僕「え、僕に義妹?」(134)

父「ああ。あれ、お前に連絡しなかったっけか?」

僕「初耳だよ。そういう大事な事はキチンと伝えて欲しいなぁ!」

父「悪かった悪かった。じゃあ改めて紹介しよう。少女ちゃんだ」

少女「少女です。よろしくね、お兄ちゃん!」

僕「……」

父「先月、孤児院から引き取ったんだ。可愛いだろ?」

少女「可愛いだろ?」

僕「……」

風呂『ピーッピーッピーッ』

父「お、風呂が沸いたな。少女ちゃん、お風呂入ってきなさい」

少女「はーい」

僕「……」

少女「…お兄ちゃん、一緒に入る?」

僕「……ッ!!!!」

少女「そうだ! 一緒に体、洗いっこしようよ!」

僕「…あー…僕、朝風呂派なんだ。ゴメンね」

少女「えぇぇーっ!? じゃあ夜は入らないの?」

僕「うん、入らないの」

少女「寝るとき体、気持ち悪くならない?」

僕「……なる…かな…?」

少女「あはははっ!! お兄ちゃんのベッドはベットベト~♪」トテトテ

僕「……」

父「……」

僕「孤児院ってもしかして、近所の教会が運営してる……?」

父「うん。あそこの牧師さんと俺は大学時代の友人でな。同じ哲学サークルだった」

父「当時は安保闘争とベトナム反戦運動の時代でね。同級生達は皆、日本でもカルチェ・ラタンを実現せんと息巻いていた。しかし私と彼はマルクス・レーニン主義が……」

僕「父さん、話が脱線してる」

父「あぁすまん。とにかくこの前、その牧師さんと偶然会ったので喫茶店で雑談したんだ」

牧師『あんた、息子さんが東京の○○大学に入ったんだって?』

父『そうなんだよ。それで唯一の肉親である俺を放っぽって、一人暮らし始めやがったんだ』

牧師『奥さんを亡くし、一人息子には発たれる。さぞ寂しいだろうね』

父『うん。とても寂しい』

牧師『そうだ。良かったら、ウチの子供たちを世話してみないか?』

父『養子か。悪くないな』

牧師『どうせなら女の子が良いだろう? 一番良い子を引き取らせてやるよ』

父「……と、こんな経緯だ」

僕「(随分いい加減な話だなぁ!)」

僕「って言うか、養父になるには配偶者が必要なんじゃないの? 母さんはもう死んだのに、父さんどうやって家裁の審査を通ったのさ?」

父「えっとそれは……細々とした事は牧師に任せきりだったから解らないな」

僕「(目、逸らしてる……)」

父「とにかく、あの子は今日からお前の妹になる。仲良くしてくれ」

僕「マジかよ」

大学に進学し、東京で一人暮らしを始めた僕。
今日は自分の荷物の回収と親父の様子見を兼ねて、田舎の実家へ帰省したところだ。

僕「(しかしまさか養子を引き取っていたとは……)」

僕「あまりに吃驚して、お土産の東京バナナ渡しそこねちゃったじゃん」

僕「……」

僕「(しかし、妹ができて嬉しくない訳ではない)」

僕(歳の離れた義妹というのは夢のような話ではある)

少女「おにーいちゃん♪」

僕「……ッ!!!!」

少女「なにニヤニヤしてるの?」

僕「……してないよ」

少女「うそ。してた!」

僕「気のせいだよ」

少女「ふーん」

少女「ところでお兄ちゃん、明後日帰るんでしょ?」

僕「そうだよ」

少女「わたし、明日お兄ちゃんとお出掛けしたいなー…なんて」

僕「は? お出掛け?」

少女「うん。パパからお金も貰ってきたよ」

僕「(つまり親父の差し金か)」

僕「そうか。君はどこに行きたいの?」

少女「んー……お兄ちゃんと一緒ならどこでも良いかな!」

僕「は?」

少女「明日はー、わたしとお兄ちゃんとー、二人っきりでデートー♪」

僕「……」

少女「お兄ちゃんはわたしとどこに行きたいっ?」

僕「急に言われても……」

僕(彼女なんていた事ないし、デートってどこに行けば良いんだ?)

