麦野「美琴、私のものになりなよ」(1000)
はじめまして。こんにちは。
以前総合に1レスだけ投稿したものの続きです。
・スレタイ通りの電磁崩し(麦野×御坂)です。
・百合要素MAXなのでご注意ください。(男も出ます)
・エロ表現、暴力表現ありなので気をつけてください。
書き溜めはあります。が、急ぐと首が絞まるのでゆっくりやらせてください。
一先ず総合の分から投下しますね。
1日目
―第七学区大通り 15:00―
麦野「はぁ……ったくあいつら、この私の召集を断るなんてどういうつもりかしら。
私の誘い以上の用事なんてどこにあるっていうのよ 」 スタスタ
御坂「あいつも見当たらないし黒子も風紀委員の仕事だし、暇ねー……」 スタスタ
麦野 御坂 「「あっ」」 バッタリ
麦野「……」 ジッ
御坂「……」 ジッ
麦野「道開けなさいよ」 ギロッ
御坂「あんたこそ邪魔なんですけど」 ムカッ
麦野「ガキは大人しく言うこと聞きゃぁいいんだよ貧乳」
御坂「オバサンだからちょっと道をずれるのも億劫ってわけね垂れ乳」
麦野「……やろうっての?」 バチバチッ
御坂「アンタこそ……!」 ビリビリッ
ヒソヒソヒソヒソ…
ザワザワザワザワ…
麦野「……クソッ。っつかアンタ一人で何やってんの? 友達いないわけぇ?」
御坂「グサッ!……人のこと言えないでしょ! あんたこそ何やってんのよ!」
麦野「わ、私は 一人で ショッピングでもしようと思ってたところだよ!」
御坂「わ、私だって 一人で 楽しくゲコ太グッズをっ!」
麦野「……」
御坂「……」
麦野「……ねぇ、アンタ今暇なら遊んであげてもいいわよ……?」 チラチラッ
御坂「……ま、まぁあんたがどうしてもって言うなら付き合ってやるけど……?」
麦野「……そこのカフェでいい?」
御坂「う、うん……」
―第七学区 cafe『グリフォン=スカイ』 15:10―
「ご注文はお決まりでしょうか?」
麦野「アイスティーとレアチーズケーキ」
御坂「アイスカフェラテとショートケーキ」
「かしこまりました。少々お待ちください」 ペコリッ
麦野「……」
御坂「……」
麦野(どうしよ、話題がない……)
御坂(何で黙ってんのよこの女……)
麦野(……こいつ年下なんだから気ぃ遣ってなんか喋れよ……これじゃまるで―――) イライライライラ
御坂(……こいつ自分で誘ったんだから何か言いなさいよね……これじゃまるで―――) イライライライラ
麦野御坂((―――私が人付き合い苦手な子みたいじゃないっ!))
麦野(ふざけんなっ! 私は友達がいないんじゃねぇ! 作らねぇだけだっつの!)
御坂(馬鹿にしてんじゃないわよ!? 確かに同学年で仲のいい子はいないけど、私には黒子達みたいな後輩がいるんだからね!)
麦野「……そ、そういえばさー」 ニヘラッ
御坂「う、うんうん。何々ー?」 ニヘラッ
麦野「今日いい天気だよねー」
御坂「そう?曇ってるけど……」
麦野「……」
御坂「……」
麦野(こいつ……っ! せっかく私が無難な話題を振ってやったのになんだその返事! なんだこの空気!
ちょっと雲出てたって充分晴れの領域だろうが! 空気読めねえのかこのスットコドッコイ!)
御坂(この女何言ってんの? っていうか天気の話題って……そんなこと話してどうするつもりなんだか……)
「ご注文の商品お持ちしましたー」 コトッ コトッ
麦野「どうも」
御坂「はーい」
「ごゆっくりどうぞー」 ペコリッ
麦野「……」 カチャ モグモグ
御坂「……」 ズズッ カチャカチャ
麦野「……美味しいわね」 モグモグ
御坂「そうね……」 モグモグ
麦野「……ま、うちの近所の店の方が美味しいけど」
御坂「ふぅん……。この近くに住んでるの?」
麦野「そこそこね……アンタは?」
御坂「常盤台の学生寮だけど……」
麦野「あそ。……学舎の園じゃないの?」
御坂「息詰まるもん。寮則も今よりもっと厳しいしさ」
麦野「いいじゃん学舎の園。有名なお菓子屋とかケーキ屋一杯あるのに」
御坂「そんなもん学校帰りに行けるし」
麦野「そか、それもそうね」
御坂「行きたいの……?」
麦野「……別に」
御坂「そう……」
麦野「……嘘、ちょっと興味ある」
御坂「意外ね。あんたでも甘いもん食べたりするの好きなんだ」
麦野「……嫌いじゃないわ」
御坂「ま、私も。……来る?」
麦野「何が?」
御坂「だから、学舎の園。友達を招待するってことなら、中に入れるわよ」
麦野「……いつアンタと私がお友達になったのよ」
御坂「細かいことはいいのよ。行ってみたいんでしょ、暴れて他の人に迷惑かけないなら連れてってあげる」
麦野「暴れるって……アンタ私を何だと思ってるわけ?」
御坂「超暴力的だと思ってるけど?」
麦野「テメェ……施設まるまるぶっ壊した奴がよく言うわね」
御坂「そ、そんなの今関係ないでしょ! 何よ人がせっかく誘ってあげてるのに。じゃあもういい」
麦野「い、行かないとは行ってないでしょ。気になってた店が結構あるのよ。
『cafe de TERRA』の三種のベリーのミルフィーユとか『パティスリー・ブリリアント・キャーリサ』のブラッドオレンジタルトとか」
御坂「案外ミーハーなんだ。でもそういう有名店めちゃくちゃ並ぶわよ?
もっと穴場で美味しいとこもたくさんあるから、そういうとこ行こうよ」
麦野「えー、でも有名店だから食べてみたいんじゃない」
御坂「そんなのテイクアウトで充分。空いてる時見計らって買ってきてあげるから」
麦野「マジ? 気が利くわね。楽しみだわ」
御坂「いいっていいって。オススメ色々あるから太る覚悟しときなさいよ!」
麦野「するする。わぁ、ありがとう」
麦野(……って何仲良くお喋りしてんだ私はぁぁああっっ!!) ガタガタッ!
御坂(急に机に突っ伏してどうしたのかしら……生理痛?) ビクッ!
麦野「……コホンッ、ま、まぁせいぜい私をもてなしなさいよ。わざわざ行ってあげるんだからね」
御坂「え、あ、うん」
御坂(あれ……?何かこの人面白い……?)
麦野(今のちょっと感じ悪かったか……? いや、別にこいつに愛想振りまく必要ないし……)
御坂「じゃあ番号交換しよっか」
麦野「は?」
御坂「いやいや。だからメールアドレスと電話番号よ。連絡先交換しないと行けないでしょ?」
麦野「あ……あぁ、そうよね。そうそう、当たり前じゃない」
麦野(人に番号聞かれたのあいつら以外で初めてだわ……) ピッ
御坂(そういや番号交換なんて久しぶり……) ピッ
御坂「ありがと。第四位の麦野さんね」
麦野「第四位を強調すんな超電磁砲(レールガン)」
御坂「御坂って呼んでよ」
麦野「は、はぁ!? 何で今更……」
御坂「私には御坂美琴って名前があんの。能力が私の全てじゃないの。
麦野さんだって、第四位第四位言われたら腹立つでしょ?」
麦野「いや別に」
麦野(そういう奴はブチ殺すし)
御坂「あっそ。でも私は嫌なの。御坂って言ってみて」
麦野「な、なんでよ……」
御坂「ほらほら早くぅ」 ウルウル
麦野「うっ……」 ドキッ
御坂「み・さ・か」 キラキラキラキラ
麦野「……御坂」 ボソッ
御坂「はい、麦野さん」 ニコッ
御坂「でさ、いつ行く?」
麦野「別にいつでもいいわよ。暇だし」
御坂「暇ってあんた……学校は?」
麦野「行ってねえよ」
御坂「何で? レベル5なのに不登校児?」
麦野「アンタにゃ関係ない。んなことよりアンタはいつ空いてんのよ」
御坂「今日が水曜日だから……土曜とかどう? それくらいなら申請出して通ると思うけど」
麦野「じゃあ土曜ね。っつかアンタ彼氏いないの? 休日なのに」
御坂「なっ、い、いないわよ!」
麦野「そうなの? じゃあ好きな男とか」
御坂「……」 ビクゥッ!
麦野「……おやぁん?」 ニヤー
御坂「な、何よ文句あんの!?」
麦野「いぃやぁ。くくっ、そうかそうか。アンタもいっちょ前に恋なんかすんのね」 クスクスッ
御坂「ほっときなさいよ! あんたはどうなのよ!」
麦野「私? 無い無い。いつもつるんでる中に男一人しかいないし。そいつは別の子と付き合ってるし好みじゃない」
御坂「どういう人が好みなの?」
麦野「……考えたことないな。んー、まあアレよ。好きになった人がタイプってやつ?」
御坂「ふぅん。あんたって何か恋愛経験豊富そうね」
麦野「ええ? ……も、もちろんよ! 星の数ほどの男をフッてやったわよ」
御坂「うわぁ、想像つくわぁ気の毒に……」
麦野(本当は付き合ったの一人だけだし、超思い出したくないんだけど……) ヒヤヒヤ…
御坂「じゃあ、相談とか乗ってもらっちゃおっかな」 ボソッ
麦野「……はぁ?」
御坂「駄目?」
麦野「……ま、まぁこの私にかかったら男なんてギャルゲーより簡単に落ちるわよ!」
御坂「そんな簡単に落ちる男もどうなのよ……」
麦野(どうしよ……)
御坂「ありがと、麦野さん頼りになるわ。メールするね?」
麦野「かかってきなさいよ!」
御坂(……? この人そこそこいい人っぽいわね。口悪いけど)
麦野(まあいいわ。別にこいつの恋路がどうなろうと知ったこっちゃないもんね。適当に答えてたって分かんないわよ)
―麦野宅 17:30ー
麦野(はぁ……なんか疲れた) ボフッ
麦野(でもあいつ意外と可愛げのある奴だったな。麦野さん、だって。
絹旗達も見習えっての、ふふっ)
麦野(また遊んでやるのも悪くないか。にしても……)
麦野(恋かぁ、最近してないな。どうでもいいけど) ハァ…
PiPiPi…!
麦野「ん、メール?」 カチャッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:麦野さん(*´∀`)ノ
本文:
今日はありがとう(*ゝω・*)ノ
麦野さんとお茶するの楽しかった(*>艸<)
甘いもの好きなんて、やっぱり女の子なんだね
(*・∀・*)
また行こう!
――――――――――――――――――――
麦野「ばぁか、顔文字つけすぎなんだよ」 メルメルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:私も
本文:
楽しくなくはなかったけどね。
にしてもあんたが恋愛(笑)
まあせいぜい頑張んな。
っつか顔文字ウザい
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(……滝壺たち以外とメールするのなんていつ以来だ?)
PiPiPi…!
麦野「返信早いわねぇ。女子中学生ってこんなもん?」
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:ひどい!(*`皿´*)/
本文:
可愛いでしょ(笑)
素直に楽しかったって言いなさいよ( ̄∀ ̄*)
っていうか笑うな(`・ω・´)=〇
麦野さんは彼氏欲しいって思う?ヾ(´∀`o)
――――――――――――――――――――
麦野「可愛くねえっつの。こいつわざとやってやがんな……」 メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:私は
本文:
今はいらないよo(≧ε≦o)
好きな人なんていないモン☆(*>艸<)
それより御坂の恋バナ聞きたいナ(*>∀<*)
彼氏欲しいの?(≧∀≦)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「ふん、これでどう。このウザさを味わうがいいわ」
PiPiPi…!
麦野「だから早いっての。なになに……?」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:無題
本文:
引くわー
――――――――――――――――――――
麦野「こ……いつ!」 ビキビキッ
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:アンタ
本文:
ムカつく。
もういい、晩御飯の用意するからまたね。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「ったく。……今日は作るの面倒くさいな。シャケ弁でいっか」
PiPiPi…!
麦野「何こいつ暇なの?」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:ごめんごめん(*´∀`)ノ
本文:
冗談よ(´ε`*)
だからもうちょっと付き合ってー(笑)
麦野さん自炊なんだねヾ(・ω・*)
今日何作るの?
――――――――――――――――――――
麦野「……暇みたいね」 メルメルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:はいはい
本文:
今日はほうれん草と鶏肉のクリームオムライス
と、シーザーサラダ
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「さぁて、コンビニ行こっと」 ポイッ
―常盤台中学学生寮 二○八号室 17:40―
御坂「へぇ、麦野さんて料理上手なんだ。クリームソースのオムライスか、聞いてたらお腹減って来ちゃった」
白井「お姉様、何独り言おっしゃってますの? 先ほどからベッドに寝転がってずっと携帯をいじっておいでですし。
新しいお友達でもお出来に……ハッ!ま、まさか恋人ですの!? お、お姉様ぁぁぁあああ!
誰とメールをしておいでですの! 黒子にもお見せになってぇっ!」 ガバチョッ!
御坂「こら黒子っ!人の携帯勝手に見るな! そして私に覆いかぶさるな!」 ゲシゲシッ
白井「ああんっ、お姉様、もっとくださいましっ! ……あら、なんだ女性の方ですの」
御坂「あんた自分は女の子が好きなのに私が女の子とメールしても別に何も言わないのね」
白井「あらいやですわ。わたくしは女性が好きなのではなくお姉様だけを愛しておりますの。
それにお姉様の交友関係にケチをつけるほど狭量な人間でもございません。
黒子の心は海のように広いんですの」
御坂「あそ。あ、初春さんから黒子に内緒で遊びに行こうってメールだ」
白井「野朗初春ェッ!お姉様今すぐ電話帳登録抹消してくださいましっ!」 ガァァッ
御坂「狭いじゃないの……さぁて、麦野さんに返事しなきゃっと」
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:美味しそう(o≧口≦)o
本文:
いいな、私も食べたい!麦野さん料理上手なん
だね(*>∀<*)
っていうかお腹減ってきたよーo(≧ε≦o)
夕食の時間までまだ結構あるし、どうしよう…
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
白井「お姉様。そう言えば今麦野さんとおっしゃいまして?」
御坂「ん? 言ったけど?」
白井「もしかして学園都市第四位のレベル5。麦野沈利さんとお知り合いになりましたの?」
御坂「お、さすがに有名人ねー。まぁ知り合いになったというか、もともと知ってはいたというか……」
白井「どういうことですの?」
御坂「今日友達になったの」
御坂(ちょっと違うけどまあいいか)
白井(友達って……相手はそこそこの年齢じゃありませんの……?
仮にも中学生のお姉様とお友達って……)
白井「そ、そうですの。よかったですわね。どのような方ですの?」
御坂「どんなって、んーそうねー……顔は美人よ。
んで、スタイルがよくて、胸が大きくて髪はふわふわね。
まあレベル5だから頭もそれなりに良いだろうし……。
それから体力凄いし、喧嘩も強い。あとは……ああ、料理が得意みたい」
白井(……あらいやですわ。お姉様と並んだらとても素敵な図になりそうじゃありませんの) ジュルリ
白井「それはまた随分と完全無欠な方ですのね」
御坂「あの人がぁ? 無い無い。めちゃくちゃ口悪いよ?
目つきも怖いし何かと偉そうだしね」
白井(今度はボロクソですの。お姉様本当はお嫌いなんじゃ……。
けれどお姉様は他人の陰口を言うような方ではありませんし、これはあの殿方と対するもの同じ匂いがしますの。
結構気に入ってらっしゃる……?) アセッ
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「おっとメール来た来た。ちょっとごめんねー」 カチャッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:食べたい?
本文:
一食2000円ね。
っつか間食でもしてろよ。そして醜く太れ。
――――――――――――――――――――
御坂「金取るんかい! なんて一人ツッコミ」 メルメルメルメル
白井(お姉様がこんなに楽しげにメールされるなんてあの殿方くらいのものですの……。
何はともあれお姉様にも気の合うご友人が出来たようで黒子は寂しさ半分嬉しさ半分ですわ。
やはり大人っぽいお姉様には同年代の方よりも年上の方のほうが話が弾むのかも知れませんわね)
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:えー(o≧口≦)o
本文:
お金とるのー?(´・ω・`)
あ、私食べてもそんなに太らない方なの(・∀・)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(意外とちゃんとメール返してくれるな。
暇なのかしら。学校も行ってないらしいし)
御坂「あれ、何の話だっけ?」
白井「もう結構ですの。それよりお姉様、今週の土曜日はご予定はありまして?
よろしければわたくしとショッピングでもいかがです?」
御坂「ごめんその日パス。先約あるのよ」
白井「あらま珍しい。どちらへ行かれますの?」
御坂「麦野さんが学舎の園の中にあるケーキ屋に行きたいっていうから案内することになってるのよ。
悪いわね」
白井「そ、そうですの。またお誘いしますわね」
白井(また麦野さんですの……?
先ほどはああ言ったもののこれはわたくしの立場を脅かす強力なライバル出現のようですわね)
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「うん、ありがと。っと、返信来た」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:Re:
本文:
死ね
――――――――――――――――――――
御坂(……?ああ、太らないって書いたからか、びっくりするじゃないの) メルメルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:ちょっとー
本文:
いきなり死ねはひどくない?(´・ω・`)
そりゃいくらケーキ食べても大丈夫だし、お菓子
も体に悪いのを除けば食べ放題みたいなもんだ
し、ダイエットなんてもんとは無縁な生活だけど、
私だって好きでこんな体質になったんじゃないん
だからねo(≧ε≦o)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂「ふふん、これでどうよ」
白井(ま、まぁお姉様も今日始めたために夢中なだけで、時が経てば飽きてしまいますの。
そうすればまたお姉様の時間は黒子の独り占めですわ。
寂しくなんてありませんの……) イジイジ
メールゲコ!メールゲコ!
カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:Re:
本文:
ブチコロシかくていね
――――――――――――――――――――
御坂「わ、こりゃそうとう怒ってるわね。ちょっと挑発しすぎたか」 メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:ごめんね(≧Д≦;)
本文:
冗談冗談(*ゝω・*)ノ
ってか麦野さん全然太ってないのにそんなの気
にすることないでしょヾ(´∀`o)
むしろ私はちょっとくらい胸に肉を着けたいんだけ
どどうすりゃいいのよ…
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
白井「はぁん、お姉様ったら。慎ましいお胸を大きくしたいのなら黒子におっしゃって下さればよろしいのに。
誠心誠意、心を込めて揉み倒して差し上げますの」
御坂「ちょっ! 勝手に見てんじゃないわよ!」 ゴツンッ!
白井「ぐふぇッ! い、痛いですの……。だってお姉様があまりに楽しそうにしてらしたから、どんな内容か
気になりますの……」 アタマサスリサスリ
御坂「楽しそうって。普通にメールしてるだけよ。あんただってよくしてるじゃない」
白井「お姉様が携帯をいじっておられるのが珍しいからですの」
御坂(まあ黒子は部屋に帰ればいるし、初春さんや佐天さんとたまにするって感じよね。
あれ、やっぱ私友達少ない……?) ズーン…
白井「お、お姉様? 今度は急に沈んで、どうなさいましたの?」
御坂「なんでもない。ちょっと自分を省みただけ……」
白井「?」
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「お、来た来た」 パァッ
カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:あのねえ
本文:
私は太ってるなんて思ってないんだから、変な勘
違いしないでくれる?
アンタの胸のことなんか知ったこっちゃないわよ。
それにしても肩凝る。
大きいと見られるし大変なのよねー。
あー、小さい人にはこの苦労わかんないだろうな
ー。
小さい人は可愛いデザインの下着が買えて羨ま
しいわね☆
――――――――――――――――――――
御坂「ぐっ……! し、仕返しってわけね。何て返そうかな」 ウーン
白井(言葉の割りに笑顔になってますわよ。
別に構いませんの。お姉様の幸せはわたくしの幸せ。構っていただけないのもお姉様の生活に充実があるからこそ。
でも涙が出てしまいます……女の子ですものっ!) ホロリ
御坂「~♪」
白井(負けませんわよ麦野さんっ! これはわたくしと貴女の戦いですのっ!
どちらがお姉様のパートナーとして相応しいか、思い知らせて差し上げますの!) ゴゴゴゴゴ…
とりあえず今日はこんなもんで。
地の分無しのSSは初めてなのですが、こんなに難しいとは知りませんでした…。
不慣れですが、お手柔らかにお願いします。
それではまた近いうちに。
ごきげんよう。
ごきげんよう。
気がついたら超電磁砲5巻の特装版と通常版両方レジに持っていっていた。何故だ。
だってむぎのんの暴力的なおっぱいが並んでたんだもの。
トリなくてもいいかなと思いつつもあった方が見やすいかなとも思うので一応付けておきますね。
百合ルートなのか友情ルートなのか自分も迷ったんですが、>1にも書いてある通り百合でいきます。
厳密には百合じゃないですが…。
地の文無しだとレス数では同じでも地の文有りに比べて情報量とボリューム感が少なく感じるのが少し辛いところです。
今日も投下していきますね。
―麦野宅 21:00―
フレンダ『へー、結局、今日は超電磁砲(レールガン)とお茶してたんだ』
麦野「アンタらが私の誘い断るからね」
フレンダ『ごめんごめん。私も絹旗も補習入っちゃったもんねー。浜面と滝壺はデートでしょ?』
麦野「明日浜面ひん剥いてキスマーク探しだね」
フレンダ『やだよきったないなー。それより皆でお風呂とか行って滝壺の方を嘗め回すように見たい訳よ』
麦野「それアンタが見たいだけでしょうが」
フレンダ『え、そうだよ?』
麦野「アンタとは二度とお風呂行かないからねド変態」
フレンダ『いいもん。合法的に見れないなら麦野の部屋盗撮するし』
麦野「カメラ一つでも見つかったらアンタ上下に引き裂くわよ」
フレンダ『やった。上と下で同時に麦野にご奉仕できる訳よ』
麦野「アンタきもい」
フレンダ『あはは、冗談だって』
麦野「全然冗談に聞こえねえんだっつの……。
あ、そだ。明日仕事入った」
フレンダ『あ、そうなの? 内容は?』
麦野「また詳しくは明日言うけど、まあいつものように適当にブチ殺して終わりよん。
ねね、明日は何賭けるー?」
フレンダ『そだなー。この前は焼肉で、その前は居酒屋だった訳よ。
ペアはいつも通りにする?』
麦野「そうね。私滝壺組とアンタ絹旗組。これが一番フェアでしょ」
フレンダ『麦野と滝壺の組み合わせは強過ぎると思うけど……まあ滝壺は戦ったりできないし仕方ないね』
麦野「それじゃ今回は高級中華でどう?
殺した人数少ない方が奢りってことで」
フレンダ『わかったー。じゃあ絹旗達にも連絡しとくね』
麦野「よろしく。明日は いつもの 来れるんでしょうね?」
フレンダ『ごめーん。明日も補習な訳よ。テスト前でさー。滝壺と絹旗もだって』
麦野「チッ……わかったわよ」
フレンダ『(おおう……舌打ちですか、機嫌悪くなる前に切ろっと)』
フレンダ『っていうか、麦野はテストとかないの?』
麦野「そんなもん楽勝過ぎて欠伸が出るわ」
フレンダ『頭良い人はうらやましいな。んじゃそろそろお風呂入って寝るね!』
麦野「え、もう? まだ九時過ぎよ?」
フレンダ『おやおや? 麦野寂しいの? そこまで言うなら今から言って添い寝をピッ』
麦野「変態の妄言には付き合わないのよ。っと、メール来てる」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:お風呂入ったよー(*>艸<)
本文:
気持ちよかったー(≧∀≦)
ところで麦野さんっていつも何して遊んでるの?
(´ε`*)
――――――――――――――――――――
麦野(何してって……何してんだろ。ファミレスで駄弁って……。まあたまには遊んでるけどいつもって程じゃないよな) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:私も
本文:
お風呂入ろっかな。
ファミレスで友達と喋ってたまにカラオケとか。
アンタは?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(遊びかぁ……。人間殺した数で競ってるなんて言えないしね……普通の子ってどんな遊びするんだろ)
PiPiPi…!
麦野(早いっつの。……ま、暇になっちゃったし付き合ってやるか) カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:麦野さんと
本文:
お風呂入ったら凄い敗北感感じそうΣ( ̄□ ̄;)
スタイルいいよねー。
私はカフェでお茶したり、たまに買い物行ったり、
フツーだよ(≧Д≦;)
――――――――――――――――――――
麦野(そのフツーが分からねえんだって。……でも今日あいつとカフェでケーキ食べたのは……フツーだよね) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:まあ
本文:
中学生に負けてるようじゃまずいでしょ。
二十二学区にレジャーお風呂あるみたいだけど、
一緒に行く?(笑)
いいじゃん。買い物どこでしてんの?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(……流れで思わず誘っちゃったけど、いいのかな)
PiPiPi…!カチッ
麦野(あいつマジで早打ちね。早漏と呼んでやろうかしら)
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:…(´д`;)
本文:
まあ私中一の子にスタイル負けること余裕である
けどね…。最近の子発育良すぎ!(≧Д≦;)
っていうか、その施設常連です(*>艸<)
行く?
買い物はセブンスミストが多いよーo(≧ε≦o)
麦野さんは?
――――――――――――――――――――
麦野「プッ……! そりゃ悪いこと聞いたわ、くくっ」 メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:なんか
本文:
ごめん…(笑)
私から言わせりゃアンタも最近の子だけど。
っつか何でその年で銭湯の常連なんだか…。
私行ったことないから案内してよ。
セブンスミストは私よりもうちょっと年齢層下だか
らあんまり行かないわねー。
私は第五学区のショップが多いかな。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(案内してなんて……初めて言ったんじゃないかしら。断りやがったら殺すわよ……!) ドキドキドキ
PiPiPi…!カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:こらー!
本文:
謝んな!余計惨めよ(≧Д≦;)
いやキャンペーンでもらえる物が欲しくてさ…。
いいよー、行こう行こう。日取りとかは今度会った
時決めよっか(*´∀`)ノ
第五学区って大学生区画だね。
おっとなー(*>∀<*)麦野さん大学生だっけ?
――――――――――――――――――――
麦野(こいつ……たまに無自覚でイラつかせるな) ミシッ! メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:おい
本文:
麦野沈利18歳女子高生。文句ある?
そうね、そうしましょ。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(……でも、こんなに自然に誰かと遊びに行く約束したことあったかな……) ヌイグルミダキシメッ
麦野(あいつらともまた遊びに行ってみようかな……) モフモフ
PiPiPi…!
麦野「……これ電話の方が早くない?」
カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:あー(≧Д≦;)
本文:
ごめん!そんなつもりじゃなかった!(o≧口≦)o
麦野さんは大人っぽくて美人で素敵!
よっ!ミス学園都市!
――――――――――――――――――――
麦野「うぜぇ……」 ピキッ
麦野(まぁ……受信メールがこんなに溜まることなんて初めてだし……いいけど。
とりあえずお風呂入ろ……) ポイッ
―常盤台中学学生寮 二○八号室 23:05―
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「お、随分返信にかかったわね。本当に怒っちゃったかと思った」 ゴロゴロ
カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:お風呂入ってた
本文:
まあぶん殴らせてくれたら許す。
っつか電話のほうが早くない?
――――――――――――――――――――
白井「ふぅー、いいお湯でしたわ。……ってお姉様まだやってますの?
今日は帰ってきてからずっとではありませんの」 ホコホコ
御坂「あー、そだっけー?」 メルメル
白井「そろそろ黒子にも構って欲しいですの。お姉様の温もりが足りませんの!」 ダキッ
御坂「あーもう! 抱きつくんじゃないの! 分かった分かった! 明日お茶しましょ」 ジリジリ
白井「本当ですの!? お、お姉様ぁっ!」 ガバッ
御坂「だから今は麦野さんとメールさせてちょうだい」 ヒラリッ メルメルメル
白井「あうっ!」 ボフッ!
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:電話かぁo(≧ε≦o)
本文:
私もちょっと思ったんだけど、一応ルームメイト
がいるから…(≧Д≦;)
メールでもいい?(´・ω・`)
殴らせません(・`ε・´●)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
白井「お姉様はもう黒子のことなんていらないんですのね…。
えーえー、だったらもう麦野さんとお付き合いしてしまえばいいんですの。
黒子なんて捨ててしまえばよろしいんですの」 イジイジ チラッ
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「来た来た。あ、黒子寝るなら部屋の電気消してねー」 カチッ
白井「きぃぃぃいい! お姉様なんかもう知りませんの!」 マメキュウカチッ! フトンカブリッ!
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:そう
本文:
別にいいわよ。片手間に出来るし。
常盤台の寮って相部屋なんだね。
――――――――――――――――――――
白井「お姉様のいじわる……ムニャムニャ」 …zzz
御坂(ふぁ~……黒子も寝たし、私もそろそろ寝よっかな) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:うん(*´∀`)ノ
本文:
ごめんね、でも麦野さんとのメール楽しいわよ
(*>艸<)
そうなの、後輩がもう寝ちゃったから私も寝るね。
今日はありがと、またメールしてもいい?(´・ω・`
)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
白井「うーん……お姉様ー……もっとぉ……」 zzz…
御坂(遊ぶ約束もしたし……)
メールゲコ!メールゲコ!
御坂(もっと色々話してみたいわね……)
カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:あっそ
本文:
私は普通。
ま、気が向いたら返信してあげる。
おやすみ
――――――――――――――――――――
御坂(なんだかんだちゃんと返信してくれてるのに、素直じゃないなぁ……って人のこと言えないか。
けど麦野さんに比べたらまだ素直なほうよね、私)
白井「フゴー……お姉様ぁん……激しいですのぉ……グォォ」 zzz…
御坂(おやすみ……か。今日は麦野さんに会ってから寝る直前までメールしてたもんね。
こんなこと初めてだわ。……みんなこういうことしてるのかな?) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:はーい(*´∀`)ノ
本文:
じゃあまた明日もメールする(笑)
おやすみー(*>∀<*)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
白井「ぁぁん……お姉さまん……もう我慢できませんのー……スピー」 zzz… ゴロゴロゴロ
御坂(麦野さん……か。ふふっ、最初はどんな人かと思ったけど、案外いい人じゃない。
もっと仲良くなれたらいいな……)
御坂(おやすみ、また明日ね。麦野さん) クスッ
今日キリもいいしここで終わろうと思ったんですが、思ったよりメールに反響があるようなので
ちょっとだけ増やして2日目朝くらいまでいこうと思います。
他愛の無いただのメールのやりとりになってしまいますが…。
この後2日目夕方のシーンから始めるつもりだったので今から書くのでややペース落としますね。
よし、なんとか出来た。短いですが。
時系列はご都合主義上等のパラレル時空です。麦野×御坂なんて前提からしてまずあり得ないんで今回はあまり
原作の時系列には気を払わずやりたいと考えています。
一応浜面がアイテム加入までは時間は進んでいますが。
2日目
―常盤台中学学生寮 二○八号室 6:30―
白井「ふぁ~ぁ……。あらお姉様……もうお目覚めですのね」 ムニャムニャ…
御坂「あ、うん。おはよ黒子」
白井「おはようございますの。七時から朝食ですわよ。お着替えになったほうがよろしいんじゃありません?」 ノビー
御坂「うん。ちょっと待って。メール打ってから」 メルメルメル
白井「朝から……。お姉様、メールのために生活リズムを崩すのは感心しませんわよ?」
御坂(……おやすみメールがあったんだから、おはようメールがあるのはおかしいことじゃないわよね?) ウーム
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:おはよう(*´∀`)ノ
本文:
いい天気だね(*>∀<*)
――――――――――――――――――――
>送信
御坂(これだけだとちょっと愛想ない?……うーん)
白井「お姉様、わたくしシャワーを浴びて参りますので、それまでにお着替えを済ませておいて下さいましね。
朝食に遅れたら朝から叱られてしまいますわよ」 スタスタ
御坂「あ、ちょっと待って黒子!」
白井「なんですの? ハッ、も、もしや一緒に入ろうとかそういうことですのねー!?
よろしくってよ、よろしくってよ! ささお姉様、朝食のことなど忘れて黒子と浴室で」
御坂「あのさ、朝起きて一発目に送るメールってどんなのがいいと思う?」
白井「まさかの全無視ですの。うーん……そうですわねぇ。『今から学校に行ってきます』とか、
『今日もがんばりましょう』とかそういうのでよろしいんじゃありませんの?」
御坂「なるほど、ありがと」 メルメル
白井(ハッ! わ、わたくしってば何素直に答えてるんですの!? 馬鹿馬鹿馬鹿! 黒子の馬鹿!) ガッガッガッ
御坂「よーしオッケー! さ、準備して学校行こっと!」
白井(朝からお姉様をあんなに元気にしてしまえるなんて……恨めしいですの……) ゴゴゴゴゴ
―麦野宅 6:40―
PiPiPi…!
麦野「ぅ……ぅうん……」 ゴロリ
麦野(誰よこんな時間に……寝不足はお肌に悪いんだからね……仕事?) ガシッ
麦野(御坂か、早朝に送ってくんじゃないわよ。7時前なんてまだ明け方よ明け方。
いいとも始まるまでに5時間もあるじゃないの……なになに?) カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:おはよう(*´∀`)ノ
本文:
いい天気だね(*>∀<*)もう起きてるかな?
今から学校行ってくるね!あんたも行きなさいよ
(*ゝω・*)ノ
麦野さんは今日は何するのー?(*>艸<)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(どうでもいいこと送ってきやがってあのバカ。私の睡眠時間返せよ……)
麦野「……」 メルメルメル
麦野(……くそ、何て返せばいいのよ。何するかって……今日もあいつらは集合できないし、
ブラブラして、シャケ弁買って……夜仕事して?)
麦野(大体いつも11時くらいに起きて、シャワー浴びてご飯の用意して、いいとも見ながらご飯食べて。
適当な時間にファミレス行くかジム行って仕事無い日はそのまま解散。テレビ見るか本読んで一日終了か……
うわ、こうして考えたら私の生活ってつまんねー……)
麦野「……」
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:おはよう
本文:
もちろん起きてるわよ。美容のためにランニング
してきたとこ。
今日は生活用品の買出しと部屋に置く観葉植物
でも見て回るつもりよ。その後は大学の研究施設
に顔出して実験協力と資料作成の手伝い。
ちなみに今日の朝食はベルギーワッフルとスペ
イン風オムレツ。早起きっていいわね。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(もうこれでいいわ面倒くさい。もう一眠り一眠り……) ガバリ
PiPiPi…!
麦野「だぁあ! アンタ返事早すぎ!」 ガッ!
カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:すげえ!
本文:
オッシャレー(*>∀<*)
麦野さんって大人だね(∩∀`*)私も高校とか大学
行ったらそんな生活してみたいもんだわ。
同じ女として素直に尊敬します(`・ω・´)b+
――――――――――――――――――――
麦野「うっ……」 チクッ
麦野(ちょっと調子乗りすぎたか……。でも今更嘘なんて言えないし……。
明日からちょっと早起きしよ……。ええと、スペイン風オムレツの作り方も調べとかないと) メルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:まあね
本文:
アンタも頑張れば私みたいになれるわよ。
まあ今日みたいな忙しい日はそんなに無いけど
…。だからあんまり買いかぶらないでね
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(罪悪感で胸が痛い……。この私が? ふざけんな。
無駄に素直に生まれてきやがってこのクソ中学生がぁっ。
……眠気覚めちゃった。オムレツ作ってみよっと……)
―第七学区 学舎の園 8:10―
御坂(買いかぶるなって言われてもねー。なんかカッコイイなー。私ってまだまだガキだわ) ハァ…
白井「お姉様、ため息などついてどうなさいましたの?」
白井(訊くまでも無いですけれど)
御坂「ううん。大人の女の人ってすごいなぁって」 トオイメ…
白井(今日は一段とお姉様が分かりませんの)
白井「麦野さんのことですの?」
御坂「木山春生もそうだけどさ。みんなちゃんとやることはやってんのよね。私なんてまだまだ」
白井「何をおっしゃいますの。わたくしからすればお姉様だって立派に充実した毎日を送ってらっしゃると思いますわよ?」
白井(立ち読みとあの殿方とのことを除けば、ですけど)
御坂「そう? ま、別に焦るつもりはないけどね」 ケイタイトリダシッ
白井「歩きながらメールははしたないですわよ?」
御坂「分かったわよ」 シブシブ
白井「お姉様は皆の憧れの的、常盤台のエースなのですから、ご自分の行動にもう少し気を配ってくださいまし」
御坂「はいはい」
白井「今日の放課後はお約束通りお茶をご一緒して頂けるんですわよね?」
御坂「忘れてないから大丈夫よ。下駄箱のところで待ち合わせね」
白井「うふふ、お姉様とデートですの。黒子、今日はお姉様のためにとっておきの下着を着けておりますのよ?」
御坂「興味ないっての……」
御坂(そういや麦野さんはそういうの気を遣ったりしてないのかしら……?
でも今朝のメールから考えると見えないところで努力してるんだろうな。
……今日も会えたらいいのに)
今日はこのへんで止めときますね。
お待たせした割にあまり進まなくて申し訳ない…。
メールの文面考えるのに結構手間取りました。
ではまた近いうちに
ごきげんよう沈利お姉様。
性根が曲がっていてよ。
ちょいと書き溜めてるんでもうちょいお待ちを
毎日投下できるうちに投下しときますw
来れない日もそこそこあると思うのでご了承ください。
ではいきます
―常盤台中学 中庭 12:15―
ワイワイ ガヤガヤ キャッキャッウフフ
御坂(さてと……昼休みになったし、メールでも返そうかしらね……) カチッ
女生徒1「あっ、御覧になって。御坂さまがいらっしゃるわよ。お昼ご一緒していただけないかしら」 ヒソヒソ…
女生徒2「あら本当だわ。でも駄目よ。誰かとメールをなさっているご様子だし、お邪魔だわ」 ヒソヒソ…
女生徒3「ああ……今日もお綺麗ね……せめて遠くから眺めるだけでも……」 ウットリ
御坂(何か視線感じるわね……あの子達か……) ニコッ ヒラヒラ
女生徒1「きゃーっ! わたくしに笑いかけて手まで振ってくださったわよ!」
女生徒2「何をおっしゃってるの! 私よ!」
女生徒3「ああ……携帯電話を物憂げにいじっておられる様子も素敵……」 ウットリ
御坂(見られてると文打ちにくいのよねー……) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:お昼休み(*´∀`)ノ
本文:
今からお昼ご飯だよーo(≧ε≦o)
お腹減ったー!
麦野さんの今日のお昼はなーんだ?(*>艸<)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(ちょっとテンション高いかな。さ、ご飯ご飯。まあ購買のパンだけど) バリッ
女生徒1「あ、御覧になって! 御坂さまがパンをお召し上がりになっているわ」 ヒソヒソ
女生徒2「あれは……チョココロネですわね。私も明日の昼食はチョココロネにいたします」 ヒソヒソ
女生徒3「ああ……わたくしもパンになりたいですわ……」 ウットリ
御坂(まだいる……。昼休み終わっちゃうわよ) モグモグ
メールゲコ!メールゲコ!
御坂(おっ、早い早い。きっと今日も学校に行ってないのね)
カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:今いいともタイム
本文:
今日のテレホンショッキングは私の好きなマキシ
マム・ザ・カミノウセキのVo.マキシマムザアックア
なんだから邪魔しないで。
常盤台の昼ごはんってどんなの?
――――――――――――――――――――
御坂(何そのバンド……) モグモグ メルメル
女生徒1「一体どのような方とメールをなさっているのかしら……」 ヒソヒソ
女生徒2「きっと御坂さまと親しくメール交換する仲ですもの。気品のある高レベルの素敵な方に違いないわ」 ヒソヒソ
女生徒3「ああ……御坂さまのストラップになりたい……」 ウットリ
御坂(麦野さんにも好きなアーティストとかいるのね。何にでも文句言いそうなのに) フフッ
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:何それ(´・ω・`)
本文:
どんなバンドなの?(*´∀`)ノ
今日は購買のパンだよ(*ゝω・*)ノ
チョココロネとコロッケパン。思ってるよりは全然
普通だと思う(笑)
まあ食堂には結構すごいメニューもあるけど…
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
女生徒1「今一瞬笑顔を零されたわ……」 ヒソヒソ
女生徒2「それほどまでに親しい方なのね……お互いを想い合う素敵なお二人……」 ヒソヒソ
女生徒3「ああ……笑顔が……ああ……」 ウットリ
御坂(私がベンチでパン食べてる姿の何がそんなに面白いのかしら……) ムグムグ
―麦野宅 12:30―
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:知らないの?
本文:
今度聞かせてあげるから肌で感じなさい。
案外フツーね。すごいメニューって本当に引くくら
いすごそうだからあえて聞かない
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
『今日のゲストはマキシマムザアックアさんでしたー』
『三度の飯より飯が好きなのである』
チャーラーチャーラチャーラララーチャララッチャーララーラー♪
麦野「ふぁ~あ……」
麦野(結局朝ごはん食べて二度寝しちゃったのにまだ眠いってどうよ)
麦野(何よりこのままじゃ太る……。太ってからじゃ遅いのよね。昼は少なめに済ませたけど、
今日の夜は仕事だしちょっと派手に暴れるか……)
PiPiPi…!
麦野(昼休みくらいクラスメイトに相手してもらえよ……。どんだけ孤独なのよ)
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:そっかー(・ω・`*)
本文:
麦野さんセンス良さそうだから楽しみ(*>艸<)
きっと引くくらいすごいわよ(笑)
朝言ってた研究の手伝いとかは終わったの?
