佐天「時を止める能力……」(830)

めちゃめちゃ投下するの遅くなりそうですが
ヨロシクお願いします
>>1はジョジョ好きです




佐天「ふぅ……やっと授業終わった~~」

初春「佐天さんはずっと寝てたじゃないですか~」

佐天「今から遊びにいきたいところなんだけど、掃除当番じゃん今日!面倒くさいなぁ初春手伝ってよぉ」

初春「も~いつも佐天さんはそうやってー、あっ今日ジャッジメントの支部に早めにいかないといけないんです!」

佐天「えーなんかあったの?」

初春「はい。また最近スキルアウトの暴行事件が増えてきたみたいで…………」

佐天「そっかぁじゃあ初春もジャッジメント頑張ってね!」

佐天「じゃあ私も後で支部の方に行っていいかな?」

初春「いいですよ。その代わりちゃんと掃除して下さいよ。」

佐天「分かってるよぉ。じゃあまた後でね」

初春「はい!」

佐天「はぁ!私も頑張らなきゃ!!」

――――――――――

佐天「やっと終わったぁぁ」

佐天「よっし支部に行こっかな!」

テクテク

プーー――――

佐天「えっ車っ!?」

ドォォーーーン

佐天「なっ何!?なんか周りがすっごいゆっくりなんだけどっ!?」

トタトタトタ

プーー―――

佐天「また戻った!!」

佐天「一瞬だけど周りがスローになった……………どういう事?」

佐天「(今のは何なのっ!?事故に遭った瞬間の人間は体内や脳でアドレナリンやらなにやらが分泌されて一瞬が何秒にも何分にも感じられるっていうあれなの!?)」

佐天「まぁいいや!おかげで助かったんだし!!早く初春に会いたいな~♪」

――――――――――

佐天「ういはぁるぅぅぅぅぅぅ」
初春「あっ佐天さん。」

固法「あっ佐天さんいらっしゃい。」

黒子「いらっしゃいですの」

佐天「みんな忙しいですねぇ」

固法「えぇ最近またスキルアウトの暴行事件が増えてるのよ佐天さんも気をつけてね」

佐天「えぇ!私には初春がいますから」

初春「んもぉ~佐天さんったらぁ」

固法「佐天さん牛乳いる?」

御坂「お邪魔しま~す、あら佐天さん?」

佐天「あっ御坂さんこんにちはっ」

固法「御坂さんいらっしゃい」

初春「あっこんにちは」

黒子「おぉねぇぃさまぁぁん、黒子に会いに来てくれたんですのねぇぇ黒子は黒子はっ!」

御坂「そうじゃないっつーの!みんなに会いに来たの!!」

ワイワイガヤガヤ

――――

固法「もうそろそろ時間ね。あななたちも早く帰ったほうがいいわね」

「「は~い(ですの)」」

御坂「じゃあ私たちはこっちだから、じゃあね」

黒子「さようならですの」

初春「はいっさようなら」

佐天「さようなら~」

――――――――――

佐天「じゃあ初春またね~」

初春「さようなら~」

ガチャッ


佐天「今日も楽しかったなぁ」

佐天「今日は豪勢にパスタでも作ろっと」

カタカタコトコト


ガタッ

佐天「うわっ鍋がっ!!!」

ドォォーーーン!!

佐天「えっまたっ遅く見える………確かに少し動いてるそれにお湯の滴が一滴一滴見える………」


佐天「うわっよく見たら体にかかるじゃん!避けないとっ」スッ

ビッシャッャャャャャ

ピトッピトッ

佐天「あちゃー………失敗したなぁ、まぁ乙女の肌を守れただけいいやっ」

佐天「けどなんで………こんなこと今までなかったのに…………今度白井さんや御坂さんに聞いてみよ」

佐天「おっ邪魔しまぁぁぁすっ」

固法「邪魔するなら帰っていいわよ」

佐天「はいっ帰りmっておいっ!!」

固法「冗談よwwwwいらっしゃい。佐天さん牛乳いる?」

佐天「ありがとうございます。あっそういえば白井さんは?」

―――――――――
佐天「スキルアウトはやっぱりまだいろいろ悪い事してるんですか?」

固法「そうね。私たち全力を尽くしているのに一向に事件は減らないのよ………むしろ少しずつ増えているわ」

ガチャッ

黒子「あらっ佐天さんいましたの?」

初春「あっ佐天さんもうこっちの方に来てたんですね」

佐天「そうだよ」

固法「初春さんに白井さん牛乳いる?」

――――――――――

佐天「あっそういえば、白井さん?」

黒子「なんですの?」

佐天「周りがスローに見える能力ってありますか?」

黒子「いやっ聞いたことはありませんが、可能性としては高速移動の能力者ならそういう経験はありそうですが…………それがどうかしたんですの?」

佐天「いえっ何でもないんですけど………友達にそういう経験をした人がいたってだけです」


佐天「(ホントの事言っても能力のせいであぁなったのかはわからないし…………)」

初春「たまたまじゃないですか?そういうの事故に遭った時とかにあったって言うの聞きますし」

佐天「だよね………」

佐天「私御坂さん探しに言ってきます」

固法「あらっ行ってらっしゃい気をつけてね」

黒子「行ってらっしゃいですの」

初春「いってら~」

―――――――――――
佐天「そっかぁまだ私には能力なんてないんだ…………」

ドガッ

チンピラ「おいおいお嬢ちゃんどこ見て歩いてんだぁ」

佐天「すっすいません!」

チンピラ2「おいっ大丈夫か!腕が逆に曲がってやがる!!!お嬢ちゃんきっちり落とし前つけてもらおうじゃねぇか!」

佐天「そんな強くぶつかってないのに…………」ボソッ

チンピラ「あぁなんか言ったかぁ!!!???いってぇなぁ腕が痛いよお!!!痛いんだよォォ!」

チンピラ2「お嬢ちゃん金がなかったら体で払ってくれても一向に構わないんだぜ!!」

佐天「嫌です!!」

チンピラ「てめぇせっかく優しくしてやってんのに頭にのりやがって!!!やっちまおうぜ」

チンピラ2「おう!!!」


佐天「いやっ!」

ドォォーーーン!!!!

チンピラ「うぉ ぉ ぉ ぉ  ぉ ぉ  ぉ」

佐天「またスローになった……この前も不良に絡まれた時はこんなのにはならなかったのに………」
佐天「とりあえず逃げなきゃ!」タッタッタッ

バァァァァン

チンピラ2「なんだぁあいつ!!!速いぞ!!能力者か!!??」

――――――――――

佐天「ここまで来たら大丈夫…ハァハァ……だよね………ハァハァ」

御坂「あらっ佐天さんじゃないどうしたの息なんか切らしちゃって」

佐天「あっ御坂さん!怖かったぁぁ………」グスン

御坂「そんな事があったのね…………」

御坂「よく不良なんかから逃げ切れたわね、頑張ったわ佐天さん」

佐天「はい…………(御坂さんにもスローの世界の事言ってないけど………今日は疲れた………)」

佐天「じゃあ今日は疲れたんで帰ります………」

御坂「そう?じゃあ送って行くわまた変なのに絡まれたら困るからね」

佐天「ありがとうございます!」
―――――――――

佐天「ありがとうございました!でわまたっ」

御坂「じゃあね!」

佐天「やっぱりスローの世界はまぐれなんかじゃなくて能力じゃないのかな?」

佐天「試しに何かしたら分かるかもしれないし…………」

――――――――――――

佐天「って事で包丁を用意したけど……………」

佐天「どうしよう………………」
佐天「足のうえに落とせば!!…………けど恐いなっ」

佐天「ここまできたらやるしかないでしょ!!!」

「…………3………2…………………1………」ドキドキドキドキ


シュッッ!!

佐天「キャッ!!」

ドォォーーーン!!!!


佐天「やっぱり…………能力だったんだ…………」

スッ

シュッ グサッ

佐天「よけれた…………」


「まだレベル1程度だけど頑張れば白井さんぐらいまでいけるかな…………佐天涙子頑張ります!」


時間静止
レベル1・能力者の意図とは関係せず無意識下に危険や恐怖を感じとると能力者は周りが遅くなり少しの時間だが自由に動くことができる。


時間静止の能力は佐天涙子しか持っていない

佐天「やっぱり能力には基礎体力が必要だよね!」

③現実は非常である

「…………3………2…………………1………」ドキドキドキドキ

シュッッ!!

佐天「キャッ!!」

ザクッ!

佐天「ああああああああいたたいいたあたいあいあいたいいあああいいいいい!!!」

佐天「筋トレしよっ」

「フンッ」

「あと20回…………」

「ぷっはぁぁぁぁ疲れたぁぁぁぁ」

「ひとっぷろ浴びて早めに寝よっと!!明日は早朝ランニングしよっと!!!」

―――――――――一ヶ月後――
体育教師「今日は1500mを走ってもらう時間も計るぞ!!」

「「「エェェェ」」」

初春「嫌ですねぇ私こういうの苦手なんです…………」

佐天「もぉ初春弱音を吐いちゃ駄目だぞ!」

初春「今日は元気なんですね佐天さん」

佐天「この1500m走をどれだけ待ち望んだか!!」

>>23
佐天さんの顔想像したらワロタwwwwww

初春「えっ佐天さんそんなキャラでしたっけ」

佐天「私は変わったんだよ
う!い!は!る!」

佐天「じゃあ頑張ろっか!!」

―――――――――――

佐天「~♪~♪」
タッタッタッタッ


佐天「新記録でました5分02秒!!!」

初春「はやっ!佐天さんすごいです!!」

佐天「エヘへ日頃の積みかさねってやつかな」

初春「私のより2分速いですよ」

佐天「初春は遅すぎなんだよ」

初春「んもぉ佐天さんったら!」

佐天家――――――

佐天「ハァァァァ!!!」

ドォォーーーン!!

佐天「意図的に発動出来るようになってる……………ハァハァ」

「けどこれかなり疲れるよね…………もっと体力をつけろって事なんだよね…………」

ホォォォワァァ

「ハァハァ……意図的に発動すると1秒か2秒か…………けど確実私は成長してる!」

「もうちょっと………」

―――――――――ジャッジメント177支部

御坂「最近佐天さん見なくなったわねどうしてるのかしら?」

>>31の追加です
レベル2・時を意図的に遅くする事が可能、反射的に遅くなるとレベル1以上の時間を遅くすることができる。

1ヶ月程度でレベル上がるのか

>>34
気合いです気合い



初春「ここ最近は真っ直ぐ家に帰って用事をしているそうですよ」

黒子「そうですかまた事件に巻き込まれてないといいのですが……」

初春「その辺は大丈夫そうですよ。最近しっかりしてるんですよ、佐天さん」

固法「明日は雪かしら」

「「ワハハハハハ」」


―――――とある噂の佐天さん――

佐天「299………300…あと10回!!」

「309………………310!!!」

「さてんだけにwwwwwwハァハァ………ふぅ」

「腕立て伏せはこなした次は木を使って腹筋したいけど家に木がないから……」

木で腕立て伏せ=酔拳のジャッキーチェンの修行のやつ


佐天「物干し竿でいいや」

………145
……………266……297
………………310

佐天「310!!!………っ!!」バギッ

ドォォーーーン!!!!

佐天「おわっ!」

「この能力便利だな………ハァ」

ヒョィッ

カランコロン

佐天「ふぅいやー疲れたなぁ~」

佐天「最近は皆と全然あってないから明日はトレーニング休もっと!」

―――――翌日――

佐天「」カリカリカリカリ

初春「(うわぁ凄いなぁ佐天さん、最近ずっと真剣に勉強してる)」

木で腹筋=酔拳のジャッキーチェンの修行のやつ


佐天「物干し竿でいいや」

………145
……………266……297
………………310

佐天「310!!!………っ!!」バギッ

ドォォーーーン!!!!

佐天「おわっ!」

「この能力便利だな………ハァ」

ヒョィッ

カランコロン

佐天「ふぅいやー疲れたなぁ~」

佐天「最近は皆と全然あってないから明日はトレーニング休もっと!」

―――――翌日――

佐天「」カリカリカリカリ

初春「(うわぁ凄いなぁ佐天さん、最近ずっと真剣に勉強してる)」

――――――――放課後――

佐天「いやぁ今日も疲れたね~」

初春「そうですね」

佐天「あっ今日は久し振りに支部の方に行っていいかな?」

初春「はいっ!来て下さいよっ!佐天さん最近あまり来ないんですからねっ!」

佐天「ほほぉ初春くんはついに私のいる有り難みを知ったんだね!」

初春「んもぉぉ佐天さんったら///」

――――――――ジャッジメント177支部――

佐天「おっじゃましまっ~す

初春「こんにちは~」

固法「あら初春さんに佐天さんこんにちは、久し振りね」

佐天「はいお久し振りですっ」

ムッキムキやぞ!

黒子「お久しぶりですの」

御坂「久し振り佐天さん、また不良に絡まれてなんかない?」

佐天「はい!大丈夫ですよっ!心配してくれてありがとうございます」

固法「佐天さん前よりスタイル良くない?」

佐天「あっ分かります?ちょっと鍛えはじめたんですよ最近」

初春「でもどうして鍛えはじめたんですか?」

佐天「それは秘密だよ~初春くん」

初春「んもぉ佐天さん教えてくださいよ~」

佐天「うんまた今度ねっ」

初春「は~い」

―――――――――

御坂「もうそろそろ時間ね」

固法「そうね今日はお開きにしましょう」

黒子「そうですわね」

「「さようなら~」」

―――――――――――佐天さんの家

佐天「もうそろそろ体力作りはいいかなっ」

佐天「今度は勉強だぁ~」

「参考書と授業のまとめで大体分かる気がするけど……………」


『パーソナルリアリティ入門編』
『パーソナルリアリティ初級編』
『パーソナルリアリティ中級編』
『パーソナルリアリティ上級編』
『佐天'sノート』


佐天「これで大体揃ったぁ~」

佐天「なになに自分だけの現実は…………………」カリカリカリ

「つっかれたぁやっぱり勉強はなれないな~」

「大分パーソナルリアリティの事が分かってきた気がする!」

「まだやっと入門編読み終わったけど凄い難しいし~頭使わずにトレーニングしたほうが楽じゃん!」

「まぁ仕方ないか…………頑張るか!!!」

カリカリカリカリカリ

「すぅ~」z Z Z……………

―――――――とある学校の授業中――

佐天「やったぁ!!筆記テスト89点だぁ~」

初春「そんな………………」

風呂入って内容まとめてきます
多分風呂入ってから寝るまではあまり投下できませんが許してください


初春「(最近の佐天さんはなんかおかしいんです!親友の私には分かります!!)」

初春「佐天さん最近変わりました?」

佐天「えっ?分かる?」

初春「えぇ私達友達ですから!」

佐天「私やっと学園都市に来てはじめてやりたい事見つけたんだ」

初春「そうなんですか!佐天さんも私もこれから頑張っていきましょうね」

佐天「そうだね!私頑張ろっ!!」

佐天「(とは言って見たものの………レベル2ぐらいから全然変わらないんだな~早くレベルあがりたいなぁそれには頑張るしかないか……)」

――――――とあるおうちの佐天さん家

佐天「(最後に笑うのはきっと‥‥ひたむきでマジメなやつだから‥‥)」カリカリカリカリ

佐天「初級編まとめを終わらしてっと次は中級編かっ………しんどいなぁー」

佐天「じゃあちょっと休憩混じりに筋トレしよっかな!」

佐天「フンッ、フンッ」

「280…290………300……310!!」

「さすがに連続で時間を遅くらせながら腕立て伏せはくるねぇ…………ゼェハァ…ハァ」

「よしっ中級編に突入!」

――――――――――

スピー z z Z Z……………



チュンチュン
ジリリリリリリリリ

ガッ


「今日も1日頑張らなきゃ!」

「……………けど二度寝は最高に『ハi……………ってやt…むにゃむにゃ」

――――――――とある道路の横断歩道

佐天「遅刻だぁッーーーー」

「早く青になってよぉ!!」

「信号無視だけど今なら行けそう!!」

プーーーーーーーー

「キャッ!デジャブゥッ」

ドォォーーーン!!!

「怖かったぁぁぁぁぁ!!」

トタットタットタッ


今日の昼からまた再投下します

だいたい構造が見えてきました。
ジョジョ好きにもレールガン好きにも楽しく見れるよう頑張ります

佐天「ん?むちゃくちゃ長い気がする…………」

「もうすぐ15秒ぐらいまでいくじゃん!」

パァァァァァン

「………ふぅ……もしかして…………レベルアップしてる!?」

「そんな事はおいといて学校に間に合わないィィッ!!」

――――――――

キーンコーンカーンコーン
タッタッタッッタ
佐天「うはッ間に合ったゼェハァ」ハァハァ

初春「佐天さん遅いですよぉ」

佐天「……うハァハァんハァ(時間を遅らせながら走ったから死ぬと思った…………)」ハァハァハァハァ


佐天「ハァハァハァハァ(けどいいトレーニングになったかな!)」

――――――――5分前――

御坂「講義まで時間あるから立ち読みでもしようかしら……」

「何っあれ凄いスピードで何かが来るッ!」

佐天「(あぁぁぁぁぁぁぁあと5分しかないッ!!なのにあと2キロちょっとはあるよぉ)」タッタッタッタッ

御坂「ん?佐天さんかも?いやッ佐天さんだわ」

佐天「ハッ!!!」
ドォォーーーン

タッタッタッタッ

時は速くなる
シュンッ
御坂「消えたわッッ!!」

「確かに佐天さんだったのよね…」
――――――

昼頃またきます



―――――――――
先生「そうなんです。そう!だからパーソナルリアリティは……」

佐天「」カリカリカリケシケシカリカリ

初春「」カリ…カリスピーカリ…スピー……

――――――

佐天「ういはるッちゃんと授業うけなきゃ駄目じゃんじゃないと初春の為にならないんだよ?」

初春「すいませんでした……」

「けど!ジャジメントのお仕事最近忙しくて………」

佐天「言い訳はしないッ!さぁちゃっちゃとノート写して支部行こう」

初春「そうですねッ」

初春「ノートありがとうございました!」

佐天「いいよいいよ」

初春「佐天さんにノート貸してもらうなんて夢にも思いませんでした」

佐天「佐天さんに向かってそんなこと言うだ~ノート貸してあげて放課後も待ってあげたのに?」

初春「あッーごめんなさいー佐天さぁん」

佐天「謝ればよろしい」ナデナデ

初春「えへ~」

佐天「不意打ちッ!!!」
プシュンッ
初春「いつの間に!?」
ファサァァ
初春「キャッんもぉ佐天さんったら///誰かに見られたら困るじゃないですか////」

全盛期のスタープラチナで何秒止められるんだっけ?

>>70

18才の時に5秒だったと思うよ

発動できるのは9秒で動けるのは10秒ぐらい

レベル3の説明一応

レベル3・時を意図的に遅くするとレベル2の時の時間より大幅に長くなる、反射的に発動するときもレベル2の時間より大幅に長くなる。

まぁ短く言えばレベル2のすごいバージョンです


佐天「私に見られるのは平気なんだー」

初春「もぉっ佐天のえっちぃ…///」

佐天「初春がえっちなんだよー」
テクテク

初春「そういえばあと2日で夏休みですよね佐天さん何処か遊びにいくんですか?」

佐天「んーそうだなー田舎にいこうかなー(山奥で修行的な意味で)」

初春「あぁそーなんですか!私はおばあちゃんのうちに泊まりにいきます」

――――――ジャジメント177支部

初春「こんにちわ~」

佐天「お邪魔しま~す」

御坂「あっ佐天さんに初春さんこんにちわ」

黒子「ごきげんようですの」

>>70ー74
説明㌧クス、佐天さんのかなり長いな
身体能力が常人だから仕方がないが

>>77

確かに長いな
ちょっと短くしようかな
15秒を9秒だな


    意図的  反射的
レベル1 不可   1~3

レベル2 1~3   1~5

レベル3 1~5   1~9


表作ったよ

黒子「今日は固法先輩がいないので休みになりましたわ」

初春「そーなんですかでもどうして?」

黒子「最近スキルアウトの事件が急激に多発しているので各支部の代表が緊急会議にでなければならないんですのよ」

御坂「あーまたそれか~もーホント懲りないあいつら」バチバチッ

佐天「御坂さん放電してますよ」
御坂「えっホントだごめんね」

「で今日はジャジメントの仕事がないから皆でゲーセンでも行かない?」

一同「さーんせーッ!(ですの)」

とあるゲーム屋さん―――――

御坂「もうちょっと!もうちょっとでゲコ太とれるんだけどなッ!」

「あと100円でとれなかったら諦めるッ」

コトッ

「うわぁぁぁぁぁぁあああああああ取れないいいいいィィィィィ」

「ハァハァこうなったら……腕っぷしでも…………とってやる……」ビシッビリリ ハジンッ

黒子「駄目ですの!おねぇさま!わたくしたちがいるまえでそんなはしたない行為は!お・ね・ぇ・さ・ま・は・私がキャッチするん・で・す・の」

御坂「いいわ諦めるわ多分あんなの何処にでも売ってるでしょうし………」

夜また来ます

承太郎などジョジョキャラを少し書こうか迷ってます

ナシの方が圧倒的に多いいんで
ナシの方向で書きます

佐天「あっ御坂さん!パンチングマシンありますよ!」

御坂「いいわねッ今度は負けないんだから!」

「じゃぁ私から行くわよ」

スーハー
チェストオオオォォォォォォォォ

ドコンッ!!!

テレテレテレテレテレン!

69p!

御坂「まあまあね」

佐天「次は私ですね」

コオオオォォォォォ

フンッ!!!!!

ド゛ッ゛ガ゛ン゛!!!!!!!
テレテレテレテレテレン!

116p!!!!

『もう一度殴れるドン』

一同「( ゚Д゚)
  (゚Д゚)ポカーン」

佐天「えへへへっ」

黒子「佐天さんですわよね?」

佐天「そうですよ」

この時三人はは絶対に佐天さんを怒らしてはならないと悟った

御坂「も、もう遅いし帰ろっか!」

黒子「そうですわね。それがいいですわ!」

佐天「え~もう帰るんですか?」

初春「アアアアンチスキルも夜の方が事件を起こしているそそそうでしよ!だから早めに帰ったほうがいいでし!!」

佐天「そっかぁまぁいーや!」

―――――――――

佐天「んじゃ初春ばいばーい」

初春「さささようならー……」



――――夏休み前日

校歌斉唱!

「「遠白き瀬戸内のうmー」」


校長「えーこれで終業式を終わります。諸君夏休みは怪我だけはせんように楽しく遊びたまえ!!」

佐天「やっとおわったーー!!」

初春「そーですね待ちに待った夏休みですよ!!!」

佐天「んじゃ帰るね!」

初春「えっもう帰っちゃうんですか?」

佐天「うん!田舎に行く用意しなきゃ!明日からいくんだよねー(修行)」

初春「そーなんですか、じゃぁさようなら~」

佐天「うん!じゃぁね~」


佐天「よしっ下着おk歯磨き粉おk歯磨きおk…………」

佐天「よしっ完璧!今日は明日に備えて寝よぉ」

―――――――――
ジリリリリリリリ
ガッ

佐天「ふはぁー」

―――――――――

佐天「よし出発進行ォォォ!」

タッタッタッタッ

走ること丸一日――――――――
チュンチュンチュン

佐天「ハァハァハァハァここが………力道山(りょくどうざん)……………数々の格闘家が修行したといわれる………伝説の山…………」


「「あー不幸だぁぁぁぁぁ」」

佐天「ん?」


佐天「よしっ下着おk歯磨き粉おk歯磨きおk…………」

佐天「よしっ完璧!今日は明日に備えて寝よぉ」

―――――――――
ジリリリリリリリ
ガッ

佐天「ふはぁー」

―――――――――

佐天「よし出発進行ォォォ!」

タッタッタッタッ

走ること丸一日――――――――
チュンチュンチュン

佐天「ハァハァハァハァここが………力道山(りょくどうざん)……………数々の格闘家が修行したといわれる………伝説の山…………」


「「あー不幸だぁぁぁぁぁ」」

佐天「ん?」


???「フコーダー!!日給20000円のバイトソッコーで申し込んだらこんな山奥で………トホホとりあえずインデックスの世話は子萌先生に頼んで一件落着ですけどねぇ交通費で財布空になったではありませんか……………」

「「不幸だ…………」」

佐天「何度も不幸って言うと幸せが逃げちゃいますよ」

???「そうですよね………たしかにそうだ………もしかして君もバイト?」

佐天「違いますよ」

???「くっ…ふk………でなんでこんな夏休み初日からこんなところにいるんですか?」

佐天「修行しにきたんですよこの力道山に」

今日はこれで終わりにします
今日は少なくてごめんなさい
みなさん良い夜を


???「えっ修行?何故に?」

佐天「実を言うとちょっと前までレベル0だったのに急に能力ついてあっという間に推定ですがレベル3までになれたんですよ。それで夏休み中にレベル4ぐらいになりたいなぁなんてなぁ、」

「それでここの山の寺の主人にそのことはなしたらこころよく泊まらして頂く事になったんですよ」

???「へぇ俺もレベル0だからそういうの分かるぜ…って今寺に泊まるって言った??」

佐天「そうですけど……」

???「俺も寺で泊まり掛けのバイトするんですよ!おれ上条当麻って言います!!」




佐天「あっ私佐天涙子っていいますヨロシクお願いします。」

上条「こちらこそヨロシク!まぁまず寺までいきませう」

佐天「そうですねッ!」

佐天「」テクテクテクテクテクテク

上条「ゼェハァハァ」テクテクテク

佐天「暑いですね~」

上条「そうですねッ涙子ちゃんこんなペース速くてよく平気だねゼェハァ」

佐天「日々の鍛錬ですよッ上条さんも頑張ってくださいねッ地図によるともうすぐみたいですよ!」

歩く事二時間―――――――

上条「やっとついたぁぁぁぁ汗でびしょびしょだぁ」

佐天「やっとつきましたね!」



住職「よくこの暑い中こんな所まで来てくれたな」

上条・佐天「(坊主じゃないッ……だと!!しかも帽子……)」

住職「あぁ俺の格好か俺はほとんど住職じゃないんだただこの寺を受けもらっただけなんでな」

佐天「なにか訳ありなんですか?」

住職「まぁそんなところだ」

上条「涙子ちゃんはここに何日いるんだ?」

佐天「え~と8月の半ばまでです」

上条「あっいっしょなんですか!」

住職「あぁその方が気が楽だと思ってな」

上条「ありがとうございます!」


佐天「あっ自己紹介忘れてました!私佐天涙子っていいます!
佐天は佐賀県の佐で天は天国の天、涙子は涙の子で涙子です!」

住職「よろしく」

上条「上条当麻です。
上に条で上条、当麻は当たるあさで当麻っていいます」

住職「………上…条……か」

上条「どうしたんですか?」

住職「いやっ昔を思い出してな…」

上条「(喋りにくぅぅ)」

住職「一応ここは寺だが坊主になりたい奴以外は基本やることやってもらったらうれしい」

住職「これから少しの間だがヨロシク」

上条・佐天「ヨロシクお願いします!」


住職「とりあえず上条君は俺の仕事を手伝ってくれ」

上条「はいッ分かりました!」

住職「佐天さんは修行するなり夏休みの宿題するなりゆっくりしていってくれ」

佐天「はいッありがとうございます!」

――――――――――佐天さん

佐天「ふぅ今日は大分体力使ったから勉強しよっと」

佐天「中級編の途中からか…頑張るぞ!」
カリカリカリカリカリカリカリ

カリカリカリカリカリカリカリ

カリカリカリカリカリカリカリ
佐天「ふぅーとりあえず中級編おっわりー」

「もう夕暮れじゃん!」

???「あのーすみません、ここの住職さんどこにいますか?」



佐天「あっそれなら向こうの部屋にいるよー(ちっさい子だなぁ何年生だろ)」

???「ありがとうございますちょっと上がらせて頂きます」

???「j……住職さ~ん」

住職「どうした?」

コソコソコソ

住職「そうかなら気をつけておく君も気をつけろ」

???「はい!ではまたッ」

タッタッタッタッ

住職「まぁ気にしないでくれ。そろそろ晩飯にしようか」

佐天「あっなら私が作りますよ」

住職「そうかありがたいなら上条君と一緒に作ってくれ」

「仕事がはかどるだろう」



佐天「かーみじょーさーん」

上条「もうくたくただぁ……」

佐天「何手伝ってたんですか?」

上条「なんかレポートを整理したり住職さんに渡したりずっと使われっぱなしだったぁぁ不幸だ……あっ」

佐天「あっ駄目じゃないですか不幸っていったら、そうそう上条さん一緒に料理つきりましょ」

上条「はいっ喜んで(天使の様な笑みで言われたら断れない……)」


―――――――
コトコト…ワイワイ…コトコト
―――――――

佐天「できましたね!」

上条「あぁ!」

―――――――

住職「うまい…………」

今日はしんどいので寝ます
もうそろそろ投下スピードあげていきます



佐天「住職さん『うまい…』って言ってましたよ!」

上条「そりぁ涙子ちゃんとこの上条さんの力を合わせれば天下無敵ってやつですよ」

佐天「ですよねー」

佐天「お風呂入ってきまーす」

――――――
上条「あーインデックス子萌先生ん家で迷惑かけてないかなぁ。」ピッ

上条「なん……だと………圏外…………」

上条「不幸………おっとおっと」
―――――

佐天「あがりましたー」

上条「おっじゃぁ俺も入ろかな」
―――――
上条「普通の日本男児ならこの残り湯に反応して普通なんですよね…健全な証拠でし!」



佐天「じゃぁおやすみなさ~い」

上条「おやすみ」

―――――――――――

チュンチュン
チュンチュン

上条「涙子ちゃんおはよう」

佐天「おはよぉございます」

住職「二人とも良く眠れたか?」
上条・佐天「はい」

住職「それは良かった」

―――――――――
住職「朝ごはんはこっちで用意さしてもらった」

上条「良かったんですか?」

住職「あぁこれから君たちは疲れるだろうからな」

上条「は、はぁ……」

「「朝ごはんうめー」」

句点が「。」で
読点が「、」だっけ?逆?

佐天「一方通行さん、貴方が反射をしようと関係の無い処刑方法を考えました」

一方通行「あン?ンだてm…

ドォ――――z____ン!!

佐天「時は止めました、止まった時の中なら反射もクソもありませんよね」

佐天「では遠慮なく……ってあれ?」ソ~…パチン

佐天「……反射、生きてますねコレ」

佐天「3秒……限界です、時は動きます」

一方通行「めェは……って、ン?空間移動系の能力者か?てめェ」

一方通行「(いや、少し妙な感覚だった…何モンだコイツ?」

佐天「………」

なんて展開を期待してたのに>< 
>>1戻ってこないかしら

DIOの時止めって厳密には止まっているんじゃなくて滅茶苦茶ゆっくりな世界ってばっちゃがいってた!!

なーんて、僕も静止した世界じゃ反射も働かないと思ってます。
でも一方さんが時の止まった世界に入門する展開も面白そうだよね

1 別の意味で停止
佐天「調子に乗っちゃ駄目!」
佐天「にゃんたら優しすぎるの大嫌い!」
佐天「にゃー!」
御坂「……」
佐天「はっぴぃにゅうにゃあ はじめまして」
御坂「……」
佐天「君にあげる最初のオーバーラン」
佐天「逃げるから……?」
佐天「み、御坂さん……恥ずかしいところ見せちゃいましたね……」
御坂「……」
佐天「御坂さん?」
佐天「御坂さーん、ほっぺたぷにぷにしちゃいますよー」
ぷにぷに
佐天「反応がないだと……」
佐天「は!まさかこれは……あたしの能力!?」


2 げんそーきょー
佐天「ここが幻想郷か……」
佐天「時を操る程度の能力……?」
佐天「って程度ってなんですか!かなりすごいじゃないですか!」

3 適当な理屈付け
佐天「危機に至った時、周りが遅くなったかのような感覚になるのを知っていますか?」
佐天「それは情報の中でその危機を乗り切るのに必要のない情報を一時的に遮断する事で
   一つの事に集中し、処理能力が上昇するからと言われています」
佐天「あたしはその情報遮断を意図的に行うことができる。つまりあたしはあなたの攻撃を瞬時に判断し、かわす事ができるのです」

3番についての質問は受け付けません。

>>1が戻ってこないなら乗っ取っちゃっていいのかな?
文章力皆無だけど

あ、書いていいんですかね?一応今書き溜めてるんですが
>>138から 寺は学園都市にあるっつー設定でよろしく頼みます

佐天「朝ごはんも食べたし、あたしは勉強してますね」

上条「あぁ、俺は住職さんの手伝いをするから涙子ちゃんも頑張ってね」

佐天「上条さんも頑張ってくださいね!」

────────────

佐天「とは言ったもののこの上級編難しいなぁ」

佐天「レベル3くらいになってからちっとも能力が上がらないし、勉強してるだけじゃダメなのかな……」

住職「何か悩み事かね? 」

佐天「あれ?住職さんお仕事してたんじゃないんですか?」

住職「ははっ、住職ってもそう忙しいものじゃないからね」

佐天「そうなんですか?サボってたんじゃないんですか?」

住職「ギクッ、手厳しいな……ところで何か悩み事でもあるのかね?」

佐天「あ、えっと……それは……」

住職「学問のことなら少しは手助けできるかもしれないぞ」

佐天「え?住職さんって……」

住職「今は住職やってるが、昔は学校の先生をやってたからな」

佐天「えっ!住職さん昔は先生だったんですか?」

住職「あぁ高校で教鞭を執ってたよ」

佐天「実は…………」

────────────

住職「成る程、能力のレベルアップねぇ……この学園都市の生徒の多くが抱えてる問題だな」

住職「しかしな、能力が伸びないからといって諦めちゃ伸びるものも伸びやしないんだ」

住職「まずは自分の『力』とはどういうものか、初歩の初歩から知識を学ぶことで自分なりの『力』の御し方が分かるのではないかと俺は思うよ」

住職「勿論その佐天さんが勉強しているAIM拡散力場についての知識も必要だけどね」ニコッ

佐天「自分なりの『力』の御し方……」

佐天「でも、どうやって……」

住職「まっ、ここが寺ならではの方法があるけど佐天さんやってみるかい?」

佐天「寺ならでは……?」

────────────

佐天「………座禅って……イテテ」

住職「ハハハ!足は無理せずに崩しても構わんよ」

住職「目を瞑ってもいいし、開けていてもいいから自分の『力』を知ろうと思って集中するんだ」

住職「そうすれば多少なり見えてくることがあるかもしれないさ」

佐天「はいっ!やってみますね!」

住職「じゃっ、俺は仕事してくるよ」

────────────

佐天「………(自分の力、かぁ……今のあたしは時間を9秒くらい遅くできる……)」

佐天「………(かといってレベル4って一体どの程度なんだろう?)」

佐天「………(【軍隊において戦術的価値を得られる程の力】これがレベル4の目安らしいけど、よく…わからないや)」

佐天「………(白井さんのような空間移動の能力者は自分の重量以上を空間移動できれば基本的にはレベル4らしいけど……)」

佐天「………(あたしの能力はどうなんだろ?15秒くらいゆっくりに出来ればレベル4なのかな?)」

佐天「………(う~~~~~~ん………わからないや………)」

上条「おーい、涙子ちゃん?おーい……夕食だけどー……おーい?聞いてますー?」チョンチョン

佐天「………(そもそも【軍隊において戦術的価値を得られる程の力】なんて9秒くらいゆっくりに出来る私にもあるんじゃ?)」

上条「これは……シカトでせうか?涙子ちゃん?」

佐天「………(う~~~~ん、わからないなぁ~)」

上条「ふ、不幸だー!!orz」

佐天「あ!上条さん不幸って言ってると幸せが逃げますよっ!」

上条「へっ!?……涙子ちゃん気がついてたの?」

佐天「そりゃ気がつきますよー、夕食ですか?結構時間たったなぁ~」

佐天「さっ、いきましょ♪上条さん!」

上条「あ、あぁ……(何か不幸だ……)」

引っかかりそうな単語入ってたらsagaるかsaga sageようにな

支援


佐天「今日の夜ご飯は豚の角煮ですか?上条さんが作ったんですか?」

上条「いや、俺は今日住職さんの手伝いしかしてないから作ってないよ」

佐天「じゃっ、これ…住職さんが作ったんですか?」

住職「そっ、俺が作ったのさサボってばかりじゃ無い所をだな……」

佐天「すごい!滅茶苦茶美味しそうじゃないですか!」

上条「だな!スフィンクスにも食べさせてあげたい位だ」

佐天「スフィンクスって何です?」

上条「家で飼い始めた猫のことだよ、まま、そんなことより早く食べようか」

住職「そうだな、冷めないうちに食べようか」

  「「「いっただっきまーす」」」

佐天「~~~~~~~~おいし~~いっ!!」パァァァ

住職「ハハハッ、そいつはよかった作った甲斐があったってもんだ」

上条「うめぇ!うめぇよ!住職さん!!口の中で蕩けるってか……今日の疲れが一気に吹っ飛んだ気がするぜ」

住職「そうか、なら今夜やる予定だったちょっとした仕事をやってくれるよね?」ドサッ




上条「( ゚д゚ ) ふ、不幸だァァァァァーーorz」

住職「それはさておき佐天さん、何か掴めたかな?」

佐天「あ、えーっとそれはその……」

住職「一日や二日でどうにかなるようなモンじゃないさ、そう落ち込まないで明日もやってみればいい」

佐天「はいっ!机に向かって勉強するより何か掴めそうでしたし、そうさせていただきますねっ!」

住職「あぁ、頑張ってくれ」

──七日後

佐天「ここで座禅するようになってからもう一週間かぁ」

佐天「もう少しで何か掴めそうなんだけどなぁ……」




──────屋根裏──────
???「はぁ、よりにもよってこんな仕事請負っちゃったんかなぁ」

???「【佐天涙子(無能力者)を殺害】、ねぇ………」

???「暗部の糞野郎供は何考えてこんな可愛い子ちゃんを殺害しようってのかね」

???「駒場のリーダーには悪いが暗部からの命令ってんならしょうがねぇ」

???「女、子供は狙わないのが鉄則だがしょうがねぇ」

半蔵「この服部半蔵がお嬢ちゃんの命貰い受けようじゃないの」

佐天「………(自分だけの現実……)」

佐天「………(時間をゆっくりにさせることを当然のように認識して……)」

半蔵「(何してんだあの娘……座禅?何にせよ屋根裏から射撃して殺すのは簡単だが、趣味じゃねぇ)」

────トンッ





半蔵「俺もそうなんだが、死ぬときってのはよ相手の顔ぐらい見ておきたい、そうは思わないか?」

佐天「え……?(天井からいきなり男の人が……?)」

半蔵「ま、お嬢ちゃん、いや佐天涙子……つーわけで死ね」

パァン!!と拳銃の弾ける音がして───。




佐天「危なかった……あと一瞬でも発動が遅かったら……ってあれ?嘘……」

佐天涙子の眼に視えるのは屋根裏から降りてきた男と、時間操作によりゆっくり動く銃弾が一つこっちに向かってくる。
──しかし

佐天「銃弾が3発も……避けきれないっ……」

3発の銃弾のうち1発はもう、佐天涙子の腹部に当たる直前だった

佐天「うそ、嘘でしょ?あたし死んじゃうの?こんな分けの分からないコトで」

佐天「いや!いや!そんなの嫌ァァァァァァァァァァ」

佐天「こないで!こっちに、こないでよおおおお」


ドォ――――z____ン!!




