沙織「バレンタイン!」麻子「だったな」(102)

沙織「今年も結局誰にも渡せなかったよ…」

麻子「何度目だ」

沙織「せっかく本命チョコつくったのに…」

麻子「相手もいないのになぜ本命チョコをつくる…」

沙織「いやー運命の出会いがあるかもしれないじゃん?」

沙織「歩いてたら偶然ぶつかってさ」

『あっ、これ落としましたよ』

『…いいです、貰ってください!』ダッ

『えっ?ち、ちょっと!』

『…綺麗な人だったな』

沙織「とかさ!」

麻子「…く」

麻子「…ククク…あーははっは!」

沙織「ひどい!笑わないでよ麻子ー!」

麻子「い、いや…すまん…」

麻子「最高のギャグだ沙織」

沙織「もー…」

麻子「しかし今年も多く貰ったな沙織」

沙織「えへへー友チョコってやつ?」

沙織「うれしいよねこういうの」

麻子「本命があるかもな」

沙織「まっさかー」

沙織「ウチは女子高だよ?」

麻子「ないとも限らないぞ」

麻子「あったらどうする?」

沙織「うーんと…もしあったら…」

沙織「困る」

麻子「…だよな」

沙織「あっ、もうこんな時間だ」

沙織「バイバイ、麻子」

麻子「バイバイ」

沙織「ただいまー」ガラッ

沙織「って誰もいないんだけどね」

沙織「あーあ、この私の特製本命チョコどうしようかな」

沙織(とりあえず冷蔵庫に入れとこ…)

沙織「さてと…うわホントにチョコ一杯だ…」

沙織「友情を感じられて嬉しいけど…どうしよこれ」

沙織「一気に食べると太るし…飽るし…」

沙織(なん日か分けて食べよう…)

沙織「これらも冷蔵庫にって…」

沙織「あれ?こんなチョコ貰ったっけ?」

沙織「これはみぽりんからの…」

沙織「これは華…」

沙織「これはゆかりんから…」

沙織「これは確か麻子からの…」

沙織「これは一年生の娘たちで…クラス仲間からのはこれ…」

沙織(あれっ?覚えがないなぁこのチョコ)

沙織(なんかちょっと豪華で…本命な感じ?)

沙織「ま、まさか私の隠れファンの男の子が密かにカバンに入れたとか!?」

沙織「やだもー!私ってばモテモテじゃん!」

沙織(どこの人かなー♪)

沙織(他校の人?いつの間に…)

沙織「よしっ!開けてみよう!」

パカッ

沙織「おおっ、まさに高級品って感じ!」

沙織(ラブレター入ってないかな…?)

沙織「…ええっ!?うそ!?」

沙織(ほ…本当に入ってるよ…)

沙織「き…緊張する~…」

沙織「よ…読んでみよ…」パラッ

沙織「………」

沙織「…………」

沙織「……………」

沙織「ら、ラブレターだよこれー//////!!!」

沙織「きゃー…////」

沙織「いやぁー…/////」

沙織(どうしよドキドキがとまんない…)

沙織(な、なにすればいいかわかんないよー!!)

沙織「あ…明日みんなに相談しよう…」

沙織「そうしよう…」

翌朝。

沙織「おはよ゛ー…みぽりん…」

麻子「zzz…」

みほ「お、おはよう武部さん…」

みほ「どうしたの?げ、元気ないね…」

沙織「昨日眠れなくてさ…」

沙織「後でみんなに相談したいことがあるの…」

沙織「戦車道の練習終わった後に話すね…」

みほ「う、うん」

みほ(クマできてる…)

沙織「お…重い…ちょっとは自分で立ってよ麻子ー」

麻子「zzz…」

みほ「ええっ!!?」

華「沙織さんが!!?」

優花里「ラブレターですか!!?」

沙織「うん…」

沙織「って三人ともそんなに驚かなくても…」

みほ「あっ…ごめん」

優花里「す、すみません武部殿…」

華「自分で昔書いたのを見つけたとかですか?」

沙織「華ー…」

華「冗談ですよ」

沙織「だから昨日ドキドキして一晩中眠れなくてさ…」

沙織「……でも」

沙織「でもでも!」

沙織「私にもついにモテ期が来たってやつかな!!」

みほ「武部さん!?」

優花里「武部殿が急に元気になりました!」

沙織「よっしゃー!テンション上がってきたよ!!」

華「モテ期が来たって…」

華(いままではモテてないって自覚があったんですね…)