(・∀・)
――――――――――――――――――――
麦野(あー、そういう設定だったっけ。忘れてたわ) メルメルメル
麦野(ま、運動がてら外うろうろしに行くか……) フゥ…
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:うん
本文:
もっと褒めなさい。
もう終わって今は家よ。
今から出かけるからまたね。
――――――――――――――――――――
>送信
麦野(よしっと。……これはちょっと返事しにくいかしら……?) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:うん
本文:
もっと褒めなさい。
もう終わって今は家よ。
今から出かけるからまたね。
メールは出来るから暇なら送ってくれば?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(これでいいわよね。さてと……買い物でも行こっかな) ハァ…
麦野(一人でいるとため息増える。……あいつのことあんまり笑えないわね)
―第七学区 ファミリーレストラン『ジョセフ』 16:00―
白井(お茶っておっしゃるから、素敵なオープンカフェでも連れてってくださるのかと思いましたら……
まさかのファミレスですの……まあケーキもお茶も悪くないですけれど……) ブツブツ
御坂「え、何? 何か言った?」 ズズッ
白井「何でもありませんの」
白井(お姉様と二人きりということなら何処でも構いませんの。この際贅沢は言いませんわ) ズズッ
御坂「んー……どうしよっかなぁ」
白井「ところでお姉様、先ほどから何を悩んでらっしゃいますの? わたくしでよろしければ相談に乗りますわよ」
御坂「ん? いや、麦野さんになんてメール返そうかなぁって」
白井「また麦野さんですの……。何か御用があってメールを送るわけではありませんの?」
御坂「まあね。特に用も無く初春さんにメールしたりしない?」
白井「しませんわね。今日のように風紀委員(ジャッジメント)の活動が無い日以外は毎日顔を合わせていますし」
御坂「そうよねえ……。私もそんな感じ……あっ」
白井「どうなさいまして? 急に窓の外なんて見て……あの機嫌の悪そうな女性が何ですの?」 チラッ
スタスタスタスタ…
御坂「麦野さんだ! ちょっと行ってくる! 待ってて!」 ダッ!
白井「ちょっ! お姉様!?」
白井(どうしてこうなった……ですの。ああ、お姉様がお茶に誘ってらっしゃる……。
黒子と二人きりの時間はものの30分でお飽きになってしまいましたの?
いいえ、負けては駄目よ黒子! 相手の戦闘力を推し量るチャンスですの!
ここでお姉様に恥をかかせてはパートナーとして失格!
わたくしの完璧な立ち振る舞いでむしろ向こうに嫉妬させて差し上げますわぁぁあああッ!) ゴゴゴゴゴゴゴ
カランカラン イラッシャイマセー アッ、ツレガイルンデー
麦野「ちょっと……本当にいいの?」
麦野(ウィンドウショッピングしてただけなのに何でこんなことに……) ヤレヤレ…
御坂「大丈夫大丈夫! 私たちもちょうど暇してたとこだし、昨日メールで言ったルームメイト紹介するね!」
白井(きっ、きましたわー!) ガバッ!
御坂「こっちこっち。麦野さん、紹介するわね。後輩の……」
白井「お初にお目にかかりますの。 わたくし常盤台中学1年の白井黒子と申します。
お話はかねがねお伺いしておりますわ。 いつもお姉様がお世話になっているようでありがとうございますの」 キラキラキラキラ
白井(どうですのっ! 伊達にお嬢様学校に通っておりませんわよ!
御覧なさい! わたくしの楚々とした貞淑な立ち振る舞いに周囲の羨望が集約していますわー!) ゴゴゴゴゴゴゴ
御坂「……ま、まぁこういう子」
麦野「はじめまして。麦野沈利よ。ごめんなさいね、二人でお茶してたのにお邪魔して。
一杯だけ飲んだら帰るから。ふふっ、可愛いリボンだね」 スッ キラキラキラキラキラ
白井「むっ……は、はいですの……いえ、ありがとうございますの……」 ドキドキドキ
白井(なんですのー! ドキドキしてる場合じゃありませんのー!
確かにお姉様と並んで歩く画はこれ以上無い程麗しいと思わなくもないですけれど、
その位置は生涯わたくしだけのものですのよー!) ニコッ
麦野(しちめんどくせぇ……何のつもりだ御坂。とりあえず無難に振舞って適当に切り上げて帰ろ。今日は仕事もあるし) ニコッ
御坂(二人して誰よあんたら……)
「お客様ご注文はお決まりでしょうか?」
麦野「ドリンクb……アイスティーで」
「かしこまりました、少々お待ちください」 ペコリ
御坂「今ドリンクバー頼もうとした? 頼んでよかったのに」
麦野「つい癖でね。ここよく来るのよ」
御坂「いつもお友達とファミレスで喋ってるって言ってたよね」
白井(ファミレスで駄弁って時間を潰しているなんて、レベル5ですのに随分と庶民的ですのね……。
見た目だけなら名門お嬢様学校の箱入りさん達と遜色ないですのに) ズズッ
麦野(何見てんだこいつ……?)
麦野「あー、まあね。今テスト期間だとかで集まってないんだけどさ。っつかアンタらはテストとかないわけ?」
御坂「あるにはあるけど、テスト勉強なんかしないわよ? ね、黒子」
白井「そうですわね。普段からやっていればそんなもの必要ありませんの。いつも通りに学校へ行けばいいんですもの」
麦野「あいつらに聞かせてやりたいわ……」
「お待たせしましたー。アイスティーでございます」
御坂「あ、この人です。っていうか、あんたは無いの? 学校も行ってないんでしょ?」
白井「ブボッ!」
御坂「わっ! 何やってのよ黒子っ!」
白井「げほっごほっ! し、失礼しましたの……」 フキフキ
白井(学校に通ってないって……学園都市で何してますのこの方……。
レベル5なのにスキルアウトと同じじゃありませんの……。
お姉様に良くない影響を与えてしまわないか心配になってきましたわ……)
麦野「テストはあることはあるけど研究協力で全部免除。
来年は霧ヶ丘女子大に入学も決まってるし、もう行く意味ないのよ。
授業なんてメイクしながら聞いてても欠伸出る程簡単だしね」 アイスティーチゥー
白井(そういうところはやはりレベル5ですのね。
でも行く意味が無いなんて、この方学校を何だと思ってらっしゃるのかしら……) ズズッ
御坂「そんなもんかしらねー。でも推薦なのに意外、アンタだったら長点上機でも行けるんじゃないの?」
麦野「ああいう大した実力も無い癖にエリート意識丸出しのとこには行きたくないわね」 チゥー
御坂「大した実力って……一応学園都市最高峰の学校よ? もちろん大学だって他に無い規模の研究機関持ってるし……」
麦野「私の能力開発以外の研究なんてどうだっていいわ。いくらエリート面してたってあいつらの中にレベル5が何人いるっていうのかしら。
それに雑食過ぎて肌に合わないのよね。使える奴はとりあえず集めとけの精神っていうの?
霧ヶ丘も実力主義って言えばそうだけど、ギラギラしてないというか、次はアレその次はコレっていう風にカリキュラム押し付けてこない
とこが気に入ったの。結果出してりゃそこそこ放っておいてくれるみたいだし」 チゥー…ズズッ!
御坂「結局次から次に研究協力させられたりするのが嫌ってことね」
麦野「まそういうことね」
白井(学園都市のお偉方とのパイプも太い長点上機をこうもあっさり蹴るなんて……次元が違いすぎてついていけませんわ)
麦野「ところであなた風紀委員(ジャッジメント)なの?」
白井「ええ、そうですわよ。よくご存知ですわね」
麦野「ポケットから腕章見えてるよ。そんなに小柄なのに大丈夫なの? 走り回ったりするんでしょ?」
白井「小さいは余計ですの。訓練を積んでいるので問題ありませんわ」
御坂「この子これでもレベル4の空間移動能力者(テレポーター)だからね。やりすぎてビルぶっ潰したりするのよ?」
白井「お、お姉様! 人聞きの悪いこと言わないでくださいまし!」
御坂「だって本当のことじゃん」
麦野「へぇ……」
白井「そういえば麦野さん、研究協力というのは、どのようなことをなさってますの?」
麦野「主に工業分野ね。鋼板切ったり、マイクロチップの小型化の研究開発とか。
基本的には壊すことに特化した能力だから。」
白井(あら、意外と社会貢献なさってますのね)
御坂「へぇ、あんたでもそういうのちゃんと協力してるんだ。ちょっと意外かも」
麦野「報酬は悪くないし、精密な操作はまだまだ伸びしろがあるみたいだから。
照準操作の短縮や連射性能が今後の課題ってとこかしら。
今のままだと寝てる時に急に敵に襲いかかられたらすぐ殺せないし」
白井「こ、殺……なんですの?」
御坂「ちょ、ちょっと黒子ごめん! 麦野さんトイレ行こう!」
麦野「はぁ? 私女同士のああいうツレションって嫌いなのよ。一人で行きな」
白井「お姉様、お手洗いならわたくしがご一緒いたしますわよ?」
御坂「い、いいから!」 ガッ!
タッタッタッタッ ガチャッバタンッ
麦野「……何よもう」
御坂「ナチュラルに殺すとか言ってんじゃないわよ!
あんたが普段何してる人でも別にいいけど、黒子を巻き込まないで!」 ヒソヒソ
麦野「ああ、そか。ごめんごめん」
御坂「ったく気をつけてよね。というか、あんたほんと普段何してるのよ」
麦野「……知らない方がいいよアンタは。知って良いことなんか一つもないから」
御坂「……でも」
麦野「ほら戻るわよ。あの子が心配するんじゃない? 私とアンタがトイレでいかがわしいことしてるんじゃないかって」 ククッ
御坂「な、何よいかがわしいことって……!」
麦野「セックスとか」
御坂「なっ! どっからそんな発想出てくんのよ!」 カァッ///
麦野「あれ、お嬢様学校ってそういうもんじゃないの? あの子からそういう匂いもするし」
御坂「匂いって……でも違うとも言い切れないところが恐ろしいわね……」
麦野「さ、戻りましょ」 クスクスッ
ガチャッ カツカツカツカツ
白井「あら、お早いお帰りでしたわね。
わたくしてっきりお二人で密室でいかがわしいことでもなさっているのかと思っておりましたわ」 クスクスッ
御坂「……」
麦野「あはは、いいね。アンタ面白い」
白井「はぁ。何のことをおっしゃってるのかは分かりかねますけれど」
麦野「さて、私は帰るわ」
白井「あら、もうですの? 今来たところではありませんの」
御坂「そうよ。まだ来てから30分も経ってないわよ?」
麦野「私も色々忙しいのよ。ここは払っておいてあげるわ、じゃね」 ピラッ
御坂「あ、またメールするねっ!」 ガタッ
麦野「はいはい。いつでもどうぞ」 ヒラヒラ
カツカツカツカツ
1540エンニナリマース チリーン アリガトーゴザイマシター
白井「なんだか色々な意味で潔い方ですわね。颯爽と去って行きましたわ……」
白井(まともとは言いがたいですけれど……)
御坂「そう……ね」
御坂(……いつでも、か。ふふっ……)
白井(お姉様の機嫌がいつにも増してよくなりましたの……むぅ)
キリが良いので今日はこの辺りで。
書き溜めはまだ結構ありますが、このままだと追いつきそうなので少しペース落としながらいきます。
ではまだ近いうちに
ごきげんよう。
ごきげんよう。
今日も投下したいと思います。
セリフのみのほうが書き難いと感じてきたので、今日は試験的に地の文投入してみます。
今後ちょくちょく挟んでいくかもしれません。
―第十九学区 裏路地 21:00―
―――あんたが普段何してる人でも別にいいけど、黒子を巻き込まないで!
麦野沈利は虚空を見上げて佇んでいた。
十九学区の大通りから曲がりくねった路地を抜けたところに、抹殺対象である研究者達が潜伏しているアジトがある。
学園都市の能力開発に関する研究データを海外に売り飛ばして小銭を稼いでた連中の粛清が今回の仕事内容だった。
達成条件は至って単純。首謀者を含む研究員十数名を悉く抹殺。
狩場となった路地裏は瞬く間に赤い色で闇を染め上げていった。
絶叫と悲鳴が辺りに木霊するも、獣の穴倉のような路地裏で放たれたそれが表通りを歩く人間達に届けられることは無い。
逃げ惑う中年の男達へ、麦野は鋭い眼光とドス黒い殺意を向けて掌を翳し電子線を放つ。
辺りに転がる赤く黒い人であった者たちの残骸を踏みつけながら、麦野は青白い閃光を纏いながら淡々と屠殺場を作り上げていった。
麦野(何してる人でもねぇ……)
麦野は昼間御坂に言われた言葉を思い返していた。
今こうやって自分と二回り以上も年の離れているだろう男達をグチャグチャの肉塊に変えているところを見たら、
果たして御坂は何と言うのだろう。
軽蔑するだろうか。
罵倒するだろうか。
「誰か助けてくれぇええ!」
「俺たちが悪かった! もう二度としへぶっ!!!」
フレンダ「そっち行ったよ麦野ー!」
あちこちに仕掛けた爆弾に発火テープで火を着け、逃げ惑う人間の手足を爆風で引きちぎるフレンダ。
無残に転がった男の頭部に向けられた青白い閃光が、黒いコンクリートに鮮烈な真紅の花を咲かせた。
麦野「オラオラ走れ走れクソ虫どもがぁっ! 最後尾からブタみてぇに殺してやるよぉっ!」
「た、助けッギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
残りは3人。
我先にと路地裏から逃げ出そうとする男達を、麦野はありったけの侮蔑を込めて罵倒する。
阿鼻叫喚の中に在る彼らがどうすればより恐れ、より苦しむかを考えながら。
生粋のドSである麦野は彼らの人体パーツを一つ一つこそぎ落としていくように末端から焼き切って行く。
麦野「命乞いする奴はどいつだぁ? ブタは人語は喋れねえはずなんだけどなぁああ、アハハハハハハ!」
悪魔のような笑い声。
快楽殺人者のような形相で、ヒューヒューと呼吸する元人間の躯をヒールで踏みつけて、
麦野は沸きあがってくる情欲に心地よく身をゆだねていた。
絹旗「今日の麦野はノリにノッてますね」
フレンダ「滝壺にアレ使わせずにこうだもんね。結局、何か良い事でもあったんじゃない?」
だが一つ注意しておきたいのは、別に彼女は殺人が好きだというわけではない。
これはあくまで仕事と割り切っているからこその彼女の行動だ。
テンションが上がりきっているため少々やりすぎてしまうきらいがあるだけである。
「た、頼む! 見逃してくれっ!」
最後の一人となった脂ぎった太めの男が尻餅を付き、眼前に立つ麦野から少しでも離れたいと後ずさる。
糞尿を含んだズボンが重く、ズリズリと黒い後をアスファルトに残していった。
麦野「ァあん? つまんねぇこと言ってんじゃねえぞゴミクズ。テメェで最後だ。
とびっっきりグロテスクに殺してやるからビデオの準備は出来てんだろうなぁ?」
「ぐっ! お願いだっ! 礼ならする! 金ならいくらでもあるっ!」
顔面に靴底を押し付ける。
男から見れば麦野の黒いレースの下着が丸見えとなる構図だが、麦野にとってはその視線を追うのも一つの楽しみだった。
自らの命のかかったこの状況下でも下着に目が行ってしまう男の性のなんと悲しいことか。
生命の危機に瀕して種を残さんとする本能によって起立する下腹部のソレを目にして、不快なものでも見るかのごとく麦野は顔を歪めて嗤った。
麦野「能力開発の極秘データを海外に売り飛ばそうってんだ、そりゃあ金は入ってくるよなぁ?
けど、テメェを枯れた蓮の花みたいな体にしたってギャラは出るのよねぇ。
ほらほら、この私に顔面踏まれて嬉しいだろぉ? 汚ねぇ×××勃起させながら愉快におねだりしてみなぁ」
何度も何度も顔面を蹴りつける。
男は血の気の引いた顔で幾度となく命乞いをしていたが、それは遂に最後まで麦野の笑い声にかき消されていた。
フレンダ「うっへぇ、いいなぁ」
それを見てフレンダがもの欲しそうにポツリと呟く。
滝壺「どっちが?」
滝壺が首を傾げて尋ねると、フレンダは愚問だとでも言うように返した。
フレンダ「んなもん決まってる訳よ」
「お……お願いじまずっ! 命だけは助げてくだざいぃっっ!!」
血と涙でグチャグチャになった顔で、男はもう一度心からの懇願を麦野に向ける。
死にたくないという強い思念が瞳に宿り、真っ直ぐに麦野に突きつけられた。
そして。
麦野はその生きたいという男の最後の願いを、とびきりの笑顔で踏みにじった。
麦野「駄ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!!!
ギャハハハハハハハハハハハハハハッッッッ――――――!!!!!!!」
青白い球体が男を取り囲み、赤い穴を男の肉体に開けて血の噴水が涌きあがる。
弾け飛ぶ男の四肢と臓物がグチャリと壁や地面にへばり付き、恵みの雨であるかのようにそれを浴びながら、
麦野は高らかに唇を歪めて笑っていた。
絹旗「うぇっぷ……今日のはさすがに……」
滝壺「……うん、ミートソースは当分食べれない……」
フレンダ「あはははー、麦野いいよいいよー。今日も素敵な訳よー!」
口元を押さえる絹旗や滝壺。やや顔色が悪いが麦野の雄姿を収めんと携帯電話のカメラを向けるフレンダ。
仕事終わりの弛緩した空気が場に流れ始めた。
麦野「ふぅ。フレンダ、車」
先ほどまでの凶暴性はどこへなりを潜めたのか。
麦野は頬についた血を拭いながらフレンダに一言告げる。
フレンダ「はいはーい」
フレンダ「もしもし、こちらフレンダ。任務終了。片付けよろしくねん。あと帰るから浜面寄越してー」
すぐに携帯電話を操作し、下部組織に後始末の指令を送るフレンダ。
その様子を尻目に、麦野は自らが築き上げた死体の山を眺めて再び御坂のことを考えていた。
麦野(……こんな私でもいいのかしらね、御坂)
自分が時に殺戮を辞さない学園都市暗部であることに、麦野は一抹の不安を抱えていた。
仕事内容に不満はない。しかし、これを知った御坂はどう言うだろうか。
多少暗部へ関わった彼女なら、受け入れることはしないまでも、さほど驚かないような気もするが果たして。
麦野「おっとメールか、気付かなかった」
携帯を取り出して確認すると、一件の着信メールがあった。
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:こんばんはー(*´∀`)ノ
本文:
今日はご馳走様(*ゝω・*)ノ
お礼に土曜日はケーキ奢るからね(*>∀<*)
今日は晩御飯何作ったの~?(・∀・)
――――――――――――――――――――
麦野(……だから顔文字多すぎんだっつの)
胸中とは裏腹に笑みを零す麦野。
その様子を見て麦野の携帯ディスプレイを覗き込むフレンダ。
フレンダ「麦野、5分で来るみたい……って、誰とメールしてんのー?」
麦野「み、見るな! 誰だっていいでしょっ!」
バッと携帯を胸に押し付けてフレンダの視線をかわす。
フレンダ「はぁん。さては男って訳?」
絹旗「何ですって!? 麦野にもとうとう彼氏が超できたんですか!?」
滝壺「おめでとう麦野」
麦野「ちがうっつの! んなことより今日の戦果は文句なしに私が多いわよ。
絹旗フレンダは帰り奢りなさいよ!」
口々に好き勝手なことを言う面々に麦野が話題を必死で逸らそうと早口でそう言った。
絹旗「ぶー、麦野今日テンション超高すぎです」
口を尖らせる絹旗とフレンダ。
フレンダ「ちぇー、勝ってご褒美に麦野の使用済みナプキンもらおうと思ってたのにー」
麦野「本気で引くわアンタ……」
フレンダの発言に顔をしかめる麦野。
フレンダ「そろそろ生理始まるでしょ? 麦野ん家泊めてくれたら勝手にトイレで回収する訳よ」
麦野「何でアンタが私の生理周期把握してんのよ……」
確かにそろそろ来る予定だが、何故そんなことを知っていると背筋に薄ら寒いものを感じた。
滝壺「むぎの、タオル使う? 血で顔も体も真っ赤だよ」
唇の端をピクピクと引きつらせる麦野に、本日はまるで出番のなかった滝壺はスッと綺麗な
ハンドタオルを差し出してきた。
全身血濡れだった麦野だが、そんな綺麗なタオルを汚い血で汚すわけにはいかない。
麦野は微笑んでやんわりと首を振った。
麦野「ああ、ありがと。でもいいよ、今日の車シャワー付いてるからそこで落とすわ」
本日は大型キャンピングカーで出勤の一同。
簡易シャワーが備え付けられているので、そちらで落とすことにした。
滝壺「それもそうだね」
フレンダ「麦野ー、一緒にシャワー浴びようよ」
麦野「あんな狭いとこに二人も入れるかバカ!」
一人分のスペースしかないのに加え、麦野が引くほどの変態であるフレンダと密室に入ったら
何をされるか分かったものではない。
麦野はフレンダの頭を小突きながら携帯の画面に視線を戻した。
麦野(それよりメールメール……)
ポチポチと手早く文章を打つ。
すっかり御坂とのメールが習慣化してしまったとぼんやり思い、苦笑する。
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:こんばんは
本文:
いいよ別にそんなの…。
年下に奢ってもらうのもちょっとね。
今日は今から友達と中華。
どっかいいお店知ってる?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(……ふぅ。……って何癒されてんのよ。相手は超電磁砲よ?
けどとりあえずもうこいつに無駄な嘘つくのはやめよ。付き合い長くなりそうだし)
御坂の気の抜けた女の子らしい可愛いメールを思い出して胸が熱くなる麦野。
変に見栄を張って後で恥をかくのは嫌なので、そろそろ気をつけていったほうがいいなと反省するのだった。
絹旗「麦野があんなに楽しそうにメールしてたことなんてありましたっけ?」
滝壺「ううん。私がはまづらとメールしてたら怒られたことあるよ」
フレンダ「結局、よっぽど仲のいい相手な訳よ。腹立たしい」
ひそひそと好き勝手を言ってくれる彼女らをどついてやろうかと青筋を浮かべた時、
路地裏の出口付近に一台の大型キャンピングカーが止まった。
車幅ギリギリだが、スイスイ運転してくる浜面の運転技術はなかなかのものだと感心する麦野。
絹旗「あ、浜面が超来ましたよ」
エンジンをかけたまま、パワーウィンドウを下ろして浜面が笑みを浮かべた。
だが彼の視線が麦野たちの背後にチラリと向った時、その顔から血の気がサッと引いていく。
そこにあるのは、臓物を撒き散らし、赤黒い血の海に沈んだ肉の塊だったから。
浜面「待たせたな、って麦野今日はまたえらく派手にやらかしたな。
うぇっ……見ちまった気持ち悪ぃ……あれ内臓だよな……うぷっ」
麦野「ああ、たぶんね。ホルモン焼きもいいかも」
嗚咽する浜面に軽口を飛ばしながら麦野は車に乗り込む。
絹旗「マジ勘弁です。今日は超中華でしたっけ? 店は決まってますか?」
滝壺「マンゴープリンと胡麻団子があるところがいい……」
フレンダ「結局、それくらい何処でもあるんじゃない? どうする麦野」
三人もそれに続いて車に乗り込んだ。
麦野「シャワー浴びるわ。店はちょっと待って、知り合いにメールで聴いてるから知ってるかも」
車内の端にある電話ボックス程度のシャワールームの前で携帯を取り出して皆にそう告げる。
浜面「まとりあえずここ離れるぞー」
まだ青白い顔の浜面が苦笑いをしながらアクセルを踏み込み、後片付けのためにやってきた下部組織の連中と
入れ違いに車を発進させた。
何の変哲もない、いつものアイテムの仕事風景である。
―アイテム専用キャンピングカー車内 22:20―
麦野「ふぅ、いいお湯だった」
シャワールームの扉を開け、機嫌良さそうに麦野が体から湯気を漂わせて出てきた。
シャンプーの優しい香りが車内に広がっていく。
フレンダ「次私ー! 麦野の残り香ハァハァ」
それと入れ違いに、フレンダがシャワールームへ駆け込む。
胸元の開いた麦野の服を見て、彼女の呼吸が荒くなっていた。
麦野「排水溝の陰毛漁るんじゃないわよー」
茶化すように麦野。
フレンダ「ハッ!そ、その発想は無かった訳よ! 早速試してみるわね!」
麦野「浜面の拾えバカ」
本当に試してみようという顔つきで、フレンダがガチャリとシャワールームの扉を閉めた。
浜面「お前らもう少し女らしい会話できねえのか……
麦野「女に幻想抱くな。皆が皆滝壺ちゃんみたいにピュアじゃないのよん」
浜面「最悪だ……。っつか、店はどうするんだ? もう第七学区まで戻ってきちまったぞ」
下品すぎる会話に浜面がゲッソリとしながらそう告げた。
帰りに皆で食事をするということだったので、麦野がシャワールームから出てくるのを待っていたらしい。
慌てて麦野が携帯を取り出してメールを確認する。
麦野「悪い忘れてた、今確認するわ」
絹旗「お腹超ぺこぺこです」
滝壺「私も……」
麦野「悪い。あ、来てる来てる」
受信メールが一件。もちろん御坂からだった。
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:いやいやー(*´∀`)ノ
本文:
こういうときは持ちつ持たれつでしょ(*ゝω・*)ノ
奢るったら奢るのっ!
中華いいなぁ(*>∀<*)第七学区でいいんだよね
?ちょっと高いけど学舎の園の近くにある中華飯
店『火織』って店が美味しいよー。
↓
――――――――――――――――――――
麦野「えっと、中華飯店『火織』ってとこが美味しいみたいよ。
学舎の園の近くだって。ナビで検索してみてくれる?」
内容を確認し、店名を浜面に告げる。
彼は運転席に搭載されたカーナビを手探りで操作し始めた。
浜面「あいよー」
滝壺「私がやるからはまづらは前見て……よいしょ」
その様子にやや不安を覚えたのか、滝壺が助手席に移ってナビの操作を交代する。
ピッピッという電子音を聞きながら、麦野はもう一度そのメールに視線を移しふと気付いた。
麦野(あれ……まだ続きがあるな)
下の行に文章が続いていることを意味する矢印が見えた。
カチカチと十字キーを押して文章を下へ送る。
そこにあった文面に、麦野は大きく目を見開いて息を呑んだ。
――――――――――――――――――――
↑
?ちょっと高いけど学舎の園の近くにある
「中華飯店『火織』」って店が美味しいよー。
麦野さんいつも挨拶返してくれて嬉しいよ(∩∀`*
)
――――――――――――――――――――
麦野「っ……」
心臓が内側から叩かれるような衝撃を感じた。
何てことの無い文章であるはずなのに、御坂から向けられた明確な好意にドキリと胸が高鳴る。
しばし呆然とソレを眺める麦野。頬がやや熱くなるのを感じながら、驚きとも照れともとれる表情を浮かべた。
滝壺「むぎの、あったよ。まだ開いてるみたい。ここ向うね。……むぎの?」
麦野「ハッ……あ、ええ、お願い……」
携帯をガン見していたので滝壺の声が全く耳に届いていなかった。
慌てて麦野は頷き、さらにもう一度その文章を読み込む。
麦野(……ムカつく……ちょっと可愛いじゃないのよ)
素直な言葉に麦野は弱かった。
それは彼女がひねくれた人間だからでもあるし、あまり人から好意を向けられる立場にいないからでもある。
だが何より、それがあの殺し合った相手である超電磁砲から送られてきたものだという事実が麦野に驚きを与えた。
返信メールを打つ麦野。
一先ず礼を打ったところで彼女の手が止まった。
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:ありがと
本文:
行ってみるわね。
――――――――――――――――――――
>送信
麦野「……」
唇をわずかに引き結んで麦野は続きを打ち始める。
自分だけが年下の御坂に翻弄されるなど癪だった。
平静を装いつつも、年上の余裕と威厳を見せ付けてやろうと、麦野はゆっくりと一言を付け足した。
――――――――――――――――――――
↑
行ってみるわね。
生意気(笑)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「ふん……」
息を吐いて携帯を閉じる。
彼女がこれを見てどう感じるかは分からないが、やられっぱなしは性に合わないという麦野のささやかな逆襲だった。
絹旗「おやおやー? 麦野何やら顔が赤いですねぇ。彼氏からのラブメールでも超届きましたぁ?」
浜面「お、麦野彼氏出来たのか!?」
滝壺「さっきも言ってたね。どんな人なの?」
にやにやと笑う絹旗や、興味深深と言いたげな浜面滝壺カップル。
面倒くさそうにため息をつきながら髪をかきあげる麦野。
麦野「彼氏じゃねえっての……友達よ」
言ってから思うが、友達というのも少し違う気がする。
二人の関係を言い表す言葉が思い浮かばないので、一応メール友達という意味でそう告げるが、
しっくりとこないなと麦野は思うのだった。
フレンダ「麦野に恋人が出来たと聞いて―――っ!」
次の瞬間。フレンダがシャワールームから飛び出してきた。
全裸で。
水を含んで重たくなった金色の髪から水気を撒き散らし、ペッタンコの胸板も、色素の薄い白い肌も、
下腹部のデリケートな部分も全てを露にして。
浜面「うぉおお!フレンダお前なんで全裸なんだよ!」
バックミラーでフレンダの裸体を確認した浜面がハンドル操作を誤って車体が大きく左右に振られた。
キャーッという悲鳴が車内に木霊する。
絹旗「うひゃっ! 浜面はちゃんと超前見て運転してください!」
なんとか体制を保った絹旗がぜぇぜぇと荒い呼吸で浜面に怒りの言葉を向ける。
浜面「わ、悪い……つい」
浜面(フレンダはやっぱり下も金髪なのか……ヤベッ鼻血)
男なものでと浜面が冷や汗をかきながらフレンダの全裸を思い返した。
隣で滝壺が頬を膨らませているのがチラリと見えて、浜面は苦笑いをしながら取り繕う。
滝壺「むぅ……」
浜面「あ、あはは、滝壺怒るなって……」
フレンダ「やっぱり本当なの麦野!?」
そんな様子を気にも留めず、フレンダは麦野にくってかかった。
愛しい麦野の一大事。裸如きが何だというのか。
そう言わんばかりの、ともすれば今にも泣きそうな顔でフレンダは麦野に縋りついた。
麦野「だから違うっつの! っつかアンタはその前に体拭け服を着ろーッ!」
いい加減しつこいと、麦野はフレンダの頭をゴツンをゲンコツでぶん殴ってシャワールームに再度放り込んだのだった。
―常盤台中学学生寮 二○八号室 22:35―
御坂美琴は寮の自室。ベッドの上に座って携帯をボーとした目つきで眺めていた。
――――――――――――――――――――
↑
行ってみるわね。
生意気(笑)
――――――――――――――――――――
御坂「……」
麦野から来たメールを見て、御坂は己の携帯を慎ましい胸に抱え込む。
御坂(……なんか私まで恥ずかしいんですけど……)
頬が赤くなり、ドキドキ高鳴る鼓動に妙な気分になってくる。
どこか気恥ずかしいような照れくさいような。
言葉では言い表し難い不思議な感情だった。
御坂「……と、とりあえず返事返そ」
誰にともなく取り繕うように、御坂は携帯を操作する。
嫌が応にも浮かぶ麦野の眉目秀麗な顔立ちが、御坂の鼓動に加速をつけた。
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:えっと…
本文:
こういうの照れるね(笑)
お店どうだったか感想教えてね(∩∀`*)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂「ふぅ……」
御坂(こういうの久しぶりだな……。あいつと会うとき以来……。
土曜日、恋愛相談乗ってもらおうかなあ……)
恋する乙女。御坂美琴。
想い人である相手のことを知らない年上の麦野になら、気兼ねなく恋愛相談が出来そうだ。
経験豊富そうな大人っぽいお姉さんなので、非常に頼りになりそうな雰囲気がある。
いい人と知り合いになれたなと思っていると、浴室の扉が少しの湯気とともに開かれ、
そこからルームメイトの白井がタオルで髪を拭きながら入ってきた。
白井「お姉様、お先にお湯頂きましたわ。……あら、お顔が赤いようですけれど、熱でもありますの?」
御坂「え? ああ、大丈夫大丈夫。さ、私もお風呂行ってこよっと」
その顔の赤さは誰を思ってのことか。
御坂は自分でも判断のつかない事柄から逃れるように、カエル柄のパジャマとタオルを持って浴室へと入っていった。
白井(麦野さんに夢中のようですの。……ふて寝してやりますの……)
お姉様のことなら手にとるように分かる白井黒子。
彼女が携帯電話を抱えていたその様子だけで、何があったのかはある程度見て取れた。
少しだけ寂しそうにそう思いながら、白井はベッドの中に潜って枕を抱えて瞳を閉じた。
というわけで2日目終了です。
殺伐としたアイテムの仕事。麦野の残虐性。かなり生々しい変態のフレンダと、やや誇張した表現をとったのは
御坂のメールの平和さと、そんな麦野の生活の中での唯一の白さが少しでも伝わればと思ってのことです。
不快に思った方は申し訳ありません。
では本日はこの辺で。
明日は来れない可能性が高いです。
ごきげんよう。
ごきげんよう。
皆さんいつもご覧いただきありがとうございます。
百合は好み別れると思ったのですが想像以上に感想を頂けたので驚きつつも嬉しいです。
さて本日の内容ですが、今回はまたセリフ形式に戻ります。セリフのみでは表現しにくい部分は地の文を挟みますね。
ところで、麦野が処女でなければ認めないという方は大変申し訳ありませんが、引き返すことを強くお勧めします。
よろしければ本日もしばらくお付き合いください。
3日目
―第七学区大通り 16:00―
スタスタスタスタ…
麦野(今日は久しぶりにファミレスだな)
麦野(そういや昨日あれから帰ってすぐ寝ちゃったからメール返してなかったっけ……) カチッ メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:こんにちは
本文:
昨日返事返せなくてごめん。
教えてもらったお店美味しかったよ。
友達も喜んでた。胡麻団子食いすぎて喉に詰ま
らせてた子がいたくらい(笑)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「よし、オッケー」
麦野(滝壺胡麻団子ばっか食べてたわね……美味しかったけど)
ドンッ
??「ってーな」
麦野「あ、ごめんなさいっ」 アセッ
麦野(やば、完璧余所見ぶっこいてたわ)
??「おいおい、メール打ちながら歩いてんじゃねぇぞ原子崩しァ」 ニヤッ
麦野「あァ?……げっ、未元物質(ダークマター)ァ……」
垣根「げっ、とはご挨拶だな。元彼に向って」 ハァ~
麦野「……テメェみてえなヤリチン野朗と付き合ってたことが私の人生最大の汚点だよ」 キッ
垣根「だったらテメェの人生最大の失敗はこの俺のようなイケメン超能力者と別れちまったことだな」
麦野「うるさい。アンタと話すことなんて何一つとしてないから消えろ」
垣根「まだ怒ってんのかぁ? あんときゃ間違いなくお前が一番だったぜぇ?
他に女がいたのは認めるが、本気だったのはお前だけだ」
麦野「クズは大体みんなにそういうのよ」
垣根「ククッ、確かにな。だが、こいつは本当だ。お前に電子線ブチこまれて泣きながら別れようって言われた時は
結構凹んだもんさ。お前ほど顔がキレーで胸もでかい女はなかなかお目にかかれねえからな。
それに、よく鳴いてくれる女も」 クククッ
麦野「……言ってろ。結局体かよ。テメェが下手糞なだけだろうが」
垣根「くははっ、照れてやんの。今男はいねえのか? ああ、安心しろ。もうお前にゃ未練はねえ。
だが、一応俺なり本気だった女だ。ちょっとした興味があるのは許してくれよ」
麦野「アンタにゃ関係ない。未練はねえけどヤリたいって? お生憎。テメェに股開くことは一生無いわ。
私の×××が見たきゃ産婦人科か泌尿器科にでもなりなゲス野朗」 フンッ
垣根「口の減らねえ女だな。日照ってんなら助けてやろうと思ったのによ」
麦野「テメェみたいに下半身と脳みそが直結してねえんだよ。
たかだか膜くれてやった程度で偉そうなこと言うな租チン」
垣根「よく言うぜ、散々感じまくってたくせに」
麦野「2年も前のことグダグダ抜かすな糞転がし。抜きたきゃ山ほどいるアホ女共のケツに突っ込んでクソでも食ってろ」
垣根「それがどいつもこいつも学校やら仕事やらで相手してくれなくてよー。
こういうときのために1から23学区まで全部に女作ったんだぜ?
俺の苦労返せってんだよな。仕方ねえからこうして久しぶりにナンパでもしようと思ってぶらついてたんだ」 ケッ
麦野「あわよくば昔の女に会えないかなって?」 ハッ
垣根「自惚れんなよ。この辺りにゃ学舎の園にあるお嬢様学校に通ってる純粋な女共が多いからな。
たまにはお嬢様を食うのも悪かねえかと思って来たんだよ」
麦野「そうかよ。お好きにどうぞ。私は待ち合わせがあるからテメェと無駄話してる暇ないの。じゃあね」
垣根「おい待てよ沈……ん、なんだあれ?」
麦野「あン?」
ドドドドドドドッ マテゴルァッ! ビリビリッ! マテルカァッ! ウォーーーーー! ドドドドドドドドッ!
麦野「御坂……」
御坂「ごるぁっ! 上条当麻ぁっ! 待てっつってんのが聞こえないのー!?」 ダダダダダダ!
上条「止まったらお前の電撃食らっちまうだろうがぁっ!」 ドドドドドドド!
御坂「右手出しゃなんとかなるでしょうがぁっ!」 ダダダダダダ!
上条「分かってんのに追いかけてくるんじゃねぇっ!」 ドドドドドドド!
御坂「右手ごとまる焦げにするつもりで撃ってんのよこっちはぁっ!」 ダダダダダダ!
上条「殺す気じゃねえかっ! うぉおおおっ!」 ドドドドドドド!
御坂「止まれっつってんd……っ」
麦野「あ……っ」
ドドドドドドドドッ!
麦野(……御坂と目ぇ合った。やばっ、こいつと一緒にいるとこ見られたんじゃ……) ドキドキドキ…
麦野(って、別にヤバくないじゃん……。何焦ってんの……意味わかんない……)
垣根「ふーん、超電磁砲か。元気なこった」 ジー
麦野「ちょっ! あいつには手ぇ出すんじゃないわよ!」
垣根「はぁ? なんで」
麦野「な、なんでって……あいつは中学生なのよ!?」
垣根「……ま、確かに。中学生はさすがになー。どこぞのモヤシ野朗と違ってロリには興味ねえんだわ」
麦野「中学生は本職から言わせりゃババァらしいわよ。そういう奴から見りゃ私なんて魔女ね魔女」
垣根「業が深いな。なぁ沈利、お前の友達とか紹介してくれよ」
麦野「便器にされるって分かってんのにするわけねえだろ」
垣根「そりゃ言いすぎだぜ。ちゃんと愛してやるさ。便器だってピカピカに磨かれれば嬉しいはずだろ」
麦野「便器の気持ちが分かる能力は持ってないもんでね」
垣根「っつかお前友達いねえもんな」
麦野「い、いるわよっ!」
垣根「ふぅーん。まいいや。じゃあ沈利、ヨリ戻さねえか?」
麦野「死ね。未練タラタラじゃねえか」
垣根「まあそうなるか。仕方ない、今日は気分も乗らねえし帰るわ」
麦野「とっとと帰って冷蔵庫の中で永久に冬眠でもしてろ。そしてアンタが地獄に落ちますように」
垣根「罵倒のバリエーションが豊富すぎんぜ沈利ちゃんよぉ。
まあお前も適当に彼氏でも作ってまともな恋愛しろよ。俺みたいな奴に引っかかっちゃ駄目だぜ?」 ククッ
麦野「全くだわ。アンタと出会ったことを一分一秒でも早く忘れたいから能力で初めからいなかったこととかにしてくんない?」
垣根「はいよ、もう消えるっつの。っつかお前、超電磁砲大事にしろよ」
麦野「は?」
垣根「目と目で会話しちまって。通じ合ってるじゃねえかよ」 ククッ
麦野「そ、そんなんじゃないわよ!」
垣根「人間の壊し方しか知らねえお前と仲良くしてくれる貴重な存在だろ。丁寧に扱ってやれよ。じゃあな沈利」 ヒラヒラ
スタスタスタスタ…
麦野「ど、どういう意味よ……つか沈利って呼ぶな!」
麦野(……言われなくたって結構気ぃ遣ってるわよ)
PiPiPi…!
麦野「ひゃっ!……ビックリさせないでよね……」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:さっきは(≧Д≦;)
本文:
恥ずかしいとこ見られちゃったね(´・ω・`)
てか胡麻団子の子は大丈夫なの?Σ( ̄□ ̄;)
あ、明日何時にする?ヾ(・ω・`*)
――――――――――――――――――――
麦野「……ふふっ」 クスッ
―第七学区 ファミリーレストラン『ジョセフ』 16:40―
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:ああ
本文:
あれが御坂の好きな人?
随分変わった遊びしてるのね。
ケロッとした顔でマンゴープリン食べてたから大
丈夫じゃない?
どうしようかしら。お昼ごはんも一緒に食べるなら
昼からでもいいし、ケーキだけなら3時くらいでも
いいわよ。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「~♪」 カチャッ
絹旗「昨日といい今日といい、麦野やけに機嫌いいですね」
麦野「えー? そう見える? うふふっ」 キラキラ
絹旗「何かありました?」 チゥー
フレンダ「うんうん。気になる気になるー」 チゥー…ズズッ
麦野「えー、どうしよかっなぁ」
絹旗「機嫌悪いよりは全然マシですがこれはこれで腹立ちます」 ブクブクブクブク
滝壺「はよ言え」 ボソッ
フレンダ「こ、こらこら滝壺……」
麦野「いや別に何もないよ。ちょっと仲良くなった子がいるだけ」
フレンダ「あ、それってもしかして超電磁砲? 電話で言ってたよね」
絹旗「マジですか。麦野あの人のこと超嫌いだと思ってました……」
麦野「いや、案外いい子だったよ。なんてねー」
浜面「うぇーい、麦野アイスティーお待ちー」 ヒョイッ
麦野「ありがと浜面」
浜面「む、麦野が礼だと……」 ビクビク
麦野「何よ、私だってお礼くらい言うっつの」
フレンダ「浜面ー、私メロンソーダ」 ポィッ
浜面「おっと。纏めて言えよ」
フレンダ「ジュースくらい自分のペースで飲みたい訳よ。ほら行った行った。
よっ!かっこいいぞドリンクバー職人っ!」
浜面「嬉しくねえよ。滝壺も絹旗もいらねえか?」
絹旗「大丈夫です」
滝壺「うん」
浜面「あいよー」 スタスタスタ
フレンダ「でも麦野と超電磁砲がねー。意外過ぎて想像できないなー」
麦野「まあねー」 カチカチカチカチ
絹旗「何してるんです? 麦野」
麦野「いや、着信音変えようと思って。電子音じゃ味気ないし、耳障りだから……よし、おっけ」
フレンダ「麦野がそんな携帯パチパチやるなんて。現代っ子になっちゃって私は悲しい訳よ」
麦野「アンタが一番携帯いじってる率高いじゃないの」
滝壺「私浜面とメールしてたら怒られたのに……」 プゥ
麦野「ごめんごめん、惚気られてるみたいだったからさ。お詫びにデザートでも奢ったげるよ、何がいい?」
滝壺「ほんと?……じゃあこのウルトラジャンボトロピカルパフェ」 (*・△・*)ワクワク
麦野「絶対食いきらねえだろ……もったいないから別のに」 ハァ…
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野「いいタイミングだわ」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:うん…
本文:
実はそう(∩∀`*)
ケーキセットあるお店あるからそこでお昼一緒に
食べよ(*ゝω・*)ノ 12時に学舎の園のゲート奥
の広場で待ち合わせでどう?
