ほむら「まどかが……まどかじゃ無い!?」(75)


>>1はこの手の掲示板に投稿するのは初めてです。

なので、思わぬ事故を起こすやも知れません。



これは、まどか★マギカ及びおりこ★マギカの二次創作です。

テーマは、第三者視点で観る…………おっと、この先は後程。



最後に、更新速度は期待しないで下さい。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367847117


もう、何度目になるだろうか? 早乙女先生の「目玉焼きに見る男女の交際講座」の後、『馴染み』の教室に『初めて』入る。
転入の挨拶と自己紹介もそこそこに済ませ、「何時もの席」に座る親友の姿を捜す。

「…………」

「!」

眼が逢った瞬間、彼女は柔らかに微笑む。

ああ! なんて愛らしいの、私のまどか!! 

前回の、驚き怯えた様な仕草と表情に少なからず心を傷めただけに、その破壊力は通常の三倍は固いわ!! 



……等と、私が恍惚に浸っていると、彼女の隣に座る二人の女子生徒……美樹さやかと志筑仁美……が、驚きの表情と共に小声で話し合う。

「うわ、まどかの言った通りになったよ」

「今朝まどかさんの仰ってた『新たな出逢い』とは、この事でしたの?」

!!

生来なら聞き取れない距離。でも私には、魔力で強化した聴力がある。

今、志筑仁美はなんと言った? 

まどかが言ってた新たな出逢い?

それはまるで、まどかが私の転校を知ってたみたいじゃない。

今も、先日まで私も入院していた病院に入院している、美樹さやかの幼馴染みで想い人、上条恭介経由で転校前に知り合った時間軸もあったが、今回は違う。

念の為にと視力を強化、まどかの手元を注視するも、ソウルジェムは見付けられなかった。

「どういう事よ」

私の呟きは、教室の喧騒に呑み込まれた。



休み時間になり、私を質問攻めにしてくる女子生徒を適当にあしらっていると、こちらに近付く気配があった。まどかだ。

「暁美君、そろそろ薬の時間では無いかね? 良ければ保健室まで案内しよう」

??? まどかって、こんな娘(キャラ)だったかしら?

「え……ええ、お願いするわ、鹿目さん」



そして保健室までの道中、私はまどかに、大切なモノがあるなら今までの自分とは違う自分になろうとしない様、忠告する。

そんな私に、彼女は「それは違うな」と断じる。

「大切だからこそ、変わって逝くんだ。変わらない為に。俺の大切なモノを、他の誰でも無い、俺が護る為に」

「お……俺!?」

今回のまどかは、話し方と良い、一人称と良い、随分と男っぽいわ。

思わずすっとんきょうな声をあげてしまった私に、まどかは「そうだ」と声を掛ける。

「良かったら、お昼を一緒にどうかな? 屋上に良い場所あるんだ」

「ええ、良いわよ」

まどかからお昼(デート)のお誘い! これを断るなんて、そんなの私が赦さないわ。



まどかに誘われやって来た屋上での昼食は、やはりと言うか案の定と言うか、彼女と仲の良い二人、美樹さやかと志筑仁美も一緒だった。

この四人でお昼を食べるのは、随分と久し振りな気がする。

「いやー、しっかし、驚いたよね。今朝のまどかの変わり様ときたら」

「はい。それに……」

美樹さんの言葉に相槌を打った志筑さんが、遠慮がちにこちらを見る。

「まさか本当に、まどかさんが仰ってた様に『新たな出逢い』があるとは思いませんでしたわ」

「あれって、あんたの事だったんだね、転校生」

「? 話が見えないわ。説明を要求して良いかしら?」

美樹さんの言葉から察するに、まどかの振る舞いは今朝まではこんなでは無かったらしい。

「うーん、何て言ったら良いかな? 転校生は知らないだろうけどさ、まどかが昨日までとは別人みたいになったとおもったら、登校中にこう言うのよ」

……今日、新たな出逢いがあるだろう……

「何を申してるのか解らないとは思いますが、わたくし達も解りませんわ」

確かに、友人の性格が変わり、更にはそんな意味深な事を言われたその日に転校生……私……がやって来たら、何らかの因果関係を疑うだろう。

でも、昨日までとは別人みたいに……。何か悪いモノにでも取り憑かれて無ければ良いのだけど。



と、ここで、今まで黙々と箸を進めていたまどかが、唐突に切り出す。

「処でさ、皆は、『どんな願いも叶う魔法(力)、欲しくない?』って訊かれたら、どうする?」

何時だったか、巴マミが潜んでいた尖塔に視線を向けながら。



どんな願いも叶うチカラ

それはまるで、あの憎き地球外知的生命体の甘言を思わせた。




どんな願いも叶うチカラ、欲しくない?



