上条「就活をぶっ壊せない」(350)


To:上条 当麻<Toma Kamijo@gmail.com>
subject: 選考結果について



こんにちは、学園都市工業株式会社人事部です。
先日は、弊社エントリーシート選考に参加して頂きまして、誠にありがとうございます。
心より厚く御礼申し上げます。

その選考の結果ですが、残念ながら貴意に沿いかねる形となってしまいました。

重ねて御礼申し上げますとともに◯ ◯◯様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。
ありがとうございました。





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上条「……」


上条「…………」パタッ


上条「……また、落ちた」


上条 当麻21歳。大学4年生。
なんやかんやと世界の危機を救いまくって約4年。

「せっかく高校に進学したのだから、大学へも行っておけ」
親の勧めもあり、彼は学園都市内の中堅の大学へ進んだ。


大学では特にサークルに入ることは無かった。
卒業するために必要な単位のみを取得し、たまに友達と遊び、そして20歳を過ぎてからは飲酒をするようになった。

それなりに満足していた生活に陰りが出て来たのは昨年の12月。
つまり、大学3年生の12月だ。
学園都市だけでなく、全国的に始まった大学生たちの一大イベント『就職活動』。
上条当麻も例外なく、その波に巻き込まれて行った。


それなりに楽観視しながら臨んでいた就職活動だった。
しかし、開始して約4ヶ月たった今。
彼は人生で味わったことの無い屈辱を味わっている。



上条「これで、何社目だ……」ゴロ


上条「……覚えてねえ」


誰に問いかけるとも分からない質問を呟く。
この4ヶ月、彼は彼なりに内定を取ろうと頑張って来た。
説明会に出て、エントリーシートを出し、結果を待つ。

しかし、面接まで進めた企業は1つもなかった。


何でだ、と疑問に思うことはあった。
しかし、その答えを究明するまでには至らなかった。



上条「はぁあああああああああああああ…………」



思いきりのいいため息。
彼は落ちた時には決まって、心を落ち着かせるためにこうしている。


テレビかなにかで「ため息にはリラックス効果がある」という見解を聞いて以来実践しているのだ。


上条「よしっ! 次だ、次! 俺には縁がなかっただけだ! そう! 縁が!!」


上条「縁が…………」


上条「えん、が…………」


上条「……」


上条「……」ガックリ


上条「……気分転換に、散歩でもするか」





上条「(散歩っつっても、することねえな。 金ないし)」


上条「(……はぁ)」


「か~みやん!!」


上条「……?」


土御門「うぃっす! ひっさしぶりだにゃ~」


上条「おぉ!! つ、土御門か!」


土御門 元春。
以前の級友である彼も上条と同じ大学へ進学した。
しかし、学部が違ったため、別のキャンパスへ行くことになった。

入学式や合同レクリエーションなどで会う機会があったが、上条が大学の学寮へ引っ越ししたのもあり、次第に疎遠になっていった。



土御門「いや~、いつぶりかにゃ~。 相変わらず上やんは美少女から追いかけ回される日々を送ってんのか?」







上条「俺がいつそんな生活したよ!」


土御門「本気で言ってるなら、容赦しないぜ?」


上条当麻は嬉しかった。
いじられて嬉しいというわけではない。

春休み中、見知った顔とこのように話すことはほとんどなかった。

就職活動は『孤独な戦い』とはよくいったもの。上条の友達も余裕のある者などいるわけがなく、相談に乗ってくれる人間すらほとんどいなかったのだ。



上条「ったく。 ……お前は変わらないな」


土御門「あっはっは、たかだか数年会わなかったくらいで変わるわけないにゃ~」



そんな状況にあったからこそ。
気心に知れた友達に会えたのは、本当に嬉しかった。




土御門「そういや上やん。 この後、何か予定は?」


上条「ん? あぁ。 ……予定は無いけど」


土御門「お! それなら久々に高校の皆に会おうぜの集いを開くところだから、一緒に来い!」


上条「そんな会開いてたのか?」


土御門「おいおい。 上やんにもメール送ったんだぜ? 1ヶ月くらい前に。 返事がなかったから忙しいもんだと思ってたが」


上条「……あ」



そういえば、と上条は思った。
マイナビ、リクナビ、その他就職活動支援サイトから送られて来る膨大なメールの対応に、彼は追われていた。

100通以上にも及ぶメールの処理。結果が出ない努力。
そんなことが重なった3月、どうしても就職活動をするのが嫌になり、一時期メールを見ないで現実逃避をした時期があった。
そのとき送ってくれたのかもしれない。


上条「……わりぃ、気付かなかった」


土御門「わっはっは! 気にするな気にするな! 今日会えたことが幸運だったぜぃ! とりあえず立ち話もなんだ。 早速むかおう!」


上条「……おう!」







:喫茶店


土御門「お待たせーぃ!」


「お前ー!待たせるなよー!」


「企画者だろ~!」


土御門「あっはっはー! すまんにゃー! だが、これを見ても同じブーイングができるかにゃー!?」












上条「うぃっす」ヒョコッ






「上条!!!」


「上条じゃん!! 生きてたのか!? 死ねよ!!」


上条「もちろん!! ……って死ねって!?」




昭和を思わせる古風な喫茶店。上条たち以外に、客はいない。
しばらく彼らは思い出話に華をさかせた。




「……上条当麻」


上条「……ん?」



吹寄「久しぶりね」


上条「お、お、お前……。 吹寄か……!?」


吹寄「他に誰がいるの」


上条「久しぶりだなぁ!! 元気にしてたか!!」


吹寄「無論よ。 この中に私ほど健康に気を遣っている人はいないでしょう」


上条「た、たしかに。 ま、まぁ座ってくれよ!」




続々と来店するかつての級友たち。
懐かしさと再会の喜びが胸を覆う。
2013年入って以来、初めて上条は心からの笑顔を見せた。



姫神「……上条くん。 久しぶり」


上条「姫神!! 久しぶり!!」


姫神「上条くん。 変わらないね」


上条「姫神もかわ――。 ……いや、変わったか?」


姫神「……そう?」


上条「私服の姫神って、慣れてないせいか新鮮に見えるぜ」


姫神「……可愛い?」


上条「あぁ。 可愛いと思うよ」


姫神「……。 やっぱり。 変わってない。 上条くん」タタッ


上条「あ、おい!! ……なんだ?」




一同「(上条氏ね)」





楽しい時間は、あっと言う間に過ぎていく。



土御門「そこで上やんが―――」


上条「てめっ!?  それ今バラしたら……!」


吹寄「……」ゴゴゴゴゴ



自分が置かれている陰鬱な状況のことを、すっかり忘れて。



青ピ「そりゃーーー!! コーヒー一気ぃ!!! ……ぶわっちぃ!!!」


吹寄「貴様……。 私の服を!!」ゴキャッ


青ピ「べふぅ!!?」


土御門「(揺れたッッ!)」



だが。


そのときは、やってくる。




「――そういえば、皆。 就活どうなん?」







避けられない、『現状報告』。




上条「(……あ)」


上条「(……やべえ。 俺……)」


上条「(……ま、まだ4月だ! 決まってないやつだっているはずだ)」


上条「……」


「それ聞いちゃう?」


青ピ「ほんまやで~。 やけに急やし!」


「いやー。 気になってさ。 皆今どんな感じなの?」


「お前らはまだ内定なんて遠いんじゃないか?」



青ピ「いっちち!! いったい所つくなや~」


土御門「俺たちなんかを拾ってくれる所があったら、土下座でもしてるにゃ~」


上条「(!!)」


上条「……そ、そうなんだよ、俺も――」



「なーんて……」



上条「(…………へ?)」




土御門「俺は、内定ゲットしたばっかりだぜぃ!!」キュピーン


青ピ「me too, や!!!」キュポーン




上条「(―――――え?)」








「マジか!!!! おめでとう!!」



土御門「あっはっはー。 もちのろんだにゃ~。 っつか、そもそも内定無かったら、お昼からこんな会来れないにゃ~」


青ピ「そうやで~。 今頃就活生は説明会で『キチョバナカナシャ』してる時間やし!」


吹寄「……貴様らでも入れる会社があるんだな」


青ピ「むっ! 吹寄さん、そりゃないで~? ……そういうキミは、その2つのメロンを使って秘書にでも――」バキッ


吹寄「卑猥なことを言うな。 殺すぞ」


土御門「(殴った後に言っても遅いにゃ~……)」


青ピ「……」ピクピクッ


吹寄「……ふん。 私も、○○商事に内定を頂いたわよ。 最も、秘書検定が必須だっていうから、今は勉強に追われているけど」


「え!? ○○商事なんて言ったら超大手じゃん!!」


「俺たちの中から、エリートが!!」


吹寄「そんなに騒ぐことでもないでしょう。 そもそも相手に合わせてエントリーシート書いて、面接して、それで終わりなんだから」



上条「(……)」


「か~っ! やっぱり言うことが違うなー!」


土御門「流石吹寄だにゃ~」


姫神「……」パチパチ


「そういや姫神さんは?」


上条「(!)」





姫神「……私は。 ▽▽製菓に決まった」


「▽▽製菓!? あのチョコレートメーカーの!」


「最近、『ドロマッチョ』とかいう飲み物出したよね!」


「あぁ、あれ流行ってるよね~」


「姫神さんも大手の社員かー。 ってか、何でお菓子?」


姫神「私。 食べること。 嫌いじゃなかったから」


「『嫌いじゃないから』って言って受けて入れる会社じゃねーぞ……」


上条「(……マジかよ……)」


「俺は■■製紙に――」


「私は××テクノロジーに――」


「僕は――」


「俺は――」



「―――――」









上条「…………」



土御門「皆すごいにゃ~! 俺はあくまで小さい工務店から頂いただけだぜぃ」


青ピ「ワイも社員30名くらいのベンチャー企業やでー」


「今の時代、正社員になれるだけありがたいでしょー」


吹寄「そうだ。 貴様らは選り好みできる立場ではないのだからな」


土御門「くっはー! 厳しいにゃ~!」


青ピ「その通りなんやけどな! わははは!!」


土御門「そういや、上やん! 上やんはどうなんだ?」






上条「!!!!」


青ピ「美少女キラーの上やんだから、女性人事の会社ならイチコロやろ!」


土御門「あはは、そりゃ言えてるにゃー」


上条「……え、えっと、俺は……」


吹寄「……上条当麻、まさか貴様、就職先が決まってもないのに、こんな場所へ……?」


土御門「!? ま、マジかよ上やん!!!」


青ピ「そんなわけあらへんって~。 あの上やんやで?」


上条「……も、もちろん!! 俺もあ、あ、あ、IT系の企業に内定をもらってるっつーの!!」


土御門「なんだよ~!! 上やん、焦らせるなよ! 内定がないやつを遊びに誘っちまったら、俺が罪悪感に駆られちまうぜぃ」


青ピ「ほれ見たことか~!」




ぎゃははははは






上条「……」






吹寄「……」



:上条宅(学生寮)



上条「……」


上条「…………」





『『今の時代、正社員になれるだけありがたいでしょー』』


『『内定がないやつを遊びに誘っちまったら、俺が罪悪感に駆られちまうぜぃ』』





上条「…………」



上条「(……俺。 …………社会に居場所なんて、あるのか?)」




ぴよ…ぴよ…



上条「……」ムクッ


上条「…………」


上条「……」チラッ


上条「!?」


上条「やっべえ! 説明会!!」


級友たちの笑顔と内定報告が頭にこびりつき、どうしても眠れなかった。
遅刻しそうになりながらも、10分以内にスーツに着替え、上条当麻は本日も説明会へむかった。



社員「我々の会社の良い所は、風通しがほんとーに良い所ですねーw」


社員2「そうなんですよ~ww なんたって社長のことあだ名で呼んでますもんww」


社員「こら、それ言ったらダメだろ~w」


社員2「www」



就活生「アハハハハ」




上条「(楽しそうな会社だなあ)」


上条「(……ここなら、俺も受け入れてくれるのかな)」





社員「さてさてー。 ここらへんで、何か質問はありますか~?」


就活生「はいはいはーい!!!はいはい!!!!」


社員「はい、じゃあ最初に手が上がったキミ!!」


就活生「はい! 私、○○大学●●学部から来ました、就活生と申します! 本日は、貴重なお話ありがとうございました! 私は御社の――」


社員「はいはい~ww それはね~wwww」




上条「(皆、威勢がいいなあ)」




就活生「はい!! ありがとうございました!!」


社員B「さあ、他にはあるかな~?www」


上条「(や、やべえ! 俺も何か質問しないと……!)」


上条「(で、でも、質問は?! 何も考えてねぇ!!)」


上条「(え、えぇい! とりあえず上げておけ!)」シュビッ


社員B「あ、はーいww そこのつんつん頭のきみ~www」


上条「(!? い、いきなり俺!?!)」


社員B「ん~?www どうかしたの~? キミだよ~?www」


上条「は、はい!ぼ、じゃなくて、わ、私は、その、えぇっと!」アタフタ



社員「wwww 自己紹介とかはしなくていいよーwww」


上条「(や、やべえ! やべえ!!) は、はい!! えぇっと、その、お、御社は、その!!」


上条「その……。 えぇと…………」




社員B「……」


社員B「……何を聞くのか、決めてから話そうね? 時間がもったいないよ?」


上条「…………はい。 すんません」



:帰り道



上条「(……ダメだ)」


上条「(今まで、自分はそこまで人見知りしない奴だって、思ってた)」


上条「(インデックスが来たときだって。 姫神が来たときだって。 俺は普通に話せてた)」


上条「(なのに、今はどうだ? ちょっと当てられただけで萎縮して。 頭が真っ白になって)」


上条「(不甲斐ねぇ……)」




上条当麻は、説明会に出るといつもこうだった。
とりあえず積極性を見せようと何かしら行動するが、どうしても裏目に出る。
自分の意気込みに対して、どうしても結果が伴わない。


上条「(そういや喋る訓練なんて、受けたことなかったな……)」


下らないジョークで自分を励ます毎日に、彼は辟易していた。
だけれども。打開策はない。突破口もない。
まさに、上条当麻の就職活動は五里霧中の状態だった。



上条「(くっそ……)」


心が荒れる。
誰の生でもなく、自分のせいだ。
それなのに、彼の心は荒む一方だった。


「あれ。 ……アンタ」


上条「……?」


美琴「……久しぶりじゃない」


上条「……おぉ、ビリビーー」


美琴「あ”ぁ”?」ビリッ


上条「……じゃなくて、御坂か」


美琴「……変わってないわね、アンタ」


上条「(……変わってない……か)」


美琴「……?」


:チェーンフードストア


美琴「どうなのよ、最近」


上条「どうって、見ての通りだよ」


上条と美琴は、ハンバーガーとポテトで人気となったフードストアに来ていた。
驚いたことに、美琴から上条を誘ったのだ。
お昼を食べていなかったこともあり、彼は2つ返事で了解と答えた。


美琴「就職活動中ってこと?」


上条「そのとーり。 絶賛職探し中だよ」


美琴「ふぅーん……」


上条「そういうお前はどうなんだ?」


美琴「……別に。 付属の大学に進んだばっかり」


上条「へぇ! おめでとう!」


美琴「ふ、付属だからおめでとうも何もないってば!」


上条「それでもだよ! 大学に入ったんだからめでたいだろ!」


美琴「あ、ありがと……」




どうも1です。


>>35
>>36


社員2を社員Bと表記してしまいました。正確には社員2です。

>>1

重ねて御礼申し上げますとともに◯ ◯◯様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。
ありがとうございました。

この○○○は上条当麻です。


申し訳ない。



美琴「……」


上条「……」


美琴「…………」


上条「…………」


美琴「……ちょっと」


上条「ん」


美琴「何か喋りなさいよ」


上条「何かと言われましても」


美琴「……はぁ(やっぱり、こういう所も変わってない)」


上条「?」




上条「そういや、大学で何を学んでるんだ?」


美琴「……政治経済学」


上条「法学部の?」


美琴「うん。 特にやりたいことってのもなかったし。 どこでもいいやって思って」


上条「へぇ。 でも、俺がいる大学とは段違いの学校だろうし、学ぶことも違うんだろうな」


上条「就職活動も楽そうだし」


美琴「そうなのかな……」


上条「え?」


美琴「偏差値とか、能力値とか、そういったもので計ってる尺度なんて、正しいとは言えないわよ」


上条「そんなもんかな」


美琴「そうよ。 私の大学だって、退学者はいるし、留年者はいるし、就職活動で職が見つからない人だっているもん」



上条「そうなのか!?」ガタッ


美琴「!? な、何よ急に……」


上条「あ、いや……。わりぃ」


純粋に驚いた。
学歴というのは、現代を生きる学生にとって、『自身の価値』そのものにすらなりうる。
だから、上条は就職先や自分の未来に高望みなんてしなかったし、度量も知れていると高をくくっていた。

