいものだねって」

夕立「お風呂上りは毎日それでもいいかも」

白露「いつも白だから、黒い浴衣着てると新鮮だね……」

涼風「確かに新鮮っていうか、イメージが変わるっていうのか」

五月雨「ですね。格好いいですよ」

提督「でも安物だよ、これ?」

村雨「安物でも何でもいいけど、これは反則よね……」

時雨「提督、右手いいかな」ギュ

夕立「私は左もらうねっ!」ニギッ

提督「まるではぐれない様に連れてる保護者だな、これ」

村雨「他人から見たら父親と娘みたいな」

白露「でも実はどっちにも手を出しちゃった恋人よねー?」

提督「……うん、まぁ……ね?」

涼風「あっはっは! 提督、顔が青ざめてるぞー」ケラケラ

五月雨「あはは……」





……



夕立「見てみて、金魚掬いよ!」

夕立「提督さん、わたあめが食べたいっぽい!」

夕立「はい、ラムネよ提督さん!」

提督「夕立は元気だなぁ」ナデナデ

夕立「お祭りなんて久しぶりだもん♪」エヘヘ

提督「まとまって動くより、お小遣い上げるから自由に動いたほうが楽かもなぁ」

五月雨「ぁ……」

五月雨「すみません、私と涼風はここでお別れです」

涼風「ん──あ、本当だ」

提督「どこか行くのか?」

鬼怒「お待たせ五月雨ちゃん、涼風ちゃん」

阿武隈「こんな人ごみだけど見つけられてよかった」

鬼怒「皆さんも一緒だったんですね」

提督「おう、鬼怒と阿武隈も?」

阿武隈「五月雨ちゃんと涼風ちゃんに、一緒に祭り周りしょうって誘われまして」

涼風「へへ、姉さんたちと仲良くなるいいチャンスかなって思って」

五月雨「なので、私たちはここで。また提督たちと土手で会えたら、一緒に花火見ましょう!」

提督「ん、気をつけてな。鬼怒、阿武隈、二人を頼むな」

鬼怒「まっかせてよ!」

阿武隈「では、また」





……



提督「花火までまだ時間があるね」

夕立「ふふんふふーん♪ 夕立は満足っぽい!」

白露「お祭りを満喫してるねー」

白露「お面つけてヨーヨーぶら下げて、りんご飴を頬張りながら提督と腕組み」

村雨「羨ましいわねぇ」

時雨「村雨、言ってくれたら交換するよ?」スルリ

村雨「……ごめん、今日だけはお言葉に甘えて」スッ…

村雨「ふふ、どう? 恋人に見えるかしら?」

時雨「うーん……少し犯罪臭がするかな……」

白露「それは誰と並んでもそう見えるかも」

提督「誰も見てないから気にしなくていいんじゃないか?」

村雨「もう、『見えるどころか恋人だよね』くらい言ってくれてもいいじゃない」ブー

提督「だそうです、時雨さん」

時雨「提督は……どうしたい?」

提督「どうって……そりゃ可愛い時雨の可愛い姉妹が言い寄ってきたら応えたくなるのが男の性と」

時雨「ならいいんじゃないかな?」クスクス


村雨「うふふ、正妻から許可を頂きましたー♪」

村雨「私にも恋人みたいなこと、してね?」

白露「姉妹ってことは、あたしや夕立も含まれるのよね?」

白露「それに、恋人相応の相手ってことは……」

提督「あーんして食べさせたり、膝枕したりとかそれくらいなら」

白露「あんなことや、こんなことも……ね?」

提督「それはさすがにダメだと思うんです」

時雨「ふふ、そこは個人で相談して決めて欲しいかな」

提督「いいや、ダメダメ。そういうのは時雨とだけってもう決めたの」

夕立「そんな、夕立とは遊びだったっぽい!?」

提督「むしろ弄ばれたのは俺だったんだが……」

夕立「そうだっけ? んまぁ、いざとなったら縛ればいいっぽい」

白露「夕立が言うと説得力あるね……」

村雨「じゃあそうしちゃおうかしら?」

提督「この話題やめ! 祭りを楽しまないでどうするの!」

提督「ほら、何か食べて花火見るのが先だから」

時雨「それもそうだね。後でゆっくり、それは決めよう?」

提督「それはそれで……はあ、観念するか」

時雨「提督。僕、たこ焼きが食べたいかな」

白露「あたしは広島風お好み焼きが食べたいなーっ!」

提督「……もう少し回って皆が食べたら土手に向かおうか」





……



提督「ついた、ここだよ」

白露「すごーい、いい眺めー!」

提督「昔見つけた場所でね。周りに人もいないし、見晴らしが良くて落ち着けるいいとこだよ」

村雨「最初の打ち上げが見られなくて残念だけど、途中からでもすごく綺麗……」

時雨「少しゆっくりしすぎたね」

夕立「っぽい?」

提督「ほれ、シート敷いたから座って観ようか」

白露「提督のお膝に、いっちばーん!」ポスッ

夕立「じゃあ夕立は隣をもーらいっ」ススッ

時雨「僕は背中にくっつこうかな」ピトッ

