王「そのー」

勇者「はい？」

王「なんじゃ」

勇者「なんでしょう？」

王「お前さん、いくつになった」

勇者「えっと、１６ですけど…。それがなにか？」

王「うーむ、初めて見たときは、こぉんな小さい娘っこっだったのになぁ。時が経つのは早いものよ」

勇者「あはは、そうですね」

王「そうじゃの」

勇者「ええ」

王「…」

勇者「…」

シーン

王「…お、お前さんももうすっかり年頃じゃのー前会ったときは」

勇者「は、話がループしてますよ王様！」

王「お、おおスマンスマン…」ｱｾｱｾ

王「…なんじゃ、そのー」

勇者「王様、大丈夫ですか？」

王「大丈夫じゃ…えー、ゴホン」

王「そ、それじゃあ用件にはいるぞ」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

勇者「は、はい（何で震えてるのかな…。顔も赤いし）」

王「勇者、お前…」


王「結婚は、したくないか？」

勇者「…」

勇者「え？」

王「だ、だからな、お前ももう１６だし、しかもこんなに可愛いし、な？」ｱｾｱｾ

勇者「えっと」

王「実際モテモテじゃろ～？？！へ、兵士たちの間ではもう、アイドル並の人気じゃぞ～」ｱｾｱｾ

勇者「え、そ、そんな…」

王「だから、結婚してもいいんじゃないかな～…なんて」

勇者「…」

王「…」

勇者「何を言ってるんですか…？」

王「！」ﾋﾞｸｯ

勇者「結婚なんて、そんな…。第一、僕には魔王を討伐するという使命がありますし…」

勇者「確かに１６の女の子たちは、結婚に丁度いい年齢ですが、僕はできませんよ」

王「あー、で、でもな…。きてるのじゃよ…。そのー」

王「えっと、き、求婚の…手紙が」

勇者「」

王「も、モテモテ～」

勇者「なっ、う、嘘です！」ｶｱｯ

王「嘘じゃないんじゃよ！！！」

勇者「な、なんで勇者なんかと結婚する酔狂が…！？いるわけありません！」

王「いるのぉおおおおおおおおおお！！！！」

勇者「い、一体誰なんですか！！？」

王「魔王じゃよ！！！！！！！！！！！！！」ｸﾜｯ

勇者「」

王「」ﾊｧ､ﾊｧ

勇者「いま、なんて」

王「だから…！魔王が、お前との結婚を望んでおるのじゃ！」

勇者「」

王「…」

勇者「今日は嘘ついてもいい日じゃありませんよ、王様」

王「ぐわぁああああああああああああああああああああああ！！！！」

王「ちょっと待っておれぇえええ！！！」ﾀﾞｯ

勇者「…」

ドドドドド…

王「こっ、これを見ろ勇者ぁああああああ！！！！」ﾊﾞｯ

勇者「はっ、はい！手紙、ですか！？」

王「差出人は誰だぁああああああああああああ！！！？」

勇者「まっ、魔王です！刻印もしてあります！」

王「内容を読んでみろぉぉぉぉおおおおおおおお！！！！」

勇者「え！？えっと…」

我、汝の国の麗しき勇者を求む。

無事彼女を我が妻としたなら、即刻世界征服は取りやめると誓う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　魔王

勇者「…」

王「…」ｾﾞｪｾﾞｪ

勇者「う、そ」

王「現実じゃよ」ﾊｧﾊｧ

勇者「…で？その魔王ってどんなやつなんですか？」

王「…わしじゃよ」

勇者「…やだ…かっこいい…//」

王「…で」

勇者「」

王「どう？」

勇者「…いや、分かりません」

王「だよねー」

勇者「あ、あの」

王「なに？」

勇者「お家でゆ、ゆっくり…考え…まひゅ」ｷﾞｷﾞｷﾞ

王「お、おお。気をつけて帰れ」

勇者「…」ｷﾞｷﾞｷﾞ　　ｸﾙﾘ

勇者「…」ﾃｸ　ﾃｸ　ﾃｸ

バタン

王「…」

王「ウブじゃのー」

～城下町～

勇者（これは夢だこれは夢だきっとそうだ）ﾓﾝﾓﾝ

勇者（だ、大体僕のどこに魅力があるっていうんだ！）

町娘「でね～」

町娘２「やだ～」

キャピキャピ

勇者（あ、あんなに綺麗でキャピキャピしてて、戦いも無縁そうな女の子がいるのに）

勇者（そ、それに僕は敵なんだよ？魔王のいっちばんの？）

勇者（ありえないありえない）ﾓﾝﾓﾝ

兵士「よっ、ゆーうしゃ」ﾎﾟﾝ

勇者「！！！！？」ﾋﾞｸｯ

兵士「お、おお！？そんなにびっくりしなくても」

勇者「へ、兵士さん、こんにち…わ」

兵士「はい、こんちわ。どうしたの怖い顔して歩いちゃって」

勇者「え！！ぼ、僕そんな酷い顔してましたか…」

兵士「いやいやいや、いつも通り美人さんだよ～」

勇者「…」

兵士「えっ、なに怖いよ黙らないで」

勇者「あの、兵士さん」

兵士「な、なに？」

勇者「兵士さんって、いつ結婚しましたか」

兵士「え！？俺？俺はね～…１６のときかな。うるさい幼馴染と結婚したよ」

勇者「そ、そでひゅか」ﾜﾅﾜﾅ

兵士「何でそんなこと聞くんだ？まさか興味あるとｋ」

勇者「あの！！！！！僕！！！！し、失礼します帰ります！！！」ﾀﾞｯ

兵士「おわ！？ちょ、まっ」

ダダダダダダ…

兵士「はやっ…」

兵士「だークソッ、今日もお茶に誘えなかったぁ」

兵士「それにしてもあの子…」

兵士（顔が真っ赤っかだったような）

～勇者の村～

勇者「……！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

村長「やあお帰り～」

勇者「そ、村長…！た、ただいま」

村長「そんなに慌ててどうしたんじゃい？顔が真っ赤じゃぞ？」

勇者「え！？そ、そんな！」ﾊﾞｯ

村長妻「あなた～。夕飯のしたく、できましたよ～」

村長「おーう、今行くぞ～。じゃあの、勇者ちゃん。今日の晩御飯はシチューでの。楽しみじゃあ」

村長妻「ほらほら、そんな薄着してぇ。風邪ひきますよぉ」

村長「ほっほ。心配性じゃのー」

勇者「…」ｶｧｧｱ

勇者「村長さ～ん！」ﾊﾞｯ！

王「…と、見せかけてわしじゃよ」ﾍﾞﾘﾍﾞﾘ！

勇者「やだ…また…///」ｷｭﾝ…

勇者「…さよならっ！」ﾀﾞｯ

ダダダダ

宿屋「ふー今日も働いたなぁ」

宿屋妻「ふふ。お疲れ様、あなた」

勇者（…ふうふ）ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

農夫「ふぃー。ただいま」

農夫妻「あっ、おかえりなさい、あなた～」

勇者（夫婦、夫婦、ふうふ、ふーふ…）ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

>>20　ワロタｗｗｗ王様どんだけ結婚したいんだｗｗ

バタン！！！

勇者「た、ただいまお母さん」ﾊｧﾊｧ

母「あんたはもぉおおおお～！！！ドアは静かに開けろって言ってたでしょうがぁ～！」

勇者「！あ、ご、ごめん」

母「遅かったのねぇ。夕飯準備できてるわよ！手を洗って！うがいして！着替えて！」

勇者「い、言われなくてもするもん…」ｾﾞｪｾﾞｪ

勇者（心臓うるさい…）ﾊﾞｸﾊﾞｸ

ジャー　ゴシゴシ

勇者（魔王って）

ガラガラ

勇者（どんな人なのかな）

ヌギヌギ

勇者（私なんかを妻にしたいなんて…）

ゴソゴソ

勇者（よっぽど変な人なんだろうな）

勇者（って）

勇者（待て待て…！何を考えてるの僕は）

勇者（だ、誰が結婚するって…！け、結婚なんか…）

母「はい～今日はソテーだよーん。いただきます」

勇者「いただきます」ﾍﾟｺ

勇者「…」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

勇者「ね、お母さん」

母「なに？」

勇者「お母さんってさ…い、いくつの時に結婚したの？」

母「ぶふっ」

勇者「わぁ！？汚いなぁ！」

母「ごめんごめんｗｗｗ何よぉいきなり～」

勇者「べ、別に深い意味は…ないよ。答えてよ」

母「そおねぇ。もう、あんたの歳には、してたかな。お父さんのアタックがすごくってぇ」

勇者「そ、そうなんだ」

母「もぉあの頃の私ってば本当にモテてたからねぇ～。男っ気のないあんたとちがって」

勇者「勇者に男なんて必要ないもん」

母「まぁ、今はそうなんだけどぉ…。大丈夫かねぇ。旅が終わって、嫁の貰い手があるか」

勇者「…（あるんだよ、それが）」

勇者「ごちそうさま」ｶﾞﾀ

勇者「もう寝るね」

母「あらそう？おやすみー」

ダダダダ

母「階段はゆっくり上がれって言ったでしょぉおおお！！？」

～勇者の部屋～

勇者「…」ﾎﾞﾌﾝｯ

勇者（どーしよ）

ゴロンゴロン

勇者（確かに…平和に解決するのはいいことだ）

勇者（これって結構…重要な選択だよね）

勇者（…被害が一番少ないし、和解だってできるもんね）

勇者「…」

勇者「決められないよ」ﾎﾞｿ

ゴロン

勇者「…」
……
…

～朝～

ガチャッ

母「勇者ぁ～～～！！起きなぁ～～！！」

勇者「ひゃ！？」

母「はいはい起きた起きたぁーー！来客だよ！」

勇者「ら、らいきゃく？」

勇者「誰かな…」

勇者「…」

勇者(なんか…視線を感じるなぁ)ｷｮﾛｷｮﾛ…

勇者「…気のせいか」



王(…わしじゃよ)

勇者「はい…」ｶﾞﾁｬ

王「グッモーニン」

バタン

王「こらこらこらこら！！！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

母「誰だった？」

勇者「多分人違いだと思うよ…」

王「開けろ勇者！！！！」ﾊﾞﾝﾊﾞﾝ

勇者「ご、ごめんお母さん、二階行ってて！」

ガチャ

王「あーびっくりした！これ、勇者！王がせっかく訪ねてきたのに、なんだその態度は！」

勇者「び、びっくりしたのはこっちです…！な、何ですか？」

王「まぁ昨日の話以外にないじゃろ」

バタ

王「…！」ｷﾞﾘｷﾞﾘｷﾞﾘ

勇者「足をどかしてください！」

王「逃がさんぞ勇者ぁあああ」ｷﾞﾘｷﾞﾘｷﾞﾘ

王「お前の人生を決めるのに、無神経だとは思う…！」

勇者「あ、足を」

王「だがな、人類のためだと思って…！一肌脱いでくれんか！」

勇者「…」

ガチャ

王「おわっ！」ﾄﾞｻ

勇者「す、すみません王様！ついご無礼を」

王「いいんじゃ、いいんじゃ。気持ちは分かる」ﾊﾟﾝﾊﾟﾝ

王「勇者よ」

勇者「はい」

王「まぁ、確かにいきなり結婚なんていうのは、早すぎたな。すまん」

勇者「えっと…は、はぁ」

王「だからな、お試し期間なんてどうじゃ？」

勇者「は」

母「あらぁ～～～王様じゃないですかぁ！どうしたんです、こんな所に！」

王「まあ色々とな。上がらせてもらうぞ」

勇者「ちょっと待って」

母「今お茶お出ししますねぇ～」

王「おかまいなく。それより母殿、ここに座ってわしの話を聞いてくれんか」

勇者「王様、まｔ」

王「実はな、勇者に縁談の話が入ってきたのだよ」

勇者「！！！！！！？」

母「あらまぁーｗｗｗｗｗ」

王「だから、相手との見合いをかねて、勇者をお借りしたいんじゃが」

勇者「」

母「あっはははｗｗｗあんたも隅におけないわねぇ！王様、どうぞどうぞ！こんな子でよければ」

勇者「」

王「ああ、ありがたいこと。では、借りていきますぞ」

母「はーいｗｗｗ勇者、ちゃんと気に入られるよう頑張りなさいよｗｗｗ」

バタン

王「計画通り」

勇者「絶対に許しません」ﾌﾙﾌﾙ

母「それで…この子の相手は…？」

王「…わしじゃよ」

勇者「…やだ…強引…///」

王「まぁ、いいではないか。お試しじゃ！相手がよければ、結婚！良くなかったら、切捨てい！」

勇者「…」

王「気楽にいこうじゃあないか！」ﾎﾟﾝ

勇者「…」ﾊﾞｼ

王「Oh」

大臣「嫌われてしまいましたね」

兵士「無理もねぇや。デリカシーなさすぎ」

勇者「もういいです。あきらめました」ﾊｧ

勇者「僕だって、平和的に解決できるんならそれでいいです。…行きましょう」

王「あ、ありがとう勇者…！」

大臣「ささ、馬車を用意していますのでそちらへ」

勇者「…はい」

兵士（くぁああ！！何でこんなに切ないんだ！俺の！俺らの勇者ちゃんが！魔王なんかの見合いにぃいい）ﾓﾝﾓﾝ

王「こりゃ、はやく馬車を出さんか！」

兵士「あ、はっ！」

ガラガラ

王「勇者、美味しいお菓子はいらんか？いいパイをコックが焼いての～」

勇者「…」

王「そ、そうだ！勇者、苺水好きじゃろう？いっぱいあるから飲まんか？」

勇者「…」

王「う、UNOしない？？？」

勇者「…（魔王って、どんな人なんだろ）」ﾎﾞｰ

王「…」ｼｸｼｸ

～魔王城付近の森～

勇者「よいしょ」ﾄﾝ

王「…結局一言も喋ってくれなかったの」

兵士「まぁ、王様がほぼ悪いですし」

勇者「えっと…ここからは一人で行ったほうがいいですよね」

大臣「うむ。危険だとは思うが…。色々とすまん」

王「申し訳ないな。辛いと感じたら、すぐ戻ってきてよいからな」

勇者「…」ｺｸﾝ

勇者「じゃあ、行ってきます」

王（すまんのうすまんのう）

大臣「生きてきて最大の罪悪感が…」

兵士「グッバイ俺のアイドル」

～魔王城・城門～

勇者「ハァ、ハァ…。けっこう疲れたな」

勇者「城門が見えてきた…もうちょっと、もうちょっと…」

勇者「…」

デーン

勇者（大きい門…）

勇者「あ、あのぉ…勇者です。えっと…魔王からの手紙を受けて来ました」

勇者「…」

ドンドンドン

勇者「…帰りたいよぅ」ｼﾞﾜ

ガチャ

勇者（あれっ、鍵かかってないや。開いちゃった）

勇者「あ、の…」

ギィイイ…

勇者「ゆうしゃ、です…。誰かいませんか」

バタン！

勇者「ひゃああ！！？」ﾋﾞｸｩ

？？？「お待ちしておりました、勇ｓ」

勇者「く、暗いよぉ！！！怖いぃい！なっ、何にも見えないーー！」

勇者「あ、開けてくださいーーー！！誰か、誰か来てくださいぃいい！！」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

