沙々「わたし、マミさんの弟子になりたいんです!」 (492)
~☆
ー優木邸ー
沙々 「要件は、なんですか?お父さん」
優木父「……」
優木父「ようやくお前の行く先が決まった。見滝原だ」
沙々「……見滝原、ですか」
優木父「ああ、見滝原だ。それもあそこらでは一番のお嬢様学校に」
優木父「沙々、今の内に一つだけお前に言っておきたい事がある」
沙々「は、はい」
優木父「よく心がけなさい、もう二度と、あのような不名誉な事件は起こしてはならない」
沙々「……で、ですがあれは!周りの者達の言い掛かりだと話は付いたはずで――」
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優木父「そんな些細な事は問題ではない」
優木父「私が今しているのは、お前に罪があるかどうか?という種類の話ではない」
優木父「我々の家そのものに泥を塗るような不祥事は、どんな形であれもう二度と許されないと言う事だ」
優木父「わかったな?」
沙々「……はい、承知いたしました」
優木父「よし、わかったならすぐに手荷物等の準備を整えろ」
沙々「それでは、失礼します」
ガチャ バタン
沙々「――――」ギリッ
~☆
ービル 屋上ー
ピョン!
沙々「こんばんは、キュゥべえ。今日も相変わらず元気そうで何よりです」
QB「やあ、沙々。キミは元気で変わりなくやれてるかい?」
沙々「くふふ、とりあえずは現状、こうして五体満足でいられてますねぇ」
QB「そうか、それはよかった。喜ばしい返事が聞けてボクも嬉しいよ」
沙々(よく言いますよ、このお調子者が)
沙々(こっちの体調に関心なんて、本当はこれっぽちもない癖に)
沙々「……」キョロキョロ
沙々「それにしても見滝原、暮らすには一見して本当によさげな町並みです」
沙々「しかもこの街ってー、エモノが良く出るって評判ですよ?」
沙々「いいですねー、羨ましいですねー」
QB「けれどキミには、キミ自身の縄張りが既にあるじゃないか」
沙々「……ところがどっこい、ちょっと色々あってそうも言ってられなくなっちゃいました」
沙々「ここの縄張りって、巴マミとかいう魔法少女一人の物なんですよね?」
QB「うん、間違いないよ」
沙々「えっとですね、強い者がより多くの物を得ると言うのは、いわゆる自明の理ですよね?」
沙々「つまりその子よりもわたしが強いという事を証明したなら、ここ見滝原はわたしの縄張りになる」
沙々「何か問題はありますか、キュゥべえ?」
QB「いいや、ボクとしては特に問題はないよ」
QB「もちろんきちんと魔女を狩ってくれてさえいれば、だけどね」
沙々「ああ、よかったよかった!」
沙々(仲良しこよし、手を取り合ってなんて、まっぴら御免ですし)
沙々(こいつに表だって邪魔さえされなければ問題はない)
沙々「そういう事ならここ見滝原は、この優木沙々がぜひとも貰っちゃいますよっ!」
~☆
ー路地裏ー
沙々(さて、とはいえどうやって巴マミを倒したものか)テクテク
沙々「!」
沙々「……って、早速孵化しかけのグリーフシードじゃないですかぁ!」キラキラ
沙々(巴マミに洗脳魔法をかけるならば、魔力は当然必要になってきます)
沙々(けれど近頃はあまり魔女狩りが出来てなかったから、『種』のストックが少ないです)
沙々(この魔女は『種』として残すか、それとも普通のグリーフシードとして持つか)
沙々(いや、そもそも今はそっと影に身を潜めるべき。何事も極限まで慎重を期すべきでは?)
沙々(ここはかなり端の方だとはいえ、歴とした巴マミという魔法少女の縄張りなのだから)
沙々「……」
ー結界内ー
使い魔 沙々「……」テクテク
沙々(結局入っちゃいました)
沙々(まあ、結界が開いてすぐに入ったから、普通に巴マミが来るまで結構な猶予があるでしょうし)
沙々(のんびりとはいかなくても気楽にいきましょうか)
沙々(私はこうして使い魔に魔女の元まで案内させてるから楽勝ですし)
沙々「ほらっ!キビキビ歩くんですよ!」ゲシツ
沙々(……おや、前を使い魔の群れが塞いでますね)
沙々(あの量の使い魔を手懐けるのは手間ですし、何か策を考えた方が――)
ダァン! ダァン! ダァン!
