勇者・魔王「「死ぬ……ホント死ぬ」」ゲッソリ (46)



勇・魔「「ん?」」

マスター「おやおやお二人さん、ただ事じゃなさそうですね」

勇者「何かあったんですか?」

魔王「ええまあ……そちらも?」

勇者「はい」

マスター「そんなにやつれてしまうほどとは、一体どうしたんですか?私でよければ話を聞きますよ?」

勇者「いやまあ……」

魔王「さすがに言い辛くて」

マスター「ここは酒場、それも裏通りにある訳あり酒場です、ここに来るのは決まって人に言えない悩みがある人です。
酒の席で悩みを見ず知らずの人に話して、酒場を出たらそれを忘れて日常に、ここはそんな場所ですよ」ニコッ

勇・魔「「……」」

マスター「さぁ……よかったら話してください、私は誰にも言いませんから」

勇・魔「「……じゃあ少しだけ」」

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勇者「実は俺……旅をしてるんですが」

マスター「ほぉ」

勇者「その……仲間とちょっと」

魔王「そりが合わないとか?」

勇者「いえ、そりは合うんですよ色々と、その……仲間がみんな女性で、まあ何というか」

魔王「あなたを取り合う?」

勇者「その方がよかったかもしれません」

魔王「?」

勇者「実は……全員で来るんです、その……まああの」

魔王「ああ……確かにそれは言いにくいですね、分かりますよ」

勇者「それでその……こんなに」

魔王「……ふぅ、まさかあなたもとは」



勇者「も?」

マスター「ほぅ?」

魔王「その……私も似たようなモノで、旅はしていませんが、身近な女性が……まああれで」

勇者「なる程……」

魔王「悪い気はしないんですが、その……身がもたないと言いますか」

勇者「分かります、すごくよく分かります、俺の方も……前は宿屋だけでしたが、最近は……」

魔王「まさか野宿で?」

勇者「2つあったはずのテントが、いつの間にか片方が灰になってて」

魔王「それは……、私もちょっと遠くまで出向く事がありますが、その馬車や船の中で……」

勇者「……お互い大変ですね」

魔王「まあ贅沢な悩み……という奴なのは分かってますがね」

勇者「さすがに命の危機を感じてしまっては……」

マスター「嬉しい悲鳴をいささか通り過ぎてますね」



勇者「いやぁ今日はこの店に来てよかった、少しだけ気分が軽くなりましたよ」

魔王「私もです、自分だけではないと分かって、安心しました」

マスター「よかったですね、さぁこれは私のおごりです」コトトッ

勇者「ありがとうございます」

魔王「いただきます」

マスター「いえ……また何かあったら来て下さい、お待ちしてます」

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マスター「……さて、今日も店じまいですね、……勇者と魔王……相容れないはずの2人が、まさか同じ悩みをもっているとは」カチャカチャ