少女「あ、そうだ! 海行こうよ、海!」

僕「無理。僕泳げないし」

少女「えー、いい年して泳げないって恥ずかしくないの?」

僕「……」

少女「じゃあさ、砂浜で見てくれるだけで良いからさ、行こうよ!」

僕(そもそもあんまり外に出たくない)
僕(でもだからと言って提案をことごとく断るというのも……)

少女「……?」

僕「うん、分かった。海行こう」

少女「ホント? やったー!」

少女「あ、わたしがお兄ちゃんに泳ぎ方、教えてあげよっか?」

僕「駄目だよ。僕スタミナがないからすぐに体力尽きて溺れる」

少女「えー? 泳ぐの楽しいのにぃー」

僕「……」

僕「あ、水着とか持ってる?」

少女「バッチリだよ。明日まで楽しみにしといてね!」

僕「……」

夜・寝室

僕「……」
僕(しかし親父、法的な手続きの話になるとあからさまに挙動不審になってたな)

僕(本当にあの子、我が家の養子になっているのだろうか?)

僕(誘拐とか……親父が話した牧師の話も全て嘘だとしたら?)

僕(考えたくないけど、まさかな)

僕(近いうちに教会で話を訊いて来るべきだな。あと役所で戸籍の確認もした方が良いか)

僕「……」
僕(眠れそうもない……)

翌朝

少女「おにーぃちゃん! 起きてよ、朝だよ!」

僕「……」

少女「ほらほら、支度してよ。早く海行こー?」

僕「……」

少女「今起きなきゃイタズラしちゃうぞー?」

僕(イタズラ……拷問……?)
僕(インドシナのフランス軍は、爪の間に薄い竹べらを刺して第二関節までいたぶる拷問を好んで使った)

僕「……ッ!」ガバッ

少女「あ、起きたね。朝ごはん出来てるよ。一緒に食べよ?」

僕「……うん」

僕「父さんは?」

少女「今日は東京に出張だって、わたしが起きた時にはもういなかったよ」

僕「ふーん」

少女「あ、コーヒー飲む? インスタントだけど」

僕「あぁ、うん」

少女「お砂糖とミルクは入れる?」

僕「任せるよ」

少女「~~♪」

僕(かぼちゃスープとサンドイッチ。彼女が作ったものか)

僕「……」パク

僕(美味しい。孤児院で身に付けたのだろうか)

少女「はいコーヒー、お待たせ」コト

僕「ありがと」

少女「あ、もうサンドイッチ食べちゃったんだ? 一緒にいただきますしたかったのにー」

僕「あぁごめん。お腹減ってて」

少女「ま、良いけどね。その代わり、今日はたっくさんわたしを楽しませてよね?」

僕「え、うん」

僕(テンションが違ってて、会話に温度差を感じる)
僕(これまで経験した事のないタイプの人だからかな、彼女との接し方が分からない……)

電車の中

僕「この快速に座ってれば……あと二十分で着くな」

少女「楽しみだねー」

僕「うん」

少女「ところでさ、お兄ちゃんって大学生なんでしょ。大学生って何してるの?」

僕「うーん、人によるけどね。僕はソ連崩壊の原因を考える研究をしてるよ」

少女「ソ連って、ロシアのこと?」

僕「厳密に言えば少し違う。通常、国家というものはその地域の民族、言語、文化、そういったアイデンティティから成り立つ共同体だ。しかしソ連という国家は……」

少女「すぅ…すぅ…」

僕「……おやすみ」

少女「着いた!」

僕「うん、着いたね」

県外の海浜。
インドアの僕には青空が眩しくて、海水浴にはぴったりな天候だった
おまけに初夏だからか人も少ない

僕「はい、これコインロッカーのお金」

少女「うん、じゃ着替えてくるね!」

正直、彼女の水着が楽しみだった

僕(彼女、小学四年生だったっけ。じゃあ学校の制定水着かな?)