沙々「ふぇ?」クルリ
??「ねえ、そこのあなた、ここが私の縄張りだって事わかってるかしら?」
沙々「え゛っ」
沙々(わ、私の縄張りって事はつまり……、つまりこいつは……)
沙々「あのーもしかしてぇ、巴マミ、さんですか?」
マミ「あら?知ってたのね。ええ、確かに私は巴マミよ」
沙々「…………」ダラダラ
沙々(……う、うわぁああああああああああああああ!)
沙々(そんなのおかしいでしょぉおおおおおおおおお!)
沙々(来るのが速すぎますよぉおおおおおおおおおお!)
沙々(この状況はマジでやばいってぇええええええええ!)
沙々「あの……」
沙々「わたし、優木沙々って言いますっ!」ニコォ!
沙々「ちょっと事情があって、最近見滝原にある中学校に転校する事になったんです!」ニコニコォ!
マミ「あらっ!私、見滝原中学の生徒なのよ」
マミ「ここで会ったのも何かの縁なのかもしれないわね」
マミ 沙々「…………」
沙々(うわあああああ!めっちゃ警戒されてるよぉおおおおお!)
沙々(洗脳魔法かけようにもこれじゃ無理だよぉおおおおおお!)
沙々(魔法少女姿を見られずに先手をとって、洗脳するわたしの必勝パターンがぁああああ!)
沙々「私が転入するのはあくまで見滝原にある中学校ってだけで、見滝原中学に転入する訳じゃないですけどね」
マミ「ふーん、そうなの」チャキッ
沙々(えっ?)
沙々(いつ、銃なんて手に握ったんですか……?)
沙々(あっ、これやっぱりダメだ、絶対まともにやったら瞬殺され――)
ダァン!
今日はここまで
途中酉外れてるの忘れてたけど、まあいいや
使い魔「」ベシャッ
沙々「!」
沙々(い、いつの間にこんな接近して……)
マミ「相手が使い魔だからといって、そんな無防備な姿を曝すのは頂けないわ」
沙々「あ、ありがとうございます、助かりました」
沙々(澄ました顔に善人オーラ漂う態度、ますます気に入りませんねぇ……)
マミ「……ところであなたの隣にじっとしてる使い魔は、いったいどうしちゃったのかしら?」
沙々「え」
使い魔「…………」チョコン
沙々(ヤ、ヤバいこれの事すっかり忘れてた)
沙々(巴マミに警戒されたりする前に手を打たなくちゃ)
沙々「さぁー?なんでかわからないですけど、さっきからずっとこんな調子ですよ、この子」
沙々「この子について行ったら、魔女の所にいけるんじゃないかなーって、わたしは――」
沙々(『おいお前っ!いますぐにわたしを襲えっ!』)
使い魔「キュ――」バッ
沙々「あっ――」ビクッ
ダァン!
使い魔「」ベシャッ
沙々(うーん、反応速度、射撃の精密さ、共に完璧ですね)
沙々「あわわわわわわわ」ペタン
マミ「…………ふぅ」
マミ「どんなに無害に見えても使い魔は使い魔、そういう油断が命取りになるから気をつけなさい」
マミ(もし優木さんの色々な態度が偽りでないのだとしたら、ルーキーである事に間違いはなさそう)
マミ(魔力も一般的な魔法少女と比べればちょっと低めみたいだし)
沙々(うへぇ、超露骨に品定めされてますよー)
マミ「えっと、見滝原の中学に転校するって事は、優木さんは日常ここで魔女を倒していくつもりよね?」
沙々「は、はい」
沙々「魔法少女の縄張りについて深く考えもせずに、こんな軽率な行動をとってしまった事は心から謝罪します」ペコリ
沙々「でも、わたし契約したてほやほやで、そういう細かいルールが身についてなかったんです」オドオド
沙々「だから一度限りで構わないのでどうか不問に――」オドオド
マミ「そんな縮こまらなくても大丈夫よ」
マミ「本来魔女による人々への被害を極力減らす事が、何よりも優先して魔法少女の使命であるべきですもの」
マミ「魔法少女同士の縄張りに関した諍いなんて、本来あるべきではないんだわ」
沙々(……なるほど)
沙々(こいつはおそらく今時珍しい、正義を気取ってる魔法少女って奴ですね)
沙々(きっと使い魔も倒すべきだとか言い始めるに違いありません)
沙々(見返りを求めぬ偽善者タイプの、わたしよりも圧倒的に強い魔法少女)
沙々(――実に洗脳しがいがありそうです)
マミ「それにそういった理想を抜きにしても私があなたを酷く責める理由はない」
マミ「だって優木さんは、近い内に自分の縄張りとなるだろう場所で魔女を倒しただけ」
マミ「もちろん私の縄張りでもあるけれど」
マミ「なるべく仲良くしていきましょう?優木さんもそう思ってくれてるわよね?」
沙々「…………」
沙々「よ、よかったぁ、マミさんと争ったりする事にならずに済んで」
沙々(マミさん呼びは、流石になれなれし過ぎますかぁ・……?)
