男「俺の同級生に狐耳が生えてる」(96)
狐娘「おはよー」
男「おはよー」
女「あ、おはよー」
女友「おはよー」
男「(なんで誰も突っ込まないんだろう……)」
狐娘「それで昨日いったカフェがね」
女「へーそうなんだー」
男「(おかしい、どうみてもあれは狐の耳だ。100歩譲っても獣の耳だ)」
男「(なぜあんなナチュラルに生えてる)」
狐娘「本当!ほんっ、とうにおいしかったの!」ピコピコ
男「(感情に合わせて動いとるがな)」
男「(気になる……入学からしばらく気にしないようにしてたが
やっぱり気になる……!!)」
狐娘「でも高くってさー、本当嫌になっちゃう」
女「わかるーああいうお店って高いよねー」
女友「おごってもらったらいーじゃん」
狐娘「そ、そんなのその人に悪いよー……」ヘタッ
男「(くっ!かわいい!!!こんなかわいい子に現実を突き付けるのか……?いやしかし、俺の疑問は解決しない!ならば!)」
男「あのさー」
狐娘「ひゃっ、え、何かな?ごめん、うるさかったかな?」
男「いや、違うんだけど、放課後ちょっといいか?」
狐娘「えっ」
女「えっ」
女友「えっ」
男「えっ?」
――――― 放課後 空き教室
男「(遅い)」
ガララー
狐娘「まま、ままった!?」
男「え、まぁ少し」
狐娘「ご、ごめんなひゃい!そ、その、あの……
こういうの初めてでよくわかんなくて」
男「そうなのか」
狐娘「だ、だから少しだけ緊張しているっていうかそのあの」
男「まぁな……俺もこんな話をするのは生涯初めてかもしれん」
狐娘「!?」
男「でもずっと気になってたんだ。いまさら後戻りはできん。いい加減夏休みに入る前にはっきりさせておこうと思ってな」
狐娘「~~~!?」ボンッ
男「え!?おい!大丈夫か!?」
――――――――保健室
狐娘「……ここは」
男「気がついたか」
狐娘「お、おはようございます!!」
男「今はもう夕方だぞ」
狐娘「わ、私どれくらい寝てたの……?」
男「10分程だ。なんで急に倒れたんだ……?」
狐娘「そ、そうなんだへー。えっと、私実は体が弱くて……」
男「おいおい、無理するなよ。
仕方ない……今日は帰るか?」
狐娘「えっ……お話は?」
男「そんなものは明日でもいい。今はお前の体のほうが大切だろ」
狐娘「そ、そうだよね……うん……えへへ」
男「よくわからんが大丈夫か?送って行ってやろうか?」
狐娘「えへぇあっ!?え、いや、大丈夫です!」
ガタッ
ダッ
男「あ、おい!」
タッタッタ……
男「(何あいつ足はえぇ……動物かよ……)」
――――――――――翌日
女「で、内容も聞かずに逃げてきたと」
女友「Oops……」
狐娘「ごめんなさい……わたしチキンだから」
男「(チキンじゃなくてフォックスだろうが!)」
狐娘「きょ、今日こそは……」
女「その意気だよ!」
女友「おー」
男「(今日こそ聞き出してやる……あの耳のことを!)」
―――――――
男「(あいつの事を見ていてわかったことがある)」
狐娘「はい!」ピンッ
先生「元気がよくてよろしいですね。
では前に出てきて解いてください」
狐娘「~♪」ピッコピッコ
狐娘「できました!」
先生「はい。あれ……?ここのスペルが間違っていますよ」
狐娘「ええっ!?」ヘターン
男「(まず、耳は感情に連動して動く)」
―――――――
狐娘「……」
狐娘「……あっ」
女「?どうかしたの?」
狐娘「まだ……かな」
女友「?」
―昼休み
女「お昼だー!あ、油あげだ」
狐娘「……」ゴクリ
女「ほしい?」
狐娘「!」コクコクコク
男「(……鼻が利く、油揚げが好き)」
女「じゃあ三回まわってワンって言って」
クルクルクル
狐娘「こんっ!」
女友「ほ、本当にやった!しかも早い!」
女「別にあげるよ!?」
狐娘「え、そうなの!?」
男「(……あと馬鹿だ)」
――――――
狐娘「せーい」
ピョンッ
ガスッ!!!
