P「えっ?」
千早「えっ?」
P「自分で選んだんじゃないのか?」
千早「価格ドットコムで評判がよさそうだったのを買ってきました」
P「それ、ソニーのCyber-shot RX100M2だろ。……ちょっと見せてみ」
P「Pモードで撮ってるのか、これはちょっともったいないぞ」
千早「プロデューサーモードですか? そんなモードはなかったような………」
P「そっちじゃない、『プログラムオート』のPだ。全自動ってことだよ」
千早「ああ、それならマニュアルに書いてありました」
P「それそれ。PモードのほかにもA、S、Mモードがあるだろ? ちょっと慣れてきた人はAモードを使うんだよ」
千早「どう違うんですか?」
P「露出を自動的に決めてくれるのがPモード、絞り値を自分で決めて撮るのがAモード、シャッタースピードを自分で決めて撮るのがSモード、露出を全て自分で決めるのがMモードだ」
P「Mモードは無理に使う必要はないな。俺はいつもAモードで撮影しているよ。露出を変えたいと思ったらEv値を変えればいいんだ。オーバー・アンダー気味になりそうなときは、ブラケット撮影で枚数を撮って……」
千早「あ、あの……露出って何でしょうか」
P「フィルムを光に晒すことだよ。デジタル全盛の今はCMOSセンサーだけどね。ほら、シャッターを押すと幕が開いて、奥にきれいなのが見えるだろ? あれがセンサーだ」
千早「あ、本当ですね」
P「どのくらいセンサーを光に晒すか、それが露出だ。たとえば千早が今撮ってた春香の横顔。なんだか写真全体が暗めだろ?」
千早「言われてみれば、そうかもしれません」
P「これは背景の壁が白いから、カメラが露出オーバーだと判断して全体的に暗くするような露出にしているんだよ。雪景色なんかを撮るときも同じ現象が発生するから、覚えておいて損はないぞ。この場合の解決方法は二通りあるんだ」
P「まずは一つ目。Ev値をプラスにして撮るんだ、これで画面全体が明るくなる。雪景色を撮るときはこの一つ目が有効だ」
P「そして二つ目。測光範囲をスポットにして撮るんだ。こうすると、春香の横顔だけに合わせた露出をカメラが考えてくれるから、ちょうどいい露出になる」
千早「本当ですね、すごいです」
P「この際だから露出を決める要素を覚えておくといい。今までで一番わかりやすかったから、フォトカノから説明を引用するぞ」
千早「フォトカノって何ですか?」
P「露出とはな、蛇口でバケツに水を貯めることに似ているんだ。蛇口の締め具合、つまり蛇口から水を出す勢いは絞りに例えられる」
P「蛇口を開ける時間、バケツに水を貯める時間はシャッタースピードに例えられる。適正露出を得るっていうのは、バケツに少なすぎず多すぎない水を貯めることなんだ」
千早「なるほど、そうなんですか。あの、フォトカノって……」
P「ここで引用を終わるが、これだけじゃ説明不足でな。デジタルカメラはISO感度を自由にいじれるんだ。フィルムの頃はISO感度は固定だったんだけどね。補足すると、バケツの大きさをISO感度に例えることができる」
P「ISO感度っていうのは、センサーの光の感じやすさだ。数字が高くなればなるほど少ない光で撮影できる」
千早「じゃあ、高いほうがいいんですね」
P「暗い所で撮るときはね。ISO感度は高くなると、ノイズが酷くなるんだ。目安としては、晴天で64~200、曇天で100~400、室内で400~1600ってところかな。まあ、よくわからないうちはオートでいい」
P「俺はどんなシーンでも極力800以下で撮るようにしてるよ。最近はファッションショーで屈辱ながらも3200で撮ってしまったが、ゆくゆくはどんなシーンでもぶれずに撮れるようになりたい」
千早「はあ、そうですか」
P「とはいっても、RX100M2は開放F1.8の明るいレンズだから心配はいらないだろう。せっかく明るいレンズだし、せっかくだから被写界深度のことも覚えておくといい。ほら、千早が今撮ってた春香の横顔。背景があまりぼけてないだろ?」
千早「ぼけ、ですか? そういうのは一眼レフカメラじゃないとできないものだと……」
P「そんなことはないぞ。このクラスのコンパクトなら、ぼけくらい朝飯前だ。というか、テクニックを熟知すればスマホでもぼけは作れる」
千早「それはすごいですね。ぜひ教えてください」
P「ぼけを大きくするテクニックはコツは4つある。1つ目は、絞りを開放すること。2つ目は、被写体とカメラを近づけること。3つ目は、被写体と背景を遠ざけること。4つ目は、できるだけ望遠域で撮ること」
P「知識だけ突っ込んでもしょうがないし、実際にやってみようか。春香!」
春香「何ですか、プロデューサーさん!」
千早「春香、その……撮っていい?」
春香「ええっ私を!? ……じゃあ、かわいく撮ってね☆ミ」
千早「一つ、絞りを開放すること……すみませんプロデューサー、絞りってなんでしたっけ」
P「あれっ説明してなかったか? 悪い悪い……まずは、カメラをAモードにしてくれ」
P「絞りっていうのは、ここにF2.8って出てるこの数字のことだ。このカメラの場合、開放するとF1.8になる」
P「絞りは開放すると被写界深度が浅くなるんだ。被写界深度が浅いと、ピントの合う範囲が狭くなる。逆に絞ると被写界深度が深くなり……」
千早「ピントの合う範囲が広くなる、と」
