穂乃果「女の子同士の恋愛とか無いよねー」 海未・ことり「っ!?」 (167)

2つのお弁当が揃って宙を舞った


『プロローグ 何気ない会話』


穂乃果「わっ!海未ちゃんことりちゃんどうしたの!大丈夫!?」


海未「げふっ、は、はい……大丈夫です、この通りお弁当は無事です」

ことり「げほげほっ、危なくこぼしちゃうところだったよ」


穂乃果「ごめんごめん、そんなに変なこと言ったかなあ」


海未「いえ気にしないでください、ちょうど同じタイミングで咳き込んだだけですから」

ことり「そうそう、もー海未ちゃんこっちまでソース飛んでるよー」

海未「あっ!すいません、今何か拭くものを……」


穂乃果「うーん……」

穂乃果「(2人がなんとも無いというならそうなんだろうな、気にしないでおこう)」

なんの気なしに本心のうちから発した言葉

おそらく昼休みが終われば思い出すことも無いであろう会話

しかし穂乃果は気付かなかった

この時、2つの恋が儚く散ったことを

――――――――――――――――――

いや散ってませんから

そもそも私は少しでも可能性があればいいというか、それほど深い関係は……

海未「あっ!穂乃果!ちょっと話があるんですけど」


『chapter1 海未の場合』


穂乃果「海未ちゃんどこ行ってたの?もう私たちが最後だよ」

海未「最後?」

穂乃果「だから次の時間、音楽で移動教室」

海未「移動……ああ、そうでしたね、あれ?ことりは?」

穂乃果「ことりちゃん先生に手伝い頼まれてるとかで先に」

海未「じゃあ私たちが最後ですか」

穂乃果「いやだからそう言ったじゃん、どうしたの海未ちゃん?大丈夫?熱とかある?」

海未「穂乃果に心配されるほど参ってはいませんよ、まだ時間はありますね、歩きながら話してもいいですか?」

穂乃果「海未ちゃんから話?うんいいけど」

海未「それほど大したことでは無いんですけど」

穂乃果「ふーん、戸締まりよしっと」


穂乃果を引き連れて教室を出る

さて、どこから切り出したものか

海未「穂乃果はその……恋愛に興味はありますか?」 

穂乃果「ぶっ!な、なに?恋愛?まーた突然だなぁ」

海未「花の女子高生ですよ、こういう話題が出るのはわりと自然なことだと思いますが」

穂乃果「いや海未ちゃんから出るのが意外というかさ」

海未「心外です」


穂乃果「ごめんごめん、でも恋愛かー、あんまり考えたこと無いなー」

海未「で、ですよね、恋愛'自体'そんな興味ないですよね」

穂乃果「まあ今はスクールアイドルがあるし目の前のことで精一杯というか」

海未「うんうん」

穂乃果「でもアイドル関係ないなら少しはしてみたいなー」


海未「うんう……えっ!?」

穂乃果「だって海未ちゃんの言ったとおり私も花の女子高生だよ?もしかしたらってもあるじゃん」

海未「ほ、ほう」

穂乃果「でも私なんかじゃ付き合ってくれる人もいないだろうけど」


海未「そ、そんなことないですよっ!」

穂乃果「へっ?」

海未「あ、いや穂乃果はほら、可愛いじゃないですか、一般的に見ても、きっと付き合ってくれる人はいますよ」

穂乃果「ありがとう、お世辞でも嬉しい」

海未「いえ、その……それで、その付き合う方というのは」

穂乃果「ああタイプ?うーん、あんまりないなー、いや考えたこと無くてさ」


海未「いえそのやっぱり……男性?ですよね?」

穂乃果「うん、当たり前じゃん」


海未「……………あ、あの」

穂乃果「どしたの?」

ごめんな海未ちゃん、ことりちゃん
穂乃果ちゃんとは清いお付き合いをさせていただいてるんだ

海未「い、一般的にというか、いわゆる、同性?そういう付き合いはどう思いますか?」

穂乃果「あー、ゲイとかレズってやつ?うーん、そういうのがあるのは分かるけど」

海未「けど?」


穂乃果「私は無いかな!」


海未「…………これっぽっちも?」

穂乃果「うん!だって女の子とかあり得ないもん、はははっ」

穂乃果「あ、遅れちゃう!急がないと!」


海未「…………」


その時の穂乃果の顔は、無邪気にキラキラと輝いていました

ああ穂乃果、本当にあなたは純粋なんですね

ならこの不純な思いは忘れてしまうのが一番、なのかも

――――――――――――――――――

音楽の授業中、海未ちゃんがずっとこの世の終わりみたいな顔をしていた

いつもなら相談に乗りたいけど今は私の問題もある

今日の放課後にでも穂乃果ちゃんに確認しないと!

「そこ!声が出ていないぞー!」

ことり「は、はい!」


『chapter2 ことりの場合』


ことり「穂乃果ちゃーん、一緒に帰ろー」

穂乃果「こ、ことりちゃん、あんまりくっつかないでよー、あーつーいー、でもぎゅー」

ことり「そういえばもうすぐ夏だねー」


よし、このぐらいのスキンシップならすぐ振りほどかれたりはしない

ふざけて絡むぐらいなら抵抗はない感じだよね


穂乃果「そういえば新しいアイスが出たんだってね」

ことり「え?何の話?」

穂乃果「アイスの話だよ、駅前の店の」

ことり「あー、アイスか、ははは」

穂乃果「今度の休みに一緒に行く?」

ことり「え!一緒に!?」

穂乃果「うんそう、私とことりちゃんと海未ちゃんで」

ことり「あ、う、うん……そうだねー、いこっか」

穂乃果「あれ?そういえば海未ちゃんは?」

ことり「何か体調が優れないみたいで先に帰るって」


だからチャンスだと思ったんだけど


穂乃果「うーん、確かに午後の授業は顔色悪そうだったねー」

ことり「穂乃果ちゃん音楽意外はほとんど寝てたでしょ」

穂乃果「はははは、ごめんごめん」


ことり「…………」


分かれ道に差し掛かる、人通りはすっかり少なくなっていた


穂乃果「ん?どうしたの?」

ちゅんちゅんちゅんちゅん(・8・)

