夏海「兄ちゃんとこのみちゃんがキッスしてる!」 (139)
小毬「ねぇ夏海。さっき家にこのみちゃん来てたけど、何かしらない?」
夏海「えっ? ウチなにも知らないけど…来てたの? いつ?」
小毬「さっき。今日は別に遊ぶ約束してなかった気がするんだけど…」
夏海「あーっ!?」
小毬「な、なにっ!? どうしたの!?」
夏海「えへへー。そういや、夏休みの宿題手伝ってもらうの約束してたわー」
小毬「何やってんの…」
夏海「ごめん姉ちゃん、このまますぐに帰るから、駄菓子屋はまた今度ね~」ダダダダ
小毬「あ! ちょっと! ったく、ちゃんとこのみちゃんに謝んなよ!」
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~~~
夏海「はぁっ…はぁっ…ぐえぇぇっ…急いで走ったから気持ち悪…」
夏海「た、ただいまー」ガララ
夏海(あ。このみちゃんの靴がある、この感じ、ずっと待ってたパターンだ)
夏海「チューペット上げたら許してくれるっしょ、うんうん」スタスタ
夏海「はぁ宿題嫌だなぁ───………」チラリ
このみ「ん」
卓「……」
夏海「──…ッ……ッ!?」
夏海(えっ、あっ、ちょ…えっ!? うそっ!? んんっ!?)ササッ
夏海(い、今…兄ちゃん…このみちゃんと…チューしてなかった…?)
夏海「………」ドッドッドッドッ
夏海(いやー無い無い。そりゃ無いわ、うん)
夏海(幾らなんでもこのみちゃんと兄ちゃんが、そんな関係なんてあるわけない。ただの見間違い──)
このみ「まーた今日はうちからしちゃったね」
卓「……」
このみ「何時卓くんからしてくれるか楽しみなんだけどなぁ~」
卓「……」
このみ「あ…ちょ、待って、急にそんな迫られても──んっ…」
夏海「──………」
夏海「…あ…えっと…あれ?」
夏海「マジですか…えーと…」
このみ「…ねえ今日はなっちゃん来ないみたいだし」
夏海「っ……!」ビクン
このみ「このまま何処か出かけて、ふふっ、えー? だめ? うちは別にいいよ?」
夏海「…ぁ…」
夏海(あ、あれ? あはは! なにやってんのウチ、勝手に聞き耳立てて、最悪じゃん、ここはもっと大胆に…)
夏海(付き合ってたんだふたりとも! ヒューヒューって飛び出すのがウチらしさだし、だから、えっと…)
夏海「…だから…」ガクガク
小鞠「ただいまー」
夏海「っ…!!??」ビクゥ!
小鞠「はぁー疲れた。あ、このみちゃん居るー? あと夏海ー! もう帰ってきてるでしょー?」
夏海「姉ちゃ…っ…」ドタドタドタ
小鞠「やっぱ居た、あんたちゃんと謝ったむぐっ!?」
夏海「しーっ! しーだってば! なにやってんの姉ちゃん!」
小鞠「むぃーっ! むぐぐー!!」
夏海「ちょ、ちょっとガチでだめな奴だって! 本当に…っ!」
このみ「…何してるの二人共?」
夏海「ぎゃー!?」
小鞠「っ…っ…」
このみ「うちの顔みて叫ばない。おかえりなっちゃん」
夏海「た、ただいま…」
このみ「それで?」
夏海「えっ!? いやいやいや! な、なんにも見てないから! ウチ! 見てないから!」
このみ「はい?」
小鞠「───」へたり
夏海「だ、だってその二人があんなことしてて…ウチがとやかく言える筋合いとか、違う違う! そうじゃなくって、」
このみ「良くわからないけど…取り敢えず小鞠ちゃん離そっか。死んじゃうよそれ」
夏海「姉ちゃーん!! だ、誰にやられたんだーっ!」
小鞠「…おぼえとけよ…夏海…」
このみ「うん。それじゃあ早速だけど取り掛かろっか」
夏海「え? なにが?」
このみ「宿題。やるんでしょ?」
夏海「ハ、ハイ…」
このみ「それで、ずっとうちのことほったらかしにしてたことを謝る」
夏海「ゴメンナイサイ…」
小鞠「私にも謝れ夏海…」
夏海「…ごめん姉ちゃん」
~~~
このみ「んー今日はここまでかな」
夏海「……」プシュー
このみ「うわっ。煙吹いた!」
夏海「…あ、ありがとこのみちゃん、マジで助かりました」ペコリ
このみ「う、うん。まだ三分の一も終わってないけど…続きは明日に頑張ろっか」
夏海「…」チラリ
このみ「そもそもねー観察日記なんか課題にするから駄目なんだよー」トントン
夏海(…このみちゃんすっげー普通。いつも通りでなにも変わってない)
夏海(さっき兄ちゃんと…き、キス…してたんだよね? してたよね? けど、全然そんな素振り…)
このみ「ちょっと聞いてるのー?」
夏海「ふわぁい!?」
このみ「もうっ! そんなんだと終われる宿題も終わらせられないよー?」
夏海「あ。うん…」
このみ「なっちゃんも、いつかは大人になって独り立ちして、自分で自分の責任を持たなくちゃいけないんだから」
夏海「……」
このみ「聞いてるの?」
夏海「…聞いてるよ」
このみ「…。なんだか今日は珍しく元気ないけど、別に待たせられたこと怒ってないよ? だってチュー…──」
夏海「えっ?」
このみ「チューペット貰っちゃったし。チョコ味、しかも丸々全部ね」
夏海「……っ…」かぁぁ
このみ「なんで真っ赤になるのそこで?」
夏海「な、なんでもないんっ! 今日はありがとこのみちゃん!」ばんっ!
このみ「う、うん」
夏海(だぁーもう駄目だ駄目だ! 全っ然集中出来無い! 元から集中力なんてないけどさ!)