マミ(マミ……、さん……)
マミ「そうね、私も嬉しいわ」
マミ「あのね、私が優木さんと話し合いたいのは、これからの縄張り云々についての事なんだけど――」
マミ「…………」
マミ「それよりもまず先に、魔女を片づけちゃいましょうか」ニコッ
沙々「は、はい!」
~☆
ー結界 最深部ー
魔女「グジュルルルルルル」
マミ「さて、ぶっつけ本番で二人組んで戦うのは、もしかしたらちょっと危険かもね」
マミ「ねえ優木さん、試しに今から一緒に戦ってみる?」
沙々「あっ、いえ、その、出来ればまず先輩のお手本が見てみたいなぁ……、なんて」
沙々(そうすれば、どういう魔法を使うのかとかじっくり見定められるし)
沙々(何よりもこっちの魔法をいきなり巴マミに知られなくて済みます)
沙々(今の内に洗脳魔法について誤魔化すそれっぽいネタを考えておかないと……)
マミ「そう?まあいいわ。じゃあ、ちゃちゃっと終わらせてお話の続きをしましょう」
マミ「念のためだけど、リボンで結界を張っておくわね」
沙々「はい、わかりました」
マミ「それじゃあ、……行ってきます」
シュルルルルルル
ビシィ!
沙々(リボンを出したり銃を出したり、色々と器用な魔法少女っぽい印象ですね)
ダァン! ドゴォン! ダァン!ダァン!ダァン! シュルルルル
魔女「グジャアアアアアア!」ビュオッ
マミ「はぁっ!」ダァン!
沙々「…………」
沙々(見れば見るだけまともに巴マミと戦う気が失せますね)
沙々(遠距離攻撃型の巴マミ相手だと、魔女を盾にしてもその隙間から攻撃を撃ち込まれやすいでしょうし)
沙々(厄介なのはあのリボン)
沙々(魔法少女一人だけで見た地力が底辺なわたしでは、あれに素早く対処する手段が全くない)
沙々(……やっぱり最初から薄々感じてたけど、相性最悪じゃないですか)
マミ「ティロ・フィナーレ!」バォオオオン!
沙々「………………」
沙々「きゃぁー!マミさん凄いカッコいいですぅー!」
沙々(ティロ・フィナーレ?)
沙々(いきなり何言ってるんですか、あの人)
沙々(マジで正義の魔法少女気取っちゃってますか?)
マミ「よいしょっと」スタッ
マミ「それじゃあ、私の家にちょっと寄って貰っても、構わないかしら?」
沙々「もちろん構いませんよ!むしろこちらからお願いして伺いたいくらいです!」
沙々(戦い方も魅せる事、観客を意識したような戦い方で)
沙々(すっごいうざかったですけど、最後のってホントなんなんですか)
沙々(強ければそういう遊びを入れる余裕が出てくるって訳ですか?)
沙々(ものすごぉーく、気に食わないです)
沙々「……あのぅ、最後のって、なんだったんですか?」
マミ「最後の?」
沙々「マミさん高らかにティロ・フィナーレって……」
マミ「あ、ああ、あれのことね。ちゃんと理由はあるのよ」
マミ「TVとかの魔法少女って希望に溢れてる事、多いじゃない?」
マミ「もちろん現実の魔法少女がそんな物じゃない事はわかってるわ」
マミ「だけどそれを真似る事で、少しでも彼女達に近づけるように」
マミ「皆に、そして自分に希望を与えるような存在になれるように」
マミ「魔女との過酷な戦いで心挫けぬよう奮い立つため、私は必殺技を叫ぶようにしてるの」
沙々「へぇー、そうなんですかぁっ!」
沙々「わたしそこまで魔法少女について深く考えた事ありませんでしたっ!」
沙々「やっぱりマミさんはどこをとっても、完璧な魔法少女なんですね!」
沙々「強くてカッコよくて、わたし、憧れちゃいますぅ!」
マミ「…………」
マミ「そんな価値、私にはないわよ」
マミ「私はただ、自分の出来る事を精一杯やり遂げようと、努力してるだけ」
沙々「?」
沙々(少しだけ、目が濁った?)
