葛葉ライドウ対妖怪學舎 (301)

葛葉ライドウとロザバンのクロスオーバー。
書き溜め無しでゆったりとやるだっしゃ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1394429408

大正時代、文明開化の最中の日本。

一台のバスが、とある目的地に向かって、走っていた。

車内の乗客は、黒マントの少年一人と、少年の相棒である、黒猫一匹のみであった。

揺れる車内…
少年は、窓際の席に座り、外の景色を眺めていた。

「あんた、陽海學園に入學する、生徒さん?」
バスの運転手が少年に話しかけてきた。
「----ああ」

運転手「ヒヒ…だったら覚悟しておく事だ」

「----覚悟?」

運転手「ヒヒヒ、この長~いトンネルを抜けると、すぐに學校だ」

「陽海學園は、恐ろしい學校だぞ~!」

「----覚えておく」

運転手「ヒヒ…着いたぞ少年…気をつけてな…」
バスは、目的地の學園へ到着し、走り去っていった。

『然し、ヤタガラスは、何を考えておるのか?
葛葉ライドウに帝都を護らせず、このような、田舎の學舎に放り込むとは』

少年の名は…
--葛葉ライドウ--
本日より、陽海學園に、入学する新入生。
黒い學帽に、黒い學生服。更に、黒のマントを纏う、全身黒尽くめの姿。
その反面、顔は、美しく、粉雪のように白い。
持ち前の長身もあり、銀幕スタアのような容貌の美少年である。その正体は…
古来より、日本を守護してきた。ヤタガラス機関に属する、悪魔召喚師…
悪魔を使役し、悪しき魔を穿つ。デビルサマナー
名門 葛葉一族の一角、十四代目、葛葉ライドウ

ライドウ「---ゴウト---今は、考えても仕方ない」

黒猫の名は、業斗童子
彼の正体は、過去、禁忌を犯した、葛葉一族の成れの果てと言われている。
彼の声は、デビルサマナー以外には聴こえない。

一人と一匹が、会話をしていると…

「きゃあ~危ないっ!どいてーーー!」

突如、二輪車に跨った少女が、ライドウに突撃してきた。
ライドウは、少女の言葉通り、二輪を避ける。
車輪に弾かれた小石が、ライドウの頬を掠めた。

ゴウト『大丈夫か?』

ライドウ「--ああ、大丈夫だ---それより----」

ライドウは、二輪車の少女を見つめる。

少女は、一本の木に直撃し、倒れ込んだままだった。
ライドウは少女に駆け寄り、抱き起こした。

「---おい、しっかりしろ、大丈夫か?」

「…う…ごめんなさい。貧血で目眩がしちゃって」

ライドウ「---無事ならいい」

「その香り……」

ライドウ「----どうした?」

「ごめんなさい…私、血の香りを嗅ぐと、おかしくなっちゃうの。
だって、私……」

ゴウト『まさか…その娘…』

「バンパイアなんだもん」

少女が、ライドウの首筋に噛み付いた。

「-----!」

ライドウは、バンパイアを名乗る少女に血を吸われた…
悪意・敵意の類を、全く感じない彼女に、隙が生まれていた。
ライドウは、少女をはねのけ、腰に下げている名刀、霧螺魔叉に、手をかけた。
すると、少女が…

「ご、ごめんなさい!私は赤夜萌香。こう見えても、バンパイアなんです!」

少女が、謝罪と自己紹介を始めた。

少女の名前は、赤夜萌香
桃色の髪に、端正な顔立ちの、美少女であった。

萌香「ごちそうさまです。あなたの血って、すご~く、おいしいんですね」
萌香は、無邪気な顔で語る。

「-----」
ライドウは、警戒を緩めず、刀の鞘に、手をかけたまま、萌香を無言で見据える。

そんなライドウを見て、萌香が口を開く…

萌香「あ…あの…やっぱり、嫌いですか…バンパイアなんて」

萌香が、悲しそうな表情で、ライドウに尋ねる。

ライドウ「----別に---突然---血を吸われなければな」

萌香の『吸血鬼』らしからぬ姿に、何かを感じたのか……
ライドウは、刀から手を離した。

萌香「えへへ…次からは、一言、声かけますね」

ゴウト『この娘、また、ライドウの血を吸う気か……』

萌香「でも、よかったー……嫌われてなくって。」

ゴウト『好きとは言っとらんがな』

萌香「それで…あの…こんな私でよかったら!と…友達になってくれませんか!!
學園に、知り合いが居なくて…心細かったんです!」

ライドウ「------葛葉ライドウ」

萌香「え?」

ライドウ「---友達になるんだろう----俺の名だ」

萌香「はい!!よろしくお願いします!入学式が終わったら、また、お話しして下さいね」

「皆さん!陽海學園へようこそっ!私は、この組の担任になった。
猫目 静です」

猫目「皆さんは、もう御存知ですが、我が校は、妖怪が通う為の學校でーす!」

ゴウト『はぁ…やはりな。校内や入學式で感じたが、ここは、妖の學舎か』
教室内の一席る、ライドウの足下で、ゴウトが呟く。

猫目が、學校の教育方針…
『人間たちとの共存』を熱弁していた。

ゴウト『ほう…』
人間との共存。ゴウトが、興味深く聞いていた。

猫目「この學園は、人間たちには秘密にしなければなりません。
仮に、人間が、この學園に侵入した場合は…死んでもらいまーす!」

教室内の、ライドウとゴウトを除く、全員が、有り得ないと笑う。

ゴウト『ヤタガラスめ…
全く面倒な場所へ……目立つ行為は控えんとな』

その時…

「すいません!遅れてしまって…」

勢いよく、教室の扉を開けたのは、萌香だった。

萌香「道に迷ってしまって…」
室内が、ざわめきたつ
「すげー美人」「あんな綺麗に、人間に化けれるなんて、すごいわ」

萌香とライドウの目があった。

萌香「ライドウ~!会いたかった!同じ組だったのね!うれしい~!」

萌香が、勢い良く、ライドウに抱き付いた。

「誰だ!あいつ!」
「學帽に隠れて、わからなかったけど…あの子も素敵」
「美男美女だわ」
……室内が更にざわめきたった。

ゴウト『早速、目立ってしまったな』

ゴウトが、溜息まじりに呟く

教室内に、そんな二人を、冷めた目で見つめる者がいた。

猫目の説明も終わり、自由行動の時間…
萌香「ねぇねぇ!次は…あっち!あっち見てみよっ!」

ライドウ「----わかったから---引っ張るな」

ライドウは、萌香に手を引っ張られ、校内探索に付き合う羽目になった。

「誰だ!?あの美人!それと、誰だ?隣の男は!?」
「誰!?あの素敵な男の子!?…あっちの女は誰よ!」

ゴウト『この目立ちよう…どうにかならんか』

ゴウトの心配も虚しく…
ライドウは数日後に、女生徒の間で『陽海王子』の名を冠する有名人になってしまう。

「よう」

突如、一人の男が、二人に声をかけてきた。

「あんた、赤夜萌香だろ?俺は、同じ組の小宮砕蔵。よろしく」
周囲がどよめく…
はぐれ妖怪の砕蔵。人間界で、問題を起こし、無理やり學園に入れられた…など

砕蔵「今から、俺と遊びに行かない?こいつといるより、断然、楽しいからさ?」

ライドウ「-----」

萌香「わ…わたし…今は、ライドウと遊んでいるから結構ですっ!」

萌香は、ライドウを引っ張り、その場から、足早に去った。

砕蔵「ちっ…俺は諦めねぇぞ」

萌香「ふぅ、びっくりしたね?」

ライドウ「----人気者だな--俺は、必要ないんじゃないのか?」

萌香「そんな事ない!私たち…血を吸った仲じゃない!」

ゴウト『どんな仲だ』

萌香「ライドウの血は、一級品よ!自信もって!」

ライドウ「---そんな自信は、いらないな」

萌香「それに…ライドウは、初めて直に吸った人なんだから……私の、初体験よ」

ライドウ「----『吸血鬼』なのに?人間を襲った事は無いのか?」

萌香「人間を…!?そんな怖い事、出来る訳ないじゃない」

ライドウ「----人間が---怖い?」

これって十四代目ライドウなら時代設定合わなくね?

まぁ、確かにライドウは大正二十年って架空の時代設定だが

萌香「私ね、中學まで、人間界で暮らしてたんだ……」

ライドウ「----」

萌香「けど、人間は、妖怪を信じないから…私の居場所は、何処にも無かった。
ずっと、人間の中で孤独だった。私なんて、存在しちゃいけないんだって思ってた」

ライドウ「----」

萌香「でも!ライドウは、バンパイアの私を拒絶しなかった!
それが…凄く嬉しかったの!
もう…一人じゃないんだって!」

ライドウ「-----そうか---だが---残念だな」

ゴウト『まさか!?ライドウ!!』

ライドウ『----俺は------人間だ』


萌香「----え?」

ライドウは、萌香に、自身が人間である事を告げた。

萌香「う…うそ…ライドウが…人間」

ライドウ「-----本当だ---だが、怖がらなくていい---お前とは---出来る限り、関わらないよう努力する」

ライドウは、茫然自失の萌香に、そう言い残し、その場を後にした。

萌香「ライドウ?ライドウー!」


萌香「やっと…友達が出来たと思ったのになぁ…」

砕蔵「なに一人で泣いてんだ?ライドウにでも振られたか?」

萌香「さ、砕蔵くんっ!?」

砕蔵「一緒に来てもらうぜぇ…赤夜萌香!」

萌香は、人気の少ない校外へと連れていかれた…

萌香「きゃっ!」

砕蔵「俺はなぁ、萌香…狙った女は、必ずモノにするんだよ」

萌香「いやっ…」

砕蔵「ああっ!興奮しちまった。
この体になっちまったら、抑えが、きかないのによ…
多少の校則違反は仕方ねぇよな!」

砕蔵の体が、人の姿から、化物へと変貌していく。その姿に、怯える萌香。

萌香「たっ、たすけて…たすけてぇ!ライドウー!」

砕蔵「誰も来ねぇよ!」
砕蔵の右手が、萌香に迫る…その瞬間!

強烈な火薬音が響いた…

砕蔵「う、うぎゃあああああ」

同時に、砕蔵の右手が、弾け飛んでいた。

砕蔵「だっ!誰だ!?」

ライドウ「-----十四代目-----葛葉ライドウ」

とりあえずここまでっす。
>>22
時代は完全大正です。
ロザバン面子はモダンな奴ら程度で書いてます

砕蔵の右手を打ち砕いたのは、回転式拳銃。コルトライトニングだった…

ゴウト『いくら妖と言えど、同級…然も、同じ組だぞ?右手は、元に戻るだろうが…いきなり砕く奴がおるか?』
一応、『學友』にあたる。砕蔵の右手を容赦なく、砕いた。ライドウに、ゴウトが一言申した。

ライドウ「---すまない----しかし、萌香が---」

ゴウト「なに、どうにでもなる。相手は、はぐれ妖怪。所詮は…」

ライドウ「----雑魚か」

砕蔵「っ!ブツブツと、独り言かましたと思ったら…俺が雑魚だとっ!?」

ライドウ「----ああ--」

砕蔵「面白ぇ!やられた右手の落とし前…キッチリつけさせて貰うからな!」

怒りに震える砕蔵が、ライドウに向かって、直進してくる。

ライドウ「---」

萌香「ラ、ライドウー!」

砕蔵が、ライドウに迫った瞬間…
ライドウは、跳躍し、宙を舞っていた。

砕蔵「なっ!?」

そして、上空を見上げる、砕蔵の顔に、峰打ちを、叩きこんだ。

ゴウト『さて、意識を断って、トドメと…』

萌香「ライドウ!」

ライドウ「--!----離れろっ!」

萌香「え?」

萌香が、戦闘が、終わったと勘違いし、ライドウの、真後ろまで、近付いていた。

不意に、砕蔵が立ち上がる…
怒りと痛みで、我を忘れ、萌香ごと、ライドウに、拳を振り下ろす。

ライドウ「----!」

ライドウは、瞬時に、萌香に飛び付き、横に跳ね、攻撃をかわした…

が、その時……

ライドウの右手が、萌香の首飾りのモナリザを掴み、外していた。

萌香「う、嘘…!?モナリザが…外れた」

萌香の、桃色の髪が、銀髪へと、変化していき、瞳の色は、真っ赤に染まっていった。

萌香「ライドウ。迷惑をかけたな…後は私に任せてくれ」

そこに居た萌香は、ライドウの知る、萌香とは、かけ離れた存在だった。

ゴウト『あの妖気、赤い瞳。間違いない…吸血鬼だ』

萌香が悠々と、砕蔵に近づく。

砕蔵は、萌香の放つ妖気に、金縛り状態になっていた。

砕蔵「萌香が…バンパイア!?『力』の大妖だと!?」

ゴウト「吸血鬼が『力』の大妖?初耳だの」

萌香「私が欲しいんだろ?だったら、力ずくで、手に入れてみせろ」

砕蔵「うっ!うぉぉぉぉぉぉ」

砕蔵の振り下ろした拳が、萌香に直撃した。

萌香「…この程度か?」

萌香は、砕蔵の一撃を、片手で受け止めていた。

萌香「所詮、低級妖怪か…
そんな雑魚が、私をモノにしようなど」

砕蔵「ひっ!」

萌香「身の程を知れ」

萌香が、砕蔵の顔を、蹴り飛ばすと、巨体の砕蔵が、吹き飛んでいった。

決着が付き、萌香が、ライドウへ近寄る。

ライドウは、萌香に、刀の切っ先を、向けた。

萌香「心配するな。お前と闘うつもりはないよ。お前は…『表』のお気に入りだからな」

「------」
ライドウは、無言のまま、刀を鞘に納めた。

萌香「さてと…私は、もう眠るよ」

そう言うと、ライドウに向かって、手を差し出した。
モナリザを渡せ。と、言う事だろう。
ライドウは、モナリザを、手渡した。

萌香「ライドウ…お前は、私が眠っている間、『表』の萌香を、護ってくれればいい」

ゴウト『勝手な奴だ』

ライドウ「-----」

萌香「それと、ライドウ…私も、お前の血が好きだぞ」

ゴウト『ライドウの血は、お前たちの食糧ではないんだがな』

萌香は、ロザリオを装着し、元の萌香へと戻っていった。
が、萌香は意識を失っていた…

ライドウ「---!」

ライドウが、萌香を抱きかかえた…。

ゴウト『本当に、面倒な學園だな』

やっと、裏萌香消化できた

モナリザワロタ

>>36
指摘サンクス
訂正するわ

>>32訂正
砕蔵が、ライドウ、迫った瞬間…
ライドウは跳躍し、宙を舞っていた。

砕蔵「なっ!?」

そして、上空を見上げる、砕蔵の顔面に峰打ちを、叩き込んだ。

ゴウト『さて、意識を、断って、トドメと…』

萌香「ライドウ!」

ライドウ「--!----離れろ!」

萌香「え?」

萌香は、戦闘が、終わったと勘違いし、ライドウの真後ろまで、近づいていた。

不意に、砕蔵が、立ち上がる…
怒りと痛みで、我を忘れ。萌香ごと、ライドウに、拳を振り下ろす。

ライドウ「----!」

ライドウは、瞬時に横に跳ね、萌香を抱き、攻撃をかわした。その時…

ライドウの右手が、萌香の首飾りのロザリオを掴み、外していた。

萌香「う、嘘!?ロザリオが…外れた」

萌香の、桃色の髪が銀髪へと変化していき、瞳の色は真っ赤に染まっていった。
萌香「ライドウ。迷惑をかけたな…後は任せておけ」

そこに居た萌香は、ライドウの知る萌香とは、かけ離れた存在だった。

>>34訂正

萌香は、砕蔵の一撃を、片手で受け止めていた。

萌香「所詮、低級妖怪か…
そんな雑魚が、私をモノにしようなど」
砕蔵「!」

萌香「身の程を知れ」

萌香が、砕蔵の顔を蹴り飛ばすと、巨体の砕蔵が、吹き飛んでいった。

決着が付き。萌香が、ライドウへ近寄る。

ライドウは、萌香に、刀の切っ先を向けた。

萌香「心配するな。お前と闘うつもりはないよ。お前は『表』のお気に入りだからな」

「----」
ライドウは、無言のまま、刀を鞘に納めた。

萌香「さてと…私は、もう眠るよ」

そう言うと、ライドウに向かって、手を差し出した。
ロザリオを渡せ。と、言う事だろう。
ライドウは、ロザリオを手渡した。

萌香「ライドウ…お前は、私が眠っている間、『表』の萌香を、護ってくれればいい」

ゴウト『勝手な奴だ』

ライドウ「-----」

萌香「それと、ライドウ…私も、お前の血が好きだぞ」

萌香は、ロザリオを装着すると、元の萌香へと戻っていった。
が、萌香は意識を失っていた…

ライドウ「---!」

ライドウが、萌香を抱きかかえた…。

ゴウト「本当に、面倒な學園だな」

これで無事に訂正終わったかな?
くそっ!モナリザとバンパイアだったならorz

ゴウト『砕蔵は、長期入院に停学か…
萌香の正当防衛が、丸々通るとは、普段の行いは大事だな』

ライドウ「----そうだな」

ライドウは、學生寮を出て、學園へと向かっていた。

萌香「おはよう!ライドウ~」
ライドウの後ろから、萌香が抱きついてきた。

「あの野郎~!よくも、萌香さんと」「止めとけ。アイツ、砕蔵を倒したらしいぜ」

周りにいる、通学途中の生徒達が、二人を見て、噂していた。

「ちっ…」
ライドウたちの後方で、一人の少女が、二人を見つめていた。

休み時間の校舎裏

萌香「ライドウ。人間一人で淋しいだろうけど、私が、いるからね。
何かあったら、なんでも言ってね」

ゴウト『人間以外なら『それなりに』いるんだがな』

ライドウ「--ああ--でも、いいのか---俺に、構ってばかりで」

萌香「いいのよ。だって、私…ライドウと居ると、ライドウの血が吸いたく…」

「----止めろ」
ライドウは、軽い手刀で制止した。

萌香「いったぁ~い…ぶつことないじゃない」

ライドウ「---突然---吸われそうに--なったからな」

萌香「そうだった!一言、声をかける約束だったね!
じゃあ…ライドウ!血を吸わせて!」

「-----」
ライドウは、萌香に血を吸わせた。

萌香「ごめんね。私、ちょっとトイレに行ってくるね」

ライドウ「----ああ」

ゴウト『然し、自分から、血を吸わせるとはな…
まあ『契約』と思えばよいか…ん?』

目にしたのは、少し、離れた先で、女生徒が、倒れ込む姿だった。

ライドウは、女生徒の方へと、駆け寄る。

ライドウ「----大丈夫か」

「胸が……苦しくて……はちきれそうなの」
女生徒は、豊満な胸を、ライドウに見せつける。

ライドウ「----大丈夫そうだな」

ライドウが、平然と立ち去ろうとすると、女生徒は、慌てた様子で、ライドウの腕に抱きついてきた。

「私は、黒乃胡夢。
お願い、保健室へ連れて行って…お願い」

胡夢は、妖しい瞳で、ライドウを見つめる。

ゴウト『この娘…』

萌香「お待たせ~ライド…」

萌香(知らない女の子が…ライドウに、抱きついてる?)

ライドウ「----止めろ」

ライドウの手刀が、胡夢の額に、炸裂した。

萌香・胡夢「!!」

胡夢「いったぁ~い!なにすんのよ!」

ライドウ「----大丈夫そうだな---行くぞ、萌香」

萌香「あ、うん」

ライドウは、物陰にいる萌香に声をかけ、二人はその場を後にした。

胡夢「萌香が見てたなんて…!
見てなさいよ!
私は、必ず!ライドウ君を虜にしてみせるからね」

一先ず休憩

萌香(ライドウと一緒に居た娘…誰なんだろ?)
『おい、狙われてるぞ』

萌香「えっ?ロザリオから声が…」

胡夢「こんにちは。バンパイアの赤夜萌香さん。
一部で噂になってますよ?」

萌香「あなたは…ライドウに、頭を叩かれてた娘!」

胡夢「そんなのは、どうでもいいのよ!
私はね、サキュバスの黒乃胡夢。
あなたを…やっつけにきたの!」

萌香「自分の正体を明かすのは、校則違反じゃ…
それより、私をやっつける?」

胡夢「そうよ!あなたは、私の計画の邪魔をした」

萌香「私が?一体、あなたの何を邪魔したの!?」

胡夢「陽海學園の全男子生徒を、私の虜にする…
酒池肉林計画よ!!」

萌香「………」

胡夢「學園中の男子が、私の魅力の虜になる筈だったのに…
萌香!あんたが、學園中の男子を虜にしちゃったのよ!
サキュバスの私を差し置いて!!」

萌香「え?え?」

胡夢「許せない!だから、あんたをやっつけて、私の方が、優れてる事を、証明するのよ!
あんたの大好きなライドウ君を……あんたから、奪ってね!!」

萌香「まって!ライドウは、関係ないじゃない!」

ライドウ「----何か--あったのか---」

萌香「ライドウ!?」

胡夢「好機!」

胡夢「あ~ん…目眩が…お願い、保健室に、連れて行って」

胡夢は、わざとらしく、ふらつき、ライドウの胸に寄りかかる。

「-----」
ライドウは、冷めた目で、胡夢を見る。
胡夢(やっぱり駄目なの~!?なら…今度は全力で)
魅惑眼

ゴウト『懲りん奴め…どうする?ライドウ』

「-----」
ライドウは、小声で呟いた。

ゴウト『なる程…なら、『誘い』に乗ってやるか』

ライドウ「----わかった---保健室に---連れて行ってやろう」

萌香(!)

胡夢(やった!)

萌香「だ、駄目よ!ライドウ!
ライドウは、その子に、騙されてるの!」

胡夢「ギクッ…!
あ~ん!胸が!!
早く!早く!保健室に!」

ライドウ「※----萌香---お前は、待っていろ」
※心配するな、其処で待っていろ。

萌香「※そんなぁ……ライドウの馬鹿ぁぁ!!」
※ライドウは、私より、その娘の言葉を信じるの!?馬鹿!!

萌香は、涙を流し、立ち去っていった。

ゴウト『なにか誤解してるようだが…構わんか』

ライドウ「---ああ----仕方ない」

胡夢(やふ~~!!
萌香の、あの顔…勝ったぁ!!)

