織莉子「バレンタインデーに鹿目まどかに一服盛る」(134)

ワルプルギスの夜を乗り越えてから、一体どれほどの時が流れただろうか。

見滝原中学校襲撃時の織莉子とほむらによる死闘は、今でも記憶に新しい。

結局その場では決着が付かず、更にはその場にまどかが現れたことで戦いは有耶無耶なものとなってしまった。

ほむらは織莉子に問いかけた。

「何故まどかを狙うの!?何も殺さなくても、他にも方法があるでしょう!?」

「彼女は魔法少女となり、行く行くは世界を滅ぼす魔女となる!放っておくわけにはいかないのよ!」

話は平行線を辿るかと思われた。

ほむらは咄嗟に、思いついた提案を口にする。

「なら、わたしと共にまどかを契約させないようにすればいい!あなたと、キリカ、それにわたしが力を合わせれば不可能ではないはずよ!」

まどかを側に置いた状態で戦闘を行いたくなかったほむらの、ほんの思いつきだった。

織莉子がその提案に乗る理由など、どこにもなかったはずだった。

しかし。

「………。暁美ほむら。その言葉に二心はありませんね?」

意外にも、織莉子はその提案を受けたのだった。

そうして、ほむら、織莉子、キリカに加え、ワルプルギスの夜が来ると知った巴マミ。

更にはゆまに関するオトシマエを付ける為に見滝原へとやって来た佐倉杏子、その杏子と行動を共にしている千歳ゆまも加わり。

無事に、ワルプルギスの夜を乗り越えることが出来た。

ほむらの第一目標である、まどかの契約阻止を達成した状態で。

織莉子とキリカも、襲撃事件以降はまどかの命を狙うそぶりも見せてはいなかった。

ここに、ほむらの思い描いていた理想の世界が実現したのだった。

理想の世界―――そのはずだった。




織莉子「………ふふ、もう少しで完成よ……」

美国の家、台所にあるオーブンの前に立っている織莉子が呟く。

やがて、焼き上がりを告げるオーブンの音が広い台所に響いた。

ガチャリ、と音を立ててオーブンを開ける。

そして、キッチンミトンを両手にしっかりと装着し、焼いていたものをトレーごと取り出す。

織莉子「熱い、あっつい、いいにおい……ふふ……♪」

ガスコンロの上に置き、如何程の出来かを眺める。

それは、クッキーだった。

チョコチップが散りばめられた、バレンタインの為のもの。

織莉子「……うん、上出来上出来♪」

キッチンミトンを取り外し、そのクッキーに向かって左手をかざす。

そして、右手のソウルジェムに意識を集中させ、トレーの上の7割近くのクッキーに魔法をかける。

織莉子「よし、完成……ふふ、バレンタインデー当日が楽しみだわ……♪」





織莉子「覚悟していなさい……鹿目まどか……」






美国織莉子は、諦めてはいなかった。

数分前。

織莉子がキッチンで何やらやっているのを、キリカが気付かれないように見ていた。

キリカ(織莉子……わたしの為に、バレンタインのチョコを用意してくれてるなんて……!)

見事に勘違いしていた。

キリカ(これは大変だぞ……!織莉子が作ってる事に気付いてないフリをしないと!なにしろわたしに黙って作ってるんだ!サプライズを演出したいに違いない!!)

