真「『弓と矢』を…ブッ壊すッ!」(1000)
代理
春香「あれ、なんですかこの『弓と矢』?」
春香「あれ、なんですかこの『弓と矢』?」 - SSまとめ速報
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伊織「スタンド使いを生み出す『弓と矢』…」
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康一「ACT3! 3FREEZEを解除…」
普通の人間はおいつめられ 足の骨が砕けそうなら能力を解除しようとばかり考える
だが ジョルノは違った! 逆に!
ジョルノ「いや そんな事はするな! これが『いい』んじゃあないか! 康一くん!」
康一「え?」
ジョースター卿『なにジョジョ? スタンドが魂をつかんではなさない?』
ジョースター卿『ジョジョ それは無理矢理引き離そうとするからだよ』
ジョースター卿『逆に考えるんだ 「あげちゃってもいいさ」と考えるんだ』
康一(死んでる…)
始めます。
伊織「っと…」ヨロッ
伊織(危うく一撃喰らいそうになった…鉄パイプは奪われるし…)
伊織(このスピードなら何されても対応できると思ったけれど…甘かったわ。もうちょっと遠くから攻撃した方がよさそうね)ザリ
FS「距離ヲトッタナ。ソノ分 君ノ『すもーきー・すりる』ノぱわーハ落チル」
伊織「………」
FS「ソノ距離デ 私ニ有効打ヲ与エラレルノカ?」
伊織「………」
FS「ソレトモ、マタ サッキノヨウニ何カ飛バシテクルツモリダロウカ」
伊織「まーたブツブツと…黙ってられないの、アンタ?」
FS「無理ダナ。コレガ私ナノデネ」
伊織「あっそ…」
FS「サテ、君ノ武器ハ コッチノ手ニ渡ッタワケダガ」
伊織「アンタのパワーじゃ大した威力にはならないわよ」
FS「ソウカナ?」
伊織「………」
FS「私ノ考エダト…コノママ振リ下ロセバ 少ナクトモ君ノすたんどデハ受ケ止メラレズ『霧散』スルクライノ『ぱわー』ハアルト思ウノダガ」
伊織「…やってみれば?」
FS「ソウシヨウ」ヒュッ
伊織「『スモーキー・スリル』!」ヒュッ
ガキィ!
FS「!」サッ
伊織「ん!」
FS「何カ ブツカッタゾ…『すもーきー・すりる』ノ手ノ中ニ何カ 握リ込ンデイルナ? 水瀬伊織」
伊織(すぐに手を引っ込めたわ…隙が出来たら掴んで奪い返してやろうかと思ったのに)
伊織(真とは逆ね…スピード自体は大したことないけど、本人の反応速度が早い)
FS「ソラ」パシッ
ブワッ!!
FS「ム…」
伊織「煙の中の『破片』を掴んだところで…意味はないわよ」
FS「ソノヨウダ…掴ンダ瞬間ニ 散ッテシマッタ」
FS「ダガ、コレデ…」ポイッ
ピタッ
・ ・ ・ ・
伊織「撃て、『スモーキー・スリル』」
ドシュゥゥゥゥゥッ
FS「人ガ捨テタモノヲ スグサマ拾ウトハ殊勝ジャナイカ」
ガキャン
FS「ブッ!!」
伊織「言ってなさいよ!」
FS「ォォォ…ウォォ…」
FS「ムグ…」
伊織(すぐに立ち直る…)
FS「ン…私ノ『鉄ぱいぷ』ハドコダ…?」
伊織「『私の』? 元々私が持ってきたもんなんだけど」
モクモクモク
FS「アア…上カ」
ドグシャア
FS「オブッ」ベコッ
ガシッ!
伊織「ちっ!(また掴まれた…!)」
FS「オゴ…グオゴゴゴ…」プルプル
FS「ソレヲ持ッテ行カレルト…少シ困ルナ…」
伊織(こいつ…頑丈すぎる! さっきからダメージを与え続けているってのに、倒れる気配が全くない!)
FS「サテ、コレデ君ノ手ニハ モウ攻撃手段ハナイナ?」
伊織「どこ見て言ってんのかしら? 私が足下に『スモーキー・スリル』を広げてんのが見えなかったの」
スゥーッ
FS「………」
バシュン!! ドシュン
伊織「攻撃手段なんて、別に私が持ってなくても…どこにでも転がってるわよ!」
FS「ソノ攻撃ニモ…飽キテ来タナ」スゥ
ピタッ
FS「…避ケタソバカラ停止サセ…飛バスカ」
伊織「律子の『ロット・ア・ロット』も似たようなことやってたわね…」
伊織「もう一回、喰らえッ!」
ドシュゥゥゥゥン
FS「ダガ、コレモ避ケレバ…」スッ
ヒュン
ガキィ!
FS「ソノ反対側ニハ 撃チ出ス『煙』ハナイ」
伊織「何…!?」
伊織(避けられた…!? さっきは無様に喰らってたくせに…!)
伊織「やっぱりこいつ、強く…なってる…!」
FS「『逆』ダ、水瀬伊織」
伊織「え!?」
FS「私ガ強クナッタ…違ウ、ソウジャアナイ。君ノすたんどガ『弱ク』ナッテイルノダ!」
伊織「わ…私の『スモーキー・スリル』が…弱くなっている…ですって!? な…なんでよ!」
FS「君ハ私ノ質問ヲ拒ンダダロウ!? ソレハツマリ、知ラレタクナイ情報ヲ自分ダケガ 持ッテイルトイウコトッ!」
伊織「…!」
FS「すたんどハ『精神力』ノえねるぎー! 後ロメタイコトガアレバ、当然『弱体化』スルッ!」
伊織「そんな意味があったの…!? なら、あんなんじゃあ割に合わないわ…!」
FS「ソウダナ。アレナラ『倒シ方』トカ『能力』デモ聞クベキダッタナ」
伊織(いや、そんなワケがない…! こんなもん、話術でそうだと思い込ませようとしてるだけよ!)
伊織(確かにこいつの言う通り、『スモーキー・スリル』のパワーは少し弱まっているのかもしれない…)
伊織(だけど、それ以上に…こいつの動きがはっきりと違う! 私の行動に、正確に対応してきている!)
伊織(無駄がなくなっている…! だから、速く感じるんだわ…!)
FS「シカシ、『すもーきー・すりる』…すたんど自体ハ ホトンド無敵カ…」
伊織(あいつの性能そのものが上がっているわけじゃあない…近づかなければ…いずれ、倒せるはず…)
FS「ヤハリ…本体ヲ狙ウ他ナサソウダナ」
伊織(何かないの、何か…)キョロキョロ
FS「ナァ、水瀬伊織?」
ピシッ ピシ…
伊織(…! あの事務所の二階辺りのあの壁…)
伊織(こいつを、あれの下におびき寄せれば…)
FS「返事クライ シテクレルト嬉シイノダガ」ノロッ
伊織(いえ…簡単ね…あいつは真っすぐこっちに向かってくるだけだわ)ザリ…
FS「………」ピタ…
伊織「…? ど、どうしたのよ? 急に立ち止まったりして」
FS「水瀬伊織…君ハ何カヲ企ンデイルナ…表情デワカル」
伊織「…!」
FS「マァ、ソレガ何カハ ワカラナイノダガ」
伊織「ふ…ふーん…」
伊織「じゃあ、そこで立ち止まってるつもり?」
FS「イヤ…今ノハ単ナル確認ダ」
伊織「え?」
FS「君ガナニカヲ企ンデイル…ソレヲ ワカッタ上デ、アエテ! 私ハソレニ カカル」
ドドドドドド
伊織「………」
ドドド
FS「君ガ『何ヲシテモ無駄』ダト ワカレバ…」
ドドドド
FS「私モ、モウ少シ楽ガデキルカラナ」ザッ
伊織「そう…」モクモクモク
バラッ
FS「ヌッ!」
伊織「だったら、喰らえッ!!」
FS(コレハ…菊地真ノ攻撃デ入ッテイタ ひびヲ『すもーきー・すりる』崩シ落シタノカ)
ガラララララ バッギャァン
パラ…
伊織「やったか…?」
…………
FS「………ナルホド、コレヲ狙ッテイタノカ…」ムクッ
パララ…
伊織「………」
FS「今ノハ流石ニ効イタゾ、水瀬伊織…」
FS「デ、次ハドウスルノダ?」
パラパラ…
伊織「………」
伊織「無理ね」クルッ
FS「ムッ!?」
ダッ
FS「逃ゲルノカ、水瀬伊織」
伊織「うっさいわね、逃げて何が悪いのよ! 文句言うならさっさと倒れなさい!!」
FS「逃ゲルナラ 逃ゲルデ構ワナイノダガ…」
FS「萩原雪歩ノタメニモ、早メニ始末シテオキタイノモ事実ダ」
FS「ウム…ヤハリ 逃ガスワケニハイカナイカ…」
FS「ト、言ッテモ…ソノ先ハ塀ダ…逃ゲ道ナド アリハシナイガナ」
伊織「知ってるわよ、そんなこと」クルッ
FS「!? ナンダ、コッチニ向カッテキテ…逃ゲルノデハナカッタノカ?」
伊織「逃げるわ。ただし、上にだけど」
伊織「飛ぶために距離が欲しかっただけよ。アンタに攻撃するためだけに穴を空けたと思ってんの?」
FS「何?」
伊織「『スモーキー・スリル』!」モクモクモク
クッギューン
FS「アノ穴ニ飛ビ込ムツモリカ…? 届カナイダロウ」
伊織「だっ!!」ガッ
伊織(一発で登ることは出来ない…けど、一度壁の出っ張りに手を引っかければ…)
モクモク…
ギュンッ
スタッ
伊織「よし、成功…」
FS「ヨク ヤル…」
FS「アアヤッテ 本体トすたんどガ力ヲ合ワセ行動スルノハ、少シ羨マシクモアルナ」
FS「萩原雪歩ノタメ 行動スルコトニ不満ハナイガ」
伊織(一つ確かめたいことがある…)
伊織(こいつは、私の居場所をどうやって判断しているの?)
伊織(目ならそれでいい…だけど、何か…別のものを認識して追いかけて来ているとしたら…)
伊織(あいつが事務所の中に来るには、表の方の事務所の入り口か、私の割った窓からか…)
伊織(どっちにしろ、登ってくるまでは時間がある)
伊織(その前に、事務所のどこかに身を隠さなくては…)
ガシ! ガシ!
伊織「…ん?」チラ…
FS「逃ガサンゾ…」ガシ! ガシ!
ピタ… ガシッ
伊織(壁を…トカゲが地べたを這いずり回るようにして登ってくる…!!)
ゾゾゾ ゾゾゾゾ
伊織(気持ち悪っ…!)
伊織(いや、それより…すぐ登ってこられちゃ隠れる時間もないわ!)
伊織「『スモーキー・スリル』! 突き落とせッ!」ブワッ
FS「フン、来ルカ…」
バフッ!
FS「ダガ上カラ押サレタ程度…」
グイッ!!
FS「…ン?」
プワァ…
FS「アア…壁ノ方カラ押シ出セバ…突キ落トスノニ、ソコマデ 力ハイラナイノダナ」
モクモクモク
FS「ヌゥゥッ!」バタバタ
伊織(なんだったかしら、これ…見覚えあるわね…)
伊織(海外のアニメーションでよくある、落ちそうなのに空中で足ばたつかせて踏ん張ってるシーンみたいな…)
伊織「人のスタンドにいつまでもしがみついてるんじゃあないわ、消えなさい」
フッ…
FS「ウォォォォォ」ヒュゥゥゥ
ドサァ
伊織(さて…どこの部屋に行こうかしら)
………
ガシ!
FS「フゥ…今度は突キ落トサレナカッタナ」
FS「サテ…」キィィィィン…
FS「…ム? オカシイナ…」キョロキョロ
FS「他ノ『すたんど使い』ハ何人カ確認デキルガ…ドノ部屋ニモ 水瀬伊織ガイナイ…」
FS「一階ニ行ッタノカ…? ワザワザ登ッテオイテ」
FS「降リルカ…私ニ床ナド関係ナイシナ…」ズッ
スゥーッ
ドサッ
FS「ドコダ…? 水瀬伊織…」キョロキョロ
FS「ン…」キィィィィン…
FS「アノ部屋…室内ニ『煙』ガ充満シテイルナ…扉カラモ 煙ガ漏レテイル…」
FS「何ノツモリダ? 誘ッテイルノカ水瀬伊織」
ガチャ
ブワァ!!
FS「コノ中ダナ、水瀬伊織」
シィン…
FS「ヤハリ 返事ハナシカ」
FS「『煙』デ ヨク見エンナ…」
ズ…
FS「ソコカ?」キィィン
ダダダダ
FS「ム! ………」ピタ…
FS「何カト思エバ 衣装用ノまねきんカ…」
キィィン…
カシャ
FS「ソッチカ」ドドド
伊織「………」
FS「今度ハ間違イナイヨウダナ。何ガシタイノダ? 水瀬伊織」
FS「『すもーきー・すりる』ヲ集中サセタラドウダ。コノ密度デハ私ノ攻撃スラ防ゲマイ」
伊織「………」
FS「マタ何カ企ンデイルノカ? マァ、ナンデモイイガ…喰ラエ!」
ヒュッ
ブワッ
FS「ムゥッ!?」スカッ
スゥ…
FS「コレハ…水瀬伊織デハナイ!」
FS「マサカ、『すもーきー・すりる』ニ像ヲ映シテ…ソンナコトモ デキルノカ!」
フワ…
ゴォッ
FS「ゲフッ」ガキィ!!
ドギャン
FS「コレハ…サッキノまねきん!? ソッチカ!」バッ
FS「…イヤ、違ウ…『すもーきー・すりる』ナラバ ドコカラデモ物ヲ飛バセル…」
FS「ドコダ…水瀬伊織…」キョロキョロ
?「ふーん…アンタ…」
FS「!」
バタン!!
伊織「私のこと、特別な何かで判断してるワケじゃあないのね。目とか…あるいは耳とか、ごく普通のものからしか情報を受け取れないのか」
FS「ろっかーノ中ニ…」
伊織「扉はスタンドで閉められるけど、それよりこんな狭いとこに体を押し込む方が苦労したわ」
FS「『観察』…シテイタノカ、私ヲ」
伊織「ええ、そうよ。アンタと同じようにね」
スタッ
伊織「こうして見る分には、人間とほとんど変わらないわね。見た目くらいで」
FS「ダッタラ、少シクライ手加減シロ。君ハ容赦ガ無サスギル」
伊織「無理ね。アンタ、『頑丈さ』だけは人間離れしてるから」
伊織「『スモーキー・スリル』」ズ…
グラグラ
ズズズズ…
FS「オイオイ…ソノろっかー、全部私ニ叩キツケルツモリカ?」
伊織「いちいち聞かないとわからないの?」
FS「ダロウナ」
ドヒュゥ!!
FS「オブッ」ドバギャ!!
伊織「らぁッ!!」ドドドドドババ
ガシャ ガシャ ギャン
FS「アガガガ…グゥッ、ウゥゥ…」
伊織「ふぅ…」
ドドドド ドド
ゴソッ
・ ・ ・ ・
FS「クハァ…」ガラッ
伊織「これでも駄目か…どんだけ痛めつけられりゃあ気が済むのよ、アンタは!」
伊織「いいわよ。アンタが立ち上がってくるなら、何度でも叩きのめしてやるわ」
FS「ハァー…ハァー…」
伊織「何…? 向かってこないの」
FS「イヤ…君ノ言ウ通リ、私ハ『頑丈』ナバカリデ弱イカラネ…」
伊織「………」
FS「私ノ『すぴーど』デハ君ヲ捕ラエルコトスラ困難ダ…ダカラ、ドウシタモノカト考エテイル」
ズボッ
伊織「…!!」
ブワァ!!
伊織(こいつ、ロッカーの瓦礫の中に入り込んでいった…!)
伊織(だが『煙の結界』を張ったわ!! これで動きはわかる!)
シン…
伊織(と…思ってたら…)
伊織(反応がない、結界を張ると同時に奴の動きが止まった…)
伊織(いや、でも…動いてないってことは、そこにいる…ってことよね)
スタスタ
伊織(ロッカーをひっぺがして…そのまま叩き付ける)
伊織「そこっ!」ガシャァ!!
ピクピク
伊織「!」
伊織(これは…腕だけ…)
ズズ…
FS「………」ゴォォォォ
伊織(本体は後ろか、しまった…!)
伊織「なーんて…」クルッ
FS「ム!」
ブチィ!
ヒュルルルル
FS「照明…」
バキィ!!
FS「フグゥ!!」
伊織「焦るとでも思った? この伊織ちゃんが、こんなもんで」
伊織「片腕切り離して、それを囮に不意打ち仕掛けようってワケ?」
FS「グガ…ガギギ…」ピクピク
伊織「なるほど。本体にダメージが届かないなら、腕くらい切っても大したことないわよね?」
FS「………」
伊織「わかってんのよ、アンタの考えてることくらい! この程度で一杯食わせようだなんて思い上がりも…」
FS「イヤ、違ウ 私ノ勝チダ」
・ ・ ・ ・
伊織「は…」
FS「気ヅカナカッタノカ…? 私ノ『手』ガ『片腕』ダケデナク…『両腕』トモナクナッテイル事ニ」
ゴゴゴ ゴゴゴ
伊織「!」
FS「無イ知恵ヲ絞ッテ考エタ策ダガ…上手ク行ッタ」
伊織(両腕…片方はここにある、だったらもう片方は…)
ズビ!
伊織「まずっ…」
伊織(足下から飛び出して来た!)
伊織「『スモーキー…」
FS「無理ダナ、間ニ合ワナイ。コノ『距離』ナラ君ハ止メラレナイシ 避ケラレナイ」
ガスゥ
伊織「うっ…!」
ゴゴゴゴゴ ゴゴゴ
ポト
伊織「…ん?」
FS「決マッタ」
伊織(…は?)
伊織「何よ、痛くもなんともないわ…こんな一撃、喰らわせた程度で…」
ズキッ!!
伊織「うっ…!?」
FS「イイヤ。君ノ負ケダ水瀬伊織」
グラグラ
伊織(頭が…揺れる…まるで『高い所から叩き付けられた』ように…!!)
スパ スパッ
伊織「な…」タラ…
伊織「こ、これ…は…この切られたような傷は…!!」
FS「私ニトッテ 都合ノ悪イモノヲ全テ、持チ主ニ『返ス』」
FS「ソレガ私ノ能力」
ドスゥ!!
伊織「うっ!」
ボコ ボコ ボコ ボコ
FS「君カラノ『だめーじ』…」
伊織「きゃあああああああああああ」
ドッギャァーン
FS「返サセテ、モラッタ」
スタンド名:「ファースト・ステージ」
本体:萩原 雪歩
タイプ:自動操縦型・自立
破壊力:C スピード:C 射程距離:A(ほぼ無限) 能力射程:A(ほぼ無限)
持続力:A 精密動作性:C~無限 成長性:E
能力:スタンドに関することを本体である雪歩から遠ざけるために行動する、存在が「矛盾」したスタンド。
雪歩が春香の手によって「スタンド使い」にされた時の「恐怖から逃れたい」という感情から生まれ、その時の想いが形となり、一人歩きしている。
「自動操縦型」ではあるが、特定の情報に反応する自動攻撃タイプではなく、自分で物事を判断し攻撃する自立思考タイプ。
自動操縦型の割に複雑な動きをする反面、飛び抜けたパワーやスピードは持っていない。しかし、自分で相手の攻撃パターンを「学習」し、どんな相手にも対応していく。
殴ることで、自分に蓄積したダメージを、与えた相手に「返す」。返したダメージは、「ファースト・ステージ」からは消え、回復してしまう。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
開始のネタがもうない…
書けない、投下できない!!さぁ4回以上言ったぞッ!
それは何かの「試練」なのか?
正直な話言われる度に限界を感じるんですが…
エルメェス「うがあああ ああっ あ…」
ド ドドド
取り立て人「大切なモノを…思イ浮カベロ…」
ドドド ドドド
エルメェス「そうだパンティーッ!! パンティーだよ!」
取り立て人「………」
エルメェス「キャー♡ はずかしィィ~もう あげちゃうわッ…あたしのパンティー! 今 ここで直にぬいぢゃうヤツぅッ!」
エルメェス「きゃあァ~~~♡」
取り立て人「また会オウ!」ズギュゥゥン
始めます。
バリ バリ バリ
伊織「うっ、うぐっ!! ぐああっ…!!」
伊織(体に…)
伊織(今までこいつに与えた攻撃が…私に返ってくる…!!)
ドサァ!!
伊織「か、かふっ…」ピクッピクッ
FS「決マリダナ。モウ君ハ立ツコトスラ ママナラナイダロウ」
伊織「ぐあ…ああう…うおお…」ゴロン
FS「………」
伊織「あ…っ、ふあ…があっ…」ビクビク
FS「…少シクライ 口ヲ閉ジタラドウダ?」
伊織「………るさいわね…」
FS「ム?」
伊織「スタンドのアンタと一緒にするな…」ググ…
伊織「それに…いちいち大げさに痛がってるアンタに言われると腹立つのよ…」
FS「…マダ動ケルノカ」
伊織「ん…」
伊織(言われてみれば…あれだけ痛めつけてやったのに…)
FS「マァ頭カラ突キ落トサレレバ 人間ナラ死ヌダロウガ」
FS「私ニトッテハ大シタコト ナイカラナ…」
FS「コノ程度デハ『返シ』テモ 死ヌヨウナ『だめーじ』ニハナラナイ」
伊織(散々痛めつけたのに…この程度…か…)
FS「ソレニ、菊地真ノ時ホド『だめーじ』ヲ受ケタワケデモナイシナ」シュゥ
ゥゥゥ…
伊織「…!」
伊織(このクソッタレの傷が…治っている…)
伊織(考えてみれば、初めからおかしかった…あの真と戦った直後だというのに、こいつは『無傷』だった…)
FS「シカシ…君モ ツイテイナイ」
FS「菊地真ノヨウニ一発デ『再起不能』シテオケバ コレ以上痛イ目ニ遭ワズニ済ンダモノヲ」
FS「マダ立テルノナラ、立テナクナルマデ ヤルダケダ」ヒョイ
FS「コイツデ トドメヲ刺シテヤロウ」
伊織(鉄パイプを拾って…また向かってくる…)
伊織(受けたダメージを、相手に『返す』能力…ですって…!?)
伊織(それってマジに『無敵』じゃない! こんなことが許されていいわけ…!?)
FS「行クゾ」ス
伊織「ちょ…ちょっと待った…!」
FS「………」ピタ…
伊織「雪歩にはスタンドのことは二度と話さないし、巻き込んだりもしない…」
伊織「だから見逃してくれ…ってのは…駄目かしら?」
FS「私ガソレヲ信ジルトデモ?」
伊織「だってそうでしょ…話したらまたあんたが出てくるんだから。するわけがないわ」
伊織「そもそも、あんたのことを知ってたら最初から話そうともしなかったと…そう思わない?」
FS「フム」
FS「悪イガ…」
FS「イヤ悪イトモ思ワナイガ…ソノ話ハ聞ケナイナ」
伊織「………」
FS「ココデ見逃スヨリハ、『再起不能』サセタ方ガ確実ダト思ウノダ」
伊織「あっそ…やっぱり、アンタがこんな話聞き入れるわけがないか」
伊織「いいわ。だったらここで要求を飲んでおけばよかったと、後悔させてやる」
FS「後悔サセテヤル、カ。大キク出タナ」
FS「デ? ソノタメニ君ハ ドウスルノダ?」
伊織「改めて…」ザ…
伊織「逃げるわ」クルッ
FS「ヤハリナ」ガラッ
ボフゥ!!
FS「ム…!」グッ
伊織「『スモーキー・スリル』! 一瞬でいい、こいつを止めろッ!!」
FS「フンッ」ブオン
バフゥ
伊織「うおおおおおおおおッ!!」
伊織(まとわりつかせた『スモーキー・スリル』が一振りで、いとも簡単に吹き飛ばされた!)
伊織(肉体的なダメージも大きいけど…こいつに対抗するための明確なヴィジョンがない!)
伊織(私は、精神力でこいつに負けてしまっている!!)
伊織「でも一瞬! 隙は出来たわ…!」ガチャッ
スッ
バタン
FS「部屋ノ外ニ出タカ…」
フワ…
FS「ム…! 『ろっかー』ガ浮イテ…」
ガン!!
FS「『すもーきー・すりる』デ、外ニイタママ ドアに『蓋』ヲ…」
伊織(『スモーキー・スリル』…ドアを閉めて、ロッカーを引っ張って塞いだ…けど…)
スゥ…
FS「無駄ナコトダナ」
伊織(すぐに通り抜けてくる…壁を作っても無駄…)
伊織(と…そんなことは承知の上よ。本命はこっち…)
モクモクモク
FS「ム!?」
伊織(ロッカールームでわかったけど、あいつは私の『煙』を透視することはできない…)
FS「コレハ…廊下ガ『すもーきー・すりる』デ 埋メツクサレテ…水瀬伊織…!」
伊織(この道は『煙』で真っ白よ! これで、私がどっちに逃げたかアイツにはわからない!)
FS「ワカラナイト…思ウカ? コンナ小細工デ」
コツ コツ コツ
コツ…コツ…
FS(聞コエルゾ…貴様ノ足音ガ!)
FS(視界ヲ封ジタクライデ 私ヲ欺ケルト思ッタカ!)ダッ
コツ コツ コツ
ピタ…
FS(イヤ、待て…音ガ不自然ダ。アノ体デ、コンナニ元気ニ走レルハズガナイ)
FS(コレハ、『すもーきー・すりる』ニヨルふぇいくダ! 水瀬伊織ハ…)
FS「ソッチダ…!」クルッ
ダダダダ…
伊織「………」
伊織「見事…成功ね」スゥ…
伊織「靴を脱いで、『スモーキー・スリル』に運ばせて音を出した…それまでは正解よ、『ファースト・ステージ』」
伊織「だけど、私にとっては引っかかろうが引っかからまいが…どっちでもよかったのよ」
伊織「私は、ロッカールームの前から動いていないわ。灯台下暗しってやつね」
伊織(あーもう、なんでこの伊織ちゃんがこんなセコい真似ばっかしなきゃならないんだか…)
伊織「でも、ま。あっちに行ってくれて助かったわ。これで靴が回収できる、裸足で逃げるなんて耐えられないもの」
キュッ
パチン パチン
伊織「さて、靴も履いたところで…」
伊織(『ファースト・ステージ』の足は結構速い…)
伊織(しかも壁も通り抜けてくる、疲れも知らない…逃げ続けるのは無理ね)
伊織(とりあえず、私にとっては二階の方が選択肢は広い。これから上まで移動するとして…)
伊織(アイツがこっちに気づく前に、なんとかしなきゃだけど…どうする?)
伊織(…貴音)
伊織(貴音は『ファーストステージ』と一度戦っているのよね)
伊織(今、事務所にはいないけど…何らかの対処法を知っているはず…)
伊織「電話しましょうか…」
ピッポッパッ
伊織「もしもし!?」
……
………
貴音『…もしもし』
伊織「貴音! やっと繋がったわ…」
貴音『伊織、どうしたのですか?』
伊織「時間がないから簡単に言うけど…『ファースト・ステージ』…知ってるわね?」
貴音『え? はい、雪歩のスタンドですね。知っておりますが…』
伊織「私は今、そいつに襲われてるわ…あいつをどうにかする方法を知りたい」
貴音『何…!? そんな、馬鹿な…奴はあの時倒した筈…』
伊織「…! 倒したって言ったわね!? 倒せるのね、アイツは!!」
貴音『しかし、また出てきたということは…』
伊織「いいから!」
貴音『…緊急事態、なのですね?』
伊織「そうよ。まず、この場をなんとかしなきゃやられるだけだわ…」
貴音『わかりました。では、奴を倒す方法…それだけ、話します』
貴音『連続して、何度も攻撃を叩き込む…そうすれば、やがて奴は耐えられなくなり攻撃を止める』
伊織「私も、何度もアイツにダメージを与えてやったけど…全然、倒れなかったわ」
貴音『「連続して」、と言うのが重要なのです。一撃ずつでは、何度やっても奴は倒れない』
伊織「…続けて」
貴音『奴に与えた攻撃は、「返す」ための表面的な傷は残りますが、内部の衝撃は時間が経つにつれ勝手に治っていきます』
伊織「なるほど、それでか…アイツがやたら丈夫なのも、私が無事なのも」
貴音『ですから、奴を倒すならば…回復する間もなく攻撃を与え続けることです』
伊織「もし、それができなかったら…」
貴音『ええ。中途半端に攻撃しても「返さ」れてしまうだけでしょうね』
貴音『特に、攻撃を加えている最中に触れられてしまえば…恐らく、逆に「再起不能」にされてしまうでしょう』
伊織「攻撃すれば、それだけアイツの能力は脅威になる…けれど、攻撃をしなければアイツを倒すこともできない…か…」
伊織(だけど、できるの…? 万全ならともかく、今の状態で…)
伊織「わかったわ、ありがと貴音。やられっぱなしってのも癪だし…やってやるわ」
貴音『待ってください伊織』
伊織「え、何?」
貴音『緊急事態…その息づかい、伊織は怪我を負っているのでしょう。一人では危険です』
伊織「わかってるわよ…でも、やよい達は仕事、亜美も姿が見えないし、一緒に戦ってくれそうなのは律子くらいしかいないわ」
伊織「『ロット・ア・ロット』がアレに通用するかと思うと…微妙なところだし、アンタだって今からこっちになんて来られないでしょ」
貴音『ええ、私がそちらに向かうことはできませんが…』
貴音『今、協力者がそちらにいる筈…彼女に連絡しておきます』
伊織「! 協力者って…もしかして、例の『もう1人』かもしれないっていう…」
貴音『はい。きっと、伊織の力になってくれるでしょう』
伊織「何から何まで、助かるわ…貴音」
貴音『彼女か、あるいは…真も今、事務所にいるはずです。伊織が彼女達と強力すれば、奴を倒せるかと思われます』
伊織「……」
伊織「…真…は…」
貴音『? 真がどうかしたのですか?』
伊織「それが…」
FS「見ツケタ」
ゴゴゴゴ ゴゴゴ
伊織「…! 『ファースト・ステージ』…!!」
伊織(もうこんなところまで来ていたのね…話しすぎたか…)
貴音『伊織、今…』
伊織「ええ、見つかった…切るわね」ポチッ
FS「見事ニ騙サレタヨ。イヤ、見事ダ」
FS「シカシ、モウ外ニデモ行ッタカト思ッタガ…コンナトコロニ イタトハナ」
伊織(さて、どうする…)
伊織(こいつにやられた体力は少しは戻ってきたけど、それでこいつを倒せるかと言われると…微妙なところだわ)
FS「誰ト話シテイタ?」
伊織(協力者とやらが私のところに来るまで、どれくらいかかる?)
伊織(今は、時間を稼ぐしかないか…悔しいけど…)
伊織「やよいと真美に、雪歩をボコボコにしてやれって話してたのよ」
FS「何ダト?」
伊織「ここで私の相手をしてるなら、雪歩は無防備よね」
伊織「アンタに攻撃してもあっちには届かないけど…本体の方を徹底的に痛めつけてやれば、多分、アンタも消えるでしょ?」
伊織「気絶させたくらいじゃ消えないみたいだし、どこまで行くかはわからないけど」
伊織「雪歩は仕事中だけど…こっちは命がかかってるんだもの、仕方ないわ」
FS「嘘ダナ」
伊織「………」
FS「私カラ萩原雪歩ノ周囲ガドウナッテイルカハ ワカラナイガ、彼女ニ危機ガ迫ッテイルカドウカハワカル」
FS「ソノタメニ生マレタ存在ダカラナ」
FS「高槻ヤヨイニモ、双海真美ニモ敵意ハナイコトハ ワカッテイル」
FS「デ? 本当ハ、誰ト話シテイタ?」
伊織「…それは、えーと…」
FS「イヤ、言ワナクテイイ。相手が高槻ヤヨイヤ双海真美デハナイノナラ、大体見当ハツク」
FS「双海亜美ヲ呼ンダカ、或イハ四条貴音ニあどばいすヲ求メタカ…ソンナトコロダロウ」
伊織「………」
FS「ドチラデモ 大シテ問題デハナイガナ。ソレヨリ、重要ナノハ…」
FS「嘘ヲツイタ…ワカッテイルナ? 君ガ私ヲ騙ソウトスレバ スルホド、ソレハ正々堂々トハ離レル」
伊織「………」
FS「君ノすたんどハ弱クナルノダ」
伊織「………」
伊織(今、電話が終わった頃だとして…)
伊織(どこにいる…? 来るのに、どれくらいかかる? と言うか、誰なの…?)
FS「何カヲ待ッテイルヨウダナ」
伊織「!」
FS「ヤハリ、双海亜美カ? 『すたーとすたー』デ萩原雪歩ノ下ヘ行クツモリカ」
伊織「…亜美ではないわね、少なくとも」
FS「フム?」
FS(嘘ヲ言ッテイル様子ハナイ…双海亜美デハ、ナイ…?)
FS(水瀬伊織ノ『仲間』ハ、菊地真、高槻ヤヨイ、四条貴音、秋月律子、双海亜美、双海真美ノ6人ノハズ…)
FS(菊地真ハ倒シタ。高槻ヤヨイ、双海真美、四条貴音ハココニハイナイ。秋月律子ナラバ、待ツマデモナイダロウ)
FS(双海亜美デハナイトスレバ、一体…?)