村雨「なら私は夕立とは反対側に、っと」ススッ

提督「広いんだからくっつかないで見ればいいのに」

提督「あと暑いから、少ししたら離れてね」

白露「けちんぼー」ブー

夕立「離れても、手を握るくらいはいいよね?」

提督「うん、それくらいなら」

村雨「……」ギュ

提督「……」ギュッ

村雨「♪」






……





提督「ごめん、ちょっとトイレ」スッ

時雨「あとちょっとで終わりだよ?」

提督「トイレ近くにあるからさ、混む前に行っておくよ」

夕立「そこの木陰で済ませちゃえばいいっぽい?」

提督「女の子がそんなこと言っちゃダメです」

提督「すぐに戻るから」

























提督「ふうー……さて、時雨たちのところ戻らないと」

提督「ん、あれは……」






……





五十鈴「……」

提督「おーい、五十鈴ー」パタパタ

五十鈴「げ……」

提督「はぁ、げってなんだよ、はぁ……」

提督「……一人でどうしたんだよ」

五十鈴「別に。関係ないでしょ」

提督「……そっか。でも、こんな人気のないところに一人で居たら危ないよ」

五十鈴「……」

提督「へぇ、ここも見晴らしがいいんだな」

提督「さっき居たところより、近くで花火が見られる良い場所だな」

五十鈴「そうなの?」

五十鈴「……ここはね、私の大切な友達とよく一緒に花火を見た場所なの」

提督「……前に話してくれた子か」

五十鈴「そう。あの子に教えてもらって、以来花火の時はここに来て一緒に見てたの」

五十鈴「……って言っても、二回しかなかったんだけどね」

提督「そっ、か……」


五十鈴「……どうしてわかったの?」

提督「え?」

五十鈴「ここ。誰もいないし、暗くて辺りも雑草とか樹があって見つけ辛いでしょ?」

提督「そうか? トイレから居た場所に戻るときに見かけたんだけど。ほら、あの辺りから」

五十鈴「……結構距離あるじゃない。よく見つけたわね」

提督「ふと見たら、放っておけなくてな。それだけ五十鈴が心配だったんだよ」

五十鈴「……心配、ねぇ?」

提督「冗談なんかじゃないさ。お前さんが俺のことをどう考えているかは知らないけど」

提督「お前も俺の大事な部下だ。色々と思うところはある」

五十鈴「色々。例えば?」

提督「……一番は、お前の中でしこりになって残ってるものかな」

提督「深海棲艦に対するそれを、どうにかして解決したいと思ってる」

五十鈴「それだったら、もう答えは出ているでしょう?」

五十鈴「私の気が済むまで出撃させてくれたら、私はそれでいいの」


提督「それじゃ根本的な解決に繋がらない。それに、お前まで死んだらどうする気だ」

五十鈴「そんなの私の勝手でしょう? 貴方は何も困らない」

提督「困る」

五十鈴「どうかしら? 口うるさい小娘が消えたら、喜ぶのが普通じゃない?」

提督「お前を口うるさい小娘だなんて思ったことは一度たりともない」

提督「決めつけで言うには度が過ぎてるぞ」

五十鈴「そ。でも、艦娘の死なんて世間じゃ当たり前じゃない」

提督「それもお前の勝手な決めつけだ。俺は当たり前だなんて微塵も思わない」

提督「……確かに、五十鈴の言う世間じゃそうかもしれない。艦娘は兵器で使い捨てるものだと」

提督「五十鈴がそうだと思うのも勝手だ。だがその意見を俺は絶対に通さない」

提督「俺はお前たちを兵器だなんて思ってないし、使うものだとも思ってない」

五十鈴「……艤装がなくても、普通の人間より異常に優れた身体能力を備えていても?」

提督「変わりない、同じ人間だ。それに艤装を解体すれば、元の身体には戻る」

五十鈴「……私、しつこい男は嫌いなんだけど」

提督「お前が海に出て危険に晒されるくらいなら、存分に嫌われてやる」


五十鈴「……貴方は何なの?」

五十鈴「こんな上官に歯向かう、ウルサイ女なんかさっさと解体するか殺すかすればいいのに」

五十鈴「何なのよ、本当に! 余計なお世話ばっかりで!!」

五十鈴「わかってるわよ、言われなくても! 他所がどうであろうとも」

五十鈴「そこの提督が敷いたルールが全てだなんて、知ってるわよ!」

五十鈴「でも、どうしても私は戦わないといけないの! それだけの理由がある!」

五十鈴「なのに貴方は綺麗事ばかり並べて……」

五十鈴「見え透いた嘘を吐いてそんなに五十鈴を苦しめたいの?!」

五十鈴「私がなにをしたっていうのよ……? もういい加減にして!」

五十鈴「貴方なんかに五十鈴の気持ちが解る訳がないのに!」

提督「……そうだな。俺には五十鈴の気持ちは、一生を掛けてもわからない」