保健室

ライドウ「-----」

胡夢「ライドウ君。
萌香に振られても、落ち込まないでね。
私が…慰めてあげるから」

胡夢がライドウの顔に、胸を押し当て、抱き締めた。

胡夢(やふ~!凄い恥ずかしいけど、ここまでやれば…)

ライドウ「----離れろ---」

胡夢「え?」

ライドウは、胡夢を寝台へ押しのけた。

胡夢「ど、どうして!?あなたは術に」

ライドウ「----息苦しいから---それに、落ち込んでいない」

ゴウト『小娘の術に、惑わされる男が、葛葉ライドウを名乗れるか』

胡夢「なによ、それ…
あれだけ恥ずかしい思いをしたのに!
許せないんだから!!」

胡夢の体に変化が起きる。
爪が鋭く伸び、更に両翼と尻尾が生え、サキュバスとしての姿が表面化した。

ライドウ「----」

萌香「うっ…うっ…ライドウの馬鹿」
『おい、おい!落ち込んでる場合か』

萌香「ほえ?…ロザリオが話しかけてる」
『さっきも話したろう』

萌香「えっと…あなたは誰?」
『私は、もう一人のお前だ。
お前が『表』の人格だとすると、私は『裏』だ』

萌香「なら、裏ちゃん?」
裏萌香『呼び方は、どうでもいい。
それより、ライドウが、危ないかも知れんぞ?』

萌香「えっ!どうして!?」
裏萌香『胡夢はサキュバス。
男を惑わす妖だ。先程の、ライドウの様子、術にかかっていたのかも知れん』

萌香「そんな…!急いで、助けに行かないと!」

萌香が、保健室の扉を勢いよく開けた。

萌香「止めて!ライドウを傷付けちゃ駄……」

萌香が見た光景は…
サキュバスが、拳銃を突きつけられ、子羊のように震える姿だった。

萌香「…」
裏萌香『……』

萌香「ラ、ライドウ!一応、相手は、女の子なんだし…もう止めよ?
胡夢ちゃんも…ね?」

萌香が、ライドウの前に躍り出て、宥める。

胡夢「萌香?
なによ…私を、助けて…勝ったつもり?
気に入らない!あんただけは…!」

胡夢が、萌香に襲いかかる。

ゴウト『またか…』

「----!」
ライドウは、萌香を抱え、窓から外に飛び出した。

萌香「ライドウ。お願いがあるの…
ロザリオを外して」

ライドウ「----何故だ--」

萌香「あの子は、私を恨んでる…だから私が!」
ライドウは、ロザリオを外した。

萌香の体が、本来の姿を取り戻していく。

胡夢「な、なにあれ…」

裏萌香「ふふ、自分の思い通りにならないと、暴れまわる自己中女が…
少し、躾てやるよ」

ゴウト『ライドウに、『片側』の世話を、押し付けた女が、よく言えたものだ』

胡夢「うるさい!私たち、サキュバスは…
大勢の男の中から、『たった一人の、運命の男』を、選ばなきゃならないのに…
その機会を奪った、あんただけは…絶対許せないのよ!!」

裏萌香『逆恨みも、ここまでくると笑えんな』

裏萌香は、胡夢の攻撃の隙を突き、背後へ回り込んだ。

裏萌香『随分、可愛い尻尾だな、引きちぎってやろうか?』

胡夢「やっ…やめ」

裏萌香『この程度で…
身の程を知れ』

胡夢は、裏萌香に、尻尾を掴まれ、そのまま、地面に叩きつけられた。

裏萌香『二度と逆らえないように、尻尾と翼を剥いでおくか』

胡夢「ひっ……」

その時

「----やめろ--」
ライドウが、胡夢を庇うように、間に割って入った。

胡夢「え…」

裏萌香『おい、ライドウ!何を考えてる?どけ』

ライドウ「---もう---勝負は決した」

裏萌香『何を甘い事を…
私たちを、襲った敵だぞ?』

ライドウ「----根は悪くない----『お前』と一緒でな」

胡夢「……!!」

裏萌香『チッ…!全く、甘い奴め』

裏萌香は、ロザリオを、ライドウから受け取り、元に戻った。

ライドウは、意識の失った『表』の萌香を抱え、その場を後にした。

胡夢「………」

通学路
ゴウト『あの時、萌香が来なければな…
まあ、感触は良かったから、次に会えれば、なんとかなるかもな』

ライドウ「----そうだな」

萌香「おっはよー!昨日は大変だったね」
昨日の出来事を話しながら、學園へ向かってる途中…

胡夢「おはようございます」

萌香「く、くるむちゃん?」

胡夢「ライドウ君!大学芋を作ったので、一緒に食べませんか」

ライドウ「---大学芋----貰おうか」

萌香「ライドウ!?ちょっと、胡夢ちゃん!
ライドウには、もうちょっかい出さないんでしょ!?」

胡夢「えへへ…実は、私……
運命の男性を、ライドウに決めました」
ゴウト『む…これは』

萌香「なっ、どういう事よ!?」

胡夢「いや~、私を、身を呈して、護ってくれた姿…一目惚れですよ~
だから…萌香には負けないからね!」

ゴウト『『交渉』して『仲魔』に、引き込む筈だったが…
まあ、終わり良ければ、なんとやらか』

萌香「ライドウ~!大学芋ばっかり食べてないで、胡夢ちゃんに、なんとか言ってよ!!」

ちんたらで、すんません。
今日はここまでっす。
やっと胡夢が終わった………

ある日の教室
猫目「皆さんには、部活に入って貰います!」

数日後の放課後
猫目「えー、ライドウ君、萌香さん、胡夢さんは、部活を決めかねてたので…
私が、顧問を務める。
新聞部に入って貰いました!」

萌香「あの~、部員は、私たち三人だけですか?」

猫目「いえ、もう一人いますよ」

「いやー、すみません。遅れてしもうて…初めまして。
俺は、新聞部の部長。二年、森丘銀影。宜しくな。
然し、新入部員…可愛い子、ばっかやなぁ」

舶来の髪留め、怪しい関西弁。軟派な態度
ギンは、不安を覚える部長であった。

猫目は「先輩とは仲良く」と、言い残し、部屋を後にした。

ギン「固くならんと、先ずは、最初の仕事や!
新聞部の宣伝広告を、部屋に、糊付けしてもらおか!
萌香ちゃん!胡夢ちゃん!頼んだで!」

ゴウト『こいつは、何処の生まれだ…』
ギンは、部屋の高い位置に、広告張りを命じ、二人の下着を覗いていた。

ライドウ「----おい---覗かれてるぞ」

ギン「何を言うてるんや?覗いてたんは、ライドウ君やないか」

胡夢「…ギン先輩の嘘つき!助平!
ライドウは、見せても見てくれないのに、覗く訳ないでしょ!」

萌香「ギン先輩…最低!」

ゴウト『やはり、普段の行いは大事だな』

ギン(あの野郎……見とれ)

裏萌香『………』

ギン「ライドウ!仕事や!ついて来い!」

「---はい、わかりました」
ライドウは、ギンに連れられ、校舎の外側へ来た。

ギン「ライドウ…
今から、あそこに見える、窓から、室内の様子を覗いてくるんや」

ライドウ「---断ります---あそこは、女子更衣室です」

ライドウは、去っていった。

ギン「なんやと!?部長の言うことが、聞けんのか!」

「何!?今の声!」
「誰!?あの人!?」
ギン「ちょ!ちょいまち…」
「きゃー!痴漢よ!」
「皆さん!落ち着いて行動するプロセスを希望します!
変質者は、捕まえるのがセオリーです!」

ギンは、逃走のプロセスを読まれ、捕まえられた…

學生寮。満月の夜
ライドウの部屋

誰かが、部屋の扉を叩く。ライドウが、扉を開けると、ギンが立っていた。

ギン「ライドウ…ちょいと、面かせや」

「----」
ライドウは、黙ったまま、ギンについていった。

寮内。ライドウとギンが歩く姿を、萌香が目撃する。

萌香(あれ、ライドウとギン先輩?こんな時間に何処へ…
それに、ギン先輩の顔…何だか怖かった)
裏萌香『おい!ライドウが危ないかも知れないぞ…』

萌香「えっ?裏ちゃん!
ライドウが危険って…どういう事!?」
裏萌香『あのギンとか言う男…只者ではない。
あいつからは、危険な匂いがする』

萌香「そんな…!」

學園屋上

ギン「ライドウ…
俺に恥をかかせた罪は大きいで…」

ゴウト『逆恨みも甚だしいな…』

ライドウ「-----」

ギン「…覚悟は出来とるようやな!」

ギンの体が、狼の姿へと変わっていく…

ギン「驚いたか!俺は『速さの大妖』ウェアウルフや!!」

ゴウト『また、大袈裟な奴がきたな…』

ギン「もう、泣いても許さんからな…
いくで!ライドウ!!」

ライドウ「-----」

誰かが屋上の扉を開けた

萌香・胡夢「ライドウ!」
一斉に、屋上に入った二人が見たものは…
ライドウは前転を繰り返し、紙一重で攻撃を避け続ける。

ギン「くっ!ちょこまかと…!」

萌香「ギン先輩ってウェアウルフだったの!?」

胡夢「『速さの大妖』じゃない!
でも…やふ~!ライドウ格好良い!余裕でかわしてるじゃない!」

ゴウト『豪語するだけあって、速さは侮れんな…注意しろよ』

萌香(そんな…ライドウは人間なのに)
萌香は耐えきれず、前転中のライドウの下へ駆け寄った…

ライドウ「----!」

ゴウト『あの阿呆!毎度邪魔しおって!』

萌香と接触する瞬間…
ライドウは、即座にロザリオを外した。

ロザリオの封印が解け、裏萌香が姿を現す…

裏萌香「全く、毎度毎度…黙って見てられないのか」

ギン「バンパイアだったんか…
こっちの萌香さんも綺麗や」

裏萌香「かかってこい…
軟派な根性を叩きのめしてやる」

ギン「くくく、叩きのめす?萌香さん、今日が何の日か忘れとらんか?」

裏萌香「!」
何かに気付いた裏萌香は、冷や汗を垂らした。

ギン「気付いたようやな…
そう!今日は満月!
ウェアウルフが最大の力を発揮できる日や!
今の俺には、例えバンパイアでも……勝てんちゅう事や!」裏萌香が、ギンに吹き飛ばされる

裏萌香「ぐっ!」

裏萌香は、ギンの縦横無尽の攻撃に、手も足も出なかった…

胡夢「あの裏の萌香が、ここまでやられるなんて…
どうしよ~!ライドウー!」

ボロボロになった裏萌香に、ギンがトドメを刺そうとした時…

ライドウが、マントの内側から『管』を取り出し叫ぶ…

ライドウ「--『ドアマース』!--」

放たれる翠色の輝き
胡夢「なっなに!?なにしたの!?ライドウ~!?」

ギン「な…なんや!?」

裏萌香「……」

彼らの目の前に、突如、現れたのは…
白と黒の二色体毛、均整のとれた四肢、美しい毛並み。
二足で立つが、当然、人ではない…

胡夢「あれ誰なのよぉ!?ライドウ~」

ギン「なんや…急に現れよったぞ!?」

そう、彼女は…狗の『悪魔』であった。

ドアマース「やっと呼んでくれたぁ!で、殺るのは誰、それとも全員」

ドアマースは、ギンと裏萌香と胡夢を、それぞれ指差し言った。

ギン・胡夢「なっ!?」

ライドウ「---誰も殺らない---狼の動きを止めろ」

ドアマース「あいよ、ライドウゥ」

ドアマースが、ギンに襲いかかった

ギン「くっ!舐めんな!」

ギンは、突然の出来事に浮き足立っていた…
そんな状態で、ドアマースと渡り合える訳がなく…
呆気なく動きを封じられた。

ギン「チッ…」

当然、ライドウは、その瞬間を見逃さない…

刀を握り、ギンに向かっての跳躍…
体を半回転させ、ギンの顔面に、峰打ちを叩き込んだ……

ギン「!!!!」

ギンは吹き飛び、柵を突き破り、地面に衝突した。

胡夢「あら………大丈夫かな?」

ライドウ「---多分な--」

胡夢「あはは、そうだね」

弛んだ空気を、ドアマースが切り裂いた
ドアマース「ライドウゥ、あんた…!」

ライドウは『下らない理由』で呼び出したと、怒鳴るドアマースを宥め『管』へと戻した。

裏萌香「………」

裏萌香「ライドウ…答えろ。お前は…何者だ?」

ライドウを『人間』と知る、裏萌香が、ライドウの『正体』を問い質す。

ゴウト『ま、当然だな』

「----」
ライドウは無言のままだ。

胡夢「ち、ちょっと!
ライドウが困ってるじゃない!?
さっきのは、ライドウの『お友達』でしょ!?
それに、『正体』を聞くのは校則違反よ!」

裏萌香「『お友達』か…」

胡夢「それより…今日のライドウ格好良かったわ~!
裏萌香を助けて、ギン先輩をどかーんって…やふ~!」

裏萌香「ま、まあ、今回、助けられたのは事実だ……
それに免じて、詮索しないでやる」

ゴウト『毎回だろうが』

裏萌香は、ロザリオを元に戻した。

夜が明けて…

ライドウたち新聞部の初仕事は、ギン覗き御用の記事だった…

ギン消化で一時休憩

中間テスト発表
テスト結果が、外に張り出された。

葛葉ライドウ 1位
「すげー!ライドウ1位かよ!」「格好良くて、頭も良いなんて…ライドウ君!素敵!!」

赤夜萌香 13位

萌香「凄~い!驚いたよ!ライドウ1位だよ!」

ゴウト『正直、萌香が13位な方が驚きだがな…
賢かったんだな』

「………」
遠目から、二人を見つめる一人の少女…
少女の名は…
仙童紫 同着1位

そんな紫に、一人の男子生徒が声をかける。

「流石ですね…紫さん。11歳で飛び級するだけの事はある。」

紫「委員長…」

委員長「ただ、調子に乗らないで下さいね。
………………薄汚い魔女め!」

「……っ!」
紫は、手に持つ小さな棒を、軽く上下に振った。
すると、小石が宙に浮き、委員長の後頭部に直撃した。

紫「あはは!」

「お前…今、何をした!」
委員長が紫に襲いかかる。

「---止めろ--」
ライドウが割って入った。
「何だ?喧嘩か?」周囲がざわつく

(くっ…ここは、人が多いですね)
委員長は、捨て台詞を残し、退散した。
ライドウ「--大丈夫か」

紫「あ、ありがとうございます!」

萌香「ライドウ~!大丈夫?何か、あったの?」

紫「あの…あのですね。
私…ライドウさんが、好きなんですっ!」

萌香「…………」

ライドウ「-----」

紫「私…あなたの事も、知っています。赤夜萌香さん」

萌香「えっ!私?」

紫「そうです。上の下。運動神経は最低。
特技無し。秀才と言うにも半端な人ですぅ」

萌香「うっ」

紫「そんな人に、ライドウさんは相応しく有りません!
だから…宣戦布告です!」
紫は、手に持つ棒を振る。

多数の箒が宙に浮き、萌香に襲いかかる。

萌香「いやー」

その日、あらゆる道具が、萌香を襲い続けた。

新聞部の部室

胡夢「仙童紫?」

萌香「そう、今日は散々だったの…」

胡夢「私と同じ組よ。
同級生って言っても、実際、子供だしね~我が儘なのよ。
組内でも、それが原因で、誰も関わらないもん。それに…」

萌香「それに?」

胡夢「あの子…魔女だし」


魔女
妖より、人間に近い魔女は、妖の世界では、半端者として嫌われてる。

萌香「………」

萌香「そうだったの…」
呟く萌香の頭に、突如、銀盥が落ちる。

萌香「う~!」

紫「うふふ」

部活が終わり
萌香「もう、怒ったわ!
ライドウからも言ってあげてよ!
迷惑だって!紫ちゃんのためにならないわ」

ライドウ「---そうだな」

紫(迷惑…!?ライドウさんまで…!?)

萌香「紫ちゃん!こんな事を続けてたら、一人ぼっちになっちゃうよ!」

紫「!平気ですぅ~…私、天才だし。
それに、元々、一人ぼっちだし…」

萌香「紫ちゃん…」

紫は、走り去っていった。

萌香「待って!紫ちゃん」

萌香が、紫を追いかける。

ゴウト『いかん、この流れ…嫌な予感がする。追うぞ、ライドウ』

ライドウ「---わかった」

紫は、走る最中に、誰かとぶつかる
紫「痛っ!ちゃんと前を向いて歩きなさいよ!」

委員長「ぶつかってきたのは、そちらでしょう?」

紫「委員長……」

委員長「一人になるのを……待ってたぞ!」

委員長によって、紫は、校舎の外へと連れ出された。

「よくも、公衆の面前で恥をかかせてくれたな…」
委員長の体が、蜥蜴の妖…
リザードマンへと変わっていく。

紫「ああ…」

委員長が、紫に近付いていく…

萌香「止めて!」

紫・委員長「!?」
萌香「お願い!紫ちゃんから離れて!」

委員長「赤夜萌香!?何故ここに?見られたからには…」

萌香「大丈夫…私が身代わりになるから。
紫ちゃん…イタズラばかりするのは、淋しかったんでしょ?」

紫「な、なにいってるですか!?」

萌香「私も、一人ぼっちだったから、わかるよ」

紫「……!」

委員長「何をグダグダと…
纏めて食ってやりますよ!」

委員長が、大きな口を開き、鋭い牙で、萌香に噛み付こうとした時……

委員長は、牙を砕かれ宙を舞っていた

萌香の前には、刀を握る、ライドウが立っていた…

ゴウト『まさか…抜刀もせずに、殴るとはな』

ライドウ「------」

数日後、新聞部へ向かう途中

萌香「紫ちゃん、大人しくなったね」

胡夢「うん、教室で今までの悪戯を、みんなの前で謝罪して、打ち解けていったし。
上手くいってるよ」

ライドウ「----そうか」

そして、部室へ到着し扉を開けると…

紫「萌香さ~ん!」
部室内から、紫が飛び出し、萌香に抱き付いてきた。


萌香・胡夢「新入部員!?」

紫「はい!私は、ライドウさんと萌香さんが、大好きなので、新聞部に入る事にしました!」

ライドウ「----」

魔女の紫が、ライドウたち新聞部の新たな部員となったのであった。

一区切りです。
次が美術教師…飛ばしたいのに飛ばせない……

スローですんません。

今更だけど
時系列は、ライドウ死人にロザリオS2を合わせる感じです

新聞部
ギン「みんな、事件やで!」

萌香(ギン先輩、事件になると真面目になるのね)

ギン「女生徒連続失踪事件や。
数日間の短期間で、七人もの女生徒が行方不明や…
みんなには、情報を集めて貰いたい」

ライドウ「----」

ギン「行方不明の女生徒は、どれも別嬪さんや。仮に、浚われたんなら、助け出して、仲良くなれる筈や!」

胡夢(それが目当てか)

部活終了後

ゴウト『ギンの動機は兎も角、気になる事件だな』

ライドウ「----ああ」

萌香「ねぇ、ライドウ。しばらく、一人で、寮に帰ってくれる?」

ライドウ「---構わないが、どうした?」

萌香「うん、美術の先生に、一週間モデルを頼まれちゃって、今から、行かなきゃならないんだ」

ライドウ「----わかった」

ライドウは、萌香と別れた

翌日…美術の授業

ゴウト『あの新任教師が、萌香にモデルを頼んだのか』

美術教師 石神瞳

石神「ダヴィンチの傑作である、モナリザ…」

美術の授業が終わり。ライドウたちが、美術室から出ようとした時、一人の生徒が美術室に入って来た。
「先生!モデルの約束ですが、いつ頃、行けばいいですか?」

ゴウト『あの教師、 片っ端から声をかけておるのか…』

そして翌日。
八人目の行方不明不明者が現れた。

胡夢「またなの~!?」

ゴウト『ライドウ…この娘』

ゴウトが行方不明の女生徒の写真を見て呟く

ライドウ「----ああ---」

ライドウは確信した。
行方不明の女生徒は、昨日、石神にモデルの約束をしていた女生徒だった。

ライドウ「----萌香が---危ない」

美術室
萌香(ギン先輩に、モデルの話をしたら、部活でなくて良いって言われたから先に来たけど…
石神先生、まだ来てないのか)

シクシク シクシク

萌香「あれ?何か、音が…」
シクシク シクシク

萌香「ロッカーの中?」

恐る恐る、ロッカーを開けると、そこには…

萌香「きゃ!」

多数の人型の石像があり、涙を流していた。
萌香は、気付いていないが、その石像は、行方不明不明者達の成れの果てだった…

石神「見てしまったね」

萌香の背後に石神が迫っていた。

萌香「!?」

ゴウト『急げ!ライドウ』

石神の毛髪が無数の蛇に変わり、萌香の左腕と右足に噛み付いた。

萌香「痛っ!」
そして、噛まれた箇所が石に変わっていく。

萌香「えっ?」

石神「驚いたかい?私に噛まれた者は石になるのさ…
さぁ、君も美しい芸術品になって貰おう!」

無数の蛇が一斉に、萌香へ襲いかかった。

萌香「!!……!?」

ライドウが、萌香を庇い、蛇に全身を咬まれて噛まれていた。

萌香「ライドウ!!」

石神「お前は……まさか!?」

石神「ふふふ、私はメデューサ…
馬鹿な奴だ。噛まれた者は石になる運命」

「-----」
ライドウは、刀を抜き、噛み付く蛇を切り捨てた。

石神「ぎゃぁぁっ………!
なっ、何故だ!何故、動ける!?」

ライドウの纏う、學生服やマントには、葛葉の里の蛇紋石や角閃石が繊維状に縫い込まれている。

ゴウト『本物ならいざ知らず
メデューサの卷族の牙で石になるものか…』

ライドウは飛び跳ね、石神の顔面に峰打ちを叩き込んだ。

石神「!!!」

ライドウは手持ちの解石符を使い、萌香や女生徒たちの石化を解いた…

萌香「あ、有難う!ライドウ~」

「ライドウ君!助けてくれて!有難う!」

翌日の新聞

連続女子生徒行方不明事件の犯人は美術教諭の石神瞳 懲戒処分

事件解決は葛葉ライドウ

胡夢「やふ~!さっすが!ライドウ~!」

紫「ライドウさん!素敵ですぅ~」

ギン「なんで、こいつばっかり…」


萌香「ライドウは頼りになるね~」
黒萌香『お前は、ライドウを、怪しいと思わないのか?』

萌香「え?」
黒萌香『あの強さ…石を治す道具。どう考えても『普通』の人間ではない』

萌香「そんなの…どうでもいいよ」
裏萌香『なに?』

萌香「例え『普通』じゃなくても、ライドウはライドウだもん」
裏萌香『……そうか』


こうして、事件は無事解決した

美術を何時もより早めに片付けられて良かった…

無駄サイドストーリー省いたら公安だったから頑張るっちゃ

ある日、出来上がった新聞を校庭で配っていると…

「貴様ら!誰の許可を得て活動している!」

胡夢「えっ!?何!?」

上下共に、學生服とは違う、警官隊を思わせる服装の集団が、こちらへやって来た。

「私は公安委員の九曜だ」

ギン「何の用や…」

九曜「わかっているだろう?我々が検閲していない新聞を、勝手に配られると……困るんだよ!」

九曜は、新聞の束を置いた机を蹴り飛ばした。

萌香「酷い!止めて…」

ギン「止すんや!」とっさに萌香を制止する

九曜「我々に逆らったら、どうなるかわかるだろ?」

九曜は、地面に落ちた新聞を踏みつける
九曜「一年前の用になりたくなければ、黙って従うんだな」

九曜は、そう言い放ち、その場を後にした。

ギン「……」

新聞部 部室

胡夢「ギン先輩!公安って何なの!?
黙ってるなんて!どういう事!」

ギン「公安ってのはヤクザみたいな者や。
従えってのは、上納金を支払えって事や」

紫「なら、尚更ですぅ!そんな奴ら相手に、悔しくないんですかぁ!」
二人がギンを責め立てる。

ギン「喧しい!お前らは公安の恐ろしさを知らんから、そんな事を言えるんや!」

ギンが二人に怒鳴りつけた。初めてみる、ギンの姿に場が静まり返る…

その静寂をライドウの一言が破った

ライドウ「--先輩、一年前---何があったんですか」

ギン「……一年前、公安の批判記事を書いたんや」

萌香「……」

ギン「そしたら、その報復に新聞部は廃部寸前まで追い込まれたんや。
なんとか廃部は免れたが、それ以来、目の敵にされてな…」

萌香「なにそれ!酷い!學園は何も言わないの!?」

ギン「無駄や…公安の権限は凄まじく、教師でも口だし出来んねん。」

萌香「そんな…」

ギン「それにな、九曜は、公安に逆らう奴を違反者として粛清し、學園から追放しとるんや」

胡夢「そんな事されて、誰もやり返さないの?」

ギン「…九曜は學園随一の実力者。怖がって、みんな逆らえんのや」

胡夢「………」

ギン「悔しいのはわかる。でも、今は耐えてくれ。
こっちから何もしなければ、いくら公安でも手出しは出来へん」

胡夢「…うん」

数日後 學園の一室

九曜「チッ…新聞部め。
あれだけ挑発したのに、一向に乗ってこないな」

「お困りだな」

九曜「貴様は…」

石神「新聞部を潰したいんだろ?力になってやろうか?」

九曜「笑わせるな…貴様のような屑の力など必要ない。失せろ」

石神「いいのかい?新聞部を、容易く潰せる。情報だぞ…」

九曜「……言ってみろ」

石神「新聞部の葛葉ライドウは……人間の疑いがある」

九曜「…ははは!やはり屑だな!人間が學園に入れる訳が無いだろう」

石神「……信じるも信じないも、お前次第さ。
ただ、知ってるだろ?人間が學園に入った時の掟を」

九曜「………」



新聞部 部室

突如、部室の扉を乱暴に開く…

萌香「!!」

ギン「九曜!何の用や…」

九曜「何の用だと?とぼけるな。
貴様ら新聞部には、重大な規則違反の嫌疑がかけられている…」

胡夢「何のことよ!言いがかりはよしてよ!」

九曜「黙れ!葛葉ライドウ…
貴様の正体が人間だとの情報が入った。付いて来てもらうぞ…」

ギン「なっ!!!」

胡夢「えっ!!」

紫「!!」

萌香(嘘…どうしてバレたの!?)
裏萌香『くっ!遂に…バレたか!!』

ライドウ「----」

ゴウト『はあ、全く面倒な事になったな』

ライドウは黙って九曜について行った。

胡夢「なによ!ライドウが『人間なんか』な訳ないじゃない!」

萌香「!!」

紫「そうですぅ!完全に、言いがかりですぅ!」

ギン「そうやな…あの、べらぼうに強いライドウが人間である訳ないわ」

胡夢「そうよ!ギン先輩やっつけちゃうライドウが『人間なんか』な訳ないじゃない!」

ギン「うっ…」

胡夢「どうしたの萌香?さっきから黙って……」

萌香「もし…ライドウが『人間』だって言ったら……どうする?」

胡夢「あはは!何いってんの!そんな訳…」

萌香「………」

胡夢「萌香…?…あんた!なんか知ってんの!!」


……………………


ギン「嘘やろ…ライドウが人間?」

紫「そんなぁ……ライドウさんが……」

胡夢「嘘………嘘よ」

萌香「どうしたの!?みんな!例え『人間』でも、ライドウはライドウでしょう!?」

ギン「人間が、學園に入る事は重大な規則違反や…」

萌香「そんな!ライドウを見捨てるの!?」

皆が無言で下を俯く…

萌香「………!!」

ギン「萌香ちゃん!どこ行くんや!」

萌香「ライドウを助けに行くんです」

胡夢「!!」

ギン「アホ言え!人間助けたら、萌香ちゃんまで…」

萌香「そんなの関係ないです…だって、ライドウは、私の大事な『友達』ですから」

萌香は、走り去っていった…

胡夢「……!」

ギン「胡夢ちゃん!まで…ライドウを助けに行くんか?」

胡夢「当たり前じゃない…ライドウが『人間』だって関係ない。運命の人だもん」
胡夢は、ライドウの下へ飛び出していった

紫「…!」

ギン「紫ちゃんまで…」

紫「私は、元々、人間に近い魔女ですから!」



ギン「くそっ!どいつもこいつも勝手な行動しよって……………」

違反者の収容所地下

九曜「おい、妖なら『正体』を現してみせろ。簡単だろ?」

ライドウ「---必要ない--」

九曜「なに?」

ライドウ「---俺は----人間だからな」

九曜「くくく…まさか自分から認めるとはな!
どうなるか、わかっているだろうな?」

ライドウ「--ああ--お前を叩き潰す」

九曜「人間風情が……!」
ライドウに向かって火柱が放たれた。

九曜「ははは!脆弱な人間なら即死だな!」
ライドウが炎を突き破り、笑う九曜に突撃してきた。

九曜「な…なに!?」

ライドウ「----」
九曜の鳩尾に、峰打ちが炸裂し、九曜は後方に吹き飛ばされた…
ライドウの纏う装備は、炎にも耐性があったのだ。

ゴウト『世間知らずの『ガキ』には、良い薬だろ』

「ライドウ~!」

萌香「助けにきたよ…あれ?」
裏萌香『…何時もと同じだな』

胡夢「ライドウ~!助けに…えっ!」

紫「ライドウさん!助けに来まし…?」

ギン「遅れたな!!」

萌香・胡夢・紫「ギン先輩!?」

ギン「助けに来たで!ライド……終わっとるんかい!」

ライドウ「----すいません」

九曜「………どいつもこいつも、ふざけやがって!」

突如、後方の九曜が立ち上がった…

九曜の体が炎に包まれ、妖の姿へ変わっていく…

ギン「あれは…妖狐!日本の大妖怪や!」

九曜「てめぇら!人間庇うなんて、どういうつもりだ!?頭おかしいのか!?」

ギン「なあライドウ…お前、ほんまに人間なのか?」

ライドウ「---は」

ギン「いわんでええ!この學園じゃあ…『正体』明かすんは禁止やからな。
それに…誰も、お前の『正体』なんか興味あらへん」

ライドウ「----先輩」

ゴウト『先輩らしいではないか、見直したぞ』

九曜「てめぇら、知ってて、白を切るつもりか…
なら!全員始末してくれる!」

九曜の尾から巨大な火柱が、部屋一面に放たれる

「ヤバい!」
ギンは後方の胡夢と紫をとっさに庇う

対するライドウは萌香を庇った。

ゴウト『ライドウ!こちらは平気だが、ギンが不味い!』

ライドウは瞬時に『管』を取り出した。
ライドウ「『ジャックランタン』!」

灼熱の炎を身に受ける…
ギンは覚悟を決めていたが、体に痛みはやって来ない…

「……?」
ギンが振り向くと…
ジャックランタン「※ヒーホーー」※ライドウに手を出す奴は許さねえぞ

南瓜に刻まれた丸い顔。円錐型の帽子。片手にはランタンを持つ、奇妙な生き物がいた。

ギン「な、なんや!?」

胡夢「可愛い~!」
紫「可愛いですぅ~!」

萌香「可愛い…」

ジャックランタン「※ヒホ」※もっと言え!

