ベルトルト「誰も知らない」(69)

開拓地 845年

憲兵「作業一旦やめ! 各自、水を飲むように!」

ザワザワ・・・

エレン「・・・なんか天気が良くないな」

アルミン「来週あたり、嵐が来るらしいよ」

エレン「マジかよ・・・、? ミカサ、なにキョロキョロしてるんだ」

ミカサ「『エレ』がいない」

エレン「はあ?」

アルミン「最近かわいがってるっていう子猫の名前だね」

エレン「エレってお前なあ・・・。っていうか猫なんか飼う余裕ないだろ、俺たちの飯も少ないんだぞ」

ミカサ「お水を分けるくらいなら平気。エレは自分でご飯をとる・・・とっても勇ましい子だから」

エレン「ふーん」

アルミン「目が緑色だから、そう名前をつけたんだよね・・・」ハハ

エレン「なんだよそれ。・・・じゃ、今度カブトムシでも見つけたらミカサって名前つけてやるよ。目が真っ黒でピッタリだろ」フン

アルミン「エレン・・・」

ミカサ「そ、それは『ミカサ』を可愛がってくれるということ?・・・あ、エレ!」タッ

猫「ニャーン」

アルミン「あの子がエレかあ。黒猫だね」

エレン「猫に引っ掻かれて、病気にでもなったら危ないのに・・・」ブツブツ

ミカサ「こっちにおいで、エレ 「ベル、おいで!」 ・・・!?」

猫「ニャーン」クルッ タタタ

ミカサ「ま、まってエレ。・・・・」ジッ

「よしよし、良い子だね、ベル。・・・? 何か用」

ミカサ「・・・あなたは? あなたも、その子をかわいがってるの?」

アニ「わたしはアニ。・・・あんたは? ここのバラックの子?」

ミカサ「そう・・・わたしはミカサ。・・・あの、その子はわたしがかわいがってる、ので」

アニ「? わたしは1ヶ月前からこのベルを可愛がってるんだけど」

ミカサ「わたしも1ヶ月前から可愛がってる、エレを」

アニ「ああ・・・1ヶ月って言っても32日前からだから」

ミカサ「わたしは33日前からだった・・・と思う」

アニ「・・・」ジッ

ミカサ「・・・」グッ

エレン「・・・なにやってんだミカサのやつ・・・」

アルミン「まずいよ、人間関係がこじれたらここじゃやっていけない。・・・あの、ちょっと!」タッ

アルミン・ライナー「「すいません!」」

アルミン「・・・うん?」

ライナー「ん?」

エレン「待てよアルミン」タタッ

ベルトルト「待ってよライナー」タタタ

6人「「「・・・」」」

ライナー「ああ、アニが迷惑をかけたみたいで、すまない。コイツ、ちょっと突っ走りやすいところがあるが、悪気はないんだ」

アルミン「こちらこそごめんなさい、ミカサは・・・ちょっと言葉を選ぶのが苦手で・・・決して悪い子じゃないんです」

アニ「でもベルは」

ミカサ「ちがう、エレ」

ベルトルト「アニ・・・!」

エレン「おいミカサ」

ライナー「・・・俺たちは隣のバラックで暮らしているんだ。今日はコイツと猫を追っかけてココまで来たんだが・・・
     とにかくすまなかった。アニ、ベルトルト、帰るぞ。もう時間がない。・・・じゃあ、俺たちはこれで」グイ

アニ「・・・わかった。またねベル」ムウ

ベルトルト「アニ、話聞いてた? その名前言うのやめてよ・・・もう」グイ

タタタ・・・

アルミン「・・・隣のバラックに、あんなに年が近い子たちがいたんだ」

エレン「年、近いか? 少し年上に見えたぜ」

ミカサ「あの子はエレなのに・・・」

アルミン(悪い人たちではなさそうに見えた。年上で境遇の似た知り合いができれば心強いな・・・)ジッ

・・・

ザーザー ピカッ ゴロゴロ

アルミン「やっぱり、嵐になったね・・・」

エレン「クソ、せっかくつくった土壌が流されちまう・・・。憲兵のヤツらもわかってたなら、土嚢でも積ませりゃいいのに」

ミカサ「・・・、・・・」ソワソワ

アルミン「ミカサ、どうかしたかい?」

ミカサ「猫が、心配・・・やっぱり、探してくる!」ダッ バタンッ

アルミン「ちょ、ミカっ・・・!?」

エレン「あのバカ、・・・いくぞアルミン、あいつ足すげえ速いから・・・!」

ガチャ バタン

・・・

バシャバシャ

ミカサ「エレ、エレ! どこにいるの!」バチャバチャ

ミカサ(エレがよくいる森の中なら・・・・!)

