頑張ります。
SSはよく書きますがこう言った形で書くのは初めてなので
至らぬところが多々あるかと思います
完結させて徐々にうpさせたかったのですが
8割くらい書いたところでHDDが吹っ飛んだため書きながらあげることにしました
遅筆です
完結はさせます
上琴になるつもりです
性的描写入るかもです
よろしくお願いします。
12月学園都市
学園都市第七学区に存在する「窓のないビル」
培養液が満たされたビーカーに逆さまに浮かぶのは学園都市統括理事長アレイスター・クロウリー。
「その格好はどうかと思うが…」
彼の眼前にはアロハシャツの上から学生服を羽織る男、土御門元春。
「年中培養機に詰まって衣替えしないアンタには言われたくないぜい」
土御門はサングラス越しにアレイスターを睨む。
「…忙しいんだ、手短にしろ」
「仕事だ、手筈はもう整っている」
土御門は舌打ちをして、顔を歪める。
「またか…お前も懲りない奴だな」
アレイスターが視線で何かを促す。
土御門が視線の先を見ると束ねられた書類が目に入った。
やれやれといった様子で書類を手に取り、それから何も言うことなく去っていった。
一人になったアレイスターは、培養機の中で静かに笑う。
「さて、今回は…どう動いてくれる?」
とある高校の職員室。
この学校の教師である黄泉川愛穂は椅子に腰掛けながら終業のチャイムを待っていた。
今はちょうど6限の途中。他の教師は授業のため全て出払っていたが、自身の授業が無いので、コーヒーを飲みながらぼんやりと考えごとをしていた。
考えているのはここ最近学園都市と騒がせているある事件。
警備員でもある彼女は最近その事件に引っ張りだこだった。
「能力の暴走…か…私にはわからないことじゃんよ」
と、そこへ一通の電話が掛かってくる。
電子音を鳴らす電話へ手を伸ばし受話器を取る。
「はい、こちら…」
学校名を告げようとしたところで止まる。
聞こえてきたのはビープ音、FAXを知らせる音だった。
「ったく…メールですればいい物を、資源の無駄じゃん」
そう言いながら黄泉川は送られてきた書類に目を通す。
送られてきたのはどうやら警備員関連の書類らしく、紙に小さな警備員の紋章がある。
「──え…」
驚きで時が止まった。手に持っていたマグカップを落としそうになる。
何かの見間違いだ、ともう一度ゆっくりと読みなおす。
しばらくして黄泉川は書類を机の上に置き
「ふ…ざけんな」
ガタン。と黄泉川は書類の上から机を力任せに殴った。
終業チャイムと共に伸びをするのは不幸少年こと上条当麻だ。
「ふぁ~~」
伸びをしながら本日これからの予定を考える。
夕飯の買出し、帰宅、夕飯。
(自由の身になってもやる事は変わらないか…)
自由の身…というのも、上条家の居候シスターインデックスは、昨日イギリスへ帰国したためである。
年末に大掃除を行うのはどの国でもお馴染みの習慣らしく、インデックスはイギリス清教内の大掃除の手伝いとやらに駆り出される羽目になった。
人手不足、というのが表向きの理由だが、
結局は彼女の絶対記憶能力が目的なのだろう、とステイルはつまらなさそうに言っていた。
上条「スキルアウトだ!」に見えた
北井
黄泉川「炊飯器以外にご飯つくれじゃん」
上条 「」
>>1です
>>26
スキルアウトのトップ辺りに立ってる上条が
ジャッジメントととして来た美琴をねじ伏せる
直後スキルアウトの下っ端集団に
美琴が腹いせされそうになるけど
トップの上条による一喝で美琴救う
まで思いつきました
でも他のスキルアウトには電撃喰らうから腹いせのくだりは難しいですかね
誰か頑張ってください
本日も短いですが投下していきます
職員室
「だからっ!わけがわからないじゃん!」
放課後の職員室で携帯に向かって怒鳴り声を上げるのは黄泉川愛穂。
