【ガルパン】沙織「華のアホ毛が壁に刺さって抜けなくなった」 (25)

沙織「みぽりん、おはよっ」

麻子「おはよう、西住さん」

みほ「あ、沙織さん、麻子さん。おはよう」

沙織「はぁー、やっぱり月曜のこの時間はいつも以上に眠たいなぁ…」

麻子「また夜更かしして結婚情報誌を読みふけっていたのか」

沙織「ちょ、そんなんじゃないってば!」

みほ「…あれ?」

沙織「みぽりん?」

みほ「あそこで壁に寄りかかってるの、華さん?」

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華「」


沙織「…ほんとだ。どうしたんだろ、あんなところで」

みほ「華さーん」

華「あら、みなさん…おはようございます」

麻子「こんなところで、どうかしたのか?」

沙織「具合悪いの?先生呼んでこよっか?」

華「いえ、そういうわけではないんですが…」

みほ「大丈夫? 肩貸そうか?」

華「あ、お気遣いなく…」

沙織「じゃあ行こっ」グイッ

華「あ、引っ張らな…あたたたたた!」グイグイ

沙織「わっ、ご、ごめんね」

沙織「あれ?何か引っかかってるの?」

麻子「…これは…」

みほ「麻子さん?」

麻子「西住さん、これを」

みほ「…あっ…これ…」

華「うぅ…麻子さん、あまりじろじろ見ないでください…」

麻子「あ、すまない」

沙織「みぽりん? 麻子? どうかした?」

麻子「沙織、これを見てみろ」

沙織「…ん? これって…どれ?」

麻子「これだ。この部分」

沙織「これがどうしたの?」

麻子「五十鈴さんのアホ毛が、壁に突き刺さって抜けなくなってる」

沙織「」

沙織「」

沙織「」

沙織「………は?」

みほ「…」ツンツン

華「どうですか? みほさん?」

みほ「うーん…完全に刺さっちゃってるなあ…」

沙織「み、みっ、みぽっ、みぽりん?」

みほ「?」

沙織「あの、ちょっ…え? なんで普通にしてるの? え? なんで?」

みほ「なんでって?」

沙織「あ、なんでもなぁい…」

麻子「しかし、なぜこんなことに?」

華「実は、そこで財布を落としてしまって…拾おうとしたときに体勢を崩してしまったんですが」

華「そのまま倒れるように壁に…」

麻子「なるほど…」

沙織「なるほど」

沙織「じゃないよっ!! なんで!? なんで髪の毛が壁に刺さるの!?」

華「何故と言われても…」

麻子「アホ毛が壁に刺さっているだけだろう」

沙織「いや、それがおかしいでしょ!? まともなのは私だけなの!?」

華「…まぁ、私も初めて刺さったときは驚きました」

沙織「え? 前科あるの?」

華「実は…」

みほ「その時はどんな感じだったの?」

華「…その…実は、新三郎に刺してしまって」

沙織「えっ!? 人身!?」

華「その時も、同じように転びそうになって、新三郎に支えてもらったんですが…」

華「人力車で家まで送ってもらった後に…」


~ここから回想~


新三郎『お嬢、到着しましたよ』

華『ありがとうございます』

スタッ

グラッ

華『あっ!』

新三郎『ああ! お嬢!!』ガバッ


グサッ


華『あ、ありがとうございます、新三郎…?』

新三郎『あっ…』ドロォ

新三郎『…』

新三郎『な……』

新三郎『なんじゃこりゃぁああ!!』


~ここまで回想~


沙織「(どうしよう、新三郎さんの役が凄い似合ってる)」

華「…その時はすぐに抜けたんですが…」

麻子「刺さったところが柔らかかったからだろうな」

沙織「そういう問題かなぁ…」

みほ「…うーん、普通には抜けそうにないなぁ…」

華「うぅ…」

沙織「どうしよ? 先生呼ぶ?」←慣れてきた

麻子「先生でどうにかなる問題には見えないぞ」


スタスタ

みほ「…ん?」

エルヴィン「お、西住隊長。おはよう」

左衛門佐「こんなところで固まってどうされた?」

みほ「あ、エルヴィンさん、左衛門佐さん」

麻子「実は…」

エルヴィン「…なるほど、五十鈴さんの髪の毛が壁に…」

華「うぅ…」