僕(キツいビキニとか着てたらどうしよう)

少女「ねぇ…お兄ちゃん聞いてる?」

僕「え?」

少女「もう! せっかく着替えたのに、感想くらい言ってよ」

僕「……ッ!」

小学生用のビキニを着た少女。
年相応の水着を着ているのに、普通の小学生よりも大人っぽく見えた
白くて長い脚がよく映えて……

僕(『よく似合ってるよ!』なんて恥ずかしくて言えないよなぁ……)

少女「お兄ちゃん、どうしたの?」

僕「あ、うん、じゃあ遊んでおいで。あんまり遠くには行っちゃ駄目だよ」

少女「ううん、お兄ちゃんと一緒に遊ぶのっ!」

僕「え? でも泳げないのにどうやって……」

少女「砂遊びから始めよ? 面白いよー!」

それから僕たちは、色んな事をして遊んだ

少女「あー! お兄ちゃんまたよそ見してー!」
僕「いや、波が怖くて……」

色んな泳ぎ方も教えてもらった

少女「ほら、これがスクロール! 簡単でしょっ?」
僕(そもそも水に浮けない……)

美味しいものも食べたし

男「あ、この焼きそば美味しいなぁ! ソースとよく合う」
少女「お兄ちゃん、わたしのフランクフルトと、半分こして食べよ?」
男「え……」
少女「美味しいものを二つも味わえるんだよ、ね?」

>>35
あれ、途中で僕が男になってる……

かき氷も美味しかった

少女「お兄ちゃん! あーんして! あーん!」

僕「え、さすがにそれは……」

少女「む~~、いいからするのっ」

僕「じょあ……あ、あーん……」ソロー

少女「……♪」パクッ

僕「……ッ!」

少女「あ、頭がキーンってするぅ~!」

そして、あっという間に日が暮れた

夕方・家

僕「……」

少女「すぅ…すぅ…」

僕「……寝ちゃったのか」
僕「ホラ、寝る前にお風呂入って、歯磨かないと」

少女「え~? うーん……」

僕「全く、仕方ないなぁ…」

少女「すぅ…すぅ…」

僕(彼女に布団をかけて……)

僕「……」

僕(さて、親父が帰ってくる明日までに、僕はやらなきゃいけない事がある)

僕(役所が閉まるまでに行かなきゃ!)

……

少女「……」すやすや

少女「……!」

少女「……あれ? いつの間にか家に……お兄ちゃんは……?」

……

僕「そんな……!」

役所で問い合わせたところ。

僕「ありえないだろ……」

少女という名前の人間はいなかった。

僕「……」

同姓同名の人間なら全国に沢山いるだろうが、
少なくともあの教会の孤児院の名簿や我が家の戸籍に、彼女の名前はなかった。

僕「一体どうなってるんだ……」

夜・家

ガチャ
僕「……」

少女「あ、お兄ちゃん、どこ行ってたのっ!」

僕「あ、あぁ……ちょっとゴミ出しに行ってたんだ。明日ペットボトルの回収日だからね」

少女「ホントに心配してたんだから!」

僕「あれ? 良い匂いがするね」

少女「あ、晩ご飯作ってたんだよ。お兄ちゃんも早く食べよっ」

僕「……」

少女「今晩はお兄ちゃんと二人っきりだからね、腕によりをかけてクリームシチュー作ったんだ!」

僕「美味しそう。ってかこの短時間によく作れたね」

少女「実は下ごしらえは昨日のうちに済ませてたから、後は煮込むだけだったのです!」

僕「へぇー、偉いなぁ!」

僕(誰なんだ、こいつは)

僕「いただきます」

少女「どうぞ召し上がれ♪」ニコニコ

僕(…まさか毒が入ってる事はないだろうが……)パクッ

僕「もぐ…もぐ…」

少女「……どう、かな。味は?」

僕「……美味しい。今まで食べたことがないくらい美味しいシチューだよ!」

少女「……ッ!」パァァ

その後、二人でテレビを見ているうちに、いつの間にか彼女は寝付いてしまっていた

少女「すぅ…すぅ…」

僕(布団に運んでやるか。お姫様抱っこって、どこに腕を回せば良いんだろ?)