佐天「えっ……嘘……何、これ……止まっ……た?」

佐天「えっと、…避けなきゃ!!」サッ

佐天「うぅ……ゆっくりにする時と違って……もう、無理……」



半蔵「いっつぅーやっぱ三点バーストは反動がでか……ん?お前、何で生きてるんだ?」

佐天「うっ……ぐぅぅぅ……足、あしが…」

半蔵「……どうやって避けたのかは分からんが、いや──どうやって避け切れなかったのかは知らんが」

半蔵「もう一発は避けれないだろう?まぁ、なんだーその、足に当たっちゃってすまんな、死ね」

佐天「いや…いやああああああ」

──バァン!!と耳を劈く音がした。

>>216ありがとう

地味ですが>>221の『3発』の部分と『1発』をそれぞれ『三発』『一発』に脳内変換しといてください

半蔵「………」

半蔵「ガフッ……お…おまえ……」

上条「なに、やってんだよテメェ」

半蔵「ぐ………」

上条「なにやってんのかって聞いてんだよ」

上条「テメェは頑張ってる子に向かって何をしようとした!! 答えろっつってんだよ!!」


半蔵「俺だってやりたかないさ!!こんな糞胸糞悪い事なんてよお!!」

半蔵「だけど仕方ねぇじゃねぇか!命令に従わなきゃ生きていけないんだからよぉ!!」

半蔵「テメェなんかに分かるわけねぇだろ!!落ちこぼれの俺たちが生きるためにどんな事をどんな思いでやってきたかをよぉ!!」

上条「──ねぇよ……」

半蔵「あ?」

上条「──知らねぇって言ってんだよ!!そんなテメェの生き様なんか知るかってんだ!!」

上条「確かに俺たち無能力者は周りの奴らからは馬鹿にされるさ!!それがなんだよ!!」

上条「俺たちは無能力者だからって馬鹿にしている奴らを力なんかじゃなくて別の方法で見返せばいいだけじゃねぇか!!」

上条「ここに居る涙子ちゃんはなぁ!元は無能力者だったのに頑張って今はレベル3になったんだぞ!!今さっきだって努力していた!」

上条「その涙子ちゃんを殺す?ふざけんじゃねぇ!地べたに這いつくばって努力もしねぇ人間が涙子ちゃんを殺そうってんなら」



上条「まずはその幻想をぶち殺す!!」

バァン!!という音が、響いた。
それは服部半蔵の拳銃ではなく、上条当麻の右拳が半蔵の頬をぶち抜いた音だった。

────────────

住職「これで大丈夫、銃弾は掠っただけだったよ血こそ酷かったが大した傷じゃなくてよかったね」

佐天「はい………ありがとうございます……」

住職「怖かっただろう?大丈夫だあの男は警備員に引き渡したから」



────────────


警備員?「こちら警備員、少女を殺害しようとした男を連行しに来た」

上条「あぁ、コイツだ……後は頼むよ」

警備員?「了解した、身柄を確保しよう」

上条「俺は怪我人の手当てに行って来る」




住職「…………………」

警備員?「うまく、いきましたね」

住職「…………………」

警備員?「おや?どうしたんですか?喜ばしいことじゃないですか」

住職「俺は聞いていないぞ、こんなことをするとは」

警備員?「多少の情報の齟齬があっただけですよ」

警備員?「さて、私は行きますが一つ貴方に言っておきます」



────【絶対能力進化】がそろそろ折り返し地点に到達します。手伝う気はありませんか?

住職「……ッ!!貴様!!まだそんなことをやっていたのか!!」

警備員?「ふふ、その様子じゃ手伝う気はないようですねでは私はこれにて失礼しますよ」

住職「……クソッ……!」

────────────

上条「涙子ちゃん大丈夫?」

佐天「はい……少し痛みますが大丈夫です」

上条「………」

佐天「………」


佐天「あの……
   ──『力』を得ようとするのは悪いことなんですか?どうして……どうしてあたしが殺されそうにならなきゃならないんですか?」

佐天「あたしがこんな能力持ってるからなんですか?」

上条「涙子ちゃん……」

上条「大丈夫、涙子ちゃんは【絶対に】悪くない」

佐天「上条さん……」

上条「だって涙子ちゃんは必死になって能力の向上を目指して努力してきたじゃないか!それは絶対に、絶対に悪いことなんかじゃないよ」

上条「もし、また命が狙われることがあっても、絶対俺が守るよ涙子ちゃん」

佐天「上条さん………」







佐天「そ、それじゃ告白みたいですよ……///」

上条「ぬわっ!?べべべべ別に上条さんはそんなつもりで言ったんじゃ」

佐天「ふふ、わかってますよ!!────当麻、さん///」

上条「る、涙子ちゃん……///」

書き溜めオワタ

いまいち佐天さんの特徴が掴み辛いのですがこんな感じで大丈夫ですかね?

超電磁砲のアニメ見直してきます 三  ┏( ^o^)┛

省略とか抜けとか急展開は自分の文章力の所為なのでご容赦ください。
脳内保管とかしてくれると助かります(実際に抜ける場合もあるんでその時もすいません)

──それから──

佐天「……(あの時、銃弾が止まったように思えた)」

佐天「……(必死すぎてよく分からなかったけど、確かにあの瞬間、時間が止まっていた…)」

佐天「うぬぬぬ~~必死に能力を再現しようとしても出来ないなぁー」

佐天「……(でも、何か……掴めた気がするっ!)」



─────とある車内にて───────

半蔵「………俺をどうする気だ?殺るなら早く殺ってくれ」

警備員?「殺る?何を仰るのですか?貴方は十分すぎる仕事をしましたよ」

半蔵「何?……依頼は佐天涙子を殺害だっただろう、それを遂行できなかった」

警備員?「えぇ、貴方は佐天涙子を殺害することは出来ない、そんな事は分かっているから貴方に依頼したのですよ」

半蔵「何だと?そりゃ一体どういうことだ?」

警備員?「スキルアウトと言えど貴方も暗部の端くれでしょう?これ以上質問することの意味を分かっていれば、これ以上の質問は無いと思いますが?」

半蔵「………(クソったれ)」


警備員?「……(しかし……私にもこの依頼の意味は分からない……統括理事長は一体何を考えているのでしょう)」

警備員?「……(明らかに【幻想殺し】の成長にはまるで関係ない……佐天涙子とかいうガキも無能力者ですし……)」

警備員?「……(まぁしかし、統括理事長の命令に従うだけで良いんですからね、私は)」

警備員?「……(このまま命令に従えば九月三十日に一方通行が我が組織に堕ち、手足が揃う事──それは決定している)」

警備員?「……(何も問題ありませんね、ふふっ)」


さらに幾日後

──八月十五日


佐天「今日でこのお寺ともサヨナラかぁ~」

住職「寂しいかい?」

佐天「う~ん、ちょっとだけ寂しいですね」

佐天「自分を見つめなおして、『力』を知ることが出来ましたし」

住職「ははっ、『力』を知れたのは俺や寺のおかげじゃないさ」

住職「……そう佐天ちゃん自身の努力の賜物さ、俺は助言しただけにすぎない」

佐天「それでも、感謝してます住職さん、ありがとうございました!」

住職「どういたしまして、さっ急がないと日が暮れちゃうよ?」

佐天「あっ!そうですね!では……ありがとうございましたー!また~」テクテク

住職「あぁ、またな」


住職「…………」

住職「…………!!」ダッ

タッタッタッ

住職「佐天さん!」

佐天「えっ?何か忘れ物でもしました?」

住職「いや…………」

住職「気を、付けて……な」

佐天「あはは、心配には及びませんよ!えっと……当麻さんが守ってくれますし///」

住職「……ははっそうか、上条君が何とかしてくれるか、年寄りのたわごとだったな」

佐天「それに、少しくらいの連中ならあたし一人でも大丈夫ですよ!多分レベル4くらいまで行けましたから!」

住職「そうか、まぁ気を付けることにこしたことはないさ」

住職「じゃっ、何度もすまないね」

佐天「はいっ!ではでは住職さんまた~」

住職「……あぁ」


────住職の部屋

住職「ふう、しかし何故佐天さんが狙われたんだ?暗部が意味のない事をするわけがない……」

住職「佐天涙子……帰り際に彼女はレベル4くらいには行ったと言ったが……レベル3程度の彼女を殺す必要が一体どこに……?」

住職「一応【書庫】で彼女の事を調べてみるか」カタカタカタ


────────

■ Profile

 名 前  佐天 涙子

 所 属  柵川中学校 1年

 能力名    ×

 能力レベル : Level 0

*備考 : 七月二十四日に幻想御手を友人と共に使用。
      監視カメラの映像によりレベル1程度の空力使いと判断される。

────────


住職「これは……?レベル……0……」

住職「どういうことだ?彼女は現時点でおおよそレベル4といった」

住職「【幻想御手】を使用し、副作用の意識不明から回復してから能力に目覚めるなんて実例は無い……」

住職「彼女は一体……」

住職「しかし実際に彼女の能力を見たわけじゃないが、彼女が嘘を言っているようには……」

住職「まさか……暗部はそれに気付いてッ………!!」

──warning──warning──!!

住職「パソコンが!?な、何だ?……ッ!!まさか暗部に──!?」

──PiPiPiPi!!

???「その通りだよ天──いや住職君と言ったほうが今はまだ正しいのかな」

住職「だっ誰だ?お前は!!」

???「誰だとは酷い言い草だな、私のおかげで量産型能力者計画の研究をさせてやっていたのに」

住職「ま……まさか……」

???「そう、アレイスター、いや統括理事長と言ったほうが君には伝わるかな?」

住職「ぐっ……な、何が目的で私に連絡を──?」


統括理事長「おや?君にはもう予想はついているのでは無いかね?」

住職「【絶対能力進化】の手伝いならやらないぞ!!あんな非人道的な事を──!!」

統括理事長「ふふ、君は手伝わなくてはいけない」

住職「しゃ、借金なら全部返済した!!私を縛り付ける口実などあるまい!!」

ピーーーー

住職「な、何だ……?」

統括理事長「いや、君が手伝わなくてはいけない理由だよ、口頭で説明するより文面のがいいと思ってね」


────────────
×× ××様

貴殿は【絶対能力進化】の途中で逃亡を図りこれに成功
絶対能力進化における【妹達】の調整に大幅な遅れを取らせた。

当該時間の研究費その他貴殿が持ち去り、破壊した機材の損害金額は

  \2,740,169,328

この金額は払わなくてはならない。
絶対能力進化参加の契約書によると
第二十七項目注の三に
【この計画の際に自身が研究の損害を与えることになった場合、損害金額を全額支払う事を義務付ける】
この一文により、貴殿には上記の金額を支払わなければならない。
────────────


住職「ばっ馬鹿な!!ふざけてる!!27億だと!?払えるわけが無いだろう!!」

統括理事長「そこで絶対能力進化だよ住職君、絶対能力進化を終了まで手伝ってくれればチャラさ」

住職「何を考えている………」

統括理事長「それは絶対能力進化の事か?それとも他のことか?」

住職「全部だ……貴様はふざけている!!悪魔だッ……!!悪魔め……」

統括理事長「ふふ、悪魔かどうかはさておき手伝ってくれるな?


                           ──天井亜雄君?」


天井「~~~!!…………一つ、質問だ」

統括理事長「なにかね?研究所での地位は心配するな、私が何とかしてあげよう」

天井「そんな事はいい…………彼女、佐天涙子の事だ」

天井「彼女は何故狙われた?彼女をどうするつもりなのだ?上条当麻と何か関係が──?」

統括理事長「…………その質問にはお答えできない、と言いたい所だが少しだけ答えてあげよう」

統括理事長「樹形図の設計者が破壊されたのは知っているだろう?」

天井「…………?それがどうした」

統括理事長「つまり私が代わりに『ある事』をシミュレーションしなくてはならないというところだよ」

天井「何が言いたい?」

統括理事長「彼女の能力のことを知っているのは私と君だけだ、この意味も分かるね?」

統括理事長「話はここまでだ、十分もすれば迎えが行くので準備しておくように」

統括理事長「活躍を願っているよ──天井亜雄君」


──ブツッ  ツーツーツー

天井「おいっ!意味が分からないぞ!!彼女をどうする気だ!クソッ!!」

天井「佐天さん……どうか、どうか無事でいてくれッ──!!」



上条「ふぃー疲れたなぁ~」

佐天「疲れましたけど、いっぱい良い事がありましたよ!」

上条「へぇ、俺は住職さんの手伝いばっかで肩が痛くなっただけだよ」

佐天「そういえば、住職さんの手伝いって何をやってたんですか?」

上条「ん~内容は良く分からなかったけど、書類の整理とかテキストファイルとか情報の暗号化だったかな」

佐天「そんな事やってたんですかー、でも書類の整理はともかく暗号化って必要あるんですか?」

上条「…………」

佐天「当麻さん?どうしたんですか?」

上条「………涙子ちゃん、男には……色々あるんだよ……」

佐天「は、はぁ……?」


上条「それは置いといて涙子ちゃんは寺での生活はどうだった?」

佐天「『あの事件』以降、レベルアップにつながる何かを掴めて、実際にレベルが上がった気がします!」

上条「ハハ、ソイツはよかったなー、上条さんもレベルが上がれば奨学金がいっぱい出て生活に困らなくなるのになぁー」

佐天「そういえば当麻さんってレベルいくつなんですか?」

上条「俺はレベル0だよ」

佐天「あ……ご、ごめんなさい……あたし……その……」

上条「気にすんなって涙子ちゃん、俺はレベルに頓着してねぇからよ」

佐天「でもあたし、色々無神経なこと言っちゃって……」

上条「だぁぁ気にすんなって!そもそも涙子ちゃんもレベル0から4まで上がったのってつい最近なんだろ?」


上条「身体検査までは元のレベルのままじゃないのか?」

佐天「あ、そうですね、次の身体検査までは書庫上ではレベル0ですね」

上条「それまでは俺達は無能力者仲間だよ!涙子ちゃんも元気だしなって」

佐天「そ、そうですよね!ありがとうございます、その急で申し訳ないんですが、その…」

上条「ん?どうした?」

佐天「えっと……///あの……あたしと友達に、なってくれませんか?」

上条「何言ってんだよ涙子ちゃん」

佐天「えっ……?」

上条「俺達はもう、友達だろ?それに、涙子ちゃんを守るって約束も忘れてないからな!」

佐天「当麻さん……///ありがとう……」

上条「お礼を言うのは俺のほうさ、涙子ちゃんが居たから寺でのバイトに華があったしな!はいコレ」

佐天「え……何ですかコレ?」


上条「俺の電話番号とメールアドレスな!また変な奴がいたら電話くれよな!飛んでいくから!」

上条「じゃ、涙子ちゃん、俺の住んでる学生寮はこの近くだからじゃあな!」

佐天「あ……当麻さん!じゃあ!また合いましょうね~~~!」

上条「おう、またな」


佐天「さて、とあたしも帰りますかー!」テクテク

佐天「……(あの事件から【時を止める】練習をして……)」

佐天「……(今のところ時を止めていられるのは2秒くらい、かな?)」

テクテク

佐天「……(時間を遅くするのも連続で15秒までは何とか出来るようになったけど)」

佐天「……(連発するには一息入れなくちゃ連続しようはできないなぁー)」

佐天「……(ま、そんなことより早く寮に帰って初春のスカートめくらなきゃ!)」


────────────

現時点での佐天涙子の能力状況

・ 時間を遅くするのは15秒程度可能。
・ 時間を止めるのは2秒が限界。
・ 連続使用は1度使ったら5秒以上は開けないと再度使用はできない。
・ 時間を遅くしてから止めることは可能だが、止めている時間は遅くした時間と反比例し短くなる。
例 : 10秒遅くする→時止め→0,5秒が止めていられる限界となる。
   逆に、1秒時止め→遅くする→5秒ほど遅くすることができる。
────────────

ちなみに>>247
アレイスターさんは佐天さんの能力を知ってるのは二人だけって言ってますが当麻も知っていることを知っています。一応補足

これ以降書き溜めてないんで書き溜めてきます。

乗っ取りのせいで駄作になったな


──とある風が強い夜のビルの屋上……。

???「横風が強い、標準を三クリック左へ修正」

???「ビル風……三方向からの渦、標準を右に一クリック修正」

???「目標コード【一方通行】射撃を開始」

──十二発の弾丸が目標を粉々にするはずだった。しかし……

弾丸十二発は時間が巻き戻るかのような軌跡で発射された銃口に向けて──……。




一方通行「……ふン、くっだらねェ……」

──狩られる者が狩る者に一方的に虐殺される、そんな風の強い夜……。




────────────

   八月二十日

────────────

佐天「あっつ~、何なのかねぇーこの暑さは」

初春「まぁ夏ですし暑いのは仕方ないと言えるでしょうが、今年の夏は暑いですね」

佐天「全く、お日様もちょっとは遠慮して欲しいものだよ!」

初春「実際にはお日様に近づいてるのは地球だから自業自得というか……あ、佐天さんちょっと待っててください」

PiPiPiPi

初春「はい、分かりましたすぐに向かいます」

初春「すいません佐天さん!風紀委員の仕事があってすぐに支部に行かないと……」

佐天「おうおう働き者だねぇー初春君は!あたしに気にせずに行っておいでー」

初春「すいません佐天さん!
     じゃあ今日行く予定だったケーキ屋さんの新作スイーツ代わりに買っておいてください!お金はいつか払います」ダッ

佐天「オッケー……っておい!さりげなくパシろうとすんなー!」


佐天「くっそー初春のやつー今度あったら凄いスカート捲ってやる!(あたしの能力でな!!)」

佐天「(時間遅延をしてゆっくり初春のパンツを楽しむのもいいけどそれじゃ新鮮味が足りない……)」ブツブツ

佐天「(時間遅延で気付かれないうちに捲って、即立ち去ってみるのが一番いいのかな……?)」ブツブツ

佐天「(立ち去ってから何食わぬ顔で初春に『何路上でパンツさらしてんのーへんたーい』とかいいかもね、あはは)」



佐天「ってあれ?あそこに居るのって当麻さん……と御坂さん!?二人で何話してるんだろ?」

佐天「おーい!御坂さーん」

御坂「あら?佐天さんじゃない、こんなところで何してるのー?」

佐天「それはこっちのセリフですよ御坂さんこそ何やってるんです?」

御坂「それがね……ププ……コイツが……二千円札を自販機に…あっはっは、ひーっ!」

佐天「ちょっ、二千円札ってまだ日本に存在してたんですね……ふふ……それを『当麻さん』呑まれちゃったんですか」

上条「……、恥ずかしながら呑まれちゃった訳ですよ『涙子ちゃん』……」

御坂「あはははは!自販機もバグるわよ二千円札なんて突っ込まれ……え?ええ?」


佐天「うん?どうしたんですか?御坂さん」

御坂「な、ど、どうしたって……え、佐天さん『コイツ』と知り合いな訳?」

佐天「あっそっか『当麻さん』とはこないだ知り合ったんですよー」

上条「そ、こないだやってたバイト先で知り合ってなー」

佐天「それに当麻さんったらあたしに告白までしてきたんですよーキャーたらしなんだから、ねー?御坂さん」

上条「だぁぁ!あれは告白じゃなくてですね!いつでも助けるよって……あー違う違う!ニヤニヤするなぁぁ!」

御坂「…………す、…………す」プルプル

上条「あ?どうした…?」

佐天「御坂さんどうかしました?」

御坂「あんたは何私の友達口説いてんのよ!!このっ!ぶっ飛ばす!!ぶっ飛ばしてやる!!」

瞬間、御坂から雷じみた青白い火花が飛び出て真っ直ぐ上条当麻の元へ飛んでいった……

──しかし上条当麻は超速反応にて屈み、避け………そして……。



自販機「……………」プスプス

佐天「あ………」

御坂「あっ……」

上条「ふ、不幸だ……」

自販機「……………そげぶ」

自販機「オ…オエェェェェェェェ」ゴトッゴトッ


「「「に、逃げろーーー!!」」」フ、フコウダー



佐天「いや~無茶しますねぇー御坂さん」

御坂「ま、二千円以上のジュースが出てきたから結果オーライよ」

御坂「あ、鰤苺サイダー貰うわね」

佐天「じゃ、あたしは普遍的無意識味ジュース貰います」

上条「そのジュースのお金は……」

御坂「何か文句あるの?」

上条「い、いえっありません!!……えーっと上条さんはこの青汁しるこでもいただきますかね」ゴクゴク

御坂「で、佐天さんとコイツってバイト仲間か何かな訳?」

佐天「いえっあたしはちょっと修行しに……そこに当麻さんがバイトしてたので仲良くなったって感じですかねー」

御坂「修行?佐天さんって、……その」

佐天「あたし遂に能力に目覚めちゃったんですよ!!」


御坂「えっ!?すごいじゃない一体どんな能力なの?」

上条「(話に入れない……っつか涙子ちゃんと仲良くしてる子は俺の知り合いっつー事で良いんですかね)」

上条「(さっき、『この超電磁砲のを打ち破った無能力者めっ!勝負よ!!』って電撃ぶち込まれそうになったけど……味方ですよね?)」

御坂「えっ?時間操作?聞いたことないけど本当なの?」

佐天「ホントですよ~、今ちょっと発動してみますてぃっ!」

上条「(ええぃ!味方かどうかなんて本人に聞けばいいだけじゃないか!)」


ドォ――――z____ン!!

佐天「うひょーい御坂さんの背後に回って……」

上条「なぁビリビリって……」

「「あれっ?」」



御坂「 !……って何アンタは佐天さんをエロい視線で見つめてるのよ!」

上条「ご、誤解だってばー!!今ちょっとおかしな事がー!」

佐天「(あれ?当麻さん止まった時の中で普通に動いてるように見えたけど……)」

上条「涙子ちゃんもこの危険因子に何か言ってやってくれー」

御坂「誰が危険因子よ!!私には御坂御琴って名前があるのよ!!」

佐天「御坂さんと当麻さん、ちょっと良いですか?」

御坂&上条「ん?どうした?」



ドォ――――z____ン!!


上条「……ん?」

佐天「やっぱり、どうして……」

佐天「どうして止まった時の中で動けるんですか!?(2秒……動き出すっ)」



御坂「佐天さんどうしたの?ってうん?」

上条「えっと、その……多分涙子ちゃんの能力が利かないのは────



        「お姉様?」


佐天「えっ!?」

上条「って……えっ?」キョロキョロ

御坂「………」

上条「増えてる!?御坂二号!?」


ミサカ「妹です、とミサカは間髪入れずに答えます」

今日の投下分終了のお知らせ

>>258-259
自分は>>1じゃないんで質や展開に矛盾が生じるのはご容赦ください。


佐天「えっ!?御坂さん妹さんいらしたんですか?いやはやそっくりですねぇー」

上条「ホントにそっくりだな、見分けがつかないくらいだ」

ミサカ「遺伝子レベルで同じですから、とミサカは答えます」

上条「遺伝子レベルって……」

佐天「ってことは双子なんですか?一卵性双生児ってやつですね!」

上条「それにしても、ここまでソックリになるもんかねー」マジマジ

ミサカ「あまり女性をジロジロといやらしい目でみてんじゃねーよコノ野郎、とミサカは心の中で呟きます」

佐天「おぉ、さりげなく毒舌ですねーさすが御坂さんの妹!」

上条「って上条さんはそんなよこしまな気持ちで見てませんよっ!」

ミサカ「そうですか?さっきから胸の辺りに視線を感じて不愉快なのですけれど、とミサカは心底嫌そうな顔をします」

上条「気のせいですっ!絶対気のせい!……ってかその御坂妹はどうしてこんなところに?」

ミサカ「この近辺でミサカと同じ系統のチカラを感じたため確認をしに来たのですが……お姉様でしたか」



御坂「───……。あんた、一体どうしてこんな所でブラブラしてるのよ……」


ミサカ「調整中です、とミサカは簡潔に答えます」

佐天「調整中?何か調整しなくちゃならないモノでも持っているんですか?」

ミサカ「はぁ、しいて言えばミサカ自身ですが、とミサカは答えます」

佐天「???……あっ!!妹さんは風紀委員か何かですか?その、それの研修中とか」

御坂「そ、そうそう!!佐天さん鋭いわね!そういうことだから──妹、帰ろ」

ミサカ「はい?ミサカにはこの後「いいから来なさい!!」

御坂「というわけだから、私はこれで帰るわねー!そのジュース二人で分けちゃってー」







上条「複雑な……」

佐天「ご家庭なん……ですかね……?」

上条「え、えーっと……」

上条「ま、まぁこのジュース、二人で半分こにしよっか涙子ちゃん」

佐天「えっ?でもこれ当麻さんのお金で買ったやつじゃ……」

上条「あー……でも買ったとは言い難いから貰っちゃってよ、ほら一人じゃ持ちきれないからさ」

佐天「えーっと…………じゃあ遠慮なく頂きますね」

上条「じゃっ、俺達も帰ろうか」

佐天「あっ!初春にケーキ買わなくちゃ!!ごめん当麻さん!!あたしケーキ屋に用があるんで」ダッ

上条「あ……って行っちゃった────大量のジュース置いて……」


──PM 5:38

佐天「ふ~、危うくケーキ屋さん閉まるところだったよ」

佐天「ふんふふん♪自分にケーキ2個も買っちゃったっ!」

佐天「ん~~~楽しみだなー♪ってあそこに居るのって」

佐天「御坂さんじゃないですか!さっき妹さん連れて帰ったんじゃ──」

ミサカ「……………?」

佐天「って、うん……?あっ、妹さん?」

ミサカ「まぁ、その認識で構いません、とミサカはキョトンとします」

佐天「どうしたんですか?こんな所で」

ミサカ「しいて言うならば準備、と言ったところでしょうか、とミサカは簡素に答えます」

佐天「準備?さっきは調整中とか何とか言ってたけど」

ミサカ「そうですね今は準備──いえ準備は完了といったところでしょうか」


ミサカ「──おや?貴女のその手に持っている袋は、とミサカはわざとらしく話題を変えます」

佐天「おっ!これに目を付けるとは妹さんも目敏いねぇ~、これはケーキなのだ!!」

ミサカ「ケーキ……そうですね、【時間】まではあと少しありますので
     そこのベンチでティータイムと洒落込みましょう、とミサカは強引に貴女を座らせます」

佐天「えっえぇぇー、あたしのケーキなのにー!」

ミサカ「ケーキは3つあるように見えますが、とミサカは早く食べたくてそわそわしながら言います」

佐天「あたしの友達の為に買っといたやつですよ」

ミサカ「ではこのケーキは本来友人の分なのですね、とミサカは食べられない友人を思い心を痛めたフリをします」

佐天「あー、そうですね友達の分かな」

ミサカ「……食べていいんですか?」

佐天「言ったじゃない【友達】の分って」ニコッ


ミサカ「──?、とミサカは理解できずに首を傾げます」

佐天「うーんこう言ったほうが良いのかな?【友達】の妹さんにって事!」

ミサカ「…………………」








ミサカ「で、では【友達】のミサカの為に3つ頂けませんか、とミサカは友人に頼んでみます」

佐天「だめですっ!妹さんといえど3つはだめですよー、あたしが初春にどやされますから」

佐天「そうだ!当麻さんから貰ったジュースが1本あるんだった!もう一本買ってくるから待っててください」タッタッタ

  「あたしと初春の分まで食べちゃだめですよーー!!」



ミサカ「ふふっ、とミサカは笑顔が抑えられません」

ミサカ「この口の中でシューっと蕩ける甘さ控えめな生クリームとスポンジの感触がたまりません
     それに上にチョコンと乗っているイチゴもたまりません、とミサカは恍惚の笑みを浮かべて言います」






────へェ【実験動物】もケーキなんざ食べンのか

ミサカ「!!」

ミサカ「──PM 5:45 少し長居しすぎたようですね、とイチゴを残念そうに見つめながら答えます」

ミサカ「──第一〇〇二八次実験場所に向かいましょう」

ミサカ「…………(友達、ですか……)」


佐天「買ってきたよ~さっ、食べましょうってあれ?妹さん?」

佐天「ケーキは食べかけだし、どこ行ったんだだろ?トイレかな?」キョロキョロ

佐天「まーちょっと待ってみますか」











佐天「戻ってこない…………」

佐天「うーん、ちょっと探してみるかーっ」バッ

佐天「おっと、食べ残しのケーキを仕舞って、と」

佐天「調整中とか準備中とか言ってたし、もしかしたら学園都市に来て間もないのかな?」

佐天「だとしたら迷子になってるかもね!妹を探せっ!……なんてねー」



佐天「妹さーん、おーい」

佐天「トイレかなぁー?」






佐天「うぬぬぅー居ない……」

佐天「この周辺で探してない所って言ったら……」チラッ

佐天「路地裏……うぅ怖い人とか居そうでやなんだけどなぁ……」

佐天「えぇい!しっかりしろ佐天涙子よ!今のあたしは昔の無能力者じゃないんだ!!」


────路地裏

佐天「お、おーい妹さーん(小声)」

佐天「(薄暗いし、若干怖い雰囲気……やだなぁ……)」テクテク




佐天「あれ?あそこに引っかかってるのって……セーターの切れ端?」

佐天「常盤台中学のセーターの色と同じ色のような……まさか、ね……?」

佐天「……妹さん……?居ますか?」











────路地裏の曲がり角、そこに彼女は居た。


佐天涙子の【友達】の御坂妹が死体となって────


──さっきまで一緒に居た、ケーキを食べていた、【友達】だと自分は思っていた。

なのにどうして、その友達がうつ伏せに横たわって、周囲の地面には血に濡れていて──

──血の海の中の友達の顔は分からない、直視できない。

目を逸らす、逸らした先に指が数本転がっていた──


──指だけじゃなかった、人間を形成する、普通は見る機会なんて一生無い淡いピンク色の──


佐天「ひっ……ぐっ……う……げほっ……うぇぇぇっ」ビチャビチャッ

──血溜まりに自分の吐瀉物混ざる、もっと気持ち悪くなった、もっと吐いた

──路地裏に広がる世界は、佐天涙子が知っている世界ではなかった。




──気付いたら萎えていた足が路地裏から遠ざかる──。





涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔よりも酷かった『心』が少し平静を取り戻す

佐天「通報しなきゃ……白井さんに──いや警備員だよね……」


???「あの……」



ミサカ?「少々話があるのですが、とミサカは何やら凄い顔になっている彼女に話しかけます」


──平静を取り戻した頭がオーバーヒートして脳が4つに割れたかと思った。

佐天「──────」

ミサカ?「おや、気絶してますね、都合が良いのでこのまま路地裏に連れて行きましょう」



ケーキ、ありがとうございました。
とても美味しかったですよブラザーとミサカは少々【友達】に砕けた口調で──


佐天「──!?今のは……夢……?妹さんも殺されてないし──」

ミサカ「いえ、ミサカはきちんと死亡しましたよ、正確にはミサカ一〇〇二八号ですが、とミサカは報告します」

佐天「へぇっ?ちょっとまって、意味が──」

ミサカ「それは実際に見ていただいたほうが分かりやすいと思い集合をかけました」

佐天「集合?それにここってさっき妹さんが──」

ミサカ?「一〇〇二八号が死亡した場所ですよ、とミサカ一万八百五号は貴女の背後から囁きかけます」

ミサカ?「それに一〇〇二八号の処理と掃除をしたのは私ですよ、とミサカ一万三千三十八号は貴女の視界に現れます」

ミサカ?「ついでに言うと貴女の吐瀉物を掃除したのは私でした、とミサカ一万四千九十九号は同じく貴女の視界に現れます」


ミサカ?「ここに貴女を呼んだのは【絶対能力進化】の実験関係者かと思ってのことでした」

ミサカ?「符丁の確認をします──ZXC741ASD852QWE963」

佐天「えっえっ?ミサカさんが4人も?四人姉妹?えっ?れべる6しふと?パス?一体──」

ミサカ「──、まぁ分かってはいましたが関係者な訳がないですよね、とミサカは徒労に終わった事を嘆きます」

ミサカ「施設に戻りましょう、一万八百五号、一万三千三十八号、一万四千九十九号、とミサカは呼びかけます」







佐天「待って!!あ、貴女達は……」

ミサカ「クローンですよ、聞いたこと位あるでしょう、とミサカはやれやれと後ろを振り返らず言います」


佐天「────────」ダッ!!

──良く分からない、良く分からない、よくわからない、よくわからない、よくわからない

──よくわからないけど、よくわからないけど、逃げなきゃ、と思った。





──とある中学校の学生寮

コンコン

初春「佐天さん起きてますー?ケーキ受け取りに来たんですけど──って部屋暗っ!?寝てるんですか?」

佐天「…………」

初春「!?……吃驚するじゃないですか、起きてるなら返事くらい……ていうか明かりくらい──」

佐天「ういはる……」

初春「何です?佐天さんケーキ買い忘れたとは言わせませんよ!」

佐天「ZXC741ASD852QWE963って何?クローンって何?絶対能力進化って何?」

初春「は?何言ってるんですか?寝ぼけてるんですか?」

初春「電気つけますよ」パチッ

初春「ひっ、佐天さん!!どうしたんですか!?髪もボサボサだし、目も真っ赤じゃ──」


佐天「初春、あたしね分からないの今日遭った事が初春が風紀委員で抜けて当麻さんと御坂さんと合って
   ジュースが一杯出てきて御坂さんの妹が出てきて御坂さんが妹さんと帰ってケーキ屋でケーキ買って
   さっき御坂さんと帰ったはずの妹さんがいてケーキ食べよって友達になってジュース買って帰ってきたら妹さん居なくて
   色々探して路地裏を探したらさっきまでケーキ食べてた妹さんが殺されてて逃げて逃げて逃げたら殺されたはずの妹さんが
   話しかけてきて色々意味がわかんなくって気絶して起きたら妹さんが殺されてた路地裏に居て
   あぁさっきまでのは夢だったんだなって思ったら妹さんがいっぱいでてきて
   パスの確認とかってZXC741ASD852QWE963とか言うし絶対能力進化とか言って最後には私達はクローンですとか言って──」


初春「佐天さん?何ぶつぶつ言ってるんですか!?しっかりしてください!!」

佐天「ZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローン

    ZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
    絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963絶対能力進化クローンZXC741ASD852QWE963
    ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963」ブツブツ
   


佐天「ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
    ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
    ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963
    ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963ZXC741ASD852QWE963」ブツブツ

佐天「わかんない、わかんないの、あたし、わかんないわかんないわかんない──……」バタッ

初春「──佐天さん!!」





────病院────

先生「うーんどうやらPTSDのようだね」

先生「かなり強い精神ショックがあったようだから、精神系能力者からの干渉と思ったけど、どうやら違うみたいだね」

先生「彼女に何かあったか解るかい?今は薬で眠っているのでね」

初春「ヒッグ……分かりません、今日私が風紀委員から佐天さんの寮の部屋に行ったら真っ暗な部屋でブツブツ言ってて……ヒッグ」

先生「そうか……」

初春「佐天さん大丈夫ですよね?ヒッグ……絶対元の佐天さんに戻りますよね!?」

先生「それについては安心してくれ、僕は患者を絶対に見捨てないし絶対治すのが心情でね」

先生「さぁ、心配なのは分かるが完全下校時刻は過ぎている、帰りなさい」





先生「──絶対に治すさ、僕はその為に生きているんだからね」



──しいて言うなら準備と言ったところでしょうか
──おや、貴女の手に持っている袋は
──ケーキ、そうですね【時間】までは少々ありますし
──……食べて、良いんですか?
──【友達】……?で、ではっ【友達】のミサカの為に3つ











──ありがとうございました。ミサカの、いえミサカ一〇〇二八号の【友達】


佐天「っ!!………」

佐天「……………?」キョロキョロ

先生「どうやら目覚めたようだね?ここは病院だよ
    申し訳ないんだけれども一応自殺防止の為に手足を拘束させてもらっているよ」

佐天「……………」

佐天「……………」

先生「……なるほど、やっぱり……無理に喋らなくていい──今はゆっくり休息する事が大事だからね」


──八月二十一日──


初春「はいっ佐天さん!!ご飯ですっあーんっ!」

佐天「……………」モグモグ

初春「美味しいですかー?美味しいはずですよー何たって常盤台中学校で使用しているお米で作ったお粥ですからね!」

佐天「……………」モグモグ

初春「……ッ!!このっ…お粥のお米は白井さんに……特別に分けて貰ったんでっ……、今しか食べる機会ありませんよ……」グスッ ポロポロ

佐天「……………?」

初春「す、すいません佐天さん、何で泣いているんでしょうね……ヒッグ……」

初春「あ、そうだ佐天さん!学び舎の園の『ケーキ』屋さんの『ケーキ』あるんで食べましょう!」ゴソゴソ



──ケーキ、そうですね【時間】までは少々ありますし

佐天「~~~~~~~~~!!」ガタッガタッ!!

──で、ではっ【友達】のミサカの為に3つ

佐天「いや、いやぁぁぁぁぁあ゙ぁあ゙あ゙あ!!」ガタン!!ガタン!!

初春「佐天さん!?どうしたんですか!?先生!!!先生ーー」



──────


先生「落ち着いた、みたいだね?」

佐天「………………」

先生「……、すぐに良くなるさ」

佐天「………………」キョロキョロ

先生「ん?どうしたかね?
    ……、あぁ初春さんは廊下に居るだけだから直ぐに戻ってくるさ」

佐天「………………」

先生「うん、それじゃあ私は一旦他の患者さんのところに行くね?初春さんを呼んでおくから少しだけ待っていてくれ」


先生「こんなところに居たのかい?探したよ初春さん」

先生「初春さん、佐天さんが呼んでいるよ?行ってあげるといい」

初春「!!私が会いに行って……また──さっきみたいな事に……」

先生「う~ん、しかし佐天さんは君を探していたみたいだったね?」

初春「大丈夫、でしょうか?」

先生「彼女に何があったのかは分かりようが無い、しかしトラウマというのはちょっとした刺激で這い上がってくるものなんだ」

先生「例としては暴漢に襲われた女性がその後男性恐怖症になって、男性の傍に居ると落ち着かない、といった風にね」

先生「だから佐天さんと合うときはなるべく刺激の少ないようにしてあげるといい」

先生「PTSDの患者さんは親しい友人等が傍に居るのも立派な治療だよ?これは僕達医者には出来ない仕事だからね」

初春「……はい……わかりました……」



──病室──

初春「さ、佐天さん失礼します」

初春「さっきはすいませんでした」

佐天「………………」フルフル

初春「ありがとうございます佐天さん」

初春「…………」

佐天「………………」スッ

初春「テレビ……ですか?」

佐天「………………」コクリ

初春「じゃ、つけますね」




初春「ふふふ、変な番組ですねーあははー!ねっ?佐天さん」

佐天「………………」ニコ

初春「!!……佐天さん……」ポロッ

佐天「………………?」

初春「だ、大丈夫です……、このバラエティー番組が面白くてちょっと涙が出てきただけです」

佐天「………………」ニコ




先生「そろそろ完全下校時刻が近いから初春さんは帰る準備をした方がいいね」

初春「あっ、はい!分かりました、また明日もきますね佐天さん」

初春「テレビ消しておきますね」スッ

佐天「────いい」

初春「えっ?佐天さん?言葉が」

佐天「────テレビ、つけておいて」

初春「は、はいっ!分かりましたっ!」

先生「(少し、回復したようだが……テレビはちょっと危険かもしれないね)」

先生「さっ、初春さん帰りなさい(キーワードに触れる可能性が──しかし……)」

初春「はいっ!先生! では佐天さんまた明日!」


先生「大丈夫そうだから手足の拘束は解いておくね?」

佐天「………………」


──とある病室の夜


佐天「………………」

佐天「………………!」

TV <さぁーはじまりましたー夏休みを満喫している学生諸君!!宿題は終わったのかね!!今日はそんな学生の為に──

佐天「………………」

TV <そう、ヘンペルのカラスというものに今日は着眼しましょう!ヘンペルのカラスとは──

佐天「………………」



TV<ここまで説明しましたが、東南アジアには白いカラスってのは実在するんで──

佐天「………………」


TV <ちなみに若干似てはいる、悪魔の証明についてですが──

佐天「………………」

TV <この証明は屁理屈のように聞こえますが、考えているとまた違った世界が見えてくるんじゃないんですかね!

TV <この学園都市では悪魔の証明の塊と──

佐天「………………」

TV <では最後に一言 【この学園都市にレベル6は居る。何故ならレベル6が居ないという証拠が無いからだ】
           もしかしたらレベル6の【実験】とか行われているかもしれませんね!
            っと!お相手はxxxxでしたーまた来週ー。

佐天「!!!!!!!!」


──レベル6、実験、レベル6
──御坂妹、クローン、『御坂美琴』のクローン!!!


佐天「────」

佐天「……、あたしは何してんだろ」

佐天「ホント、馬鹿……行かなきゃ、御坂さんに会わなきゃ……」

佐天「普通に考えて当事者のはずじゃない、ZXC741ASD852QWE963だって絶対能力進だってクローンだって何でも答えてもらうわ」

佐天「病院で悲劇のヒロインだなんて、もうあたしには似合わないのよ──!!」




佐天「初春、ごめんね……明日は会えないかもしれない」


──闇夜の海の上、黒焦げになった鉄橋の上に『超電磁砲』、御坂美琴はいた。


佐天「こんばんは、御坂さん」

御坂「……!?佐天さん?何で……こんな所に」グスッ

佐天「何泣いているんですか?御坂さん」

御坂「あ──、これはえっと──」

佐天「ZXC741ASD852QWE963」

御坂「えっ?……佐天さん……?一体どうして……」

佐天「【絶対能力進化】も【実験】も目的も教えてください、でないと」

   ド────z____ン!!