―ガサガサッ

ミカサ「! エレ!」バッ ガシッ

ミカサ(なにかやわらかいものを掴んだ!)グイ

ミカサ・アニ「「みつけた!」」

ミカサ「・・・」パーカーツカム

アニ「・・・」マフラーツカム

バシャバシャ

アルミン「ミカサー!」

ライナー「アニ!」

エレン「・・・お、おお。あんたらか、なんかデジャヴだな・・・」

ベルトルト「本当だね・・・」

アルミン「ミカサ、帰ろう!」

ライナー「そうだアニ、帰るぞ。この大雨であんな子猫探すなんてムチャだ」

ミカサ・アニ「「嫌!」」

エレン「どうしたんだよ、お前そんな分からず屋じゃなかっただろ?」

ベルトルト「そうだよアニ、このままじゃ僕らが帰れなくなっちゃうよ」

ミカサ「あの子は親猫を亡くして、一人だから・・・・」

アニ「そんな不安な子を、一人にできない」

アルミン・ライナー「・・・」ウーン

エレン「・・・。場所の心当たりは他にあるのか?」

アルミン「ちょっと、エレン・・・」

ベルトルト「心当たりがあるところを見て、それで帰ろう。そこにいなきゃ、誰かに保護してもらってるんだよ」

ライナー「オイ」

ミカサ「わかった・・・エレンがそう言うなら」

アニ「うん、それでいい」

アルミン・ライナー「・・・」ハア

・・・

エレン「なんとか、猫は見つかったけどよ・・・・」

ベルトルト「嵐がひどくてバラックに帰れないね。キミが側の洞窟を案内してくれて助かったよ」

ライナー「ああ。雨に打たれちゃ体力が持たない。助かった」

エレン「いいよ、女の子もいんだし、身体冷えちゃ辛いよな」

アニ「・・・」

ミカサ「・・・ごめんなさい・・・、エレンたちに迷惑をかけてしまって。わたしは冷静じゃなかった」

エレン「もっと早く気づいてくれよ」

アニ「ごめん・・・心配だったの」

ベルトルト「・・・」キュン

アルミン「・・・」ガタガタガタ

ライナー「お前、大丈夫か? 寒いんだろ、俺にくっつくけよ。体温が高いんだ」

アルミン「へ、平気、です」ガタガタガタ

ライナー「そんなに警戒しないでくれよ。近い開拓地にいる者同士、協力しないといけないぞ。
     仲間は一人でも多い方がいい、そうだろ?」

アルミン「・・・。そうだね。僕は、アルミン・アルレルト。・・・キミは?」ガタガタ

ライナー「俺はライナー・ブラウンだ」

エレン「・・・俺はエレン・イエーガー」

ベルトルト「僕はベルトルト・フーバー」

ミカサ「ミカサ・アッカーマン」

アニ「アニ・レオンハート」

アルミン「キミたち3人、同じバラックで寝泊りしてるってことは・・・同郷なの?」

ライナー「ああ。俺たちはウォールマリアのサウィ村出身なんだ」

アルミン「サウィ村・・・聞いたことある、たしか南東にある小さな村だよね?」

ベルトルト「うん。そこで、あの日を迎えて・・・馬でここまで避難してきたんだ」

エレン「そうだったのか・・・」

アニ「あんたたちはどこの出身?」

アルミン「僕らはシガンシナ区だよ」

ライナー「シガンシナ区・・・被害の大きかった区の一つじゃねえか。大変だったな・・・」

アルミン「キミたちだって・・・」

エレン「・・・」ブルッ

ベルトルト「・・・」ガタガタ

ライナー「とにかく、このままじゃ俺たち全員風邪引いちまう・・・くっつきあってた方がいいぜ。猫も含めてな」

ミカサ「確かに、それはそう」ピタ

エレン「うわ、お前冷たいな、ミカサ・・・・」

アニ「・・・・。そういえば、あんたたち年は?」

アルミン「みんな10歳だ。君らは?」

アニ「わたしとこいつは11歳、デカいのは12歳」

ベルトルト「やっぱり、君ら年下だったのか・・・これから何かあったら頼ってよ」

エレン「ああ、悪いな・・・よろしく」

・・・

1ヶ月後

憲兵団上官「開拓状況は芳しくないな・・・」

憲兵団「その、これは、先月の嵐の影響で・・・」

上官「心配するな、ここの管轄は来週より他の兵に変わることになった。優秀な開拓効率をあげている兵だ。・・・」

老人「・・・これ以上、子供と老いぼれに何をやれっていうんだろうね・・・」

アルミン(管轄が変わる・・・ここは他のバラックより待遇がマシだって聞いてた・・・どうなるんだろう)