ドバズンッ
女「相変わらず鬼のようなスパイクだね……」
狐娘「えへへー」
女友「そのちっさい体のどこにそのパワーが」
男「(意外とパワータイプ。そしてスポーツ万能)」
男友「(こいつずっと女子の試合見てるな)」
―――――― 再び放課後 空き教室
男「(これらの事を総合すると……
やはりあいつは、擬人化した狐なのでは……)」
男「(変化の術というパターンもあるか)」
男「(しかし目的はなんだ……?あいつから邪なものは感じられん)」
男「(もしかしたら普通に狐耳が生えてるだけの女子高生なのかも……)」
男「(……実はあの耳でいじめられたトラウマがあって)」
男「(みんなその事を知っていてあえて触れないとか)」
男「(……)」
男「(そうだよ)」
男「(あいつは別に……狐耳が生えてるだけじゃないか)」
男「(それについてどうこう言う権利は、俺にはない)」
男「(……はぁ、正直、俺も今まではスルーしてたし)」
男「(やっぱり、問いただすのはやめよう)」
ガララ
狐娘「ご、ごめんね!ま、待った!?」
男「ああいや、さっき来たところだ」
狐娘「本当?ならいいんだけど……」
男「おう」
狐娘「……」
男「……」
狐娘「あの……」
男「え、何?」
狐娘「お話があるって……」
男「あああれな、もういいわ」
狐娘「もういいの!?」
男「なんというか、俺は行動が性急すぎるんだよ。
よく考えもせずにすぐに行動にうつしちゃうタイプでさ」
狐娘「い、いいじゃん!性急でも!」
男「いや、それがどういう事につながるかとか、よく考えてこれから行動することにしようかなって」
狐娘「け、結局何の話だったの……?」
男「え、だからもういいんだって」
狐娘「(気になる!!)」
男「呼び出して悪かったな。じゃあ」
狐娘「……」
バッ ガシッ
狐娘「ま、待って!」
男「え?」
狐娘「こ、ここを通りたくば、私をたおしてからいけー!」フンス
男「……」
ピンッ
狐娘「あうっ!!」
男「あ、ごめん。つい……」
狐娘「あ、あうあぅ……なんででこぴんするの……」
男「倒して行けって言うから……」
狐娘「うぅぅ……」
男「わ、悪かったよ。大丈夫か」
狐娘「大丈夫じゃない」
男「えっ」
狐娘「……おいしいスイーツを食べたら治るかも」
男「……」
狐娘「あーいたいなー……キズものにされちゃったなぁ……」
男「(意味わかって使ってるんだろうか)」
男「わかった……わかったから」
狐娘「え!?もしかして」
男「スイーツくらいなら奢ってやるから、それで今回の件はチャラな」
狐娘「やったぁ!」ピコピッコ
男「(耳が躍動感あふれる動きしてる……)」
――――――――――――翌日 待ち合わせ場所
男「……少し早く着きすぎたか」
男「(約束の時間まであと20分……)」
狐娘「やっほー……」グデェ……
男「おう!?ど、どうした!?」
狐娘「みずぅ……」
男「ちょ、ちょっと待ってろ!」
――――
ゴクゴクゴクゴク
男「おまえはいつから待ってたんだ……」
狐娘「さ、さっき来たとこだよ」
男「……腕んとこ日焼けしてるぞ」
狐娘「えっ!?あ、本当だ!」
男「(マジでいつからいたんだ)」
狐娘「と、とにかく行こうよ!あの店ただでさえ並ぶんだから!」ピコッ
男「お、おう(おかしい、さっきまで死にかけてたとは思えない元気)」
―――― 店の前。
狐娘「……」
男「……」
狐娘「……暑いね」ヘタァ
男「……言うな」
狐娘「……えい」
ヒヤッ
男「のうっ!?」
狐娘「あははは!『のうっ!』だってー!」ピコピコ
男「おまえなっ……」バッ
狐娘「ん?」
男「……そ、そういうのは控えろよ」スッ
狐娘「ごめんなさーい」ヘタリ
男「(ワンピースから伸びる白い肌の美しさに思わず見とれてしまった……)」
