モバP「卯月がうざい」(74)
卯月「プロデューサーさん! 今日もお仕事頑張りましょうね!」
P「イヤだ。モチベーション上がらんから寝るわ」
卯月「またそんなワガママ言って……」
P「言いたくもなる。こんな平凡なアイドルと組まされた俺の身にもなれよ」
卯月「もう一年も経つんですから、そろそろ慣れてくださいよぉ」
P「断る。めんどくさい」
卯月「もう……」
卯月「じゃあ、今日は私がプロデューサーさんを楽しませてあげます!」
P「……は?」
卯月「気分が良くなれば、お仕事だって頑張れますよね?」
P「パンピー同然のお前に何ができるんだ?」
卯月「いつもいつも平凡とかパンピーとか言わないでください! 私は島村卯月、アイドルです!」
P「特技は頑張ること、趣味は友達との長電話。こんなアイドルいねーよ」
卯月「えっと……実はこう見えて、モデル体型なんです!」
P「身長159cm、体重45kg。スリーサイズは83-59-87。スタイルのいい一般人じゃねーか」
卯月「うぅ、なんで覚えてるんですかぁ……」
卯月「まず、私の魅力について語るというのはどうでしょう?」
P「尻。以上」
卯月「ひ、ひどい!」
P「他に褒めるとこ無いだろ」
卯月「えぇ!? 私、結構可愛いって言われますよ?」
P「超可愛いけど、アイドルとしてそれは当然のことだろ」
卯月「それはそうですけど……」
P「性格もあざとくないし人当たりもいい。でも頑張りますしか言えないのはなぁ」
卯月「頑張るっていい言葉ですよね」
P「あまり言うと薄っぺらな言葉に成り下がるけど」
卯月「……すみません」
P「とは言え、頑張りますロボになるのも1つの個性かな。俺は嫌いじゃないよ」
卯月「ロボとか言わないでください……」
P「よし寝る。おやすみー」
卯月「あっ、おやすみなさい……じゃないです! 寝ないでください!」
P「うるさいうるさい。耳元で叫ぶな、ツバかかった」
卯月「す、すみませんっ」
P「さっきの話も一瞬で終わったじゃん。お前のダメな点ならいくらでも挙げられるけど?」
卯月「それはヘコむのでやめてください……」
卯月「あ、そうだ。ゲームしましょう!」
P「ゲームって、テレビゲーム?」
卯月「はい! スマブラとか盛り上がりますよ?」
P「そういうの苦手。インベーダーゲームしか知らないから」
卯月「えぇ~……そんな歳に見えませんけど」
P「小さい頃からアウトドア派でさ。今もPCでカタカタするよりは営業の方が楽しいし」
卯月「そういえばプロデューサーさん、人差し指だけでキーボード叩いてますよね」
P「ちひろさんとかキーボード見ないで叩いてるから怖いわ……」
卯月「えっと……それなら、しりとりしませんか?」
P「お前から尻を取ったら魅力ゼロだぞ」
卯月「そういう意味じゃないです! もう、じゃあ始めますよっ」
P「やるなんて言ってないだろ」
卯月「まずはしりとりの『り』!」
P「凛。ハイ終わり」
卯月「プロデューサーさぁん……」
卯月「諦めずにもう一回やります!」
P「そこは諦めとけよ……」
卯月「しりとり!」
P「リトマス紙」
卯月「島村卯月」
P「キス」
卯月「す……好き。えへへっ」
P「うぜぇ」
P「……あぁ、そうだ。好きで思いついたけど、コイバナとかどうだ?」
卯月「え? こ、コイバナ?」
P「さすがの俺でもこれは盛り上がる。特に好きな人の話とかするとなー」
卯月「確かに……二人でコイバナなんて、修学旅行みたいで楽しいですね!」
P「喋るのはお前だけだぞ」
卯月「え……プロデューサーさんも話しましょうよぉ」
P「やだ」
卯月「不公平です……」
卯月「えっと……何を話しましょうか。やっぱり好きな人の話とか……」
P「いや、それより元彼の嫌な思い出とかの方が盛り上がる。女のネチネチした話は楽しい」
卯月「…………あの」
P「ほら、さっさと話せ。さぁさぁ」
卯月「彼氏、いたことないです」
P「…………は?」
卯月「私、誰とも付き合ったことないんです……」