僕「お、とっても軽いな」

僕「軽い、軽い」

僕(僕が小学生の時もこれくらいの軽さだったんだろうな)
僕(こんな小さな体に、よくあれだけの体力が詰まってるものだ)

少女「……」

僕(可愛い寝顔)

僕「おやすみ、少女ちゃん」

…バタン

僕「あいつは一体誰なんだ」

僕は、昨日からの二日間の出来事を反芻した

僕「彼女と僕は初対面だ。しかし彼女は最初から馴れ馴れしく僕に接してきた」

『そうだ! 一緒に体、洗いっこしようよ!』
『明日はー、わたしとお兄ちゃんとー、二人っきりでデートー♪』
『お兄ちゃん! あーんして! あーん!』

僕「……」

僕「まるで、以前にもどこかで会ったみたいじゃないか」

……いや、違う
彼女を僕に会わせたのは親父だ
そして僕と彼女の二人に遊びに行かせ、仲良くさせようと謀ったのも親父だ

親父が全ての原因だ

僕「親父なら真実を知っている……」ピッポッパッ

Prrrrrr Prrrrrr

電話『現在、電波が届かないところにあるか……』

僕「…不通か……」

世の中には、公にしないほうが良い事もある

僕「例えば非嫡出子……隠し子とか」

捨て子を保護した、親父の友人の娘だった、色んな説を考えた

しかし結局はこの結論に落ち着いた

僕「親父の隠し子だった、という事にしておこう」

新幹線の切符は明日になっているが、なに、自由席に乗れば良い
明日の夕方に出れば、夜には大学の寮に帰れるだろう

僕「それまで、少女の様子を見るか……」

……

駄目だ眠い。
明日のお昼まで残ってたら、続き書きます

拙い文章だけど、もし読みたい人がいれば保守頼みます

おやすみ

帰って来ました
すぐに投下します

>>85
ID変わってるけど>>1です

翌朝

僕「うーん……」

僕「……まだ6時。健康的な時間だ」

僕「……」

僕(少女はどうしているのだろうか)

リビング

僕(げ、もう起きて朝飯作ってる!)

少女「あ、もう起きたの? おはよー」

僕「おはよう」

僕(僕が小学生の時は、始業時間にギリギリ間に合う8時に起きたものだけど)

少女「……」

僕(あれ、少女の元気がないな、どうしたんだろ?)

少女「……あれ、こっち見てどうしたのっ?」

僕(無理矢理元気をよそおってる感じだ)

僕「あー、何でもないよ。朝ご飯の前に風呂入ってくるね」

風呂

ゴシゴシ

僕「……」

コンコンッ

僕「ッ!?」

少女『……お背中流しましょうか…?』

僕「……。結構でーす」

少女『……』

僕「?」

少女『……お兄ちゃん、今日帰っちゃうんでしょ…?』

僕「うん。今日の夕方に出発する」

少女『……せっかく本当のお兄ちゃんが出来たのに、もう会えなくなっちゃう…』

僕「……」

少女『……』

僕「…いつでも遊びに来れば良いよ」

少女『え?』

僕「日本のどこにいようとさ、今じゃ三時間もあれば東京へ来れるんだからさ」

僕「休みの日とか、いつでも僕の所に遊びに来なよ」

少女『……』

少女『ありがと。お兄ちゃん』

散歩中

僕(僕を駅まで見送るついでに、彼女と少し遠回りして散歩する事になった)

少女「ゴメンね、ワガママ言っちゃって」

僕「いや、大丈夫だよ。このくらい」

少女「……」

僕(どうしよう。話題がない……)

少女「……」

僕「…!」

僕(あ、指が……)

少女「……♪」

僕(女の子と手を繋いで歩くなんて初めてだ)

僕(小っちゃくて、それに、温ったかい……)

少女「~~♪」

僕(鼻歌まで歌って。何だか楽しそうだな)

