上条「上条当麻。何でも屋だ!!」 (338)
上条さんチートssです。
大好きでたくさん上条チート系読んできたのですが、
自分でも立ててみました。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391362923
御坂「不良を守って善人気取りか、熱血教師ですかぁ?」
上条「御坂っ!?」
御坂「あ、あんた!なんで私の名前知ってんのよ!?」
上条「はぁ…?お前何言って――
上条「え…、このやりとり…」
困惑する上条の脳内に、ひとつの仮説が生まれる。
あまりに非現実的ながらも、『一度死んだ』上条にとって、
一瞬でその仮説が浮かび上がるほどには現実味を帯びている仮説だった。
上条「今日って何年何月何日だ?」
御坂「…○年七月十九日よ」
御坂「とぼけて勝負を有耶無耶にしようたって――!!」
上条「どういうことだ!?上条さんは確かに死んだはず」
御坂「って聞いてんのかゴラーーーーー!!」ビリジリビリジリリリビリビリ
上条「どういうことだ…」パキーン
それが人を殺せるレベルの電撃であったのにもかかわらず、上条はそれをまったく見もせずにかき消す。
御坂「…ltsい」ギリギリ
しかし、それが逆に超電磁砲を刺激する結果となってしまった。
そもそも、彼女がこの男に勝負を挑むのにはそれなりの理由がある。
学園都市においてレベル5は最高位の能力者であり
その力を有する彼女は、今までにおける戦闘で誰かに負けたことなどない。
それが自分と対等である超能力者ならまだ理解できるだろう。ただし、対峙している男は全くの無能力者だったのだ。
努力で第三位という序列に登りつめた彼女にとって、ぽっと出の無能力者にいとも簡単に自分の能力をあしらわれることは不可解、かつ、屈辱の極みであった。
さらに相手の男は御坂に対して一度も攻撃を仕掛けてこない。
そのことが、まるで手加減されているようで御坂を余計に刺激していた。
上条「やっぱり――ここは過去の世界」
御坂「っ!随分余裕みたいね――っ!」ジリジリビリビリズシャーーー
上条「現実に起きているせいか不思議と疑問もない」パキィィン
上条「一度死んだからって…こんなこと…」
上条「都合のいい夢…?」
上条「だったら、もう一度!夢でもいいから――」
上条「人生をやり直す!!」
御坂「あんた…正気なの?」
上条「じゃあ、上条さんは忙しいのでこれにて――!!」ダダダダーーー
御坂「あ、ちょ―――!」
御坂(何?人生やり直すって…?)
御坂「電撃浴びすぎて頭どうかしちゃったのかしら…?)
上条当麻は夜の学園都市を奇声を上げながら駆け抜ける
上条「ッエーイ!」
はたから見れば頭のおかしな男子高校生に見えただろう。
しかし、その瞳の奥には確かな炎が燃えていた。
上条(俺の人生は不幸と失敗の連続だった…!)
上条(これから人生をやり直したって、きっと不幸な目には相続ける)
上条(でも―――)
上条(いい)
上条(上条当麻はそれでいい)
上条(この右手をもって生まれたことを恨みながら生きてきた)
上条(俺はこの――夢か幻かさえわからないこの世界で)
上条(一人でも多くの人間を救ってやる!)
上条(皆の不幸は、俺が全てあの世へ持って行ってやる!!)
一度目の投下は終了。早いペースで投下する予定です。
現在進行形で淡々と書き溜めてるので。。。
時系列はめちゃくちゃだと思います。
ご都合主義になりがちな点もあると思いますが
暖かく見守ってくれると嬉しいです!
寝る前に少しだけ投下
第一話 赤髪の神父を救え
翌日 とある男子寮
上条「ステイルや神裂から聞いた話だと…」
上条「日付があってるならインデックスと出会う日は今日のはずだよな…」ソワソワ
上条「インデックスとはどうやって…」スタスタ
上条「布団干すか…」ヨッコイセ
ガラガラ
上条「」
禁書「お腹へった」
上条(こんな出会い方したのかよ俺!!!)
上条「いんでっ――――!!」
上条「いい天気でっす!!」アタフタ
上条(未来知ってるとこいつにバレるのは面倒だよな…)
上条「だ、誰だお前―!ひとんちのベランダで!」
禁書「お腹へったって言ってるんだよ?」
上条「食い意地は初対面のときからかよ…」
禁書「ねぇ!お腹いっぱいご飯を食べさせてくれるとうれしいな!」
上条「そ、そうだな。飯にするか」
上条(昨日雷落とされなかったせいか…冷蔵庫の中は生きてる!!)
上条(これで第七学区の大半の過程を停電から救えた…!!)
上条「とりあえず、なんか軽く作ってやるよ」
禁書「親切な人だね」
――――――――
―――――
――
上条「お前、名前なんて言うんだ?」
禁書「わたしの名前はインデックスっていうんだよ」
上条「そうか、インデックスっていうのか」
禁書「あ、魔法名はDedicatus545 献身的な子羊は強者の知識を守るって意味だね」
上条「ふーん」
禁書「ありがとう!美味しかったんだよ!」
上条「ああ、お粗末さま」
上条(今日の補習は…まぁサボるか。仕方ねえし)
上条「んで、そのインデックスさんはなんでベランダなんかに?」
禁書「逃げてきたの。魔術結社から」
上条「なんで狙われてるんだ?」
禁書「わたしの持ってる十万三千冊の魔導書が狙いかも」
上条(こうして俺とインデックスは出会ったのか…)
上条(この穀潰しともお別れだと思うと…すこし寂しいもんだな)
禁書「聞いてるのかな?」
上条「ああ、聞いてるって。でもその魔術師も、その魔導書が狙いってわけじゃねえのかもしれないぜ」
禁書「それはどういうこと?」
上条「そいつらにも…なにか言えない事情があるのかもな(遠い目)」
禁書「…」
禁書「なにも知らないのに…あなたの言葉にはどこか説得力があるかも…」
禁書「いつまでもあなたって呼ぶのは他人行儀だね」
禁書「あなたの名前は?」
上条「上条当麻だ」
―――――――
――――
―
禁書「わたしはもう行くね」
禁書「いつまでもここにいると、連中ここまで来そうだし」
禁書「とうまだってこの部屋ごと吹き飛ばされたくはないだろうしね」
上条「おい、待てよ――」スッテンコロリン
禁書「その右手、幸運とか神のご加護とか、そういうものまとめて消しちゃってるんだと思うよ」クスクス
禁書「何が不幸かって、そんな力を持って生まれてきたことが不幸だよね」
上条「…かもな」
少し目を伏せた先に、父刀夜が送ってきたのであろうオカルトグッズが映る。
上条「でも俺はそうは思わない」
上条「確かにお前のいうとおりだ」
上条「でも、この右手がくれたものも大きかったから」
一生涯を振り返る上条の顔が、禁書目録にはひどく儚げに見えた。
上条(いまだってもう一度)
禁書目録はこれ以上少年を巻き込みたくないと思った。
禁書「…行くね」
上条「待てよ!」
だから、このお人好しがすぎる少年が諦めてくれるように、とどめの一言を告げる。
禁書「じゃあ、わたしと一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
上条「…」
途端、上条の顔が一気に曇る。
久しぶりに触れた人の暖かさを胸にしまうようにして、禁書目録は部屋を後にする。
ステイル「見つけたよ禁書目録」
赤髪の神父と対峙し、インデックスがバツの悪そうな表情をする。
いくら歩く教会が守ってくれるとはいえ、追いつかれては意味が無いのに。
たった今巻き込むまいと誓った少年の部屋を出たばかりだというのに。
きっと彼は自分を助けようとするだろう。
少し話しただけでそう思わせる魅力と呼ぶべきものが、彼にはあったから。
禁書「ここは関係ない人間がいるから…」
ステイル「では大人しく投降してくれるのかな?」
禁書「…わかったんだよ」
上条当麻は静かに怒っていた。
事情を知ってる身からすれば、どんなに悲惨な光景なんだろう。
ステイルはインデックスを禁書目録と呼んだ。
彼女が記憶を失う前は、互いをなんと呼んでいたのだろうか。
彼女を救うと決めた彼は、一体どれだけの涙をのんで敵のふりをしているんだろうか。
怯えるインデックスを見た彼は、何度自分の無力さを嘆いたんだろうか。
『じゃあ、わたしと一緒に地獄の底までついてきてくれる?』
なにも知らない彼女は、一体どれほどの重荷をその小さな身体で…。
こんな間違った幻想は――
上条「待てよ、魔術師」
ステイル「なんだ、いたのかい?」
ステイル「悪いが、邪魔はしないでくれるかな」
ステイル「邪魔をすれば、君を灰にしなければならないんでね」
上条「インデックス!!」
禁書「?――――ッ!!」トテッ
振り返った彼女の鳩尾に、上条の拳がめり込む。
ステイル「!!」
一部を目撃した親父の目には焦り、そしてしずかな怒りの色が見て取れた。
上条「どうした魔術師、お前はこの子を狙ってる悪い魔術結社なんだろ?」
ステイル「…」
本心とは裏腹に、彼は悪役を演じなければならない。
上条「でも安心しろ。痛みを感じさせずに気絶させるくらい朝飯前だ」
ステイル「わからないな…君はこの子を助ける騎士のような立場だと思っていたんだが」
上条「前は偉そうに説教なんかしたんだろうだけどな…」ボソッ
ステイル「?」
上条「それはお前のほうなんじゃねえのか」
ステイル「!!」
上条(――できることなら、もっと以前に戻れればよかったのに)
上条「なぁ魔術師、悲しいな」ツー
ステイル「何を言って――(涙!?)
上条「もう一人も呼んでくれ。話し合いで解決したい」
ステイル(神裂に気づいている!?)
ステイル(…)
ステイル「いいだろう」
―――――――――――――
―――――――――
―――――
――
上条の部屋
神裂「…神裂火織と申します」
上条「上条当麻だ」
神裂「禁書目録はステイル、あなたが?」
上条「いや、俺が眠らせた」
神裂「…」
神裂「どうしてわたしに気づいたのですか?」
上条「学園都市には不思議な能力が山ほどあるんですのことよ」
ごまかすように、上条は言う。
神裂「…」
ステイル「それで、君の目的は?」
ステイルが切り出した途端、魔術師側の空気が一変する。
上条「本当のことを話してくれ」
神裂「!!」
ステイル「…本当のこと?」
上条「ああ、お前らがこの子を狙う本当の理由だ」
神裂「ステイル…あなたまさか」
ステイル「いや、僕からは何も」
上条「…お前らが好きでこの子を狙ってないことくらいわかる」
神ス「!!」
上条「目を見ればわかるさ」
初めて彼らと出会ったとき、はたして自分は気づいてあげられたのか。
敵対の意思なく無邪気に眠っているインデックスを見る――敵であるはずの彼らの目が、優しく、憂いを帯びたものであることに。
ヒントはこんなにもあったのに。
神裂(ここまで見越してこの子を眠らせたのか…)
神裂「いいでしょう。お話します」
ステイル「…」
歩く教会ェ…
――――――――――――――
――――――――――
――――――
上条「良かったなインデクス…お前を追い回していた魔術結社の奴らは…」
上条「仲間思いの優しい奴らだったよ」
神裂「なにを―――
禁書「うん…そうだったんだね。かおり、すている」
ステイル「インデックス!?」
彼女を前にして、驚愕のあまり外面を忘れたステイルが叫ぶ。
禁書「ごめんね。最初から聞いてたんだよ」
神ス「!!」
ステイル「いつの間に目が覚めたんだい!?」
上条「ああ、あれはふりだ」
禁書「いきなりでびっくりしたけど、とうまの指示に従って正解だったね」
上条「だろ?」
神裂(この少年…一体どこまで見越して…)
右手で殴る→いやん
左手で殴る→歩く教会発動
どっちで殴ったんだ……?
ステイル「い…インデックス」
禁書「ごめんね…かぉぃ…スティゥ…」ボロボロ
禁書「わたしのために…辛い思いを我慢してたんだね…」
ステイル「(´;ω;`)ブワッ」
神裂「(´;ω;`)ブワッ」
ステイル「謝るなら僕達の方さ…そうだ…記憶を消すたびにもっといい思い出を一緒に作ってやればよかった…」ボロボロ
神裂「結局わたしたちは…あなたの笑顔が辛くて…自分たちの臆病のつけをあなたに押し付けていただけだった…」ボロボロ
禁書「うん。きっといい思い出を作って…ううん作ろう」
禁書「だから、記憶を消すのも怖くないよ…」
ステイル「インデックス…」
神裂「…」
やっと分かり合えた喜びもつかの間、神裂の表情は曇ったまま。
もうわたしたちは彼女と別れなければならないのか…
この思いと向き合うのが怖かっただけ。そう気づけたのに彼女の旨を渦巻く悔しさは微塵も晴れない。
上条「大丈夫だ」
禁書「…なにが大丈夫なのかな?」
上条「神裂、ステイル下がっていろ」
神裂「一体何を!?」
上条「インデックス」
禁書「なにかな?とう――っ!?」
振り向き呼びかけに応えた少女の小さな口に
少年の指が突っ込まれる。
ステイル「っ!?」
パキィィィィン
上条「よし…」
右手を抜き、立ち上がる上条にステイルが掴みかかるも
インデックスんの姿を見た途端、ステイルの腕はだらしなく垂れ下がる。ぐてーん。
あれ、記憶ないのに喉の奥ってわかったん?
