パチュリーが文通にハマる話 (125)

美鈴「パチュリー様~。お届けものですよ。」

パチェ「ありがと。そこに置いといてくれる?」

美鈴「はい。これって外界から届いた荷物みたいですね。また、Amazonとかやつですか?」

パチェ「そうよ。欲しい本を見つけたの。」

美鈴「ふぅ~ん。私も何か読みましょうかね。ただ門の前に立ってるだけだと暇で暇で……」


パチェ「眠気覚ましにっていうなら、堅い文字ばかりの重いのよりも柔かな文体で読み込み易いのがいいと思うわ。
ま、今度は読書に集中し過ぎて妖精やら泥棒魔翌理沙の侵入に気付かないなんてことになりそうだけどね……」

美鈴「ご心配無く!起きてさえいれば、近付く気配らを見逃すことはありません。」

パチェ「そぉ。なら、頑張りなさい。私も、それにメイド長だってあなたに期待してるんだから……」


美鈴「はいっ!任せてください!」



パチェ「……元気があっていいわね……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391770715

注意
東方キャラを利用してますが、世界観は現在社会の要素も含まれてます
例 パソコン、ツイッター、Amazon運搬システムなど……

また、かなりローペースで投稿していきます

パチェ「………」

パサッ


小悪魔「パチュリー様……」

パチェ「ん?何か用?」

小悪魔「そのお届けものって、やっぱりあれですよね……」

パチェ「そうよ。また“彼”から日記が届いたみたいね。」

小悪魔「……左様ですか……」



パチェ「…………」パサッパサッ


小悪魔「?」

小悪魔「……あの、パチュリー様。」

パチェ「何かしら?」パサッパサッ

小悪魔「お読みになられないんですか?日記……。
先ほどから全く関係のない書物を読み続けていらっしゃいますけど……」


パチェ「そうね。貴方がどこかに行って、私1人になってからゆっくり読もうかしらね。」

小悪魔「えっ!?」

パチェ「……そういうことよ。この日記、出来れば1人の時に読みたいの。どうしてだか分かってくれるわよね?」

小悪魔「……はい。それは分かります。交換日記ですし、関係の無い第三者が内容を知るのは御法度かと……」


パチェ「なら、いいわ。何か面白い情報が載ってたら教えてあげるから……」

小悪魔「は、はぁ……。」

小悪魔(パチュリー様が外界の人間と文通という形の交換日記を始められて早1年……)

小悪魔(1週間に1度、お互いに日記を交換し合っては、互いに相手の文章を読んで、それに対しての感想や最近の自分の体験、感動したことなどを書き込んでまたお互いに日記を交換し合う。)


小悪魔(ロジカルで原始的なやり取り。手間も掛かれば時間も費やす。)


小悪魔(しかも、パチュリー様はまだお互いに顔すら知らない相手てと行っていらっしゃる。)

小悪魔(何故パチュリー様はこのような行為にハマっていらっしゃるのだろうか?
普段のパチュリー様なら、このような面倒で低俗な“遊び”にハマることなど……)





妖精A「パチュリー様って、最近文通で交換日記にハマってるらしいよ。」

妖精B「へぇ~。お相手はどんな人なの?」

妖精A「さぁ?まだお互いに顔すら分からないんだって。
ただ、相手は男性だって。日記に書いてたって。」


妖精B「えー?でも、お互いに顔すら知らないんじゃ、本当に相手の人が男かどうかも分からないんじゃない?」

妖精A「そうだよねー。嘘かもしれないよねー。」

妖精B「というより、顔も知らない相手と交換日記して、何が楽しいんだろうね?しかも1週間ごとにだよ。
フラン様のやってるツイッターやネット板の方が早くて便利だし、沢山の人と話せて楽しそうなのにね。」

パチェ「………」


パチェ「さて、そろそろ読もうかしら。」


パサッ


『拝啓 ノーレッジ様へ
最近、寒い日が続きますね。私の住んでいる街でもついに雪が降りつもりました。
近所に住む子供達がはしゃいで、地面広がる雪をかき集めては互いにそれを投げ合っていました。
とても楽しそうでした。私も是非それらの遊びに加わりたかったです。
しかし、大人の男性が子供達の遊んでいる所に入ってしまっては、彼らの遊び場をとってしまいかねないですよね。
だから大人は大人らしく、じっと静かに雪を楽しむことにしました。』


パチェ「………」

パサッ

『これだけ雪が降って気温も下がっているのに、川の水は全く凍っていませんでした。
この川が凍るには後どれほど寒くなる必要があるのでしょうね……』

パチェ「流水を凍らすのは難しいわね。気温を低くするよりも、動きを止めることの方が先……」

『川が凍れば、凍った床が川に流されてベルトコンベアの様になるのでしょうかね?
その上を、また子供達が面白がって乗っては遊ぶのでしょうか。
でも、もしそうなる様ならこればっかりは危いのでちゃんと子供達を止めないといけませんね。
いつ割れるか分からない川の氷の上に子供達が乗るのは危険ですし。
こういう危ない遊びは子供のすることではない!私達大人の遊びなんだ!って。

私は乗りたいです。移動する氷の上に乗るのって面白そうじゃないですか?』


パチェ「……ふふ。まぁね。誰でも好奇心は突かれるものよね。
でも、それで氷が割れて、冬の川の中に落ちるようじゃ、ただの馬鹿じゃないかしら?

でも、そういう馬鹿な遊びもたまにはいいのかもね。」

パチェ「馬鹿な遊び……か。
最近、また図書館から出なくなったから、私には無縁だわ。」



パチェ「……そうね。いいわよね。あなたは。
毎日毎日面白いネタを思い付いて。
私は毎回書くネタに出会うところでつまずいててるっていうのに……」


パチェ「……さて、今回は一体どんなことを書けばいいのかしらね。」




小悪魔「パチュリー様、お茶をお持ちしました。」

パチェ「小悪魔。ちょうどいいところに来たわね。」

小悪魔「?」

パチェ「ちょっと図書館の留守の頼まれてくれないかしら?」

小悪魔「え?あ、はい。分かりました。」

パチェ「確か、湖の方でも雪降らしの妖精らが遊び回ってたわよね?」

小悪魔「は?ま、まぁ……毎年この時期では、よく見かけますよね……」


パチェ「ちょっと行ってくるわ。あいつらに話があるから………」

小悪魔「……?」



~続く~

ちょっと審議

個人的には文通にハマるロマンチックなパチュリー様を描きたかったんだけど
相手の男性の文章は必要かな?
まずこの堅い文章書くのだけで無駄に労力消費する上、書いて恥ずかしい
自分ならパチュリー様にどんな文章贈るかを想像して書いてるから

でも、文通にハマるパチュリー様を演出するなら、相手の文章はむしろ描写しない方が面白いかも
パチュリー様の言動とかで大体の内容を描くぐらいにして、相手の書いてる内容を具体的には本文であまり書かない様にして、相手がどんな文章を書いてるかはパチュリー様のみが知る……にした方が面白いかな

その方が、あの恥ずかしい文章書かずにすむから僕は楽だし

【ep2】



咲夜「パチュリー様。咲夜、参りました。」

パチェ「よく来てくれたわ。こんな朝早くに忙しくはなかったかしら?」

咲夜「朝御飯の仕込みは済ませてきたので問題無いです。
それで、ご用件というのは?」

パチェ「咲夜。あなたは朝の香りって分かるかしら?」

咲夜「朝の香り?」

パチェ「ええ。日が上り始める丁度今ぐらいの時間に、独特の香りがするらしいの。
植物達が一斉に酸素を吐き始めて、それが何かの匂いを発するのかしら?」

咲夜「はぁ……。確かに朝窓を開けた瞬間に変わった匂いを感じたりはしますけど……。
それがどうかなさいました?」

パチェ「いえ。ただ、凄く心が落ち着くらしいの。その香りを嗅ぐと……」

咲夜「心が落ち着く……。
そこまではいきませんけど、あの匂いがすると確かに朝の業務により励める様な気は致します。
あの匂いを嗅がないと……」

パチェ「新しい朝が来たって実感が湧かない?」

咲夜「はい。そんな感じになりますね。」

パチェ「そう。朝の香り……か。やっぱり図書館の中では感じられないものなのよね。」

咲夜「そうですね。よろしければ、庭に出てみてはどうです?
そろそろ日も上がった様ですし、その朝の香りを感じるにはちょうど良いのではないでしょうか?」


パチェ「………そうね。体調が良さそうなら、そうしてみるわ。」

小悪魔「う~ん……むにゃむにゃ……」


咲夜「小悪魔さん。おはようございます。」

小悪魔「あ、メイド長さん。おはよう……?
あ、今ひょっとして朝なんですか?」

咲夜「ええ。そうですけど……小悪魔さんは今起きたのですか?」

小悪魔「いえ、ずっと書き物をしてました。図書館の奥、日の光が届かない場所に居たので、今が朝なのか夜なのかが分からなくて……」

咲夜「そうですか。確かに、先ほどパチュリー様がいらした場所も窓らしきものが何もない薄暗い場所でした。」

小悪魔「パチュリー様なんてもう2週間もあそこに籠もられてますし、食事も不定期に摂られていますからね。
私もそれに合わせて過ごしてましたから……」


咲夜「……あら?
でもパチュリー様は今が朝だと分かってらした様でしたが……」

小悪魔「あ。……それは……」

パチェ「……もうすぐ6時か……。
人間達が起きて、1日の業務に備え始める時間帯。そして、世界が回り始める……か。」


パサッ

『今日も電車に乗る時間が迫っていますね。電車の中では今日もまた、大勢の知らない人達に囲まれての満員電車に挑むこととなるでしょう。
まるで仕事場に行くまでの間も、社会から試練を与えられている様な気持ちです。』


パチェ「……可哀想ね。大勢の本に囲まれるっていうのなら、幸せな気分になれたでしょうに……」


『まだ太陽が地平線に隠れている肌寒い朝の道を駅に向かって歩きました。1日の中で最大の戦場となる通勤電車に備え、心を引き締めながらゆっくり道を歩いていました。
そうすると、毎朝定番のあの香りがしてきました。朝のあの香りが……。』



パチェ「朝の香り……」


『毎朝、この心地のよい匂いには癒されています。まぁ、この後の満員電車を考えると、あまり余裕を持って感じることは出来ませんが。
ただ、この匂いを感じた時、私は新しい朝を出迎えたことを初めて実感できるのだと思います。そして、それは同時に私が新しい1日を歩き始めたことも実感させてくれます。
ノーレッジさんはどうですか?毎日の新しい朝の始まりを実感する決まった物とかは何かありませんか?』


パチェ「朝……ね。
悪いけど、私にとって朝になるってことは心底興味のない出来事なの。そして、朝は私にとって1日の始まりじゃないわ。
むしろ、レミィと付き合いだしてからは夜が“始まり”って感じになったわ。その感覚から言えば、朝は1日の“終わり”ってところね。」




ピピッ ピピッ ピピッ


パチェ「……6時、か。朝の始まる時間、そして人間達にとっては1日の始まり……」

カチャッ

パチェ「………私にとっての1日の終わり………」

咲夜「新しい時計を所持してらしたのですか?」

小悪魔「はい。パチュリー様は最近、手のひらに乗る程の小型の時計をお近くに置いてらっしゃるんです。可愛い柄が施されたオシャレなのを……。
後、その時計は好きな時刻に音を流すことが出来るみたいなんです。」

咲夜「音を鳴らす……目覚まし時計の類いかしら?最近、人里でもよく扱われてるそうです。」

小悪魔「目覚まし……?」

咲夜「朝の決められた時に起きれるように、時間になったら音を鳴らして持ち主を起こしてくれるんです。
人間には自分で睡眠時間を制御できない者が多くいて、特に日が上らない時間帯に起きるのを不得意としてます。そんな者達の為に開発された時計だそうです。」

小悪魔「なるほど……。でもそんな人間の道具を、何故パチュリー様は使ってらっしゃるのでしょうか?」


咲夜「パチュリー様は読書などで時間が過ぎるのをお忘れになることが多いと聞きますから。
そういった時に、お使いになられてるのでは?」


小悪魔「パチュリー様が時間を気にするなんて考えられません。何よりも読書を優先してますし……。
そもそも、人間の道具を使用すること自体、何か変です……」


咲夜「……確かに。今朝もパチュリー様らしからぬことを言っておられましたし……」

小悪魔「え!?な、何なんですか!?それ……」

レミリア「……ん?あら、パチェ。」

霊夢「ん?」

パチェ「レミィ……それに博麗の巫女。」

レミリア「珍しいわね。こんな朝早くに図書館から出てくるなんて……」

パチェ「……私も、日が上ってる時間帯に起きてる貴方と出会うとは思わなかったわ。
寝坊助は治ったみたいね?」

レミィ「ええ。最近は毎朝ちゃんと朝御飯を食べれてるわ。ついこの前までは、朝起きても食欲すら湧かないぐらい体調が優れないことが大半だったけど。」


霊夢「あんた、吸血鬼でしょ?妖怪なら妖怪らしく、夜起きて朝寝るのスタンスがあるだろうに……」

レミリア「人間達は“朝起きて夜寝る”を実行してるのでしょ?人里の者達も、貴方や咲夜も。
人間達が1日を活動をしている間、私1人が眠り就いてるだなんて、色々癪に障るのよ。」


