ほむら「優しい日々」(1000)
このSSは魔法少女まどか・マギカ本編終了後のほむほむと
鹿目家の人々が交流を深めていくっといった話です。
たっくんはどんどん成長してオリキャラになってしまいます。
変な日本語を見つけた場合笑って指摘して下さい。
それではよろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1335075984(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
まどかがこの世界からいなくなって随分たつ
最初こそ寂しさで夜も寝れなかったが
何時の間にかこの世界を受け入れてしまった私がいた
そんな自分が嫌になってくる
ほむら(進路希望か・・・)
帰り道、気持ちを切り替える為
早乙女先生に言われた自分の進路について考える
ほむら(・・・)
将来の事など考えていなかった
遠い昔、それこそ見滝原中学校に転校する前の
私は何か夢を持っていたかも知れないが
今となってはそれも思い出す事が出来ない
この町でまどかに出会ってから私の人生は変わった
魔女に襲われていた所を助けて貰ったまどかに憧れた
彼女を救いたいという願いに人生をかけたが叶わなかった
そして絶望しかけた私は、また彼女に救われた
その結果、彼女は人ではなくなってしまったのだ
ほむら(・・・まどか)
今の私は惰性で生きている様な存在
まどかとの最後の約束を守る為に戦い続けるだけ
ほむら(・・・この町を離れようかしら)
まどかとの思い出が残る見滝原町
ここに居続ければ罪悪感に襲われ続ける
ならばいっそこの町から離れるのも・・・
ほむら「あれは・・・」
私が河原にいる少年に気がついたと同時に
向こうも気がついて笑顔で近づいて来る
以前、この河原でまどかの絵を描いていた
まどかの実の弟、タツヤ君だ
タツヤ「お姉ちゃん、見て見て~」
タツヤ君はそのまま私の手を掴み引っ張っていく
その先には以前と同じ様にまどかの絵があった
ほむら「また、まどかを描いたの?」
タツヤ「うん。まどか大好きだもん」
笑顔で答えるタツヤを見ていると申し訳なくなってきた
彼の大好きな姉がいなくなったのは私のせいでもある
その事を謝ろうとした時、タツヤの両親が急いで駆け寄ってきた
知久「すみません、またタツヤがお世話になったみたいで」
ほむら「そんな事ないですよ」
詢子「まったく、この年でこんな綺麗な子を
ナンパするなんて、将来が心配になってくるよ」
ほむら「?」
詢子「この子ったら、前にあなたに会ってから何度も
ここに行きたいって駄々こねてたんですよ」
ほむら「そうだったんですか・・・ありがとうねタツヤ君
そうだ、このリボン欲しがってたよね」
結んでいたリボンを解きタツヤ君に渡してあげる
リボンを貰った彼は本当に嬉しそうだ
詢子「あっ、いいですよ。気を使って貰わなくても」
ほむら「いえ、私はもう1つ同じ物を持ってますし
この方があの子も喜ぶと思いますから」
詢子「あの子って?」
タツヤ「まどか!」
ほむら「そう、まどか」
顔を見合わせ、ニッコリと笑う私達を
鹿目夫婦は不思議そうな顔で見ていた
その日から毎週金曜日に河原で鹿目家の人達と会うようになった
最初は話をするだけだったが最近では家におじゃまして
夕食をご馳走になる事も増えてきた
詢子「へぇ~、ほむらちゃん、和子の生徒だったんだ」
ほむら「はい。早乙女先生とは?」
詢子「昔からのダチさ。あいつ昔はけっこうモテてたんだよ
今じゃ見る影もないけどね~」
ほむら「酷い言いようですね」
知久「でも、何だかんだ言って詢子さんは
早乙女さんの事心配してるんですよ
会社の人を紹介したりしてるし」
ほむら「そうなんですか」
詢子「はは、まぁ長い付き合いだしね
でも、ちっとも長続きしなくて困るよ」
夕食後はコーヒーを飲みながらまたゆっくりと話をする
この人達は私を本当の家族の様に受け入れてくれた
会えば罪悪感が増すだけだと思っていたのに
その優しさが私に安らぎをくれていた
タツヤ「・・・」
ほむら「タツヤ君?眠くなった?」
タツヤ「ぅ~ん」
知久「じゃあそろそろお風呂に入って寝ようか」
タツヤ「!、ヤダ、まだ起きてる」
言いながらタツヤは私にくっついてきた
詢子「こら、ほむらちゃんも困ってるだろ」
タツヤ「む~」
ほむら「タツヤ君また来週会いに来るから、ね?」
タツヤ「・・・絶対だよ、絶対に来てよ」
ほむら「えぇ、約束するわ」
笑顔で右手の小指を出し、指きりげんまんをする
詢子「もう、この子は無理ばっかり言って」
ほむら「いえ、私こそいつもおじゃましてしまって・・・」
知久「そんな、気にしないで下さいよ
僕も詢子さんも娘が出来たみたいで喜んでるぐらいですから」
ほむら「そう言ってもらえると私も嬉しいです」
思えば両親とこうやって過ごした事が
どれだけあっただろうか
ほむら「それじゃあ、私はこれで」
詢子「あっ、送ってくよ」
タツヤ「・・・バイバイ、ほむ姉ちゃん」
ほむら「バイバイ、タツヤ君」
帰りは何時も詢子さんに送ってもらっている
夜風に当たりながら散歩の様にマンションに向かう
詢子「ふ~、最近太ってきちゃってね~
こうやって運動しないと体重計に
乗るのが怖いんだよ」
ほむら「全然そうは見えませんけど」
詢子「はは、お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいよ」
ほむら「お世辞じゃなくて、本当にそう思ってますよ」
ニッコリ笑って詢子さんの方を向くと
詢子さんも笑って返してくれた
しかししばらくするとちょっと
困った様な顔で尋ねてきた
詢子「ほむらちゃんは・・・1人暮らしなんだよね?」
ほむら「はい」
詢子「ご両親は?」
ほむら「私の病気の治療費を稼ぐ為に外で働いてくれてます」
詢子「寂しくないのかい?」
ほむら「少しは・・・でも私の為に頑張ってくれてますから
わがままはいえませんよ」
今までかかった治療費は莫大な物だ
この費用を払う為2人とも必死に働いてくれている
詢子「そうなんだ・・・ねぇ、ほむらちゃん
よかったらだけど、家で一緒に住んでみない?」
ほむら「えっ?」
詢子「いや、やっぱり年頃の娘が1人暮らしなんて物騒だし
もちろん、ちゃんとご両親に許可を貰ってからだけど
ほむらちゃんが来てくれたら私達も嬉しいし」
ほむら「・・・」
その申し出は本当に嬉しい、けど・・・
詢子「駄目、かな?」
ほむら「・・・ごめんなさい
その気持ちは大変嬉しいんですけど」
そこだけは超えてはいけない一線の様な気がする
今ですらまどかが味わうはずだった幸せを貰っているのだ
これ以上は貰えない
詢子「そっか・・・あっゴメンね、変な事言って」
ほむら「本当にごめんなさい」
詢子「ああ、いいよいいよ。気にしないで
無理言ったのはこっちなんだから
はぁ~、こりゃ私もタツヤの事言ってられないね」
ほむら「・・・」
少し寂しそうな詢子の顔を見ると決心が揺らいでしまう
彼女はもうまどかの事をほとんど覚えていない
けど無意識に娘を求めているのかも知れない
『いいんだよ、ほむらちゃん』
ほむら(まどか!)
申し訳なくて俯いてるとまどかの優しい声が聞こえた
ほむら(でも、私は・・・)
『私の事は気にしないで。ほむらちゃんの人生だもん
ほむらちゃんの好きにしていいんだよ』
ああ、まどかはまた私を助けてくれるのね
ほむら「・・・金曜日と土曜日だけ」
詢子「?」
ほむら「金曜日と土曜日だけ、泊めてもらってもいいですか?」
その言葉を聞いた詢子の顔が見る見る明るくなってくる
詢子「もちろんさ!じゃあ今日は早速家に泊まろうよ!」
ほむら「えっ、急にいいんですか?」
詢子「いいに決まってんじゃん
あっ、でもほむらちゃんの着替えが家にないな」
ほむら「私、家から着替え持ってきますよ」
詢子「ホント!じゃあ早く行こ」
私の手を引っ張りながら走り出す詢子さんは
子供の様に嬉しそうだった
ほむら(まどか・・・ありがとう)
星空を見上げながらまどかに感謝を述べる
一瞬、笑っているまどかの姿が見えた
今回は以上です。
だいたい週1のペースでこのくらいを投稿していきます。
乙です
杏子やマミさんとか他の魔法少女は出てくるの?
>>15
杏子ちゃん、マミさんは出てきてもらう予定です。
ゆまちゃんは・・・どうしようか迷ってます。
>>13の続きを投稿したいと思います。
今回はマミさんが登場します。
金曜日は学校が終わるといつも鹿目家に向かう
でも今日はその前によりたい所があった
その人は私の恩人だけど色々あって今は少し苦手だ
けどどうしても話をしておかないといけない
マミ「それじゃあ、今日もあの家族に会いに行くのね」
ほむら「えぇ」
マミ「ふふっ、楽しそう」
巴マミ、彼女は学校の先輩であり
魔法少女としての先輩でもある
ほむら「杏子とゆまは?」
マミ「今日は来るって連絡は貰ってないわねぇ」
佐倉杏子と千歳ゆま、隣町に住む魔法少女で
彼女達は頻繁に巴さんの家に遊びに来てるらしい
ほむら「でもいいの?杏子にあんな小さな子のお守りを任せて」
マミ「逆よ。ゆまちゃんといると佐倉さんは
悪い事しなくなって安心出来るの」
ほむら「なるほどね」
マミ「それで。今日は何の話?」
紅茶とケーキを出しながら笑顔で巴さんは尋ねてくる
ほむら「実は・・・この町の事について話を」
言いづらい事だが話さなければならない
ほむら「あなたがこの町でずっと戦ってきたのは知っている
だからよそから引っ越してきた私がこんな事を
頼むのはおかしな事だけど・・・」
マミ「・・・この町を譲って欲しいのね」
その言葉を先に言われ私は黙って頷いた
魔法少女は協力して魔獣を倒す事もあるが
基本的に自分の縄張りを持って
他人の縄張りに入る事はない
人数が多ければそれだけ魔獣を倒した時に
手に入るGSの分け前が減ってしまうからだ
GSは魔法少女達にとって必要不可欠な物
だから他人の縄張りで勝手に魔獣を狩ると
争いの元になってしまう
ほむら「お願いです。この町を私に譲って下さい」
私はギュっと目を瞑って頭を下げた
こんな事を彼女に頼むのは失礼にも程がある
この町は本来巴さんの縄張りなのだ
私を追い出す権利は向こうにある
でも優しい彼女は一緒に戦おうと言ってくれた
その恩を忘れ私は彼女を追い出そうとしている
ほむら「・・・私、あの人達の傍に居たいんです」
この町から出て行こうと考えた事もある
でも、今は鹿目家の人達から離れたくない
だから・・・
マミ「いいわよ」
ほむら「えっ?」
マミ「どうしたの?そんな驚いた顔をして」
顔を上げると巴さんはニッコリと微笑んでくれていた
マミ「この町は私にとっても本当に大切な所なの
ここで私はQBに出会って、魔法少女になって
佐倉さんに出会って、暁美さんに出会って
そして・・・美樹さんにも出会えた」
一瞬、巴さんは寂しそうな表情をした
先にまどかの下へ行った誰よりも
真っ直ぐだった仲間を思い出したのだろう
マミ「そんな大切な場所だからこそ
暁美さん、あなたに任せたいの」
ほむら「巴さん」
マミ「それに私、もう直ぐ引っ越すから」
ほむら「えっ、どこへ」
マミ「ちょっと恥ずかしいんだけど・・・」
そう言って巴さんは1枚の名刺を見せてくれた
ほむら「これは?」
マミ「実は私、芸能人になってみないかってスカウトされたの」
確かに巴さんは学校でも評判の美人でスタイルも良い
身内だからなのかも知れないがTVに映っている
芸能人よりも華が有る様に思える
マミ「卒業と同時に事務所の近くに引っ越して
その町の高校に通おうと思ってるの・・・驚いた?」
ほむら「・・・正直」
マミ「学校では誰にも言わないでよ
まだ友達にも佐倉さんにも言ってないんだから」
ほむら「でも、それだと色々大変なんじゃ」
巴さんが行く町には既に他の魔法少女が居るかも知れない
その子がここは自分の縄張りだと主張したらどうするのか
例えそうでなくても学業と芸能人を両立しながら
魔法少女として戦い続けるなんて難しい事の筈だ
マミ「そうね。でも、だからこそやりがいがあるわ
叶うかどうかは分からないけど
私は自分の夢を叶える為に頑張ってみたいの」
ほむら「・・・私も巴さんみたいに夢が見つかるかな」
確かな夢を持つ巴さんを見て思わず本音が出てしまった
マミ「焦らなくても大丈夫よ
何なら暁美さんも芸能人を目指してみたら?」
ほむら「そ、それは遠慮します」
マミ「あら、残念。・・・そういえば」
ほむら「?」
マミ「暁美さん、さっき巴さんって呼んでくれたよね」
ほむら「!、何の事かしら、巴マミ」
マミ「もう、またそんな呼びかたして
もう一度呼んで欲しいな~」
ほむら「け、結構よ」
恥ずかしくなったのでケーキを食べてごまかす
けど私の様子をニコニコしながら見る
巴さんに根負けして言ってみた
ほむら「・・・ありがとう、巴さん」
マミ「どういたしまして」
ほむら「///」
やっぱり私はこの人が少し苦手だ
帰りにタツヤ君の好きな
クッキーを買って鹿目家へ向かう
巴さんが居なくなるのは寂しいけど
これからもあの人達の居る町で
過ごせる事は本当に嬉しい事だ
でも、最近少しだけ悲しい事もあった
ほむら「タツヤ君、今日は何を描いてるの?」
タツヤ「フォーゼ!」
ほむら「・・・そうなんだ」
タツヤ「?」
タツヤ君がまどかの絵を描かなくなったのだ
ほむら「タツヤ君、最近まどかを描かなくなりましたね・・・」
詢子「うん?あぁそう言えばそうだね」
知久「子供って色んな物に興味を持つけど
飽きるのもまた早いからね」
詢子「今は仮面ライダーだっけ?」
知久「そう。今日もおもちゃ買ってってダダこねられたんだ」
詢子「で、結局押し切られて買っちゃったと
まったく、あんたもタツヤには甘いんだから」
ほむら「・・・」
仕方のないことだけどやっぱり悲しかった
ほむら(・・・私は、何を期待してたのかしら)
まどかの事を忘れたタツヤ君に罪は無い
しかし彼には覚えていて欲しかったのだ
ほむら(これであなたの事を覚えているのは私1人・・・)
詢子「どうしたの?ほむらちゃん」
ほむら「いえ・・・何でも無いです」
そう、本来は最初からこうだった筈
少しでもこの人達がまどかの事を
覚えていたのが奇跡に等しいのだ
ほむら(それに、私が忘れなければきっと)
何時かまた少しだけ思い出して貰えるかもしれない
だから私だけは絶対にあなたの事は忘れないわ、まどか
それから暫くたったある日
両親から携帯にメールと電話があった
ほむら「そっか・・・今日は私の誕生日だったんだ」
久しぶりに両親と話した後ベットで横になる
繰り返し続けた1ヵ月が完全に私の感覚を狂わせていた
ほむら「私、本当は何歳なのかしら・・・」
去年の誕生日がどんなものだったか思い出せない
いや、両親との思い出すらほとんど覚えていない
それほど長い時間を繰り返し続けたのだ
ほむら「お母さん、お父さん・・・」
今日は忙しくて会いに来れないそうだが
何時かはこのマンションに来てくれるだろう
その時、私は両親にどんな顔をするのか
会いたいけど、会うのが怖かった
私が枕に顔を埋めて涙を堪えていると
インターホンが鳴った
ほむら「誰かしら?」
玄関を開けると知久さんとタツヤ君がいた
知久「すみませんね、急に」
ほむら「いえ、構いませんけど
今日はどうしたんですか?」
知久「それがタツヤが急に行きたいって言い出して」
ほむら「タツヤ君が?」
知久さんの後ろにいるタツヤ君に視線を移す
タツヤ「ほむ姉ちゃん、お誕生日おめでとう!」
そう言うとタツヤ君はニッコリと笑って
筒状に丸めて輪ゴムで止めた画用紙を手渡してくれた
ほむら「えっ」
知久「暁美さん、今日が誕生日だったの?」
ほむら「はい・・・でも何で」
知久「?」
ほむら「タツヤ君にも、教えて無かったのに」
そもそも私自信、両親からの連絡があるまで忘れていたのだ
知久「タツヤ、今日が暁美さんの誕生日だって
何で分かったんだい?」
タツヤ「ふふ~ん、内緒だから教えないよ」
そう答えるとタツヤ君はまた私の方を向く
ほむら「見てもいいの?」
タツヤ「うん」
輪ゴムを外して画用紙を広げてみる
ほむら「これ・・・私とまどかを描いてくれたの」
タツヤ「うん、そうだよ」
画用紙には手を繋いで笑っている私とまどかがいた
ほむら「・・・あっ」
あまりの嬉しさに気づいたら涙が溢れ頬をつたっていた
タツヤ「ほむ姉ちゃん・・・ごめん」
自分が悲しませてしまったと思った
タツヤ君はシュンとなり泣きそうな声で謝る
ほむら「違うの。私・・・嬉しいの
ありがとう、タツヤ君」
タツヤ君を抱きしめながら彼に礼を言う
タツヤ「ホント、ホントに?」
ほむら「ホントだよ」
さっきまでの沈んでいた気持ちが嘘の様だ
今は自然と笑顔になる
ほむら(そうだ。こんな風に笑えばいいんだ)
両親に会う時もこんな風に笑えばいい
嬉しすぎて泣いてしまうかも知れないけど
それでも構わないじゃないか
ほむら(私はこんな簡単な事をさっきまで悩んでたのね)
そう思うと今日両親に会えない事が本当に寂しい
タツヤ「ねぇほむ姉ちゃん、今日家に来てよ。良いでしょ?」
知久「そうしよう。勿論、暁美さんがよろしければだけど」
ほむら「良いんですか?」
知久「当たり前じゃないですか
そうと決まったら早速準備しないと
夕食は期待して下さいね」
タツヤ「ケーキは?」
知久「そうだね・・・ケーキは詢子さんに
連絡して買って帰って貰おうか」
タツヤ「やったー。ほむ姉ちゃんケーキだよ、ケーキ」
ほむら「うん、どっちも楽しみだね」
もう自分の本当の年齢とかどうでも良い
私の誕生日を祝ってくれる人達がいる
その人達と過ごす事で幸せを感じれるのだから
ほむら「ありがとう、タツヤ君」
もう一度タツヤ君にお礼を言ってほっぺにキスをした
タツヤ「ど、どういたしまして///」
耳まで真っ赤にして彼はそう答えてくれた
今回は以上です。
杏子ちゃんとゆまちゃんはいずれまた。
遅れてすみません。
>>38の続きを投稿します。
あと今回ゆまちゃんの話が出てきますが設定が大分変わってます。
時間はあっと言う間に流れていく
今日、巴さんが見滝原中学校を卒業した
杏子「お、来た来た」
マミ「2人ともお待たせ~」
ほむら「もういいの?」
マミ「うん、あの子達とは卒業旅行でまた会うから
ここで解散なの」
杏子「へぇ、土産よろしくな」
マミ「はいはい」
こうして3人集まるのは結構久しぶりな気がする
巴さんは受験勉強や引越し先を探すので忙しかったし
杏子はゆまに付きっ切りだったからだ
杏子「そんじゃマミの卒業と新たな門出を祝って
かんぱ~い」
杏子と一緒に飾り付けた私のマンションで
ささやかだげど巴さんの卒業パーティを開く
マミ「これ、全部暁美さんが作ったの?」
ほむら「知久さんに作り方を習ったの
初めてだから味の保障は出来ないわよ」
ちょくちょく知久さんに料理を習っていたが
パーティ用のご馳走を作るのはこれが初めてだ
正直ちょっと緊張している
杏子「いや美味いぞこれ」
マミ「ホント美味しいわ
暁美さんは将来いいお嫁さんになりそうね」
ほむら「もう、からかわないで」
例えお世辞でもそう言ってもらえて嬉しかった
マミ「そういえば風見野町の方は大丈夫なの?」
杏子「ゆまがいるから大丈夫、大丈夫
何かあったらQBが報せてくれるしな」
ゆまは両親と共に魔獣に
襲われていた所を杏子に助けられた少女
その時、彼女自身は無傷で助かったが
両親は致命傷を受けておりその傷を治す為
QBと契約してしまったらしい
マミ「そう、今度ゆまちゃんに会ったら
お礼をしないといけないわね」
ほむら「杏子がお世話になってる分もね」
杏子「私が世話してやってんだよ」
ほむら「あら、千歳ゆまに盗みを止める様に説教されて
そのまま家に居候しているのは誰かしら?」
杏子「うっ」
ゆまには本当に助けられた
美樹さんがまどかの下へ行ってから
杏子はやけを起こして私や巴さんが何度注意しても
聞く耳を持たずムチャな戦いを繰り返していた
あの時の杏子は本気で美樹さんの後を追うつもりだった
しかし両親を助ける為に契約したゆまの姿を見て
杏子はようやく目を覚ましてくれた
そして心配していた私達の気持ちにも気づいてくれた
マミ「ゆまちゃんのご両親とはどう?」
杏子「うん・・・良くしてもらってるよ」
ゆまの両親は娘と杏子が魔法少女だと知っている
目の前であんな事が起きたら信じるしかなかったろう
でもそれも悪い事ではなかったと思う
魔法少女になる前のゆまは両親から虐待を受けていたらしい
しかしゆまに命を助けられた2人は文字通り
心を入れ替え娘に接するようになった
私が知る限り魔法少女になってその秘密を知る両親と
うまくいっているのは彼女だけだ
杏子「ああもう、私の事はいいだろ!」
マミ「はいはい。じゃあ今度は暁美さんの事を聞こうかしら」
ほむら「私?・・・変わった事は特にないわ」
杏子「嘘付け、仏頂面だったお前が笑ってんだ
よっぽど良い事があったんだろ?」
ほむら「ぶ、仏頂面」
マミ「そうね、出会った頃の暁美さんは表情が
読み取りにくかったけど
今は楽しそうなのが目に見えて分かるわ」
杏子「彼氏でも出来たのか?」
ほむら「出来るわけないじゃない!」
マミ「じゃあ何があったの?ねぇもったいぶらないで教えてよ」
ほむら「何って言われても・・・」
本当に変わった事なんてない
鹿目家の人達と付き合う様になったのは大分前だし
その事はもう2人ともとっくに知っている
しいて挙げるとするなら・・・
ほむら「こんな風に3人で集まるのが凄く楽しみだったわ」
言ってからとても恥ずかしい事を口走った事に気づいた
杏子「ちょっ、お前、こっぱずかしい事言うなよ///」
マミ「でも、暁美さんにそう言ってもらえて凄く嬉しいわ///」
ほむら「待って2人とも、今のは忘れて///」
杏子「い~や、絶対に忘れねぇ」
マミ「今日は暁美さんが素直になった記念日にしましょう」
杏子「お、いいね」
ほむら「ちょっと、2人とも///」
結局この後、私は2人にからかわれ続けた
でも嫌な気分にはならなかった
次の日の放課後、帰りに鹿目家へ寄ってみた
週末まで待ってもよかったが早くお礼が言いたかったのだ
ほむら「こんにちは」
知久「やぁいらっしゃい。今日はどうしたの?」
ほむら「この前教えていただいた料理のお礼に来ました
これ、ケーキです」
知久「ありがとう。料理は喜んでもらえた?」
ほむら「はい。美味しいって言ってもらえました」
知久「それは良かった」
ほむら「タツヤ君は?」
知久「それが、ちょっと熱があって今は寝てるんだ
ほむら「そうなんですか・・・」
タツヤ君の顔を見たかったけど体調が悪いなら仕方ない
知久「・・・こんな事頼むのも悪いんだけど
留守番お願いしてもいいかな?」
ほむら「えっ?」
知久「解熱剤やポカリスエットを買いに行きたいんだけど
タツヤを1人にすると寂しがるから
家に居てもらうだけでいいんだけど・・・」
ほむら「もちろんいいですよ。困った時はお互い様ですから」
知久「悪いね。直ぐ帰るから」
知久さんを見送った後、濡れタオルを持って
タツヤ君の様子を見に行ってみた
タオルを変えてあげると目を覚まして
私の顔をボーっと見つめてくる
タツヤ「・・・あれ?」
ほむら「こんにちは、タツヤ君。起こしちゃってごめんね
具合はどう?」
タツヤ「ほむ姉ちゃんだ!」
ほむら「あ、駄目よ、起きちゃ」
身体を起こそうとするタツヤ君を
落ち着かせもう一度横になってもらう
しかしさっきまで寝てたからか
目がさえて寝付けないみたいだ
タツヤ「ねぇ、ほむ姉ちゃん。何かお話して」
ほむら「お話?」
タツヤ「うん。僕ほむ姉ちゃんのお話聞きたい!」
ほむら「そうね・・・」
ほむら「じゃあ・・・私の最高の友達の話をしようかしら」
タツヤ「ほむ姉ちゃんのお友達?」
ほむら「えぇ。あの子はね・・・」
私はまどかの事をタツヤ君に話すことにした
彼も今はもうまどかを忘れてしまっている
私の誕生日にまどかの絵を贈ってくれた事を最後に
まどかという言葉を口にしなくなったのだ
ほむら「そして、私の初めての友達になってくれたの」
だからまどかという言葉は使わずに伝える
タツヤ君の姉の勇気を、強さを、優しさを
彼の心に彼女の想いだけは残ってもらえる様に
ほむら「そうして世界は救われたの」
タツヤ「・・・ほむ姉ちゃん、寂しくないの?」
私の話が終わるとタツヤ君は泣きそうな顔で聞いてきた
ほむら「少し寂しいわ。でも、大丈夫」
タツヤ「何で?もう会えないんでしょ?」
ほむら「いいえ、何時かまたきっと会える
そう信じてるの。それに・・・」
タツヤ「?」
ほむら「あなたと一緒だから私は大丈夫なのよ」
タツヤ君の頭を撫でながら心の内を明かす
ほむら「詢子さんや知久さんやタツヤ君がいるから
私はこうして笑っていられるの」
まどかと再会する時、それは私の人生の終わり
でも、私は今この命を失っても後悔は無い
それだけの幸福をこの子達に貰っているのだ
タツヤ「僕も、ほむ姉ちゃんと一緒にいると
すっごく幸せだよ」
ほむら「ありがとう。さぁ、もう一眠りして
風邪の菌をやっつけちゃいましょ」
タツヤ「うん!・・・僕も会えるかな?
ほむ姉ちゃんのお友達に」
ほむら「きっと会えるわ。だから
あの子の様に優しい気持ちを忘れないでね」
タツヤ「うん!」
タツヤ君は元気よく返事をして目を閉じた
彼を撫でながら寝付くまで傍にいてあげる
ほむら「・・・」
タツヤ君の寝顔を見ているとある事を思った
どうしてそんな事を思ったのか分からないが
その思いは消えることは無かった
今回は以上です。
次こそ、次こそゆまちゃんを・・・。
>>55の続きを投稿します。
またまた遅れてしまいすみません。
私にとって特別な日が近づいてくる
まどかが世界を変えて私の新しい人生が始まった日
でも、その日が特別なのは私だけではなかった
美樹さんもその日にこの世界からいなくなったのだから
仁美「暁美さんも○○高校にしたんですか?」
ほむら「えぇ」
仁美「なら、またご一緒ですね!」
ほむら「・・・あなたはともかく私は結構ギリギリなのよ」
繰り返し行なったループのせいで
私の成績は魔法少女になる前より格段によくなったが
それは何度も同じ授業を聞いたからであって
私の学力自体が上がった訳ではない
あの1ヵ月以降の授業は私にとっても始めての授業だ
だからこの成績を維持する為に結構努力している
でもそれを特に苦しいと感じた事は無い
学校に行く事も知らないことを学ぶのも
楽しいと感じているからだ
仁美「ご謙遜を。あぁ、これで高校生活の楽しみが増えましたわ」
ほむら「ホントに気が早いわね」
まだ進路希望の段階だというのに
呆れながら浮かれている志筑さんを見る
その時ふと彼女の様子がおかしいと思った
ほむら「何かあったの?」
仁美「えっ?」
ほむら「今日の志筑さん、何だか無理をしているみたいよ」
今日の志筑さんの笑顔にはどこか影があった
私がその事を指摘すると彼女の顔が
見る見るうちに暗くなっていく
仁美「・・・今朝、上条さんに聞きました
・・・さやかさんの捜索が、打ち切られたそうです」
ほむら「・・・そう」
私にとっては分かっていた結末
けど彼女達にとっては絶望的な結末だ
この世界の志筑さんにとって美樹さんは親友
そして私は美樹さんのお陰で志筑さんと友達になれた
その出会いも彼女達と過ごした日々も
私にとっては記憶でしかなけど大切な思い出
その思い出は私だけの物ではなかったのに
ずっと目を背けてしまっていた
仁美「う、うぅ」
今朝から涙を堪えていた志筑さんを黙って抱きしめる
仁美「どうして、さやかさんが」
ほむら「・・・っ」
仁美「帰って来て下さい、さやかさん・・・」
親友を失う悲しみを私は何度も経験した
だから志筑さんの気持ちは痛いほどよく分かる
なのに真実を知る私は・・・
~1年前~
QB「美樹さやかの両親に彼女の最後を伝える?」
ほむら「えぇ」
QB「それは止めておいた方がいいよ」
ほむら「どうして?今も必死に美樹さやかを捜してるのよ
彼女の最後を知る私には彼らに伝える義務があるわ」
QB「確かに君には伝える権利があるかもしれない
けど今回のようなケースは特殊だ
君も知っているだろ?美樹さやかの願いを」
ほむら「・・・」
QB「彼女は他人である上条恭介の腕を治す為に
僕と契約して魔獣と戦う運命を受け入れ
そして全ての力を使い果たし円環の理に導かれた
この真実を知った時、彼らはどう思うと思う?
間違いなく上条恭介を恨むだろうね」
ほむら「でも!」
QB「それに何も教えてくれなかった君も恨まれる筈だ」
ほむら「私は・・・恨まれてもいい」
言いながら本当にそう思っているのか
そう思い続けれるか不安になってくる
ほむら「・・・」
QB「僕が言えることはこれだけだ
後は君が決めてくれ」
ほむら「・・・っ」
結局、私は真実を誰にも話さず
胸の奥に仕舞ってしまった
時が彼らの傷を癒してくれるだろうと
そう都合のいい言い訳を並べて
仁美「うぅ、さやかさん」
けどそれは大きな間違いだった
志筑さんも美樹さんの両親も上条恭介も
美樹さんを忘れずに想い続けている
ほむら(私は、どうすればいいの?)
自分で決めなければならない事は分かっている
だけど私の中にある選択肢では誰も幸福にはならない
放課後になっても私の気持ちは晴れなかった
このままでいいのかその事ばかりを考えてしまう
気持ちを整理する為、杏子に相談してみる事にした
杏子「おっ、珍しいな。お前の方からこっちに来るなんて」
ほむら「ちょっと相談したい事があるの」
杏子「・・・さやかの事か?」
ほむら「!」
杏子「皆考える事は一緒か。あいつがいなくなって
もうすぐ1年になるんだもんな」
ほむら「そうね」
杏子「さっきマミからも電話があったよ
このままさやかの事を黙ったままでいいのかなって」
ほむら「杏子はどう思う?」
杏子「・・・私は伝えたい。けどそれで
さやかの親の気が晴れるとは思えねぇ」
杏子も巴さんも美樹さんの最後を
ご両親に伝えようとしたらしい
けど私と同様QBに止められて
伝える事が出来なかった
杏子「やっぱきついよな。知ってるのに伝えれないのは」
視線を落とす杏子と私
その時、元気な声が玄関から聞こえてきた
ゆま「ただいま~」
杏子「ん?おお、おかえり」
ゆま「あ、ほむらお姉ちゃんこんにちは
今日はどうしたの?」
ほむら「こんにちはゆま。今日は・・・
ねぇゆま、あなたはどう思う?」
ゆまは美樹さんの事を知らない
だからこそ私達とは違う答えを出せる様な気がした
ほむら「もし私が魔獣との戦いで死んだら
私の両親に私の秘密を話した方がいいと思う?」
ゆま「・・・嫌だ、死んじゃ嫌だよ」
ほむら「例え話よ」
ゆま「それでもそんな事言わないで!」
ほむら「あっ、ごめんね」
ぐずりだすゆまをあやしながら
こんな質問をしたのは失敗だったと
今更ながら思った
ほむら「大丈夫、死んだりしないわ」
ゆま「約束だよ、絶対だよ」
ほむら「えぇ」
ゆま「・・・ほむらお姉ちゃんは話して欲しい?」
ほむら「私?私は・・・」
ゆま「ほむらお姉ちゃんが話して欲しいなら
ゆまはちゃんと話すよ」
ほむら「・・・そんな事をしたら
怒られたり恨まれたりするかもしれないわよ?」
ゆま「ゆまは怒られるのこれっぽっちも怖くないよ
だってほむらお姉ちゃんがして欲しいって
言った事だもん」
ほむら「・・・私の意志を尊重してくれるの?」
ゆま「うん。でもほむらお姉ちゃんは死なないんだよね?」
大切な事を忘れていた
遺された人達の気持ちを考えるのも重要な事だけど
美樹さんの気持ちを考えるのも同じぐらい重要なのだ
ほむら「えぇ・・・ありがとう、ゆま」
杏子「なぁほむら、さやかはどう思ってたのかな」
ほむら「・・・誰にも悲しんで欲しく無い
そう思っていた筈よ」
杏子「だよな。あいつは馬鹿が付くくらい
真っ直ぐでいい奴だったもんな」
ゆま「さやか?」
杏子「私達の友達さ」
そう言って杏子はゆまに
美樹さんとの思い出を語り始めた
帰りにゆまの言っていた事を思い返す
誰にも悲しんで欲しくないと思っていた美樹さん
その意思を尊重するには私はどうするべきか
詢子「ほむらちゃ~ん」
ほむら「詢子さん?」
振り返ると詢子さんが手を振って私を呼んでいた
横には知久さんとタツヤ君もいる
詢子「どうしたの?こんな所で」
ほむら「友達の家で遊んでたんです。皆さんは?」
詢子「うちの若い社員からおいしいパスタの店を聞いたから
ちょっくら足を伸ばしてみようと思ってね
ほむらちゃんもどうだい?勿論おごっちゃうよ」
ほむら「すみません、今日はちょっと」
詢子「な~んだ残念。じゃあまた今度都合のいい日を教えてよ」
ほむら「はい」
タツヤ「・・・」
知久「どうしたんだい?タツヤ」
タツヤ「ほむ姉ちゃんどうしたの?元気ないよ」
ほむら「えっ?・・・ううん、そんな事ないよ」
タツヤ「ホントに?」
じーっと見つめてくるタツヤ君に
思わずキョトンとしてしまう
どうやら彼にはお見通しだったみたいだ
ほむら「・・・ごめんね。私、嘘付いちゃった」
タツヤ「嘘付いたらいけないんだよ~」
ほむら「うん、そうだね」
タツヤ「でも、僕怒んないよ。何でだと思う?」
ほむら「タツヤ君は優しいもんね」
タツヤ「そうじゃないよ。ほむ姉ちゃんが
正直に言ってくれたからだよ」
ほむら「私が?」
タツヤ「うん。お父さんもねお母さんもね
僕が嘘付くと怒るんだ
でも、正直に謝ったら許してくれるんだよ」
美樹さんの死を悲しんでいる人達に
全てを話せば黙っていた事を恨まれる
QBが言っていた事は間違いではない
だけどタツヤ君が教えてくれた事も
間違いではない気がする
ほむら「・・・友達や他の人にも嘘付いてるんだ
その人達の知りたい事を知っているのに
知らないって」
詢子「・・・教えたくない事なの?」
ほむら「怖かったんです。嫌われんじゃないかって」
詢子「ほむらちゃん、この子が言ってるように嘘は良くないよ
嘘を付かないといけない事情があったのかもしれないけど
結局は自分が苦しむ破目になるんだよ」
ほむら「・・・はい」
詢子「よっしゃ、説教はこれぐらいにしてパスタ食べに行こうか」
ほむら「でも」
詢子「これは私達に嘘付いた罰だよ」
ほむら「・・・分かりました」
私の返事を聞いた詢子さんはニッコリと笑ってくれた
その笑顔を見ていると不思議と気分が晴れてくる
タツヤ「ほむ姉ちゃん」
ほむら「?」
タツヤ「大丈夫だよ。誰もほむ姉ちゃんを
嫌いになったりしないよ」
ほむら「うん、ありがとう」
タツヤ君にお礼を言いながら私は覚悟を決めた
今回は以上です。
ほむほむがどんな覚悟を決めたのかは次回にまた。
>>77の続きを投稿します。
どんどん投稿が遅れてしまいすみません。
ほむら「上条さん」
机に伏している上条恭介に声をかける
顔を上げた彼の顔は酷くやつれていた
恭介「暁美さん?・・・僕に何か用?」
ほむら「昨日の夜、町で何をしていたの?」
恭介「・・・さやかを捜してた」
塾の帰りにはあまりにも遅すぎる時間帯
上条恭介は手当たりしだい通行人を捕まえて
美樹さんの写真を見せて訪ねていた
彼女の事を何か知らないかと
ほむら「美樹さんの事は残念だけど
警察が見つけられなかったのだから
貴方が何をしても無駄よ」
私の言葉を聞いた上条恭介が
怒りの表情に変わっていく
恭介「君だってさやかの友達だったんだろ!
君は心配じゃないのか!」
ほむら「友達か・・・貴方は彼女の事を
本当にそう思ってるの?」
恭介「当たり前だろ。さやかは僕の大切な友人だ」
ほむら「本当にそれだけ?」
恭介「何が言いたいんだよ!」
ほむら「入院していた時、何度もお見舞いに来てくれたり
自暴自棄になりかけた時、必死に励ましてくれた
彼女をあなたはただの友達としか見ていないのね」
恭介「!、何でその事を・・・」
ほむら「・・・美樹さんも馬鹿な事をしたものだわ
こんな奴の為に一生を棒に振るなんて」
恭介「えっ?君は、さやかの事を」
ほむら「あつかましい様だけど私は美樹さんの友達よ
だからあなたにも話さないといけないと思った
だけど気が変わったわ。貴方は一生そうしてなさい」
あれだけ献身的に尽くした美樹さんの気持ちに
気づけない様な奴に真実を話しても意味は無い
それこそQBが言っていた様に不幸になるだけだ
恭介「ま、待ってくれ。さやかの事を
何か知っているなら教えてくれ、頼む」
ほむら「・・・覚悟はある?」
恭介「かく、ご?」
ほむら「一生恨まれ続ける覚悟よ
それが無い限り貴方には教えられないわ」
恭介「ホントに、君はさやかの事を知っているのかい?」
ほむら「えぇ」
恭介「・・・分かった。どれだけ恨まれてもいい
だから君の知っている事を全部教えてくれ」
ほむら「・・・放課後、私に付いてきて」
それだけ言って私は自分の席に戻った
仁美「あの、上条さんと何の話をしていたんですか?」
ほむら「・・・志筑さんにもちゃんと話すから
それまで何も聞かないで」
仁美「?・・・はい」
可愛そうだけど志筑さんに話すのは最後になる
放課後、上条恭介を連れて人気の無い駅に向かう
恭介「ここは?」
ほむら「私が美樹さんを見た最後の場所よ」
恭介「さやかは電車でどこに行くって言ってた!」
ほむら「彼女は電車には乗っていないわ」
恭介「じゃあ・・・」
上条恭介は目を見開いて線路を見た
ほむら「安心して轢かれてもないから」
恭介「っ!、僕を茶化すのがそんなに楽しいのかい!」
ほむら「茶化してなんかないわ」
恭介「もう帰らしてもらうよ」
ほむら「待ちなさい上条恭介
貴方の腕、どうして治ったと思う?」
恭介「そんなの今は関係無い事だろ!」
ほむら「主治医もご両親も貴方自身も諦めた
でも、唯1人だけ諦めなかった子がいた筈よ」
恭介「!・・・さやか」
ほむら「美樹さんは貴方の腕が治るなら
どんな運命も受け入れると言っていたわ」
恭介「さやかが治してくれた?・・・でも、どうやって?」
ほむら「来たわね。後ろを見てみなさい」
恭介「後ろ?」
後ろを振り向いた上条恭介は驚いて尻餅をついた
そこには数匹の魔獣がいたからだ
恭介「な、何だ、こいつら」
ほむら「美樹さんはね、こいつらと戦う運命を受け入れたのよ」
恭介「えっ?」
理解の追い付かない上条恭介の目の前で
私と魔獣の戦いが始まった
恭介「あ」
私の命懸けの戦いが彼にどう映ったのか
しばらくして戦いが終わり息を付く私を
心配しているとも恐れているともとれる
表情で見つめていた
恭介「君は、いったい?」
ほむら「魔法少女。そう言われているわ」
恭介「魔法?」
~1年前~
恭介「諦めろって言われたのさ」
さやか「え」
恭介「もう演奏は諦めろってさ
・・・先生から直々に言われたよ
今の医学じゃ無理だって」
さやか「・・・」
恭介「僕の手はもう2度と動かない
奇跡か、魔法でもない限り治らない」
さやか「あるよ」
恭介「え?」
さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ」
恭介「あの時、さやかは確かに魔法って・・・」
ほむら「私達はね、最初に願いを1つだけ叶えて貰える
でもその後はさっきの様な化け物と
戦い続けないといけない・・・死ぬまでね」
恭介「じゃあ、さやかは僕の為に・・・」
上条恭介は美樹さんに謝りながら泣き始めた
簡潔な説明だったが彼は全てを理解したようだ
ほむら「貴方は美樹さんにとって
自分の命より大切な存在だった
その事は忘れないで」
恭介「・・・さやかの両親には?」
ほむら「今から伝えに行くつもりよ
言っておくけど止めても無駄
もう覚悟は出来てるんでしょ?」
恭介「止めはしない。だから僕も一緒に行かせてくれ」
ほむら「一緒に来てどうするの?