小鞠「んー、あれ? 二人共まだやってたの?」ガラリ
このみ「いま終わった所。言ってもまだ全然だけどねー」
小鞠「やっぱりね。夏海、このみちゃんにあんまり迷惑かけないでよ」
夏海「んーっ! んんッ!」ドタバタ
小鞠「…何やってんのアイツ」
このみ「今日はずっとこんな感じだよ」
夏海「はぁっ…はぁっ…ちょっとスッキリした…」ぐてー
このみ「じゃあ今日はもう帰るね。また明日」フリフリ
小鞠「あ、うん。じゃあまたねー、ほらあんたも!」
夏海「ういっすー…また明日お願いしますー…」
このみ「はいはーい。おじゃましまし、おっとと」
卓「……」
このみ「い、何時からそこに。気づかなかかった…」
夏海「兄ちゃん!」
卓「……」
このみ「うん? あーその感じ、晩御飯食べて行かないのかなって?」
卓「……」コクリ
夏海「え」
小鞠「おーそれもいいね。お母さんも喜ぶだろうし」
夏海「…」
このみ「でもうちでお母さんも待ってるだろうし」
小鞠「電話貸すよ? ついでに泊まっていってもいいよ、確か今日はお客様用の布団も干してたし、いい匂いすると思うし」
このみ「え、ほんとに良いの? 迷惑ならない?」
卓「……」コクリ
夏海「っ……」
夏海「だっ、だめ! だめだめだめ!!」
小鞠「うわっ! び、びっくりしたー…」
このみ「…なっちゃん?」
卓「…?」
夏海「そんなのだめ! だって──……あっ…えっと…」
小鞠「駄目ってあんた…どうしたの急に」
このみ「えーっと…」
夏海「ち、違うん!! そうじゃなくって、その、別に駄目だって言いたいわけじゃなくって…っ」
小鞠「いや、言ってたから」
このみ「うん。今日はなっちゃんの様子もおかしいし、やっぱり帰ることにするね」
夏海「……ごめん…」
このみ「いいよ別に。けれど明日は絶対に宿題終わらせるから、ちゃんと待っててよね」
夏海「……うん」コクリ
このみ「じゃあこれで。バイバイ」フリフリ
~~~
このみ「え、送ってくれる? あはは。隣だよ?」
卓「……」コクリ
このみ「そっか。じゃあお言葉に甘えて送ってもらおっかなー」
夏海「……」
小鞠「またあしたねー」
このみ「じゃあねー」
ガララ ぴしゃっ
夏海「…はぁ~」
小鞠「やっぱり変だ」
夏海「…なにが?」
小鞠「私の大人の勘がビシビシきてるよ。これは怪しいね」
夏海「! ね、姉ちゃんもそう思う?!」
小鞠「うん。今日というか以前から思ってたんだけどさー」
夏海「うんうん!」
小鞠「夏海。あんたまたそこら辺の草食べたでしょ? それで具合が悪いと見た!」
夏海「……………」
小鞠「へへーん。あのねー夏海、いくらお腹が減っても草は無いでしょ草は」
夏海「無いのは姉ちゃんだよ…」スタスタ…
小鞠「胃薬いる? 甘いやつあるよ?」
夏海「黙ってて姉ちゃん…うん、黙ってて…」
小鞠「酷いっ!?」
風呂場
夏海「………」シャアアアアア
夏海(なんで駄目なんて言っちゃったんだろ。今までどおり、いつも通りの流れだったのに…)
夏海(どうしてか、すっごく嫌な気分になった。このみちゃんが同じ場所でご飯食べるって、一緒に寝るって、それから───)
夏海「それから…」
このみ『ん』
卓『……』
夏海「……」
フラ…
夏海「…なんだっけ」コツン!
夏海「うん。なんでもない、ウチには関係ないことだし、うん」キュッ
夏海「…兄ちゃんは兄ちゃんだし」ガララ
夏海「このみちゃんはこのみちゃん…」
フキフキ
夏海「それでおっけ。うんうん、ウチはウチ」
夏海「…もう寝よっかな」キィ
卓「………」
夏海「あっ…」びくっ
夏海「に、兄ちゃん。風呂?」
卓「……」コクリ
夏海「そ、そっか。先に入らせてもらったからーあははー」
卓「……:」スッ
夏海「ぇ」
卓「……」クイ
夏海「っ! な、なに!? 兄ちゃん今何したん?!」
卓「……」ヒョイ
夏海「え……あ、ウチの口に髪の毛挟まってた…? そ、そっか…ありがと…」
卓「……」コクリ
スタスタ パタン
夏海「………ぐっはぁ~…っ…!」フニャフニャ
ストン
夏海「めちゃくちゃ気まずい…なんなんコレ…まとめに会話することも出来ない…」
夏海(これじゃあ駄目だ…本当に駄目だ…モヤモヤが貯まる一方で…)
夏海「ッ…! 兄ちゃん!」ガタタ!
夏海「入るよ兄ちゃん! あのさ──」ガラリ
卓「……」
夏海「今日のことなんだけど、ぎゃー!!!?」
卓「……」
夏海「に、にいちゃ…っ…ちょ、見えてる見えてる!」
卓「……」フルフル
夏海「え、ぁぅ…ふぇ? あ、ああ…まだパンツ履いてるって…そっか、ごめん…!」
卓「……?」
夏海「え? 今日はどうしたのかって…待った兄ちゃん、その格好で聞いてくるのは勘弁して…」チラッ チラッ
卓「……」イソイソ
夏海「…兄ちゃんにさ一つ、聞いておきたいことがあるんだけど」
卓「……」コクリ
夏海「……」モジモジ
卓「?」
夏海「あ、あのねっ! その、さ…っ……兄ちゃん、今付き合ってる人…居るのかなーって聞きたいんだけど…」
卓「……」
夏海「ど、どうなん?」
卓「……」
──フルフル…
夏海「あ…」
卓「……」
夏海「そ、そうなんだーっ? なんだよもーこっちも勘違いしちゃったじゃんかー!」
卓「……?」
夏海「そうだったらそうだと早く言ってよ! 兄ちゃんが誰かと付き合うはず無いもんねー!」
卓「……」
夏海「あははー…えっと、それじゃあお休み兄ちゃん!」
卓「……」コクリ
夏海「……」フリフリ
パタン
夏海「……」フリ…
夏海「……」
夏海「そっかー! やっぱウチの勘違いだった感じだよねー! なーにもやもや考えてたんだろウチってばー……」
夏海「あははー…うふふ………」
夏海「……嘘、つかれちったなぁー…兄ちゃんに…」
今日はここまで
続きは明日の ノシ
夏海(あの感じいつもらしくなかった。返事に一瞬迷ってた、ウチに嘘つこうと思ってる顔だった)
夏海「そっかー兄ちゃんも嘘をつく年頃になっちゃったのかー」
夏海「あはは…」コツン
夏海「…………」
夏海「…兄ちゃんのばか」ボソ
次の日
夏海「あっちぃ~」
小鞠「そんな体勢だと、このみちゃんが来る前に寝ちゃうぞ夏海」
夏海「いいんだよぉ~なーつみちゃんは凄い子だからねぇ~寝ないよぉ~全然寝ないよぉ~」
小鞠「どっから湧いてくるのよその自信…お母さんに怒られる前にさっさと終わらせちゃいなよ」
夏海「あいあいぃ」
小鞠「私はちょっと出かけてくるから。晩御飯前には帰ってくるよ」ガサゴソ
夏海「うぃ~おみやげよろぴく~」
小鞠「買わないし。そんなお金ないっての、んじゃ頑張ってー」トタトタ