>>28 >>30
えっと、左手で殴ったふりをしたんです。
歩く教会のことはわかってても実際に倒れたインデックスを見てステイルが動揺したってことなんですけど。
科学の街はわからないことが多いので。
強引すぎましたかね苦笑
わかりにくくて申し訳ないです。
>>33 しまった…。どうしよう…
あれだよ記憶失った後ステイル達が色々教えてたシーンあったじゃんその時知ったから覚えてることすればいいんだよ
うん俺はそうした
>>33 インデックスから聞かされていたということで脳内補完いいですか?
どちらにせよ身体の何処かにっていうのはわかったので、歩く教会破壊しなくてすみますし…
今度からしっかり見直すようにするので大目に見てくださいm(_ _)m
>>37 名案です。
ほんと次から気をつけますm(_ _)m
今投下したのは昨日の分です
描き溜め進めてるので次の投下は今夜中です。
きりがいいんですけど、内容めっちゃ少ないからsageで投下します
ステイル「上条当麻…一体何を…」
上条「清教側がつけた首輪を破壊したのさ…」スッ
何かに備えるように、上条当麻は立ち上がる。
『前世』で聞いた話と重なり、少年はこの中で唯一正しく状況を理解していた。
これからこの部屋で起こるであろうことを含めて。
神裂「首輪…?」
禁書「警告。第三章第二節。第一から第三までは全結界の貫通を確認。再生準備、失敗。……エトセトラ」
禁書「侵入者を破壊します」ジュウィィィィン
バシュゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
インデックスから発せられた光の柱が上条を襲う。
迎える上条もとっさに右手を構える。
上条「うぐっ…」パキィィィィン
ステイル「ま…まさか…」
神裂「なんであの子が魔術を…」
上条「インデックスが魔術を使えないなんて教会が嘘ついてただけだろうが!」
神ス「!!」
上条「ああそうだ。インデックスが一年おきに記憶を消さなきゃならないってのも大嘘だ!」
上条「こいつの頭は教会の魔術に圧迫されてただけなんだ!」
振り返らなくても、二人がどんな表情をしているのか少年にはわかる。
いったい自分たちは何をしてきたのか。なんのために…
だからこそ少年は許せない。
人の心を利用する下卑た手段を…
上条「そいつを打ち消しちまえば、もう記憶を消す必要なんてなくなる!!」
ステイル「だがっ…そんなことは!」
上条「俺の右手で触れれば一発だ!」
上条「禁書目録なんて…残酷な役目をこいつに押し付けやがった奴らが…お優しくてめぇらに本当のことを話すわけ無いだろ!」
禁書「セントジョージの聖域は、侵入者に対して効果が得られません…別の術式に切り替え、侵入者の破壊を継続します」ビーーーーン
上条「うぐぁぁっ」ギリギリ
一層出力を上げた光の柱に、万能なはずの右手も押され始める。
上条(これなら…!!)
ステイル「曖昧な可能性なんていらない…あの子の記憶を消せば、とりあえず助けることはできる」
ステイル「僕はそのためならだれでも[ピーーー]。いくらでも[ピーーー]」
ステイル「そう決めたんだ…ずっと前に」
上条「…」
こんなにも少女を大切に想う男が、苦しめられている。
大丈夫、一度目は成功とはいえなかったけど、今なら――
上条「神裂!!インデックスの足場を狙え!」
神裂「!!」
上条「この攻撃を空に飛ばせば隙ができる!!」
神裂「はい!」
神裂「Salvere000」
神裂のワイヤーが上条宅の畳を遠慮なしに引っぺがす。
上条「これで!やっと!」
光の羽の降るなか、少年は嬉々として少女の元へ駆ける。
神裂「これは…竜王の殺息!!伝説にあるセントジョージのドラゴンの一撃と同義です」
神裂「それにたった一枚でも触れてしまえば大変なことに…!」
上条「任せろ!避けるのは得意だ!」
不幸で塗り固められてきた少年の人生において、避けることはもう生活の一部と化していたのだ。
上条(まずはインデックスを――!!)
上条「っ!!」パキィィィン
右手が少女の額に触れた瞬間、魔術を打ち消す効果音。
それは、少年の背後に佇む二人の魔術師――あるいはもっと大勢の人々の戦いの終わりを告げる音だった。
上条「ふたりとも外へ!」
頷き、二人の魔術師が部屋の外へ出る。
少年は少女を抱え、二人の後を、器用に羽の雨をくぐり抜けながら進む。
ハッピーエンドになることができないこの戦いでも、未来を生きていけばいつかは思い出となり
二人の心の傷は、少女の笑顔を見る度に癒やされていくだろう。
その度に訪れる後悔も、この笑顔を必ず守る――そう強く思えばそれでいい。
きっと彼らはそうしないけど、少年は二人に自分たちを誇ってほしいと思った。
こんなに仲間を思いやることができる人間なのだから。
腕のなかで眠る少女の顔は微笑んでいるから。
彼らならきっとこの子の幸せを守っていけるだろう。
彼らにはその覚悟と力が伴っている。
…あと財力だ。
少女の食欲を満たすのは、後ろを走る少年にはすこし荷が重い。
戦いを終えた少年の表情は晴れやかだった。後に部屋の惨状を見るまでは。
ここまできりがいいので。
禁書目録をステイルに引き渡した場合どうなるんだろうか…
思慮が足りない>>1はそこで悩んでいます。
乙
インデックスは
風斬とか打ち止めのウイルスとか学園都市にいないと不都合が多くないか
あ、あと>>43にもあるようにみさきち達に救いはないのですか?…ついでにヘタ錬も
この世界線のステイルは上条と仲悪くないと思うから上条を信頼してインデックスを預けるという形でいいんじゃないそれでステイルは二人に会うためによく学園都市に来るみたいな
>>57 みさきちと上条さんは以前知り合いだったような感じしますけど、確定じゃないんですよね?
このssではあとで出そうと思えば出せるので出してもいいですよ
>>58 ようし、それでいきましょう!採用にします。
ではそれで書き溜め進めます。
先まで出来てるんですが、きりがいいところまで投下します。
騒動から三日後。
イギリスで楽しく暮らすと思っていたインデックスは、以前と変わらず俺の部屋に居座っている。
なんでも、ステイルたちが清教側に自分たちを騙していたことの説明を求めたらあっさり現状維持ということになったらしい。
ステイルと神裂は転々とした生活をおくることになるようなので、うちで預かってくれないかと頼まれた。
インデックスは二人と一緒にいたいと少々渋ったが、度々ここに来てごちそうするという約束を取り付けると喜んで手を振った。
結局彼女の最優先事項は食欲にある。
シスターにあるまじき信条に少々げんなりしつつも、清教側から送られてきたインデックスの生活費にはさすがの上条さんも大手を振って喜ん
だ。
他に以前と変わったことといえば、あれからまだ三日だというのにステイルから既に三通もの手紙が来ていることくらい…。
第二話 鮭弁を吹き飛ばしたら死亡フラグ
場面はとある路上
上条当麻は焦っていた。
少年の頭には、ある実験の記憶が蘇っている。
学園都市最強と最弱がぶつかり合ったあの事件のことを、上条当麻はまだ鮮明に覚えていた。
脳裏によぎるは実験動物として今まさに学園都市の食い物にされている妹達。
そして学園都市最強の少年。
実は毎晩探しまわっていたのだが、いかんせん実験場所は毎度変わっているらしく、未だ発見には至っていない。
こうして昼間も外に出て探しまわっているのだが、誰一人見つけることが出来なかった。
上条(足で探すのは無理があるか…)
前世の上条当麻がこの実験のことを知るきっかけになった出来事はまだ起こらない。
御坂美琴はまだ何も知らないだろう。
何も知らずに今も中学生としての日常を歩んでいるはずなのだ。
だからこそ…一人でも多く救える今だからこそ。
上条「…なにか行動を起こすしかないか」
さすがは二周目の人生。
焦っていても冷静さは失わない。
上条はこのまま一人で探し続けても埒が明かないと考えた。
裏情報をいち早く手に入れられることを―――。
何気なく辺りを見渡すと、大勢の人が集まっていた。
学園都市観光に来たとおぼしきマイクロバス。
クレープの販売車には女子中学生が並んでいた。
上条「こうしてみると平和な街だよな…」
すこしだけ、心に余裕を持つことが出来た―――
のも束の間。
ドゴォォォーーーーーーン
激しい爆音とともに、目の前の銀行のシャッターが爆発した。
同時に、向かい側から歩いてきた女性のコンビニ袋が爆風で飛ぶ。
袋から出て道路にぶちまけられた鮭弁当がなんともシュールである。
上条「……平和な街でもないな」
サッと辺りを見渡すと、大勢の小学生が目を丸くして爆発に注目していた。
上条(人質を取られると厄介だな…ここは俺が)
少年のやわらかな表情が急に引き締まる。
強盗A「おら、グズグズすんな!さっさとしねえと―――
白井上条「「お待ちなさい(待てよ!)」」
麦野「待てやゴラぁぁぁぁあああぁぁぁ!!」
白井「!?」
上条「え?」
??「あぁ?」
この二人、片やレベル4のテレポーター。片やレベル5の暴れん坊である。
白井「風紀委員ですの!!…あなた方は下がっていてくださいまし。
これは風紀委員のお仕事ですの」
上条「お前ならなんとかなるかもしんねーけど、周りには小学生がたくさんいる。
人質取られたらおしまいだぞ」
??「小便臭ぇガキはどいてろ、お仕置きの時間だこらぁ」
白井「わたくしを知っていましたの?」
上条「あ、いや、その…」
白井「とにかく一般のかたは下がっていてください!」
白井「器物破損、及び強盗の現行犯で拘束します」
??「無視してんじゃねええぞ」
上条「弁当くらいでキレんなよな…」ボソッ
見れば、先ほどの爆発でコンビニ弁当を飛ばされた女性だった。
麦野「なんか言ったか、てめぇ」
余計なことを言ってしまいました。
すみません。
名前が麦野だったり??だったりブレてますね。
見なおしたんですがいかんせん眠くて…申し訳ないです。
>>1はドロンします
今夜23時半に投下します。
了解
時に>>1さん、本人かどうか確認しづらいのでコテか酉の利用を検討していただけると助かります
>>85
そうですね!
では今回からこのコテで行くので覚えておいてください~
ご忠告痛み入ります。
投下ー
初春「警備員の要請終わりましたけど…」
佐天「なんかだいぶおかしなことになってますね…」
少女たちが目を向けた先には、強盗を撃退すべく先行した黒子が通行人に絡まれている姿があった。
御坂「あ、あいつ!」
佐天「え、知り合いの方がいるんですか?御坂さん」
御坂「ちょっとごめん!わたしも行ってくるからっ!」
御坂はそう言い残してかばんを放り出し、騒動の中心へと駆けていった。
初春「え?一体どうなってるんですか?」
佐天「さ、さぁ…」
一方、銀行前では―――
麦野「なんか言ったか短小野郎」
上条「女の子がなんて下品な!」
強盗を前にして、危機感の全くない通行人達が口論を始めていた。
強盗C「おいやべぇぞ…はやくしねぇと警備員がっ!」
目の前の風紀委員の容姿から、子供だからといって舐めきっている強盗の脅威の対象は、
まだ見ぬ警備員だけだった。
しかし、強盗は知らない。
目の前に立つ少女が、訓練を受けた大能力者だということを。
強盗B「どかないとケガすんぜ」チャキ
三人組の中央にいた男が、懐からナイフを取り出し風紀委員の少女に襲いかかる。
あわてて前に出ようとする上条を、少女は右手で静止する。
白井「だからここは風紀委員の仕事だと――
強盗B「そんななめた態度とってると痛い目みるんだよおおお!」
腰の位置に刃物を構えた男が、少女の懐に潜り込む。
勝利を確信した男だったが、次の瞬間には仰向けで気を失っていた。
強盗C「一体何をしやがった!」
強盗A「チッ…テレポーターかっ!」
白井「安心なさいな。全員この場で拘束しますの!」
正義感に実力を伴う少女の声が、強盗たちの焦燥感を煽った。
御坂「見つけたわよ!あんた!」
突然の一声に、麦野沈利と上条当麻が振り向く。
現在二人は白井の後ろに控えており、麦野は上条と口喧嘩をしながら目の前の強盗を
上条は強盗と子どもたちの動きを気にかけていた。
麦野(こいつは…第三位か?)
上条「御坂!なんでこんなとこに?」
御坂「友達と遊んでただけよ!そしたらあんたが見えたから」
上条「今お前と遊んでる暇ねえんだよ」
御坂「それくらいわかってるわよ!」
常識のない少女も、さすがに強盗を前にして襲ってくる気はないらしかった。
麦野(チッ…風紀委員がいたんじゃ強盗は消せないか…)
麦野(舐めた口聞くこのバカもぶち殺してぇが人目につきすぎる)
麦野(こいつ超電磁砲の男か?)
