長門「やめて……」キョン「いいだろ、恋人同士なんだから」(135)



長門「どう?」

古泉「といわれましても…」

長門「私が書いたSOS小説」

古泉「SOS小説ですか」

長門「そう。 登場人物は私たちSOS団団員」

古泉「ふむ」

長門「今回のジャンルは恋愛」

古泉「ほうほう………ん?」

長門「なかなかの売れ行き」

古泉「………ちょっと待ってください」

長門「?」

古泉「まず1つ1つ確認していきます。
    …売れ行きとはなんですか?」

長門「私が書いた小説を書籍化し校内で販売している」

古泉「っ、…長門さ
長門「安心してほしい」

古泉「?」

長門「作品は私のオリジナル 著作権は問題ない」

古泉「いや、そういう意味ではなくて
長門「大丈夫」

古泉「?」

長門「もちろんペンネームを使用している。
   私が書いているとは特定不可能」

古泉「」

長門「ペンネームゆきりん」

長門「…なかなかの売れ行き」

古泉(困ったものです…)

長門「…」

古泉(長門さんも人間らしくといいますか
   パソコン以外に息抜きとして新たな“趣味”を持つことは僕も大いに応援しましょう)

長門「…」

古泉(…ですが)

ペラ

『長門「やめて……」

キョン「いいだろ、恋人同士なんだから」

長門「ん、…、っぁ…』

古泉(………どう見てもアウトですよ長門さん)

古泉「」

長門「なかなかの売れ行き」

古泉「はぁ」

長門「新刊は発売されたばかり。今から読み始めても大丈夫」

古泉「はぁ」

長門「購入はいつでも受け付けている」

古泉「はぁ」

長門「ご意見、感想箱はこちら」

古泉「いつの間に」

長門「…」

古泉(この期待…どうしたものでしょうか………)

長門「…」ソワソワ



「”ゆきりんさん“ 今回も面白かったです」

古泉「その声は」

みくる「あら古泉くんも」

古泉「どうも、って今ゆきりんと…」

みくる「今回もとっても素敵でした」

みくる「強引なキョンくんに従順な長門さん」

みくる「王道でありながら読者を飽きさせる事ない展開」

みくる「思わず…ドキドキしちゃいましたよぅ」

長門「…照れる」

みくる「続きはまた感想箱に投函しますね」

長門「…//」

古泉「」

古泉(くっ、まさか朝比奈さんまでもそちらに回っていようとは…)

みくる「新刊はまだですか?」

古泉(しかも長門さん同様にノリノリだなんて)

長門「現在執筆中 焦らないで待っていてほしい」

古泉(やめさせるのは至難の業ですね)

みくる「わかりましたぁ」

古泉(彼ではありませんが………やれやれです)

長門「そちらの執筆中の作品はどうなっているのみくる先生?」

古泉「」

みくる「先生だなんて…」

古泉「」

長門「あなたの作品もそこそこな売れ行きのはず。 良い評価は私の耳にも届くほど」

みくる「もぅ、ゆきりん先生ったら」

古泉「」

長門「今古泉一樹に私の新刊をオススメしていたところ。あなたも紹介することを推奨する」

みくる「そうします!」

長門「みくる先生は巻数こそ少ないものの作品の完成度が高くとても評価されている」

古泉「そうなんですか…」

長門「彼女特有の作風によってつくられた物語は穏やかかつ温かみを持ちご新規のファンもたくさん獲得している」

古泉「…詳しいですね」

長門「そう、私も彼女のファンの一人」

古泉「はぁ」

長門「みくる先生ファンクラブ会員のNo.1であり会長も勤めている」

古泉「それは、ずいぶんご熱心なんですね」



みくる「どうぞ、見てみてください」ドンッ
古泉「って小説じゃなくて絵本ですか!」

長門「小説は私 みくる先生の作品は主に絵本」

古泉「僕が知らない間にこんなことが」

みくる「一冊一冊に丁寧に描きたくて、だから巻数は少なめなんです」

長門「しかしそれがあなたのいいところ」

みくる「えへへ、ありがとうございますゆきりん先生」

古泉(そして知らない間にこれほどまでの絆が)

古泉(風紀や涼宮さんのことも考えてSOS作品に反対の僕でしたが………)

長門「ここ」

みくる「はい、なんですか」

長門「よくできている。かわいい」

みくる「! あ、ありがとうございますぅ!」

古泉(ふふ、微笑ましいものではありませんか)