男「(あの中に清涼飲料水を突っ込むなどという暴挙はさすがにできん)」
男「(こいつ無自覚にエロいな)」ジッ
狐娘「なにー?なにー?」
男「ああいや、アホだなと思って」
狐娘「ひどいね!?」
店員「二名で御待ちのお客様ー」
男「あ、俺らだ」
狐娘「わーい!」ピコッピコッ
―――――――店内
狐娘「……ここまで来て言うのもなんだけどさ」
男「ん?なんだ?」
狐娘「な、なんというか、流石に同級生に奢ってもらうのは……」
男「そういうのは身長がもう20cm高くなってから言えよ。
いいよ今日は。スイーツ代くらい出せらぁ」
狐娘「もー!またそうやって馬鹿にして!」ピクピク
男「(怒りの際はこう動くのか)」
狐娘「……本当にいいの?」
男「ああ、でこぴんのおわびだ」
狐娘「……わーい!」ピココンピッコ
男「(今どういう動きした!?)」
――――
店員「お待たせいたしました―、アイスコーヒーとミラクルデラックスパフェEXになりますー」
男「(EX!?)」
狐娘「わーい!」ピッコンピッコン
男「でっけぇなぁ……そんなの食えるのか?」
狐娘「あーん♪」
男「……」
狐娘「あ、あーん……」
男「え?何?」
狐娘「あ……」ウルウル
店員「お客様、カップル割引には『あーん』をクーポン代わりとさせていただいてるんです……」
男「(聞いてねぇ)」
狐娘「あー……んー……」ウルウル
男「(クッ)」
パク
店員「はいありがとうございまーす♪ごちそうさまでーす♪」
男「くっ……」
狐娘「えへへー、ごめんなさーい」ピコピコパタパタ
男「(なんて躍動感あふれる動きだ)」
男「許す」
狐娘「わーい♪ゆるされたー♪」ピコピコ
男「(クソァ!!可愛いぞ畜生!!)」
狐娘「ところで、あなたはスイーツ食べないの?」
男「え?俺?」
狐娘「コーヒーばっかり飲んでるとムキムキになれないよ?」
男「あれ?何で俺ムキムキ目指してる事になってんの?」
狐娘「あれ?男の子って皆ムキムキ目指してるんじゃないの?」
男「その情報は大いに間違ってる。今の男の子は皆公務員を目指してるんだよ」
狐娘「そうなんだぁ……じじ様の言う事も正しくないことがあるんだぁ……」
男「(じじ様って……)」
狐娘「ところでこうむいんって何?」
男「すごく安定した職業についた人のことだ」
狐娘「へー、すごいの?」
男「おうすごいぞ。ていうか何で知らねぇんだよ」
狐娘「え!?そ、それはアレだよ……知識に偏りがあるからだよ!」
男「いくらなんでもありすぎだろ」
狐娘「こう見えても私!森林や山にすむ哺乳類の生態系とか詳しいんだからね!」フンス
男「こう見えてもの部分がいらなかったな」
狐娘「えっ?」
―――――――――
狐娘「今日はほんとうにごちそうさま!」
男「いいっていいって」
狐娘「いやいやー、この恩は一生忘れないよ!」
男「大げさだな」
狐娘「あ、そうだ」
男「ん?」
狐娘「せっかくだから、うちで晩御飯食べてってよ!ね!?」
男「えっ?」
狐娘「うちのお母さんの作る晩御飯は絶品だよ!」
男「え、いや流石にそれは急すぎ……」
狐娘「あっ……」ヘタッ
男「えっ……」
狐娘「……そうだよね。ごめん、ちょっと馴れ馴れしすぎたよね」ヘターン
男「もしもし母さん!?俺今日友達の家でメシ食って帰るわ!!!」
――――――――狐娘家
男「(でかい)」
狐娘「ようこそ我が家へ!」
ガラガラガラ……
曽祖父「むむ……?お友達かの?」
狐娘「じじ様ただいま!」
曽祖父「ほっほ。人間のお友達か。良いことぞ。大切にしなさい」
狐娘「はーい!」ピコピコ
男「(おい言っちゃったぞ!!この人微妙にぼかしてた事の核心言っちゃったぞ!!)」
狐娘「こっちが大広間で―こっちが客間でー」
男「本当に広いな……」
狐娘「うん!色んな人が来るからって」
男「(いろんな……人?いろんな妖怪とかじゃないのか)」