その場で怒りを買うだけよ」
恭介「でも、やっぱり一緒に行かせてくれ
暁美さんだけにそんな役割押し付けられない
それに君は僕を庇うつもりなんだろ?」
ほむら「!」
上条恭介に指摘されたとおり私は美樹さんの
ご両親には彼の名前は伏せるつもりだった
私の病気を治してもらった事にすれば
私だけが恨まれ彼に被害が及ぶ事はない
ほむら「・・・」
恭介「やっぱり。でも僕の事は庇わなくていい
だからありのままを伝えてあげてくれ」
真剣な眼差しを向ける上条さんを見てある事を思いついた
ほむら「なら、1つ協力して貰えるかしら」
恭介「あぁ、何でも言ってくれ」
ほむら「貴方が協力してくれるなら
美樹さんにもう1度会えるかもしれないわ」
恭介「え?」
遂にその日がやってきた
今日の放課後に私と志筑さんと上条さんは
美樹さんのご両親に会う約束をしている
仁美「本当に、さやかさんは帰ってくるんですか!」
ほむら「えぇ」
志筑さんにはまだ本当の事は話していない
今日、美樹さんにまた会えるかも知れない
としか話していない
恭介(志筑さんに期待させる様な事して大丈夫なの?)
ほむら(それも貴方次第よ。練習、ちゃんとしたの?)
恭介(したさ。今までで一番ね)
待ち合わせの場所は病院の屋上
美樹さんの願いが叶った思い出の場所
3つだけ用意した椅子の両端に
美樹さんのご両親に座ってもらい
1つだけ空席を作る
私と志筑さんは少し離れた所で様子を伺う
恭介「それでは弾かせてもらいます」
私が上条さんに頼んだ事
それは美樹さんの命日に彼女の為に
バイオリンを弾いてもらう事
仁美「・・・あっ」
私の隣で演奏を聴いていた志筑さんが声を洩らす
席に座っていた2人も同時に気づいてくれた
ほむら「・・・上条さんが美樹さんの為に
バイオリンを弾いてくれるんだもの
あの子が来ない訳ないじゃない」
私達には空席だった椅子に
瞬きも忘れて演奏を聴き入っている
美樹さんの姿が見えていた
仁美「さやかさん」
声を上げて泣き始めた志筑さんに気がついた
美樹さんは笑顔でしーっという仕草をする
ほむら「志筑さん静かにって」
仁美「はい、そうですね」
叱られた志筑さんは涙を吹いて演奏を聴き入る
同じ様に泣いている美樹さんのご両親も
美樹さんに静かにしてと注意されている
ほむら「相変わらずね」
1年ぶりにあった美樹さんは何も変わっていなかった
上条さんの演奏が終わると同時に拍手が起こる
誰よりも賞賛しているのはやっぱり美樹さんだ
恭介「う、うぅ。さやか」
美樹さんの淡い想いにようやく気がついた
上条さんは泣きながら崩れ落ちた
もっと早く気づけなかった事を後悔して
さやか「仁美、ほらほら」
仁美「え?」
さやか「あんたが行ってあげなきゃ」
仁美「・・・はい!」
美樹さんに促され志筑さんは泣きじゃくる
上条さんを優しく抱きしめてあげた
そして私は魔法少女の事を話した
美樹さんが何を願って規約したのかも
私達は黙っていた事を怒られた
でも、最後は美樹さんの分もしっかりと
生きて欲しいと許してもらえた
さやか「じゃあ、もう行くね」
ほむら「ありがとう・・・美樹さん」
さやか「こっちこそ、サンキュ。・・・ほむら」
笑顔のまま去っていく美樹さん
それから毎年この日は上条さんが
美樹さんの為に演奏する日となった
杏子「ずっりー!何で私達に教えてくれなかったんだよ!」
ほむら「美樹さんのご両親が許してくれるとは
限らなかったのよ」
マミ「だからって自分だけ美樹さんに会うなんてずるいわ」
ゆま「ゆまも会いたかった~」
ほむら「・・・ごめんなさい」
今日の出来事を皆に報告したら一斉に非難された
人の苦労も知らないでと言いたくなったけど
私も彼女達の立場だったら文句を言っていたと思う
だから今回は黙って怒られる事にした
杏子「ちくしょお~。来年は私も行くからな」
ゆま「ゆまも、ゆまも」
マミ「私も絶対に行くからね」
ほむら「・・・来年は騒がしくなりそうね」
巴さんはともかく杏子とゆまは
静かに演奏を聴けるのか少し不安だ
まぁ、美樹さんも何だかんだで賑やかな方が
好きだから許してくれそうな気がする
ゆま「ほむらお姉ちゃん、携帯が鳴ってるよ」
ほむら「?・・・詢子さんから」
詢子「あ、ほむらちゃん・・・えーと、元気?」
ほむら「はいおかげさまで。今日は?」
詢子「いや、元気ならいいんだ。うん」
今日は詢子さん達にとっても特別な日
多分まどかが会いに来る筈だ
ほむら「詢子さん、今日は家族水入らずで過ごして下さい」
詢子「え?」
ほむら「そうすれば素敵な夢が見れますよ」
詢子「そう。じゃあさ、ほむらちゃんも来てよ」
ほむら「・・・今日は遠慮しておきます」
まどかには会いたいけど邪魔したら悪い
詢子「さっき、家族水入らずって行ったよね?
ほむらちゃんはもう家の家族なんだから
来てもらわないと困るんだよ」
ほむら「でも」
詢子「タツヤー、ほむらちゃん今日来てくれるって」
タツヤ「ホント!やったー」
ほむら「あっ」
詢子「ほら、またタツヤに嘘付くのかい?」
まったくこの人はホントに強引な人だ
ほむら「分かりました。今から向かいますね」
詢子「それでよろしい」
電話を切り溜息を付いて皆の方を見る
ほむら「ごめん皆、出かけないと行けなくなったわ」
ゆま「行ってらっしゃい」
杏子「今日は大忙しだな」
マミ「それだけ暁美さんが人気者って事よ」
巴さんの言葉に少し照れながら鹿目家へ向かう
今日は私にとってホントに素敵な1日になった
今回は以上です。
ちなみに魔法少女達はほむほむのマンションに集まってました。
>>102の続きを投稿します。
とうとう1週間分の遅れとなってしまいすみません。
誰にも得意不得意がある
不得意なことは誰しも避けようとするけど
どうしても立ち向かわないといけない時もある
詢子「ねぇほむらちゃん、今年は皆で海に行かない?」
ほむら「海ですか?」
詢子「今年は受験で勉強を頑張んないといけないのは
分かってるんだけど息抜きも必要でしょ?
去年は一緒に行けなかったしどうかなあって」
ほむら「えっと、その」
タツヤ「ほむ姉ちゃん、今年は一緒に泳ごうね」
ほむら「う、うん」
詢子「じゃあ早速日取りを決めようか」
ほむら(ま、まずい)
その日の夜、私はこっそり杏子に電話した
ほむら「という事があったの」
杏子「ふ~ん。お土産よろしくな」
ほむら「貴方はいつもそうね
まぁそんな事はどうでもいいわ
問題は海に行くって事なの」
杏子「?・・・肌焼きたくないのか?」
ほむら「そうじゃない・・・私、泳げないの」
杏子「は?お前泳げなかったのか?」
一瞬の間の後、杏子はゲラゲラと笑い出した
仕方ないのだ
私は今まで入退院を繰り返していて
まともに学校に通っていなかった
今でこそ人並み以上の体力になったが
昔は身体も弱かったので海に行ったら
強い日差しに当たっただけで
目まいを起こしていた
杏子「つーかさ、去年は行かなかったのか?」
ほむら「去年は貴方達との約束があったり
実家に帰る予定を組んでたから
予定が合わなくて行けなかったの」
杏子「そういえばお前、私達とも海には行かなかったよな
てっきり疲れるのが嫌だと思ってたけど」
そう言うと杏子はまた笑い出す
ほむら「もう笑わないでよ。真剣に悩んでるんだから」
杏子「別に泳げないなら正直に泳げませんって言えよ」
ほむら「だって・・・恥ずかしいじゃない」
去年、初めて水泳があった時の事を思い出す
志筑さん達や先生は私が泳ぐのも得意だと思っていた
皆が期待の眼差しで私の方を見ている中で
泳げませんと言うのがどれだけ恥ずかしかったか
それに一緒に泳ごうねっと誘ってくれた
タツヤ君に泳げない事がバレたら
失望されてしまうんじゃないかと思ってしまう
杏子「恥ずかしいって、私には言えてるじゃねえか」
ほむら「と、とにかく私は夏休みまでに泳げるようになりたいの」
杏子「でも私も人に泳ぎ方なんて教えた事無いし
土日はバイトもあるし」
ほむら「そこをなんとか」
杏子「う~ん。・・・じゃあ明日朝10時に
風見野町のプールに集合な」
ほむら「分かった。ありがとう杏子」
杏子「いいっていいって。困った時はお互い様だろ」
杏子は笑顔で優しくそう言ってくれたけど
何故かその言葉を嘘臭く感じてしまった
次の日、私は詢子さん達に用事が出来た
と言って風見野町のプールに向かった
そこで私を待ってたのはゆまだった
ゆま「ほむらお姉ちゃん、こんにちは」
ほむら「ゆま、杏子は?」
ゆま「杏子はアルバイトで忙しいから
代わりにゆまが教えてあげてって」
ほむら「・・・はめられた」
ゆま「安心して。ゆま泳ぐの凄く上手なんだよ
それに助っ人ももう直ぐ来てくれるし」
ほむら「助っ人?まさか巴さんを呼んだんじゃ」
QB「やぁ久しぶりだね、ほむら」
ほむら「・・・杏子~」
何が悲しくて小学生と宇宙人に
泳ぎを教えてもらわないといけないのか
杏子が暇そうだったからとはいえ
彼女に相談するんじゃなかった
ほむら「そういえば杏子はなんのアルバイトをしてるの?」
ゆま「色んな所でアルバイトしてるんだって
よく売れ残って安くなった食べ物を
買ってきてくれるよ」
ほむら「そう。でも急にどうしたのかしら」
ゆまの家でお世話になっているうちに
その日暮らししか頭に無かった
杏子の考えが変わってきたのだろうか
QB「それじゃあ早速始めようか」
ほむら「・・・」
こうなったら今日1日で
絶対に泳げる様になってやる
ビート板を持って初心者用の
プールにおもいっきり・・・
ほむら「痛い!あっ、ビートb」
QB「腹打ちしたみたいだね」
ゆま「ほむらお姉ちゃん、プールで走ったり
飛び込み台以外で飛び込んじゃ駄目なんだよ」
ほむら「そ、それy・・・助k・・・」
QB「ほむらそこは浅いから君なら足が付くよ」
ほむら「はぁ、はぁ」
QB「そもそもなんでいきなり飛び込んだんだい?」
ほむら「だって勢いをつけないと向こうまで
辿り着けないじゃない」
QB「・・・」
ゆま「・・・」
ほむら「な、何よ」
クラスメイト達は皆飛び込んでいたし
TVで見た水泳選手達も皆そうしていた
だから私は間違っていない筈だ
ゆま「えっとね、背泳ぎは飛び込めないんだよ」
QB「ゆまそれよりも先ずは面かぶりから教えよう」
それから1時間くらい壁につかまって
面かぶりとバタ足の練習をさせられた
こんな事しててホントに泳げる様になるのか
疑問だったけど大人しく従っておく
ゆま「じゃあ今度はビート板を持って泳いでみようか」
ほむら「いよいよね」
ゆま「あ、待って。上がんなくていいよ」
ほむら「?」
ゆま「最初はね、こんな風に壁を蹴ればいいんだよ」
ほむら「なるほど、そうやってバタ足に繋げればいいのね」
ゆまがやったように壁を蹴りバタ足で進む
今、初めて泳いだと実感できた
ゆま「凄い凄い。ほむらお姉ちゃん泳いでるよ」
QB「この調子なら本当に今日中に泳げそうだね」
ビート板有りとはいえ泳げる様になったので
休憩を含めて昼食を取る事になった
水の中でずっと動きっぱなしだった
私はかなりお腹が空いていたので
ちょっと多めに注文してしまった
QB「ところで学校ではちゃんと教えて貰えなかったのかい?」
ほむら「と言うより聞きづらかったのよ」
志筑さん達や先生は教え様としてくれたが
何となく申し訳ないと思ってしまい
仮病を使ったりして断ってしまっていた
ゆま「駄目だよ、そんな事したら」
ほむら「そうね、今思えばとても失礼な事をしていたわ」
昔からの悪い癖だ
人との間に自分で壁を作ってしまう
ゆま「でも杏子は嬉しかったと思うよ
そんなほむらお姉ちゃんに頼ってもらえて」
ほむら「・・・もう2度とあの子には相談しないけどね」
海に行った時のお土産も絶対に
食べ物にはしないつもりだ
詢子「ほむらちゃん?」
ほむら「えっ?」
詢子「やっぱりほむらちゃんか
どうしてここに?」
ほむら「それは・・・」
視線を泳がし辺りを見回す
タツヤ「あっ」
遠くで私を見つけたタツヤ君が
知久さんに影にサッと隠れるのが見えた
やっぱり彼も来てたんだ
ほむら「えっと・・・この子が泳げないって
言うから私が教えていたんです
前から約束してたのに忘れちゃってて」
ゆま「えっ?」
ほむら(ごめんゆま。話合わせて)
ゆま「・・・」
詢子「何だそうだったんだ」
ほむら「詢子さん達はどうしてここに?」
詢子「昨日タツヤが言ってたでしょ、一緒に泳ごうって
でもあの子まだ浮き輪が無いと駄目なんだよ
その事を今朝からかってみたら
泳げる様に特訓してって泣きついて来てさ」
ほむら「は、はあ」
詢子「それで最初は近場のプールに行こうとしたんだけど
ほむらちゃんにバレるかも知れないってまた駄々こねて
こっちに来て見たんだけど・・・」
詢子さんはちらりとタツヤ君達の方を見る
よほど私に気づかれたくないのか
じっと隠れたままで顔を見せてくれない
詢子「こりゃ完全に裏目にでたね」
知久「こんにちは。ほらタツヤ
隠れてないでちゃんと挨拶しなさい」
タツヤ「~~~~~~」
詢子「ほら情けないぞ。男の子だろ」
タツヤ「・・・だって」
詢子「大丈夫その歳で泳げなくたって
全然恥ずかしくないんだぞ
な、ほむらちゃん?」
ほむら「も、もちろんです」
詢子「ほら、ほむらちゃんもああ言ってるんだから」
タツヤ「・・・こんにちは」
今まで見た中で1番元気が無い挨拶をするタツヤ君
詢子「そうだ、ほむらちゃんタツヤにも
泳ぎ方教えてくれない?」
ほむら「!?」
タツヤ「や、やだ」
詢子「照れるな照れるな。ホントはほむらちゃんに
教えてもらいたいくせに」
タツヤ「///」
ほむら「あ、でも私達さっき昼食取ったばかりで
直ぐに動くのはちょっと・・・ね、ゆま?」
ゆま「ううん。ゆまはもう大丈夫だよ
だから早く教えて。ほ・む・ら・お・姉・ちゃん」
ほむら(ゆ、ゆま~)
ゆま「ふんっ」
ほむら「~~~~~~」
結局私は泳げない事を正直に話した
詢子さんは一瞬キョトンとした後
大きな声で笑ってしまった
今回は以上です。
ちなみにほむほむが泳げないというのは私の妄想です。
>>122の続きを投稿します。
今回は今までよりタツほむ出来ました。
約束の時間より少し早く迎えの車が来た
助手席のウインドが開き元気な声で挨拶される
詢子「ほむらちゃん、おはよう」
ほむら「おはようございます、詢子さん」
詢子「昨日はよく寝れた?」
ほむら「・・・はい」
実は昨日、海に行くのが楽しみで中々寝付けなかった
でもその事を正直に言うとまたからかわれそうなので黙っておく
知久「おはよう、暁美さん。今トランク開けるね」
ほむら「おはようございます、知久さん」
運転席から降りてきた知久さんがトランクを
開けてくれたので鞄を入れて後部座席に座る
ほむら「おはよう、タツヤ君」
タツヤ「Zzz」
ほむら「タツヤ君?」
詢子「ああごめんね。昨日の夜興奮して寝れなかったみたいでさ」
ほむら「そうなんですか」
タツヤ君に楽しんでもらおうと考えておいた
クイズを出せないのが少し残念だったけど
私と同じ様に今日を楽しみにしてくれていた事が
たまらなく嬉しかった
詢子「こんな事聞くのもなんだけど、勉強の方は捗ってる?」
ほむら「はい。でも・・・少し焦ってます
皆、結構余裕があるみたいで」
詢子「えっ?どういう事?」
ほむら「夏休みに一緒に遊びに行かないかって
同級生の子達に誘われたんです
それも同じクラスの子だけじゃなくて
あんまり話した事の無い隣のクラスの子にも」
詢子「それって男子から?」
ほむら「そう言えば男子ばかりでした」
詢子「あぁなるほどね。まぁその勇気は褒めてやるか」
ほむら「?」
受験生が夏に遊びに行くのは
そんなに勇気がいる事なのだろうか
何だかだんだん不安になってきた
詢子「大丈夫大丈夫、ほむらちゃんが不安がる必要は無いよ
そいつらが無謀な戦いに挑んだだけだから」
ほむら「???」
無謀な戦いとはいったい何の事だろう?
朝、早めに出発したのであっという間に海に着けた
ビーチにはそれなりに人がいるがまだ空いている方だ
ほむら「タツヤ君起きて、着いたよ」
タツヤ「ふぁ・・・!」
ほむら「おはよう、タツヤ君」
タツヤ「おはよう、ほむ姉ちゃん」
詢子「ほら、早くしないと置いてっちゃうぞ~」
タツヤ「!」
タツヤ君は水着袋を持って急いで車から降りると
トランクから荷物を出す知久さんの方に駆け寄る
タツヤ「僕も、僕も持つ」
知久「じゃあ、タツヤにはこっちの鞄を
持って行ってもらおうかな」
タツヤ「そっちがいい」
タツヤ君が指差したのはビーチパラソル
知久「う~ん、これはタツヤがもうちょっと大きくなってからだね」
知久さんは苦笑しながら鞄をタツヤ君に渡す
するとタツヤ君は私の方をちらりと見て駄々をこねだした
タツヤ「やだっ、そっちがいい!」
知久「でもこれは重いからタツヤが持つと
他の人にぶつけてしまうかも知れないよ
危ないから今日は我慢しよ?」
タツヤ「大丈夫だもん!」
詢子「こら、言う事を聞かないなら連れて帰るよ」
タツヤ「うぅ~」
詢子さんに怒られタツヤ君は泣きそうな顔になる
ほむら「じゃあ私と一緒に持とうか」
タツヤ「えっ・・・でも・・・」
詢子「いいの?ほむらちゃん」
ほむら「はい。連れてきてもらったんですから
このくらいはしないと」
知久さんからビーチパラソルを受け取り
タツヤ君に端を持ってもらう
ほむら「行こっか」
タツヤ「・・・うん」
しぶしぶと言った感じでタツヤ君は頷く
ほむら(タツヤ君・・・どうしたのかしら)
急に元気が無くなってしまったタツヤ君
そんなに1人で持ちたかったのかな
ほむら(そうだ)
周りに人がいない所まで行ってから1度パラソルを置く
ほむら「重かったね、タツヤ君」
タツヤ「・・・うん」
ほむら「タツヤ君は凄いね。これを持とうとするなんて」
そう言ってタツヤ君の手を撫でる
ほむら「ねぇ、もう一度持ってみて」
タツヤ「でも・・・危ないって」
ほむら「大丈夫、周りに誰もいないから、ね」
私に促されタツヤ君はビーチパラソルを手に取る
そして軽く持ち上げてしまった
タツヤ「!」
実はさっきタツヤ君に触れた時
魔法で力をちょっとだけ強くしておいたのだ
ほむら「凄い凄い。ホントに1人で持てたんだね」
タツヤ「えへへ。ねぇほむ姉ちゃん。僕って力持ちかな?」
ほむら「うん。それに知久さんのお手伝いを
しようとしたんだからとっても立派だよ」
タツヤ「えへへ」
ほむら「でもね、タツヤ君がどんなに力持ちでも
他の人にぶつかったら危ない事には変わりないんだよ
だから知久さんの言う事はちゃんと聞こうね」
タツヤ「うん!」
元気を取り戻してもらえて良かった
やっぱりタツヤ君には何時も笑顔でいてもらいたい
タツヤ「・・・僕、お父さんに謝ってくるね」
そう言うとタツヤ君はビーチパラソルを置いて
知久さんの下へ走っていく
QB「やあ、ほむら」
ほむら「!・・・何であなたがここにいるのよ」
QB「ちょっとこの町に気になる事があってね」
ほむら「気になる事?」
QB「はっきりとしたら君にも伝えるよ」
それだけ言うとQBは去っていった
一体何をしにここに来たんだか
ほむら「・・・まさかね」
一瞬、嫌な考えが頭をよぎった
水着に着替え終わると詢子さんは
じっくりと私の方を見る
詢子「ほほう」
ほむら「に、似合ってます?」
プールで会った時は学校指定の水着だったけど
今日は紫色のビキニを持ってきた
詢子「100点満点中の120点だね」
ほむら「そんな、褒めすぎですよ///」
詢子「いやいや、ホントばっちり似合ってるよ」
ほむら「詢子さんの方こそ似合ってますよ」
詢子「嬉しい事言ってくれるじゃない」
日焼け止めを塗り終わってからビーチに行くと
タツヤ君と知久さんがボールを膨らませていた
詢子「ほら、タツヤ。ほむらちゃんどう思う?」
タツヤ「す、すっごく綺麗だよ。ほむ姉ちゃん」
詢子「だろ?こんなに可愛いいんだから
クラスの男子がほっとかないのも分かるよな」
タツヤ「?」
詢子「そっか、タツヤは寝てて聞いてなかったのか
ほむらちゃん学校じゃあモテモテ何だって」
タツヤ「!?」
ほむら「そ、そんな事は無いですよ」
タツヤ「ホントなの、ほむ姉ちゃん?」
ほむら「じ、詢子さんの冗談よ」
詢子「まっそういう事にしておくか」
ほむら「もう変な事言わないで下さいよ」
タツヤ「・・・ほむ姉ちゃん」
ほむら「?」
詢子「ん~?あっちの2人組みはさっきから
ほむらちゃんの方をじっと見てるぞ」
タツヤ「!?」
タツヤ君は急に焦り出すとタオルを広げて私の前に立った
詢子「あっはっはー。頑張れよ、タツヤ」
詢子さんはそんなタツヤ君の様子を見て楽しそうに笑った
今回は以上です。
ほむほむの水着はフュギアのあれをイメージしてください。
>>141の続きを投稿します。
またまた遅くなりすみません。
詢子「はぁ~。やっぱでっかい風呂はいいね~」
旅館の大きなお風呂でくつろぎながら
詢子さんは私に話しかけてくる
私達は海の近くの旅館に来ていた
日帰りで帰れる距離でもあったけど
せっかく海まで行くのだからと言う
詢子さんの提案で泊まる事にしていたのだ
ほむら「タツヤ君、今日はどうしたんでしょうね」
今日のタツヤ君は急にタオルを広げたり
大声を出したりしてずっと変だった
詢子「ふふ、ほむらちゃんが他の人に取られちゃうんじゃ
ないかと思って焦ってたんだよ」
ほむら「えっ?」
詢子「タツヤにとってほむらちゃんは特別な存在なんだよ
そりゃあ私や知久もほむらちゃんを大事に思ってるよ
でもね、あの子が持ってる想いはもっと強い物なんだ」
ほむら「それって・・・」
詢子「何時までそう想い続けるのかは分からないし
ほむらちゃんに迷惑をかける事もあるかも知れない
でも、タツヤがほむらちゃんみたいな素敵な人を
そう想える様になってくれたのは嬉しいよ」
ほむら「・・・」
詢子「まっ、ちょっと早すぎだけどね」
ほむら「私も・・・皆さんを大切に想ってます
本当の家族の様に」
詢子「それを聞いたらあの子も喜ぶさ」
笑顔を向けてくる詢子さんに
私も出来る限りの笑顔で答えた
深夜、寝付けなかったので夜風に当たりに外に出る
ほむら「・・・」
詢子さんや知久さんを家族の様に思っているのは間違いない
でもタツヤ君をどう見ているのか自分でもよく分からないのだ
彼も家族として見ているのか、それとも・・・
QB「何を考えてるんだい?」
ほむら「・・・いたの」
QB「今日調べていた事を君にも伝えようと思ってね」
ほむら「今は聞きたくない」
QB「そうか。君がそう言うなら仕方ないね」
ほむら「・・・この町の魔法少女の事でしょ?」
QB「?、聞きたくないじゃないのかい?」
ほむら「いいから答えて」
QB「まぁ元々その事を話すつもりで
ここに来たから別にいいんだけどね
君の言う通りこの町の魔法少女の事さ
今日1日、彼女を探して見たけど
どこにも見当たらなかった」
ほむら「・・・つまり」
QB「彼女はもうこの世にはいないという事さ」
QB「マミの言う円環の理に導かれたのか
魔獣にやられたのかは分からないけどね」
QBは動じる事無く淡々と報告する
こいつはそういう奴だと分かっていても
怒りを抑える事が出来ない
ほむら「何で、もっと早く教えてくれなかったの」
QB「?」
ほむら「あなたがもっと早く教えてくれたら
その子を助ける事が出来たかもしれないのに!」
QB「僕も異変に気がついたのは昨日だったからね
多分、間に合わなかったんじゃないかな?」
ほむら「・・・っ」
QB「こればかりは仕方の無い事さ
それより彼女がいなくなった事で
この町の魔獣が増えてきている」
ほむら「私にそいつらを倒せと?」
QB「取り合えず今日の所はお願いするよ
僕は明日からこの町で素質のある子に
声をかけてみるから」
ほむら「・・・そうやって貴方達は私達を
道具の様に使い捨てていくのね」
QB「人聞きが悪い事言うな~
君達には全てを話した上で
交渉しているじゃないか」
この世界のこいつらは前の世界の様に
重要な事を省略したりはしていないらしい
魔法少女達は全ての秘密を知った上で
契約するかどうかを決めている
それでも私はこいつらを許す事が出来ない
これは理屈じゃなく私の感情だ
QB「君が魔法少女を増やす事に
いい顔をしないのは知っている
だけど君1人ではこの町と見滝原を
同時には守れないだろ?」
出来る事ならそうしたい
しかしそれが出来ない事だというのも分かっている
結局、私が妥協するしかないのだ
ほむら「・・・分かったわ」
八つ当たりをする様に私は魔獣を狩りに向かった
ほむら「こんなところね」
倒した魔獣が落としたGSを拾い
SGに溜まった穢れを吸わせる
使い切ったGSはQBに向かって投げ渡した
QB「・・・」
ほむら「・・・まだ私に用があるの?」
QBは旅館に帰ろうとする私をじっと見ている
さっきのやり取りでただでさえ機嫌が悪いのに
その視線がさらに私を不快にさせた
QB「暁美ほむら・・・君は弱くなってしまったね」
中途半端ですが以上です。
続きは今夜に投稿します。
>>158の続きを投稿します。
期限を破ってばかりですみません。
一瞬、こいつが何を言っているのが理解出来なかった
ほむら「・・・撃ち殺されたいの?」
QB「自覚が無いようなら教えてあげるよ
さっきの戦いで君は魔獣を1匹
逃がしてしまってるんだよ」
ほむら「嘘」
QB「これは以前の君からは考えられない失態だ
それに魔翌力の消費も多くなっている
矢の無駄撃ちが多くなった証拠だ」
ほむら「・・・でも、杏子もゆまもそんな事言ってなかったわ」
彼女達と共闘する事はほとんど無い
でもたまにだからこそ違和感に気づきやすい筈だ
ほむら「私が弱くなっていたのなら
彼女達がまっさきに気づく筈じゃない!」
QB「それも君の強さだったんだよ。ほむら」
ほむら「・・・どういう事?」
QB「僕が見てきた魔法少女の中でも
君はトップクラスの強さを持っていた
でもそれは才能によるものではなかった」
ほむら「・・・」
QB「君の才能は良く言って中の上だ
そんな君が他の子より違っていたのは
戦いに向かう姿勢、心構えだ」
QB「死を恐れず勇敢に戦う魔法少女は数多くいる
自己犠牲も問わない魔法少女も少なからずいる
けど以前の君の様に矛盾した戦い方をする
魔法少女はまずいない」
ほむら「矛盾?」
QB「意識してなかったかも知れないけど
君の戦い方はあきらかにおかしかった
傷つけられるの目的としている様に
敵の真っ只中に飛び込み戦う
だけど自分の命を捨てようとはしない
戦って傷つく事も生き残る事も
自分の義務としてしまっていた」
ほむら「そんな事・・・」
QB「以前、君は僕にまどかと言う少女の事を話したね?」
ほむら「それが今の話とどう関係があるの」
QB「君の話だとSGの穢れが溜まったら
その少女が向かいに来てくれるんだったね」
ほむら「あっ」
QB「君はその少女との再会を
望んでいたじゃないのかい?」
ほむら「・・・でも、変じゃない!
まどかに会いたいだけなら
SGに穢れを溜め続ければ
それで済む話でしょ?」
言いながら自分の謝りに気づく
そう、私はまどかに誓ったのだ
まどかがくれたこの世界を守り続けると
だから簡単に命を投げ出す様な事は出来ない
QB「君の中でまどかという少女が
どれほど大きな存在なのか分からない
だけど君を死地に向かわせているのも
君を死地から救っているのも
間違いなくその少女が原因だ」
ほむら「じゃあ何で、巴さんや杏子は
私の戦い方のおかしさを指摘しなかったの」
QB「彼女達と共闘している時の君は
誰のフォローにも直ぐに駆けつけれる様に
常に周りを見ながら戦っていた
必然、何時もより引き気味になってしまう
普段と違う戦い方をしてると言ってもいい
君は他の魔法少女の前だと
皆が生き残る事を優先しているんだ
その理由は僕にも分からないけどね」
その理由、私には分かる
今まで何度も彼女達を死なせてしまっていた
この世界でも美樹さんを助けれなかった
だからこそもう誰にも死んで欲しくないと思っている
QB「誰よりも死を望んでいるのに
誰よりも生きようとしている
自分が傷つく事を良しとしても
仲間が傷つく事は許せない
これらの強い感情が君の強さだったんだ
けど、今の君は死を恐れている」
恐怖があるから敵の数を把握しきれていない
恐怖があるから必要以上に矢を放ってしまう
もし巴さんや杏子、ゆまが危なくなっても
身を挺して助けるのを躊躇ってしまう可能性がある
ほむら「それが、今の私・・・」
QB「今のままが嫌なら君は早急に手を打つべきだね」
ほむら「私にどうしろと?」
QB「簡単さ。あの家族と距離を置けばいい」
ほむら「何で!」
QB「あの家族と接触してから君は変わってしまった
なら元に戻るには逆をすればいいだろ?」
ほむら「・・・嫌」
QB「何故だい?以前の強さを取り戻せるんだよ」
ほむら「嫌!そんなのいらない!」
QB「それじゃあ今のまま戦い続けるかい?