みくる「ゆきりん先生よりも巻数が少ないですが一生懸命頑張って作品を作っています」

古泉「へぇそうなんですか」

長門「合作もした」

古泉「そこまでですか」

みくる「やりましたね。すっごく大変だったけどファンレターもいっぱい届きましたよね」

長門「売れ行きはかなり上々」

古泉「それはそれは、見てみたいものです」

みくる「でもあれはすぐに完売してしまって」

長門「問題ない。非売品の1冊を手元に残してある」

古泉「それでは見せていただけるのですか?」

長門「待ってて」ゴソゴソ…

長門「これ」

古泉「わぁ、素敵な本ですね」

長門「作画はみくる先生が」

みくる「小説はゆきりん先生が」

古泉「では読ませていただきます」

みくる「なんだかドキドキします」

長門「…」



表紙はSOS団全員がいた。朝比奈さんの柔らかいタッチの絵柄に長門さんも型を崩していつも話す時とは違うやんわりとした文体
思わずページをめくる手も早まった。

古泉(なんだか気恥ずかしくもありますが癒やされますね)ペラッ

みくる「どうですか?」

古泉「とても素敵な作品です。温かい気持ちですよ」ペラ

みくる「うふふ、ありがとうございます」

長門「…うれしい」

古泉「…こちらこそありがとうございます」ペラ

長門「これは非売品 販売することが不可能 最後までみて」

古泉「はい」ペラ


古泉(♪)
古泉(ん?)
古泉(んん?)
古泉(………)


『っ、待って! まだ…あぁ!』

『やめていいのか… キモチイイんだろう?』パンパン!

『んん!……あっ あぁぁ!』


古泉「」
長門「小説は私が担当」長門「力作」

古泉「なんなんですかこれは!」

みくる「ひぇ! どうしたんですか?」

古泉「どうしたもこうしたもありません!
   温かくて癒された僕の気持ちを返してください!」

長門「一部“温かくなった”のは間違いではない」ボソッ

古泉「ぐぬぬっ」

長門「…♪」


キョン「俺は…お前の気持ちがわかるぞ古泉」

古泉「!」

みくる「キョンくん…」

長門「…」

古泉「あなた…」

キョン「古泉…お前もわかるよな」

長門「しかし売り上げは上々」

みくる「そうです!ファンレターや重版のお願いだっていっぱい来てるんですよ!」

長門「オマケ特典の”秘密~SOSの本性~“の小冊子でもいいからという切実なものまである」

古泉「?! 本性ってまさか!」

長門「問題ない。我々の素性を明かすものではなく、ただの18禁」

古泉「さらりと言ってますが流されません、問題だらけですよ!」

キョン「やれやれ」

キョン「朝比奈さん全ページ詳細まで繊細に頑張って描いたのはよくわかります」

キョン「長門売り上げも評価も高いのも知ってる。俺が知らない訳ないだろ?」

キョン「でも作品をつくるってのは…だがそれだけじゃない」

みくる「…」
長門 「…」
古泉 「…」

キョン「こいつがいい例だ」

古泉「僕ですか」

キョン「せっかくのお前たちの力作もこいつには響かなかった」

キョン「それは作品ってのはつくる側だけじゃない…読む側の気持ちも大事なんだ」

みくる「…」
長門 「…」
古泉 「…」

キョン「なーんて偉そうな事言っちまったけど作品が悪い訳じゃないんだ。俺もお世話になってるしな」

キョン「でも人には好みがあるのさ」

キョン「お前はそう言いたかったんだろ?」

古泉「え?」

キョン「自己主張くらいしろ。めんどくさくて適わん」

古泉「…」

キョン「俺はお前の通訳なんてする気はないからな」


古泉(「ありがとうございます」って言うのも変ですね)

古泉(でも………うれしいですよ)



キョン「ほらこれだろ?」

古泉「え?」

・長門×ハルヒ
・ハルヒ×みくる
・みくる×長門

キョン「定番はこんな感じだがリクエストだって受け付ける。
    イエスマンじゃない…お前の好みをな」

古泉「また騙された…」

古泉「ダメです」

みくる「なんでですかぁ?」

古泉「朝比奈さんはギリギリセーフかもしれませんが他2名に示しがつかないので」

キョン「エロ本禁止なんて、お前はオカンかよ」
長門「なかなかの売れ行き」

古泉「お黙りなさい」

古泉「18禁もバレバレペンネームもダメに決まっているでしょう?」



古泉「副団長権限により禁止します。」

長門「朝比奈みくるは書記」
キョン「その手があったか!」
古泉「禁止です」

長門「エロも青春の1ページ」

キョン「百合の魅力に気づいたらお前にもわかるさ」

古泉「ダメなものはダメなんです。涼宮さんの目に触れたら…」

バタン!