少女「あ、キレイなお花!」

僕「お、懐かしいな。学校で育てた花だ」

少女「わたしも二年生の時育ててたよ。アサガオっていうんだよ!」

僕「あぁアサガオだった。でもまだ蕾みたいだね」

少女「うん。普通は8月くらいに咲くんだけど、ここら辺は暖かいから」

僕「ふーん。少女ちゃんは詳しいね」

少女「えへへ」

僕(頭を撫でてやりたい所だけど、嫌われたらヤだな。止めとくか……)

少女「……もうすぐ駅に着くね」

僕「うん」

僕(ここで別れるのはちょっと名残惜しいな……)

少女「……」

僕「そうだ。別れる前にさ、駅ナカの百貨店でちょっと買い物しない?」

少女「……買い物?」

僕「確か階上に……」

少女「……?」

僕「あった、婦人用品のコーナー。何でも買ってあげるよ」

少女「え?」

僕「服とかリボンとか、あ、下の化粧品でも良いよ」

少女「え、ホント?」

僕「うん、あんまり高いのは駄目だけどね」

少女「じゃあ…これ!」

僕「え、ヘアピン?」

彼女が持ってきたのは、何とも可愛らしいヘアピンだった。
小さくアサガオの意匠が付いた、幼さを感じるデザインのもの。

僕(結構安いけど、こんなもので良いんだろうか)

少女「ねぇ、わたしに付けて見せて?」

僕「あ、付け方がよく解らない……」

少女「もう、しょーがないな。お兄ちゃんは」

そう言うと、彼女は自分でヘアピンを付けてみせた。
前髪を右から左へ流して分けた、少しおでこが見えるような髪型。

少女「また、帰ってきてね……?」

僕「うん」

少女「じゃ……」

僕「バイバイ」

新幹線

僕(結局僕は、少女に彼女の生い立ちを訊く事は出来なかった)

僕「ヘタレだな……」

僕(結局、残る手掛かりは親父だけになった)

僕(次に親父とじっくり話し合える機会はいつになるんだろうな)

僕「結局、彼女は……」

僕「……Zzz…」

数年後・僕の部屋

友「あー、俺はとてもとても寂しい」

僕「……」

友「俺の友達連中は皆就職しちまって、院に進むのは俺一人。この先どうすりゃ良いんだい?」

僕「友、ちょっとうるさいよ」

友「ああ、お前だけは俺の仲間だと思っていたのに!」

僕「大体君は、卒業コンパで僕のお酒まで飲み干してゲロまでしてたじゃないか。もう十分でしょ」

友「お別れのキスくらいしてくれよ」

僕「嫌だよ、気持ち悪い」

友「そう邪険にしないで」

僕「だったら僕の引越しの準備、手伝ってくれないかな!?」

友「それは疲れるからヤダ」

僕「ホント邪魔くさいなぁ」

?「お兄ちゃん、その人をそんなに苛めると可哀想でしょっ」

僕「いやこいつホモだからこれくらい言わないと尻を触ってく……ん?」

友「誰だよ、この可愛い娘」

?「さぁ問題です。わたしは誰でしょうっ?」

僕「少女…ちゃん…?」

少女「せいかーい! 久しぶり、お兄ちゃんっ!」ダキッ

僕(だ、抱きつかれた!)
僕「お、大きくなったね。背……」

少女「うん、今150センチ!」

友「なんだよお前、浮気かよ」

少女「え、お兄ちゃん浮気してたの……?」

僕「いや、浮気もクソも誰とも付き合った事ないから」

友「なんか俺、空気みたいだから退散するわ」

ガチャ…バタンッ

少女「で、何してるの?」

僕「あぁ、引越しの準備だよ。就職したからこの寮を出なくちゃいけないの」

少女「やけにダンボール多いね?」

僕「うん、結構重いから、気をつけてね」

僕「で、今日は何の用事で来たのさ?」

少女「えーっと……お兄ちゃんに会いたくなって……」

僕(これは何か隠してるな)

少女「わたしは身長伸びたけど、お兄ちゃんは変わらないね」

僕「え、まぁ成長期も終わったしね」
僕(君はカラダはデカくなったけど、胸は成長してないじゃんか)

少女「引越し、手伝ったげるよ!」

僕「そう? じゃあの本棚の本をダンボールに詰めてくれないかな」

少女「うん、わかったっ!」

僕(なかなか手際が良いな)