   スタスタ


佐天「…………」

佐天「3秒いけますか、なんだかんだで進化してますね、私も」

御坂「!!!いつの間に目の前に!!佐天さん一体……」

佐天「御坂さんのクローンの一〇〇二八号なんですが、私の友達だったんですよ」

御坂「──!!佐天さん──あなた……」


御坂「あの馬鹿にも言ったけどね……」




佐天「一方通行?『向き』を操作……」

御坂「それをアイツは……」

佐天「一方通行ですか、その人はどこに居るんですか?」

御坂「なっ、何を──!!どんな能力なのかは知らないけど一方通行にはどんな能力だって適わないのよ!!」

御坂「それにアイツの作戦は『無能力者』が『一方通行』を倒すことなんだから──」


佐天「それなら、問題ないです──、あたしまだ『書庫』では無能力者のままですから」

佐天「それに、今から全力で時間遅延を使って走れば当麻さんに追いつけますね」

御坂「──!!待って!!佐天さん!!!」

御坂「────!!居ない……」




御坂「どいつもこいつも!!勝つだとか……、そんなこと出来るとでも思ってるの?アンタ達はッ!!」ダッ




佐天「(時間遅延のほうは20秒程度は持続しますね)」

佐天「(一方通行『さん』絶対に、あたしの友達を殺したことを後悔させてあげます)」

佐天「(学園都市での命令だから風紀委員や警備員には裁けないでしょうし)」

佐天「──裁いてあげますよ、私の【無能力】で」





    「おら、死ぬ気で避けなきゃホントに死ンじまうぞォ!」

    「はっ!!オマエは何回殺されてると思ってンだっつのっ!!」

    「…………」    

    「ふン、さて、今日の実験終了のお知らせってかァ?」








──あたしの【友達】から離れてください一方通行さん


一方通行「コーユー場合ってよォ実験ってのはどうなっちまうンだ?」

一方通行「頼むぜ『実験動物』よォ、関係のねェ一般人なンか連れ込ンじゃってよォ」

一方通行「使い捨ての人形じゃなくてマジモンの一般人とか──」

佐天「ちょっと黙っててもらえませんか?不愉快です」シュッ

一方通行「なっ!?何時の間に移動しやがった!!」



『──、何を、何をやっているのですか、とミサカは問いかけます』

佐天「何って、友達のピンチに駆け付けちゃ悪い?」

『──、訳が分かりません、ミサカは単価にして十八万円でボタン一つで製造できる──』

佐天「単価とか、どうでもいいよ──貴女達は御坂さんの妹で、あたしの友達なんだから」

『──、』

佐天「ちょっと待っててね──」



佐天「一方通行さん、貴方が『反射』をしようが、『向き』を操作しようが関係のない処刑方法を考えました」

一方通行「ハッ、それは聞ィてみてェn



     ド────z____ン!!



佐天「時は止まりました、とりあえず病院からくすねてきたナイフで
    おっと、攻撃をする前に『反射』が生きているか確認しましょう」

佐天「………!?」ソ~…パチン!!

佐天「……(嘘……反射が生きてる……)」

佐天「…3秒──時は、動きます」

一方通行「ェなって、ハッ、やっぱ空間移動系の能力者かァ」

一方通行「悪ィがな11次元だろォがよォ反射出来ンだわ残念かァ?」ニヤァ

一方通行「(確かに反射したが……妙だな……)」

佐天「……………」

ようやく>>199に辿り着いたぞッ!!しかし寝ます。


一方通行「頼むぜェ嬢ちゃんよォ──万策尽きたって訳ァねェよなァ?」

一方通行「万策って文字通りこの【一方通行】を倒す為に『万』の策を用意して来たンだろォ?

一方通行「万でも億でも兆でも京も垓──策なンざ無駄なンだよ!!」

一方通行「友情や努力で勝利できねェんだわ、この【一方通行】はなァ」

一方通行「ハッ、それに笑わせるぜェ?【人形】相手に友情だァ?くだらねェよ」

一方通行「そうかそうか──オンナノコって【人形】好きだもンなァ?」ニヤァ

佐天「いい加減に──」

一方通行「分かったから、安心してケツを俺に向けてダッシュだァ──追わねェからよ」

一方通行「この【一方通行】が見逃してやるって言ってン──」

佐天「黙れって言ってんの」

一方通行「あァ?」

佐天「誰が【一方通行】が倒せないですって?アンタなんか楽賞よ──」

一方通行「……、へェ面白ェなオマエ」


佐天「予言します、このナイフを『反射』出来ずに【一方通行】は終わる」

佐天「一撃、です──、アナタみたいな雑魚には一撃で十分です」

一方通行「ほォ、この未だかつて破ったことも無い『反射』を破るって楽しみだねェ」

佐天「……(『静止した世界』は正確には『静止した世界』じゃない──)」

一方通行「確かにィ?そんなナイフで刺されたら一撃だわなァ」

佐天「……(『止まってると思うほど時間を遅くする』正確には多分そう──)」


一方通行「無駄だって気付かねェ──


     ドォ────z____ン!!



佐天「少し頭を使えば分かりますよねアナタの『反射』の破り方くらい」

佐天「『反射』の膜に当たったベクトルを跳ね返している──なら」

佐天「……(ここだ──!!)」

佐天「──3秒、時は正常に廻りはじめる」


一方通行「!!!!ガッ──」ブシュゥゥ

一方通行「ぐっ、テメェ!!!何しやがった!!!」ボタボタ


佐天「単純なことじゃないですか、『反射』の膜に触れた瞬間──」


     「ナイフを引いただけですよ」



一方通行「!?……『空間転移系』にンな事できる訳が────」

佐天「誰が『空間転移系』って言いました?私は『無能力者』ですよ──、しかし」

佐天「……(一瞬にも満たない時間で『向き』の方向を変えた──)」

佐天「……一撃、では無いようですね」

佐天「咄嗟に反射の向きを変えるなんて──とても人間には思えません」

佐天「でも──、太ももにナイフが刺さっていては戦えないでしょう?」

佐天「次はもっと深く刺してあげますから大人しくしていてくだ──」













一方通行「──────調子に乗ってンじゃねェぞ!!クソアマァ!!」ブワッ


──いつの間にか佐天涙子の目には空が映っていた。


一方通行「この程度で勝った気になってるから──、足元掬われンだ」

一方通行「確かにテメェの策は俺の反射を破った、だが反射を破ったからどォした?」

一方通行「その程度で【一方通行】を攻略した気になってンじゃテンで駄目だわ」

一方通行「ケド惜しかったなァ世界初だぜ?この一方通行にナイフ刺したとか」


──体中がハンマーで1時間殴られ続けたように痛む……


一方通行「『向き』を操れるから俺ァ【一方通行】なンだよ俺が何をしたか解るか?」

一方通行「テメェにゃちょっとした風の塊をぶつけたってだけだ」

一方通行「滅茶苦茶手加減してやったからよォ死にはしねェよ」


──…………、ごめん……妹さん──あたし負けちゃった……。


一方通行「だが俺の『反射』を逆手に取るなンざ──」

一方通行「──、対策は後ででいいか……まずは実験だなァ」






──……………………やっぱり無理だったのかな



ミサカ「ぐっ……あの二人は一体どうなったのでしょう、と──」

一方通行「ったく、都合よく救世主なンざ現れやしねェんだよ」

ミサカ「!!一方通行……彼女は」

一方通行「はっ!安心しろよ滅茶苦茶手加減してやったからよォ」

一方通行「暫く病院からァ出られねェだろうなァ」

ミサカ「それを聞いて心底安心しました、とミサカは本心をあらわにします」

一方通行「………、チッ」

一方通行「………………」スタスタ

ミサカ「一体どこへ、と──」

一方通行「気が変わった、やっぱ殺すわ」スタスタ


──ずるずると体が乱暴に引っ張られている

佐天「…………(……?)」



──自分を引きずっている人間に見覚えがあった

佐天「…………(一方……通行……)」

佐天「…………(体中痛くて……声も出ないや……)」



──ズルズルズルズル、ドサッ


佐天「…………(あ……妹、さん……)」

一方通行「持ってきてやったぞ、心配してたンだろォ?」ニヤァ

ミサカ「──何を、考えているのですか」

一方通行「こォすンだよ!!」



指一本動かせない佐天の腕を目掛けて一方通行は足を振り下ろした。

────ボギッ!


佐天「あ゙っ……がっ……ッ」

ミサカ「!!何を──!!」

一方通行「見て解んねェのか!?この一方通行様に傷を付けたクソアマの骨を折ってンだよォ!!」ヒュッ ボギッ

佐天「ぐ……ご……ゔっ……」

ミサカ「や、やめなさい!!実験は私が殺されれば済む筈です!
    彼女は関係ない、殺すならミサカにしてくださいとミサカは一方通行に懇願します」

一方通行「くっく、『人形』でもンな顔すンだなァ」

一方通行「だがテメェを殺すのは後だ」グリグリ

佐天「あ゙っ!!あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙──!!」


一方通行が足を振り下ろすたびに軽快な音を立てて骨の折れる音と佐天涙子の絶叫が辺りに響く。





──どうして、届かなかったのかな……

──珍しい能力に自惚れちゃったのかな……

──友達が殺されていく事が許せなかっただけで……

──これで、いいのかな?このまま死んじゃっても……


佐天涙子の世界が壊れていく。
彼女の人生の全ての経験が洗い流されていく。

白く、ただ白く世界が変わっていく。
痛みも忘れていく、白が彼女を包んでいく。

想像もしていなかったものが近くに感じる。
少ない人生で出会った様々な人達。

全て、忘れて──。







……………………………………………………
……………………………………………………
……………………………………………………
………………………死…………………………


一方通行「ハッハァ!イイネ最高だねェ!!」ゲシッ






──その子達から離れろ




一方通行「あァ?ンだテメェ?今日はやけに客が多いンだな」

──ごちゃごちゃ煩せぇよ

一方通行「ったく……見世物じゃねェンだからとっとと消えろ」











当麻「ごちゃごちゃ言ってないで離れろって言ってんだよ!!三下!!」


ミサカ「何故──何故ミサカを助けようとするのですか!?ミサカは単価にして十八万円の価値しかありません」

ミサカ「もう、やめてください……ミサカなんかに命を賭す価値なんか──」

上条「──うるせえよ」

上条「十八万円だとか、命を賭す価値とかごちゃごちゃうるせぇよ」

上条「確かにお前は二万人も居るのかもしれねぇけどな──」

上条「ミサカ一〇〇三二号は、お前はたった一人しかいねぇだろ!!何でそんな事もわかんねぇ!!?」

ミサカ「──。(何なのでしょう、この気持ちは……彼女がここに来たときも感じたこれは──)」

上条「今からお前達を助けてやるから、黙ってそこで見てろ」


一方通行「くっく、面白ェな──面白ェよお前達」

上条「──────、」

一方通行「ンな人形助けてどォすンだっての──!!」ゲシッ

佐天「────ッ!!」

上条「いいからテメェはさっさとその子達から離れろぉぉぉぉぉ!!」


ロケットのように上条が一方通行に向かって駆け出す。
しかし一方通行はベクトルをどう操ったのか、たんっと砂利を踏み
ゴッ!!と砂利が舞い上がり向かってきた上条を軽く吹き飛ばした。


一方通行「ハッ、遅せェ遅せェ!!そんなんじゃ全っ然遅ェぞ!!」

上条「くっ──、クソぉぉぉぉぉ!!」

──起きて、起きて佐天さん!!お願い!

──佐天さんの力が必要なの!!あたしじゃダメなの!



佐天「──み、みさか──さん──?」

御坂「こんな事頼める状況じゃないのは分かってる──でも、【超能力者】の私じゃダメだから──」

佐天「……(御坂さん──。でも、ごめんなさい指一本動かせません……)」


御坂「佐天さんの能力なら、アイツを──、アイツを助けてやることが出来るの!!お願いっ」

佐天「……(アイ、ツ?)」チラッ

佐天「……あっ……」

視線の先には一方的に虐げられている上条当麻が居た。


御坂「──、お願い、お願い……」

佐天「…………」コクッ


一方通行「アッハァ!遅せェ遅せェ!!狩人を楽しませるならキツネに──」





     ドォ────z____ン!!





上条「──!?これは……そうか、涙子ちゃん──」ダッ



一方通行「なっ!?テメェいきなり──」

上条「────ッ!!」


──バギン、と音がして一方通行が吹っ飛ぶ。


一方通行「ガッ、グハッ!?ンだテメェ?」

上条「立てよ一方通行──、妹達や涙子ちゃんの痛みを教えてやる──ッ!!」

一方通行「チッ、────吼えてンじゃねェぞ三下がァ!!」

一方通行「テメェなンざ──」



   ドォ────z____ン!!



上条「お、おぉぉぉぉぉぉぉぉ──!!」

一方通行「ガッ、ハァ──ッ!!テメェそりゃ一体──!」

一方通行「!!(そうか、さっきのクソアマの──)」チラッ







──視線の先には、無能力者と言い張った少女が、倒れている。

──倒れてはいた、しかし無言で一方通行をキッ!と睨み付けていた。

佐天「…………」


上条「余所見を、するな──」

一方通行「ガッ──、クソッ何なンだテメェらは──」




   ドォ────z____ン!!




上条「歯食いしばれよ最強──」


上条「──『俺達』の最弱は、ちっとばっか響くぞ!!」




上条当麻の右拳が一方通行の顔面に突き刺さる。
華奢な一方通行の体がゴロゴロと砂利道を転がっていった──。


佐天涙子が目が覚めるとそこはまだ夜明けを迎えていない病室のようだった。


佐天「──?あーっと?」

ミサカ「ここは病院です、とミサカは目が覚めたばかりの貴女に語りかけます」

佐天「!?妹さん──、えっと、その実験は」

ミサカ「はい、実験は一方通行が敗北したことにより中止に向かうことが決定しています、とミサカは懇切丁寧に報告します」

佐天「そっか……、それで妹さん達はどうなるんですか?」

ミサカ「それについてはご心配なく、世界各地の研究施設に送られて調整を行う予定です、とミサカは答えます」

佐天「世界各地?それって妹さん達にはもう会えないんですか──?」

ミサカ「いえ、学園都市に残る個体もいますし会うことは出来ると思いますよ、とミサカはやはり懇切丁寧に答えます」

佐天「そ、それじゃ──」

ミサカ「──、それとミサカ一〇〇二八号から言伝があります」





ミサカ「『ケーキ、美味しかったですよミサカ一〇〇二八号の友達』とミサカは一字一句間違えずに伝えます」


──ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ救われた気がした。



佐天「……」

ミサカ「それでは失礼します、とミサカは出口に向かいながら別れを言います」



ミサカ「あ、とミサカはもう一つ用事があることを思い出し言います」

ミサカ「『調整』が済んだら、一緒にケーキを食べに行きましょう──」


佐天「──!そうだね……初春や白井さん御坂さんも呼んで盛大にやりましょう!」

佐天「そしたらあたしがケーキの一つや二つ奢りますよっ!」

ミサカ「おや、いいのですか?、とミサカは目を輝かしながら食いつきます」

佐天「当たり前じゃない!『友達』なんだから──」


──ミサカが病室を出て行って暫く後



佐天「しっかし色々なことが一気に起こったなぁー」

佐天「暫く入院生活かーってあっ!夏休み明けの身体測定が──」

佐天「……もう暫く無能力者のままかートホホー」



     コンコン


御坂「失礼するわねー佐天さん調子はどう?」

御坂「って何かどんよりしてるけど大丈夫?」

佐天「御坂さん……あー、平気ですちょっとメランコリーな気分になってただけです」

御坂「そっか、それで怪我の具合は大丈夫なの?」

佐天「それが少しおかしいんですよねー」

御坂「おかしい?一体何が──?」


佐天「骨折した箇所が『無い』んですよ、確かに骨折してたはずなのに」

御坂「…………?まぁ、怪我が軽くてよかったじゃない!」

佐天「そうですね、それと御坂さん」

御坂「ん?どうしたの?」

佐天「今度妹さんと一緒にケーキ食べに行きましょうね」

御坂「!!──そうね……学び舎の園に新しくオープンしたところに行きましょう」







──こうして佐天涙子と妹達の物語は幕を閉じた。

これから先、彼女に起こる物語が幕を開けることを知らずに──。






アレイスター「くく、佐天涙子の能力発現によって計画の省略が可能となったな」

      『アレイスター、一体君は彼女をどうする気だい?』

アレイスター「おや君か私に電話をかけるなんてどうかしたのか?」

      『質問に答えてもらおうか、佐天涙子や僕の患者達をどうする気なんだい』

アレイスター「ふふ、少々前に聞いたような質問だな」

アレイスター「あの男には回りくどい言い方をしたがあなたにはもう少し答えてあげよう」

      『…………』

アレイスター「彼女は保険だったが無理して回収しといてよかったよ、能力発現してなによりだ」

アレイスター「学園都市には原石と呼ばれる能力者達がいるが、彼女はそれとは少し違う」

アレイスター「原石と区別し彼女は『芽』とでも言おうか」

アレイスター「『芽』はいずれ『花』を咲かすさ、それは非常に美しく私の為にね」

      『…………なんであったも僕の患者を傷つけることは許さない』

アレイスター「ふふ、貴方には借りがあるが許さないとしても貴方にはどうすることもできないさ」

      『…………』

アレイスター「では話は終わりだ、私の友人よ」

とりあえず今日はこれまでです。
色々と展開なんかをもっと考えておきます……。


──九月十日──



??「『了解、電話を変わる』おい、お前宛の依頼らしいぞ」

??「私に?他の誰かではダメなのか?」

??「『電話の男』はお前を所望だそうだ──手塩」









手塩「『ブロック』の手塩恵未だ今回の依頼について聞こうか」













手塩「…………………」

??『こちら佐久、ターゲットの調子はどうだ?』

手塩「…………」

佐久『黙ってちゃ分からん、ターゲットの調子はどうだ、と聞いている』

手塩「不機嫌だ、それに気分も悪い」

佐久『おや?ターゲットに何かあったのか?こちらからは異常は見られない』


手塩「私が不機嫌で気分が悪いと言っているんだ佐久」

手塩「『ブロック』に依頼だぞ?それが何だ!!依頼の内容は──!!」

佐久『ハッハ、大声を出すな、ターゲットに気付かれるだろ』









手塩「ターゲット?ターゲットだと!?ただの中学生じゃないか!!」

手塩「それになんだ!?『依頼内容は佐天涙子の監視』だと?ふざけるな!」

手塩「百歩譲って依頼内容は受け入れよう、しかしあのような子供に暗部が動くだと?」


手塩「それが私が不機嫌な理由だ!依頼内容は監視だったが」

手塩「──守るぞ」






佐久『ハァー、ったくターゲットの直接干渉は禁じられているんだ』

佐久『だが、手塩……依頼内容の変更などするな俺達は[ブロック]、プロのプレイヤーだ』

佐久『身の程を弁えろ、冷静になれ手塩』






佐久『[守る]、そういう事は大きな声で言うな──行動で示せ』





手塩「……、くだらん電話なら切るぞ」

手塩「監視を続行する」






初春「佐天さん!退院おめでとうございます」

佐天「おーありがとさん、あれ?御坂さんと白井さんは?」

初春「あ、お二人は後から合流するそうです」

佐天「ういはるーそれとねぇー」

佐天「あたしの退院祝い欲しいなぁ」ニヤニヤ

初春「あっ!佐天さん、実は用意してるんですよ……えーっと何処に仕舞ったっけ……」ガサゴソ

佐天「……ふっ……隙ありっ!!」










佐天「おやおや初春さぁん……菖蒲の花柄のミニショーツですかぁー新しいパンツですねこのー」


佐久『最近の中学生はお洒落な下着を着用しているのだな』

手塩「……、無駄な私語は慎め……そういったのは佐久、お前だ」

佐久『手塩、お前よりお洒落なパンツ穿いてるんじゃないか?』

手塩「基本的には動きやすいものを着用しているからな、ていうかいい加減黙れ」

佐久『うーむ、差し詰め十日の菖蒲といったところだな』

手塩「それじゃあ後の祭りじゃない……」


手塩「……、先ほど彼女は『御坂』と言わなかったか?」

佐久『そうだな、事前調査では第3位の超電磁砲の御坂美琴と知り合いのようだ』

手塩「だとするとこの距離は危険だな、もう少し離れ──」

??「お?そこに居るのは恵未じゃんかーこんな所で何してるじゃん?」

手塩「──黄泉川愛穂……、そのセリフはそのままお返しするのだけれど」

黄泉川「相変わらず手厳しいじゃんねー、もっと気楽に──」

手塩「──気楽にした結果が『アレ』とは言わせないわよ」

黄泉川「……そう、じゃんね……『アレ』を贖う事は一生できないと思ってるじゃん」

手塩「──、そう……用が無いなら私は行くわ」

黄泉川「待つじゃん!よかったらお茶でも──」

手塩「私は忙しいから今度──」








佐天「あ!こんな所で何してるんですか?」


佐天「あ!こんな所で何してるんですか?」

黄泉川「うん……?あ、あぁ……こないだの」

手塩「!?(佐久、どういうことだ!?)」ヒソヒソ

佐久『あー、忠告はしたんだが、お前は聞こえてなかったようだな』

初春「佐天さんもお知り合いなんですか?」

佐天「あははー、幻想御手の件でちょっとお世話にー」

御坂「あぁ……夏休み中に学校に行ってたんだっけー」

白井「それは……災難でしたわね、それでこのお方たちはその時の?」

佐天「こっちの人にはお世話になりましたけど、こちらの方には……」

黄泉川「あー、コイツは手塩恵未で私と同じ警備員じゃん」

手塩「……、どうも」


佐天「えーっと、あたし達これからケーキ食べに行くんですけれどよければ一緒にどうですか?」

ミサカ「そうやって誘ってケーキ代を浮かせようとしているんですね、とミサカは言及します」

佐天「うっ……!そ、そんなことないですよー」

黄泉川「別にいいじゃんよー私は暇だし……恵未もいいじゃんね?」

手塩「いや、私は……」

佐久『ここでターゲットから離れると再接近は少々厳しいかもしれない』

佐久『第3位のレーダーに引っかかるかも知れないしな』

佐久『付き合ってやれ、第3位の前では怪しい動作は避けたいから電話は切るぞ』ピッ

手塩「~~~!!──、わかった私でいいなら付き合おうか」


──ケーキ屋にて



佐天「へぇーお二人とも同じ部署で働いていたんですかー」

黄泉川「そうじゃんよー二人で警備員の『黄泉ノ塩』と呼ばれていたじゃん」

手塩「そう呼んでいたのは貴女だけよ……」

手塩「それにしても、第3位と言ってもこうしてみると普通の中学生のようね」

佐天「あーえっと、あそこのケーキバイキングで妹さんと言い合ってるのは──」

黄泉川「ま、超能力者の前に人間じゃん、それに女の子じゃんー甘いものの前じゃ喧嘩も起きるじゃん」

佐天「あはは、(多分言い合ってるのは白井さんのセクハラの所為かと)」

手塩「まぁ私達警備員は体作りが重要だからあまり甘いものを沢山食べられないけれどね」

手塩「(……、参ったな……子供と話す話題が無い……)」

黄泉川「!!そ、そうじゃんね!警備員は体が資本じゃん!」

手塩「愛穂、貴女また──」

黄泉川「ち、違うじゃん!付き合いで呑みがちょっとばかし多くなってるだけじゃん!」

手塩「やんわり断ればいい事でしょ!全く……」

佐天「あはは、お二人さん仲良しなんですねーあたしちょっとトイレ行ってきますねー」

手塩「あ、あぁ……気をつけて」

黄泉川「トイレに気を付けるも糞も無いじゃんよ!あ、糞はあるか」

手塩「そろそろ黙る時間よ愛穂」


──女子トイレ


佐天「ふー、少しの間とはいえ入院していたから体力落ちてるなー」

佐天「それに……うーん」



   ドォ────z____ン!!!



佐天「……ぶはっ!限界っ!!」

佐天「1秒も止められなくなってる……やっぱり体力落ちたからかなぁ?」

佐天「ま、手洗って戻りますかー」ジャバジャバ

佐天「……痛ッ!?……うん?」コツンコツン

佐天「ん?水の中に何かあるのかな?水止めてみよ」キュッ

佐天「??何も無い……なんだったんだろ?ま、いっかー」


佐天「ただいまーってあれ?黄泉川さんと手塩さんは?」

初春「黄泉川さんは警備員の仕事に、手塩さんは用事があるとかで出て行かれましたよ」

佐天「あちゃー、黄泉川さんにお礼言い忘れたなぁー」

白井「お礼ですの?」

佐天「はい、黄泉川さんや他の先生に教わって諦めない心や限界について学ばせてもらいましたから」

初春「へぇ~そういえば佐天さん身体検査を楽しみにしておけって言ってましたけど」

佐天「あー、それについてはまだ秘密なのだよ初春君!」

御坂「まぁ私はなんとなく分かってるけどねー」


──店から200Mほど離れた場所にて

手塩「ふう、何とか自然に出られたか……」

佐久『どうやら店外に出られたようだが、そのまま店内に居たほうが良かったかもしれん』

手塩「どういうことだ?何かあったのか?」

佐久『分からん』

手塩「は?いい加減に──」

佐久『店内で彼女がトイレに行ったときに能力が発動した反応があった』

佐久『書庫上では彼女は無能力者だが、一体どういうことだろうな』

手塩「……、店内には第3位含め沢山の生徒がいたが、その生徒達の悪ふざけとは?」

佐久『考えにくい、あの時の力場の発生箇所は女子トイレでトイレには彼女しか居なかったからな』

手塩「ステルス系の能力者の仕業では?」

佐久『その線は薄いどころか無いな、あくまで能力は一瞬女子トイレから発生していた訳だからな』

手塩「……、何であっても監視を続行しよう」

佐久『そうだな、暗部組織か何かに動きがあったら伝える』


手塩「(書庫のデータでは無能力者だが、彼女は能力者なのかも知れないな……極めて稀な)」

手塩「(書庫のデータを改竄するのは容易の事じゃない、やはり暗部が関わっているのか?)」

手塩「…………(何にせよ暗部に彼女を良いようにはさせない……)」

佐久『こちら佐久、彼女達一行が店から出るようだ』

手塩「了解」


佐天「いやー、美味しかったですねー」

初春「そりゃ学び舎の園のケーキ屋さんですよ!美味しくない訳がないです!」エッヘン

白井「どうして初春が威張るんですの、それにしてもお姉様はご機嫌ですわね」

御坂「え?ご機嫌?一体どうして?確かにケーキは美味しかったけど──」

ミサカ「おや、学舎の園には似合わぬツンツン頭の少年を発見しました、とミサカは彼を目掛けてダッシュします」ダッ

御坂「な、何でアイツがここにいんのよ!!待てーーー!!」ダッ

白井「お、お姉様!?いけません、あんな類人猿のところなんかに行っては──!!」シュン









佐天「あれれー、気付いたら二人になっちゃったね初春ー」

初春「そうですね、これからどうしましょうか?」

佐天「初春の行きたいところに行けばいいんじゃなーい?あたしはケーキ屋さえ行ければ良かった訳だし」

初春「行きたい所ですか……」

佐天「特に無いなら帰るー?」

初春「27箇所ほど見たいところがあるので付き合ってください佐天さん!」

佐天「に、27箇所!!??ちょ、ちょちょっちょっと待って~~~」

──2時間後

佐天「初春さん……蛙が鳴くから……」

初春「蛙なんて何処にも居ませんよ?さぁ行きましょう!次は──」PiPiPi!!

初春「チッ……『はい、初春飾利です……分かりました直ぐ向かいます』」

初春「どうやらここでお預けのようですね、風紀委員の支部に向かいますんで代わりに行っておいてください」

初春「じゃっ、よろしく頼みましたよ佐天さん!」






佐天「──またこのパターンかよ!!」


──学舎の園にある噴水傍のベンチにて


佐天「はぁー、ようやく回り終わった……初春も退院したての人間にこんな事させるなんて酷い……」

佐天「でも、楽しかったなぁー、学舎の園に来るのは二度目だけれど飽きないわねぇ」

佐天「初春も厳選に厳選を重ねて27箇所だったのかね──あっソフトクリームが売ってる」

佐天「九月とはいえ暑いから買っちゃおうっ!店員さーん」




佐天「ふいーこれだけ暑いとすぐ溶けちゃうなー早く食べちゃわないと」ペロペロ

佐天「学舎の園じゃ露店のソフトクリームまで美味しいのねー……」ガキッ

佐天「痛ッ!?……うん?氷か何かに当たったのかな?まぁいいやさっさと食べて帰ろうー」


佐久『どうやら学舎の園を出るようだな』

手塩「今のところ彼女の近辺になにか異常はあるか?」

佐久『これといった異常はないようだな、このままターゲットがお家に帰ったら仕事終了だ』

手塩「だといいがな……(考えすぎか?彼女にアレイスターの関与など)」


佐天「あちゃー、結構遅くなっちゃうなーよしっ!近道しよう!」

佐天「路地裏にはいい思い出は無いんだけど近道ならしょうがないっ!!」

佐天「……(ま、いつまでもトラウマに縛られてちゃダメ、だしね)」

佐天「(そこの角を左に行けば大通りに出てっと……)」

??「失礼、お嬢さん」

佐天「うん?どちら、様ですか?(あれ?この男の人いつからあそこに居たんだろう?)」

??「垣根帝督。ちょっと仕事を頼まれちゃって」

佐天「仕事?あたしには手伝うことないんで──」






垣根「俺も大概だがアレイスターもぶっ飛んでるよな、こんな可愛らしいお嬢さんを殺せってよ」

佐天「えっ──!?殺──えっ?」


手塩「どういうことだっ佐久!!どうしてあんな奴が出てくる!?」

手塩「衛星の映像で監視していたんじゃないのか!?」

佐久『わ、分からん……今も彼女の前には何も居ないように見えるが……』

手塩「く、くそっ……」ダッ

佐久『おい!まて手塩──』

手塩「(くそっ、ここからじゃ走って2分は掛かる……監視場所を建物の上なんかにするんじゃなかった!!)」


垣根「まぁ可哀想だが素直に素敵な死体になってくれやお嬢さん──」

垣根帝督と名乗った少々ガラの悪い少年の背中に真っ白な六枚の翼がゆったりと羽ばたいていた。
──垣根はその六枚の翼のうち一枚を佐天涙子に叩きつける。

ゴッ!!という人間には耐えられなさそうな轟音と衝撃音を響かせて砂煙が舞い上がる。


垣根「何にせよアレイスターの糞野郎を恨んでくれや、ってん?」

垣根「おいおい、お前は死体になってなきゃいけない筈なんだが」

佐天「はっ……はぁ……はぁはぁ……(危なかった……)」

垣根「事前調査では無能力者の筈なんだが……空間移動系の能力者だったか?」

佐天「……(どうしよう……どうすれば──)」

垣根「俺は質問したんだぜ?『貴女は空間移動系の能力者ですか?』ってな、シカトされちゃ参るぜ」

佐天「どうして……どうしてあたしを殺すなんて言うんですか?」

垣根「オーケーオーケー、あくまで俺の質問には答えてくれないってか」

垣根「答えてやるよ、答えは『そんなモン知らねぇ』だ、お嬢さん聞きたきゃ直接アレイスターに聞きなっと」


垣根帝督の六枚の翼のうち今度は【六枚】全部を纏めて佐天涙子の頭上にたたきつけた。
──ゴッ!!という音と共に佐天涙子のいる路地裏のビルごと崩れていく、筈だった。


垣根「…………」




佐天「はっ……ハァハァ、これは……?」


佐天涙子の頭上には今にも佐天涙子を押しつぶさんと六枚の翼が迫っているが、そのどれもが静止していた。
──否、静止しているのは六枚の翼だけではない、垣根帝督と名乗った少年も静止しているように見える。

佐天「えっと、あたし一体何を──」

佐天涙子の能力は、『時間を止める』、『時間を遅くする』の二つ
『特定のものを静止』など彼女の能力にはない。
しかし、彼女は頭上に迫る六枚の翼に向かって何かをしたことを覚えていた。

──佐天涙子は六枚の翼が叩きつけられる直前に【右手】を頭上に突き出していた。


佐天「止まって……る?こんなの私の能力じゃ──」

佐天「な、何にせよ逃げなきゃ!!」ダッ


垣根「……!!……ん?妙な手ごたえだったが殺ったのか?」

──PiPiPi



垣根「『……今回の依頼は終了、ふーん楽な仕事だったな切るぞ』」ピッ

垣根「アレイスターの野郎何を考えてるんだ……やっぱ俺が『第一候補』になるしかねぇな」チラッ

垣根「……(あの小娘の死体どころかビルすら崩れちゃいねぇ、一体どんな手品を使ったんだ)」

垣根「まぁいい、『俺の』仕事は終わったんだからな、後は頑張れよ」

手塩「──、…………」


手塩「彼女はどうなった?佐久」

佐久『言っただろ映像じゃ何も映ってない』

佐久『彼女がどうなったのかもな』

手塩「くそ!!もっと早く駆け付けられれば──!!」

佐久『多分それでも無理だったろう、お前が見た少年は恐らく【垣根帝督】第二位だ』

手塩「……、くそったれ……」

佐久『今さっき電話があった、任務終了お疲れさん、だとよ』

手塩「とことん人を馬鹿にする気だなアレイスター!!」

佐久『今回の件は俺も頭に来ている、クソッタレ……』

手塩「……(愛穂の事なんて何も言えないじゃない……救える立場だったのに救えないなんて……)」


手塩「……、佐久そういえば『結標淡希』って知ってるか?」

佐久『誰だ?ソイツは……いや聞いたことがある──』

手塩「そう、忌々しい『窓のないビル』の案内人らしいわ」

佐久『ソイツがどうしたってんだ?』

手塩「アレイスターを潰す計画を思いついた、これ以上は直接話しましょう」


──佐天涙子の部屋──

佐天「やっぱり……あの時のは幻とかじゃない──」

佐天「あたしの【右手】……これはきっと……」


佐天涙子の足元には【時を刻むことやめた】時計が落ちている。
時計の故障ではなく、佐天涙子の能力で──。

佐天「このくらいの大きさの物だと1分くらい止めてられるみたい……!!」

佐天「右手で触れたものの時間を止める能力、かぁ……」

佐天「右手……当麻さんみたい──」


──窓のないビルの深部──

アレイスター「垣根帝督も手塩恵未も十分すぎる仕事をやってくれた」

アレイスター「ふふ、成長が早くて何よりだ【佐天涙子】」

アレイスター「上条当麻の【第二候補】としては十分すぎる能力だな」

アレイスター「彼女を【計画】に組み込むことも可能だ」

アレイスター「もう少し……もう少しで計画が本格始動できる──」

なんという中二病能力……でも思いのほか微妙だったような。
今日のところは以上です。あと明日も急がしめなんで次の投下は土日のどっちかになります。

周りから見えてない&完全回避
だからキンクリかと思ったらまた違うみたいだ…

あーっと簡単に言うと右手に触れたものの時を止める能力、です。

止めたものは大きさによって止めていられる時間が変わります。(人間程度なら20秒ほど)
しかし、今回の垣根帝督のように止めるものと体がつながっている場合、人間の方も止まります。

なので飛び道具系の能力を使われたら垣根帝督は止まらず、飛び道具だけ止まっている状態になるって感じです(伝わるのか?)

例① ・佐天涙子が垣根の翼に触れる→垣根の翼と体は一体(なの?)なので垣根自身も20秒程度時が止まっている状態になる。
例② ・佐天涙子が神裂の七天七刀の鋼糸の一本に触れる→七天七刀の鋼糸の全ては静止するが神裂さんは止まらない。でも七天七刀は止まってるから使えない。
例③ ・佐天涙子が右手で誰かに触って静止させたとしても飛び道具を発射していた場合には、飛び道具は止まらない。

>>399
周りから見えてないのはお三方が見失ったからです。分かりづらくて申し訳ない
完全回避というか反射的に右手を突き出したので……って感じです。

非常に分かりづらいと思いますがイメージ的には幻想殺しが破壊だったのに対し、佐天さんは静止するって感じです多分。
幻想殺しみたいに【魔術&超能力】限定ではなく佐天さんは何でもイケます。

>>390>>391の間にこれ忘れてました。

手塩「おい!!路地裏の状況は!!」

佐久『第二位がターゲットに攻撃した!!──クソッ砂煙で何も見えねぇ!!』

右手は分かったがそれ以外は発動出来無くなってるの?時を遅くしたり止めたり。

>>403
バリバリ発動できるようです、というか副産物みたいな感じです。


──九月十八日の放課後のファミレス




佐天「さてさて、今年も大覇星祭の季節がやってたわよ初春!」

初春「大覇星祭ですか……私には憂鬱な季節です……」

佐天「それでも学園都市の生徒かぁぁ!出るからには頑張るのだ!」

初春「えぇ~何いきなり熱血キャラになってるんですか……」

佐天「去年までは憂鬱だったが今年は違ぁう!!」ビシッ

白井「まぁまぁ、初春の言う通りですわ……第一イメージアップだか知りませんが……はぁ……」

御坂「まぁー黒子は怪我してるから競技に参加できないし憂鬱だろうねぇ」

御坂「私もだるいわー、学校を上げてだからだし……」

佐天「あー、常盤台中学ってだけで相手チームに同情しちゃいますねぇ」

初春「お嬢様学校ですからね!何せホワイトハウスも攻略できますから!」

白井「誰が言い出したんでしょうね、そのホワイトハウスを攻略だなんて……こっちは迷惑ですわ」


御坂「まー何にせよ事実だからじゃないかしらね?机上の空論だろうけど」

白井「はぁー……それにしたって大覇星祭──憂鬱ですわ……」

佐天「随分と憂鬱そうにしていますけれど白井さんは大覇星祭楽しみじゃないんですか?」

白井「楽しむも何も去年は風紀委員の仕事も兼ねてましたので目が回る忙しさでしたわ」

白井「祭り、となるとはしゃぎたい一般人が学園都市の生徒、能力者に喧嘩を売ったり──くだらない事をしでかすものですわ」

佐天「へぇ~そうなんですか……、でも白井さん怪我してるから大覇星祭中は仕事無いんじゃないんですか?」

初春「白井さんには支部の方で色々裏方を『沢山』やってもらうので大丈夫ですよ」ニコニコ

白井「…………憂鬱ですわ……」

初春「さ、白井さんティータイムは終わりです、支部に向かいましょう」

白井「………憂鬱ですわ」ハァ…


佐天「でも何にせよ今年はやるぞー!!」

御坂「私は明日から競技あるのよねー」

佐天「えっとー常盤台中学は明日に『玉入れ』ですか」

佐天「何の競技にしろ相手チームに同情しちゃいますねーアハハ……」

御坂「みんな多少手加減する筈だし、怪我人を出したら罰則だからなぁー」

佐天「そういった意味では御坂さんはやりにくそうですね」

御坂「そうねぇーまぁ私が出る幕でもなさそうだし、楽っちゃ楽よ」

御坂「……で、佐天さんはあの能力──どうなの?」



   ドォ────z____ン!!



佐天「と、ささっと佐天は御坂さんの隣に回りこみまーす……なんてね」



御坂「!?……ほんっとよく分からない能力ね、それ」

佐天「それに最近またヘンテコな能力に目覚めましたし」


御坂「??佐天さんの能力は多少分かったけど、能力がまた発現って……?」

佐天「そうですねー、例えば左手にあるこの中身の入ったコーヒーカップを──右手へ向けて逆さに!」

コーヒカップから零れた珈琲は佐天涙子の右手に触れた瞬間に──
まるで凍った滝のようにビタリ、と静止した。

御坂「!?……嘘……何これ、念動力か何か……?」

佐天「正確に言うなら静止させた状態ですね、まぁ右手に触れるもの限定なんですけど」

御坂「はぁー、原理も何も分からない能力ねぇ……、新しい能力って、実現不可能とされる多重能力じゃないのかしら」

佐天「あーっと多分違うと思います、御坂さんの電撃を強くしたり弱くしたりのように能力の強弱を付けてる感じかと」

佐天「それにこの右手の力は気付いてないだけで前からあったっぽいですし」

御坂「前からあった?それってどういうことかしら」

佐天「多分あたしの能力ってこの右手からの副産物みたいなものっぽいです」

佐天「ON/OFFの切り替えって感じですかねぇー」

御坂「???よくわからないわねぇーやっぱ」

佐天「あはは……自分でもよくわかりませんし……」

御坂「今度の身体測定で詳しく調べてみたほうがいいわねーっと」

御坂「そろそろ門限だから私は帰るわねー、お互い大覇星祭楽しみましょ!」

佐天「そうですね!楽しい大覇星祭になる事を願いますーさよならー!」


──────────

佐天「ふんふふーん」

佐天「……(右手の能力に気付いてから約一週間かぁー自分なりの解答はみつけたけど…)」

佐天「(多分時を止めるのも、遅くするのもこの右手の力、よね……)」

佐天「(右手で空間に触って『空間を静止させた』多分これが正解……)」

佐天「ま、細かいことはいいか……おっといけない遅くなっちゃう!!」ダッ

佐天「こういう時こそ時間を遅くするのが便利よ、ねッ!!」


時間を遅くしている所為で超高速に見える彼女を覗く滞空回線があった。
70ナノメートルのシリコンの塊は学園都市に5000万機ほど散布されているが
この滞空回線はとある人物のとある専用機だった。



アレイスター「ふむ、彼女専用の滞空回線の出来は良い、苦労して作った甲斐があったものだ」

アレイスター「明日は大覇星祭、彼女が全てを静止できるのならば見せてもらおうかな」

アレイスター「本来は上条当麻の成長に使う予定だったが、両方の成長に変更だ」

アレイスター「上条当麻は問題ないとして、佐天涙子は果たしてどうだろうか」

アレイスター「『魔術』を止めることは果たして出来るかな──クク、結果は分かっているがな」





アレイスター「佐天涙子、お前は上条当麻のように幻想を殺す──幻想を止めることはできるかな」

アレイスターさん独り言パネェ……。
とりあえず今日はこの辺で区切ります、次回から大覇星祭辺始まります多分。

科学と魔術が交差するとき、佐天涙子の物語が始まる──!