ハルヒ「よーし、今日も張り切って行くわよ!」

古泉「!」


みくる「涼宮さん」

ハルヒ「みっくるちゃ~んお茶お願い」

みくる「は~い」

古泉(いつものSOS団)

ハルヒ「う~ん」カチッ

みくる「はいどうぞ」

長門「…」

古泉(あれは悪夢だったんです。)

キョン「ほら」パチ

古泉(涼宮さんの目に触れることなく未然に防げた。
   世界の平穏を保つというのも厄介なものですね)

キョン「おい、まだか?」

古泉「はいただいま」パチ

ハルヒ「…」ジー

長門「…」

パタン

ハルヒ「あらもう終わり?」

キョン「お前来るのが遅かっただろうが」

ハルヒ「せっかくいいとこだったのに仕方ないわね」



古泉「では我々は…」

キョン「あぁ」


ハルヒ「あ、有希 あれは用意してくれた?」

長門「…」コクッ

コト

古泉「…」

見覚えのある箱に僕は……………


ハルヒ「ついにあたしの時代がやってきたわね!」

長門「ペンネーム ハルハル間違いない?」

ハルヒ「OK!燃えてきたわよ~」

キョン「ネットでいいネタ拾ったのか?」

みくる「うらやましいです~」

ハルヒ「ザンネン!今日のオセロよ」

キョン「はぁ?意味がわからん」

ハルヒ「『まだか』 『はいただいま』ピンとこない?」

キョン「全く」

ハルヒ「主人×執事よ。 夫婦ものでもいけるわね」

キョン「相変わらずの奇想天外、突飛な発想だな」

ハルヒ「あんたの百合もそれくらいやってみなさいよ」

キョン「やれやれ」

キョン「これだから“薔薇”は困る」



世界は僕が危惧しているよりも脆くもなく
案外丈夫に出来ているのかもしれない…


バタン…

ハルヒ「古泉くん?」
キョン「古泉!」

「気がついた?」

見慣れない天井
しかし見たことがないこともなく


古泉「…ここは」

森「おはよう」

古泉「森さん… …ここはもしかして」

森「心配しなくていいわ。例の病院だから」


そうかあの箱を見た途端に意識が朦朧として…


森「過労かしら?ムリしちゃダメよ」

傷心した僕には森さんの気遣いが嬉しかった
そんな森さんに迷惑はかけられない


古泉「割と平気なんですよ。検査も異常は見あたらなかったでしょう?」

森「確かにそうだけど」

古泉「僕は元気ですよ」ニコリ

森「そう、良かった」ニコッ


僕の心も癒されていく


コンコン…

森「もしかして…」

「あの、面会に来ました…涼宮ハルヒです」


古泉「…」

涼宮さんの声が聞こえた
緊張しているのかいつもよりかたく、小さな声だ

森「…どうする? 病み上がりだしせっかくだけど帰ってもらう?」

森さんは本当に優しい人だ。
僕のことを真剣に心配してくれている。
そんな優しさ、温かさに僕は答えたかった。


古泉「大丈夫です」

古泉「どうぞお入りください」

古泉「やぁ、皆さんお揃いで」

ハルヒ「古泉くん…大丈夫?」

キョン「急に倒れるからビビッただろうが。…心配させるな」

みくる「お怪我はないですか?」

長門「…これ」


古泉「果物ですか。ありがとうございます。いただきます」


皆さんしょんぼりとした顔をしていますね。
不謹慎かもしれませんがやっぱりうれしい。

古泉「ちょっとめまいを起こしてしまったようで…ご心配をおかけしました」

ハルヒ「良かった…疲れてるなら疲れてるって言いなさい。団長命令!」

キョン「やれやれ。…まぁ何事もなくなによりか」

みくる「お茶入れてきたんです。よかったら飲んでね」

長門「…よかった」ポンポン

古泉「…ありがとうございます」


森「どうも」ペコリ

ハルヒ「あ、森さん?」

森(古泉、いい友人と巡り会えたものね)

古泉(はい)