雲上人だと思っていた常盤台大学の学生ですら、自分と同じ境遇にいる。
その事実を聞いて、戸惑いを隠せなかった。


美琴「そんな光景を見ちゃったら。 まだ入って2週間足らずだけど、私も将来不安になってくるわね」


上条「お前は心配する必要ないだろ。 頭も良いし、運動だってできるし、何より……」


美琴「超能力者(レベル5)だから?」


上条「!」



美琴「はぁ。 アンタも周りと同じこと言うのね」


上条「だって、事実だろ? 学園都市内での就職には、必ずつきまとってくる要素だし」


美琴「履歴書には書けるわ。 だけど、そんなの、ただのオマケでしかないわよ」


上条「……!?」


美琴「資格とか、特化した能力があっても、必ずしも社会で役立つとは限らないじゃない」


上条「ま、まぁ」


美琴「でしょ? 私の能力だって、本気で役立てるんだったら、研究所だったり、発電所だったり。 そういった所しか、見当つかないもん」
 

美琴「私がやりたいことがそうでなかったら……ただのお飾りでしかないじゃない」






上条「……あ」


上条当麻は知った。
そもそも、社会に対して考えていることが、自分と彼女では違うのだと。

自分は、なんとなく生きてきて、なんとなくやってみたいことを生業としている企業を受けていた。
その結果は、惨敗に次ぐ惨敗。

彼女はどうだろう。

自分よりも、圧倒的に時間的猶予があるにもかかわらず。
彼女の考え方は、大人だった。
社会に出て、何ができるのか。自分は何がしたいのか。
大雑把ながらも、上条よりもずっと多くのことを考えていた。



上条「お前ってやっぱ、凄いやつなんだな」


美琴「ふっ、ぇ、んな、なななななによ!? いきなり!」


上条「いやぁ、俺との差というか、格の違いを思い知ったよ」


美琴「……何よ、格の違いって」


上条「考え方とか、将来に対する思い、とか?」


美琴「そんなもん、学校で当たり前に学ぶことでしょ! そんなこと褒められても嬉しくないっ!」プイッ


上条「(俺学べてねぇ……)」ズーン




上条「ふぃー、美味かった! ジャンクフードってたまに食べたくなるもんだよな」


美琴「い、いいの? 奢ってもらっちゃったけど。 私だってお金持ってるよ?」


上条「女の子に、しかも後輩に奢らせるほどおちぶれちゃねーっての」


美琴「そ、そっか……。 ありがと。 ごちそうさま」


上条「お礼なんていいって。 すげー良い話聞かせてもらったし」


美琴「そんな……。 別に、普通じゃない。 あんなの」


上条「普通じゃないって! 少なくとも、俺よりまとも! ありがとな、ほんと!」


美琴「……(……あ、そうだ!)」


上条「それじゃ、行くかー」


美琴「ちょっと待って!」


上条「んー? どうした? 忘れ物か?」


美琴「……はい! これ!!」ビシッ


上条「……? メルアドと番号?」


美琴「……その。 前交換したときと、変わっちゃってるといけないから、一応……」


上条「……」


美琴「あ、アンタがあんなにくだらないことで悩んでるんだったら、私が力になってやってもいいって言ってんの!」


上条「御坂……」


美琴「その……。 い、いつでも頼って来なさいよね。 私、待ってるから」


上条「……おうっ! ありがとな!!」





:上条宅


上条「(……)」


上条「(…………自分ができることと、やりたいことの違い、か……)」


上条「(……そんなこと、考えたことも無かったな)」


上条「(インデックスがイギリスに帰ってから、特に何事もなく過ごして。 それに満足して。 この先も、ずっとそれが続くんだろうって思って)」


上条「(行き着いた未来が、ここ)」


上条「(……)」


上条「(……明日から……。 いや、今日。 今から、変わらないと)」


上条「(……うっし! やるぞ!! まずは、自分ができること探しだ!!)」


2013年4月初旬。
上条当麻、21歳。『本気の』就職活動が始まる。



上条「(……っつっても。 何をしたら、自分ができることなんてわかるんだ?)」


上条「(……。 自己分析っつーんだっけ。 そんなのやったことなかったな。 難しそうだし)」


上条「(教えてくれる人、いっかなー……。 土御門たちは頼れそうもないし……)」


上条「(……神裂に聞いてみるか? ……いや、聖人にんなこときけねえ……。 しなくても自分が何者か分かってそうだし……)」


上条「(……うーん。 大学教授も俺と仲の良い人なんて……)」


上条「(……ん? 教授? ……先生…………。 ……そうかっ!!)」



:とあるアパートの一室


ぴんぽーん


上条「……」


「はいはーい、どなたです……か……って、上条ちゃんじゃないですかーっっ!!」


上条「……こ、こんばんは。 小萌先生」


小萌「い、いやですー! こんな寝間着姿見られちゃって……! そういえばこれって二度目です!!」ガーン


上条「すいません! 急に来ちまって」


小萌「そ、それは全然構わないんですけど~……。 とりあえず、入りますか~?」


上条「はい……!」





:小萌先生宅


出される渋茶。
散乱したビールの空き缶。
少しばかりのノスタルジックを感じる。


小萌「も~っ!! そんなまじまじと部屋の中を見渡さないでくださいっっ!!」


上条「あっ、す、すいません。 なんか懐かしくって」


小萌「わ、私だって普段はもっと綺麗にしてるんですからっ。 今日はその、たまたま散らかしっぱなしなだけで……」ボソボソ


上条「あはは……」




小萌「……で」


紙カップに浮かぶ湯気を、小さな吐息で飛ばしつつ。
言い訳をする子どものような目から、凛とした教師の眼差しへと変える。


小萌「いきなりどーしたんですか~? 高校卒業してから全く音沙汰がなかったのに」


上条「すいません……。 交通費の関係で学生寮の方に入っちまったんで、なかなかこっちに来る機会がなくて」


小萌「ふふふ、別に謝る必要は無いですよ~。 学生は青春を謳歌しないといけませんから~」


屈託の無い笑顔を見て、改めて思う。
この人が、自分の先生で良かった、と。




上条「いや、その……。 自己分析ってのを、教えてほしくって」


小萌「『自己分析』ですか……?」


上条「はい」


小萌「能力解析ではなく?」


上条「そ、それもあるんですけど。 俺は今、就職活動中でして……」


小萌「なんと!! 上条ちゃんが、就職ですか!!」


上条「そうなんですよ」


小萌「時の移ろいというのは不思議なものですね~。 もう、そんなに時間が経ちましたか」


上条「あはは……」


小萌「確かに、自分を知る、というのは就職活動に置いて、重要なポイントの1つですよね~」


上条「はい……。 だけど、俺、そういうことしたことなくって……」


小萌「ほとんどの学生は就職活動の時期にならないとやりませんからね~。 日本の悪しき風潮です~」


小萌「そういう風潮を作っているのが、日本の教育委員会及び教師陣っていうんですから、私が言えた義理でもありませんけど……」




小萌「そうですね~。 例えば……。 上条ちゃん、バイトはしたことありますか~?」


上条「い、いや……。 短期バイトは何回かやったんですけど、長期のバイトはほとんど経験がないです」


小萌「なるほど~。 じゃあ、学生時代に学んだことは何でしょう?」


上条「は、はい。 国際文化……ですかね」


小萌「ほぉ~。 国際文化って言っても、沢山ありますよね? 国際考古学とか、国際文化人類学とか。 上条ちゃんはそういったくくりだと、どんなことを学びましたか?」


上条「細かく分類するとってことですか?」


小萌「そのとーりです!」


上条「うーん……。 パッと、これ!っていうのは出て来ないんですけど。 どちらかというと、海外の現代文化とか、宗教文化っていうのを……」


小萌「上条ちゃんの周りにはインデックスちゃんたちがいましたもんね~。 そういった色が強く残ってるってことですかね」


上条「た、多分……。 少なからず、俺は影響を受けてると思います」

シスターちゃんな



小萌「これが、自己分析ですよ~!」


上条「……へ?」


小萌「今、上条ちゃんが何でその勉強してるのか。 そのルーツを、簡単ながらも探るように質問してみました」


上条「!」


小萌「そこで、上条ちゃんは『外国人の友達がいるから、国際文化を学んだ』っていうパーソナルな歴史が見えてきましたよね」


小萌「これこそが、上条ちゃんだけの歴史。 『自己』です。 この『自己』を知るために、自分に疑問を投げ掛けるのが『自己分析』というわけです~」


上条「な、なるほど……!」


小萌「『分析』なんて言うと堅苦しいですよね。 要は、自分の『今』はなんであるんだろう、どのようにして自分の価値観はできたんだろう」


小萌「そうやって考えてみることが、自己分析ってことなのですよ」

>>71

申し訳ない。以後気をつけます!



上条「(自分の、歴史……)」


自分が何者なのか。
分析、という言葉から、つい小難しい定義をしていまっていた。
言い方や考え方を変えてみると、こんなに物事は理解しやすくなるのか。

上条当麻は、改めて彼女が教師なのだと実感した。


小萌「そういえば、シスターちゃんは今どうしてるんですか~?」


上条「今はイギリスに戻って、あいつにしかできない仕事をしてるみたいです」


小萌「シスターちゃんにしかできない仕事……。 大食いとかですか~?」


上条「あはは。 まぁ、俺といるよかイギリスにいる方が多く食べれるでしょうね」


小萌「上条ちゃんは海外に行ったことはあるんですか?」


上条「は、はい! イギリスとか、フランスとかには……。 あと、ロシアにも」


小萌「なんと……!? ヨーロッパにロシアですか! 運賃だって馬鹿にならなそうです~」


上条「色々と事情がありまして……」


小萌「ふむふむ。 それじゃあ、上条ちゃんは海外に行ったことない学生よりも、海外に行ったことがある経験があるという面で、強みを持ってるわけですね」


上条「強み……?」


小萌「はい。 いくら海外に行くことが容易くなった時代とは言え、まだまだ日本人の学生たちは海外へ行く意欲が薄いのです~」


小萌「国際文化を学んでいるのに、日本でしか過ごしたことがない。 そんな子だって沢山いるはずですよ~」


上条「海外へ実際に行ったことがあって、国際文化を学んでいることが、俺の強み……」


小萌「正に、その通りです。 他の誰でもない、上条ちゃんだからこそ持ってる強みです」




上条「で、でも。 海外に行ったことある奴だって、沢山いると思うんですけど」


小萌「そうです。 今見つけた強みはまだまだ、強みとしては錬磨しきれていません」


小萌「そこで、更に自己分析をすることで、上条ちゃんの強みを、より鋭いものにしていく必要があるのです」


上条「より鋭いもの……ですか」


小萌「はい。 言葉面では難しそうですけど。 実際は簡単なことです」


彼女はそう言って立ち上がると、戸棚から紙とペンを持って来て、上条に差し出した。


小萌「この紙に、上条ちゃんが今まで海外に行って、1番印象に残ったものを、なるべく具体的に書いてみてください」


上条「具体的に?」


小萌「はい。 例えば、フランスに行った期間が1ヶ月だったら、しっかり1ヶ月と書くこと! 間違っても、短期間とか、長期間とか。
そういった人によって尺度が違う言葉は使ってはいけません」


小萌「大人はこれを、客観的に述べる、と呼びます」


上条「客観的に……。 なるほど」





15分間、彼は必死に考えた。
戦闘した経験や死にそうになった経験などは多々ある。
だが、そんなことを書いても、意味がないことは御坂美琴から教わった。

彼は彼なりに考えぬいて、より自身の学ぶ学問と結びつけて書き記した。


小萌「イギリス清教、ロシア成教、ローマ正教、そして日本に存在する天草式十字凄教の4つの宗教と出会い、考え方の違いを知った、と」


上条「はい。 俺が海外に行ったのは、とある事情があったからで……。 文化的な意味では旅行客レベルで、ほとんど学べてないんですけど、
宗教に関しては人より多く触れる経験があったと思うので」


小萌「いいじゃないですか! これでいきましょう! 上条ちゃんの『軸』は」


上条「『軸』ですか?」


小萌「はい。 上条ちゃんを語る上で通さなければならない、1本線の筋のようなものです」




小萌「えーと……。 あ、これが丁度いいですね~」


可愛らしい桃色の携帯電話を取り出し、インターネットで何かを検索する。
超有名な動画サイトを開くと、威勢よく上条当麻の前に突き出した。


上条「……えっと」


小萌「この動画を見て、この人がどういう人物か推測してみてください。 いいですね?」


上条「は、はいっ」


『小学生のときは野球をやって! 中学生のときは生徒会をやって。 あ、野球のポジションはピッチャーでー、生徒会は庶務でした。
それで高校のときはテニス部に入って大会に出ました!!大学では文学について色々と学んで、人生には沢山の楽しみがあるんだなと思いました』


上条「……」


小萌「どうでしたか?」


上条「えっと……明るい人だとは思ったんですけど」


小萌「聞いていて、何を言ってるんだろう。って思いませんでしたか?」


上条「はい。 そうです。 何が言いたいのか、よく伝わってきませんでした」



小萌「軸がないと、こうなります」


小萌「今の彼は、きっと『今まで沢山のことに取り組んで来た』ということを言いたいのでしょうけど。
初めて会った人にそれを全部伝え切るのは、無理なんです」


小萌「1日に何回も会うような人であっても、数年付き合ってようやく気付く習慣とか口癖があったりします。
それと同じで、自分のことを全て相手に知ってもらうなんてことは、一朝一夕ではほぼ100%無理です」


小萌「なので、1つのことに絞って、相手に自分はこういう人なんだよ!って伝えることが、1番効率がいいんです。
すいませんが、上条ちゃん。 もう一度動画を見てもらっても良いですか~?」


上条「はい!」




『私、○○大学●●学部の××と申します。
専攻はメディア情報学です。小さい頃から新聞を読むことが習慣になっていたこともあり、情報について学びたくてこの学部に入りました。
大学時代は、マスコミ関係のインターンシップを3社ほど経験させて頂きました。
そこで培ったのは、事実の裏付けと、情報鮮度の重要性でした。
この経験から、『理論プラス実践』がモットーとなっています。宜しくお願いします。』


上条「おぉ……」


小萌「どうですか?」


上条「言ってることがすんなり入ってきました。 何で大学の学部に入ったのかも分かりましたし、マスコミに行きたいんだなってことも伝わりました」


小萌「そうですね。 マスコミで働く上で重要なことを誰よりも知ってますよ!ってことをアピールしている、良い自己紹介だと思います」


小萌「前者では、生まれてきてから今に至るまでの経緯を全て羅列していました。
しかし、後者では経緯などはほとんどなく、自分が好きなことだけを押し出しています」


小萌「詳細性で言ったら、前者の方が良質です。 しかし、自分がどういう人間なのか、何が好きなのかを相手に簡潔に伝えるといった目的では、
圧倒的に後者の方がわかりやすいのです」


小萌「これが、軸を持つことと持たないことによる違いです~」


>>82

訂正。


『私、○○大学●●学部の××と申します。
専攻はメディア情報学です。小さい頃から新聞を読むことが習慣になっていたこともあり、情報について学びたくてこの学部に入りました。
大学時代は、マスコミ関係のインターンシップを3社ほど経験させて頂きました。
事実の裏付けと、情報鮮度の重要性を改めて知ることができた良い機会だったと思っています。
この経験から、『理論プラス実践』がモットーとなっており、もし私が御社に入社できましたら、活かしていきたいと思っております。
宜しくお願いします。』


上条「おぉ……」


小萌「どうですか?」


上条「言ってることがすんなり入ってきました。 何で大学の学部に入ったのかも分かりましたし、マスコミに行きたいんだなってことも伝わりました」


小萌「そうですね。 マスコミで働く上で重要なことを誰よりも知ってますよ!ってことをアピールしている、良い自己紹介だと思います」


小萌「前者では、生まれてきてから今に至るまでの経緯を全て羅列していました。
しかし、後者では経緯などはほとんどなく、自分が好きなことだけを押し出しています」


小萌「詳細性で言ったら、前者の方が良質です。 しかし、自分がどういう人間なのか、何が好きなのかを相手に簡潔に伝えるといった目的では、
圧倒的に後者の方がわかりやすいのです」


