上条「神様だって殺してみせる」 (464)

とある魔術の禁書目録×月姫&空の境界のss
(志貴と式が上条さんの師で兄姉)
(過去編でしか志貴たちでてこないけど一応クロスオーバー?)

・初ssです
・上条さんが直死の魔眼を持ってたらというIFで再構成(既出ならごめんなさい)
・再構成とか言っときながら禁書読んでる途中
・上条さんが若干(?)チート
・口調迷子
・ご都合主義
・残酷な描写があるかもです
・理系なのに地の文(日本語おかしいかも)
・不定期更新(週一で来れたらいいなぁレベル)、sage進行
・書き溜めは……一回一回短いです。
・物語の進行遅いです
・誤字、脱字は脳内変換よろしくお願いします。

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~プロローグ~

ガラスの割れるような音と共に数億ボルトの電撃の槍が消し飛ぶ。

ツンツン頭で黒髪の少年は鉄橋の上で紫電を放つシャンパンゴールドの髪の少女と向かい合っている。
ふと上を見上げ、 ”兄” の口癖とも言っていい台詞をこぼす。

「今夜はこんなにも、月が――綺麗だ」

少女に再び目を向け

「大凶に当たるとは、お前ってついてんだかついてないんだか」

その直後、七月十九日の終わりを告げるように
凄まじい轟音と共に雷が鉄橋に落ちた。

~第一話~

「はぁ」

少年、上条当麻の七月二十日第一声はため息だった。
昨日落雷が『落ちたらしく』電子機器は八割程がオシャカ。
クーラーをつけることも出来なかった学生寮の部屋は熱気が支配し、うだるような暑さである。

さらには、冷蔵庫の中身は全滅、キャッシュカードは踏み砕き、担任から補習の知らせと言う名のラブコール。
上条の『不幸』は今日も平常運転であった。

「こういう不幸じゃなきゃ振り払えるんだけどなぁ」

涙目で一人愚痴ってみるが、答えてくれたのはどこからか聞こえてきた野良猫の鳴き声だけであった。

とりあえずは、冷蔵庫とカードだなと頭にインプットしながら布団を抱え、干すためにベランダへの窓を開ける。

「は?」

思わず、固まってしまう。
かろうじて、布団を落とすのは防いだ。つまり、布団は腕の中。
なら、今ベランダにかかっている『白いの』は何だ?

少女だ。

純白の肌。銀色の髪。十四、五歳。……白の修道服。
少女の特徴はこんなものだろうか。

「マジもんの修道女か?」

修道服を着た人を見るのはこっちでは初めてだ。 ”兄” の所に居た時はよくというか毎日見ていたが。
黒鍵を投げる修道女がそうそう居ては困るのだが。

「ォ――」

そんなことを考えていると少女の口から声がこぼれた。

「な、なんだ?」

「おなかすいた」

今何つった? おなかすいた? え? ベランダ引っかかってて第一声がそれ?

「あぁー えーと とりあえず腹が減ったってことで良いのか?」

「うん」

よく分からないが分かった。とりあえずご飯だな。
そう判断した上条は部屋へと戻ろうとするが、

「食材って全滅してたよな」

終了
またいつか更新にきます

「とりあえず、何であんな所に引っかかっていたのかが上条さんは知りたいのでせうが?」

上条の問いに上条が急いで買ったきた甘ったるい菓子パンを貪りながら少女は

「私の もぐっ 名前はね、インデックスって もぐっ 言うんだよ?」

「おい」

「見ての通り もぐっ 教会の者です。 もぐっ あ、イギリス清教の方ね」

とりあえず飲み込んでから喋れといいつつ、

「何の話だ何の。てか、会話が成立してる気がしないのは上条さんだけでせうか?」

「んくっ 魔法名はDedicatus545なんだよ」

「魔法名? はぁ、もういい。まず俺が聞きたいのは何でベランダに引っかかってたのかなんだよ」

「屋上から屋上に飛び移ろうとしたんだけど、失敗しちゃって」

「は?」

上条は思わず上を見上げる。

「馬鹿じゃねぇの? 八階だし、失敗したらあの世行きだぞ」

「うん、そうだね」

少女、インデックスは肯定する。

「じゃあ何で」

「でも、追われてたから仕方なかったんだよ。逃げ道他になかったし」

「は?」

さっきから頭が追いつかない。あまりにも突飛だ。

「ほんとは、飛び移ってる最中に撃たれたんだけどね」

「ゴメンね。 落ちてきて引っかかっちゃったみたい」

そう言ってインデックスは上条に微笑みかけてくる。

「撃たれたって、お前! どうもないのか?!」

「それなら大丈夫。この服は『防御結界』の役割もあるからね」

そう言ってインデックスは自慢げに胸を張った。

『防御結界』 ”兄” や ”姉” と暮らした世界で存在していたが、

「こっちの世界にもあったんだな」

「え?」

思わず口に出していたようで

「いやっ! 何でも無いから!」

急いでごまかす。

「ふーん」

とりあえず、『防御結界』だというのなら ”右手” では触れないようにした方が良いだろう。



「にしても、俺の順応能力すごくね? よくこの程度の混乱ですんでるよホント。これも慣れですかねぇ」

「?」

投下終了
また、いつか

はぁ、厨二 治したいなぁ

四個目となる菓子パンを両手で持っているインデックスに上条は一番気になっていることを尋ねる。

「で、インデックス? は誰、てかナニに追われてるわけ?」

「んぐっ 魔術結社だよ。名前までは分からなかったけど」

『魔術結社』さっきも教会とか魔法名だとか言ってたし魔術師の集まりと見て間違いないだろう。

「科学じゃ証明できない力がこの世界にもあるのか。まぁ、使えるかどうかは分からねぇけど」

「この世界ってどういうことかな?」

また、失言したらしい。
初対面だぞ? 話してもいいのか? そんなことを考えながら上条は右手を見つめ、数秒後何かを決心したかのように握りしめた。

「とりあえずお前のことは聞いたし、今度は俺かな。まずは俺の名前は上条当麻だ。……で、聞いてみるか? 俺のこと」

少し不思議そうな顔をした後、

「うん!」

「あ、とうまって呼んでいい?」

話そうとした矢先、突然で分からなかったが名前で呼びたいってことらしい。
少し苦笑して、

「ああ」

答えるまで間が空いたからか、少し不安げだったインデックスが花が咲いたように笑った。
そんな彼女に再び苦笑を浮かべながら上条は話し始めた。

~過去編~

上条当麻という少年は不幸だ。
言葉にすれば只のそれだけ。
だが、現実は『それだけ』で済まされるものではなかった。
偶然コンクリートの壁が崩れてきたり、偶然居眠り運転にあったり、偶然植木鉢が降ってきたりと数えたらキリがない。知らない男に背中を包丁で刺されて瀕死になったこともあった。

そんなこんなでついたあだ名が『疫病神』

子供の心にソレはあまりにも重すぎた。

ある日、当麻は一人で公園で遊んでいた。
『疫病神』
その代名詞と不幸という体質のおかげで当麻には誰一人として友人が居なかったのだ。
遊んでいたゴムボールが跳ねて偶然妙な跳ね方をしてベンチに当たり、車道へと跳ねていく。
それを追って飛び出した当麻の体に不幸にも偶然飲酒運転の車がぶち当たった。

少年は背中を刺されたときのように生と死の境を七日七晩行き来した。

その間、両親は寝る間を惜しんで少年の手を握り続けた。
死なないで。ここに居てと。

その思いが届いたのか、八日目の朝少年は目を覚ました。

「当麻!」
「当麻さん!」

泣いてよろこぶ両親の目に映ったのは愛しい息子の ”蒼紅い眼” 。

「父さん、母さん。この ”黒い線” と ”点” は、ナニ?」

不可思議な ”線” と ”点” が見えるようになって数ヶ月。
とある青年が二人、着物の上に上着を羽織った女と眼の当たりに包帯を巻いた男が上条家にやってきた。

二人の名前は ”両儀 式” と ”遠野 志貴” 。旅人だという。
名乗りはしないが ”殺人鬼” と ”殺人貴” である。

二人の話によると力の差はあれど、当麻と同じ ”眼” を持っているらしい。
そして、噂を聞き本物であったため迎えにきたと言うのだ。
当然、当麻の両親は渋った。

だが、ここに居ても当麻は『疫病神』と言われ続け、とある男のように八つ当たりのように『疫病神』を殺しにくる人も居るかもしれない。
ならば、同じような人たちに預けた方が安全なのではないか?
それに、悪い人たちには見えない。
そう判断した二人は、

「どうぞ、当麻をよろしくお願いします」
「当麻さんをよろしくお願いします」

承諾した。

この時、当麻に ”シキ” という名前の兄と姉ができた。

六歳の時、当麻は兄と姉に ”俺たちの世界” に連れて行かれた。
そこで、とりあえず簡単な ”眼” の説明を受けた。

まず、 ”眼” の名前は『直死の魔眼』。
これは、 ”モノの死” を視るというもの。線を切れば、その切った部位を ”殺し” 、点を突けば、そのモノの存在を完全に ”殺す” というもの。
とにかく、 ”死を司る眼” であるということを教わった。

そして、眼の特徴は式の眼に近い眼であること。
簡単に言えば志貴同様に ”死” を黒く認識するが、式同様に眼が少し色合いは違うが蒼紅く輝き脳に負担はかからず生物無生物に問わず殺せ、さらには誰にも出来ないと思われていた完全な制御さえも出来る筈といったようなものであった。

これらを調べたのは、二人の兄姉と兄である志貴の先輩であるシエルという名の修道服の女。
そして、これらを調べる過程で ”あるモノ” が見つかった。

”右手に宿る力” である。

それはどこまでのモノを殺せるのかを調べていた時のことである。

「じゃあ、当麻。これに線は視えるか?」

そう言って、志貴はシエルの作り出した黒鍵の刃の部分を当麻の前に差し出す。

「うん。こことここに点がある」

そう言って当麻の指差した右手が触れた瞬間。
ガラスの割れるような音とともに刃の部分が聖書のページへと強制的に戻る。

「!!!」

予想だにしない結果に、三人は眼を見張ったがすぐに調べ始めた。

結果は、 ”死” が視えても普通のモノには何の影響も与えず、何らかの力で作り出したモノは例外なく強制的に打ち消すということ。

この異能の力を強制的に打ち消すという驚異的な力に志貴たちは『幻想殺し』『イマジンブレイカー』と名付けた。

さらに分かったことがいくつかある。
どうやら、当麻の中には正体の分からないモノがあり、その副産物が『幻想殺し』であること。
志貴同様に二回の臨死ではあるが、 ”死” を経験することによって ”中のナニか” が二個目の副産物として『直死の魔眼』を宿したことである。さらに、志貴たちを上回る ”眼” もその ”制御” もコレによる影響である可能性が高いこともであった。

これに関しては、正体が分からないため当麻には話していないが。

六歳から十六歳になるまで、当麻は志貴たちと訓練をした。

直死の魔眼を持った人間は戦いに巻き込まれる。
このことを危惧した兄と姉が始めたのだ。

志貴からは、小刀・刀を使った戦闘術(暗殺術)
式からは、眼の力の制御と幻想殺しの制御。それらを使った三次元の戦闘術、武道。さらには、自己暗示と呼ばれる方法。
シエルからは、右手の制御(基本はon状態)が出来るようになってからは『投影魔術』なるもの及びそれを用いた戦闘術を教わった。
他にも、アルクェイドという人(?)に素手での戦闘法を教わったりもしたが、爪が固くも鋭くも無いので断念した。まぁ、動きの稽古にはなったが。

これらの訓練は最早人間の領域ではなかった。

戦闘術を教わるときに、当然ながら当麻は尋ねた。

「何でそんなのをわざわざするの?」

その問いに式は、

「お前はいずれ元の、お前の世界に戻る。そのときに必要になるだろ」

そして、志貴がそれに続くように

「当麻の世界には ”超能力” を開発する『学園都市』ってのがあるらしんだ」

「その中の悪い輩に右手や眼を狙われる可能性もあるしね」

「せめて、自分とその周りを守れるぐらいにはなってもらわないと」

シエルは、

「あと、守るために ”殺す” ことが必要になることもあります。そのときは

「生かすために殺せ」

志貴が放ったその言葉は矛盾があるように聞こえた。
でも、それでいて矛盾がないようにも聞こえた。


十年間訓練は続いた。その間、死徒と呼ばれる存在を殺したことも一度や二度ではない。
さらには 訓練により”中のナニか” の影響か、訓練を受けた当麻の身体能力は暗示をかけずとも人間のソレを凌駕した。

そして十六歳になる年の春

~第二話~

「俺はこの自分の居た世界に戻ってきたって訳さ」

あまりに突飛な話だったからだろう。
インデックスはポカンと馬鹿みたいに大きく口を開け、こちらを見ている。

「あの~インデックスさん?」

「はっ!」

ビクンと大きく体を跳ねさせ、こちらを見ると

「あまりに現実離れしすぎて、ちょっと信じにくいかも」

と言った。

まぁそうだろう。突然、俺は異世界に十年間いたんだなんてことをいきなり告白されても普通は信じられない。
そもそも、初対面の相手に話すこと自体が間違っているのだから。
だが、なぜか目の前の少女には話したいと思ったのだ。なぜだか。

「ま、今の段階では信じてくれなんて言わないさ」

そこで

「あ」

肝心なことに上条は気がついた。

はい。ここまでです。
中間テスト前なので書き溜めを一気に今日明日で投下します。
その後は二週間ぐらい空くかもです。

できたらステイル戦までいきたいなぁ、なんて……

「そういや、なんでお前は追われてるんだ?」

「わたしが禁書目録だから」

「は?名前ならさっき 「私の持ってる十万三千冊の魔道書が目的だと思う」

「えーっと」

訳が分からない。
見ても、本を持っている風な様子はないし、仮に持っていたとしても十万三千冊なんて物理的に不可能だ。

「上条さんにはどうしてもそんなものを持っているようには見えないので 「ちゃんと持ってきてるよ?」

あれ? 俺には見えないぞ? 馬鹿には見えない本? いや、それはねぇだろ。
もしかして、魔術云々もこいつの妄想?

「お前の言ってる意味が全く俺には理解できないんだけど。見えねぇし」

そう言うと、インデックスは再び胸を張り、

「当たり前かも、勝手に見られると意味ないもん」

「あー、もう簡潔に言ってくれよ」

インデックスは頭を指先で叩きながら

「全部、この中にあるんだよ」

何言ってんだコイツと思いながら何気なく見た時計に寒気のあまり身体が震える。

「補習忘れてた」

「あぁー、お前どうすんだ? これから俺、補習あんだけど帰ってくるまでここに居るか?」

インデックスに向き直って尋ねるが、

「いい、出てくから」

「はぁ? いや、ここに居とけば……」

「連中は私を追ってここまでくるかも。それにこの部屋爆破とかされたくないでしょ?」

平然と恐ろしいことを言ってのけた少女は固まった上条の横を走ってすり抜けていく。
フードをその勢いで落として。

「おい、待てよ。お前の話が正しけりゃ追われてんだろ? だったら 「なら、私と一緒に地獄まで付いてきてくれる?」

笑顔だ。泣いてる笑顔だ。
自分より年下であろう少女の辛そうな笑みに再び体が固まる。

「大丈夫。教会まで逃げれたら匿ってもらえるから」

「まぁ、英国式じゃないとだめだけど」

その言葉に上条は右手を見、そして眼を一瞬蒼紅く光らせ、

「とりあえず、今のうちは俺と居ろ」

「え?」

「お前を追ってきてんのが魔術師なら問題ねぇだろ。右手も……いざとなれば ”眼” もあるしな。守ってやるよ、教会見つけるまで用心棒してやる」

その言葉にインデックスは、簡単にうなずくことなんてできない。
追われているのだから。
迷惑をかけてしまうのは目に見えているのだから。

でも、『守ってやる』。
ただそれだけの言葉に誰も巻き込まないという決心が揺らいだ。

「ほ、ほんとにいいの?」

「ああ」

「怪我しちゃうかもだし、それに、もしかしたら殺されちゃうかも!」

「簡単にやられるほど上条さんもやわじゃありませんのことよー」

「……ごめんね」

だめだ。
だめなのに。
分かっているのに。

「いいっていいって」


――縋ってしまった。のばされた『右手』に

はい。はい……。
また、22時頃きます。
とりあえずここまでで許してください。

「で、何で上条ちゃんは女の子連れなのですかー?」

上条のクラスの担任である見た目幼女の大人、月詠 小萌が上条に尋ねた。

「こ、これはですね。 マリアナ海峡よりもふかーい理由がありまして……」

とりあえず浮かんだ海峡の名前を出しながらごまかす。

「その理由を聞きたいのですよー」

ことはできなかった。
が、

「まぁ、上条ちゃんのことですからまた人助けでしょうね。ですが、先生も怪我をされるとつらいので怪我しないように気をつけてくださいねー」

なんとなく理解してくれたようだ。
このまま話が終わる、はずだった。

「ねぇ、とうま。 なんでこんな小さい子がここにいるの?」

インデックスの純粋な疑問が小萌に突き刺さる。

「む! 私は小さい子ではないのです! 立派な教師なのですよー!」

「あ、先生ごっこなのかな?」

「違うのです! れっきとした大人なのです!!」

見かねた上条が二人の間に割り込んだ。

「インデックス? 間違いなく先生は大人で俺の担任だ。ok?」

「え、そうなの? なら、科学は若返りの秘薬すらも作ったというの? でも、……」

「あーもう! インデックス! とりあえずコッチこい!」

上条はインデックスの手を引いて廊下へと出て行った。
そんな二人を後ろから見ていたのは、

「あ、上条ちゃん待つのですよー」

担任と

「な、なんなんや。あのかわいらしい子は~!」

青髪にピアスの似非関西弁と

「……」

じっと白い修道服を見つめるアロハシャツであった。

「大人しくしてろって言ったよな! インデックス!」

上条は廊下に階段の踊り場まで行くと言い聞かせるようにインデックスの肩を掴んだ。

「あ」

そう掴んだのだ。両手でインデックスの肩を。
もっと言うと、『右手』で『白い修道服』に触れたのだ。

触れたのだが……

「あれ?」

幻想殺しはoffにはしていない。
そもそもoffにしている間は脳に負荷がかかるから気づかないなんてことは無い。

「どうしたの? とうま?」

インデックスが首を愛らしくかしげた直後。


はらり。

完璧に計算しつくされた刺繍や縫い方は魔術的な意味合いを ”殺され” 、それにより法王級の結界としての防御力も ”殺しつくされた” 。
そして、あたかもプレゼントのヒモをほどくかのように白い修道服がただの布地となり落ちていった。