提督「それがどれだけつらいものかも、もがくことを止められる気持ちも」

提督「俺にはきっとわからない」

五十鈴「だったら!」


提督「でもな、どうにかしてそれをわかってあげたいんだ。無理だとわかっていても」

提督「この気持ち、五十鈴にはきっとわかると思うんだ」

提督「俺の並べる御託は、五十鈴から見ればきっと虹色みたいに綺麗なことばかりだと思う」

提督「でも、本当のことなんだよ。つけ加えるなら、その理想を実現したいと思ってる」

提督「お前たちが大事で仕方がないんだ。時雨であっても五十鈴であっても」

提督「出会ってから過ごした時間や、その間にあった事も、一切関係ない」

提督「艦娘だとか、兵器だとか、そんなつまらないことも関係ないんだ」

提督「俺の下に就いた以上は、お前たちをなんとかして無事なまま生き残らせたい」

提督「その為なら、俺にやれることがあるなら出来る限りのことを手伝うつもりだ」

五十鈴「……貴方はどうしてそこまでするの?」

五十鈴「貴方になんの得があるの?」

提督「目の前で悩みを抱えている子がいて、それを解決するのに損得で動くような人間には育てて貰ってないんでね」

提督「なにより、お前さんの悩みは一人で抱えるには大きすぎると感じたから」


五十鈴「は……なによ、そんな理由? 理由にもならないじゃない」

提督「今までの様子だと、誰にも相談しないで一人で背負ってきたんだろ?」

提督「ずっとずっと……つらかったと思う」

五十鈴「それも、勝手な想像でしょ……?」

提督「ああ。でも、本当だろ?」

五十鈴「そうよ、っ、ずっと、つらかった、わよ……」

五十鈴「…………」

五十鈴「なに、いけない……?」

提督「おっと、鼻水と涙で酷いことになってるから、ハンカチ出すから待って」

五十鈴「それっくらい、持ってるわよ!」

提督「そうか、必要になったら言ってな」

五十鈴「だれが!」

提督「……もう、一人で抱え込むのはやめて欲しいな」

提督「いつでも話はちゃんと聞くし、泣きたくなったら付き合ってやるから」

提督「人間、つらいときに頼る人間がいるとすごく楽なんだ」

提督「一人でずっと抱え込んでたら、いつか圧し潰されちゃうから」

提督「よく、頑張って耐えたな」ギュッ

五十鈴「う、うっううあぁぁああああああ……!」ギュ…

提督「……」ポンポン





……




五十鈴「ん……」グシュッ

五十鈴「もう、大丈夫」

提督「ほい、ハンカチ」

五十鈴「ありがと……」

提督「だいぶ楽になっただろ」

五十鈴「おかげさまでね。スッキリしたわ」

提督「なら良かった」

提督「俺も五十鈴の気持ちを無視して、一方的に従うように言い聞かせてたところもあったから」

提督「ごめんな」

五十鈴「……お互い様よ」

提督「そう言ってもらえると助かるよ」

提督「帰ったら相談しよう。今後の在り方、五十鈴も皆も納得のいく方法で」

五十鈴「うん……」

五十鈴「……あのね」

五十鈴「私、深海棲艦が憎い。でもそれ以上に自分が憎かった」

五十鈴「私の親友が目の前で殺されたって言ったけど、私が殺したようなものなの」

提督「……聞いてるよ」

五十鈴「深海棲艦が出たとき、その子は私のことを庇ってくれたの」

五十鈴「最期に『逃げて』って言って。言われたとおり、私は逃げた」

五十鈴「頭の中真っ白で、言葉なんて出てこなくて。ただひたすら走って逃げた」

五十鈴「その子がどうなったのかも見ないで。本来、自分がなってた姿を……」

五十鈴「そんな自分が嫌で、苦しくて、どうにかなりそうだった」

五十鈴「提督は、そんな私のことをどう思う?」


提督「……五十鈴はなんて言って欲しい?」

五十鈴「え?」

提督「逃げなきゃどうしようもなくて、そこで逃げなかったら五十鈴も死んでた」

提督「五十鈴もわかってるんだろ?」

五十鈴「うん……。そうね、結果それが正しかったことなんだろうけれども」

五十鈴「自分じゃどうしても受け入れられなくて、誰かに肯定して貰いたかったのかも」

五十鈴「それか、一緒になって否定して貰いたかったのか」

提督「……」

五十鈴「けど、それは間違いだったって貴方と話してわかった」

五十鈴「せっかく命を賭けて助けてくれたのを、無下にするようなこと」

五十鈴「あっていいはず、ないものね」

提督「……五十鈴は強いな」

提督「本当に強い子だよ」

提督「そのときは、それが最善だったんだ」

提督「だから、もうこれ以上自分を責めたりしたら駄目だからな?」

五十鈴「……もしまた、五十鈴が間違ってたって不安になったら」

五十鈴「また、頼ってもいい……?」