ことり「もし……もしもだよ?例えばそう、海未ちゃん」


海未ちゃんごめん、今度アイスおごる


穂乃果「海未ちゃん?」


ことり「海未ちゃんが、穂乃果ちゃんのこと好きって言ったら?」

穂乃果「へ……?い、いやそれは嬉しいけど」

ことり「嬉しい?」


穂乃果「そりゃあ友達に好きって言われるなら嬉しいよ、嫌いって言われるよりは」


ことり「そうじゃなくて……友達じゃなくて、なら?」

穂乃果「ことりちゃん?」

私の顔があまりに真剣だったからか、穂乃果ちゃんが困った顔をした


ことり「いや海未ちゃんがどうのってのじゃなくて、例えね、例えばの話」

穂乃果「…………」


ことり「もしだよ?海未ちゃんが友達を越えて穂乃果ちゃんのことが好きだと言ったら、どうする?」

穂乃果「なんか、今日海未ちゃんにも同じようなこと言われたな、はは」

ことり「えっ」

やばっ、タイミング悪すぎっ


穂乃果「私はね、海未ちゃんのことは大事な友達だと思っている」

ことり「友達……」

穂乃果「本当に、本当に、大切な友達、でもそれだからこそ、その関係を守りたい」

ことり「…………」

穂乃果「誰かが私に想ってくれた想いは嬉しいよ、すごく嬉しい、でも、私からそれを受け入れることは無い」


ことり「それが……例えば、私……でも?」


穂乃果「うん、だってことりちゃんも、大切な友達だから……」


ことり「そっか、変なこと聞いてごめんね!じゃ!また明日!」

穂乃果「うん、また明日!」



たった1人の帰路を、一度も振り返らずに走った

この想いごと、振り切りたくて

支援

――――――――――――――――――

『幕間 友達だから』


今日は2人の様子が変だった

難しいことはよく分からないけど落ち込んでいたのは確かだ


雪穂「お姉ちゃんはよく無自覚に人をたらしこんで傷つけそうだよね」

穂乃果「そんなことは無いと思うけど」


しかし雪穂の言うとおり私のせいなのかな、分からないけど

とにかくこのまま落ち込んでる2人を見ていたくは無い、友達だからこそ


穂乃果「よし!こういう時はアイスだ!」

雪穂「え!アイスあるの!?」

穂乃果「無いよ」

雪穂「もーお姉ちゃんにぬか喜びさせられたー悲しいー、ってどこいくの?」

穂乃果「ちょっと電話してくる!」


雪穂「ほーい……ま、そこがお姉ちゃんの良いところでもあるんだけど」

雪穂「付き合わされる人間は大変だねー、誰かさんたち」

雪穂「惚れた弱みってやつなのかなー、ま、私用にアイスはあるんだけど……ここに隠してたのが」


雪穂「って!お姉ちゃん食べたでしょ!ちょっとー!」



穂乃果『ねぇ!今度の日曜なんだけどさ!』

―――――――――――――――――――


海未「このアイス美味しいですね!」

ことり「うん!わざわざ食べに来たかいがあったねー」

海未「はぁ……それにしても」

ことり「うん……そうだね」


駅前、いつもの店の新作アイス

しかしそこにあるはずのものが無い、いるはずの人がいない

なんで……!なぜ……!あなたは!!!!


『chapter3 2人だけの休日』


海未「はぁ!?来れない!?」

駅前でものすごい剣幕で電話をする花の女子高生、1名、つまり私


海未「来れないってどういうことなんですか!!」

穂乃果『いやーごめんねー、家族絡みでさー、どーしても外せない用事ができちゃって』

海未「でもこれあなたが誘ったんですよ」

穂乃果『分かってる!分かってるって!ほんとごめん!本当に今日だけドンピシャで用事が出来て!』

海未「まぁあなたがそこまで言うからには事情があるんでしょう、余計な詮索はしません」

穂乃果『ありがとうございます海未様!!』


海未「で、ことりにも連絡は入れてるんでしょう?」

穂乃果『あーそれが忙しくてさ!ほんとごめん!海未ちゃんから言っておいて!あ!もう行かなきゃ!ごめんねブツッ、ツー、ツー』


海未「…………んな、なんなんですかもうっ!」

――――――――――――――――――――――――

雪穂「さすがお姉ちゃん、まずは2人を仲良くさせて後からサプライズなのかな?」

穂乃果「何言ってるの、ほら雪穂も行くよ、さっさと準備する」

雪穂「えっ!なにっ!?用事ってマジなの!?だめー!今日は私も友達とー!」

穂乃果「はいはい時間無いんだから、今日は戻ってこれないかもよ」

雪穂「うっそおおおおおおん!!!!」

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海未ちゃんアイス食べにいこーとか言われて浮かれ気分で準備していた自分がバカみたいだ