沙織「で、これがそのラブレター」

みほ「ええと…」

優花里「これは…」

優花里「まごうことなき恋文です!」

優花里「武部殿への愛が書かれていますよ!」

みほ「…////」

沙織「やっぱりは、恥ずかしい…/////」

華「あら?でもこの手紙」

麻子「差出人の名が書かれてないな」

沙織「よしっ!この本命チョコをその人に渡しにって…」

沙織「え…?」

沙織「あれ…名前書かれてないの…?」

沙織「ホントだ…」

華「いままで気づかなかったんですか?」

華「一番大事なことですよ?」

沙織「いやーあはは…舞い上がりすぎちゃって…」

沙織「いま初めて気づいたよ…」

優花里「これでは返事ができませんね…」

みほ「武部さん、その手紙が入ってたチョコはいつ貰ったの?」

みほ「そのときに顔を見たはずじゃ…」

沙織「それがね、覚えがないんだー…」

沙織「なんかいつの間にかみんなのチョコに混じってた感じでさ」

華「沙織さん…もしかして…」

華「自作自演で自分にそのチョコを…」

沙織「するか!いくらなんでも空しすぎるよ!!」

優花里「手紙を書いてる時、うっかり名前を書き忘れたのでしょうかね?」

沙織「緊張してたのかな?おちゃめな人////」

みほ「多分その人も、名前を書き忘れたことに気づくんじゃないかな」

優花里「きっとまた武部殿にアプローチを仕掛けるはずです!」

華「そのときがチャンスですわ」

沙織「なるほど…その通りだね!」

沙織「よし、私待つよ!」

沙織「いつまでも待つよ!」

沙織「そろそろ遅くなってきたね」

沙織「みんな話に付き合ってくれてありがとう!」

沙織「じゃあね!」

休日。

沙織「フンフーン♪」

麻子「嬉しそうだな、沙織」

沙織「モチロン!」

沙織「はあ…楽しみだな~」

沙織「いつ逢えるんだろうな~」

沙織「この本命チョコもつくった甲斐があったよ!」

麻子「…意地悪なこと言っていいか」

沙織「なに?」

麻子「気づかないうちにチョコが入ってたと言ったな」

沙織「うん、そだよ?」

麻子「私たちは登校して帰宅する毎日だ」

麻子「そんな私たちのカバンが無防備なのは、学校にいるときぐらいしかないんじゃないのか?」

沙織「ど…どういうこと麻子?」

麻子「私たちの通う高校は大洗女子学園」

麻子「つまり…女子からのチョコじゃないのか、それ」

沙織「…」

沙織「私が…カバンぶら下げて下校してるときにこっそりと入れたとか…?」

麻子「そのくらいの距離に男が近づいたなら絶対意識するだろ、お前」

沙織「…」

沙織「…ち」

沙織「違うもん!」

沙織「絶対に違うもん!」

沙織「私って毎日隙だらけだし!」

沙織「チョコ入れるくらい簡単だよ!」

沙織「いつか渡してくれた運命の人がまた私のところにくるはずだもん!!」

麻子「…そうか」

麻子「その運命の人が女じゃなければいいな」

麻子「まあ、気長に待つといい」

沙織「麻子のバカ!」

沙織(来るもん…来てくれるよね…?)

沙織(女の子だったら…いやいやそれはない!)

沙織(ないもん!)

一日目。

沙織「よし!戦車道終わり!」

沙織「これから下校!」

沙織「逢いに来てくれるかな~楽しみだな~」

優花里「武部殿幸せそうですね~」

みほ「うん、早く手紙の人が会いに来てくれるといいね!」

華「どんな方でしょうか、わたくし興味があります」

沙織「ふふん、みんなにも紹介してあげるからね!」

沙織「バイバイ!」

麻子「どうせ来ないと思うし、もしくは来てもおん…」

沙織「うっさい!」

沙織(歩こう歩こう~!)

沙織(ゆっくりゆっくりとね!)