三人が各々別の思考をしている隙にも、風紀委員の少女は二人目の強盗を沈めていた。
二人目の強盗がリーダー格の強能力者だったこともあり、少女は無意識に三人目の強盗を視界から外していた。
白井(もう一人が――)
白井「しまった!!」
少女が振り向くと、強盗はバスの方向へ走っていた。
先を目で追うと、逃げ遅れた子供が座っているのが見える。
風紀委員の少女と常盤台の超電磁砲が油断していた中、この動きを察知し行動していた人間が二人居た。
一人は超能力者である麦野沈利。
普段から死と隣合わせの日常に身を置く彼女には、周囲と違う動きを察知する能力が備わっていた。
その能力は、ほぼ無意識に身体が反応するほどである。
治安維持に手を貸す口実で弁当の復讐に足を焼いてやろうと思案した彼女から
発光体がレーザーのように強盗の足元へ飛んで行く。
麦野「!!」
しかし、彼女の原子崩しが強盗の足を焼くことはなかった。
驚いた彼女が目を凝らすと、誰もいない地面が音を立てて溶けているだけだった。
すぐ隣には、原子崩しから強盗を守ったツンツン頭の少年がいた。
麦野沈利の目が驚愕に見開かれる。
あろうことかその少年は、暗部所属のこの女に気取られることなく動き、目の前の強盗を救ってみせたのだ。
つまり、この少年は女より早くこの強盗の動きを察知し、強盗を追いながらも後ろを警戒していたことになる。
一体どれだけの死線をくぐればここまで洗練された行動が取れるのか―――
麦野(こいつ…)
まただ…
少年は横目に溶けだ地面を見ながら、先ほどの行動を省みながら思う。
動き出した強盗が、子供を人質にするであろうことは予想していた。
だからこそ、少年は一番に反応することが出来た。
瞬時に追いつき、強盗の右側から殴りかかろうとした瞬間、固く握っていた少年の右の拳が急に後ろに引っ張られた。
―――まるで、右手に別の意思があるかのように。
右手の引く力が思いのほか強く、身体ごと後方に投げ出される。
少年は男を逃がさないよう咄嗟に左手で男の襟つかんだため、彼も上条に引っ張られる形で原子崩しから免れた。
少年はこの妙な感覚に覚えがあった。
それは少年の前世の記憶。
死にそうな窮地に合うと――激しい怒りに震えると、右手が躍動し、あるときは右手が勝手に動く。
またある時は、右手から得体のしれないオーラが溢れ、竜の頭のような形をとった。
魔術師である神裂火織がそれを竜王の顎と呼んでいたが、当の本人である少年が意識して使えた試しがなかったため、
その存在を忘れかけていた力だった。
白井「ご協力、感謝致しますの」
考えにふけっていた少年の意識を、少女の声が現実に引き戻しす。
あわてて左手に掴んだ男を見れば、地面に頭を打ったらしく昏倒していた。
上条「いやぁ、とっさに手が出ただけだよ。協力なんて全然」
御坂「フン!あんたにしてはやるじゃない」
上条「お前は俺をなんだと思ってんだよ!」
これ以上関わって面倒事に巻き込まれても厄介なので、少年はこの場を後にすることにした。
上条「じゃあ、騒動も済んだみたいだし俺は行くな」ヒラヒラ
白井「ありがとうございました」
類人猿と蔑まれてきた前世と比べると、いくらかましになった対応が微笑ましい。
失神した強盗を避けて歩くと、足元を未知の感覚が襲った。
ぐちゃり。
上条「…」
おそるおそる足元を見ると、お姉さんの鮭弁当『跡』が顔をのぞかせていた。
鮭弁当「やっちゃったね」
今度はゆっくり後ろを振り返る。
麦野「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」
上条「きゃーかわいい」
蒼白な顔でつぶやく。
助けを求めようと風紀委員の方を見ても、事件の処理に追われているらしく
こちらをチラリとも見やしない。
全身に冷たい汁が流れた。
いくつもの修羅場を乗り越えた少年に備わった第六感が、全力で逃げろと告げている。
上条「だぁぁぁぁぁああああっ不幸だあああああああああああ」
闘争本能ならぬ逃走本能をむき出しにして逃げる。
少年にとって不幸だったのは、一般人に迷惑をかけるまいと人気のない路地裏に逃げ込んでしまったこと。
追ってくる女の火に油を注ぎ、さらには現況の弁当を踏みつぶしてしまったことだろう。
麦野「逃すかあああああああああ!」
序列はしたでも脅威は上。
第七学区某所 ここに命がけの鬼ごっこが開幕した。
ここは第七学区のファミレス
そこには、待ちぼうけを喰らう三人の少女達の姿があった。
フレンダ「麦野まだなの~?」
絹旗「さすがに遅いですね。超面倒事にでも巻き込まれてるんでしょうか?」
フレンダ「結局麦野なら一瞬で片付けちゃうからそれはないと思う訳」
滝壺「…近くにいる」
絹旗「拡散力場で捕捉したんですか?」
フレンダ「どのくらい?」
滝壺「すごい速さで移動してる。自転車並の速度。約500m先」
絹旗「麦野が自転車全力漕ぎって…」ププ
フレンダ「すごい絵になる訳よ」ププ
フレンダ「ちょっと見に行ってみよう!」
絹旗「でも麦野には麦野のプライベートがありますし…超悪いんじゃ」
フレンダ「たまたまとおりかかったことにすればいいじゃん!」
絹旗(いざとなったらフレンダのせいにすればいいですね)
滝壺(ふれんだに無理やり連れて行かれた…)
何も知らない一人を除く二人の少女は同じことを考えていた。
あれから15分が経過した。
追いかけられ慣れている少年からすれば、こんな長時間粘ってくる鬼は相当しつこい。
普段からスキルアウトや不良やらにしょっちゅう追いかけられているが、連中がこんなに粘ってくることはない。
ここまで逃げても追ってくるのは、常盤台のお嬢様くらいのものであった。
さらに追ってくる女は身体能力が異常に高い。
曲がりくねった路地裏でも少年に離されることなくついてくる。
道中にあったゴミ箱や廃棄物で道を塞いでも足止めが効かない。
おそらく彼女の能力に関係しているのだろうと、背後から飛んでくるビームを避けながら少年は推察した。
この破壊力はおそらく超能力者クラス。
途端、一気に道が開けたかと思うと、目の前には河原が広がっていた。
上条「逃げ場を失った!?」
なにせこの道は咄嗟に逃げ込んだだけで、少年のテリトリーというわけではないのだ。
麦野「観念しやがれ童貞野郎ぉぉ!」
そう叫ぶやいなや、女の周りに複数の光の球体が生成される。
上条「まさか…」
麦野「死ね」
女の周囲に浮遊していた発光体が形を変えて、次々と少年に襲いかかる。
しかし、少年の顔に苦笑は見えても、焦りは全く感じられなかった。
襲ってくるビームを、半身を逸らしてかわし、足を上げてかわし、横に飛んで交わす。
左右から死角に迂回して飛んで行く原子崩しも、まるで飛んでくる場所がわかっていたかのように前転して交わす。
麦野「チッ…やっぱ能力者だったか」
上条「いやぁ――上条さんは歴とした無能力s――
言い終わらぬうちに、複数の光が上条へと伸びる。
テンポよく攻撃をかわしていく少年に、休むまもなく次の原子崩しを放つ。
麦野「今度はそう簡単には避けらんねえぞ!」
きりがわるいここで終了です(ゲス顔
フレンダ「ぜぇ…はぁ…滝壺!まだな訳?」
前を走る二人に遅れ、息を切らしている金髪碧眼の少女、フレンダが問う。
滝壺「ううん、もうすぐそこ。そこで止まってる」
絹旗「まったくフレンダは超フレンダですね」
フレンダ「人の名前を悪口みたく言うのやめて!?」
絹旗「滝壺さん、先に行きましょう」
滝壺「うん。じゃあねふれんだ。応援してる」
フレンダ「それってほんとに応援してるの!?」
フレンダ「ちょ、ちょっと待って!」
少女フレンダが前に佇む二人に追いついた時、麦野が見知らぬ少年と交戦しているのが見えた。
滝壺と絹旗は、目を丸くして絶句している。
ちらっと見えた男が殺されたのかなー
そう思ったフレンダが視線をずらした先には、麦野にとどめを刺そうとしている少年の姿があった。
対する麦野は、苦しそうに顔を歪めるだけで全く原子崩しを放とうとしない。
フレンダ「嘘…」
少女にとっては無敵の存在、麦野沈利が――
どこの誰ともしれない男に敗北した。
ちょっと前 河原
ほんの前まで軽快なフットワークで原子崩しを交わしていた少年の足が止まる。
少年の突然の奇行に驚くも、一度麦野を離れた原子崩しの軌道は制御できない。
とはいっても、軌道を変えてあげるつもりはさらさらないのだが。
これは、いかに反射神経が良くても交わすことは出来ない。
警戒心の強い麦野沈利に勝利を確信させるほど、少年には無数の原子崩しが伸びていた。
麦野(観念したのかしら…)
一向にその場を動こうとしない少年の心理を、麦野沈利はそう解釈した。
さぁ、どうする。
少年は、さっきまで全く頭になかった考えに身を委ねていた。
急に、ふと思いついた、愚策としか思えない考え。
この考えに思い至ったのは、最初に女の原子崩しを免れた時のことが強く印象づいていたからだろう。
この先――どんな強敵に遭うかわからない。
そういう茨の道を進むことを、少年は決意していた。
だったら――いままでと同じじゃだめだ。
すこしでも可能性があるなら、もっと強い力を。
原子崩しが少年を溶かすまで、あと1秒もかからないだろう。
不思議と恐怖がないのは――この世界のことをまだ夢だと思っているからなのだろうか。
少年が考えた愚策――それは死の間際、たまに訪れる
気のせいとも思えてくるような、右手の力に頼ること。
目の前で勝利を確信する女の顔が見えた瞬間、少年の意識が引っ張られた。
殺した――殺した――
殺したよな…?
麦野沈利の心に動揺が生まれる。
原子崩しが少年を貫く瞬間、少年の目が急にうつろになった。
その姿が、妙なプレッシャーを与えてくる。
言い知れぬ恐怖を感じる。
身構えるも、土煙が上がっていて視認できない。
麦野「杞憂か…」
そう思い、警戒を渡航とした瞬間、心臓を掴まれたかのようなプレッシャー。
本能的に恐怖を覚える、まるで命を握られているような感覚。
気配の元をたどり、後ろを振り返るとそこには少年の姿があった。
麦野「!!」
麦野「てめぇ…テレポーターかぁああ!」
さっと後方に飛び、距離を開ける。
そのまま、右へ大きく走る。
テレポーターは移動の際に、厳密な演算を必要とする。
失敗すれば自分がどこに飛ぶかもわからないのだ。
動きまわっていれば、体内に物を直接テレポートされるような危険はかなり低くなる。
対する少年は、うつろな目で麦野をじっと見据えたまま微動だにしない。
麦野が原子崩しを放とうとするも、ただ立っているだけの上条はそれだけで隙がない。
どこに撃っても交わされる。
そう思わせるほどの威圧感があった。
麦野「畜生…」
すこしでも弱気になった自分が許せない。
相手はたかだがレベル4程度。
麦野「死ねぇぇぇえええ!!」
一気に距離を詰め、連続で放つ。
少年は動かない。
ただ、右手をそっと前に付き出した。
前から、横から、上から。
様々な方向に飛ばした原子崩しが、少年の右腕に吸い込まれていき、消えた。
息をつく暇もなく、麦野の元へ飛び込んだ少年が彼女の手を取る。
それだけで、能力が使えなくなった。
麦野「どういうことだ!…なにも感じねえ…」
少年が左手を固く握り、構えた。
手を振りほどこうにも、少年の右手の力はケタ違いで、動かすことすら出来ない。
女の頬の数センチ手前で、少年の左手が止まった。
書き溜め尽きました。
乙
やっぱ上条さん記憶なくてもみさきち出してほしいな
ところで>>1は過去作ある?
>>115
現行が他に2つです。
>>116
探してみる
改めて乙
>>117 わざわざ探してもらわなくても載せますよ。
マナー違反だったらごめんなさいm(_ _)m
えと、
一方通行「あァン?フロニャルドだァ?」
一方通行「あァン?フロニャルドだァ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391498328/)
ナルト「強くてニューゲムだってばよ」
ナルト「強くてニューゲムだってばよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1388984823/)
です。ジャンル違いますけど。
レスたくさんありがとうございます!