小萌「これが、軸を持つことと持たないことによる違いです~」



上条「なるほど……。 自分を語る上で、何か1つテーマを決める……ってことか」


小萌「イエス! 上条ちゃん、賢くなりましたね~。 先生は嬉しいです」


上条「あはは……。 一応、成人しましたし」


小萌「おぉ、そうでしたね! 就職活動中ということは、今21……ですか?」


上条「うす。 そんで、今年22歳です」


小萌「なんと!! 上条ちゃんと一杯酌み交わせるなんて……! 教師冥利に尽きます……! っていうことで、ビールを用意しますね~」タタタッ


上条「あっ、いや、俺、今日は……」


小萌「はいっ!」バンッ


麒麟、端麗、そしてタイガービールまで。
どこから集めたのか、日本の有名所から海外の主要ビールまで、大量のビール缶を取り出してきた。


上条「せ、先生……」


小萌「お酒でも飲まないと、ほんとーの自分は出て来ないものですよ~。 ……ね?」ニコッ




上条「……ひっく。 これ美味いっすね。 なんというか、薄味で」


小萌「おぉ、良い所に目をつけましたね~。 それはベトナムから取り寄せたバーバーバービールって言うんですよ~。
後味すっきりで美味しいですよね~」


上条「はい、すごい飲みやすい感じがします」


小萌「そうなんです。 お酒は薄口の方が、舌触りもいいし、喉を通しやすいんです」


小萌「しかし! 相手に自分を伝えるときは、濃ければ濃いほど良い。 ということを忘れないでくださいね~?」


上条「……濃ければ濃いほど、ですか?」


小萌「はい~。 薄味っていうのは、つまり調味料や、着色料、その他を極力薄めているってことなんですよー。
経済的背景があって、どうしても材料費を掛けられないっていうこともありますけど~」


小萌「だけど、相手に自分を伝えるときは、インパクトがあればあるほど。 つまり、話の中に相手の気を引くエッセンスがあればあるほど、良いのです」



小萌「先ほどの話で言うと、『新聞(マスメディア)が好き』だから『マスコミ関係のインターンシップを3社体験』して、『マスコミで働く上で重要な知識を知っている』ってことをアピールしました」


小萌「簡単に言うと、3つほど調味料を入れてるってことですね」


小萌「この調味料は、多ければ多い程、そして具体的であればあるほど、相手の記憶に残ります~」


小萌「もちろん、『軸』を置いて話すという前提があってこそですけどねー」


上条「『軸』と、『調味料』……」


小萌「ちょっと一気に押し込み過ぎましたかね~?」


上条「あはは……。 久々にこんな勉強してる気がします」


小萌「む~っ。 大学生からそのような発言は頂けませんね~」プクーッ




上条「ちょっと、まとめてみてもいいですか?」


小萌「はい、どうぞどうぞ!」


上条「俺の軸っていうのは、その『世界の宗教の考え方』について知っていること。 そして、その経験をもとに、学習してきたこと」


小萌「うんうん」ニコニコ


上条「で、調味料としては、実際にインデックスたちが周りにいることで、宗教内のいざこざや体制を体感してきたエピソードを使う……」


小萌「宗教論、興味深いですね~。 ぜひ、先生も聞いてみたいものです~」


上条「そ、それはまだまとめきれてないですが……」アセアセ


小萌「あ、いえいえ! 急かしてるわけではないんですよ~。 自分を伝えることが一朝一夕ではいかないと同じく、自分を知るっていうこともすぐにはできるものではありませんし」


小萌「そういった細かいエピソードは、これからじっくり時間をかけて煮詰めていけば良いのです~」


上条「はい……! 本当にありがとうございます!」


小萌「上条ちゃんの役に少しでも立てたのなら、嬉しい限りですよっ!」ニコニコ






上条「と、とりあえず。 今日から先生に教えてもらったことをまとめて、自己紹介について研究してみたいと思います!」


小萌「それが良いと思いますですよ~」


小萌「あっ。 でも、上条ちゃん。 1番重要なことを伝え忘れてました」


上条「1番重要なこと……!」


小萌「はい! ……それは、上条ちゃんらしく行く。 ってことです」


上条「俺らしく……」


小萌「上条ちゃんは人懐っこくて、それでいて他人に対して謙虚になれるいい子なんです」


小萌「大人の先生から見て、そう思うんですから間違いないのです!」


小萌「だから、上条ちゃん! 自信を持ってください。 変に飾ろうとしないで。 上条ちゃんの自然体で、臨んでください。


小萌「そうすれば、絶対に上条ちゃんにぴったりの仕事が見つかりますからっ」ニコッ


上条「先生……」


お酒の力もあってか、思わず目頭に熱いものが溜まっていくのを感じた。
就職活動が始まって以来、誰かに笑顔を向けてもらうことも、自分を認めてもらうことも、ほとんどなかった。

自分には、強い味方がたくさんいること。 それに気付けただけでも、今日の収穫として十分だった。



上条「そ、それじゃあ夜遅くなっちまいましたし、今日は帰りますね。 本当にありがとうございました」


小萌「そうですね~。 終電がなくなってしまっても困りますし~」


荷物を片付け、玄関までむかう。
いつの間にか散らかっていた缶のゴミが片付いていた。
やはり、人に見られたいものではなかったのだろう。


上条「それじゃあ、今日はありがとうございました。 小萌先生のおかげで、もう少し頑張れそうです」


小萌「とんでもないっ! 可愛い教え子のためなら、私は1肌も2肌も脱ぎますとも!」


上条「あはは、大げさですよ」


小萌「大げさなんかじゃ……ない……で、す……」ポテッ


上条「うぇっ!? せ、先生!?」


甘い香りが上条の鼻孔をつっつく。
一定距離を保っていた先生の頭が、今上条の胸の中にあった。


上条「先生、どうかしましたか?! せん――」


小萌「す~……。 すぴー……」


上条「(あ……)」


思い出した。
この人は、『先生』なのだ。
今日も仕事だったに違いない。
説明会に出て、話を聞くだけでもそれなりに疲労感を感じるのだ。
社会人が仕事をして感じる疲労感など、学生には見当もつかない。


上条「(疲れてるのに、俺の相手をしてくれたんだな……)」


静かに音を立てないように布団を敷き、彼女を寝かせ、毛布をかける。
1つ1つの動作を、とてつもなく丁寧に行う。
感謝の気持ちと尊敬の念を込めて介抱した。


上条「(分かりやすいところに鍵が置いてあってよかった……)」


がちゃっ

ごとんっ。


メモを残した後、鍵を閉め、郵便受けに鍵を入れた。


上条「(……んーっ……)」


夜風に当たると、一気に酔いが冷めていく。
澄んだ風が彼の身体に吸収されていくかのように、思考も冴え渡る。


上条「(……よっし。 やるぞ!!)」


ふてくされている時間などない。少しでも早く、自分のことを思ってくれる人たちの期待に応えたい。
上条当麻にとっての自信は、人からくるものなのだ。

今朝とは違う瞳を宿した彼の姿が、そこにはあった。



:上条宅


小萌先生に教えてもらってから、彼の就職活動は変わった。


上条「……」


闇雲に受けていた企業の説明会全てをキャンセルし、自己分析のために時間をかけた。


上条「やっぱり、アニェーゼたちの考え方からして……。 ローマ正教って乱暴なイメージがあるよな。
必要なものは是が非でも手に入れようっていう感じがする」


自分が見て、聞いて、触ったもの。 体感したもの全てを書き出して、そこから自分自身とは何かを導き出そうとした。


上条「その点、ロシア政教は神の右席の存在があったように……。 隠密的に行動するというか……」


本来ならば日本どころか世界的な機密情報を知っている彼だからこそ、感じたこと。
死にもの狂いで生き残って来た、彼の軌跡があるからこそ、わかること。

それらを、どう表現し、どうやって自分の強みとして相手に表現するか。
ひたすら考え、書いて、脳内を整理したのだった。

>>101
神の右席はローマ正教でないかい?

ロシア成教は殲滅白書だな



上条「(……俺の自己紹介なんて、考えれば誰もが言えてしまうような、ありふれたものだった)」


上条「(俺にしかできない。 ……俺だからこそ、言える自己紹介を考えよう)」


自分のことを見つめ直すというのは、思いのほか楽しかった。
記憶を掘り起こして行く上で、何でそうなったか、なぜ自分はそれを選んだのかを考えていく。
頭を使う作業など、大学生活中ほとんどしてこなかった。
だけれども、それを楽しいと感じるのは、彼が充実した来歴を持つからに他ならない。


上条「(俺は、誰かの役に立ちたかった。 困ってる人から目を背けるなんて、絶対にできなかった)」


上条「(きっと、これからもそうだと思う)」


上条「(そういった思いも、伝えたい)」


自分が大切にしていた考え方が、浮き彫りになって来る。
改めて言葉にするのは恥ずかしい気持ちもあったが、それよりも自分自身のことがわかっていく高揚感の方が勝っていた。


上条「(……頑張るぞ!!)」


>>102 >>103
ありがとうございます。ロシア成教の『成』まで間違えてました……。 失礼しました。
>>1は一応新約2巻まで読んでるのですが、1年近く前の話なので間違っている所がありましたらご指摘お願いします。


>>101

訂正



:上条宅


小萌先生に教えてもらってから、彼の就職活動は変わった。


上条「……」


闇雲に受けていた企業の説明会全てをキャンセルし、自己分析のために時間をかけた。


上条「やっぱり、アニェーゼたちの考え方からして……。 ローマ正教って乱暴なイメージがあるよな。
必要なものは是が非でも手に入れようっていう感じがする」


自分が見て、聞いて、触ったもの。 体感したもの全てを書き出して、そこから自分自身とは何かを導き出そうとした。


上条「その点、ロシア成教は殲滅白書があったように……。 隠密的に行動するというか……」


本来ならば日本どころか世界的な機密情報を知っている彼だからこそ、感じたこと。
死にもの狂いで生き残って来た、彼の軌跡があるからこそ、わかること。

それらを、どう表現し、どうやって自分の強みとして相手に表現するか。
ひたすら考え、書いて、脳内を整理したのだった。





真面目な話「俺だけにしか出来ない自己紹介」とか考えないほうがいいぞアニメの主人公じゃ無いんだからさ
NNTの短い人生なんて激動の時代生きてきた爺さんたちからしたら本当たかがしれてるから
よほど変なことでもしてないと強みにならんし語られても滑稽なだけ
規格化された魅力なし学生は無理して厚化粧するよりスッピンでいくのがいい
話す事なんて大学でなにを学んできたかで十分だよ
大学でサボって遊んできたやつは御愁傷様

乙乙~。

一生懸命自己紹介して、アピールしたけど不合格で、
次に喋ったチャラ男が、『刺身の美味い食べ方』を面白おかしく話して合格した時に、
「ああ、俺の就活は間違ってたんだなぁ…」と実感したわ。

>>107 >>108

ケースバイケース、だと思います。
少しでも気を引くために自己紹介を磨くことは前提であって、必ずしもそれをすれば合格するといった確証足り得ません。
面接官の年代、経歴、趣向。 面接時間、環境。 あとは受験者側の体調や経歴。 そういう『運』要素も絡んできます。
一概にこれ、と答えを出せない所が辛いですよね。



3日後

:上条宅


ヴヴヴヴヴ……


上条「(……ん? メールか)」


上条「……」カチカチ


上条「……!!」


上条「(……エントリーシートの結果……!)」


彼に来たメール。
それは昨日提出したエントリーシートの結果だった。
小萌先生から自己紹介について教えてもらった翌日に提出したので、結果が来るまで3日程度。
このようなことは初めてだ。


上条「(いつもは提出してから2週間以上経ってから結果が来たのに……)」


上条「(……どうだ…………。 よしっ!)」ポチッ






To:上条 当麻<Toma Kamijo@gmail.com>
subject: 選考結果のご連絡です。


上条当麻 様


時下、ますますご健勝のことと、お喜び申しあげます。

このたびはエントリーシートをご提出いただき、厚くお礼申しあげます。

さて、エントリーシートにつき、慎重に協議いたしましたが、
誠に残念ながら、今回は採用を見送らせていただくことになり、
貴意に添えぬ結果となりました。

ご期待に応えられず申し訳ございませんが悪しからずご了承の程を
お願い申しあげます。

末筆ながら14卒皆様のこれからのご健闘をお祈りいたします。

                              敬具  



上条「(……)」カチッ


上条「(……ダメかぁああああああ~~~~)」


上条「(仮に、自己紹介は良しとしても……。 他にも書くことが沢山あるかならぁ……。 そこでダメなんだろうな)」


上条「(めげてても先に進めない。 エントリーシートに通らないと、会ってすらもらえないんだから)」


上条「(……エントリーシートに重点をおいて、対策を練るしかない)」


上条「(……よしっ)」



:美琴宅


御坂美琴。
常盤台付属中学校を卒業した後、付属高校へ進学。
その後、エスカレーター制度及び推薦にて、全国でもトップレベルの法学部に入学。


美琴「(……)」


とりあえず体験してみよう。
食わず嫌いをせず、勧誘を受けた新歓には全て参加した。
しかし、むけられるのはいつも奇偉の目線。
誰も自分には近づかない。美琴が積極性を見せた所で、相手がそれに応じてくれない。

ささやかに思い描いていた理想のキャンパスライフは、彼女から遠のいていた。


美琴「(…………)」


美琴「(…………ぷはっ)」


美琴「(何でメール送って来ないのよ!!)」


美琴「(私教えたよね!? 間違ってないわよね!? 電話番号だって教えた!!)」


美琴「(何で1通も連絡がないわけ!? 普通、『今日は楽しかったよ』の一言があってもいいんじゃないの!?)」


美琴「(なーにが『おちぶれちゃいないっての(ドヤッ』よ! こういう所でだらしないのは成長してないくせに!!)」


美琴「(…………)」


美琴「(…………………せっかく、久しぶりに、会えたのにな……)」





美琴「……」パカッ


『新着メール:0件』


美琴「…………」カチカチッ


『新着メール問い合わせ中……
 新しいメッセージは、ありません』


美琴「~~っ!」


ぽふっ


美琴「(あ~~~っ!! こ~な~い~!!)」


美琴「(もう、こうなったら私から送ってやろうかしら……)」


美琴「(でも、就職活動で忙しそうだし……。 迷惑かけたらいやだな……)」


美琴「(……。 ……あ~~~も~~~~!!! 何で送ってこないのよ、あのトーヘンボク!!!)」


ーッ ーッ


美琴「(大体アイツはいつもこうなのよ! 中2の大覇星祭前のときだって、せっかく2人きりだったのにアイツは!!)」


ヴーッ ヴーッ


美琴「(!)」シュシュ パカッ


美琴「(……メール!)」カチカチッ


美琴「(……ぁ―――)」





:恵○寿 ガーデンタワー前


美琴「……」ソワソワ


美琴「…………」チラッ


美琴「(……早く着き過ぎたかな…………)」


上条「御坂!」


美琴「!」ビクッ


上条「わりぃわりぃ! 待たせちまったか? って、まだ少し早いよな?」


美琴「(び、びっくりしたー……) ま、待ってないわよ! それじゃ――」


上条「……?」


美琴「……(……)」


上条「どうかしたか?」


美琴「へ?! あ、う、ううん!! 何でもない! さ、さあ! 行きましょ!!」ツカツカ


上条「おうっ!」


美琴「(……い、今のはナシ!! こんな奴をカッコいいとなんか思わない!! 今のは錯覚!!)」




:喫茶店 ヴ○ルデ


上条「……」カチコチ


美琴「あ、ブレンドとチーズスフレ1つお願いします」


上条「お、おおおお、俺は、その……普通のコーヒーを!!」


店員「はい、かしこまりました」


美琴「……」


上条「……」


美琴「なーに堅くなってるのよ……」


上条「あ、いや、なんか、こういう格式高そうな店、あまり来ないからさ……」


美琴「格式高いって……。 普通の喫茶店でしょ」


上条「ま、まぁそうなんだけどさ」




美琴「それで。 一緒に考えてもらいたいものって?」


上条「そうそう。 それなんだけど」


昨日。上条当麻は、彼女に1通のメールを送った。


ーーーーーーーーーーーー

From:上条当麻(ばか男)<○○○@○○.ne.jp>
To:御坂美琴(自分)<▽▽@▽▽.ne.jp>
subject:

上条当麻です。 一応。

この前はありがとな!
久々過ぎて驚いたけど、御坂も変わってないようで良かったよ。
それにすごいタメになる話もありがとう!
今までは疎遠になってたけど、これからはよろしくな。

ところで、ちょっと一緒に考えてもらいたいものがあるんだけど、時間取れる日とかあるか?
忙しいようだったら、無理しないでくれ。

それじゃ、またな!