私の名前言えば通れるはずだから(≧∀≦)
――――――――――――――――――――
麦野「……」 メルメルメル
浜面「ほらよフレンダ」 ドンッ
フレンダ「サンキュー」
浜面「昨日もそうだけど、麦野がメールしてるとは……」
絹旗「女が超出来たらしいですよ」
浜面「げっ、マジか。確かに女にもモテそうだな」
フレンダ「麦野は私のっ! 私は麦野のっ!」 ガタンッ
浜面「まあ麦野に友達が増えたってのはいいことじゃないの。さ、やっと昼飯の続きが……」
絹旗「浜面、コーラで」 ハイッ
浜面「テメェっ……俺はいつになればこの冷え切った和風ハンバーグを食えるんだ、チクショー!」 ガタッ
「ウルトラジャンボトロピカルパフェお待たせしましたー」 ドーン!
滝壺「うん、それ無理……」 ヒキッ
麦野「いつの間に頼んでたんだよ……ったく……」 メルメルメルメル
フレンダ(こ、これは……麦野が、とられる……!)
―常盤台中学学生寮 二○八号室 17:30―
御坂「ふぁ~あ……」
御坂(今日は結構走ったから眠いわねー……仮眠しようかしら……けど夕食までに起きられない気もするし……)
御坂(おっ、メール来てるわ)
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:わかった
本文:
そう。
ハードな鬼ごっこにしか見えなかったけど。
それでいいよ。
楽しみにしてる。
――――――――――――――――――――
御坂(……楽しみにしてくれてるんだ……)
御坂(気合入れて案内しなくっちゃ。と言っても六時には目ぼしい店閉まっちゃうからなぁ……。
でもそんな何軒も周るのも変よね。
お昼ご飯を兼ねた一軒目はあそこにするとして……二軒目はどうしよっかな) ウーン…
御坂(ってか何真剣に悩んでんのよ私は……。別に何だっていいでしょそんなもん……) ベッドニゴロリ
御坂(んー……でも楽しみにしてくれてるのよねー。
そういやレベル5の人と仲良くなるの初めて……。
一方通行と心理掌握はアレだし、二位と六位と七位は顔も知らないし……。
本気で殺されかけた相手にこんなこと思うなんて……私もどうかしてるわね) ハァ…
御坂(そういえば麦野さん男の人と一緒にいたな。
あの人どっかで見たような……うーん、誰だったんだろ……彼氏とか。
いないって言ってたような……) ズキッ
御坂(……? 何か苦しい……変なの。いいや、寝よ) ゴロン
―麦野宅 22:20―
麦野(明日何着て行こうかなー。あいつは制服じゃないと駄目なんだっけ。
となるとあんまり気合入れるのも浮くよね。中のお嬢様共も制服ばっかだろうし。
……私も制服で行くか?)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野「あいつだ。本人に聞くか」
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:おはよー(∩∀`*)
本文:
うとうとして寝ちゃってたら夕食食べ損ねた(笑)
と思ったら後輩の子が確保してくれてて今部屋
で晩御飯中~(*>∀<*)
麦野さんは何してるの?(*ゝω・*)ノ
――――――――――――――――――――
麦野(寮生活も大変ねー。自炊しなくていいのは楽だけど) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:おはよう?
本文:
おやすみの時間だけど?(笑)
こんな時間に食べて、油断してるとほんといつか
太るわよ。
明日着ていくもの考えてる。学舎の園って制服
じゃないと駄目ってことない?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「むしろ太れ忌々しい」 フンッ
麦野(訊いてはみたものの、学舎の園にある学校じゃないんだから制服だってどっちにしろ浮くわよね……)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野「はや」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:ほんとにね(笑)
本文:
眠く無くなっちゃったどうしよ(´д`;)
太らないもーん( ̄+ー ̄)キラン
別に大丈夫だよー。
でも麦野さんの制服姿見たいッ!(*>∀<*)
――――――――――――――――――――
麦野(……そ、そこまで言うなら……考えてあげてもいいけど……) カァッ…
麦野(えと……制服どこだったかな……)ガサガサ
麦野「あったあった。仕方ないわね、今回だけよ」 メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:ムカつく
本文:
寝ろ。
気が向いたらね。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(ま、あいつがどうしてもって言うからね。……アイロン当てとこ……) ササッ
アイロンダイガチャコンッ! フシュー…
麦野(っつか、あのツンツン頭があいつの好きな奴かぁ……。何かフツーの奴だったわねー。
ま、変に気取った男とかよりああいうのの方が好感持てるけどさ) フシュー…ススス
麦野(彼氏かぁ、御坂の恋路が上手くいったら、もう連絡くれなくなるかな……) ズキッ フシュー…
麦野(……って、別にいいだろ。あいつなんかただの暇つぶしの相手なんだから。
向こうだって相手が他に出来りゃ私なんて用済みなわけだし……) ズキズキッ
麦野(……くそっ、それはそれでムカつくな……。
だからってあいつに相手してくれって頼めっての? 冗談、私を誰だと思ってるのよ。
そもそもそれ以前にあいつとは4つ以上も年が離れてるのよ……。
友達って考えてもちょっとおかしいのに……けど絹旗を考えたら別に……?
うーん、でもやっぱ納得いかない……) ……ジュー
麦野「やべっ!」 サッ!
麦野「あー……ブラウスの袖焦がしちゃった……」 コゲェ
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野「くそっ、テメェの所為だぞ分かってんの?」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:ごめーんo(≧ε≦o)
本文:
怒っちゃいやー(≧Д≦;)
眠れないんだから相手してよー(∩∀`*)
制服すっっっっごく楽しみにしてるわね(*>∀<*)
――――――――――――――――――――
麦野「……ばぁか」
麦野(何か独り言増えたな私。……こいつと会話してる気分だからか。
……独りには慣れてたのに、随分と私も日和ったもんね) メルメルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:まったく
本文:
仕方ない子。
↓
――――――――――――――――――――
>送信
麦野(……まあでも、こうしてアンタとメールするのは嫌いじゃないよ。認める) カチカチカチ
麦野(アンタもそう思ってくれてたら……私はどうするのかな……)
――――――――――――――――――――
↑
仕方ない子。
ちょっとだけね。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「……レベル5(アンタら)は寂しがりやだね」
麦野(……そしてきっと……私も)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:やった(≧∀≦)
本文:
麦野さん大好き(´ε`*)
――――――――――――――――――――
麦野「――――――っ!」
麦野(困ったな……)
麦野(―――アンタを手放したくなくなりそうだ……)
3日目終了ということで本日は以上です。
麦野の着歌があの曲でなければいけないのは理由がありますが、それはまあ本筋には関係ないのでいずれ。
次回は学舎の園で麦野が御坂とイチャイチャします。
明日から月曜あたりまでちょっとバタバタするので来られるか分かりません。
来れるかもしれませんが、また近いうちに。
>236
失礼、ただの誤字ですw
変換一発目でそれが出てくるので使いっぱなしでした
麦野「どう?初めてのローションは…」ヌルヌルモミモミ
美琴「…ゃ…だ……あッ……ッ…」モジモジビクビク
麦野「こんなにビンビンにして…やっぱお前、オナニーばっかしてんだろ?ハハッ」ギュッギュペロー
美琴「ッ……し、して…ないわよ…///」
麦野「こんなになってんのに、まだそんなこと言っちゃうんだ…
美琴ぉ……もっと気持ちよくなりたく…ない?」ススッサワサワ…
美琴「…ぅ…ぁあッ……ゃだぁ…いじわる……しないでぇ…」モジモジジンジン
…あれ?
麦琴なんて好きな奴いるかよマジ誰得^^
って思ってたら何この流れ。麦琴はやっぱりアリなのかw
ごきげんよう
アレイスター様が滞空回線で見てらっしゃるわよ。
今日はなんとか来れました
量は相変わらず少なめですがちょろっと投下していきますね
4日目
―学舎の園 入場ゲート 11:50―
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:おはよう
本文:
今ゲート着いたからもうすぐ行く。
眠いんですけど…
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「常盤台中学の御坂美琴さんの招待で来た、麦野沈利です」
警備員(女)「少々お待ちください……」
麦野(初めて来たけど、なるほど厳重ね。周囲は高い壁だし、監視カメラもここから見えるだけでもかなりの数……。
こりゃ箱入りお嬢様養成所と言われるだけあるわ。
石畳に白壁の地中海風の街並……女の子の憧れってのは分かるけど、綺麗なナリした監獄みたいだ)
警備員(女)「はい、申請されてますね。どうぞ」 ニコッ
麦野「どうもー」 スタスタスタ
麦野(警備員も女ばっか。ここから一歩も出ない純粋培養ちゃん達に思いっきり卑猥な単語ブチ撒けてやりたくなるわね。
……っと御坂は……いたいた)
御坂「あ、麦野さんおっすー。わぁ、制服可愛いね。似合う似合う」
麦野「中学生に制服褒められてもね……。アンタこそいつもの常盤台の制服、板についてるわね」
御坂「これ以外滅多に着ないしねー」
麦野「あら、ヘアピンかーわいい」 ツンッ
御坂「あはは、ありがと、照れるわね。立ち話もなんだし、ご飯食べ行こっか」 スタスタ
麦野「そうね。……寝不足の胃に優しいもんがいいわ」 スタスタ
御坂「ごめんごめん、結局明け方までメールしてたもんねー。先に寝てくれてもよかったのに」
麦野「っつかアンタはなんでそんなケロッとしてんのよ……」
御坂「なんでって聞かれると分かんないけど、ほら、麦野さんと遊ぶの楽しみだったから……なんて、あはははは……は」 ドキドキ…
麦野「……ば、ばかじゃないの……」 カァッ
御坂「な、何よその反応! 言ったこっちが恥ずかしくなってくるでしょっ!」 カァッ
麦野「言われた方はもっと恥ずかしいんだよ……」
御坂「あんただったら適当に受け流すと思ったのよ……」
麦野「……生意気よ、年下のくせに」
御坂「沈利お姉様ッ、今日はいっぱいいっぱい楽しみましょーね☆」 (*ゝω・*)-☆バチコンッ
麦野「……」 ( ゜Д゜)
御坂「……」 (*ゝω・*)…
麦野「……」 (((((; ゜Д゜)))))
御坂「……」 (;ゝω・*)…
麦野「キモい」 ハァ…
御坂「わ、分かってるわよ! やってみたかっただけよ!」
麦野「やってみたかったって何。つまり私のことお姉様って呼びたかったのかにゃーん?」 ククッ
御坂「んなわきゃないでしょ!」
麦野「っつかアンタ目上に対する礼儀がまるでなってないのよね。
一応私アンタの年上なんだから、あんた呼ばわりってどうなのよ。
常盤台じゃ上下関係そんなに杜撰なわけ?」
御坂「そ、それは……!」
麦野「そんなんで後輩達を導いていけるとでも思って? お・ね・え・さ・ま・?」
御坂「うー……」 シュン…
麦野(あら可愛い。ちょっと自覚してたとこあったってわけね。ふふん、いじめがいありそうだけど、
周りにゃこいつの信者も大勢いそうだし。後ろから刺されたくないからこの辺でやめといてやるか)
麦野「なーんてうっそぴょー」
御坂「すみませんでした、麦野先輩」 ペコリ
麦野「……あン?」
御坂「確かに先輩の言う通りです。以前例の研究所でお会いしたときとは違いますもんね……。
麦野先輩は私より4つも年上の方なのに、言葉遣いも弁えず、不快な思いをさせてしまいました……。
本当に申し訳ありませんっ!」 フカブカー
麦野「ちょっ……ぅええ!? ア、アンタ誰よ!」
御坂「え……? 御坂美琴です。もうお名前も覚えて頂けないほどに私のことを嫌いになってしまわれたんですか……?」 シュンッ
麦野「やめやめやめやめー! キモい! さぶいぼ出てきたっ! 敬語禁止! あんたで結構!
だからその気色悪ぃ言葉使いを今すぐやめろっ!」
御坂「うん、分かった」 ケロッ
麦野「なっ…!」
御坂「うー、寒気したわ。慣れないことするもんじゃないわねー」
麦野「て、テメェ……図りやがったな……」 ムカッ
御坂「あら嫌ですわー。てめぇ、だなんて。言葉遣いがお悪いですわよ沈利お姉さま。
ここは学舎の園。郷に入っては郷に従えって言葉ご存知ですかしら?
そのような乱暴な言葉遣いではつまみ出されても文句は言えなくってよ?」
麦野「く……か……て……め」 ギリギリギリ
御坂「肩こったー。私は敬語使う必要ある相手にはちゃんと使うわよ」 コキッコキッ
麦野「……私にゃその必要ねえってか。はっ、お偉いこったな第三位サマは。
アンタにとって目上ってのはカミサマか何かのことなのかねえ。
親しき仲にも礼儀ありって言葉知ってる?」
御坂「違うわよ」 クスッ
麦野「……あァ?」
御坂「あんたとの間に、敬語とかそういうので先輩後輩の壁を作りたくないだけ」
麦野「……」
御坂「上手く言えないけど、あんたとは対等な関係でいたいの。気を遣わない間柄になりたいなって、思ってるのよ」 ニコッ
麦野「……勝手な」
御坂「ああでも確かに勝手なのは分かってるわよ?
あんたの言うとおり年下は私なんだし、あんたがちゃんと敬語使いなさいって言うならそうするわ。
麦野さんとは長い付き合いになりそうだから」
麦野「……好きにしなよ」
御坂「いいの?」
麦野「アンタがそうしたいんなら、いいよ。正直最初からそんなもんどうだってよかったんだから」
御坂「ありがと」
麦野「……別に」
麦野(クソッ……何なのよこいつ……。気を遣わない間柄になりたいとか、対等でいたいとか……)
御坂「あ、もうお店すぐそこよ。行こ行こっ!」
麦野(……私はもうアンタのことそういう風に思ってるわよっ!)
―学舎の園 cafe 『スマートヴェリー』 12:20―
「ご注文の料理はお決まりでしょうか?」 ニコッ
御坂「日替わりパスタのケーキセット一つと……あんたは?」
麦野「んー、私も同じもん」
「ドリンクとケーキをお選びください☆」 ニコッ
御坂「ガトーショコラとセイロンティーお願いします」
麦野「……どれがオススメ?」
御坂「そうねえ、木苺のミルフィーユとかレモンタルトが美味しかったわよ?」
麦野「じゃあレモンタルトとアイスミルクティーで」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ☆」 ニコッ ペコリー
麦野「可愛いお店ね。よく来るの?」
御坂「ううん、たまに。学舎の園の外で遊ぶことの方が多いから」
麦野「ああ、例の彼と?」 ニヤー
御坂「なっ! ち、違うわよ! 友達と! 何にやけてんのよ!」 アセッ
麦野「あら、アンタ友達いたの」
御坂「いるわよっ! 一昨日だって会ったでしょ!?」 ダンッ!
麦野「あの子って後輩じゃないの?」
御坂「後輩だって友達は友達でしょ! 他にもそこそこいるんだからねっ!」 フンッ
麦野「ああ、例の彼ね」 ニヤー
御坂「だからにやけるなっ! と、友達じゃないもん……」
麦野「あれ、付き合ってんの?」
御坂「……ううん」 フルフル
麦野「え、でも……」
御坂「う、うるさいわねー! 友達って言ったら負けでしょうがっ!」
麦野「ああ、確かに。好きな人だもんね」 ニヤニヤ
御坂「……う……ち、ちが」
麦野「違わないでしょ。アンタメールで言ってたじゃん」 ニヤニヤ
御坂「そ、そうだけど……」
麦野「どこに惚れたの?」 ニヤニヤ
御坂「…………私を、対等に扱ってくれるとこ……かな」
麦野「……ふぅん」
麦野(理屈で言えば私にも当てはまるような……) ドキッ
御坂(あれっ何よこのリアクション……あっ、そういやさっき麦野さんにそんな感じのこと言ってしまったような……) ドキッ
麦野「……」
御坂「……」
「お待たせ致しましたー。日替わりパスタでございます☆」 ニコッ
ゴトッ ゴトッ
「ごゆっくりどうぞー☆」 ニコッ
麦野「え、えーっと……食べよっか」
御坂「そ、そうね……!」
イタダキマース
麦野「……あの男とはよく会うの?」 カチャカチャ チュルンッ
御坂「んー……モグモグ……学校行くときと帰る時にたまに……」 カチャカチャッ
麦野「年は?」 チュルンッ モグモグ
御坂「二個上」 ウマウマ
麦野「そうなんだ」 ウマウマ
麦野(おいおい……相手の男こいつに手出したら犯罪だろ……。
まあ御坂ってガキッぽいけど幼くはないから高校生に見えなくもないけど) モグモグ
麦野「ふーん……遊びに行ったりとかしないの?」 モグモグ
御坂「……しないかも」 カチャカチャ チュルンッ
麦野「どうして?」 カチャ…
御坂「だっていっつもあいつ逃げちゃうし……やっぱ誘った方がいいかな?」 モグモグ
麦野「まあ仲良くならないことにはね……」 カチャカチャ チュルンッ
御坂「そうよねぇ。どういうとこに誘えばいいと思う?」
麦野「知らないわよそんなの。自分で考えな」 モグモグ
御坂「お、お願い麦野さんっ! 麦野さんならそういうの詳しそうだから……」 ガシッ!
麦野「う……」 ビクッ
麦野(どうしよ……目がマジだわ……。最初は適当に考えてたけどここまでくると下手なこと言えないし……)
御坂「だ……駄目……かな?」
麦野「いや……その。い、いいわよ、任せなさい!」 ドンッ!
御坂「ほんとっ!? 頼りになるなー」 パァッ!
麦野(私のアホ――――――!!!)
御坂「昔の彼氏とはどういうとこ行ってたの?」
麦野「ええ? そうねぇ……」 ウーン…
麦野(あいつとの過去なんて思い出したくもないけど……仕方ないな。
えっと……確か最初はあいつの家で……。
あれ? その次もあいつの家……。次は私の家で……。
あれあれ? その次はホテルで……そのあとすぐ別れたから……あれー) ムムムッ
御坂(すごい……真剣に考えてくれてる……。やっぱり麦野さんってば恋愛エキスパートなのねっ!
もうこれは勝ったも同然! 覚悟しときなさいよ上条当麻ェっ!)
麦野「……」
御坂「wktk」 キラキラキラキラ
麦野(私……デートしてないじゃん……) ズーン…
御坂「ど、どうしたの? 何か聞いちゃ駄目なこと聞いちゃった……?」 オソルオソル…
麦野「いいの何でもない……私って都合の良い女だったのね……」 ハァ…
御坂「なっ……お、大人発言……」 カァッ
麦野「ごめん、私の意見あんま参考になりそうにないわ」
御坂「え……でも、ほんと何でもいいんだけど」
麦野「ホテルでも?」
御坂「うっ……そ、それは」 カァッ
麦野「けど今の子って初体験早いんでしょ? おまけに相手はヤリたい盛りの高校生。
どっちにせよ連れ込まれる覚悟くらいは決めといたほうがいいかもね。
好きな相手なんだし」 カチャカチャ ムグムグ
御坂「え、そういうもんなの?」
麦野「知らないけど。まあ一応アンタ可愛いしさ。男だったらヤリたくなんじゃないの?」
御坂「あ、あいつでも……?」
麦野「だから知らないって。でもそうね、私がそいつの立場で、アンタみたいな純粋な子が相手だったら……」 クィッ
御坂「……っ」 ドキッ
麦野「欲しくなっちゃうかもね。ソース付いてるよ」 フフッ スッ
御坂(……悔しいけどドキッとしちゃった……)
御坂「……ど、どうしよ」 ドキドキドキ
麦野「ま、誘うだけ誘ってみたら? 何もしなくてもこのままなんだし」
御坂「け、けど……初体験とか……そんな」
御坂(あいつもやっぱりそういうこと考えるのかな……そ、そんなの無理っ)
麦野「周りの子でいない? お嬢様学校じゃいないか」
御坂「分からないけど……」
麦野「っつか今電話しなよ」
御坂「はぁっ!?」 ガタンッ!
麦野「うるさい、周りの迷惑でしょが。明日休みなんだから丁度いいじゃん」
御坂「で、ででででもっ!」
麦野「つべこべ言わない! 遅かれ早かれどうせいつかみんな膜ブチ抜かれんだよ。ほら、携帯出す」 グィッ
御坂「膜とか言わないで!」 トリダシ
麦野「番号は? 知ってる?」
御坂「知ってるけど……一応あいつとペア契約した携帯だから」
麦野「そこまでやっといてなんでメールとか電話しないのよ」
御坂「何話せばいいか分からないもんっ!」
麦野「はぁー……まいいや、意地張らずちゃんと伝えなさいよ」
御坂「よ、よし。行くわよ」 ピッ!
prrrrrrrrrr…
御坂(な、なんでこんなことに……。でも麦野さんの言う通り待ってたってあいつは気付いてくれないんだから、
私から誘わないと駄目なのよね……)
prrrrrrrrr…ガチャッ
上条『もしもし。なんだ、御坂?』
御坂「あ、あの……!」
上条『ん?』
御坂「あ、明日暇!?」
上条『お? ああ、まあ暇って言えば暇だけど。何で?』
御坂「あ……あの……その……」 チラッ
麦野(腹括れよ……) ヒラヒラ
上条『なんだよ?』
御坂「明日、遊びに行かない?」
御坂(言っちゃったー……!) カァァ…
麦野(……よしよし) クスッ…ズキッ
麦野(……何よこれ)
上条『あー……いいけど』
御坂「ほんと!?」
上条『ん……。どこ行くんだ?』
御坂「どこって……」
御坂(考えてなかったわ……) チラッ
麦野「とりあえず後でメールするとでも言っておいたら?」
御坂「あ、なるほど」
上条『なるほど?』
御坂「ううん、こっちの話! あとでメールするね!」
上条『お、おう分かった』
御坂「うん、それじゃあね。突然悪いわね」
上条『上条さんは宿題くらいしかやることが無いので構いませんよっと。じゃメール待ってるな』
御坂「はーい。バイバーイ」 ピッ!
麦野「上手くいったみたいね」
御坂「えへへ、おかげさまでね」 テレッ
麦野「よかったじゃない」
御坂「ありがとう麦野さん!」
麦野「お礼言われるようなことしてないわよ。さ、デザート持ってきてもらいましょ」
御坂「うん! ふふっ」 ニコニコ
御坂(あいつとデートかぁ……麦野さんの言うとおり、自分から行動しないと始まらないわね。
麦野さんと仲良くなれてほんとよかった) フフッ
麦野(……こいつが喜んでるならそれでいいんだけどね……ほんと何かしらこのモヤモヤしたの……) ハァ…
―学舎の園 大広場 14:00―
カランカラン アリガトーゴザイマシター
御坂「んー、美味しかったー」 ノビー
麦野「悪いわね、奢ってもらっちゃって」
御坂「この前のお礼だし、気にしないで。それよりどうだった? ケーキはお気に召しまして? お姉さま」 バチコンッ!
麦野「うん。美味しかったよ」
御坂「……あ、あれ……?」
麦野「何よ?」
御坂「いやー、麦野さんだったら『普通』 とか『微妙』 とか言ってくると思ってたもんだから」
麦野「あら、ちょっとは私のこと分かってきたみたいね。
けど、美味しいもんには素直に美味しいって言うわよ。その逆も然りだけど。おわかり?」 バチコンッ!
御坂「う、うん……」 テレッ
御坂(麦野さんのウィンクは反則でしょ……私もこれくらい綺麗だったらあいつとももっと上手くいくのかなぁ……)
麦野「んで、次はどこ連れてってくれるの?」
御坂「すぐ行く? 私お腹一杯だからちょっと腹ごなししたいけど」
麦野「実は私も。あ、じゃあ明日のデートの準備でもする?」
御坂「準備って?」
麦野「服……は制服だもんね。そだ、ヘアピン買ったげる」
御坂「えぇっ!? い、いいわよそんなの!」
麦野「焚きつけたのは私よ? たまには年下らしく素直に奢られなさいよ」
御坂「で、でも……」
麦野「うるさい。ゴチャゴチャ言ってる暇あんならとっとと可愛いヘアピン売ってる雑貨屋でもアクセサリーショップでも案内しなさい」
御坂「……う、うん」
麦野「そうよ。素直にお姉さんの言うこと聞いてりゃいいの」
御坂(お姉さんかぁ……妹みたいに思われてんのかな) チラッ
スタスタスタスタ
御坂「でもほんと明日どこ行こうかしらねー」
麦野「映画とかいいんじゃない?」
御坂「遊園地とかのほうがデートっぽくない?」
麦野「遊園地は実は初デートには向かないのよ」
御坂「へー、何で?」
麦野「並んでる待ち時間に会話が持たないから。
喋れる自信あるならともかく、日中何度も並ぶようなとこは疲れもイライラも溜まってよくないわよ」
御坂「ほー。さっすが麦野さん。経験者は語るってやつよね、頼りになるー」 カンシン!
麦野「ほっときなさいよ」
麦野(まあ雑誌に書いてあっただけなんだけど。
っつか今日だってアンタと会話持たせるために色々調べてきてんだよこっちは。
……でも意外と大丈夫だったわね) フゥ…
御坂「映画はどうして良いの?」
麦野「喋らなくていいからよ」
御坂「それってデートの意味なくない?」
麦野「そりゃ映画上映開始10分前とかに集合して終わったら即解散みたいなのじゃ意味ないけどさ、まあ普通そんな奴いないでしょ」
御坂「あーそっか。終わった後感想とかで会話のネタに困らないもんね!」
麦野「そうそう。暗闇の中で同じ時間を共有できるっていうのも良いよね」
御坂「すごーい。あんた詳しいわねー。どこでそんなの教えてくれるの?」
麦野(いつも読んでる『CunCum』と『学園都市Walker』と『びあ』のおかげよ)
麦野「んー、ほら。日ごろから色んなもんにアンテナ張ってんのよ」 シレッ
御坂「んじゃ映画にするね。あいつにメールしとこ」 カチッ…メルメルメル
麦野(微妙にスルーしやがったなこいつ……)
麦野「メイクは? 大丈夫?」
御坂「いやー、それがうちの学校化粧も禁止なのよねー。まあ淑女の嗜み(レディライクマナー)とか言って一見分からないくらい
薄くしてる子も多いんだけど」
麦野「休日だしリップくらい塗ってたってわかんないでしょ。して行きなさいよ。
ああけどそれだけだと逆に不自然か……?ファンデも……うーんでも無くても別に」 ブツブツ
御坂(麦野さんほんと親身になってくれてるなー)
御坂「あいつに分かるかどうか微妙だしいいわよ」
麦野「分からなくてもするの。好きな人とのデートなんだから、ちょっとでも可愛いって思ってもらえるようにしといた方がいいでしょ」
御坂「なるほどね。可愛いか……そういうのにとことん鈍い奴だからねー」 ハァ…
麦野「苦労するわね。まあ何も言ってもらえなかったら私のところに来なさい。
今度は完璧な化粧を施して嫌でも可愛いって言わせてやるから」
御坂「案外優しいわよね、麦野さん」
麦野「は?」
御坂「世話焼くの好きでしょ。もっと冷たい人だと思ってたけど、そんなことなくて良かった」 フフッ
麦野「……そう」
麦野(私が世話焼くのなんてアンタくらいのもんよ……鈍いのはアンタも同じじゃないのよ)
御坂「よーし! 応援してくれる麦野さんのためにも、明日のデートは何が何でも成功させてみせるわよ!」 オー
というわけで今半分なので今日はここで区切ります。
明日と明後日は家に帰れそうにないので次にお会いするのは早くても月曜日になるかと。
今日は皆の麦琴妄想ブチ撒けたレスを出先から携帯で覗いてニヤニヤしてたのでまた良いネタあればよろしくw
それではまた後日お会いしましょう。
2、3日来れないのでたまにはレス返させていただきますね。
>294
サーセンwまだ出会って4日なのでさすがにやめときましたw
>296
あ、4日目の半分です。言葉足らずで申し訳ないです。
>297
美鈴さんも旅掛パパも孫の顔は見れないですねw
>300
>301
なんと。それ知らなかったです。読み飛ばしてたかな。
いいこと聴いた、ありがとうございます。
つまり二人の前に障害は無いと。
学園都市は百合に優しい街ですね^^
お久しぶりです。
少々遅くなりましたが今から投下しますね。
―学舎の園 アクセサリーショップ『カヴン=コンパス』 14:00―
ガヤガヤ…
御坂「この店とかどうかしら」
麦野「なかなか流行ってるみたいね。ヘアピンコーナーは……あったあった」
テクテクテク
麦野「結構色々あるじゃない。どんなのがいい?」 ガチャガチャ
御坂「麦野さんが選んでよ」 ガサガサ
麦野「そのつもりだけど。うーん……こんなのは? フラワーモチーフだけど、今つけてるのとかぶっちゃうか」
御坂「同じもんじゃないしいいと思うけど」 ガサガサ
麦野「新鮮さが無いじゃない。じゃこれは? モノトーンのチェック柄。あー、でもアンタのキャラじゃないなー。
どっちかって言うとこういうチャームが大きい奴の方が似合うわね」 アワセアワセ
御坂「ハートはちょっと着けるの恥ずかしいわねー」
麦野「いっそこんなんどうよ。稲妻型」
御坂「そこまでして電撃使い(エレクトロマスター)を主張しなくても……」
麦野「あはは、見てこれ。カエルのマスコットだって。さすがにこんなの頭に……」
御坂「……」 ジー
麦野「……これがいいの?」
御坂「ハッ!……そ、そんなわけないじゃない! 誰がそんなガキッぽいもの……を」 チラッチラッ
麦野「そ。じゃこれは無しで」 ナオシナオシ
御坂「ぁ……」 (´・ω・`)
麦野「……」
御坂「……」 シュン…
麦野「ぷっ……あっははははははははは!」
御坂「なっ、何笑ってんのよ!」
麦野「ふふっ、だってアンタこれ戻したらすんごいしょんぼりしてんだもん。
いいよいいよ、これ買ったげる、くくっ」
御坂「い、いいわよそんなの! どうせ子供っぽいって思ってるんでしょ!?」
麦野「思ってるわよ」
御坂「くっ!」
麦野「いいじゃん。好きなんでしょ? 悪いとは言わないわよ」
御坂「え……ほんと? ハッ……! ち、違うわよ! さすがの私も着けたりはしないわよ!?
ただちょーっとだけ……ほんとにちょびっとだけ可愛いかなーって思っちゃっただけでゴニョゴニョ」
麦野「まあこれ着けてきたら思いっきり笑ってやるけど。可愛いのは可愛いんじゃない?」
御坂「……あ、ありがと」
麦野「けどこれでデートは駄目ねさすがに。他には……」 ガサガサ
御坂「一つで充分よ」
麦野「こんな315円の小学生アイテムレジに持ってく私の身にもなりなさいよ」
御坂「ごめん」 ガサガサ
麦野「うーん……あっ、これいいんじゃない?」
御坂「どれ? あ、ガラス製の花……?」
麦野「合わせてみて。……うん、可愛い可愛い。じゃこれ買ってくるわ。先店の外出てていいわよ」 スタスタスタ
御坂「はーい」
御坂「……」
御坂(…………あ! そうだ!)
スタスタスタ
アリガトーゴザイマシター
麦野「えーっと、御坂は……」
御坂「ごめんごめん! 待たせちゃった?」 タッタッタッ
麦野「いや今出たとこだけど。まだ店の中いたの?」
御坂「うん、ちょっとね」 ササッ
麦野「ふーん? はいじゃあこれ……」
キャッキャッ ウフフ
麦野(なんだ? 常盤台の連中がこっちジロジロ見てるな……)
女子1「ねえ見て見てあそこにいらっしゃるの御坂様じゃないかしら?」 ヒソヒソ
女子2「え!? あ、ほ、ほんとですわ! あぁ……今日もお綺麗ね……」 ウットリ
女子3「ご友人の方は先輩の方かしら。お二人並んでいるととても素敵だわ……」 ウットリ
女子1「ねぇ、お声をかけてみましょうか?」
女子2「ええ? でもご友人の方とご一緒の様ですし、ご迷惑じゃないかしら……」
女子1「ちょっとだけなら大丈夫よ。あのー、御坂美琴お姉さまですか?」
御坂「え? うん、そうだけど」
女子1「私達常盤台中学の1年の1子と申します。こちらは2子さんと3子さん。ほら、がんばって」 ヒソヒソ
女子2「あ、あの握手してもらえませんか!?」 バッ
御坂「えぇ? いやいや、芸能人じゃないんだから……」 アセッ
女子2「み、御坂様は芸能人よりよっぽど素敵です!」 ズイッ
女子3「そ、そうですわっ! 御坂様とお近づきになりたいとクラスメイトの友人も皆申しておりますもの!」 ズズイッ
麦野(さすがお嬢様学校。こういうこともあるのね……) ヒキッ
御坂「あー、わかったわかった。はい、それじゃ……」 ギュッ
女子2「キャーーー!」 ギュッ
女子3「ありがとうございますっ!」 ギュッ
女子1「わ、私もせっかくなのでぜひっ!」 ギュッ
麦野(おいおい……アイドルねまるで……)
御坂「これでいい?」
女子1「はい! お買い物中失礼いたしました」 ペコッ
御坂「いいよいいよ。学校で会ったら遠慮なく声かけてね」 ニコッ
女子2「そ、そんな滅相もない……! 御坂様を遠くで眺められるだけで幸せなんですっ!」 ドキドキドキ
女子3「そ、そうですわ! わたくし達みんなの御坂様ですものっ、畏れ多くてそんなこと……」 ドキドキドキ
御坂「ほんとそんなの気にしないで欲しいんだけどなぁ……同じ学校に通ってるんだし……」
女子1「御坂様、お邪魔して申し訳ありませんでした。それでは私達はこれで……」 ペコッ
パタパタパタ… キャー! アクシュシテイタダイッチャッター ワタクシキョウテアラワナイデオコウカシラ ワタシモー キャッキャッ ウフフ
御坂「あっ、ちょっ……!もう……」 フゥ…
麦野「御坂様ファンの子?」
御坂「あー……まあそんなとこ。ごめんね、放っといちゃって。行こ」
スタスタスタ
麦野「面白いもんが見れたからいいわよ。にしても、隣に第四位がいるのに見向きもしないってのは
怒りを通り越して笑えるわ。レベル5への憧れというよりはアンタ個人への崇拝って感じね。
目が蕩けきってたし」
御坂「まあ慕ってくれるのは嬉しいんだけどねー。
あんまこっちの事情はお構いなしというか、フレンドリーに接してるつもりなんだけどなあ」
麦野「そういうところが逆に信者増やしてんじゃない?
あのテの学校じゃアンタみたいに誰でも分け隔てなく接する子は珍しいでしょ」
御坂「分け隔てなくはともかく、派閥ってもんがあるからねーウチは。
私みたいな奴は珍しいってとこは当たってるわ」
麦野「名誉有る孤独ってやつ? 聞こえはいいけど結局一人なのは変わらないもんね」
御坂「あんたみたいな人が先輩に居てくれりゃよかったんだけど。
私二年生なのに先輩からもあんな感じなのよ? 気ぃ遣うっつの……」 ハァ…
麦野「あははっ、まあいいじゃない。アンタがそれだけ魅力的に映るんだよ。それにしても……」
御坂「うん?」
麦野「あの子達今日は握手した手でオナニー三昧だろうね」 ククッ
御坂「アンタがあの子達の前で喋らないでいてくれてほんとよかった」
―学舎の園 cafe『エンゼル=フォール』 15:30―
「ご注文がお決まりになりましたらお声をおかけください」
麦野「結構こじんまりしたお店ね」
御坂「そ。だからあんまり人がいなくてゆっくり出来るのよね。今日はここで最後にしときましょ。
はいメニュー」 スッ
麦野「ありがと。どれにしようかな……」 ウーン
御坂「さっきチョコだったから今度はさっぱりしたもんにしよっと」
麦野「確かに私もそっちの気分だわ。……よし、決めた」
御坂「何にするの?」
麦野「苺とシャンパンのジュレ」
御坂「あー、それ狙ってたのにー」
麦野「同じもん頼めばいいじゃん」
御坂「テーブルの彩りが無いじゃない」
麦野「分かるような分からないような……」
御坂「よし決まった。すいませーん」 スッ
ハーイタダイマー
パタパタパタ…
「お待たせいたしました。お伺いいたします」
御坂「ドリンクセット二つで、イチゴとシャンパンのジュレが一つと、オレンジムース一つ」
「はい。お飲み物は?」
御坂「キャラメルマキアートと……あんたは?」
麦野「レモンティー、ホットで」
「かしこまりました。少々お待ちください」 スタスタスタ
御坂「あんた紅茶好きなの? 毎回頼んでるわよね」
麦野「そうね。割と。あ、そだ。はいこれ、ヘアピンね」 スッ
御坂「ありがとう。大事するねっ!」 ニコッ
麦野「しなくていいから壊れるまで使いなさい」
御坂「そういう言い方麦野さんらしくて好き。……ねえ、麦野さん」 オズオズ
麦野「ん、何よ」
御坂「これ……受け取ってくれる? ヘアピンのお礼」 スッ
麦野「……さっきの店の袋……。アンタわざわざ……」
御坂「うん、麦野さんがレジ終わってからこっそり買った。ねね、開けてみてよ」
麦野「……ったく余計な気遣って……あ、ヘアクリップだ」
御坂「麦野さん髪長いからヘアピンじゃちょっと小さいし足りないと思ってさ。黒だったら何にでも合うしどうかな?」
麦野「へぇ、ブラックビーズとスワロフスキーが綺麗ね。アンタにしちゃいいセンスしてるわ」
御坂「それ褒めてんの?」
麦野「褒めてるわよ。ふふっ、ありがと。お礼のお礼なんてしてたらキリがないわよ、まるで憎しみの連鎖のようね」
御坂「例え悪いって」
麦野「冗談、嬉しいよ」 クスッ
御坂「えへへ、よかったー」
「お待たせいたしましたー」 コトッ コトッ
御坂「お、来た来た」
「ごゆっくりどうぞー」 ニコッ
麦野「美味しそう。いただきます」 カチャッ パクッ
御坂「私もー。……んー! 美味しいっ!」 モグモグ
麦野「確かにこれは悪くないわ……。あ、はい一口。アンタもこれ狙ってたんでしょ?」 スッ
御坂「わ。ありがと! あーん……」 パクッ
御坂「ん! 口当たりサッパリしてて美味しいわね。次は私もこれにしよっと。
じゃお返しにはいどうぞ」
麦野「い、いいわよそんなの……」
御坂「いいからいいから。グッとグッと」
麦野(……な、なんか妙に恥ずかしいのよね……)
御坂「ほらほら、遠慮せずにパックンといっちゃいなさい」
麦野「あ、あーん……」 パクリ
麦野「ムグムグムグ……ん、美味しい……」
御坂「ね。甘いものってどうしてこう魅力的なのかしら」
麦野「そ、そうね。っつか、初めて親以外の人からプレゼントなんてもらったわよ」
御坂「え? 麦野さん彼氏から誕生日にもらったりしなかったの?」
麦野「……」
御坂「麦野さん?」
麦野「……あいつにそんな甲斐性なかったわよ……」 ハァ…
御坂「……そ、そうなんだ……」
麦野「……」
麦野(雰囲気悪くしちゃったか……?)
御坂「……もしかして……昨日一緒にいた男の人って……」
麦野「……うん」 ピクッ
御坂(余計なこと言っちゃったかな……)
麦野「やっぱ見られてたか……。あー……まあ、そう」
麦野(こいつもしかして気にしてる……? そろそろ白状しとくか……) フゥー…
御坂「そうなんだ……」
麦野「うん。この際だから告白するけど、私付き合ったのそいつだけ。星の数程どうとかいうの嘘。ごめんね」
御坂「えっ!? ふぅん……それは、なんていうか……」 ホッ
御坂(って何安心してんの私!? っつかそれじゃあさっき都合の良い女って言ったのはあの男に……) カァァァ
麦野「気になるの?」
御坂「な、何が?」
麦野「顔に出すぎなんだよバカ。アンタの思ってる通り、あいつは最っ低のクソ野朗だから街で声かけられても絶対着いていくなよ。
ガキには興味ねえとか言ってたけどヤレるもんはとりあえずヤッとくような奴だし」 ケッ
御坂「や、ヤッとくって……」 カァァッ
麦野「とにかく4回目くらいのデートであいつには他に何十人も女いること分かってフッたの。
あいつに4回も体許したことが死ぬほど腹立たしいわ……私も初めての彼氏で浮かれてたんだろうな」 イラッ
御坂(こ、こんな生々しい話初めて……) ボー
麦野(とか思ってんだろうな。詳しく話したら頭爆発するんじゃない? これ以上思い出したくないから絶対言わないけど)
麦野「ま、そんなわけだから。恋愛相談に関してはそんなに力には……」
御坂「私だったら……」
麦野「ん?」
御坂「私だったら、麦野さんにそんな酷いことしないのにっ!」 ガタッ!
麦野「ちょっ!……な、何立ち上がってんの!」 アセッ
御坂「こんな可愛い彼女がいてどうして浮気なんてできんのよ! あー腹立つ! 何その男!
別れて正解よそんなの! 気にすること無いわよ麦野さんっ! そんな男のことなんて……」 スゥッ
麦野「い、いやだから今は別にどうでも……」
御坂「私が忘れさせてあげるからっっっ!!!」
麦野「」
シ――ン…
御坂「……」
麦野「……」 ポー…
御坂(あ、あれ……?)
ヒソヒソヒソ… アノフタリソウイウカンケイナノカシラ… トキワダイノコガトシウエノセンパイニコクハクヲ… ヒソヒソ…
御坂(……わ、私何言ってんの――――――!!!!?) ガタッ!
御坂(ハズカシー……!勢い余ってあんなことっ! 今日は楽しく遊んで嫌なことは忘れようって言いたかったのに、
あの文脈じゃ私が麦野さんを体で……) カァァッ
御坂(と、とにかく麦野さんの誤解を解かなきゃ……) チラッ
麦野「……」 ポー
御坂(うわーっ! 呆れてる! 視線が痛い!)