FS(普段ハ萩原雪歩ト同ジ景色ヲ見テイル…戦イガ発生スレバ、見ニ行クコトモアル…何カ、見落トシテイルノカ…)
FS「………」
FS「マァ、イイカ…」カラ…
伊織(来るか…)
FS「誰カヲ待ッテイルノナラ、ソノ前ニ君ヲ倒スダケダ」
伊織「倒す?」
伊織「この伊織ちゃんを? そんな鉄パイプに頼らなきゃならないようなアンタの力で?」
FS「君ガ私ヲ倒スヨリハ、簡単ダロウナ」
伊織「わかってないわね」
伊織「いい? こっちから攻撃しなければ、アンタの攻撃なんて大したことない」
伊織「『パワー』自体は『スモーキー・スリル』の方が上。アンタは私にその鉄パイプを当てることすらかなわないわ」
FS「ワカッテナイノハ君ノ方ダ」
ゴゴゴ
FS「君ガ私ニ攻撃シナイトイウコトハ…」
ゴ ゴゴゴゴ
FS「君ハ、私カラ 一方的ニ攻撃ヲ受ケ続ケルトイウコトダ」
伊織「………」
FS「私ノ体力ガ尽キルコトハナイガ…君ノ方ハドウダ?」
伊織「どうもしないわ。そこまで付き合ってやるつもりもないし」
FS「マダ、私ヲ倒スツモリデイルノカ? ソレトモ、逃ゲル算段デモシテイルノカ」
伊織「ブツブツ言ってる暇があったら、さっさとかかってくれば?」
ドドドド
ドドド ドド
FS「………」グッ
FS「シャァッ」ブン
ゴォッ
伊織「行け、『スモーキー・スリル』!!」
バシッ!!
FS「!」
伊織(できる、さっきのダメージを『返された』直後とは違う…)
伊織(『近距離モード』なら…いける! 奴の振るってきた鉄パイプを簡単に止められたわ!)
FS「オオァッ」ブンッ
伊織「たっ!」バッ
ボフッ!
ググググ
FS「チ…」バッ
FS「堅ク厚イ『煙』ノ壁…カ…!」
伊織「はっ…どうしたの、『ファースト・ステージ』! 私を倒すんじゃあなかったの!?」
FS「…ヤハリ、正面カラ相手ガデキルホド甘クハ ナイカ」スタスタ
ガッ
伊織「ん!?」
伊織(脇に置いてあるベンチの下に…手を突っ込んだ…?)
FS「コノ場所…何カ気ヅカナイカ?」
伊織(何を…この場所って…?)
伊織「ま…」
伊織「まさか…アンタ…」
FS「ソノ、マサカダ。君ト会ッタノハココダッタナ、水瀬伊織」グイッ
真「う…」ズル…
伊織「真…!!」
伊織(ベンチの下に叩き込まれていた真を引っ張りだしてきた…!)
ガッ!
真「ぐお…」
伊織(アイツ、真の背中を踏みつけて…何をするつもり…?)
FS「私ハ今カラ菊地真ヲ叩ク」
伊織「はっ!?」
FS「コノ『鉄ぱいぷ』ヲ…『スイカ割リ』ノヨウニ頭ニ振リ下ロシテナ…」
真「うぐ…」
伊織(何…ですって…?)
伊織「ア…アンタの相手は私でしょ、やめなさいよそんなことッ!!」
FS「アア、ヤメルトモ。私ダッテコンナ真似ヲ シタクハナイ」
FS「水瀬伊織、君ガ身代ワリニナルノナラナ」
伊織「は…」
伊織「身代わりって…真の代わりに、頭を叩かれろって…そういうこと?」
FS「近ヅイテ頭ヲ出セ。叩イタラ コノ足ヲ退ケテヤル」グリッ
真「ぅぁ…」ビク
伊織「………」
伊織「な、何よ、その条件…そんなもん、飲むと思うの?」
伊織「そこまで叩きのめされたのは真が負けたから…自業自得じゃない」
伊織「なんで伊織ちゃんが身代わりにならなきゃいけないのよ、馬鹿馬鹿しい」
FS「代ワルノカ? 代ワラナイノカ?」
伊織「やるならさっさとやりなさいよ。私は代わったりしないわ」
伊織(こんなんでも、雪歩のスタンド…事務所の仲間に、そんなひどいことするわけ…)
ブンッ
キィィィン
真「ごっ…」ビクッ
FS「………」シン…
伊織「…………え」
真「………」
FS「フゥ…」クイッ
伊織「アンタ…今、何した」
FS「見テノ通リダガ」
伊織「何が『見ての通り』よッ! その足をどけろッ!!」
FS「ナラバ、君ガ 代ワッテヤレバイイダロウ? 君ガ飲ンデクレレバ菊地真ハ助カルノダ」
伊織「『ファースト・ステージ』…! アンタ性根まで腐りきってるわ…!!」ワナワナ
真「い…」
伊織「…!」
真「伊織…」
伊織「ま、真…」
FS「ナンダ、マダ話ス余裕ガアッタノカ」
真「何をやっている…逃げろって言っただろ…」
伊織「な、何を…って…アンタ…」
真「ボクのことはいい…構うな…! 代わろうだなんて、考えるなよ…」
伊織「そ、そんな…こと…」
FS「ソウカ。ナラ、オ望ミ通リモウ一回」グオッ
伊織「」
プッツーン
伊織「や…やめろッ!!」ダッ
FS「フ…来タカ」クルッ
ブンッ
バキャア!!
伊織「おぐぉっ…!!」グワングワン
伊織「う…」バタン
真「い…おり…」
FS「綺麗ニ入ッタナ」
FS「コレデ、モウ水瀬伊織…君ノ勝チノ目ハナクナッタナ」
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
読み返してたら2スレ目の>>913と>>915の間が抜けてました…
コツ コツ
伊織(雪歩が『スタンド』という単語を認識できない現象…)
伊織(最初に思い当たるのは『アイ・ウォント』の『五感支配』だけど…)
伊織(雪歩は聞こえないだけでなく見えもしない。二つ以上の感覚が操られていた)
伊織(そもそも春香がやっているのだとしたら、何のために…? 理由がわからない…)
伊織(それに『アイ・ウォント』の能力が届く射程距離は10m程度…)
伊織(仕事中の春香が、事務所にいた雪歩に能力をかけ続けるなんて…そんなことはありえない)
伊織(じゃあ、一体…)
バキャァ!!
伊織「…?」クルッ
伊織「何、今の音は…」
シーン…
伊織「…気のせいかしら」
今回分も…主語抜けすぎですわ
とりあえず目についた日本語として本当にヤバいところ訂正
>>139
>FS「見事に騙サレタヨ。イヤ、見事ダ」
FS「騙サレタヨ。イヤ、見事ダ」
>>141
>伊織「気絶させたくらいじゃ消えないみたいだし、どこまで行くかはわからないけど」
伊織「雪歩を気絶させたくらいじゃ消えないみたいだし、やよい達の攻撃がどこまでエスカレートしていくかはわからないけど」
>>155
>FS「近ヅイテ頭ヲ出セ。叩イタラ コノ足ヲ退ケテヤル」グリッ
FS「コッチニ来テ頭ヲ出セ。君ガ一撃受ケタラ、コノ足ヲ退ケテヤル」グリッ
アヴドゥル「JOJO…こんなことがあった 4か月ほど前…わたしはエジプトの…カイロで」
アヴドゥル「明け方に…目が醒めちゃって…月明かりのさすあそこの窓の鉄格子の形を見てたらなんかその」
アヴドゥル「ついムラムラって だから…で… …その…ふと気づいて顔をベッドから上げたら」
─DIOに出会ったのだ
始めます。
ヒュゥ
ゥゥゥゥゥ…
伊織「………」
FS「約束通リ返スゾ、モウ必要ハナイカラナ」ゲシッ
真「ぐあっ」ゴロン
伊織「はぁー…はぁー…」ガクガク
伊織(あ…頭が…揺れる…)
FS「虫ノ息ダナ水瀬伊織。スグ楽ニシテヤロウ」
伊織「ふー、ふー…」
FS「シャァ」ヒュッ
伊織「ス…『スモー…キー…』」
バフゥ
・ ・ ・ ・
FS「モウ、君ニ私ノ攻撃カラ身ヲ守ル手段ハナイ」
伊織(まずい…目の焦点が定まらない…)
ゴォォォォォ
FS「勝ッタ!」
スッ
キィン!!
FS「!?」
伊織「え…」
真「勝った、だって?」
伊織「え…」
真「寝言は寝て言えよ、この木偶人形が…」
伊織「真…?」
FS「菊地真!?」
伊織(どういうこと…真が立ち上がって、私をかばった…?)
FS「馬鹿ナ…貴様、何故立ッテイラレル…?」
真「ボクがお前にあのベンチの下に叩き込まれてからどれくらい経ったと思ってる?」
真「『返された』ダメージはそこで横になっているうちに回復してるよ」
FS「違ウ、ソンナコトヲ言ッテイルノデハナイ…! 水瀬伊織ト同ジヨウニ、頭ニ一撃叩キコンダハズダ…!」
真「叩き込んだ? よく見なよ」トントン
ギギギギギ
FS「…! 貴様、ソノ頭ニ張リ付イテイルノハ…!!」
真「『チアリングレター』」ギギギ
真「頭のほんの一部に、鎧を集中させた。お前のあんな攻撃、何のダメージにもならなかったよ」
伊織「ま、真…」
真「だから言っただろ、伊織…ボクのことは構うなって…」
伊織「く…」
真「ボクは大丈夫だってのに…飛び出して来てさ…」
真「本当…馬鹿だよ、伊織は…」グッ
伊織「真…」
FS「菊地真…」
真「随分と…」
真「汚い手を使ってくれるじゃあないか、『ファースト・ステージ』。雪歩がお前の事を知ったらどう思うだろうね」
FS「何トデモ言ウガイイ。萩原雪歩ヲ守ルタメナラ 私ハ」
FS「手段ハ選バナイ」
真「………」キッ
ドドド
FS「何ダ、ソノ目ハ…」
FS「私ト戦ウツモリカ? ソンナぼろぼろノ体デ」
ドドドド
FS「君ガソノ怪我ヲ負ノハツイ先程ノ事ダ…忘レタワケデハアルマイ?」
真「忘れた」
FS「ソウカ…」
ドド
FS「ナラ、思イ出サセテアゲヨウ」
ドドドドドド
FS「行クゾ…」グオオ
真「さっさと来い…『ストレイング・マインド』!」ピキ ピキ ピキ
伊織(『チアリングレター』じゃあない、全身鎧の方を…)
FS「シャァ」ブオン
真「オラァッ!!」ビシュ
ガッ!
FS「ム!」
グググ
FS「貴様…武器ノ方ヲ狙ッテ…」ギリギリ
真「オラァ」
キィィィン
伊織(鉄パイプを弾いた…)
真「これで武器はなくなった」
FS「チ…手負イトハ言エ簡単ニハ 行カナイカ」
伊織(…やっぱり…)
伊織(ダメージは相当残ってるんだわ…今までの真なら、あんなもの殴るだけで粉砕してたのに…)
伊織(『固く』したことで、逆に壊せなくなっている)
伊織(『パワー』も『スピード』も全然ない…あらゆるものを一撃でブチ砕く『ストレイング・マインド』が、こんな…)
FS「ウシャァッ」ブオン
真「だっ!」バッ
ガンッ
伊織(両腕を交差させて受け止めた!)
FS「グ…」
伊織(ヤツに『ストレイング・マインド』を砕く『パワー』はない! これなら…)チラッ
真「………」コクッ
伊織(これなら、『協力者』が来るまでの時間は稼げる…!)
FS「ガァッ!」ヒュッ
キィィィン
真「どうした? そんな攻撃で何を思い出させてやるって?」コォォ…
FS「チッ!」ババッ
真「………」ォォォ
FS「………」
FS(菊地真ハ自分カラ仕掛ケテ来ナイ…私ノ『返ス』能力ヲ恐レテイルノカ)
FS(イヤ、時間稼ギカ…? 水瀬伊織ガ呼ンダ援軍ガ来ルマデノ…)
カラン…
FS(『鉄ぱいぷ』ヲ拾イニ行ケソウダガ…)
FS(拾ッテモ、菊地真ニハ通用シナイダロウナ。マタ弾カレルダケダ)
真「ボーッとしてていいのかい? もう向かってくるつもりがないのなら大人しく帰って欲しいんだけど」
FS「フ…」
FS「来テホシイノナラ、望ミ通リ行ッテヤロウ…!」ダッ
ドドドド
伊織「助走をつけて…!?」
真「正面から突っ込んでくるつもりか!」バッ
FS「ウリァ!!」ゴォッ
ドゴォ!!
伊織「真!!」
ズザァァァ
真「だ…」
真「大丈夫だ、伊織」シュゥゥゥ…
FS「…駄目カ」グググ
伊織(大分消耗してるはずなのに…『固く』する能力、伊達じゃあないわね…)
伊織(だけど、気になるのは『ファースト・ステージ』…あんな正面から突っ込んでいって、どうするつもりなの…?)
真「ちょっとは響いたけど…」
真「こっちから手を出さなければ、お前に『ストレイング・マインド』を破る手段は…」
ゴンッ!!
・ ・ ・ ・
FS「グ…カカ…」プルプル
真「…なに?」ビリビリ
FS「ウアッ!!」ガン!
真「うおっ!?」キィィン
伊織(『ストレイング・マインド』に頭を打ち付けてる…!?)
伊織(一体何のため…って…)
伊織(決まってるでしょうが、そんなもん…!)
伊織「真、避け…」
FS「シャァッ」ブンッ
真「うぐっ」ガン
伊織「ちょっ…」
真「うぉ…」ピキ ピキ
FS「頭部ヘノだめーじ…」
真「うわぁぁっ!」ビシッ!!
FS「返サセテ、モラッタ」
ピキィィィン
伊織「真ッ!!」
真「う…」グラッ
伊織「な…何を馬鹿正直に喰らってんのよ! このアホ!」
真「…うるさいな」ピタ
伊織「!」
真「少しヒビが入っただけだ、この程度今更なんともないよ…」ピキ ピキ
FS「ホウ」
伊織(いや、でも…『返す』攻撃には防御は関係ない。その上、『返さ』れてるのはあの『鎧』に打ち付けたばかりの新鮮な痛み…)
伊織(確実にダメージは入っている! 真が反撃できないとは言え、『ストレイング・マインド』を突破された…!)
FS「シャァ」ブオッ
ガンッ! ゴンッ!!
真「ぐ…」ギリッ
FS「モウ一発!」ゴッ
真「がっ…」ビキビキビキ
伊織「…!」
伊織(また、こいつは…あんなに簡単に攻撃を受けて…なんで避けないのよ!!)
伊織(そりゃボロボロだけど、アンタならあの程度避けられない攻撃じゃあないでしょうが!)
FS「『すとれいんぐ・まいんど』デ 反撃シテモイイゾ…」
真「はぁ、はぁ…」
伊織(………)
FS「ソウナッタラ、スグニ『返シ』テヤルガナ!!」ドボォ
真「うぉぉ…」ギリギリ
伊織(いや、違う…私がいるから…)
伊織(後ろに私がいるから、コイツは逃げないんだ…)
真「ぐ…」フラフラ
FS「マダ、私ノ恐ロシサヲ理解シテイナイヨウダナ…」
真「はっ…何が恐ろしさだよ…」
真「お前なんかより、伊織の方がよっぽど恐ろしかった。ボクを倒すために、ビル一つ壊させたんだよ?」
伊織「真…」
伊織(攻撃自体は大したものじゃあない、けど…)
伊織(このままじゃいずれ『再起不能』に追い込まれてしまう!)
伊織「真!!」
真「…なんだよ、伊織」
伊織「アンタ、私に逃げろって言ったわね…」
真「……」
伊織「アンタこそ逃げなさいよ…! 私よりボロボロのくせに…!」
真「ボクは、伊織がやるはずだったことを代わりにやってるだけだ」
伊織「…!」
真「ボクが人質になんて取られていなかったら、伊織だって同じようにこいつを止めていただろ」
伊織「アンタ…」
FS「止メラレルカ? ソノ体デ!!」ゴスッ
真「がぁっ…!!」ピシッ
伊織「…っ」バッ
伊織(見ていられない…)
伊織(だけど、『スモーキー・スリル』でサポートするにも、まだ手が震えている…こんなじゃ…)プルプル
ダムッ
伊織「…?」
ダム ダム
伊織(なんか…聞こえる…何、この音…?)
ダムッ
伊織(近づいてくる…まさか…)
真「はぁ、はぁ…」
FS「ソロソロ、限界カ。ヨクヤッタ方ダナ」
ダム ダム ダム
FS「…?」
ゴ ォ ォ ォ ォ ォ ォ
?「ドラァッ!!」ギュン!!
ズドム!!
FS「オグッ!?」グキ
ドバッギャァァァーッ
真「え…!?」
伊織「は!?」
FS「ウバッ」グラララララ
ズザァァァ
FS「ォ…ォォォ…」ビクビク
シュゥゥゥゥ…
真(なんだ今のは、見えなかった…)
伊織(何かもの凄いものが突っ込んで来て、アイツを轢き飛ばした…!?)
FS「ウグ…ウォォ…」
?「おまえが、『ファースト・ステージ』って奴か?」
伊織「アンタ…」
?「待たせたな! 伊織、真!」
真「キ…キミは…」
伊織「響…!!」
響「ああ! 自分、我那覇響だ!」ピース
真「どうして響がここに…?」
伊織「協力者って、アンタのことだったのね…」
響「うん。たかねに、伊織を助けてくれって言われて来たけど…」チラッ
FS「四条貴音ノ…」ギギギ
響「うわ、こいつ喋るのか…」
FS「我那覇響…効イタゾ…今ノハ」ギギギギ
真「やっぱり、すぐ立ち上がってくるな…」
響「あいつを倒せばいいんだよな?」
伊織「そうだけど、響…アイツの事は聞いてるの?」
響「抜かりないさ。自分を誰だと思ってるんだ?」
伊織「アンタだから心配してんのよ…」
響「心配しなくても」ダムッ
FS「ヌッ!?」
ドシュ!!
バギャゴッ
FS「ゴハァァッ!?」ゴロゴロ
響「わかってるよ、あいつがくたばるまで…」スタ…
響「攻撃し続ければいいんだろ? 簡単なことさ」
響「行くぞ、『トライアル・ダンス』!!」スゥッ
伊織「!」
伊織(うっすらと響の背後にスタンドが見える…)
伊織(何? 本体と一体化するスタンド…?)
ダムッ!
真「飛んだ!」
ダム ダム ダム
FS「ム…」
響「そらっ!!」グッ
バヒュン!
FS「ゴフッ」ドグシャァ
・ ・ ・ ・
ズサササササ
伊織「こっ… ………」
伊織「この人間離れした身体能力! 狭い空間を蹴る事で縦横無尽に駆け巡って、アイツを弾き飛ばしてるのね」ペタペタ
真「…伊織、何やってるんだ? こんな時に携帯なんていじってさ」
伊織「保険。こんな時だからよ」
真「…?」
ダムッ ダムッ
伊織(それにしても速い、速すぎる! 速さだけで言えば、私の見てきたどのスタンドよりも上!)
FS「シカシ…動キハ単調ダ…」フラ…
ダム ダム ダム
バヒュ
FS「ソコダ!!」ゴッ
響「当たるか!」ヒュバ!!
ゴシャァ
FS「グ…グアアアアアア」プラン
真「手を出そうとした『ファースト・ステージ』の腕が真っ二つに折れた…」
FS「グ…馬鹿ナ…」グラッ
伊織(当然よ! 動きが違いすぎる、あんなもの正確性だけで対応できるものじゃあない!)
響「ガンガン行くぞ!!」クンッ
ドシュン! ドシュ! バシュゥン!!
FS「ウガッ、ガフッ!!」ボギャッ ドギャァ
真「うひ…」
伊織(これが…)
伊織(これが響のスタンド…)
ズガガガガ
FS(菊地真ヤ四条貴音ノ攻撃モ 速カッタガ…ソレ以上ダ、コレハ…)ガリガリガリ
ガガガガガガガ
FS(ダガ、ヤハリ単調…)ダッ
響「ん!」キィィッ
真「向こうの階段の方に逃げる気か…! あっちじゃこういう壁を使っての攻撃は難しいぞ」
伊織「響、長引かせると危険よ! とっととブッ倒しちゃいなさい!」
響「言われなくても…」シュゥゥゥゥ…
響「行くぞっ!」ドダダダダダダ
伊織「速っ…」
響「うおおおおおおおお」ダダダダダ
FS「一度…」クルッ
伊織(! 振り向いた…)
FS「一度触レサエスレバァァァァ」グワッ
響「ドラァッ」ビッ!!
ゴォッ!!
真(うはっ、走る勢いを利用して槍を突き出すかのような強烈な蹴り!)
ドグシャア
FS「グ…」
グシュッ
響「ドラララララララララ」ババババババ
グシュ グシュ グシュ
FS「グアアアアアアアアアアア」
ドッパァァァーッ
FS「アアアアアアアアアアア…」シュゥゥ…
ビタッ ドサ ドサ
響「よしっ」キィィッ
伊織「や…」
伊織「やったわ、バラバラになった! これでもうアイツは攻撃できない!」
響「よし伊織、真。今手当しに行くからな!」
伊織(本当はこの伊織ちゃんの手で倒してやりたかったけど…この際、よしとするか)
真「響…ぐっ!」ズキン
伊織「ちょ、ちょっと真…アンタ、相当攻撃食らってたんだからじっとしてなさいよ」
真「だ、駄目だ響…」
伊織「え? 駄目って…何が駄目なのよ」
伊織(響に助けられたくないとか? こいつ、ランク近いのもあって結構にアイツにライバル意識燃やしてるから)
真「伊織、あいつはまだくたばっちゃいない…!」
伊織「え…?」
真「ボクの時もそうだった…ああやって、自分からバラバラになって…」
ピクッ プルプル
真「あいつはやられたフリをしているだけだ、響が危ない…!」
伊織「あ…」
伊織(そうか、アイツは…)
FS「………」モゾ…
伊織(自分の体を切り離せる…!!)ダッ
真「伊織!?」
響「ん…? どうしたの、伊織? そんなに慌てて」
FS「油断…シタナ!」バッ
ドヒュゥゥゥゥ
響「え…」クルッ
響(あいつの腕が、腕だけが自分の方に飛んで来た…!?)
FS「私ハコレクライノ『だめーじ』ナラ、耐エラレルガ…」
FS「君ノ方ハドウカナ、我那覇響!!」
ゴゴゴゴ ゴゴゴ
響「ト、『トライアル…」
FS「間ニ合ウカ! コノ傷、貴様ニ『返シ』テヤロウ!!」
ドシュゥゥゥウ
伊織「いえ。それは不可能よ『ファースト・ステージ』」
FS「何!?」
ドゴォ
響「えっ!?」
伊織「ぐっ…」ググググ
FS「水瀬伊織…!!」
伊織「がっ!!」ドサァッ
響「い、伊織…なんで自分をかばって…」
真「馬鹿な、伊織…」
真「そんな体で、あのダメージを受けきれるわけが…伊織ィィィッ!!」
伊織「うっさいわね…」ムクッ
真「えっ!?」
伊織「『ファースト・ステージ』…」
伊織「腕だけの割には、いいパンチじゃない。腰でも入ってるの?」
FS「貴様…」
響「ぶ…無事だ、伊織は…」
真「いや、それだけじゃない…『ファースト・ステージ』の傷が回復していないんだ…!」
響「と…」
響「とにかく、あいつの『返す』能力ってのは伊織には効かないんだな!?」
真(いや、そんなはずはない。伊織がここに来るまでに追っていた怪我、あれはあいつの能力によるものだ)
真(だったら、何故『ファースト・ステージ』の『返す』能力が発動しない…?)
伊織「『質問』、いいかしら? 『ファースト・ステージ』」
FS「………」
伊織「あんたは響から受けたダメージを私に返すことができる?」
FS「………」
伊織「答えはNO。アンタに与えたダメージは、与えた本人にしか返せない」
真「!」
伊織「響から受けたダメージを私に押し付けることはできない…そうでしょう?」
FS「………」
伊織「できるなら、あんたはとっくにそこらの壁にでもダメージを押し付けてるはずなのよ」
FS「………」
伊織「だんまり? ま、答えなくても結果はハッキリしてるけど」
響「伊織…」
伊織「響でも駄目か…これ以上は近づくのすら危ないし」
伊織「こうなったら最終手段を使うしかないわね。やれやれだわ」
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
今回結構長引いてるんで来週の更新分で終わらせたい
余計なことかもしれないが、今までに出たスタンドを簡単にまとめてみた※順不同
()内は元になったであろう曲
春香:アイ・ウォント(I Want)1スレ目>>125
性能:近距離パワー型・人型
相手の五感を支配し、奪い取ることが可能。嗅覚や聴覚は相手に触れずとも発動し、視覚に関してはスタンドを見せるだけで良い。
真:ストレイング・マインド(迷走mind)1スレ目>>177
↓
S.Mチアリングレター(チアリングレター)2スレ目>>505
性能:近距離パワー型・装着
スタンドを全身に纏い戦い、触れた物を『硬く』する。→全身だけでなく、一点に装甲を集中出来るようになった
伊織:スモーキー・スリル(Smoky Thrill)1スレ目>>253
性能:
煙の様な形の無いスタンド。
応用性が高く、拡げるか一点に集中させるかによって性能が変化し幅広い戦い方が出来る。兎のような外見にするのがお気に入り。
千早:ブルー・バード(蒼い鳥)1スレ目>>421、>>502
↓
B.Bインフェルノ(inferno)2スレ目>>864
性能:近距離パワー型・標準
触れた物の重量を『奪い』、『分け与える』事が出来る。奪った重量は自分に加算されるが、72は72のままである→温度を操作する能力へと変化した。温度変換と熱転移の2種類の温度操作能力を持つ。
あずさ:ミスメイカー(Mythmaker)1スレ目>>361
性能:近距離パワー型・標準
攻撃を当てた対象を91秒で眠らせる事が出来る。既にカウントが始まっている場合、カウントが早く進んでいく。
眠らせたものはその機能を停止し、能力の解除と共に再び動き出す
亜美・真美:スタートスター(スタ→トスタ→)2スレ目>>299
性能:近距離パワー型・発動
亜美と真美がそれぞれ1つずつ持っており、2体で1組のスタンド。
触れた物や自分自身をもう1方の元へワープさせる事が出来る。
貴音:フラワー・ガール(同名)1スレ目>>821
性能:近距離パワー型・標準
体内のカロリーをスタンドのパワーとして使うことが可能であり、故に通常とは桁違いの出力が可能である。
しかし、燃費は悪く、スタンドを出しているだけで本人のエネルギーは消費されていく。
響:トライアル・ダンス(TRIAL DANCE)2スレ目>>103
性能:特殊型・憑依
生物に取り憑き、身体能力を大幅に上げるが、その反面思考能力は低下する。
響自身に取り憑いた場合、その能力は100%引き出され、超スピードでの戦闘を可能にする。
やよい:ゲンキトリッパー(同名)1スレ目>>546
性能:遠隔操作型・分裂系
物体にスタンドが触れる事によって物体同士をくっつける事が出来る。
スタンド自体は小さな粒が細胞のように固まっている集合体である
律子:ロット・ア・ロット(いっぱいいっぱい)1スレ目>>749
性能:遠隔操作型・群体系
小箱のような小型スタンドを操作出来るスタンド
小型スタンドには、麻酔液が詰まった個体とカメラで本体に映像を送る個体の2種類がある
美希:リレイションズ(relations)2スレ目>>789
性能:近距離パワー型・標準
殴った対象をロックし、狙った相手は逃がさないスタンド。
攻撃の軌道はロックに引っ張らせるように向かわせる事が出来る。
雪歩:ファースト・ステージ(First Stage)このスレ>>70
性能:自動操縦型・自立
自立思考タイプであり、学習する事によりどんな相手にも対応していく。
殴ることで、自分に蓄積したダメージを相手に返す。返したダメージはスタンドから消え、回復してしまう。
スレ汚し&間違っている所があったらすまない
まーた間に合わん、1時間延長で
あと二回分とか言いましたが無理っぽいです
3時ですが最後まで終わらん
ので、残りは投下して支援待ちながら書きます
始めます。
真「さ…」
響「最終、手段…? なに、それ」
FS「マダ、何カ企ンデイルヨウダガ」グ
グオッ
響「うおっと!」タッ
伊織「危なっ…」
FS「君達ノ中デ戦エルノハ我那覇響ダケ…ソレモ、一撃与エレバ終ワリダ」
FS「ドンナ策ガ アルトシテモ、ココカラ私ヲ倒スナド 無謀トシカ思エンガナ」
伊織(こいつをどうするか…)
伊織「悪いけど『ファースト・ステージ』、もうアンタに構ってる暇はないわ」
FS「何?」
伊織「響、真、走るわよ!」クルッ
響「え、でも…」
真「どうするつもりだ、伊織?」
伊織「いいから、さっさと着いてなさい!」
タタタ…
FS「何ヲスルカト思エバ…諦メテ逃ゲルカ?」
FS「ドコヘ行コウガ、私カラ逃ゲラレハシナイト言ウノニ」
FS「マァ…目ノ前ニイテ ミスミス逃ガス理由モナイナ」グ…
ダッ!
伊織「ち、やっぱ追いかけてくるわよね…」
真「い、伊織…すぐに追いつかれるぞ…」
伊織「大丈夫よ、私の予想では…」
FS「グ…」ブルッ
真「あれ、なんだ…? 『ファースト・ステージ』の動きが遅い?」
伊織「あんなギリギリまでやられたんだもの、んなすぐに回復はしないわよ!」
響「自分のお陰だな!」
伊織「あー…そうね。ちょうたすかったわ」
響「ふふん」
タッタッタ
響「どこまで行けばいいんだ?」
伊織「一階の玄関前まで…すぐ近くよ、アイツが回復する前に着くと思うけど…」
真「はぁ、はぁ…」
伊織「…響、真を運んでくれる? こんなんじゃ、着く前に追いつかれるわ」
響「え、それはいいけど…」
真「伊織だって、ボロボロじゃないか…ボクのことは置いていけば…」
伊織「…それ以上言うな。私はなんとかするわ…ここで追いつかれちゃ全部パァだもの」
響「うーっ…」
伊織「響?」
響「『トライアル・ダンス』!!」ヒョイッ
伊織「うおっ!?」グイッ
真「ちょ、響!?」グオッ
響「ボロボロなのは二人ともだろ! 今は強がってる場合じゃないぞ!」
響「どっちも自分が運んでやる! 二人くらいなら、なんくるないさー!」ガッ
ギュゥゥゥーン
ズダダダダダダ
真「はっ…速いな…!」
伊織「こ、これなら追いつくどころか引き離せる…!」
響「へへん、そんなに褒めなくてもいいぞー! 」ズダダ
FS(イクラ我那覇響デモイツマデモ走ッテイラレル筈ハナイ、イズレ追イツク…)
FS(私カラ逃ゲ…ソレデドウスル? 何ガ狙イダ…?)
FS「マ…」
FS「マサカ…水瀬伊織、貴様…!!」ダダッ
伊織(感づいたようね…だけど、遅いわ…)
真「それで、どうするんだ伊織…? 最終手段ってのは一体なんなんだ」
伊織「決まってるわ。私達にあの『ファースト・ステージ』はどうにもできない」
伊織「スタンドがどうにもならないなら…」
真「まさか…」
伊織「そうよ…本体の雪歩を叩くッ!!」
響「え、でも雪歩は仕事中だぞ。玄関に行っても駄目じゃないか?」
真「さっき携帯をいじってたのはそういうわけか、伊織」
響「?」
伊織「ええ…亜美に、玄関前に来るように言っておいたわ」
伊織「さっきの場所に呼んでもよかったけど…近づくと、響との戦闘に巻き込まれるかもしれなかったから」
伊織「亜美の『スタートスター』で一気に雪歩のところまで『ワープ』するッ!」
響「? ?」
真「待て伊織、本当にそんなことをするつもりなのか! 何も知らない雪歩を傷つけるなんて…」
伊織「言葉の綾よ。野蛮人じゃあるまいし、伊織ちゃんがそんな暴力的な手段取るわけがないでしょうが」
真「…だったら、どうやって?」
伊織「真、『ファースト・ステージ』が何のために行動してるかは聞いてるわよね?」
真「え? えーと…『スタンドの事を雪歩から遠ざける』事か? そんなことを言ってた気がする」
伊織「ええ、そうよ」
伊織「アイツは雪歩に恐怖を与える『スタンド』に関する事を排除しようとしている。だから、雪歩に近づく『スタンド使い』の私達を排除しようと襲いかかってきた」
真「それが一体…」
伊織「じゃあ…雪歩が『スタンド』の存在を受け入れたら?」
真「!?」
真「そ、それってつまり…」
伊織「アイツの行動理由…いや、存在理由!」
伊織「それを奪ってやるわッ! そうすれば、アイツは完全に『再起不能』するッ!」
響「いやいや、ちょっと待った。さっきも言ったけど、雪歩は仕事中だろ?」
響「亜美の『ワープ』ってのがどういうのかは知らないけど…いきなり飛び出していくのはまずいんじゃないか?」
伊織「貴音の携帯…」
響「たかねがどうかしたの?」
伊織「貴音に電話をかけたら、律子に繋がったのよ…どうやら、返すのを忘れてたみたいでね」
伊織「そういう時、アイツなら予備の携帯を渡してるはず…それで、アイツに電話して貴音への連絡先を聞き出したのよ」
真「アイツってのは…」
伊織「プロデューサーよ。今日は、雪歩達の付き添いをやってる…ね」
伊織「その時、ついでに聞いておいたわ」
伊織「あと2分で、収録は1時間の休憩に入る! カメラさえ回っていなければ、『ワープ』してもどうとでもごまかせるわよ」
伊織「休憩時間中に、会場まで辿り着き…どうにかして雪歩にスタンドを受け入れさせる!」
真「いや…でも、ちょっと待て伊織! 雪歩が『スタンド』に関する事を認識できないのは知ってるだろ!」
響「認識できない? それってどういうことだ?」
真「雪歩には、スタンドやそれに関することが見えもしないし聞こえもしないんだ。恐らく、『ファースト・ステージ』の『都合の悪いものを押し付ける』能力の一部だと思う」
真「それはどうするんだ、伊織!」
伊織「………」
真「あ…」
伊織「もう、これしか方法がないのよ…」
響「とにかく…亜美のところに行けばいいんだよな!?」
伊織「ええ…頼むわ、響」
………
……
ドドドド
亜美「ん?」
響「うぉぉぉぉっ!」ズザザザ
亜美「うわっ、凄い勢いでひびきんが飛んで来た!?」
響「ちょっと疲れた…降ろすぞー」トサ
真「おつかれさま、響」スタ
伊織「亜美…ちゃんと待ってたわね、よかった…」タッ
亜美「あっ、いおりん! もう、3分の遅刻よ!」
伊織「亜美…今は遊んでる場合じゃあないわ」
亜美「えー、ノリ悪ーい」
亜美「ま、いいや。三人揃ってどうしたの? みんなでどっか行く…」
真「………」ボロ…
響「ふぅ、はぁ…」
亜美「…って感じじゃなさそうだねー…」
真「伊織、『ワープ』するのは…」
伊織「あと少し…休憩時間が始まってから少し後くらいに…」
亜美「ほぇ? 何の話?」
伊織「もうちょっと経ったら、雪歩のところまで『ワープ』して。緊急事態なの」
亜美「ゆきぴょんとこ? でも…」
ドサ!!