そんな言葉と共に始まったまどかの語らいに、あたしと仁美は不思議と魅せられていた。

転校生は……何故か不機嫌そうに眉間に皺をよせる。

? 嫌な思い出でもあんの? 



「その代り、魔法(力)を手にした者には戦士になって貰う。人を喰らう怪物と戦い狩る戦士に」

「うわぁ、なんかそれって、正義の味方っぽくってカッコいい」

「だけどね、戦士は怪物を食べないと自分を保てないの。それも成長しきった、オトナの怪物を……。ああ、『食べる』とは抽象的表現だが、だからと言って閲覧規制なコトでもない」

「自分を保てないとは、どういう事ですの、まどかさん」

「異形へと変わり、チカラが暴走、誰彼構わず襲う様になる。その姿を見た者は『それ』をこう呼ぶ。怪物」

「その言い様だと、オトナの怪物さえ食べていれば、異形に変わったり暴走したりしないのよね?」

「ああ、だから、自分が人を襲いたく無かったら、子供の怪物はある程度見逃し、成長するのを待たなければならない。勿論、犠牲者は出る」

「!! そんなのって、ないよ」

「あんまりですわ……護りたいなら見殺しにするしかないだなんて」

「……………………」



「…………と、この様な基本骨子を元に話を創ろうと思うのだが、君達、絵心はあるかね?」

まどかの悪戯っ子な笑みに、あたしと仁美は揃って脱力。

「お……お話を創るって、まどかさん、漫画でも描くつもりですの?」

「行く行くは、銀幕で世界のハートをガシッとキャッチ鷲掴みだ。勿論、音響はカミジョーで」

まどかの眼は、猛禽の如く光っていた。

そんでもって、何でそこで恭介の名前が!?


まどかに誘われての昼食は、まどかの変化にこそ戸惑ったものの、私にとって実に有意義だった。

まるで、魔法少女と魔女の事を連想させる、まどかが語った戦士と怪物、そしてチカラの暴走。

今にして思えば、そのまま話すのでは無く、こうやって、単語(キーワード)を他のものに置き換えて話せば良かったんだわ。

私って、本当に馬鹿ね。

「転校生、何でこっち見んのよ」

「他意は無いわ」

不意に、前を歩いている人魚騎士……もとい、美樹さんが振り向く。

どういう訳か彼女、勘が鋭いのよね。しかも、余計な事に限って。

まどかの事さえ無ければ、そういった呪いを撒き散らす魔女がいないか、調査討伐したいところだわ。



閑話休題

今私達は、まどかと美樹さんの案内で、見滝原の商店街を歩いていた。

志筑さんは、お稽古事があるとかで、先程お別れした。

「ここが五郷(いつさと)駅。遠出をするなら、先ずここだな」

「よーし、次は、さやかちゃんお奨めのコンビニに、ご案内しちゃいますからね」

「ええ」

まどかが施設や場所の紹介、美樹さんが次の目的地を決める。大体がそんな感じだ。

いつもの時間軸なら、まどか達はショッピングモールにいて、私はインキュベーターを駆除しているのだけど、この行動が今後にどう影響を与えてくれるかしら?

出来れば、巴マミは兎も角、インキュベーターには遭わずに済んで欲しい。



そんな私の願いは、悪い方に打ち砕かれた。斜め上に。

私達と同じ制服に身を包んだ、黒髪の少女が落とし撒き散らしたお金の回収を、まどかと美樹さんはさも当然の様に手伝う。
そこへもう一人、まどか達と同じ様に助け船を出そうとした白銀の髪の少女が、私と同じ様に硬直する。

何で……何で彼奴がここにいるのよ!! 美国織莉子が!?

いつかの時間軸の様に、まどかの命を狙って? ……とも考えたが、どうも様子が変だ。

まさか、これは偶然の出会いだとでも言うのだろうか?