麦野(……こ、これって告白……? い、いやでもあいつ好きな男が……。
も、もしかしてそれとは別で私を関係を持ちたいってこと……?ど、どうしよ……) ドキドキドキドキ
御坂(な、何から説明すればいいのよ……!) アウアウアウアウ
麦野(……いやいや、いくらなんでもそれは無いでしょ。私に気ぃ遣って言ってくれたのか……)
御坂「えと、麦野さん。今のはその……」
麦野「あーいいよいいよ。私を気遣って言ってくれたんでしょ? ありがとね」
御坂「あ……う、うん……」
御坂(よかった。誤解してなかったみたい)
麦野(……おかしいな。誤解だって分かってるのに……ドキドキする。まさかこれ……) チラッ
御坂「な……なんか今日楽しいわね! こんなに誰かとゆっくり遊ぶのも久しぶりだしねー!」 モグモグ
麦野「そう。ま、私も面白くないことはないわよ?」 クスッ
御坂「ったく、素直じゃないんだから」
麦野「うるさい」
麦野(……まさか、ね) フゥ…
―第七学区 常盤台中学学生寮前 17:50―
御坂「悪いわね、わざわざ送ってもらっちゃって」
麦野「帰り道の途中だし、いいわよ別に。これが常盤台の学生寮ね」 フーン
御坂「上がってく? と言ってももう門限まで時間あんまり無いけど」
麦野「また今度お邪魔するわ」
御坂「麦野さん家も遊びに行かせてよ」
麦野「……ま、いいけど」
麦野(掃除しておかないとな……)
御坂「どこ住んでんだっけ?」
麦野「ここから15分くらい歩いたとこにあるマンション」
御坂「んじゃ今週行くわね!」
麦野「こ、今週!? いきなりだな……」
御坂「いやー、その……ね、もうちょっと恋愛相談乗って欲しいかな、なんて」 エヘヘ
麦野「あー……」
御坂「やっぱ駄目かな……?」
麦野「もう何でもいいよ。いつ来るの?」
御坂「火曜日は?」
麦野「その日なら空いてるから大丈夫」
御坂「いつでも空いてんじゃないの?」 フフッ
麦野「黙れ。まあその通りだけど」
御坂「うん。じゃあその日に行くわね! 泊まりで!」
麦野「了解。ってはぁあ!? 何で泊まる必要があんのよ」
御坂「せっかくだからパジャマパーティしたいじゃない」
麦野「私とあんたは出会って1週間も経ってないのよ? そんな相手にスッピン見せろっての?」
御坂「私いつもスッピンだし。出会ってからはもっと経ってるよ。それに、そんなの期間の問題じゃないでしょ」
麦野「そりゃそうかもしんないけどアンタねぇ……」
御坂「あ、もちろん無理だったら全然構わないわよ」
麦野「いいけど……。大したもんないわよ」
御坂「いいのいいの。楽しみにしてるわね!」
麦野「はぁ……分かった分かった。そのつもりしとくからそろそろ中入りな。
二階の窓からこっち睨んでる人がいるわよ?」
御坂「ゲッ、寮監だ。寮の前で長話してたから……。ごめん部屋戻るわ。
暗くなってきたから帰り気をつけるのよ」
麦野「誰に言ってんだ中学生。じゃ、帰るわ。バイバイ」 スタスタスタ…
御坂「麦野さーん!」
麦野「まだ何かあんの?」 クルッ
御坂「今日はありがとー! また遊ぼうねー!」 ニコッ
麦野「……」
麦野「はいはい。またね」 ヒラヒラ
スタスタスタスタ…
麦野(やれやれ、自分の家の前で恥ずかしいこと叫んじゃってまぁ)
麦野(けど、私も楽しかったかな。……次の約束もしちゃったし) クスッ
麦野(……メールしとくか) カチャッ
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:今日は
本文:
ありがとね。初めて入ったけどなかなか面白いと
ころだったわ。
それからヘアクリップもありがと。普通に気に入っ
たから使わせてもらうわよ。
明日、頑張ってね。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(あいつ明日デートか。けしかけた手前上手くいってもらいたいもんだけど……) ズキッ
麦野(何であいつがデートってだけでこんなモヤモヤすんのよ。私まで緊張してんの?)
麦野(……はぁ、最近御坂のことばっか考えてるな。他に考えることも無いんだけど……) ハァ…
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野(……あいつとメールするようになってからまだ4日だけど、結構仲良くなれてきたかな) カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:こちらこそ(*´∀`)ノ
本文:
ありがとう(*ゝω・*)ノ
また行きたくなったらいつでもどうぞ(*>∀<*)
私もヘアピン明日付けていくからねっo(≧ε≦o)
色々相談乗ってくれたし、明日の結果はちゃん
と報告するから!麦野さん家も楽しみにしてるね
!(*>艸<)
――――――――――――――――――――
麦野(……火曜日、またあいつに会えるのね) クスッ
というわけで本日は終了です。
雑談の話が出ていたようですが、麦琴愛を叫ぶのは何も問題ありませんw
強さ議論とか日常生活の話等始まったりすると答えなんか出るわけないのでさすがに困りますがw
ルールとかガチガチに固めるとつまんないですし、私もそんなルール決めれるような立場でもないので。
揉め事さえ無ければあとは常識の範囲内で適当にお願いします。
ごきげんよう。
ごきげんよう。
いつも見ていただきありがとうございます。
毎日ちょいちょい書き溜めてるのに、どうにも終わる気配がしないのはどういうことだ…。
結構無駄は省いてるつもりなのになぁ。
ま、言ってても仕方ないので今日も投下していきますね。
5日目
―麦野宅 13:00―
ジリリリリリリリリリリリリリリッッ!!
麦野「んー……んぅ…………」 ゴロリ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!
麦野「あと5分だけ……」 ゴロゴロ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!
麦野「ん…………」 イラッ
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!
麦野「目覚まし時計如きが私に指図してんじゃねぇえええぇぇぇっ!!!」 ガバッ!
ビシュゥゥゥゥゥゥウウウウウッッ! ガチャーンッ!
プスプスプス……
麦野「……また壊しちゃった。まいいや。ストックまだ20個くらいあるし……もうこんな時間か。
昼ごはんどうしよっかな」 ポリポリ
麦野(……メール来てるかな) カチッ
麦野(げっ! なんだこれ、フレンダからの着信が15件? 電話の女からも3件……。
寝てて気付かなかったからフレンダに連絡が行ったのか……。メールは……2件) ピッピッ
――――――――――――――――――――
from:フレンダ
件名:こらー麦野ー!
本文:
寝てるでしょ!今夜仕事だって連絡入ったよ!
起きたら私に至急折り返し電話!
そして罰として麦野の体液付シミ付下着を私にく
――――――――――――――――――――
麦野「これ以上は読む必要ないわね」 ピッ
麦野「もう一件は御坂か」 ピッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:おはよう(*´∀`)ノ
本文:
今から行ってくるわ!
昨日もらったヘアピンばっちり付けてるからね!
待ってろよ上条当麻ぁ~!(`・ω・´)b+
――――――――――――――――――――
麦野(おーおー張り切っちゃって) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:今起きた
本文:
楽しんでる?(笑)
良い雰囲気になったら告白しちゃえ!
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(こいつの恋路が上手くいったら私の肩の荷も下りるってものよ。……きっとね)
麦野「さて、シャケ弁買ってフレンダに電話しないと」 ヨッコイセ
―第七学区 ファーストフード店 13:10―
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「あ、ごめん、メールだわ」 モグモグ
上条「おう」 モグモグ
御坂(麦野さんか、もうお昼よ……なになにー?) チューッ…ズズッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:今起きた
本文:
楽しんでる?(笑)
良い雰囲気になったら告白しちゃえ!
――――――――――――――――――――
御坂「ブフーーーーッッ!!!」 ブバァッ!
上条「うぉあ! 何やってんだ御坂?」
御坂「え、な、なんでもないわよ!」
上条「?」
御坂(何送ってきてんのよ! こ、こここ、告白って! そんなこといきなりできるわけないでしょ!)
上条「何かあったのか?」
御坂「あ、ううん! 友達から来てただけ! ほ、ほら。早く食べて映画館向うわよ!」 ガツガツガツッ!
上条「ああ。いや、そんなに急がなくてもまだ時間あるぞ」
御坂(変なメールしてこないでよっ……! めちゃくちゃ意識してきちゃったじゃないの!) カァァ ガツガツッ
上条「おーい、御坂さーん?」
ヴーンヴーンヴーン
上条(聞いちゃいねえ。……っとメールか、誰だ?) カチッ
上条(……姫神? 話があるから今日の夜時間ちょうだいって、何だろ)
御坂「誰からのメール? ま、まさかまた女の子とか言うんじゃないでしょうね」
上条「クラスメイトだよ。それより今日映画何見るんだっけ?」
御坂「忘れたの? 『GEKOTA the MOVIE~愛と追憶の日々~』 よ。
ゲコ太の完結編となる待望の劇場版なんだから心して見なさいよね!」
上条「ほほー……」
御坂「……じゃ、じゃなくてっ! たまたまチケットもらっただけよ!
他に見たいものいっぱいあったけど偶然この映画だけだったんだからね!」
上条「ふーん。ま、無料だし俺は何でもいいけどな」
御坂「そ、それよりほら、何か気付いたこととかないの?」 チラッチラッ
上条「気付いたこと……?」 ウーン
御坂(ヘアピンとリップよ! 気づけこの馬鹿っ!
麦野さんに言われた通り、朝から黒子に隠れてわざわざしてきたんだからねー!)
上条「ん~?」 マジマジ
上条(正直分からんが……何かに気付いて欲しいというのは分かる……ここは一つ賭けに出るか)
御坂(そ、そんなに見ないでよ……) カァァ
上条「お前痩せた?」
御坂「変わんないわよ!」 ガァァ!
上条(外しても喜ぶかと思ったけどそんなことなかったな……失敗した) ポリポリ
御坂「はぁ、もういいわよ。食べ終わったし行こ」 ハァ…
上条「お、おう」
上条(ちょっと怒らせちまったかな……。映画見ながら考えとくか)
―麦野宅 13:40―
麦野「だーからっ! 悪かったっつってんでしょ。っつか休日は昼まで寝てるって知ってんでしょが!」 ワリバシパキッ
フレンダ『そうだけど電話何回も鳴らしたのに気付かないってどんだけ寝てる訳よ!』
麦野「はいはい申し訳ありませんでしたぁっ! いいからさっさと仕事の内容教えろっつの!」 シャケベンモグモグ
フレンダ『もうっ! 今日はこの前の続きだよ。能力開発に関する研究データをどっかの国に売り飛ばそうとしたバカを殲滅』
麦野「主犯連中はこの前全員ブチ殺したでしょ。今日は何?」 モグモグ
フレンダ『結局、今度はそれを仲介したブローカーのいるアジトを襲撃して皆殺しにしてきてくれってさ』
麦野「殺しちゃっていいの? 仲介人締め上げて取引相手割り出してそっちも消しといたほうがいいと思うんだけど」 ムグムグ
フレンダ『その辺はもう割れてんじゃない? 何にせよ仕事内容はそれだけ。十七学区にアジトがあるらしいから
今夜21時頃迎えに行くね』
麦野「はいはい了解。ま、私らの考えることじゃないしね。今日も何か賭ける?」 モグモグ
フレンダ『今日はやめとく。この前のお店高かったし。ところでさ麦野』
麦野「あン?」
フレンダ『寝坊の罰として麦野のムレムレの下着をくれるっていう約s』 ピッ
麦野「誰がやるか変態」 ピッピッ
麦野(メール確認メール確認っと) イソイソ
カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:できるかー!
本文:
ビックリさせないでよ(o≧口≦)o
今から映画見てくる…
――――――――――――――――――――
麦野(いや告白しないと始まらないでしょ。焦る必要無いけど、あんまりもたもたしてるのも良くないわよ……) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:そう?
本文:
言わなきゃ伝わんないと思うけどね…。
何見るの?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(まあ私も人のこと言えないけどね。夜まで暇だし掃除でもするか……)
―第七学区 劇場前 16:50―
御坂「んー! 面白かったわねぇ。入場者全員プレゼントのゲコ太フィギュアも手に入ったことだし、満足満足!」 ホコホコ
上条「よかったな」
御坂「あんたはどこが面白かった?
私はやっぱピョン子が『もう一度生まれ変わって、オタマジャクシになってもめぐり合いましょう』ってことね。
名台詞誕生キタ――――――! って感じよ。
正直劇場版は原作アニメからの改変がすごいから賛否両論って意見がファンの間でも多かったんだけど、
今回の内容見ると全然そんなことなかったわよね。そりゃピョン子もゲコ太も確かに大人蛙になって言動も落ち着いてたわよ?
けどやっぱゲコ太の根本は変わってないっていうか、あーでもこれ大人が見たほうが楽しめる映画だったかも知れないわね。
特に最後に宿命から開放されてオタマジャクシに転生して故郷の河で泳ぐゲコ太達は子供達にはちょっと分かりにくい
演出だったんじゃないかしら。けどけど私としてはやっぱりあれくらいシリアスにやってくれたほうがいっそ清清しくて
いいと思うのよね。あんたはどう思う?」 ペラペラペラペラ
御坂「……って、さっきゲコ太ファンっぽい人が言ってたわよ……?」 カァァ
御坂(やっば、テンション上がっちゃってた……)
上条「ああ、俺もお前と同じ意見だ」
上条(さっぱり分からん)
御坂「わ、私じゃないわよ!それより、これからどうする?
私門限あるから6時には帰らなくちゃ駄目なんだけど……お茶くらいする?」
上条「んー、どうしようかなー……」
御坂(こういうときに……
上条『今日は帰したくないっ!』
御坂『えっ……で、でも、寮監や黒子に怒られる……』
上条『悪い御坂。いや、美琴。俺のために怒られてくれ! 今日はお前と一緒にいたいんだっ!』 ガバッ
御坂『あっ……と、当麻……』 ギュ…
上条『愛してる、付き合おう。美琴……』 ギュッ!
御坂『嬉しいっ! わ、私も好きだよ……当麻!』 ギュッ!
上条『今夜は寝かさないぜ……』 キランッ
御坂『やだっ……恥ずかしい……』
なーんてことになったらいいのに) フッ…
上条(そう言えば姫神が何か話あるとか言ってたな。あんま遅くなってもアレだし、帰りに寄ってみるか)
上条「そういうことなら今日は帰るか。目的の映画も見れたしな」
御坂「えっ」
上条「ん?」
御坂(そりゃこいつならそう言うわよね……はぁ、結局今日は映画見ただけで終わりか……
……まいいや、とりあえず二人で遊べたし) ハァ…
上条「あ、そだ御坂」
御坂「何よ」
上条「ヘアピンいつもと違うな。あー……その、似合ってるぞ?」
御坂「!」
御坂(やっ……やだっ! こいつ気付いてくれてたの……? どどど、どうしよ、めちゃめちゃ嬉しい……) アウアウアウ…
上条(映画中チラチラこいつ見ててようやく気付けた……正解っぽいな……危ない危ない) フゥッ…
御坂「……ありがと、あんたに褒めてもらいたくて……付けてきたの……」 チラッ ドキドキ
上条「そ、そうなのか」 ドキッ
上条(なんだなんだ何なんですかこの反応は。
御坂が可愛く見えるってどういう……いやでもこいつ見た目は悪くないし……。
ちょっと乱暴なところを除けば実はすげえ可愛げのある奴なんじゃ……)
御坂「……」 ドキドキドキ…
上条「……」 ドキドキドキ…
御坂(あれ……なんかいい雰囲気……?)
―――良い雰囲気になったら告白しちゃえ!
御坂(……!!! こここ告白って! どどどどうやりゃいいのよ!?) ドッドッドッ…
上条(いやいやまさかなー……。大体相手は中学生だぞ。気は合うけど。
はぁ……上条さんにもこれくらい可愛い彼女が欲しいもんですよ。
それ以前に出会いが欲しい……) ハァ…
御坂「あ、あの……上条!……さん」 ドッドッドッ
上条「!?」
上条(さ、さん付けですとー!? 上目遣いで瞳も潤んで……うわなんだこいつめちゃくちゃ可愛いぞ……) ドキドキドキ
御坂「そ、その……私ね……」 ドッドッドッ
上条お、おう。なんだよ」 ドキドキドキ
上条(も、もしかして……もしかするのか……?) ドッドッドッ
御坂「その……だから……」 ドドドドドド
上条(そうだとしたらどうする……? 相手は中学生だが……いや、愛に年齢は関係ねえはず!
上条さんはオッケーしちゃいますのことよ!) ドドドドドドド
御坂「き、気をつけて帰るのよ……!」 ニヘラ
上条「へ?」
御坂(……や、やっぱり言えない! ……恥ずかしいもん……。そういうのは男から言ってくれるもんでしょ……) カァァ
上条(そ、そうだよな! 何勘違いしてんだ俺は! 中学生だ何だ言ってるけどこいつは常盤台のお嬢様だぞ?
もっと相応しい相手もいるし、結局年齢が……くそっ、ちょっと残念だな……) ハァ…
上条「心配してくれてありがとな! お前こそ気を付けて帰れよ!」 ニコッ
御坂「う、うん。今日は付き合ってくれてありがと」
上条(ふぅ……危うく恥かくところだった。あー、彼女欲しいな……) ハァ…
御坂(ま、また今度言えばいいわよね……。よし、次会ったとき言おう! うん、そうしよう……) ハァ…
御坂「あ、あんた彼女とかいないのよね……?」
上条「んなもんいるわけねえだろ……」
御坂「……欲しいって思う?」 ジッ
上条(また上目遣い……可愛いけど、こいつにそんな気あるわけねえしな)
上条「ま、まあ人並みにはな……」
御坂「……そう」
御坂(よっしゃキター! ならいっそこいつから告白してくれないかしら……)
御坂「ちょ、ちょっとでもいいなって思う子には素直に告白しなさいよねー……!
あ、案外向こうも自分のこと好きだと思ってるかもしれないんだからっ!」
上条(何言ってんだこいつ……? 彼女欲しいって言ったからアドバイスしてくれてんのか? へぇ、やっぱ根はいい奴だな)
上条「そうだよな! そんな場面が来たら迷わず素直になるようにするわ!」
御坂「そ、そうよその調子っ! ……次は楽しみにしてる」 ボソッ
上条「ん?」
御坂「な、なんでもないのよ! じゃ、帰りましょうっ!」
上条「おう。んじゃまたな」
御坂「うん、バイバイ。またね」
タッタッタッ…
御坂(はぁ……なかなか告白って難しいな……。
でもあいつヘアピンのこと気付いてくれたし……うん、今日は楽しかった!) フフッ
御坂(負けないわよ! 次は覚悟しときなさいよねー!
それにもしかしたら次はあいつから……なんて、ふふふっ!)
―アイテム専用キャンピングカー 車内 21:20―
ブォーン…
麦野「……」 ジー
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:結果報告(*ゝω・*)ノ
本文:
あいつヘアピンのこと気付いてくれたよ(∩∀`*)
結構いい雰囲気になったし(*>艸<)
これも麦野さんのおかげだね!
でも告白は恥ずかしくて出来なかった…。
あいつから言ってくれればいいのにな…(´・ω・`)
でもでも、それとなくそっちから伝えて欲しいなっ
て言ってみたから、次はもしかしたらあっちから
言ってくれるかも☆
なんて、さすがにそこまで上手くいくとは思って
ないけどね(´д`;)
――――――――――――――――――――
麦野(あのバカ……) フゥ…
絹旗「どうしました麦野、ため息なんかついちゃって。 さっきから携帯超眺めたままで」
麦野「ん? 何でもないよ」 カチッ
フレンダ「また超電磁砲? ぶー、たまには私ともメールしてよー」
麦野「アンタとはしょっちゅう顔合わせてんだろ。電話だって毎日のようにかけてくるじゃない」
フレンダ「ふえーん、滝壺ー。麦野を超電磁砲にとられたー」 ビー
滝壺「よしよし。健気なフレンダを私は応援してる」 ナデコナデコ
麦野「アンタねぇ……」
浜面「おーい、もうすぐ着くぞ。そろそろ準備しとけよー」
絹旗「今日もつまんない仕事になりそうですね」
滝壺「眠い……」
フレンダ「ははぁん、結局、浜面が寝かせてくれなかったって訳ねー? やーらしー」 キャッキャッ
浜面「ばっ! フレンダお前何言ってんだよ!」
滝壺「……」 カァァ…
フレンダ「げっ、マジで? えーっと……あはは、ごめんごめん」
絹旗「どうすんですかこの空気」
フレンダ「だって本当にそうだと思わなかったんだもーん。麦野ー」
麦野「……」 ボー
フレンダ「麦野? 具合でも悪いの?」
麦野「え? ううん、違う違う」
ブォー…ドドド…
浜面「よし、着いたぞ。しっかり稼いでこいよ」 ビッ!
絹旗「何で浜面が超上から目線なんですか」 ゲシッ
フレンダ「そうだそうだ! 結局、私らの下っ端ってこと忘れないでよね!」 ゲシッ
浜面「いてぇ! いちいちブン殴るな……はっ、麦野!」 ビクッ
麦野「……」 スッ
滝壺「……?」
浜面「麦野が俺を殴らないなんて……」 ガクブル
麦野「アホなことやってないで行くわよ。チリ一つ残さずブチ殺してやりましょ」
麦野(……はぁ、あいつが頭から消えないなんて……何なんだかね、私は……)
―常盤台中学学生寮 二○八号室 22:00―
――――――――――――――――――――
to:上条当麻
件名:今日は
本文:
ありがと。
まあわりと楽しかったわよ?
よかったらまた行こ
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂「んー……麦野さんから返事来ないなー」 ボフッ
御坂(いつも結構早いんだけどな……。色々と相談したいことあったのに……) ゴロゴロ
御坂(なんか私最近麦野さんばっかりだ……。苦手な相手だったのに、随分仲良くなっちゃったな) フゥ…
白井「お姉様元気がありませんわね。何かありましたの?」 カミトカシトカシ
御坂「べっつにー……大したことじゃないわよ」 ゴロン
白井「では露骨にため息など吐かないでくださいまし。気になってしまいますわよ」
御坂「そうよね、ごめん……」
白井「?」
御坂(さすがに黒子にあいつのことは相談できないしね……。っていうか、麦野さん以外に話したことないし……) ゴロリ
御坂(麦野さんって学園都市の暗部?だっけ。そういう人なのよね……)ゴロゴロ
御坂(どういう目で見りゃいいのかしら……? 悪い人? ……でも仕事でやってるみたいだし。
麦野さん本人は面白くていい人だと思うし、うーん……) ゴロゴロゴロ
御坂(訊きづらいなぁ……。知らない方がいいとも言ってたもんね。
でも私の話ばかりじゃなくて、麦野さんのことももっと知りたい……) ゴローン
御坂(よしっ! やっぱり思い切って訊こう!) ガバッ!
白井(お姉様が挙動不審ですの……) アセッ
御坂(あいつとも何か上手くいってる気がするし、最近良いことが続いてるわね) フフッ
白井(お、お姉様……何か悪いもので食べましたの……?) ヒキッ
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「麦野さん!?」 ガバッ!
白井「……」
カチッ
――――――――――――――――――――
from:上条当麻
件名:Re:
本文:
おう。チケットありがとな
上条さんは今日良いことがあったので今度はお
前に何か奢ってやるよ。今日のお礼に
――――――――――――――――――――
御坂「なんだあいつか……」 ハァ…
御坂(って、なんだって何よ!……私はこいつのことが好きなんでしょ?
なんで麦野さんじゃなかったらってため息つくわけ、意味わかんない……!
ちょっと麦野さんのこと気にし過ぎなのよ。
同じレベル5で、能力も似てるし気が合うのは合うからいいんだけど……) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:上条当麻
件名:良い事?
本文:
って何よ?
すっごいもん奢らせてやるんだからね!
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(良い事ってなんだろ)
御坂(まあどうせ卵が安かったとかそんなことでしょ。やれやれ、こっちの気も知らないで) ハァ…
メールゲコ!メールゲコ!
御坂(あいつにしちゃ早いわね。言いたくて仕方ないってこと? 子供かっつの) クスッ
カチッ
――――――――――――――――――――
from:上条当麻
件名:Re:
本文:
な・い・しょ・(^_-)-☆
なんてな(笑)今度会ったときに教えるよ。
じゃあ明日も学校だからそろそろ寝るわ。
またなー
――――――――――――――――――――
御坂(何こいつ……。まいいか、近々どうせ合うでしょ。
あれ、でも次会うときは告白か……どどど、どうしよ) カァァ…
御坂(ま、まあ何とかなるでしょ! 麦野さんに相談してから考えよ!) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:上条当麻
件名:そう?
本文:
ウィンクすんなキモいわよ(笑)
どうせ大したことじゃないんでしょうけど( ̄∀ ̄*)
じゃね、おやすみー
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(案外メールしてみると普通ね。もっと緊張するかと思ったけど)
御坂(けどもうちょっと顔文字とか使った方がいいかしら?
でも多いって言われてるし……まこれでいいか)
御坂(……麦野さん今。何してんのかなあ) ポイッ
白井「……」
本日は以上です。
今回は美琴パートが多めになりましたね。
ではまた近いうちに。
ごきげんよう
ごきげんよう
今日も投下していきますね。
>436
そういうわけではないですが、割かしマイナーキャラに食指が動くところはあります。
今でこそ麦野SSは多いですが、2ヶ月程前までは『とある科学の超電磁砲5巻』が発売していなかったこともあり、
麦野はそれはそれは登場頻度の少ない不遇なキャラでした。
五和は今でもそうですが…。
今回の麦琴も百合ということで受け入れられるのかという不安はあったものの、
意外とたくさんの方に見ていただけているようで嬉しいです。
この先さらに濃厚な百合(というかもはやレズ)描写になっていきますので、
今のうちに注意を促しておきたいと思います。
―第十七学区 不穏分子アジトビル 1F 22:00―
墓穴の底から響くような声がそこかしこから聴こえてくる。
十七学区の路地裏。今は使われていない廃ビルの正面玄関前、絹旗、フレンダ、滝壺の三名は
辺りに転がった無残な死体の山を見下ろして一息ついたところだった。
絹旗「何とか片付きましたね」
額の汗をぬぐいながらふぅと息を吐く絹旗。
足元には鉄骨や車の下敷きにされた男達の死体が転がっている。
フレンダ「結局用心棒の能力者がちょっと厄介だったけど、追いかけてった麦野大丈夫かな?」
絹旗「麦野が負けることなんて、それこそレベル5でも出てこない限り超あり得ません」
本日の仕事は先日の能力開発関連のデータを海外に売り裁くにあたって仲介人となったブローカー達の抹殺だ。
アジト内部に売人と用心棒である『風力使い(エアロシューター)』がまだ逃亡中のため、麦野がそちらの掃討。
3人は外の敵を潰しつつ、このビル唯一の入り口である正面玄関を封鎖しているところだった。
フレンダ「いや、そっちの心配じゃなくて。派手にやらかし過ぎて野次馬が寄ってくるような騒ぎにならないかなって」
苦笑しているフレンダ。
麦野の『原子崩し』はとにもかくにも目立つ能力だった。
光輝くわ轟音はすごいわ、おまけに能力者の麦野自信がハイになるとそれはそれはよく吼える。
弱い犬ほどよく吼えるというが、例外もいるのだということを証明しているかのように。
とにかく相手の自尊心を粉々に粉砕するまで罵倒し続ける麦野。
街中だったら5秒で『警備員(アンチスキル)』や『風紀委員(ジャッジメント)』が飛んでくることだろう。
絹旗「……それは、何とも言えませんね」
絹旗も呆れてため息をついた。
滝壺「二人とも、データが入ったディスクも回収したよ」
ブローカーの一人が持っていたアタッシュケースの中から、データが入ったディスクの一つを取り出して滝壺がぼんやりと言う。
いくつかに分けて所持しているようで、中にいる連中も恐らく持っているだろう。
絹旗「あとは上の階に上っていった麦野だけですか。まあ何か問題が起こるとは超考え辛いですが」
窓ガラスが割れて煤けた30階建ての廃ビルを見上げて絹旗が頭をポリポリとかく。
少々てこずっているのか遊んでいるのか、やけに静かな夜だった。
フレンダ「とりあえず、終わったら車戻るように麦野に言われたし、退散しよっか」
絹旗「ですね、いつ頭上から電子線の雨が降ってくるか分からないですし」
敵を追いかけてビルに入っていった麦野は最初こそ罵詈雑言を吐き連ねながら電子線を乱射していたが、
それは威嚇のつもりだったのだろう。今はねっとりと舌なめずりでもしながら狩を楽しんでいるのに違いない。
物音のしないビルを見上げて、フレンダと絹旗は同時にゴクリと唾を飲み込んだ。
次の瞬間には、ビルが跡形もなく消し飛ぶような攻撃を放つかもしれないのだから。
滝壺「むぎの、今日も随分はりきってるね」
ビルを見上げているのか、その中にいる麦野を見ているのか、滝壺は上を向いたままポツリと呟いた。
フレンダ「麦野が本気出してくれたらこっちも楽だしいいんじゃない?」
絹旗「確かに、麦野は楽しい、私達は楽。みんな超ハッピーです。おっと、相手さんは不幸になるだけでしたね」
フレンダ「あはは、それ言えてる。結局、今日はどんなことやらかしてくれるのかしらね」
軽口を叩きあって、フレンダは携帯電話で少し離れたところに待機している浜面を呼び寄せようとボタンを操作し始めた。
―第十七学区 不穏分子アジトビル 3F 22:10―
廃墟と化したビルの内部。
二人の男が息を殺して誇りまみれの部屋の隅で辺りの様子を伺っていた。
そのうちの一人は某国へ学園都市の能力開発関連のデータを売り捌くべく学園都市内部に侵入していたブローカーであり、
小奇麗なスーツと趣味の悪い宝石がこれでもかとちりばめられた金時計を腕に巻く太めの男。
もう一人は学園都市内部の能力者で、金ほしさにブローカーに協力しているレベル4の『風力使い』である。
カツーン… カツーン…
女のヒールが床を叩く音が遠くから響いている。
ゆっくりとした足取り。
彼らの姿を探して歩いているようだ。
がらんとした無人の廃墟に、嫌に鮮明に足音が響いていた。
売人「はぁ……はぁ……ここまで足音聴こえてきやがる……な、なんなんだあの女!」
壁に100キロ近くある体重を預けて汗をぬぐいなら男が荒く呼吸した。
ほんの30分ほど前のことを思い出す。
突如アジト前に横付けされた巨大なキャンピングカーの中から現れたのはたった4人の少女だった。
警備を任せていた二人の屈強なボディーガードを瞬き一つの間に肉片へ変えた一人のモデル風美女は、
彼らの眼前に降り立つなりこの世のものとは思えない恐ろしい笑顔でこう言い放った。
「ブチコロシ、かくていね」
アジト内から飛び出していく学園都市内で雇った勇敢なチンピラ達は、まるで餌に釣られた肉食獣のようだった。
突如目の前に現れた可憐な少女達をとっ捕まえて欲望のはけ口にでもしてやろうと、軽い気持ちだったのだろう。
しかし、ブローカーはその時既に危険を察知していた。
長年こういった仕事をしている者としての勘が告げたのだ。
今すぐ逃げろと。
あの女の前に立てば、並大抵の苦しみで殺してなどはくれない。
たっぷりねっとりと。
骨の髄までしゃぶりつくして、吐き出した吐しゃ物をもう一度骨に刷り込んでまた嘗め尽くすような、
それはそれは凄惨で無慈悲な殺され方をするだろう。
カツーン… カツーン…
響く足音を聞きながら隣で冷や汗を流している用心棒の男を一瞥する。
レベル4の『風力使い』で、修羅場をくぐることにかけてはそれなりに慣れているとのたまった男だが、
彼もあの女の前では何の役にも立たなかった。
ただただ一方的な虐殺を前に尻尾を巻いて逃げ出すことしか出来なかった。
だが無理もない。
あんな風に解体されていく人体など、ブローカーは40年近い人生で一度もお目にかかったことはなかった。
初めて潜入した学園都市はまさに人外の魔境であったのだ。
風力使い「こっちが聞きてえよ! あんなの出てくるなんて聴いてねえぞ! 邪魔してくる奴を
ぶっ飛ばすだけで金がもらえるからって手伝ってやったのにっ! 何だよあの化け物女!」
レベル4『風力使い』。小学生のころから順当に成長を続け、それなりの苦労をしつつこの位置まで上り詰めた。
そこそこの努力をして、だが学生生活も適当にこなしてきた。友人にも恵まれ、レベルも高いことから女にもそれなりにモテた。
そんなつまらない日常に、ちょっとした刺激をと思って始めた今回の仕事。
路地裏のスキルアウトをボコボコにして正義の味方を気取っていたこともある。
今回も、そんな簡単な仕事の一つだと思っていたのだ。
カツーン… カツーン…
だが、これはそんな生易しいものではなかった。
強すぎるという言葉で片付けるのは簡単だろう。
犯罪に与しているというのはなんとなく分かっていたが、自分はストレスの解消と小遣い目当てだから大して罪悪感も無い。
アホ面下げてやってきた連中を吹っ飛ばす。
それだけのことだと思っていたのに。
キャンピングカーから出てきた彼女を見たとき、まず最初に思ったのは、今まで付き合ったどの女よりも美人だということだった。
2秒後。
それは幼いころ見た夢に出てくる怪物のような、恐ろしいものであると理解した。
青白い閃光を纏って侵略してくるただ一人のインベーダー。
フレディよりも、ジェイソンよりも、エイリアンよりも。
もっと恐ろしい化け物。
紛れもない『レベル5』。
学園都市の頂点に君臨するその存在に、レベル4以下の数字など何の価値もないのだと悟った。
売人「あいつ俺達を探してるぞ……お前レベル4なんだろ! あの女それでどうにかならねえのかよ!?」
無理だ。
それは学園都市外の彼よりも、内部の人間の方がよっぽど分かっている。
レベル5にまともに勝てる人間なんて、この世にはいない。
カツッ…
風力使い「さっき散々試しただろ! クソッ! 何とか逃げ道探さねえと、俺達どうなっちまうんだ……」
忌々しげに歯噛みする風力使い。
すると、突如目の前のブローカーがこちらを指差してガクガクと歯を鳴らし始めた。
売人「あっ……あ……」
青白い顔。尋常ではない怯え方だった。
風力使い「ど、どうしたんだよ?」
大の大人の恐慌状態を目の当たりにして焦りが生じた。
故に判断が遅れる。
売人「う、後ろ……」
彼は、こちらを指差していたのではない。
部屋の扉の僅かな覗き窓。
風力使い「え?」
そこから、女の目がこちらを見ていた。
「 み ぃ つ け た 」
吹き飛ぶドア。
口を耳まで引き裂くように嗤う彼女を見つけた瞬間、
風力使いは迷わず手近のロッカーを女に向けて射出しようと手を動かした。
風力使い「テメェぶっ殺」
だが能力が発動することなどない。
風力使いの右腕は、女の手から放たれた青白い光によって胴体と別れを告げた。
麦野「トロいんだよ遅漏が。乾いちまうだろぉがぁぁあ!! ギャハハハハハハハッ!」
異様なテンションで馬鹿笑いをする女の声などもう届かない。
吹き飛んだ右腕から絶え間なく吹き出る大量の鮮血が部屋中を赤く染め上げていった。
風力使い「ギャァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!
腕がっ! 俺の腕がぁああああアアアアアァァッッ!!!! 」
のた打ち回る男。
床に転がった彼にはもう興味を無くしたように、今度は小便を漏らして床にへたりこんでいるブローカーを
ニマニマとねめつけている。
麦野「ギャーギャー喚くなよド低能。私は今めちゃくちゃ機嫌がいいの。
特別サービスよ。面白いもん見せてあげる」
売人「う、うわぁぁぁっ!!!」
もはや逃げる以外の選択肢など頭の中には無かった。
少しでもこの化け物から遠ざかりたいという欲求に、ただの人間である彼が勝てるはずもない。
麦野「ばぁかっ! このビルにもう逃げ場なんざねえんだよっ!」
心底馬鹿にするような声で、女は右から左に腕を薙いだ。
同時に室内に広がる青白い閃光。
360度、全方向に向けて放たれる極太の光の槍。
何枚もの壁を粉砕し、その向こうから夜空が覗き見えた。
売人「ひっ! や、やめてくれ! た、頼むっ!」
それは一つとして男に当てられることは無かったが、威嚇としては充分な効果をあげたようで、
彼はでかい尻から床に転げて両手を前に突き出し命を乞う。
だが、女は今度は無表情のまま唇を動かした。
麦野「あー、もうそれ無理だわ。今の一発で終わったから」
売人「は?」
終わった?
まだ自分は生きているし、風力使いの男もそこで転がって血の気を失いガタガタと震えている。
麦野「このビル30階建ての廃ビルだっけ? テメェら二人の棺桶にくれてやるよっ!」
轟々とした地鳴りがビル全てを襲った。
青白い顔をした風力使いがさらに顔を青くして呟く。
風力使い「ま……ま、まさかこの音って……」
売人「こ、こんなことしらお前まで死ぬんだぞっ!」
そう。彼女は先ほどの一撃で。
ビルにある支柱全てを破壊してしまったようだった。
ゆっくりと歩き回っていたのは広さを把握するためだったらしい。
しかしこのままでは女も心中だ。
ブローカーはそれがハッタリであることを願うように、女に問いかける。
麦野「そりゃ困る。だから窓から逃げるわ」
無機質な微笑みで、女は窓の欄干に足を掛けてこちらに向けて手を振った。
風力使い「な、なっ……た、助け」
愕然として、風力使いの男が誰にともなく手を伸ばす。
麦野「ばいばーい」
そして女は、もう一度ヒラヒラと手を振って彼の願いを踏みにじる。
次の瞬間。
30階建てのビルは粉塵の中、世界の終わりのような音を立てて瓦礫の山へと成り果てていった。
―第十七学区 不穏分子アジトビル前 22:20―
浜面「おいおい……なんかビルが倒壊していくんだが俺の気のせいか?」
絹旗「奇遇ですね。私にも超そんな幻覚が見えてますよ」
滝壺「……むぎの、やりすぎ」
フレンダ「早く逃げないと面倒なことになる訳よ。麦野のアホー!」
麦野「誰がアホだって?」 スタスタスタ
フレンダ「げっ……」
麦野「3階なんてものの高さじゃないっつの。これで証拠も隠滅。経年劣化によって突如崩壊したビルの中から
グチャグチャになった男達の死体らしきものが見つかるけど、事故じゃしょうがないよね」
フレンダ「うん。それは仕方ない訳よ」
絹旗「超事故ですからね。にしてもなんでこんな真似を?
ここまでやらなくてもいつも通り死体ごと消滅させるか下部組織の連中に処理させたほうがよかったんじゃないですか?」
麦野「べっつにー。ちょっとやってみたかっただけ」
麦野(あの白井とかいう風紀委員のマジメちゃんに出来てこの私にできないはずないことを証明したかっただけよ)
浜面「んじゃ後片付けは他の連中に任せて帰るか」
麦野「そうね。ご飯食べて帰る? フレンダ、アンタには迷惑かけたからなんか奢るよ?」
絹旗「超行きたいです。気分的にはカレーですね」
麦野「何でアンタまで奢られる気なのよ。フレンダだけ」
絹旗「ぶー……麦野はいちいち器が超小さいですね」
麦野「あらあらまあまあ。体まで小さいあなたには言われたくないわねー」
絹旗「ガァァッ! 麦野だってでかいの乳だけでしょうっ!」
麦野「あァん? 乳すら小さい奴が何言ってんのよ。分かった分かった、全員私が奢ったげるわよ」
絹旗「おや、珍しい。麦野がこんなに簡単に折れるなんて」
麦野「やっぱ無しにすんぞチビ旗」
絹旗「冗談です。何がいいですかねー」
フレンダ「まあまあ二人とも。せっかくの奢りなんだからいいものを食べたい訳よ」
浜面「あー、悪い。今日は俺達パスするわ」
麦野「なんでよ」
浜面「それはだな……えっと……」
滝壺「今日ではまづらと付き合って一ヶ月だから、お祝いしたいなって」
麦野「一ヶ月でお祝いって、毎月やるつもり?」
滝壺「ううん、次は半年かな」
フレンダ「まあまあ。二人が記念日っつってんだから仕方ない訳よ。そういうことなら今日はやめとこっか」
絹旗「そうですね。麦野、また今度お願いします」
麦野「分かったわよ。にしても一ヶ月ねえ? どう、付き合ってて。何か変わった?」
浜面「何かって?」
麦野「楽しい?」
滝壺「楽しいよ。いつも一緒にいられるし」
麦野「ふぅん……」
麦野(そういう楽しさ私にゃ一っつも分からなかったけどね……やっぱ恋人がいるっていうのは楽しいことなのかしら)
絹旗「何照れてんですか超浜面のくせに」 ニヤニヤ
フレンダ「結局、あんまり滝壺を独占しないでよねー」 ニヤニヤ
浜面「う、うるせえな。ほらとっとと乗れよ。まだ仕事中だろ」
絹旗「浜面に仕事のことで注意されるなんて超心外です」 ブー
フレンダ「帰ってご飯作るのめんどくさーい。帰りどっかコンビニ寄ってよ」
浜面「はいよ」
滝壺「むぎの? どうしたの、帰ろう」
麦野「……ん、ああ。行く行く」
麦野(恋人ねえ。こういうの見てると欲しいとは思わなくもないけど……。欲しいからって作るもんでもないわよねえ)
―常盤台中学学生寮 二○八号室 24:00―
御坂(結局今日は返ってこなかったなぁ。色々話したかったのに……)
白井「……」 zzz…
ヴーン! ヴーン!
御坂「き、きたっ!」 ガシッ!
白井「……ん……ぅうん……」 ゴソゴソ
御坂(おっと、黒子起こしちゃ悪いわよね。静かに静かに…) カチカチ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:こんばんは
本文:
返事遅れて悪い。ちょっと立て込んでた。
上手くいったみたいでよかったね。
と言いたいところだけど、いけそうなチャンスには
いっといたほうがよかったと思うわよ?
↓
――――――――――――――――――――
御坂(やっぱそうなんだ……。失敗したかなぁ……で、でも時間はいくらでもあるわよ!
次は大丈夫! ちゃんと心の準備していくんだから!……っと、続きある)
――――――――――――――――――――
↑
いっといたほうがよかったと思うわよ?
まあでもアンタにしては頑張ったんじゃない?
――――――――――――――――――――
御坂(褒めて……くれてるのよね……) ドキドキ
御坂(よーし……私も……)メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:うん(*>艸<)
本文:
次はがんばるっ!麦野さんの応援を無駄にしな
いためにも、あいつを仕留めてみせるわよ!
↓
――――――――――――――――――――
>送信
御坂(ふふっ……麦野さんを照れさせてやるわよ)
――――――――――――――――――――
↑
いためにも、あいつを仕留めてみせるわよ!