沙織「(みんな普通にしてるよ…? おかしいのは私…? それとも世界…?)」

みほ「あの、なんとかなりませんか?」

エルヴィン「…うむ…」

左衛門佐「五十鈴殿、宜しいか?」

華「左衛門佐さん?」

左衛門佐「どうしても抜けないというのであれば、髪の毛を切るしかないと思うが…」

華「はい…確かに、そうですね…」

麻子「それしかないか…」

華「…お願いします、左衛門佐さん」

左衛門佐「いいのか?」

華「これ以上、みなさんに迷惑はかけられませんから…」

左衛門佐「分かった」

沙織「え? 左衛門佐さんが切る流れなの? 私、ソーイングセットならあるけど?」

麻子「この髪の毛がただのハサミで切れるとも思えない」

沙織「そうだけど…うん、そうだよね? これはハサミじゃ切れな…あれ? 髪の毛だよね? あれ?」

エルヴィン「もんざ、やれるか?」

左衛門佐「任せろ。この刀で、必ず五十鈴殿を救って見せよう」シャキーン

沙織「ちょ、なにそれ!? どっから出したの!?」

麻子「あ、あれは大般若長光!」

みほ「知っているんですか、麻子さん?」

麻子「鎌倉時代の刀工、長光が作ったと言われる国宝の太刀だ。まさか、現物を見ることができるとは…」

沙織「国宝!? なんで女子高生がそんなの持ってるの!?」

エルヴィン「左衛門佐は私たちの中でもコレクター体質だからね」

沙織「それで済ませちゃいけない気がするんだけど」


左衛門佐「…じゃあ、手をこっちに…うん、これでいい」

華「じゃあ、お願いします」

左衛門佐「…行くぞ、五十鈴殿…覚悟いたせ」

沙織「(どうしよう、絵面が完全に斬首刑なんだけど)」


左衛門佐「…すぅーっ…」

左衛門佐「…」

左衛門佐「…」

左衛門佐「…!!」カッ

左衛門佐「キエェェェエエエェエァァァアアアー!!!!」


沙織「ヒイッ」ビクッ


左衛門佐「チェェェストオオォォォォオオオーー!!!」ブンッ


エルヴィン「…やったか!?」

麻子「(やってなさそう)」

華「…左衛門佐さん? どうなりました…?」

左衛門佐「あ…ぁ…」カランカラン

みほ「…斬れて…ない…?」

沙織「(何かそんな気はしてた)」

エルヴィン「刃こぼれしてるぞ…」

左衛門佐「何だと!?」チャッ

左衛門佐「あ…ああぁぁぁ…!!」プルプル

華「あ、あの…左衛門佐さん? 申し訳ありません、こんな…」

左衛門佐「…う」

みほ「ん?」

左衛門佐「うわああぁぁーーん!!」ポロポロ

麻子「えっ」

左衛門佐「わぁぁーん!!」ポロポロ

エルヴィン「…すまない隊長。もんざをあやしてくる…」

みほ「あ、いえ…すみません、わざわざ…」

エルヴィン「で、では失礼する」スタスタ

沙織「ダメだったかぁ…」

みほ「華さん、体調は大丈夫?」

華「ええ、特に問題ありません。切られたところも、何ともないようですし」

麻子「それはそれでおかしな話ではあるけどな」


スタスタ

杏「やーやー、あんこうチームじゃん。何してんの?」モグモグ

みほ「あ、会長」

麻子「実は…」

桃「…なるほど、五十鈴の髪の毛が壁に…」

柚子「あらー…完全に刺さっちゃってるね…」

沙織「なんとかなりませんか?」←慣れた

杏「うーん、もんざ殿でも斬れなかったんでしょ?」

みほ「はい…」

桃「彼女がダメとなると、力でどうにかするのは難しいですね」

沙織「え? 左衛門佐さんってそんなに凄いの…?」

杏「普通に引っこ抜くのは無理かぁ…」

杏「じゃ、とりあえず滑りを良くしてみようか」

みほ「滑り…ですか?」

杏「サラダ油とか何でもいいけどさー、とりあえず髪の毛ヌルヌルにしちゃえば?」

麻子「なるほど、抜けやすくするのか」

杏「小山、用意して」

柚子「はい会長」ダッ

桃「あ、私も…」

柚子「桃ちゃんはそこでジッとしてて。邪魔」

桃「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛柚゛子゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛」ビエエエエ