高等学校の階段の踊り場。
そんな公共の場でインデックスは完全無欠に素っ裸で凍り付いた。

「あ、あの? 姫?」

この後、一人の少年の叫び声が学校中に響き渡った。

「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

痛い。空気が重い。
保健室で歯形をつけた上条はそう感じていた。
どうやら、インデックスという少女は怒ると人に噛み付く癖があるらしい。

保健室にあるベッドのカーテンの向こう側にはインデックスがチクチクと安全ピンでバラバラになった修道服の修復を行っているだろう。(無駄だと思うが)

「……あのー」

あまりにも重い空気に耐えきれず上条はカーテン越しに話しかける。
が、

「……」

返答はなかった。

「……あのさ」

「……なに?」

ようやく聞こえた返答を聞くなり、上条は人間離れした身体能力を使ってコンマで土下座を完成させる。

「さっきのは俺が100%悪かった?」

「なんで疑問系なんだよぅ!」

カーテンの内側から安全ピンが目の前に飛んできた。
そして、すこし開いたカーテンの隙間から今まさにはさみを投げようとしているインデックスの姿が見えた。

「ちょっ! 悪かった! 謝ります! だからそのはさみをしまってください!」

上条の願いむなしく、はさみが上条の額めがけて飛んでくる。

「ひぃ!」

「できた」

落ち着きを取り戻した保健室に鼻声のインデックスの声が響いた。

カーテンの中からでてきたインデックスが着ていたのは、なんとか形を取り戻した白の修道服であった。
何十本もの安全ピンがギラギラと光った……

「それ、アイアンメイデン?」

思わず、上条が言葉を漏らす。

「……(泣)」

「日本語では、針のむしろだけど。着たんだな」

「ぐすん」

「すいませっんしたー!」

上条はインデックスの鼻をすする声を聞くなり再び秒にも満たない速さで土下座をする。
そんな上条をおいて、インデックスは保健室を出て行く。

「お、おい」

ずーんとした雰囲気をまとわせたインデックスに声をかけると、

「帰る」

といった言葉が返ってきた。

「は? どこに?」

そう尋ねると、右手をだしてきた。

「かぎちょうだい」

上条の家に帰るつもりらしい。

「あ、あぁ。って、一人で大丈夫か?」

「大丈夫だから早く」

ポケットから鍵を取り出す。
それをインデックスは両手で握りしめ、とぼとぼと歩いていった。

「おい、道わかんのか?」

「おぼえてる」

このことを、後に上条は後悔する。
このとき、上条は失念していたのだ。

少女が魔術師に追われているということを。

ご飯食べて、お風呂入ってまたきます。
とりあえずのage

~第三話~

夏休みの補習とか言っときながらしっかりと完全下校時刻まで拘束された。
あのあと、勝手に抜け出した罰まで受けて上条はすでにクタクタだ。

「不幸だ」

言わずにはいられない。
そして、ふと思い出す。

「そういや、インデックスのやつ。ちゃんと帰ったのか?」

夕焼けに光る風力発電のプロペラを見上げた上条に声がかかる。

「あっ、いたいたこの野郎。って、無視すんな!」

「ったく、帰ったら謝んないとなちゃんと」

「無視すんなって言ってんでしょうが、ゴラァァァァァァァァ!!」

バリバリッと、上条の背中に向けて青白い電撃が槍となって放たれる。

と同時に、上条は前へと飛び込みながらながら後方へと右手を伸ばす。
おなじみとなってきた音と共にこれまたおなじみとなった現象が起きる。

「いきなり何しやがるビリビリ中学生!」

振り返った上条が見たのは想像どうり最近妙に絡んでくるようになったシャンパンゴールドの髪の女子中学生の姿であった。
財布ねらわれてたところ助けてやっただけなのに(泣)

「悪いけどさ、今日は精神的に疲れてんの。また今度なー」

適当にあしらうことにした。

が、これがまずかったらしい。

「ざけんな!」

再び飛んできた電撃の槍をこれまた再び消しながらぼやく。

「ったく。こっちは魔術師に追われた女の子が家で……!」

思い出した。
インデックスは追われていたのだ。
なのに、何で一人で返した!
狙ってくださいって言ってるようなもんじゃねぇか!
いや、まて。
昼に狙ってくるとは限らない。
まだ、間に合うかも。
だが、

思考のループにはまりかけた上条に本日三度目の電撃の槍が飛んでくる。

「だから! 私を! 無視すんな!」

インデックスが危ない。
そう、結論づけた上条にとって今目の前にいる女子中学生は障害にすぎない。

「おい」

「へ?」

女子中学生はいきなりひどく低い声で話しかけられたからか間抜けな顔をしたが上条の真剣な顔を見ると、

「やっと、やる気だしたってとこ?」

にやりと笑った。
それに対し上条は、

「あぁ、俺は急な用事ができた。やるなら早くやろう。時間が惜しい」

上条はいたってまじめだが、そのセリフは少女にとっては挑発以外の何物でもない。

「アンタ。Level5の私にそのセリフ。ふざけてんの?」

「いや、ふざけてるつもりはない。ただ、」

上条は続ける。

「やるからには本気でやらせてもらう」

ただでさえも時間が惜しいのだ。
こんなところで時間を食っている暇はない。
上条から殺気があふれる。
これでも抑えているが、相手は中学生である。
濃厚な殺気に動けなくなった。

ぞくり

本気?
コイツの本気はどこまで?
怖い怖い怖い怖い怖い怖い

殺気を真正面から当てられた少女の思考はたった一つで埋め尽くされる。

殺気に対する恐怖と本能的な『未知』に対する恐怖。
そう、純粋な恐怖である。

上条は走った。
身体能力を隠すとかは考えなかった。
ただ、最短距離をひたすら走り抜ける。
ビルからビルへ跳び、壁を駆け上がり、再び跳ぶ。

上条は『直死の魔眼』を持っている。
『死』を視ることができる。
それ故か、上条は『死の匂い』に敏感だった。

寮に近づくたびに『死の匂い』が濃くなっていく。

「速くっ速くっ!」

ただ、ひたすらに走った。
そしてついに寮へとたどり着く。

寮の八階まで跳び、寮の廊下へと降り立った。

辺りを見回すと、白い修道服が横たわっていた。

「ははっ。インデックスさん? 空腹のあまり倒れたか?」

違う。

「ったく、お前らしいかな?」

違う。
近づくたびに血の匂いが濃くなる。

「……おい。インデックス?」

うつ伏せに倒れたインデックスの背中、腰に近い辺りが横に一閃されていた。
刃物によってつけられた傷にそうように腰まである長い髪が切りそろえられている。
そして、傷口から溢れ出す赤い液が、髪を服をそして地面を染上げていく。

「くそ、くそっ!」

今上条の頭を埋め尽くしているのは、一人で返したことに対する後悔であった。

ふと、後方に人の気配を感じた。

「うん? これは随分と派手にやっちゃって」

「神裂が斬ったって話は聞いてたけどさ」

声が幼い。だいたいインデックスと同じくらいだと上条は予想を付けながら振り返る。
そこには、2m超の黒の修道服が立っていた。
だが、神父と呼ぶには抵抗のある出で立ちであった。
離れている上条にも香水の甘ったるい匂いが感じ取れ、髪は赤く染められ、十本の指にはそれぞれ銀の指輪、耳にはピアス。
煙草をくわえ、右目の下にはバーコードの刺青が刻まれている。

上条は確信する。

「お前が『魔術師』か」

「ん? あぁ、ソレから話を聞いたのかい?」

「聞きたいことは山ほどある」

「それは困った」

「だが、まず聞こう」

「ここに来て、何しようとしてんだ?」

目の前の神父は少し考えるような素振りを見せ、
言った。

「何って、回収さ」

「かい、しゅう?」

意味が分からない。

「うん? ああそうか、全部聞いた訳じゃないのか。正確にはソレの頭の中の『十万三千冊』を回収しにきたのさ」

「――魔道書、か」

「ほお。それは聞いてたのか。ソレは『完全記憶能力』という能力でありとあらゆる魔導書を記憶している」

「彼女自身に魔力を練る力がないから無害なんだけどね」

神父は愉快そうに笑う。
不愉快だ。

「とにかく、ソレの中身は少々危険な代物でね。さらわれる前に僕たちが保護するのさ」

「ほ、ご?」

「あぁ、保護さ。ソレにいくら良心や良識があっても拷問とかには耐えれないだろ? それにそんなことをする連中に女の子の体を預けるなんて心が痛まないかい?」

上条は自らを『偽善使い(フォックスワード)』と称している。
人の不幸を許せず、ついつい助けにいってしまうような偽善な狐だと。

だが、そんな心優しい狐にも逆鱗ってモノが存在する。

「テメェ、何様のつもりだ」

「うーん。ステイル=マグヌスと名乗りたいけど、ここではFortis931と名乗ろうか」

「これは、魔法名でね。僕たちの間では、」

「――殺し名、かな?」

神父、否『魔術師』は口にくわえていた煙草を横合いに弾き、呟いた。

「炎よ」

その瞬間、煙草をオレンジの軌跡が追い――爆発した。

「巨人に苦痛の贈り物を」

笑みを浮かべたステイル=マグヌスは炎の剣を作り、横殴りに上条へと叩き付けた。

「やりすぎたか、な」

頭を掻きながら眼前の黒煙と火炎を見やる。

そして、大きく目を見開いた。

「ば、馬鹿な!」

黒煙の中には、無傷で右手をこちらに向けている上条の姿があった。
上条はステイル=マグヌスに嗤いかけた。

「上条当麻だ。って名乗りたいけど、こう名乗ろう。『殺人鬼』だ」

ステイル=マグヌスは『狐』の逆鱗に触れた。

『狐』は今、『鬼』と成った。

上条は周りで燃えている炎にむけて右手をふるう。

「邪魔」

一瞬にして炎が消え去る。
目の前の魔術師はそんな『予想外』に対してうろたえた。
まるで、『人間』のように。

「はははっ」

嗤う。

「クズみてぇな事言うから人間じゃねぇもんだと思っちまってたけど、人間だなぁ。おまえ」

「くっ」

目の前の『人間』は苦し紛れに炎剣をふるってくる。

「だから、邪魔だって」

哀れだ。
感想と言えばそれだけ。
今の上条にただの『人間』でしかないステイルが勝てる道理などどこにもないのだから。

右手が再び炎をかき消す。

「――世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ」

ステイルが慌てたように何かを唱う。

「どのみち、このままじゃ楽しめない。魅せてみろお前の『最強』を」

上条は見ているだけで何もしない。

「我が身を喰らいて力と為せ――!」

唱が終わる。

途端、ステイルの胸元から炎の塊が吹き出す。
ただの塊ではない。
ソレは人の形をしていた。
その名は『魔女狩りの王(イノケンティウス)』
その意味は、『必ず殺す』
必殺の名を冠する巨人は上条へと両手を広げた。

そんな『必殺』に対し上条は、薄っぺらい学生鞄からあるモノを取り出した。
なにやら、金色をしたナイフの柄ようなものを。
そこには二文字刻まれていた。

『神上』と。

す、と柄を上条が構えると刃の部分が柄から飛び出す。
まるでそれが合図のように上条の黒い目が蒼紅く輝く。

「見せてやるよ。これが本当の意味での必殺だ」

炎の巨人を上条は睨みつける。
インデックスが何故か妙に冷静な声でこの巨人が外部のルート、魔術回路らしきもので魔力を供給されていることを教えてくれた。
殺せると判断したため、巨人の線が見えてくる。
だが、上条が探しているのは線ではない。
その線を束ねているように見える、『点』

「灰は灰に、塵は塵に、」

「吸血殺しの紅十字――!」

炎の巨人と炎剣が二本、上条に迫る。

――視えた

ず、と上条の突き出した短刀が巨人の首辺りをとらえる。

ボンッ

すると巨人は弾けるように姿を消した。

「い、いのけんてぃうす?……イノケンティウス!」

気がそれたのか炎剣が消える。
あってもなくても同じだが好都合だ。
上条は再び嗤う。

「はははっ」

ありえない。
イノケンティウスはルーンのカードを媒介に魔力を供給することで、存在し続けるのだ。
それが、ナイフ一本で消された。

「い、いのけんてぃうす?……イノケンティウス!」

思わず、叫んだ。
自分の手の中から炎剣が消える。
まずい。
そう思ったときには遅かった。

「はははっ」

嗤いながら『鬼』が迫る。

再び炎剣を作り叩き付けるが、またも右手によって霧散する。

「あ、ああぁ」

情けない声しかでない。

気づいたときには空を舞っていた。
左の頬に熱さを感じる。
吹き飛びそうな意識を何とか保とうとするが、体に新たな衝撃が走る。

ステイルが意識が途切れる前に見たものは、インデックスを抱きかかえる上条の姿と、上条の蒼紅い眼であった。

~第四話~

インデックスを「言うことを聞いてやってくれ」とだけ言って担任のアパートに置いてきた。
そして上条は今、再び寮へと戻ってきていた。

「流石にいない、か」

ステイルと名乗った魔術師は居なかった。
さらに、インデックスの血も、煤けた壁や地面も元通りになっている。
ステイルがやったのかカンザキがやったのか、それとも別の魔術師がやったのか。

「ま、今は関係ないですけどねー」

上条は寮の自室の鍵を開ける。
そして一直線にベッドへ向かい、その下に手を突っ込んだ。
なにもイヤらしい類いのものを取り出す訳ではない。

そこからでてきたのは、美しい造形の日本刀と軍服のような黒の服そして無数のナイフ。

『神上』と刻まれた特殊な短刀は ”兄姉” の二人からの贈り物であるのに対し、
美しい造形の日本刀は ”姉” から、軍服のような黒の服は ”兄” からの贈り物である。

上条は今着ている学生服を脱ぎ捨て、黒の服を着込む。
当然のようにナイフを袖口などに隠し込みながら。
そして、日本刀を袋に入れ、背負う。

なぜこのようなことをしているのかというと、相手が刀を持っているからである。
会った訳じゃない。
ならどうして分かったかというと、傷である。
インデックスの背中の傷は明らかに刀傷であった。
ならば、短刀では心もとない。
ということで、装備をそろえたのだ。

最後に短刀を腰の後ろに差し込み、部屋を後にした。

「さぁ、行こう」

カンザキを探してまわり、一夜明けて小萌先生のアパートに戻ると、魔術で傷を塞いだインデックスが高熱と頭痛に襲われ額に濡れタオルをのせて寝込んでいた。
小萌先生のパジャマを着て……。

「――マジかよ。小萌先生何歳だとおもってんだ。パジャマぴったしかよ」

な、と絶句しかける小萌にインデックスが追い討ちをかける。

「流石の私もこのパジャマは胸が苦しいかも」

「な、馬鹿な……」

小萌はしばしの間灰になっていたがなんとか立ち直って疑問を投げかけてきた。

「で、このインデックスちゃんはだれなんです?」

「先生には借りがある。でも、だからこそ巻き込みたく無いんです」

「上条ちゃん」

何かを言おうとする小萌を遮るように上条は続けた。

「とりあえず、今のところは義理の妹ってことにしといてください」

そんな上条に小萌は真剣な表情で、

「変態さんです?」

思わずずっこけた。
ここはシリアスじゃなかったのかよ、という上条の叫びは心の中のみで響き渡った。

小萌が何やら支度を始めた。

「先生はすこし買い物に行ってくるのですよー」

「インデックスちゃんのこともその格好のことも帰ってきたら聞くのでちゃんとどう答えるか考えておいてくださいね」

何となく、笑っている小萌を見ていると帰ってきたときに何もなかったかのように『忘れて』いるのではないかと思う。

「じゃあ行ってくるのですよー」

扉のしまる音が聞こえた。
部屋の中は上条とインデックスの二人だけである。

「悪いな。なりふり構っていられねぇけど流石に、な」

「ううん。いいんだよ」

「それに、コッチの世界の人じゃないからこれ以上あの人は魔術を使っちゃダメ」

色々とルールってモノが存在するのだろうと上条は考える。

「知りたい?」

唐突にインデックスが静かな声で聞いてきた。
上条がえ、と聞き返すと再び聞いてくる。

「とうまは自分のこと抱えてるもの教えてくれたでしょ? 眼とか右手とか」

「あ、ああ」

「だから、私の抱えてるモノ知りたい? って」

どこまでも静かな声に上条は、

「俺は神父でも何でもない。それでいいなら話してくれよ。お前のこと」

テスト一日前だから投下しにきました。
テスト記念です。
今週はだいたいこの時間に来ます。
よければお越し下さい(sageてるけどね)。
では、ノシ。

インデックスは語った。

元は一つであった十字教は政治を混ぜてしまったことで分裂し、対立し、争い合い、同じ神を信じていながらバラバラの道を歩むことになった。
そして、その一つ一つが独自の『個性』を手に入れた。国の様子や風土に合わせて。
例えば、ローマ正教は『世界の管理と運営』ロシア成教は『非現実の検閲と削除』といった具合に。
そしてインデックスが所属しているのはイギリス清教だ。
イギリスは魔術の国。
故にイギリス清教は魔女狩りや異端狩りといった『対魔術師』用の文化や技術が以上に発展した。
首都ロンドンには、今でも魔術結社を名乗る『株式会社』がいくつもある。書類上だけの幽霊会社ならさらにその十倍以上も。
元々『街に潜む悪い魔術師』から市民を守る筈であったソレは極められ、いつしか『虐殺・処刑の文化』となってしまった。

イギリス清教には特殊な部署があるのだと、インデックスは自らの罪を告白するかのように言った。

魔術師を討つために、魔術を調べ上げて対抗策を練る。
名を『必要悪の教会(ネセサリウス)』

敵の攻撃を防ぐには敵を知らなければならない。
だが、汚れた敵を理解すれば心が汚れる。
汚れた敵に触れれば体が汚れる。
だから、そういった『汚れ』を一手に引き受ける必要悪の教会が生まれた。
そしてその最たるものが――

十万三千冊の魔道書。

魔術は式のようなものだ。
うまく逆算すれば、相手の『攻撃』を中和させることもできる。
だから、インデックスは十万三千冊を記憶させられた。
世界中の魔術を知れば世界中の魔術を『中和』させることができるはずだから。

魔道書にとって重要なのは『本』ではなく『中身』である。
たとえ魔道書の原典を消したとしても、ソレを知っている魔術師(魔導師という)が他の弟子に伝え聞かせたら意味がない。
さらに、魔道書はあくまでも教科書。
その内容を知るだけでなく、自分なりのアレンジを加え新しい魔術を作り上げてこその魔術師なのだ。

魔道書は危険なものだ。
写本の処分ですら専門家が両目を縫って脳の『汚染』を防いだとしても、『毒』を抜くため五年は洗礼を続けなければならないほどに。
写本ですらそれなのだから、原典にいたっては人間の精神では不可能だ。
世界中に散らばる十万三千冊はどうしようもないため『封印』するしか道がなかった。
まるで売れ残りの核兵器のように。