提督「こんな俺でよければ、いつでも頼ってくれ」

五十鈴「うん……そうする」


五十鈴「うん……そうする」

提督「俺じゃなくてもいい。身近にもっと、一緒に過ごしてきた大事な姉妹がいるだろう?」

提督「彼女たちも、頼ってあげて欲しい」

五十鈴「うん……。あの子たちや姉さんにも、すごく悪いことしてきた」

五十鈴「何も悪くないのに、心配してくれる声からもずっと逃げてた」

提督「気遣って、優しくしてもらった分、優しくしてやれよ」

五十鈴「できるかな……」

提督「五十鈴ならできるさ。大丈夫」

五十鈴「うん、頑張る……」

五十鈴「頑張って、もっと強くなりたい」

提督「十分強いじゃないか」

五十鈴「ううん、まだ足りないわ」

五十鈴「心も弱い上に、戦闘能力もまだ低いもの」

五十鈴「敵もどれだけ強いのがいるのかわからないし」

五十鈴「二度と同じようなことを繰り返さないためにも、ね」

五十鈴「今度は五十鈴が誰かを護れるように」

五十鈴「もう二度とあんな思いはしないし、させない」

提督「軽巡の艤装だと物理的な強さじゃ限度がな……」

提督「五十鈴には、五十鈴の出来ることからやればいい」

提督「それも、一緒にゆっくり探そう?」

五十鈴「……ありがと」


提督「そういえば、いつの間にか花火終わっちゃってたな」

五十鈴「最後のほう、まともに見てなかったわね」

五十鈴「って、私のせいか……ごめんなさいね」

提督「謝られるようなことじゃないよ、大丈夫」

提督「来年また、見れたら一緒に見よう?」

提督「今度はここで、皆で一緒に見られたらいいな」

五十鈴「……うん」

提督「しかしまぁ、浴衣が五十鈴の涙と鼻水でびっしょびしょ」

五十鈴「な、なによ! 自分から胸を貸しておいて、それは卑怯ったら!?」

提督「冗談だよ、あんまり濡れてないって」

五十鈴「……そういうとこは嘘を吐くのね。びしょ濡れじゃない」

提督「……洗えば大丈夫でしょ」

五十鈴「そう? ……もし駄目にしてたら言って頂戴ね?」

提督「いやいやそうなっても自分で買うから大丈夫だって」

五十鈴「でも……」

提督「五十鈴が元気になるのに比べたら安いもんだって。それに濡れただけなんだし駄目になるはずが」

五十鈴「もう、じゃあ知らないわよ……」

提督「なんだかんだ、五十鈴は優しいんだな」

五十鈴「は!?」

提督「あんなにつんけんしてたのに、今はこんな可愛くなっちゃってまぁ」

五十鈴「別に、貴方に対する考えが改まっただけの話よ!」

提督「慌てちゃってまぁ」

五十鈴「ふんだ!」プイ

提督「それに、いつもの仏頂面より、笑ってたほうがやっぱりいい顔してる」

五十鈴「そうやって、もう……はぁ」


五十鈴「ほら、もう花火も終わっちゃったんだし帰るわよ」

提督「そうだな、帰らないと皆が……」

提督「……」

提督「すまない、少し寄るところが出来た」

五十鈴「どこよ、もう花火は終わったでしょ?」

提督「いや、時雨たちと一緒に来てたんだよ……ほら、別のとこで見てたって言ったじゃん?」

五十鈴「……」

提督「……五十鈴もくるか? 一人で帰らせるのは心配だし」

五十鈴「えぇ……」

提督「何よりその泣きべそをかいた顔で一人で帰れるなら」

五十鈴「わかったわよ、行くって!」

提督「帰りの途中にあるトイレは混んでそうだしなぁ……」

提督「鎮守府まで我慢できるか?」

五十鈴「……それしかないじゃない」

提督「ん、じゃあいこっか。近くに、まだ居てくれたらいるはずだから」

提督「ほら、暗いし転んでも困るからつかまって、行くよ」ギュ

提督「あ、お面があった。これして帰れば……」

五十鈴「」ギロッ

提督「……ごめんなさい」

五十鈴「……ばか」ギュ





……



提督「おーい、みんなー……って、時雨一人か?」フリフリ

時雨「提督……どこ行ってたの?」

提督「ごめん、トイレの帰りに五十鈴を見かけたから……」

時雨「一緒に花火見てたの?」

提督「いや、見てたというか見てなかったというか……」オドオド

時雨「……」チラ

五十鈴「……」

時雨「……無事でよかった、心配したんだよ?」

時雨「皆も何かあったんじゃないかって、心配して探しに行ったんだよ?」

提督「すまない……」

五十鈴「ごめんなさい、私が悪いの」

時雨「ううん。別に、怒ってるわけじゃないんだ」

時雨「無事ならいいんだ。帰ろう?」

提督「他の子は?」

時雨「探しに行って、いなかったらそのまま帰っていいよって」

時雨「下手に動いても、すれ違いで皆バラバラになっちゃうからね」






……