前にも言ったけど、麦野さんのそういうとこ好きだ
よ(∩∀`*)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(はー……麦野さんからの返事待つのなんでこんな緊張するんだろ……。
あいつは意外とそうでもなかったのに……) ドキドキドキ
御坂(自分でも思ってるより麦野さんのこと好きなのかなぁ……) トクンッ
御坂(って、何考えてんのよ! そりゃ嫌いじゃないけど好きのベクトルをあいつと同じに考えちゃ駄目でしょ!
女の子同士なんだから……)
御坂(女の子同士だから、緊張するのかしらね……。どう付き合っていいかまだ分からないし……。
だけど麦野さんとのこの距離は、もっと縮めていきたいなって思うのよね……。
長い付き合いじゃないけど、そこそこ深い付き合いだもん。
その方向が変われば……もっと麦野さんに近づけるのかな……)
メールゲコ!メールゲコ!
御坂(着信音が鳴るだけで麦野さんの顔が浮かぶ……。結構私重症なんじゃない?)
カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:無題
本文:
私も好きよ。美琴
↓
――――――――――――――――――――
御坂(ええええええええええええええええええっっっ!!!???) ガタッ!
白井「ぅ……うぅん……お姉様ぁ……ムニャムニャ」 zzz…
御坂(やばっ! ごめんね黒子。
ビ、ビックリしたぁ……な、何これ……) ドキドキドキドキ…
御坂(あれ……? 続きある……?)
――――――――――――――――――――
↑
私も好きよ。美琴
ドキッとした?
したならアンタは女子高に染まり過ぎてます。
ご注意(*ゝω・*)-☆キャピッ
――――――――――――――――――――
御坂(……そ、そんなの……!)
御坂(何よ……後半の方がドキッとしちゃったじゃないの……) ドキドキドキ
―麦野宅 浴室 24:30―
チャプッ…
麦野「~♪」
麦野(極楽……。あー、そういや御坂とお風呂行こうって約束まだ日取り決めてなかったな) チャポッ
麦野(けどあいつ明後日来るんだっけ? せっかくだからその時行くか)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野(おっ。さてさてさて、何て返してくれるんでしょうかね、美琴ちゃんは) ニヤニヤ
麦野(っつかお風呂にまで携帯持って入るって……どうよこれ。なんつって。
だって早く反応見たいんだもん☆ ビニールで包んでりゃ全然大丈夫だしねー) ククッ
カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:驚かせないでよo(≧ε≦o)
本文:
ドキッとなんてするわけないでしょっ!
下の名前で呼ばれるなんてそうそう無いからそこ
はビックリしたけどね(´・ω・`)
随分帰り遅いのね。
……仕事ってやつ?
――――――――――――――――――――
麦野「なんだつまんない」
麦野(仕事のこと突っ込んできやがったな……。よせって言ったのに) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:ちっ
本文:
つまらねーの。
まだ起きてていいの?ガキは寝る時間よ。
それに関してはコメントを差し控えさせて頂きます
っつか詮索すんなよ超電磁砲。
私はアンタとの間に仕事の話を持ち込むつもりは
無い。それがお互いのためだしね。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(ま、これが正解でしょ。私らとは一切関わり無いところにアンタがいてくれるから
私はこうして楽しくメールできんだしね)
麦野(楽しく……ね。受け入れ過ぎでしょ私。暇つぶしだったはずなんだけど……。
私はこいつとどうなりたいんだか……)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野(もう日付変わってんだから寝ろよ……)
カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:もうちょっとo(≧ε≦o)
本文:
もうちょっとだけ麦野さんと話してたい…。
だめ?(´・ω・`)
分かった。変なこと聞いてごめん!
――――――――――――――――――――
麦野(……ったく。ちょっと言い過ぎたか?) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:仕方ないわねえ
本文:
私のこと大好きなのね(笑)
いいよ。ところで、明後日泊まりに来るなら前言っ
てたレジャーお風呂はその日の夜行く?
っつかアンタって泊まりとか大丈夫なの?
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(書いててちょっと恥ずかしいじゃないのよ) チャプン…ブクブクブク
麦野(体洗おうっと) ザバァッ
―常盤台中学学生寮 二○八号室 24:50―
御坂(大好きって……変に意識してるときにそんなこと言われたら余計寝れないじゃないっ!)
御坂(明日寝不足確定ねー……いいけど) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:まあ
本文:
普通に好きだよ(*>艸<)
それいいわね。そうしましょ☆
わー、友達の家に泊めてもらうの初めて!
すっごい楽しみ!(∩∀`*)
水曜日はテスト休みで休日なのよん(*´∀`)ノ
外泊申請出しといたから大丈夫ヾ(・ω・*)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(お風呂かー。いよいよ敗北感を味わう羽目に……)
御坂(麦野さんスタイルいいわよねー……私もああなりたいけど、ま、これからよねっ!) フフッ
メールゲコ!メールゲコ!
御坂(お泊りってどうしてこうワクワクするのかしら) フフッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:あっそ
本文:
素直でよろしい(笑)
そんなに期待しないでよ。何も面白いものなんて
無いんだから。
まあご飯くらいは作ってあげるけどね。
1泊2食で10万円になります(*ゝω・*)-☆キャピッ
――――――――――――――――――――
御坂「う……」
御坂(ヤバ……また麦野さんのウィンク思い出しちゃった……。
あれだけ美人なんだからもうちょっと言葉遣い直したらすごいことになるんじゃないかしら) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:えー(*´∀`)ノ
本文:
麦野さんって色々こだわってそうだから部屋オシ
ャレっぽい(*ゝω・*)
お金取るなってのo(≧ε≦o)
麦野さんの手料理も楽しみだわー(・∀・)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂(……もう一時過ぎか……さすがに寝ないと明日しんどいだろうな……)
御坂(……けど麦野さんと話していたいというジレンマ……。うーん、けど向こうだって眠いわよね。
ここらで切り上げた方がいいかも……でもなぁ……んー) ウトウト
御坂(……あー……寝そう……麦野さん……から……返事…………) ウツラウツラ……
ヴーンヴーン
御坂「……くー」 zzz…
本日はこのくらいで。
フラグを立てるのは今日で終わりです。
6日目の話は繋ぎなので短いですが、エロシーン有りなので苦手な方はご注意を。
それではまた近いうちに
>464
分からないですwまだ書き溜めが全然終わってないので。
今後は日にちが飛んだりすることもあると思うので、何日目とお答えしてもあまり参考にならないでしょうし。
めちゃくちゃ長いものにはならないとは思いますが
こんばんは。
本日も投下していきます。
今日はかなり短めになりますがご了承下さい。
あと一応エロ注意で。
6日目
―???―
濃厚に香る蜜の匂い。
静寂に閉ざされた世界の中で、優しい声が聴こえた。
「御坂……! 御坂起きろよ」
「!?」
涼やかな男の声に、私は薄く瞳を開いて現実に呼び戻された。
ゆっくりと体を起こすと、私はどこかの部屋のベッドで眠っていたようだ。
クイーンサイズの巨大なベッドの四隅から天蓋に伸びる螺旋の柱が聳え、薄いシルクのカーテンの向こうは
靄がかかったように何も見えない。
「まだ寝るには早い時間だぞ、御坂?」
「……ごめん……ってあんた何よその格好!?」
声の主、上条当麻は一糸纏わぬ姿で隣に腰掛けている。下半身はシーツがかかっているから直接見えないものの、
何も着ていないということは腰周りの様子から見て取れた。
私は熱くなる顔を隠すようにバッとそこから視線を外す。
彼は私の頭の後ろでクスリと笑い声をあげた。
そっと体に回される腕。
白く細い、しなやかな指先が私の皮膚を這い回り、ゾクゾクとした電流が全身を駆け巡っていった。
「何言ってんだよ御坂。俺達、今日結ばれるんだろ? ……もう我慢できねえよ、いいだろ?」
耳元に口を寄せて甘く囁く。
私はピクリと体を跳ね上げてその声に酔いしれた。
ああ、これはきっと夢だ。
だから私は、彼のその言葉を何の迷いもなく受け入れることができた。
彼とこうなることを望んでいたのは私も同じはずだったから。
「で……でも! 私初めてだから……その……怖い……」
いつにも増して積極的な彼と、夢の中での睦み事を愉しむ。
彼の体に自らの体を預けて、私は抵抗する気も起きずに体を緩く捩るばかりだった。
「大丈夫だよ……私に任せなさい……」
胸元で握った私の手を、彼のピンク色のネイルで彩られた指が解きほぐす。
耳元に吹きかかる熱い吐息が、私の脳を蕩けさせて思考能力を奪う。
背中に密着する彼の体。
柔らかな二つの丘が背中へ押し付けられ、掌は私のささやかな膨らみを優しく包み込んだ。
わずかな違和感。
男の体とは、こんなにもしっとりと柔らかいものだっただろうか。
「あ……あんた、随分柔らかいわね……女の子みたい」
空いた片方の手が私の足の付け根へと滑り降りていく。
よく手入れされた綺麗な手だった。
そう。
まるで、女のそれであるかのように。
「何言ってんの? 私、女の子だよ?」
凛とした声だった。
振り返ったその瞬間、私は絶句する。
量の多い、ふわふわの栗毛。
芸術品のような整った顔立ちと白く繊細な肌。
長い睫をたくわえた鋭い大きな瞳。
細い首筋から綺麗な鎖骨を通りすぎ、その下に鎮座する神々しいまでの美麗かつ大きな乳房。
無駄な肉の無い腹部と、細い腰の下にはムッチリとしたお尻と肉付きの良い長い脚が見える。
「む……ぎのさん……?」
そこにいたのは上条当麻などではなく。
どういうわけか麦野沈利その人であった。
「美琴……我慢できないよ……しよ……?」
トロンとした瞳で、私の首に腕を回してくる。
鼻先五センチのところで囁く彼女の吐息は恐ろしく甘く香り、私の鼻腔を蠱惑的にくすぐる。
理性をボロボロに砕かれそうになるのをこらえながら、私は最後の抵抗として、ギュッと瞳を閉じて拳を握った。
「だ、だって私達……女同士なんだよっ! こ、こんなのおかしいわよっ!」
「大丈夫……私がぜぇんぶ……教えてア・ゲ・ル……」
「ふぁ……む……むぎのさん……ぁっ」
栗色の毛先が私の肌を柔らかくくすぐった感触の後、彼女の舌先が私の首筋を這い回っていく。
熱く濡れたヌルヌルの舌先に、私の欠片ほどの理性がどこか遠くへと消しとんだ。
女の体を知り尽くしているのは、他ならぬ女の自分自身であるということを証明するかのように、
彼女は私の嬌声を導き出す奏者の如くこの体を弾き鳴らしていった。
「ぁっ! ぁあっ! 麦野さん……駄目っ……私はあいつのことが好きなのに……こ、こんなの……んぅっ!」
「だから? こんなに濡らしてるくせに何生意気言ってんの?」
天蓋付ベッドはまるで外の世界と隔離されているように何事をも外界へ伝えることは無く。
私はただ体の上を這い回る彼女の指先に翻弄されるばかりだった。
体の奥底から溢れてくる情欲の蜜がシーツを色濃く濡らしていく。
奥底をかき回す彼女のしなやかな中指は、まるで生き物の様に私の最奥を擦り上げて刺激する。
「はぁんぅっ! ぁぁあ……! 駄目……! 駄目なのぉっ……!」
「ふぅん。指一本でキツキツの割にはエロい体してんのね」
彼女は、私の薄い茂みをジッと眺めて意地悪く微笑んでいた。
快楽に身を委ねる私を嘲るその視線に、言い知れぬ酔いが全身を走りぬける。
私は永遠とも思える時間を、彼女の指先一つで作り上げられた。
気持ちよすぎて。何も考えられない。
やがてさらに奥底を目指すその指先が、ある地点で動きをピタリと止める。
「そ……そこからは本当に駄目っ! は、初めてなのぉっ!」
「……じゃあ、それも私のね」
残酷に笑う彼女の唇が艶かしく蠢いた。
ギラギラと私を射抜く熱っぽい視線に、もうどうにでもしてと、私はとうとう涙を零して笑みを浮かべることしかできなかった。
「これでアンタは、私のものよ」
ギチギチと裂かれていくような破瓜の痛みと抑えきれない喘ぎの中で、私の意識はプツリと途切れた。
―常盤台中学学生寮 二○八号室 6:00―
御坂「!?」 ガバッ!
白井「……ぐぉぉ……お、お姉様ぁ……そこは汚いですのぉ……グヘヘヘ……ムニャムニャ」 zzz…
御坂「夢……?」
御坂(なんつー夢見てんの私っ!)
御坂(む、むむむっ麦野さんとあんなことする夢なんて……) カァァッ
御坂(ハッ……そか、メールしながら寝ちゃってたんだ……)
白井「ぁはぁん……お姉様……黒子をめちゃめちゃにしてくださいましぃ……がぁぁぁ……」 zzz…
御坂(黒子がこんな寝言呟いてるから……! 恥ずかしいー! 明日麦野さんの家行くのに顔見れないわよ……!)
御坂(女同士でそんな……! 大体どうやってするっての!? 麦野さんの指が私の……ああああぁぁぁ!
思い出すな思い出すな! うわぁ~……最悪……どんな顔して麦野さんに会えばいいのよ……)
御坂(私にはあいつがいるのに……女の人と……エ、エッチする夢見るとか何なのよ……)
御坂(わ、私はそもそもエッチなことなんて……! きょ、興味ないんだからね!)
御坂(ぁぁぁああぁぁっ! やだもう最低っ! なんでよりにもよって麦野さんなのよー!) バタバタバタッ
御坂(リアル過ぎるわよ……。麦野さんならきっとあんな風に……駄目駄目駄目! 無理無理無理!)
御坂(おちけつ! 冷静になるのよ私っ! 深呼吸深呼吸……) スーハースーハー
御坂(あ、そ、そだメール……) カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:いや
本文:
そこまでじゃないけど…
ほんと大したことないわよ?
こんな美人の手料理ってだけで価値跳ね上がる
のに、アンタ無料で食おうっての?(笑)
――――――――――――――――――――
御坂(昨日の夜はこのメール見る前に寝ちゃったのか……)
御坂(頭冷えるまでメール返せないな……。あーもうやだっ! と、とにかくシャワー浴びてこないと……) イソイソ…
御坂(ごめんね麦野さん……夢の中で、あんたとしちゃったわ……) ドキドキドキ…
―麦野宅 17:00―
麦野「結局あいつから返事無いな……」 ボソッ
麦野(珍しいわね。昨日まで麦野さん麦野さん言ってきたくせに)
麦野(明日の準備のためにわざわざあいつらとの集まり切り上げて帰ってきたんだけど、
気になって掃除が手に付かないじゃないの……) イライラ
麦野(にしても今日変な夢見たな……)
麦野(……御坂とセックスする夢って……欲求不満なのか私は)
麦野(何でよりによって相手が女のあいつなのよ……)
麦野(まあ身近に男なんていないわけだけど……わざわざあいつが出てこなくたっていいじゃないの、ねえ?)
麦野(フレンダよりはマシだけど……)
麦野(夢の中のあいつは随分積極的だったな……。年下にいいようにやられるなんて……夢とはいえ屈辱だわ……)
麦野(まあそんな機会ないだろうけど、せめてあいつの夢にでも出てグッチャグチャに犯してやらなきゃ気が済まないわね……)
麦野(ああ……私に屈服する第三位。……うふふふふっ、考えただけで素敵。首輪とか付けて人間の尊厳なんて根こそぎ奪って
ボロッボロのクッタクタにしてやりたいわ……) クスクス
麦野(そこまでやればあいつを素直に可愛がれるかも)
麦野(どうでもいいけどあいつたぶん処女よね。違うとか言われるほうが驚くわ)
麦野(うはー泣かせてえ……。あの生意気な御坂がビービー泣いてるとこなんてそれだけでご飯食べられるわね) ゾクゾクッ
麦野(……って、何考えてんだか。いじめがい有りすぎて思考がおかしな方向に行っちゃったわ)
麦野(っつかあいつ返事返せよ……。何で私が一人でやきもきしなくちゃなんないわけ? あー腹立つ)
麦野(っていうかあいつ明日ここに泊まるのよね。布団はフレンダ達が来たとき用のがあるからそれ使うとして……。
着替えはあいつ持ってくるか。ってことはやっぱ料理ね。何しよっかなぁ……)
麦野(あー、けど夜お風呂行くもんね。朝から作っておけるもんのほうがいいか。
季節的にもシチューとかいいかも。よし、決めた! ビーフシチュー! あいつ好きかなぁ……ふふっ)
麦野(……何うきうきしてんだか。ったく、あいつのこと考えると調子狂うな。
アホくさ……とっとと掃除しよ……) ハァ…
麦野「けど……楽しみね」 ボソッ
―常盤台中学学生寮 二○八号室 20:00―
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:返事遅れてごめんねo(≧ε≦o)
本文:
ちょっと忙しくってさ(≧Д≦;)
ところで明日学校終わってから行くけど、場所分
からないから迎えに来てくれたりしない?(´・ω・
`)
住所教えてくれれば自分で行くけどね(*´∀`)ノ
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂「よし。さぁて、明日の準備準備」 ガサゴソ
ガチャッ
黒子「あらお姉様。何をなさってますの?」
御坂「あれ、言ってなかったっけ。明日の夜私いないから」 ガサガサ
黒子「は?」
黒子「お、おおおお姉様!? とうとう黒子に愛想を尽かせてしまいましたの!?
嫌ですの! どうか、どうか考えをお改めになってぇっ!」 ビー
御坂「は!? ちょっ、何泣いてんのよ!」
黒子「お姉様はここを出て行ってしまわれるんですのねー!? 嫌ですのー!」 ビー
御坂「違うって。明日は麦野さんの家に泊めてもらうの。水曜日テスト休みでしょ。遊びにいくだけよ」 ヨシヨシ
黒子「あら……そうでしたの。けどまた麦野さん……。随分仲がよくなりましたのね」
御坂「まーねー。気が合うみたい」
黒子「ではお楽しみになってくればよろしいんじゃありません?」 プィッ
御坂「? あんた何か怒ってる?」
黒子「怒ってなどおりませんの!」 フンッ
御坂「……そう」
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「あっ! 麦野さんだ!」 パァッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:うん
本文:
いいわよ。迎えに行ってあげる。
夕食用のパンを買わないといけないし。
寮の前で待ってるから、時間教えてくれる?
――――――――――――――――――――
白井「…………」
御坂(あ、駄目もとだったけど来てくれるみたいね。やっぱいい人だわ) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:ありがとう(*ゝω・*)ノ
本文:
さっすが麦野さん!やーさしい(*>∀<*)
4時半くらいには寮帰れると思うわよ(*>艸<)
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂「お風呂セットの用意もしとかないと。あー、今から楽しみだわ」 フフッ
白井「……」 スタスタスタ ガチャッ
御坂「あれ、黒子どこ行くのー?」
白井「黒子はお邪魔なようなので他のお部屋でお喋りでもしてきますの。お忘れ物の無いようにお気をつけくださいまし……」 バタンッ
御坂「……何よ、別に邪魔なんかに思ってないのに。……拗ねてんの? ま、そのうち機嫌直るか」
メールゲコ!メールゲコ!
御坂「はいはーい」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:麦野沈利
件名:はいはい
本文:
褒めても何もでないわよ。褒めなかったら食事抜
きになるとこだったけど。
じゃあそれくらいに行くね。寮の前に居て不審人
物扱いされるとか無いわよね?
――――――――――――――――――――
御坂「ふふっ、面倒見いいわねえ」
御坂(……私ももう少し黒子の面倒見てやったほうがいいかしら。
最近構ってあげられてなかったもんね……。よし、明後日帰ってきたら黒子とも遊びに行こうっと) メルメルメル
――――――――――――――――――――
to:麦野沈利
件名:危ない危ない(≧ε≦;)
本文:
麦野さん小さーい(´・ω・`)ご飯抜きはいやー(゜Д
゜;)
大丈夫大丈夫(*´∀`)ノたぶん(笑)
出来るだけ遅れないように行くわね(*ゝω・*)ノ
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
御坂「さ、今日はお風呂入って早く寝ないとね!」 ポイッ
御坂(あー……いよいよ明日かー。麦野さんの色んなことが知れたらいいな)
というわけで短いですが以上です。
エロは賛否両論あるかと思いますが、今作はこういう感じでいってみたいと思います。
と言ってもエロメインになるようなことはありませんが。
次回からはお泊りイベントということなので、しばらくメールは封印です。
二人の距離を一気に詰めにかかっていきます。
それではまた近いうちに。
ごきげんようお姉様方。
遅くなりましたが、今から投下しますね
7日目
―麦野宅 12:30―
グツグツグツ… コトコトコト…
麦野「ズズッ……うん。大体完成ね。4時過ぎに出れば間に合うから、あとは煮込んで置いておくか」
麦野(料理良し。布団良し。お菓子と飲み物良し。お酒も一応買ってあるし、これでいつあいつ来ても大丈夫ね)
麦野(ちょっと気合入れすぎ……? この私にここまでさせるなんて、あいつってばなんて幸せ者なのかしら)
麦野(ま、初めて来るからこれくらいはね。何も用意してないのも感じ悪いしさ……誰に言い訳してんだ私は)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野(ん、あいつかな。時間的には昼休みか)
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:昼休み!
本文:
お腹減ったーo(≧ε≦o)
ママー、今日の晩御飯何ー?(∩∀`*)
――――――――――――――――――――
麦野「野朗ォ……」 ピキッ
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:ママだと?
本文:
テメェに食わせる飯はねえ
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野「ふんっ」
麦野(この私が中学生の娘がいるような年に見えんのかっつの)
ハーナテココローニキザンダユメモミライサエオーキーザーリーニシーテー!
麦野「ちょっとは反省したかしら?」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:御坂美琴
件名:怒らないでヾ(・ω・`*)
本文:
冗談じゃない(笑)
――――――――――――――――――――
麦野「私は私を実年齢以上に見てくる奴を許しはしないのよバカ死ね」
麦野(……そういやこいつの母親ってどんな人なんだろ。やっぱこんな感じなのか?) メルメルメル
麦野(ま、会うことなんて無いだろうからどうでもいいけど……なんて言ってると会っちゃったりするのよねー、怖い怖い)
――――――――――――――――――――
to:御坂美琴
件名:言葉には
本文:
気をつけろ。死ぬわよ。
今日はビーフシチューよん。
――――――――――――――――――――
>送信 ピッ
麦野(さてと。私も化粧してあいつ迎えに行く準備するか)
―常盤台中学学生寮前 16:30―
スタスタスタ…
麦野(ここね。相変わらず立派な寮だこと)
麦野(常盤台か……。受けるよう薦められたけど結局受けなかったな。
まあ受けてたところで御坂とは年が離れてるから同じ時期に学校にはいられなかったけどね)
キャッキャウフフ ワイワイ キャッキャッ
麦野(下校してくる奴らが増えてきたな。そろそろか)
麦野(にしてもガキっぽいな……中学生だと思うからそう見えんのかねー。
いくら名門常盤台で大学生並みの勉強してても中身も外見も結局これなのよね……)
麦野(そう考えると御坂はわりと大人っぽい方か。絹旗も見た目はガキくさいけど中身はそこそこしっかりしてるし、
経験の差ってやつかしら)
タッタッタッ
御坂「麦野さんごっめーん! ちょっと遅れちゃったね! ダッシュで帰ってきたんだけど、結構待った?」 ハァ…ハァ…
麦野「別に。今来たとこよ。わざわざ走ってご苦労さま。ルームメイトの子は一緒じゃないの?」
御坂「黒子は風紀委員(ジャッジメント)の活動があるからねー。部屋から荷物取ってくるからちょっと待っててちょうだい。
あ、それか部屋上がる? 今は黒子もいないし遠慮しなくても大丈夫よ」
麦野「いいの? ちょっと興味あるな。常盤台の寮の部屋ってどんなとこなのかしら」
御坂「全然普通だってば。ま見れば分かるでしょ。おいでよ」
麦野(こいつの部屋か……ふむ)
スタスタスタッ ガチャッ
麦野「玄関からいきなりすごいオシャレね」
御坂「まあ年一回一般公開もするしね。2階だから、こっちよ」 タッタッタ
麦野「そう言や私のあげたヘアピン使ってくれてんのね」
御坂「ああこれ? うん、可愛いしお気に入りよ」
麦野「そりゃよかった。よく似合ってるわね」
御坂「えへへ、ありがと」
おさげの女生徒「あ、御坂様、お帰りなさいませ」
御坂「ただいまー。あなたはどこかへお出かけ?」
おさげの女生徒「はい。お友達とお茶をしに」
御坂「そう。変なのに絡まれないように気をつけてね」 ニコッ
おさげの女生徒「ありがとうございます。失礼致します」 ペコッ
麦野(後輩か。やっぱ御坂どこでも慕われてんのねー)
大人しい女生徒「あ、御坂様、お帰りなさいませ」
御坂「ただいま。どこか行くの?」
大人しい女生徒「今日は食堂の掃除なので」
御坂「そう。頑張ってね。あ、ほら襟がめくれてる。寮監に怒られるわよ」 ナオシナオシ
大人しい女生徒「あ、ありがとうございます!」 ペコリッ!
御坂「いいから。行ってらっしゃい」
大人しい女生徒「失礼します」 ペコッ
御坂「ふう……」
麦野「いい先輩してんじゃない」
御坂「ありがと。寮の子はみんな仲良くしてくれるわよ」
麦野(いるじゃん友達。……いや違うか。いい先輩と可愛い後輩の関係ね。
年齢で言えば私と御坂の方が離れてるってのに)
御坂「それよりほら、ここが私の部屋」
麦野「ここで毎晩アンタは後輩を連れ込んで夜の指導をしているわけね」 ククッ
御坂「セクハラオヤジみたいなこと言わないで。はーいどうぞ我が家へ」 ガチャッ
麦野「お邪魔ー……へぇ、レトロで良い雰囲気の部屋じゃない」
御坂「まあちょっと古いけど、綺麗なのは綺麗でしょ」 ボフッ
麦野「ベッドが二つ並んでるのね。プライベートな空間が無いのってストレス溜まらない?」
御坂「慣れちゃえばなんてことないわよ」
麦野「オナニーとかどこですんのよ」
御坂「しないわよ! なんであんたはそう発想が下品なのかしらね!」
麦野「単純な興味でしょ。お高く止まってんじゃないわよメスガキ。
アンタはしてなくてもアンタの後輩達はアンタでぶっこいてるっつの。女の性欲なめんな」
御坂「!」
御坂「……ほんとサイッテー……。この寮でそんなこと言わないでくれる?」
御坂(ああもう最悪……昨日見た夢思い出しちゃうじゃないの……) カァァ…
麦野「ん? ねえ御坂、このぬいぐるみ何? こっちにやたらでかい熊もあるけど、アンタの?」 ヨイショッ
御坂「それ? あー……ゲコ太って言ってね。まあ……なんというか……
そう、そこそこ嫌いじゃないキャラクターなのよねーって……何よその目」
麦野「アンタこの前カエルのヘアピン買ってあげたでしょ。今更何隠してんのよ」
御坂「だ、だって黒子にもいつも笑われたりバカにされたりするんだもん……」 ゴニョゴニョ
麦野「別にアンタの好きなもん否定するほど私はガキじゃないわよ。ぷっくく……しかしこれをアンタがねえ……くくっ」 クスクス
御坂「笑ってんじゃないの! もういい返して! ほ、ほらさっさとあんたの家行くわよ!」 ヒョイッ
麦野「はいはい。パンツ忘れんじゃないわよー」
御坂「持ってるわよ!」 ガッ!
―麦野宅 17:00―
麦野「はいどうぞ」 ガチャリ
御坂「お、お邪魔しまーす」 ドキドキドキ…
御坂(うわー、麦野さんの部屋だ……いい匂いがする……)
麦野「何突っ立ってんの? さっさと荷物置いてお風呂行きましょ」
御坂「う、うん……あ、もう晩御飯作ってくれてたんだ」 チラッ
麦野「そうそう。ビーフシチューって言ったと思うけど、食べれるよね?」
御坂「うん。好きよ」
御坂(麦野さんがここで生活してると思うとなんか……なんだろこの気持ち) ドキドキ
麦野「ご飯は心配しないの。荷物こっち持ってきな」
御坂「はーい。……うわ、部屋中に鞄やら靴やらが……」
麦野「服はなんとかクローゼットに突っ込んだだけど靴と鞄が入らなくてさー。
ウォークインクローゼット付の部屋に引っ越そうかなってちょっと真剣に考えたわ。
荷物適当にそのへん置いといて」
御坂「ありがとう。買い物好きなの?」
御坂(麦野さんのベッド……ピンクのシーツって意外ね……。もっとシックな感じの趣味かと思ってた)
麦野「まあ好きね。一度に大量に買うことってないんだけど、毎回一つ二つ買って帰るといつの間にかこんな風に
なっちゃったの。散らかってて悪いわね」
御坂「ううん。うちの学校っていつも制服だからこんなに服とか色々買うことないから珍しくって」
御坂(部屋もピンク系の小物が多いわね。大人っぽい部屋かと思ったら案外可愛いのが好きなのかぁ……)
麦野「何ジロジロ見てんのよ」
御坂「あ、ごめんごめん。可愛い部屋だなって思って」
御坂(化粧台もすごい……なんか高そうな化粧品ばっかり……)
麦野「そう? 白とピンク基調だからそう見えるだけよ。ファンシーなデザインってそんなに好きじゃないし」
御坂「そうなんだ。にしても大きい部屋ねー。一人だと寂しくならない?」
麦野「いや全然。部屋はともかくお風呂が結構広めで気に入ってるのよ」
御坂「へー見せて見せてー」
麦野「こっちよ、おいで」
ガチャッ
御坂「わっ、広っ!? 何これ。5人くらいは入れそうね」
麦野「掃除ちょっと大変なんだけどね。ここ押すとミストサウナになるのよ。
んでこっちはジャグジーで……」 イソイソ
御坂「うひゃー……これすっごい。こっちも入ってみたいわねー」
麦野「また今度入りに来れば?」
御坂「うん! 行きたい行きたい!」
御坂(ここでいつも麦野さん体洗ってるんだ……って、今日私麦野さんと裸の付き合いするんじゃない!?
ど、どうしよ緊張してきた……) ドキドキドキ
麦野(無邪気なもんね。お風呂なんかで喜ぶなんて可愛いとこあるわ)
麦野「それじゃあ二十二学区まで行きましょうか。それともちょっとお茶でもする? 学校出てからバタバタしっぱなしでしょ」
御坂「あ、ううん大丈夫。行こ行こ」
麦野「隣の学区だけどちょっと遠いからタクシーでも呼ぶか?」
御坂「まだ明るいし、駅前から無料送迎バス出てたと思うわよ。それ使ったらいいんじゃない?」
麦野「そう。じゃあそれで」
御坂(はぁ……恥ずかしいわねー……。麦野さんの裸はやっぱり夢のときみたいな凄い感じなのかしら……) チラッ
御坂(……どう見てもでかいし……ちょっと見てみたいような見たくないような……) ドキドキ
麦野(ってか考えたら私こいつの前で裸になるのか……。お腹のお肉は……うん、大丈夫) コソッ ギュムッ
麦野(けどこいつ細いわよねえ……一緒にいたら私太って見えるかな……。
……脚なんか全然太さ違うし……) チラッ
麦野(あー……今になって昨日の夢思い出した……。あの華奢な体であんなことされるなんて……くそっ。
恥ずかしくなってきたじゃないの……) カァァ
御坂「い、行かないの?」
麦野「い、行くわよ!」
麦野御坂((はぁ……緊張する……))
―第二十二学区 スパリゾート『安泰泉』 17:40―
ワイワイ ガヤガヤ ザワザワザワザワ
御坂「着いたわ」
麦野「二十二学区はどうも空気が薄く感じるのよねー」
御坂「間違いなく気のせいね。むしろ外より空気は綺麗なくらいだし」
麦野「圧迫感の所為かしら。ま、そんなことどうでもいいから行きましょ」
ウィーン… ガヤガヤガヤガヤ
アイサコモエミテミテ ウエニハレストランガイッパイアルンダヨ!
シスターチャンマズハオフロガサキナノデスッ!
コンカイノワタシノデバンハコレダケデハナイハズ。
ガヤガヤガヤガヤガヤ スタスタスタ…
麦野「人結構多いわね」
御坂「いい時間だしねー。ねね、どのお風呂行く?」
麦野「うーん……。サウナで汗流したいのよねぇ」
御坂「お、いいわね。出た後の水風呂がたまんないのよね」
麦野「えーっと。サウナがあるのは……健康風呂。これね」
御坂「それ行ったことないわ。どんなのかしら。あ、エレベータこっちね」
ポチッ… チンッ!
スタスタスタ
御坂「何階だっけ?」
麦野「12階だってさ」
ウィーン
御坂「………」 ジー
麦野「………」 ジー
御坂「……エレベータ乗ってるときって何か階数表示板見ちゃわない?」
麦野「分かる分かる。誰か乗ってたら無駄に声潜めちゃったりね」
御坂「あるある! 開ボタン押そうとして間違えて閉ボタン押しちゃって降りる人挟んじゃったり」
麦野「いやそれはない」
御坂「あるわよ!」
麦野「アンタだけ」
ウィーン キャッキャウフフ チーンッ!
麦野「ここね。施設案内があるわ」 スタスタスタ
御坂「なになに?」
麦野「健康風呂は歩行浴、ジャグジー、打たせ湯、寝湯等、9種類のお風呂が楽しめますだって。
普通の銭湯みたいなもんか。これでいい?」
御坂「うん。いいわよ。あんた普通の銭湯なんて行ったことあるの?」
麦野「友達に連れられて一回だけ。じゃ受付行きましょ」
麦野(滝壺が健康ランド好きなのよね……)
「いらっしゃいませ。料金はお一人様1000円となっております」
御坂「あ、一万円しかないや」
麦野「私千円札あるからまとめて払って。はい千円」 ピラッ
御坂「はいはい。じゃあこれで二人分で」
「1万円お預かりいたしましたので、8千円のお返しです」 ガチャリーン
御坂「どーも」
「こちらがタオルとロッカーの鍵になっております。それからこちらがキャンペーンのスタンプシールです。ではごゆっくりどうぞ」
麦野「何々? 10枚集めると湯上りゲコ太ストラッププレゼント……はぁん。
そういやキャンペーンでもらえるもんが欲しくて常連なったんだっけ?」 ニヤニヤ
御坂「に、ニヤニヤすんじゃないわよ!」
麦野「はい」 ポスッ
御坂「え?」 キョトン
麦野「私いらないし。これで2枚一気に溜まったわね、ラッキー」
御坂「あ、ありがと……」
麦野「あと何枚でもらえんの?」
御坂「……今日で溜まった……」 ボソッ
麦野「よかったわね。帰り貰ってきなさい」
御坂「う、うん……」 ナオシナオシ
麦野「えっと女湯は……こっちか」
スタスタスタ
麦野「アンタの財布、チェック柄可愛いね、どこの?」
御坂「これ? 常盤台に入学した時親にお祝いで買ってもらったのよ。
サンクティスてブランドなんだけど知ってるかな」
麦野「分かる分かる。第六学区にショップあるよね」 スタスタスタ
御坂「あーその店で買ったのよ。結構気に入ってるの」 スタスタスタ
麦野「へー」 ガチャッ
御坂「ロッカー1063番は……っとここだ」 ロッカーガチャッ
麦野「私は1067番。近いわね」 ガチャッ
御坂「麦野さんは財布どこの?」 バサッ
麦野「Tomson=Oよ。分かる?」 プチップチッ
御坂「うひゃー、いいもん使ってるわねー」 シュルシュル…
麦野「でも結構長く使っててボロくなってきたからそろそろ変えようと思ってるのよねー」 ファサッ
御坂「ふぅん、次はどこの……うわっ!」
麦野「ん?」
御坂「な、なんでもない……」 アセアセッ
御坂(そ、想像以上にでかかった……。下着もなんか大人っぽー……)
麦野「そういやアンタ帰りの着替え持ってきてんの? 制服で帰る気?」 ホックパチッ…プルンッ
御坂「校則だとそうしなきゃいけないだけどさすがに汗かいてるからね。ちゃんと持ってきてまーす」
御坂(ホック外してブルンッて! すごい! 大きいのに形も綺麗だし……いいなあ。
っていうか恥ずかしくなってきた。夢での麦野さんこれを私の背中に……) カァァ
麦野「偉い偉い。あ、下着可愛いね。てっきりキャラものが出てくるかと思ってたわ」
麦野(夢で見た通り慎ましいというか華奢というか……。でもスタイルはやっぱりいいわね)
御坂「さすがにそんなの穿いてこないわよ」 ホックパチッ…シュルッ
御坂(昨日の夜気付いてよかったー……。恥かくとこだったわ)
麦野「そりゃ悪かった。わ、腰細いわねーアンタ」
麦野(胸も薄いけど。75、いや8くらいはあるか? AかギリBってとこかしら……)
御坂「ちょっ! 何見てんのよ!」 タオルバサッ!
御坂(うわー……何この胸。E? いやFはあるわね……。固法先輩よりはちょっと小さいかしら。
けどウェストもほっそ。モデルみたい……) ジー ゴクリッ
麦野「アンタこそ胸ばっかジロジロ見てんじゃないわよ」 タオルマキマキ
御坂「あーごめん。そこまで大きい人ってあんまり見たことないから」
麦野「このタオル短いね。下ギリギリだわ。ああ、まあ中学生じゃこれからでしょ」 ガチャッ カギシメッ
御坂「育ってくれりゃいいんだけどねー」 ガチャッ カギシメッ
麦野「よし、行きましょっか。嫌味とかじゃなくて、ほんと大きいのもそれはそれで邪魔よ。似合わない服とかもあるし」 スタスタ
御坂「そういうもんかしらねー」 スタスタ チラッ
麦野「そういうもんよ。なに、触る?」 ズイッ ニヤッ
御坂「えっ!? い、いいいいわよ!」 アセッ
御坂(夢であんなに触られたの思い出しちゃうもん……) カァァ
麦野「別に遠慮することないのに」
麦野(やばっ、我ながら恥ずかしいこと口走ってしまったわ……) アセッ
麦野(ふふっ、でもこいつ照れてやんの。こういうからかい方もあるのね。
こんなのアホの浜面くらいにしか通じないと思ってたけど、御坂にもいけるのか。いい方法見つけちゃった) ニヤッ
御坂「?」
―浴場―
ガララララ… ワイワイ ガヤガヤ
バシャー ジャババババ ゴォォォォ ジャバーン
ペチャペチャペチャ
御坂「これぞ銭湯って感じよね。まずかけ湯かけ湯」 ジャバー
麦野「ここはそんなに混んでなくてよかったわね」 ジャバー
御坂「まずどうする? 体洗おっか」 ペタペタ
麦野「そうね。あ、しまった洗顔忘れた」 ペタペタ
御坂「私のでよかったら貸すけど?」
麦野「マジ? 助かるわ」
御坂「ここ2つ空いてるからここにしましょ」
ジャバー バシャバシャバシャ
御坂「麦野さんってお風呂長いでしょ」 ゴシゴシ
麦野「何突然。別に長くないわよ」 バシャバシャ
御坂「ふぅん。一番長い時でどれくらい入ってるの?」 ゴシゴシ
麦野「……3時間くらい」 ジャボー
御坂「逆に干からびそうね」 ゴシゴシ
麦野「半身浴だから大丈夫なんですー。
それに髪長いからシャンプーとトリートメントだけでも結構時間かかるのよ」 ゴシゴシ
御坂「確かに髪長いわよねー。いつから伸ばしてるの?」 ザバー
麦野「ショートにしたことないからねー。そういう意味じゃ子供のときから?」 ゴシゴシ
御坂「麦野さんって可愛げない子供だったって断言できるわ」 ジャボジャボ
麦野「あァん? 失礼ね」 シャー!
御坂「うわっ冷たっ! 水かけないでよ!」 ガタガタッ
麦野「天使のような子だったわよ」 フフンッ
御坂「自分で言うなっつの。そんな良い子はあんな下品なこと言う子には育ちませんっ!」
麦野「下品下品言うな」 バシャッ
御坂「だから冷たいって!」
麦野「ふん。じゃあ……」
御坂「ん? 何よ……」
麦野「品がない私らしく、こうやって背中流してあげよっかにゃー?」 ギュッ ピトッ ムニュッ
御坂「!!!!!?????」
御坂(背中にっ! ムニュッて! 柔らかいのが!? あわわわわわわ……!)
麦野「何硬くなってんのー? ほらほらー柔らかくて気持ちいでしょー」 スリスリ
麦野(抵抗しないな……。おいおい、引っ込みつかなくなるじゃないのよ……) グニグニ
御坂「や……やめ……」
御坂(うー……先っぽの感触が生々しい……。……何なのこの人……。
夢と一緒で……そういう人なの?) カァァァ
麦野(こっちも恥ずかしいんだけどどのタイミングでやめればいいのよ……。ちょっとは抵抗しろっつの……。
それともこいつもしかして喜んでたり……いやいや無い無い。それだとこっちが困る) ムニムニ
御坂「お願い……恥ずかしいから……やめて……」 ボソボソ…
麦野「……! あ、ああ……」 バッ
麦野(マズったな……。こういう反応は予想外だわ……。
恥ずかしがるのはさっきので分かってたけど、黙っちゃうなんてね……)
御坂「……」 ドキドキドキドキ
麦野「……悪い」
御坂「……う、うん。もうしないでね……」
麦野「……」 ゴシゴシ
御坂「……」 ワシャワシャワシャ
麦野(気まず……ちょっとふざけだけでそんなに恥ずかしがることなくない? それとも怒ってる……?
まあ確かに私がフレンダにあれされたら迷わずぶん殴るけど……ヤバ、完全に失敗だったのか……)
御坂「……」 ワシャワシャ
麦野「……ごめん」 ジャバー
御坂「え?」 ワシャ…
麦野「いや、やりすぎたかなって……嫌だったよね」 ジャババババ
御坂「いやそんな……」
御坂(面食らっただけだし。感触がまだ背中に残ってる……ドキドキして麦野さんの顔見れないよ……)
麦野(こっち向いてくれないな……なんであんなことしちゃったんだろ、バカだな私)
御坂「別に……怒ってはいないわよ」
御坂(でも気まずいままじゃ駄目よね。黒子にやられたらぶん殴るだけじゃない! 切り替え切り替え!