海未「わざわざ駅前まで来て今更帰るっていうのも……取り敢えず集合場所に行きますか」


数分後

集合場所にことりを見つける、すごいキョロキョロしていた


海未「ことりー!」

ことり「海未ちゃん!あー、良かったー、時間になっても誰も来ないから間違えたのかと」

海未「いえ私が遅れてしまっただけなので」

ことり「いや別にいいよいいよ、それでそれで、穂乃果ちゃんも遅れてるのかなー、かなー」

海未「あのー浮かれてキョロキョロしてるところ大変言いにくいのですが」

ことり「ええ?キョロキョロなんてしてないよー」

海未「穂乃果、来ませんよ」


ことり「え……?わ、わんもあー」

海未「だから、穂乃果は来ません」

ことり「ど、どうして!?どうしてなの!?私悪いことした!?」 

海未「そんな目で見ないでください、家庭の事情だとか」

ことり「そっかー、お家のことなら仕方ないねー」

海未「それにしてもドタキャンすぎる気もしますが」



ことり「海未ちゃんさ」

海未「はい?」

ことり「今日は気合入ってるねー、その服」

海未「んなぁ!!」

ことり「やっぱり穂乃果ちゃんと出かけるからー?」

海未「こ、ことりこそ!いつもの3倍ぐらい気合入りまくりじゃないですか!」

ことり「そ、そんなことないよー、やだー!」

海未「私こそそんなこと無いですよ!至って普通です!」

ことり「いや海未ちゃんこそーワイワイキャッキヤッ!!」

海未「ことりこそーワイワイキャッキヤッ!!」


ことり「……はぁ、はぁ」

海未「……はぁ、はぁ」

ことり「…………はぁ」

海未「…………はぁ」

ことり「なんかさ、違うよね」

海未「はい、私もこの感じもういいです、疲れました」

ことり「やっぱり穂乃果ちゃんがいてこそというか」

海未「なにか悲しいものがありますね」

ことり「やめて!もっと悲しくなるから!」


海未「取り敢えずせっかく来たのですし何か食べて行きますか?アイス」

ことり「あ、うん、そうだね、食べていこ」

気合い入ってる海未ちゃん可愛すぎワロタ

カランカラーン 店内


ことり「あ!そうだ海未ちゃん、1個だけおごるよ」

海未「え、いいですよ気とか使わなくて」

ことり「個人的なケジメだから気にしないで」

海未「はぁ……?そこまで言うならご好意に預かります」


ことり「食べてくよね?席そこ空いてるかな」

海未「私がここ取っておきますから」

ことり「うん、じゃあ私が2人分頼むね、味は……」

海未「ことりのセンスに任せます」

ことり「あはは、自信無いけど美味しいの選んでくるよ」


そういってことりは列に並びに行った

海未「日曜にしては空いてるほうなんですかね」

海未「ふぅ……」

海未「はぁ……(本当なら、穂乃果もここにいるはず……)」

海未「(全く、我ながら興味無いと言われた後なのになんでこんな格好を)」


まるで、何かまだ期待をしていたような


海未「滑稽すぎてまるでピエロですよ……」


ことり「いいんじゃない、ピエロ」

海未「ことり……早いですね」

ことり「これ海未ちゃんのね」

海未「どうも」 

ことり「別にいいと思うよ、ピエロ2人で」

ことり「だってなんだか……楽しそうでしょ?お祭りっぽくて」


慰めなのか、ことりっぽくなくてつい吹き出してしまう


海未「ぷっ……ははは」

ことり「もー真面目なこと言ってるのに」

海未「ピエロなら笑われるのが本望じゃないんですか?」

ことり「確かに……ぷっ、はははは」


海未「もー、笑ってばかりじゃなくえアイスも食べましょう、あ!美味しい……!」

ことり「海未ちゃん、くく……アイス、鼻についてる……はははは」

海未「え、どこ!?どこですか!こう、えいっ!」

ことり「もー動かないで、取るから、ははっ!」

海未「こ、ことりぃ、そんなに笑わないでください!」

それが心から笑えていたのかは分からない

でもその日過ごした時間は確かに楽しかった

それだけは、本当だった

・ 



ことり「見てみて海未ちゃん!あれ可愛いよねー」

海未「でも取るの難しそうですよ」

ことり「ふふふー、ここはゲームセンター嵐と呼ばれた私の腕の見せ所だね」

海未「初耳ですよそれ」




海未「この服ことりにすごい似合うと思いますよ」

ことり「えー、少し派手すぎないかなー」

海未「試着してみたらどうです?」

ことり「そこまで言うなら……着てみちゃおうかな?」





海未「穂乃果……!結局あれから一度も連絡よこさないで……!」

ことり「まぁまぁ、本当に忙しいんだよきっと」





海未「小腹がすいてきましたね」

ことり「あ、私あそこのお店入ってみたいかも!」





ことり「ねぇこの曲よくない?私好きかも」

海未「あのアーティストの新譜ですか、こういう曲もやってみたいですね」

ことり「後で真姫ちゃんに頼んでみよっか」

海未「そうですね、考えておきましょう」

穂乃果がからむとほのキチになるけど、ことうみだと結構バランス良いのな





色々な場所をめぐり、最後は近くの公園に来た


ことり「ぷっはー!疲れたー!」

海未「結局なんだかんだ言ってもうこんな時間ですね」

ことり「まだ夕暮れって感じじゃないけど時間はすっかり夕方だね」

海未「でも……楽しかったですよ」


海未「たまにはことりと2人で遊ぶのも、いいものですね」

ことり「うん、そうだね」


海未「穂乃果が入ればもっと良かったのですが……」

ことり「うん……そうだね」

ほのうみ ほのこと ことうみ
はどれが良いかといわれると迷う

>>47
やっぱ二年生組は三人揃ってこそだよな

海未「…………」

ことり「あのさ……海未ちゃん」

海未「はい」


ことり「海未ちゃんはやっぱり……好きだった?」


海未「…………はい、今更、嘘を付くこともないでしょう」


ことり「じゃー仲間かー!どうする?滑り台で遊ぶ?独身宣言する?」

海未「それは穂乃果に彼氏が出来た時にしましょう」

ことり「ははは、それはもっとへこむだろうなー……」

海未「ですね」


そのことりの背中はとても寂しそうに見えた

海未「あの、ことり」

ことり「そうだ海未ちゃん!今からうち来る?」

海未「……え?」

ことり「同志だって分かったんだし、色々買い込んで負け犬パーティーしようよ!」

海未「いや負け犬まで落ちぶれるつもりは」

ことり「じゃー秘密の女子会でもなんでもいいよーこれが飲まずにいられるか!」

海未「飲んだらダメですからね」

ことり「そこはほら……ジュースとかね、秘密のジュース」

海未「普通のジュースにしましょう」

ことり「はいはい分かってるよー」


ことり「……え?ってことは海未ちゃん来てくれるの?」

海未「あまり遅くならなければ付き合いますよ、敗戦パーティー」

ことり「それもっと重くなってるような……まぁいいか」

そして、向かうことになることりの家

ああなんてことでしょう、この時に気づくべきだった

これがとんでもない間違いだと!