「こっちは終わったよ、まどか」

「俺も」

「こ……これで全部かしら?」

美樹さんとまどかの声に漸く我に返った美国織莉子も、自身が回収したお金を黒髪の少女に渡す。

「う……うん」

「また逢おう」

躊躇いがちに礼を言う黒髪の少女に、まどかは微笑みを向ける。


と、その時、不意に美国織莉子が何かを探る様に視線を走らせ、それに一拍遅れてまどかの視線が険しくなる。

「あ……あの……」

何か、まどかの怒りを買う様な事をしただろうか。

そんな表情を浮かべながら、黒髪の少女は躊躇いがちにまどかに訊ねる。

「君は悪く無いさ」

そう、彼女は悪く無い。悪いのは……私の耳にも届いた声の主。

「唯、空気を読めない災難な悪魔が救援要請を出してきたんだ」

インキュベーターだ。

「まどか、あんたが何言ってんのか、全然訳解んない」

美樹さんの批判は、ある意味正しい。

『……助けて、まどか。…………マミ、織莉子、近くにいないのかい? えーい、この際誰でも良いから、救援要請!!』

先程と違い、美国織莉子とまどか、そして私だけで無く、今度は黒髪の少女と美樹さんにも聞こえたらしい声さえ無ければ。

「!? 何、この声!?」

「!? 呼んでるよ、まどか。助けに行かないと」

「他にも呼ばれたぞ。……まみとおりこ、だったか?」

「織莉子は私です、まどかさん」

「では参るか、織莉子」

「私としては、お奨めしかねます」

さも当然の様に、織莉子と共にインキュベーターの元へと向かうつもりのまどかを、織莉子は行かせまいとする。

良いわ、その調子よ美国織莉子。今だけは、私は貴女の味方よ。

「そうよ。何があるか判らないのに」

私は大雑把に大体知ってるけど。

「嫌な予感でもする? 俺も」

不敵な笑みを浮かべるまどかを先頭に、私達はコンビニを後にした。

「まみにも逢えるかな?」

「逢えますわ、必ず」

「わ……私も行くわ! まどかを危険な目に遇わせる訳には行かない!」

結局、五人で行く事になった。


私とまどかさんを先頭に、ほむらさんを殿(しんがり)に、人気の疎らな路地に私達は駆け込む。

そこに、『それ』はいた。

白を主体としたイタチの様な長い体に、キツネを思わせる太く大きな尻尾。ネコのそれに似た耳からは、垂れたウサ耳と言われれば納得してしまいそうな触手が伸びる。

「キュゥべえ!? アナタ、大丈夫なの?」

『ああ、織莉子か。助かったよ』

弱々しい声が、脳裏に響く。

彼の姿は、傷だらけで酷い有り様だった。

「な……何なのよ、ソイツ!? 縫いぐるみ……じゃ無いよね。生き物? ……てか、今喋った!?」

驚きを隠そうともせず、一気に捲し立てるさやかさん。

その傍でほむらさんは、キュゥべえに苦々しい表情と共に殺気の籠った視線を注ぐ。

「!」

『私』の眼に映る情景が、DVDの早送りの様に変化する。

「チッ!!」

思わず身構える私へと、ほむらさんの剣呑な、そしてさやかさんとキリカさんの怪訝な視線が集まり、まどかさんは舌打ちと共に手近な金属棒を蹴りあげ手中に納める。



世界が揺らぐ。否、浸食される。



「な……何なのよ、コレ」

さやかさんとキュゥべえを抱いているキリカさんは、互いに抱き合う様に身を寄せ合い、まどかさんは先程入手した金属棒を構える。

そんな私達の周囲を囲む様に、髭を生やした綿毛が鋏を手に行進。何処かで見た絵画や彫刻が並び、そして最奥に凱旋門が見える。

「何だ、この組み合わせ」

「魔女が……二体同時に!?」

「だから、お奨めしかねますと言いましたのに……」

あの時、私が後ろ向きな意見を言ったのには、勿論、世界を滅ぼす最悪の魔女になる可能性を秘めた鹿目まどかと、キュゥべえを接触させない為でもある。

でもそれ以上に、ほむらさんが驚愕の表情で口にした様に、魔女二体と同時に戦う未来を『視た』からだ。

私とほむらさんで一人一殺という展開も、或いはあったかも知れない。

「大丈夫よ、まどか。貴女は私が護るわ」

「なら、さやかさんとキリカさんは私の受け持ちかしら?」

未だ魔法(チカラ)を持たぬ一般人さえ居なければ。

三人には悪いが、護りながら戦って倒せる相手ではない。

「今度はほむらと織莉子さんが変身した!? 今朝のまどかの人格変化に始まって、人の言葉喋る謎生物に不思議空間と気味悪いお化け。そして極めつけがコレ。今日は一体、何なのよ!!」