伊織「!?」バッ
FS「ヤハリカ…」シュゥゥ…
真「『ファースト・ステージ』…!」
FS「双海亜美ニ連絡ヲトッテイタナ、水瀬伊織」
響「な、なんでもうこんなところにいるんだ!? 反対側から、思い切り走ってきたのに…」
FS「私ニハ壁モ床モ 関係ナイ。ワザワザ階段ヲ降リル必要モナイ」
FS「萩原雪歩ノ所ニハ 行カセナイ! ココデ全員始末スルッ!」
伊織「はっ、行かせない…ですって?」
伊織「遅い遅い。遅すぎてあくびが出るわ。アンタ、今の状況わかってんの?」
FS「何ダト?」
伊織「さぁ亜美! 『スタートスター』で真美のところまで送り…」ビシッ!
亜美「やー、そりゃ無理だよ」
伊織「なさ…い…」ヘナヘナ
響「あれ?」
真「む…無理…? 無理って言った、今…?」
亜美「うん、無理。三回目は言わせないでねー」
真「ど、どういうことさ…この前は、離れた廃ビルにも余裕で『ワープ』できてたじゃないか」
亜美「うん、あそこ…まっすぐの距離だと、実は事務所からそんな離れてなかったじゃん?」
亜美「でも、ここから会場に送るには、ちょっと距離が足りない…って言うか…」
伊織「な…なんですって…!?」
FS「ラシイナ」
伊織「!」
亜美「うお、なにあれ? 喋ってる」
FS「サァ、コレデ『最終手段』トヤラモ潰レタワケダガ…ドウスル?」
伊織「タ、タンマ! これは流石に計算外!」
FS「待ツト思ウカ?」
伊織「うぐ…」
プオーッ
響「んがっ!?」ビクッ
伊織(! クラクションの音!?)
ヴヴヴ…
ドルルルルルル
律子「あんた達、乗りなさい!」
伊織「り…律子!?」
律子「雪歩の所に行くんでしょ? こいつを使えば早いわ!」
伊織「り、律子…準備いいわね、アンタ…」
律子「事務所が騒がしいもんだから、『ロット・ア・ロット』で見てたのよ」
律子「車で会場の方まで近づくわ、そうすれば『スタートスター』も使えるでしょう」
亜美「おおっ、りっちゃん様! あなたこそ救世主だ! よくわからんけど」
伊織「助かるわ、律子…!」
FS「待テ! 乗リ込ム前ニ貴様ラヲ『再起不能』ニ…」
真「おっと、そうはさせないよ!」バン
亜美「まこちん!?」
真「ここは通さない…」
FS「クタバリ損ナイガ…何ガデキル!」
響「真一人じゃあ無理かもな…でも自分もいるぞ!」ババン
伊織「響も…!?」
響「伊織、亜美、今のうちに車に乗り込め!」
伊織「アンタわかってんの!? 今、アイツに触られたら…」
響「触られなければいいんだろ? 問題ないぞ」
真「ボク達が少しだけでも時間を稼ぐ、急ぐんだ!」
伊織「え、ええ…」ダッ
亜美「ほら、いおりん早く早く!」タッタッタ
FS「菊地真、我那覇響! ソコヲドケ…!」
真「どかしてみろ、ボクがどくのは熱心なファンの女の子が道端で待ち伏せしているときだけだ」
響「それってどいてるのか?」
FS(二人カ…菊地真カ我那覇響 片方ナラバ突破デキタダロウニ…)
FS「ク…」プルプル
バッ
真「ん?」
スゥ…
真(なんだ、事務所の中に…戻っていった?)
クルッ
FS「オオオオッ!!」グワッ
ガシャァァァン
真「うわっ!?」
真(ガラス製のドアを殴って、ボクの『硬化散弾銃』みたいに…飛び道具だと!?)
FS「喰ラエ、水瀬伊織!」
ヒュン ヒュヒュン
真「オラオラオラオラ」ガシャン ガシャ
ヒュゥゥゥウ
真(駄目だ、全部は撃ち落とせない…)
響「危ない、伊織…!」
伊織「え…なっ!?」
亜美「ス、『スタートスター』!」
真「『ワープ』を使えないのに、単体の『スタートスター』で叩き落とせるのか!?」
亜美「わわっ、そうだ! ヤバいよー!!」
ゥゥゥゥゥウウ
律子「『ロット・ア・ロット』」カタカタ
フォン
伊織「!」
亜美「おっ!」
トス ホスッ
FS「何ッ!?」
律子「何か飛ばして来ても、無駄よ。それくらいなら私にだって止められる」
ガシャン ガシャ
伊織「あ…ありがと、律子…」
律子「それより、早く乗って!」
伊織「え、ええ!」ザッ
伊織「亜美、ドアを閉めて!」
亜美「了解!」バタン
FS「………」
律子「よし、行くわよ…!」ガッ
ブロロロロロ…
響「行ったか…」
FS「………」
真「さぁ、どうするんだ『ファースト・ステージ』?」
真「もうお前に伊織達は止められない。雪歩を守るとかなんとか言ってたが…お前にはそれもできないんだ」
FS「フ…」
真「?」
FS「フハハハハハハ!」
響「な、なんだこいつ…? いきなり笑い出して…」
FS「気付カナカッタノカ…? がらすノ行キ先デ頭ガ一杯ダッタノカ…」
真「一体、何を…」
響「あっ!? こいつ、脚が片方なくなってるぞ!」
真「えっ?」
FS「コッソリト…秋月律子ノ車ノ中ニ、私ノ脚ヲ忍ビ込マセテオイタ」
FS「今頃、アノ三人ト一緒ニ 走ッテイルコトダロウ」
真「…それがどうした…?」
真「お前の腕は確かに脅威だ。だけど、脚が一本車内に紛れ込んだ所でどうするって言うんだ」
FS「コノ脚ハ、ココノ割ッタがらすデ切断シタモノダ」
FS「コレニ、だめーじヲ『返シ』タラ…ドウナルト思ウ?」
・ ・ ・ ・
真「『チアリングレター』!!」
響「うおおっ、『トライアル・ダンス』!!」
FS「私ノ方ガ…一枚上手ダッタナ」チョン
パリィィィン
………
ブロロロロ…
伊織(とりあえず、アイツは撒いた…)
伊織(後は、雪歩にどうやってスタンドのことを受け入れさせるかだけど…どうしようかしら…)
伊織(『スタートスター』のワープだとか、『ゲンキトリッパー』のくっつく効果を見せてやれば信じるか…?)
律子「おかしいわね…」
亜美「何が?」
律子「『ロット・ア・ロット』を通って来た道に配置してきたんだけど…」カタカタ
律子「見ても、『ファースト・ステージ』が追って来ている様子がない…」
亜美「諦めたんじゃないの? こっち車だし」
伊織「あるいは、雪歩の居場所に向かって一直線に走っているとか。アイツ、壁とかおかまいなしだし」
伊織「どっちにしろ『スタートスター』の『ワープ』に追いつけるわけがないし、私達に追いつく方法はないはず」
伊織「それより、運転しながら操作するのやめなさいよ。事故るわよ」
律子「うーん…何か引っかかるのよ。もうちょっと調べるわ」カタカタ
ガゴッ!!
亜美「ん?」
伊織「何かしら、今の揺れ?」
ドル…
律子「あれ…?」
亜美「どったの?」
ゥゥゥ…
伊織「なんか…速度、落ちてない?」
律子「いや…エンジンが止まった…」
伊織「は…!?」
プス、プス…
伊織「故障!? こんな時に…!」
亜美「えーっ!? もう、このポンコツー!!」
律子「この前、点検したばっかりなんだけど…」
伊織「く…ここから歩くしかないの…?」
律子「そう…みたいね…」
亜美「えー、やだよー。ここまで来て歩くのー?」
伊織「『スタートスター』は使える? 使えるなら歩かなくていいけど」
亜美「うーん…駄目っぽい」
伊織「じゃあ歩くわよ。何にしても、乗ったままじゃ仕方ないわ。降りましょ」バンッ
律子「私は業者呼ぶから、二人で行くのよ」
亜美「んー…仕方ないか。りょーか…」
ズ…
亜美「ん?」
ズズ…
亜美(シートの中から、手が…)
律子「えーと、電話番号は…」ゴソゴソ
亜美(これ、もしかして…りっちゃんを襲おうとしてる…?)
ズズズ…
亜美「りっちゃん、危ない!」バッ
律子「へ?」クルッ
ヒュッ
亜美(あれ、違う…)
グォォ
亜美(これ、狙われてるの亜美の方じゃん)
亜美「ぐっ!?」ボグォオ
ドサァ!!
伊織「えっ!?」
亜美「うーあー…」
伊織「亜美…?」
?「双海亜美サエ倒セバ…」ズ…
伊織「そ、その声は…」
FS「モウ、私カラ逃レル手段ハナイ」ズリ…
伊織(車のシートの中から『ファースト・ステージ』が…!!)
伊織「なんでよ…」
伊織「なんでアンタがここにいるのよ…!!」
FS「ソレヲ答エル意味ガアルノカ?」
亜美「うーん…」
伊織(亜美がノビてしまっている…これじゃ、会場に近づいたとしても『スタートスター』の『ワープ』が使えない…)
律子「どうやら…」パチン
伊織「律子…」
律子「業者を呼んでる場合じゃあないようね…」スッ
FS「降リテ来タカ、秋月律子。ソコデ座ッテイレバイイモノヲ」
律子「『ファースト・ステージ』だったか…車を故障させたのはあんたね?」
FS「アア、ソウダ秋月律子。中ニ入リ込ンデ、チョットネ…」
律子「修理代は高くつくわよ…『ロット・ア・ロット』!」カタカタ
ブォン
キュル キュルキュル
FS「『ろっと・あ・ろっと』数ダケハ多イすたんど…」
FS「邪魔ナダケダナ」ヒュッ
ガギッ!!
伊織(『ファースト・ステージ』が『ロット・ア・ロット』を殴った…あれを壊したら…)
バギャ
バチャァ!!
FS「ム」
律子「『麻酔液』よ! 止まっていなさい!」
FS「体ガ…動カシニクイナ…」ギギギ
律子「伊織、亜美を連れてタクシーでも捕まえなさい! こいつはどうあっても倒さなきゃ駄目よ!」
伊織「え、ええ…わかったわ」
FS「………」ユラ…
伊織「…!」
キュルキュル
伊織「律子、『ロット・ア・ロット』を引っ込めて!」
律子「え?」
カスッ
律子「ッ!?」ビリッ
FS「コレガ私…」
FS「『ふぁーすと・すてーじ』ノ能力ダ。貴様ガ与エタ現象ハ、全テ貴様ニ『返ッテ』イク」
律子(体が痺れる、『麻酔液』の影響が私に…!)
FS「例エ一部デモ、『すたんど』ニ触レレバ ソレハ貴様ニ触レタノト同ジコトダ」
律子「ぐっ…」
FS「時間稼ギニモ ナラナカッタナ」
伊織「く…」
FS「アトハ…貴様ダケダ、水瀬伊織」
モクモクモク
伊織「『スモーキー・スリル』…」
伊織「うおおおおお」
ガシ…
FS「フッ」
バフゥ!!
伊織「うぉ…」
伊織(掴もうとした『煙』が…ちょっと払っただけで飛ばされた…)
FS「君ニハモウ 戦ウ力ハ残ッテイナイダロウ? ソンナ弱ッタ体デ、私ニ立チ向カオウダナドト」
FS「思イ上ガリモ イイトコロダナ」
伊織「この…くそったれが…」
FS「マァ、命マデ取ッタリハシナイ。萩原雪歩モ ソコマデハ望ンデイナイダロウシナ」
伊織「ここまでやっておいて、何を寝ぼけたことを…!!」
FS「終ワリダ。眠レ、水瀬伊織!!」シュバッ
伊織「『スモー…キー…』」スゥ…
バフッ
伊織(駄目だ…止まらない…)
ガシィ!!
FS「ン! !?」
伊織「は!?」
伊織(止まった…いや、止められた…これは…)
伊織(これは、スタンド…!?)
???「変な音が聞こえたから来てみたけど…なんだか、大変なことになってるわね~」ザッ
伊織「え…嘘でしょ…? なんで、アンタが…?」
FS「何故ダ…」
FS「何故、貴様ガココニイル…何故、水瀬伊織ノ味方ヲスル…!」
伊織「あ…あずさ…!!」
あずさ「あら…仲間が襲われているのを助けるのはいけないことかしら?」
あずさ「こんな傷だらけの女の子相手に…あなた、ちょっと度を越してるわよ」
うーん…本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
自分で足ぶった切ってそのダメージ返すってできんの?
ダメージを与えて来た相手にしか返せないんじゃないのか?
>>318
例えば、壁ドンすると腕に反発した衝撃がかかりますよね?そのようにして受けた衝撃をダメージ、その壁を相手と見立てればできます。
「ファースト・ステージ」が自分から向かっていったとしても、結果として「ファースト・ステージ」にダメージを与えれば、それが相手となります。
作中では、真の「ストレイング・マインド」に頭を打ち付けて受けたダメージを返していました。
まぁ、理屈がどうこうじゃなくてやってる以上はできることなんです。できると思えばできるんです。精神力の問題です
色々あってすみません。始めます。
FS「三浦アズサ…コンナトコロデ 会ウトハ…」
FS「アト少シデ片付キソウダッタノニ、イササカ 水ヲ差サレタ気分ダナ」
あずさ「あなた…スタンドね?」
FS「ソレハ『質問』カ?」
FS「聞キタイ事ガアルノナラバ 三浦アズサ、『三ツ』ダケ質問ヲ許ソウ」ビッ
あずさ「質問? 答えてくれるの?」
FS「アア。知リタイコトヲ 好キニ聞ケ」
あずさ「あらあら、それはご親切にどうも」
伊織「あずさ、こいつは…」
FS「貴様ハ黙ッテイロ、水瀬伊織。今三浦アズサハ 私ト話シテイルノダ」
あずさ「えーっと、それじゃあ…」
FS「ウム」
あずさ「律子さんがうずくまってるけど、あなたのせい?」
FS「…ハ?」
律子「あずさ…さん…?」
伊織「あずさ…?」
FS「ナンダソレハ…他ニ聞クベキコトガ アルノデハナイノカ?」
あずさ「二つ目…亜美ちゃんが倒れているのは…あなたのせい?」
亜美「きゅぅ…」
FS「…見テ ワカラナイノカ?」
あずさ「三つ目。伊織ちゃんの怪我は…あなたのせい?」
FS「ドウイウツモリダ、三浦アズサ! ソレガ本当ニ聞キタイコトナノカ!?」
あずさ「答えてくれないのですか…?」
FS「…ナラ、望ミ通リ答エヨウ。ソウダ、全部私ガヤッタ」
FS「私ノ本体ニトッテ害ト ナリウル彼女達ヲ、全テ私ガ始末シタノダ!」
あずさ「わかったわ。ありがとう」
FS「コレデ イイノカ?」
あずさ「ええ。これで…」
あずさ「あなたに遠慮する必要もないから」
ドドドドド
FS「遠慮スル、カ。随分ト甘ク見ラレタモノダ」
あずさ「『ミスメイカー』」ズ…
FS「遅イ! ノンビリ話シテイル暇ガアレバ…」バッ
あずさ「!」
FS「スグニ攻撃ヲ仕掛ケルベキダ、三浦アズサ!」ドヒュ
ヒュォォ
あずさ「やっ!」グオッ
グワッ!!
FS「ム!?」グラッ
伊織「拳を払いのけた…! 凄いパワーだわ…」
カチ!
FS「! 私ノ右手ニ…『かうんと』ガ…」チッ チッ
あずさ「その『カウント』が0になった時、あなたの右手は『眠る』わ」
伊織(あずさのスタンド、これがミスメ…『ミスメイカー』っていうのね)
伊織(近距離パワー型の『眠ら』せるスタンド! これなら…)
FS「甘イナ、三浦アズサ…」
あずさ「?」
FS「遠慮ハシナイト…ソウ言ッタ割ニ 攻撃ヲ払イノケルダケトハ、随分ト 優シイジャアナイカ?」
あずさ「あなたにも本体がいるでしょう? 誰かは知らないけど、傷をつけるのもね」
伊織「あずさ…アンタが肝心なこと全然聞かなかったから言っておくけど…」
伊織「そいつは『自動操縦』…勝手に動くスタンドよ、攻撃しても本体にダメージはいかないわ」
あずさ「あら、そうなの? 助かるわ~、伊織ちゃん」
あずさ「私の『ミスメイカー』は相手の意識をそのまま落とせるわ。大きな動きは必要ない」グッ
FS「フ…」
あずさ「触れば、それで勝てる!」ブンッ
FS「フンッ」スッ
あずさ「あら…?」スカッ
伊織「えっ?」
FS「何ダ、随分ト遅イナ。簡単ニ避ケラレタ」
ドギャ
あずさ「きゃっ!」ボゴォ
伊織「あずさ!?」
あずさ「さ、さっきはあんな簡単に触れたのに」ズリ…
FS「一発目ハ、アエテ喰ラッタノダ…貴様ニ 返スタメニナ!!」
チッ チッ
あずさ「私の手に『カウント』が…」
FS「『返シ』タ能力ハ私デナケレバ解除ハ デキナイ」
カチ!
あずさ「!」ガクン
FS「貴様ノ『眠ラセ』ル能力ナド 元々知ッテイル…」
伊織(こいつは、私の能力のことも知っていた…こっそりと情報収集していたのね)
伊織(全員分の能力を知り、その対抗策を考えて行動してくる…)
FS「確カニ、触レレバ強力ダ。ダガ触レサエシナケレバ、何モ怖クハナイ!」
FS「片腕ダケ…シカモ、ソノすぴーどデハモハヤ私ヲ捉エルコトハ 不可能」
あずさ「そう…みたいね。これじゃ、腕の動かない右方向から来たら止められないわ」
伊織(あずさでも、こいつを倒すのは無理なの…!?)
FS「何人タリトモ私ヲ倒スコトハ デキナイ! 貴様ラヲ始末シタ後ハ四条貴音モ、天海春香モ スグニ下シテヤル!」
ダッ
FS「シャァッ」ビュバ
伊織「あずさ…!」
ビュォォォ
FS「オウッ!?」ズルッ
伊織「え!?」
バキャ
FS「オ、オゥォ…!?」
FS(何ダ…足ヲ取ラレタ、コンナ…こんくりーとデ舗装サレタ道路ニ!)
あずさ「『ミスメイカー』で、目の前の地面を一部『眠らせ』ておいたわ」
あずさ「『眠った』道路は、『道』としての役割を失っているの。その上に立つことはできない」
FS「ナ…何…!?」
あずさ「そして」ガシィ!!
FS「ウグゥ!」
伊織(腕を掴んだ!)
あずさ「私のスタンド、確かにあんまり速くはないけど…」
あずさ「『パワー』は結構、凄いと思うわよ?」ギリギリ
あずさ「あとはこのまま、押さえつけておけば…」
FS「グググ…」ヒュッ
伊織「!」
伊織「あずさ! 危ないわ、左手でアンタの腕に触ろうと狙ってる!」
あずさ「えー…いっ!」
グアッ!!
FS「オグッ!?」ビキッ
伊織(片手を一瞬開いて…掴んでいる右手ごともう一本、力で無理矢理抑え込んだ…)
伊織(まるで手錠かけられた『犯罪者』みたいなポーズね、『ファースト・ステージ』のヤツ)
あずさ「がっついちゃ駄目よ? このまま押さえつけておけば、あなたの『返す』能力を封じる事ができるわ」
メリ…メリリリ
FS「ガ…? ギギ…」
カチカチカチ
あずさ「ほら、暴れないで」
FS「ォ…!」
ブチィ!!
伊織「!?」
あずさ「えっ?」
伊織「あずさのスタンドが、あのヘンテコの腕を引きちぎった…」
あずさ「あら…片手だったから、ちょっと強く絞めすぎたかしら…」
あずさ「でも、これで…もう戦えないわね」
FS「ウ、ウォォォォ…グッ」
FS(ク…ククク…私ノ手ガ飛ンダノハ 三浦アズサノすたんどニヨルモノデハナイ!)
ヒュォォォォォ
FS(自分デ 切リ離シタノダ! 貴様ヲ油断サセ、確実ニ触レルタメニナ!)
FS(貴様ノ頭ニ落トシテヤル! コレデ三浦アズサノ両腕ハ 死ンダ!)
ォォォォォ
スポッ
FS「ナ」
キュルキュル
律子「ロ…」
律子「『ロット・ア・ロット』…あんたの両腕…回収させてもらったわよ…」ピクピク
FS「秋月…律子」
伊織「律子、アンタ…動けるんなら言いなさいよ」
律子「途中から、あれの意識から外れるために黙ってたのよ(痺れてて喋りにくかったってのもあるけど)」
律子「この律子さんの目をごまかせると思ったら…大間違いってヤツね」クイッ
あずさ「律子さん、ありがとうございます」
律子「アイドルをフォローするのも、プロデューサーの仕事ですから」
FS「ク…グヌヌ…」
FS(秋月律子モ、水瀬伊織モ手負イ…双海亜美ハ気絶シテイル…敵ハ三浦アズサ一人ナノダ)
FS(腕サエ…腕サエ回収デキレバ…!)
FS(ダガ、ドウヤッテ…)
FS「………」
キュルキュル
FS「グ…グググ…」クルッ
あずさ「?」
FS「グッ!」ダッ
あずさ「あら?」
律子「こ、こいつ、逃げる気…!?」
FS(腕ノ回収ハ不可能…ダガ今ココデ消エル訳ニハ イカナイ…萩原雪歩ヲ守レナクナル!)
FS(車ハ破壊シタ…私ガ先ニ萩原雪歩ノ所ニ 辿リ着ケバ…)
ボフゥ!!
FS「ヌオッ!?」
グググ
伊織「『スモーキー・スリル』…」
伊織「はいそうですかって、逃がすわけがないでしょうが…!」
FS(押シ戻…サレル!)
FS「水瀬伊織、貴様…コノタメニ ちからヲ蓄エテイタナ…!」
伊織「違うわね。真正面から戦えないアンタなんて、ボロボロの私でも簡単に止められんのよ!」
伊織「あずさ! 今のうちに!」
あずさ「はいっ」グオッ
カチッ
FS「ア…」
あずさ「『ミスメイカー』、頭部に触れた。あと30秒であなたの意識は落ちるわ」ピトッ
FS「フ…フフ…」
あずさ「?」
FS「コレデ勝ッタト思ウナ…三浦アズサ、水瀬伊織、秋月律子…」
律子「何を…」
伊織「ふん、負け犬の遠吠えよ」
FS「私ハ必ズ貴様ラヲ…」
カチ!
スゥ…
あずさ「あら」
律子「消えた…最後まで言い終わってないのに」
伊織「倒した…と言うか、攻撃を止めた…ってことかしら」
あずさ「うーん…意識だけを『眠らせ』たつもりなんだけど、どうして消えたのかしら?」
伊織「なんでもいいわ、とにかくアイツは消えた」
伊織「…助けられたわね、あずさ」
律子「あずささん、ありがとうございます」
あずさ「いえいえ、いいですよ。当たり前のことですし…」
律子「そんなこと…」
あずさ「それに…」
伊織「?」
あずさ「成り行き上、助けることになりましたけど…」
あずさ「忘れていませんか? 今、事務所がどういうことになっているのか」
律子「へ…」
あずさ「あなた達を倒します。春香ちゃんの『仲間』なら、『スタンド使い』として」
伊織「は…!?」
律子「ちょ、ちょっと待って…私達は…!」
あずさ「どっちでもいいですけどね。とりあえず、『ミスメイカー』で『眠らせ』さえすれば」
ゴゴゴ
あずさ「それで、私の勝ちになりますから」
ゴゴゴゴゴ
伊織(こ…ここで、あずさと戦う事になるなんて…)
ゴゴ
伊織(いっそ、抵抗せず捕まってしまうか…でも、それじゃあ雪歩の所には行けない。そうなったら…)
伊織(だけど、こんな状態でまともに戦えるわけが…)
あずさ「な~んて…」
伊織「えっ?」
律子「はい?」
あずさ「冗談ですよ、律子さん、伊織ちゃん。全部わかってますから」
伊織「は? え、何が…?」
あずさ「千早ちゃん達が動いてるの。貴音ちゃんから、伊織ちゃん達がそうじゃないことは聞いているわ」
律子「な、なんだ…脅かさないでくださいよ…」
伊織「千早もこっち側…? ってことは…」
あずさ「千早ちゃんに、美希ちゃんに、響ちゃん、それと私。貴音ちゃんから聞いた以外は、この4人が集まってるわ」
伊織「! それじゃ…!」
あずさ「ええ、あとは二人だけ。そして、さっきのが多分、雪歩ちゃんのスタンドでしょう?」
あずさ「残るは、春香ちゃんだけよ」
亜美「うーん…ふぁ…」
伊織「あら、亜美。目、覚めたのね」
亜美「ん…? ここはどこ私は誰?」
あずさ「えっと、ここは…どこかしら?」
亜美「あれ、あずさお姉ちゃん!? なんでここに?」
あずさ「ふふ、ちょっと通りかかってね」
伊織「そういえば、アンタなんでこんなところに通りかかるのよ? おかしくない?」
律子「言われてみれば…買い物に行ってたんじゃ…」
あずさ「欲しかったものがなかなか見つからなくて、あちこち回ってるうちいつの間にか…ね…」
伊織「あーそう、んなこったろうと思ったわ…」
亜美「あずさお姉ちゃんの方向音痴恐るべし…」
伊織「あ、休憩時間終わってるわね…」
律子「もう、この際いいでしょ。車も運ばないといけないし…」
亜美「え、終わっちゃったの? つまんなーい」
律子「あんたねぇ…」
伊織「それじゃ、このまま現場に行きましょ。収録が終わった後に着けばいいわ」
律子「はい? 何を言いますかあんたは」
伊織「『ファースト・ステージ』に止めを刺すわ」
あずさ「雪歩ちゃんのスタンド? それなら今倒したし、それでいいんじゃない?」
伊織「倒すだけなら貴音が一度やっている。それだけじゃあ駄目なのよ」
あずさ「えっと…どういうこと? 雪歩ちゃんは、自分のスタンドが負けた事はわかってるのよね…?」
伊織「わかってないわ」
伊織「アイツは、一人歩きしているスタンドなの。そして、本体の雪歩が無事なら、何度でも復活する…」
あずさ「そんな…」
伊織「このまま放っとけば、また襲いかかってくるわ! 完全に倒すためには、元を断つしかないッ!」
律子「だけど、元を断つって、どうやって…」
亜美「まさかいおりん、ゆきぴょんをやっちまうつもりじゃ…」
伊織「んなことやるわけないでしょうが」
伊織「…そのためには多分、アンタの力が必要よ。あずさ」
あずさ「私の?」
伊織「ええ。『ミスメイカー』なら、きっと『ファースト・ステージ』の呪縛を解ける」
伊織「最初はどうにかするって行き当たりばったりみたいで嫌だったけど、アンタがいれば確実に成功するわ」
亜美「亜美は? なんかやることない?」
伊織「ないわよ」
亜美「はっきりゆわれた! ええい、亜美にもなんかさせろー!!」
………
……
…
伊織「着いたわね」
伊織(私達は、タクシーに乗って雪歩達の収録現場の建物の前まで辿り着いた)
亜美「真美達の仕事って何時までだっけ?」
律子「もう終わってるはずよ。あっ、領収書お願いします」
伊織「!」
ゴゴゴ ゴ
FS「待ッテイタゾ…」
伊織「…また、アンタか…しつっこいわね」
あずさ「えーと…さっき『眠らせ』…ましたよね?」
FS「アア。私ヲ『眠ラセ』タソノ瞬間、萩原雪歩ノ意識モ 一瞬落チタ」
FS「ドウヤラ、『みすめいかー』デ 萩原雪歩ガ『眠ラ』サレルト、私ハ 消エテシマウラシイ」
FS「シカシ、ソウナルト『みすめいかー』ノ射程距離ハ萩原雪歩ニハ 全ク届カナイ。結果、『眠ラセル』能力ハ解除サレ…」
FS「私モ再ビ目覚メタ。結果的ニ、私ヲ萩原雪歩ノ下ヘ 送ルダケダッタナ」
伊織「やめときなさい、『ファースト・ステージ』。ここまで来たら、もうアンタに勝ち目はないわ」
FS「勝チ目ダト? ソンナモノ、関係ハナイ! 萩原雪歩ニ手出シハ サセン…!」
伊織「やれやれだわ」
FS「シャァッ!!」バッ
律子「亜美、今よ」
亜美「了解(ラジャー)!」バッ
FS「ヌ!?」
亜美「飛んでけーっ、『スタートスター』!!」ヒュッ
FS「貴様…」
FS(速スギル、避ケラレン…!)
ヒュン
伊織「よし、送った! 後は…」モクモクモク
あずさ「あらあら…」
律子「『スモーキー・スリル』がまとわりついて…」
伊織「亜美、まとめて『ワープ』よ!」
亜美「よっしゃー、一気に行くよーん!」ヒュン
パッ
あずさ「ここは…控え室かしら?」
真美「うおっ、また来た!」
亜美「やっほー真美、来ちゃったYO!」
やよい「みなさん、どうしたんですか?」
律子「プロデューサーは、『ワープ』を見られたら面倒だから『ロット・ア・ロット』でいないのはあらかじめ確認してたけど…」
律子「雪歩はどこ? 姿が見えないわね」
やよい「雪歩さんですか? プロデューサーと一緒だと思います」
真美「まー、すぐ戻ってくるっしょー」
伊織「そう…それじゃ、それまで待ってようかしら」
FS「ク…『すたーとすたー』デ ココマデ来タカ…シカシ、私マデ『わーぷ』サセタノハ…」
伊織(と、その前に…)
伊織「やよい、こいつを床にでも『くっつけ』ちゃって」
FS「ヌゥッ!?」
やよい「う、うん? わかった!」ゾゾゾ
ピタァ
FS「グ…高槻ヤヨイ…!」
やよい「『ゲンキトリッパー』、動かないでください!」
亜美「観念するのだー!」
真美「よくわかんないけど…大人しくお縄につけい!」
伊織「こうなったら、アンタも形無しね『ファースト・ステージ』」
FS「グゥ…」
やよい「これって、すたんど…だよね? 何かあったの?」
伊織「それは後で説明するわ」
ガチャ
雪歩「あれ、みんな…」
伊織「雪歩…!」
P「お前達、なんでここに…」
伊織(と…こいつもいたか、邪魔ね)
伊織(どうしましょう。あずさに『眠らせ』てもらうとか…?)
律子「プロデューサー! お疲れ様です!」
P「り、律子? おう、ありがとう…」
伊織(って、律子?)
律子「実は、765プロの今後について話したい事がありまして」
P「え、事務所に戻ってからでもよかったんじゃ?」
律子「いいですから! 来てください!」グイッ
P「わっ、引っ張るな! わかったって!」
あずさ「あらあら、律子さんったら強引ね」
伊織(プロデューサーを引き離した、ナイスよ律子!)
雪歩「…?」ポカン
FS「萩原…雪歩…グッ」
伊織「やっと…やっと、ここまで来たわね」
亜美「長かった…『竜宮小町ゆきぴょん行き御一行様』もついに終わりか…」
伊織「始まってから3時間も経ってないわよ」
雪歩「えーと、みんなどうしたんですか…?」
伊織「雪歩、アンタに話す事があるわ」
雪歩「は、はいっ? 私に…?」
伊織「そうよ。そのために、ここまで来た」
雪歩「へ? それって…」
伊織「大事な話」
FS「グ…ググ…」
FS(萩原雪歩ニ…『すたんど』ノ事ヲ話スツモリカ…)
FS(ソウハ サセナイ…! 『すたんど』ハ萩原雪歩ニ不安ヲ モタラスモノダ!)
ブチィ
FS(右手ヲ落トシ…)
ウゾゾゾゾゾ
FS(コレデ、高槻ヤヨイニ触レテシマエバ…)
FS(『クッツケ』ル能力ヲ『返ス』! ソノ後ハ 三浦アズサモ『返ス』能力デ『眠ラ』セルッ!)
FS(ソウスレバ、私ヲ止メラレル者ハ イナイ…萩原雪歩ノ平穏ハ 守ラレル!)
真美「何してんの?」
FS「!」
亜美「隊長、こいつ怪しい動きしてますぜ!」
やよい「あっ、大人しくしててください」ワラワラ
ビトォ
FS「ガッ…!!」
FS(ウォォ…腕ガ…動カナイ…)
FS(駄目ダ、数ガ多スギル…! 萩原雪歩…!)