ーーーーーーーーーーーー


10分と待たせることなく、彼に返って来た返事は、


――――――――――――

From:御坂美琴<▽▽@▽▽.ne.jp>
To:上条当麻(自分)<○○○@○○.ne.jp>
subject:Re:

届いてる。
別にこれといって特別なことを話したわけじゃないでしょ。

ずいぶん唐突ね……。
まぁ、でも。明日なら、空いてるけど?


――――――――――――




>>123

ミスです。誤字脱字ありまくりで申し訳ないです。気をつけます。




美琴「それで。 一緒に考えてもらいたいものって?」


上条「そうそう。 それなんだけど」


昨日。上条当麻は、彼女に1通のメールを送った。


ーーーーーーーーーーーー

From:上条当麻(ばか男)<○○○@○○.ne.jp>
To:御坂美琴(自分)<▽▽@▽▽.ne.jp>
subject:

届いてるかな……。
上条当麻です。 一応。

この前はありがとな!
久々過ぎて驚いたけど、御坂も変わってないようで良かったよ。
それにすごいタメになる話もありがとう!
今までは疎遠になってたけど、これからはよろしくな。

ところで、ちょっと一緒に考えてもらいたいものがあるんだけど、時間取れる日とかあるか?
忙しいようだったら、無理しないでくれ。

それじゃ、またな!


ーーーーーーーーーーーー


10分と待たせることなく、彼に返って来た返事は、


――――――――――――

From:御坂美琴<▽▽@▽▽.ne.jp>
To:上条当麻(自分)<○○○@○○.ne.jp>
subject: Re:

届いてる。
別にこれといって特別なことを話したわけじゃないでしょ。

ずいぶん唐突ね……。
まぁ、でも。明日なら、空いてるけど?


――――――――――――



そこから2、3通のメールを重ねた後、決まったのが本日13時に恵○寿に待ち合わせ。

最初は、無理に予定を合わせてくれているのではないかと心配になったが、彼女の思いやりなのだと考えることにした。


上条「俺のさ、直すべきところっていうか……。 弱みってなんだと思う?」


美琴「……はぁ?」


上条「あ、えっと、いきなり過ぎたか?」


美琴「弱み……っていきなり言われても……」


上条「いや、あのさ。 俺が考えてると、自分のダメなところってあり過ぎてさ。 逆に頭がこんがらがっちまって……」


上条「だから、他人に聞いた方が良いと思ったんだけど……」


美琴「それで、3、4年会ってなかった私っていう結論になるわけ……?」


上条「あははは……。 俺の周りの奴らは皆、俺と同じような状況だからさ……」


美琴「……う~ん……。 弱み、ねぇ……」


上条「やっぱ、すぐにゃ思いつかないよな……。 メールで聞こうとも思ったんだけどさ、文字で説明しようとすると煩わしいと思ったから」


美琴「いや、それはいいんだけど……。 例えば、アンタは自分の悪いところ、どういうところだと思ってるの?」


大手(イギリス清教・ローマ正教・ロシア成教)
中小(魔術結社)
フリー(オリアナ、闇咲あたりに弟子入り?)
上条さんの魔術サイドでの就職口ていったらこのくらいか?



上条「え”……」


美琴「なーにが『え”……』よ。 つい数十秒前に沢山あり過ぎてとか言ってたじゃない」


上条「いざ聞かれてみるとすぐには出ないな……」


美琴「自分の考えくらい、少しはまとめてきなさいよ……」ハァ


上条「うーん……。 沢山あるんだが……。 そうだな……」


上条「俺は、どうしても受け身になりがちってところが、良くないのかなぁとは感じてる」


美琴「受け身? 受動的ってこと?」


上条「ああ。今までは何をやるにしても、誰かに言われたり、されたりしてから始めることが多かった気がするんだよ」


上条「実際に大学だって、両親の勧めがあったからこそ進学はしたが、もし勧められてなかったら行ってるかわからねぇし」


美琴「……そうかな?」


上条「え?」


美琴「私は、そんなことないと思うけど」







美琴「どんな未来が待ってるかなんて、偶然の出会いでもない限りわからないし。 だから布かれたレールに沿って、大学に進学したことに関しては仕方がないのかな、と思う」


美琴「っていうか、アンタはどっちかって言うと『異常な程』主体的でしょ。 どこのバカが命かけて他人の問題に首つっこんだんだっけ?」


上条「うぐ……」


美琴「確かにあの時はアンタがいなかったら~とか思うとゾッとするけどさ。 当時は恨みもしたもんよ。
私のせいでアンタが死んだら、……私には償いきれないし」


美琴「……そうね。 そういう意味で言うなら……。 アンタの悪いところは『猪突猛進』過ぎるところってことかしら」


コーヒーを片手に雄弁を振るう彼女に、一言も返せない。

ある程度思考も成熟し、大人になった今考えてみると、あの時の行動が独りよがりであったことは明白だ。
自分がやりたいから、自分がそうだと感じたから、行動に移した。
客観的に見たら、ただの自殺行為に他ならないものだった。
もちろん、あの時の行動を反省することはあれど、後悔などは毛頭ないが。



上条「その節は、すんませんでした……」


美琴「い、今更謝らないでよ!! だから言ってるでしょ! 結果的には助かったんだから!! そ、その……」ゴニョゴニョ


上条「……へ?」


美琴「そ、それがアンタの良いところでもある……と、思う……」ブツブツ


上条「猪突猛進で何も考えないところが、俺の良いところ?」


美琴「そ、そう! 二律背反ってやつ! 1つの物事には2つの側面があるってこと! そういうこと、うん! そういうことよ!」


上条「なるほど……。 良いところでもあり、悪いところでもある……ってことか」


上条「(なんとなく、良い感じがする)」


美琴「こ、こんな感じで良かったの?」


上条「ん?」


美琴「アンタが聞きたいことって」


上条「え、あ、あぁ! 凄く助かった! 御坂って本当に良い奴だな!」


美琴「い、良い奴……」ドヨーン


上条「え!? な、なんでいきなり落ち込んでるんでせう!?」


美琴「(あいつにとって、私はまだ、『良い奴』かぁ……)」



上条当麻が乙女心を知る日は、くるのだろうか。



<ありがとうございましたー。



上条「ここのコーヒーってめっちゃ美味しいのな。 香りだけでも量販店のものとは一味違った気がする」


美琴「それなりに有名店だしね。 ……ところで、この後はどうするの? 解散?」


上条「あ、それなんだけどさ。 この前も今日も、俺ばっかりお世話になってるからさ、何かお礼させてくれよ!」


美琴「えぇっ!? べ、別にお礼なんて! い、いいわよ! 今日だってこの前だって奢ってもらってるし、私何かしてあげてる気しないしっ!!」フリフリ


上条「俺の気が済まないんだって。 俺にとってスッゲー重要なことを手伝ってもらってんだし!」


上条「高額なもん買ってくれ!っていうのは少し困るけど……」


美琴「お礼なんて言われてもなぁ……」


美琴「(うーん……)」


美琴「(……あ、あれ? これって、もしやチャンスだったりする?)」


美琴「(これを機に一緒にどこかへ遊びに行けば、『良い奴』からの昇格もあり得る……!?)」


美琴「(でもでも! 私ががっついてるように見られるという危険性も……!! 諸刃の剣……!)」


美琴「(うぅ……。 このニブチン、相手からアクションかけないと絶対に気付かないタイプだし……っ)」


美琴「(覚悟を決めるしか……っ)」


すまん、上琴になるようだったら早めに言ってもらえると助かる
離脱するんで



美琴「あ、あの……、それじゃあ私と映画にでも――」


上条「あ! そうだ!」


美琴「!?」ビクッ


上条「たしか財布に入ったまんまだったな……」ガサゴソ


上条「え~っと……。 あ、あったあった!」


美琴「……ディズ○ーランドのチケットぉ?」


上条「おう。 幸か不幸か、就活サイトのアンケート懸賞に当たったんだよ」


上条「ペアチケットで行く奴いねーし、そもそも時間ねーしってことで売ろうか迷ってたんだが」


上条「白井とでも行って来いよ! あ、もちろんそういう奴がいんならそいつと行ってもいいしさ」


美琴「へ? い、いや。 ちょっと、それなら一緒に――」


prrrrr.... prrrrr....


上条「お、すまん。 電話だ」ピッ


上条「もしもし、上条当麻です。 ……あ、お世話になってます! はい……はい……あ、ぜひ行かせてください!」


上条「今日の5時から新○NSビルですね? わかりました。 はい、はい。 ありがとうございます。 よろしくお願いします。 失礼します」


美琴「……」


上条「御坂、すまん! 説明会の予定がはいっちまった! そのチケット、レストラン付きみたいだから楽しんで来いよ! じゃあな!」タタタッ


美琴「あ、ちょ、ちょっと待ってよ! ……はぁ?」


美琴「……」


美琴「…………何なの……」


美琴「何なんだアイツはぁーッッ!!」バリバリッ


周囲の人「ファッ!?」


美琴「……はっ。 す、すいません!!」ダダッ




>>140

すいません。寝落ちしてしまったので先に書いてた分投下しました。
相当話が迷走しない限り、特定カプをつけたりって話にはならないと思います。

僕の書き方が下手くそなばっかりに皆さんに不快な思いをさせました、すいません。
もう少しハッキリと書くように心がけますので、よろしければ見てってください。



:上条宅


上条「(おぉ……!)」


上条「(俺が押し出せるところ、そして時として弱みとなってしまうところ)」


上条「(この2つがわかっただけで、エントリーシートの見方が変わった気がする)」


上条「(『学生時代頑張ったこと』『貴方らしいエピソード』とかは自分の押し出せるところを中心とした話を書けばいい)」


上条「(『挫折した経験』『困難に打ち勝った経験』ってやつは、自分の弱いところが出てしまった話を書けばいい)」


上条「(言い方とか考え方を変えるだけで、こうも自信を持って書くことができるんだな)」


上条「(……本当に、御坂や小萌先生には感謝しても仕切れないな)」


上条「(ぜってーに通過するぞーっ!!)」




それから2週間、企業の選別とエントリーシート記入に明け暮れた。
エントリーシート1つ書くだけでも、1日以上かかってしまうこともあった。
それだけに、手当たり次第というわけにもいかなかったため、事業内容や求める人物像を精査し、自分が行きたいと思えるところ、
そして自分が合ってると感じたところへのみ、エントリーシートを送ることにした。

今までは、ウェブ上で提出するエントリーシートばかり送っていたので、記述式のエントリーシートにはかなり手間取った。
何しろ、小学校から現在に至るまで、正式な書類などほとんど書いた経験がない。
奨学金手続き書類や、大学入学願書などは、ただ指示通りに書いていれば事足りる。
だが、エントリーシートは、言わば『自己紹介書』。
自分を紹介することができるのは、おおよそ自分だけなのであって、その回答は全て自己責任。

その場しのぎの内容を書いていた今までと、自分のことを本気で伝えようと考えて書く現在では、緊張の度合いも違うものだ。


上条「(こ、これはミスれない……! ここでミスったら、また最初から書くことに……!)」


重要だと思えば思う程、少しのミスも許せぬほど几帳面になってしまうのが人間の不思議なところ。


上条「(ゆっくり、丁寧に、ミスがないように……。 ――!)」


だが。

――完璧を目指そうとすればするほど、ミスが出て来てしまうのも、人間の不思議なところ。


上条「のわぁあああああああああああああああ!!!」


隣人「うるっせーぞ!!!」壁ドン


上条「す、すんません!!」


上条「(ミスったあああ……! 下書きでは『です』って書いてたのに、『である』って書いちまったぁ~……! 最初からやり直しぃぃぃ……!)」








……


………………



……………………



―ッ  ――ッ


ヴーッ   ヴーッ


上条「(来たか……!)」


上条「(恐らく、結果が来たに違いない)」


上条「(結局、2週間で送ることができたのは6社)」


上条「(そのうち、最初の方に送った2社からは落とされた)」


上条「(持ち駒は、あと4社。 ……さぁ、どうだ……?)」カチカチ



To:上条 当麻<Toma Kamijo@gmail.com>
subject: 1次選考へのご案内



上条 当麻様

こんにちは!
サイバー○○○株式会社採用チームです。

先日ご送付頂きましたエントリシートを厳正に精査した結果、選考【合格】となりました!(おめでとうございます!)
つきましては、ぜひ1次選考に進んでいただきたいと考えております。

次回はグループディスカッションによる選考会となっております。

下記日程の中からお越し頂ける日をご選択の上、ご返信して頂きたいと思います。


次回選考会で上条当麻様にお会いできること、楽しみにしております!


――――――――――

○月●日 13:00~14:45
○月▽日 13:00~14:45
○月×日 13:00~14:45

――――――――――



上条「……」


上条「…………」ゴシゴシ


上条「……」


上条「…………………」パチン


上条「…………」ジーン…


上条「………………よっし!」グッ


上条「(夢じゃない!! 通った!! 遂に通ったぞ!)」


上条「(ようやく、エントリーシートの次の段階だ!!)」


上条「(ここは……? ブログやSNSで有名なIT企業か……。 ES出した中でも相当大きい方の会社だ……)」


上条「(……このチャンスを逃すわけにはいかない……! やってやるぜ……!)」




上条「(とは言ったものの……。 グループディスカッション……ってなんだ?)」


上条「(面接ではないみたいだし……)」


上条「(困った……。 何か特別な選考だったらどうすんだよ……)」


上条「(……ふーむ)」


上条「(とりあえず検索してみるか)」カタカタ




上条「(……なるほど。 『1つのテーマについて、複数人で話し合うこと』か)」


上条「(『テーマや事前に渡される情報は企業により異なっており、予測することが難しい』)」


上条「(つまり、対策は打っておけない選考っつーことか……)」


上条「(どうしたもんかなぁ……。 対策できないっつっても、何かしらしていないと落ち着かないんだが)」


上条「(ん? 『共通事項としては、結果は見ていないこと。 企業側は、発表の独自性よりも、考え方や議論の展開の仕方、協調性などを重視している傾向がある』)」


上条「(……考え方、議論の展開の仕方、か。 小萌先生みたいに上手く人に説明できる人が勝つってことなのか)」


上条「(……わからん)」




上条「(……どうすっかなぁ……)」


上条「(……)」


上条「(…………)」グゥ~


上条「(……とりあえず、飯でも食うか)」


上条「(たしか、買い置きのマルちゃん製麺があった気が……)」スクッ



ぴんぽーん




上条「……ん?」



学生寮。
実家から学校への距離が規定以上あり、かつ学校が指定する以上の成績を保つ必要があるがあるなど、所定の条件を満たしていないと入寮できない。
その分家賃などは安く、施設も整っているので、毎年学生からの人気が絶えない。

上条当麻がそんな場所へ入寮することができたのは、彼の人生の中でもトップクラスに幸運な出来事かもしれない。


もちろん、学園都市の学生寮はオートロック式。
無理にでもこじ開けようとすればすぐにでも警備ロボやアンチスキルなどが駆けつけてくる。
防犯体制には余念がない。

なので、玄関の門を叩ける者と言えば、学校の規定により許可されている郵便会社、もしくは入寮している学生のみ。
学校長の視察など特例はあるが、基本的には外部の者の進入を許すことはない。