「おおっ!!」

私とほむらさんの変身を目の当たりにして、さやかさんは混乱の極みとばかりに吼え、キリカさんは羨望の眼差しを私達に向ける。


私の『眼』にはもう一人、魔法少女がやって来る未来(姿)も『視える』のだが、確率が低いのか、朧気だ。

「まみって奴の登場を待ちながら護りに徹して時間稼ぎ……てのが妥当か」

しかし私の眼に映る(視える)その像(姿)は、刻が進む毎に着実に確固たるものへと変化してゆく。

ならば、まどかさんの作戦が最良だろう。

「逃げれる隙が出来たら、その時は逃げるべきよ!」

腰だめに構えた機関銃を掃射しながら、ほむらさんは銃声に負けじと声をあげる。

あれ、昨日映画で観たのとそのままなんだけど……まさか、ねえ。

「それで行きましょう。……とは言え、後数分の辛抱です」

私も、呼び出した宝珠をぶつけ応戦。

それすら掻い潜り、懐に飛び込んできた綿毛に、まどかさんのカウンターを狙った薙ぎ払い。

「シィッ!!」

まどかさんは、流石は最強にして最悪の可能性を秘めているだけあるのか、それとも元からの技巧(スキル)なのか、契約前だというのなかなかやる。



「! 来ました」

私の言葉に併せ、ほむらさんのそれとはまた違う、銃声が結界内部に響いたかと思えば、一帯の使い魔が一掃される。

「あら、その制服、見滝原中学よね。二年生? 呉さんも、もう大丈夫よ」

「君は……」

現れたのは、特殊を体現する螺旋な髪型をした金髪の、ウエスタン風の衣装を身に纏った魔法少女。

「酷いわね、クラスメイトの顔を忘れるなんて。ちゃんと学校に来ないからそんな事になるのよ」

彼女の言い分から察するに、どうやら、彼女とキリカさんは同じクラスの様だ。

「貴女以外の他の皆の為にも、先ずは自己紹介……と言いたいとこだけど、その前に……」

最奥に聳(そび)える凱旋門を一瞥、指を弾く。

その音が響くと同時、虚空に魔法陣が揺らぎ、そこから二十を超えるのマスッケトライフルが宙に姿を現す。

「一仕事、終わらせちゃって良いかしら?」

答えを待つより早く、マスッケトライフルが一斉に火を噴く。

本日はここまで

おりこサイドは兎も角、まどかサイドは記憶だけが頼りなので、違和感全開です。

面白いと思う
ただ誰の視点なのか分かりにくいな

>>17氏の指摘を受け、ちょこっと修正

それじゃ、始まるヨ!