？？？「…」

パチッ

勇者「こわいよ…って、あれ？電気ついた」

？？？「えーゴホン、ようこそ、勇者様」

勇者「！！！？」ﾋﾞｸｯ

勇者（オ、オ、オーガだ！！）

オーガ「お待ちしておりましたよ」ﾆｺ

勇者「は、はい…」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

オーガ「（勇者の割りに怖がりだなぁ）安心してください、あなたに危害は加えません」

勇者「は、はい…」ﾎｯ

オーガ「私はオーガ。この城の執事長をやております。お見知りおきを」

勇者「はい…」

オーガ「では、早速魔王様にご挨拶しに行きましょう」

勇者「えっ、えっと！？」ｶｧｱ

「待ちなさいよぉ、オーガ！」

オーガ「ああ…。何のようだ魔女。まだ待機していろと言っただろ」

魔女「うるッさいわねぇ！女の子には準備が必要なのよ！ね？」

勇者「え？は、はい…」

オーガ「…まあそうだが」

魔女「とりあえず、お召し変えをしましょう、勇者ちゃん？」

勇者「は、はい…よろしくお願いしま、す」

魔女「さ、こっちよ。あ、オーガは来なくていいから！」

勇者「…」ｱｾｱｾ

～廊下～

魔女「ごめんなさいねぇ、びっくりしたでしょう」

勇者「はい…」

魔女「うちの魔王様、ちょっと変わってるの。でもでも、いい人よ」

勇者「そうなんですか」

魔女「そおよぉ！お顔も美形だし、背もスラっと高くて、色白で…。照れ屋さんなところもあるのよ」

勇者（何だか人間くさいんだなぁ）

魔女「はい、この部屋よ」ｶﾞﾁｬ

勇者「わ…。い。衣装がこんなに」

魔女「すごいでしょう？魔王様ったら大急ぎでかき集めたのよ」

勇者「え、そんな…」ｶｧ

魔女「あなたは美人さんだから、何でも似合うわね。ほらっ、これなんかどう？」

勇者「あ、あの（うわっ…！こんなﾌﾘﾌﾘしたもの、着たことないや…！）」

魔女「あっ、こっちのピンクのやつなんかどう？ほら、背中が開いていてセクシーでしょう」

勇者「ひゃ！？こ、こんなもの無理です！」

魔女「えースタイルいいから似合うと思ったのにぃ」

勇者「い、いえ！！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

魔女「じゃあこっちのは？」

勇者（な、なにこれ！！短い！！ふ、太ももがいっぱい出ちゃう！）

勇者「あ、あの！」

勇者「こっちの…。白いシフォンみたいなやつ…が、いいです」

魔女「え？こんな地味なの？もったいないわよ、もっと派手なのにしたら？」

勇者（丈も、露出度も丁度いいし…）

勇者「こ、これがいいです」

魔女「そっか！うん、まぁ白だったら清楚なかんじでいいかも」ﾆｺ

魔女「じゃあ、着替えましょう。脱いで？」

勇者「！？じ、自分で、でき…ます！」

魔女「意外と着るの難しいのよぉ！さ、脱げ脱げぇ～！」ｸﾞｲｸﾞｲ

勇者「！！や、や」
……
…

～魔王の部屋～

コンコン　ガチャ

オーガ「入りまっす」

魔王「…」

オーガ「彼女、来ましたよ。あー久々に堅苦しい事した」

魔王「…」

オーガ「いやぁ、水晶で見たよりずっと綺麗な子でしたねぇ。隅におけませんな～」

魔王「…」

オーガ「はぁ、緊張しなくても大丈夫ですって」

魔王「…そんなのではない」

オーガ「嘘つかないでください。ガッチガチですよ」

魔王「…」

オーガ「あの子、きっと優しい子ですよ。あなたのことだって…」

ガチャ

ゴーレム「お邪魔しまっすｗｗｗ」

オーガ「ノックしろ低脳！」

ゴーレム「玉座の間のセッチング終わりましたｗｗｗ」

ゴーレム「魔王様も着替えてくださいねｗｗｗ」

魔王「…」

オーガ「では、魔王様。準備が出来次第、お声をかけてくださいね」

魔王「…分かった」

バタン

魔王「…」

魔王「…勇者…」

オーガ「…はー」

ゴーレム「どしたのｗｗｗ」

オーガ「いや、魔王様ったらよ、昨日からあんなにふさぎこんじゃって」

ゴーレム「確かにｗテンション低いってゆうｗ」

オーガ「勇者が来るってなったとたん、あれだもんなぁ。まぁ無理も無いか…」

オーガ「自信がなくなるのも分かる。だって魔王様は…」

側近「おらああああああ！！！何やってんだ社畜どもがぁあああ！！働けやぁああ！！」

オーガ・ゴーレム「げ、側近さん」

側近「無駄話してる暇あったら手を動かせ手を」

オーガ「いやいや、もう仕事ないんですよ」

側近「あ、そう？…というか魔王様はどうであったか」

オーガ「相変わらずっす」

ゴーレム「思春期っすｗｗｗｗ」

側近「ふーむ、困ったものだなぁ。もう少しシャッキリしてほしいんだが」

オーガ「まぁしょうがないでしょう。緊張もあるし」

側近「うむ…。心配だな」

側近「まぁとにかく重要なのは、魔王様があのことを何時、カミングアウツするかだ」

側近「…みんなくれぐれも、口を滑らせないようにな！」

オーガ「了解」

ゴーレム「いえっさｗｗｗ」
……
…

勇者「ど、どうですか？」ﾌﾜｯ

魔女「めっさ綺麗よ。ばっちりね！」ﾆｯｺﾆｯｺ

勇者（こんなキラキラしたもの初めて…。く、靴もヒール高いなぁ。転ばないようにしないと」

魔女「あ、着ていた服と装備は預かっておくわね」

勇者「あ、はい」

勇者（剣がないと落ち着かないなぁ）

魔女「じゃあ、玉座の間に行きましょうか！」

勇者「は、はい」

勇者（歩きにくいや…。僕以外の女の子って、こんなもの履いてるのか）

魔女「緊張しなくてもいいからね」

勇者「は、はひ」

勇者「…あれが…魔王…」

魔王「よき来てくれたな、勇者よ…私は…」

勇者(やだ…超イケメ…)

王「…わしじゃよ」ﾊﾞｻｯ！

勇者「……これは、これで素敵///」ぽっ…

～玉座の間～

側近「…」ｿﾜｿﾜ

側近「魔王様、まだですかー！？」

「まだだ」

側近「は、はぁああ！早くしてください！勇者が来てしまいますぞ！」

オーガ「はー…。照れ屋さんなんだから」

魔女（ごるぁぁああ！！女の子待たせてんじゃねぇよハゲども！！はよ入れろ！）

ゴーレム「魔www女ｗｗｗキレるなってゆうｗｗｗ」

魔女「ごめんね、勇者ちゃん。もう少し待ってて」

勇者「は、はい」ｶﾞﾁｶﾞﾁ

魔女「だーいじょうぶ！お顔を見せて、挨拶するだけでいいのよ？」

勇者「…」ﾄﾞｯｸﾝﾄﾞｯｸﾝ

魔女（ウブねぇ）

側近（魔女！準備ができた！入ってよいぞ）

魔女「あ、準備できたみたい。さ、行きましょう」

勇者「は、い（どうしよう、心臓が破れそう）」ｶﾞﾁｶﾞﾁ

～玉座の間～

魔女「魔王様、勇者様を連れて参りました。さ、こちらへ。勇者様」

勇者「…」ﾊﾞｯｸﾊﾞｯｸﾊﾞｯｸ

魔女（頭を下げていてね。魔王様が何か言うまで、顔を上げちゃだめよ）ｺｿｯ

勇者（はい）ﾊﾞｸﾊﾞｸﾊﾞｸ

勇者「…」

カツ　　カツ　　カツ

勇者（ま、魔王がこんなに近く…。すごい力を感じる…。）ｿﾞｸ

勇者「…」ﾋﾟﾀ

勇者「勇者です。お招きいただき、光栄です、魔王様」

魔王「…」

側近「…」ﾄﾞｷﾄﾞｷﾄﾞｷ

魔王「よくぞ参った、勇者。顔を上げてよいぞ」

側近（うわぁああああああ良かったあぁああああああああマトモなこと言ってくれたぁああ）

勇者「は、はい（澄んだ、ちょっと高い声だな…）」

勇者「…（ま、魔王の姿がついに）」ｽｯ

勇者「…！…あ、…あぁ…」ｶﾞｸｶﾞｸ…

王「すまんのぅ…わしじゃよ」ﾄﾞﾝ！

勇者（…ついに）

スッ

勇者（え）

魔王「…」

魔王
E　仮面
E　分厚いマント

勇者（見えない！！！！？）ｶﾞｰﾝ

勇者（ず、ずるいよ！こんなの！！）

魔王「…」

オーガ（やばい魔王様フリーズしてやがる）

側近（威厳を保てぇえええええ！！！お願いぃいいい！！！）

勇者「」

魔女（嫌だこの子、フリーズしてる！？）

魔王「…勇者よ」

勇者「は、はい」ﾋﾞｸ

魔王「ご苦労であったな。…下がってよいぞ」

勇者「えっ」

魔王「…」ｽｸ

側近「えっ」

魔王「…」ｽﾀｽﾀ

オーガ「えっ」

魔女「えっ」

ゴーレム「えっ」

バタン

シーン

側近「…」

側近「…」ﾊｯ!

側近「ま、魔王様！お待ちを！！」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

魔女「…えと」

勇者「…」ﾎﾟｶﾝ

魔女「えーと、ゆ、勇者ちゃん。えーと…お、お部屋に案内しましょうか！？ね！？」

勇者「…」ﾎﾟｹｰ

オーガ（どういうこと）

ゴーレム（わかんねぇよ）

オーガ（お前驚きのあまり、草どっかいってるぞ）

ゴーレム（あｗｗｗｗｗ）

～廊下～

側近「まおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

魔王「…」

側近「止まれ貴様ぁああああ！！説明しろおおおおお！！！」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