森「私は失礼させてもらいます」

ハルヒ「え、どうして?」

森「私がいなくても十分みたいですから」

ハルヒ「え?」

森「皆様、今後とも古泉をよろしくお願いしますね」

古泉「森さん…」

ハルヒ「もちろん!だって団長命令だからね」

キョン「そういうことだ副団長」

古泉「…はい」

森「それでは…」

………森さんに感謝しています。
この場にSOS団の皆さんがいなければ…僕は泣いてしまうかもしれない。

ハルヒ「お気をつけて」

森「ありがとうございます」

森「あ、忘れるところでした。これを」

森さんは涼宮さんに封筒のようなものを手渡す。

森「感想を言う機会があまりないのでこれを用意致しました」

長門「問題ない。ペンネーム ハルハルのご意見、感想箱は設置完了している」

森「あらそれはいいことを聞きました」

ハルヒ「主人×執事は完成したからそっちもよろしくね。
    さ~てネタ探しから始めるわよ!」

キョン「早えぇなおい! 森さん俺のはどうでした?」

森「はいキョン子×一姫やハルヒ×一姫もとても素晴らしいデキでした。次回もよろしくお願いします」

キョン「ありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします」

長門「私の執筆中のNL小説はハルヒ×古泉のカプ。よろしくお願いしたい」

森「はいわかりました」

みくる「リクエストありがとうございます!また頑張りますね」

森「お待ちしています」


森「皆様、失礼します」

パタン



古泉「騙ざれだ」シクシク

ハルヒ「さてと」



ハルヒ「入院中は暇だって聞いたからたくさん用意してきたわよ古泉君!」

古泉「え゛」

みくる「この作品は古泉くんが主役です。
    お気に入りが見つかりましたらペンネームみくるのご意見、感想箱までよろしくね」

古泉「…」

長門「あなたがメインの作品は女子に売れ行きがいい」

長門「こちらは最後まで目が離せない。もちろん例のシーンも克明に書き記した一品」

長門「ゆきりんはご意見、感想はいつでも受け付けている」

キョン「とりあえず持ってきた」

キョン「長門×一姫やキョン子×一姫も人気があるな」

キョン「リクエストもあるなら言ってみろ。ファンサービスに応えるのが俺のモットーだ」

キョン「まぁなんだ…言いたいことがあるならペンネーム J.スミスまでよろしくだ」

古泉「…」


ハルヒ「古泉君!」

古泉「!」

古泉「涼宮さん…」

ハルヒ「いきなりパロものはハードルが高いと思うわ」

ドシャ

ハルヒ「だからシンプルにSOS団での話のものを持ってきたわ」

ハルヒ「キョン×古泉ならこれがイチオシ!森さんも絶賛だったわ」

古泉「…」

ハルヒ「これなんかすっごく頑張っちゃって…」

ハルヒ「あ、古泉×キョンもあるから安心して」

キョン「ないない」

ハルヒ「うっさいバカキョン」

ハルヒ「あ、看護されるネタってのもありね」

キョン「やらんぞ、断じて」

古泉「…」

長門「…もう一度合作をする?」

みくる「ゆきりん先生!」

古泉「…」

キョン「ん?…古泉?」

古泉「」

眠りに落ちて僕は祈った
stay with the world

…………………………

ハルヒ「はやくくっつけなさいよ!」

キョン「貴重なイチャイチャタイムだもう少しページを割く」

ハルヒ「もやもやするわね~」


みくる「ゆきりん先生!」

長門「…なかなか良い」

みくる「ありがとうございます」

長門「…こちらこそ」

………………………………………

長門「できた」

キョン「いい出来だな」

ハルヒ「当たり前じゃない5人の合同雑誌よ」

みくる「おからだは大丈夫ですか?」

古泉「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

キョン「で、お前も書いた訳だがジャンルはなんだ?」

古泉「それは読んでからのお楽しみです」

ハルヒ「じゃあ売り込みに早速行くわよ」

長門「かなりの売れ行き」

古泉「それは良かったです」

長門「これが売り上げ金 涼宮ハルヒがあなたに渡すようにと」

古泉「なぜ僕に?」

長門「入院費」

古泉「…なるほど。ありがたく頂戴いたします」

古泉「ずっと気になっていましたが」

長門「…?」

古泉「売り上げはいったいどれくらいだったんでしょうか?」




長門「…SELECT?」



長門「終わりんご」

キョン「……せれくと??」

長門「!?」

古泉「……ちょっとした愚かさも含めて愛しくなりませんか?」






長門「secret?」

長門「終わりんご」

最後のミスは許して
おやすみなさい

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