Side:マミ

あの日魔法少女となって以来、毎日の日課となったパトロールの最中、魔女の気配を追っていると、キュゥべえからの救援要請(テレパシー)を受けた。

聞こえた限りでは、私の他にも、『まどか』と『おりこ』と呼ばれる魔法少女(娘)にも助けを求めたみたい。

確かに少しばかり距離があるとはいえ、魔法で強化した脚力に、十五年間培った土地勘が加われば、二分と掛からない。

何を焦っているのかという疑問は、魔女の結界に突入して解けた。

使い魔と戦う、白と紫、二人の魔法少女と、見滝原中学の制服そのままな女の子。

更に、満身創痍なキュゥべえを抱いた青毛の女の子と、不登校気味のクラスメイト呉さん。

そして、凱旋門と、複眼に薔薇が咲く蝶の翅を生やした芋虫……二体の魔女がいた。



二度目のマスッケト銃の掃射で、呉さん達を取り囲む使い魔の粗方を一掃した時、棒を振り回している桜色の髪の小柄な女の子が、声を掛けてきた。

「なあ君達、俺はそこいらの調度品に見覚えがあるのだが、気のせいかね?」

確かに言われてみれば、結界を飾る絵画やオブジェ、モニュメントの姿をした使い魔は、誰もが知る美術品ばかりだ。

「確かに。あれは…………かしら?」

「消えた!!」

白い魔法少女がオブジェの正体を言い当てると、呉さんが言う様に、霞みとなって霧散した。

「そこにあるのは…………ね」

続いて、紫の魔法少女が言い当てると、やはりモニュメントは溶ける様に消えた。

「ならあれは、…………の背景に…………ね」

私も絵画を指して正解を言い当てる。そのままでは無い複合作品だから多少の不安はあったけど、これも消えた。



正体を言い当てると消える作品使い魔、そして魔法少女三人分の火力で、使い魔は完全に一掃された。

残るは二体の魔女だが、何となく、作品使い魔は凱旋門が生み出したのではないかと、そんな気がした。

「贋作で戦おうというなら、穂群原のブラウニーを見習いなさい」

「模倣そのものは間違いなんかじゃ無いさ。それが、自分の力で辿り着いた研鑽の賜物なら」

凱旋門に言い切る白い魔法少女に続き、桜色の女の子も言葉を紡ぐ。

本来形を変えない筈の凱旋門が動揺した様に見えたのは、果たして気のせいか、それとも魔女故か。

「それじゃ、そろそろ決めるわよ」

私は胸元のリボンを紡ぎ、大砲ほどもあるマスッケト砲を生成。それに呼応するかの様に、宝珠の動きが激しくなり、薔薇蝶を凱旋門の近くへと追い詰める。

「そこで良いわ。ティロ・フィナーレ!」

言霊と共に引き金を絞る。

結界全体を揺るがす程の砲声が響き、二体の魔女を纏めて貫いた。


Side:ほむら


二体同時に現れた芸術家の魔女と薔薇園の魔女は、巴マミのティロ・フィナーレと美国織莉子の水晶爆撃によって仲良く倒された。

特に、芸術家の魔女を倒せたのは、その使い魔が贋作だと見抜いたまどかの功績が大きい。

やっぱい私のまどか、最高だわ。



そして魔女が倒れた後、巴さんは魔法で取り出した紅茶を優雅に一服。

いつも疑問に思うのだけど、あれ、何処に携行しているのかしら? 巴さんは私の盾みたいな、マギカ収納グッズは持ってない筈だけど。

程無く結界も解け、最初より少し離れた路地裏に戻る。



……と、ここでまどかが巴さんの元へおもむろに近付き、拳骨一発。

「!! 痛ったぁい!!」

「ま……まどか!?」

いきなりの事でノーガードだったのだろう、まどかの拳は巴さんの脳天にクリティカルヒット。美樹さんも驚きの声を上げる。

「な……何するのよ、いきなり」

「何するのよ、では無い。世界の浸食から抜け出せた訳では無いのに、何呑気に茶など飲んでる」

涙目と化した巴さんの抗議をまどかは一蹴。

「え……? で……でも魔女は二体共倒したし……」

「それが、油断を誘う為の欺瞞だとしたら? 快復力が異様に高い魔女かも知れないし、別の魔女が強襲して来る可能性だって捨てきれないわ」

そこに美国織莉子も加わる。

「良いかね、武の世界には『残心』と言うものがあってだな……」

「そこに直りなさい。たっぷりと、御説教してあげます」

「……………………」

斯くして巴さんは、まどかと美国織莉子のありがたーーーいオハナシを聴かされる事となった。

「ごめんなさいゴメンナサイ、ゆるしてくださいユルシテクダサイ、もうしませんモウシマセン」

最後の方になると、巴さんは譫言の様にぶつぶつと呟くだけとなった。

流石に、あれは可哀想ね……。


Side:織莉子



「……で、キューべーだったか? 君、何で襲われてた?」