~ボツネタ~
>>386付近に入れようと思ったけど辞めたヤツです

佐天「翼……?天……使?」

垣根「あぁ、お嬢さんの告死天使だ──死にな」


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 第 二 章  魔 術 の 世 界  E m e r g e n c y C a l l

──────────────────────────────────


──血溜まりに一人の女学生が倒れている




佐天「オリアナ=トムソン、聞こえてますか?
   あたしは貴女に一つだけ質問したいことがあります……

   『どうしてあの人を傷つけたのですか?』

   貴女が傷つけたあの人はこんなにも苦しんでいます
   正直、正直貴女にはがっかりです──関係のない人を巻き込むなんて

   ねぇ?聞こえてます?見えていますか?あそこに倒れている女の人が
   オリアナ=トムソン、貴女はどうして傷つけたんです?
   人の命で遊ぶなんて──絶対に許さないッ!!

   貴女は直接あたしが止めます……その魔術ごと──その幻想を止めてやるッ!!」


──遡る事十数時間前──


佐天「昨日あれほどやる気に満ち溢れていたのに……」

初春「私はやる気はさほどありませんが、佐天さんの言うことは分かります……」

佐天「どうして校長先生の話は長いのよ!!それに12人も話すなんて聞いてない!!」

初春「静かにしてください佐天さん、暑さと話の長さで今にも倒れそうです」

佐天「しゅーん……辛いよぅ……」


校長L「──で、あるからにして学園都市の生徒という誇りを持ってこの大覇星祭を楽しんでもらいたい次第であります。
    そして、生徒の皆さんは十分にいや、十二分に実力を発揮していただきたいッ!!
    静かに、目立たず──こういった学生は皆さんの中には居ないことを信じています、外の方からも沢山の方が来られています。
    皆さんの親御さんも我が子が心配で来られていることでしょう。その親御さんに『自分は元気だよっ!元気にやっているよっ!』
    こういうアピールをしていただきたいッ!!本来学生の本業は勉強ですが、この学園都市に至っては違うと言わざるを得ないでしょう。
    なぜなら能力があるからです。能力を使用、または観測することも勉強なのです!学生さんには向上心を持って
    この大覇星祭を楽しんでもらいたい。
    そして怪我には気をつけて貰いたい、しかし心配はしなくてもよろしいっ!
    では我が学園都市が誇る設備の数々の紹介に移りましょう!!
    まずは擦り傷等をしてしまった生徒に対して処置されるであろうこのトウモロコシの繊維を使った絆創膏です!
    これはトウモロコシの繊維が傷口と同化し、やがて傷跡もろともなくなってしまうという優れものです
    傷を負ったのならばすぐに試用していただきたい。
    次にこれは少々厄介ですが、骨折等をした生徒が居た場合はこの酸素カプセルです。
    これは外にある既存の酸素カプセルと違い単純骨折程度なら1週間以内で完治できるという既存の酸素カプセルの常識を覆す──
                    ( 中 略 )
    ──最後になりますが、生徒の皆さんには不屈の魂をもって頑張ってもらいたい次第であります。
    単純そうに見えて実は凄い効果を持つのですよ、この頑張る!という気持ちは!!
    勉強もしかり、恋愛もしかり──能力もしかりなのです。
    そうこの大覇星祭はその頑張る気持ちで生徒さんたちの能力向上を目的としています。
    なぜならばここは学園都市であり、生徒の多くは可能性を秘めているのです!私の知り合いの先生は言いました
            「頑張る気持ちこそが能力向上への近道」と
    これは学園都市の論文にも記載されている立派な、非常に立派な理論なのです。自分です!自分が自分を成長させるのです!
    その先生はこうも論文で仰っていました「人間はちっぽけな存在だが、可能性はとても大きい」と!
    これを読んだ私の衝撃と言ったら筆舌に尽くしがたいでしょう!
    その論文を読んだその日は同僚20人ほどと朝まで飲み屋で語り明かしたものです、非常にすばらしい!
    私達大人は可能性を潰すのではなく、咲かせることが宿命なのです。これは大変難しく、そして大変有意義な宿命です!
    だからこの学園都市は大覇星祭を開催するのです!!
    そう!生徒達皆さんは可能性という種なのです!!その種はいずれ花を咲かすのでしょう!!
    その役に立てるのなら私達先生一同は何でも協力しましょう!!
    常日頃から思っていたのですが生徒達にはもっと先生を頼るという事をしたまえっ!!先生はそのために居るのだから!!
    使い潰す、利用しつくす気持ちで頼ってやれッ!!おっとまだまだ喋り足りないが時間のほうが無いな。
    学生の時間を無駄にするつもりは無い、私の話はこれにて終わらせていただこう!ではここに宣言する!
   
    ──大覇星祭の開催を!!」


佐天「(さすがにうぜぇ……)」

初春「(あの爺……いつか[ピーーー]……)」




佐天「……うぇ……もうこんな時間かぁー」

初春「私はあの糞爺の所為で生まれたストレスを病院で暇そうにしている白井さんにぶつけて来ますね」ビキビキ

佐天「え、えぇ……頑……張って?い、いってらっしゃい(青筋!!青筋でてますよ初春さん!!)」


────────────────────────

佐天「さってとー今日はあたしの競技ないし、どうしようかねー」

佐天「屋台とかでてるし、食べ歩きしよっかなー」

??「あーっと佐天涙子さんだよね?僕はステイル=マグヌスという者なんだけどちょっとお話いいかな?」

佐天「えっ?どうしてあたしの名前……(神父服?でナンパ?なのかコレは……)」

ステイル「僕も本来なら上条当麻と土御門の3人で行動する予定だったのだけどね、やむ終えない事情で……」

ステイル「佐天涙子、僕、上条当麻、土御門の4人で学園都市に侵入した『魔術師』を追わなきゃいけないんだ」

佐天「はぁ?お兄さん何を言っているんです?『魔術師』って……居るわけないじゃないですかーこの科学の街に」

ステイル「……(魔術を知らない?嘘をついているようには見えないけれど……アレイスターめ何を……)」

ステイル「まぁ実際に見てもらったほうが早そうだね、ちょっとこっちに来てくれないか」(路地裏)

佐天「いやいやいや、怪しすぎますって!そんなんで着いて行く女子はいませんよ!!お兄さんナンパなら──」

上条「いやー、怪しそうに見えるけどステイルは信用してもいい奴だからさ、ねっ?涙子ちゃん」


佐天「えっ!!当麻さん??どうしてコンナ怪しい神父風ナンパ男と……」

ステイル「馴れ馴れしく呼ぶなよ上条当麻──気持ち悪いね殺すぞ……後誰が怪しい神父風ナンパ男だって?」

佐天「!!(怖っ……)」

佐天「てか話がそれていると思うんですけど、『魔術師』とか嘘……ですよね?」

上条「えーっと本当、なんだけどなぁ……どう説明すりゃ──」

佐天「これは当麻さんに化けたナンパ男の友達の能力者ですねっ!あたしは騙されませんよ!!」

上条「えぇー参ったなぁ……あっ!コレならどう?涙子ちゃん」

──上条当麻の右手と佐天涙子の右手が触れ合う。
佐天涙子はこの状況を若干冷静に見ていた。右手に触れた当麻さんに化けた能力者を静止させようと──



佐天「あれ?あたしの能力が──嘘??ホントに当麻さんなの……??」

上条「ようやく信じてくれたか、涙子ちゃんに手伝ってもらいたいことがあるんだけど」

佐天「あたしに?あのナンパ男が言っていた『魔術師』を追うってヤツですか?」

上条「あー、その辺は俺たちが何とかするからさ、『オリアナ』って女を見つけたら電話くれるだけでいいから」


上条「詳しい話は路地裏でしようか涙子ちゃん。土御門も待ってるからさ」

佐天「は、はい……(流されるままに着いていっちゃうあたしって……)」






ステイル「ていうか何時まで君達は手を繋いでいるんだい?」

佐天「はっ!?……はぅ///」

上条「わっ!!ごめん涙子ちゃん!!」ババッ


──路地裏──

ステイル「まぁここに来てもらう前に上条当麻が話した通りだから説明は不要かな?」

土御門「にゃー、カミやんがまたフラグ立ててきたんだ、相変わらずフラグビンビンにゃー」

土御門「佐天さん君の能力を知っておきたいんだがーその前に質問があるなら聞くにゃー」

佐天「え、えっと……お兄さん達って、その『魔術師』なんですか?」

土御門「俺とステイルはそうだが、俺は魔術を軽々しく使えないからにゃー、ステイル何か見せてやれ」

ステイル「彼女の能力を見るのではなかったのかい?……やればいいんだろう!!やれば!!くそっ」

ステイル「まぁ、僕の能力は詳しくは省くけど炎の魔術を使うことが出来る」ボッ

佐天「おぉ?でもお兄さん若干発火能力に似ているような──」

ステイル「彼が言うには上条当麻と同属の力を持っているということで──」

土御門「おい、ステイル────」




ステイルという神父風の男が手の上の小さな火に何かを呟くと、火は何十倍にも膨らみ──
その手の上の火を佐天涙子に投げるようなモーションで飛ばした。


佐天「きゃっ…………あ、あぶ……」



人間の頭ほどの大きさの火は佐天涙子を焦がすことなく
佐天涙子の右手に触れ、そしてそのまま静止していた。


ステイル「なっ……信じられない……一体どういう──」

上条「ステイルてめぇえええええええ」

土御門「ま、まぁまぁカミやん抑えるにゃー……ステイルは火傷治療も得意だし、何より当たった瞬間に消える魔術だったにゃー」

上条「それでも突然涙子ちゃんを狙うなんて──」

ステイル「いいいじゃないか、これで彼女の能力は分かった……といいたいけれど良く分からないね」

ステイル「一体その右手はどういう事なんだい?」

佐天「あーっと……まぁ色々静止させることが出来ます……」

土御門「なるほどにゃー、カミやんと同属の能力ねぇ……」

ステイル「戦力にはなりそうだけれどね、それでも君に危険な事はさせないさ」

ステイル「僕達がオリアナを何とか追い詰めるから、君のその能力で上条当麻をサポートしてほしいんだ」

佐天「は、はぁ……別にいいですけど……」

佐天「それで、オリアナって人はこの学園都市で何をしようとしているんですか?」


土御門「簡単に言うと翳すだけで人を殺せる道具を使う予定らしいにゃー、厳密には違うんだけどそう思ってくれて問題ないにゃー」

佐天「人を[ピーーー]!?そんな……風紀委員や警備員に──」

上条「それがダメなんだ、えーっと簡単に言うと…………えっと……」

ステイル「まぁこの科学の街で『魔術師がこの都市で人を殺そうとしている』と通報しても相手にしてくれないって事さ」

佐天「な、なるほど……」



土御門「まっ、そうと決まればカミやん、行くにゃー」

上条「ホッントにごめん!!涙子ちゃんは絶対に危険な事をして欲しくなかったんだけど……ごめん!!」

ステイル「オリアナを追い詰め次第君に電話をするから、それまでこの大覇星祭とやらを楽しんでいてくれればいいよ」

上条「それじゃっ!!……もしオリアナを見つけたと思ってもやっつけようとは思わないで!俺たちを必ず呼んでくれよな!」ダッ!

ステイル「…………(彼女が僕の炎を止めたとき──魔術とも言えないような力を一瞬感じ取れた、一体……)」






佐天「は、はぁ………行っちゃった……」

佐天「まぁ……屋台でも回りますか……」ポヨン

佐天「おとっ!?すいません!!ぶつかってしまって……」

??「あら?貴女みたいな可愛いらしいお嬢さんならいくらでもお姉さん歓迎よ」


佐天「う……(す、すごい美人さん!!それにすごいセクシー……固法さんよりあるかも……)ってハッ!」

佐天「す、すいません!!ぶつかった上にガン見してしまって!!」

??「うふふ、可愛いのねお嬢ちゃん……お姉さんの体でよかったらもっと堪能していいのよ」

??「あらっと?ちょっとお姉さん急いでるからまた今度イロイロ遊びましょうね」ヒラッ








佐天「……なんと言うか、すごい……初春とは二百億倍くらい凄い色気だった──ってうん?」

佐天「何か紙切れが落ちてるけどあのお姉さんの落し物かな??何か英語?みたいな文字が書いてあるけど」

佐天「あのお姉さんの落し物だったら届けなきゃ!!お姉さーん!!待ってぇぇぇぇ!!落し物ですううー」ダダダ







??「ふう……色々と面倒な街ねぇ、ってうん?誰か私に向かってくる??」

??「『裏表の静寂』の魔術を使っているのに……?勘違いじゃなさそうだけど……」

佐天「ハァハァ……やっと追いついた……お姉さん……お、落し物……です……ハァハァ…」

??「!?どうしてそれを?貴女一体──」

佐天「あたしと別れるときに落としたんですよー、お姉さん歩くの超早くないですか?追いつくの大変だったんですけど……」

??「え、えぇ……ありがとうね、お姉さんの為に……(かく乱用の魔術は確かにあの時私があそこに設置したはずなのに)」

??「(このお嬢ちゃんは魔術師には全く見えないし……どうしようかしらぁ……)」

佐天「えっと、もしかして一般来場者の方ですか?」

??「えぇ、そうよこの学園都市は人も多くて何処を見て回ればいいのか分からないわぁ」

佐天「ちょうど良かった!あたし暇してるんでお姉さん一緒に回りませんか?」

??「(ちょっと困ったわねぇ……お嬢ちゃんにリードされるのも興奮しちゃうのだけれど)」

??「(ちょっと今はまずいのよねぇ……うん?お姉さんいい事考えちゃったー!)」


??「そうね!一緒に回ってくれるとお姉さん大分助かっちゃうわ」

佐天「やったー!!あたしの名前は佐天涙子っていいます!お姉さんの名前は?」

??「オリアナ=トムソンよ、ヨロシクね」

佐天「!?(オリアナって……当麻さん達が探してるあの?)」

オリアナ「あら?どうしたのかしら?お姉さんの名前がそんなに不思議?」

佐天「い、いえっ!!あの、名前も綺麗だなって──(こんな優しそうなお姉さんが人殺しの道具を使うなんて信じられない)」

オリアナ「やーん、可愛らしいのね貴女ってお姉さんこんな可愛い妹が欲しかったわ」

佐天「か、可愛いだなんて/// (信じない!!きっと同名の人違いですよね?暫く一緒に居て判断しよう!!)」

オリアナ「さて、お嬢ちゃん、お姉さんをちゃんとリードしてね。うふふっ年下の女の子とデートなんて興奮しちゃう」

佐天「デ、デートだなんて///え、えっと!!まずは屋台を見ましょう!!」

オリアナ「うふふ、楽しみだわ(本当にね……)」

>>427でsaga忘れたけど脳内保管してくれる筈!!
今日は以上です。


佐天「じゃっ、あそこの新感覚たこ焼きを食べましょう!」

オリアナ「新感覚ねぇうふふ、新しい刺激というのは楽しみね」

佐天「この学園都市は色々と『新しいことへの挑戦』が前面に出てますからね」

佐天「まぁ普段の学生達は食べ物系で実験させられてる気分ですけどね」

オリアナ「うふふ、お姉さんも学園都市に住んでみたいわね」

佐天「この街に居ると退屈しませんしねぇー、おじさん!たこ焼き2パックください!」

オリアナ「新感覚、とても楽しみね……どんな風にお姉さんを楽しませてくれるのかしら」

佐天「あたしも楽しみですよー、っと出来たみたいですねーあそこのベンチで食べましょう」



佐天「じゃっ、いただきまーす」モグモグ


オリアナ「……これは、そのなんと言うか、あれ…よね」

佐天「あれ、ですね……」

佐天「半熟……」

オリアナ「たこ焼き、ね……お姉さんたこ焼きは初体験なのだけれど、こういうものなのかしら」

佐天「い、いえっ!!普通は中まで熱々なんですけれどもコレはなんと言うか」

オリアナ「外はパリっとしていて熱いのに中側にいくにつれジェラートになっているのよね」

佐天「でも、9月のこの暑さですし、アリ……といえばアリですかね?」

オリアナ「不思議な感覚の食べ物ね、学園都市というものは不思議があふれてるわ」

佐天「あー、あのたこ焼き屋の機械に秘密があると睨みました」

オリアナ「普通の鉄板に見えるけれども、特殊な技術ってヤツかしら」

佐天「特殊かどうかは分かりませんが内側から瞬間冷凍のような機能でもあるんでしょうね」

オリアナ「それでも結構イケるわね……それでもお姉さんを満足させるにはもうちょっとした刺激が──」


上条「あれ?涙子ちゃん!こんな所で何をしてるんだ?」

上条「うん?新感覚たこ焼きかー1個いただけますか?」

佐天「あ、当麻さんと──」

吹寄「上条、こんな女の子にまで手を出すとは……」

上条「わー!!誤解です吹寄サン!!知り合いの中学生の友達で──」

吹寄「へぇ中学生の知り合いの友達ねぇ……やはり上条当麻は上条当麻だな」

上条「怖いです!!吹寄様!!中学生といってもただの友達で──」

佐天「当麻さん?あたしの事ただの友達だと思ってたんですか……?」ウルウル

吹寄「やはり貴様はいっぺん死んだほうがいいな」ゴリッ

上条「ぎゃー、足を踏んできた!!地味に痛いのに目立たない攻撃だー!!」ヨロッ

上条「っとと、すいません……えっと、涙子ちゃんのお友達の方ですか?」

オリアナ「うふふ、可愛い男の子ね急に抱きついてくるのだから、強引なのも好きよ」

オリアナ「さ、立てるかしら?立てるわよね?若いんだもの」スッ

上条「あ、ありがとう────」スッ


──パギン




吹寄「は?……今なんか……」

上条「………………」

オリアナ「………………」

オリアナ「お姉さんはもう少し学園都市を見て回るからいくわね」

上条「あ、あぁ……気をつけてな、この季節は──変なやつが多いから」

オリアナ「うふふ、こっちは可愛いお嬢ちゃんがリードしてくれるから大丈夫よ」

オリアナ「じゃあね、今度会ったらもう少し遊びましょう?」

オリアナ「行きましょう、お嬢ちゃん」サッ

佐天「あ、はい……じゃあ当麻さん今度ー」ニコニコ

上条「ウルウルしてたのは演技かー!!」

佐天「はて?何のことでしょうー?あたしは分かりませんー」

──────



佐天「じゃー今度は何処に行きましょうか?希望あります?」

オリアナ「もう少し暗くなったら行きたい所は有るのだけれど今はまだ早いわね」

オリアナ「少し歩きましょうか、適当に歩いてればいいものがあるかもしれないわ」

佐天「そうですね、そうしましょっか(多分……さっきのは──)」

オリアナ「少しとはいえ食べた後だしね運動しなきゃいけないわ(んー、『裏表の静寂』が壊れてるわねぇ)」

佐天「……(──それでも、それでもこの人が悪いようには感じない……)」

オリアナ「……(何にせよ後ろの坊やを撒かないとね……それからお嬢ちゃんを使おうかしら)」

オリアナ「少し疲れたわ、あそこを抜けましょう」

佐天「うげ、路地裏ですかぁあまりいい思い出ないんですよね」

オリアナ「悪い思い出なんて薙ぎ払えばいいのよ、優しくね」

佐天「は、はぁ……」







上条「(勘付かれたか!?クソッどうして涙子ちゃんはオリアナと一緒に)」

PiPiPiPi

上条「もしもし!?土御門か、どうした?」

土御門『にゃー、素人がオリアナみたいなプロを尾行だなんて無理があるにゃー』

土御門『ここは佐天涙子に任せるんだにゃー』

上条「おま!!オリアナみたいな危険なヤツと一緒になんか──」

土御門『冷静になれカミやん、オリアナがどういう経緯で佐天涙子と行動を共にしているかは分からないにゃー』

土御門『だが、オリアナは彼女の事を一般人だと思っている筈ですたい』

土御門『だから、そこに付け入る隙はあるにゃー』

上条「何だって?どうすればいい?」

土御門『ステイルと一緒に指定する場所に来るにゃー、オリアナが彼女と一緒なら場所はこっちに筒抜けになるにゃー』

上条「……わかった、信じていいんだよな?涙子ちゃんは怪我なんか負わないよな?」

土御門『まぁ、多分大丈夫だにゃー、じゃっそういう事で』ピッ

上条「──涙子ちゃん……」


────────────


オリアナ「(さてさて、撒いたというよりかは引っ込んだ感じね──オトコノコはそうでなくちゃね)」

佐天「はぁはぁ、お姉さん早いです……」

オリアナ「あーごめんなさいね、お姉さんも言うほど路地裏好きじゃないのよ」

オリアナ「ほら手をどうぞお嬢ちゃん、そこのベンチに座りましょうか」スッ

オリアナ「お姉さんはあそこにある学校に届け物があるからちょっとあそこの辺りで待っててもらえるかしら」

佐天「いいですけれど、仕事があるなら先に言ってくださいよー」

オリアナ「ごめんね!後でおっぱい揉ませてあげるから」ダッ

佐天「いやいや……いやいや……」

佐天さんってどんな能力手に入れても絶対に無双できないよね


──とある学校の体育倉庫

オリアナ「ふぅ、ちょっと無理があったけどここに迎撃術式を設置完了っと」ピッ

オリアナ「あー、聞こえてるかしらリドヴィア=ロレンツェッティ」

リドヴィア「だから本名はやめなさいと──」

オリアナ「ちょーっとばかし厄介なことになっているわ」

リドヴィア「何かあったので?」

オリアナ「んー『裏表の静寂』が壊されたのはまぁおいておいて、今一般人のお嬢ちゃんと遊んでいるのだけれど」

リドヴィア「……、何のつもりですか?一般人に手を出すことは──」

オリアナ「手を出す気はないわ、ただ追手は魔術師のようなので『お嬢ちゃんにも迎撃魔術を施しといた』だけよ」

リドヴィア「そうですか、追手はどの程度?」

オリアナ「お姉さんを満足させるには少々役者不足ってところかしら」


オリアナ「ってアン♪──ビンゴねぇ……あちらさんはお姉さんの罠に嵌ってくれたみたい」

リドヴィア「仕留めたのです?」

オリアナ「まさか。この程度でヤられるような子達じゃなさそうよ」

リドヴィア「それでどうするので?」

オリアナ「そうね、お嬢ちゃんには悪いんだけれどお嬢ちゃんを置いて逃げようかしら」

リドヴィア「そう。それじゃ、また何かあったらかけて頂戴」ピッ

オリアナ「かけられたこと無いくせにぃ──って直ぐ切っちゃうんだからぁ」

オリアナ「さてと、お姉さんは仕事に戻るわね。お嬢ちゃん、たこ焼き美味しかったわよ」


──1時間後──


佐天「お姉さん遅いなぁ……いやいや、流石に遅すぎるよねぇ……」

御坂「あら?佐天さんどうしたの?こんな所で」

佐天「御坂さん!?御坂さんこそどうしてここに?」

御坂「『玉入れ』の競技場所ここなのよね、佐天さんは?」

佐天「あはは、あたしは友達に待ってろって言われてかれこれ1時間ほど……」

御坂「1時間も?何かあったんじゃ──」

佐天「どうなんでしょうね、金髪酔眼でナイスバディーなお姉さんなんですけど、見ませんでした?」

御坂「あー、そういえばここに来る途中で見たかも」

佐天「な、なんですとっ!うぅ……御坂さん、あたし置いていかれたんでしょうか」

御坂「あ、はは……もしかしたら急用があったとかじゃ……」

佐天「うへぇ……じゃああたしはその辺ふらふらしてきますー」

御坂「分かったわ、まぁその、元気出して!」

佐天「はい……」


──────────


佐天「ふらふらと彷徨っているうちに少し時間がたったなぁ」

佐天「やっぱりお姉さんは最後まで悪い人には見えなかったけど……」

佐天「でも何か引っかかるのよねぇ……ってん?」

佐天「急病人?『玉入れ』の競技で……さっきの所の!?」

佐天「──あ、お姉さんだ……」



オリアナ=トムソンは佐天涙子と同じく電光掲示板を見つめていた。
人の行きかう大通りの中心で立っている所為もあるが、少し目立っていた。

──少し困ったような表情と泣きそうな表情で電光掲示板を見つめていた。


佐天「おーい、お姉さーん」

オリアナ「──!?……お嬢ちゃん…どうして」

佐天「迷子になったんじゃないかと思ってー、探しましたよー」

オリアナ「──そう、優しいのねお嬢ちゃんは……(迷子、か…)」

オリアナ「でもね、お姉さんは急な仕事が入っちゃってね、直ぐに行かなきゃいけないの」

オリアナ「楽しかったわ、今度あったらまた遊びましょうね」タッタッ

















佐天「行っちゃった……(お姉さん、どうしてそんなに悲しい顔していたんだろう)」

>>441
スタンド同様に使い方次第ではかなり強そうなんですけどね。
ここの佐天さんでも 時止め→ナイフ投げ でレベル3程度までなら余裕そうですな。
(佐天さんの性格上無双し辛い…)

今日は以上です、少なくて申し訳ない。


PiPiPiPi

佐天「ん?誰からだろう……『もしもし?』」

土御門『あー土御門だにゃーそっちがオリアナと一緒にいたって事について聞きたくて』

佐天「は、はぁ……あまり悪そうな人には見えなかったんですけども……」

土御門『●●学校で先ほど急病人が出たって事は知ってるかにゃー?』

佐天「は、はぁ……一応(それ、以上は……)」

土御門『──オリアナの迎撃魔術に触れた所為だにゃー』

土御門『いいか、良く聞くんだ』

土御門『オリアナも自分なりの正義を持っている。悪気があるとかないとか、そういう次元じゃないんだにゃー』

佐天「…………」

土御門『オリアナだって出来る限り一般人は巻き込まないようにする筈だが、それでも限界はある』

土御門『だからといって邪魔をする一般人を傷つけないとは限らない、分かるよな?』

佐天「……はい」

土御門『……それで、オリアナは何処に居るのか分かるかにゃー?』

佐天「それは──」


────

土御門『成る程、事情は分かった』

土御門『色々思うことがあるかも知れないけど、当初の通り俺達からの連絡を待つにゃー』

佐天「はい……分かりました」

土御門『──辛いだろうけど、気を確かにな。──じゃっ……』ピッ




佐天「はぁ……お姉さんの正義か……」

佐天「でも、さっきのお姉さんの顔は──」

佐天「(本当に目的のためなら一般人を傷つけることを厭わないのかな?)」

佐天「確かめたい、電光掲示板を見ていた“あの”お姉さんが本当に悪い人なのか」

佐天「すこし、休憩してからお姉さんを探そう」


──喫茶店にて──


佐天「でも、確かめるったって見つけることできるのかしら…」

佐天「当麻さん達が必死に探しても見つからないのに、あたしがどうすれば」

佐天「結局のところ、あたしが足を棒にして捜すしかない訳ね」

佐天「よしっ!行こう!!会って、本当にお姉さんが悪いことしようとしているのか確かめなきゃ」

佐天「ってうん?」PiPiPi


佐天「はい?どなたですか?」

土御門『土御門、だにゃー……オリアナと、ちょっとした戦闘があった……』

土御門『それで、まぁ……オリアナには逃げられた形にはなるが……』

佐天「戦闘?大丈夫なんですか?(声が随分と弱弱しい……)」


土御門『はは、大丈夫だにゃー……。それで、オリアナは佐天さんの居る学区の方に向かっているにゃー』

土御門『ステイルや、カミやんも向かっているが……佐天さんも適当に探してくれないか……』

土御門『オリアナはまだ佐天さんを一般人だと思い込んでるにゃー、会ったら時間を少しでも稼いでくれ……』

佐天「はい、分かりました……といってもこの学区はちょっと広いんですけど」

土御門『無理に探さなくていいにゃー、あくまでオリアナと出会ったら時間を稼ぐ、でいいにゃー』

佐天「そうですか、わかりました。出来る限りのことはしますね」

土御門『危なくなったら、もしオリアナが単語帳のようなモノを口に咥えたら逃げるにゃー』

土御門『魔術を使って攻撃してくることはまず無いだろうが、一応注意だけは頼む』

土御門『それじゃ、切るにゃー。気を付けてくれ』ピッ







佐天「さて、と。お姉さんを探すにしてもこんな喫茶店にいちゃしょうがないよね」

佐天「少し、歩きながら探してみますか」


─────・・・


佐天「っと、結構な時間お姉さんを探してるけど──」キョロキョロ

佐天「大覇星祭期間中だし、やっぱり凄い人の多さだなぁ」キョロキョロ

佐天「って……アレは──」


──道路を挟んだ向こう側の歩道にオリアナ=トムソンは歩いていた。
すこし焦っているようにも見え、その所為で若干周囲から浮いていた。




佐天「お姉さん!!見つけた……、とりあえず向こう側に行かなきゃ!!」ダッ




佐天「っと、お姉さんは何処行ったのかな……」キョロキョロ

佐天「いた!少し先の路地裏に入ったわね──」




オリアナ「(カンザキカオリか、聖人対策を練るためにちょっとゆっくり考える場所が必要ね)」スタスタ

オリアナ「(基本的には、聖人並のスピードが必要よね)」ブツブツ

オリアナ「……(勝つというのは何も敵を葬るだけじゃないわけだし、逃げ切れることさえできれば──)」


──ドン!

??「きゃっ」

オリアナ「!!!!」

オリアナ「(追手!?いや……ただの通行人ね)」


オリアナと衝突した身長一三十五センチ程度のチアガール服を着た少女は
その衝撃で後ろを歩いていた黒髪の少女にぶつかった。

──バシャッ!!っとチアガール服を着ていた少女が持っていたジュースが黒髪の少女の胸元に降り注いだ。


「……小萌先生、よくもやってくれた」


「ご、ごめんなさいなのですよ!!でも先生もびしょ濡れだからおあいこなのです!」

「あ、そっちの人は大丈夫なのですか?」

オリアナ「ええ、お姉さんは平気よ。それより、そちらの方のほうが心配かな?」ニコッ

オリアナ「そのまま表通りを歩くには少し扇情的な格好よ?」

「あぁっ!姫神ちゃんが濡れ濡れの透け透けになっているのです!」

「小萌先生も。胸の辺りが尖ってるけど」

「なっ!!見ちゃダメなのです!!」ババッ


オリアナ「(さて、と……そろそろ先に行かないと──)」


オリアナは黒髪の少女の胸元にあるモノを見てしまった。
それはジュースを浴びてピンク地に緑色のリボンで飾り付けられた少女の下着ではなく、その横の










──イギリス清教のアレンジが加わった、ケルト十字を。


オリアナ「(なっ!!!英国側の魔術師!?しかもそんな!!)」

オリアナ「(『歩く教会』!?あの禁書目録の保護に使われているモノと同じ霊装を携えてるなんて──)」

オリアナ「(この怪物は──!!)」バッ


黒髪の少女の十字架を見て、その重要度を知った瞬間、オリアナの手は動いていた。
細い金属の輪に束ねられた単語帳の一部を口に運び。
一気に引きちぎる。
そして、その表面に流れるような筆記体で文字が浮かび上がり──。


────────────
  S o i l _ S y m b o l
────────────





佐天「はぁはぁ、やっぱお姉さん歩くの早すぎって──」









──黒髪の少女に炸裂した。









血。






佐天涙子の目の前で、黒髪の少女が爆ぜるように倒れていった。
一瞬で路地裏は血の海になる。


佐天「なん、で……お姉さん……?」

オリアナ「!!お嬢ちゃん──っ!?」ダッ

佐天「待って!!どういうことか──説明してくれないんですか?」

オリアナ「っ!!そんな暇ないの!!」タッタッタ










佐天「──ない……──るさない!!」



佐天「許さない!!許されない!!オリアナ=トムソン!!!!」


佐天「魔術とか、そんな事以前に──!!人間として──許すわけにはいけない!!」

佐天「オリアナ=トムソン、聞こえていますか?
    人の命で遊ぶような真似をするなんて……。
    ──絶対に許さない!!」


佐天「その魔術の計画ごと絶対に!!あたしが直接止めてやるッ!!」


────・・・・・・


上条「こ、これは……る、涙子ちゃん!?」

小萌「か、上条ちゃぁぁん!!」

ステイル「こ、れは……」

上条「な、なぁ……あそこに倒れてるのって──」

上条「なんで姫神が?……先生、涙子ちゃんここで何が」

小萌「わ、わからないんです、ここで先生は女の人とぶつかって……」

小萌「ごめんなさいっって謝って、その女の人は笑って許してくれたと思ったんですけど──」

小萌「姫神ちゃんを見て怖い顔になって──それで、いきなり姫神ちゃんに──!!」


上条「なんで……どうして姫神が」

ステイル「アレだろう、その子の『歩く教会』だ」

ステイル「……随分と舐めた真似をしてくれるね、十中八九この子を追手の魔術師、それもかなりの手練と勘違いして攻撃したんだろう」

上条「間違えて……?そんな事……」

佐天「──すいません、当麻さんステイルさん」

ステイル「うん?どうした?状況的に君が思い悩むことは──」

佐天「この人をお願いできますか?私の能力じゃ『生命活動をも静止』させちゃうかもしれませんし」

佐天「あたしはオリアナを追います、では……」ダッ

ステイル「!?待つんだ!!危険すぎ──」


佐天涙子は走っていた、ただオリアナ=トムソンを追って。
オリアナ=トムソンが何処へ行ったのか分からない、しかしそんな事はどうでも良かった。


佐天「(オリアナ=トムソン!!絶対に──絶対に止めてみせる!!)」

佐天「(あたしが甘かった、あたしがオリアナの名前を聞いたときに当麻さん達に連絡しておけば)」

佐天「(そうすれば、あの女の人は──!!)」


佐天涙子は走っていた。しかし、がむしゃらには走っていない。
金色の髪の毛をした人を一人も見逃さずに、観察しながら走っていたが──。
オリアナの姿は無く……。
ただ時間だけが過ぎていく。

佐天「くっ!!あの人も違う……あの人も……、一体何処に!!」


──午後5時半──

佐天「ぜっ……ハァハァ……違う……オリアナじゃない…」

佐天「くっ、もうこんな時間……オリアナは何処に──」

        PiPiPiPi

佐天「土御門さん?──いや、非通知?『はい、もしもし』」

??『こんばんは、土御門から番号を聞いた。佐天涙子さん』

??『私は──そうだな、今は名乗るほどのものではない、ただ土御門達は君に情報を連絡するのを渋っていたようなのでね』

佐天「??どういうことですか?あたしがオリアナを追っているのを知っているんですか?」

??『ふふ、そうさ。そう、オリアナ=トムソンは今第二三学区のとある場所にいる』

佐天「その情報を簡単に信じるとでも?」

??『ふふ、そうだね君は冷静で頭が良いのだな。しかし当ても無く探すつもりか?』

佐天「……、貴方が本当のことを言っているという証拠はあるのですか?」

??『そうだな、第二三学区の鉄身航空技術研究所付属実験空港の敷地に行けばあるさ』

佐天「そうですか、つまり今すぐに出せる証拠なんて無いって事ですよね?」

??『冷静に分析するのはいいが、考えてばかりでは何も始まりはしない』

??『冷静とは言ったが沈着とは言えないな。ここでどうすべきなのかは明白だろう?』






??『──なぜなら私は答えを言っているのだから』


──第二三学区を佐天涙子は走っていた。


佐天「くっ……腑に落ちないけど行動しなきゃ意味が無いわよね!!」タッタッタ

佐天「『鉄身航空技術研究所付属実験空港』ここね──」

佐天「フェンスに挟まってる紙、あれは……」

佐天「罠よね、でも──右手で罠自体を止めれば問題ない」ピッ







フェンスの先、距離はおよそ五百メートル強。
小さな滑走路を挟んだ向かいの建物の壁に寄りかかっている金髪の女が見えた。
佐天涙子が来たのが意外だったのか、フェンスに手をかけた瞬間に何かをしようと思ったのだろうか、少しあわてていたが
佐天涙子が『平然』とフェンスをよじ登ったのを見て、悟ったのだろう。

──あぁ、自分を止めに着た敵なのか、と。


佐天「……見つけた」


距離が遠い。30秒ほど時間をスローにしても近づくには遠すぎる距離。
──だが

佐天「近づかないことには、オリアナを止められないわよ、ねっ!!」ダッ


オリアナ「(……お馬鹿さん!!)」バッ


オリアナは単語帳の一つを噛み千切ると
ドッ!!という轟音と共に巨大な火の玉が真っ直ぐこちらに向かってくる。

──しかし、佐天涙子は怯んだりはしなかった。

佐天「こんなもの!!邪魔よっ!!」

佐天涙子の右手で巨大な火の玉を受け止めるとピタリと火の玉は静止した。
──カチリ

佐天「!?──なっ!!」

最初からあったのか、それとも火の玉に隠してたのか
佐天涙子の足元に単語帳の一つが落ちている。

それは淡い光を帯びて──爆発した。


佐天「ぐっ!!(右手でっ!!)」

佐天「(爆発の規模は分からない、時間を止めて避けても衝撃波でやられるかも知れない──なら!!)」

佐天「(単語帳を中心とした半径数十センチの空間の静止!!間に合え)」



オリアナ「唖然ってカンジね──どんな超能力を使ったのかしら」

オリアナ「でも、本当にお馬鹿さん……!!あの爆発はお嬢ちゃんの気を失わせる程度の威力しかなかったのに」

オリアナ「用意してある魔術で一番弱いのはもう、ない。ここからはお姉さん少し本気よ?」




佐天「上等ッ!!範囲指定の空間静止はどうやら成功したようね!!」

オリアナまでの距離はおよそ三五〇。

佐天「直ぐに貴女の幻想を止めてやるから、覚悟しなさい!!」




オリアナ「うふふ、女の子同士でヤりあうのも面白いわね!!てっきりあの聖人が来るのかと思ったけどね!!」

オリアナ「止められるのなら止めて見せなさい!!」

出社時間キタァァァ。
ということで今回はここまで。稚拙な地の文が多くて申し訳ないー。

次回は土日のどっちかに。


オリアナまでの距離は三五〇──まだ遠い。

佐天「(時間を遅くして近づくにしても、最低でも一五〇メートル前後まで近づかないとダメ)」

佐天「それでもっ!!前進するしかないわよね!!」ダッ


オリアナ「うふふ、緩急を付けて攻めるなんてお嬢ちゃんテクニシャンね!!」ブチッ

オリアナが単語帳を口に運び噛み千切った枚数は3枚。

真っ直ぐに佐天涙子を目掛けて飛ぶバスケットボール大の氷の塊が一つ。
視界の端から彼女を引き裂こうとする風の刃が一つ。

──そして地面を這う影の刃が一つ。

三種三様の魔術による攻撃が佐天涙子に襲い掛かる。



佐天「三つ!!少し多いけど──対応できないほどの数じゃない!!」

佐天「(右手で氷を止めて、後は時間を遅くして避ければ、いい!!)」バッ


オリアナ「うふふお嬢ちゃんの能力が少し分かった気がするわ」

オリアナ「(第一候補としては……この能力であって欲しいというお姉さんの願望だけど、身体能力向上系かな)」ピッ


オリアナは単語帳の一つを噛み千切ると、野球の球ほどの炎の玉が佐天涙子を目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。
佐天涙子はそれを右手で静止させると、炎の玉は役目を終えたかのごとく音も無く消えた。


オリアナ「炎の玉を消したところを見るとあの坊やを思い出すけれど、ちょっと違うわね」

オリアナ「炎の玉が消える直前に静止していた。やっぱりあの右手は──」ゾクッ






オリアナ「『時間の神クロノス』の力を持つ右手ってトコロかしら……うふふ、うふふふ……」

オリアナ「聖人なんか目じゃないわね……だってあのお嬢ちゃんは神の力を持っているのようふふふ、けど!!」ブチッ


不敵な笑みを浮かべるオリアナが単語帳から引きちぎった枚数は9枚。
佐天涙子を倒そうと様々な角度から魔術による攻撃が迫る。


佐天「!?これは避けきれない……ッ!!──なら!!!」

佐天「範囲指定の時間静止!!対象は『あたしの周囲』半径1メートル!!」ビタッ



9つの魔術による様々な攻撃は、佐天涙子の半径1メートルに到着すると音も無く静止し、消えた。




佐天「……、はぁはぁ、能力の連続使用は体力が……でも!!」

佐天「お姉さんの魔術の攻撃は防げた」

佐天「御坂さんの超電磁砲なんかは静止させたところで消えないんだろうけど……」

佐天「どうやら魔術は静止させると消えちゃうみたいね」


オリアナ「どうやらその“右手”の力は完全じゃないようね、うふふ」

オリアナ「完全に神の力を行使できるならお姉さんなんてとっくに殺されてるもの」

オリアナ「なら、勝機は必ずあるわ」



──距離は後二百。


佐天「ここからならあたしの声が聞こえるでしょう!!お姉さん、一つ質問があります!!」

オリアナ「何かしら?あまりプライベートな質問はお姉さん答えかねるんだけど、うふふ」

佐天「一つ、たった一つです!どうして関係の無い人を巻き込んだんですか!!質問はそれだけです」

佐天「目的のために関係の無い人を傷つけても構わないのがお姉さんの正義なんですか!!」


オリアナ「お姉さんだって傷つけたくて傷つけてるわけじゃないわよ!!」

オリアナ「お姉さんの正義ねぇ……。お嬢ちゃんこの世の中にどれだけの数の主義主張信仰思想善悪好悪があると思う?」

オリアナ「答えはね、いっぱいなの。全世界の人類の数だけあるといってもいいわ」

オリアナ「ねぇお嬢ちゃん、想像もつかない出来事なんてね、いっぱいあるのよ。
     例えば迷子の女の子を教会に預けたらその子はイギリス清教から逃げてきた子で髪を掴まれて処刑塔に引きずられていったとか」

オリアナ「そういう落とし穴がいっぱいあるのが世の中ってやつなの」

オリアナ「困ってる人が居ても、行動しても結果その人を傷つけるだけなんて、お姉さんはどうしたらいいのかしらね」

オリアナ「おかしいと思わない?隣人を愛する人々が、その実、隣に立つ人すら守れずにいるだなんて」

オリアナ「だからお姉さんは求めるのよ、お姉さんの上に立つ誰かに」

オリアナ「──この世界に散らばる主義主張を上手に支配してくださいって」

オリアナ「それがお姉さんの、オリアナ=トムソンの正義なのよ」


佐天「そんなの、そんなのただの詭弁じゃないですか!!お姉さんは間違ってる!」

佐天「そんなので関係の無い人が傷ついてもいい理由になんてならない!!そんな幻想あたしが止めてみせる!!」


──距離は一五〇メートル。オリアナ=トムソンに届く距離まで来た。


佐天「そんな幻想、止めてあげます。今すぐに!!」

佐天「(時間遅延の射程距離範囲!!今だ!!)」ダッ



時間を遅くし、全力でオリアナ=トムソンに駆け出す佐天涙子。
15秒ほど全力疾走し、オリアナとの距離は数十メートルまで来た。


佐天「一気に!!オリアナまで届くまで時間を遅くッ!!」


一気に距離をつめ、オリアナ=トムソンに手を伸ばす──


佐天「──これでお姉さんを静止させて終わりよっ!!」






















オリアナ「ざぁんねぇーん!!お嬢ちゃんの手はバレバレよ♪」ヒュッ


右手でオリアナに掴みかかろうとした瞬間、時間が遅れているのにもかかわらず

──オリアナは佐天涙子と同じ速度で動いていた。




オリアナ「本来は!!お嬢ちゃん用じゃないんだけど、例のカンザキカオリ対策の魔法を用意してて良かったわ!!」バキッ




佐天「うぐっ……、がっ……は……」



時間が遅れている中であるにも関わらず、目にも留まらぬ速度の蹴りを佐天涙子の腹部に放つ。

──冗談みたいな衝撃。佐天涙子は十数メートル弧を描き吹っ飛ぶ。


オリアナ「あらあら?一発で終わりかしら?お姉さんはまだまだイケるわよ?」

オリアナ「一人だけで満足するなんてダメよ、ちゃんと相手も満足させなきゃ」

佐天「……、ぐぅ……(どうして……あの時間の遅さの中……)」

オリアナ「うふふ、不思議かしら?あなたのその右手の力はとても凄いとは思うわ──でもね」

オリアナ「まだ未完成、まだまだ未熟な蕾なのよ……。時間を遅くするのも甘い、とぉっても甘いわ」

オリアナ「そう、このお姉さんの聖人対策用の速度強化の魔術で追いつける程度にね!!」

佐天「そ、そん……な……」

オリアナ「うふふ、お嬢ちゃんの相手はお姉さん一人だけだろうけどね、お姉さんは後3人かもうプラス一人相手にしなきゃいけないからね」

オリアナ「悪いんだけどお嬢ちゃんはここで寝ててちょうだいね♪」スタスタ







佐天「……(そんな……また……?また負けるの?嫌……!!もう負けて何も出来ないのは──嫌!!)」


オリアナまで後数十センチまで迫った。
あともう少しだった。

──もうすこし、もう少しだったんだ。







佐天「待ちな……さいよ……。待ちなさい!!オリアナ=トムソン!!」


立っているのも辛い、目がかすんでオリアナの姿がぼやける。
オリアナに蹴られた箇所を触ると激痛が走る。どうやら肋骨が数本折れているようだ。

激痛に身を任せ倒れてしまいたかった。
負けて、負けて楽になりたかった。
でも、絶対に負けたくない。
負けて、また何も出来ずに惨めな気持ちになるのは絶対に嫌だった。


佐天「待ちなさいよ……待ちなさい!!まだ勝負はついてないわ!!」

オリアナ「!?……、お嬢ちゃんそこで寝ていてって聞こえなかったのかしら?」

オリアナ「お嬢ちゃんがそこで寝て居てくればお姉さんは殺しはしないわ」

佐天「それでも!!負けられないのよ!!」

オリアナ「時間を遅くしてもね、お姉さんには届きやしないの!!どうして分からないの!!」

佐天「……」ダッ

オリアナ「お馬鹿さん!!ホントに──!!」






   ドォ────z____ン!!