意外に見てくれてる人多いんですね。
vipの狭さに驚愕です
投下なり~
第七学区 ファミレス
いつもは和気藹々としているメンバーの間に、不穏な空気が流れていた。
少女たちのリーダー、麦野沈利がメンバーの前で初めて敵に敗北する姿を晒したのだ。
麦野沈利なら、こんなとき次に会ったらぶち殺すと意気込み、イライラしてフレンダに当たったりするはずなのだが
今日の麦野はただ頭を抱えているだけだった。
麦野は考える。
今日戦ったあの少年について。
ずば抜けた身体能力に反射神経、草食動物を凌駕する勢いの視野の広さ。
常人離れした危機察知能力。
これだけでも信じられないレベルだ。
しかし、彼女の頭を思い悩ませているのはこれらのことばかりではない。
はじめに彼が見せたずば抜けた身体能力から、まず麦野は少年が何かしらの能力を持っていると考えた。
死角からの攻撃も、少年は全く見ずに反応できていたことも何かの能力だと考えられる。
そして逃げ場を失った瞬間の常人離れした移動速度。
人間には絶対に不可能な動き。
あれは空間移動系の能力と考えるのだ妥当だろう。
しかし、この時点ですでに矛盾が生じる。
百歩譲ってあの洗練された動きを一介の高校生が自身の力だけでやってのけたのだととしても、
死角からの攻撃に反応できた能力と空間移動の能力との間に全く繋がりが見えてこない。
この時点ですでにあの少年は多才能力者だということになる。
麦野「ああああああああああ」ワッシャワッシャ
フレンダ「む…麦野が荒れてるわけよ」
絹旗「でも今日の麦野はやっぱり変です…フレンダに当たらないなんて」
フレンダ「そうやって煽るのやめてくれる!?」バッ
金髪の少女は心底懇願する。
絹旗「…超必死ですねフレンダ」
麦野「ねぇあんたたち…多才能力って聞いたことある?」
絹旗「マルチスキルですか…噂で聞いたことはありますが実際にいるなんて超ありえないですね」
フレンダ「わたしもそう思う。2つ以上持ってるなんておかしい訳よ」
滝壺「あのひと能力者じゃなかったと思う」
ピンクのジャージを着た少女の一言が、この店の7番テーブルに波乱を呼ぶ。
麦野「どういうことだ滝壺ぉ!」
フレンダ「じゃあただの無能力者に麦野が負けたってわけ!?」
絹旗「しかしわたしたちは超最後の最後しか見てませんし!」
滝壺「AIM拡散力場が出てなかった…ほんのすこしも」
フレンダ「AIM拡散力場を消す能力だったとかは!?…ない?」
絹旗「AIM拡散力場消してどうするんですか…」
フレンダ「あ…」
滝壺「もしそうだったとしても拡散力場を消す拡散力場が出るはず」
麦野「待てよ…拡散力場が全くないっておかしくない?」
滝壺「わたしもはじめてみた」
滝壺「無能力者でも開発を受けていれば必ず拡散力場が出るから」
絹旗「では、あの少年は学園都市の学生ではないということですか?」
フレンダ「でも制服着てなかった?」
麦野「まずあいつが無能力者だってことは絶対ねえな。すくなくとも空間移動系の能力は絶対に持ってた」
絹旗「テレポーターですか。でもただのテレポーターに麦野が負けるなんて超信じられませんね」
フレンダ「結局不意打ち以外じゃ絶対あり得ないわけよ」
麦野「あいつには能力が効かねえんだよ。避けるだけじゃねえ。あいつが手を出した瞬間わたしの原子崩しが吸い込まれて消えた」
フレンダ「能力が効かない能力って都市伝説であったよね、前に」
滝壺「能力が効かない…AIM拡散力場がない以上わたしの能力は効かないね」
絹旗「やっぱり都市伝説は超本当だったんですね?能力が効かないなんて…」
絹旗「超B級設定の匂いがプンプンしますよ」
フレンダ「また絹旗のB級の話が始まったわけよ」
絹旗「フレンダのサバ缶話よりは超マシです!おいしい、おいしいしか言わないじゃないですか!」
フレンダ「それをいったら麦野の鮭弁当の話だって―――あ」
麦野「フーレンダァ。オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」
フレンダ「ぎゃあああああああ」
滝壺「よかった。やっとむぎのの調子が出てきたね」
フレンダ「不幸なことにこのタイミングでね!?喜ぶところじゃないわけよおおおおお」キャー
絹旗「それにしても…」
ギャアアーーーー オラオラオラ
絹旗「よく出禁にされませんね…」
滝壺「いいお店だね」
絹旗「わたしたちは超最悪の客ですけどね…」
第三話 この物語の時系列はめちゃくちゃである。
この少女は知らないことだが、アイテムのリーダー麦野沈利と上条当麻が交戦した日から
既に一日が経過していた。
薄暗い第七学区の路地裏を徘徊しているこの少女の名前は佐天涙子。
少女のポケットには複数枚のマネーカード(総額は数万円にものぼる)が入っていた。
都市伝説をこよなく愛する彼女は、現在ある旬の噂の真偽を確かめるためにこの路地を徘徊している。
結果は大当たり。
また一枚、彼女のポケットにマネーカードが収められた。
少女が追っているのは、路地裏にばら撒かれたマネーカードの噂である。
なんでもここ最近第七学区の路地裏で、差出人も宛名も書かれていない封筒がいくつもばら撒かれてあるらしく
その中身には金額がバラバラのマネーカードが入っているのだとか。
しかもその封筒は隠すように撒かれてあるので、探すのも一苦労なのだ。
佐天「でもこのわたしにかかれば…」
少女は路地裏を四つん這いで歩行している。
見つけたマネーカードの多くが、伏せなければ見えないような場所に隠されてあったからだ。
少女は気づいていないが、後ろから見ると彼女の下着は丸見えなのである。
不良A「ねぇ君、な~にやってんの?」ニヤニヤ
第七学区、路上
近くにいる友だちの窮地に気づいていないこの二人の少女は常盤台中学の制服に身を包んでいる。
白井「ところでお姉さま今日はどちらへ?」
御坂「ただ旅行用の小物の買い物に行くだけよ」
一見普通の回答のようだが、向かい合う少女は辟易した様子だった。
白井「はぁ~」
御坂「ん?」
白井「また微妙なお子様用品を買い漁りますのね」
白井「既にメイドイン不明なパチもんキャラでところ狭しと溢れかえっていますのに」
御坂「な・に・か言った?」
白井「いえ別に」
白井「では今日はお買い物デートですわね~」
御坂「はぁ。別についてこなくたっていいわよ」
白井「そんなぁ~えっと、他に何かお求めになりたいものとかは?」
前を歩く少女は足を止め、左手の指を立てて振り返らずに告げる。
御坂「夜な夜なベッドに入ってくる痴漢を撃退するグッズとか?」
白井「ぅゔ!……まだ怒ってらっしゃいますのね…」
御坂「全然」
少女の声は全く無表情のものだった。
白井「わ、わたくし!色々とお役に立ちますのよ!」
白井「例えばほら!」
少女は路地裏へと続く細い道を指す。
白井「ショッピングモールへ行かれるのならこちらのほうが断然近道かと」
―――――――――――
――――――――
―――――
―――
御坂「狭っ…てゆうかあんたよくこんな裏道知ってるわね」
白井「仕事柄。街の地図は隅々まで頭に入っておりますので」
白井「あ」
前を振り返った少女が、想定外といった声を上げる。
背後を歩く少女が習って前を見ると、狭い路地の向かい側から一人の男が歩いてきた。
地面のあちらこちらをきょろきょろと見渡しながら進むその姿は…まさに挙動不審。
二人はさっと道を避け、窮屈な道を進んでいく。
その後も数人とすれ違った少女たちは、ことの奇妙さに気付き始めた。
御坂「ここってそんなメジャーな道なわけ?」
白井「いえそんなはずは…」
突然、前を歩く少女が足を止め、しゃがみ込む。
御坂「どうしたのよ黒子、それなに?封筒?」
白井「差出人も宛名もありませんの」
封筒を様々な角度から見る少女の足元に、ひらひらと金色のカードが舞い落ちた。
白井「…マネーカードですわね」
御坂「…みたいね」
訝しんだ目でマネーカードを見る二人の少女の耳に、けたたましい携帯の着信音が響いた。
ここは第七学区路地裏。
不良B「見りゃ分かんだろ。ケツ振って俺らのこと誘ってんだよ」
不良C「やっぱりか?」
背後から聞こえる下卑た笑い声だけで、無能力者である少女の不安はいっきに煽られる。
誰が言い始めたのか、この学園都市は弱肉強食であるらしい。
実際にそうだと少女は思っている。
それほど、能力を持った人間とそれを持たない人間との間には絶望的な差が開いている。
超電磁砲と呼ばれる少女と出会ってから、佐天涙子はさらにそのことを実感していた。
近くにいるだけで、否応なしに差を思い知らされる。
例えばこの少女なら、いままさにそうであるのだが、こういう状況に遭遇した時ただ恐怖に震えるだけ。
しかし御坂美琴ならどうだろう。
考えるまでもない。
振り向いて、一言かっこいい説教でもして、何人の相手であろうとたった一人で倒してしまう。
そして少女に振り返り、優しく手を伸ばしてくれるのだ。
本当に――かっこいい。まさにヒーロー。
でも、その手を掴みお礼をいう少女は、所詮守られる側でしかないのだ。
一体どんな顔をして少女の横へ並べばいいのか。
彼女と自分との間には、一生かかっても届かないような距離が開いているのに。
自分の世界に逃げ込んでいたところを、背後に立つ男が無理矢理現実に引き戻す。
少女の臀部を男たちの一人が舐めるような手つきで触る。
途端、少女顔が凍りついた。
この男たちが一体何をしようとしているのかわかったからだ。
佐天「ひぃぃぃ。やめてください!」
ほとんど無意識に飛び上がって距離を取る。
不良B「感度良好、と」
また男たちの間に笑いが起こる。
こんなとき、能力があれば。
こういう状況でさえ、無能力者である自分が惨めに思えてくる。
取り出した携帯の画面に表示されているのは、初春飾利の携帯番号。
反射的にコールを押し、男たちに背を向け走りだす。
後ろの男たちが追ってくる足音、声
自分の心臓が波打つ鼓動、恐怖
結局助けを求めるしかない惨めさ。
少女の頭はもう何がなんだかわからなくなっていた。
初春飾利はワンコールで電話に出た。
初春『はい、佐天さんですか?』
―――――――――
――――――
―――
―
佐天「だから!わたしは普通に歩いてたんだけど!」
不良D「おぉーい、そんなに逃げんなよ」
全力で走り回っているのに、不良は全く離されることなく少女について来ていた。
佐天「うわあああ」
男たちの姿を見た途端、再び少女は踵を返す。
佐天「とにかくー!急いで!」
初春「はい!佐天さんの携帯の位置、特定出来ました」
そこで電話が切れる。
おそらく初春が白井さんに応援を頼んだのであろう。
佐天「助けが来るまで逃げ切らなきゃ!」
頭だけ振り向くと、不良たちはあと一歩のところまで来ていた。
白井「わかりましたの」pi
電話を切った少女の顔は、風紀委員の時の表情になっていた。
素早く腕章を取り出し制服の袖につける。
御坂「なにがあったの?」
風紀委員の仕事にこの少女を巻き込むのは少しはばかられるのだが
ことが事であるため、手短に内容を話す。
御坂「わたしもそこへ連れて行きなさい」
白井(こうなったらもう止めることはできませんわね…)
白井「わかりましたの!」ビュン
佐天「まだなの…!!」
少女への通話が終わってから、一分が経とうとしていた。
息切れした少女背中に、いまかいまかと手が伸びてくる感触がある。
意識を前に集中すると、道がふた手に別れていた。
佐天(どっちに――)
意を決し、左手に曲がろうとした途端、右から伸びた手のひらが強引に少女を引き寄せた。
平均的な女子中学生の体重では、抗いようもない力。
佐天(捕まった…まだ仲間がいたなんて)
横ろから伸びた手は、少女をそっと抱き寄せ、自身の後ろに置く。
あれ…予想していた感触と違う…?