今気付いたかの様なまどかさんの問い掛け。その呼び間違いを、キュゥべえは即座に訂正。

『違うよ、僕の名前はキュゥべえ。鹿目まどか、美樹さやか、呉キリカ、僕は君達に御願いがあって来たんだ』

まどかさんの疑問を華麗にスルーし、キュゥべえは本題に入る。

おそらくだけど、キュゥべえが魔女に襲われていた理由は、自身を窮地に立たせまどかさん達の同情を誘い、契約を容易にする為だろう。

「な……何であたしらの名前を!?」

「……何?」

「? 助けて、では無いのか?」

『うん。僕と契約して、魔法少女になってよ』

つい一週間程前に私も聞いた、キュゥべえ曰く、魔法少女の契約をするにあたり、交渉を始める時の決まり文句。

「駄目よ、魔法少女だなんて!! そいつと契約したら最後、総てを喪い、身を滅ぼす事になるわ!!」

途端、大きな声をだして契約を思い止まらせようとするほむらさん。

私としても、倒せない魔女の誕生を阻止する為にも、まどかさんが魔法少女にならない事は望むべく処なので、助言する。

「そうね。ポスターのキャッチコピーじゃないけど、その契約、本当に必用なの? 私としても、安易に契約するのはお奨めしないわ」

とは言ったものの、即断を阻止出来た以上の意味は無い。

「その辺の事を説目する為にも、皆、これから私の家に来ない?」

何故ならここに、私とほむらさんとは違って、キュゥべえとの契約を肯定する魔法少女がいるのだから。


Side:ほむら



魔法少女について説明したいという事で、私達は巴さんのマンションに呼ばれる事となった。

ここに呼ばれるのは、随分と久しぶりな気がする。

そして、美国織莉子と呉キリカが一緒なのは、間違い無く初めてだ。



そして、キュゥべえと契約して魔法少女になれば、どんな願いも叶うとい処で、早速美樹さんが食い付く。

「それじゃ、金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか……!?」

「マンカン……?」

よく解ってない呉キリカは置いといて、契約と同時に産み出される魔法少女の力の源にして本体、ソウルジェムの紹介と説明、そして今回は、グリーフシードの使い方も併せて行う。

「それじゃ、ほむら……は転校生だからこれからだけど、織莉子さん達はここ見滝原を護る、正義の魔法少女って訳ですね?」

目を輝かせ興奮気味の美樹さんに、美国織莉子は苦笑を浮かべ訂正。

「私は見滝原に住んでる訳でも、見滝原だけを護るつもりも無いのだけど」

「え? それじゃ、美国さんは何処に……と言うか、何で見滝原に?」

「夢は大きく、私が世界を救世を成し遂げます」

巴さんの疑問を巧みにはぐらかし、尊大な事をいってのける美国織莉子。

『以前』も彼女は、未来を視る力を手に入れ、世界を滅ぼす魔女となる可能性を秘めたまどかの抹殺を謀っていた。

言動から察するに『今回』も能力は変わっていない。なら、近付いて来たのは何の為……? 



と、私が疑念を抱いていると、まどかがキュゥべえに訊ねた。

「処でよ、祈りから産まれ、希望をもたらすのが魔法少女で、絶望から産まれ、呪いを撒き散らすのが魔女だと言ったな?」

『そうだよ。訂正する程間違ってはいないね』

「それじゃ訊くが、『世界を破壊したい』なんて俺が願って、その願いが叶ったら、その時俺は、呪いから産まれ絶望をもたらす存在……つまり魔女って事で良いのかな?」

「「「「「!!!!」」」」」


本日はここまで

へこたれずに頑張って活きます

う~ん…なんか…
読んでると、まどかが某紅茶さんに見えてきた。

今回は、魔法少女講座後半

そんな訳で、はじまるヨ♪


Side:織莉子


世界の破壊をキュゥべえとの契約として持ち掛けるまどかさんの言葉に、本人とキュゥべえ以外の皆が息を呑む。

さやかさんとほむらさん、そしてマミさんの三人が、どういう事かとまどかさんに詰め寄り思い止まらせようとするなか、キュゥべえもまた、まどかさんにその真意を確かめるべく声を掛ける。

『中々面白い発想だね。確かに、出来るか出来ないかで言えば、素質にも因るけどそれは可能だよ。鹿目まどか、君は世界の破壊を望むのかい?』



私が魔法少女と成り、得た、未来視の魔法で初めて『視た』、世界を滅ぼす誰にも倒せない魔女。

その正体が鹿目まどかである事を、私は『識って』いる。

当初は、魔法少女としての素質が魔女の力に関係しているのかとも考えたが、契約時の願いも影響を与えるのだろうか?