佐天「な、にも……時間を遅くするだけじゃないんだから……」



──佐天涙子の右手がオリアナ=トムソンに届く。



佐天「これで……止まる……。お姉さんの計画も……お姉さん、も」バタッ




──それから


オリアナ=トムソンを止めた後すぐに当麻さんたちが来て、静止したオリアナとあたしを見つけたそうだ。
オリアナは直ぐに当麻さんの右手で時間静止を解き、計画の全貌を話させたそうで──。






佐天「しかし、『使徒十字』かぁ……、そんなものを使おうとしてたんだ」

佐天「でも、結果的に止めることが出来たんだねぇよかったよかった」


トントン


佐天「はーい、どうぞー?」

ステイル「失礼するよ、佐天涙子さん」

佐天「あ、ステイルさん……、まだ学園都市にいらしたんですね」

ステイル「そうだねもう帰国する予定なんだが君に挨拶をしておこうと思ってね」

佐天「あー別にいいのに、あたしが勝手に行動しただけなんで──」

ステイル「いや、結果オリアナを捕まえることが出来た。ありがとう」

佐天「うーなんだかお礼を言われると恥ずかしいな……」

ステイル「それに、今回の件で少々うちのボスが君に少し興味を持ったようなんでね」

佐天「え?」

ステイル「また近いうちに会うことになるかもしれないね、じゃ」バタン



コンコン

佐天「ど、どうぞー……」

医者「どうしたんだい?どうやら随分と元気がないようだけれど」

佐天「いや、ちょっと肩透かしというか……」

医者「そうかい、まぁ暫くは安静にしていることだね?何せ肋骨4本に折れた肋骨が肺に穴を開けていたんだからね」

医者「怪我に関してはこんな所だけど何か質問はあるかな?」

佐天「えーっとあたしの事じゃないんですけれど、ここに運び込まれた長い黒髪の女の人が来たと思うんですけど」

佐天「どう、なりましたか?」

医者「僕を誰だと思っているんだい?酷い怪我だったけれど安心していい、応急手当がよくてね命に別条は無いさ」

佐天「……、よかったぁ~」

医者「あっちのほうは大丈夫さ直ぐに退院できるさ、じゃっ僕は他の患者を見てくるから安静にね?」










こうしてあたしの大覇星祭は幕を閉じた。
──次に学園都市に降りかかる未曾有の大混乱が幕を開けることを知らずに。

勝ったッ!!第三部完!!


佐天涙子の暫定的能力解説。


時間遅延→40秒くらい可

時間静止→5秒ほど可

範囲指定の時間静止

 指定できる所は佐天涙子を中心として5メートル程度まで。
 時間静止の壁にぶつかった魔法は基本的に当たったとみなされて消える。
 しかし、御坂美琴の超電磁砲のような物質的な攻撃はただ止まるだけで、範囲指定の時間静止を解いたら動き出す。


何かと矛盾点あるかと思いますが細けぇ事は以下略。
次回から神の右席編始まる(?)よ!しかし次回の投下は未定ッ!

答えなくてもいいけど
天井は死んだの?

数レスですがちょこッとだけ。
>>505
原作通りに進んだ感じなんであの後芳川に撃たれたようです。合掌


──九月三十日──

佐天涙子の朝は遅い。
学園都市ご自慢の目覚まし時計も彼女を目覚めさせることは出来ないようだった。


佐天「ん……むにゃ……んなー……」


時刻は現在午前8時10分。
明日から衣替えなので今日は午前中授業である。

本来ならば初春飾利という佐天涙子の友達が毎朝起こしに来てくれるのだが──。


初春「…………zzz」


彼女達のルームメイトは薄情である。
否、一応声は掛けてあげたのだが……どうやら目覚めには至らなかったようだ。

現在午前8時25分。


初春「……ん?……もうすぐ7時半ですか……もうちょっとだけ寝ていましょう……」

初春「…………!?」バッ


──佐天涙子の九月三十日の朝は、遅かった。


──いつものファミレス──

佐天「だからー謝ってるじゃんー許してよー」

初春「佐天さんが昨日ずっと寝かせてくれなかった所為で私まで遅刻しちゃったじゃないですか!!」

佐天「ごめんごめんってー、でも初春もノリノリだったじゃん」

初春「そんなことないです!!私は何度も寝かせてくれって!!」

御坂「一体どんな話をしてるのよ……」

白井「会話だけ聞くと非常に卑猥ですわよお二人共」

初春「なっ!!私はただ佐天さんが昨日の夜に電話してきて寝かしてくれなかっただけです!!」

佐天「いやぁ盛り上がったんだけどなぁ……」

御坂「あーっと私はちょっと用事があるから抜けるわねー」

白井「……お姉様?もしやあの類人猿の所へ行くなどとは言わせませんよ?」

御坂「!?だっ誰があんなヤツの所へなんか!!……い、急いでるからっ!」ダッ

白井「なっ!?そんな……!!待ってくださいましーお姉様ー」





佐天「行っちゃった……いつものパターンか……」

初春「白井さんはいつも通りだったと思いますけどね」

佐天「あぁー、白井さんはいつも通りか……」

佐天「この後どうするー?遊びにでも行く?」

初春「えーっと確か支部のほうで雑用があったんで無理ですねー」

佐天「もはやテンプレ化してきたわね……」

初春「まぁまた今度に遊びましょうか」

佐天「まぁあたしはその辺ぶらぶらしてくるわー」

初春「それじゃ今日はお開きにしますか」


佐天「ここの地下街って昼だか夜だか時々分からなくなるときがあるのよね」

佐天「うーん、皆行っちゃったし帰っても良いんだけれど……何か癪だから喫茶店にでも入ろうかな……と」

佐天「『New!!飲む珈琲グミはじめました』って何じゃこりゃ……」

??「珈琲ゼリーとは違うのかなってミサカはミサカは呟いてみたり」

佐天「うーん正直な話ゼリーとグミの違いがよくわからないんだけど……柔らかさ?」

??「なるほどー!ってミサカはミサカはちょっと強引な解釈のアナタに感心してみたり!!」




佐天「……ん?」

??「んっ?……ってミサカはミサカはアナタと同じように首を傾げてみる」

佐天「御坂さん……の妹さん?」

??「ミサカは打ち止めって呼ばれる固体だよん!ってミサカはミサカはアナタに答えてみる」

佐天「打ち止め……?妹達の妹さんみたいな感じなの……?」

打ち止め「まぁまぁ、お話はこの飲む珈琲グミでも飲みながらにしましょうって、ミサカはミサカはアナタを店内に押し込んでみる」ぐいぐい




佐天「つまり打ち止めちゃんは妹達を纏めるホストコンピューターみたいな感じなのね?」

打ち止め「ホストというよりかはコンソールに近いかもってミサカはミサカは訂正してみたり」

佐天「成る程、つまり妹達の入出力装置って訳ね……ふーむそんなものまで作るとは……」

打ち止め「今日は実験を止めてくれたアナタにお礼を言いに来たの!ってミサカはミサカは鶴の恩返し的な展開にしてみたり!!」

佐天「……、あたしは何も出来なかったよ……」

打ち止め「そんな事無いってミサカはミサカは言ってみる」

佐天「でも……」

打ち止め「確かにアナタはあの人と戦って負けた、でもそれは無駄じゃなかったんだよ」

打ち止め「少なくとも一〇〇三二号は痛めつけられていたアナタをみて、
       初めて実験を嫌だと感じることが出来たんだってミサカはミサカは告白してみたり」

佐天「……そっか、意味はちゃんとあったのね」

佐天「それにしてもあの時は自分の骨が折れる音を聞いたはずなんだけど、結局骨折してなかったのよね」

打ち止め「あーっと……アレはあの人が音のベクトルを操作してたみたいよってミサカはミサカは言ってみたり」

佐天「……まぁいっかー、それにしても打ち止めちゃんは一人で何をやってたの?」

打ち止め「だから鶴の恩返しをしに……」

佐天「本当は?」

打ち止め「ふふん!コレを下位固体から強奪して下位固体と追いかけっこをしてたのってミサカはミサカは答えてみる!」

佐天「さらっと山賊のような発言しおったこの子!!」

きてる・・・


??「おやおや、何処に居るのかと思えば……」






ミサカ「へぇ……こんな所で休憩とは良いご身分ですね上位固体とミサカはサブマシンガンを容赦なく構えます」

打ち止め「はっはー、アナタのような下位固体相手では休憩も余裕で取れちゃうのだってミサカはミサカはダッシュで走り去ってみたり」

ミサカ「いいでしょう、その挑発に乗ってあげますとミサカは本気モードに移行して上位固体を追いかけます」ダッ






佐天「……まるで嵐だ…………」




佐天「げっ、もうこんな時間!!完全下校時刻過ぎちゃう!!」

佐天「早めに帰って今日はすぐ寝ようかなー」

佐天「…………」

佐天「しっかしバス来ないなぁ……」

佐天「…………」


佐天「流石に遅れすぎじゃない?……、しょうがない歩いて帰るかなー」


ブロロロロ……




佐天「お、ようやく来たかー遅れすぎだよー」



遅れてきたバスがゆっくりとこっちに向かってくる。

佐天「……?何か様子が──」

バスの様子がおかしい、それに学園都市が静かすぎる。
ゆっくりとこっちに向かってきたバスだったがスピードがみるみる下がり、やがて止まった。



佐天「??おかしい……絶対におかしいわコレ……」タタタッ

佐天「もしもーし、バスの運転手さーん?大丈夫ですかー?」

佐天「……?え……運転手さんもお客さんも全員寝てる……?」

佐天「どういうことなのかな?能力者の仕業にしては……」

佐天「と、とりあえず警備員に通報しとこう……」プルルル


  『ザ……な、なんなんだアイツは!?おい、相棒しっかりしろ!』

佐天「!?何だぁ?」

  『誰か!!誰か応答しろ!!侵入者だ!!くそっ!あの女──ぐ……ぁ……』

  『ふん、魔術の対策もしてないなんて学園都市のセキュリティは甘っちょろいわね』ブッ

  ツーツーツー

佐天「……、今のって……『魔術』か……」

佐天「小難しいことは分からないけど、多分魔術師が攻め込んできたって事よね?」

佐天「こういう時どういう行動すればいいのか……」

佐天「(攻め込んできた魔術師の居場所、風貌、能力について分からない……)」

佐天「このバスの様子が魔術による攻撃なのかな?それとも……」

佐天「とにかく、少し歩いてみよう……」


佐天「ん?あれは……警備員?でも何か……装備がちょっと違うような」

佐天「そして直ぐに車で何処かへ行った、か……」

佐天「(もしあれが警備員だった場合と警備員じゃなかった場合の二つを考えると……)」

佐天「一つはさっきのバスの中の人達みたいな人を助ける為に移動した…」

佐天「もう一つはこの学園都市の静けさの原因であると思われる『魔術師』の所へ行ったか」

佐天「前者は無いかな?だって救助しに行くのにあんな大掛かりな装備は要らないもんね」

佐天「だとすると……あの車が向かった先に魔術師が居るって事よね」

佐天「よし!!行こう……!!」ダッ





佐天涙子の予想は半分正解で半分不正解である。
なぜなら彼らは『猟犬部隊』と呼ばれる学園都市の暗部組織であって──

──あの一方通行を殺しに行く途中だったのだから。


小雨の振る最中佐天涙子は走っていた。
何だか不穏な空気を漂わせている場所へ一歩一歩近づいている感じである。

走っている最中に黒塗りの、いかにも盗難車のような車が佐天涙子の進行方向とは逆に走り去っていった。



佐天「む、なんだ??魔術師から逃げてった……?」 ヒュルル~

佐天「ん……!?ちょっ……」


突然ミサイルのようなものが先ほど走り去った車へ向けて飛んでいった。
爆音とともに砂煙が舞い上がるが、車は見えない。
どうやらミサイルには当たらずに逃げ切れたようだ。


佐天「びっくりした……、それにしても変だな……」

佐天「あの車に魔術師が乗っていたならば納得だけれども、この学園都市の静けさの原因である魔術師が逃げるなんてあるかな?」

佐天「仲間割れ?違うような気がするけどそう解釈しよう」

佐天「さっきの車を追うよりかは先に進んだほうが──」


佐天涙子の思考を中断せざるを得ない勢いで黒塗りの車が走り去っていく。
恐らく先ほどの車を追っていったのかな、と佐天涙子が思った時にはもう車は見えなくなっていた。


佐天「魔術師以外でも、何か起こっているのかも……」

佐天「急ごう!!」タッタッタ


目的地に到着した、と佐天涙子は即座に判断する。
なぜならば先ほど見た黒ずくめの男達が十数人ほど倒れており──

──その真ん中に黄色のレインコートのようなものを着た女が立っていたからだ。


??「あっらー?誰かしらアナタ?私の姿を見て倒れてないって事はアンタが上条当麻?……、そんなワケないか」

佐天「……、当麻さんを狙いに来たんですか?この学園都市の様子は貴女の魔術の所為ですか?」

??「質問は一個に絞って欲しいものね、魔術について知ってるところを見るとアナタ魔術師か何か?」

佐天「この街のただの学生です。これ以上学園都市を混乱させるというなら止めてみせます」

??「ふーん、アンタに止められるとは思えないケド?」スッ


一瞬で黄色の女は佐天涙子の目の前に来る。


佐天「!?な、何……?」

??「上条当麻と知り合いみたいだけれど、何処にいるか知らないかしら?」

佐天「知ってても……教えるわけが……」

??「あ、そう別にいいんだけどねーん、アンタが教えてくれなくたって向こうから出てくるでしょうし」

佐天「……、アナタ一体何者なんですか?この学園都市に何をしに来たんです?」

??「そうねぇ答えてあげましょうか、私は『神の右席』前方のヴェント、この街には上条当麻を殺しに来たワケ」






ヴェント「だから雑魚はさっさと消えてくんない?」

>>516
こんな時間に居るとは!?

今日のところは以上です、ヴェントさん編長くなりそうな予感。

あああー、一応佐天さんに天罰術式が効かない理由(こじつけ)は考えてあったんですけど
前回の投下時にそこまでのストックが無かったんで投下できませんでした。
混乱させてしまい申し訳ありません。

以下数レスほど失礼します。


佐天「雑魚、ですって?学園都市を襲撃したり魔術で人を傷つけたりして……」

佐天「どこまで人を舐めてるんですかアナタは!」キッ!

ヴェント「はっ!どーでもイイんだよ学園都市の人間が傷つこうが死のうがね、私は上条当麻を殺すためなら『日本』をも犠牲にするわよ」

ヴェント「それはお嬢さん?アンタも同じよ──死にたくないなら下がりなさい」

佐天「……、それを聞いてあたしが怖気づくとでも思ったんですか?絶対に貴女をここから進ませたりはしない!!」

ヴェント「──?(敵意はしっかりある、私の天罰術式がこの娘に発動していないのはどうしてかなーん……)」

ヴァント「ハハッ、勇ましいねぇー。ところでお嬢ちゃん私は名乗ったのにアナタは名乗らないのは可笑しくなーい?」

佐天「……、佐天──佐天涙子です……」

ヴェント「んふ、佐天涙子ちゃーん?さっきのー私をここから進めさせたりはしないってー、セ・リ・フ──」










ヴェント「──五臓六腑をシェイクして人肉ジュースになった後でも言えんのかしら?」ガッ


ゴウッ!!という音を立てて重々しい有刺鉄線のハンマーが現れたと確認できたのは
──風を切って吹っ飛んでいる自身の状況を確認した後だった。



ヴェント「はいっ一歩♪ってか?この前方のヴェントを相手に『進ませない』なんてセリフを吐くだなんて、私も舐められたものね」

ヴェント「ま、死んじゃいねーだろうが暫く意識はねーだろ、無駄な時間を食わせやがっちゃってまぁ」

ヴェント「禁書目録を先に殺すか?──いや先ずは上条当麻だな」スタスタ

ヴェント「(にしてもどうしてあの小娘は私の天罰術式が効かなかった?)」

ヴェント「……、ん?」チラ



違和感。ヴェントは少々の違和感を感じ自身の服についてあった保険である霊装を見る。
霊装自体は少々の攻撃を防ぐ程度のものであったのだが──

その霊装が壊れている。
役目を終えたマッチのように、二度と機能することのない状態になっている。


ヴェント「なっ?これは……まさかあのガキが……!?」


先ほどこの『前方のヴェント』を前に啖呵を切った少女を吹っ飛ばしたシーンを脳内で再生してみる。
心当たりといえば、彼女を殴り飛ばした瞬間に、彼女の体がくの字に折れ曲がって──


ヴェント「この霊装が偶然あのガキの『右手』に触れたけど……」

ヴェント「噂の上条当麻の『右手』じゃあるまいし──」

ヴェント「(佐天涙子……?佐天……偶然?いや──ま、まさかあのガキ……)」バッ


ここで初めてヴェントは先ほど吹き飛ばした少女の方向を見る。
彼女にしては珍しい、そして彼女を知る人が見たら驚いたことだろう何故なら──

『前方のヴェント』、20億人の最終兵器が焦っていたのだから


ヴェント「ハッ、ハハハッ!!なんだそりゃーよぉ!!──アレイスタァァァァァ!!」

ヴェント「はぁはぁ……、アレイスターあなたは何処まで『計画』していたというのよ!!」

ヴェント「は、効く訳無いじゃない!!私の天罰術式が」


ヴェントはやや自嘲的な笑みを浮かべつつその辺にあったベンチを破壊する。
まるで事実を認めたくないかのような立ち振る舞いは駄々をこねる子供のそれに似ていた。


ヴェント「ふー……、天罰術式は『人間』への罰という意味の術式だ」

ヴェント「『神』に唾を吐く『人間』を許さないってな……」

ヴェント「佐天──左の天、『神』の力を含む『人間』に天罰が下るわけないわよねぇ!!」

ヴェント「上条当麻だけじゃ無かったと言うの?うふ、アハハ……」

ヴェント「アハッ、ギャハハハハハハハッ!!」









ヴェント「殺す、殺してやるわよ……ッ!!このキモチワルイ学園都市を!!アレイスター、アンタ諸共ね!」


ヴェント「──やることが一つ増えたわねーん……」

ヴェント「先ずは上条当麻、その次に佐天涙子……、そしてアレイスター……アンタはその次よ!」


──────…・・・・・・


佐天涙子が吹っ飛んだ先は川だった、水深が深い川ならば多少は良かったのであろうが
浅瀬に(といっても深さは膝上程度はあるようだが)吹っ飛んできた佐天涙子であった。

少しの間意識を失っていたようだが──


佐天「あー──、いてて……。なんとか着地の衝撃だけは範囲指定の時止めで何とかなったけど……痛っ!!」

佐天「っつー、けど派手に吹っ飛ばされた割には怪我が少ない──、打ち所が良かったのかしら」



彼女は知る由も無かった。自身の右手がどのような意味を持つものか
そして神の右席の使う魔術がどういったものなのかを。


佐天「──てか寒っ!?川まで吹っ飛ばされたから服がビチャビチャだよ……」

佐天「よし、先ずは寮に戻って着替えようかな」


佐天「バスは来ない訳で、かなり歩いたわけだけど……」

佐天「ふー、寮までは学区を挟んでるから遠いのよね……」

佐天「ぬれた服で街を歩くなんて、普段の学園都市だったらありえないわね」

佐天「……、へぷしっ!!──う~……風邪ひきそう……ん?これは──」

佐天「血?それもかなり新しいような──あれは……!!」


暗くて足元にあるのが血だと判断できたのは最近血の匂いを嗅ぎ慣れていた所為だろうか
足元の血溜りの先には先ほど佐天涙子を吹っ飛ばし、学園都市に攻め込んできた魔術師──

──前方のヴェントが苦しそうに咳をしているのが見えた。

佐天涙子がヴェントの存在に気付いたと同じくヴェントもこちらの存在に気付いたようだ。


ヴェント「チッ!!げほげほっ……くそ……上条当麻の次はテメェか佐天涙子」

ヴェント「ぐっ、げほっ──いいわよ、上条当麻の前に殺してアゲル」

佐天「……、いいですよ今度は油断しません!!」

何故か血を吐いているヴェントと戦うことを一瞬躊躇した佐天涙子だったが
ハッキリ言って奇麗事を並べるだけの余裕が無い、今ここで止めることが出来なければ被害が拡大するだけだと判断した。


ヴェント「ハッ、油断とか隙があったとか!!そんな次元の存在じゃないんだよ!!神の右席ってのは!!」

佐天「!!(やっぱり動きが鈍い、コレなら!!)」

佐天「時間を遅くする!!ここでアナタを止めてやる!!」

ヴェント「!?(この小娘の速度が異常なほどに上がった?──いやこれは!!)」

佐天涙子がヴェントに近づくまでの数瞬の間に彼女の持つハンマーで足場のアスファルトを崩した。

佐天「くっ、やっぱり遅くするんじゃなくて静止させて近づいたほうが良かったか……」

ヴェント「ガッ、ゲホゲホッ……、はは佐天涙子!!どうやら上条当麻よりかよっぽど右手の進化は進んでいるようネ」

ヴェント「でもそれが仇となるのよ!!────」


前方のヴェントが手にする有刺鉄線が巻かれたハンマーを軽々しく振るおうとした瞬間

ヴェント「ガァッ──ゲホッ……なんなのよ!!これは──!!」

上条当麻、佐天涙子の攻撃ではないことは確かだが、この吐血の原因は一体──


佐天「『隙』あり、です!!神の右席だか知りませんけど、今止めてあげます!!」

ヴェント「ぐ!!ァァァァあああッ!!!」

佐天涙子の右手がヴェントに触れる前に彼女はぐるりと方向転換すると
見当違いな方向へ有刺鉄線を巻いたハンマーを振り回す。
砕いたアスファルトの破片が周囲に飛び散る。
それが良かったのか、佐天涙子は近づけないようだった。


ヴェント「チッ、くそッ!!」


──逃げられた。

そう感じてしまうのは先の戦闘が佐天涙子が有利な状況だったからだろうか。
否、実際は違う。

もし、前方のヴェントが万全の状態で佐天涙子を殺そうと思ったのなら、一瞬で彼女は肉塊になっていただろう。
それほど迄にヴェントを襲っている謎の攻撃は彼女の身体能力その他を蝕んでいた。


佐天「止めよう、今度こそ……絶対に学園都市は魔術師の好きにはさせない!!」


彼女が呟いたのは一つの覚悟。
大好きなこの場所をこの学園都市を守るんだ、という意思表示。

口に出すことで、その思いは体に染み込み立派な覚悟になった。


──逃げた。

自分でも信じたくは無かった
あの程度の少年と少女を二人殺害する程度に逃げの一手を取った自分が。
【二十億人の最終兵器】と呼ばれる自分が。

げほっ、と水っぽい咳を連続して出る。
口を押さえる手の隙間からドロドロとした重い血液が自分の手を伝って落ちていく。

あの少年を殺害する一歩手前から自分の体がおかしい。
自身は特殊な作りをしているとはいえ、こんなこと一切なかった。



ヴェント「殺す、今度は一瞬で殺してアゲル……科学はニクイ──そうよね【  】」



彼女が呟いたのは弟の名前。
科学を憎むようになった、神の右席である彼女の根幹の部分。
忌むべき科学の象徴とも言うべきこの学園都市を壊すという意思表示。

弟の名前を呟いただけでヴェントの体を苛む震えがいくらか引いた。

今日はこれにて。
若干意味不明だと思いますが脳内保管よろしくお願いします(天罰術式とか佐天さんとか内容とか口調とか以下略)

次は三連休のいずれかに。

22巻読んだ。
一方通行さんが格好よすぎて生きるのが辛い……。

以下ちょっと投下失礼いたします。


佐天「よし、ヴェントが逃げた方向はあっちの鉄橋の所辺りかな?」

佐天「……、能力を使って追いつくのは良いかもしれないけれど、体力保持するために温存しておこうかな」

佐天「それにヴェントのあの吐血の具合ではそう早くは動けないと思うし……」



─路地裏─


佐天「ここさえ抜ければもうすぐ鉄橋ね──」

??「ちょっと待ちなアンタ!」

佐天「え──?アナタは……」



姉御「特別講習の時以来じゃないか、えーっと佐天涙子っつったっけ?」

佐天「どうしてアナタがここに……?」

姉御「そんなの決まってんわよ、今学園都市に起きてることについてだよ」

姉御「じゅんt……いやアタイの舎弟も今意識不明になってんだ」

姉御「似てねぇか?幻想御手を使ったアンタにも分かるだろ?」

佐天「意識不明……ですか、いや確かにそうですけど──」

姉御「アタイがぶっ飛ばしてやろうと思ってな、木山春生だったっけ?」


佐天「え、えぇ~と(多分、ていうか木山さんは全く関係ないと思いますけど…)」

姉御「それで、アンタはこんな所で何してんだい?」

佐天「あたしもこの学園都市の異変を止めようと思って──」

姉御「なら丁度良い、二人で木山をぶっ飛ばしに行くぞ」

佐天「──それは出来ません」

姉御「あ?どういうことだ?」

佐天「木山さんは確かに幻想御手で生徒達を意識不明にしたことは有ります──」

佐天「──でも違うんです!今回の件と木山さんは!!」

姉御「一体どういうことだい?──……、まさかアンタ木山を庇ってる訳じゃないわよね?」

佐天「!?な、どうして──!!」

姉御「問答無用ォォ!!木山春生はどこか吐きなさいッ!!」

佐天「ぐっ……(埒が明かない……。ていうか話聞いて欲しい……。こうしている間にもヴェントは行ってしまうのに)」

佐天「わかりました、あなたが話を聞いてくれないというのなら、あたしがその行動ごと止めてあげます」

姉御「ふん!!潔く認めたかぁッ!木山は何処だっ!!」ダッ


今回の事件とはまるで関係のない事で怒りをぶつけて来る相手であったが
幻想御手を使用したことのある自分には分かる、彼女の怒りが……少しだけ。


佐天「あたしはッ!あの頃とは違う!!」


そう、幻想御手の時とは違う──あたしには止める【力】がある……。
此方へ拳を振りかざし向かってくる彼女を、時間が遅くなった世界で少しだけ同情した。


佐天「少しの間、静止しててくれますか?あたしはヴェントを追わなければ──」


彼女へ走り出そうと右足を一歩踏み出──


佐天「え?う、動かない!?」


姉御「知らないだろう?幻想御手を使ったとはいえアタイ元々はレベル3」

姉御「表層融解(フラックスコート)、あの時みたいにアスファルトを自在に操れるわけじゃないが──」

姉御「こうしてアンタの足をアスファルトに埋めることが出来るのさ!!」

姉御「さぁ!!吐け!!木山は何処に──」



そこから先のセリフは、ゴン!!!という轟音によってかき消された。
見れば、何か巨大な物が色々な建物を破壊しながら恐るべき速度で飛んでいっていた。


何処かとは二人には全く想像もつきはしないが、それは窓のないビル。
とある人物への純粋な【怒り】という感情を向けて一方通行が放った、地球の自転を遅らせるほどの攻撃。

学園都市の統括理事長、アレイスターが存在しているとされている世界最硬のシェルターへ。


佐天「……………………」

姉御「……………………」


言葉がでない、佐天涙子はそう思う。
今のは一体何だ? もしかしてヴェントが遂に当麻さんを殺すために──?


姉御「お、おい……今のも木山春生の仕業なの……か?」

佐天「……、できると思いますか? 少し落ち着いてください。 今回の件は木山さんは関係ありませんから」

姉御「あ、あぁ……」

佐天「というか、今この学園都市に侵入者が来たって情報をニュースか何かで見てないんですか?」

姉御「侵入者だって!?ソイツがこの学園都市の騒ぎを?」

佐天「そうです、あたしはその人を止めに行くので──」

姉御「クソッ!!その侵入者とやらの所にアタイも──グッ!?ガハッ……」

姉御「………………」

佐天「なっ!?これは?意識が……?姉御さん?ヴェントの魔法ですか……?」

佐天「くっ……さっきの飛んで行ったモノも気になるし……、姉御さんごめんなさい!あたし、先に行くね」タッタッタッ












佐天「ん?あそこで歩いてる女の子は一体──?」





──虚数学区・五行機関が部分的な展開を開始。

──該当座標は学園都市第七学区のほぼ中央点。

──理論モデル『風斬氷華』をベースに追加モジュールを上書き。

──妹達を統御する上位固体『最終信号』は追加命令文を認証。

──これより学園都市に『ヒューズ=カザキリ』が出現します。

──関係各位は不意の衝撃に備えてください。


先ほどから気にしていなかったが、学園都市は今雨が降っている。
普段の学園都市とは違い九割の人間が昏倒しているので道路に車といった照明といったものは乏しい。
それは建物も同じで、まるで学園都市に誰も居ないような気にさえさせる。


──そんな街の一角で、莫大な閃光が溢れる。


光の中心点の僅か数十メートルに佐天涙子はいた。
轟ッ!!という先ほど高校生くらいの女の人が居た地点から無数の翼のようなものが吹き荒れる。
周囲にはビルといった建物があるが、そんなものは関係ないとばかりにその翼で次々と倒壊させていく。


佐天「きゃ、きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


その翼は佐天涙子も邪魔と言わんばかりに此方へと凄まじい速度で向かってくる。


佐天「────!?」バッ


ほとんど無意識だった、無意識に右手を突き出していた。
翼は止まったが、いや止め切れなかったのだろう。
翼からの直接的な激突は止められたが、その衝撃までは止められなかったらしい。

──衝撃波によって佐天涙子は吹っ飛ばされてしまう。


────────

御坂「どう、なってんのよ……あれ」

御坂「私はただいつもの通りコンビニで立ち読みしてたのに……あれは一体?」

御坂「──ん?」


バシャバシャ、と水溜りを気にせずにかけていく少女が歩いていた自分を抜かしていった。
その顔に見覚えがあった。


御坂「ちょ、ちょっと!アンタこんな所で何やってんのよ!?危険だってわからないの?!」

インデックス「離して!!ひょうかがあそこに居るの!!」

インデックス「行かないと。あそこには私の友達がいるの!どうしてか分からないけど、止めにいかないと!」


よほど錯乱しているのだろう、ほとんど説明になっていない。
あまりの事態に混乱して狂ったんじゃないのかしら、と御坂が思った瞬間──


インデックス「とうま!!」


そう、今日この九月三十日に罰ゲームと称して午後一番に地下街を一緒に回って
携帯のストラップを貰ったりした、上条当麻が100メートル先に居た。


インデックス「だめだよとうま!!ひょうかを殺さないで!!」


上条「ッ!?──インデックス?それに御坂もッ!?」


上条当麻は追われていたため、大きな声に体が一瞬硬直する。
撃たれたのかと思ったが、後ろを振り返るとインデックスと御坂美琴が此方へ向けて走ってくる。


上条「今はダメだ!!俺は黒服の連中に追われてる!!だから来──!?」


ヒュ~、という音に上条当麻は黒服の男達が銃ではなく何か新しい兵器を使用したのかと思い身を強張らせた。
しかし、黒服達は居ない、では一体──


──ァァァァ、ダメェェェェ


上条「ん?何か今聞こえ──」



佐天「イヤァァァァァァァァ!!!ダメッ!!!!当麻さんどいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」



当麻「う、うわあああああああああ」


上条当麻は追われていたので建物と建物の間に身を隠して居たのだが
どういうわけか飛んで来た佐天涙子は上条当麻に吸い込まれるようにして……。

──激突した。


佐天「うぅ……、危ないトコロだった……本日二回目の吹っ飛び……」

佐天「そのお陰っていったらアレかもしれないけど範囲指定の時止めで何とか激突の衝撃は免れたかぁ……」

上条「──る、涙子ちゃん……?な、なにを……」

佐天「あ、いやー何か天使みたいなのに、ふっ飛ばされて──」


インデックス「とうま!!その天使はひょうかなの!!お願い!!ひょうかの所には行かないで!!」

インデックス「どういう理屈かは分からないけど、止めなきゃ!でもとうまが触ったらひょうかが消えちゃうんだよ!」

インデックス「だから、行かないで!!」


上条「インデックス……、大丈夫だアイツは俺が止める。それに問題はアイツだけじゃないんだ。お前だけには任せられない」

インデックス「とうま!!」

上条「殺すんじゃねぇ、風斬を助けるために立ち上がるっつってんだ!!」

上条「俺には魔術的な詳しいことは分からない、だからお前の力が必要だ。でも今風斬に起きてる現象はAIM拡散力場も絡んでると思う!」

上条「だからお前にも分からない事もあるかもしれない。でも俺ならそっちのほうは手伝える俺達なら風斬を助けられる」

上条「行くぞインデックス、風斬氷華を助けるためにお前の力を貸してくれ!!」


インデックスと呼ばれる少女はコクリと頷く。


御坂「ハァー、何だか訳分からないけどまたアンタはでかい問題に巻き込まれてるワケね?」

上条「ま、まぁそうだけど」

インデックス「ていうかとうま、さっきから触れなかったけど当麻と密着してる女の子は誰なのかな?」

上条「あ、えと……と、友達です」

佐天「んー、さっきの天使は当麻さんの知り合いなんですか?」

上条「えぇ!?この状況についてスルー!?……、知り合いってか──」

インデックス「知り合いじゃないよ、友達」

御坂「ハァー、何にせよソイツは悪い奴じゃないのよね」

上条「絶対違う、インデックスも言っただろ?あそこに居るのは俺の友達だ」

佐天「当麻さん!!黒服の人たちが──」

御坂「じゃ、そこの黒服が悪い奴ってワケよね?」

上条「何を目的としてるのかは分からないが、少なくとも良い奴ではないハズだ」

御坂「しゃーない。何だか知らないけどあれは大切な友達なんでしょ、さっさと助けてきなさいよ。こっちは何とかするから」

上条「馬鹿、お前……ッ!!」


御坂「ごめんごめん。止める間もなく始めちゃうわよ」



超電磁砲。
学園都市二三〇万人の頂点、七人しか居ないレベル5の第三位。

──御坂美琴


彼女は既に路地の出口に向かってゲームセンターのコインを射出していた。
彼女の二つ名の一撃は路地の左右を削り轟音と閃光を撒き散らしながら黒服の元へ衝撃波を飛ばす。

超電磁砲が直撃すれば命は無いだろうが、御坂美琴はちゃんと軌道を考えているのであろう
しっかりと黒服たちには命中させないように衝撃波だけを当てていく。



御坂「罰ゲームよ!! アンタは『友達を助けて戻ってきなさい!!』何でも言うこと聞くんでしょ!!」

上条「わかった!!必ず助ける、だからテメェも死ぬんじゃねぇぞ!!」

上条「行こうインデックス、涙子ちゃん」


タッタッタ、と路地を抜ける3人を確認した後、御坂美琴は少しため息を漏らす。


御坂「はぁーあ、罰ゲーム、こんな事に使っちゃうなんてなぁ……」

御坂「ん?待てよ、あんた達黒服がいなきゃ問題を起こさなきゃ今よりマシな罰ゲームを言い渡せたのではないだろうか──」

………
……




ムシャクシャしてきた。

──アンタ達……覚悟しなさいよね。


────────────


インデックス「ねえとうま、さっきから街が静かなんだけど。これって何なの?ひょうか以外にも魔術の流れを感じるんだよ!」

佐天「(魔術……か、この子は当麻さんの何なんだろうか。AIM拡散力場について分からないと当麻さんが言ってたし)」

上条「あぁ、この街が静かなのは皆気を失ってるからだ、この街に侵入してきた魔術師の攻撃でな!!アイツの攻撃の方法と治す方法が何かわからないか?」

佐天「(わからないか?か、この子は多分魔術師?か何かなのかな……?ステイルさんや土御門さんのように)」

インデックス「多分、それは『天罰』だよ」

上条「なんだって?」

インデックス「ある感情を鍵にしてその感情を抱いたものに罰を与える。距離も場所も関係ない!って魔術だと思うんだよ!!」

インデックス「その魔術師は特定の感情を誘導させるような行動をしたりしなかった?」

佐天「感情──そうか、『敵意』じゃないかな?」

上条「それだ、そうすればわざと挑発するような言動とかに説明がつく!」

佐天「そっか、それであの──」

インデックス「待って!!それ以上その魔術師について言わないで!!私は今『歩く教会』の防御機能は失われてるの。だからその天罰は防げないんだよ!」


佐天「そっか、ごめんね──」

上条「それにしても風斬は大丈夫なんだろうな!?」

インデックス「わかんないの!!少なくともあそこに居る天使とそれを統率している核が別々の場所にあることはわかるんだけど」

上条「インデックスでも解けない、か……」

佐天「その、あれって学園都市で作られた魔術?みたいなモノなんですよね……?」

佐天「だったら、AIM拡散力場が関連してるんじゃないんでしょうか……?」

上条「それだ!!えーっとAIM拡散力場について詳しい人は………、子萌先生だ!!」プルルルル

上条「クソッ、繋がらない……」

佐天「えっと、あたしじゃダメだと思うんですけど、御坂さんなら分かるんじゃないでしょうか」

佐天「常盤台中学校って大学レベルの問題もやってるみたいですし」

上条「そうか、御坂ッ──」











上条「俺はあの天使の所にいって決着を付けに行く、インデックスAIM拡散力場について分からなければ御坂に聞いてくれ」

インデックス「わかったんだよとうま!」

上条「インデックス、一人で大丈夫か?」

インデックス「大丈夫なんだよ!!それよりひょうかをお願い!!」

上条「わかった、任せろ」


────────

上条「それじゃあ涙子ちゃんはこのまま家に──」

佐天「無理です、あたしだってヴェントを止めたい理由があります!」

上条「でも危険だ!!涙子ちゃんには傷ついて欲しくない!!」

佐天「うれしいセリフですが、あたしの能力があればかなり有利に事が進むと思いますけど?」

上条「~~~!!わかった。でも危険だと感じたら俺のことは気にせずに逃げてもいいからな!!」


第七学区の中心点。

そこは本来なら若者向けのデパートやレストランで賑わっている所だ
しかし今は散々な状況だった。
ビルは崩れ、デパートも崩壊し、レストランの看板が粉々に砕け散り──


──その中心点に天使はいた。


翼のサイズとは違い本体は人間サイズだ。
灰色の粉塵も、土砂降りの雨も、その全てを吹き飛ばすかのように天使の翼は光を放っていた。


長い髪の少女だった。
黒の中に茶色の混じった綺麗な髪、上条当麻が知っている少女のはずだった。
気弱で泣き虫で悪党を殴ることも躊躇うそんな少女のはずだった。


今、上条当麻と佐天涙子が見ているのはそんな少女とは全く違う。
口は半開きにし、舌をだしフラフラと不規則にゆれている。


上条「風斬ィィィィィいぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


思わず駆け出してしまった上条当麻だが
──近づいてどうする?この右手で彼女を触ってしまったらそれで彼女は死んでしまう。

くそ、どうする……と心の中で悪態をつく上条当麻だったが──


ヴェント「おやおや、そろいも揃って大罪人同士、傷でも舐めあってたってところカシラ?」


上条「……っ!!ヴェント!!風斬はやらせない!!」

ヴェント「へぇ、あんなものに情が沸くんだ。とんだ博愛主義者よね、そこらの変態でもアレは受け付けないと思うケド?」

上条「テメェ!!撤回しろ!!」

ヴェント「ナニについてぇ?もしかしてー、普段はああじゃないとか言うつもり?馬鹿馬鹿しい」

ヴェント「ソイツは全ての十字架を背負うもの全てを嘲笑う、冒涜の塊よ──消滅すべき存在だわ」

ヴェント「ね?アナタはそうは思わない?佐天涙子ちゃん?」

佐天「────、あれは……。当麻さんは『友達』だといった。」

ヴェント「だからー、馬鹿馬鹿しいって。アレはこの糞学園都市が生み出したお人形よ?」














佐天「『友達』というのなら……。──消滅して良い存在の筈が無い!!!」



上条「そうだ、ヴェント……もう一度言うぞ!!」



















上条&佐天「「撤回しろ、クソ野郎!!」」

あ、キリが悪いんで今日の投下はこの辺で。
次回投下は14日か15日の深夜にー。

面白いって言ってくれる人や感想くれる人本当にありがとうございます。
めっちゃ嬉しいですし、なんとも書こうって気力が沸いてきます。

佐天「じゃもっと投下スピード上げなさいよ」

ごめんなさい。

おっと>>566
上条「」となるべきところが
当麻「」になってますね。
支障は多分無いですけど添削ミスですすいません。

やっと追いついた
佐天さん順調に進化してってるな。
よく考えたら限定した空間内だけ止めるって場合によっちゃDIO様よりチートじゃねぇ?
vs一方通行の時上条さんタッグでやったことが上条さん以外でもできるってことでしょ?
佐天さんと組む人が組む人ならとんでもない強さになるような。

そういや時間の遅延って何倍速までできる設定?
聖人クラスの速さには対応できないから1/2倍程度?