それは君が恐れている死に近づく事になるんだよ?」
ほむら「消えてっ!私の目の前から今すぐに!」
QB「・・・分かったよ」
そう言うとQBは静かに去っていった
ほむら「あっ・・・」
1人になった途端急に身体が震え出した
恐怖から逃げる様に旅館に駆け戻る
ほむら「はぁ、はぁ」
音を立てない様にドアを開けて
ぐっすりと眠っている3人の顔を見る
そうすれば少しは落ち付けると思った
しかしほっと出来たのは一瞬だけ
また直ぐに身体は震え出す
ほむら「う、うぅ~」
布団に包まり頭の中の考えを必死に追い出そうとする
さっきの戦いで私は何回危ない目にあったのか
1歩間違えていたら死んでしまっていたのではないか
嫌な考えは頭から離れようとせずどんどん膨らんでいく
ほむら「嫌・・・死にたくない」
今まで気づかなかった自分の感情
無意識に抑えていたそれが止めどなく溢れ出てくる
タツヤ「ほむ姉ちゃん?」
ほむら「えっ?」
タツヤ「泣いてるの?」
布団から顔を出すと詢子さんと知久さんの間で寝ていた
タツヤ君が身体を起こして心配そうに私を見ていた
ほむら「うん。ちょっと・・・怖い夢、見ちゃって」
必死に平静を装おうとしたけど
涙声で途切れ途切れになってしまった
タツヤ「・・・そっちに行ってもいい?」
ほむら「えっ?」
タツヤ君はトコトコと私の方に来ると
タツヤ「怖い夢を見た時はこうしてもらえばいいんだよ///」
そう言って布団の上からピッタリとくっ付いてくれた
タツヤ「ハックション」
ほむら「あっ」
慌ててタツヤ君を布団の中に入れて上げる
ほむら「寒くない?」
タツヤ「うん、大丈夫。ほむ姉ちゃんはもう怖くない?」
ほむら「・・・ごめん、まだ怖いの。だから」
タツヤ君をギュッと抱きしめ泣きながら頼み込む
ほむら「今日はこうして一緒に寝てくれる?」
タツヤ「う、うん///」
ほむら「ありがとう、タツヤ君」
タツヤ君の暖かさを感じる事で私の震えはようやく納まった
ほむら「タツヤ君。私、強くなるね」
タツヤ「?」
ほむら「あなたの傍にずっといられる様に」
私が死にたくない理由
それはタツヤ君達と別れたくないからだ
だからQBの提案など了承出来る訳がない
でもこのままだといずれ魔獣に負けてしまう
ならば強くならないといけない
まどかへの誓いを守る為
もう誰も死なせない為に
タツヤ君達がくれた温かみに答える為
今回は以上です。
お休みなさい。
何時も何時も待たせてしまいすみません。
>>177の続きを投稿します。
ほむら(今まで通り・・・今まで通りすれば大丈夫)
ビルの上から瘴気の濃い場所を見つめ
そう自分に言い聞かせる
ほむら「・・・」
だけど中々1歩が踏み出せない
あの日以来、私は魔獣との戦いに
向かうのが怖くなってしまった
・・・いや、怖がっていたのを
気づいただけなのかも知れない
ほむら「・・・っ」
強くなるとタツヤ君に誓ったのだ
ここで戸惑い続ける訳にはいかない
そう再び自分に言い聞かせて
勇気を振り絞りビルから跳び出した
身体が思い通りに動いてくれない
倒しても倒しても魔獣の数は増えていく
ほむら「はぁ、はぁ」
矢はどんどん当たらなくなり
勢いを増す敵に次第に追い詰められてしまう
ほむら「くっ」
翼を出し一旦空に逃げる・・・しかし
ほむら「そんな」
魔翌力で作られた翼はボロボロと欠けていき
遂には霧散してしまった
翼を失った私は魔獣の群れの中に
真っ逆さまと落ちていく
ほむら「嫌・・・嫌ぁぁぁぁ!!」
ほむら「ハッ!?・・・夢?」
ベットから飛び起き自分の身体を確認する
取り合えずどこにも異常は見当たらない
ほむら「昨日は・・・」
心を落ち着かせようと昨日の事を思い返す
戦いが終わった後震えながらマンションに帰り
シャワーも浴びず直ぐ布団に包まった
だけど恐怖は収まらず朝まで振るえ続けていた
ほむら「嫌・・・そんなの嫌」
今回見た夢は何時か現実になるのかも知れない
しかし私には再び震え始めた身体を抱きしめながら
必死にその結末を否定する事しか出来なかった
こんな毎日が続いたからだろう
夏休みもあと少しとなった頃
私は体調を崩してしまった
詢子「本当に1人で大丈夫?」
電話の向こうから私を心配する
詢子さんの優しい声が聞こえてくる
今ほど彼女達に会ってその優しさに
甘えたいと思った事はない
ほむら「・・・はい、大丈夫です
皆さんにうつすわけにもいきませんから」
でも今は彼女達に会えない
会えばもう1人に戻れなくなる
戦いに向かう事も出来なくなる
それはまどかとの約束を破る事に繋がる
詢子「そう・・・何かあったら電話してね。直ぐに行くから」
ほむら「はい、ご心配をかけてすみません」
何度も断りを入れてようやく詢子さんはおれてくれた
ほむら「これで、良かったのよ」
電話を切った後寂しさを誤魔化す様にそう呟いてしまう
私はもう1度あそこに行ける様になるのだろうか
ほむら「・・・弱気になってたら駄目ね」
彼女達に早く会う為にも強くなろう
そう思いながら今夜に備えて眠りについた
目を覚ますと日は暮れていたが
まだ戦いに向かうには早い時間だった
シャワーを浴び頭をすっきりさせる
ほむら(怖い夢は見なかったし、大丈夫)
服を着て鏡の前で自分の顔を確認する
と、背後にQBがいるのに気づく
ほむら「何の用?」
QB「その様子だとまだ戦いに向かうのが怖いみたいだね」
ほむら「余計なお世話よ。冷やかしに来たのなら帰って」
QB「そんなつもりで来たんじゃないよ
君に連絡があって」
QBの言葉を遮る様に携帯電話が鳴った
相手は詢子さんからだった
ほむら「もしもし」
詢子「ほむらちゃん?急にごめんね。タツヤそっちにいる?」
ほむら「え?」
昼の時と違い焦っている詢子さんの声
それだけで今大変な事が起きているのを理解した
詢子「あっ・・・ごめんね、休んでたのに。じゃお休み」
ほむら「待ってください!タツヤ君がどうかしたんですか?」
詢子「いや、その、何でも」
ほむら「いなくなったんですか?」
詢子「う、うん」
ほむら「やっぱり・・・私も捜すの手伝います」
詢子「いや、大丈夫だよ。ほむらちゃんだって体調悪いんだし」
ほむら「でも、私のせいで」
本当は今日、鹿目家に泊まりに行く予定だった
だけど私の都合でそれが流れてしまった
タツヤ君は寂しさと私が心配になって
お見舞いに行こうとしてしまったのだろう
詢子「ほむらちゃんのせいじゃないって」
ほむら「でも、でも」
私がのん気に寝ている時も詢子さんと知久さんは
必死にタツヤ君を捜し続けていた筈
そんな2人にとって私への電話は最後の望みだった
その望みが無くなってしまったのに
まだ私を心配をしてくれている
ほむら「私の身体の事なら心配いりません
だから手伝わせて下さい!」
詢子「・・・ありがとう、助かる」
その声は涙で震えていた
詢子さんもギリギリだったのだろう
どの辺りを捜しているのかを教えてもらい
2人と違う場所に向かう事にする
QB「電話は終わったかい?」
ほむら「今は貴方に構ってる時間は無いの」
QB「君にとっては悪くない話だと思うんだけど」
ほむら「いいから消え・・・」
ふと疑問に思う
こいつは何を伝えにここに来たのか
ほむら「・・・何?簡潔に話して」
QB「鹿目タツヤの事さ
ここに来ようと思ってたみたいだけど
途中で道を間違えて迷子になってる」
ほむら「!、タツヤ君がどこにいるのか知ってるの?」
QB「うん」
ほむら「教えて!お願い」
QB「・・・彼の事となると君は目の色を変えるんだね」
ほむら「いいから、教えて」
QB「分かった。付いて来て」
QBに案内されたのはマンションから
少し離れた所にある公園
しかしそこにタツヤ君はいなかった
QB「おかしいな~。ここのベンチにいた筈なんだけど」
ほむら「タツヤ君」
これで本当に手がかりが無くなってしまった
途方に暮れかけた時
タツヤ「ほむ姉ちゃん!」
泣きながら叫ぶタツヤ君の声が聞こえた
振り返ると彼が私の方へ駆け寄っていた
ほむら「あっ」
途中でこけてしまったタツヤ君に
私も駆け寄り抱き起こす
ほむら「もう、勝手に家を出ちゃ駄目でしょ!」
タツヤ「ごめんなさ~い」
ほむら「詢子さんも知久さんも心配してたのよ!」
タツヤ「ごめんなさ~い」
泣きながら叱る私と泣きながら謝るタツヤ君
ほむら「でも、良かった。無事で」
強く優しくタツヤ君を抱きしめる
あと少し遅れていたら見つけられなかった
もう直ぐ魔獣が出てくる時間帯なのに
ほむら「タツヤ君、もうこんな事しないでね」
タツヤ「うん」
ほむら「約束よ」
タツヤ「うん」
泣き止んだタツヤ君をおぶって鹿目家に向かう
詢子さんと知久さんには連絡してあるので
2人も直ぐに戻って待っている筈だ
ほむら「・・・」
タツヤ君は私の背中で静かに寝ている
疲れと安堵で一気に眠気が来たのだろう
それだけで彼がどれだけ怖かったか想像がつく
彼だって始めから1人で町に出る事が
これだけ怖い事だと分かっていた筈だ
それでも私を心配して勇気を振り絞り町へ出た
ほむら「ごめんね、タツヤ君。私が弱いせいで
背中から感じるタツヤ君の温かみ
それが今日消えていたのかも知れない
そう思うとその原因を作った自分が許せない
タツヤ「ほむ、姉ちゃん?」
ほむら「ん?起きちゃった?」
タツヤ「・・・ほむ姉ちゃんは強くなんなくていいよ」
ほむら「え?」
タツヤ「僕が強くなってほむ姉ちゃんを守るから
だからほむ姉ちゃんは無理しないで」
ほむら「・・・ありがとう。でもねタツヤ君はもう十分強いんだよ」
タツヤ「そんな事ないよ」
ほむら「ホントだよ。だからその勇気少し分けて貰うね」
そう言ってほっぺにキスをする
タツヤ「あ、あの///」
ほむら「これでもう大丈夫。私、タツヤ君のお陰で強くなれたよ」
タツヤ君は私に勇気を見せてくれた
今度こそ私はそれに答えないといけない
ほむら「ほらお家が見えてきたよ。覚悟は出来てる?」
タツヤ「え?」
ほむら「詢子さんも知久さんも心配してたんだよ
だからす今すっごく怒ってるよ~」
タツヤ「こ、怖くないもん。僕もほむ姉ちゃんに勇気貰ったから」
ほむら「うん、なら大丈夫だね」
遂さっきまで2人とも泣いていたのに
今では笑い合っていた
ほむら(ようやく気づいた。私はタツヤ君の事が好きだ)
親友の弟としてではなく
お世話になっている人達の子としてでもなく
もっと特別な存在として愛している
ほむら(・・・ちょっと早過ぎだよね)
だからこの気持ちは一旦心の奥にしまう
もしタツヤ君が大きくなっても
私を思い続けてくれていたら
その時はこの気持ちを正直に伝えよう
だから今は今まで通り大切な家族として
彼の成長を見続けたい
ほむら「私、頑張るね」
誰に対して言ったのかそう呟いてしまった
今回は以上です。
次回は時間が飛んで数年後となります。
保守
あの誓いから2年の月日が流れた
結局、私の強さは元には戻らなかった
悪夢にうなされる事は無くなったけど
今でも魔獣と戦うのが少し怖い
だけど後悔はしていない
代わりに大切なものを得たのだから
仁美「昨日はどうでした?」
ほむら「?」
仁美「もう隠さないで下さいよ
昨日の放課後に告白されたんですよね」
ほむら「ああ。丁重にお断りさせてもらったわ」
仁美「そうなんですか・・・」
ほむら「何で志筑さんが残念そうな顔をするのよ」
仁美「ああ、何時になったら暁美さんの御眼鏡に適う
殿方が現れるのかしら」
ほむら「別に選り好みをしてる訳じゃ」
仁美「でも去年からずっと断り続けてるじゃないですか」
ほむら「まぁ・・・そうだけど」
仁美「今でも卒業式の事は鮮明に思い出せますわ
誰もが別れを悲しみ泣いている方もいる中で
凛とした表情を崩さなかった暁美さん
だけど1人でお手洗いに行った時に
声を殺して泣いていた暁美さん」
ほむら「ちょっ何思い出してるのよ!って言うか見てたの?」
仁美「えぇ。それに皆さん気づいていましたよ
帰って来た時の暁美さんの目
ウサギさんの様に真っ赤でしたから」
ほむら「そ、そう」
今更だけどもの凄く恥ずかしくなってきた
仁美「あの暁美さんのギャップに当てられた
多くの方々が告白を決心したのは
あまりにも有名な話」
ほむら「・・・それ、初耳なんだけど?」
卒業式が終わった後に沢山告白されたのは
そういう理由があったのか
仁美「けれど誰も暁美さんのハートを
射止める事は出来なかった」
ほむら「あの、志筑さん?」
仁美「まさに高値の花!天の上の存在!」
ほむら「・・・」
こういう時の志筑さんは厄介だ
人の話を聞かず勝手に暴走していく
・・・何となくだけど志筑さんと美樹さんが
仲良くなれた理由が分かった気がする
仁美「ハッ!まさか暁美さん、誰かに恋をしているのでは?」
ほむら「へ?」
仁美「しかもその恋は障害の大きいものとお見受けしますわ」
ほむら「いや、別に、そんな事は・・・」
仁美「・・・どうやら図星みたいですね
さぁ教えて下さい。どんな方なんですの?」
ほむら「もう、早く行かないと遅刻するわよ」
仁美「あっ、待って下さい。暁美さ~ん」
それから志筑さんは1日中
同じ質問を私に繰り返してきた
どうやら彼女は何度否定されても
自分の勘を疑わなかったようだ
ほむら「はぁ」
杏子「なにしけた面してんだ」
紅茶を飲みながら杏子が聞いてくる
彼女は時々バイト先で余った物を買い取り
こうしてお土産として持って来てくれる
・・・殆ど自分で食べてしまっているが
ほむら「持って来たお土産を自分で食べてる人には
一生縁の無い事よ」
杏子「いいだろ。私の金で買ったんだから」
ゆま「杏子、これは多分恋の悩みだよ」
ほむら「いや、そんなんじゃなくて」
ゆま「ふっふ~ん、ゆまの目は誤魔化せないよ
クラスに好きな人が出来たんでしょ?」
杏子「それはお前の事だろ」
ほむら「え?そうなの」
ゆま「へ、変な事言わないでよ、杏子」
杏子「変な事のもんか。こないだだって
そいつの隣の席になれたって
はしゃいでたじゃねぇか」
ゆま「わ~バカバカ、杏子のバカ~///」
顔を真っ赤にしたゆまは杏子をポカポカと叩きだす
その様子を見るにどうやら図星のようだ
杏子「分かった分かった。私が悪かったよ」
ゆま「む~、絶対反省してないでしょ」
杏子「してるしてる。え~っと確か名前は・・・」
ゆま「わ~///」
なおもバラそうとする杏子と
その口を必死に押さえようとするゆま
ここはゆまを助けてあげようかな
ほむら「ゆま、杏子は貴方が取られるんじゃ
ないかと思って嫉妬してるのよ
だから許して上げてね」
杏子「バッ、私は別に」
ゆま「なぁんだそうなんだ~
大丈夫、ゆまは杏子も大好きだよ」
杏子「・・・ふん」
照れ隠しに杏子はゆまの髪をワシャワシャと撫でる
そんな2人の様子は仲の良い姉妹の様だ
ほむら「そういえば2人は最近巴さんに会ってる?」
杏子「全然」
ゆま「最近忙しそうだもんね」
巴さんは最近TVや雑誌に出るようになってきた
会えないのは寂しいけど彼女が頑張ってる姿が
見られるようになったのは嬉しい事だ
杏子「あいつ魔獣狩りとかちゃんと出来てんのかな?」
ほむら「ストレス発散に丁度良いって前に言ってたわ」
その事は私も心配になってたので
電話で聞いた事がある
杏子「・・・1人が寂しくて泣いたりしてるかもな」
ほむら「・・・そうかも知れないわね
でも、私達から会いに行くのは
やっぱり失礼だと思うわ」
巴さんは私達以上に会いたい筈なのだ
それを堪えて頑張っているのだから
私達も我慢しなくてはいけない
杏子「分かってるよ」
ゆま「うん。ゆまも我慢する」
ちょっとしんみりした空気になった時
私の携帯が鳴った
ほむら「巴さんからだわ。もしもし」
マミ「久しぶり、元気にしてる?」
ほむら「はい、おかげさまで。巴さんの方は?」
マミ「う、うん。元気よ」
ほむら「今丁度、杏子とゆまが家に来てて
巴さんの話をしてた所なんですよ」
マミ「そ、そうなんだ。へぇ~そうか。3人で。へぇ~」
・・・あれ?もしかして
ほむら「・・・巴さん、寂しくなりましたか?」
マミ「そ、そんな事無いわ
ただ皆が元気かどうか気になって
・・・うん・・・寂しいの」
その言葉を聞いて思わず笑ってしまった
マミ「もう、笑うなんて酷いわ」
ほむら「ごめんなさい。実は私達もさっきまで
巴さんに会いたいって話してたんで、つい」
マミ「へ?そうなの?」
ほむら「はい。だから巴さんの都合がいい日を教えて下さい
その日に皆で集まってお茶会をしましょう」
マミ「じゃあ今週、今週の休みにそっちに行ってもいい?」
ほむら「はい」
子供の様にはしゃぐ巴さんにまた笑いそうになる
杏子「おい、マミは何て?」
ほむら「土日にこっちに来るそうよ
巴さんも我慢の限界だったみたい」
ゆま「やったー」
杏子「ふん、何だよマミの奴。ちょっと代わってくれ」
悪態をつきながらも杏子は嬉しそうに巴さんと話出す
ゆま「ねぇ杏子、早く代わってよ~」
マミ「大丈夫よゆまちゃん、私は逃げないから」
杏子「けっ良く言うよ」
離れていてもこうして気持ちは繋がっている
その事が堪らなく嬉しかった
詢子「へぇ~そんな事があったんだ
いいなぁ~そういうの」
タツヤ「・・・」
詢子「なに拗ねてんだよ」
タツヤ「・・・別に」
ほむら「ごめんねタツヤ。そうだ貴方も家に来る?」
タツヤ「いい」
知久「こら、暁美さんが困ってるじゃないか
いい加減にしないと父さんも怒るぞ」
叱られそうになったタツヤは自室に戻ってしまった
ほむら「すみませんでした。急に無理言って」
詢子「謝んなくていいよ
映画は来週もまだやってんだし
中々会えない先輩なんだろ?
そっちを優先しないとね」
ホントは今週の日曜日に皆で
映画を見に行く予定だった
それが流れてしまいタツヤは
不機嫌になってしまったのだ
詢子「んじゃ時間も時間だしそろそろ送ってくよ」
ほむら「でも」
知久「タツヤなら大丈夫だよ
一晩寝れば機嫌も直るさ」
ほむら「・・・私、やっぱりもう1度タツヤに謝ってきます
ほむら「タツヤ、入るわよ」
ノックして聞いてみる返事は無い
だけど鍵はかかってないので
ホントは入って欲しい筈だ
ほむら「ホントにごめんね
タツヤはずっと楽しみにしてたのに」
タツヤ「・・・」
布団を被ってたタツヤがもそもそと顔を出した
頬を膨らませてムスッとし表情だった
タツヤ「・・・ほむ姉は楽しみじゃなかったの?」
ほむら「勿論、楽しみにしてたわ
でも映画は来週もやってるから
いいかなって思っちゃったの」
タツヤ「ホントに?ホントに楽しみにしてた?」
ほむら「うん、ホントよ」
タツヤ「じ、じゃあさ、い、今から2人で見に行こうよ///」
ほむら「え?」
タツヤ「この時間でもまだやってる筈だし
ほむ姉が帰る時は父さんも見送るから
その隙に僕が裏からこっそり出て
後で合流してさ・・・」
顔を真っ赤にしながらタツヤはそんな提案をする
デートに誘われたみたいでちょっと嬉しい
ほむら「えぇいいわよ」
タツヤ「ホント!」
私の返事を聞いたタツヤの顔は明るくなる
ほむら「でもタツヤは大丈夫?
夜に外に出るの怖いんでしょ?」
タツヤ「こ、怖くないもん」
迷子になってからタツヤは夜や暗い所を
怖がる様になってしまったのだ
ほむら「うん、なら大丈夫ね
じゃあ私は帰ったふりをするから
公園で待っててね」
タツヤ「う、うん///」
ほむら「じゃあまた後でね」
そう言って部屋を出ると詢子さんが
ニヤ~っとした表情で立っていた
詢子「何?逢引?」
ほむら「そ、そんなんじゃ」
詢子「冗談冗談。んじゃ知久にも言っとくよ
2人は私達に隠れてデートするって」
ほむら「ちょっ詢子さん」
詢子「タツヤをよろしくね~」
小声でそう言いながら詢子さんは降りていく
ほむら「もう」
詢子さんにはからかわれっぱなしだけど
不思議と悪い気分にはならない
これは彼女の人徳のなせる業だと思う
詢子さんと帰ったふりをして
タツヤの待つ公園に向かう時
ほむら「・・・ホントに幸せだわ」
そんな事を口に出してしまった
こんな優しい日々が続いてるから
私はどんな恐怖にも打勝つ事が出来るのだ
ほむら「まどか、ありがとう」
この世界をくれた最高の友達にお礼を言い
不安そうにベンチに腰掛けてるタツヤに駆け寄った
今回は以上です。
次回はタツヤ視点の話になります。
>>227の続きを投稿します。
ちなみにほむほむは現在高校2年生で
たっくんは6歳のつもりです。
タツヤ「お父さん、おはよう」
知久「おはよう、タツヤ。今日は早いね」
タツヤ「えへへ」
今日は1週間で1番好きな金曜日
早く今日になって欲しかったから
昨日は何時もより早く寝たし
目覚まし時計も早めにセットしたのだ
タツヤ「ねぇ早く牛乳頂戴」
知久「はいはい」
朝起きたら牛乳をコップ1杯飲むと
背が高くなるってお母さんが言ってたのだ
知久「はい、ゆっくり飲むんだよ」
手渡されたコップの中身を
こぼさない様にゆっくりと飲む
知久「美味しい?」
タツヤ「うん、美味しい」
1番最初に牛乳を飲んだ時は
半分くらい残しちゃったけど
今は全部飲める様になった
タツヤ「ごちそうさま」
知久「直ぐ朝ごはん作るからその間に
お母さんを起こしてきてくれるかい」
タツヤ「うん」
タツヤ「お母さん起きてぇ」
布団に包まっているお母さんに乗っかって
揺すってみるがいつも通り効果は無い
しばらく繰り返した後チラッとドアの方を見る
タツヤ「・・・?」
別にドアに何かがある訳じゃないけど
何時もなんとなくドアの方を見てしまうのだ
タツヤ「よ~し」
気合を入れてベットから飛び降り
カーテンを一気に開ける
眩しいくらいの光が部屋に入ってきた
タツヤ「ほら、起きてぇ~」
1人だと布団を取る事は出来ないので
下から少しずつ捲っていく
詢子「う、う~ん・・・おはよう、タツヤ」
タツヤ「おはよう、お母さん」
目を擦りながらお母さんは僕を見ると
詢子「・・・タツヤは優しく
起こしてくれるから大好き~」
そう言って引き寄せほっぺにキスをしてきた
タツヤ「や、やめてよ。恥ずかしいよ」
詢子「なんだよぅ、誰も見てないだろ~」
タツヤ「それでも嫌なの」
詢子「そんな寂しい事言うなよぅ」
お母さんから離れようと抵抗したけど
逃げられず顔中にキスをされてしまった
タツヤ「も~」
詢子「そんな怒るなよぅ、親子の触れ合いだろ」
知久「昔は嫌がらなかったのにね
ママがキスしてくれなかったって
怒った事もあったのに」
タツヤ「ママ?」
知久「そうだよ。タツヤは昔お母さんとお父さんを
ママとパパって呼んでたんだよ」
言われてみればそんな気がしてくる
だけど何時までそう呼んでたかは思い出せない
タツヤ「・・・昔って何時?」
知久「そう言えば何時から変わったんだっけ?」
詢子「え?そうりゃあ・・・覚えてないや」
もしかしたら漫画かアニメのキャラクターの
真似をしていただけなのかもしれないなぁ
今日ほむ姉にも聞いてみよう
幼稚園が終わって家に帰ると黒猫が
玄関の前をウロウロしていた
タツヤ「エイミー!」
撫でてやろうと近づくが逃げられてしまう
タツヤ「む~、ほむ姉はまだ来てないから
遊んであげようと思ったのに」
エイミーは野良猫だけどほむ姉に懐いてる
マンションにも餌を貰いに来る事があるらしい
タツヤ「そんな態度取るならほむ姉が来ても
家に上げてやんないぞ~」
脅してみたがエイミーは欠伸をするだけで
まるで話を聞いてくれない
知久「タツヤ、暁美さんから連絡があって
今日は来るのが少し遅れるんだって」
タツヤ「え?」
知久「用事がすんだら直ぐに行くから
心配しないでってさ」
タツヤ「うん、分かった」
ちょっと遅れるぐらい構わない
なんたって明日も明後日も
ほむ姉は家に居るんだもん
タツヤ「だからわがまま言っちゃ駄目だぞ」
エイミーにそう言って捕まえようとしたけど
また逃げられてしまった
ほむら「お邪魔しま~す」
タツヤ「ほむ姉だ!」
晩御飯を作るのを手伝ってると
玄関の方からほむ姉が声が聞こえてきた
知久「いらっしゃい、暁美さん
詢子さんももう直ぐ帰ってくるから
それまで待っといてもらえるかな」
タツヤ「ほむ姉、今日は僕も手伝ったんだよ」
ほむら「そうなんだ。えらいねタツヤ」
タツヤ「えへへ。ねぇ日曜日は映画見に行くけど
明日もどっかにお出かけしようよ」
ほむら「あ・・・その事なんだけど」
タツヤ「?」
詢子「へぇ~そんな事があったんだ
いいなぁ~そういうの」
お母さんとお父さんは
ほむ姉の話を聞いて笑ってる
でも僕はちっとも楽しくない
詢子「なに拗ねてんだよ」
タツヤ「・・・別に」
ほむら「ごめんねタツヤ。そうだ貴方も家に来る?」
タツヤ「いい」
僕はほむ姉と一緒に映画を見たかった
だからお茶会になんて行きたくない
知久「こら、暁美さんが困ってるじゃないか
いい加減にしないと父さんも怒るぞ」
お父さんに言われほむ姉の顔を見る
申し訳無さそうな顔をしていて
遂、謝ってしまいそうになる
タツヤ「・・・」
その場に居辛くなって自分の部屋に逃げた
だって悪いのはほむ姉の方だもん
タツヤ「ほむ姉のバカ」
ドアを閉めて誰にも聞こえない様に叫ぶ
そのまま鍵をかけたけど寂しくなって
音を立てない様に外してしまった
タツヤ「ほむ姉が悪いんだ、ほむ姉が」
布団に包まって何度も文句を言った
でも気分は晴れず空しいだけだった
しばらくするとほむ姉がノックして部屋に入ってきた
ほむら「ホントにごめんね
タツヤはずっと楽しみにしてたのに」
タツヤ「・・・」
謝ったって許せないものは許せない
でも確かめたい事があったから
布団から顔を出してほむ姉を見る
タツヤ「・・・ほむ姉は楽しみじゃなかったの?」
ほむら「勿論、楽しみにしてたわ
でも映画は来週もやってるから
いいかなって思っちゃったの」
タツヤ「ホントに?ホントに楽しみにしてた?」
ほむら「うん、ホントよ」
その言葉を聞いてちょっと安心出来た
でもまだほむ姉を許せない
タツヤ「じ、じゃあさ、い、今から2人で見に行こうよ///」
ほむら「え?」
タツヤ「この時間でもまだやってる筈だし
ほむ姉が帰る時は父さんも見送るから
その隙に僕が裏からこっそり出て
後で合流してさ・・・」
だんだん恥ずかしくなってきて最後の方は
聞こえてなかったのかも知れない
でも言えた、ほむ姉を映画に誘えた
ほむら「えぇいいわよ」
タツヤ「ホント!」
ほむ姉も楽しみにしてくれてた事
今からほむ姉と2人で映画見れる事
そのどっちもが嬉しかった
ほむら「でもタツヤは大丈夫?
夜に外に出るの怖いんでしょ?」
タツヤ「こ、怖くないもん」
ホントは暗い所に1人で行くのは怖いけど
ほむ姉にかっこ悪いと思われるのが嫌だから
この事は秘密にしてある
ほむら「うん、なら大丈夫ね
じゃあ私は帰ったふりをするから
公園で待っててね」
タツヤ「う、うん///」
ほむら「じゃあまた後でね」
そう言ってほむ姉は部屋の外に出た
タツヤ「急がなきゃ」
お父さんとお母さんにバレたら
絶対に行かせてくれない
だから急いで準備しないと
先ずは貯金箱を開けて中身を
全部お財布の中に入れた
次に宝箱に入れてある
ちっちゃい頃ほむ姉に貰った
リボンをポケットに入れる
ほむ姉は今日もリボンを着けてたから
これを持ってけばおそろいになるのだ
タツヤ(良し、大丈夫そうだ)
お父さんとお母さんが玄関に行ってる事を
確認して裏口のドアを開ける
タツヤ「あっ!」
裏口にはお父さんやお母さんが使う
大きいスリッパしか置いてなく
僕が履けそうな物が無かった
タツヤ(どうしよ、どうしよ)
早くしないとお父さんとお母さんが戻ってきちゃう
タツヤ(エイミー!)
なんとエイミーが僕の靴を片方だけ銜えて
持って来てくれたのだ
タツヤ「ありがとう、エイミー」
靴を受け取り撫でてやる
今度は逃げない所をみるとエイミーも
褒めて貰いたかったみたいだ
でも、片方だけじゃ歩けない
取り合えず片方だけでも履いて
けんけんで外に出る
タツヤ「エイミー、もう片方も取ってきてくれない?」
エイミーに頼むと何だかめんどくさそうな顔をした
タツヤ「頼むよ、お願~い」
両手を合わせてもう1度頼むと
エイミーはゆっくりと玄関の方に戻り
もう片方の靴も持って来てくれた
タツヤ「凄い、お前は天才だよ」
でも何でエイミーは靴を持って来てくれたんだろ?
2回目はともかく最初は頼んでなかったのに
タツヤ「ま、いっか」
それより早く公園に行かないと
公園にはまだほむ姉は来てなかった
外灯に照らされているベンチに座って
ほむ姉が来るのを待つ事にした
タツヤ(うぅ~怖いよ~)
怖がってる所をほむ姉には見られたくない
でも周りが暗く隠れれそうな所が沢山あるので
何かが飛び出してきそうで怖いのだ
タツヤ「・・・」
ポケットからリボンを取り出す
このリボンを持っていると不安が少し和らぐ
なぜなら昔、このリボンに助けられた事があるのだ
ほむ姉のお見舞いに行こうとして迷子になった時だ
あの時も不安で仕方なくてずっと握ってたけど
公園を出た後何時の間にか無くなってしまってた
泣きながら来た道を引き返し公園に戻ると
そこで僕を捜してくれてたほむ姉に会えた
嬉しくて安心してもっと泣いちゃった
そしてすっかりリボンの事を忘れてしまい
次の日の朝に思い出してまた泣いちゃった
しかし無くしてしまったというのは
僕の勘違いでちゃんとポケットの中に入ってた
タツヤ「・・・あの時はありがとね」
あの勘違いがあったからほむ姉に
見つけてもらう事が出来た
ほむ姉がくれた僕の宝物のリボン
でも、何でだろう?
何か大切な事を忘れてるような・・・
タツヤ「あ!ほむ姉」
ほむら「お待たせ。怖くなかった?」
タツヤ「へ、平気だって言っただろ。それより早く行こ」
ほむら「うん」
タツヤ「・・・ねぇほむ姉」
ほむら「何?」
タツヤ「・・・な、なんでもない///」
デートみたいだねって言おうと思ったけど
恥ずかしくて言えなかった
ほむら「ふふっ。何だかデートみたいだね」
タツヤ「ふぇ!?・・・う、うん///」
ほむ姉も僕と同じ事を考えてくれてた
それがまた凄く嬉しかった
今回は以上です。
ちなみにエイミーが靴を持って来てくれたのは
ほむほむが頼んだからです。
後でちゃんとお礼も貰ってます。
キタ━(゚∀゚)━!
ほむらさん高校二年生ですか、グヘヘ
仁美と同じ高校に進んだのか?
仁美「ねぇ聞いてくださいよ暁美さん
私、今度という今度はもう許せませんわ!」
志筑さんは何10回と聞いた事のあるセリフを
言いながら私の席に近づいて来る
ほむら「・・・今度は上条さんが何をしたの?」
仁美「見てくださいよこれ!」
そう言って彼女が見せてきたのは
グラビア雑誌だった
ほむら「これは?」
仁美「上条さんが隠し持ってた物です
こんな物を学校にまで持って来るなんて
酷いと思いません?」
ほむら「・・・確かにこれは酷いわね」
仁美「しかも彼、これは友達が
無理やり押し付けてきた物で
自分のじゃないって言うんですよ
そんなの嘘に決まってますわ!」
ほむら「・・・」
上条さんが自分でこんな雑誌を
買う様な人には見えないから
友達から借りたと言うのは本当だと思う
だけど無理やりと言うのは嘘な気がする
雑誌に載っているグラビアアイドルは
活発で元気いっぱいと言った感じの娘で
どことなく美樹さんに似ているのだ
多分彼の方から頼んで借りたんだろう
ほむら「でもまぁ、このぐらいなら許してあげたら?」
仁美「いいえ、絶対に許しません!
だってこの方は・・・」
どうやら志筑さんも雑誌の娘が
美樹さんに似ていると感じてるようだ
だから余計に怒ってるのだろう
恭介「あの、志筑さん」
仁美「・・・ふん」
謝りに来たであろう上条さんを無視して
志筑さんは自分の席に戻ろうとする
恭介「待ってくれ。その・・・嘘付いてごめん」
仁美「・・・」
恭介「この雑誌の娘がさやかに似てる気がして
それで遂、借りてしまったんだ」
仁美「上条さんはこういう方が好みなんですね
よく分かりましたわ」
恭介「違う・・・いや確かに一瞬だけだけど
さやかを重ねてしまったのは本当だ
でも今は凄く悪い事をしたと思ってる」
仁美「それはさやかさんに対してですよね?」
恭介「さやかに対してだけじゃない
志筑さんに対してもさ」
仁美「・・・口だけでは何とでも言えますわ」
恭介「志筑さん、ごめん」
仁美「!・・・そんな急に抱きしめても///」
恭介「僕が悪かった。どんな罰でも受ける
だから・・・」
仁美「・・・放課後、私をエスコートして下さい」
恭介「え?」
仁美「もし私を満足させれたら許してあげます」
恭介「・・・分かった。久しぶりだね、放課後のデートは」
仁美「デ、デートじゃありません///これは罰です」
恭介「うん、そうだったね」
ほむら「・・・2人とも、そういうのは
どこか別の場所でしてくれる?」
いちゃいちゃするのは勝手だが
それを見せ付けられているこっちはいい迷惑だ
恭介「志筑さん」
仁美「上条さん」
ほむら「・・・」
しかし2人は完全に自分達だけの
世界に入っていて聞く耳を持たない
だけど偶然なのか肩を抱き合って
どこかへ行ってくれた
ほむら「はぁ」
あの2人にはいい加減学習して欲しい
今までも似たような事が何10回もあったのだ
志筑さんが不安なのは分かる
以前、彼女は私にこう語った
仁美「上条さんは私を忘れる事はあっても
さやかさんを忘れる事は無いんです
それが・・・凄く辛いです」
上条さんは志筑さんを愛してる
でもそれは未来永劫なのかは分からない
逆に彼の美樹さんへの想いは決して変わらない
だから些細な事で嫉妬してしまうのだ
ほむら(何度も大丈夫って言ってるんだけどなぁ)
ふとある事に気づいて視線を落とす
そこにはグラビア雑誌が置いてあった
ほむら「はぁ」
もう1度深いため息を付いてしまった
ほむら「どうしよう・・・これ」
鞄からグラビア雑誌を取り出してぼやく
せっかく仲直りした2人の所に
これを持って行く訳にもいかず
さりとて元の持ち主も分からないので
結局家に持って帰ってしまったのだ
ほむら「・・・私と同い年」
改めてよく見ると表紙には
載っている娘の名前と年齢も書いてあった
ほむら「・・・」
自分の胸をポンポンと触ってみる
中学生の時から体格は殆ど変わってない
当然、胸の方も小さいままだ
ほむら「こ、これは持病のせいよ」
遂、言い訳を口にしてしまった
ほむら「そうよ、別に見せる相手が
いる訳じゃないんだし
このままでも問題無いわ」
でも少し悔しいのも事実だ
ほむら「・・・牛乳あったかしら」
巴さんやこの雑誌の娘とまでは言わない
それでも人並みの大きさは欲しかった
同い年の志筑さんや杏子は背も伸びて
女性らしい身体つきになっているのに
私だけが取り残されてる様で寂しい
ほむら(詢子さんに相談してみようかな)
詢子さんは会った時とまったく変わらず
あのスタイルを維持している
少なくとも何もしないよりは良い筈だ
ほむら(よし、今度聞いてみよう)
詢子「スタイル維持の秘訣?」
ほむら「はい。何か特別な事をされてるのかと思いまして」
金曜日、タツヤと知久さんが
お風呂に入っている間に
こっそりと詢子さんに聞いてみる
詢子「う~ん、特に変わった事はしてないかな」
ほむら「・・・そうですか」
そもそもよく考えてみればここ数年
週末は殆どこの家に泊めさせて貰ってるのだ
もし詢子さんが特別な事をしていたら
その時に気付いてる筈だ
ほむら「じゃ、じゃあ」
詢子「気にする必要は無いよ」
ほむら「え?」
詢子「ほむらちゃんの歳だとよく自分を
周りの娘と比べてしまうけどさ
それって結局意味の無い事じゃん?
ほむらちゃんにはほむらちゃんの
良いとこがあるんだからさ」
少し話しただけなのに見事に
私の悩みを当てられてしまった
ほむら「でも、やっぱり・・・」
詢子「ま、若い時はそれでいいのかもね
皆そうやって悩んだり色々試したりして
成功と失敗を繰り返しながら
大人になっていくんだもん」
ほむら「・・・詢子さんもそうだったんですか?」
詢子「自慢じゃないが失敗した数なら誰にも負けないよ」
グラスを傾けながら詢子さんはニコッと笑う
詢子「手始めに1杯どうだい?」
ほむら「でも、アルコールは」
身体の成長を阻害するから子供は飲まない方が良い筈
詢子「そんなのホントかどうか分かんないだろ?
よその国だと子供でも酒飲んでるんだし
・・・まぁ、楽しみは取っておくか」
ほむら「楽しみ?」
詢子「私、自分の子供と一緒に飲むのが夢なんだ
タツヤはまだまだちっさいけど
ほむらちゃんは後3年でOKだからね」
詢子さんは私を本当の娘の様に思ってくれている
結局私の悩みは解決しなかったけど
この言葉を聞けただけでも良かったのかも知れない
タツヤ「あがったよ~」
お風呂からあがったタツヤが髪も乾かさず
リビングに戻ってアイスを取り出そうとする
知久「こら、アイスは髪を乾かした後」
タツヤ「え~」
知久「え~じゃない」
頬を膨らませたタツヤが知久さんに
連れられてお風呂場に戻ろうとした時
詢子「あっそうだ、特別な事してたわ
タツヤ、おいで」
ほむら「?」
タツヤ「?・・・何、お母さん」
タツヤは状況が分からず
不思議そうな顔で詢子さんに近づく
っといきなり抱きしめられて
思いっきりキスをされた
タツヤ「ふぇ!?」
詢子「ふぅ。こんな風に若さを補給してんの
どう?ほむらちゃんもやっとく?」
ほむら「え・・・」
タツヤと顔を見合わせる
彼は耳まで真っ赤になっていた
タツヤ「~~~~~っ///」
真っ赤になった顔を隠しながら
タツヤはお風呂場に逃げてしまう
詢子「たっく、せっかくのチャンスだったのに」
ほむら「もう、からかわないで下さいよ///」
詢子さんの冗談なのか本気なのか分からない
言葉に私の方も照れてしまった
今回は以上です。
最近はお風呂あがりにビールを飲むかアイスを食べるか迷ってしまいます。
また遅れてすみません。
>>260の続きを投稿します。
ほむら(・・・まだかしら)
何時もなら帰りのHRが終わってる時間
しかし担任の先生が来てないので
まだ始まってすらいない
別に早く帰りたい訳ではないが
待たされるのはあんまり好きではない
仁美「暁美さん、これ見て下さい」
そう言って志筑さんは後輩から
届いたメールを楽しそうに見せてくる
ほむら「・・・うちの高校に不良が来てる?」
仁美「そうなんです!何でもバイクで
敷地内を走り回ってたんだとか
一体どんな方なんでしょうね」
ほむら「それってそんなに楽しい事なの?」
仁美「暁美さんは気になりません?
先生方に見つかるのを承知で乗り込む勇気
一体何がその方を突き動かしているのか
友情?愛?それともそれらとは別の何か?
ああ、気になって仕方ありませんわ」
どうやらこの歳になっても志筑さんは好奇心が強いらしい
そんな風に私が呆れてると先生が教室に入ってきた
先生「暁美、ちょっと来てくれ」
ほむら「え?」
仁美「まさか、目的は暁美さん!」
志筑さんのテンションは更に上がっていくが
私のテンションは逆にガタ落ちだ
杏子「オッス」
ほむら「・・・はぁ」
玄関には3人の教師と杏子がいた
先生「暁美、本当にこの娘はお前の知り合いか?」
ほむら「はい、私の友人です」
杏子「ほれ見ろ。人を嘘付き呼ばわりしやがって」
ほむら「どう考えても貴方が悪いわよ
部外者がバイクで敷地内に入ったら
止められるに決まってるじゃない」
杏子「・・・ちぇっ、悪かったよ」
ほむら「直ぐ行くから校門で待ってて」
杏子「へ~い」
すごすごといった感じで杏子は出て行く
先生「・・・なぁ暁美」
ほむら「?」
先生「あんまり交友関係に口出しはしたくないが
友達は選んだ方がいいぞ?」
・・・こいつは何を言ってるんだろう
先生「見たところ、あの娘、学校に行ってないみたいだし」
ほむら「先生は杏子の事を何か知ってるんですか?」
先生「え?」
ほむら「学校に通ってないから何ですか?