麦野さんの目を見ないと……!) チラッ
麦野「……ほんと? 無理しなくていいわよ」 バチッ
御坂(目ぇ合った! ……あー、でもちょっと寂しそうな顔してる。私の所為よね。
ただのじゃれあいなんだから意識しすぎ! いつまでも引きずってたらせっかくのお風呂が台無しだもんね!)
御坂「ほんとほんと! 驚いただけだって! 麦野さんったらエロいんだからー」 ニヘラッ
麦野(よかった……笑ってくれたわ) ホッ
麦野(って、なんで安心してんのよ……! 私を不安にさせるなんてこんのバカ超電磁砲!……次からもうちょっと気をつけよ)
麦野「誰がエロよ。せっかくサービスしてあげたのに」 フンッ
御坂「その発想がエロいっての。彼氏にもあんなのやってたの……?」 ジャァァアア
麦野「やらねえよ。アンタだけだよ」 バチコンッ☆
御坂「……う、そ、そっか」 ジャアア
御坂(ウィンクとかそういう仕草は天然なの? ああもう一々ドキドキさせないでよね!) ドキドキ
麦野(これは照れてるよね。線引きが難しいけど、スキンシップは苦手と見た)
御坂「……あ、洗顔使う?」 ハイッ
麦野「ありがと。シャンプー忘れなくてよかったわ。あっちは借りれないもんね」 カパッニュル
御坂「そう? 別に大丈夫じゃない?」 カパッ ヌルヌル
麦野「いつも使ってるやつから変えたら髪キシキシになるのよ」 ヌルヌル メイクオトシオトシ
御坂「それでそんなに携帯用のシャンプーとかトリートメント持ち込んでるのね。一日くらい別にねえ……」 ヌルヌル
麦野「そういう油断が切れ毛枝毛の元なのよ。アンタも髪短いからって手入れサボッてると毛先ドンドン痛むわよ」 ジャボー
御坂「大丈夫大丈夫。それなりには気使ってるし。麦野さんなんて元が良いんだから適当でも問題なさそうなのに」 ジャボー
麦野「それはアレよ。もともとレベル4だったやつがレベル5を目指す努力をしないようなもんよ」 バシャバシャ
御坂「それはそれは。自己評価が高くていらっしゃるのね」 バシャバシャ
麦野「自分を客観視できていると言ってくれる? 私が美しいことは悪いけど揺ぎ無い事実なのよね」 バシャバシャ
御坂「うらやましいわねその自信。実際その通りだから何も言えないし」 バシャバシャ
麦野「アンタだって悪くないわよ。私が保証したげる」 ジャバージャブジャブ
御坂「そりゃどうも。あ、でも麦野さんすっぴんのほうが可愛いわよ」 ジャブジャブ
麦野「っ! そ、そんなわけないでしょ! 眉毛薄いんだからあんま見るな!」
御坂「おやおやぁ? 麦野さんの自己評価もまだまだねー。
化粧してるのも大人っぽくて素敵だけど、こっちは年相応っていうか、若……ハッ!」
御坂(あぶないところだったわ! 麦野さんに若いとか年とかは禁句禁句……。晩御飯は食べたいもんね……) チラッ
麦野「…………」 カァァ
御坂「あ、あれ……?」
御坂(て、照れてる……? 自信満々かと思ってたけどそうでもないのね。
むしろ化粧とかは自信の無さの表れってこと? ……駄目だ、この人可愛い……) ドキドキ…
麦野(何なのよこいつ……可愛いとか言われたことないんだからビックリさせんな……) ドキドキ…
御坂「ふふっ、麦野さんも照れたりするのね!」 タオルギュッ ジャー
麦野「は、はぁ!? 照れてない! ほら行くわよ! まずはジャグジーから攻めるからね!」 タオルギュッ ジャー
御坂「はいはい、お供します」 ペタペタ
―ジャグジー―
麦野「ぁー……お風呂最高……明日までここにいれるわ」
御坂「ちょっと寝ないでよ?」
麦野「寝ろって言われればすぐにでも寝れるけどね」
御坂「勘弁して。私は何してりゃいいのよ」
麦野「はいはい。美琴ちゃんは寂しがりやだもんねー。お姉ちゃんが相手してあげますからねー」
御坂「ムカつくわね……。あんた家にジャグジー付いてんでしょうが」
麦野「それとこれとは別。そんなこと言い出したら家に足伸ばし放題のバスタブあるわよ」
御坂「麦野さんそんなにお風呂好きだったの?」
麦野「うん、好き」
御坂「まあ嫌いな人のほうが珍しいか。さっぱりするしねー」
麦野「ここ貸切風呂もあるみたいだし、アンタの好きな例の男と一緒に入りにくれば?」
御坂「そ、そんなもん誘えるわけないでしょ! 一緒にお風呂って……裸じゃないの!」
麦野「水着なんて野暮なこと言わなかったのは褒めてあげるわ。
っつかアンタせっかくいい雰囲気になったのに告白しなかったんだって?」
御坂「だって……恥ずかしかったし。そういうのは男のほうからしてくれるもんじゃないの!?」
麦野「そりゃ好きな女に告白も出来ないようなヘタレは願い下げだけど、
だからってアンタからしなくていいってことにはならないでしょ」
御坂「それは……そうかも」
麦野「鈍感な相手に惚れたアンタが悪いのよ。もたもたしてると他人にとられちゃうわよ」
御坂「そ、そんなの駄目!」 バシャン!
麦野「わっぷ! 飛沫かけんな。ありえないことじゃないでしょが。いくら鈍感だからって好きって言えば
伝わっちゃうんだからね。アンタの他にそいつのこと狙ってる女がいるかもしれないじゃない」
御坂「……た、確かに。……あいつよく他の女の子と一緒にいるし。ライバルは多いような……」
麦野「告白するのが嫌なら、デートのほとぼりが冷めないうちに誘って誘って誘いまくって気付かせなさいよ」
御坂「う、うん……」 ドキドキ
麦野(ほんと分かってんのかこいつ……。けど早い方がいいわ……なんか胸騒ぎがするのよね……)
御坂「ありがとね、麦野さん」
麦野「あァ?」
御坂「あんたいつも真剣に私の話聞いてくれてるわよね。麦野さんが背中押してくれるから私頑張れてるのよ?」
麦野「……ふん。一度乗った船だもの。最後まで付き合ってやるわよ」
御坂「麦野さんがあいつだったらよかったのにね……」 ボソッ
麦野「なんて? ……ジャグジーの音でよく聞こえなかった」
御坂「何でもない。ちょっとした妄言よ」 ニコッ
麦野(……聴こえてるわよ……。私を逃げ場所にしようなんていい度胸じゃない……ばか)
御坂(なんでそんなこと言うのよ私……聴こえてなかったみたいでよかった……。
あいつが麦野さんだったら……私は迷わず告白できたっての……?)
御坂(ばっかみたい……。あいつは麦野さんじゃないんだよ……。そんなの、あいつにも麦野さんにも失礼すぎるじゃないの)
麦野(……けどこいつに逃げ込まれたら私は……)
麦野(……ってそれよりこいつまた落ち込んでやがんの……。めんどくさい子ね。……やれやれ)
麦野「よし御坂。サウナ行きましょう。汗を捨てて体重落とすのよ」 バシャッ!
御坂「わぷっ! 何でお湯かけるのよ!」
麦野「泣きそうな顔してんじゃないわよ」
御坂「……え?」
御坂(ヤバ、顔に出てたみたいね……。余計な心配かけちゃったかな)
麦野「……私はあんたが悩んで、頑張って、苦しんでることを知ってるもの。
どんな結果になったって、あんたを笑って受け止めてあげるわよ。
だからいつもみたいに生意気な面してなさい。そっちのほうがアンタらしいから」
麦野(らしくないこと言ってるわねー……。こいつとあの男が上手くいって、本当に笑顔で祝福できるのかしら……。
考えただけでもやもやするってのに……何なのよこの気持ち、ムカつく)
麦野(何なのよって……白々しい、ほんとは分かってんじゃないの?)
御坂「麦野さん……」
麦野「ほら行くわよ。次私の前でそんな暗い顔したら顔面吹っ飛ばすんだから」 ザバァッ ペタペタペタ
御坂「……ほんと……どうしてあんたじゃないんだろ……」
麦野「あン?」
御坂「何でも! ささ、行こ行こ! 先に耐え切れなくなったほうがジュース奢りね!」
麦野「受けて立つわ。吠え面かくんじゃないわよ」
麦野(けどまあこいつが笑っててくれてるほうが私としては嬉しいしね……)
麦野(……こいつに偉そうに言えるような状態じゃないな、私も……)
とりあえず7日目前編終了です。
麦野は御坂への気持ちにもう気付いてるのかなという話でした。
次回は風呂の続きとパジャマパーティを。
ではまた近いうちに
ごきげんようお姉様方。
久しぶりに昨日落ちてたみたいですね
まあそんなことより投下します。
今日もややエロ注意でお願いしますね。
―サウナ―
ジリジリジリ…
ボトッ…ボトッ…
麦野「……」
御坂「……」
麦野「……」
御坂「……」
麦野(かれこれ15分……。正直暑くてクラクラしてきた……こいつさっさと出たいって言えよ) チラッ
御坂(うぅ……頭ボーっとする……。っていうかこれ女の子のする勝負じゃないわよね……) チラッ
麦野「……どうした御坂ぁ。さっきから黙っちゃって。そろそろヘバったんじゃないのー……」 ダラリ…
御坂「そっちこそ……。随分辛そうな顔してんじゃない……。そろそろ出たほうが体のためよ……?」 ダラダラ…
麦野「上等だコラァ……。私にはこんなの適温なのよねぇ……」 ハァ…ハァ…
御坂「私だって涼しくて夜の海岸かと思っちゃったくらいよ……」 ハァ…ハァ…
麦野「……吹いてんじゃないわよ超電磁砲……」 ゼェゼェ……
御坂「そっちこそ無理してんじゃないわよ原子崩し……」 ゼェゼェ…
麦野「……」
御坂「……」
麦野(ッベェ……。マジで倒れそう……。にしてもコイツ……贅肉全然無いな……クソが……
……肌綺麗でお尻も小さいし、何着ても似合いそう……。抱きしめたら折れそうね……) ゴクリッ
御坂(ぁああ……暑い熱い暑い熱い! ……麦野さんよく平気ねー……汗でジットリしてて色っぽいな……
髪が肌に張り付いてなんかやらしい……。タオル巻いてるから谷間すごいし……
これがさっき私の背中に擦り付けられたのよね……) ジー…
麦野「また胸見てる……。なにアンタ……おっぱいフェチ……?」 ダラダラ…
御坂「んなわけないでしょ……。そんだけでかかったら嫌でも目がいくっつの……」 ダラダラ…
麦野「……別に触ってもいいわよ……」 ハァ…ハァ…
御坂「……触って欲しいわけ……? さっきも同じこと言ってたじゃない……」 ハァ…ハァ…
麦野「ばぁか……アンタが物欲しそうな顔で見てるからでしょが……鬱陶しいのよその視線……」 ゼェゼェ…
御坂「……じゃあもう触らせなさいよ……うらやま忌々しいわねぇ……」 ゼェゼェ…
麦野「……好きにすれば……? ほら……」 グィッ
御坂「……柔らかい……でも思ったより張りがあるのね……」 グニュグニュ…
麦野「んっ……ただの脂肪の塊じゃないのよ……」 ハァ…ハァ…
御坂(……すごい……何この感触……これはクセになるわ……) ムニュムニュ…
麦野(何よこいつ……無駄に触り方上手いわね……。変な気分になるじゃないの……) ダラリ…
御坂「…………」 ムニムニムニムニ
御坂(確か黒子はこんな風に触ってきたような……)
麦野「……んぅっ……ちょっと……もういいでしょ……ぁんっ……」
御坂「……あんたが触っていいっつったんでしょ……。これ気持ちいいわ。もうちょっと楽しませて」 グニュグニュグニュ
麦野「……こ、このいい加減にしろエロ中学生!」 ゼェゼェ…
御坂「ばっ、そんなんじゃないわよ……! これはこう……癒し効果みたいな……」 ダラダラ…
麦野「分かったから離せよ……! んぅっ……はぁっ……! 触りすぎ!
普通ちょっと触って『なるほどーこんな感触なんだ』ってなって終わりでしょが……!」 ハァ…ハァ…
御坂「変な声出してんじゃないわよ……! 汗で手に張り付いてくるわね……やらしー……」 ハァ…ハァ…
麦野「出してねぇよ……! くそっ、私ばっかりムカつくっ……! アンタも触らせろ……!」 ガバチョッ!
御坂「ちょっ! いきなりっ……」
ガタガタッ…! ステーンッ!
御坂「……いたた……もう。急に飛び掛ってこない……ぁ」
麦野「アンタが変に調子乗るから……ぁ」
御坂(顔近いっ! あわわっ! 胸がっ! 胸にっ! そんなお約束って……! あのバカじゃないんだからっ!) アセッ
麦野(汗で体がひっついて……ヤバイ……すっごい変な気分になってきた……) ドキッ
御坂「ど、どきなさいよ! ばかぁっ!」 ガァァ
麦野「ど、どくわよ! ばかぁっ!」 ガァァ
ガチャッ
小萌「さあシスターちゃん、姫神ちゃん! 先生と一緒にサウナに入るのですよ!
この後のビールがたまらなく美味し」
禁書「こもえ? どうした……の……?」
姫神「ビールはどうせ飲ませてくれないくせに」
麦野「」
御坂「」
禁書「短髪が知らない女の人とくんずほぐれつなんだよ……」
小萌「ご、ごめんなさいなのですっ! サウナでハッテンするのは男の人だけだと思っていたのですっ!
ささ姫神ちゃんシスターちゃんもこっちにくるのですよっ!」 ダッ
禁書「た、短髪がそんな人だなんてしらなかったんだよ! どどど同性愛は十字教では諸説あるけど私はあばばばば!」
姫神「出番があった。私はそれで満足。ごゆっくり」
ギィィ…パタン
ポツーン…
ジリジリジリ…
御坂「ちょっ! 私はそんなんじゃないっ!」 ガバッ!
麦野「私も違うっつの! なんでこんなお約束な事態に巻き込まれなくちゃなんないわけ!? アンタのせいだからね!」
御坂「るっさいわね! もとはと言えばあんたが……あっ……やば……急に立ち上がったから……」 クラッ
麦野「ちょちょちょ! しっかりしなさいよ……!」 ダキッ
御坂「ごめん……」 ギュッ
麦野(御坂、体小さいな……それに柔らかい……) ドクドク
御坂(……麦野さんの体温……なんか安心する……) ドックンドックン
麦野御坂((って……だから私は何考えてんだ――――――!!))
―大浴槽―
麦野「アンタの所為で最悪な目にあったわ……。私はこれっぽっちもそっちのケはないんだから勘違いすんじゃないわよ!」
御坂「私だってそうよ……! 女同士で抱き合って喜ぶ趣味なんか全っっっ然ないんだからね!」
麦野(くそっ……何でこいつに胸触っていいなんて言っちゃったんだか……。
のぼせあがっててまともに思考できてなかったもんなぁ……)
御坂(何で胸触らせろなんて言っちゃったのよ……。
頭くらくらして訳わかんないことしちゃったわね……)
麦野「と、とにかく今のは無かったことにするわよ!」
御坂「当然でしょ! あんたと裸で抱き合うなんて気持ち悪……」
御坂(……くはなかったわね……。案外普通っていうか、意外と心地よかった……アホかっ!
お、女同士で抱き合って気持ちいいなんて変態か私はっ!? 黒子じゃないんだから!)
麦野「私だってアンタを抱き寄せたかと思うと最悪の気分……」
麦野(でもなかったな……。意外と抱き心地よかったというか……抱き枕に最適サイズというか……ばっかみたい!
あ、ああ頭沸いてんじゃないの!? 裸の御坂に乳揉まれて声まで出したあげくに悪くないなんて、
フレンダじゃないんだからっ!)
御坂「…………」
麦野「…………」
御坂「あ、あがろっかシャワー浴びて」 ブクブクブク
麦野「そ、そうね。そうしましょ。居辛くなっちゃったし」 ブクブクブク
―更衣室―
御坂「はー、さっぱりした。やっぱお風呂最高っ!」 フキフキ
麦野「そうね」 ペタペタヌリヌリ
御坂「あれ、麦野さん何やってんの?」
麦野「化粧水と乳液塗ってんのよ。保湿しないと乾燥するでしょ。当たり前だけど」
御坂「んなもん帰ってからでいいじゃないの」
麦野「バカなこと言わないで。帰ってからじゃ遅いのよ。アンタはやってないの?」
御坂「まあ自分の部屋だったらするけど、わざわざ外に持って行ったりはしないわねー」
麦野「そんなこと言ってたらそのうち後悔するわよ」 ペチャペチャ
御坂「そうなの? 私も塗っといたほうがいいかしら」
麦野「今すぐにね。ほら、貸したげるからちゃんと保湿しなさい」 ポーイ
御坂「おっと。ありがと」 キャッチッ
麦野「あ、やっぱアンタじゃ不安だから私がやったげる。貸して」
御坂「え、い、いいわよ別に」
麦野「つべこべ言わないー。はい座る。黙る。大人しくする」
御坂「麦野さんってばほんっと世話焼きなんだから」
麦野「うるさい。帰ったらパックもしたげよっか?」 ペチャペチャ
御坂「いらないわよー。麦野さんがルームメイトだとすっごい面倒くさそうだわ……」
麦野「そうだったらご愁傷様ね。その代わり2割増しで可愛く仕上げてあげるわよ。
ただし可愛げのある子に限る」 ペチャペチャ
御坂「私だったら?」
麦野「生意気だからいじめて部屋から追い出す」 ヌリヌリ
御坂「ひっどーい! アンタマジでやりそうよねー……」
麦野「しないっつの。嫌いな奴には嫌いって言うし」 ヌリヌリ
御坂「それ言っちゃうのも駄目でしょ」
麦野「よしオッケー。これでアンタも玉のお肌よ」
御坂「そんなすぐ効果出ないでしょ。さ、帰ろ帰ろ。コーヒー牛乳とフルーツ牛乳どっちにしようかしら」
麦野「水」
御坂「うわっ、つまんないっ! 風呂上り、特に温泉と銭湯の後はそのどっちかって決まってるじゃないの!」
麦野「冷たい水は代謝が良くなるの。美容のためにはお風呂のセオリーなんてクソ食らえだわ」
御坂「まあ私もそこまでこだわってるわけじゃないけどさ。そう言われると意地でも飲ませたくなるわよね」
麦野「何でもいいけど帰るためにメイクしないと」
御坂「はぁっ!? 何言い出すの!? お風呂入った意味ないじゃない!」
麦野「スッピンで外なんか出られるわけないでしょ!」
御坂「麦野さんのスッピンは宇宙一可愛いから大丈夫っ!」
麦野「なっ……!」
御坂「よしっ! 化粧品没収! さ、行くわよ!」 ダッ!
麦野「ちょ、テメッ! ……くそっ、なんてこと言うのよ……」 ドキドキ…
―休憩所―
御坂「はい麦野さんこれ」 ヒョイッ
麦野「何よこれ」
御坂「フルーツ牛乳」
麦野「私ミネラルウォーターって言ったでしょ」
御坂「うん。それも買ってきた。けどまずはこれなの! 一緒に腰に手を当てて飲むのよ!」
麦野「ぅぇえ?」
御坂「そんなあからさまに嫌そうな顔しないでよね。美琴センセーからの奢りよ。
まさか突っ返したりなんてしないわよね?」
麦野「まあアンタの奢りなら飲むけどさ……」 キュポッ
御坂「じゃ、かんぱーい!」
麦野「何によ」
御坂「何でもいいのよそんなの。ほら、二人の出会いに!」 ガチャンッ
麦野「出会って数秒で殺しあったのを祝ってどうすんだか」 ガチャンッ
御坂「んぐっんぐっ……んぐっんぐっ……っぷはぁっ! おいしー!」
麦野「ごっきゅごっきゅごっきゅ……ぷはっ。ん、悪くないわ」
御坂「ねー? 私からの奢りだと思うと余計美味しいでしょ?」
麦野「ま、タダだしそれはそうね」
御坂「よしよし。じゃ、帰りましょ。楽しかったね」
麦野「……そうね。たまにはこういうのもいいもんだわ」
御坂「ストラップももらったことだし、いよいよ帰ってご飯食べるだけか」
麦野「あんま期待すんじゃないわよ」
御坂「お腹ペッコペコだから大丈夫。何でも美味しいわよ」
麦野「私の手料理は満腹でだって美味しいわよ!」 カチンッ
御坂「どっちなのよ……」
―麦野宅 21:15―
御坂「はー! 美味しかったー! ごちそうさま。期待するな、なんて言って料理上手なんじゃない」 マンプクッ
麦野「はいお粗末様。一応自炊してるからね。時間かけりゃまともなもん出来るわよ」 カチャカチャ
御坂「またまた謙遜しちゃって。あ、片付けは私もやるわよ」 カチャカチャ
麦野「いいわよ、アンタ一応お客なんだから座ってテレビでも見てなさいよ」
御坂「あんたが片付けしてる横でそんなの出来ないわよ」
麦野「そ。殊勝な心がけね。じゃこれでテーブルでも拭いててちょうだい」 ポイッ
御坂「はーい」
麦野「それ終わったら布団敷いてくれる? 手前のクローゼットに入ってるから」 ガチャガチャ
御坂「おっけー」 フキフキ
御坂(今日はここで一緒に寝るのよね……あんなことあった後だと思うとちょっと緊張するわ……) ドキドキ
御坂(……けど麦野さんの寝顔は見たいな) フキフキ
御坂「手前のクローゼット……これね。布団布団っと……」 ガララ…
御坂(お、あったあった。……うわ、麦野さんの下着が畳んである……これすご……。
黒子も似たようなもん持ってたけど着る人が違うとやっぱり違うわねー……) ピロリ
麦野「こら、何見てんの?」
御坂「わ! こ、これはたまたま目に入ったからよ! っつかあんたこんなやらしーの着つけるの!?」
麦野「着けるわよ。悪い?」
御坂「いや悪くはないけどさー……そっか」 ジー
麦野「私をジロジロ見るな。今の着けてる下着は普通よ。着替え見てんでしょが」
御坂「いやー、あれでも私から言わせりゃ充分すごいんだけどね……下着がというよりトータルで」
麦野「アンタがお子様過ぎんの。それよりさっさと布団敷いて」
御坂「ごめんごめん。今敷くわよ。っていうかアンタ何持ってんの?」
麦野「酒」
御坂「ちょっ! 私達未成年じゃないの!」
麦野「細かいことはいいのよ。夜はまだまだこれからよ? まあいい子ちゃんの美琴ちゃんはもうおねむかもしんないけどぉ?」
御坂「ちっ! 上等じゃない! 付き合ってやるわよ!」 キッ
麦野「よろしい。んじゃパジャマに着替えて飲みましょ」 クスクスッ
―22:00―
御坂「よし、布団も敷いたし、パジャマに着替えたし。いつでも始められるわね!」
麦野「っつか何よあんたのその可愛いパジャマ。カエル柄ってありえなくない?」
御坂「う、うるさいわねー。 可愛いじゃないの!」
麦野「いやまあ可愛いけどさ……」
御坂「あんたなんかそれパジャマじゃないでしょ! ベビードールに下着って……!」
麦野「寒い日はジャージとかで寝るわよ。今日はそうでもないし、飲んだら暑くなるから」
御坂「どんな顔してそれ見てりゃいいのよ私は……」
麦野「いちいち気にすることないでしょ。……ムラッときても襲ったりしないでよ?」
御坂「するわけないでしょ。それ女の子に言う言葉じゃないわよ」
麦野「アンタほんと胸ばっか見すぎなのよ。無いものねだりすんな」
御坂「無いとか言わないで。あ、そだ。ねえ麦野さん、それ何?」
麦野「どれ?」
御坂「ベッドの上のボロボロのぬいぐるみ」
麦野「こ、これは……なんでもないのよ」 バサッ
御坂「何で隠すのよ。……ははぁん、もしかしてそれ抱いてないと寝られないとか?」
麦野「う、うるさい! 小さいときからのお気に入りなの!」 ギュッ
御坂「あんただって私のパジャマのことどうこう言えないじゃない」 ププッ
麦野「いいでしょ別に! いつも一緒に寝てるんだからもうこれないと寝られないの!」
御坂「一緒に、とか言っちゃうあたりが微笑ましいわねー」
麦野「黙れぶっ殺すわよ! ほ、ほら! どれ飲むの!」
御坂「お酒なんてお正月に実家帰ったときにちょっと飲まされるくらいだからねー……どれが何なのやら」
麦野「缶チューハイばっかりよ。あとは私の晩酌用のウィスキーと芋焼酎とワインね。
浜づ……友達の罰ゲーム用のウォッカとテキーラもあるけど」
御坂「ん、一番きつくないやつちょうだい」
麦野「おっけー。ウォッカストレート。めんどくさいからジョッキでいいわよね?」
御坂「ちょっと待ちなさい。いくら私でもそんなのには騙されないわよ」
麦野「お、えらいえらい。騙されて酔った勢いで食われちゃ駄目ってことを教えてあげようと思ったのよ」
御坂「嘘ね。思いっきり飲ませる目だったわ」
麦野「チッ、缶チューハイで勘弁してあげるわよ」 ポイッ
御坂「ありがと。カルピスサワー……度数2%、これなら飲めそうね」 プシュッ
麦野「私はレモンハイで。じゃ、今日はお疲れ様ー」 プシュッ カツンッ
御坂「はーい。ありがとねー」 カツンッ
麦野「ゴクッゴクッゴクッ……ぷはぁっ!」
御坂「ズズ……うん、ジュースみたい」
麦野「おつまみどれ食べる?」
御坂「あ、コアラのマーチ好き」 ガサガサ
麦野「はいよ。私はピザポテト開けよ」 バリッ
麦野「結構するよ。まあ缶チューハイはあんまり買わないけど」 パリッ
御坂「こっちの瓶のお酒ばっかりってこと?」 ズズッ
麦野「そうそう。焼酎ロック一杯とチー鱈とかでね」 グビグビ
御坂「オッサンくさー」 ボリボリ
麦野「いいじゃないチビチビ飲むのも好きなのよ」
御坂「女の子二人でお酒片手にお菓子ボリボリ食べて、何か華が無いわよねー」
麦野「私という咲き誇る一輪の華があるじゃないの」
御坂「毒の花だけどね」
麦野「テメェ……よし、怒った。お酌したげるから飲みなさい」 ガッ
御坂「ちょっ! まだこっち入ってるわよ!」
麦野「空けなさい」
御坂「無理矢理飲ませるの駄目、絶対! 一気かっこわるいわよ!」
麦野「うるさい飲め潰れろゲロ吐け」
御坂「一蹴ね。じゃあ麦野さんが飲んだら飲むわ」
麦野「言ったわね。後悔すんじゃないわよ!」 ゴッゴッゴッゴッ!
御坂「いい飲みっぷりね。その調子でこれもお願い!」 サッ
麦野「……ぷはっ! っざけんな。それはアンタが飲め」
御坂「ちぇッ、残念。………ぷは」 ゴクゴクゴク
麦野「よし。ほら、グラス持って」 ドプドプドプ
御坂「芋焼酎って書いてあるんですけど……」 ポー
麦野「顔赤くなってきたわよ。弱いわねー。まだまだ夜は長いのに」
御坂「あんらこんなに飲ませてどうするつもりらのよ……」 ポー
麦野(呂律が回ってない……。缶チューハイ一本でこれって……)
御坂「ははぁーん、さてはわらしを襲う気ねー。そんな軽い女じゃないんらからー……」 フラフラ
麦野「襲ってどうする。悪いけど私はアンタに突っ込む棒切れ持ってないのよ」
御坂「やぁーん、麦野さんのエッチー。突っ込むとか女の子が言っちゃ・ら・め」 ケラケラ
麦野(面倒くせぇ……飲ませんじゃなかった)
御坂「御坂美琴、一気しまーふ!」 グッ
麦野「ちょっ!」
御坂「……」 ニヤッ
麦野「な、なによ……」
御坂「んー」 ムチュッ
麦野「アンタ、何をむぐっ! んー! んー!」 ジュルジュル
御坂「むー……」 ジュルルル…
麦野(こいつ……酒流し込んで……!)
御坂「ぷはぁ! なんてね♪ ふへへ、麦野さんの唇柔らかーい!」 ゲラゲラ
麦野「っはぁ! アンタブチ殺すわよ!」 フラッ
麦野(久しぶりにキスしちゃった……や、やだ何これドキドキする! くそっ! 酒の所為よ酒の!)
御坂「怒っちゃらめー。麦野さんともっと仲良くしたいのぉ」 スリスリ
麦野(どんだけ甘えてくるのよこいつはぁっ! あーやば……私も焼酎回ってきたかも……) ポー
御坂「麦野さん、年下の女の子は嫌い~?」 ギュッ ウルウル
麦野(なんか可愛く見えてきたわねー……あー……ブチ犯してぇ……ってアホか!
駄目よ駄目駄目! 酒如きにこの私が飲まれるわけにはいかないわ!) ブンブン
御坂「ささっ、麦野さん。もっと飲みましょーよー」 ドポドポドポ
麦野「そ、そうね。それじゃ返杯」 トプトプトプ
御坂「二人の夜にかんぱーい!」 チンッ
麦野「か、乾杯」 チンッ
御坂「麦野さん柔らかーい」 スリスリ
麦野「離れろよ……」
御坂「やーだ。麦野さん体からいい匂いするわねー……何の匂い?」 スンスン
麦野「髪乾かす時にほんのちょっとだけ香水つけてるからその匂いじゃないの?」
御坂「美味しそうね、ペロッ」
麦野「ひゃぁんっ! ……アンタ馬鹿じゃないの!?」
御坂「可愛い声出しちゃってー。ええやろええやろー? ここがええのんけー?」 ペロペロ
麦野「ぁあんっ! く、首筋舐めるなぁっ!」 ビクビク
麦野(もうやだこいつ……。くそっ! ええいこうなりゃヤケよ! 私も酔ってしまえ!) グッ
御坂「麦野さんカッコイー! よぉっし! わらしもいきまーふ!」 ググッ
麦野(もういいや、明日こいつも休みみたいだし寝かせとこ……あー……いい気持ち……) フラフラ
―00:00―
麦野「だからねぇ、私はその時言ってやったのよ! はーまづぁ! テメェの×××に焼きゴテの刑だってねぇ!」 フワフワ
御坂「あはははははっ! 麦野さんおもしろーい!」 ケラケラ
麦野「ヒック……!そんな浜面だって童貞卒業してんのよ! 世の中おかしいと思わない!?」 カッ
御坂「思う思う! あいつのドーテーは私が奪うっ! じゃ一番御坂美琴! 脱ぎまーす!」
麦野「ギャハハハハッ! いいぞいいぞ! ぬーげ! ぬーげ! ぬーげ!」 パチパチパチ!
御坂「ちゃらららららーん♪ あっはーん、麦野さんにブラジャーあげちゃうんらからー」
麦野「やだもう生暖か~い! サイズ小さ~い!」 ケラケラケラ
御坂「パンツも欲しい~?」 ゲラゲラ
麦野「いらなーい。汚ーい」 キャッキャッ
御坂「汚くないわよぅ。この格好で告白したらあいつ落ちるかしらねー」 フラフラ
麦野「落ちる落ちるー!ようぅっし、今電話して告っちゃいなさいよーぅ!」 キャッキャッ
御坂「それいい! よーし、わらし言っちゃうわよー。『その童貞をブチ犯すっ(キリッ)』てねぇ!」 キャッキャッ
麦野「いいじゃんいいじゃん! 奪ったれ奪ったれ! 御坂のバージンは、今夜私がいただくけどねー」 ウフフフ
御坂「あげないもーん! あいつの電話番号はーっと」 ピッピッ!
麦野「いけいけー!」
prrrrrrrrr……prrrrrrrrrr……ガチャッ
上条『はいもしもし? 御坂か?』
御坂「……あもしもしー!? あんた誰ー!?」
上条『お前が電話してきたんだろ。上条さんですよ。何か用か?』
御坂「いいこと、よく聴きなさいよー! あんたに言いたいことが……言いたいことが……!」
麦野「どしたどしたー! そ・ど・ぶ! そ・ど・ぶ!」 パッチンパッチン
御坂(あ、あれー? ……わ、私なんでこいつに電話してんのよ……!)
上条『何か騒がしいな。お前まさか酒でも飲んでんのか? お嬢様でも酒盛りなんかすんのな』
御坂(そ、そか……流れで告白することになっちゃったんだ……と、とりあず何か言わなきゃ!)
御坂「……あ、明日話あるから……前にあんたと喧嘩した河川敷に来てくれる……?」
麦野「……あれ?」
麦野(あっ……ヤバ、酔っ払ってとんでもないことしてるんじゃ……) アセッ
上条『明日か。……まあいいけど。前言ったとおり、お前に言いたいこともあるしな』
御坂「言いたいことって……何よ」
麦野(やっべぇ……。御坂ごめん! 止めてあげるべきだったのに……。がんばれ、超がんばれ!) ハラハラ
上条『お前こそ……なんだよ』
御坂「……明日言う。絶対言う」
上条『そうか。じゃあ俺も明日だ。何時くらいにする? 上条さんには補習があるのでできれば夕方にしていただけませんでせうか』
御坂「……わかった。6時に河川敷でどう?」
上条『おう、それでいいぞ。じゃな、あんま飲み過ぎんなよ』
御坂「うん、遅くにごめんね。……じゃ、明日」
ピッ
御坂「…………」 フゥ
麦野「あ、御坂……その、ごめん……」
御坂「なにが?」
麦野「なんか勢いでやらせたみたいな感じになっちゃったし……」
麦野「そ、そっか……」
御坂「……でも、どうしよ」
麦野「御坂、こっちおいで」 ギュッ
御坂「あっ……」 ドキドキドキ
麦野「……私にも責任あるから、明日アンタをとびっきり可愛く仕上げてあの男のとこに送り届けてあげるからね……」
御坂「……む、麦野さん……」
麦野「あーごめん……私まだ酔ってるみたいだわ……。もうちょっとこうしててもいいわよね?」
御坂「酔ってたら……体熱いんじゃない……?」
麦野「いや別に……ううん、熱い……。私も上脱ぐね」 シュルッ
御坂「麦野さん温かいな……」 スリスリ
麦野「アンタ甘えんぼなのね」 ギュッ
御坂「酔ってるからよ」
麦野「そう。じゃあ仕方ないわね」
御坂「うん……仕方ないの」 ドキドキ… ギュッ
麦野「……」 ドキドキ…
麦野(……ヤバい……この流れ……しちゃう……あーもう! 人肌ってなんでこんな気持ちいいのよ……)
麦野「ベッド行く……?」
御坂「う……うん……」 コクッ
―00:40―
ボフッ
麦野「もっとこっち来なさいよ……」 グッ
御坂「……うん」 ススッ ピトッ
麦野「電気消すね」 ピッ
御坂(……これって……そうなのよね……。私……麦野さんに初めてを……)
麦野(全然抵抗しない……何よこれ……私は迷いまくってるっていうのに……)
御坂(あいつじゃなくて……麦野さんなんだよ……? 何で私こんなに嫌な気持ちにならないのよ……。
女の人なのに……あいつじゃないのに……)
麦野(もう何もかも無かったことにしてこいつを食べ散らかしたい……。めちゃくちゃに犯して私のものにしたい……。
女の子なのに……男じゃないのに……。なんでこんなにこいつが欲しいのよ……!) グッ
麦野「……大丈夫よ」
御坂「え……?」
麦野「アンタを抱いたりなんかしない。アンタとセックスはしない」
御坂「……どうして?」
麦野「してほしいの?」
御坂「……そうじゃないけど……そういうつもりなのかなって思うわよ……」
麦野「女同士ってとこに抵抗持たないの?」
御坂「麦野さんは持つの?」
麦野「めちゃくちゃ持つ。気持ち悪い。……でも、アンタなら嫌じゃないって思う」
御坂「……じゃあどうして……」
麦野「アンタは明日別の人を好きになるから。そいつのところに、綺麗なアンタを届けてあげたいじゃない……」
御坂「……それは、その……」
麦野「それだけじゃないけど……まああとはこっちの事情だから」
御坂「何?」
麦野「言えない。アンタには関係ない」
麦野(……人の壊し方しか知らない人間だって、垣根はそう言ったわ)
麦野(こんなときにそんなこと思いだすなんてね……)
麦野(……御坂。アンタをどう扱ってやればいいのか、まだ私には分かんないのよ……)
御坂「麦野さん……私がしたいって言ったら……してくれるの?」
麦野「……ごめん」
御坂「ううん、私も怖いからいいわよ……。けど、今日はこうして寝てくれるんでしょ?」 ギュッ
麦野「アンタが嫌じゃないなら……」 グッ
御坂「嫌じゃないよ……」 ギュッ
御坂(嫌なわけない……)
麦野(御坂の体凄く熱い……。溶けそう……。駄目だ私……こいつのこと……)
クチュリ…
麦野(もうヤバい……濡れまくってる……。下着越しだけどバレてるよなぁ……太もも当たってるし……)
御坂(麦野さんの心臓の音がする……。太もも汗かいちゃったかな……熱くてヌルッとする)
麦野(御坂の指細いな……。これだったら2本は入るかな……。そういや、女同士ってどうやってするんだろ……)
御坂(お酒まだ全然抜けてないもんなー……。私って結構軽い女だったのかしら……やだな。
あいつが好きなのに、麦野さんにこうされるのが嫌じゃないなんて……) ハァ…
麦野(我ながら酷い酔い方してる……。御坂を抱きたいなんてさ……。早く寝ちゃおう。
……明日になったら、こいつをうんと可愛くしてやろう)
御坂(あいつと上手くいってもいかなくても、麦野さんには何かお礼をしなくちゃね……。
ここまで私のことを真剣に考えてくれたんだもん……ほんと、麦野さんがいてくれてよかった)
麦野(ああ、落ち着く……朝までずっとこうしてたい……―――)
御坂(……私のこと、大事にしてくれてるのよね……きっと。こんなに優しく抱きしめてくれるんだから……―――)
麦野御坂(―――いっそ明日なんて、来なければいいのに……)
濃厚な百合の匂いが漂って参りました。
もはや百合でもなんでもないとお叱りを受けそうですが、響きが美しいのであえて百合と呼びます。
みなさんの感想はいつも大変励みになっております。ありがとうございます、お姉様方。
ではまた近いうちにお会いしましょう。
今気付いた
>645
麦野「はいよ。私はピザポテト開けよ」 バリッ
と
麦野「結構するよ。まあ缶チューハイはあんまり買わないけど」 パリ
の間に
御坂「あんた一人でも晩酌するの?」 ボリボリ
が入ります。
何故か抜けてしまったw
ちょうど今気付きましたw
>654と>655の間に
御坂「何言ってんの、電話したのは私なんだし。それにあいつに告白することが決まったんだから、むしろ結果オーライじゃないの」
が入ります。さっきのはともかくこれ抜けたら意味わかんないですねw
大変失礼しました。今日は誤字多かったですね、次から気をつけます。
最近神百合ゲーをやったおかげで妄想がやばい。
佐天「私が初春の横を通り過ぎていくと思うの!」
とか
黒子「わたくしがお姉様の横に立つのにもっとも相応しい人間だと、証明してみせますわ」
とかね。
すまん誤爆った。
ごきげんようお姉さま方。
いまから投下させていただきます。
本日は運命の8日目。
いつもより長い一日でございます。
3回に分けて投下いたしますので、お付き合い下さいませ。
8日目
―麦野宅 10:00―
チュンチュンチュン……
麦野(……ん……ぅーん……寝すぎたか……?) ムクッ
御坂「……スー……スピー……」
麦野(あのまま寝ちゃったみたいね……。昨日は妙なこと考えてたなー……酒って怖い)
御坂「……スー……スー……」
麦野(でもこいつとしなくてよかった。こんなアホ面さらして寝てる顔見られるんだもんね) ツンッ
御坂「ん……んぅ……」 ゴロリ
麦野(胸丸見えだっつの。私もだけど。風邪ひくわよ) ファサッ
御坂「んぅ……とうまぁ……ムニャムニャ」
麦野「……」
麦野(……アンタにその気がないって分かってるのに、結構きついなそれ) フゥ…
麦野(さて、シャワー浴びてちょっと気合入れた朝食でも作ってやるか) スルッ
ガチャッ パタン
麦野(しかしあいつと裸で寝るような関係になるなんて想像もしてなかったわ……) シュルッストッ
麦野(それだけならまだしも……たぶんこれ……そういうことなんだろうな……) センタクキガパッ
麦野(この私がまさか女の子相手にねえ……) ポイッ
ガチャッパタン ペタペタ
キュッキュッ シャワァァァァァ
麦野(つってもまああいつには例の男がいるわけだし、私にゃどうにもならないわね) バシャァァァ
麦野(……なんて、本当は少し昨日期待したんだけどな。でもやっぱ駄目だわ。
あいつは告白する腹括ったんだもん……私は、それを邪魔することなんてできない……) シャワァァァァァ
麦野(暗いわねえ私。んなもん建前のくせに……。断られんのが怖いだけだろっての。
まあけど、あいつがあの男とくっついて幸せだっつーんなら私は別にいいか) シャワァァァァァ
麦野(私よりは、そっちのほうが絶対いいだろ) シャワァァァァァ
シャワワワァァァ……キュッ
麦野(ふう。それはもう考えるのやめよ。今日の私の仕事はあいつを最高に可愛い状態に仕上げて
例の男のところへ届けることなのよ。あいつの告白を成功させるためにも、余計なこと考えてる暇ないの)
麦野(そうよね御坂……。アンタが求めてくれるなら、私はそれでも構わないけど……)
ガチャッパタン
御坂「……スピー……スピー」
麦野(アホな顔で寝てるわ。こうして見るとやっぱまだ中学生よねー) スッ
麦野(化粧はまあ薄くしてやればいいとして、服はどうしようかなー……) クローゼットガララ…
麦野(ちょっと背伸びした感じも可愛いわよね。胸はないからそっち方面でアピールは無理と。
私の好みでもいいかしら?) ウーン
麦野(こいつ素材はいいから着せ替えるの楽しそうね。
あー、けどサイズ大丈夫かな。身長も私のほうが結構高いし……)
御坂「ん……ぅん……」 モゾモゾ
麦野「ん?」
御坂「……麦野さん……? 何してるの……?」 ムニャムニャ
麦野「はよ。今日アンタが着る服考えてるの」
御坂「ふぁぁ~……おはよー。服……? 制服があるからいいわよそんなの」
御坂「って私裸のまま!?」 バサッ
麦野「隠すほどのもんじゃないでしょが。ほら、シャワーでも浴びて歯磨きしてこい。
そしたら朝ご飯にしましょ」
御坂「う、うん……昨日はなんか……その……」 カァァ…
麦野「い、言うな!……恥ずかしいでしょ。飲んでたし夜中で変なテンションになってただけよ。
そんなことより、アンタは今日どうやって告白するかでも考えてなよ」
御坂「うっ……そ、そうだった」 ハァ…
麦野「なにアンタ忘れてたの?」
御坂「覚えてるわよ。はぁ……緊張してきた」
麦野「アンタでも緊張なんてするんだね。タオルは洗面所に置いてあるから」
御坂「ありがと。ま、決めたことだし仕方ないわよね。決まった以上はちゃんとやるわよ」
麦野「そうね」
御坂「んじゃシャワー借りまーす」 ガチャッ
パタン
麦野(やれやれ。呑気なもんね。私の方がハラハラしてるんじゃないかしら)
麦野(なんて。あいつもどうせ腹の中じゃビクビクしてるんでしょね。私にできる応援なんてこのくらいだし、
その辺はあいつが自分で折り合いつけてくれる以外にどうしようもないわ) フゥ…
Prrrrrrrrrrrr… Prrrrrrrrrrrr…
麦野(ん、電話?) カチャッ
麦野「電話の女……。今日も仕事か」
―11:00―
御坂「ふー、ご馳走さま。麦野さんのオムレツ美味しかったー」 ゲプ
麦野「そう? そりゃ作った甲斐があったわ」
麦野(すっごい練習したからね)
御坂「あいつと会うまで結構時間あるけど、帰るのも面倒だからここにいてもいい?」
麦野「私はもともとそのつもりなんだと思ってたけど」
御坂「助かるー。麦野さんち居心地よくって困るわー。ここに住みたいもん。
じゃあ片付けしましょっか」
麦野「いつでも来ていいよ。片付けは後。それよりアンタ何着ていく?」
御坂「いや、だから私は……」
麦野「制服じゃいつもと一緒でつまらないじゃない。
可愛い格好してドキッとさせてやりましょうよ」
御坂「可愛い……」 ピクッ
麦野「そうそう。昨日の夜約束したしね。いいからアンタも選びなさいよ」
御坂「選べって言われても……あんたのクローゼット服で埋まってんじゃないの。こんな中から選べるわけないでしょ」
麦野「つっても、アンタ細っこいからこの中で着れそうなのはそんなに……この黒のミニスカートとかどう?」
御坂「うーん……」
御坂(ヒラヒラしてるし可愛いかも……。穿いてみたいけど……また笑われそうな)
麦野「アンタこういうの好きかと思って。少女趣味だし」 クスクスッ
御坂「は、穿くだけ穿いてみようかな……なんて」
御坂(麦野さんって私の趣味を笑うけど馬鹿にはしないのよね……)
麦野「うん。どうぞ」
御坂「なんか人前で着替えるのって恥ずかしい」 シュルッ ストッ
麦野「お風呂一緒に入ったのに?」
御坂「確かに。でもちょっと違うのよねー」 ハキハキ
麦野「分からないでもないけど。お、似合う似合う。ウェスト大丈夫?」
御坂「ピッタリよ。麦野さんホント腰細いのね」
麦野「まーね。んじゃ下はそれで決定。トップスはどんなのがいい?」
御坂「んー……」
御坂(どうせなら思いっきり可愛い格好もしてみたいような……あ、あれ可愛い……) チラッ
御坂(でもシフォン素材かー……。これもふわっとしててちょっと私にはイメージ合わないかな……。こっちにしとこ)
御坂「じゃあこれとか……」 スッ
麦野「いやアンタこっち見てたじゃないの。これにしなさいよ」 パッ
御坂「あはは、バレてたか。でもねー……」
麦野「アンタのキャラじゃないって? アンタが可愛い服着て誰が損するっての?」
御坂「それは……」
麦野「似合わないなら止めてあげるから、着たいもん選びなさいよ。オシャレなんて所詮自己満足。
けどそれで一日良い気分で過ごせたり、違う自分になれる気がするならそれでいいじゃない」
御坂「麦野さん……」
麦野「はい上脱いでこれ着て」 ズイッ
御坂「うん……」 ヌギヌギ
御坂(ヤダ……ちょっとウルッときちゃった……。麦野さんって私のこと否定しないのね……)
麦野(……これ着た御坂絶対可愛いよね。私のファッション魂が疼く……まさに磨けば光る原石よ。
こいつが可愛いことは誰もが認めてるんだから、私の手でさらに上の次元へ連れて行ってあげるっ!) メラメラ
御坂「ど、どうかな……」
麦野「あらいいじゃない。女の子らしくて。モノトーンだから無駄に甘くないし。
うん、あとはアクセでちょっと色味足してやれば完璧ね」
御坂「そ、そかな……」
御坂(こ、こんなに自分の趣味褒められたの初めて……! 麦野さんのセンスのおかげよね。
正直めちゃくちゃ嬉しいんですけど……)
麦野「ネックレスどれにしようかな。シンプルめにこのハートモチーフにするか……いやもっと抑えたチャームでも……」 ブツブツ
御坂(何かスイッチ入ってるみたいね……そっとしておきましょう)
麦野「御坂、アンタピアス開いてる?」
御坂「ううん。学校はもちろん禁止だし、開けたいと思ったこともないわね」
麦野「私イヤリング持ってないから無しか……。まあネックレスだけで充分ね」
御坂「こんなの借りてもいいの……?」
麦野「そんなに高いもんじゃないからいいわよ。気に入ったんなら餞別にあげるし」
御坂「もらったりはさすがに出来ないわ」
麦野「そう? んで後はメイクね」
御坂「お化粧かー……。正直気が乗らないなー」
麦野「なんでよ。必死に見られるのが嫌ってこと?」
御坂「そういうのもあるけど、慣れてないから崩れた時困るなって」
麦野「一理あるわね。今晩は8時くらいから雨らしいし。バッチリキメずにナチュラルを心がけるよ」
御坂「えー」
麦野「えーとか言わない。まだ時間早いから行く前にしてあげるわね」 ニコニコ
御坂(楽しんでる……?)