ふと見上げた後ろ姿は、細身の男のものだった。
ツンツン頭のこの男に見覚えはない。
??「おい、お前ら。大勢で女の子一人を追い回して…恥ずかしくねえのか!」
少年の怒声が鳴り響く、第七学区路地裏。
不良たちの運命が決まった。
佐天「う…嘘っ」
少女の目の前に広がる光景は、まさに信じられないの一言につきた。
相手の不良集団は6人。
ナイフやバットの類で襲ってくるその不良たちを、少年が次々と沈めていく。
あっという間に六人の不良たちは意識を失ってしまった。
少女が驚いたのは、その少年が能力と思しきものを全く使っていなかったからだ。
??「これに懲りたら、二度とこんな真似すんじゃねえぞ、情けねえ」
佐天「あ、あの…」
少女の声が少年に届くことはなかった。
駆けつけた少女の友人の大きな声に寄って阻害されてしまったからである。
白井「ジャッジメントですのっ!」
白井「婦女暴行未遂の容疑で、拘束します!」
??「え…」
白井「まだ一匹残ってたようですわね」
佐天「いや、その人は違くて―――――
言い終える前に、少女を救ってくれた少年は風紀委員の放った金属矢によって拘束されてしまった。
佐天「し、白井さん!」
御坂「佐天さん無事だったのね!よかった」
駆けつけた御坂美琴が、少女の無事を確認すると同時にへなへなと腰を落とす。
??「あのー、御坂さん」
御坂「!?」
御坂「あ、あんた!!」
上条「お友達に拘束を解いてくれるよう頼んではいただけないでせうか?」
白井「あ、あなたはっ!!昨日の!?」
白井の驚く声に習って、少女は初めて自分を救ってくれたヒーローの顔を見た。
そういえば昨日の強盗騒ぎの中にいた人だ、と少女は得心する。
白井「良い殿方だと思っていましたのに…最低ですわ」
上条「え…冤罪なのですが!!」
佐天「あのーですからその人は違くて」
白井「え…」
佐天「私を助けてくれたんです!もしその人がいなかったら私…」
――――――――――――――
――――――――――
――――――
―――
白井「本当に申し訳ございませんでしたの」フカブカ
場面は移り、ここは風紀委員第177支部である。
事件のあらましを説明するべく、少年はここに連れて来られていた。
一応の説明を終え、雑談に興じている最中に、本日五回目となる少女からの謝罪。
上条「いやぁ、いいって。気にしてないから」
白井「はいですの…」
上条「ところで、佐天さんだっけ?なんであんな路地裏うろついてたんだ?」
佐天「はい…えっと、これなんですが…」
少女は少し言いにくそうに顔を歪ませながら、マネーカードを取り出す。
白御「あ」
佐天「ふえ?」
白井「そういえばわたくし達も一枚見つけましたの…」
佐天「白井さんたちもですか!!」
なんだ~というように少女の表情が柔らかいものとなる。
初春「まさか佐天さん…そのまま持って帰ろうと思ってませんでしたか?」
佐天「うげっ!?…ま…まさか。初春ってば~」
「「「…」」」
佐天「あはは…あはは」
実は、と花飾りの少女が話を切り出す。
初春「ここ最近、第七学区のあちこちでマネーカードを見つけたという報告が来てるんですよ」
初春「いま、48件。あっ56件に増えましたね」
上条「そんなに!?…ふつうじゃないな」
初春「実際は報告されてないものもあるので、もっと…」
白井「もしかして、組織的なカード偽造とか?」
固法「それがね、届けられたマネーカードは全部本物なのよ」
御坂「本当ですか?固法先輩」
固法「ええ」
白井「でも何故です?わたくし今回の件はなにも耳に入っておりませんでしたの」
初春「貨幣を故意に遺棄、破損させることは禁止されてますけど、マネーカードは対象外なんですよ」
白井「なるほど」
固法「カードの金額もまちまちで、下は千円から、上は五万円を超えるものまで」
固法「決まって人通りの少ないところに撒かれているの」
上条「人通りの少ないところ、ね…」
白井「それがどうかしましたの?」
上条「ただカードをばら撒くだけならどこだっていいはずなのに、決まって人通りの少ないところときてる」
上条「これじゃあまるで――――!!」
突然、何かに気づいたように少年が立ち上がる。
白井「どうかしましたの?」
上条「悪い、い、いまから特売なんだ!またな!」バタン ダダダダーー
白井「な…なんなんですの?」
固法「さぁ…」
―――――――――――
――――――――
―――――
――
御坂「じゃあまたね、佐天さん」フリフリ
上条当麻が177支部を去ってから4時間あまり。
よく晴れていた今日の青空も、赤く染まり始めていた。
御坂「じゃ、わたしもそろそろ帰ろっかな」
帰宅を決め込み、歩いてきた道を引き返すと、路地へ伸びる道の先から男の声が聞こえた。
御坂「?」
スキルアウトA「ほんとだって!小便しようとE地区の路地に入ったら女が封筒持ってんのが見えてさ。後つけたんだよ」
スキルアウトB「んで?」
スキルアウトA「そしたらそいつ、C地区にある雑居ビルに入ってったんだ!」
スキルアウトA「多分アジトだぜ?」
スキルアウトB「女が一人でか?」
スキルアウトC「仲間がいんじゃねえの?」
スキルアウトA「ちゃんと調べたよ。女が一人だって!」
スキルアウトD「フン…行ってみるか」
リーダー格の男が立ち上がり、集団もそれにつぐく。
四人の男たちは路地裏へと姿を消した。
御坂「!!」
マネーカードの件についてなにかわかるかもしれない。
そう思った少女が後をつけようと足を踏み出すと、因縁の相手であるツンツン頭の後ろ姿が見えた。
どうやら彼も近くで会話を耳に挟んだらしく、少女と同じようにスキルアウトを尾行しているようだ。
声をかけて一緒に、そう思ったが、やめた。
少年の目がそれほどまでに真剣なものだったからだ。
これはいよいよなにかある――少女はそう確信し、距離を開けて尾行を開始した。
スキルアウトA「は~い、お邪魔しますよ~」
場面は移り、ここはC地区の雑居ビルである。
マネーカードをばら撒いた人物と思しき少女が拠点としているビルに、4人のスキルアウトが上がり込んできていた。
スキルアウトA「大人しくしてりゃあ何もしねぇからよ」
布束「なにか用かしら?」
スキルアウトD「いやぁな。お前がばら撒いている例のカード、俺達がまとめてもらってやろうと思ってさ」
上条「はいはい。案内ご苦労」
スキルアウトC「誰だてめぇ!?」
振り返った男の腹部を一蹴。
それだけで男は気を失ってしまった。
スキルアウトD「チッ…付けられてたか」
スキルアウトD「なんだ…てめぇも分前がほしいってか?」
上条「てめぇらの相手をしてる時間ももったいねえ。今すぐ消えれば見逃してやるけど?」
ゴキゴキと、少年の拳が鳴る。
スキルアウトA「なめやがって…!」ブン
アフロの男が、少年の顔めがけてナイフを横にふる。
しかし、ナイフを構えた瞬間から動きを察知していた少年は上体を落として攻撃を交わしていた。
そのまま、格闘技のお手本のようなアッパーをアフロにお見舞いする。
スキルアフロA「」チーン
スキルアウトD「て…てめえ!」カランカラン
少年の底を見せない実力に、リーダー格の焦燥感が一気に煽られた。
スキルアウトD(能力者か…いや…)
スキルアウトD「おら!おら!」ブンブン
完全に少年に怯えた男の振る鉄パイプは、少年に届きもしない。
上条「…」パシッ
スキルアウトD「ひぃぃぃ!!」
少年は男の胸ぐらをつかんで引き寄せ、手刀で気絶させる。
スキルアウトC「見逃してください…おねがいします!」
上条「じゃあさっさといけよ」
スキルアウトC「ひぃぃぃぃ」ダダダダーーー
上条「やっと終わったか…」
少年は足元に転がる三人の男に目を落としてつぶやいた。
布束「どうやら、あなたもマネーカードが狙いのようね」
無表情の少女が少年に告げる。
上条「まさかまさか!上条さん的にはお姫様を救う王子様のつもりなんでせうが?」
布束「嘘ね」
少女は無表情のまま、じっと上条を見据えている。
上条「…あんたがマネーカードをばら撒いている張本人なのか?」
布束「…」
少女は答えない。
少年はそれを肯定ととって、話を進める。
上条「第七学区の、決まって人通りの少ないところに撒いているのにはなにか理由があるんじゃねえのか?」
布束「…」
上条「たとえば、監視カメラのない路地裏に人の注意を向けるため、とか?」
布束「…!」
ここにきて、初めて少女の顔に動揺が見て取れた。
アタリかもしれない…少年は話を続ける。
上条「最近噂になっているレベル5…超電磁砲の噂を知ってるか?」
布束「…あなた、もしかして実験についてなにか知ってるの?」
上条「どうやらアタリみたいだな。絶対能力者進化(レベル6シフト)計画のことだ」
布束「!!」
突如、少年の顔が険しいもに変わる。
上条「誰だっ!?」
今日終わりです。
少し投下
C地区 雑居ビル 数分前
御坂「ここね…」
少女は、約1分ほど前にツンツン頭の少年が入っていったビルの前に来ていた。
御坂「…」ドクンドクン
十分に安全マージンは確保している。
にも関わらず、少女の心臓はいまにも爆発しそうなくらいに躍動していた。
正義感の強い子の少女は、いままでにさまざまな事件に関わってきている。
故に、尾行は幾度と無く経験してきたし、能力で張っているレーダーで危機管理も万全のはずだ。
しかし今少女が追っているのは、自分より『格上』の人間。
口では認めないが、本心では認めている。
彼に少女の攻撃は一切通用しない。
それがどういう原理で引き起こされている現象なのかはわからないが、すくなくとも、少女は一度たりとも少年に勝ったことがなかった。
それに、少女は少年のことをほとんど知らない。
例えば、少年はこの少女にとっていいやつなのか、悪いやつなのか。
強い力は、それだけで人をどんな風にも変えてしまう。
ましてやあの少年は、学園都市において第三位の序列にあるこの少女を片手間にやり過ごすほどの実力者なのだ。
それほどの力があれば、なんだってできる。
例えば――
御坂「いまからこの場所を襲って、マネーカードを独占したり。とかね」
はたから見れば、スパイダーマンのように見える動きで静かに壁を這う。
素直に階段を登るより、ずっと音が抑えられるからだ。
「ぐわぁぁぁっ」
御坂「!?」
少女の耳に飛び込んできたのは、男の悲鳴だった。
スキルアウトの仲間割れか――いや。
御坂(アイツのしわざね…)
少女の目つきが変わる。
いよいよ本気で注意しなければならない。
もしかしたら、あの少年と本気で敵対する事態になるのかもしれないのだから。
男たちのうめき声が響いてる間に、壁を登りきらなきゃ。
―――今なら多少の音をこぼしても気付かれまい。
そう判断した少女の手から、糸状の電気が伸びる。
それを利用してどんどん壁を登って行き、遂には入口付近まで辿り着いた。
聞こえてきたのは、またも男の声だった。
「ひぃぃぃぃ」と、声にならない悲鳴を上げながら――
御坂(音が近づいてる!?)
御坂(ここで見つかったらおしまい…)
御坂(仕方ないわね)
相手はどうしようもないゴロツキ。
少女はそう自分に言い聞かせると、天井にぶら下がり、青い白い電気を纏った右手を伸ばす。
入り口から出てきた男は、やはり少女が見かけたスキルアウトの一人だった。
涙と脂汗を流しながら、転がるように走っている。
天井の少女の気配に気づいたのか、男は天井を見上げ、そこから右手を伸ばしていた少女と目があった。
御坂「ごめんね」
口の動きだけで一方的に告げ、男が口を開く前に能力で気絶させる。
スキルアウトC「」ドサッ
御坂「…ふぅ」
一瞬緩んだ表情を見せるも、すぐに真剣な表情に戻る。
御坂(ここでしくじるわけにはいかない)
音を殺して入口付近の壁に移動し、耳を澄ますと、どこか無機質な女の声が聞こえてきた。
ここで、少女は女性の悲鳴が聞こえてくれば飛び出すことを決意する。
しかし、どうやら少年に女性を襲う意思はないらしく、単に会話をしているようだった。
急に、自分の行動が馬鹿みたいに思えてきた。
結局、彼は自分が初めて出会った時と同じ――襲われる女性を助けに出ていっただけの優しいやつだったのか。
しかし、聞こえてきた二人の会話から出た単語は、少女が想像していたものとまるで違っていた。
『超電磁砲の噂』
『実験』
『絶対能力進化計画』
超電磁砲…?
一瞬、頭がついていかなくなる。
御坂(それって…わたしのこと…?)
