久「ねぇ、美穂子」 (86)

美穂子「はい、なんでしょう」

久「それ、ロンだわ」

美穂子「……あら」

――――――――――

・オムニバス形式で咲SS
・基本百合
・部キャプ以外も書く予定
・溜めなし
・落ち無し
・考えなし
・才能なし
・のんびり
・リハビリ
・現実逃避

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396102920

久「ねぇ、美穂子」

美穂子「はい、なんでしょう」

久「最近暖かいと思わない?」

美穂子「……そうですね」
    「連日の暖かさで東京都心ではすでに桜が開花しているみたい」

久「結構速いように思えるけど、実は去年より9日くらい遅いのよね、開花宣言」
 「平年よりは早いけれど」

美穂子「長野ではいつごろ咲きますかね」

久「……ちょっと調べてみようかしら」

久「……」

久「飯田市が4月1日で一番早いみたいね」

美穂子「4月1日ですか」

久「うん……だからこの辺りはもう少し遅いかもね」
 「あっ、そうだわ」

久「桜がいい感じに咲いたらお花見に行きましょうか」

美穂子「えっ!?」

久「みんなで」
 「鶴賀や、龍門渕の人たちも誘ってね」

美穂子「……ですよね」

久「ん? どうかした?」

美穂子(……もしかしたら上埜さんと二人っきりで……)
    (だなんて、思っていた自分)

美穂子(ずうずうしすぎるわよね、そんなの……)

久「……美穂子?」

美穂子「あっ、いえ、なんでもありません」
    「それじゃあ私、お弁当作っていきますね」

久「本当?」

美穂子「はい、腕によりをかけて」

久「それは嬉しいわ!」
 「美穂子の料理はおいしいものね」

久「好きよ、とっても」

美穂子「……っ」

久「……あら?」
 「どうしたの? 顔、赤いけど」

美穂子「あっ、いえっ……その、春の陽気に……中てられてしまったみたいで」

久「なぁんだ」
 「言ってくれれば、カーテンくらい閉めるのに」

美穂子「……す、すいません」
    
美穂子(私に対して、じゃないことはわかっているけれど)
    (平然とそういうことを言うなんて……やっぱり)

美穂子「……ずるいです」

久「えっ」
 (何が……? 私の暑さに対する耐性が……?)

美穂子「あの、上埜さん」

久「なにかしら」

美穂子「ウーロン茶と緑茶、ほうじ茶、紅茶、麦茶なら、どれがお好きですか?」

久「えー?」
 「うーん、そうねぇ」

久「……」
 「どれも同じくらいかしら」

美穂子「そ、それだと、困るんです!」

久「えぇ……」

久「じゃあ……緑茶かしら」

美穂子「そうですか!」

久(いったい何なのかしら)

――――――――――数日後


美穂子「上埜さん」

久「ん? あら美穂子、どうしたの?」

美穂子「お弁当、作ってきたんですけれど……いかがですか?」

久「本当に? 嬉しいわ」
 「折角だからいただこうかしら」

美穂子「はい!」

久「……どれどれ」

カパッ

久「うわぁ……おいしそう!」

久「やっぱり美穂子の料理は見た目もばっちり!」

美穂子「そ、そんな……」

久「じゃあ、いただきます」
 「……ん」

美穂子「……」

久「……うん、味も最高」

美穂子「そうですか、よかった……」
    「あ、お飲み物もありますから、どうぞ」

久「サービスまで最高と来たわ」

美穂子「ちょっと待ってくださいね、注ぎますから……」

美穂子「……はい、どうぞ」

久「ありがとう」
 「っと、ん?」

久(この香り……緑茶?)
 (あ、なるほど。 前にお茶の好みを聞いてきたのはこういうことだったのね)

久「……ズ」
 (気遣いまでできる。本当にできた人だわ)

久「ふぅ……」
 (うん、やっぱり緑茶だわ、和食には緑茶)

久「じゃあお次はこの卵焼きを」
 「……はン」

久「……んッ!?」
 (違う)

久(おかずが和だから緑茶が合っているわけじゃない)

久(緑茶に、おかずの味を合わせてきている……!)

久(この緑茶にして、このおかずあり……! 逆も然り!)

久(まさかここまで計算して今日のお弁当を作ってきたというの!?)

美穂子「……ふふっ」

久(やっぱり美穂子……すごいわね)

【まどろみ】


美穂子「あの、上埜さん」

久「……」

美穂子「上埜さ……」
     「……あら」

久「……ん」
 「スー……」

美穂子「寝ていましたか」
    「ふふ」

美穂子「暖かいですものね」

美穂子(とはいえ、このまま寝ていたら風邪をひいてしまうかも)
    (ひざ掛けは持ってきていないし……)

美穂子(何か……かけるものは)