電話の相手はさっきFAXを送ってきた彼女も所属する警備員の支部である。
「どう考えてもおかしいじゃん!上条当麻は学生、それがなんで…」
支部のほうからは上の決定としか言われなかった。
黄泉川自身も抗議の電話を入れているが、支部のほうでもその「上」に相当抗議したはずだ。
抗議もしないような腐った支部ではないのは、所属する黄泉川自身が一番わかっている。
わかってはいるが…
「…」
黄泉川は少し黙りこみ、冷静に考える。
「わかった…ただこの件は、私に任せてもらうじゃんよ」
相手の返事も待たず、黄泉川は電話を切った。
溜め息を付き、両手で頭を掻く。
「あ、あのー」
その時後ろから少し怯えたような声が掛かった。
バカ二人から逃げ出した上条は、
職員室で電話に怒鳴り散らす黄泉川愛穂に恐る恐る声を掛けて、
素晴らしい睨みを受けた後、校長室へ連れられた。
(いやいやいや…校長室しつってもうどう考えてもヤバい話しかしないでしょう…
遂に留年…出席日数がやっぱりアウトだったのか!?くそう…不幸だ)
きっと豪華であろうソファーに座らされ、目の前にはジャージ教師黄泉川と名前の知らない校長が座っていた。
(あーでもゴリラじゃないだけマシだよなぁ…あのゴリラならひと通り話が終わったら鉄拳喰らわされそうだし)
いろいろ考える暇があるのは、黄泉川と校長が何やらヒソヒソと話しているからだ。
それほど自分の留年が急な話だったのだろうかと考えていると。
「上条当麻!」
「はっ…はい」
突然黄泉川に声をかけられ肩を大きく震わせる。
突然黄泉川に声をかけられ肩を大きく震わせる。
と、黄泉川のほうは上条の名前を口に出したきり、何やらうんうんと考え込んでいる。
「あ、あのー」
しびれを切らせた上条から逆に声をかける。
しかし黄泉川は黙り込んだまま。
微妙な空気が流れる校長室。
校長は窓の外を見たままで「今日も部活動が盛んですな」とでも思っていそうだ。
「あー!もう!」
黄泉川が頭をぐしゃぐしゃと掻きながら叫ぶ。
上条は全く以て意味がわからない。
そこまで留年決定者に留年を告げるのが苦な仕事なのだろうか。
「上条当麻!今から言うこと、よく聞くじゃんよ!」
ようやく話が始まるのか、と上条は背筋を今一度伸ばす。
「先に言っておくけど、これは十分拒否可能!少しでも嫌だと思ったら嫌って言うじゃん!わ か っ た ?」
あまりの気迫に上条が小さく「はい」と返事をすると、
バン!
と机の上に何やら書類を突き付けられる。
見るのが恐ろしかった上条は突き付けられた瞬間閉じていた目を、恐る恐る開いていく。
と、そこにあったのは。
以上です。
やっぱり短い、ですね
申し訳ないです
少しずつペースを上げていければ
と思っています
たくさんの支援、期待とても励みになります
ありがとうございます
>>1です
こんばんわ。
魔術サイドのキャラの需要が多く
少し驚きました
大掃除ということなので学園都市には登場できませんが
イギリス清教では何が起きているかといった
原作でいう「行間」のようなお話になりそうです
申し訳ないです
ただしレッサーさんは学園都市に…
「あ…」
3人がディスプレイから顔を上げる。
「ようやくお分かりになられましたか」
黒子は一つ溜め息を付き、
「そう、能力者はしっかりとアンチスキルやジャッジメントを狙って能力を使っていますの。
これはどう考えても能力の『暴走』とは言い難いですわ」
「でも、どうしてアンチスキルは暴走って言い切るの?」
「そうですよ、ここまで明らかな使い方をするのなら、れっきとした犯罪行為です」
「それが…」
美琴と初春の意見に言いにくそうに目を伏せる黒子。
しばらくして自分も信じ難いというように、ゆっくりと話し始める。