テクテクテクテク

沙織(忘れずにチョコ渡さないとね…)

沙織(オイシイって言ってくれるかな~)

テクテクテクテク

沙織(学校からも離れてきたし)

沙織(そろそろ逢いにきてくれてもいいんだよー)

テクテクテクテク

沙織(シャイなのかな?)

沙織(そういうのも可愛いけど、おまり女の子を待たせちゃダメだよ?)

テクテクテクテク

沙織(おかしい…)

沙織(来ない…)

テクテクテクテク

沙織「あっ…」

沙織「ついちゃった…」

沙織「…」

沙織「ま、まあまだ一日目だしね!」

沙織「名前のこと気づかなくてもしょうがないよね!」

沙織「明日があるさ!」

二日目。

沙織「ふふふ…今日こそは!」

杏「なに?武部ちゃんなんかあったの?」

沙織「会長!こういうことがあってですね…」カクカクシカジカ

杏「へえーよかったじゃん!」

杏「ファイト~」

沙織「ありがとうごさいます!」

桃「…ふん、下らん」

桃「腑抜けるなよ武部…って」

杏「もう行っちゃったね、かわしまー」

麻子「…懲りないやつだな」

沙織(めぐり~あえたね~♪)

沙織(まっていた~うんめいのひとに~♪)

テクテクテクテク

沙織(いつでも準備オッケーですよ~)

沙織(カモン!私の運命の人!)

テクテクテクテク

沙織(学校からも離れてきたよー)

沙織(ウチの生徒は周りにいないよー)

テクテクテクテク

沙織(実際に会ったらなんて言おうかな?)

沙織(考えただけで緊張しちゃう~)

テクテクテクテク

テクテクテクテク

テクテクテクテク

テクテクテクテク

テクテクテクテク

沙織「…ついちゃった」

沙織「なにやってるんだろ私…」

沙織「ま、まだ二日だしね…」

沙織「これから…だよね?」

三日目。

沙織「今日こそ…今日こそ…」

宇津木「先輩どうしたんですか?」

沙織「えへへ~こういうことがさ~」カクカクシカジカ






沙織「今日もダメ…か…」

四日目。

沙織「…うう…」

五日目。

沙織「…なんで」

六日目。

沙織「…私のこと、どうでもよくなったのかな…」

七日目。

沙織「……」

沙織「……」ドヨーン

みほ「た、武部さん元気だして!」

優花里「そ、そうですよ!」

華「今日こそ来るはずですわ!」

沙織「そう…かな」

沙織「そうかもね…」

沙織「いや…そんなことないよ…」

沙織「どうせいたずらだったんだ…」

沙織「バイバイみんな…」

みほ「武部さん…」

優花里「武部殿…」

華「沙織さん…」

沙織「……」

沙織(今日も無事何事もなく家に到着と…)

沙織「バカみたい…」

沙織(渡すつもりだったこのチョコ…)