上条「(こんなお昼時に、俺を尋ねて来る……?)」


上条「(誰だろ……)」


上条「(って、あんまり待たせちゃ失礼か) はーい、今開けます!」




上条「はいはい、お待たせしましたよー――――」


神裂「……こ、こんにちは」ニコッ


上条「―――っと……」


神裂「……」


上条「……」


神裂「……わ、私の顔に何かついてますか?」アセアセ













上条「か、神裂さんんんんんんんんんん!!?!?」




神裂「お、お久しぶりです。 上条当麻」


上条「え!? ひ、久しぶりっていうか、え、なぜでせう!?」


神裂「これには色々と事情がございまして……」


上条「事情ったって……」


神裂「……あの」


上条「えーっと、あ、え、はい?」


神裂「中、入っても、よろしいですか?」


上条「……」


神裂「……」


上条「あ、はい…………」





上条「こ、こんなもんしかないけど……」コトッ


神裂「お構いなく……」


上条「……おいしょっと」スッ


神裂「折角ですし、頂きます」


神裂「……こくっ。 上条当麻」


上条「は、はいっ」


神裂「……お茶、美味しいです。 ありがとうございます」


上条「ど、どうも……」




上条「……」


神裂「……」


上条「…………」


神裂「…………」


上条「(何なんだろう、この間は……)」


神裂「か、か、上条当麻!」


上条「のわぁっ!? な、なんだ!?」


神裂「そ、その……。 えぇと……」


神裂「こ、困ってることはないですか!?」


上条「!? 困ってること!?」


神裂「はい!」






上条「ど、どうしたんだよ急に!?」


神裂「先ほど言った通り! 貴方に困っていることがないかを聞きに来たのですっっ」


上条「脈絡無さ過ぎやしませんか!?」


神裂「うっ……。 と、とにかく! 貴方に何か問題があるのであれば、教えてください!」



1週間前…




prrrrr…  prrrrrrr…



神裂『え、あ、はい!! 出れてますでしょうか!?』


土御門『うぶっ。 出れてますかって』ゲラゲラッ


土御門『相変わらず機械類は苦手なのかい、ねーちん』


神裂『……土御門でしたか。 ご用件は』


土御門『おいおい、邪見にするなってー。 せっかく良い情報を提供してやろうと思ったのににゃー』


神裂『……良い情報? どうせ、またろくでもないことでしょう』


土御門『上条当麻』


神裂『』ガタゴトガタンッ


土御門『(うぷぷ……)』


神裂『ご、ごほん……。 で、情報、とは?』



土御門『ま、今答えを言っちまったが。 上やんのことですたい』


神裂『上条当麻が、いかがいたしましたか。 もう3年以上会っていませんが』


土御門『え、なになに? ねーちん、もしかして寂しかったの?』


神裂『そ、そんなこと一言も言っていません!! また勝手な解釈を!』


土御門『あはは~、うそうそ☆ 冗談だって(……図星くせ~)』


神裂『と、とにかく!! 上条当麻がどうしたのですか! ま、まさかまた何か問題を……!?』


土御門『あ、いや。 そういうわけじゃ……。(――……ん? いや、一応問題っちゃあ問題か…………? よっし、ここは……)』


土御門『お察しの通りですたい』


神裂『一体どんな!? いつからですか!?』


土御門『正確には分からんが、昨年の12月ごろからだと思うぜぃ』


神裂『『『なぜそれをもっと早く言わないんですか!!』』』


土御門『(うぉー……。 どこで出してんだこんな大声……) すまんすまん。 俺も上やんばかりに構っていられなかったんでね』







神裂『くっ……。 一体何が……!』


土御門『まっ、俺は伝えたぜぃ。 詳しいことは俺の口からより、上やんに聞いた方が良い』


神裂『何故ですか!? もったいぶってるなら――』


土御門『上やんの人生に関わってくることだから』


神裂『!』


土御門『……って言ったら、納得してくれるかい?』


神裂『(人生……!? ……人生って!?)』


土御門『そいじゃ、そういうことなんで。 手遅れになりたくないのなら、早く動いた方が良いと思うぜぃ』


土御門『じゃーねぃ』


ぶつっ


神裂『なっ!? つ、土御門っ! まだ話は終わってな――』


ぷーっ……ぷーっ……


神裂『(……と、とにかく。 何よりもまず。 確認しないことには始まりません)』


神裂『(……上条当麻。 貴方に一体何が……?)』




……

…………

………………

……………………


神裂「(一応、ここに来る前に上条当麻の身辺をできうる限り洗い浚い調べましたが……)」


神裂「(特に問題は見つけられませんでした)」


神裂「(土御門の悪戯の可能性も鑑みましたが……。 ……一応、確認のために)」


上条「……えーっと」


神裂「(……この様子だと、何かありそうですね……)」


神裂「(…………もうしかしたら、自分からすら口に出しにくいことなのかもしれません)」


神裂「(……かといって、口下手な私には、説得して白状させるなんて芸当は難しい)」


神裂「(だから、誠意を見せて……。 自分から言ってもらうしかない)」





神裂「何か、言いにくいことでもあるのですか?」


上条「いや、言いにくいってわけじゃないんだけどさ」


神裂「そ、それなら! ぜひ私にも協力させてください! 私は『法の書』の恩をまだ貴方に返し切れてな――」


ぐぅ~…


上条「……」


神裂「……」


上条「…………なぁ、神裂」


神裂「……はい」


上条「……悪いんだけど。 とりあえず、飯でも食いに行かないか?」





:て○や


神裂「就職活動……ですか?」


上条「あぁ」モグモグ


神裂「はむっ。 ……12月から?」


上条「おぉ。 よく知ってるな。 俺たちの就職活動は12月解禁だったからな」ズズッ


上条「あ、店員さーん。 お茶のおかわりください」


店員「はーい。 少々お待ちください~」


神裂「……なるほど。 ……で、貴方は何にお困りなんですか?」


上条「うーん……。 強いて言うなら、自分の無力感、みたいな……」


神裂「無力感!?」


上条「いやー。 履歴書みたいな書類を送るところから始まるわけなんだけど」


上条「送れども送れども、1回も面接まで辿り着けなくて……」


神裂「めん……せつ……」


上条「あぁ。 大変だよ。 日本では人生すら左右するイベントって言うし。 ……俺もまだ、あまりそんな大それたことしてる実感はないんだけどな」





―――土御門『上やんの人生に関わってくることだから』




神裂『(つ、土御門ぉぉ……!! こういうことですか!!)』


上条「……? どうかしたか?」


神裂「い、いえ。 別に……」


上条「?」


上条「お、いんげん美味いな」パリッ


神裂「……」シャクシャク


神裂「……上条当麻。 一応、聞いておきたいのですが」


上条「? なんだ?」


神裂「……その、就職活動というイベントで。 私ができるお手伝いって……ありのでしょうか」


上条「……多分、ないかな……」


神裂「」ガーン


 



上条「ふぅ、美味かった! ごちそうさま! ……って、何で落ち込んでるんだ?」


神裂「……。 別に、落ち込んでなど……」


上条「どういうわけかわからないけど。 とりあえず、久しぶりに神裂に会えて嬉しいよ」


神裂「えっ……?」ドキッ


上条「忙しそうだったし、連絡も取れなかったから、会えなかったけどさ」


上条「やっぱり前から知ってる奴に会えると嬉しいもんだな」


神裂「上条……当麻……」


上条「あっ、そうそう。 良かったら携帯の連絡先交換しないか?」


神裂「け、けいたいでんわですか!」


上条「

>>188

末尾ミス……。 失礼しました。



上条「ふぅ、美味かった! ごちそうさま! ……って、何で落ち込んでるんだ?」


神裂「……。 別に、落ち込んでなど……」


上条「どういうわけかわからないけど。 とりあえず、久しぶりに神裂に会えて嬉しいよ」


神裂「えっ……?」ドキッ


上条「忙しそうだったし、連絡も取れなかったから、会えなかったけどさ」


上条「やっぱり前から知ってる奴に会えると嬉しいもんだな」


神裂「上条……当麻……」 ドキドキ


上条「あっ、そうそう。 良かったら携帯の連絡先交換しないか?」


神裂「け、けいたいでんわですか!?」



上条「どうかしたのか?」


神裂「あ、え、いや、その……」


神裂「情けないことに、いまいちこのけいたいでんわの使用法については理解できていないので……」


上条「へ?」


神裂「私、機械モノに弱いというか……。 そういったモノ全般が苦手でして……」


上条「あはは。 機械がダメな人ってたまにいるもんな。 よければ携帯貸してくれないか? 入れておくよ」


神裂「は、はいっ! 申し訳ないです……」


上条「いいって。 ……えっと、アドレス帳を開いて、新規作成……っと」


上条「うっし。 登録完了」


神裂「あ、ありがとうございますっ……」アセアセ




上条「ほら、ここの右上のボタンがあるだろ? ここを1回押してさ」


神裂「ふむふむ……」


上条「そしたら『アドレス帳』っていう連絡帳が出て来るから、今度は左側のボタンを押す」


上条「色んな項目が出て来るけど、『新規作成』ってところを押すと入力画面になるから、あとはアドレスやら名前やらを入力すりゃいいんだ」


神裂「なるほど……。 右、左、そして新規作成……ですね。 覚えておきます」


神裂「(……って、私は上条当麻の手助けにきたのにお世話になってどうするんですか!!)」ガーン


上条「……ぷっ。 ……くくく」クスクス


神裂「!? か、上条当麻!? なぜ笑っているんですか!? 私が機械音痴なことがそんなに面白いですか!」ズーン


上条「あ、いや! わりぃ! そうじゃなくてさ!!」


神裂「では、なぜ!?」


上条「3年経って、神裂は外見もすげー大人っぽくなっててさ。 最初会ったとき一瞬わからなかったんだよ」


上条「でもさ、全然変わってないし。 今になって、神裂の新しい一面も知れて嬉しかったというか……。 別にバカにしたわけじゃないからさ! そう思われたのであれば、すまん!」


神裂「……」カァァ


上条「……顔赤いぞ? 店内、少し暑いもんな。 そろそろ出るかー」


神裂「そ、そういうわけではないんですが……。 出ましょうか……」




:自宅までの道のり


上条「そういや、神裂」


神裂「?」


上条「どうやって入ったんだ? 学生寮」


神裂「人払いを使った後、そのまま貴方が住む階層まで飛びましたが……」


上条「アウト!!」


神裂「!?」ビクゥッ


上条「これからはそういうことをせず、インターホンならしてくれ。 俺なら開けられるし」


上条「神裂は客なのにそんなことさせられねーよ」


神裂「わ、分かりました……」


上条「よし」




上条「んで、この後なんだけどさ」


神裂「……はい」


上条「あのー、さっき手伝えることはないとか言っておいてなんなんだけど……」


神裂「……?」


上条「実は少し、手伝ってほしいことを思い出したんだけど、まだ時間あるかな」


神裂「……! あ、あります! ぜひ手伝わせてくださいっ!」


上条「ありがとな! それじゃ、また家行くかー」


神裂「はい!!」




:上条宅


上条「……で。 協力してほしいこと、なんだけど」


神裂「はいっ! な、なんなりとどうぞ!」


上条「……ディスカッションってどうやるか、教えてくれないか?」


神裂「ディスカッション、ですか? つまり、議論の仕方、ということで捉え間違いはないでしょうか」


上条「それで間違いない。 次の選考がグループディスカッションって言うヤツなんだけど、俺は今までディスカッションなんて大層なこと、したことなかったからさ」


上条「神裂なら天草式の奴らと何かしら会議的なものをやってたんじゃないかなーと思ったんだけど」


神裂「なるほど……。 確かに、信仰及び振興方針を決定する際や、他宗教との差異を計ろうとするときは、それなりに会議はしています」


神裂「しかし……。 その就職活動というものは、私は経験したことがないので……。 勝手がわからないかもしれませんよ?」


上条「大丈夫! 会議をする上での話し方とか、考え方を教えてほしいんだ。 決して、就職活動だけに必要なものを教えてくれってわけじゃないからさ!」


神裂「ふむ……。 そういうことであれば。 できうる限り、尽力いたします」


上条「助かるよ!!」




神裂火織。
禁書目録との邂逅時から、上条当麻とは出会っている。
「御使落し」「法の書」「カーテナ・オリジナル」「第三次世界大戦」。
多くの問題を上条当麻と共に解決まで導いて来た。

そんな彼女だからこそ。上条当麻には、恩を返すというだけではなく、戦友としての、ある種の絆を感じていた。


しかし、上条当麻が大学受験に入るとめっきり会うこともなくなった。
理由の分からない虚無感に襲われはしたものの、それは一体どんな感情なのかを自身の中で整理することができず、心の奥底にしまっておくことにした。

天草式十字凄教の女教皇としての残務、そして必要悪の教会の一員としての職務に追われ、時は瞬く間に過ぎていった。


そんな最中、1本の電話が、彼女の気持ちに揺さぶりをかけ、目覚めさせた。


上条「グループディスカッションっていうのは、何かテーマが用意されて、それについて3・4人で考えて結論を出すという形式みたいなんだ」


上条「大抵は個人で考える時間が3~5分程度用意されてるらしい」


神裂「『みたい』『らしい』ということは、貴方はまだ経験のないイベント、ということですか?」


上条「そうなんだ……。 ようやく履歴書が通って、次の段階に行けたところで、このグループディスカッションって言葉が出て来たんだよ」


神裂「なるほど。 話を伺った限りだと、通常の会議とあまり変わりはなさそうですね」

個人面接もうすぐだから個人面接編ありませんか!?



上条「それで、これがグループディスカッションのよくあるテーマらしい」スッ


――――――――――――


●就職活動において重要なことは?
●面接で自分を出すために重要なことは?
●会社選びにおいて重要なことは?
●就活を通して学んだことは?
●就活を成功させるポイントは?
●社会人になってからについて
●理想の上司像は?
●学生と社会人との違いは何か?
●営業をするにあたり大切なことは?
●上司と上手くコミュニケーションをとるには?
●お客さまの声に応えるにはどうすればいいか?
●社会人として一番重要なことは?
●仕事ができる人とは?
●社員が納得できる評価制度を考えて下さい。