「容疑者である能力者によると…身体が無意識のうちに動いたとかで…自分が誰かに操られているようだと…」
美琴が眉をひそめる。
「どういうことよ!そんな言い訳で済むなら、街中暴れまくる輩で溢れちゃうじゃない」
「落ち着いて下さいまし。もちろん、アンチスキルも最初は相手にしませんでしたわ」
ですが、と黒子は一呼吸おいて。
「初めての事件が起きて以来、立て続けに同じような事件が起きましたわ。徐々に起きる頻度も高くなっていますし…」
うーん、と唸る4人。
「その容疑者の人って本当に悪いことした人じゃないんですか?その…悪い集団みたいなのが暴れて、口裏を合わせてるとか」
自身が無能力者であるがゆえか、佐天が遠慮がちに聞く。
「もちろんその可能性も考えましたが、暴走した能力者の方は至って普通の学生。
前科も無く、中には元ジャッジメントの方もいましたの。
不可解な繋がりもなかったですし…
先入観を持つのはいけませんが、どう考えても突然そのような道に進むとは思えない方ばかりですの…」
解けない謎に、4人がそれぞれ頭の中で考えていた。
あ、とパソコンで調べていた初春がと小さく呟く。
「スキルアウトによる『能力者狩り』も激化しているようです」
「ったく…ここぞとばかりに出てくるわね…」
美琴がやれやれと溜め息をつく。
スキルアウトは無能力者が自分の持てない能力を持つ能力者を妬み、
敵対視しているため、今回の事件はスキルアウトが暴れるのにはちょうど良い口実になる。
そのために、最近の警備員と風紀委員は能力者の暴走事件とスキルアウトの暴走への対処に追われ忙しく、人員不足と言っても過言ではなかった。
しばらくは各々が頭の中で事件を整理していたようで、沈黙が続いたが、
はぁ~と黒子が一つ大きな溜め息を付いて
「それに関しての今日の臨時会議でしたが…
遅いですわねぇ固法先輩。
もしかして本当に買い食いだなんて端ない真似を…」
「するわけないでしょ!」
黒子が言い終わる前に支部のドアが開き、固法美偉が抗議の声と共に入ってきた。
「げ、固法先輩…会議はもう終わったのですか?」
「遅いとか言っときながら、来たらその態度ってどういうことよ」
固法は黒子を呆れたように見ながら、鞄の中から書類を取り出す。
「まったく、これからは年末で冬休みも始まるからただでさえ忙しいのに…」
真面目な固法が珍しく愚痴をこぼしつつ、書類を黒子と初春に手渡す。
「今日の会議の資料よ。
最近起こっている能力者暴走の事件について、アンチスキルから正式な支援要請があったわ」
つまり、と固法は続ける。
「この事件については、ジャッジメントも捜査にあたれるわ」
風紀委員とは、本来学校内の治安維持をメインとした機関であり、都市内での活動は管轄外である。
そのために、初春は度々黒子の活動に対する始末書を書かされるわけだが…
「今回は白井さんのために始末書を書く心配が無いわけですね」
初春が心底安心したように呟く。
「心外ですわね…でも、この事件について公認で捜査ができるようになったのは大きいことですわ」
おもむろに、黒子は初春の後ろへ立つ。
黒子が今にも頭の花へ手を出しそうだったのを、首を振り避けながら初春は言う。
「でも、年末はその年の事件の整理とか、書類の提出とかで冬休みで学校が休みなのにジャッジメントはいろいろ大変なんですよね?
それに加えて今回の支援要請。なんだかとても忙しそうですねー」
「人事のように呟いているあなたには余裕が感じられますわ」
「あぁ、そのことなんだけど…」
固法が思い出したように、別の書類を渡す。
「ジャッジメントの臨時募集?」
書類を見ながら黒子が呟く。
以上です。
禁書のキャラは口調が難しいです
それぞれに特徴があるので会話のみの場面が作り易いですが
違和感無いでしょうか?