提督「帰りはさすがにすごい混むな」

時雨「手、離しちゃダメだよ? またどこか行っちゃったら困るから」ギュッ

提督「あぁ。五十鈴も離すなよ?」

五十鈴「……うん」

時雨「……」

提督「……」

五十鈴「……」

提督「……時雨、本当にすまなかった」

時雨「僕は大丈夫。ただ、姉妹皆で心配してたからご機嫌取りしないとダメだよ?」

提督「そーだな……」

五十鈴「……」






……



白露「そこ、正座して」

提督「……はい」

村雨「私たちをほったらかして、なにをしてたのかしら……?」

提督「ちゃんと話します」

夕立「提督さんが無事なら夕立は何でもいいの」ギュ

提督「よしよし、ごめんな」ナデナデ

白露「夕立も少しは怒りなさいよ」

夕立「だって時雨が怒ってないから、夕立がそこまですることないっぽいし?」スリスリ

時雨「反省してるみたいだし、なんだかワケありみたいだし」

時雨「何よりなんともなかったんだから、ね?」

白露「むぅ~……」

村雨「なんだか釈然としない感じ……」

五十鈴「……えっと」

提督「話はするから、皆ちょっと待ってて」


提督「五十鈴、今日はお疲れ」

提督「近いうちに、皆に集まってもらって話をしようと思うんだ」

提督「だから、明日また執務室に来てくれるかな?」

五十鈴「……わかったわ」

提督「姉妹にも伝えておいてくれると助かる」

五十鈴「うん、言っとく」

提督「よし、それじゃあ今日はもうお休み。夜も遅いから」

五十鈴「提督は大丈夫なの?」

提督「大丈夫って?」

白露「……」ジー

村雨「……」ジー

夕立「♡」スリスリ

提督「あぁ……大丈夫だと思う」

五十鈴「そう……」

五十鈴「今日は、本当にありがとう」ペコリ

五十鈴「……おやすみ」カチャリ


パタン


白露「どういうこと?」

村雨「あんなに提督のことを毛嫌いしてた五十鈴さんが?」

夕立「どういうことかしら? てーとくさん?」

時雨「それは僕も気になるな」

提督「なんて言えばいいのか……」

提督「とりあえず、五十鈴も納得のいくように今後やり方を変えようかなって話をした」

夕立「どうして?」

提督「五十鈴にも考えがあって出撃しなきゃって主張してたんだし、見直そうかなって」

村雨「具体的にはどうするの?」

提督「深海棲艦は無条件にでも人を襲うからね。こちらが出撃しないで平和でも、襲われたら一溜まりもない」

提督「駆逐艦と軽巡洋艦が数名じゃ、太刀打ちどころか護る事も出来ないと思う」

白露「じゃあまた艦娘を増やすの?」

提督「増やそうと思う。でも、増えれば増えるほど皆の意見が通ることは難しくなる」

提督「だから、戦艦や空母のような戦闘力の高い子を少数呼ぼうかなって考えてた」

提督「姉妹揃って呼びたいから、二人から四人くらいが理想かな……」

提督「装甲の厚い戦艦なら、少しの攻撃では怯まないだろうから」

提督「結果的に盾にしてしまうことになるけど、他の脆い子が攻撃を受けることは減るんじゃないかなって」


提督「でもやっぱり、出撃はしないつもりだって五十鈴には伝えるつもりだよ」

白露「確かに、今まで襲われなかったのは運が良かっただけで……」

村雨「そう考えると怖いわね」

時雨「……他には?」

提督「五十鈴は今まで色んなことがあって、一人で背負って頑張ってたみたいだから」

提督「力になるから頼ってくれって言っただけなんだけどな」

提督「おかげで溜まってた色んなものも吐き出せたみたいだし、少しだけ仲良くなれた気がする」

白露「あぁ……」

村雨「そっちよりそれだね……」

夕立「提督さんの悪い癖っぽい」

時雨「……それくらいなら、まだ大丈夫じゃないかな?」

提督「?」

白露「自覚がないみたいよ?」

村雨「有罪ね」

提督「……なんにせよ、皆には迷惑をかけてすまなかった」

提督「お詫びで済む問題じゃないが、お前さんたちにも出来ることがあればさせて欲しい」

夕立「へぇ……?」ペロリ


夕立「なら夕立も提督さんも、溜まってる色んなものを一緒に吐き出しましょう……?」ズイ

村雨「抜け駆けはんたーい」

白露「はんたーい」

夕立「……夕立は、別に一緒にでもいいよ?」

村雨「……」

白露「……」

村雨「さすがに姉妹でも、一緒にする気はないかな、うん……」

白露「ねー……?」コクリ

夕立「ん……確かに、提督さんと二人きりのほうが堪能はできるっぽい」

時雨(そういう問題なのかなぁ……)

夕立「じゃあ今夜は夕立が提督さんに『何でも』してもらうね」

村雨「えー……しょうがないわねぇ……」

提督(しょうがないで済むのか……)