憲兵団「・・・。よし、今日の作業はここまで!」

エレン「疲れた・・・」ドサ

ミカサ「嵐があってから、作業が倍になっているから・・・。仕方がない」

アルミン「ぼ、僕パンを受け取ってくるよ・・・」ヨロ

ライナー「ほらよ、パンだ。もらってきたぜ」

アルミン「あ、どうも。・・・ライナー!?」


エレン「アニ、ベルトルトまで・・・。なんでここに? おまえら、隣のバラックだろ?」

ベルトルト「うん。管轄区域が変わったしくて、バラックを共同で使用することになったんだ」

ライナー「そういうことだ・・・今日から俺たちも同じバラックで寝泊りするから、よろしくな」

アニ「しばらくは、同じ地域を開拓するらしいから」

ミカサ「そうなの。・・・じゃあこの子の面倒もいっしょに見れる」

猫「ニャーン」

アニ「・・・可愛いね」ナデナデ

ミカサ「うん」

ベルトルト「・・・」キュン

・・・

翌日

アニ「・・・っ、痛!」

ライナー「アニ、どうした」

アニ「・・・。手、切っちゃって・・・」ポタポタ

ライナー「オイオイ、血が止まらねえじゃねーか。・・・すいません!」グイ

憲兵団「どうした」

ライナー「コイツ、怪我をしたんです。包帯はありますか?」スタスタ

アルミン「あ。アニ、怪我をしたのか・・・心配だな。・・・しかしライナーって、さすが12歳なだけあってしっかりしてるね」ザクザク

エレン「ああ。開拓地なのに結構身体がっしりしてて、かっこいいぜ」ザクザク

ベルトルト「アレは、体質だろうね・・・僕も同じもの食べてきたのに、全然違うんだ」ハハ ザクザク

エレン「お前だって背めちゃめちゃ高いじゃねーか・・・もう、あのちょっと小さい憲兵くらい身長あるぜ」

ベルトルト「ただ縦に長いだけじゃなあ・・・」

アルミン「イヤ素直にうらやましいよ。・・・っと、兵が戻ってきたね」ザクザクッ

ミカサ(・・・エレンもアルミンも、あの3人といっしょにいると楽しそうにしている。元気が戻ったようで良かった・・・)ザクザク

ミカサ(・・・ただ、あのアニは、正直、なんだか・・・おもしろくない・・・)ザクザクザクザク

エレン「スゲエ・・・ミカサ、俺たちの倍のスピードで・・・!」

ベルトルト「男が負けてたんじゃ、かっこつかないね・・・」

・・・

ミカサ「・・・、アニ?」

アニ「ミカサ。おはよう」

ミカサ「なにをしているの・・・こんな早くに、まだ夜も開けてない」

アニ「開けると同時に作業が始まっちゃうからね。・・・できた」

ミカサ「! 花冠」

アニ「好きなんだ、こういうの。・・・なんて、こんなちまちました遊び、似合わないだろうけどね」

ミカサ「? そんなことはない。わたしもお花は大好き・・・花冠も母さんがよく作ってくれた」

アニ「! そっか。・・・」ポン

ミカサ「!」

アニ「似合うよ。やっぱり、寒色は黒い髪のほうが良い」

ミカサ「アニはオシャレなのね」

アニ「オシャレって・・・。全然そんなんじゃないから」

ミカサ「色の組み合わせは、オシャレで大事だと母さんに聞いた」

アニ「アンタ、本当にお母さんが好きなんだね。お母さんは、・・・」

ミカサ「・・・・」

アニ「・・・ごめん、こんなまだこんな話するべきじゃないな」

ミカサ「母さんは、1年前に亡くなったから。もう平気」

アニ「・・・そう。ウチ、お母さんいなくて、男手一つで育ててくれたからさ。・・・こういう話できる相手、欲しかったんだよね」

ミカサ「! わたし・・・も、女の子の友達がずっと欲しかった・・・かも」

アニ「・・・。今度はアイビーでつくってあげるよ」ニコ

・・・

アルミン「ヘトヘトだ・・・」

エレン「日が暮れる前にパンもらいに行こうぜ・・・ん? ライナーとベルトルトだ」タタッ

アルミン「なに見てるんだろう?」タタ

エレン「ライナー、ベルトルト!」

ベルトルト「うわあ!」

アルミン「? なに、どうしたの?」

ライナー「よう、お前らも見るか?」ピラ

ベルトルト「ちょっ、ライナー・・・」

アルミン「??」

『今注目のモデル厳選! 裸婦像画集 お買い求めはお急ぎを』

アルミン「・・・コレ、カンノウ本のチラシじゃないか!」カーッ

ライナー「そこで憲兵が捨ててったのを拾ったんだよ」ハハ

ベルトルト「もう・・・エレンやアルミンにはまだ早いよ。・・・エレン?」

エレン「・・・」ジーッ

ライナー「そんなにその裸婦像が気に入ったのか? なかなかませてるな」

エレン「・・・かあさん」ポロッ

ベルトルト「!?」

アルミン「え、エレン大丈夫!?」

エレン「!」ハッ「イヤ、あの、平気だ! ちょっと、母さんに似てたから思い出しちまっただけで」ゴシゴシ

ライナー「・・・スマン、色々とエレンには早かったな・・・コレは俺がもらっておくから」スッ

ベルトルト「ライナー・・・キミってやつは・・・」

アルミン「エレンは一昨年までお母さんといっしょにお風呂に入っていたからね、仕方がないよ・・・」

エレン「ちょっアルミン、恥ずかしいだろ! やめろ!!」

ベルトルト(・・・この裸婦像みたいな美人と・・・)イイナー

ライナー(危ねえ、今晩コレで抜くとこだった)