聞こえてきたな名前、超電磁砲とはレベル5の第三位を指す呼び名に違いなかった。
御坂(わたしの実験…)
急に、最近の出来事が少女の脳内で思い起こされる。
ある共通した出来事が。
それは、街中で聞いた噂。
『クローン?なにそれ?』
『なんか、レベル5のクローンを作っちゃおうって話。聞いたことない?』
『あれだろ?なんか軍用兵器として利用しようって話』
『それそれ。もうすぐ実用化されるんだって』
それは、友人である佐天涙子との会話。
『も~御坂さん。昼間はなんでなんの反応もしてくれなかったんですか?』
『え?お昼は風紀委員にいたけど?』
『え?セブンスミストの前を一人で歩いてたじゃないですか。制服も常盤台だったし』
『見間違いでしょ?変なこと言わないでよ』
それは、朝の学校での会話。
『おはよう』
『あら?御坂さん?ずいぶん早いですわね』
『え?早いって…いつも通りだけど?』
『あ、いえ。先ほど街中で。学校とは真逆の方向に歩いてらしたのをお見かけしましたので』
『まさかー。そんなことあるわけないじゃない』
『きっと誰かの見間違いでしょ?』
「誰だっ!?」
思考の闇に堕ちていた少女を、少年の怒声が現実に引き戻す。
まずい――。
なぜか、ここで見つかったらまずいと思った。
何も考えず、ひたすらきた道を駆け抜ける。
「おい、どこ見てやがんだ!」
「前見て歩け!いや走れ」
「きゃぁぁ!!なに!?」
さっきから、何度も口が勝手に謝っている気がする。
我に返ると、常盤台の女子寮の前に来ていた。
恐る恐る後ろを振り返ると、ただ見慣れた風景が広がっているだけ。
どうやら少年は追ってきていないらしい。
一瞬扉に手をかけるも、少女は来た道を引き返す。
今日の帰りは遅くなると、友人に伝えたばかりだったから。
それに、今の精神状態で黒子(あの子)に会えば、自分の動揺を悟られてしまうに違いない。
御坂「そろそろ、目をそらすのは終わりにしなきゃね」
少女は誰にともなくつぶやく。
学園都市には以前から黒い噂が後を耐えなかった。
そもそも超能力という力自体が、世間一般ではアブノーマルな事なのだ。
『超電磁砲の軍事用クローン』
冷静に考えてみれば、あり得ない話ではなかった。
学園都市に七人しか存在しない超能力者を量産できるとして、この街の科学者たちがそれに食いつかないわけがないのだ。
なぜ自分が選ばれたのかはわからなかったが、そんなことはもうどうでもいい。
少女の頭には、もう噂の真偽を確かめることしかなかった。
布束「なにも気配なんて感じなかったけど…なぜ気づいたの?」
再び入り口から室内に足を踏み入れた少年に、少女が相変わらずの無表情で問う。
上条「最後の一人の足音が途中で不自然な止まり方をした」
布束「in brief,わざと逃したってことかしら?」
上条「考え過ぎだっての」
布束「あなたの言ったことは全部アタリよ」
布束「マネーカードを撒いたのもその一環。誰もいない路地に目を向けさせることで、そこで行われるはずだった実験を止めるため」
布束「but, 私自身が目撃されて後をつけられるとは、迂闊だったわ」
布束「これを見られたら、面倒なことになっていたかもしれない」
少女は引き出しから紙の束を取り出し、ライターで火をつけた。
上条「ちょっ――それ!」
なにか重要な書類だったのではないかと、少年が慌ててそれを制止する。
しかし、既に炎は紙の半分を覆っており、少年が掴みかかったせいで炎は床に散乱してしまった。
上条「ああ゙!!」
布束「indeed, 証拠隠滅するなら現場もろとも目撃者も消してしまえと」
上条「別にそういう訳じゃ!とにかくこいつら運ばねえと」アタフタ
布束「しーらない」
上条「ちょっと!」
実験についてなにか知っているかもしれない少女は、燃える部屋を見ても特に動揺することなく出て行く。
今追いかけるべきだったが、少年は自分でせいで横たわるスキルアウトを放っていくことが出来ない。
結果的に少年は少女を見失い、夜の街を駆けまわるハメになった。
翌日昼 第七学区 某喫茶店
外の席を囲んでいるのは、4人の中学生である。
佐天「そういえばここですよ!御坂さんを見かけたのって!」
御坂「…」
少女の脳裏に、昨日の記憶が蘇る。
少女は昨夜C地区の雑居ビルを後にしてから、ハッキング調べた自分のDNAマップの行方を追いある研究所に侵入した。
学園都市の電気系能力で最高を誇る少女に、研究所のセキュリティはぬるすぎるものであったため、難なく侵入に成功。
そこでみつけたのは、まさに噂を裏付ける資料だった。
量産型能力者計画(レディオノイズ計画)。
しかし、資料によると計画は失敗。
既に凍結されているとわかったのだ。
初春「あ~、あのそっくりさんの話ですね」
初春「まだ言ってたんですか?」
佐天「だってほんとに見たんだよ。あれって…まさか御坂さんのドッペルゲンガーだったりして!?」
御坂「え…」
初春「そうだ!似てるといえば固法先輩から聞いた噂なんですけど、なんでもクローン技術を使ってレベル5を――
いいかけ、少女はバツの悪そうな顔でうつむく。
噂の当事者である少女に対して悪いと思ったのだろう。
御坂(ここはわたしがフォローしとかなきゃ、ね。)
御坂「クローンねぇ…学園都市らしい噂といえば、らしい噂よねぇ」
御坂「もし自分のクローンがいたら…佐天さんならどうする?」
佐天「わたしだったらそうですね…宿題を手分けしてやるかなぁ」
白井「部屋においておけば、寮監の目を欺くことが」ニヤ
白井「お姉さまはどうなさいます?」
白井「もしご自分のクローンが現れたら…」
御坂「そうねぇ…わたしだったら――――
そんなことあるわけがない。
昨日手をつくして調べてわかったことだった。
少女にとって、もうこの質問は
もしデスノートを拾ったらどうする?
もし自分が男だったらどうする?
というような、あり得ないことを思案して一喜一憂するくだらない日常会話に過ぎなかった。
少女の面持ちは明るい。
彼女の知らないところで秘密裏に進められている実験のことなど、微塵も想像していなかったから。
楽しかった一日も終わりかけ、空は赤く染まり始める頃。
御坂美琴は一人、第七学区の道を歩いていた。
実験の事で頭がいっぱいだった昨日から開放され、日常の何気ない会話が嬉しく、楽しいものであったため
一人で余韻を楽しんでいたのだ。
御坂「――ッ」
突如、少女の足が歩みを止める。
明るかった表情は、また姿を変えた。
いきなり感じた――奇妙な感覚。
例えるなら、まるで自分の力を自分以外の者から感じたような感覚。
まるで、他に自分がいるような。
以前の少女なら、それを感覚ではなく錯覚と呼ぶだろう。
御坂「あ…有り得ない…有り得ない」
有り得ない――のに。
少女は昨日調べたのだ。
危険を犯して、必死に調べた。
御坂「なのに…!!」
気が付くと、少女は走りだしていた。
現れた不安の種を、今度こそ潰すために。
失われそうな日常を、たぐり寄せるように。
研究者「筋力、スタミナ、身体機能も問題なし、と」
研究者「あとは対人用テストに合格すれば、外部研修に移ることになるわ」
ミサカ「ミサカは既にハンバーガーの頼み方からキャッチセールスの断り方まで習得しています」
ミサカ「完璧に周囲の人間に溶け込む自信があります、とそのテストの必要性に疑問を投げかけます」
研究者「外の世界じゃテスタメントで学習したようには行かないこともあるのよ」
研究者「それに、オリジナルと遭遇する可能性だって0じゃないしね」
ミサカ「!!」
研究者「ま、だからといって実験の障害にはならないでしょうけど」
ミサカ「オリジナルとはなんでしょうか?」
研究者「そうねえ。言ってみればあなたたちの…『お姉さま』と言ったところかしら」
ミサカ「……お姉さま」
御坂「たしか…このあたりから」
息を切らし、膝に手を当てながらも顔だけは辺りを見渡す。
御坂「―――!!」
真っ先に目に入ってきたのは、常盤台中学の制服を身に纏った、一人の女子生徒の後ろ姿だった。
栗色のショートヘア。
客観的に自分を後ろから見たら、あんな感じだろうか。
そう思った自分自信に、気づく。
それは、彼女(クローン)の存在を認めることにほかならないのだ。
ふいに、でもそうすることが自然であるように、目の前の少女がこちらを振り返る。
目が合った。
合ってしまった。
まるで鏡を見ているかのような感覚。
目が合えば、もう逃げられない。
少女は、少女の日常が遠ざかっていくのを感じた。
御坂妹「にゃぁ」
御坂「は?」
御坂妹「と鳴く四足歩行生物が木の上から降りられなくなっています。とミサカは現状を説明します」
御坂「ってそんなことはどうでもいい!わたしは、アンタが何者かって聞いてるのよ!」
一瞬、目の前の少女にペースを乱されるも、なんとか我に返る。
目の前の少女は、軍用クローンとは名ばかりのただの脳天気な女の子にしか見えない。
御坂妹「そうですか。お姉さまは見知らぬ猫が木の上から地面にたたきつけられてもいいと」
御坂妹「その結果、大怪我をして機能障害を引き起こしても、生命活動を停止しても、関係ないと」
御坂「…」
御坂「わかったわよ」
御坂妹「四つん這いになった上に、ぎりぎり手を伸ばせば届くのではないか、とミサカは提案します」
御坂「ちなみにどっちが下?」
御坂妹「…」ニヘラ
――――――――――――
――――――――
――――
―
御坂「近くで見ると、可愛い子猫じゃない」
御坂妹「子猫?」
御坂「子供の猫だから子猫よ」
御坂「でも、怯えられちゃうのよねぇ」
御坂「私の体から出てる微弱な電磁波に反応されちゃうの」
御坂妹「ミサカもだめなようですね」
御坂「だからそうじゃなくてっ!」
ハッとして我に返る。
自然流れでほのぼのした空気になってしまっていた。
そう、目の前にいるこの脳天気な少女は、もう誰の目にも明らかなクローンなのである。
つまり、実験というのは――
御坂「アンタ…わたしのクローンな…わけ?」
御坂妹「はい」
間髪入れずに、目の前の少女が答えた。
つまり、噂はほんとうだったわけで。
少女の知らないところで、学園都市は非人道的な実験を行っていたことになる。
御坂「…例の計画とやらわ凍結されたはずでしょ」
御坂「なんで、アンタたちみたいのが存在すんのよ」
言ってしまって、後悔した。
目の前の少女の顔を覗くと、しかし少女は無表情のままだった。
そのまま、顔色一つ変えずに口を開く。
御坂妹「ZXC741ASD852QWE963'、とミサカはパスの確認を取ります」
御坂「?」
御坂妹「やはりお姉さまは実験の関係者ではないのですね。先ほどの質問にはお答えできません」
御坂「…」
御坂「どこのどいつが計画を主導してんの?」
御坂妹「機密事項です」
御坂「…なんのために作られたわけ?」
御坂妹「禁則事項です」
御坂「…ッ!」
少女は焦っていた。
自分の知らないところで、こんな計画が進んでいたことを確信したばかりなのだから無理もない。
だからこそ、たった一人の手がかりがしらを切ることが気に入らなかった。
すばやく、少女の右手を引き、関節をきめる。
御坂「痛い目にあいたいの?力づくで聞き出したって…」
御坂妹「…」
少女の顔を見た途端、御坂は取った手を離す。
少女が顔色一つ変えなかったからだ。
というより、おおよそ表情と呼べるものがないくらい無表情だった。
きっとこの少女は、ひどい拷問を受けても絶対に吐かないだろう。
そう思わせるほどに、その顔は何も感じていないように見えた。
そして、表情のないこの少女を、作り物だと感じてしまった自分がひどく嫌になった。
御坂「いいわ、行きなさい。勝手に後をつけさせてもらうから」
御坂「どうせあんたはこの後どこかの施設なり研究所なりに帰るわけでしょ?」
御坂「そこでアンタの製造者をとっ捕まえて、直接話を聞き出してやるわ」
御坂妹「ミサカはこの後実験に向かうので、今日施設へは戻りません」
御坂「え…」
御坂妹「お姉さまが後をつけるのは勝手ですが、ミサカの創造主には会えません」
御坂(それならさっきのパスで調べたほうが早いか…)
御坂「いいわ、じゃあ今日のところは失礼させてもらうから」
御坂妹「さようなら…お姉さま」
御坂「ん?ああ…うん、じゃあね?」
御坂妹「……さようなら」
御坂「もしもし初春さん?唐突で悪いんだけど――」
少女は、脇目もふらずに駆ける。
奇妙な胸騒ぎを感じながら。
第四話 二周目の男
第七学区 路上
不幸少年こと上条当麻は、夕焼け空の第七学区を走っていた。
昨夜から徹夜で、飲まず食わずの状態にあったが、自然と平気だった。
おそらく、アドレナリンってやつなのだろう。
毎日、昼も夜もいたるところを探していたこの少年が昨日に限って家に帰らなかったのには理由がある。
それは、布束砥信との出会いがあったからだ。
彼女は今まさに実験が行われていることを知っていた。
知っていたからこそ、彼女なりの方法で実験を止めるために暗躍していたのだ。
そして、過去に戻ってきた自分がやるべき事は一つ。
一人でも多くの命を、幸せを守ること。
疫病神と罵られ、恐れられ、蔑まれてきた自分が、右手の力が、人の役に立てる。
これなら、きっと父刀夜も喜んでくれるだろう。
しかし、24時間走り回っても、広すぎる第七学区でたった一箇所の実験場を見つけるのは困難だった。
上条「…」ゼェ…ハァ
上条「どこなんだ…!」
ふと、辺りを見渡す。
御坂妹「♪」フワフワ
上条「…」
少年が飲まず食わずで探し求めていた少女は、花壇を飛び回る蝶に夢中だった。
御坂妹「っ!?!?」
上条「…良かった」
女の子特有の甘い香りが、少年の鼻孔を刺激する。
不覚にもいい匂いだと思い、気づいた。
上条(なぜ、この少女はわたくしめの腕の中に…?)