過去に戻れるとしたらここが分岐点だったのでしょうか


まあ、そんなこと思うはずもなく

続く

―――――――――――――――――――――

海未「おじゃまします」

ことママ「いらっしゃい、あれ?今日穂乃果ちゃんは?」

ことり「今日は来れないんだって」

ことママ「へー、ゆっくりしていってね」

海未「はい」


ことり「あ!私の部屋には来なくていいから!飲み物とかお菓子は買ってきたし!」

ことママ「はいはい、分かりました分かりました」

ことり「いくよ海未ちゃん、むっふー」

海未「あまり騒ぎ過ぎないようにしましょうね」


『chapter4 2人きりの夕暮れ』


海未「ことりの部屋、そういえば久しぶりかも」

ことり「そう?確かに最近あんまりうちで遊ぶこと無かったからねー」

海未「集まると言っても穂乃果の家とか」

ことり「そう穂乃果ちゃんの……」

海未「はいもう暗くならない!今日は穂乃果を忘れてパーティーでしょ?」

ことり「そうだね、うん!」


海未「座るのここでいいですか?飲み物注いでおきますよ」

ことり「あ、うん適当に、ありがとー、ごくごく……ぷはー!体に染みるねー」

海未「ことりオヤジ臭いです」

ことり「ほらほら海未ちゃんも」

海未「あっ、ちょっ!こぼれますこぼれますって」

ことり「そうだこれ、このお菓子開けてみようよ」

海未「うっ、またこんな味のを買ってきて……」

ことり「えー!おいしいと思うけどー」

海未「ん、意外といけるかも」

ことり「でっしょー」

海未「ふむ……もぐもぐ」


ことり「あっ!」

海未「もぐぶっ!……ど、どうしたんですか急に」

ことり「宿題!忘れてたぁ!」

海未「あーありましたね、明日提出の、何故やって無かったんですか」

ことり「どうしよ、難しいから誰かに聞こうかなと思ってたのに……じー」


海未「そうですか、見守ってるので頑張ってください」

ことり「ニコニコしながらひどいこと言わないでー、手伝ってよー!海未ちゃーん」

海未「はぁ、しょうがないですね、本当に分からないところだけですよ」

海未「そこだけ聞くこと、他は手出ししません」

ことり「やったー!じゃあさっそくやるね」


ことり「えーと…………」カリカリ

海未「…………もぐ」ポリポリ


ことり「…………ここが」カリカリ

海未「…………ごく」チュー


ことり「……こうで……」カリカリ

海未「…………もぐ」ポリポリ



ことり「うるっさーい!!!」 

海未「ええっ!!」 

ことり「集中できないよー、食べないで飲まないでー」

海未「私は何のためにここに来たんですか」

ことり「じゃあ1人でお母さんのとこ行っててー」

海未「嫌ですよ」


ことり「うー」

海未「第一誰が何してたってことりの勉強効率に変わりはありませんよ、ふっ」


ことり「んなっ!……むむむむ」

海未「なんですか」

ことり「むー、そんな海未ちゃんなんかこうだ!とりゃー!」

海未「わわっ!ちょっとこと、あぶなっ!」

ドシーン!

(                | │                   〈   !
                | |/ノ二__‐──ァ   ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
               /⌒!|  =彳o。ト ̄ヽ     '´ !o_シ`ヾ | i/ ヽ !
               ! ハ!|  ー─ '  i  !    `'   '' "   ||ヽ l |
_______∧,、_| | /ヽ!        |            |ヽ i !_ ______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ ヽ {  |           !           |ノ  /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               ヽ  |        _   ,、            ! , ′
                \ !         '-゙ ‐ ゙        レ'
                  `!                    /
                  ヽ     ゙  ̄   ̄ `     / |
                      |\      ー ─‐       , ′ !)