夏海「ちぇっ。姉ちゃんのけちんぼー」
夏海「…あーあ」
夏海「………」
ミーンミンミンミン
夏海「う~ん」ゴロリ
夏海「…」
すっ…
夏海「この辺、だっけか」
夏海(二人が座ってたのって、肩を寄り添って、くっつき合って、楽しそうにしてて)カリカリ
夏海「……キスってどんな味するんだろ」
このみ「急にどうしたの?」
夏海「へっ? こ、このみちゃんっ!!?」ガバァ
このみ「やっほー来たよ~」
夏海「い、何時からそこに居た感じっ?」
このみ「うーんと、さっきかな?」
夏海「えーっと…そうなんだ、あははー! じゃあ今日も頑張って宿題終わらせますかー!」
このみ「……」じぃー
夏海「うん…うん…」
このみ「ねぇなっちゃん」
夏海「は、はいィ? なんです? ウチさっさと課題終わらせてパパっと遊びに行きたいなって……」
このみ「キス」
夏海「っ…! あ、あうあっ…ち、違うんよ?! 全然違うから! そんなこと一言も言ってないし!」
このみ「いやいやいや。言ってたよね? キスってどんな味なんだろうって、言ってたよね?」
夏海「ぇぁ…ウチ…その、あのその…っ」かぁぁ
このみ「食べたこと無いの?」
夏海「…へ? 食べる?」
このみ「魚のキスだよキス。くちばし細っこいやつ、こう口が飛び出してるの」ヒョイヒョイ
夏海「あーぇー…魚の……」
このみ「そもそもそ見たことあるかな。ココらへん山ばっかだし、海の魚とか見る機会ない?」
夏海「……まぁうん、ないかも、しれない、かも」
このみ「見た目はあれだけど美味しいんだよ~煮物にするとなお格別でね~」
夏海「あははーそうなんだ……」
このみ「今度手に入ったら持ってきてあげるよ。楽しみにしててね」
夏海「あ。うん…ありがと」
このみ「さて。無駄話はここまでにして」パンパン
このみ「パパっと取り掛かっちゃおうか。今日は厳しく行くよー? びしばし行くからね!」
夏海「…う、うん」
夏海(あ、焦った…ほんっと焦った…なんて人物に聞かれるところだったのよウチ…!)
夏海(…あれ? そういえばこのみちゃん、今日はなんだか大人っぽく見える気がする)
夏海「ね、ねぇこのみちゃん。今日はなんだか雰囲気違くない? 気のせい?」
このみ「えっ? …そお?」
夏海「うんうん。大人っぽく見えるっていうか、一見すると高校生っぽい」
このみ「高校生だからね普通に。ふふ、実はね…これこれ、唇の所見てみて」くいっ
夏海「くちびるぅー?」
このみ「どお? 実は色が入ったリップクリーム塗ってるんだよー」
夏海「あー……」
このみ「口紅ってわけにもいけないけれど。ちょっとしたおしゃれみたいな感じでつけてみたんだ」
夏海「ふーん、でもなんで急に? 今日はどちらかと言うとジメジメしてるっていうか、空気は湿り気味だけど」
このみ「え、あっ、そのっ…えーーっと…」ドキッ
夏海「このみちゃん?」
このみ「うーんと、なんでだろーね? ちょっとした気晴らしっていうか、そんなに深い意味はないかなぁ?」
夏海「…そっか」
夏海(なんだろこの目に来る眩しいオーラ…このみちゃんを中心にして放たれている桃色の光は…)
このみ「ふんふーん」ホワホワワン
夏海「……」
──ズキン
夏海(…そしてなんだろ、この感じ)
夏海(なんでもないのに。何でも無いはずだって思ったはずなのに、いやいや、ウチが勝手に思ってるだけで)
夏海(二人にとってウチはなーんにも関係は……無いんだって…)
──ズキン…
夏海「っ……」ギュッ
このみ「今日はどの課題から始める?」
夏海「えっ? あ、そうだね~! じゃあ観察日記をめちゃくちゃ埋めちゃおっか! おりゃおりゃー!」
このみ「テキトーに書いても先生に見破られるよ?」
夏海「い、いいのいいのー! あん人はこういうの適当に見るだけだって!」
このみ「んー確かに言われてみればそうかも知れない。じゃあわたしは、こっちの数学の答え合わせしとこっかな」
夏海「おー! 頼んまーす! ありがたやーありがたやー!」
このみ「うんうん」
夏海「……っ…うっし! とことんやってやるぞー! うぉおおおおおおお!!」
~~~~
このみ「うん…うん…わかった、じゃあ今から帰るから。うん、じゃあまた」チーン
夏海「電話どしたの? お母さん?」
このみ「お友達が来てるから帰って来いだって。ついでにお昼ごはんも食べてきちゃうと思う」
夏海「ふーん。じゃあ今日はもうお終い?」
このみ「いえいえ。お昼からまた再開するよ、なっちゃんも何処か出かけたりしないようにね」
夏海「えー? しょうがないなぁーもぉー、おっけーおっけー了解でっす」
このみ「いやなっちゃんの手伝いだから。それじゃあまたお昼に」フリフリ
夏海「はいはーい! またお昼にー!」
夏海「ふぃー…ちかれたぁ~」パタリ
ツクツクボーシ ツクツクボーシ
夏海「…あ。そういえばお母さんお昼居ないんだっけ、町内会の集まりで」
夏海「そうめん勝手に食べとけとか言ってた気がするね。うん、じゃあ早速食べますか、よいしょっと」
スタスタ
夏海「確か戸棚の中に…うーんと…」ガサゴソ
夏海「あれ、無いんだけど。ちょっとどいうことよーお母さんマジでさー」ガサ
コトリ
夏海「んぉ?」
夏海「なんだこれ。長方形の台所に見合わない物体…」
夏海「口紅?」
夏海(なんでこんなものが台所の戸棚の中に…あ! そーいやウチが昔、悪戯してお母さんの隠したやつじゃん!)
夏海「うっわー…何年前の悪戯よそれ……見つかったら本気で怒られるわこりゃ……」
夏海「今のうち戻しとこ。うん、それがいいわ、最善の策に違いないっしょ」スタスタ
~~~
夏海「えっと化粧品類は確かここらへんに…」カタカタ
夏海「…。うっし証拠隠滅かんりょーしましたー」びしっ
夏海「いや待てよなつみちゃん…このタイミングで普通においてあったら怪しまれるか…? 逆に不自然じゃないのかね…?」
夏海「……。鏡の裏に隠しておこう、明日明後日に掃除するって言ってたし」
夏海「じゃあ早速──」スッ
夏海「──……」
夏海「…口紅かぁ…」
夏海「ぇっと…」かぽっ
夏海「……いつもお母さんがやってるの見てるし」
夏海「……こんなの簡単に」
きゅうっ きゅきゅっ
夏海「どうだっ!」
夏海「…………………………………なんか違くないコレ?」
夏海(なんでか山姥が出来上がったんだけど)
夏海「え、えー…? 何を間違ったん? ちょ! 擦っても消えないし!?」ゴシゴシ
夏海「うわわっ! 洋服の袖に付いた!? まずいこのままじゃお母さんのバレ────」チラリ
卓「……」じぃー
夏海「にっ…にひぁっ!?」ガタタ!