沙々(でも、それでも、依然変わらずに、自分が正しい事をしてる、そう確信した奴特有の目をしてる)
沙々(…………あ ゛ぁ゛ー、ムシャクシャしますよー)
沙々(いつか巴マミに、地べたの埃を、直に舐めさせてやりたいですねぇ)
今日はここまで
性根の半分くらい腐ってるけど沙々さん良い子なんですよ!という設定
~☆
ーマミホームー
マミ「さあ、どうぞ」
沙々「おじゃましま-す!」
沙々(へぇ、いい家に住んでるじゃないですか)
マミ「そこのテーブルに座っててくれるかしら」
マミ「お茶とお菓子を用意してくるから」
沙々(自分のテリトリーに入って、無意識に少しだけ警戒を解いてますね)
沙々(これなら目を直に見れば、警戒を緩めるチャームくらいはかけれそうです)
沙々「ご両親とかはいつ頃お帰りになるんですか?」
マミ「…………もう、どっちも死んでしまったわ」
マミ「だから私は親戚の世話で、この家に一人暮らしさせて貰ってるってわけ」
沙々「あ、あうぅ……」
沙々「し、知らなかったとはいえ、無遠慮にデリケートな事を聞いてしまって、あの、本当に申し訳ないです」
マミ「いいえ、大丈夫、気にしないで」
沙々(ああ……、せっかくくつろいでた心がまた強張っていく……)
~☆
沙々(ピーチパイも紅茶も結構おいしかったですね)
マミ「さあ、一息ついた所で、今後についてのお話をしましょうか」
沙々「は、はい」
沙々「わたしって魔力、元からそんな多くないですし」
沙々「ここの狩り場のある程度小さな所さえ分けて貰えばどうにか……」
沙々(とても不本意ですけど、このままでは勝てないのが明らかですから仕方ないですね)
マミ「ねえ、優木さん」
沙々「なんですか?」
マミ「あなたは、自分の将来的なグリーフシードの取り分を少なくしてでも、使い魔を倒すべきだと思う?」
マミ「たとえ全員を救えないとわかっていても、見知らぬ誰かのために使い魔を倒すべきだと思う?」
マミ「……いえ、もう少し訊き方を単純にするわ」
マミ「あなたは、いついかなる場合でも、努めて使い魔を倒すべきだと思う?」
沙々「…………」
沙々(これは、どういう答えを期待しているんでしょう)
沙々(彼女が基本的には、使い魔を倒すべきだと考えている事はもはや疑いようがない)
沙々(問題はいついかなる場合でも、という仮定です)
沙々(印象としては、自分を犠牲にしてでも使い魔を倒して人々を助けるべき、とか言いそうですが)
沙々(綺麗事だけでは生きていけない。皆を助けるためには自分だけは生き残っていなければならない)
沙々(だから人々の多少の犠牲は必要といったスタンスの魔法少女の可能性も一応あります)
沙々(……どちらにせよ、倒さないべきというよりは倒すべきと言った方が、後々相手の主張に合わせやすいか)
沙々「倒すべきだと、私は思います」
マミ「どうして?」
沙々「だって、悲しいじゃないですか」
沙々「私の知らない所で、私の倒さなかった使い魔が誰かを苦しめるなんて未来は」
沙々「誰よりも何よりも、自分自身のために、私はどんな時も使い魔を倒すべきだと思います」
マミ「…………」
沙々(いや、この言葉の選び方はちょっとまずかったかもしれません)
沙々(使い魔を倒すべきと考えている魔法少女は元々少ない)
沙々(ご機嫌取りをしているのだと、目ざとく見破られる可能性がある)
沙々(……まあ実際、見知らぬどこぞの誰かさんの事なんか気にしてたら)
沙々(魔法少女としてグリーフシード不足でろくに生きていられませんけどね)
沙々(それとも魔女が次々と湧き出るここ見滝原とかでならば、あるいは実現可能ですか?)