『超能力者以外の普通の人』は誰しも魔術を使える。
だからこそ、魔術結社の連中も無闇に魔道書を持ち出さない。
魔術を知るものが誰しも味方であるのではないからだ。
そして、だからこそインデックスを狙ってくるのだ。
頭の中にある十万三千冊という『爆弾』を手に入れるために。

十万三千冊もの原典を記憶の中で複製した写本の図書館。
それを手に入れることは、等しく世界中の魔術を手に入れることだからだ。

十万三千冊は全て使えば、この世界の全てをねじ曲げることが可能だ。
魔術師達はそれを魔神と呼ぶ。
魔界の神という意味ではない。
魔術を極めすぎて、神の領域に達した人間という意味での、

――魔神

聞かされた内容は上条を驚かせると同時に何に対してかよく分からないがイライラさせた。

「ごめんね」

インデックスが小さく呟いた。
その一言で上条のイライラはトップに達し、ついにキレた。

「ざけんなっ!」

軽くではあるが、インデックスの額を叩く。

「んな大事な話黙ってたのかよ。朝にいくらでも話せただろうが」

「だ、だって信じられないだろうし、怖がらせたかもだし、それにっ! ……」

聞き取れないほど小さな声でインデックスが呟く。
だが、上条の聴覚はしっかりとその声を聞き取った。
きらわれたくなかった、と。

「だれが! その程度で嫌うわけねぇだろ! ふざけてんのか、テメェ。勝手に人のこと値踏みしてんじゃねぇぞ。んなことでテメェを見捨てるとでも思ってんのか!」

インデックスが大きく目を見開く。

「俺はな、十年間でいろんなことを経験してんだっつの。確かにお前が背負ってるもんは途方もなく重てぇよ。世界中の魔道書覚えてて、さらには魔術使えたなら魔神だときたもんだ」

上条はさっきの怒った顔とは打って変わってインデックスに優しく笑いかける。

「でもな、俺がそんな ”ちっぽけ” なことでお前を見捨てたりするかよ」

たとえ、右手がなくとも眼がなくとも上条は助けようとするだろう。
助けない理由などどこにもないのだから。

「それに、守ってやるって言ったろ?」

呆けたように上条の顔を見上げていたインデックスの目に透明な液が溜まっていく。
まるで氷が溶けたかのように、両目に溜まった液が、涙が、大きくなっていく。

先ほど言った言葉がそれほど心に響くものだと上条は自惚れていない。
きっと今の今まで溜め込んでいたものがさっきのやり取りをきっかけに溢れ出だしているのだろうと考える。

インデックスの両目からどんどん涙がこぼれていく。
上条はそんなインデックスを、かつて面倒くさがり屋の ”姉” がたった一度だけしてくれたように優しく抱きしめる。

「泣けばいい。今は泣くことだけ、泣いて流しだしちまうことだけ考えろ」

インデックスは上条の黒の服にしがみつき泣きじゃくった。
まるで幼い子供のように。
ひたすらに。

インデックスの頭をなでながら上条は言った。

「俺、謝んないとなお前に。……ごめん」

「ふぇ?」

見上げてくるインデックスから目を逸らしながら、悔しそうに口を歪めながら、

「守ってやるって言ったのに怪我させた。一人で帰した」

「いいんだよ。私はとうまを許すんだよ。私が勝手に帰りたいって言ったんだし」

「――それにね?」

見てみると、インデックスは笑っていた。
涙はもう止まっている。




「守ってくれるんでしょう? とうま」



本日は終了です。
投げそうという話がありましたが、言い切りましょう絶対投げません。

では、また明日。

600mほど離れたビルの屋上でステイルは双眼鏡から目を離した。

「軍服? 昨日は学生服だったが……。少年兵までいるのか? この街は」

疑問に思ったことをそのまま口に出す。
まで、という言い方は『アンチスキル』と呼ばれる教師達を見たからだろう。

「禁書目録に同伴している少年の身元を探りました。……彼女は?」

後ろから聞こえてくる女の声にステイルは振り返らずに答える。

「生きている。おそらくあちらに魔術の使い手がいるんだろう」

女は無言だが、どことなく安堵しているような雰囲気が伝わってくる。

女の歳は十八だが、十四歳のステイルより頭一つ分程低い。
もっとも、ステイルは2mを超える長身。
それを考えると女の身長は日本人の平均からすれば高いだろう。

腰まで届く黒髪をポニーテールにまとめ、腰には長さ2m以上もある日本刀が鞘に納まっている。
その女の格好は、着古したジーンズに半袖の白のTシャツ。
ジーンズは何故か左足の付け根からバッサリ斬られ、Tシャツは脇腹の方で縛ってヘソが見えるようにしてあり、足には膝まであるブーツ。
日本刀も革のベルトに挟むようにぶら下げられている。
ステイル同様にまともな格好とはお世辞にもいえない。


「それで? アレはいったい何なんだい?」

「それですが、あの『殺人鬼』と名乗った少年の情報は特に集まっていません」

「少なくとも魔術師や異能者の類いではない、ということになるのでしょうか」

「何だ、もしかしてアレがただの高校生とでも言うのかい?」

口に咥えて引き抜いた煙草の先を睨んで火をつけながらステイルが憎々しげに呟く。

「はあ、やめてくれ。僕はこれでも現存するルーン二十四文字全てを解析し、新たに力ある六文字を開発したんだ」

「何の力もないものがイノケンティウスを短刀一つで消滅させれるほど世界は優しく無い」

ステイルの炎をいとも簡単に打ち消した正体不明の『右手』『短刀』。
さらには、最後に見た黒だった筈の『蒼紅い眼』。
アレが一般人なら日本はまさしく神秘の国だろう。

神裂火織は目を細め、

「むしろ問題なのは、自らを『殺人鬼』などと名乗った少年が『ただの喧嘩っ早いダメ学生』の中に入っていることでしょう」

学園都市は超能力者量産機関という裏の顔を持っている。
五行機関と呼ばれる『組織』に二人は禁書目録のことを伏せるとはいえ、事前に連絡を入れ許可を取っていた。
世界最高峰の魔術グループですら隠し通すのは不可能であると踏んだからだ。

ここで彼らは『あの少年は五行機関とは別の組織のバックアップを受けている』と踏んだ。
他の組織が、意図的に上条の情報を徹底的に消して回っていると勘違いしたのだ。

神裂は目を閉じ、

「敵戦力は未知数。増援は無し。難しい展開ですね」

上条の『幻想殺し』は異能の力ありきの能力である。
故に学園都市の身体検査の際に用いる測定機械には何の効果ももたらさない。
さらに、驚異的な身体能力や『眼』を隠しているときた。
そんなことで上条は圧倒的な力を保有していながら無能力者なのである。

「最悪、組織的な魔術戦に発展すると仮定しましょう」

ステイルがまるでトレーディングカードのような刻印を手品師のように取り出した。

「あの『短刀』霊装か何かか? なぜ、どうやって消されたのかは分からないが、今度は建物のみならず半径2kmに渡って結界を刻む」

「……使用枚数は十六万四千枚。六十時間程で準備を終えるよ」

現実の魔術は唱えてはい終しまいって程に簡単ではない。
一見そう見えるだけで実際には裏で相当な準備が必要となる。
ステイルのように局地的な魔術ならなおさら。
六十時間という時間は達人レベルである。

魔術戦とは先の読み合い。
常に変動する戦況を百手、二百手先を読む。
これは戦闘という野蛮な言葉とは裏腹な、頭脳戦である。
故に、『敵戦力未知数』というのは魔術師にとっては痛手だ。

「楽しそうだよね」

不意にステイルは600m先を見て呟いた。

「僕たちは一体いつまでアレを引き裂き続けなければいけないんだろう」

神裂も600m先を眺める。
双眼鏡や魔術を使わなくとも視力8.0の彼女には鮮明に見えた。
黒の軍服の用な服に身を包んだ少年の腕の中で、嬉しそうに楽しそうに笑う少女の姿が。

「複雑な気持ちですか? かつてあの場所に居たあなたとしては」

神裂は機械的に尋ねる。

「……、いつものことさ」

ステイルはまさしく、いつも通りに答えた。

神裂は再び少年と少女に目を向ける。
その時少年と目が合った気がしたのは、気のせいだろう。
きっと……

~第五話~

おっふろ♪ おっふろ♪ と上条の横でパジャマから安全ピンだらけの修道服に着替えたインデックスはとても楽しそうに洗面器を両手に抱えながら歌っていた。
それにしても、

「その修道服血だらけだったのにどうやってそんな綺麗な白色にもどってんだ?」

疑問だ。

「うーん、分かんない」

分からないというより風呂で頭がいっぱいで考えてないような言い方である。

あれから、三日たち出かけることが出来るようになった彼女の願いが風呂であった。

「何だよ。気にしてたのか? 別にそんな気に何ねぇぞ? 汗の匂いとか」

「ジャパニーズ・セントーに行ってみたかったんだよ」

なるほどと思う。
外人にとっては銭湯ですら珍しいのか。

「ま、デカい風呂はいいもんだぜ? イギリスっていやユニットバスがメジャーなんだろ?」

「うーん? その辺はよく分からないかも。気づいたら日本にいたし」

「どうりで日本語がうまいわけだ。ガキの頃から居りゃそうだわな」

そういった上条にインデックスは銀髪を左右に揺らすようにして否定した。

「ううん。そうじゃないんだよ。私ね、生まれはロンドンで聖ジョージ大聖堂の中で育ってきたらしいんだ」

「で、日本に来たのは一年ぐらい前らしいんだよ」

曖昧な表現に上条が眉をひそめたところでインデックスが種を明かす。

「一年ぐらい前から、記憶がなくなっちゃってるから詳しいことは分からないんだよ」

「路地裏で気がついたときには自分のことも分からなかった。なのに、禁書目録とか魔術師とかの知識だけがぐるぐる」

「本当に怖かった」

インデックスは笑いながら話す。
その笑みが完璧であるため、よけいにその裏にある焦りや辛さが見て取れる。

完全記憶能力の少女が記憶喪失。

ただそうなっただけだ、と言ってしまえばそうなのかもしてない。
だが、上条には何故かそれに意図的なものを感じてしまう。
上条は ”兄姉” といたときに裏の組織などに関わったこともある。
そしてそんなときに曰く付きの少年少女を見たことだって一度や二度ではない。
その少年少女にインデックスが重なる。
確証なんてモノはどこにもない。
だが、用心するにこしたことはないだろう。
もし、意図的に消されている場合。
――そのときは、

「くそったれ」

思わずこぼれた言葉は夜空へと消えていく。

インデックスが上条の許にきたのはただの偶然だった。
なぜかそれが上条をイライラさせる。

「とうま?」

「なんだよ?」

そんな気持ちを隠すように薄く笑いながら聞き返す。

「ううん。なんでもない」

「なんだよそれ?」

「とうま」

「だからなんだよ?」

「とうま、とうま」

上条は呆れたようにため息をつきながら、ずり落ちてきた刀の袋を肩にかけ直す。
そんな上条にインデックスは笑いながら、

「なんでもないのに名前を呼べるのってなんだか楽しいかも」

懐かれてる、ってことでいいのか?

「悪い気はしねぇかな」

「とうま、早く行こっ!」

そう言って、インデックスは上条の腕を引っ張る。

「はいはい、そう急かすなって」

彼女の笑っている顔、声、仕草。
それらを見ているとイライラが消えていくようだった。

「英国式シスターねぇ」

インデックスは待ちきれなくなったのか一人で走っていった。
一人夜道を歩きながら、上条は誰に聞かせるでもなく小さく呟く。

イギリスの教会に保護されれば上条の出番は終わり、インデックスは安全になる。
逆に、保護されなければインデックスは延々と魔術師に追われ続ける。
そうなると、インデックスを追ってイギリスに渡るのは非現実的だ。

たったそれだけのことが再び上条をイラつかせる。

「ん?」

上条は周りの異変に気がついた。

「人の気配がまるでない。ここら一帯が死んでるみたいだ」

コンビニにもデパートにも人の出入りがない。

「マジかよ」

まさしく死んでいるという表現がふさわしい状態である。

ふと、人の気配を感じた。
そちらにむかって持っていた洗面器を投げつけながら距離をとる。
この死んだ一帯で気配がした。
それ故に、魔術師だと上条は判断したのだ。

「まさか気づくとは」

上条から10m程先、三車線の車道の真ん中に女が立っていた。

「ステイルが人払いのルーンを刻んでいるだけです」

女は奇抜ではあるが、上条にとってはまだ普通の範囲内の格好であった。
腰からぶら下げた2m超の刀がなければ、だが。

「この一帯に居る人たちに『何故かここには近づこうと思わない』ようにしているだけです。多くの人は建物の中でしょう。ご心配はなさらずに」

上条は理屈とかではなく体感で感じ取る。
ステイルなどという魔術師とは比較にならない程の力を。

「神浄の討魔、ですか。良い真名です」

「お前は?」

上条は適度な緊張感を保ちながら尋ねる。

「神裂火織と申します。……できれば、もう一つの名は名乗りたく無いのですが」

「魔法名、か」

「ええ」

上条は神裂の持っている刀を観察する。
あれは確か、

「令刀?」

「知っているのですか?」

知っているとは思ってなかったのか、聞き返してくる。

「刀マニアな ”姉” がいるもんでね」

「で、話を戻すがステイルの言ってたカンザキがお前ってことでいいのか?」

「はい」

なるほど、話が通じそうだ。
そう上条は判断する。
ステイルは問答無用といったようだったが神裂は魔法名を名乗りたく無いと言っている。
それは、最初から殺す気できた訳ではないということだ。
インデックスを斬ったのもおそらく修道服のことを知っていたのだろう、と上条は仮定する。

「率直に言って、」

上条が話しだそうとするがそれより早く彼女が口を開いた。

「魔法名を名乗る前に彼女を保護したいのですが」

また、保護かよ。

「嫌だね」

上条は挑発するように薄く笑いながら即答する。

「仕方がありません、ならば名乗ってから彼女を保護します」

「そうかよ。なら、」

「――俺を殺してみせろ」

「嫌だね」

上条は挑発するように薄く笑いながら即答する。

「仕方がありません、ならば名乗ってから彼女を保護します」

「そうかよ。なら、」

「――俺を殺してみせろ」

その言葉に神裂の手が、令刀が霞む。

「七閃」

静かの声とは裏腹に凄まじい勢いで七つの斬撃が上条へと迫る。

「ちっ」

舌打ちをしながら後方へと飛び退る。
魔術か物理か特定できない今、引くことがいいと判断した。

「もう一度問わせていただきます。彼女を保護したいのですが」

上条は袋から刀を抜き放った。
一片の曇りもない刀身が月と街灯の光を受けて光る。
そして、それに呼応するように上条の瞳が蒼紅く輝く。

「言ってんだろ、断る」

「そうですか」

再び七つの斬撃が襲いくる。
それらに上条は頭から突っ込んでいく。
そして、刀を横なぎに払った。

「鋼糸(ワイヤー)、ねぇ? 手品師みたいだなお前」

「まさか、一瞬で見切ったというのですか!」

想像を超える上条の行動に思わず叫ぶ。

「いや、細かい "線" が無数に見えたもんでね」

「てか、そろそろその令刀抜かねぇと死ぬぞ?」

「致し方ありませんね」

神裂は顔をしかめながら令刀の柄に手をおいた。
すらっ、と2mを超える刀身が姿を現す。
それを確認すると同時に上条は自己暗示をかける。

「魔法名は名乗りたく無いので早々に終わらせましょう」

「それはこっちのセリフだ、魔術師」

どんっ

二人の姿が揺らぎ、一瞬のち金属音とともに次の衝撃が空気を揺らす。
吹き飛んだのは、神裂の方だ。
体勢を整えようとする神裂に上条が迫る。
くるりと横に回転し、そのエネルギーをそのまま蹴りとして放つ。

「蹴り穿つ!」

上条の足の裏は的確に神裂の顎をとらえる。
防御もままならないまま神裂は吹き飛び、三車線の車道をバウンドする。

上条は追わない。
立ち上がるのを待つ。

「ま、さか、これほどとは」

顎を蹴り上げられた影響か、少し体勢を崩しながら立ち上がってくる神裂に上条は切っ先を向けながら尋ねる。

「まだ、やるか?」

「ええ、こちらとしても負けれない理由があります」

その言葉に駆け出そうと踏み込んだ上条の足が止まる。

「理由? そういやアンタ妙に魔法名を名乗りたがらないな。それにわざわざ ”峰打ち” だったし……」

顎に手をやり、しばし考える。

「なんかワケありみたいだな。ステイルって魔術師は加減しなかったが、お前は手加減してる。『常識』があるみたいだな」

その言葉に神裂は黙り込む。
そんな彼女を見て上条は確信する。

「なら、分かってんじゃねぇの? 女の子を寄ってたかって追い回して、刀で背中斬って」

「んなこと許されねぇって分かっちまってんじゃねぇのかよ、お前」

上条は刀を鞘へ納め、袋の中へとしまう。
それに伴い、蒼紅かった眼も黒へと戻っていく。
まるで、戦いは終わりだというかのように。

「神裂だっけ? お前は強い力を持ってんだろ? なら、何でその力を追いつめて傷つけることにしか使えねぇ?!」

追いつめられていた。
ロンドンで十本の指に入る魔術師である神裂火織はたったそれだけの言葉に追いつめられていた。

「私だって、私だって彼女の背を斬るつもりなんてなかった」

「あれは彼女の『歩く教会』の結界が生きていると……絶対に傷つく筈がなかったから、なのに……」

神裂のそんな言葉を聞いて上条は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
それはそうだ、インデックスの防御結界は上条が破壊してしまったのだから。

「私だって好きでこんなことしてませんよ……」

「でも、こうしないと、こうしないと彼女は生きていけないんですよ……死んで、しまうんですよ」

神裂はもう泣き出してしまいそうだ。

「私の、いえ私たちの所属する組織はあの子と同じ、必要悪の教会です」

血を吐くように、告げた。

「彼女は、私の同僚で――大切な親友なんですよ」

終わりです。
今日は3時頃来ようと思ってたんですけど遅くなりました。

神裂とは戦闘シーンが短かったですね。
いや、別にめんどくさっかったとかではなくですね(汗
話にあがってました魔術の設定ですが、書いていく中で出てきます。

神裂より強いってのもなぁ…

>>147
一応補足しておきますと、神裂さん無意識のうちに手加減してます。
神裂さんの本気となるとこんな簡単にはやられません。

明日は早めにくると思います。

訳が分からなかった。
インデックスは魔術師から逃げていて、イギリス清教へと帰ろうとしていた。
なのに、追っていた魔術師がイギリス清教でしかも友人だ?