パチェ「そうよね。人間である咲夜も、貴方に合わせて夜中も働かせ過ぎるのも可哀想よね。いくら彼女に時を操る力があるからって……」

霊夢「……まぁ、人間に合わせてくれるって言うんなら、私からは何も文句ないけど……」


パチュリー「でも、レミィが起きてるから館中の窓が閉め切られてるみたいね。せっかく朝なのに、夜みたいに暗くなってるわ。」

レミリア「ずーっとは起きやしないわ。さすがに昼ごろになると疲れが酷くなってくるから……」

霊夢「やっぱり無理しちゃってるんじゃない。吸血鬼が朝起きるなんて、人里ではさぞかしネタにされてるわね。」

レミリア「……どう言われようと、私は朝起きて夜寝る生活を会得してみせるわよ。人間達と同じように……」

霊夢「ふーん。まぁ、頑張るってなら、それはそれでいいけど。」

レミリア「とりあえず、せっかく朝起きてられる様になったことだし、今日はその記念に食事会を開くことになってるの。」

パチェ「こんな朝早くに食事会……」

霊夢「いいじゃない。朝早くのパーティってのも新鮮だし……」

パチェ「……ああ。だから、巫女がここにいるのね。貴方は相変わらずタダで飲み食いな事に引き寄せられて……」

霊夢「育ち盛りの女の子なんでね♪」

パチェ「可愛いくもない可愛い顔で誤魔化せるつまり?」


霊夢「………そ、そんなアンタだって、図書館を抜けて朝早くにどこに行くのよ?」

パチェ「え?……あー……」

レミリア「あら?一緒に朝食会をするつもりだったんではないかったの?」

パチェ「いや、それは別にいいんだけど。先にちょっと外に出てくるわ……」

レミリア「外?外出するってこと?」

パチェ「ええ。まぁ、庭をちょっと回ってくるわ。」

レミリア「貴方が?朝早くにお庭を散歩?」

パチェ「……単なる気紛れよ。本ばかり読んでたら、肩どころか足も鈍ってしまってね。」

レミリア「え……?」

レミリア「パチェが自分の健康を気にしてる……?」

霊夢「何言ってゎの?魔法使いだからって、健康を怠る馬鹿はそうそう居ないわよ。」

レミリア「私の大親友は、そのそうそう居ない馬鹿だったはずなのよ。
それに気紛れで外出するなんて、もう何十年も見てないわ。」


霊夢「そりゃ、何か心変わりでもしたんじゃない?引きこもり気味の自分に嫌気が差したとか……」

レミリア「もしそうだとしても、頑固なあの娘を一体何が心変わりさせられるって言うかしら?」

霊夢「う~ん……とりあえず鏡でも見れば分かるんじゃない?」

レミリア「……え?」

霊夢「あんただって、郷に来たときよりも大分丸くなったんだし、あの魔法使いだって色々変わるわよ。」


レミリア「……そういうものなのかしら………」

ペシャッ


パチェ「………」


美鈴「パ、パチュリー様!?」

妖精A「パ、パチュリー様!?」

氷妖精「あ、魔法使いだ!おはよー!」

妖精B(チルノさん!早く謝って!パチュリーのお顔にぶつけたことを早く……)

チルノ「えー……?でも、あたい達が雪投げしてる所に入ってきたのはあっちじゃん。」

冬妖精「あらら……可愛らしい魔法使いさんね。吸血鬼さん達の知り合いかしら?」



美鈴「パ、パチュリー様……これは……」

パチェ「……朝から、妖精達と一緒になって、貴方は何してるの……?」

美鈴「……雪が積もってて、暇潰しに雪だるま作ってたら、妖精達に邪魔されて、気が付いたら……」



パチェ「妖精……?ああ……妖精ごときが私の顔に雪玉を当てて……」


冬妖精「!!凄い魔力………」

妖精C「パチュリー様が……怒ってる……!?」

妖精D「チルノちゃん!これヤバいよ!」

氷妖精「なんだ?あたいに勝負を挑む気か?
先に言っとくけど、あたいは雪属性最強、真冬四天王、冬将軍、札幌1番(雪に関連する強そうな名詞を並べてみた)だからね!!」


美鈴「パチュリー様!雪合戦ですから!雪で!雪でやりましょうよ!
ほら!炎魔法とか使っちゃったら、せっかくの雪景色が溶けちゃいますから……」




パチェ「そうね……」

美鈴「……へ?」

パチェ「私は私なりの、“馬鹿な遊び”で楽しませて貰うわ………」

・・・・・・


レミリア「それで?妖精達はどうなったの?」

美鈴「……吹雪の中、楽しそうにはしゃいでました………ックチュ!!
わ、私は……身体を冷やし過ぎて……風邪気味……」

咲夜「仕事中に雪合戦なんてしているからです。」

レミリア「ふーん。パチェがね……妖精達と雪合戦して、しかも本気になって魔法を使い出すなんて……」

霊夢「何かおかしなことなの?アイツ、結構やられたらやり返す系じゃない。そりゃ、売られた喧嘩は……」

レミリア「普段のパチェなら妖精達もろとも吹き飛ばしておしまい、なはずよ。わざわざ雪合戦に付き合うだなんて……」

霊夢「ああ……確かに……。
んで?そのヒステリックな引きこもりさんは今どこにいるの?」


咲夜「久々に身体を動かし過ぎたらしく、疲れて部屋で休んでらっしゃいます。
食事は、温かいのを部屋に持ってきてくれたらいいと……」

霊夢「あらら。相変わらず身体弱いのね。」

美鈴「きょ、今日は頑張った方ですよ……。前なんか、湖に散歩に行くとか言って森の途中で倒れ込んでました……から……ックチュ!!……ブルブル」


霊夢「脆い紅魔館の頭脳さんなことね。
ま、それなら早く食べましょうよ。お腹も空いてきたし……」


レミリア「………ふふっ。パチェが心変わりね……」

美鈴「ックチュン………あの、私は………」

レミリア「ん?ああ、……そうね。咲夜、彼女の始末、貴方に任せるわ。」

咲夜「はい。門番をサボっての雪遊び、その上に風邪まで引いた始末です。当然、食事は抜きで部屋に謹慎……」


美鈴「ックチュ!!……ックチュ!!
しゃ、しゃぐやざん……うぅっ……」


咲夜「……と、とにかく身体が温まるものを食べて、早く身体を元に戻してください!反省はそれからです!」

美鈴「!!……あ、ありがとうございま……ックチュ!!」

レミリア「……あら、貴方も意外と優しくなったわね?咲夜……」

咲夜「……別にそのようなことは……」

パチェ「………」


小悪魔「もう……無理をなさるから……」

パチェ「……疲れるわね。妖精達に……付き合ってたら……」

小悪魔「……」

パチェ「ホント、やっぱり馬鹿なことなんかしない方がいいのね。」

小悪魔「……」

パチェ「私は……私らしく……」


小悪魔「………パチュリー様……」

パチェ「……?」

小悪魔「パチュリー様……最近……変ですよ……?」


コンコン

咲夜「失礼します。」

小悪魔「!!ど、どうぞ!」

咲夜「パチュリー様。お食事は用意致しましたが、その前にお風呂で身体を温めたられてはいかがでしょうか?」

パチェ「お風呂……?」

小悪魔「パチュリー様。今日は身体をかなり冷やされてましたし………」

パチェ「分かってるわ。今すぐ行くわ。」

咲夜「はい。では……」


パチェ「小悪魔……。」

小悪魔「はい?どうかされました?」

パチェ「私の寝室に箱が入った赤い紙袋が棚の上にあるの。
取ってきて貰えるかしら?」

小悪魔「はい。……え?でもそれが入浴に何か関係あるのでしょうか?」

パチェ「ええ……私が配合した入浴剤が入ってるの。」



小悪魔「にゅ、入浴……剤?」



~続く~

【ep2.5】


小悪魔「パチュリー様、紙袋をお持ちしました。」

パチェ「ありがとう。よかったら、貴方も一緒に入っていきなさい。」

小悪魔「えっ!?一緒にですか!?」

パチェ「自作の入浴剤の出来具合を調べたいのだから、実験体は多く居た方がいいのよ。」

小悪魔「は、はぁ……」




フラン「!」

パチェ「え?フラン?」

小悪魔「フ、フラン様!?何故ここに!?」

フラン「え?パチュリーが……なんでここに?」

小悪魔「パ、パチュリー様!!早く!早く魔法を……!!」


パチェ「静かになさい。今のフランは正常よ。特に狂気を纏ってないから、暴れ出すこともないわ。」

小悪魔「えー……でも……」


フラン「なんでパチュリーが来たの?美鈴は?」

パチェ「何?」

フラン「美鈴と……一緒にお風呂に入る約束してて、だからここで待ってるの。」

パチェ「……」

小悪魔「パ、パチュリー様?どうします……?」

パチェ「……フラン。」

フラン「……何よ…?」

パチェ「今から私達がお風呂に入るの。美鈴は来ないわ。」

フラン「嘘っ!!だって美鈴が……」

パチェ「彼女は今風邪なの。お風呂には入れやしないわ。諦めなさい。」

フラン「………」

咲夜「お風呂に行く!?何を考えてるの!病人は大人しくベッドで休んでなさい!!」

美鈴「だ、だって……妹様と……約束……」


レミリア「フランと……?」



妖精F「お嬢様。妹様がお風呂場に向かわれたとのことです。」

咲夜「何ですって!?今お風呂にはパチュリー様がいらっしゃるのに……」

霊夢「ムシャムシャ……何?何か問題なの?」

レミリア「フランはパチェが苦手なのよ。パチェは、あの娘には特に厳しいから……」

咲夜「どうしましょうか?せっかくパチュリー様がお風呂に向かわれたのに……」

霊夢「……ん?“せっかく”ってどういう意味さ?」


レミリア「……パチェは大のお風呂嫌いなの。というより、お風呂を面倒がるタイプ……。
お風呂に入ってる間は本が濡れてしまうから読書は出来ないでしょ?彼女はそれが気に入らないらしくて……」

咲夜「はい。ですが先ほどのパチュリー様は、入浴するのにかなり好意的でしたけど……」


レミリア「……ふーん。やっぱり、心変わりなのかしら?」

咲夜「後、自作の入浴剤を使いたいともおっしゃられてました。」

レミリア「……入浴剤?彼女が自作したの?」


霊夢「……お風呂嫌いだった魔法使いがいきなり入浴剤を自前してのノリノリ入浴……。
これって……異変?」

フラン「……え?今、何て……」


パチェ「私達と一緒に入ってかない?どうせ美鈴は当分お風呂に入れないのだから。」

小悪魔「パチュリー様……それは……その……」


フラン「……やだ。」

パチェ「どうして?」

フラン「……理由なんかないけど……嫌だ……」



小悪魔(やっぱり。フラン様はパチュリー様のことをまだ嫌ってらっしゃるのね……。
パチュリー様によって部屋に閉じ込められてたから……)


パチェ「……フラン。貴方って結構なお風呂好きだそうね?」

フラン「好きだよ。美鈴と一緒に何回も入ってる。楽しいから……」

パチェ「これ、私が作った入浴剤なんだけど。」


フラン「入浴剤……?」

パチェ「“柚桜”。かなりの力作なの。後は実用して最終チェックをしたいの。
被験体は多い方がいいから、一緒に試してみてくれない?」


フラン「……パチュリー?」

パチェ「何?」

フラン「なんかいつもと雰囲気が違う……」

小悪魔「……」


パチェ「……私が研究成果を喜んでいる時は、いつもこんな感じよ。今回も、この入浴剤はきっと素晴らしい出来のはずだから。」


フラン「………。それ、楽しいの?」

パチェ「そうね。多分貴方も感動するんじゃないかしら?」



フラン「………ちょ、ちょっとだけなら……」

パチェ「そっ。なら、一緒に来なさい。」


小悪魔(嘘っ……。フラン様がパチュリー様と一緒に入浴することになるなんて……)

フラン「そこの……羽根の生えたの。」

小悪魔「え?……あ、はい。私ですか?」

フラン「……脱がせて。」

小悪魔「へ?」

フラン「服、脱がせて。お風呂に入るんだから、裸にならないと……」

パチェ「貴方、まだ服を自分で脱げないの?」

フラン「………。自分で脱ごうとしても、気が付いたら服がボロボロに破けてるの……」

小悪魔「ボ、ボロボロ!?」

パチェ「仕方ないわね。小悪魔、脱がしてあげなさい。」

小悪魔「ええっ!?で、でも……」

パチェ「大丈夫よ。貴方にもしものことがあっても、すぐ再生させてあげるから……」

小悪魔「そ、そんな死亡が前提だなんて……」


フラン「ね~。早く~……」


小悪魔「……分かりました。」


フラン「……。そういえば、パチュリーはお風呂が嫌いって美鈴が言ってたんだけど……」

小悪魔「え?それは……」


パチェ「自分の身体を清めるのに、わざわざ何十分も水に浸かるだなんて時間がもったいないでしょ。」

フラン「ええ~。でも、お風呂は身体だけじゃなくて、心の疲れとかも癒してくれるんだよ?」

パチェ「心の疲れ……ね。」

小悪魔「……」



パチェ「……?小悪魔?」

小悪魔「は、はい。何ですか?」

パチェ「……この服、どうやって脱ぐのだったかしら?」

小悪魔「……え?」

フラン「え?パ、パチュリー?自分の服の脱ぎ方が分からないの?」

パチュリー「分からないというより忘れたのよ。
………最後に服を脱いだの、多分数年……いや、数十年も前だし……」

小悪魔「え……?ええっ!?」

フラン「え?でも、パチュリーって別に臭くないよね。髪の毛とか服とか……」


パチュリー「当たり前よ。毎日浄めの炎とかの浄化魔法を浴びるのだから……。」

フラン「え~。でも……ちょっと……ね。」

パチュリー「………うるさい。清潔なのにはかわりないじゃない。」


フラン「……パチュリー?ひょっとして、ちょっと恥ずかしいの?」

パチェ「………」


小悪魔「……パチュリー様は偉大な魔法使い様ですし、お、お風呂なんか入らなくたって……」

小悪魔「ところで、パチュリー様。」

パチェ「何?」

小悪魔「先ほど、入浴剤について柚と桜……と?」


パチェ「ああ、そうね。そういうことよ。」

小悪魔「……やはり、あの日記に書かれたことですね。」


パチェ「……まぁ、見てなさい。」


フラン「……で?パチュリー?どうするの?」


パチェ「私の作った入浴剤。ただお風呂の湯の色や匂いを変えるだけのものなんかじゃないわ。
小悪魔、この瓶にお湯を入れて。」

小悪魔「え?この……ピンク色の液体が入ってるヤツですか?」

フラン「ピンク?ピンク色のバラ?チューリップ?」


パチェ「いいえ、“桜”よ。」


小悪魔「はい……分かりました。」



パシャン



ボワワッ!!