沙々(そんな途方もない理想を追求しようと思うなら)
沙々(まずは前提として、人に手を差し伸べられるくらいの豊かさを、自分が備えていなくては)
沙々(せっかくの能力をそんな事に使うなんて、私からすればとんだ間抜け、無駄遣いですけど)
マミ「……優木さん」
沙々「はい?」
マミ「これから私と、魔法少女のコンビを組んでみない?」
沙々(あっ、問題無かった)
沙々「魔法少女のコンビ、ですか……」
マミ「私は見滝原にいきなり私にとっての不可侵の場を新しく設けるよりは」
マミ「あなたと二人で試しにやってみたい」
マミ「二人で協力すれば戦いにおける危険は確実に減らせるわ」
マミ「それにあなたには色々教えてあげられる事が私、あると思うの」
マミ「二人で組んだ時の一番大きくてわかりやすい問題は、グリーフシードの問題だけど」
マミ「ここは魔女が多いし、二人分なら余裕で賄えると思う」
マミ「どう?私と仲良くしてみる気はない?」
沙々「…………」
沙々(さて、どうしようか……)
沙々(馴れ合いはあまりしたくないですけど、現実問題まともにこいつに勝てる気しませんし)
沙々(グリーフシードは手に入る、強力な魔法少女の庇護下に加われる)
沙々(ここに入り浸れば、あの押し込められた感じのするさながら巣箱)
沙々(狭く居心地の悪い借家に帰らずに済みます)
沙々(もうちょっと娘のためにマシな家を借りろよクソ親父)
沙々(……巴マミとこれから親密になっていけば、いずれ色々と彼女を洗脳する機会もあるでしょう)
沙々(洗脳する前から友好関係を築けているというのは、私にとっても好都合か)
沙々(今現在私の実力では、認識を明らかに変える程に絶えず洗脳し続けるのは、魔力をバカに食います)
沙々(ちょっとした刺激で制御下から外れてしまうみたいですし)
沙々(いっそ長期的に腰を据えて、深層心理に食い込むような洗脳魔法を構築してみるのも、ありかも知れませんね)
沙々(このいけすかない魔法少女には、控えめに見てもそれくらいの価値はあります)
マミ「お答えは、今ここで聞かせて貰えるのかしら?」
沙々「…………」
沙々「わたしはマミさんとコンビには、なりません」
マミ「……つまり、あくまで縄張りの一部割譲を要求するわけ?」
沙々(こ、こわぁっ……!)
沙々「いいえ、そういう訳じゃなくて、わたしとしてはもう少し別の関係になりたいんです」
マミ「別の、関係?」
沙々「ええ」
沙々「わたし、マミさんの弟子になりたいんです!」
~☆
沙々(で、なんで師弟関係が決まった途端にお泊りなんですか)
沙々(まあ、いいですけど)
沙々「………………」
沙々(どうにも寝付けませんねぇ)
沙々(……この来客用の布団、今まで一度も使われてなさそうな気配がひしひしと――)
マミ「佐倉さんっ!」
沙々「はふぇっ?」ビクッ
マミ「…………」クー クー
沙々(お、お驚かせんじゃねーですよ、こんにゃろう)ドキドキ
沙々(今何時だと思ってるんですか。声の大きさ考えてくださいよ、まあ無理でしょうけど)
沙々(……佐倉さん、一応記憶しておきましょうか。何かに使えるかもしれませんし)
沙々(おおっと、よく見れば巴マミの心の警戒が相当に緩んでますね)
沙々(流石に歴戦の魔法少女でも、夢の中では無防備なようで)
沙々(それじゃあちょっと、本格的な洗脳に向けた下拵えでも――)ワキワキ
マミ「う……あ……う……」グスッ
マミ「パパぁ……、ママぁ……」ポロポロ
沙々(ええっ……!)
沙々(なんで急に泣き始めてるんですか……!)
沙々(まだ私、何もしてないですよ……!)オロオロ
マミ「…………置いて行かないで」
マミ「皆、私を置いて行かないでよぉ!」パチッ
沙々(あっ、起きた)
マミ 沙々「………………」
マミ 沙々(うわぁ、なんか凄く気まずい……)
マミ「あの、優木さん、夜もだいぶ遅いけどどうかしたの……?」
沙々「どうかしたのって、それはマミさんの方ですよ」
マミ「えっ……?」
沙々「だって、マミさん」
沙々「泣いてるじゃないですか、今」
マミ「……あっ、ホントだ」クスッ
沙々(ホントだって……、あなたねぇ……)
沙々(とりあえず目を見て、警戒を緩めるチャームをかけておきましょうか)
沙々「寝言で佐倉さんって人の名前を呼んでましたけど、誰ですか?その人」
マミ「えっ、あらやだ、私、寝言なんて言ってたの?」
沙々「はい、間違いなく言ってました」
沙々「そのせいで目が覚めちゃいましたよー」
沙々(嘘ですけど)
マミ「そ、そうだったの、ごめんなさい!」