更には妙な気遣いまでするキリカ。

キリカ「あー、あー……んん、ゴホンッ……」

発声練習を少しだけして、ひとつ小さく咳払い。

キリカ「織莉子ー!わたし、ちょっと用事があるから出掛けて来るよー!」

居間へのドア越しに、織莉子に向かってそんな言葉を投げかける。

織莉子「ええ、わかったわー!気を付けて行くのよー!」

居間の更に向こうの台所から、織莉子の返事が聞こえて来る。

それを聞き届けたキリカが、美国の家を後にする。

キリカ「せっかくだ、誰かに自慢しに行こう!」

マミの家―――

マミ「あら、呉さん?いらっしゃい、あがって」

キリカ「ああ、上がらせてもらうよ恩人」

マミに促され、キリカは中へ入って行く。

居間には、杏子とゆまの姿があった。

杏子「ん、キリカ?一人でマミの家に来るなんて珍しいな」

ゆま「キリカー!」

キリカの姿を確認したゆまが、トテトテとキリカの側へ駆けて来る。

近くにやってきたゆまの頭を撫でながら、キリカは杏子と話をする。

キリカ「いや、何、織莉子が家で忙しそうにしていたからね。邪魔するのも悪いと思って、一人で来たってだけさ」

杏子「ふーん……あいつがねえ……」

ケーキをほおばりながら、杏子が呟く。

マミ「あら、佐倉さんダメじゃない。今からみんなを呼ぼうと思っていたのに、先に食べちゃ」

杏子「んなこと言ったってよぉ、眼の前に出されながら食べちゃダメなんて言われたって我慢出来るわけないだろー」

マミ「もう、仕方ないわね……呉さんも座って。美国さんの家にも電話入れようと思っていたのだけれど、忙しそうにしていたのならやめておいた方がいいわね」

キリカ「ああ、そうしてあげてくれ」

杏子の隣にゆまが座り、更にその隣にキリカが腰掛ける。

マミはほむらやさやか、まどかに電話を入れているようだった。

それから数十分後。

ほむらとさやか、まどかがマミの家にやって来た。

ほむら「……杏子とゆまちゃんはともかく、あなたが一人でマミの家にいるなんて珍しいわね?」

テーブルを挟んだ向かい側に腰掛けながら、ほむらがキリカに問いかける。

キリカ「ふふ……今日はわたしから自慢話をしに来たのさ」

さやか「キリカが自慢話?何々、聞かせてよ」

マミ「その前に、いただきますしましょうか」

台所から紅茶を乗せたマミが戻って来る。

さやか「待ってましたマミさん!」

杏子「なあ、マミ。あたしの分はないのか?」

マミ「佐倉さんはさっき自分の分、食べちゃったじゃない」

杏子「いや、食ったけどさあ……いいじゃん、別に……」

マミ「ふふ、なんてね、冗談よ」

全員に紅茶が行き渡ったのを確認したマミが、傍らに置いてあるケーキ箱をテーブルの上に置く。

その箱を開け、中からショートケーキを八つ取り出した。

マミ「さっき佐倉さんが食べたのは、わたしのお手製のケーキの方よ。今日の本命はこっちだから、安心して」

杏子「さっすがマミ!」

ショートケーキを小皿に乗せて、それも全員に行き渡らせる。

ゆま「わーい、ケーキだー!」

全員が手を合わせ、いただきますの挨拶をする。

キリカ「さて、皆の者。明日は何の日か覚えているかい?」

まどか「明日?って、2月14日だよね?」

キリカ「そう、そうだよ鹿目!セントバレンタインデーだ!!」

さやか「それがどうかしたの?」

キリカ「ちっちっち、わかってないな美樹は。いいか?バレンタインっていうのは、愛しい人に自らの気持ちを込めたチョコレートを渡すイベントがあるじゃあないか!」

まどか「な、なんだかその言い方、ちょっと恥ずかしいよキリカちゃん」

キリカ「ふふ……明日が楽しみだなぁ!いやー本当に楽しみだ!」

ほむら「……察するに、美国織莉子があなたの為にチョコレートを用意していると、そう言いたいわけね?」

キリカ「流石、暁美は鋭いね!」

まどか「キリカちゃん、自信満々だなぁ。わたしもそれくらい自分に自信を持ちたいよ」

さやか「あたしはどうしよっかなぁ……幼馴染のよしみで、今年も恭介にあげよっかなぁ」

杏子「未練たらしいねぇ、さやかは。あいつ、彼女出来たんだろ?もうすっぱりと諦めろっての」

さやか「う、うるさいなっ!杏子には関係ないでしょっ!」

杏子「へいへい」

マミ「もしかして、美国さんが忙しそうにしていたって、チョコ作りをしていたからかもしれないわね」

キリカ「そう、そこだよ恩人っ!」

バンッとテーブルを叩き、キリカは身を乗り出す。

キリカ「織莉子、台所でお菓子を作ってるっぽかったんだよっ!あれは間違いなく、バレンタインのチョコだ!!わたしの為にわざわざ作ってくれてるんだよ、織莉子はっ!!」

マミ「お、落ち着いて呉さん!」

ほむら「……仲、いいわねぇ、本当に。羨ましくもあるわ」

キリカ「何を言ってるんだ!暁美には鹿目がいるじゃあないか!」

まどか「えっ!?」

突然自分の名前を上げられたまどかが、敏感に反応を示す。

キリカ「鹿目も、暁美の話はもう知っているんだろう?暁美は、キミを守るために今まで頑張っていたんだ、って」

まどか「そ、それは、ほむらちゃんは、確かにそう言ってたけど……で、でも、でもでも、それとこれとは話が……」

ほむら「キリカ、そこまでにしておきなさい。まどか、困っているわよ」

キリカ「ふふん、冷静を装っているつもりでも、わかっているよ。キミも心中穏やかじゃないだろう?」

ほむら「な、何を……っ」

キリカ「ま、でもわたしと織莉子の間にある愛には勝てないだろうけれどね!ハッハッハ!」

杏子「絶好調だな、キリカの奴……」

さやか「ハハ……」

ゆま「ゆまはね、キョーコにチョコレートあげるから!楽しみにしててね!」

杏子「おう、期待してるよゆま」

マミ「わたしは特定の誰かにあげることは、今年もないかなぁ……明日もこうしてみんなで集まってお茶会出来ればいいかな、って思っているくらいだし」

キリカ「ダメダメ恩人、そんなんじゃあ。愛は無限に有限なんだよ!だから、恩人も相手を探さなきゃ!」

マミ「あはは……少し、真面目に考えてみようかしら?」

さやか「マミさんに相手が出来るとしたら、どんな人かなぁ?」

キリカの自慢話から始まり、他愛のない話に花を咲かせる。

そして、夕方。

キリカ「それじゃあね、いいバレンタインを迎えてくれ!」

玄関先で、嬉しそうにそれだけ言い残してキリカは駆け足で帰って行く。

ほむら「元気ねぇ、彼女」

まどか「そうだね。でも、貰えるのはほぼ確定なのかぁ……いいなぁ……」

さやか「ふむふむ、まどかは女の子から貰っても嬉しいのかね?」

まどか「あはは、それはそうだよぉ。好意を向けられて、嫌な気持ちになんてなるわけないでしょ?」

杏子「そりゃ、そうだろうけどな」

ほむら(……なら、やっぱりわたしがまどかに……)