「否。ただ、君がどんな願いでも……などと言うものだから、確かめたかっただけだ」

「よかったー。まどかったら脅かさないでよ、全く。ほむらと織莉子さんじゃ無いけど、その契約だけはさやかちゃんも反対だわ」

「私は、どんな契約も反対よ。魔法少女になれば、破滅しか無いわ」

安堵の溜め息を漏らすさやかさんと、頑なに魔法少女にさせまいとするほむらさん。



「確かめたい事は他にもある」

『なんだい? 何でも訊いてくれ。僕に答えれる事なら、可能な限り答えようじゃないか』

「魔法少女の力の源であり契約の証でもあるソウルジェムは、魔法を使うごとに穢れ、浄化するには魔女の卵であるグリーフシードを使うしかない。そしてグリーフシードの数は限られている。故に、魔法少女同士のいさかいも珍しく無い。……だったな」

「ええ。悲しい事だけど、事実よ」

まどかさんの事実確認に、ここ見滝原で長らく魔法少女として魔女と戦ってきたベテラン魔法少女、マミさんが頷く。

「キュゥべえ、君の願いはなんだ?」

『僕の願い、かい? 何故そんな事を訊くんだい?』

キュゥべえの疑問は尤もだ。但しそれは、魔法少女の末路を知らぬ者の発想でしょうけど。

「契約とは、双方が互いに求めるモノを提供しあいそれを交換する事で行われる。キュゥべえ、君は奇跡を起こし、戦う為の魔法(チカラ)を与え、その代価として何を得る」

「まどか?」

何を言い出すのかとばかりに、さやかさんはまどかさんを見る。他の皆も。

「俺も、当初は魔女の殲滅を目的とした戦力増強が目的かとも考えた。だが、その結末の先に起こるのは、ソウルジェムを浄化するすべを、グリーフシードの供給源を喪うという、魔法少女にとっての死活問題だ」

「確かに……」

皆の胸中を代弁するかの様に、キリカさんが頷く。



「これは俺の素人考えだが、ソウルジェムの穢れが臨界を超え魔力が尽きた時、魔法少女に何かが起こるんじゃないか? そしてその果てに、或いはその過程で生じるナニカ、それがキュゥべえ、君の求めるモノでは無いかね?」

『な……ななな…………何故それを!? おいおい……否!! いやいや、君の洞察は素晴らしいね。よ……よくそ…………それだけの僅かな情報でそこまで辿り着いたものだ。だ……だだだ…………だけど、憶測でひとを貶めるのは良くないよ』

「あなたはひとじゃ無いでしょ、この淫獣」

誰にも語っていない真実をまどかさんに言い当てられ、動揺丸出しで憤慨するキュゥべえに、ほむらさんの冷徹なツッコミが炸裂。

それを見てキュゥべえは、耳の触手でテーブルを叩き、我が意を得たとばかりに捲し立てる。

『ほらごらん。君の不用意な発言のせいで、暁美ほむらの僕に向ける視線が、台所の黒い悪魔を目撃した時の目と一緒だよ。隙あらば僕を殺そうと狙ってる。一秒でも早く抹殺しようとしている。在る事が我慢ならない目をしている』

「それは最初からな気が…………」

キリカさんのツッコミも的確すぎて、私とさやかさんは揃って頷くしか出来ない。マミさんは、なにやら複雑そうな表情だ。

「ほむら、織莉子」

「「何かしら、まどか(さん)」」

まどかさんの呼び掛けに、ほむらさんと私は揃って意識を向ける。

「!!」

「……………………」

途端、ほむらさんの私に対する敵愾心が増した。

出逢った時から警戒されている事は解っていた。何せ私は、彼女の友人の命を狙っているのだから。

でも、今のはそれとはまた違う気がする。

まるで……そう、嫉妬ね。


Side:ほむら



私と同時に、美国織莉子までもがまどかの問い掛けに反応したのは気に入らないけど、その事は放っておいて、今はまどかの質問に答えましょう。



それにしても、『今回のまどか』は鋭すぎるわ。

インキュベーターは相変わらず言葉巧みにはぐらかし、私を含めて誰も、ソウルジェムの秘密とグリーフシードの真実にも触れていない。

にも関わらず、まどかの語る推論は核心に迫っている。



「君達はソレが何か知っている。そして、それはとてつもない付随被害をもたらす。事態を阻止するには契約を結ばせないのが確実かつ安全であり、故に妨害活動を行っている。違うかね?」