沙々「いえいえそんな、気にしないでくださいマミさん」ニコニコ
沙々(くふふ、私を驚かせたのに見合うくらいの罪悪感は、せめて感じて欲しい物です)
沙々「で、話を戻しますけど、佐倉さんっていったいどちら様です?」
マミ「…………」
マミ「佐倉さんはね、あなたとこうして知り合う前に魔法少女のコンビを組んでた子なの」
マミ「ごく最近までそうだったんだけどね」
マミ「パパとママを交通事故で亡くしてから、唯一私の事を理解してくれた子だった」
マミ「魔法少女として見つけた使い魔は全て倒すべき」
マミ「そんな私の考えに完全に同意してくれる子は、それまで一人もいなかったから」
沙々(それは当然、そうでしょうね)
沙々(見返りもなく、自分にとってむしろ不利益にしかならない事をやりたがる子は少ないでしょう)
マミ「だから私も頑張ったのよ。どうにか彼女に気に入られようって」
マミ「でも、ダメだった。全部台無しになっちゃった」
マミ「一人ぼっちは嫌だわ。苦しくても辛くても一人でそれを抱えるのは、私には重荷過ぎる」
マミ「誰か本当の意味で、私の味方になって欲しかった。私の傍にずっといて欲しかった」
マミ「それがあの子だったら、どんなに良かった事か……」
沙々(なんだ、想定していたよりずっと脆くて弱そうな子じゃないですか)
沙々(しかし逆説的に言えば、このメンタルでこれ程自分を追い込む立場に自分をおけるというのは)
沙々(あるいは心が強いのかもしれません)
沙々(……なーんか嫌な感じで、胸の奥がもやもやっとしますねぇ)
マミ「優木さん」
マミ「誰にも理解されない、自分が誰にとっても必要ないって感じる気持ち……、あなたにはわかる?」
沙々「…………まあ、私個人としては、そういうのわかってるつもりではありますよ」
沙々(正直私からすれば、そこまで色々なモノを持っていて、そんな悩みを抱えてるあなたは贅沢ですけどね)
沙々(誰からも必要とされない人間というのは、もっと本当によわっちい物ですよ)
沙々「…………」
沙々(――もしかして私は、巴マミの境遇に、自分を重ねて同情している……?)
マミ「ふふふ、不思議ね」
マミ「逢ったばかりだというのに、あなたと一緒にいると心が安らぐわ」
マミ「まさかこんな話を、いきなりあなたに打ち明けちゃうなんて、さっきまで思ってもみなかった」
マミ「佐倉さんの事もあったし、いつもの私なら、もっとあなたの事を警戒しちゃうはずなんだけど」
マミ「もしかして私達って、何か特別な縁みたいなものがあるのかもね」
沙々「は、ははは、不思議ですねー」
沙々(それはそうですよ。だってそういうチャームを、この家に入ってから事あるごとにかけてるんですし)
沙々(……はたしてグリーフシード、このままで足りるんでしょうか)
沙々「まぁなんにせよ、心や体が疲れた時にはぐっすり眠ったほうがいいですよ」
沙々「ほら、ちゃっちゃと布団の中で目を瞑った、瞑った」
マミ「……それはちょっと、難しそうかな」
沙々「えっ、どうしてです?」
マミ「こういう時って寝直すと、いつもさっきみたいな嫌な夢をまた見ちゃうのよ、私」
マミ「だから、どうしても眠らないとってなるまで起きてから……」
沙々「…………」
沙々「仕方ないですねぇ、じゃあ特別に、私の魔法を少しお披露目しますよ」
マミ「あっ、優木さんの固有魔法が何なのか、そういえばまだ聞いてなかったわね」
マミ「いったいどんな――」
沙々「はいはい、それは、魔法を実際に受けてみてからのお楽しみですよ」
沙々「……マミさん。しっかり私の目の奥を無心で見つめてください」
沙々「抵抗しようとしないでくださいね、かからなくなっちゃうんで」
マミ「?」
沙々「……」スッ
マミ「ひぅっ!」ビクッ
マミ「な、何!?」
沙々「肩に触られるくらい我慢して下さいよ……」
沙々「さあ、力を抜いて……。力を抜いて……。力を抜いて……」ユサユサ
マミ(い、いきなりそんな事を言われても……)
沙々「…………」ユサユサ
沙々(そろそろ、ですかね)
沙々『心安らかに、朝まで深く眠りなさい』
マミ「!」
マミ「…………」コテン
マミ「…………」クー クー
沙々(……これで、巴マミとの『繋がり』が出来た訳です)
沙々(目的に向けて、着実に前進してるのは確か)
沙々(そう、素直に捉えるべきでしょう)
沙々「――でも、柄にもなく何をやってるんでしょうね、わたし」ハァ
今日はここまで
だいたい本編時間の一年から一年半くらい前のつもり
杏子とマミの決別後すぐくらい
