美穂子「上埜さん日記」 (140)

先生や華菜の勧めで今日から日記を付けようと思います

たくさんの上埜さんとの思い出を綴る予定です

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今朝は上埜さんからランチのお誘いがありました
上埜さんはとても美味しかったです
おやすみなさい

東京には上埜動物園というところがあるそうです
上埜さんがたくさんいて楽しい所だと上埜さんが言っていました

今度上埜さんといっしょに行きましょうと約束しました
とても楽しみです

朝起きるとベッドに上埜さんがいました
「おはようございます」と声をかけても、上埜さんはまだ眠っていました

ベッドを抜けるとキッチンで上埜さんが朝食を作っていてくれました

それをテーブルで上埜さんといっしょに食べます
美味しかったです

明日は私が上埜さんに朝食を作ってあげたいです

上埜さんと私が結婚すると、苗字が竹井になってしまうのだそうです

上埜さんはどこにいってしまったのでしょうか?
私の上埜さんを返してください

壁からたくさんの上埜さんが出てきました
とても幸せ

今日は華菜に上埜さんの話をたくさんしました
ついうっかり喋り過ぎちゃったかな?

少し恥ずかしいですね

でも上埜さんの話を聞いてもらえて嬉しいですよ、華菜

久しぶりに上埜さんと麻雀をしました
やっぱり上埜さんは強いです

私は一度しか上がる事が出来ず、ずっと上埜さんが勝ち続けました

でも、上がれた時には上埜さんが褒めてくれたのでとても嬉しかったです

今日は上埜さんに会えなかったので書くことがありません
何もない一日で悲しいです

今日も上埜さんが来てくれなかったので、一日中上埜さんを探しました

ロッカーの中にいるかもしれないと思って何度もロッカーを開け閉めしたけど、上埜さんは現れませんでした

明日こそは会いたいです上埜さん

眠っていたら上埜さんが来てくれて、上埜さんといっしょに寝ました
上埜さんに抱きしめられながら眠るととても温かくて気持ちが良いです

今日は上埜さんのお部屋に行きました

上埜さんのお部屋はとても広くて何もかもが大きいです

上埜さんも上埜さんのお部屋だととても大きくなってしまい、私は縮んでしまいます

でも上埜さんが私を大切に扱ってくれるのが伝わってきたので、私は幸せでした

上埜さんは忙しい人なので、会えない日もあります

とてもさびしくてくじけてしまいそうになります

そんな時には、上埜さんを思いながら一人で麻雀のゲームをします
ゲームの使い方は華菜に習ったので大丈夫です

ゲームのコンピュータは悪待ちをしないので余計にさびしくなってしまいました

今日は先生とお話をする日でした

今週は3回も上埜さんに会えない日があった話をした時に、先生がかすかに笑ったのは気のせいでしょうか?