・・・



翌週

憲兵「よく聞け、開拓民ども!!」

憲兵「本日より、この区域が我々が管理する! なお反抗的態度をとったものは厳重に処罰するから、そのつもりでいろ!!」

アルミン(ライナーたちのとこだけじゃなくて、かなり多くの区域と合同化されたんだな・・・知らない人がたくさんいる)チラ

憲兵「・・・。おい、そこの小さい金髪のガキ! 余所見するな!!」

アルミン「! は、ハイ!」

憲兵「生意気だな・・・」スタスタ

ミカサ「! アルミン・・・」

憲兵「丁度いい、見せしめだ。こうしてやる!」ガシッ グイ

アルミン「わっ!?」(抱え上げれた・・・)

ズルッ

アルミン「!!?」カアッ

憲兵「ガキにはケツ叩きだ! よく見てろよ!!」

バシンッ バシンッ

アルミン「う・・・うわああっ!」(お尻を、みんなに見られて・・・! 痛い、恥ずかしい・・・っこいつ等・・・・!!)バシンッ バシンッ

エレン「~~~!!」グッ

ミカサ「エレン、待って・・・」

エレン「ミカサ!? おまえアルミンが・・・ッ」

ミカサ「・・・」ジッ

アルミン「・・・!」フルフル

アルミン(ダメだエレン、エレンとミカサに迷惑かけるなら・・・我慢したほうが・・・)ギュッ ブルブル

ライナー(・・・アイツら、変態か・・・かわいそうに)

ベルトルト(どう考えても前の管轄の兵よりロクでもないぞ・・・)

アニ(・・・・最低)

・・・

その日の夜

憲兵「作業、終了して良し!」

アルミン「~~~・・・」バタン

エレン「アルミン、大丈夫か?」

ミカサ「肩をこっちに回して・・・」ヨイショ

ライナー「ずいぶん労働時間が伸びたな・・・早く寝ないと、明日に差し支える」

ベルトルト「え・・・? 待って、パンは?」

アニ「今日から夕飯は2日に1度にするって言ってたよ。とにかく寝よう・・・」

ベルトルト「でも、あっちの大人たちはパンを食べてたよ」

ライナー「あの人たちは金で商人から買ってるんだ。俺たちは一銭も持ってないから無理なんだ」

エレン「マジかよ・・・配給だけじゃ、全然足りねえじゃねーか・・・」

・・・



アニ「・・・」(お腹鳴りそう・・)ギュ

ミカサ「アニ? 寒いの?」

アニ「イヤ、別に平気だよ・・」ググ

ミカサ「寒いときはくっつきあうといい」ギュッ

エレン「お、あったかそうだな、俺も」ギュ

ライナー「なんだ寒いのか?」ガシ

ベルトルト「・・・」ガバ

アルミン「僕も入れて・・・」ギュウー

アニ「・・・イヤ、イヤイヤ。重いよ! 特にライナー!」ガバッ

ライナー「俺だけ嫌がるなよ! 俺が一番体温高いんだからな」

アニ「ライナー、だいたいわたし寒いわけじゃないから!」

ミカサ「・・・え、エレン? そういうことだから、もうわたしにくっつかなくてもいい」テレテレ

エレン「なんかミカサあったかいな・・・筋肉ついたか? ライナーみたいだ」

ミカサ「ら、ライナー・・・」ガン

ベルトルト「・・・アニ、あったかかったな・・・」キュン

アルミン(キミが抱きついてたのライナーなんだけど・・・)

憲兵「ガキども遅いぞ! 早く来い、昼飯抜きにするぞ!!」バタン

・・・

数ヵ月後

エレン「今日も草むしりか・・・」ブチブチ

ライナー「アルミン、なに見てるんだ?」ブチブチ

アルミン「・・・あの黒煙・・」ブチブチ

ベルトルト「管轄が変わった頃から、登るようになったよね。何か燃やしてるのかな?」ブチブチ

アルミン「木や草を燃やしても、あんな色の煙はでないんだ。一体なにをしてるのかと思って」ブチブチ

アニ「・・・。! アレを見て」

鳥の群れ「ピーヒョロロロ・・・、・・・・」ボトボトボトボト

ミカサ「鳥が・・・落ちていく」

エレン「死んじまったのか」

ライナー「なにかロクでもないことしてるってことだな・・・」

ベルトルト「アレを吸い込んで、僕たち大丈夫なの?」

アルミン「・・・」

ミカサ「大丈夫かといえば・・・あの人は、どういう人たち?」

黒髪、茶髪、ハゲのモブ「・・・」ニヤニヤ

アニ「作業もせず、わたしたちをニヤニヤ見て、すぐどこかに行ってしまう・・・」

エレン「開拓民じゃないよな。商人か?」

ライナー「よほど暇な商人ってことになるが、そうだと思いたいな・・・」

アルミン「・・・?」チラ

ハゲのモブ「・・・」ニヤ フリフリ

アルミン「・・・!」ゾッ

アルミン(あの身なり、商人にしてはいい気がする・・・、もしかしたら・・・)