「完全記憶能力をご存知ですか?」

神裂が尋ねてくる。

”兄” と見ていたドラマにその能力が出てきた。
見たもの聞いたこと全てを瞬間的に記憶するという体質らしい。
気になって色々と調べた記憶がある。

「ああ。インデックスが持ってるんだってな?」

「あなたには、彼女はどう見えていますか?」

「ただの女の子」

即答した上条に神裂は疲れたような表情を見せる。

「ただの女の子が、一年間も私たちから逃げ切れると思いますか?」

「何が言いたい?」

「あなたは必要悪の教会の魔術師を二人相手にしました。どう思います? 逃げ切れますか?」

上条は彼女の本質に気づく。

そう、彼女は

「天才です」

「扱い方を間違えば天災になるレベルの。教会が彼女をまともに扱わない理由は明白です。怖いんですよ、誰もが」

「たったそれだけで道具かよ。あいつは、人間だぞ」

「そうですね」

神裂は肯定する。

「その一方で、彼女の性能は凡人とほぼ変わりません」

「彼女の脳の85%は十万三千冊に埋め尽くされてしまっているんです。残る15%を動かしている状態ですら凡人と変わらないんです」

違和感を感じた。
特に数字に。
だが、今はとりあえず話を聞く。

「だから何だよ、何でお前ら必要悪の教会はインデックスを追い回してる?」

「彼女は、覚えていないんです」

そういえば、一年前からの記憶がないとインデックスは言っていた。

「おそらく、自分の中の記憶のみで判断したんでしょう。追ってきているのは魔道書を狙っている悪い魔術師だと」

「まってくれ、なんでアイツは記憶喪失なんだ?」

「記憶喪失ではありません。正確には、」

「――私たちが消しました」

これが、魔法名を名乗らない理由なのか?
だが、

「どうして!?」

インデックスの笑顔がよぎる。

「そうしなければ、インデックスが死んでしまいますから」

呼吸が、時間が、死んだ。

「言ったでしょう、彼女の頭は15%しか使えません。記憶していけば一年で脳がパンクしていくんです」

その言葉にまた時が流れ出す。
上条が思ったことはただ一つ。

無知ってのは恐ろしいな、である。

「馬鹿か?」

思わず漏らしてしまった。

「はい?」

神裂は何を言われたのか分かっていない。

「あのな、兄さんとドラマ見てたんだよ」

「急に何の話です?」

「まぁ聞けって」

「そのドラマに出てくる探偵はある特異体質だったんだ。名称は、完全記憶能力」

「なっ!」

神裂が絶句する。
インデックスだけの能力とでも思っていたのだろうか。

「それでな、気になったんだよその特異体質。パソコンとか本とかで調べまくってよ」

「完全記憶能力はどんなゴミ記憶でも一言一句記憶するが、それで脳がパンクすることはない」

「で、ですがっ! 彼女は現に!」

神裂はいきなり知れた事実に混乱しだす。

「話は最後まで聞け」

「は、はい」

「人間の脳ってのは思い出と知識はそれぞれ違うところに記憶されるんだ。それに140年もの思い出を記憶することも可能だ」

「だから、十万三千冊で知識が埋まっても思い出によって圧迫なんてことはそもそも有り得ない」

「だ、だったらなんで? 何で彼女は一年ごとに苦しむんです!?」

「さぁな、イギリス清教から離れないようにそういった細工でもしてんじゃねぇのか?」

神裂は絶句して、そんなだの、でもだのと呟いている。

そんな神裂に追い討ちをかけるように上条は言った。

「そもそも15%が一年で埋まっちまうなら七歳の時には死んでるだろ」

「はっ!」

今更気づいたようだ。
マジであきれる。

「脳なんてまだ解明されきってねぇのに、残ってるのが15%だのと分かるわけねぇだろ」

「ちゃんと考えてりゃこんなことにはなってなかっただろうに……、いや同じか?」

神裂は黙ったままだ。

「まぁお前の話を聞く限り、アイツに何かしらの細工がしてあんのはほぼ確実だ」

「俺はアイツを守ると誓った。記憶の忘却なんてもんからも苦しみからも守ってやる」

「やる気があるなら、朝見てたアパートまで来い。ったくバレバレなんだよ」

そう言うと上条は立ち去るべく歩き出す。
そんな上条の背中に声がかかる。

「救えるのですか?」

「ん?」

「あの子に細工がしてあったとして、救えるのですか?」

神裂は揺らいでいるのだろう。
インデックスの友人をやめ敵として認めた自分と、友人として救いたい自分の間で。

「俺の右手はな、」

後一押し、一押しだけしてやれば、神裂はインデックスの友人に戻れる。

「それが異能の力ならば何だって打ち消せる」

「インデックスに細工が仕掛けてあるのなら、十中八九魔術だろ」

「救うさ」

救える ”絶対” があるわけではない。
だが、上条は自信を持って言える。
俺は、インデックスを救うと。

「お前の力は何のためだ? お前はその手で誰を守りたい?」

「俺から言えるのはそれだけだ」

今度こそ上条は立ち去った。


上条は随分と長話をしてしまったと銭湯へと行き、体を洗うだけ洗って待っていたインデックスを引き連れて小萌のアパートへと戻っていった。
話さなければならないことがある。
隠すようなことはしない。
インデックスは知らなくてはいけないのだから。

「インデックス?」

覚悟を決めて話しかける。

「なあに? とうま」

「お前に話さないといけないことがある」

「?」

「銭湯に行くときに刀を持った魔術師と会った」

「! 無事なの!?」

「ああ。それですこし話をしてきた。お前の話だ」

「私の?」

「そう、お前の」

上条は心配させないようにインデックスへと優しく微笑み、

「聞く覚悟が出来たら言ってくれ、話すから」

インデックスは即答した。

「とうまが話してくれるなら聞くんだよ」

「そうか」

上条は深呼吸をする。
心をしっかりと落ち着かせ話しだす。

「まず、お前を追っかけてきている魔術師は悪い奴らじゃない」

「へ?」

インデックスは目を見開いて驚いた。
そりゃそうだろう、そう信じていたのだから。

「赤毛の魔術師と刀を持った魔術師、アイツらは必要悪の教会の人間で、一年より前のお前の友人らしい」

「私の友人?」

「そう、記憶をなくす前の」

インデックスは混乱しながらも何とか内容を咀嚼し飲み込んでいく。

「ここまではいいか?」

「う、うん」

「よし、じゃあ次はお前の体の話だ」

「とうまの変態!」

ティッシュ箱が飛んできた。

「ち、違ぇよ! お前の記憶の話だっつの」

「ふぅ、先に言ってほしかったかも」

「話戻すぞ?」

上条はため息を一つついて、再び話しだす。

「おまえはおそらくイギリス清教に、なんて言ったらいいか……首輪? をしかけられてる」

「首輪?」

「ああ、表現としてはそれが一番正しいだろう」

「その首輪は、おそらく一年ごとに記憶を消すために脳に負担をかけていくってものだろう」

「そ、そんなものが私に?」

「おそらくな。で、アイツらの焦り方からするとおそらく期日は数日後だ」

「私、とうまのこと忘れちゃうの?」

緑の瞳が揺らぎ、涙がこぼれていく。
そんなインデックスの姿を見て上条は自分を責めた。
何で心配させるような言い方してんだよ俺、と。

「おい、インデックス?」

「な、なに?」

「俺なんて言ったっけ?」

「へ?」

何を聞かれているのか分からない風なインデックスに再び尋ねる。

「俺はお前をどうしてやるって言ったっけ?」

「え、と。『守ってやる』って?」

「そうだ、お前を守るよ」

「ホントに?」

「ホントに」

「ホントのホントに?」

「ホントのホントに」

すると、インデックスは不安げな様子で聞いてきた。

「とうまは、わたしを守ってくれるの? 助けてくれるの?」

「インデックスはどうしてほしい?」

「わたしは……」

インデックスは躊躇うような素振りを見せ、ちらちらと上条の顔色をうかがう。
そんなインデックスに上条はただ微笑みかける。



「守って、ほしい……助けて、とうま」


す、っと上条の胸にその言葉が入り込んでくる。
理解した。
――俺はこの言葉が聞きたかったんだ。

「ああ、お前が望むのなら助けてやるよ」

その言葉にインデックスは上条にすがりつくように抱きつく。

「魔術師にもこのことは話してんだ」

「首輪のこと?」

「アイツらが覚悟決めてここに来たら首輪を殺そう」

上条はニヤッと笑い、

「来ないなら来ないで俺一人で殺すけどな」

「とうま、ありがとう」

そんなインデックスを見て、絶対助けると上条は右手を握りしめて誓った。

~第六話~

あれから三日間、上条はインデックスと日常を暮らしていた。
普通にただただ普通に暮らしていた。
二日目の食事の際に、とある場所に上条が ”それっぽい刻印” を見つけたが。

ノックの音に、小萌の家でくつろいでいた二人はドアに目をやる。

「こもえ、かな?」

すこし後にあれー、うちの前で何やってるんですー? という声が聞こえてきた。
ノックをしたのは別人だということだ。
上条はニヤリと笑った。

「やっときやがった」

「ステイルとかおり?」

「ああ。その呼び方で呼んでやれよ? よろこぶと思うぜ?」

そう言いながらドアを開けに向かう。
ドアを開けると案の定二人の魔術師が居た。

「よぉ、よく来たな」

手を挙げて友人にするように笑いかける。
すると神裂は頭を下げてきたが、ステイルは睨みつけてきた。

「何だよ?」

そう聞くと、

「僕は君のことを信用していない」

そう答えた。

「そうかよ、なら帰れ」

スッパリと上条は切り捨てる。
上条が欲しいのは『予想外』に対する戦力だ。
上条は十年間の経験で予想をしていた。
仕掛けをしているなら何かしらのトラップはあるだろう、と。

「な! 少し待ってください、上条当麻」

「俺が欲しいのはインデックスを救うための協力者だ。俺を信用できないってことは俺のやり方じゃ救えないって思ってんだろ? なら帰れ」

「彼女を救うということには賛成だ。だが、本当に出来るのかい? 君に」

「出来るさ。刻印はすでに見つけてある」

「!!!」

上条の言葉に二人の時間が止まった。

「本当なのですか!?」

先に動き出したのは神裂だ。

「たぶんな、信じてくれるなら協力してくれ」

「分かりました。ステイルはどうしますか?」

神裂がもう一人の魔術師に確認をとる。
赤毛の魔術師は一つ舌打ちをし、

「協力するしかないだろう。だが、失敗してみろ! 灰まで残さず燃やしつくすぞ!」

「そんなことにはならねぇから安心しろ」

上条はニッと笑う。

「まぁ、入れよ」

魔術師二人を招き入れた。

インデックスは自然と体が強張るのを感じた。
それを何とか押さえつけて笑顔を作る。

「こんにちは。ステイル。かおり」

そう言うと、二人の魔術師は面白いぐらいに固まった。

「私の、友達だったんだよね。忘れててごめんね」

頭をぺこりと下げると、

「いえ、私も申し訳ありません」

神裂が頭を下げてくる。

「すまない」

ステイルも。

ぱんっ

手を叩く音が響いた。

「小萌先生は今日帰ってこない。夜に決行だ」

上条が真剣な表情で伝えた。
それにステイルが食って掛かる。

「なぜ今すぐしない!?」

それに上条は、

「罠がある可能性が高い。あった場合、昼にやったら最悪能力者にばれるだろ」

正論を返す。

「とりあえず夜まで待とう」

とりあえず今日はこれで終わりです。
次は vs自動書記です。

書き溜めが……二巻の最初までしかない。
じきに尽きる……
――書いてきます。

確か投影魔術は『極端に効率が悪い』故に実戦闘には使えないだったはず

投影した武器は使い捨て(時間が経つと消える)
実戦に耐え得る武器の投影は非常に面倒(高度な理解が必要?)
そもそも燃費がクソ悪い

と悪い方に三拍子そろっていて、結果的に代用品の方がいいって事だったと思う
下手に木刀投影するより薪拾って得物にした方が安全、手軽、強力って感じ

夜になると、インデックスの様子に変化があった。
まるで熱病にうなされるように汗をびっしょりとかき、浅い呼吸を繰り返している。

「一刻の猶予もありません」

神裂が断言する。
その言葉を聞いて上条が立ち上がる。

「始めますか」

上条は刻印らしきモノをすでに見つけていた。
それは直線距離ならつむじよりも頭蓋骨が無い分『脳』に近い場所。
滅多に人に見られず触れることすら無い場所。
そこは……

上条は一度だけ目を細めると意を決し少女の口に手を突っ込んだ。
ぬるり、とした感触に躊躇いながらのどの奥を付くように一気に指を押し込んだ。
静電気が走るような感触を右手人差し指に受けると同時に、
バギン! と、上条の右手が後ろへと大きく弾かれる。

「な!?」

上条は即座に体勢を立て直し、インデックスに向き合う。
他の二人も驚きながら身構える。
三人の視線の先で、ぐったりと倒れていた筈のインデックスの両目が静かに開く。
その目は赤く光っていた。
それは眼球ではなく、眼球の中に浮かぶ血のように真っ赤な魔方陣の色だ。

まずいっ!

上条が右手を突き出すよりも早く、インデックスの両目が恐ろしいぐらいに赤く輝く。
そして何かが爆発した。

凄まじい衝撃と共に上条の体が向かいの本棚に叩き付けられる。
ちらりと二人の魔術師を本に埋もれながら見てみると、呆然と構えることすら忘れて立ち呆けていた。
口の中に溜まった血を吐き出しながら、小さく舌打ちする。

「覚悟してたんじゃねえのかよ」

二人の魔術師は首輪に仕掛けられた罠、つまりインデックスが魔術を使ったということに呆然としているのだろう。

だが、それがどうした。
首輪までつける輩だ。
記憶まで消す様にしむけてきた輩だ。
騙されてきたんだろうが。
今更こんなことで何呆けてやがる。

「でも、これはいただけないな」

上条は小さくぼやく。
インデックスの話が正しければ今の彼女は『魔神』だ。

「めんどくさいなぁ、ホント」

『魔神』というのがどのようなものか、世界中の魔術を合わせたものがどのようなものかは上条にとって想像出来ないし、問題じゃない。
おそらく、インデックスの体に右手が触れれば事足りるだろうから。
それよりもそこにたどり着くまでの道のり数mが険しくなったことが問題だ。

「――警告、第三章第二節。」

あくまでも機械的な声がインデックスの口から出てくる。

「Index-Librorum-Prohibitorum――禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認」

機械的な声は今のインデックスの情報を簡潔に伝えてくれる。

「再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能」

その言葉に上条は首輪を殺しきれたことに一先ず安堵する。

「てか、ソレの名称。マジで『首輪』だったんだ」

ビンゴすぎて笑えてくる。

「現状、十万三千冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

上条はインデックスを改めて見る。
すると、インデックスはのろのろとした不気味な動きで立ち上がってくる。
インデックスの赤い眼。
そこに、その少女の暖かさは欠片も無かった。

「これのためかよ」

上条は右手を握り直す。

「これのためにお前は魔力が使えなかったのかよ!」

『首輪』が破壊されたとき、そのときにまさしく『魔神』としての力を振るい迎撃する。
そしてその自動迎撃用のシステムとも言えるモノを作るために魔力が注ぎ込まれていたのだろう。

再びインデックスの眼を見て、上条は理解する。
インデックスの姿をしてる。
機械的とは言え、インデックスの声をしてる。
でも、
それでもコイツは、

「アイツとは、違う」

「~~、対侵入者用の特定魔術を組み上げます」

上条が考えている間に時間が経っていた。
すぐに駆け出していれば間に合ったかもしれないが、遅かった。

「侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました」

上条は嫌な予感がした。
三日の間に上条とインデックスはお互いのことを話していた。
その中には右手がある一定量以上の攻撃を打ち消しきれないことも入っている。
もし、
もし、今のインデックスがその知識も使っていたら?

インデックスは小さく首を曲げて、

「これより特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」

インデックスの両目にあった二つの魔方陣が拡大する。
直径2m程の魔方陣が二つインデックスの目の前に重なるように配置される。
上条の見たところインデックスの目を中心に固定されているようだ。

「   、      」

インデックスが『何か』を歌う。
瞬間、二つの魔方陣が輝きを増し、爆発した。
爆発の後に現れたのは、空間を直接引き裂いたかのような亀裂。
その亀裂は四方へ、部屋全体に向けて走り出した。
めきっ……、という音と共に亀裂が内側から膨れ上がる。
わずかに開いた亀裂からは獣の匂いがする。

ここでやっと自我を取り戻した二人の魔術師が驚愕に何かを叫ぶ。
だが、今の上条にはそんな声は届かない。
悟ったのだ。
理屈などではなく知ったのだ。

アレを殺せば、インデックスが戻ってくる。
アレを殺せば、インデックスを救える。
アレを殺せば、インデックスを守れる。

『守れる』
上条にとって、それだけで十分だった。
アレを殺す理由には十分すぎる程だった。
アレは神の領域の存在。
アレは神の領域の力。
レベルが違いすぎるのは肌で感じる。

だが、そんなものは関係ない。

「俺は ”神殺し” だ! 絶対に取り戻(ころ)す!!」

左手に短刀を握り込み、未だに何かを叫んでいる魔術師二人を追い抜いて、4mの距離を埋めるべく足を踏み込む。

と同時、亀裂が『開いた』
亀裂の中から『何か』が覗き込んで、

亀裂の奥から、『何か』から『光の柱』が襲いかかってきた。

直径1m程の純白の光が襲ってくるのを確認するや否や、上条は右手を突き出す。
熱した鉄板に肉を押し付けたような激突音が響く。
特に痛みも熱さもない。
光の柱は上条の右手に当たると四方八方へと飛び散る。
だが、消しきれない。

「やっぱりか!」

上条の予想通り、打ち消しきれない程の量で来た。
魔神となったインデックスはしっかりと知識を利用し、有効な攻撃方法を用いてきたのだ。

上条の両足が後ろへと下がる。
常人を超えた身体能力で押さえつけているというのに右手が弾き飛ばされそうになる。
さらには時間が経つにつれ、魔術が右手に食い込んでくる。
右手の処理速度を遥かに超えているのだろう。

ジリ貧ってレベルじゃねぇ!
いつか吹き飛ばされる!!