雪歩「…?」
伊織「アイツらのことは気にしないでいいわ。いえ、そのことも含め…話す」
伊織「あずさ、お願い」
あずさ「ええ。わかったわ伊織ちゃん」
ピトッ
雪歩「あ、あの…?」
あずさ「『ミスメイカー』。『眠らせ』るわ」
雪歩「『Mythmaker』? 『眠らせる』? ? ?」
FS「『眠ラ』セル…? ナンダ、何カ策ガアルノカト思エバ」
FS「萩原雪歩ヲ『眠ラ』セヨウト無駄ダ!」
FS「サッキ、試シタダロウ? 『眠ラ』セレバ 一時的ニ私ハ消エル。ダガ、『起キタ』時…私モ再ビ目覚メル」
FS「ソウスレバ、ココデハ 貴様ラノ勝利ト言エルダロウ。ダガ、ソレデ私ヲ止メタワケデハ ナイ!」
FS「再ビ『起キタ』私ハ、例エ仕事中デアッテモ、食事中デアッテモ、睡眠中デアッテモ! 私ハ貴様ラニ襲イカカル!」
FS「だめーじデ私ヲ消シタトテ同様! すいっちガ入レバ 私は何度デモ現レル、貴様ラハ眠ルコトスラ許サレナイノダ!」
伊織「ええ…そうね。ここでアンタを放置するのは、実質アンタに負けてるのと同じだわ」
雪歩「あ、あの…伊織ちゃん? 誰と話してるの…?」
FS「貴様ガ何ヲ企ンデイルノカハ 知ラナイガ…」
FS「見ロ、水瀬伊織! 萩原雪歩ハ、今『みすめいかー』ニ触レラレテイルコトニスラ 気ヅイテイナイ!」
FS「関心ガナケレバ警戒モナイ、萩原雪歩ノすいっちヲ止メルコトハ…」
あずさ「ゼロ」
カチ!
FS「出来ナ…」フッ
やよい「はわっ!? 消えちゃいました…」
FS(フ…ヤハリ、コノ程度…)
FS(………)
FS(何ダ…私ノ体ガ透ケテイル…? 意識ガ消エナイ、コレハ私ノ姿ガ『透明』ニナッテ消エタダケダ…!)
FS(ドウイウコトダ…何ヲシタ、三浦アズサ!?)
あずさ「雪歩ちゃんにかかっていた…」
あずさ「あなたの『都合の悪いものを排除する能力』…それを『眠らせ』た」
FS(…!! ナンダト…)
伊織「アンタの存在理由は、『雪歩からスタンドを遠ざける』こと…そのアンタが雪歩に見えるようじゃ話にならないわ」
FS(萩原雪歩ノ視界ニ入ルト、私ハ存在デキナイ…)
FS(ソノタメニ、萩原雪歩ニハ私ノ姿ヲ『見エナク』シタ…)
FS(ト言ウコトハ…今、萩原雪歩ハ…!!)
伊織「スイッチが入るのを止められないとかなんとか言ってたわね」
伊織「だったら、そのスイッチごとブッ壊してやるッ!」
雪歩「…え?」
ゴゴゴゴ
雪歩「ひぃっ、おばけっ!?」
あずさ「『ミスメイカー』よ。ちゃんと、見えてるわね」
雪歩「え? え…? あ、あの…あずささん…?」
亜美「あー、『スタンド』って最初見たときはびっくりするよねー」
伊織「雪歩…」
ドドド
雪歩「は、はいっ!?」ビクッ
モクモクモク
伊織「この『煙』が…見えるわね」
雪歩「え? な、何…?」
ドドドドド
雪歩「伊織ちゃんの体から…『煙』が…」
伊織「よし」
………
……
…
雪歩「『スタンド』…」
伊織「そう、スタンド。私達の精神力のエネルギーよ」
真美「ゆきぴょんさ、『矢』見たことあるでしょ? あの長いやつの先っぽが身体に刺さると『スタンド使い』になるんだよ」
雪歩「うん、思い出したよ…私、あの時春香ちゃんに『矢』で射抜かれたんだ」
あずさ「思い出した? 忘れてたのかしら?」
雪歩「はい。なんでかは、わからないんですけど」
あずさ「あらあら、うっかりさんねぇ」
伊織(そんなこと、普通忘れるわけがないでしょうが…これも『ファースト・ステージ』の仕業かしら)
やよい「でも、真さんは春香さんの『仲間』にならないと、ひどい目にあうって言ってました」
やよい「雪歩さんは、どうしてだいじょーぶだったんですか?」
雪歩「よく、覚えてないんだけど…」
雪歩「誰かが、私の事を守ってくれたような気がする…」
FS『………』
伊織(『矢』に貫かれたと同時に『ファースト・ステージ』が発現、それで雪歩は逃げられた)
伊織(その後も、あの能力じゃ春香も迂闊に手を出せなかった、ってとこかしら)
伊織(だから何って話だけど)
伊織「雪歩。春香はアンタの時と同じように、『弓と矢』を使って事務所のみんなを『スタンド使い』にした」
雪歩「み、みんな…?」
伊織「そして…春香はまだ『弓と矢』を手放さない。更にはその力で、事務所を混乱に陥れている」
伊織「アンタも体感してるでしょ? 『アイ・ウォント』を」
雪歩「う、うん…『幻覚』を見せられたり…凄く、怖かった」
伊織「…春香にあの『矢』を持たせているのは危険よ。私達は、春香から『弓と矢』を取り上げるために戦っているの」
伊織「雪歩、アンタも協力してくれる?」
雪歩「え…」
雪歩「い、いきなり、そんなこと言われても…」
雪歩「って言うか…私にそんなことできるかどうかと言われたら…多分、無理と言うか…」
伊織「あっそ。じゃあいいわ」
雪歩「…へ?」
亜美「な、何言っちゃってんのさいおりん!? 何のためにここまで来たの!?」
伊織「無理なんでしょ。だったらいいわよ、どうでも。もうアレの存在意義は否定したようなもんだし」
雪歩「あっ、で、でも…!」
雪歩「事務所が大変なんだよね…何もできなくても、みんなの手伝いくらいは…」
伊織「だから、いいわよ。必要ないわ」
雪歩「うっ…」ビクッ
やよい「伊織ちゃん、ちょっと言い方怖いかも…」
伊織「え?」
真美「そーだそーだ、ゆきぴょんをいじめるなー」
伊織「………」
あずさ「そうね、もうちょっと優しい言い方でもいいと思うわ」
亜美「謝れ! ゆきぴょんに謝れ!」
伊織「くぅ…」
伊織「萩原雪歩!」
雪歩「は、はいっ!」
亜美「あ、ごまかした」
伊織「春香には7人もの『仲間』がいた、でも今はもう誰もいない…次に動くのはアイツよ!」
雪歩「あの春香ちゃんが…」
伊織「アイツは、『アイ・ウォント』の力を使って…なりふり構わず襲ってくるでしょう!」
伊織「アンタはどうするの、立ち向かう!? それとも、逃げる!?」
雪歩「それは…」
伊織「どっちでもいい、逃げたとしても誰も文句は言わないわ」
伊織「そうなったら私達でどうにかする。アンタは何もする必要はない」
雪歩「え…」
伊織「正直、戦力はもう充分なの。アンタにはスタンドのことさえ知ってもらえればそれでいいわ」
雪歩「………」
雪歩「…嫌、だよ…」
伊織「嫌? 何が?」
雪歩「みんなが一緒になっているのに、一人だけ外にいるなんて…」
やよい「雪歩さん…」
雪歩「何かする前から諦めるなんて…逃げるなんて、嫌…!」
伊織「それが、アンタの本音ね?」
雪歩「あっ…う、うん…」カァッ
伊織「そう…」
伊織「しょーがないわねぇ…そこまで言うんなら、一緒に戦いましょ、雪歩」
雪歩「! う、うん…!」
亜美「いおりん何様さー」
真美「これこれいおりん様に逆らうでない、首ちょんばされるぞー」
伊織「………」
雪歩「これで、よかったの…?」
伊織「いいわよ。少なくとも…」
FS『ハ…萩原…雪歩…?』ワナワナ
伊織「アレには伝わったと思うから」
雪歩「…?」
真美「ねーねー、ゆきぴょんのスタンドってどんなの?」
雪歩「え、それは…何だろう…」
あずさ「それは…うふふ」
亜美「アレだよねー」
真美「えーっ、二人とも知ってるの!?」
雪歩「わ、私が知らないのに…」
伊織「ん…」チラッ
FS『………」ズズ…
伊織(『ファースト・ステージ』…まだいたのね。控え室の外、雪歩の視界の外に出て行った)
ザ…
やよい「伊織ちゃん? どこ行くの?」
伊織「後始末よ」
やよい「あとしまつ…? よくわからないけど、私も一緒に…」
伊織「いいわ。雪歩にスタンドのことを教えてやって」
やよい「う、うん。あ、伊織ちゃん!」
伊織「?」
やよい「あとしまつ、頑張ってね!」サッ
伊織「ええ。行ってくるわ、やよい」ス…
パシン!
FS「ハァ、ハァ…」
FS「体ガ…薄レテイル…私ノちからガ失ワレテユク…」
伊織「どこへ行くつもり?」
FS「!」
伊織「雪歩を守るんじゃあなかったの?」
FS「何故ダ、何故…『すたんど』ハ 萩原雪歩ニ恐怖ヲ モタラスモノダ…何故…」
FS「何故、萩原雪歩ガ『すたんど』ヲ 受ケ入レルノダ…?」
伊織「『ファースト・ステージ』。あいつは…雪歩は、そんなに弱くないわ」
伊織「一見臆病かもしれない…弱いかもしれない…」
伊織「だけど、恐怖や自分の弱さを受け入れて、乗り越える強さを持っている。そんな奴よ、あいつは」
FS「………」
伊織「何?」
FS「水瀬伊織…貴様ハ萩原雪歩ノコトヲ ソノヨウニ見テイタノカ…? 少シ意外ダナ…」
伊織「う、うるさい! そんなことくらい誰でもわかるでしょ!」
FS「萩原雪歩ガ ソノヨウナ強イ存在ナラバ、私ハ一体何ノタメニ…」
伊織「過保護すぎんのよ、アンタは。自分から芽を潰しに行くことまでしなくてもよかった」
伊織「同情する点があるとするなら…発現した時が悪かったわね。その時に雪歩が恐怖から遠ざかりたいと願ったから、それが強く出てしまった」
伊織「そして、アンタは雪歩にとって成長の妨げ…害となった」
FS「ワ…私ハ 萩原雪歩ヲ守リタイト…ソウ思ッテイタダケダ! ソレガ害ダト!?」
伊織「別に、雪歩を守りたいって気持ちを否定するつもりはないわ」
伊織「だけど、アンタは方法を間違えた。それじゃその気持ちだって押し付けがましいもの、ただの迷惑よ」
FS「私…ハ…」
ザッ
伊織「逃げるつもり?」
FS「アア…モウ、萩原雪歩ハ 私ヲ必要トハシテイナイ…」トボトボ
モクモクモク
FS「ヌ…?」
伊織「逃がすと思う?」
FS「ハ…」
伊織「このままいじけて雪歩から離れるなんて許されない…ってのは、建前として…」
伊織「アンタはやってはならないことをした。その落とし前くらいはつけさせてもらうわ」
ゴゴゴゴゴ
FS(『すもーきー・すりる』デ周囲ノ物体ヲ持チ上ゲテ…)
FS「ソ、ソレヲドウスルツモリダ…?」
伊織「あら、そんなの決まってるじゃないの」
ゴゴゴゴ
FS「マ、待テ、水瀬伊織!」
伊織「何?」
FS「私ハ モハヤ無力ダ! ソンナ私相手ニ 本気デソンナコトヲスルノカ、君ハ!!」
伊織「うーん、そうよねぇ…普通は、そうするべきかもしれないわね」
FS「ソウダロウ、ソウダロウ」
伊織「でも…私の知ってる誰かさんは、そうしなかったのよねぇ」
FS「アグッ」
伊織「これで終わりよ。悔い改めなさい、『ファースト・ステージ』」
FS「ヤ…」
モクモクモク
伊織「『スモーキー・スリル』」
FS「ヤメロォォォォォォォ」
グシャ!
FS「グガッ」
ギリギリギリギリ
FS(すたんどノぱわート…物体ノ重ミデ、スリ潰サレル…!)
FS(逃レナクテハ…体ヲばらばらニシテ…)
FS「ガッ…!!」パルィィィン
伊織「おっと」モクモクモク
FS「…! …!!」
ズリ…スゥーッ
FS(破片ガ…『すもーきー・すりる』デ 元ノ場所ニ集メラレル…)
伊織「だーかーらー、逃がさないって言ったじゃないの。にひひっ」
FS「ア…ア…」
伊織「叩き込め『スモーキー・スリル』ッ!!」
ドバ バギャォ グビャン ドバ
FS「ア゛アアアア゛ア゛ア゛アア゛ァァァ!!」
伊織「うおおおおおおおおおおおお」
ダスン ギャバッ ドグパ
FS「アグバァーッ!!」ブッシャァァッ
ドヒィィン
シュゥゥゥゥ…
サラサラ
FS(ア…)
FS(アノ時…見逃シテオケバ、ヨカッタノカ…)
FS(水瀬伊織ヲ敵ニ回シテハ、イケナカッタ…ヨウダ)
伊織「雪歩がアンタを必要としてるかどうかなんて…そんなもん、どうだっていいわ」
伊織「重要なのは『ファースト・ステージ』、アンタが雪歩に必要とされたいかどうかよ」
FS「………」
伊織「しばらく頭冷やしてろ。雪歩のこと、今度はちゃんと見てやりなさいよね」
FS(……)
スゥ…
伊織「終わったわね…」
伊織(私の気は済んだ…あとは、雪歩と『ファースト・ステージ』…本人達の問題か)
雪歩「伊織ちゃん…」
伊織「あら、雪歩」
伊織(噂をすれば。途中で来られなくてよかったわ)
雪歩「なんか、凄い音がしたけど…どうしたの?」
伊織「別になんでもないわよ」
雪歩「え、えーと…」
雪歩(色々なものが床に落ちてるけど…聞いちゃ、駄目だよね…)
伊織「はぁ…なんか、今日は疲れたわ」
雪歩「あ、伊織ちゃん、『スタンド』ってどうやって出すの…? あずささん達にも聞いてみたけど、出せなくて…」
伊織「そんなこと、知らないわよ。自分でどうにかしなさい」
雪歩「ええっ…?」
伊織「ほら、仕事も終わったんだし今日は帰りましょ」
雪歩「うぅ…『スタンド』出せないなら、協力も何もないんじゃ…」
………
……
P「お前ら…車で来たんじゃないのかっ…!」
律子「だから、途中で故障したって言ったじゃないですか」
P「だからって…」
ギュゥゥゥーッ
P「全員で乗り込むなよ!」
真美「どー見ても定員オーバーだねー」
伊織「全員で事務所に帰る必要ないでしょ! もう、ここで解散でいいでしょうが!」
やよい「うぅー、ここからはちょっと家まで遠いかも…」
雪歩「わ、私はいいですからやよいちゃんを乗せてあげて…」
あずさ「あら、それなら私も今日は歩いて帰ろうかしら~」
亜美「や、あずさお姉ちゃんは送ってもらった方がいいのでは」
萩原雪歩ースタンドを受け入れ、その存在を知る。
しかし、彼女のスタンドである『ファースト・ステージ』は彼女の前に姿を現さないようだ…
そしてその夜、天海家…
春香「すぅ、すぅ…」
ズ
ズ…
ズズ…
FS「天海…春香…」
春香「くぅ…」
FS「コレガ…私ノ最後ノ仕事ダ」
FS(萩原雪歩ガ 天海春香ニ立チ向カウト決メタノナラ…)
FS(私ハ、萩原雪歩ヲ危険カラ守ルタメ…コウスルシカナイ)
FS(天海春香、貴様ハ萩原雪歩ニトッテ 間違イナク害トナル。ココデ始末サセテモラウ)
FS「余計ナ事カモ 知レナイガナ…」フッ
キラ…
FS「ン?」
FS(天海春香ノ机ノ上ニ…)
ゴゴゴゴ ゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
FS(コレハ…『矢』ダ…私ヲ生ミ出シタ…)
カラン
FS(『箆(の)』ノ部分ガナイ…? 『鏃』ダケ残ッテイルガ…重要ナノハコノ部分ダ)
FS(水瀬伊織ハ『弓ト矢』ヲ天海春香カラ取リ上ゲルノガ目的ト…ソウ言ッテイタ)
FS(ナラバ、コノ『矢』ヲ持ッテ行ケバ…)
ス…
春香「そこで止まりなさい『ファースト・ステージ』。あなたがそれに触れることは許されない」
FS「…!!」ビクッ
春香「乙女の部屋に…」スタ…
春香「無断に踏み込むなんて、許されないことだよ」
FS「天海春香、起キテイタノカ…」
春香「こんな夜に自分の部屋に入ってこられたら、誰だって気づくよ」
FS(私ニ、『すたんど使イ』達ト戦ウ理由ハナクナッタガ…)
FS(天海春香ハ別ダ! 萩原雪歩ハ、天海春香ニ立チ向カウ意志ヲ示シタ!)
FS(ナラバ、私ガ戦エナクテ ドウスル!)バッ
春香「私とやりあう気…? やめてくれないかなぁ、もう夜遅くだし」
FS「天海春香…貴様サエ倒セバ…」
春香「『ファースト・ステージ』、あなた、私を倒せるつもりでいるみたいだけど…」
春香「無駄だよ、時間の無駄。あなたなんて私の相手にもならない」ズズ…
FS「抜カセ!」ドォゥ
春香「『アイ・ウォント』」ズ
FS(『あい・うぉんと』ハ強力ナ能力ノ代ワリニ ソノ性能ハ決シテ高クハナイ…)
FS(今ノ私ヲ止メル事ハデキン!)ゴォォォ
春香「はい」
ズ…
FS「!!」ピタッ!
ゴゴゴゴゴ
FS「ウ…」
春香「『視覚支配』」
春香「わかるよね、この姿…」
FS「キ…貴様、天海春香ァァァッ!!」
ゴゴゴゴ
春香「『ファースト・ステージ』。あなたの目に映る私を、『雪歩』に見えるようにした」
春香「今、目の前には『雪歩』がいるように見えているはず…でしょう?」
FS「ク…」
FS「ソンナモノ、所詮偽リニスギン!! 貴様ハ…貴様ハ萩原雪歩デハ ナイッ!」シュバ
春香「ええ、こんなものただのまやかし」
FS「グッ!?」ピタッ
春香「…でもね、それがわかってても無駄なの」
FS(何故ダ…天海春香ニ手ヲ出セナイ…)
春香「あなたの存在意義は、『雪歩を守ること』…それだけ。それしかない」
春香「例え私の能力で見せている偽りの像であると頭で理解していても、あなたに『雪歩』を攻撃することはできない」
FS「グ…」
春香「そこから先に進めないあなたに、私を倒すことなんてできるわけがない…でしょう?」
FS「ワ…私ハ…」
春香「ん?」
FS「生マレタ時カラ、萩原雪歩ヲ守ルト決メタノダ…例エ」
FS「例エ、萩原雪歩自身ヲ欺イテモ!!」グワァ
春香「身の程を…知った方がいいよ」グッ
FS「シャアッ!!」ヒュッ
ズアァ
・ ・ ・ ・
ビュ
春香「無駄ァッ」ボギャァァ
FS「ウゴッ!?」ガクッ
FS「グギ…グググ…」
春香「遅すぎる。殴り掛かるのを見てから一発入れられる」
FS「コ…コノ『ぱわー』…『すぴーど』…以前ヨリモ…遥カニ…!!」
春香「放っといてもどうせ殴れはしなかったろうけど…わかってくれたかな? これが私とあなたの差」
FS「ア…アグガ…」
春香「逃がしたって印象ばかりで過大評価だったかな。これなら放っとく必要もなかったね」
春香「あなたには雪歩を守れたりはしない」
FS「私ヲドウスル…」
春香「どうもしないよ、見逃してあげる。どうせ倒しても無駄だし」
FS「ナンダト…?」
FS(私ハ…敵トシテスラ 見ラレテイナイ…ノカ…?)
春香「雪歩のところに帰りなさい。そろそろ寝たいんだよね」スゥ…
FS(萩原雪歩ノ姿ヲ解イタ…)
FS(触レレバ、コノだめーじヲ天海春香ニ『返セ』ル…!!)
FS「油断…」ググ…
春香「え?」
FS「シタナ…天海春香…!!」ブオン
ドヒャァ
春香「違う」
スパァァァ
FS「……………ハ」
春香「そっちじゃあない」
FS「ォ…」ゾク
春香「『視覚支配』を解いたらすぐ、後ろから不意打ちかぁ…芸のない」
ズザ…
FS「ソコカ!!」ドヒャ
シィィーン…
春香「はずれ」
FS「ア…」
FS(当タラナイ…ドコニイルノカサエモ ワカラナイ…)
春香「だから、最初に言ったでしょう? あなたなんて、私の相手にもならないって」
FS(コレガ…)
春香「攻撃をやめさせるには確か…」
FS(コレガ、『あい・うぉんと』…)
春香「回復する間もなく攻撃を与え続けるんだよね?」
FS(コレガ、天海春香カ…!!)
春香「じゃ、さよなら」
ヒュ…
春香「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」ドバ バ バ ドド バァ
FS「グオオオオオオオオ」ドガ バゴ ズギャ
春香「無駄無駄無駄無駄無駄無駄」 ボコ ドッ ドン ドン ドッ
FS「オオオオオオオォォォ…ォ…」ゴギャ ギョン ズギャ
シュゥゥゥ…
春香「さて…」
春香「『ファースト・ステージ』が私のところまで来るってことは…そろそろかな」
春香「ふぁ…ねむ…」
To Be Continued…
本日分はこれで終了です、支援ありがとうございました。
やっと終わった…二回分くらいの量になってしまいましたが支援本当にありがとうございます
前回の投下が2ヶ月前なので、いい加減今日の22:00に投下できるようにします
本当に絶対投下するよ!もし投下しなかったらHTML依頼出して貰っても構わないよ
前回までのあらすじ
P「春香、好きだ!」
春香「は、はい! わ、私もプロデューサーさんが好きです!」
P「は? それってヤバイ意味じゃないだろうな?」
春香「!?」
始めます。
トゥー…タッタッ
『あぁぅ!』タン♪
『知っらぬが~♪ 仏ほ~っとけな~い♪』
『く~ちびるポーカーフェ~イス♪』
『Yo灯台~♪ もと暗しDo you know!?』
『ギ~リギリで♪』
『お~あずけFunky girl♪』
ダダッダッダッダン
ジャン!
・ ・ ・ ・
ワァァァァァ!!
………
……
…
控え室…
亜美「よっし、終わった終わったー!」
あずさ「今回のライブも、無事成功ね~」
律子「みんな、お疲れ様」
伊織「ええ、ありがと。お疲れなんて言われるほど疲れちゃいないけど」
律子「へぇ、そう…それじゃあこの後、今日のおさらいでレッスンでも…」
伊織「待った待った! これで終わりでしょ、それに今日は…」
律子「あれ、疲れてないんじゃなかったの?」
伊織「アンタねぇ…わかって言ってるでしょ」
亜美「まぁ、亜美もそんな疲れてないけどね。行けって言われたらまだまだ行けるよ~ん」
あずさ「あらあら、私だって伊織ちゃんや亜美ちゃんには負けないわよ?」
律子「張り合うのはいいですけど、水分補給はしておいてくださいよ。結構、汗かいたでしょう」
伊織「そうね。お茶でも飲もうかしら」
カラッ
伊織(…控え室に置いてあったペットボトル、途中で飲み干してたわ)
伊織(飲み物の換えもないの? 期待するのも何だけど、気が利かないわね…)
グビッ
亜美「あーっ、うまい!」
あずさ「そうねぇ」カラン
伊織(かと言って、疲れてるのは同じだし分けてもらうってのもちょっと…あずさに至ってはもう飲み終わってるし)
伊織「ちょっと律子…」クルッ
シン…
あずさ「律子さんなら、外でお偉いさん達とお話しに行ったわ」
伊織「会場のスタッフは?」
亜美「みんな舞台の後片付けじゃない?」
伊織「はぁ…」
スタッ
あずさ「あら? 伊織ちゃん、どうしたの?」
伊織「飲み物買ってくるわ。面倒だけど」
亜美「あっ、いおりんコーラ買ってきてコーラ!」
伊織「自分で買え! と言うか、今飲んだばかりでしょうが!」
亜美「お茶とコーラは違うYOー」
………
伊織「はーっ…?」
ヴィーン…
伊織「何よこの自販機! 炭酸ばっかりでお茶すらないじゃない!」
伊織「つっかえないわね! この伊織ちゃんが来てあげてるんだからもっと品揃えよくしなさいよ!」
伊織「…って、自販機に当たっても仕方ないわね。スタドリでいっか…」ゴソッ
伊織「あれ、小銭入れが…ない? 鞄に入れておいたのに…」ゴソゴソ
伊織「え、嘘でしょ!? もーっ、なんでこんな時に…」
?「水瀬伊織」
伊織「わっ!?」ビクッ
?「マズハ、仕事オ疲レ様ト…ソウ言ウベキカナ」
伊織「ア、アンタは…『ファースト・ステージ』!」
FS「ウム。マズハコレヲ 返サナクテハナ」ヒョイ
パシッ
伊織「わ、私の小銭入れ!? アンタが持ち出したの!? 何のために…」
スッ
伊織「え? これって…」
FS「『おれんじじゅーす』…君ガ探シテイタイノハ コレダロウ?」
FS「らいぶガ終ワル前ニ 外ノ自販機デ買ッテキテ オイタノダ」
伊織「き、気が利くじゃない…」
伊織「いや、それより…言いたいことは色々とあるけど…」
伊織「アンタ、あの時攻撃止めて消えたでしょうが! 何勝手に出てきてんのよ!」
FS「勝手モ何モ…原因ハ君ダ、水瀬伊織」
伊織「は?」
FS「私ハ、萩原雪歩ニ『すたんど』ノ情報ガ接触スルコトを『すいっち』トシテ出現スル」
FS「シカシ、萩原雪歩自身ガ すたんどヲ受ケ入レテシマッタカラナ…言ワバ今ハ『すいっち』ガ入リッパナシノ状態ナノダ」
伊織「え、じゃあ何よ…アンタ今、ところ構わず出てこれるわけ…?」
FS「ソウナルナ」
サッ!