・・・

数ヵ月後

アルミン「~~~、」フラ、バタン

エレン「! アルミン!」

憲兵「そこ! なにをしてる作業に戻れ!」

エレン「コイツ疲れてるんです、ずっと貧血だって・・・」

憲兵「じゃあソイツはそこに寝かせてお前は作業に戻れ! 開拓効率を下げることは許さんぞ!」

エレン「~~コイツ・・・」

憲兵「大体、足りない分の栄養は自分で食料を買って体調管理しろと言ってるだろう! お前たちの管理能力の問題だ!」

エレン「金がないのに・・・どうやって買えって言うんですか!」ガバッ

憲兵団「ハッ稼ぎ方まで面倒見切れるか・・ケツでもだせばいいんじゃないか」ブンッ

エレン「っ! はあ・・・??」サッ

ミカサ「ケホ、エレン・・・。早くアルミンを日陰に行かせよう」ヒョイ

エレン「~~クソ・・」グイ

アニ「原因が空腹だけならまだいいけどね・・・」ザクザク

ベルトルト「僕、後で薬草でもとってくるよ」ザクザク

ライナー「・・・。そろそろ限界だな」ザクザク

・・・



グーグー グルル・・ スースー キュー

ライナー「・・・西のバラックの配給は多いらしい」ヒソ

ベルトルト「・・・? うん、・・・まさか」

ライナー「貰えないか交渉してくる」
 
ベルトルト「・・・ダメだよライナー、無理だよ。仮にもらえても無傷じゃ済まないはずだ」

ライナー「わからんだろ、それは。どっちにしてもこのままじゃアルミンは飢え死にだ」スクッ

ベルトルト「イヤ、でも・・・ライナー、ダメだ、危険だって!」

ライナー「静かにしろベルトルト、みんな起きちまう。朝は少し遅れるかもしれんが、うまくやってくれ」バタン

ベルトルト「あ、~~ライナー、待って!」ガチャ

・・・

アルミン「・・・?」パチ

アルミン(アレ・・・僕は・・・。倒れてしまったのか。? 人の声がする、もう夜だと思ったんだけど)フラッ

アニ「―――で、―――なんだね?」

黒髪の男「―――だ、―――よ」

アルミン(アニの声だ。・・・!)

アニ「わかった、パンをくれて・・・病人に手を出さないと約束してくれるなら」スル

黒髪の男「へへへ、」ガバッ

アニ「・・・・。お父さん、・・・」ブルブル

アルミン「やめろ!」

アニ「・・・!? アルミン、出てきちゃダメだ!」ガバ

茶髪の男「おっと動くなよ」ギュッ

アニ「・・・ううう・・・!」

ハゲの男「せっかくだからいっぺんにやろう・・・キミも赤ちゃん生む準備できてるかな?」ガシ

アルミン「! 離せ! クソッ、殺してやる! …!!」


・・・

エレン(アルミン・・・、憲兵のヤツらもう我慢ならねえ)ムク

ミカサ「エレン」

エレン「! ミカサ、起きてたのか」

ミカサ「憲兵のもとに行く気? ダメ、行ってもどうにもならない。危険なだけ」

エレン「なんでだ! わからねえだろ!」

ミカサ「憲兵団の地位は絶対。わたしたちの言葉は聞かない・・・子供で、弱者だから」

エレン「ぐ・・・、イイヤ行く。奴らの場所はわかってるんだ、あの黒煙の根元だ!」ダッ

ミカサ「エレン! 待って」

・・

タタタ

エレン「けほ、・・・、あそこだ、誰かが火の番をしてる」コソ

ミカサ「ケホ、ケホ・・・えれ、ケホケホっ」ゼーゼー

エレン「ミカサ? お前が息切らすなんて珍しいな」

ミカサ「なんでもない・・・・ケホケホゲホッ!」

憲兵「? 誰だ!」

エレン「・・・! オイ、このままじゃ俺たち飢え死にだ! こんな馬鹿な開拓法、王様が命じる訳ないだろ! お前らのせいで・・・!」

憲兵「イイヤ、俺たちは王機関からの命令に従っているだけだ。・・・ここにきた根性に免じて教えてやるよ、お前らは王政府直々に人体実験の被検体として選ばれたんだ。
   とにかく、この状況の責任は俺たちにない。見当違いだ」

エレン「実験・・? 人を殺す実験をしてるってのか、王様が?」

憲兵「まあ良心として言ってやると、あまりこの黒煙に近づかないほうがいい。ほら、お前の女を見てみろ」

エレン「は? ・・・ミカサ!」

ミカサ「けほ、・・・けほけほっ、うええっ」ブルブル

憲兵「いいか。人には役割があるんだ。お前らは、被検体としての役割。なあ、親もない、力もない、将来もない、運命に見放された生き物には十分だろう。王のために死ねるんだぞ」