先生はそんな事で人を差別するんですか?」
先生「いや、そうじゃ・・・」
ほむら「杏子は学校に行きたくても行けません
敷地内に入ったのだって
学校に憧れてたからなんです
そんな彼女の気持ちも知らずに
よくそんな事が言えましたね!」
先生「あっ・・・」
別の先生が止めに入ってくる
だけど私の怒りは収まらない
杏子を侮辱したこいつを許せない
ほむら「貴方なんか杏子の半分も苦労して」
杏子「ストップ。落ち着け」
最後まで言い切る前に戻って来た
杏子に口を塞がれた
杏子「外からでも聞こえる様な大声出しやがって
ガキみたいでみっともないぞ」
ほむら「でも」
杏子「いいんだよ。誤解されるのには慣れてるさ」
先生「・・・すまなかった」
杏子「ん?」
先生「見かけだけで君を判断した事を許してくれ」
そう言って先生達は頭を下げた
杏子「ほら、こうやって頭も下げてくれたんだ
もう許してやれよ」
ほむら「・・・うん」
放課後、杏子のバイクに乗せてもらう事になった
何でも風を感じれてスッキリするらしい
ほむら「バイクの免許なんて何時取ったの?」
杏子「去年だよ。こいつはバイト先の先輩が
新しいの買ったから安く売ってもらったんだ」
ほむら「ふーん」
杏子「しっかし、お前があんだけキレたところ
初めて見たよ」
ほむら「別に・・・そこまで怒ってた訳じゃないわ」
杏子「嘘付け・・・でも、ありがとな」
素直に感謝されるとこっちが恥ずかしくなる
ほむら「誰にも言わないでよ///」
杏子「分かってるよ」
そう言って杏子は更にスピードを上げた
詢子「ほむらちゃ~ん。私達に何か言う事ないかな~?」
金曜日、仕事から帰って来た詢子さんは
楽しそうに私にそう聞いてきた
ほむら「特に、ありませんけど?」
詢子「もう、隠さないで武勇伝を聞かせてよ~」
タツヤ「ぶゆうでん?」
・・・嫌な予感がする
詢子「聞いたよ~。友達を馬鹿にした教師達を
土下座で謝らせたって」
タツヤ「!、ほむ姉凄~い」
ほむら「ま、待って下さい、それ誤解です」
何でその事を詢子さんが知ってるんだろうか
しかも尾ひれまで付いてるし
詢子「ほむらちゃんもやる時はやるんだね、偉い!」
ほむら「ですからそれは誤解なんです
土下座なんてさせてませんから」
詢子「大丈夫、私はほむらちゃんの味方だよ
友達を馬鹿にされたんだ、怒って当然さ」
タツヤ「僕もほむ姉の味方だよ」
詢子さんとタツヤは2人で盛り上がってる
こんな時どうすれば・・・
知久「まるで詢子さんの若い頃みたいだね」
タツヤ「?」
詢子「」
知久さんの言葉にピタッと詢子さんの動きが止まった
ほむら「どういう事ですか?」
話を変える絶好のチャンスと思い
すかさず知久さんに聞いてみる
知久「詢子さんも昔は」
詢子「だぁ~その話は駄目だぁ~」
ほむら「え~、でもタツヤも聞きたいよね?」
タツヤ「聞きたい!」
自然な流れでタツヤも味方に引き込む事に成功した
こうなっては詢子さんに止める手段は無い
詢子「あぅ~」
知久さんが語る自分の武勇伝を聞きながら
詢子さんは顔を真っ赤にする
ちょっと悪い事しちゃったかな
でも普段はからかわれてるんだし
たまにはいいよね
数日後
ほむら「はぁ、はぁ」
息を切らせながら林の中を走り目的地に向かう
そこには既に杏子とゆまが来ていた
杏子「よう、お前も来たのか」
ゆま「・・・ほむらお姉ちゃん」
ほむら「・・・っ」
風見野町の林の中にある教会
それが取り壊されていた
ほむら「何で」
杏子「・・・林を探検してた奴らが
ここの教会を見つけて遊んでたらしいんだ
けど何年も放置したボロい建物だったから
ドンくさい奴が怪我しちまって
んでそいつの親がブチギレて
取り壊す様に頼んだんだと」
杏子は淡々と語るがその顔は寂しそうだった
ほむら「・・・」
何と言ってあげればいいのか分からない
杏子にとって1番大切な場所が
他人の手によって壊されたのだ
ゆま「・・・ねぇ杏子」
杏子「・・・わりぃ、今日は1人にしてくれないか?」
ほむら「分かったわ。行きましょ、ゆま」
何とか元気付けてあげようとしている
ゆまの手を引っ張り歩き出す
けど気になって1度だけ振り返ってみた
杏子「・・・」
じっと瓦礫の山を見つめている
杏子の頬に一筋の涙がつたっていた
今回は以上です。
ちなみにほむほむと同級生の男子→N沢君→早乙女先生
といったルートで詢子さんは噂を聞きつけました。
また遅れてすみません。
>>291の続きを投稿します。
このSSを読んで不快に思われた場合
それは作者の力量の無さ故であるため
各キャラクターには罪はありません。
非難はどうぞ作者の方にして下さい。
マミ「メール読んだわ。でもごめんなさい
直ぐにそっちには行けそうに無いわ」
ほむら「そうですか」
少し残念だけどこれは仕方のない事だ
巴さんには巴さんの生活がある
だから無理強いは出来ない
マミ「佐倉さんは1人にして欲しいって言ってるの?」
ほむら「はい」
マミ「そう。なら今はそっとしといてあげて」
ほむら「・・・大丈夫でしょうか」
マミ「暁美さんが心配な気持ちも分かるわ
でも佐倉さんは辛い事があった時
誰かが近くに居るのを嫌がるの」
美樹さんが居なくなった時の事を思い出す
あの時も杏子は私達を避け1人になろうとしていた
ほむら「でも美樹さんの時みたいになったら」
マミ「あの時もだったけど佐倉さんは
励まされたり支えられたりとすると
申し訳なく思って余計に苦しんでしまうわ
・・・私も昔、その事に気付いてあげれなくて
喧嘩になってしまった事があるの」
ほむら「・・・」
杏子は全てを自分のせいにしようとする
本人は他人に迷惑をかけたくないから
それが1番だと思ってるみたいだけど
私としてはもっと頼って欲しい
マミ「大丈夫。佐倉さんは命の大切さも
残される人の辛さも私達以上に知っている
だからもうあんなムチャはしないわ」
ほむら「そうですね、そうですよね」
今は信じよう、杏子の強さを
そしてもし私達を頼ってくれたら
その時はそれに答えてあげよう
ほむら「ゆまにも伝えておきます
あの子も杏子を心配して
傍に居ようとしてましたから」
マミ「お願いね。また何かあったら連絡して」
ほむら「はい、分かりました」
やっぱり巴さんに相談して良かった
それから2日後杏子が私のマンションにやって来た
何時もはゆまと一緒だったから1人なのは珍しい
ほむら「調子はどう?」
杏子「別に病気だった訳じゃないんだ
もう大丈夫だよ」
ほむら「そう」
杏子「・・・気を使わせて悪かったな
ゆま達に私をそっとしとく様に
頼んだのお前かマミなんだろ?」
ゆまの両親も杏子を心配していた
何とか力になってあげれないかと
わざわざ私に連絡してきたのだ
杏子「大丈夫って言ってるのに
2人とも全然聞いてくれないし
ゆまもくっついてこないし」
ほむら「寂しかった?」
杏子「・・・まぁちょっとな」
杏子の様子を見て少しホッとした
まだ全快と言う訳ではないけど
何時もの杏子に戻ってきている
ほむら「分かった、皆には私の方から言っとく」
杏子「頼む」
そう言って杏子は席を立った
ほむら「もう行くの?」
杏子「ああ、久しぶりに3人を飯に
連れて行こうと思うからさ」
ほむら「すっかり一家の長女ね」
杏子「へへ、じゃあまたな」
杏子を見送ろうと立ち上がった時
ある疑問が浮かんできた
ほむら「杏子は将来の事、考えてる?」
杏子「どうしたんだ急に?」
ほむら「・・・なんとなくね」
巴さんもゆまも自分の願いを叶え
今を精一杯生きている
私もまどかがくれたこの世界を
守る為に生きている
だけど杏子は願いが叶わなかった
残ったのは魔法少女として戦う使命
1人ではないとは言えそれは
あまりにも辛い人生の様な気がした
杏子「・・・今のバイトに区切りが付いたら
旅に出ようと思ってる」
ほむら「自分探しの旅をするの?」
杏子「いや、何をするかはちゃんと決めてるよ」
ほむら「そうなの・・・意外ね」
杏子「意外とはなんだ意外とは」
ほむら「ごめんごめん。で、何をしに行く旅なの?」
杏子「・・・私はさ、助けられてばっかりなんだ
マミにもゆまにもお前にも助けてもらった
・・・さやかにも助けてもらった
皆のお陰で私は生きてこれた」
ほむら「・・・」
杏子「でもさ、私の様に苦しんでいる
魔法少女はいっぱい居ると思うんだ
だから私はそいつらを助けてやりたい
仲間は居るんだって伝えてやりたい」
・・・それは素晴らしい旅だとは思う
でもその旅にゴールはあるのだろうか
ほむら「風見野にはもう帰らないつもりなの?」
杏子「偶には顔を見せに帰るさ
でも長くは居られないだろうな」
日本にいる魔法少女に会うだけでも
相当な時間がかかる筈
ましてや助けるとなると・・・
杏子「ゆま達が嫌いになった訳じゃないんだ
私にはもったいない位の幸せをくれた
あの家族には本当に感謝してる
でも私はやんなくちゃならない
それがどんなに辛い事だろうと」
ほむら「そう」
杏子は本気だ
本気でゴールの見えない旅に出るつもりだ
ほむら「何って言っていいか分からないけど
私は応援してるわ」
だから杏子が旅立つ時は笑顔で送りだそう
彼女が目的を達成する事を信じて
杏子「皆にはまだ内緒にしといてくれよ」
ほむら「ええ」
杏子「そうだ、お前は何か夢とかあるのか?」
ほむら「私の夢は・・・」
杏子「まっ、じっくり考えなよ」
そう言って杏子は帰っていった
ほむら「考える、か」
夢は1つあるけどそれはまだ
心の中に閉まって置かないといけないもの
その想いを伝えるのはまだまだ先の事
ほむら「ねぇタツヤ」
タツヤ「?」
ほむら「タツヤはなりたいものとかある?」
週末、タツヤが将来何になりたいか
ちょっと気になり聞いてみた
タツヤ「僕、お父さんみたいなコックさんになりたい!」
知久「はは、タツヤ、父さんはコックさんじゃないぞ」
タツヤ「そうなの?」
詢子「でも、タツヤが勘違いするのも仕方ないか
何時もプロ顔負けの料理を作ってくれてるんだもん」
ほむら「そうですね」
知久「そう言われると照れるな」
タツヤ「・・・ほむ姉は」
ほむら「?」
タツヤ「ほむ姉は何かなりたいものとかって」
詢子「そんなの決まってんじゃん。ねぇ」
ほむら「へ?」
タツヤ「お母さん知ってるの?」
詢子「女の子の夢は決まってるんだよ」
タツヤ「何?何?」
詢子「それはな・・・お嫁さんだよ」
ほむら&タツヤ「!?」
ほむら「ちょ、ちょっと詢子さん」
詢子「それも顔が良くて背も高くて
とっても優しいお・と・なな人のね」
詢子さんの言葉を聞いたタツヤは
相当ショックを受けたらしく
机にうな垂れてしまった
逆に私は今の彼の気持ちを知れて
嬉しく思ってしまった
詢子「はぁ肩がこったな~。タツヤ、肩叩いて」
タツヤ「・・・」
詢子「肩叩いてくれたら、女の子に大人っぽく
見てもらえる方法教えてあげるのになぁ~」
タツヤ「!、やるっ!!」
ほむら(・・・頑張ってね、タツヤ)
必死に大人っぽくなろうとするタツヤを見て
つい心の中で応援してしまった
今回は以上です。
これからもなにとぞよろしくお願いします。
遅れてすみません。
>>323の続きを投稿します。
今回は季節感を吹っ飛ばしてのクリスマスの話です。
ほむら「ねぇタツヤ、今年はサンタさんに
何をお願いするの?」
まだ12月になったばかりだが
早めにタツヤの欲しい物を聞いてみる
タツヤ「・・・サンタさん何て居ないよ」
ほむら「え?、でも去年はサンタさんちゃんと
タツヤの所にも来てくれたじゃない」
タツヤ「僕、サンタさん見てないもん」
ほむら「あ・・・」
言うだけ言うとタツヤは自室に入ってしまった
詢子「友達とサンタクロースが居る居ないの
喧嘩で言い負けちゃったらしいんだ
それでサンタクロースは居ないって
思っちゃって拗ねてるみたい」
ほむら「そうだったんですか・・・」
詢子「まあ、何時かは分かる事だし仕方ないと思うけど
もうちょっと信じてて欲しかったなぁ」
ほむら「知久さんもそう思いますか?」
知久「嘘を付くのは良くない事だって
分かってても、どうしてもね」
ほむら「・・・私、タツヤがもう一度サンタクロースを
信じれる様に頑張ってみます」
詢子&知久「え?」
ほむら「だから、貴方にこれを着てタツヤに会って欲しいの」
杏子「いや、理由は分かったけどさ
マミの方が良いんじゃないのか?そういう役は」
ほむら「巴さんはTVに出てるから多分バレてしまうわ
お願い、貴方にしか頼めないの」
杏子「まぁ、ちょこっと会うだけならいいけど」
ほむら「ホントに!」
杏子「あぁ」
ほむら「じゃあこれ」
杏子「・・・何これ?」
ほむら「タツヤがどんな質問をして来てもいい様に
予め答えを用意しておいたの
当日までに覚えてきてね」
杏子「これ全部覚えろってか!?」
ほむら「あぁ後、家に入る時は玄関からは駄目よ」
杏子「はぁ?何でだよ!」
ほむら「サンタクロースらしさを出す為よ
煙突が無いならせめて2階からじゃないと」
杏子「そんなとこ人に見られたら
泥棒と間違えられてしまうだろうが!」
ほむら「大丈夫よ。この服着てるんだから」
杏子「そういった手口の泥棒が実際に居たんだよ!」
その後も杏子は色々文句を言ってきた
だけど最終的にサンタ役を引き受けてくれた
杏子(くっそ~。これでお前への借りは全部チャラだからな)
ほむら(分かったわよ。じゃあQBお願い)
杏子がこっそり庭に入ったのをテレパシーで確認した後
今度は2階のタツヤの部屋にある窓の鍵をQBに開けてもらう
QB(・・・君がわざわざ僕を呼び寄せたんだから
どんな緊急事態かと思ってたら、こんな事だなんて)
ほむら(うるさいわね。仕方ないでしょ)
誰かが1度でもタツヤの部屋に入ってしまうと
タツヤはその人が開けたんだと疑ってしまうだろう
だから詢子さんと知久さんにも
今日は部屋に入らない様にお願いしてある
ほむら「タツヤ、そろそろお風呂に入らないと」
全ての準備が整ってからタツヤを
2階へ行く様に誘導する
タツヤ「え?まだ晩御飯食べてないよ」
ほむら「今日はクリスマスだから知久さんが
いっぱいご馳走を作ってくれてるのよ?
食べた後だとお腹いっぱいになって
眠くなっちゃうわよ」
タツヤ「そっか」
ほむら「でしょ?だから早くパジャマを持って来て
お風呂に入りなさい」
タツヤ「は~い」
しばらくすると叫び声と共にタツヤが降りて来た
タツヤ「お父さ~ん!部屋に変な人が居る~!」
ほむら「どうしたのタツヤ?」
タツヤ「ほむ姉、僕の部屋に赤い服着た人が」
ほむら「まぁ!それはサンタさんよ」
タツヤ「へ?サンタさん?」
ほむら「きっとタツヤがいい子にしてたから
サンタさんが会いに来てくれたのよ」
そう言った後降りて来た杏子を見る
っと愕然としてしまった
ほむら(ちょっと何で髭まで付けてるの!)
杏子(うるせい!こんな格好して素顔で町歩けるかっ!)
ほむら(じゃあ何で取らなかったのよ!)
杏子(部屋に入ってから取ろうと思ってたのに
こいつが直ぐに来たから取れなかったんだよ!)
タツヤ「・・・」
タツヤはジロジロと杏子を見ている
その目は完璧に疑っている目だ
杏子「め、メリークリスマス!」
タツヤ「・・・本当にサンタさんなの?」
杏子「そうだよ。私は本当のサンタクロースだよ」
タツヤ「サンタさん、女の人だよね?何でお髭があるの?」
この質問は想定していないから
ここは杏子のアドリブ力に頼るしかない
杏子「えっと・・・サンタクロースは女の人でも
髭が伸びてしまうんだ」
タツヤ「剃っちゃ駄目なの?」
杏子「うん」
タツヤ「何で?」
杏子「えっと・・・」
杏子は助けを求める様に私の方を向いてきた
こういう時はえーっと・・・
知久「やぁいらっしゃいサンタさん」
詢子「毎年すみませんねぇ」
杏子「め、メリークリスマス!」
タツヤ「お父さんお母さん、この人女の人なのにお髭が」
知久「?、別に不思議な事じゃないぞ」
タツヤ「え?」
知久「この人はまだ若いサンタさんだから
威厳を出す為に髭を伸ばしてるんだよ
リンカーンって人もそうしてただろ?
そうですよね、サンタさん?」
ほむら(ナイスフォロー、知久さん)
杏子「そ、そうだよ。どうだい威厳が有るだろ?」
タツヤ「うん。・・・じゃあさ
どうやって僕の家まで来たの?」
この質問は想定してあるから大丈夫だ
杏子「トナカイが引いてくれる空飛ぶソリでだよ
でもこれには他のサンタクロースもいっぱい乗ってて
サンタさんを降ろしたら直ぐに別の家に行っちゃうんだ
だから今直ぐに見せてあげる事は出来ないなぁ」
タツヤ「!?、何で僕が見せて欲しいって分かったの?」
杏子「本物のサンタさんは子供の気持ちが分かるんだよ」
タツヤ「すご~い!」
よし、タツヤは杏子をサンタだと思う様になって来た
タツヤ「じゃあさ、どうやって僕の部屋に入ったの?」
杏子「サンタクロースは少しだけ魔法が使えるんだ
だから煙突から入る事も出来るし
窓を外から開ける事だって出来るんだよ」
タツヤ「そうなんだ。じゃあ僕の前でやってみて!」
・・・まずい、この質問は想定してなかった
杏子「・・・いいよ」
ほむら(え?・・・そっかQBにまた頼めば)
そう思って探してみたがQBはもう帰ってしまっていた
ほむら(あいつ、肝心な時に)
杏子(大丈夫だ、任せとけ)
そう言って杏子は皆をタツヤの部屋まで連れて行き
窓から外に出てタツヤに鍵を閉めさせた
ほむら(大丈夫かしら)
私が不安に思ってると杏子は本当に
魔法で鍵を開けて中に入って来た
杏子「どうだい?凄いだろ?」
タツヤ「すご~い!!」
杏子(・・・まさか昔やってた事がこんな風に
役に立つとは思わなかったよ)
ほむら(・・・ごめんなさい)
なんだか悪い事してしまったと思い
遂、テレパシーで謝ってしまった
ほむら「さぁタツヤ、サンタさんも忙しいんだから
質問はそれくらいにして欲しい物を頼んでみて
あの大きい袋から出してくれる筈よ」
タツヤ「えっとね、僕ね」
タツヤの欲しい物はヒーローの変身ベルト
直接は聞けなかったが物欲しそうに
TVのCMを見ていたから間違いない
タツヤ「超合金のロボットが欲しいの」
ほむら「!?」
杏子(オイ、たしかお前が買ってたのって)
まずい、1番大事な所で・・・
詢子「おっと、それならお母さん達が用意してるよ」
ほむら「え?」
詢子さんは私にウインクをすると部屋から
プレゼントを取って来た
タツヤ「わぁ~、お母さんお父さんありがとう
あっ・・・どうしよう、サンタさんも同じのを」
詢子「大丈夫。サンタさんの袋は魔法の袋だから
タツヤが2番目に欲しい物を出してくれるさ」
おそるおそる杏子からプレゼントを受け取り
ゆっくりと包みを取っていくタツヤ
タツヤ「わぁ変身ベルトだ!これも欲しかったんだぁ!」
知久「ほら、ちゃんとサンタさんにお礼を言いなさい」
タツヤ「うん!ありがとう、サンタさん!!」
杏子「お、おう。じゃあねタツヤ君」
タツヤ「バイバイ、サンタさん!!」
杏子が窓から出てった後もタツヤはずっと手を振っていた
ほむら「あの、ありがとうございます」
詢子「ふっふ~ん。ほむらちゃんもまだまだだねぇ~」
小さな声で2人にお礼を言うと
詢子さんは勝ち誇った様な顔でそう言った
母親の維持というものを感じられた
今回は以上です。
ほむほむはまだ詢子さんに敵わないっという話でした。
遅れてすみません。
>>357の続きを投稿します。
今回は杏子ちゃんとゆまちゃんの2人が主役です。
久しぶりに巴さんがこっちにやって来る
だからその日は楽しい日になる筈だった
ゆま「なんで?杏子はゆまの事嫌いになったの?」
杏子「だからそうじゃないって言ってるだろ!」
ゆま「じゃあなんで?なんで知らない子を
助けに行くなんて言うの!」
杏子「そいつらが悲しんでるかも知れないだろ
だから助けてやりたいんだよ!」
ゆま「じゃあ杏子は私が悲しんでも良いって言うんだ!」
杏子「そんな事は一言も言ってないだろ!」
マミ「2人とも落ち着いて!ね?」
巴さんは必死に2人をなだめようとするが
本人達はまったく聞いてくれない
杏子「とにかく私はもう決めたんだ!
今更何言われたって辞めるつもりはないからな!」
ほむら「杏子」
杏子「・・・ふんっ」
ゆま「杏子の・・・杏子のバカー!!」
マミ「あっ、ゆまちゃん」
杏子「ほっとけよ、あんな奴」
マミ「佐倉さん、そんな言い方無いでしょ
ゆまちゃんは貴方の事を心配してくれてるのよ」
杏子「それが余計なお世話なんだよ」
マミ「本気でそんな風に思ってるの?
もしそうなら私も怒るわよ」
杏子「・・・」
マミ「待ちなさい!」
杏子「今日は私が悪かったよ・・・ゆまにも謝っとく」
そう言って杏子も帰ってしまった
マミ「はぁ。暁美さんはこの話、知ってたの?」
ほむら「はい。すみません、私が黙ってたから」
マミ「ううん、貴方のせいじゃないわ
・・・でも正直驚いちゃった
佐倉さんがあんな事考えてたなんて」
ほむら「私も聞いた時は驚きました
でもすばらしい旅だとも思いました」
マミ「確かにそうね。でも、私も反対よ」
ほむら「・・・」
マミ「佐倉さんは確かに強いかも知れない
でも彼女がやろうとしている事は
想像もつかない様な辛い事の筈よ
絶対にどこかで心が折れてしまうわ
だから私は旅に出るんじゃなくて
この町から少しづつ魔法少女の輪を
広げる様にして欲しい」
巴さんの意見はもっともだ
何の足がかりも無しに旅に出るより
風見野町に腰を据えて輪を広げる方が
遥かに現実的な気がする
ほむら「・・・杏子も自分がやろうとしている事の
無謀さは分かってると思います
でも、杏子はそれでも行くと言いました
そんな彼女を止める事は私には出来ません」
マミ「佐倉さんはどうしてそこまで
こだわっているのかしら」
ほむら「・・・自分の願いの正しさを証明しようと
しているんじゃないでしょうか」
マミ「え?でも、佐倉さんの願いって」
お父さんの話を皆に聞いて貰いたい
それは自分ではなく人の為の願いだった
ほむら「確かに杏子の願いはお父さんの為の願いでした
でも杏子自信に正しい事を伝えたいという
気持ちが無ければあんな願いはしない筈です」
杏子もお父さんと同じものを目指していた
今でもその気持ちは彼女に残っている筈だ
マミ「でも、それならなおさら風見野町で」
ほむら「風見野町から魔法少女の輪を広げようとしても
賛同してくれる人はごく僅かです
その事を杏子は昔の苦い経験で知っています
正しい事を言ってもそれだけでは皆に届かないと
誰かが来るのを待っているだけでは何も変わらないと
魔法を使ったとしてもそれは結局同じ事だと
だから直接会いに行く事を選んだんだと思います」
お父さんの失敗、自分の失敗
それらが杏子を決意させた
彼女自身が魔法少女達の指針となり
彼女が願った皆が助け合える未来を作る旅へ
マミ「それでも、辛い事には変わりないわ」
ほむら「例え辛くなっても帰る場所はあります
ゴールが見えなくても休憩する事は出来ます」
マミ「・・・そうね。佐倉さんは1人じゃないのよね」
ほむら「はい」
マミ「分かったわ。私も佐倉さんを信じる
出来る限り協力もするわ」
ほむら「ありがとうございます、巴さん」
マミ「・・・まったく、暁美さんに説得を任せるなんて
佐倉さんはこの調子で大丈夫なのかしら」
ほむら「私、ちょっと出しゃばり過ぎたかも知れませんね」
マミ「いいえ、そんな事ないわ
佐倉さんは何時も舌足らずだもの
そうだ、旅立ちの条件としてゆまちゃんの
説得は1人でちゃんとするってのはどう?」
ほむら「それはいいですね」
マミ「じゃあその事は早速メールで伝えましょうか」
マミ「それにしても暁美さん
よく佐倉さんの気持ちが分かったわね」
ほむら「付き合いも長いですしそれに・・・」
頭に浮かぶのは鹿目家の人達とのふれ合い
あの日々が私の心を潤してくれている
それが無ければ杏子の気持ちに気づく
余裕は生まれてなかったかも知れない
ほむら「普段から純粋な子の相手をしていますから」
マミ「それって前に話してくれた家族の事?」
ほむら「はい、この前も」
それから私は鹿目家の人達との思い出を沢山語った
それを巴さんは楽しそうに聞いてくれた
杏子「ゆま、入るぞ」
どうせ返事はしないだろうと思いそのまま入る
ゆまは布団を被ったままでこっちを見ようともしていない
杏子「お前の気持ちも考えず勝手に決めてて悪かったな」
ゆま「・・・」
杏子「さっきおじさんとおばさんにも話した
2人とも止めてくれたけど最後は納得してくれたよ
マミとほむらからもメールが来た
お前を説得出来たら許してくれるってさ」
ゆま「じゃあ絶対納得しない」
杏子「言うと思ったよ・・・そこ座って良いか?」
ゆま「駄目」
駄目と言われたが構わず座る
杏子「考えてみりゃ、お前と喧嘩した事なんてなかったなぁ」
ゆま「・・・」
杏子「私ってさ、マミともほむらとも喧嘩した事あんだぜ
その時の事ってまだ話して無かったよな?」
ゆま「聞きたくない」
杏子「そう言うなって。前に話したさやかの事覚えてるか?」
ゆま「・・・杏子達のお友達」
杏子「そう、私の親友。そのさやかが死んだ時
私は生きていくのが本当に嫌になった
どんなに頑張っても結局は無駄に終わるんだって
そうとしか思えないようになってた
だから魔獣との戦いでさっさと死のうとしてた」
ゆま「・・・」
杏子「マミもほむらも私を止めたよ
でも生きる希望が無かった私には
余計なお世話でしかなかった
だから大喧嘩になったのさ」
ゆま「それは杏子が悪い」
杏子「そんなある日、私は魔獣に襲われている一家を見つけた
何とか娘は助けれたけど両親は致命傷を負ってた
私はもう助からないと判断してその場を去ろうとした
だけど娘が両親を助ける為に契約しようとしやがったんだ」
ゆま「それって」
杏子「私は慌てて止めたよ。絶対に後悔するって
でもそいつは言う事を聞かず契約しちまった
だから私はそいつの家に転がり込む事にした
別に私のせいで契約した訳じゃないが
そのままほっとくのも後味が悪いと思ってな
で、その日の晩また驚かされたよ
そいつの両親に娘を虐待してたって
告白されたんだから」
杏子「思わず殴りかかろうとした
でもそれを止めたのは虐待を受けてた娘だった
『私が悪い子だからいけないの』
そいつは涙を流しながら必死にそう言ってた
その姿を見た両親も涙を流しながら娘に謝り出した
今更何を言ってるんだと更に怒りが沸いたのに
娘の方は喜んで両親を許してしまったんだ」
何が起こっているのか分からなかった
いや、ホントは分かってたけど
最初は認めようとしなかった
杏子「私はそいつの間違いを正そうとした
魔法は自分の為に使うものだって
他人の為に使ってはいけないって
でも何度言ってもちっとも聞いてくれない
だからつい怒鳴ってしまった
『何で私の言う事が聞けないんだって!』って
そしたらそいつはなんて答えたと思う?」
ゆま「・・・杏子は私を助けてくれた
だから私もそんな風になりたい
誰かを助けてあげれる人になりたいって」
杏子「あの時のお礼まだ言ってなかったな
ゆま、本当にありがとう」
家族の絆を取り戻したゆまに嫉妬した
何で自分の時は上手く出来なかったんだと後悔もした
だけどそれらの想いよりも嬉しさが勝った
自分の魔法でゆま達を助けれた事が何より嬉しかった
杏子「私はその言葉に救われたんだ
だからそう言ってくれた
ゆまにだけは嫌われたくない
お前の事が大好きだから」
ゆま「杏子」
杏子「ゆま、私は待つよ。お前が許してくれるまで、ずっと」
ゆま「どうしても行かなきゃ駄目なの?」
杏子「ああ、私は行かなきゃいけない
自分の願いを叶える為にも」
父さんの為の願い
それは形を変えて今でも私の中にある
その願いを今度こそ叶えたい
ゆま「・・・帰ってきてね」
杏子「ああ」
ゆま「絶対だよ」
杏子「ああ」
布団から出て来たゆまを強く抱き寄せる
例えどんな辛い旅だろうが私は絶対に挫けない
私の帰りを待っていてくれる家族が居るのだから
今回は以上です。
タツほむを期待していた方すみません。
次回はちゃんとタツほむに戻ります。
タツほむの絡み、楽しみです。
保守
知久「2人とも御飯が出来たよ」
ほむら「タツヤ、手を洗ってお皿並べるの手伝いましょ」
タツヤ「は~い」
ほむら「・・・」
詢子さんは最近仕事が忙しいらしく帰りが遅い
だからタツヤもずっと寂しがっていた
だけど今日は何時もと様子が違う気がする
タツヤ「いっただっきま~す。わぁこれ凄く美味しいね」
ほむら「うん、そうね」
タツヤ「・・・あ、これも美味しいよ」
必死に明るく振舞ってる
そんな気がしてならないのだ
ほむら(やっぱり詢子さんが居なくて寂しいのね)
しかしこればかりはどうしようも無い
せめてタツヤが寂しさを感じ無い様に
知久さんと一緒に傍に居てあげたい
タツヤ「どうしたの?」
ほむら「何でもないわ。ほら、口の周りが汚れてるわよ」
タツヤ「じ、自分でするってば///
もう、子供扱いしないでよ」
知久「はは、そんな事言ってる内はまだまだ子供だよ」
タツヤ「お父さんまで~。もう」
頬を膨らませたタツヤはティッシュで口の周りを
これでもかと言うくらい拭いた
タツヤ「どう?ちゃんと出来たでしょ?」
自信満々の笑顔でそう言うタツヤ
今日、初めて無理なく笑ってくれて少し安心した
お風呂の順番は決まっていて何時も私が最初だ
その後詢子さんが入り知久さんとタツヤが一緒に入る
ほむら(そう言えば最近はタツヤと一緒に入って無いなぁ)
そんな事を考えてるとタツヤがお風呂から戻って来た
タツヤ「アイス、アイス」
ほむら「も~、何回も言われてるでしょ
アイスは髪を乾かした後」
タツヤはお風呂あがりに食べるアイスが大好きだ
よく髪を乾かさず食べ様とする
タツヤ「む~」
ほむら「私も我慢してるんだから早く行ってきて」
タツヤ「は~い」
と玄関からドアが開く音が聞こえてきた
詢子「た、ただいま~」
ほむら「!」
思わず時計を見てしまった
詢子さんが最近帰って来る時間より随分早いのだ
ほむら「お帰りなさい。タツヤ、詢子さんが帰ってきたわよ」
詢子「あっ、えっと」
タツヤ「え・・・お帰りなさい」
詢子「うん、ただいま」
ほむら「?」
何だか2人とも様子がおかしい
詢子さんは何故かギクシャクしてるし
タツヤも急に暗くなってしまい
そのまま自室に戻ろうとしている
ほむら「タツヤ、アイスは?」
タツヤ「・・・今日はいい」
ほむら「えっ?詢子さんとお話もしなくていいの?」
タツヤ「・・・うん」
すごすごと部屋に帰ってしまうタツヤ
その姿を悲しそうに詢子さんは見ていた
知久「10時過ぎくらいだったかな
一昨日、詢子さんが帰ってきたのは
タツヤはもう寝てしまってたんだけど
トイレに行きたくなったみたいで
起きて1階に下りてきたんだ
最近は朝も殆ど話せなかったから
詢子さんに会えたのが嬉かったんだろうね
トイレが終わっても部屋に戻らず
話を聞いてもらおうとしたんだ
でも詢子さんは大分疲れてたみたいで
『今、何時だと思ってるんだ!早く寝なさい!』
って怒鳴ってしまったんだ」
ほむら「・・・そうだったんですか」
詢子さんがお風呂に入ってる間
知久さんにこれまでの経緯を教えてもらった
2人とも悪くない、ただ魔が差しただけだ
知久「詢子さんも言い過ぎた事に気付いて
直ぐタツヤに謝ったんだけど・・・」
ほむら「タツヤは嫌われちゃったと思ってるんですね」
知久「僕もそんな事ないよって言ったんだけど
昨日は酷く落ち込んでしまっててね
でも今日は暁美さんが来るから
無理して元気に振舞ってたみたいなんだ」
ほむら「もしかして詢子さんが早く帰って来たのは」
知久「うん、タツヤと仲直りしたいんだろうね
でも昨日も直ぐに部屋に戻ってしまったから
まだ話せず仕舞いみたいなんだ」
ほむら「タツヤも仲直りしたい筈なのに」
何とかして2人を仲直りさせたい
そう思っていると詢子さんがお風呂から戻って来た
詢子「・・・はぁ」
知久「早かったね。今日は何にする?」
詢子「いや、今日はいいよ。・・・はぁ」
ほむら「らしくないですよ。溜息ばかりなんて」
詢子「ごめんね。でも酷い母親だなって思うと
どうしても・・・」
知久「そんな事ないよ
ただちょっと疲れてただけなんだよ」
詢子「・・・約束破ってごめんね、知久
仕事でどんなに疲れても
子供には当たらないって言ってたのに」
堪え切れなくなったのか詢子さんは
涙ぐみながら知久さんに謝り始めた
ほむら(ど、どうしよう)
突然の事に動揺してしまった私と対照的に
知久さんは穏やかな顔のまま詢子さんに歩み寄った
知久「今日はもう休もうか、ね?
暁美さん悪いけど戸締りだけ
お願いできるかな?」
ほむら「は、はい。分かりました」
知久「よろしくね。さぁ行こ」
そう言って知久さんは詢子さんの肩を
優しく抱いて寝室に連れて行ってあげた
ほむら「さてと」
知久さんに頼まれた戸締りを確認し2階へ上がる
今日はもう寝てしまおうと思ったのだ
ほむら「・・・」
でもタツヤの事が気になり
部屋の方を向いて立ち止まってしまった
するとドアが少し開き覗き込むように
タツヤが顔を出してきた
タツヤ「・・・ほむ姉」
ほむら「まだ起きてたの?」
タツヤ「うん」
ほむら「・・・ちょっと待っててね
アイス取って来てあげるから」
タツヤも何かを話したそうだったので
アイスを口実に部屋に入れてもらう事にした
ほむら「はい、タツヤの分」
タツヤ「ありがと」
ほむら「さっきはどうしたの?
急に部屋に行っちゃって」
タツヤ「・・・」
明るく聞いてみたがタツヤは答えず
俯いたままアイスをちびちび食べる
ほむら「言いたくないの?」
タツヤ「お母さん、僕の事、嫌いになっちゃったんだ」
ほむら「そんな事ないわよ」
タツヤ「ううん、そうだよ。僕の事なんか
もうどうでもいいんだよ」
ほむら「どうして急にそんな風に思っちゃったの?」
タツヤ「だって・・・」
ポツリポツリと不満を洩らすタツヤ
朝早く仕事に行ってしまい殆ど会話が出来ない事
夜遅くに帰って来るから顔も見れない時がある事
そして一昨日怒鳴られてしまった事
タツヤ「僕、僕・・・」
ほむら「タツヤは詢子さんの事、大好きなのね」
タツヤ「・・・うん」
普段なら恥ずかしがって否定するだろう
だけど今は本心を教えてくれた
だから私も詢子さんの本心を伝えたい
ほむら「なら大丈夫よ。だって詢子さんも
タツヤの事、大好きなんだもん」
タツヤ「・・・嘘だよ」
ほむら「ホントよ。さっきまで詢子さん
今のタツヤみたいに泣きそうだったんだから」
タツヤ「じゃあなんで?なんで僕を怒鳴ったりしたの?」
ほむら「詢子さんが怒鳴ってしまったのは
ずーっとお仕事を頑張ってて疲れてたからよ
勿論、だからと言って怒鳴るのは良くないわ
でも直ぐに謝ってくれたでしょ?」
タツヤ「じゃあなんでそんなにお仕事頑張るの?」
ほむら「詢子さんはね、頑張るのが好きなの」
タツヤ「?」
ほむら「嫌な事や辛い事がいっぱいあっても
それを乗り越えれた時、とっても嬉しい
だから人一倍頑張ってるのよ」
タツヤ「そんなの、僕に関係ない」
ほむら「確かにこれは詢子さんの理想の生き方ね
でももう1つ、確かな目標があるわ
それがなんだが分かる?」
タツヤ「・・・社長に成りたいとかでしょ」
ほむら「ブッブー、外れ~」
タツヤ「じゃあなんなのさ?」
ほむら「家族を幸せにしたい
これが今の詢子さんの目標よ」
タツヤ「えっ?」
ほむら「タツヤや知久さんに美味しい物を
いっぱい食べさせてあげたい
2人に良い服を買ってあげたい
たまにはおもちゃも買ってあげたい
休日は一緒に遊んだりお出かけしたい
2人の笑顔をもっと沢山見たい
詢子さんは何時もそう思ってるわ」
タツヤ「・・・お母さん」
ほむら「だから詢子さんはタツヤに
そんな暗い顔をしてほしくないの
今日だって仲直りしたいから
早く帰ってきてくれたのよ」
タツヤ「・・・ほむ姉ぇ、僕も、僕も仲直りしたいよぉ」
涙を流しながらすがり付くタツヤを
安心させる様に優しく抱きしめてあげる
ほむら「泣かなくても大丈夫。ちゃんと仲直り出来るわ」
タツヤ「ねぇ、僕今からお母さんのお部屋に行っていい?」
ほむら「それは・・・ちょっと駄目かな」
タツヤ「なんで?」
ほむら「え、えっとね、今は2人っきりだから、その///」
タツヤ「?」
ほむら「あ、明日の方がいいと思わない?
その方が時間がたっぷり取れる筈よ」
タツヤ「ほむ姉がそう言うなら、そうする」
ほむら「うん、そうしましょ」
ほむら「じゃあ今日はもう寝よっか」
タツヤ「うん・・・ねぇほむ姉、さっきの話」
ほむら「?」
タツヤ「お母さんもお父さんも僕も
ほむ姉が笑顔だったらすっごく喜ぶから
だからほむ姉も家族だからね」
ほむら「・・・ありがとう、タツヤ
そうだね、私も家族なんだよね」
タツヤは当たり前の様に嬉しい事を言ってくれる
私は彼のそんなところが大好きだ
ほむら「・・・今日は一緒に寝てくれる?」
タツヤ「えっ!?」
ほむら「駄目?」
タツヤ「だ、駄目じゃ、ない、よ」
ほむら「じゃあ枕取ってくるね」
タツヤと一緒に寝るのは随分と久しぶりだ
だから余計に嬉しい
ほむら「ほら、もっとこっちに寄って。落ちちゃうわよ」
タツヤ「う、うん///」
ほむら「・・・えいっ!」
タツヤ「ふぇ!?」
ほむら「ふふ、あったか~い」
タツヤ「///」
ほむら「おやすみ、タツヤ」
タツヤ「お、おやすみ、ほむ姉///」
大好きな人が傍にいてくれる
今夜はぐっすりと眠れそうだ
今回は以上です。
ちなみに次の日、詢子さんのお肌はつやつやでした
まどかママが妊娠中って、誰が稼いでたんだろうか?
遅れてすみません。
>>403の続きを投稿します。
>>410
結婚時は共働きをしていて、詢子さんが産休中は知久さんが稼いでいたんじゃないでしょうか。
まどっちが大きくなって詢子さんが仕事に復帰する際、仕事に専念出来る様に
知久さんは退職して家事を一手に引き受ける様になった、と自分は解釈してます。
まだ少し肌寒い3月
遂に杏子が旅立つ日が来た
ほむら「この中にお金とお守りが
入ってるから持って行って」
杏子「あぁありがと」
ほむら「缶詰や保存食を食べていいのは
ホントに食べ物が無くなった時だけよ」
杏子「分かってるよ」
ほむら「財布と通帳とカードはちゃんと持ってる?」
杏子「持ってるよ」
ほむら「携帯と充電器は?」
杏子「あるある」
ほむら「予備の電池パックは?」
杏子「買ってないけど大丈夫」
ほむら「・・・免許書とそのコピーは別々の場所に入れてる?」
杏子「入れてるよ」
ほむら「あと印鑑は・・・」
杏子「ああもうしつこいな。皆して同じ事言いやがって」
ゆま「杏子はオッチョコチョイだからね~
忘れ物が無いか、皆心配なんだよ」
杏子「ったく、マミも昨日の電話でいちいちしつこかったし
子供じゃないんだから少しは信用しろってんだ」
杏子は文句を言いながらゆまの
髪をわしゃわしゃと撫でる
その時間は何時もより長めだ
ゆま「もう、止めてよ」
杏子「いいだろ、当分出来なくなるんだからさ」
一瞬、ゆまの顔が曇りかけた
だけど直ぐに笑顔に戻る
杏子「・・・そろそろ行こうかな」
ゆま母「気をつけてね」
ゆま父「何時でも帰ってきていいからね」
杏子「・・・お、お義母さんとお義父さんも
身体に気をつけて下さいね」
ゆま母&ゆま父「!?・・・うん、気をつけるよ」
照れながら言う杏子に涙ぐみながら2人は頷く
後で聞いた話しだが、杏子はこの時初めて
2人の事をお義母さん、お義父さんと呼んだらしい
ほむら「杏子」
杏子「まだ何かあんのか?」
杏子は旅立つ前にもう1人
挨拶しなくてはいけない人がいる
ほむら「美樹さんに挨拶した?」
杏子「これから行くつもりだよ」
ほむら「そう」
杏子「・・・ゆまの事、頼んだぞ」
ほむら「えぇ任せて」
杏子の頼みを満面の笑顔で答える
杏子「じゃあ、またな」
バイクに跨った杏子は私達に笑顔を向けた後
思いっきりアクセルを吹かし走り出した
ゆま「杏子ぉ~、頑張ってねぇ~!!」
大声で声援を送るゆまに
走り去る杏子は片手を上げて答えた
ゆま「・・・」
ほむら「偉いわ、ゆま」
ゆま「・・・うっ、ひっく」
ほむら「もう、思いっきり泣いていいのよ」
ゆま「うわああああん、杏子ぉ~」
ほむら「大丈夫、杏子はきっと帰ってくるわ
それまでちゃんと貴方が風見野町を守るのよ」
ゆま「うん。うん」
泣きながら決意を固めるゆまの姿を
両親は誇らしげに見つめていた
旅立つ前に見滝原に寄りさやかの家にあげてもらった
さやかの両親にも私の正体と旅立つ事は伝えてある
杏子「さっき、ちょっとヤバかったんだ
ゆまに泣き顔見られそうになって
それで残りたいって・・・」
お線香をあげてさやかの遺影に向かって話しかける
少し情けない本音が漏れた
杏子「・・・ごめん、お前の前なら良いよな
ちょっとぐらい泣いても」
さやか「駄目~」
杏子「!」
さやか「私だってあんたの泣き顔なんて見たくないよ
あんたは笑顔の方が似合うんだからさ」
杏子「・・・ケチ」
さやか「まっ、どうしても見て欲しいって言うなら
見てあげない事もないけど?」
杏子「い~や、もう結構だ
さっきまでの私はどうかしてたよ
まさかお前に弱みを見せようとするなんてな」
さやか「おしかったな~。せっかくからかう
ネタが増えると思ったのに」
杏子「ふんっ、私を馬鹿にしようなんて
100年早いんだよ」
嫌味の言い合い、それが私達らしい会話だ
杏子「・・・じゃあ、行って来るよ」
さやか「・・・杏子、頑張ってね」
杏子「ありがとう、さやか」
最後に感謝を述べてさやかの家を後にした
杏子が旅立って数日がたった
しかし彼女からの連絡はまだ来ない
ほむら「・・・」
タツヤ「ほむ姉どうしたの?