伊織「や、やるの…? こっちはもうアンタとの戦い方なんてわかってるけど…?」
FS「モウ君達ト戦ウツモリハナイ、戦ウちからモナイ」
伊織「…? 力もないって?」
FS「私ノ、すたんどトシテノ在リ方ヲ 真ッ向カラ否定サレタカラナ…」
FS「君ヲ前ニシテモ マルデぱわーガ出テコナイノダ」
伊織「あ、そう…そりゃ、雪歩を説得した甲斐があったってもんだわ」スッ
FS「ソレハ 飲マナイノカ? セッカク買ッテ来タノダカラ、飲ンデクレルト アリガタイノダガ」
伊織「…そうさせてもらうわ」プシュ
………
グビッ
伊織「ぷは…やっぱジュースは果汁100%に限るわね」
伊織「で、『ファースト・ステージ』」
FS「ム?」
伊織「アンタは何しに来たのよ? まさか、私に『オレンジジュース』を買ってくるために来たわけじゃあないでしょ」
伊織「で、この前みたいに私達をブチのめそうってわけでもない…なら…」
FS「ソノコトダガ…」
FS「マズ、最初ニ言ッテオコウ。コノ前ハ 済マナカッタ」
伊織「は?」
FS「私ノ勝手ナ『思イ込ミ』デ 君達ニ危害ヲ加エタコトダ。謝罪スル」
伊織「………」
FS「水瀬伊織?」
伊織「いや、今何を言われたのかちょっと理解できなかったわ…」
FS「ナンダト」
伊織「アンタ、謝るとかできたのね」
FS「私ダッテ謝リモスルシ 傷ツキモスル」
伊織「話の通じない奴…いつでも自分が正しい! 他の意見なんて聞き入れない! って奴だと思ってたのに」
FS「アンナモノヲ見セラレテハ、受ケ入レル他ナイダロウ」
伊織(あんなもの…ね。雪歩がああ言ったのがそんなにショックだったのかしら)
伊織「だから、これで機嫌取りってワケ?」チャプッ
FS「ソウイウツモリデハ ナイガ」
伊織「ふーん、そう。へーぇ…それで?」
FS「ム?」
伊織「アンタ、私にどうしてほしいワケ…? 許してほしいと…そう言いたいの?」
FS「アア、ソウダナ」
伊織「別に、私達にどう思われてようがアンタは困らないでしょ」
FS「イヤ、ソレハ困ル」
伊織「それはまた、なんでよ?」
FS「萩原雪歩ガ、君達ト一緒ニ 戦ウト言ッタカラダ」
伊織「へ?」
FS「君達ガ彼女ヲノケモノニスルトハ思ッテハ イナイガ…私ガ皆ニ嫌ワレテイテハ、萩原雪歩モ肩身ガ狭イダロウカラナ」
伊織「…うーん…」
FS「ドウシタ、水瀬伊織」
伊織「あれだけのことやられて…心を入れ替えましたって言われて、あっさり許すってのも…なんか…」
FS「駄目カ…?」
伊織「アンタね…」ハァ…
グッ
伊織「自分で何やったか覚えてんの!? この伊織ちゃんに何をしたか!」
伊織「真なんてベンチの下に叩き込まれた! 律子だって、車の修理代かかるんで落ち込んでるのよ!」
FS「ム…」
FS「ソウカ、ソウダナ。仕方ナイ…カ…」
伊織「………」
伊織「あーっ…!」グビッ
FS「?」
ゴクッゴクッ
FS「水瀬伊織…? 一気飲ミハ ヤメテオケ、体ニ悪イ…」
伊織「ぷはっ…」
モクモクモク
伊織「『スモーキー…」グッ
FS「!?」
伊織「…スリル』ッ!」
グォォォ
FS「オ…!?」ドグシャァ
カラン
FS「鼻が…ナ、何ヲ…」
伊織「それは仲直りの『握手』の代わりよ」
伊織「『雪歩のため』…そう言ったわね」
伊織「やりすぎな場面はあったし行き過ぎた行動には出たけど、アンタはそのスタンスを崩したことはない」
FS「デハ…」
伊織「全面的に許したわけじゃあないけど…雪歩に免じて、アンタのやったことには目を瞑ってやるわ」
伊織「この伊織ちゃんの、海より広い心に感謝しなさいよね」
FS「アア…感謝スル、水瀬伊織」
伊織「む。……」
FS「菊地真達ニモ謝ラネバ ナラナイナ…」
伊織「はいはい、この話は終わりよ。これからのことを話しましょ」
カラカラ
伊織「あ、その前に…その空き缶、アンタが捨てておきなさいよ」
FS「断ル。私ハ君ノ『すたんど』デモ 奴隷デモナイノデナ」
伊織「許してやったのに?」
FS「ソレトコレトハ話ガ別ダロウ」
伊織「あっそ。それもそうね」
モクモクモク…
カラン
FS「『すもーきー・すりる』カ…」
FS「缶ヲ拾イ上ゲ ごみ箱ニ捨テルトハ、使イコナシテイルジャアナイカ」
伊織「まぁ…ね。なんだかんだ、便利だし」
FS「天海春香ト戦ウノダナ」
伊織「ええ。残っているのは春香だけ。もう、先送りは出来ない…」
FS「私ガ萩原雪歩以外ノ事ニ感情ヲ 左右サレルコトハナイ」
伊織「あっそ…」
FS「ダガ…」
FS「ソノ萩原雪歩ノ心ヲ動カシタノハ 他デモナイ君達ダ。デキルダケノコトハ シタイト思ウ」
伊織「………偽物?」
FS「何ヲ言ウ」
伊織「いきなり謙虚な事言い出すもんだから。ちょっと気持ち悪いわアンタ…」
FS「君ハ私ノ事ヲ誤解シテイル」
FS「萩原雪歩ニトッテノ害ト ナラナイノナラ、何モ進ンデ敵対シヨウトハ 思ワナイ」
伊織「ふーん?」
FS「タダ、天海春香…奴ハ別ダ。奴ハ危険スギル」
伊織「………」
FS「ソレデ、勝算ハ ドレクライダト考エテイル?」
伊織「80%ってとこかしら」
FS「高イナ」
伊織「春香の『アイ・ウォント』は確かに強い。けれど、こっちには春香以外の765プロの全員揃っている…勝てない相手じゃあないわ」
FS「シカシ80ぱーせんとトイウコトハ、20ぱーせんとハ負ケル…ト言ウコトカ?」
伊織「いえ、低く見積もって80%よ。4人程度でも充分それくらいの勝算はあるわ。千早や美希のスタンドもよくわかってないし」
伊織「どんなに頑張っても、あっちは1人…こっちは12人いるんだもの、100%勝てるはずよ」
伊織「勝たなければならない」グッ
FS「………」
伊織「そのためにもアンタも協力しなさい、『ファースト・ステージ』」
FS「萩原雪歩ノ意思ヲ尊重シ、協力シヨウトハ 思ウ」
FS「ダガ、水瀬伊織…アエテ言オウ、君達ハ恐ラク天海春香ニハ勝テナイ」
伊織「え…?」
伊織「な…なんでよ!?」
FS「コノ間、私ハ天海春香ノ寝込ミヲ襲イニ 行ッタノダガ…」
伊織「はぁ!?」
FS「ム? ヤハリ軽卒ナ行動ダッタカ…」
伊織「…い、いや、いいわ。それで、どうだったの?」
FS「見テノ通リダ、失敗シタ。『矢』ヲ 奪オウトシタ所ヲ気ヅカレ、返リ討チダ」
伊織「アンタ…やられたのね」
FS「手モ足モ出ナカッタ…マルデ 叩コウトシタラ引ッ込ム『モグラ叩キ』ノヨウニ、奴ニ遊バレテイルヨウナ感覚ダッタ」
伊織「『アイ・ウォント』は能力こそ強力だけど…スタンド自体の性能は中の下よ。アンタがそんな一方的にやられるとは思わないんだけど」
FS「同ジ『すたんど』ダカラ、ワカル…以前ノ『あい・うぉんと』トハ決定的ニ、何カガ違ウ」
FS「イヤ…『あい・うぉんと』モ変ワッテイルガ…ソレ以上ニ違ウノハ 天海春香ダ」
伊織「春香が?」
FS「他ノあいどるガ全テ敵ニ回ッタトイウノニ、奴ノ態度ハ 余裕ソノモノダ」
FS「事実、私ノ時モ マルデ本気ヲ出シテイナカッタ…何カ底知レナイモノヲ今ノ奴カラハ感ジル」
伊織「底知れない何か…ね」
FS「奴ニハ警戒シテ シスギルトイウコトハナイダロウ…ソシテ、シタトコロデ…恐ラク、奴ハ ソノ上ヲ行ク」
伊織「真と同じようなこと言うのね…って言うか、それってまるで…」
FS「マルデモ何モ…」
FS「ソモソモ私ガココニ来タノハ、君ニ『忠告』スルタメダ。天海春香トハ戦ウナ」
伊織「………アンタ…」
FS「戦ウノナラ、協力ハスル。ダガ、私ノ意見トシテハ奴ト戦ウベキデハナイ。逃ゲテクレ」
伊織「ビビってるの、アンタ」
FS「私ガ恐レルノハ 萩原雪歩ヲ守レナイコトダケダ」
FS「ソシテ…私ガアノ天海春香カラ萩原雪歩ヲ守ルコトハ、恐ラク不可能。ダカラ、ソウダナ…怖イ」
伊織「『ファースト・ステージ』…」
FS「頼ム、水瀬伊織…」
伊織「…いいわ」
FS「! デハ…」
伊織「もういいわ、『ファースト・ステージ』」
FS「ナニ?」
伊織「アンタみたいなビビリが戦う必要はない。協力も結構。雪歩の傍で震えてなさい」
FS「びびルトカびびラナイトカ、ソウイウ次元ノ話ヲシテイルノデハナイ!」
伊織「春香から逃げて、それでどうするのよ」
FS「戦エバ、萩原雪歩ハ…イヤ、君達全員、タダデハ済マンゾ!!」
伊織「春香は今…いや、『スタンド使い』になってからずっと独り。もしも私達がアイツから逃げたりしたらどうなるかしらね」
FS「天海春香ノ事ヲ気ニ シテイルノカ…? ソウナッタノハ奴ノセイダ、自業自得ダロウ」
伊織「…私達は逃げたわ。逃げたから、今こうなっている」
FS「…? 何ノ話ダ」
伊織「みんな逃げたのよ。貴音も美希も…真もやよいも律子も亜美も真美もあずさも響も雪歩も、そして私も」
伊織「『アイ・ウォント』を恐れ、アイツと向き合うことを放棄したの。だから春香はああなってしまった」
伊織「春香だけじゃあない。765プロ全員の責任で…765プロ全体の問題なのよ」
FS「水瀬伊織…」
伊織「私達はやっとここまで戻ってきた」
伊織「けれど今…春香と向き合えなければ、765プロはきっとまたバラバラになってしまうわ」
伊織「アイツだって、私達の仲間よ! 切り捨てて、先に進めるわけがないッ!!」
FS「私ニハ…君ノ言ウコトガワカラナイ…」
伊織「わからないわよ。雪歩ともちゃんと向き合えてない臆病者には」
FS「………」
伊織「『ファースト・ステージ』アンタがなんと言おうと私達は春香と戦うわ」
FS「ソノ結果、ドウナロウトモ?」
伊織「ええ。納得できなければ時に衝突、逃げるなんてありえない。それが765プロよ」
FS「ソウカ…」
FS「『すたんど』ハ精神ノちから…ソコマデノ決意ガアルノナラ、勝テナイトシテモ…何モ デキズ終ワルコトハナイダロウ」
伊織「はぁ…ここまで来たら、『きっと勝てる』くらい言いなさいよ」
FS「私ハ嘘ハ ツカナイ」
FS「サテ…私ハ ソロソロ萩原雪歩ノ下ニ戻ルトシヨウ。色々ト考エタイコトモアル」
伊織「あ、ちょっと『ファースト・ステージ』」
FS「ナンダ?」
伊織「何か迷ったりしたら、私の所に来なさい。話し相手くらいにはなってやるわよ。にひひっ」
FS「フ…アリガトウ、水瀬伊織」
スゥ…
伊織(春香の余裕…アイツが何を考えているのか、何を隠し持っているのか…私にはわからない)
伊織(だけど、私は…私達は前に進むしかない。みんなのために、私のために)
伊織(春香を…倒す)
………
……
…
事務所…
キョロキョロ
千早「美希、美希…」
千早「姿が見えないわね…どこへ行ったのかしら」
美希「呼んだ…? 千早さん…」ヌッ
千早「ひゃっ…!」
美希「あはっ、ソファの陰から出ただけなのに、千早さんビックリしすぎなの」
千早「また、寝てたのね…そんな、部屋の隅の方で」
美希「向こうは工事の音でうるさいから」
美希「千早さん、何か用?」
千早「何か用って…忘れたの?」
美希「えーと…なんだっけ?」
千早「美希…」
美希「うそうそ、ちゃんと覚えてるの」
美希「対策かいぎ…だっけ? それ開くって律子から聞いてる」
千早「ええ、そうよ。場所は覚えてる?」
美希「えーと、確か…携帯に…」ゴソゴソ
千早「近くの廃ビル…亜美と真美の秘密基地と言っていたわね」
美希「なんでそんなところでやるんだろうね」
千早「これ以上事務所の中でやるわけにもいかないでしょう。これまでも『スタンド』の影響で色々な物が壊されている」
千早「全員で行くなら、激しい戦いになるだろうし…これ以上派手に事を起こせないわ」
千早「かといって、道端でやるのもね。『スタンド』は人には見えないけれど、私達はアイドル…注目を集めるのは避けるべきよ」
千早「あの場に春香を誘い込み、迎え撃つという話みたい。そのための下準備も兼ねているわ」
美希「うーん…本当に必要あるのカナ、それ」
千早「必要あるのかって、どういうこと?」
美希「別にそこで戦うってのはいいケド、下準備とかいらないって思うな」
美希「正面から挑んでバトル! それだけでしょ!」
千早「美希…貴女、何も考えてないの…?」
美希「考えてないって言うか、この期に及んでビビってるようじゃあ、むしろそっちの方が倒せないって思うな」
千早「………」
美希「…千早さん?」
千早「なるほど、それも一理あるわね。『スタンド』は精神力の高い方が勝つ…」
千早「それに、やるならこそこそとやるより、堂々と実力で倒した方が互いに納得できるわ」
美希「あ、千早さんもそう思う?」
千早「けれど…」
美希「へ?」
千早「貴女や私だけの問題でもない。それに春香の力は未知数、勝手に先走るのも危険なのも事実」
千早「話し合いは、ちゃんとするべきよ。その上で正面から戦いましょう」
美希「あふぅ…メンドーなの」
千早「…それが本音ね」
美希「そう言えば、千早さん。あの後、ミキは忙しくてあんまり会えなかったケド、腕は大丈夫なの?」
千早「これかしら」グッ
美希「なんか、腕につけてるし…結構ひどいんじゃ…」
千早「ええ、まぁ…あの日からギプスは取れてないけれど…問題はないわ」
美希「う…」
千早「階段から落ちたということにして、その間仕事には穴を空けることになったけれど…問題はないわ」
美希「ご、ごめんなさーい!」
千早「いや、問題はないのよ本当に…一人暮らしで片腕しか使えないけれど」
美希「千早さんんん…」
千早「冗談よ。確かに不便だけれど、お互い様だし仕方ないわ」
千早「さぁ、そろそろ行きましょう。みんな待っているわ」
美希「あふぅ…」
美希「もうちょっと時間あるでしょ? 竜宮小町がライブ終わってからって話だし、律子達が着く前に行けばいいの」
千早「行くのなら、早めに着いた方がいいでしょう。向こうにも寝るスペースはあるみたいよ」
美希「やっぱ事務所のソファが一番なのー」
千早「ちょっと、美希…」
美希「だいじょーぶ、時間までにはちゃんと着くから。千早さん、先に行ってて…」
千早(春香は、今日はライブで地方まで行っている…)
千早(終わっても、事務所には帰ってこない。新幹線でこっちの方まで来たらそのまま家に帰ることになっている)
千早(例え今からここに来るとしても、美希が待ち合わせまでに来れば鉢合わせにはならないわね)
千早(本当に、美希が時間までに着くなら…だけれど)
千早「もう…知らないわよ。私は行くわ」
美希「はいなのー」
………
……
…
美希「ん…」パチ
美希「うーん…千早さーん…?」
シィーン…
美希「…誰もいないの。タブン、あとは他の部屋に小鳥が一人だけかな」
美希「あふぅ…えっと、竜宮小町のライブが終わったのがこれくらいで、車でこっちに向かってるとして今はどの辺だろ…」
美希「まぁ、まだ大丈夫でしょ。どこだっけ? ケータイで…」スッ
?「ここがどうかしたの?」
美希「確か、みんなで集まって…」パチ…
・ ・ ・ ・
ゴゴゴゴ
美希「な…」
?「やっほ、ただいま…」
ゴゴゴゴゴゴゴ
春香「美希」
美希「はる…ッ…!」
ゴゴゴ ゴゴゴゴゴ
春香「美希、他に誰もいないけど(小鳥さんはいるけど)…どうしたの?」
美希(一瞬で目が覚めた…な、なんで…)
美希「なんでここに春香がいるの…!?」
春香「質問を質問で返さないでほしいな」
美希(春香は…地方にライブに出て…数十分前に終わったとして…ここに来れるわけがない…!!)
美希「ありえない! なんで…」
春香「なんでだと思う? 当ててみなよ」
美希「サ、サボったとか?」
春香「まっさか~」ケラケラ
春香「ま、そんなことどうでもいいか。それより、みんなで集まるんだって?」
美希「………」
春香「じゃあさ、私も連れて行ってよ。仲間はずれはよくない…」
美希「春香にはサプライズのつもりだったんだけどな」
春香「え、そうなの? じゃあ知られちゃ駄目じゃない、美希?」
美希(………)
ドドドド
美希「ねぇ、春香」
春香「何?」
美希「一緒に来る? みんな、春香のコト待ってるケド」
ドドド
春香「あれ、いいの?」
美希「もともと、そのつもりみたいだし。手間が省けるの」
春香「うーん…せっかくのお誘いだし、行きたいのは山々だけど…」
ドドドドド
春香「その前に…やっておいた方がいいと思う事があるんだよねぇ」
美希「…何かな」
春香「それはもちろん…」
ドドドドドドド
春香「美希を倒しておくことだよ。他のみんなを相手にする前に…ね」
ゴゴゴゴゴ
チリ…
春香「『アイ・ウォント』」ズ…
ブルルッ
美希「…っ!」
春香「どうしたの? 腕が震えてるよ、美希…」
美希「はぁ…っ…」
春香「そんなんで、私と戦えるのかなぁ、美希ィッ!!」ダッ
美希「…あはっ」
春香「!?」ズァッ!!
ギュァァアア
美希「この震えはあれなの…えっと…」ビシュゥ!
ガッシィィッ
春香「む… …!」
美希「ま、いっか。いるはずがない春香が、なんでここにいるのかはよくわかんないしびっくりした…」
美希「だけど、ミキは今それよりも…春香を倒せると思ってすっごいドキドキしてる」
美希「ミキを倒すって言ったケド…倒されるのはどっちの方かな? 春香」
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
次回分は来週までに投下できたらいいな(願望)
体感時間を「奪う」とか考えたけど、これディアボロと変わらんな…
体感時間を「奪う」とか考えたけど、これディアボロと変わらんな…
縺昴≧縺?dGE縺後◎繧後°
前回までのあらすじ
伊織「あれは…『ファースト・ステージ』?!」
FS「キミハ…リュウグウコマチ ノ ミナセイオリ」
伊織「こんな所で何してんのよ!」
FS「ワタシ、モウイラナイッテ…アマミハルカ ニ マケタカラ イラナイッテ…」
伊織「そんな…! アンタがみんなにどれだけ迷惑かけたと思ってるの!」
FS「ショウガナイヨ…」
伊織「『ファースト・ステージ』、いえ臆病者。ウチに来なさい」
FS「エッ」
伊織「春香を見返してやろうじゃないの!」
ラミレス「ハ、ハラサン… 」
始めます。
………
P「あれ?」
P「春香、春香ー!? どこに行ったんだ、春香!?」
ブルルルル
P(ん、メールが…春香から?)
春香
すみませんっ(>_<)
ーーーーーーーーー
春香です。突然いなくなってごめんなさい!
この後、どうしても外せない用事があって…。
先に帰っちゃいました!本当にごめんなさい…。
今日のライブは大成功でしたね!プロデューサーさんのおかげです!
また一緒に頑張りましょうねっ☆
P(帰った…のか? 一人で…いつの間に…)
P(大事な用なら、あらかじめ言ってくれればいいのに)
P(いや、それより…今の時間から帰っての用事ってのは、なんだ…?)
P(春香…ライブも終わった直後だって言うのに、一体どこに行ったんだ…)
………
真「あれ?」
やよい「あ、真さん! おはようございます!」
真美「まこちんおはよー」
雪歩「お、おはよう、真ちゃん」
真「おはよう。今いるのはやよいに真美に雪歩に…」キョロキョロ
貴音「私達もいますよ、真」
響「結構みんな集まってるぞ」
真「貴音さんと響か。みんな、早いね」
雪歩「今日は、春香ちゃんと竜宮小町以外はみんなオフだから」
真「そっか、伊織達がいないんだね。美希と千早は?」
貴音「まだ、のようですね。連絡もありません」
やよい「千早さんも美希さんも、どうしたんでしょうか…」
響「千早はわからないけど、美希はどこかで寝てるに決まってるぞ」
真美「諸君! 今日は真美の秘密基地にようこそ!」
貴音「真美がこのような土地を所有しているとは…驚きました」
真「私有地だと思うんだけどなぁ…使われてないけど」
やよい「そういえば…雪歩さんのスタンドってどうなったんですか?」
雪歩「それが、全然出てきてくれなくって…」
真「…できれば出て来てほしくないな…」
雪歩「へっ?」
貴音「まぁ、よろしいではありませんか。過ぎたことです」
真「それはそうだけどさ…」
やよい「みんなが来るまでどうしましょう?」
真美「どーしよっかなー。みんなで話しててもいいけど、ちょっと退屈だよね」
響「ふふふ、そう言うと思って飲み物買ってきてるぞ! みんなで飲みながら待ってようよ」
真美「え、ほんとー!? コーラある?」
貴音「私も一つ頂きましょう」
真「何の集まりなんだ、これは…」
………
亜美「あれ?」
亜美「いおりん、なんでコーラ買ってきてないのー!?」
伊織「自分で買えっつったでしょうが!」
亜美「それでもいおりんは買ってきてくれると信じてたのに!」
律子「運動した直後にそんな甘いもん摂ってたら太るわよ」
亜美「そんなー、あずさお姉ちゃんじゃあるまいし…」
あずさ「亜美ちゃん…?」
亜美「ハッ!」
ゴゴゴゴゴ
亜美「あ…あずさお姉ちゃん…今のはちょっとした…」
あずさ「今の? なんて言ったのかしら、ちょっとよく聞こえなかったわ」
亜美「絶対聞こえてたよ! 助けていおりん、りっちゃん!」
律子「ここの所、もうちょっと躍動感つけた方がよくない?」
伊織「そうかしら? これはこれでいいと思うんだけど」
あずさ「亜美ちゃん、話してくれる…?」
ゴゴゴゴ ゴゴゴ
亜美「うわああああああああああああごめんなさいいいいいいいい」
あずさ「えーっと…本当に聞こえなかったんだけど…」
………
春香「あれ?」
春香「今…変な言葉が聞こえた気がするんだけど。なんて言ったの、美希?」
美希「聞こえなかった? ならもう一度言ってあげる。春香を倒すって言ったの」
春香「ふっ…」
春香「ふふふ…あはははは…あっはははははは!」
美希「………」
春香「倒す…? 美希が? 私を?」
春香「無駄だよ、無駄。自分の置かれてる立場、よく考えてみたら?」
美希「やってみなきゃわかんないって思うな」
春香「やらなくても、もうわかるよ」ズ…
美希「そこまで差があるとはケド」
春香「わかるってば。まさか、さっきのが本気だって思った?」
ゴゴゴゴゴ
ゴゴ ゴゴゴゴ
春香「………」
美希「………」
ゴゴゴゴ
春香「行きなさい!」カッ!
美希「!」
春香「無駄ァッ!」
バヒュウ!!
美希(速っ…!! 千早さんの『インフェルノ』と同じくらい…)
美希「けど…」グッ
ヒュン
春香「…!」バチィ!!
ズガガッ
美希「速いだけなら、まだなんとかなる」
美希「さっき触った時につけた『ロック』目がけて叩いたの。そして…」
<LOCK!
春香「………」
美希「これで、ふたつ。『リレイションズ』のダメージはドンドン増えていくよ、春香」
春香「はぁー…」
美希「………」
春香「どうして、みんなわかってくれないのかなぁ」
春香「私はみんなのために『弓と矢』を使ってるのに」
春香「美希だって、そうやって『スタンド』を使ってるのに」
美希「違うよ」
春香「?」
美希「春香が『スタンド使い』を増やしているのは他人のためじゃない。わからせたいってだけ」
春香「わからせたい? 何を?」
美希「誰も自分の『アイ・ウォント』には勝てないってコト」
春香「………」ピク…
美希「自分は他の誰よりも優れているってコト。そうでしょ?」
春香「違う…」
美希「違わない。春香がやってることって、つまりはそういうことでしょ」
春香「随分と…調子に乗ってくれるじゃあない美希」
美希「そういうセリフって、大体調子に乗ってるヒトが使うの」
春香「言わせておけば…」ゴォォォ…
美希「怒った? 図星突かれて頭に来た?」
美希「こっちは春香から書けられた迷惑でそれ以上にプンスカしてるの!!」
春香「美希ィッ!」
ギュオン!!
美希「わかんないかな…『リレイションズ』を相手に…」
ォォォォォオ
美希「先に動いたら、駄目だって!」ヒュッ
ガスッ!
<LOCK!
春香「くっ…!」
美希「もう一回!」ダダン
春香「きゃ…」ドス! ガスッ
<LOCK! <LOCK!
美希「たーっ!!」ズダダダ
<LOCK! LOCK! LOCK!
春香「ぐぅ…っ…」タッ
ザザ…
春香「ふぅーっ…」
美希「………」
美希(おかしい…)
美希(『アイ・ウォント』相手にこんな順調に攻撃を与えられるなんて…春香はどうして能力を使わないの…?)
美希(殴れた場所はバラバラ…ギリギリで避けられて、『ロック』した部分を捉えられてはいない)
美希(でも、それでも…体の『ロック』が増えれば不利になるなんてこと、春香だってわかってるはずなのに…何故…?)
春香「いやぁ…本当に厄介なスタンドだよ、『リレイションズ』は…」
春香「1m圏内ならその針の穴を通すような『正確性』…『近距離パワー型』なら大抵のスタンドには対抗できるだろうね」
春香「私の『アイ・ウォント』も…」
美希「『五感支配』を使えばいいの、春香」
春香「………」
美希「『アイ・ウォント』のパワーアップには結構びっくりしたケド…能力を使わずにミキに勝とうなんて、そうはいかないよ」
春香「『五感支配』ね…」
春香「ふふっ…くくくっ…くふっ…」
美希「…何がそんなにおかしいの?」
春香「いや、だって…」
春香「ヴァイッ!!」
美希「!?」バッ
ガキィィィン
春香「あは、あは、あははははははは」
美希「…!? は、春香…?」
春香「無駄無駄無駄無駄」ビュォ ド ド ド バ バ
美希「リ、『リレイションズ』…ッ!!」
ガギャァ! バシィ!!
美希「っ…!?」ズザザ
春香「あはは…そうみたいだね…『アイ・ウォント』の能力を使わなかったら…美希には勝てないかもね…!!」
美希(な、何…? 今の春香、ゼッタイにおかしい…)
美希(なんていうか、妙に『ハイになってる』っていうか…ラリってるっていうか…すっごく、ヘン…)
春香「それじゃ、お言葉に甘えまして。そろそろ行こっかな…うふふ…」ス…
パンッ!!
美希「!」ビクッ
フッ…
美希(春香が手を叩いたら、姿が消えた…)
美希(でも、ほんとに消えたわけじゃあない。これは『視覚支配』…すぐ近くにいるはず)
美希(それで、春香の『アイ・ウォント』が『支配』できる感覚は一つだけ…)
美希(『視覚支配』を使ってるってことは、他のは大丈夫ってコトだから…)
ザリッ…
美希「そこっ!!」バォッ
ガキィ!!
美希「よしっ…!」
美希(当たる…ちゃんと対抗できる)
美希「ミキは『アイ・ウォント』に勝つために…力を蓄えてきた! 前のミキとは違う!!」
ザザッ…
美希(この音…離れるつもり…? でも、ミキの『リレイションズ』は…)
美希「一度射程距離内に入ったら…逃がさない…のっ!」クイッ
ゴォッ
バシィィン!!
ザザザッ
美希「それ聞こえてるっ!」シュバ!!
ブオン
美希「ん!?」
ズリズリ…
美希(音は聞こえるのに、そこに春香がいない…これは…)
春香「みーーーー」
美希「…!」
春香「きーーーー」ケラケラ
美希「み、耳元に春香の声!」
美希(これは、『聴覚支配』? でも春香の姿が見えない…ってコトは…)
美希「春香は、この部屋から出て行ったの!? それなら…」
春香「って思うでしょ?」ボソッ
ドズゥ
美希「う…っ!?」
春香「違うんだなぁ」
美希(攻撃された…ってことは、春香は近くにいる…!? やっぱり、『視覚支配』!?)
美希(いや、春香は『五感支配』を好きなように使える…次々と切り替えて惑わせてるってことなの!)
ズズ…
春香「はぁい、こっち…」
美希「くっ!!」ブオン
スカッ
美希「なら…そっち!!」クルッ
春香「………」
美希(春香は別に、『瞬間移動』できるってワケじゃあない…両方叩けば!!)バビュゥ
フ…
美希「え…」
ゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴ
美希(ち…)
美希(違う…! 声を出したのも、そこに立っていたのも…どっちも春香じゃあない…!!)
春香「ヴァイッ!!」ヒュオッ
美希「!!」バッ
シーン…
・ ・ ・
美希「ぐ…!?」ボギャ
ズガァァァァァ
美希「うあああああああ!?」
美希(攻撃を…受けた!? どこから…また、声や音のする方じゃなかった…!!)
美希(春香は音のする場所にはいない…)
美希(でも、目にも見えない…これって、つまり…!!)
春香「美希は確かに強くなってるね…『ロック』する能力、それを活かせるくらい美希も『リレイションズ』も強くなった」
春香「だけど…私は、その上を行く」
美希「…!!」
春香「前の美希とは違う…ね…」
春香「どうして私は前のままだと思ったのかな…どうして、自分のスタンドだけが成長していると思ったのかな…?」
美希(前提が、間違ってる…!?)
美希(春香の『五感支配』…『支配』できる感覚は、一つだけって…)
美希(もし、そうじゃなくなってるとしたら…?)
春香「美希が考えている通り…今の『アイ・ウォント』は五感のうち二つ…『支配』できる」
美希「…!」
春香「今使ってるのは、『視覚支配』と『聴覚支配』の両方だね」
美希「そ、そんな…」
春香「なんであっさりとバラすと思う? それがわかっても、無駄だからだよ」
春香「そう、無駄。無駄無駄」ス…
美希「…!」
美希(どこから来る…? どこから殴ってくるの…!?)
春香「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
バォッ ドガ ドギャ ズギャ
美希「うぉっ…おおおっ…!!」グギャン
春香「人間は見えないものを恐れ…見えないものには対抗できない…」
春香「例えば『スタンド』を見ることができない一般人には、スタンドから見を守る手段はない」
春香「そして私の『アイ・ウォント』は『スタンド使い』にすら見ることはできない」
美希「っ…はぁ…」
春香「どうする美希? 今なら謝れば許してあげるけど」
美希「…やだよ。ミキ、なんにも悪いことしてないモン」
美希(でも…姿も見えない、音も別の方から聞こえる…どうやって春香に対抗すれば…)クイッ
美希「…? これって…」クイクイ
春香「悪いこと…ね。いいとか悪いとか、そういう話じゃあないんだけどなぁ…」
春香「やっぱり、美希にはちゃんとわからせてあげないと…駄目みたいだね!」ビュァァ!!
美希「!」シュッ
グオン
春香「ん!?」バッ
美希「…外した…」
春香「当てずっぽうで…方向を当てた? でも、そんなのは…」
美希「そっち!」ビュッ
春香「!」サッ
春香「違う…当てずっぽうじゃない、ちゃんと私の居場所がわかって攻撃してきている…?」
春香「『視覚支配』と『聴覚支配』…してるはずなのに、なんでわかるんだろ…」
キィン…
美希「ミキの能力…なんだったか、忘れたの? 春香」
春香「! そっか、体についてるこれを目印に…」
美希「『リレイションズ』の『ロック』は…」
美希「これは誰にも邪魔されない、ミキだけの感覚…! 『アイ・ウォント』の影響は受けない、何も問題ないの!」
春香「ふーん…なるほどね…」
美希「これで、春香に届…」ヒュバッ
春香「………」スッ
美希「わっ…」フラッ
春香「届かないね」
春香「無駄だよ、無駄。例え『ロック』で、方向がわかろうが何も変わらない」
春香「当てるには『距離感』が必要。『視覚支配』と『聴覚支配』は美希の距離感も奪っている」
春香「方向はわかる…それで? それだけで、『アイ・ウォント』をどうやって攻略するつもり?」
美希「………」ピン!
ピシ! ビシ!
・ ・ ・ ・
春香「何か…当たった? 今…『リレイションズ』の指が何かを弾き飛ばして…」
春香「これは…ビーズ?」
<LOCK! <LOCK!
春香「!」
美希「はぁっ!!」ゴォッ
春香「無駄無駄ァ」ブォン
バッチィィィ!!
春香「む!」
美希「なのーっ!!」グイーン
春香「こっ…!!」バチィ!!
春香「美希の『リレイションズ』の引っ張る力が上がっている…! 距離が2mくらい開いてても一気に縮められるくらい…」
春香「スピードも、そっちを上回りつつある…! これは…」
美希「名付けて…押せ押せとっこー作戦…なの!」
ビュオッ!!
春香「くっ…!!」ガスッ
春香(いや、だけど…なんで私が『リレイションズ』の2m圏内、その中にいる時がわかるのは…これはなんでかな?)
美希(勝てる…)
美希(勝てる! 春香の姿は見えないからダメージはわからないケド…このまま行けば…春香を倒せる!)
春香「ああ…そっか、わかった」
美希「! そこっ!」クルッ
ゴォッ
シン…
・ ・ ・
美希「あれ…?」
美希(こっちに…『ロック』はない…春香は、いない…)
美希(なんでミキは振り向いたの…? なんで、そこに春香がいるって思ったんだろ…?)
春香「ヴァイッ!!」ゴォッ!
美希「デッ!?」ガキィン!!
ズザザ
春香「ふふ…ふふふふふふふふふ」
美希(今、春香の攻撃と音が一致した…)
美希(『聴覚支配』を解いた? なんのために? それに今のは…)
美希(ワケわかんない…何が起きてるの…?)
美希(春香の『アイ・ウォント』…まだ、何か隠してるっていうの…!?)
美希「………」クイッ
美希(『リレイションズ』の『ロック』はそっちに引っ張ってる…)
美希(春香はこっちにいる、ゼッタイにいる…)
春香「どうしたの? もう、終わり?」
ゴゴゴゴ ゴゴゴ
美希「………」ゴクッ
美希「はぁぁっ!!」ゴォッ
春香「………そろそろ、いいかな」ス…
パチン
ズ…
ズズズ…
美希「…え!?」
…
……
………
カツ カツ カツ
千早(…結局、戻ってきてしまったわ)
シーン…
千早(事務所は不気味なほど静か…何も聞こえないわね)
千早(…何か、胸騒ぎがする)カツ カツ
ピタ…
千早(部屋の前まで来た…)
千早(さっき出てきたばかりだし、美希はまだ…寝ていると思うのだけれど…)ス…
ガチャ
千早「美希、まだいる…?」スッ
千早「あれ…」
春香「無駄ァッ!!」ゴッ
美希「ぐ…ぁ…」グシャ
ドグバァ
春香「惜しかったね美希…」シュゥゥゥゥ…
ゴゴ
美希「う…」ヨロ…
春香「あと少し、あとほんの数ミリ程度腕が前に出ていれば…」
ゴゴゴゴ
春香「この『ロック』した部分をブッ叩いて私の全身に『再起不能』するほどのダメージを与え、勝利してたかもしれないのにね…」
美希「うぐ…ぅ」ガクッ
ゴゴゴゴゴゴ
千早(これは…)
千早(春香が美希を…一体、何があったと言うの…?)
ゴゴゴゴ ゴゴゴゴ
春香「ん?」クル!
千早「………美希」
美希「千早…さん…?」
春香「あ、千早ちゃんだ」
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
③までかかると思ったら②で終わってしまった
なにげに今日このss一周年やんけ
おめでとう?
>>616
元々今日までに終わらせるつもりだったので、1周年を迎えてしまったというのはつまりはそういうことです
ですが、時々放置しながらも今日まで投げず続けてこられたのは皆様のお陰です。ありがとうございます
とりあえず今回分は17レス分くらいまでは書き終わったので日付が変わるまでには投下したいと思います
本当は放置した分一気に3回分くらい投下しようとしたのですがどうにも無理でした
『弓と矢』は今回の話を含めあと4話、9回くらいを予定しておりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです
前回までのあらすじ
千早「春香…これは貴女がやったのね」
春香「ええ、私がやった…」
千早「何故、こんなことを…」
春香「千早ちゃんはどんどん先に行って…私に振り向いてくれないから…」
千早「だから、全部壊したと…そういうこと?」
春香「うん。そう」
千早「馬鹿な事を…」
春香「馬鹿な事って…私は…!」
千早「だって、そんなことをしなくたって春香。私も貴女のことを…」
春香「千早ちゃん…」
ちゅっちゅ
HAPPY END
始めます。
春香「やっほー、千早ちゃん」
ドド ドドドド
千早(何か胸騒ぎがして戻ってきてみれば…)
千早(これは、どういうこと…? どうして、春香がここに…)
春香「元気?」
千早(美希がやられている…ということは…)
千早「………顔は時々合わせてるから、こんなことを言うのも奇妙だけれど」
千早「ようやく、会えたわね…春香」
春香「そういえば、こうしてスタンド使いとして千早ちゃんと話すのは初めてだったね」
美希「………」シン…
千早(戦いは、既に始まっていた…!)
千早「これは貴女がやったの? 春香…」
春香「私は美希に何もしてないよ」
千早「嘘おっしゃい…なら、そこで倒れているのは何だって言うの?」
春香「倒れてる? 寝てるの間違いじゃない?」
千早「何を馬鹿なことを…!!」
春香「まぁ、落ち着いてよ千早ちゃん」
春香「千早ちゃんはさ、どこまで知ってるの?」
千早「全て聞いている…『弓と矢』を使い事務所の皆を『スタンド使い』にしたこと、『アイ・ウォント』で皆を傷つけ無理矢理『仲間』にしていること…」
春香「ふーん…でもさ、それって千早ちゃんが直接確かめたわけじゃあないよね?」
千早「え?」
春香「私が『弓と矢』を使ってみんなを『スタンド使い』にしたのは事実。みんなを誘ったのもまた事実」
春香「けど、それだけだよ…それってそんなに悪いこと?」
千早「なんですって?」
春香「無理矢理引き込む事なんてしないよ。断られたらそれでいいじゃない、そんなことしなくても事務所の仲間であることには変わりないんだから」
千早「え!? それは…」
春香「そもそも、考えてみてよ。どうしてみんなを『仲間』にする必要があるの?」
春香「私は『矢』さえ手元にあればいい。私がみんなに攻撃する動機なんて何もないんだよ」
春香「それに…」
ドクドク…
千早「う、その腕…」
千早(血が沢山流れている…)
春香「先にやってきたのは美希の方…私も、攻撃されたとあったら黙ってはいられない」
春香「千早ちゃんが見た美希の姿は、私の『矢』を壊そうと襲ってきた結果…正当防衛だよ」
春香「確かに、ちょっとやりすぎたかもしれない…けど、私は自分を守るため…やるしかなかったんだ!」
春香「ねぇ、信じてよ千早ちゃん! 私はこっちから手を出したりはしてない!」
春香「その証拠に、今日まで千早ちゃんは私に襲われなかったでしょ? タイミングはいくらでもあったのに!」
千早「………」
春香「もしも千早ちゃんが誰かに襲われたのなら、それはその人が勝手にやった事…」
千早(響や美希は元々春香側ではなかった…あずささんは春香の側にいながらも春香を倒す事を考えていたわ)
春香「信じてくれないの千早ちゃん…?」
千早「うっ!」
春香「やっぱり…私一人よりも、他のみんなの言うことを信じるのかな…?」
千早「春香の言うことと他の皆の言うことならば…」
千早「私は貴女を信じる…信じたい」
春香「千早ちゃん! それじゃあ…」
千早「けれど」グオン
春香「え?」
ビシュゥ!