エレン「ふざけるな!! 俺は、母さんの仇をとるんだ・・・こんな開拓地なんかで死んだりしない! くそっ・・・」グイッ

ミカサ「え・・・エレン、ごめんなさ・・・、わたし・・・迷惑・・・」ケホケホ

エレン「もう、しゃべるなミカサ・・・!」

・・・

ガチャ

エレン「ミカサ、着いたぞ」

ミカサ「ありがとう、もう平気」スッ

エレン「本当か・・・? ! アルミン。お前、病人バラックから戻ってたのか。・・・!?」

アルミン「やあ、エレン・・・」

エレン「お前、顔の傷、どうしたんだ・・・。・・・憲兵か」

アルミン「その通りだよ。でもこんなもの勝手に治る。こんなものは・・・」

ミカサ「アニ。どこか悪いの?」

アニ「・・・。どこも悪くないよ。ありがとう」フラ

ライナー「・・・よう、起きてたのか」ガチャ

エレン「・・・ライナー、ベルトルト! ・・・その怪我」ゾッ

ベルトルト「よいしょ。・・・これ、西のバラックからもらってきたパン」

エレン「パンなんてもういいよ! お前ら、ひどい怪我だぞ!」

ライナー「・・・ああ、割に合わねーなコレじゃ」ハハ

ベルトルト「ライナーは脚をやられてるんだ。・・・しばらくは単純作業に専念する」

ライナー「イヤ問題ない。とりあえず今から添え木を探して、なんとか使い物になるようにする。迷惑はかけない」

ベルトルト「とにかく治療するからさ。パン、年下のキミらから食べてよ。悪くなっちゃう」

エレン「そんなものいらない! ・・・だれが、俺たちをこんな目に遭わすんだ・・・俺たちになんの恨みがあるんだ」ギリッ

ミカサ「エレン、それは違う」

エレン「・・・。なんだよ」

ミカサ「誰かに狙われてる訳じゃない、わたしたちが弱いからこうなっているだけ。怒っても仕方ない」

エレン「よ、弱いから死ねっていうのか!?」

ミカサ「だから生き延びて強くなろう。・・・パン、もらったほうがいい。今度はわたしたちが肉を調達してくるから」チラ

アニ「・・・」ウン

アルミン「・・・」


・・・


数ヵ月後

ガラガラッ

憲兵「早く起きろ!! 今日よりC地区の開拓が完了するまで、労働開始を一時間早め、終了を二時間遅らすことになった!!」

老人「これ以上無茶だ・・・何人過労死したと思ってるんだい・・・」

ライナー「過労死を気に留めないほど、開拓が切羽詰っている・・・イヤ違う、この地区の人間を囲って殺している・・・?」

ベルトルト「・・・」

エレン「・・・、クソ! いい加減にしろ!」グイッ

憲兵「邪魔だ、ガキ」ブンッ

エレン「あ・・・」フラッ

ガクンッ

ミカサ「エレン、しっかり。・・・もうそういうことはよしたほうがいい」ダキ

エレン「・・・、待て、待って・・・」クラクラ

エレン「・・・俺は、こんなに弱くない、のに、・・・」

ミカサ「この食糧不足じゃ、筋肉が落ちても仕方がない・・・」

エレン「・・・弱くなってるのか? ・・・俺、兵士になれるのか・・・。仇、打たないと・・・、母さん・・・俺・・っう!!」ズキ

(グリシャ『――お前はこの力を使いこなすんだ!』)

ミカサ「エレン? どうしたの」

エレン「・・父さん? 力・・・? ・・・・」

(グリシャ『この力の使い方は彼らが教えてくれるだろう!―――』)

エレン「・・・、・・・俺には、まだ知らない力があるのか・・・」スク

ミカサ「・・・エレン?」

エレン「ああイヤ、なんでもないよミカサ。・・・俺は弱くない、俺は力を使いこなす、そして母さんの仇を・・・!」フラフラ

ライナー「・・・?」



・・・



数ヵ月後、バラック

ミーンミーンミーン ジワジワジワ

エレン「・・・」ブツブツ

アルミン「・・・黒煙の量、日に日に増えている・・・」ジッ

ミカサ「・・・」ケホケホ

ライナー「・・・」スクッ

ベルトルト「ライナー?」

ライナー「西のバラックへ行く」

ベルトルト「・・・やめろよ、そんな体力じゃまた行ってもロクなことにならないぞ!」

ライナー「・・・配給はもう3日ないんだぞ、労働もない、それであの黒煙は増える一方だ! 
     それで大きな区域を出ようとすると撃ち殺される、コレはもう、そういうことなんだ!」