マミ「呉さんは足早に帰っちゃったから言いそびれちゃったけど……明日、みんなは何か用事ある?何もなければ、またお茶会しましょう?バレンタインだし、ちょっとだけ豪勢に」

さやか「あたしは参加っ!どうせ恭介は仁美とよろしくやるだろうし、ね!」

杏子「あたしはマミの家に住んでるんだし、不参加な理由にはならないな」

ゆま「ゆまも参加ー!」

まどか「あ、わたしは、ちょっと明日は無理かもしれないです」

マミ「あら、そうなの?何かあった?」

まどか「ちょっと、パパと約束があって」

マミ「先約があるなら仕方ないわね。暁美さんは?」

ほむら「わたしも、パスね。用事があるの」

マミ「そうなの……残念ね。それじゃ、美樹さんと佐倉さん、ゆまちゃんとわたしの四人で贅沢しちゃいましょうか?」

杏子「贅沢って言ったな?後悔させてやるぜマミ!」

ゆま「後悔だー!」

さやか「いやー明日が楽しみになっちゃいましたなぁ!」

マミ「言っておくけれど、美樹さんはお客さんだからいいとして、佐倉さんはウチの居候なのだからね?タダで食べられるとは思わない方がいいわよ?」

杏子「はんっ、あたしにはバイトで稼いだ金があるんだぜ?全然全く問題無しっ!!」

ゆま「問題なーし!」

マミ「ふふ、息ぴったりね、二人とも」

まどか「それじゃマミさん、帰ります」

さやか「あたしは、また明日ですね!」

ほむら「バイバイ、マミ」

マミ「ええ。三人とも、気を付けて帰ってね」

それぞれさよならの挨拶をし、まどか、さやか、ほむらは家路につく。

~~~

キリカ「ただいまー、織莉子!」

美国の家のドアを開け、中へ入りながら、キリカは織莉子にただいまの挨拶をする。

織莉子「あら、お帰りなさいキリカ」

織莉子は、まだキッチンにいた。

しかし、やることは全て終わっているようで、椅子に座り紅茶を飲んでいるところだった。

キリカは織莉子の正面の椅子に腰かけ、自分テイストの紅茶を入れる。

ジャムを三杯に、砂糖を三杯。

織莉子「どこに行ってたの、キリカ?」

キリカ「ん、ちょっとね。それより、わたしが出て行く前に織莉子、何かをやっていたみたいだったけれど。何をしていたんだい?」

あえて、キリカはその一歩を踏み出す。

自身の考えを、確信へと変える為に。

織莉子「え、ああ……わたしも、ちょっと、ね」

キリカの予想通り、織莉子は言葉を濁した。

その返答を以て、キリカは自身の考えが確信へと変わったと心の中で喜ぶ。

ふと、キリカは視線を織莉子の更に向こうへ移した。

織莉子は隠しているつもりなのだろうが、キリカは織莉子の事をよく理解していた。

織莉子が何かを隠す時は、いつも食器棚の下なのだ。

更に、何かを隠した時に、完全には棚は締めきらず、中に何があるのかが少しだけ見える状態。

それが、織莉子の癖だった。

そして今回、その戸棚の中に見えたモノは、包装紙に包まれた大小二つの何かだった。

それが何なのか、キリカの心には既に確信とも言える答えがあった。

キリカ「ふーん、そっか」

織莉子「ところでキリカ。明日、何か用事はある?」

キリカ(キタッ!!)

キリカ「いや、何も用事はないけれど?」

あくまで冷静を装い、キリカは答える。

織莉子「よかった。明日、とても大切な用事があるの。そのまま開けておいてね?」

キリカ「ああ、了解だ」

表面上は冷静そのものだが、キリカは心の中で狂喜乱舞していた。

キリカ(あぁ、明日が楽しみだ……今夜は早めに寝ようそうしよう)

キリカの意識は、とっくのとうに明日へ向かっていた。

その為、織莉子の少しだけ憂いを含んだ表情には気付く事が出来なかったのだった。

明けて、翌日。

キリカ「おはよう、織莉子!いやぁ今日もいい天気だねっ!!」

キリカは元気いっぱいだった。

織莉子「ええ、おはよう……キリカ」

対する織莉子は、酷く冷静だった。

キリカ「それで、織莉子?今日、何かあるのかい?」

いてもたってもいられず、キリカは織莉子に問いかける。

織莉子「ええ、とても、とても大切な用事が」

声のトーンは低いまま、織莉子は答える。

キリカ「一体何があるんだい?」

はやる気持ちを必死に抑えながら、キリカは次の言葉を促す。

織莉子「本題に入る前に……」

そこで言葉を区切り、織莉子は小さな包装紙に包まれたものをキリカに差し出す。

キリカ「……うん?」

それに、違和感を覚えた。

昨日の夕方帰って来た時に確認したのは、大小二つの包みだった。

小さなものは誰へのものなのかはわからなかったが、キリカは当然大きい方を渡されるものだとばかり思っていた。

織莉子「ハッピーバレンタイン、キリカ。わたしから、貴女へ」

穏やかな笑みを浮かべて、織莉子はそう言った。

キリカ「え、あ、あぁ……あり、がとう……?」

若干の疑問形ながら、キリカはそれを受け取る。

それを、マジマジと見つめた。

やっぱり、小さい方だ。

穴が開くほど見つめても、その事実は覆らなかった。

キリカ「こ、これ、本当にわたしに?」

恐る恐ると言った体で、キリカは問い掛ける。

織莉子「? なにかおかしなところ、あった?」

キリカ「い、いや……その……?」

織莉子「変なキリカね。それじゃあ、本題に入らせてもらうけれど……」

そう言いながら、織莉子は今度は大きい包みを取り出した。

それは昨日キリカが確認した、大小二つの包みのウチの大きい方だった。

キリカ(ま、まさか……わたしの他に、本命が……っ!?)

嫌な予感が、キリカの脳裏をよぎる。

織莉子「これをもって、鹿目まどかの所へ行きまs」

キリカ「まさかの鹿目だとおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!?!?!?」

織莉子の言葉を遮り、キリカが吠える。

織莉子「っ!?」

キリカ「そんな、そんなバカなっ!?織莉子が、織莉子が、そんな、そんなあああああぁぁぁぁっっ!!」

思わず、キリカは家を飛び出した。

織莉子「あ、ちょっとキリカーーーーっ!!?」

織莉子の呼び止めにも応じなかったのは、これが初めてだった。

それほどまでに、キリカは衝撃を受けていたのだった。

織莉子「……行っちゃった。暁美ほむらが完全に油断しきっている今が、鹿目まどか暗殺の好機なのに。仕方ないわ、わたし一人で仕掛けることにしましょう」