春香「ちょっ…!?」
ガッシィィッ
春香「な、なにするのかな…千早ちゃん…」
千早「確かに…血は流れているように見える」
春香「え?」
千早「だけど、ならば…何故、貴女からは血の臭いがしないのかしら」
春香「………」
ゴゴゴゴゴゴ
千早「それほど流れていれば、少しくらい臭いがしてもいいはずなのに…不自然だわ」
千早「春香、貴女に人を騙すことなどできやしないわ」
千早「偽りの像を見せている? 臭いを消している? どっちにしても、これは現実ではない」
千早「そして私を騙そうとしているのなら、貴女の言う事でも信じることは出来ない。残念だけれど」
春香「フゥー…」
千早「春香…?」
春香「やっぱり、駄目かぁ…」
スゥ…
千早(血が引いていく…)
春香「千早ちゃんとはあんまり戦いたくなかったんだけど…本当に…」
千早「そう。奇遇ね春香、私もよ」
千早(美希…)チラ…
美希「………」ブルブル
千早(あんなに震えて、相当酷い目に遭わされ…)
美希「ち、『血の臭いがしない』って…」プルプル
千早「…え?」
美希「千早さんって、結構…ぷぷぷ」
千早「な、何!? そんなにおかしかった!?」
美希「ぐっ…」ズキン
千早「美希…! 貴女、その怪我…」
美希「あはは…やられちゃったの…」
千早「…そう…」
千早「そこでじっとしてて、美希…」
千早「後は私がやる」
美希「ち、千早さん、その腕!」
千早「腕? 腕がどうかしたのかしら?」
美希「それ、折れてるんじゃ…片腕で大丈夫…」
千早「折れてる? 何のことかしら」
美希「さっき、ギプスつけてたの! そんな腕じゃ…」
千早「………」ジャラ…
春香「ん? コイン…」
ポイッ
千早「『インフェルノ』」ヒュバ!!
ズバッ バッ バッ バッ
千早「そんな腕じゃ…何?」パッ
チャリン
美希「片腕でたくさんのコインを取ったの…」
千早「確かに折れていたけれど…まぁ、治った。問題はないわ」
美希「あ、あれ…さっき、仕事が大変だとか…言ってたの…」
千早「あれは冗談と言ったでしょう」
美希「え、それってそういう意味だったの!?」
春香「そろそろいい?」
千早「ええ…待たせたわね」
美希「あ、ちょっと待って千早さ…!」ムクッ
春香「『アイ・ウォント』」ヒュ
千早「!!」
ドスゥ!
美希「うぶ…」
ガクッ
春香「美希はもう黙ってなよ…決着はついたでしょう」
千早「春香…!」ギリッ
春香「ねぇ千早ちゃん…最後に聞いておくけど、『仲間』になる気はない?」
千早「何をぬけぬけと…目の前で美希にこんなことをやっておいて…!!」
春香「これは見せしめだよ。千早ちゃんさえ『仲間』になってくれれば、今みたいに誰かに手を出したりはしない」
千早「…!」
春香「私もさ…何もみんなのことを傷つけたくてこんなことをしてるんじゃあないんだよ」
千早「なに…?」
春香「『スタンド』に出会って私は変わった…だからこそ、みんなに『スタンド』の素晴らしさを知ってほしかった」
春香「誰か一人でも…わかってくれる『仲間』が欲しかった。誰もわかってくれなかったけど」
千早「春香…」
春香「そして…そんなスタンド能力を引き出してくれた『矢』を美希や貴音さんは破壊するべきと、そう言ったの。そんなこと納得できない」
春香「互いに納得できないのなら…戦うしかない…」
春香「戦って…勝ち取るしかない。でしょう?」
千早「………」
春香「私も、事務所のみんなを傷つけるのは心が痛む…『矢』を壊そうだなんて言ってこなければこんなことはしたくない」
春香「だけど今、私は孤立している…そしてみんなが『矢』を狙ってくる。『仲間』がいなければ安心もできない」
千早「………」
春香「ねぇ…千早ちゃん。千早ちゃんが私の『仲間』になって、私は誰も傷つけない…みんなからは距離を置いてもらう…」
春香「こうするのが一番いい、これが765プロ全員にとって幸せなことだと思うんだ」
春香「だから、一緒に…」
千早「………」
春香「一緒にトップアイドル目指そうよ!」
千早「春香」
春香「ん?」
千早「アイドルとは『与える者』よ」
千早「美希を傷つけ…自分の都合で皆から平穏を奪い…」
千早「そして今、私を引き込み他の仲間を奪おうとしている…今の貴女はアイドルではないわ」
春香「………」
千早「そんな貴女とはトップアイドルなんて目指せないわね」
春香「…前も同じようなこと言われた気がするなぁ…」
千早「ねぇ、春香。既に事務所の皆が『スタンド使い』になった…それでも『矢』を手放さないということは…」
千早「つまりはこれから事務所に入ってくる人達、全員を『スタンド使い』にすると…そういうこと?」
春香「そのつもりだけど」
春香「ああ、もしかして…みんな、自分だけの物にしたいのかな? だから『矢』を壊そうと…」
千早「違う、危惧しているだけよ。貴女のやっていることには考えがなさすぎる」
千早「例えば、『スタンド使い』になった誰かがスタンドを悪用するかもしれない…そうなったら、貴女はどうするの」
春香「そのための『仲間』…そのための『アイ・ウォント』…だよ」
千早「そうなら、何をしてもいいと言うの?」
春香「問題を起こすのなら…そうなるかもね。だからみんなもそうなった」
千早「私達がいつ問題を起こしたの?」
春香「問題だよ。『矢』がなくなったら私の考えていることは全部崩れてしまう」
千早「事務所に入った皆を『スタンド使い』にすると…もしも、『スタンド使い』になれなかったらどうするの」
春香「それはもう仕方ないよ。その子はアイドルとしての才能がない、可哀想だけど」
千早「…春香…やっぱり、今の貴女の話を飲むわけにはいかない」
千早「ここで止めてみせる」グッ
ドドドドド
春香「そっか、残念…千早ちゃんはあくまでも、私に対抗する気でいるんだ」
千早「ええ。そのために今日まで鍛えてきた」
春香「ふーん…じゃあ、千早ちゃんには美希と同じ目に遭ってもらおっか」
ドドド
千早「だったら…春香には美希よりももっと酷い目に遭ってもらうわ」
ドドドド
春香「やってみなよ、千早ちゃん!」
千早「言われなくても…『インフェルノ』!」カッ!
バヒュウ!!
春香「ふーん…これが千早ちゃんのスタンドかぁ…」
春香「能力は、ものを『軽く』するんだっけ? 『温度』を変えるんだったっけ」
春香「ま、どっちでもいいけど」
ユラ…
千早「!」ピタッ
千早(春香の姿が歪んで消えていった…これが『五感支配』というやつかしら)
バチィ!!
千早「う…っ!」
千早(止めた腕が弾かれたわ…外した時点でさっさと引っ込めるべきだった)ビリビリ
千早(春香の『アイ・ウォント』、なかなかの正確性を持つスタンドのようね)
千早(けれど、攻撃のタイミングを見るに…私の『インフェルノ』の方が速い)
千早(問題はどうやって春香を捉えるか…だけれど)
千早「………」
シン…
千早(音がない…私が動くまで行動する気はない…と言うことかしら)
千早(なら、誘き寄させてあげるわ)
千早「『ブルー・バード・インフェルノ』」ヒュオッ
スカッ
千早(………)
コッ
千早「そっちね」クル
春香「あ、速…」
千早「そこよ!!」ブオンッ
シン…
千早「ん…?」
春香「うん、方向は合ってる。方向だけは…」
千早「!」
春香「でも…ちょっと『射程距離』が足りないかな? 美希の『リレイションズ』よりは長いけど、それでも2mちょっとくらいみたいだね」
千早「呑気に話している場合じゃあないでしょう、春香」
春香「お? こっちに来る?」
千早(声の聞こえた方にいるのはわかった、けれど私が突っ込んでいけばどちらかの方向に逃げるはず…ならばそこに『インフェルノ』を…)
コツッ
千早(右ね…!)
千早「んあっ!」ギュオン!!
シン…
千早「う…」
千早(駄目だわ、手応えがない…)
千早(これは、春香の足音じゃない? 何かを床に落とせばそれで音は出る…)
千早(見透かされてる…ということは、春香は元の場所に…)
春香「ちーはやちゃん」ボソッ
千早「…!」ゾク
千早(じゃない! 後ろにいる…いつの間にか回り込まれている…!!)
春香「無駄」ヒュッ
千早「ぐ…っ!」ガスッ
春香「無駄無駄」ダダン
ドス! ガスッ
春香「無駄無駄無駄無駄」ズダダダ
千早「きゃ…!!」タッ
ザザ…
春香「ほらほら、もっと頑張ってよ千早ちゃん。これなら美希の方が強…」
千早「『イン…」
春香「!」
千早「…フェルノ』!!」ゴッ
春香「防いで『アイ・ウォント』」バッ
ガキィィィン
千早「そこよ…!」ビュォ
ド ド ド
春香「うっ!」ガギャァ!
千早「んああっ!!」バ バ
春香「くーっ…!」バシィ!!
千早(浅い…)
春香「千早ちゃん、結構突っ込んでくるね…怖くないの? 『アイ・ウォント』が」
千早「知らないわ。『それ』を見たのは今日が初めてだもの」
千早「そんなものを、どうやって怖がれというの?」
春香「ふーん…ま、いいけど」
春香「千早ちゃんのそれ、『ブルー・バード』…だったっけ」
千早「『ブルー・バード・インフェルノ』よ」
春香「私、千早ちゃんには『矢』を使った覚えないんだけど…なんで、使えるのかなぁ。『スタンド』を」
千早「さぁ…私にもわからない。だけど、そんなことはどうだっていい」
千早「私はこの『インフェルノ』を貴女を止めるために使う…それだけでいい」
春香「止める? 無駄だよ、無駄。未だに私の『アイ・ウォント』を捉えられないのに」
千早「やってみなければわからないわ」
春香「わかるよ」ス…
パンッ!!
千早「!」ビク
シン…
千早(音が…消えた…?)
ガキィ!!
千早「くっ…!?」メシャ
ザザ
千早(何処からか攻撃を受けた!?)
千早(春香が攻撃している!? しかし、足音がしないのは…)
シーン…
千早(そうか、スタンドには足音がないから…! これではどこから来るのかがわからない…!)
バシィィン!!
千早「ぐっ!!」ブン
スカッ
ザザザッ
千早(当たらない…)
千早(正確に打ち込んでくる…反撃しようにもすぐに避けられるわ、間に合わない…)
ズリズリ…
千早(離れても、この方向でいいのか…『アイ・ウォント』の射程距離はどれくらい?)
千早(また攻撃は来る…どうやって躱す? 次は…どこから…)
ピタ…
ズズ…
春香「千早ちゃん、どうしたの立ち止まって…もう諦めちゃった?」
千早(姿を現した…けれど、やはり見えてからでは間に合わないわね…)
春香「ヴァイッ!!」ブオン
フワ…
・ ・ ・ ・
春香「………ん?」
千早「どこから来るのかわからないのなら…」フワリ
千早「どこでもいいわ。当たらなくすればいいだけの話よ」
春香「なに、それ…」
千早「叩き込む、『ブルー・バード』!!」
ポフッ
春香「ん?」
千早(当たった! このまま体重を戻し、更に春香の体重を『奪って』…)
ズシ…
春香「う…?」
千早(『ブルー・バード』を『重く』する!)
ドズゥ
春香「うぐっ…!」
ズシャァァァ
春香「こ…これは…」
千早「よし…捉えたわ、春香…」
春香「どういうこと? 『スタンド』は一人一能力のはず…」
千早「『インフェルノ』は『ブルー・バード』の能力の延長線上よ」
千早「『熱』を『奪い』『与える』『インフェルノ』に対し、この『ブルー・バード』は『重量』を操作する」
千早「私の体重を空気より『軽く』し…当てた瞬間、体重を戻し更に『奪って』一時的に『重く』した」
千早「美希の『リレイションズ』には破られたけど…貴女の『アイ・ウォント』相手には通用するみたいね」
春香「二つの『ブルー・バード』…二つの能力…」
春香「それは…ちょっとずるくないかな、千早ちゃん…」
千早「ずるい? 貴女からそんな言葉を聞くとは思わなかったわ春香」
春香「『軽く』する能力…ですって? そんなもの、『アイ・ウォント』で…」
フッ
千早「また消えた…けれど…」
ブワッ
千早「もう、当たらないわ」クルン
春香「空中で一回転した…!?」
千早「『ブルー・バード』!!」ヒュン
春香「ぐっ…」ボギャ
ズガァァァァァ
春香「むうううっ!!」
ズズ…
春香「ふぅーっ…」
千早「さぁ…チェックメイトよ、春香」
春香「こんなので私を追いつめたつもり?」
千早「もう貴女が私に攻撃を加える手段はないわ」
千早「『五感支配』を使おうと関係ない。私の方が優位よ」
春香「何もわかってない…美希も、千早ちゃんも…私の『アイ・ウォント』の恐ろしさを」
千早「確かに、みんなの言う通り恐ろしいスタンドであるとは思うわ。けれど、どうしようもない差があるわけではない」
春香「ふ…」
千早「?」
春香「あはははははははは! あはははは!」
千早「は…春香?」
春香「ああ、駄目だ…もう駄目! これで笑うなって方が無理!」ケラケラ
千早「………」
春香「あっははははははは! ひーっひひひっひ!!」
千早(…よくわからないけれど…)
春香「ひぃーっ、ひぃーっ…」
千早(笑い声が聞こえるということは、そこにいるのね?)
千早「『ブルー・バード』!」
春香「あーっはっはっはっはっは」
バォッ ドガ ドギャ ズギャ
春香「おぶっ」グギャン
千早「春香…一体どうしたの? 何がそんなにおかしいの?」
春香「すぐにわかる…いや本当に、面白くて仕方ないよ…ふふふ…」
千早「なら、勝手に笑っていなさい。顔には手を出さないであげるから」
春香「おっとぉ、そうはいかないよっ!」ヒュッ
千早「む!」バッ
ピシ! ピシ!
・ ・ ・
千早「浅いわ、春香! そんな攻撃で…」
春香「ヴァイッ!!」ゴォッ
バッチィィィ!!
千早「ん!?」
春香「そーれっ!!」グイーン
バチィ!!
千早「おおっ!?」
千早(こ…これは!? 『アイ・ウォント』のパワーが上がっている…)
千早(今までは本気じゃあなかったってこと…? それとも…)
春香「無駄ァッ」ビュオッ!!
千早「『インフェルノ』!」ガスッ
春香「ん…」
千早「こうして見た目通り防げるということは、『五感支配』に使っていたパワーを回したのね? それしか考えられない」
春香「はー…」
千早「でも…こっちの方が…私のスタンドの方が強いわ」
千早「んあっ!!」ゴォッ!
春香「きゃああああっ!!」ガキィン!!
ズザザ
春香「はぁ、はぁ…」
千早「さぁ、春香…これで全て終わりよ」
春香「ああ…そっか、そうみたいだね」
千早「………」
千早(何、春香のこの態度は…諦観? それとも何か隠している…?)
千早「春香、降参しなさい。そうすればもう攻撃はしない」
春香「降参? 冗談でしょ」
千早「もう決着は着いた、これ以上やる意味はないわ」
春香「なら、『再起不能』させれば? 負けを認めればスタンドは力を失う」
千早「………」
千早(やはり…何か企んでいる…?)
千早(けれど…ここで引き下がる選択肢なんてないわ。春香の『何か』に怯え引き下がるようなら、私の精神は敗北したということになる)
千早「なら、望み通り…『ブルー・バード・インフェルノ』!!」ゴオッ
春香「………そろそろ、いいかな」ス…
パチン
千早「!」ビクッ
千早(何? 春香が指が鳴らし…)
千早「…は?」オオッ
美希「え!?」ピタッ
千早(美…希…? なんで、美希の『リレイションズ』が私の目の前に!?)
千早(駄目だわ、『インフェルノ』を止め…)
グシャァァァ
美希「おぶっ」ドザァ
ドッバァァーッ
千早「あ…!! …!」
ドドドド ドドドド
美希「う…」ピク…
千早「み…美希…?」
春香「はい、おしまい」
今回の分はおしまいです。支援ありがとうございました。
次回は…できる限り早く投下したいと思います
前回までのあらすじ
春香「『アイ・ウォント』…千早ちゃんと美希に幻覚を見せ仲間同士で戦わせていた」
千早「な…なんですって…!?」
美希「それもまた幻覚なの。春香はもう片付けておいたの」
春香「うぅ…」ボロッ
千早「な…なんですって…!?」
高木「諸君! ただいま帰ったぞ!」ガラッ
千早「しゃ、社長…!? 貴方は死んだはずでは…」
高木「実は親戚間で少々ゴタゴタがあってね。忙しい時期に迷惑をかけてすまなかった」
千早「な…なんですって…!?」
P「千早、実は今までのことは全部ドッキリだったんだ」
千早「え!? ならこれは…」
ブルー・バードの中の人「やぁ」スポン
小鳥「スタンドなんてありませんよ漫画やアニメじゃあないんですから」
千早「な…なんですって…!?」
『弓と矢』完!
始めます。
千早「え…?」
春香「千早ちゃんのそのスタンド…」
春香「美希ほどは使いこなせてるわけじゃあないみたいだね。美希のはピッタリ止まったのに」
美希「うっ、くぅ…っ…」ブルブル
千早「な、なんで美希が…?」
美希「う…うぅ…」
千早「だって美希は…春香にやられて…そこで…」
春香「うん、今やられたね。私じゃあない、千早ちゃんの手で」
千早「美希が戦ってて…え? 私と…?」
春香「まだわからないかなぁ。『アイ・ウォント』の能力、忘れたの?」
千早「は…」
春香「ああ、千早ちゃんはわからないのか。直接見せたのはこれが初めてだから…」
千早「ご…『五感…支配』…まさか…!」
春香「『五感支配』…ね」
春香「ま、そうだよ。美希も千早ちゃんも…互いのことを私だと思って戦っていた」
千早「そんなこと、『アイ・ウォント』にできるはずがない…!! 音も映像も確かに…」
春香「千早ちゃんには言ってなかったし、見せてもなかったね…私、二つの感覚を『支配』できるの」
千早「そ…そんな…」
美希「いや…ちょっと待って…」
千早「! 美希…」
春香「あれ? 美希、千早ちゃんの『インフェルノ』の攻撃を受けてもう喋れるんだ」
美希「だとしても…『五感支配』でごまかしたとしても、カンペキに騙しきるなんてできっこないの…」
春香「なんで?」
美希「春香が操れるのは二つだけ…他の感覚は元のままだから、繋ぎ繋ぎでごまかしてもどこかヘンになってるはずなの」
美希「人そのものが変わっていれば尚更! 動きとかで、ゼッタイボロは出てる! 違和感感じるはず…!」
春香「違和感は覚えるものだよ、美希」
美希「春香は国語の先生なの…」
美希「いや、そんなことどうだっていい…! ミキと千早さんの両方を、どっちも春香だと思わせようとするなんて、そんなことできるわけが…」
春香「ねぇ二人とも、『ダウジング』って知ってる?」
美希「へ?」
千早「は?」
春香「細い鎖に重りを繋げた振り子…鎖の先っぽを握って重りを垂らすと、手の僅かな動きによって振り子が揺れる」
春香「その振り子の揺れる方向に、探し物があるという…これが『ダウジング』。地下水脈を探すのに使われるらしいね」
千早「い、いきなり…何の話…? 何を言っているの…?」
春香「知らない? なら『こっくりさん』でもいいよ」
春香「『こっくりさん』っていうのは文字が書かれた紙の上で十円玉に触れると、十円玉が勝手に動いて質問に答えてくれるってものなんだけど…」
美希「いや…それは知ってるケド…」
春香「『ダウジング』で水脈や、なくしものを見つけられる…『こっくりさん』が答えを出す…何故だと思う?」
千早「ただの偶然よ…そういうオカルトめいたものはあまり信じてはいないわ」
美希(千早さん、スタンドのことはどう思ってるんだろ…)
春香「他には…そう。漫画家の『荒木飛呂彦先生』は子供の頃、見えないところからやってきた医者の存在を探知できたという」
千早「…それとこれと、何の関係があるの?」
春香「ん?」
美希「さっきから何? ゼンゼン意味わかんないの」
千早「要領を得ないわ。はっきり言ってくれないかしら、一体何を言いたいのか」
春香「ああ、うん。『ダウジング』とか『こっくりさん』とか『荒木先生』はあまり関係なくて…つまり、何が言いたいかと言うと」
春香「人間の『脳』は感覚を使わなくても、無意識のうちに周囲のことを感じ取っているってこと」
美希「???」
千早「………」
春香「ああ、そんな顔しないでよ…こっちも、説明するのが難しいんだから…」
春香「この10円玉だけど…数字描いてある方が裏ね」
ピン!
春香「さぁ千早ちゃん、表と裏どっちだと思う?」パシッ
千早「は?」
春香「答えてよ、話が進まないからさ」
千早「………『裏』」
ス…
春香「うん、正解。答えは『裏』」
千早「…これが何なのかしら」
春香「千早ちゃん、今この10円玉の表裏を当てられたのは何故?」
千早「これこそ偶然よ。二分の一だもの、たまたま当たっただけ」
春香「じゃあ、裏を選んだのはなんで? 表でもよかったのに」
千早「…勘よ。特に理由はないわ」
春香「そう、それ。『勘』。それが重要なんだよ」
千早「勘が重要って、何を言っているのか…」
千早「…………え」
美希「千早さん?」
春香「千早ちゃんは気づいたみたいだね」
千早「いえ…まさか、そんな…」
春香「人間は例え『五感』で感知できないようなものの存在も、潜在意識ではわかっている」
春香「だから、無意識に振り子を揺らしたり…10円玉を動かして答えを出す」
美希「そんなの、アレがないの。えーと…コンキョ?」
春香「そう、はっきりとした根拠はない! 本人も気づいてすらいない! けど、わかっている!」
春香「それが『勘』というものなんだよ!」
千早「『勘』…」
千早「『勘』というのは、つまり『直感』…」
美希「ちょ、直…『感』…?」
美希「ま…」
ドドドド
美希「まさか…」
ドド ドドド
春香「そう、『直感支配』!!」
ドドドドドド
千早「直感は『第六感』とも呼ぶ…」
千早「『六感…支配』…!」
春香「そうそう。二人とも、さっきから『五感支配』『五感支配』って…ふふ…」
美希「そ…そんな馬鹿なコトって…!!」
春香「成長しているんだよ、私の『アイ・ウォント』も」
春香「『直感』をズラせば勘は100%外れる、普通なら気づくはずのほんのささいな違和感にも気づかない」
美希(ミキが振り向かされたのもそれのせい…!?)
春香「さっきのは、千早ちゃんの『直感』に10円玉のことを深く植え付けた」
春香「千早ちゃんは偶然と言ったけど…あのまま繰り返してたら、何十回でも何百回でも千早ちゃんは当て続けただろうね」
千早「そんな馬鹿なことが…」
春香「『直感』自体の影響は微々たるものだし…流石に、『五感』ではっきりとわかるような事実はごまかせないけどね」
美希「『アイ・ウォント』は受け入れた感覚しか支配できない…じゃあ、『直感支配』はどこから…」
春香「さっきから言ってるでしょう! 『人間の脳』は! 無意識のうちに! 『視覚』よりも! 『聴覚』よりも! 遥かに多くの情報を手に入れている!」
春香「『アイ・ウォント』はただそこに在るだけで『直感支配』できるッ!!」
春香「これで種明かしは終了。わかったかな?」
千早「自分からは手を出さず、私と美希を戦わせたわね…」
千早「なんのために…こんなことを…」
春香「真正面から挑んじゃあ流石に…能力の大半を『六感支配』に使っている『アイ・ウォント』じゃ美希の『リレイションズ』や千早ちゃんの『インフェルノ』には勝てないからね」
春香「でも…互いのスタンドなら…」
美希(千早さんの『インフェルノ』と同じくらいのパワーとスピード…)
美希(当たり前だった、ミキが戦っていたのは千早さんだったんだから…)
千早(『リレイションズ』と同等の能力…正確性…)
千早(私は…美希を相手に戦わされていた…)
春香「『直感』は人の『潜在意識』…すなわち『精神』そのもの」
春香「そしてスタンドは『精神』のエネルギー…すなわち、『精神』を支配できる『アイ・ウォント』は…」
春香「『スタンド』の頂点…ということだよ」
千早「こ…こんなもの、ただ同士討ちを仕向けただけじゃない…! 『アイ・ウォント』自身の力で勝ったわけじゃあない!」
千早「そんなのが頂点であるわけが…」
春香「ねぇ千早ちゃん…ちゃんと現実見なよ」
千早「なんですって?」
春香「千早ちゃん達はボロボロ、私は無傷。それが今の状況だよ」
千早「くっ…」
春香「勝てるんだよ。千早ちゃんは自身の力じゃないって言ったけど、これが『アイ・ウォント』の力なの」
春香「みんなで私を倒そうとしてるみたいだけど…無駄。何人集まっても、無駄。無駄無駄無駄無駄」
春香「集まれば集まるほど…相手が多ければ多いほど、『アイ・ウォント』は脅威を増す」
春香「ま…一対一でも私は負けないけどね」
千早「………」ブルッ
千早(なんなの…春香のこの『自信』は…)
春香「…その顔。『アイ・ウォント』の恐ろしさを知った人はみんなそういう顔をするね」
千早「うっ…!」
千早(飲まれている…春香に…)
美希「千早さん…!」
千早「!」ハッ
春香「ん?」
美希「折れたら駄目なの…!」
千早「…美希」
美希「恐怖を感じたら『アイ・ウォント』には勝てなくなる…!! だからしっかり…」
春香「『アイ・ウォント』」ヒュッ
美希「ぐふっ…!」ボコォ
千早「………は」
ガクン
春香「最初に私に逆らってきたのは美希だったね…」
春香「美希があんなことを言い出さなければ、こうはなってなかったかもしれないのに」
春香「私は『矢』を手放すつもりはない。そのことさえわかってくれれば、『再起不能』にまで追い込んだりはしない」
春香「だからもう襲って来ないで」
千早「…るか…」
春香「ん?」
千早「春香ああああああああああああ」ズアッ
春香「案外…元気だね。美希がちゃんと止め刺さないから」
千早「『インフェルノ』ォォォーッ」ヒュバ
スカッ
・ ・ ・
ボコォ
千早「が…!」
春香「さっきも言ったでしょう! 精神を『支配』する『アイ・ウォント』はスタンドを支配する存在!」
春香「無駄だよ、無駄! 千早ちゃんのスタンドじゃ、私に触れることすらできない!」
千早「美希に…あそこまでする意味はあったの!? 春香…!!」
春香「やったのは千早ちゃんでしょう? 私は止めを刺しただけ」
千早「は…春香ぁぁぁ…!!」
春香「やだなぁ、そうやって敵意剥き出しにして…」
千早「ああああああ!!」ヒュン
春香「向かってくるなら、いくらでも相手してあげるよ。千早ちゃんが無駄だと理解するまでね」
美希「ち…」
美希「千早さん、落ち着いて…! ミキは何もされて…」
春香「無駄だよ美希。美希が何を言ったところで、千早ちゃんには届かせないから」
春香「ほら、見なよ美希。美希にやったことが、『六感支配』によるものだってことも気づいていない千早ちゃんの姿を」
千早「ああああああ!!」ヒュン
春香「こうなったら…」
千早「んあっ!!」ゴォッ
ブンッ!!
春香「人は、脆い。簡単に崩れる」シュッ
千早「が…!!」ドゴォ
美希「千早さん…!」ググ…
春香「無理しない方がいいよ、美希。千早ちゃんの攻撃をモロに受けたんだから。それに…」
春香「美希が立った所で、また同士討ちになるだけだと思うけどなぁ。あはは」
美希「く…」
千早「ふーっ、ふーっ…」
千早「そこっ!!」ブンッ
スカッ…
春香「『勘』で当てようだなんて無駄だよ。『直感支配』で100%外れるって、言ったよね?」
千早「くっ…」
春香「そもそも、私は千早ちゃんの射程距離の中にはいないし」
千早「なんですって…?」
春香「嘘だよ、ちょうどこっちの方にいるよ。ほら、声のするところ」
千早「そ、そうなの…? いえ、そんな言葉に騙されは…」
春香「そうだよ、こっちだよ」春香「いやいや、こっちこっち」
千早「…!」
春香「ねぇ、千早ちゃ~ん」ボソッ
千早「あああっ!!」ヒュバッ
スカッ…
千早「ああ…」プルプル
ブゥン…
千早(は…春香の姿が…)
春香「無駄」春香「無駄」春香「無駄」春香「無駄」
千早(春香の声が、あらゆる方向から響いてくる…!!)
グルグル
春香「「「「無駄無駄無駄無駄」」」」グルングルン
千早「あああ…ああああ…!!」ブン ブン
春香「そんな攻撃じゃ」春香「当たらないよ」春香「千早ちゃん、だだっ子みたい」
春香「「「「あはははははは」」」」
千早「ああああ…っ!!」ブルンッ
美希「う…千早さんの声、すっごくプッツン来てる…」
美希(どうにかしないと…誰か呼ばなきゃ…!)
美希(! ケータイがあるの! 春香に気づかれないよう、コレで連絡を…)サッ
カタカタカタ…
美希(あれ、勝手に画面に文字が…?)
それは
リモコン
だよーん☆
ズズ…
美希「…っ!!」ポチポチ
美希(遊ばれてる…完全に…!!)
春香「ねぇ、美希。『春香さんには勝てません、諦めます』って言ってよ。そうすれば…」
美希「うるさいっ!」
春香「おお、こわいこわい」スゥ…
美希(『ロック』もない…『視覚』と『聴覚』…二つの感覚を『支配』されたらどうやって春香を認識したらいいの…!?)
美希「………」ハッ
美希「リモコン…テレビの…リモコン!?」
千早「ああああ…っ…!!」ブオン ブンッ ブオッ
ス…
春香「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」ダム ドギャ バギャォ
千早「うぶっ」ゴキャ
グギャン
メシャァ
千早「はぁ、はぁ…」
春香「千早ちゃんには私を認識出来ない。認識できなければ攻撃すら出来ない」
春香「だから、こうなるのは『必然』なんだよ千早ちゃん」
千早「っはぁ…ぁ…」
千早「うっ…」クラッ
千早(『視覚支配』を中心に…『聴覚支配』と『直感支配』…合間合間にもう片方を挟んでくる…)
千早(もう、何が何だかわからないわ…春香をまともに捉えることもできない…)
千早(春香の『六感支配』…どうやって攻略すればいいのか、見当もつかない…)
千早(駄目なの…?)
千早(私では、春香を止めることは出来…)
ブワッ
・ ・ ・ ・
千早「………」ビリビリ
千早(何? 何かが…あっちの方から何かの衝撃が…私の体にぶつかってくる)
春香「?」
千早「『ブルー・バード』…」ズ…
ヒュオッ
バキィ!!
千早「………」
千早(これは…テレビ?)
春香「あ…止まった?」
美希「………」
春香「美希…どうしたの、テレビの電源なんかつけて。しかもボリュームまで上げて…」
春香「でかい音を出して、あっちの部屋にいる小鳥さんにでも気づかせようと思ったのかな?」
美希「………」
春香「でもね、美希。『聴覚支配』のための音は『アイ・ウォント』が起こした『音』であればいい、ここで起こっている音は最初から聞こえなくしてあるよ」
春香「それに『直感支配』で違和感も拭い去っている。『スタンド使い』じゃなくても、『なんとなく、何かがある』ってことは脳は感知してるみたいだから」
春香「ここで何があったとしても、気づく人はいないし…第一誰か来たとしても、何が起こっているのさえ理解できない」
美希「違う…ミキが狙ってるのはそんなことじゃあないの」
春香「?」
美希「春香にはわかんないか」
春香「………なに?」
千早(今のは…これも春香の『六感支配』?)
千早(いえ、わざわざこんなことをする理由がないわ…すると、美希?)
千早(美希が…何故? 私に何か伝えたいことでも)
千早(…いや、待って。私はどうしてテレビの場所がわかったの?)
千早(目には見えない、音も聞こえなかった…)
千早(そしてなぜ、私はテレビを殴ったとわかったの…?)
千早(そう、私は何かが体にぶつかってくる感覚があって…まるで…)
千早(ライブの時、歓声が自分に降り掛かってくるようなあの感じ…)
千早「………!」
千早「そう…そういうことね…美希」
春香「え…なに? あのテレビになにかあったの?」
千早「『インフェルノ』」
シュー シュゥゥゥーッ
春香「千早ちゃんのスタンドが…腕から蒸気を吹き上げてる…?」
春香「何をするつもり? 何がわかったのかな」
千早「『五感』で情報を得る方法は光や音だけではない…」
千早「音による空気の震え…振動だって、私達には感じ取れる」
春香「ああ、振動…なるほど、『視覚』と『聴覚』が使えないなら『触覚』か…」
春香「でもね千早ちゃん、『アイ・ウォント』は『スタンド』! 意識させなければ移動による空気の揺れだとか…足音だとかの振動は起こらないよ!」
春香「私だって、さっきから一歩も動いてない! この話し声だって、『聴覚』に直接訴えている!」
春香「振動で感知!? 無駄だよ、無駄! 私は一切の震えも起こしていない!!」
春香「なんのために自分に『熱』を集めているのかわからないけど、振動がなければ『触覚』で感じ取れる情報なんて…」
千早「春香。どうして私がこんなことをわざわざ話していると思うの?」
春香「はい?」
千早「自分に『熱』を集めている…? 違うわ、春香」
春香「それじゃ、な~にをやってるっていうのかな千早ちゃーん!?」
千早「私の目的は、熱くすることではない…その逆、周囲の空気を冷やしているのよ」
春香「…?」
ゴゴゴゴ
フワ…
春香「…ん? 風…」
コォォォォ
千早「空気は暖かい場所から冷えた場所に移動する。空を羽ばたく鳥のように…風の流れを感じ取る」
ヒュゥゥゥゥゥ…
千早「肌に触れる感覚の違和感…気流の乱れがあれば…」
スゥ…
千早「春香…貴女はそこにいる」グッ
春香「…!」ゾク
ゴゴゴゴゴゴ
千早「やっと…今度こそ、捉えたわ。春香」シュゥゥゥゥ…
千早「『インフェルノ』」ボ
春香「『アイ…」
千早「んあっ!」ビュシィッ!!