まぁ何はともあれ乙

相手本人の時を静止させた場合、その間はノーガードだしボコボコにできるんじゃあ。チートすぎワロタ
とか思ってたけど、発現前のジョジョ的描写からよく考えれば、基本的にはアストロンみたいな状況にできる能力、ってことでいいのかな?


製作速報復活してるー!!あれ?いつから……?

>>582
時間遅延のほうはドンくらい遅くなるんでしょうね、聖人(かんざきさんじゅうはっさい)は音速を余裕で突破してますけど……。
空間転移の能力者である黒子は時速288km/hほどなんでそれよりかは早い程度に動けるんじゃないかと。

>>583
おおよそアストロンで合ってます。
ただ静止してても上条当麻さんの右手で殴られたらボコボコですけど。

以下ヴェント編終幕へ



ヴェント「へぇ、意外と可愛いところあるじゃない。イイでしょう、どのみちアンタ達は順番に殺す予定だし、仲良く一緒に殺してアゲル」

ヴェント「もしかして、その後ろの冒涜の塊に救援を求めちゃったりしてる?だとしたら無駄よ、ソイツには意思なんか無いんだから」

ヴェント「天使ってのは神様の『道具』なんだよ利用されるだけ利用されて使い物にならなくなったらゴミ箱へポイさ」

ヴェント「ハッ、そこの冒涜の塊を見るに不完全ってところよね。」

ヴェント「今の不完全な状態なら内側制御系に介入する術式を組んで自爆を誘発させてやるわ!!」

上条「……、黙って聞いてればふざけるなよテメェ」

上条「どうやって風斬に学園都市が利用して天使に仕立て上げたのかは知らねぇ」

上条「けどな自分を利用されて、それで外からやってきたテメェに殺される?」

上条「ふざけるなよ、人の友達を何だと思ってやがる!!」


──────────────────────────



上条「涙子ちゃん、ヴェントと戦闘になったら間違いなく俺はアイツに殴りかかりに行くと思うんだ」

上条「まぁ、なんというかそこで涙子ちゃんは俺と同じようにヴェントに向かうのではなく、こっそり時間を遅くして欲しい」

佐天「はぁ、こっそり……ですか?モロバレだと思うんですけど」

上条「バレていても問題ない、俺が殴り込めばヴェントも対応せざるを得ないだろうからな」

上条「だから俺がヴェントに向かって駆け出したら時間を遅くして欲しい」

佐天「分かりました」

上条「あぁ、頼むぜ」



──────────────────────────


上条当麻がヴェントを目掛けて掛け出す。
佐天涙子はそれを見て少しヴェントから距離を離す。


上条「行くぞヴェント!!」

佐天「(!!……今だ)」スゥ…

上条「!!(来た、待ってろヴェント……俺たちがお前の幻想をぶち殺してやる!!)」


佐天涙子が時間を遅くし、上条当麻が矢のように加速しヴェントへ疾走する。
時の遅くなった世界で上条当麻は右手の拳を振り上げ──


ヴェント「ハッ、見え見えなんだよ!!クソガキの考える事なんてよ!!」


拳の先にヴェントは居なく──
すこし離れた佐天涙子の目の前に居て
ハンマーを佐天涙子に突いた。

佐天「──がっ……、う、うそ……」

ヴェント「チッ、やっぱ出力落ちてるわね」


げほ、と小さく咳をして血痰を道路に吐き出すヴェント
ハンマーを腹に突かれたことによって、くの字に体が折れ、道路に倒れる佐天涙子。


上条「る、涙子ちゃん!?ヴェントお前一体──」

ヴェント「あったま悪いわねー、この佐天涙子の能力が割れてる以上作戦なんて有って無いようなもんデショ?」

ヴェント「まぁこの佐天涙子の能力の全てを把握してるワケじゃないけどサ」

ヴェント「射程距離がある程度あるなら身を隠しておくべきだったわね」

ヴェント「げほっげほ、チッ……だが邪魔な佐天涙子はクリア──」


ヴェントが佐天涙子を目掛けて有刺鉄線が巻かれたハンマーを勢い良く振り下ろす。
反射的に上条当麻は佐天涙子の方へ駆け出すが


上条「待ッ────」



上条当麻は佐天涙子に振り下ろされたハンマーを止めることが出来なかった。
土砂降りの雨の中ヴェントの放った一撃が周辺のコンクリートを巻き込んだのか、辺りは灰色の粉塵が舞っている。
周囲の状況を考慮しても、あの一撃の中心点にいた佐天涙子が生きている訳が無かった。

──だが


上条「え……?」

ヴェント「なっ……!?」


上条当麻とヴェントは倒れている佐天涙子を見る……確かに彼女に攻撃が直撃した──はずなのに。
はずなのに、佐天涙子は先のハンマーの一撃を食らった様子は無かった。


ヴェント「(どういうコト……?私の攻撃は直撃した筈なんだけど。クソッ上条当麻の前でコイツを潰せばちょっとは揺さぶれたのに)」


そうヴェントは思考していたが、視界の端に何かが映る。

──ふわり、ふわり。

淡い光を放つ綿のような、優しい光がゆっくり夜空から舞っていた。


ヴェント「一体コレは……?」

上条「は、はは………」

ヴェント「ま、まさかこの堕天使──」

上条「はははは!!たまんねーな!!あぁ、そうさ!!不幸不幸って言ってるけど、これだけあれば十分に幸せじゃねぇか!!」

ヴェント「ナニを、何のコトを言ってんのよアンタは!」

上条「ははは、ヴェント……お前の相手は俺と涙子ちゃんの二人だけじゃないって事だよ!!」

ヴェント「ッ!!……、ハッ!!まるで後ろの化け物と協力してるみたいな言い方ね!」

上条「協力してるみたい、じゃねぇ。本当に協力してるんだ!」

ヴェント「ハッ、言ってろ!!」


そういうとヴェントは上条当麻へハンマーを振り上げる。
縦横にハンマーを振り回すと、3つの鈍器が生み出される。


上条「ッ!!(まずっ、避けきれな──)」


とっさに右手を構えた上条だが──


ヴェント「うぐっ……、げほっ──!!」


ヴェントが不意に体を折り曲げたと思ったら、その口元から血が爆発した。
制御を失った三つの鈍器がその場で爆発し、轟音と共にヴェントの体を後ろに吹き飛ばす。


上条「ヴェント!!」

ヴェント「……、ナニ馬鹿みたいな声を上げてるのよ」

ヴェント「コレはあんたら科学サイドが仕掛けたことでしょう?」

ヴェント「この学園都市で魔術を使うとその術師に魔術の循環不全をさせるってトコロかしら」

上条「馬鹿野郎、そこまでして戦う理由があるのかよ!!」

ヴェント「ハッ、人を殴り殺そうとしようとしてるクソ野郎が白々しいセリフを吐いてんじゃないわよ!!」

ヴェント「ゲホッ、ゲホゲホッ──」ボタボタ

上条「……、レスキューが必要なんじゃねぇのか!?」

ヴェント「ふざけんじゃ、ないわよ……」

ヴェント「私はもう二度と!!科学なんぞに身を預けない!!」

上条「──もう、二度とだって?」

ヴェント「……、私の【弟】は科学によって殺された」

佐天「────!」ピクッ

上条「なに?」


ヴェント「遊園地のアトラクションが誤作動を起こしてね、私は弟と一緒にぐしゃぐしゃの塊になった」

ヴェント「アトラクションは科学的に安全が保障されていた、全自動速度管理プログラム!そんな頼もしい単語ばかり並べて!!」

ヴェント「けど、実際には何の役にも立たなかった!!──弟は……、弟は……」キッ

ヴェント「だから科学が人を救うなんて信じられない!!」

ヴェント「そこの【人形】も同じよ!!ナニが人を守ってるよ、その裏でしっかり破壊してるじゃない」


【弟】【人形】……。


ヴェント「驚いたァ?この私が戦ってる理由をきいてサ!!神の右席を利用しても、科学を潰したい──科学を憎んでるの!!」

──イデ、スヨ


ヴェント「あぁ?」







佐天「その……憎しみは……ただの勘違いですよ……と言ったんです……」


佐天涙子はヨロヨロ立ち上がり、咳をしながら弱々しく──


佐天「科学が弟を殺した……?あたしも弟がいますけど……、もし……あなたのような状況になって弟が死んだとしても──」

佐天「──あたしは科学を憎んだりなんかしない」


フラフラと揺れながら、ヴェントに向かって言う。
その表情は陰になっていて見えないけれど
ヴェントは彼女が真っ直ぐ力強く自分に視線が向いている事が分かった。


ヴェント「──ッ!!テメェに何が分かる!!実際に目の前で肉親が死んだ経験も無いくせに!!」

佐天「それでも、です……、言い切れます──あなたは……科学を憎むんじゃなくて……弟に感謝するべきです」

ヴェント「ナニを言って──」

ヴェント「弟は──弟は!!病院で私達二人の分の輸血が一人分しかなくてッ!!それで弟は何て言ったと思う?」

ヴェント「お姉ちゃんを、助けてくださいって!!そういったあの子は見殺しにされたんだ!!」

佐天「──、そのお医者さんも初めから死なせたくなかったに決まっているでしょう……」

佐天「死にかけてた弟さんは、お姉ちゃんを助けてくださいって……、命がけで頼んだんでしょう……?」

佐天「それなのにあなたは……そのことを分かってる癖に……、その事実を無視して──無視して無視して無視して」

佐天「無視して──科学を憎んでるフリをしてるんです。」

佐天「本当は……、弟さんに感謝して、私の命を救ってくれてありがとうって言わなきゃいけないのに」

ヴェント「──黙れ」

佐天「弟さんの願いを聞いてくれてありがとうって、お医者さんにも──その【科学】にもありがとうって」

ヴェント「黙れっつってんだよおぉぉぉぉぉぉぉッ!!」


激昂のあまり持っていたハンマーをがむしゃらに振り回す。
今までのように計算して振り回しているわけではなく
ただ乱雑にハンマーを振り回している。


佐天「今、この時この瞬間にあなたの科学への憎しみを止めてあげます」


乱雑に振り回されているハンマーを掻い潜り、佐天涙子はヴェントへと掛け出す
それをサポートするように──
上条当麻はヴェントへの牽制として右手でヴェントの魔術である空気の鈍器を消し去る。


ヴェント「たった10歳にも満たない子供がッ!!死に掛けて朦朧としている状態で目の前に傷ついた肉親がいたら!!」

ヴェント「ソンナ状態で決断しろと迫られたら!!誰だって首を縦に振るに決まってンだろぉぉぉ!!」

ヴェント「小さな子供の意見なんて、そこに価値なんてあるわけないじゃない!!」

佐天「価値ならあるじゃないですか」


乱雑に振るわれているハンマーを時を遅くして避けたのか、いつの間にか至近距離に彼女が居た。


ヴェント「ッ!!」








佐天「──だってあなたは生きてるんだから」


サー、と雨の振る音だけが聞こえてくる。
先ほどまでの何かを破壊するような音は聞こえない。


佐天涙子の右手はヴェントのハンマーを掻い潜り、彼女に届いた。
右手に触れたヴェントは近づかれた佐天涙子に吃驚した表情で固まっている。

──終わったのだ、この学園都市を襲った未曾有の大混乱が、佐天涙子という中学生の女の子一人の右手によって。



上条「(終わった、か……そうだインデックスのほうは──)」

上条「(ホントにヤバかったら御坂から電話がくるか……。一先ず──)」

上条「涙子ちゃんの応急手当、だな」


佐天涙子は一見外傷が無いように思えたが、先ほどハンマーで殴られた腹部のほうが気になる。
ヴェントを掴んだまま肩で息をしてて一言も喋らないし……。
もしかしたら結構ヤバいんじゃ──

──と、思ったその時。


ガン!!
という音と共にヴェントがいた辺りのコンクリートが砕け、灰色の粉塵が舞う。


上条「なに!?」


灰色の粉塵が邪魔でヴェントと佐天涙子の姿が確認できないが──

次第に晴れていく灰色の粉塵に一つ、シルエットが多かった。


上条「誰だ!!」



??「失礼」

??「この子に用があったものでな。手荒な真似を避けるため目を眩ませてもらったが気に障ったかね」

上条「誰だって言ってんだよ」

アックア「後方のアックア。ヴェントと同じく神の右席の一人である」

アックア「心配しなくともいい、兵の無駄死には避けるべきだ。だから佐天涙子とかいうこの小娘に手を出す気はない」


上条「涙子ちゃん!!」

佐天「と、当麻さん……?」

アックア「そこの【人形】と戦うのは避けたほうが良いだろう。少なくとも準備を整えるまではな」

佐天「人形人形って!!あそこに居るのは当麻さんの友達です!!」キッ

アックア「ふむ、それは失礼した。だが佐天涙子、あれは学園都市が……、否──アレイスターがアレイスター自身の為に作られたモノであるぞ?」

アックア「形こそ人に酷似しているが中身は全くの別物である、それは【人形】なのではないのか?」

佐天「……、例え人形と世界中の人が言ったとしても!!あたしだけは!!人形と認めるわけにはいかないんだ!!」


佐天涙子が風斬氷華のコトを人形ではなく人間として扱うには訳があった。
それはかつて彼女が救うことができなかった2万人のうち約半分ほど殺された妹達の存在がある。

学園都市の絶対能力進化という実験の為に製造され
殺されるためだけに作られた──人形。

その妹達の友達である彼女自身が風斬氷華を人形として扱うことは、妹達の否定に他ならないのだから。


佐天「とりあえず、アックアさん……ヴェントを離してください」

佐天「まだヴェントには言い足りないことがあります。彼女の憎む科学なんて幻想と──」




アックア「──幻想か、それは佐天涙子、貴様の右手の事であろう?」

佐天「──な……?」

上条「ゴチャゴチャ言ってねぇでヴェントを離せ!!」

アックア「学園都市で昏睡している人々を助ける方法でも聞くつもりかね?」

アックア「それともここで我輩がヴェントを離したとして何になる、学園都市に身柄を引き渡したら間違いなく処刑だな」

上条&佐天「ッ!!」

アックア「どの道ヴェントはもう天罰術式を使えん。昏睡した人々もそのうち目を覚ますであろう」

佐天「待って!!そんな納得できな──」


アックア「一つだけ教えてやる、私は聖人だ。無闇に喧嘩を売ると寿命を縮めるぞ」



ダァン!!という地面を蹴る轟音と共にアックアの姿は一瞬で見えなくなった。
前後左右上下どこへ行ったのかも目で追う事は出来なかった。
分かるのは桁違いの速さという事だけだった。


上条「(クソッ……、行っちまった……)」

佐天「(あたしの右手が幻想──?どういう事……?)」


────────────────────────────

アックアはヴェントを抱えて学園都市を出た。
ヴェントの霊装が破壊されたことによって学園都市の人々は次第に目を覚ましていくだろう。


アックア「嫌な世の中だ」


ピピピと鳴る音源を探ると、アックアのポケットに入っていた携帯電話には見慣れた番号が羅列してあった。
憂鬱そうな表情を見せ、アックアは携帯電話の着信に応答する。


アックア「テッラか」

テッラ『えぇそうですよ、左方のテッラです。そちらのほうは終わりましたか?』

アックア「ヴェントがやられた。今回収して学園都市外周部の機動隊を下げさせた所である」

アックア「我々の被害が七割を超えたため上条当麻への追撃及び学園都市の攻略は一時中止させた」

テッラ『ご苦労様です』

アックア「叱責はなしか」

テッラ『あなたや、ましてあのヴェントに対して悪意を向けてどうするのです」

テッラ『まぁもっともやられたのなら霊装のほうも潰された可能性が高いですけど』

テッラ『して、今回上条当麻【のみ】の殺害を依頼してあったと思うのですが』

アックア「あぁ、そうだな分かっている。標的は二人に変更だ上条当麻と佐天涙子のな」

テッラ『にしても佐天、ですかー学園都市もかなり厄介なモノを用意したものですねー』


アックア「そっちの方は放っておいても良さそうであるがな」

テッラ『と、いうと?』











アックア「──佐天涙子の右手の能力は間も無く消滅するであろう、ということだ」



学園都市の未曾有の大混乱は幕を閉じた。
しかしそれは【神の右席】の始まりに過ぎなかった。

──突然世界中でローマ正教徒達による反科学デモが起き始める。
そこであたしは久々に力の無さに悔しさを覚えることになる。



ヴェントが攻めてきた次の日から、あたしは右手の能力を失っていた。

20日に復活してたとな!?結構前ですね。
確認遅くて申し訳ないです。

次回からテッラ編始まるんですけど、かなり急展開ですので注意してください(何を)
もうちょっとヴェント編長くする予定でしたがバッサリカットしちゃいました、ごめんねヴェントさん。

それではおやすみなさい。


──10月──

佐天「ふんふふーんー♪」

初春「随分とご機嫌ですね佐天さん」

佐天「ふっふっふー、そうご機嫌なのだよ初春くーん」

初春「はぁ、あまり聞きたくないんですけど何かあったんですか?」

佐天「分からないのかね初春君!!」

初春「??」

佐天「こないだの侵入者騒ぎでッ!!中間試験がなくなったのだぞ!!これが嬉しくなくて何なのだー!!」

初春「は、はぁ……、でも佐天さん」

佐天「んー?」

初春「中間試験が無くなったって事は、期末試験で全ての成績が決まるから寧ろ喜ばしいことではないと思うのですが」

佐天「へ?」


初春「単純に考えて中間試験分の範囲も含まれての期末試験ですから……」

佐天「…………。」

初春「今からちょくちょく勉強しとかないと不味いんじゃないですかね」

佐天「は、はは……」

佐天「初春さん……いや初春様……」

初春「まぁ佐天さんが入院してた分のノートくらいは見せてあげますから安心してください」

佐天「初春ぅ~やっぱ持つべきは友よね!!さすが今日のパンツはクマちゃんなだけあるね!!」

初春「さ、佐天さんっ///……もういいです!!ノート見せてあげないっ!」

佐天「えぇ~!!そんなー初春んー謝るからーごめんねごめんねー、あははー」


──学生寮──


佐天「……、はぁ」


溜息をつく
幸せが逃げてしまうから溜息なんかしちゃダメですよと当麻さんに言ったのを思い出す。
あぁあれはもう2ヶ月前だっけ──


佐天「はぁ……流石にこれは溜息が漏れちゃうよね……」ピト


彼女の右手には毎朝お世話になっている目覚まし時計。
その目覚まし時計は一定の間隔で時刻を刻んでいく正常な時計だ。

その正常な時計こそ異常だった。
──佐天涙子の右手は対象の大きさ、複雑さにもよるがこの程度の時計なら1分ほど時間を静止させることが出来る。


佐天「やっぱ出来ない……。あの日以来能力が使えない──」


ヴェントが学園都市に攻め込んできた次の日能力を使おうとしたところ、何も起きなかった。
時間を遅くさせるどころか、時を止める及び範囲指定の時止めも使うことが出来ない。

少し前に右手の事に気付く直前に能力の使用が制限されていたことがあったが
それは入院による体力の低下が直接的な原因だったと思う、それに

あの時は制限されていたとはいえ、少しは能力が使えたのだから。


佐天「──無能力者、か……」

佐天「こんなことを誰に相談したら良いんだろう?」

佐天「あたしが時を止める能力を持っていたことを知っている人自体が少ないし……」

佐天「当麻さん……はダメか、当てにならない。だとすると御坂さんしか居ないよね」ピピピ


佐天「あ、もしもし御坂さんですか?夜分遅くに申し訳ないんですが……少し相談があるんです」

御坂『あー気にしなくていいわよそんな事ーで、何かあったの?』

佐天「ちょっとあたしの能力についてなんですが……」

御坂『……、そうねぇ……今から会えないかしら?』

佐天「え、今からですか?」

御坂『まぁ明日でもいいんだけど、まだ完全下校時刻になってないしね』

佐天「分かりました、じゃあいつものファミレスでお願いします」

御坂『オッケー、じゃあね』



佐天「っと……ちょっと厚着していこうかな」


さーて、何着て行こうかなー
この前セブンスミストで初春と一緒に買ったノルディック柄のニットワンピにー
デニムのショートパンツとーうーん……。

あ!そうそうブラックのナウシカブーツ買ったんだった♪



トットットッと学生寮をオニューの服で景気良く佐天涙子だが


佐天「ふー、無理に明るくしても……なぁー」

佐天「あれだけ憧れてた超能力者から一気に無能力者、か……」

佐天「──ん?あぁ……」


佐天涙子が見上げた先には飛行船が有り、ソコには毎日のニュースが流れている。
そこには世界中で反科学デモを行っているローマ正教徒達が映されていた。


佐天「──科学的超能力開発機関である世界最大の宗教団体ローマ正教ねぇ……」


魔術の存在を知っている自分だからこそ、あのニュースが嘘を言っているのだと理解できるが
果たして無能力者で魔術について全く知らない自分が居たら……、あれを信じでしまうのだろう。


??「そう、そのローマ正教についてお話があるのです」


いつの間にそこに居たのだろうか
スーツを着て柔和な笑みを浮かべた自分より少し年齢が上の少年が佐天涙子の後ろに立っていた。


佐天「!! あなたは一体?」

佐天「ていうか何時からソコに」


??「まぁ自分のことは特に気にしていただかなくて結構です」

??「そうですね、しいて言うなら統括理事会の関係者とでも言っておきましょうか」

佐天「統括理事会の関係者があたしみたいな中学生に一体何の用ですか?」

??「そう警戒しないで頂きたいものですが、まぁこの状況じゃ警戒するなってほうが無理な話ですよね」

佐天「それで、一体何の用なんですか?」

??「そうですね、初めにお話したローマ正教に関することで統括理事会長から貴女に依頼があるようです」

佐天「依頼って……?」

??「いま世界中でローマ正教徒達によるデモ活動が行われていることはご存知ですよね?」

佐天「はぁ……まぁこれだけニュースでやっていれば」

??「そこで騒ぎの中心点であるフランスに飛んで欲しいんです」


佐天「は?フランス??あたしパスポートとか持ってな──」

??「極秘裏に行って頂く形になりますのでパスポートは不要です」

佐天「いやいやいやいやいや、あたしなんかがデモ活動を止めるなんて──」

??「今起きているデモ活動が、とある人物によって起こされているとしたら?」

佐天「へ?」

??「【神の右席】である【左方のテッラ】という人物が今回の突如起こった世界中のデモ活動の犯人です」

佐天「!!──神の……右席……」

??「はい、先日の学園都市へ侵入したヴェントの仲間でありローマ正教の秘密兵器です」

??「自分も噂程度にしか聞いたことがないので相手がどういった【魔術】を使うのかは分かりませんが」

佐天「魔術ってあなたは──」

??「自分についての素性はとにかく明かせないのでその質問にはお答えしかねます」

佐天「……、それであたしはフランスに飛んでどうすればいいの」

??「現地に科学サイドではなく魔術サイドの人たちを用意させてますので、そこでお聞きください」

??「他に何か質問はありますか?」

佐天「あっ、もう一つだけあります──」

佐天「あたしこれから御坂さんとファミレスで合う予定だったんで、御坂さんにお断りの連絡を代わりにして置いてください」


登場からずっと柔和な笑みを崩さなかった男が、御坂という単語を聞いただけでその笑みが崩れる。
ていうか焦っている。


??「みみ、御坂さんですか……、はは……わかりました……い、いや待てよ……」ブツブツ


ただこちらとしては御坂さんにファミレスでの件を断る旨を伝えてくれさえすれば構わないのだが。
ブツブツ言いながら焦った表情の男は笑顔になったと思ったら急に焦った表情を浮かべたりと急がしそうである。


佐天「あ、あの……それでフランスにはいつ行くんですか?明日とかなら御坂さんに断りの件必要ないんだけど」

??「あっ、そ、そうですね!!フランスには【今から】行ってもらう事になってます」

??「車も準備してあるのでご安心ください」


男が指差す方向には停車しているいかにも、な黒塗りなワゴン車がとめてあった。
そのワゴン車に向かって歩き出そうと思ったが──。


??「あ、少し待ってください、ちょっとこちらの不手際で数分ほど待っていただかないと困るんです」

佐天「ん?すぐには行けないんですか?」

??「え、えぇ……あなたから頼まれた任務を遂行しなければならないので」キリッ

佐天「は?」

??「では少々お待ちください、飛行機までの案内人はサラシを撒いた女の人がくるのでそれを待っていてください」


そういって男は少し離れたところで携帯電話を取り出して誰かにかけ始める。
会話はあまり聞こえないが、先ほどの男は電話先の相手にかなり丁寧に頼み込んでいるようだ。

ていうか聞こえてくる会話にショタとか小学生の男の子とデートとかあるんですけど。


──数分後──

??「こんばんは紹介されてるとは思うけど私が案内人よ、さぁ行きましょうか」

佐天「あ、はい……(本当にサラシ撒いてる女の人キター)」

??「ま、といっても車にのって貰って空港まで案内するだけだから別に私じゃなくても良かったのだけれどね」

佐天「は、はぁ……」

??「頼まれちゃったししょうがなくね。さ、車に乗りましょ」


そういって車内へと移動する。


佐天「あ、お姉さんが運転するんじゃないんですね」

??「そうね、別に私が運転しても良いんだけれど」

佐天「というか今からフランスに行ったとして到着は何時になるんですか?」

??「えぇっとちょっと待ってね……今資料を見るわ」ガサゴソ



??「あら……?お嬢ちゃん残念ね──」

佐天「へ?何が残念なんですか?」

??「フランス到着はおおよそ一時間後よ、時速7000Kmでる飛行機で出発ですって」

??「乗り心地は多分最悪でしょうから今から物を食べるのはよしといたほうがいいわね」クスクス

佐天「な、な……7000Km……」

佐天「ふ、不幸だ……」


──学園都市・第二十三学区──


??「さぁ着いたわ、あそこにあるのがアナタが今から乗る時速7000Kmに到達する飛行機よ」

??「まぁもっともあれを飛行機と呼ぶのかは疑問なんだけれど」

佐天「……ゴクリ」

??「まぁ頑張ってね、それとえーっと何々?ふーん」

佐天「何ですか……?」

??「あったあった、これか。アナタ飛行機に乗ったらコレを着用してね」

佐天「リュック??何ですかこれ?」

??「ん?パラシュートじゃない?使い方は知らなくても勝手に開くようになってるから心配しなくてもいいわよ」

佐天「パ、パラシュートォォォォ!?」

??「ま、諦めてさっさと飛行機に乗った乗った」


佐天「第二十三学区かぁ、大覇星祭を思い出すなぁ」

佐天「オリアナさんどうなったんだろ──それにしても……」

佐天「乗客はあたし一人……言われるがままにパラシュートまでつけて……」

佐天「時速7000Km……一体どんな」ガタン

佐天「うおっと……滑走路へと動き出した──ん?」

佐天「ちょっと待って……、あたしって今右手の能力ないんじゃ──」


滑走路へ入り加速し始めた機内で佐天涙子はそれ以上の言葉を紡ぐことは出来なかった。


──一時間後のフランス──


??「お、ホントに降ってきたのよ」

??「親方空から女の子がーってか?」

??「まぁ何にせよ早めに回収してC文書の調査に戻らないといけないのよな」



佐天「イヤァァァァァァァァァ怖いィィィィィィ」


??「へいオーラーイ、オーラーイ」


佐天「どいてくださぁぁぁぁぁぁぁい」ゲシッ


??「ぎゃぁぁぁぁぁ」

ドサァァァァ

佐天「いてて……、着地できた……ん?」

佐天「足元に居るこのクワガタみたいなおじさんは誰だろう」

??「おじさんじゃないのよ……、天草式の建宮斎字っていうのよ」

佐天「あ、もしかして現地の案内人って言う」

建宮「そうなのよ、これから佐天さんには我々天草式の調査に手伝ってもらうのよ」

佐天「は、はぁ分かりました、でまず何をすればいいんですか?」

建宮「まず……どいて欲しいのよ……」

書き溜め尽きるの早すぎワロタwwwwwwww
テッラ編に関しては展開を考えてあるのである程度は書くのは早そうですが。
時間遅延って多分1/10くらい?時間静止は1/100くらいですかね?単純に考えすぎてるんでかなり矛盾が(略)