今日は携帯ばっかり見てるけど」
ほむら「あ、ごめんね。友達から連絡ないかなって
気になっちゃって」
タツヤ「ふ~ん。こっちから電話しちゃ駄目なの?」
ほむら「う~ん、駄目じゃ無いけど・・・」
電話も出来ないくらい忙しいのなら
こっちから電話するのはかえって迷惑な気がするのだ
タツヤ「忙しいんだね、ほむ姉の友達も
あっ!マミさんだ」
TVに目を向けると番組のゲストとして巴さんが出ていた
ほむら「・・・タツヤは巴さんの事好きなの?」
タツヤ「うん!すっごく綺麗だし優しそうだもん」
ほむら「そう」
・・・何となく面白くない
タツヤ「そうだ!ほむ姉、マミさんと会った事ある?」
ほむら「え?」
タツヤ「この前ねTVでやってたんだけど
マミさんってほむ姉と同じ中学校に
通ってたんだって」
ほむら「へ、へ~。そうだったんだ~
全然知らなかったわ」
思わず嘘を付いてしまった
タツヤ「・・・そうなんだ」
ほむら「もし巴さんに会えたらタツヤはどうする?」
タツヤ「えっとね、握手して貰うでしょ
次にサインを貰うでしょ
後ギュってして貰いたい」
ほむら「え?」
タツヤ「マミさんにギュってして貰ったら
気持ちいいだろうな~って
お母さんが言ってたから」
ほむら「駄目よ!タツヤ」
タツヤ「!」
ほむら「女の人にギュってしたりして貰うのは駄目!
してもいいのは家族だけ。分かった?」
タツヤ「う、うん」
ほむら「あ・・・」
凄い剣幕で言ったのでタツヤはビックリしてしまってる
と、携帯が鳴り表示画面に巴さんと言う文字が出た
タツヤ「?」
ほむら(まずい!)
慌てて携帯を取りトイレに駆け込む
マミ「もしもし暁美さん?佐倉さんから連絡」
ほむら「すみません、後でかけ直します!」
マミ「え?え?」
混乱している巴さんには悪いけど電話を切る
後でちゃんと謝っておこう
トイレから出るとタツヤが立ってた
タツヤ「ほむ姉さっきの人って」
ほむら「あ、えっと・・・」
何て説明しようと考えてるとまた携帯が鳴った
表示には杏子と出ていた
ほむら「!、もしもし」
杏子「お、繋がった。久しぶり
いや~さっきマミに電話したんだけど
どうも話中だったみたいでさ~」
ほむら「杏子、ベストなタイミングよ!」
杏子「へ?」
ほむら「タツヤ、この人。私が待ってたのは」
タツヤ「そうなんだ。じゃあ邪魔しちゃ悪いから
僕、居間に戻ってるね」
トコトコと居間に戻って行くタツヤを見て
ホッと胸を撫で下ろす
杏子「ちょっ、何なんだ。ちゃんと説明しろよ」
ほむら「・・・ねぇ杏子」
杏子「うん?」
ほむら「もし旅先でバストアップに効果がありそうな
食べ物があったら送ってくれる?」
杏子「・・・分かった」
杏子は何かを察したのか冷やかす事無く了承してくれた
今回は以上です。
詢子さんもアルティメットまどかもナイスバディだったので
たっくんはおっぱい星人になる可能性が高いですよね。
>>427の続きを投稿します。
今回の話で第二部は完っといった感じです。
ほむら「すっごく緊張してるわね」
タツヤ「そ、そんな事ないよ」
ほむら「でもカチカチじゃない
それにキョロキョロして落ち着きが無いし」
タツヤ「///」
照れてるタツヤがまた可愛い
だからついついもっとからかいたくなる
ほむら「全然こっちを見ようとしてないし
ホントは気付いてたんでしょ?」
タツヤ「だ、だって恥ずかしいし・・・」
ほむら「あらどうして?」
タツヤ「・・・皆が見てるから」
詢子「誰もあんたに注目なんてしてないよ
他の子だって緊張してたし」
知久「せっかくの晴れ舞台だったんだから
もっとこっちを向いて欲しかったね」
タツヤ「む~」
今週あったタツヤの小学校の入学式
今日はその時のビデオを見せてもらっていた
ほむら「でも本当に綺麗に撮れてますね」
詢子「そりゃあそうだよ。知久ったら
張り切って新しいビデオカメラを買うし
当日も朝早く行って場所取りしてたんだから」
詢子さんに言われ知久さんも照れ出す
知久さんは普段は大人しい人だけど
こういう時は人1倍、行動力があったりする
私が見滝原中学校を卒業した時も
お父さんに色々レクチャーしてたし
知久「終わりっと。次にこれを使うのは運動会かな」
タツヤ「もう、父さんは気が早いよ」
知久「そんな事は無いさ」
ほむら「?」
今、ちょっと違和感があった様な・・・
詢子「ふふっ、タツヤったら小学校に上がってから
私達を父さん、母さんって呼ぶ様になったの
周りの子達がそう呼んでるからかな」
ほむら「あぁ、なるほど」
私の疑問に詢子さんは笑いながら耳打ちしてくれた
ほむら「ねぇタツヤ」
タツヤ「何?」
ほむら「私の事はこれから何て呼ぶの?」
タツヤ「それは・・・ほ、ほむら姉さん」
ほむら「え~、ほむ姉の方が良かったな~」
タツヤ「だってそんな呼び方してたら
恥ずかしいし・・・」
ほむら「う~ん・・・分かったわ
じゃあ私もこれからタツヤを
たっくんって呼ぶ様にするから」
タツヤ「え!?そ、それも恥ずかしいから止めて!」
結局、私の呼び方は今まで通り
ほむ姉で落ち着く事になった
それから数日たったある日
詢子さんから1本の電話が入った
ほむら「はい、分かりました
いえ迷惑だなんて、そんな事はないですよ
落ち着けば直ぐに家が恋しくなると思いますし
あっ、ちょうど来たみたいなんで
一旦電話切りますね」
電話を切って2度目のインターホンを
鳴らす人物の応対をする
ほむら「はい、どちら様でしょう?」
タツヤ「ほむ姉・・・入れて」
ほむら「タツヤ?どうしたのこんな時間に」
驚いた振りをしながら玄関を開けてあげる
タツヤ「ほむ姉、お願い泊めて」
ムスッとした表情で言うタツヤの目元は少し腫れていた
多分ここに来る間に泣いていたのだろう
ほむら「私は良いけど、お家にちゃんと連絡したの?」
タツヤ「・・・」
ほむら「私から連絡しようか?」
タツヤ「止めて。父さんにも母さんにも
僕がここに来てるのは言わないで!」
ほむら「・・・分かったわ。取り合えず入りなさい」
タツヤ「ありがとう、ほむ姉」
安心して少し笑顔になったタツヤを
居間に案内してココアを淹れてあげる
ほむら「それで今日はどうしたの」
ホントはさっき詢子さんから電話があったから
何故ここに来たかは分かっている
だけどあえて知らない振りをして
タツヤの不満を聞いてあげるつもりだ
タツヤ「・・・ほむ姉はさ、変だと思わない?うちの家」
ほむら「変?・・・どこもおかしくないと思うわ」
タツヤ「母さんが働いてて、父さんが家事やってるんだよ
そんなのおかしいじゃないか!」
ほむら「そうかしら?最近は家事を手伝うお父さんは
増えているみたいよ」
タツヤ「手伝ってるんじゃなくて全部父さんがやってるの!
そんなのクラスで僕んちだけなんだよ」
ほむら「・・・学校で何か言われたの?」
うっと言いながらタツヤは言葉を詰まらせる
そして仏頂面でしばらくそっぽを向きだす
だけどじっと見つめていると耐え切れなくなって
今日あった出来事を話してくれた
タツヤ「・・・今日、友達に言われたんだ
男の人が家事しかしないのは変だって
クラスの皆の家では仕事もしながら
家事を手伝ってるよって・・・
それで父さんに頼んだんだ、何か仕事をしてって
そしたらゴメンねって言って断られて・・・」
小学生にありがちな事だ
大勢と違うだけで変だと言い
少数だから変だと思ってしまう
ほむら「それで喧嘩して家に来たのね」
タツヤ「・・・僕は悪くないもん、父さんが悪いんだ
ほむ姉もそう思うでしょ?」
ほむら「いいえ、私はそうは思わないわ」
タツヤ「何で、皆と違うんだよ
皆のお父さん達は仕事してるんだよ」
ほむら「じゃあタツヤのご飯を毎日作ってくれてるのは誰かしら?
タツヤが着ている服を毎日洗ってくれてるのは誰かしら?
お風呂を洗ってくれてるのは?家の掃除をしてるのは?
確かに知久さんは専業主夫で外では働いてないわ
でもお家の仕事をちゃんとしてるじゃない」
そもそも他の家のお父さん達が家事を
手伝う様になったきっかけは
詢子さんが何かの集まりの時に他の家の主婦に
知久さんの事を自慢したからだったりする
詢子さんの話を聞いた主婦達が羨ましく思い
夫に家事を手伝わせる様になったのだ
ちなみに子供達が学校に行ってる間
鹿目邸では知久さんによるお父さん達を対象にした
料理教室が開かれている事もある
だから子供達が知らないだけで実は鹿目家は
他の家から尊敬の眼差しで見られているのだ
タツヤ「・・・でも、やなの!皆と一緒がいいの!」
今のタツヤの様子だと
ちょっと荒療治が必要なのかも知れない
ほむら「ふーん。タツヤは他の家のお父さんと違う
知久さんの事が嫌いになったのね」
タツヤ「そうじゃ・・・」
ほむら「じゃあタツヤは私が他の人と違ってたら
嫌いになっちゃうのね」
タツヤ「えっ?」
ほむら「もし私が人と違ってたら・・・
もうここには来てくれないのね
私、寂しいなぁ」
タツヤ「ち、違う。僕はほむ姉が他の人と違っても
嫌いになんかならないよ」
タツヤはうろたえながらそう言ってくれた
ちょっぴり可愛そうだけどもうちょっと続ける
ほむら「・・・嘘ね。タツヤは知久さんも
嫌いになっちゃたんだもん
どうせ私の事だって」
タツヤ「父さんだって嫌いになってないもん」
ほむら「でもさっき嫌だって」
タツヤ「違うの、父さんは好きなの。だから、だから・・・」
タツヤは泣き出しそうになり言葉を詰まらせた
そんなタツヤを優しく抱きしめてあげる
ほむら「・・・友達に知久さんを悪く言われたから
悔しくて怒ってるのよね」
タツヤ「・・・うん」
ほむら「無理な事言ってしまってホントは後悔してるのよね」
タツヤの心を代弁してあげると
とうとう大声を上げて泣き出した
タツヤ「うわああああん」
ほむら「私が一緒に行ってあげるから
ちゃんと知久さんに謝ろっか?」
タツヤ「うん・・・ありがとう、ほむ姉」
タツヤ「ねぇ、ほむ姉」
ほむら「何?」
手を繋いで鹿目邸に向かっている時
タツヤは思い出した様に声をかけてくる
タツヤ「僕、絶対にほむ姉の事を嫌いにならないからね」
ほむら「あら嬉しいわ。でももし私が
お化けや怪物になったらどう?」
遂、そんな変な質問をしてしまった
だけどタツヤは直ぐに答えてくれる
タツヤ「そんな事絶対にさせないもん」
ほむら「じゃあ、もうなっちゃってたら?」
意味の無い質問をまた続けてしまった
タツヤ「じゃあ僕もなる!
僕も怪物になってずっと傍にいて上げる
そしたらほむ姉は寂しくないだろ?」
ほむら「えっ・・・」
どこまで本気なのかは分からない
でも、今の言葉がタツヤの本心だとしたら・・・
タツヤ「?」
ほむら「・・・ありがとう、タツヤ
でも私は、1人で大丈夫だから
貴方は怪物にならなくていいのよ」
タツヤ「あっ、信じてないなぁ
ホントだよ絶対になってほむ姉を助けるんだ」
ほむら「頼もしいわね。でもそうすると
知久さんと詢子さんは寂しくなっちゃうわね」
タツヤ「あっ・・・えーと」
ほむら「ふふっ。その気持ちだけで十分よ
だから貴方は2人を大切にしてね」
今のタツヤの言葉を聞けただけで本当に嬉しい
生きる目的を半ば失っていた自分を支えてくれ
新しい生き甲斐をくれたのは間違いなく
鹿目家の3人なのだから
ほむら(まどか、私はこの世界をこの町を守り続けるわ)
タツヤの手をしっかりと握りながら
心の中でまどかにそう語りかけた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数年後少年は憧れの女性の秘密を知る
その時、今日の会話を覚えていたのか
忘れていたのかは分からない
けれど彼女を過酷な運命から救う為に
非日常へと足を踏み入れてしまう
それはまた、別の話・・・
今回は以上です。
パソコンの調子が悪く非常に時間がかかってしまいました。
遅れてすみません。
>>450の続きを投稿します。
今回はほむほむの進路の話です。
仁美「まだ悩んでるんですか?」
ほむら「・・・うん」
他のクラスメイト達は既に将来の目標を決め
その道に進む為に頑張っている
でも私の進路は未だに定まってなかった
仁美「やっぱりあの事が負担になってるんですよね」
ほむら「違うわ、ただ・・・」
仁美「隠さないで下さい
あの事が暁美さんの選択を狭めてるのは明白です」
志筑さんは私が魔法少女だと知っている
だからこそ私を心配してくれていた
ほむら「大丈夫、だから」
仁美「今の暁美さんの姿を見せられて
そんな言葉とても信じられません!」
ほむら「・・・お願い。今はほっといて欲しいの」
志筑さんとは対等な友達でいたい
だから彼女にはこれ以上同情されたくなかった
仁美「・・・出すぎた真似をしてすみませんでした
そうですね、友達を同情するなんて
どうかしてましたわ」
ほむら「あ・・・ごめんなさい」
仁美「私の事は気になさらないで下さい
まだ時間はありますから
暁美さんは暁美さんのペースで
決めればいいんですよ」
私の気持ちを汲み取ってくれた志筑さんは
静かに自分の席へと戻ってくれた
ほむら「・・・」
私は就職してお金を稼ぎたかった
お父さんとお母さんは私の病気を治すのにかかった
治療費を払う為に質素な生活を続けている
だから早く2人の負担を減らしてあげたかった
仕送りを多くする為にもなるべくお給料が多い所に就きたい
だけど魔法少女として戦わないといけない以上
夜勤があったり残業の多い仕事は選べない
ほむら(そんな条件の良い所、ある訳無いのよね・・・)
言い訳なんて出来ない
これは部活もせずアルバイトもせず
自分のやりたい事しかやっていなかったツケだ
この問題は自分自身で解決しないといけない
QB「お帰り、ほむら」
ほむら「・・・ただいま」
魔獣との戦いを終えてマンションに帰るとQBが居た
多分使い切ったGSを回収しに来たんだろう
ほむら「はい、GSよ」
QB「大分溜まってたんだね」
そう言うとQBは後ろを向いて背中を開けた
しかしそれっきり動こうとしないので
仕方なく開いた穴にGSを投げ入れる
ほむら「用件が済んだらとっとと帰って」
QB「きゅっぷ、いや今日はもう1つ用があって来たんだ」
ほむら「何?」
QB「ほむら、君はこれから大学に進学するのかい?
それとも就職するつもりなのかい?」
ほむら「・・・何でそんな事を教えないといけないのよ」
こいつは私の保護者でも先生でもない
ましてや恩があったりとか親しい間柄でもない
利害の一致、それだけが私達の関係だ
当然、私の進路をこいつに話す必要も無い
QB「別に君の将来について口出しするつもりは無いさ
ただ君が進学するにせよ就職するにせよ
この町を離れるとしたらその前に
誰かと契約しておいた方が良いと思ってね」
思わず呆れてしまった
こいつが私の世話を焼こうとしてると勘違いした
自分自身に対してだ
ほむら「私はこの町を離れるつもりは無いわ
だから余計な事はしないでいい」
QB「そうか。じゃあ誰かに引継ぎを頼む必要も無いね」
そう言うとQBは帰ろうとする
普段なら止めはしないが少し気になる言葉があった
ほむら「引継ぎってどういう事?」
QB「文字通りの意味さ
君達の社会だと大人になれば普段の生活だけで
手一杯になりGSを集めるのが難しくなるだろ?
だから君の様に成長した魔法少女には
新しく契約した魔法少女と共闘してもらうんだ
新人の娘は戦いのノウハウを教えてもらえるし
ベテランの娘はGSを集めておく事が出来る
どちらにもメリットがあるだろ?
そしてそのまま新人の娘は町の守りを引継ぎ
ベテランの娘は魔法の使用を極力押さえながら
偶に魔獣と戦ってGSを補充する生活に入るんだ」
どうやらこの世界のこいつらは
少しは魔法少女の事を考えてくれてるらしい
ほむら「そう・・・私には関係の無い話ね」
私は他の魔法少女と違い戦い続ける
まどかへの誓いを守る為に
QB「まぁこの引継ぎもあんまり良い方法じゃないんだけどね」
ほむら「?、聞いた限りでは問題ない様に思えるけど?」
QB「ちょっとした事で両者の間に亀裂が入るんだ
一方はほぼ毎日命懸けで戦っているのに
もう一方は偶にしか戦いに現れないからね
不満が出てくるんじゃないかな?」
ほむら「・・・この話、杏子にはしたの?」
QB「してないよ。聞かれなかったからね」
ほむら「今すぐ杏子の所に行ってこの話をしなさい!」
QB「何で?」
こいつは杏子の旅の意味をまるで理解して無いらしい
ほむら「いいわ。私がする」
QB「杏子がこの事を知ったとしても
あんまり意味は無いと思うけどな~
だって当事者同士の問題じゃないか」
ほむら「ええ、そうね。あんた達には一生分かんない事よね」
さっき少しでもこいつらを見直した自分に腹が立つ
この世界でもこいつらの根本は変わってないのだ
ほむら(仲違いした娘も危ないって言うのに)
携帯電話にコールしながら巴さんと杏子の事を思う
1度喧嘩別れした2人は孤独に悩まされていた
同様の事が他の町でも起きていると思うと心が痛む
ほむら「杏子?ちょっと伝えておきたい事があって・・・」
さっき聞いた話を杏子に伝えながらQBの方を向く
しかしそこにはもうQBは居なかった
杏子「あんのヤロ~、大事な事端折りやがって~」
話を聞き終わった杏子は相当頭にきている様子だった
どうやら丁度この話の様な問題に直面していたらしい
杏子「とりあえず2人をふん縛って話をさせるか・・・
サンキュー、ほむら」
言うだけ言うと杏子は電話を切ってしまった
なにやら物騒な言葉が聞こえてきたが
まぁ問題は無いだろう
ほむら「・・・」
他人の心配をしてる余裕なんてない
なのに何故かホッとしている自分がいた
簡単に夕食を済ませお風呂に入ろうとした時
インターホンが鳴った
詢子「ほむらちゃ~ん」
ほむら「詢子さん?どうしたんですかこんな時間に」
詢子「ちょっとね。入って良い?」
ほむら「えっと・・・ちょっと待っててもらえます?」
詢子「もしかして部屋散らかってる?」
ほむら「・・・はい」
詢子「じゃあ私も手伝うよ」
ほむら「え、悪いですよ」
詢子「気にしなくていいの。ほら、ちゃっちゃと終わらせよ」
詢子さんはスーツ姿のままだった
多分、仕事が終わってそのまま寄ってくれたのだろう
ほむら「あの・・・後は自分で出来ますから」
詢子「ん~、大分綺麗になったし、こんなもんかな」
ほむら「それで今日はどうして?」
詢子「・・・お父さんとお母さんから連絡があったよ
ほむらちゃんが進路の事全然話してくれないって」
ほむら「・・・」
詢子「私の方から聞く訳にはいかないから
今まで黙ってたけど許可を貰ったから
今日は堂々と聞くよ、何を悩んでるんだい?」
ほむら「・・・どこで働けばいいのか分からないんです」
詢子「ほむらちゃんは就職したいんだ」
ほむら「はい」
真っ直ぐに見つめてくる詢子さんに
魔法少女の事は話さず悩みを打ち明けた
詢子「確かにそんな条件のいいとこ
転がってる訳無いね」
ほむら「・・・やっぱり、高望みしすぎてますよね」
詢子「う~ん。今のほむらちゃんじゃそうかもね~」
やっぱりもっと早くから将来の事を
考えておくべきだった
詢子「でもね、何とか出来ない訳じゃないよ」
ほむら「え!?どうすればいいんですか?」
詢子「簡単な事さ。もっと勉強して
スキルを増やせば良いんだよ」
ほむら「それは、進学した方が良いって事ですか?」
詢子「ちょっと違うね。私が言ってるのは
働きながら勉強するって事
勿論、これは人1倍頑張んないといけないよ
でもそうやって夢を叶えた人は沢山いる
だから給料の事は二の次にして考えてみなよ」
ほむら「でも私、早く負担を減らしてあげたいんです
だから・・・」
詢子「ほむらちゃんはホントに優しい子だね
でもね、妥協して入った場所で
頑張ったって後悔しか残んないんだ
それなら給料が少なくても他の条件が合う場所で
力を蓄えた後もう一度探した方がいい」
ほむら「・・・」
詢子「最初は給料が少なくてもいいじゃない
5年後10年後に多い給料を貰える様になれば
結果的に両親を早く楽にさせてあげれるんだよ」
ほむら「・・・ホントにそれでいいんでしょうか?」
詢子「何が悪いって言うんだい?
親孝行な娘を持って2人は鼻が高い筈だよ」
ほむら「だって、私、迷惑ばかり、かけてたから・・・」
何時の間にか涙が溢れ出ていた
そんな私を詢子さんは優しく抱きしめてくれた
詢子「何でも自分1人で何とかしようとするのは
ほむらちゃんの悪い癖だよ」
ほむら「ごめんなさい」
詢子「謝んなくていいよ。その変わりこれからは
お父さんとお母さんにもちゃんと相談するんだよ」
ほむら「はい」
詢子「良い娘だ」
詢子さんに優しく撫でられると
止めようとしている涙が止まらなくなる
ほむら「うっ・・・ひっく」
詢子「今日は思いっきり泣いていいんだよ
この事は知久にもタツヤにも内緒にしとくからさ」
その言葉を聞いてとうとう声を出して泣いてしまった
ほむら「ありがとう、ございます」
感謝の言葉も嗚咽交じりなってしまう
でも詢子さんは嬉しそうに頷いてくれた
今回は以上です。
やっぱりほむほむも進路の事で悩むんじゃないかと思いこういう話になりました。
皆、映画は観たかい?俺はやっと前編を観たぜ!
後編はタツほむ分があるのか、ちょっと不安だが、今度の日曜日に観る予定
>>タツヤ「じゃあ僕もなる!
僕も怪物になってずっと傍にいて上げる
そしたらほむ姉は寂しくないだろ?」
スマートブレイン社「」ガタッ
ゆま「お邪魔しま~す」
ほむら「ごめんね。わざわざ来てもらって」
ゆま「ううん、いいよ。ついでにお使いも頼まれてるし」
杏子が旅立ってから1週間に1回は
こうしてゆまと会うようにしている
お互いのSGの状態を確認する為だ
ゆま「ほむらお姉ちゃん・・・
ちょっとは部屋の片付けしたほうがいいよ」
紅茶とお菓子をテーブルに並べてると
ゆまにいきなりそんな事を言われた
確かに散らかっているがこの前詢子さんと一緒に
掃除をしたから少しはマシになってるのに
ほむら「・・・内定を貰ったらするわ」
志望場所を決めたとは言え私は出遅れている
今はその遅れを挽回する為そういう事は後回しだ
ゆま「もうそんな事言って
こんな部屋鹿目君に見られたら
幻滅されちゃうよ」
ほむら「・・・なんでここでタツヤの名前が出てくるのよ」
ゆま「えっ!?いや、その、なんとなくだよ」
ほむら「?」
ゆま「そんな事よりちゃんと綺麗にしとかないと
男の子って自分は平気で服とか汚すくせに
女の子は綺麗好きじゃないとダメって
思ってるんだよ」
ほむら「・・・ゆまの好きな子もそうなの?」
ゆま「ううん、ショウ君は・・・って違うから!!」
ほむら「そう、ショウ君って言うのね」
以前、杏子からゆまには好きな子がいると
聞いていたが名前はまだ知らなかった
ゆま「違うからね、そんなんじゃないからね///」
ほむら「分かってるわよ」
真っ赤になりながら否定されても説得力は全然無い
取り合えずこの話はここで終わらせておこう
ほむら「はい。ゆまも見せて」
ゆま「えっと、はい」
指輪にしてたSGを宝石に戻して見せ合う
2つとも綺麗な輝きを放っていた
ほむら「うん、大丈夫見たいね
GSのストックはある?」
ゆま「10個くらいかな」
それだけあれば問題無いだろう
ほむら「常にそのくらいは残すようにしててね」
ゆま「・・・ねぇ、さっきの話なんだけど」
ほむら「分かってる、ショウ君は
唯のクラスメイトなんでしょ?」
ゆま「そう、唯のクラスメイトなの///」
本当に唯のクラスメイトと思っているなら
こんなに真っ赤になったりはしないだろう
ほむら「じゃあもしショウ君に告白されたらどうする?」
ゆま「ふぇっ!?えっと・・・///」
やっぱりゆまはその子に対して
特別な感情を持っているようだ
もう少し掘り下げて聞いてみたかったけど
ゆまはお使いがあると言って帰ってしまった
しかし余程焦っていたのかエコバックを忘れている
ほむら「あの子ったら、しょうがないわね」
まだそんなに遠くに行っていない筈だから
魔翌力を辿っていけば直ぐに追いつけるだろう
そう思い追いかけていくと何故か公園に着いた
ほむら「あれ?・・・タツヤ?」
とっさに物陰に隠れてしまった
ゆまはタツヤと一緒に鉄棒をしているのだ
ほむら「・・・楽しそう」
どんな話をしているのか分からないが
2人は楽しそうに会話をしていた
タツヤ「う~」
ゆま「ほら、もうちょっとで出来そうじゃん」
タツヤ「・・・もうちょっと、もうちょっとって
昨日からずっとそう言ってるじゃないか」
ゆま「昨日からずっともうちょっとなの
それとも途中で諦めるの?
そんな男の子、カッコ悪いな~
ほむらお姉ちゃんに言っちゃおっかな~」
タツヤ「!、頑張るから、頑張るからほむ姉に告げ口しないで」
ゆま「分かればよろしい」
そう言ってゆまさんは隣の一段高い鉄棒で
くるんと逆上がりをして得意気な顔を向けてくる
タツヤ(う~、見てろよ~)
クラスで逆上がりが出来ない子は
僕を含めて数人しか残っていない
出来る様になるのが最後になってもいい
だけど出来ないままなのは嫌だった
だから放課後、直ぐには家に帰らず
公園で秘密の特訓を始めたのだ
ゆま「腕が伸びちゃってるよ」
そして昨日、偶然ゆまさんに出会った
なんでも友達と見滝原町を探検してた時
公園で特訓してた僕を見つけたらしい
で、そのまま師匠になってあげると言われた
ゆま「う~ん、何がダメなんだろう?」
そう言ってゆまさんはまた隣で逆上がりをする
タツヤ「・・・」
今気がついたけどスカートをはいて
逆上がりなんてしたら
パンツを見られちゃうんじゃ・・・
ゆま「何?」
タツヤ「なんでもない///」
ゆま「・・・あ!今、パンツ見ようとしたでしょ
鹿目君のエッチ~」
タツヤ「し、してないよ」
ゆま「ホントに~?」
タツヤ「・・・ちょっと、気になったけど」
ゆま「やっぱり・・・じゃあこうしよう
逆上がりが出来る様になったら
1回だけパンツを見せてあげる」
タツヤ「え・・・駄目だよそんなの///」
ゆま「え~、私のパンツ見たくないの?」
ここで見たくないと言えば酷いと言われ
見たいと言えばエッチな子だと言われる
どう答えても僕は非難されるから答えにくい
ゆま「それとも・・・ほむらお姉ちゃんの下着が欲しい?」
タツヤ「へ!?」
ゆま「こっそり、取ってきてあげようか?」
ニヤニヤしながらゆまさんはそんな提案をしてきた
タツヤ「そんなの」
ゆま「あ、ほむらお姉ちゃん」
タツヤ「!?」
驚いてゆまさんが声をかけた方を振り向くと
ほむ姉が不安そうな顔でこっちを見ていた
ゆま「あっちゃ~、バレちゃったね。どうする?」
タツヤ「どうするって・・・」
僕がいい誤魔化し方がないか考えてると
ほむ姉はゆっくりとこっちにやって来た
ほむら「これ・・・忘れ物よ」
交互に僕達を見ながらゆまさんに
エコバックを渡すほむ姉
・・・なんだか今日は元気が無いなぁ
ほむら「何をしてるの?」
ゆま「えっと・・・鹿目君に
逆上がりを教えてもらってたの
ね?鹿目君」
タツヤ「え?」
ほむら「・・・そうだったんだ」
ほむ姉は何故かホッとした顔になる
でも直ぐに首を傾げた
ほむら「でも、さっき・・・」
ゆま「そうだ!鹿目君もう1回やってみせて」
タツヤ「!」
そんな事言われても急には出来ないよ
でもここで出来ないって言うと嘘がバレちゃうし・・・
ゆま「どうやるんだったっけ?
確か怖がらず逆手で鉄棒を
しっかりと持つんだよね?」
ゆまさんはウインクをすると
昨日教えてくれたアドバイスを
もう一度言ってくれた
ゆま「腕は伸ばさない様にして肘はしめる
脚はどうするんだったっけ?」
タツヤ「・・・かったぽは棒の前に出して
もうかたっぽは棒の後ろ」
言いながら自分の脚をその位置に持っていく
ゆま「後は怖がらず勢いよく跳ぶんだよね」
そうだ、怖がっちゃ駄目なんだ
怖がってたら絶対に成功しないんだ
タツヤ「見ててね、ほむ姉」
ほむら「?・・・うん」
深呼吸をして思いっきり跳ぶ
一瞬で景色が1回転した
タツヤ「出来た・・・出来た!」
ゆま「やっぱり鹿目君は上手だね
ね、ほむらお姉ちゃん」
ほむら「えぇ上手だわ」
タツヤ「あ・・・」
そうか、ゆまさんは僕の為に嘘を付いてくれたんだ
ゆま「あ、もうこんな時間だ
お使いもあるから今日は帰るね
バイバイ、鹿目君、ほむらお姉ちゃん」
タツヤ「え、待ってよ!」
止めようとしたけどゆまさんは
構わず走って帰ってしまった
タツヤ「あのね・・・ほむ姉」
正直に言わないといけない
ホントはさっきまで出来なかったと
教えてもらってたのは僕の方だと
そうしないとゆまさんを嘘付きにしてしまう
ほむら「・・・タツヤ、人を悲しませる嘘は絶対に付いちゃ駄目よ
でも人を喜ばせる嘘はちょっとだけならいいの」
タツヤ「え?」
ほむら「逆上がりが出来る様になって嬉しかった?」
タツヤ「・・・うん」
ほむら「じゃあ何も問題は無わね」
そう言ってほむ姉はニッコリと笑う
そうか、最初から分かってたんだ
やっぱりほむ姉は凄いや
ほむら「ところで、タツヤは、ゆまの事どう思う?」
タツヤ「?」
ほむら「ほら、可愛いとか、綺麗とか」
タツヤ「えっと、可愛い人だと思うよ」
ほむら「・・・そっか」
僕の答えを聞いてほむ姉はしょんぼりする
僕、何か悪い事言っちゃったかなぁ?
逆上がりが出来る様になって数日
今日は久しぶりにほむ姉が家に来てくれる
知久「いいかい?暁美さんは今大変な時期だから
わがまま言っちゃ駄目だよ」
タツヤ「うん」
ほむ姉の邪魔にならない様に今日は静かにする
もし肩叩きとか頼まれたら喜んでしてあげるんだ
タツヤ「あっ来た!」
インターホンが鳴ったので急いで玄関を開ける
タツヤ「いらっしゃい!ほ・・・」
ほむら「お邪魔します。・・・似合ってるかしら?」
ほむ姉は何故かゆまさんの様な髪型になっていた
今回は以上です。
今回出て来たショウ君ですが今後話に絡ませようと考えてます。
しかしオリキャラは出して欲しく無いという意見があると思うので
皆さんの意見を聞かせてもらえませんか?
大変遅れてすみません。
>>503の続きを投稿します。
今回はほむほむと仁美の話です。
仁美「暁美さん、何を読んでるんですか?」
ほむら「へ!?別に」
仁美「もう隠さないで下さいよ、えいっ」
ほむら「あっ、ちょっと」
仁美「・・・これは!!」
志筑さんは私から取り上げた雑誌を
宝物を見つけた子供の様に見つめだす
ほむら「ほら、面接とかの事も考えたら
そろそろ髪を切った方がいいかなって
これには髪型とかも載ってるし」
仁美「誰なんですか!暁美さんの心を射止めた方は!」
ほむら「いや、だから」
仁美「暁美さんがオシャレを気にする様になるなんて
ああ、今日は何て素敵な日でしょう!」
ほむら「志筑さん、声が大きい」
志筑さんは気付いてないが彼女の声を聞き
周りの皆はこっちを注目しだしていた
仁美「でも、この雑誌に載っているものは
正直言って・・・勧め出来ませんね」
ほむら「えっ、そうなの?」
雑誌を捲りながら難しい顔をする志筑さんに
思わず聞き返してしまった
仁美「そうですわ!今日の放課後
私のお勧めの店に行きません?
そこなら可愛い服が沢山ありますよ」
ほむら「いや、でも・・・」
確かに可愛い服も欲しいと思っている
だけど今はそんな余裕は無いし・・・
仁美「たまには息抜きもしないと
ノイローゼになってしまいすわ
それに店員さん達の髪型も
参考になると思いますし
直接アドバイスも頂けるんですよ」
手探り状態の私にとってプロの人達から
直接アドバイスを貰えるのは魅力的だ
仁美「ねぇ行きましょうよ~」
ほむら「・・・うん」
誘惑に負けてとうとう頷いてしまった
仁美「これなんかいいと思いません?」
志筑さんが指差しているのは明るい色合いのワンピース
何となくまどかが気に入りそうな服だと思った
ほむら「・・・ちょっと合わせてみようかしら」
仁美「せっかくなんで試着しましょうよ」
そう言って試着室に引っ張っていく志筑さん
制服だから着替えるのは大変だと思ったが
実際に着てみるとそんな考えは直ぐに消えた
ほむら(・・・可愛い)
よく大人びていると言われる自分が
歳相応か年下の様に見えた
仁美「素晴らしいですわ。これ買いましょ」
頷きながらワンピースの値段を確認する
しかしそこで愕然となってしまった
ほむら「やっぱり止めとくわ」
仁美「えっ、どうしてですの?」
ほむら「とてもじゃないけど手が出ないわ」
新作だからある程度は覚悟してたが
それでも高過ぎる
仁美「それなら私が出しますよ」
ほむら「それは止めて!」
笑顔で財布を取り出す志筑さんに対して
少し強く言ってしまい驚かせてしまった
仁美「私の事は気になさらなくても」
ほむら「ホントにいいの。それに探せばもっといい服が
見つかるかも知れないでしょ?」
そう言って着替え、ワンピースを元の位置に戻す
少し未練はあるけどこればかりはしょうがない事だ
何件か周った後、今週新しくオープンした
喫茶店に行ってみると少し行列が出来ていた
ほむら「他のとこにする?」
仁美「う~ん・・・暁美さん、悪いんですけど
ここに並んでいて貰えませんか?
私ちょっとお花を摘みに行って来ますから」
ほむら「うん、分かったわ
・・・あっ、お店のを使わして貰えば」
呼び止め様としたが既に志筑さんは小走りで
遠くまで行ってしまっていた
ほむら(よっぽど我慢してたのかな)
そう思いながら店員さんから貰った
アドバイスをまとめたメモ帳に目を通し
時間を潰す事にした
行列があったので待たされると思っていたけど
丁度入れ替わりのタイミングだったらしく
10分後には店内に案内して貰えた
志筑さんに店に入れたとメールで伝え
待つこと更に数分、彼女が店に入って来た
ほむら「志筑さん、こっちこっち。・・・え?」
仁美「お待たせしました」
ほむら「志筑さん、それ」
仁美「どうしても暁美さんにこの服を着て貰いたくて
遂、買っちゃいました」
悪戯が見つかった子供の様に笑う志筑さん
それとは対照的に私は沈んだ表情になってしまう
ほむら「どうしてこんな事を?」
彼女とは対等な友達で居たかった
でもこれではとても対等とは言えない
仁美「私の事は気にしないで下さいまし」
ほむら「でもこれじゃあ私は貴女にたかってるようじゃない」
仁美「誰もそんな風に思いませんよ
それに私があげたいと思ったから買ったんです」
ほむら「じゃあ何でそう思ったの
私に同情したからでしょ?」
仁美「違います。ただ・・・」
言葉を慎重に選んでいる志筑さんを見てると
余計に彼女が私を同情している様に思えてしまう
志筑さんは私が魔法少女だと知っている
家に多額のローンがあるのも知っている
だからこそ同情してしまったのだろう
でも!
ほむら「私は、貴女には同情されたくなかったのに」
仁美「・・・私の気も知らないで
勝手に決め付けないで下さい!」
ほむら「っ、貴女のそんな気持ちなんて知りたく無かったわ!」
志筑さんに負けじと強く言い返し
そのまま店を飛び出してしまった
ほむら「うっ・・・うぅ」
走りながら涙を拭う
でもどんなに拭いても止まらずでてくる
今までの思い出が偽物の様な気がして
志筑さんとの友情を失った様な気がして
仁美「・・・」
暁美さんと喧嘩してしまい
途方に暮れながら帰路につく
私が余計な事をしなければ
楽しい一日になる筈だったのに
どうしてあんな事を・・・
タツヤ「あの、すみません」
仁美「?」
振り返れば小学生くらいの子が
不安そうにこちらを見上げていた
仁美「どうしましたの?」
タツヤ「道を、教えてくれませんか?」
仁美「いいですわよ。どちらへ行きたいんですの?」
タツヤ「えっと」
仁美「そのメモ見せてくださいます?」
メモ用紙には簡単な地図と店の名前
そこで買う物が書いてあった
仁美「この店ならこちらの道ですね」
手を繋いで少年を案内しようとした時
ふと彼を見つめてしまった
タツヤ「?」
初めて会った筈の少年
だけど何故か懐かしい気がする
仁美「あの、お名前を教えていただきませんか?」
タツヤ「僕、鹿目タツヤです」
仁美「鹿目・・・」
珍しい名字だから忘れる訳がない
やはり勘違いなのだろうか
タツヤ「お姉さん、どうしたの?」
仁美「いえ、何でもありません。さぁ行きましょ」
お店に向かう途中タツヤ君はずっと緊張していた
知らない人に手を繋がれているのだから無理もない
仁美「はい、着きましたよ。帰り道は分かります?」
タツヤ「えっと・・・はい」
地図を確認して少し不安そうな返事をするタツヤ君
タツヤ「あ、ありがとうございました」
仁美「どういたしまして。それでは御機嫌よう」
これでタツヤ君とはお別れだ
日常ではよくある出会いと別れ
だけど彼の言葉が耳に入ってきた
タツヤ「ほむ姉、喜んでくれるかな」
仁美「え?」
以前、暁美さんから聞いた事がある
お世話になっている家の少年が
自分の事をほむ姉と呼んでいると
仁美「・・・」
タツヤ君とその家族は暁美さんの知り合い
彼らは暁美さんの秘密を知っているのだろうか?