魔王「…」ﾋﾟﾀ

魔王「え、だって顔見せっていったから」

側近「違うだろ！！なんかもっと気の利いた話とかするでしょ！」

側近「勇者の顔見たか！？ポッカーンだったぞ！この馬鹿！コミュ障！」

魔王「うるさいな」ﾌﾟｲ

魔王「…緊張してたんだ、つい」

側近「は、はぁあ」

魔王「あんなに勇者が近くにいたらって考えるとな、なんだか言葉が出なくてな」

側近「で、でも。その格好も一体何のつもりです？そんなに体と顔を隠して」

魔王「…」

魔王「勇者が、我を見たら」

魔王「……」

魔王「怖がる。きっと、驚かれる」

側近「魔王様…」

魔王「…」ﾌｲ

魔王「部屋に戻る」

～客室～

魔女「ごめんなさいね、勇者ちゃん」

勇者「いえ…」

魔女「魔王様、ものすっごく緊張してたのよ。機嫌が悪かったわけじゃないの」

勇者「はい、分かります。僕も、倒れそうだったから」ﾆｺ

魔女「うわぁあああいい子ぉおお！ありがとうありがとう！うちの魔王様を嫌わないでね！」ｷﾞｭｳ

勇者「は、はい！そんな、嫌いになるもなにも…！まだ、お互いよく知りませんし」

魔女「あ、そ、そうよね」ﾊﾟｯ

勇者（ぶっきらぼうな人かな…とは思ったけど）

魔女「ま、とにかく、この部屋があなたの部屋よ。自由に使ってね」

勇者「はい」

魔女「何かあったら、野郎でもあたしでも、誰にでも声をかけてちょうだいね」

勇者「ありがとうございます」

魔女「じゃあね、勇者ちゃん」ｶﾞﾁｬ

バタン

勇者「…ふぅ」

勇者「うううううう」ﾎﾞﾌﾝ

勇者「は、恥ずかしかった！恥ずかしかったよぉ！」ｺﾞﾛｺﾞﾛ

勇者「はぁ、はぁ」

勇者（あの人と結婚するかもしれないんだ！しれないんだぁああ！）ｺﾞﾛｺﾞﾛ

～会議室～

側近「えー。お集まりありがとー」ｹﾞｿ

魔女「アンタやつれた？目に光がないわよ」

側近「えーあの魔王様の奇行についてですが」

ゴーレム「奇行ｗｗｗｗｗｗ」

側近「本人いわく、緊張してたと」

魔女「なにそれー。そんなの、勇者ちゃんだって一緒なのに」ﾑｩ

オーガ「まぁ、繊細なお方だから」

魔女「だからって…。あの格好はまずいわよ」

側近「そう、そこなんだよなぁ…」

ゴーレム「隠し通していいもんじゃないよねｗｗｗ」

側近「お顔と体を見せるよう説得してみたんだが」

側近「麻痺魔法を唱えてきやがったんですよ、あのコミュ障」

ゴーレム「あｗｗｗそれでそんなやつれてｗｗｗ」

魔女「お可愛そうに。聞く耳もたず、か」

オーガ「どうすっかなぁ…。勇者もビックリしちゃうよな…きっと」

魔女「うん…」

魔女「とりあえず、夕食のときにお話ができる機会を設けたほうがいいわ。その方が、円滑にいく」

側近「そうだな。まー、あとは魔王様しだいだけど」ﾊｰ

側近「はぁ、もう頭痛いわ」

側近「んじゃー、解散！メイド、執事のみんなにも、余計な事を言わないように釘さしとけよ」

魔・ゴ・オ「了解」

～客間～

勇者「…」

勇者「はぁ、着替えよ」ﾑｸ

勇者（クローゼットに、着替えが入ってるって言ってたよね）ｶﾞﾁｬ

勇者「うわぁ…。何、この服…どんな生地使ってるのかなぁ」

勇者「よいしょ、よいしょ」

勇者「ひゃあ。可愛い服だなぁ、お、落ち着かない…」

勇者「…やっぱり僕には、男っぽい勇者の衣装がお似合いかな」ｱﾊﾊ

勇者「…散歩とか、していいのかな」

勇者「…」ｿﾛ

ガチャ

勇者（何をコソコソしてるの？監禁されてるわけじゃないんだから…。堂々といこ）

勇者「いってきまーす」ﾊﾞﾀﾝ

勇者「えーと、この階段を下りた先に、綺麗な庭があったんだった」ﾃｸﾃｸ

狐耳「…」ﾓｸﾓｸ

勇者（わっ、獣人の女の子だ！仕事中、だよね…。邪魔しないよういこ）

狐耳「」ﾋﾟｸ

勇者（あ、コッチ見た）

狐耳「ゆうしゃだ」

勇者「え、あっ、はい勇者です」

狐耳「…可愛い」

勇者「え？そ、そんなこと…ない、です」ｶｧ

狐耳「魔王のタイプ。ばっちり」

勇者「え？？そうなの…？」ｶｧｱｱｱ

狐耳「うん。あいつ、勇者みたいな健康的な子、好き。純情そうなとこも」

勇者「…」ｶｧｱｱｱｱｱｱ

狐耳「どこか行くか？」

勇者「さ、散歩に…」

狐耳「ウチも行く。案内したげる」

勇者「ありがとう」

狐耳「礼はいらない。仕事サボりたいだけ」

勇者「あはは…」

狐耳「庭行く？」

勇者「うん、行きたい！」

狐耳「付いてきて」ﾃｸﾃｸ

狐耳「勇者、魔王どう思う？」

勇者「え！！？ど、どうって」

勇者「どうって…。ち、ちょっと気難しい人なのかなって」

狐耳「惚れたか？」

勇者「！？ほ…！？ま、まだ分かんないよ！」

狐耳「そう。魔王は惚れてる。勇者にぞっこん」

勇者「…」ｼｭｳｳ

狐耳「あいつ、ちょっとぶきっちょ。好きなのに正直なれない」

勇者「そうなん、だ」

狐耳「うん。魔王、いつもは優しい。あとアホ。とても話しやすい、いいやつ」

狐耳「でも、勇者のことになると人変わる。あいつ、ウブだから」

勇者「そっか…」

狐耳「うん。勇者は、好きな人いないか？」

勇者「ぼ、僕は…。恋愛なんてしたことないよ」

狐耳「そんなかんじだな。魔王も、恋愛したことない。これ、初恋」

勇者「…う」ｶｧ

狐耳「可愛い。勇者」ﾆﾔ

～庭～

狐耳「ついた。ここ庭」

勇者「うわぁ…。すごく綺麗」

狐耳「魔王、植物好き。お忍びで買う」

勇者「そうなんだ！僕も好きだよ」

狐耳「そうか。ウチは果実は好き。あとどうでもよし」

勇者「あはは！面白いんだね、君」

狐耳「ふふ。自由に見ていい。ウチ、ついでに水やる。なにかあったら呼んで」

勇者「分かった！」ﾀﾀ

～魔王の部屋～

魔王「…」

魔王「水晶、勇者を」

水晶「へい」ﾎﾞﾜ

魔王「…」

『わぁ…。みたことない色の薔薇がある。綺麗…』

魔王「…」ｷｭｯ

水晶「魔王様ぁ。水晶から見てるだけじゃ、切なくないですか？」

魔王「…ああ」

水晶「全く、人が変わったように萎れて。元気だしたらどうです？愛しい勇者が着てくれたんですよ」

魔王「そうだな。でもな、嬉しいはずなのにな、なんだか…」

『大きい木…すごいなぁ…』

魔王「…」

魔王「…」ｽｸ

水晶「おや？どこ行くんで？」

魔王「ちょっとな」ｶﾞﾁｬ

勇者「…」

ヒラ

勇者「あ、蝶…」

ヒラヒラ

勇者「綺麗。待って…」ﾀﾀ

勇者「…つかまえ、」

勇者「た！」ﾎﾟﾌ

勇者「…」

勇者（なに、この気配…）

勇者「…」ｸﾙ

勇者「！」

魔王「蝶は好きか」

勇者「…あ」

勇者「ま、魔王…さま」

魔王「そうだ」

勇者「！こ、こんにち…は」ﾍﾟｺ

魔王「うむ」

勇者「…」ﾊﾞｸﾊﾞｸ

ヒラ

勇者「…！あ」

魔王「すまんな。行ってしまったか」

勇者「！い、いえ」

魔王「…あの蝶はな」

勇者「は、はい」

魔王「ここにある、ある貴重な花の蜜しか吸わないのだ」

勇者「そうなんですか」

魔王「ああ」

勇者「…どんな花ですか？見たいです」ﾆｺ

魔王「…！」

魔王「つ、ついて来い」ｸﾙ

勇者「はい」

スタ　スタ　スタ

勇者「綺麗な庭ですね」

魔王「…そう、か。気に入ってもらって嬉しい」

勇者「珍しい、見たこと無いものもありますね」

魔王「…時々、下界に降りて調達してくるのだ」

勇者「そうなんですか」

勇者（ううう、ドキドキしてしょうがない）

魔王「…これだ」

勇者「あ…。意外と、小さいんですね」

魔王「香りをかいでみろ」

勇者「…」ｽｩ

勇者「あ…。すごくいい香りです。落ち着きます」

魔王「うむ…。我も、この花の香りは好きだ」

勇者「…とっても美しいです」

魔王「ああ」

勇者「…」

魔王「…」

勇者（ど、どうしよ。会話…しなきゃ）

勇者「あ、の。魔王様」

魔王「なんだ」

勇者「えっと…。どうして、…お顔を隠しているんですか」

魔王「…」ﾋﾞｸ

勇者「！あ…。ご、ごめんなさい」

魔王「いや。いい。…我は…」

魔王「…」

魔王（見せられない）

魔王（見たら、勇者は）

魔王「…すまんな」

勇者「いえ！ぼ、僕こそ変なことを聞いて…！」

魔王「いい」

魔王「…」

魔王「行こう」ｽｸ

勇者「は、はい」

魔王「…」ｽﾀｽﾀ

魔王「勇者」

勇者「は、はい」

魔王「我は怒っていないぞ」

勇者「はい…」

魔王「…夕飯を、一緒にどうだ」

勇者「…！ぜ、ぜひ」

魔王「そうか」

魔王「では」ｸﾙ

魔王「部屋に戻る。あとは、狐耳に案内してもうらうとよい」

勇者「はい…。ありがとうございました」

魔王「…」ｺｸ

スタスタ

勇者「…」

勇者（ききききき緊張した！！！）

勇者（ど、どうしよう！失礼な事ばっかりしてた気がする！）

魔王「…」ｽﾀｽﾀ

魔王「…」ﾋﾟﾀ

魔王「…」ﾄﾞｻ

魔王（きききききき緊張した！！！）

魔王（怒ったって思われたか！？いやでも、夕飯誘えたし…！！）

魔王（うわぁあぁぁぁ！勇者、顔こわばってた！！）

魔王「くぅ…」

オーガ「…」ﾆﾔﾆﾔ

魔王「貴様」

オーガ「…」ﾆﾔﾆﾔ

魔王「どこからだ。どこから見ていた」

オーガ「ぜ　　ん　　ぶ」

魔王「……！！」ｷﾞﾘｯ

オーガ「まぁ上出来なんじゃないっすかぁ～？同じ趣味見つけられたしぃ」

魔王「こ」

魔王「殺してやる」

～庭～

勇者「…」ﾎﾞｰ

狐耳「仕事終わった」

勇者「そう」

狐耳「勇者、どうかしたか？顔、赤い」

勇者「な、なんでもないよ！」

狐耳「そうか？」

勇者「そうだよ！！！」

～客間～

狐耳「楽しかったか？」

勇者「うん。案内ありがとう、狐耳ちゃん」

狐耳「礼はいらない」

魔女「勇者ちゃーーーん！」

狐耳「おや、魔女。相変わらずうるさいな」

魔女「なによ狐耳！あんた、通路の掃除はどうしたのよ」

狐耳「勇者に城を案内してた。だからしてない」

魔女「テメッ！またサボったな！」

狐耳「違う。だから勇者をな」

魔女「あーーーもういい！後々！勇者ちゃん、夕飯のことなんだけど」

勇者「あ、はい…魔王様とですよね」ｶｧ

魔女「え、なんで知ってるの」

勇者「え？だって…魔王様が、その…。誘ってくれて」

魔女「！！！！！！！！？？？」

狐耳「ほう」ﾆﾔ

魔女「う、う、うそ！！？」

狐耳「やるな。アイツも」

勇者「～～～～っ」ｶｧｧｧ

魔女「よ、良かったじゃない勇者ちゃーん！じゃ、じゃあ早速おめかししましょうね！」

勇者「…」ｺｸﾝ

狐耳「手伝う」

魔女「あんたは、掃除しなさいよ！」

狐耳「あんなもの。低脳ゴーレムにさせればいい」

魔女「じゃあ、服はどれにする？」

狐耳「露出度高めがおすすめ」

勇者「！！？い、いや」

～魔王の部屋～

魔王「誘ってしまった」

側近「良かったぁあぁぁぁあ！もう、隅におけませんね、魔王様」

魔王「…」ﾌｲ

側近「じゃあ、お洒落しなきゃですね」

魔王「別にいい」

側近「何を言ってるんですか！…そのモサいマントも脱ぎなさい」

魔王「駄目だ」

側近「ハア…。魔王様、告白するなら早いほうがいいと思うんですけどね」

魔王「…」

側近「嫌われるのが、怖いんですか」

魔王「ああ」

側近「あの子、優しい子です。魔王様の気持ちをあからさまに拒んだりしません」

魔王「ああ…。でも、まだ心の準備ができない」

側近「そうですか…」

魔王「ああ」

側近「じゃあ、着替えはせめてしてください。終わったら呼んでくださいね」

魔王「分かった」

バタン

魔王「…」

魔王「はぁ」

狐耳「じつに可愛らしい」

魔女「似合ってるわねぇ」

勇者「う…。やっぱり、これ、丈が短すぎます」

魔女「何をいってるのよ！膝丈じゃない！全く、純情なんだから」

狐耳「そうだ。魔女を見てみろ。こんなに太ももを見せ付けて。見苦しい」

魔女「うるさいわね…！」

勇者「…ふふ」

狐耳「おー笑った。笑った方が可愛いぞ」

～ホール～

魔女「失礼いたします」

狐耳「いたします」

勇者「…」ｷﾞｷﾞｷﾞ

狐耳（さっきはあんなに笑ってたのに）

魔女（あー、じれったい子！）

側近「さ、奥の席で魔王様が待っています」

勇者「は、はひ」

勇者「こ、こんばんは」

魔王「こんばんは。待っていたぞ」

勇者「は、い…。ありがとうございます」

ストン

オーガ（いい感じじゃないか？）

ゴーレム（なんか距離感縮んでるｗｗｗｗ）

勇者（また、仮面してるなぁ…。そんなにお顔をみせたくないのかな）

勇者（ん、あ、れ？）

魔女「前菜でございます」ｺﾄ

狐耳「ございますー」ｺﾄ

勇者「わぁ、おいしそうっ」ﾊﾟｧ

魔王「…」

勇者「あっ！！ごめんなさい、声が…」ｶｧ

魔王「いや。食事が好きなようだな」

勇者「……！え、えへへ。はい」ﾆｺ

魔王「…」

魔王「では、いただくとしよう」

勇者「はい」

勇者（ん？）

魔女（あれ？）

狐耳（ちょっと）

オーガ（待てよ？）

魔王「…」ﾋﾟﾀ

側近（仮面！！！！！！！！！！！！！！！！）ｶﾞｰﾝ!!