ライドウ「--ジャックランタン--後ろの三人を頼む」

ジャックランタン「※ヒーホ~!」※わかった!任せろ!

九曜「お前…!人間じゃないな!くそっ!石神の奴め騙しやがって!」

ライドウが九曜に向かって走り出す…
九曜の尾による攻撃を、跳躍により避けると、そのまま刀を振り下ろした…

然し、ライドウの攻撃は外れた…

九曜が瞬時に体を圧縮し、真の姿である人型になった為に、狙いがズレたのであった…

九曜の攻撃が……ライドウを捉えた。

ライドウ「----!」
胡夢「ライドウー!!」

ゴウト『ちっ…
峰打ち攻めが、こんな所で徒になったか』

ライドウは、衝撃によって後方へと飛ばされた…

萌香「!!」
飛ばされた先に居たのは、萌香だった…

ライドウはロザリオを、外していた。
裏萌香が姿を現す…

九曜「こいつ…バンパイアだったのか!」

裏萌香『ライドウ。お前が攻撃を受けるなんて、珍しいじゃないか?』

ライドウ「----」

裏萌香「そこで休んでろ。こいつは、私が片付けてやる」

九曜「バンパイア風情が…私を片付けるだと?」

裏萌香「耳が遠いのか?そう言ったんだよ」

九曜との勝負が始まった。勝負は五分に見えたが、九曜の表情は余裕だった。
一方、裏萌香の顔には、疲労の色が見えていた…
実力が均衡し、攻め倦ねていたせいで、裏萌香は、身近で熱気を浴び続ける事になり、体力を消耗していった…

「あかん…!見てられんわ!」
ギンが、ウェアウルフとなり、裏萌香の救援に駆けつける。

ジャックランタン「※ヒホ!?」※おい!?

九曜「間抜けめ…ウェアウルフと言え、月の無い場所で、私に勝てると思ったか!」

九曜の尾から生まれた火柱が、ギンの体を焼いた。

ギン「ぐわぁ!」

九曜「はははははっ」

裏萌香は、その隙を、見逃さなかった。
強烈な左膝が、九曜の鳩尾を射抜く。

九曜「ぐっ……!」
今の一撃で、力を使い果たし、膝を着く裏萌香…

然し、九曜は…倒れて居なかった。
怒りに震える九曜が、裏萌香に拳を振り下ろす瞬間…

ライドウが刀を握り、九曜の眼前に詰めていた……

九曜「なっ…!」

ライドウ「----!」

ライドウの強烈な一撃が、九曜の顔面を打ち抜いた。

「!!!!」
九曜は、後方に、凄まじい勢いで吹き飛ばされ、完全に意識を断たれた

ライドウ「----」

ライドウ「---戻れ--ジャックランタン」

ジャックランタン「※ヒーーホ!」※了解!

ジャックランタンは『管』に戻っていった。

裏萌香「ライドウ…今日こそは、話してもらうぞ。お前が一体『何者』かを」

ライドウ「----」

胡夢「ライドウ…お願い…私も、知りたい。
ライドウが隠してる事…例え、どんな『事実』でも、私は受け入れる。だから!お願い!話して!」

紫「そうですぅ!水臭いですぅ!」

ギン「そうやな…お前が、俺らを『本当の仲間』と思ってるなら、話してくれても、ええんちゃうか?」

ライドウ「----」

裏萌香「ライドウ…!」

ゴウト『もう限界だな』

ライドウ「---俺は--」


「待った!!」

胡夢「誰!?」

「その話は、私からしよう…」

紫「あなたは!?」

ギン「學園長!!」

陽海學園 學園長
御子神 典明

御子神「構わないかな?
デビルサマナー
十四代目---葛葉ライドウ君」


ライドウ「----!!---」

ゴウト『この男…』

裏萌香「デビル……サマナー?」

學園長室

胡夢「ふぇ~…學園長室なんて、初めて入った」

紫「き、緊張するですぅ~」

御子神「まあ、そう固くならずにかけたまえ」

御子神が、新聞部の部員を椅子に座るようよう促した。

裏萌香「能書きはいい…さっさと話して貰おうか」

胡夢「ちょ!萌香!」

御子神「ああ、そうだったね。
何故、『人間』である、ライドウ君が、この學園に居るのか…」

ライドウ「---」

ギン「……!」

紫「!」

胡夢「やっぱり!」
裏萌香「続けろ…」
御子神「そもそも彼が、この學園に居るのは…
私が『ヤタガラス』に依頼したからなのだよ」

ライドウ「---!」

ゴウト『何だと!』

裏萌香「ヤタガラス…?」

胡夢「ヤタガラスって?」

ギン「確か…日本の古来から居る、神様やな」

紫「はい!ヤタガラスは太陽の化身とも、言われていますぅ!」

裏萌香「それが、ライドウと何の関係がある!」

御子神「君はせっかちだな…
私の言う『ヤタガラス』は君たちが今、言ったのとは違ってね…」

裏萌香「だから、それは何なんだ!」

御子神「『ヤタガラス』この日本を、古来より『魔』の存在から守護してきた機関…
そして、そこのライドウ君は、その『ヤタガラス』に所属している人間だ」

裏萌香「なっ…!」

胡夢「え~!?」

ギン「……話が大きくなってきよったな」

裏萌香「……ライドウが、その『ヤタガラス』やらの人間だというのは理解した。
だが…!
私が知りたいのは、ライドウは『人間』でありながら、何故あれだけの強さを持つ!?
ライドウが呼び出す、あの『妖』はなんだ!?
そして、先程の、お前が言った…デビルサマナーとは、なんだっ!!答えろっ!」

裏萌香は矢継ぎ早に御子神に質問をした。

ギン「そ、そうや!人間離れした、ライドウの強さ…!
あれは、なんなんや!?
正直、ライドウが人間やなんて、いまだに信じられんわ…」

胡夢「そうよね…人間が、ギン先輩を倒すなんてね」

ギン「うっ…その話、もうええやろ!」

御子神「ふっふっふっ…
それは、君たちが、ひよっ子だから、そう思うのだよ」

裏萌香「何だと!?」

御子神「其処のライドウ君と同様に、世の中には、君たちより強い『人間』など大勢いるよ…
無論バンパイアの君よりね
古来より現在まで、世界を支配し続けているのは人間だぞ?
少し、考えればわかるだろう」

裏萌香「ぐっ…!」

胡夢「う~ん…そう考えれば、そうよね」

紫「ライドウさんが、ギン先輩を、ぶっ倒したのも納得ですぅ」

ギン「お前は見とらんやろぉが!」

御子神「ふふふ、わかってくれた所で、話を続けようか…
ライドウ君が呼び出した『妖』だが…
あれは『妖』ではない」

ライドウ「----」

ゴウト『どこまで知ってる?』

裏萌香「何を言ってる…!あれは、どうみても『妖』だ!」

御子神「違うよ、あれは…『悪魔』だよ」

ギン「あっ…悪魔ぁ!?」

胡夢「『悪魔』って…
私たちの御先祖様って言われてる?
あの神話にでてくる…」

裏萌香「『悪魔』だと…」

御子神「そうだ。そして『悪魔』が『妖』の御先祖様と言うのは、少し違うな…
『妖』は、『悪魔』の『眷属』だよ」

胡夢「『眷属』!?…って何?」

紫「『眷属』とは、従者や配下…まあ隷属身分って事ですぅ」

裏萌香「そんな話は聞いた事ないな」

御子神「まあ、君たちは、まだ子供だからな当然だろう。
これも、考えれば分かるだろうが、闘った九曜や石神…」

裏萌香「その二人がどうした?」

御子神「鈍いな。
まさか君たちは、本当に信じているのか?
學生と教諭。そこらの『小僧と小娘』が…
伝承に伝わる、『本物の妖狐とメデューサ』だと」

裏萌香「!!」

ギン「そう考えればそうや……。
深く考えとらんかったが、メデューサや妖狐…明らかに『妖』の枠から、はみ出とる。
こいつら神さんの類や」

御子神「理解が早くて助かる。
『妖』と『悪魔』の違いだがね。
『妖』は先程、説明した通りだが、『悪魔』はね…
その神話や伝承に現れる……『本物』なんだよ」

裏萌香「なっ…なんだと!」

胡夢「え~~~!」

紫「あわわわわ…ついてけないですぅ!」

ギン「やばい予感が…」

ライドウ「-----」

胡夢「じゃ…じゃあ、ライドウが連れてたのは…」

御子神「そう、伝承に伝わる『悪魔』だ」

裏萌香「!!」

御子神「そして、何故、彼が『悪魔』を連れているのか…
それは彼が、デビルサマナーだからだよ」

裏萌香「デビルサマナー…」

胡夢「そ、それってなんなのよ!?」

ギン「そうや。なんで『人間』のライドウが『悪魔』を連れてるんや?」


御子神『デビルサマナー…悪魔召喚師。
『悪魔』を従え 悪しき『魔』を討つ
古来より『ヤタガラス』は、そうして日本を守護してきたのだ』

ギン「話が途方もなくデカくなってきよったな…」

御子神「ふふふ。ライドウ君は『悪魔』と戦う為に、日々訓練を積み重ね。
『ヤタガラス』で更に特殊な『葛葉四天王』の一角を担う『十四代目-葛葉ライドウ』の名を継いだ男。
日々『悪魔』と戦ってきた彼に、血統だけがとりえの、未熟者な小僧と小娘が、勝てる訳が無いのだよ」


裏萌香「ちっ…!」

胡夢「やっぱり…ライドウって凄かったんだねぇ~!!」


紫「凄いですぅ!ギン先輩がボロ負けするのも当然ですぅ~!」

ギン「紫ちゃん…ええ加減にしよか」


ゴウト『こいつは一体、何者なのだ』

御子神「なに、私は敵では、ないですよ業斗童子」

ゴウト『なっ…!』

ライドウ「---!」

ゴウト「俺の声が聞こえるのか?」

御子神「ええ、聞こえますよ」

裏萌香「なんだ?」

胡夢「業斗童子って…ゴウトちゃんの事?」

ゴウト『お前はサマナーではない…
なら『悪魔』か?』

御子神「いえいえ、そこらの『妖』よりも、長い時間を過ごしたせいで…
他の『妖』より、芸が達者になっただけですよ」

ゴウト(俺の声が聞こえるのは、サマナーか『悪魔』のみ…
こいつは、かなりの実力者だな)

胡夢「ちょっと!ちょっと!さっきから誰と話してるのよ!?」

紫「怖いですぅ!」

裏萌香「まさか…その猫じゃないだろうな?」

御子神「どうだろうね?」

御子神は受け流す

ギン「ははは…萌香さん。
いくら何でも、それは…待てよ。
今までの話を考えたら、猫が喋るぐらい、有り得るんちゃうか?」

胡夢「ど、どうなの?ライドウ!?」

ライドウ「----」

ギン「ほんまかい…」

裏萌香「お、おい、ライドウ。その猫は普段、私の事を何て言ってるんだ」

胡夢「あ~!私も気になる!ゴウトちゃんは、私の事を何て言ってるの~!」

紫「私もですぅ!」

ギン「恥ずかしがらんと、言うてみ?ライドウ」

ゴウト『不味いな…おい!御子神!何とかしろ』

御子神が頷く

御子神「さて、これからが、本題だ」

場が静まった

御子神「私が、何故ライドウ君を學園に呼び寄せたかだ」

ゴウト(それだ…
ライドウを帝都から離れさせる程の理由…
この學園には何がある?)

御子神「ある組織が、この學園を狙っている」

ライドウ「---ある組織?」

御子神「ああ、その組織は、この国に危機を齎す存在であり、學園が組織の手に落ちたら…」

胡夢「落ちたら…」

御子神「この国は壊滅的な打撃を被るだろう…」

裏萌香「なんだと!」

ギン「何でや!!」

ゴウト『何故だ…
国の危機と、この學園…何の関係がある』


御子神「今は、詳しい事を話す事は出来ない
ただ、私が依頼し『ヤタガラス』が、君を派遣したのは、そういった理由からだ」

ゴウト(この學園には重大な秘密がある訳か)

御子神「學園を狙う、組織についてだが…
組織の人間が、既に學園内に潜入したという情報を得ている」

ライドウ「---!」

御子神「教員か生徒かは判明していないがね…両方の可能性もあるが」

紫「それより、『人間』!?」

御子神「情報ではな……」

胡夢「どっちでも良いわよ!それより潜入されたって、不味いんじゃないの!?」

御子神「厳重に警戒してある。当分は大丈夫さ」

ゴウト(學園内の何かを護っている訳か)

裏萌香「あんたが探して倒せば良いだろ?」

御子神「出来れば、そうしたいがね。私が動けば、警戒して尻尾を出さないだろう。
そこで、ライドウ君と…君たちの出番だ」

胡夢「わ、私たちぃ!?」

紫「む、無理ですぅ!」

御子神「おや?『人間』のライドウ君は、勇敢に立ち向かうのに…君たち『妖』は、臆病風に吹かれるのかい?」

裏萌香「ふん…面白い。その潜入した奴と組織、纏めて潰してやるよ」

ギン「そうやな、學園潰されても、かなわんしなぁ…
何より、部員を守るのが、部長の務めやしな」

胡夢「…私も戦う!ライドウだけ危険な目にあわせる訳にはいかないわ!」

紫「わ、私も、頑張るですぅ!」

御子神「ふふふ、期待しているよ。
まぁ、厳重な警戒態勢だ。
組織の連中も直ぐに、どうこうする訳ではあるまい…
慌てず慎重に調査してくれたまえ、バレたら、元も子もないからな。
そして、ライドウ君の『正体』の事も、皆で支えてやってくれ」




ゴウト『あの狸め…
この事件、かなり根深いぞ』

ライドウ「----そうだな」


ライドウの長い一日が終わった

正体バレて一段落つきました。


然し起床時間過ぎるとは

敗れた九曜は、學園を去っていった。
そして、公安の事件から、数週間後。
一学期が終わり、ライドウたちは、夏休みを迎える…
その間に、御子神からの依頼は、特に進展を、見せてはいなかった。

新聞部 部室

猫目「今日から、學園は夏休みに入りまが…
そこで、我が新聞部は、合宿を行う事になりました。
合宿場所は『人間界』です!」

萌香「人間界に合宿ですか!?」

胡夢「卒業するまでは、どんな理由であれ、學園外に出ちゃいけないんじゃないんですか?」

猫目「大丈夫です。學園長からは許可を貰っています!
因みに強制参加です!」

ゴウト『何?
そんな下らん理由で、ライドウを學園から離すとは、何を考えてる』

紫「…………」

合宿当日 バス停
ライドウたちは、人間界行きのバスを待っていた。

萌香「これから合宿だなんて…楽しみだね!ライドウ!」

「------ああ」
ライドウは、素っ気なく返事をする。

萌香「もう!本当にそう思ってる!?」

素っ気ない返事に、不満を垂らすと、ロザリオが、萌香の頭の中で、語り出した。

裏萌香『阿呆が』
萌香(裏ちゃん?)
裏萌香『こんな合宿、楽しめる訳がないだろう』

萌香(な、なんで!?)

裏萌香『…學園には潜入者が居るんだぞ。
我々が留守の間に、何か動きがあったらどうする?』

萌香(!それは…でも!學園長が)

裏萌香『当分は大丈夫と言った話か?確証はあるまい…
それに、その話を聞いてから、既に『当分』経ってると思うがな』

萌香(それは……)
萌香は言葉を失ってしまう。

裏萌香『まあ……今更、どうこう言っても仕方あるまい。
ライドウも、それは、理解しているだろう』

萌香「え?」

裏萌香『學園の事は、常に考えてるだろうが、
基本的に、ライドウは、何時もと変わらないと言うことだ』


ライドウ「---萌香、大丈夫か」

一人、落ち込む顔の萌香に、ライドウが声をかける。

萌香「うん!」


新聞部の合宿が始まった

胡夢「まだバス来ないのかな?私『東京』行きた~い!」

ギン「おっ、ええな!『東京驛』は流行の地なんやろ?
別嬪さんも、仰山居るんやろぉなぁ」

紫「………」

萌香「紫ちゃん?どうしたの」

紫「私…人間界に行きたくありません!」

胡夢「はぁ?」

紫「今朝の占いでも不吉と出ましたし……
それに、人間界は、怖い所です」

胡夢「怖いなんて…やっぱり子供ねぇ」

紫「なんですって!」

二人が言い争いを始める…
そうこうしてる内にバスが到着し、紫も乗る事になった。


運転手「ヒヒヒ…久しぶりだな…少年」

ライドウ「----あの時の--」

運転手「ヒヒ……學園生活は恐ろしかったかい?それとも…君には、物足りなかったかな」

ライドウ「----!」

ゴウト『こいつ…』

運転手「ヒヒヒ…合宿先だが、気をつけろよ~
何せ『神隠し』が発生している場所だからな」

ライドウ「----神隠し----」

運転手「ヒヒ…着いたぞ~」

目的地に到着すると…
そこは、一面に広がる、向日葵畑の見える丘だった

胡夢「な…なによぉ~!この辺鄙な場所!!」

向日葵裸の丘、緑に覆われるこの土地。
『開発』が行き届いていないのだろう。

萌香「あの…先生。合宿先は、本当に、この場所なんですか?」

猫目「んにゃ?そういえば…」

運転手「ヒヒ…先生、美味い魚屋を知ってるんですが…行きませんか?」

「!」
猫目は、部員を置いてバスで去っていた…

胡夢「せ、先生ぇぇ!」

その時
ガサガサ

「--!」
ライドウは、向日葵畑から、何かの気配を感じとった

ライドウ「--気をつけろ--向日葵畑になにかいる」

萌香「えっ!」
ライドウの言葉に場に緊張が走る

ガサガサガサガガサ

音が周囲に広がっていく

ゴウト『姿を見せんか…微妙だな 』

ゴウトは、謎の気配の主が『魔』の類か野生動物か計りかねていた…

ゴウト『仮に、鼠の群れ相手に、向日葵畑を、焼き尽くしたりなどしたら、葛葉の沽券に関わる。
正体を見極めるしかないな
一旦退くぞ』

ライドウ「----わかった」

ライドウたちは、向日葵畑から逃げ去った…

萌香「はぁ…ここまで来れば大丈夫かな?」

紫「もう嫌…」

胡夢「紫ちゃん?」

紫「もう人間界なんか嫌!わたし帰る!」

ギン「ちょ…紫ちゃん。数には驚いたが、所詮、鼠やないか?大袈裟すぎんか」

紫「あれは、鼠なんかじゃありません!」

胡夢「じゃあ、何なのよ!?」

紫「そ、それは…」

胡夢「……帰りたいからって、出鱈目いって!」

紫「違いま……」

胡夢「私は帰らないわ。帰りたいなら、紫ちゃん一人で帰りなさいよ」

紫「!………」


紫は、向日葵畑の方向へ走り去っていった。

萌香「紫ちゃん!?…胡夢ちゃん!言い過ぎよ!」

胡夢「………」


ギン「んな事は、どうでもええ!紫ちゃんの走った方向は、向日葵畑や!追うぞ」


紫(胡夢さんの馬鹿……みんなも、どうして私の気持ちわかってくれないの!)

紫が向日葵畑に到着すると…

「うおっ!なんだコイツら…」

男の叫び声が聞こえてきた

紫(何!?向日葵畑の方から…)

紫が向日葵畑に向かうと…
ダービーハットを被った背広姿の男が、植物のような化物に襲われていた。

「『魔女の丘』ってのは、とんでもないな!」

紫「えっ…『魔女の丘』?」

男と紫の目があった

「その姿…『魔女』か?」

紫(に…『人間』に姿を見られた!!)

「おい!何やってる!早く逃げろ!」

紫「えっ?」

「この化物を見て、分かんないのか!いいから逃げろ!」

紫「だっ…だって、おじさんが…」

「おじさん…って気にしてる場合じゃない……あっ!」

男は、化物の攻撃を必死に避け続けていた…

化物は、攻撃が当たらぬ男に見切りをつけ、紫に襲いかかる…

「あ…あ…!!」
紫は恐怖で目を閉じてしまう



「くそっ…!」

(あれ?どこも痛くない…)
紫は恐る恐る目を開くと…

「……大丈夫か?お嬢ちゃん」

紫「おっ……おじさん!!!」


紫の目に映ったのは、化物の攻撃から身を呈にして自分を護る……男の姿だった

紫「大丈夫ですか!!おじさんっ!」

「おじさんって……俺も齢喰ったのかねぇ…痛てて」

紫「おじさん……どうして私なんか…」

「…『人間』だからだよ」
男は優しく微笑み紫の頭を撫でる

紫「おじさん…」

「無駄話は終わりだ!今度こそ逃げな!」

紫「…………!」

「おっ、おい!?」

紫が、男と化物の間に割って入った…

紫「もう…おじさんには手を出させません!
おじさんは……私が護るですぅ!」


紫が棒を振ると、占いに使う、鉄製のタロットに翼が生え、宙を舞った。

「これは…」

無数のタロットが隼の如く舞い、敵を一瞬で切り刻んだ

紫「はぁはぁ…やった…ですぅ」

紫は意識を失った

「おい!お嬢ちゃん!しっかりしろ!」

ライドウたちが向日葵畑に着いた時には決着が付いていた


胡夢「なっ…なにコイツ!?」

ゴウト『気配の主はこいつか…『妖』の類だとは分かったが、正体が、今一つ、わからん』
摩訶不思議な生物に首を捻る

萌香「紫ちゃん!大丈夫」

紫「うっ…おじさん!?おじさんは?」

「ああ、無事だよ。お嬢ちゃんのお陰でな」

紫「うぅ…良かったですぅ~!」

萌香「あの…紫ちゃんが御世話になりました」

「いえいえ、それより君たち學生さん?近場に學校なんてないけど」

胡夢「合宿できたんですけど…」

「合宿?」

これまでの経緯を説明した

「はぁ…酷い先生もいるもんだね」

萌香「ははは」

「この近辺に宿って言ったら一つだけだからな……
よし!俺が車で送ってやるよ」

萌香「え!?良いんですか!」

胡夢「すご~い!車持ってるの~!」

「お嬢ちゃんに助けて貰ったしな…っと、俺とした事が名乗り忘れてたな…はい」

男はライドウたちに名刺を差し出した

「俺は東京で、探偵社を営んでいる……」



鳴海「鳴海だ」




ライドウ「----鳴海--」

ライドウと鳴海は知り合いのセオリーでは無いのか?
説明のプロセスを希望する

鳴海って悪魔とかは一切見れなかったと思うけど妖の類は見れるの?