卓「……」
夏海「に、にちゃっ! にぃ! い、いついついついつからそこににににっ!」カァァ
卓「……」スタスタ
夏海「ち、ちがっ違うんよ! これは新たな悪戯で別になにもオシャレとか似合わんの知ってるんねんな!?」
卓「……」スッ
ぐいっ
夏海「ふぇっ?」
卓「……」フルフル
夏海「…ぇ…それじゃ駄目って…?」
卓「……」コクリ
夏海「そ、そうなん…? そう言ったって、だってウチこういうの知らんもん…」
卓「……」スッ
すたすた
夏海「にいちゃっ…ど、どこ行くん…っ?」
卓「……」ビシッ!
夏海「…待ってろ?」
数分後
卓「……」トントントン
夏海「ううっ兄ちゃん…くすぐったい…っ」
卓「……」フキフキ
夏海「お、終わったん? 綺麗に取れた…?」
卓「……」コクリ
夏海「…おおっ。すっげー綺麗にとれてる」
卓「……」
夏海「あ、あんがと兄ちゃん。その、えっと、このことだけど出来ればお母さんに…あと姉ちゃんにも…」モジモジ
卓「……」コクリ
夏海「だ、黙っててくれるんっ? ううっ…ごめんほんと兄ちゃん…感謝しますぅぅ…」
卓「……」ジッ
夏海「え、なにっ? まだついてる? どこどこ? どこについてる感じっ?」
卓「……」
くいっ
夏海「え、兄ちゃん?」
卓「……」コトリ きゅぽっ
夏海「ちょっ! 兄ちゃん何する気っ? もう口紅はいいってばー!」
卓「……」フルフル
夏海「良いから任せろって…ウチ似合わんってばそういうの、いくら手先器用な兄ちゃんでも無理なもんは無理だってば…」
卓「……」スッ
ススス…スス…
夏海「んっ!」ぴくっ
卓「……」
夏海「に、兄ちゃんくすぐったいっ」モジッ
卓「……」クイ
夏海「っ…っ…っ…」ピクピク
卓「……」フゥ~
夏海「ぇ? お、終わった? もう出来たの?」
卓「……」コクリ
夏海「見てみろって…ウチが化粧した所で何も変わったりなんか───」
夏海「───…………」
夏海(うぇぇえっ!? うっそ、マジでこれがウチ!? べっぴんさんじゃん!)
卓「……」ムフー
夏海「すっげー…兄ちゃんすげーよこれ…」
卓「……」コクコク
夏海「口紅一つでこんだけ変わるもんなんだー…いやいや、これはウチの元が良いからって話かなー? ナハハー!」
卓「……」
夏海「ねぇねぇどう思う兄ちゃんっ? やっぱウチってば可愛い? めちゃくちゃ将来的に有望な感じするっしょ?」
卓「……」
夏海「えー? ほらほら何か言ってよ兄ちゃんっば~! うりうりっ」グリグリ
卓「……」スッ
シュルルル
夏海「うぇ?」パサァ
夏海「えっ、ちょ、なんで髪留め外すしたの? やめてよ兄ちゃん、急に変なことすんのさー」
卓「……」ヒョイ
夏海「櫛? なんでまた櫛なんか…髪をすいてくれんの? い、いやいやっ! やんなくていいって別に!」
卓「……」ぐいっ
夏海「おわわっ?! 兄ちゃん強引すぎだってば…!」
シュー… シュー…
夏海「ったくー…なんなん急にこんなこと…」
卓「……」
夏海「っ…別にいいけど。兄ちゃんぐらいだし、ウチの髪触るの昔っから」
卓「……」スー
夏海「んふふっ。そういや、ウチが小さい頃もこうやって兄ちゃんに髪梳いてもらってたっけ」
夏海「お団子ヘアしたり、姉ちゃんと一緒のツインテールにしたり、あとはーそうそう! 玉ねぎヘアーとかあったじゃん?」
卓「……」コクリ
夏海「兄ちゃんが毎日面白い髪型考えてきてさぁ~お母さんたちが爆笑してたの思い出すわー」けたけた
卓「……」
夏海「うんうん、あの頃は本当に楽しかった。今みたいに課題に追われることも無かったし、毎日が…」
夏海「キラキラしてて、冒険がいっぱいで、姉ちゃんもお母さんもみんなみんな笑ってて…」
夏海「…兄ちゃんもウチの側に居た…」ボソ
卓「……」
コトリ
夏海「…ねえ兄ちゃん。ウチさ…」
夏海「…昔みたいに兄ちゃんにべったりじゃなくなって」
夏海「そ、そりゃまぁ中学生だし? 兄ちゃんももう高校生だし? そんなんって駄目っていうか、子供過ぎるって思うよ」
夏海「……っ…」ぎゅっ
夏海「で、でもウチは───」バッ
夏海「──あ……」
卓「……」コクリ
夏海「う、うへぇええっ…これただ髪をすいただけ、だよね…?」
卓「……」ムフッフー
夏海(鏡に映るウチが、一段とお洒落度が増した気がする…うぉぉ…)
卓「……」コトリ
夏海「自分のことながら、変わり様に言葉が出ないっすわー…兄ちゃんすげーな…」
卓「……」フルフル
夏海「自分のチカラじゃないって? 何いってんの兄ちゃん、流石にこれは兄ちゃんの…」
卓「……」
夏海「…えっ、あっ、ウチ? ウチが大人になったってこと…?」
今日はここまで
続きは明日ねんな ノシ
今更だけどこのみは一人称「私」だぞ
今更だけどこのみは一人称「私」だぞ
連投スマン
卓「……」コク
夏海「んな褒めても、兄ちゃんウチ騙されないって」
卓「……」フルフル
ポンポン なでなで
夏海「……。ふへへー」によによ
卓「……」ナデナデ
夏海「えー? そーなん? そーなっちゃいますぅ? なつみちゃんが大人になって綺麗になったもんだから~」
夏海「にひひっ」
夏海「じゃあ、さ。じゃあさじゃあさ! 兄ちゃんもそう思う? ウチが綺麗になったって思ってるってワケっ?」
卓「……」コクコク
夏海「ほ、ほおー……そ、そうなん? ちょー兄ちゃん正直過ぎっしょー?」
卓「……」ポン
夏海「うんうん。なつみちゃんは本当に凄い子だわ。何時かはすっげー玉の輿しちゃうかもね、こりゃ」
夏海「あっ……で、でもさぁ! そこまでの間っていうか、ウチが誰かと結婚とか付き合うとかなるまでは──」
卓「……」スッ
夏海「──あ、あれ? 兄ちゃん?」
卓「……」ポン
スタスタ ガララ
夏海「兄ちゃん? どこいくの?」
卓「……」フリフリ
パタン
夏海「………」
夏海(え、だからどこ行くかぐらい言ってよ! 何急にウチが喋ってる中に…)ガラリ
「おー卓くん家に居たんだ~」
夏海「あ…」
このみ「お昼に帰ってきてたんだ。今からギターの練習するの? へぇーじゃあ今度聞かせてもらおっかな~」
卓「……」コクリ
このみ「ふふっ。それじゃあそんな多趣味な君にもーんだいっ。…今日は私どこか変わってない?」
卓「……」ビシ!