ベッドへと体を押し倒される

お尻あたりまでがベッドに付いた状態

ことりがその上からベッドに膝をついて覆いかぶさってくる


海未「ことりっ、ちょっとどいてくださっ」

ことり「やーだ、どかない」

海未「もう……」

ことり「あれれー?海未ちゃん顔が赤いよー」

海未「赤くありませんっ!」


ことり「あ、そうかー、忘れてたー、海未ちゃんは女の子に発情する色情魔なんだっけー」

海未「違いますっ!」

ことり「違わないよー、だって、好きだったんでしょ?ほらー、このこのー」

海未「…………」

ことり「女の子なら誰でもいいのかなー?あ!私も襲われちゃうかもーきゃー」


海未「……好きでした、好きでしたけど!」

海未「私が好きだったのは穂乃果だけです!誰でもよくはありませんっ!」

ことり「……あっ、いやその」

海未「ええ好きだった!私は女の子を好きになる変態ですっ!でも、それでも本当に本気だった!」

海未「穂乃果を好きな気持ちは本当だった!だからこそ……!その気持ちをからかわれるような事は嫌なんです」


その時のことりの顔は見れなかった

自分の顔も見られたく無かった

ことりがどんな顔をしてるのか見るのも怖かった


海未「……どいて、ください」

ことり「…………」


ことりは無言でどいてくれた

どいて、ベッドの私に倒れてる横に座り、膝をかかえた


ことり「でも、言えなかったんだよね」


海未「…………っ」

ことり「気持ち、伝えられなかったんだよね」


海未「それは」

ことり「怖いから」

海未「それはっ」


ことり「うん、しょうがないよね……私も、だもん、はは……」


ことりの手は、冷たく震えていた

海未「……ことり」


ことり「心の中には確かな想いが合って、口ではカッコいいこと言えるつもりでも、行動はおこせなかった」


海未「…………」


ことり「臆病なんだよね、私たち、こんな気持ちがあるくせに、まだ穂乃果ちゃんと友達でもいたいなんて」

ことり「自分勝手に期待して、自分勝手に傷ついて、本当に自己中だよ」

ことり「本当、笑えてきちゃうよね」


いえ、泣いてるんですよ、あなたは

ことりのこの顔を見るのは今日で何度目だろう

元気に取り繕っていてふと見せる、悲しい顔

「私は元気だよ、気にしないで」と、周りを明るくする、小さな雛

本当は自分が1番落ち込んでいる癖に



ことり「ねぇ海未ちゃ……海未ちゃん?」

海未「…………」

ことり「海未ちゃん?ねぇ海未きゃっ!わっ!ちょっ!」



ポフンと体が柔らかいベッドに沈む

いつの間にか、ことりをベッドに押し倒していた

今度は、さっきよりも近い距離で



それはきっと、夕日のせい

ことり「あれ!?海未ちゃん?もしかして怒ってる?」

海未「…………」


ことり「ご、ごめんねー、適当なこと言っちゃってあははー、ほら!お菓子さ、残ってるからお菓子食べよ!?ねっ!」

海未「…………ことり」


ことり「海未ちゃん!なんか目が怖いよ!トロンとしてる!とりあえず体起こして……え、なに海未ちゃん力つよっ」

海未「むぐ……」


ことり「わっ!顔近い!顔近いって!……あ!あれでしょー、私が可愛いから襲いたくなっちゃったとかー困るなー、そういうのはあはは」

海未「はい、ことりは可愛いです」

ことり「えぇっ!?いやぁ、嘘ぉ、嘘だよね海未ちゃん、そういう冗談はらしくないかなー」

海未「本気です」


ことり「もしかして酔ってる!?あっれー?今日買ってきたチョコにそういうのは無いはず……」

海未「はい、酔ってます」

ことり「な、何に……?」

海未「この空気に」


ことり「ちょっ!タンマ海未ちゃん!一端ストップ、ストップ!ストッ……」

海未「ちゅっ」



そう、全部、夕日のせい

深く、深く、全部を重ねていく

(・8・)

