男「水槽脳は電波の夢を見るか?」 (6)
…………
少女「私たちは、わかりやすいだけの利益を得て、本当に大切なものを失くしてしまったのかもしれない」
少女「幸せも価値観も、人によって違うものだとわかっているけれど、わかっているつもりだったけれど」
少女「私には、誰もが誰も、苦しんでいるように思えてならない」
少女「私は馬鹿だから、お金の価値がわかりません」
少女「お父さんは偉いから、お金の価値を知っていました」
少女「だからお父さんは、悪魔に魂を売りました」
少女「お父さんは満足そうでした」
少女「でもお父さんは、昔の方が幸せそうでした」
少女「『仮面は黙り、鸚鵡は今日も誰かの声で鳴く』」
少女「私には、誰もが誰も、苦しんでいるように思えてならない」
…………
携帯『7:00、男様、朝でございマス』
男「最近、変な夢を見るな。まあ、夢に意味なんかないんだろうけど」
男「夢診断を頼む」
携帯『ハイ、了解デス。どのような夢を見られたのデスカ?』
男「暗闇にひとりの女の子が浮かんでいて、何かを訴えてくるんだ」
携帯『了解デス。現在、調査中……』
携帯『…………』
携帯『その質問にだけは、答えられまセン』
男「……珍しいな、いつもならなんでもすぐ答えてくれるのに」
男「くっそ、なんか腹が立つな……」
男「親父にもらったまだ出回ってない実験途中の最先端AIだってのに、なんでこんな質問の答えが返ってこないんだよ」
男「……まあいいや、学校に行ってくれ」
携帯『了解デス』
携帯『学校を表示しまシタ』
男「まだみんなあんまりログインしてないな」
携帯『メッセージ一件、再生します』
幼馴染『おはよう、男君!』
男「適当に返しといて」
男『ああ、おはよう。お前はホント、朝から元気だな。こっちは寝起きだってのに』
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