狐母「あらおかえりなさい」
狐娘「おかーさんただいま!」ピッ
男「おじゃましてます」
狐母「こちらの方は……」
狐娘「友達だよ!」
狐母「……」
男「(な、なんだ……)」
狐母「あらあら、あらあらまぁまぁ……」ニコニコニコニコ
男「!?」ビクッ
狐母「お母さん怖がってるよ……」
狐母「あらごめんなさい」
狐母「今日はゆっくりしていってね?『ゆっくり』……」スタスタ
男「え、ええ……はい」
男「(何で二回言った!なんで強調した!)」
狐娘「ごめんね?何かお母さん喜んでるみたい」
男「あれ喜んでたの!?」
男「(しかしここに来たが、誰も狐耳生えてないのな)」
男「(尻尾もないし。やっぱりもしかしてこの子、普通のにんげ……)」
男「(いや、いや、あのおじいさんの発言がおかしいだろ)」
男「(そもそもなんでじじ様なんだ……?おじいちゃんじゃないのか?)」
男「(やはりこの家にはまだまだ謎が)」
狐娘「じゃあ私の部屋に案内するね!」
男「おう」
男「(って、えっ)」
――――――――狐娘部屋
男「(ここが……)」クンクン
狐娘「ごめんねー、あんまり片付いてないけど、そのへんでくつろいでて」
男「(いい香りだ。全身に力がみなぎるようだ)」
男「……おや?」
狐娘「あ、それ?私のアルバム」
男「アルバム!?」
狐娘「うん。見る?」
男「(どうなってるんだ……!?まさかすごい勢いで狐だったりするのか!?
気になるぞ……!?)」
狐娘「どうしたの?」
男「(いやでも不作法に相手の秘密に踏み込むのは……!!)」
狐娘「おーい……?」
男「うぐぐう……」
狐娘「まぁいいや、見ないんだったらなおしとくね」
男「あ、見ます」
男「……」ドキドキ
狐娘「やー、ちょっと恥ずかしいなぁ」
パラッ
男「……」
狐娘「これが5歳の時でー」
男「……」
狐娘「こっちがいとこと遊んだ時だね。わー、なつかしー」
男「(尻尾はえとるうううううううううう!!!)」
男「(もれなくいとこにも耳がついてるよ!!)」
男「(なんだよこれもう確定じゃねぇか!!)」
男「(畜生尻尾モフモフしてぇえ!!!)」
狐娘「ど、どうしたの……?すごい顔してるけど」
男「なんでもない。続けてくれ」
狐娘「う、うん」
狐娘「こっちが中学校の時で、この写真が……ふぁ」
男「ん?」
狐娘「はくちっ!」
ボフンッ
男「(尻尾出たああああああああああ!!!)」
狐娘「ありゃ、尻尾出ちゃった」
ボフンッ
狐娘「ふー。たまーに油断するとすぐ出ちゃうんだよねぇ」
男「(自分から触れよったあああああああ!!!)」
男「(もうタブーじゃないこと前提すぎだろ!!)」
男「(ていうか耳よりも尻尾が先だろ!!だろ!!)」
狐娘「あ、あれ?どうしたの?」
男「え?」
狐娘「え、ずっと黙ってるから……」
男「いやそりゃあ」
狐娘「えっと……やっぱ、こんな尻尾ついてる女の子、いや?」
男「えっ?」
狐娘「私もねー、何か変なのは自覚してるんだ。
でも皆何も教えてくれなくて」
男「……」
狐娘「だから、もうあんまり気にしないで生きていこうとは思ってたんだけど……
あれ?どうかしたの?」
男「……」スッ
狐娘「え、どうしたの?か、帰っちゃうの?」
男「……」
ザンッ!!
狐娘「!?」
男「お願いします!!尻尾をモフモフさせてください!!」
狐娘「土下座して懇願!?」
男「いきなりで戸惑うのはわかります」
男「でももう俺は限界だ!!正直に生きる!!」
狐娘「ひゃ、ひゃい!!」
男「なので尻尾をモフモフさせてください!!」
狐娘「えっ、えっと……」
男「お願いします!!!」
狐娘「……」
ボフンッ
男「……あっ」
狐娘「……ぞ」ボソッ
男「え?」
狐娘「ど、どうぞ……」ボソ
男「アアアアアアアアアアア!!!」
モフモフーンッ!!