村雨「じゃあ、明日♪ 提督、明日は私のところに来るのよ?」

白露「ずっるーい! じゃあ私は明後日だからね!」

村雨「うふふ、それじゃあ頑張ってね?」カチャ…

白露「おやすみなさーい」フリフリ


バタン…


提督「勝手に約束されちゃった」

時雨「言っちゃったものは仕方ないよ、皆本気みたいだしね」

時雨「心行くまで構ってあげてよ」

提督「いいのか、そんなんで?」

時雨「うん。それに少し、試したいことがあって」

提督「?」

時雨「少しの間禁欲したら、するときにどれくらいすごいのかなー、って」

時雨「いつも一緒にいて、まったりやりたいことしてたからさ」

提督「時雨がそう言うなら、うん」

提督「でもこんなエッチな子になっちゃってたなんて……」

時雨「やめてよ、提督だってえっちなくせに。それにお互い、今更じゃないか……」

提督「それ言っちゃそうなんだけどね」

時雨「だから僕は、今日はこれで失礼するよ。浴衣でしてみたかったけど、ね?」

時雨「もう夕立が待てなさそうだから……おやすみ、また明日」カチャ…


バタン…


夕立「……」ジー…

提督「……?」

夕立「提督さん……」

提督「……おいで、夕立」

夕立「うんっ!」ダキッ

夕立「ん……」ギュー

提督「よしよし」ナデナデ

夕立「あっ♡」

提督(尻尾とかついてたら、すごいブンブン振り回してそう)モフモフ

夕立「もっとしてぇ……♡」

提督「今日は一段と懐っこいな」ギュ

夕立「久しぶりに、二人きりだから……」

夕立「はぁぁー……しあわせ……♡」スリスリ

提督「……夕立、したい?」

夕立「うん……いいの?」

提督「いいの、って。さっきまでやる気満々だったじゃん?」

夕立「うん……でも、少し迷惑かなって遠慮してた」


夕立「祭りのとき、そういうのはもう時雨としかする気がないって、言ってたじゃない?」

提督「それを気にしてたって?」

夕立「うん」

提督「あの場は皆がいたからそう言ったけど、夕立は別だろ?」

夕立「別?」

提督「時雨もいいって言ってるんだし、夕立はお嫁さんになるとか言ってなかったっけ?」

提督「本当になる気なら問題ないんじゃないかな。それにもうやることやっちゃってるんだし」

夕立「なんだ……じゃあ遠慮はいらないの……」

提督「そこがっかりするところ?」

夕立「ずーっとその一言を気にしてたから……」

提督「余計な心配させちゃったな」

夕立「ん。少し傷ついたっぽい」

提督「よしよし、ごめんな」ナデナデ

夕立「だから、一晩かけて慰めて……」

提督「……」ナデナデ

夕立「ん──」チュ

提督「少し、こうしててもいい? なんだか落ち着く……」ナデナデ

夕立「いいよ……夕立も、すごく気持ちよくて安心する……」ギュー




翌日。





提督「皆、集まってくれてありがとう」

名取「全員が集まるって、珍しいですね」

提督「いずれ皆に言おうと思ってたから」

提督「これくらいの人数なら食堂に収まるし、ちょうどいいかなって」

鬼怒「それでお話って、なになに?」

提督「まず、今の体制を見直そうと思って。方向はだいぶ決まってはいるのだけれど」

阿武隈「出撃、するようになっちゃうんですか?」

提督「それも含めてね」

提督「今まで出撃しないで安全を優先してきたけど、それだけじゃダメだって最近思って」

長良「何がどうダメなの?」

提督「正直な話、うちの鎮守府が敵に攻め込まれたらひとたまりもない」

提督「いくら錬度が高くても、駆逐艦や軽巡洋艦では戦力に限度がある」

提督「お前さんたちが弱いと言ってる様に聞こえるなら謝る」

阿武隈「言いたいことはわかるよ、うん……」


由良「でも、今まで鎮守府が攻め込まれた話なんてそんなに数があるわけではないし」

由良「あったにしても、襲われた鎮守府のほとんどが艦娘の……」

提督「そうなんだよね。でも、いつ何があるかわからない」

提督「由良が言うのも、お前さんたちが沈まない限りは絶対にないから、それについては大丈夫だろう」

提督「ただ、民間人で死傷者が出てる以上は何をしてくるかわからない」

時雨「だから、もし攻めてくる敵がいれば、それを追い払うだけの十分な戦力が欲しいってだけだよね?」

提督「うん。出撃はしないで今まで通りの運用でいくけど、高い耐久力や戦闘力のある用心棒がいればいいなって」

提督「五十鈴はどうだい?」

五十鈴「……別に、構わないわ」

五十鈴「今より安全になるのは確かだもの。それに、相手が戦艦クラスなら私たちでは耐え難いのが現実だし」

五十鈴「いいんじゃない?」

提督「ありがとう。他の子は何か意見とかある?」

白露「あたしはないかなー」

村雨「村雨も大丈夫よ。増えるにしても多くて四人くらいでしょ?」

提督「姉妹でだから、そうなるのかな? 一人ってこともできるけど」

夕立「姉妹のほうがいいっぽい。身内がいると安心できるよね?」

長良「もう少し賑やかでもいいかも。賛成するよ!」

名取「ていうことは、来るのは年上の方……ご迷惑をおかけしないようにしないと……」オドオド

由良「そこまで構えなくてもいいんじゃない?」

鬼怒「いいんじゃない? ふふ、楽しみだなぁ」ワクワク

阿武隈「北上さんじゃないなら、あたし的にはおーけーです!」

涼風「新しい姉さん、か……」

五月雨「きっとまた、仲良くしてくれるいい人たちですよ」


五十鈴「呼ぶのはいいけど、ちゃんと強い人を呼ぶのよ?」

提督「ん、きてのお楽しみだな。最後に、時雨は?」

時雨「僕の意見は提督と一緒さ。いつどんなときでも、ね?」

時雨「今度こそ、優しいお姉さんがきてくれるかもしれないしね?」

提督「長良たちも優しいと思うんだけどな」

夕立「もっと格好いいお姉さんかもよ?」

村雨「あらあら、胸がでかいかもしれないわよ?」

白露「それならある程度、いやすでに……」チラ

五十鈴「ん…………どうしたの?」ユサ…

涼風「やっぱでかいよなー」

五月雨(時雨姉さんや夕立姉さんは二次改装して若干でかくなったし、五十鈴さんはどれだけでかくなるんだろう?)