鳴海「ここが宿だな」

萌香「有難う御座います!」

ギン「ほんま助かりました」

胡夢「鳴海さんは、この後どうするんですか?」

鳴海「とりあえず、病院かな」

紫「あっ…!」
病院の言葉を聞き、申し訳なさそうな顔をする…

鳴海「まっ……大した傷じゃないけど、病院に行けば、綺麗な看護婦さんと会えるしね」

ギン「なる程、偶には、わざと、怪我すんのもええかもな…」

鳴海「ははは」

萌香「もう、二人とも!」

鳴海「ま、そう言う訳だから、紫ちゃんが気にする事はないんだぞ」

紫「鳴海さん…」

鳴海「じゃあ、合宿頑張れよ!縁があったら、またな」

鳴海は、自慢の愛車に乗り、颯爽と去っていった

ギン「鳴海さん、おもろい人やったなぁ」

胡夢「それより私、探偵に驚いちゃった!まるで江戸川乱歩よね!」

萌香「鳴海さん、とても良い人だったわね」
裏萌香『少しは疑うという事を覚えないのか』

ロザリオを通じ、裏萌香が語りかける

萌香(怪しいって…鳴海さんの事?)
裏萌香『そうだ…宿に来る間、車内で、鳴海は『魔女の丘』には、神隠しの調査で来たと言っていたが…』

萌香(それがどうしたの?鳴海さんは探偵だから変じゃないよ)
裏萌香『行方不明事件の為に、わざわざ東京からくるか?
不自然な点はそれ以外にもある。
身に纏う装飾品や車、探偵業を営んでいるだけの人間には不釣り合いだ』


萌香(う……)

葛葉ライドウVS死人驛使の時は鳴海と知り合ってないんだっけ。
このときって帝都守護の任務にも就いてなかったような

>>138
時系列
襲名

何度か仕事をこなす↓
入学

大事件

半年のカテゴリーに鳴海探偵社就職

進級


こんな感じっす。

>>139
ロザバン妖怪は人間でも直視可能

>>142
死人の時には知り合ってるし、帝都守護にも就いてるお

時を同じく
ゴウトも裏萌香と同様に鳴海を疑っていた

ゴウト『あの鳴海という男…
とんだ食わせ者かもしれんぞ』

ライドウ「----」

ゴウト『あの妖擬きに襲われ、尚且つ紫の力を、その目にしながら、その件を全く追求してこない。
探偵が…だぞ?』

ライドウ「----」

ゴウト『奴は『妖』などの存在を、初めから知っていたんだろう。
神隠しの調査などと言っていたが、実際は、何を調べに来たのか…』

ライドウ「----どちらにせよ--」

ゴウト「うん?」

ライドウ「---紫を救って貰ったのは事実だ」

ゴウト『……そうだな、焦臭いのは、お互い様だな。
『恩人』の詮索は、これぐらいにしておくか』

ライドウ「---ああ」

ライドウたちの合宿一日目が終わった


「お館様…私たちの向日葵畑を荒らした連中が、宿に入って行きました」

「何故、殺さなかった?」

「彼らの中に『魔女』の少女が居たのです」

「何!まさか、私たちの同朋に巡り会えるとは…」

「どうしますか?」

「必ず、連れ出せ!
私たち『魔女』の仲間をな…
頼んだぞ、瑠妃」

瑠妃「お任せください。お館様」

合宿二日目

ライドウたちは、向日葵畑の怪物と、神隠しについての関連性を疑い、『魔女の丘』と神隠し事件についての調査を行っていた。


午後 宿

新聞部員が、各自調査を終え、宿へと戻る。

調査の結果

胡夢「私と紫ちゃんで調べた『魔女の丘』なんだけど…
名前の通りだったわね。
この丘には昔、魔女の『集落』があったみたい」

萌香「えっ!集落?」

紫「はい、小規模ですが、魔女の集落が存在したそうです。」

萌香「そうなんだ」

胡夢「集まった魔女は、薬や魔法を使って、土地の人々を助けて仲良く共存していたんだけど…」

ギン「けど…なんや?」

紫「魔女たちが…突如、集落ごと消えてしまったんです……
明治10年辺りだそうです」

ライドウ「---!」

ゴウト『ライドウ…』

萌香「えっ!?突然消えちゃったの?」

ギン「驚くのは、そこやない!明治やって!?昔いうても、最近やないか!
ちゅう事は、この土地は『比較的最近まで魔女と共存』してたっちゅうんか!?」

紫「はい…」

ギン「なら、何か知っとる人間がいるんやないか?
今の爺さん婆さんなら知っとるやろ?」
ライドウ「---先輩--ここからは--俺が話します」

ライドウは、萌香と共に調査をした『神隠し』の件について語り、『神隠し』にあった人間の共通点を挙げた。

ギン「被害者が、この土地の生まれの八十歳近くの爺婆やって!?…なんやそれ?」

ライドウ「---紫たちは--当時の状況を知る人間を---探したが---見つけられなかったんじゃないのか」

紫「!」

胡夢「そう!なんでわかったの!?」

ギン「なる程な…なんとなく、読めてきたで」

その時…

窓から大量の鴉が部屋へ押し寄せてきた。

胡夢「きゃー!何よ!これぇ!痛たたた!ちょっと~」

萌香「痛い!痛い!やめて~」
裏萌香『落ち着け!』

ギン「ちょいまち!少ないんや!髪だけは…」

紫「!」


ライドウ「----!」

鴉は飛び去っていった

胡夢「痛たた…みんな…大丈夫?」

萌香「う、うん…あれ…?
紫ちゃんが……居ない?
それに……」




街唯一のビルディング屋上

紫「私を攫って!あなた…誰ですか!?」

瑠妃「うふふ…私の名前は瑠妃。あなたの仲間の『魔女』よ」

紫「『魔女』!?」

瑠妃「そうよ。
でもね…
それよりも……あなた誰よ!!!」



ライドウ「---葛葉ライドウ--」

紫を捕らえた鴉が飛び立つ瞬間。ライドウは、紫の脚を掴んでいた。
ライドウが、紫の真横に立っていた事が、幸いした。


ゴウト『ここは狭い部屋じゃないからな、遠慮なくやってしまえ。…だが、やりすぎるなよ?
神隠しの件を、話して貰わないとならんからな』

ライドウ「---ああ---わかってる」

瑠妃「なにを、ぶつぶつと人間風ぜ…!」

ライドウは鞘を使って、瑠妃の顎先を掠める、強烈な一振りを放っていた。

瑠妃は、意識を失い、その場に倒れ込んだ。

紫「る、瑠妃さん」

ゴウト『よし、後は宿に連れて尋問だ』

ライドウ「----そうだな」


二人は瑠妃を捕らえ宿へと戻る

萌香「ライドウ!紫ちゃん!大丈夫!?…その人、誰?」

ライドウは、経緯を説明した。

胡夢「う~ん…この人は『魔女』で名前は、瑠妃さん。それと紫ちゃんの仲間って言ったのね?
で、わかってるのは、それだけ?」

紫「は、はいぃ~。ライドウさんが、あっさり倒しちゃったもので…」

ギン「ライドウ…お前!何やっとんや!
もうちょい、喋らせてから締めんかい!」

萌香「それは、ちょっと違うんじゃ…」
裏萌香『無茶苦茶だな』

瑠妃「うっ……お前たちは…人間!?」

紫「瑠妃さんが目を覚ましたですぅ」

瑠妃「お前は!…おのれ!人間めっ!よくも私を…!」

ライドウ「----」

ライドウ「---起きたか--話して貰うぞ、神隠しの真相」

瑠妃「………」

瑠妃が語った

この土地の魔女と人間は、長く共存関係にあった。
魔女たちが、大掛かりな術を使わなかった為に、土地の人間たちは『魔女』という存在を、頭の良い『人間』との認識を持っていたからである。

明治が始まり、様々な物が、この土地に入ってきた。『魔女』に関する詳細な情報も…

魔女は人間に、害をもたらす存在…
異国より伝来した情報だったが、土地の大人は誰も信じなかった。

然し、土地の若者は鵜呑みにしてしまった…
彼らは徒党を組み、ある晩、夜の闇に紛れ、魔女たちを襲った

長く平和に過ごし、力の衰えてる魔女たちでは、抗う事も出来ず。
小さな集落は一夜にして亡ぼされた

ライドウ「---その『若者』が神隠しの被害者か---」

瑠妃「ええ……そうよ」

ゴウト『……素直に喋る娘だな』

紫「でも!瑠妃さんには、直接関係は…」

瑠妃「生き延びた魔女がいたのよ……お館様。私の師よ」

胡夢「お館様?」

瑠妃「神隠しは切欠に過ぎない…お館様は、この国の全ての人間に復讐なさるのよ!」

ライドウ「----!」
ギン「なんやて!?」
瑠妃「お館様はっ……痛!」

萌香「る、瑠妃さん!?体に障るから、あまり大声ださないで…」

瑠妃「五月蝿い!人間が私の名前を呼ぶな!」

ギン「悪いけど、俺ら『人間』ちゃうで?」

瑠妃「え?」

萌香「あ、私『妖』です」

胡夢「私も『妖』よ」

胡夢「私は『魔女』ですぅ」

ギン「んで、俺も『妖』や」

瑠妃「そんな…!?」

ギン「でも、こいつは『人間』や」
ライドウを指差す

瑠妃「!!!」

ライドウ「----」

瑠妃「そんな…!?」

ライドウ「--その事は、今はいい---それより、『この国の全ての人間に復讐する』--と言ったな」

胡夢「そ、そう!とんでもない事を言ってたけど…なんなのよ!?」

瑠妃「………」

ライドウ「----向日葵畑の怪物が、関係しているんじゃないのか」


瑠妃「!!」

萌香「えっ!そうなの!?」

瑠妃「ええ、あの怪物は、お館様がお造りになった人工妖魔…
向日葵畑の下に、隠されているわ、数え切れない程のね」

ギン「なんやと」

ゴウト『人工……』

瑠妃「お館様は…丘に眠る、妖魔の大軍を使って、人間たちに復讐するのよ」

瑠妃「そして、もうじき準備が終わる。
週明けにでも、侵攻が開始されるでしょうね……もう止められないわ」

ライドウたちが、立ち上がり、部屋を出ようとする…

瑠妃「あなたたち…どこに行くつもりなの!?」

ライドウ「--魔女の丘----向日葵畑だ」

瑠妃「な!なに言ってるのよ!止められないって言ったでしょ!?」

萌香「関係ありません!こんな事…黙って、見てられません」

胡夢「そうよ!それに、やってみないとわかんないでしょう!」

ギン「ああ、急ぐで」

ライドウ、萌香、胡夢、ギンは急ぎ部屋を出た。

紫「待って下さぁい」

瑠妃「紫ちゃん…」

紫「はい?」

瑠妃「紫ちゃんや、あの人たちは……『人間』の為に、どうして危険を晒す事が出来るの?」

紫「それは……みんな、信じてるからです。『妖』と『人』が分かり合えると!」

瑠妃「!」
紫は笑って、みなの後を追った

瑠妃(………)

幼い頃の回想

幼少の瑠妃「私ね、いつか『魔女』と『人間』が、分かり合える世界が来ると思う」

瑠妃の父「そうだな」

瑠妃の母「そうなると、良いわね」

幼少の瑠妃「うん!」

人間の通り魔「…」

瑠妃の父「危ない!瑠妃!」

幼少の瑠妃「お父さん……お母さん!!」

瑠妃(お父さん、お母さん)

魔女の丘 向日葵畑

ゴウト『ライドウ…毎度面倒だ、先に、萌香のロザリオを外しておけ』

ライドウ「--わかった---萌香」

萌香「なに?ライドウ」
ライドウは、ロザリオを外した

裏萌香「いきなり外すとは、どういうつもりだ」

ライドウ「---何が起こるか分からないからな」

目の前にローブを纏った女が現れた

胡夢「あんたが『お館様』?」

「そうだ…お前ら、瑠妃を捕らえた人間たちだな。
情けない!人間風情に、やられるとは!」

裏萌香「お前もやられるんだよ。下らん企み、潰させてもらうぞ!」

「小娘が粋がりおって…魔女の恐ろしさ……見せてやる!」

お館様が、手に持つ本に手をかざすと…地中から、大量の人工妖魔が、姿を現した。

「こいつは、私が造った、植物の妖魔ハナバケ。土地の人間共を殺す前に…貴様らから殺してやろう!」

「ジャックランタン!」
ライドウは『管』からジャックランタンを呼び出した。

「『悪魔』だと!?貴様…デビルサマナーか!」
お館様は、ライドウの存在を知っていた。

胡夢「な、なんで知ってんの?」

「伊達に長く生きておらん……だが、如何に『悪魔』とて、今の私には勝てん」

ジャックランタン「※ヒ~ホ~!!」舐めんな!

「ふふふ、いけ!ハナバケ」

ハナバケの大群との戦いが始まった。

「あの娘たちは、人間ではなく『妖』だったか…」

いくらハナバケが大群とはいえ、相手が、ライドウに大妖二人と『悪魔』。ハナバケは徐々に数を減らしていった…

ジャックランタンが、炎で道を開いた。

「--先輩」
ライドウが合図をすると同時にギンが俊足を生かし、開いた道を抜け、お館様の下へ詰め寄っていた…。

ギン「終わりや!」

ギンの連打がお館様に直撃した。

胡夢「やるじゃん!ギン先輩」

ギン「ちょいと本気だせば、こんなもんや」

軽口を叩いていると

「小僧の分際で、やるじゃないか…」

お館様が立ち上がる

ギン「なんやと!あれ食らって無事な訳…」

ゴウト『確かにそうだ…あいつ妙だぞ
気をつけろ、ライドウ』

「このままじゃあ、厳しいな…予定が早まったが、奥の手を使うか」

お館様が、先程と同様に、本に手をかざすと…生死を問わず、全てのハナバケがお館様の体に集まり、弐百尺(約60メートル)程の巨大な怪物と化した

胡夢「な…な…なにあれぇ!紫ちゃん!魔女って、あんな事出来るの?」

紫「し、知りません!あんな事!普通出来ません!」

二人が、慌てる最中、一つの影が現れる

「あれは、妖魔合体…」

胡夢「る、瑠妃さん!?」

瑠妃「他の生物と合体し一つの生命となる術……そして、二度と、元の体に戻れない」

「瑠妃!貴様…裏切ったのか」

瑠妃「もう止めましょう!お館様!昔のように、静かに暮らし…」

「五月蝿い!この裏切り者め!貴様も殺してやる!」

裏萌香「五月蝿いのは、お前だ。デカくなった位で、調子に乗るなよ」

裏萌香が、巨大な化物と化した、お館様へと駆ける。

ゴウト『いかん!』

無数の巨大な触手が裏萌香を襲う。全てを避けきれず、その内の一本に命中してしまう。

裏萌香「ぐふっ!」
全身を強く打ちつけられた。一撃で吐血する程の威力だった。

ギンが瞬時に動いた。
裏萌香を連れ後方へ避難する。

ライドウは、ジャックランタンに、触手を焼き払うように命じた。

一本、二本と焼き払っていくが…

「『悪魔』め…舐めるなよ」

一本の触手がジャックランタンの頭上に振り下ろされた…


ジャックランタン「ヒ~…ホ~」
戦闘不能に追いやられた

ライドウは、急ぎ『管』に戻した。

「ふふふ…今の私は『悪魔』にも劣らぬ!流石は『魄霊』を集めた体だ!」

ゴウト『魄霊だと!?』

「そうだ…私は、この地に集まる魄霊を、ハナバケに変えたのだ!」

ゴウト「俺の声が聞こえてる!やはり…こいつ!」

「---関係ない」

ライドウは、刀を抜き、猛進した。

ゴウト『待て!ライドウ』

ライドウは、迫る触手を、刀で切り刻んでいく…

「ぐっ…その刀は…」

ライドウの『霧螺魔叉』は魄霊だろうと問題なく切り落とせる

ライドウは触手に乗り、お館様の頭上へと駆け上がっていく……

「----終わりだ」
ライドウの渾身の力を込め、刀を振り下ろした。
お館様の巨体が唐竹割りとなる……

「ぎゃあああ」

ギン「嘘やろ?」

胡夢「やふ~!!流石!ライドウ!」

勝負は決した…
誰もが、そう思った……

巨大な触手が、油断したライドウを襲った

ライドウ「----ッ!」

「はあ…はあ……忌々しい小僧め、死ぬかと思ったぞ」

ライドウは、触手ごと地面へ押し潰されてしまった

胡夢「ラ…ライドウー!!」

ゴウト『油断しおって』

胡夢「あのライドウが……!」

ギン「紫ちゃん!萌香ちゃんを頼んだで!」

紫「は、はい!」

即座に胡夢とギンが動いた。
胡夢はライドウを抱えて飛翔。ギンは、俊足を生かし囮となった。

ギン(あかん…満月やなくても、せめて月が出てたらなら)
曇り空。月が隠れ、ギンの力は、半分にも満たなかった。
ギンは徐々に、追い詰められていった。

胡夢「ギン先輩が…どうしよ~」

胡夢は、ライドウを抱え上空から、ギンの様子を見守っていた…

その隙を、お館様は見逃さなかった…

数本の槍のような触手が、胡夢に目掛けて飛ばされる。

胡夢「……!!」


瑠妃「うっ…お館様…もう…止めて」

瑠妃が、変化の術を使い羽をはやし飛翔。上空の胡夢とライドウを、身を呈し庇っていた。

瑠妃「『魔具』が壊れちゃった……これが…なきゃ…魔女は術が使えない…のに」

瑠妃の変化が解け、地上に落下していく…

然し、ギンが直前で受けとめていた。

ギン「はあ…」

「なぜだ……瑠妃……なぜなんだ」

お館様の動きが止まっていた。

ライドウ「---胡夢---俺を、奴の正面に運んでくれ」

胡夢「ライドウ!気付いたの!?良かった~!」

ライドウ「--お願いだ--早く!」

胡夢「う…うん!わかった!」

胡夢は、ライドウが打開策を思い付いた事を察し、お館様の正面へと急いだ

「死にかけのデビルサマナーか……何しに来た」

ライドウ「----お前を倒しにだ」

「ははは!満身創痍の貴様に何ができる」

ライドウ「--方法なら、瑠妃--さんが--教えてくれたからな」

「なに!?」

ライドウ「--だから---終わりだ」



ライドウは懐から拳銃を出し『暴威弾』を放った……
弾は、お館様の『魔具』である、『本』を砕いた。

「る…び……すまなかった」


『魔具』を失い、妖魔合体の術が解け、巨大なお館様の体が、激しい閃光と共に崩れ去っていった……

胡夢「お館様、最後に、瑠妃さんに謝ってたけどさ…どういう意味なんだろうね…」

ライドウ「----さあ」

瑠妃「………」

紫「瑠妃さん、…どうしましょう」

運転手「ヒヒヒ…それなら、心配いらないよ」

ギン「うぉ!いつの間に居ったんや…ってバスまで!」

猫目「大変だったみたいねぇ」

裏萌香「本当に、こいつ教師なのか?」

運転手「その娘は、學園で預かろう。人間界に一人残す訳には、いかんだろう?」

ギン「そうやな、それが一番かもな」

猫目「話も纏まった所で、無事合宿終了!學園に帰る準備をしましょう」

胡夢「ええ~もう!?私まだ観光してない

猫目「まあ、合宿は学校行事で遊びじゃないですから…」

胡夢「あんたが言うなー」





ゴウト『『魄霊』を集めたのは『魔女の丘』……
鳴海が調査していたのは、この事だろう。
問題は、誰が『ヤタガラスに伝わる魄霊を操る術』を教えたかだ……
直ぐに帝都には帰れんかもな』

ライドウ「----」


ライドウたちの長い合宿は終わりを告げた

瑠妃終わった……
超スローですんません

夏が終わり、ライドウは新学期を迎えた

教室

猫目「今日から、二学期です。文化祭などに備え、各委員を決めたいと思います。先ずは、学級委員長。
誰か立候補者は居ませんか?」

「はい」
一人の生徒が手を挙げる。

「学級委員長は、葛葉ライドウ君が良いと思います」

ライドウ「!」

猫目(あれは、一学期不登校だった白雪さん…)

猫目「…推薦もあったので、ライドウ君に決定します!」




萌香「学級委員長就任おめでとう。ライドウ」

ライドウ「----」

ゴウト『こんな雑務をやらされるとはな』

ライドウ「---あの女は誰だ」

萌香「ライドウを推薦した娘?私も、よく知らないんだ…
一学期は、殆ど学校に来てなかったんじゃないかな」

「学級委員長……おめでとう……ライドウ」

「----お前は」
ライドウの前に、自分を推薦した少女が現れる。

「わ…私は、白雪みぞれ。お前の新聞の…愛読者だ」

ライドウ「---愛読者」

みぞれ「そ、そうだ。私は…人付き合いが苦手で……学校に……行かなかった」

ライドウ「---」

みぞれ「そんな中……猫目先生が届けてくれる……学校新聞だけが、楽しみだった……
そして…私は、特に……お前の連載記事が好きなんだ」

萌香「ライドウの?」

みぞれ「ああ…『人間』と『妖』の共存について……いいね……優しい記事だ」

ライドウ「--そうか----だが---それと、俺を推薦した事になんの関係がある」

みぞれ「お前に……喜んでもらいたくてね」

ライドウ「----迷惑だ」

みぞれ「そ、そうだったのか………それは…すまなかったな」

ライドウ「--それで---なんの用だ」

みぞれ「あ…ああ…そうだった……ライドウ……お前と…話がしたくてな……二人きりで」

ライドウ「----部活がある」

みぞれ「手間は……とらせない」

ライドウ「---わかった」

みぞれ「本当か!」

萌香「ライドウ!?」

「---直ぐ終わる」
ライドウは、萌香に告げると、みぞれと共に、場を後にする。

校外 湖のほとり

「私の手帳を見てくれ……」
みぞれは、ライドウに手帳を渡した。ライドウが、手帳の中身を見ると、一面に…ライドウの執筆記事が糊付けされ、不気味な感想文が散りばめられていた。

ライドウ「-----」

ゴウト『この娘、大丈夫か?』

みぞれ「私の思いは伝わっただろう?……私は……お前が好きなんだ」

ゴウト『なんだと』

「---帰らせてもらう」
ライドウが、その場を後にしようとすると……湖、地面が凍りついていった。

ライドウ「----!」

ゴウト『こいつ『雪女』か』

みぞれ「行かないでくれ……私と一緒にいてくれよ」

ライドウ「---断る」

みぞれ「なら、仕方ない……お前を凍り漬けにするしかないな…そうすれば、お前は永遠に私のモノだ」

ゴウト『はあ、この學園…まともな奴は居ないのか』

勝負は一瞬で決まった。
ライドウの刀が、みぞれの脇腹を打ち抜く……みぞれは、ライドウの速さに、全く反応出来なかった。
みぞれの意識が遠退く…

ライドウ「---帰らせてもらう」

ライドウ戦後

みぞれ「ひっく…うぅ…ライドウ」

「ん?誰だ?」「泣いているな」

蹴球部員二人が、部活終わりの帰り道に、みぞれを見つける

「よく見たら、可愛いな」「君、なに泣いているの?」

みぞれ「うるさい……」

「え?」「ちょっ…」
話しかけた蹴球部員たちは、凍り漬けにされてしまった……
一夜明け

萌香「た、大変だったね…ライドウ」

ライドウ「---ああ」

萌香「ちょっと変わってる娘だと思ったけど、ライドウを凍り漬けにしようとするなんて……」

二人は、昨日の件を話しながら、學園に向かっていた

職員室

萌香「白雪さんが學園に来ていない?」

猫目「そうなのよ。昨日は普通に登校して来てくれたのに~…昨日なにかあったのかしら?」

ライドウ「----」

猫目「そこでね、ライドウ君に。白雪さんの部屋に行って、白雪さんを連れて来て欲しいの」

萌香「えっ、なんでライドウが?」

猫目「仕事よ!ライドウ君は、学級委員長だからね!頼んだわよ」

萌香「そんな……」

「猫目先生。その白雪の事で、少々お話があります。」

猫目「…小壺先生」

体育教師 小壺奥人

小壺「昨日、ウチの蹴球部員二人が、白雪に暴行を受けたんですがね…」

猫目「な…!」

小壺「半殺しの状態にしてから凍り漬け……俺が発見するのが、後少しでも遅かったら、危なかったんですよ」

猫目「本当に、白雪さんが…」

小壺「現場には、奴の手帳も落ちていた…言い逃れは出来ないでしょう。
奴が問題を起こしたのは、これで『二度目』です。退学させるしか、ありませんね」

ライドウ「-----」

胡夢「あのライドウに絡んだって女が、蹴球部の男子を半殺しにした!?」

萌香「うん…そうみたい。理由は分からないんだけど」

紫「理由はズバリ!失恋ですぅ」

ライドウ「-----」

胡夢「ちょ、ちょっと!ライドウは気にしないで良いのよ!自業自得なんだから」

紫「そ、そうですぅ」

ライドウたちが、みぞれについて、話していると…

小壺「そうだな…君が気に病む必要は無い」

ライドウ「---小壺---先生」

小壺「白雪は入学早々に停学を受ける、同情する余地の無い問題児だ」

胡夢「停学!?何かやったんですか?」

小壺「あいつはね、ある教師に恋をした。だが当然、その恋は報われなかった…
失恋した白雪は、教師を逆恨みし…その教師を、凍り漬けにしてしまったのさ」

萌香「えっ!?」


小壺「ライドウ君…手帳を見たよ。君も白雪に絡まれたんだな…
迷惑な奴だろ?俺には、君の気持ちが良くわかる」

ライドウ「--小壺先生--まさか」

小壺「そう…その教師は、俺だよ。……心配するな、ライドウ君。
俺が必ず、白雪を學園から追放してやるからな」

ライドウ「-----」

學生寮 みぞれの部屋の前

ゴウト『おい、ライドウ…直に退学処分の娘だろ?無視しても良かったんじゃないのか』

ライドウ「----仕事だからな」

ゴウト『そうか』

ライドウは、みぞれの部屋の扉を叩いた

ライドウ「---居るんだろ----葛葉だ」

名を名乗った瞬間、扉が、凍り付き、砕け散る…部屋の中から、みぞれが出てきた。

ライドウ「----元気そうだな」

みぞれ「……」

ライドウ「---お前---退学になるかも知れないぞ」

みぞれ「なっ!なんで!?」

ライドウ「---昨日、蹴球部員二人が襲われたそうだ---半殺しにされた後---凍り漬けの状態で見つかったらしい」

みぞれ「何それ?私じゃない!?確かに、苛々してて、凍り漬けにはしたけど……直ぐ我に返って、元に戻したもん」

ライドウ「----」

みぞれ「はは……なんだ……私がやったと思ってたんだ……酷いよ……お前だけは、信じてくれると思ってたのに」

ゴウト『昨日、ライドウを凍り漬けにしようとした女が何を言ってる』

みぞれの体がひび割れ、砕け散った。

ライドウ「---氷人形」

ゴウト『本体は別の所か………
そういえば、猫目が、部屋に居ない場合は、崖で海を眺めてるとか言ってたな。
行くか?ライドウ』

ライドウ「---ああ」

海の見える崖

みぞれ「………」

「相変わらず…
お前は落ち込むと、ここに来るんだな…白雪」

みぞれ「う…小壺先生」

小壺「おっと、足元に気をつけろよ。『不登校の女子生徒が誤って、崖から落ちても』誰も不思議に思わないからな」

みぞれ「まさか……先生…いや!放して!放してー!」

小壺「おっ…おぉぉぉぉ」

みぞれ「せっ…先生!?」

みぞれが誤って小壺を崖から落としてしまう…

小壺「危ないな、俺じゃなきゃ死んでいたぞ?」
崖の上から這い上がってきた小壺の背中には、八本の巨大な蛸足が生えていた

みぞれ「!」

小壺「これで二度目だな……お前は一学期でも、俺を凍り漬けにして、殺そうとしたよな?」

みぞれ「ち、違う!あれは、小壺先生が私に、いやらしい事をしようとしたから、身を守る為に仕方なく…!」

小壺「純潔ぶりやがって…お前、俺の事を好きって言ったよな?それなら、文句言うんじゃねぇよ」

みぞれ「うう……」
「お前みたいな危険な奴はな!永久に不登校のままで良かったんだよ!
妙な噂を垂れ流されても困るからな…ここで海の藻屑になってもらうぞ」

みぞれ(馬鹿だな…私は…こんな人ってわかってたら、好きにならなかった……誰も信用できない。私は……独りだ)