このみ「おーあたりあたり~。そうだよ、唇にねぇリップクリーム塗ってるんだ~」パチパチ
このみ「じゃあご褒美を上げないとねぇ」すっ
ちゅっ
このみ「…はいご褒美おしまい」
卓「……」ピクッ ばっ!
このみ「わわっ! どうしたの急に…」
卓「……」キョロキョロ
卓「……」
~~~~~~~
夏海「はぁ…はぁっ…くっ……」たったったっ
夏海「はぁ、ふぅ……はぁっはぁっ…」
小鞠「おー夏海じゃん。なにやってんのここで?」
夏海「はぁ…はぁ…」
小鞠「ていうかあんた宿題は? まっさかまたサボって逃げ出したんだじゃ…このみちゃんに怒られ」
夏海「っ…!」バッ
ダダダ!
小鞠「ちょっ、夏海ぃー!? どこ行く気ぃ!? 待てーぇ!」
小鞠「……夏海…?」
~~~~~
夏海「………」ズーン
夏海(勢いで逃げてきてしまった。あぁ、ウチ、何やってんだろ、本当に)クシャクシャ
夏海「あっ…兄ちゃんにせっかく梳いてもらったのに…」
夏海「……はぁー」ガックシ
夏海(またキスしてた。兄ちゃんとこのみちゃん、またキス……してた)
ズキン
夏海「っ…だぁあああああああああああああもぉおおおおおおおおおおお!!!」
蛍「きゃあ!?」
夏海「…え? ほ、ほたるん?」
蛍「な、夏海センパイ…?」
れんげ「うちもいるのん」
~~~
蛍「わぁー夏海センパイどうしたんですかっ? すごく綺麗です~!」
夏海「うぇっ? あ、あははー! ちょいとオシャレさん気取ってみようかなぁ、なんて」
蛍「すっごく合ってますよ! へぇーセンパイって化粧のノリがいいんですねぇ羨ましいなぁ」
夏海「え、じゃあほたるんも良く化粧とかするの?」
蛍「あ、いえ。いつもしている訳じゃないんですけど、親には良く化粧あわないねぇなんて言われてたり…」
夏海(それはシなくても綺麗だという褒め言葉なんじゃ…)
れんげ「なっつんなっつん」
夏海「どしたーれんちょん?」
れんげ「ゆいのうするん?」
夏海「ゆいのう?」
蛍「ゆいのうって何ですか?」
夏海「ウチに聞かれても…れんちょん、ゆいのうってなに?」
れんげ「だからなーこういうのなんなー」カキカキ
夏海「おお、地面にかいて説明してくれんの……結婚じゃんコレ」
蛍「結婚するんですかセンパイ!?」
夏海「待ってほたるん年考えてウチの」
れんげ「おめでとーぉなっつんなっつん!」わはー
夏海「待ってなーれんちょんウチなーんも言ってないからねー」
蛍「じゃ、じゃあ相手は誰何ですか…?」
夏海「だからしないっつーの! アグレッシブなりすぎ!」
れんげ「じゃあどうしてけしょう、してるん?」
夏海「…特に理由はないから、結婚もしない、おーけー?」
れんげ「わかったん」コクリ
蛍「えへへ…小鞠センパイと…うへへ…」
夏海「おーいほたるん戻っといでー」ゆさゆさ
蛍「ハァッ! あ、ごめんなさい…ジュルル…」
夏海「ふぃー…くっく、あはは! うぷぷっ」プルプル
れんげ「どしたん? なっつん?」
夏海「えー? あ、いやいや…みんないつも通りでちょっと…くくっ…」
蛍「だ、大丈夫ですか? またそこら辺の草を食べたんじゃ…」
夏海「大丈夫だって…なんで知ってんのそれ!?」
れんげ「なっつん…」
夏海「違うってば! 食ってない食ってない! れんちょんもそんな目で見ないで!」
蛍「ご、ごめんなさいっ! 以前に小毬センパイから聞いてて…夏海センパイはお腹が空いたら何でも食べると…」
夏海「食べないから。それ姉ちゃんの嘘だから」
れんげ「なっつん。コレあげるん、これでおなかみたしとくんなー」
夏海「お腹って…あ、ありがと」
『草』
夏海「結局草じゃねーか!」パシッ
れんげ「いま、ありがと言ったん! やっぱりなっつん草たべるん!」
蛍「い、言ったねー確かに…」
夏海「くわねぇええええから! 草食べないから! れんちょんウチ草食べませんから!」
れんげ「今度うさぎのえさもってくるん。なっつん、たのしみにしててなー」キラキラ
夏海「あ、うん…わかったよもぉ…食べる食べるなつみちゃん人参も生でボリボリ食べるから…」
蛍「えーと、夏海センパイ? それでどうしてここに居るんですか…?」
夏海「ぇ? あっと、その、なんでそんなこと聞くの…?」
蛍「あのその…コレも小鞠センパイから聞いたんですけど、夏休みの宿題終わってないとか…」
夏海「……。まーね、けど逃げ出してきたー」イジイジ
蛍「だっ駄目ですよ! ちゃんと終わらせないと~……その、怒られちゃいますから」
夏海「いいのいいのー。ウチのことなんて、誰も気にしたりなんか~」
ズキン
夏海「……気にしたりなんて、しないから」
蛍「…?」
夏海「……」
れんげ「いしの下にいっぱいダンゴムシいるんー!?」ゴトゴト
蛍「…夏海センパイ」
夏海「んぁ?」
蛍「誰もなんて、そんなワケないじゃないですか。そんなことないですって絶対に」すっ
夏海「ほたるん…」
蛍「えへへ。少なくとも私は…今の夏海センパイを放っておこうなんて思えません、その、何か合ったんですか…?」
夏海「……」
このみ『ん』
卓『……』
夏海「ほたるんはさ、キスってしたことある?」
蛍「ほゃにゃわっ!? っき、キスっ……ですかっ!?」
夏海「うん。キスだよキス」
蛍「き、キスですかー…その、ないです、けどー…」
夏海「そっか、でもどんな味するんだろ。キスって」
