エレン「夢をみていた」(4)



……頭が痛い。ひどい頭痛と目眩に今にも体のバランスを奪われそうになる。


「っ…」

地面…と言えるかどうかわからない場所に手をつき、体を支える。


頭痛はさらにひどくなる。頭が割れそうというのはこういう感覚なのだろうか…


「っ、う……ぐ……!」


耐えきれず、頭を強く掴んで呻いた。

「うぁ、あ、あぁぁぁっ…!」



苦痛に吠える喉が震え、脂汗が滲んだ。

情報が、映像が、記録が、感情が。どこからともなく頭の中に押し寄せてくる。

膨大な質量は頭蓋を内側から砕き破裂させようとするかのようで、とても、とても正常ではいられない。



「くっ…うぅっ……!」



暗闇の中にいた。

ここがどこなのか…なぜ自分がこんな場所にいるのか。
ひどい頭痛に苦しめられながらもそれを考える余裕がまだあった。





が、その思考は急激に凍りついた。

鋭い刃で切り裂かれたような予感が背筋から首筋を這い上がる。



誰かがいる。いや、近づいてくる。


気がつけば痛みも苦しみも消えていた。が、振り返る余裕はなく、すぐさま立ち上がってどこへともなく走りだす。



なぜそうしたのか自分でもわからなかった。ただあそこにいてはいけないと、本能めいたものが激しく警告したのだ。

「はぁ……はぁ…!」



重く、とてつもなく威圧的な。

条理も不条理もすべて踏み潰すことができるような、冷徹な音。

そんな音が段々と近づいてくる。どれだけ速く走っても少しずつ、少しずつ近づいてくる。

「っ…」

遂に観念して立ち止まり、恐る恐る振り返る。



瞬間、息を呑んだ。





「アァァアアアアアア!!!」

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