狐娘「ひゃうっ」
モフモフモフ
男「ふかふかじゃー!!ふかふかじゃー!!」
狐娘「あっ……おねがい、優しくして?んっ」ピクッ
モフモフモフモフ
男「うひょおおおお!!」
ガラガラガラガラ
狐母「ごはんできたわよー」
狐娘「あっ」
男「あっ」
狐母「……」ニコニコ
男「あのですね、これはですねその」
狐娘「そのね?すごい深いわけがあって」
狐母「『ごゆっくり』」
ガラガラガラー
狐娘「あああああ!!まってえええ!!」
狐娘「もー!変な勘違いされちゃったじゃない!」
男「大変申し訳ありません……」
狐娘「もー……今度からは、見つからない場所で、ね?」
男「えっ」
狐娘「さぁいこ?ごはん冷めちゃうよ」
男「……」ゴクリ
狐娘「ど、どうかしたの?」
男「いやぁなんでも!?ただ綺麗だなって!」
狐娘「えっ」
男「あ」
狐娘「……い、い、いくよ!!」
ダッ
男「早い!」
―――――――――
男「おお……すごい美味しいなこれ」
狐娘「でしょ!」
狐母「うふふ……喜んでもらえてうれしいわぁ」
曽祖父「いい子じゃのう」
祖母「お父さん、おかわりはいりますかね」
曽祖父「いただこうかの」
祖父「ふぉっふぉ、若いということはいいのう」
男「(大家族だな……)」
狐母「ごめんなさいね?夫はまだ帰ってきてないの。『普通のサラリーマン』だから」
男「えっ?」
狐母「本当は今日紹介するつもりだったのよね?気が利かなくてごめんね?」
狐娘「そ、そそんなんじゃないよ!」
狐母「とにかく、お父さんとお母さんに連絡は済んだ?」
男「え?」
狐母「え?だって今晩は泊っていくのよね?」
男「いえ?普通に帰るつもりですが……」
狐母「え?」
男「え?」
祖父「おや……?それはすごい精神の持ち主じゃの」
曽祖父「なるほど、若者とはそれだけの行動力があるのか」
男「え?あの、どういうことでしょうか」
狐母「……」ピッ
TV『現在、近辺で過去最大級の台風が上陸しており』
男「!?」
狐娘「!?」
狐母「今そと凄いことになってるのよ?さっき車が外を飛んでたから、あわてて雨戸締めてきちゃったわ」
男「(なにこれどうなってるの!?)」
狐娘「すごいね……台風ってこんな急にくるんだ」
男「(そうなの!?)」
狐母「これはもう泊まっていくしかないと思うんだけど……」
祖母「そうしたほうがいいと思うねぇ。私も」
男「……はい。お言葉に甘えます」
祖父「良い心がけじゃ」
曽祖父「ほっほ」
狐娘「え、泊っていくの?やったー!」ピコピコ
男「えっ?」
狐娘「あ、えっ、な、なんでもないよ!」
狐母「……」ニコニコニコ
―――――――
ドッザアアアアアアアアアアアアアアアア
狐娘「すごい雨だねー」
男「まさかこんなことになるとは……」
狐娘「あっ……ごめんね。急にこんなことになって」
男「いやいや、むしろ泊まれるなんてラッキーなんて思ってたところで」
狐娘「えっ」
男「あっ」
狐娘「……」
男「……」
狐娘「と、とりあえずお風呂入ろうか!」
男「そうだな!」
スーッ
狐母「一緒に入る……?」
男「!?」
狐娘「おか、っおかぁおかあさん何言ってるの!?」
狐母「貴方も昔はいとこの子たちとよくはいったじゃない?」
狐娘「あれは昔の話!」
狐母「今は……?」
狐娘「今はー……」チラッ
男「ん?」
狐娘「……」カァッ
狐娘「と、とにかく入らないから!!」
狐母「はいはい……」スーッ
狐娘「まったくお母さんったら……」
男「(あのお母さん何歳なんだ?若すぎないか?見た目)」
狐母「ちょっと」
男「はい!?」
狐娘「こ、こんどはなに!?」
狐母「ちょっと話したいことがあるだけよ。
まったく何を考えてるの?」プンプン
狐娘「も、もう!わかったよ!さっさと用件だけ伝えてきて!」
狐母「うふふ、いらっしゃい?」
男「は、はぁ……」
―――――――
狐母「……用件はわかってるわね?」
男「え、何のことでしょう」
狐母「耳」
男「ゲホッ!!ゲホッゴホッ!」
狐母「尻尾」
男「ゴホッ!!ゴホッ!」
狐母「ここまで言えばわかる……そうよね?」
男「……まぁ」
狐母「別にね?あれは周りの人に見えてるわけじゃないのよ?」
男「え!?そうなんですか!?」
狐母「貴方はなんというか……強いのよ。霊力みたいなものが」
男「わぁお……」
狐母「……まぁそれとは関係なく」
男「あれ!?どうでもいい話題だった!?」
狐母「あの子は昔からきょうだいがいなくってね」
男「……」
狐母「たまにくるいとこくらいしか同年代の子がいなかったの」
男「……」
狐母「だから友達をつくるのが下手でね?