先生が上埜さんを隠したのですか?
どうしてそんな事をするのでしょうか

もしそうなら私と上埜さんの邪魔をしないでください
お願いです

上埜さんに「焼肉と焼き魚のどちらがいおですか?」と聞いたら、「美穂子が食べたい」と言われました
そんな事を言われたら私が火傷してしまいます上埜さん

上埜さんに食べてもらうなら本望です
いつか召し上がってくださいね上埜さん

今日は青い上埜さんとピンク色の上埜さんがいました

「今日はいつもと違いますね」と言うと
「どうかした?」と上埜さんに聞き返されました

おかしな上埜さん
でも違う色の上埜さんも素敵でした

上埜さんといっしょにお出かけしました

上埜さんと出かけると私はいつも迷子になってしまいます
いつもいつも上埜さんとはぐれてしまいます

一人で道に迷っているといつも迷子になる私は上埜さんに迷惑がられていないか不安で不安でたまらなくなります

ごめんなさい上埜さん
いつも勝手に帰ってしまってごめんなさい

上埜さんに手を握られると、私は舞い上がってしまってよくない事をしてしまう気がします

上埜さんは優しいので、困ったような顔で私をフォローしてくれます

私は上埜さんに甘えてしまっていますね

上埜さんに会わなくてホッとする日もあるのですが、ここだけの秘密です
上埜さんにはナイショです

今日は一日上埜さんに会ったらどうしようか不安だったけど、結局会いませんでした

でも明日は会いたいです上埜さん

今日は華菜とお話しました
上埜さんといっしょに行こうかと思いましたが、華菜が「二人で会いましょう」と言うので一人で行きました

一人だと毎回道に迷わないかが心配ですが、今日は華菜が迎えに来てくれたので助かりました

おとといの日記を付け忘れていました

でも、何があったのかはよく憶えていません

おとといの私は上埜さんと会えたのでしょうか?

ロッカーを開けたら上埜さんがたくさん入っていました
上埜さんはみんな素敵でした

今日は上埜さんとお出かけしました

いつもいつもはぐれてしまうので、今日は上埜さんの腰にしっかりしがみついていました

「歩きにくいは美穂子」と言いながらも私を引きずってくれる上埜さんはとても素敵でした

上埜さんのいれてくれたコーヒーは上埜さんの味がしてとても美味しいです
何杯でも飲めてしまう不思議な味です

上埜さんのお部屋に行きました

また模様替えをしたのですね
とても見晴らしが良かったです

上埜さんといっしょにご飯を食べました
上埜さんといっしょだといくら食べてもお腹がいっぱいにならない気がします

今日は華菜に迎えに来てもらって先生の所へ行きます

先生は私に「上埜さんと会いたくない時はどんな時か」
「上埜さんと会いたいけど会えない日はどんな時か」
など聞かれました

そんな事を聞かれても、私はただただ困ってしまいました

どう答えればよかったのでしょうか?

よくわからない事ばかりです




華菜「ようやく見つけたし」

華菜「ああもう。こんなに手が冷たくなってる!」ぐいっ

華菜「ほら、帰ってご飯食べるし!」

華菜「立てるか?ここは寒いから、早く帰るぞ」

華菜「・・・竹井」


久「竹井?誰ですかそれは?上埜さん、上埜さんはどこですか?」

美穂子「華菜っ!」

華菜「あ、先生」

美穂子「久が見つかったって本当?」

華菜「今しがた見つけたところです。震えてたから自販機でココア買って飲ませました」

美穂子「震えて・・・?だ、大丈夫かしら上埜さん!?」

華菜「健康状態はさほど悪くないし。それと、先生。今『上埜さん』って言いましたよ?」

美穂子「ああっ、ごめんね華菜。つい気が動転して・・・」

華菜「気をつけてくださいし!」

久「・・・上埜さん?」ぴくっ

華菜「あっ!」

久「上埜さん?上埜さんはどこですか?上埜さんに会わせてください!」

華菜「落ち着くし!」

久「上埜さん!私上埜さんに会いたい!どうして会いに来てくれないのでしょうか?上埜さん・・・」

美穂子「久・・・」

久「あれ?華菜に、先生?どうしてここに?」

美穂子「・・・あなたこそ、どうしてここに?」

久「私?私は上埜さんを探しに部屋を飛び出して・・・?」

華菜「勝手に部屋を出たらダメだって言っておいたろ?」

久「ごめんなさい華菜。上埜さんに会いたいと思ったら、居ても立ってもいられなくて」

美穂子「いいのよ久。もう帰りましょう?」

久「でも私は上埜さんを探さないと」

美穂子「・・・久、あなたのお部屋で待ちましょう?きっとまた会いに来てくれるわよ」

久「でも、私・・・」

美穂子「うん」

久「上埜さんに会いたくて・・・」ぐすっ

美穂子「あなたのお部屋で待ちましょう。それにもし上埜さんがあなたに会いに来た時に、あなたが居ないと困ってしまうでしぃう?」

久「・・・わかりました。部屋に帰るわ」

華菜「じゃ車に乗るし」

久「うん、ありがとう華菜」

美穂子「お部屋に帰りましょう。久、あなたはごはんを食べないと」

久「はい。お腹が空いたわ」

華菜(少し口調が混じってるし。正気に戻りかけてるか?)