春香「うげ!」メキャア!!
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
続きは…次の月曜までには
前回までのあらすじ
いるはずのない事務所に突如出現した春香。
しかし、実はライブはまだ終わっていなかった!
客席から漏れるざわめき。そして不満の声。舞台裏にも悲鳴が上がる。
必死に春香を捜すプロデューサー。しかしステージのどこにも彼女の姿はない。
主を失った控え室。そこでプロデューサーの目に入ったのは、春香の衣装だった…
次回『弓と矢』第13話
『きらめく舞台に、俺も立つ』
始めます。
春香「うが…ががが…っ…!!」
シィーン…
千早「………」
千早「殴った音は聞こえない。私から見ても全く見当外れの所を叩いている」
ググ…
千早「でも…感触は確かにある」
春香「ぉ…」
千早「ためらったりは…しないわ」
千早「『インフェルノ』ォォーッ!!」ゴォッ
ズババ バババ ババババ
春香「ああああああああ!」ジュッ
ジュァァァァァァ
ドギャン!!
ジュゥ!!
春香「も…『燃える』!」
春香「空気から奪った『熱』を…そのまま攻撃に…ッ!!」ジュァァァァ
コォォォォォ
春香「はっ!?」
千早「まだ終わりじゃないわ」ジュゥゥゥ…
春香「ちょっ…ちょっと待…」
千早「はぁっ!!」ヒュン!
春香「がっ…!!」ガギャ
バリバリバリ
スゥ…
千早「!」
美希「あっ、『アイ・ウォント』の『六感支配』が解除されたの!」
春香「く…ああ…」ジュゥァァッ
千早「空気の振動…風の動き。完全とはいかないけれど、『インフェルノ』のスピードがあればさほど問題にはならないわね」
春香「こ、こんな…こんな…ことで…!」シュゥゥゥゥ…
千早「人は『触覚』でも物事を感じ取れる、そして私の『インフェルノ』なら風の操作ができる…」
千早「これが伝えたかったのね、美希」
美希「はいなの!(そこまでは考えてなかったケド)」
春香「風の…動きですって!?」
春香「そんなもの…『アイ・ウォント』!!」
ブァッ!!
千早「!」
ゴォォォォォォ
千早「これは…」チリッ、チリッ
春香「『触覚支配』で空気の触れる感覚を操った! これで…」
千早「そこね」ヒュオッ
春香「うびゃ!!」ゴギャ!
春香「な…なんで…『触覚支配』で、もう私の居場所はわからないはずじゃ…」
千早「ええ。音も肌の感覚も、まるで部屋の中に暴風が吹いているようだったわ」
千早「…あなたの姿は丸見えだけれど」
春香「はっ!?」
千早「どうやら、『実は三つ支配できる』とはいかないようね」
春香「ぐ…ぐぬぬ…」
千早「『視覚』『聴覚』そして『触覚』…これで三つ。貴女が二つの感覚を『支配』しようが、私にはもう通用しない」
千早「『直感支配』で違和感を奪っても、はっきりと捉える感覚が増えるだけ…何も問題はない」
千早「さぁ…どうする? 春香…」
春香「………無駄ァッ!!」グオッ
千早「『インフェルノ』」ヒュバ!
春香「うおっ…」ドゴォ
ザザッ
春香「速…」フラ…
ドサァ
春香「あ…」ジュゥウッ
春香「ああああ…熱い! 熱いぃぃぃぃぃ…」ゴロゴロ
千早「地獄の業火に身を焼かれる気分はどうかしら、春香」
美希「………」
春香「調子に…乗らないでよ…」
千早「あら、それを貴女が言うの? 散々調子に乗ってきた貴女が」
春香「千早ちゃんんん…!!」ズズズ…
・ ・ ・
千早「…何度姿を消しても同じよ。『インフェルノ』で空気を冷やして…」
美希「千早さん、気をつけるの!」タタッ
千早「美希…動かないで。春香の居場所を探知できないわ」
美希「春香は何か企んでるの!」
千早「美希…」
美希「だから…」
千早「動くなと言ったでしょう」ズビュ!!
美希「ぐべ!!」ゴシャ
ズズ…
春香「な、なんで…」ヨロ…
千早「あら…春香だったのね」
美希「自分にミキの姿を重ねて、千早さんを騙そうとしてたんだね」
美希「だけど、千早さんには…」
千早「気づかなかったわ。姿も声も美希だし、探知にも引っかかるし…」
美希「え?」
春香「気づかなかったって、美希だと思って攻撃したってこと…?」
千早「まぁ、怪しいとは思ったけれど」
美希「え?」
春香「本当に美希だったらどうするつもりだったの千早ちゃん…」
千早「仮に本物だったとしても、忠告を無視した美希が悪いのであって、私は悪くないわ」
美希「え?」
春香「ふふ、美希だって気づかなかった? でも攻撃した」
春香「そんな戦法はいつまでも続かない…ヴァイッ!!」ゴッ
千早「! そこっ!」ヒュッ
スゥ…
千早「偽物ね、向かってくるから思わず反応してしまったわ…」
千早(『インフェルノ』、空気を早いところ冷やして…)シュゥゥゥ…
ズ…
ズズズ…
美希「千早さん! 後ろから出てきてるの!」
千早「わかったわ」クルッ
春香「あはは! かかったね、千…」ゴォッ
ズ…
春香「え…? 『スタンド』が…こっちを向いて…」
千早「『インフェルノ』」ビシュゥ!!
春香「おおおおおおおおおおッ!?」バッ
ズギャッ ギャギャン ギャギャォン
ズザザザザザ
ザリ…
春香「なんで…あらかじめ『直感支配』で違和感は潰しておいたはずなのに…」シュゥゥゥゥ…
千早「耳はいいのよ、私は」
春香「は…?」
千早「美希の声はしたけれど、他の物音は全くしなかった…明らかに不自然だわ。『直感支配』でどうにかなるような違和感じゃあない」
千早「だから振り向きながら、背中に『インフェルノ』を出した。結果的に、こっちが騙したみたいになったわね春香」
春香「う…ぐぅぅぅ…!!」
千早「いくら小細工をしたところで…そう、無駄よ」
千早「もう一度言うわ、春香。貴女に人を騙すことなどできない」
美希(違う…『アイ・ウォント』の『六感支配』、精度は凄く…えっと…スゴかった)
美希(ミキも千早さんも一度騙されてたし、さっきまで他の音がしないとか、そんな失敗はしなかった!)
美希(春香がこんなことで間違えるってコトは…春香は動揺してるってコト…)
美希(つまり、春香は千早さんに追いつめられてるの!)
千早「春香が『支配』できる感覚は二つ…そして『直感支配』。種はすべて割れた」
千早「そして…立ち向かう手段もある」コォォォォ…
春香「く…」
千早「もう、負ける道理はない」
春香「まだだよ…」
千早「?」
春香「まだ…………じゃない…」
千早(…? なんと言ったの、今?)
春香「『アイ・ウォント』…」ズズ…ズ…
千早「また『視覚支配』…芸がないわね」
千早「それはもう通用しないと…」シュゥゥゥ…
フ…
千早「…? え…!?」
千早(どこにもいない…探知に引っかからない?)
千早(まずい、油断しすぎた…春香を見失った…!)
春香「ふふ…空気による探知はそんな遠くまで感じ取れるわけじゃあないみたいだね」
千早(く…どこにいるの!? 風は繊細、うかつに動けない…)
春香「一旦、外に出て体勢を立て直す…千早ちゃんみたいに無闇に突っ込んだりはしない…」
春香「あの『空気探知』を封じる方法…エアコンをつけるか…うちわでも使うか…」
千早「…! ……!」アタフタ
春香「ふふ。千早ちゃんの姿、おかし…」
ムニュッ
春香「ん? 何かぶつかった?」クルッ
?「前くらい…」
美希「ちゃんと見るべきだって思うな」
春香「みっ…!?」
美希「『リレイションズ』!!」ゴォッ
春香「きっ」ダン!
<LOCK!
美希「そのうち逃げるかと思って、ドアのとこに立ってて正解だったの」
美希「1m! これで『リレイションズ』の射程距離内…」
春香「む…無駄ァッ」バッ
美希「なのっ!」シュッ
春香「うお…」バチィ!
<LOCK!
美希「なのなのッ」ズダ ダダ
春香「うぼっ…」
<LOCK! <LOCK!
美希「なのなのなのなのなのなのなのなのなのなの」
ダダ ダダ ダダダダダダダダダダ
<LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!LOCK!
春香「ぐああああああああああああああああああああああああああああああ」
美希「なのっ!!」ゴキャ
バヒュゥ!!
春香「おぐっ」バリッバリバリバリバリ
ズッギャァァァーン
千早「! 美希、これは…」
美希「千早さん、油断しちゃダメだよ」
美希「さっきからミキを使って千早さんを騙そうとしてたみたいだけど…そうはいかないの」
春香「ま…まだ…」グ…ググ…
春香「あてっ!?」ズルッ
ドンガラガッシャーン
千早「………」
春香「こ…この…」グググ…
春香「きゃっ!」ガクン
ドンガラガッシャーン
春香「た…」
春香「立つことが…美希の今の攻撃で…立つことができない!?」
美希「千早さんにボコボコにされたダメージもあるし…」
美希「『リレイションズ』の攻撃はダメージが倍々に増えてく。あれだけ受ければそうなるに決まってるの」
春香「こ、この…美希がァァーッ!!」
美希「意味不明なの…」
千早「春香…哀れね」
春香「私が! 私の『アイ・ウォント』が! これしきで負けるわけない…!!」
フッ
美希(春香と音が消えた…千早さん!)
千早(わかってるわ)
コォォォォォォ
千早「そこよ」ヒュン
ズギャ
春香「うお…」フラ…
千早「もう一発」ギュゥン
春香「アグバァーッ」グゴャァン
ズ…ガガッ…
春香「ぐぅ、うぐ…」チリッ
美希「もう、スタンドにパワーもスピードもゼンゼンなくなってる。カンネンするといいの」
千早「貴女のダメージは限界に近いでしょう。チェックメイトよ、春香」
千早(春香のスタンド、『六感支配』…厄介ではある、だけど…)
千早(だけど…それだけよッ! 何も恐れることはない!)
春香「ぐっ、ぐうう…ぐぬぬ…」シュゥゥゥ…
千早「この光景は春香、また『視覚操作』で見せているのかしら? それとも、これが現実なのかしら」
千早「どっちでもいいわね。どの道…貴女の『アイ・ウォント』を『再起不能』させるまでやるだけだから」
春香「つ…」
春香「強い…」
千早「私が強い?」
千早「違うわ春香。一人でいくら意地を張っていたところで、所詮はそんなものなのよ」
春香「ふ…」
春香「ははははははっははっはははあーっはははっはははっははっはっっはっは!」
春香「ははははっは、ははっはーはっあはははっはははっはははは!!」
千早「ま、まだ何かあるのかしら…」
美希「正直、もうカンベンしてほしいって思うな…」
春香「は、あはは…ふぅ…」
春香「すごいよ、私の『アイ・ウォント』をここまで追いつめるなんて」
千早「追いつめる? 随分と悠長なことを言っているのね」
美希「これ以上変な悲鳴上げる前にコーサンした方がいいって思うな」
千早「『弓と矢』を破壊する…それで終わりよ、春香。目を覚まさせてあげるわ」
春香「千早ちゃんはさ…」
千早「ん?」
春香「前から、ずっと一人でなんでもできたよね」
千早「今の状況のことを言っているのかしら? それなら美希の…」
春香「才能もあって、プロデューサーさんにも最初から見てもらって…」
千早「…春香、貴女…」
春香「アイドル活動だって、最初から…」
千早「! それは違うわ! だって…」
春香「いいよ、なぐさめなんていらない」
千早「春香! 話を聞いて、私は…!」
春香「いいって言ってるでしょ!!」
千早「…!」ビクッ
春香「私は…ずっと足踏みしてた。今まで、前になんて進めていなかった。千早ちゃんとは…違う」
千早「春香…」
美希「千早さん、もう終わらせよう」
千早「ええ、そうね…そうしましょう」
春香「これで勝ったと本当に思ってる?」
千早「…それは貴女が一番よくわかってるんじゃないかしら、春香」
春香「そうだね。『アイ・ウォント』は完全に敗北した。本当に『再起不能』ってくらい完膚なきまでに…ね」
春香「けど、私が負けたわけじゃあない」
美希「? どーいうコト?」
春香「私にはまだ…これがある」ス
千早「え?」
春香「これだけは使いたくなかった。使うつもりはなかった」
キラ…
美希「あれは…」
千早「これは…『矢』!?」
千早(『鏃』だけを取って…春香が持ち歩いていたのね…!)
春香「だけど、二人は私のことを追いつめてしまった…だから」
千早「何…? 何を言っているの…」
春香「挫折を…本当の絶望っていうものを…千早ちゃんにも思い知らせてあげる…!!」
美希「なんかヤバいの、千早さん…!」
千早「大丈夫よ、こんなもの…飛んできたって『インフェルノ』で叩き落として…」
春香「『アイ・ウォント』」ヒュッ
ザクゥ
千早「…え」
千早(『矢』を…自分のスタンドに…『アイ・ウォント』に刺した…)
千早「春香…何を、やっているの…!?」
春香「『弓と矢』が私達に『スタンド能力』をもたらした…」
春香「そして…この『弓と矢』が…私に更なる力をもたらしてくれる」
ピキ!
千早「!」
ピキ パキ パキ パキ
千早(『矢』を刺した部分にヒビが…)
春香「うっ!」ドバァ
千早「春香!」
春香「ふ…ふふ…!」ヨロ…
パラ…
千早「………え」
キラリ
千早(あれは、何…? 『アイ・ウォント』の割れた体から、何かが覗いている…)
パキッ
ボロボロボロボロ
春香「ああ、『アイ・ウォント』の体が…」
春香「崩れている…『新しいもの』へと変わっていく…!」
千早(何かわからないけど…まずい…!!)
千早「はっ!!」ゴオッ
ドグシャァ!
春香「がっ…」ボグッ
千早「『インフェルノ』ォォーッ!!」ドッ ドォ ドォオ
春香「あ…」ゴキャ
春香「あはははははははははは」ドゴバキベキ
ギャァァァーン
千早「………」ス…
シン…
春香「は…」ス…
ガクリ
美希「倒れた…?」
千早「はる…」
春香「………」
パラ…
千早「!」
ドクン
千早「………っ…」
千早(何か… ………)
ドクン ドクン
千早(何か、とてつもないことが、今…)
キラリ
千早(起こっている…)
ドクン ドクン ドクン
ドォ
…
……
………
…………
………
……
…
ーン
千早「………」
・ ・ ・ ・
千早「…え?」
美希「え!? 何、今の…」
千早(今の感覚…まるで…)
千早(自分の存在が、この世界から引き剥がされそうになるような…)
春香「………」ズ…
ド
千早「あ…」
春香「流石に…」グ…
ドドド
春香「今のはちょっとだけ死ぬかと思った」ムクリ
美希「立ち上がった…!? 今の攻撃を受けて…」
ズズズ…
千早(春香のスタンドが…)
ド ドドドド
千早(『アイ・ウォント』…じゃあない…違うものへと変わっている…)
春香「さぁ…」
ドドドドド ドドド
春香「続けよっか。二人とも」
ドドドドド ドドドド ドドドドド
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
次回は…とりあえず水曜で
>>1乙
さあ!次回こそ響が大活躍するよ!
大活躍......しますよね?
前回までのあらすじ
春香「『アイ・ウォント』」ヒュッ
ザクゥ
千早「…え」
千早(『矢』を…自分のスタンドに…『アイ・ウォント』に刺した…)
千早「春香…何を、やっているの…!?」
春香「………」
千早「春香…!?」
ゴゴゴ ゴ ゴゴ
千早「こ…こいつ」
ゴゴゴ
千早「……死んでいる……!」
ゴ ゴゴゴ
『弓と矢』完
始めます。
ゴゴゴゴ ゴゴゴ
春香「れべるあ~っぷ♪」
ゴゴゴゴ
千早(変わった…春香のスタンドが…)
キラリ…
千早(あの姿、スタンドの左手首に『矢』がくっついている…『矢』と一体化したということ…?)
春香「………」クイッ
ゾォッ!!
千早「!」
美希「うわっ…」
ズズズズズズ
千早(景色が変わっていく…何をする気…!?)
春香「………」パチン!!
フッ
千早「え?」
美希「も…戻った?」
春香「『六感支配』はもういらない…どうせ二人には通用しないし」
春香「これに比べたら…チャチな能力だしね…! こんなものは!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
美希「ろ、『六感支配』が…チャチな能力…?」
千早「春香…貴女の『アイ・ウォント』は、一体どうしてしまったというの…」
春香「『アイ・ウォント』?」
春香「これはもう、『アイ・ウォント』なんかじゃあない」
春香「私は頂点(トップ)に立ったの。アイドルの頂点に君臨した」
春香「だから名前は決まっている。アイドルの頂点…」
春香「『ジ・アイドルマスター』」
春香「…が」スゥ…
千早「う…」
春香「ふさわしい」ピッ
千早「ス…ステージでもないのに人を指差さないで欲しいわね」
春香「変なことを気にするね…動揺してるの千早ちゃん?」
美希「ち、千早さん…ビビったら駄目なの…」
千早「美希こそ…声が震えてるわ…」
春香「あはははは、どっちもどっちだよ二人とも」
千早(春香の…『ジ・アイドルマスター』? 今まで見てきたあらゆるスタンドと、決定的に何かが違う…)
千早「…いえ、関係ないわ。私のやることは…春香を止める、それだけよ」
美希「ねぇ千早さん、気づいてる?」
千早「? 何が?」
美希「治ったのは千早さんの最後の攻撃だけ…春香はもうボロボロ」
春香「………」
美希「『ロック』も消えてない…そのままなの」
千早「ええ、そのようね…早く止めを刺しましょう」
美希「ミキは逆だって思うな」
千早「え?」
美希「今の春香からは余裕とかが感じられる、得体が知れない…」
美希「ここはちょっと様子を見るべきだって思うな」
千早「どうしたのよ美希…貴女らしくもない」
美希「だって、千早さんが千早さんらしくないから。春香のコトになると落ち着きを失うね」
千早「…私は冷静よ」
美希「ゼンゼンそうは見えないケド」
千早「………」
美希「ねぇ千早さん。戦うならもっとちゃんと…正しく動かないと駄目だよ」
美希「トラックを間違えたら、迷子になるのは確実なの」
千早「…それでも」
千早「飛び込んで行かなければ相手が何なのかもわからないわ」
美希「…わかった。千早さん、ムリしないでね」
千早「ええ…ありがとう美希」
春香「あ、終わった?」
千早「黙って見ているなんて、随分と余裕ね…」
春香「ん? あぁ…」
春香「どうせ二人が何やっても無駄だし…やりきった方が逆らう気もなくなるでしょう?」
千早(もう既に勝った気になっている…気に入らないわね)
千早(しかし、それだけ春香がこの『スタンド』を信用しているということでもある)
春香「どうしたの千早ちゃん? いいんだよ…どこからでも打ち込んでくれば」
千早「………」
春香「千早ちゃんが来ないのなら、こっちからでも…」
千早「そこよ!」ヒュオッ!!
春香「無駄ァ!!」バッ
ガッシィィ!!
美希「! 速い…」
美希(ケド…これは)
美希「なのっ!!」ブン!!
千早「!? 美希…?」
春香「何か投げてきたね…水を差さないで欲しいな、美希!!」スッ
バガァ!
千早(叩き落とした!)
春香「!!」ビリビリビリ
美希「そのリモコン…『ロック』つけて返したの」
春香「…これしきでどうにかなると…」
千早「いいえ、これで充分…」ヒュ
ゴォッ
春香「こんなもの、目くらましにもならないよ」ガッ
千早(また止められた…)
千早(このスタンド…『アイ・ウォント』に比べるとパワーとスピードはかなり上がっているわ)
千早(…けれど!)
千早「『インフェルノ』ォォーッ!!」ギュォン!!
春香「! これは…」
シュバァ!!
春香「きゃっ!」ジュゥッ!
千早「かすったわッ!」
千早「パワーアップしても、元はあの『アイ・ウォント』…」
美希「『インフェルノ』のスピードは春香の新しいスタンドよりも上なの!」
春香「あー………やっぱりかぁ」
千早「空気中から集めた『熱』を、ありったけ…」
プシュゥゥゥゥ…
千早「叩き込むッ!」
バキィ!!
春香「うあっ…あぐっ…」ジュゥゥゥゥ
春香「………」ゥゥウウ…
千早「春香、貴女が何をしようと私は負けたりはしない…」
千早「これで…」
春香「『ジ・アイドルマスター』」
ドォ……………ーン
千早「終わり…よ…」
・ ・ ・ ・
千早「え…?」
美希「えっ!?」
千早(い…今の感覚は…最初、あのスタンドが目覚めた時と同じ…)
千早(春香の新しいスタンド…今、『なにか』したの…?)
ドドド
春香「びっくりしちゃった」
千早「!?」
千早(ど…)
春香「千早ちゃんのスタンド、『ブルー・バード・インフェルノ』…だっけ?」
ドドドド
千早(どうして…)
春香「本当に…『強い』ね」
千早(どうして春香は平然と立っているの…!?)
春香「だけど、無駄。千早ちゃんのスタンドがいくら強くても…」
春香「例え私の『ジ・アイドルマスター』を超えてようが、ね」ス…
ツヤ…
ドドドド ドドドドド
千早(春香の…! 春香の傷が…消えている…ッ)
千早(どういうこと…『治癒能力』!?)
美希「ち、千早さん…」ブルブル
千早「? 何かわかったの、美希?」
美希「あ、頭…」
千早「頭…?」スッ
ベトォ…
千早「…え?」タラッ
春香「千早ちゃん…頭から血が出てるよ」
ゴゴゴゴゴ ゴゴ
千早「うおおおおおおお!?」ダラダラ
ゴゴゴゴゴゴ
千早(ダメージを受けている! 春香ではなく、私がッ!)
千早(春香のスタンドは、私に触れてすらいないのにッ!)
千早「ま、また『視覚操作』!?」ペロ…
千早「違う…この『痛み』も! 流れる血の『熱』も! 鉄っぽい『臭い』も、『味』も! どれも幻覚じゃあないッ!」
千早「いえ…全ての感覚が、操られているとしたら…それなら、もはや現実と変わりはない…!」
千早「まさか、『六感全て』を『支配』する能力ッ!? 触れることもなくッ!!」
春香「その質問に対する答えは『No』」
千早「!」
春香「だーから、『ジ・アイドルマスター』はそんなチャチな能力…ごまかしなんかじゃあ断じてないって言ったでしょう」
春香「まぁ、何か『予想外』のことが起こるかもしれない…『直感支配』だけは使わせてもらってるけど」
千早「わ、私は…」
千早「私は…夢でも見ているの…?」
春香「ちがうよ。これが現実だよ千早ちゃん」
春香「今起こってることはすべて現実で、必然なの」
千早(『インフェルノ』で与えた熱が元に戻っている…まるで『なかったこと』にされているかのように…)
千早(『なかったこと』にする…? いえ、それじゃあ私の傷に説明がつかないわ! これは元々『なかったもの』だもの!)
千早(なら、春香の能力というのは…一体…?)
春香「私なんて、こうまでしないと千早ちゃんは到底敵わない」
春香「でも、『矢』を持っているのは私…そして勝つのも…ね」
千早(『ダメージを押し付ける』能力…?)
千早(いえ、それなら私の『インフェルノ』が与えた『熱』もそのまま私に返ってくるはず…)
美希「千早さん! 何ぼーっとしてるの、春香が攻撃してきてる!!」
ドドド
千早「はっ…!」
春香「ヴァイッ!!」ヒュン
美希「『リレイションズ』!!」グイン
ガッ!
春香「お…」バリッ
千早「み、美希」ズザ…
春香「『ジ・アイドルマスター』の間に割って入るなんて…」
春香「美希の『リレイションズ』も…『ロック』の数でここまで速くなるのか」
グ…
グググ…
春香「どうしたの? 美希の『リレイションズ』なら私についた『ロック』に正確に攻撃できるでしょう」
春香「この状態ならどこか一つにでも攻撃できれば一発で倒せるんでしょ…ほら、何をためらっているの?」
千早「くっ…美希!」
美希「…千早さん、よく見てて」グッ
ゴキュ!!
春香「うぐ…!! ぐっ…」バリバリバリ
美希「なのっ!」バキャア
春香「………」グォォォ
ドォ…………ーン
千早「! 今…」
美希「………!」ピタッ
美希(春香がいない…今、真正面にブッ飛ばしたのに…)
千早「美希! 後ろ…」
美希「え?」
春香「無駄無駄ァ」ヒュヒュン
美希「…!! うぶ…」ゴキャ
ドシャア
千早「美希…!!」
千早(今のは…美希が春香に攻撃したと思ったら、後ろに回り込んで…そして攻撃していた…)
千早(『ワープ』…あるいは『時を止める』能力なの…?)
千早(違う、今回もまた美希の攻撃によるダメージがなくなっている)
千早(回復に、私へのダメージ…そして瞬間移動…わからない、春香は何をやっているの…?)
千早(スタンドは一能力のはず…しかし、そう言いきれもしない。あのスタンドは『六感支配』を見せたわ…)
美希「ぐっ…このっ…」
春香「美希。もうやめにしない? 結果がわかってる戦いなんてつまらないもの」
春香「『春香には勝てない』…一言そう口にしたら、見逃してあげるよ」
美希「誰がそんなこと…」
春香「あ…そう。じゃあ…」ガシッ
千早(『ジ・アイドルマスター』が美希の両腕を掴み…背中に足を…あれは…)
春香「ほら…気絶するまでやるよ」グッ
美希「う…うあああああああああ…!!」ミシミシミシ
千早「は…春香! やめなさい…! そのスタンドのパワーでそんなことをしたら…」
美希「ああ…ああああ…!!」ミシミシミシ
春香「降参すればすぐにでもやめるよ」
春香「つまらない意地を張ってるそっちにも責任はある…違う?」
千早「春香、貴女は…!」
春香「ほらほら、美希!!」グッ!!
ゴリュ…
美希「かふ…」ピキッ
ブラン
千早「え…」
春香「あ…やりすぎちゃった」
千早「は…? 美…希…」
美希「………」……………
千早「は………はる…………はるか………」
ドォ…ーン
千早「あああああああああああああああ!! …あ…?」
美希「え…?」パチ…
春香「ごめんね美希。今度はやりすぎないようにするから」
美希「あれ…治ってる…」
美希「え…また、なの…?」
春香「ほらほら、やるよ?」グ…
美希「や、やめ…やめて…」
春香「何か、言うことなかったっけ?」
美希「ごめんなさい! ごめんなさい!」
春香「ちがうでしょ、美希…」グリグリ
春香「ほら、さん…に…いち…」
美希「うわあああああああああああああ!! あああああああああ!!」
春香「ああ…やっぱり、ちょっとやりすぎちゃったかな」パッ
美希「あうっ」ドサァ!!
美希「ひぐ、えぐっ…」プルプル
春香「まぁ、いいか…これで美希は『再起不能』だろうし…ね」
千早(何か…)
千早(私達は何か、取り返しのつかない間違いをしてしまったのでは…?)
千早(もう、春香には何をしたって無駄なんじゃあないの…?)
春香「さて…」クルッ
千早(いえ、こんなところで諦めるわけにはいかない…)
千早(春香を止める…それもあるけれど、それ以上に…美希にあんなことをした春香を許せない…)
千早(………あれは、私の知っている春香ではないわ…!!)
春香「次は千早ちゃんの番だよ」カツ カツ
千早(『蜃気楼』を作る…)シュゥゥゥゥゥ…
千早(これで春香の攻撃は一回だけならかわせるはず…)
千早(この世に完全なものなんてない…どこかに、弱点がある…)
春香「ないよ。『ジ・アイドルマスター』に弱点なんて存在しない」
ドォ………ーン
ヒュバァ
千早「!?」
春香「止めて、『ジ・アイドルマスター』」ブォン
パシッ
千早「う…! …!?」
春香「ま、この程度だね…できることは」
千早(何? 今のは…『インフェルノ』が勝手に攻撃した…?)
千早「くっ」ガクッ
千早(…う、今の攻撃で右腕が…)
春香「あーあ…また折れちゃったね、腕…せっかくやよいに治してもらったのに」
千早「ま…負けるものですか…」
春香「まだ諦めないのか。千早ちゃんのそういう所、好きだよ」
春香「でも…今はちょっと余計かな」
千早(考えるのよ…どうすれば、春香に攻撃が届くのか…)
バッ!!
春香「ん…?」
シン…
春香「どうしたの、千早ちゃん? ソファの陰に隠れたりして」ヒョイッ
千早(乗ったわ…)
千早「『ブルー・バード』!!」
春香「!」フワ
春香「ソファを『軽く』…足下のバランスが…」グラ…
千早「ソファは足を乗せるものじゃないわよ…春香!!」ビュン
春香「ムッ!」ガシィ!
千早「そのまま…地面に叩き付けて『ブルー・バード』!!」グイッ
春香「わっ…!!」グルン
ドグシャア!!
春香「ぐ…があああああっ!!」バキバキバキ
千早(この手応え…間違いなく…腕を折った…)
千早(さらに…)
ズシン!!
春香「千早ちゃんの体重に、ソファ分の重量も…『プラス』…か」ググ…
千早(これで…この状態で『重量』を押し付けたら春香はもう動けない…私の勝ち、そのはず…)
千早(でも…)
春香「千早ちゃん…困難に打ち勝とうとするその『意志』…尊敬に値するよ」グググ…
千早「春香、貴女の能力はッ…!!」
春香「でも、無意味」
春香「『ジ・アイドルマスター』」
ドォ
…
……
………
……
…
ーン
千早「う…」ベキ…
千早「うわあああああああ!!」バキバキバキ
美希「あ…あああ…」
千早(腕が…折れているッ!! 春香のではない、私の腕が!)
春香「これが、『ジ・アイドルマスター』」シャラン
千早(また…春香のダメージがなくなっている…なぜ…)
春香「これが、『頂点』(トップ)に立つ能力!!」
千早「何が…一体…なんだって言うのよ…!!」
千早(春香の能力が何なのかはわからない…)
千早(でも、わかることはある…春香の『スタンド』は私の理解を遥かに超えた領域に行ってしまったということ…)
千早(そして、自分がどうしようもなく『無力』だということッ!! 『ブルー・バード』も『インフェルノ』も通用しない…)
千早(それ以前に、もう両腕が使えない、どうすれば…!!)
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
悪役を一手に押し付けてしまった春香には申し訳ない気持ちになる…申し訳ない気持ちになるだけで最後までやりますが
次回は…来週の水曜までには
作者以外の人は「sage」た方がいい
「saga」じゃあなくて「sage」だぞ
読者をぬか喜びさせることになるからな
前回までのあらすじ
女性アイドルとして生きていくことを決意した秋月涼。
しかし活動を続けていくにつれて涼の男なら耐えられない部分に少しずつ鬱憤が溜まっていく。
自分の男をこのまま隠し通せるものではないと悟った涼は身も心も女となるため手術を受けることを決める。
そして、彼…いや、彼女は律子の勧めでモロッコへと飛び立ったのであった…
わぁい間に合った、始めます
千早「ああ…あああああああああああ…!!」
千早(何が…一体何が起こっているの…!? 春香の能力は何!?)
春香「………」ザッ
千早「わ…私のそばに近寄らないで…!!」
春香「ふふ…」ツカ ツカ
千早(攻撃される前に『ブルー・バード』で私の『体重』を…)
千早「あぐっ…」ズキンズキン
千早(くっ、手が…)
プルプル
千早(み…右腕はなんとか動く…けれど…)
千早「はぁ、はぁ…くっ…」
千早(左腕が…指が全く動かない…)
.
千早(しかし、動くのなら…『与える』ことはできるわ)
春香「ヴァイ!!」グオォォ
千早「『ブルー・バード』…」
フワッ
春香「無駄無駄無駄無駄」ダン ダン ダン
千早「そんな力任せに振っても当たらない…」
ビュオォォ!!
千早「わ…?」ジク…
千早「うあああああ…ああああ…!?」ズキンズキン
春香「『軽く』したってことは、少しの力で動くってこと…」
春香「拳の風圧でちょっと腕を動かしてやればいい。折れてるでしょ? それ…」
ドサ!