―――――――――――――――――――――

海未「むっ、はっ!はぁ……んちゅっ、はぁ、んんっ!ぷはっ」


―― あれ?私……一体何をして ――


ことり「ひやっ、はむっ……んん、ぐちゅっ、ぱっ、ひゃあっ!」


―― 確か今日は休日で穂乃果が来れなくて ――


海未「ことりっ、もう一回っ!あむっ!ふぐっ!びじゅ……はぁ、じゅるっ」


―― そうだ、それでことりの家に……ことり? ――


ことり「ダメッ!海未ちゃんっ!ははぁ!むむっ……ぐっ、はっ、ああっ!」


―― ことりが私の下で滅茶苦茶に、あれ?何故こんな…… ――

海未「ことりっ!ことりっ!はぁあっ!あああっ!」

―― あれ?これは……私の、声? ――


甘い匂い、一瞬戻った意識が、また埋没していく


ことり「だめっ!ダメだよ海未ちゃん!はっ!それは……そこはっ!んっ、ははああああああはあ!!!!」



そこは2人きりの世界だった

傷ついた2人の、甘くて優しい、そんな世界


『chapter5 うみことり』


ことり「はぁ……はぁ……ひぃ……あぅ」

海未「あれ……?」

いやいや冷静になりましょう私


まずは半裸のことりを押し倒してるこの状況を

ふむ……


海未「あのー、ことり」

ことり「はぁ……なに、海未ちゃん」

海未「聞くのが怖いんですが……私はいったい何をしてしまったんでしょうか?」

ことり「何を……プルプル」

海未「あれ?ことり?目がすごい怖いのですけど」


ことり「何をじゃないよ!バカあああああああああああああああああ!!!!」

海未「ひぃいいいいいいい!」

ことり「私にもっと言うことは無いの?」

海未「ことりは見た目より胸が大きいですね」

ことり「そういうことじゃない!」

海未「げふっ!」

枕が顔面にクリーンヒットした



ことり「私!初めてだったんだよ!キスも!その先も!」

海未「すいません……なんか勢いで」

ことり「勢いで許されることじゃないよ!」

海未「猛省します」

ことり「もぅ……ぐすっ、やだよぉ……、ぐすっ」

海未「ことり……」


かける言葉も見つからなかった

すこしでも慰めになればと

いや違う、これは自分の慰めだ、ことりを傷つけたのに変わりは無い


ことり「ぐすっ、だからね……その、ぐすっ」

海未「ことり……言い訳のしようもありません、どんな罵りも罰でも受けるつもりです」


ことり「え!なんでも!?」


何故かことりのトーンが上がった、あれ……なにか悪い予感が

たまらん

海未「いえなんでもとは言っても出来ることと出来ないことが」

ことり「うーんとねー、ちょっとまってねー」

海未「ことり!なんでそんなタンスの奥をガサゴソしてるんですか?何を取り出そうとしてるんでしょう」

ことり「えっとねー、ひみつ道具」

海未「できれば秘密のままにしてて欲しいです」


ことり「じゃじゃじゃじゃんじゃじゃーん!!!ちょっと口に出せないあれー!」

海未「あのー、ことり……なんでしょうその、ブランブランしてる卑猥な形のあれは」

ことり「アレだよ!」

海未「変態だあああああああああああ!!!」


ことり「変態じゃないよ!スクールアイドル南ことりだよ!」

海未「いや……怖いです、そのドヤ顔も怖いです」

ことり「これね、いつか穂乃果ちゃんとやると思ってねー、買ってたんだけどねー」

海未「買ったのですか……」


ことり「これで穂乃果ちゃんの初めてを奪うつもりだったのに、お金の無駄になっちゃったよ」 

海未「そ、それは残念でしたねー……」


ことり「だからさー、海未ちゃん」

海未「な、なんでしょう?では私はこれで」  


ガシッと肩を掴まれた、てか痛いです、痛い痛い
 

ことり「海未ちゃんで……つ・か・わ・せ・て?」

海未「いやああああああああああああああああああああああ!!!!」

海未「えんだああああああああああああ」

親鳥……

ことり「大丈夫!優しくするから!」

海未「信用成りません!というか何もう装着してるんですか!?」

ことり「痛いのは初めだけだから!」

海未「痛いんじゃないですか!嫌ですよ!」

ことり「私だけイカせて海未ちゃんが無傷ってのはねぇ」


海未「えーとじゃあそこにあるなんですか?バ○ブ?電○?あれでもいいじゃないですか!」  

いやというかそれも買ってたのですか、ことり……あなたって人は

ことり「だってー、それだと普通のプレイでつまらないじゃん」


海未「ええ!?どうして!?ふ、普通のプレイじゃダメなんですか!?」

ことり「今回は復讐の意味が強いからかなー、じゅるり」

海未「ひぃいいいいいいい」

ことり「さー海未ちゃん、ベッドの上でねんねしよーねー」


抵抗は無意味だった

主導権を奪われた私はあっという間に仰向けにされ


ことり「海未ちゃん、パンツ脱がすよ……」

海未「解説しないでください、どこのエロ漫画ですか」

ことり「こういうのは雰囲気なんだよー、ご開帳~」

海未「くっ……」

ことり「か、かあいいいいい」

海未「やめてください!!恥ずかしすぎて火を吹きそうです」

ことり「海未ちゃんのあそこも、真っ赤な顔も、可愛い……ちゅっ」

海未「あふっ」

ことり「へへー、ここを奪うのかぁ」

海未「ま、まだ戻れますよ……ねぇことり、引き返しましょう」 

ことり「嫌だなぁもー、何を言ってるのかなぁ、ぐいぐい」

海未「あ、当たってる!卑猥なものが、あ、ああ……、いやぁああああ」

ことり「ほら……海未ちゃんのおっぱいも可愛い、ふにふに」

海未「ひぃやぁ、もうっ、やめて」


ブーブー ブーブー

海未「はっ!携帯……!携帯鳴ってますよ!見なくていいんですか」

ことり「携帯……?むぅ、誰からだろ」

ことり「うーん、いいや、今は海未ちゃんが大事だし、ぽーいっ」

海未「なっ」


ことり「今度は口にちゅっ」

海未「むむむむっ」

ことり「それじゃそろそろ……」

海未「あの、心の準備が……待って」

ことり「うーん、無理!いくよー?えいっ!」

海未「うわぁぁああ、い、嫌……いやぁああああああああああああああ!!!!!」




お父様、お母様、不肖の娘をお許しください

今日私は、とても大事なものを失くしました


あんっ


――――――――――――――――――

穂乃果「あ、はい、ことりちゃんと海未ちゃんは家にいるんですね、ありがとうございます」


携帯にかけても両方繋がらないしこれは本当に愛想つかされたのかも

家のほうにかけてみたらことりちゃんのお母さんが出てくれてよかった

用事が予想より早く終わったから顔ぐらいだそう……あと謝ろう


穂乃果「うーむ、お詫びにケーキでも買っていこうかな」


『chapter6 穂乃果の場合』

ピンポーン

ことママ「はーい、あ、穂乃果ちゃんいらっしゃい」

穂乃果「おじゃましまーす、あの……ことりちゃんは」

ことママ「ことりたちならことりの部屋に」

穂乃果「ありがとうございます」

ことママ「ゆっくりしていってねー」

穂乃果「はーい」


テクテク

ことりちゃんの部屋か、なんだか久しぶりだな

こっそり来た形になっちゃったし2人共驚くだろうな

いや……驚かしてあげようかな


穂乃果「そろーり……そろーり……」

アカン

「……うみちゃ……あっ、……こと……ああっ……」


おっ?

扉越しに声が聞こえてくる……むー、私抜きで盛り上がってるのかな

いったい何の話してるんだろ


「…………おお……きっ、はぁ……こと……うぅ!……」


声を潜めて聞いてみるけどよく聞こえない、むむ


……か、ほ……の、……かぁ……ほのかぁ!」

「わっ、……う……ちゃ、こ……大き……きこえ……」


あれ?今私の名前が聞こえたような

「ほのか……穂乃果ああああ!!!」

穂乃果「うわわっ!」

思わず尻もちをついてしまった


びっ、びっくりしたー、もう


穂乃果「なーんだ、聞いてたのバレてたのかー、あははー、ならそう言って」 ガラッ



その扉を開けたことを私の脳は瞬時に後悔した

アフターフェスティバル

海未「ぁあああ……え?」

ことり「うそ、ほのかちゃ……」


扉を開けた先には四つん這いになった海未ちゃんの

えっと、なんか、気持ちよさそうな顔があった


穂乃果「……よ、…………」


ドサッと何かが落ちる音がした

たぶんそれは私が落としたケーキの箱

でも今、私はそれを考える余裕も



穂乃果「あ……!え……?え!?」

海未「ほ、穂乃果!これは!」


穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんが裸で……」

ことり「穂乃果ちゃん、あのねっ、これはっ」


穂乃果「う、海未ちゃんが四つん這いで、そ、その後ろにことりちゃんが……ことりちゃんの股間からへ、変なのが……」

海未「穂乃果……えっと!その!一端落ち着いて」


穂乃果「海未ちゃんのあそこに……わ、わ、わ」



穂乃果「な、なんか、ごめん!!!!」

とりあえず謝ってダッシュで逃げることにした

海未「ま、待ってください!!」ガシッ

逃げられなかった

穂乃果「ひぃいいいいいい!逃げさせてえええええ!!!」

海未「これには訳が!そう訳があってですね!」

穂乃果「うひぃ!海未ちゃんの手なんかすごいぬるっとする!ぬるっとする!」

海未「いやこれはことりのロー」

ことり「ねぇ穂乃果ちゃん!ほんとにね、本当に違うくて!」

穂乃果「いやぁあああああ!!ことりちゃんが何かブラブラさせてるうううううううう!!」

ことり「あ、ごめん!これ抜くから!怖がらないで」

穂乃果「え!なにそれ抜けるの!?てかどうしてたの!?部屋もすごい変な匂いするし!?ワケワカンナイ!!」

ひと通り吐き出したら、もう喋る気力も無くなった


穂乃果「はぁ……はぁ……ぜぇ……」

海未「穂乃果、そのですね……」

穂乃果「わ、分かった!」

ことり「ええと……何が?」

穂乃果「一晩!一晩だけ考えさせて!」

海未「一晩……?」

穂乃果「きっと、2人の関係……受け入れてみせるから!!じゃ、私はこれで!!シュバッ!!」

海未「いや……ちょ……!ちょっ!!」


それだけ残すと、私は脱兎のごとく逃げ出した

後ろで誤解ですーみたいな叫び声と、もう帰るのーみたいなのんきな声が聞こえたけど気にしない

ああもう、まさか2人がそんな関係だったなんて

大丈夫!私はきっと受け入れるから!