小壺の蛸足が、みぞれに振り下ろされた………

小壺「ぎゃあああああ」

振り下ろされ足が、体を離れて、宙を舞っていた……

小壺「お前はっ……!?」

みぞれ「ら…ライドウ!」

ライドウ「----」

ゴウト『クラーケンか…不味そうだな』

みぞれ「ライドウ…どうして」

ライドウ「---やってないと----言ってたからな」

みぞれ「ライドウぅ…」

小壺「ちっ、見られたからには仕方ねぇ…纏めて潰してやるよ!」

残った蛸足をライドウに差し向ける…が

小壺「ぎゃああああああああああ!」

ライドウは、全ての足を切り落とす。
間髪入れず、小壺の顔に強烈な峰打ちを叩き込み、勝負は決した。

ライドウ「---學園に--帰るぞ」

みぞれ「うん……」


後日 小壺は長期入院を余儀無くされる。事件の内容が明らかとなり、みぞれの処分は取り消された。

通学途中

萌香「白雪さん処分取り消されたんだってね」

ライドウ「---ああ」

校門の前にたどり着いた時に、みぞれが、ライドウの前に現れる

みぞれ「お…おはよう」

萌香「白雪さん!?…髪切ったの?」

みぞれ「あ、ああ…似合ってるかな?」

萌香「似合ってよ!ねっ!ライドウ?」

ライドウ「----ああ」

みぞれ「そ…そうか……!」

ライドウ「---もう、大丈夫なのか--白雪」

みぞれ「みぞれだ……」

萌香「え…?」

みぞれ「ライドウ……私の事は…みぞれ…って……呼んでくれよ」

ライドウ「---みぞれ」

みぞれ「うふふ…うふふ」

みぞれは立ち去っていった

萌香「あっ…行っちゃった」

ゴウト『不気味な奴だな』



胡夢「ちょっと!みぞれって女、ライドウの後ずっと付けてきてるわよ!」

紫「こ、怖いですぅ!」

ゴウト『退治した方が良いんじゃないか…』

ライドウ「----」

萌香「悪い子じゃ……ないのかなぁ?」



ライドウの尽力で、みぞれの事件は無事終わりを迎えた。

みぞれ終わりで一区切りつきましたです。

學園長室

ライドウ「---學園祭---実行委員会?」

御子神「そうだ。ライドウ君には、その委員会に入ってもらう」

ゴウト『なぜだ?』
御子神「例の潜入者ですがね……目星が付いたんですよ」

ライドウ「----!」

御子神「ただ、確固たる証拠がない…そこで、ライドウ君の出番と言う訳だ」

ゴウト『成る程な。潜入者は生徒だった訳か……そして、その委員会に居る…』

御子神「ええ……そして、その生徒の名は…………」


學園祭実行委員会本部

「君が、一年三組の級長の葛葉ライドウ君だね?先生達から、聞いてるよ。ウチの委員会に入ってくれるんだってね?」

ライドウ「----はい」

ゴウト『この男が…』

「僕は、この実行委員会の会長を務める、三年の金城北都だ」

北都「宜しく!君を歓迎するよ」

ライドウ「---有難うございます」

ゴウト「潜入者……」

新聞部

胡夢「學園祭実行委員会!? なんでライドウが!?」

萌香「學園長直々の仕事で……委員会に、例の潜入者が潜んでいるみたいで」

みぞれ「何だ?それは…ライドウは、危険な仕事をさせられているのか?」

胡夢「みぞれ…ちゃん!? なんで、新聞部に!?」

みぞれ「ライドウと一緒に居たいからな…入部したんだ。当然だろ」

胡夢「どうでもいいわよ!そんな変態! 今はライドウでしょ!私は納得しないわよ…理事長に抗議してやるんだから!」

萌香「胡夢ちゃん!?」

胡夢が勢いよく部室の扉を開けると…

「無駄よ…残念だけど、理事長は學園に居ないわ」

胡夢「あ、あなた……」

瑠妃「お久しぶり。魔女の丘でお世話になった時、以来ね」

萌香「瑠妃さん!?」

胡夢「あなたが…どうして此処に?」

瑠妃「色々あってね…私は今、理事長の下で働いているのよ」

紫「瑠妃さぁ~ん!良かったですぅ!!」


瑠妃「有難う。紫ちゃん……それより 、ライドウさんが危ないわ」

萌香「どういう事ですか!」

瑠妃「潜入者に、こちらの事が、バレてる可能性が高いの」

萌香「えっ!? じゃあ、理事長は何でライドウを……」

瑠妃「理事長は……ライドウさんを餌にする気よ」

胡夢「な、何よそれ…!」

瑠妃「潜入者の目星は付いたわ。 けど、確固たる証拠がない……。理事長は、ライドウさんを使って、潜入者を誘い出すつもりなんだと思う。
ライドウさんも、それは承知していると思うけど…」

萌香「そんな!ライドウが承知してるからって……私、助けにいってくる!」

紫「え~!?一応、ライドウさんは潜入捜査中ですよぉ?バレたか確証も無いのに…」

胡夢「私もライドウを助けに行くわよ!
例の組織って學園破壊を企ててる奴らじゃない! バレてたらどうすんのよ!
いくら、ライドウが強くても、一人になんか出来ない!」

紫「胡夢さんまでぇ……」

みぞれ「私も行くぞ…」

瑠妃「私に出来るのは、ここまでよ。既に命令違反なんだから」

胡夢「十分よ!」

みぞれ「いくぞ…」

萌香たちはライドウの下へ向かった


紫「………待って下さ~い!私も行きますぅ」

(無事でいてね…ライドウ)
萌香たちは、ライドウの居る學園祭実行委員会本部へと向かっていた…

そんな萌香たちの前に、一人の男が立ちふさがる。

「残念だけど…君たちを、この先に行かせる訳にはいかないんだ」

萌香「!」

胡夢「あ、あんた誰よ!?」

「僕? 僕は、吉井霧亜。君たちが探してる潜入者さ」

萌香「あなたが!?」

霧亜「ふふ… そうだよ」

みぞれ「しかし、馬鹿な奴だ…」

霧亜「ん?誰がだい?」

胡夢「あんたがよ!私たちの前に、一人で現れて… とっつかまえてやるから、覚悟しなさい!」

霧亜「あははははは」

みぞれ「なに笑ってる…」

霧亜「いやいや…僕を捕まえるって?君たちには無理だよ。だって……弱いんだから」

萌香「!」

ライドウは、北都と共に、実行委員会の部屋へと向かった…
そこで、ライドウが見たものは…

ライドウ「----!」

部屋中が荒れ果て、実行委員と思われる数名の『妖』が、虫の息で倒れていた

北都「どうした?ライドウ君?何を驚いている」

ライドウ「----」

ゴウト『やはり黒か』

北都「そう…この俺こそ、御子神が君に捕まえるよう命じた、潜入……」

ライドウは、北都が喋り終わる前に、刀の峰打ちを顔面に叩き込んでいた。

北都「…!!」

ゴウト『御子神の所へ連れていくぞ』

ライドウ「---ああ」

學園校外 墓場

萌香「うっ……ここは?みんな!?起きて」

みぞれ「うう…」

紫「痛たた…」

胡夢「萌香…?……あたし!?霧亜は!?」

霧亜「ここだよ。どうやら、みんな目覚めたようだね」

霧亜は、墓石に座り小説を読んでいた

胡夢「あ、あんた!」

霧亜「気絶した君らを、ここまで運ぶのは、大変だったよ」

みぞれ「なっ!」

霧亜は、四人の意識を奪った後、始末をせずに、この墓場まで運んだのであった。

胡夢「何で…どうして…私たち……」

霧亜「僕が、どうして君たちを生かしたのか…かな?」

胡夢「!」

霧亜「必要だったからだよ。北都…もう一人の潜入者の為にね」

萌香「え!潜入者って、あなただけじゃ!?」

霧亜「ん?知ってるだろ?『実行委員会に潜入者が潜んでるって』…」

紫「まさか…」

霧亜「そう…潜入者は二人だったんだよ。会長である北都と、この僕のね」

萌香「じゃあ…ライドウは」

霧亜「今頃、北都と戦ってるんじゃないのかな?
まっ、ライドウ君は強いから…やられてると思うけどね」


萌香「あ…あなた…一体何を…?」

理事長室

御子神「北都君、君には期待していたのにな…残念だ」

北都「……ひひひひ」

御子神「何がおかしい?」

ライドウ「----」

「これを見ろ」
北都の胸元から、小さな、一つ目の生物が姿を見せる

御子神「これは……式妖…」

北都「ふふふ…こいつは、二匹で一組の式妖でな、互いに妖気を飛ばして、お互いが、現在見ている光景を映し出す事が出来る……」

ライドウ「----」

北都「そして……今、もう片方が見ている光景は………」

御子神「!!!」

ライドウ「---!」

そこに映し出された光景は……

霧亜と萌香たち新聞部の姿だった

北都「くくく……一緒に映っている男は、もう一人の潜入者の霧亜だ」

御子神「貴様…!」

北都「いいのか?助けにいかなくて?
俺が捕まった以上、お仲間もどうなる事やら」

御子神「ライドウ君……ここは私に任せて、君は萌香君たちを、助けに行きなさい」

ライドウ「---しかし--」

御子神「安心しろ。北都は結界で封じ込めておく」

「----わかりました」
ライドウは、理事長室を飛び出し、萌香たちの下へと急いだ。

北都(ふふふふふ)

墓場

霧亜「最初から計画通りなんだよ…北都が、ライドウ君に捕まり、理事長の下へ連行される。
そして、式妖で、この光景を見た、ライドウ君が、君たちを助けに来る『北都を理事長の下に置いてね』」

胡夢「さっきから何を……」

霧亜「理事長室の光景を見てみなよ……そろそろだと思うよ。…ほら」

萌香「!……あぁっ!!」


理事長室

御子神「結界の中で大人しくしてるんだね…」

北都「出しやがれ!」

御子神「ライドウ君が、帰ったら地下牢に入って貰うよ。その後、組織の事を聞かせて貰おう…」

北都「ふふふふ」

御子神「!ぐふっ」
北都「やっと隙を見せたな!『三大冥王』御子神學園長さんよ!」

御子神「な、何故…結界を」

北都「この日の為に、俺は結界術を磨いていたのさ!あんたと二人きりになる…この瞬間の為にな!」

御子神「き、貴様…!」

北都「『俺たちの計画』には、あんたの持つ『魔具』……『審判の十字架』が必要だからな 」

御子神「やはり…貴様らの目的は…!」

北都「そう…學園の大結界を解かせて貰う」

墓場

萌香「ああ…學園長…」
裏萌香『くそっ!油断してからに…何が『三大冥王』だっ!!』

胡夢「どうしよ~」
霧亜「ふふ、慌てなくていいよ。直ぐに僕が楽にしてあげるから」

みぞれ「くっ!」

霧亜「早く北都の所に行かないといけないからね…ここで、ライドウ君を待って、彼と戦うのも面白…そぎぃ!!!」

霧亜は吹き飛び、海へと落ちていった…

ライドウ「----無事か」

霧亜は、納刀状態ではあったが、加速のついた突きを、頬に食らっていた

萌香「ライドウー!」

胡夢「ライドウ!大変なの!北都の奴が!!理事長が…」

ライドウ「---何があった」



學園地下最深部

北都「ここが…學園の地下最深部か……見つけたぞ、大結界を操作する装置」


御子神「待て!北都!」

北都「御子神?ちっ…死に損ないが」

ライドウ「----」

萌香「學園を破壊するのは止めて!」

胡夢「北都!あんたの悪事はここまでよ!」

北都「霧亜め……しくじったか」

學園地下最深部

北都「なあ、ライドウ…何故、お前は、俺たちの邪魔をする?」

ライドウ「----」

胡夢「はあ!?何言ってんの?当たり前じゃない!學園を破壊しようとする悪党に、ライドウが協力するわけ無いでしょ!」

北都「くくく…御子神から何も知らされていないようだな?いや、御子神は、あえて黙っていたか」

御子神「……」

ゴウト『恐らく、この學園は…』

北都「いいかぁ…この學園はなぁ!『妖』が、通うだけの施設じゃなく…『護国』の場所『東京驛』と同じ役割を果たす施設でもあるんだよ!」

ライドウ「----!」

ゴウト『やはり』

萌香「な、なにそれ」

北都「學園が置かれる『土地』は、魄霊を集め。學園と言う『施設』は、魄霊の力を高める」

紫「あなたは、學園を壊し、この国を滅ぼすつもりなんですね!」

北都「国を滅ぼす?俺は一言も、滅ぼすなんて言ってないぞ?それとも御子神に吹き込まれたか…味方を平然と欺くとは、見下げ果てた男だな」

御子神「………」

北都「俺たちの目的は、學園を破壊する事じゃない。当然、国を滅ぼす事でもない」

萌香「じゃあ…!一体なんですか!?」

北都「目的はな…護国だよ。そして、その為に、下らない大結界を無くす」

萌香「そんな…」
裏萌香『なっ!なんだと』

ライドウ「----」

胡夢「護国の為…?それに…大結界が下らないですって!?」

北都「ああ…そうだ。大結界はな、知っての通り『妖』の存在を完全に隠す機能を持つが、弊害があってな…」

御子神「………」

みぞれ「弊害?」

北都「魄霊を集める力と高める力を、極端に弱めるんだよ…」

ライドウ「----」

北都「たまらないよな……護国の施設が弱体化させられる……『妖』の暮らしを守るなんて下らない理由でな!」

萌香「酷い……私たちの暮らしが」
裏萌香『クズめ』

胡夢「あんた…最低よ!」

御子神「北都…わかっているのか!?大結界を解除したら、どうなるのか?人間もタダじゃ済まないんだぞ!」

北都「わかっているよ。犠牲になるとしても、近隣の住民だけだ。国を護る大事に比べれば、些細な事だ」

みぞれ「外道め」

北都「それに、『妖』と『人間』双方が殺しあってくれれば、魄霊が増えて都合が良い」

萌香「狂ってる…」

北都「それに…危険な『妖』は、駆除されるからな、ヤタガラス……ライドウ…お前たちがな」


ライドウ「----!」

萌香「ライドウの事…知ってたの?」

北都「当然だろ?ヤタガラス所属デビルサマナー十四代目葛葉ライドウ…」

ゴウト『こいつの組織とは一体…』

北都「ライドウ…お前も、国を護る身なら、俺の事を理解できるだろう?」

胡夢「ライドウ?ライドウは違うよね?」

「----」
ライドウは沈黙したままだ

みぞれ「ラ…ライドウ」

紫「ライドウさん……」

萌香「違う!ライドウは…あなとは違う!絶対にしない!ライドウは……私たちの大事な仲間だもん!!」
裏萌香『お前…』

胡夢「萌香…」

北都「ふん!国を護る男が、幼稚な戯言に耳を貸すと思うか?」

ライドウ「---そうだな」

萌香「ラ…ライドウ!?」

ライドウの予想外の言葉に、萌香たちは絶句した…

北都「ははははは!この『審判の十字架』をはめれば、終わりだ!」

萌香「や、止めてー!!」

その時…

『最後の十字架』を握っていた、北都の右手が砕け散った。

北都「ぐっ……!?」

ライドウが、拳銃を構え『暴威弾』を放っていた…

ライドウ「--そうだな----聞くに耐えなかった----お前の---幼稚な話は-」

萌香「ラ…ライドウゥ…」
ライドウの言葉に、萌香たちは安堵し涙する

北都「ライドウ………気でも狂ったか!?」

ライドウ「---狂ってない--お前と違ってな」
北都に詰め寄りながら、更に拳銃を撃つ。

「ぐっ……!」
北都の右肩を撃ち抜く

ライドウ「---」

北都「国の大事より、一部の『妖』共の暮らしを取るのか!?」

ライドウ「--護国は『人々の暮らし』を護る事---護る人々に『妖』も『人間』も関係ない」

萌香「ライドウ……」
裏萌香『ふっ……』

追い詰められていく北都…

ライドウが、拳銃をしまい、刀に手をかけた時…

「まだだ…」
北都は上着を脱ぎ捨てた

御子神「なっ…!あれは…!」

御子神が、北都の左腕に巻かれた鎖を見て驚愕した…

御子神「魔封じの鍵…!まさか、奴は」

ライドウ「--魔封じの鍵」

萌香「理事長!魔封じの鍵って…一体なんですか!?」

御子神「魔封じの鍵…妖気を抑える機能を持つ…『人間』の……『妖』化を防ぐ道具だ」

萌香「そ、それじゃあ…まさか!?」

北都「そうだ……俺は『人間』だったんだよ」

胡夢「え~~~!!」

みぞれ「う…嘘だろ」

紫「信じらんないですぅ…」

萌香「そんな…そんな事って…」
裏萌香『馬鹿な…まさか『妖』に血を注入されたのか!?』

ゴウト『やはり…』

北都「例え…この身が完全な『妖』と化しても………俺は使命を果たす!!」

北都の砕かれた右手に、異様な手が生えてきた

ゴウト『不味い!奴は鍵を外して『妖化』する気だ』

ライドウ「----」

北都「ぐわっ!!」
魔封じの鎖を外す前に…
ライドウの早撃ちが、それを防いだ…

北都「く………そ………」

体中を撃たれていた北都は『妖化』を防がれ、傷を回復出来ず、意識を失った


重体の北都は、病院に運ばれ入院となった

胡夢「北都…意識不明らしいよ」

ライドウ「----そうか」

胡夢「い、いやぁー!でも今回のライドウは、一段とかっこ良かったわ~!!もう~私、益々惚れ直しちゃった!やふ~」

みぞれ「ライドウから離れろ…乳女」

紫「ライドウさん、かっこ良かったですぅ」

萌香「うん…本当に…ライドウかっこ良かったよ……わたし信じてた」
裏萌香『ふん、私は最初から信じてたぞ』

ライドウ「----そうか」


北都の病室

霧亜「まさか、僕の血を注がれた君が、こんな姿になるとはね」

北都「………」

霧亜「ふふ…葛葉ライドウか……とんでもない奴だよ」


後日 警備の隙を突かれ、北都は病室を脱走した



こうして無事事件を解決したライドウは、學園祭の準備に取り掛かるのだった……

とりあえず北都終わりました一区切り

學園祭 初日

一年 三組
出し物 金魚すくい

萌香「金魚~金魚すくいはどうですか~?」

ライドウ「---金魚すくい--やってます」

「うぉぉ!!」「浴衣姿の萌香さんだ!」「あぁぁん!!」「今日も素敵!!私もすくってぇ!ライドウくぅ~ん!!」

大量の男子生徒と女子生徒が群がる

萌香(きゃ!誰か、お尻触った!?)

猫目「店番頑張ってますか~?」

ライドウ「---先生」

猫目「繁盛してますね~」

萌香「…集まってるだけで、誰も金魚すくいを、してくれないんですけどね……」

萌香「はあ…」

ライドウ「----」

萌香(折角、浴衣着てきたのに…これじゃライドウと一緒に、お祭りまわれないよ…)

ライドウ「--おい---店番--頼んだぞ」

「ちょ、待てよ!」

ライドウ「---萌香」

萌香「え?」

ライドウ「---いくぞ」

萌香「え?えっ?」

ライドウ「ライドウは、萌香の腕を引っ張り、その場を立ち去る」

「逃げた!?」「萌香さん!」「待ってぇ!ライドウく~ん!」


「あの娘の尻…触ったの、あんただろ?無茶すんなよな」

「馬鹿いえ。卒業生が久々の母校に戻ってきたんだ。折角の學園祭…楽しまなきゃな」

萌香「はあ…はあ…どうしたの…ライドウ?」

ライドウ「---學園祭見学--したかったんだろ」

萌香「え!?う…うん」

ライドウ「---店番は--他の人間に、頼んだからな」

萌香「そ、そうなんだ!」

「--だから--ゆっくり見て来い」
ライドウは、その場を後にしようとする

萌香(えっ!?え~~~!!)
裏萌香『な、なんだ…何なんだ!?こいつは!なにを考えている!!』

萌香「ちょ…ちょっと待ってよ!!何処いくのよ!?」

ライドウ「---店番--今、一人だからな」

萌香「……店番なら、やらなくていいんじゃないかなぁ?」

ゴウト『俺も、そう思うぞ』

ライドウ「--そうか」

萌香「そうだよ!…それより、私、浴衣着てみたんだけど…似合ってるかな?」

ライドウ「--似合ってるんじゃないのか」

萌香「あ、ありがとう~!それでね…話があるの」

ライドウ「--なんだ」

萌香「私ね…人間界に居たときから、今まで一度も、お祭りに行ったこと無かったの……
だから…今日のお祭り、凄い楽しみだったの」

ライドウ「---」

萌香「だから!あの…ライドウ。今日の夜、私と一緒に、お祭り……」

みぞれ「一緒になんだ?」

萌香「きゃああ!みぞれちゃん!?あなた…どこから」

みぞれ「不純異性交遊はだぞ…浴衣で誑し込む気か?油断も隙もないな」

萌香「それは、あなたでしょ!」

みぞれ「それより、私はライドウに話があって来たんだ」

萌香「ライドウに?」

ライドウ「----」

みぞれ「今日、學園祭に、母が来てな…どうしても、ライドウに会わせろと聞かないんだ」

萌香「母?」

みぞれ「ああ、私の後ろにいる…」

「………」

萌香(うわぁ……こっち覗いてるよ…間違いない。あれは、みぞれちゃんのお母さんだ……)

ゴウト『この親子…揃いも揃って』

みぞれ「だから頼む!少しの間、付き合ってくれ!」

ライドウ「---少しだけならな」

みぞれ「ありがとう!」

屋外喫茶 一席

「初めまして…みぞれの母親のつららです。」

ライドウ「--初めまして」

つらら「あなたが、みぞれの恋人のライドウさんね?」

萌香(はぁぁぁ!?)

ライドウ「----恋人」

みぞれ「す…すまない。勢いで言ってしまったんだ。だから……睨まないでくれ…ヒソヒソ」

萌香(はあ、どうしてこうなっちゃったのかな…さっきの約束…ライドウに伝わったかな)

つらら「先程から、気になってたんだけど…後ろにいる女性は、誰なのかしら?」

みぞれ「ああ…あれは、ライドウの追っかけだ。気にするな」

萌香(それは、アンタでしょぉぉぉ)

つらら「そう、ところでライドウさん。結婚は、いつ頃お考えなのかしら?」

萌香(結婚~?)

ライドウ「---考えていないですね」

つらら「付き合っているのに……考えていない?」
手に持つ珈琲から、氷の刃が飛び出した

ライドウ「---!」

つらら「嫌だわ、私ったら…興奮すると、つい氷で刃物を…」

ライドウの鞘が、つららの顎下を払った

萌香「…!!」
裏萌香『いい気味だ』

みぞれ「ラ…ラ…ライドウ!?」

ライドウ「--攻撃---されたからな」

ゴウト『雪女は皆こうなのか…』


みぞれ「おい!母!起きろ!」

つらら「う…う~ん…あら?私」

みぞれ「起きたか。馬鹿め、ライドウは、學園一強いんだぞ。生きてて良かったな」

つらら「あらあら、それは、頼りになる方…気に入ったわ。素敵な人じゃない」

萌香(やっぱり変わってる)

つらら「ライドウさん、今夜一緒に夕食でもどうかしら?」

みぞれ「それは良いな」

萌香「えっ!?」

つらら「うふふ…それじゃ、またね」

ライドウ「----」

胡夢「ライドウ~」
みぞれの母親とのいざこざが終わって間も無く、胡夢が、ライドウの下へ飛び付いてきた

胡夢「ライドウ!ちょっと、お願いがあるんだけど!」

萌香「胡夢ちゃん…後ろの人は…」

胡夢「あ!この人は…私のお母さん!ライドウに会いたいって」

「どうも~、胡夢の母親のアゲハです。」

ライドウ「---初めまして」

アゲハ「あなたが胡夢の婚約者のライドウ君?」

ライドウ「---婚約者」

(ごめんね~)
胡夢は手をあわせる

アゲハ「後ろの娘達は、愛人の娘ね」

萌香(今度は、愛人か)

「ふーん…」
アゲハは、不意にライドウを抱き寄せる

ライドウ「----!」

胡夢「ちょっと!?」

アゲハ「あの娘、ああ見えて純情だから、君…襲っていいわよ」

ライドウ「------」

ゴウト『何を言い出すのかと思えば……
『妖』や『悪魔』は、皆おかしいのかもな……』

アゲハ「可愛い子じゃない。私が欲しい位よ」

胡夢「お母さん!」

アゲハ「冗談よ。今夜、三人で夕食とりましょ。話の続きはそこで…じゃあね」

みぞれ「おい…夕食の約束はウチが先だぞ」

胡夢「え…!あんたも?」

みぞれ「婚約者とは…随分と見栄を張ったな」

胡夢「話が進む内に、大きくなっちゃったのよ!あんたも似たようなもんでしょ!」

みぞれ「まあな」

紫「皆さん~!みんなに、私の両親を紹介したく、連れて来ました」

珠範「紫の父の珠範です。いつも娘が御世話になっています」

不二子「母の不二子です。」

胡夢「あ…こちらこそ」

(家族か…)
萌香は、静かに席を離れた

ライドウ「----萌香」

みぞれ「…………」

學園祭 夜

(はあ………)
萌香は祭に賑わう、人混みの中、一人歩いていた

「おじさんたち、面白ーい」

「そう?だったら俺たちと一緒に遊ばない?」

「ん?」

「どうした?」

「あの女……昼間の」

「あ~…あんたが尻触った子ね」

「お前は、その女たちと遊んでろ…俺は、少し外す」

「あんま、やりすぎんなよ」

「どうしたの?」

二人組の學園卒業生。
坊主頭の片割れが、その場を後にする


學園屋上

萌香(みんな誰かと一緒…折角のお祭りなのに、私は一人きりか)

屋上の扉が開く

「……ライドウ?」
萌香が、扉へと近付くと、扉からは、坊主頭の男が出てきた

「いい女が、一人で寂しそうじゃねぇか?」

萌香「あ、あなた誰ですか?」

「學園の卒業生だよ。人間界にいると、いい女に不自由してな…」

萌香「いや…助けて」

「それで、こうして學園祭に来てみたら…本当に、いい女だ」

坊主頭が、萌香に詰め寄り、浴衣に手をかける

萌香「助けて…ライド…」

坊主頭の体が吹き飛び、柵を破り、露天の屋根へと落下した…

萌香「ライドウ…どうして…ここに…夕食はどうしたの」

ライドウ「--さあな--みぞれが何とかするらしい--それに」

萌香「?」

ライドウ「--最初に頼んだのは---お前だからな」

萌香「ライドウぅ」


夕食の件は、みぞれが、ライドウを困らせたくないとの思いから、胡夢に内緒で、2つの氷人形を作り誤魔化しを図るも、両家が鉢合わせ失敗に終わる
嘘が露呈し、みぞれ胡夢の両名は、親達に絞られる事となった



ゴウト『これで、萌香からの『依頼』は片付いたな』

ライドウ「----ああ」

ゴウト『一緒に夕食をとるなら、早めに頼んでくれんとな』

ライドウ「---そうだな」

學園祭 初日

ライドウは無事『依頼』を果たすことが出来た

學園祭 二日目

バス乗り場

「ふぅ、やっと着いたな。しっかし、この場所……
美人さんからの依頼だから引き受けたけど…安請け合いだったかなぁ」


紫「萌香さんって姉妹がいるんですか!?」

萌香「うん。姉が二人と、妹が一人。私は三番目の四姉妹なの」

紫「そうなんですかぁ」

萌香「ねぇライドウの家族は?」

ライドウ「---俺は、一人だ」

萌香「あ…ごめんなさい」

ライドウ「---別に」

微妙な空気が流れる中、そこに…

「どうした?元気ないな」

萌香「え?………あっ!」

ライドウ「---!」

鳴海「久しぶり!君ら、この學園の生徒だったんだ」

紫「な…鳴海さん!?」

鳴海「やあ紫ちゃん。元気にしてたかい?」

紫「は…はい」

ゴウト『なぜ、この男が…』

萌香「あの~鳴海さん…どうして學園に?」

鳴海「學園祭見学に…って言うのは冗談で、仕事だよ。仕事」

萌香「仕事…ですか?」

紫「一体、どんな仕事ですか?」

「お使いだよ。荷物を届けてくれって」
鳴海は、そう言うと、手持ちの英国製の鞄から、その依頼の品を取り出した

ライドウ「---それは」
鳴海が手にしていたものは、陽海學園の大判封筒だった…

萌香「學園の封筒の封筒……」

鳴海「そう言うこと。受取人が現れる手筈なんだが…、現れる気配も無いし、俺は、時間まで學園祭見学でもしてくるよ」

萌香「ええっ…!?」

鳴海「後で会おうぜ」

紫「あわわわ」

ライドウ「---鳴海さん」

鳴海「ん?」

ライドウ「-學園--案内しますよ」

>>207 修正

紫「一体どんな、お仕事ですか?」

「お使いだよ。學園に荷物を届けてくれって」
鳴海は、手に持つ英国製の鞄から、依頼の品を取り出した

ライドウ「---それは」
鳴海が手に持つ品は、陽海學園の大判封筒だった…

萌香「學園の封筒…」

鳴海「何が入ってるかは知らないが、この封筒を、學園の『誰か』に届けるのが、今回の仕事ね」

萌香「誰かって……鳴海さんは知らないんですか?」

鳴海「ん?ああ、依頼人が…學園に到着したら、受取人が取りに来るって言うからさ……現れる気配ないんだけどね」

紫「大雑把ですぅ」

鳴海「まぁ、しばらくしたら取りに来るだろ。俺は、その間、學園祭見学でもしてるよ」

萌香(えぇぇぇ!どうしよう!鳴海さんは人間なのに!)