――――――――――――


神裂「……」


神裂「(……面白いですね。 どれも答えは1つではない。 ……より良い学生を引き抜くために、あえてまとまらないようにしているのでしょう)」


上条「どうかな……?」



神裂「……ある程度の要素や考え方はわかりました」


神裂「それでは、実際に考えてみましょうか」


上条「!? 実際に!? 今!?」


神裂「はい」


上条「これ、本番は複数人だぞ!?」


神裂「考え方と議論の行程を学びたいのであれば、1人で十分です」


神裂「さ、今しがた貴方が示した中から、お好きなものを選んでください。 まずは、現在の貴方を知りたいのです」


上条「あ、あぁ。 わかった」


上条「……うーん」


上条「……じゃあ。 『学生と社会人の違いは何か』ってやつを……」


神裂「わかりました。 それでは本番では5分程度の思考時間でしたね。 今回も同様に行いましょう」

>>209

おぉ!頑張って下さいね!!
個人面接編にも突入しますが、あともう少々掛かりますね……。
2日、3日後までには突入するとは思いますが……。



5分後…



神裂「……5分です」


上条「ぷはぁーっっ。 ……何かを無心に書くのとは、また違ったしんどさが……」


神裂「疲れれば疲れる程、しっかりと考えてやっているということです」


上条「たしかに」


神裂「……それでは、簡単にでよろしいので、今考えたことを私に伝えてみてください」


上条「あぁ。 ……えーっと、まず。 社会人はやっぱり仕事をしてるってところと学生は勉強が本分ってところで違うよな」


上条「あとは、時間の制限とか……。 収入の多寡だとか……。 そういったことくらいか」




神裂「なるほど……。 ありがとうございます」


神裂「一般的な答えだと思います。 可も無く不可も無い」


上条「(……的外れなこと言ってなくてよかった……)」


神裂「ただ」


上条「!」


神裂「それでは恐らく。 合格にはならないと思います」


上条「えっ!?」


神裂「あ、もちろん。 どのような評価基準があるのかはわかりませんし、議論の行程も重要視されるのであれば、可能性はゼロではありません」


神裂「ただ。 考え方、という面では、少し足りない点があると思われます」


上条「足りない点……?」


神裂「はい」


神裂「それは、『答えの指標がないこと、そして前提が曖昧である』ということです」





上条「指標に、前提……」


神裂「今、貴方が私に提言してくれたのは、金銭、時間、そして、それぞれの存在意義」


神裂「二言の説明にも、3つの要素が絡んでいます」


上条「たしかに」


神裂「個人が持つ考えとしてならば、それは正しいです。 汎用性のある知識を持ち、それを元に思考を広げて行く」


神裂「ただ。 複数人でテーマを持って話しをする、という前提がある場合、それだけではいけません」


上条「……」


神裂「わからなくても無理はありません。 これから知っていけばよいと思います。 きっと、他の学生も同じ状況下にいると思います」



神裂「それでは、前提の話から入ってみましょう」


神裂「まず、話を整理してから説明します。 『学生と社会人の違いは何か』と聞かれた本議題がありますが、この議題を元に議論させる理由はなぜででしょうか」


上条「……理由?」


神裂「はい。 不必要なものを話あってもしょうがありません。 この世に霊界は存在するか否か、など、答えが見つからない不毛な議論をするようなもの」


神裂「時間をかけて話し合うからには、それ相応の理由があります。 それは何でしょうか」


上条「……うーん。 それは、さっき言った通り、学生の考え方や議論の行程を見るため……とかか?」


神裂「はい。 先ほどの説明通りならその通りです。 それでは、この議論での前提とは一体なんだと思いますか?」


上条「前提……」




上条「頭がこんがらがってきたぞ……」


神裂「深く考える必要はありません。 前提とはつまり、前提条件のこと。 この議題で言うと、社会人と学生の『どこの違い』を論点として話を進めるか、ということです」


上条「……!」


神裂「今しがた、貴方は3つの要素を言いましたが。 それは単なる情報の羅列であり、議論においてやってはいけないことです」


神裂「金銭に関して話を進めるか、労働時間について話を進めるか、存在意義について話を進めるか。 それだけでも論点は大幅に変わってきます」


上条「なるほど……」


神裂「議論で重要なのは、どこに軸を持って話を進めるか、ということなんです。 時間が1時間にも満たない短いものであるとするならば、尚更のこと」





神裂「貴方が最初に言った『社会人と学生の本分』という軸を持つとするならば、前提条件はいかがでしょうか」


上条「うーん……。 まだ曖昧だけど……。 『学生と社会人が日々行っていることについて、話を進めること』か」


神裂「はい。 なので、賃金や時間の使い方などに話がブレることはなく、なぜ仕事を重視するか、なぜ勉強を重視するか、といった話に尖らせた議論ができます」


神裂「それでは、『金銭』においてはどうなるでしょう」


上条「……『入って来るお金の量の違いと、その使い道の違い』について、話すことになりそうだな……」


神裂「『時間』について話すことを前提条件とするならば、いかがですか?」


上条「『スケジュールの付け方とか、時間の価値観の違い』っていう話になりそうだな」


神裂「流石、理解が早いですね。 自分の考えをまとめる上でも、それを相手に伝える上でも、軸を置くことは重要なんです」


上条「(ここでも、『軸』なのか……。 やっぱり、一点集中っていうのは重要なことなんだな)」




神裂「言ってしまえば、前提というのは『テーマ(議題)の中のテーマ(軸)』。 自分の中での考えを整理するために、議題の中に、1本の支柱を立てること」


神裂「人によって考え方が異なる、答えの無い論議に、自分なりの軸を持つことが、『前提決め』ということなのです」


上条「なるほどなぁ」


神裂「ここまでの話は、大丈夫でしょうか」


上条「うーん……。 まだ不安だけど、なんとなくは……」


神裂「それでは、理解を深めるために、もう1題考えてみましょう」


上条「そうしてくれると助かるよ」


神裂「そうですね……。 ……それでは、『上司と上手くコミュニケーションをとるには?』という議題で行きましょう」


神裂「これについて、貴方が考える前提は何だと思いますか?」


上条「……。 えー……。 前提は、話をする上でのテーマのテーマ、だから……」


上条「(俺の中の考えを相手に伝えるために、要素を1つに絞ること…………。 つまり……)」


上条「そうだな、俺なら『上手くコミュニケーションを取る』っていうことを『出世するため』とかじゃなくて『仲良くなるためには』って考え方を持って話すかな」


神裂「ほう。 ……その理由は?」


上条「人によっちゃ、上司は出世するための足がけとしか考えてないヤツもいそうだけどさ。 俺は1人の人間として仲良くなりたいっていうのがあるからさ」


神裂「完璧な答えです。 貴方自身の考えをしっかり持つことができていると思います」


神裂「今まで様々なことを言ってきましたが。 要は、『自分の考えを1つにまとめる』ということです」


上条「……! しっくりきた! なるほど!!」


神裂「小難しい話ばかりしてしまいすいません。 簡潔にまとめてしまうべきでしたね。 人に教えることに慣れていなかったもので……」


上条「いいや!! 最初から納得して理解できたし、そっちの方が助かるよ! ありがとな!」


神裂「」キュン


上条「あ、そうだ。 わりぃ! 飲み物出してなかったな! お茶入れてくるから神裂は休憩していてくれ!」


神裂「あっ、えっ、いや、お気遣いは……」


上条「少しでも気遣わせてくれよ! 教えてもらってばっかりなんだからさ! ちょっと待っててくれ!」タタッ


神裂「は、はぁ……」


神裂「(……な、なぜでしょうか……。 心拍数が急に高くなった気が……)」

…………

……





上条「ふ~……。 落ち着くな」トン


神裂「……あの」


上条「ん?」


神裂「……貴方さえ良ければ、なんですが……」


神裂「……。 ……『必要悪の教会』に入ってみる気はないですか?」


上条「! 俺が……?」


神裂「はい。 きっと本部も貴方の力を認めていると思いますし。 待遇の面でも計らってくれると思います」


神裂「……それに……」ゴニョゴニョ


上条「……へ? すまん! それに、の後が聞こえなかったからもう一度言ってくれないか?」


神裂「っ!!! べ,別に何でもありません!! ……と、とにかく! どうでしょうか! 私から本部に伝えておきますし、貴方にこれ以上の気苦労をさせることも無くなると思うのですが……」


上条「うーん……」




上条「……今は、遠慮しておこうかな」


神裂「! なぜですか? ここで承諾してしまえば、就職活動は終わるのですよ?」


上条「そりゃあ、そうなんだけど……。 でも、何て言うか……」


上条「ここにきて初めて、自分自身のことを本気で考えることができてるんだよな」


神裂「……」


上条「もう少し自分の可能性とか,将来とか、できることとか。 本気で考えてみて。 それから最終決定がしたいんだ」


上条「だから、その……。 わりぃ。 今はまだ決められない」


神裂「そうですか……」


上条「あ、でも、ほら! 行きたくねぇってわけじゃなくてさ、むしろ俺なんかでよければって感じだから」


上条「……もし、そういうことになったら、頼んでもいいか?」


神裂「……! はい! もちろんです!」


上条「勝手な都合でごめん……。 しかし、必要悪の教会を就職先にするなんて考えてもみなかったな……」


神裂「そんなことはないです。 こちらからお願いしていることなのですから、構いませんよ」


神裂「……」


神裂「(…………私が)」


神裂「(…………私が、貴方と共に働きたいから……。 ……そんなこと、言えませんよね)」


神裂「(……)」




…………

……







神裂「……さて。 お茶菓子も頂いたことですし、続きに入っていきます」


上条「お願いします」ペコリ


神裂「『指標と前提』のうち、前提については先ほどお話しいたしました。 自分の中の意見をまとめるため、話す軸を持つこと。 それが、前提決め」


神裂「詰まるところ、それは自身のために持つ心。 これから向かえる他者との話し合いに備え、確乎たる思考をもつためのもの」


神裂「対して、指標は違います。 それは自身が持つ考え(前提)を突き詰めて行くために、他者を巻き込んで決めるべき目標のことです」


上条「他者を巻き込むって、どういうことだ?」


神裂「言葉で言うと、先ほどのように回りくどい説明になってしまいます。 先ほどの例題から考えてみましょう」


上条「確かに……。 そうしてくれるとありがたい」




神裂「『学生と社会人の違いは何か』という議題で話を始めるとします」


神裂「そして、貴方は『学生と社会人の存在意義の違い』を自身の軸として、議論を進めると決めたとします」


上条「あぁ」


神裂「……この後、個人の試行錯誤の時間が終わった後。 ……貴方はどうしますか?


上条「へ? そ、そりゃあ、俺が考えたことをそのまま皆に伝えると思うけど」


神裂「そうですね。 折角考えた案や意見も、他者に伝えねば意味がない。 ただの電気信号で終わってしまいます」


神裂「ただ。 議論をする上で、必ず見なければいけないことが、時間の制約です」


上条「そうか……! たしかに、無限に時間があるわけじゃない……!」


神裂「『いんたーねっと』上に載っている情報が正しいとするならば。 議論できる時間の平均値は35分程度とのこと」


神裂「全員が全員、全く別の軸を持って話を進めようとした場合、それをまとめるだけで相当な時間を食ってしまいます」


上条「た、たしかに……。 俺でも何個か思いついたんだから、もっと思いつく人だって多いはず……」






神裂「魔術や、学園都市が開発している超能力を使えば、口を開くこと無くまとめられるかもしれませんが、今回はその可能性はなしと見なして話を進めます」


上条「あはは……」


上条「(2万人規模で意思を通わせる奴らもいるもんな……)」



―――――――――――――――――――――




10032「へっくしょ」


10777「……おやおや風邪ですか、とミサカは一応心配します」


10032「いえ。 異常はありません。 きっと、どこかの誰かが私の美貌について論議しているのでしょう、とミサカは希望的観測を述べます」


10777「……あの方だったりして。なんてミサカは希望的観測を重ねます」


10032「最近、会ってませんね……」


10777「リアルにヘコむのはやめてください、とミサカは心底お願いします」


―――――――――――――――――――――――



神裂「時間的制約があるのは、就職活動における選考だけでなく、通常の会議でも同じこと」


神裂「無駄なタイムロスをなるべく避けるため、ある程度のリズムや足並みは合わせておく必要があります」


神裂「そこで誰かが設定しなければならないことが『指標』です」


神裂「スポーツで話を考えてみるとわかりやすいですね。 どんなスポーツでも、ゴールの存在しないものなんてないでしょう? ……無いのであればどうするか。 作ればいい」


上条「たしかに!」


神裂「『ここまで、何分以内に決めましょう』の『ここまで』を決めるのが『指標立て』というわけです」


上条「……つまり、今回の『存在意義の違い』っていう自分の中の軸を通して言うならば、『1つずつ、存在の定義付けをして差別化しよう!』みたいな目標を立てると、それは指標になる……ってことでいいのか?」


神裂「良い指標だと思います。 違いなんてものは幾らでも出てくるのですから、『何を、何のために、どのようにして』を決める定義付けすることが1番客観視しやすいです」


上条「なるほどなぁ……。 自分の持つ考えの軸を元に、議論の終着点の提案を皆にすることが、指標立て……か」


神裂「はい。 ただ、それにこだわってしまってはいけません。 納得のできる知識や経験の裏付けから、自分が考えた指標よりも説得力のあるものを打ち出して来る人間だっています。 そうなれば、決して意固地にならず、譲ることも重要です」


神裂「もしもそうなった場合、他者の案に乗っ取った『自身の前提(軸)決め』が必要になることもありますから、気をつけてください」





上条「前提と指標はセットってことか。 確かに自分の考えに沿った指標しか立てられないもんな」


神裂「はい。 そうでなければ前提を決める意味がありません」


上条「なーるほどなぁ……。 今まで考えてもいなかった世界を見てる気がするよ」


神裂「複数人をまとめる、導くというのは、思いのほか大変なことですからね。 柔軟性のある考え方や協調性が、最も重用視される場であると思いますよ」


上条「自分の考えっつーのをしっかり持って、それに沿った目標を提案する! 他の奴のが良いと思ったら譲る! 理解したぜ!」


神裂「あと、もう1つ」


上条「!」


神裂「相手の言うことを全否定してはいけません」


神裂「議論の場では、多くの意見が出ます。 多くの考え方が存在します。 価値観の相違や、経験の差から、批判的になってしまうことだってあります」


神裂「しかし、意見は全て何らかの考えの元出て来る要素。 生きています。 それを否定してしまえば、その要素が未来に芽吹かせたかもしれない可能性を消し去ってしまうことになります」


上条「……」


神裂「だから、一概に否定はしないでください。 必ず根拠と謙虚さを持って、他者と接してあげてください」


神裂「人間の集まりなのですから、感情のぶつかり合いだってあります。 しかし、そこで激情に駆られてしまえば、ただの獣と同じです」


神裂「今まで理性ある1人の人間として生きて来たことを忘れずに、議論を進めてみてください」


上条「……ああ! わかった!」


神裂「要は、『喧嘩はするな、仲良くやれ』ってことなんですけどね」クスクス


上条「くくくっ……。 違いないな」


>>上条「(2万人規模で意思を通わせる奴らもいるもんな……)」

ここの妹達は誰も死んでないのか






:出口


上条「悪いな、こんな夜中まで付き合ってもらっちゃって」


神裂「いいえ。 こちらこそ、夕ご飯まで頂いてしまって……」


上条「あんな質素なご飯、神裂に出すのは失礼かなと思ったんだけどさ、あいにく材料が無くて……」


神裂「とても美味しかったですよ。 ぜひ、また頂きたいものです」


上条「あんなものでよければ、いつだって出すぜ!」


神裂「い、いつだって、ですか」ドキッ


上条「もちろん!」ニコッ


神裂「あ、あああ、ありがとうございます……」




神裂「ここまでで大丈夫です」


上条「ほんとか? 駅まで送るぞ?」


神裂「電車で帰れる距離ではありませんし、天草十字凄教の様子を見に行こうと思っているので。 後で時が来たら縮図巡礼でもお借りして帰りますよ」


上条「女の子をこんな夜半に1人にするのか……」


神裂「お、女の子なんて年ではありませんし、無法者がいれば1秒以内に塵にしてやりますから」


上条「じょ、冗談でもリアル過ぎて怖いぞ……」


神裂「冗談ではありません。 ……それでは、そろそろ」スッ


上条「あっ、神裂!」


神裂「……?」


上条「……色々落ち着いたら、遊びに行こうな! もっとゆっくり話したいしさ!」


神裂「……」カァァ


神裂「た、楽しみにしておきますよ。 ……では」シュッ


上条「(……いったかー)」


上条「(本当に、俺の周りってスゲーやつばっかりなんだな)」


上条「(……俺もしっかりしないとなー)」


>>236

ファッ!?
『1万人規模』に脳内訂正よろしくお願いします。 申し訳ないです。

To:上条 当麻<Toma Kamijo@gmail.com>
subject: 1次面接へのご案内


上条当麻様

こんにちは。
学園都市商事株式会社人事部です。

先日は弊社のエントリーシート選考にご応募いただきまして、
ありがとうございました。

種々慎重なる検討の結果、ぜひ、上条当麻様には弊社2次選考に出席して頂きたく、ご連絡いたしました。

1次選考としましては、30分程度の個人面接を予定しております。
後ほど詳細をご連絡させて頂きますので、ご確認ください。


取り急ぎ、連絡まで。


上条当麻様に会えることを、弊社社員一同楽しみにしております!



