ほむら「ここは・・・」(33)

ベッドから身体を起こし、窓の外の景色を眺める。

ほむら「見滝原・・・じゃない・・・?」

どうしてすぐにそれが分かったのか、自分でも理解できなかったが、いやな胸騒ぎがした。

~~~~~~

看護師のネームプレートを見やる。

『七森病院』

ほむら「やっぱり・・・違う・・・」

ほむら「というか、七森って何処なのよ・・・」

ほむら「・・・何とかするしかないわ」

ほむら「今までこんなループ経験したこともなかったけれど」

ほむら「私の使命は、まどかを救うこと」

ほむら「それが見滝原の地である必要は、ないわ」

退院した私は、『見滝原中学』に代わる中学を探し歩いた。

ほむら「・・・」

歩き疲れた。魔力をこんなことに使うのも考え物だ。


ネットで検索をかけても、『見滝原』は一件も引っかからなかった。

よくよく考えて見れば、転入の書類だってちゃんと手元にある。もちろん、七森中学の。

しばらく、というか今回は、七森町で頑張るしかないらしい。

ほむら「・・・」

この時間軸、どこまでイレギュラーなのかしら。

ほむら「はい、今度転入することになった、暁美ほむら、です」

早乙女先生の姿は見当たらない。それどころか、顔に覚えのある教師が一人もいない。

いつもなら闊歩できるはずの校舎だが、何回も迷ってしまった。

話のほうは、滞りなく進んでいった。

先生「・・・だいたいこれくらいかな。あ、そうそう、忘れるところだった」

制服が手渡された。やっぱり、見覚えはない。けど・・・

ほむら「・・・可愛い」

転入当日。

先生「はい、じゃあ自己紹介よろしく」

無難な自己紹介を済ませ、さっと教室を見渡す。

ほむら「・・・!」

まどかと一緒のクラスじゃないみたいね。それと美樹さやか。彼女の姿も見えないわ。

クラスメイトが口々に私に質問を投げかけてくる。

私はわざとらしく、困ったそぶりをしてみるが、ああ、まどかがいないなら・・・

ほむら「ごめんなさい、ちょっとお手洗いにいってくるわね」

そう言って、逃げるように隣のクラスへ向かった。

向かおうとしたのだけれど。

ガラガラッ

京子「よし!ギリギリセー・・・!!??」

ドン!

京子・ほむら「痛たた・・・」

ほむら「ごっごめんなさい・・・」

京子「うおぉ・・・いっててて」

結衣「・・・自業自得だぞ」

私の背後で声がした。

結衣「ごめんね?京子の奴が・・・立てる?」

ほむら「え、ええ。私は平気よ。むしろ・・・」

京子「おぉう・・・朝から沁みますなあ・・・」ピヨピヨ

結衣「ああ、こいつは大丈夫。いつもこんな感じだから」

結衣「ほら、戻って来い」

黒髪の女子がそう言って、金髪の女子の頬を軽く叩く。

京子「んっ・・・お、結衣じゃん。おはよー」

結衣「おはよーよりも先に言うことがあるだろ?」

京子「・・・あれ、どちら様?」

結衣「昨日先生が言ってたろ、転校生が来るって」

京子「・・・?」

結衣「ま、昨日は6時間目までずーっと居眠りしてたもんな」

京子「面目ない・・・てことは、あなたが転校生?」

ほむら「・・・そうよ」クスッ

美樹さやかとはまた違ったおてんば娘ってところね。ひょっとして彼女が、この世界の美樹さやかだったりするんだろうか?

京子「ごめん!遅刻しそうだったもんで・・・」

結衣「正味一時間アウトなんだけど?」

ほむら「ええっと・・・」

京子「あ、私は歳納京子。でこっちが」

結衣「船見結衣。よろしくね」スッ

ほむら「暁美ほむら。こちらこそよろしく。歳納さんと船見さん」

京子「うわー、なんか大人っぽいなー」

ほむら「そうかしら?」ファサ

京子「あっ!今のとか!」

っと、ムダ話してる時間も惜しいわね。ワルプルギスの夜が襲来する前に、出来る限り戦力を蓄えておきたいもの。それとまどか。

ほむら「ちょっと二人に質問があるのだけれど・・・」

京子「何?分からないことがあったら、何でも訊きなよ!」

ほむら「鹿目まどかって、どこのクラスかしら?」

京子「・・・かなめ?」

結衣「まどか・・・かぁ」

京子「そんな子いたっけ?」

時が止まったような気がした。

皮肉なものね。いつもは周囲の時を止めてる私なのに。

結衣「・・・暁美さん?」

呼びかけで我にかえったとき、船見さんは心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

京子「えと・・・ごめんね?ウチらはちょっと心当たりないや」

結衣「他の学年のことなら、その学年の人に訊いたほうが早いし・・・」

ほむら「いえ、間違いなく中2よ」

京子「・・・みんな知ってる?」

取り巻きは一斉に首を横に振った。再び、目の前が真っ暗になる。

気がついたときには、ベッドに横たわっていた。

京子「お、気付いたよ!」

結衣「綾乃、わざわざ付き添ってくれてありがとね。後は、私達だけで平気だから」

綾乃「えっ、な、何言ってるのよ!具合の悪い生徒がちゃんと回復するまで見守るのも、生徒会の仕事よ!」

京子「え~?」

綾乃「な、何よ・・」

京子「ホントはそう言って・・・」

綾乃「ぅ・・・」

京子「ほむらちゃんを横取りするつもりなんじゃないのかー?」

綾乃「違うわよ!!」

結衣「こら、騒がしくすんなよ」

ほむら「あの、私はもう大丈夫だから・・・」

そう言って立ち上がる。三人には悪いけど、やるべきことが山積みなのは変わらないから。