小悪魔「!?」
フラン「!!」

小悪魔「は、発煙してますよ!?パチュリー様!!ピンクの煙がぁ!!?」

フラン「え?何これ?失敗なの?」

パチェ「……いい感じね。」

  ヒラリ

小悪魔「ん?何かな?これ……」


ヒラリ ヒラリ ヒラリ


パチェ「人間が、見るだけで心が癒されるものよ。」

フラン「これ……これって、ひょっとして桜の花びら?」

小悪魔「……凄い。本物なんですか?」

パチェ「いいえ。形こそ似てるけど、ただの紛い物よ。
1時間も経てば、ただのピンク色の粉に戻るわ。だから、後で水で洗い流せばすぐに片付けられる。」



小悪魔「あれ?ピンク色の発煙の形って、ひょっとして……」

パチェ「“桜の木”みたいな形をしてるでしょ?屋内にある桜がまるで花びら旋風を巻き起こしてるかのように……」

小悪魔「……凄い……凄いですパチュリー様!!!」

パチェ「ええ。屋内で、季節問わずに桜見湯が出来る……。
でも、それだけじゃないわよ。私が研究に最も力を注いだのは……」



フラン「……いい香り……ほんわかしてる……甘いのと……ちょっと酸っぱいのが……」


小悪魔「……これは、桜の香りと……ひょっとして、柚?」

パチェ「ええ。桜の香りと柚湯の香り。絶妙な組合せだと思わない?」

小悪魔「はい。ですけど、柚の匂いってもっと強かった様な……」

パチェ「桜のほんのりとした香りの背景さに比べて、自己主張の強い柚の匂いをどの程度まで押さえこむのかが最も難しかった。
どちらの匂いもここまでちゃんと感じられる様に出来るのはそう容易いことじゃない。」


小悪魔「……パチュリー様。やはり、あの日記を読んだ時から……?」

パチェ「外界には、そのバランスを上手く把握してるプロがいるそうね……。」


『先日、短期休暇の中でとある温泉宿に行きました。』

『少し遅い桜の開花の下で入った温泉……』

『……空を桜の花びら舞う、湯に浮かぶ桜の花びらの両方が私の心を癒しに掛かってくれました。』

『……この、桜の香りとそれを消さない程ではあるものの、はっきりと感じとれる柚の香り………』

『……最近は休暇がとれても、遠距離を旅行するのにはとても余裕がありません。以前お話した宿に行くこともままなりませんね。
もし、あの温泉を自宅のお風呂場で体験できたらな……と、毎日考えています。ホント、傲慢な欲を書き散らして申し訳ありません。』

小悪魔「凄いですね、パチュリー様。」

パチェ「私は魔法使いだから。不可能な願望ほど可能にしてみたくなるものなのよ。」


小悪魔「この入浴剤、ひょっとして、あの日記の相手に……」

パチェ「言い出したのは彼の方だから。私の研究心に火を点けた責任は最後まで取ってもらうわよ。
私の、偉大な魔法使いの力を見せつけてやるわ。」


小悪魔「……あ、何だかパチュリー様らしくなってきましたね。」

パチェ「何よ?どういう意味?」

小悪魔「人間にご自身の力を見せつけ、格の違いを思い知らさせるんですよね?」


パチェ「……まぁ、そんなところよ。」




フラン「パチュリー。」

パチェ「何かしら?フラン。」

フラン「これ……あたしにも頂戴。今度、美鈴や、他の皆とお風呂に行く時に使いたいの。」


パチェ「いいわよ。私の部屋に何個かあるから、後で届けさせるわ。」

フラン「!!パチュリー、ありがとう!!」


小悪魔「……フラン様がこんな笑顔になられるなんて……」


パチェ「………はぁ。なんかホッとしたら眠くなってきたわ。
小悪魔、先に出てるから、フランをよろしくね。」

小悪魔「はい。分かりました。……って、ええっ!?」


フラン「羽根の生えたの!身体洗いっこしようよ!!この桜湯で!」

小悪魔「洗いっこ!?パ、パチュリー様ぁ~!!」

パチェ「……出来た。この入浴剤……」


パチェ「………」

パチェ「魔法使いの偉大な力を見せつける……か。」



パチェ「………。
……久しぶりにお風呂に入りました……。そしたら、久々過ぎて、服の脱ぎ方を忘れていました………。」


パチェ「………」

パチェ「!!」


パチェ「ダ、ダメダメ!!こんなの書いたら、偉大な魔法使いである私が不潔って思われかねないわ!!
……そうよ。こんなの書く必要はないわ。」


パチェ「……それに、これからはちゃんとお風呂に入るんだから………。」


パチェ「……つ、月に一度くらい……で。」



パチェ「………。先日、貴方が送ってくれた可愛らしい時計。私としては、特に時間に縛られる様な生活を送っていないから、あまり必要ではなかったのだけれど………」


パチェ「…………。
なんか嫌味な文章ね。本心を書いたつもりなのに。
だって別に時計なんて欲しくなかったし……。まぁ、ある以上はあったら便利なのだけれど………」


パチェ「……ここもカット。素直にお礼だけを書いておこう。」


パチェ「……そのお返しというわけではありませんが、よかったら使ってみてください。私の自信作を。
貴方の自宅のお風呂場が、きっと最高の雰囲気で貴方を癒しに掛かることでしょう。
………そして、偉大なる魔法使いの力を……味わ……」


パチェ「……こんな付け足しは要らないわね。」

パチェ「……そして、辛いこともあるかもしれないでしょうけど、明日も頑張ってください。」



パチェ「……ノーレッジ大魔法使い より。」

パチェ「………」


パチェ「人間……か。でも、あのお風呂場の光景を見たら、どんな反応をするかしら……?」


パチェ「………」


パチェ「フランみたいにはしゃぐのかしら?それとも……」




咲夜「失礼します。パチュリー様。」


パチェ「……はい。何かしら?」

咲夜「お風呂を上がられたと聞いたので。
まだお食事会は途中ですので、よろしければ……」


パチェ「分かったわ。すぐに行くとレミィに言っておいて。」

パチェ「あ、後、フランや小悪魔も一緒の席にと呼んできて貰える?」

咲夜「フラン様もですか?」

パチェ「ええ。多分、レミィに話たくて仕方のない楽しい話があるはずだから……」


咲夜「分かりました。」




パチェ「………」


パチェ「……ふふっ。」



~続く~

おつ
結構好き



どうでもいい部分なんだがすごい気になったところが一つ

> 小悪魔(ロジカルで原始的なやり取り。手間も掛かれば時間も費やす。)

交換日記が論理的なやり取りってなんだよwwwwwwww

論理的でしょ

>>46>>47
恥ずかしながら、意味を誤用してました
気をつけます

【ep3】


妖精G「本日もご指導ありがとうございました。」

パチェ「いいから。私も知識の確認になるし。」


小悪魔(たまにおかしな妖精もいるんですよね。パチュリー様に勉強をならいたいだなんて……)



妖精G「小悪魔様もありがとうございました。」

小悪魔「いいえ。私も一緒に勉強が出来ましたし。」

小悪魔(でもこの妖精はもう2年もパチュリー様のところに勉強しにくる。
一々難しい事ばかりおっしゃるパチュリー様と話したがる妖精なんて、館内じゃ彼女くらいですね。)


妖精G「パチュリー様は博学で、お淑やかで、本当に素敵な方です。私、実は小悪魔様みたいに図書館で、パチュリーの側でお勤めするのが夢なんです!」

小悪魔「え?妖精の貴方が?」


妖精G「はい。でも、私は小悪魔様みたいな完璧な書物の管理は出来ないし、どうせ足手まといになるだけなのですけど……」


小悪魔「え……そ、そんなことは……」

小悪魔(実際、あんな広い図書館の全ての本を把握するなんて妖精どころかメイド長さんやレミリア様にも無理だろうけど。
パチュリー様だって、興味がない本はたまにお忘れになるし。だから私の能力が役に立つんだけど……)


妖精G「……そういえば、最近のパチュリー様は色々な範囲の研究に挑んでいるそうですね。
入浴剤やお料理みたいな身近なことから、音や気候の流れを変える魔法まで……どれも凄い結果を出してるって聞きました。
妖精達の間では、パチュリー様がまた新しいものを開発するのを楽しみにしてる子達もいます。」


小悪魔「え?あ、そうですね。」

小悪魔(最近のパチュリー様は更に読書と研究に没頭されていらっしゃる。相変わらず睡眠も食事も不定期、お風呂も入るようにはなったものの月に1度入るか入らないか。
たまに暇があれば私やこの妖精さんを勉強会に呼んでくれるけど、それも1週間に1回って程度。
やっぱり、パチュリー様は魔法の開発に励む大魔法使いなのですね。

てっきり……お変わりになられたのかと思っていました………)

パチェ「……ふぅ。」

パチェ「あら?もう5時なのね。妖精が起きてたのだから、夕方の5時……か。」

パチェ「そろそろ、夕陽が見えるのかしら。もう何年も見てないわね……。」



パチェ「………」

パチェ「夕陽は黄昏、人間達に1日の終わりである夜の始まりを暗示する存在。
そんなものを私が見て、何を感じろというのかしら?」


『……川の先に沈む夕陽を、これほど美しく華やかにしてくれる景色は他にないと思っています。
写真はこれまで撮ってきたものの中でもベストなものをお選び致しました。しかし、是非ノーレッジさんにはこの光景を写真でだけでなく、その瞳で直接ご覧になってもらいたいですね。
私は当分行ける時間がとれないのですが、地図も一緒に送付しましたので、機会があれば是非立ち寄ってみてください。』



パチェ「………。どこからどう見ても普通の夕陽にしか見えないのに……。本当にこんなものに、彼は感動しているのかしら?
それとも、ただ馬鹿みたいにことを大袈裟にして、私を騙そうとしてるのかしら?こんな写真で、私の心を揺さ振れるとでも?