沙織「こんな…」

沙織「こんなものなんて…」

沙織「捨てちゃえ…」

麻子「待て」

沙織「!?」

沙織「ま、麻子!?」

沙織「ど、どうしてここにいるの?」

麻子「どうしてだろうな」

沙織「どうしてって…私が聞きたいんだけど…」

沙織「う…ぐすっ…来なかった…」

沙織「今日も来なかったよ…」

麻子「…いつか気づくと思ったんだが」

麻子「…これ以上は可哀想だな」

沙織「なに言ってるのさ…意味わかんないよぉ…」

麻子「…そのチョコ捨てるのか?」

沙織「…うん」

沙織「どうせもう来ないし…」

沙織「もういらない…」

麻子「じゃあその本命チョコ、私にくれ」

沙織「え?」

麻子「いや…くれというよりはお返ししてくれだな」

沙織「お返しって…」

沙織「麻子とはもう友チョコ交換しあったよ…」

麻子「…」

麻子「ばーか」

沙織「な、なんで麻子にバカって言われなくちゃいけないの!!」

麻子「沙織はこういう時どうする?」

麻子「沙織には好きな人がいました」

麻子「バレンタインデー…好意を伝えるチャンス」

麻子「ですが結局恥ずかしくて義理しか渡せませんでした」

麻子「せっかく本命のチョコをもってきたのに」

麻子「後悔して後悔した後…沙織はどうする?」

沙織「どう…って」

沙織「そのときになってみないと…わからない、かな」

沙織「なんでいきなりそんなこと聞くの麻子…?」

麻子「どうしてだろうな」

沙織「もういい」

麻子「チョコは貰うぞ」

沙織「あっ、こら!」

麻子「…うん」モグモグ

麻子「オイシイな」

沙織「もー…」

沙織「…でも、アリガト」

沙織「なんか気が楽になった」

麻子「よかったな」

麻子「私に感謝しろよ」

沙織「調子にのるな!」

麻子「冗談だ」

麻子「…ごめんな、沙織」

麻子「ずっと会いに来なくて」

麻子「私も恥ずかしかったんだ」

沙織「えっ麻子?」

沙織「会いに…?」

沙織「恥ずかしいって…?」

麻子「…さっきの質問だけどな」

麻子「私だったらこっそり本命チョコをその人のカバンに入れておく」

麻子「バイバイ、沙織」

沙織「え…ま、待ってよ麻子!」

沙織「麻子…」

沙織「そういえば手紙…」

沙織(浮かれてて気づかなかった…)

沙織(名前なんて…必要なかったんだ)

沙織「これ…麻子の字だ」
――――――――――――――――――――――――…

沙織「ウチは女子高だよ?」

麻子「ないとも限らないぞ」

麻子「あったらどうする?」

沙織「うーんと…もしあったら…」

沙織「困る」

麻子「…だよな」

…――――――――――――――――――――――――
沙織「麻子……」

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

沙織「よし!今日も楽しく戦車道!」

みほ「た、武部さん?」

沙織「いやー心配かけてごめんねみぽりん!」

沙織「結局アレ、イタズラだったんだ」

沙織「だけどいつまでもくよくよしてられないしね!」

沙織「乙女は精神的に強くないとね!」

沙織「ねっ、麻子!」

麻子「あ、ああ…」

優花里「おおっ!さすがです武部殿!」

華「なんかいつも以上に素敵ですわ沙織さん!」

みほ「そうだったんだ…」

みほ「うん、武部さんが元気になってくれてよかった!」

麻子「………」

麻子(沙織…結局気づかなかったのか)

麻子(いや…気づいた上でいつものようにふるまって…)

麻子(私ともいままでどおりに…)

麻子(…どっちにしろ沙織と私はこんな関係が一番…だよな)

沙織「どうしたの、麻子?」

麻子「いや…なんでもない」

沙織「よろしく頼むよウチのエース!」

麻子「ああ…」

沙織「お疲れみんなー!」

沙織「バイバイ、明日も頑張ろうね!」

みほ「さようなら武部さん」

優花里「はい!頑張りましょう武部殿!」

華「ふふっ、すっかり元通りですね沙織さん」

麻子「……」

優花里「あれ?どうかしましたか冷泉殿?」

麻子「なんでもない」

麻子「じゃあな、明日もよろしくたのむ」

麻子(沙織…)

麻子(これで…これでよかったんだよな)

麻子(私と沙織はこれまでどおり…)

麻子(それで…いいんだ)

麻子「ただいま…」

麻子「って誰もいないんだが」

麻子「さて…晩飯の用意でも」

麻子「あれ?私の鞄にこんなものあったか…?」

麻子「…」

・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥
沙織「あっ、麻子」

沙織「こんなとこで会うなんて偶然だね」

麻子「偶然だな」

沙織「なんか手紙でもよんだ?」

麻子「ああ」

麻子「名前は書かれてなかったけど差出人はすぐわかった」

沙織「…ふふ」クスクス

麻子「…くくっ」クスクス

沙織「あはは、美味しかった?」

麻子「前より美味しかった」

沙織「嬉しいな」

麻子「私も…嬉しい」

沙織「前の質問への答えだけどね…」

沙織・麻子「「私だったらこっそり本命チョコをその人のカバンに入れておく」」

おしまい



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   ノ:ノ:ハ//- ノ:::|      |:::l:::>//-ノ:::|
  (::(::(⊂ヽ∀ノ⊃:)       |:::|⊂ヽ∀ノ⊃|

>>96
AAはってくれてありがとう、書きながら癒されてたよ

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