少年が状況を正しく理解した時、なぜか視界に一杯の夕焼け空が映った。
御坂妹「おりゃああ、とミサカは痴漢を投技で迎撃します」
上条「…」チーン
寝ぼけてて投下がバランバランになりました。
昨日書いた分の投下はこれで終わりです。
今日は休みなので書き溜め次第夜に投下するかもしれません。
書き溜め進んでないので少し投下
―――――――――――――
―――――――――
―――――
――
場面は変わり、ここは第七学区のファミレスである。
痴漢少年は、被害者の少女をお詫びと題してファミレスに誘っていた。
上条「それにしても…」
御坂妹「…」ガツガツ
上条「よく食べますね…姫」
テーブルの上には、約5000円分の食事が並んでいる。もちろん上条持ちで。
御坂妹「いきなり抱きついてきた痴漢行為を水に流すのに、これでは少々甘すぎるくらいです
とミサカはさらにオーダーを追加します」ピンポーン
上条「」
ところで、と対面の少女が話を切り替える。
御坂妹「あなたはそんなに女性に飢えているのですか?とミサカは質問します」
上条「はぁ…不幸だ。あれは誤解であって…」
上条「うまいか?」
御坂妹「まぁまぁです。そもそもファミレス程度の食事でミサカの舌をうならせることなど不可能です」
上条「ファミレス程度って…上条さんにとっては贅沢の極みですのことよ?」
上条「…じゃあしょうがない。上条さんがとっておきの贅沢をお前にさせてやるよ」
御坂妹「?」
――――――
―――
―
御坂妹「これは…これがパフェ」パァァァ
上条「パフェ食うのは初めてか?」
御坂妹「はい。嗜好品の類は余り食べる機会がありませんので…フフ」ニヘラ
上条「やっぱりお前は笑顔のほうが似合うな」
御坂妹「ミサカは今笑顔でしたか?とミサカは素朴な疑問を投げかけます」
上条「ああ」
御坂妹「これが笑顔」
上条「そっちのほうがずっと可愛いと上条さんは思いますよ」ニカッ
御坂妹「…可愛い」ニヘラ
御坂妹「では、このパフェを頂きます」マグマグ
御坂妹「!!」
御坂妹「美味しいです!バニラアイスクリームのひんやりとした食感にストロベリーの酸味が加わり
御坂妹「サクサクしたクランチクッキーが絶妙なアクセントとなって」サクサクモグモグ
上条「ははっ。良かったな」
――――――――――――
―――――――――
―――――
――
20時半 第七学区某公園
ファミレスで少女がほぼ一方的に食事を取った後、二人は少年がよく行くというゲームセンターで遊んだ。
現在はその帰り。
少年は最後に少女をこの公園へ誘った。
御坂妹「ここは…」
上条「ああ、よくここでお前の姉ちゃんと会ってさ」
姉というのは当然常盤台の超電磁砲のことである。
ここで、少年と少女の間に認識の差異が現れた。
御坂妹「なぜですか…?」
上条「?」
御坂妹「ミサカはてっきり、あなたがミサカのことをお姉さまだと誤解して接していると思っていたのですが
とミサカは疑問を露わにします」
御坂妹「あなたは…実験の関係者なのですか?とミサカは質問します」
上条「関係者ってわけじゃねえな」
上条「少なくとも今は全く関係してない」
御坂妹「ではなぜ――
上条「なあ、今日は楽しかったか?」
御坂妹「楽しい…ですか?」
少女は困惑していた。
生まれたばかりの彼女は、楽しいという言葉を知識として知っていても、実際に自分に当てはめて考えたことがない。
殺されるためだけに造られた少女は、そんなことを考えようとも思わなかったから。
模造品は考える必要もない。
だから、本能のままに、プログラムされたままに口からスラスラと答えは出る。
御坂妹「楽しいという感情がどういうものなのか、ミサカには―――」
御坂妹「…」
いいかけて、やめてしまった。
まっすぐに少女の目を見つめる少年の顔が、真剣なものに見えたからだ。
明日になったら忘れてしまうくらいの――日常会話にすぎない問を、本気で聞いてくるのだ。
『自分の言葉で答えなければ』
不覚にも、少女はそう思ってしまった。
思わせられたと言ってもいい。
少年は目の前の人形を、まるで人間のように扱おうとしている。
御坂妹「今日は、初めてお姉さまにお会いしました」
御坂妹「ミサカ達の元となった人…どこか、新鮮な感じがして」
御坂妹「それからあなたに会って…」
少女の目が、腕に抱えたゲコ太のぬいぐるみを捉えた。
少年が今日の記念にとプレゼントしたぬいぐるみ。
UFOキャッチャーを前にして、はじめて少女が関心を見せたものだった。
少女は、自分の頬が緩んでいることに気づいた。
9981回の人生経験を共有している彼女の脳内にも、こんな経験はない。
御坂妹「今日…ミサカは楽しかったのかもしれません、とミサカは心中を吐露します」
上条「そっか」
上条「きっとそれが楽しいってことだ」
御坂妹「これが…楽しい…」
上条「お前は人生を楽しむ権利があるんだ。もっと喜んだっていいんだ」
少女は、またも混乱していた。
公園の時計は、既に20時40分を指している。
実験場所まで、ここから約10分。
本来ならもう行かなければならない。
なのに、心のどこかからもっとこの少年と話していたいという気持ちが現れ始めていたのだ。
でも――――
少女は、自分が本来生まれてきた意味を思い出す。
単価にして18万円のボタンひとつで生み出せる模造品。
ここでこうしていることがそもそも少女には無駄でしかない。
ここで別れを告げよう。
少女は自分のいるべき場所に行かなければならないのだから。
少女が口を開こうとした瞬間、どこからか悲鳴が響いた。
上条当麻は、反射的に声のした方を振り返る。
声から判断すると、おそらくは若い女性が襲われているのだろう。
学園都市には、以前から力を悪用する能力者、スキルアウトやらが大勢いて、こういう事態も珍しくないのだ。
自分には関係ない。
おそらく大多数の人間は、見て見ぬふりをするだろう。それが普通なのだ。
でも、この少年にはそれが出来ない。
だからこそ、我に返ってみたときには既に駆け出していた。
そのまま少女に振り返って告げる。
上条「いいか!まだ話は終わっちゃいねえからな!そこで待ってろよ!」
不安は残っていた。
今日が彼女の実験の日でないという保証はない。
でも、少年は一刻も早く今襲われているかもしれない女性を助けたかった。
すぐに助けて、すぐ戻ってくればいい。
少年にはどちらかを捨てることなどできるはずもない。
だが、それが命取りになった。
少年が向かった先には、予想通り、3人のスキルアウトに襲われている女性がいた。
すぐさまスキルアウトたちを沈め、女性を助けることに成功。
少女の待つ公園に戻るまで、おそらく5分もかからなかったと思う。
公園にはもう誰もいなかった。
御坂「なによ…これ」
時刻は戻り、ここは第七学区の電話ボックスである。
常盤台中学の制服に身を包んだこの少女は、クラッキングよって得た情報に唖然としていた。
少女に目に次々飛び込んでくる情報は、にわかは信じられないものばかりだった。
『絶対能力進化計画』
『ツリーダイアグラムによる予測演算の結果、まだ見ぬレベル6へとたどり着ける者は一名のみ』
『128種類の戦場を用意し、超電磁砲を128回殺害することで、レベル6へとシフトする』
『二万体の妹達との戦闘シナリオを持って』
『絶対能力者への進化を達成する』
御坂「ははっ…なによこれ」
――有り得ない。
――そんなことあるはずない。
だって寮に帰れば、また黒子がまとわりついてきて――明日になれば皆を誘ってお茶したりして
あいつと明日こそ決着をつけて――。
御坂「悪ふざけにもほどがあるわ」
御坂「わ…私を殺すとか…代わりにクローンを使うとか…」ハハッ
そんな代わり映えしない日常が待ってるはずなんだから。
御坂「そんなこと…できるわけない」
御坂「のに」
『さようなら…お姉さま』
御坂「…」ギリッ
そう―――嫌な予感はしていた。
だからこそすぐに初春飾利に電話した。
結局私はまた逃げていただけ。
だから目をそらした――見えてないふりをした。
まだ掴めた手を――掴まなかった。
完全下校時刻を大きく回った夜の道を、全力でひたすら走る。
ポケットを弄ると、コインの感触があった。
彼女とは、たった一度会っただけ。
自分とはなんの関係もないところで生まれてきた
本来交わらなかった平行線上を生きている存在なのかもしれない。
私がしようとしていることなど無意味で、彼女はそれを望んでいないのかもしれない。
だが、構うものか。
彼女たちが造られたのは、ほかでもないわたしの責任だから。
第七学区の路上。
ほとんど車のない路上を高速で移動する黒いバンがあった。
車に乗っているのは、学園都市の闇を担う組織、アイテムの構成員である。
仕事を終え、下部組織の運転手にファミレスまで輸送させている最中なのだ。
構成員である少女たちは、現在血なまぐさいガールズトークに花を咲かせていた。
フレンダ「結局今日の仕事もなんてことなかったわけよ」
絹旗「ほとんど麦野だけで終わりましたね」
麦野「まぁいつものことでしょ」
フレンダ「でもわたしも活躍しないと今月ピンチなわけよ」
絹旗「また通販ですか?」
フレンダ「そうなの。ついね」テヘッ
麦野「あんた足引っ張りはしても活躍はしないわよね」
フレンダ「」
絹旗「まぁ超事実ですから仕方ありませんね」
滝壺「大丈夫。そんなダメダメなふれんだを応援してる」
フレンダ「…」
麦野「はりあいなくてつまんないわ」
絹旗「麦野と張り合える人なんて超いませんよ」
絹旗「それこそ序列が上の超能力者くらいのものじゃないですか」
麦野「序列が上って言ったらやっぱ超電磁砲は気に喰わないわ」
麦野「ガキのくせして私の上を名乗ってることが許せない」
滝壺「そういえば、最近超電磁砲と似たAIM拡散力場を感じる」
麦野「どういうこと?」
絹旗「あれじゃないですか?超電磁砲のクローンの噂」
フレンダ「あれってただの噂でしょ?なんか最近はやってるみたいだけど」
滝壺「いま近くに超電磁砲のAIM拡散力場が…2つある」
麦絹フ「!?」
滝壺「性格には同じじゃない…でもこれほど近いのは珍しい」
フレンダ「じゃあなに?噂はほんとうだったわけ?」
麦野「まぁあり得ない話じゃないわね。レベル5を量産できるなら喉から手が出るくらい欲しいでしょうよ」
麦野「今日のターゲットみたいな、イカれた科学者共ならね」
絹旗「じゃあなんですか!?いますぐそこにレベル5が二人!?」
滝壺「…」
麦野「ちょっと気になるわね…オイ」
運転手「はい?」
麦野「行き先へんこー。滝壺のナビに従うこと」
運転手「はいっ」
麦野「二人いるなら一人くらい殺しても平気かにゃーん?」
絹旗「麦野の超電磁砲嫌いは相当ですね」
麦野「序列が上ってだけでも気に入らねぇのに男持ちだからなぁ」
フレンダ「そんなつっこんだことまで知ってるわけ?」
麦野「いや。一緒にいるとこみただけ」
絹旗「それって付き合ってるかわからないんじゃ…」
麦野「あんたらも見たでしょ…あいつよ」
絹フ「?」
麦野「こないだのツンツン頭」
絹旗「…ああ、あの男ですか」
少女たちは知っている。
あの男が指すのは、麦野を負かした相手、上条当麻のことである。
麦野がハッカーをつかって手に入れた情報は微々たるもので
上条当麻は何故か学園都市の最重要機密扱いで、分類上無能力者だということだけ。
麦野「やっぱり奇妙ね…」
フレンダ「あれって…」
メンバーの一人、フレンダ=セイヴェルンが窓を見つめてつぶやいた。
絹旗「超どうかしましたか?フレンダ」
フレンダ「やっぱりあれって…見間違いじゃなかったら上条だと思う」
少女の発言に、リーダーである麦野沈利が噛み付く。
麦野「上条だあああああ!?どけフレンダぁ!」
絹旗「ほんとですかフレンダ?」
フレンダ「ぶぎっ!…いてて」
麦野「ああ間違いねえ。オイ停めろ」
運転手「は、はいっ」
見るからに怪しい黒いバンが、急にその速度を落としてその場に停車する。
少女たちが発見したその人影は、スピードを落とすことなくバンの横を通り過ぎていった。
一旦終了です。また進んだら投下します
御坂妹「21:00になりました。只今より、第9982次実験を…開始します」
少女は額に当てられたゴーグルを下ろし、銃を構える。
一方「…」ニタァ
対する最強の能力者は、身構えもしない。
既に日常と化しているこの実験は、彼にとって戦闘と呼べるものですらないのだ。
だから笑みを浮かべたまま、そこにいるだけ。
ただ息を吸って吐くように、彼の勝利は始まる前から確定していた。
少女が携帯の画面に視線を落とすと、時計は既に21:08を指し示していた。
彼女が得た情報によれば、実験開始時刻は21:00。
既に実験という名の悪夢がはじまってから8分もの時間が経過していた。
もうずっと走りっぱなしで、彼女は一度も足を休めていない。
すでに体力は限界にきていたが、少女は自分がすこしでも足を止めることをよしとしなかった。
彼女はこの実験の被験者である一方通行についてほとんど何も知らない。
知っていることといえば、彼が間違いなくこの街で最強の能力者だということ
その能力がベクトルを自在に操るという予想もつかないものであること
そして、すでに約10000人の妹達を殺しているかもしれないということだけだった。
曲がりくねった路地を、月明かりだけを頼りにひたすら走リ続けていると
目的の座標までもうあとこの角を曲がるだけという場所まで来ていた。
目的地を目の前にした少女に、焦りと不安と恐怖が次々に襲いかかる。
今はただひたすら、この角の先に最悪の光景が広がっていないことを望むばかりだった。
角を曲がりきり、足を止める。
覚悟を決めて目を大きく見開くと、そこには今までと同じ、ただ何もない裏道があるだけだった。
荒れた呼吸と波打つ心臓の鼓動ばかりがやけに大きく響く。
少女の腰がへなへなと折れた。
御坂「…やっぱりね…そんな実験…あるわけないじゃない」
安堵の表情を見せた少女の額から、止まっていた汗がどっと流れ始めた。
そのまま足を伸ばしたところで、少女は足に違和感を感じた。
何かを踏んでいるような違和感を。
慌てて建物の影になっている部分から踏んでいた物を引っ張りだすと、それは壊れた黒いゴーグルだった。
見間違いようもない――昼間出会った少女の頭上でやけに存在感を放っていた、あのゴーグル。
なぜ、昼間であった少女の持ち物が――誰も寄り付かない路地裏で、壊れた状態で置かれていたのか。
再び少女を拭い用もない恐怖が襲った。
たったひとつ、見つけてしまったゴーグルだけで、この謎は意図も容易く解けてしまう。
それが正解だと言わんばかりに、少し離れた場所から轟音が聞こえた。
御坂「もう!」
もう見当違いであるはずもない。
悪夢としか思えない実験は、10000人を超える彼女の妹達は、彼女の提供したDNAマップのせいで生み出され
くだらない実験のために殺され続けていたのだ。
たとえばそれは、彼女がゆっくりお風呂に浸かっていた時だったかもしれない。
彼女が友人たちとお茶を囲っていた時だったかもしれない。
そんな日常の些細な出来事に一喜一憂していた少女の裏で、妹達は造られ、殺され続けていた。
――――そして今この瞬間も。
『さようなら…お姉さま』
彼女は確実に死へ向かって、少女に背を向けて歩き出した。
だったら私は…?