~~~

キリカ「うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

奇声を発しながら、キリカは住宅街を駆け抜けて行く。

キリカ「織莉子が、織莉子がああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

どこを目指しているわけでもなく、とにかく走らなければどうにかなってしまいそうだった。

キリカ「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

走り続けて、商店街へと抜けた。

「きゃっ!?」

キリカ「うわっ!?」

曲がり角へ差し掛かったところで、誰かと盛大にぶつかってしまった。

キリカ「も、申し訳無い。ちょっと、ショックなことがあって……」

マミ「いえ、こちらこそ……」

キリカ「……恩人?」

マミ「え?……あら、呉さん?」

キリカがぶつかった相手は、巴マミだった。

マミ「ああ、せっかく買ったケーキがぐちゃぐちゃに……」

キリカ「………グスッ」

マミ「え?」

キリカ「恩人……わたしは一体どうしたらっ……」

ぶつかったことで少しだけ冷静さを取り戻したキリカが、不意に泣き出す。

マミ「く、呉さんっ?」

キリカ「織莉子がっ……織莉子があああぁぁぁぁ……お、おりおりおり………!」

マミ「お、落ち着いて呉さんっ!?な、何が何だか……!?」

へたりこんだまま泣き出すキリカを見て、マミはオロオロし始める。

マミ「と、とりあえず、人のいない所に行きましょうっ?ね?」

キリカ「グスッ……うん……」

マミに手を握られ、立ち上がる。

そのまま、子供のように手を引かれながら人気のない所へ向かって歩き出すのだった。

~~~

公園のベンチに、キリカが座っていた。

マミは少し離れた所にある自動販売機で缶コーヒーを二つ買い、キリカの所へ戻って来る。

マミ「はい、コーヒー」

キリカ「……甘いやつ?」

マミ「ええ、カフェオレがあったからそれを買って来たわ」

キリカ「ありがとう……」

確認を取り、キリカは差し出された缶コーヒーを受け取る。

マミ「それで、何があったの?なんだか、穏やかな話じゃなさそうだけど」

自分の分の缶コーヒーを開け、マミはキリカの隣に腰掛ける。

キリカ「うん……実はね……」

キリカは、事の顛末を包み隠さずマミに話した。

今朝渡されたバレンタインのチョコは、二つあった包みのウチ小さい方であったこと。

もうひとつの大きい方は、これからまどかに渡しに行くと言っていたこと。

マミ「………それは、本当に美国さんがそう言っていたの?」

キリカ「間違いないよ……大きい方の包みを持って、これから鹿目の所に行こうって言っていたんだ」

マミ「ふむ……。美国さんが、鹿目さんを、ねえ……」

キリカ「わたしは織莉子をこんなにも愛しているというのに、織莉子の本命はわたしじゃなかったんだ……こんなのってないよ……」

自分で言っておきながら、キリカは更に落ち込む。

絶望とは、こういうものだったのか、と。

そんな考えすら脳裏をよぎった。

キリカ「ああ……失恋ってこのコーヒーのようにほろ苦いものだったんだね……」

マミから受け取ったカフェオレを飲み下しながら、キリカはそうぼやく。

マミ(それ、あの自販機の中で一番甘いものなんだけど……)

マミ「……失恋なんて、長い人生では何度もあることよ、呉さん。そう落ち込まないで。ね?」

キリカ「……恩人……」

マミ「そうだ!これからわたしの家でお茶会をやるんだけど、よかったら呉さんも来ない?失恋の悲しみなんて忘れるくらい、思いっきり騒いじゃおうよ!」

キリカ「ありがとう、恩人……そうさせてもらうよ……」

マミの優しさに、キリカは甘えることにした。

織莉子のことを忘れることは無理だろうけれど、今日くらいは。

そうして無理やりにでも忘れるのも、ありかもしれない、と思うことにした。

