佐天「付け耳って可愛い」(130)

佐天「ふんふーん」

初春「お待たせしました、佐天さん」

佐天「おっ? おっはよー! う・い・は、……る?」

初春「…………」

佐天「初春……さん? ……ですよね?」

初春「……なんですか?」

佐天「……花、ありませんけど」

佐天「えっと、……え? どうしたの? 体調悪い? 大丈夫? 病院行く?」

初春「どんだけ心配してるですか!」 

佐天「だって花のない初春なんてメダルのないメダロットみたいなもんだし……」

初春「花が本体みたいに言わないでくださいよ! 方々でネタにされてるんですよ!?」

佐天「ゴメンゴメン、ちょっとびっくりしちゃってさ……」

佐天「それで、どうしたの? 寝坊してセッティング出来なかったとか?」

初春「いえ、ちゃんとセットはしてきたんですけど急に突風に煽られまして」

佐天「吹っ飛んじゃったの?」

初春「運悪く道路に落ちてトラックに踏み潰されちゃいました」

佐天「あらら、お気の毒に。初春(花)」

初春「だから! 花を別の人格みたいに言わないでってば!」

初春「はあ……折角気合い入れてセットしたのになあ……」

佐天「んっふっふー、落ち込むな落ち込むなー」

初春「……何か企んだような笑いですね」

佐天「初春にぴったりのプレゼントがあるのよぅ!」

初春「プレゼント、ですか?」

佐天「見て驚けー! はい、じゃーん!」

初春「…………イヌ耳?」

佐天「驚いた? 驚いたでしょ? 肉球もあるんだー!」

初春「私にぴったりのプレゼントって言ってませんでした?」

佐天「とりあえず頭に何か乗せとけば喜ぶと思って」

初春「私が首でも鍛えるために花乗せてるとでも思ってるんですか?」

佐天「まあまあ、話を付けるのはイヌ耳着けてからにしよう」

初春「何うまいこと言ったみたいな顔してるんですか?」

初春「全く、しょうがないですね佐天さんは」

佐天「何だかんだ言いながら結局着けてくれる初春が、あたしは好きだよ」

初春「肉球グローブも着けるんですか?」

佐天「あったりまえよ! 完璧目指さなきゃね!」

初春「んしょ、よっと。……はい、これでいいですか?」

佐天「ういはる可愛いー! 好きだー! 結婚してくれー!」

初春「うわああああ! すごいタックル!」

佐天「よーしゃしゃしゃ! わーしゃしゃしゃ!」

初春「ちょっと、ちょっとー!」

佐天「初春似合いすぎー! 初春ー! イヌ春ー!」

初春「やっ! どこ触ってるんですかぁ!」

佐天「首輪も持ってくればよかったー! リードも付ければよかったー!」

初春「そんなことしたらもう口利いてあげませんからね!」

佐天「初春! お手してみて! お手!」

初春「……はい」

佐天「いい子だ初春ぅ! 次! おかわり!」

初春「……はい」

佐天「お座り! あたしの膝の上にお座り!」

初春「…………」

初春「……よいしょ」

佐天「痛い痛いあいだだだだ!! 正座!? 何で正座!?」

初春「イヌなりの精一杯の礼儀です」

佐天「正座で礼儀を尽くすイヌなんて聞いたことないよ!」

初春「あっ、ちょっと横にズレますね?」

佐天「い゙っだだだだだ!! ういはるー! 駄ぁ目だってそれぇ!!」

佐天「こらっ! 初春! 何でこんな事したの! 悪い初春だよ!」

初春「……くぅ~ん」

佐天「くそー、可愛いくて怒れない……」

初春「じゃ、もう外していいですか? この耳」

佐天「あーどうだろう、外れるかな」

初春「……え゙っ? それってどういう事ですかね?」

佐天「その耳とグローブは一度着けたらなかなか外れないんだって」

初春「はいぃ!? 外れないぃ!?」

佐天「学園都市の技術の粋を結集させた特殊な吸着素材らしいよ」

初春「技術の粋をコスプレグッズに結集させちゃったんですか!?」

佐天「あまりにも外れないからリコールされた激レアグッズです」

初春「ただの欠陥品じゃないですか! 何で着けさせたんですかあ!」

初春「どうするんですか! この後ジャッジメントの仕事あるんですけど!」

佐天「可愛いからいいんじゃないかな」

初春「よくないですよ! キーボード叩けないじゃないですか!」

佐天「わあ、怒った顔も可愛いなあ。イヌ耳すげー」

初春「佐天さん! いい加減にしてください! ぶちますよ!?」

佐天「えっ!? いいの!? 肉球パンチいいの!?」

初春「ぐあああああ!! 話が通じない!!」

佐天「まあまあ、白井さんに頼めばちょいちょいっと外してくれるって」

初春「……ああ、まあ、それもそうですね」

佐天「今はワンダフルライフを謳歌しよう! イヌだけに!」

初春「他人事だと思って腹の底から楽しんでますね……」

佐天「実はさあ、イヌだけじゃないんだよね。バリエーション」

初春「というと?」

天「4つのバージョンがあってさ、イヌの他にも――」

初春「つまり佐天さんの着ける分もあるって事ですよね?」

佐天「え? いや、あたしは絶対着けたくないし。恥ずかしいもん」

初春「着けてください、今、ここで」

佐天「あ、あれ? もしかして初春、ご立腹ですか?」

初春「つべこべ言ってないでとっとと着けて!」

佐天「うえー……分かったよう……」

佐天「ほら、着けたよ。黒猫バージョン」

初春「しっぽのオプションまであったんですね……」

佐天「初春のイヌしっぽフワフワで気持ちいいでしょ?」

初春「いや、自分じゃ分かりませんけど……」

佐天「あらま、残念だったねー。こんなにフワッフワなのにねー」

初春(……しっぽより何より、ネコ佐天さんが何か)

佐天「んふふー、うりうりー」

初春(すごくエロい!)

佐天「じゃあジャッジメント支部行こうか」

初春「え? この格好でですか?」

佐天「だから白井さんに会いに行かないと、外せないじゃん」

初春「まず白井さんに来てもらいましょうよ! ここに!」

佐天「どうやって呼ぶの? 携帯を取り出すことも出来ないんだけど」

初春「何で佐天さんまでグローブ着けちゃったんですか!」

佐天「初春が着けろって言ったんじゃん」

初春「むあーっ! 迂闊でしたー!」

佐天「大丈夫だよ、初春可愛いから。写メ撮られるくらい平気だよ」

初春「永久にネタにされるじゃないですか! 何で佐天さんは余裕なんですか!」

佐天「途中でそんなに人に会わないと思うし、支部ってすぐそこじゃん」

初春「佐天さんは危機感が足りないんですよ! そんなだからすぐ絡まれるんです!」

佐天「ムッ! ……ふーん、そういうこと言うんだー」

佐天「……初春ってさあ、キレイな首筋してるよねえ」

初春「なっ、なんですか? 急に」

佐天「可愛いワンちゃんに、ネコさんがイタズラしてるんだよ?」

初春「ちょっと、やめっ、ひんっ!」

佐天「あれえ? 大人しくなっちゃったねえ。イヌは元気良くないとさあ……」

初春「あっ……だめぇ、もっ、……あっ」

佐天「ネコさんにメチャクチャにされちゃうにゃあ?」

初春「……佐天さぁん、だめぇ……」

佐天「なーんつってね」

初春「…………え?」

佐天「いやー、初春ノリ良すぎ。思わず一線越えるかと思ったよー、あっはっは」

初春「…………ガブッ!」

佐天「いったあ! 噛んだ! 初春に噛まれた! 何で!?」

初春「反抗期だからです!!」

~とある路地裏~


佐天「何で路地裏通るのよ? 表通りの方が近いでしょ?」

初春「誰にも見つかりたくないんですよ」

佐天「……普段は通るなって言うくせに、自分ばっかり」

初春「私はジャッジメントだからいいんです」

佐天「ずーるーいー、イヌはそういうの出しちゃ駄目にゃん」

初春「イヌのおまわりさんだからいいんです」

女子生徒「ごめんなさい……急いでるんです……」

スキルアウトA「いいじゃねえか、付き合えよ」

スキルアウトB「そうそう、痛い目みたくはないだろ?」



佐天「遭遇しちゃったね、どうする?」

初春「行けばいいんでしょ!? 分かってますよ!!」

佐天「丁度ジャッジメントのワン章ついてるしね」

初春「イヌだけにね! ってやかましいわん!」

初春「ちょっと貴方たち! 何してるんですか!?」

スキルアウトA「ああ? 何だテメエら。……いや、マジで何ですか!?」

初春「ジャッジメントですわん! あっ間違えた! ジャッジメントです!」

スキルアウトB「え? 何? ジャッジメントってイヌ属性強化月間とかあんの?」

佐天「自主的な強化ですにゃん。レアリティ高いにゃあ?」

女子生徒「エロい! ネコさんエロい! イヌ可愛い!」

初春「迷惑行為はダメ、絶対!」

スキルアウトA「ちっ、わーったよ。はいはい」

スキルアウトB「あっ、よかったらサインくんない?」

佐天「残念ながらペンが持てないにゃん、ゴメンにゃ?」

女子生徒「じゃあ肉球でパンチしてください!」

佐天「おっ、いけるクチにゃあ? ていやっ」

女子生徒「ふあっ、ありがとうございます!」

スキルアウトA「俺もイヌの方に頼める?」

初春「……もう何が何やら」

幼女M「こっちだよ! 動物系ジャッジメント! ってミサカはミサカは」

保護者A「何ですかァ? あの愉快なハードパンチャーはよォ」

女子中学生K「おお、超バカっぽいB級加減が超超イケてますね」

観光客R「私の頬にもネコパンチさせたりけるわ!」

通行人A「新たな可能性か、プランを書き換える必要があるな」



佐天「すごい大騒ぎになってないかにゃあ?」

初春「何やってるんですか! ほら、逃げますよわん!」

―――
――



佐天「だから表通りの方がいいって言ったのに」

初春「まさかああなるとは予想できませんよ……」

佐天「殴られたい人続出してたよね」

初春「ジャッジメントに殴打を要求するこの街はクレイジーですよね」

佐天「ストレス社会だからねえ」

~ジャッジメント一七七支部~


初春「失礼しまーす。白井さーん、いませんかー?」

佐天「ちぇー、名残惜しいけどイヌ春とはお別れかあ」

固法「白井さんなら警邏に出てるわよ?」

御坂「それもたった今ね。入れ違いになっちゃったわね」

初春「そっ! そんなあ!」

佐天「ざーんねんだったねー! イ・ヌ・は・るぅー!」

固法「っていうか、何その格好。流行ってるの?」

初春「これは佐天さんが」

佐天「そーなんですよー! すっごく流行ってて! ね、御坂さん?」

御坂「えっ? いや、私は聞いたこと」

佐天「あっれぇ? もしかして知りませんでした? まさかですけど」

御坂「! し、知ってますけど? 常識よ!」

佐天「じゃあ、御坂さんもどうぞ。鞄の中にあるんで、はい」

御坂「うえっ!? 私も着けんの!?」

佐天「ダメですか?」

御坂「出来れば遠慮したいかなあ、なんて……」

佐天「ダメ……ですかぁ……?」

御坂「うっ!」

佐天「おねがぁい……にゃあん……」

御坂(エロいエロいエロいエロいエロい!)

佐天「御坂さぁん……? 着・け・てぇ……?」

御坂「わ、分かった! 着ける! 着けるからぁ!」

佐天「はいけってー! 御坂さんは黄色い方の袋ね!」

御坂「くっ! 仕方ないわね!」

初春「鼻血出てますよ?」

佐天「固法先輩の分もありますからね」

固法「いや、無理」

佐天「何でー!?」

固法「恥ずかしいから無理」

佐天「……そういう風に思ってたんだ」

固法「いや、普通は思うでしょ」

佐天「あたしのこと恥ずかしいって思ってたんだ……」

固法「いや、そうじゃなくて」

佐天「……ぐすっ、ういはるぅ……」

固法「ちょっ! 泣くことないでしょ!?」

初春(調子に乗ってるなあ、佐天さん)

佐天「……固法先輩の、ひっく、……ばかー、ぐすっ」

固法「……はあ、分かったわよ。ちょっとだけだからね」

佐天「はいけってー! 固法先輩大好きー!」

固法「…………ちょっと」

初春「固法先輩、無駄です。諦めてください」

佐天「無駄でーす! 諦めてくださーい!」

固法「くっそー……」

御坂「これは……一体何の動物なの?」

佐天「ネズミですけど?」

御坂「耳長いししっぽギザギザしてるんだけど……」

佐天「『ぴっかあ!』って言ってみてください」

御坂「ぴ、ぴっかあ!」

佐天「あっはっはっは! 完璧!」

御坂「もしかして馬鹿にしてる?

固法「私はウサギか……」

佐天「ウシがなかったんで我慢してください」

固法「ウシがいいなんて言ってないでしょ?」

佐天「ていっ、ネコパンチ」

固法「こぉらっ、やめなさい。怒るわよ?」

佐天「ウサギは寂しいと死んじゃうんですよ?」

固法「生きるために殴られるのも納得いかないわ」

初春「改めて見てみると異様な光景ですね……」

佐天「まるで怪しいお店みたいだよねー」

固法「ねえ、そろそろ外していいでしょ?」

佐天「いいんじゃないですかね? むふふっ」

固法「……? あれ? ちょっと! 脱げないんだけど!」

御坂「えっ? うそっ! あっこれガチのやつだ!」

固法「……佐天さん? これって一体」

御坂「どういう事なのかしらねえ?」

佐天「何のことはない、科学の力です!」

固法「そういう事を聞いてるんじゃないの!」

御坂「何で最初に言わなかったのよ!」

佐天「何のことはない、愉快犯です!」


固法・御坂「「ぐあああああ!! 話が通じない!!」」

固法「どうするのよ……仕事が出来ないんだけど……」

御坂「このまま寮に戻ったら寮監に捩じり切られる……」

佐天「白井さんなら簡単に外せるから大丈夫ですよ、多分」

初春「でも今出ていったんですよね? 最低でも30分は帰ってきませんよ?」

固法「最短でね……平均では1時間半ぐらいよ……」

御坂「場合によっては戻ってこない事すらありますよね……」

佐天「後ろ向きに考えすぎですってー、ポジティブポジティブ!」

御坂「……いっそ焼くか」

固法「ま、それもやむなしかしらね」

佐天「えー、高かったのに……」

御坂「もちろん弁償するわよ」

佐天「非売品だからもう手に入らないのに……」

御坂「……ぐぬぬぬ」

初春(佐天さんは全力で今を楽しむよなあ)

御坂「分かったわよ! 黒子を待てばいいんでしょ!」

佐天「ありがとにゃあん! 御坂さん好きぃ!」

御坂(ドチクショー! 可愛い!)

固法「……まあ書類整理だけだし、休憩時間がズレたと思うことに」


Prrrr! Prrrr!


初春「……問題発生、ですかね」

固法「……うそー」

固法「これっ、受話器どうやって取ればいいの!?」

御坂「スピーカーにすればいいんじゃないですか?」

固法「ああ、そうか、……よ、っと。もしもし、こちら風紀委員活ど」

黒子『もしもし! 白井黒子ですの!』

固法「……どうしたの? 何か事件かしら?」

黒子『事件も事件! 大事件ですの!』

固法「何があったのか、簡潔に報告してちょうだい」

黒子『一七七支部近くの路地裏で暴動が起きていますの!』

固法「暴動ですって!? 原因は!?」

黒子『どうやらイヌ派とネコ派に分かれて争っているようですの!』

佐天「うわー、ぜんっぜん意味分かんないね」

初春「クレイジーも極まれりというものです」

固法「あーもう! すぐ応援に行くわ! 待ってて!」

黒子『了解しまし……あっ!』

御坂「!? 黒子!? どうしたの!?」

黒子『……解決しましたの』

固法「……は? 解決?」

黒子『どうやらネコがエロい方担当でイヌが可愛い方担当と言うことで決着が付いたようですの……』

佐天「うわー、意味分かんないね。どうかしてるぜ」

初春「このイカレた街ももう終わりですね」

固法「解決したなら人払いして、早急に支部まで戻ってきてちょうだい」

黒子『警邏の途中ですが、宜しいのですか?』

固法「こっちはこっちで問題発生中なのよ」

佐天「ゆっくりでいいですよー! 白井さーん!」

御坂「佐天さん! お黙り!」

黒子『……まあ、大体分かりましたの。では、早急に』

固法「ごめんなさいね。じゃあ、切るわ」

固法「……佐天さん? 悪戯にも限度ってあるでしょ?」

佐天「……可愛いからいいんだもん」

御坂「反省の色が見られないようね……」

佐天「つーん、知らないにゃあ」

初春「……なかなか外れないとは聞きましたけど、絶対に外れないとは言ってませんよね? これ」

固法「あら、そうなの。それはいい事を聞いたわね」

御坂「試してみる価値はあるわね、佐天さん?」

佐天「いやあ、無理ですってー。無理無理ー」

初春「ほら、やって後悔しろっていうじゃないですか」

佐天「そこだけ抜き出したらただの破滅願望だよ!」

固法「はい捕まえた、暴れちゃ駄目よ?」

御坂「いい子にしましょうねー、にゃんこちゃん?」

佐天「動物虐待は『動物の愛護及び管理に関わる法律』によって禁止されてるんですよ!?」

初春「動物同士のじゃれ合いは網羅されてませんから大丈夫です」

佐天「初春! 余計な事を言うんじゃないよ!」

黒子「ふう、やっと帰ってこられましたの……」


 < 角度が悪いのかな……えいっ!
 < んぎゃああああ! 人として無理ぃいいい!
 < でもネコとしての佐天さんなら?
 < これ四の字固めじゃん! グローブ関係ないじゃん!
 < 全身ほぐしてからでも遅くないわ
 < あだだだだだ!! 無理無理無理無理!!


黒子「…………」


黒子「!!!!?」

黒子「何事ですの!?」

佐天「!? 白井さん助けてぇっ!!」

黒子「……固法先輩? これは、一体、何事ですの?」

固法「え、えっとぉ、これには深い訳があってね?」

佐天「痛いよぅ……白井さぁん……」

黒子「……こっちにいらっしゃい、佐天さん」

佐天「えーん、白井さーん、えーんえーん」

黒子「よしよし、もう大丈夫ですわよ?」

初春「言っておきますけど佐天さんの自業自得ですからね」

黒子「それは大体分かってますの」

佐天「にゃんですとー!?」

御坂「佐天さん回復早っ」

黒子「大方、佐天さんが悪戯を働いて大騒ぎ、といったところでしょう?」

御坂「いつになく冷静な黒子に震えがくるわ」

黒子「おやおや、黒子はいつだって冷静ですの」

佐天「……なんで何もない空間を見つめてるんですか?」

黒子「別に、ちょっとアレがアレなだけですの」

佐天「…………にゃはあ」

初春「うわあ……邪悪な笑顔……」

佐天「しーらーいさん? こっちむーいて?」

黒子「必要ありませんの」

佐天「にゃあん、さみしいにゃあ」

黒子「余りくっつかないでくださいまし」

佐天「構ってくれないと泣いちゃうにゃあ?」

黒子「いい加減にしてくださいまし。さもないと……」

 
黒子「血を見ますわよ?」



ぶっしゃああああああ!!



佐天「うわああああ!!! 鼻血ーーーー!!?」

黒子「ごっぶふぁっ」

佐天「え!? あたしのせい!? まだ何もしてないのに!!」

御坂「佐天さんのせいと言うより黒子の煩悩のせいじゃないかな」

初春「今の佐天さんはビジュアルだけでも相当のエロさを誇りますからね」

固法「むしろ見ない方がエロいって事もあるんじゃないかしら」

佐天「え、えええええと、し、止血? しなきゃ……」

佐天「……んん、んしょ、んん」

固法「あれはー……タオルを取ろうとしてるのかしら?」

初春「棚が開けられなくて四苦八苦してる様ですね」

佐天「ふぎゃん!!」

御坂「あ! 顔ぶつけた! 勢いよく開けすぎて!」

初春「いいなあ……涙目ですよ……」

佐天「…………む」

固法「開けたはいいけどタオルを持てない事に気付いたようね」

佐天「……はむっ!」

初春「あっ、くわえた。あまり衛生的ではないですね」

御坂「まあ他にどうしようもないしね、仕方ないわ」

黒子「はっ! ……わたくしとした事が」


ぺしぺし!


黒子「ああ、すみません、もう大丈……」

佐天「んっ、……んっ」

黒子「…………」




黒子「っぶほおおおお!!」

佐天「!!!!!?」

 
その後、白井さんは病院に緊急搬送された。出血多量である。
私たちは呆然とし、コスプレ姿のまましばらくその場に立ち尽くした。


間もなくして、一七七支部は動物系ジャッジメントの走りとして一大ブームを巻き起こす事となる。
その影響からか犯罪件数が著しく減少し、なんやかんやで学園都市は日本で一番平和になった。

また、有志のジャッジメントからアイドルユニットが結成され、動物系防犯アイドルとして学園都市内外を沸かせている。
アイドル達はジャッジメントとしての役割も兼任しており、グローバルな規模で治安向上の為の活動に勤しんでいる。


そしていつしか、科学と魔術は緩やかに交差していく――

~半年後~


佐天「いよぅ! イヌ春隊長! おっはよー!」

初春「もー、やめてくださいよ。隊長なんて」

佐天「だって初春はアイドルグループの隊長でしょ?」

初春「私はイヤだって言ったのに……裏方に戻りたいです……」

佐天「始まりの動物系ジャッジメントだもんねー、初春は」

初春「そもそも佐天さんが発端じゃないですか! 責任とってくださいよ!」

佐天「あたしはジャッジメントじゃないもん、知ーらない」

初春「メンバーからも熱望されてるんですよ? 黒猫は佐天さんのポジションだー、って」

佐天「やっだよー、ネコは気ままなアウトローってね」

初春「その分イヌはお仕事が一杯ですよ……」

佐天「今日だっていつぶりの休暇になるんだろうねー」

佐天「街の景色も変わったよねー、最後に遊んだ時とさ」

初春「そうですねえ。右も左も……」



帯刀女K「あちらにいらっしゃいませんでした? 眼鏡のウサギさん」

修道女A「もう逆方向に行っちまいやがりましたよ。もたもたしてるから」

ゴスロリS「見つけましたよ――――――擦り切れて禿げ上がるまで愛されやがれ、雌兎が」



初春「……多様化しましたよね、色々と」

佐天「学園都市、まだ始まってすらいなかった」

初春「見た目もそうなんですけど、街全体の雰囲気が変わりましたよね」

佐天「あー、何となく柔らかくなったよね。初春の体は引き締まったけど」

初春「どこ見て何言ってるんですか! このスケベネコ!」

佐天「いやホント、ここの足の付け根あたりとかマブいぜ」

初春「ちょっとー! ナチュラルにスカートめくらないでくださいよ!」

佐天「あらまっ、高貴な紫パンツ! マブいぜ!」

初春「次やったら噛みますからね!」

佐天「ふーん、じゃあまたやろうっと」

初春「ぐぬぬぬぬ」

佐天「あっはっは、うそうそ、もうやんないよ。今日は」

初春「今日はって何ですかあ!」

佐天「それはそうと、白井さんは大丈夫なの?」

初春「ああ、大分戻りましたよ。鼻血も止まりました」

佐天「ああ、やっと止まったんだ。じゃあ一安心だね」

初春「アイドルを直視するのはドクターストップ掛けられてますけどね」

佐天「残念だなあ、絶対白井さんも似合うのに。動物系」

初春「御坂さんもゲストで特別出演してますし、その内這い上がってきますよ」

佐天「それもそうだねー、……およっ?」

女子生徒「あのっ、ネコさん、ですよね……?」

佐天「あー、あの時の肉球パンチの人ですよね?」

女子生徒「はー! やっぱりネコさんだー!」

佐天「何かご用かにゃあ、なんつって」

女子生徒「あの、何でネコさんは公演とかに出ないのかなって、思って」

佐天「まあ興味がないでもないだけどねー」

初春「受け入れ体勢は整ってるんですけど、首を縦に振ってくれないんですよ」

女子生徒「じゃあ、次のロンドン公演にも出ないんですか?」

佐天「うーん、ダンスとか歌とか練習しなきゃだし、時間的に無理じゃない?」

初春「意外といけちゃう気もしますけどね」

―――
――



アレイスター「イギリス清教の最大主教ともあろうものが何の用だ?」

ローラ「知れた事なのだわ。次のロンドン公演の話につき」

アレイスター「最大限の譲歩はしただろう。そして納得したはずだ」

ローラ「衆目の前では快諾せざるを得なかっただけの事。これは個人的な交渉にはべり」

アレイスター「彼女達の意向に添う限りは、一考しよう」

ローラ「……それでは単刀直入に申すなり」

ローラ「次の公演にネコちゃんを出演させて欲しいの!」

アレイスター「了解した」

ローラ「私にネコパンチさせて欲しいの!」

アレイスター「了解した」

ローラ「食事会を催したいの!」

アレイスター「了解した」

ローラ「きゃー! 一生感謝するなり!」

アレイスター「私も同席する事が条件だがな」

ローラ「そんな事は好きにすればよかろうなのだー!」

アレイスター「プランは順調に消化されている。ネコパンチはその礎となるだろう」

ローラ「意味ありげな台詞はやめなし。むしろ頭悪そうに聞こえけるわよ?」

アレイスター「他人を諫めるには、お前の顔は緩みすぎている」

ローラ「ほっときなんし!」

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           j /::{.ヽ!:li1{ んリ」   ! レ  /j:/__」/_|川:.:;::|:.:.:.:l   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ,:.'::::::い.ト|:|!‘<㌧       ',ィぅY^V リ!:/::|:.i:.i:|   |  えっ
          ,′l::::.:ヽ_l l  ´^        {{㍗ ノ^ レ:::::!::l:l !   |  次のロンドン公演
            //::::|:::.:.:.:|::!          ,    `¨   /'7ハ_!:::!:!:!  |  あたしも出演するの!?
         //::/l::::.:.:.:l:ハ.           u /,彳/ ∨:リ  ノへ__________
       /_;/_ノ:!:::.:.:.:.l 丶    __       ,イ´://   V
     ,<::.ヽ..::`ー|:::.:.:.:.:!  \  ´ ′   _, ヘ://
      /  \::\、:.:|:::.:.:.:.:i:',     ンー¬:::::´:::.::.::.::`ヽ、
.    i   、 \::.ヽ:l:::.:.:.:.:|::iー、 ′/|:::::.::.::.::.::.::.:/':.ハ

.    !    ヽ \::.:!:::.:.:.:.!::.l. /^\ |::.::.::.::.::.:://  i
    j       ,  l\!:::.:.:.:|::.::l::.::.::.::.::l::.::.::.:: // l  !亅
    〈: . .    '  l: : |:トi:.:.:|::.::.l::.::.::.:,'::.::.::/;.イ  ! ' {



こうして世界は平和になった。
付け耳ってすごい。

終わり

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