ただ、もしこの人間が本当に心を奪われているのだとしたら………」



パチェ「人間は本当におめでたい愚か存在ね……」




パチェ「……さてと。そろそろ食事でも摂ろうかしら。確か、10時間も何も食べずにいたはずだから、人間なら死ぬほどお腹も空いている頃なのだろうけど……」


パチェ「私には関係ないのよね。この魔法陣で毎時活力を供給してるから……」

咲夜「侵入者を許したですって!?」

妖精A「はい!美鈴様が1人はお捕まえになりましたが、何人かは屋敷内に侵入者したようです。」





妖精・星「うぅ……サニー!ルナ!助けてよぉ~!」

美鈴「妖精です。それもかなり異端な種の様です。」

咲夜「異端?何か見たの?」

美鈴「いえ、塀の端の方から気を感じたので調べに行ったのですが、誰も居なかったんです。
それで、気だけを頼りに探したら何も無いところからこの妖精が現れたんです。」

咲夜「なるほど。姿を消していた……と。」

美鈴「姿だけでなく、足音や鼻息の1つもしませんでしたし、隠密行動に適したかなり能力を持っている様です。」


妖精・星「何んなの!?お姉さんにも気配を感じる能力があるってことなの!?」

美鈴「まぁ、微弱ながら。
ただ、この館周辺にはパチュリー様の結界が張られていて、その中でなら私の気を感じる力は強化されてるんです。」

咲夜「つまり、相手が悪かったというわけです。ステルス妖精さん。」


妖精・星「ぐぬぬ……。」

美鈴「……これからどうします?咲夜さん。」

咲夜「美鈴はここにいてください。館に侵入した者達はこちらで処分します。
時間は掛けません。こちらには既に人質もいるますし。」


妖精・星「あ、あたしは!あなた達の言いなりになんかならないんだから!!」


咲夜「そぉ。それならこちらにも考えがあります。」


妖精・星「……考え……?」

咲夜「もちろん拷問です。その口が軽くなるまで、時間をかけてゆっくり仕込んで差し上げますから」ニッコリ


妖精・星「……サ、サニー!!ルナー!!助けてぇ~!!」

妖精・陽「……スター。お前の犠牲は決して無駄にはしない……」

妖精・月「何を言ってるの!!早くスターを助けないと!!」

妖精・陽「あんな化け物からどうやって!?私達の能力が効かないんだよ!?」

妖精・月「ここに侵入しようって言い出したのはサニーじゃない!!門番は腑抜けだから楽勝だって!!」

妖精・陽「だって……森の妖精達がそう言ってたし、巫女も馬鹿にしてたから……」


妖精・月「……相手は吸血鬼とその手下の妖精や魔法使い達よ。どうするの?今から土下座でもしに行くの?」

妖精・陽「……いや。ここで下手に出るのは危険だ。捕まったら何されるか分からないし。」

妖精・月「じゃあ、どうするっていうの?」

妖精・陽「……向こうが人質を盾にするっていうのなら、こっちにも考えがあるさ……」

レミリア「……」

レミリア「……あら?何これ?全滅?」


レミリア「全く、まだクリア出来ないのかしら、このゲーム。」

レミリア「ていうより、ボタンの押し具合が悪いわね。そろそろ買い換え時かさら。」


レミリア「……ちょうどいいし、そろそろ咲夜と一緒にお茶にでもしようかしら。」


レミリア「でも、これだけ何週間もやり続けたゲームも珍しいわね。人間の作ったものにしては、面白いわ。
レベルも上がってきたし、もうすぐ全クリアね。楽しみね~。」






妖精・陽「よし、あれだ。あの小さいの。」

妖精・月「あんなちっちゃいのに価値なんてあるの?」

妖精・陽「いいからいいから。」

妖精・星「……しくしく…」

咲夜「侵入した妖精2人。姿を消したり、音を聞こえなくしたりするみたいです。注意して探しなさい。」

妖精A「はい。」



レミリア「咲夜?何をしてるの?」

咲夜「お嬢様……。いえ、妖精が2人侵入した様です。」

妖精・星「ふぇぇ……」


レミリア「ほぉ~?そいつもその仲間か?」

妖精・星「!!」

レミリア「可愛い顔してるわね。今すぐにでもグチャグチャにしてやりたいわ~♪」


妖精・星「う、うわぁああ!!もう嫌!!サニー!ルナ!!助けて!!」


グチャ

妖精・星「やだぁ~!!これ以上塗らないで!!食べさせないで!!……もごぉっ!?」

レミリア「………。で、咲夜。これは?」

咲夜「生クリームです。」

レミリア「普通のなの?」

咲夜「賞味期限が半年前に切れたのです。」

レミリア「また買い溜めし過ぎたの?賞味期限には注意しろといつも言ってるでしょ。」

咲夜「申し訳ありません。」



妖精B「……ううっ、なんてムゴいの……」

妖精E「もうケーキ30個分も食べさせられてる……。見てるこっちがムカムカしてきた……」




パチェ「……?何の騒ぎかしら?」

妖精・陽「待ちなさい!!」


咲夜「……あら、やっと現れましたね。」

レミリア「ん?ほぉ~……」

パチェ「?」



妖精・陽「スターを今すぐ解放しろ!!この鬼畜吸血鬼ども!!」

妖精・月「今すぐこちらの要求に従いなさい!さもないと……」



咲夜「侵入者です。警護藩。集合!」




妖精B「承知しました。」
妖精E「承知しました。」
妖精F「承知しました。」
妖精G「承知しました。」










妖精(299)「承知しました。」
妖精(300)「承知しました。」



妖精・陽「……え~……?こんなに妖精が居たんだ?この館って……」


レミリア「さてと。我が館にお出向いてくれて結構なことだわ。たまにはこういうハプニングがないとね?私達も平和ボケしていまうから……」


妖精・月「……サニー……早くあれを……」

妖精・陽「わ、分かってる!!
やいっ!吸血鬼ども!お前達が私達の同胞を人質にするというのなら、こちらにも考えがある!!
これを見ろー!!」


レミリア「?」
咲夜「?」
パチェ「?」

咲夜「何かしら?マグカップですか?」

レミリア「あれは私のゲーム機……?」

パチェ「……?花でできた被り物やら本やら……?」


妖精・陽「お前らが部屋に大切そうに置いてたものばかりだ!!これらを無事返して欲しかったら、私の親友を解放しろ!!」


レミリア「なるほど。交換条件を持ってきたわけね。」

咲夜「あのマグカップは……私がお嬢様から頂いた……」

妖精・陽「そうだ!お前が大切そうにしてた……」

咲夜「……にそっくりなのを美鈴が陶芸で作ったものですね。」

妖精・陽「……だ、だが、その美鈴とか奴からもらった大切な物にはかわりないだろ!?」

咲夜「まぁ……美鈴がオリジナルを割った謝罪と一緒に持ってきた物だから大切にはしてましたけど……。
正直複雑な気持ちで置いてるんですよね……」


妖精・陽「……じゃ、じゃあこの小さいのは!?吸血鬼が大事にしてた……」

レミリア「まぁ、大切にはしてたけどね。でも、そろそろ買い換えかなって思ってたし……」

妖精・月「……で、でも、こういうのって中に入ってるデータとかいうのが大事なんじゃ……」

レミリア「それ、カセットが差さってないでしょ?」

妖精・陽「……え?」

レミリア「私は常にカセットを抜くようにしてるの。カセットが無事なら、そんな機械がどうなろうと……」



妖精・陽「……な、な、ならなら!!この古くさい本はどうだぁ!?」


パチェ「え……?あれは……」


小悪魔「わ、私がパチュリー様から初めて貰い受けた本!!」

妖精・陽「こ、これなら……大切な物に……」

小悪魔「パチュリー様!ごめんなさい!私がぼーっとしてたから……」


パチェ「あれって、たしか重複してる図書があったからあげたやむよね?」

小悪魔「はい。パチュリー様が私に初めてくださった大切な……」

パチェ「なら、いいわ。」

小悪魔「え……?」

パチェ「もしあれが破壊されても、もう1つあるのをあげるから……」

小悪魔「え!?でも、それではパチュリーの分が……」

パチェ「いいわよ、別に。貴方なら本を大切に扱ってくれると思ってるから。
私が読みたいと思った時にはあなたが貸してくれればいいわ。それなら、同じ本は2冊も要らないわよね?」


小悪魔「パ、パチュリー様……」

妖精・陽「……」


妖精・月「ま、まずいって……サニー。もう謝った方が……」

妖精・陽「な、なら!!これはどうだ!?」


レミリア「?」
咲夜「……あれは、時計?」

妖精G「あれ?あれって確か……」

小悪魔「!!」

パチェ「………」


妖精・陽「と、図書館でそこの魔法使いが大切そうにしていたのだ!どうだ!?きっと大切な物に違いないよね!?」


小悪魔(あれは、パチュリー様と文通してる外界人が送ってきたっていう……)

レミリア「パチェ?貴方の物なの?」

パチェ「……ええ。時計があれば時間を計るのに便利だから……」

レミリア「そぉ。なら、無下には扱えないわね。」

パチェ「………いいわよ。別に……」

小悪魔「!?」

妖精・陽「何ぃ!?だってお前、こいつに話し掛けたりしてたし、絶対大切なものなんだろ!?」


パチェ「……私、時間に縛られるのは好きじゃないから。
それに、必要なら新しいのを手に入れるわよ。それにこだわっているつもりはないわ。」


レミリア「そう……分かったわ。」

咲夜「つまり、交渉決裂ってことですね……」


妖精・陽「……」

妖精・月「……もう謝ろう。今なら、生チョコ責めとか生ジャム責めとかで済むと思うし……私はチョコがいいなぁ……好きだから……」

妖精・陽「ま、まだ……あの門番の部屋で見つけたこの花の飾りものが……」


レミリア「……パチェ。あれは何なのかしら?」

パチェ「さぁ……?」

美鈴「返してください!!その花冠を!!」


レミリア「!?」
パチェ「……?」

咲夜「美鈴!?貴方、門番は……」

美鈴「妖精達に代わらせました!その花冠はフラン様が私にくださった大切なものなんです!」


レミリア「フランが……?」

パチェ「フランがあの花飾りを?あの娘にものつくりなんて出来るの?」

レミリア「私も知らないわよ。積み木をしてても、気が付いたら粉々の木クズにしてる様な娘なのに……」


美鈴「それはフラン様が何度も何度も挑戦して、必死で造りあげた大切なもの……」


妖精・陽「わ、分かった!!乱暴にはしないから!だから、スターを解放してくれたら……」


美鈴「許さない……」

妖精・月「スターを放してくれたら返すから!だから……」

美鈴「なら今すぐ返しなさい!!!」

妖精・陽「!?」
妖精・月「ひぃ~!!」


レミリア「あのバカ!美鈴!!」

パチェ「チャンスね。一気に畳み掛けるわよ。」

小悪魔「え?でも、パチュリー様……あの時計は……」

妖精・陽「ルナ!こっち!!」

妖精・月「うん!」




レミリア「ん?あいつらはどこに?」

咲夜「姿を消す力……ですね。」


美鈴「………」


美鈴「……逃げる気ですか?」

妖精・陽「え!?」

妖精・月「こっちを睨んでる……。やっぱり、あの門番には私達が見えてるのよ!」

美鈴「逃がしません!!」

妖精・陽「ひぃっ!!く、来るな!!来たら、この冠を……」

美鈴「壊したら、あなた達もタダじゃ済ませません!!」

妖精・陽「う、うわぁああああっ!!!」



パチェ「……全く。」

妖精・陽「え!?」
美鈴「!?」


ガキン!!!

妖精・陽「え!?何これ!?閉じ込められた!?」

パチェ「……へぇ、これがフランの力作ね……」

妖精・陽「お、お前にも見えてたのか……?私が……」

パチェ「私が見ていたのは美鈴の視線の向きよ。それで大体の予想をつけただけ。」

美鈴「パチュリー様!それ……」


パチェ「美鈴。本当に大事な物だからって、我を忘れて相手に飛び込んでいくのはどうかと思うわよ?」

美鈴「……はい。ただ、それを壊されたことを知った時の妹様の顔、悲しみに溢れ、私に裏切られた様に思われるのではないかと思うと……」

パチェ「……だからって、無茶をして……。
まぁ、貴方のその熱い気持ちが、貴方の長所でもあるのだろうけど……」

妖精・陽「ルナ!こっち!!」

妖精・月「うん!」




レミリア「ん?あいつらはどこに?」

咲夜「姿を消す力……ですね。」


美鈴「………」


美鈴「……逃げる気ですか?」

妖精・陽「え!?」

妖精・月「こっちを睨んでる……。やっぱり、あの門番には私達が見えてるのよ!」

美鈴「逃がしません!!」

妖精・陽「ひぃっ!!く、来るな!!来たら、この冠を……」

美鈴「壊したら、あなた達もタダじゃ済ませません!!」

妖精・陽「う、うわぁああああっ!!!」



パチェ「……全く。」

妖精・陽「え!?」
美鈴「!?」


ガキン!!!

妖精・陽「え!?何これ!?閉じ込められた!?」

パチェ「……へぇ、これがフランの力作ね……」

妖精・陽「お、お前にも見えてたのか……?私が……」

パチェ「私が見ていたのは美鈴の視線の向きよ。それで大体の予想をつけただけ。」

美鈴「パチュリー様!それ……」


パチェ「美鈴。本当に大事な物だからって、我を忘れて相手に飛び込んでいくのはどうかと思うわよ?」

美鈴「……はい。ただ、それを壊されたことを知った時の妹様の顔、悲しみに溢れ、私に裏切られた様に思われるのではないかと思うと……」

パチェ「……だからって、無茶をして……。
まぁ、貴方のその熱い気持ちが、貴方の長所でもあるのだろうけど……」

妖精・月「わ、わっ!?もう無理っ!!」

妖精G「逃がしません!」

妖精・月「ごめんなさい!!わ、私達、軽い気持ちで……」

妖精F「軽い気持ちでなら済むとでも?」

妖精H「あなたみたいなイタズラっ子は、納豆責めの刑です!」

妖精・月「な、納豆だけは嫌なんだから!!」

妖精H「逃がすものですか~!!」





咲夜「……あんなに暴れて。後の掃除が大変そうですね……」

レミリア「この3バカ妖精にやらせればいいのよ。罰として。」

美鈴「……ところで、皆さんの大切なものは大丈夫でしたか?」

小悪魔「わ、私の本は、氷に閉じ込められた妖精さんが持ってました。」

咲夜「私のもです。」

レミリア「となると、私のゲームはあっちの妖精が……か。」

パチェ「………」



妖精・月「はぁはぁ……。ざ、ざまぁないです!吸血鬼の下っぱ風情の妖精達が私に適うわけ……」

レミリア「……はいはい。」

妖精・月「!!ボ、ボスの登場ですね……。私は絶対負けませんから!!」




レミリア「………」

妖精・月「………」

レミリア「今謝ったら、チョコ責めで勘弁してあげるわよ?」

妖精・月「ごめんなさい。参りましたです。」


パチェ「賢明な判断ね。それに妖精相手じゃ、レミィも腕磨きすらできないものね。」

レミリア「んじゃ、ま、私から奪ったものを返して貰いましょうかしら?」


妖精・月「………」

妖精G「………」

妖精・月「……わ、私は悪くな………。
いえ、ごめんなさい!弾幕勝負の最中に……」

妖精G「パチュリー様!ごめんなさい!!」


レミリア「あら……粉々になったのね。私のゲームも、パチェの時計も……」

パチェ「………」

妖精G「取り返そうとしてもみ合った時に……ごめんなさい!ごめんなさい!!」

パチェ「……いいわよ。また新しいのを手に入れればいいんだし……」

レミリア「私も別に怒らないわよ。この程度なら……」

妖精・月「ほっ。」

妖精G「……えぐっ……パチュリー様の大切な時計を………ごめんなさい……」


パチェ「いいから。貴方の私を慕ってくれる気持ちが分かったし……」

妖精G「う、うわぁ~ん!!パチュリー様ぁ~!!」



レミリア「……パチェをこんなに慕ってる妖精が居ただなんて……」

小悪魔「……」


咲夜「パチュリー様。その……この壊れた時計は……?」

パチェ「え?……ああ。そうね。一応私の方で修理でもいてみようかしらね。
……無理なら、新しいのを探すわ。」


小悪魔「………」


小悪魔(……あれ?何だかパチュリー様………)


レミリア「にしても、パチェにあんな可愛い妖精メイドがついてただなんて……」

咲夜「図書館での仕事はパチュリー様以外に小悪魔さんしかされていません。
ですから、あのメイドは単にパチュリー様と交友があるだけだと思います。」

レミリア「……パチェはたまに優しいのよね。妖精にも……人間にも……」



小悪魔(……優しい……。優し過ぎる?
パチュリー様は確かに本以外の持ち物を壊されたぐらいではあまりお怒りになりませんけど……。
何だか……今日のパチュリー様は随分優しい様な……)

パチェ「大切なもの……」

パチェ「……この時計が本当に大切なら、ちゃんとしまっておけばよかっただけのこと……」


パチェ「……“・・・・・・・・・・”………」


ドサッ!