麦野「靴ばっかりはサイズ合わないだろうからサンダルで合わせるとして……。あ、エロい下着穿いとく?」
御坂「穿いてどうすんのよ!」
麦野「もしかしたら脱がされるかもしれないし」
御坂「脱ぐか! 仮に上手くいっても初日からそんなことするわけないでしょ!」
麦野「何言ってんのよ。アンタ昨日……ハッ」
御坂「……」 カァァァ
麦野「う……わ、悪い」
御坂「べっつにー。もう気にしてないもん」
麦野「そうかよ。あ、そだ。アンタにこれだけは渡しとかないと」 ゴソゴソ
御坂「ん? なになにー?」
麦野「はい、コン○ーム」 ヒョイ
御坂「なっなななななななななななんつーもん出してきてんのよあんたって人はぁぁぁああっっ!!」
麦野「ゴムくらい持っときなって。私だって男と会うときは一応念のため鞄に2つ3つ入れてるわよ」
御坂「念のためって……何の念よ!」
麦野「何がどう間違ってそういうことする羽目になるか分からないでしょ」
御坂「な、なるほど……」
麦野「せがまれても生でさせるんじゃないわよ?」
御坂「しないっての……」
麦野「何が起こるか分からないのが人生なのよ」
御坂「そんなこと言ったら何でもそうでしょ。分かったわよ、もらっとく」 グッ
麦野「一応言っておくけどそれ意味も無く相手に見せるなよ。期待させるから」
御坂「見せないわよ! 財布にしまっとく!」
麦野「さて、それじゃいいともでも見ながら夕方までゆっくりしましょ」
御坂(私のこと想って言ってくれてるのかただ楽しんでるだけなのか……どっちもでしょうねこれは……) ハァ…
御坂(でもまあありがたいか。あいつに何て告白するか考えなくっちゃ……) ドキドキドキ…
―17:30―
麦野「い、いよいよね……」
御坂「なんか麦野さん緊張してない?」
麦野「し、してないわよっ!」 スハースハー
御坂「そ、そう?」
麦野「ア、アアアンタこそ大丈夫なんでしょね!?」
御坂「うん。服も化粧も麦野さんがバッチリ決めてくれたし、何よりそんなにブルブルしてる麦野さん見てたらなんだか
緊張とか吹っ飛んじゃったわよ」
麦野「私は緊張なんかしない! 生まれてから一度もしたことない!」
御坂「そういうことにしといてあげるわよ。……じゃ、行くね」
麦野「え、ええ……」
麦野(行っちゃうのか……上手くいけばもうこいつは他の誰かのもの……私とメールしたり
遊んだりするのも随分と減っちゃうよね……正直寂しいわ。寂しいなんて感情、私の中にあったのね)
御坂(あいつと上手くいったら麦野さんに真っ先に報告しなくっちゃ。
そしてあいつにも紹介しよう。この人が私の親友の麦野さんだよって)
麦野「……一回しか言わないからよく聴きなさいよ?」
御坂「ん?」
麦野「今のアンタ正直めちゃくちゃ可愛いから、自信持ってバシッと伝えてきなさい!」
御坂「……っ!」
麦野「ほんと、誰かにあげるなんて勿体ないくらいね……」
御坂「……ありがとう、麦野さん」
麦野「ん。結果ちゃんと教えてね」
御坂「うん、それじゃね!」 ダッ
タッタッタッ…
麦野「……」
麦野(ああ……やっぱり結構きついな……)
麦野(御坂……私が応援できるのはここまでよ……。
私がアンタの無償の理解者でいられるのは……きっとこれで最後だからね)
―第七学区 河川敷 17:59―
御坂(そ、そろそろ時間よね……) ドッドッドッ
御坂(麦野さんから借りた服とメイクは完璧なはずよね……あとは私の言葉と気持ち次第……)
御坂(あいつに会ったらまず何て言おうかな……)
御坂(『おっすー遅いわよー』 ……ちょっと砕けすぎかな。
『私より早く来ないなんてどういうつもり!?遅刻、罰金!』 ……これはなんか違う……。
『来てくれてありがと……』 ……こんなとこかしらね。
どうせ好きって言うんだから、素直にならないと……)
上条「おーい、御坂ー」
タッタッタッ
御坂「あっ、と、当麻……」
上条「悪い、待たせたか?」
御坂「ううん、今来たとこ……来てくれてありがとね当麻……」 モジモジ
上条「お、おおう……」
上条(当麻……? どうしたんだこいつ……。しかも何かいつもより可愛いような……) ゴクリ…
御坂(……い、いよいよね……) ゴクリ
御坂「と、当麻! 私あんたに言いたいことあるって言ったよね……」 ドキドキドキ
上条「ん? ああ、そうだったな。で、何だ?」
御坂「あのね……当麻……。私ね―――」
―常盤台中学学生寮 玄関ホール 19:20―
ガチャッ ギィィ バタンッ
カツカツカツ…
御坂「……」 カツカツカツ…
寮監「遅いお帰りだな、御坂。しかも私服で帰宅とは、いい度胸だ」 ギラッ
御坂「……すみませんでした」
寮監「何を俯いている。目を見て話せ」
御坂「……」 カツカツカツ…
寮監「おいどこへ行くつもりだ」 ピキピキ
御坂「部屋に帰るんですよ……もういいでしょ、謝ったんだから。次からは気をつけます」
寮監「貴様私を舐めているのか……? お前がそんな調子では後輩達にも示しがつかんだろうが。
お前には明日寮の玄関の扉掃除を」
ビシュゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ ズガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
パラパラ… フシュー…
寮監「な……何をしている……」
御坂「綺麗になったじゃないですか……ドアは無くなっちゃったけど」
寮監「寮内での能力使用。寮の破壊。私への恫喝の意図も見てとれる。痛い目を見ないと分からんようだな」 ゴキッゴキッ
御坂「で?」
寮監「何……?」
御坂「私に勝てるとでも思ってんですか? あー、じゃあもうかかってくればいいでしょ。
黒子達にするみたいに問答無用で」
寮監「お、おい御坂。お前何かあったのか……?」
御坂「いえ……何も。ドアを壊してしまって申し訳ありませんでした……。弁償します。
罰も必ず受けますから……しばらく放っておいてください……失礼します」 カツカツカツ…
寮監「おい御坂待てっ!」
寮監「ちっ……何もだと? だったら何だというんだ、その顔は……」
―常盤台中学学生寮 二○八号室 19:30―
ガチャッ パタン
御坂「ただいま……」
スタスタスタ… ボフッ
御坂「……」
御坂「……」
ガチャッ…
白井「あらお姉様、帰ってらしたんですの? 門限はもうとっくに過ぎておりますわよ?
よくご無事で入ってこられましたわね」
御坂「んー。見つかってこっぴどく怒られてきたわよ……」
白井「それで帰ってくるなり枕に顔を埋めてふて寝ですの?
本日も随分と遅いお帰りでしたし、さぞかし楽しい時間を過ごされたようですわね」
御坂「……」
白井「あら、ところでお姉様私服ですわね。そのようなお洋服はお持ちでしたかしら。
よくお似合いですけれど、そのままご帰宅なされるのはいかがなものかと思いますわ」
御坂「……ハァ」
白井「お姉様、聞いておられますの? こちらを向いてくださいまし」
御坂「……」 カチッ メルメル
白井「……またですのね」 フゥ…
御坂「はぁ? 何がよ」
白井「また麦野さんとメールしてらっしゃるんですのねと申しております」 ハァー
御坂「そうよ、悪い……?」
白井「悪いとは申しませんけれど、例の殿方のことはもうよろしいんですの?
ここ最近、朝から晩まで麦野さんのことばかりですわよ」
御坂「……っ」
白井「お姉様の交友関係に口をお出しするつもりはありませんけれど、
お姉様の周りにいらっしゃるのは麦野さんだけでは無いことを覚えておいてくださいましね。
ずっと携帯ばかりに向き合って、黒子の目も見てくれないのは寂しいですの」
御坂「黒子……。ごめん……」 シュンッ
白井「うっ……」
白井(あらいやですわ、しゅんとなんているお姉様も可愛いじゃありませんの。虐められオーラがプンプンでしてよー!)
白井「大体、お姉様はいつもそうですの。
ゲコ太だとか言うワケの分からないマスコットキャラに現を抜かしておられるときもそうです。
集中力がお有りになるのは結構ですけれど、もう少し周りをご覧になってはいかがですの?」 クドクド
御坂「……ごめん」
白井「あの殿方のことにしてもそう。寝ても覚めても上条さん上条さんと。気に入ってらっしゃるのは分かりますが、
聞かされるこちらの身にもなっていただきたいものですの」 クドクドクド
御坂「……はい」
白井「そもそも、お姉様には常盤台のエースとしての自覚が欠けておりますの。
あの麦野さんもご自分の能力を高めることに関しては真剣に考えておられましたわよ?
それを毎日立ち読みやらゲコ太やらで無為な時間をお過ごしになって、黒子はお姉さまが心配でなりません」 クドクドクドクド
御坂「……」 イラッ
白井「黒子はお姉様のためを思って言っておりますの。
先ほどは麦野さんを非難するようなことを申し上げたように聴こえたかもしれませんが、むしろわたくしは
あの方とお付き合いされることに関しては賛成ですの。
ご自分の力をより向上させる手段としてではありますが、社会貢献もされておられるようですし、
学校に通っておられないのも進学先が決まっているからと思えばまあ納得もできます。
お姉様もあのお方のように少しはご自分のお力に自覚を持たれてはいかがです?」 クドクドクドクドクド
御坂「……」 ピキピキッ
白井「ついでに言わせて頂きますが、お姉様の短パンや子供っぽい下着類はそろそろご卒業なさってはどうですの?
この前もパステルカラー満載の水玉模様の下着を買ってらして、黒子は正直目を疑いましたの。
せっかくお姉様には素晴らしいプロポーションと美しいお顔が備わっておられるのですから、
もっとご自分の身の丈に合った格好をするべきだとわたくしは常々思っておりましたの」 クドクドクドクドクドクドクド
御坂「……」 ブチッ!
白井「それに一般人であるお姉さまが風紀委員の仕事に首を突っ込んでこられるのも……ちょっとお姉様聞いてますの?」
御坂「うるせぇぇぇぇぇぇええええええええええッッッ――――――!!!!」 ガシャーーン!
白井「ビクゥッ!……お、お姉様……?」
御坂「あんたは私のママかっ! どうして後輩のあんたにそこまで言われなくちゃいけないのよっ!
私が誰と付き合おうが私の勝手! 私が何を着ようが私の勝手! 私が何をしようが私の勝手でしょうがっ!
風紀委員のことはともかく、他でいつあんたに迷惑かけたのっ!?
親でも無いのにそんなこと言われる筋合いないわ大きなお世話よ!
大体あんたこそ何なの寝ても覚めてもお姉様お姉様って!
私は四六時中あんたの傍であんたの相手してなきゃなんないってわけ!? ええっ!?」
黒子「そ……それは……」 ビクビク…
御坂:「私だって自由な時間が欲しいのよ! 学校や寮内じゃ御坂サマ御坂サマ言われて笑顔返さなくちゃなんないし、
部屋に帰ればあんたの良き先輩でいなくちゃなんないなんてまっぴらなのよっ!
麦野さんは私にそんなこと強要しないっ! 私を対等に見てくれるっ! むしろ見下してくれるわっ!」
白井「……お、お姉様、黒子が悪かったですの……ですからどうか落ち着いてくださいまし……」 ビクビク
御坂「麦野さんは私を馬鹿にしない! 麦野さんは私を受け止めてくれる!
もううんざりよ! 私のことは放っておいて!」
白井「お姉様……黒子が言い過ぎましたの。ですからどうか気を落ちつけて……」 スッ
御坂「触んないで! もういいっ! 私たちちょっと距離置いたほうがよさそうね……!」 ゼェ…ゼェ…
白井「そ、そんな……何もそこまで……ハッ」
御坂「……グスッ」
白井「お、お姉様……? 泣いておられますの……? そのお顔……目元が赤く腫れて」
御坂「うるさい黙れっ!」 ガッ
白井「ひっ……!」 ビクッ
御坂「……」
白井「あ……こ、これは……違いますのよ。
お姉様の勢いに驚いただけであって、決してお姉さまが恐ろしいとかでは……」 ビクビク
御坂「出て行く」 スクッ
白井「え……? ほ、本当ですわよ!? わたくしを見損なわないでくださいましっ!」
御坂「別にそんな風には思ってないわよ……。驚かせてごめん……ここに居たらあんたに当たっちゃうから……」
白井「……お姉様、何がありましたの?」
御坂「……」
白井「黒子ではお力になれませんの?」
御坂「最初に報告する人はもう決めてあるの……」 スタスタ
白井「……そうですの……」 シュン…
御坂「しばらく戻らないけど……心配しなくていいから」
白井「こ、こんな時間にどちらに行かれるつもりですの!?」
御坂「……ほんと、お願いだから一人にさせて」 バッ
タッタッタ…
白井「あっ! お、お姉様ー!」
白井(何があったというのでしょうか……。と、とにかく追いかけないと……) グッ
白井「……」 ゾクッ
白井(……どうしてですの……。今日のお姉様が……とても怖いですの……)
本日は以上になります。
上条さんと美琴に何があったかは次回の投下分で明かされます。
それから、服については申し訳ないですw
適当にネットから画像拾ってきて描写するようにしてはいるのですが。
まあ麦野と御坂がお洋服を前にキャッキャウフフやってる図を想像していただく程度で構いませんので。
それではまた近いうちに。
ごきげんようお姉様方。
今日は時間があるので投下させていただきますね。
―第七学区 河川敷 18:10―
時刻は僅かに遡る。
間も無く辺りも暗闇に包まれる時間帯。
静かなる決意を秘めた御坂美琴は、懇親の力を振り絞って彼に伝えるべき言葉を伝えようと
目の前に立つ彼を真っ直ぐに見上げた。
黒いツンツンの髪も、たくましいその腕も全てが愛おしく見えて。
彼に吐き出したい思いが溢れてくる。
御坂「当麻……。私ね……」
緊張で滑りの悪い喉を削り取るような声で御坂は言葉を紡ぎだした。
キョトンとしたままの上条がこちらを見下ろし、不思議そうな視線を投げかけてきていた。
御坂「私……あんたのことが……―――」
麦野に借りたドット柄の黒いバルーンスカートの裾を握り締める。
ヒラヒラのシフォンのチュニックも、赤いハートモチーフのネックレスも、ガラス製のコスモスのようなヘアピンも。
麦野がまるで勇気をくれたように思えて。
彼に伝えたい言葉を教えてくれているような気がして。
だから御坂は、真っ直ぐに彼の瞳を見つめて口を開いた。
■■「上条くん。お待たせ」
だが、喉まで競り上がってきていた大切な言葉は、ついに世界へ羽ばたくことなく口の中でおし留められた。
道路からゆっくりと階段を下りてきたのは、長い黒髪とおっとりとした雰囲気を持つ、地味目の和風美少女だった。
セーラー服に身を包んだ彼女は、上条の傍らまで歩いてくると、こちらをチラリと一瞥して彼に問いかける。
■■「上条くん。紹介したい人ってこの子?」
上条「ああ、友達の御坂だ。常盤台のお嬢様でレベル5なんだ」
■■「そう。それはすごい」
御坂「……紹介?」
低いトーンで御坂が首を傾げる。
その質問に、上条は照れくさそうに頭をかきながらはにかんで頷いた。
上条「御坂、紹介するよ。姫神だ。日曜日から付き合い始めた」
御坂「――――――っ!?」
呼吸が出来ない。
汗がだらりと頬を通り過ぎる。
日曜日と言えば、自分と映画を見た日じゃないか。
紹介された姫神という少女はペコリと頭を下げてぼんやりとした瞳をこちらに向けてきた。
御坂「……どうして……紹介なんてしようと思ったの……?」
喉からひりだした声は恐ろしく震えていた。
受け入れがたい現実をまざまざと突きつけられたように、心がその事実を激しく拒絶している。
上条「ん? いやお前のアドバイスのおかげで付き合うことになったからさ」
御坂「は?」
ポカンと口を開け放って御坂が眉間にシワを寄せる。
敵に塩を送るような真似をしたつもりはないが。
隣に立つ姫神の頬が少しだけ赤いのがやけに気に障った。
上条「お前言ったろ? 少しでもいいなって思う子には素直に告白しろって。
実はお前と映画見に行った後姫神から呼び出されてさ。
モジモジしてたから俺から告白したんだ。前から結構メールしてたんだけど、
いつもそっけないから駄目もとだったけど、素直な気持ちぶつけたら上手くいったよ」
姫神「……あんな情熱的な告白は初めてだった」
体が震える。
そんなつもりで言ったんじゃないのに。
自分で告白するのが恥ずかしいものだから、彼からしてほしいということを暗に伝えようとしたのが
裏目に出たらしい。
彼はそれを自分のおかげだと思ってくれているようだった。
残酷なことに、それをわざわざ目の前で伝えてくれるという律儀な真似までして感謝の気持ちを伝えてくる。
笑顔を浮かべている上条。
御坂は膝から崩れ落ちそうになるのを必死で抑えながら、引きつった下手くそな笑顔を浮かべる。
御坂「そ……そう。よかったじゃない……」
俯き、拳を握り締めて御坂は吐き捨てるように言った。
シンとした空気が場に流れる。
上条「別に遠慮することねえぞ。上条さんは義理人情に熱い男なんですことよ」
御坂「いらないっつってんでしょ!」
思わず声を張り上げていた。
それ以上浮かれた顔を見たくなかった。
嬉しそうな声を聴きたくなかった。
想い人が自分以外に向けた好意なんて、きっと世界中のどんな猟奇的で残酷な物語よりもえげつなく。
まして幸せそうに頬を染める恋人が隣に寄り添っているから、よりグロテスクで救いが無い。
上条はそれに気付かず、御坂の心を丁寧にスプーンで抉り取るような素敵な笑顔を向けてきた。
上条「ははーん。御坂、お前上条さんが羨ましいんだなー? いやいや分かるぞ。俺もこの前まで
道行くカップル達を忌々しく思っていたもんだ」
もうやめて。
御坂は血が滲むほど唇を噛み締め、決して涙を零さないように拳を強く握りながらプルプルと体を震わせていた。
姫神「?」
上条「だが安心しろ。こんな俺でも彼女が出来たんだ。お前は俺なんかと違って顔も可愛いし、性格だって悪くない。
心配しなくたって彼氏くらいすぐ出来るさ」
彼氏が欲しいんじゃない。
あんたが欲しかったのに。
あの時告白していれば。
次頑張ろうなんて思わずに、あの時頑張って告白をしていれば……。
御坂の後悔は尽きない。
勇気を出せなかった自分が、殺したいほど恨めしい。
彼に悪気が無いのは分かっている。
むしろ全てが善意だ。
彼はきっと心から御坂が御坂自身のために放った言葉を良くも悪くも前向きに解釈して、この凶悪な結末を叩きつけてきた。
だからこそ彼を責められない。
姫神を憎めない。
どこにも悪意なんて無いのに、自分だけが地獄の底へと叩き落されたのだ。
姫神「!」
上条「にしてもお前の彼氏になれる奴ってのはどんなやつなんだろうなー。
きっと高レベルで頭が良くて。おまけに……」
姫神「上条くん。そのくらいにして」
上条「あー、そうだな。ごめんな御坂、何かのろけたみたいで。
自慢したかったわけじゃないんだよ……。ほんと、ありがとな、御坂」
ポンポンと頭を撫でてくる。
上条「そういやお前の話途中だったよな、何だったっけ?」
御坂「っ!」
御坂はその手を、懇親の力で振り払った。
パシンッという乾いた音と共に弾かれる彼の手。
強く強く睨み付けると、彼は驚いたような顔でこちらを見下ろしていた。
上条「み、御坂……?お前、泣いて……」
わなわなと震える唇。
目尻に浮かんだ涙が耐え切れなくなって頬を滑り落ちていった。
御坂「なんでもないわよ……。欠伸しただけ」
上条「で、でも目が真っ赤に……」
姫神「上条くん。帰ろう」
上条「い、いやこんな状態で御坂を置いていけるわけないだろ!」
姫神「上条くん! いいから!」
上条「……姫神?」
姫神はどうやらこちらの気持ちに気付いているようだった。
そりゃそうだ。
こんな状況で必死の形相で涙をこらえる姿を見れば誰にだって分かる。
分からないのは、彼だけ。その鈍感さはもはや人を殺せるレベルに達していた。
姫神「ごめんね……」
近寄ってきた姫神がどうしていいか分からないといった様子でポツリと呟いた。
御坂「……分かってる。一人にして」
姫神「うん……。もう暗いから。すぐ帰ったほうがいいよ」
御坂「……放っておいて」
鼻を啜り、俯いたまま淡々とした口調で御坂が返した。
姫神の顔なんて見たくない。
これから彼とたくさん笑顔を浮かべあって。抱き合って、キスをする顔なんて。
惨めな自分をいっそ笑ってくれれば、少しは憎まれ口も叩けたのに。
触れることすらしてこなかった姫神の優しさに、もうどうしたらいいのかが分からなくなった。
上条「御坂、なんか、ごめんな」
御坂「いいから……彼女ちゃんと送って帰んのよ?
ほら行った行った。私もちゃんと帰るから心配しないでいいわよ」
上条「……本当だな?」
無理矢理の笑顔を浮かべて、彼らを送り出す。
彼らは何一つ悪いことなどしていないのだから。
行き場の無い感情を彼にぶつけそうになってしまったが、それはあまりに理不尽だ。
掌に爪を突き刺してその衝動をこらえる御坂。
御坂「しつこーい。言っとくけど、彼女が出来たからって私の電撃があんたを襲わなくなるわけじゃないんだかんね?」
上条「ゲッ、まじかよ」
御坂「あったりまえでしょ! 私とあんたは……友達なんだから」
最後まで不安げだったが、何とか上条と姫神は帰ってくれた。
寄り添い歩く二人の背中はどう見ても恋人同士のそれで。
今自分は失恋したんだなとようやく自覚することができた。
同時にこみ上げてくる喪失感と虚脱感。
バチバチという漏電の音が静かな河川敷に寂しく響く。
御坂は悲しみの全てを吐き出して咆哮するかのように、河の水面に向けてポケットに入っていたコインを弾き飛ばした。
超電磁砲。
音速の3倍に達するその一撃は、高々と水柱を上げて河川敷に水しぶきを撒き散らした。
呼吸が荒くなり倒れそうになるまで、御坂は何発も何発も、水面に穴を開けていくのだった。
御坂「アぁッァァアアあぁぁぁぁぁああああああっぁっぁああアアアアああああアアァァァッッッ――――――!!!!」
辺りに響き渡る轟音で、崩壊していく『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』と共に放たれた御坂の悲鳴と絶叫は
誰にも届くことなくかき消された。
―アイテム専用キャンピングカー車内 22:00
本日の仕事は一連の能力開発関連データ流出に関する事件の最後の後始末だった。
一部加担していたと思われる統括理事会の役員秘書の男を捕縛し、他の組織に預けて一連の事件は幕を閉じた。
あっけない幕切れだが、いつも仕事の最後はこんなものだ。
フレンダ「結局、テレビでも買おうかと思ってる訳よ。めちゃくちゃでかいやつ」
絹旗「いいですね。私も一部屋オーディオルームに超改造してホームシアターにしようかと」
滝壺「新しい枕が欲しい」
車内にて姦しく喋っている3人。
今回の仕事は結構大きな事件だっということで非常にギャラも良い。高級車が一台買えるくらいの額だ。
また、しばらくは休みをくれるということらしいので、『アイテム』の一同は車内でわいわいと報酬で何を買おうかという話で盛り上がっている。
そんな中、麦野は携帯電話のディスプレイを不安げに眺めていた。
もう夜の十時になるというのに、一向に御坂からの結果報告の連絡が無い。
寮の門限があるのでもう部屋には戻っているはずなのだ。
麦野(成功してどっかのラブホにでもシケこんでんのか……?)
そうであったなら構わないが。
どうにも胸騒ぎがしていた。
あの律儀な御坂のことだから、上手くいったら真っ先に連絡をくれるような気がする。
何かあったのではないだろうか。
フレンダ「ねーねー、麦野は何買うー? バッグとか?」
にこやかに語りかけてくるフレンダ。
麦野「貯金。今別に欲しいもんないし」
絹旗「麦野の辞書に貯蓄、倹約なんて言葉があったんですね」
麦野「ぶつわよ」
それを適当に流しながら、麦野は携帯をパカパカと開閉して落ち着かない様子で御坂のことを考えていた。
滝壺「あ、雨降ってるね」
外を見ると、滝壺の言うとおり大粒の雨が窓を叩いている。
暗雲立ち込める空が、麦野の心に重圧となって圧し掛かる。
この雨の下に、せめてあいつがいないことを祈りたい。
フレンダ「やっば、洗濯物干しっぱなしな訳よ」
麦野「朝天気予報で雨だっつってたでしょうが」
フレンダ「あーん、雨に濡れ濡れで今日穿く下着がない! というわけで麦野の濡れ濡れの下着をイテッ!」
飛び掛ろうとするフレンダの顔面にクッションを投げつけてやる。
それを横目に見ながら、麦野はもう一度窓の外に視線を移した。
大きな河が見える。
第七学区に戻ってきたようだ。
雨で水量が増しており、濁流となって流れている。
そのとき視界の端に何かが踊った。
麦野「浜面止めて!」
浜面「あ? お、おう!」
麦野が思わず運転席の浜面に向けて叫んでいた。
まさか。まさか。
麦野は眉間に皴を寄せ、唾を飲み込みそちらを振り返る。
麦野「くそっ!」
麦野は舌打ちをして、怪訝そうに首を傾げる皆を放り、傘も持たずにその雨の中へ飛び出した。
―河川敷 22:10―
降りしきる雨の中、御坂は一人河川敷に佇んでいた。
先ほどまで上条と言葉を交わし、一気にこの世の地獄に叩き落されたあの場所だ。
白井に八つ当たりをしてしまい、寮を飛び出して最初に向かった場所は麦野の部屋だった。
縋りつくようにドアの前まで来て呼び鈴を慣らせば、面倒くさそうな顔をして自分を優しく迎え入れてくれるはず。
そう思っていた。
だが、彼女は一向に姿を現さなかった。
御坂(麦野さんに……依存してたんだな、私は……)
どんな時だって、麦野は文句を言いながらも助けてくれるのだと勝手に思っていた。
期待を裏切られたなんて思ってはいない。
だが、自分の一番辛い時に一緒にいてほしいと思える人物がいないというのは、
御坂の精神に負担を強いた。
逃げるように彼女のマンションを後にして、結局御坂が辿り着いたのはこの河川敷。
きっとまだ認めたくないのだ。
これは実は全て夢で、今から自分は彼に告白をするためにここに呼び出す。
ひょっこりと現れた彼に想いを告げると、はにかんでそれを受けた上条が自分を抱きしめてくれる。
雨の中呆然と立ち尽くし、御坂はずっとそんなことばかりを考えていた。
空虚感から逃げたくて、絶望を忘れたくて。
御坂は体を雨風にさらして水量を増した河をじっと見つめていた。
化粧は雨で落ち、せっかく麦野が貸してくれた可愛らしい洋服は雨でボトボト。
それでも御坂は、その場所から動く気にはなれなかった。
御坂(……もう寮には戻れないわね……)
寮を破壊し、寮監を脅した上に白井とも喧嘩した。
退寮は免れないだろうし、下手をすると退学もあり得る。
濡れてぴったりと頬に張り付いた髪をかき上げながら、御坂はぼんやりと虚空を見上げた。
御坂(まあいいか……どうでも……)
今はそんなことを考えている余裕などない。いや、もうどうでもいい。
失恋によって心はズタズタに引き裂かれ、何もする気力が起きなかった。
御坂(あー……死にたい……)
遠くを轟々と流れる河を眺める。
その濁流の中へと飛べば、重苦しい心は楽になるだろうか。
そんな考えがチラリと頭を掠める。
「御坂っ!」
女の人の声が聴こえた。
振り返ると、道路の方から傘も差さずに麦野が駆け下りてくる。
ふわふわの栗毛が雨で濡れるのにもおかまい無しで、黄色いワンピースが肌に張り付き下着が透けるのも関係なく。
真っ直ぐにこちらに向って駆け寄ってくる。
麦野「アンタ……何してんだよ……」
沈痛な面持ちだった。
心配してくれているのだろう。
だが、正直御坂は今更こんなところを見られたくはなかった。
上条という想い人を失い、白井という理解者を失い、帰る場所を失った。
そんな惨めな姿を、麦野の前にさらしたくはないという気持ちの方が強い。
そのはずなのに。
御坂「麦野さん……っ!」
御坂は、とうとうこらえきれなくなった涙を雨に隠して、麦野の大きな胸に飛び込んだ。
冷たい雨に濡れた服の向こう側に確かな彼女の体温を感じて、御坂は貪るように彼女を抱きしめた。
温もりが欲しい。
何もかも失い、孤独になった自分に、麦野の温かな体温は最後の拠り所だった。
麦野「……バカ。体冷えてんじゃないのよ……」
御坂「……グスッ……ヒグッ……駄目……エグッ……だったよ……!」
嗚咽し、途切れ途切れに言葉を紡いでい自分に、麦野は何も言わず頭を撫でてくれた。
麦野「そっか……」
御坂「……あいつ……エグッ……日曜日、私と会った後女の子に告白されて……グスッ……彼女に……!」
麦野「……そりゃまた……」
御坂が強く麦野を抱きしめると、彼女もまたふわりと胸元に顔を抱き寄せてくれる。
御坂はそのあまりの温かさと柔らかさに、感情の吐露を止めることができずにいた。
御坂「あの時私が……ヒグッ……告白してればもしかしたらって……グスッ……」
麦野「……」
後悔だけがどうしても拭いきれない。
どんなに悲しみを叫んでも、涙を流しても。
あの日、あの時、自分の想いを口に出していればという自責の念に駆られる。
麦野「とりあえずここに居たら風邪ひいちゃうね。ウチおいで」
御坂「でも……麦野さんに迷惑かける……」
麦野「ばか。言ったでしょ、どんな結末になったって、アンタを笑って受け止めてあげるって」
僅かに微笑んで麦野はそう告げた。
これが私の恋の結末。
告白することすら出来ず、戦いの土俵に立つ前に、既に勝負は決していた。
思えばあっけない幕切れだ。
御坂は胸にポッカリと空いた穴を埋めるように、麦野に縋りつく。
もはや麦野だけが、自分に生きている実感をくれる存在だった。
滝壺「むぎの……」
ふと気付くと、麦野の背後にビニール傘を差した黒髪の少女が立っていた。
肩口で切り落とした髪とぼんやりとした瞳が特徴的な高校生くらいの少女だ。
先日絶対能力進化計画関連の研究所を潰して回っていたときに一度だけ麦野と共に交戦したことがある。
御坂は泣き顔を隠すように麦野の胸元に顔を埋めた。
麦野「滝壺……どした?」
滝壺「濡れちゃうよ、はい傘」
自分の分とは別に携えていたビニール傘を麦野に手渡す滝壺と呼ばれた少女。
麦野「ありがと」
滝壺「ひとまず車に戻ろう」
麦野「そうね、御坂。アンタも……」
傘を広げた麦野が土手の上に停められているキャンピングカーへと脚を向けた。
しかし、御坂は麦野を引き止めるように強く体を抱きしめる。
怪訝そうにこちらを見下ろす麦野の胸元で、御坂はただ無言で首を横に振った。
麦野「御坂……」
滝壺「大丈夫だよ、私達はむぎのの友達だから」
不安に思っていると感じたのだろう、滝壺が優しく語りかけたが、御坂はもう一度だけ首を横に振った。
泣き顔を見られたくない。
麦野の友達に迷惑をかけたくない。
何より惨めな自分が許せなかった。
失恋のショックからすら一人で立ち上がることの出来ない自分の弱さが、酷く情けなく思えてならなかった。
麦野「あー、ごめん滝壺。もう家すぐそこだしあなた達は先に帰って。こいつとゆっくり歩いて帰るから」
滝壺「……うん、分かった」
小さく首肯する滝壺。
空気を読んでくれたのだろう。
チラリと滝壺の方を覗き見ると、こちらを心配そうに見つめているのが見えた。
麦野「悪いわね、今日はお疲れ」
滝壺「うん。気をつけてね」
そう言って去っていく滝壺。
その背中を見送って、麦野はため息をついて御坂に語りかけた。
麦野「私達も帰るわよ。ちょっと歩くからね」
御坂「うん……」
麦野に手を引かれ、御坂もまた彼との記憶が残る河川敷を後にした。
―麦野宅 浴室 23:00―
チャプ…
御坂(……結局また麦野さんの家に来ちゃったな……。お世話になりっぱなしって感じだわ……) ブクブクブク
御坂(ちょっと落ち着いてきたけど……ほんとこれからどうしようかな……) チャポン…
御坂(麦野さんの家に居る訳にはいかないし……。しばらくはホテル借りてそこで暮らすしかないよね……)
御坂(学校はどうしよう。鞄も制服も家だし……財布と携帯くらいしか持ってない……)
御坂(取りに帰るの嫌だなぁ……) ハァ…
コンコン
麦野「御坂ー。お湯加減大丈夫?」
御坂「あ、うん。大丈夫よ。ありがと……」
麦野「んじゃ私も入るわねー」
御坂「は?」
ガララ…
御坂「えええええぇぇぇぇぇっっっ!?」
麦野「何よ?」 ドーン
御坂「ちょっ! だって……ええぇええ!?」
麦野「昨日一緒にお風呂入ったし裸で寝たって今日何回言わせるつもり? いい加減慣れろバカ」 ペタペタ
御坂「いやまあそうだけど……心の準備が……」
麦野「誰かさんの所為でビッチョビチョになったんだけど?」 キュッ…シャワァァァァァ
御坂「う……ごめん……」 シュン…ブクブクブク
麦野「冗談よ。もうちょっとそっち詰めて」 チャプッ…
御坂「はい……」
麦野「……」
御坂「……」
麦野「……何があったの?」
御坂「……あいつに彼女がいて……」
麦野「そっちじゃなくて」
御坂「ああ……うん、黒子と喧嘩してさ……」
麦野「どういうこと?」
御坂「私服で帰ったら寮監に怒られて、妙にムシャクシャしてたから寮の扉ぶっ潰した……」
麦野「あら、優等生のくせにそんなことできんのね」
御坂「それから部屋に戻って、黒子に色々お説教されて喧嘩した……」
麦野「お説教ねえ……」
御坂「常盤台のエースとしての自覚を、とか。短パンやら子供趣味はやめろ、とか。
……腹立って麦野さんはそんなこと言わないのにって言い返しちゃった……」
麦野「買いかぶりすぎね。アンタの学校や趣味に興味が無いから言わないだけよ」
御坂「そうよね……」
麦野「……嘘よ。っつか、アンタガキねやっぱ」
御坂「分かってる……」
麦野「本当かしら」
御坂「分かってるわよ!」 バシャッ!