P「そうそう。ちなみに画面全域にピントが合ってることを『パンフォーカス』と呼ぶんだ」
P「ちなみに、パンフォーカスって和製英語だから海外で使うなよ。英語だと『ディープフォーカス』っていうからな。これから海外レコーディングもあるけど、気をつけてな」
千早「まあ、たぶん使わないと思いますけど……それで、どうやって開放するんですか?」
P「液晶の横についてるコントロールホイールを回すんだ。鏡筒根元にあるコントロールリングを回して絞るようにカスタムすることもできるぞ」
千早「あ、F1.8になりました」
P「よしよし、次は二つ目、被写体とカメラを近づけるんだ」
千早「わかりました。春香、ちょっとこっちに寄っ……」
P「そいつは違うぞ千早。写真っていうのはな、足で撮るものなんだ。千早だって、グラビア撮ってるときカメラマンに『こっち来て』とか『離れて』とか、言われたことないだろ?」
千早「ファッション誌の取材の時は、頻繁に場所を変えましたけど…」
P「それは背景を変更したいか、太陽の高度の変化で光の取り方を変えてみたくなったか、もしくは千早を気遣って気分転換しようとしたんだろうな」
P「ファインダーを覗いたカメラマンがモデルに位置変更の指示をすることはない。グリップを握り、ファインダーを覗いてシャッターに手をかけたら、後はもう撮るか撮らざるか、それだけなんだよ……」
千早「そ、そうなんですか。では、私が春香に寄りますね」
千早「じゃあ三つ目、被写体と背景を遠ざけること、ですか」
P「そうだな。これは事務所内だときついから、近所の公園に行ってみようか」
~近所の公園~
千早「公園に来ました」
P「よし、じゃあ背景までの直線距離が長い方を向こうか。さて、最後の一ついってみよう」
千早「できるだけ望遠域で撮る、ですね」
P「その通り。広角の写真っていうのは、ぼけないんだよ」
千早「その、プロデューサー」
P「ん、どうした」
千早「絞りが、F4.9になってしまったのですが」
P「ああ、問題ないぞ。ワイド時とテレ時で開放F値が違うのは普通だ」
千早「ああ、そうなんですか」
P「ワイドからテレまで開放F値が同じレンズは『通しレンズ』と呼ばれていてな。ま、これは一眼の話だ」
千早「とにかく、これでぼけるんですね」
P「ああ、撮ってみろ」
千早「春香! いくわよーっ!」
春香「いえーいっ!」
千早「」カシャッ!
P「どうだ?」
千早「すごいですプロデューサー! ぼけてます!」
春香「千早ちゃん、どう? どんな感じなの?」
千早「ほら、春香も見て!」
春香「わっ、すごい! でもなんていうか、照れるね……」
P「とっても可愛く撮れてるな。二人ともさすがだ」
春香「」///
千早「プロデューサーのおかげです。ありがとうございます」
P「ああ。まあ、俺はプロデューサーじゃないんだけどな」
はるちは「「は?」」
本物のP「あれ、弟じゃないか。なんでこんなところに。なんで春香も千早もいるんだ?」
はるちは「えっ? えっ?」」
P弟「いやぁー、久々に東京に来たからサプライズで兄貴に会いに行ったら、この子がうちのカメラ使ってるからさ。つい声かけちゃって」
兄P「なんだよ、そんなことなら一本連絡くれればよかったのに。というかお前、いつ就職したんだ?」
P弟「去年の秋からソニーの工場で清掃アルバイトしててな。俺もソニー勤務だぜ?」
兄P「お前、まだ定職にもついてないのか! いい加減お袋に迷惑かけるのやめろよ!」
P弟「そのお袋から伝言だよ。『正月くらい帰ってこい』ってさ」
P弟「……兄貴の事務所が今スゲー売れてるのは知ってるけどさ。お袋、寂しがってたぞ」
兄P「……」
はるちは「「……………………」」
P弟「んじゃ、俺は用事あるから。じゃな、兄貴!」
兄P「お、おう……お前、そろそろちゃんとしろよ!」
P弟「兄貴はマジメすぎんの!」
兄P「……あいつは本当にどうしようもないな」
兄P「さて、春香、千早。なんか、弟が迷惑かけたみたいでごめんな」
千早「いえ、弟さんには、写真の撮り方を教わっていました」
兄P「写真の撮り方? あいつ、そんな趣味あったかな」
春香「それより弟さん、プロデューサーさんにそっくりでしたね。双子なんですか?」
兄P「ああ、亜美真美たちと同じ一卵性の双子だよ。中身的には、亜美真美たちみたいには似てないけどな」
春香「へぇ~……似ない双子って、普段亜美真美を見てると信じられないけど、いるところにはいるんですね」
千早「そうですか? 私は弟さんと話していると、プロデューサーと同じような優しさを感じました」
P「そりゃあいつに言うと喜ぶだろうな。まあそれはさておき、事務所に帰ろうか」
はるちは「「はい!」」
終わり?
本当は春香PだけどSSA二日目のミンゴスの約束でボロ泣きしたんで書きました
今まで「はっ、歌聞いてなくとか豆腐かよ(笑)」とか思ってた自分を殴りたい
色(ホワイトバランスとか)、構図の取り方、圧縮効果とか遠近法にも言及しようと思ったけど眠いので次の機械にまた
千早誕生日おめでとう!
おやすみ!
書き忘れたけどRX100M2は劇場版で作中千早が使っているカメラです
ステマじゃないです
普通にいいお値段するカメラだけど、ソニーらしい良いカメラなんで買って損はないですよ
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