~~~

場面は移り変わり、住宅街。

織莉子が、まどかの家を目指して歩いていた。

織莉子(この魔法をかけた必殺クッキーなら、ひと口で爆発して死に至るのはほぼ間違いないはず……それでも不安だから量を多めにして、キリカにあげたのよりも大きな包みになってしまったけれど)

大きな包みを両手に抱えながら、織莉子はそんな思考を巡らせる。

織莉子とすれ違う人々みんなが、織莉子の事を振り返った。

傍から見れば、想い人の為にバレンタインのチョコを渡しに行く女性にしか見えないであろう。

そこまで計算に入れたうえでの、バレンタインデーの実行だった。

実に大胆な犯行である。

織莉子(暁美ほむらには申し訳ないけれど、未だに未来予知の魔法では世界を滅ぼす魔女の姿が見える……やはり鹿目まどかをどうにかしなければ、あの光景が消えることはないでしょうね)

見滝原中学校を襲撃した時のほむらの提案は、織莉子にとっても悪くないものであることは間違いなかった。

あの時は、ほむらの提案なら本当になんとかなるのではないか、と思った。

しかし、やはりそんなことはなかった。そんなことはなかったのだ。

織莉子「そんなことはなかったのだっ!!」

思わず声に出してしまう。

それほどまでに、あの未来予知の光景が恐ろしいのだ。

丁字路の合流地点にて。

ほむら「………あら?」

織莉子「!」

織莉子とほむらは、ばったりと出くわしてしまった。

ほむら「こんにちは、織莉子」

ほむらが、何気ない挨拶を投げかける。

織莉子「こ、こんにちはっ!?」

返事の声が裏返る。

この自体は、想定していなかった。

ほむら「どうかしたの?なんだか、焦っているようだけれど?」

織莉子「い、いえ、別に焦ってなんていないようなそうでもないようなっ!?」

どうする、どうすればいい、どうしたら。

織莉子は頭をフル回転させる。

とにかく、この場から逃げなくてはならない。

そうでなければ、ほむらは追及してくる。絶対してくる。

ほむら「……?バレンタインのチョコレートかしら、それ?」

織莉子「っ!!!」

大胆な犯行ゆえの弊害である隠しようのない包みを、思いっきり指摘される

織莉子「え、えぇもちろんそうよっ!?」

ほむら「誰に渡すのかしら?やっぱり、キリカ?」

織莉子「え、あ、え、ええっと、それはそのですね、ええっと……あの……」

しどろもどろに返答する織莉子。

もう、逃げようがなかった。

織莉子「そ、そそそそそそうだっ!!そ、そういうほむらさんこそ、どこへ行くのですかっ!?」

必死ながら、話題を転換する。

ほむら「? わたしは、まどかの家へ行こうと思っていたのだけれど」

織莉子(何……だと……?)

織莉子の心の中で、大胆な犯行が音を立てて崩れて行く。

最早、修正の施しようが無かった。

ほむら「ほら、バレンタインのチョコレート。まどかに渡そうかな、と思ってね」

織莉子「そ、そう……なの……」

さあ、どうする美国織莉子。と、織莉子は心の中で自身に問いかける。

ほむら「それで?あなたは誰に渡すの?キリカ?」

織莉子「こ、これは、その、ですね」

思考の整理も追いつかず、更にはほむらに質問された為に思考がめちゃくちゃになり。

織莉子「か、鹿目まどかに渡そうと思っていて……」

つい、ポロリと本音が零れ落ちる。

ほむら「………………………………え?」

織莉子(わ、わたし……今、なんて言った?鹿目まどかに、渡す、と言っちゃった……?もしかして?)

動作が停止したほむらを眼の前にして、織莉子はたった今自分が漏らした言葉がどういったものだったのかを必死に思いだそうとする。

ほむら「……………そ、そう……ま、まどかに……ね……」

織莉子(や、やっぱりっ!!?!?!?!?)