もし知っているなら自分と同じ不安を
彼らも抱えているのだろうか?
知久「お帰りタツヤ・・・そちらの方は?」
仁美「志筑仁美と言います。暁美さんのお友達です」
タツヤ「・・・僕、迷子になっちゃって
志筑さんに案内してもらったんだ」
知久「そうだったんですか
ありがとうございます。良かったら中へ」
仁美「お邪魔します」
タツヤ君を家まで案内するという名目で
とうとうここまで来てしまった
知久「タツヤ、暁美さんへのプレゼントは
ちゃんと買えたのかい?」
タツヤ「うん!」
仁美「それ暁美さんにプレゼントするんですの?」
タツヤ「うん。ほむ姉はね、今勉強頑張ってるんだ
でもね頑張り過ぎてちょっと疲れてるの
だからこれでリラックスしてもらうんだ」
タツヤ君が買っていたのは
色んな種類のアロマキャンドル
専門店の物なので効果も大きい筈だ
タツヤ「志筑さんにも1個あげるね」
笑顔で包みを渡してくれるタツヤ君を見て
また懐かしい気持ちになってくる
仁美「ありがとうございます、タツヤ君」
何故こんな気持ちになるか分からない
でも暁美さんがこの家に来たくなる
気持ちは何となく分かった気がした
仁美「暁美さんとはどうやって知り合ったんですの?」
タツヤ「ほむ姉が僕の絵を褒めてくれたんだ」
仁美「じゃあタツヤ君の将来は画家さんですわね」
タツヤ「ううん。僕は父さんみたいになるんだ」
紅茶の準備をしているお父様の方を見ながら
自信満々に答えるタツヤ君
仁美「そうなんですか。素敵なお父様ですものね」
タツヤ「うん。父さんみたいになって
頑張るほむ姉を支えてあげるんだ」
その言葉を聞いてタツヤ君が暁美さんに対して
淡い気持ちを抱いているのに気付けた
タツヤ「あの・・・ほむ姉は学校で僕の事、何か言ってた?」
仁美「?」
タツヤ「ほら、何て言うか、その・・・」
どうやら暁美さんが自分の事をどう思っているか
私から聞き出そうとしているらしい
仁美「暁美さんは休み明けには何時も
貴方の事を楽しそうに話してくれますよ」
タツヤ「ホント!」
仁美「えぇ」
タツヤ「えへへ///」
知久「良かったね、タツヤ」
タツヤ君もお父様の方も
暁美さんの秘密を知らない様だ
純粋に暁美さんの事を慕うタツヤ君
それを温かく見守るお父様
2人からは私と同じ不安は一切見られない
タツヤ「どうしたの?」
仁美「いえ、何でも
タツヤ君は暁美さんの事が
大好きなんですね」
タツヤ「うん!志筑さんもそうでしょ?」
仁美「・・・」
直ぐに答えられなかった
暁美さんの本当の友達なら直ぐに頷ける質問なのに
タツヤ「もしかして・・・ほむ姉と喧嘩しちゃったの?」
仁美「・・・はい」
タツヤ「どうして?」
知久「こら、タツヤ」
仁美「いいんですよ。悪いのは私なんですから
・・・私、もう帰りますね」
重い空気を作ってしまい
逃げる様に帰ろうとしてしまう
そんな私をタツヤ君は呼び止めた
タツヤ「あの・・・志筑さんはほむ姉の事
嫌いになっちゃったの?」
仁美「いいえ、大好きです。大切な友達ですもの」
大切な友達だから余計に不安だった
何時か暁美さんもさやかさんの様に
居なくなってしまうんじゃないかと
明日にはもう会えないんじゃないかと
タツヤ「じゃあ直ぐに仲直り出来るよ
だってほむ姉も志筑さんの事が
大好きだもん。ね?父さん」
知久「志筑さん、この子の言う通り暁美さんも
貴女の事を大切な友達だと思ってますよ
家で学校の話をしてくれる時
楽しそうに貴女の事も話してくれますから」
仁美「・・・そうなんですか
そう言って貰えて本当に嬉しいです」
知久「それにお互い思う事があって喧嘩になったのなら
どちらか一方が悪いなんて事はありません
本音を言い合うのも時には必要な事だからね」
仁美「あ・・・」
私はまだ暁美さんに自分の本音を伝えていない
私も彼女にちゃんとを伝えないと
仁美「・・・私、今から暁美さんの所に行きます」
タツヤ「うん、早く行ってあげて
ほむ姉は寂しがり屋だから
志筑さんが来てくれたら
凄く喜ぶと思うよ」
知久「あ、自分の事は棚に上げて
そんな事言う様になったのか」
タツヤ「だってホントの事だも~ん」
暁美さんの秘密を知らなくても
この人達は暁美さんを理解している
何時か秘密を打ち明けられたとしても
変わらず彼女を支えてくれるだろう
仁美「タツヤ君」
タツヤ「?」
暁美さんを大好きだと言ったタツヤ君
もしかしたら彼こそが彼女の
運命の人なのかも知れない
仁美「頑張って下さいね」
でも、まだ認めれません
大切な友人を任せれるかどうか
今後じっくりと拝見させていただきます
仁美「それでは、また」
名残惜しいけれど大丈夫
きっとまたこの家に来れる筈だから
ほむら「・・・あ」
時計を見ればもう8時になろうとしていた
志筑さんと喧嘩して泣きながら
マンションに帰りそのままベットに
伏して寝てしまっていた様だ
早く晩御飯の準備をしないと
ほむら「・・・」
しかし何もやる気が起きず
志筑さんの事ばかりを考えてしまう
自分があんな癇癪を起こしたばかりに
彼女を酷く傷つけてしまった
彼女の好意を何であんな風に
捉えてしまったのだろう
っとインターホンが鳴った
仁美「暁美さん、開けて下さいます?」
ほむら「志筑さん?どうして」
仁美「どうしても今日中に伝えておきたくて
先ほどはすみませんでした
暁美さんの気も知らずに
勝手な事をしてしまって
でも、1つだけ訂正させて下さい
私は決して同情してる訳じゃありません
・・・暁美さんは魔法少女として
この町を守ってくれてます
でも、何時かさやかさんの様に
居なくなったらと思うと
私、不安で、仕方なかったんです」
言いながら志筑さんは涙を流し始めた
仁美「朝、暁美さんの顔を見る度に
心の底から安堵しています
でも放課後、さよならを言う度に
身を裂かれる様な思いに襲われるんです
だから今日をとても楽しい1日にしたくて
暁美さんの喜ぶ顔がもっと見たくて・・・」
ほむら「あぁ、ごめんなさい、志筑さん
貴女は私の事を・・・」
私も涙を流しながら謝る
志筑さんの気持ちも知らず酷い事を言ってしまった
私は何て愚か者なのだろう
仁美「謝らないで下さい
暁美さんは何も悪くないんですから」
ほむら「ううん、私が悪かったわ」
仁美さんの気持ちは痛いほど分かる
私も昔、仁美さんと同じ様に
まどかと巴さんの安否を気づかっていた
あの時の辛さや苦しさを忘れて
勝手に仁美さんを疑うなんて最低だ
ほむら「ごめんなさい、ごめんなさい志筑さん」
仁美「もういいんです。誤解が解けたんですから
だからこれからも私の友達で居てくれますか?」
ほむら「勿論よ。何時までも私の友達で居てね」
偽物なんかじゃないんだ
仁美との友情も思い出も決して偽物なんかじゃないだ
仁美「・・・これ、貰ってくれますか?」
ほむら「うん、ありがとう」
仁美「ふふっ、暁美さんが泣いてるところを見るの
これで2回目ですわ」
恥ずかしいけど別に構わない
志筑さんは私の友達なんだから
まどか「ぷくぅ」
さやか「もう、そんなにむくれなくていいでしょ
さっきまで『仲直りして~』って
言ってたのにあんた手の平返すの早すぎ」
まどか「・・・だって」
さやか「ほら、行くよ」
まどか「ぷぅ」
今回は以上です。
皆さんは先日出たまどマギ4コマVol.2は買いましたか?
この巻にはタツほむがあってとても楽しめました。
保守
新作では仁美もスポットあたるっぽいから、人柄も多少はわかるかな?
早く上映してほしいぜ。
タツほむ要素がちょっとでもあれば、尚嬉しい
ほむら「お邪魔します」
知久「いらっしゃい。今日は気合が入ってるね」
ほむら「はい、本番のつもりで来いって言われたんで」
明日はいよいよ採用試験の日
今日は面接の練習をする為に鹿目邸へやって来た
知久「その髪型とっても似合ってるよ」
ほむら「ありがとうございます」
面接に備え髪を切り久しぶりに3つ編みにしてみた
昔と違い高い位置に1つだけしか作ってないので
大人の雰囲気を出せるしまどかのリボンも使える
腰まであった髪を短くするのは少し勇気が必要だったけど
新しい髪型を褒めてもらえて嬉しい
ほむら「タツヤは?」
知久「自分の部屋で勉強してるよ
邪魔しない様に気を使ってるみたい
呼んで来ようか?」
ほむら「・・・いえ。私も勉強させてもらいますね」
少し寂しいけど気を使ってくれてるんだから私も我慢しよう
知久「テーブル使っていいよ。コーヒー淹れるね」
テーブルに座ろうと思ったけど
美味しそうな匂いに釣られキッチンを見てしまう
豪華な食事の下準備がしてあった
ほむら「美味しそうですね。でも量が多くないですか?」
知久「今日はこのぐらい必要なんだ」
ほむら「?」
知久「すぐに分かるよ」
詳しくは教えてもらえなかったが
詢子さんが帰って来た時、その答えを知る事になった
詢子「ただいま~。お、髪切ったんだ
いいじゃんその髪型」
ほむら「お帰りなさい、詢子さん・・・こ、こんにちは!」
思わず立ち上がって挨拶をしてしまった
詢子さんの後ろに見知らぬ人達が居たのだ
詢子「驚いた?ほら、あんた達も挨拶しな」
言われて順番に挨拶を始める3人
皆、詢子さんの会社に勤めている人らしい
ほむら「えっと・・・どういう事ですか?」
詢子「言ったろ、本番のつもりで来いって
面接官は初めて会う人なんだから
私や知久がやったって意味無いだろ?
だからこの子らにやってもらうの
高校の時とはひと味違うんだから
このくらいはしないとねぇ」
ほむら「じゃあ、わざわざ私の練習の為に
来てもらったんですか?
あ、あの、ありがとうございます」
詢子「そんな事気にしなくていいの
晩御飯に釣られて来た様なもんだから、な?」
照れながら笑顔を向けてくれる3人
ほむら「でも、やっぱりお礼を言わせて下さい
私、頑張ります!」
詢子「じゃあさっそく練習始めようか
ここを面接会場にするから
ほむらちゃんは2階に上がって
呼ばれるの待てって」
ほむら「は、はい」
私と詢子さんの会話を聞きながら
あれっ?と言う顔になる3人
多分、私を詢子さん娘と勘違いしてるからだろう
詢子「この子は私の娘じゃないの
未来じゃ分かんないけどね」
ほむら「///」
詢子さんは疑問に答えたつもりみたいだけど
3人は余計に混乱してながら私を見る
その視線に耐え切れなくなって
顔を真っ赤にしながら2階へ逃げてしまった
面接の練習を沢山した後
知久さんが用意してくれた夕食を皆で取る
だけど食事中、私は3人からの質問攻めにあった
やっぱり私とこの家の関係が気になってるみたい
詢子「ほほう、上司の家に来て
そこに居る娘にちょっかいかけるとは
お前らも偉くなったもんだな~」
タツヤ「・・・ぷくぅ」
時々詢子さんは戒めているのか
煽っているのか分からない様な事を言うので
タツヤがどんどん不機嫌になっていく
知久「ちょっと飲みすぎだよ詢子さん」
詢子「いいじゃん。前祝だよ、前祝」
今日の詢子さんは本当に楽しそうにお酒を飲んでいた
それから話題はタツヤの事に移りしばらく談笑が続く
その頃には大分お酒が回ってきたのか
詢子さんはウトウトしだし、とうとう寝てしまった
料理も殆ど無くなったのでそのままおひらきとなった
ほむら「あの、今日は本当にありがとうございました」
社員「明日、頑張ってね」
お礼を言って3人を見送った後
片づけを手伝う事にする
知久「片付けは僕がやっておくからいいよ」
ほむら「でも」
知久「今日は面接の練習で疲れてるし
もうお風呂に入って休まないと」
タツヤ「ほむ姉、明日は僕が起こしてあげるからね」
ほむら「・・・じゃあお言葉に甘えようかしら」
タツヤ「うん、ゆっくり休んでね」
さっきまで不機嫌だったのが嘘の様に
タツヤは明るい顔になっている
ほむら「ねぇタツヤ、今日は久しぶりに一緒に入る?」
タツヤ「えっ!?・・・///」
顔を真っ赤にしながら食器を洗い始めるタツヤ
ほむら「もう、照れなくてもいいのに」
ホントに一緒に入りたかったけど
あの様子だとどうやら駄目みたい
そんな私達のやり取りを見て
知久さんはクスクスと笑い出す
ほむら「どうしたんですか?」
知久「いや、そういう所が詢子に似てきたなぁって」
ほむら「え?」
知久「今日、詢子さんの機嫌が良かったのも
部下の人達に暁美さんと似てるって
言ってもらえたからかも知れないね」
ソファで気持ち良さそうに
寝息を立てている詢子さんを見る
私を本当の娘の様に思ってるからこそ
ここまでしてくれたんだろう
ほむら「私、絶対に合格します」
知久「うん、その意気だよ」
お風呂からあがり知久さんとタツヤに
お休みを言って部屋に入る
QB「調子はどうだい?」
ほむら「・・・何時から居たの?」
QB「ついさっき来たとこさ
ゆまは無事に家に帰ったよ」
ほむら「そう、良かった」
ゆまは私が本番に備え万全の体調でいられる様に
今日はこの町も守ると言ってくれたのだ
ほむら「あの子が受験する時は
私が代わってあげないとね」
QB「報告も済んだし僕はもう行くよ」
ほむら「・・・ねぇ」
QB「?」
ほむら「私、合格出来ると思う?」
QB「どうしたんだい急に」
ほむら「参考までに聞いておきたいの
貴方ほど客観的な評価を下すのに
最適な存在はいないから」
沢山の人に心配をかけ手助けして貰った
ここまでしてもらったんだから
何としてでも合格してみせる
でも不安な気持ちは僅かながらある
QB「ほむら、君は同年代の娘に比べて
容姿は整っているし知識も深い
普段通りの力を出せばきっと合格する筈さ
自信を持って試験に臨めばいい
だけど君と同じ様に努力してる娘も居る
慢心はしない様にね」
月並みな言葉だがこいつが言うと妙に説得力がある
ほむら「ありがとう、少し安心したわ。・・・何?」
QB「いや、君が僕にありがとう何て言うからね」
確かにこいつに感謝するなんて私らしくない
ほむら「ふふっ、滅多にないから光栄に思いなさい」
もしかしたらこいつに対する憎しみも
この数年で大分薄れて来たのかも知れない
深夜、目が覚めてしまったので
水を飲もうと1階に下りた
居間は電気を点けなくても
ベランダから射し込んでくる
月と星の光に照らされ十分明るかった
ほむら「・・・」
何となくベランダを開けて外へ出て
雲1つ無い星空を見上げる
ほむら「綺麗」
しばらく星空を眺めていると
誰かが階段を下りてくる音が聞こえてきた
タツヤ「ほむ姉?寝てないと駄目だよ
明日起きれないよ」
ほむら「ちょっと目が覚めちゃって
もう少し星を見たら寝るわ」
タツヤ「う~ん、でも・・・」
ほむら「タツヤもこっちに来てごらん。綺麗よ」
仕方ないといった感じで隣に座るタツヤ
しかし星空を見て顔を輝かせた
タツヤ「わぁ~!本当に綺麗だ」
ほむら「でしょ?あの大きな星が北極星
ひしゃくみたいな形を作ってる
7つの星が北斗七星よ」
タツヤに星座を教えてあげながらふと思う
こんな風に夜空を眺める事も出来ないくらい
追い込まれていた時期が私にはあったのだ
あの時の事を思えば今は何も不安がる必要は無い
今は沢山の人が私を支えてくれているのだから
ほむら「・・・」
でも余計な事も考えてしまった
もしあの時にも私を支えてくれる人が傍に居たら
誰にも頼らないなんて言わず誰かに助けを求めたら
今とは違う未来を歩んでいたのだろうか、と
タツヤ「どうしたの?」
ほむら「・・・ううん、何でもない」
この考えは2度としてはいけない
まどかの起こした奇跡を否定する
そんな事は絶対にしてはならないのだ
ほむら(ごめんね、まどか
もう2度とこんな考えはしないわ)
ほむら「・・・そろそろ寝ましょうか」
タツヤ「うん」
ほむら「そういえばタツヤの感想は
まだ聞いてなかったわね」
タツヤ「何の事?」
ほむら「せっかく髪型を変えたのに
気付いてくれなかったんだ」
タツヤ「あっ!とっても似合ってるよ」
ほむら「似合ってる?私はもうとっくに
髪をほどいてしまってるわよ?」
タツヤ「うっ・・・じゃあ明日の朝一番に言うから」
ほむら「ふふっ、よろしくね」
私は今優しい日々を送っている
まどかがくれたこの世界でこれからも生きて行く
だからもうやり直したいとは考えない
今回は以上です。
私はほむほむはOLになると思っていますが
皆さんはどんな職業に就くと思いますか?
大分遅れてすみません。
>>570の続きを投稿します。
ほむほむの職業に関してはやっぱり色んな意見が出ますね
それだけ自由度の高いキャラクターって事なんですかね
気の緩みは確かにあった
内定を貰い少し浮かれもしていた
だけどまさかあんな事になるなんて
思いもしなかった
ゆま「ほむらお姉ちゃん、前にお仕事決まったら
掃除するって言ってたよね?」
SGの状態を確認しに来たゆまは
ジトーっと私を見ながらそんな事を言い出す
ほむら「・・・いいでしょ、もうちょっと休んだって」
ゆま「も~しょうがないなぁ」
そう言いながらリビングに散乱してる
洗濯物を集め始めるゆま
ほむら「あ、いいってば」
ゆま「だってほっといたら
絶対片付けないでしょ?」
ほむら「そ、そんな事ないわ」
ゆま「嘘だね。杏子もそうだったもん
後でやる、後でやる~ってか言って
結局私がやるまでな~んにもしなかったんだよ」
ほむら「分かった。分かったから」
しぶしぶゆまに従い部屋の片付けを始める
別にそこまで酷く散らかってる訳じゃない
ゴミだって溜めずにちゃん出してるし
毎日じゃないけど掃除機もちゃんとかけているのに
ゆま「服は部屋に投げとくんじゃなくて
直ぐに洗濯する、いい?」
ほむら「・・・はい」
ゆま「も~、ペットボトルは燃えるゴミに
入れちゃ駄目だよ」
ほむら「・・・はい」
ゆま「それに見えるとこにしか掃除機かけてないし
こんなんじゃ掃除してるなんて言えないよ」
ほむら「・・・はい」
ゆまはあれこれ言いながらも
楽しそうに掃除をする
逆に私はさんざん駄目だしを受け
少し凹んでしまった
ゆま「とりあえずこのくらいかな」
ほむら「ありがとう、手伝ってくれて」
ゆま「今度からはちゃんと1人でしてね
あ~あ、疲れちゃった」
ほむら「そう言う割には随分楽しそうだったわよ」
ゆま「だって綺麗にするのって楽しいでしょ?
私なんて毎日自分の部屋の掃除をやってるんだよ」
ほむら「まぁ確かにすっきりするけど・・・」
でも毎日するとなると話は別だ
ゆまは相当綺麗好きなんだろう
そう言えば巴さんも綺麗好きだったなぁ
ゆまが帰った後自分の寝室を見る
こっちも少し散らかっていた
ほむら「・・・明日でいっか」
今日はもう誰も来ないし
リビングは綺麗になってるんだから
別に焦ってする必要は無いし
そう思っていると電話が鳴った
ほむら「もしもし。あらタツヤ、どうしたの?」
タツヤ「ねぇほむ姉、エイミーそっちに居る?」
ほむら「エイミー?ちょっと待っててね」
ベランダを見てみるとエイミーは
何時もの場所でのんびりと寛いでいた
ほむら「うん居るわ。ベランダで日向ぼっこしてる」
タツヤ「ホント!じゃあ今から遊びに行ってもいい?」
ほむら「?、いいわよ」
タツヤ「やったー。直ぐに行くから待てってね」
タツヤはエイミーに何か用があるのかしら
まぁ最近は私に気を使って遊びに来なかったから
久しぶりに一緒に遊びたいのかな
ほむら「エイミー、タツヤが来てくれるって」
そう言いながらベランダに居た
エイミーを抱えてお風呂場に連れて行く
猫は基本的にシャワーを嫌がるらしいけど
エイミーは特に嫌がったりしない
ほむら「貴方は結構変わり者よね」
タツヤが来るまでに身体をしっかり洗ってあげようかな
タツヤ「ほむ姉、エイミー、来たよ~」
ほむら「いらっしゃいタツヤ。どうしたのそれ?」
タツヤ「学校で作ったんだ」
そう言ってタツヤは持って来た
ポリ袋から猫じゃらしを取り出す
ほむら「それでエイミーに会いたかったのね」
タツヤ「ううん、それだけじゃないよ
エイミー、ほら何かしゃべって」
ほむら「?」
猫じゃらしをふりふりさせながら
エイミーに話しかけるタツヤ
当然、エイミーはしゃべらない
タツヤ「しゃべったらお菓子あげるよ~」
・・・こういう時はどうすれば良いんだろう
エイミーは猫だからしゃべれない
でもそれをそのまま伝えるのも何だか気が引けるし
とりあえずタツヤがどうしてエイミーと
会話したいと思ったのか聞いてみようかな
ほむら「・・・タツヤはエイミーとお話がしたいの?」
タツヤ「うん!知ってるほむ姉?しゃべる猫の話」
ほむら「しゃべる猫?」
タツヤ「うん。子供に話しかけてくる野良猫が居るんだって
それってしゃべれる猫も居るって事だよね
エイミーも賢いからきっとしゃべれると思うんだ」
学校の七不思議か何かかな
ほむら「う~ん、私もよくエイミーと遊ぶけど
しゃべったところは見た事無いから
多分、エイミーはしゃべれないんだと思うわ」
タツヤ「えっ・・・そうなんだ」
しょんぼりしだすタツヤ
何とかフォローをしてあげないと
ほむら「でも、エイミーが考えてる事は分かるわ」
タツヤ「ホント!」
ほむら「うん。タツヤと居ると楽しいって思ってるわ
だってこんなにも嬉しそうじゃない」
タツヤ「そうかな」
ほむら「そうよ。しゃべる事は出来ないけど
きっとありがとうって伝えたい筈よ」
私の言葉を聞いて笑顔になりながら
エイミーを撫でるタツヤ
うん、やっぱりエイミーも嬉しそうだ
ほむら「ところでそんな話誰から聞いたの?」
タツヤ「TVで巴さんが言ってたんだ
昔しゃべる白い猫に会った事があるって
他にもいっぱい見た人が居るんだって
ゆまお姉ちゃんも会った事があるって言ってた」
ほむら「・・・」
タツヤ「学校でもすっごく流行ってるんだよ
しゃべる猫ってキャラクター」
そう言ってキーホルダーを見せてくるタツヤ
真っ白な身体に大きな耳とぱっちりとした赤い目
・・・どう考えても奴を連想させるデザインだった
ほむら「これ・・・巴さんがデザインしたの?」
タツヤ「うん。巴さんが描いた絵が元なんだよ」
犯人はあの2人か
さっき褒めて損した気がする
ほむら「でも、タツヤはそんな猫より
エイミーの方がいいわよね」
タツヤ「うん。エイミーの方が可愛いもん」
それでいい
しゃべる猫への興味は早く無くして欲しい
タツヤ「エイミー、ほらお菓子だよ~」
持って来たお菓子の袋を開け様とするタツヤ
でも固いのか中々開ける事が出来ない
っと勢い余ってこぼしてしまった
タツヤ「あっ、ごめんほむ姉」
ほむら「いいのよ、今度から気をつけてね」
お菓子がこぼれた箇所に掃除機をかけてると
その様子をタツヤは関心しながら見ていた
ほむら「どうしたの?」
タツヤ「ほむ姉はお母さんと違って綺麗好きなんだね」
ほむら「えっ?」
タツヤ「お母さんって結構だらしないとこあるから
ほむ姉もそうかなって心配だったんだ」
ほむら「・・・えぇ、掃除とか大好きよ」
以前ゆまが言ってた事を思い出す
やっぱり綺麗好きだと思われていたい
・・・何だかエイミーが私に対して
疑いの眼差しを向けている気がするが
きっと気のせいだろう
タツヤ「ん、どこ行くの?エイミー」
ほむら「!?」
タツヤを案内する様に
エイミーが向かったのは私の寝室
タツヤ「ここに入りたいの?」
ほむら「タツヤ!女性の寝室に
許可無く入っちゃ駄目よ」
極力平静を装いながら注意を促す
流石に綺麗好きと言った手前
あの部屋はとても見せられない
タツヤ「だってさ。こっちおいで」
エイミーを抱えあげようとするタツヤ
しかしエイミーはドアノブに飛びついてしまう
タツヤ「こら、駄目だって」
ほむら「ま、待って!」
タツヤはエイミーを引き剥がそうとするが
エイミーはドアノブはしっかり掴まっている
体重がかかり少しドアノブが回った
ドアを引いてしまったら・・・
タツヤ「あれ・・・」
少しドアが開いたところでタツヤは動きを止めた
そこで踏み止まってくれたら良かったのだが
部屋を見たいと言う興味には勝てなかったのだろう
そのままドアを開けてしまった
タツヤ「・・・」
ほむら「か、片付け様とは思っていたのよ
でも試験勉強とか色々あって
それどころじゃなかったの!」
タツヤ「ほむ姉」
ほむら「な、何?」
タツヤ「・・・嘘は良くないよ」
その日私は、タツヤの信頼を大分失ってしまった
今回は以上です。
3連休を貰えたので次回は早めに投稿出来そうです。
早めに投稿すると言ったのに遅れてすみません。
>>593の続きを投稿します。
仁美「暁美さん、今日はどうしたんですか?
あまり元気が無い様に見えますけど」
ほむら「気にしないで。ちょっと考え事をしてるだけだから」
仁美「考え事ですか?」
志筑さんはもう少し詳しく説明して欲しそうだけど
散らかってる寝室を見られて幻滅された
なんて恥ずかしくてとてもじゃないが話せない
ほむら「そうだ。志筑さんは上条さんと付き合い始めて
驚いた事とかある?」
仁美「と言いますと?」
ほむら「ほら、部屋が散らかっててビックリしたとか」
仁美「う~ん、そうですねぇ・・・
恭介さんはクラシック以外の音楽には
あまり興味が無いみたいで
流行の曲を全然知らないと言われた時は
驚きましたね」
ほむら「へぇ、そうなんだ」
仁美「ですからカラオケに行っても
あまり歌ってくれないんですよ
それで申し訳なくなって
『見てるばかりじゃつまらないですよね』
って聞いてみた事があるんです」
ほむら「彼はなんて?」
仁美「恭介さんったら少し照れながら
『仁美さんの歌ってる姿を
見てるだけでとても楽しいよ』
って言ってくれたんです///」
ほむら「・・・」
信頼を取り戻す方法のヒントにならないかと
志筑さんに質問した筈なのに
何時の間にかノロケ話になっていた
仁美「それでですね、じゃあデュエットで・・・」
ほむら「ああ、うん」
こうなると志筑さんの話は長い
まぁ今回は私から聞いてしまった訳だし
大人しく予鈴がなるまで付き合おう
ほむら「でも・・・歌か」
私も流行の曲をあまり知らない
鹿目家の人達の前で歌を歌った事も無い
人は他人の意外な一面を見ると
関心すると聞いた事がある
もしタツヤの好きな歌を上手に歌えたら
少しは見直してもらえるかなぁ
ほむら「・・・ねぇ、志筑さん」
1週間後
タツヤ「・・・はぁ」
詢子「どうした、タツヤ?
今日はほむらちゃんが来てくれるんだぞ」
コーヒーを飲みながら母さんが尋ねてくる
お化粧もバッチリしてるしスーツもきちっと着ている
こんな母さんを友達や友達のお母さん達は
カッコイイと褒めてくれるし僕も昔はそう思ってた
でも朝に弱かったり、お酒を飲みすぎて酔っ払った姿を
何度も見ている内にそうは思えなくなってきた
詢子「ジロジロ見るなよ。あっ、もしかしてようやく
母親がトップクラスの美女だと気付いてくれたのか?」
ほむ姉も母さんみたいになっちゃうんだろうか?
それは、ちょっと嫌だなぁ
タツヤ「・・・はぁ」
詢子「・・・母親の顔を見てため息を付くとは
どうやら教育的指導が必要みたいだね」
タツヤ「えっ?違うよ、母さんに対してじゃなくて」
詢子「うるさい、こうだ!」
タツヤ「や、止めて、くすぐったいよ」
最近、母さんが得意としている擽り攻撃
僕はこの攻撃が苦手だ
詢子「どうだ?参ったか?」
タツヤ「ごめんなさい、ゆるして~」
詢子「よーし・・・っと油断させてぇ~」
タツヤ「わぁ、助けてぇ!、父さん」
知久「ははっ、2人とも朝から元気だね
学校に行くと放送委員の友達が
自慢そうに何かを見せびらかしていた
タツヤ「おはよう。それ何?」
男友達「ふふ~ん、巴さんのベストアルバム
ほら、ライブの写真も付いてるんだよ」
タツヤ「えっ!?いいな~」
男友達「給食の時間に流すから楽しみにしとけよ~」
巴さんは凄く人気のある芸能人
僕のクラスにもファンが大勢いる
女友達「そう言えば鹿目君もCD持ってるんだよね?」
タツヤ「えっ・・・うん」
男友達「なんだ、早く言えよ。何のCD?」
タツヤ「・・・演歌」
男友達「・・・ぷっ、あはははは
演歌っておじいちゃんかよ」
タツヤ「いいじゃん、別に。好きなんだから」
何で演歌を好きになったのか自分でも良く分からない
父さんも母さんも演歌を好きな訳じゃないし
ほむ姉は歌自体をあんまり聴かない
演歌のCDも僕が買うまで家には無かった
でも聴いていると何故か懐かしい気分になる
どこかで誰かと一緒に聴いた事がある
そんな気がしてならないのだ
男友達「よし、そこまで言うなら来週絶対持って来いよ」
タツヤ「えぇ~」
女友達「私も演歌ってあんまり聴いた事が無いから
聴いてみたい」
タツヤ「・・・分かったよ、持って来るよ」
とうとう断り切れずしぶしぶ了承してしまった
タツヤ「・・・はぁ」
放課後、またため息を付いてしまう
何だか家に帰りたくない
今日はほむ姉が家に来るのに
何て言って謝ればいいのか分からない
多分、ほむ姉は相当怒ってる
先週は家に来てくれなかったし
電話にも出てくれなかった
タツヤ「・・・ちょっと、寄り道しちゃえ」
行き先も決めずブラブラしていると
後ろから声をかけられた
仁美「あら?タツヤ君」
タツヤ「えっ・・・あ、こんにちは」
振り向くと志筑さんが居た
隣にはカッコイイ男の人も居る
多分、志筑さんはデート中だ
邪魔しちゃ悪いし早く退散しないと
仁美「ふふっ、寄り道もいいですけど
早めに帰ってあげて下さいね」
タツヤ「どういう事ですか?」
仁美「今日は暁美さんが来てくれるんですよね」
タツヤ「・・・うん」
仁美「暁美さん頑張って練習してたんですよ」
タツヤ「練習?」
仁美「直ぐに分かりますよ。それでは、また」
タツヤ「あ、あの」
仁美「?」
タツヤ「ほむ姉・・・怒ってました?」
仁美「どうして、そう思うんですの?」
タツヤ「僕、この前ほむ姉を怒らせる事しちゃったんだ
だから・・・」
仁美「・・・いいえ、怒ってなんかいませんでしたよ
それどころか貴方に会うのを楽しみにしてましたよ」
タツヤ「ホントに?嘘じゃない?」
仁美「嘘なんかじゃありませんよ
だからそんな暗い顔してないで
前みたいに笑顔で。ね?」
タツヤ「・・・うん。ありがとう志筑さん。バイバイ」
恭介「今の子、誰?」
仁美「そうですね・・・暁美さんの特別な方
っとでも言いましょうか」
恭介「えっ、どう言う事?」
仁美「ふふっ、暁美さんがお世話になっている
家の息子さんですわ」
恭介「あぁ、そう言う事か。・・・でも彼
暁美さんを凄く慕ってるみたいだったね」
仁美「はい。だから楽しみなんです」
恭介「・・・なるほど。確かにそれは楽しみだ」
志筑さんと別れた後、走って家に向かった
多分、ほむ姉はもう家に来ている
・・・笑顔で、笑顔で挨拶するんだ
タツヤ「・・・よ~し。ただいま~」
玄関の前まで行くとまた不安になったけど
一度深呼吸して大きな声でただいまを言い切った
ほむら「お帰り、タツヤ。遅かったわね」
タツヤ「ほむ姉、この前はゴメン!」
ほむら「?」
タツヤ「勝手にお部屋覗いちゃって」
ほむら「謝らなくていいのよ
もう気にしてないから」
志筑さんの言ってた通りだ
ほむ姉は全然怒ってなかったんだ
ほむら「ね、ねぇタツヤ」
タツヤ「何?」
ほむら「詢子さんが帰ったらカラオケに行ってみない?」
タツヤ「カラオケ?・・・うん!行ってみたい」
ほむ姉とカラオケに行くなんて初めてだ
ほむ姉はどんな歌を歌うのかなぁ
タツヤ「あっ」
ほむら「どうしたの?」
タツヤ「・・・ううん、何でもない」
志筑さんが言ってた練習って歌の事だったんだ
タツヤ「ほむ姉、どっちが上手いか勝負しよ」
ほむら「いいわよ。ルールはどうする?」
タツヤ「5回歌って合計の点数が多い方が勝ち。どう?」
ほむら「それでいきましょ。手加減しないからね」
タツヤ「僕だって負けないからね~」
友達の前では恥ずかしいけど
ほむ姉の前だったら演歌だって堂々と歌える気がする
タツヤ「よ~し、部屋で練習するぞ~」
ほむら「私もタツヤの部屋で練習していい?」
タツヤ「いいけど、ほむ姉の歌う曲
僕持ってないかも」
ほむら「大丈夫、持って来てるわ」
タツヤ「じゃあ先に部屋で練習してて
僕、手洗いとうがいして行くから」
ほむら「うん」
手洗いとうがいをささっと済ませて
部屋に向かうと丁度曲が流れ始めていた
タツヤ「あれ?」
お昼に聴いたこの曲は・・・
ほむら「タツヤの好きな巴さんの曲
恋のティロ・フィナーレよ」
そう言ってほむ姉は歌い始めた
普段のほむ姉からは想像もつかない様な
可愛いい声と表情で
タツヤ「うわぁ・・・」
上手、上手だけど・・・
ほむ姉のイメージが崩れる様な感じがして
聴いてる僕の方が恥ずかしくなってしまった
今回は以上です。
ちなみにほむほむがたっくんの電話に出れなかったのは
マミさんに電話でアドバイスを貰っていたり
練習のし過ぎで声を枯らしちゃったりしたからです。
タツほむは、なんか切ない展開の予想しかできないな。
常にすれ違ってるみたいな。
タツヤ「いったいどのくらいの速さで生きれば…」
ほむら「またあなたに出会えるのかしら…」
的な
遅れてすみません。
>>616の続きを投稿します。
ほむら「ん・・・」
布団の中に居るのに妙に寒さを感じ
何時もより早い時間に目が覚めてしまった
冬なのだから当たり前なのだが
昨日に比べて随分冷えてる気がする
ほむら「あ、雪・・・」
カーテンを開けてみると一面の銀世界が広がっていた
そう言えば昨日の天気予報で降るって言ってたっけ
でもこんなに積もるとは思っていなかった
とりあえずタイマーにしてたエアコンを動かす
ほむら「・・・今日は早く出ないといけないわね」
窓の外を眺めながらそんな事をぼんやりと考えた
ほむら「また降ってる」
休憩時間、窓の外を見るとまた深々と雪が降っていた
登校にも苦労したけど帰りも相当疲れそうだ
仁美「随分と降りますね」
恭介「天気予報だと明日の朝まで
降ったり止んだりを繰り返すんだって」
ほむら「そう・・・今夜は鍋にでもしようかしら」
こんな寒い日はコタツで鍋を食べるのが1番
杏子が送ってくれた魚もあるし
冷蔵庫に残っている野菜も使ってしまおう
恭介「・・・あの、今夜は大丈夫なの?」
ほむら「?」
恭介「ほら、暁美さんって」
上条さんは周りに聞こえな様に小さな声で尋ねてくる
多分魔法少女の事を聞いているんだろう
ほむら「問題ないわ。あの格好、結構温かいもの」
確かに真冬の寒さは辛い時もあるけど
いざとなったら感覚を遮断する事も出来る
もっともそれは最終手段であって
あまりしたくない方法だけど
恭介「そうは言っても」
ほむら「女の子は寒さには強いものよ
志筑さんだって足を出してるじゃない」
私の様にタイツやニーソックスを履かず
冬でも足を出してる娘は結構いる
あれは流石に寒いんじゃないかと思うけど
本人達は寒い寒いと言いつつ止め様としない
恭介「そう言えばそうだね。どうしてなの?」
仁美「・・・もう!」
恭介「え?何で怒るの、仁美さん」
少しでも自分を可愛く見せたいという
女の子の努力が分からない様じゃ
上条さんもまだまだ甘い
それよりこの2人、何時の間にか
名前で呼び合う様になっている
まぁ仲が良いのは前から分かってたし
一線を越えてても別に不思議じゃないか
ほむら「痴話喧嘩なら他所でしてね」
心の中で少しだけ祝福して
結局始まってしまった痴話喧嘩を
呆れながら見守る事にする
この時期に帰宅して直ぐにする事は
ベランダにエイミーが来てないかの確認
そこには私の帰宅が遅れても大丈夫な様に
屋根付きのダンボールの箱も作って置いてある
その中で丸くなっているエイミーを発見
ほむら「寒かったでしょ。さ、シャワー浴びよ」
このマンションはペット禁止なので
ちゃんとしたお家やトイレを
用意してあげる事が出来ない
だからこんな風にこっそりと
エイミーの面倒を見てあげてる
まぁこの子は自由気ままな性格なので
飼い猫になるつもりは無い様だ
1度タツヤが飼おうとしたけど
脱走を繰り返すので諦めてしまった事もある
ほむら「はい、お終い」
身体を拭き終わるとエイミーは
電源を入れておいたコタツの中へ潜り込む
猫はコタツで丸くなるとはよく言ったものね
ほむら「コタツの中で寝ちゃ駄目よ」
一言注意して鍋の準備に取り掛かる
パトロールの後に1から作るのは面倒なので
今の内に出来る事はしておけば後が楽になる
昆布でダシを取った後一旦火を消し
切った魚や野菜を入れて蓋をしておく
後は帰ってからもう一度火を点ければOKだ
ほむら「さてと、出かけて来るから
お留守番よろしくね」
コタツから顔だけを出して返事をするエイミー
まぁ帰って来る頃には暑くなって出ているだろう
ほむら「ふぅ」
雪降る町のパトロールを終え
帰宅した頃には既に10時を過ぎていた
QB「お帰り、ほむら」
ほむら「・・・何してるの」
QB「GSの回収に来たんだよ」
それは分かってる
私が聞きたいのはその態度だ
今日のこいつはコタツに入りながら
顔だけを出して私の帰りを待っていたのだ
エイミーがやるなら可愛いが
こいつがやると腹が立つ
QB「酷いな~。ちゃんと鍋の準備もしておいたのに」
言われてみれば良い匂いがキッチンの方からしてる
ほむら「準備って、ただ火を点けてただけじゃない」
QB「でも直ぐ食べれる事には変わりないだろ?