今後もよろしくお願いします
>>1です
こんにちわ。
昨日は忙しくて来れませんでした
申し訳ないです
車内は居心地の悪い雰囲気に包まれていた。
(……気まずい…)
上条は窓の外を見ながら、何か会話をしようかと考えるが、どう話しかけていいのかまったく分からない。
結局学校を黄泉川の車で出てから、上条は一言も話していなかった。
黄泉川のほうは特に気にした様子もなく、
急停車、急発進無く丁寧で上条にとって(身体的な面で)快適な運転をしていた。
と、気がつけば3車線道路が交差する大きな交差点に来た。
今目の前の信号機は赤だが、前を横切る車は無い。
今までも交差点には何回か止まったが、少ないとはいえいくらかの車が横切っていったはずだった。
だが、この交差点はまったく車が通っていない。
不思議に思い後ろを見ても信号待ちをしている車もなかった。
まるで「人払い」の魔術を使用したようだ。
上条は何か嫌な予感がした。
しかし、黄泉川は何も気にした様子は無く。
「上条、一つ聞かせて欲しいじゃん」
「え?はい」
緊張していたため、声が上ずる。
「アンタ、まさかとは思うけど。
生活費が苦しいとか、遊びたいがために、このアンチスキルをやるつもりじゃないだろうな?」
「え?生活費?遊び?」
上条は全くわけが分からず、間抜けな声をあげる。
「…ったく、その様子で安心したじゃん」
黄泉川は呆れたような、それでも安心したような表情で運転席の横の鞄に手を入れる。
そして取り出してきたのは、さっきの任命状だった。
「月詠先生から聞いてるけどアンタって後先考えず突っ走るバカらしいじゃん?
でも、こういう書類はちゃんと読んだほうが人生得することがあるじゃん」
書類を手渡されて、上条は目を通す。
さっき見た「臨時のアンチスキルとして任命する。上条当麻」の下に、まだ文章が長々と書かれていた。
上条は校長室の時と同じように音読する。
「なお、学生からという特別な形のため、今回は特例としてアンチスキルながらに給与が発生する。
その額はこの文書では書かないが、それ相応のものとする」
「ま、物で吊ろうっていう汚い考えだろうけど、アンタがそんなバカじゃなくてよかったじゃん」
さっきから、後先考えず突っ走るバカだの、物に吊られないバカでよかっただのと言われているが、
いったい自分はどんな人間なのだろうと考えるバカ学生、上条当麻だった。
「ま、冬休みの課題もあって大変だろうじゃん。
そのあたりも踏まえて、お小遣い程度の軽い気持ちで貰っとくといいじゃん」
え、と上条の「果たして自分はバカであるのかないのか」というバカな思考が途切れる。
「や、やっぱり…宿題は免除されないのでせうか?」
「当たり前じゃん?ま、休憩時間とか隙間の時間にやればなんとかなるじゃん。
そのあたり、私が教師としてしっかり指導してやるじゃん」
「ふ、不幸だ…」
がっくりと頭を抱える。
先日の期末考査でさえ散々な結果だった上条は、今でも鞄の中に大量の補習用プリントが入っている。
それに加えて冬休みの宿題だ。
きっと不幸な自分は警備員の仕事に恵まれすぎて、やる暇も無いだろう。
二度目の一年生もそろそろ見えかけている。
実際今日、校長室に呼ばれたのもそれを覚悟してのことだった。
(留年とか親に会わせる顔がありませんよ。そして周りの連中にバカにされまくるんだ…不幸だ…)
「それで、上条当麻」
これからの人生どう生きようかと、本気で悩んでいた上条は、黄泉川に呼ばれ我に帰る。
「さっきアンタ。この道で車が通らないことに違和感を覚えたみたいじゃん?」
「え、えぇ…まぁ…」
そう言っている今も、車が通る気配も無い。
「いい観察力じゃん…ご褒美として、教えてやるじゃん」
黄泉川は運転席の位置を前後へ調整しながら言う。
「この道は一般道じゃないじゃん。
緊急車両用特別道路。つまりアンチスキルや救急の車が通る道」
何だか嫌な予感がした。
今までの不幸体質で養った、第六感が赤信号を灯している。
「こんなこともできるじゃん!」
目の前の信号機が青を示すと同時に、車の後部からタイヤの悲鳴が聞こえ、大きなGが上条の身体を襲う。
「口を閉じてろ、下噛むじゃん」
口の中で上条は色々な意味を込めていつもの言葉を叫んだ。
ビルが立ち並ぶ街を一台のスポーツカーが凄い速度で走り去っていった。
以上です。
>>1多忙のため
明日も来れると言い切れません
次はステイルさん達の登場です
何もしませんが
あげ忘れです
ここから上司と部下の禁断の愛が始まるんですねwktk
上条×黄泉川×美琴
だろjk
才郷×黄泉川なんぞいらん
>>312
いや…
上司(黄泉川
部下(上条
だろ常考…
上条「え、A・I・M・ジャァァマーァァァァ!!」 そげぶ!