千早「ううう…!!」ダラダラ
春香「汗が凄いね千早ちゃん、暑いの?」
千早(春香は…もう私なんて倒そうとすればいつでも倒せるはず)
千早(それでも、私を精神的に追いつめるため…あえて手加減している)
千早(私の行動を一つ一つ封じていき…私の心を折ろうとしている…)
千早(決定的だわ…もう私ではどうあっても春香を倒すことなんて…できない)
千早「………」トス
春香「ん?」
ズリリ…
春香「まだやる気なんだ」
千早「はぁ、はぁ」ヨロ…
春香「ねぇ千早ちゃん、もうやめようよ。そうやって壁に背中つけないと立てないのにどうしようっていうの」
千早「………」
春香「この『ジ・アイドルマスター』に勝てないのはわかったでしょう?」
千早「ええ。そのようね…私ではもうどうにもならないわ」
春香「それなら、もう…」
千早「それで…春香」
ゴゴゴゴゴ
千早「そんなことで私が諦めると…本当にそう思っているの…?」キッ
ゴゴゴ
春香「…わからないよ。どうして勝てないとわかってるのに諦めないの…?」
千早「わからないでしょうね。今の貴女には」
春香「…強いんだね、千早ちゃんは」
千早「やはり、わかってないわね。私は…強くなんてないわ」
千早(春香に勝てる可能性はゼロ…ならば、私のやるべきことは春香を止めることでも…春香を倒すことでもない)
千早(私がこうして立っていられるのは美希のお陰…)
千早(私も次に繋げる…私が駄目でも、春香の能力くらいは見抜いて皆に伝えるわ、それが私のすべきことよ…!)
千早(そのためには倒れてなんていられない)ズ…
春香「その目…」
千早「………」
春香「美希や貴音さんも同じような目をしていたけど、何がそんなに気に入らないのかな」
千早「もう話し合いなんて意味はない。これまで通り力づくで、この『スタンド』で決めればいいでしょう」
春香「私はいいけど、千早ちゃんはもう無理だよね? 意地を張ってもいい事なんて何もないよ」
千早「私には、ずっと意地を張っているのは貴女の方に見えるけれど」
春香「…いいよ。お望み通りこれで決めてあげる」ズズ
千早「………」ス…
春香「『ジ・アイドルマスター』!!」ズォン
ドドドド ドド
千早(私から動く必要はない)
千早(春香が能力を使うのは、私の攻撃が春香にダメージを与えた時だけ)
千早(『ジ・アイドルマスター』の射程距離は『アイ・ウォント』よりも短い…)
千早(そして射程距離が同じくらいでも私の『インフェルノ』の方が速いわ)
ザッ
千早(まだよ…)
ザッ
千早(まだ…)
ザッ
千早(入った…!)
千早「はっ!」ドゥォ
春香「蹴りか…腕が駄目なら足を出すってこと?」
パシッ!
春香「無駄無駄!! 腕が折れてるんじゃ力の入った蹴りなんてできないでしょう!」
ガシャン!!
春香「ん?」
千早「『ブルー・バード』…」フワ…
千早「私の『体重』をこのおはじきに与えた。こうすればどこにも触れずに体重を『軽く』できる」
春香「無駄だって…さっきのことをもう忘れたの?」
千早「そうね。ここにいては危ない、早く離れることにしましょう」グッ
トン!
ブワッ!!
春香「!? 私を踏み台にした…!?」
グゥゥゥーン
千早「『ブルー・バード』、体重を元に戻して!」
クン…
スタ!
千早「っ…」クルッ
ダダッ
春香「………え、なに?」
春香「逃げた…の? 部屋の外まで飛んでいって…」
千早「く…」プルプル
パチ!
千早「こんな腕でも、窓を開けるくらいなら…なんとかできるわね」ガラガラ
千早(ここから飛び降りる…)ヒョイッ
フワ…
スゥ…トン
千早(『ブルー・バード』で体重を軽くすれば…高いところからでも風の抵抗でゆっくりと降りられるわ)
千早「これで…少しくらいは時間が稼げるわ」
千早「春香が二階から飛び降りられるというのなら話は別だけ…」
ドォ………ーン
千早「………」
春香「無駄…」
千早「は…春香…目の前に春香がいる…」
春香「私の『ジ・アイドルマスター』からは逃げることすら許されない」
千早「く…」
春香「ヴァイッ!!」ズァ
千早「うおおおおおおお…!!
千早(…え…?)
・ ・ ・ ・
ァァァァ
千早「これは…」
ヒュン!!
ガッ
春香「…あれ?」
千早「動く…」
ググ
千早「右腕が動く…治った…!!」ヒュン
春香「!!」サッ
ガキィッ
春香「おっ…」ズザ…
千早「今ここで攻撃したとしても、意味はないのでしょうけど…」
千早「まぁ…いいわ。せっかくだから喰らっておきなさい」
春香「無駄…」グアッ
ベキャ
・ ・ ・ ・
春香「お…腕が…」プラン
千早「『インフェルノ』ォォーッ!!」
ドン ドン バゴ ドゥン
春香「『ジ・アイドルマスター』ッ!!」
ドォ…ーン
千早「………」ピタッ
千早「後ろ? また『ワープ』している…」クルッ
春香「ああー…そっか、そうだよねぇ…」
千早(やはり…春香に与えたダメージはもう治っている)
千早「春香…腕が治ったのは貴女の能力によるものかしら」
春香「まぁ、ちょっとしたサービスだよ。このままじゃ張り合いがないし」
千早「張り合いがないから…?」
千早「私の腕が動いた所で、貴女にとっては何も変わらないでしょう」
春香「ま…そうなんだけど…ね」
千早(春香は意識して私を治したわけじゃないのでは…?)
千早(『アイドルマスター』を使ったことで、私の腕が治ってしまった…そういうことじゃあないの?)
千早(しかし、さっき能力を使われて左腕を折られた時…その後も私の右手は折れたままだった)
千早(さっき折られた時と、今春香が目の前に出てきた時の違いは何…?)
ズキン
千早「うっ…」
千早(左腕が…こっちは折れたままだわ。頭の傷も治っていない…)
千早(春香は『何か』をして私達や自分の傷を治している、しかしその『何か』によってつけた傷は元には戻らない…そういうこと?)
千早(なにか…)
千早(あと一つ、なにか…)
春香「そろそろ…終わらせようか」ドドドドド
千早(春香が来る…けれど、能力を使われなければ片腕でも私の方が強いわ…!)シュゥゥゥ…
パキ! パキ!
千早「『インフェルノ』!!」ビュア
春香「っと!」スゥーッ
千早「! 左側に避けた…」
春香「左腕は動かないはずでしょう? もらった…!!」
千早「いえ…」
春香「え…!?」
コォォォォ
千早「これを待っていたわ、春香…」
春香「動かない左腕を『凍らせ』て…今の音はそれかッ!!」
千早「叩き…つけるッ!!」ブオン!!
春香「おぶっ…」グシャア
ゴロゴロゴロ
千早「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
春香「む…」
千早「は…」
ゴゴゴ
春香「無駄だよ、もうわかってるだろうけど」
ゴゴゴゴゴゴ
春香「千早ちゃんが何度優勢になろうと、何度私を倒しても…このスタンドの前には…!」
千早「………春香」
ゴゴゴゴ
春香「さぁ、終わらせなさい…『ジ・アイドルマスター』」
ドォ
…
……
………
ドドドドド
春香「………」
ドドド
春香「…『戻って』きたよ。私の『意識』だけ…」
千早「うっ…」ズキン
春香「これは『過去』の出来事。ついさっき起きた、私が攻撃を受けて敗北する『過去』」
春香「ここで…」
シュゥゥゥ…
パキ! パキ!
千早「『インフェルノ』!!」ビュア
春香「千早ちゃんは『インフェルノ』の右腕で殴ってくる。私はそれを知っている。ここで…」
スゥ…
春香「私が攻撃の前に出ても、ぶつかることはない…今、この場所には『私に攻撃が当たった』という出来事が存在しないから」
千早「! 左側に避けた…」
春香「千早ちゃんの行動も言葉もさっきと『同じ』。私が動いても何も変わらない」
千早「いえ…」
コォォォォ
千早「これを待っていたわ、春香…」
春香「一度起こった『過去』の出来事は誰にも変えられない」
千早「叩き…つけるッ!!」ブオン!!
春香「おっと、これには当たっちゃ駄目だ」サッ
コォォォォ…
春香「『ジ・アイドルマスター』…このスタンド以外は」グッ…
ゴゴゴゴ ゴゴゴゴ
春香「私以外は、変えられない」
春香「ヴァイッ!!」ビュン
バキィィィィィイイ
千早「うぐっ…」ミシ
千早「ああああああっ!?」ミキミシ
千早「は…春香…これは…!」
春香「これが、『ジ・アイドルマスター』の能力だよ」
春香「過去の出来事をビデオのように再生し、その中で私だけが動ける。そして、『ジ・アイドルマスター』だけが過去を変えられる」
千早「…! やはり…そういうこと…なのね…」
千早「い、いや…ちょっと待って、春香…何故そんなことを話すの…?」
春香「そして…」
春香「『ジ・アイドルマスター』が書き換えた出来事は『現在』にその結果だけが残る」
春香「記憶は残らない。今の出来事も…だから、話した」
千早「…!」
春香「何故自分がダメージを負っているのか、千早ちゃんには理解できない」
千早「うっ…」フラッ
春香「これが『ジ・アイドルマスター』。これが頂点の力」
春香「どんなに優れた人間も、どんなに強力なスタンドも、私の世界に踏み込むことすら許されない!」
………
……
…
ーン
千早「………あ…」
ドサァ
春香「………終わったね」
春香「こうやって倒しちゃ、何が何だかわからないだろうけど…」
春香「ま、いいか。千早ちゃんなら『ジ・アイドルマスター』の恐ろしさは充分に理解したでしょう」
スッ
春香「さて、美希から奪った携帯…」
春香「このメールによると、みんな近くの廃ビルに集まってるみたいだね」
春香「今まで、長かった…けど、これで終わる」
春香「これでみんなに私の考えをわかってもらえる…ふふふ」
………
……
…
………
美希「!」ガバッ
キョロキョロ
美希「春香………はもういない、か…」
美希「こうしちゃいられない、みんなに春香のコトを伝えなきゃ…」
ゴソゴソ
美希「カバンにケータイがない…ってコトは、春香が持っていったのカナ…」
美希「電話したいけどリモコンしかねぇの」
美希「あ、そっか。別に携帯にこだわる必要なかった、そこにあるちっちゃいの(電話の子機)を使えば…」
美希「みんなに伝えないと…」カチャッ
美希「あれ、律子の電話番号ってなんだったっけ?」
?「美希、貸して」
美希「え…?」
千早「電話番号なら私が知っているわ」
美希「ち、千早さん! 大丈夫だったの!?」
千早「大丈夫ではないけれど…美希こそ、春香に酷い目に遭わされていたけれど無事だったのね」
美希「あれは演技なの。ミキ、アイドルだからこれくらいできないとね」
美希「千早さん、腕は…」
千早「凍らせたわ。痛みは引いたわね。後でまた高槻さんに『くっつけ』てもらう必要はあるけれど」
美希「千早さんがここにいるってことは、春香は…」
千早「いえ、春香は…倒せなかったわ。私は『ジ・アイドルマスター』の前に完全に敗北した」
千早「けれど、春香はこれで私が折れて諦めてしまうと…そう思っていたようね…『再起不能』にまでは追い込まれなかったわ」
千早「私が諦める時は…私達、仲間全員が立ち止まってしまった時…それだけよ」
美希「うん、そうだね。今の春香にはそんなこともわからないの」
千早「…呑気に話している場合じゃあないわ。まずは…」ピポパ
電話『とぅるるるるるるるる』
律子『もしもし?』ガチャ
千早「律子…」
律子『その声は千早? どうしたの、今そっちに向かってるところよ。もう少しかかりそう…』
千早「春香が…動き出したわ…」
律子『………』
律子『は? 何言ってんのよ…春香って、今日は…』
千早「詳しくは後で話すわ。春香がスタンド能力で事務所に現れたの、私達は…」
律子『ちょ、ちょっと待った。今…』カタカタ
ヒュン
キュルキュル
千早「これは…」
律子『「ロット・ア・ロット」を出したわ。これでビルにいるみんなとも会話できるはずよ』
雪歩『ひっ!? な、なんですかこれ!?』
やよい『あっ、これ律子さんの…えっと…』
伊織『「ロット・ア・ロット」よ、やよい』
千早「助かるわ、律子」
真『あれ? 千早、今どこにいるんだい?』
美希(みんなで集まらなくても、最初からコレ使えばよかったんじゃ…)
………
……
…
あずさ『千早ちゃんが…負けるなんて』
真『「アイ・ウォント」の時でも手が付けられなかったのに…その「ジ・アイドルマスター」というのはそんなに強いの…?』
美希「強いっていうか、イミわかんなかったの…」
千早「私達を倒して、今は真…貴女達のいる場所に向かってるはずよ」
貴音『春香が…来るのですか』
伊織『いや、ちょっと待ちなさいよ。そもそも、今日って春香は帰ってこないんじゃなかったの?』
亜美『亜美達の「スタートスター」でもそれほどは「ワープ」できないよ』
美希「そんなの、実際にいるんだから考えるだけ時間の無駄なの」
千早「いえ、美希…春香は『ジ・アイドルマスター』の能力を使ってここまで来たのよ」
千早「それだけじゃない。私達に起こったこと、全てに説明がつくわ」
美希「え…千早さん、春香の能力が…わかったの!?」
千早「ええ。これのお陰で確証するに至った」パッ
カラン
美希「千早さん、それは…」
千早「血よ…『インフェルノ』で凍らせた、私の血の塊」
千早「右手で転がしながら…『6個』だけ作っておいた。春香と戦う中で、間隔を空けながら1つずつ落としていたわ」
伊織『なんでそんなことを…』
千早「そして、私の記憶では…これは、全て落としたはず。もう手の中に残っていないわ」
美希「え、でも…」
千早「そう。あるのよ…私の手の中に、『3個』」
ゴゴゴゴゴゴ
千早「計算が合わないわ。これはどういうことかしらね?」
響『え…数え間違いじゃあないのか』
美希「響は黙ってて」
千早「私は、攻撃を受けた時これを落とすのをやめようとそう考えていた。結局、受ける前に全て落としてしまったけれど」
雪歩『それが、「3個」残っている…?』
真美『それって、つまり…』
千早「私は『3個』落とした時点で攻撃を受けた…ということになるわ」
千早「全部落としたはずなのよ…減るのならともかく、増えるというのはおかしな話じゃないかしら?」
千早「数がズレたのは…ちょうど春香が『ジ・アイドルマスター』を使った時よ」
美希「!」
千早「一瞬意識が飛びそうになったかと思ったら、私は倒れていた。攻撃を受けたの」
律子『千早…もったいぶらないで早く教えなさい!』
千早「このことから導き出せる答え…『ジ・アイドルマスター』の能力は」
千早「過去を変える…」
全員『…!!』
千早「時間をやり直し、過去の出来事を変える能力…そうとしか、考えられないわ」
律子『か…過去を変える…だって!? そんなバカなこと…』
美希「で…でも…確かに、それなら色々説明できる…」
美希「過去を変えて別の場所に動けば、『ワープ』したように見える…」
美希「攻撃した過去を変えれば、攻撃はしなかったコトになって、『治った』ように見えるの…」
真美『ちょ…ちょっと待ってよ、それってさ…』
亜美『マジ「無敵」…なんじゃないの…?』
真『…無敵だろうが何だろうが』
伊織『…そうね、真。やるしかないのよ、私達には」
貴音『千早、安心してください。春香を修羅の道に引き込むあの「矢」は…必ず、私達が破壊します』
やよい『悪いことする春香さんなんて、「くっつけ」て止めちゃいます!』
千早「…ありがとう、みんな…」
あずさ『礼なんて必要ないわ。だって私達みんな…』
小鳥「きゃあああああああああ!?」
千早「!?」バッ
小鳥「ち、千早ちゃん、美希ちゃん…そのケガは一体…!?」オロオロ
美希「………」
小鳥「い、今病院呼んでくるから…」
美希「あて身」ドスッ
小鳥「はうっ」
ガクッ
響『おーい? どうした? 何かあったのかー?』
千早「何してるの、美希…」
美希「なんかメンドーなことになりそうだったから…」
←To Be Continued
スタンド名:「ジ・アイドルマスター」
本体:天海 春香
タイプ:?
破壊力:? スピード:? 射程距離:? 能力射程:?
持続力:? 精密動作性:? 成長性:?
能力:「弓と矢」の力により「アイ・ウォント」の先に到達した春香の新スタンド。「アイ・ウォント・レクイエム」。
自分の「精神」を「過去」に飛ばし、既に起きた「過去」の出来事を再現する。
「過去の世界」では一度決まってしまった運命は確定していて、何者も変えることはできない。
ただし、「ジ・アイドルマスター」以外は。
「ジ・アイドルマスター」によって変えられた出来事は、春香の意識が「現在」に戻ってきた時、書き換えた後の「結果」だけが残る。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
次は1週間後に…できるかなぁ…
乙!
能力的にはK・クリムゾンのブッ飛ばした時の中で傍観者ではなく実際に触れたり出来る感じかな?
自分とスタンドだけ世界をショートループさせれるんだろ?
乙
確定したこと、なんてあるか?
相手が違う行動を取ればそれに応じて行動を変えるに決まってるし
同じ行動をしない限りそれは確定したとは言えないんじゃないか
もし行動自体が確定しているのであれば、凍らせた血を落とすという行動は確定してることにならないかな
>>910
はい、そうです
ただし、そのままでは春香が直接何かに触れることはできないため、「ジ・アイドルマスター」で触れる必要があります
そして「ジ・アイドルマスター」で触れたものは能力の中で動きだします
動きだしたもの同士ならば、能力の中でも触れることができます
ちなみに春香が直接何かに触れることはできないと書きましたが、重力の影響によって触れさせられるもの、地面には例外として触れることが出来ます
これは「ジ・アイドルマスター」に触れて動き出したものも同様です
>>915
大体それで合ってます
使えます
>>917
説明不足でしたね
「ジ・アイドルマスター」の能力内で行われている行動は言わばビデオで撮影した映像を再生しているようなもので、バイツァダストの「過去をやり直す」能力とはまた別です
春香が何もしなければ、春香以外のあらゆるものは本来の時間と全く行動をします。行動が確定しているというのはそういう意味です
能力の中であれば、例えライブのステージから春香が消えても、観客は勝手に盛り上がります
「ジ・アイドルマスター」が直接触れない限りは、目の前に落とし穴を掘ろうが重力の影響すら受けず歩き続けます
そして、その確定した行動を無理矢理変えてしまうのが「ジ・アイドルマスター」の能力です
千早は血を落としている途中で「ジ・アイドルマスター」によって攻撃を受けたので行動が変わりました
単に時間を戻すというよりは、既に起こったことを基に仮想現実を作り出し、その中で変化させた事実だけを現実に反映させるといった感覚の方が近いかもしれません
水曜日といったが何時の水曜日とは明言してないからな
ホル・ホース(このままッ!! 両指を! こいつの!)
ホル・ホース「鼻の中に…つっこんで!」ズボォ!
ホル・ホース「殴り抜けるッ!」ズッギャア!
ウワァアーァッ
アヴドゥル「すごい! すごいヤツだ!」
ホル・ホース「新しいコンビのスタンド能力を使っただけさ 特別ここにいる者だけに教えてやってもいい」
承太郎「本当かいぜひ教えて!」
ジョセフ「わしも! わしも!」
ホル・ホース「ところで こういうのもあるんだ」ボッゴォォン
アヴドゥル「す…すごいッ! 見た事もないエンペラーだッ!」
ホル・ホース「割り込みに撃つと耳もとれる…作り方を教えてやろう」
兄キ「まちがいねえ! 空港でイキナリおれ様の耳をフッ飛ばした野郎だッ! ひき殺してくれるぜッ!」
ギャンガァァァァ
ドッゴォー
ホル・ホース「うごォ」
キリのいいとこまで行けたんで予定より分量少なめですが始めます
ブロロロロロ…
あずさ「まだかかりそうですか?」
律子「ええ、交通法規をはみ出さない程度には飛ばしてますけど…」
伊織「『スタートスター』は駄目なの?」
亜美「まだ距離が足んないよ、もっと近付かないと」
律子「…ねぇあんた達、本当に…春香と戦うつもりなの…?」
伊織「そのつもりだけど」
律子「なんて言うか、話を聞いている限り…その…」
律子「逃げた方が…いいんじゃあないかしら…」
伊織「逃げるったって、どこに逃げるって言うのよ!」
律子「あーもう…そんなことわかってるわよ…」
律子「冗談よ冗談! もう腹を括るしかないでしょうがこんなの!」
あずさ「うふふ、律子さんでも冗談を言うんですね」
律子「はぁ…なんでそんな落ち着いていられるんですか…」
………
……
真「春香が来る…」
響「こうしちゃいられない、準備しないと…」
真美「ジュースは!?」
真「後だよそんなの!」
貴音「…そう…ですよね」
響「たかね、今はそんなので落ち込んでる場合じゃないでしょ」
やよい「終わったら、みんなで飲みましょう!」
真「…そうだね。全部終わったら…それがいいと思う」
雪歩「み、みんな…大丈夫…だよね? これでおかしかったのも全部、元に戻るんだよね…?」
響「ああ大丈夫! なんくるないさー!」
真美「うん! なんとかなるっしょ!!」
やよい「みんなでがんばりましょー!」
貴音「…待ってください」
真「貴音さん?」
貴音「聞けば美希や千早も負けた相手…何の策もなしに勝てるとは思えません」
響「みんなで戦えば、きっと勝てるよ!」
真「『ジ・アイドルマスター』…あれの打開策なんて、あるのか…?」
真美「無理…だよね」
やよい「『あい…』えっと、前のスタンドならたぶん大丈夫だったかもですけど…」
雪歩「前のスタンドかぁ…なんとかして、元に戻せないのかな」
真「…元に戻す?」
真美「そーいや、『ジ・アイドルマスター』って『矢』がくっついてできたんだよね?」
響「そっか! 何度でもやり直せるなら、いくら攻撃をしても無駄…だったら」
やよい「『矢』を取っちゃえば春香さんも元に戻るかも!」
真「だけど、本当に『矢』を取ったくらいで元に戻るのか…?」
貴音「しかし、無策のまま立ち向かうよりは…希望があると思います」
真「…それもそうだね」
真美「あ、あのさ…」
真「ん?」
真美「真美達ってどうすればいいかな…」
響「あ、そっか…二人とも、今のままじゃスタンドが使えないのか」
雪歩「あうぅ…ごめんなさいぃ…」
真「二人とも、上に行っててくれ」
雪歩「上に? みんなは…」
貴音「私達はここで春香を迎え撃ちます」
やよい「二人の分まで、私達が頑張ります!」
真美「…りょーかい。みんなならきっと大丈夫だよ」
雪歩「気をつけてね、みんな…」
パタパタパタ…
真「さて、春香から『矢』をどうやって取り上げる?」
真「『五感支配』…いや『六感支配』に加えて『過去』を変える能力まであるんだ」
響「まぁ、普通に戦うだけでも…難しいよね」
貴音「ええ。正面から挑めば、美希と千早を負かせた『スタンド』…まず勝つことはできないかと思われます」
貴音「しかし、それ故に…春香は自分の『スタンド』に相当の自信を持っているはず。まずは堂々と踏み込んでくるでしょう」
響「うん、美希と千早の話ではそうかも。随分余裕あったみたいだし」
真「! それなら…」クルッ
やよい「え? 私ですか?」
貴音「やよいの『げんきとりっぱぁ』動きを止めれば、私達の『スタンド』で能力を使われる前に取り上げるのは可能かもしれません」
響「できるか? やよい」
やよい「はい! 私の『ゲンキトリッパー』でなんとかなるなら、とっても嬉しいかも!」
真「それじゃやよい、今から…」
ドォ………ーン
・ ・ ・ ・
ゴゴゴゴ
春香「やっほ」
真「………!!」
ゴゴゴゴゴゴ
春香「本当にみんなここに集まってたんだね」
やよい「はわっ!? は、春香さん…」
真(早すぎる…!!)
貴音「なるほど。『あいどるますたぁ』で移動してきたのですね」
春香「ん? あれ…なんで貴音さんが『ジ・アイドルマスター』のことを知ってるの?」
真「…千早達から聞いた。キミに完敗したらしいけど…無駄なんかじゃあなかったってことだよ」
春香「ああ…千早ちゃん、まだ折れてなかったんだね…流石だなぁ…」
響「自分達はみんな春香の能力を知ってる、美希と千早から受け継いだんだッ!」
やよい「春香さんが『過去』を変えたって、消えたりしません!」
春香「いいや、消えるよ…」
春香「私がここで全員を倒せば…全部ね」
真(今の会話の間に…)
ウー ウッウー ウー
真(やよいが『ゲンキトリッパー』を仕掛けた、これなら…)
真「ボク達は…」パキッ
真「春香なんかに絶対負けたりしない…!」パキパキパキ
春香「いいや…やっぱり私には勝てなかったんだって…すぐ思い知ることになるよ」コツ コツ
真(! 春香が近付いてきた…)
真(『矢』を引き離すのなら、一番適任なのは貴音さんの『フラワーガール』だ)
響(わかってるぞ。まず自分達が春香の両腕を封じるんだ)
貴音(響、真、お願いします。動きを止めれば私が…)
春香「………」ピタ…
真「止まった!」ダッ
響「行くぞ!」ダム
春香「二人して飛び込んできたか…」
響「ドラァ!!」グババッ
真「オラァ!」ビュオッ
.
ゴォォォォォ
春香「フン!」
ゴゴゴゴゴ
真(これが…『ジ・アイドルマスター』、春香の新しいスタンドか!)
響(確かに、左手首に『矢』がついてるな!)
春香「無駄無駄無駄無駄」
ガシィ!!
春香「あれ? どうしたの、この手応えのなさは…」
真(よし、これで両腕を塞いだ!)
響(今だたかね、能力を使われる前に…)
貴音「『フラワーガール』」ヒュオッ
春香「三人がかりか…けど…」
ググ…
貴音「そこです」ヒュバァ
春香「! これは、腕にくっついてる『矢』を狙って…」
真(取った…!)
.
ゲシャァ!
真「え!?」
貴音「ぐ…!?」グオッ
春香「ざーんねん。はずれ」
真「け…蹴り!? だって!?」
春香「無駄無駄無駄無駄」ガン ガン ガン ドン ドン
真「うおっ!」ピキィ!
響「うわっ!!」ドグォ
バッ バッ
真「ど…どういうことだ!? なんで蹴ることができる!?」
響「やよいの『ゲンキトリッパー』で足は『くっつけ』られたはず…」
春香「『ゲンキトリッパー』ね…どうなの? やよい」
やよい「う…」ヘタリ
真「え?」
やよい「うう…」ガタガタ
真「や、やよい…!? どうしたんだ!?」
.
やよい「た…」
真「た?」
やよい「高いところは…やだ…」
真「な、何を言ってるんだやよい!? ここは…」
真「!! まさか…」
春香「『視覚支配』」
春香「やよいには、自分が断崖絶壁の上にいるように見えているだろうね…」
響「そういえば、やよいは『高所恐怖症』…」
貴音「卑劣な…」
真「やよい! それは幻覚だ!」
やよい「はぁっ、はぁっ」ブルブル
真(聞こえてないのか…!? 『音』でも恐怖心を煽られているのかもしれない!)
春香「はい、まずやよい」
.
春香「それにしても…なるほどね。どうするのかと思ったけど…ここを狙ってくるのか」
真「春香…!!」
貴音「真。まずはやよいを安全な場所へ移動させてください」
真「! はい…」
春香「まずは貴音さん? いいよ、相手してあげる!」
貴音「『フラワーガール』」ヒュオッ
シュバァ!
春香「ヴァイ!」グオ
ガシィ!!
貴音「む…」
ガキッ! バキィ!!
春香「無駄…」グ…
貴音「うっ…! これは…」グググ…
貴音(『フラワーガール』が押されている…!?)
.
春香「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
ガギャ ギン ガリャ グギャ ガン
貴音「ぬぅ…っ」ブシュ
真「貴音さん!」
貴音「強い…」ポタッ
真(春香の『アイドルマスター』のパワーは貴音さんの『フラワーガール』を上回るのか…!?)
春香「弱い! やるならもっと本気でやってよ、貴音さん!」
ダムッ
春香「千早ちゃんや美希はこんなものじゃ…」
響「ドラァッ!!」ゴォォッ!!
春香「おっ…!?」サッ
バッチィィィ!!
ゴリュ
・ ・ ・
春香「ありゃ…」プラン
真(響の体当たりで腕が折れた! けど『矢』には当たっていない…)
春香「貴音さんは囮…響ちゃんの勢いを活かした攻撃は受けきれないか」
.
響(今から『視覚支配』を使っても…その場から逃げる前に攻撃してやる!)
響「行くぞ春香ッ!! ドラァ!」ゴォォォォォ…
春香「『ジ・アイドルマスター』」
ドォ…ーン
フッ
響「え」ゴォッ
貴音「な」ピタッ
ゴシャ
貴音「ぐっ…!?」
ドサッ
貴音「………」ゴフッ
響「た…たかね…」
春香「響の攻撃の直線上にいる私を取り除けば…」
春香「その先の『未来』で起こるのは『響が貴音さんにぶつかった』という事実」
貴音「う…く…」シン…
.
響「は…春香ァッ…!!」
春香「なに?」
響「ドラァッ!!」ダム
ス…
春香「『トライアル・ダンス』の脅威は真っすぐ飛んでくる…スピードの乗った力だけ」
ゥゥゥ…
春香「後ろにかわし、勢いが落ちたところで…捕まえる」
ガシィ!
響「あ…」ピタ…
春香「無駄だよ。こんな広い場所じゃあ響ちゃんの能力は活かせない」
春香「無駄無駄ァ」バガ ガ
響「おぶっ…」グギ
ドパァ!
真(バ…)
真(バカな…こんな、こんな…簡単に…)
春香「貴音さん…そして響ちゃん」
.
春香「さて…」
真「く…!」バッ
スタスタ
真「え?」
真(ボクは…無視?)
春香「真美と雪歩もいるよね…千早ちゃんと美希と『竜宮小町』以外はみんなここにいるはずだから」
真「…! ま、待て春香!」
コツ コツ コツ
真「ま…」
…………
雪歩「う、凄い音がしてるけど大丈夫かな…」
真美「大丈夫だよ、これはみんながはるるんを…」
真『真美ー! 春香がそっちに行った!!』
真美「うぉ…!?」
雪歩「真ちゃんの声…春香ちゃんが上ってくるってことは…」
真美「そ、そんな…だって、さっき来たばかりだよ!? 早すぎる!!」
.
コツ コツ
真『雪歩を連れて逃げろーッ!!』
真美「逃げろったって…」
雪歩「どこに行けば…」
コツ コツ
真美「ゆきぴょん、とりあえず上に逃げよう!」
雪歩「いや、でも…階段の方は春香ちゃんが来てるんだよね!?」
真美「あっ…い、いやでも! このままここにいたら…」
コツン!
春香「やっほ」
真美「は…」
雪歩「春香…ちゃん…」
春香「どうしたの? 二人揃って」
春香「あ、そっか。使えないんだね、二人とも…『スタンド』が」
真美「く…!」
.
雪歩「ち、近寄らないで! 近付いたら私の『スタンド』が…」
春香「どうするの?」
雪歩「悪い春香ちゃんなんて、ぼこぼこにして、めためたにして、ベンチの下に叩き込んでやっつけちゃうんだから…!」
春香「あはは。その頼りになる『スタンド』はいつになったら出てくるのかな?」
雪歩「うぅぅ…!」
春香「まぁ、あんなの出てきたとしても何も怖くないけど」
真美「はぁーっ、はぁーっ」ガタガタ
春香「真美の『スタートスター』も亜美がいなければ何もできない…」
春香「弱いものいじめみたいで気が引けるけど、まぁいっか。『ジ・アイドル…」
ピシ!
春香「ん?」
ピシ!ピキピキピキ
春香「床が…」
.
真「オラァッ!!」
ドッボォォ
春香「やっぱり真か…」
雪歩「真ちゃん…!!」
真「そこまでだ、春香…喰らえッ!!」ドギュン
春香「ち…!」バッ
真「!」ブルン
春香「『ストレイング・マインド』…下の階から無理矢理床をブチ抜いてきたのか」
真「ボクを無視するなんてひどいじゃあないか、春香」
春香「忘れたの? 私の『アイ・ウォント』にこっぴどくやられたことを」
真「ボクはもうあの時のボクじゃあない!」
真美「まこちん!」
真「雪歩、真美、ボクが春香を引き付ける! その間に逃げるんだ!」
真美「わかった! ゆきぴょん!」
雪歩「う、うん」
.
春香「逃がすと思う?」
真「いいや…そうするしかないだろう、春香は」
春香「?」
真「『アイドルマスター』の能力を使えば、わけのわからないままにみんな倒すことはできる」
真「けど、それじゃ恐怖心を植え付けることは出来ない。自分の力を存分に思い知らせてから倒す…だから、ボク達はまだ全滅していないんだろう?」
春香「ま、そうだね。何より無抵抗のままじゃ私もつまらないし」
真「だからこそ、ボクがここで何もしないうちに倒されることはない。ボク達にも勝機がある」
春香「ないよ」
真「別に能力で雪歩達を追いかけてもいいさ」
真「けれど、ボクを放って雪歩達の所に行くということは、ボクから逃げることだ」
真「無敵の『アイドルマスター』の能力を使ってまでボクから逃げたいってことだ…そうなってしまうんだよ、春香」
真「『スタンド』は精神力のエネルギー、例え『矢』でパワーアップしてもそれは…」
春香「はいはい、つまり…」
ゴゴゴゴ
春香「どうしても先に倒されたいってことなんだよね? 真は」
ゴゴゴゴゴ
真「………」
.
本日分はこれで終了です。支援ありがとうございました。
待ってる間書いてたら結局いつもくらいの分量になったぜ
次回分は金曜くらいにやります。
次スレは>>985の人に
やよい「『弓と矢』と765プロ」
でお願いします。
多分これが一番最後だと思います
『SSを読む』、『支援もする』」
『両方やる』というのは……
そうムズかしい事じゃあないな乙!
やよい「『弓と矢』と765プロ」
やよい「『弓と矢』と765プロ」 - SSまとめ速報
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