君が帰ってから火を点けたんじゃ
食べるのはもっと遅れてたんだよ」
ほむら「はいはい、分かりました
どうもありがとうございます」
これ以上こいつと不毛な争いを続けるより
早く鍋を食べて温まりたい
サッと手洗いとうがいを済ませ
コタツに置いてあるコンロに鍋を移し食器を2人分並べる
QB「これは?」
ほむら「貴方の分よ。食べるつもりだったんでしょ?」
途中であーだこーだ言われるくらいなら
始めから準備した方が手っ取り早い
QB「まぁ君がせっかく用意してくれたんだ
ありがたくいただくよ」
ほむら「しらじらしい」
こいつらはよく人の食べ物をねだって食べようとする
ただの興味本位でか、はたまた何かの研究なのか
そもそもこいつらに食事が必要なのかどうかすら分からない
もっとも今更知りたいとも思わないけど
QB「うん、美味しいよ」
ほむら「それはどうも」
私達はこの距離のままでいい
踏み込んでも遠ざかってもどうせロクな事は無いのだから
QB「大丈夫かい?」
ほむら「・・・」
昨夜、お腹いっぱいになった後
睡魔に襲われそのまま眠ってしまった
朝までずっとコタツに入っていたので
体調を崩してしまったのも当然と言えば当然だ
コタツの力は恐ろしいと改めて認識させられる
QB「誰かに看病を頼んだ方がいいんじゃないかな?」
ほむら「・・・大丈夫よ。1日寝れば・・・治るわ」
看病に来た人にうつしてしまうのも悪いし
志筑さん達には心配はいらないとメールで送ってある
QB「君のそういう所、よくないと思うよ」
ほむら「・・・」
QB「辛い時や苦しい時は誰かに頼らないと
1人で抱え込んでたら押し潰されてしまうよ」
もっともな話だがこいつ言うと
嫌味にしか聞こえない
ほむら「妙に私を・・・気にかけるわね・・・
何を・・・企んでるの?」
QB「何も企んじゃいないさ
魔法少女のケアも僕の仕事の1つだから
君を気にかけてるのさ」
ほむら「あぁもう・・・それでいいわ」
頭もガンガンするしもう1度眠ろう
しかしそんな私の気持ちを知ってか知らずか
QBはまだ何か話しかけてくる
よく聞き取れないので適当に返事をしながら
ゆっくりと眠りについた
ほむら「ん・・・え?」
タツヤ「あ、ごめん。起こしちゃった?」
ほむら「何で・・・」
目を覚ますと予防マスクを着けた
タツヤが心配そうにこっちを見てた
おでこにヒンヤリする感触がある
寝る前に張った冷えピタが
こんなに冷たい筈がないから
多分、タツヤが張り替えてくれたんだろう
タツヤ「何でってほむ姉が風邪引いちゃったって
メールで送ってくれたから心配で」
ほむら「そんな、だって・・・」
タツヤにメールを送った覚えは無い
心配してマンションに来るかも知れないので
風邪を引いた事自体、黙っておいたのだ
っとタツヤの隣にいるQBの存在に気が付く
ほむら(貴方が勝手に送ったのね!)
QB(勝手にとは心外だね
ちゃんと君に同意を得てからにしたよ)
そう言えば眠り落ちる前にこいつは何かを言ってた
適当に返事をしていたがそれがこんな事だったなんて
ほむら(あんな状態の返事を同意とは言わないわよ!)
QB(まぁでも看病してもらったお陰で
君も少しは楽になったんじゃないかな)
自分の行いはまったく悪くないと言う様に
平然としているこいつを見ていると
また頭痛がしてきそうだ
タツヤ「ほむ姉?」
ほむら「あ、ごめんね。ボーっとしててよく覚えてなかったの」
タツヤ「そうだったんだ
お腹とか空いてない?
父さんも来てるから
何か作ってもらおうか?」
ほむら「じゃあ、お願いしようかしら」
朝昼と何も食べてないので
お粥くらいなら食べれそうだ
タツヤ「じゃあ父さんに頼んで来るね」
そう言って部屋から一旦出るタツヤ
・・・何だか様子がおかしい気がする
ほむら「何でかしら・・・もしかして
寝室に入ってしまった事を気にして」
以前、寝室を覗いてしまった事を
ずっと反省してたみたいだったし
悪い事をしたと思ってるのかも知れない
でも今回は私の為にしてくれてるんだから
気にやむ必要は無いのに
タツヤ「今作るから待っててって
はい、ポカリもあるよ」
ほむら「ありがとう」
お礼を言うとタツヤは笑顔を見せてくれた
しかし直ぐシュンとなる
ほむら「そんな顔しなくてもいいのよ」
タツヤ「え?」
ほむら「私を心配して来てくれたんだから
怒ってなんかいないわよ」
タツヤ「・・・うん」
ほむら「?」
怒っていない事を伝えても
タツヤはまだシュンとしている
もっと別の事で元気が無いのかしら
タツヤ「あのさ、ほむ姉
昨日・・・誰か来てた?」
ほむら「?、いいえ、誰も来てないわ」
タツヤ「そう、なんだ・・・」
何でそんな事が気になったのかしら
しかしタツヤは下を向いてて
何だか聞き辛い雰囲気だ
知久「はい、お待たせ」
ほむら「ありがとうございます」
長い沈黙があった後
知久さんが食事を持って来てくれた
お粥だと思ってたけどおじやだった
多分、昨日の鍋の残りを利用して・・・
ほむら「!?」
大変な事に気が付いた
昨日は夕飯の片付けもせずに寝てしまった
だから今日タツヤが来た時テーブルには
鍋と2人分の食器が残っていたのだ
それを見れば誰だって昨日の夜は
2人っきりで過ごしたと思ってしまう
しかも私はさっきタツヤに
昨日は誰も来てないと言ってしまった
隠し事をしてる様にしか思えないだろう
ほむら「あ、あのねタツヤ」
タツヤ「・・・僕、居間にいるね」
ほむら「ま、待ってタツヤ」
俯いたままゆっくりと部屋を出て行くタツヤ
完全に誤解してしまってる
ほむら「あの知久さん、コタツにあった食器の事なんですが」
とりあえず知久さんが誤解しない様に
うまく説明しておかないと
知久「うん、大丈夫。分かってるよ」
その言葉を聞いて少し安心する
良かった、知久さんは誤解して・・・
知久「詢子さんにもご両親にも黙っておくよ
だから、折を見て紹介してくれればいいから」
ほむら「・・・」
だ、駄目だ
知久さんも誤解してしまってる
よく見ればかなり動揺してるし
知久「居間にいるから。何かあったら言ってね」
ほむら「えっと、え、あ」
呼び止めようとするけど
どうやって誤解を解けばいいのか分からず
変な声を出しながら見送る事しか出来ない
QB「さっきの2人はどうしたんだろうね
様子が変みたいだったけど」
ほむら「・・・」
QB「どうしたんだい?ほむら。顔を真っ赤にして」
ほむら「あんたのせいでしょうが!!」
状況をまるで理解してないQBに
思わず叫んでしまった
今回は以上です。
次回はたっくん視点での続きとなります。
大分遅れてすみません。
>>643の続きを投稿します。
タツヤ「なぁ、エイミー。お前は昨日ここに居たんだよな」
エイミー「?」
タツヤ「お前がしゃべれたら・・・」
ほむ姉の彼氏がどんな人か聞く事が出来る
・・・でも知りたくない気持ちもあった
知久「タツヤ、ちょっといい?」
タツヤ「・・・何」
父さんが僕に話しかけた時
ほむ姉の叫び声が聞こえてきた
よく聞き取れなかったけど
ほむ姉が叫ぶなんてよっぽどの事だ
タツヤ「ほむ姉!?」
知久「大丈夫だよ。多分、恥ずかしがってるだけだから
今はそっとしといてあげよう」
タツヤ「・・・うん」
知久「それでねタツヤ、今日お見舞いに来た事は
母さんには内緒にしようと思うんだ」
タツヤ「何で?」
知久「母さんも心配して来ちゃうだろ
これ以上余計な心配はかけたくないって
さっき暁美さんにお願いされたんだ」
多分、嘘だ
父さんだって気付いた筈だもん
昨日ここにほむ姉の彼氏が来てた事に
だから母さんには言わない様に
ほむ姉にお願いされたんだ
知久「約束出来る?」
タツヤ「・・・ヤダ」
知久「ど、どうして?」
タツヤ「ヤなものはヤなの!」
知久「タツヤ・・・」
特に理由なんて無い
ただ父さんやほむ姉を困らせたいだけだ
タツヤ「僕、今日帰らないから
ずっとここに居てほむ姉の看病するから」
知久「そ、そんなの駄目だよ」
タツヤ「するの!絶対にするの!!」
僕が駄々っ子の様な事を言うと
父さんは困った顔をして見つめてくる
タツヤ「そ、そんな顔したって
絶対に帰らないからね」
知久「・・・タツヤ、暁美さんに
好きな人が出来たのが
そんなに嫌なのかい?」
タツヤ「・・・」
知久「父さんも分かるよ、その気持ち
タツヤが暁美さんを大好きになった様に
父さんも暁美さんの事が好きだからね
でもだからと言って嫌がらせしたり
困らせる様な事をしちゃいけない
そんな事すれば暁美さんはタツヤの事を
嫌いになってしまうよ」
タツヤ「だって・・・だって・・・」
じゃあ僕はどうすればいいんだろう
頭の中がぐちゃぐちゃになってて
もう涙を流す事しか出来ない
そんな僕を父さんは優しく抱き寄せて
頭を撫でてくれた
知久「誰かを好きになるって事は
とても素晴らしい事なんだ
だけどその影でどうしても
悲しい思いをする人も出てくる
・・・父さんも昔、好きな娘に
フラれた事があるんだよ」
タツヤ「え?」
知久「勇気を出して告白してみたんだけど
その娘には他に好きな人が居たみたいで
きっぱりと断られちゃったんだ
その日は頭の中が真っ白になって
何にもやる気が起きなかったなぁ
立ち直るのにも随分かかったよ」
少し照れながら父さんは
自分の苦い思い出を教えてくれた
知久「あ、この話母さんには内緒だよ」
タツヤ「でも、僕はほむ姉が誰かに
取られちゃうなんてヤダよ・・・」
知久「確かに今直ぐは納得出来ないかもしれない
もしかしたら何年経っても難しいかもしれない
でもね、暁美さんもきっとタツヤから
おめでとうって言って貰いたい筈だよ
だから気持ちの整理が付いてからでいい
何時かちゃんとおめでとうって言ってあげよ?」
タツヤ「・・・うん」
知久「良い子だね」
父さんは優しくそう言ってくれたけど
心にあるもやもやは取れなかった
家に帰ってもほむ姉の事が
ずっと頭から離れなず悶々とする
気分転換にTVを見てるけど全然気は晴れない
それでもボーっと見続けていると
巴さんがゲストとして出て来た
タツヤ「・・・」
巴さんは誰もが認める凄い美人だ
ほむ姉の友達の志筑さんもとっても美人だ
だけどほむ姉はもっともっと綺麗だと思う
・・・だから今までほむ姉に彼氏が出来ないのが
不思議なくらいに思っていた
詢子「どうした、今日は2人とも変だぞ」
知久「そうかい?」
詢子「何か元気が無いって言うかさ・・・」
知久「き、気のせいじゃないかな」
詢子「う~ん」
タツヤ「・・・ねぇ母さん」
詢子「ん~?」
タツヤ「母さんは何で父さんと結婚したの?」
詢子「ぶっ」
飲んでいたお酒を吹き出しそうになって
母さんはむせてしまった
詢子「急に何を聞くのかと思ったら・・・」
タツヤ「ねぇ何で?」
詢子「そりゃあ好きになったからだよ」
タツヤ「どっちから告白したの?」
詢子「ちょっ、何で急にそんな事が気になりだしたのさ」
タツヤ「ねぇどっちから?」
詢子「・・・ぷ、プロポーズは知久からだったよ///」
タツヤ「なんて言われたの?」
詢子「あぁもうこの話は終わり///
ん?メールか・・・」
母さんは携帯に届いたメールを見ると
廊下の方に行っちゃった
多分、会社の人からのメールだ
こんな時間にも届くなんて
お仕事大変なんだなぁ
・・・ほむ姉も彼氏と電話したり
メール交換してるのかなぁ
タツヤ「はぁ」
そもそもほむ姉とは10歳以上歳が離れている
ほむ姉にとって僕は弟の様な存在であって
元々恋愛対象として見てなかったのかもしれない
タツヤ「う、うぅ・・・」
また涙が出て来た
こんな苦しい思いをするなら始めから
ほむ姉を好きになんてならなければ良かった
そうすれば・・・
詢子「タ~ツヤ、何泣いてんの?」
タツヤ「な、泣いてないよ」
何時の間にか帰って来た母さんが話しかけてきた
振り返ったら泣いてたのがバレてしまうから
じっとTVの方を向いたまま返事をして誤魔化す
詢子「あっそ。そうだ、今度の金曜日
私も知久も夜遅くまで帰って来れないから」
タツヤ「どうして?」
詢子「会社のパーティーがあるのよパーティーが
だからちゃんとお留守番しといてね」
知久「え?そんな話聞いてなかったけど・・・」
詢子「・・・」
少し間があって父さんの呻き声が聞こえてきた
何があったのかは分からないけど大丈夫かなぁ
タツヤ「て、ちょっと待って。金曜日僕1人って事は・・・」
詢子「何言ってるの、ほむらちゃんが来てくれるでしょ
ちゃんと持て成してあげるんだよ」
タツヤ「・・・」
そんなぁほむ姉と2人っきりなんて気まずいよぉ
今回は以上です。
次回が今年最後の投稿になると思います。
遅れてすみません。
>>660の続きを投稿します。
今回は視点がコロコロ変わって今まで以上に読みにくいかもしれません。
ほむら「ちょっと、付いて来ないでよ」
QB「別にいいじゃないか。彼には僕が見えないんだから」
ほむら「貴方がいると良くない事が起こりそうなのよ」
せっかく詢子さんが誤解を解くチャンスをくれたのに
疫病神みたいなこいつと一緒なんて縁起でもない
QB「誤解と言っても僕と一緒だったのは事実なんだし
魔法少女だとバレてなければ
何も問題無いと思うんだけど」
ほむら「彼氏が居るって思われるのも嫌なのに
その相手がよりにも寄って貴方なのが
余計に気に食わないのよ」
QB「・・・」
ほむら「何よ」
QB「僕の経験上、そんな事を言うのは
好きな異性がいる娘の筈なんだけど・・・」
ほむら「バっ・・・違うわよ///」
QB「君の恋愛についてとやかく言うのも何だけど
歳の差もあるし」
ほむら「だから違」
QB「何より相手は既婚者だ
この手の恋愛は誰も幸福にはならないよ」
ほむら「うって・・・既婚者?」
QB「?」
・・・あぁなるほど
こいつはこいつて勘違いしてる訳ね
ほむら「確かに知久さんは素敵な人だと思うけど
そんな風に思った事は1度も無いわよ」
QB「え?じゃあ・・・」
ほむら「・・・ふんっ」
尻尾を踏んづけてやろうとしたが
逃げられてしまった
QB「危ないじゃないか!」
ほむら「うるさい。貴方今、引いたでしょ」
QB「そんな事ないさ」
ほむら「まったく」
QB「で、ホントのところはどうなんだい?」
ほむら「ふんっ」
QB「痛い!痛たたた」
今度は踏みつけれた
ついでにつま先でぐりぐりしておく
QB「もう、ムキになるって事は
やっぱりそうなんだ、っておっと」
ほむら「ちっ。とにかく私はこれから誤解を解きに行くの
変なちゃちゃを入れるならまた踏んづけるわよ」
QB「分かったよ。もうこの話は止めにしておく」
痛い思いをしたのにこいつはまだ付いて来る
いったい何が目的なんだか
タツヤ「あぁ、もう直ぐほむ姉が来ちゃうよぅ」
エイミー「ふぁ~」
タツヤ「う~、のん気な奴め」
しかし居てくれるだけでもありがたい
今日はエイミーを話題にしてこの前の事は
触れない様にしようと思っているのだ
エイミー「!」
タツヤ「どうした?」
エイミーが立ち上がったと同時に
チャイムが鳴った
タツヤ「ほむ姉だ・・・」
深呼吸をして心を落ち着かせてから玄関に向かう
っと何故かエイミーも付いて来た
チャイムを鳴らすとしばらくしてから
タツヤがおどおどとした様子で玄関を開けてくれた
まだあの事を気にしているみたいだ
タツヤ「い、いらっしゃい、ほむ姉」
ほむら「こんにちは、タツヤ。エイミーも」
QB「やぁ久しぶりだね」
ほむら「え?」
エイミー「・・・」
QB「今日はどこに行くんだい?」
何故かQBは見知った知人の様に
エイミーに話しかけてる
タツヤ「あ!、おい、どこ行くんだよ」
タツヤが声をかけるが気にせずエイミーは
すました顔のままQBと一緒に歩いていく
ほむら「え?・・・えぇ?」
QB「じゃあまたね、ほむら」
タツヤ「ちょ、ちょっと待ってよ」
捕まえに来たタツヤをヒョイっと避け
そのままどこかへ行ってしまう2匹
タツヤ「そ、そんな~」
タツヤには見えていないが
私にはエイミーとQBが仲良く・・・
ほむら「・・・止めておきましょう」
首を振って頭に浮かんだ考えを否定する
これ以上考えると更に頭痛が酷くなりそうだ
QBもエイミーも私に気を使ってどこかへ行った
偶々一緒の方角へ向かっただけで
2匹は別に仲が良いと言う訳じゃない
そう考える事にしよう
ほむら「・・・中に入りましょうか」
タツヤ「・・・うん」
エイミーが居なくなってしまい
タツヤはかなり緊張している
これは主導権を掴むチャンスなのかも知れない
ほむら「今日はタツヤの好きなハンバーグにしようかしら」
タツヤ「え、ホント?」
ほむら「うん。飛びっきり美味しいの作ってあげるね」
タツヤ「あっ、僕も手伝う」
ほむら「いいの?ちょっと大変よ?」
タツヤ「大丈夫、何時も父さんのお手伝いしてるもん
それに母さんがちゃんとお持て成ししろって」
ほむら「そう、じゃあよろしくね」
案の定タツヤは手伝いを買って出てくれた
ハンバーグ作りは大変だけど
お肉をこねたり好きな形のを作ったりと
楽しみながら調理出来る
これでタツヤの緊張も少しは和らぐ筈
タツヤ「ちょっと待ってて」
そう言ってタツヤは急いで部屋に上がると
何かを手にして降りて来た
ほむら「ゴーグル?」
タツヤ「うん。これ着けて玉ねぎ切るんだ」
タツヤ「玉ねぎは僕に任せてね」
ほむら「でも包丁は・・・」
タツヤ「大丈夫」
そう言ってタツヤは玉ねぎの皮を剥き始めた
仕方ないのでお肉の方の準備に取り掛かる
ほむら「・・・」
チラっと横目でタツヤの方を見ると
皮を剥き終え切り始める所だった
確かに危なっかしい所は無いので
何度か経験がある様に思える
タツヤ「あっ、今僕の方見てたでしょ」
ほむら「え?そんな事無いわよ」
タツヤ「もう、信用し、痛っ!」
ほむら「タツヤ!!大丈夫!?」
私の方を向いてしゃべっていたタツヤは
誤って指を切ってしまったのだ
慌ててタツヤが切ってしまった指先を
口に含み根元をぎゅっと握って止血する
タツヤ「え、あ///」
何十秒かそうして血が止まってきたところで
1度水で洗いガーゼを当てる
ほむら「・・・タツヤ包丁を使う時はよそ見しちゃ駄目よ」
タツヤ「ごめんなさい」
ほむら「私も貴方がちゃんと包丁使えるのか
疑ったりしてごめんね」
タツヤ「うん・・・///」
タツヤ「いっただっきま~す」
よっぽどお腹が減っていたのか
タツヤはハンバーグを美味しそうに頬張る
ほむら「どう?美味しい?」
タツヤ「うん、すっごく美味しい」
ほむら「良かった」
そう言ってタツヤが食べてるのとは
違う種類のハンバーグを半分に切る
すると中からチーズがとろ~っと出て来た
今日は普通のハンバーグと
チーズ入りの両方を作ったのだ
ほむら「こっちもちゃんと火が通ってるわね」
タツヤ「わぁ~、そっちも美味しそう!」
ほむら「私好きなの。チーズ入りのハンバーグ」
タツヤ「えへへ、何だかほむ姉子供みたい」
ほむら「む~、そんな事言うとタツヤ分取っちゃうわよ」
タツヤ「え~、駄目~」
笑いながらの夕食、楽しい時間
この雰囲気のまま今日を終えるのもいいだろう
でも、やっぱり誤解は解いておきたい
ほむら「ねぇタツヤ・・・この前の事なんだけど」
私が話を切り出すとタツヤは強張った表情になる
ほむら「あの時はちゃんと言えなかったから
今、言うね・・・実は」
ほむ姉は急に真剣な表情になると
僕を真っ直ぐに見て話し始めた
ほむら「あの時はちゃんと言えなかったから
今、言うね・・・実は」
聞きたくない
聞きたくないけど
聞かないといけない
ほむら「私、フラれちゃったの」
タツヤ「・・・え?」
ほむら「好きな人に告白して家に招待してみたんだけど
他に好きな人が居ますって断られちゃったの」
タツヤ「そんな・・・」
ありえない
ほむ姉の告白を断るなんて考えられない
顔も知らないその人に怒りが沸いてくる
タツヤ「あっ」
怒りで頭が爆発しそうになった時
父さんが言ってた事を思い出す
ほむ姉も辛かった筈なのに僕は・・・
タツヤ「ごめんね、ほむ姉。変な風に勘違いして」
ほむら「ううん、いいの。分かってくれれば」
ホッとした表情になるほむ姉
でも心はまだ傷ついたままなのかも知れない
タツヤ「ぼ、僕だったら断らないよ」
ほむら「え?」
タツヤ「あっ違う、そうじゃなくて、ほむ姉は綺麗だから
だから、その・・・///」
ほむら「・・・ふふっ、じゃあタツヤが大きくなった時
まだ私が結婚してなかったらしてくれる?」
タツヤ「え?・・・う、うん///」
ほむら「ありがとう。約束よ」
深夜、こっそりタツヤの部屋に入って寝顔を見る
しばらく眺めていると何時の間にか
QBも窓の外に来ていた
QB「随分と嬉しそうだね
どうやって彼を納得させたんだい?」
ほむら「・・・内緒よ」
QB「ふ~ん。まぁ君も上機嫌みたいだし
これ以上詮索するのは止めておくよ
それより早く行かないと」
ほむら「分かってるわよ
行って来るね、タツヤ」
タツヤのほっぺにキスをして魔獣との戦いに向かう
ほむら「・・・貴方が大きくなるの
私は待ってるから」
今回は以上です。
今まで読んでいただき本当にありがとうございます。
まだこの話は続きますので来年もどうぞよろしくお願いします。
それでは良いお年を
遅ればせながら皆さん明けましておめでとうございます。
>>684の続きを投稿します。
今回の話は前回から大分時間が経過しております。
またたっくん視点での話となります。
タツヤ「母さん、起きて。遅刻するよ」
詢子「・・・」
タツヤ「駄目か・・・仕方ない」
ため息を付きながら窓の方へ向かう
母さんを起こす必殺技をする為だ
小さい頃は1人で出来なかったけど
今はもう全部出来る様になった
タツヤ「ほら、起きろ~」
カーテンを勢い良く開けて
母さんが包まってる布団を一気に引っぺがす
詢子「きゃあ~!!」
日光を浴びたドラキュラの様な声を出す母さん
僕がこの必殺技を引き継いでもう10年近くになるけど
未だに効果が抜群なのはどうなんだろう
・・・あれ?誰から引き継いだんだっけ
詢子「もう、昔はもっと優しく起こしてくれてたのに
何で最近は・・・どうした?ドアの方をじーっと見て」
タツヤ「・・・別に。それより早くしないと」
詢子「じゃあキスして、ん」
そう言って目を閉じキスをねだる母さん
キスの変わりにデコピンで答える
詢子「痛っ!もう照れちゃって」
タツヤ「馬鹿な事やってないで早く支度しないと」
詢子「は~い」
しぶしぶと言った感じで伸びをする母さん
タツヤ「って僕が居るのに服を脱がないでよ~!」
母さんを起こした後携帯を取り出す
もう1人朝が苦手な人を起こす為だ
コール6回、ようやく繋がった
ほむら「・・・もしもし」
タツヤ「ほむ姉、今起きたでしょ?」
ほむら「そんな事無いわよ。ふぁ~」
タツヤ「思いっきり欠伸してるじゃん」
ほむら「もう細かい事ばっかり
昔はもっと優しかったのになぁ」
タツヤ「さっき母さんにも言われたよ」
この2人、実は血が繋がってるんじゃないだろうか
タツヤ「遅刻しない様にね。じゃあね」
ほむら「あ、待って。おはよ、タツヤ」
タツヤ「・・・おはよ、ほむ姉」
ほむら「明日もよろしくね」
そう言ってほむ姉は電話を切った
もう何何百回と繰り返しているやりとりだけど
未だに胸が高まってしまう
詢子「何にやけてんだ?」
タツヤ「わっ!?」
詢子「ラブコールもいいけど
お前も早く準備しろよ」
タツヤ「へ、変なこと言わないでよ///」
詢子「ふふっ」
言いたい事言うとさっさと下へ降りてしまう母さん
タツヤ「たっく・・・あれ?」
さっき父さんと母さんに何か聞こうと思ってたけど
何を聞こうと思ってたのか忘れてしまった
・・・まぁ忘れるくらいだから大した事じゃないか
知久「今日も行くのかい?」
タツヤ「うん。だから僕の分の晩御飯は作んなくていいよ」
知久「迷惑の無い様にね。何時もの時間に迎えに行くから」
そう言って父さんはお手製のレシピを渡してくれた
ふむふむ、今日は煮魚か
タツヤ「行ってきま~す」
知久「行ってらっしゃい」
色々と酷使しすぎてボロボロになった
ランドセルを背負い学校に向かう
小学生でいられるのもあと少し
もう直ぐ僕はほむ姉が通ってた
見滝原中学校に通うのだ
男の子「なぁなぁ、暴れん坊のサンタクロースって知ってる?」
昼休憩、同じ班の噂好きの友人が
そんな話題を持ち出した
タツヤ「暴れん坊?慌てん坊じゃなくて?」
男の子「それ歌のやつだろ」
タツヤ「じゃあ知らないなぁ。どんなサンタなの?」
男の子「それが普通のサンタクロースと違って
1年中、バイクで町を回って
子供達に奇跡を配ってるんだって」
女の子「プレゼントじゃないの?」
男の子「うん。でさ怒らすとすっごく怖いんだって」
タツヤ「それもうサンタじゃない様な・・・」
そもそも奇跡を配るってどういう事なんだろう
男の子「でもその人、赤い服装に着替えたら
空を飛んだりも出来るんだって」
タツヤ「え、私服持ってるの?何で?」
男の子「そりゃあ夏とかにあんな格好してたら
暑くて倒れちゃうからじゃない?」
ますますサンタクロースから遠ざかってるぞその人
タツヤ「それって唯の変なおっさんじゃないの?」
男の子「ところがどっこいすっごい美人らしいぞ
なんでも巴さんクラスだとか」
タツヤ「・・・それは無いんじゃない
そもそもその人はそんな事して何の得が有るの?」
男の子「知らねーよ。従姉から聞いただけだもん」
女の子「でも、去年のクリスマスライブで
巴さんもサンタさんの格好してたよね
すっごく綺麗だったな~」
タツヤ&男の子「・・・」
その発言は男子にとって禁句になっている
実はライブ中、巴さんは転んでしまい
パンツが丸見えの写真を撮られてしまったのだ
ネットではその時の写真が流失しており
クラスの男子は全員その画像のデータを
パソコンの中に入れてると思う
当然、親や先生にばれない様に
皆が皆知らないふりをしてるので
こういった時、反応に困ってしまうのだ
ちなみに僕も持ってたけどほむ姉に見つかり
他の巴さんの画像と一緒に消去されてしまった
そして1時間近く正座で説教を受けた
・・・あの時のほむ姉、怖かったなぁ
男の子「この話は止めにしようか」
かなり強引に違う話題へ持って行こうとする
友人に適当な返事をしながら
昔、家に来たサンタさんの事を思い出す
本当はサンタクロースなんて居ない
口喧嘩に負けてそう思ってたその年に
家にサンタさんがやって来た
女の人なのにお髭を生やした変なサンタさん
あの時は気付かなかったけど
多分あの人はほむ姉の友達だったんだと思う
でも、あの人は本物のサンタさんだったって
今でも胸を張って言う事が出来る
だって本当に嬉しかったんだ
僕の質問に答えてくれた事
僕の前で小さな魔法を見せてくれた事
僕の欲しいプレゼントを用意してくれた事
全部トリックだったのかも知れない
でも嬉しいという気持ちが本当なら
それをくれたサンタさんも本物の筈だ
女の子「どうしたの?鹿目君」
タツヤ「何でもない。ちょっと昔の事を思い出してただけ」
放課後、皆の誘いを断り真っ直ぐ
ほむ姉のマンションに向かう
ほむ姉はまだ帰って無いけど
合鍵は貰ってるので大丈夫だ
タツヤ「お邪魔しま~す」
パッと部屋を見て掃除が必要かどうか確認する
どうやら今日は必要無いみたいだ
タツヤ「今日は煮魚だぞ。お前の分も作ってやるからな」
綺麗な額縁に収めてある写真に声をかける
返事は無いけどきっと喜んでくれてる筈だ
タツヤ(晩御飯を作る前に洗濯しとこうかな)
そう思って洗濯機が置いてあるお風呂場へ向かう
タツヤ「あっ///」
反射的にドアを閉めてしまった
脱衣所のかごには洋服と一緒に
下着も入れてあったのだ
ほむら「ただいま~」
タツヤ「お、おかえり」
ほむら「今日もありがとね。はい、お土産」
タツヤ「ありがと・・・」
ほむら「どうしたの?元気が無いみたいだけど」
タツヤ「な、何でもないよ。それより早くご飯食べよ」
ほむら「?」
動揺を隠す為に顔を逸らしてしまう
脱衣所で見た下着の事が頭から離れず
ついつい目線がほむ姉の胸の辺りにいってしまうのだ
ほむら「う~ん、美味しい。タツヤはホント料理の天才ね」
タツヤ「父さんのレシピ通りに作っただけだよ」
ほむら「それでも上手な事に変わり無いわ
会社でも貴方が作ってくれてる
お弁当を自慢してるんだから」
タツヤ「///」
照れてる顔を隠す為お味噌汁をすする
そんな僕の様子をほむ姉はニコニコしながら見つめてくる
ほむら「ねぇ、学校であった事聞かせて」
こうやってほむ姉と2人で晩御飯を食べながら
学校であった面白い話を教えてあげる
この時間が今の僕にとって何より楽しい時間だ
今回は以上です。
次回は今回の話と同じ日のほむほむ視点でのお話となります。
この作者さんすごいしそこら辺も抜け目ないでしょ。
きっと書くよ(ハードルage)
そうだね!期待して待つことにしようかw(さらにage)
朝を告げる携帯のアラーム音が聞こえて来る
だけどまだ眠いので目を閉じたまま切ってしまう
アラームは早い時間に鳴る様にセットしてあるし
毎朝わざわざ電話で起こしてくれる人もいる
だから安心して二度寝が出来るのだ
っとアラーム音とは別の音楽が流れ始めた
何時もよりかかってくるのがちょっと早い
ほむら「・・・もしもし」
タツヤ「ほむ姉、今起きたでしょ?」
ほむら「そんな事無いわよ。ふぁ~」
タツヤ「思いっきり欠伸してるじゃん」
呆れているタツヤに
二度寝を考えてたなんて言ったら
間違いなく怒られるから黙っておく
ほむら「もう細かい事ばっかり
昔はもっと優しかったのになぁ」
タツヤ「さっき母さんにも言われたよ」
それはまた面白い偶然があるものね
もしかしたらこういう所が
詢子さんに似てきたって思われてるのかも
タツヤ「遅刻しない様にね。じゃあね」
ほむら「あ、待って。おはよ、タツヤ」
タツヤ「・・・おはよ、ほむ姉」
この挨拶を済ませないと私の1日は始まらない
こうやって毎日元気を分けて貰ってるのだ
ほむら「明日もよろしくね」
電話を切って伸びをする
布団の中が恋しいけどもう出ないといけない
顔を洗い頭をすっきりさせてから居間に向かう
ほむら「おはよ。今日もタツヤは元気だったわよ」
綺麗な額縁に収めてある写真に声をかける
エイミーを写している貴重な一枚
・・・思えばタツヤがさっきみたいに
電話をかけてくる様になったのは
この子の死がきっかけだった
仕事に就いてから鹿目家へ
遊びに行く回数がどんどん少なくなり
月に1、2回にまで減っていた
寂しい気持ちはあったけどその僅かな時間を
今まで以上に楽しみにしていたから
私もタツヤも我慢出来てたんだと思う
そんな日々が数年続いたある日
エイミーがベランダにずっと居る様になった
最初は寒さを凌いでるだけで春なれば
また自由気ままに歩き回るだろうと思っていた
けれどエイミーは春になっても元気が無いままで
大好きだった猫缶も食べなくなってしまった
様子がおかしいと思い慌てて動物病院に連れて行ったが
もう長くないと告げられてしまった
QBにも相談してみたけど
こればかりはどうしようもない
だから最後にエイミーの願いを
叶えて上げて欲しいと頼まれた
ほむら「エイミーの願い?」
QB「ああ。あの少年に会いたいそうだ」
ほむら「・・・分かったわ。貴方も来る?」
QB「僕はいいよ・・・さよなら、エイミー」
その時のQBの言葉には
悲しみが混じっている様に感じれた
何も知らないタツヤは久しぶりに
エイミーに会えた事をとても喜んでいた
タツヤ「お前はお婆ちゃんなんだから
もうフラフラするなよ」
そんな風に注意しながら嬉しそうに
撫でてあげているタツヤの腕の中で
ありがとうと伝える様に一声だけ鳴くと
エイミーは安らかな眠りについた
私は堪えきれず泣いてしまった
訳が分からず困惑していたタツヤも
エイミーが動かなくなった事に気付き
泣きながら私達を抱きしめてくれた
その日からタツヤは今まで以上に
私を気にかける様になった
1人で寂しい思いをしているかも知れない
突然居なくなってしまうかも知れない
今でもその不安を無意識下に抱えている
多分、まどかを失った悲しみが
心のどこかに残っていたからだろう
エイミーの死によりその傷が広がり
親しい人が自分の傍を離れる事を
極端に恐れる様になってしまったのだ
まるで、私の様に・・・
ほむら「・・・駄目、変な事を考えちゃ」
タツヤの傷は少しずつ癒えている
失う事がトラウマになってはいない
だから私の様な間違いは犯さない
ほむら「・・・ゆま」
大切な人を守りたかったのに逆に傷つけてしまう
タツヤにはそんな間違いを犯して欲しくなかった
仕事が終わった後、急いで病院へ向かう
時間はギリギリだから間に合うか微妙な所だ
っと玄関からゆまが出てくるのが見えた
ほむら「ゆま」
ゆま「・・・何しに来たの」
ほむら「お見舞いに・・・」
ゆま「お見舞い?お見舞いって
相手の事を心配してるから
行くんだよね?」
ほむら「・・・」
ゆま「私にあんな事言っといて
自分は心配してるって言うの?」
ほむら「・・・ごめんなさい
正直に言うわ、貴女に会いに来たの」
ゆま「・・・」
ほむら「今から少し話せる?」
ゆま「・・・急がしいから無理」
ほむら「待って!10分、いえ5分でいいの
お願いだから私の話を聞いて!」
ゆま「離して!」
ほむら「あっ・・・」
怒りのこもった眼で睨みつけられ黙ってしまう
かつて友人に同じ様な眼で非難され続けた記憶が蘇る
ゆま「言いつけはちゃんと守ってる
だから私の事はもうほっといて!!」
捲くし立てるように言い切ると
ゆまはそのまま私を置いて行ってしまった
QB「今日も駄目だったんだね」
ほむら「・・・居たの」
QB「ゆまの状態はかなり危険だ
GSの消費も激しくなってるし
このままだと」
ほむら「この袋にGSが入ってるわ
ゆまに渡しておいて」
QB「こんな事して君は大丈夫なのかい?」
ほむら「私は大丈夫よ
それより私から預かったなんて
絶対に言わないでよ」
QB「・・・」
ほむら「・・・何か言いたげね」
QB「ゆまはこの周辺の魔法少女の中では
君に次いでベテランだ
彼女が死んでしまったとなると
周りの魔法少女の動揺も大きいだろう」
杏子の努力により一部の魔法少女達は
横の連携を持つようになった
だから誰かの死も直ぐに伝わってしまう
仲間の死、それは魔法少女達にとって
大きな傷となって影響を及ぼす
ほむら「私がゆまの説得を失敗した場合
全員が危険な状態になるかも知れない
そう言いたいのね?」
QB「そうじゃないよ。ゆまを説得出来るのは
君だけだって言いたいのさ」
そう言ってQBは袋の中に入ってる
GS数個を私に投げ返す
QB「杏子もマミも別の場所で
多くの後輩達の面倒を見ている
こっちに来るのは難しいだろう
もし君が居なくなってしまったら
いったい誰がゆまを説得するんだい?」
どうもQBなりに私達の事を
心配してくれてるみたいだ
ほむら「随分と回りくどい言い方をするのね」
QB「迷惑だったかい?」
ほむら「いいえ、礼を言っておくわ」
QB「今夜も気をつけてね」
ほむら「貴方もGSを落とさないでね」
らしくない言葉を交わしながら私達は別れた
玄関の前に付いてから一旦深呼吸をする
タツヤは優しくて勘が鋭いから
元気の無い姿は見せられない
そんな姿を見せたら余計な心配をかけてしまう
ほむら「ただいま~」
タツヤ「お、おかえり」
ほむら「今日もありがとね。はい、お土産」
タツヤ「ありがと・・・」
出来る限り元気な姿を見せようとしているのに
何故かタツヤは私の顔を見てくれない
ほむら「どうしたの?元気が無いみたいだけど」
タツヤ「な、何でもないよ。それより早くご飯食べよ」
ほむら「?」
ほむら「う~ん、美味しい。タツヤはホント料理の天才ね」
タツヤ「父さんのレシピ通りに作っただけだよ」
確かに知久さんは腕前はプロ顔負けだ
だけどこの料理はタツヤが作った物
幼い頃からお手伝いを頑張ってたから
レシピを渡されただけでもちゃんと作れる
それは間違いなくタツヤの努力の賜物だ
ほむら「それでも上手な事には変わり無いわ
会社でも貴方が作ってくれてる
お弁当を自慢してるんだから」
タツヤ「///」
タツヤは誤魔化そうとしているけど
顔が赤くなっているのはちゃんと見えている
ほむら「ねぇ、学校であった事聞かせて」
辛い事があってもタツヤが居てくれる
だから私は挫けずに頑張れるのだ
今回は以上です。
ゆまちゃんとの関係が悪くなった原因は少し引っ張ります。
保守
ゆま「ほむらお姉ちゃんお願い、勉強教えて!」
だからちゃんと勉強しときなさいって
あれ程言ってたのに
ゆま「だって、一緒の高校に行きたいんだもん・・・」
はぁ、分かったわ
でも合格出来るかは貴女の努力しだいよ
ゆま「合格だった、合格だったよ!!