勇者「…」ﾊﾟｸ

魔王「…」

魔王「…」

側近（うわああああああああああああ）

ゴーレム（見てらんねぇぇぇぇぇぇぇぇええええ）

魔王「…勇者よ」

勇者「はい？」

魔王「お前の話を聞かせてほしい」

狐耳（流石魔王。仮面のせいで食えないのを、話にシフト）

魔女（セーフ？セーフ！）

勇者「僕の話、ですか？…うーん」

魔王「ああ。お前の旅の話を聞かせてほしい」

勇者「それなら、お安い御用ですよ」ﾆｺ

勇者「えーと、面白かったのはですね…」

魔王「ああ」

勇者「北の、音楽が有名な町に行ったときのことで…」

側近（いい感じじゃない？）

オーガ（うん、めちゃくちゃ）

魔女（よし）

ゴーレム（作戦通りｗｗｗｗ）

狐耳（解散！！！）

ダッ

勇者「そこで、一人の楽師に会ったんです。その人は…」

魔王「ああ…」

勇者「…だったんです」

魔王「ほお。それは興味深いな」ｸｽ

勇者（あれ、笑った？）

勇者「魔王様、笑って…くれましたね」

魔王「ああ。そういう勇者だってな」

勇者「！あ…えへへ」

魔王「もっと話をしてくれ。お前の話は面白い」

勇者「えと…じゃあ、次はですね」

……
…

魔王「はは。それはおかしい」

勇者「そうでしょう？僕も、びっくりしちゃって」

勇者「…ってあれ？使用人さんたちは？」

魔王「ふむ。あいつら…」

勇者（二人っきり…だよね？でも、なんでだろう）

勇者（全然緊張しない。むしろ、楽しいや）

魔王「…」

勇者「楽しいですね」ﾆｺﾆｺ

魔王「あ、ああ」

……
…

勇者「ああ、美味しかった。それに、とっても楽しかったです」

魔王「そうか」

魔女「はいはいーお皿下げますねぇ」

魔王（お前等…）

狐耳（どう。楽しかった）

勇者（うん！本当に、話しやすかったよ）

魔王「…では、開きにするとしよう」ｶﾞﾀ

魔王「勇者」

勇者「はい？」

魔王「久々に、楽しい夕食だった。ありがとう」

勇者「！は、はい」

魔王「…」ｸﾙ

勇者「…」ﾎｰ

魔女「ふふ。魔王様、ついに素直になりはじめたわね」

勇者「…いい人でした」

狐耳「惚れたか」

勇者「！！！わ、分かんないってば！！」

魔女「ふふ。じゃあ、次はお風呂ね。狐耳、案内しなさい」

狐耳「はいはい。勇者。おいで」

勇者「うん」ｶﾞﾀ

魔王「ふぅ」

側近「楽しそうでしたね」

魔王「まぁ、な。お前等、勝手にはけて」

側近「いいじゃないですかー。二人っきりにもなれたし」

魔王「ふん」

魔王「風呂にする。着替えをあとでもってこい」

側近「はいはい」ﾆﾔﾆﾔ

魔王「…」ﾌｯ

狐耳「こっち。…ああ！」

勇者「な、なに？」

狐耳「勇者の着替え。用意するの忘れた」

狐耳「とってくる！！勇者。あっちをまっすぐ行って、曲がった先が風呂」

勇者「そう。あ、ゆっくりでいいからね」

狐耳「すまない！」ﾀｯ

勇者「あはは、急がなくていいってば」

狐耳「そうはいかない」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

勇者（魔王様…いい人だったな）

「魔王は、お前との結婚を望んでおる」

勇者（怖い人だったらどうしようかと思ったけど、そんな事なかった）

勇者「…」ﾆｺ

勇者「…えっと、あれ？お風呂場…どっちかな」

勇者「えと、こっちかな」ﾀﾀ

勇者（あ、良かった合ってた）

勇者「結構大きいんだなぁ…」

勇者「おっふろ、おっふろ」ｶﾞﾁｬ

勇者「大きなおっふろ」ﾇｷﾞﾇｷﾞ

ザパン！！

勇者「ひゃ！？」

勇者「あれ…誰か入ってるのかな」

勇者「…」ﾁﾗ

勇者「誰、かな」

ソロ…

勇者「あの、誰か」ｶﾞﾁｬ

キィ

勇者「入ってますか…？」

ジャアアア…

勇者「だれか…？（すごい湯気…）」

勇者「…」

？？？「…！」ｸﾙ

勇者「…！！！！！」

……
…
狐耳「はぁはぁ」

魔女「うわ、何よ狐耳！どうしたの」

狐耳「あのな。勇者の着替えをな」

魔女「なによぉ。それなら今、私が持っていこうと思ったのに」

狐耳「なんだ。そうか…」

魔女「もお。勝手に勇者ちゃんほっぽりだして！」

狐耳「すまんすまん」

魔女「勇者ちゃんが迷ってたらどうするつもり？どこで別れたの」

狐耳「ああ、丁度ここ」

魔女「もう、ここ、左に曲がったら…」

魔女「」ﾋﾟﾀ

狐耳「ん？」

魔女「……や」

魔女「ヤバイ！！！！！！！！！！！」ﾀﾞｯ!!

狐耳「おいおい！なにがヤバイ？」ﾀﾞｯ

魔女「大馬鹿！！！ひ、左には！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

魔女「魔王様の…！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

狐耳「あ」

狐耳「ああああああああああああ！！！！」
……
…

勇者「あ、あの」

？？？「ゆ、うしゃ…」ﾍﾟﾀﾝ

バン！！！！

魔女「魔王様！！」

狐耳「勇者！！！」

？？？「…」

勇者「え、ま、魔王…さま？」

魔女「あっ…」

狐耳「ま、魔女お前！」

魔王「…」ﾍﾀ

勇者「どういう、こと」

魔王「…魔女、狐耳。勇者を出せ」

魔女「はっ、はい…！！」ｶﾞｼ

勇者「待って、離して！」

狐耳「お願い！勇者、言うことを聞いて」

勇者「……！！！」

バタン

魔王「…」

～通路～

勇者「…っ！」

勇者「離して！！」ﾊﾞｯ

魔女「違うの！勇者ちゃん、これは…」

狐耳「……」ｱﾜｱﾜ

勇者「な、なにが違うっていうんですか…！」

勇者「ま…魔王様は」


勇者「…女性、なんです…よね…？」

魔女「…」

狐耳「…」

勇者「そうなんですよね…！？」

魔女「…ええ」

勇者「…！」

狐耳「魔王様は、正真正銘の女性。…勇者が見たとおり」

勇者「そんな…嘘…」

魔女「ごめんなさい…」

勇者「…」

狐耳「騙していたわけではないんだ」

勇者「わ、分かんない…」

勇者「…」ｸﾙ

ダッ

魔女「勇者ちゃん！」

狐耳「お、おい…！」

勇者（どうして、どうして）ﾀﾀﾀ

～魔王の部屋～

魔王「…」

魔王「はぁ」ﾄﾞｻ

側近「魔王様…？」

魔王「ばれてしまった」ﾎﾞｿ

側近「え！えっ…」

魔王「…」

側近「魔王様…」

魔王「出て行ってくれ」

側近「！は、はい…」

バタン

魔王「…」ｺﾞﾛ

魔王「…ゆうしゃ」

魔王「…」

魔王「…」ｸﾞｽｯ

魔王「う、うぅ…く…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

勇者（どうしたらいいの）ﾊｧ､ﾊｧ

勇者（僕と結婚したいっていうのも）

勇者（全部、嘘だったのかな）ﾊｧ､ﾊｱ

勇者（…）ｼﾞﾜ

勇者「…何で泣くの」ﾎﾟﾛ

勇者「…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

『辛かったら、いつでも帰ってきていいんじゃぞ』

勇者「…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

勇者「…」

勇者「ごめんなさい」

タッ

～魔王の部屋～

魔王「ぐっ、ひくっ、ぅう…」ｸﾞｼｯｸﾞｼｯ

水晶「ま、魔王様、魔王様！！」

魔王「…なんだ」ｸﾞｽ

水晶「あの子が！勇者が！」

魔王「…」

水晶「出て行こうとしてます！止めてください！」

魔王「いい。行かせてやれ」

水晶「ど、どうして…！」

魔王「…」

魔王「ごめんなさい、勇者」

～魔王城前・森～

勇者「ハッ、ハッ…」

勇者「…」ﾊｧﾊｧ

勇者（振り向かないで）

勇者（走って、走って…！）

ズガッ

勇者「！！！」ｸﾞﾗ

勇者「きゃ…！！」

勇者（落、ち）

……ドサッ！！

レズかよ畜生...

百合かぁ……、イケメン魔王と可愛い勇者でニマニマしてたのに……
百合好きだからまあいいけど、萌えるし

>>150>>151 何かすまんな…

勇者「い…った」

勇者（しまった…。足元をよく見ておくんだった）

勇者「よい、しょ…」

ズキッ

勇者「ぐ…！？」

勇者（駄目だ、立てない！足が…）

勇者（どうしよう、どうしよう）

勇者（ひ、左足なら…）ﾖﾀ

勇者「！」ｽﾞｷﾝ

勇者「は…っ」ﾍﾀ

勇者（迂闊…だった）

ガサッ

勇者「…！」

魔物「…グルル」

勇者「あ…」

ガサガサッ

魔物２・３「…」

勇者（さ、３体も…！？）

魔物「…」ｼﾞﾘ

勇者「近寄るな！！」

魔物「…」ｼﾞﾘｼﾞﾘ

勇者（しかたない、魔法で…）

勇者「…火炎魔法！」ﾊﾞｯ

魔物「…！」ｻｯ

魔物２「グアアアアアアアアア！！！」

ダッ

勇者「！」

ザシュッ

勇者「い…たっ！！」

勇者（どうしよう、魔法が効かない魔物なんだ！）

ドガッ！

勇者「がふ…っ」

勇者（意識、が）

勇者（遠のいてく）

勇者（………）

勇者（…死、ぬ）
……
…

……
…

勇者「…」

バサッ

魔王「…」

魔物「！」

魔王「…あっちへ行け」

魔物「…キュウ、ン」

魔物「行け！！」

魔王「…まったく」

魔王「剣くらい持って出ればよかったものを」

魔王「…」

グイ

勇者「…ぅ」

魔王「ふむ。意外と軽いのだな」

魔王「…」

魔王「すまない、勇者」

『………しゃ』

『………ゆうしゃ！』

勇者「………う、うぅ…」

『…！…気がついたか…』

勇者「……兵士…さん…」

兵士「……と、思った？」ﾆｯ…

勇者「……え？」

王「…わしじゃよ」ベリリ！

勇者「………抱いて///」ぽっ…

～魔王城～

魔王「おい、誰か！」

側近「ま、魔王様ぁぁぁぁぁ！！何処に行っていたんですか！我々、もう本当に心配して」

魔女「しっ、失恋のジョックがらぁぁ、自殺じぢゃっだのかもっでぇぇぇ」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