だから沙々殿もいくらか辛酸を嘗める前なので比較的まだ良心的
キュゥべえに久しぶりとか言ってたので、
マミさんが契約してから数カ月後位に契約した年季の入った雑魚魔法少女という設定
次回本編時間までとびます
やる気と話の展開が決まるかどうかによって間空くかもしれないです
乙です
前からマミ沙々は面白そうな題材だと思っていたので、少しずつ増えてきてるのは嬉しいなー
ただ、マミさんは確かパパママ呼びじゃなくてお父さんお母さんって言ってたはずなので、そこだけは変えた方がいいかも
沙々マミ略してササミ
魔法少女狩りとか別の時間でやってるキリカに言われたくはねーよと漫画読みながら思った
外伝のは織莉子が好きなだけの白いキリカだから問題ない
>>44
あれ?と思ってTDS見たらマジでした
また久し振りに読み直さなくちゃ……
せっかくだから今直そう
>>15 10行目
× マミ「本来魔女による人々への被害を極力減らす事が、何よりも優先して魔法少女の使命であるべきですもの」
○ マミ「魔女による人々への被害を極力減らす事が、何よりも優先して魔法少女の使命であるべきですもの」
>>33 2行目
× マミ「パパぁ……、ママぁ……」ポロポロ
○ マミ「お父さん……、お母さん……」ポロポロ
~☆
ー約一年後 マミホームー
沙々「ちょっとマミさん!」
沙々「いつまでも寝転がってテレビ見てないで、家事の手伝いしてくださいよ!」
マミ「えー、少し待ってー。今凄い良い所なのよー」
沙々(これでもかと堕落しきってますねぇ……)
沙々「私との同居が決まった時は、もっとシャキッとしてたじゃないですか!」
マミ「同居、というかあなたが半ば無理やり私の家に転がり込んできたんじゃない」
マミ「嬉しくなかった、とはもちろん言うつもりないけど」
マミ「……って、あら大変!うっかり紅茶こぼしちゃった!」
マミ「優木さーん、とりあえずティッシュとって―!」
沙々「ああ、もう……、まったくもう……」
沙々(やれやれ、共同生活を始めてからの巴マミの変貌ぶりときたら……)
沙々(とはいえ、あの借家に一人でいるよりは今の状況の方が余程心地良い)
沙々(何もかもが息苦しかった実家にいる時と比べるならば、もはや天国にいるみたいなものです)
沙々(それでもやっぱり、こいつが出会った時の初心を思い出してくれたら……)
沙々(と、思ってしまうのはいささか贅沢過ぎる望みなんですかねぇ)
沙々「皆の憧れな先輩っぽい、そういう最初の優雅な雰囲気はどこ行ったんですかぁ、巴先輩?」ニコォ
マミ「ふん、いっつも猫被ってる子に偉そうな事言われたくないわ」
マミ「一緒に暮らし始めてから、色々家事とか教えてあげたじゃないの―」ゴロゴロ
マミ「魔女の倒し方だってー、勉強だって―、他にはー」ゴロゴロ
沙々「あー、うるさいうるさい!」
沙々「わたしがやればいいんですよね、わかりました、わかりましたから」
沙々(ふんだんに時間をかけて、巴マミに可能な限りの洗脳を施してきた)
沙々(その中で当然、彼女の精神の奥深くにも色々な形で手を触れてきた)
沙々(まさかそれがこんな弊害を生んでしまうとは……。頭痛いです)
沙々(完全にわたし、甘える形で依存されちゃってますね、これ)
沙々(……わたしが魔法少女個人として、彼女がいないととてもやってけない位に弱いっていうのも)
沙々(巴マミが弱い自分を曝け出す、良い後押しになったのかも)
沙々(でもそれにしたって、いくらなんでもこの堕落っぷリはひどすぎるでしょう)
マミ「よーし、番組も終わったし、そろそろ私も働いちゃおうかなー」
沙々「もう、やるべき家事は一通り全部終わっちゃいましたよ……」
マミ「えっ」
~☆
ー夜 街中ー
スタスタ スタスタ
マミ「…………」
沙々(こうやって出歩いてる時の頼もしさを、家でも常時発揮してくれてれば)
沙々(文句なしに優秀な手駒なんですけどねぇ……)
マミ「優木さん」
沙々「なんですか?マミさん」
マミ「止まって。あちらの方が何かを言いたそうにしてるから」
沙々「……!」
沙々(うわぁ、普通に気付かなかった)
沙々(長い黒髪の少女)
沙々(この時間に外をうろついてる事)
沙々(そして何より漂う魔力の気配からして、ほぼ間違いなく同業者ですね)
マミ「どういった、ご用件かしら?まずはお名前からお聞かせ願いたいのだけど」
ほむら「……」
沙々(うへぇ……)
沙々(こっち、それもわたし一人を明らか睨んでますよー)
沙々(どう見てもわたしよりは強そうな雰囲気です)
沙々(……?)
