男「天気予報、並ぶ傘のマーク、居座る低気圧」(16)

女「…ゆ、故に我々も居座る」

女友「…この場所に」

男友「…酒とつまみを携えて」

男「傘ならあるから帰ってくんねぇかな」

女「………」

女友「………」

男友「………」

男「おぅ、だんまりかコンチクショウ共」

男友「それより次のおつまみはまだかい、男?」

男「このくらいの料理なら出来るだろ、お前ら」

男「少なくとも女友は料理出来るって男友から聞いてんぞ」

男「手伝いくらいしろや」

女友「いや、面倒じゃない?」

男「おいコラ」

男友「まー、流石に手伝ってあげたら?」

男友「あ、僕あれが食べたいよ、一昨日作ってくれたやつ」

女友「じゃあ明後日池袋駅に10時ね、荷物持ち」

男友「へっ!?」

男「はっ、相変わらず尻に敷かれてんなぁ」

男「じゃあ、女友頼むわ」

女友「冷蔵庫の中身、使って良い?」

男「ご自由にどうぞってね」

女(女友ちゃん、さりげなくデートの約束作った…)

女(凄いなぁ、女友ちゃん)

女(告白した側なのに、自分から色々行動して…)

女(でも、男友くんも嫌々じゃないって感じがして)

女(こーゆー関係、良いなぁ…)

女「………」

男友「あれ、どしたの女ちゃん」

女「ひゃっ!?」

男「…あ、もしかして料理してる男を目に焼き付けてたり?」

女「……!!!」

女「ちち、ち…違うよぉ!?」

男友「へぇ、それはーー」

女「確かに料理してる男くんはいつもと違って、なんか家庭的でまさに頼れるお父さんみたいな感じがしてすごく良いとは思うけどっ」

女「そ、そーゆーのじゃないから、ホント!」

男友「………」

女「……はっ!」

男友「……」

男友(分かりやすいなぁ)

女「…い、良い天気だなー」

男友「誤魔化し方が下手糞にも程があるよ、女ちゃん」

男友「…まぁ、別に皆に言おうだなんて思ってないよ」

男友(だって皆気づいてるし…男以外)

女「…あ、ありがとうございます」

男友「たださ、ちょっと手伝わせてくれないかな」

女「…へ?」

男友「いやぁ、そろそろ男にも身を固めて貰いたいからさ」

男友(地味にモテるクセに気付かないし、面倒事は男と仲の良い僕に降りかかるし)

男友(それに、女ちゃんと男ってお似合いだし)

男友(あと面白そうだし)

女「………」

女「じゃ、じゃあ…お願いします」

男友「うん、任せてよ」

女(…あ、後戻り出来なくなっちゃったかな)

女(もしかして)

男友「とは言っても、そんなに肩肘張るような事はしなくても良いさ」

女「そ、そうなの?」

男友「うん、ただーー」

女友「なーに話してるの?」

女「うわぁ!」

男友「あれ、料理はどうしたのさ女友」

女友「レシピ教えたら、男が後はやっておくってさ」

女友「それより男友、私の可愛い女に何かしてないでしょうね?」

男友「いや、別にー?」

女友「何よそれー、なーにか隠して…!」

女「?」

女友「…あぁ、そーゆー事ね、分かるわ」

女「えっ、……えっ!?」

女友「やっとやる気になったのね、女」

女「え、女友ちゃん、どうして…」

女友「…気付いてないとでも思ってた?」

女「…嘘、でしょ?」

女友「そんな筈ないでしょ?」

女友「どんだけ一緒にいたと思ってんのよ」

女友「むしろさっさとくっつきなさいとすら思ってたわ」

男友「だよねぇ」

女「……」

女(なんか、恥ずかし過ぎて…死にたいです)

女友「何今更恥ずかしがってんのさ」

女「だって…」

女友「だってじゃないって、まったく」

女友「あの激ニブ野郎を落とすんでしょ?」

女友「しゃきっとしなさいな」

男友「こーゆー事になると、途端に目を輝かすよね」

男友「女友って」

女友「…なんか言ったか、男友?」

男友「滅相もございませんよ」

女友「あら、そう」

女「……」

女友「…何よ、女?」

女「いや、良いなぁって思って」

女友「?」

女「男友くんと一緒の時、女友ちゃんがとっても楽しそうなのが」

女「良いなぁって」

女友「…う、うるさいわね」

女「あ、照れてる女友ちゃん久々に見たかも」

女友「もう、言うようになったねぇこの娘ったら」

女「ふふん、どれだけ一緒にいたと思ってるのー?」

男友「あはは、仕返しされちゃってるね、女友」

女友「…明後日、覚悟しておきなさい?」

男友「…えっ」

男「おー、料理出来たから運べぇ、男友」

女友「ほら、呼んでるわよ男が」

男友「あー、はいはい分かったよ」

男「にしても、良い彼女持ったなぁ男友」

男「これ美味いぞ」

男友「毎日弁当作ってくれるしね」

男「え、マジかよ羨ましい死ねば良いのに」

男友「負け惜しみにしか聞こえないなぁ、…で、どれを運ぶの?」

男「とりあえずこっち来いよ、早く」

女友「………」

女「うわぁ、顔真っ赤だよ、女友ちゃん」

女友「…うるさい」

男「にしても、何か盛り上がってたな」

男友「ん?…あぁ、ちょっとね」

男「…お前の言う『ちょっと』は信用ならねーんだよなぁ」

男友「そうだっけ?」

男「そうだよ、まったく」

女友「男共~!つまみはまだかッ」

男「…ほら、お前がぐーたらしてるから彼女さんが怒ってんぞ」

男友「…女友って、なんだか男らしいよね」

男「そー言うお前は少し女々しい所があるよな」

男友「…君みたいな野生児には言われたくないさ」

男「要するにお似合いって事だって話だよ」

男「早く運ぼうぜ、腹減ったわ」

男「お待たせさん……どした、顔真っ赤だぞ、女?」

女友「いやぁ、ちょっとね」

女「ちょっとじゃないよ…」

女(私、そんなに分かりやすいのかな…)

男「…あぁ、類は友を呼ぶって、本当なんだな…」

女友「何言ってんのよ」

女友「それよりほら、おつまみは?」

男友「これでしょ?」

女友「『これでしょ?』じゃないわよ、早くここに置いて、ほら」

男友「はいはい」

女「これ、男くんが作ったんだよね?」

男「レシピは女友だけどなー」

女(…もしかして女子力負けてるかな、私?)

男「…どした、女?」

女「別に…私も料理上手くなりたいなぁって」

女友「あら、なら男に教えて貰いなさいよ」

女「!?」

男「異性より同性のが教わりやすいだろ」

男「女友がやってやりゃ良いじゃねーか」

女友「残念ながら私は読書で忙しいのよ」

男「あんな薄い本5分もありゃ読み終わるだろうが」

女友「何言ってんのよ、読み終わってからが本番でしょうよ」

女(そんなに薄い本なんてあるのかな…?)

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