「ええ、そうよ。だからこれ以上、魔法少女には殖えてほしく無いの」

「でも、私も長い事魔法少女をやってるけど、そんな話聞かないわ。キュゥべえは勿論、他の魔法少女からも」

まどかの言葉に頷く私に、巴さんが反論する。が、そこは私のまどか、すかさずキュゥべえを一瞥すると共に口撃を放つ。

「それは、そこに至るまで生き残った魔法少女がいないか、極めて稀だからだろ? ま、だからこその『魔法少女』なのだろうが」

「? どゆこと?」

一人納得のまどかについて行けず、疑問符を浮かべる美樹さん。呉キリカも同じ様に首を捻っていたが、ややあって結論に至る。

「魔法少女は、大人になるまで長生き出来ない?」

『魔法少女だってちゃんと大人になれるよ。それに、魔法少女の姿で契りを交わせば相手の魔力を分けて貰う事が出来るんだ』

「キュ……キュゥべえ……! ////」

「お……女の子の前で何て事言うの! ////」

「これだから淫獣は……」

「////////」

「? えっと……何? なんでマミさん達は顔紅くなってんの?」

「さやかちゃんは、美樹さやかのままでいれば良いんだよ」



『? 訳が解らないよ。それと、確かにまどかがいう様に、長生きする魔法少女は稀だね。参考までに、魔法少女の初陣での戦死率は世界平均で88.98%だ。因みにこれは、事前の知識無しに単独で魔女と戦った場合の数値だよ』

この数値は、『長い間戦ってきた』私も初めて知った。

魔法少女の多くは、ソウルジェムが濁りきって魔女へと変わる前に魔女との戦いで死ぬとは聞いていたが、初陣の戦死率がこんなに多いなんて。



「あんた! そんな恐ろしいものにあたし達を勧誘しようとしてたの!?」

『先週契約したばかりの織莉子は兎も角、経験豊富なベテランのマミもいるし、彼女の指導を受ければ問題無いと僕は思ったんだけどな』

衝撃の事実に眼を見開く美樹さんと、だから問題は既に解決済みだろ? とでも言いたげなインキュベーター。


「ああ、経験と言えば、キュゥべえ。君は何故、現役のほむらや織莉子達では無く、先ず始めに俺に助けを求めた? 資格有る者の存在は感知出来ても、魔法少女の所在までは判らない、とでも言うのかね?」

『そんな訳無いじゃないか。僕達は契約した魔法少女、それから、出逢った魔法少女候補の女の子の動向と居場所、全て把握しているよ』

「まるでストーカーね」

「? それって、巴よりも鹿目の方が頼れるって事?」

まどかの当て推量に対し憤慨するインキュベーターに、私のツッコミと呉キリカの疑問が向けられる。

「成る程。つまりそれだけ、俺が破格という事か」

『そうだね。マミも織莉子も決して弱いとは言わない。けど、それでも鹿目まどか、君には及ばないんだ』

「キュゥべえの裏切り者……」

誤解を誘う事はあっても嘘は付かないインキュベーターの発言に、頬を膨らませてむくれる巴さん。

確かに、長年魔法少女として魔女と戦ってきた自分よりも、見知らぬ候補者の方が頼りになると言われれば、嫉妬もするだろう



「だから、俺を契約させる訳にはいかない……か」

「ええ、私の魔法は未来視。そして私は『視た』わ。見滝原に現れる魔女の郡体を魔法少女になったまどかさんが一掃して、そしてその結界、魔力の尽きたまどかさんが世界を滅ぼすのを」

「まどかはそんな事しない!!」

美国織莉子の言葉に、怒りも露に憤慨する美樹さん。やはり彼女は、『どの時間軸』でも友達想いの良い人だ。

「美樹さやか、これは本人の意志でどうこう出来る問題じゃ無いの。だから巴マミ、美国織莉子、貴女達も、ソウルジェムの状態とグリーフシードのストックには気を付けなさい」



「さしずめ、穢れた魔力の暴走、か……。ま、御約束だな」

「鹿目、これはアニメやマンガじゃ無いんだから」



>>25

穂群原のブラウニーは紅茶の昔の渾名


>>25

穂群原のブラウニーは紅茶の昔の渾名



そんな訳で、今回はこれにて


連投事故……orz

挫けるな、私

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