ライナー「不思議な日記」(24)
元ネタがあります。投下中は気づいてもスルーしてください
ある日、俺は道端で中が真っ白な日記を拾った。
その頃、女子たちの間で日記が流行っていたらしく、クリスタもその一人だった。
クリスタを意識していた俺は、なんとかクリスタとの共通の話題を作るために、その真っ白な日記を自分のものにした。
初めこそは、盗みをしたような罪悪感を感じた。
だが、落とし主がいつ拾いに来るか分からない状況で、あのまま放置されて雨に濡れて誰の使い物にもならないよりかは、マシかと思い、気付けば、そんな罪悪感を忘れていた。
初めの日の日記の内容は、こうだ。
849年4月4日
今日の主な訓練内容は、立体機動と格闘術。エレンとアニと格闘術の訓練をしたが、相変わらず俺とエレンはアニには敵わない。アニ曰く 、まだまだ俺たちは未熟者だと(笑)
そんな感じで日記を続け、クリスタとも日記のことで、よく会話を交わした。
だが、そのせいでユミルの奴に目をつけられてクリスタと話す機会は、さほど多くはなかった。
俺は訓練兵団に入団してから気付けば、みんなの中心にいて、みんなの兄貴となっていた。
同期だけではなく、教官たちからも男子のリーダー、また訓練兵団のリーダーとして扱われることも暫しあった。
俺は初めこそ、気にすることもなかったが、仲間の死を何度も経験していくうちに、仲間や教官が俺に投げかける責任というものが、ひどく精神を削った。
このとき、俺は兵士が体より先に心がやられるということに気づいた。
だが、こんな俺を癒してくれたのがクリスタだった。
たとえ、1日に何度かしか会話を交わせないが、俺にはそれでも充分だった。
俺は兵士として、しっかり責任感というものを持ち続けることができた。
クリスタのおかげだ。
そして、ある日のことだった。
俺の日記に、内容に対する返事が書き込まれていた。
最初は同期の奴の悪ふざけかと思って日記の場所を変えたりしたが、日記には返事が書かれていた。
初めは、気味が悪いと思った。
だが、日が経つごとに実は、この日記は不思議な日記で、それが交換日記のようなものに思えて、気味が悪いというよりは、面白いと思うようになった。
質問を重ねていくうちに、親しくなった。
名前は教えてくれなかったが、性別は男で、共通点が多く、身長体重もほとんど変わらなかった。
だが、それも束の間の楽しみだった。
ベルトルトが日記を燃やしてしまった。
俺はひどく憤慨した。たとえ、同郷の友としても許せなかった。
俺はベルトルトになぜ燃やしてしまったのかと問い詰めたが、ベルトルトは泣くばかりだった。
君は兵士じゃない、戦士だ・・・と。
俺はベルトルトの言っていることが理解できなかった。
恐らくベルトルトは、兵士として心を削られ、おかしくなってしまったのだろう。
そう思い、同郷の友として、ベルトルトの言うことに耳を傾け、理解したことを示した。
すると、あいつは急に笑顔になり、きっと故郷に帰ろう!!・・・と俺に強く迫った。
当たり前だ・・・と俺は強く、その言葉に答えた。
だが、あいつを失うことは辛かった。
あいつは、俺のことを何もかも理解してくれた。
俺はまた隠れて日記を始めた。
あの日記が不思議な日記ではなく、新しい日記でもあいつが現れることを祈った。
そして、書き込んだ3日後に返事が来た。
俺は、再び立ち直れた。
もはや、そのときクリスタは自分にとって異性の可愛い相手というだけで、心の支えになっていたのはあいつだった。
だが、それもまた、束の間だった。
急にあいつの態度が豹変した。
お前が憎い、お前が憎い・・・と。
俺は、なぜだ・・・俺が何をしたんだ・・・とあいつの怒りに触らぬよう聞いた。
殺してやる・・・震えた字で書いてあった。
俺は、翌日、自殺した。
ベルトルトが泣いていた。
アニも泣いていた。
俺は、一体何者だったのだろうか?
終わり
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