勇者「泥まみれの劣等感と優越感」(17)

木の陰で横たわる

泥にまみれながら
血反吐を吐きながら生きてきた

もう駄目だと何度も思った

優越感なんてない

僕は勇者なんてなりたくなかった。

旅の一日目。
訪れた村が焼かれた

僕がいたから魔物に狙われたそうだ

村人が襲われているのに気づき、宿を出ると数百もの

魔物が僕を討伐に来ていた。

いや、おかしいでしょ?
最初は2、3体がくるんじゃないの?
本気で来てるじゃん

マジで殺しに来てるじゃないですか・・・・。

見渡せば火、火、火、火

燃える音と魔物の歓喜と村人の断末魔

みんな知ってるかい?
笑い声より、叫び声の方が耳に残るんだよ

僕はどうしたかって?

逃げたよ

死にたくなんてないしね
僕に助けを求める村人を押しのけて森に逃げたよ

ひどい?じゃあ君を今から殺すね
動かないでね?一撃で首を跳ねるから

冗談?違うよ、よっと、こいつは業物だからね
いつもは飾りになってるけど、切れ味はあのころと変

わらない

え?ごめんなさい?わかった

人間誰だって死にたくないのわかるだろ?

それでね気づくと朝だった
逃げ疲れて寝ていたんだろうね

昨日の夜とは違って小鳥の美しい歌声が聞こえたんだ
その音でね、全部フラッシュバックしてきてさ

吐いちゃったよ。
泣きながら

何回も何回も謝って

「ごめんなさい、、」って

誰に言ったんだろうね

逃げたのに、勇者なのに

それでも僕は人間なんだ

斬られたら死んじゃうんだ

次の村に行ったときに魔法使いが声をかけてきたんだ

「私も一緒に行ってあげるよ!」って

すごい元気な子だった
魔法も白魔法、黒魔法つかえて
すごい強かった

彼女と一緒なら魔王まで楽勝だと思ったよ
実際襲い掛かってきた魔物ほとんど蹴散らしてたしさ

日が暮れてついた村は戦士の村だった
みんな鍛えに鍛えていて村人全員で魔王上に行けばい

いんじゃないかって思ったほどだよ

そして宿で休んでいると村人の一人が訪ねてきたんだ

「俺を戦士にしてほしい」って

僕がそういった称号を与えられると勘違いしてるのか

な?
僕は「僕に称号を与える事なんてできないよ」って言

ったら

笑いながら、そうじゃない、連れて行ってほしいって言われた。

彼も強かった
魔法には詠唱時間がかかるんだけど、剣ならそんなの

必要ないからね

龍が出た時、ちょっとやばいなって思ってたら龍の首

が飛んだんだよ

戦士の斬るスピードと太刀筋はものすごいものがある

と感動したよ

そうして旅をしてるうちに、魔王城が近づいてきた
魔物の数も増えてきて、強くもなってきた

幸いにも、魔王城近くを拠点にしている村みたいのが

あってそこで休んでたんだ

明日魔王城に乗り込もう、って時だった

村に竜神族の魔物が現れた

僕達だってそれなりにレベルも上がってたし
殺気で気が付いたんだ

戦士と魔法使いが剣と杖を持って外に出た瞬間消し飛

んだ

剣士は即死、魔法使いは下半身を持っていかれた

動けないものだね、どんなに強くなったと思っていて

魔法使いが僕に「逃げて」と口パクで伝えてきた
そりゃ下半身がないんだ、声も出せないね

え?なんでこんな淡々と話せるのかって?

そう見えるかい?

僕は回復魔法が得意じゃなくてね
いや、回復魔法かけても下半身吹き飛んでれば同じこ

とだけどさ

僕は剣を持って裏から飛び出したんだ

ん?魔法使い?
なんで連れて行かなかったのかって?
無茶言わないでくれよ

戦士が消し飛ぶ力持ってる相手に
けが人背負って逃げれるほど僕は力持ちじゃない

仲間じゃないのか?

仲間だよ。

大切な仲間だった

君は大切な人が目の前で転んだのを見たことあるかい


あるか

じゃあ手を切るったことは?
あるね

じゃあ馬車に轢かれたことは?
ないか、まぁあったら死んじゃうしね

僕の場合は目の前で下半身が消し飛んだんだ

これの意味わかるかな?

手遅れとかの問題じゃない

助けに行ったら、僕も消し飛ぶってことさ

そうなれば魔王を倒すどころか、その竜神族も倒せな



みんな勇者をなんだと思ってるの?

優越感?あるわけないだろ
僕は農夫だぞ

ただの人間だ

神の声を聴いただけの

ただの、人間なんだよ

怪我をすれば血が出る

転べば血が出る

殴られれば痛い

悲しければ泣く

楽しければ笑うんだ

僕は勇者だ

でも人間なんだ

死んだら、生き返れない

優越感?あるわけないだろ
僕は農夫だぞ

ただの人間だ

神の声を聴いただけの

ただの、人間なんだよ

怪我をすれば血が出る

転べば血が出る

殴られれば痛い

悲しければ泣く

楽しければ笑うんだ

僕は勇者だ

でも人間なんだ

死んだら、生き返れない

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