美琴「なんだAIMジャマーか」
これでいける
上条が寮から最寄りの駅に帰ってきた時には、日が暮れていた。
暗くなった道をふらふらと歩く。
支部に戻ってから、
黄泉川に『隠してた罰として今回の報告書を書くじゃん』と言われ、
結局最終下校時刻ギリギリまで残るはめになった。
「うぉー寒い」
時折吹く風に身を縮ませながら、電灯が並ぶ幹線道路の歩道を歩く。
この時間帯なら学生が出ていてもおかしくはないが、寒さのためか一人も見かけない。
当然のことであり、いつものことだが、今の上条には何故かそれが寂しく思える。
あの事件の後、正確には美琴にあった後から、
上条の頭の中というか心の中というか、
とにかく説明しがたい身体の内が、説明しがたい感情で溢れていた。
何が原因で何に対してなのか、上条にはわからない。
ただ
──御坂美琴に会いたい。
なぜなのかわからない、愛しいなどの意味ではないし、会えば何か解決するとも思わない。
ただ…何となく。
いつもの公園に差し掛かった。
彼女と会うのは大抵この場所。
居るわけがないとわかっているが、どうしても公園を見回してしまう。
少し遠回りにはなるが壊れた自販機の所を通る。
上条は知っている。
いつも急いでいる時に現れるくせに、こうしてたまに会いたいなんて思った時に限って──
「─っくしゅん!」
「…あれ?」
「あーやっと来た。アンタってばいっつも遅いんだから。
おかげでこっちは鬼の寮監にラブコールをするはめになったのよ」
美琴は自分の腕を寒そうに撫でながら言う。
「え、何してんだ?ビリビリ」
「何って、これよ」
美琴がポケットから何かを取り出して上条へ投げる。
慌てて受け取ると『ホットおしるこ』だった。
「この前奢ってくれたでしょ、それのお返しよ」
「お返しって…それじゃ奢りにならねーじゃん」
「いっ…いいから!ありがたく受け取りなさい!」
「へいへい」
そう言って上条はプルタブを引いて一口飲むが。
「あの…美琴さん」
「何よ?」
「冷めてるんですが…」
「え…う、嘘!」
「お前ここまで冷めるまで待ってたのかよ、缶ジュース一本にどれだけプライドかけてるんだ」
美琴は顔を真っ赤にしながらそっぽを向く。
「ち、違うわよ!
故障…そう、この自販機が故障してて温かくないだけよ、ほらこの前だって間違って商品出してきたじゃない!」
必死な美琴を見て、上条は小さく笑う。
少し虐めてみたくなった。
「いやぁ、でも冷めてるっていっても冷たいんじゃなくて、生温いって感じなんですがねー」
「う…」
「何と言うか、買ってしばらくたってしまった生温さってとこかなー」
「───」
「あ……」
バチバチという音が聞こえて、上条は顔を青くする。
美琴を見ると、顔は俯いているが耳まで真っ赤で、髪の毛先からはバチバチと青い光が散っている。
「この野郎!」
「うぉわ!」
バチンを飛ばされた電撃を右手ではらう。
「あ…」
間抜けな声と共に美琴が立ち尽くした。
あぶねーだろ!と一喝しようとしたが、そんな美琴を見て上条は不安そうに問いかける。
「あの、御坂?」
「ね、ねぇ…変なこと聞くけどさ」
「あぁ?」
「今日、お昼過ぎって…何してた?」
美琴の質問に身体が強張る。
今回は身体から火薬の臭いがする筈もないし、昼間のことを仄めかす言動もしていない。
「あぁ…昼は補習だったよ。
何分出席日数が足りない上条さんは冬休みなんて無いも同然です」
「そう…そうよね!しっかりしなさいよ!