たまに作っては、妙な妖術を見せて引かれたりしてたの」
男「えっ」
狐母「今はなんとか、うまくやっているらしいけど……もしよかったら、これからもあの子と仲良くしてね」
男「お言葉ですが」
狐母「……え?」
男「僕は別に、あの子に同情しているわけでも、物珍しさで付き合ってるわけでもありません」
狐母「……」
男「ただ単純にいい子で、楽しいから一緒にいるだけです」
狐母「……」
男「貴方にどうこう言われようが、僕はあの子に優しくすることも、厳しくすることもありません」
狐母「……ふふっ」
男「どうかしましたか」
狐母「私の子でも産む?」
男「はぁっ!?」
狐母「ごめんなさい。冗談よ。つい素敵な言葉で濡れちゃったから。
うふふ。心配はいらなかったみたいね」
男「は、はぁ……」ドキドキ
狐母「ごめんなさいね。そろそろお風呂も沸いてるころだから。入ってきなさい。
服は替えを用意しておくわ」
男「あるんですか?」
狐母「言ったでしょう?たまにいとこが来るの。その服があるのよ。
ちょうど貴方と同い年くらいよ」
男「ああ、なるほど。助かります」
狐母「うふふ……ごゆっくり」
男「はい。ありがとうございます」
―――――――
男「風呂風呂……ここか、広いな」
男「(はっ!?待てよ!?これはよくある『ぐうぜんあの子が入ってたところに僕も入っていっちゃってたキャーッ』
ってパターンじゃないのか!?一旦部屋に戻っているかどうか確かめよう!)」
―――
ガララ
男「ただい」
狐「……」
男「……完全に狐になっとるううううううううう!!!!」
ボゥンッ
狐娘「……み、見た?」
男「え?あ、うん……(ちゃんと服着てんだな)」
狐娘「あああああああああああああああああ!!!」
男「!?」
狐娘「はっ……恥ずかしい……もうお嫁いけない」
男「そんなレベル!?」
狐娘「……人間で例えるなら」
男「うん」
狐娘「逆立ちしながら下半身の剃毛してるところを見られたくらいだよ……」
男「それはお嫁に行けない!!」
狐娘「い、今のは忘れて……あぅぅ」
男「お、おう……」
男「(しかし綺麗な毛並みだったな)」ジッ
狐娘「な、なに?」
男「え?いや綺麗な毛並みだと思っただ」
狐娘「……」カァァ
男「ん?」
狐娘「……」カァァァァァァァァ
男「おいおいおい大丈夫!?なんかすごい赤くなってるけど!?