杏「五十鈴ちゃん、いい?」

華「はい、どんな手段を使っても構いません」

沙織「華…」

華「ごめんなさい、皆さん。巻き込んでしまって…」

ダダッ

柚子「あったよ! ローションが!」

杏「でかした!!」

沙織「ローション!? なんで!?」

麻子「生徒会だしな」

沙織「あぁ…」

杏「じゃー五十鈴ちゃん、行くよー」

華「はい、お願いします」

杏「気持ち悪かったらすぐ言ってね」

ヌルヌル

華「んっ…」

柚子「大丈夫?」

華「つ、続けてください」

杏「はいよー」

ヌルヌル

華「…んっ…」

華「やっ……ぁっ……」

華「んんっ…! あぁぁっ…!」ゾクゾク

華「はぁ…っ…」ビクンビクン


麻子「五十鈴さん。全年齢。全年齢板」

みほ「地上波だから。深夜とはいえ地上波だから。華さん」

華「あっ…すみません…」

沙織「何!? どういうこと!?」

杏「だいぶぬるぬるしてるけど、どうかな?」

華「んっ…!」グイグイ

沙織「華!がんばって!」

みほ「ちょっとだけ引っ張ってみるね」

麻子「痛かったら言ってくれ」グイグイ

華「んー…!ぐぬぬ…!!」

柚子「五十鈴さん! 頑張って!」

みほ「華さんっ!」

沙織「(あれ…?なんかその場の空気に流されて泣きそう…)」

華「はぁ、はぁ…ダメですね、これ…」

杏「やっぱダメかぁ…」

華「動かしても痛くはないんですが…」

柚子「あ、会長。そろそろ…」

杏「んあ? …あー、連盟のお偉方の接客だっけ?」

柚子「…ごめんね、私たちそろそろ…」

みほ「あ、いえ」

華「すみません、お時間を取らせてしまって…」

杏「じゃ、頑張ってねー」

桃「…」

柚子「(無言の肘打ち)」ドスッ

桃「う゛っ」

柚子「行くよ、桃ちゃん」

桃「ま、待ってよ柚子ちゃん…」

柚子「もー、私がいないとダメなんだから…」ナデナデ

桃「えへへぇ…」

沙織「(DVかな?)」

麻子「生徒会でもダメか…」

華「(お腹が空いてきました…)」


あや「…あれ?西住隊長?」

みほ「大野さん?」

梓「こんなところでどうしたんですか?」

麻子「カクカクシカジカ」

梓「…え?」

あや「へぇ、五十鈴先輩が…」


梓「…ちょ、ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってください、冷泉先輩? 今なんて?」

麻子「いや、だから五十鈴さんのアホ毛が壁に刺さってしまって」

梓「…は、はぁぁ? えぇ? はぁー??」

沙織「ね? おかしいよね?」

梓「えっ、ちょ…え? 髪の毛…壁? え?」

沙織「梓ちゃん、気持ちはわかるけど落ち着こ?」

梓「あの、武部先輩…? え…?」

沙織「うんうん、私も最初はびっくりしたから。むしろ仲間がいて嬉しいって言うか」ナデナデ

梓「せんぱぁい…私怖いです…」

沙織「よしよし…」ナデナデ

華「あら~」

沙織「はいそこ茶化さない!」

あや「先輩!そんな時こそネットに聞いてみましょう!」

みほ「そうだね…もう他に頼れるものもないし…」

あや「えっと、ちょっと待ってください…」

麻子「確かに、もう私たちではどうにもならないな」

あや「…あ、返信きました!」

沙織「は、早いね」

あや「えっと…」

『まず服を脱ぎます』

梓「いや、絶対おかしいでしょそれ!?」

華「わかりました。すみませんが、誰か手伝っていただけますか?」

沙織「ピュアかよ! 華! ダメだからね!!」

華「しかし…」

沙織「絶対ガセでしょ!?」

あや「あ、また返信来た」

『髪の毛切ればいいだろJK』

みほ「うーん、それができればいいけど、切れそうにないんだよね…」

あや「あとは…」

『戦車で壁壊しちゃえよ』

麻子「それだっ!」

あや「それだぁ!」

梓「それだっ! じゃなーい!!」

みほ「…なるほど、確かにM3の火力なら、副砲でもこのくらいの壁は抜けるハズ…」

沙織「みぽりん!? 何真面目に考察してるの!?」

梓「いやいや、ダメだって! 五十鈴先輩が…」

華「…いえ。問題ありません」

沙織「華!? 何言ってるの!?」

華「もう、手段は択ばないと決めていますから」

華「…大野さん。お願いします」

あや「まっかせてください!」