ほむら「……………」

織莉子「……………」

お互いに、沈黙する。

ほむら(まさか織莉子がまどかの事を好いているとは……。これが世に言う『殺し愛』なのかしら)

織莉子(ど、どうしよう……こうなったら、暁美ほむらを押しのけてでも鹿目まどかの所へ行くべき……?いえ、でも……)

ほむら「……ひとつだけ、確認してもいいかしら?」

織莉子「は、はいっ!?なんでしょうかっ!?」

ほむら「あなたは……本気、なのね?」

織莉子(ど、どういう意味での『本気』なの、それは!?やっぱり、そういった意味合いでの『本気』よね!?)

織莉子「………えぇ。わたしは本気です。止めるのなら、お好きに」

織莉子(もうどうにでもな~れ♪)

その問いに答える形で、織莉子は諦めた。

押し通るのも無理だし、どうすることも出来ない。

なら後は、正直に答えて大局に身を任せる他ないと判断したのだった。

ほむら「………そう。あなたのその気持ちが本気であるのなら、わたしがどうこう言う資格はないわね」

織莉子「……えっ」

ほむら「頑張ってきなさい、織莉子。……わたしも、応援させてもらうから」

それだけ言い残し、ほむらは来た道を引き返す。

ワルプルギスの夜との戦いにおいても、美国織莉子の力は大きかった。

そんな彼女が、まどかを好きだとわかったのだ。

自分が邪魔をしていい資格など、ない。

そうほむらは判断したのだった。

織莉子「え、ええっと………」

歩き去るほむらの後ろ姿を見送りながら、織莉子は呆気に取られてしまっていた。

織莉子「ほ、ほむらさんっ!!」

思わず、織莉子はほむらを呼び止める。

その呼び止めに応じ、ほむらは歩みを止めた。

織莉子「本当に、いいのですか!?だってあなたは、今までずっと……!」

まどかの事を守るために、頑張って来たのではないのか。

その言葉が、出てこなかった。

ほむら「………いいの。あなたの本気は、きっとわたしなんかよりずっと強いと思うから」

大きい声では無かったが、その言葉は織莉子の耳に何よりも強く響き渡った。

織莉子「ほむらさんっ……!」

ほむら「ただしっ!!」

織莉子「!」

ほむら「真正面からぶつかりなさいよ、織莉子!あの子は優しいから、きっとちゃんとした返事をしてくれるはずよ!!」

織莉子「………ほむらさん……!」

ほむら「わたしから言えるのはそれだけ!頑張りなさい、織莉子!!」

織莉子「………ありがとう、ほむらさん!わたし、頑張るから!」

ほむらは振り返らず。

片手をあげて、そのまま立ち去って行った。

織莉子(ほむらさんから、勇気をもらった!)

気を取り直し、織莉子はまどかの家を目指す。

織莉子(これは、絶対に失敗出来ないわ!)

意気揚々と、どこか嬉しさすら醸し出していた。

織莉子(キリカがいないから不安だなんて、甘えたことは言っていられない!)

この角を曲がって、100mも歩けば鹿目家だ。

織莉子(絶対に、救世を成し遂げなければ!)

そうしてとうとう、織莉子はまどかの家に辿りついた。

織莉子「……スゥ……ハァ……」

何度か、深呼吸を繰り返す。

そして、意を決して呼び鈴を押した。

ガチャリと、インターホンが音を立てる。

織莉子「あ、あのっ!」

『ろちらさまれすかー?』

気の抜けそうな声が聞こえて来る。

織莉子「え、あ……」

『もしもしー?』

織莉子「あ、あの!まどかさんはいらっしゃいますでしょうか!?」

『ねーちゃ?ねーちゃー!』

『た、タツヤ!取っちゃダメって何回も言ってるのに!』

『おきゃくさまらよー!ねーちゃいるかーっていってる』

『わたしに?はい、代わりました』

織莉子「か、鹿目まどかさん?わたしです、美国織莉子」

『織莉子さん?ちょっと待っててください、今玄関まで行きますから』

インターホンを置く音が響き、時間差でドアの向こうから駆ける足音が聞こえて来る。

ガチャリ、とドアが開き、まどかが顔を出す。

まどか「こんにちは、織莉子さん」

織莉子「え、ええ、こんにちはまどかさん」

まどか「……一人ですか?珍しいですね」

織莉子「ええ……実は……」

言って、織莉子は今の今まで両手で持っていたものをまどかに差し出した。

織莉子「これを、貴女に」

まどか「………えっ」

織莉子「こ、これが、わたしの気持ちです!」

ズズイ、と更に差し出す。

まどか(え?えっ?えぇ?えぇぇぇえええぇぇぇっ??)