提督「おほん……話が決まったところで、解散にしようか」

夕立「誰にするかは提督が決めるっぽい?」

提督「それはまた相談するけど、艤装がね……」

時雨「揃ってないの?」

提督「結構前に大型建造が可能になったじゃん? 今では大和や武蔵のレシピ情報も回ってるんだけど」

提督「全く触れてなかったせいで、大型建造でしか作れない艤装についてはなんもないんだよね」

提督「だから呼ぶのはそれからかな……」

五十鈴「資材足りるの?」

提督「確か今ボーキサイト以外が二十万と少しで……開発資材が二千近く……」

提督「多分足りるんじゃないかな?」

提督「出来たらまた召集かけるから、それまではゆっくりいこう」

時雨「マイペースでいいんだ、うん」

提督「そう。ある分で出来なかったら、それは仕方ない」

提督「それじゃあ解散。お疲れ様」




それからしばらくして。






時雨「提督、今週からまた僕が秘書なんだってね」

提督「うん。皆も仕事に慣れたから、一人ずつにしようと思ってね」

提督「一週間ごとの交代にしようかなって」

時雨「いいんじゃないかな……提督と仕事中に二人きりって、久しぶりだね」

提督「そうだな……おいで」ポンポン

時雨「ん、失礼……重くない?」ギュ

提督「軽いくらいで、少し心配かなー。もう少し太ってもいいんじゃない?」ナデナデ

時雨「……提督はむっちりしてるほうが好きとか?」

提督「そんな時雨も、ありっちゃありかもしれないけど」

提督「この抱き心地が一番しっくりくるかな……」ギュウ…

時雨「ぁ……ん……」

提督「ここ最近、急に冷えてきたね」

時雨「日が落ちるのも、途端に早くなったしね」

時雨「今日みたいな雨の日には、冷えるね……」

提督「……こたつ、出そうか。一緒にダメになろう?」

時雨「もう提督のせいでダメになってるかも……」スリスリ

提督「言われてみれば。俺も時雨のせいでダメになってる」

時雨「ふふっ、でしょ?」


提督「うん。時雨が好きでどうしようもないダメ人間さ」

時雨「僕も同じさ、好きだよ」

時雨「提督。大好き」

提督「……今日は仕事やめよう、無理だ。時雨が可愛過ぎて手につかない」

時雨「あーいけないんだーお仕事しないなんてー」

時雨「……じゃあ今日はどうする?」クスクス

提督「仕事は明日にして、今日一日は時雨を愛でる。時雨に愛でてもらう」

提督「ゆっくり時間をかけて、お互い心行くまで堪能できる時間を共有しようと思います、どうでしょう」

時雨「いいね……そんなこと言われちゃったら期待しちゃうよ?」

時雨「夏祭りの日以来かな、提督とスキンシップ以上のことは避けてたから」

提督「そろそろ解禁してもいいんじゃないでしょうか」

時雨「うん、そうする。ううん、もう耐えられない」

提督「俺もそろそろ限界で襲っちゃいそうだった」

時雨「提督に襲われるって、そうそうないからそれでもよかったな……」

時雨「……でもまだ、今はこのままくっついていたいかな」

時雨「──はぁ、暖かい……」ギュッ

提督「ほんと、身体も心も温まる」サスサス





……



時雨「ねぇ、提督」

提督「ん?」

時雨「あれから結構経ったけどさ、艤装は出来た?」

提督「いやぁ、ぼちぼちやってるんだけどね」

提督「まだ揃ってないんだ」

時雨「……そっか」

時雨「新しいお姉さんたちを呼ぶのはだいぶ先かな?」

提督「そうなっちゃうな」

時雨「提督は運がないんだね」クスクス

提督「なのかなぁ……時雨は運いいよな」

時雨「そうかもね?」

提督「そうだよ……そうだ。時雨、ちょっとおいで」

時雨「?」

提督「……」ギュー…

時雨「急にどうしたのさ?」

提督「いや……時雨の幸運に肖ろうかなって」

時雨「……僕をずっと秘書にしてるのって、それ?」

提督「それもあるし……一緒にいたいから」

時雨「それは反則……離れられないじゃないか」ギュー

時雨「離れたいとも思わないけど、ね……?」

提督「時雨のそれも反則……」ナデナデ

時雨「ん……」ギュッ





……



時雨「提督、起きて?」ユサユサ

提督「……ん」

時雨「よかった……。長いこと、返事がなかったから」

時雨「死んじゃったかと思ったよ?」クスクス

提督「……」ギュッ

時雨「……? 提督?」

提督「安心してくれ。時雨を残して先に逝くことはない」

時雨「あ……」

提督「時雨には、もう寂しい思いをして欲しくないから」

時雨「……うん」ギュッ

提督「いやぁ、最近時雨が激しいからさ。疲れが溜まって眠くって」

提督「コタツなんてものに篭ってれば余計だよね」

時雨「眠いのは僕も一緒さ……」

提督「一緒に昼寝しよう?」

時雨「ちゃんとお仕事もしようね?」

提督「そうと決まれば」ナデナデ

時雨「ん……」


時雨「時々ね」

時雨「艦の記憶っていうのかな。それが脳内っていうか、瞳っていうのかな」

時雨「チラつくことがあって、すごく寂しくなるときがあったんだ」

提督「……」ナデナデ

時雨「って言っても提督と親しくなってからは、なくなったんだけどね」

時雨「こうやって一緒に居られるだけで、すごく幸せだからかな……」

提督「……もしそういうことがあったら、遠慮とかしないで言ってな」

時雨「遠慮なんてしないよ、水臭い」

時雨「ただ、もうないから……言うこともなかったかなって」

提督「そういうのは大事かも」

時雨「ごめんね」

提督「時雨が気にしないならいいんだけどさ。俺としては心配なだけで」

時雨「……うん。もしそういうことがあったら、提督に抱きしめてもらって紛らわすよ」

提督「抱きしめるどころか、そんな気分が吹っ飛ぶくらいすごいことするかも」

時雨「……今のままでも十分なくらい、二人してすごいことしてると思うよ?」