上条は今やただ突っ立っているだけの魔術師に叫ぶ。

「テメェら! いつまでそうやってるつもりだ!!」

そんな呼びかけに赤毛の魔術師ステイルは、

「なぜ、一体なぜ彼女が魔術を……?」

「首輪までつけた奴らだろうが! 素直に話してるわけねぇだろ!!」

「疑問に思うのはいいが、目の前の現実を見やがれ!」

「テメェの『名』の意味は何のためだ! 『最強』示せよ、クソガキが!!」

ステイルは奥歯が砕ける程に噛み締め、

「――Fortis931」

無数のルーンのカードが部屋を埋め尽くしていく。
その姿に何を見たのか、上条は馬鹿にするように嘲笑う。

「おい、とりあえずとか考えてんなよ」

「くだんねぇ事考える暇があんなら、たった一つだけ考えろ!」

さらに勢いを増した魔術を相手にするため、短刀を持った左手で右手を支え、自己暗示をかけながら叫ぶ。

「テメェは! テメェらはインデックスを助けたくねぇのかよ?」

ようやく動き出した魔術師が再び止まった。
吐息も、動きも。

「テメェらはインデックスが記憶失わなくて済む、敵に回らなくて済む、そんな幸福な結末(ハッピーエンド)待ってたんだろうが!」

「他の何者でもなく他の何物でもなく、テメェの手で救い上げてぇ……いや、」

「助けるってその『名』に誓ったんじゃねぇのか!」

「命を賭けてでも女の子を守る魔術師になりたかったんだろ!」

勢いを増した『光の柱』に向かうように上条は一歩また一歩と足を前に動かす。
その姿に魔術師は何を見るだろうか。

「手を伸ばせば届くんだぞ!」

自己暗示をかけ、最早人間の領域を遥かに超えた力で押さえつけていた上条の右手が左手ごと弾き飛ばされる。

「しまっ……!」

「――Salvare000」

神裂の叫びが部屋に響いた。
叫んだのは彼女が名乗りたがらなかった魔法名だろうか。

神裂のもつ令刀が大気を引き裂く。
と同時に、七つの斬撃がインデックスの足下へと襲いかかる。
七つの斬撃は脆い畳を一気に切り裂いた。
足場を失ったインデックスが後ろへと倒れていく。
そして、眼に連動した魔方陣も上へ向く。
白い柱は、アパートの壁から天井を一気に引き裂き、黒い雲のたなびく夜空へと昇っていく。
あの様子じゃ雲だけじゃなくて人工衛星ぐらい撃ち落としてそうだな、と上条は後ろに倒れ込みながら考える。

受け身をとり、後ろへと下がりながら上条は体勢を整える。
インデックスの元へ駆けるため、アレを殺すため。
だが、上条が駆け出すより早く『光の柱』が振り下ろされた。

「――魔女狩りの王(イノケンティウス)!」

炎が上条の前で渦巻く。
人のカタチをとったソレは、両手を広げ盾となる。
十字架の意味そのままに。

「行け、『殺人鬼』!」

ステイルの声を聞くや否や上条は駆け出した。
”兄” から教わった歩法を用い、0から100まで加速する。
上条の眼が蒼紅く光る。

「――警告、第二十二章第一節。炎の魔術の術式を逆算に成功しました」

インデックスの声が響くと同時に上条の左手が振るわれる。




神様、この物語(せかい)がアンタの作った奇跡(システム)通りに動いてるってんなら
――まずは、その幻想をぶち殺す!!!


左手に握り込まれた短刀により、二つの魔方陣が亀裂も含め等しく『十七分割』される。
さらに、右手が振るわれ跡形も無く消え去る。
あまりにも簡単に。
なぜこんなもので苦しめられていたのかと笑えるぐらい簡単に。

「分かったか。これがモノを殺すということだ」

「――警、こく。最終……章。第、零――……。『 首輪、』致命的な、破壊……再生、不可……消」

インデックスから声がブツリと切れる。
そのことに安堵する間もなく、上条は濃厚な『死の匂い』を上方から感じた。
魔術師が叫んでいる声を無視し、上を向く。

そこには、何十もの光り輝く羽があった。
それらが粉雪のように月光を浴びながら舞い降りてくる。
それを見て、上条は悟った。

ああ、これが俺の『死』か……。

インデックスを守るように強く抱きしめ、上条は目を閉じた。
これが運命(さだめ)だ、と。

投下終了のage
一巻は150レス以内に収めるつもりだったんだけどなぁ……
このスレで何巻までいけるか!
この調子だと五巻の最初辺りでしょうか?

ではでは。

~第七話~

目を閉じたときに見えるのはまぶたの裏だと思っていた。
それがどうだろう。
今見えているのは着物の上に赤いジャンパーを羽織った青年であった。
その青年はどこか面倒くさそうに頭を掻きむしっている。

「姉さん?」

問いかけるとこちらをチラリと見、これまた面倒くさそうな声を出した。

「何してんの?」

「へ?」

「何で受け入れてるのさ? こんなに早く」

なぜ『死』を受け入れているかを聞いているのだろう。
そう判断し、上条は答える。

「これが運命だからさ。決められてた」

そんな上条の言葉に式はぶっきらぼうに答えた。

「それならあの子が記憶消されるってのも決められてた運命だ」

「あ」

上条は気がついた。

「あのさ、学生服とは違ってオレ達は決められた運命だって殺せるんだよ」

「それに、お前が死んだらあの子はどうなんのさ?」

上条は苦笑いを浮かべる。

「そう、だね」

「こんなのは誰も望んでない。ここでしっかり殺しておきなよ。そんな運命なんてさ」

その言葉に上条は笑う。

「ああ、殺してみせるよ」

その言葉を聞くと式は少し笑い、

「まったく、オレの柄じゃない。いつからオレは弟思いになったんだか……」

小さく手を振ってどこかへ消えていった。
見えるのはまぶたの裏だ。

「そうさ、こんな運命は、ここでしっかり殺しておかないとなぁ!」

上条当麻は目を開いた。

目を開くと同時に、幻想殺しをoffにする。
そして、魔術回路に魔力を流し込んでインデックスを抱えていない左手に三本のナイフを創り出す。
隠し持っていたナイフは最初の一撃のときにほとんどを落としたし、何より取り出している時間が惜しい。

眼を全開にすると、蒼紅い輝きが増す。
自己暗示をかけ、身体を戦闘用に作り替える。

上を見上げると雪のように不規則な動きをしながら降ってくる『白い羽』が ”視える” 。
線をいちいち斬っている暇はないため、投擲し点を穿つ。

「はっ!」

上条が霞むような速さで左手を振るうと三本のナイフがそれぞれ違った対象に向けて飛んでいく。
それらは不規則に動いているはずの羽の『死』を的確に貫いていく。

投影、投擲。
投影、投擲。
投影、投擲。
ただそれの繰り返し。
時間が経つたびに幻想殺しoffの副作用により脳に負荷が増えていくが、気にせずに繰り返す。
そしてついに、残すところ後2枚となった。

片手でインデックスを優しく寝かせる。
そして、短刀を右手に構え、羽を睨みつける。

「一、二の!」

一瞬で二枚を斬り刻む。

眼を全開にした上条には何も無い虚空に『一つの点を中心に上条を取り囲む線』が視えていた。
上条の死という運命の『死』である。

「――、三!!!」

突き出された上条の短刀が今、『運命の死』を貫いた。
アパートの一室で確定されていた筈の『運命』が音も無く静かに死に、消えていく。

月光を頭から浴びながら上条は目を瞑った。
そしてそのままインデックスの横に倒れ込む。
慌ててステイルと神裂が駆け寄る。

上条とインデックスは、左手と右手を重ねながら穏やかな顔で眠っていた。

「まったく、驚かせてくれますね。彼は」

「まったくだよ」

静かになったアパートの一室に二人の魔術師の声が静かに響いた。

~エピローグ~

「またかい? 君も懲りないねぇ」

大学病院のある一室で小太りの医者はそう言った。
医者は自分がカエルに似ているのを自覚しているのか、IDカードにアマガエルの小さなシールが貼られている。

「たはは」

声をかけられたのはツンツン頭の少年、上条当麻だ。
上条は目に黒い包帯を巻き付けていた。

「言っただろう? 君の『眼』、右手をoffにした状態で最大で使うと最低でも2週間程は暴走するって」

話の限り医者は上条の『事情』を少なからず知っているのだろう。

「いやぁ、すみません。でも、2週間で治りますよね?」

そう尋ねると、

「いや、無理だね」

速攻、否定された。

「え? マジ!?」

「マジもマジ大マジだね」

「何で?」

「君、違う能力も使っただろう?」

上条は魔術に関しては能力ということにしてある。

「あ……」

「当分の間、3週間程かな? 包帯を取らないように。視たいなら構わないけどね」

幻想殺しをoffにすることで上条は魔術を使えるが、これには長時間offにするとデメリットがでてくる。
それが、『眼』の暴走である。
制御下におけなくなり、常に『死が視える』ようになるのだ。
さらに魔術を使い続ければ尚更に。
そのときは、 ”魔眼殺し” の眼鏡をもっていない上条は包帯を巻くしか無い。

気まずそうに頬を掻いている上条に医者は声をかける。

「あと、内蔵に軽度の損傷が見られたね。心当たりはあるかい?」

上条に思い当たる節はない。

「いえ、特に。……!」

いや、あった。

そう言えば、能力開発を受けた能力者は魔術を使えないとインデックスが言っていたような気がする。
使った場合は身体に損傷を負うとも。
だが、

「こんなこと今まで無かったけどな……」

”こちら” に戻ってきてからも上条は魔術を使っていた。
そのときは何も無かったのだ。
つまり、

「『ルール』に触れて、『修正力』『抑止力』が働いたといったところか」

おそらく、”こちらの魔術” と触れ合ったことで上条の使う ”あちらの魔術” にこの世界の『ルール』が触れ、『修正力』『抑止力』が働いた。
ただし、”こちらの魔術” とは異質なモノであるためこの程度で済んでいるのだろうと上条は推測する。

「もう一つの能力も使ったからだと思います」

「ふむ。いろいろと大変だねぇ、君も」

医者はふと何かを思い出したような様子を見せた。

「そういえば、白いシスターさんが来たよ? 名前は、インデックスだったかな」

「本当ですか?」

「ああ、ホール辺りで待ってるんじゃないかな? あと、過激な友達がいるみたいだね?」

「へ?」

「炎の魔術師といったかな。手紙に液化爆薬でも仕込んであるようだったね」

上条はゲンナリしてみせた。
だいたい分かる。
アイツだ。
あの赤毛の不良神父。
未成年喫煙者。

「知り合いで良かった。知り合いじゃなかったら立派なテロだね、うん」

「ははは、すみません」

「ま、とりあえず退院だろ?」

「はい、お願いします」

上条は頷く。
視覚は無くなるが、それで活動出来なくなる上条ではない。
たった数時間の入院だったが退院の手続きをして、病院のホールへとでる。
その間に看護婦さんに「また来てね」などと言われたが……。

ホールに着くと、上条は立ち止まった。
前方から気配がしたからだ。

「とうま!」

気配が近づく。
走ってるインデックスの姿を上条は想像する。

「なんだよ、インデックス?」

「……大丈夫?」

インデックスの声が小さくなる。
自分のせいだとか考えているのだろうか。

「心配すんなって。ピンピンしてるぜ?」

「良かった」

今度は心底安堵した声だ。
単純なヤツだ。
思わず笑いそうになる。

「で、お前。内に来るんだろ?」

「へ? 何で知ってるの?」

「神裂に聞いた」

「かおりに?」

「ああ」

インデックスの安全のためだと神裂は言っていたか……。

インデックスと並んで上条は病院から表に出た。

「とうま、ありがとう」

唐突にインデックスが礼を言ってきた。
それに上条は笑って答える。

「約束守っただけだって」

「それだから、ありがとう」

「どういたしまして」

二人の間を沈黙が支配する。
沈黙を破ったのは上条だった。

「シスターのお前にこんな事言うのは、どうかと思うんだけどさ」

首を傾げるような気配が伝わってくる。

「もし、神様ってヤツがいるとして」

「いないとシスターの私としては困るかも」

吹き出しそうになりながら上条は続ける。

「いるとして、もしインデックスにこれ以上重たい運命を背負わすのならそのときは、」

「そのときは?」

「奇跡(システム)や神様の抱いた幻想だけじゃない。俺は」






「神様だって殺してみせる」




決意を込めるように右手を握りしめた上条の耳にインデックスの声が聞こえてくる。

「本当に殺されちゃ困るけど、とうまらしいかも。ありがとう」

インデックスがどんな顔をしているのか上条には見えない。
でも、きっと、笑ってるだろう。

「さぁ、帰るぞ。インデックス」
(二人で笑って帰れる。これは決して、決して……)

上条は微笑みながら右手を伸ばす。

「うん!」
(……幻想なんかじゃないんだよ!)

インデックスはこれまた微笑みながらその手に絡むように抱きついた。


青く澄み渡った空が、静かに吹き渡る風が、サワサワと音を立てる街路樹が、真夏にしては珍しく優しく暖かく照らす太陽が。
全てが二人を祝福しているかのようだった。






「とうま! インデックスはとうまのことが大好きなんだよ!」




はい。
一巻はこれで終わりとなります。
魔術に関しては無理矢理感のある設定となってしまいました。

書き溜めが尽きかけですので書いてきます。
書き溜めだすと止まらない私『土蜘蛛』でございます。
出来る限り早めに来たいとは思っておりますのでご容赦ください。

~第一話~

その部屋に窓はない。
それどころか、階段やエレベーター、通路といったものまでない。
まるでビルとして機能させる気のないここは、レベル4相当の空間移動(テレポート)がなければ出入りすることができない史上最硬の要塞だ。
そんな核シェルターをも超える強度を誇るビルの内部に一人の魔術師はいた。

名前はステイル=マグヌス。
ルーンの魔術師である。
さらに言えば、イギリス清教の神父であり、魔術師を殺すために魔術を極めた、例外中の例外である。

そんな彼は、本来ここにいるべきではない。
『ここ』が指し示すのはこの建物ではなく、この建物の建っている『この街』である。
この街はオカルトを否定しているわけではないが、『一部の例外を除いて』すべて科学によって裏付けされつくしている都市である。
そんな街にオカルトの住人である彼がいるのは、トランプの中に1枚だけタロットカードが入り込んでいるぐらいに異彩を放つ。

そんな彼がここにいるのには理由があった。
イギリス清教として主義主張の異なる学園都市と対話に来ているのだ。
彼は、人を殺す事や人を生きたまま燃やすことにためらいが無い。
そんな彼でも、目の前の光景には何度見ても慣れない。

部屋と言っていいのか躊躇う程に広大なそこには、証明なんて物は無い。
だが、室内は無数の光に照らされている。
それは、室内の四方を埋め尽くすかのように設置された無数のモニタやボタンの瞬く光である。
大小数万もの機械からは、さらに数十万ものケーブルやコード類が伸びて、それらが地を這って一ヶ所へと集まっていた。
部屋の中央、巨大なビーカーへと。

直径4m、全長10mを超す強化ガラスによって作られたソレには、赤い液体が満たされている。
ただ、慣れない原因はそれではない。

ビーカーの中には緑色の手術衣を着た人間が逆さに浮かんでいた。

それは『人間』としか表現出来ない。
銀色の髪を持つ『人間』は男のようにも女のようにも見て取れる。
また、大人にも子供にも見え、囚人にも聖人にも見えた。
『人間』として全ての可能性を手に入れたのか、はたまた全ての可能性を捨て去ったのか。
どちらにせよ『人間』としか表現することは出来ない。

「ここに来る人間は皆、私の在り方を観測し、皆同じ反応をするのだが、――」

ビーカーの中に浮かぶ『人間』は男にも女にも、大人にも子供にも、囚人にも聖人にも聞こえる声で言った。

「――機械に出来ることを、わざわざ人間がする必要は無いだろう」

己の生命活動は機械が行える。
だから、わざわざ自らでそれを行う必要はない。
これこそが『人間』の在り方であった。
推定寿命1700年にも及ぶ人間の限界が、今まさにステイルの目の前にあった。

ステイルは、恐い。
『人間』とはここまで歪むことが出来るのかと目の当たりにするため、この『人間』の在り方が恐ろしい。

「ここに呼び出した理由はすでに分かっていると思うが――」

学園都市統括理事長『人間』アレイスターは厳然と告げた。

「――まずいことになった」

ステイルは目の前の『人間』が弱音を吐いたことに眉をひそめながら、

「吸血殺し(ディープブラッド)ですね」

ステイルは普段使わない敬語を使う。
一瞬でもアレイスターに敵意があると判断されれば、その場で八つ裂きにされることが分かっているからだ。
このとき、敵意が本当にあるかないかは関係ない。
あると判断されれば、誤解だろうが勘違いだろうが八つ裂きは決定、ステイルの命運はここで尽きるのだ。

ここは敵の本拠地で、230万もの超能力者を操る場所なのだから。

「ふむ。能力者だけなら問題はなかった。アレは元々私の保有する超能力者の一つだ。」

「この街だけでおきたここの住人の問題ならば、それを解決・隠蔽する策など7万と632程ある」

何の感想も持たないステイルを興味無さげな目で見やりながらアレイスターは続ける。

「――問題は一つ。君たち魔術師が関わっている事だ」

吸血殺し(ディープブラッド)。
出典は学園都市のバンクではない。
英国図書館の記録からである。
いるかどうか定かでない『とある生物』を殺す。
ただ、それだけの能力。
その能力の実体は分からず、真偽も分からない。

その『吸血殺し』を保有した少女がとある魔術師に監禁された。
今回の事件を簡単に言うとその一言に尽きる。

「相手がこの街の『外』の人間だと、少し事情が厄介になる」

「230万の能力者を使い、総力戦にすれば、魔術師の一人や二人簡単に潰せる」

「問題はそれではなく、科学者が魔術師を倒してしまうということだ」

超能力と魔術。
互いがそれぞれの技術を独占しているからこその今の地位である。
故に、超能力を統べる学園都市が魔術師を倒すとなると魔術サイドは決していい顔はしないだろう。

「そうなると、そちらの増援を迎えるのも難しそうですね」

超能力と魔術の統合部隊というのも同じ理由で火種を巻きかねない。

だが、あの時は?
ステイルは二週間程前に行った『殺人鬼』との戦闘を思い出す。
何故、あの戦闘は例外的に許されたのか。
ステイルの知らないところで何かしらの取引があったのか、あの少年がレベル0であったためかも知れない。

だが、今回は違う。
今回、渦中にいる人物は、魔術師にしても能力者にしても絶大な力を認められた『重要人物』だ。

「なるほど。それで例外の私を呼んだということですか」

つまり、能力者が魔術師を叩いてしまうのは問題だが、同じ魔術師たるステイルが叩く分には問題ないのだ。

「それで、問題となる『戦場』の縮図だが」

どういう仕組みか、暗闇の中に直接映像が映る。
浮かび上がったのは、どこかの何の変哲もないビル。
見取り図の端には、『三沢塾』と整然とした文字で記されている。

「魔術的な仕組みについては不明」

「『三沢塾』というものに対しては少々特殊な環境にある」

『三沢塾』という全国規模の進学校は、学園都市特有の学習法を盗むために入り込んで来た巨大な企業スパイの色が強い。
ところが、半端に能力開発をかじった『三沢塾』は悪い影響を受けた。
能力開発という自分たちしか知らない科学技術=自分たちは選ばれた。
などという科学崇拝とも言うべき考えにとりつかれた。
学園都市にある支部校は本来の目的を放棄し、さらには『吸血殺し』の少女を監禁した。