ベルトルト「落ち着けってライナー! 憲兵は言ってたじゃないか、休みを与えるって! 水は川で汲めるんだ、まだ餓死することはないよ!」

ライナー「それで? 馬鹿正直に信じて死亡経過時間を記録されたいのか? わずかでも体力があるうちに行動すべきなんだ!」


アニ「やめてよ・・! 騒いでるのを聞いてるだけで頭痛いんだ・・・」ズキズキ

エレン「そうだ、今に俺が憲兵団をぶっ壊してやるよ」

ライナー「・・・エレン」

エレン「心配するな、俺にはすごい力がある、やがて人類の希望となるんだ。こんなとこ出て、調査兵団になって、あのリヴァイ兵長の元で
    働き、母さんの仇を打って、世界の仕組みを変える、それで」ブツブツ

ミカサ「エレン。・・・余計に喉が渇くから、静かにしたほうがいい」

エレン「っなんだよ、俺の話がおかしいって言いたいのか!」

アルミン「・・・。エレン、ちょっと来て」グイ

ガチャ バタン

エレン「・・・んだよ、アルミン」

アルミン「エレン、ハッキリ言うよ、キミがこの数ヵ月言ってることはただの妄想だ」

エレン「父さんが俺に特別な力を与える注射をしたって言ってるだろ、それは本当に思い出したんだ!」

アルミン「そういうことがあってもなくても、今は関係ないよ。僕たちは衰弱していっていて、明日生きられるかわからない。
     実際アニやミカサは朝晩問わないキミの言葉にストレスを感じてますます疲弊していっている。それはわかるよね?」

エレン「・・・っ俺は、運命に動かされて戦うんだ。そしてお前とミカサと外の世界に行く」

アルミン「・・・僕らは、運命に見捨てられているんだ。世界の隅で弱っていく、多くの一つでしかないよ」

エレン「・・・。! ・・・アルミン、震えてんじゃねえか」

アルミン「!」

エレン「お前がそんなに俺を否定するなんてな、驚いたぜ」

アルミン「・・・」

エレン「わかったよ。すぐ調査兵団になってそんなことねえって証明してやる。とにかくバラックにもどるぞ」

アルミン「エレン!」

ガチャ

ミカサ「エレン・・・。水でも飲んで、落ち着こう」

ベルトルト「・・・アニ、キミ顔色がひどいよ。お腹も痛いの、吐き気は? ・・・」サスサス

アニ「平気・・・乙女の身体のことだから、気にしないで・・・」ウプ

エレン「おいアニ、しっかりしろよ。お前すごい足技持ってるんだし、いっしょに兵士にならなきゃもったいねーぞ」

ミカサ「・・・ねえエレン、調査兵になりたいって気持ちは変わってないのよね?」

エレン「そうだ! 絶対に調査兵に」

ミカサ「そんな精神状態じゃ、絶対、訓練兵にもなれない。・・・正気に戻れないなら、もう目指すべきじゃない」

エレン「は? ・・・なんだと、俺の意思はこんなに強いってのにか?」

ミカサ「今のエレンの精神は正常じゃない。訓練兵団に行っても徒労に終わるだけ」

エレン「は、ははは! ・・・俺は人類の希望になるんだぞ」

ミカサ「そう。どうやって?」

エレン「その方法もあるんだ! 今に思い出してやる! ・・・ックソ!」ダッ

アルミン「! エレン、今日は長く外に出ない方が」

バタン

・・

タタタタ

エレン(・・・本当に、俺の考えがおかしいのか。父さんが力を与えてくれたこと、しっかりと覚えてるのに!)

エレン「ゲホゲホッ、ハア、ハア、・・・?」カサ

エレン(裸婦像画集のチラシ・・・)

『黒髪・人妻美人画 予約受付中 限定版はお急ぎを』

エレン「・・・、かあさん・・・」

(カルラ「またミカサに守ってもらったの?」

 カルラ「・・・カッとなってばかりでないで、考えて行動しなさい」

 カルラ「あんたは男の子なんだから、ミカサを守ってみせな」)