分からないとこあれば教えてあげるから!」
少し安心したような、それでも不安そうな笑みを浮かべる美琴。
「おいおい、それ言われた俺の立場になってみろって!
俺は高校生ですよ!美琴さんより2つも年上ですよ」
ふざけながらも、上条は心の中で美琴に謝る。
嘘だらけの中で、いつもの自分が演じられているのかが不安だ。
「あ、冷めてるんだったわね、貸してみなさい」
思い出したように美琴が手を出す。
「あぁ?いいよ、冷めてても大丈夫だし」
「いいから!さっさと貸す!」
そう言って上条から強引に缶を奪う。
「私は電撃使いよ?電子レンジでも電磁調理器にでもなれるわ」
「それって言ってて悲しくないか?」
「う…細かいことはいいの!」
美琴は缶をベンチに置いて両手をかざす。
美琴の手と缶の間に電撃が走ったりはしないが、しばらくすると缶から湯気が上ってきた。
「んー調節が難しいのよね…」
「御坂、右手…」
上条は美琴の右手に巻かれた包帯を見て小さく言う。
「ごめん、ちょっと今集中してる」
「いいから!」
美琴の右手を強く引く。
上条の声に一瞬驚いたためか、缶から中身が少し溢れてしまったが、上条が右手で手を引いたため能力は止まる。
「ちょっ…ちょっと!」
「この怪我は?また何か無茶したのか?」
もちろん上条は、美琴がどこで怪我をしたのか知っている。
しかし詳しいことが知りたい、毎度のように美琴が怪我を負う危険があるのなら、指を咥えて見ていられない。
「ちょ、ちょっとした事件よ。ほら、ジャッジメントになったって言ったでしょ?
それで今日事件があって…もちろん!私が行ったんだから、ささーっと解決しちゃったけど」
「それで、この怪我は?能力者にやられたのか?」
「えぇっと…これは、その、何と言うか…」
もじもじと、なぜか恥ずかしそうにする美琴。
「や…八つ当たりというか…」
「八つ当たり?」
予想外の質問に思わず言葉を返してしまう。
「わ、笑わないでよ…ちょっと悔しいことがあってね、ガツーンと地面殴ちゃったわけ」
「ぷっ…なんだよ、そうだったのかよ」
思わず吹き出し、ヨタヨタと力無くベンチに座り込む上条。
「ちょっと!笑ったわね!笑ったでしょ!」
「笑いました、三段活用。あー心配して損した」
「何よそれ!アンタは私が自分でコンクリートに壁を打ち付けて怪我しても、笑って済ませるの?」
フーフーと、美琴は頭から湯気が上りそうな程顔を真っ赤にする
「冗談だよ。怪我も心配だったけど、とにかく危険なことしてるんじゃないかって」
「アンタに言われたくないわよ」
「そりゃごもっともで…」
「だからアンタ、今回だって首突っ込んでないかと思ってね」
そう言って美琴は上条の右手を見つめた。
「さっき話した今日の事件なんだけど…」
「あぁ?」
「私と同じ、電撃使いが暴走したの。
それで私が抑えようとしてね」
「それで、しっかりと事件解決できたんだろ?」
あくまで事件の概要は知らないフリ。
その場しのぎでは無い嘘をつくことがここまで難しいとは思いもしなかった。
「結果はそうなんだけど…ちょっと気になることがあって」
「もしかして俺に関係あることか?」
「わからない…
でも、ちょっとドジして、暴走した能力者の電撃がアンチスキルとかの居るところにいっちゃったの…
さっき言った悔しかったのはこのこと。
だけどね…その電撃は消えたの」
消えた─という単語を聞いて、上条は次に来る質問がどんなものなのか予想はついていた。
「アンタが右手ではらったみたいに…」
「そう…か」
「本当に何も知らないの?本当に今日のお昼は補習受けてたの?」
美琴の問いかけに、上条は固まる。
正直なところ、隠さずにはなしてしまえればどれほど楽だろうと思う。
それでもなお隠し続ける必要はあるのだろうか。