~~~~~~

結局、七森中学でまどかと美樹さやかは見つからなかった。
巴マミはいたけれど、契約はおろか、魔法少女のことも知らないらしい。

それどころか。

ほむら「・・・生徒会長ですって・・・!?」

マミ「ええ。ところで、あなたはどうして私のことをそこまで知りたがるのかしら?差し支えなければ、教えて欲しいのだけれど・・・」

その言葉を無視して、私はさらに問う。

ほむら「・・・何かあったの?」

マミ「何かって?」

ほむら「あなたはなんと言うか・・・そんなキャラじゃないと言うか・・・」

マミ「まっ、失礼ね」

ほむら「あ、別にそういう意味じゃ・・・」

マミ「クラスメートにも同じことを言われたわ。初めはね」

巴マミは身の上話を始めた。交通事故で死にかけていたところを救急隊員に救われたが、両親を失い、半ば自暴自棄になっていたところで、生徒会長への立候補を勧められたらしい。

マミ「やってみたら意外と上手くいくものなのね。勿論、後輩の助けがあってこそ、なんだけれど」

マミ「私の話は終わったわ。今度はあなたの番よ、暁美さん」

ほむら「・・・」

魔法少女のことを知らないと言うのなら、きっとこの時間軸の巴マミはただの一般人・・・

そうだ、ここに来てからまだ一度もインキュベーターを見かけていない。魔女にめぐり合わないのも運が悪いと思っていたが、もしかするとこの世界は・・・

ほむら「ねぇ、今まで、白い変な生き物を見かけたことはないかしら?」

マミ「また質問?」

魔法少女のシステムが存在するなら、この巴マミにも魔法少女の素質があるはず。七森にいるインキィベーターが接触していていいはずだ。

マミ「ええ、あるわ」

ほむら「本当に!?」

マミ「ええ。今日もこれから会いに行こうと思っていたところよ」

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連れられてやってきたのは、生徒会室だった。

もしかして、猫か犬でも飼っているとかそんなオチが・・・

西垣「おはよう巴。それと、暁美ほむら」

先生?いや、この喋り方・・・

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