ありがとう、ほむらお姉ちゃん」
おめでとう
同じ高校に行けたら告白するって約束
忘れないでね
ゆま「えっと・・・期限は高校卒業まででいい?」
・・・随分と伸びたわね
ゆま「ほむらお姉ちゃんも試合見に来てよ
絶対に面白いから」
貴女は試合じゃなくてショウ君を見てるんでしょ
ゆま「ちゃ、ちゃんと試合も見てるもん」
そうじゃないとマネージャー失格よね
ゆま「凄いよ、ショウ君1年で
レギュラーに選ばれたんだよ!!
ま、半分は私のお陰かな」
玉拾いしてあげてただけなのに随分と偉そうね
ゆま「ぶー。ほむらお姉ちゃんはそうやって
いっつもケチつけるんだから」
分かった分かった、ショウ君も感謝してるって
ゆま「ショウ君が・・・ショウ君が」
大丈夫、きっと大丈夫
だから・・・
ほむら「!!・・・夢?」
・・・またこの夢を見てしまった
ゆまとの関係が険悪になる前の記憶を
ほむら「・・・」
時計を見ると時間と一緒に日付が目に映る
まだ数ヶ月しか経っていない筈なのに
あの頃が遠い昔の様に感じられた
ほむら「・・・やり直したいと思ってるのかしら」
馬鹿
そんな事をすれば今度はゆまを苦しめるだけ
そもそも今の私には時間を操る事は出来ない
ほむら「きっと、きっと分かってくれる・・・」
あの時の様に諦めず説得を続ければ
きっとゆまも分かってくれる
今はそう信じるしかないのだ
タツヤ「お帰り・・・今日は遅かったね」
ほむら「ごめんね。残業で遅れちゃって」
本当は今朝見た夢に不安を煽られ
ゆまに会いに行ってたから
こんな時間になってしまった
しかし結局彼女には会えなかった
QBによるとゆまは私の気配に気付き
どこかへ隠れてしまったらしい
タツヤ「ふーん・・・ねぇほむ姉」
深刻な顔で呼ばれドキッとしてしまう
まさか悩みが有るのに気付かれてしまったんじゃ・・・
タツヤ「今度温泉に行かない?」
ほむら「・・・温泉?」
タツヤ「ほむ姉最近ずーっと働き詰めだから
偶にはいいんじゃないかなって
それに去年行った所なら
母さん達も気に入ってたから
上手く説得出来ると思うんだ」
どうやらタツヤには仕事のしすぎで
疲れが溜まってると思われてるみたいだ
ほむら「うーん、ごめんね
今はちょっと無理かな」
ゆまの問題が解決するまでは
彼女の傍を離れたくない
タツヤ「そっか・・・あんまり無理しないでね」
ほむら「うん。心配してくれてありがとう」
それに温泉なんか行かなくても
タツヤが来てくれるだけで十分癒されてる
だけど最近その事が少し心配になってきた
ほむら「ねぇタツヤ、中学校で
何の部活をするか考えてる?」
何時もの様に一緒に晩御飯を食べながら
それとなくタツヤに聞いてみる
タツヤ「部活?う~ん、部活に入ると
帰りが遅くなっちゃうし
帰宅部でもいいかなって・・・」
ほむら「・・・」
タツヤ「そ、そんな顔しないでよ
ちゃんと考えておくからさ」
私の心配事はこれだ
タツヤは私との時間を優先するあまり
他の事を疎かにしてしまうのだ
タツヤが会いに来てくれるのは嬉しい
だけど彼自信の事を考えると
はたしてこれでいいのだろうか?
ほむら「・・・もっと自分の
やりたい事をやってもいいのよ」
タツヤ「え?」
ほむら「今のタツヤ、私の為に色んな事を
我慢してる様に見えるから」
タツヤ「気にしなくていいよ、好きでやってるんだから
・・・もしかして僕がここに来るの、迷惑?」
ほむら「そんな事ないわ。ごめんね、変な事言って」
心配そうな顔で聞いてくるタツヤに
これ以上は言い辛かった
悩んだ末、タツヤが知久さんと一緒に
帰宅している間に電話で
詢子さんに相談してみる事にした
詢子「久しぶりだね~。元気にしてた?」
ほむら「はい、タツヤのお陰で毎日助かってます」
詢子「それは良かった
でも偶にはこっちにも来てよね
で、今日はどうしたの?」
ほむら「実は・・・」
タツヤに対する心配事を正直に話す
考え過ぎと言われるかと思ったけど
詢子さんは私の考えに同調してくれた
詢子「・・・なるほど、そう言えば修学旅行の時も
たった数日会えなくなるだけなのに
タツヤは嫌がって休もうとしてたね
よっぽどエイミーとの別れが辛かったんだね」
詢子さんにはエイミーとの別れが
原因だと説明したけど
まどかとの別れも大きな原因のはず
だけどその事は話しても
信じてはくれないだろう
ほむら「ごめんなさい、私がもっと」
詢子「ううん、ほむらちゃんのせいじゃないよ
早く気付いてあげれなかった私達親の責任さ
幸いタツヤももう直ぐ中学生だ
今までみたいに自由に使える時間は
グンっと少なくなるだろうし
私の方からも部活に入るよう言っとくよ
ちょっとずつそっちに行く回数を減らして
徐々に慣らしていけばいいさ」
ほむら「・・・」
詢子「ん?もしかして、タツヤが
あんまり来てくれなくなると寂しい?」
ほむら「・・・はい」
詢子「ぷっ、あっはははは」
ほむら「笑わないで下さいよ///」
詢子「ごめんごめん。ほむらちゃんも
タツヤが傍に居ないと寂しいんだなって
思うとつい、ね」
ほむら「タツヤには内緒にしといて下さいよ」
タツヤは私をだらしない大人だと
思ってるみたいなので
これ以上の弱みは見せられない
詢子「分かってるって・・・ほむらちゃん
改めてお礼を言わせて貰うね」
ほむら「え?」
詢子「今回の件もそうだけど
タツヤがあんなに立派に成長出来たのは
ほむらちゃんが居たからこそだと思うんだ
だから、ありがとう」
ほむら「・・・いえ、お礼を言うのは私の方です
私が今をしっかり生きていられるのは
詢子さんや知久さん、それにタツヤが
居てくれたからこそです」
詢子「そう言ってもらえてホント嬉しいよ
また今度一緒に飲もうね
じゃあお休み」
ほむら「お休みなさい、詢子さん」
詢子さんと小さな約束をして電話を終える
この小さな約束も私が生きる活力になっていく
魔獣との戦いに必ず生きて帰るという強い意志に
ほむら「さぁ、今日も頑張りましょうか」
辛い事もあるけど優しい日々がもっと続く
・・・そう信じていた
今回は以上です。
ゆまちゃんの年齢は不明だったのでこのSSに都合の良い年齢にさして頂きました。
皆さんは外出の際はマスク等で予防を怠らない様にして下さい。
そうじゃないとうちの職場みたいに凄まじいローテションを組む事になりますよ(苦笑)
1ヵ月近く投稿出来ずにすみませんでした。
>>748の続きを投稿します。
タツヤ「ただいま~。ねぇ父さん、早く行こうよ!」
今日は久しぶりにほむ姉が家に来てくれる
だからその前に急いで買い物に行かないといけない
知久「お帰りタツヤ。どれにするか決めた?」
タツヤ「これ」
こっそり学校にも持っていった
カタログを鞄から取り出して
印を付けてあるページを父さんに見せる
知久「これかい?結構前の機種だよ?」
タツヤ「いいの」
古い機種だろうが構わない
僕はこれがいいのだ
タツヤ「♪~」
知久「ちゃんと考えて使うんだよ」
タツヤ「分かってるって」
中学生になったらキッズ携帯じゃなくて
ちゃんとした携帯に買い替えてもらう
ずーっと前からしていた約束だ
僕が選らんだのはほむ姉と同じ機種
この日の為にお店に行ってカタログを貰ったり
まだ在庫が残ってるか確認してもらってた
知久「でも何で電話帳の引継ぎを
して貰わなかったんだい?」
タツヤ「いいじゃん別に」
最初に登録するのはほむ姉の携帯って決めてる
それに他の番号は後から登録出来る様に
ちゃんとメモに取ってあるから大丈夫
タツヤ「あれ?」
知久「どうしたの?タツヤ」
タツヤ「先に帰ってて、ゆまさんがいたから話してくる」
知久「あっ、遅くならない様にね」
タツヤ「は~い」
今日は父さんもはりきってるなぁ
久しぶりにほむ姉が来てくれるんだから当然か
タツヤ「むっ、まだ僕に気付いてないな」
よ~し、後ろからこっそり近づいて驚かしてやる
ゆま「・・・」
目的も無いのに町を歩き回るのは辛いなぁ
かと言って風見野の方に戻ると
暁美さんに見つかってしまうだろうし
タツヤ「ゆ~まさん」
ゆま「ゲッ!」
タツヤ「驚いた?僕だよ~」
ゆま「・・・鹿目君1人?」
タツヤ「うん。さっきまで父さんと一緒だったけど」
ゆま「・・・そっ」
てっきり暁美さんも近くにいるかと思ったけど
それなら安心だ
タツヤ「久しぶりだね。今日は部活はないの?」
ゆま「・・・今日はお休みだったの」
タツヤ「そうなんだ。ねぇ見て見て
ほむ姉のとおそろいのやつ
新しく買って貰ったんだ
まだ誰の番号も入ってないんだよ」
どうやら新しく買って貰った携帯を
自慢したくて私に話しかけて来たみたい
少し大人びてる一面もあるけど
こういうところはまだまだ子供らしい
タツヤ「それでね、今日ほむ姉が家に来るから
その時初めて赤外線を使ってみるんだ」
ゆま「・・・」
嬉しそうな顔を見てると何だかイライラしてきた
腹いせに携帯を取り上げて私の番号を赤外線で送ってやる
タツヤ「あ゛ぁー!?」
ゆま「うるさいな。どうせ私のも後から登録するんでしょ?」
タツヤ「酷いよ、酷いよゆまさん」
ゆま「もう男の子ならこんな事で泣かないでよ」
タツヤ「泣いてないよ、ゆまさんの馬鹿ー」
ゆま「・・・」
ついでに画面についてる透明なテープもはがしてしまえ
タツヤ「あぁー!?」
ゆま「鹿目君の初めては全部私が奪っちゃいました~」
・・・あぁ、空しぃ
ゆま「はい。これで許してね」
流石に子供相手に大人気なかったので
ソフトクリームを奢って機嫌を治してもらう事にした
最初は頬を膨らませて怒ってた鹿目君だけど
トリプルソフトを出す店に案内すると
物珍しさですっかり怒りも収まっていた
ゆま「・・・そう言えばこの店
暁美さんに教えて貰ったんだっけ」
タツヤ「え、ほむ姉もこういう所来るの?」
ゆま「いい鹿目君。女の子は誰だって
甘いの物には目が無いの
覚えておきなさい」
タツヤ「は~い」
ゆま「あと甘い物を持ってる時に女の子が隣に居たら
一言『食べる?』って聞くように」
タツヤ「えっと、食べる?」
ゆま「よろしい」
チョコの段を一口貰う
うん、やっぱり美味しい
タツヤ「そういえば何でゆまさんこっちに?」
ゆま「今更聞く?」
確かに隣町の人が1人ブラブラしてるのは変だけど
それは1番最初に聞くべき質問だと思う
タツヤ「ねぇ何で?」
ゆま「・・・喧嘩したから今あっちに居たくないの」
タツヤ「ゆまさん家出中なの?」
ゆま「違う違う。そもそも喧嘩したのは
お母さん達とじゃないし」
タツヤ「えーっと・・・」
鹿目君は必死に考えてるみたいだけど
答えは見つけられないだろうな
ゆま「この話はもうお終い。今度は私の質問
最近暁美さんの様子はどう?」
タツヤ「ほむ姉の様子って?」
ゆま「顔色が悪かったり苦しそうにしてた時なかった?」
タツヤ「う~ん、疲れが溜まってるみたいだけど
ほむ姉はその事隠そうとしてるんだ
無理しないでねって言っても
あんまり聞いてくれなくて・・・」
ゆま「そう。・・・鹿目君、今日暁美さんが
家に来るって言ってたよね?」
タツヤ「うん・・・あぁ!急いで帰んないと」
ゆま「ちょっと待って。これ暁美さんに渡しといてくれる?」
そう言ってゆまさんは袋を手渡してきた
石みたいな音がするけど何が入ってるんだろ?
ゆま「絶対に袋を開けちゃ駄目よ」
タツヤ「え?」
ゆま「絶対だよ」
タツヤ「うん分かった・・・ねぇこれ何が」
ゆま「頼んだわよ。じゃあまたね」
タツヤ「あっ、バイバイゆまさん」
う~ん、結局気になる事は何も教えてくれなかったなぁ
タツヤ「・・・」
気になるなぁ、袋の中身
袋越しに触ってみると角があるし
結構重いからやっぱり石なのかな?
タツヤ「・・・ちょっと見るだけならいいよね」
好奇心に負けて中身を1つ取り出してみる
石と言うよりは紺色の宝石みたいだった
っといきなり大量の視線を感じた
タツヤ「!?」
辺りを見回しても僕を見ている人はいない
でも明らかに何かが僕を見ていた
タツヤ「気のせいだ、気のせいだ」
自分に言い聞かせる様に呟き急いで家に帰る
でも真っ直ぐ家に向かっている筈なのに
何時の間にか知らない場所を走っていた
今回は以上です。
次回はほむほむ視点での話となります。
朝になってしまい申し訳ございません。
続きを投稿します。
見滝原にある大きな病院
ここには今、ゆまの想い人である
飛田ショウ君が入院している
QB「ゆまは来てないみたいだね」
ほむら「そう」
何時もならゆまを捜しに
風見野へ向かうところだが
今日はどうしようか迷ってしまう
QB「もしかしてこの前ゆまに言われた事を
気にしてるのかい?」
ほむら「・・・少しね」
ショウ君の事を心配していない
そう言われた時、私は反論出来なかった
私は彼の事は深く考えず
身内の心配しかしていなかった
そう、始まりは彼の身に起きた不幸な事故
それに対する対応の仕方を巡って
私とゆまは険悪になってしまったのだ
無事に志望校へと入学したゆまは
ショウ君を追いかける形で
サッカー部のマネージャーとなった
遅くまで彼の練習に付き合ったり
魔法少女として町のパトロールをしたりと
忙しい毎日を送っていながらも
ゆまは不満など洩らさず
毎日が充実していると自慢していた
だけどそんな中事件は起きた
ショウ君が日課としていた
早朝のランニング中に魔獣に襲われたのだ
この時ゆまは昨晩の疲れで熟睡しており
この事態に気付けなかった
QBから連絡を受けた私が駆けつけた時
ショウ君は既に私程度の治癒魔法では
治せないほどの重症を負わされていた
病院へ担ぎ込まれた彼は
一命を取り留めたものの回復には
長い時間を要すると診断された
ゆまは自分が魔獣を全て倒さなかったから
彼を傷つけてしまったと酷く落ち込んだ
せめて魔法で傷を癒させてあげれば
幾分かその気持ちは和らいだのかもしれない
しかし私はそれを許可出来なかった
怖かったのだ
小さな傷を治すくらいなら構わない
けれど大きな怪我を治してしまったら
その人に対する想いが膨らみ過ぎて
自分を見失ってしまうんじゃないか
そんな不安がどうしても拭えなかったのだ
だから私達の存在が世間に知られてしまうという
もっともらしい理由を持ち出して
ゆまの思いを押さえつけてしまった
今思えば、美樹さんの事を無意識に
ゆまに重ねてしまっていたんだと思う
でもその時の私はそれに気付いていなかった
そしてショウ君の心の傷にも・・・
魔獣との戦いが終わると病院へ行き
ショウ君が入室している部屋を
外から見つめていたゆまの姿は
本当に悲しそうだった
それでも私はゆまならきっと
立ち直ってくれると思い込み
見守り続ける事しかしなかった
しかしQBが気付いたある可能性によって
状況は一変してしまう
ショウ君が襲われた日の前夜
QBはゆまと一緒に行動しており
風見野に現れた魔獣は全て倒されたのを
しっかりと見届けていたのだ
だから早朝とはいえ魔獣が
新たに出現する可能性は極めて低く
もしかしたらショウ君を襲った魔獣は
どこか別の町から来た可能性があると
ゆまと私に語ったのだ
QBなりにゆまを励まそうとしたのだろうけど
結果的にその好意は裏目に出た
ゆまは犯人捜しを始めてしまったのだ
頭一つ飛びぬけた実力を持つゆまに
疑いをかけられた魔法少女達は萎縮して
本来の力を出せなくなってしまい
魔獣との戦いに支障を出す娘まで出てきた
私が必死に止めさせようとしても
ゆまは聞く耳を持ってくれず
躍起になって犯人捜しを続けた
ゆまがそこまで意地になったのは
ショウ君の心も大きく傷ついていたからだ
彼は自分の身に起きた事を
警察や主治医に正直に話した
しかし誰も彼の言葉を信じず
精神異常が起きているとさえ
誤診されてしまったのだ
その事がきっかけで彼は
誰にも心を開かなくなってしまい
唯一信じてくれていたゆまに対しても
暴言を吐くようになってしまっていた
ゆまが犯人捜しを始めて約2週間
ある娘が私の元を訪ねて来た
そしてあの日、魔獣を逃がしてしまったのは
自分だと泣きそうな表情で告白してくれた
私はその娘が自白してくれた事をゆまに伝え
とても反省しているから名前は聞かず
許してあげて欲しいと頼んだ
しかしゆまの怒りは収まらず
その娘には厳しい罰を与えべきだと言って
名前を聞き出そうとした
ゆまがずっと溜めていた悲しみや苦しみは
私が思っていた以上に彼女の心を蝕んでいたのだ
しかしその事に気付くのも遅すぎた
ゆまは名前を教えようとしない私に対して
痺れを切らし実力行使に踏み出してきたのだ
そしてそれ以降、ゆまは私を避ける様になり
時間だけが過ぎていった
QB「あれは仕方のない事だったさ
あの時反撃しなければ
君の方が危なかったんだよ?」
ほむら「でも、もし貴方が居なかったら私は・・・」
敵意を剥き出しにして攻撃して来るゆまに
動揺していた私は上手く加減が出来ず
必要以上にゆまを傷つけてしまっていた
もしQBが止めに入らなければ
もっと悲惨な事になっていたのかも知れない
ほむら「私が、私の判断が間違っていたから・・・」
QB「・・・ほむら、ゆまは僕が捜しておくから
君はもう休んだ方がいい」
ほむら「でも」
QB「今日は久しぶりにあの家に行くんだろ?
そこでゆっくり休むんだ
今の君がゆまに会ったところで
何も出来はしないよ」
ほむら「・・・」
結局私はQBに押し切られ
鹿目邸に向かう事にした
けれどこんな暗い顔じゃタツヤ達に
心配されてしまうだろう
何とか気持ちを切り替えないと・・・
っと携帯電話が鳴る
相手は知久さんからだった
ほむら「もしもし」
知久「あ、もしもし暁美さん?
何時ごろに来れそう?」
ほむら「え?」
腕時計を見て驚いてしまう
QBと別れて2時間近く経っていたのだ
ほむら「ご、ごめんなさい
直ぐに行きます」
知久「いや、焦んなくていいよ
ちょっと心配で電話しただけだから
タツヤと一緒にゆっくり来てよ」
ほむら「え?」
知久「・・・来てないのかい?
てっきり暁美さんのマンションに
迎えに行ったんだと思ってたけど」
そっか
知久さんは私がマンションに
居ると思っているのね
じゃあタツヤはマンションでずっと・・・
ほむら「実は私、ずっと外出してて
直ぐに帰ります」
知久「あ、うん」
電話を切って急いでマンションに戻る
多分タツヤはこのドアの向こうで
むくれて私の帰りを待っているのだろう
ほむら「ごめんねタツヤ。待たせちゃって」
謝りながら玄関を開ける
しかし
ほむら「・・・タツヤ?」
電気の点いていない部屋からは
タツヤの気配がまったく感じられなかった
今回は以上です。
続きは今週の金土日のいずれかの深夜になると思います。
長期の間更新を止めてしまいましたが
完走までもう少しですので
最後まで付き合っていただけたら幸いです。
夜が明けてしまいました。
短いですが続きを投稿します。
タツヤ「ハァ、ハァ」
見えない何から逃げ回って
どのくらいの時間がたっただろう
タツヤ「なんで、なんでまたここに」
家に向かって走っていた筈なのに
何時の間にか知らない場所を
ぐるぐると回り続けていた
まるでメリーゴーランドの中に
閉じ込められてしまったかのように
タツヤ「やだ・・・やだよ・・・」
ここから出れないかもしれない
そんな不安が頭をよぎり
泣き出しそうになる
タツヤ「父さん、母さん、ほむ姉ぇ~」
助けを求めるように家族の名前を呼ぶ
しかし呼びかけた人の返事はなく
変わりに恐ろしい足音が聞こえてきた
ほむら「お願い、繋がって・・・」
祈るように電話をかけるが
何度かけてもタツヤには繋がらない
GPSも彼の位置を特定してくれない
不安と焦りがどんどんと募っていく
警察にも捜索してもらっているのに
タツヤの姿は見つからない
誘拐されてしまったのか
それとも魔獣に襲われてしまって・・・
QB《ほむら、ゆまが見つかったよ》
ほむら《ホントに!?》
QBから届いたテレパシーに
僅かな希望を感じる
知久さんはタツヤと別れた時
タツヤは偶然町で見かけたゆまに
声をかけに行ったと教えてくれた
だから彼女ならタツヤが今どこにいるか
知っている可能性があるのだ
ほむら《それでタツヤの事は何か》
QB《残念だけど、ソフトクリームを奢った後に別れて
その後の事は知らないらしい》
僅かな希望も直ぐに消えてしまった
ほむら《そう・・・QB、ゆまにも一緒に
捜してくれるよう頼んでくれないかしら》
QB《頼んでみたけど拒否されてしまったよ
「頑張ってね」だってさ》
ほむら《・・・》
一瞬、ゆまに対して抱いてはいけない
不の感情を抱いてしまった
頭を振ってその気持ちを追い払う
ほむら《ゆまとタツヤが行ったお店を教えて
とにかくそこへ行ってみるわ》
タツヤ「な、なに、あれ・・・」
顔に靄のかかった灰色の巨人が
ゆっくりと近づいて来る
前からだけでなく横からも後ろからも
完全に囲まれてしまっていた
タツヤ「こ、こないでぇ~」
泣きながら必死に叫ぶ
あの巨人達は自分を殺そうとしている
分からない事だらけの状況なのに
何故かそれだけは確信出来ていた
そして自分はもう助からないと・・・
タツヤ「あ、あぁ」
巨人の手が伸びてくる
あれに捕まったら絞め殺されるのか
それとも食べられてしまうのか
スローモーションの様に迫ってくる
巨人の手を見つめながら
自分の死に様を想像していた時
タツヤ「え?」
巨人の頭が閃光によって吹き飛ばされた
光が飛んできた方へ目を向ける
そこには
タツヤ「・・・ほむ、姉?」
肩で息をしているほむ姉が居た
ほむら「タツヤ、伏せてなさい!!」
ほむ姉は弓を構えながら叫ぶと
先ほどと同じ閃光を撃ち出す
巨人達は次々と射抜かれ
遂に全て倒されてしまった
たった1人のほむ姉によって
ほむら「ハァ、ハァ」
今まで1度も見た事の無い
ほむ姉の姿に圧倒された僕は動けなかった
呆然としている僕の元へほむ姉が
心配そうな顔で駆け寄ろうとする
だけど
ほむら「!?・・・ぐ、はっ」
今度は彼女のお腹が閃光に貫かれた
ほむら「!?・・・ぐ、はっ」
血を吐き、激痛に耐えれず膝を付いてしまう
動きの止まってしまった私に
魔獣は容赦なく攻撃を繰り返した
私は奴らの罠にまんまと嵌っていたのだ
タツヤの周りにいた魔獣に気を取られ
背後に回り込まれている事に気付かず
一瞬、隙を見せてしまっていた
そしてその一瞬が命取りだった
ほむら「・・・あっ・・・がっ・・・あぁ」
辛うじてSGへの攻撃は凌ぐものの
息もまともに出来ないほど攻撃を浴び
QB「ほむら!?ほむら、しっかり意識を持つんだ!!」
遂には変身も解けてしまった
QB「ほむら!!ほむら!!」
立てない・・・
戦えない・・・
視界が真っ黒になっていく・・・
QBの声も遠くなっていく・・・
このまま私は・・・
ホントに短いですが今回は以上です。
次回の投稿も週末になると思います。
終わりが近いのにくぎってばかりで申し訳ございません。
遅れてすみません。
>>836の続きを投稿します。
今回は今まで以上に視点がコロコロ変わるので
読み辛いかもしれません。
血を吐き、膝を付くほむ姉
しかし背後から来る光は
容赦なく彼女を撃ち抜いていく
タツヤ「あ、あぁ」
あっと言う間にほむ姉は血まみれになり
前のめりで倒れてしまった
しかしそれでも彼女への攻撃は止まない
タツヤ「ほむ姉ぇ!!」
叫びながらほむ姉の下へ駆ける
自分が死んでしまうという恐怖より
彼女を助けたいという想いが勝り
無我夢中で走る
タツヤ「うあぁぁぁぁ」
しかし僕の声が目障りだったんだろう
巨人の1体が僕に向けて光を放った
その攻撃を避けられず・・・
タツヤ「ほむ姉ぇ!!」
ほむら「・・・あ゛」
誰かの悲しい叫び声が
消えかかった私の魂に届き
意識を取り戻させる
ぼやける視界に映るのは・・・
ほむら「・・・タ、ツ、ヤ?」
そうだ、このまま死んでしまったら
タツヤも魔獣に殺されてしまうんだ
せめて彼だけでも守らないと
だけど意思に反して身体は動いてくれない
タツヤ「うあぁぁぁぁ」
タツヤが私を助けようと
叫びながら駆け寄ってくる
ほむら「に゛、げ、て゛」
逃げてと叫びたいのにまともな声が出せない
自分の無力を痛感しながら何度も声を張る
しかしタツヤには私の声が届かず・・・
QB「ほむら!?ほむら、しっかり意識を持つんだ!!」
呼びかける
今まで何度も戦場を共にした
不思議な雰囲気を持つ魔法少女の名前を
しかし返事は返ってこず
代わりに彼女の変身が解けた
とうとう意識を保てなくなったのだろう
ほむらという魔法少女は死んだか
生きていたとしてもあと数十秒の命
魔法少女がこうなってしまった以上
直ぐに逃げなければならない
QB「ほむら!!ほむら!!」
しかしまだ呼びかけてしまう
無意味な行動
誰が呼びかけたところでもう彼女は・・・
タツヤ「ほむ姉ぇ!!」
ほむら「・・・あ゛」
QB「!?」
少年の叫びによって
ほむらは意識を取り戻す
ほむら「・・・タ、ツ、ヤ?」
その少年の名前は鹿目タツヤ
ほむらにとって特別な人物
タツヤ「うあぁぁぁぁ」
少年がほむらを助けようと駆け寄ってくる
彼にとってもほむらは大切な人なのだろう
しかしその行動は自殺行為に他ならない
ほむら「に゛、げ、て゛」
かすれた声でほむらは少年に言うも
その声は少年には届いていない
近くに居る僕がようやく聞き取れる声量だ
叫びながら走っている彼に聞こえる訳がない
QB「・・・」
魔獣の1体が少年の方を向く
あいつの攻撃を受けたら
少年は死んでしまうだろう
そしてそれを見たほむらは
絶望の中で死に絶えるだろう
QB「・・・」
ほむらは必死に逃げてと言い続ける
泣きながら、懇願するように
それほどまでに少年を生かしたいのだ
QB「・・・それが君の願いなのかい?」
僕等インキュベーターは
魔法少女の願いを叶えないといけない
だったら僕は・・・
QB「やぁっ!!」
ほむら「!?」
目を疑う光景だった
タツヤに向けて放たれた攻撃
それをQBがその身を盾にして防いだのだ
転倒して気絶してしまうも
直撃を免れたタツヤは無事だった
ほむら「なん、で?」
バラバラになったQBに問いかける
しかし彼はもう答えれない
ほむら「なんで」
何度恨んだか分からない
何度苦しめられたか思い出せない
でも、それは全て過去の話
ほむら「なんで・・・」
私の弱さを指摘してくれた
私のわがままも聞いてくれた
ゆまとの喧嘩も止めてくれた
このQBは10年もの間
私と共に戦ってくれた・・・
ほむら「う、うあぁぁぁ」
大切な友人だった
心に憎しみが宿っていく
本来持ってはいけない不の感情
しかし皮肉にもそれが立ち上がる力となった
黒い靄が私の傷を覆い塞いでいく
ほむら「・・・さない」
友人を殺した事
タツヤを殺そうとした事
ほむら「・・・絶対に、許さない!!」
怒りを体現するかの様に黒い翼が生えてくる
侵食する黒き翼
しかし今日のそれは普段のそれと
比べ物にならないほど大きく毒々しかった
ほむら「うあああああああ」
巨大な翼を振るい
1番近くに居た魔獣をズタズタに引き裂く
次にその奥に居た2体を挟み潰す
ほむら「ああああああああ」
散り散りになって攻撃を始める魔獣達
片翼を纏う様にしてその攻撃を防ぎ
もう片翼で魔獣を真っ二つにしていく
魔翌力の消費やSGの穢れなど気にしない
ただ怒りに身を任せ攻撃を繰り返す
ほむら「逃がさない!」
逃げようとした魔獣を細切れにして辺りを見回す
何時の間にか敵は全ていなくなっていた
ほむら「・・・うっ」
しかし翼は破壊の対象を求め暴れ回る
ほむら「制御が、出来ない・・・うっ、あぁ」
翼はなおも私の魔翌力を吸い上げ巨大化していく
このまま吸われ続けたら・・・
その時、癒しの魔法が私を包んだ
魔法は傷を覆っていた黒い靄をどかし
私の身体を治していく
全快にはならなかったけど
それでも翼を制御出来る程には戻った
ほむら「・・・ゆま」
魔翌力のパターン、桁違いの回復魔法
どちらもゆまのものだった
しかし既に彼女の姿を見えず
どこかへ跳び去った後だった
ほむら「・・・ありがとう」
一言礼を言い気絶しているタツヤの下へ行く
身体が鉛の様に重かった
ほむら「タツヤ、タツヤ、目を開けて」
タツヤ「・・・う、ん。ほむ、姉?」
ほむら「タツヤ、良かった」
ほむら「どこか痛くない?」
タツヤ「・・・あっ!ほむ姉、お腹」
ほむら「お腹!?お腹が痛いの?」
タツヤ「僕じゃなくてほむ姉のお腹・・・」
そう言いかけてタツヤは驚いた表情で
私の身体をまじまじと見つめる
ほむら「あっ・・・」
今更になって自分の秘密が
タツヤにばれてしまった事に気が付く
もう誤魔化す事は出来ないだろう
ならこれ以上この子達を
巻き込まない様にするには・・・
タツヤ「ほむ姉?」
ほむら「・・・鹿目タツヤ」
タツヤ「えっ?」
ほむら「・・・鹿目タツヤ」
スッと立ち上がったほむ姉は
今まで見た事のない無表情な顔で
僕の名前を呼んだ
タツヤ「え?」
ほむら「今日見た事は誰にも言わず
直ぐに忘れなさい
そしてもう私には近づかないで
いいわね?」
タツヤ「な、何言ってるんだよ、ほむ姉」
ほむら「約束出来ないと言うなら
貴方の記憶を全て消させてもらうわ」
タツヤ「そんな、そんなの嫌だ」
ほむら「そう。なら自力で忘れなさい」
そう言うとほむ姉は帰ろうとする
タツヤ「ま、待って。今日、家に来るんだよね?
だったら一緒に」
ほむら「何を言ってるの?行くわけ無いでしょ」
タツヤ「だって父さんも母さんも
ほむ姉が来るの楽しみに」
ほむら「私は別に楽しみになんてしていなかったわ
むしろ面倒だと思ってたぐらいよ」
タツヤ「嘘だ」
ほむら「ホントよ。まぁ黙って行かないのも失礼だから
メールくらいしておくわ」
そう言ってほむ姉は携帯を取り出すと
ポチポチとメールを打ってまた去ろうとする
タツヤ「ねぇどうしちゃったの?ねぇほむ姉ぇ」
すがり付く様にほむ姉の服を引っ張る
けどいきなりビンタされ手を離してしまう
ほむら「・・・しつこいようなら
本当に記憶を消すわよ?」
タツヤ「ご、ごめんなさい・・・」
泣き出しそうになるのを俯きながら必死に堪える
別人の様になってしまったほむ姉に対して
自分がどうすればいいのか分からない
ほむら「・・・さようなら」
タツヤ「・・・」
ほむ姉はそう言い残し行ってしまう
僕はその姿をただ呆然と
見てる事しか出来なかった
かろうじてマンションに着いたものの
耐え切れずソファに倒れ込んでしまう
ほむら「・・・うっ、うぅ」
ああするしかなかった
鹿目家の人達を巻き込まない為には
ああやって突き放すしかなかった
けれど何度自分にそう言い聞かせても
涙が止まる訳がなかった
ほむら「・・・タツヤぁ」
すすり泣く様にタツヤの名前を呼んでしまう
また大切な人を失ってしまった
心に開いた穴はもう埋まる事は無いだろう
あとは苦しみに蝕まれていくだけ
ほむら「まどか・・・私はもう」
SGに残されている
僅かな輝きを見つめながら
ほむらは深い眠りについた
今回は以上です。
次回はたっくん中心の話になります。
朝になってしまいすみません。
続きを投稿します。
深い霧の中をひたすら走る
先はまったく見えないけどこの先に
誰が居るかだけは分かっていた
タツヤ「ほむ姉ぇ」
僅かに見えた人影に呼びかける
僕がほむ姉の後ろ姿を見間違う筈がない
そしてほむ姉が僕を無視する筈がない
きっと振り返って笑顔を見せてくれる
それは絶対の自信と信頼だった
・・・だけどその信頼は
いとも容易く裏切られた
タツヤ「待って、待ってよほむ姉」
聞こえている筈だ
僕が後ろにいる事に気付いている筈なのだ
だけどほむ姉は振り返らない
僕を見てくれない
まるで興味が無いとでも言うように
タツヤ「行かないでぇ、ほむ姉ぇ!!」
泣きそうになりながら必死に叫ぶ
けれどほむ姉は一度とて振り返らず
遂にはその後ろ姿も見失ってしまった
タツヤ「ほむ姉ぇ!!・・・あ、れ?」
急に視界が開いたと思ったら
そこは見慣れた自分の部屋だった
タツヤ「・・・夢?」
そう理解するのにしばらく時間がかかってしまう
それほど今の悪夢は僕にとって現実的なものだった
タツヤ「・・・ほむ姉」
昨日、ほむ姉は家に来なかった
彼女は本当に僕らとの縁を断つつもりなんだ
別れ際の事を思い出す
僕を赤の他人の様に見ていたあの表情を
記憶を消すと脅した強い口調を
あれがほむ姉の本心だったのだろうか?
タツヤ「・・・そんなの、嘘だ」
ほむ姉との楽しい思い出が全部嘘だったなんて
信じられない、信じられる訳がない
僕にとってほむ姉との思い出は
何よりも大切な物なんだから
タツヤ「・・・」
もう覚悟を決めるしかない
今日の放課後、ほむ姉に会いに行く
会って自分の気持ちをちゃんと伝える
そしてほむ姉の本当の気持ちを教えてもらおう
ほむ姉は絶対に嘘を付いてる筈なんだから
ほむら「・・・」
ゆっくりと瞼を開くと何時ものベットの上にいた
つまりまだ現世に留まっているという事だ
手元にあるSGの状態を確認する
眠りに着く前同様酷く穢れを溜めていた
ほむら「・・・こんな状態でもまだ生きてるのね」
これには我ながら驚いてしまう
昨日の時点で限界だと思っていたけど
もしかしたらもっと穢れを溜めても
案外大丈夫なのかもしれない
ほむら「なんて、馬鹿な事を考えてるんだろう」
そうボヤいているとインターホンが鳴った
起き上がる気力も無いので無視していると
ガチャンっと鍵が開く音が聞こえた
タツヤ「ほむ姉、居る?」
何時もみたいに明るく元気に
ここに来る途中何度も自分にそう言い聞かせた
絶対に泣いたり不安な表情は出さない
タツヤ「あっ、やっぱり居た~」
ほむら「・・・なにしに来たの?」
じろりと睨んでくるほむ姉に
一瞬怯みかけるけど急いでリュックから
ある物を取り出す
タツヤ「こ、これ。久しぶりに一緒に見よ?」
リュックから取り出したのは
ほむ姉との思い出が一杯詰まっているアルバム
タツヤ「ねぇねぇ、これ覚えてる?
初めてほむ姉と一緒に旅行した時の写真
僕、前の日興奮してて全然寝れなかったんだ」
ほむら「・・・」
タツヤ「これは2人でこっそり映画を見に行った時のやつ
え~っと、こっちはサンタさんが来てくれた記念の写真」
ほむら「止めて」
タツヤ「これはほむ姉の合格祝いの時のやつでしょ
あとは・・・」
ほむら「止めてって言ってるでしょ!」
タツヤ「・・・あ」
ほむら「これを私に見せてあなたは何がしたいの?
私に楽しかったとでも言って欲しいの?」
タツヤ「楽しく、なかったの?」
ほむら「えぇ、まったく楽しくなかったわ」
タツヤ「嘘だ」
ほむら「ホントよ」
タツヤ「嘘だ、嘘だ、嘘だ!」
ほむら「聞き分けのない子ね、もういいわ
今日は見逃してあげるから早く帰りなさい」
タツヤ「嫌だ。ほむ姉が嘘を付いてるって認めるまで
僕帰らないから」
ほむら「もう一度叩かれたいの?」
タツヤ「だって写真の中のほむ姉、笑ってるんだよ
楽しくなかったらこんな表情出来る訳ないもん」
ほむら「・・・作り笑いよ」
タツヤ「違う、絶対違う。ほむ姉も楽しかったんだ
僕や父さんや母さんと一緒で楽しかったんだ
僕には分かるもん」
ほむら「あなたに私の何が分かるの」
タツヤ「だって僕は、僕は・・・」
何時の間にか泣いていた
駄々っ子みたいでカッコ悪いけど
もうここまで言ったら言い切るしかない
タツヤ「僕は、ほむ姉が」
っと突然、ほむ姉に抱きしめられた
タツヤ「・・・え?」
ほむら「・・・お願い、それ以上は言わないで」
あっけに取られている僕に向かって
ほむ姉は優しく続ける
ほむら「急に冷たくしてごめんね
嘘付いたりしてごめんね
聞きたい事が沢山あるのも分かるわ
でも、何も聞かないで
全部あなたの為なの
私の近くに居ればまた
あの魔獣に襲われるかもしれないの」
ほむ姉の表情は見えない
だけど悲しい表情をしてるって分かる
そして今になって自分が
彼女を追い込んでいた事に気付く
嘘を付かなければならなかった
ほむ姉の気持ちを僕は考えていなかった
タツヤ「ごめん、ほむ姉」
ほむら「謝らなくていいわ
タツヤは何も悪い事してないんだから」
タツヤ「僕、昨日の事誰にも言ってないよ
父さんにも母さんにも」
ほむら「ありがとう」
タツヤ「・・・やっぱり会えなくなるなんて嫌だよぉ」
ほむら「・・・大丈夫よ、魔獣がいなくなったら
私の方から会いに行くわ」
タツヤ「ホントに?」
ほむら「えぇ、約束するわ」
そう言ってほむ姉は僕を放してくれると
右手の小指をだしてくれた
タツヤ&ほむら「ゆびきりげんまん、嘘付いたら
針千本飲~ます。指切った」
この約束が果たされる事はないだろう
それでも嬉しそうなタツヤの顔を見ると
もう少しだけ頑張ろうと思える
ほむら(また助けてもらったのかな)
心の中でそう思いながら
タツヤを家まで送る
おそらく鹿目家の人達の姿を見るのは
これが最後になるだろうから
今回は以上です。
次回で終わる予定です。
このSSまとめへのコメント
最後の最後で荒らしにつぶされた
百合豚のしわざか?