……熱っ!!」
狐娘「もういっその事殺して……」
男「なんで!?」
狐娘「すっごい恥ずかしいの!察して!!」
男「お、おう……ごめん」
狐娘「……でも」
男「……」
狐娘「……で、でも、うれし、かった、よ」
男「……えっ」
狐娘「いっ、今のなし!!今のなし!お風呂入ってくる!」
男「お、おう」
狐娘「私が入ってる間想像しちゃだめだよ!?」
男「(何をだ!?)」
――――ー
男「想像しちゃだめだよって……」
男「おそらくあっち(獣状態)の事なんだろうな……」
男「しかし綺麗な毛並みだった……」
男「グルーミングしたい……」
男「首輪つけて飼いたい……」
男「毎朝餌をあげたい……」
男「はっ!俺は何言ってるんだ!?」
男「……しかし女の子の部屋は落ち着かないな」
男「なんかいい匂いがするし、毛がやたら落ちてるし」
男「……」
男「このベッドは……あいつが毎日寝てるベッド」
スッ
男「……あ、やっぱり毛落ちてる」
男「コロコロもある……掃除しといてやろ」
コロコロ
コロコロ
男「~♪」
ガラガラ
狐娘「あがったよー。……何してんの?」
男「ああごめん、すぐ行くよ」
狐娘「あ、毛……」
男「ん?」
狐娘「……あはは。そうだったよね。バレちゃってるんだった」
男「え?何が」
狐娘「……私が、実は狐だってこと」
フワッ
男「(ああ!シャンプーのいい香りがする!!
なんで女の子ってこんないい香りすんの!?)」
狐娘「こ、この事はね……他の皆には内緒にしてほしいんだけど……
ど、どうかな……
男「(ていうかTシャツに短パンとかちょっとエロすぎじゃないですかね……
意外と胸あるなこの子……ってかうわちょっと汗かいててさらにエロい」
狐娘「もちろん私もね、こっちにいるべきじゃないってことくらいわかってるの。
実は私、純血じゃなくて、ハーフってやつらしくて」
男「(あ~いい匂いなんじゃあ~家帰ってこの匂いで抜きたい)」
狐娘「でも、少なくとも今は、こっちの世界でうまくやれてるし、
いいかなって思って……もちろん、何か問題があったら、すぐに里に行くつもりだよ!?」
男「え?あ、ごめんなんだって?」
狐娘「聞いてなかったの!?」
男「あ、ごめん……」
狐娘「ひどいよ……」ヘタッ
男「いや……その、あんまりにもいい匂いだったから」
狐娘「えっ」
男「あと服装がエロい……」
狐娘「えっ、えっ」
男「ついでに言うと首輪つけて飼いたい」
狐娘「!?」
男「毎日尻尾をもふもふするだけの生活がしたい」
狐娘「……!?……!?」
男「ていうか耳触りたい」
狐娘「ちょ、ちょっと落ち着こう!?」
男「はっ、すまない。ちょっとトリップしてた」
狐娘「……ね、ねぇ」
男「何さ」
狐娘「さっき言ってたのって、本当?」
男「え?何が?」
狐娘「その……耳とか」
男「え?うん。もちろん。オフコース当然」
狐娘「気持ち悪くないの?」
男「なんで?」
狐娘「えっ」
男「可愛い」
狐娘「ほ、ほら……見た目人間なのに、獣の耳なんてきもちわ」
男「おいこら!!!」ドンッ
狐娘「ひゃっ!?」
男「今すぐケモミミフェチに謝れよ!!今すぐにだ!!」
狐娘「ご、ごめんなさい!?」
男「あーわかってねぇ。全然わかってねぇなああ!?」
狐娘「ねぇ!?口調がすごい変わってるよ!?どうしたの!?」
男「人間の見た目にケモミミがついてるからいいんだろうが!!」
狐娘「そ、そうなの?」
男「そうなんだよ!」
狐娘「ひっ、ごめんなさい」
男「あ、ごめん……怖がらせちゃったね」
狐娘「(情緒不安定なのかな?)」
男「とにかく、気持ち悪いとか禁句な。次言ったらひっぱたくから」
狐娘「は、はい」
男「まったく……奇跡みたいな可愛さに文句つけるとは」
狐娘「……あのさ」
男「なんだ?」
狐娘「触りたい?」
男「!?」
狐娘「本当はね?これ結構コンプレックスだったんだ。今は隠せるようになってるからいいんだけど、