美穂子「……あっ」

美穂子「こんなところにお塩が」
    「……って、それはお料理にかけるもので」

美穂子「数字」
    「は……かける時もあるわね」

美穂子「橋……?」
    「橋は架かっていなければ意味がないわ」

美穂子「宇宙?」
    「宇宙を駆ける……」

美穂子「あ、あら……!?」
    「私、一体……どう、しちゃったの、かしら……」

――――――――――
―――――――
――――

美穂子「う、うぅん……」

美穂子「……」

美穂子「ん……?」

久「あ、起きちゃった?」

美穂子「上埜さん……」
    「あれ……私」

久「ふふ、ぐっすり」

美穂子「あ……す、すみません」

久「まぁ、暖かかったからね、仕方ないわよ」
 「私も、結構寝ちゃうし」

久「暖かいけど、もしかしたら風邪ひいちゃうかも、なんて思ったから」
 「毛布を掛けようとしたんだけれど……それで目がさめちゃったみたい。 ごめんなさいね」

美穂子「そ、そんなっ! むしろ……心配していただいて、ありがとうございます」

久「ふふふ、大げさよ、美穂子」

美穂子(……上埜さんは、毛布をちゃんと掛けてくれていたのに)
    (私は夢の中でさえ、毛布を掛けてあげられなかった)

美穂子(……駄目ね、私ったら)


きょうはここまで。

【お気遣い・和咲】

咲「――でね、あそこのお店のクレープが美味しいって評判になってて」

和「そうなんですか」
 「なら、今度行ってみましょうか」

咲「うんっ! ……楽しみだね」

和「えぇ」
 「っと……部室についてしまいました」

咲「たくさん麻雀打てると良いね」

和「今日は、負けませんよ」
 「……っと」

和「あら?」
 (ドアがちょっと開いている……)


――――――――――

「本当?」

「はい、腕によりをかけて」

「それは嬉しいわ!」

――――――――――


和(そしてこの声……)

咲「ん?」
 「どうかしたの、和ちゃん」

和「あの、咲さん」

咲「……? なぁに、和ちゃん」

和「その、クレープ」
 「食べに行くの、今日にしませんか?」

咲「え? でも、ここまで来たのに」

和「興味がわいちゃったんです」
 「そもそも……私がお腹を空かせているときに、クレープのお話をする咲さんがいけないんですよ?」

咲「え、えぇ~? 私がぁ……?」

和「はい♪」

咲「う、うぅん……?」
 「……まぁ、いっか」

咲「じゃあ、行こっ、和ちゃん」

和「ありがとうございます」
 「行きましょう、咲さん」

和(あんな風にお話をしているときに、部室に行くのはちょっと野暮ってものですよね)

和(どうせですし、咲さんと2人きりの時間を楽しませていただきましょう……)

【にわか雨】

久「悪いわね、買い物に付き合ってもらっちゃって」

美穂子「悪いだなんて……そんなことは無いですよ」
    「私も、買いたいものがありましたから」

久「そう? なら、良いけど」


ポツ...ポツ...


久「……ん?」
 「あ、雨?」

美穂子「そうみたいですね……」
    「天気予報では、晴れだって言っていたのに」

久「そうだったわよね」
 「……ともかく、強くなる前に帰りましょう?」

美穂子「えぇ、そうしましょう」


ザァァ.......

――――――――――

ザァァーッ...


久「……はぁ」
 「こんなに早く強くなるとは思わなかったわ」

美穂子「近くに雨宿りできる場所があって良かったですね」

久「そうね、本当に……」
 「まぁ、雨が弱まるまでここでちょっと待ってみましょうか」

美穂子「えぇ、この雨の降り具合では……」
    「無理をして帰ったら、風邪をひいてしまうかもしれませんし」

久「季節の変わり目の風邪は厄介だものね」

美穂子「長引きますから……」
    「あ、ハンカチがあるので、良かったら使ってください」

久「あら。ありがとう、美穂子」
 「使わせてもらうわね」

美穂子「えぇ」

久「それじゃあ、動かないでね」

美穂子「はい」
    「……え?」

久「拭いてあげるから」

美穂子「えっ!? う、上埜さ……ひゃっ」

久「はいはい、動かない動かない」

美穂子「ちょっと、あの……上埜さん、私は良いですから」

久「だめよ、美穂子」
 「使わせてもらうわよ、って聞いて、えぇ、って答えたのは貴女なんだから」

久「持ち主に許可を得た私には、それを自由に使う権利がある、そうでしょう?」

美穂子「で、でも」

久「そーれーに、どうせ、美穂子のことだから」
 「先に自分の体を拭いちゃいなさいって言っても、聞いてくれないでしょう」

美穂子「……それは」

久「まぁまぁ! 良いから」
 「おとなしく拭かれなさい」

久「ね?」

美穂子「っ……」
    「……はい」

久「うん、それでよし」

久「……~♪」

美穂子「……」

美穂子(う、うぅ、絶対顔が赤くなってるわ)
    (……はずかしい)

美穂子(心臓も騒がしいし……)

美穂子(は、早く拭いてください……上埜さん)

久「……」
 「……ふふ」
 
久「はい、おしまい」

美穂子「……はー……」

久「じゃあ、私も拭かせてもらうわね」

美穂子「はい……すみません、湿ったハンカチで」

久「いいのいいの、借りられるだけで十分よ」

美穂子「……」

久「ふぅ、意外と濡れちゃってるわね」
 「暖かくなってきた時でましだったとはいっても、酷いわね」

美穂子「……えぇ」

久「……」

久「でも、ちょっと、ラッキー……だったかもね」

美穂子「え?」

久「あ……えっと」
 「雨宿りの分、2人でいられる時間が増えるでしょ?」

久「だから、ラッキーかな……って」

美穂子「ぇ……」

久「あ……」

美穂子「……っ」

久「……」

美穂子「……ぁ、ぁの――」

久「――ま、まって! 今の無し」
 「無しッ……ね? 聞かなかったことに、しましょう! ね!」

美穂子「あ、そ、そうですね! そうしますね!」

――――――――――

優希「まったく、デートの日に雨が降るなんてさいてーだじぇ」
   「お前は雨男か!」

京太郎「デートじゃないし、俺は雨男じゃない!」
    「はぁ……ったく」

優希「それに、雨に備えて折り畳み傘くらいもってこいっ!」

京太郎「ビニール傘買ったんだからいいだろ……?」

優希「そういう問題じゃないじぇ!」

京太郎「ハァ……はいはい」

京太郎「……お? あれは」
    「部長と……風越の……福路さん?」

京太郎(……あんなとこで、二人で雨宿りでもしてるのか?)
    (それにしても……なんで)

優希「おいっ! きょうたろーっ! 傘が高くて下の方がびちょびちょだ!」
   「もっと傘の位置を下げるんだじぇ!」

京太郎「……」
    「ハァ~……」

優希「そうそう、そのくらいだじぇ」
   「やればできるじゃないか」

京太郎「……何様だ」

京太郎「……にしても」
    (なんであの二人、並んで座ってるのに全然顔も合わそうとしなかったんだ)

京太郎(仲悪かったのか? あの二人……)


今日はここまで
4月1日が億劫なんですな

【知らん顔・まこ】

―――――部室

まこ「……」

まこ「今日は風がつよいのー……」

久「あら、まこ」
 「もう来てたのね」

まこ「おー、部長」
  「今日は店番も掃除当番もないけぇの」

まこ「そがぁなら、一番最初に着いてしもうたみたいじゃ」

久「そうだったの」

まこ「……」

まこ「今日は」
  「風越のキャプテンのところにゃあ行かんのか?」

久「え? 美穂子のところに?」

まこ「最近よう会うとるじゃろう」

久「……そうかしら?」

久「あ」
 「何、まこ、もしかして」

まこ「なんじゃ」

久「私がいなくて寂しかった、とか?」

まこ「なっ……」
  「べ、別にそがぁなことない」

まこ「どっちか言うたら、せいせいしょぉったんじゃ……」

久「あら、ひどい」

まこ(……ひどいのはどっちじゃ)
  「……まったく」

久「あ、そうそう」

久「はい、これ」

まこ「……ん?」
  「なんじゃ、このメガネクロスは」

久「結構可愛いでしょ」
 「この間、買い物に行ったから。そのお土産」

久「……ちょっと、シンプルすぎたかしら」

まこ「お土産……」

久「気に入らないなら、沢村さんや吉留さんにあげちゃうけど」

まこ「気に入らんなんて、そがぁなこと言っとらん」
  「……」

まこ「……ありがとう」
  「大事に使わせてもらうけぇ」

久「良かった♪」

~♪

久「っと」

まこ「なんじゃ、電話か?」

久「そうみたい」
 「ごめんね、ちょっと」

久「……!」

まこ(あ……)

久「もしもし?」
 『ごめん、まこ、ちょっと席外すわね』

まこ『分かった』

久「えぇ、うん、大丈夫よ」
 「どうしたの?」

まこ「……」

まこ(相手は、風越のキャプテンじゃの)
  (まったく、分かりやすい奴じゃ)

まこ(表示画面を見たときの顔)
  (……長い間、一緒におったはずなんに)

まこ(わしの知らんような……嬉しそうな顔して)

まこ(あんたが特別な風に思っとること、丸わかりじゃ……)

まこ(どれだけ、わしがあんたのことを見よぉったんか、分からんじゃろうの)


まこ(あー……)

まこ(……悔しいのぉ)


久「うん、じゃあ、また」
 「はい、はーい」

久「……」
 「ふー」

まこ「誰からじゃ?」

久「あー、えっと、美穂子からよ」

まこ「会わん日も、結局電話しとるのぉ」

久「電話だって、毎日来てるわけじゃないわ」

まこ「そうじゃろか」


けらけらと笑ってみせる。

……目からこぼれそうになっていたものを
貰ったメガネクロスで拭いてやろうとも思ったが
彼女からの贈り物であるという事実が、それをさせなかった。


まこ(……わしも、大概じゃの)


早いけど今日はここまで。



このような駄文を見てくださっている方、ありがとうございます。
4月1日から新生活が始まり、投稿できない日が続きます。
仮に投稿できても、それほど長いものには出来ないかと思います。

キリのいいところまでは続けたいと考えていますので
お暇なときには覗いてくださればそれ以上に嬉しいことはございません。

【つうかあ】

久「ねぇ美穂子」

美穂子「はい、なんでしょう」

久「あの件はどうなった?」

未春(……あの件?)

美穂子「あぁ、あれはあれで大丈夫みたいです」

久「そう、良かったわ」
 「ちょっと不安だったのよね」

美穂子「そうですね」

星夏(……確認)

久「私はべつに牛にこだわらないんだけどね」

美穂子「こちらの方だと多いのは豚ですからね」

未春・星夏「えっ」

久・美穂子「えっ」

未春「あの……聞くのもどうかと思うんですが」
   「お二人は何について話していたんですか?」

美穂子「前に、コーチがね」


貴子「姫松の監督から長野県で美味いご飯が食べられるところあるか聞かれたんだが」
   「どこかちょうど良い感じの店知らないか?」


美穂子「って聞いてきて」

久「それならあの、コンビニが二軒並んでる通りにある定食屋がいいんじゃないかって私たち二人で話してたのよ」
 「安いし、それなりにボリュームがあるし」

久「そもそもおいしいしね」
 
星夏「はい、それは分かります」

久「特に、焼肉定食は男女問わず人気のメニューだから」
 「それを頼んだら良いんじゃないかってことも、言ったのだけれど」

美穂子「実は、関西の方では焼肉定食といえば豚ではなく牛が一般的らしくて」

未春「あぁ、だから豚とか牛とかおっしゃってたんですね」

久「そうそう」
 「それで、もし焼肉定食は牛しか認めないっていう人がいたら、なんか申し訳ないことしたなって思って」

久「良かったのかな、ダメだったのかなってどんどん気になっちゃってね」
 「だから、美穂子に久保コーチへ、大丈夫だったか、って確認してくれるよう頼んでおいたの」

星夏「そうしたら、結局問題なかった、と」

久「そういうこと」

未春「それにしても、よく“あの件”で通じましたよね」

星夏「そうですよ、はたから見ていたら全く話の内容が分かりません」

久「そうなの?」

美穂子「意外とわかるものだと思っていたけど……」

未春・星夏(いやいや……)

久「……あ、そうそう!」
 「あの話についてなんだけど」

未春・星夏(あ、また始まった……)


今日はここまで
なんだか頭が回らんちん


風越部長パターン?

>>36
これはただ風越に部長が来てるという設定です
何回も来てるので誰も気にしてませんけどね

【独占欲】
自室

久「あー……」
 (……美穂子)

久(……)

久(会いたい……無性に)

久「はぁ……」
 「どうかしてるわ……最近」

久「……」

久「明日……空いてるかしら」



美穂子『はい、もしもし』

久「もしもし、美穂子?」

美穂子『あ……上埜さん!』
   『こんばんは』

久「こんばんは、今電話大丈夫?」

美穂子『ええ、大丈夫ですよ』
   『どうかしましたか?』

久「あー、えっとね」
 「明日って何かあるかしら」

久「もし時間があれば何処か行きたいなって思ってるんだけど」

美穂子『明日……ですか?』

久「そう」

美穂子『……あの、明日は』
   『華菜達と勉強会を開く予定で……』

美穂子『ごめんなさい、だから時間がないんです』

久「……」
 「あ、そぉ……」

美穂子『わざわざ誘って頂いたのに……』

久「……良いわよ、別に」

美穂子『……あ』

久「まこやゆみを誘って行くことにするわ」
 「取り敢えず、聞きたいのはそれだけだから」

美穂子『そうでしたか……』

久「じゃあ、切るわね」

美穂子『あっ、はい……おやすみなさい』

久「おやすみ」

久「……」

久「はぁ……」

キュッ...キュッ...

ザァー……


久「……」

久「……ハァ」

久「……」

久(さっきの……感じ悪かったわよね)
 (バカみたい)

久(美穂子にだって、予定があるのに)
 (自分の思い通りにならなかったからって)

久(あんな風に……ぶっきら棒に言うことなかったじゃない)
 (ほんと……なにやってるのかしら)

久(やっぱり、どうかしてるわね……私)

久「……」

久「……グスッ」

久「……はぁ」

久「後で……謝ろう」

 
今日はここまで
見てくださってる方々、本当にありがとうございます

もし、こんなシチュで、っていうものがあればいくつかやらせていただきたいと思いますので
よろしくお願いします

おつです

独占欲のミッポ視点が欲しいすなーできれば続編?付きで

>>43
承知しました
次回は【独占欲 episode of side-M】でやります

美穂子「……はぁ」

美穂子「上埜さん……」

美穂子(最近、上埜さんのことが頭から離れない)

美穂子(お電話してもいいのかしら……)
   (でももしお風呂にでも入っていたら出られないだろうし……)

美穂子(そもそも……迷惑なんじゃないかしら……)

美穂子「……」

美穂子(声が聞きたい……)


~♪


美穂子「ひゃ!」

美穂子「……上埜さん?」

美穂子(ど、どうしましょう)
   (声を聞きたいとはおもったけれど)

美穂子(いざ電話で話すとなると……緊張しちゃうわ……)
   (取り敢えず、落ち着きましょう)

美穂子「すぅ、はぁ……」

美穂子「……よし」

美穂子「はい、もしもし」

久『もしもし、美穂子?』

美穂子「……上埜さん」
   「こんばんは」

久『こんばんは、今電話大丈夫?』

美穂子「ええ、大丈夫ですよ」
   「どうかしましたか?」

久『あー、えっとね』
 『明日って何かあるかしら』

久『もし時間があれば何処か行きたいなって思ってるんだけど』

美穂子「……!」
   (上埜さんと……お出かけ!)

美穂子(あっ……でも)

美穂子「明日……ですか?」

久『そう』

美穂子「……あの、明日は」
   「華菜達と勉強会を開く予定で……」

美穂子「ごめんなさい、だから時間がないんです」

久『……』
 『あ、そぉ……』

美穂子「わざわざ誘って頂いたのに……」

久『……良いわよ、別に』

美穂子「……あ」

久『まこやゆみを誘って行くことにするわ』
 『取り敢えず、聞きたいのはそれだけだから』

美穂子「そうでしたか……」
   (染谷さんや加治木さんと……)

久『じゃあ、切るわね』

美穂子「あっ、はい……おやすみなさい」

久『おやすみ』


美穂子「……」

美穂子「……」

美穂子「……」ジワァ

美穂子「どうしましょう……」

美穂子(上埜さんの期待に応えられなかった……)
   (せっかく……誘ってくださったのに)

美穂子(もう誘ってくれなかったら……)

美穂子(でも、華菜たちとの約束を無下にするわけにもいかないし……)

美穂子「私……どうしたら」ポロポロ


美穂子(罪悪感で……死んでしまいそう)

~♪


美穂子「っ……!」

美穂子(電話……もしかして)

美穂子「……上埜さん」

美穂子(……誘いを断った私に……出る権利なんて、あるのかしら)
   (でも……出ないと失礼だわ)

美穂子(……)


美穂子(もしここで、出なかったとして……)
   (これからずっと、会えなくなってしまえば)

美穂子(それは、中学校と高校入学の時の二の舞だわ)

美穂子(こうやって、再び会えて……麻雀を打てて)
   (会話をして、一緒に日々を過ごせている)

美穂子(もう、会えないで……あの人の顔も見れないなんて、そんなの嫌)

美穂子(私は、後悔なんてしたくない……)

美穂子(出て、謝ろう)
   (そして、また今度……一緒に何処かに行けるなら)

美穂子(行きたい、行かせてくださいって、伝えなきゃ!)

美穂子「も、もしもし! 上埜さん!」

美穂子「あのっ……!」


ツー……ツー……


美穂子「……」
   

美穂子「き、切れてしまったわ……!」

美穂子「どうしましょうどうしましょう」

美穂子「と、とりあえず、かけなおさなきゃ……!」


トゥルルルン……


美穂子「……出て、お願い……!」


ガチャ


美穂子「もしもし、上埜さん!?」

久『美穂子……』

美穂子「あの、さきほどは」

久『さっきは、ごめんなさい!』

美穂子「……っ、え?」

久『私……酷い言い方したわよね』
 『美穂子にだって、用事があるのは分かってるの』

久『それなのに、自分の思い通りにならなかったからって、勝手に機嫌悪くなっちゃって』
 『……酷すぎるわよね』

美穂子「えっ、いえ! そんな!」
   「私こそ、折角、誘っていただいたのに……上埜さんの期待に応えられず」

美穂子「……ごめんなさい」

久『なんで謝るのよ!』
 『美穂子はなにも悪くないわ』

久『悪いのは、私なの』
 『……どうかしてる、私のせいなのよ』

美穂子「どうかしてる……!?」
   「上埜さん、何か、調子が悪いんですか!? 大丈夫ですか!?」

久『違うのよ、体調不良とかじゃなくて』

久『……』

久『さっ……』
 『最近……美穂子のことばかり……考えてて』

美穂子「……」

美穂子「えっ……?」

久『……会いたいとか……出かけたいとか……一緒にいたいとか』
 『い、色々……考えて』

久『しまって、その』

美穂子「……」

久『美穂子が誰かと過ごすのかと思うと、辛くって……』

久『って、な、なんだか、あはは! 気持ち悪いわね、自分で言ってて、おかしいって思うわ!』

久『……ごめんなさい、今のも聞かなかったことにし』

美穂子「一緒です」

久『……美穂子?』

美穂子「それでおかしいっていうなら、私もきっとおかしいんです」
   「それが気持ち悪いのなら、私だって気持ち悪いのだと思います」

久『……そ、それって』

美穂子「私だって、同じ風に……考えてます」
   「上埜さんと……」

美穂子「何処かに行きたい、お喋りしたい」
   「一緒にいたいって……思ってるんです」

久『……美穂子』

美穂子「あの」
   「明日は……無理ですが」

美穂子「また、今度……よろしければ」
   「一緒に、何処かに出かけませんか?」

久『……ええ、そうね』
 『2人だけで、ね』

美穂子「はい……」
   「楽しみに、してますね」

久『じゃあ……そろそろ切るわね』

美穂子「はい、上埜さん」

久『改めて、今日はごめんなさい』
 『そして、ありがとう』

美穂子「こちらこそ、ありがとうございました」

久『うん……おやすみ、美穂子』

美穂子「おやすみなさい、上埜さん」


美穂子「……」

美穂子「はぁ……」

美穂子「……」

美穂子(どうしましょう)

美穂子(……どうしましょう)


美穂子(上埜さん……)

美穂子(上埜さん)


美穂子「……」

美穂子「……好き……」


美穂子(はやく、来て)


(貴女に会える日よ……どうか、早く──)

   
今日はここまで
おやすみなさいまし

【となり・華菜】

美穂子「……ふぅ」

美穂子(今日は上埜さんと会える日)

美穂子(楽しみだけど……最近は少し辛い所もある)

美穂子(私が上埜さんに抱いている気持ち)
    (それは、間違いなく……ずっと一緒にいたい、隣を歩いていたい、という)

美穂子(友情とは、まったく異なる想い)

美穂子(その想いを伝えられないまま、いつも別れてしまう)
    (もし、上埜さんに伝えられたなら……楽になれるのかもしれない)

美穂子(でも、怖い)
    (今だって、二人で歩くことができている)

美穂子(それなのに、この関係が変わってしまうかもしれない、もう隣を歩くことが出来ないかもしれない)
    (何より、上埜さんを困らせてしまうかもしれない)

美穂子(だから、伝えられない……)
    (会うたびに、気持ちは膨らんで……どんどん、どんどん苦しくなっていく)

美穂子(会えないなら会えないで、辛いくせに)
    (……私って、我儘だわ)


「キャプテーンッ!」

美穂子「……華菜」

華菜「お疲れ様です、キャプテン!」

美穂子「えぇ、お疲れ様」

華菜「……あれ?」
   「どうかしたんですか? なんか、元気ないみたい」

美穂子「え?」

華菜「なんだか、雰囲気がしょぼーんってしてますよ」

美穂子「そ、そう? ごめんなさい、別に元気がないわけではないのよ?」

華菜「本当ですか~?」

美穂子「本当。 本当よ?」
    「ちゃんとお昼も食べていたでしょう?」

美穂子「だから、元気がないなんて、そんなことないわ。 ね?」

華菜「……」
   「……嘘つき」

美穂子「えっ……」

華菜「キャプテンが嘘ついてることくらい、すぐわかっちゃうんですよ!」
   「バレバレです!」

華菜「……何か、あったんですよね?」

美穂子「……」
    「そんな、わざわざ言うことではないのよ?」

華菜「あたしには相談できない、ってことですか?」
   「あたしって、そんな信用できない人間ですか?」

美穂子「そ、そんなことないわ!」

華菜「なら、何でも良いから……言ってみてください」
   「話したら、少しくらいは楽になるかもしれないですし」

華菜「それに、何より、あたしはキャプテンの力になりたいんです!」

美穂子「……華菜」

華菜「……だめ、ですか?」

美穂子「……華菜には、敵わないわね」
    「じゃあ、少しだけ……甘えちゃおうかしら」

華菜「はい! 思い切り、甘えてください!」

美穂子「……少し辛いの」
    「今日、ある人と会うのだけれど」

華菜(ある人って……)
   (……清澄の、かな)

美穂子「……その人と会うのが、ちょっとだけ、ね」

華菜「……どうしてですか?」

美穂子「それは……自分の気持ちを伝えられないから、かしらね」

華菜「……」
   「気持ちって……どんな気持ちですか」

美穂子「……ぅ」

華菜「あたし、誰にも言いませんから」

美穂子「……い」
    「一緒に、いたいという気持ち……それも、ずっと」

華菜(……っ)

華菜「どうして伝えられないんです?」

美穂子「私が、弱いから……かしら」
    「今の関係でも、十分幸せだし」

美穂子「もし伝えて、今の関係が壊れてしまったら……って考えると、ね」

華菜「……キャプテンは弱くないです」

美穂子「そう、かしら」

華菜「そうです! あたしはしってます」
   「……それに、今の関係が壊れてしまったら……って」

華菜「キャプテン、その関係って……自分が気持ちを伝えたら」 
   「簡単に壊れてしまうような、もろいものなんですか?」

美穂子「そ、それは」

華菜「違いますよね」
   「そのことはキャプテンがいちばんよくわかっていると思います」

美穂子「だけれど……少し、ぎこちない関係になってしまうかも……しれないから」

華菜「それはあるかもしれませんけど」
   「何もしないままでも、今の関係は壊れてしまうかもしれないんですよ」

華菜「キャプテンが動かなきゃ……その人、誰かにとられちゃうかもしれないですよ」

美穂子「……!」

華菜「それは嫌ですよね?」

美穂子「……ええ」

華菜「だったら伝えた方が良いです」
   「伝えられないまま、あとで後悔する方が、ずっと辛いと思います」

華菜「キャプテンなら、伝えられます」
   「……本当に……」

華菜「ほんとうに、その人のことが……好きなら」
   「伝えられるはずです!」

美穂子「……華菜」

華菜「……」

美穂子「……そうね」
    「ありがとう、華菜」

美穂子「私、がんばって……伝えてみるわ」

華菜「……はいっ」
   「もし、ちゃんと伝わらなかったら、なんて、先に考えちゃ、ダメですよ!」

華菜「それに、勝利の女神であるあたしが応援してるんですから」
   「絶対に成功します!」

華菜「キャプテンは、幸せになれます!」
   「あたしが保証しますっ!」

美穂子「ふふ、それは、とても心強いわ」

美穂子「華菜のおかげで、沢山勇気が湧いてきちゃった」

華菜「えへへっ」

華菜「て……ぅわ!」

美穂子「……ほんとうに、ありがとう。 華菜」ギュッ

美穂子「私、素敵な後輩を持てて……幸せだわ」

華菜「……っ」


華菜「キャプテンにそう言ってもらえて……光栄ですっ!」

華菜「……あっ、ほら!」
   「そろそろ、時間なんじゃないですか?」

美穂子「え?」

華菜「もう、16時過ぎですよ!」
   「早く準備して、いかないと!」

美穂子「あら……そうね」
    「今日のお礼に、今度、お弁当を作ってくるから」

華菜「お弁当! やたっ!」

美穂子「ふふ……楽しみにしててね」

美穂子「じゃあ、行ってくるわね」

華菜「はいっ! 気をつけて!」
   「健闘をおいのりしてますっ!」


.......バタン

華菜「……」

華菜「行っちゃった」

華菜「……」ジワ...

華菜「うぐっ、ヒクッ……」
   「……ぐす」

華菜(自分で、伝えないほうが後悔するって言ったくせに……)
   (……言った本人が、伝えられないままで後悔するなんて)

華菜(えらそうに言える立場じゃないし……)

華菜「……うぁぁぁぁん」


(……清澄の部長)

(あたしの大好きなキャプテンを泣かせるようなことしたら)

(絶対に、許さないからな)


(キャプテン)

(ずっと、大好きでした)

(どうか、幸せになってください)

【告白・部キャプ】
――――――――――同日

久「それでね、咲がまた、見事に嶺上開花しちゃって」
 「しかもドラがのっちゃったものだから……それは大変だったわ」

美穂子「ふふ……」
    「つくづく運が巡ってこないこともありますよ」

美穂子「次は、負けないようにがんばりましょう?」

久「えぇ、後輩は皆、どんどん成長していってるわ……」
 「負けないように、私も沢山練習して、強くならないとね」

美穂子「はい!」

久・美穂子「……あ」

久(別れ道……)

美穂子(……)

久「……」

美穂子「……」

久・美穂子「あ、あのっ」

久「え?」

美穂子「あっ……」
    「あの、なんでしょうか?」

久「いや、美穂子こそ、どうしたの?」

美穂子「いえいえ、上埜さんが先におっしゃってください」

久「いやいや……って、これじゃ埒があかないか」
 「いや、まだ時間があるから……良かったら、もう少し……お話どうかなって、思ったのだけど」

美穂子「……あ」

久「美穂子は、何が言いたかったの?」

美穂子「……実は、私も」
    「もう少し、お話したいと、思っていまして」

久「――」

久「ちょ、ちょうど良かったわ!」 
 「じゃ、じゃあ、とりあえずあそこに公園があるから」

美穂子「そこでもうしばらくお話していましょうか!」

久「ええ! そうしましょ!」

美穂子(……)

美穂子(ここで、言わなければ)

美穂子(華菜に顔向けできないわ)

久「……」

―――――

美穂子「……」

久「お待たせ」

美穂子「あ……」

久「飲み物、コーヒーで良かった?」

美穂子「あ、はい、勿論です」
    「……ごめんなさい、お金出さないで……」

久「いいのよ、こういうときはおとなしく奢られておくものなの」

美穂子「……ありがとうございます」

久「いえいえ……」
 「……」

美穂子「……」

久「……うん」

美穂子「はい……」

久「……」

美穂子「……」

久「な、何かお話しましょうか」

美穂子「ええ、そうですね! 何か」

久「……何か」

美穂子「え、えっと」

久「……ぅ」

美穂子「……ぁ」

美穂子(だ、ダメ……伝えなきゃってことで頭がいっぱいで)

美穂子(ちゃんと会話が出来ないわ……)

美穂子(し、しっかりしないと)

美穂子(会話、会話)

美穂子(……何か、話題)

美穂子(話題、話題)
    (話題、告白、告白)

久「えーと……美穂k」

美穂子「う、上埜さんっ! あのっ!」

久「ひっ! はい!」

美穂子「……あの」

久「……ええ」

美穂子「こ、こく」

久「……こく?」



美穂子「……告白させてください」



久「……あ」
 「あ、あぁ~、ね! 告白!」

久「……告白ね」

久「……」

久「えっ……」

美穂子「あっ……」

久「……美穂子」
 「告白って」

美穂子「……」

久「そういう、告白?」

美穂子「……はい」

久「告白、するの?」

美穂子「さ……させてください」

久「……今?」

美穂子「……今です」

久「……」

美穂子「私、実は、上埜さんのことが」

久「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってっ!」
 「まだOKしてないわよ!」

美穂子「えっ……」

久「……まだ」

美穂子「い、言わせてください!」

久「だ、ダメだってばッ!」

美穂子「どうしてですかっ……!」

久「どうしてって、それは」

久「わ、私から告白したかったからよ!」

美穂子「えっ」

久「……」

美穂子「……え」

久「私から、言いたかったの」

美穂子「う……上埜さん」

久「美穂子、実はね、私、貴女のこと」

美穂子「ダメっ!」

久「えぇ~……!?」

久「なんで遮るの!?」

美穂子「わ、私……約束したんです!」
    「華菜と……ちゃんと気持ちを伝えるって!」

美穂子「だから、告白は私からしなければいけないんです!」

久「そっ、そんなこと言ったら私だって!」

久「実はちょっと前に、和にちゃんと気持ちを伝えた方が良いって言われて」
 「それに、そうね、って答えちゃったんだから」

久「先に告白されたら、和に何て言えば良いか!」

久「だから私が言うの!」

美穂子「さ、流石に、上埜さんがそう言っても」
    「ここだけは譲れないんです!」

久「私だって、譲れないわ!」

美穂子「……」

久「……」



久「……ふっ」

美穂子「……くすっ」

久「ふふっ、あはははッ」

美穂子「ふふふっ」

久「も、もぉ、何よこれっ」
 「こんなロマンチックの欠片もない告白なんて、全然想像してなかったわ!」

美穂子「本当です」
    「さっきまで緊張していたのが馬鹿みたい」

久「まったくだわ!」
 「緊張損よ、もう」


久「はー……ほんと」
 「美穂子と一緒にいると、楽しいわ」

美穂子「……ええ、私も」
    「上埜さんと一緒にいると、とても楽しいです」

久「……」
 「ずっと、一緒でも……良いくらいだわ」

美穂子「……」
    「ずっと一緒には……いてくださらないんですか?」

久「……一緒にいてくれるの?」

美穂子「……私でよければ」

久「この先、何があるか、わからないけど」
 「……幸せなことばっかりじゃないと思うけど、それでもいい?」

美穂子「はい」
    「そんなこと、分かってますから」

美穂子「貴女のとなりの一番を、私に譲ってくれませんか?」

久「……ええ」

久「喜んで」

―――――――――――――――
――――――――――――
―――――――――


久「美穂子」

美穂子「どうしたの? 上埜さん」

久「……」
 「それよねぇ……」

美穂子「え?」

久「呼び方」

久「せっかく付き合って、結構経ったのに」
 「まだ私のこと上埜さん、って呼ぶでしょ」

美穂子「あ……」

久「どうして?」

美穂子「……それは」

久「……それは?

美穂子「一番最初、出会ったときのこと……覚えてる?」

久「勿論」

美穂子「あの時に私の目が綺麗だって……言ってくれて」
    「それがとても嬉しかったの」

久「そうなの?」

美穂子「今まで言われたことが無かった言葉だったから」
    「でも、あの後……貴女はいなくなって」

久「そうね……次に会ったのは、高校三年生」

美穂子「そう」
    「貴女が入学するものだと思って入った風越にも、貴女の姿はなかった」

久「……」

美穂子「もしかしたら、その時のことをまだ心のどこかで引きずっていたのかもしれない」
    「私が初めて知った貴女が、上埜さんだったから」

美穂子「私が気にしていた目を、誉めてくれた貴女が」
    「改めて出会った時に、そのことを忘れているかもしれないこと」

美穂子「貴女が変わってしまっているのではないかってことが、怖かったから」

久「だから、今でも上埜さんって、呼んでいたのね」

美穂子「……そうかもしれない」

久「……なら、もう大丈夫ね」

美穂子「え?」

久「私、もう、美穂子の前から勝手にいなくなったりしないもの」

久「それに、私、自分を変えるつもりはないわ」

久「……ううん、正確に言うなら、“一人で”変えるつもりはない」

美穂子「……」

久「これからの道は、美穂子」

久「貴女と二人で、変えていきたいから」

美穂子「……はい」

久「ま、というわけで、上埜さん呼びは禁止! ね?」

美穂子「分かったわ」

久「よろしい!」



久「……美穂子の右目、綺麗ね」

美穂子「あら、ありがとう」

久「あら、謙遜しないのね」

美穂子「ええ」
    「だって、貴女が誉めてくれた目だもの」

美穂子「自慢の目なの」

久「ふふ、そう」

久「ねぇ、美穂子」

美穂子「はい、なぁに?」


久「愛してるわ」


美穂子「……私も」

「愛しています、久」


【FIN】

見ていただいた方、ありがとうございました。
少しの暇つぶしにでもなったのなら、幸いです。

心に沁みるわ…
乙でした

部キャプ編が終わりで別キャラで続けてくれるのかな?

>>81
他の子たちは、また別にスレを立ててやります
その時もまた、見ていただけるなら嬉しいこと限りないです

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