それではおやすみなさい。

能力名ですか、いやぁ何も考えてませんでした。
そのうち考えておきます。
以下数レスですが失礼します。


──────────────

佐天涙子が降ってきた場所では少々目立ちすぎるとの事なので
建宮に連れられ路地裏へと足を運ぶ。


建宮「さて、お嬢ちゃんが佐天涙子ちゃんなのよね?」

佐天「あ、はい」

建宮「わざわざフランスにまで来てもらった理由は分かるか?」

佐天「いえ、それが……なんとなく程度にしか……」

建宮「まぁそれは想定の範囲内なのよ、落ち込むことはない」

建宮「まず、世界各地で起こっている暴動は【C文書】という霊装による魔術によって引き起こされているのよ」

佐天「は、はぁ……」

建宮「その【C文書】って霊装を操ってる奴がここ、フランスのアビニョンにいるってことなのよ」

佐天「えっと……つまりその霊装を破壊するのが──」

建宮「そう、今回の目的でもある」

佐天「目的“でも”って事は他になにか?」

建宮「そのC文書を破壊するのには佐天さんの力を借りる訳だけれども」

建宮「その霊装を操ってる奴も懲らしめないといけないわけよ」

佐天「あっ、なるほど」


建宮「アビニョンに居るのは五和と俺の二人だけだから心もとないと思うが頼むのよ」

建宮「まぁ五和は他に仕事があるんでこっちに合流はできそうにないのよ」

佐天「わかりました、でもテッラの使う魔術とかって……そのC文書以外に何か分かるんですか?」

建宮「──なんだって?」

佐天「いえ、ですから【左方のテッラ】の使う魔術が知りたいなぁって」

建宮「テッラ?お嬢ちゃん一体何を言っているのよ」

佐天「あ、あの?今回の事件の首謀者であるテッラについてですけど……」

建宮「事件の首謀者……だと?お嬢ちゃん一体どこでそんな情報を?」

佐天「えっと、学園都市であたしをここまで誘導した男の人が言ってましたけど……」

建宮「──なるほど、お嬢ちゃん」

佐天「へ?何ですか?」

建宮「助かった、礼をいうのよ」

佐天「え?え?……良く分からないんですけど」


建宮「俺たちはこの世界各地で起こっている暴動はC文書という霊装によって起こされていると特定はしたのよ」

建宮「だが、そのC文書を操っている奴はまだ不明。テッラなんて──」


ぶわっ、という音と共に路地裏の壁が崩れる。
建宮を狙ったのか、路地裏の壁が何者かの攻撃によって崩れたようだ。


佐天「建宮さん!!」

建宮「大丈夫なのよ、心配ない」


??「うーんちゃちゃっと終わらせて次に向かいたいところなんですが」


建宮「誰なのよ、影からこそこそ狙うなんて。ローマ正教徒か?」

??「まぁ違いは有りませんがどうせなら先ほど貴方が仰った名前で呼んで欲しいものですがねー」

建宮「なに──?」

テッラ「どうも、今回の暴動の首謀者の神の右席、左方のテッラです」

建宮「──へぇ……、俺の行動を嗅ぎ付けて始末しに来たって訳か?」

テッラ「面白い冗談ですねー。貴方みたいな異教の猿を相手にするのは三下のすること。私の目的は一つですよ」





テッラ「そこの佐天涙子とかいう小賢しい小娘を殺害しに来ただけです」


佐天「!!」

建宮「させると思うか?」

テッラ「別に抵抗してもらって構わないのですが、いささか私も予定があるんですよ」

テッラ「この後ちょっとした暇潰しに出かけなければなりませんのでねー」

建宮「はっ、つまり俺たちは暇潰し以下の相手って事か?」

テッラ「貴方がそこの佐天涙子を庇うならお相手しますけどねー。しかしその娘に庇う価値などありませんよ?」

建宮「あ?何を──」

テッラ「そうでしょう?“何の力も持たない”佐天涙子さん?」


佐天「──ッ!!どうしてそれを!?」


テッラ「アックアに聞きましてねー、貴女の能力についてとその限界について」

佐天「限界ですって?」

テッラ「おやおや。何も知らないのですか?自身の能力がどのようなものなのか」

佐天「…………」

テッラ「元々ですねー貴女の右手に時を止める能力なんか目覚めるわけがないんですよ」

佐天「──は?」


テッラ「しかし厄介ですよねー、御使堕しというモノは」

佐天「御使堕し……?」

テッラ「そうですよ御使堕しの影響で貴女はその右手に“時を止める能力”が身についてしまった」

建宮「なんだって──?」

建宮「あの術によってそんな事が起こりえるなんてありえないのよ」

テッラ「まぁ貴方達に詳しく教える義理も必要もないんで──」

佐天「それで!!どうしたらあたしの能力は元に戻るんですか!!」

テッラ「教えるとでも思いますかー?思ったのなら相当なお馬鹿さんですねー」

建宮「チッ、嬢ちゃんは逃げろコイツは俺がやるのよ」

テッラ「ほぉ、楽しませてくれると嬉しいのですが」

建宮「ハッ言ってろォォォ!!」


どこに隠し持っていたのか建宮は波をうっている剣を取り出し
テッラに思い切り振り下ろす──


テッラ「優先する。──剣を下位に、空気を上位に」


建宮が振り下ろした剣はテッラに届くことなく空中で止まった。
まるで何かの壁に阻まれたように。


テッラ「まぁアニューゼ部隊を数十人で互角以上の戦いをしたとしても一人ではこの程度でしょうねー」

テッラ「しかしながら貴方達が何十人居ようと相手になりませんがね、この左方のテッラは」

佐天「建宮さん!!」

建宮「何してるのよ!!早く逃げろ!!」

テッラ「逃げても構いませんよ。できるものならばですけどねー」

テッラ「さてと、そろそろ死にますか?佐天涙子──」

 PiPiPi

テッラ「む?……、はぁ……命拾いしましたね佐天涙子」

建宮「なに!?」

テッラ「思いのほか上条当麻がC文書のパイプラインの存在に気がつきましてねー」

テッラ「そちらのほうが厄介なので今回は見逃してあげますよ」

佐天「──ッ!!」

テッラ「幻想殺しと違って今の貴女は何の能力も持たぬただの小娘。いつでも殺せますしねー」

テッラ「では。またお会いしたときはよろしくお願いしますね」


言うが早いかテッラは足早に路地裏を去っていく。
しばらく剣を構えて警戒態勢をとっていた建宮だが、追撃がない事を確認し剣をおろす


建宮「──行ったみたいだな……」

佐天「そ、そのようですけど……」

建宮「で、アイツが言ってた能力が使えないってのは本当か?」

佐天「…………」

建宮「黙ってちゃ分からないのよ」

佐天「す、すいません!!…………」

建宮「いつから使えなくなったのよ?」

佐天「こないだ学園都市を襲撃したヴェントを撤退させた日以来……」

建宮「まっ、無いなら無いでいいのよ!元々天草式のメンバーと上条当麻で解決する予定の問題だったわけだし」ニカッ

佐天「で、でも今テッラが──」

建宮「魔術に疎い上条当麻だけなら多少危険かもしれないのよ」

建宮「でも今は魔術に詳しいさっき言った天草式の五和を付き人とさせてるのよ」

佐天「で、でも!!相手は訳の分からない魔術を使って──」


建宮「確かに危険ではある、だが俺たち天草式のメンバーは無理はしないのよ」

建宮「撤退するのが最善ならば撤退するし、勝ちに拘る阿呆ではないのよ」

建宮「それにアイツの魔術はある程度は分かったのよ」

佐天「あの時間だけで何か分かったんですか?」

建宮「あぁ、恐らく奴の魔術は物の優先順位を変更する魔術なのよ」

建宮「そんな魔術が使えるとはにわかには信じ難いが──」

??「おや、そこに居るのはブラザーではないですか。こんな所で何をしているのですか?とミサカは尋ねます」


佐天「えっ!?妹さん??どうしてここに──」

ミサカ「はぁ、それはこちらのセリフなんですけど……いいでしょう説明してあげます」

ミサカ「元々妹達は世界各地に調整のために散らばってますし、フランスにだって学園都市に協力している機関はあるわけで」

ミサカ「まぁその機関はフランスのアングレームに在るんですが、とミサカは補足説明をします」

ミサカ「あ、因みに検体番号は一三〇七二号です、とミサカはさらに補足説明をします」

佐天「あ、ある程度は分かったけど……それでもどうしてそのアングレームの機関からアビニョンのここに?」

ミサカ「あぁ単純な事です────」



──もうすぐこちらのアビニョン旧市街へ学園都市が侵攻を始めるからですよ。


佐天「なっ、学園都市が!?それでどうして妹さんが──」

ミサカ「そりゃ戦力としてでしょうね、とミサカは簡潔に答えます」

佐天「そんな……!!そんなこと──」

ミサカ「ですが先程も言ったようにミサカは治療中の身ですので実戦投下はまず無いでしょうが」

建宮「二人で話してるところ何やら悪いんだが、佐天涙子ちゃんこの娘は誰なのよ?」

佐天「あたしの友達です」

建宮「ということは、味方なのよな?」

ミサカ「……、まぁクワガタ頭の味方といえるのかは疑問ですが……味方です」

建宮「それで学園都市様はこのアビニョンを侵攻するってどういうことなのよ」

ミサカ「私には詳しく作戦が聞かされていないのでなんとも言えません、とミサカは少々落胆の色を見せながら答えます」

ミサカ「ですが、ここの宗教団体が国際法に触れる特別破壊兵器を生産してるとの事で私が呼び出されたと聞きました」

建宮「なるほどね……」

佐天「建宮さん!!あたし達も急がないと──」

建宮「そうだな、動くなら早いほうがいいのよ。行こうかお嬢ちゃん」

ミサカ「そうですね行きましょう」






佐天「へ?」


ミサカ「ん?とミサカは自分の行動に何か不思議な点があったのかとお尋ねします」

佐天「いやいやいやいや、妹さんは学園都市の機関で身柄を──」

ミサカ「心配要りません、ある程度の自由は保障されていますし」

ミサカ「それにブラザーがここに居るという事は何やら事情があるのでしょう?」

佐天「ま、まぁ……そうなんですけど」

ミサカ「なら戦力は多いほうがいいと思いませんか?」

佐天「──で、でも!!あたしは妹さんに傷ついて欲しくないし……それに治療中なんじゃ!!」

建宮「戦力は多いほうがいい、それには同意なのよ」

佐天「建宮さん!!どうして!!」

建宮「おい、そこのお嬢ちゃんは超能力が使えるのよね?」

ミサカ「はい、レベル3程度の電力使いです」

ミサカ「あと私はそこのお嬢ちゃんではなくミサカ一三〇七二号です、とミサカはクワガタ頭に突っかかります」

建宮「オーケーオーケー、了解なのよ。なら付いてくるのよ」

佐天「どうして!!いくら能力者だからといって──」




建宮「人数は多いほうがいいのよ、左方のテッラの魔術には穴があるのよ」


佐天「あ、穴?それは一体──……?」

建宮「それについては場所を移してから話すのよ。ここはもう直ぐ戦場になる」

建宮「移動しよう、今後について色々と考えなければならないのよ」

建宮「それでいいな?ミサカちゃんと佐天ちゃん?」

佐天「は、はぁ……」

ミサカ「イエッサーです、クワガタ頭」


──隠れ家的な喫茶店──

ミサカ「ほお……何やら物々しい雰囲気の喫茶店ですね、とミサカは辺りを見て言います」

建宮「まぁここは暴動に巻き込まれた人たちの治療所も兼ねているのよ」

建宮「多少アレな雰囲気は我慢して欲しいのよ」

佐天「……、それでテッラの魔術の穴って一体何なんですか?」

建宮「恐らくアイツの魔術は【光の処刑】だ、物の優先順位を選択できる魔術なのよ」

佐天「それはさっき分かりましたけど──」

建宮「そこで、だ。アイツは複数の物を選択できるのかって疑問なのよ」

佐天「あ……」

建宮「答えは恐らく出来ない。アイツには物量作戦が有効だろうのよ」

ミサカ「あ、あの魔術とか何言ってるんですか?頭沸いてるのですか?と、ミサカはクワガタ頭に冷めた目線を投げかけます」

建宮「──、そこでこのお嬢ちゃんなのよ。電力使いということなら攻撃パターンも複数あるだろうしな」

ミサカ「お嬢ちゃんじゃ──」

建宮「ははっ、すまんなミサカちゃん。つまりミサカちゃんと俺でテッラを追い詰める」

佐天「で、でもテッラは今何処に──」

建宮「恐らく教皇庁宮殿だろう。あそこにC文書があることは分かってるのよ」

建宮「今は暴動の所為で教皇庁宮殿に近づくのは難しいが、学園都市が侵攻を開始した混乱に乗じて行くのよ」

佐天「な、なるほど……そ、それであたしは何をすれば──」

建宮「能力が使えないってのなら戦場に連れて行ったら死ぬだけなのよ。だからここで待ってて欲しいのよ」

佐天「──そ、そんな!!あたしはテッラにまだ聞きたいことがっ……」


建宮「厳しいことを言うかもしれないが、お嬢ちゃんがテッラと戦うとなったら何ができるのよ?」

佐天「ッ!!それは……」

建宮「そういうことなのよ……フランスまで来てもらって何も出来ないのはこっちとしても心苦しいのよ」

建宮「けどわかって欲しいのよ、テッラから聞きたいことは身柄を拘束してからでも遅くは無いのよ」

ミサカ「少々良いでしょうか?とミサカはクワガタ頭に問いかけます」

建宮「何なのよ?」

ミサカ「学園都市の侵攻の混乱に乗じるなら急がないと行けませんね」

建宮「──ッ!?まさかもう直ぐ始まるってか!?」

ミサカ「はい、まもなくというか後8秒後ですけど」


言うが早いか、遠くのほうで銃声が聞こえ始めた。
暴徒達による銃声でないと確信できるのは
暴徒達が銃を所持してはいないという情報があるからだ。


建宮「クッ!!始まったのか、早いのよ……」

建宮「行くのよミサカちゃん!!作戦は向かいながら話すのよ!!」

ミサカ「最終確認ですブラザー、とミサカはブラザーへ向かって質問を投げかけます」

佐天「ッ!何ですか?妹さん」

ミサカ「このクワガタ頭のことは信用してもいいんでしょうか?」

佐天「大丈夫……あたしが保障する……」

ミサカ「了解しました。ブラザーはそこで待っていてください、すぐに暴動を止めてきますから」ダッ


喫茶店から勢い良く出て行く建宮と妹達のミサカ一三〇七二号の二人。
彼らはこの後教皇庁宮殿へ向かい、テッラと対決するのだろう。
あたしは…………。

何の能力を持たないあたしは唯の中学生。
能力を持つ前の中学生活はどうだったんだっけ──……。

毎日の暮らしの中では他の中学生と変わらない。
授業で寝ていれば怒られて、悪戯をすれば叱られて、良い事をすれば褒められる。

学校へ行き勉強したり、友達と一緒にショッピングしたり、ゲームセンターで遊んだりする、そんな中学生。
一日は早く、夜の眠りは平和で暖かい。

時を止める能力も、右手の事もまだ知らなかったから──。
今も友達の初春とどこかで遊んでいたのだろうか。

でも知ってしまった。右手の能力も。
今世界で起こっている暴動がテッラによって起こされていることも!!


──いいのか?こんな所で無力を嘆いていて!!


佐天「──そんなのっ!!わかん、ないよ!!」グスッ

佐天「行ってもあたしには何も出来ないんだから……」

佐天「お願い!!お願いだから──今だけでもいいから!!」


佐天涙子はテーブルにおいてあったコップの中の水を右手へと垂らす。


佐天「お願いします……神様どうか……あたしに力を──」


泣きながらお願いしても……、
右手へ垂らした水はそのまま右手をつたって床に落ちるばかり。
それを見て更に涙が出てくるばかり。

右手に能力は──ない。


佐天「うぅ……どうしてっ!!どうして……」

佐天「どうして……」


涙する日本人を見て喫茶店の人はどう思っているのだろうか。
暴動が怖くて泣いている中学生にしか見られていないのだろうな、と心のどこかでそう思う。

しかし泣いている小娘のあたしに流暢な日本語で話しかけてくる男が居た。


??「どうして泣いてるんだい?お嬢ちゃん……怖いのか?」


あまりに流暢な日本語だったため吃驚して話しかけてきた男をちらりと見る。
どうやら日本人のようだ、パッっと見た感じはワイルドという言葉がぴったりな風貌の男だった。


佐天「グスッ……おじさんは一体……」

??「まぁ俺は旅するコンサルタントだそんな気にすることは無い」

??「ただ俺は世界に足りないものを示すだけだ」

??「そんなわけでふと立ち寄った喫茶店で泣いてる日本人中学生が居たら話しかけるしかないだろう」

??「それで、どうして泣いていたんだ?」

??「よけりゃ俺に教えちゃくれないか」


佐天涙子は走っていた。
先ほどの喫茶店を飛び出し、一つの目的の為に。

さっきの男に諭された訳ではないだろうが、きっかけには、決意には、決断するきっかけにはなった。

──力なんか関係ない。したいことを決断することが大事なんだよ、お嬢ちゃん今君はどうしたいんだ?

息を切らしながらも教皇庁宮殿へ向かう佐天涙子の手には金属バットが握られている。


佐天「はっはっ、うー、真っ直ぐ教皇庁宮殿へ向かおうにもーぐうー」


無理も無い、今のアビニョンは学園都市の駆動鎧が暴徒達を抑えるためにそこら中にいるのだ。
彼らの目に留まれば佐天涙子も暴徒達の例に違わず銃で撃たれて気絶させられるだろう。

それに混乱している暴徒達にも気をつけないといけなかった。
日本人であるというだけで、彼らは襲い掛かってくるのだから。


佐天「何とか──何とか路地裏を使ったりで向かってるけど!!」

佐天「くそぅ……距離的にはそうでもないのに……!!」


佐天涙子の見つめる先には教皇庁宮殿がある──。

それはゴッ!!という轟音と共に爆発した。


──────────────────────────────

ゴッ!!という音と共に教皇庁宮殿が爆発したようだ。
こちらにまで衝撃が伝わってくる。

建宮「あれは!?そうか学園都市の攻撃か!!」

ミサカ「話には聞いたことがありますが、恐らくアレは大陸切断用ブレードでしょうね」

建宮「そうか……。もう一度作戦を言うのよ!!」

建宮「俺が前衛として剣を使ってさっき教えた特徴のテッラと言う男に切りかかるのよ」

建宮「それにミサカは俺の剣に電気を帯びさせて欲しい!!」

建宮「時には直接電撃や電撃の槍もしくは周りの建物を壊して牽制してもらってもいいのよ!!」

ミサカ「何回も確認するような作戦ではありません。一度で十分です、とミサカは自身の記憶能力の高さをアピールします」

建宮「そりゃ、いい。ははは……来たぞアイツがテッラだ」



テッラ「チッ、C文書をクソ猿に壊された後にまたクソ猿ですか面倒ですねー」


建宮「おいおい、随分とボロボロじゃないのよ、どうしたのよその顔の痣は」

建宮「上条当麻にやられた後か?なら一気に行かせて貰うのよ!!」

テッラ「ドイツもコイツも舐めてくれますね!!異教のクソ猿共がぁぁぁぁ!!」


ブワッとテッラから白い粉末の小麦粉が舞い、それはギロチンの形を成した。
そしてそのギロチンを容赦なく建宮へ横に薙ぐ。

だが建宮はコレをジャンプして避け、波をうっている剣をテッラに振り下ろす。


テッラ「無駄なんですよぉ!!」

テッラ「優先する。剣を下位に、人肌を上位に──」


余裕を持ってテッラは対応する。
剣はテッラに傷一つつけることが出来ずに止まる、が。


テッラ「ぐ、がぁぁぁぁ!!な、何を!?」パチパチ


テッラ「こ、これは……電気!?そんなものでこの私を攻略した気になっちゃ困りますよ!!」

建宮「はっ、そう言ってられるかな?行くのよ!!左方のテッラ!!」

テッラ「そんな小細工が!!通用するほど神の右席は甘くないんですよ!!」


先ほどと同じように、建宮は剣を振り下ろす。


テッラ「優先する。──剣を下位に、外壁を上位に」

テッラ「ふん、電撃の魔法を帯びた剣をわざわざ受けなくても──」


テッラはそれ以上の言葉を発することが出来なかった。
正確にテッラ自身の体に容赦なく銃撃による攻撃が来たからだ。


テッラ「ぐっ……(何ぃ?この辺にあの学園都市の駆動鎧は居ないはずですし、それにこれは──)」

テッラ「(ゴム弾?誰が──)」


建宮と対峙した時を思い出す。
傍に佐天涙子じゃなく、他の小娘が居なかったか?


テッラ「がぁぁぁぁぁぁ!!舐めるなよクソ猿がぁぁぁぁあぁ!!」

テッラ「(そうか、この電気はあいつの魔術じゃなく──)」

テッラ「(居た、あの小娘の魔術によるものですね?何故マシンガンを持っているのは疑問ですが)」


─────────────────────────

目指していた教皇庁宮殿が爆発した。
あれは一体全体どういうことなのだろう?

考えていてもしょうがないので佐天涙子は走っていたが。
その時視界の端で青白い閃光が見えた気がした。


佐天「!?妹さんの電撃!?あっちか──」


先ほどの路地裏から少し離れた少し広めの道路にテッラと建宮は居た。
テッラたちは佐天涙子に気付いてはいない様だ。
それから車の陰からマシンガンを構えたミサカが少し見えている。


テッラ「先ずはそこの面倒な小娘を攻略するとしましょう!!」

テッラ「優先する。──車を下位に、小麦粉を上位に」


ミサカが身を隠していた車がバラバラに吹き飛ぶ。
ミサカは吹き飛んだ車を確認後、直ぐにその場を離れようとするが、小麦粉のギロチンが迫り──。


ミサカは一瞬だけ、走馬灯と呼ばれるものを見た気がした。
実験のこと、佐天涙子との出会い、上条当麻との出会い。
他の中学生と比べたらはるかに少ない人生経験。




その走馬灯を見ている視界のなかで────

────確認したのは、切り離されて舞い上がった、自分の右腕。


テッラと呼ばれた男が笑っている。
男の武器であると思われる、白いギロチンのような武器が崩れゆく自身に迫ってくる。
その視界の端

──あぁ、どうして
どうして貴女がここに居るのですかブラザー

そう言葉を発しようとしたが崩れいく体ではその言葉を発せず、認識するだけで精一杯だった。

今日はコレにて……、おやすみなさいです。
次は水曜日辺りにでも。

電車で座って寝ていたら目の前の女子高生に頭突きされました。
以下テッラ編終幕へ。


テッラ「ふん、止めです──」

建宮「うおおぉぉぉォォォ!!」


ミサカの右腕が切り飛ばされるのを確認後、建宮はテッラに飛び掛る。
矢のような速度でテッラに駆け、波打つ剣をテッラへと振り下ろすが


テッラ「まったく、アナタは次に始末してあげるというのに、死に急ぐとは笑えますねー」ドカッ

建宮「がっ、ハッ──」


振り下ろされる剣を体をひねり軽く避け、建宮へ踵落としの要領で蹴りをかます。
建宮はその蹴りを受け、二、三度地面をバウンドし、沈黙する。


テッラ「所詮はクソ猿の悪知恵といったところですか、私には遠く及びませんよ」

テッラ「では、死んでください────」

カラン

テッラ「!?」バッ


──感じたのは違和感、それも建宮やミサカのいる前方からではなく、後方から

振り向けば、自分が殺害しようとしていた上条当麻ではないほうの標的である
佐天涙子が立っていた。


ブラックのナウシカブーツに、デニムのショートパンツそしてノルディック柄のニットワンピを着ている彼女が立っている。
彼女の足元には金属バットが落ちているが、どうみても佐天涙子、彼女だ。
だが──


テッラ「な、何なんですか貴女は!!」

佐天「────────。」

テッラ「だから何だと聞いているのですよ!!貴女のその【左腕】と【頭上の輪】は──!!」


異様。
その言葉に尽きるだろう。

先の服装に、長いストレートの黒髪。
ここまではテッラの知る彼女と同じ。

しかし

彼女の双眸からは真っ赤に輝く涙がとめどなく流れ落ち、地面に触れると同時に消えていく。
彼女の頭上には半透明の……言われなければ気づかない程度ではあるが、半透明な輪が存在し──

──そして彼女の左腕は

鈍い灰色の光を放つ、羽根に覆われていた──


テッラ「(何だ、何なんですかコレは──!!これではまるで──)」

テッラ「(報告にあった学園都市の天使のようでは──!!)」

テッラ「ば、馬鹿な!!貴女の右手の能力はただ単純に 御使堕しによって神の力が流れてしまっただけの筈!!」

テッラ「こんな結果になる訳が──!!」

佐天「────────」フラァ

テッラ「(来る──!!)」

テッラ「なっ……?」


確かに彼女はこちらへ向かって一歩を踏み出したはず。
しかしその一歩目
その足が地面に触れる寸前に彼女が消えた。


テッラ「一体何ですかこれは────!!」

テッラ「(目は離していなかった。しかし佐天涙子は消えた?まさか……まさか……)」


テッラは恐る恐る後ろを振り返る。
そこには血の海が広がっているはず。

テッラ自身がその光の処刑により切り落とした少女の右腕が転がっているはずなのに──


佐天「────────」フラァ……

テッラ「あ……、そんな──こんな馬鹿な事が……」


佐天涙子はテッラの後ろで倒れているミサカの傍に立っていた。
血溜まりに沈むミサカの傷口に【左手】で触れる。

血が、ミサカの傷口へと戻っていく。

奇妙な光景だった。
まるでビデオの逆再生のような出来事が目の前で起こる。

辺りに飛び散った血は床に付着していたはずの血も残さずミサカへと逆流していき
──そして最後には

切り飛ばされた、ミサカの右腕が、先の血のように傷口へと──


テッラ「優先する。──佐天涙子を下位に、小麦粉を上位に」


ズバァ!!と佐天涙子目掛け小麦粉のギロチンを振るうテッラだが
小麦粉の攻撃により佐天涙子が傷つくことは、なかった。


佐天「────────?」


首を傾げる仕草をする彼女を見て奇妙な感覚に襲われる。
人に限りなく近い外見のロボットが気味が悪いように
目の前の彼女はどこか奇妙だ。

まるでナニかが人間の真似をしているような──。

先ほどから口は動いているのだが、言葉だけが聞こえてこない。
確かに喋っているような口の動きなのにも関わらず──

この奇妙な感覚が恐怖と呼ばれる感情だとテッラは気付けなかった。


佐天「────────」ユラァ…

テッラ「(来るッ!!)うおおおおおォォォ!!」

テッラ「優先する!!──人体を上位に、佐天涙子を下位に!!」


ピタリ、と羽根を纏う左腕は止まる。
テッラの体に傷一つ無い。


テッラ「防いだ……?ふ、ふふふ……ククク……やはり私の光の処刑は──」タラァ

テッラ「な、何ですか……?ま、まさか──」ダラ


テッラの頬に伝うこの赤い液体は──
この液体は……!!


佐天「──────、守」

一歩、テッラへと踏み出す。


テッラ「血ですか……?な、何故……」ザッ

後退の、一歩目は警戒


佐天「──妹───、fgt」

二歩目


テッラ「佐天涙子は攻撃を止めたのではなく攻撃をしていた──!?」ザッ

二歩目は忌避


佐天「──傷、許──。」

三歩目の敵意


テッラ「いや、まさか“時”を──」ザ

三歩目は恐──


──ガァン!!という音と共に現れたのは……。


アックア「流石に事情が変わったのである、撤退するぞテッラ」

テッラ「アックア!!貴方がいればこの化物を──」

アックア「撤退すると言っているのである。これは右方のフィアンマの命令でもある」

テッラ「ぐ、でも私達二人がかりなら──」

アックア「…………」

テッラ「アックア!」

アックア「佐天涙子、であったか」

佐天「────────」ピク

アックア「此度の事は謝るのである。だから今回は見逃して欲しいのである」

テッラ「アックア!!何を……ッ!!異教のクソ猿に頭を下げるなんて」

佐天「──み、の──が、す?」スゥ

アックア「貴様の友人には手は出さないのである」

佐天「──!!」

アックア「……、では」ダッ


言うが早いかアックアはテッラを乱暴に抱え、その場を去る。

取り残されたのは、傷が全て無くなった意識の無いミサカと、一部始終をぼやけた視界で見ていた建宮と
佐天涙子だけだった。

佐天涙子の頭上にあった輪は溶け、真っ赤な涙もいつの間にか消え
柔らかな鈍色の光を放っていた左腕の羽根も消えて──。
そして佐天涙子は意識を失ったのかその場に倒れる。


──窓のないビル──

アレイスター「…………」

??「ふふ、君がそのような表情をするのはいつぶりだろうなアレイスター」

アレイスター「貴方かエイワス」

エイワス「覗き見か?どうやらhg黒shytの現出が知覚できたので着てみればおやおや」

エイワス「成る程。上条当麻や一方通行のdqmnytか。だが発現させるには少々早すぎだな」

アレイスター「長年こういった計画をしていると、イレギュラーこそが娯楽になるのですよ」

エイワス「ふ、まぁどうでもいいがな……」

エイワス「佐天涙子、か……中々興味深い。あの状況下でdqmnytするとは」

エイワス「しかし不完全すぎる、それで良いのか?」

アレイスター「計画なら何個もある。所詮アレは使い捨てのようなものですよ」

エイワス「ふっ、そうか……(アレイスターめ今回も焦っているな)」


──────────────────────────────────


──バチカン、聖ピエトロ大聖堂──


テッラ「何故あの場で撤退を?」

アックア「アレと戦うには準備も情報も何もかもが乏しすぎなのである」

テッラ「私達二人なら──」

アックア「これを見るのである」

テッラ「アックア?その指……どうしたんですか?」

アックア「……、佐天涙子がお前へ攻撃をしただろう」

アックア「あの一撃の軌道を替えるために支払った犠牲なのである」

テッラ「(あのアックアが攻撃を逸らして指を骨折……?)」

テッラ「……、分かりました。あの撤退については納得しました」

テッラ「アックアは何故ここへ?」

アックア「貴様に少し話があってな」


テッラ「何ですか?」

アックア「何、簡単なことだ。貴様にしか使えない光の処刑。その照準調整のための報告についてだ」

テッラ「あぁ……観光客とローマ近辺の子供達を使ってますね。取り立てて騒ぐことですか?」


テッラは饒舌にペラペラと異教徒は人間ではないだとか大層な平等を唱えている。
アックアの目が細くなっていることに気付かずに。


アックア「そうか……その術式を携えた頃より調整を行っていたということだな?」

テッラ「えぇそうです。さぁそこをどいてください、やるべき事が山積みですよ」

テッラ「先ずはあの佐天涙子の対策から。幻想殺しについては少々後回しでもいいでしょうし──」

アックア「いや、その前にやっておく事がある」

轟ッ!!

──────────────────────────────────────────────────

しまった、アックアさん編について次回予告書いてるつもりがカーテナの方書いてた。
何を言ってるがわからねーと思うが以下略。
今回の投下はここまで。

とりあえず佐天さんマジ天使!!

もしかして書き手さんは佐天「第四波動」の人なのか?
とりま支援。

最近佐天さんがまともな活躍をするSSがなかなか見当たらないからここは貴重

ぐぅぅ……アックアさん編のネタが浮かばない。
カーテナ、ロシアのほうはかなりネタあるんですけどね。
いっそアックアさん編飛ばすか

>>681
別人です、すいません。
>>689
佐天さんが活躍するSSの需要が少ないのでしょうかね……。
ここが貴重というかなんというか、その……すいません。

レスしてくださる方本当に、本っっ当にありがとうございます。めっちゃ嬉しいです!



十月九日といえば学園都市の独立記念日である。
この日は学園都市は祝日となる。

つまり学校はお休みってだけのお話です。



──とある病院──


佐天「……っ!────ここは?」

佐天「あたしは確かアビニョンにいた筈……」


時間は深夜だろうか、辺りは暗い。
照明の明かりは無いが、ここは病院。
そこは分かるが──しかし……。


佐天「ここは学園都市か──」

医者「うん、そうだね。つい先ほど君をこの学園都市に移させて貰ったんだね」

佐天「あなたは確か──」

医者「ここの病院の医者さ。それ以上でも以下でもない」

佐天「……、鏡」

医者「うん?鏡……?」

佐天「鏡、ありますか? 無いなら今のあたしの姿はお医者さんにどう写ってますか?」

医者「──、普通の女の子に見えるけどね。それでは納得しないかもしれないから鏡を用意しよう」

佐天「お願いします」


──フランスでの出来事は事細かに覚えている。
テッラの事、妹さんの事、あたしの事。


佐天「あと、ミサカさん……いえ──ミサカ一三〇七二号さんはいらっしゃいますか?」

医者「──あぁ……彼女も君と一緒にこの病院へ移されている」

医者「怪我は無いし、意識もハッキリしている。後で会いに行ってあげるといい」

佐天「ありがとうございます……」


チラリ、と佐天涙子は自分の左腕を患者服をまくって眺める。
そこには何の変哲の無い普通の左腕。

あの時の左腕ではない。

それに自分が学園都市に搬送されていることについても不思議とは思わない。
何故なら書庫上では無能力者とはいえ、学園都市のカリキュラムを受けた身なのだから。

ただ──


佐天「ただ、あたしが無能力者では無いって事は学園都市は気づいてる」


スゥ──と自分の左手で夜風に揺れるカーテンに触れると
それは揺れていたその時のまま静止している。


佐天「左手、か──」 コンコン

医者「手鏡ならあったけれど、もっと大きな鏡がいいのならトイレに行くといいね」

佐天「いえ、十分です。ありがとうございます」


自分の目で確認できない部位といえば多々あるが、この場合は──


佐天「(顔も、頭上も異変なし。つまりあたしは人間って事よね)」

佐天「ありがとうございました。この鏡お返ししますね」

医者「あぁ、どういたしまして」

佐天「今は夜ですけれど、退院してもいいですか?」

医者「──、夜は危ないから明日にでも退院したらどうかな?」

佐天「明日ですか……学校の準備が──」

医者「明日は十月九日、学園都市の独立記念日だから祝日だね」

佐天「成る程!なら今晩はここの病院に居ますかねー」

医者「そうするといい。あの子達も喜ぶ」

佐天「妹さん達と会うのに今とかは無理ですかね?」

医者「もう深夜だ。明日にしてくれると助かるね」

佐天「分かりました、では明日……」

医者「あぁ。そうするといい、今夜はゆっくり休むといいね」


先ほどまで意識は無かったのにも関わらず
ベッドに寝転がり目を閉じると次第に眠気が襲ってきた。


佐天「(──これから……)」


これからのこと、学園都市の狙いを考えたり
自分の体に起こった事を思い出したり当麻さんの事を思ったり
様々な事を思いながらも佐天涙子は夢の世界へと旅立ち始める。


──自分の左手の新たな能力を確信しつつ。

思わせぶりな10月9日の予告を投下して自分も夢の世界へ旅立ちます。
本編は水曜日か木曜日のこの時間帯にでも。

いままでのまとめです。↓
http://www35.atwiki.jp/seisoku-index/pages/432.html
読みかえす時などによかったら。

>>703
大丈夫だ、問題ない
あんま無理すんなー

今週ももうすぐ終わりだけど来そうにないな

この作品が未完は泣けるぞ

寝るまでが今週か・・・

>>1はたまに3時4時にくる事あるから今回もそうなんじゃないかな(チラッ

なるほど(チラッ

月曜日に今週中って言ったから、まだ大丈夫だ、まだ………

2,3日なら誤差の範囲。そう誤差の範囲だ・・・!

半分諦めてたけどまさかの登場に驚きを隠せない。
期待していいんだよな!

アンタどういう仕事してんだよwww
とりあえず期待

スレの時が止まらなくて良かった……

>>702
まとめとか!!恐れ多いです、ありがとうございます

>>704
ありがとうございます。おかげさまで生きてます。

>>706
完結できるでしょうか、頑張ります!

>>705>>707>>710>>711
どうみても今週じゃないです本当にありがとうございました。

>>708>>709
コソッ

>>713
期待しても内容が略

>>714
海外に初めて行きました……。

>>715
佐天「ククク……」

うざったらしい全レスの以下数レスほど失礼します。
急ぎ足で書いたので誤字脱字その他急展開矛盾ありますが、どうかよろしくお願いします。


──十月九日──

死角というものがある。
この学園都市には沢山の死角と呼ばれるものが存在する。

例えば路地裏。
そんな路地裏を走る少女が一人と仮面を被った黒いスーツの男が一人。


佐天「ぜぇ……はぁはぁ……」ダッ

佐天「(一体どうしてこんな事に──)」

佐天「くっ……、振り切れない──」


男「止まっていただけませんか?佐天涙子。私は貴女に危害を加えるつもりはありません」

男「話をしましょう」キィン


かすかに聞こえたキィン、という音はあの男の武器である学園都市製の銃声だろうか
佐天涙子の足元でコンクリートが弾ける音がした。


佐天「そんなモノ使っておいて信じられるわけないです!!」

佐天「(逃げなきゃ……、とりあえず路地裏から出ないと──)」


タッタッタ、と一定のリズムを刻みながら路地裏を抜けようと走る。
しかし中学生の足の長さでは男の、それも成人してるであろう男との距離を離す事が出来ない。


男「別に取って食おうって訳じゃないんだからさ」

男「なぁ?【無能力者】の佐天涙子ちゃん」

佐天「くっ……」


この男の目的は一体なんだ?
恐らく学園都市の人間だろうが、捕まったらマズイという予感だけはする。

あたしを無能力者という、この男に能力を使ってもいいものなのか……。


佐天「(くっ……、使えない──少なくともこの状況じゃ!!)」

佐天「(確かこの先にコンサート前広場があるはず!)」

佐天「(人が沢山いれば──!)」ダッ


────────────────────

コンサート前広場は予想以上の人の多さだった。
どうやら統括理事会の野外講演をしているようだが
ざっと見渡しても2~300人は居る。


佐天「……、ここならあの男もあたしを見失うだろうし」

佐天「この人の多さであたしに危害はくわえないで──」


ガチリ
背中に冷たい鉄の硬い感触。


男「この人の多さなら貴方を撃ち殺しても楽々逃げられますよ」

男「さぁ、そのままゆっくり歩きなさい」


人が多く居るこの場所なら仮面を被った男は目立つと思ったのだが
背後の声がクリアに聞こえる為、どうやら仮面ははずしているようだ。


佐天「…………」

佐天「……楽々逃げ切れる、ですか」

男「?早く歩きなさ────」


ドォ────z____ン!!



佐天「暫く止まっててください」ピト


念のために振り返りスーツの男の手に触れ、男の時間を少し静止させてからその場を離れる。
スーツの男の顔は逆光でよく見えなかった。


男「!? 何!?目の前に居た筈──」

男「何処にも居ないだと?……」

男「クッ……逃げたとしたならば、もうここには居ないでしょう」タッ




佐天「行ったかぁ……つっかれた……」

佐天「どうして、こんなことになったのよ!」



それは今朝まで遡る。

病院で目覚めた佐天涙子は帰りの支度をし、妹達に挨拶をしてそのまま帰る筈だった。
だが、見かけてしまった。

──ビルからビルへ飛んでいく真っ白な悪魔を。


佐天「あれは……!?一方通行?」

佐天「どうしてこんな所に──」ダッ

佐天「悲劇が起こる前に……!追いかけないと──」タッタッタ



一方通行を追いかけてビルとビルの隙間である路地裏へと足を運ぶ。
なぜかそこに現れた黒いスーツの男。

そして現在に至るという訳である。

──以上回想終わり──


佐天「これで諦めてくれると良いんだけど……」

佐天「でも、そんな上手くいくかなぁ……?」


人ごみにまぎれている佐天涙子であったが、内心不安でいっぱいである。
いくら時を静止、遅く出来るからといっても銃等でいきなり撃たれたらどうしようもない。
わぁ、という拍手や歓声が辺りを包んでいる。


その音に紛れて、ベコッ、ベコッという何かがへこむような音がするのを聞き逃さなかった。


佐天「!?何……?今のは────」


辺りを見回していると、ゴバッ!!という音と共にコンサートホール前広場の一角が爆発した。
天高く上る黒い煙と、火の手があがる。
その爆発に壇上で演説をしていた初老の女性は身をかがめ、護衛の人間に囲まれながら壇上を降りていく。


そして、黒い煙の中に──

──真っ白な悪魔が居た


佐天「一方通行!!今度は一体何を企んですか!!」

一方通行「……、はァ?関係ねェんだよテメェには」

佐天「こんな所で爆発を起こして関係ないですって!?」

佐天「また悲劇を起こそうってのなら、あたしが止めてやります!」

一方通行「──ハッ、面白ェ冗談だな。まァ相手してやってもいいンだがよォ」

一方通行「生憎こっちは忙しいンだ、失せろ三下」

佐天「……断ります」

一方通行「──。これはテメェら表の人間がしゃしゃり出る問題じゃねェンだよ」ヒュッ


佐天涙子を目掛けて
否わざと佐天涙子を避けるように一方通行は小石をベクトル変換し、蹴飛ばす。
しかし、佐天涙子はその自身を避けるように飛ぶ小石を左手で────

ガギン、と小石は一方通行の足元へ。


一方通行「!?(弾き飛ばした?いや、これは──)」

佐天「【反射】が貴方だけのモノだと思ったら大違いですよ」キッ

一方通行「…………」

佐天「…………」


睨みあう両者の思考は──ある者によって吹き飛ばされた。



打ち止め「あー!!『あの人』だっ!ってミサカはミサカは駆け寄ってみたり」


佐天&一方通行「「打ち止め(ちゃん)?」」


佐天「ん?……どうして貴方が打ち止めちゃんの事を──」

一方通行「チィ!!おいそこの三下ァ!!そのガキを頼むぞ」ヒュン


脚力のベクトルを操作したのか
高く飛び上がった一方通行はどこかへ消える。


打ち止め「行っちゃった……ってミサカはミサカは久しぶりに会えたあの人を見失って落ち込んでみたり」

初春「アホ毛ちゃーん!!いきなり走り出して──って」

佐天「初春!?」

初春「佐天さん!?」


────────────────────

佐天「……、打ち止めちゃん──どういう事か説明お願いできるかな?」

打ち止め「あ、えっと……、その──隠していた訳じゃないんだけどってミサカはミサカは──」

佐天「あーっと……説明頼んでおいてあれなんだけど、今度でいいかな?」


爆発の影響だろう、コンサート広場にいた人々が散り散りに逃げていく。
その逃げていく人々の群れの中に、一人の男が立っている。
先ほどの爆破で勘付かれたのか、佐天涙子を追っていたスーツの男。


打ち止め「え?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

佐天「うん、ごめんね。初春も打ち止めちゃんの事頼むね」

初春「さ、佐天さん?少し前から何か変ですよ……?また怪我するような──」

佐天「──ごめん。いってくる」タッタッタ

初春「あ……」



『いってらっしゃい佐天さん……』


スーツの男は、佐天涙子が一人で向かってくるのを確認した後
スタスタと人気の無い所へ歩いていく。
付いて来い、という事だろう そのくらい佐天涙子でも分かった。

ただ──


佐天「許せない事が一つあるんですよね」スタスタ


許せないこと。
銃を持ちあたしを追いかけたことは別にいい。
人ごみに紛れあたしに銃を押し付けた事も、まだいい。

人々が逃げていく中【初春と打ち止め】に銃口が向けられていた事
友達に向けて、銃口を向けた事が何より許せなかった。

ズカズカと、多少の怒りを晴らすように歩く佐天涙子であった。
前を歩いていた男が人気の無いところ、人気の無いところへと誘い、そして

寂れた広場、のような場所だった。
広場の中央にあるベンチに仮面を被ったスーツの男が座っている。


男「話をしましょう?佐天涙子さん」

佐天「……、人の友達に銃向けておいて、まず言うことがあるんじゃないんですか!」

男「はて?これからお話しすること以外に貴女に言うべきことは──」

男「冗談ですよ冗談。ですからそんな怖い顔をしないでください」

佐天「──……。」

佐天「それで、話ってなんですか?」

男「なに、単純なお話ですよ佐天涙子さん」




男「学園都市の暗部組織である『スクール』に入りませんか?」




佐天「へ?あんぶそしき……?スクール……?」

男「そうです、貴女にはそこで働いてもらおうかと思いまして」

男「活動内容はですね、まぁ学園都市に仇なす者や組織を殺したり壊したりですかね」


この男は何を、言っている。
学園都市に仇なす者や組織を殺す?

確かに学園都市について最近不信感を抱くようになった。
だけど、そんな……。


佐天「そ、そんな組織に入るわけが──」

男「『打ち止め』『ミサカ検体番号一三〇七二号』『初春飾利』」

佐天「!!──あ、な……」

男「別に彼女らを取って食おうって訳じゃありませんので、そんな顔をしないでください」ニコニコ

男「佐天涙子さん貴女が働いてくれれば、ね」

男「それに、知りたくはありませんか?この学園都市の事を」


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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       例えば、『絶対能力進化』について

       例えば、こないだ現出した『ヒューズ=カザキリ』について

       例えば、『これから起こる出来事』について、とか。

       例えば──そう、『ドラゴン』とかね

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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


佐天「あ……、う……。」

男「さぁ、私の手を取って『スクール』の一員になりましょう」


佐天「い……、嫌っ!!」

男「!!」

佐天「あたしは!!自分が正しいと思ったことを信じるって決めてるの!」

男「あなたのお友達の『初春飾利』さんがどうなっても?」

佐天「そんなもの!!」









      『守るに決まってるじゃないですか!!』








男「そうですか、残念です」ピ


仮面の男が懐から取り出したスイッチを押した。
寂れた広場に、1機の無人攻撃ヘリが到着する。

最新鋭のHsAFH-11、通称『六枚羽』

その六枚羽は佐天涙子を敵性と判断し即座に自動攻撃に入る。
六枚羽の機銃が唸りを上げた。

掃射というより爆破といったほうが正しいのかもしれない。
寂れた公園がオレンジ色の輝きに侵食された。



男「……、まぁ私はホログラムなんで熱くも寒くも痛くも痒くもありませんけどね」

男「しかし良かったのでしょうか?『佐天涙子が組織に所属しなければ殺害してもよい』なんて」

男「統括理事長の考えは私では理解できませんね」

男「さて、残ってればの話ですが……死体を確認しますか」


「死体なんて、ありませんよ」


男「なっ!?そんな馬鹿な────」


今なおオレンジ色の炎に包まれた寂れた広場に
傷一つも無い佐天涙子が立っている。

ゆっくりと、待機させてあった六枚羽に近づいた彼女は左手で六枚羽をつかみ──
六枚羽は止まった。


「ねぇ、その統括理事長にさ……」

「あたしの大切な人達を傷つけることは許さないって伝えてくれない?」


──────────────────────────────────

男「くっ、何なんですかあの化物は──ッ!!」

男「まさか六枚羽を壊されるとはッ!!」

男「──、幸いにも機能が停止しているだけなので修理は出来るでしょうが……」

   PiPiPiPi

男「は、はいっ!!此方スクールの【 】ですが」

  『ふ、その様子では任務失敗といったところか?』

男「統括理事長!?あ、その……す、すぐに部隊を向かわせ──」

  『必要ない。たった今“ドラゴン”が向かった』ブッ

男「は、はは……」


終わった。
ドラゴンが動いた、もうそれだけで十二分だろう。

──────────────────────────────────


佐天「ぜっ……、はぁはぁ……時間遅延しながら走るのは体力が……」

佐天「(早く初春と打ち止めちゃんの所へ)」ダッ

佐天「学園都市は、信用できない──!!」


『──ふむ。何の面白味も無いhg黒shytだな』



佐天涙子は走るのを中断せざるを得なかった。
突如目の前に現れたモノによって。


金色の長い髪
光り輝くような長身と、その肢体を包むゆったりとした白い布の装束
正確な性別など判別できないが、外見の見た目だけなら女性に見える。

喜怒哀楽の全てがあり
それでいて人の持つ感情とは明らかに異質なものを根幹に秘めた極めてフラットな顔つき


佐天「──!!うっ……」

  『自己紹介をしようドラゴンなどと呼ぶものが居るが、より一層私を表現するなら以下のような単語を選ぶべきか』


  「エイワス、と」


佐天「エイ、ワス──」

エイワス「君のアビニョンでの発現に一定の価値を認めて、ちょっと興味が沸いたのでね」

佐天「なぜそれを──」


苦しい。
目の前の本物の化物に胸を圧迫されるようなそんな感覚。
左腕が、ざわざわする。


エイワス「それは私の力にお前のhg黒shytが反応しているからだ」

佐天「──!!」ピキ

エイワス「やはりアレイスター……。発現させるにはこの個体では未熟すぎだな」

佐天「────────」サァ


先ほどまで【人間】だった佐天涙子が【化物】へと変化していく。
アビニョンの時と同じ、真っ赤な瞳、流れる涙、透明な輪、鈍色の羽根に包まれた左腕。


エイワス「その程度ではダメだ。まだまだhjyt足khfgない」

エイワス「それでは中途半端だ。中途半端にオシリスとホルスのrsg力nopheだ」

佐天「────────」


ギシ、ギシと、どこか機械めいた音を立てる佐天涙子の
“左肩から小さくて真っ白な羽が一つ生えた”
小さな羽は、左腕を覆っていた羽根を吸収するかのように取り込み大きく成長していく。

ある程度の大きさまで成長すると、突然その羽はエイワスへ向けて振り下ろされた。


佐天「────────ァ!!」


音は、無かった。
ただ光だけが爆発的に生まれたように思えた。

光で真っ白だった世界が、学園都市の世界へと戻っていく。




    「まぁまぁ、ってところかな」





佐天「うっ……」

エイワス「私の力に反応したとはいえ、まぁまぁだったぞ若きhg黒shytよ」

佐天「あ、ああ……」

エイワス「ふむ、やはりhg黒shytの力に個体の方が耐えられないか」

エイワス「この成熟度では到底アレイスターの計画には使えまい、が」

佐天「…………」

エイワス「hg黒shytの発現はアレイスターにとってもイレギュラーの筈」

エイワス「幻想殺しや一方通行と違い、あの計画を壊すことが出来るのは、もしかしたら君なのかもな」

エイワス「では一先ずお別れだな、佐天涙子」






     「──汝の欲する所を為せ。それが汝の法とならん、か」




──────────────────────────────────────


あたしは一体何をしているのだろうか。
ああ、判らない。

ただ全身の皮膚が少しずつ剥がされていくような痛みがある。
痛い、と声を上げることすら出来ないほどの痛みの中であたしは這っていた。

友達のもとへ。


不思議と彼女の場所は判る。
あぁ……、友達が怪我をしている。


佐天「う……いはる……」

初春「!?……佐……天さ……」





   『おかえりなさい、佐天さん』





折り重なるように倒れた二人の少女は病院へ運ばれた。


とりあえず終了という事で。

次回予告的なアレ。
アックア編は都合により省略されました。

──────────────────

レッサー「『新たなる光』が4人というのは少々情報が古いですよー」

上条「あぁ?何を言って──」

レッサー「ついこないだ、新入りが入ったんですよ」




レッサー「ね?佐天涙子ちゃん」


ゆらり、と今まで何処に隠れていたのか判らないが
黒髪の少女が一人現れた。


佐天「久しぶりですね、当麻さんとお姉さん」





佐天「当麻さんがイギリスを救おうだなんて、幻想を抱いているなら」

佐天「このあたしが止めてみせましょう」

──────────────────

次回、カーテナ=オリジナル編。

上条Vs佐天

科学と魔術が交差する時、物語は始まる──!!