狐耳「魔女うるさいぞ」

魔王「…」ﾊｧ

魔王「勇者が怪我をしている。部屋を一つ開けてくれ」

>>161ｸｿﾜﾛｗｗｗｗもうその内容でSS書けばいいのに

魔女「え！？あっ、勇者ちゃん！！」

狐耳「一体…」

魔王「いいから早くしろ。傷口に毒が入る」

側近「たっ、ただいま！！！」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

～客室～

魔王「…よいしょ、と」ﾎﾞﾌ

勇者「…」

オーガ「医療器具を持ってきます？」

魔王「いい。我が魔法でやる」

魔女「て、手伝います」

魔王「いい。みんな、出てくれないか」

側近「…はっ。皆、出た出た」

バタン

魔王「…」ﾎﾟﾜ

勇者「…ぅ」

魔王（あの魔物めが。あざとい所に傷をつくりよって）

勇者「…」

魔王（足も怪我しているのか。大方、崖から落ちたのだろう）

魔王「よし」ﾎﾟﾌ

魔王（まずまずだな。跡は…残らない、大丈夫だ）

勇者「…」

魔王（酷く汚れてるな。体を拭いてやろう…。いや、待て。私がやってもいいものか）

魔王（まぁいい）

魔王（布と湯を持ってこねばな）ｽｸ

バタン
……
…

勇者「…ぅ」

勇者「！！」

勇者「あれ、い…生きてる？」

勇者「うぐっ」ｽﾞｷ

勇者（まだ痛みはあるけど…傷は塞がってる。それに、足も）

勇者（一体誰が）

ガチャ

魔王「…」

魔王「…！」

勇者「あっ…」

魔王「…」

勇者「…あ、の」

魔王「…魔女にあとはさせよう。魔女…」

勇者「駄目！まってください！」

魔王「…」ﾋﾞｸ

勇者「あ、あなたが…これを？」

魔王「…」

魔王「ああ」ｺｸ

勇者「ありがとうございます。危ない所を助けていただいて」

魔王「礼は…いらない」

魔王「原因を作ったのは…私、だからな」

勇者「そんな。勝手に城を飛び出したのは僕で…」

魔王「…」ﾌﾙﾌﾙ

勇者「…ぁ」

魔王「…体を拭こうか」

勇者「は、はい…。お願いします」

魔王「腕をあげて」

勇者「はい…いたた」ｽｯ

魔王「…」ﾌｷﾌｷ

勇者「…」

魔王「…」

勇者「どうして」

魔王「うん？」

勇者「どうして…助けてくれたんですか」

魔王「…」

勇者「なんで、こんな僕を」

魔王「…私を、どう思う」

勇者「え？」

魔王「私の顔と体をよく見てみろ。お前、見たがってたろう」

勇者「…」

勇者（なんて綺麗な女の人なんだろ。…改めて見ると）ｺﾞｸ

魔王「どう思う」

勇者「…えと、とってもお綺麗で、す」

魔王「違う」

魔王「私は…」

魔王「わたしは…」

魔王「女、なんだよ」

勇者「…」

魔王「気持ちが悪いとは、思わないか？」

勇者「そん、な」

魔王「変だろう。女が女を好くとは。なぁ？」

勇者「…」

魔王「…わたし、は」

魔王「醜いだろう。現に私は、お前に拒まれてしまった」

勇者「…！」

魔王「それでもな、お前を…。迷惑がられると分かってるのに、嫌いになれん」

勇者「魔王、さま」

魔王「終わりだ。一泊したら帰るとよい」

魔王「それじゃ」ｶﾞﾀ

魔王「…！」

ギュッ

勇者「…」ｷﾞｭｳ

魔王「…袖を離してくれないか」

勇者「ごめん、なさい」

勇者「ぼ、僕。結婚するかもしれない、ってだけでも、びっくりしちゃってて」

勇者「そ、それも魔王が、僕を妻にしたいだなんて、予想もして、なくって」

勇者「そ、それに…。女の人だっていうのも」ｼﾞﾜ

勇者「ご、ごめんなさいぃ…」ﾎﾟﾛｯ

勇者「傷つけて、ごめんなさいぃぃ…」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

魔王「ゆう、しゃ…」

勇者「ごめんなさい、ごめんなさい…！泣かせて、ごめんなさい…！」

魔王「ば、馬鹿な。私は泣いてなど」

勇者「か、鏡を見たらどうですかぁ……！」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

魔王「…！」ｻﾜ

魔王（何で。濡れてる…？）

勇者「う、うぅうううう…」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

魔王「…こっちこそ、だ」

魔王「女であることをひた隠し。慣れないところで不安がっていたお前をかき回して」

魔王「…勝手に、好きだなどとのたまって」ｼﾞﾜ

魔王「お前の気持ちなんか…考えもしないで」ﾎﾟﾛｯ

魔王「私が、私が…！全部悪いんだ…！！」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

勇者「魔王様は悪くないですぅぅ…！！」

勇者「ひっく、女が女を好きになっちゃいけないなんて、そんな訳ないんですぅ…！」

勇者「だっ、だからぁぁぁ…！」

魔王「違う！私が悪いんだ！」

勇者「僕が悪いんですぅぅ…！」

魔王「しつこいぞ！」

勇者「そっちこそ！」

魔王「私が悪いんだ！！！！」

勇者「いっ、いいえ！僕が悪いんです！」

魔王「いい加減にしろ！」

勇者「はっ、はぁぁぁ？だからっ、僕が…！」

魔王「黙れ、私が悪いといったら…」

勇者「違う！！僕が悪いといったら…」

魔王・勇者「わる…い…」

魔王「…」

勇者「…」

魔王「私が」

勇者「僕が」

魔王「…」

勇者「…」

「「おい」」　「「あの」」

勇者「あっ…先にどうぞ」

魔王「いや、お前から」

勇者「いえいえ」

魔王「チッ」

勇者「舌打ちしましたね」

魔王「もうよい！」

勇者「なっ」

勇者「もういいです！もう…ひ、引き分けにしましょう！」

魔王「ああ！！！」

魔王「どっちも悪いということだ！それでいいな！」

勇者「そ、そうですとも！！！！」

魔王「ったく、見かけより頑丈な娘だ」

勇者「魔王様だって。静かそうなのに頑固」

魔王「…なにを」

勇者「…だってそうじゃないですか」

魔王「…ああ、そうかもな」

勇者「そうです」

勇者「…」ﾎﾟﾌ

魔王「…眠いのか」

勇者「疲れちゃいました」

魔王「そうだろうとも」

勇者「眠ってもいいですか」

魔王「ああ」

勇者「ここにいてもらってもいいですか」

魔王「…」

勇者「僕が眠るまで。いいですか」

魔王「…ああ」

勇者「ありがとう、ございま」

勇者「す…」ｶｸ

魔王「…」

勇者「…」ｽｩ

勇者「…」ｽｩ､ｽｩ

魔王（…早いな）

魔王（…面白い奴よ）ｸｽ

魔王「…」ｽ

ポフ

魔王「…勇者」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

勇者「…」ｽｩ､ｽｩ
……
…

ガチャ

側近「ま、魔王様」

魔王「なんだ、みんなして。いたのか」

側近「あ、あの」

魔女「話し声が…」

狐耳「なにかあったんで？」

魔王「うむ。まぁ…」

魔王「…まぁ、いいだろうが。勇者は寝たから、静かにな」

魔女「は、はい…。えと、勇者は何て」

魔王「…」

魔王「まぁ、とりあえず一泊だ」

狐耳「まじか。やった」

魔王「我も寝る」ｸﾙ

側近「は！おやすみなさいませ」

魔王「ん」ｺｸ

～魔王の部屋～

魔王「…」

魔王（なでちゃった）

魔王「…」

魔王（勇者の体に…）

魔王（！！！何考えてるんだ！！！）

魔王（くそっ、今頃になって動悸が）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

魔王（…勇者、びっくりしたろうな。でも…）

『女の人が女の人をすきになっちゃいけないって、そんな訳ないです』

魔王「…」ｷｭ

魔王（嬉しいのか）

魔王（そうなのか…）ｺﾞﾛﾝ

魔王（勇者）

魔王（やっぱり、優しいんだ）

魔王（あの頃と変わってないな）

魔王「…」ｳﾄ
……
…

『みーつけた！わーい！！』

『ちくしょぉ！いいな、勇者は目がよくってよぉ』

『へへーんだ』

いいな。あんなに楽しそうで、いいな。

『よーし次は池で遊ぼうぜ勇者！！』

『あ、待ってよ幼馴染ー！』

『んだよ、嫌なのか？』

『違うの…あの子、ずっとこっち見てて』

…え？

『は？あいつ…？本当だこっち見てる』

『ね？』

…やだ、見られた

『ねぇ、一緒に遊ぼう！』

…や、私

『おい、放っておけよ…。あいつ、なんかおかしいぞ』

『え？』

『よく見ろ…あんなに白い髪、みたことない。それに目だって、真っ赤だぞ』

…や、見ないで

『…放っておこう。気味悪いぜ』

『馬鹿！！！！！』

バシン！

…え？

『いってぇぇぇ！何すんだ、アホ！』

『アホはそっちでしょお！？なんでそんな意地悪言うの！？』

『髪、真っ白で綺麗じゃない！ね、遊ぼうよっ』

…わた、し

『かくれんぼは好き？お魚釣りはできる？』

『遊ぼう！きっと楽しいよぉ！』

…

…でも、わたしは

『四の五の言うなーい！』

…うわ！？

『決ーめた！今日はあなたと、鬼ごっこする！幼馴染も入りたい？』

『はぁ！？ふ、ふざけん…なよ！』

『ふふん。意地っ張りなんだから。行こう！』

…変なの

…私、変な子なのに

何で遊んでくれるのかな

なんでかな

『私は勇者！よろしくね！あなたは？』

…私？

…

私、は

……
…

魔王「…！」ｶﾞﾊﾞ

魔王「…」

魔王「なつかしい夢を、みた」

魔王「…」ﾆｺ

「魔王様ー。朝食の時間ですよー」

魔王「ああ。今行く」

魔王（着替えねば）

魔王（仮面…はどこにやったかな）

魔王（あ）

魔王（もう、隠さなくとも、よかったのだな）

魔王（なんだか、嬉しいような気もする。心が軽くなったようだ）

魔王（もう普段どおりの服を着ていこう。堅苦しいマントやローブはうんざりだしな）

魔王（…髪もとかすか）

魔王（…久しぶりに、化粧でもするか？）

魔王（いや…。勇者に堅苦しい印象を与えてしまうかな）ｳｰﾑ

魔王（…）

魔王（ええい、せめて紅だけでもひいておこうか）ｳｰﾝｳｰﾝ

「まだですか！！？」

魔王「も、もうちょっとだ！！このくらい待たんか！」

ガチャ

魔王「朝からうるさいな」ﾑｽ

側近「わ、魔王様…。今朝はずいぶんと、こう」

魔王「うむ。もう変装はやめだ。ふだん通りにいくと決めた」

側近「そうですか…。スカートも似合っておりますよ、魔王様」

魔王「そうか」

側近「そうですとも！」

魔王（勇者に最初に言って欲しかったのに）ﾁｯ

～広間～

魔女「おはようございます、魔王様」

魔王「う、うむ。おはよう」ｿﾜｿﾜ

狐耳「おお、久々の女装ですな。お美しい」

魔王「そ、そうか」ｳﾛｳﾛ

側近「とりあえず席についたらどうです？」

魔王「う、うむ」ｶﾞﾀｯ

使用人一同（一夜にしてこの変わりようｗｗｗｗｗｗｗｗｗ）

魔王「…」ｷｮﾛｷｮﾛ

狐耳「勇者なら、もう少しで来る」

魔王「なっ…。なにも言ってないだろうが」

魔女（言わなくても分かるっつーの…）

ガチャ

勇者「すっ、すみません遅くなりました！」

魔王「！！！！」ﾋﾟｼｯ

勇者「あ…」

勇者「あ、あの。魔王様、おはようござい、ます…」ﾍﾟｺ

魔王「！お、おはよう」

勇者「昨晩は、どうも…。ご迷惑おかけしました」

魔王「い、いや。いいのだ」

側近（ぎこちねぇーｗｗｗｗ）

魔女（しょうがないでしょう！一夜で縮まった距離も少し開く…それが恋の醍醐味）

狐耳（語るな。魔女）

勇者（改めてみると）

勇者（すっごい美人なんだなぁ…。うわぁ、綺麗な白髪）

勇者（肩身が狭い…）ﾁﾝﾏﾘ

魔王「…（勇者が萎縮しまくっている。何か会話何か会話）」

魔王「そう、いえば」

勇者「は、はい？」

魔王「傷はどうなのか？痛みとかは」

勇者「いいえ！全くありません…！あんな回復魔法初めてです」

魔王（流石勇者というべきか。私の魔法も万能ではないのに、一夜でここまで元気になれるとは）

魔王「そうか、ならいい」

勇者「ええ…」

魔王「…」

勇者「…」

側近（じ、じ、じれったいよぉぉぉぉおおおおおお！！！）

魔女（きぃぃぃぃやぁぁぁぁぁあああ！！！！）

狐耳（早く朝食運べ）

カチャカチャ

勇者「うわぁ、相変わらずおいしそう」

魔女「でしょう？いっぱい食べてね」

勇者「はい！」ﾆｺﾆｺ

魔王（く…。魔女とはあんなに話せるのに）

魔女（あ、あちゃー！！しまったぁぁ）

勇者（あ…、今の、まずかったかな）

勇者「あ、あの」

魔王「ん？」

勇者「その…失礼かと思うんですけど」

魔王「？」

勇者「魔法を…。教えて欲しい、なって」

魔王「魔法！」ﾊﾟｧ

魔王「！」ｺﾞﾎﾝｺﾞﾎﾝ

魔王「えー、よいぞ」