蛍「ふぇぇぇっ!? ど、どんな味かなんてちょっと、わからないですけどぉ…っ…す、すっぱいとかは…聞いたりしますよね…っ?」
夏海「え、そおなの? てかやっぱしたことあるんじゃんっ!」
蛍「違います違います違いますーぅ! う、うわさで聞いたことあるだけですぅ!」
夏海「なんだうわさか」
蛍「ううっ…なんで急にそんなこと聞いてくるんですかぁ…?」
夏海「……。なんでだろ、ウチも今まで気になったこと無かったけど」
夏海「どんなもんなのかなーって。キスってやっぱり、嬉しいものなんかなーって」
蛍「えっと…そうなんじゃないんでしょうか? 好きな人とき、キスが出来れば…私だって……えへへ~」
夏海「おっ。想像してるねぇ~はたしてほたるんの相手は誰なのかなぁ~?」ニヨニヨ
蛍「うっひゃい!? の、覗こうとしないでくださいっ! ぜったい言いませんから…!」
夏海「いいじゃん別にぃ~ねぇねぇ相手は誰を想像したの?」
蛍「そ、それはっ……その、夏海センパイも教えてくれるのなら言います!」
夏海「え、ウチ?」
蛍「そ、そうです! 夏海センパイなら誰を相手にするんですか…!?」
夏海「ウチは居ないってのー! 誰かとキスしたいなんて考えたことも──」
ホワンホワン
『ウチ、あの、その…』
『……』
『ま、待って! 心の準備とか…うっひぁぁ~あ…』ビクビク
『……』すっ
『ぁ…に、兄ちゃん…っ』
ホワンホワン
蛍「…夏海センパイ?」
夏海「──………っ…」かぁぁ
蛍「あ! その表情はもしかして~…居たんですね?」
夏海「えっ……あっ……ち、ちがっ…」
夏海「ちがう、ってウチ…別に……っ」ブンブン
夏海「………チガウ…」
蛍「顔が真っ赤ですよ?」
夏海「ううっ」
れんげ「どしたんなっつん」
夏海「……」
れんげ「だんごむしたべるん?」
ウジュウジュ
夏海「……」ヒョイ
蛍「え? やっ、夏海センパイそれはだっ…!?」
夏海「ッ…!」
ブン!
夏海「くうかぁ─────あほぉおおおおおおおおおおおお!!!」
れんげ「おー」
蛍「そ、そうですよね…よかったぁ~」
夏海「はぁっ…はぁっ…くっ……!」ギュッ
夏海「ほたるん、れんちょん!!」
蛍「は、はいっ!」
れんげ「どうしたん?」
夏海「……ウチもう帰るから、バイバイ!」
だだだーっ!
れんげ「ばいばいなのーん!」
蛍「あ、さようなら~……」
蛍「……夏海センパイ…」
~~~~
夏海「……」
夏海「ウチはっ……ウチは…どうしたらいいんっ…!」
たったったっ
夏海(兄ちゃんに彼女が出来て…っ…めでたいことで、このみちゃんも嬉しそうで…っ)
夏海(全部全部幸せなのにっ…どうして、どうしてウチは素直に喜ぶこと出来んのよ…!?)
たったっ……たっ…
夏海「なんでよっ…なんでそうなるんっ…ウチは兄ちゃんのこと嫌いになった…っ?」
夏海「違うっ…このみちゃんも好きやし…二人はずっと幸せになっててもらいたくって…!」
蛍『えっと…そうなんじゃないんでしょうか? 好きな人とき、キスが出来れば…』
夏海「好きな人と…キス…」
コケッ!
夏海「おわわっ!? どわぁー!?」ズテーン
夏海「いたたっ…うぅっ痛い…」
夏海「ぐすっ…えぐっえぐっ……」
夏海(子供みたいにまた怪我して、お母さんに怒られる。何時までたってもガキのまんまで、ウチは…)
……
『えーん! えーん! いたいよぉー! お母さーん! ねえちゃーん!』
『にいちゃ、にいばああああああうわあああああああん!!』
ザリ…
『ひっぐ…えっぐ…ふぇ…?』
『……』フリフリ
『にいちゃん…にいちゃあああああっ』ぎゅっ
『……』ナデナデ
『ひっぐ…ひっぐ…あんなぁっウチいたくていたくて…っ…ぐしゅっ』
『……』すっ
『え、ぐす…かたぐるま…?』
『……』コクリ
~~~
『えへへー! たかいたかいぞー!』
『……』フラフラ
『にいちゃん、ウチな? おとなになったらウチな?』
『……』コクリ
『にひひ! にいちゃんのおヨメさんになる! ぜったいなる!』
……
夏海「……」 ぎゅっ
夏海「…行くぞっ」
~~~~
卓「……」ギュインギュイーン キュラキュラジャジャーン
卓「…フッ」
夏海「たのもー!!!」ダーン!
卓「……」ビクゥ
夏海「はぁ…はぁ…兄ちゃん居た…!」
卓「…?」
夏海「はぁーふぅー……あのさ、兄ちゃん聞いて欲しいんだけど」
卓「……」コクリ
夏海「……」
卓「……」
夏海「あ、あのあのっ…えーっと…あははー! ん~?」キョドキョド
卓「……」
夏海「うーよしよしっ! 大丈夫、なつみちゃんイケル、マジでやれる娘天才だから」
夏海「あのさー…兄ちゃん、ウチと軽くーでいいんだけど、その……」
卓「……」
夏海「き、ききききき……きちゅっ! いひゃい…ひゃんら…」
卓「……」
夏海「うーっ!! 兄ちゃん!!」がばぁ!
卓「……」コ、コクコク
夏海「あ…えっと…その…」かぁぁ
夏海(めっちゃ顔近!? いや、こんな顔近くするつもりなんて、違くて、あぁぁあぁあ~…!)
夏海「…っ…」
夏海「あっ…あんな兄ちゃん…ウチ確かめたいことがあってな…」ぎゅっ
卓「……」
夏海「ウチと今すぐ…ちょびっとだけでいいからさ…」
夏海「兄ちゃんとキス…してもいい?」
卓「………」
夏海「…だめ?」
夏海「っ…っ…」ドッドッドッ
卓「……──」
このみ「たのもー!!」ダーン!