紫(あわわわ…)

鳴海「準備や手伝いやらで忙しいだろ?悪かったな、捕まえちゃって」

鳴海が立ち去ろうとすると…

紫「待ってください!」

鳴海「ん?」

紫「鳴海さんは……お客様ですぅ!私たちが、學園祭を案内するですぅ!」

鳴海「まさか、學園の敷地が、こんなに広いとは…一つの街みたいだ。案内してくれて助かったよ。
一人だったら、迷子になってたね」

萌香「いえ、鳴海さんには以前、お世話になりましたから、お役に立てて良かったです」

紫「そうですぅ!」

胡夢「ライドウ~!私の組ね、女中喫茶やって……鳴海さん!?」

鳴海「久しぶり……それにしても…凄い格好だな。先生に叱られない?」

胡夢「ちょっと!どうして鳴海さんが、學園に居んのよ…ヒソヒソ」

紫「訳は、後で話すですぅ!それより尻尾…ヒソヒソ」

鳴海「かなり変わってるけど、自由な感じで良い學校だね。」

ライドウ「--そうですか」

萌香「そ、そうだ!鳴海さん、私とライドウの組に行きませんか?」

鳴海「確か…それって」

萌香「はい、金魚すくいです。どうですか?」

鳴海「金魚すくいか…行ってみるか」

一年三組では、丁度、みぞれが店番をしていた。

みぞれ「お前ら…私が店番を務めている隙に、ライドウを誑し込む気だな……」
一匹の金魚が凍り付き、みぞれの右手が氷の刃に変わる

ライドウ「---!」

鳴海「おっと…なんだぁ」

胡夢(あ~!馬鹿~)

紫(間が悪いですぅ!)

萌香「ちょっと!」
みぞれの後頭部を、萌香が馬鹿力で殴った。氷は溶け、金魚は水槽へと戻っていった…

みぞれ「う…よくもやっ…」

胡夢「ちょっと!あんた、こっち来なさい!」

紫「来るですぅ!」

みぞれ「な…なんだ、お前たち」

鳴海「……」

萌香(ど~しよう…)
裏萌香『諦めろ、流石に誤魔化しはきかんだろう』

鳴海「ははは!いやー、面白かったよ」

萌香「え!」

鳴海「あれは『ばけがく』の応用かい?楽しませて貰ったよ」

萌香「は…はは」

ゴウト『本当に知らないのか?すっとぼけてるだけに見えるが……』

みぞれ「なんだ…そう言う事情か、早く言え」

胡夢「言う前に、凍らせたんでしょ!」

紫「もう面倒ですぅ!怪しい言動・行動をする輩は、私の術で、先に口を塞ぐですぅ!」


瑠妃「あっ、ライドウさん!理事長が…いたっ」

瑠妃の頭に、ちりとりが落ちる

鳴海「綺麗な子だなあ」

ギン「何やっとん…って、鳴海さん…痛ぁぁ」

ギンの頭に、石像が落ちる

鳴海「よお、久しぶり…大丈夫か?」


紫「はあはあ…これで…大丈夫な筈ですぅ」

夕刻

鳴海「然し、瑠妃ちゃんが、魔女の丘にいたなんてなあ、こんな美人さんが居たなら、俺も残ってれば良かったかな?はは」

瑠妃「ふふふ、鳴海さんったら」

萌香「それは…どうかなぁ」
裏萌香『残ってたら死んでたな』

ギン「そういや鳴海さん、荷物の受取人やらは、どないしたんですか?」

鳴海「到着してから、かなり時間経ってるけど音沙汰無し……それなりの前金貰ってるし、悪戯では無いと思うんだけどな」
封筒を片手に、話していると…突如、封筒が振動し始めた

ライドウ「---!」

鳴海「なんだ…封筒が…」

そして、激しい地響きと共に、何かが近付いてくる

胡夢「ななな、何あれぇぇぇ!」

ライドウ「---!」

鳴海「でけぇ…」


ライドウたちの前に巨大な蛙の化物が現れた

ライドウ「-----」

「ヒヒヒ…刀は抜くなよ、少年」

聞き覚えのある声が、蛙の頭上から聞こえた

胡夢「う…う…」

萌香「運転手さん!?」

運転手「やあ」

鳴海「あ…あんた、バスの運転手?」

運転手「ヒヒヒ…そうだよ」

鳴海「じゃあ、その蛙は、あんたの乗り物か…あのね、困るよ。そんな危ない運転されちゃ」

萌香「な…鳴海さん」

ギン「流石に、ボケすぎやろ」

運転手「ヒヒヒ…そいつは申し訳ない。急いでたものでね」

瑠妃「何か急用ですか?」

運転手「ああ、ちょっと探し物をね。探していてたら、君たちに反応があったから、来てみたのさ」

「タスケテ…ツカマリタクナイ」

鳴海(ん?今、声が)

運転手「手鏡を探しているんだ。丁度その封筒位の…」

「ツカマリタクナイ!」
突如、封筒が鳴海の手を離れ、學園の方角へ飛んでいった

萌香「ああ!封筒が」

運転手「あれは…まさか」

鳴海「ちっ…何だか知らないが、依頼品を紛失する訳にはいかねぇ…すまん!ここは任せた」

紫「えっ!?鳴海さん!」

鳴海が全速力で、封筒を追いかけて、學園の方角へ消えていった

胡夢「行っちゃった…」

みぞれ「はやいな」

萌香「そんなこと言ってる場合じゃないよ!今、鳴海さん一人よ」

ギン「あぁー!そうやった!」

瑠妃「はやく戻りましょう」

運転手「不味いことになるかもな…」

鳴海「捕まえたぞ!馬鹿封筒」
「キャッ」

鳴海「手間かけさせやがっ……うぉっ!」
捕まえた封筒から、手鏡が飛び出してきた。

「あなたが、わたしの御主人様ね?わたしは鏡の『付喪神』リリス。一つだけ願い事を叶えてあげる……それにしても足速いのね」

鳴海「ああ!封筒がっ!依頼品駄目にしちまった…」

リリス「あの~聞いてる?」

鳴海(『付喪神』ねぇ。だが『悪魔』じゃないのは確かだな…)

リリス「一つだけ願い事を叶えてあげるよ」

(魔女の丘で襲われた『妖』とか言う奴と同類か?『ライドウか紫ちゃんが居てくれたらなぁ』)

リリス「ちょっと!聞いてる!」

鳴海「勿論、聞いてるよ」
(ちんちくりんの癖に何が願い事だ…ろくでもない事になるに決まってる。上手くやり過ごせるかね)

リリス「ねぇ、願い事を何にするか決めた?」

鳴海「焦らすなって。一つだけなんだろ?考えさせてくれよ」

リリス「え~!そうだ!御主人様は他人の本性を見たくない?」

鳴海「他人の本性?」

リリス「そう!私の鏡に写った者は本性をさらけ出すの」

鳴海「へぇ~」
(成る程、それが、こいつの力って訳だ…それしか出来ない癖に、何が願い事だよ)

リリス「どう?面白そうでしょ?」

鳴海「う~ん…興味ないな。俺、他人に関心ないんだよ」
(どうせ下らない願い叶えた後、代償に命頂戴とかだろ?見え見えなんだよ)

リリス「楽しいよ!一度やってみれば分かるって!ほら試しに」

鳴海「あっ…おい!」

「それっ!」
リリスは道行く生徒達に鏡を翳した…姿を写された『妖たち』の本性が暴かれる

鳴海「…!」

リリス「ど~う?御主人様。楽しめた?」

鳴海「ああ…十分な」
(今の學生服…まさか…ここって)

リリス「遠慮して…もっと沢山……見せてあげる」

鳴海「おい!」

リリスは上空を飛び、大勢の生徒たちに鏡を翳した……


鳴海「おいおい」
(ったく……『陽海』學園じゃなく…『妖怪』學園だったのかよ)

胡夢「じゃあ、そのリリスの鏡に写されたら、強制的に『妖』の姿になっちゃうの!?」

運転手「ヒヒヒ…まあ、そういう事だな」

ゴウト『不味いぞ…それが事実なら、鳴海が危険だ』

紫「鳴海さんが危険ですぅ!」

ギン「助けにいくで!」


鳴海(まさか『妖』の學園とはな……って事は、あの子等もか…紫ちゃんは『サマナー』じゃなかったわけね。
あれ?でも、ライドウは人間だよなぁ……こんな事、考えてる場合じゃないか)

リリス「ど~う?楽しめてる?御主人様」

鳴海「もう十分……っ…囲まれたか」


鳴海の周囲を『妖』が包む

リリス「妖怪なんて驚いたでしょ?ここ『人間』じゃなく『妖』の學園なんだよ」

鳴海「まあな……やばっ…」
『妖』の一撃が鳴海を襲う…

萌香「鳴海さん…危ないっ!」

鳴海「いてて…萌香ちゃん!?」
萌香が飛び付き、鳴海を救う

萌香「大丈夫ですか!?鳴海さん」

「あ、ああ……やっぱり、萌香ちゃんも…」
鳴海は、自分たちを囲む、『妖』を指差した。

萌香「隠していて…すいません……私たちの事、怖いですよね」
悲しげな表情で、伏し目がちに、鳴海に謝罪する。

鳴海「萌香ちゃんも……」

萌香「はい……」

鳴海「普段可愛いけど…素の姿だと、あんな感じになっちゃうの?」
萌香に耳打ちする

萌香「はい?」

鳴海「ほら、萌香ちゃん可愛いからさ、姿によっては、ちょ~っと驚いちゃうかも、なんてね……ははは」

萌香「鳴海さん……ふふ…きっと、驚きますよ」

鳴海「そうなの?じゃあ、覚悟しとくかな」

リリス「ちょっと!何、余裕こいてんのよ」

萌香「鳴海さん!あの鏡の所まで、走れますか!」

鳴海「え?走れるけど…大丈夫」

萌香「はい、信じてください!」

鳴海「何か手があるみたいだな…やってみるか」

二人は、リリスへ向かって直進した

リリス「えっ!ちょっと」

萌香「捕まえた!」

リリス「あわわ…私を道連れにする気!?」

「少し借りるわよ」
萌香は、自分に鏡を向けた…萌香の本性が姿を現す

裏萌香「ロザリオを外さず、鏡を使うとは…考えたな」

鳴海「あれが、萌香ちゃんの…」

裏萌香は、その場に居た『妖』たちを、次々と蹴り倒しっていった。

リリス「ひ~」

鳴海「と…そうはいくか」
リリスが、静かに、その場を逃れようとしたが、鳴海に捕まえられる。


紫「鳴海さ~ん!」

鳴海「?」

萌香たちに遅れ、紫たちが、鳴海を助けにやってきた

胡夢「萌香!あんた運転手さんが話してる途中なのに、先に行ってんじゃ……何で、あんたが!?ロザリオは?」

裏萌香「鏡の力を使ったんだよ」

ライドウ「---鳴海さん--大丈夫ですか」

鳴海「ああ、『可愛い』萌香ちゃんと『美人な』萌香ちゃんに助けられたからな」

紫「鳴海さん……」
『妖』の存在を受け入れる、鳴海の反応は紫たちの心を暖めた

鳴海「まあ、それより…コイツどうするかね」

リリス「は~な~し~て~」

瑠妃「リリスの鏡!」

紫「その鏡…誰が、鳴海さんに、學園まで運ぶよう頼んだんですか?」

鳴海「ああ、それは…」

「私だよ」

裏萌香「貴様…!」

鳴海「あんな感じの美人さんって……あの人だよ!」

石神「久しぶりだね」


ライドウ「---石神--」

胡夢「石神先生!?何でここに…」

鳴海「あんた教師だったのかよ…」

石神「元な…鏡は、そんな元教師からの贈り物さ」

ライドウ「---贈り物だと」

石神「この世で最も美しい物は何かわかるかい?
それは破滅…美しい物が、崩れ行く様子だよ」

みぞれ「お前…頭大丈夫か?」

石神「桜が散る様は美しいだろ?それと一緒さ…本性を現した『妖』が殺しあい學園を破壊し…!」

ライドウ「---お前の仕業なのはわかった----急いでるんでな」

ライドウは、提灯列の上に乗る石神の下へ飛翔…以前と同様に、顔面に峰打ちを叩き込んだ。

胡夢「まだ、何か言ってなかった?」

ライドウ「---雑魚に構ってる暇はない---學園が崩壊する前に--残りの『妖』たちを鎮圧するぞ」

瑠妃「はっ!そうでした!鏡で暴走した、大勢の生徒や関係者たちが大暴れしてるんだったわ」

裏萌香「急げ!」

ゴウト『さっさと終わらせるぞ』

ライドウ「---ああ」

鳴海「おいおい…俺は、どうすりゃ…」

運転手「ヒヒヒ…君は私と来なさい。その方が安全だ。鏡も預かろう」

リリス「いや~ん」



ライドウたちの活躍により、騒ぎは沈静化した。然し、學園校舎が被った被害が大きく、三日目の學園祭は中止となる。

そして、更に……

一夜明け

ライドウ「---休校---ですか」

萌香「休校なんて…」

胡夢「嫌~!ライドウと離れたくなーい!」

「休校中は、『それぞれの家に帰るように』…か」
鳴海が、休校中の注意事項を片手に現れた

紫「な…鳴海さん!?」

鳴海「よっ、昨日は大変だったな」

萌香「昨日、帰らなかったんですか!?」

鳴海「騒ぎが原因でね。怪しい理事長が、部屋を貸してくれたんだよ。丁度、今、帰るところさ」

萌香「あ、怪しい」
裏萌香『あれは仕方ないな』


鳴海「会えない心配よりも、半年後の授業ついてけなくて、留年の心配じゃない?」

胡夢「げっ!?」

鳴海「ははは、冗談だよ。半年なんてあっという間さ、直ぐに会えるよ。」

萌香「はい」

鳴海「じゃあ、元気でな…っと」
立ち去る寸前に、ライドウの耳に小声で呟く

鳴海「お前とは、直ぐに会う事になると思うけど、そん時は宜しくな………十四代目」

ライドウ「!」

ゴウト『こいつ!やはり…!』

鳴海「はは…今度こそ、さよならだ。じゃあ元気でな」

萌香「はい!鳴海さんも、お元気で!」

みぞれ「達者でな」

紫「さよならですぅ!」

鳴海は去っていき、學園は休校を迎える。

鳴海の正体はヤタガラス機関の人間だった…

ライドウは、鳴海の言葉通り、休校期間の半年間、ヤタガラスの指令により、鳴海探偵社の探偵見習いを勤める事となる…

やっと半分終わった……

筑土町 銀楼閣
鳴海探偵社


鳴海「いやぁー…よく来たな!まっ…一応、自己紹介しとくぜ。
俺は鳴海探偵社 所長の鳴海だ。今後とも宜しく」

ライドウ「---はい」

ゴウト『まさか、鳴海がヤタガラスの人間だったとはな…』

鳴海「それと、こっちの子は、俺の娘…ってのは冗談で、秘書の音無 燦だ。
お前と同じ住み込みで働いている。」

燦【宜しくお願いします】

ライドウ「----彼女は」

鳴海「筆談の事だろ?燦は照れ屋なんだ。勘弁してやってくれ」

燦【すいません。面倒をかけて】

ライドウ「--大丈夫です---葛葉ライドウです--宜しくお願いします--燦先輩」

燦【こちらこそ宜しく。ライドウ君】

ゴウト『変わった娘だな』

鳴海「自己紹介も終わった所で…早速だが、探偵見習いのライドウに初仕事だ。」

ライドウ「---はい」

鳴海「簡単な仕事だ。ウチの宣伝広告を、町内に貼っていって貰いたいんだ。
それと、一日で全部貼れないと思うから、残った分は翌日以降に持ち越して構わないからな。
呉々も『夜、出歩いて貼るなよ』」

ライドウ「--わかりました」

ゴウト『夜が本番と言う事か…』

ライドウ「---行ってきます」

鳴海「ああ、頼んだぞ」

燦【頑張って!】


ゴウト『然し、鳴海の奴、東京で探偵をしているとは言っていたが、まさか筑土町だったとは…
出会う前から監査していたのかもな』

ライドウ「---そうだな」

ゴウト『何にせよ、久々の筑土町だ。
金玉屋で、減らした道具の補充をしておくぞ』

ライドウ「---ああ--」

筑土町 夜

「おい!生きた人間を襲うなよ!命令違反だろ!」

不気味な骸骨が、歯をカタカタと鳴らせ、怒鳴る。

「襲った訳ではないよ。私は食事、多少の血を貰っただけさ。
それに…命令を受けたのは、お前だけだろ?」
葉巻をくわえた黒外套の男が、骸骨に答える

「悪魔とは言え、和を考えろよ。お前の食事を見ると、俺だって食事したくなるだろ」

「お前の食事は命を奪うからな……わかったよ。以後注意する」

「頼むぜ~。我慢するのも辛いんだからよぉ…うぉっ!」


突如、骸骨の左手が吹き飛んだ

「----」
ライドウの拳銃から硝煙が放っていた。

ゴウト『ガシャドクロか…まさか『悪魔』と遭遇するとはな…』

ガシャドクロ「あいつか~?とんでもないガキだな」

「いきなり撃つとはな…面白い奴だ」

ゴウト『二人か…こっちも喚ぶぞ』

ライドウ「--ああ」
『ドアマース!』


ライドウは『管』から、ドアマースを喚びだした…

ドアマース「やっと喚んでくれたね!ライドウゥ それで、あたしはどっちをヤレば良いんだい?」

ライドウ「---黒外套の方を頼む」

「了解!」
ドアマースが、黒外套の男へ襲い掛かる

「ドアマースか…面白い」

ゴウト『さっさと片付けるぞ』

ライドウ「--ああ」

ガシャドクロ「いきなり、片手吹き飛ばしてくれやがって、全くふざけた……ガキだぜぇ!」

ライドウの下へ詰め寄っていた、手負いの骸骨が、鎌を振り下ろす…

ライドウ「---」

刀と鎌が鍔迫り合いを起こす

ガシャドクロ「只物じゃねぇな…てめぇ何者だ!?」

ライドウ「---葛葉---ライドウ--」

ガシャドクロ「く…『葛葉ライドウ』だとぉぉ!?」

(ライドウだと!?くくく…本当に面白くなってきたな)

ライドウは動揺したガシャドクロの体を蹴り、体勢を崩した所に一閃を放った。

ガシャドクロ「くそ……覚え…てろ」

骸骨は、煙を放ち消えていった

ゴウト『次は黒外套だ!急ぐぞ!』

ドアマース「はあはあ……何だよコイツ!?……殴っても殴っても、ピンピンしてやがる」

「効いてるよ。ただ、治りが早いんだ」
黒外套の男が不敵に笑う

「そろそろ、こちらから、攻めさして……!」
黒外套の男に鈍痛が走る。ライドウが、背後から、腕を斬り落としていた。

黒外套の男は、後方に飛び距離をとった

「まさか腕を落とされるとはね…」

ライドウ「---次で仕留める」

「君に出来るかな?先代のライドウでも、私を倒せなかったのに」

ライドウ「---!」

ゴウト『なんだと!?』

「今日は、この位にしておこう……なにせ急だったからな」

ライドウ「---逃がすか」

「また会おう…十四代目君」
黒外套の男は、霧のように消えていった。

ライドウ「----」


ゴウト『先代ライドウだと…一体何者だ』

年が明け、春
今日は學園再開の日。この半年の間に、黒外套の男と再び出会う事は無かった。

鳴海「見習い業務を中断して出て行くとはな…けしからん奴だよ」

ライドウ「---すいません」

鳴海「冗談だって、これも『大事なお勤め』だからな。頑張れよ、ライドウ」

燦【ライドウちゃん、いってらっしゃい】

ライドウ「--いってきます」


陽海學園 始業式

ゴウト『今日から二年か…早いものだ』

「ライドウ~!」

ライドウ「---久し振りだな」


始業式へと向かう途中、新聞部の面子が顔を揃え、久し振りの再会を喜んだ。

始業式が終わり
二年一組

胡夢「やふ~!ライドウと組が同じだ~!やっぱり運命?」

ライドウ「---全員同じだ--猫目先生もな---」

みぞれ「ライドウの正体を知る、私たちを、一カ所に集めたんだろうな。……理事長のやりそうな事だ」

紫「なんでも良いじゃないですかぁ。皆が一緒なんですから!ねぇ、萌香さん」

萌香「えっ? うん。……そうだね」

胡夢「さっきから、ぼーっとしてるけど…あんた風邪引いたの?」

萌香「ちょっと考え事してただけ、風邪は引いてないよ」

ライドウ「----」


始業式から数日後…

新入生が生まれる、入学式の日を迎えた。

萌香「はぁ……」

胡夢「溜め息なんかついて…なんかあったの?」

萌香「うん。……妹がね、今年の新入生として、學園に入学して来るんだ」

紫「妹さんがですか!良かったじゃないですかぁ」

みぞれ「その割には、元気がないな」

萌香「ちょっと変わった子でね…」

ライドウ「---変わった子---」


「あーっ!やっっと…見つけた!」
一人の女生徒が、こちらを指差し叫ぶ

萌香「うっ…ごめん!…あたし逃げるね!」


「あっ!待てぇー!逃がさないわよっ!萌香ぁ」

女生徒が、その場から逃げる萌香を追っていった。

胡夢「なにあれ…」

みぞれ「さあな」



教室

紫「えっ!『あれ』が萌香さんの妹さんっ!?」

萌香「う、うん。名前は朱染 心愛。…母親が違う、腹違いなんだけどね」

みぞれ「それにしても物騒な妹だな。入学早々に姉を襲うとは……何かあったのか?」

萌香「心愛は子供の頃から、あんな感じでね。
姉妹の中で私と歳が近いからか、今みたいに、毎日わたしに喧嘩をふっかけてきてね…
ロザリオの封印がされる前だから、心愛には負けた事なかったんだけど…
多分、その事を根に持ってるんだと思う」

胡夢「……しつこい妹なのね」

心愛「この教室ね!」
教室の扉を、心愛が勢いよく開く

萌香「こ、…心愛!?ちょっと待って、私の話を…」

心愛「問答無用!今度こそ私と勝負して貰うわよ!お姉ちゃん!」
蝙蝠の式妖が、巨大な金槌へと変わる。

心愛「いくわよ!お姉ちゃ……」

ライドウ「----教室で暴れるな」


心愛が萌香に金槌を振り下ろす前に、ライドウが、心愛の顔に鞘をめり込ませていた

萌香「心愛ー!?…ライドウ!妹に何するのよ」

胡夢「何言ってんのよ~!…暴れるからでしょ」

みぞれ「そうだな…ライドウに文句を言うなら、お前がしっかり管理しろ」

萌香「う……それでも、話をする前に倒しちゃうのは……」

紫「まあまあ、それぐらいにして……それより心愛さんが目覚めて、また騒動が再発しても面倒ですぅ。今の内に外に連れ出しましょう。
外でなら、安心して話も出来ますしね」