パチェ「こんな風に魔法陣の結界で……。
さすがにあの妖精達も、この日記の存在には気付なかった様だし……」

パチェ「………」


パチェ「……先日、貴方から頂いた時計をメイドの娘が誤って破損させてしまいました。彼女が悪いわけではありません。私の保管の仕方が悪かったせいで………。
……私としては、時計によって時間に縛られた生活をしていた様な気持ちがしていたところでしたし………。」



パチェ「………」


パチェ「……特に……気には……なら……ない………」


パチェ「特に……残念では………ない……ない………」


パチェ「……こんな、こんな文章送れるわけないじゃない!!
いくら本心だからって……時計が壊れたのがまるで嬉しいみたい……」


パチェ「せっかく……せっかく、送ってきてくれたのに………。
可愛い……便利なのを……。」


パチェ「でも、私は適当に机に放置してたし……妖精に盗られた時も、どうでもいいって言ったし………。

盗った妖精でも、あの妖精のせいなんかでもない。私が、私自身が……軽く見てた私自身が………。」



パチェ「どうしよう……何て書けばいいのかしら……?どう、弁解すれば……。いや、どう謝れば、伝わるのよ……」


パチェ「……ごめんなさい?ごめんなさい……こんな軽い言葉なんかじゃ……」


パチェ「私のせいなのに……だから、謝りたい。謝りたいのに……言葉が思いつかない……」



パチェ「……ごめんなさい?……ごめんなさい。ごめん……なさい………。………ごめん……ね………」

パチェ「申し訳ございません……すいません……深く反省してます……」


パチェ「こんなことなら……もっと大事に、保管しておけばよかったです………」



~続く~

【ep4】


美鈴「ようこそおいで下さいました。パチュリー様は図書館におられます。」

永琳「またあの埃だらけの所で1日中過ごしてるの?」

美鈴「最近は空気清浄機とかを使ってますし、空調はかなり良くなったと思いますけど……」





パチェ「やっと来たのね、永琳。」

永琳「あら、意外と元気そうじゃない。相変わらず顔色は優れないみたいだけど。」

パチェ「顔色が悪いのはいつものことよ。」

永琳「……全く。死ぬまでに一体何回私を呼ぶことになるのやら。いつまでたってもこんな空気のわるいところに引き籠もって……」

パチェ「貴方のところのお姫様だって同じじゃない。」

永琳「ウチの姫様と違って、あなたにはちゃんと寿命があるのよ?太陽すらまともに浴びない生活だなんて、よっぽど早くあの世にでも行きたいのかしら?」

パチェ「どうってことないわよ。これぐらい……」


永琳「医師として、治す気もない患者の世話をさせられることほど無意味な行為なんてないわね。
私の手に掛かる以上は、素直に私の意見に従って欲しいものです。」


パチェ「……月の医学なんかなくても、私には魔法があれば十分よ。」

永琳「あら?倒れたあなたに一体誰がその魔法を掛けるのかしら?私が呼ばれたのはどうしてかしらね?」

パチェ「……私が倒れたのは一昨日よ。なのに来るのに2日もかかるなんて……」


永琳「私も暇じゃないの。あなたが頑丈だって知ってるから、後回しにさせてもらったの。
もちろん、あなたのお嬢様からも許可を貰ったのよ。むしろ『暇があったら来てくれればいい』なんて言われたし。」


パチェ「………」

永琳「……ふふっ。さすがに拗ねたかしら?ごめんね。冗談………ではないけれど。急患だって言われたらすぐに駆け付けて、ちゃんと助けてあげるから、安心してね?」

パチェ「………ねぇ、永琳。」

永琳「何かしら?」

パチェ「私の声って、なんか低く過ぎると思わない?」

永琳「そうね。落ち着いた感じがして、私は嫌いじゃないけど。」

パチェ「私、高い声を出そうとしても喉が痛くて……」

永琳「あなたの喉はかなり傷んでると思うわよ。喘息の影響もあるかもしれないけど、こんな空気の悪い所に居続けたらねぇ……」


パチェ「……なんか、喉薬とかくれないかしら?」

永琳「どうしたの?突然声の高さなんか気にして……。恋でもしたのかしら?」

パチェ「低い声だと……読めなくて扱えない魔方陣もあるのよ……。」

永琳「なるほど。それに気付いて初めて喉の大切さが分かった、と?」

パチェ「ええ……。今すぐ治せるなら治したいわ……」



永琳「そう。残念だけど、喉を治したからって声帯がよくなる保障はないわ。だから、声域を広くしたいのなら、まさにあなたの大好きな魔法にでも頼ることね。」


パチェ「………」

永琳「あ、もし不安に思ってるのなら、一応背中を押してあげるわ。」

パチェ「え?」

永琳「あなたの声、私は好きよ。低いけど落ち着いてて、女の子らしい静かさも感じるし、とっても可愛らしいと思うわよ?」


パチェ「……あ、そう。」


永琳「……ふふっ。ごめんごめん。気を悪くしないでね。軽いジョークよ。
思春期の少女が自分にコンプレックスを抱えるなんてよくあることなの。だから、つい可哀想に思っちゃってね。」

パチェ「私の思春期はとうに過ぎてるわよ……」

永琳「はいはい、ごめんね。自分の声を気にするだなんて、気になる異性がいる娘や歌手目指してる娘が気にするようなことだものね。
あ、それに魔法陣を扱いたい娘もね?」


パチェ「………」



永琳「喉にきく薬、一応出しといてあげるからね。後はなるべく外に出るようにしなさい。」

パチェ「気が向いたら……」

美鈴「ご苦労様でした。」

レミリア「ウチの図書館長の病態はいかがだったかしら?」

永琳「次来る時までに図書館の天井を吹き飛ばすか、或いはあの娘を無理矢理外に引き摺り出してでも新鮮な空気や太陽の下に連れて行くことね。
あのままじゃ、また近い内に私が呼ばれることになりそうで仕方ないわよ。」

レミリア「相変わらずな言い方ね。そんな口調でよく診療医なんて勤まってるわね。」

永琳「これだけ自分の健康や私の指示を無視してる患者なんか他には居ないわよ。
頑固なところも彼女の魅力かもしれないけど、あまり私を困らせないで欲しいです。」



レミリア「ふふっ。彼女の頑固は私でもどうにもならないから。」

美鈴「そうですね。でも、最近のパチュリー様はちょくちょく外出をする様になりましたよ?」

永琳「……あら、そうなの?」

美鈴「庭を散歩したり、湖まで行ったりと。この前は、私と妹様の散歩に付いてきましたし。」

永琳「へぇ~。引き籠もりが若干解消されつつあるのね……。それとも……」

レミリア「引き籠もりといえば、フランの方が最近ね……。自分から部屋に閉じこもる様になったわ。」

美鈴「あー、ネットでお友達と交流してるそうですね。」

永琳「それは早くなんとかした方がいいわね。ネットは危険よ。」

美鈴「え?でもフラン様は楽しそうに……」

永琳「ハマればハマるほど厄介なことになるわよ。止めさせるなら今の内!」

レミリア「厄介って……なんか具体例でも側にあるの?」

永琳「………」


パチェ「……はぁ……」


パチェ「さすがに……何にもやる気にならないわね……」



小悪魔「パチュリー様……。」

パチェ「小悪魔?……何かしら?」

小悪魔「実は昨日からパチュリー様宛ての荷物を預かっているのですが……」

パチェ「そぉ……持って来てもらえる?」

小悪魔「こちらになります。いつもの外界からの本と、この小さな小包が一緒に。」

パチェ「小包……?何か購入してたかしら?とりあえず、そこに置いといて。後で確認してみるわ。」

小悪魔「はい……。」


パチェ「後、レミィに机の上にある赤い本を持って行ってくれるかしら?」

小悪魔「赤いの……」

パチェ「館付近の結界を操作する魔方陣をまとめてある本よ。私がこんな状態だし、今はレミィに結界の監視を任せておいた方がいいから。」

小悪魔「はい、分かりました。」

パチェ「それから、図書館内のことは貴方に任せるわ。また誰か侵入してくるかもしれないし、気をつけてね。」

小悪魔「は、はい。それはお任せください!」

パチェ「………」



パチェ「……はぁ、読みたくない……わね。」


パチェ「……時計のこと、どう返答してきたのかしら……」


パチェ「………」


パチェ「……そういえば、小包の方は何なのかしら?」


ガサッ……

パチェ「……?送り主が書かれてない?一体誰から………」


ガサッ……バサッ……

……カラン


パチェ「……?何?この小さいの……?石……の首飾り?」

パチェ「………」

パチェ「……弱い……微かに魔力を感じる。
力を失った魔結晶かしら?一体誰がこんなゴミを……」

パチェ「………。いや、何かおかしい。この輝き……意図的に作ったもの?」



パチェ「………」



パサッ……

パチェ「………」

パチェ「!」


『……同じ時計を探そうとしたのですが、近くの店では手に入らないようです。申し訳ありません。
代わりといってはなんですが、この夜光石の首飾りをお送りします。』

パチェ「……まさか、時計を壊した私に、またすぐ新しい送りものをしてくるなんてね……」

『これは以前どこかで購入したものです。どこで購入したかは残念ながら忘れてしまいましたが。もう何年も前のことなので。
この石はかなり独特な光り方をします。周りが暗くなればなるほど虹色に強く光るそうです。この夜光石の元の石は色々なものを組み合わせたり削って作ったものらしいです。
何個か購入したのを友人に渡し回っていたのが1つ残っていた様なんです。
私にとって大切な友人であるノーレッジさんにも是非受け取って貰いたいなと思ってお送りしました。

それと、余談になるんですが、私が買った中で友人達にあげた物は1年足らずで光らなくなってしまったそうなんですが、この石は何年も経つ今でも夜になると虹色に輝いています。それもかなり美しい輝きです。
もしかしたら、大魔法使い様のお力になるかもしれませんね。』




パチェ「………」

パチェ「力になる?こんなゴミが……?」


パチェ「人間は……本当におめでたい生き物なのね。」

パチェ「夜になると光る?……部屋を暗くすれば分かるかしら?」



カチッ



パチェ「………。」


パチェ「……ふーん、なるほどね。
もっと目に悪い光かと思ったら、案外ほんのりとした静かな光り方をするのね。
魔石の微弱な魔力のせいか、見ていて気分が落ち着く……だんだん魅了されてくる光ね……。

ただ、天然の魔石ならこんな輝きは起こせない。人間達が細工を施したから、人為的にとはいえこれほどの物を作り出せた。

そして、あろうことか、あの人間はこれを私に送ってきた。
……時計を壊した私に、時計の代わりに……ね。」


パチェ「撤回するわ。これはゴミなんかじゃない。いえ、魔法具的には何にも価値ないけれど。
でも立派な装飾品には違いないわね。」

パチェ「首飾り……か。私に似合うのかしら?」


……サラッ

パチェ「………」

パチェ「……この服だと首元が見えないわね。それに首飾りが今一つ似合わないわね……。」


ガサゴソッ

パチェ「……ふぅ。まさかこんな形で服を脱ぐことになるなんてね。
……ふ~ん。中々なデザインね。人間の作った飾り物にしては。
それに………」


『いきなり女性に装飾品を送るのはどうかな、とも思いました。男性の私の感覚では、ノーレッジさんの好みにはそぐわないかもしれませんが……』


パチェ「……全く、こんな結構なものを送っておいて、どうしてこうも弱気なこと言うのかしら?
人間って、本当に馬鹿ね……」

パチェ「……気に入ったわ。あの時計よりも、いえ、あの時計も同じぐらい気に入ってたと思うけど。」

パチェ「……。」

パチェ「この気持ち、どうやって文章にすればいいのかしら?」

パチェ「……どう書いたら、本当に気に入ってるってことを伝えられるのかしら……」



パチェ「………」


パチェ「……はぁ。分からないわね。」

パチェ「自分では気に入ってるのだけれど、相手は私が時計の件を気にして無理しててるって考えるかもしれないし………」

パチェ「………彼はどんな風にしてたかしら?彼が気に入ったもの、風景や桜や……自分が気に入ったってことをどんな風に表現してたんだっけ……」


パチェ「………」


パチェ「……そっか。こればっかしは文章で伝えるよりも、“見て貰った方が早いわよね”。」

~そして、その夜~



パチェ「………」

小悪魔「……?パチュリー様?」

パチェ「……何かしら?」

小悪魔「いえ……先ほどから読んでらっしゃる本のページが進んでおられない様ですが……」

パチェ「……ちょっと考えごとをしていただけよ。」

小悪魔「……やっぱり、体調がまだ……」

パチェ「平気よ。気にしないで。」

小悪魔「は、はぁ……」



パチェ「………」

小悪魔「……?」

パチェ「………」



パチェ「……私、一体何をやっているのかしら……」


「ホント、恋い焦がれる少女は大変ね~。」


パチェ「………。何の用?スキマ妖怪……」

紫「はぁ~い。久しぶりね。大魔法少女ちゃん。元気に喘息してる?」

パチェ「……私には別に対処法がないわけじゃないのよ?スキマ妖怪。
貴方がスキマを使ってこの紅魔館に何度も侵入する様なら、こちらにも考えがあるわ。」

紫「そう怒らないで。今度からはちゃんと呼び鈴ならしてあげるから。」


パチェ「どうだか。神出鬼没、覗き見盗み聞きが大好きな貴方にもはやそういったモラルなんて存在しないんじゃなくて?」


紫「あらら?そんな風に私を悪者扱いしちゃっていいのかしら?
貴方が毎回楽しみにしてる外界からの“お届けもの”。あれを宅配してあげてるのはどこの誰かしらね?」

パチェ「貴方の式神達でしょ?ご苦労様。いつも助かってるわよ。」

紫「そうね。ただ、私もスキマを通して外界を出入りする物のチェックぐらいは一応しているのよ?
外界に存在しない様な物を送られたら、色々困るからね。」


パチェ「………」

紫「まぁ、私もガチガチに頭が固いってわけでもないの。
特に危険がなければ、写真とか時計とか入浴剤、それに魔石の首飾りぐらいは大目に見てあげてるし。」


パチェ「……それを伝えに来てくれたのね。ホント、ご苦労様。」


紫「危険……さえ、なければね。」

パチェ「……私が危険なものを送ったとでも言いたそうね?」

紫「危険ね……。この場合は、相手を危険にするのではなく、貴方自身の危機管理力を疑わざるをえない行為ね。」



パチェ「……そう。分かったわ。今日出した“写真”のことね。」

紫「ええ。貴方がとある書物と一緒に送付した写真。これに問題があるわけ。
何故だか分かるかしら?」

パチェ「……。その写真に写っているのは私よ。正確には……」

紫「相手の男が送ってきた首飾りを付けて撮影したもの。相手に自分がこの飾りを気に入ったってことを分かりやすく伝える為にこうしたのでしょ?」


パチェ「……一応、首から上は写らない様にしたわよ?それでも、幻想の住民の姿を写したものを外界に出すのは禁忌と言いたいってことかしら?」


紫「……貴方は、この写真が……相手の手に渡っても、他人、しかも男性の手に渡っても本気でいいと思ってるわけ?」

パチェ「……?何が言いたいの?」

紫「……よく見なさい。この写真に写ってる貴方はどんな格好してる?」

パチェ「……首飾りを付けてる。」

紫「半裸じゃない!下着姿に首飾りを付けただけの!!
貴方はどういうつもりでこんな写真を異性に送る気なの!?」


パチェ「?…?いや、何か問題かしら……?」

紫「……あらあら、大魔法使いちゃんは引き籠もり過ぎて貞操観念が麻痺しちゃってるようでちゅね~。」

パチェ「??」

紫「いいっ!?異性に、まだ顔も知らない男に、しかも初めて送る写真が下着姿の写真とか!!
これを貰った相手はどんな反応をするのか貴方は分かってるの!?」


パチェ「……。今まで写真を送ったことなかったし、とりあえず嬉しいんじゃ……」

紫「そりゃー嬉しいでしょーね!女の子が自分の下着写真を送ってきてくれたら!!
何も頼まなくても自分から脱いでくれる娘よ!?『お?意外と軽い女だな。このままイケるんじゃね!?』とか思われるに決まってるじゃない!!!」