「何で、『三沢塾』は『吸血殺し』を監禁したんでしょう?」

「どうやら世界に一つだけで再現不可能の能力ならなんでもよかったようだ」

「?」

「この街における『序列』は『学力』と『異能力』の二つだ」

「そう言う意味で『吸血殺し』を保管、研究するのは意味あることだろう」

つまり、珍しい能力を量産出来るという触れ込みは劣等感をもつレベル2やレベル3を釣るにはいいエサなのだ。

「……まったく、一度発現した能力を変えることなど、脳を移植しても不可能だというのに」

ステイルは違和感を抱く。
そもそもオカルトを信じないこの街ならば、『とある生物』も信じないのではないか? と。

「とにかく希少価値がある、と認められれば話の種ぐらいにはなるだろう」

「『幻想殺し』を始めとする『正体不明の能力者』はいくらでもいるしな」

ともかく、『吸血殺し』が監禁されただけなら問題は無かった。
問題は、『外』から『魔術師』がやって来て『三沢塾』を乗っ取ったこと。

ステイルは黙って、見取り図をじっと見つめる。
中がどれだけ『魔術的』に改装されているか分からない。
生きるか死ぬか。
それにしても、230万もの能力者の中でたった一人の孤独というのは愉快だ、とステイルは心の中で笑う。

「そうでもないさ」

突然、心を読んだかのような声が見取り図を眺めていたステイルにかかる。

「君達にとっての『天敵』を一つ、私は保有している」

その言葉にステイルは硬直した。

『幻想殺し』。いや、『殺人鬼』と言った方がいいのだろうか。
二週間程前、ステイルと殺し合いを演じた少年。
ステイルの炎をいとも簡単に消し去り、『聖人』たる神裂すらも圧倒した驚異的な身体能力・技術を誇る少年。
常識どころか異常からさえも外れてしまっている、特異な少年。

「けれど、魔術師を倒すのに能力者を使うのはまずいのでは?」

ステイルは純粋な疑問をぶつける。

「問題ない。アレはレベル0、無能力者であり、情報を持っていることも無い」

「魔術の情報を手に入れようとすることも無いだろう」

このタヌキが。
ステイルは初めて目の前の『人間』に敵意に似た感情を持つ。
『彼』が無価値である筈が無いのは正面からぶつかったステイルにはよく分かる。
たしかに、『あの力』を理解し教会に持ち込むことは不可能だ。
おそらく学園都市側もそうであろう。
だが、その稀有ということすらはばかられる程の『彼』をアレイスターはぞんざいに扱う。
まるで、鍛え上げるかのように。

「……、」

それより、『彼』の側にいる『彼女』は何よりタブーではないのか?
本音と建前の食い違いにステイルは疑問を持つが、悟られないように注意を払う。
『彼女』に波風を立たせるようなことはしたくない。

「吸血殺し……」

呟いたステイルの顔は解けない謎に直面した学者のそれであった。

『ある生き物』。
本当に居るというのだろうか?
無限の魔力を誇ると言われる、カインの末裔が。

そんなステイルの疑問にまたもアレイスターが心を読んだかのように口を開く。

「『ある』か『ない』か。そんなものは些細なことだろう」

「けれど、――」

ステイルの目の前で巨大なビーカーに浮かぶ『人間』は笑みを浮かべた。

「――『吸血殺し』が吸血鬼の存在を証明するのならば、『彼』は一体何を証明してくれるのだろうか」

安っぽいファーストフード店の二階にある窓際の四人掛けの禁煙席。
上条はそこに座っていた。
どうしてこうなっている、と上条は天井を仰ぐ。
上条の他に座っているのはインデックス、青髪ピアス。
――そして、巫女さん。
これだ、これが謎なのだ。

巫女さんは見たところ上条と同い年ぐらいだろうか。
赤と白の巫女装束に腰まである黒髪。
THE 巫女さん、と言った感じの少女だ。
しかし、

「なんで食い倒れてんだよ」

上条は盛大に嘆息する。
勘弁してくれ、と言いたい。

包帯をしっかりと巻き付けた上条は、二人分程の視線を感じ取る。

「なんだよ?」

視線はインデックスと青髪ピアスのものだ。

「カミやん、話しかけられたんやから答えてやらなっ!」

「そうなんだよ、とうま。神の教えに従い救いの手を差し伸べるのですなんだよ。アーメン」

上条はゲンナリしてみせる。
不幸だ、と小さく呟く。
話しかけられたとは言わない。
この巫女さんは、食い倒れたと呟いただけなのだ。
そもそも、『神殺し』を名乗る上条に神の教えに従うもくそもない。

「あの、もしもし?」

だが、上条の性格上放っておくこともできなかった。
巫女さんの肩がピクリと動く。上条には見えないが。

「食い倒れたって、なんでだ?」

とりあえず、呟いてきた言葉の意味を尋ねてみる。

「一個56円のハンバーガー。クーポン券があったから」

「うん」

上条は金欠時にお世話になった非常食を思い浮かべながら適当に相づちを打つ。

「とりあえず三十個程頼んでみたり」

「お得すぎだ馬鹿」

もはや、条件反射であった。

上条の突っ込みに巫女さんはピクリとも動かなくなった。上条には見えないが。
だが、どことなく哀しい雰囲気が伝わってくる。

「悪い、条件反射だ。別に乱暴に扱ったわけじゃなく、少しでも友達っぽく話した方がいいだろ、ってことだ」

「やけぐい」

何の前触れもなく、巫女さんが呟くように言葉を発した。

「は?」

「帰りの電車賃400円」

上条は確かに学園都市の電車って高いよな、などと思いながら巫女さんの方に顔を向ける。

「で?」

「全財産300円」

「……、その心は?」

「買いすぎ、無計画」

「お、おう」

「だから、やけぐい」

馬鹿だろ、と叫びそうになるのをぐっとこらえて上条は言葉を選んで発言する。

「300円分でも乗っていきゃいいだろ。そもそも、誰かに借りれねぇの?」

「それはいい案」

じー

「は?」

上条は救いを求めるかのような視線を感じ取る。

「もしかして、俺の方見てます? いやいや、初対面の人に金貸す勇気俺には無いんですけど」

ぎょっとして身を仰け反らして巫女さんから離れようとする上条。

「……、………」

何やら不機嫌そうな気配が上条に伝わってくる。
巫女さんではない。
二本目のシェイクを飲み終えようとしているインデックスだ。

「えーっと、……」

「う、ウソや。カミやんが女の子と話してる、今この場であった美人さんとナチュラルに会話してるなんて幻想やーーっ!」

上条は青髪ピアスの言葉に少し包帯を取りたい気分になった。
青髪ピアスの言うところの美人がどれほどのものか気になったのである。
が、名誉毀損な叫びに対しては一応言っておかなくてはならない。

「テメェは後で体育館裏集合」

そして、上条は巫女さんへと向き直る。

「お前もどうにか100円入手して帰ること、ok?」

何やら錯乱した青髪ピアスが叫んでいるが上条は無視する。

「100円、無理?」

「勘弁してくれよ、無理無理」

巫女さんは少し考え、上条の方を見る。そして、

「チッ」

盛大に舌打ちした。

「喧嘩売ってんのか!」

これまた条件反射であった。

青髪ピアスがしゃがれた声で何かを言っているが無視する。

「美人」

巫女さんがまたも何を考えているのかさっぱり分からないことを言い出した。

「は?」

「美人に免じて100円」

「うるせぇ! 生憎、俺はお前の顔見てねぇよ。てか、自分の顔売って金貸せって言うヤツのどこが美人だ、コラ!」

本人達は100円を巡って交渉しているだけだが、端から見るとじゃれ合っているようにしか見えない。
不機嫌ですといったオーラを全開にしているインデックスはストローをガシガシと噛みながら敵意のこもった目で巫女さんを見る。

「巫女装束を見たあたり、卜部流見たいだけど。卜部の巫女は顔も売るの? 『巫女』って平安時代では娼婦の隠語だったみたいだけど」

上条は反射的に吹き出した。
青髪ピアスは「東西対決や~!」などとハイになっている。
そんな青髪ピアスに対し、上条は拳より少し小さいくらいの石を投影して投げつける。
頭部から鈍い音を出しながら青髪ピアスは崩れ堕ちた。

「私、巫女さんではない」

「へ?」

堕ちていた筈の青髪ピアスまで声を揃えた。
上条が最初にみたところ、巫女で検索をかけたら図解に載っていそうな程の巫女さんである。
黒髪、緋袴。
どこからどう見ても巫女さん以外の何者でもない。
現に今もその姿で座っている。

「じゃ、じゃあ。お前一体どこのどなたのナニ子ちゃん?」

上条が代表して三人共通の疑問を口にする。

「私、魔法使い」

「……………」

全員が全員、黙り込んだ。

本日はこれで終了。というわけでageました。

別に2巻を端折ろうって訳じゃないですよ。
ただ、妹達編が長くなりそうだからできれば200レスぐらいに収めたいなと。
とか言って1巻みたく予定より長くなるんでしょうけど……。

バン!と、両手で思い切りテーブルを叩きながら、インデックスが立ち上がる。

「魔法使いって何! カバラ!? エノク!? ヘルメス学とかメルクリウスのヴィジョンとか近代占星術とかっ!」

「お、おい? インデックスさん?」

「曖昧なこと言ってないで専門と学派と魔法名と結社名を名乗るんだよオバカぁ!」

「……?」

「この程度の言葉も分からず魔術師を名乗っちゃダメ!」

「大体あなた卜部の巫女なんだからせめて陰陽道の東洋占星術師ぐらいのホラ吹かなきゃダメなんだよ!」

「じゃあ、それ」

「じゃあ!? あなた今じゃあって言った!?」

上条はそんなやりとりに頭を痛ましながらも、間に入る。

「まあ、あんたがそう名乗りたいならそれでもいいとして……」

「な! とうま、それは許せないんだよ!」

「ただ、魔法使いはやめてくれ。俺個人の事情だが、それだけはやめてほしいんだ」

「?」

”遠野志貴”という兄を持つ上条にとって『魔法使い』とは、それだけで特殊な意味を持つ。
それ故に、上条にとって『魔法使い』と名乗られるのは勘弁願いたいのだ。

「あ……」

インデックスが間抜けな声を出すのと、上条が戦闘態勢をとったのは同時であった。
青髪ピアスが呆けたような顔で辺りを見回す。否、辺りではなく……、
テーブルの周りに取り囲むように立つ、十人近い人間である。

「―――――ッ!」

上条は包帯を外しながら、奥歯を噛み締める。
『殺人鬼』と自らを名乗り、気配を読むことに長ける上条が、包帯をしていたとはいえ、ここまでの接近に気付けなかった。
それほどまでに、気配が皆無だったのだ。

包帯を解くと、上条の蒼紅い瞳が彼らの姿を映し出す。
彼らは、同じスーツを着た20代から30代の男たちであった。

「おまえら……、」

上条は思わず後ずさる。
無個性に見える『彼ら』。
だが、その目は何一つ『感情』も浮かべていなかった。

(感情が、ない? いや、何かが……違う)

そんな中、巫女さんの声が響く。

「あと、100円」

巫女さんは10人近い男に囲まれながら、なんの警戒もしていなかった。
むしろ、待ち合わせしていたかのような態度だ。
音も無く巫女さんが立ち上がると、彼らの一人が道を譲るように一歩下がる。
そして、彼らの一人が100円玉を音も無く差し出す。

「こいつら、お前の知り合いか?」

上条が警戒を若干緩めながら、巫女さんへ尋ねる。

「……、」

少し考えるように目を泳がせ、

「うん。塾の先生」

何の気無しの返答だ。

「そ、そうか」

取り出しかけの『神上』をポケットに押し込み、警戒を解く。
巫女さんが一階へと降りていき、まるで護衛するかのように、男達は音も無く後ろに続く。

「けど、何で塾のセンセが生徒の面倒見んねんな。小学校の生活指導じゃないんやし」

~第二話~

夏の夕暮れ、大きなデパートが立ち並ぶ駅前の大通り。
インデックスと二人きりで上条は歩いていた。
インデックスの気配をさぐり、上条は小さくため息をつく。
事情が事情とはいえ、『女の子』と『男子寮』で『同棲』である。
それだけなら、『従妹』と同じように扱えるが……。

――寝相が悪かった。
寝ていると、すぐに潜り込んでくる。
上条だって健全な高校生なのだ。

柔らかい躯。
鼻腔をくすぐる女の子特有の甘い香り。
全てが、上条の性欲を刺激する。
バスルームで寝るということも考えたが、
「いかないでぇ……」
寝言とは言え、あんなことを耳元で囁かれるとそうも行かなかった。
だがしかし、

「うがぁあああ」

「どうしたの? とうま」

「いや、」

「あ」

インデックスが何かに気づいたように、唐突に立ち止まる。

「どした、インデックス?」

「とうま、ネコがいる」

「は?」

「捨てられてるんだよ。これはシスターとしては見逃せないかも」

「ネコ?」

耳を澄ますと、たしかにみーみーと鳴き声が聞こえる。

「ん?」

シスターとして見逃せない? ちょっと待て、と上条はインデックスの方に向くがすでにそこにはいない。

「わぁー、かわいい!」

「はぁ、マジかよ」

ネコの餌代が増えることを考えると、

「不幸だ……」

にしても、俺はインデックスに甘すぎるんじゃないだろうか。
上条がそう考えたとき、

インデックスの動きが唐突に止まる。
それを感じ取った上条は首を傾げる。

「どうした?」

「これは、」

「属性は土、色彩は緑。この式は……、」

何かを考えるようにブツブツと呟くインデックスの声が、上条に届く。
上条が様子をうかがっていると、

「……、ルーン?」

呟くと同時、インデックスが勢いよく走り出す。

「お、おい!」

「誰かが魔方陣を仕掛けてるっぽい。調べてくるから、とうまは先に帰ってて」

「……、分かった。危なかったら、すぐに帰ってこい!」

「うん!」

上条はため息をつく。それはインデックスの行動に、ではない。
後ろに立つ少年に対する、ため息だ。

「で、何だ? ステイル君?」

「久しぶりだね、上条当麻」

赤毛にバーコードのタトゥ。赤に染めた金髪に指輪。
漆黒の修道服を着ているとは言え、神父とはまるで思えない少年がそこにいた。

上条が微かに殺気を放つと、ステイルは満足げに頷く。

「そうだそうだ。僕たちの関係はこうでなくては」

「人の気配がなかったんでね。俺とお前を除くと、インデックスが最後の一人だった」

「そうだ。人払いをしておいた」

「で?」

共闘したとは言え、和解した訳ではない。
二人の間には、殺伐とした空間が出来ていた。

唐突に、上条が右手を前に突き出す。
ガラスの割れるような音と共に、一片のためらいも無く振り下ろされた炎剣が消える。

「おいおい。殺されに来たってか?」

上条が、飢えた獣のように獰猛に笑う。
ステイルも同様だ。

「いや、日和っていないかと思ってね」

「心配すんな。いつでも相手になってやるよ」

するとステイルは小さく笑い、

「なら、内緒話に付き合ってもらおうか」

「は?」

予想の斜め上を突っ切ったステイルの発言に上条は呆ける。

ステイルは手に持っていた大きな封筒を、人差し指で飛ばした。
分厚い封筒はフリスビーのようにクルクルと回転しながら上条の手元へ収まっていく。

ステイルが何やら呟いた瞬間、刃物で切ったように真横に裂ける。

「『三沢塾』という名の進学予備校を知っているかな?」

「ああ、たしか……シェア一位の、だっけ?」

それぞれの書類にルーンが刻まれているらしく、それらは上条の周りをフヨフヨと漂っている。

「そうだよ」

ステイルはつまらなそうに言う。
どうやら、用件は進学予備校ではないらしい。

ひらり、と上条の前に一枚の資料が飛んでくる。

「で、何だよ? 友達でも紹介すりゃネコの餌代でも貰えんのか?」

「そこ、女の子が監禁されてるから。どうにか助け出すのが僕の仕事なんだ」

「あ?」

思わず、上条はステイルの正気を疑う。

「資料を見てもらえば、分かると思うけどね」

紙吹雪のように舞って上条をとり囲んだコピー用紙は、『三沢塾』の見取り図であった。

それらの資料を見ていると、歪な隠し部屋があることが明白であった。
人の目を隠すように大量の電気が使われていることも、大量の食料が『誰か』のために買い込まれていることも。
一人の『少女』が『三沢塾』に入っていき、それ以来寮に戻っていないことも資料にあった。

遅くなったことをまずはお詫びします。申し訳ございません。
漢検に模試と忙しくて、、、
書き溜めもあまり無いので、ボチボチ進んでいきます。
ではでは、、、

「今の『三沢塾』は科学崇拝を軸にした新興宗教と化しているんだそうだ」

つまらなそうに言うステイルに眉をひそめながらも、上条は話を促す。

「で?」

「教えについては不明だがね。それに現在はもう潰れているし、問題じゃないんだ」

「……?」

「端的に言って、」

吐き捨てるようにステイルは繋ぐ。

「『三沢塾』は乗っ取られたのさ。インチキ宗教が、正真正銘本物の魔術師に……、いや、」

「チューリッヒ学派の錬金術師にね」

「錬金術師ねぇ?」

「重要なのは、錬金術師の目的だ。一つは簡単だ。『三沢塾』というって要塞をそのまま使いたいんだろう」

「けどね……、そもそもの目的は『三沢塾』にとらわれていた『吸血殺し(ディープブラッド)』なんだ」

『吸血殺し』
その名を聞いたとたんに、上条の体の中で何かが脈動する。
――同族
そんな言葉がふと、頭をよぎる。
それを、上条は頭を振って消し去る。

そんな上条を、見て見ぬ振りをしているのか、そもそも見ていないのか、ステイルは話を続ける。

曰く、一歩先に『吸血殺し』を手に入れた三沢塾から錬金術師は奪い返したということらしい。

「錬金術師からすれば、『吸血殺し』の獲得は悲願だろうね。いや、全ての魔術師……、あるいは全人類の、かもしれないけど」

「実在するかも分からない『ある生き物』を生け捕りに出来るかもしれないからね」

「はぁ?」

上条は思わず、間抜けな声を出してしまう。
『吸血殺し』が殺すモノ。おそらくは、

――死徒。

吸血種の中で吸血鬼と呼ばれるモノの大部分をしめる、
様々なものが存在する中で、一番吸血鬼のイメージに合っている。
元々人であった者が、真祖や他の死徒に噛まれ吸血されたことにより変異した吸血鬼がソレだ。
吸血鬼になるまでには『屍鬼』や『動く死体』と言った過程があるが今は関係ないだろう。