麦野「そう」
御坂「……私がガキだから……あいつに気持ちが届かなかったのかな……」
麦野「かもね」
御坂「……あいつに素直に気持ちを伝えていれば……結果は違ったのかな……」
麦野「かもね」
御坂「……もうどうしたらいいのかわかんないわよ……」 グスッ
麦野「……」
御坂「初恋だったの……あいつとは結構前に出会ったんだけど……」
麦野「悪い、興味ない」
御坂「冷たいわね……聴いてくれるだけでいいのに」
麦野「アンタがあの男にどんな風に恋をして、どんな風に想いを募らせていったのかなんて、もう聴きたくない。
だってそれ、全部無駄じゃない。結果は出たんだから」
御坂「…………麦野さん?」
麦野「……いい機会だから、正直に言うね」
御坂(何……? 何を言おうとしてるの……?) ドキドキドキドキ…
麦野「私、アンタがフラれて今すっごい嬉しい」
御坂「……っ!?」
麦野「だって、これでアンタの気持ちの先には誰もいないんだもん」
御坂「…………はじめから、失敗すればいいって思ってたの?」
麦野「違うわよ」
御坂「……」
麦野「今日の夕方アンタを送り出すまでは、アンタの恋が上手くいけばいいって、心からそう思ってた」
麦野「けどアンタを送り出してから、気付いたんだ」
麦野「ああ、私はアンタを応援するフリをして、さっさとこの恋に決着を着けさせたかっただけなんだなって」
御坂「それ……どういう……」
麦野「いつからだったんだろうね。アンタをそんな風に思ったのは。アンタ、気づいてた?」
御坂「何……なんなのよ……」
麦野「私がアンタに律儀に返信したり、アンタの悩みを聴いたり、アンタを応援したりしたのはね」
御坂「……」
麦野「結局、アンタのためなんかじゃなくて。私はそうすることでアンタを手に入れられると思ってたからなのかもしれない」
御坂「それって……」
麦野「ねえ御坂。私にしなよ」
御坂「え……?」
麦野「私なら、アンタのことあの男より気持ちよくしてあげられるよ」
御坂「な……な……」
麦野「アンタがあの男のものになっていたら、私は諦められたんだ」
麦野「だからさっき、あの河川敷で、アンタを見つけて。……アンタが失恋したんだって知って。
私はアンタに伝えようって決めたの」
麦野「もうあの男はいない。あの男はアンタのものにはならない。ざまあみろって、ちょっと本気で思ってるの」
御坂「……」
麦野「私のこと、酷い奴だって思う?」
御坂「……それは……」
麦野「いいよ別に。けど、誤解しないで欲しいのは、アンタにしたアドバイスは私なりに本気で考えて、
アンタが幸せな結末を迎えられたらいいなって、本当にそのとき思ってたんだ」
御坂「……あんたが何をしたかったのか分からないわね……」
麦野「アンタを送り出してから、ずっと昨日の夜のことを思い出してた……」
御坂「……っ」 カァァ
麦野「アンタの肌が忘れらなくて、アンタの温もりが心地よくて……泣けたわ」
麦野「河川敷でアンタを見つけたとき……ようやく私は確信したの」
御坂「……」
麦野「御坂、私ね。アンタが好きみたい」
麦野「ねぇ……私のものになりなよ。アンタが欲しくなっちゃった」 スッ
御坂「……私、女なのよ……?」 ピクッ
麦野「知ってるよ?」
御坂「……お、おかしいじゃない。女同士で付き合うって……その……」
麦野「昨日と言ってること違うわね。けどまあ……私ちょっと頭おかしいみたい。なんせ脳みそ弄り回されてるからさ。
でも、アンタの心も体も慰めてあげられる。アンタを誰より理解してあげられる」
御坂「……」
麦野「アンタがここに来たのってさ、結局のところ私に慰めて欲しかったんでしょ?」
御坂「!」
麦野「友達の少ないアンタには、頼れる人間なんてそんなにいない。数少ない理解者の後輩にガキッぽい八つ当たりして、
ヤケクソになったアンタの行動パターンなんてお見通しなのよ」
御坂(ど、どうしよう……混乱してわけわかんない……)
麦野「……私が欲しかったんだろ? いいよ、美琴。アンタの期待に応えてあげる」
御坂(駄目……駄目……それを言われたら私は……)
麦野「ねえ知ってた? 私、悪い人間なんだ」
御坂(焦らされてるの……? 麦野さんの言葉が欲しくてたまらないのが……バレてるの……?)
麦野「……もう一度言うわよ―――」
御坂「……だめっ!」
麦野「―――美琴、私のものになりなよ」
本日は以上になります。
今回の麦野の告白は少々ネチッこく御坂の心の隙間にヌルリと入っていくようなイメージで書いてみました。
所詮麦野は悪党です。
ではまた近いうちにお会いしましょう。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!と思ったうわああああああああああああああああああああ
返事はああああっっ!?
>>850
確かにまじめなシーンで■■は萎えたな。
>>854
あれは隠すために■■にしてたんだと思う、ちゃんと上条が後で紹介したじゃん
まぁ「」だけでよかったと思うけど
>>1です。たくさんの感想をありがとうございます。
今日は今から私用で帰れないので本日の投下は出来ません。
明日か明後日くらいには来られると思いますので。
ところで、現在の進行状況や次スレについて質問を頂いているようなのでお答えしておきますね。
実はまだ全体の半分くらいです。よってあと一スレくらいは続くと思います
台詞形式は文字数の割に改行が半端じゃなく多いのでこのスレでは終われそうにないです。
ですので、余程無関係な雑談に発展しない限りは書き込みを自重していただかなくても大丈夫ですよ。
と言ってもキリよく8日目だけはこのスレで終わりたいです。レス数は30くらいを予定しているので、それくらいはいけると思いますが。
ご心配ありがとうございますね。それではまた
ごきげんよう。
ごきげんよう。
このスレでの投下はこれが最後になりそうですね。
ちょっと準備しますので10分ほどお待ちください。
今日の投下が終わりましたら、次スレ立ててきますね
―23:15―
御坂「そんなの……」
麦野「私と付き合おう。もう男には戻れない体にしてあげる……」
御坂「だ……だって……今あんたの告白を受け入れたら……
あいつに失恋した悲しさを埋めるためにあんたと付き合うようなもんなのよ……」
麦野「それの何がいけないの? 私はアンタが欲しい。アンタは私に慰めてもらえる。誰も損をしないわ。
重要なのは、アンタの気持ちだけ。っていうか、アンタそのつもりでここに来たんでしょ」
御坂「違う!……そ、そんなすぐ気持ちの切り替えなんて……」
麦野「一瞬であんな男のことなんて忘れさせてあげる。心も体も……私を刻みつけてあげる」
御坂「……私と……しないんじゃなかったの……?」
麦野「……そうね。……けど恋人同士なら、してもおかしくないでしょ」
御坂「お、おかしいわよ……そんなの……」
麦野「どうして? 女同士だから……? 昨日まであんなに応援してくれたのにって? アンタ、私のこと嫌い?」
御坂「……嫌いじゃないけど……」
麦野「もっとこっち来なよ……」 グッ
御坂「あっ……」
御坂(顔近い……ヤダ……頭ボーッとしてきた……)
麦野「ねえ……沈利って呼んでよ……」 フッ…
御坂(耳元で……。駄目……こんな気持ちの時にそんなこと言われたら……拒めないじゃない……) ハァ…
御坂「離れて……そんなの……駄目よ」
麦野「アンタ、最初からずっと嫌って言わないよね……」
御坂「……っ……」
御坂(……確かに……嫌じゃない……。麦野さんに好きだって言われて、嬉しいって思っちゃってる……) ドキドキドキ…
麦野「もちろん無理強いはしない……。私も腹括って言ってんだよ」
御坂(最近頭の中が麦野さんでいっぱいだったのは……私も麦野さんが好きだったからなの……?
けどそれは、仲の良い友達としてであって……)
御坂(本当にそうかしら……麦野さんと昨日抱き合って眠って……ずっとドキドキしてたじゃない……)
御坂(や、やだ……麦野さんを受け入れる方向に考えがいっちゃってる……)
麦野「……もういいよ」 ザバッ
御坂「え……?」
麦野「アンタ私のこと嫌いみたいだし。この話は忘れて。もちろん今日泊まるのは全然構わないから」
御坂「そ……んな……」
麦野「妄言だったわね……好きになっちゃってごめん……もう上がるね、今の私はアンタのことそういう目で見ちゃうし……」
御坂「ま、待って……!」 グッ!
麦野「……!」
御坂「…………分かった」 ボソッ
麦野「何が?」
御坂「なる……! 麦野さんのものになるっ!」
麦野「…………無理しなくてもいいのよ」
御坂「私も……麦野さんのこと好きだから……」
麦野「へえ、それは意外ね」
御坂「……女の子同士でも……麦野さんとだったら嫌じゃないから……」
麦野「……」
御坂「私を……麦野さんのものにしてくれる……?」 ジッ
麦野「……」
御坂「……」
麦野「……沈利って、呼んで」
御坂「沈利……さん」
麦野「可愛いね、美琴。確認しとくけど……アンタ、私の彼女よ?」
御坂「……実感無いな……」
麦野「まあね。……本当にいいのね?」
御坂「うん……。今考えてみれば……最近麦野さんのことしか頭になかったから……。
きっと私も麦野さんが好きだったんだと思う……」
麦野「おーおー、二股とはいい度胸してるわ」
御坂「ち、違うわよ! 凄く仲の良い友達だって思ってた……けど、少しだけ違ったのね……。
私にはあいつがいたから……。麦野さんへの気持ちはそれとは違うものだって思い込んでたのよ……。
あいつへの気持ちのほうが大きかったのも事実だし」
麦野「分かってるわよ……私もそうだったから……」
御坂「麦野さんこそいいの……? これ、やっぱりあいつに失恋したから麦野さんに乗り換える形になっちゃってるのよ?」
麦野「……いいよ。アンタが手に入るなら……。今日から……私だけを見てくれるなら」
御坂「……うん、もう麦野さんしか見えない……。麦野さんが……大好き」
麦野「し・ず・り! 次間違えたらチューするわよ」
御坂「……麦野さん」
麦野「……っ……」
御坂「……してくれないの?」
麦野「……生意気っ! んっ……!」 チュッ
御坂「んぅっ……」 チュッ
麦野「……これでいいんでしょ」
御坂「……しちゃったね。……ヤバイ、私、麦野さんにもっともっと依存しそう……」
麦野「いいよ。この先待ってるのは地獄だけどね。アンタもう、私から離れられないんだから」
御坂「……いいのかな」
麦野「問題無いわ。ふふっ、やっと手に入ったわ……先あがってるね」 ガチャッ バタン
御坂「あっ……」
御坂「……」
御坂(……勢いで付き合うことになっちゃった……)
御坂(本当にいいのかしら……?……こんなので)
御坂(……麦野さんの唇、柔らかかったな……) ドキドキドキ
御坂(それに良い匂いがした……)
御坂(こ……恋人……ってことなのよね……) ドキドキドキ
御坂(こういう始まり方も有りなんだ……)
御坂(思ってたのとは少し違うけど……うん、麦野さんとなら……
沈利さんとなら……上手くやっていける気がする……!)
御坂(にしても彼女か……黒子のこともう何も言えないわね) ハァ…
ガチャッ バタンッ!
麦野「…………」
麦野「はぁ……」 ヘタリ
麦野(まさかこんなに上手くいくなんてね……) ドキドキドキ
麦野(押しに弱そうだから失恋中だし駄目もとでやってみたら……う、うそでしょ?) ドキドキドキ
麦野(何あいつ可愛いっ! めちゃめちゃ可愛い……! もう失恋中とかそんなのどうだっていい!
あの可愛いの……私の恋人なんだ……!) ドキドキドキ
麦野(だ、騙すような真似しちゃったわよね……ううん、なんでもいい……あいつが手に入った!
御坂……私のなんだ……) ハァ…
麦野(まさか女の私に彼女が出来るとは……。キスまでしちゃったし……デートとか誘ってもいいのかしら……?
い、いいわよね……恋人同士なんだもんね……! ど、どこ行こうかしら……)
ガチャッ
御坂「ふぅ……いいお湯だった。沈利さん、何やってんの? 座り込んで」
麦野「きゃっ……!」
麦野(やだ私舞い上がってる……! 相手は中学生よ……落ち着いた対応をしなくちゃ駄目よ……)
御坂「ちゃんと拭かないと風邪ひくわよ?」
麦野(裸の美琴……いざ恋人だと思うと……ムラッとくるわね……) ゴクリ…
麦野「アンタが拭いてよ……」
御坂「え……」
麦野「ねぇ……いいでしょ?」
御坂「う、うん……」 ドキドキ…
御坂「い、いくわよ……」 フキフキ
麦野「んっ……」 ビクッ
麦野(……やば……タオルが柔らかくて思ったより気持ちいい……)
御坂(うー……やわらか……。っつかどこまで拭けばいいのよ……そこも、ここも濡れてるのに……) フキフキ
麦野「も、もういいわ……ありがと」
御坂「あ、そ、そう?」
御坂(……谷間とかどうしようって思ってたからよかった……)
麦野(存外ヤバいわねこれ……。私も触りたいな……)
麦野「じゃ、じゃあ今度私の番ね……」
御坂「ええっ!? い、いいわよそんなのっ!」
麦野「文句言うんじゃないの……ほら、貸しなさいよ」
御坂「う、うん……」
麦野「い、いくわよ……」 フキフキ
御坂「ぁ……」
御坂(なんか体がむずむずする……。麦野さんに触られてるから……?)
麦野(細い……小さい……でもしっかり柔らかくて……ちゃんと胸も膨らんでる……) フキフキ
御坂「ん……もういいんじゃない……?」
麦野(ああ……直接触りたいな……) フキフキ
御坂「麦野さん、聴いてる?」
麦野「え? な、なんだっけ?」
御坂「はぁ……何夢中になってんのよ……エッチ」
麦野「う、うるさい! アンタだって昨日サウナで私の触りまくったでしょ……」
御坂「あ、あれは麦野さんの触り心地が良すぎるのが悪いのよ……!」
麦野「また麦野さんになってる。そんなに私にチューしてほしいわけ?」
御坂「……ごめん沈利さん」
麦野「許さない」 スッ
御坂「ぁ……んむっ……」
麦野「んっ……ちゅぷっ……んちゅ……」
麦野(……昨日まで仲の良い友達だったのにこんなことしてるって思ったら……めちゃめちゃ興奮してきた……) ハァ…
御坂(……頭ボーっとする……。沈利さんの舌……ぬるっとしてて……気持ちいいな……) トローン…
麦野(……もっと欲しい……意識飛びそう……美琴が欲しくてたまらない……) グッ
御坂「……んう!…………っぷは……!」
麦野「……あ……ごめん、苦しかった?」
御坂「……ばか。……興奮しすぎ」
麦野「……しょ、しょうがないでしょ! アンタが……!」
御坂「……え」
麦野「アンタが可愛くてたまらないんだから……!」
御坂「……ぅ」
麦野「わ、悪い……!?」
御坂「べ、別に……私だって……」
麦野「う、うん……?」
御坂「……沈利さんのこと……」
麦野「……」
御坂「……っくちゅんっ!」
麦野「おい」 ガクッ
御坂「ズズーッ!……湯冷めしちゃったみたいね。とりあえず着替えない?」 グスッ
麦野「……ぐぐっ……」 ギリギリギリ
御坂「え、何?」 ワシャワシャ
麦野「なんでもないっ! はいこれアンタの寝巻きね」 ズイッ
御坂「おっと。ありがと。ってちょっと! 何よこれ! スケスケなんですけどー?!」
麦野「うるさい! 嫌なら裸でいろ!」
御坂「えー……何怒ってんのよう」 ブツクサ
麦野(やっぱ舞い上がってるな……こいつよりテンション上がっちゃってるのが腹立つ……)
御坂「ねーねー、沈利さん。ジャージとか無いのー?」 ダキッ
麦野「私の分しかない」
御坂「Tシャツでもいいからー。こんなの着て寝れないわよ」 グイグイ
麦野「だーもう! うっとうしいわねぇ! わかったわよ! ジャージでいいんでしょ!」
御坂「やたっ! ありがと、沈利さん!」 ニコッ
麦野「う……」
麦野(……こいつの笑顔は反則よね……) カァァ
―麦野宅 リビング 24:00―
麦野「美琴ー、アンタご飯食べる? 私実は晩御飯まだなのよ」
御坂「んー、食べる食べる! 私もお腹ぺこぺこー」
麦野「ちょっとは迷いなさいよ。こんな時間に食事することの恐ろしさが分かってないのね」
御坂「もう3回目くらいだけど、私太らない体質なのよね」
麦野「言うな忌々しい」
御坂「あ、私作るわよ。もうお客さんじゃないんだし」
麦野「いいわよ。アンタは休んでなさい」
御坂「私は沈利さんの恋人だもん。 沈利さんに手料理食べてもらいたいのっ」
麦野「……そ、そう……じゃ、一緒に作ろ」
麦野(ずるい奴……そんな言い方されたら断れないじゃないの)
御坂「オッケー。何作る?」
麦野「昨日のビーフシチューがまだ結構残ってるから、これご飯にかけて食べればいいんじゃない?
お米は家出る前に炊いておいたから」 カチッ
御坂「あ、じゃあこれ明日にも残しておいて、ハンバーグ煮込みましょ。3日目だとかなり煮詰まってるし」
麦野「いいわね。明日の夕食も決定ー」
御坂「サラダでも作る? 冷蔵庫見せてね……うーん、大根サラダくらいなら作れそうね。乾燥わかめある?」 ガサガサ
麦野「あるわよ、そっちの戸棚。ドレッシングは絶対やめてよね」
御坂「分かってますって。油は抵抗あるんでしょ。ポン酢あるからこれにしましょ」
麦野「アンタ意外と手際いいじゃない。寮で家事なんてしないくせに」 グツグツグツ
御坂「するわよ。洗濯と掃除は。料理だって別に難しいもん作るわけじゃないんだし、
これくらいは適当でも何とかなるでしょ」 ザクザクザク
麦野「まあ確かに。アンタ好きな食べものとかあるの? 逆に嫌いなもんとか」 グツグツグツ
御坂「んー、嫌いなもんは別に無いわねー。甘いものとかお菓子は普通に好きだし、
ジャンクフードもまあ嫌いじゃないわよ」 ザクザク
麦野「張り合い無いわね。毎日嫌いなもん食べさせて直してやろうと思ったのに」 ガチャガチャ
御坂「それ絶対逆効果でしょ」 トットットットッ
御坂(……それってつまり毎日ここに来てもいいってことよね……) ドキドキ
麦野「よし、シチューは温まったわよ。大根切れた?」
御坂「ん、だいじょぶ。あとは盛り付けて完成ねっ! 二人でやると早い早い」 イェーイ
麦野「そうね」 パチンッ
御坂「よし、美琴センセー特製の大根サラダ出来たわよ!」
麦野「大根千切りにしてわかめとドカ盛してポン酢かけただけのね」
御坂「分かってないわねー。切るという作業が重要なのよ。さ、食べよ食べよ!」
麦野「はいはい。ビール飲む?」 ガチャッ
御坂「ナチュラルにお酒勧めないでくれる? 私中学生なんですけど?」
麦野「学園都市じゃ5歳からお酒飲んでいいという条令があるのよ」
御坂「そんな条令聞いたことないわね」
麦野「いいじゃん、飲もう飲もう。今日だけ今日だけ」
御坂「ビールって太るんじゃないの?」
麦野「こんなおめでたい日に飲まない方が嘘でしょ」
御坂「昨日も飲んだくせに。酔って襲わないでよねー」 スタスタ
麦野「おいこら、そりゃこっちのセリフだっつの」
麦野(けど確かに昨日みたいなことになったらどうしよ……いやむしろ歓迎?)
麦野(……さっきはああ言ったけどこいつとしてもいいのかな……。……こいつ初めてなのに、どうしてあげたらいいのか……)
麦野(って、何でしちゃう前提なのよ!……出来るわけないでしょ……私なんかと)
御坂「何してんのー? 早く食べようよー」
麦野「あ、うん。今持ってく」
―24:20―
麦野「じゃ、かんぱーい」 プシュッ
御坂「かんぱーい!」 プシュッ
麦野「ゴクゴクゴクゴク……っぷはぁっ! このために生きてるわねぇっ!!」 ガンッ!
御坂「ゴク……うぇ、ビール苦。っつかあんたそんなにお酒好きなの?」 イタダキマース
麦野「ううん、普通。晩酌くらいはするけど。今のは言ってみたかっただけよ」 イタダキマース
御坂「そっかー。お、二日目のシチューも美味しい! ご飯にかけるのも全然アリね」 ウマウマ
麦野「ハヤシライスみたいなもんよね。私が作ったんだから美味しいに決まってるでしょ」 ウマウマ
御坂「んー、沈利さんの他の料理も食べてみたいなー」
麦野「何言ってんの。これからいくらでも食べれるわよ」
御坂「やった。恋人特権てやつよねー」
麦野「そういうこと。よかったわね、料理上手な彼女で」
麦野(恋人か……接し方があんまり変わらないから実感沸かなかったけど……やっぱ嬉しいな)
御坂「ねね、私のサラダも食べて食べて」
麦野「言われなくても食べるわよ」
御坂「感想が聞きたいの。あ、ポン酢の味とか言うの無しよ! 愛情が篭ってるんだからね」
麦野「わかったわかった。ったく……ご飯くらい好きに食べさせてよ。どれ……」 パクッ シャリシャリ
御坂「どう?」
麦野「うん、大根の味」
御坂「うんそりゃね。じゃなくてっ!」
麦野「はいはい美味しいわよ。美琴ちゃんは自慢の彼女です」
御坂「よろしい。包丁握った甲斐があったわ」
麦野「めんどくせえ奴」
御坂「こら、彼女にそんなこと言わないの」
麦野「はいはい」
御坂「ったくもう。……私は沈利さんの彼女よね」
麦野「そうね」
御坂「沈利さんは私の彼女」
麦野「だから?」
御坂「どっちも彼女って何か変な感じね」
麦野「確かに。人に紹介すると聞き返されそうね」
御坂「女の子と付き合ってますって堂々と言えるの?」
麦野「言えるよ」
御坂「そっかー」
麦野「アンタは抵抗ある?」
御坂「抵抗っていうか、ああもちろん沈利さんと付き合ってるのが恥ずかしいとかそんなんじゃないのよ?
けど何かいちいち説明するのが面倒というか……」
麦野「それは分かる。男相手だと『こいつらどうやってセックスするんだろう』ってエロい目で見られるわよ」
御坂「紹介する男の人いるの?」
麦野「一人だけ。仕事仲間でね」
御坂「そっか。……仕事のことは……」
麦野「教えません」
御坂「だよねー」
麦野「っつか別にそこまで大層なもんじゃないって。警備員(アンチスキル)みたいなもんだよ」
御坂「ほんとかなぁ」
麦野「ほんとよ。アンタに余計な心配かけたくないし」
御坂「分かった。もう訊かないわよ。ごめん」
麦野「いいえ」
御坂「……」 モグモグ
麦野「……」 モグモグ
御坂(……ところで本当にどうやってするのかしら……) ドキドキドキ
麦野(……女同士のセックスって……一応調べといた方がいいわよね。
指使うってくらいしかイメージが無い……) ドキドキドキ
麦野「あ、そういやアンタって明日学校は?」
御坂「ん? ええ、普通にあるわよ」
麦野「いやいや普通にじゃねえだろ。制服は? 鞄は? っつか逆にアンタが今持ってるもんて何?」
御坂「財布と携帯と……あとは麦野さんに借りた服くらい。あ、服濡らしちゃってごめん!」
麦野「今更ね。別にいいわよ。洗濯すりゃいいだけだし。それより、そんな状態で学校行けるの?」
御坂「取りに帰らないとねー……」
麦野「っつかとっとと謝って仲直りしてこいよ」
御坂「うん……黒子には謝り倒してくるつもりよ。けど寮監はまずいわ……下手すりゃほんとに殺されるかも」
麦野「むしろ少しほとぼりが冷めるまで待ったほうがいいか……」
御坂「うん……」
麦野「んじゃ明日はもう学校サボりなよ。後輩の子にはメールだけしておいて」
御坂「寮監に謝るなら早い方がいいような……」
麦野「そこまでやらかしてりゃいつ謝ったって一緒でしょ。……代わりに明日はデートしよ」
御坂「えー? 普通サボッてデートしようなんて言う?
そこは恋人として毅然とした態度で学校行きなさいっていうのがいい大人ってもんじゃないの?」
麦野「私は悪い子だしね。っつか、テメェ今微妙に私が成人に達してるような発言しやがったな」
御坂「違う違う。沈利さんは頼りになるお姉様だなーって思っただけ」
麦野「ほんとかよ」
御坂「インディアンウソツカナイワヨ」
麦野「インディアンがもう嘘だろ。で、どうすんの? ちゃんと学校行くの?
それとも……」
御坂「……」
麦野「私と……デートするの?」 ドキドキ…
御坂「……沈利さんとデートしたい」
麦野「……ほんと?」
御坂「明日一日だけ……不良になります」
麦野「ま、まあそこまで言うならどこか連れてったげる」
麦野(やたっ!……ど、どこ行こう! 初デートってどういうところがいいのかしら……!)
御坂(恥ずかしいこと言わせるわねー……! けど……楽しみ。私ってば浮かれてんのかしら) カァァ…
麦野「じゃあ忘れずに後輩にはメール打っときなよ」
御坂「ううん、ご飯食べたら電話するわよ」
麦野「ああ、それがいいね。さっさと仲直りしなさいよね」
御坂「心配してくれてるの?」
麦野「違う。後輩との関係捨ててまで私と仲良くされてもって感じじゃない?
アンタが私を良く思ってくれてたのは嬉しいけど、別に私はアンタから離れていったりしないからさ。
後輩にもちょっとは構ってあげなよ」
御坂「……」
麦野(ちょっと偉そうだったか?)
御坂「意外」
麦野「あン?」
御坂「まさかあんたからそんな言葉が出るなんてね。すっごい独占欲強そうなのに、他とも仲良くしなさいなんて」
麦野「うるっさいわねー……。私が原因で喧嘩なんかされるの胸糞悪いじゃないのよ」
御坂「うん、分かった……」
麦野「まあでもそれで私をないがしろにするような真似したらマジでアンタ監禁するわよ」
御坂「うぇ、それは勘弁してほしいかも」
麦野「独占欲強いもん」
御坂「……まあでもありがと。麦野さんやっぱ大人ね」
麦野「当然よ。アンタみたいなガキとは違うの」
御坂「ガキに告白した癖に。言っとくけど犯罪よ犯罪」
麦野「いいんだよ。愛があれば」
御坂「わひゃっ!」
麦野「……何?」
御坂「は、恥ずかしいこと言ってんじゃないわよ!」
麦野「恥ずかしい……ハッ! ちょ、違う、一般論としてよ! 別にアンタに対して言ったわけじゃ……」
御坂「え、違うの?」 シュン…
麦野「う……違わないけど……」
御坂「ほんと? 嬉しいっ!」 パァッ
麦野「う……うん」
麦野(くそ……その顔には弱いのよね……)
御坂「それより沈利さん。明日はどこに行くの?」
麦野「そうねー……なんか行きたいとこないの?」
御坂「行きたいところかぁ……」
御坂(あいつと行けたらなって思うところはあったけど……それを提案するのもちょっと気が引けるわねー……)
麦野「アンタあの男と行きたいとこ妄想したりしなかったの?」
御坂「っ!」 ビクッ!
御坂(な、なんで考えてること分かったのかしら……) アセッ
麦野「分かりやすすぎ。……気ぃ遣ってんの?」
御坂「だって……沈利さんをあいつの代わりにしたくないんだもん……」
麦野「私はそんなの気にしないから大丈夫だって。ほらほら、希望があるなら言いなさいよ」
御坂「えと……と言ってもありきたりなところばっかりなんだけど、遊園地とか水族館とか……あと公園でピクニックしたり、
普通に映画やカラオケに、それからショッピングとか夜景見たりも……」
麦野「多いわね。ま、ちょっと考えるわ」
御坂「でもご飯食べ終わったら、普通ならもう寝る時間じゃない? 今決めた方が……」
麦野「何言ってんの。今夜は寝かさないからね」
御坂「なっ……!」 カァァ
麦野「深読みすんなバカ。……アンタといっぱい話がしたいの……」
御坂「あ、ああ、そういうことね……私ももっともっと麦野さんのこと知りたい」
麦野「アンタって結構なムッツリよね」
御坂「はぁ!? ば、馬鹿なこと言わないでよ!」
御坂「なななな何を根拠にそんなこと言ってるわけ!」
麦野「だって私中二の頃なんて毎日オナニーしてたし、エロいことばっか考えてたわよ」
御坂「あんたと一緒にすんな! ってか男子かあんたはー!」
麦野「お高く止まってんじゃないわよ。そんなことばっか考えてるから変な深読みすんのよ」
御坂「そ、それはあんただってそうでしょうが!」
麦野「そだよ。正直に言うと風呂上りのビールの所為でいい感じに酔ってムラムラしてんの」
御坂「身の危険を感じるわね……」
麦野「アンタ今日は酔わないのね。アンタが酔っ払ったら押し倒そうと思ってんだけど」
御坂「正直すぎるのも困りもんね……。ビール苦いからほとんど飲んでないのよ」
麦野「つまんないの。ま、別に焦んないけどね」
御坂「ったく。顔赤くなってるわよ。片付けはやっといたげるから、ご飯食べたら横になってなさい」
麦野「えー、食べてすぐ寝たら太るから嫌よ」
御坂「酔っ払いは黙って寝るの」
麦野「分かったわよ、じゃあよろしくね」
御坂「任せといて」
御坂(真剣に私のこと考えてくれてると思ったらこれだもんね。一緒にいて飽きない人だわ) クスッ
―常盤台中学学生寮 二○八号室 25:30―
白井(お姉様からの連絡がありませんの……どこに行ってしまわれたのでしょう……)
白井(初春達にも協力してもらって辺りを探しましたけれど、全然見つかりませんでしたし……困りましたわね……)
白井(お姉様に限ってまさかということは無いでしょうが、心配ですの)
白井(可能性としては例の殿方と一緒にいるか……もしくは麦野さん……)
白井(是非後者でお願いしたいところですが……いずれにせよ明日もう一度しっかりと探してみないといけませんわね)
白井(電話をかけても繋がりませんし……何をしていらっしゃいますの、お姉様……)
PiPiPi…!
白井「っ! こ、これは……お姉様からのメールですの……!」
白井「……な、何かあったのでしょうか……」 カチッ
――――――――――――――――――――
from:お姉様
件名:ごめん
本文:
電話にしようと思ったんだけど、もう寝てるだろう
からまた明日ちゃんと言うね。
あれから行くあてもなくてフラフラしてたら偶然沈
――――――――――――――――――――
白井(ええい、電話の方が早いですのっ!) ピッ
trrrrrrrrrrrr… trrrrrrrrrrrrrr…ガチャッ
御坂『はい……』
白井「お、お姉様!? 今どちらにいらっしゃいますの!?」
御坂『メール読んでくれてないの? 今は沈利さん家。行くあてが無くて河川敷でぼんやりしてたら家に
連れてきてくれたのよ』
白井「そ、そうでしたの……。てっきりわたくしはお姉様の身に何かあったのかと……よかったですの」
御坂『ねえ、黒子……』
白井「な、なんですの……」
白井(ま、まさかもう寮には戻らないとか言い出すつもりでは……そ、そんなの嫌ですのー!)
御坂『ごめん……ほんとにごめん……。私、失恋してあんたに八つ当たりしちゃったんだ……』
白井「は?」
御坂『怒ってるよね……またそっち戻ったらちゃんと謝るから……ごめんね』
白井「いえ、そうではなくて……その、失恋とおっしゃいましたのは……?」
御坂『あ……うん、あいつに……』
白井「例の上条さんのことですの……?」
御坂『…………うん』
白井「そうですの……それは……」
白井(ど、どうお慰めすればよろしいんですの?! 正直複雑ですの……お姉様が上条さんと恋人関係にならないというのは
わたくしとしては一安心ですけれど、傷ついたお姉様は見たくありませんの……)
御坂『ああっ! でも大丈夫よ! それはもう何とか整理がついたから!
でも冷静になって、あんたに酷いこと言っちゃったなって思ってさ……いくら謝っても許されないのかもしれないけど……』
白井「いえいえ! そ、そんなことはありませんの! わたくしはお姉様がご無事ということであればそれだけで充分ですの!
ですからどうかお気になさらずにっ!」
御坂『でも……』
白井「わたくしが言い過ぎたところも確かにありましたので。ですからこの話はもうこれで終わりにいたしましょう。
わたくしこそお姉様がお辛いのに気がつけず、心無い言葉をぶつけてしまい、申し訳ありませんでした」
御坂『黒子……』
白井(これはわたくしの時代がついに来ましたのねっ!
失恋したわりに随分とお元気なご様子ですし、お姉様はもう新たな恋を探して歩き始めておられますの。
つまりっ! この白井黒子がお姉様の新たな恋人候補に繰り上がったと言うことですのー!)
御坂『……あんたみたいないい子が友達で……パートナーで、嬉しいよ。私も本当にごめんなさい』
白井(キャ――――――! お姉様から早速最上級の褒め言葉ですのっ!
いいですわよいいですわよ。遂にお姉様もわたくしというかけがえのない存在にお気づきになられましたのねっ!
もはや言葉は無粋。お姉様とベッドにて肉体言語で語り合えるのをお待ち申し上げておりますの!)
白井「ではお姉様。仲直りということで、今夜は遅いので明日にでもお戻りになられますの?
あ、けれど明日は学校がありますから、よろしければ今からお迎えにあがりますわよ?」
御坂『あ、そのことなんだけど、明日までは沈利さん家に厄介になるわ。
寮監は正直相当怒ってるだろうし……少し間を置こうと思って……』
白井「な、なるほど、確かにそうかもしれませんわね。わたくしからも説得しておきますわ」
白井(まあ確かに、仲直りした途端家に戻るというのは麦野さんに対しても失礼というか、愛想が無い話ですの。
焦らずともお姉様とのラブストーリーは既に始まっていることですし、ここはじっくりと……)
麦野『美琴ぉー……! 寂しくて寝られないー……!』
白井「!?」
御坂『はーい、今黒子と電話中だから待ってー!』
白井「!?」
御坂『ごめん黒子、そんなわけだから明日は学校休むわね。明日の夜には帰ると思うから』
白井「な、なんですの今の声は……」
白井(気のせいか『美琴』とか聴こえたような……気のせいですわよね)
御坂『沈利さんお酒飲んで酔っ払ってるの』
白井「そうですの……」
白井(まあそういうことなら仕方ありませんわね。ところであの方未成年ではありませんの……? )
御坂『あー……黒子』
白井「はいお姉様」
御坂『……帰ったらどっか遊びに行きましょ』
白井「へ……?」
御坂『最近あんたに構ってあげれてなかったし、どっか行きたいとこ考えておいてくれる?
たまには後輩のあんたに奢ったげるわよ』
白井「……ほ、本当ですの?」
御坂『ん……。別に初春さん達も一緒でもいいけど』
白井「いいえ! 二人で! 是非二人きりでデートがしたいですの!」
御坂『そう。あ、デートと言えば私ね』
白井(ハァー……ハァー……お姉様と二人きりでデート……ハァー……。
やはりホテルのスウィートを確保して、学園都市の夜景を見ながら結ばれるのがウヒヒヒヒヒ) ジュルリ
御坂『まいっか……』
白井「ハッ! あまりの嬉しさに我を忘れておりましたの。何のお話でしたかしら?」
御坂『あーいいのいいの。また今度話すわ。もう夜も遅いしそろそろ電話切るわね』
白井「分かりましたの。またお部屋でお待ちしておりますわね。それではお姉様、お休みなさいませ」
御坂『うん、ほんとごめんね! 寮監にもきっちり謝るから! それじゃお休みー!』 ガチャッ
ツーツーツー
白井「……」
白井「……くひっ!」
白井「ぷくく……くひゃひゃひゃっ……うへへへへへへへへっ……」 ダラーン
白井(……くくくっですの! ついにこの部屋は正真正銘お姉様と黒子の愛の巣へと成る日が来ましたのね。
これは何としても寮監様を説得しなくてはなりませんわ。お姉様とのアバンチュールの実現のためなら、
黒子はどんな手でも使いますのー!) ゴゴゴゴゴゴ…
白井(にしても、麦野さんには感謝しなくてはなりませんわね。お姉様に手を差し伸べてくださって。
お姉様と黒子の挙式の際には必ずお呼びしなくてはなりませんわ) クネクネ
白井(それにしてもお姉様ったら麦野さんのことを沈利さんだなんて。少々仲良くなられたようですわね。
きっとあの方ならわたくしとお姉様の仲を祝福してくださいますのグヘヘヘヘヘ) ウネウネ
白井「デート~♪ デート~♪ お姉様と恋のデート~♪」 ニマニマニマニマ
―麦野宅 26:00―
御坂「電話終わったわよー」
麦野「電話中だったか、ごめんごめん」
御坂「ったくもう。寂しくて寝られないなんて意味わかんないこと言って」
麦野「言ってみたかっただけよ。その様子だと仲直りできたみたいね」
御坂「まあね。明日行くとこ決まった?」
麦野「まったく。初デートは色々と前準備したいから明日は家でゆっくりしましょ」
御坂「準備って……。ま、いいか。どうせ寝不足だし」
麦野「ゴロゴロ惰眠を貪ろうじゃないの」
御坂「たまにはいいわね。それじゃ明日は夕方くらいに帰るわね」
麦野「それが良いわね。まあ寮追い出されたらウチに来なさいよ。泊めてあげるから」
御坂「うん、すごく助かる。結構その確率高いからね……はぁ」
麦野「自業自得でしょ」
御坂「だからどうしようもないんだって。……それじゃ今日はもう寝ましょうか」
麦野「ええ。こっちいらっしゃい」
御坂「えと、私の布団は?」
麦野「……」 パンパン
御坂「いやいや。それは沈利さんのベッドでしょ?」
麦野「……」 チョイチョイ
御坂「手招きされても……」
麦野「何よ! 昨日一緒に寝たじゃないの!」
御坂「そ、それは……雰囲気に流されて……酔ってたし」
麦野「雰囲気作られたら誰とでも寝るのかこの売女がぁっ!」
御坂「んなわけないでしょ! あんただけよ……! っつか彼女に対してなんてこと言うの!」
麦野「いいから来なさい。アンタは今日から私の抱き枕なの。拒否は許さないわ」
御坂「なんて勝手な……ふ、布団が無いから仕方なくなんだからね!」 ゴソゴソ
麦野「よしよし。もっとこっち来て」
御坂「そっち詰めなさいよ。せまいでしょ」 モゾモゾ
麦野「人のベッドを狭いとか言わないでくれる? あら、あったかーい」 ギュッ
御坂「ちょ、ちょっと抱きつかないでよね」
麦野「何で? いいじゃん恋人同士なんだから。背中向けてないでこっち向きなよ」
御坂「……眠れないじゃない……」
麦野「私が寝たら離れてもいいわよ」
御坂「自分本位過ぎて惚れ惚れするわ……」
麦野「そんな私が好きなんでしょ?」 ギュゥッ
御坂「あーはいはい、そういうことにしといてあげるわよ」
麦野「美琴は甘えたり甘えられたりするの好きじゃないわけ?」 モミモミ
御坂「……ど、どうなんだろう……。何せしたことないから……」
麦野「それもそうね。いいわよ、どんどん甘えてきなさい」 モミモミ
御坂「沈利さんって絶対突き放してくるタイプだと思ったけど、そんなこと無いのね」
麦野「二人きりだもん。私は自分の欲望に忠実なのよ」 モミモミ
御坂「そう言われるとすごい納得だわ。……ってさっきから何胸揉んでんのよ」
麦野「いい位置にあるからつい。揉む程無いけどねー」
御坂「余計なこと言わなくていいのよっ! 小さいのも味があっていいでしょ!」
麦野「自分で言うそれ? 味ねえ……それじゃ一口……」
御坂「ばか。そういう意味じゃないわよ!」
麦野「冗談よ。今はこうしてるだけで幸せだよ」
御坂「う……そ、そう」
麦野「あれー? また恥ずかしがってんのかにゃーん?」
御坂「うるっさい! こんな寝方したことないんだから当たり前でしょっ!」
麦野「そりゃそうね。私だって無いし」
御坂「え……あ、そうなんだ……」
御坂(元彼とも無いんだ……てことは沈利さんの初めては私か……ちょっと嬉しいかも)
麦野「あのクソのこと考えてる? アンタを安心させるって言い方が正しいのかは分からないけど、
私ほんとにヤリ捨てられただけみたいなもんだから、アンタにしてることは大体全部初めてよ。
……というか、恋人が出来たら一緒にゴロゴロするのが夢だったの」
御坂「別に言わなくてもいいわよ……」
麦野「不安になってるのかと思って」
御坂「全然。むしろ聞きたくないわ。あんたが他の誰かを好きだった話なんて。
……沈利さんと同じようにね」
麦野「……そっか、そうよね。ごめん……」
御坂「いいって。私のことを想って言ってくれてるんだもんね。
それに……」 ゴロッ
麦野「……っ! 急にこっち向かないでよ!」
御坂「あんたの顔が見たくなったのよ」
麦野「ばか……それに、何なのよ……」
御坂「麦野さんだって私のものなんでしょ?」
麦野「……アンタが私のもんなの」
御坂「同じことじゃない」
麦野「違うっつの。あくまで私が所有者。アンタは私の所有物」
御坂「言い方悪いわねー。恋人なんだからもちっと何とかならないの?」
麦野「……恋人という名の所有物」
御坂「そこは譲らないわけね。まいいけど。初日からこんな濃厚に絡んでたら沈利さん飽きちゃうんじゃない?」
麦野「言ったでしょ。私は独占欲が強いの。……一度手に入れたもんを手放したりしない……どう扱うかも私が決める」
御坂「あんたを裏切らない限り。って付け足したい感じね」
麦野「……そうよ」
御坂「目が怖いわよ。私はもしかしてとんでもない人に捕まっちゃったのかしら?」
麦野「かもね。……私のものじゃなくなったら……許さないわよ?」 ツン
御坂「目が笑ってないって。……大丈夫……。
今、『私って実は麦野さんのこと大好きだったんだなあ』って実感してるとこだから……」
麦野「……アンタも言うようになったわね」
御坂「まああんたに今日一日でかなり鍛えられたからね」
麦野「でもアウト。また麦野さんって言った」
御坂「あっ。ごめんごめん、慣れるまでちょっとかかるかも」
麦野「慣れなくてもいいわよ」 スッ
御坂「え……?」 ドキッ
麦野「だって、アンタにキスが出来る理由になるんだから……」
御坂「理由なんていらないわよ。あんたがしたいときは……私だってしたいもん……んっ」 チュッ
麦野「んちゅっ……んぅ……ちゅぅっ……ちゅぷっ……」
御坂「ふぁっ……んぅちゅっ……ちゅっ……ン……」
御坂(段々激しくなってる……。気持ちいい……) ポー…
麦野(こいつなんでこんなに良い匂いがするのかしら……やば、また変な気分になってきちゃった……) ハァッ
御坂「……そっち向くんじゃなかった……」
麦野「どうして?」
御坂「……やっぱり眠れそうにないもん」
麦野「朝までもう4時間もないわ……眠ってしまうなんて、もったいないじゃない」
御坂「明日目が覚めてもちゃんと隣にいてあげるわよ」
麦野「ううん、私より早く目が覚めたらご飯作って」
御坂「なんてひどい奴なのかしら。……先に目が覚めたらね」
麦野「期待してるわね、美琴」 ギュッ
御坂「仕方ないわね、私のほうが早く起きたらよ、沈利さん」 ギュッ
というわけで本日はここまでです。
麦野と美琴が恋人関係になったところでスレが終われたのでキリがいいですね。
今から次スレ立ててきますので、スレの残りは麦野や美琴に対する愛を叫んでください。
そしてもしよろしければここまでの感想などもお聞かせいただければ幸いです。
一先ずここまで読んでいただきありがとうございました。
次スレでもよろしくお願いいたします。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1279560207/
立ててきました。
このスレは明日か明後日あたりにhtml依頼出してきます。
誘導ありがとうございます。
ところで一つだけ
>682
正解です。
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