時雨「だから、きっと大丈夫」

提督「……他の子でそういう気分になるとか、何かあったりするのってわかる?」

時雨「ないみたい。少なくとも姉妹の間ではね」

提督「ならよかった……」


提督「そういえばミカンを切らしてた」

時雨「唐突にどうしたのさ?」

提督「コタツにはミカンだよね?」

時雨「定番だね」

提督「買ってこようかなって。寒いしどうしようか迷ってる」

時雨「僕はコタツに篭ってようかな……うん、やっぱり眠い」

提督「ついてこないかなーと期待したけど、うん」

時雨「夜に備えて寝まーす……」

提督「ならしょうがない。帰ってきたら俺も寝よっと」

提督「寝起きにお茶淹れてミカンでも食べるとしよう」

提督「ってことで、買ってくる」

時雨「うん、お留守番してるね」

提督「近くのコンビニにあると思うしちゃっちゃと行ってきちゃうな」

提督「何か買うものある?」

時雨「……ないかな。気をつけて行ってきてね」

提督「ん、ありがと」





……



提督「さて、出かけますか……」

名取「あれ……提督さん、お出かけですか?」

提督「あれ、名取と五十鈴に……。皆揃ってどうした?」

五十鈴「今日はもうやることないから雪かきしてたの」

由良「ちょうど終わったところだったんですけど……」

提督「雪かきか、えらいな……こたつで食っちゃ寝の野郎も見習わないとだな」

鬼怒「提督も一緒に汗かきたかった?」

提督「今度は参加するかも。最近ちょっとだるくって」

阿武隈「だるいのにお出かけ?」

提督「ちょっとした買い物だよ。すぐそこのコンビニまで」

長良「あの子たちに行かせないの?」

提督「そんな使いっぱしりみたいなことさせません」

五十鈴「甘いのねぇ……で?」

提督「?」


五十鈴「いつも一緒にいる子。時雨ちゃんはどうしたの?」

提督「外寒いし中にいるって」

五十鈴「あらら。振られちゃったと」

提督「そーだよ、悪いか。一人寂しく買い物いくんだよ」

五十鈴「ふーん……」

由良「……提督さん、どうやら姉さんも一緒についていきたいそうです」

五十鈴「え?」

鬼怒「私たちは先にお風呂入ってるからねー」

五十鈴「え? え?」

阿武隈「この前改二にして貰ったお礼、だそうです」

五十鈴「ちょっと、何いってるの?」

長良「まぁまぁ、たまには二人で行ってらっしゃい?」ボソボソ

五十鈴「なんでよ?」ボソボソ

名取「今日は珍しく一人だし、逃したら二人きりなんてないかもよ?」ボソボソ

五十鈴「……」

由良「夏祭りの後から姉さんがすごく柔らかくなったの、皆知ってるんですよ」ボソボソ

長良「その夏祭りで提督が深く関係してるのもあの子たちから聞いたんだよ?」ボソボソ

鬼怒「提督のこと見るとき、すごい優しい目で追ってるのに気づいてないのは姉さんくらい?」ボソボソ

五十鈴「っ……わかったわよ、行ってくればいいんでしょ!?」


五十鈴「ほら、私もついてくから早く行くわよ!」

提督「お? これまた珍しい」

五十鈴「なに、文句ある?」

提督「いやいや。んじゃいこっか」

提督「手袋ある? 知ってると思うけど外寒いよ?」

五十鈴「部屋に取りに行かないとないわ。戻らないとダメ?」

提督「なら繋いでポケット入れちゃうからいいや。これなら温かいだろ?」ギュ…

五十鈴「……仕方ないわね」

提督「嫌なら言ってくれな?」

五十鈴「嫌だなんて誰も言ってないじゃない……」











由良「怒って部屋に戻るかと思ってたけど……」

鬼怒「……半分冗談のつもりで言ったんだけど、まさか」

長良「でも提督のおかげで柔らかくなったのは本当だよね」

阿武隈「あの人の影響かな? いい意味で変わったよね」

名取「応援してあげたくなるよね」

由良「半分は反応を楽しんでるのもあるというか、なんというか」

長良「でも、こうでもして背中押さないといくら経っても前に出ないでしょ?」

鬼怒「まーね……。あっちは任せて、寒いし早くお風呂いこ?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月15日 (日) 10:20:30   ID: btAvy_aQ

ハラショー
こいつはいいssを感じる

2 :  SS好きの774さん   2014年07月21日 (月) 21:36:58   ID: WkCQQ4Q6

ハラショー
最高だ

3 :  SS好きの774さん   2014年08月17日 (日) 23:44:12   ID: K94olWSE

この提督好きになれない。偽善的で。もし鎮守府が襲われたら、過保護にしてる艦娘は無惨に死ぬね。
防衛できる戦力無いし。

4 :  SS好きの774さん   2014年10月12日 (日) 18:37:06   ID: yePKQd4s

ハラショー
更新期待しているよ

5 :  SS好きの774さん   2014年10月15日 (水) 11:56:14   ID: k7FlziJn

駆逐艦とはいえ99Lvが数隻と軽巡の錬度高めてたら、
鎮守府近海の敵に奇襲されたところで痛くも痒くもないんじゃないかな…
2-3くらいまでなら運次第で無傷で攻略できそう

6 :  SS好きの774さん   2014年11月02日 (日) 18:38:31   ID: -4fv17Q0

なんか気持ち悪い

7 :  SS好きの774さん   2015年01月26日 (月) 23:09:01   ID: SufmlHVK

カッコカリしてるからlv150の駆逐艦とそこそこ錬度のある
軽巡なら安心だと思うぞ。

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