――――――――――――――――――――

真姫「ワケワカ……ワ……」

真姫「イミワカンナイ!!」

寝覚めは最悪だった

何度も何度も、扉を開けた瞬間の穂乃果の顔が夢でプレイバックする

自分の呆けた顔を真正面からみられた瞬間を


海未「はぁ……今日が月曜でなければ良かったのに」


たぶん私にしては珍しく、そう思った


『chapter7 一夜明けて』


いつもの場所に穂乃果はいなかった

海未「まぁ、当たり前ですよね」

ことり「おっはよー、海未ちゃん」

海未「おはようございます、ずいぶんと陽気ですね」

海未ちゃん…

ことり「そういう海未ちゃんはずいぶんと暗い顔してるね」

海未「精神的にも肉体的にも疲れてますからね」

ことり「うん、またいたいね!」

海未「もう少しオブラートに包みなさい、ていっ」

ことり「あいったー!」


私の気分とは裏腹にことりは気にしてない様子で

ある意味助かった


海未「それにしても……誤解、されたままなんでしょうね」

ことり「あながち誤解じゃないってところもややこしいよねー」

海未「まぁ言い訳はできないでしょうけど」

ことり「ヤッちゃったのは事実だしねー」

海未「なんかことり、受け入れる方向性に持っていこうとしてません?」

ことり「私は暗く落ち込んでても仕方ないかなーってだけだよ」

結局学校に着くまで穂乃果とは出会わなかった

ことりの宿題を確認しつつ、いつ来るのかと待っていたら


穂乃果「おーい!海未ちゃーん!ことりちゃーん!」ブンブン

海未「文字通り大手を振ってバカが来ましたよ」

ことり「絶対何か余計なこと考えてる笑みだよ」

穂乃果「よっこらっしょっと、むふふー」

海未「おはようございます、穂乃果」

ことり「おはよー穂乃果ちゃん」

穂乃果「おはよーおはよー2人共、それでね……私昨日の夜考えたんだけど」

海未「はい……」

ことり「なにか慈愛に満ちた目をしてるね」

穂乃果「いやー色々調べたりして分かったんだけど、この世にはそういう愛の形もあるんだね」

海未「あのですね……穂乃果、そもそもそれは誤解で……」


穂乃果「だから私決めた!私は2人のこと応援するよ!!」

海未「……はぁ、ってはぁ!?」

穂乃果「色々障害は多いと思うけど、愛し合ってる2人を応援しないほど私は冷たい女じゃないよ!だって友達じゃない!」

ことり「あのね穂乃果ちゃん、別にそういう」

穂乃果「でも校内ではなるべくいちゃつかないことね!まー気持ちは分かる、分かるけどさ、そこは節度を守って」

海未「もしもーし、聞いてますかー、穂乃果ー」

穂乃果「もちろん私が見てる時はフォローするよ、でもやっぱり偏見はあるからさぁ」

ことり「これは聞いてないね、うん」

すいません、連投引っかかりすぎなのでスマホのほうから投下します

穂乃果「あと秘密は大丈夫、私は口が固いからね!絶対に バラさないよ!」

海未「まぁ、それはこちらとしてもありがたいですけど」

クラスメイト「おはよー、あ!ことりちゃんと園田さんっ て付き合ってるんだってー?」

海未「さっそくバレてるじゃないですか!!あなたの口は ガバガバですか!!」

穂乃果「あっれー?おかしいなー、昨日ちょっと電話で相 談しただけなのに」

海未「そこです!原因そこ!」

クラスメイト「え!?ガバガバ!?うっそー!そこまで進 んでるの!?」

海未「そっちもうるさい!違いますから!」

ことり「そうだよ!海未ちゃんのはキツキツだよ!」

海未「どっちの味方ですかあなたは!!」

ことり「ひゃうっ!!」

クラスメイト「え、SMプレイ!?」

海未「もう黙って!!!」

海未「はぁ……はぁ……」

穂乃果「海未ちゃん落ち着いて、そんなに騒ぐと話が広ま っちゃうよ?」

海未「だーれーのーせーいーだと思ってるんですか」

穂乃果「まあまあ、少なくともこのクラス意外には知られ てないんだし、ねぇ?」

クラスメイト「そうだぞみんな!このことはクラスだけの 秘密な!」

クラスメイト「おーう!任せといて!!」

クラスメイト「うちらの絆は最強だからね!!」

穂乃果「ほら、ね?」


海未「文化祭みたいなノリなのが気になりますが、まあこ こでとどめてくれるのなら」

ガラッ!!!