パチェ「……はぁ。……はぁ?何がイケるって言うの?」

紫「分からない?次は胸とかお尻とか、全裸の写真を送ってこいって言われるかも知れないのよ!?」

パチェ「はぁ?なんでよ。たかが下着姿送ったぐらいで、何でそこまで調子にのれるのよ?」

紫「それが人間の雄なのよ!強いて言うなら、人間の女の子にとって下着姿一つ恥じらうことも貞操観念の表れなの!まともな女の子なら、むやみに他人に下着姿を見せたりしないわよ!!」

パチェ「……私だってむやみに見せてるわけじゃないわよ。大体、相手は……」


紫「文通を通じてかなり信頼を置いてる人間の雄……よね?」

パチェ「貴方、まさか全部知ってるの……?」

紫「そんな暇人じゃないわよ。ただ、私の郷に住む住民は皆、私にとっての子供みたいなものなの。
だから、引き籠もり思案な可愛い愛娘が外界の人間と執拗にコンタクトを取ってるのが心配になっただけ。」


パチェ「……それで、人の荷物を勝手に……」

紫「さすがは大魔法使い様。簡単に他人には見られない様に、相手の男性以外が先に箱を開けた瞬間写真が燃え尽きる細工をしていたわね。」

パチェ「……後、写真は相手が見てから10分後にインクが蒸発してただの白紙になる細工もしてるし。
危機管理という意味では問題がないはずよ。」


紫「そうね。確かに、そこら辺はしっかりしていたわね。
と、いうことは、残るは貴方の薄っぺらい貞操観だけね。」

パチェ「……。別に、人間相手に一々気を使う必要なんか……」


紫「大体、この下着もなんなのよ?髪も服も紫なら、ブラもパンツも紫尽くしだなんて……。貴方は本当に全身紫のもやしみたいね。
紫の下着って変に大人ぶって見えるから、お子さまには似合わないと思うわよ?」


パチェ「はぁ?それはどういった喧嘩の振り方かしら?」

紫「体形はスレンダー……っていうよりガリガリよね。食生活を無理してダイエットしてる子って思われなければいいけど。
もっと胸を強調した方がいいんじゃない?それか、逆にキャミソールで隠すとか…」


パチェ「悪いけど、そういうオシャレには興味がわかないの。レミィや咲夜、あるいは貴方の大好きな巫女とでも話してくれる?」


紫「……はぁ。本当に貴方って娘は……」

パチェ「ふん。」

紫「……せっかく、あんな結構な男と文通出来てるってんのに……」


パチェ「……今何て言った?」

紫「えー?だから、せっかく…………あ。」


パチェ「貴方、相手がどんな人か知ってるのね?」

紫「…………」

パチェ「……貴方のことだから、気になった相手を調べないわけないものね。
どうせ私生活とかも覗き見してきたんでしょ?」

紫「………ご、ごめんなさい……。つい……」

パチェ「別に怒ったりはしないわ。
ただし、二度とその話を私の前でしないで!」

紫「それは分かってる!お互い、相手を知るのは文章を通して行うのが一番だものね。」


パチェ「……まさか、相手の人に接触とかもしてないでしょうね?」

紫「………」

パチェ「……わざとらしく目を泳がせて……」

紫「だ、大丈夫よ!貴方のことには一切触れてないし!もちろん、つまんだりもしてないから!」

パチェ「……つまむ……て、何よ?」

紫「………え、えーと……。
まぁ、つまりね、その人が友達と飲み会してる中に、酔っぱらいのふりをして偶然を装って割り込んでね、ちょっとだけお話をしたの!それだけ!!それだけだからね!!」


パチェ「…………」

紫「………ゴクリ」

パチェ「……はぁ。分かった。もうそれについてはこれ以上とやかく言わないから。」

紫「……ほっ。」

パチェ「……まぁ、でも大体のことは分かったわ。」

紫「?」

パチェ「貴方が私に文通を止めろとまでは言わないってことは、相手の男はそれなりに安全な相手ってことね。」

紫「あらあら、そう考えちゃう?」

パチェ「或いは、貴方が私にお似合いだと考える様なペテン師。
私がまんまと踊らされてる姿をみたいが為に、わざと私を止めない……とも考えられるわね。」

紫「うふふ。これ以上は、私な~んにも言わないから。」

パチェ「ただ、相手が男性ってところだけは本当の様ね。」


紫「そこは保証してあげる。だから、貴方が感じてるその気持ちは偽物じゃないから……」


パチェ「はぁ?何を言ってるの?」

紫「とボケちゃって~♪文系少女が原始的な文通で恋い焦がれるなんて、近年まれにないまさに幻想的な事案よね。」


パチェ「………」

紫「結構優しい人みたいよね?文章を読むかぎりは……」

パチェ「そうね。私の為かどうかは知らないけど、随分と無理をして綺麗な文体にしてるようだし……」


紫「ほほう……つまり、彼は文章で自分を偽っていると?」

パチェ「ええ。多分、普段の口調では全くああいった綺麗な言葉を使用しないんでしょうね。
だから、慣れない手付きで、でも新鮮な文章を書いている。文章を書いている間は自分の作る綺麗な字列に見惚れいるんじゃないかしら?
もしかしたら、私の為というより、綺麗な文体を描こうとする自分に酔いながら文通をしてるんじゃない?」


紫「……つまり、特に貴方を気に入っての文通ではないってこと?」


パチェ「さぁね。彼が私のことをどう思ってるかまでは、文章だけじゃ読み取りにくいわね。」


紫「ふぅ~ん。そんな綺麗な装飾品を貰っておいて、そんな態度なわけね。」

パチェ「……確かに悪くはない贈り物よね。
でも、物で作れる信頼関係なんてたかが知れてるわよ。」


紫「そっか。でもね、貴方が送ろうとしてる写真は、貴方がそんな風に思っている彼を一気に引き寄せるわよ?」

パチェ「……あんな写真1枚で?」

紫「ええ。彼に大きな一歩を踏ませることになるわね。」

紫「そっ。だからね、その写真は手を抜いちゃ駄目なわけよ。
ちゃんとした写真を送らないとね……」



……バサッ!!

パチェ「何よそれ?」


紫「貴方のサイズに合う下着がここに100着。スキマを使えばさらに集められるわよ?」

パチェ「………」



パチェ「はぁ!?ま、まさかアンタ……」


紫「全く、あんなひ弱な写真で相手を魅了出来ると思ったわけ?
そんなお花畑思想じゃ実る恋も実らないわよ!」


パチェ「……ば、馬鹿なの!?私がそれを着ると本気で思ってるわけ!?」

紫「大丈夫。彼の好みは大体把握してるから♪」


パチェ「ふざけないで!!何で一々相手に合わせて着替えなくちゃいけないのよ!そんなの、本来の私じゃないじゃない!」

紫「恋ってのは、多少の偽りもあった方がいいものなのよ。」


パチェ「だ、大体貴方はさっき、私に下着姿の写真を送るなって忠告してたじゃない!!」

紫「それを言うなら、私が注意する前から既に貴方は送ろうとしていたじゃない?
今さら恥ずかしがらないの!!」


パチェ「は……別に恥ずかしくなんか……」


紫「……紫お姉さんに、そんなバレバレの嘘が通じると思ってるの?
顔真っ赤にしちゃって……可愛い~♪」


パチェ「う……うわぁー!!!お前っ!!今すぐぶっ飛ばしてやる!!スキマの彼方まで送ってやるー!!!!」





小悪魔「パチュリー様ぁ~。メイド長様がお夜食にチーズパイをお作りしたそうですけど……」


パチェ「……あら、ありがとう。
そこに置いといて貰える。」

小悪魔「はい。分かりました。」


小悪魔「あれ?パチュリー様?」

パチェ「何かしら?」

小悪魔「……いいえ。先ほど見た時より……その……」

パチェ「……?」

小悪魔「か、顔色が良く……なられました?」

パチェ「そうかしら?私はあまり変わらないと思うけれど。」

小悪魔「い、いえ。私の勘違いです。すいません……。」





パチェ「………」

紫「貴方っていい役者になれるわ~。さっきまでのハイテンションをよく隠せたわね。」

パチェ「……はぁ。まだ居たの。いい加減に帰ってくれる?」

紫「………その下着。凄く似合ってるわよん♪」


パチェ「……うるさい。」
紫「それ、貴方にプレゼントしたげる。女の子なら、もうちょっとオシャレに興味持たないとね?」

パチェ「………」


紫「この写真、ちゃ~んと送っておいてあげるから………」

パチェ「………。
ごめん、紫。やっぱり……」

紫「じゃあね~♪」

パチェ「ま、待って!!ゆか……」



パチェ「………」


~続く~

【ep5】


パチェ「……」


小悪魔「……?そのお写真は?」

パチェ「外界の人間が送ってきたものよ。」

小悪魔「へぇ~。今回もまた綺麗な景色ですね。
………あれ?でも今回の、誰か写っていますね。」

パチェ「そうね。」

小悪魔「……男性の方の後ろ姿ですか?誰なんでしょう?ひょっとして、相手の方?」

パチェ「日記にはそう書いてあるわね。」


小悪魔「え?じゃあ、ついにご自身の写真まで送って来たのですか!?あの人間さんは……」

パチェ「……みたいね。まぁ、後ろ姿が少し写ってるだけだし、ピントは景色に合わせてて当人の姿自体はボヤけてる様だけど。」


小悪魔「……なんか、大きな壁を一つ無くされたみたいですね。」

パチェ「え?」

小悪魔「今まで、個人を特定出来かねない写真は全く送ってこなかったのに……大分パチュリー様に歩み寄ってきた感じがします。」

パチェ「………そうね。」

パチェ「………」

『素敵な写真をありがとうございました。首飾りを気に入っていただけて幸いです。
ただ、この様な写真を送って貰って、どんな言葉を返せばいいのか……。
残念ながら、言葉にするのを諦めました。私も、言葉ではなく写真でお返しすることにします。』


パチェ「何よ……あくまで紳士振るの気なのね。
あんなに恥ずか……頑張ったんだから、もうちょっと褒め言葉があったっていいじゃない……」


『この写真が相等のお返しになるとは思えません。ですが、どの景色を背景にしても、また如何なる姿の私を写そうとも、写真に写るノーレッジ様のお姿に適うものはないと諦めてしまいました。
空に舞う天使を写せば良いのでしょうか?薔薇の野原を背景にすればいいのでしょうか?
その様なものでは越えることの出来ない美しさ、神秘さがあの写真には秘められていました。私がどんなに頑張っても、あの写真を越えることは出来ません。』


パチェ「……!!」

パチェ「……何て恥ずかしいことを書いてんのよ……こいつ……」


『写真が消えるまでの数分間、私はじっと眺めていました。見惚れていました。
写真が消えてからも、ただの白紙と化したそれをじっと見つめていました。
人生で一番楽しい時間だったと思っています。』


パチェ「……馬鹿……」


『これ以上は何も言いません。いや、言えません。
素敵な写真、素敵な時間をありがとうございました。』


パチェ「………」


パチェ「そっ。また送って欲しいとか、もうするなとも言わないのね。
またやるかはどうかは私の選択次第……か。」


小悪魔「パチュリー様~!」

パチェ「何よ?うるさいわね。」

レミリア「おくつろぎのところ、悪いわね。我が親友。」

パチェ「忙しいとは言わないけど、あまり暇人呼ばわりされたくないわね。」

レミリア「分かってるわよ。でも、今から本当に忙しくさせるけど、構わないかしら?」

パチェ「……どういうことかしら?」

レミリア「今晩、博霊の方がやけに騒がしくなるみたいなの。最近、人間達の間で流れてる不穏な噂が関係している様ね。」

パチェ「噂?私の耳には入ってきていないわね。
一体どんなのかしら?」


レミリア「私も文屋から聞いた話なのだけれど、仲の良い恋人達の前にだけ現れる少女のことらしいの。その少女を前にすると、2人は突然お互いのことが嫌いになって喧嘩し出したりするそうよ。」


パチェ「へぇ?変わった能力ね?」

レミリア「里の人間達だけでなく動物や妖怪達の前にも現れるそうなの。なんの能力かは知らないけれど結構なもので、婚約仲だったカップルが一瞬にして破局するほどだって。」

パチェ「そう。確かに面倒な妖怪ね。でも、博霊の巫女が出る幕なのかしら?」


レミリア「私も最初はそう思ったわ。でも、そんな単純な被害じゃ済んでないみたいなの。
2人の仲が親しければ親しいほど、少女の前ではその分反発し合うそうよ。
とある鴦夫婦な男女なんて互いを憎しみ合うあまりに殺し合いにまで発展しかけたらしいわ。」


パチェ「………。それはあまり笑えないわね。」

レミィ「もう既にかなりの被害者が出ているそうなの。それで妖怪や妖精達の間でもその少女を討伐しようって輩も現れたから、更に大混乱してるみたいで……」


パチェ「まさか、館内にも被害が出てないでしょうね?」

レミリア「今のところは。でも、だからといって私達がただ傍観してるのも何だかバツが悪くて……」


パチェ「気持ちは分かるけど、巫女が動いたのなら彼女な任せておくのがいいわ。
おそらく、私達が軽く対処出来る様な案件じゃないわよ。」

レミリア「分かってるわよ。この件が例え博霊の巫女が動いたたとしても簡単にはいかないってことは。
だから、咲夜と一緒に霊夢の手助けに向かうつもりなの。」

パチェ「……。レミィ。貴方はこの館の主なのよ?たかだか里や妖怪達の為なんかに、館を放ったらして良いとでも……」


レミリア「だからこそ、貴方に館の守備を任せたいの。
美鈴一人じゃ、さすがに重荷だろうから……」


パチェ「……はぁ。全く。貴方も相変わらず身勝手ね……。」

レミリア「その返事は承諾して貰えたってことでいいわね?」

パチェ「……勝手にしなさい。」

小悪魔「……パチュリー様。あの……」

パチェ「小悪魔。レミィがあんなだから、迷惑かけるわね。」

小悪魔「いえ、私は別にこれぐらい……。」

パチェ「そう。なら、美鈴に門番を妖精達に代わらせて、館内でメイド長代理をしてくるよう伝えて貰える?」

小悪魔「え?よろしいんですか?」

パチェ「館周辺の結界を強くするわ。後は視覚的に警護する輩が居れば十分よ。門よりも館内の警護を固める方が重要だから。」

小悪魔「はい、分かりました。」

パチェ「……どのみち、その少女はここには来ないわよ。ウチには仲の良い男女なんていやしないから。
ただ、館の防衛を疎かにするわけにはいかない。」

小悪魔「心得ています。」

パチェ「……仲の良い2人の前に現れる……だったかしら。」

小悪魔「はい。私も妖精方から聞きましたけど、それはそれは仲の良いカップルの方々の前にばかりに急に現れるそうです。それで気が付いたら2人はお互いのことを嫌いになってるそうで……」

パチェ「そっ。随分限定された被害者ばかりを狙う幽霊ね。
一体何が目的なのかしら?」


小悪魔「分かりませんけど、恋仲な二人を破局させることが目的。或いは……」

パチェ「……普通、他人の恋仲なんてどうでもいいことなのにね。
その少女は何が楽しくて一々恋人達にちょっかいをかけているのやら……」

パチェ「………」

パサッ……パサッ……


パチェ「………」

パチェ「……こんな時に、良い文章なんて書けやしないわね……」




バサッ!