「僕たちの間ではカインの末裔なんて隠語が使われてるけど、」

「簡単に言えば、吸血鬼さ」

その言葉に、上条は目を細める。

「……、だと思った」

「うん?」

「いや、予想はついてたさ。死徒なんだろうなって」

「死徒?」

「お前らの言うところの、吸血鬼だよ」

「君は本当に不思議だね。僕たちの知り得ない事まで知っているみたいだ」

「否定はしないさ」

上条は、不機嫌さを全面に出した声で尋ねる。

「で? んな話して、何がしたいんだお前は……、女の子助けにいかないのかよ? そもそも、何でその女の子を狙ったんだよ、錬金術師は」

「人間にはどれだけ努力しても、たどりつけない領域がある。それでも上に昇りたいのが人間だ。なら、どうする?」

「知るか」

上条は今日の特売を思い出して不機嫌さMAXである。

「簡単さ、人間以外の力を借りればいいだけだ」

「吸血鬼ってのは不死身だ。心臓をえぐり出して、剣に埋め込んでも生き続ける」

「それ、ホントか分からねぇだろ」

「でも、事の真偽は関係ない。そこに僅かな可能性があるのなら試すのが学者という生き物だ」

「『三沢塾』や錬金術師も本気みたいだ。吸血鬼と交渉する際の切り札が『吸血殺し』と言ったところか」

ヤバい。
なんだか分からないが、この話を続けていると碌でもない事に巻き込まれそうな、そんな感覚を上条は全身で感じ取った。

「あぁ、そうか。ま、仕事がんばれ。特売あるから、またな~」

そう言って立ち去ろうとした上条の背中を炎剣が襲う。

「行かせるとでも?」

「……、はい?」

訳が分からないと言った風に上条は右手を上げたまま呆けてみせる。

「君も一緒に来てもらうんだから、行かれると困るね」

「はぁ!? ふざけんな! 誰が、「あぁ、それとね」

上条の言葉を遮るようにステイルが冷たく言い放つ。

「拒否権は無いよ。従わなければ禁書目録は回収する」

その言葉に、上条は言葉ではなく殺気で答える。
そんな上条にステイルは怯むでもなく、煙草をふかす。

「君は禁書目録の『足枷』なんだよ。けどまぁ、不要なら仕方が無い。回収するしか無いね」

「本気で言ってんのか? ステイル」

豪瀑布のような殺気がステイルに叩き付けられる。
ステイルは流石に耐えきれず怯んでしまうが、引くわけにはいかない。

「殺し合いは、錬金術師を仕留めてからにしよう」

「それと、それが『吸血殺し』だ」

資料の中から、一枚の写真が上条の前に飛んでくる。

「っ!」

どんな顔をしているのかと、写真に目を向けた上条の顔が固まった。

いろいろな思いが上条の中を駆け巡る。

「くそったれが……!」

上条は一度、学生寮に戻ってきていた。
『三沢塾』へ行くための装備を整えるためだ。

黒の服を着込み、ナイフを仕込み、刀を背負い、『神上』をベルトに挟む。

そんな様子を呆然と見ているのは、インデックスだ。

「とうま?」

「あ?」

「なにしてるの?」

「ちょっと、な」

「むぅ~、ご飯!」

唇を尖らせて、主張する。

「悪いな、インデックス。ちょっと行ってくる」

「とうま!」

「旨いもん食わせてやるからさ、お前にも、そのネコにもな」

「本当に?」

「あぁ。……じゃ、行ってくる」

「――、行ってらっしゃい」

インデックスは駆け出していった上条の背を見えなくなるまでジッと見つめていた。

今日はここまでです。
書いてて思ったんですけど……これ、上イン?

まぁいいか、書き溜めしてきます。

~第三話~

寮の通路にルーンのカードを貼付けるという作業をしていたステイルを手伝った後、夕暮れの街を歩きながら上条は『敵』について尋ねてみる事にする。

「錬金術師って、誰なんだ?」

「アウレオルス=イザードという名前さ」

「アウレオルスと言えば一人しかいないが、あれはあくまで末裔だ。伝説に聞く程の力じゃないさ」

「アウレオルスってだれさ?」

「はぁ……、本当に君はこちらに疎いのか詳しいのか……」

「はぁ?」

「パラケルススという名前には流石に聞き覚えがあるだろう?」

「あれ? 医者じゃなかったっけ? そいつ」

「そうだ。だが、錬金術師としても有名さ」

ステイルは何かを思い出すような仕草を見せ、

「たとえば『ホムンクルスを創るのに成功した』とか、『賢者の石を持ち歩いていた剣の中に保有していた』とかの伝承があるようにね」

「ふーん」

「なんだ、その反応は?」

「別に。ホムンクルスが相手に出てくる訳じゃないんだろ?」

「ああ、それほどの力を保有している訳じゃないからね」

「本当に、眷獣ぶっ放してくるホムンクルスの女の子とかいないだろうな?」

「なんだい……、それ?」

「いや、なんでもない」

上条は居心地悪そうに頬を掻く。

「話を戻そうか。アレ自体は大した事ないが、吸血殺しを押さえつける『何か』を持っているからね。それに、『ある生物』を飼いならしているかもしれない……、考えたくないけどね」

「ま、吸血鬼が居た場合は俺が殺せる。そんなのより優先するべきは敵の大将だろうが」

「ん? ああ、それなら問題ないさ」

「はぁ?」

ステイルは口角をあげた。

「錬金術師なんていう職業は無いからね」

再び真面目な顔に戻り、ステイルは問題を投げかける。

「錬金術師の目的は何だと思う?」

「何をすれば、どうなるって事を知る事……か?」

「ほぅ」

ステイルが感嘆の声を上げる。

「そうだね。『公式』『定理』といったものを彼らは知ろうとする。でも、真の目的はその先だ」

「先……?」

「ああ、世界の全てを頭の中でシミュレートする事さ」

「なるほど、世界の『公式』やら『定理』やらが全部分かれば、ソレが出来る……、って訳か」

ステイルは訝しげに眉をひそめた。
そんなステイルを上条は疑問符の浮かぶ顔で見る。

「なんだよ?」

「いや、妙に理解が早くて気味が悪かっただけさ」

「いろいろあるんですよ。上条さんにもね」

「そう」

「で、未来を計るための計算機になるのが錬金術師の目的ってか?」

いいや違うね、とステイルは吐き捨てる。

「自分の頭の中で思い描いたモノを現実世界に投影できたら、どうなると思う?」

何も答えない上条にステイルは続ける。

「『頭の中』を投影するって言うのは何も魔術の中では珍しく無い」

「! だとすれば……」

「そう、『頭の中で正確に世界を思い浮かべる』事は大きな意味を持つ」

「でも、それは……」

上条は『修正力』を思い浮かべる。
世界に歪なものが生まれれば、容赦なく消し去る力。

「消えちまうんじゃないのか。正確じゃなけりゃ」

「! 本当に君は……、驚かせてくれる」

「いや、考えたら分かるだろ」

「そうか。じゃあ、逆に考えてみろ」

「逆?」

「正確だったとしたら?」

上条は絶句する。
そんな事になったら、勝ち目は0だ。
『世界』には自分も含まれているのだから。

「ま、大丈夫さ」

気にした風の無いステイルに上条は苛立つ。
もし、そんなものを使われたら、勝とうとする事自体がバカらしいのだから。

「錬金術は完成されていない。砂の一つ一つまで観測するのに何年かかると思ってる。100年、200年じゃすまないだろうね」
「呪文は完成されている。が、それを語りきれないんだよ。人間の寿命は短すぎる」

上条は釈然としないまま歩を進め、やがて立ち止まった。

目の前には、燃えるような夕日に照らされたビルが待ち構えていた。

『田』の字を作るように配置されたなんとも不思議なビルではあるが、上条は何も感じなかった。
姉さんの話に聞いた円形ビルの方が実物を見てないとは言え、印象に残るだろう。

「最初の目的地は南棟の五階――食堂脇だね」

「ん?」

「隠し部屋があるらしい」

ステイルがのんびりと呟いた。

「隠し部屋ねえ……、全部で何ヶ所?」

「十七ヶ所だ」

「ふーん。見た感じ怪しくねぇけどな」

上条は蒼紅い眼でジッとビルを見上げる。
線が二重に視えるだとかそんな事は無い。
ただの、普通のビルだ。

「そうだね……、何も怪しいところが無い。見当たらないさ。専門家の僕が見ているのにね」

ステイルは何か釈然としないような様子だ。
明らかな異常を見ているのに見えていないような、例えるならそんな感じの表情だ。

「大丈夫な筈が無いんだ」

「それは分かるさ。怪しく無いのに怪しい気がする」

「そうだね。でも、入るしか無いだろう? 今回は殺しじゃないんだ。コレごと焼き払ってくれっていうなら僕も楽なんだけどね」

上条は横目にステイルを見て、確信する。

(こいつ、半分以上本気だ)

冷や汗が出てきた。
何か知らんが、コイツなら俺を盾にしそうな気がする、と上条が汗を拭いながら考えていると、

「ほら、行くぞ」

ステイルが真っ正面から入ろうとする。

「え、いやいやいやいや! 待て待て、上条さんはもっとステルス的な何かを期待してたんですけどっ!?」

「はぁ? 馬鹿か君は、君の右手が有る限りそんなものは意味が無い」

「はい?」

「僕にしても、君にしても、どっちみち入ってしまえば歩く発信器だ」

「……、マジか」

「ステルスなんて意味が無い」

「……ちぇー」

上条が唇を尖らせて足下の石ころを蹴る。
そう、なんていうか、あの有名なステルスアクションゲーム的なものを上条は期待していたのだ。メタル、メタル……なんだっけか?

「安心しろ」

唐突にステイルが真面目な顔で、ゲームの名前を思い出そうとしていた上条にそう言った。
上条はそんなステイルを見て、

「ああ、そりゃそうか。対策してないはずないもんな」

「当たり前だ」

「ほっとしたぜ」

「何のための君の右手だ」

「………………」

立ち止まった上条を置いてスタスタとステイルはビルへと入っていく。

「行くよ」

上条は盛大にため息をついて、自動ドアへと足を進めた。

ガラスの入り口をくぐり抜けても、別段変わった様子は無く、ただ広いロビーが広がっていた。
奥にはエレベーターが四基並んでおり、そのうち端の一つは荷物搬入用か大きかった。
そしてエレベーターのある場所から横手に入ると非常階段としてしか機能していないであろう飾り気の無い階段がある。
そんなロビーを生徒達が行き来している。

「!?」

上条は何の異常も見当たらないロビーの中で『匂い』を嗅ぎ付けた。
ある一点を見つめる。
そこはエレベーターの一基目と二基目間。
そこに、手も足もひしゃげ、ただの金属塊と成り果てたソレがあった。

「死体……?」

「うん?」

少し遅れて、ステイルもソレに気付く。

「ああ、アレが気になるのかい? 気にしなくてもいいと思うよ。…………」

ステイルが何やら忌々しげに呟いているのを上条は無視して、ソレ――鎧を着た人間に近づく。
静かにゆったりとした足取りで近づいていく。
微かに、ほんの微かに呼吸音が聞こえる。
上条はジッと鎧を見つめる。
そして、

「もう、助からないな」

静かに、鎧を着た人間の現状を告げる。

少し哀しげな色を見せ、上条はベルトからナイフを取り出す。
『神上』の柄から、刃が飛び出す。
それを静かに、頭上へと上げていく。

「      、      。」

騎士が何かを言う。
ステイルが近くまで来ていたようで、騎士の言葉に頷いた。
それを横目に確認した上条は、蒼紅い眼で騎士を見る。
その眼には、優しさがあった。

「安心して、安らかに……、逝ってくれ」

刃が残像を伴って振り下ろされる。

上条は崩れ落ちた騎士に一度だけ、たどたどく十字を切り、背を向け、後ろに立っているステイルに向き直る。
ステイルは少し驚いたような表情を浮かべていた。
ステイルは上条に尋ねる。

「どうして、君が殺したんだい?」

「あの人のために」

「そうかい」

(背負う命が、増えたな……)

上条はナイフを強く握りしめながら、現状を把握するべく疑問を口にする。

「ここの奴ら、俺達に気付いてないみたいだ」

「そういう結界なんだろうさ。さしずめ、ここはコインの表。僕たちは裏側に立っている感じかな」

「裏側に居る俺達は表の連中には見えないし聞こえない、か」

「そういうことだろうね」

上条はここを正しく戦場だと理解した。
ナイフをその手に握ったときから覚悟も決めた。
グッと、ズレ落ちかけた刀袋を肩にかけ直す。

「行くぞ」

「分かったよ。僕も、戦う理由が増えたみたいだしね」

10日ぶりに投下しました。
今回は殺人鬼としての上条さんではなく、『貴く人を[ピーーー]』をテーマに書きました。
未だに、『貴く人を[ピーーー]』の意味が分かりきっていませんが……

さて、二巻になってから筆が鈍っている土蜘蛛ですが、これからもよろしくお願いいたします。

――疲労が体を襲う。

『裏側』に居る二人は、『表側』に干渉出来ない。
そしてこのビルも、『表側』に属していた。
つまり何が言いたいのかというと、床を踏んだ衝撃が全部自らの足へと跳ね返ってきているのだ。

『硬すぎる』地面を踏んでいるため、疲労のペースは二倍にも三倍にも上がる。

「……敵も、同じ条件である事を願うね」

あまり鍛えていないのだろう。
ステイルはあまりに早く訪れた、疲労に困惑している。
そんなステイルの前を悠然と歩を進めるのは上条だ。
その顔に疲労の色は無い。

「どうした? 早く行くぞ」

上条は、ステイルの方をちらりと見ると呟くように告げた。

「はぁ、君は本当に……」

ステイルは視線を上げて、階段を淡々と上っていく上条を見て、再びため息をついた。

そんなステイルに上条は再度尋ねる。

「何だ?」

「君は疲れないのかい?」

「? ああ、俺は別に……疲れてんのか?」

「いや」

「殺しても良いんだぞ?」

「は?」

上条の台詞にステイルは間抜けな声を出す。

「どういう意味だい?」

「いや、この結界を殺せば疲れる事もないだろって話」

「……何だって?」

「いや、この結界を破壊しようって話だよ」

「できるのかい?」

「おそらくは」

上条はナイフを逆手に持ち替え、何かを探すように地面を見渡す。
ステイルはそんな上条に制止の声をかける。

「いや、塾生に見られたら厄介だ。このままで行こう」

「そうか?」

少し考えるような仕草を見せた後、上条は何事も無かったようにタンタンと階段を軽い足取りで上がっていく。

「ふう、体力が有り余ってるのか、鍛えているのか…………どっちもか」

ステイルは先ほどとは違うため息をついた。

二人は食堂に居た。
隠し部屋があるとされるところを探す。
ステイルはふと立ち止まり、壁をコツコツと叩く。

「隠し部屋か?」

「ここら辺にあるはずなんだが……」

「入れたら良いのか?」

「いや、入り口がある筈なんだ。その位置だけでも知っておきたい」

上条はふと、生徒達の方を見やる。
食堂の中は学生達らしく、騒がしい。
だが、騒がしさの内容が上条には気に食わなかった。
他人を蹴落とし、蔑むような内容で笑い合っている。

「胸くそ悪ぃ」

ボソリと呟いた途端、食堂に居た80人近い生徒全員が一斉に二人の方へと向き直る。

「なっ!?」

「ま、ずいかな」

「おい、ステイル! アイツら俺らの事見えてんぞ!」

「ああ、まずいかもね」

棒立ちの生徒の内、一人が唱いだす。
それに続くように、二人三人四人五人六七八九十…………ッ!
建物中の人間の作り出す言葉の渦が巻き起こる。
生徒の眉間辺りから青白い光球が現れると、狙いも曖昧なまま宙を飛び、上条の側に落ちた。
まるで強酸のように音を立てて薬品の煙が上がる。
それ一つなら火傷程度で済むだろうが……。

「……まじかよ」

上条とステイル、二人の視界を埋め尽くす程の何百という数の青白い光球。

「ステイル、下がってろ」

上条は手に何も持たず、徒手空拳のまま駆け出す。
理由は単純。
相手が能力者だから。
上条の使う魔術とは違い、正真正銘『こちら』の魔術を使わされている彼らは直に代償が来るだろう。
それより早く、

「たたっ斬る!」

光球を右手で撃ち落とし、袖口から左手に握り込んだナイフを生徒の体を斬る。
ナイフはまるで透過したかのように生徒の体には傷一つ付けずに役目を果たす。
――概念殺し
魔術を使わせている『何か』を殺したのだ。
右手で消しては左手で斬る。
たったこれだけの単純でありながら、想像もつかない程の労力を必要とする作業を、淡々とこなしていく。

30秒と立たないうちに、浮いている光球は数えれる程になり、床には意識を失った生徒達が横たわっていた。

「終了……じゃねぇよなぁ」

「流石は最強の盾だな、君は」

「盾は自分から攻撃しねぇっつの」

軽口を叩きながら、開け放たれたドアから出て行く。

「レプリカとは言え、『グレゴリオの聖歌隊』を作り出すとは……」

「魔術の名称なんてモノはどうだっていい。どうすりゃ止まる? 2000人と鬼ごっこなんて洒落にもならねえぞ」

「『核』を破壊すれば止まる筈だ。2000人もの人間を同時に操らなくてはいけないからね。同調の鍵になっている『核』を止めさえすれば事足りる筈だ」

長い通路を走り、ちょうど階段の近くまで辿り着いたとき、前方から洪水のように襲い来る青白い光球の群れを視認した。

「くそっ」

「ちっ」

二人はとっさに階段へと飛び込む。
上か、下か。

「僕は上に行く」

「ちっ、俺は下だ」

ステイルは上に、上条は下に向けて走り出す。
当然のように、『幻想殺し』を持っている上条へ向けて光球の群れは方向を変える。

「俺かよっ」

上条は踊り場まで走り、光球の群れへと向き直る。
それらは鉄砲水のような勢いで上条に迫る。
だが、

「遅いっ!!」

袖口からナイフが両手に三本ずつ現れる。
光球を直死する。
ナイフを投擲すると同時に、上条は文字通り弾けた。
手に握り込まれた『神上』の速さはまさに神速。
ならば、上条自身の速さは如何ほどか。
舞うような動きで光球の間を通り抜けていく。
まるで消しゴムで消されていくかのように、上条の通り道から光球が見る見るうちに消えていく。