エレン「・・・」ギュッ


・・・

ガチャ

エレン「・・・っミカ、? みんな・・・どうしたんだ? 集まって・・・」

ライナー・ベルトルト・アニ「・・・」

アルミン「エレン・・・ミカサが動かない」

エレン「・・・」スタスタ

ベルトルト「水汲みから帰らないから、様子を見に行ったら川辺で倒れていて・・・」

ライナー「エレン、父親が医者だと言っていたよな・・・」

エレン「ミカサ、・・・ミカサ。・・・」グッ ペタペタ スッ

エレン「・・・・・・」


・・・

ミーンミーンミーン カー カー

ザク、ザク、ザク

アルミン「・・・エレンの物、埋めなよ」

エレン「・・・」

アルミン「エレンといっしょにいれればいいって言っていたから」

・・・

ガチャ

アルミン「ただいま」

エレン「・・・なに見てるんだ?」

ベルトルト「憲兵が持ってきた」ピラ

ライナー「・・・」

アルミン「・・・」カサ

『第104期訓練兵 申込用紙』

エレン「・・・」カサカサ

メモ『6人分の申込用紙だ。よく2年生き延びた。立派な兵士になってくれ』


・・・


一年後

憲兵「全員、休憩! 食事をとれ!」

アルミン「今日、スープもつくんだって」ケホケホ

エレン「マジかよ。豆入ってるかな」

ベルトルト「僕、アニたちの様子を見てくる」

ライナー「わかった、お前の分の食事も受け取っておくから」ズル、ズル


・・

ミーンミーンミーン

アニ「ミカサ・・・いい子いい子」ナデナデ

コンコン カチャ

ベルトルト「アニ、お水だよ」ガチャ

アニ「あ。ありがとう」

ベルトルト「・・・ミカサももう一歳なんて早いなあ・・・」

アニ「そうだね・・・」

ベルトルト「はは、アイビーの花冠、黒髪によくにあってるね。アニと同じ青い目も綺麗だ。・・・いつか故郷に連れて行きたいな」

アニ「・・・ムリだよ、3年前・・・あの日」ナデ

ベルトルト「・・・」

アニ「核の被爆があって、ウォールマリアは出入り禁止になったじゃない」


ベルトルト「そう、だよね・・・。(言ってみただけだ、僕らはここでもうすぐ・・・)・・・こんなことを言ってはいけないけど」

アニ「?」

ベルトルト「病気や怪我・・・で、兵士の適正試験に落ちて、生産者に回ることになって。僕はコレはコレで良かったと思っているよ。
      イヤ・・・ミカサを殺した病気のことは憎いけど・・・」

ベルトルト(あんなクズが父親だけど、お母さんをしてるアニは幸せそうに見える。アニのためにもこれでよかったんだ・・・きっと)

赤ん坊「キャッキャ」

アニ「・・・可愛いね」ナデナデ

ベルトルト「・・・。うん」



終わり

補足



ベルトルト「じゃあ戻るね、アニ。・・・あ、そうだ。今日はスープがつくらしいから」

アニ「本当? スープならミカサももう飲めるかも・・楽しみにしてるよ」ニコ

ベルトルト「それがいいよ」ニコ

バタン

ベルトルト「・・・」

タタタ

ベルトルト(エレンの言っていたこと。みんな妄想だと言っていたけど・・・僕は違うと思っている。
      エレンがあんなことを言い出す1年前、ソックリな夢を見ていたから)

ベルトルト(その夢では・・・僕は、神様のような力を持って、故郷を襲った奴らを根絶やしにして復讐をする戦士になっていた。
      最初は、無力な現実の自分と比べて夢の中の自分を羨ましいと思ったけど・・・)

ベルトルト(夢の内容が進むにつれ、その神様のような力を持った代わりに、僕は死ぬよりつらい気持ちを味わうことになり・・・
      最期には罰としてひどい拷問を受けて殺された)

ベルトルト(目を覚まして、僕は死ぬほど安心した。「罪を負うくらいなら、運命にも見放されるくらい無力な方がよっぽどマシだ」って。
      僕は自分の命が最優先のヤツだから・・・。仇をとるのが最優先のエレンは、逆のことを考えて、現実と混合しておかしくなったみたいだけど)

ベルトルト「ただいま。ご飯ありがとうライナー」

ライナー「おう」

ベルトルト「スープなんて久しぶりだなあ」

アルミン「子供だけに配ってるんだって」ケホケホ

エレン「最近、開拓効率マシになったから、少しずつ良くなってるのかもな」

ベルトルト(無力でも、こうやってささやかな幸せがあるだし)パク

・・

憲兵1「この地区の開拓効率もマシになったな」

憲兵2「他の地区から呼んだ成人達がいい働きをしているようです」

憲兵1「ヤッパリ、怪我と病気のガキじゃどうしようもないってことが証明された訳だ。まあ最期に、うまいもの食わせてやったし、十分だろ」

憲兵2「無力なヤツに食わせる飯なんてありませんものね」ハハ



アルミン「・・・っ、うぐっ、」ピクピク

ライナー「うえっ、うええ・・・ッ」ゴボゴボ

エレン「・・・・・っぐ、・・・、あ、・・・かあ、さ・・・、かあさん・・・!」ビクビク

ベルトルト(・・・っ、こんな、とこで? こんなとこでこんなつまんないもので死ぬの? 僕らって、なんだったん、だ)

ベルトルト(・・・夢の中と、現実の僕、どっちが幸せだったんだろう、・・・)

憲兵1「・・・ヨシ、効いてるな。あっちの子供生んだガキにも持っていくか」スタスタ

ベルトルト「!!」ハッ 「ま、・・・待っ・・・て・・・! っかは、・・・ぅぁあああ・・・っ」ゲホッ ガクガク

ベルトルト(僕は、間違ってた)

エレン(俺は、間違ってない)

ベルトルト・エレン(生まれ変われるなら・・・、生まれ変われるなら、次こそあの人を守れるくらいの力が欲しい)


終わり

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