パチェ「……?」

パチェ「……何かしらこれ?」

パチェ「……週間雑誌?外界のもの?どうして私の図書館に……」

パチェ「……」

パチェ「……紫?貴方なの?」


『今週の恋愛運!』

『金メダリストの涙の裏側に密着!!』

『汚職まみれになるのか!?知事の金銭感覚を徹底分析』


パチェ「……こういう俗話ばかりの書物は受け付けれないのよね……」


『恋愛の縺れ?自殺した14歳の少女の部屋には沢山の魔法グッズが』


パチェ「……?」


『……若くしてこの世を去った少女、部屋で練炭自殺。その傍らには、近頃の少女の間で大人気の魔法グッズが沢山置かれていた。』


パチェ「……魔法グッズ?」

『同級生らによると、少女は1歳上の同校男子生徒に思いを寄せていた模様。しかし、男子生徒に彼女がいることを知り、執拗にその彼女に対してネットなどでの中傷などの嫌がらせを行っていた。』


『……そして、ネット掲示板に書かれていた“恋仲な二人を別れさせる魔法”なるものを実行しようとして、部屋で練炭を焚いていた中で一酸化炭素中毒になったと見られている。』


パチェ「……馬鹿ね。練炭を焚く魔法だなんて聞いたことないわ。
多分、そういった愚か者を自殺させる為の嘘ね。まんまと引っ掛かるなんて……自業自得もいいとこ。」


パチェ「……にしても、魔法グッズ?ヘンテコなのばっかりが載ってるわね。
わけの分からない魔方陣に、変な形の金属。
魔法なんて使えるわけないのに、人間ってのは全く……」

パチェ「……この週間雑誌の日付。
確か、日記に書かれてる外界の日付から逆算すれば昨日今日あたりのものね。」


パチェ「……紫。どういうつもりで私にこれを……?」




………ジン……

パチェ「……?」

パチェ(何かしら?この嫌な気配……)



………ザワ……ザワ……


パチェ「……おかしいわね。結界には何の反応も無かったのに……。
本当に瞬間移動でもしているのかしら?」

パチェ「……何の用?ここは知と歴史の宝物庫。貴方の望むものなんて何もないわよ?」




パチェ「何とか言ったらどうなの?貴方なんでしょ?噂の少女って……」


少女《………》


パチェ「……そう。私の前に堂々と姿を現すなんてね……」


少女《………》


パチェ「あいにくだけど、ここには貴方の望む様な仲良しの男女なんて居ないわ。
さっさと出ていきなさい。それとも、巫女の代わりに冥土への引導を授けてあげましょうか?」

少女《………》


パチェ「……何なの?言いたいことがあるなら、さっさと良いなさいよ。」


ガサッ

パチェ「!?
……どういうつもり?それを返しなさい。」

少女《………妬ましい……》

パチェ「……返しなさい。それは貴方には何の価値もないただの本よ。」


少女《妬ましい……妬ましい……》


ザクッ!

少女《……》

パチェ「何度も同じことを言わせないで!次は当てるわよ?」


少女《………》

パチェ(……何よ……たかが日記を盗られたぐらいで、同様し過ぎよ、私。
敵の前で変に隙を見せるわけには……)



少女《……嫌い?》


パチェ「何?」

少女《好き?嫌い?》

パチェ「“嫌い”に決まってるでしょ!」


パチェ「……!?」

パチェ(今のは……?)

少女《どこが嫌い……?》

パチェ「……意気がっているところとか、大した人間でもないくせに偉そうに文章を書いているところ、とか!」

パチェ(……何なの?私、何を言って……)

少女《彼には……どうして貰いたい…?》

パチェ「……死ねばいい。ろくな人生も送れない半端者なんか……」

パチェ(くっ……まさか、既に私はあいつの術中に……?)



バサッ

パチェ「!?」

『貴方の文章からは迷いを感じます。人生において、貴方は迷ってばかりなんでしょうね。迷って、迷って、逃げてばかり。
そうまでして、生きることに意味があるのかしら?』

パチェ(……何よこれ?いつの間にこんな文章を……。
これって私の字よね……。まさか、私がさっきまで書いていた文章……)


『……死ねばいい。今ならまだ親や知人らも貴方の死を悲しんでくれると思うわ……。』


パチェ「…………」


『貴方の戯れ言を聞くのも、冗談半分に返し文句を書くのにも飽きたの。』


パチェ「……何なの……これ……」

少女《アハハハ。ウレシイネ。》


少女《ヤット本音ガ言エタヨ。ヤット本当ノコトヲ伝エレルヨ。》


パチェ「………どういうことよ……。
私が、私が今までやってきたことは……」


少女《……嫌い。あの人なんか嫌い。》


パチェ「……私は……ただ、楽しくて……」


少女《……馬鹿みたいな文章書いてる人間って、愚かで面白い。》

パチェ「違う……違う!!私は、嫌いなんかじゃない!!!嫌いなんかじゃ……。
こんな文章はダメよ!書き換えなくちゃ!」



『嫌い』

パチェ「……何よ?どうして?」


『嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い』

パチェ「……どうして?どうして書けないの!?あの言葉を書こうとしてるのに、なんで“嫌い”になるのよ!?
どうして……あの言葉が……」


少女《……あの言葉って、何だっけ……?》


パチェ「…………」


パチェ「“嫌い”」

……何を言ってるの、私は……

何を考えているのよ?私は……

パチェ「……人間ごときに、私は何を苦悩してるのかしら……」


パチェ「何故私が人間の為にこうも苦しめられなければならない?」

パチェ「私は大魔法使い。人間なんか、山に生えてる数万の木の中の1本ほどの価値しかない……。
そんな者との交流に今までせっかく付き合ってきてやったというのに……。」


パチェ「……この愚か者が……。人間ごときが偉そうに、私に文章を送ってくるなど。ゴミを見る時間など私にはない。」


……ビリッ

パチェ「こんな本、なんの価値もない。私の宝蔵には必要ない。」


ビリッ   ビリッ


パチェ「……胸くそ悪いわね……」

少女《アハハハ。》

パチェ「……お前。私の図書館にいつまで居る気?」


少女《アハハハ。アハハハ。アハハハ。》


パチェ「……そう。燃えカスになりたいのなら、今すぐ………」




ガシャン!!

美鈴「がっ……!?」

パチェ「!?美鈴!?」


美鈴「……パチュリー様……っ!」

小悪魔「パチュリー様ぁ!!大変です!侵入者が……」



一角鬼「失礼。中々手強いチャイナ服さんだね?」


パチェ「……。鬼?」

一角鬼「へぇ~。ここが噂の大図書館ってんのかい?」

パチェ「……次から次へと、今日は面倒ごとばかり……」


一角鬼「……こんな所に居たのか。パルスィ。」

少女《………》

美鈴「……まだまだ、これからだっ!」

一角鬼「……おやおや。元気だねぇ~。んだが、悪いが稽古にはもう付き合えないよ。」

美鈴「何ぃ!?」


猫又「鬼の姐御さん!見つけたのかい!?」

一角鬼「ああ。ま~た暴れてたみたいだな。パルスィ。」

少女《………》


一角鬼「……いい加減、私達に心配かけるのはやめてくれないかい?さっさと地獄に帰ろうや。」


少女《………チッ。》



猫又「……やっぱり、かなり精神をやられてるみたいだねぇ。」

一角鬼「仕方ないな。頭殴って連れて帰るしかないようだな。」



パチェ「……私の図書館でこれ以上暴れる気……?」

ゴゴゴ……

小悪魔「パ、パチュリー様っ!?その魔法は……」

一角鬼「な、なんだ?あのお穣ちゃん?」

猫又「吸血鬼んとこの魔法使い。かなりヤバいって聞いてたけど……」



パチェ「……そう、そんなに死に急ぎたいなら……」

小悪魔「パチュリー様!!」

美鈴「うひゃ~……これはマズいって!!」




パチェ「あの世までぶっ飛ばしてあげるわ」


~続く~

【ep4.5】

フラン「……何?うるさいなぁ……」

妖精C「侵入者の様です。」

フラン「侵入者?美鈴は?お姉様は?」

妖精C「レミリアお嬢様は外出中です。美鈴様が侵入者と応戦されてる様です。」


フラン「……いや、美鈴だけじゃないみたい、戦ってるの。」


妖精C「え?」

一角鬼「おいおい?あんたの図書館を自分で吹き飛ばしちまう気かい?」

パチェ「図書館や本達には私の魔法は届かない様に陣を張ってるわ。
死ぬのは貴方達だけよ!」

少女《……クッ…》

パチェ「逃がさない!」


ガチャリッ! ガチャリッ!

少女《!?》

一角鬼「光の鎖!?お前、一体何種類の魔法が使えるんだよ!?」

パチェ「貴方が一生掛けてもたどり着かないほどの数よ!」



猫又「ヤバいヤバい!なんとかしないと……」

美鈴「待てっ!そこの猫目!」

猫又「ひっ!?あ、あたいはただ、さとり様の命令であの娘を連れ戻しに……」

小悪魔「どれだけお怒りになれれ様とも、パチュリー様は決して愚かな方にはございません。」

美鈴「侵入者とはいえ、無意味な殺生はしませんから……」

猫又「だって、あいつ!あんな凄い魔法で……」




一角鬼「……仕方ねぇな。地上であんまやらかしたら、巫女に恨まれるかもしれないが……。
妖怪の頂点に立つ種族たる者として、このまま引き下がるわけにはいかないなぁ!!」

パチェ「いい覚悟ね。私も、全力で迎え撃つわよ!!」



ゴゴゴ………

妖精B「い、今の地響きは……?」

妖精F「図書館からみたいですけど?」



フラン「……まさか、パチュリー……。」



パチェ「……はぁ…はぁ……うー…」

一角鬼「……痛ぇ……くそ……」


美鈴「パチュリー様!?大丈夫ですか!?」

猫又「姐御さん!無茶するから……」

一角鬼「痛ててて……。腕の骨がいっちまったよ……」

パチェ「……はぁ……もう無理……。体力が……」

小悪魔「あんな魔法を連発するから……」

パチェ「全く……最悪な気分だわ……」

一角鬼「くそぉ……こんだけやったら気が済んだろ?魔法使い。
悪いが、私達にもやんなきゃいけないことがあるから……」


少女《……ぁ…ぅ……》

美鈴「このお嬢さん。お二方の戦闘に巻き込まれて伸びておられますけど……」

一角鬼「そいつは助かる。さっさと連れて帰…」




霊夢「ちょっと待ちなさい!」

一角鬼「……うるさいのが来たな……」

猫又「げっ!?巫女の姐さん!」

霊夢「……全く。人里や妖怪山をはってても現れないと思ってたら、まさかこんな所に出てくるなんて……。
相変わらず、異変となるとここにたどり着くのね。」

パチェ「……博麗の巫女。貴方……」

霊夢「……さてと。鬼、そいつを渡しなさい。」

一角鬼「そいつ?……ああ、パルスィのことかい?」

霊夢「人間や妖怪達にまやかしを見せて混乱させる今回の異変の首謀者よ。博麗の者として、何のお咎めも無しってわけにはいかないわ!」

一角鬼「……悪いが、パルスィは私達、旧地獄側の者だ。彼の者の罪は私達で決め、私達で償わせる!」

霊夢「頑固な鬼ね。痛い目みないと自分達の否が分からないのかしら?」

猫又「姐さん!ここは穏便にしましょうよ!こうして暴走してたパルスィも捕まえれたわけだし……」



パチェ「いい加減にしなさい!」

猫又「!?」
一角鬼「……」
霊夢「何よ!?あんたは関係ないでしょ!」


パチェ「私の図書館でこれ以上騒がないで……」

美鈴「そ、そうですよ!こういうのは、表にでてやってくださいよ!!」

小悪魔「美鈴さん!?そんな無責任な……」


パチェ「……その少女、暴走してたって言ったわよね?」

猫又「ええ。そりゃ、あんな風に無差別に人間や妖怪を襲うなんて……」

一角鬼「パルスィのことは私もよく知っている。癖のある性格だが、こんな異変を起こす様な奴じゃなかったはずだ。」


パチェ「……。その娘、確かに言動とか変だったわ。まるで……」


霊夢「何かに操られてるみたい……でしょ?」

一角鬼「……私達もそう思っている。」

猫又「何かがとり憑いたんだよ!多分……」



パチェ「……。ちょっと、その娘の身体、よく見せて貰える?」

一角鬼「……?別に見るぐらいなら……」

パチェ「……」

猫又「?」
一角鬼「……」

パチェ「……!!この娘の手にあるアザ……」

猫又「ん?なんだろうね?かわった型のアザだねぇ。」

一角鬼「こんな変なのあったっけ?」


霊夢「それ……紫から貰った雑誌に載ってた……」

一角鬼「ん?」
猫又「え?」

パチェ「……外界で流行っている魔方陣……」

霊夢「知ってるの!?あなたも…」

パチェ「……いえ。この魔方陣はただの出来損ないよ。
でも……そうね。これは呪いか何かの様ね。」

一角鬼「呪いだと!?」

パチェ「なんの意味もない魔方陣なのだけれど、外界で多くの人々が願いを込めて使ってるうちに、その願いがこの陣に募っていったのよ。」


霊夢「なるほどね。外界ではその魔方陣、恋仲の2人を引き裂く力があるって言われてるから。
そう思って使った人々の願いがどんどん溜まって……」

パチェ「さらに、この魔方陣を使う段階で死ぬ人も居たらしいからね。
人が死ぬ時に放たれる力は微弱ながらも、募った願いらと交じり合って呪い程度の力を持つまでに至った。」