妹に背を向けて、不安を拭い去るために――自分の日常を守るために歩き出した。
わたしのせいで殺されていることなんて知らくて。
途端、少女は自分が許せなくなってしまった。
いま、ここでこうして生きていることさえ恥ずかしい。
恨み事の一つでも言ってほしかった。
わたしはいまなんで走っているの?
妹達を助けるため?自分で巻いた種なのに?
もう一万人も殺されているのに…昨日まで楽しく過ごしてきた私がなにかしたところで、一体誰が救われるの?
自問自答を繰り返し息を荒げ走り続けてきた少女の足が止まる。
その瞬間、少女は自分の頭のなかが空っぽになるのを感じた。
フェンス越しに見えたその光景は紛れも無い現実で――それを前にしたら少女の悩み事なんて本当にちっぽけなものだった。
傷だらけの少女は、身にまとう制服さえボロ布のようで
少女の悲惨な姿などどこ吹く風の狩人は、嬉々として獲物を追い回している。
誰が言い始めたのか、学園都市は弱肉強食であるらしい。
実際にそうだと、少女は思った。
絶対的力を持った能力者は、目の前の少女をまるでゴミを見るかのような目で見下ろしている。
きっと彼は、戦闘をしているつもりすらないのだろう。
彼が指で触れただけで、少女は痛みに顔を歪め、赤い血を振りまく。
みっともなく尻振って逃げまわる。
学園都市は弱肉強食。
ここでどれだけ実験の間違いを説いても、実験は止められない。
止める方法があるとするなら――いまここでアイツを
御坂「殺す」
決めてしまえば、もう考える必要もなかった。
御坂「離れなさい!」
狩る者と狩られる者。
二人しかいなかった世界に、一匹の猛獣が放たれた。
一方「あァン?」
御坂妹「お…ねえさま?」
狩人の視線が、猛獣に向けられる。
一方「なァに予定外の行動とってやがンだ?」
少年の足が瀕死の少女の頭を踏みつけた。
一方「あの個体をどォにかしろ」
どうやら少年は御坂美琴をクローンだと認識したらしい。
対する少女は認識の誤りなど眼中に無く、妹の頭をゲシゲシと踏みつける少年に心底怒っていた。
御坂「今すぐその子から離れなさい!」
少女の本気の怒涛にも、少年は飄々とした態度を崩さない。
まるで遊び飽きたかのように瀕死の少女から足をどけ、薄ら笑いを浮かべながら少女に向き直った。
一方「なンか様子が違うと思ったら…オマエ」
一方「オリジナルかァ!」
御坂「なに…やってんのよ…」
一方「あァ…わかった」
一方「オマエ…人形を助けに来たのかァ」
少年は何がおかしいのか、嬉しそうに笑う。
一方「オマエのクローンには世話になってンぜェ?」
一方「俺を絶対能力者にする実験に付き合ってもらってンだ」
嬉々として語る少年の姿が、この少女には信じられなかった。
こんな非人道的な実験――二万人を殺害する実験を、自らすすんで行っている少年の存在。
嫌々手伝わされているのかもしれない。
少女のそんな考えはただの幻想に過ぎなかったわけだ。
御坂「そんなことのために…」
少女の目に、少年の足元で苦しそうに顔を歪める妹の姿が映る。
彼女の検体番号は9982。
その数字は、これまでに9981人の妹達が犠牲になったことを示していた。
目の前の少年は、これから9982人目の命を奪う。
絶対能力者(レベル6)になるため…
御坂「そんなことのために…」
一方「あァン?」
御坂「あの子たちを殺したのかああああああああああああああああああああああああああああ」
少女の突き出した右手から、オレンジ色の光が伸びる。
地面をえぐりながら音速の三倍で進む超電磁砲は、確実に少年の頭に命中した。
命中して、返ってきた。
時間にして1秒にも満たない間に、少女背後から轟音が響く。
少女の目には、まるでスローモーションのように、起きたことが鮮明に見えていた。
放ったコインが、跳ね返る。
少女の横髪をかすめ、遥か後方の鉄柱に命中した。
目を見開いた少女の顔を、大粒の冷汗が伝う。
一方「なにがどォなってるかわからねェって面だなァ…」
一方「あァ?…」
一方「そっかァ。いやァ悪ィ悪ィ。今のがオマエのとっておきってやつだったのかァ」ニタァ
一方「仮にも同じレベル5だ。それがまるでこンなにシケたもンだって思わくてよォ…」ニヤニヤ
起きたことは全て見えていた。
この少年の言葉で全て理解できる。
―――同じ超能力者の中でも、第一位と第二位は傑出している。
―――なかでも第一位は、その戦闘を経験したものに『まさに一方通行だった』と言わしめるほどの実力。
そして今見た、第三位本気の超電磁砲をはじき返すという芸当。
学園都市230万人の頂点――あらゆるベクトルを操る能力。
その真意は、彼に対してすべての攻撃が通用しないということ。
それはこの少女が勝つ確率が0になったことを意味していた。
御坂「な…んで」
一方「あァン?」
御坂「それだけの力があって…なんでこの子たちを殺さなきゃなんないのよ…」
一方「オマエみてェなやつがまだいるからだ」
御坂「…え?」
一方「オマエみてェに向かってくる奴がいるからだ」
一方「挑むことすらおこがましい。無敵の存在」
一方「それになるためだ」
一方「ところでよォ…愉快に素敵に邪魔してくれやがって…」
一方「ちっとは楽しませてくれンだろォなァ?三下ァ!!」グキグキ
少年の標的が少女にすり替わる。
腕を鳴らし歩み寄ってきた少年に、瀕死の少女が待ったをかけた。
その手にはボロボロの銃が握られており、銃口はしっかりと少年を捉えている。
御坂妹「実験外の戦闘は…演算結果に支障をきたしかねません…」
一方「あァ…オマエまだ生きてたのか」
一方「生命力はゴキブリ並みだなァ鬱陶しい」
御坂妹「足裏にもバリアを張っているとは…予想外の結果に…ミサカは動揺を隠しきれません」
一方「もォいいもォいい…しゃべるな気持ち悪ィ」
一方「ちょろちょろ逃げ回られても面倒だからよォ」ニタァ
言い終わると同時に、少年の姿が視界から消える。
御坂「!?」
再び少女が少年の姿を視界にとらえた時、彼は妹の太ももを掴み取っていた。
突如瀕死の少女の顔が苦しみに歪められ、声にならない叫びが漏れる。
御坂妹「うぐっあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ああああああああああああ」
血しぶきの中、薄ら笑いを浮かべた少年の手には少女の左足が握られていた。
少女の顔から生気が抜けていく。
御坂「ああ」
御坂「あああああぁぁぁあああぁぁああぁぁああぁあああああああ」
なぜこんなことができるのだろう。
彼女に恨みでもあったのだろうか。
怒りをも殺意をも超えた感情で、少女の頭は溢れかえった。
激情に任せた砂鉄の竜巻が、磁力で操る鉄柱が、少女を離れ轟音とともに飛んでいく。
対する少年は、鬱陶しそうに一瞥しただけ。
それだけで、少女の攻撃は向きを変え、少年を避け少女自身を襲った。
勝ち目のない絶望が判断を鈍らせる。
一拍逃げ遅れた少女の足に飛来した鉄柱が、鈍い音で鳴いた。
不思議と痛みは感じない。
もっと恐ろしい恐怖が少女を包み込む。
少年はもう少女を相手にするつもりもないらしく、足をもがれ地を這う彼女の妹に、ゆっくりと歩を進めていた。
彼が一体何をしようとしているのか、想像するのも容易い。
平然とした態度で、とどめを刺そうとしているのだ。
きっと彼には命を奪うという認識すらないんだろう。
ただ今日の実験を終わらせようとしているだけ。
少女が妹に視線を移すと、彼女は懸命に地を這っていた。
実験のために生まれてきたと自称する彼女が、実験を放り出して逃げているというのは有り得ない。
では一体何故あそこまでして―――
彼女の向かう先にあるものが見えた瞬間、少女は呼吸が止まる思いだった。
少女の部屋にも、同じものがある。
第七学区のクレーンゲームで取ったゲコ太のぬいぐるみ。
何故少女がそんなものを持っていたかはわからない。
命の散り際、ぬいぐるみに手を伸ばす妹の姿が、少女の心にやけに響いた。
どうしても助けたかった。
彼女は何も悪くないのに。
全ての元凶である私が、こう思ってしまうのはおかしいだろうか。
もう立ち上がることも出来ない。
少年は何を思ったのか、瀕死の妹から離れていく。
ぬいぐるみに手が届いた少女と、全長10mに達するコンテナに手を伸ばした二人の姿は、さながら一枚の絵画のよう。
少年の何倍もあるかというコンテナは、少年の能力によって軽々と持ちあげられる。
誰が言い出したのか、学園都市は弱肉強食であるらしい。
でも、これはあんまりじゃないだろうか。
―――常盤台のエース、超電磁砲、七人しかいない超能力者。
この少女を賞賛する呼び名は幾つもある。
努力で勝ち取った超能力者の称号を、これまで誇りに思っていた。
でも、常盤台のエースは理不尽に殺される妹を助ける力もない。
最強無敵の電撃姫は、うずくまって立ち上がることもできない。
――小さい頃私がなくと、眠ってる間にママが全部解決してくれた。
今こうしていることすらも全部夢で…起きてしまえば全部無かったことになればいいのに……現実は甘くない。
――なんでも解決してくれたママは、ここにはいない。
――神頼みしても、奇跡が起きるわけじゃない。
「なに…やってんだよ」
――駆けつけてくれるヒーローがいるわけでも
「なにやってんだって聞いてんだよこの三下がああああああああ!」
急に後ろが騒がしくなった。
砂利を踏みしめる音が近づいてくる。
ありえない…。
だって、わたしは知ってるから。
これまでの人生経験から学んでいるから。
困ったときに助けてくれるヒーローなんているわけが――
背後に感じた気配は、いつの間にかわたしの横に並んでいた。
つい見上げてしまったのは、不可抗力だ。
いるはずもないヒーローにすがるほかに、どうしようもなかったんだっから。
一方「あァ?だれだオマエ」
少女の目に、見慣れた少年の横顔が飛び込んできた。
突然の第四者乱入に、少年がコンテナを落とし、ぬいぐるみを抱えた血まみれの少女が振り返る。
御坂妹「…あ…あなた…は」
消え入りそうな彼女の声がこぼれた。
絶体絶命の中現れた少年は、少女の顔なじみ、上条当麻だった。
少女に勝負で勝ち続けているこの少年のことを、少女はよく知らない。
第一、こんなところまで一体何をしに来たというのか。
少女の疑問などお構いなしに、少年は少女に携帯を渡してきた。
上条「悪いな御坂。そいつで救急車をここに呼んでくれ」
上条「冥土帰しの病院に行けば御坂妹はまだ助かる」
御坂「なに言ってんのよ…」
そう、何を言ってるのかわからなかった。
この少年は、この状況で少女の妹を助けようとしているのだろうか。
御坂「あんた…なんでこんなところに」
上条「決まってんだろ」
上条「助けに来たんだ!」
何でも屋要素が皆無
だが面白い
きれいに切断された上条さんの右腕はともかく、引きちぎられた脚はくっつくのかね?
レスたくさんありがとうございます。
>>293
何でも屋さん開業はまだ先なのです。
>>296
僕歯医者だよ?足が引きちぎられていようが生きているなら絶対に助けてやる。傷痕もなくして心のケアまで含めて助けてやる。
これカップリングあるのかな?
このSSまとめへのコメント
面白い!!!!
このSSの上条は原作と比べものにならないほどモテモテでラブコメ展開も意外とありありかも( ̄▽ ̄)
早く続きお願いします(ーー;)
ss速報vipが鯖落してるから更新できない状態なのです
もう更新できるのでは?(・・?)
早く続きがよみたいです
お願いしますお願いしますどうか続きを!
面白いです!!
続きはいつ書いてくれますの?
いま闇条スレでいそがしいなじゃない?
続きを…はやく続きを読ましてくれ。・゜・(ノД`)・゜・。
つ、続きを...
更新まだ?
更新まだ?
更新まだ?
面白くなりそうなとこであきたかw
闇条で興味持ったけどやっぱこの作者すげえわ
また書いてくれないかな
だれーかー