元はといえば、美琴のような人が事情を知って首を突っ込んでくるのを恐れていた。
しかし、結局美琴は自分の考えで、自分の道で事件と向き合っている。
それなら隠す必要も無いのではないか…
いや──
上条が事件に関わっていると知れば、美琴はもっと深く危険なところまで来るかもしれない。
それならば、今の状況がいいのかもしれない。
と上条は少々強引に、甘える自分を押し込めた。
「ねぇ…聞いてる?」
「あ、あぁ悪い…少し考えたけど、本当に何も知らない。
そんなことより、その能力者は結局どうしたんだ?」
「その電撃の行方を見た後に振り返ったら、気を失うところだった…」
「気を失ったから、電撃は消えたんじゃないのか?」
「そう考えるのが自然よね…ごめん、疑ったりして」
美琴は悔しそうに両手を握る。
「さっき、ささっと解決したとか大きいこと言っちゃったけど、結局私は何もしてないの…」
力無く言う美琴の手を、上条は思わず握った。
「そんなことねーよ!
御坂が戦ったから、抑えられた損害だってあるはずだ。
いや、絶対にある。御坂が戦わなかったら怪我人だってたくさん出ていたかもしれないだろ」
上条は美琴を見つめながら言う。
美琴は上条の行動に拍子抜けしていたが、合わせられた視線を外すことができない。
「そう…なのかな…」
「そうだよ、もっと自信持てよ。学園都市第三位の御坂美琴だろ」
真剣な顔で、まるで自分のことのように力説する上条を見て、美琴は小さく笑う。
「そうね…もっと自信持たないとね」
つられて上条も笑みをこぼす。
どちらからともなく手を解くと、美琴もベンチに座った。
「まったく、変なこと言い合ってる間にまた冷めちゃったじゃない」
上条との間にある缶に、美琴はもう一度両手をかざす。
「あ、悪いな」
「いいから、集中するから話しかけないこと」
「お…おぅ」
上条はぼんやりと星空を眺める。
しかしそれに飽きたため、上条は横で難しそうな表情をする美琴を見た。
細身の身体から伸びるしなやかな腕。
その先手には包帯が巻かれているが、手の甲だけなので綺麗な指が見える。
そんな美琴の右手を見て、
「綺麗な指してるんだな…手の甲の傷跡、残らないといいけど」
上条は本当に純粋な気持ちで、独り言のつもりで言ったのだが。
「ふ──」
「あれ!?美琴さん!溢れてます!溢れてます!」
「ふにゃー!」
結局、ホットおしるこは温かく美味しく飲まれることのないまま散っていった。
以上です。
鋭い方はお気づきになるかと思いますが
上条さんがちょっとしたミスを犯しています
これは上条さんのミスであって>>1のミスではありません、念のため
次の投下でどんなミスかわかるのであまり難しく考えないでさっくり読んで下さい
というか、急いで書いて
後々文の間にいろいろ挟んだりしているので
普通に>>1のミスが多すぎて
逆に上条さんのミスに気付かないかもしれないです
だからさっくり読んで下さい
乙~
続き待ってます!
役不足 やくぶそく (一般)
正しい意味は、「素晴らしい役者に対して、役柄が不足している」という意味、つまり能力のある人につまらない仕事・簡単な仕事をさせるという意味なのですが、最近は逆の意味で使われることが多く、アンケート調査などでも日本人の半分が逆の使い方で覚えているようです。
(ただ最近は、逆の意味で使われていること自体はよく知れ渡っており、逆なのを承知の上で使っている人が多いと思われます。[要出典])
「この人には荷が重い」というような使い方をする際は、「力不足」「役者不足」が正しい。
http://d.hatena.ne.jp/keywordtouch/%CC%F2%C9%D4%C2%AD
このSSまとめへのコメント
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