織莉子「………」

まどか「え、あ、え、えと、その、あの、ええっと……あー……と」

物凄くまじめな顔をした織莉子を正面に見据え、まどかはしどろもどろする。

顔も真っ赤だった。

まどか(ま、まさか、人生初の本気バレンタインチョコが女の子からなんて……)

織莉子「……受け取って、くれませんか?」

まどか「わ、わたしは、その……えと、あの、ゴメンナサイっ!!」

咄嗟に、まどかは謝ってしまう。

織莉子「!」

まどか「わ、わたし、織莉子さんの事は、嫌いじゃないですけど……お、織莉子さんには、キリカちゃんがいるじゃないですか!わ、わたしは、えと、だから、その~……織莉子さんの気持ちには、答えられない、ですっ!」

そこまで一気にまくしたてると、まどかは恥ずかしさのあまりドアを閉め切ってしまった。

織莉子「…………………」

その場には、頭を下げて大きな包みを差し出している織莉子が取り残されるのみだった。

断られるとは思っていなかった。

これが、本当の意味での『想定外』なのだろうか。

どこか冷静な頭で、そんなことを考えてしまう織莉子だった。

~~~

織莉子「……まさか、あの鹿目まどかが断るなんて……」

帰路に着いた織莉子が、そんな言葉を呟く。

織莉子はそれが未だに信じられなかった。

織莉子「完璧な作戦……パーフェクトだと思ったのだけれど……」

まさかこの期に及んで、『一服盛る作戦が失敗したから直接殺った』などとほむらに報告するわけにもいかず。

次はどんな作戦でまどかを狙おうか、暁美ほむらにはどのような言い訳をしようか、などと考えていた。

織莉子「……そう言えば、キリカ……」

今朝、美国の家を飛び出したきり、会っていない自らのパートナーのことを思い出す。

冷静に考えたら、あれはまずかったかもしれない。

いや、冷静に考えずとも、小さな方を本命とするのは無理があったと気付けたはずだった。

織莉子「……まぁ、いいわ。今日、帰ってきたら話す事にしましょう」

今は、自分も少なからず落ち込んでいる。

家に帰り、お茶でも飲みながら、次はどうするか考える事にしよう。

織莉子は、そう結論を出したのだった。

~~~

マミの家にて。

さやか「アーッハッハッハ!!失恋の一度や二度がナンボのもんじゃー!!」

杏子「人生山あり谷ありってねぇ!キリカの人生、今が谷の時期なんだろうよ!気にすんな気にすんな!この世にゃ星の数ほど女もいりゃ男もいるってもんだ!」

ゆま「きにしなーい!まえをむいていきていこー!」

マミ「むしろ失恋出来る事を幸せに思うべきよ、美樹さんも呉さんも!わたしなんて、失恋する相手もいないからしたくても出来ないってものよ!」

キリカ「アハハハハハ!なんか本当にどうでもよくなってきたやぁ!」

キリカとマミをはじめとしたお茶会組は、マミが買って来たシャンパンによって完全に出来あがっていた。

さやか「しっかしあの織莉子さんがまどかの事をねぇ!意外や意外!」

杏子「人間、見た目に寄らないって言うが、ありゃ本当だな!ようはあれだ!殺したい程愛してたってこった!アッハハハハ!!」

マミ「殺し愛!いいじゃない、それも素敵なものよ!」

ゆま「そうだ、キョーコ!はい、バレンタインのチョコだよ!」

杏子「おっ、サンキューゆま!お前は真っ直ぐ育てよなぁ!」

ゆま「ゆまは育ちざかりだから、すくすく育つもん!将来は、キョーコのお嫁さんになるんだぁ!」

杏子「そいつぁ楽しみだ!ずっと待ってるからな、ゆま!」

マミ「こら、佐倉さん、ゆまちゃん!失恋したばっかりの呉さんの前でそういう会話は冗談でもしないの!」

ゆま「ごめんなさーい!あはははは!」

さやか「恭介のバッカヤロー!逃した魚は人魚やでぇーーー!!」

キリカ「織莉子のバカヤローウ!でもやっぱり大好きだぁぁぁ~~~!!」

マミ「その気持ちは、いつか呉さんにとってかけがえのないものとなるはずよ!大事にしなさい!」

キリカ「本当にありがとう!キミ達はわたしの大切な恩人だ!」

さやか「恋の話なら、この失恋の大先輩に任せときんさい!愚痴なら、いつでも聞いたげるから!」

キリカ「感謝してもしたりないよ、美樹!」

―――案外と、キリカの立ち直りも早かったのだった。

数時間後。

さやか「恭介ぇ……ムニャムニャ……」

杏子「クカー……あー腹減ったぁ……」

ゆま「ムニュ……お嫁……さん……」

マミ「殺し愛……それもすて、き……クー……」

キリカを除く四人は、酔いつぶれて眠ってしまっていた。

キリカ「……だいぶ、助けられたよ……。ありがとう、みんな」

感謝の言葉をひとつ残し、キリカはマミの家を後にする。

キリカ(織莉子……キミの気持ち、今ならわたしは正直に受け止められる気がする)

美国の家へ向かいながら、キリカはいくつかの決心を固める。

織莉子が誰を好きであろうと、受け入れて見せる。

そして、それでもわたしは織莉子の事が好きだ、と。

キリカ(胸を張って、そう言い切って見せようじゃないか)

キリカの気持ちが前を向いたからか、はたまた別の事由によってか。

美国の家につくのは、思いのほか早かった。

キリカ(………よしっ!!)