校舎外

心愛「う、う~ん…。…ここは?」

萌香「心愛!良かった!気がついたのね」

心愛「お姉ちゃん?……あっ!あんたは…よくも!…覚悟は出来てるんでしょうね!」

ライドウ「---」


心愛「って……無視するなぁぁぁ!」

激昂した心愛は、ライドウに襲いかかるが、その行く手を萌香が阻んだ。

萌香「やめて!」

心愛「お姉ちゃん…?」

萌香「私の友達に手を出さないでっ!…相手なら……私がするわ」

心愛「お姉ちゃん…やっと、私の相手をしてくれるのね」

萌香「お願い…ライドウ。私のロザリオを外して」

ライドウ「---ああ」

萌香のロザリオを、ライドウが外す。封印が解かれ、裏萌香が、姿を現した。

心愛「あ…あ…」

裏萌香「…心愛。私は妹だからといって容赦しないからな…来るなら来い」

心愛「お…お………お姉さまぁぁぁ!」


心愛は大粒の涙を流し、裏萌香に抱き付いた。


胡夢「お姉さまぁ?」

裏萌香「お、おい…心愛?どういう事だ」

心愛「やっと会えたぁ!……私、置いてかれて……ずっと淋しかったんだからぁ!」

みぞれ「うーん…あの豹変ぶり、どうやら、姉に向けられる愛情は裏萌香限定の様だな」

紫「歪んでますぅ…」

ライドウ「----」

ゴウト『全く…姉妹揃って面倒だな』



新たに入学してきた萌香の妹の心愛。
姉が妹に襲われる今回の事件は、一応の解決を見せた。

鈍速ですいません。とりあえず一段落です

學園長室

御子神「急に呼びだして済まないね。突然だが、ライドウ君。君に仕事だ」

ライドウ「---仕事ですか---」

御子神「ああ、君には明日、鳴海君の事務所へ向かって貰う」

ゴウト『鳴海の?…何故だ』

御子神「…休校期間中にライドウ君が戦った、黒外套の男についての情報を得た……との事です」

ライドウ「----」

御子神「そう言う事だ…出席日数は心配いらん。仕事だからな、頼んだぞ」

ライドウ「--はい」

新聞部 部室

萌香「えっ…ライドウ…鳴海さんの事務所に行くの?」

ライドウ「--ああ--」

胡夢「ライドウが行くなら、私も行く~」

紫「私もですぅ!鳴海さんに会いたいですぅ」

ギン「鳴海さんの事務所って東京やろ?別嬪さんが仰山居るんやろうな~」

心愛「ど、どうしてもって言うなら、私も行ってあげても良いわよ」

瑠妃「……残念だけど、外出許可が出ているのは、ライドウさんだけなのよ」

胡夢「えっ!?」

萌香「えっ!じゃあ…私たちは…」

瑠妃「お留守番ね」

「えーーっ!!」

胡夢「いやー!私も絶対いくんだからー!」

紫「落ち着いて下さぁい」

みぞれ「納得いかん」

萌香「そんな……」

ゴウト『やれやれ、遊びに行く訳ではないんだぞ…』

ライドウ「----」

バス停

運転手「…準備はできたかね?」

瑠妃「はい!バッチリです」

運転手「ヒヒヒ…あんたに聞いたんじゃあ無いんだがね……まあ、いい…出発するぞ」

ライドウ「---ああ」

トランク内

胡夢《大丈夫…気付かれてないわ…それにしても、瑠妃さんだけズルいわ!生徒の管理だの理由つけて…》

萌香《それは、仕方ないじゃない。それより、こんな事して大丈夫なのかしら…》

みぞれ《一緒に乗り込んだ癖に…良い子ぶるな》

萌香《そ、それはぁ…》

紫《バレなきゃ平気ですぅ》

心愛《ちょっと!アンタたち静かにしなさいよ!》

ギン《お前が一番うるさいわ…》



運転手「…着いたぞ」

ライドウ「----」

筑土町

運転手「ヒヒヒ…着いたぞ」

萌香「へ~…ここがライドウの住む町なのね…素敵な町ね」裏萌香『まあまあの町だな』

胡夢「本当!本当!観光が楽しみ~」

瑠妃「ええ、そうね………って、えぇぇぇ!どっ、どうして!?」

ライドウ「----」

紫「やっと着いたですかぁ…辛かったですぅ」

ギン「狭っ苦しい所に居ったからな…俺も体が痛いわ」

心愛「本当よ!!あんな所は、もう御免だわ…」

みぞれ「そうだな…ライドウと一緒なら歓迎だが、お前たちとは二度と御免だ」

瑠妃「紫ちゃんまで……ちょっと~!どういうことなのよ」

運転手「ヒヒヒ…面白そうだったからな…乗せてしまったよ」

瑠妃「そんなぁ」

胡夢「まあまあ、もう到着したんだから……ね?」

みぞれ「そうだな。諦めろ」

瑠妃「あなた達ねぇ……」

ライドウ「----」

ゴウト『付き合いきれんな…』

萌香「ちょっと?ライドウ!?先に行かないでよぉ~」

鳴海探偵社

鳴海「よっ!おかえり」

燦【おかえりなさい。ライドウちゃん】

ライドウ「---ただいま--」

萌香「お邪魔します。お久しぶりです、鳴海さん」

鳴海「えっ、萌香ちゃん……」

胡夢「お邪魔しま~す!鳴海さん元気してた?」

紫「お邪魔するですぅ!あっ…鳴海さん!お元気ですか」

鳴海「紫ちゃんまで…」

みぞれ「邪魔するぞ…」

心愛「へぇ…なかなか素敵な場所じゃないの」

瑠妃「大人数で押し掛けて、すいません…」

鳴海「おいおい…」

燦【ライドウちゃん…この人たちは?】

萌香「ライドウちゃん?」

胡夢「ちょっとライドウ!誰よ!この娘」

燦【わたしは……】

ギン「邪魔するでぇ……え?……燦先輩!!なんでここに!?」

燦【えっ?ギンちゃん】

鳴海「ん……燦先輩…?」

ゴウト『おい、まさか燦の奴……』

ライドウ「----」

鳴海「陽海學園って事は…もしかして…燦って【妖】なの?」

燦「ど、どうして…」

ギン「燦先輩が……喋りおった」

鳴海「ん?…あー、そう言えば人前では喋らないな、二人きりの時には喋るんだが」

ギン「えぇっ!」

胡夢「ちょっと…全然話が見えないんだけど」

萌香「結局、誰なんですか?」

心愛「誰?この娘…中学生?」

紫「可愛いですぅ」

ギン「阿呆んだらぁ!燦先輩はな、俺が一年の時の三年生で新聞部の部長を勤めてた…お前らの大先輩やっ!」

胡夢「えぇぇぇぇ!この人が!?」

みぞれ「し、信じられんな…」

瑠妃「そうは見えませんね」

鳴海「しかし…燦が【妖】だったとはね」

燦「隠していて…すいません…話しても、信じて貰えないと思って……それに」

鳴海「それに?」

燦「鳴海さんに怖がられて…追い出されたくなかったんです……勝手…ですよね」

鳴海「燦……」

鳴海「いや、それはもういいよ…御覧の通り『妖』自体は、知ってたし。ただ…燦は俺より強いんだろ?なのに秘書とはなぁ」

燦「すいません…」

鳴海「冗談だよ、悪かったな。燦は秘書が似合ってるよ。こいつらと違ってお淑やかだしな!ははは」

ライドウ「---そうですね--」


胡夢「ちょっと!どういうことよ!ライドウまで」

燦「鳴海さん…ライドウちゃん」

鳴海「だから辞めるなんて言うなよ?看板娘に辞められたら困るしな。それに……家族みたいなもんだしな」

燦「な…鳴海さん……」

鳴海「これからもよろしく頼むな。燦」

燦「…はい!」


ギン(よかったな……燦先輩)



燦【ライドウちゃんは『人間』なの?】

ライドウ「--はい」

萌香「そうですよ。ここにいる、みんなが知ってます。だから、みんなでライドウを守ってるんです」

胡夢「なに言ってんのよ!逆にライドウに守って貰ってるんでしょ!?萌香なんて毎回じゃない」

萌香「それは…」
裏萌香『恥ずかしい限りだな』

心愛(は、初耳だわ…ライドウさんが人間…じゃあ、私…もしかして人間に負けたのぉっ!?)

燦【そうなんだ。素敵だね。ライドウちゃん】

みぞれ「ライドウちゃん…」

ギン「ライドウ!どういうことや!?燦先輩とどういう関係なんや!?」

ライドウ「---仕事の先輩です」

紫「燦先輩は、部の先輩にもなるわけですねぇ」

みぞれ「見事に共存しているな…」

瑠妃「そうね…素敵だと思うわ」


鳴海「ごほんっ!まぁ、燦の事は解決したとして……
ライドウ、本題に入るぞ…黒外套の男の事だ」

ライドウ「---はい」

萌香「黒外套の男…?」

とりあえず此処までっす。

鳴海「半年前、お前と戦った、黒外套の男だが…素性が判明した…」

ライドウ「---」

胡夢「えっ……ちょっと!鳴海さん…ライドウが戦ったってどういう事!?」

萌香「ライドウ…」

燦【私も初耳です……】

鳴海「胡夢ちゃんたちはともかく、燦には言ってなかったな…ライドウは探偵業務とは別の…ある組織から、帝都防衛の責務を負ってるんだ」

燦【組織……帝都防衛…ですか?】

鳴海「ああ、その組織はヤタガラスって言うんだが、日本國を護るのを使命としている。そして、俺とライドウは、そのヤタガラスの一員だ」

燦「!」

鳴海「隠していて悪かったな…まっ、ここはお互い様って事で勘弁してくれ」

燦【わかりました。ただ、あまり無茶な事は止してね、ライドウちゃん】

ライドウ「---はい」

瑠妃「それより、黒外套の男って何なんですか!?」

鳴海「ああ、悪い、話が逸れたな…黒外套の男の正体だが…
名前は…藤咲 雅 」


ライドウ「---藤咲---雅」

鳴海「ああ、その藤咲雅…貿易業を営んでいる男なんだが…………
結論から言うと、奴は『妖』か『悪魔』のどちらかだろう」

ライドウ「---やはり」

鳴海「過去の経歴を辿ってみたが、七年程遡ると、存在した痕跡自体が見当たら無かった」

胡夢「うーん…それは間違いなく人間じゃないわね」

瑠妃「ですね」

鳴海「その雅だが…近々、とある『ぱあてい』に参加するとの情報を得た」

ライドウ「--ぱあてい--ですか」

>>243 修正

鳴海「ああ…その藤咲雅…貿易業を営んでいるんだが、結構羽振りが良くてな…
あ~…そうじゃないな。結論から言おう……奴は『妖』…然も……相当に黒い奴だな」

ライドウ「----」

鳴海「奴が公に現れたのが、凡そ七年前…それ以前の経歴は謎で、出生届など生きてく為に必要な、諸々の書類物が全て出鱈目。この時点で人間じゃないな……それに…」

萌香「それに?」

鳴海「『ヤタガラス』から聞いたが、人間社会で生きる『妖』は、社会で生きる為の必要書類を申請して、用意してもらうんだってな?」

燦【はい。私は、學園に用意して貰いました】

紫「私は、お母さんが用意してくれたですぅ」

鳴海「うん…紫ちゃんは直に申請して貰い、燦は學園を通して申請して貰った。
どちらも同じ機関が発行してるんだけど…実は、その機関って言うのが『ヤタガラス』関連の組織なんだよ」

胡夢「えぇぇぇぇぇ!?」

萌香「そうなの?ライドウ」

ライドウ「---初耳だ--」

鳴海「俺も最近知ったんだよ。學園長の御子神さんとヤタガラスは、昔から繋がっていた訳だな」

ゴウト『成る程な…』

瑠妃「學園長が……驚きだわ」

鳴海「藤咲雅は人間じゃない…そして、社会生活に必要な書類が用意できない『妖』って訳だ。
まっ…『悪魔』と一緒に居たり、ライドウの先代を知ってる時点で堅気じゃないがな」

鳴海「それで、ライドウ…実は、お前を呼んだのは、雅の正体の報告だけじゃないんだ」

ライドウ「---なんですか」

鳴海「藤咲雅が、とある『ぱあてい』に参加するとの情報を得た……だから、お前には、その『ぱあてい』に潜入して貰いたい」

萌香「えっ!?ライドウぱあていにいくの!?」

ライドウ「---『ぱあてい』--ですか」

鳴海「そうだ。表の顔の付き合いだろうな…ただの金持ちの集会さ…」

ライドウ「---」

鳴海「会場の潜入方法だが…金玉屋の爺さん知ってるだろ?
あの爺さん、ああ見えて金持ちでな、こういった集会に招待されるんだけど、毎度腰痛で断ってるらしくてなぁ…」


萌香(金玉屋///)
裏萌香『金玉屋…馬鹿め///』

胡夢(ちょっと!金玉屋って…///)

紫(いやですぅ///)

みぞれ(…///)

ギン(金持ちの爺さんが営業しとる金玉屋……あはは)

心愛(き…金玉屋なんて…不潔よ///)

瑠妃(はあはあ……ライドウさんが…金玉屋///)


ライドウ「---鳴海さん--続けて下さい先」

鳴海「あ、ああ…それで、爺さんの浮いた招待券を譲って貰ったんだよ」

ライドウ「---そうですか」

ギン「ライドウ一人で『ぱあてい』にいくんかい!?」

鳴海「ライドウ一人じゃないんだがな……爺さんの代理も一緒だ。爺さんの玄孫で、確か名前は……えっと…芳芳君だ!」


ライドウ「--芳芳--」

鳴海「芳芳くんは、腰痛が激しく、毎度出席できない爺さんの代理らしい…金玉屋の爺さんも腰痛とは大変だよな……ははは」

ライドウ「---鳴海さん--」

鳴海「なんだ?」

ライドウ「---金王屋ですよ--」

鳴海「……あぁ、そう言えばそうだったな…名前が似てるから、自分で言ってて違和感なく気付かないんだよな…」

燦【全然、違います!初めて聞いても、普通の人なら違和感を感じます!】

萌香「……」
裏萌香『……』

胡夢「……」

紫「……」

みぞれ「……」

心愛「………」

ギン(なんや、ちゃうんか…残念やな)

瑠妃(えっ?えっ?玉じゃないの…)


鳴海「悪い悪い…そう言う事だから、金玉……金王屋の爺さんたちに挨拶しておけよ」

ライドウ「---わかりました--」

とりあえずここまでっす。

金王屋前


ゴウト『今更だが…俺も玉だと思っておったわ』

ライドウ「--ゴウト--どうでも良い--」


店内

「お~ライドウ、久しぶりじゃな…『ぱあてい』の件かの?」

紫より更に背の小さな高齢の店主が、座布団の上に胡座をかいて座っていた

ライドウ「--はい--招待券--有難うございました」

「ええんじゃよ、どうせ腰痛で行かんかったしな。それより、お主が出張ると言う事は……何か事件か?」

ライドウ「--ええ---」

「そうか…なら、芳芳の奴に気をつけるよう言……おほぉ~!!ライドウの後ろに美少女たちが!!」

金王屋主人が、ライドウの後方へ飛び跳ねる

胡夢「いや~ん!なによぉ…このお爺ちゃん………いきなり飛び付いて何処触ってんのよ!」


「ほっほっほっ…随分立派な物を持っておるのぉ」

ライドウ「------」

「ふむ…お主らは、ライドウの學友か……」

胡夢「そうよ!助平爺!なんか文句ある!?」

萌香《ちょっと胡夢ちゃん…》

「アカーシャ…!?お主が何故ここに!」

萌香「え?…アカーシャは、私の母ですけど……お母さんを知ってるんですかっ!?」

ライドウ「---」

ゴウト『なぜ金王屋の店主が……まさか』

「古い知り合いでな……それで、アカーシャは元気にしておるのか?」

萌香「わかりません……行方不明なんです。七年前から…」

「な、なんじゃと!?」

ライドウ「---」

「ロザリオで人格をな……居なくなった時の事を覚えとらんのか」

萌香「はい…なんだか、記憶が曖昧で」

(ロザリオの封印のせいじゃな……)

「ふむ…そうか。アカーシャの事、力になれず、すまんかったの」

萌香「い、いえ。そもそも、母が理由で来たわけではないですから……お母さんの昔の話が聞けて良かったです」

「それなら良かったわい」

胡夢「……さっきから一体なんなのよ!?お爺ちゃん何者よ!?」

「わしか?すまんすまん、名乗っておらんかったの…わしは東方不敗。アカーシャの友人じゃよ」

ギン「と…東方不敗やてぇ!?」

瑠妃「御子神理事長と同じ『三大冥王』の一人……」

胡夢「えぇぇぇぇ!そうなの!?」

心愛「この助平爺が……!?」


東方不敗「そこのお嬢ちゃんが言った御子神とわし…萌香の母親のアカーシャ・ブラッドリバーの三人じゃな」

瑠妃「あのアカーシャが、話してた萌香さんの母親だったんですか!?」

東方不敗「そうじゃよ」

萌香「……」
裏萌香『………』

ライドウ「---店長が---『妖』--」

ゴウト『やはり…』

東方不敗「なんじゃライドウ……ヤタガラス…鳴海の奴から聞いとらんのか?」

ライドウ「--はい」

ゴウト『あいつ……』

東方不敗「全く……符や香を扱っとるんじゃから、気付いても良いと思うんじゃがのぉ…それに……普通の人間なら『ヴィクトル』の奴に地下なぞ貸さんわい」

ライドウ「--確かに--」

ゴウト『それはそうだな』

東方不敗「じゃろ?」

萌香「ヴィクトルって誰ですか?」

東方不敗「気にせんでええ…ただの変人じゃ…」

胡夢「変人って…」

東方不敗「ところでライドウ、『ぱあてい』の同伴者は誰なんじゃ?鳴海か?」

ライドウ「--いえ---一人の予定です--」

東方不敗「一級品の食事や酒がタダなのに勿体無いのぉ…」

ライドウ「---仕事ですから--」

東方不敗「仕事なら尚更同伴者は必須じゃな。同伴者の居ない来賓なぞ目立つぞ?」

ライドウ「----」

東方不敗「萌香たちは候補に連れて来たと思っとったんじゃが…」

胡夢「はいはい!なら、私が同伴するわ!」

萌香「あっ!ズルい胡夢ちゃん!私だって…」

紫「私も行きたいですぅ!」

みぞれ「私しか居ないだろう。喧しいお前たちじゃ無理だ」

ギン「なに言うとんねん!ライドウは仕事やろ!お前らじゃ役に立たんわ!……俺にしとき(別嬪さんが居るんやろぉなぁ~)」

心愛「わっ……私は…興味ないけど…選んでくれたら……ついて行ってもいいわよ」

瑠妃「私が……」


東方不敗「それで、じゃんけんの結果…萌香に決まった訳じゃな」

萌香「はい!よろしくねライドウ///」

ライドウ「---ああ--」

胡夢(くそ~…私も絶対『ぱあてい』いってやるんだから)

萌香「あの~芳芳…君の同伴者は誰なんですか?」

東方不敗「ん?芳芳なら姉の鈴鈴が同伴する。……少々変わっておるがの」

萌香「変わってる?」

東方不敗「まあ、心配する必要はないと言う事じゃ」

萌香「はあ」

東方不敗「それより…わかってると思うが一応『ぱあてい』じゃからな。燕尾服…タキシードにドレス着用じゃからな?」

ライドウ「---わかってます」

萌香「そっか…私もドレス着るのかぁ…それよりライドウのタキシード!楽しみだな」
裏萌香『私は剣道の授業限定……男子以外は見れないと言う學帽の下が見たいがな…』

胡夢「腕組んだりするんでしょ…もう~!」

東方不敗「『ぱあてい』は明後日じゃ。しっかり用意しておけよ」

ライドウ「---はい」

ぱあてい当日

ライドウと萌香の二人は、華やかな會場の広間に立っていた

萌香「本当にライドウ、タキシード似合ってるね」
裏萌香『然し…この様な場所でも學帽を外さないとはな……』

ライドウ「---そうか」

「いたいた…ライドウさん!」

萌香「あっ」

ライドウに声をかけてきたのは…先日、顔合わせをした。東方不敗の玄孫、黄 芳芳だった。

芳芳「いや~待っていたよ。ライドウさん…タキシード素敵だね///」

萌香「ふ…芳芳君?」

ライドウ「----」

芳芳「どうしたの?ライドウさん」

「芳芳…お主が少し気色悪いから、反応に困っておるのじゃよ」

芳芳「ね…姉さん」

現れたのは燕尾服とは程遠い服装の芳芳の姉、鈴鈴だった。

萌香「鈴鈴さん……ここでも、その格好なんですね」

鈴鈴「ん?儂はキョンシーだからな。反省はせんぞ?儂は既に死んでおるゆえの」

萌香「は…はは」

ゴウト『まさか姉が既に死んでいて、然もキョンシーだったとはな……こいつが目立つせいで、お前たちの正装…無意味にならんか?』

ライドウ「---かもな--」

萌香「鈴鈴さんの格好って…目立ちませんか?」

芳芳「あ~…それなら大丈夫だよ。周りは常連さんばかりだからね。姉さんの格好は見慣れてるから誰も気にしないよ!」

萌香「そ、そうなんだ…」

胡夢「ちょっと!ライドウ何処よ~!」

みぞれ「静かにしろ。探すのはいいが…ライドウに話しかけるような馬鹿な真似は止せよ」

紫「え~!なんでですかぁ!?」

胡夢「馬鹿ですって~!私が魅惑の術で他の客から招待券掠めたからアンタ達来れてんに!」

みぞれ「……ライドウは潜入してるんだぞ?目立つ真似をしてライドウの邪魔をする気か?」

胡夢「うっ……」

紫「そう言えば…」

瑠妃「まあまあ、落ち着いて…私たちはライドウさんたちに何かあった時、直ぐ力になれるよう、近くで待機してれば良いじゃないですか」

ギン「そうや…仲間なら…もぐもぐ…事情を尊重して……黙って……別嬪さんや…耐えんかい」


心愛「そうね……美味し……私も……コレも……お姉……もぐもぐ……耐えてるんだからね」

みぞれ「お前らは飯が食いたいだけだろう…一名は追加で女か」


胡夢「わかったわよ~…静かにしてるわよ」

みぞれ「ああ、そうしろ」

ライドウ「----」

萌香「どう?見つかった?」

ライドウ「-----!」
萌香の問に、首を横に振ろうとした瞬間…ライドウの視界に壁に寄しかかり、煙草をふかす藤咲雅の姿が目に入った…

雅「ん?…ふふ」
同じく、ライドウに気付いた雅が、不敵な笑みを浮かべつつ、ライドウたちの下へとゆっくり近付いてきた。

雅「ライドウじゃないか……そう警戒するな。こんな會場で暴れる訳にはいかないだろ?」

ライドウ「---お前には関係ないんじゃないのか」

雅「ふふ…ボスが厳しくてな、そう言う訳にはいかないんだよ…」

ゴウト『ボスだと…』

雅「組織の元締めの事だよ。業斗童子」

ゴウト(こやつ…!)