勇者「ほ、本当ですか！じゃあ、朝食のあと！」

魔王（さっさと食べよう）

勇者（よ、よかったぁ）

～庭～

勇者「よろしくお願いします」ﾍﾟｺ

魔王「う、うむ」ｶﾁｺﾁ

勇者（自分が用意したシチュエーションとはいえ、二人きりかぁ。て、照れくさい）

魔王「えーと、勇者。何の魔法を学びたい？」

勇者「か、風魔法です！僕、すっごく苦手で」

魔王「ほーう。風魔法か。どの程度なら？」

勇者「（急に生き生きしだした！）えと、もう初歩的なものしか」

魔王「ふむ。とりあえず、そこの落ち葉を集めてみせてくれないか」

勇者「分かりました！…えい！」ﾌﾞﾝ

フワ

バサバサ

魔王「…」

勇者「え、えへへ」

勇者「全然だめ、ですよね…」ｼｭﾝ

魔王「いやいやいや！筋は…いいと思うぞ」

勇者「本当ですか！？」ﾊﾟｧ

魔王「ぐ。う、うむ。まあな。しかし勇者、お前はまず構えが根本的に間違ってる」

魔王「手はこっちに向け…こうだ」ﾌﾞﾝ

フワッ

パサ…

勇者「う、わ…。すっごく綺麗」ﾎｰ

魔王「さ、やってみろ」

勇者「えっと…こう、かな？」ﾌﾞﾝ

フワッ

…バサバサ

勇者「うー…。駄目です」

魔王「決め付けるのはよくない…。勇者、手のひらはな、こちらを…」

ギュ

魔王「！！！」ﾊﾞｯ

勇者「あ…」

魔王「す、すまんな。急に触れて」

勇者「なっ、なんで謝るんですか！？」

魔王「…」

勇者（なんで萎縮しあわないといけないのかな）

勇者（…今、分かった。僕はこの人に…もっと近づきたい）

勇者「…！」

ギュウ

魔王「！！！？」

勇者「教えてください！こうですか？こう？」ｷﾞｭｰ

魔王「ゆゆゆ、勇者！は、離して…くれっ」ｱｾｱｾ

勇者「嫌です！教えてくれるまで離しませんよ！だいたい、昨日は体まで拭いてくれたのに！」ｷﾞｭｳｳ

魔王「そっ、それはだな緊急事態で」

勇者「いいから、お願いしますっ！！」ｷﾞｭｳｳｳｳｳｳ

魔王「わっ、分かった！こうだ、こう！」ｷﾞｭ

勇者「…なるほど」

魔王「…全く。とんでもないことをする」

勇者「手くらいいいじゃないですか…」

魔王「…う、む。まぁいい。やってみろ」

勇者「ん…！」ﾌﾞﾝ

フワッ

パサ

勇者「！やった！できましたよ！」

魔王「ふむ。まあ上出来か」

勇者「えい！えい！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

フワフワ

勇者「あはは！これ、気持ちいいですねっ」

魔王「お、おいこらはしゃぐな…！」

勇者「あ」

バサバサ！！

魔王「わっぷ」

勇者「ぎゃっ」

勇者「ふみまへん」ｺﾞｿｺﾞｿ

魔王「あんまり調子にのるからだぞ…」ﾓｿﾓｿ

勇者「う…。すみません」ｼｭﾝ

魔王「はぁ。まぁ上達は早いな。次はもっと高度な物をしてみようか」

勇者「はい！頑張ります」

魔王「さ、我の真似を」

勇者「…」

勇者「あのう」

魔王「うん？」

勇者「あの…。魔王様、昨日は自分のこと、私って言ってましたよね」

魔王「…！（じ、地が出ていたのか！？）」

勇者「魔王様は、やっぱり…、あの。私って言った方がにあうかな…って」

魔王「そうか…」

魔王「わたし、私。…じゃあ、そういうことにしよう。ただし勇者」

勇者「は、はい？」

魔王「お前の、その、堅苦しい喋り方もなしだ」

勇者「え！？」

魔王「～様とか。そういうのだ」

勇者「そ、それってすごぉく失礼なんじゃ」

魔王「気にせん。そうしろ」

勇者「え、えと…。ま、魔王、さん？」

魔王「さんも、なしだ」

勇者「そ、そんなぁ！じゃ、じゃあ…」

勇者「魔王…ちゃん？」

魔王「…！！」

『まおーちゃん！今度は木登りしようよ』

『まおーちゃんって、魔法上手なんだねぇ。すごいや』

魔王「……」

勇者「あ、いや…でした？」

魔王「違う」

魔王「…なつかしく、なった」

勇者「え？」

魔王「…」ｸｽ

勇者「？？？」

魔王「魔王ちゃん、か…。いいな。そう呼んでくれ」

勇者「は、はい…！えと、魔王ちゃん…？」

魔王「うむ」ﾆｺﾘ

勇者「えーと、これってすっごくアンバランスなような」

魔王「じゃあ敬語も外せばよい」

勇者「う。敬語だけは、なんだか抜けないんです。僕」

魔王「はは。変な勇者だなぁ。まぁ、次に行くぞ。次はすごいぞ」

勇者「何なんです？」

魔王「操る事が出来れば、空が飛べる魔法だ」

勇者「！！そ、空を」

魔王「ああ。しかし、根性が必要だぞ…。やるか？」

勇者「も、もちろん！！」

魔王「そうこなくてはな」

……
…

狐耳「いいかんじじゃないか？」ﾆﾔﾆﾔ

魔女「かーなり」ﾆﾔﾆﾔ

ゴーレム「うはｗｗｗｗ甘酸っぱｗｗｗｗ」

側近「魔王様…。あんなに楽しそうに」ｳﾙ

オーガ「俺らも魔王ちゃんって呼ばない？」

狐耳「それは」

ゴーレム「殺されそうｗｗｗｗｗ」

～数時間後～

勇者「…はっ！」ﾌﾞﾝ

フワッ

勇者「うわぁ！！う、浮いた！？」

魔王「よし、いいぞ！そのまま集中してみろ！」

勇者「…！」ｷﾞｭ

ビュンッ

勇者「うわぁぁぁぁああ！！」

魔王「上出来だ！そのまま前に！」

勇者「やった！やったぁぁぁー！！」ﾋﾞｭﾝ

勇者「嬉しいよぉお！」ｽﾀｯ

魔王「流石だな。会得が早い」

勇者「あ、ありがとうございます、魔王ちゃん！」ｷﾗｷﾗ

勇者「ね、ねぇ！一緒に飛びましょうよ！」

魔王「は？」

勇者「空中散歩しましょう！ね！ね！」ｷﾗｷﾗ

魔王「お、おい」

勇者「いーきーまーしょおー」ｸﾞｲｸﾞｲ

魔王「…しかたないな」ﾌﾜ

勇者「やっほー！！」ﾋﾞｭﾝ

……
…

勇者「風がきもちいいー」

魔王「ん。楽しむのもいいが、気をつけろよ？」

勇者「分かってますって。…魔王城って、上から見たらかなり大きいんですねぇ」

魔王「ああ。きっとお前がまだ行ってない所も多くあるな」

勇者「あ、あっちは！？」

魔王「あれは、農園だな。動物もいるぞ」

勇者「すごい！僕、行ってみたいです」

魔王「ああ。今度案内し…」

魔王「…」

勇者「あ…」

魔王「…お前の故郷はあっちだったな」

魔王「いつ、帰る？今夜中なら、明日の朝までには着く。馬車を用意しよう」

勇者「…あ、う」

勇者「…（あ、れ）」

魔王「…」

勇者「そ、ですか」

勇者（僕、ここにいて…いいのかな）

勇者（自分の気持ち、まだよく知らない。ここにいても…いいのかな）

魔王（…やっぱり、帰りたいよな）

勇者（でも）

魔王（でも）

勇者（何でだろ、帰りたく…ないな）

魔王（帰って欲しくない）

魔王「…降りるか」

勇者「は、い」

ヒュン

魔王「さ、中へ」

勇者「はい…」

魔王「…」

魔王（この子は、優しい）

魔王（押し付けてはならない。この子を本当好きだ。だから、返さなくてはいけない）

魔王（…）

勇者「…」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

魔王（…ああ！）

ギュ

勇者「…え、魔王…ちゃん？」

魔王「…手を、握るくらいいいと言ったのはそっちだ」ｷﾞｭｳ

勇者「…あ、う、うん」ｶｧ

魔王（駄目だ）

魔王「…勇者」ｷﾞｭｳ

魔王（駄目だって）

勇者「な、何ですか？」

魔王（駄目だ、って）

魔王「…」

魔王「…るな」

勇者「え？」

魔王「帰、るな…」

勇者「…！」

魔王「…傍に、いて…欲しい」ｷﾞｭｳ

勇者「…ま、おう」

魔王「…もう、嫌だ」

魔王（やめろ）

魔王「離れ離れに…なるのは」

魔王（黙れ）

魔王「もう、…嫌、なんだ。眺めてるだけは」

勇者「…」

勇者「魔王ちゃん…」

ギュ

魔王「！！」

勇者「よしよし」ｷﾞｭｳ

魔王「はっ、離し」

勇者「何で？ハグくらいいいじゃない」ｷﾞｭｳ…

魔王「やっ、やめ…！こんな、こと…するな」

勇者「だって、魔王ちゃんがすごく寂しそうだったから」

魔王「…ぅ」

勇者「ぼ…僕も、帰りたく…ないです」

魔王「…え？」

勇者「魔王ちゃんといると、なんだか楽しいし」

魔王「そ、そん」

勇者「それとも、僕がいたら迷惑…？」

魔王「そんなことはない！」

勇者「そう…えへへ」

勇者「いて…いいかな？」

魔王「…！」

魔王「…ぅ」

ギュウウ

勇者「えーと」

勇者「抱きしめ返すってことは、OK?ってこと？」

魔王「そ、そうだっ」ｷﾞｭｳｳ

勇者「ありがとう」

魔王「畜生、嬉しい…！」

勇者「うん。僕もだよ」

？？？「待てい！」

魔王「…！…なにやつ！…姿を見せろ！」ｷｯ！

勇者「今の声…もしかして…」

王「そう…」

王「わし…」

王「じゃよ…」

魔王「…なんだ！？…こいつらは…」

勇者「やだ…王様のくせに、かっこいい…///」

魔王「…」

魔王「あ、っと」ﾊﾟｯ

勇者「ありゃ、もうお終いですか？」

魔王「お前な…。わ、忘れたのか！私はお前をなぁ…」ｶｧ

勇者「！わっ…忘れてませんよ！」

魔王「あーあーあー！もういい！中に入るぞ！もう夕食時じゃないか」

勇者「あ、そういえば…。お腹空きましたね」

魔王「勇者」

勇者「はい？」

魔王「あー、その。なんだ…。堅苦しく、広間で食べなくてもいいのだぞ」

魔王「なんなら自分の部屋で食べてもいいのだからな」

勇者「…魔王ちゃんと一緒に食べたいですよ」

魔王「！」

魔王「そ、そ、そうか！」ｶｧ

勇者「あっ、じゃあ、魔王ちゃんのお部屋で食べてもいいですか？一緒に！」

勇者「そうしていいですか？」

魔王「あ、ああ。勿論だとも」

勇者「やったぁ！じゃあ、僕、着替えてきます」ﾀｯ

魔王「あっ、ゆう、しゃ…」

魔王「あんまりきっちりした格好をしなくてもいい、からな…」

勇者「え？」

魔王「普通の格好で、いい…。もう互いに気を張らなくてもいいのだから。な？」

勇者「…そうですね！」ﾆｺ

……
…

王「…」ﾊｧ

大臣「心配ですか？」

王「当たり前じゃろー！ああ、何か悪い事をされてないといいが」

兵士「じゃあー何で積極的に送ったんすか！俺らのアイドルを！！」

王「るっせぇ！！仕方ないじゃろーが！」ｸﾜ

王「あああ、にしてもぉぉ…。心配じゃぞ、勇者よ」

門兵「ﾁｰｽ、来客でーす」

王「うむ。…後にしてくれないか？」

大臣「我儘やめてください。いいぞ、通せ」

門兵「ｳｰｯｽ」

王「おいいい…。今ちょっとアンニュイなのじゃぞ」

大臣「仕事してください！」

ガチャ

男「…」

王「！」

男「お久しぶりでございます、王様」

王「…せ、戦士」

戦士（男）「ええ。覚えていてくれたのですね」ﾆｺ

王「あ、ああ…」

王「…すまない、皆、男と二人にしてくれないか」

大臣「へ！？」

兵士「なんでっすか？」

王「いいから！大事な話があるのじゃ！」

バタン

王「…」

戦士「任務の報告をしましょうか？」

王「いや、いい。風の噂で成功は聞いておる」

戦士「そうですか」

戦士「では、話を私的なものにしてもよろしいですか？」

王「…構わん」

戦士「そうですか。では」ﾆｺ

戦士「…勇者は、何処なんでしょう？」

王「…」

王（…やはり、か）

戦士「故郷の村に戻ってると思ったんですが、どこを探してもいなくて」

王「…お前が知らないものを、わしが知ってるわけ」

戦士「あるでしょう？」

王「…！」

戦士「大体、俺は勇者の任務に同行すると言ったはずです。何故、引き離したのです？」

王「それは、問題が重なったからじゃろうが」

戦士「そうですか？俺が行った任務はそこまで重要なものじゃなかった」

王「…」

戦士「何か、あるのでしょう」

王「そんなものはない」

戦士「王様」

王「…！」ｿﾞｸ

戦士「勇者を出してください」

王「わしには、分からないのじゃよ」

戦士「嘘です」

戦士「俺のいない場所で、何を企んでいるんです？勇者に何をしたんです？」

戦士「教えてくださいよ。勇者に何かあったら、どうするつもりです？」

王「…」

王「お前は、勇者の心配をしすぎじゃ。あやつなら、お前がいなくてもやっていける」

戦士「いいえ。無理ですよ。勇者はまだ子供なのだから」

王「…っ」

王「あ、ああ。そうじゃ」

王「早急にあたって欲しい任務があったのじゃった」

戦士「…」

王「心配しなくとも、勇者はこちらが探そう。きっとこの前の都にでも行っているのじゃよ」

戦士「王様」

王「…何じゃ」

戦士「…、…。いいえ。何でもありませんよ」

戦士「任務を受けることは、ご遠慮させていただきます。疲れをとりたいので」

王「なっ…。戦士、待て！」

戦士「すみません。帰らせていただきます」ｽﾀｽﾀ

バタン

王「…く…っ！」

王（あやつめ、割りに早く帰ってきおって…！あの任務をたった３日で終わらせるとは！）ｷﾞﾘ

大臣「あ、あの」

王「大臣、口封じをせよ！戦士に真相を知らせてはならん！」

大臣「え、ええ？」

大臣「何故です？戦士は、旅の多くを勇者と共にしてきた男。今回のことは、知らせるべきでは」

王「ならん！！！！」

大臣「！」ﾋﾞｸ

王「いいか、あやつだけには、絶対知らせるな！」

王（くそっ…！まずいことになった）

王（戦士…。わしの魂胆に薄々感づいているのじゃな…）

王（ならん。お前の思う通りにはさせんぞ、戦士…）
……
…

～酒場～

戦士「…」

戦士（あの性悪爺が。何を企んでいる）

戦士（くそっ、勇者…。せめて俺の任務終了を待っていればよかったのに）ｸﾞｲ

「だーーーーぁらよぉ、行っちまったんだよぅ、ゆうしゃちゃんはぁぁ」

戦士「！」ﾋﾟｸｯ

兵士「あの髭爺ーーー。天使をあんな所に送り込むなんてよぉ、正気じゃねぇよぉ」ﾋｸｯ

店主「飲みすぎだよ、兵士さんよ」

戦士「おい」

兵士「あん？あんだよぉ、お前」

戦士「勇者のことを話していたな。聞かせろ、あいつは今何処にいる」

兵士「ああ？」

戦士「報酬がほしいのか？金ならいくらでも出すぞ」

兵士「あーー。むりむり。こーいうの、機密事項らしーからよぉ」

戦士「機密…？」

兵士「うんそー。だから、ごめんね兄ちゃん」

戦士「…」

戦士「やはり王めが。何かよからぬことをしたのだな、勇者に」

戦士「俺の、勇者に」ｷﾞﾘ

兵士「あ？」

ガタン！

戦士「来い！！！」ｷﾞﾘｷﾞﾘ

兵士「お、おわ！？何すんだよ、離せ！！」

戦士「黙れ！！」ﾌﾞﾝｯ

ガシャアアン！！

兵士「！ぐっ…！？」

戦士「言え。言わないと」

チャキて…

戦士「こうだ。分かるな？」

兵士「ひ、ひっ…！？」

兵士「わ、分かった！話す、話す、から…」ｶﾞﾀｶﾞﾀ
……
…

『どうしてそんなに膨れてんだよ、勇者？』

『だってぇ…。あの子、いなくなっちゃったんだもん。もっと遊びたかったのに』

『は…』

何でだ

俺の方が近くにいる

『まおーちゃん…。早く遊びたいなぁ』

何でだ

俺の方がお前を思ってる、のに

『勇者、もうアイツと遊ぶの、やめろよ』

『ま、またそんな意地悪言って…！』

『意地悪じゃない！アイツ、何だか嫌なんだよ。変だ！』

『ひ、どい…そんなこと言わなくてもいいじゃない！』

『違う！俺は、お前のことを心配』

『あっ！まおーちゃんだ！おーい！』

『勇…！』

勇者

何で俺から離れていく？

何で俺じゃ駄目なんだ？

俺の何がいけないんだ！

あぁ…俺の勇者

そんな銀髪のヤツと仲良くしないでくれ

俺の前で楽しそうにするな

見つめあったりするな！

手を繋ぐな！！

…くやしい

くやしいのに…

くやしいのに…感じちゃう…///

ふふ…

ふふふ…

……戦士かと思ったか？

王「…わしじゃよ」

戦死「帰ってくださいお願いします」

>>263お前ｗｗｗｗなんなんだよｗｗｗ

～城～

バン！！！

兵士「おっ、王…さま！！！」ｾﾞｪｾﾞｪ

王「ぬぅおう、びっくりした！どうしたんじゃ、兵士？」

兵士「もっ、申し訳ございませんんんん！！！！」ﾄﾞｹﾞｻﾞｧ

王「え！！？なに、なんじゃ！？」

兵士「おっ、俺が…！酒場で飲んでいたとき、戦士に会いまして…！！」

兵士「お、脅されて、勇者の居場所を…！！」

王「なん…じゃと」

王「…く…！馬鹿者！！！」

兵士「申し訳ございません！申し訳ございません！！」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

王「く…！しかし、お前が無事なだけ良かった…！大臣！」

大臣「はっ」

王「戦士に勇者の居場所が知れてしまった！早急に戦士を連れ戻せ！」

大臣「は…？何故です？」

王「あやつは、必ず勇者を追いかけるからだ！！」

大臣「そ、それが何か不都合でも？」

王「あやつは…！異常なのじゃ、勇者に対する執着が！」

王「勇者の身が危ない！早急に連れ戻すのだ！」

「成る程」

王「…！！」

大臣「あ、あわわ…」

戦士「俺はそんな言われようですか、王」

王「…！衛兵！」

戦士「無駄です。皆気絶してますよ」

戦士「勝手に勇者をあんな所に送ったりして」

王「…！」

戦士「くだらない真似してくれますね」

王「…く…」

戦士「王。俺は確かに、あの子の為ならなんでもします。それが異常に見えることもあるでしょう」

王「異常なのじゃ！お前の感情は愛情ではなく、執着な」

戦士「黙れ。殺すぞ」ｼｬｷ

王「…！！」

戦士「ふん」

王「……！」

戦士「一緒に来てもらうぞ、王。人質だ」ｸﾞｲ

戦士「いいか。俺を追いかけるなんてしてみろ。こいつの首が飛ぶからな」

大臣「お、王…！！！」

戦士「来い」

王「くっ…！！」

戦士「ではまた。勇者を取り戻してから会いましょう」

～魔王城～

勇者「ふー、美味しかった」

魔王「うむ。なかなかだったな」

勇者「いやぁ、魔王ちゃんのお部屋って意外とシンプルですから、緊張しませんでした」

魔王「そ、そうか？」

勇者「はい！なんだか、落ち着きますよ！」

魔王「ああ、くつろいでもらえて結構」

勇者「あの、あのー」ｸｲｸｲ

魔王「ん？何だ」

勇者「えーと…。お、お風呂行きません？」

魔王「」

勇者「今日、魔法の練習なんかもしたし…。ゆっくり浸かりたいというか」

魔王「」

勇者「ね、行きましょう？」

魔王「」

勇者「あのー？」

魔王「おおおおおお前は何を言ってるのか自分で分かってるのか馬鹿者が」

勇者「へ？お風呂入るのって、そんなに悪いことでしたっけ？」

魔王「違うだろ！！い、い、い、一緒に入るなんて無理だ絶対に無理」

勇者「え？い、一緒に入るんですか！？」

魔王「へ？」

勇者「え」

魔王「…」

魔王「」ｶｧｧ

～風呂場～

魔王「まぁ、色々はやとちりをしてしまって、すまなかった」

「いいえー！大丈夫ですよ！」

魔王「く…。今思い出しても恥ずかしい」ｶｧ

「魔王ちゃん、恥ずかしがらないで！どうせ今顔真っ赤なんですよね？目に浮かびますよ」

魔王「ううううう、うるさい！さっさと洗え！」

「あははー」

魔王（くそっ、浴場の壁がこんなに薄いとは…。独り言も丸聞こえじゃないか）

勇者「ふん♪…ふん♪」ｺﾞｼｺﾞｼ…

『だーれだ？』もみゅん☆

勇者「きゃ！…もぅ…何するんですか、魔王ちゃ…」

王「…わしじゃよ」

『勇者？…どうしたんだ？』

勇者「だめ…魔王ちゃんが…魔王ちゃんが…来ちゃう…///」はぁ…はぁ…

勇者「ここのせっけんいい香りしますねぇ」

「そうか？あまり気にした事はないが」

勇者「お花の、いい香りです！せっけんって、人間界では今貴重なんですよぉ」

「ふむ。そういえば、狐耳の手作りだったかな」

勇者「へぇ、狐耳ちゃんが！器用なんですねぇ」

「ああ。あいつは、中々良い職人腕をしている。なんでも作れてしまうんだよ」

勇者「すご…！」

ザッブーン

勇者「うひゃー…とっても良いお湯！」ﾄﾛｰﾝ

勇者「魔王ちゃん、今何してますか～？」

「何だ急に？私なら、今頭を洗っているが」

勇者「おお。全身洗ってからお湯につかる派なんですね」

「そうしないと何だか落ち着かなくってな」ｼｬｶｼｬｶ

勇者「あ、魔王ちゃんの髪って…綺麗な白髪ですよね。珍しいです」

「…ああ、人間にはなかなか無い色なのだったな」

魔王「私は…勇者の黒髪が羨ましいがな」

「えっ、僕の髪なんて…。短いし、何の工夫も無いし」

魔王「そんなことはない。短い髪が活動的で、非常によろしい。無理に手入れしなくても、サラサラだしな」

「え、あ、の…そんなことは」

魔王「可愛いやつめ」ﾎﾞｿ

「ななななな！！！？なんですかそれ！！」

魔王「あっ、聴こえていたのか」

「わっ、訳分かりませんよ全く！！」

魔王「…勇者」

「なんですか？」

魔王「白い髪…で、何か思い出すことはないか？」

「え？」

魔王「あ、いや。何でもない…気にしないで」

「ありますよ」

魔王「！」ﾋﾟｸ

「お婆ちゃん！」

魔王「…」

魔王（何をがっかりしてるんだ、私は）

魔王（覚えてるはずない、じゃないか。私は、この手で自ら）

魔王（勇者の、記憶を）

「あのー？」

魔王「！！！い、いや何でもない！そうか、勇者の祖母か…」

「はい！今も元気に暮らしてるんです」

魔王「そう、か…」

勇者（何でそんなこと聞くのかな。変なの）

ザバ

「おい、もうそろそろ上がろう。のぼせてしまう」

勇者「あ、は、はーい！」ｻﾞﾊﾞ
……
…

勇者「ふぃー」ﾎｶﾎｶ

魔王「さっぱりしたか？」

勇者「ええ！」ﾆｺ

魔王「もうかなり夜更けなのだな」

勇者「あ、本当だ…。結構入ってたんですね」

魔王「そのようだな。さ、勇者。寝室へ」

勇者「ええ、もうお休みですか」

魔王「成長しないぞ」

勇者「むっ…。い、良いんですよ！これくらいの体型が丁度いいんです…」

魔王「ほーう？」

勇者「うぐ…。ま、魔王ちゃんはスタイルが良いから分かりませんよ…だ」ﾌﾝ

魔王「はは。まぁ、とにかく早く寝ることだ」

勇者「むー。はい」

魔王「では、な。お休み」

勇者「お休みなさい！」

勇者「…また、明日！」ﾆｺ

魔王「！あ、ああ。また明日」

魔王（何て良い言葉なんだ。また明日、か。勇者にまた明日も会える、のか）

勇者「？何で微笑んでる…んですか？」

～魔王の部屋～

魔王「…」ﾆｯｺﾆｯｺ

水晶「ご機嫌でありますなぁ、魔王様。どうでしたか？洗いっこプレイは」

魔王「割るか？」

水晶「すみません」ｿﾞｯ

魔王「わ、私は…。勇者とけ、結婚…するまでは、そういうことはしないんだ」ｶｧ

水晶「へーへー。ウブなこって」

水晶「それよりもね、魔王様。ちょーっと、悪いことが起こってますよ」

魔王「ほう？それは…先ほどから森の入り口をちょろちょろしてる気配のことか？」

水晶「流石。お気づきで」

魔王「あそこまで猛った気配、見逃す物か…。しかし、誰なのだ」

水晶「映しましょう」ﾎﾞｳ

魔王「…男、か」

「旦那、この先は魔王の棲家ですぜ…？行くんですか？」

「無論だ。お前にも高い報酬をやったのだ。今更怖気づくなよ？」

「ええ。そりゃ、一介の傭兵の誇りにかけて」

魔王「ふむ。男、傭兵、それに…。弱った気配がもう一つ？」

水晶「妙な一行ですね」

魔王「うむ…。恐らくは、ただの旅人か…？」

魔王（しかし、この男、どこかで…？）

水晶「森の魔力を高めておきましょうか？」

魔王「そうするとしようか。まぁ、今早急に気にすることではない」

魔王「さて、お前もきちんと休養をとるようにな。お休み」

水晶「へい、お休みなさい」

……
…

『勇者、遊ぼうぜぇ』

ん？いや、今日は駄目ー

『…はぁ？何でだよぉ』

今日はね、まおーちゃんとクッキーを焼く約束をしてるの。だから無理！

『…またあいつかよ。もう遊ぶのはよせって言ったろ』

幼馴染…。そんな怒らないでよぉ。クッキーならちゃあんとあげるから、さ！

『俺はそういうことを言ってるんじゃねぇ！』

うわ！何で怒鳴るの…？クッキー嫌い？

『違う！そうじゃなくて、勇者…俺は、お前とあいつが関わるのが…』

『あ、あの…。勇者、ちゃーん』

あ！！来た！まおーちゃんだ！…じゃ、幼馴染ー待っててね！美味しく作るから

『おい！待てよ！！』

『……』

『…くそっ！！！』

『お、幼馴染君、大丈夫？怒ってたみたいだけど』

大丈夫ー。あいつってば、そういう奴なんだよぉ

『そっか…でもさ』

ねぇ、今日はどんなクッキーを焼く？チョコ？キャラメル？

『え？わ、私はね…。勇者ちゃんと作れるなら、なんでも』

あはは。じゃあー、幼馴染の好きなチョコいっぱい焼こ！

『う、うん』

さ、早く早くー！

……
…

勇者「…ん、ぅ」ﾑｸ

勇者「ふぁぁ…」

勇者「…何か、変な夢、見ちゃったな」

勇者（ちっちゃい私と、幼馴染と、あと…。あれ？）

勇者（誰かいた、かな？…思い出せないや）

「勇者ちゃーん。朝ごはんよー」

勇者「あ、はーい！」

勇者「おはようございます、魔王ちゃん」

魔王「ん。ああ」

勇者「…あれ？ご飯…食べないんですか？」

魔王「いや、ちょっと用があってな」

側近「勇者様は、城で過ごされて結構です。私たちは、外出しますので」

勇者「ええ…。寂しいな」

魔王「ん、すまんな…。まぁ、すぐに戻ってこれるかも知れん」

勇者「はい…」

魔王「では、行ってくるぞ。留守は頼んだぞ」

魔女「ﾗｼﾞｬｰ」

狐耳「把握」

勇者「いってらっしゃい…」

バタン

魔女「うーん。残念ねぇ、仕事は時間を選ばないから」

勇者「まぁ、しょうがないですよね…」

狐耳「そうヘコむな。明日ユリユリすればいい」

勇者「ユリユリ？？」

魔女「馬鹿が！！！」ﾊﾞｼﾝ

狐耳「あだ！！み、耳は触るなと！！」

魔女「おほほ。ごめんねぇ、勇者ちゃぁん。何でもないのよ～」

勇者「は、はあ…」
……
…
～森～

側近「…これは」

魔王「…」

魔王「何がしたい、あの一行」

オーガ「ひでぇや。生きてるものの気配すらしねぇ」

ゴーレム「皆かたっぱしからやっちゃったのか！？」

魔王「そのようだな。この有様から見ると。あと、草はどうした」

ゴーレム「このｗｗｗ状況ｗｗｗでｗｗ笑えるかｗｗっていうｗｗ」

魔王「…ふむ」

魔王（ここを突破するとは、かなりの使い手ではあるな）

ゴーレム「え、無視ｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

魔王「側近。進路は分かるか」

側近「えーと…。ここからまっすぐ…。城の方へ」

魔王「なに？」

オーガ「おいおい討伐隊かぁ？」

側近「それにしても人数が少ない。正気とは思えませんな」

ゴーレム「それに一人は、弱ったお荷物ｗｗｗｗ」

魔王「何者なんだ…？迷い人なのか？いや、しれにしても進路に迷いが無い」

オーガ「まぁ、徒歩ですから城につくまではまだ、結構かかりますよね」

魔王「うむ、しかし暴れられても迷惑だな」

側近「どうします？」

魔王「相手はかなりの強者だからな…。魔物たちには、退避を命ずる」

ゴーレム「ええ！？」

魔王「もし迷い人だったら、元の場所に案内すればよい」

魔王「違ったとしても、私に適う相手ではない」

側近「まぁ、確かに」

魔王「あとは森を修正してさっさと帰ろう。勇者が待っている」ｿﾜｿﾜ

魔王　ｿﾜｿﾜ

魔王　ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

魔王　ﾌﾞﾜｧｯ!

王「魔王かと思ったか？」

王「わしじゃよ」

～魔王城・庭～

勇者「～♪」

狐耳「そっちのレモン。任せたぞ」

勇者「うん！今日はこれで何か作るの？」

狐耳「ゼリー。さっぱりして美味しい」

勇者「おお…。魔王ちゃんも好きかな？」

狐耳「あいつ。甘い物好き。意外と女らしいとこ、ある」

魔王「そうなんだぁ…」ｸｽ

勇者（これくらいでいいかな？）

勇者「よっと」ｸﾞｲ

狐耳「重いか？」

勇者「む。舐めたらだめだよ！これくらい、大丈夫だから」

狐耳「そうか？なら任せる。運んでくれ」

勇者「はーいっ」

狐耳「威勢の良いこと」

勇者「げ、元気って言って欲しいな」

～森の奥～

戦士「…おい、傭兵」

傭兵「へぇ？」

戦士「袋の中の奴、出せ」

傭兵「ああ、あいつすね。少々お待ちをー」ｺﾞｿｺﾞｿ

王「がっ…ぶはっ」ﾊｧﾊｧ

戦士「どうも、王」

王「くっ…貴様、いい加減にせんか！！」

王「魔王城に乗り込んでも勇者は戻らんぞ！」

王「お前、魔王の力が分からないほどの阿呆だったか？違うじゃろう！」

戦士「ああ。確かに、今の俺の力では魔王には適わない」

戦士「だから、正面から突っ込むなんて馬鹿な真似はしない」

王「な…！？」

戦士「魔王はやはり、森を荒らしたら出てきた。気配で分かる…」

戦士「森を荒らして、魔王がそれを改めているときに城に侵入する、そして勇者を奪還する」

王「き、貴様…。そんなものが上手くいくとでも」

戦士「いく。絶対に。障害物は必ず除く。王、お前でもだ」

王「…！」ｿﾞｯ

傭兵「えーと、逆らわないほうが懸命っすよ？」

王「く…」

戦士「とにかく、スピードが命だ。王、お前森の抜け道かなにかを知ってるだろう」

王「…！」

王「知らん」

戦士「嘘はつかないほうがいい。俺がいない間に、さっさとこの森を抜け、勇者を運んだ特別な道があるだろうが」

王「…知らん！」

戦士「…」

バキッ

傭兵「ちょ…！？」

王「ぐ、がはっ…！！」

戦士「言え」

王「……！！」

戦士「それとも、ここで死ぬか」

王（く…）

戦士「…どうする？」ｼｬｯ

王（勇者を守るため、無理矢理に乗ったこの縁談…）

王（魔王の城なぞ、絶好のバリケードじゃ。そこから勇者を戻したりしたら）

王（こいつは、今度こそ何をしでかすか分からない…！！）

戦士「…王！！！！！！！」

王「…！」ﾋﾞｸｯ

王（く……。すまん、勇者、すまん…！許して、くれ…！！）

～魔王城～

勇者「…」ﾋﾟｸ

勇者（何、今の）

勇者（悪寒？なんで…？）

勇者（…気の、せい？…かな）

狐耳「おーい、運べたか」

勇者「あっ、うん！大丈夫、運べたよ」

勇者（…大丈夫、だよね）

～夜～

魔王「ふぅ、ただいま」

勇者「あーーーー。お、遅いじゃないですかぁ」

魔王「仕方ないだろうが。結構ダメージが大きかったんだ」

側近「むう。あんなものが頻繁に起こったら、困りものですぞ」

魔王「ああ、…疲れた。夕飯の前に、風呂に入りたい」

魔女「準備してますよ。どーぞ」

勇者「あっ、じゃあ僕も…」

勇者「よいしょ、よいしょ」

魔王「おいおい。脱衣所で脱げばよかろうが」

勇者「まぁまぁ、上着くらいいいじゃないですか」ﾇｷﾞ

魔王「…」

サワ

勇者「ひゃぁああ！！？」

魔王「あ、す、すまん」

勇者「なな、何でいきなり腕なんか触るんですか…」

魔王「いや、…傷があると思って」

勇者「…え、これですか？」

魔王「ああ。体を拭いてやったときにも、気になっていた」

勇者「いや、これは…」

勇者「…」ﾌﾙｯ

勇者「剣の練習をしてたとき、間違えて」ｱﾊﾊ

魔王「…そうか？」

勇者「はい」

ザパーン

魔王（あれは結構前のか。しかし…深かったな。自分でつけられる傷か？）

魔王（気になる）

魔王「おい、勇者よ」

「はーい？」

魔王「あの傷は、本当は一体何なんだ？」

「…いや、だから剣の切っ先がですね」

魔王「本当のことを言ってほしい…。知りたいんだ」

勇者（…）

「駄目か？」

勇者「…人に、斬られたんです」

「…そうか。たしかに、アレは魔物の傷ではない。剣の傷だ」

勇者「あははー。でも、手違いなんですよぉ！ちょっとびっくりしましたけど」

「そうか…。すまないな、変なことを聞いて」

勇者「いえいえー。ま、色んな旅をしてたら、そういうこともあります」

勇者（……）ﾌﾞﾙｯ

魔王（嘘だ）

魔王（手違いなどではない）

魔王（あれは、執拗にえぐられた傷だ）

魔王（…誰が、あんなことを）ｷﾞﾘ

魔王（…だが、もう追求はしないでおこう。勇者が怖がる）
……
…

魔王「勇者、私は仕事があるので失礼するぞ」

勇者「え、え、えー！！あ、遊んでくれないんですか」

魔王「子供か、お前はー。まぁまた明日だ」

勇者「む…。もう、しょうがないですね」

魔王「お前は犬みたいだな」

勇者「なに！！？」

～勇者の部屋～

勇者「ふー」ｺﾞﾛﾝ

「あの傷は、本当は一体何なんだ？」

勇者「…」ｷﾞｭ

勇者（手違いなの）

勇者（あんな、こと。）

勇者（手違いなんだ…！！）
……
…

『おい、勇者』

何？戦士？

『昨日歩いていた男、あれは何だ』

は？…ああ、あの人はね、魔物の情報を知ってる博士でね！

『博士…？にしては若かったが』

ああ、すごいよねぇ。あんなに若くで博士になれるなんて。僕も驚いちゃって

『嘘をつくな』

…え？

『あんな夜中に、しかも家にまで行って…。嘘だろうが』

…え、戦士…。何を言ってるの、もう。資料を見せてくれるって言ったから、家に上がらせてもらっただけだよ

『ふざけるなよ！！！』

…え

『お前は自覚が足りてない』

な、何の…！？怒鳴らないでよ、怖いよ

『男の家に簡単に上がりこむな！何故俺を呼ばなかった！』

せ、戦士何を考えてるの？博士は、そんな人じゃな

『黙れ！！』

…！！

い、痛い…！　戦士、やめてよ。叩かないで

『俺を裏切る気か！！ええ！！？勇者！！』

裏切るって何！？い、意味がわからないよ

『鈍い奴だな、だから、俺は！』

…！！

は、離してよ

『勇者、俺はなぁ』

嫌、戦士！！おかしいよ、戦士！！

『お前が』

……離せっっっっ！！！

『…い、ってぇ』

あ…ご、ごめんなさい。戦士…じょ、冗談はやめてよ。びっくりしちゃった

『…』

戦士…？

『そうやって、お前はいつも俺を拒むんだな』

せ、戦士？

『…』

……！！！！や、誰か、助け

『お前が』

『お前が悪い』

『俺はお前のことを一番に想っているのに』

『お前が、振り向きもしないから』

『勇者、ゆうしゃ…』

『…』

嫌、誰か…！！

勇者「嫌だぁぁぁああああああああああああああああああああ！！！！！！！」

俺が戦士暗殺してくる

博士「やめろ！」どんっ！

戦士「く…！」ﾖﾛｯ…

勇者「…博士！」

戦士「…！…お前、昨日こいつと一緒にいた…！」ｷﾞﾘｯ…

戦士「博士って肩書きは嘘で、色々うまいこと言って勇者を家に呼び込もうとしたんだろ！？…あ゛！？」ｶﾞｼｯ！

勇者「や…やめて！」

博士「……否定はしないよ」

勇者「え…？」

戦士「そら、見たことか！…胡散臭いヤツめ！…大体お前、なにもんなんだよ！」ｸﾞｸﾞｯ…！

博士「…まだ、分からんか？」

戦士「あ゛ぁ！？」

王「…わしじゃよ」ﾊﾞﾊﾞｰﾝ！

戦士「なん…だと……」

勇者「……素敵///」

ガバッ

勇者「はぁっ、はあ…！！」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

勇者「……はぁ、…」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

「おい？」

勇者「嫌ぁぁぁあ！！！？」ﾋﾞｸｯ

「あ、ああすまん。私だ、魔王だ。すごい声が聞こえたんで、何事かと思ってな」

勇者「ま、魔王ちゃ」

勇者「ん…」ｼﾞﾜ

「どうした？何かあったのか？」

勇者「……ぐっ、ひっく」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

「な、泣いてるのか？」

勇者「うん…ま、魔王ちゃん」

勇者「ど、ドアなら開いてるから…来て、よぉ」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

「…分かった」

ガチャ

勇者「…！」

ギュウッ

魔王「！！？うわっ！？」

勇者「…ひくっ、ぅぐ…」ｷﾞｭｳｳ

魔王「ゆゆゆ、勇者！！？」

勇者「うぅ…」ｷﾞｭｳｳ

魔王「…怖い夢でも見たのか」

勇者「…」ｺｸﾝ

魔王「そうか…」

魔王「大丈夫」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

勇者「…」

魔王「まぁ、そういうこともある」ﾖｼﾖｼ

ギュウウ

魔王「う、うぁ…。えーっと」

勇者「離さないでよ…」

魔王「！」

魔王「う、うむ。分かった。ごめんな」ｷﾞｭ

魔王「…」ﾖｰｼﾖｰｼ

勇者「…夢に」

魔王「ああ」

勇者「怖い人がでてきたの」

魔王「そうか…勇者にも怖い人がいるか」

勇者「いる。…でも、その人は、多分優しい人」

勇者「優しいから、自分が保てなくなっちゃう人」

魔王「そうか…」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

魔王「ここには、そんな奴はいない」

勇者「…」

魔王「いたとしても、私がぶちのめす」

魔王「だから、安心していい」

勇者「…うん」

魔王「あー。月並みな台詞だが、私がお前を守る。絶対にな」

勇者「…ありがと」

勇者「魔王ちゃん、あったかい。柔らかいね…安心する」

魔王「そうか？」

ボフン

勇者「おっぱい大きいー」

魔王「ばばばばばば馬鹿者が！何を！！」

勇者「へへー」

魔王「さっきまで泣いてたと思えば…！」

勇者「油断大敵ですよー」

魔王「あーあーあー…。もう、好きにしろ」

魔王「早く寝てしまえ」

勇者「むー」

ギュ

魔王「…しょうがない奴だな」

勇者「あはは、その。ごめんなさい…。こわ、くて」

魔王「…横になれ。眠るまで見ていよう」

勇者「あ、ありがとう…」ﾎｯ

魔王「…」

勇者「…優しいですよね」

魔王「そうか？」

勇者「ええ…。敵対してたとは思えないです」

魔王「私は…人間と敵対したつもりは無い」

勇者「え？」

魔王「なんでもない。早く寝るんだ」ｸﾞｲ

勇者「ひゃ！」ﾎﾞﾌﾝ