外から家を眺め、キリカは意を決して家の中へあがる。

キリカ「ただいま、織莉子!」

挨拶をしながら、居間のドアを開けた。

織莉子「………」

中では、織莉子が椅子に座って目を瞑っていた。

どうやら、未来予知の魔法を使っているようだった。

邪魔にならないように静かにしながら、キリカは織莉子の正面に座る。

織莉子「―――………あら、キリカ」

キリカ「ただいま……織莉子」

諦観の笑顔を浮かべながら、キリカは再度ただいまを言う。

織莉子「ええ、お帰りなさい。どこに行っていたの?」

キリカ「ちょっと、心の整理をしに、ね」

織莉子「心の整理?」

顔に疑問符を浮かべながらも、織莉子はテーブルに大きな包みを置く。

キリカ「!? これは!?」

織莉子「話す前にキリカ、家を出て行っちゃったから知らないでしょうけれど……」

キリカ「いや待ってくれ織莉子、わかってるよ」

織莉子「キリカ……?」

キリカ「これは鹿目に渡すはずだった、バレンタインの本命チョコ……だよね?」

織莉子「ええ……結局、渡しそびれてしまったけれど」

キリカ「鹿目に、断られた、ということかい?」

織莉子「そう。だから、作戦の立て直しよ。と言っても、もう作戦を立てる必要はないのだけれどね」

たった今行っていた未来予知では、世界を滅ぼす魔女の姿が見えなくなっていた。

今日のどの行動が功を奏したのかはわからない。

ただ、言えることは。

これで、世界は救われた、ということのみだった。

キリカ「………織莉子は、やっぱり鹿目の事が好きなんだね」

織莉子「えっ」

キリカ「いいよ、わかってる……でもね、織莉子。織莉子が誰を好きであろうとも、わたしは織莉子の事を愛している。それは何があろうとも変わらない、強い、わたしの気持ちだ」

織莉子「ちょっ、え、あれ?なんだか話がこじれていない?」

キリカ「えっ?」

織莉子「わたしが愛しているのは、今も昔もこれからも貴女一人よ、キリカ」

キリカ「!?」

織莉子「この大きな包みは、その、別の事由で鹿目まどかに渡そうと思っていただけに過ぎないわ。貴女に渡したバレンタインチョコの包みが小さかった事に関しては、申し訳無いと思ってる。わたしの失態よ」

キリカ「え?それじゃあ、織莉子が鹿目の事を好きだっていうのは……」

織莉子「勘違いさせてしまってごめんなさい、キリカ。もう一度言うけれど、わたしが愛しているのは貴女だけよ、キリカ」

キリカ「………っ~~~~そっかぁ!!そっか、そっか、そっかぁ!!わたしの勘違いかぁ!!いやぁ、よかったよかった!!」

心のもやが晴れ渡ったような気分だった。

キリカ「いやー、なんだか安心したらお腹空いて来ちゃった。これ、食べてもいい?」

問いかけながらも、手は大きな包みを開封に掛かっていた。

織莉子「あ、それは!」

手早く開封し、中のチョコクッキーを口へと運ぶ。

キリカ「いただきまー―――」

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           γ ⌒ ⌒ `ヘ
          イ ""  ⌒  ヾ ヾ    ドガァァァァァァァァン.....
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  _ _i=n_ ._ [l_ .._....,,. .-ー;''!  i;;;~-ヽ_ii_i=n_ [l h__
  /==H=ロロ-.γ ,~ー'''l ! |'''ーヾ  ヾ 「!=FH=ロロ
  ¶:::-幵-冂::( (    |l  |    )  )=HロΠ=_Π
  Π=_Π「Ⅱヾ、 ⌒~"""''''''⌒~'"´ ノ;;'':::日lTΠl:::....

 Д日lTl,,..:''''"   ""'''ー-┬ーr--~''""   :::Д日lT::::
 FH=n.:::::'            |   |         :::FL日l」:::::
 ロΠ=:::::.:.        ノ 从 ゝ←美国の家 .::田:/==Д::

 口=Π田:::.                   .::::Γ| ‡∩:::::
 Γ| ‡∩Π::....                ...:::Eヨ::日lTlロ::::
 Д日lTlロ_Π::::.......            ...::::::::田:凵Π_=H:::
 =Hロ凵Π=_Πロ=HロΠ:::.................:::::::::::口ロロH「l.FFl

―――後に呉キリカはこう語る。

「魔法少女でなければ即死だった。これも殺し愛の形のひとつなのかもしれない」

そして、美国織莉子はこう語る。

「我ながら惚れ惚れする威力でした。これなら対魔女戦でも足手まといにならずに済みそうです」

………と。

QB「え?何故織莉子の未来予知で世界を滅ぼす魔女の姿が見えなくなったか、だって?」

QB「今日の彼女達の行動を見ていて、よくわかったんだよ」

QB「僕は、予想以上に恐ろしい人を相手に契約を迫っていたのかもしれないってね」

QB「宇宙のエネルギー問題も大切だけれど、僕たちが絶滅してしまっては元も子もないからね」

QB「まどかとの契約は諦めたのさ、これがね」




終わり

なんかもうゴメンナサイ
勘違いって怖いよね

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