ライドウ「---組織だと」

雅「組織の事は北都や霧亜から聞いてるだろ?」

ライドウ「---お前の目的は國を護る事なのか--」

雅「私は國を護るとか言うのには興味が無いがね」

ライドウ「---何故だ」

雅「質問ばかりだな…まあいい。私とボス……理由は一致していないが目的は一致していると言う事だ」

ゴウト(どういう関係なのだ…)

雅「それより、周りの子は陽海學園の御學友かな?」

萌香「……っ」

雅(アカーシャ…!…違う、有り得ない…そうか……やっと見つけたぞ)

萌香「な……何ですか?」

雅「君はアカーシャの娘の赤夜萌香君だね?」

萌香「!…どうしてそれを!?」

雅(やはりな、ロザリオが反応を隠しているんだろうな…それで気付かなかったか)

ライドウ「--萌香--コイツと話すな」

雅「私は質問に答えたのに随分手厳しいな…」

ライドウ「----」

雅「まあいい、私はそろそろ帰らせて貰うよ」

ライドウ「---待て--」

雅「なんだ?パーティーが終わった後、人混みの中で決闘か?……お互い面倒だろ?じゃあな」

雅は霧の様に消えていった…

鈴鈴「全く隙が見当たらんかった。何者か知らんが只者ではないの…」

芳芳「あれが黒外套の男……」

萌香「藤咲…雅」

ライドウ「-----」

胡夢「御手洗いって何処よ~?」

紫「広くてわかりませ~ん」

心愛「歩いてれば見つかるでしょ」

「あれぇ……もしかしてぇ…心愛じゃない!?」

心愛「えっ!?………なっ……何で…ここに」
突如後方から心愛に声をかけてきた、金髪褐色の美女…
その姿を目にした心愛が震えだした

胡夢「ちょ…ちょっと!?アンタどうしたのよ…知り合い?」

紫「綺麗ですぅ」

ギン「別嬪さんやなぁ」

心愛「あの人は…朱染刈愛……上から二番目…私の姉さんよ」

瑠妃「心愛ちゃんの…お姉さん?」

胡夢「えぇ!?」

みぞれ「あまり似てないな…」

刈愛「そちらの人たちは心愛のお友達なの?……いつも妹が御世話になっています」

瑠妃「あっ…こちらこそ」

心愛「どうでもいいわよ!…刈愛姉さんが…どうしてこんな所にいるのよ!?」

刈愛「え?私?御手洗いの場所がわからなくて迷子になっちゃったの…」

胡夢「うっ……変わってんのね」

心愛「とぼけないで……姉さんは仕事以外に外に出ない……今日は誰を殺す仕事なの?」

ギン「なんやて…」

刈愛「もう!心愛ったら…私だって普通に外に出るわよ!今日は、ある組織にいる男性の同伴で来ただけなんだからね!」

心愛「…ある組織って?」

刈愛「え?『御伽の国』って組織よ。朱染家が全面的に協力しているの」

心愛「朱染家が…!?……じゃあ……」

刈愛「ええ…『亞愛姉さん』も一緒よ」

胡夢「亞愛姉さん?」

心愛「亞愛姉さん…私たちの長女よ……刈愛姉さん…その『御伽の国』って何をする組織なの?」

刈愛「え~っと…確かぁ……」

「おい、刈愛。何をしてる」

刈愛「あっ…雅さん!」

胡夢「雅…!?」

心愛「雅って…」

刈愛「あっ心愛!この人が私の同伴者の藤咲雅さんよ」

瑠妃「藤咲雅ですって!?」

胡夢たちは目の前の男が藤咲雅と分かり、戦闘の構えをとった

刈愛「ど…どうしたのよ~!みんなして…心愛まで!」

心愛「……刈愛姉さん」

雅「これはどういう事かな?」

胡夢「どうもこうもないわよ!アンタはライドウの敵の藤咲雅でしょ!」

雅「成る程ね…まあ落ち着けよ」

みぞれ「落ち着ける訳ないだろ…」

雅「ライドウとは會場で会ったが、もう少し冷静だったぞ?」

紫「ライドウさんと会ったんですかぁ!?」

雅「ああ、立ち話を少々な…」

胡夢「立ち話しただけだって言うの?」

雅「ああ…お互い人混みで暴れるのが嫌だったんでな……戦闘の気配なんて無かったろ?」

紫「うーん、確かに…でもライドウさんなら一瞬で終わらせられそうな気もしますが」

ギン「こいつは……あのライドウが仕留め損なった相手やろ?それは流石に無理ってもんや」

雅「理解してくれたかな?そう言う訳で今日は退散させて貰うよ」

心愛「待って『御伽の国』って何なの!?」

雅「ライドウにでも聞け……行くぞ刈愛」

刈愛「あっ…はい。じゃあね、心愛」

心愛「待って!刈愛姉さん…」

雅と刈愛は、心愛たちの前から消えていった

胡夢たちは會場のライドウたちと合流した

萌香「刈愛姉さんが……」
裏萌香『刈愛姉さんに……亞愛姉さんだと……』

鈴鈴「朱染亞愛か…こいつは厄介じゃの」

芳芳「姉さん知ってるの?」

鈴鈴「まあな…腕は超一流だが無関係な人間もお構いなしの冷酷な殺し屋…裏社会の嫌われ者として有名じゃ…」

胡夢(裏社会…鈴鈴さんって)

心愛「冷酷で孤高…そして強さ。亞愛姉さんは絵に書いたようなバンパイアよ。私たち姉妹でも飛び抜けてるんだから」

みぞれ「なんだかヤバそうだな」

紫「まあ…ライドウさんが居ますから」

鈴鈴「人間に頼るとは情けないの」

胡夢「あんたライドウの強さ知らないから言えんのよ!バンパイアの裏萌香をボコボコにしたギン先輩を瞬殺できるんだからね!」

ギン「ほんま…勘弁してくれ……」

裏萌香『くっ……』

心愛「ライドウさんって……お姉さまより強いの!!」

芳芳「凄いな~ライドウさん///」

瑠妃「だから安心よ。ねっ!ライドウさん?」

ライドウ「----」

瑠妃「無視!無視って…御褒美なの?ライドウさん///」

心愛(この人マトモそうに見えて……そんな訳ないじゃない)

ゴウト『『御伽の国』か…厄介な相手になりそうだな』

ライドウ「---ああ---」

瑠妃「え///」


「「「「え?」」」」

とりあえずここまででつ。

>>259 修正

胡夢「立ち話しをしただけですって…」

雅「…ここは一目につくからな…わかるだろ?」

胡夢「そんな事……信用できるもんですかっ!!」

心愛「駄目っ…!」

胡夢は心愛の言葉に耳を貸さず、雅に飛びかかった

胡夢「う……」

紫「く…胡夢さん!!」

胡夢の腹部を刃が貫いていた…

ギン「胡夢…!」

刈愛「もう~!何でわかってくれないのよ!」

瑠妃「何…あれ」

刈愛の右腕が異質な刃へと変貌していた

心愛「変化よ…刈愛姉さんは、バンパイアの変化能力を使って体の一部を武器に変えたの」

みぞれ「バンパイアはそんな事も出来るのか?」

心愛「バンパイアは変化を嫌うから余り知られてないけどね……
それでも、あんな事が出来るのは、変化能力がズバ抜けてる刈愛姉さん位だわ」

紫「それより胡夢さんがぁ!!」

ギン「出血が酷い…早よ手当てせなあかんっ!」

みぞれ「よくも胡夢を……」

雅「阿呆か?そいつから仕掛けて来たん……!」


突如、雅の左腕が銅から離れ宙を舞う…
後ろからの衝撃に、振り向く雅の頬へ白黒の拳がめり込み、心愛たちの後方へと吹き飛ばす……
一方、動揺する刈愛を雅の腕を奪った『影』が襲う……
『影』は刈愛の隙を見逃さず、瞬時に強烈な逆刃を側頭へ当て、雅の下へと吹き飛ばした……


紫「ら…ライドウさんっ!!」


ライドウ「----」

ドアマース「久しぶりだなぁ~糞外套ゥ!久々の私の拳はどうだぁ?」

裏萌香「お前たち大丈夫か!!」

みぞれ「裏萌香…何で…?」

裏萌香「強い妖気を感じてな……事前にロザリオを外して貰ったんだ」

心愛「お…お姉さま…刈愛姉さんが」

裏萌香「ああ……わかってる」

芳芳「なんだよ、あの男…今日は黙って帰るんじゃなかったのかよ」

鈴鈴「甘いの芳芳…約束を交わしたのは儂たちであって、この娘たちでは無い。
それに広間は目立つが、ここは一目につかん。隙あらば潰す…戦の常套手段よ」

紫「萌香さん…この方たちは一体…」

裏萌香「こいつらが東方不敗の玄孫たちだ」

鈴鈴「自己紹介をしとる暇は無いみたいじゃの…」

刈愛「痛ぁぁぁい!も~う!何な……あれ?萌香ちゃん?」

ゴウト『立ち上がるか…』

裏萌香「刈愛姉さん……」

刈愛「久しぶり~!会いたかったよ!……あれ…?でも萌香ちゃん……何で…その人たちと居るの…?」

雅「敵だからだよ」

ドアマース(この野郎…やっぱりピンピンしてやがったか)

刈愛「え?」

雅「萌香は敵だ」

刈愛「そんな…嘘…」

ギン「ライドウ!胡夢ちゃんの容態がヤバい…急いで治療せんと」

ライドウ「--直ぐ--終わらせます」

雅(…アカーシャから萌香へ移された『私の血』を奪い返したい所だが……今は難しいか)

刈愛「萌香ちゃん…心愛…もう嫌ぁ!!」

裏萌香「不味い!刈愛姉さんが…泣いた」

瑠妃「ど…どうしたんですか?」

心愛「優しい性格の刈愛姉さんは性格が邪魔して戦いで本気を出せないの……」

みぞれ「あれでか」

裏萌香「涙を流すのは涙と共に心を捨てる為…感情を無くし本気になった刈愛姉さんは……相手が死ぬまで止まらない」

雅「止めろ…刈愛」

刈愛「……」

裏萌香「っ!…来るぞっ!!」

「何をしている…」

雅「!」

刈愛「!」

ライドウ「----」

ゴウト(こ…この男は!)

現れたのは、白のタキシードを着込んだ男だった。
オールバックの白髪、同色の長い揉み上げとオールドタッチの顎髭、年齢は、中年以上、初老以下。がっしりとした体躯をし、背丈も横幅もライドウを上回っていた。

刈愛「あ…あ」

裏萌香(刈愛姉さんが正気に戻ってる…!?…それにしても…あの男…)

立ってるだけの男から圧倒的な威圧感が放たれる。

「妙な気の流れを感じて来てみれば…その腕は何だ?」

雅「その少年にね…流石は『ライドウ』って事かな」

「その少年が『ライドウ』か…何代目だ?」

ライドウ「---十四代目--葛葉ライドウ」

「ほぉ、もうそんなになるか」

ライドウ「---ヤタガラス---いや、この國に仇なす者と見た」
白髭に刀の切っ先を向ける

「若者は結論が早いな。君と目的は同じだよ」

ライドウ「---戯言を--」
男に斬りかかろうとしたライドウをゴウトが制止した。

ゴウト『止めろライドウ…この男の正体なら知っている。この男は………ヤタガラスだ』

ライドウ「---何っ!?」

裏萌香『どっ…どうした?ライドウ』

「その猫、業斗童子か?」

ゴウト『そうだ』

「今は猫に魂を封じられているのか、ふふっ、最後に儂と会ったのは大山椒魚であったな」

ゴウト『あの躯は動かしにくかったな』

ライドウ「--ゴウト--知り合いなのか?」

ゴウト『何世代もの昔、何度か会ったことがある』

ライドウ「---誰なんだ?」

ゴウト『……極めて稀な、ヤタガラスが家紋を与えた人物だ。ヤタガラスが分身と認めた、或いは息子としてか…どちらにしろ『サイガ』は正統な分家。そうだろう……雑賀魔護壱よ』



ライドウ「---雑賀----魔護壱」

ゴウト『以前…そこの藤咲雅は、『魄霊』を襲う『悪魔』と行動を共にしておった…』

雑賀「……」

ゴウト『更には、護国などとほざき、目的の一つ『魄霊』を狙い、多くの『妖』と『人間』を、破滅寸前までに追いやった、金城北都は雅と同じ組織だと聞く…。まさかこの様な下衆共の一味とは言うまいな……雑賀よ』

雅「ふふふっ…、下衆とは随分な言われようだな。一味どころか、その雑賀魔護壱こそが……私たちのボスだよ。業斗童子」

ゴウト『!!…やはり…!』

心愛「なっ…なんですって!?じゃあ…こいつら『御伽の国』に協力してる、お母さんや亞愛姉さんは『人間』の配下になったっていうの…」

ライドウ「---『御伽の国』--」

黒萌香「待て…!心愛っ!今なんて言った!?亞愛姉さんだとっ!?」

心愛「うん……こいつら『御伽の国』に…『朱染家』が全面協力してるって……亞愛姉さんも…刈愛姉さんが言ってたわ…」

裏萌香「なんだと…あの…人間嫌い…いや…人間を激しく憎んでいる亞愛姉さんが…!?護国だと…有り得んっ!」

雅「驚く事はないさ…あいつ等は、雑賀や本当の目的を……知らないんだからな」

裏萌香「なにっ!?」

雅「私の『眷属』である、北都や霧亜は全てを知っているがね…」

ライドウ「--どういう事だ---お前は護国に無関心と言ったな---だが北都はそう見えなかったぞ」

雅『私や霧亜は護国ではなく『助かりたい』だけだからな……まあ、北都は元人間だからか、『眷属』にもかかわらず、雑賀の思想に賛同してるようだがな…ふふ」


ゴウト(『助かりたい』…どういう事だ)

裏萌香「貴様が姉さんを騙したのかっ!!」

裏萌香は怒りの感情を込め、雑賀を睨みつけた…

雅「私だよ。雑賀は締めにしか関心がないのでな…面倒な仕事は私がやるんだよ」

瑠妃「大勢の『妖』を騙す事が面倒ですって…!?」

ギン「クズが…!」

雅「酷い言われようだな……だが『御伽の国』の表の顔を知っても、そう言えるかな?」

みぞれ「表の顔…?」

雅「そう……騙された連中…どんな理由で集まったと思う?……『妖の国の設立』……『人間社会の転覆』……要するに『この國の人間の抹殺』だよ」

ライドウ「--!」

裏萌香「なっ……なんだとっ!!?」

雅「無知とは怖いものだ…そんな事は不可能だというのに……仮に出来たとしても儚く消えるだろう……馬鹿が怖いもの知らずとは本当だな!はっはっはっ…」

心愛「あんた…!」

ライドウ「---」

雅「ライドウ…ヤタガラスの君に、何か不満があるのか?危険な『妖』共を一つに纏めてやったんだ……感謝してくれよ」

裏萌香「こいつゥ…」

刈愛「あ…あの…雅さん…先程から……話が…良くわからないんですが……こちらの……男性は…?……私たちの司令は……お母様では?」

雑賀「………」

雅「ん?ああ…殆ど一緒に行動してるから、気付かなかったよ。お前も知らないんだったよな」

刈愛「え…?え…?」
雅の言葉に刈愛は困惑を深める

雅「先程言った事は、事実だよ。お前の母親…玉露はボスじゃない……そこに居る雑賀がボスだ」

刈愛「じゃ……じゃあ……お母様は…?」

雅「玉露か……少し前……あいつの千里眼紛いの力によって、色々感づかれてしまってね。五月蝿かったんで……殺したよ」

裏萌香「っ…!?」

心愛「うそ…お母さんが…」

刈愛「え……」

雅「まあ、遅かれ早かれ『御伽の国』の連中は『魄霊』にして、糧にする手筈だったから問題はないがな…」

ゴウト(魄霊に…糧……まさか!?)

裏萌香「…『魄霊』だと!それに『糧』?…亞愛姉さんはどうした!」

雅「亞愛?あいつなら無事だよ…今の所はな…」

裏萌香「今の所だと…」

雅「そうだ…亞愛は、私の『正体』を知っているが、『目的』の方は知らんからな…」

裏萌香「お前の『正体』だと?」

雅「…あいつが『御伽の国』に協力しているのは、朱染家の命令じゃない……」

心愛「えっ…?」

雅「…亞愛は『人間社会の転覆』など興味がない」

心愛「なら、どうして亞愛姉さんが、あんた達の組織に居るのよ!?」

雅「亞愛の目的は『私の監視』……それと、赤夜萌香…『君を守る』為だよ」

裏萌香「!?一体どういう事だ!」

雅「言ったとおりだよ。今、この建物の周りを彷徨いてるんじゃないか?まあ…雑賀の張った結界が破れず、狼狽えてるんだろうがな…ふふふ」

裏萌香「亞愛姉さんが近くに……何故だ……」

雅「萌香…君は私を見て、何も感じないのか?」

裏萌香「?」

雅(封印の影響か…『親の仇』の顔も忘れるとはな)

裏萌香「どうした?黙りこんで?何が言いたい?」

雅「なに、私と君は…昔、一度だが、出会っててね。君に忘れられて傷心してたのさ」

裏萌香「何っ!?」

雅「然し、あの小娘には一本取られたよ。探していた君が、學園に居たなんて…あの騒ぎで、行方知らずになり…反応が消えたので、てっきり国外に逃げたと思っていたよ。まさか、反応が消えたのはロザリオが原因とは…亞愛も行方を知らないと思っていたが、知っていたんだろうな…」

刈愛「お母様が…そんな……」

雅「ん?ああ…刈愛、すまない。萌香たちとの話で、君を忘れてしまっていたよ」

刈愛「雅さん…嘘ですよね?お母様が…死んだなんて?」

雅「悪いが…嘘じゃないんだ。だが、安心しろ…直ぐに玉露の下に送ってやる」

雅は、そう告げると、自身の右腕を、無数に枝分かれする触手に変化させ、刈愛の全身を貫いた。

小娘「ねっ…姉さん!」

刈愛「ああ…なんで?」

雅「液状変化できないからか?何だかんだ言っても、お前は、ただのバンパイアだからな」

刈愛「うっ…うう……」

裏萌香「刈愛姉さんっ…!」

雅「私が相手では無理だ。諦めるん…!」

刈愛を貫く、右腕が弾け飛ぶ……

惨状を前に、凍り付く場を、一発の発砲音が溶かした…

雅「ライドウ…!」

ライドウ「----」


雑賀魔「ほう…」

>>269の修正や

雅「然し、あの小娘には一本取られたよ。長年探していた君が、まさか學園に居たなんてな…あの時の騒ぎ以降、行方知らずになり、反応が感じられなかったから、てっきり国外に逃げたと思っていたよ。まさか、反応が消えたのは、ロザリオが原因とは…亞愛も行方を知らないと思っていたが、知っていたんだろうな…」

刈愛「お母様が…そんな……」

雅「ん?ああ…刈愛、すまない。萌香たちとの会話で、君を忘れてしまっていたよ」

刈愛「雅さん…嘘ですよね?お母様が…死んだなんて」

雅「悪いが…嘘じゃないんだ。だが、安心しろ…直ぐに玉露の下に送ってやる」

雅はそう告げると、自身の右腕を、無数の触手に変化させ、刈愛の全身を貫いた…

心愛「ねっ…姉さん!」

刈愛「ああ…なっ…なんで?」

雅「液状変化できないからか?何だかんだ言っても、お前は只のバンパイアだからな」

刈愛「うっ……うぅ……」

裏萌香「刈愛姉さんっ!」

雅「…私が相手では無理だ。諦めるん…!」

刈愛を貫く右腕が吹き飛んだ……

惨状を前に凍り付く場を、一発の発砲音が溶かした…

雅「ライドウ…!」

ライドウ「----」


雑賀「ほう…」

雅「刈愛は君の敵だろ?わざわざ敵の女を助けるとは…十四代目は随分と甘い男だ……」

ライドウ「--関係ない--」

ライドウは雅に続けて発砲する

雅「ぐっ!」

ゴウト『阿呆が…ライドウを前に余所見し、得意げに女と会話してるからだろう…隙があれば撃つ…当然だろう』

雅「…ふふ、成る程。甘いのは私だった訳だ」

雑賀「もう良いだろう…行くぞ」

この騒動を黙って見つめていた雑賀が、口を開く

雅「そうだな…すまないな。待たせてしまって」

ライドウ「---逃がすと思うか--」

雑賀「己の本分を見誤るな…若きライドウよ。君はその才能を磨き、近い将来に訪れる…強大な敵に備えるのだ」

裏萌香「近い将来に訪れる…強大な敵?」

「-関係無い」
ライドウは、腰に携えたムラマサを抜くと、前方の雑賀めがけて、一直線に駆けていった。

雑賀「ふふ、問答無用か、若いということは素晴らしいな」

二人の間に障害物はない。ライドウは雑賀の目前に迫っていた。

雑賀「---遅いな」

雑賀の右腕が持ち上がり、指さされた。

ライドウ「---っ!」

ライドウは遥か後方へと飛ばされる。
見えない衝撃がライドウを襲った。

みぞれ「ラ…ライドウ!」

雑賀「同じ、ヤタガラス…目的は同じだ。殺しはしない」

裏萌香「まさか…ライドウが…」

雑賀「だが、その若さ故の蛮勇を示されても困る。しばらくは静かにしていてもらおう」

ゴウト(今のはなんだ…音も光もない、ただ凄まじい圧力だけが襲う、あれは………氣の塊か)

雑賀「帝都防衛の結界が臨界点を越えるまでだ」

ゴウト(やはり!雑賀の目的は…)

鈴鈴「帝都防衛じゃと…お主、一体何を考えておる?」

雑賀「言葉の通りだよ…行くぞ」

雅「ああ、わかった。まぁ、仕方無い…この場は大人しく退散しよう」

雅は名残惜しそうだったが、雑賀の命に従い、共に去っていった

芳芳「き、消えた…」


雅「折角、『邪魔』が消えたのにな…」

雑賀「ふふ、その躯で、お前の宿願とやらは、果たせたのか?」

會場から消えた二人は、街燈が少なく、人通りのない、薄暗い路上を歩いていた

雅「念願を前にして、失念してたよ。そう言えば、肝心の私が、この様だったんだな…全く、葛葉の武器は治り辛くて困る」

雑賀「治る迄待った所で、その頃には、ライドウが目覚める…難儀な事だ」

雅「なんだ…助けてくれないのか?」

雑賀「お前の個人的な問題だ。興味はない」

雅「ふふふ、冷たい主だな。まあ、今回は、萌香の所在が分かっただけ良しとするか」

「あらあら、無様な姿ね、誰にやられたのかしら?」

二人の前に、一人の少女が姿を現す、街燈の光に、うっすらと映し出しされたのは、艶やかな黒髪に、整った顔立ち、全身黒の制服を身に纏う、黒衣の少女だった

雅「ん?…お前は」

「今なら、簡単に殺せそうね」

雅「……そんな無様な私を見て、千載一遇と判断したか……亞愛」

亞愛「………」

雑賀「知らぬ顔だな」

亞愛「初次対面、私は朱染亞愛。請多関照」

雑賀「朱染亞愛か、覚えておこう」

亞愛「多謝~」

雅「朱染亞愛…『御伽の国』に協力している、朱染家の一員であり、私の孫娘でもある…」

雑賀「この少女は、お前の孫か…」

亞愛「……」

雅「発育は悪いが、いい歳だぞ?少女とは呼べないな」

亞愛「煩い!人が気にしてる事をっ!」

雑賀「元気が良い娘だ。然し、お前は随分と孫に嫌われておるようだな」

亞愛「違う違う、私、別に嫌ってないよ」

亞愛は屈託のない笑顔で、雑賀の言葉を否定した…

亞愛「ただ、この男が、私の大切な人…萌香に危害を加えようとするから……殺すだけ」

雅「実の祖父より、腹いの妹……そんなに萌香が大事か、薄情な孫娘だな」

>>274 早速修正や

雑賀「知らぬ顔だ」

亞愛「初次対面、私は、朱染亞愛。請多関照」

雑賀「朱染亞愛か、覚えておこう」

亞愛「多謝~」

雅「朱染亞愛…『御伽の国』に協力する、朱染家の一員であり……私の孫娘でもある」

雑賀「ほう…この少女は、お前の孫か」

雅「少女?ふふ、ガキ臭いナリだが、いい歳だ…少女とは呼べないな」

亞愛「うっ、煩いっ!人が気にしてる事をっ!」

雑賀「元気が良い娘だ。しかし、お前は随分と孫娘に嫌われておるようだな」

亞愛「違う、違う、お爺ちゃん。私、別に嫌ってないよ」

亞愛は屈託のない笑顔で、雑賀の言葉を否定した

亞愛「ただ、この男が、私の大切な人、萌香に危害を加えようとするから………殺すのよ」

亞愛の顔から笑みが消え、冷血な殺し屋の素顔へと変わっていった

亞愛「ん?」

亞愛が、その場を立ち去ろうとする、雑賀に気付く…

亞愛「ちょっと、お爺ちゃん、何処へいくの?」

雑賀「何処へ?帰るのだよ、君たち家族の問題に、儂がとやかく言う事は無いのでな」

雅「おいおい、孫とは言っても、命を狙われてるんだぞ」

雑賀「お前の個人的な事に興味はない、先ほど言ったであろう」

雅「ふ、手厳しいな」

亞愛「呀~…お爺ちゃん。残念だけど、そう言う訳にはいかないのよね」

雑賀「何故かな?」

亞愛「お爺ちゃん、その男の仲間みたいだからね。だから、一緒に死んで貰うわ…対不起」

雑賀「ふふ、全く、元気な娘だ」

亞愛「…」

雅「!」

刹那、亞愛は前方の雅へと襲いかかるや、一瞬の早業で切り捨てた。

雑賀「ほう…」

雅の躯は五つに輪切りにされた。

雑賀「ふむ、次元に干渉する類の技か…いやはや見事な物だ」

雑賀は軽く手を叩き、亞愛を賞賛した。

亞愛「多謝!…でもね、お爺ちゃん。誉めてくれて嬉しいけど、次はお爺ちゃんの番なのよ?」

雑賀「ふふふ…、出来るかな?」

>>278 修正や

亞愛「…」

雅「!」

亞愛は前方の雅へ襲いかかるや、一瞬の早業で切り捨てた。

雑賀「ほう…」

雅の躯は五つに輪切りにされた。

雑賀「ふむ、‘次元に干渉する技,か…いやはや、その若さで見事な物だ」

雑賀は小さく拍手し、亞愛を賞賛した。

亞愛「呀~、今の一目で分かったんだ?お爺ちゃん、ただの人間じゃないね?」

雑賀「どうだろうね?」

亞愛「まっ…何でも良いけど……誰であろうとも、この‘次元刀,は絶対防げないからね。」

雑賀「‘絶対,か…ふふふ、出来るかな?」

亞愛『崩月次元刀』

亞愛は瞬時に正面の雑賀へと詰め寄り、右の手刀…崩月次元刀で脇腹を切りつけるが…

亞愛「なっ!?」

亞愛の刀は雑賀を胴切りせず、右脇腹で止まっていた。

雑賀「良い動きだ」

亞愛「ちっ…」

亞愛は即座に後方へ飛び跳ねた。

亞愛「次元刀が効かないなんて……あなた人間じゃないの?」

雑賀「いいや、儂は人間だよ」

想定外の結果に、亞愛は動揺を隠せないでいた。

雑賀「『ヤタガラス』の装備は特殊でな、様々な耐性が施されておる。そう易々と命は穫れんよ」

亞愛「ヤタガラス…?」

雑賀「呆けてる場合ではないぞ?次は儂の番だからな」

亞愛「!」

亞愛(不味いっ‥!)

男の並々ならぬ威圧感を感じた亞愛は、距離にして凡そ五間程後方へと、瞬時に飛び跳ねた。

雑賀「おやおや…随分、遠くに離れたものだ。大した問題ではないがな」

雑賀の腕が持ち上がり、亞愛に向けて指差された。

亞愛(何をするつもりか知れないけど、次元回避の前では…)

その途端、亞愛の視界に映った物は、ビルディングや街灯…全てが上下逆さの景色だった。

「―――っ!」
亞愛の躯が反転し、後方に弾け飛んだ。

雑賀「ほう…まだ意識があるか、バンパイアなだけあって人間より頑丈だな」

亞愛は片膝を付きながらも、辛うじて身を起こした

亞愛「ど…どうしてっ……!?なんで…次元回避がっ……!?」

雑賀「なに、簡単な理由だ……君の次元を‘貫通,しただけの事だ」

亞愛「貫通…何よ…それ……?そんな…そんな事が……人間なんかに…」

雅「現に出来てるだろう」

亞愛「!?」

てす

長々と申し訳…
まだ時間かかります。すいません

ご無沙汰して、すいません。
ちょっと、ごたついてしまいまして…。
秋頃、落ち着くと思いますので、その後、また再開できたらと思います。
すいませんでした。

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