後輩「咲きましたねー」先輩「そうだな」 (23)
後輩「ぜー……ぜー……」ヨタ ヨタ
後輩(もう無理だ…限界………せっかく、訓練生から上がったのに……こっちに来ても、こんな……)ドサ
後輩「……あーあー」
後輩(毎日毎日、ホント飽きないよこの生活は…)
後輩(つまるところ、慣れないって事だー………うあー……面倒だー)
「何サボってんだ、後輩」
後輩「げ」
先輩「ふむ……上官に向かってその態度か、それに……」
後輩「い、いえ!お疲れさまであります!少尉殿!」バッ ビシ
先輩「かかと」
後輩「へ?」
先輩「間が空いてる、それに閉じ過ぎだ」
後輩「あ、うわっ」サ
先輩「首元が緩い、ズボンも捲るんじゃあない、手の角度はこうだ」
後輩「はい!」キュ サッ ビシ
先輩「ふむ…いいだろう」
後輩(ふぅ……細かいよホント……)
先輩「まぁ、そんな事よりも……サボってるのはいただけないな」ジ
後輩(げ)
先輩「罰走か食事抜き、どちらか選ばせてやる」ニコ
後輩(げげげ)
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後輩「………」ゲッソリ
先輩「お、帰って来たか」
後輩「」ビシ
先輩「はは、もういい。今は時間外だ」
後輩「ふひゅ………」ヘタ
先輩「メリハリが大事なんだ。いつまでもガチガチでいろなんて言わないさ」
後輩「………先輩……食事を……」
先輩「ん?もう食事の時間は終わったぞ」
後輩「」クラ
先輩「ははは、ほら立て。いいとこ連れてってやる」ス
後輩「…………」ズル
先輩「……上官の手を煩わせる気か?」
後輩「いえ……行きます……どうか連れてってくださいー」ヨタ ヨタ
先輩「ん、よろしい」スタスタ
後輩(鬼めー……)
後輩「…………」
先輩「ふー」
後輩「……なんですかここは……」
先輩「いい景色だろう」
後輩「いい景色だろう、じゃあないですよ!何もないじゃないですか!二十分も連れ回して着いたのがここですか!」
先輩「む」
後輩「自分は!空腹です!このままでは……」ググゥ~
後輩「…う…」ヘタリ
先輩「まさか後輩からそんな口の利き方されるとは思わなかった」
後輩「……空腹は、恐ろしいんです、よ…」
先輩「せっかくお前の分の食料をくすねてきてやったのにな」
後輩「!!せんぱぁーいっ!!ホント絶景ですよねココ!!いやー来てよかったー!!!」ルンルン
先輩「調子いいな……」ゴソゴソ
先輩「自分の、ちょっとした隠れ家なんだ、ここは」
後輩「へぇー」モーグモーグ
先輩「ムカつくな、一発殴っていいか?」
後輩「あ、それはノーサンキューです」
先輩「ふん……滝、広がる森林、小鳥のさえずり……はもう夜だから聞こえないか」
後輩「駐屯地の外れにこんな場所を見つけるって暇なんですね」パリ サクサクサク
先輩「失敬なヤツだなお前は……時間が時間だったらトコトン絞ってる所だ」ドサ
後輩「冗談ですよ冗談。いやぁ、本当……楽になれますね、ここ」
先輩「普段気を張りつめて生活してるんだ。ちょっとぐらい、な」
後輩「……そうですね」
後輩「さて、腹も満たされたので帰りましょう」
先輩「何を言ってるんだ。もう少し付き合え」
後輩「今日はヘトヘトなんですよ、罰走のせいでー」
先輩「身を以てしても自業自得という言葉が理解できないようだな」ジト
後輩「……まぁ、別にいてもいいんですけど…何もなくてつまんないですもん」
先輩「……………」
先輩「時期に分かるさ。今はまだ、つまらないだろうが…きっとこのような景色が手放せなくなる時がくる」
後輩「そういうものなんですかねー」
先輩「………自分はもう少しここにいる。お前は帰っていいぞ」
後輩「本当ですか!?やった!寝られる!!」
先輩「……」
先輩(ため息しか出ない程残念な頭をしてるな…後輩)
後輩「それでは先輩っ、お先でーす」タッタッタ
先輩「……まだ走る元気も残ってるじゃあないか」
先輩(明日も、いや…明日は今日以上に絞ってやろう)
先輩「…………」
先輩(ここにくると、自分はまだ生きてこの世界にいるのだと感じる。荒廃し、焼けただれた大地では…死との薄い境界線に怯え、同じように心も枯れていく)
先輩「……明日も、この景色は……自分は生きているのだろうか」
先輩「……………」グス
先輩「死にたくないな……」
後輩「せんぱぁーい……」トボトボ
先輩「っ!!!」スチャ
後輩「ちょ!!銃口向けるのはおかしいですよ!!」
先輩「きゅ!急に出てこられたら反応してしまうモノだろうが!!」
後輩「どうやって帰ればいいのか分からないから戻ってくるしかないじゃあないですか!!」
先輩「…………」
後輩「………」フリーズ
先輩「…このドあほが」
後輩「酷い!」
先輩「うるさいぞ後輩!気が散るだろうが」
後輩「本当に怖いんですから……」トス
先輩「………っ」グシ
後輩「あっれ?もしかして泣いちゃってました?自分の唐突な登場に驚いて」
先輩「風のせいで目が乾いただけだ」
後輩「…ほー……へー……」
先輩「泣かす」
後輩「すみませんでした少尉殿」サッ
先輩「……ふん…もういい。帰るぞ」スタスタ
後輩「おお!了解です!!」タッタ
先輩(部下に弱みを握られるほど、弛んだ上官などいるものか………しっかりしろ。自分は、軍人だ。戦場で生き、戦場で死ぬ人間だ)
先輩「…………」
後輩「やっと帰ってきたー…疲れたーっ」スタタタタ
先輩(やはり普段手を抜き過ぎだな、絶対に許さん。泣き言も無視してやろう)
ゴーグル「……おんやぁ?今お帰りですか?」
先輩「ああ、少し風に当たりにな」
ゴーグル「少尉殿も物好きですねぇ、”葬儀屋”と一緒に出歩くなんて」
先輩「放っておいてくれ。異名だのあだ名だの、戦場では全く役には立たん」
ゴーグル「はは、では」
先輩(……葬儀屋、ね)
先輩(後輩は、なかなか腕のたつ兵士だ。本当だったら自分と同じ……いや、さらに上の尉官にまでなれるような人材だ)
先輩(それなのに当の本人は問題だらけで下士官止まり、ときたもんだ……)
先輩(戦場で味方の死を悲しみ、あの世への手向けをし、遺品を後生大事そうにずっと抱えてる)
先輩(『後輩と行動をすると、いつあの世に送られるか分からない』……というのが、葬儀屋とかいうくだらんあだ名の理由だ)
先輩「………」
後輩「…………」ワイワイワイ
後輩「………………」
『今回哨戒の任に当たる分隊の編成は――――――』
『――――哨戒哨戒って、このクッソ平和な所に敵なんてこないのにな、まったく……』
『――――ん?こんな所に道?』
『――――――酷い臭い……』
『気をつけろ、敵の負傷兵がいるかもしれない』
『…もぬけの殻……』
『――――っ!!!ーーーっ!!!!!!!』ドタドタドタ
『なっ!?まずい!何処の圏内の敵だ!?』
『知るか!撃たなきゃやられるぞ!』
『待て!!なんだか様子がおかしい!!』
『撤退です!!相手の数が把握できればそれでいい!!退いて本隊と合流します!!』
『っ!!!身体にグレネード!?誘い込まれてるぞ!!!』
『道に出たわ!!すぐに戻』パン
『っっっっ!!!狙撃手までいるぞ!!チクショウやられた!!』
『生体センサー多数反応!!規模は小隊レベル!!』グチャ
『どけ!グレネード野郎は俺が抑える!!本隊に奇襲かけられちゃたまんねーぞ!!』
『撤退!全滅しちゃあダメです!!なんとか、生きて帰るんです!!』
『身を隠せ!!破片でやられるぞ!!』
『待ってください!!まだ!!!』
『…………………そんな…』
後輩「…………へくしっ!………うう、さっむぅ~……」
後輩「…………」
「眠れないの?」
後輩「まぁ、いつもの通りですよ、バンダナさん」
バンダナ「そっか…結構走らされても、ピンピンしてるんだね」ポス
後輩「体力にはそれなりに自信があるので」
バンダナ「でも走ってる時は死にそうな顔、してたけど」クスクス
後輩「ああいう顔でもしなきゃあいつまで経っても終わりませんからね。少尉殿は加減を知らないので」
バンダナ「ふふっ」
後輩「バンダナさんは?」
バンダナ「ん?」
後輩「眠れないんですか?」
バンダナ「んー…まぁね。またここも………動き始めるみたいだから、不安になっちゃって」
後輩「ああ……らしいですね」
バンダナ「後輩くんの周りには、生きた証がたくさんあるからちょっと力を分けてもらおうかと思ったの」
後輩「嫌味ですか、それ?」
バンダナ「それだったらもう少し嫌味ったらしく言うよ」クス
後輩「そうですか。ま、どうぞご自由に。自分は、託されて生きてますので」
バンダナ「……写真、ヘルメット、タグ、ピアス、髪、歯、手紙、ボトル……」
後輩「ホント、どんどん重くなっていくんですよね」
バンダナ「嫌味?」
後輩「だったらもう少し嫌味ったらしく言いますよ」
バンダナ「ふふっ」
後輩「自分は抱えてやるしか、できないんです」
バンダナ「それでいいんじゃないかな」
後輩「報いる事もできない。マトモに供養もしてやれない。ただ、持ってるだけです」
バンダナ「生きた証は、誰かに憶えてもらえればそこにあるの。きっと、みんなも生きていたって何かを残したかったと思うの……だから、どうか忘れないであげて」
後輩「これは自己満足なんですかね?」
バンダナ「どうだろう……この戦場で生きた証は誰だって欲しいものだと思うな」
後輩「ただ単に自分は……楽になりたいのかもしれないのです」
バンダナ「背負う事で?」
後輩「……ま、そんなとこです。ちょっと話し込んじゃいましたね」
バンダナ「あ、いけない。先輩ちゃんに嫉妬されちゃう」
後輩「はい?」
バンダナ「おっと、それじゃあね。早く寝ないと明日に響いちゃうよ」サササ-
後輩「………いや、嫉妬って……」
後輩(先輩、先輩,先輩………)ムーン
先輩『その、後輩……あんまり他のヤツの所に行かないで欲しいんだが……』テレ
後輩(……た、確かに……カッコいいけど、そういう、らしい一面を想像してみると……)カァ
後輩「…………」ドヨン
後輩(どうせ明日になったら意地悪な上官にしか見えないんだ。バカな考えはやめてさっさと寝よう……)
「我が軍は今、劣勢の位置にある。そのため、我が軍が崩れるような事があればたちまち祖国は異人達によって踏みつぶされるであろう」
先輩「………」
後輩「………」
後輩(何度目なんですかね、この朝礼)
「我らが魂は我が国と共にある!!祖国のため、平和を望む国民のため、愛する人間のために!自身の身が朽ち果てようとも、必ずや勝利をつかみ取るのだ!!!」
後輩(毎日毎日……輝かしい明日はいつになったらくるんですかね……)ウズ
「己を鍛え上げ、祖国を守る盾と!先へ進むための刃となり!本日も各個の任にあたれ!!以上!!」
後輩「ふぁ………」
先輩「………」グシャ
後輩「!!!!!!」
後輩「何するんですか少尉殿ぉ!!」ピョンピョン
先輩「腑抜けた態度がありありと見て取れるぞ戯け物が」
後輩「足踏む事ないじゃあないですかぁ……言えば分かるのに……」
先輩「ふん。本日新しく小隊が編制され、指揮官として私が、指揮官補佐としてお前が選ばれた」
後輩「?………新しく編制されたって……最近ですと……」
先輩「そう、北征部隊だ」
後輩「はは……激戦必死じゃあないですか」
先輩「お互い二階級特進もあり得るな」
後輩「名誉な事ですね、本当」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「………さて…明日◯五◯◯、行動開始だ。準備は怠るなよ」
後輩「少尉殿」
先輩「どうした」
後輩「……生きて、帰りましょう」
先輩「馬鹿者、骨を埋めるつもりで行くぞ」
後輩「………」
先輩「……国のためだ」
後輩「国のためって……」
先輩「国民は、一刻でも早く平和が訪れるのを待ち望んでいる」
後輩「多少の犠牲は気にしないんですか」
先輩「犠牲の上でしか成り立たないものがあるのが世の中だ、気にするな」
後輩「……犬死にさせられるのがどうしたら国のためになるんですか」ボソ
先輩「っ!」バキ
後輩「ぐぁっ!!」ドサ
先輩「犬死にさせられるというのは先に逝った仲間の生に対する冒涜だ!!!撤回しろ!!!」ガシ
後輩「………く……………申し訳…ございませんでした……」
先輩「………っ…」ジワ
先輩「………すま、ない…」クル ザッザッザッ
後輩「……………」
_______________
先輩「………………」
後輩「せーんぱいっ」
先輩「………………後輩…」
後輩「いやぁ、来てると思いましたよ。宿舎の方では姿が見えなかったので」
先輩「………」グス
後輩「普段冷静で、鬼のような厳しさの先輩でも泣くんですね」
先輩「なんだ、からかいにきたのか?……こんな、みっともない上官を」
後輩「そんな馬鹿な。綺麗な景色でも見て、気を晴らそうかと思って来たんですよ」トス
先輩「…そうか」
後輩「……怖いですね、明日」
先輩「…………」
後輩「自分、覚悟できましたよ。みんなが生きた証は、こっちに残る人間に預けてきました」
先輩「ふふ、預けたって、帰ってくる気満々じゃあないか」
後輩「もちろんですよ。這いつくばってでも、抗います」
先輩「………強いな、後輩は」
後輩「臆病なだけですよ」
先輩「……自分……ううん、私は……怖いんだ。ちっとも覚悟が決まらなくて、頭では分かってるのに震えが治まらないんだ」カタカタ
先輩「……国のために、命をかけるのは構わないと思ってる。でも、怖いんだ。……死にたくないんだ。そう考えると……怖くて、怖くて……」
後輩「それは向き合う相手が違うから怖いんですよ」
先輩「……どういうことだ?」
後輩「生きたいのに、死神さんに向かって行くのは誰だって怖いですよ。……生きたいのなら、生きのびるための女神を捜さなきゃ」
先輩「………ああ、そういうことか……はは」
後輩「生きましょう、先輩」
後輩「生きて、またここに帰ってきて…こんな風に息抜きしながら、たわいもない会話をしましょう」
先輩「………ああ…そうだな」グス
後輩「もうすぐ春ですよ?この木もだいぶ莟をつけてますし、帰って来る頃には満開ですよ、きっと」
先輩「お調子者が……帰ってきたら花見に酒だ」
後輩「お、その調子ですよ」
先輩「ふふ……ぐすっ……」
後輩「ははっ」
先輩「…少し、気がまぎれた」
後輩「それはなによりです。自分は八つ当たりされて痛い思いまでしたんですから」
先輩「う……すまない…」タジ
後輩「確かに無礼だったかもしれませんが、力加減というものをですね――――――」
先輩「………」ス
後輩「あの、先輩?」
先輩「………」チュ
後輩「」
先輩「許せ。とりあえず帰ってきたら、また返事でも聞かせてもらおうかな」ニコ
後輩「第一分隊は東より川沿いから進行、目的地に到着後待機し第三分隊第四分隊の連絡を待て」
後輩「第三分隊は西から迂回し市街地まで進行、各個配置につけ。建物の崩壊等のトラブルにより配置に付けない場合は第四分隊と合流のため南へ退け」
後輩「第四分隊はこのまま北へ進行、目的地まで直行の形になるため速度は落としておく。目的地に到着後第一分隊に連絡、その後迫撃砲による陽動をかける」
後輩「第二分隊は第四部隊と共に進行、目的地に到着後後方支援、怪我人の手当等を任せます」
後輩「それではこれより隊長から本作戦開始にあたってのお言葉をいただく」
先輩「今回の作戦で、大きく戦局が動く事になる。一人として欠ける事なく、本国の栄光を勝ち取る様を必ず見届けよう」
後輩「それでは全員行動前の準備を開始してください」
先輩「……」
後輩「……まさか少尉殿の口から生き残るように言われるとは誰も思わなかったでしょうね」
先輩「誰も死ぬ気なんてさらさらないんだ、わざわざ死にに行くぞ、だなんて気が滅入る」
後輩「はは、それもそうですね。それで、少尉殿」
先輩「先輩、でいい」
後輩「……そんな時間じゃあないんですが…」
先輩「いいんだ。自分の名前を呼んでくれる誰かがいるのは、心強い」
後輩「しょうがない人ですね……先輩」
先輩「別にそれぐらい構わんだろう、お前も」
後輩「ええ、もちろんですとも。自分、第三ですので先に行ってお待ちしていますよ」
先輩「到着が遅れてる間に物陰でサボってたらバッチリ迫撃砲をお見舞いしてやる」
後輩「仲間に向かってなんて事するんですか!」
先輩「ふふ…」
後輩「ま、キッチリやりますよ。訓練ではないので」
先輩「そうだな……後輩」
後輩「はい」
先輩「生きて帰るぞ」
後輩「もちろんですよ。おいしーい酒が待ってるんですから」
先輩「花より酒か」
後輩「おおっと?間違えてしまいました」
先輩「せいぜい足掻こう、這いつくばってでも」
後輩「元からそのつもりですよ、それでは……行ってきます、先輩」ス
先輩「ああ」
先輩(………寒いな……雪がちらついてる)
先輩「第四分隊、準備はいいな?これより作戦を開始する!」
後輩(マズいですね……本格的に降ってきました……もうすぐ春なんですけどね)
後輩(兵達の動きもどんどん鈍くなっていく……このままだと作戦に支障も出てきてしまいます)
後輩「全体、進行ペースを上げます!」
ペースアゲルゾ オイチンタラスンナ
後輩(早いとこ配置についておかないと、もし戦闘が開始してしまったら……)
先輩「…………おかしいな」
兵1「足跡ひとつ見つかりませんでした。どうやら向こうも何かするつもりなのでしょう」
先輩「先日送った斥候の報告ではこのエリアに潜伏している、と確認はとってあったんだがな…これは面倒な事になった…」
先輩「無線兵、他の隊に今の事を伝え、周囲を警戒するように伝えてくれ」
無線兵1「はっ」
先輩(北へ退いた…?いや、わざわざ戦力を集め、行動範囲を狭めるような真似はおかしい。となると東の川沿い、西の市街地……川なら行軍の気配を消せると踏んだか……?)
先輩「………」
無線兵1「少尉殿、第三分隊と連絡が取れません」
先輩「何をやってるんだ、第三は……まぁいい、第一分隊にこちらと合流するように連絡してくれ。そうしている間に第三とも連絡も取れるだろう」
無線兵1「はっ」
後輩「くっ……状況はっ?」
兵3「三名戦死、二名負傷してます!!無線兵がやられたため連絡手段を失いました!!」
後輩「負傷者二名は動けそうですか?」
兵3「一人は右腕を、もう一人は下半身がやられてしまい、とても戦力としては……」
後輩「分かりました、この状況でなんとか打開策を見つけましょう。連絡が途絶えていれば、他の隊も何か勘付くはずです」
兵3「了解です!」サササ
後輩(じり貧だ……このまま身を隠して、どれくらい持つんだろうか……向こうは五十、こっちは七人……)
ザザザ
後輩「!!」バッ
後輩(二!!)ズダダダダダダ!!! ズシャア
「!"#(('&!!」 「#(%&'(#$!!!」 ドサ ドサ
後輩(飛び出して、撃って、物陰に隠れる……三人までなら大丈夫ですが、それ以上は……)ハッ ハッ …
後輩(まさか、こっちに敵さんが流れて来てるとは思わなかったですよ……連絡とろうにも断たれてしまいましたし……)
後輩(信号を挙げようにも、的にされてしまうだけ……とうとうお迎えがきた、と言えばいいんですかね)
「_?><>?+*`{」ザ ザ
後輩「………はぁっ……はぁっ……」ガタガタ
「%$_#"}!{?」ザクザク
後輩「……っふ」ガシッ
後輩「このっ!!!」ズドッ
「」ブシッ
後輩「…はっ……はぁ……ふぅ……」ポタ ポタ
後輩(……ナイフの血、落とさないと場所が割れますね……)ゴシ
後輩「…………先輩……」 バスッ
後輩(え…身体に穴……?………あ……しま……)ドサ
先輩「第一分隊は南方より攻め上がってくれ。第四分隊はこのまま西へ向かって強襲をかける」
先輩「第三から連絡がない事をみて、おそらく……んん……おそらく、かなり緊迫した状態であると思われる」
先輩「第二分隊は戦闘が開始した所を見計らって第三分隊の兵を救出してくれ」
先輩「事は急を要している!行くぞ!!」
先輩(……後輩……生きて、帰るぞ……頼む……)
後輩「っぐぅ……はっ………」ズルズル
後輩(止血だけで……どれだけ持つんですかね……)ギュウウウ
後輩「ぐ、ゔ……」パタタ
後輩「は、はぁっ…はぁっ……」
兵3「曹長殿!」
後輩「待て……こないで下さい………ぐ……」
兵3「ですが…」
後輩「仕留め…損なってるのに……トドメを刺さないのは、餌代わりです。来たら、あなたが死にますよ…」
兵3「いや、今なら!雪が少し時間を稼いでくれるはずです!」タタタ
後輩「………ごふ…」
兵3「そこの、陰に…!」ズルズル
後輩「………」
ド
兵3「」ドサ
後輩「…本当、馬鹿ですね……生きて、帰るつもり、ないんですか…」
後輩「…ぐ…ごふっ……ちくしょう…ちく、しょう……」ギリギリ
バキャ
後輩「っあ”あ”あああああああ!!!!!」
後輩(腕、腕まで……やられましたか……もう、ダメだ……ごめんなさい、先輩……)ドクドク
後輩「花見に酒は……あの世で、先に始めてます……」
ズドン! ズドン!! タタタ タタタッタタ
後輩(ふふ………あの世行きの、祝砲と………鼓笛隊ですか……あはは…)
「後輩!!!」
後輩「………あ……」
先輩「後輩!!しっかりしろ!!後輩!!」ダダダ
後輩「……来て、くれたんですね……先輩」
先輩「すぐに手当する!気をしっかり持て!!」
後輩「左手は、ダメなんでいいです。……それよりも聞いて、くださいよー先輩」
先輩「…く…血が、血が止まらん!!なんでだ!!!」
後輩「ふ、く……ゔふっ………」ドロ
先輩「もういい!喋るのはやめろ!肺までおかしくなってる!」
後輩「ライフル………とって…下さい……」
先輩「ああ、持ってろ、だから口を閉じろお調子者!!」ガシ
後輩「……ふーっ……ふー…っ…」カチャリ
先輩「ど、どうした?」
後輩「ふ…あはは…………」
先輩「何馬鹿を……何故私に銃を向けてる!!」
後輩「ある程度、方向は……分かりました……ただ、先輩までも………巻き込みは、しません」スチャ
ダダダダダダッ
先輩「っ!!!」ビク
後輩「はは…死ぬときは…一矢、報いるのが…軍人ですから……」トサ
先輩「ひ……おい…後輩?………起きろ、おい!!!」
後輩「…っはぁ……起きてますよ……ただもう…これ以上は力,出ませんよ………」バチュ
先輩「!!!!」バッ
後輩「がぁ……っああ!!……足が……く、そ…仕留め、損なったかー………」
先輩「く……待ってろ、後輩!!今またそっちに行って、助けてやる!!」
後輩「いや、いいんです……さっきも、それで……兵3が……」
先輩「まだお前は助かる!!すぐに手当すれば生きて帰れるんだ!」
後輩「花見、したかったです」
先輩「馬鹿なこと言うな!今からそっちへ!!」
後輩「……」チャキ
先輩「…お前!!」
後輩「自動小銃は一応……身につけてあるんで……これぐらいは、自分でも取れます……そして……」
後輩「もしも…まだ、助けようとするなら……撃ちます…逃げて……生きて下さい…先輩……」
先輩「お、前………」ポロ
後輩「……あはは……泣き虫ですね、最近の先ぱ」ドシュ
後輩「っ!!……っ…あ……あ”あ”あ……」
先輩「後輩!!!」
後輩「ま……ぎひ……来ないでください…!」チャキ
先輩「だが……!」
後輩「……………………」
先輩「……私は、許さないぞ…お前が、死ぬなんて!生きて帰ろうと言ったのはお前だ!!許さんぞ!!!」
後輩「……う…はぁ……また、どやされて……しまいました……」
先輩「お、お前の事を、愛してるんだ!!だから行くな後輩!!!」
後輩「…あは…嬉しいです……実は……自分も……愛してましたよ……」
先輩「…ぐ……っ」ボロボロ
後輩「いつも、不機嫌で…鬼のような厳しさで…それなのに、優しくて…暖かい……」
後輩「……自分の、お守りは……先輩の写真だったり……へへ……」
先輩「………っ……」
後輩「……どうです?この雪景色に……随分と、赤い……鮮やかな花………はは、花見、今しちゃえば……約束は守れそうですね……こんなに、綺麗に……」
先輩「………お前……お前は……馬鹿だよ………愛した人間を残すのか?……」
後輩「……咲き、ましたね」
先輩「…そう、だな……」
後輩「…………」ニ
終了です。
あと1レス残してサーバ停止とか、随分と酷い目にあった……。
似合わないとの事でしたが、確かに自分にこんなのは合わないですね。
もうちょっといい感じに書けたらいいのになぁ。
次はまた普通に書きます。
男「まっすぐ」という話を書き始めました。
前スレで番外編……という話題が出てたので
妹「……つぎ」兄「ん、了解」ということで番外編に手を出してみようかと思います。
このSSまとめへのコメント
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