* 次回予告と次回の内容は変更になる場合がございます。
   あらかじめご了承ください。

全然書き溜められないうわぁぁぁん。
数レスだけど生存報告がてらに簡便をorz


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■報告書
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○天使の力を行使? 学園都市の中学生
 佐天涙子(さてん るいこ)
 Saten Ruiko


 先日のアビニョンでのテッラとの戦闘時において、強大な天使の力を観測
 発生源は、学園都市の女生徒である【佐天涙子】によるものと特定。

 彼女の学園都市での超能力のレベルは0である。
 しかし、彼女の左手に超能力とも魔術ともいえない力を確認。
 その能力は“時間を操作”する能力とされる。

 時間の操作といっても自由自在に操作できるわけではない模様。
 以下に確認されている彼女の能力を記述する。

 ・時間を遅くさせる     (20~30秒程度)
 ・時間を止める       (3~5秒程度)
 ・範囲指定の時を止める (彼女を中心とした5メートル程度か)
 ・特定物体の時間逆流  (未確認情報)

 以上の能力を有するとされている。
 そしてアビニョンで佐天涙子から天使の力を観測
 目撃者の証言によると姿は【天使】のようだったと。

 双眸から真っ赤な涙がとめどなく流れ
 左手には鈍色の羽根に包まれており、頭上には透明な輪があったとの証言である。

 また、学園都市に神の右席であるアックアが【上条当麻】を殺害しに赴いたが
 佐天涙子については殺害対象からは外れていた模様。

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   ◆


──ピッ、ピッ

規則的に聞こえる病院でしか聞けない音をBGMに初春飾利はベッドの横の花瓶の花を取り替える。

初春自身も入院するほどではないが多くの怪我を負っているが、それももう癒えてきた。


十月九日

この日に垣根帝督と名乗る少年から攻撃を受け、怪我を負った。
その直後くらいだったろうか、痛みで意識が朦朧としている中で友人の姿があった。

あの日、コンサート前広場で初春に何かを隠して行った佐天涙子は怪我をして現れた。
深くは追求できるような状況ではなかったし、もし怪我をしていなかったとしても何も追求できなかっただろう。

明滅するする視界に現れた彼女は、一瞬だが──
ほんの一瞬だが……。



         “天使のようだった”



その天使は左手を初春に差し伸べ
そして初春に折り重なるように倒れた。

その左手が初春に触れた瞬間に垣根帝督から受けた重い傷は癒えてしまった。
こうして入院もせずに歩き回れるのは彼女のおかげだと

あれは『幻想』などではないと初春は信じていた。


初春「ふー、やっぱり朝は早起きするに限りますね!」

初春「10月の朝の空気はとても気持ちがいいですよねー」

初春「早起きは三文の徳といいますか、どうも最近寝覚めがいいんですよ」

初春「まっ、佐天さんは目覚まし時計を壊すくらいのお寝坊さんなんで無理でしょうけど」

初春「それはともかく聞いてくださいよ佐天さん!」

初春「また白井さんが風紀委員の仕事でヘマしましてねー」

初春「どうやったら発注数1個を10個と見間違えられるんでしょうね!」

初春「おかげで経費で落とす筈のマグカップが10個も届いちゃって」

初春「結局マグカップは経費で落とせないし私が全部買取ですよ!?」


  (あははー!何それー!!それは初春が悪いに決まってるじゃんー!!白井さんグッジョブっ!)


初春「……、わ、私は悪くないですよ!!ちょっとマグカップが壊れたから──」


ピッ、ピッ、ピッ


  (経費で落とそうとするからバチが当たったのだよ初春君!!ズル、よくなーい!!なんてね)


ピッ、ピッ、ピッ


初春「──なんて佐天さんは言うんですかね……、」グス


  (おー?どうして泣きそうなのかなー?あ!!もしかしてこないだスカート捲った事まだ怒ってるとか!?)


初春「……ひっく、怒って……ないですから……、だから、だから……いい加減目を覚ましてくださいよ佐天さん……」


問いかけに返事をするのは、無機質で一定のリズムで音を鳴らす機械の音のみ。
佐天涙子が、生きている事の証明。

十月九日
彼女は怪我をして初春と同じくこの病院へ運ばれた。

当初の診察によれば、単なる擦り傷や打撲といった軽い診断結果だった。
しかし、次の日になっても彼女は目を覚まさない。

身体的異常は全くない。
精密検査の結果も正常であった。
どうして佐天涙子が眠り続けているのかは不明、だった。

原因がわからないまま佐天涙子は眠り続けていた。


初春飾利は彼女の意識が戻らないことを知ると、毎朝毎晩病院へ通うようになった。
基本的には朝は患者との面会はさせない方針なのだが

「もしかしたら友人の声という音波が脳を刺激し、覚醒するかもしれない」

との一声から特別に彼女は朝の面会を許されていた。

初春飾利の朝はとても早いだろう。
何しろ患者の友人と言っても学生である。

基本的に登校時間に間に合うようにするには、この病院を7時半には出て登校しなければならないだろう。
面会時間は朝の5時から7時半ギリギリまで。

朝5時にこの病院へ来るのには彼女はどのくらいの時間に起きているのだろうか。
それを土日を除いて毎日、だ。

十月十日から十月十六日である今日までの六日間
初春飾利は5時の面会時間に来て7時半に学校へ向かう。

風紀委員の仕事を終え、夜の面会時間ギリギリまでずっと佐天涙子に話しかけ続けている。
医者は、初春飾利の負担を考え辞めさせようと何度か説得していた


医者「……(ふーむ、佐天涙子さんの件をいち早く解決しないといけないね)」

医者「お忙しいところをお越しいただきありがとうございます、木山先生」

木山「ふぅ、忙しいとはとんだ皮肉だな」

医者「おや、これは失礼しました」

木山「それで、何の用ですか?この私をわざわざ連れてきてまで」

医者「……、実は少し診てもらいたい患者が居るんだね」

木山「『冥土帰し』の異名を持つアナタが私に──?」

医者「大脳生理学の専門チーム所属だった貴女なら別なアプローチができるかもと思ってね」

木山「……、それで患者は──?」

医者「これがMRIとMRAとCTによる検査結果だね」

木山「ふむ……。………?」パサ

木山「………………………」パサパサ

木山「すまない、異常があるようには見えないのだが……。」

医者「そうか、もしかしたら……と思ったんだけれどね」

木山「力になれなくてすまない」

医者「いや、恐らく“異常なし”コレは恐らくあっている」

木山「何……?」

木山「(まさかこれは……?)」

医者「──暴走能力の法則解析用誘爆実験」


木山「まさか!? あの実験がまだ極秘裏に行われていたと言うのですか?」

医者「わからない。だから君を呼んだんだね」

医者「それを踏まえた上でもう一度見てくれるかな?」

木山「……………」

木山「しかし……それでもこれは……」

医者「そうか……残念だ」

木山「もしかしたら、と言うこともありますのでこれを持ち帰っても……?」

医者「患者のプライバシーは守るモノなのだけれどもね」

医者「正直な話、藁にも縋る思いなんだね」

医者「だから木山先生にはそれをお預けします」

木山「わかりました、では……」

木山「何か判ったら連絡をします」

医者「あぁ、頼んだよ」




医者「これで……、保険はある程度掛けた、といってもいいのかね?」

医者「正直これ以上佐天涙子さんを意識不明にさせておくのはマズイ」

医者「初春飾利さんのことも心配だしね」

医者「さて……」

医者「……(あの『負の遺産』だけは頼らない事を祈ろうかね)」PiPiPi


   ◆



日本ではない、どこか……イギリス辺りだろうか?
一組の男女が暗い個室で密談を交わしているようだ。

女のほうは真っ赤なドレスを着ていてまるでお姫様のようだが、お姫様はなにやら羊皮紙を読んでいる。
男のほうは高級そうなスーツを着、さらにはピッっと淀みのない姿勢で立っている。



キャーリサ「ふーん、何の霊装も無しに天使の力を行使したっつーの?」

騎士団長「報告にはそうありますが」

キャーリサ「本当に天使の力を行使していたのか疑問だし」

騎士団長「報告書には書かれてませんが“天使の力に限りなく近い何か”だった模様です」

キャーリサ「重要なポイントを報告書に書かないのはコレ書いた奴が無能だからか?」

騎士団長「……、正体が掴めないまま報告書を作成するよりかは天使の力と決め付けて書いたほうが楽だったのでしょう」

キャーリサ「ったく、そんなんだからこの国はダメな訳だし」

キャーリサ「まーこの娘を計画に加える、と言うよりかは騙して協力させたほうが楽だし」

騎士団長「騙す、ですか。中学生といえど馬鹿ではないでしょう」

キャーリサ「別に。【交渉】も軍事のうちだし」



   ◇



ここは……?

夢……かな……?


真っ白だし、変な夢だなぁー

というか、うーん?


何か重要なこと忘れているような……?

あれー何だっけ……?


そもそも、あたしって誰なんだっけ──?



    『知りたいか?』


へ?あたしの夢なのに誰かから返事がー!!



    『知りたいか?』


知りたいか?って一体何を……ですか


    『お前の知りたいことを』


あ!それなら先ずあたしは誰かって事を教えて欲しいなー


    『お前の名は、佐天涙子でありhg黒shytだ』


佐天涙子……って  あ……思い出した──

って!いつも思ってたけどそのhg黒shytって何なのよ!!


    『それはお前が辿り着く答え、我が教えることではない』


えーケチー!教えてくれたっていいのにー


    『他に聞きたいことは無いか?ならば戻るがいい人よ。待っている人が居るのであろう』


あ、うい……はる……
そっか……そうだよね……
あたしがあたしである事を教えてくれただけで十分よね!


    『……、そうか。』



あっ!ズルしちゃおっかなー、なんて
学園都市統括理事長の計画って奴を教えてくれちゃったりなんかするのかなー


    『それは────』


初春「それでですねー佐天さん──」


   ガチャ


医者「失礼するよ初春さん」

初春「あ、先生──と……そちらは?」

医者「あぁこちらは────」



コツコツコツ、と部屋に踏み入る黒髪のツンツン頭の男が一人。
無言で窓際の佐天涙子を見、そして近づく。

わっ、と初春は声をあげたが彼はとまる様子は無かった。

彼が佐天涙子の直ぐ傍まで来ると、漸く声を上げた。


上条「──ごめんな涙子ちゃん。気付いてあげられなくて」スッ



スッと彼は【右手】を佐天涙子の額へと伸ばす。
彼の右手が彼女の額へ触れると──






────パリン


   ◆


佐天「あ……ここは……」

初春「あ……あぁ……」ボロッ

初春「ざ、ざでん……ざてんさぁ゙ん……」

佐天「初春……それに……当麻さんも」

上条「……、長い間気付いてあげられなくてごめんな涙子ちゃん」

佐天「あはは……、気にしないでくだ……うっ……あっ」

医者「起きたばかりだ、無理をしなくて良いね」

佐天「だ、大丈夫で……す……お願いがあるんですけどいいでしょうか……」

医者「何だね?患者の求めるものを揃えるのが僕のポリシーでね」

佐天「それは良かったです……なら、あたしを────」

















   「──殺してください」

キリがいいんだか悪いんだか判りませんがこの辺で区切ります。
書き溜め少なすぎワラタ 許してくださいお願いします。

しかしカーテナ編の起承転結でいう起の半分が終わったくらいです。
このスレで完結できるかしら?いや内容をちょっとカットしてでもォォォォオ!!
完結のオチは読めても言わないでくださいorz
それでは寝ますお休みなさい。

深……夜……?もう夜明けじゃ
激眠なので途中で寝落ちしたら申し訳ないです……。
その場合は明日の夜に投下しますのでー。


医者「な、何を言っているんだね!?」

佐天「──……、あたし……少しだけ……少しだけ分かっちゃったんです」

佐天「分かっちゃったから……、分かっちゃったんです……」

医者「分かった?一体何をだい?」

佐天「私の役割──統括理事長の計画の一部が……、分かったんです」

医者「!?──いや、しかし……」

佐天「あたしが……あたしは……うぅうぅぅぅ……」バタッ

初春「佐天さん!?しっかりしてください佐天さん!!」

上条「涙子ちゃん!?(幻想殺しの効果がない……、気絶したのか?)」

医者「……、脈拍と脳波に異常なし──気を失っただけだね」

医者「……後は僕に任せて、君達はもう帰りなさい」

初春「で、でも佐天さんが──」

医者「心配ないね、ただ気を失っただけだからね?さっ……」

上条「本当に大丈夫なんですか?」

医者「心配ないとは思うがね?一応検査をするから君達は帰るんだね」

初春「わ、わかりました……」



   ◆

 十月十七日


佐天「んっ……、ここは──」

佐天「あぁ病院、か……」

佐天「──、なにか……思い出せないけど、大事なことを忘れてる気がする」

医者「おや?目覚めたかね」

佐天「お医者さん……?えっと、あたし気を失う前何か言ってませんでしたか?」

医者「──、いや何も言ってなかったね?」

佐天「当麻さんのお陰で目が覚めて、初春が居て……そこまでは覚えてるんですけど……」

医者「君はそこで気を失ってしまったんだね」

佐天「うーん、そうですか……ありがとうございます」

医者「(記憶があやふやになっているのか……好都合だね)」

佐天「えっと?」

医者「ん、あぁ……、もう少し検査して特に異常がないようなら退院してもいいね」

佐天「そうですか、わかりました」

佐天「うーん……(何か……重要なこと……?)」


佐天「ぐへぇー、何か自室に帰ってくるの久しぶりだなぁー」

佐天「もう夜も遅いし、寝るかなーん」PiPiPi

佐天「??……、嫌な予感が──」

??『こんばんは退院おめでとうだにゃー!佐天涙子ちゃん』

佐天「はぁ、誰ですか?凡その予想は付いてるんですけど……」

??『随分と荒んでるんだにゃー俺だよ俺、大覇星祭の時の土御門だにゃー』

佐天「あ、あー……やっぱりそうですか。で、何のようなんですか?」

土御門『うーん、ちょっと説明が面倒ではあるんだけど涙子ちゃん最近ニュースとか見てるかにゃー?』

佐天「いえ、ここ1週間以上見てないですけれど……」

土御門『ふむ。まぁ何と言うかイギリス──フランス間を繋ぐユーロトンネルが爆破されたんだ』

佐天「……、はぁ……それでどうしてあたしに?」

土御門『まぁその爆破した奴が魔術師の可能性が高いんだにゃー』

佐天「それで、どうしてあたしが?」

土御門『うーん……、ちょっと分かり辛いかもしれないがフランスとイギリスを繋ぐトンネルの所為でな』

土御門『どちらの国も被害者として調査したがっているんだにゃー』


佐天「は、はぁ……」

土御門『まぁそれで涙子ちゃんにはそのイギリスに行ってもらう事なるんだが』

佐天「え゙!!ひ、一人でですか……?」

土御門『いや、上やんも一緒に行くからその点は安心してくれ』

土御門『まぁそっちの寮の外に迎えの車をよこすから待っていてくれ』

佐天「……、わ、わかりました……」

土御門『もっと詳しい説明は現地に天草式の誰かを用意させておくからソイツに聞いてくれ』

佐天「えっと、これは学園都市からの……?」ズキ

土御門『いや、今回はアレイスターからの命令ではない』

佐天「……っ!!」ズキン

土御門『そういうことだから、よろしく頼んだにゃー』ブッ

佐天「痛っ……ん?何か一瞬頭が……?」

佐天「…………?」



佐天「まぁいっか……よし今回も行ってくるか」

佐天「初春──は……まだ風紀委員の支部にいるか……」

佐天「書置きくらいしておこうかな」カリカリ



佐天「っと、よし!それじゃあ行きますか」


──第二十三学区──


佐天「ぐっ……この飛行機は……」

佐天「こないだも乗ったトラウマ飛行機じゃ……」

佐天「落ち着け落ち着け落ち着け落ち着くんだ佐天涙子……っ!」

佐天「今回は当麻さんもいるんだ……うぅぅぅ……だめだ、やっぱこの飛行機嫌だよぅ」

佐天「しかしもう乗っちゃったしなぁ……」

佐天「…………」

佐天「予定フライト時刻まであと少しだけど……当麻さん遅いんじゃないかな」

佐天「あたし以外に乗客もいないし……」

  ニャー

佐天「ぬっ!?土御門さん??」

スフィンクス「にゃー!にゃー!」

佐天「なんだ、猫か……」


ゴゴゴゴゴゴ


佐天「って!!動き始めましたケド!?当麻さああーん!!」

スフィンクス「にゃー……(まぁお嬢ちゃん諦めようぜ……)」

佐天「いやぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


──イギリス──


??「到着予定時刻は過ぎたが、少し遅いな……」



??「ふむ。写真と一致している少女が一人居るな」

??「あれが佐天涙子か……」



佐天「空港に、ついたのよね……もうだめ……周りは外国人ばかりで無理……」

佐天「というか、現地に天草式の人がいるらしいけど──」


??「もし、そこのお嬢さん」

佐天「は、はいっ!?(日本語?)」

??「佐天涙子殿と見受けられるが……?」

佐天「そ、そうですけど……貴方は?」

??「これは失礼。私は騎士団長と呼ばれているものだ」

佐天「ふぇっ?えっと……、天草式の人が来られるとお聞きしていたのですが」

騎士団長「少し事情があってな、今回は私が案内をする為にここに居る」

佐天「そ、そうなんですか……」

騎士団長「ユーロトンネルの事について説明は受けているのか?」

佐天「えぇと、一応聞いてはいるんですけど……」

騎士団長「ふむ……(好都合といったところか)」

騎士団長「では、説明は現地で行うものとして付いてきてくれるかな?」

佐天「は、はい……」










建宮「あれー?上条当麻の野郎と佐天涙子ちゃん遅いのよ」

スフィンクス「ニャー」

建宮「猫は居るんだが……」


   ◆

佐天「で、でかっ!?」

騎士団長「キャーリサ様のご住居だ。大きくて当然といったところかな」

佐天「キャーリサ様?すいません不勉強でどなたかご存じないんですが」

騎士団長「他国の事について事細かに覚えていることを望んではいないよ」

騎士団長「キャーリサ様はこのイギリス女王の第二王女であらせられる」

佐天「お、王女!?そ、その冗談ですよね??」

騎士団長「冗談ではない、ユーロトンネルの事等について君に頼みたくてな」

騎士団長「そのためにキャーリサ様は君を日本から招集したのだ」

佐天「あ、あたしに!?そ、そんな恐れ多い……」

騎士団長「……、あくまで個人的な頼みごとだからな……断ってくれても構わない」

佐天「は、はぁ……その、頼みごとって奴を聞いてから判断したいと思います」

騎士団長「そうか(ふむ。中学生と聞いていたが、そこそこ良い精神をしているな)」


騎士団長に案内された部屋の中央には一人の女性が立っていた。
赤いドレスを着た二十代後半くらいの華奢な女性だった。



キャーリサ「よく来たな」

佐天「あ、へ……?は、はい……」

キャーリサ「そう緊張しなくてもいーし、リラックスしてくれて構わん」

佐天「あ……はい……」

キャーリサ「……(見た感じ普通の幼子にしか見えないし)」

佐天「え、えっと?」

キャーリサ「──、順を追って説明するか。問題の発端は五日前に起こったユーロトンネルの爆破事故だ」

キャーリサ「イギリスとフランスを繋ぐ唯一のトンネルであるユーロトンネルは三本並んで海底を走っているはずなのだが」

佐天「はずなのだが?」

キャーリサ「それが全部吹っ飛ばされたわけだし」


佐天「吹っ飛ばされた……」

キャーリサ「母上ももう掴んでいるだろうけど、これはフランスによる破壊工作だと」

佐天「えっ……?えっ?」

キャーリサ「このままだとフランスとイギリスの戦争になる」

佐天「せっ、戦争ッ!?」

キャーリサ「あぁ、これはどう足掻いても止めることは出来ないし」

佐天「そんな!どうにか止めることは出来ないんですか?」

キャーリサ「無理だな、どうあっても避けることは出来ないし」

キャーリサ「戦争は、まぁいーとしてもだ、よく聞いてくれ」

佐天「はい……」

キャーリサ「“このまま戦争をしたらイギリスは負ける”これが問題なんだし」

佐天「……っ!」


キャーリサ「というのもイギリスは【王室派】と【騎士派】と【清教派】の三つに分かれてる」

キャーリサ「今、この纏まっていない三つのグループでフランス相手に戦争を仕掛けたら負けるのは確実だし」

キャーリサ「だから私は騎士派と手を組んだのだが、しかし私一人で王室派という訳ではない」

キャーリサ「母上と姉上と妹が居るのだが、こいつらは頭が硬くてね」

キャーリサ「それに清教派のローラ=スチュワートも全部のグループで仲良しこよしって意見はハナから持ち合わせちゃ居ない」

キャーリサ「別に戦争でフランスを負かして相手の人間を多く殺そうって訳じゃない」

佐天「……ッ!!」

キャーリサ「私はこの戦争に勝ちたいんじゃない、引き分けたいんだ」

キャーリサ「“なるべく、多くの犠牲を払わないために”」

キャーリサ「その準備を君に頼みたい……」

キャーリサ「頼む。この通りだし」ペコリ

佐天「そ、そんなっ!!頭を上げてください!!」

佐天「手伝いますから!!」


キャーリサ「ありがとう……感謝するし」

キャーリサ「【新たなる光】というグループで少し仕事をしてくれればいーし」

キャーリサ「頼んだし佐天涙子ちゃん」

佐天「はいっ!!任せてください」

騎士団長「本当にいいのか?子供には少し辛いと思うが」

佐天「大丈夫です!!こう見えても学園都市で何件も事件を解決してますから!」

キャーリサ「それは頼もしーの、頼んだよ」







キャーリサ「やっぱ天使の力を行使できるといっても子供ね」

騎士団長「第二王女とはいえ皇族に頭を下げられては断れるものも断れないでしょう」

キャーリサ「ふん。これで時間が稼げるなら安いものだし」

キャーリサ「精々、期待してるし。涙子ちゃん」


   ◆


佐天「えっと、貴方達が【新たなる光】のメンバーですか?」

フロリス「えぇ、私はフロリス。今は二人ですが、他にも二人居ますよ」

佐天「あたしは佐天涙子って言います。よろしくお願いしますね」

フロリス「ほら、レッサー挨拶をしなさい」

レッサー「…………」ジー

佐天「え?……レッサーちゃん?」

レッサー「…………」ズイッ

佐天「な、なに……って、きゃぁっ」ポムン

レッサー「!?………」ペタペタ

佐天「むむむ、胸を、胸を触られた……」ドキドキ

レッサー「同い年で……くそっ……敵だな貴様!!」

フロリス「馬鹿なことをするなっ!!」バコッ



フロリス「それで、これからの仕事について説明するけれど」

佐天「はい!あたしは何をすれば……?」

レッサー「むしろ何が出来るのよー?魔術師じゃないって聞いてるけどホントに使えるの?」

佐天「ぬぬっ!確かにあたしは魔術師ではないですけど……」

レッサー「でも学園都市の人間って事は、超能力が使えるんでしょ?」ミセテミセテー

フロリス「確かに、気になりますね……詳しい事は聞いてはいないので」

佐天「……、じゃああたしをしっかり見ててくださいっ!」

レッサー「うん?……」




  ドォ────z____ン!!



佐天「ふっ、さっき胸を揉まれた仕返しでもしますか」サッ

佐天「4,5……まだもう少し時間を止めていられる──ッ!!」

佐天「8,9……9秒も止めていられる……」



レッサー&フロリス「ッ!!?」


佐天「びっくりしましたかー?レッサーちゃん、さっきのお返しだー!!」コチョコチョ

レッサー「ひゃっ、あひゃひゃひゃ!!いやぁぁぁくすぐるのは!!」

レッサー「分かったから……くすぐりはランシスだろぉぉお……ひゃひゃぁぁ」

ぐふっ……限界……です……明日の同じ位にまた続きを……。


佐天「で、具体的にあたしは何をすればいいんですか?」

フロリス「佐天さんにはしばらくはレッサーと一緒に行動してもらいます」

レッサー「えー!?一人で十分だぜー?」

佐天「酷いこと言わないでくださいよぉーレッサーちゃん」ワキワキ

レッサー「わかった!分かりましたからくすぐるのだけはやめてー!」

フロリス「具体的な作戦なんですけれども──」

キャーリサ「それは私から説明するし」

フロリス「キャーリサ様!?」


キャーリサ「……(計画については私から説明するからお前たちは席をはずせ)」

キャーリサ「……(佐天涙子にはカーテナ=オリジナルの事は言うな)」


フロリス「!!……、分かりました。私達は席をはずしますね」

フロリス「行きますよレッサー」

レッサー「あ、あぁ……」


キャーリサ「それで今回の作戦の前に、涙子ちゃんには少し辛い情報が入った」

佐天「辛い情報……?何ですか?」

キャーリサ「先ほど母上と姉上と妹との会合があったのだが」

キャーリサ「どうやら学園都市から禁書目録とその保護者である上条当麻を使うらしい」

佐天「当麻さん!?」

キャーリサ「禁書目録についてはユーロトンネルの調査に行くようだがそっちの男は違うようだし」

キャーリサ「先手を取られた」

佐天「先手……?」

キャーリサ「フランス側に、さ」

キャーリサ「【新たなる光】は全員北欧系の魔術を使う。そこを逆手に取られたわけだし」

佐天「すいません、魔術については詳しくないんで……」

キャーリサ「──、今日飛行機がハイジャックされたんだけども」

キャーリサ「どうやらそのハイジャック犯人が北欧系の魔術の痕跡を残した」

佐天「つ、つまり……?」


キャーリサ「つまり、その北欧系魔術を使った“出所”がイギリスのスコットランド地方でね」

キャーリサ「北欧系魔術を扱う魔術師はイギリスに沢山居るが、出所からして“新たなる光”へ辿り着く可能性が高い」

キャーリサ「うっとーしー事に母上達はまず国内の魔術結社の排除をご所望だし」

佐天「って事は……」

キャーリサ「秘密裏に動こうと思っていた新たなる光のメンバーは清教派から追われる事になる」

キャーリサ「上条当麻は新たなる光を追うために行動するそうだし」

佐天「そう……ですか……」

キャーリサ「辛ければ……この城で待っていてもいーし」

キャーリサ「だが、私達はイギリスの為に動く。新たなる光もそうだし」

佐天「だ、大丈夫です!!あたし……やります」

キャーリサ「清教派の奴らの行動も理解できないわけじゃない」

キャーリサ「でもこのままフランスと戦争すれば甚大な被害がでるの」

キャーリサ「私から言いたいことはもう無い。後は涙子ちゃんに任せるし」


   ◆


『新たなる光』の二人、レッサーと佐天涙子は場末の酒場にいた。
ロンドン北部にある酒場なのだが、10代の少女である二人は浮いていた。

そんな二人はカウンターでオレンジジュースを飲んでいた。
レッサーの足元には古ぼけた四角い鞄が置いてある。
レッサーは魚のフライに夢中になっていると、佐天涙子が話しかける。


佐天「それでですけど、あの四角い鞄を持って所定の位置まで行けば良いんですよね」

レッサー「ふごふご……、そー。所定の位置に持っていった後は指示待ちだな──」

レッサー「ぶっ!!ちょっ、ちょっ!!ちょっと待って!!」

佐天「はい?どうかしました?」

佐天「って、ちょっ!!鞄が──鞄が二つ!?」


お互いの特徴がほとんど同じ、見分けが付かない四角い鞄が二つ。
隣のおじさんがビールをぐびぐび飲んでいるが、きっとこの鞄は彼のものだろう。


レッサー「(やっべー、やばいやばいやばいやばい)」

レッサー「涙子、どっちが私達のものか分かる?」

佐天「…………」

レッサー「(うおおおお、予想以上にやばい……)」


鞄の中には霊装である『大船の鞄』が入っているが、こんな所で発動するわけにも行かない。
佐天涙子の左手で触ってしまえば霊装が壊れてしまうだろう。

もしこんな所で霊装発動してしまえば必要悪の教会に見つかってしまうだろう。
そうなってしまえば計画が崩れかねない。



レッサー「(そうだ……多分右にある鞄が私の鞄だ、そうだそうに決まって──)」





──ゴトリ、と音を立てて3つ目の見た目ソックリな鞄が手元に舞い込んだ。



レッサー「(もうだめだ……どれが……どれがあああああ)」








「ぜっ、全員動くなァァあああああああああああああああああ」


   ◆


オリアナ「連絡が入ったわ。ヤツらの一人がヘマしたみたい!!」

上条「何だ!?必要悪の教会からか?」

オリアナ「いえ、今のは王室派から干渉を受けているロンドン市警よ」

オリアナ「何か近くの酒場でトラブった馬鹿がいるようね」

上条「ここから近いのか?」

オリアナ「もう着くわ!」



オープンカーに乗っている二人は視界に変なものを捕らえる。
煉瓦の歩道を突っ走っている小柄な女の子が一人。
突っ走っているだけでも少々目を引くものがあるのだが、もっとも目を引くものがある

槍。

小柄な少女がビジネスマンのように肩と頬に挟んでいる。


上条「何だぁ?ありゃ」

オリアナ「恐らく何らかの霊装でしょうね」

オリアナ「全く、魔術師というのは自分が変な格好をしているって自覚がないのかしら?」

上条「………(突っ込まないでおこう)」


オリアナは胸元から単語帳のようなものを取り出し、二枚引きちぎる。
一枚は『人払い』
もう一枚は


ボゴッ、という爆炎が歩道で炸裂した。
辺りのシャッターや窓がビリビリと震え、夜の闇が赤く照らし出される。


上条「おいおい、やりすぎじゃないのか?」

オリアナ「いいえ、むしろまずそうよ」


叫び返しながらオリアナは転がるように車から降りていく。
首をひねる上条当麻だったが──


レッサー「文句は無いですよね?」


先ほどの少女が顔と頬に挟んでいた槍の先端を車に突きつけていた。
槍は車を貫通し上条当麻をも突き刺そうと──


上条「オッ、ォォォォォォォオオオオオオオ!!」


咄嗟に上条当麻は車を飛ぶようにして下車する。
上条当麻がその中で見ていたのは、大事そうに抱えている四角い鞄。



上条「おいオリアナ、何だかよくわからんがあの四角い鞄が最重要アイテムらしい」

上条「女の子をぶっ飛ばすとか気が進まなかったんだが、あの四角い鞄を集中砲火でボコボコにしよう」

オリアナ「そうね。あれが霊装の一種というのなら貴方の右手で殴ってみるというのも面白そうね」

レッサー「よっ、よくぞこの短時間で私の弱点を見破りましたねっ!!」

レッサー「しかしここでやられる訳にはいかないのです!!」

レッサー「ここは戦略的撤退をさせていただきましょう」

上条「俺たち二人から逃げられるとでも?」

オリアナ「だとしたらお姉さんも随分舐められたものね」

オリアナ「『新たなる光』のメンバーの他の“三人”の居場所と目的を吐いてもらおうかしら」


レッサー「………、ふっ──」チラ


レッサー「新たなる光が、私を含めて“4人”というのは少々情報が古いですね」

上条「あぁ?人数が増えようが減ろうがどうでもいいだろ」

オリアナ「5人だろうが6人だろうがお嬢ちゃんに吐いてもらえば済むことよ」

レッサー「ふ、ふふ……。確かに魔術師が増えたところで専門家の貴方達を撒くことは出来ないかもしれませんね」

上条「何……?」





レッサー「ねぇ?────佐天涙子ちゃん」






先ほどオリアナが放ったレッサーを攻撃しようとした爆炎が
炎の動きがおかしい。



あれはまるで──

──止まっているようじゃ




佐天「お久しぶりですね、当麻さんとお姉さん」

上条「う、嘘だろ……?どうして──」

オリアナ「なっ……お嬢ちゃんがどうしてイギリスに──」

佐天「二人がイギリスの為に動いているだなんて幻想を抱いているのなら」

佐天「そんな幻想、あたしがここで止めてあげます!!」


   ◆


佐天「レッサーちゃんは男の方を頼みます」

レッサー「オッケー、向こうの二人とは知り合い?」

佐天「はい、男のほうは右手に『幻想殺し』という異能の力を打ち消す能力を有してます」

レッサー「……、じゃ女のほうは任せたよ」







オリアナ「作戦会議は終わりかしら?」

佐天「えぇ、まぁ」

オリアナ「お姉さん吃驚しちゃったわ、どうして貴方がここにいるか聞いてもいいかしら?」

佐天「お姉さん達と一緒ですよ」

オリアナ「ふぅん……それで、お姉さんと戦おうというの?その、“右手”で」

佐天「いえ、右手で戦いませんよ。今は“左手”です」

佐天「ですが、時を遅くしたり止めたりはしません」

佐天「当麻さんのサポートになってしまいますからね」

オリアナ「そう……」ブチッ



単語帳から引きちぎった枚数は5枚。
多種多様な魔術による攻撃が佐天涙子を襲うが


佐天「……(範囲指定の時止め)」


佐天涙子に当たる直前に全て消える。


オリアナ「ふふ、相変わらずねお嬢ちゃんは」

オリアナ「メチャクチャな力。あっちの坊やもそうだけれども」

オリアナ「あの日からお嬢ちゃんにまた相対したときの為に実は対策を取っていたのよ」

佐天「スピードで勝負しようということですか?」

佐天「これは決して驕りではないですけれども、無駄だと思います」

オリアナ「ふふ、言ってくれるわね──」ブチッ


オリアナが単語帳の一枚を引きちぎると
バスケットボール大ほどの炎の球が出現し、佐天涙子目掛け飛んでいく。


佐天「……?こんなの一つでどうしようと言うんですか」サッ



佐天涙子は炎の球を左手でガードし────


オリアナ「ばぁーん」カチャ



オリアナ「本当は魔術でケリを付けたいところだけども、ちょっと骨が折れそうだからね」

オリアナ「貴方が左手でガードする隙に、足に目掛けて拳銃を撃って……それでオシマイよ」

オリアナ「さて、あっちの坊やは大丈夫かし──」






  「その程度で、勝った気にならないでくださいよ」


オリアナ「うそっ……手でガードする暇なんて無かったはずなのに」



佐天涙子はオリアナの目の前に立っていた。
先ほどと変わらぬ姿で──

一つだけ、おかしいところが一つだけあった。


オリアナ「ど、どうして銃弾が────」


佐天「別に、あたしが止められるのは魔術や物体だけじゃありませんよ──」

佐天「見えませんか?“止まった空気”が見えませんか?」

オリアナ「なっ────」


オリアナは単語帳を引きちぎろうとしたが──


佐天「遅い!!」ピト


走っていた。
佐天涙子は走っていた。

レッサーは何処へ行ったのかは戦闘の後を見れば一目瞭然といったところか。
道なりに建物や、街頭が破壊されていれば佐天涙子でもレッサー達を追うのは簡単だ。


雑居ビル、だろうか
町並みの戦闘の跡はここで途切れている。


佐天「ここにレッサーちゃん達がいるのね」タッ

オリアナ「全く、試合にも勝負にも負けたって感じね」ダッ


煉瓦造りの洒落た建物の中に典型的な業務用のスチールデスクや業務用コピー機がある。
階段をのぼっていると、話し声が聞こえた。



レッサー「……目的は達成したけど、試合に負けたのも事実」

レッサー「こんなつまらない結果で、同盟を組んでいる貴方達やフォワードに迷惑をかけるのもアレですし──」




レッサー「受け入れましょう、口封じするなら今がベストです」


窓の外に広がる風景の一点がチカッっと光るのを見た。
咄嗟に前に出て、レッサーを突き飛ばそうとしたが、レッサーの後ろにあった窓が粉々に砕け散り

そして真っ赤な鮮血が噴出した。


佐天「レッサーちゃん!!」

オリアナ「馬鹿ッ!!伏せなさい!!」

佐天「きゃぁっ!!」


佐天涙子の頭上スレスレを何かが通過する。
それは30センチほどの棒に、その半分まで流線型の鏃をつけたような特殊な飛翔体だった。


オリアナ「こ、これは……『ロビンフッド』……」

レッサー「ふ、ふふ……涙子ちゃんを……騙していたのが心残りでしたけど……」

佐天「レッサーちゃん!!しっかりしてよ!!どうして……どうして……」

レッサー「……私達が輸送していたのは、カーテナ=オリジナル……」



佐天涙子へ向けているのか、にっこりと血まみれの顔に笑みを浮かべながら。


   ◆


騎士団長「──届きました」

キャーリサ「なるほど」

騎士団長「電子、魔術の双方の通信を傍受した限り……『清教派』の連中は新たなる光が王女を暗殺することで」

騎士団長「イギリス全土に仕掛けられた対ヨーロッパ用の大規模攻撃術式を自動発動させようとしている、と勘違いしていたようです」

キャーリサ「ふん。そんな胡散臭い伝説など実在しないというのに」

騎士団長「そこまでの高威力の魔術が用意できるならもっと簡単に交渉を進められたでしょうし」

騎士団長「なにより容易に民を死なせないための『計画』ですからね」

キャーリサ「ふん。このカーテナ=オリジナルさえあればもう計画は完了したといってもいーし」

騎士団長「──、これは報告すべきか迷いましたが」

キャーリサ「何だ?」

騎士団長「佐天涙子を狙撃し、殺害することに失敗したようです」

騎士団長「そして目の前で新たなる光の一人レッサーを狙撃されたのを目撃したようです」

騎士団長「恐らく彼女は今度、私達の敵となって向かってくるでしょう」

キャーリサ「ふん。どうせ計画が終わったら殺すつもりだったし」

キャーリサ「あの程度の小娘程度なんの障害にもならん」

キャーリサ「イギリス全土に潜ませた『騎士派』の全軍に伝えよ」







   「侵攻を開始せよ。
    王を選ぶ剣、カーテナ=オリジナルはわが手中にあり。
    これより英国の国家元首はこの私、キャーリサが務める。
    平和主義の『前女王』と共にイギリスを腐らせたくない者は、自らの意思で立ち上がるといい。
    新たなる英国の軌道に必要な分だけ地均しを行い、必要な分だけ破壊を行え、とな」





今回はここで一旦区切ります。
明日投下すると言ったのにもかかわらず長い間放置して本当に申し訳ありませんでした。
次回から早めに投下してこのスレ内で完結しないと新約が出ちゃいそうなんで頑張ります。

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