マスター「世界はやはり面白い」フフッ

マスター「さて……明日はどんな客が来るかな?」キュッキュッ

マスター「……おっと看板を下げないと」カタン

マスター「さて……」

誰も見てないかもしらんが、用事ができたんで、一旦中断。

ちょっとだけ再開



カランカラン

マスター「いらっしゃい、おや?この間の」

勇者「どうも……また来ちゃいました」

マスター「また何か?」

勇者「はい……」

カランカラン

マスター「いらっしゃい、おやおやこれはまた」

魔王「あれ?この間の」

勇者「ああどうも、奇遇ですね」

魔王「よく来るんですか?」

勇者「いえこの間振りで」

魔王「それはまた奇遇ですね、私もですよ」

勇者「珍しい事もありますね」

マスター「確かに珍しいかもしれませんが、長く店をやっていると、こういう事も意外とありますよ、ウチは特に……」

勇者「へぇ」

マスター「まあこれも何かの縁です、また話してはどうですか?悩み……あるんでしょう?」

勇・魔「「……はい」」



勇者「実はあの後、増えたんです」

魔王「増えた?……まさか」

勇者「元々は武闘家、賢者、商人の3人と旅をしていたんですが、他にも仲間はいまして」

魔王「ああ……あれですね、根城に待機して」

勇者「はい……俺の国にある酒場にいたんですが、何を聞いたのかみんなでやって来てしまって」

魔王「その……何人程?」

勇者「……5人程」

魔王「つまり……相手は8人?」

勇者「はい……、さっきの3人に加え戦士、魔法使い、僧侶、遊び人、盗賊が……、それで毎晩毎晩……もう体が」ガタガタ

魔王「それは……また……」

勇者「はは……は……はぁ」



魔王「私もですね」

勇者「まさか……」

魔王「私の側近と部下が3人の計4人だったんですが、この間部隊の編成とかが変わりまして」

勇者「……何人に?」

魔王「6人増えて10人」

勇者「……大台ですね、体の方は?」

魔王「それが……新しく来た部下の中に精力増強の魔法が使える者がいまして、ただ最中はいいんですが、朝起きた時は……もう」

勇者「……それは逆に辛いですね」

魔王「……昔はハーレムの話を聞いたら、少なからず羨ましくもありましたが」

勇者「俺もですよ、自分には一生縁がないと思ってましたが、いざ当事者になると」

魔王「ただただ身の危険を感じますね」

勇者「まったくですよ」



マスター「苦労というものは、当事者にならないと分からないものですからね」トポトポ

マスター「これもおごりです、どうぞ」コトトッ

勇者「マスター……ありがとう」

魔王「美味しいです」

マスター「いえいえ……これが私の仕事ですから、皆さんにお酒と気兼ねなく話せる場所の提供、それが私が酒場を始めた理由なんですよ」

勇者「そうなんですか」

魔王「沢山の人の悩みを聞いてきたんですね」

マスター「ええそれはもう、数え切れないほどに」

勇者「……マスターもあなたもありがとうございました、少しだけ気が楽になりました」

魔王「私の方こそ、2人に聞いていただけただけで、また頑張ろうと思えましたよ」

マスター「それはよかった、またきが向いたら来て下さい、私はいつでもここにいますから」

勇・魔「「はい」」



マスター「ふふっ……勇者も魔王も、モテる男は大変ですねぇ」キュッキュッ

マスター「今まで何万人も話を聞いてきましたが、あんなのは初めてでしたね」カチャカチャ

マスター「さて……今日も店じまい、看板を下げて……と」カタン

マスター「明日も楽しみですね」

今日はここまで。
とりあえずこれで最初の予定分です、また時間がある時に来ます、ではまた。

ちょいと続き



カランカラン

マスター「いらっしゃい、また来てくださったんですね」

魔王「いやぁ……何か気が付くとここに来たくなってて」

マスター「それはありがたいですね」

カランカラン

マスター「おやいらっしゃい」

勇者「あっどうも、またお会いしましたね」

魔王「いやぁ奇遇ですね」

マスター「お二人共、また何かありましたか?」

勇者「あ……はい」

魔王「ちょっと」

マスター「どうぞお話し下さい、いくらでも聞きますから」

勇者「実は……」



勇者「この間旅の途中で、滅んだ町を見たんです」

魔王「滅んだ町ですか?」

勇者「昔に魔王に滅ぼされた、そう聞いてます」

魔王「……」

勇者「俺はそれを見て憤りとかを感じました」

魔王「魔王が許せないと?」

勇者「そうです、そして仲間達もそうだと思いました」

魔王「……でしょうね」

勇者「でも違いました」

魔王「え?」

勇者「仲間達はその町を見て、こう言ったんです、じゃあ私達の子供で、この町を復興しよう……と」

魔王「あー……じゃあ」

勇者「その後はもう、半日以上の……終わった時には、枯れ木も真っ青なレベルでしたよ」

魔王「……生きててよかったですね」

勇者「はい……本当に」



魔王「私も似たような事がありました」

勇者「どんな事が?」

魔王「私の部下が率いてる部隊何ですが……先日敵にやられてしまって、壊滅したんです」

勇者「壊滅……」

魔王「私は彼等の為にも、頑張らないといけない!そう思ったんです、部下もそうだと思ってました」

勇者「……」

魔王「そしてそう言ったら、彼女たちは……減った人数を新たに作ろうと言い出して」

勇者「……どのくらいでした?」

魔王「精力増強の魔法を3回重ね掛けで、丸1日……終わった時には、死んだ父と母が川の向こうで叫んでて」

勇者「……生きててよかったですね」

魔王「ええ本当に……生きててよかった……」グス



マスター「命あってこそですからね、あなた達が来なくなったら私も悲しいですよ」

勇者「そういえば、他の客を見たことがないんですが」

魔王「確かに、いつも私達だけですね」

マスター「最初に言いましたが、この店は訳ありな酒場です、悩みを抱えた人だけがこの店にやってくる、今のあなた達のようにね」

勇者「そんな事あるんですか?」

魔王「まるで魔法じゃないですか」

マスター「そうだと言ったらどうします?」

勇・魔「「え?」」

マスター「冗談ですよ、少々立地が悪くて客がなかなか増えないんですよ」

勇者「ま、マスターも人が悪いですね」

魔王「驚かさないで下さいよ」

マスター「すみません、これはお詫びも兼ねてのおごりです」コトトッ

勇者「いえ構いませんよ」

魔王「偶にならいいものですから」

マスター「ありがとうございます、ではまた来て下さいね、私はいつでもここにいますから」

勇・魔「「はい」」



マスター「……滅んだ町ですか、懐かしいですね……あれから何年経ったかな?」カチャカチャ

マスター「あの頃はもっと……おっと、もう年ですかね?」キュッキュッ

マスター「……昔を懐かしむのはまだ早いと思ってましたが」フキフキ

マスター「さて店じまい、明日も楽しみですね」カタン

とりあえずここまで。
読んでくださってありがとうございます、ではまた次回に。

ちょろちょろ書きます。



カランカラン

マスター「いらっしゃい、お久しぶりですね」

勇者「どうも……」

マスター「また何かお悩みで?」

勇者「ええ……とりあえずお酒を、ちょっと強めのを」

マスター「分かりました」

カランカラン

マスター「おやこちらさんもいらっしゃい」

魔王「あ……お久しぶりですね」

勇者「ええ……」

マスター「何になさいます?」

魔王「お酒ください、少し強いやつで」

マスター「分かりました、それで……やはり悩みがおありで?」

魔王「はい……」

マスター「お二人共どうぞ、では今日もお聞きしますよ」コトトッ

勇・魔「「はい」」



勇者「実は……先日仲間が」

魔王「例の8人ですか?」

勇者「はい……そのいつもの流れだったんですが」

魔王「何かありましたか?」

勇者「その……武闘家が抜けまして」

魔王「良かったじゃないですか、相手が減ったんでしょう?」

勇者「いえむしろ大変に」

魔王「何故ですか?」

勇者「その……武闘家が抜けたのは、旅が出来ないからで」

魔王「旅が?でも怪我とかなら……ん?まさか……」

勇者「はい……そのまさかで、さすがに子供が出来たのに連れて行く訳には……」

魔王「確かに……、でも人数は減ったんですから、少しは楽に」

勇者「いえ……むしろ増えたと言うか、武闘家が抜けた分を他の仲間が、しかも先を越されたと言って、今まで以上に……」

魔王「……きついですね」

勇者「もう出ないのに無理やり」ブルブル

魔王「……私も」



魔王「私の方もです」

勇者「え?」

魔王「先日話した部下達ですが」

勇者「10人でしたよね?」

魔王「はい……その1人の、側近が……デキまして」

勇者「やはり休暇を?」

魔王「いえ……デスクワークなどを中心にして、動ける間は仕事をすると言って聞かなくて」

勇者「少し心配ですね」

魔王「まあ無理をする奴じゃないので、大丈夫だとは想うんですが、こちらも他の部下達が」

勇者「盛り上がってますか?」

魔王「はい……、我先にとせがんできて、もう出ちゃいけないものまで出したのに」ブルブル

勇者「気をしっかりもってください」



マスター「大変なようですが、とりあえず言わせていただきます、おめでとうございます」

勇者「あっはいどうも」

魔王「まあ確かに、子供が産まれる事自体は嬉しいです」

勇者「ただ体がキツいだけで」

魔王「まさにそこですよね」

マスター「とは言え子供は可愛いものですよ、自分の子供は特に……ね」

勇者「マスター……」

魔王「マスターもお子さんが?」

マスター「ええまあ……とっくにひとりだちしましたが、それでも思い出すのは可愛い頃ばかりですよ」

勇者「お子さんはいくつくらいで?」

魔王「そもそもマスターの年はいくつですか?」

マスター「いくつに見えますか?」

勇者「30後半ですか?」

魔王「子供がひとりだちしたなら、40はいってるんじゃ?」

マスター「ふふふ……残念ですね、こう見えて結構年をくってるんですよ」

勇者「そうなんですか?」

魔王「じゃあ実際はいくつで?」

マスター「そうですね……まあ内緒という事で、こちらは私のおごりですよ、大分若く見ていただけましたからね」コトトッ

勇者「ありがとうございます」

魔王「いただきます」

マスター「まあまた挑戦してください、待ってますから」

勇・魔「「はい」」



マスター「……子供か……」カチャカチャ

マスター「……あいつ、あっちでも元気にやってるかな?」フキフキ

マスター「……ちょっぴり人見知りだったからなぁ」キュッキュッ

マスター「……あれから何年だったかな?……やっぱりもう年かな?うまく思い出せないな」カタン

マスター「さて……また明日か、楽しみですね」

こんな感じで。

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