花陽「海未ちゃんとことりちゃんがラブラブって本当なん ですか!?」

凛「SNSで回って来たにゃー!!」

海未「クラスの絆どこいった!!!裏切り者はどいつだ! !!!」

穂乃果「海未ちゃん口調まで変わってるから!!落ち着こ !落ち着こ!」

まあそんなこんなで収束するわけもなく

しばらくの間、私とことりは校内初の百合ップルという好奇な視線を向けられることに 

はぁ……なんでこんなことに……

まぁそれでも


1年「きゃー!海未先輩!!応援してます!!」

海未「あ、ありがとう?」


みんなが優しいのは、良いことなのかもしれない

――――――――――――――――――――

てす

『lastchapter これからの季節』


海未「ことり……まだ残ってたんですか」


放課後、先生に頼まれたプリントを持って教室に来るとことりが1人残っていた


ことり「なんかね、明日使うプリントを整理して欲しいんだって、運んでくる人が来るからって……」

海未「あー、そういう」

ことり「ことだね……」


あの暴露事件からしばらくが過ぎ、少しは沈静化してきたのだが

未だにこういう妙な気の使われ方をすることがあった


海未「優しいってのも考えものですね」

ことり「そうだねー」

海未「というか単に仕事を楽したいだけですよ、私たちは委員でも無いのに」

ことり「でも量はそんなに無いんでしょ?」

海未「2人でやれば10分もかからないと思いますよ、うわーこれ完全に変な手間ですよ、先生自分でまとめてやったほうが早いでしょう」

ことり「本当に気を使われちゃってるんだね、なんかお母さんも妙なこと言ってたし」


海未「え、嫌ですよ……ことりの親にまで弁明しに行きたくないですからね」

ことり「先に手を出したのは海未ちゃんなのに?」

海未「それは謝りますけど……もう、ほら作業始める」

ことり「はーい」

しばらく無言でプリントの整理をする

窓の外は、あの日と同じ夕暮れだった

あの日以来ことりとは本当に何もない

学校で一緒にいるとからかわれるぐらいで

当の私たちの関係は、あの日のまま止まっていた



海未「これで終わりですね」トントン

ことり「夏……だね」

海未「え?」


ことりはいつの間にか、窓の枠に腰掛けていた

ことり「これから、夏本番だねってこと、季節も忘れちゃったの?」

海未「ああ、そうですね、少し考え事をしてて」

振り向かず背中越しにことりの声を聞く


ことり「夏もアイドル活動はやるんだろうね」

海未「ええ、そうでしょうね」

ことり「みんなで海とか行きたいなー」

海未「ええ、そうでしょうね」

ことり「可愛い水着とか買ってさ」

海未「ええ、そうでしょうね」

ことり「海未ちゃんはさ……」

海未「ええ……」


ことり「私のこと、どう思ってるの?」

これはにこまきとりんぱなも安心して暮らせそうですね

振り向いた拍子に、髪がふわっと広がる

開けっ放しの窓から、熱気を含んだ風が入ってきた

夏の、新しい季節の匂いを乗せて

1つが終わるということは、1つが始まるということ


海未「私は……」


私は、なんと答えればいいのか

数秒、戸惑い


海未「私は……、私は……!こと」

ことり「はーい、ストップー!」


言いかけた唇を指で塞がれた

ことり「別に海未ちゃんを困らせたいわけじや無かったんだ、ごめんね」

海未「ことり……」

ことり「そんな真面目な顔されたらこっちが困っちゃうよ」

海未「……でもっ」

ことり「今すぐ結論を出す必要は無いと思う、だって私たちにはこれからいっぱい時間があるんだから」

海未「忙しいでしょうけどね」

ことり「うん、その中でね、いっぱい悩むことがあると思うんだ」

ことり「勉強のこと、部活のこと、そして……進路のこととか」

海未「はい」


ことり「そういう時、悩んで苦しい時、私は……」


ことり「私は、海未ちゃんにそばにいて欲しい」

海未「…………!」

ことり「ダメな私を、支えて欲しい」

ことり「これがその……私からの、えと……未来希望?なんかはっずいねー、あはは」



海未「私も……!」


目はそらさない、今度は真っ直ぐ見据える

この気持ちに嘘偽りは無い


海未「私も、そうあれたらいいと思います」

海未「こんな私で役に立てるかは分かりません、でもことりがそう言うのであれば」

海未「私は、どんな形でも、あなたの傍に居続けたいと願います」

ことり「…………はわっ!」 

ことり「はわわわわわわわわわわわ!!!!」


あれ?様子がおかしい


海未「あ、あれ?ええと、私何か余計なこと言って」

ことり「嬉しい!嬉しいよ海未ちゃん!」

海未「へ……?ま、まぁ喜んでいただけたなら何よりです」

ことり「うん、本当に……嬉しいよっ!」


ことりが胸に飛び込んでくる


海未「こ、ことり!?くっつきすぎです」

ことり「ごめん、あと30秒だけ……こうさせて」

ことり「……変だよね」

海未「はい、変です」

ことり「本当、変な関係になっちゃった」

海未「変な関係だからこそ、急にどうこうする必要はないのです」


ことり「そうかもね……すー、はー、すー、はー」

海未「ちょっとことり……?」

ことり「すーはー、すーはー、パワー補給~!」


本当に30秒きっかりで、ことりは顔をあげる


ことり「う~、よし!元気でた!ありがと海未ちゃん!もう大丈夫!」


笑ったことりは清々しい顔をしていた

きっと青春が、聞こえた

あいせえええええええええええ

ことり「じゃあ帰ろっ!もう仕事は終ったんだよね」

海未「は、はい、ちょっ!もう少しゆっくり!」

ことり「あれー?もしかして手を繋ぐのが恥ずかしいとか?」

海未「そんなこと……あります……よ」

ことり「海未ちゃんも素直になったねー、まぁゆっくりいこ、ゆっくり」

海未「はい、ゆっくり」


ことりに手を引かれて歩き出す

暖かく、大事な友の手

私たちの関係はこれからどうなっていくのか

それはゆっくり決めていけばいい

新しい季節はすぐそこまで迫っていた

果たして夏は、私たちを変えるのか


ことり「あっ!」

海未「ど、どうしたんです?急に止まって?」

ことり「海未ちゃん……週末うちにくる?」

海未「……なぜ」

ことり「実は新しいのが届いちゃって」

海未「んな……またあなたはっ!」

ことり「で?来るの?来ないの?」


海未「そ、それはもちろん…………いっ」


それとも私たちが、夏を変えるのか

きっとそれは2人だけが知ることになる

内緒の、内緒の、お話


今はまだ夕焼け空の下、私たちは歩いて行く

これから訪れる、予想の出来ない未来に向かって

この手だけは、離さないで


END


次は
ことり「女の子同士の恋愛って無いよねー」
海未「女性同士の恋愛って無いですよね」だな

とりあえず全部投下終了
連投規制でPCから無理だった分は>>121>>124>>125
ちなみにアイディア元は一昨日のうみあいスレの「穂乃果がノンケでことうみが傷舐め合う話書いて」
ビビっと来たから書き溜めると言ったのが俺、まあここにはいないだろうけど言っとく

ともかく無事に終わりました、お疲れ様でした


いい話だった

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