昔はずっと帽子かぶってるくらいで」
男「(これ問い詰めなくて正解だったパターンか)」
狐娘「だから、これを受け入れてくれるのって、ちょっと嬉しいんだ」
男「……」
狐娘「……だ、だからね?その、触りたいなら、触っても」
男「触りたいです」
狐娘「ひゃっ」
男「触りたいです」
狐娘「……どうぞ」ピコッ
フニッ
狐娘「んぁっ」ピクッ
男「!?」
狐娘「あ、だ、大丈夫だよ。ちょっと敏感なだけだから」
男「(僕の敏感な息子も反応しております)」
フニ……クニッ
狐娘「っ……ふっ……」ハァハァ
男「だ、大丈夫?」
狐娘「へ、平気だよ?」ニヘラ
男「あああああああああ可愛いなぁああああああもおおお!!」
フニフニフニフニフニフニ
狐娘「ちょっ!やっ、あっ、強っ、んっ、あっ、んんっ!」ビクッ ビクッ
――――
狐娘「……」
男「ごめん」
狐娘「……」プクー
男「だからごめんってば」
狐娘「……許さない」
男「本当にごめん。マジでごめん」
狐娘「いくらなんでもひどいよ。触るって言っても限度ってものがあるじゃん」
男「だからこうして謝って……」
狐娘「許さないからね」
男「ええー……」
狐娘「……でも」
ポフッ
男「お?」
狐娘「スイーツおごってくれたら考えてもいいかな」
男「……また今度な」
狐娘「……うん!」
――――――――――
男「本当にお世話になりました」
狐母「いえいえ。……でも」
男「でも?」
狐母「結局何もしなかったのね。据え膳なのに」
男「ブフゥッ!?」
狐娘「お母さん!!」
狐母「ごめんね?冗談よ?(3分の1くらいは)」
狐娘「いってきます!」
男「おじゃましました」
狐母「貴方もいってきますでいいのよ?」
男「いやそれは」
狐娘「ま、まだ早いよ!」
狐母「ん?」
男「えっ」
狐娘「あっ……あう……」カァ
―――――――
女「やっほー、今日ははや……い、ね……?」
男「あっ」
狐娘「あっ」
女友「そっかぁ……無事成功したんだね」
女「先に行っちゃったんだね……お母さんかなしい」
狐娘「まって!これは違うの!」
男「誤解なんだ!」
女友「しかもお泊りかー。すごいね。進んでるね」
男「何故わかった!?」
女「えっ」
女友「えっ」
狐娘「あっ……」
男「……あー」
――――――――
狐娘「もー……すごい誤解受けちゃったじゃんか!」
男「すまぬ……すまぬ……」
狐娘「……二人は気を使って先に行っちゃうしさぁ」
男「本当に申し訳ない」
狐娘「ここで問題です」
男「ん?」
狐娘「この誤解を解くにはどうすればいいでしょう!」
男「はぁ!?それはその……事情をしっかりと説明する?」
狐娘「ぶぶー!はいはずれー!」
男「わかんねーよ!」
狐娘「正解はー!」
男「正解は?」
狐娘「……えへへ」ピコッ
男「え、何何、何なの気になる」
狐娘「そ、その……誤解じゃ、なくす、とか……」
狐娘「な、なーんちゃってなーんちゃって!」ピコピコ
男「おお、ナイスアイデア」
狐娘「へっ!?」
男「え?もういっその事……」
ガンッ
狐娘「ゲフッ……」
男「大丈夫かーーー!?」
狐娘「ま、前見るの忘れちゃってた」
男「なにそれ!?」
狐娘「い、いたい……」
男「大丈夫か?本当?どっか切ってないか?」
狐娘「それは大丈夫……」
男「それは?」
狐娘「……でも」
男「うん、何だ」
狐娘「スイーツおごってくれたら……いやむしろ、
一緒に食べにいってくれたら、なおるー……」
男「……」
狐娘「……えへ」ピコ
男「大好きだああああああああああああ!!」
ガバッ
狐娘「ひゃああああ!?」
HAPPY END
この後も幸せにくらしましためでたしめでたしみたいな感じで
俺も同級生に狐耳の女の子が欲しかった
こういう時いつも「これからだろ!」と思うけど
いざ「これから」を始めると大抵やめ時を見失って失速する
でも見たい
ジレンマ
このSSまとめへのコメント
ヤバイ、萌死ぬ....
控えめにいって素晴らしい