バタン
ブロロロロロ

華菜「病院までは15分くらいだし。帰ったらごはんとお風呂にも入れるように連絡しといたし」

美穂子「ありがとう華菜。仕事が早いわね」

華菜「て、照れるしっ」てれっ

久「上埜さん。会いたいです上埜さん・・・」ぶつぶつ

華菜「ああ、また落ちちゃってるし」

美穂子「・・・少し、面談してみようかしら?」

華菜「大丈夫ですか?いつもより危ないんじゃないでしょうか?」

美穂子「この状態でないと出来ない事もあるかもしれないじゃない?」

華菜「・・・わかりました。何かありそうなら、すぐに車を止めますね」

美穂子「ええ、お願い」

美穂子「ねぇ久?いつものように自己紹介してくれるかしら?」

久「・・・またですか先生?」

美穂子「嫌いなのはわかるけど、やってもらえないかしら?」

久「・・・わかりました。私の名前は上埜久」

美穂子「・・・。」

久「風越に通う高校生です。麻雀部に所属しています」

久「父と母の名前は、上埜XX、上埜XX」

久「風越で毎日上埜さんと麻雀を打つのは楽しいです」

美穂子「・・・そう」

久「・・・いつもみたいに質問しないんですか?」

美穂子「今日はやめておくわ。今の久は疲れてるみたいだから」

久「良かったです。先生は私が自己紹介をするといつも意地悪な質問をするんですもの」

美穂子「そんな事ないわよ。それと、話変わるけど久。あなたは今何歳だったかしら?」

久「私ですか?何歳・・・何歳?私、今いくつでしょうか?」

美穂子「・・・。」

久「私は、今・・・今日?いつ、えっと、わかりません。自分が何歳かわからないです」

美穂子「そう。この話はやめましょうか?」

久「はい・・・」

美穂子「代わりにあなたの好きな麻雀部の話を聞かせて。麻雀部には他にどんな人がいるのかしら?」

久「麻雀部、上埜さん以外ですか?他の部員は、美穂子がいます!」

美穂子「・・・へぇ、どんな子なの?」

久「とても綺麗な眼をした女の子で、上埜さんととても仲が良いんです。二人は中学の大会で出会ってから、ずっと親友なんですよ」

美穂子「そうなの。話してくれてありがとう久」

久「はい!上埜さんの話なら、いつでも聞いてください!」

華菜「・・・到着だし。竹、いや久、車から降りるし」

久「うん。送ってくれてありがと華菜」


華菜「竹井のヤツ、どんどんひどくなっていませんか?もう自分の年齢すらわからなくなってきています」

美穂子「私はそうは思わないわ。彼女は確実に自分の状況を理解しつつある。少しずつだけれどね」

華菜「だといいし。あいつがここに来てから、ずいぶんになるし」

美穂子「日々を積み重ねるほど、日記の効果が出てくると思うの。久は自分の矛盾に自分で気づくしかないわ」

華菜「先は長そうですね」

美穂子「いいのよ。少しずつ、少しずつ良くなってくれれば」にこっ

なんだか久しぶりの日記な気がします

お部屋に戻ったら、そこには上埜さんが待っていてくれました!

部屋の扉を開けたら上埜さん。ベッドで眠る上埜さん。ロッカーの中にも上埜さん。窓の外にも上埜さんです

上埜さんが「遅かったじゃない美穂子」と言いました
お待たせしてごめんなさい上埜さん。私また道に迷ってしまったみたいです(華菜と先生が迎えに来てくれました)


今日もたくさんの上埜さんとすごす日々はとても幸せです

おしまい

家族がバラバラになってしまった久さんは実は大きなトラウマを負っていた

→昔の「上埜 久」の頃に戻りたいと心の中では思いつつ、今までひょうひょうと振る舞っていた

→美穂子と再会して、その制止が振り切れて精神的に病む

→自分を、あったかもしれない「美穂子と風越女子に通う上埜 久」だと思いこむようになった


→以下の日記へ


こうかな?  異論は認める

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