上条「うっし!!」グッ


上条「(2社目、エントリーシート通過……っ!)」


上条「(波に乗れてる気がする……!)」


上条「(どうやら、前の会社とは違って、即面接みたいだし。 初面接かぁ……)」


上条「(……)」ジーン


上条「(……おぉっと!!)」ブンブン


上条「(感傷に浸ってる場合じゃないぞ!!)」


上条「(せっかくのチャンスを無駄にしたくないな……。 最善を尽くそう!)」



上条「(面接の練習……)」


上条「(基本的な受け答え集とかなら、きっとインターネットで検索すれば出て来るとは思うけど……)」


上条「(……その場の雰囲気とかは、出せないだろうなあ)」


上条「(ちゃんと面接っぽい空気で喋る練習しておかないと……)」




――上条『は、はい!ぼ、じゃなくて、わ、私は、その、えぇっと!』アタフタ




――上条『は、はい!! えぇっと、その、お、御社は、その!!』




――上条『その……。 えぇと…………』






――社員B『……何を聞くのか、決めてから話そうね? 時間がもったいないよ?』






上条「(……っ)」ブルッ


上条「(……またあんな風になるのは、勘弁だな……)」








:スーパー



上条「(そろそろ冷蔵庫の中身、補充しとかねーと……)」


上条「(せっかく来てくれた神裂に、大したもんだせなかったし……。 予想外の事態に備えて、多めに用意しておこう)」


上条「(お、この鶏肉安い! 3割引きかよ。 買いだ、買い!)」


「あのー……。 上条当麻様のお宅をご存知でしょうか……?」


「!? え、えっと……知らないです」


上条「(おおお! こっちの牛バラは4割引きかよ!! ……これは酢と砂糖と醤油辺りで和えて甘辛煮だな……)」


上条「(ついでに、お酒でも1本買って……。 自分へのご褒美に……)」


「……さようでございますか。 ありがとうございます」ペコリ


「は、はぁ……」


上条「(そうと決まれば、チーズも買うべきだな! 今日は1人祝勝会だ!!)」


上条「(たまにはいいだろ、うん!)」ウキウキ


「あの~……」


「?」



「上条当麻様のお宅を、ご存知でしょうか?」


「うーん……。 知らないなー。 ……ってかおねーさん、めっちゃ可愛いね」


「さようでございますか。 ありがとうございます」ペコリ


「え、ちょ、ちょっと待ってよ。 そんな冴えなそーな名前のヤツんとこ行くんだったらこれから俺と遊びに行こーよ」


「……? 冴えない……。 そういうときは、暖めたコンポタージュを飲むと気分が優れますよ」コトッ


「……よくわかんないけど、俺の買い物かごに物入れるってことは、一緒に来てくれるってこと? そーかそーか!」


「そういえば。 上条当麻様のお宅をご存知でしょうか?」


「……。 面倒くせえ。 行くぞ、おい」グイッ


「あらら――?」


「ちょーっとすいませーん」


「あ?!」


上条「そっちの人、俺のツレなんですよ。 ご迷惑おかけしましたー。 ……ではっ!」シュビッ


「あららら――?」


「……コブ付きかよ! くそ! ……ってこのコーンポタージュどっから取って来たんだあの女!!」ウガー



:外


上条「……はぁ、はぁ」


「私の手を引いて走り去るとは……。 凄い体力でございますね」


上条「あはは……。 ありがとうございます」


上条「あんま変な人に絡まれたら着いて行っちゃダメですよ。 じゃ、俺はこれで……」


上条「(カゴ置きっぱなしだ……! 早く戻らねーと!)」


「…………あなた様は、上条当麻様でございますか?」


上条「……え。 何で俺を……?」


「やはり、そうでございましたか」


上条「……!!!」


上条「ま、まさか…………。 え、えぇ~……そんな……何で……?」


「私、オルソラ・アクィナスと申します。 お久しぶりでございます」







:上条宅


オルソラ「広い部屋でございますね」


上条「1人用にしちゃ、たしかに広いよな。 あっ、コーヒーか緑茶どっちがいい?」


オルソラ「じゃぱにーず・てぃーを頂いてもよろしいでしょうか」


上条「緑茶な。 ちょっと待ってろ」


オルソラ「はい。 ありがとうございます」


上条「茶菓子は……」


オルソラ「そこまでの配慮は無用でございますよ」


上条「俺も何か食おうと思ってたから気にすんなって。 ……そうだな、折角だし肉でも炒るか」


オルソラ「あなた様の手料理でございますか! それはそれは楽しみでございますね!」


上条「あんま期待すんなよ。 男の料理なんて大したもんじゃないんだからな」


オルソラ「はい。 少しの期待で留めておきますね」ニコニコ





上条「……よっと」ジュージュー


オルソラ「……」ニコニコ


上条「…………っと」ジャー


オルソラ「……」ニコニコ


上条「…………あのー……、オルソラさん……?」


オルソラ「はい? なんでしょうか」


上条「……ずっと見られてると、何か落ち着かないのですが……」


オルソラ「これは失礼いたしました。 男性が料理をしている姿など滅多に見れない光景でして」


上条「そうなのか?」


オルソラ「はい。 私は女性寮に置いて頂いている身でございますゆえ」


上条「あぁ、そっか。 アニェーゼ達と一緒の寮で暮らしてるんだっけ?」


オルソラ「さようでございます」




上条「あはは……。 ま、俺なんかの料理風景でよければ好きなだけどうぞ」


オルソラ「いいのですか?」


上条「減るもんでもないしな。 ……少し恥ずかしいけどさ」


オルソラ「恥ずかしがることはありませんよ。 素晴らしい腕前でございます」


オルソラ「良い匂いも香ってきますし……。 これは、何の香りなのでしょうか?」クンクン


上条「醤油と砂糖、んで料理酒を2:3:1で混ぜたソースだよ。 肉はこれを和えて焼けば大抵食えるようになるんだ」ジュージュー


オルソラ「さようでございますか。 参考にさせて頂きます」ニコニコ


上条「参考にする程のことじゃないぞ? オルソラの料理みたいに美味いもんは作れないから、こうやって大雑把な味でごまかしてるだけだし」ハァ…


オルソラ「そんなことはございません。 料理の世界は奥深い。 人によって感じる味覚は異なりますし、焼き加減や調味料の量、盛りつけ方まで、十人十色でございます」


オルソラ「だから、あなた様にはあなた様の良さが現れているのですよ」


上条「そ、そうかな? 本当に適当なんだけど」


オルソラ「しかし……」


上条「?」


オルソラ「お褒めの言葉を頂くことは、素直に嬉しいです。 ありがとうございます」ニコッ


上条「!? ほ、褒めるとかじゃなくて、本当に思ってることだからさ!」アセアセ


オルソラ「なおのこと、嬉しいです」ニコニコ


上条「(……可愛い)」




:食卓


上条「それでは……。 いただきます」


オルソラ「いただきます♪」


オルソラ「……」スッ


オルソラ「……っ」パクッ


上条「……」ドキドキ


オルソラ「…………」モグモグ


上条「……」ドキドキ


オルソラ「まぁっ」


上条「っ!」ビクッ


オルソラ「とても、美味しいです! 流石、あなた様でございますね」ニコニコ


上条「……」ホッ


上条「とりあえず、期待に応えることができてよかったよ」


オルソラ「期待以上の出来でございます」ニコニコ







オルソラ「……ふぅ。 ごちそうさまです。 美味しかったです」


上条「お粗末様。 口に合ったようで何よりだ」


オルソラ「……ふふっ」


上条「え!? な、なんか面白いこと言ったか?」


オルソラ「いえ。 あなた様は、以前と変わらず、他人のことを心から気遣える、お優しい方なのだなと思いまして」


上条「……以前と変わらず、か」


オルソラ「……? どうかいたしましたか?」




上条「いや、あのさ。 実は……」


上条当麻は、重い口を開けた。

級友たちと会ってから、気にかけていたこと。
それは、自分が『変わっていない』こと。

自分の知っている皆が変わっていないことに安堵しているし、喜びも感じている。
しかし。
それは、結果が伴った上での、『変わっていない』だった。
内定をもらい、大学へ進学し、自分の仕事をこなし、任務をこなし。
上条の周りは、全員が全員、彼ららしさを保ちながら行動し、結果を見せていた。


その点、上条当麻はどうだろう。


大学生活は何気なく過ごし。なんとなく、その場しのぎに生きて来た。
そうして、得られていない『内定(結果)』。

自分は変わらなくてもいいのだろうか。
変わらないと、前に進めないのではないだろうか。
答えがでない問題を頭の中で繰り広げるたびに失う自信。

いつの間にか、「変わってない」と声を掛けられる度に、彼は考え込んでしまうようになっていた。


少しずつ見えて来た選考突破という光明。
しかし、その僅かな光は、上条の深層心理に潜む不安を照らす程強くはなかった。



オルソラ・アクィナス。
彼女は、『布教者』として、世界各地に飛び、人々の希望となった。


そんな彼女の包容力を無意識下でも感じ取ったからこそ、思わず心の内をぶちまけてしまったのかもしれない。

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| 皿洗いぐらい楽勝なんだよ。   |        .|
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|      /´ r__,ヽ          ゞ二フレvゞ二フ|
|       { ィ|irwnト|        ヾ二フ二フ_゚-ヾ二フ|
|.     丿 ,l| ゚ヮ゚ノi{        ヾ二フ二フ_}つ二フ |
|     ヽ、,ノリγ⌒0      .ヾ二フ二フ⊥}    .|
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|  ふっふふん ふん♪              |
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|    8ヽ、,ノリ.史リ、,〉⌒)。8 oヾ二フ二フ      .|
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| (´。o ⌒) l| ゚ロ゚○o⌒) O 。°○    ⊂{,^Y^ |
|  。(⌒ヾ⌒6.。゚0⌒)⌒)。8 o⌒) ヾ二フ   {,人_|
| ̄○/o8(⌒う⌒ (⌒ヾ⌒8o゚~ヾ二フ二フ ̄ ̄ ̄~|

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オルソラ「……なるほど」


オルソラ「変わらなければ、進めないと思っている。 だけれども、自分のどこを変えればいいのかわからない」


オルソラ「そういうことでよろしいのでしょうか?」


上条「あぁ……。 最近、結構悩んでてさ……」


オルソラ「……ふーむ」


オルソラ「私は、あなた様が変わる必要など、全くないと思いますが」


上条「っ! で、でもさ。 結局、俺は何にも成長できていないから、こういう状況になっているわけで……」


オルソラ「成長と変化は、必ずしも合致するものではございませんよ」


オルソラ「あなた様の言う変化とは、環境に適する形に自分を化していくことであると思います」


上条「……」コクッ


オルソラ「ただ、それは必要に応じて成していくものであって、急かされたからといって、どうにかなるものではございません」


オルソラ「その点、今のあなた様は、無理やりにでも自分を矯正して前に進もうとしているように見えるのです」




上条「……」


オルソラ「そのような形での変化に、どのような価値がありましょうか」


オルソラ「個性というのは、神が与えてくださった、人間の才能の1つです。 そのような素晴らしい才能を捨てて、妄想のままに迷走するなど……」


オルソラ「あなた様らしくありませんし、何より、私がそうしてほしくありません」


上条「……でも、結果が」


オルソラ「そもそも、職を得ることが必ずしも成功と言えるのでしょうか」


上条「!」


オルソラ「私は世間一般の皆様方のように働いてはおりません。 皆様からのお布施や給付により、衣食住を保証して頂いております」


オルソラ「しかし、私は今の状況を失敗などと思ったことは、1度もございません」


オルソラ「組織に属することを始め、孤立することも、徒党を組むことも、私のように神に従事することも。 個人の『個』の延長線上に成されたものであれば、それは全て『成功』であると思います」


オルソラ「だから、あなた様はあなた様の思うように進めばいいのです。 無理に変わろうとなどせず、そのまま……」


オルソラ「それに、私が今回、あなた様に会えて1番に嬉しかったことは、そこなのです」


上条「え……?」


オルソラ「数年前、私を闇の底から救ってくださった。 ……あのときのまま、変わらずいてくださったことです」ニコッ








上条「オルソラ……」


オルソラ「はいっ」ニコニコ


上条「……なんつーか……。 すげー気持ちが楽になったよ! たしかに、無理して変わったところで、いずれしんどくなっちまうだろうしな!」


オルソラ「その通りでございます! 自分を貫いて得た結果こそ、かけがえのない成功なのでございますよっ」


上条「なんとお礼を言っていいか……」


オルソラ「いえいえ、お礼など、滅相もございません。 神の子の心杭を抜去るのも、シスターの務めなのでございます」


上条「……そういえば、ずっと気になってたんだが……」


オルソラ「?」


上条「何で今日は修道服じゃないんだ……? 以前までは、頭まで隠すくらいの修道服を着ていた気がするんだけど」


オルソラ「あぁ、それは。 おしゃれ、というものをしてみたのでございますよ」


上条「お、オシャレぇ?」


オルソラ「はいっ。 せっかく数年ぶりにあなた様とお会いするのですから。 修務に勤しんでいない時間ですし」


オルソラ「……何か、変でございますか? あまりこういったことになれていないものでして……」


上条「い、いやいや! 似合ってる、似合ってると思うぞ、うん!」


オルソラ「そうでございますか」ニコッ


上条「(黒いセーターと白いスカート着ただけなのに、こんなに栄えるのもオルソラくらいだろ……っ!!!)」





上条「……ん?」


オルソラ「?」


上条「……『せっかく数年ぶりにあなた様とお会いするのですから』……?」


オルソラ「はい。 さようでございますが」


上条「……待て待て。 学園都市にいたのは、観光じゃあ……」


オルソラ「いいえ。 あなた様に会いに来ましたっ」ニコッ


上条「なんで!?」


オルソラ「お会いしたかったから……ではいけませんでしょうか」


上条「そんなことはございません」キッパリ




上条「……でも、実際そういうことじゃないんだろ?」


オルソラ「……ふふふっ。 鋭いですね」


オルソラ「私はーー」


オルソラ「……」


上条「……私は?」


オルソラ「……はて」


オルソラ「……なぜ来たのでしょうか」


上条「!?」


オルソラ「あなた様のお宅を探していたところまでは覚えているのですが」


上条「えぇ~……」


オルソラ「お皿洗ってきますね」


上条「いきなり過ぎだろ!! って俺がやるからいいよ!!」


オルソラ「家事は好きなので、構わないでございますよー」


上条「そういうことじゃなくてだな!」




次の日…



ちゅん…… ちゅん……


上条「……」ボーッ


上条「(……朝……か…………)」


上条「(…………)」


上条「(……)」クルッ




オルソラ「……う………ん……」






上条「(……結局泊まらせることになってしまった……)」


上条「(学長にバレたら大変なことになるぞ……。 っていうか……)」




上条「(正直、オルソラはダメでしょ……。 我慢が……)」


このSSを見て内々定が決まりました

>>1は人事か何かなのか



オルソラ「……ふぅっ、ん……」


オルソラ「……」ムクッ


上条「!」ビクッ


オルソラ「…………おはようございます……」ニコッ


上条「お、おはよう……」


オルソラ「……朝食、ご用意させて頂きますね」


上条「え、い、いいって! 俺がやるよ。 トーストとスクランブルエッグとかでいいだろ?」


オルソラ「泊めて頂いている身ですし、私がや――。 ……?」


オルソラ「……」


上条「……?」


オルソラ「……」クンクン


オルソラ「このベッドは、私どもの物とは違う匂いがいたしますね……」


上条「か、嗅ぐなよ!! そんな頻繁に洗ってるわけじゃないからやめとけ!」


オルソラ「……いえ、不快なものではございませんよ。 これが、あなた様の香りなのですね」


上条「本気でやめてくれ……」ゲッソリ


上条「(……どんな状況だよ……)」








オルソラ「ごちそうさまでした」


上条「おそまつさん」カチャカチャ


オルソラ「申し訳ございません。 昨晩の夕食だけでなく、朝食まで用意して頂いて……」


上条「いいや、いいんだって」


上条「(……あの謎の状況を打破するには、すぐに朝食作りに取りかかるくらいしかできなかったからな…………)」


オルソラ「あなた様」


上条「うーい」ジャージャー


オルソラ「てれびじょんを見ても、よろしいですか?」


上条「ご自由にどうぞー。 別に聞かなくてもいいぞー」ジャージャー

>>285

おめでとうございます!
>>285さんの魅力が伝わったんだと思います!おめでとうございますー!


オルソラ「ありがとうございます。 ……しかし、どうすれば、てれびじょんが見れるのでしょうか」


上条「テーブルの上にリモコンあるだろ? それの電源ボタン押せばつくよ。 後はチャンネルボタンで好きな番組を選べばいい」ジャージャー


オルソラ「ありがとうございます」


オルソラ「(……りもこん、とは、これでございますか)」


オルソラ「(……えぇと、恐らく、『電源』というのはこの赤く表示されている文字……)」


オルソラ「……」カチッ


テレビ<ただいま、午前8時になりました。


オルソラ「!」パァー


オルソラ「つ、つきました! つきましたよあなた様!」


上条「!? お、おう! 良かったな!」


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|    __     ,:':::,::::::::ヽ  | 天草式十字凄教は、  |
|.   /´/'ヽ/'ヽ   {::::;|ニニl:|  | 偽装に長けているから |
|  | i |``"゙|.|  /;d(l゚ -゚ノi{  \____  ____/
|   川(l|゚ ‐ナj. 〈;8シ':::亞\!       __  |/  .|
|  /´ く_V,>`i  .();/f┬}、()    ./__、 `ヽ   |
|  /  `|l::l|. |   台台      {ni|ト   }    |
| ,/   jリ::l|.|            、゚.|l   ヽ   |
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|         /´ r__,ヽ  | それに対抗するために! .|
|          { ィ|irwnト| .乂__________,/
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|    _ゞ─-、゙i';、          {ィ|rwniト } + < 偽装してみたんだよ |
|    Zw'レvィ, ,ゞ      + }h.゚ヮ゚*|l .{、 +  \________/
|      、゚- ^l)ノ`       (シ'゙史([匚}ノ    .|
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||  これで授業中でも、とうまに遊びに   |    |
||  来てもらえるんだよ。           |    |
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|       |/    |  おい!天草式は関係ないのかよ! |
|わーい           \__  ___________/
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オルソラ「……」ピッ


テレビ<み●もんたの朝ズバッ! 


オルソラ「……」ピッ


テレビ<スッキ●!


オルソラ「……」ピッ


テレビ<旬の筍料理! 味わいに来ました~!


オルソラ「……」ゴクリ


オルソラ「…………」ピッ


テレビ<ネゴシエーターたちの一日に密着しました!


オルソラ「……!」


テレビ<彼らの特技は、『交渉』。 誰よりもわかりやすく、そして考えて相手に語りかけること!


オルソラ「(……わかりやすく……)」


オルソラ「……」


オルソラ「……!」ポンッ



上オル大好物でござる
このSS完結したら書いてくんないかな~(チラッ

4コマのクオリティ凄いですね!
即興で作れる技術があるとは……。


>>293

このスレを見て頂くご分かる通り、あんまりSS書くの得意じゃないので、私には荷が重いです……。



オルソラ「思い出しましたよ!」


上条「何をだ?」


オルソラ「私、あなた様に交渉術を教えに来たのでございます」


上条「こ、交渉術ぅ?」


オルソラ「はい」


上条「なんだってそんな急に……」


ボォン!!!!


上条「はぁ!?!?!?」


しゅぅぅうううううう……


上条「と、ととと、扉がふっとんだ……!?」


「お~る~そ~らぁ~!!」


オルソラ「は~い。 おはようございます」


「……ったくよぉ。 何処行ったかと思いましたよ……。 一般人宅なんかに勝手に上がり込んでんじゃねーっつんだよ!!」


「…………エリス。 もういい」


シェリー「……ん? ……そこにいたんですか、上条当麻サンよぉ」


上条「(……)」


上条「(……マジで、何なのこの状況)」



:上条宅(エリスが扉を工事中)


上条「ど、どうぞ……」


シェリー「おう……。 あっつ!! ふーっ! ふーっ!」


オルソラ「うふふ。 気をつけてください。 英国の紅茶のように適温で出されるわけではございませんよ」


シェリー「先に言えっつの!! ってか呑気に笑ってんじゃねえ! 私は一日中お前を探しまわってたんだぞ!」


オルソラ「あらあら。 少し苦味もあるので、紅茶にはない深みを味わえますよ」


シェリー「人の話を聞けよ……」


上条「……と、ところでさ」


シェリー「……ん?」ギロッ


上条「うっ……。 ひ、久しぶり……です」


シェリー「お久しぶりです」ニコッ


シェリー「小綺麗な家住みやがって、西欧の貴人気取りかてめぇは」


上条「い、いや、これは学校から借りてる寮でして……」


シェリー「はぁ……」


上条「(俺がため息つきたいんですけど……)」


オルソラ「ため息を吐くと不幸になる――。 日本でのジンクスだそうでございますよ」


シェリー「その原因の1つがてめぇだよ!」


オルソラ「もっとも、横隔膜から息を吐くということで。 リラクゼーションにも繋がりますので、ジンクスとは反して良い効果もあるわけでございますが」


シェリー「……」


上条「……あ、あのさ、オルソラ」


オルソラ「はい?」


上条「さっきの交渉術って何のことだ? 今回シェリーとオルソラが来たことに関係してるのか?」


オルソラ「あ、そうそう。 その通りでございますよ」


シェリー「はぁぁああ!? お前、そんなことも説明してねーんかよ!?」


シェリー「昨晩泊まったんだよな!? ……まさかやることやって満足したなんて笑い話は出て来ねえだろうな!?」


上条「!?」


オルソラ「やること……でございますか?」


シェリー「決まってんだろ!! セック――」


上条「わー!!わー!!!!! 本題、本題へ行きましょう!! ね? ね!!」




シェリー「はぁ……」


オルソラ「ため息を吐くと不幸にな――」


シェリー「さっき聞いたよ! いいからさっさと説明しろ!」


オルソラ「そうでございましたね。 ……あなた様」クルッ


上条「は、はいっ」


オルソラ「あなた様が今、大きな問題に直面しているというお話を伺ったのです」


オルソラ「就職活動……でしたか。 日本では、学生たちの慣例、通過儀礼の1つであると聞いたことがございますが」


オルソラ「昨晩の悩みも、それに関するものでしたね」


上条「あ、あぁ。 たしかに、かなり苦戦してるから、俺にとっては大きな問題だけど……」


上条「一体誰からそんな情報が……。 イギリスと日本って、うわさ話が飛び火するほどの距離じゃあない気が……」


オルソラ「それに関してましては、風の噂……とでも伏させて頂きます」ニコッ


上条「(えぇ~……)」


オルソラ「……とりあえず。 イギリス清教内、特に必要悪の教会ではその話で持ち切りなのでございますよ」


上条「……マジかよ」


上条「(何でそんな大事に……)」


オルソラ「そして、ある方の頼みもございまして、私たちが馳せ参じた、というわけです」


上条「な、なるほど……。 もう無理矢理にでも納得するしかないな」


オルソラ「そうしてくださると助かりますっ」ニコッ





オルソラ「もちろん、私たちは計画無しに来たのではございません」


オルソラ「日本の就職活動という文化をできうる限り調べ、その結果として、私たちが役に立てる分野があるということで来日させて頂いたのです」


上条「……オルソラたちが役立てる分野?」


オルソラ「はい。 ……それは、交渉術。 他人との直の接触にございます」


上条「直の接触……。 ……! まさか、面接か!」


オルソラ「はい。 その通りでございます」


上条「オルソラは布教活動をやってたって言ってたもんな……。 話すが上手いし」


オルソラ「そんなことはございません。 ただ、私は、『見知らぬ方々に、物事の魅力を伝える』という事柄に関して、他の方よりも多く経験しているというだけでございます」


上条「! なるほど、たしかに……。 面接も、その通りだもんな。 初めて会う面接官に、俺の魅力を伝える必要があるわけだから」


上条「(そういや、小萌先生もそういったことを話してたな)」


オルソラ「納得して頂けたようで何よりでございますよ」



オルソラ「と、ということで。 早速始めましょうか」


シェリー「やっとか……」


上条「えぇっと……。 面接練習を手伝ってくれるって言うのはわかったんだけどさ。 ……やるって、何を?」


オルソラ「はい。 そうですね、手始めに……。 ……そうだ、まず。 私たちにあなた様のことを伝えてみてください」


上条「うぇっ!? い、いきなりか!」


シェリー「貴方は、本番も同じことを言うつもりですか? ……さっさとやれよ、玉ついてんだろ玉ぁ」


オルソラ「玉……?」


上条「お、オルソラはそういうの気にしないでくれ……」


オルソラ「はぁ」




上条「ごほんっ。 えぇと……。 お……じゃなくて。 わ、私は、●●大学から参りました、かかか、上条当麻と申します」


上条「専攻は……えー……。 ……そうだ、こ、国際学で、と、とくに! 宗教について――」


シェリー「止まれ」


上条「!」


シェリー「一応聞かせてきかせてください」


シェリ「……お前は私たちの腹の虫を起こすために演じてるだけか? それとも、本気でやって、『そのザマ』か?」


上条「……本気です…………」


シェリー「くはーっ……。 今時、3歳児でももっとまともなパフォーマンスできるっつの……」


オルソラ「それは言い過ぎでございますよ。 小学生程度にならなければ、覚えている語彙的にも無理だと思います」


上条「(フォローになってねぇ……)」ズーン







シェリー「お前、周りに人がいるって意識しながら話す練習してこなかったろ」


上条「はい」


シェリー「身分も、知識も、経験も、全てが自分と違うヤツの前ではな、第一印象が全てなんだよ」


シェリー「オメーら日本人は接客業を徹底してんだろ。 あれは第一印象で客の興味を削がないためだ」


上条「ほうほう……」


シェリー「んなことも初めて知ったのかよ……」


オルソラ「あなた様。 人の第一印象は、何秒で決まるか知っていますか?」


上条「うーん……。 あまり意識したことなかったけど……。 ……1分くらいか?」


シェリー「悠長なこと言ってんなぁ……」


上条「え……?」


オルソラ「正解は、10秒前後です。 それだけで、相手の印象を捉えてしまうと言われています」


上条「じゅ、10秒!? たった10秒で!?」


オルソラ「人によって個人差や理論の違いはありますが、概ね主流になっているのは、それでございます」


オルソラ「見るポイントとして。 外見、挙動、言葉の3ポイントを無意識でもチェックしているのです」


上条「……なるほど……。 (……確かに、御坂はパッと見るとお嬢様にしか見えないもんな……)」







上条「そんなの考えたこともなかった……」


オルソラ「私があなた様と初めてお会いした際の第一印象は、良かったですよ」


上条「あ、あぁ……。 バス停だっけか」


シェリー「私は最悪でしたよ」ニコッ


上条「あはは……」


オルソラ「私が言いたいのは、あなた様は意識していない時は素晴らしいのですから。 


オルソラ「それを意識している時でもできるようになればいい、ということです」


上条「意識してる時でも、無意識の時みたいに話せればいい……か」


上条「意味はわかったが結構それって難しいぞ……」


シェリー「そのために練習するんだろうが。 おら、次だ次!」ドンッ


上条「わ、わかった! わかったから暴れないでくれ!!」


上条「(これ以上家の中の物を壊したら大変なことになる……!)」

シェリーの口調に違和感がある
冗談でも敬語使うようなキャラじゃなかったはず

>>308


「さあ、パーティを始めましょう―――土の被った泥臭え墓穴の中で、存分に鳴きやがれ」

っていう台詞が印象に残ってて、wiki見ても『乱暴な男言葉と丁寧な女言葉が混じる』と書いてあったので実践してるのですが、おかしいですかね……。
普段の言葉では使わないかぁ。SSは読んでいないのでわからないですが、とりあえず修正しますね。

ちなみに、wikiはhttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/179.htmlを参照しています。



:数時間後



上条「――というわけで、宗教学に関しては、他の人に負けない自信を持っています」


シェリー「……ふぁーあ。 やっと聞ける位になったじゃん」


オルソラ「流暢に話せるようにもなっておりますしね」


上条「そうか? ……まぁ、最初は緊張してたからなあ。 慣れて来たのかも」


オルソラ「それが重要なのでございますよ」


上条「……それ? 慣れが大事ってことか?」


オルソラ「はい。 運動や文芸にも下積みがあるのと同じで、他人との対話にも訓練はつきものでございます」


シェリー「口頭のアドバイスだけで始めから全て上手くいくんだったら、誰も苦労しねぇわな」


上条「たしかに……」


オルソラ「きっと、面接が得意でない方というのは、練習や実践が足りていないだけなのだと思いますよ」


オルソラ「誰でも成長しようと意識して臨めば、結果はついてくるものでございます!」


上条「……! お、俺も、もっと頑張るよ!」


オルソラ「その意気でございますっ」ニコッ


オルソラ「さて……。 次は、問答の練習をいたしましょう」


上条「問答?」


オルソラ「面接、と言うからには、自己紹介の後に幾つか問答がございますでしょう? その練習をするのでございます」


上条「あ……」


シェリー「なーに『そういえばそうだった……』みたいな顔してんだよ」


シェリー「そもそも面接っつーんだから自己紹介なんてオマケのオマケだろ。 できて当たり前。 こっからが本番なんじゃねーの?」


上条「おっしゃる通りです……」


オルソラ「そのように落ち込む必要はございませんよ。 あなた様だって自己紹介に関しては、今や当たり前のようにできるではありませんか」ニコニコ


上条「お、おぉ……(当たり前レベルには至ってないけど……)」



オルソラ「それでは……。 こほん。 あなた様が思う、社会人像を教えてくださいませ」


上条「は、は、はいっ!」


シェリー「……」ピクッ


上条「えっと、俺は、やっぱり、バリバリ働いて、人のため?に尽くしているのがしゃ、社会人だと思いますっ!!」


シェリー「まてまて、何でまたどもってんだよ」


上条「あ、あぁ。 自己紹介はある程度テンプレート的な形で覚えたから言えるようにはなったけど、質問に答えるとなると……」


シェリー「はぁ……。 ……いいか? 組織ってのはな、機械を求めてるわけじゃねーんだぞ」


オルソラ「彼の場合は、組織、ではなく会社と呼んだ方が正しいかと」


シェリー「どっちでもいい。 人の集合体って意味じゃ大して変わらねーだろ」


シェリー「話を戻すぞ。 固定化した応対をする奴なんざ、組織が求めていると思うか? そんなの、お前ら学園都市側のだぁ~い好きな機械サマがやってくれりゃ十分なんだよ」


上条「……!」


シェリー「人間ってのはな、考えて行動できるから機械より優位な立場に立ててるんだよ。 じゃなければ、何時間も掛けて数十ワード記憶するのがせいぜいな人間と、一瞬で何百万と記憶できる機械の差なんて一生埋まらねーだろ」


シェリー「……そもそもさぁ、その場で適切な言動ができない奴は、同列としてすら見られねえぞ」


上条「……」


シェリー「相手と同列の立場だと認められて始めて、お互いの理解って成立するもんじゃねーの?」


シェリー「はなっから呆れるような動作する奴と、いつまでもくっちゃべってたいと思うか?」


シェリー「しかも! お前は何を勘違いしているのか知らねーけど、この面接って今回だけのことじゃねーだろ」


上条「!」


シェリー「もし万が一、凄まじく運良く入れたとしても、その後、お前はどうするんだ?」


シェリー「必要な言葉を事前に丸暗記して行くのか?」


上条「(そ、そっか……)」


上条「(俺は、とりあえず面接に通らないと!って考えていたけど)」


上条「(これは、あくまで、『始まり』であって、この後にまだまだ続くんだよな……)」


上条「(シェリーの言う通り、勘違いも甚だしかったんだ……)」






オルソラ「あなた様、落ち込む必要はございませんよ」


上条「……え?」


オルソラ「友人や家族と取るコミュニケーションと、見知らぬ方と取るコミュニケーションの違いを知らなかっただけでございます」


オルソラ「あなた様だって、ご友人からの質問には例え唐突だとしても対応はできるでしょう? それは幼い頃から慣れ親しんでいる行為だからです」


オルソラ「それに比べ、就職活動のような形式的かつ緊張感のあるコミュニケーションは、そこまでしてこなかったと思います。 だから、できないのでございます」


オルソラ「しかし、それも練習をすれば必ずできるようになります。 今はできずとも、意識して少しずつ成長して行きましょう」


上条「あ、あぁっ!」


上条「(オルソラは励ましてくれてるけど……。 面接をただの儀式的なものだと考えていた一面はあったのは反省だな……)」


上条「(……よしっ。 気合いを入れて頑張らねーと!!)」


オルソラ「それでは。 続いて聞かせていただきます――」




最近投下できなくて申し訳ございません。
私用が忙しく中々書き進めることが難しい状態でした。

これからはもう少し投下できると思いますので、しばしお待ちください。

それでは、おやすみなさい。



――



上条「……だから、その、私は、不屈の精神が大事だと思います」


シェリー「まだ、どもってはいるが……。 聞けなくはないな」


オルソラ「はい。 たどたどしさの中にも、しっかりと説得力のある言葉が含まれておりますし」


オルソラ「……それでは、最後に1つ。 話し方のコツを教えさせて頂きます」


上条「話し方の、コツ……?」


オルソラ「はい。 『Result,Reason,Background,will』でございます」


上条「??」


オルソラ「日本語に直しますと、結論、理由、背景、意志でございます」


オルソラ「簡単に、『けりはい』とでも略しましょうか」ニコニコ


上条「けりはい……」










オルソラ「短時間で自分の意見を伝えるためには、簡潔でわかりやすい話し方をしなければなりません」


オルソラ「それをするための、話の流れのことを指しています」


上条「なるほど……。 つまり、先に結論を言って、次にその理由、そしてそう思った経験……。 ……となると、意志ってなんだ?」


オルソラ「流石でございますね! あなた様が言った3つ、全てこちらの意図通りでございます」


オルソラ「意志というのは、そういった事も踏まえ、今後何をしたいか、どう思っているか、を伝えることでございます」


オルソラ「こちらに関しましては、言葉で言うよりも、実践した方が分かりやすいと思います」


オルソラ「例えば……私があなた様に『どのような社会人になりたいのか』を尋ねたとします」


オルソラ「そしたら、『けりはい』の論理で言うと、あなた様はまずどう答えますか?」


上条「えぇと……(……説明からじゃなくて、結論だから……)」


上条「……私は、一環した目標を持ち、妥協しない社会人になりたいです……みたいな感じか?」


オルソラ「完璧でございますっ」ニコ


オルソラ「続いて、その理由をお答えください」




上条「最初に掲げた目標を変えると、今までやって来た事自体が無意味になってしまいかねないし、妥協してしまったたら後々後悔してしまうことがわかってるからです」


オルソラ「素晴らしいことを学んでおりますね。 それでは、なぜあなた様は妥協が後悔に繋がると知っているのでしょうか」


上条「色々理由はありますが……。 1番に思いつくのは、大学生活の過ごし方です。 サークルにも入らず、アルバイトもせず、なぁなぁに過ごしてきた自分に嫌気がさした経験があるからです」


上条「だから、将来は絶対にそうならないよう、しっかりとした目標を持って行きたいんです」


オルソラ「自分の経験から、妥協や惰性は後悔に繋がると言う経験を積んだのでございますね」


上条「はい」


オルソラ「理由と経験はわかりました。 しかし、今のままではまだ、言葉面で決意表明をしているだけ……。
後悔しているあなた様を脱却し切れていません」


オルソラ「そこで、あなた様が将来、どのようにしてそういった自分を打破していくのか。 そして、見事成長できた暁には、自分はどのように貢献できる存在になっているのかを語るのです」


オルソラ「自分が抱くビジョンや、自分の成長方法を明確に語ることで、相手に自分の考え方や思慮の深さを伝えるのです」


上条「な、なるほど……!」


上条「たしかに、口だけでなら幾らでも言えるからな……」


上条「本当に後悔しているなら、そんな現状を打破しようと必死に画策しているはずだし……」


上条「そうやっている現状や、未来の自分の姿を相手に伝える事で始めて、具体的に自分のことを知ってもらえる……ってわけか」


オルソラ「はいっ。 その通りでございますよっ」ニコニコ



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