霊夢「でも、外界で人気のエセ魔方陣と、この妬み妖怪がなんで繋がったのかしら?」



一角鬼「いや、今の話を聞いたら納得したよ。」

霊夢「え?」

一角鬼「パルスィはそういう妬みの気持ちに引き寄せられる妖怪だから。逆に言えば、そういう呪いを引き寄せてしまう。」


霊夢「つまり妬み妖怪であるが故に、外界で作られた妬みらの思念体にとり憑かれた、と?」

パチェ「……もしそうなら、このアザを消せば呪いも消えるはずよ。」

一角鬼「そうか。ならさっさと消してくれ。」

パチェ「そっ。分かったわ。小悪魔、ハサミを持ってきて。」

小悪魔「はい。ただいま……」


猫又「……って、おい!消すって……あんた、まさか!?」

パチェ「アザを皮膚ごと剥ぐ。」

一角鬼「え!?ま、マジかよ……」

パチェ「……今までこの娘のやってきた行為に対する罰としてはかなり柔らかいものでしょ?」

猫又「で、でも……女の子の手の皮をきるなんて……」

霊夢「面倒だし腕ごと切っちゃえば……」

猫又「腕ぇ!?な、なら皮膚でいいから!」

霊夢「……あんた、死体とかは好きなくせ。腕とか持って帰れるのが嬉しいと思わないの?」

猫又「本体が生きてたら死体じゃないじゃんか!!」

霊夢「………。
あーあ、皮膚を切ったら異変解決なのかな?」

小悪魔「た、多分……」

霊夢「なんだ。あっけない。久々に誰かぶっ飛ばしてやりたかったのに……」

小悪魔「……あなたは本当に巫女なのですか?私の知ってる巫女とは随分……」

霊夢「ああ、それは幻想だから。巫女なんて本来、その日雇いのバイトばっかだから。」


パチェ「……それでも、巫女らしい振る舞いをきっちりするんだから、貴方よりは数倍はマシでしょうね。」


巫女「巫女は振る舞いじゃない!心で決まるのよ!」

パチェ「あっそ。」

パチェ「……あ。」

一角鬼「?どうかしたのかい?」

パチェ「切ってて分かったんだけど……」

霊夢「……?」


パチェ「このアザ、油性マジックで書いたものだわ。」





霊夢「………へ?」

一角鬼「……は?つまり……」

猫又「……うーん、と。つまり、アザは呪いで出来たのではなく……」

パチェ「……なるほど。読めたわ。」


パチェ「多分この娘、自分で手に魔方陣を書いたのよ。外界の雑誌かネットで魔方陣の存在を知ってね。」


一角鬼「……え?」


パチェ「まさか外界の魔方陣でこんな事態になるとか考えもせずに、軽い気持ちで書いたんじゃない?
だって彼女、妬み妖怪なんでしょ?」

少女「………」


少女「……こいしに教えて貰ったの。使えば男女を別れさせられるから、妬み解消になるかなって……」

一角鬼「……パルスィ……お前……」

猫又「また、こいし様の仕業ですか!?」


少女「……わ、私のせいなのかな……?」


少女「……で、でも!世の中に妬ましい輩がいるのがいけないのよ!!」


少女「バレンタインにはしゃいでチョコを食べさせ合う光景とか!公害に近いとと思わない!?」



少女「………」


少女「……ごめんなさい……」

霊夢「よろしい。」

パチェ「……疲れた。どっと疲れた。」

小悪魔「パチュリー様、お疲れ様です。」

パチェ「……部屋で休んでくるわね。もうレミィも帰ってるそうだし、後は任せたわよ。小悪魔……」


小悪魔「……え?任せたって……」

パチェ「……掃除。」


小悪魔「え……ええ!?これを1人でですか!?」


パチェ「……適当でいいから……。
全く、図書館であいつらが暴れまわるから……」



小悪魔「パ、パチュリー様だって、暴れられてたじゃないですか……」







小悪魔「……でも、パチュリー様は何をあんなに怒ってらして……」


小悪魔「あれ?何でしょうか?これ、ページの破片?
おかしいなぁ、図書館の本には防御魔方陣が張られてて、一冊も破損してなかったはずなのに……」



『貴方はいつも面白い文章を書いて私を楽しませてくれるわよね。その力、ある意味尊敬に値するわ。』


小悪魔「……あれ?これって……」


『たまに迷うことがあるのが、生きてて面白いことじゃない?貴方も生きて、私みたいに長生きすればそれに気付けるでしょうね。』


小悪魔「これって……パチュリー様の字……」


『好き』

小悪魔「!?」


『好き好き好き好き好き』


小悪魔「……な……何なの……?これ……。パチュリー様……?」

~博麗神社~


霊夢「………」


藍「ん?霊夢殿、お帰りなさい。」

霊夢「………。」


河童A「んしょ。んしょ。今日の外界からの荷物はこんだけっと……。」

河童N「ご苦労。運送班に回して。」


河童B「にとり~。また、ネット回線がこじれたぞぉ~。」

河童N「分かった!今行くから……」


天狗文「ふむふむ。今週の外界の情勢は……」

河童C「どこのテレビ局も大雪ばっか流してる。酷そうだね?」

天狗文「いや、良い映像があった!そこ、女子高生が転んだの!」

河童C「え?これ?」

天狗文「これは使える!明日の見出しは“外界。大雪で転ぶJKがパンチラ。”だな!頂きだね!」




霊夢「………」


藍「あの……霊夢殿?」

霊夢「……紫は?」

藍「はい?紫様は今眠ってらっしゃる……」

霊夢「そう。なら、話をしてくるわ。」

パチェ「………」


パチェ「……全く、こんなにもビリビリに破いちゃうなんてね……」

パチェ「……新しい日記帳を作らないと………」





~続く~

注意・小悪魔が病んデレ化します

【ep5】


パチェ「すぅ~……zzz」

小悪魔「……パチュリー様……」

小悪魔「………」

小悪魔「この文章を書いたのは、本当にパチュリー様なんですか……?」


『好き好き好き好き好き好き』


小悪魔「……こんな……こんなの……。
パチュリー様、貴方様は一体どうなされたのですか……?」


パチェ「zzz……」

小悪魔「どうして、こんな……どうして……。
なんで人間なんかに……しかも、顔も知らない相手に……」

パチェ「zz……」


小悪魔「パチュリー様……私は……私の……」


小悪魔「私はいつだってパチュリー様のお側に居るのに……どうして私なんかではなく、どこかの人間になんかに……」


パチェ「z………」


パチェ「……う……ん?」

小悪魔「……パチュリー様。おはようございます。」

パチェ「……小悪魔?……おはよ……。
……起こしに来てくれたの……?」

小悪魔「……いえ……その……」


ギュッ

小悪魔(私はパチュリー様の秘密を覗いてしまった。この紙、日記の切れ端を見てしまった。
そして、知ってしまった。パチュリー様が……人間と………。

偉大なる魔法使いであられるパチュリー様の従者として、私は……パチュリー様に警告をしないと。人間に近づき過ぎることの危うさを……)



小悪魔「パ、パチュリー様!」

パチェ「……ふぇ……?」

小悪魔「!?」


パチェ「……?」


パチェ「……って、ふぁっ!?あ……ご、ごめんなさい!気の抜けた返事をして……。
す、少し寝呆けて、頭がぼーっとしてたのよ…。」

小悪魔「は、はぁ……」


小悪魔(……パチュリー様の腑抜け声……可愛い……)


パチェ「……ごほん。んで、何かしら?」

小悪魔「……いえ。その……」

パチェ「……?」

小悪魔「……あ……その……」





小悪魔「……パ、パチュリー様!ま、また昨晩も夜更かしで研究をなさっておられたんですよね!?」

パチェ「……?え、ええ。そうだけど……」

小悪魔「パチュリー様!いくら研究の為とはいえ、あまり夜更かしばかりしていてはお身体に障ります!」


パチェ「え?何よ?いきなり……。徹夜なんていつものことじゃない……」

小悪魔「そ、それはそうですけど……。
お、お医者さんにだって生活リズムをきちんとする様に言われていますし……」


パチェ「………」

小悪魔「……」

パチェ「……貴方まで、そんな風に堅いことを言いだすのね?」


小悪魔「……私は、パチュリー様のお身体のことを……」

パチェ「……分かってる。貴方の気持ちは十分にね。」


小悪魔「……申し訳ございません。」

パチェ「……いいわよ。別に……」




小悪魔(………。

違う。私は別にこんなことを言いたいわけじゃなかったのに……。
私は別に、パチュリー様が必死になってなさろうとしていることを止めようだなんて考えていないのに……。)


パチェ「……さて、朝の読書でもしようかしら……」


小悪魔「……違うんです……。」

パチェ「え?」

小悪魔「私は……パチュリー様が……」


パチェ「……?」


小悪魔「……パチュリー様が他の人の前で、先程の様な寝呆けた可愛らしいお声を発せられては、大魔法使いの名に傷が付くのではないかと心配なのです!!」


パチェ「!?」

小悪魔「パチュリー様は偉大なお方なんです!だから、あんな声……従者の私ならまだしも、他の妖怪やレミリアお嬢様にだって聞かれてはならないものなんです!
あんな可愛らしい声では、威厳が!パチュリー様が今まで築いてきたカリスマは崩れてしまわれます!」


パチェ「………」

小悪魔「……だ、だから私は……パチュリー様には睡眠のリズムをしっかりととってもらい……その……」


パチェ「………私の声が可愛い?そんなに可愛い声だったの?さっきの私は……」

小悪魔「え?そ、それは!はい!そうです!でした!!はい!とっても可愛らしくありました!!」


パチェ「そ、そう……///」


小悪魔「……え?パチュリー様?どうかなされました?」

パチェ「いえ、なんでもないわ。
そうね……確かにあんな腑抜けた声、レミィの前では出せないわね。」

小悪魔「そ、そうですよ!」

パチェ「なるほど……貴方の言うことも一理あるわね。
まぁ、だからと言って今やってる研究を放っておくわけにはいかないから……。

でも、出来るだけまとまった睡眠はとるようにするわね。」


小悪魔「い、今すぐでなくていいんです!生活リズムはゆっくりと修正していけばいいんですから!」

パチェ「……そうね、小悪魔。」

小悪魔「はい?なんでしょうか?」

パチェ「私が寝呆けたら可愛い声を出してしまうこと、他の人には秘密にしてもらえるかしら?咲夜やレミィにも……。
その……貴方の胸の内にしまっててもらえる?」


小悪魔「も、もちろんです!分かりました!!」

パチェ「お願いね。私の威厳の為に……」

小悪魔「はい!」





小悪魔(……パチュリー様?
……貴方の威厳は……。
私の中の貴方の威厳は既に崩壊していますよ……。
パチュリー様………)




パチェ「あ、そういえば小悪魔。」

小悪魔「はい?なんでしょうか?」

パチェ「少しお使いを頼まれてくれるかしら?人里で、ノートを何冊か買ってきて貰いたいのだけれど……」



咲夜「失礼します。パチュリー様。」

パチェ「咲夜?何か用かしら?」

咲夜「新しいメイド達の面接を開始するので、是非パチュリー様にも面接官を……」

パチェ「……分かったわ。今回はどんな妖精達が居るのかしら?」

咲夜「今回はかなり個性的な種が多いようですし、妖精以外の妖怪も居ます。」

パチェ「………妖怪?妖怪が我が紅魔館のメイドになりたいと申し出てるって言うの?」

咲夜「はい。なんでも、人里近くの墓地にいたところを、お嬢様と出会われたそうで……。」

パチェ「……そうね。確かにしっかりと面接する必要があるわ。
私達を敵視するならず者達は大勢いる。そのメイド志願者妖怪が、一体どこの誰の息が掛かったスパイなのか口を割らせないと……ね。」


咲夜「……いえ。大体の素性は調べましたか、どこの勢力にも属さない“はぐれ妖怪”の様なんです。」


パチェ「はぐれ者?ということは、かなりの大物なのかしら?」

咲夜「……い、いえ……その……」

パチェ「………」

小傘「あ、あの……私は……その……」

咲夜「小傘さん。あまり緊張なさらないで。」

小傘「は、はい!え、えと~……」


パチェ「傘の妖怪……ね。」

咲夜「戦闘能力は割と使える方だと思われますが?警備部や迎撃隊に?」

パチェ「……いえ、彼女にはもっと最適な役割があると思うわ。」

小傘「私は戦闘にはあまり向いていませんし……出来れば……」

パチェ「貴方の特技は?」

小傘「驚かせることです!」

パチェ「そっ。じゃ、やってみて。」

小傘「はい!……はい?」

パチェ「だから、驚かしてみてよ。私達を……」

小傘「いや……その……驚かされるって既に分かってる人を驚かすのは……ちょっと……」

パチェ「いいから。んで?どうするの?目でも飛び出るの?」

小傘「そ、そんなグロいことはしません!ただ……相手の背後から忍び寄って……驚けーっ!!って……」


パチェ「………子供騙し……。ピッタリね。あの子が喜ぶわ。」

咲夜「子供……。パチュリー様?まさか小傘さんを……」


パチェ「傘妖怪をこの館に招いたのはレミィなんでしょ?彼女が何故そんなことをしたのか、この妖怪を見てて何となく分かったわ。
恐らく……レミィも最初っから、そのつもりだったのよ。」


小傘「……?」



~続く~

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom