男「魔物図鑑を作る?」女「………ん…」(301)
―――――王都 路地裏の魔法具店―――――
男「また唐突に何を言い出すんだよ」
女「本で知識を入手することはできる。でも実物を見たことが無い」
男「絵入りの図鑑だってあるだろ?」
女「あれはごく一部、それも付近の魔物がせいぜいだから」
男「それにこの店はどうするんだよ?」
女「"彼"に任せる」
指差した先には1m程度の道化師人形
ケタケタと笑いながら"彼"は言う
人形「オマカセクダサイワガアルジ」ケタケタケタ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361956279
女「簡単なレシピは紙にしたから彼でもできる」
男「っ……じゃあ店は良いとして、襲われたらどうするんだ?絵を描きながらじゃ対処できないだろ」
女「大丈夫、腹案がある」ニヤリ
男「腹案?」
女「怠惰な魔術。その名も念写」
男「念写ってなんだ?」
女「知らなくても仕方ない。これはごく一部の魔法使いにしか知られてない」
女「とある魔法具職人が画期的な発明をしました」
女「でも実際に作ろうとすると、材料やタイミング、使う魔術の多さから覚えきれません」
男「だったら書けばいいだろ?ほれ」 つ紙・羽ペン・インク
女「……じー…」
男「はいはい、黙りますよ」
女「紙に書くことはできるけど書く内容が多くて大変です」
女「そこで魔法具職人は考えました。"頭の中の事を紙に写せればいいのに"」
女「魔法具職人は研究を重ねて紙に写す魔術を完成させました」
女「でも、肝心の写す内容を忘れてしまいましたとさ。めでたし、めでたし」パチパチパチ
男「イイハナシナノカナー」
女「そう言うわけだから、私は頭の中の事を紙に写すことができる。ほら」 つ紙
男「お?俺の絵か。なになに?名前:男、性格:馬鹿、特技:剣術ってこら!」ビリビリッ
女「稀代の傑作を破り捨てた…」ジトー
男「馬鹿にしたお前が悪い。で、絵に問題が無いのはわかったが護衛とかはどうするんだ?ギルドか?」
女「ギルドや傭兵じゃお金がつらい。何日かかるかわからないし、どれだけ戦うかも不明」
女「だから一人旅」
男「お前、それじゃ危ないじゃないか!」
女「なら貴方がついてくる?」
男「俺は…その……」モゴモゴ
女「なら一人旅。便りが途切れたらガメオベラ」
男「ガメ…なんだって?」
女「今日出発するから、そろそろ帰って。稽古の時間」
男「家の道場じゃ俺が一番強くて親父以外は相手にならないんだよ」
女「練習だけ一流の剣術。実戦で試すチャンス」
男「………」
女「とっても可愛い魔法少女と二人旅」
女「アタックチャーンス」ニヤッ
男「わかったよ」
女「本気?」
男「本気だ」
女「正直、貴方は対象外」
男「そっちじゃねぇ!」ベシッ
女「………あぅ」
男「経験にもなるしお前の護衛をしてやるって話だ」
女「貴方ならそう言ってくれると思った」ニヤッ
男「その笑い方は可愛くねぇよ」
女「知ってる」クスッ
女「なら、出発は翌日にするから。明朝西門集合」
男「了解。護衛料は高くつくぜ」
女「貴方が生きて帰れたら出世払いでよろしく」
男「っけ。ほんとに可愛げがねぇな」
―――――バタンッ!
人形「オモイドオリ?」
女「計算通り」
女「でも、男なら背中を預けられる」
人形「スナオニソウイウベキデハ?」
女「そう言う間柄でもないから」
女「準備の確認する。お店をよろしく」
人形「イエスマイロード」ケタケタケタ
―――――王都 西の森入口―――――
男「それで、これからどうするんだ?」
女「まずは森を抜けて山岳部。その後は谷を抜けて西の都へ向かう」
男「なんだってまたそんな無茶を」
女「平原にはほとんど動物しかいない」
女「魔物が居るのは深い森や険しい山、他には沼地」
男「そりゃ知ってるけどよ…ところで、魔獣と動物ってどう違うんだ?」
女「大きな差は判らない。ただ、獣には魔翌力が無い」
女「逆に言うと魔物には少なからずの魔翌力がある」
男「人間には魔翌力が無いな」
女「エルフにはある。そして魔翌力を宿していないと魔術を使う事は出来ない」
男「それで俺は使えなくてお前は使えるのか?」
女「そう、貴方は人間だから。そして私はエルフだから」
男「なるほどねぇ……」
女「魔術は確かに便利。でも頼り過ぎはよくない」
男「まったくだな。お前も少しは体を鍛えるべきだ」
女「旅に出るだけマシ。普通は外に出ない」
男「そういえば、怠惰な魔術だっけ?なんで普及してないんだ?」
男「念写とか使い道も多そうだし、もっと一般的でも良いと思うんだが」
女「怠惰な魔術を見つけ出す魔法使いは基本的に研究家。それも重度の」
女「まず、外に出ようとしない。本を読んで研究するだけ」
女「魔物図鑑なんて普通はもうできてても良いはずなのに無いのはそのせい」
男「怠け者はとことん怠け者ってわけか。それにしたらお前は優秀だな」
女「もっと褒めるが良い」
男「調子に乗るな馬鹿」
女「馬鹿に馬鹿と言われた。屈辱」
~~~~♪~~~~♪
男「ん?何か言ったか?」
女「言ってない。静かにして」
~~~~♪~~~~♪
女「こっちから、たぶん……」ガサガサ
妖精A「~♪~~~♪~~~♪」
妖精B「~~~♪~~~♪」
男「小さくてよく見えないな…なんだ?」
女「おそらく妖精。フェアリー」
女「トンボのように透き通った小さな羽を持った小人」
女「歌を好みいたずら好きだけど平和的」
男「詳しいもんだな」
女「知識だけはある。だから実物を見るために旅してる」
妖精A「~♪~~~♪~~~♪」
妖精B「~~~♪~~~♪」
男「行って見ようぜ」
女「………ん…」コクリ
妖精A「人間だ―」
妖精B「めずらしー」
男「おぉ、ちょっと邪魔するぜ」
妖精A「こっちのお姉ちゃんはエルフだー」
妖精B「エルフエルフー」
女「ふふっ」
妖精A「お姉ちゃん達は何してるのー?」
妖精B「一緒に踊るー?」
男「えぇっとだな…」チラッ
女「いろんな生き物に会う旅。貴方達にもね」
妖精A「へー、よくわからない」
女「ん……絵を描いても良い?」
妖精B「お絵かき?いいよー」
妖精A「私たちを書いてくれるの?」
女「そう。そこのお花に座れる?」
妖精「「はーい」」チョコン
女「隠者の紫」パシパシッ
女「はい、これは二人に」 つ紙
妖精「「わー、お姉ちゃんすごーい」」
女「………」ニコッ
男「ところで君たち、この近くで水場はある?」
妖精A「水場?」
妖精B「水ならこのまままーすぐ行けば大きな泉があるの」
妖精A「でも、怖いのもいるの。大きくと空を飛ぶの」
男「不安もあるが、飲み水の確保って意味でなら行った方が良いな」
女「ん、どちらにしろ絵を取らないといけないから」
妖精B「お水飲みに行くの?」
男「あぁ、そうだよ。怖いのはお兄ちゃん達がやっつけてやろうな」ニカッ
女「大丈夫…」
妖精A「うん、お兄ちゃん気をつけて」
妖精B「お姉ちゃんも気をつけてね」
男「おう、ありがとう」
女「ありがとう」
妖精「「じゃあ、バイバイ」」フリフリ
男「じゃあな」フリフリ
女「………」フリフリ
―――――ガサガサ、ガサガサ
男「戦闘になるかもしれないな」
女「大丈夫。簡単な魔術とモンスターの知識はある」
男「知識っても弱点とかじゃないんだろ?」
女「そうだけど、無いよりはマシ」
男「そうだな。一応装備を確認しておくか」
女「………ん…」
―――――装備―――――
名前:女
種族:エルフ
職業:魔法使い
装備:
頭:とんがり帽子
体:マント
武器:杖
道具:大量の羊皮紙、旅支度
名前:男
種族:人間
職業:剣士
装備:
頭:バンダナ
体:鉄の鎧
武器:鉄の剣
:鉄の大盾
道具:旅支度
※旅支度(食料、水筒、テント、ランプ、ナイフ、薄手の毛布)を二人で分担
―――――王都 西の森の泉―――――
男「まだつかないのか?」ガサガサ
女「判らない」ガサガサ
男「いたずらとかで騙されたわけじゃないよな?」
女「その可能性は否定しない」
男「ところで、さっき念写したときの…」
女「隠者の紫?」
男「辞めた方が良いぜ」
女「何故?」
男「何となくって…ここか?結構広い場所だな」
女「怖いの…いない」
男「とりあえず水を汲んで休憩にしようぜ」
女「………ん…」
キィ―――――――――ッ!!
男「鳥の鳴き声?」
女「嫌な予感。隠れて」ガサガサ
男「おう」ガサガサ
―――――バサッ、バサッ、バサッ
男「やっぱり鳥か?」
女「それにしては音が大きい」
―――――バサッ、バサッ、バサッ
キィ―――――――――――ーッ!!!
男「な、なんだありゃ!?」
女「静かに……あれはたぶんグリフォン」
女「鷲の頭と翼、獅子の体。全身は茶色で大きい」
女「とても獰猛で縄張り意識の強い」
女「おそらくここは彼の水飲み場」
男「妖精の言ってた怖いのってのは…」
女「間違いなく…あれ」
グリフォン「………」ピチャ…ピチャッ…
女「逃げた方が無難」
男「そうだなっととと!」ガサッ!
グリフォン「………」ギロッ
女「見つかった。構えて」
グリフォン「キィーーーーーーーッ!!」
男「今から逃げるのは?」
女「無理。奴のが早い」
男「なら倒すしかねぇな。行くぜっ!」ガシャン。ダッ!
女「援護する――水鞭<ハイドロウィップ>――」
水鞭。文字通り水を操る魔術はグリフォンの背後、先ほどまで彼が水を飲んでいた泉の水を操る。
細くのびた水流は鞭の如くしなり、グリフォンの背を、翼を、足を叩き絡め取る。
女の援護に合わせて男はかまえた剣を振り上げ、グリフォンの首を狙って振りおろす。
―――――刹那
絡め取られた魔獣は頭を、翼を、足を振って暴れまわり、
男は咄嗟にバックステップを踏むことで振り払われた足を回避し剣を構え直す。
男「っと!あぶねぇ。女!他に手は!?」ガチャ
女「大丈夫。――石落<ストーンブラスト>――」
次に女が詠唱したのは土の魔術。
空中に人の頭くらいの石が無数と浮かび上がり、飛来して魔獣を襲う。
だが、それを魔獣は羽ばたく事で迎え撃った。
魔術で生み出しているとはいえ、決して石が軽いわけではなく、そして勢いに乗った石は簡単に風に動かされる事は無い。
だが魔獣もまた馬鹿では無いのだ。自然の中で生きる彼は己の強さを知っている。
故に飛来する石は全て―――――吹き飛ばされる!
男「っ…うぁぁぁあ!」
女「男!」
無数の石を吹き飛ばす翼は鉄の鎧で身を固めた男をもまた吹き飛ばす。
魔獣はその赤い瞳で女を見据え
グリフォン「キィーーーーーーーッ!」
吼えた
男「女、逃げろ!」
女「無理。いつまでも寝ていないで早く起きて」
男「そんなこと言っても、お前の魔術はどれも効いてないじゃないか」
女「大丈夫。私に腹案がある」ニヤッ
獅子の足で音もなく、それでいて疾風の如く距離を詰める魔獣。
見据えた女は不敵に笑い、風でずれたとんがり帽子を直して杖を構えた。
勢いの乗った魔獣が前足を振り上げ―――――るよりも早く
女「――岩槍<グレイブ>――」
唱えたのはまたも土の魔術。岩の槍を数本地面から飛び出させるものだ。
大型の魔獣には効果が薄い術式ではあるものの、相手が疾風の速度で近寄るなら別の話、
魔獣の勢いはそのまま槍の威力へと変わり、深々と魔獣の体へと吸い込まれていく。
女「討伐…完了」
男「すげぇ…」
女「正しい知識は武器になる。運もあるけど」
男「そうだな。ちょっと見なおした」
女「大いに見直すべき」
男「とりあえず、これで水は組めるな」
女「………ん、いったん休憩」
男「よっと」ザバァ
女「水汲んだら枝を集めて」
男「人使いが荒いこって」
女「戦功第一」
男「しかたねぇな…」ガサガサ
女「殺すのは気が引けるけど、私もまだ死ねないから」
男「そうだな。仕方ないさ」
女「埋めるくらいはしたいけど、流石に無理」
男「ここは森だから、いずれ動物が土にかえすさ。ほら薪だ」バラッ
女「それが自然の摂理――火<ファイア>――」ボッ パチパチ
男「軽く飯にしておくか?ところで…」ガチャガチャ
女「………?」
男「お前が得意なの火じゃなかったか?」
女「火が得意。でも森を焼くわけにはいかない」
男「水で消せるだろ」
女「そう簡単じゃない。脳筋……」ボソッ
男「おい、今なんかいったか?」
女「なにも…」
男「けっ…食いものやらねぇぞ」
女「それは横暴。公平にするべき」
男「横暴はどっちだよ。ほれっ」
女「なんだかんだで男は優しい。そう言うところは好き」
男「護衛対象が飢え死になんて恥ずかしくて家に帰れねぇだろ」
女「それもそう。私の為に身を粉にすると良い」
男「だーかーらー、可愛げがなさすぎだっての」
女「そもそもそんなの必要ない」フフッ
男「なんで勝ち誇るんだ。腹立つなぁ…」
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:フェアリー
種 族:妖精
生息地:森の中
全 長:15cm程度
特 徴:透明な2対の羽を持った小人
基本的には友好的であり歌と踊りを好む。臆病でいたずら好きだが人間に友好的。
人語を理解するので会話することが可能である。
名 称:グリフォン
種 族:魔獣
生息地:森の中
全 長:3m~4m程度
特 徴:鷲の頭と翼と獅子の体を併せ持った魔獣
獅子の爪やパワーと鷲のクチバシやスピードを兼ね備え、とても獰猛
縄張りを侵されると撃退するために襲いかかってくる
また雑多な飛び道具や魔法では、その大きな翼で強力な風を起こして無効化する知恵も持っている
一度小休止。
sage sagaについては知ってはいましたが、必要ない場面だったので意識はしていませんでした。
気にする方も多いようですし、今後は常時付けて行こうかと思います。
ご指摘ありがとうございます。
また、SS崩れの駄文ではありますが、何かご意見やご質問などありましたら参考にさせていただきますので遠慮なくどうぞ。
―――――王都 西の森の奥地―――――
男「ん~、しかし他には魔物を見ないな」
女「仕方ない。ここは王都に近い方」
男「そうだな。動物や純粋な植物が多い」
女「平和が一番」
男「それじゃ魔物には会えないんじゃないか?」
女「争いが一番」
男「それじゃ生きてけねぇよ」
女「男は我がまま」
男「お前が我がままなんだよ」
女「~~~♪」
男「ん?何か言ったか?」
女「なにも」
女「~~~♪」
男「あぁ、妖精の歌か…」
男「~~~♪」
男「それにしても、妖精は可愛いよな」
女「ロリコン…」ジトー
男「ちがっ、そういう意味じゃない!」
女「知ってる」
女「森に入ったばかりで会った妖精も、水飲み場に来たのも、皆可愛い」
男「皆で楽しく歌って踊る。気ままなもんだ」
女「人間もあれくらいのおおらかさを持つべき」
男「そうだな。まぁそれでも今は平和だとは思うけどよ」
女「そう。魔物も人間も住み分けてるから今は平和」
女「いずれ人間はまだ見ぬ土地を求めると思う」
男「そうだな…」
女「知性ある魔物は王を生みだし、いずれ人間と戦うかもしれない」
男「………?」
女「そして人間の英雄と魔物の王が戦う」
男「で、何の本の影響だ?」
女「家に帰ったら貸してあげる」
男「まったく……」
キィ――――――ッ!
男「この鳴き声は…またグリフォンか!?」
女「……とりあえず、開けた場所に」
男「そうだな。最悪、前回と同じ方法で頼む」
女「任された…」グッ
―――――ガサガサ
男「よし、ここなら充分だろ」
女「隠れた方がよかった?」
男「どうせばれてるだろ」
女「同意。たぶん探されてる」
男「仇打ちか?」
女「可能性は高い」
―――――バサッ、バサッ、バサッ
男「くるぞ!」
女「これは…」
―――――バサッ、バサッ、バサッ
キィ―――――――――――ーッ!!!
男「なんだこいつは!?グリフォンじゃないぞ」
女「鷲の頭と翼は一緒。でも下半身が馬」
女「おそらくヒッポグリフ。さっきのグリフォンの子供」
男「子供?似てないじゃないか」
女「グリフォンと馬の子供だから」
女「獅子じゃないから力は低い。でもその分速い」
男「なるほどな。じゃあ頼むぜ!」
女「………」コクリ
男「それ、石つぶてでもくらいな!」ビュ....コツン
ヒッポグリフ「キィーーーーーー!」
―――――ダカダッダカダッダカダッ!
力強い馬脚で地面を蹴って進む速度はグリフォンより早く、
親に同じく赤い瞳で二人を見据えて突進する。
その威圧力が戦闘経験の浅い女の勘を狂わせたのは仕方あるまい
女「――岩槍<グレイブ>――」
先に同じく突き上げられる岩の槍。
だが、魔獣は胸に突き刺さるより早く地を蹴ったのだ。
障害物を飛び越える馬の如く、槍の林を飛び越えた魔獣は棹立ちのごとく前足を持ち上げ、女へと叩きつけた
男「ぐっ…うぉぉおおお!!」バキバキバキ
咄嗟に女を突き飛ばした男は、その手にした大盾で馬の前足を受け止める。
まるで駄々っ子のように何度も振り下ろされる馬脚は、その一振り事に表面の鉄板をゆがめ、あるいは土台の木を砕き、
特殊な技能を持たない男を押しつぶしていく
男「女!何かしてくれ」
女「待って…ならこれで――鎌風<ウィンドカッター>――」
起き上がった女が唱えたのは真空刃の魔術。魔獣の前足目がけて二本の刃が飛来する。
ヒッポグリフ「キィーーーーーーッ!」
咄嗟に飛び上がった魔獣は刃を回避した。
が、そもそもの目的は男の救出。目的達成
立ちあがってボロボロの盾を捨てた男は剣を構えて空を見る。
男「さて、どうしたもんかな」
女「空を飛ばれてたらこちらの攻撃だと難しい」
男「そうだな。飛び道具はもちろん、並の魔術じゃ押し負けちまう」
女「何か手は……」
女「………」
女「慢心……」
男「あ?」
女「これならいけるかもしれない。男、弓は?」
男「持ってねぇな」
女「なら、投げられる物」
男「これで…どうだ?」ググッ
男が手にしたのはボロボロの盾
歪んだ鉄板を引っぺがすと、土台の木がずらりと並ぶ
その木もほとんどが半分に折れているのだが、折れているからこそ槍の形をなしているのだ
女「上等……」ニヤッ
女「合図に合わせて全部投げて」
男「こんなんじゃ届かねぇぞ?」
女「知ってる。とにかく空中に放り投げれば良いから……今!」
男「まぁ了解!あいつが降りてくる前にやっちまおうぜ。そらっ!」バラッ
女「――暴風<ストーム>――」
女が作るのは一条の烈風。
放り投げられた木の槍を載せて、まるで燕の…いやそれよりはやく魔獣へ向かう。
魔獣は吹きつけられた風に向かって大きく羽ばたいた。
―――――バサッ、バサッ、バサッ
翼に絶対的な自信を持つ一族だからこそ、風に抗う。
どんな強い風でも、飛来する物体でも己の巻き起こす風で打ち消すことができるという慢心。
風に乗った木の破片は右へ左へと撃ち落とし、ついに最後の一かけらを弾いた刹那に飛来したのは銀色の刃
男「飛ぶのは木だけじゃねぇぜ?」
男が最後に投げたナイフは風に乗って魔獣の右の翼へと突き刺さる。
バランスを崩したそれはゆらゆらと地面へ降りてきたて地面へと着地する。
右の翼をかばうようにふらついたその間を戦士たる男は見逃さない!
―――――ズバン!
女「お疲れ様」
男「魔術をよけた時はどうしようかと思ったよ」
女「本当に、あの時は頭が白くなった」
男「まぁ結果オーライだが…水は出せるか?」
女「返り血が酷い」
女「飲めないから気をつけて――水<ウォーター>――」シュー
男「とりあえず流せれば何とかな」
男「ありがとうよ」
女「どういたしまして」
男「ん?素直だな」
女「戦功第一」
男「なるほどな。しかし、盾が壊れちまった」
女「仕方ない。次の街か村で買う」
男「そうしてくれ。このままじゃないのは不安だ」
女「私もそう思う」
?「こちらへ――――」
男「へ?」
男「何か言ったか?」
女「何も」
?「こちらへ――――」
女「私にも聞こえた」
男「木の蔦が?この奥を指してるのか?」
女「そうみたい。行く?」
男「行ってみるべきだろうが」
男「道が判らなくなるんじゃないか?というか、判ってるのか?」
女「実は迷ってる」
男「………おい」
女「置いてく」ガサガサ
男「おい、待てっての!」ガサガサ
―――――王都 西の森の深奥―――――
女「ここ」
男「静かな広場だな」
女「あの木は」
?「来て下さいましたね」ニコッ
男「木、木に人が!」
女「落ちついて。あれはドライアド」
女「木に宿る妖精や精霊の一種で、恐らくこの森の守護者」
ドライアド「えぇ、良くご存じですね」
女「お褒めにあずかり光栄」
ドライアド「お二人があの親子を倒すのは森の木々を通して見ておりました」
ドライアド「あれらは最近この森の住みつき、荒らしていた厄介者でして」
ドライアド「かといって我々の力で討伐するのは難しかったので、大変助かります」ニコニコ
男「な、なかなか辛辣だな」
女「我々?」
ドライアド「えぇ、この子たちです」
妖精A「お姉ちゃんまた会ったねー」
妖精B「お兄ちゃんが怖いのやっつけてくれたのー」
男「お前たちだったのか」
妖精「「なのー」」ワーイ
女「ふふっ」ニコッ
ドライアド「ところで、出口をお探しですか?」
女「はい、迷いまして」
ドライアド「判りました。ではこの子たちに送らせましょう」
ドライアド「それから、貴方にはこれを」シュルシュルシュル
男「これは…木の盾?」
ドライアド「この森に生える強く丈夫な木で作られております。少しはお役にたてるかと」
男「助かります」ガシャン
ドライアド「では貴方達。案内してさし上げなさい」
妖精「「はーい」」
女「あ、その前にひとつお願いが」
ドライアド「なんでしょう?」
女「私は図鑑を作成しているのですが、差し支えなければ貴方も載せたいのですが」
ドライアド「そういうことでしたらどうぞ。ただし、具体的な住処は公開しないでくださいね」
女「………」コクリ
ドライアド「しかし変わっていますね。腰のかばんを叩くと紙が出てくるなんて」
女「念写と言います。腰のかばんに入れた羊皮紙に頭の中の情報を記す」
女「手でたたくのは入力信号みたいなもの」
ドライアド「魔術も進化していると言う事でしょうか」
ドライアド「まぁなんにせよ、改めて送りましょう」
女「ありがとう」ガサガサ
男「助かるぜ」ガサガサ
妖精A「じゃあこっちだよー」
妖精B「はぐれちゃダメだよー」
女「少しは貴方を見なおした…」
男「最初から見直しとけっての」
女「自分でそう言うのはよくない」
男「この女は……」
妖精A「二人ともすごいのー」
妖精B「怖いのやっつけてくれてありがとうなのー」
男「ははっ、まぁ今回はこの子らに免じて二人のおかげってことで」
女「………ん…そうだね」
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:ヒッポグリフ
種 族:魔獣
生息地:森の中
全 長:3m~4m程度
特 徴:鷲の頭と翼と馬の体を併せ持った魔獣
グリフォンと馬の子供で、グリフォンよりパワーは無いが、陸・空共にスピートでは勝る
翼で障害物を弾く知恵を持っているほか、動体視力がよく、咄嗟の判断力が高い
名 称:ドライアド
種 族:妖精
生息地:森の中
全 長:1m程度(人の部分のみ)
特 徴:樹と同化した緑色の髪の女性の姿をしている妖精
森を愛し、自分が住まう森を傷つける者に対してのみ敵意を向ける
逆に森を愛し、守る者には敬意を払う森の守護者的な存在
書きなおし分と書き足し分で今日はこのあたりまで。
本当は図鑑に絵を乗せられればいいのですが、そこは絶望的なので想像にお任せします。
さて、次は誰を紹介しょうか
幼えらいキャラ変わったな
自分は前の方が好きかなぁ
―――――西の都 南の山岳―――――
男「おい、大丈夫か?」ガチャガチャ
女「平気」ゼェゼェ
男「平気には見えねぇよ。ここらで休憩するぞ」
女「ならそうしてあげる」
男「まったく。山なんだから無理するなよ」
男「いくら桟道があるって言っても下を歩くよりは辛いんだからな」
女「……うん。気をつける」ボッ...パチパチ
男「それにしても本当に体力無いのな」
女「エルフだから」
男「エルフは狩りをするんだから体力はあるっての」
女「………チッ」
男「なぁ、ところでひとつ疑問なんだが」
女「ん…何?」
男「魔獣…魔物か。魔物は魔力を宿して操る事が出来るんだよな?」
女「詳しく言うと違うんだけど正解。魔術の原理については話しても判らない」
男「なんだから気に障る言い方だが、確かに判らんな」
男「話を戻すが、人間や普通の動物は魔力を持たない。これって変じゃないか?」
女「どうしてそう思う?」
男「魔術が使えた方が便利なんだから、人間も進化するはずだろ?」
女「なるほど。悪くない着眼点」
女「………」
男「例えばエルフと人間は似ているのに、エルフのが長寿で魔術も使えたら公平じゃねぇよ」
女「難しいから概要だけ」
女「簡潔に言うと魔物は弱点が多い」
女「エルフは長寿だけど力が人間より弱い」
女「そして文明を進化させようとはしない。エルフが森に籠るのはそのせい」
男「じゃあお前は?」
女「私は例外」
女「エルフは森と生きる事しかできないし、ドワーフなら土と生きるしかない」
女「魔力を宿した代償に進化の可能性が著しく低下しているのが魔物」
男「でも新しい魔術は研究されているんだろ?」
女「それは使い方を変えただけ。松明じゃ危ないからオイルランプを作ったようなもの」
女「人間の弓矢は鉄だけど、エルフは木が多い。少し進歩しても青銅」
女「魔術の火力を使えば鉄を精製することはできるはずだけど、『鉄を使おう』とすら思わない」
男「進化の可能性ねぇ…」
女「最低でも一般論はそう言われている」
男「そっか。なら、そうなんだろうな」
女「いずれ人間は魔術よりすごい文明を手に入れると思う。それが魔力の代償だから」
男「魔法を使うよりもすごい文明なんて想像つかないな」
女「同意」スクッ
男「お?もう行くか」
女「――水<ウォーター>――」コクリ...ジュー
男「よし、足元気をつけてついてきな」ガチャガチャ
女「生意気…」
男「けっ、お前よりは素直だよ」
女「なら単純」ニヤッ
男「口が減らねぇなっとと、そこ気をつけな」ガラッ
女「……!!?」ガラガラッ...フラッ
男「言ったそばから!」ガシッ
女「助かった」
男「それだけか?」
女「……ありがとう」
男「よろしい。今度は用心しろよ」
女「……ん…」コクリ
男「なんだか空がちょっと怪しいな」
女「山の天気は変わり易い」
男「どれくらい降るか判らないし、雨宿りできる場所を探さないとな」
女「あれ」スッ
男「ん?おぉ!ちょうどいい洞窟だな。そこにするか」タッタッタッ
女「降って来た」タッタッタッ
―――――ポタッポタッ
ザーザーザー
男「ふぅ、ちょうどよかったな。」
女「運が良い。タオル?」
男「いや、俺は大丈夫だ。それより火を起こしてくれ」
女「薪が無い」
男「どれ……地上から貫通した木の根ならあるな」スパッ
女「松明には十分」ボッ
―――――山岳の洞窟―――――
男「雨はやみそうにないし、奥の安全を確認してくる」
女「待って、私も行く」ドサッ
男「こんなところじゃ荷物を置いといても盗まれないな」ドサッ
男「足元が滑るからな」
女「転ばないようには気をつける」
男「深くなければ良いんだが…」カツーンカツーン
女「足音の反響が面白い」カツーンカツーン
男「本当にずぶといな」
女「それほどでも」
男「褒めてねぇよ」
―――――ピチャンピチャン
男「っと!上から水滴が滴ってるな」
男「足元の水たまりに気をつけ……」
女「足元。離れて」
スライム「ピチャン…ピチャン…」ムクリ
男「水たまりと思ったらスライムが化けてやがったのか」ジャキン
男「喰らえ!」ビュ
スライム「ノビー……」
男「っ!切ったそばからくっ付いて行きやがる」
女「なぜか甘くみられるスライムだけど、物理攻撃は有効じゃない」
女「ゲル状の体だから打撃でつぶしても斬撃で切っても再生する」
男「じゃあどうする?」
女「水分を飛ばす。――火球<ファイアボール>――」ボボッ
スライム「プシュ……」
男「火球が当たったスライムが消えたぞ」
女「また湧く可能性はあるけど、とりあず平気」
男「助かった。が、洞窟内で火の魔術はよくないな」パタパタ
女「蒸し暑い」パタパタ
女「スライムの体は酸性」
男「その酸の体で相手を包んで溶かすんだろ?」
女「剣」
男「え?っととと!」ゴシゴシゴシ
男「鉄だから酸はよくないってことだな。厄介な敵だぜ」
女「松明で叩くと弱る」
男「なるほど!って先に言えやコラ」ウガー
女「常識」
男「しらねーよ」
女「実戦経験不足」
男「それを言われると弱いな…」
女「一つ勉強になったと言う事で」
男「そう言う事で妥協してやるよ。先行くぞ」カツーンカツーン
女「はいはい」カツーンカツーン
男「ようやく行き止まりか」
女「一本道の袋小路」
男「一本道ってのは不便だが、けっこうな広さだな」
女「たき火の跡がある」
男「隊商なんかの野営地だったのかもしれないな」
女「どちらにしろ何も残ってなさそう」
男「ちらほら落ちてるのはゴミばかりだしな」
女「小さな靴、こっちは帽子?」
男「まるで子供用だな。でもこんなところに子供なんて…」
女「子供じゃない。ちょっと面倒な奴かも」
男「面倒って…どんな?」
?「おっとそこを動くんじゃねぇぜお二人さん」
男「ッチ。入口に立たれた。逆光でシルエットしか見えないか…」
?「こっちは武器もあるんだ。妙な動きをするんじゃねぇや」
女「子供ほどの背丈に尖った耳。ゴブリン」
男「ゴブリン?」
ゴブリン「正解だぜ嬢ちゃん。正解したところで武器を捨てな」チャキ
男「断る」ジャキン
ゴブリン「俺様とやろうってのか?良い度胸だぜ兄ちゃん!」タッタッタゥ
男「ナイフなんか相手になるかよ!」ガツン...カランカラン
ゴブリン「ナイフが弾き飛ばされて……ヒッ!」
女「ここは貴方の家?」
ゴブリン「そ、そうだ」コクコク
女「勝手に入ってゴメン。雨宿りだけさせてほしい」
男「ずいぶん丁寧なんだな」
女「先に侵入したのは私たち。剣を下ろして」
ゴブリン「雨宿りだけならかまわねぇ」
男「俺たちの荷物には手をつけてねぇだろうな?」カチン
ゴブリン「洞窟の入り口?まだ触ってねぇ。ホントだ」
ゴブリン「侵入者だと思って先にこっちに下りてきたんだ」
女「ありがとう」
男「念の為俺は荷物を取ってくる」カツカツカツ
女「よろしく」
ゴブリン「こっちこそ身の程をわきまえるべきだったぜ」グゥ~
女「空腹?」
ゴブリン「最近は麓の森が危なくて食料が取りにくいからな」
女「よかったら食べて」 つ乾パン
ゴブリン「!?いいのか?」
女「変わりに絵を描かせてほしい」
ゴブリン「俺のか?物好きな奴だ」バリバリ
女「物好きだからここにいる」
ゴブリン「ちげぇねぇ」ケラケラ
ゴブリン「そうだ。火ぐらい起こすか」ペタリ
女「熱がこもらない?」
ゴブリン「小さい空気の抜け道がたくさんあんだ。大丈夫だよ」カツッカツッ...ボッ
女「そう。じゃあ絵を描く」パシッ
ゴブリン「ん?もう終わりか?」
女「ほら」ペラッ
ゴブリン「へぇ、大したもんだ」バリバリ
男「おーい、雨が上がったから行くぞ!」
女「じゃあ、行くから」
ゴブリン「俺が言うのも変な話だが気をつけな」
ゴブリン「この先に牛男や鳥女がいるからな」
女「ありがとう」
女「ちなみに森は平和」カツカツカツ
男「何か教えてもらえたか?」
女「この先に厄介な魔物がいる」
男「へぇそりゃ楽しみだ」ガサッ
女「判ってれば対処できる」ガサッ
男「んじゃ、再開と行きますかね」
女「了解」
男「それにしてもさっきの天気が嘘みたいだな」
女「本当に天気が変わり易い」
女「また雨が降る前に進めるだけ進む」
男「あぁ、それがいいな」
男「ところでゴブリンって鬼なのか?」
女「実は妖精。小柄でいたずら好き。フェアリーと同じ」
男「それにしては可愛げが微塵もないけどな」
女「そういうのはよくない」クスッ
男「ん?なんだよ」
女「顔に泥がついてる」
―――――山岳の奥地―――――
男「このあたりは開けた場所も多いな」
女「その代わり道が無い」
男「そうだな。ちょっとした崖登りをしなきゃならない」
女「面倒」
男「しょうがないだろ。じゃないと進めない」
女「そんなことない」
女「――風<ウィンド>――」フワッ
男「あ!ずるいぞそれ」
女「早く来て」スタッ
男「この野郎……」ガシッガシッ
女「か弱い乙女だから」
男「何が乙女だっての」ガシッ
女「次はどう進む」
男「次は俺も運べよな。まずはここを登って…」フワッ
女「登る」フラッ
男「次のこの木で隣の大岩まで移動」フラフラ
女「落ちそう」フラフラ...フワリ
男「落ちるんじゃねぇぞ?」
女「……ん…無事」スタッ
男「また自分だけずるを…」
女「これで結構疲れるから」
男「はいはい、そう言う事にしておくよ」
男「で、最後はここをゆっくり降りるぞ」
女「降りる?」
男「あぁ、降りる」
男「誰かが作ったのかもしれないが、坂になってるからな」
女「それなら安全」
男「そう言う事だ。そろそろ日も傾いてきたし、早く寝どこを確保するぞ」ガチャガチャ
『ゴブリン「この先に牛男や鳥女がいるからな」』
女「急ぐ」ガチャガチャ
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:スライム
種 族:無機物
生息地:洞窟
全 長:20cm~30cm程度
特 徴:透明な体を持つゲル状の生物
その性質から、打撃・斬撃に強く肉体が欠損するたびに再生することができる
逆に体のほとんどが水分で成り立っているため火や雷の属性にめっぽう弱い
酸性の体に敵を取り込んで消化する特性上、鉄製の武具に付着する錆びさせてしまうため注意が必要
名 称:ゴブリン
種 族:妖精
生息地:山岳地帯
全 長:1m~1m20cm程度
特 徴:裂けた口と尖った耳を持つ妖精
いたずら好きで暴力的な面もあるが、凶悪と言うほどではない
人語を理解し道具を使う程度の知恵はあるが、頭が良いと言うほどではない
今日はここまで。地の文の扱いがとても難しいですね。
今回は入れないでやってみましたが…
>>42
女「黒歴史。可及的速やかに忘れるべき…」
―――――山岳の奥地―――――
男「ん、ちょっと寒いけど良い朝だな」
女「お布団…」モグリモグリ
男「こらこら寝るんじゃない。今日中に山を降りるんだぞ」
女「低血圧…」
男「わがまま言うな。テント片付けるから外に出な」ガサガサ
女「鬼畜…」
男「やかましい。朝飯くらい作ってくれ」
女「仕方ない…」グー
男「ところで、昨日言ってたやつらはなんて言ったっけ?」
女「牛男と鳥女?」
男「あぁそれだ」
女「ミノタウロスとハルピュイア」
女「種族としてはどちらも獣人に属してるはず」
女「ミノタウロスはとにかく凶暴。とても力が強くて武器を持ってると思う」
女「ハルピュイアは狡猾。翼があるから空を飛べるし、動きが早いから不意を打たれるかもしれない」
男「なるほど。まっ、居るってことを知ってれば対処できるだろ」
男「収納完了っと。飯は出来たか?」
女「干し肉のスープと乾パンだけどね」
男「仕方ないさ。山を降りたらたしか…」バサッ
女「今がたぶんこのあたり。このルートで行けば西の都のすぐそばなはず」スススッ
男「そろそろ街が恋しくなってきたな」
女「……ん…確かに」
男「食い終わっら行くぞ」
女「ゆっくりした食事も恋しい」
男「なんにせよ、ここを出てからだ。行くぞー!」
女「おー」
男「だいぶかすれてるけど、看板があるな。どれ」
看板「この先下り坂。西の都へ」
女「この道を行けば良い」
男「見たいなだな。休むか?」
女「大丈夫」b
男「無理すんなよ」
―――――ヒュンヒュンヒュンヒュン
ズガン!!!!!!
男「なんだ!!?」ジャキン
?「どっちかには当たると思ったんだが、看板に当てちまったか」
女「牛…ミノタウロス」
ミノタウロス「なんだ、俺達の事を知ってるのか?なら話は早いな」ガシャン
ミノタウロス「命まではとらねぇ。荷物全部置いていきな!」ダッダッダッ
男「問答無用じゃねぇか!」ビュ!
ミノタウロス「口下手なもんでな!」ブンッ!...ガキン!!
走り寄る牛の獣人。バトルアクスを両手で構えて男に駆け寄ると一閃
空を切る鈍い風きり音に冷や汗を吹き出しながらも男は剣をふるう。
一合、二合、三合……
男「っ!斧相手に剣じゃ厳しいか…」
ミノタウロス「当たり前だ。両手で持つようなバトルアクス相手に、たかが片手剣じゃ話しにならねぇよ」
女「なら…斧を捨てて」スッ
ミノタウロス「……魔術ってわけかい」
女「………」
男「………」
ミノタウロス「………」
打ち合いに集中している獣人の背後。女は杖を構えて告げる。
戦いのさなかを切り取ったように構えて動かぬ三人を静寂が包むことは数秒
沈黙を破ったのは斧の投げ捨てられる音だった。
ミノタウロス「2対1じゃやりずらくてかなわねぇな」
女「仕掛けたのはそっち」
ミノタウロス「けっ!ピンチの時は仲間を頼るのが良いよな」
男「……?」
女「今は一人。大人しく」
男「女っ!!後ろだっ!!」
女「え?……っ!!!」バッ
振り返った女の視界に映ったのは蹴りだされた鉤爪。咄嗟に転がるように飛んでかわして杖を構える。
その瞬間に同じくして牛の獣人は最初に投げつけた片手を地面から引き抜いて構え、男と対峙した。
?「仕留めたと思ったんだけどねぇ……」
ミノタウロス「肝心なところでしくじりやがって」
?「はんっ!助けてやったのに大した言いようだね」
女「ハル…ピュイア…」
ハルピュイア「正解ー。商品は無いけどね」
ミノタウロス「これでまた拮抗状態だぞ。人間」
男「どうかな?せやっ!!」ビュッ
先に動いたのは男。片手の斧で受けた牛の獣人はすかさず反撃するが男はすでに盾を構えた。
森の精から送られた盾は木製と言えど堅く、獣人の斧を受け止める。
ハルピュイア「後ろががら空きだよ!」ビュッ
女「させない――火球<ファイアボール>――」ボッボッ
両手が埋まった男の背後を突こうと高架した鳥の獣人を女の火球が行く手を阻む。
忌々しそうに再び高度を取った彼女を見上げて女はニヤリと笑った。
男「これで邪魔は入らないな」
ミノタウロス「それは…どうかな!?」ビュ
―――――ヒュンヒュンヒュンヒュン
ミノタウロスは手にした斧を女へと投げつける。虚を突かれた女は咄嗟に石のつぶてを放ち斧を落とした。
が、注意がそれた一瞬を獣人たちは見逃さない。
ミノタウロスは先ほど捨てた両手斧を拾いに、ハルピュイアはそれを追いかける男の牽制を行ったのだ。
自慢の両手斧を構えて牛の獣人が笑う
ミノタウロス「さぁ、形勢逆転だな」
ハルピュイア「大人しく身ぐるみ置いてきな」
男「女、大丈夫か?」
女「大丈夫。構えて」
両手斧と打ち合えば負けてしまうのは実践済み。
そして魔術で背後から撃とうにも牽制役がいる。まさしく絶体絶命である。
二人が武器を下ろしかけた、その瞬間。
?「武器を納めよ!!」
声をかけたのは馬の下半身を持った人間。
頭に鳥の獣人と同じ羽根で作られた飾りを、腰には牛の獣人と同じ毛皮で出来た腰布を巻いた彼は、
手にした弓矢を引絞って走り寄る
ミノタウロス「面倒な奴が現れやがった…」
ハルピュイア「獲物の横取りはご法度だよ!ケンタウロス」
ケンタウロス「ここは我らの土地!横取りはどちらか?」
ミノタウロス「調子に乗るなよ馬野郎。1対1で勝てると思うな」ガチャ
男「おっと…俺を忘れちゃ困るな」ジャキン
女「貴方も動かないで…」スッ
ハルピュイア「くっ……」
ミノタウロス「こうなったら……逃げる!」ダッ
男「あっ、待ちやがれ!」ダッ
ミノタウロス「待てと言われて待つかよ!」ブンッ!
―――――ドゴン!!!!ガラガラガラ…!
言うや否や振りかぶった斧を壁にたたきつける獣人。
叩きつけられた岩にはひびが入り、やがて道をふさぐように崩れてしまった。
男「逃げられちまった…あの鳥やろうは?」
女「いつの間にか逃げた…」
男「まぁそれならいいんだが、であんたは敵か?」
女「馬鹿…」
女「まずはありがとう。貴方は?」
ミノタウロス「警戒させてしまったならすまない。」
ミノタウロス「私はミノタウロス。見ての通り馬の獣人で助けに来たつもりだが…」
女「……確かに。男も武器を下ろして」
男「おぉ、すまない」カチャン
ミノタウロス「いや、いきなり襲われれば警戒もするだろうさ」
ミノタウロス「ところでお二人は?」
女「私は女。魔物の図鑑の作製をしている途中でして…」
女「こちらは護衛の男です」
男「ど、どうも」ペコリ
ミノタウロス「なるほど。こちらこそよろしく」
男「逃げられちまった…あの鳥やろうは?」
女「いつの間にか逃げた…」
男「まぁそれならいいんだが、であんたは敵か?」
女「馬鹿…」
女「まずはありがとう。貴方は?」
ケンタウロス「警戒させてしまったならすまない。」
ケンタウロス「私はケンタウロス。見ての通り馬の獣人で助けに来たつもりだが…」
女「……確かに。男も武器を下ろして」
男「おぉ、すまない」カチャン
ケンタウロス「いや、いきなり襲われれば警戒もするだろうさ」
ケンタウロス「ところでお二人は?」
女「私は女。魔物の図鑑の作製をしている途中でして…」
女「こちらは護衛の男です」
男「ど、どうも」ペコリ
ケンタウロス「なるほど。こちらこそよろしく」
ケンタウロス「しかし妙だな。彼らが手を組んでいるとは」
ケンタウロス「そもそもここまで来ることなんてないのだが」
女「と、いいますと?」
ケンタウロス「ふむ、というのもこの山には3つの種族が住んでいてね」
ケンタウロス「我々ケンタウロス。斧を持っていたのがミノタウロス。そして翼を持つハルピュイアだ」
ケンタウロス「基本的にはお互いの領地というか、縄張りから出ないようにしているのだが」
女「それは?」
ケンタウロス「あぁ、毛皮と羽根飾りか?今よりもっと前は頻度に戦争があったから戦利品だ」
女「………」
ケンタウロス「戦果を誇示するようなものさ」
男「相手を威圧する意味合いにもなるな。刺激もしそうだけど…」
ケンタウロス「まぁ争わなくていいならそれが一番だがね。なかなかそうもいかない」
ケンタウロス「ところで、もし怪我などしてるようななら村へ案内しよう」
男「おっ、それなら…」
女「今回は先を急ぐ」
ケンタウロス「そうかい?見たところ膝などを怪我しているようだが」
女「大丈夫。日が沈むまいに下りたい」
男「?……まぁそういうことなら先を急ぎますので」
ケンタウロス「それは残念だ。では道中気をつけて」
女「ありがとう。貴方もお気をつけて」
男「で、どうしたんだ?」ヒソヒソ
女「後で話す…」ボソッ
男「よくわからんが任せるよ」
女「………」
―――――山岳 西の都への坂―――――
男「で?さっきはどうしたんだ?」
女「別に……」
男「嘘つけ。何かあったんだろ?」
女「助けてもらったからあまり言いたくないけど…」
男「"戦利品"のことか?人間で言えば生首持ち歩くようなものだしなぁ……」
女「そうだけど、それじゃない」
男「ん?違うのか」
女「本で読むところによると、ケンタウロスは女好き」
男「はぁ?」
女「ついでに言うなら酒癖が悪い」
男「あぁー…なるほど」
女「流石にちょっと…」
男「そうだな。それなら仕方ない」
女「貴方は泊まりたかった?」
男「興味が無いわけじゃないけど別に平気だ」
女「……ん…」
男「しっかし、鉄面皮の女でもそういうのは気にするんだな」ケラケラ
女「……げしっ」ゲシッ
男「さ、坂道で背中を蹴るなって。俺が悪かったよ」フラフラ
女「問答無用」ゲシゲシッ
男「転ぶってうわぁぁぁぁああああ!!」ゴロゴロ...ドン!
女「自業自得。置いてくから」
男「待てっての」ヨロヨロ
女「また無い」
男「西の都についたらお菓子かってやるから」
女「そんなもので釣られるとでも?」
男「……水飴とジャムを1ビンずつ」チラッ
女「……2ビン」
男「わかったよ」ハァ
女「ふふっ…」ニヤッ
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:ミノタウロス
種 族:獣人
生息地:山岳地帯
全 長:2m程度
特 徴:牛の上半身と人間の下半身を持った獣人
あまり頭はよくないがとても力が強い
そのパワーは文字通り岩を砕くほど
名 称:ハルピュイア
種 族:獣人
生息地:山岳地帯
全 長:2m程度
特 徴:鳥の翼と鉤爪を持つ獣人
力はあまり強くないが、高い飛行能力と狡猾さを持つ
腕が翼になっているため道具を使う事はほとんどない
名 称:ケンタウロス
種 族:獣人
生息地:山岳地帯
全 長:2m程度
特 徴:人間の上半身と馬の下半身を持つ獣人
知能が高く、道具や装飾を作る能力に長けている
反面、酒癖と女癖が非常に悪いと言う噂がある
ゴブリンがケンタウロスについて話さなかった理由(推測)を書き忘れると言う失態。
とりあえず今日はここまで。未だにどう書いて行こうか迷いっぱなしです。
ところで、皆さんはどんな魔物や魔獣が好きでしょうか?
単純な興味ですので、もし見てくださっている方がいましたら教えていただけると嬉しいです。
触手
触手
やっぱドラゴンだけどまだ早いよな
泉の精霊とか
ウィスプ系とか
スキュラみたいな人が変えられた系とかそそるものがありますよね(迫真)
ケットシーとか良いよね
妖怪が魔物魔獸に含まれるのか分からんが天狗
妖精ならジャックフロスト
>>80
触手は植物系か軟体系かでだいぶ変わりますよね。
あとはクトゥルフ神話など。
>>81
ドラゴンはやはり良いですね!ウィスプは世界各地に伝承がありますし鉄板です。
泉の精霊はイソップ童話やアーサー王伝説で出てきますが、ネット的には綺麗なジャイアンでしょうか。
>>82
ギリシャ神話の魔女や女神は嫉妬で娘を魔物に変えるのが好きですよね。
他にはラミアなどが有名ですね。
>>83
明言されてるわけでは無いですが、猫の恩返しのバロンなどが判り易いですね。
一度でいいからケットシーの王国に行きたいです。
>>84
妖怪系を出す案はあるのですが、たぶん極まりないこのSSに需要などあるのだろうか…
ジャックは女神転生のが一般的みたいですね。あまり詳しくないですが
―――――西の都―――――
男「ようやく都についたな」
女「長かった…」
男「街道を通れば掛かった日数の半分以下で来れるもんな」
女「……ん…何度か村に寄ったけど、街道沿いならもっと大きい村もいっぱいある…」
男「まぁ目的が目的だからな。で、今は……」
女「フェアリー・グリフォン・ヒッポグリフ・ドライアド」
女「スライム・ゴブリン・ミノタウロス・ハルピュイア・ケンタウロス」
男「9匹か。思ったよりは少ないな」
女「比較的人が入り易い場所だったから」
男「なるほど。とりあえず宿を探そうぜ」
女「よろしく…」コクリ
―――――ニャーオ
女「…?」
男「どうした?」
女「猫の鳴き声…」
男「何も聞こえないけどな」
女「エルフは耳も良いから。こっち…」スタスタ
男「おいおい宿屋はどうするんだ?」
女「いいから…」
男「まぁいいけどよ。ホントに猫が好きだな」
女「まぁね…」フフッ
黒猫「ニャー………」
男「お!こいつか?」
女「足を怪我してる」スッ
黒猫「………ニャー」アトズサリ
女「大丈夫だから……ハンカチを…」スッ
男「それで大丈夫なのか?」
女「出来るのはこれくらいだから」
男「医者とかは?」
女「自然に治る。たぶん引っかけただけ」
女「よしよし」ナデナデ
黒猫「ゴロゴロ…」
女「ん…もう行こう」
男「いいのか?」
女「後はこの子が自分で頑張る事…」
男「そうか。なら行こうぜ」
男「そうだ。ほれっ」つ パン
黒猫「~~♪」
男「腹が減ってたみたいだな」
女「貴方も猫が好き?」
男「犬のが好きだけどな」
女「そう。私は猫が好き…」
男「知ってるよ」
女「そう言うと思った」スタスタ
黒猫「ニャー……」
男「さて、宿屋は…」
女「あれ……」スッ
男「宿屋ブラウニー?変わった名前だな」
女「ブラウニーは妖精。それも家に住み着くタイプの」
男「へぇー、そんなのもいるのか」
――――――ガチャ...チリンチリン
男「空いてるかい?」
主人「空いてるとも。何人だい?」
男「二人でふた……」
女「ひと部屋。ベッドは別々が望ましい…」
主人「二人部屋か……なら大丈夫だな」カチャ
女「ありがとう…」チャリーン
主人「部屋は2階の203号室。食堂は1階の奥だ」
主人「夜は酒場を兼ねてるから呑みたくなった来ると良い」
男「久しぶりに酒が飲めるのか」
女「ほどほどに…」
主人「ところで…お二人は何の旅だい?新婚旅行にゃ見えないが…」
男「あはは、ボロボロだもんな」ドロッ
女「魔物の研究を…」ボロッ
主人「魔物の?女なのに珍しいな」
女「だからこの宿を選んだ…」
主人「それはお目が高いな。大正解だ」
男「なんだ?そのブラウニーとかいうのが本当にいるのか?」
主人「あぁいるとも。部屋に行く前に204号室に行ってみると良い」
男「隣の部屋?」
主人「少し前に宿泊客が帰ったから清掃中なんだ」
女「なるほど」
主人「ノックなどしなくていいから、"部屋を間違えた"くらいで行くんだ」
男「よくわからねぇが行ってみようぜ」
女「……ん…」
男「201、202、203…ここが俺達の部屋だな」
女「隣が204.入る」
男「よっしゃ!」ガチャ
?「!?」
男「あ?なんだこの茶色い子供は。近所の悪ガキか?」
女「それがブラウニー…」
男「嘘!?」
女「ホント…」
ブラウニー「……?」
男「ひげ面でボサボサの髪に茶色の服…たしかに子供じゃなさそうだけどよ」
女「ごめんなさい。部屋を間違えた…」ペコリ
ブラウニー「……」フルフル
男「うーむ、お前が掃除を?」
ブラウニー「……」コクコク
女「ところで、私は絵描き。描いても?」
ブラウニー「……」クビカシゲ
女「こう言う事」バシッ...ペラッ
ブラウニー「!!」
ブラウニー「……」ニコッ
女「あげる。でももう一枚描かせて」
ブラウニー「……」コクッ...ビシッ
男「おっ?なんだかポーズをとったぞ」
女「良いと思う」バシッ...ペラッ
女「ありがとう。良い絵が描けた」
女「ところで、203号室は?」
ブラウニー「……」→
男「右の部屋か?行き過ぎてたんだな」
女「貴方が数え間違えたせい」シレッ
男「なっ…」
女「それじゃ邪魔しないようにもう行く」スタスタ
男「ちょっと待てっての」スタスタ
男「っと、掃除頑張れよ」b
ブラウニー「……」フリフリ
―――――バタン…
―――――宿屋 203号室―――――
男「ふーっ、食った食った」
女「美味しかった…」
男「お前もあれくらい作れるようになると良いんだがな」
女「……じとっ…」ジトー
男「ま、まぁプロの料理が簡単に作れたらプロがいなくなっちゃうな」
女「……そういうこと」
男「ふー…」
女「ため息をつくと幸せが逃げる」
男「お前もよくつくじゃないか」
女「私は良い…」
男「納得いかねぇ理論だな」
女「ところで、ここまで無事に護衛を果たしたからには報酬があるべきだと思う」
男「んなもん王都に戻ってからまとめてで良いって」
女「今受け取るべき」
男「なんだよ?」
女「………」つ 蒸留酒
男「確かにそれは今受け取るべきだな」
女「グラスが二つ」コトッ
男「準備が良いな」
女「信賞必罰」トクトクトク...
男「それは頼りになる雇い主だ」
女「音頭…」
男「それじゃ、かん…」
―――――トントン...コトッ
男「っと調子狂うな。空いてるぞ!」
?「………」
女「?」
男「しょうがねぇ…誰だ?」ガチャ
男「誰もいない」
男「いたずらか何かかって、なんだこりゃ?」
女「……何?」
男「チョコレートのケーキが置いてあるんだがこれもお前か?」
女「私じゃない」
女「たぶんあの子」
男「あの子?」
女「ブラウニー」
男「根拠は?」
女「このケーキの名前」
―――――魔物図鑑―――――
名 称:ブラウニー
種 族:妖精
生息地:街
全 長:1m程度
特 徴:ボサボサな髪と髭を持った子供のような妖精
ボロボロ茶色い服を着ており、人目につかず掃除や炊事を行う
働きに対してささやかな対価を求めるが、恩はしっかり返す律儀者
まだ?
>>102
男「だとよ?」
女「覚えてる人…いたんだ…ちょっと嬉しい」
―――――宿屋 203号室―――――
男「ところで、お前の怠惰な魔術って何があるんだ?」
女「……?」
男「いや、分類してるって事はそれなりに種類があるんだろ?」
女「……そういうこと」
女「私が使えるのはごく一部。実際の数は判らない」
男「今使えるのは念写って言ったっけ?」
女「――念写<ソートグラフィー>――頭の中にある物を紙などに映し出す魔術」
女「他には……じゃあこの袋の中に何かものを入れて。私は眼を閉じてるから」スッ
男「じゃあ…そうだな」ガサゴソ
男「もういいぞ」
女「ん……――透視<クリヤボヤンス>――」
女「中に入ってるのはお金…金貨が1枚と銀貨が3枚……あとは銅貨が4枚?」
男「……」ジャラ
男「正解だ」
女「ある医者は貧しい人たちのために精一杯働きました」
女「ほとんど無料で手を尽くした彼はたくさんの命を掬います」
女「数年後、彼の家にお礼の手紙や荷物が毎日のように届くようになりました」
女「しかし彼は忙しく、一つ一つを開いて読む時間がりませんでした」
女「彼は思いました『物を透かせてみる事が出来るようになればいいのに』」
女「その結果がこの怠惰な魔術…透視」
男「相変わらず、理由が開くのが面倒…とかなんだな」
女「この魔術の本質は"楽をしたい"だから…」
男「他にもまだあるのか?」
女「私が使えるのはこの二つだけ…」
女「他には手を触れずに物を動かす――念力<テレキネシス>――」
女「歩かずに移動する――空間移動<テレポーテーション>――」
女「が比較的メジャーかな」
男「空間移動なんて実用化しててもよさそうだけどな」
女「歩かないだけで同じくらいの労力は掛かるから…」
男「というと?」
女「ここから王都まで空間移動すると、実際に歩いたのと同じだけ疲れる」
女「念力も同じ」
女「鉄の大窯を移動しようとしたら、それを持ち上げるのと同じだけ疲れる」
女「人力なら道具を使えば良いけど、これは個人で労力を背負い込むから下手すると死ぬ」
男「」
女「何事もうまくは行かない」
男「そ、そうか。大変なんだな」
女「怠惰するために努力する。ちょっとした矛盾だから」
女「あ、もう一つ思い出した」
男「怠惰?」
女「…ん……」
男「死ぬようなのじゃないだろうな?」
女「そういうのはあんまりない」
女「説明の前に一つやって見せる…」
女「私は今から口を開かないから確認してて」
男「おう」ジー
女≪あんまり見ないで、恥ずかしい≫
男「!?」
女≪これが私の使える最後の怠惰――通信<テレパス>――≫
女「喋らなくても相手に自分の思いを伝える事が出来る」
女「でもあまり遠くには飛ばせない」
男「相手の考えを読んだりはできるのか?」
女「できない。これは一方通行」
女「とある学者がたくさんの質問を受けた」
女「そして答えようにも周りがうるさくて声が聞こえなかった」
女「それで学者は直接相手の頭に答えを送る術を考えだした」
女「それがこの通信」
女「お互いにこの能力があれば秘密の会話ができるけどね」
男「今度は喋りたくないって事か。でもそれは便利だな」
女「便利?」
男「魔獣に襲われた時にお互いの考えを伝えあえれば連携しやすいだろ?」
女「相手が人間や妖精の類有効だけど、魔獣ならそうでもない」
女「言語を理解する相手なら秘密の作戦を伝えあえるけど、これは送るのに時間がかかる」
女「あれば使えるかもしれないけど、喋った方が早いし楽」
男「あらら、うまくは行かないもんだな」
女「うまく行くならもっと有名になってる」
男「確かに」
女「それじゃ、今日の講義はここまで…」
女「そろそろ出発」
男「そうだ。でもその前に飯くらい食わないと」
女「ん、食事したら街を出て北に向かう…」
男「了解」
―――――北の都 北部の荒野―――――
男「さてと…街道から外れて荒野だがこのあたりはどんなのが出るんだ?」
女「街が近いから動物中心…あとはあんなの」スッ
男「え?」
?「シュルルル……」
男「蛇の獣人…?」
女「おそらくラミア…これで」スッ
男「耳栓?」
女「ラミアの口笛は人を魅了するから」
女「まだこっちには気づいてないみたいだから奇襲する」ギュ
男「なるほど。了解した」ギュ
蛇は総じて熱が苦手である。
剣を抜いて走り始めた男の背を見て女は詠唱する。
女「――火球<ファイアボール>――」
男に気がついた獣人に火球が飛来する。
咄嗟に頭を下げてよけた隙を男は見逃さずに剣を振り下ろした。
しかし、その一撃を左手を盾にすることで防いだ獣人は右手の爪を男に振るう
ラミア「キィィイイイイイ」
男「くそっ」バッ
腕を斬り落とされた痛みからから吼える様な声。
剣を手放してバックステップした男は距離を開いて背中の木の盾を構えた。
ラミアはと言うと男の剣を拾って右手で構えた。
女性の姿である外見からすれば鉄の剣を片手で振るうのは難しそうだが彼女は魔獣の類。
蛇の如く這って男へ剣を突き出す。
―――――ガッ!!
森の妖精。ドライアドに与えられた木の盾で剣を受け、短剣をラミアの腕へと振り下ろす
咄嗟に剣を抜こうとしたところで木の盾に突き刺さった剣はすぐに抜けはしない。
男「取った!!」ブンッ
しかし短剣は空を切る。ラミアもまた剣から手を話したのだ。
だがこれで武器を取り返したからには優勢である。
男がそう考えるのは当然のことである。片腕が無くこちらには得物があるのだ。
だが、それは人間同士の話であった!
ラミア「キシャァア!」
蛇の獣人は剣から手を離すと同時にもう一度手を突き出してきたのだ。
そも、彼女の本来の武器は剣ではなく己の爪。
避けるにも短剣を振り下ろした体勢では姿勢が前傾になってバランスが取りずらい。
その刹那――
女「――鎌風<ウィンドカッター>――」
風の刃が獣人の腕を斬り飛ばした。
両腕を失った獣人を相手にするのはたやすいことである。
本来の蛇ならまだ口を気にするべきであるが彼女の頭は人間のそれとあまり変わらない。
その相手を斬るのは気持ちが良いものではないがこれも命を守るためなのだ。
男は盾に突き刺さった剣を持つと、盾を蹴飛ばして強引に剣を引き抜き振るう
男「せやっ!!」ズバン...ゴトッ
女「危なかった……」
男「また助けられたな」
女「仲間だから…」
ラミア「」
男「人を殺した感じがしてあんまり気持ちがよくは無いな」
女「仕方ない…ラミアは蛇の獣人だけど人間の子供が好き」
女「もしここに子供が来たら間違いなく殺されてた…」
女「街から近いし、それを予防できた…」
男「まぁそう考えるしかないか」
女「ん……」
―――――グォォオオオ
男「今度はなんだ!?」ジャキ
女「来る…」
男「でかい蛇?でも翼がある」
女「たぶんワイアーム…なんだこんなところに……」
女「――岩槍<グレイブ>――」
蛇の獣人を倒して一息ついたところに迫ってくるのは翼を持つ大蛇
身体をしならせて素早く迫る蛇のような竜の下から突き出された岩の槍はその体を串刺したように見えたが、
その瞬間に相手は皮膜で上空へと舞い上がった
男「飛行能力があるのか…厄介だな」
女「魔術で何とか落としてみる…」
空飛ぶ蛇を見上げた女は杖を構えて詠唱する。
森で戦闘した経験から、空を飛べる相手に風の魔術はあまり効果が無い。
そして地面から離れているから土の魔術も使いづらい
火か水か……そして彼女がはなったのは
女「――雷撃<ライトニング>――」
ズガン!大きな音と主に空中に発生した雷は空に舞った蛇へと飛来する。
その光に撃たれた蛇はよろよろと高度を下げ始め…女へと滑空した。
やはりこの程度で倒せはしないのだ
男「よけろ!」
女「――石落<ストーンブラスト>――」
男が叫ぶ声を無視して魔術を放つ。
空中に発生した人の頭程度の石を蛇へと飛ばしす。
しかし相手も甘くは無い。その場で羽ばたいて停止すると口を開いて火球を打ち出したのだ
飛ばした石は4つ。吐いた火球も4つ。お互いにぶつかって消滅する。
女「この程度じゃダメ……もっと強く…」
ふいに蛇は何かを見つけたように一方を見つめると、そちらへと飛びつく。
その先にあったのはラミアの死骸。辿り着いた蛇はそれを咥えて女をギョロリと見つめ…
女へと投げつけた!
女「くっ……――暴風<ストーム>――」
避けたのではその隙に自分へ向かってくるのは素人でも判る。
風の魔術を唱えて風を起こすと、飛来する死骸を押しとどめた。
見かけが蛇と言えど竜の眷属。すさまじい力で飛ばされた死骸を止めるには相応の魔力を消費する。
男「無視すんなよ蛇やろう!」
女が魔術を放つ瞬間。追い打ちのように飛びかかろうとした蛇を押しとどめたのは男の剣。
咄嗟に駆け寄って剣を振り下ろしたのである。
口に生えた巨大な牙で受け止められた剣をさながらつばぜり合いのように押しあい…
男「まだまだぁぁぁああああ!」
押し勝った!
振るわれた剣は蛇の両方の牙を砕き、その口へと振り下ろされる。
だが、頭を両断すると思われた剣は動かない。
牙は折る事が出来たが、頭を斬るより先に閉じられた口でさながら白刃取りを行ったのだ
男「何て奴だ!」
押す事も引く事も出来ない拮抗状態。
だが、こと戦闘に置いては人間よりも自然に身を置いている魔獣のが有能なのだ。
身体を捻った蛇はその長い尻尾で男の手を打ちすえ、その一撃によってできた一瞬のすきを見逃さない。
ラミアを投げつけた首の力を持ってして男の手から剣を奪い取り
ワイアーム「グォォオオオオ!」
その大口を開けて男へと飛びかかる。
―――――ズドン!!
ワイアームの大口が閉じられる。
だがそれは男に噛み付いてでは無い。頭上に現れた大岩によって
"閉ざされた"のだ
女「はぁはぁ…――岩落<ロックマウンテン>――」
男「また助けられたな」
女「気にしない…仲間…」
男「そうは言ってもそれなりに気にしちまうよ」
男「これでも道場一だった自信はあったしな」
女「人間相手と魔獣相手は違うから」
女「それにしても、なんでこんなところに…」
男「あんまり人前に出る様な奴ではないのか?」
女「街の近くで見かける様な魔獣じゃないと思う…」
男「そっか…でも確かに厄介だな。言ったん街に戻るか?」
女「………」フルフル
男「そっか。それじゃ先に進もうぜ」
女「…ん……」
男(もうすこし考えて戦わないと、いつか死ぬかもしれない)
男(装備とか戦い方とかいろいろ研究しないと、女にも悪いな……)
男(………)チョイチョイ
男「っと……腕引っ張ってどうした?」
女「何度か呼んだけど無反応…」
男「すまん、考え事してた」
女「そう……」
男「それで?用事は?」
女「もう少し行くと村があると思うからそこで休む」
男「了解。まだ日は高いけど休憩も必要だな」
女「それに……」
男「?」
女(男の状態がよくないから……)
女「なんでもない…」
―――――荒野の村―――――
男「この村か?」
女「ん……そう言えば装備品とかは大丈夫?」
男「今のところは大丈夫だけど、ちょっと見ても良いか?」
女「大丈夫」
男「おう、じゃあ時間決めて別行動のが良いか?」
女「一緒に行く…私も見たいものある」
男「了解」
男「それにしても…なんだか人が多い気がするな」
女「お祭りでもあるのかもしれない」
男「祭りか…でも違う気もするけど……っと、武器屋はここか」
武器屋「いらっしゃい!旅の人か?」
男「あぁ、いろいろ回っててな。弓とかあるか?」
武器屋「弓か…ならこいつがお勧めだ」ガチャ
武器屋「見たところ剣を使うみたいだし、小さめの複合弓だ」
武器屋「土台には樫の木を使って動物の角で補強してある。矢が小さめだから致命傷は難しいかもしれないが、威力は出るぞ」
男「うーん…そうだな。じゃあそれを貰おう」
武器屋「あいよっ!矢をつけて値段はこれくらいだ」
男「ありがとう」チャリン
男「ところで…祭りでもやってるのか?」
武器屋「いや?見世物小屋が来てるだけさ。面白いものが見れるぞ」
男「面白いもの?」
武器屋「そいつは行って見てのお楽しみさ」
男「そうか。じゃあ行ってみるよ」
女「終わった?」
男「おう、女は良いのか?」
女「大丈夫」
主人「さぁさぁ、めったにお目にかかれない魔獣の子供だよ!」
主人「そこの若いお二人さん。デートのコース是非寄って行ってよ」
主人「きっと良い記念になるよ!」
男「武器屋のおやじが言ってたのはこれか…行ってみるか?」
女「……」コクリ
男「ご主人。二人だ」
主人「あい毎度!さぁさお二人様ご案内だ。ゆっくり見て行ってよ」
主人「おっと中でイチャイチャするのはお断りだよ」ケラケラ
男「…そんなんじゃねぇっての!」
女「……」クイッ
男「っとと、引っ張るなよ」
男「……なんだこりゃ?」
女「大昔の文明のツボ」
男「こっちは?」
女「昔の誰かが描いた絵」
男「この小さいのは?」
女「たぶん……希少な石?」
男「入ってみたものの意味わからないものが多いな」
女「好きな人は好き……それより…」
男「主人が言ってた魔獣の子供?」
女「…ん……」
男「えぇっと、あの布の先だな」
男「ほらっ、先入れよ」
女「ありがと…」
ドラゴン「ぴーぴー」
男「魔獣ってドラゴンだったのか!これは確かにすげえな」
女「………」ザワッ
男「はいってよかったな……女?」
女「来て、今すぐ」タッタッタッ
男「もっとゆっくり見ても……わかった引っ張るなってば」タッタッタ
男「どうしたんだよ?」タッタッタッ
主人「おぉお二人さん。もうお帰りかい?」
女「あのドラゴン…どうしたの?」
主人「苦労して捕まえたのさ。すごいだろう」ドヤッ
女「早く逃がした方が良い……」
主人「おいおい、大切な金づるは逃がせないよ」
女「……くっ」ダッ
主人「なんだいありゃ?」
男「よくわからん!」ダッ
―――――村はずれ―――――
男「そろそろ説明してくれないか?」
女「……ドラゴンの子供は親を呼ぶ能力がある」
男「え?それって……」
女「あの見世物小屋が親のドラゴンを殺してるないなら、必ずこの村にはドラゴンがくる」
男「それじゃ早く知らせなきゃ!」
女「急にそんな事を言っても難しいと思う。それに主人には伝えた」
男「だからってやらないよりは…」
女「もしドラゴンが現れたら私たちじゃ勝てない。逃げるべき…」
男「見捨てろってのか?」
女「これが現実。実力をわきまえて」
男「そうは言っても!」
女「ワイアーム程度で苦戦したのに、ドラゴンなんて勝てない」
女「私たちは死ぬわけにはいかない…」
男「っ……」
男「わかった…じゃあお前は先に行っててくれ。すぐに追いかけるから」
女「ダメ……」
男「せめて多くの人に伝えないと」
女「………」パシンッ
男「…なんだよ!?」
女「貴方の雇い主は私。従ってもらう」
男「見捨てる事は出来ない!」
女「自惚れないで。なら貴方との雇用契約をここで打ち切る」
男「………」
男「くそっ!そんな奴だったのかよ」ダッ
女「………」ダッ
女「男の…判らずや……」
女「でも彼の選択肢を留める権利は無い…」
女「私は冷たい女だから…」
―――――グオォォオオオオオオ!!!
女「!?」
女「ドラゴン……」
女「子供を探してる……」
女「………」ダッ
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:ラミア
種 族:獣人
生息地:荒野
全 長:3m前後
特 徴:人間の上半身と蛇の下半身を持った獣人
好戦的と言うほどではないが、人間の子供を見つけると襲いかかる。
鋭い爪と長い蛇の尾で戦い、その口笛は人間を魅了する力がある。
また人語を発することはできない。
名 称:ワイアーム
種 族:ドラゴン
生息地:荒野
全 長:5m前後
特 徴:長い蛇に翼を持ったドラゴン
爪は持たないが鋭い牙と口から吐き出す火球とその長い体を武器し、
口に生えた2本の大きな牙には毒を持っている
また戦闘に対する知能に優れ、その場にある物を利用することも多い
名 称:ゴラゴンパピー(作中表記:ドラゴン)
種 族:ドラゴン
生息地:山岳等
全 長:30cm前後
特 徴:ドラゴンの幼態
鋭い牙や爪、硬い鱗もブレスも持たず飛行能力も大したことが無い
人間には聞き取れない音波によって親のドラゴンに居場所を伝える事が出来る
相変わらず文節が酷く、語彙力もないような文ですね。
他の勇者系SSのように、とてつもない戦闘力を持った勇者や剣士、魔法使いではなく、
モブクラスの能力の二人が旅をするってコンセプトなので戦闘が地味かもしれませんが、
これからもちまちま頑張りますのでよろしくお願いします。
キャラクター紹介とかしてみたい今日この頃、ではお疲れさまでした。
名 称:ドラゴンパピー(作中表記:ドラゴン)
種 族:ドラゴン
生息地:山岳等
全 長:30cm前後
特 徴:ドラゴンの幼態
鋭い牙や爪、硬い鱗もブレスも持たず飛行能力も大したことが無い
人間には聞き取れない音波によって親のドラゴンに居場所を伝える事が出来る
肝心なところを間違えていたので訂正
乙
妖怪もいいなら妖狐を出してほしいです
―――――廃墟の村―――――
女「………」ザッザッ
女「………」
男「………」
女「男…」
男「女か。間に合わなかった」
女「途中で飛んで行くのが見えた…」
男「そうか」
女「埋めるなら手伝う…」
男「いやいい。俺がやる」
女「一人じゃ大変…」
男「俺が居てもどうしようもないのは判ってるんだ」
男「でも、どうしても見捨た感じがして気分が悪いんだ」
男「一人にしてくれ…」
女「………」
女「私は砂漠を越えて北の都に向かう…」
女「貴方は帰って良い…」ザッザッ
男「そうか…気をつけて行けよ」
女「貴方も、道中気をつけて…」ザッザッ
女「………」クルッ
男「どうした?」
女「ここまでありがとう。楽しかった」ペコリ
男「よせよ。今生の別れじゃねぇだろ」
女「……ん…」
―――――砂漠前の村―――――
道具屋「いらっしゃい。お客さんも砂漠越えかい?」
女「…ん……必要な物を買いたい」
道具屋「そうか。とりあえず必要なのは毛布とマントや布。あとは水分だな」
道具屋「意外かもしれないが、昼は暑い砂漠も夜は寒いんだ」
道具屋「それに日差しが強いからマントなんかで守らなきゃならん」
道具屋「他に靴も砂で足を取られるから専用の物のが良いぞ」
女「知ってる。一式そろう?」
道具屋「そりゃ余計な事言ったな。これで一式だ」ドサッ
女「ありがとう。これで足りるはず…」チャリン
道具屋「まいどあり。気をつけて」
女「…ん……とと…」フラッ
道具屋「おいおい大丈夫かい?」
女「荷物が増えたから…時期に慣れる……」ヨロヨロ
道具屋「本当は荷物を積めるラクダなんかも手配できると良いんだが…」
道具屋「そうだ、お客さんは一人旅かい?」
女「…ん……」
道具屋「ならまだ空きがあるかもしれない」
女「?」
道具屋「この先の酒場で隊商が護衛を募集してるんだ」
道具屋「一人旅って事は心得はあるんだろうし、行って見たらどうだ?」
道具屋「幌馬車とはいかないが、ラクダくらいは乗れるかもしれないぞ」
女「それは魅力的…」
女「ありがとう。行ってみる…」
道具屋「おぉ、無事を祈ってるよ」
――――――ガチャン
マスター「いらっしゃい。冷たい水もあるよ」
女「隊商が護衛をしたい…」
マスター「あぁ、あのキャラバンか。なら奥の席だ」
女「ありがとう…」スッ
マスター「おいおい、何か頼んでくれよ」
女「じゃあ水を1杯。あと水筒全部に満タン」ガチャン
マスター「あいよ!そうこなくちゃな」
女「………」
女「貴方が隊長?」
隊長「あぁそうだが…あんたは?」
女「護衛をしたい」
隊長「なるほど、得物は?」
女「魔術を使える」
隊長「魔術ねぇ……」
隊長「今いるのは…おい副長!リストだ」
副長「リスト?ほらよ」ペラッ
隊長「魔術師は……なんだほとんどいないのか…」
隊長「というわけで採用だ」
隊長「報酬は金貨5枚で到着払いだ」
女「それでいい…砂漠を渡るのが目的」
隊長「だろうな。飯は出すが荷物は自分で用意しな」
女「大丈夫。万端…」
隊長「それは何よりだ」
女「出発は?」
隊長「明日の早朝だ。村の北側入り口集合」
女「…ん……」
マスター「話は終わったか?」
隊長「おぉ、今終わったところだ」
マスター「ほら、水だ。水筒はカウンターに置いてあるから帰りに寄ってくれ」
女「…ん……」ゴクッ
隊長「それにしても女で一人旅とは…大切な用事か?」
女「いろいろあって…」
隊長「まぁ旅する理由なんて人それぞれだな」
隊長「………どんな魔術が使える?」
女「属性魔術の中級までなら」
隊長「俺は上級魔術なんて見たことねぇしな」
隊長「ドラゴンと遭遇でもしなけりゃ大丈夫だろ」
女「………」コクリ
―――――北の砂漠―――――
女「………」
弓兵「暑いですね」
女「…ん……まだ良い方、日が頂点だともっと暑くなる」
弓兵「あはは、砂漠越えは慣れてるんですか?」
女「初めて…本で読んだ…」
弓兵「なるほど、知識も大切な武器になりますもんね」
弓兵「僕は弓兵をしてて、どんな魔物でも射ぬいて見せますよ」
女「そう…私は魔術を少々…」
弓兵「………」
弓兵「あの…」
女「――氷針<アイスニードル>――」ビュビュ
弓兵「うわっ!何を…」
女「蠍…気をつけて…」
弓兵「た、助かりました」ゾクッ
―――――ドゴン!!!
商人「うわぁぁぁモンスターだ!」
隊長「どうどう、お前らラクダを抑えろ!荷物持って逃げちまうぞ!」
隊長「護衛共!サンドウォームだ!給料分くらい働けよ!」
弓兵「行きましょう!」ダッ
女「…ん……」ダッ
地面から生えるのは大木と見まがうような太さの巨大ミミズ
口は4つに割れて鋭い、すり鉢状の牙を覗かせながらあたりを見回す
―――――バンッ!!
遠くの地面で炸裂したのは火薬の弾…音爆弾と呼ばれる道具だ。
サンドウォームは地中で生活するゆえに目が退化して音を頼りに移動している。
故に遠くで音をならせばそちらに注意が向くのである。
地面から生えた巨大ミミズは再び地中に戻って音爆弾がさく裂したところに顔を出す。
だが、そこにすでに待ち構えている一団がいた
剣士「おりゃぁあ!」ズバッ
戦士「このミミズ野郎!」ブンッ
槍兵「せいっ!」ヒュ
タイミングを見計らって振るわれる剣と斧と槍。
3人でミミズを取り囲むように構えて攻撃する姿は熟練だと見てとれる。
だが、皮膚が分厚いのだろう…ミミズがダメージを受けている様子はあまり感じない
弓兵「援護します!」ヒュンヒュンヒュン
蠍に驚いていた弓兵もここぞとばかりに弓を放つ。
三矢を瞬く間に、顔に向けて打ち込む
だが、それもまた分厚い皮膚で止まり、せいぜい石ころにぶつかった程度だろう
近接の3人が相手を撹乱して弓で顔を狙う。
形としては最適なのだがダメージが通らないのは相手の性質に次いでこの気候のせいもあるのだろう。
照りつける日差しと足場の悪い砂地では本来の実力を出せないのも仕方がないことだ
―――――ブンッ!ブンッ!
ミミズが暴れるが如く体をふるう。
その巨大な体はまるで棍棒を振りまわすようなもの、1撃が致命傷になってもおかしくは無い
つまり持久戦は不利である。
ならば1撃で仕留める魔術を使う必要がある。
砂漠に住まい、地中を進むミミズに火と土は効果が薄い。
かと言って風ではあの分厚い皮膚を両断する事も、巨体を吹き飛ばす事も難しいだろう
女「なら…これで……」
現在使える最大の魔術。
それ故に発動までに時間がかかるが、そこは賭けとしか言いようがないだろう。
こんなときに男なら、気がねなく安心して任せられるのに……
言っても仕方ないことだ
戦士「うぉっ!」ズサァ
斧が弾かれて戦士が吹き飛ぶ。
すかさず剣士と槍兵がカバーして体勢を立て直す。
人は違えど何度このやり取りをしただろう
弓兵「っく……」チラッ
助けを求めるように弓兵が女をチラリと見る。
それに答える余裕など女には無い。
己の精神力を魔力へ、そして魔力で世界へと干渉する
女「いったん離れて!――氷嵐<アイストーネード>――」
剣士に襲いかかろうとしたミミズを槍兵の槍が突いて追い返した直後、女の声が砂漠に響く。
3人の近接組は疑うもなくミミズと距離をとり、体勢を整えた刹那―――氷の嵐がミミズを包む
サンドウォーム「グォォオオオオ!!」
砂漠に似合わぬ凍てついた空気はミミズを覆い、
その丈夫な体を十分すぎるほどに冷やしていく。
やがて嵐が止んだ頃には1本の柱の出来上がりだ
戦士「おぅりゃ!」ガンッ
戦士「もう一発!!」ガンッ
戦士「まだまだ!!!」ガンッ...ビキッ
固まったミミズに何度も打ち込まれた戦士の斧は、やがてその体にヒビを入れた。
今は戦闘不能であれ、このまま放置すれば復活する可能性が十分にあるのだ。
剣士や槍兵も各々で攻撃を咥えていく。
弓兵「では僕も…とっておきです!!」
そう言う弓兵は変わった矢じりの矢をミミズの口へと放つ。
―――――ドガン!!!
弾けた。
弓兵「新型火薬付きの爆弾矢…とっておきですよ」ニッ
ヒビの入った身体は内側からの爆発に耐えられずばらばらに吹き飛んだのだ。
もちろん、弓兵が後に近接組にこってりしぼられたのは言うまでもないが、それは先のお話し
隊長「おぉ、倒せたのか!」
剣士「まぁ余裕だよ。なっ?」
槍兵「食われそうになった癖によく言うぜ」
戦士「はっはっはっ!結果オーライじゃないか」
隊長「追い払うくらいかと思ってたから助かった!おかげで他の連中も無事だ」
弓兵「それはよかった…」
戦士「それにしても、女…だったか?お前すごいな」
剣士「あぁ、彼女の魔法が決定打だったな」
女「…ん……仕事だから…」
隊長「お前を雇って正解だったよ。さぁ、先行してる隊を追いかけるぞ!」
弓兵「女さん、強いんですね」
女「そんなことない。相性が良かった」
弓兵「またまた謙遜して…」
女「貴方こそ、あの矢は?」
弓兵「新型の火薬を矢じりに詰めて打ち出す爆弾…」
弓兵「もっとも、火薬が高いからあんまり数は無いけどね」
女「火の魔術より強力かもしれない…」
弓兵「あはは、コストを考えると割に合わないよ」
女「でも、助かった…」
弓兵「必死でしたから」
女「貴方が戦功第一」ニコッ
弓兵「……」ドキッ
弓兵「ありがとうございます」
弓兵「急ぎましょう」ダッ
女「…ん……」ダッ
―――――廃墟の村―――――
男「これで…最後だな」ザッザッ
男「ふぅ…結構かかっちまったな」
男「………」
男「これからどうするかな」
男「女は砂漠を越えると言ってた…別のルートで急げば遠回りでも追いつくかもしれないな」
男「でも、俺は追いかけて良いのか?」
―――――ポツポツ…ポツ…
男「雨か……」
男「砂漠には雨は降らないんだろうな…」
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:サンドウォーム
種 族:魔獣
生息地:砂漠
全 長:10m程度
特 徴:砂漠に住まう巨大なミミズ
眼は退化しており聴覚が発達している
皮膚は分厚く熱に強いが、保湿性が高いため水分を多く含むので氷の魔術に弱い
また、内側からの破裂には比較的脆弱である
たまにはファンタジーから離れてSFの紹介。
イメージがわかない方は映画のトレマーズでも参照ください。
もうしばらく砂漠編が続きますが、今日はここまで。
あ、感想や要望なんかは頂けると喜びます。
ではおやすみなさい。
乙です
トレマーズ懐かしい
続編で普通に地上走る種類とかも出てた気がする
UMA出す予定ありますか?
>>133
妖怪が登場するイメージはあるのですが、その場所まで女が辿りつければ…ですね。
妖狐と言えば封神演義の妲己や玉藻前が有名どころですかね。
>>152
現実のUMAはファンタジーだとメジャーな存在だったりしますよね。
リザードマンやカーバンクルなんかはウィキペディアのUMA一覧にも載ってますし、
モンゴリアン・デス・ワームってUMAはサンドウォームに同じく、砂漠に出現する巨大ミミズです。
ちなみにどんなUMAがお好きで?
―――――北の砂漠――――――
隊長「よし、ここらで休憩だ!」
戦士「あぁ暑い…水をくれ」
商人「いい加減に覚えただろうがちょっとずつ飲むことだぞ」スッ
戦士「あぁ…ありがとよ…」コクッ
剣士「あとどれくらいでつくんです?」
副長「俺の計算なら今で半分くらいだな」
剣士「まだ半分かよ…ったく」
副長「これでも順調な方だ。文句を言うな」
隊長「ちと見回りに行ってくる」
隊長「女、槍兵、ついてきな」
槍兵「ったく了解…」ヤレヤレ
女「…ん……」
隊長「………」ザッザッ
槍兵「………」ザッザッ
女「………」ザッザッ
槍兵「隊長さんよぉ…」
隊長「なんだ?」
槍兵「隊長さん自体が見回りって事は何かあるんだろ?」
隊長「流石に鋭いな」
女「…?」
隊長「情報だとこのあたりにはコカトリスが居るはずだ」
女「……」
槍兵「バジリスク?どこかで聞いた名前だな」
女「バジリスク。砂漠に住まうトサカを持った8本足のトカゲ」
女「牙には強力な毒を持ち、視線を合わせると石化する」
槍兵「あれって実在するのか?」
隊長「実在する…この単眼鏡であっちを見てみな」スッ
槍兵「ん?」ジー
槍兵「なんだありゃ?石像がたくさん並んでるな」
女「全部商人……」
槍兵「ってことは……」
隊長「奴に石化させられた連中ってことだな」
隊長「判ったところで手分けして他に石化した連中が居る場所がないか探してみるぞ」
槍兵「おいおいマジかよ……」
隊長「絶対に戦闘するなよ。見かけたらすぐに戻って来い」
槍兵「どっちにしろ目印が無いような砂漠だ…遠出はできねぇよ」
女「……あれ…」スッ
隊長「あ?サボテン?…なるほど」
槍兵「サボテンがなんだよ?」
隊長「あれを集合地点にするってことだ。じゃあ行くぞ」
女「……ん…」
女「………」キョロキョロ
女「………」
女「…いない……」
女「……!」
女「――石落<ストーンブラスト>――」ドカドカッ
蛇「」
女「道具があれば解毒剤が作れる……」ヒョイ
女「それどころじゃないけど……」ポイッ
女「………」
女「………」
女「………暑い…」
―――――バサッ!
女「…!」
バジリスク「…シュルルルルル」ジー
女「……目線を下に…」スッ
女「立ち位置を間違えなければ影は見える……」
女「………!」バッ
女「ラクダが石に……」
バジリスク「…シュルル…キシャー」バッ
女「…くっ……」サッ...ゴロゴロ
女「……――暴風<ストーム>――」ビュゥウウ
女「……砂埃があれば眼は合わない…今の内に……」ジリジリ
バジリスク「キシャー」バッ
女「……っ!」ザクッ
女「……左腕が……」ポタッポタッ
バジリスク「シュルル……」ジー
女「毒がまわる前に逃げないと……」
バジリスク「シュルル…シュルル」
女「……とにかく腕を縛らないと…」シュル...ギュ
女「………」フラッ
女「……まずい……これ…で…――火球<ファイアボール>――」ヒュン
――――――バンッ!!
バジリスク「……」ビクッ
女「遠くに着弾させて意識を向けさせる…」ダッ
バジリスク「……フシュル…」ギョロ
バジリスク「キシャー!!」
―――――バンッ!
女「もう一度……」
―――――バンッ!
女「もう一度……」
―――――バンッ!
女「もういち………」バタッ
―――――――――――
―――――――
――――
――――――???――――――
女性「さぁついたわよ」
少女「わぁ…人がいっぱい!」
女性「今日からこの街で暮らすのよ」
少女「うん!」
―――――ビュゥウ
女性「あっ…少女、ちゃんとフードをかぶって」スッ
少女「っとと、ありがとう!」ニコッ
女性「どういたしまして」ニコッ
女性「ほら、お手手つないで行きましょう?」
女性「うん!」ギュ
――――――???――――――
女性「さぁついたわよ」
少女「わぁ…人がいっぱい!」
女性「今日からこの街で暮らすのよ」
少女「うん!」
―――――ビュゥウ
女性「あっ…少女、ちゃんとフードをかぶって」スッ
少女「っとと、ありがとう!」ニコッ
女性「どういたしまして」ニコッ
女性「ほら、お手手つないで行きましょう?」
少女「うん!」ギュ
女性「ここが新しいお家ね?」
少女「わぁ…」ガチャ
少女「コホッコホッ…埃だぁ…」
女性「あらあら、まずはお掃除からしなきゃだめね」
少女「少女もお手伝いする!」
女性「良い子ね」ナデナデ
少女「えへへ…あっ!」タッタッ
少女「お帰り、ママ」ニコッ
女性「ふふっ、ただいま。少女」
少女「パパも帰ってくるといいなぁ…」
女性「そうねぇ…パパは遠くにいるからもう少しかかっちゃうかもだけど…」
女性「少女が良い子にしてたらきっと帰ってくるからね?」
少女「ホント!?少女、いっぱいお手伝いして良い子にするね!」
女性「少女、ここでの暮らしは慣れた?」
少女「うん!」
女性「ならよかったわ」
少女「」
少女「あ、お外で遊んできても良い?」
女性「えぇ、行ってらっしゃい。ちゃんとフードは被るのよ?」スッ
少女「はーい!行ってきます」ガチャ...バタン
女性「遅くならないうちに帰ってくるのよー」
女性「………」
女性「はぁ………」
少女「今日はなにしよっかなー…」トコトコ
少女「あれ?」
白猫「ニヤー…」
少女「猫さんだ―!」タッタッタッ
白猫「ニヤー…」サッ
少女「待ってよ―」タッタッタッ
少女「はぁはぁ……ようやく追いついた」
白猫「………」シッポフリフリ
少女「あーそーびーまーしょ?」チョイチョイ
白猫「ニヤー」ゴロゴロ
少女「変な声」ケラケラ
白猫「ニヤ?」
少女「猫さんは何してたの?」チョイチョイ
白猫「ニヤー」ゴロゴロ
―――――北の砂漠―――――
――――
―――――――
―――――――――――
女「ここは………」
旅医者「気がついたかね?」
女「テント……」フラッ
旅医者「まだ寝ていた方が良い。今、隊長を呼んでくるから」サッ
女「バジリスク……」
女「毒で倒れた……はっ」バッ
隊長「生きてたか!心配したぞ」
女「迷惑をかけた……」
隊長「気にするなよ。命あっての物種だ」
隊長「それより、お前が倒れてからの話をするか?」
女「ん……お願い……」
隊長「探索してたら爆発音が聞こえたもんで急いで向かったんだが…」
隊長「お前が魔術で地面を吹き飛ばしながら逃げてたんだ。覚えてるか?」
女「なんとなく……」
隊長「単眼鏡で見つけた時にお前が交戦中だったんだが、着いた時にはお前が一人で砂漠に倒れてたってわけだ」
隊長「近くでラクダが石になってたが、やはりバジリスクか?」
女「ん……地面からいきなり出てきた」
隊長「あのあたりは石像もなかったし、若い奴かもな」
隊長「左手の調子は?」
女「少し痺れるけど…時期に動く……」
隊長「そりゃ思わぬ幸運だな。普通なら斬り落とさなきゃならないところだ」
女「………」
女「今は……?」
隊長「あぁ、時間か?お前を担ぎこんだ日の深夜…もう日付は変わったかな?」
女「1日無駄にさせた……」
隊長「進むのは送れたが、お前のおかげでバジリスクと交戦せずに済んだと思うさ」
隊長「気にする事は無い」
女「ありがとう…」
隊長「へっ、そろそろ休め。明日には出発するからな」
女「ん……その前に、荷物を…」
隊長「あ?ほれ」ガサッ
女「…ん……」ペラッ
隊長「紙?」
女「忘れないうちに……――念写<ソートグラフィー>――」ボヤッ
隊長「なんだ?」ノゾキ
隊長「絵?こいつは一体…?」
女「バジリスク。咄嗟だから横顔だけど……」
隊長「一瞬だろうが見たのか。大した度胸だ」
隊長「でもなんでこいつの絵を?」
女「それが目的だから……」
隊長「旅のか?図鑑でも作る気か?」
女「…ん……」コクリ
隊長「まじかよ……」
隊長「ま、まぁなんにせよ今日はもう寝ろ。これを飲んでからな」サッ
女「……薬?…」コクリ
女「明日からは汚名を返上する……」
隊長「期待してるぞ」バサッ
女「…お休み……」
―――――魔物図鑑―――――
名 称:バジリスク
種 族:魔獣
生息地:砂漠
全 長:2m程度
特 徴:8本の足とトサカを持つトカゲのような魔獣
爪と牙には強力な毒を持ち、視線を合わせた者を石化させることができる。
幼態時の毒は解毒剤で治療が可能だが、成態の毒は地面すら腐らせると言う
なお、雌はコカトリスと呼ばれている。
テストがてらバジリスク戦を地の文なしで描いてみた結果、迷走してしまいました。
バジリスク=コカトリスは悩みましたが、別にするには石化の魔眼を即死の魔眼にするくらいの差別化しかできず、
下手すると女を殺さざるを得ないので同一説を採用しました。
では今日はここまででおやすみなさい。
>>174
あ、案はあるんです。自信が無いだけで……
>>175
伝承によって様々ですが、コカトリスは視線に石化の呪いがありさらに強力な毒ガスを吐くとも、
あるいは仰るとおりで吐く息に石化の毒があるともいわれています。
バジリスクと性質が似てるため、二つは混同されたり雌雄とされたりしますが、
バジリスクはさらに厄介で、剣や槍などの武器を媒体として毒が感染するなんて言われたりするチートです。
余談ですが、水牛の魔物で『カトブレパス』というのがいて、こちらも視線に即死の呪いがあったり、
バジリスク・コカトリスの伝承と合わさって視線を合わせると石化させると伝えられたりもします。
――――――北の砂漠―――――
隊長「調子はどうだ?」バサッ
女「ん……すぐ支度する…」
隊長「おぉ、そりゃすまねぇな」バサッ
女「………デリカシー……」ガサガサ
女「腕の調子は……」ビリッ
女「不調……」
女「準備完了…いつでも行ける」バサッ
隊長「そうかい。ならこれかじってラクダに乗りな」ポイッ
女「……了解」パシッ
隊長「ちゃんと取れたな。なら問題なしだ」
隊長「よーし、出発するぞ!テントを畳め!」ザッザッ
女「…………」ビリッ...ポロッ
女「………」
弓兵「大丈夫ですか?」
女「問題ない……」
弓兵「そうですか…」
弓兵「無理しないでくださいね」
女「…ん……」
女「休んでる間…迷惑かけた…ごめん……」ペコリ
弓兵「あはは、誰も気にしてませんよ。おかげでバジリスクと戦わなくて済んだんですから」
弓兵「それに、女さんは戦力として期待されてるんですから」
女「……そう…」
弓兵「とにかく、魔物が来たら撃退するだけですよ」
女「…ん……」
副長「もう少し…っても1日くらいかかるが」
副長「まぁなんにせよあと半日もすればもう魔物は出てこないだろう」
副長「それまで耐えてくれ」
女「大丈夫……そんなに気を使わないで」
弓兵「そうは言ってもバジリスクの毒を受けたんだから気にしますよ」
副長「まったくだ。まぁ戦っては貰うがな」
女「…契約……」
副長「そういうこった」
女「異論ない……任せて…」
弓兵「やれやれ、意地っ張りな人だ…」
―――――バサッ!バサッ!
女「……!」
隊長「敵襲だ!上から来るぞ!!」
副長「隊長!ありゃアンフィスバエナだ!まずいぞ」
隊長「っく…仕方ねぇ…全隊の護衛を集結させろ!俺と副長はとにかく隊商を移動させるぞ」
副長「了解した。仲間に伝達だ!」
商人「了解だ」バッ
弓兵「まだこちらに気がついてない?」
女「違う……おそらく動きを見てる…」
―――――ざわざわ…ざわざわ……
急げ!!!
おぅおぅ敵はどこだ?
早くしろ!誰かそいつを後ろから押してやれ!!!
―――――バサッ!バサッ!
飛来したのは羽根の生えた蛇かトカゲか…
真っ赤な蛇の体から2本の前足だけ生やした中途半端な竜は風に乗って急降下する。
そのままの勢いのまま、別の隊から呼ばれた護衛……きっと槍の使い手と魔術師を押しつぶす!
「グァァァアアアアアアアア!!!!」
巨大な赤き竜は己を示すが如く吼える。
そのまま首を突き出すようにして眼の前に居た長い剣を構えた剣士へと襲いかかった!
長剣剣士「遅いぜ!」バッ
長剣剣士が横に飛ぶことで避け、その手にした獲物によって竜の首を切り落とさんと振りかぶる。
重量の乗った長い剣であれば、堅い鱗に覆われた竜の首にも一撃を与える事は可能。絶好のタイミングでの反撃と皆が思ったその瞬間……
まるで机のおもちゃを薙ぎ払うがごとく竜は突き出された首で剣士を薙ぎ払ったのだ!
吹き飛んだ剣士はその後ろにいた屈強な大鎚使いも、さらにその後ろにいたひょろ長の弩兵をも巻き込んで砂丘へと埋まる。
長剣剣士「いてて…ちょうど良いクッションだったぜ」
大鎚使い「早くどきやがれ!ったく邪魔な野郎だ」
弩兵「下が砂じゃなかったら間違いなく死んでたなこりゃ……」
3人は無事だ…だが埋まっている
その絶対的な隙を野生で生き抜いてきたハンターが…まして頂点とさえ言われる竜種が見逃すはずは無い。
すぐさまに埋まった3人へと向かって幾重にも牙が生えた口を開くと、紫の塊を吐きつけたのだ!
「「「ぐぁぁぁああああああああ!!」」」
3人の断末魔が木霊す。
あの紫の塊は誰が見ても毒。それをまともに浴びたのだ。人間が生き残れる道理などない。
あたりに人の溶ける腐臭を漂わせ、砂に埋まった3人の傭兵は腐肉へと、あるいは白骨へと変わる…
時を同じくして、竜が地面へと降りたって2人を押しつぶした瞬間。
竜の後ろ側に回りこんでいた護衛の傭兵もまた居た。
彼は女と同じ隊で戦っていた斧を使う戦士と剣士だ。
戦士「バックアタックだ!」ブンッ
剣士「一気に決める!!」ビュ
竜が地に着いた瞬間には地面を蹴り、斧が、剣が竜の尻尾を襲う。
相手が強大だからこそ長期戦によって戦力を消費する前に畳みかけるべきと言う長年の勘である。
だが、今度ばかりはそれが裏目に出た
戦士「な…尻尾にくち……」バクン!
尻尾の根元にばかり気を配りすぎて、視界から外れていた尻尾の先端にはもう一つ竜の顔があったのだ。
振るわれた斧ごと戦士の上半身は第2の口へと消える。
もう1人。剣をふるった剣士は確実に尻尾を斬りつけたがそれでも致命傷とは言えない。
―――――そして、毒を浴びた3人の断末魔が響く
魔術師「あんなのアリかよ……」
隊長の号令で集まって来た内の一人、魔術師がぼそりとつぶやく。
当たり前だ。それなりの実力を持った傭兵15人の上、6名が一瞬で死亡したのだから。
本来なら逃げるのがふさわしいような相手である。
女「……得意な魔術は……」
魔術師「俺か?俺は土だな…」
前後に頭のある竜に対して、近接だけじゃ不利である。
かと言って中距離を担う弓では鱗を越えるのには威力が不安だ。
つまり、2人となってしまったがやはり魔術が重要となる。
女「なら最大出力で――岩落<ロックマウンテン>――を…」
魔術師「またどぎつい要求だな。策があるんだろ?」
女「…ん……私は火で合わせる…」
魔術師「火?……なるほど。でも出来て2回だ」
女「…弓兵さん…足止めを伝えられる?」
弓兵「それくらいなら。でもあまり期待しないで」
弓兵が作戦を伝えに前線へと走る。如何に1か所に留められるかが勝負のカギなのだ。
全員の連携が欠かせない。
長弓兵「足止め!?無茶を仰る!」ビュン
槍兵「またあの嬢ちゃんに頼るのか…癪だな」ダッ
言うや弓兵の2倍はあろう長い弓を持った傭兵は、竜の眼を狙って弓を射る。
例え命中しなくても、生物敵に眼前に迫った物は避けてしまうからだ。
頭を振ってかわす限り攻撃を定めるのは難しい
返事と共に走った槍兵は逆に竜に近寄る。
上半身を持ち上げている2本しかない足に攻撃を仕掛けるためだ。
散発的とはいえ竜の視界をそらす長弓兵が居る限り接近は容易であり、そして巨体ゆえに足元は死角!
大盾「まぁ何とかして見せよう!」ガシッ
長槍「正直自信は無いけどな」ガシャ
大きな盾を構えた男は自信ありげに笑う。
反面、その後ろに隠れた長く、太い槍を手にした男は自信なさげに笑った。
尻尾の顔を前にして二人は1歩も動かない。
動かない故に竜は尻尾の顔をぶつけたり、あるいはかみついたりと攻撃を加えるのだが、
全て大盾で正面から受け止め、その瞬間に長い槍が反撃を繰り出す。
剣士「まだまだぁ!」バッ
闘士「背中を潰すぞコラァ!!!」スッ
先ほど剣でやや尻尾斬った剣士は体勢を立て直すとかけ始める。
目標は槍兵と同じく足だ。
後方から駆け寄ろうとするがゆえに距離は長いが、大盾を囮とすることで視覚へと潜り込む
手に鉤付きのグローブをはめた闘士はというと、やはり大盾を囮として走る。
だが、それは足へではなく尻尾に飛び乗って竜の背を駆け上っているのだ。
彼が狙うのは翼。片方の翼膜だけでも破壊することができれば飛行手段を失わせることができると、赤い地面を蹴った
竜の牙を巨大な盾が弾く。すかさず自分の後方から突き出される槍が牙を追い払う。
このやり取りをすでに何度繰り返しただろう。盾の小さなのぞき窓から反対側を見ると紫の塊が見えた
大盾「やべぇ!!」
急いでのぞき窓を閉めると、その刹那に3人を一瞬で死に至らしめた毒が手にした巨大な盾に降り注ぐ。
微かに金属の溶ける匂いを嗅ぎながら、それでも彼はまだ倒れない。
大盾「鉄壁の守りこそが我が武器!これくらいの毒など効かんぞ」
竜へと吼える。
するとそれに答えるが如く、再び牙の応酬が盾を襲ってきた。
5度、6度、7度…どこかで軋む音が聞こえるのは盾か身体か…
赤い背中を蹴ってより高く、より高く
そして竜の翼へ向かって…跳ぶ!
闘士「でりゃぁぁぁあ!」
空中で繰り出される斬撃の拳は翼膜を小さく斬り裂く。
だが、ここに感覚的な器官は無いのだろう。相変わらず前で後ろで足元で戦う仲間たちに注意が向いているのが判る。
翼膜に鉤爪を突き刺して落下をとりとめた彼は、壁を登るが如くもがいては穴を広げていく
闘士「まだ風を受けられる場所は!?」グラッ
左の翼をボロボロにし終わった頃、不意に世界が揺れる。
いや、正確には竜が揺れたのだ。
足元で戦っていた仲間が右足を斬り飛ばしたのだ。
しかし、それによってバランスは狂い竜は転倒し、結果…闘士は空中へと投げ出された
竜が傾くのが見える。
羽ばたく翼はボロボロで飛翔するほどの力は無いのだろう。
それでも体勢を立て直されればこちらが全滅する事もあり得るだろうか…
つまり、これが千載一遇…仲間が作り出したチャンス
女「……いける?」
魔術師「もちろん……行くぜ?――岩落<ロックマウンテン>――」
女「――噴火<イラプション>――」
竜の上空に巨大な岩が現れた!
以前、自分がワイアームに落としたものよりもさらに大きい。
どうやら彼が土の魔術が得意と言うのは本当なのだろう…つまり相性が良いのだ。
すると落下が始まった巨石から溶岩が噴出し始めた。
大地が生み出した究極の炎たる溶岩を生みだす魔術…噴火<イラプション>
それを魔術によって生み出された巨石に合わせる事でさながら巨大な隕石と言ったところだろうか。
長弓兵「すげぇ……」
弓兵「これなら……」
剣士「あの馬鹿、俺を殺す気かよ!」ダッ
槍兵「良いから走れ!」ダッ
二人の弓兵は思わず感嘆の声を上げ、剣士と槍兵は巻き込まれまいとひた走る。
降下する隕石は身動きが取れない竜を燃やし、潰し、破壊する。
二人の魔術師が作り出した強大な攻撃を受けた双頭の毒竜は唸るような断末魔を上げて息絶えたのだった。
魔術師「ひゅ~……やるじゃん」
女「貴方も……」ビリビリ...カラン
魔術師「どうした?杖なんか落として」
女「なんでもない。取れ……」カラン
魔術師「力が入らないのか?」
女「毒が抜けきって無かった……」
魔術師「…ん?あんたか、バジリスクの毒を受けたってのは」
女「………」
魔術師「まっ、とにかく北の都に到着するしかないな」
女「なさけない……」
魔術師「それであれだけの魔術を組めるだからそうとうさ」ニッ
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:アンフィスバエナ
種 族:ドラゴン
生息地:砂漠
全 長:7m前後
特 徴:頭としっぽの先に顔を持つ双頭の毒竜
2本の前足で上半身を持ち上げ、背中には1対の翼を持つ。
凶暴で戦闘知能が高く、また前後の口から強力な毒を吐きだすことができる。
片方の頭を潰しただけでは死なず、二つの頭は別々に思考することができる
ちょっとチートじみたドラゴンを出してみました。
お恥ずかしながら補足ですが、砂漠編に出てきている「隊商」は3つの隊から成り立ち、計15名の護衛が雇われています。
護衛のメンバーをざっと紹介しましょう。
1番隊(リーダー:隊長)
・女 :一応主人公。途切れ途切れで話すため「…」が多い。中級程度なら各属性の魔術を操ることができる
・剣士:片手剣を使用する傭兵。毒竜の右足を斬り落とした
・槍兵:一般的な槍を使用する傭兵。砂漠のモンスターに少し詳しい
・戦士:両手斧を武器にする傭兵。毒竜に背後から攻撃したところを尻尾の頭にマミられた
・弓兵:敬語で話す弓の傭兵。まだ高価な火薬を使用した特殊な矢を持っている
2番隊(リーダー:副長)
・長剣剣士:両手の長い剣を使用する傭兵。薙ぎ払われた上に毒を浴びて死亡
・大鎚使い:両手持ちの大きなハンマーを武器にする屈強な傭兵。死因は同上
・弩兵 :いわゆるクロスボウを武器にしているひょろ長な傭兵。死因は同上
・短弓兵 :騎乗用の短い弓を扱う傭兵。毒竜に押しつぶされて死亡
・魔法使い:黒いローブの魔術師。得意な属性は水。死因は同上
3番隊(リーダー:商人)
・大盾 ;身体をすっぽりと覆う巨大な盾を持つ傭兵。長槍とは双子、2人1組で戦う
・長槍 :馬上のランスのような大きな槍を使う傭兵。大盾の弟
・闘士 :鉤爪のグラブをつけた言葉遣いの悪い傭兵。身軽で奇策を好む癖がある
・長弓兵:ロングボウを使う傭兵。連射速度は遅いが正確で鋭い射撃を行う
・魔術師:黒いハーフマントの魔術師。得意属性は土。最大出力の土魔術は女が驚くほど
勝負はターン制じゃないということで、
2レスが同時に行われている内容だったり、あるいはその次の行動だったりと読みづらかったら申し訳ないです。
思考錯誤中と言う事で勘弁いただければ嬉しいです。
ではおやすみなさい。
そういえば、今まで登場した魔獣について>>176的に解説は必要ですか?
―――――女さんの魔物講座その1―――――
男「需要があるみたいだがやるのか?」
女「もともとはこっちのがメインな気もする」
男「そうなのか?」
女「いろんな魔物を紹介したいからSSを書いてみたけど。結局SSじゃ伝えられないことに気がついた」
女「って言ってた…」
男「誰が…とは聞かないでおこう」
女「それが懸命」
女「では助手君…はじめる前に注意事項を」
男「誰が助手だよ……」ケッ
男「じゃあ注意事項。このコーナーは本編で出てきた魔物の現実での成り立ちを説明するコーナーだ」
男「できるだけ原点に近く書くようにはしてるが、どうしても独自解釈を入れた場合や原点以外を参考にした場合もある」
男「というわけで、間違っていても生温かい目で見て欲しい。また、見てくださってる方の解釈などを教えてくれると喜ぶぞ」
女「上出来…じゃあ、始める」
女「まずはこの子…
名前:フェアリー
図鑑:>>23
解説:
そもそもフェアリーというのは妖精の総称。この世界でのフェアリーは現実では『ピクシー』と呼ばれることが多い。
また、妖精は神と人間の中間であるとも言われており、魔物というよりは超自然的な存在に近いとされてる。
ピクシーについて解説すると、外見はコンティングリー妖精事件の捏造写真によって作られたイメージが強く、
30cm程度で背中に羽がある少女の姿が一般的。
性格はいたずら好きでどんな隙間からも家の中に忍び込み、ポルターガイストをおこしたり子供をさらってしまう…
等と言われている。
人間に対しては友好とされておりさらわれた子供もほどなくして見つかる事が多いみたい。
現実の世界だと、作品としてはディズニーアニメのピーター・パンに出てくる「ティンカーベル」が有名。
少し中二的にするなら、空の境界の第六章・忘却録音に少し出てくる…
だいたい、こんな感じ」
女「次はこの子
名前:グリフォン
図鑑:>>24
解説:
名前の語源となったのはギリシャ神話。でも登場自体はいろいろな作品にいろんな姿で出てる。
例えば旧約聖書では、頭は鷲だけど身体は牛として登場…もっともこれは身体が白いだけで獅子であると言われたりもする。
ギリシャ神話ではグリフォンは神々の乗る戦車を曳く役目を持ってる。
そのために馬が同様の役目を担う事からライバル視しており、見つけると殺してしまうという。
しかし、後に設定が変更されたらしくグリフォンが狙うのは『オス』であり『メス』の場合は犯して子を孕ませるとされるようになった。
こうして生まれたのがヒポグリフ
逆に中東での伝承ではグリフォンは宝の番人とされた。紋章学でグリフォンが『知性』を表すのは、
宝を見つけ、それを守るという中東からの伝承の影響が大きい。
現実の世界ではハリー・ポッターシリーズでの寮「グリフィンドール」も紋などに描かれてる。
他にも空の王である鷲、陸の王である獅子から「王家」としての紋章ともされ貴族などに愛された見たい。
アイスランドの国章の左上に描かれている白い鳥はグリフォンだとされてる……
グリフォンはとても由緒正しいだけに、大体はウィキペディアを見てもらった方が早いかもしれない……」
女「今日はここまで」
男「おう、お疲れさん」
女「繰り返すけど…間違ってる部分もあると思うから鵜呑みにはしないで」
女「逆に、ウィキに書いてないけど伝えられている物もあったりする…」
男「まぁ、あそこは事実のみを書くのが基本だから魔物関係はあまり深く書けないだろうしな」
女「…ん……」
男「ところで、本編は書かないのか?」
女「私に聞かないで……」
男「そりゃ、まぁそうだな。」
女「というわけで今日はここまで…」
というわけで、試しに書いてみました。
飽くまでここも女が喋ってるという設定なので、ら抜き言葉とかは仕様ですよ。
本編も進められるように頑張りますので、またお付き合い頂けると光栄に、ではおやすみなさい
―――――北の都―――――
医者「腕の調子はどうだね?」
女「…ん……もう痺れは無い」ギュッギュッ
医者「そうか、それならよかった」
女「ありがとう…」
医者「なに、仕事だからね」
医者「それにしても、バジリスクの毒を浴びて平気だったなんて本当に運が良い」
医者「すぐの処置が良かったからだろう」
女「…ん……もう行ってしまったけどね」
医者「君が運ばれてからもう1カ月くらいは過ぎたしね」
女「………」バサッ
医者「そろそろ行くのかい?」
女「旅の途中……」
医者「図鑑作りだっけ?ならこれを持って行きなさい」スッ
女「……?」
医者「解毒薬だ。もう問題は無いと思うが、念のためにね」
女「…ありがとう」ペコリ
医者「腕のしびれのほか、一般的な毒には効くはずだけどあくまで一時的だ」
医者「危なくなったら近くの村か街に避難するように」
女「…ん……そうする」スタスタ
女「治療代と薬代…」チャリン
医者「治療代だけ受け取っておくよ。そっちはサービスだ」スッ
女「…そう、助かる」スタスタ
医者「お大事に」
女「とりあえず…北の鉱山跡…火山に向かうとして…」スタスタ
女「準備はしてきたから道具はある…」スタスタ
女「後は護衛をどうするか……」スタスタ
女「お金も無くなって来たし、単独行か……」
女「魔物がお金を持っていることも多いとは言え、パトロンが居ないのはつらい…」
女「……?」
―――――ぬおー…
女「路地裏…?」タッタッタッ
―――――北の都 路地裏
虎猫「ぬおー…」ジタバタ
女「大きい……」
虎猫「ぬおー?」
女「どうしたの?」チョコン
虎猫「ぬおー…」カベタシタシ
女「この壁の向こうに行きたいの?」
虎猫「……」コクリ...タシタシ
女「ちょっとまって…」スッ
女「………ッ!」
女「重くて持ちあがらない…」
虎猫「おー…」ショボン
女「大丈夫……」ニコッ
女「――風<ウィンド>――」フワッ
虎猫「ぬおー!」パタパタ
女「暴れないで…」スッ
女「これでいい?…」
虎猫「ぬおー!」コクコク...ピョン
女「ん…よかった……」ニコッ
女「……さて、護衛……か」
女「男が居れば良いんだけど……」
?「何かお困りかい?」
女「……!」
?「………」
女「男…なんでここに?…」
男「護衛を探してる魔術師が居る気がしてさ」ニッ
女「てっきり帰ったかと思ってた」
男「あはは、一度帰ったさ」
女「それにしては…」
男「早いか?まぁ早馬だったしな」
男「それに、魔物に会う事を考えなければ道も整備されてるしさ」
女「そう……」
女「また私に付き合う…?」
女「先に言っておくけど、これから先も私は冷たいまま…」
女「無理な時は逃げる…」
男「俺もあれから頭を冷やして考えたさ」
男「確かに人は助けたいが、無理に突っ込むのは蛮勇だ」
男「でも、助けられるときは俺は助けたい。それでいいか?」
女「………」
女「ん……それなら」スッ
男「契約成立だな。報酬は出世払いにして置くぜ」ギュ
女「実質…ただ働き」ニヤッ
男「久々にその顔見たぜ。やっぱり似合わねぇよ」ニッ
女「今さら……じゃあ、貴方の装備を整える」スタスタ
―――――北の都 宿屋―――――
男「一日買いものになっちまったな」
女「大丈夫…準備は必要…」
男「しっかし、流石に鉱山と工場で成り立ってる北の都だな。装備が豊富だ」
女「王都にも探せばあるだろうけど…この街は小さな工房が多い…」
女「しっかり選べば工房独自の強力な物も手に入る……」
男「まぁ、その代わりに失敗作を買わされる時もあるんだけどな」
女「そのあたりは御愛嬌…」
男「全くだ」
女「貴方がお金を多めに持ってたおかげで助かった」
男「わりぃ、あの時は手持ちを分配しないまま持ってきちまったしな」
男「それに一度帰った時に多めに持ってきたし」
女「何か言われた?……」
男「頑張れよ…とだけな」
男「それより一応装備を確認するか」
女「ん……それが良い」
―――――装備―――――
名前:女
種族:エルフ
職業:魔法使い
装備:
頭:とんがり帽子「魔法使いの定番アイテム。つば広で日差しを防げる」
体:マント「フード付きで身体を覆えるマント。実は魔力で暑さ・寒さを少しだけ緩和する効果がある」
武器:無の魔力杖「魔力を少し増幅させる石のついた杖。特化した属性がないが減退させてしまう属性もない」
道具:大量の羊皮紙、旅支度
名前:男
種族:人間
職業:剣士
装備:
頭:バンダナ「母が作ってくれた赤いバンダナ」
体:精錬鉄の鎧「北の都で作られた強固な胸当て。通常の鉄よりも重量がある」
武器:精錬鉄の剣「北の都で作られた丈夫な片手剣。重量はあるが切れ味も高い」
:森の盾・改「ドライアドに贈られた盾をベースに精錬鉄で強化した丸い盾。市販品より軽い」
:複合弓 「樫の木と動物の骨で作られた弓。矢が短いので射程は短めだが近距離でも威力がある」
道具:旅支度
※旅支度(食料、水筒、医薬品、テント、ランプ、ナイフ、薄手の毛布)を二人で分担
男「こんなところか…そう言えば杖を変えたんだな」
女「ん……媒体としての杖だけだと少し不安だから魔力を増幅する石をつけてみた…」
男「どれくらい違うんだ?」
女「特化させてるわけじゃないから全体的に水増ししてる程度…あまり期待はしないで」
男「そうか……?」
女「一応説明する?」
男「………頼む」
女「ん……」
女「魔術の属性は基本的に8つ」
女「地・水・火・風・氷・雷・光・闇」
女「でも、光と闇は特殊……使いこなせる人は少ない…」
男「女は使えるのか?」
女「無理……」
女「大体の魔術師はどれかしらの属性に特化させてる」
男「特化させて強力な魔術を使えるようにするんだな?」
女「ん……」
女「属性に特化すると、その属性は強力になるけど、対応する属性が弱くなってしまう」
女「具体的に言うと地←→風・火←→氷・水←→雷・光←→闇」
男「へぇ?火と水じゃないんだ?」
女「ん……よく間違われる」
男「それで、女は何が得意なんだ?」
女「私は得意な属性がない。その代わり苦手な属性がない」
男「万能型…悪く言うと器用貧乏か?」
女「そう……だから同じく特化させてない石で強化してる」
男「まぁいろんな魔物と戦うかもしれないもんな」
女「そういうこと……」
女「以上、女さんの魔術講座」フッ
―――――ガタガタ、ガタガタ
男「?…ネズミか?」
女「それにしては大きい気がする…」
男「確かに、ってことは泥棒か」
女「かもしれない……その板外せる?」
男「ここか?…外せるぞ?」
女「なら合図に合わせて外してみて」
女「………」ドンッ!
―――――ドタドタドタ!
男「杖でつついたところから逃げてる感じだな」
女「……それ」ドンッ!
女「開けて…」
男「おう」ガタッ
―――――ドサッ
?「いたたたた………」
男「なんだこいつ?犬の獣人か?」シャキン
女「違う……おそらくコボルト。妖精の一種」
コボルト「あ!見つかっちまったかぁ……」
男「お前、天井裏でなにしてたんだ?」ジリジリ
コボルト「え?あ、あはははは……」アトズサリ
女「男…脅かさないで…」
コボルト「べ、別に悪さしようとしてたわけじゃねぇんだ」
コボルト「面白そうな話が聞こえたんでつい……」
女「そう……でも会えてよかった…」
コボルト「へ?…それはどういう…」
女「…ん……」ペラッ
コボルト「あ!こいつは俺かい?」
男「女は魔物の図鑑を作ってるんだよ」
コボルト「そうでやしたか…それなら一つ情報を…」
コボルト「どうせこの先の廃坑にいくつもりなんでしょう?」
コボルト「なら、あの鉱山と火山にはドワーフが住んでるんでさ」
女「ドワーフ……」
男「なんだ?そのドワーフってのは」
女「地下にすむ妖精で、鍛冶なんかが得意」
男「へぇ、なるほどね」
コボルト「でもあいつらは偏屈だ」スッ
コボルト「そこでこの石を渡せば話は早い」
女「これは?」
コボルト「人間達はコバルトって呼んでる石で、俺たちは人間の鉱石とこいつと取り替えて鉱物集めをしてるのさ」
男「盗人じゃねーか」
コバルト「まぁそう言いっこなしですぜ。人間達は俺達の住処も堀荒しちまうんだし」
女「…ん……そうね…」
コバルト「他にもあのあたりの洞窟にはオークやリザードマンなんかが住んでる」
コバルト「気をつけて行ってくだせぇ」
女「ありがとう…お礼はこれで良い?」スッ
コバルト「お!牛乳。ありがてぇ」
男「牛乳で買収できるのか……」
女「物々交換……」
男「あはは、そうだな。言葉が悪かった」
コバルト「それじゃ、俺は行きますがお二人もお気をつけて」サッ...ドタドタ
男「なんだか賑やかな奴だったな」
女「でも助かった。廃坑周りだけでも4種。火山も合わせればけっこう見つかりそう…」
男「そうだな。ところで、今はどれくらい集まったんだ」
女「ん……これで全部…」
女「明日出発するから…寝るまで読む?」
男「おう、見せてくれ」ガサッ
女「………フフッ」ニコッ
―――――魔物図鑑―――――
名 称:コボルト
種 族:妖精
生息地:洞窟・街
全 長:1m前後
特 徴:犬の獣人のような姿をした妖精
街では屋根裏などに住み着き、時には有益な情報を与えてくれる。
また妖精族の特徴にそぐわずいたずらを好み、人間の持つ鉱石を加工できない物にすり替えてしまう。
なお、そのすり替えられた物質はコボルトの名をとって"コバルト"と呼ばれる。
ちょっと短めですが、男を復活させたところで今日はここまで
火山や洞窟、地下に住む魔物は多いのが基本なのでこれから稼いでいきたいところ
ではおやすみなさい。
コボルトがコバルトになっとる
―――――女さんの魔物講座その2―――――
つ カンペ
男「なになに?いろいろ忙しいから間を繋げ?」
男「忙しいの大概は趣味じゃねーか」バンッ
女「…仕方ない。趣味も大切……」
男「まぁそれは認めるけど、生きなり投げられてもなぁ…」
女「気にしたら負け」
男「ところで、講座のルールをある程度決めたんだよな?」
女「…ん……」
女「登場した日にちごとにやろうと思ったけど…それだと追いつけない」
男「基本的に1回の投稿で1体は新しいのが出てくるもんな」
女「だから、シーンごとにまとめて紹介する…」
男「今のところ森・山岳・荒野・砂漠だな」
女「街については適当に割り振る…」
女「では始まり始まり…」パチパチ
女「今日は中途半端だから森の残りだけ…
名前:ヒッポグリフ
図鑑:>>39
解説:
先に紹介したグリフォンとメス馬から生まれる魔獣。
グリフォンの項ではヒポとなってるけどここではウィキペディアに習って以後、ヒッポで統一する。
まず名前からだけどヒッポは馬、グリフはグリフォンを意味した併せ言葉。
元々は不可能を意味する言葉として『グリフォンと馬を交配させるようなもの』が転じて魔獣となった。
グリフォンの項で説明したけど、グリフォンはもともとはオスメス問わずに馬を見ると殺してしまう性質がある。
本編では前後とも馬の足であるように書かれているが、本来は頭・翼・前足が鷲、体・後足が馬とされてる。
本編で前足を馬にしたのは馬としての機動力を象徴するため。
もっとも、一般的には…という話だから、中には前足が馬のヒッポグリフもいるかもしれないけど
性質だけど、頭が鷲なので肉食。もちろん馬を見ると襲いかかってくる。
グリフォンと違い、オス馬・メス馬での扱いの違いは伝えられないから、馬全てが駄目だと考えるべき…。
しかし、半分が馬なだけに手なずけるのはグリフォンよりは楽とされてる。
高い飛行能力と知能を持つ鷲と、古来から人間を乗せて走る馬の中間だけに乗り物としては非常に優秀とされた。
ただし一つ難点を上げるなら、同じく馬であり飛行できるペガサスを見ると対抗心を燃やしてしまうとされる事。
もし空中で遭遇すると振り落とされるかもしれないから注意して…。
最後に現実世界での作品としては、おなじみのハリーポッターシリーズ「アズカバンの囚人」にて登場する。
こちらは一般的な前足が鷲のタイプ。知能が高く高貴なために敬意を払う必要があるけど、高い飛行能力を持ってた。
少し長くなった…寝てた人は起きて……」
女「今日のラスト…
名前:ドライアド
図鑑:>>40
解説:
別名だとドリアードとかドリュアスって呼ばれてる。
妖精と言うより木の精霊に近いとされて、木に埋まった緑髪の女性として伝えられてる。
基本的には木を守る存在とされてて、木を傷つける者には不作や干ばつを起こして反撃するみたい。
植物を操る能力を持っていると考えれば判り易い…
本来、彼女たちはイケメンを好んでいて、女性の姿に化けてでては誘惑して木に引きずり込んだりする。
といっても殺すというわけでは無くて、一緒にいたいがためのいたずらと考えれば大丈夫。
ただし、木の中の1日が外では10年や100年の事もあるから浦島太郎状態。
受動的な妖精なのであんまり作品として描かれる事は少ない見たい。
カードゲームなんかでは定番だけど、映画やアニメなんかで出てるのを>>1は知らないそう。
強いて言うなら、ドリュアスって名前の競走馬がいるみたいだけど……
以上。質問は?」
男「お疲れ様」
女「ん……」
男「次回予告しておくか?」
女「次にやるときは山岳編で出てきた3獣人とゴブリンを説明する」
男「まぁこのコーナー自体が不定期だからいつになるかはわからないけどな」
女「ところで…誤字が多い」
男「特に名前間違えがちまちまあるな。大切なところだから間違えないでほしいもんだ」
女「まったく……」
―――――ペラッ
男「ん?」ガサッ
『ごめんなさい』
男「だとさ?」
女「かろうじて許す……気をつけて」
男「手厳しいもんだ。それじゃあ本日はここまでだ」
女「…ん……お休み……」
ちなみに趣味ってなに?
―――――大鉱山跡―――――
男「ここだな……ほれ、松明だ」ボッ
女「…ん……」
男「中はやっぱり暗いな…」
女「来る人はいないだろうし…」
男「まぁそうだな。お?壁の松明はつきそうだな」ボッ
女「悪いけど、残ってる松明を灯しながら行く…」
男「そうだな。帰りの目印になるし迷わないで済むだろう」
女「……」コクリ
―――――ガサッ
女「……気持ち悪い…」バサッバサッ
男「やっぱり蜘蛛の糸が酷いな…」
女「まったく…」バサッバサッ
男「あの犬……なんていったっけ?」
女「コボルト…」
男「そうそう、コボルトが言うにはオークとドワーフとリザードマンが居るんだっけ?」
女「そのはず…」
男「結構歩いたと思うが、未だに何も出てこないな」
男「せいぜいコウモリくらいか……っと、広いな?」
女「昔の集積所……?」
男「特に糸が酷いみたいだが…どうする?」
女「こんなところ歩きたくない……」
女「――火球<ファイアボール>――」ボッボッボッ
男「おー、よく燃えるな…燃えすぎじゃないか?」
女「大丈夫――水……」
――――――キュァァアアアア!
まるで甲虫の鳴き声のように甲高い音が広場に響く。
咄嗟に剣と盾を構えた男が蜘蛛の巣の燃え広がる空間に目を凝らしていると重たい何かの落下する音が聞こえた。
男「何かいる…火を消してくれ」
女「貴方に言われなくても…――水<ウォーター>――」バシュ
先ほど止めてしまった詠唱を再び行い、燃え残る糸の火と消し止める。
相手の正体が判らない以上はあたりの火が有利とは限らないからだ。
うっすらと立ちこめる白煙の中、複数の赤い丸が浮かび上がる。
すると男が構えた盾に強い衝撃が走った。
男「なんだこいつは…」ガシャン
男の目の前に現れたのは大きな芋虫だった。
先ほどの衝撃はどうやら転がってぶつかって来た衝撃らしい、
芋虫の幾重に重なった口が開き、太い糸が射出される。
それは振り下ろされそうになっていた男の剣を弾き飛ばす。
男「くそっ!」バッ
咄嗟に飛びのいて弾かれて地に落ちた剣を拾おうと男が手を伸ばす。
だが、剣についた糸は地面に剣を張りつけてしまったらしい。
持ちあがるには持ちあがるが地面に引っ張られてしまう
女「任せて――火球<ファイアボール>――」ボウッ
のろのろと男へと向かう芋虫に女が魔術を見舞う。
先ほど糸を焼き払ったものよりも…否、いままで旅をして放った同様の魔術よりも強力な火球だ。
芋虫も迫る火球に気がつき、咄嗟に糸を吹きかけた。
だがそんなものは焼け石に水どころか火に油である。
吹きかけられた糸ごと燃やし、火球は芋虫へとぶつかり燃えあがる。
火にあぶられて持ちあがる巨体。
先ほどに同じく甲高い声を上げて火を消すために右へ左へ
男「へっ…大人しくしてな」ビュン
いつの間にか折りたたみの複合弓を組みたてた男が矢を引絞って放つ。
芋虫は短くも鋭い矢によって地に縫い付けられ、やがて息絶えた
女「ふぅ……暑い……」
男「弓を買っておいてよかったな」
女「本当ね…」
男「ったくまさか虫がいるとはな」
女「おそらくクロウラー…芋虫の姿が成虫の魔獣」
女「熱に弱いみたいだから、蜘蛛の巣を燃やした時の熱で驚いて落ちてきたみたい」
男「あるいはこいつの糸だったのかもしれないな」
女「かもしれない……なんにせよ、この巨体に押しつぶされたらただじゃ済まない」
男「まったくだ。ところで剣をどうするかな」ネバッ
女「私の魔術でも良いけど…松明の熱を使ったら?」
男「なるほど。さっき咄嗟に投げちまったあらな」アブリ
女「ん…気をつけて…」
男「最後に水で熱をとって…と」ジュ…
男「よし、準備完了だ」カチャン
女「………」
男「ん?どうした?」
女「あれ…」
男「光?…誰かいるのか?」
女「行っちゃった…」
男「もしかしたらドワーフとかかもしれないな」
男「行ってみるか?」
女「ん……」タッタッタッ
男「気をつけろよ」タッタッタッ
女「……ここを右」
女「こっちは左」
女「また…左」
男「誘いこまれてる気がして嫌だな」
女「確かに……」
男「今度も左か?」
女「…ん……」グラッ
男「っと、あぶねぇ!」バシッ
女「崖………」
男「見事に誘いこまれたってことだな。大丈夫か?」ギュ
女「貴方が居て助かった……」ギュ
男「前にも同じことがあった気がするな」
女「崖は苦手…」
男「あはは、そんな事もあるさ」
男「そんなことよりあいつだ」
女「崖を飛んでるってことは…霊体…?」
男「とりあえずこれでもくらいな」ビュ
しかし、矢は空を飛ぶ光にはあたらない!
女「あれはたぶんウィスプって呼ばれてる霊の一つだと思う…」
男「いわゆる鬼火ってやつか?」
女「…ん……たぶんこれが有効なはず…」
女「――水弾<ウォーターブレット>――」ビュ
―――――シュゥウ……
火に水をかけたように音を立てて光は消えた!
女「討伐完了……」
男「とりあえずいったん戻るか?」
女「ん、ごめん…」
男「壁の松明には火をつけてたから戻れるさ」
男「ここは危ないしな」
男「さて戻って来たわけだが」
女「とりあえず通路ごとに探していく…」
男「そうだな。たくさんの坑道が入り組んでて迷うしな」
女「そう言う事。とくに足元に気をつけないと…」
男「実体験か?」
女「………」ジトー
男「冗談だよ。また助けてやるって」
女「…大丈夫、気をつけるから」プイッ
男「あはは…んじゃ改めて行くぞ」
女「…ん……」
―――――魔物図鑑―――――
名 称:クローラー
種 族:魔獣
生息地:洞窟
全 長:1m程度
特 徴:芋虫の姿をした魔獣
姿とは打って変わって肉食性である。
粘着性の強い糸を吐きだして相手を拘束するほか、強力な顎を持つ。
体重は重く圧し掛かりなどが、転がることで高速移動することも可能
名 称:ウィル・オ・ウィスプ
種 族:不死
生息地:不明
全 長:20cm程度
特 徴:空中に浮かぶ松明のような光
直接的に攻撃をしてくる事は無いが、危険な場所に導くことで害を与える。
退治する際は霊体であるため物理てきに触れる事は出来ないため魔術が有効。
続きを書きますが、場面転換をする幕間的な意味で一度図鑑を入れておきます。
>>81のドラゴンとウィスプは曲りなりにですが紹介ができましたね。
もっとも、ドラゴンの方は系統って意味ですが…
ウィスプって意志があったのね
何となく浮いてるだけか
エルフ何かに使われている道具のイメージ
男「もう結構歩いたけどな」
女「それだけここが広い……」
男「せめてトロッコが使えれば良いんだけどな」
女「仕方ない…古いし……」
男「ちょっと休憩しないか?」
女「…ん……」
男「ここの広場で良いか。竈もあるし」
男「昔の休憩所だったのかもしれないな」
女「かもしれない。松明かして」
男「ほらよ」
女「簡単な食事を作るから…」ガチャガチャ
男「助かるよ。俺は少し周りを見てくる」
女「気をつけて……」
男「心配するな。見てくるだけだよ」
女「といっても…大したものは作れないけど……」グツグツ
?「なんだ良い匂いがしてるなぁ」
女「誰…?」スッ
?「お?こんなところにエルフたぁ珍しいな」
?「まっ、そんな警戒すんなや。わしゃここに住んでるドワーフでさ」ガチャ
女「ドワーフ…そう…」
ドワーフ「良い匂いがしてたもんだからついつられてきちまったんだ」
ドワーフ「よかったらわしにも一杯恵んでくれんか?」
女「そういうことなら…でも、もうすぐ連れが戻るから少し待って……」
ドワーフ「んじゃまぁ座ってますかね」ガチャ
男「女、このあたりは大丈夫s……誰だこのおっさん!」ガチャ
女「大丈夫…剣を下ろして座って…」
ドワーフ「そりゃ警戒されちまうわな。わしはドワーフって言ってな、この鉱山に住んでる」
男「そ、そうか。俺は男。いきなり剣を向けて悪かった」
ドワーフ「ここも安全な場所じゃねぇだ。気にするこたぁねぇ」
女「はい…どうぞ…」
ドワーフ「お!うまそうじゃねぇか」ズズズ
男「………」
男「大丈夫なのかこのおっさん」ボソボソ
女「ドワーフは危険な種族じゃないから敵意を出さなければ大丈夫」ボソボソ
ドワーフ「ところで、二人はなんでこんなとこさ来たんだ?」
女「私が魔物の図鑑を作ってるから……」
ドワーフ「図鑑?」
女「これ…」ペラッ
ドワーフ「こりゃクローラーだな。よく描けてるじゃねぇか」
女「そう言うわけで旅してる…出来れば貴方も描きたいんだけど…」
ドワーフ「飯の恩があるだ、別にかまわねぇよ」
女「それはよかった……」
男「ところで…」
ドワーフ「ん?」
男「ドワーフとエルフは仲が悪いって聞いたことがあるんだが……」
ドワーフ「わしゃそんなこと気にせん。お嬢ちゃんはべっぴんだしな」
女「…ん……」クスッ
男「それなら良いんだけどよ」
ドワーフ「ただし里にはいかねぇことだ。やっぱり嫌いな奴も多いでな」
女「そう、ありがとう……」
男「人それぞれってことだな」
ドワーフ「そう言う事だ」
―――――ガタン!
男「あ?」
女「…あの箱……」
男「道具入れみたいだけど、ネズミでも入ってるのか?」
ドワーフ「気になった時は空けるのが一番だ…っ!」
そう言って小柄な髭面…ドワーフが埃をかぶった金属の箱を開けた刹那!
牙を生やした箱がドワーフへと跳びかかったのである。
咄嗟に飛びのいてかわしたドワーウは低い声で
ドワーフ「ミミックたぁ…油断した」ビリッ
咄嗟に飛びのいたとは手から血が流れているのが見てとれる。
男は剣を抜き、女は杖を構えてすぐさまに戦闘態勢を取った。
女「これを……」
女がドワーフに投げて渡したの北の都で医者がくれた解毒薬だ。
男が剣を水平に構えて突き出す。それを箱を閉じる事にってミミックは防いだ。
はじき返したその瞬間にはすでに男に食ってかかる魔物を男は手にした盾によって追い返す。
男が如何に強力な武器と言えど鉄の箱を両断することはできないし、
魔物もまた箱型ゆえに手足がないから攻め手に欠けるのだ。
男「っ…どうする?」
女「下がって…――噴火<イラプション>――」ドロッ
女が詠唱したのは以前に使用した溶岩を生みだす魔術。
これならば鉄であれ破壊することができるはず…液状の炎が魔物を飲みこんだ!
男「あちち……だから洞窟で火はまずいっての…」
女「仕方ない……」
ドワーフ「いや、まだだ!二人とも油断するでねぇ」
ドワーフが告げた直後、女が生み出した溶岩が逆に押し返された
見れば、真っ赤に染まった箱の中から何個もの岩が飛び出している。
もちろん、箱に中に収まる量では無い…即ち魔術だ
男「っつ…この箱野郎、魔術も使えるのかよ」
悪態をついた男をあざ笑うようにケタケタと箱が開く。
溶岩によって熱された身体はもちろんダメージを受けているのだろうが、それでも健在。
再び牙をむいた箱は男へと跳びかかった!
男「この!」ガツン!
盾を構えて跳びかかった箱にぶつかる。
一般に"シールドバッシュ"と呼ばれる技であり、盾でぶつかることによって相手を怯ませる技術だ。
熱された鉄の暑さに呻きながらも、魔物を吹き飛ばした男は剣を突き出して追撃する。
開いた口へと精錬鉄の剣が突き刺さる!
女「次で仕留める……」
女の合図とともに男が剣を引き抜き、距離を取ろうと後ろに下がる。
だが、魔物は剣が突き刺さっていたなど意にも解さぬといったようすで再び男へ跳びかかった。
引き抜いた勢いで下がった故に構える事は出来ず、シールドバッシュも使う事が出来ない。
魔物の口が大きく開かれたその瞬間!
―――――ドガン!!!!
広場に響く衝撃音。
ドワーフが手にした槌を思い切り叩きつけたのだ!
その威力や熱されているとはいえ鉄でできた身体をひじゃけさせ、地面にめり込ませる。
ドワーフ「嬢ちゃん!今だぜ!」
女「…ん……――氷嵐<アイストーネード>――」ビュオオ
ドワーフの合図に合わせて女がはなったのは氷の魔術。
先に使用したものとは相反する性質を持った魔術は、熱された魔物を冷やし、そして凍らせる。
女「はぁ…はぁ…ドワーフさん……」
ドワーフ「おうよ。もういっちょ!」ブンッ
――――――バキン!!!!
熱された物が急激に冷やされるともろくなるものだ。
まして凍っているなら尚更のことである。
思い切り振るわれたドワーフの土は、地面と共に凍りついた魔物を文字どおりに叩き割った。
ドワーフ「いやぁ、これならもういいだろ」
男「すげぇな……」
ドワーフ「いやいや、お前さんだって大したもんさ」
女「二人とも……大丈夫…?」
男「お前が一番ダメそうだよ」
ドワーフ「はっはっはっ、ちげぇねぇな」
女「ちょっと…疲れた…」
ドワーフ「あれだけのを2回も使えばそりゃ疲れるさ」
男「まったくだ。しばらく休もうぜ」
女「……ん…そうする」
ドワーフ「そうそう、薬助かったぜ」
女「ううん、こちらこそ助かった…」
ドワーフ「まぁお互い様とは言えよ、家から回復薬もってきてやらぁ」ザッ
女「それくらいな持ってる…」
ドワーフ「いんや、疲労回復の効果があるやつさね。ちょっと待ってな」ダッダッダッ
男「行ったか…まぁ言葉に甘えてもらっとけよ」
男「どうせ休むのにここから動かないんだしさ」
女「…うん……」
女「今のうちに描いておく……」パシッ
男「あぁ、それがいいさ」
男「ところでさっきのはなんだったんだ?」
女「ミミックって呼ばれてる箱やつぼに擬態して待ち伏せする魔物」
男「厄介な奴だな…」
女「下手すると丸のみにされる」
男「丸のみって言えば剣を突き刺したのに効果がなかったな」
女「もしかしたら口の中が異界に繋がってるとかなのかもしれない……」
男「あはは…まさか…」
女「流石に冗談。でも特殊なのは事実」
男「確かに。人を丸のみにするくらいだからな。」
女「…ん……今後は箱なんかも気をつけないと…」
―――――――――――
―――――――
――――
―――――魔物図鑑―――――
名 称:ドワーフ
種 族:妖精
生息地:洞窟
全 長:1m~1m50cm程度
特 徴:男女とも体格がよく髭が生えた妖精
地中に住み、鉱石の発掘や加工に優れた技術を持っている。
またとても強い力を持ち、戦士としても優秀な種族である。
エルフ族を嫌っている物が多い
名 称:ミミック
種 族:無機物
生息地:洞窟
全 長:80cm程度
特 徴:洞窟や坑道で壺や箱に擬態している魔物
牙には麻痺性の毒を持ち、覗きこんだ相手に襲いかかってくる。
便宜的に"擬態"と記したが、正確には
「箱やつぼに擬態することができるのか」「既存ものに入りこんでいるのか」は不明である。
ミミックとドワーフはどちらも有名ですよね。
相変わらず男がぱっとしないようにも見えますが、守りとかって意味で地味に活躍するキャラが好きです。
女は長門的に寡黙と説明的に喋らせたりするのが意外と難しい……
まぁなんにせよ今日はここまで。おやすみなさい
>>228
ファンタジーとか邦画や洋画なんて見るのが好きです。
>>243
ウィスプ…鬼火は伝承がいろいろあるので、どれを重視するかにもよります。
私はウィル・オ・ウィスプの伝承を使用してるので「悪意ある光」として描きましが、
日本の鬼火なんかはただ飛んでるだけ…というのも多いかと思いますよ。
乙
しかし怠惰な魔術は、
夜に明かりつけるの面倒だから とか
料理で食材切るの面倒だから とか
そんな理由で研究されたものもありそうだな
will o'the wispだっけ?だから意思そのものなんじゃないかな
鬼火と直で対訳になるのかは私もそっち方面に明るくないので分からんけど
>>242
ありがとー
期待してた甲斐があった
乙!!
ハーフエルフはよく聞くけど
ハーフドワーフはあまり聞かないね
>>258
女「実は正解…大昔に発火のための怠惰の魔術は存在した」
女「もっとも、文明が進んで火をつける事が労働じゃ無くなってからは廃れたけど」
女「――発火<パイロキネシス>――…忘れ去られた過去の魔術」
>>259
ウィスプも元をたどれば人魂の類ですので、日本では意訳で鬼火…と訳されます。
正確にはウィスプは個体を表すので固有名詞、鬼火は現象全てですので普通名詞…とするのが正しいかもしれませんね。
作中で男に鬼火って単語を使わせたのは失敗でした。
>>260
いわゆるドラゴンももう少しで登場させる予定ではあります。
戦うかどうかは状況次第ですが
>>261
エルフは美しい外見とされるのに対し、ドワーフは矮躯でガチムチとされますからね。
下手するとドワーフは石から生まれるために女性に当たる個体がいないとする伝承もあります。
でもハーフドワーフって発想は面白そうです。
―――――大鉱山跡―――――
女「ふぅ……」
男「クローラーやら馬鹿みたいにデカイ蝙蝠やら…結構いるんだな」ガシャン
女「仕方ない…」
男「ところで、あのデカイ蝙蝠は魔獣には入らないのか?」
女「難しいところ…自然に存在するとは言い難いけど、魔力があるとも言えない」
女「魔力の影響で突然変異的に大きくなった「ただの」蝙蝠と考えるべき」
男「そうか…難しいところだな」
女「他にもカエルやムカデ、サソリが確認されてるみたい」
男「どれも元は小さい生物なんだな」
女「ん…要観察……」
男「もし魔獣とするなら、改めて探せばいいさ」
女「そういうこと…」
なにやら書き込み規制を受けました
『前の人がイーモバイルみたいです。』
PCを使ってるのに妙な話ですが、何が原因でしょう?
とにかく更新が出来そうもないので中断します。
せっかくドワーフで盛り上がっていたので、講座などもやりたいのですが……
―――――ドゴン!!
女「何…?」
男「またなんか出やがったか?」ジャキン
女「……!」グイッ
男「っと、引っ張るn…」
―――――ガラガラガラ!!!
男「上が崩れたのか……大丈夫か?」
女「貴方こそ怪我は?」
男「ないな。助かったよ」
女「どういたしまして…」
男「それにしても、来た道がふさがれちまったな」
女「別の道を探すしかない…」
男「そうだな…松明も消えてないし…行くか」
女「…ん……」
>>266は携帯から書き込みました。
書き込み用のテキストボックスの読み込みもえらく遅いし踏んだり蹴ったりです。
とりえあず今日はここまで、おやすみなさい。
マジか(´Д`)
ダメなら違う場所ででも続けて欲しいな
深夜VIPとかなら、ここ並みに落ちる速度遅いし
>>273-274
誤字なんかを訂正しつつ、別場所で完結させようかと思います。
まだスレ立てすらしてないですけどね。
さしあたり、こちらは段落がつくまでは続けます。まぁifとでも思っていただければ。
どちらにしろ1レスずつしか進みませんし
女「………」
男「………」
どれくらい歩いただろう―――
退路が絶たれて前に進むしかないのだが、だいぶ歩いた気もする。
軽食とは言え食事も取ったし、交代で仮眠を取りもした。
気がつけば歩いているのは坑道ではなく完全な洞窟であり、だんだんと地下へと進んでるようだ。
道がわずかにだが傾いている。
男「どこまで続くんだろうな…」
女「わからない。でも、前に進むしかない…ここで終わるわけにはいかないから」
不安を打ち消すように強く答えて二人は闇に向かって歩く。
それはまるで、妻を助けに冥府へ降りた詩人のように…
長い下り坂を降りてようやく開けた場所に出た。
闇が濃いのか松明なんて意味がないようにすら思えるくらい視界が狭い
男「暗いな…」
女「光の魔術が使えれば良いけれど……」
?「――光<シャイン>――」
あたりが明るく照らされる。
驚いた事に声の主は自分たちのすぐ前にいたようだが、全く気がつかなかった。
長い黒髪とその間から覗く紅い瞳。周囲の闇に溶けてしまいそうな漆黒の鎧を身に付けたその男は言う
?「ここは人の身で踏み込むところでは無い」
?「何ゆえにここへ来た?」
女「その……迷ってしまった…」
女「できれば出口を教えてほしい…」
口ぶりからして相手は人間ではない。もちろんエルフでもないのだろう。
相手が何者かを知るより先に本能が関わるべきでないと伝えている。
こちらの回答を聞いた鎧の男は愉快そうに口を歪ませ答えた。
?「では…私が送ろう」
女「いや、結構…」フラッ...ガシャン!
男「おい大丈夫か?」
女「大丈夫…何かに足を取られただけ…」ガサガサ つ頭蓋骨
男「骨!?しかもこれは…」
女「…ん……人間…」スッ
?「死後の世界まで送ってやろうかと思ったが…なかなかどうしてうまくいかないものだな」クックックッ
男「っ!」ガシャン
?「この遠呂智とやりあうか、人間よ」ガシャン
フワリ…生温かい風が頬を撫でるとともに洞窟内がより明るく照らされた。
気がつけば、足元は風化したものを含めて大小さまざまな骨が転がっている。
男は遠呂智と名乗った男に剣を向け、遠呂智もまた細く長い片刃の剣を抜く
女もやや距離を取って杖を構え、精神を集中する。
逃げるべきだと本能が告げている。しかし、逃げるなど不可能だろう。
ならば―――
男「でやぁ!」ビュン
女「――火球<ファイアボール>――」ボッ
剣と炎が遠呂智を襲う!
―――――side:男―――――
こちらの振るった刃を受け流す様にかわした鎧の男…遠呂智は、飛来した火球を左手で受け止めた。
その余裕から見ても無傷と言う事だろう。
遠「その程度では傷つける事すらかなわぬ」ヒュン
逆に遠呂智が自分へと襲いかかってくる。
見たところ自分が持つ剣よりも半分くらいしか幅がない剣だ。うまくいけば武器の破壊を狙えるかもしれない…
盾を構えて相手の踏み込みに合わせて盾をぶつける!
―――――ガキン!
派手な音がする。
だが問題がないのだろう。遠呂智は再び剣を振り下ろした。
―――――ガキン!
2回目…まだまだか?
シールドバッシュは単純に言うと押し出すだけの行動だが、その実はタイミングを合わせる精神力と、
なによりも相手の攻撃を押し返すパワーが要求される。
―――――ガキン!
3回目…こちらに向けられる力は弱まるどころか強くなっている気がする。
ハンマーのように重さが乗る武器ではなく、まして片手だと言うのにこのパワーはなんだろうか。
打ち込まれるたびに足元の岩がわずかに砕ける感触すら感じるほどだ
男「まだまだぁ!」ブンッ
自分が耐えるほど女が強力な魔術を放てるのは知っている。
叫ぶ事で自らに気合を入れ、4度目の斬撃を…押し返す!
遠「なかなかよく持ちこたえる」ヒュン
男「まだ死にたくないんでね」ガキン!
遠「だが、その虚勢はいつまで持つかな?」
男「お前が死ぬまでだ」ガキン!
遠「ほぅ、それは大したものだ」ブン!
男「!!!!」
振るわれた一撃は今までの全てが手加減だった言わんばかりに重く、男を後方へと吹き飛ばす。
何とか立ちあがり、ニヤリと笑う遠呂智を睨みつけるが正直もう限界に近かった。
盾を使う際の軸にしていた左腕がしびれ、これ以上は盾で受け止められそうに無い。
遠「どうした?もう限界か?」ザッザッザッ
男「あぁ…限界だね」
遠「ではここで[ピーーー]」
男「断る!」バッ
男は盾を外し、構えもせずに近づいてくる遠呂智へと投げつける。
―――――ズバンッ!
鉄の盾を剣で斬るなど聞いた事がない
横一文字に振りぬかれた遠呂智の剣は、こちらが投げた盾を綺麗に両断したのだ。
だが、振りぬいてしまったこの瞬間こそが男の待っていた明確な好機。
力の入らぬ左手を剣に添え、強く地面を蹴った!
男「くたばりやがれ!!」ビュ
突き出した剣は、闇のように黒い鎧を貫く!!
男「……………」ゼェゼェ
遠「……………」
男「どうだ…?」
遠「………それで終わりか?」ニヤリ
―――――――――――
もうグデグデ…今日はここまでで。
支援いただいた方、ありがとうございました。
剣は確実に遠呂智の体を貫いていたはずだ。
それでも目の前のソレは笑って得物を振り上げる。
『ここで死ぬのか』そんな思考がよぎった刹那、頭に声が響く
女≪剣を離して距離を取って≫
いつだったか教えてくれた怠惰の魔術だろう。
諦めかけた思考を中断し、剣を手放して強く地面を蹴る。
女「――雷爆<サンダーブレード>――」
バリバリと高い音が洞窟に鳴り響き、先ほどまで自分がいた場所に電気が走る。
遠「……これは!」
電気の渦は収束し、前から後ろから…あるいは右から左からと遠呂智の身体を穿つ。
しかし、それだけでは無い。
身体の表面に叩きつけられた雷は、突き刺した剣の媒体に身体の中へと伝導する!
遠「くっ!」ズッ
それに気がついた遠呂智は己の体に突き刺さった剣を抜こうと動いたが、その瞬間に眩い閃光が洞窟を照らす。
耳を劈く爆音とともに…爆発した!
―――――side:女―――――
放った雷は確実に遠呂智に命中した。
洞窟内が白い煙に覆われて姿こそ見えないがあれだけの爆発だ。無事ではすまないだろう。
男「女!」
中級とは言え、全魔力を込めて放った反動か目まいがする。
しかし、倒れる事無く支えてくれた男の胸に抱かれる事となった。
女「大丈夫……」
杖を支えに改めて自分の足で立つ。
……フラッ…
男「無理するなよ」
やはり疲れているのだろう。
頼るのはしゃくだがしばらくは男の胸で休むことになるかもしれない。
肩越しに見えた白煙に無数の赤い光が見えたような気がした……
不本意ではありましたが、これにて終了とさせていただきます。
本来はここで遠呂智は登場しないはずなのですが、
規制等の都合で打ち切りをするのに登場してもらいました。
風呂敷だけを広げるなら、まだ王国の東・南が残っていますし、
遠洋航海での海の魔物や、極東の島国で妖怪などを予定しておりました。
一番やりたかったのは某作品のオマージュで考えていた、猫の王国編(仮)ですけどね
練り直し等が出来ましたら深夜の方にでも最初から投稿してみようかと思いますので、
その時はまたお付き合いいただければと思います。
尻切れとなってしまいましたが、ありがとうございました。
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