沙織「いやいやいやいや! ちょっと華!」

華「はい?」

沙織「危ないどころの話じゃないって! どうなるかわかってるの!?」

みほ「だ、大丈夫だよ沙織さん。特殊カーボンでコーディングされてるし…」

沙織「戦車はね!」

華「それに、私も華道の心得はありますから」

沙織「それがどうしたの!? 華道ってなんなの!?」

麻子「それに、この前の練習試合の最中に砲弾が直撃したこともあったじゃないか」

みほ「その時もなんともなかったし…」

沙織「ウッソ!? 何それいつの話!?」


あや「せんぱーい!こっち用意できました!」

みほ「…あれ? 梓さんは?」

沙織「あまりの展開に気絶しちゃったからこっちで寝かせてるよ…」

みほ「…華さん。大丈夫ですか?」

華「ええ。覚悟はできています。お願いします」

沙織「(もはや何も言うまい)」

麻子「私たちは離れるか」

あや「いきまーす!!」カチッ


ドォォーン!!


梓「」ビクゥッ

沙織「きゃあ!」

みほ「華さん!」

麻子「ど、どうなった…?」

あや「…あ、あれ…?」

華「うぅ…」

沙織「当然のように無傷な華はおいといて…あれ…?」

みほ「…壁、壊れてないですね…」

麻子「というか、五十鈴さんのアホ毛が刺さってる部分だけきれいに残ってるな」

華「何故…何故こんなことに…」

みほ「本当に手詰まりになっちゃったね…」

華「…もういいんです、皆さん…」

麻子「五十鈴さん?」

華「私はもう、ここで朽ち果てる運命なんです」

華「もとはと言えば、こんなところでもたついた私の責任ですから」

華「皆さんは、もう私のことなんて…」

みほ「…華さん」

華「…」

みほ「私…あの時、転校してきたばっかりの時、声をかけてくれて本当にうれしかった」

みほ「黒森峰から逃げてきて、大洗でも落ち込んでた私を助けてくれた」

みほ「…今度は、私の番だから」

華「みほさん…」

沙織「(どうしよう。良いシーンだと思うんだけど、シチュエーションがアホすぎてどんな顔すればいいのかわからない)」

麻子「……あっ」

みほ「麻子さん?」

麻子「…そうだ。何故こんなことに気付かなかったのか…」

麻子「確かにこの髪の毛は、左衛門佐さんには斬れなかったが…」

麻子「…それじゃあ、プロに頼んでみるか」

華「はぁ…」

麻子「……」プルルル・・

麻子「もしもし?」

10分後


好子「お待たせ―!ゴメンね、時間かかっちゃって」

みほ「いえ。わざわざ来ていただいて、ありがとうございます」

好子「娘の友達が困ってるんですもの。放っておけないわよ」

華「あのぅ、お店の方は大丈夫なんですか?」

好子「大丈夫大丈夫。主人はいるし、そもそも全然お客さん来なくてアカ出そうなくらいだから」

沙織「それはそれで大丈夫なんですか!?」

好子「…どれどれ…なるほど、この子ね?」

華「は、はい。お願いします」

好子「動かないでねー」

チョキッ

好子「はい、おしまい!」

みほ「こ、こんな簡単に…」

麻子「最初からこうすればよかったな」

華「本当にありがとうございます、奥様」

好子「いーのいーの。今度はウチに来て頂戴ね」スタスタ

沙織「はー、でも無事に終わって良かったぁー!」

麻子「さんざん紆余曲折したけど、最後はシンプルに片付いたな」

みほ「…あっ、もうこんな時間になっちゃったね。急がないと」

華「あ、もうすぐ本鈴ですね。急ぎましょう」

麻子「こっちから行こう。雑木の間を突っ切れば、校舎まで近いはずだ」

みほ「わかりました。行きましょう」

スタスタ

みほ「…あれ?」

麻子「ん?」

みほ「…あそこにいるの、優花里さん?」

華「…本当ですね。何をしているんでしょうか

沙織「(あっ、嫌な予感)」

みほ「…優花里さん?」

優花里「あ、西住殿っ!」

華「…こんなところで何を?」

優花里「あ、あのー、ですね…」

麻子「なんだ、どうしたんだ?」

優花里「……うぅ~…」

沙織「あ、あの、ゆかりん…?」

優花里「た、助けてください!! 西住殿ぉ!」

優花里「私の髪が、木に引っかかって取れなくなっちゃったんですぅ!!」

沙織「」



- おしまい -

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