P「……お前の高校、女子校だっけ?」
卯月「共学です」
P「じゃあ、中学が女子校だった?」
卯月「共学です」
P「男が山ほどいるのに、そのルックスと性格で『彼氏イナイ歴=年齢』なの?」
卯月「え? あ、はい……」
P「……はっはっは」
卯月「なんで嬉しそうなんですか!?」
卯月「あの……やっぱり私って、モテなさそうですか?」
P「さあ?」
卯月「さあ、って……」
P「人によって恋愛の感性は違うしな。一般論を求められても困る」
卯月「……じゃあプロデューサーさんは? 私のこと、彼女にしたいって思います?」
P「………………」
P「……うーん」
卯月「…………」
P「そうだなぁ……」
卯月「…………」
P「…………ノーコメント」
卯月「えぇ!? ど、どういう意味ですか!?」
P「答える義務も義理もない」
卯月「気になるじゃないですか!」
卯月「もう……私にばっかり話させて、プロデューサーさんはズルいです」
P「ズルいって……」
卯月「やっぱり不公平です。プロデューサーさんもコイバナしましょう!」
P「……しょうがないヤツだな。何の話が聞きたいんだ?」
卯月「え……いいんですか!?」
P「お前から振ったんだろ。というか、鬱陶しいほど絡まれたら相手せざるをえない」
卯月「そっ、そうですねぇ……好きな人! 好きな人の話がいいです!」
P「わかった。じゃあ俺から見た島村卯月の話でもするか」
卯月「それ私です! 全然わかってないですっ!」
P「お前の話だぞ。聞きたくないのか?」
卯月「どうせ、またバカにされるだけですし……」
P「いきなりネガティブになったな」
卯月「私なんて、普通だし、凡才だし、無個性だし、貧相だし……」
P「…………」
卯月「もういいですっ。プロデューサーさんは私のこと、嫌いなんですよね」
P「……ったくお前は、本当にしょうがないな。感情表現が下手な俺も悪いけど」
卯月「…………?」
P「本当に嫌いだったら、趣味やスリーサイズまで覚えないだろ」
卯月「……えっ」
P「一年も付き合いがあれば分かるだろうけど、俺は相手を素直に褒められない人なの」
卯月「プロデューサーとして致命的ですよ……」
P「そこをあえて直球で述べると、まあ……お前は、ルックスも性格も俺好みだよ」
卯月「ほぁっ!?」
P「スタイルもいいし、特にお尻が大きいのが好きだ」
卯月「…………」
P「どんなにレベルアップしても頑張り続ける、向上心の高い子だと思ってる」
卯月「え……な、なにこれ……夢?」
P「そんな、彼女にしたいランキングNo1の子に彼氏がいるか探りを入れてみたら、いなかったわけだ」
卯月「あ、はい……いないです……」
P「俺にもまだチャンスがある、と内心思ったよ」
卯月「…………」
P「が、よく考えたらあと数年もすれば、お前も男性アイドルとかと付き合うようになる」
卯月「なりませんよ?」
P「だから、今こうして正直に言ったのも無駄だったな……」
卯月「なりませんってば」
P「アイドル同士はイヤなのか。じゃあパンピーと付き合いたいの?」
卯月「そういう意味じゃなくて……私、ちゃんと好きな人がいるんです」
P「あ、彼氏いないけど好きな人はいるのか……だよな、うん……」
卯月「……そんな落ち込まなくていいと思いますけど」
P「いや、落ち込むなって言う方が無理だろ……」
卯月「…………」
P「ちなみに、誰なの? 業界人?」
卯月「業界人ですよ」
P「じゃあディレクター? 映画監督?」
卯月「プロデューサーです」
P「え? お前、俺以外にプロデューサーの知り合いとかいたんだ」
卯月「いませんよ?」
P「んん……? どういうこと?」
卯月「……はぁ。こんな人だし、積極的に行かないといけないよね」
P「え?」
卯月「プロデューサーさん。ちょっと、目閉じてもらえます?」
おわり。
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