夏海「にゃー!!?」ビクゥ
このみ「おや。ここに居たんだねぇなっちゃん、私を放ったらかしにしておいて、ここに居たんだねぇ~」
夏海「うっにゃっはぁうっ!?」わたわた
このみ「ん? その前にちょっと、どうして卓くんとそんな距離になっちゃってるワケかな?」
卓「……」
このみ「説明貰えたらうれしいなぁー…なんて」
夏海「っ…それだーぁ!!」
このみ「うぇっ?」
夏海「このーみちゃん? どしって兄ちゃんのこと『メガネ君』じゃなくって『卓』って呼んでるん!?」ビッシィイィッ!
このみ「え、えっとー…それはぁー…?」
夏海「だぁー嘘は聞きたくありませんってことですよぉ!? ウチは知っとるんよ! 兄ちゃんとこのみちゃんが…っ…」
このみ「…私らが?」
夏海「っ…つ、つきあっ…つき……! ──っ……ウチは……!!」ババッ
夏海「兄ちゃんは…っ」
このみ「ねぇなっちゃん。何が言いたいのか私には少しもわからない、けどね」すっ
夏海「…!」
このみ「私だって高校生なんだよ。卓くんだってそろそろ高校生だし、なっちゃんだって…もう立派な中学生」
ぎゅっ
卓「……」
このみ「…なっちゃんが思ってることを私が勝手に解釈していうけれど、あのねなっちゃん」
このみ「──もう子供じゃないんだから、聞き分けのないことは言わないほうが良いよ?」
夏海「っ……なん、で…兄ちゃんと手を握るの……」
このみ「なんで? って、もうそれは解ってるんじゃないの?」
夏海「わか、わかんないっ…ウチには全然わかんないっ!」
このみ「さっき言いかけたことだよ。なっちゃんが私達に言おうとしたこと、そのまんまだよ」
夏海「あれは…っ!」
このみ「うん。付き合ってるの、私達──ずっと前から内緒にしてたけど」
夏海「…うぁ…うっ…」チラッ
卓「……」
夏海「に、兄ちゃ…」
卓「……」
──コクリ
夏海「……ぁ……」
このみ「だからね、なっちゃ、」
夏海「ッ──知ってるよそんぐらい! もうとっくに気づいてた! このみちゃんと兄ちゃんがき、キスしてるのも見たから知ってる!!」
夏海「けどさぁ! 駄目なんだってばぁ! ウチが全然納得できなくて…! 二人のこと応援したいのに、でき、なくてっ…」
夏海「二人のこと…傷つけたくない、のにっ……だめで…っ」
ブルブル…
夏海「だから、だから…! ウチは──兄ちゃんと…!」ババッ
小鞠「あ…」
夏海「ぇぁ…?」
小鞠「えっと、その~……あはは~コレみえる? 夏海? じゃ、じゃーんっ」
『ドッキリ☆だいせーこー!』
夏海「……ドッキリ…?」
小鞠「そ、そおだぞー夏海ぃ? まんまと騙されちゃってさー……?」
このみ「うん。大成功だね」
小鞠「あ。うん、大成功っていうか…その…」
夏海「……」
小鞠「な、夏海? あんたが何時までたっても夏休みの課題とか終わらせないから、ちょっとこらしめるーとかでさ…」
このみ「私が企画したんだよ。なっちゃんをどうしたら騙せるかなってね」
夏海「…あはは」
夏海「お、おおっ?」
夏海「ははっ、そっかードッキリかー! なーんだドッキリかよーなんだよもー…ウチめちゃくちゃ騙されてー…」
ポタッ パタタッ
夏海「あれ、なんで──ウチ泣いて……」
夏海「ッ……!」くるっ
ダダッ
小鞠「な、夏海ぃー!!」
小鞠「ど、どどどどうしよーぉ!!? 夏海泣いて、泣いちゃって、ぎゃわあああああ!!」ボロボロボロ
このみ「お、落ち着いて小鞠ちゃんっ」
卓「……」すっ
このみ「…それに卓くんもだよ」
卓「……」ピタ
このみ「駄目だよ追いかけちゃ。良くならないことになるから、今のなっちゃんは追いかけちゃ駄目」
卓「……」
このみ「今行ったら今度は、本気でキスするよ」
卓「……」
このみ「ちゃんと唇と唇で…するから、頬じゃなくってね」
卓「……」フルフル
このみ「……駄目だってば」
卓「……」ジッ
すっ
このみ「…ぇ…」
卓「……」ボソボソ
このみ「っ……」
卓「……」シュビ!
シュバァッッッッ!! ギュイーン!!
このみ「…はっやー」
蛍「きゃっ…!? い、今のは…?」
このみ「おっと。びっくりしたよね、ごめんね~」
蛍「あ。ハイ…どうしたんですか、小鞠センパイ!? なんで泣いてるんですか!?」
小鞠「ほ、ほたるぅ~…なつ、なつみがぁ~…」ぎゅううっ
蛍「ほわっ! ほわわわーぁ!! こま、こまままぁ~!!」ニコヤカ
このみ「……」
このみ「はぁーあ」
「…振られちゃったなぁ」
~~~
夏海「……」
夏海「…死のう」
夏海「こんまま山ん中で暮らしてのんびりと死のう。草食って生きよう、うんそうしよう」
ガサガサ
夏海「もう帰れないっすわーあんな顔見られてさーやばいっすわーないっすわー」
ガサ…
夏海「……うっ…ひっぐ…ばか…」
夏海「ばか、ばかばか…ウチのばか…!」ぐしぐし
夏海「なんで、なんでなん…っ…なんでウチ嬉しがって、ばか……っ」
夏海「兄ちゃんが付き合ってないって、知って、なんで嬉しがるんよ……!」
夏海「なんなん……もう、わかんないってば…! ひうぁっ…もう、もう、ウチ…っ」
夏海「うわぁあああんっ……もうやだぁー! もどりたいー! 昔に戻りたいっ…!」
夏海「あああっ…ぐすっ…ひっぐ…」
コケッ
夏海「あ…」
ぐいっ
夏海「ふぇっ?」
ポスン
夏海「………?」
卓「…フゥー」
夏海「………」
卓「……」コクリ
夏海「…なんで追いかけてきたん…?」
卓「……」
夏海「兄ちゃんわかるっしょ、いま、きたらウチ、だめだってことぐらい、わか、わかるっ…よねっ…」
卓「……」
夏海「なんで、あんでっ! ウチはだめなんだって! 兄ちゃんのこと素直に…っ!」
ぎゅっ
夏海「にいちゃ…」
卓「…」なでなで
夏海「……兄ちゃん…っ」
ぎゅうっ
夏海「ごめんっ…ごめん兄ちゃん…ウチ本当に悪い子だから、だけど、いまだけは許して…お願いお願い…っ」ぎゅううっ
卓「……」
なでなで
~~~