「ん?」

上条は残り数十個となった光球の一つをナイフの一振りで消滅させ、異変に気付いた。
光球は空中で一時停止をされたかのようにピタリと止まった。

上条は気配のした階段下を覗き込む。
階段の下には通路へ続く出入り口があり、夕暮れの日差しが差し込んでいた。
そこに、

「『吸血殺し』……、姫神秋沙」

彼女が立っていた。

今日はここまで
明日から、期末考査
続きがまた、遅くなりそうです、、、

ではでは

ステイルは炎剣が消えていくのを眺めていた。
炎剣が果たした役割は、『核』の破壊である。
『核』が何か、確認する事も無くとりあえず破壊した結果、『グレゴリオの聖歌隊』は止まったらしい。

能力者が魔術を使った代償だろう。
どこからか流れてきた鉄の匂いに顔をしかめる。

通路の向こうからあからさまな足音がステイルの鼓膜をかすかに揺らした。
絶対の自信を感じさせる足音であった。

足音が言う。

「自然、『偽・聖歌隊』を使えば、『核』までおびき出せるとは思っていた」

足音はいまだ近づく。

「当然、侵入者は二人だったはずだが……。もう一人はどうした、現然、貴様の使い魔は『偽・聖歌隊』に呑まれたか」

「まさか。あれは想像以上しぶといよ」

「それに、アレを使い魔だなんて……、寒気がする」

ステイルは『殺人鬼』を思い出す。
あれほどの化け物を使役するなど……、冗談じゃない。

ステイルは正面を見据える。
その先には、一人の男。

2mに届く細身の体は高価な純白のスーツに包まれている。
歳は十八、性別は男、彼の名前はアウレオルス。
髪の色は緑。ステイルの赤が『火』をなら、こちらは『土』である。

煌びやかすぎる姿は、男の中性的な美貌によって様になっていた。

「戦闘向きでないお前が僕を招くとはどういうつもりなんだ? お前と僕じゃ足止めにもならない、分かってるだろう?」

「それともなんだい、」

ステイルはニヤリと笑って続ける。

「今日は何十の魔道具を隠し持っているんだい? 骨董屋」

その言葉はアウレオルスにとってタブーに近い言葉であった。
錬金術師という戦闘に不向きなアウレオルスは、何十という魔道具に頼り、身を包まなければ、ステイルと同じステージに立つ事は出来ないのだ。

「全然。貴様、今の私が魔道具を持たぬ事にも気づかんのか」

「ま、そうだろうね」

このビルそのものが一つの巨大な魔道具の塊のようなものなのだ。
だが、それを『殺せる』者が侵入者とはアウレオルスも気づいていない。

「それで、お前に何が出来るんだ?」

「貴様」

「あいにく僕はお前に興味はない、どけよ」

「厳然、貴様――!」

「リメンマグナ!」

「悪いね、偽物に興味は無いんだ」

直後、炎剣が振るわれた。

「お前が、姫神秋沙……か?」

「……」

「吸血殺し、なのか?」

少女は静かに返答する。

「魔法使い」

「はぁ、証拠は?」

「魔法のステッキ」

取り出したのは警棒。スタンガン内蔵式。

「おい」

上条は髪の毛を掻きむしりながらチラリと少女を見る。
間違いない。姫神秋沙だ。

「目的達成」

「?」

「帰るぞ」

「?」

差し出した右手を不思議そうに見ている。

「外に出ようぜ、こんなとこからよ。そのためにここまで来たんだっつの」

「どう、して?」

「は? 理由が必要なのかよ?」

姫神の顔が朱に染まる。
夕焼けのせいだろうか。

「私は、」

突如、負の感情を押し込めたような吐息が響いた。

「――!」

ナイフを逆手に構え、非常階段へ向き直る。
そこから、ずるりと引きずるような音と共に何かが歩いてきた。

「な、んだ……、お前は、」

白いスーツを着た、緑の髪の青年。
左腕と左脚は切断され、歪な金色の棒が義手と義足の役割をしている。
そして、右手と左の義手には左右に三人ずつ、血まみれの少年少女を引きずっていた。

「そいつらを、どうするつもりだ」

「当然、材料に過ぎん」

姫神を庇うように、前へ出る。
すると、

「かわいそう」

唐突に、姫神が呟いた。

「姫神?」

「気づかなければ、アウレオルス=イザードでいれたのに」

「ぐっ……、貴様ァ!」

金の鏃が突如結界を作るかのように高速で飛び交う。
少年少女を貫きながら。

「なっ!?」

六人は鏃に貫かれた瞬間、ドロドロに溶けた金の液体へと姿を変える。
水銀めいた金属の煌めきを誇り、空気を焼く蒸気を発す。

「お前っ」

上条にとって、今この瞬間で許せないのは少年達が簡単に殺された事。
少年達を簡単に殺した事。
金の鏃は眼中に無い。

「当然、――必殺!」

姫神がヨタヨタと下がっていく。
それは恐怖からではない、射程から離れる動きだった。

「下がっていろ」

上条は下がらない。
静かに足を前へと運ぶ。
青年を直死する。

「!?」

上条の動きが一瞬止まる。
少年少女に気を取られすぎて、分からなかったが。
青年の『死』は人間のソレとは異なっていた。

「お前は……、」

凄まじい勢いを保って、黄金の鏃が飛んでくる。
右の手を側面に触れるように振るう。
正面から受けると手が傷つく可能性があるからだ。
青年の手元に戻った鏃は風化するように消えていく。

「……悄然。な、んだ」

「当然、何故『変換』されん」

「あ?」

「ふ、ふはははははははは! 体を開け! 解明させよ!」

金の鏃が上条の眉間に狙いを定め、飛来する。
一度ではない、機関銃のように幾多の鏃が飛来する。
だが遅い。
円を描くように上条は残像を伴い駆ける。
鏃は一つとして上条を捉えることが出来ない。

鏃の一つが上条を追う事をやめ、通り過ぎていく。
その先にいるのは姫神秋沙。

「間に合えっ」

踏み込んだ足を軸に方向を変える。
その先には残像を貫いていく鏃がある。
大きく両足で跳躍する。
鏃の間をかいくぐるように上条の体が通り過ぎていく。
そのままの勢いで姫神を抱きしめ、射程外へと逃れる。
停止したその姿に、残像が集束していく。

「てめぇは、殺す! 境界の外側の存在なら……いいよなぁ」

「ひっ……」

一瞬で懐へと入り、ナイフを振るう。
それを躱したのは、生存への執着だろうか。

「悄然、失策……!」

錬金術師は転げるように走っていった。

「避けられん程の黄金があればいい。手持ちは1982人前。必然、これで倒せんはずが無い」

アウレオルスの声はどこか狂っていた。
嗤う。
嗤い声が長い通路に響く。

「はははは、破壊だ破壊! 破壊の破壊を破壊と破壊!!」

「ふざけんのも大概にしろ」

「ひっ」

声が聞こえた。
背後から近づいてくる足音がした。
カツン、カツンと。

アウレオルスはギチギチと固まった動きで振り返る。
その先に、猛禽のような目で睨みつけてくる、鬼がいた。

「う、ううああああああああああああ!!!」

恐怖のあまり、絶叫する。
瞬間練金『リメンマグナ』放つ。
狙いも定めず、恐怖の向くままに。
それは、上条を後押しするには十分だった。

金の鏃が放たれた頃には、10mの距離を0にしていた。
アウレオルスの目の前に鋼の煌めきが迫る。

「待、」

右腕と左腕を流れるような動作で断ち斬る。
両腕を断ち斬ったナイフは翻り、容赦なく両足を断つ。
どさり、と落ちた胴体に馬乗りになり、顔の前でナイフを止める。

「ひっ」

上条は無言だ。
ただ蒼紅い眼がアウレオルスを射抜く。

「ぃ、ぎ、…………生ぎ、だい」

今まさに、顔へと突き立てられようとしていたナイフが目前で止まる。
アウレオルスの両目からは透明の雫が溢れていた。

「お前は、『人間』なのか」

上条はポツリと呟く。

カツンと足音が聞こえる。
上条とアウレオルスが目を向けた先には、

「……ステイル」

「そうか……。悄然。私を殺し足りんか。私は、自然と果て逝くぞ」

「知っているさ」

アウレオルスは、自らが人でない事を知った。
上条のナイフによって供給用のケーブルを断ち切られたときの脱力感。
そこから気づいてしまった。

「なら、何故だ。このまま果て逝く事さえ許せぬか?」

「お前の方こそ、このまま消えていく事に耐えれるのか?」

アウレオルスはその言葉に、確かに笑った。
上条はそっと離れる。

――その手で引導を渡してやると言うのか、お前は
  今のままで還してやろうと

「天使か悪魔か分からん男だな」

ステイルの修道服の中からカードが桜のように舞う。

「Fortis 931」

アウレオルスは静かに灰となり、消え去った。

――、その頃。
白いシスターがとある男子寮から飛び出していった。


「ふふ、久しいな禁書目録。変わらぬ君の姿が美しい」

「金色の、アルス=マグナ?」

ステイルは、すぐにどこかへと行ってしまった。
仕方なしに上条は姫神の元へと戻っていった。

目の前の少女はここでしか出来ない目的のためにいると言う。
アウレオルス=イザードがいなければ出来ない事を。
目的は、『歩く教会』。
理由は、もうこれ以上『彼ら』を殺したく無いから。

「なにが、同族だ」

「え?」

一瞬でも、同族なんて言葉がよぎった自分が許せない。

「いいから、出るぞ」

「ダメ。アウレオルスは言った。助けたい人がいるって」
「一人では出来ないと。彼らの協力が必要だって言った。だから私は約束した」
「私はアウレオルスを助けるために。殺すためじゃなくて助けるために」
「初めてこの力を使うの」

「なおさらダメだな。これ以上そいつの好きにさせたら取り返しがつかない」
「ここの塾生はどうなる。何人死んだ?」
「別にいいぜ、お前が残りたいなら俺は止めない」
「そのかわりふざけた野郎もぶっ飛ばす」

「間然。一体いかなる思考にて私の思考に異を唱えるか」

30m先に、瞬きをする間に青年が現れた。

「お前っ!?」

流石の上条もうろたえる。
その間に、

「寛然。仔細ない、すぐにそちらへ向かおう」

距離をつめていた。

「姫神の血は私にとっても重要なモノだ。回収しにきた次第」

距離2m。
上条にとっては無い距離だ。
ナイフを眼前に構え腰を落とす。

「これ以上、貴様はここに来るな」

駆けた。
七夜の歩法も使った。なのに、距離がつまらない。
否、上条が動いていない。

「何っ!?」

「必然」

「あ?」

「私の何が取り返しがつかないと語るか?」

「全部だくそったれ!」

ナイフを足下へと突き刺す。
上条の体は、とたんに爆発的なエネルギーを得る。
そのエネルギーは上条を弾かせる。
残像を伴う程のスピードでアウレオルスの後方へと現れる。

「殺す」

上条が静かに告げる。
が、

「動くな」

再び、上条が止まる。
今度は距離ではない。空中で上条の姿が停止する。

「くっ」

ガラスの割れるような音と共に体が自由を取り戻す。
バク転を繰り返し、距離をとる。

「後がつかえている。懸念すべきは侵入者より、禁書目録の扱いか」

姫神がアウレオルスに何かを問いかける。
それを無視し、彼は鍼を首筋へと突き立てた。

「少年。ここで起きた事は全て忘れろ」

――視界が暗転した。

~第四話~

「あん?」

辺りは夜になっていた。
いつの間にかを思い出そうとしても思い出せない。

「どうなってる?」

考え込むように、両手で頭を抱える。
途端、ガラスの割れるような音が響く。

「くそっ、やられたっ!」

ステイル、姫神、アウレオルス。
辺りを見回しても、どの姿も無い。
当然、

「……、インデックス」

「第一の御使い、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!」

声が唐突に聞こえた。
上条が見たのは、巨大な紅蓮の槍がビルの屋上から地下までを貫いた瞬間。

「て、……」

「てめぇ! ざけんなよっ!!」

先ほど叫んだ全身鎧の男に掴みかかる。

「何をやったか、分かってんのか!」

全身鎧は答えない。
ただ一点を見ているようだった。
振り返った先では、落ちたはずの槍が天へと帰り、ビルが再生していく。

「な、」

上条は三沢塾内へと走った。
そこには、

「死んだはずじゃ」

黄金と化したはずの少年少女が笑い合っている。
あるのは『日常』。

「君がいるという事はやはりここは日本か」

聞き慣れた声。
ステイルがそこにいた。
ぶつぶつと呟いているところを見ると、先ほどの上条と同じように記憶が無いらしい。

「おい、ステイル」

「何だい?」

「コッチこい」

ちょいちょいと手招きする。
素直にしたがって歩いてくるステイルに

「呼んでおきながら、ほったらかしにすんじゃねぇ!」

右の拳が突き刺さる。

――ガラスの割れるような音が響いた。

あー、ダメだ。うん。
アウレオルス編やる気なさすぎで泣けてくる。
はははは、は
笑えねぇ
それと言って、特筆する点が無いんですよ。この話は。

愚痴ばっかで終了となってしまいましたが、明日終わらせます。ではでは

「お姉様?」

「ん?」

「まぁお姉様、まぁまぁお姉様」

気違いか?
上条はお姉様呼びへのツッコミより先にそう思った。
横では美琴が頭を抱えている。
とりあえず手に持っている黒豆サイダーを一口。
何とも言えない味だった。製品として、どうだろう?

「このための口実だったんですのね!」

横では二人の間で会話が進んでいる。
一方的ではあるが。
飲み終えた黒豆サイダーを脇によけ、ヤシの実サイダーを開ける。
プシュッと言う音と一緒に良い香りがする。
これは中々にいけるかもしれないと期待しつつ一口含む。

「お、うま……」

上条の隣で紫電が弾ける。

「こえぇっ!? なにすんの! 上条さんはヤシの実サイダーを味わってたのに!」

慌てながらもヤシの実サイダーを飲む上条にツインテールの少女が満面の笑みで近づいてくる。
上条でも目を見張る程の恐るべき速度で。
年齢は見た目小6だろうか。
だが、常盤台の制服を着ているから中1だろうと上条は予想する。
そんなことを考えているとガシリとヤシの実サイダーを持っている両手を包まれる。

「へ?」

「初めまして殿方さん。わたくし、お姉様の『露払い』をしている白井黒子と言いますの」

「ども」

小さく前に首を傾ける上条を見て、白井黒子はつまらなそうにする。

「ま、浮気の心配はなさそうですわね」

「はい?」

「あー、んー、たー、はー。このヘンテコが私の彼氏に見えんのかぁ!」

上条を地味に沈める言葉と共に紫電が弾け、青白い槍とも言うべき電撃が白井黒子に向けて殺到する。
が、寸前に白井黒子は上条の手を離し前ぶれなく虚空へと消える。

「テレポーター、か」

「あら、分かりましたの」

馬鹿にしたかのような彼女の言葉に上条は苦笑する。

「見せられたら分かるに決まってるだろ」

「では、失礼しますの」

少女は再び虚空へ消えた。
その様子を見ながらヤシの実サイダーを傾けた上条は唐突に後ろを振り向く。

そこには御坂美琴がいた。
だが、美琴は横にいる。
なら、

「おまえは、誰だ?」

シャンパンゴールドの髪の少女と美琴との違いは大きく二つだろう。
額に乗っている暗視ゴーグルらしきものと焦点の定まらない曖昧な瞳。
美琴を追っていたその瞳が上条を向く。

「ミサカはミサカです、とミサカは答えます」

「御坂ミサカ?」

「ミサカはミサカです、とミサカはオバカなあなたに答えます」

「オバカじゃねぇし、……馬鹿だけど。いきなり失礼だな」

「それは失礼しました、とミサカは謝罪します」

ペコリと頭を下げるミサカに上条は眉をひそめる。
この少女はあの日見た『死の気配』の少年と同様に上条の興味を引く物だった。
理由は『生の気配』の希薄さ。
今日か明日にでも死んでしまいそうな気配だ。

「おまえ……「アンタ! 一体なんでこんな所でブラブラしてんのよ!」

上条が尋ねようとするのを遮って、美琴がミサカに怒声を上げた。

「何かと問われれば研修中です、とミサカは簡潔に答えます」

美琴とは正反対にどこまでも落ち着き払った声で、と言うよりは感情の無い声で答えるミサカ。
上条は余計に興味が引かれているのを自覚した。
『死の気配』をまとった少年と『生の気配』が希薄すぎる少女。
無関係とは上条には思えなかった。
そう、この少女を知ればあの少年に会えるような気がする。

「なぁ、研修ってどこですんの?」

「何故そのようなことを聞くのですか、とミサカは胡散臭い男だなと思いながら尋ねます」

「……いや、何でもない」

「ちょっと来なさい」

上条から離すように美琴がミサカを連れいていく。

「……、行くか」

二人の背中を見送っていた上条は缶ジュースを抱えて立ち上がり、気づく。

「家に置いてきた方が良いよな……これ」

取りあえず、缶ジュースを抱えて自身の住む学生寮へと足を向ける。
ふと、前方に転がったテニスボールが見えた。
危険だ、と上条は判断する。
こういう時には、何かしらの要素によって転ばせにかかってくる。
経験で知っている。
上条は慎重に一歩を踏み出す。
と、狙ったように風が吹き、上条の足の下へとボールを滑り込ませる。

「ちっ」

舌打ちと共に、即座に手をつき体を跳ね上げる。
空中で横に二、三回転した後に着地する。

「くそっ、あぶねぇ」

躱したのはいいが、持っていた缶ジュースをぶちまけた。

「マジかよ、くそ」

拾おうと屈むと、拍手が聞こえた。

「ん?」

「おおー、凄いです素晴らしいです、とミサカは惜しみない賞賛の言葉と共に拍手します」

「おまえ、」

曖昧な瞳を輝かせたミサカがそこに居た。が、上条には分かる。

「さっき、お前の姉貴と一緒に姉だか妹だかが向こうに行ったぞ」

「おや? 分かるのですか、とミサカは驚愕します」

「いや、驚いてねぇだろ」

上条はそこで、思いついた。

「お前、何人姉妹?」

「いっぱいです、とミサカは答えます」

「ほぉ~、じゃあこれ」

拾った缶ジュースを差し出す。

「持ってってくれ。元は、お前の姉貴が強奪……盗ってきたもんだ」

「取ってくる、じゃない気がしつつも、ミサカは受け取ります」

「おう、じゃあなっ!」

上条は、厄介な缶ジュースを渡せて、少年も追えることを嬉しく思い、何も考えずに、近くのビルへと昇っていった。

「おおー、凄いですね、とミサカは感嘆します」

戦闘シーンに早く行きたいです。

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