少女「よいしょっと……」セッセッ

僕(あ、パンツ見えた)

ワンボックスカーの中

少女「あ、お兄ちゃん車持ってたの?」

僕「いや、これは友人から借りたものだよ。これで引越し先にダンボールを持ってく」

少女「引越し屋さんは使わないの?」

僕「ここの寮の家具や家電は僕の物じゃないからね。それに僕の私物もあんまりないし、業者を雇うより自分で運んだほうが安い」

少女「ふーん」

僕たちを乗せた車は公道を走っていく

少女「会社には寮はないの?」

僕「一応あるんだけどね。狭いから自分でアパート借りる事にした。ちょっと広い家だよ」

少女「ふーん……」

僕「?」

少女「その話なんだけどさ、わたし、お兄ちゃんと一緒に住んで良い?」

僕「……え?」

僕「いやいや、君、学校あるんじゃないの?」

少女「うん、東京の高校に受かったし、お兄ちゃんのアパートから通えるだろうってパパも言ってた」

僕「じゃあ少女ちゃんは、僕がアパートに入居した事は知ってたけど、その場所は知らなかったってこと?」

少女「うん」

僕(つまりこれも親父の差金か……)
僕(まるで数年前、彼女と初めて会った時みたいだな)
僕(考える事が多い……)

夕方・アパート

少女「じゃあわたし、晩ご飯作ってくるね!」

僕(今のうちに親父に電話しとくか)

Prrrrrr Prrrrrr

父『おう、お前か、どうした?』

僕「父さん。今日少女が来たんだけど、僕の家から通学するって?」

父『ああ、その話か。前もって話しておかなくて悪いな』

僕「いや、その話もなんだけど……数年前から訊きたい事はいっぱいあった」

父『……』

僕(…っと、ここからの話は家でしない方が良いな。一旦外に出るか)

少女「……」

…バタンッ

僕「今日が良い機会だから訊くけどさ」

父『あの子は何者か?って話か』

僕「そう」

父『お前があの日、役所に行って確認してきた事は知っている。だが今はきちんと我が家の養子になっているはずだ』

僕「……そもそも少女は誰の子だよ?」

父『……』

僕「じゃ次の質問。養父になるには配偶者が要るって話だけど、父さんの再婚相手は誰?」

父『……そんなこと聞いてどうする?』

僕「僕の義母に当たる人が何者なのかを訊いたら駄目なの?」

父『……』

僕「実は僕、あの子が父さんの隠し子じゃないかとか、あの子自身が父さんの愛人だとか、考えてる」

父『それは違う』

僕「3つ目の質問。どうして父さんはそんなに、僕と少女を仲良くさせようとしてるんだよ?」

父『……』

父『少女が我が家の養子にならなければ、あの子は学校に通う事も出来なかった』

僕「……」

父『ま、仲良くやってくれ』

僕「え? あ、ちょっとっ!」

電話『ツーッ、ツーッ、ツーッ』

僕「……」
僕(結局、ろくに教えてくれなかった)

…バタン

僕「ただいまー……ってあれ?」

少女「……」

僕(どうしたんだろ?)

少女「…お兄ちゃんは、わたしの事、キライ?」

僕(まさか今の話を聴かれたか?)

僕(そりゃ愛人が云々話してれば傷付くわな……)

少女「……」

僕「……そんな事ない、好きだよ」

少女「……ホント…?」

僕「本当だって。こんなに可愛い妹がいるんだもん、嬉しくない訳ないよ」

僕(我ながらなんて臭いセリフだ……)

少女「……♪」ニマー

少女「でも妹かぁ……」

僕「……」

少女「さっ、早くご飯食べよっ? 今日は唐揚げだよ!」

僕「うん。美味しそうな匂い」

『でも妹かぁ……』

僕(まさか…な……)

僕(そういや、血縁がなければ義妹と結婚できたっけ)

僕「……」

彼女の作った晩ご飯は美味しかった。

ご飯食べに行ってきます

一、二時間以内に帰ってきますので、よろしくお願いします

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