夏海「昔はよくこうやって兄ちゃんに連れて帰ってもらったよねー」
卓「……」
ガサガサ
夏海「ウチが迷子になって、山の中で散々迷った挙句、夕方過ぎに兄ちゃんが一人でやってきて」
夏海「…今みたいに手を繋いで連れてってくれた」
卓「……」
ガサガサ
夏海「昔からなーんも変わってない。何時までたっても子供のまんま。ウチは全然大人になった時のこと考えられないわ~」
卓「……」
夏海「ねぇ兄ちゃん覚えてる?」ぐいっ
卓「……」ピタ
夏海「…ウチが小さい時、兄ちゃんに口癖のように言ってたことだけどさ」
夏海「『にいちゃんのおヨメさんになるー』って奴だけど、どお?」
卓「……」
コクリ
夏海「うっはぁ~! マジで? ちょー恥ずかしいんですけどー」
卓「……」
夏海「いやいや。あんなのウチが小さい時の…戯言? みたいなもんやし、気にしなくてもいいから~」
夏海「おっと、そんなこと言う前に最初から気にしなかった感じじゃん。あははー忘れて忘れてー兄ちゃん」
卓「……」
夏海「ウチはまだまだ子供だけど、何時かはホントーに大人になって、この街から出て行って…」
夏海「ちゃーんとイケメン男を見つけて結婚するんよ。うんうん、そしたら兄ちゃんにも紹介するわ」
卓「……」
夏海「そしたら兄ちゃんとか目利き良さそうだし、いい男かどうか判断してもらっちゃおっかなぁーなんて──」
ぎゅうっ
夏海「──…おっとと、兄ちゃん? ちょっと手が痛いんだけど…」
卓「……」
夏海「兄ちゃん? どしたの急に?」
卓「……っ」
フルフル
夏海「なんでもない? そ、そっか」
卓「……」クイックイッ
夏海「急ごうって? おおん、お母さんに怒られる前に帰ろっか」
卓「……」コクリ
スタスタ スタスタ
夏海「……」チラチラッ
卓「……」
夏海「……」ポリポリ
夏海(ウソつかれた、兄ちゃんに。ウチが結婚の話したら)
夏海「えーっとさ兄ちゃん…」
卓「……」
夏海「…ウチが結婚するのイヤ?」
卓「……」ビクゥ
夏海「……えぇ~? なんでなん~? ちょっと兄ちゃんそこんところ教えてくれないかなぁ?」
卓「……」
夏海「ウチは別に気にしないんだけど、やっぱそういうのって兄ちゃん的には許せ───」
ずりっ
夏海「どぅわぁっ!? すべっ!」
卓「……」くるっ
夏海「やばっ! 兄ちゃんどい、」
ズッダーン!
夏海「いたた…今日はよく転ぶ日だ…」
夏海「なって……」
卓「……」
夏海「…顔近っか…」
夏海(兄ちゃん? は、多分今の状況を上手くつかめてない──)
夏海「……あ、そうだ確かめなきゃ…」
夏海(そうだった、好きな人とキスすれば…嬉しいって、ホントにウチは兄ちゃんのことが…好きなら)
すっ
夏海「兄ちゃん…」
夏海「……」
夏海「なんつってー! もういいでしょその流れはさー!」
卓「……」ウーン
がばっ
夏海「ふむぐっ!?」
──ちゅっ
卓「……?」
夏海「…はっ…にゃっ…うっわ……」
卓「……」
夏海(い、今キス……兄ちゃんの頬にだけど……!)
卓「……?」
夏海「な、なんでも無い! なんでもない! 気にしなくていいから! ち、ちがくてっそのっ」かぁぁ
夏海「か、かえろっか…?」
卓「……」コクリ
ぐいっ スタスタ
夏海「……っ…───っ……!」
夏海(…ああ、だめだ本当に…ウチは本当に…)
きゅうううんっ
夏海「…にへへ」ニヨニヨ
卓「……」チラリ
ドクン
卓「…フゥ」
~~~~
小鞠「ごべんばづみぃー!」ぎゅうう
夏海「いいってばーもう大丈夫だっての姉ちゃん」
小鞠「わだじがながずばんべばぁああああああああああああ!」
夏海「もう何て言ってるかわっかんないからさ…」
蛍「あ、夏海センパイ膝に怪我を…」
夏海「お。ホントだ、なんだかんだで忘れてた」
れんげ「なっつんなっつん」
夏海「おーれんちょんも来てたんだ」
れんげ「…りこんしたん?」
夏海「は?」
このみ「……」
このみ「さーて、説明してもらおっかなーこのシスコンさんに」
卓「……」
このみ「どうするの? 多分なっちゃん、本気で思い始めちゃうよきっと」
卓「……」
このみ「今ならまだ間に合うと思うけどなー」
卓「……」
夏海「だーから結婚しないっつーの!」
卓「……」フルフル
このみ「そっか。じゃあ私のフライング気味のドッキリ仕掛けも無意味になっちゃったかー」
卓「…?」
このみ「あれ? 言ってなかった? …ドッキリだって周りに伝えたの、今日だよ?」
卓「……」
このみ「ま。それも今になっては無駄だったけどねー……それとメガネ君」
このみ「その頬のキスマーク。流石に晩御飯前には消しといたほうがいいと思うよ?」
卓「……」コクリ
夏海「あ。このみちゃーん! 今日は晩御飯食べてかなーい?」
このみ「おや。良いのー? 当分は許してもらえないかと思ってたけど」
夏海「いっひひ。それはダマされる方が悪いって奴、ほら、兄ちゃんもはやくはやくー」
卓「……」
このみ「妹は俺が守る、ね」
卓「……」ピク
このみ「草食系かと思えば案外違ったメガネ君に、幸あれ」たったった くるっ
このみ「…ばーか」んべ
たったったっ
卓「……」
スタスタ
夏海「うっし。じゃあ今日はご飯食ってゲームして寝るぞー!」
小鞠「ひっぐ…えぐ、え? アンタ宿題は…?」
夏海「あ…」
蛍「…夏休み明日までですよ?」
れんげ「なっつんおわったんなー」
夏海「ああ、ある意味人生がね…」
このみ「いえいえ、大丈夫だよ私達がついてるから!」
卓「……」コクコク
小鞠「私も手伝うから! ちゃんと手伝うから!」
蛍「わ、私もやりますっ!」
夏海「み、みんな…っ! ありがとーぉ!」
卓「……」
夏海「…兄ちゃんも、ありがとねっ?」
卓「……」
フンスー
夏海「いひひっ」ぎゅっ
卓「……」ヨロロ
夏海「んじゃれっつごー!」
おわり
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