沙々(にしても魔力が、よくわからない随分珍しい波長をしてますね)
ほむら「私の名は暁美ほむら。この度、見滝原中学に転入が決まった魔法少女よ」
沙々(えぇー、私も引っ越してきた口ですけどまた増えるんですかー)
沙々(いくら見滝原の魔女の質が良くて豊富だといっても、三人だと流石に旨味が少ない)
マミ「そう、暁美さんね。私は――」
ほむら「あなたの事はもう知っているわ。巴マミ、見滝原中学三年のベテラン魔法少女」
沙々(……ふーん。巴マミってここに来る前の私が既に知ってただけあって、やっぱり有名人なんですか)
ほむら「それで、そちらの魔法少女は、どちら様?」
沙々「あっ。わたしですか!優木沙々って言います、はじめまして暁美さん!」ペコリ
沙々「今後仲良くしていきましょう!」ニコォ
ほむら「…………」
沙々(……って、返事はなしかよ!)
マミ「ここは私の縄張りよ」
ほむら「ええ、知ってるわ」
マミ「だからここでは、私のルールに従って貰いたい」
ほむら「当然ね」
マミ「具体的には見つけた使い魔は全て駆除して貰いたいの」
ほむら「わかった」
沙々(おや、物分かりがやけに良いですね)
マミ「そう、それは良かった」
マミ「それで次に提案なんだけど、私達とチームを――」
ほむら「残念だけどその提案に関しては保留させて貰うわ」
沙々(物分かりが良い、わけでもなかった)
ほむら「はっきり言って、そちらの魔法少女の得体が知れないし」
ほむら「何よりあなたに、背中を普段預けて戦う気に今はなれない」
沙々(失礼な。こっちからしたら得体のしれないのはまさにそっちだっつうの)
沙々(まあわたしって洗脳系魔法少女ですし、判断そのものは事実正解ですけど)
沙々(というか巴マミにすら背中を預ける気にならないとか、超贅沢ですね)
沙々(まあ戦力の問題じゃなくて、人として信用出来ないって事なんでしょうが)
沙々(実際これも魔法少女としては正しい判断です)
マミ「……そう、それがあなたの答えね」
ほむら「ええ」
マミ「それなら魔女狩りの時間であろう放課後、互いに見滝原に不可侵の縄張りを設けましょう」
ほむら「いいえ、街中を自由に歩かせて貰えないと困るわ」
ほむら マミ「…………」
沙々(どうも空気が怪しくなってきました)
沙々(戦いが始まったら巻き込まれないように、ひとまず離れましょう)
沙々(隙あらば背後から魔法弾で攻撃か)
沙々(巴マミに奴の注意が完全に向いた瞬間、ちょっと魔法を使って手元を狂わせるか)
マミ「あなた、私達と敵対するつもりはないのよね」
ほむら「もちろん」
マミ「じゃあ何?グリーフシードが余程たくさん欲しいの?」
ほむら「あるに越した事はない」
ほむら「けれど使い魔をわざわざ捜索して排除したりしなければ」
ほむら「節約するのもそれほど難しくはない」
ほむら「あなた達が無駄に消費さえしなければ」
マミ「する訳ないでしょ」
沙々(ごめんなさい、わたし、巴マミで色々余計な洗脳の実験とかしちゃってます☆)
マミ「グリーフシードが目的ではない」
マミ「しかし放課後、歩き回らなくてはいけない」
マミ「という事は他に何か特別な目的があるのね?」
ほむら「それをあなたに教える義理はない」
マミ ほむら「…………」
沙々(……これはきっと、どっちかの血が今ここで流れますね)
沙々(固有魔法が何かすらてんでわからないのと、巴マミを出来れば戦わせたくないのですが)
沙々(いざとなったらマミの精神を操作して、この場から無理にでも引かせましょうか)
マミ「……これ以上の話し合いは無意味ね」
マミ「なるべくでいいから、これから私達と顔を合わせずに済むようにしてくれるかしら?」
ほむら「ええ、そうね」
ほむら「なるべく努力するわ」
マミ「手を取り合う事が出来なくて本当に残念。さようなら、暁美さん」
ほむら「――たとえ嫌でも共闘関係を結ばなければならない、あるいはそんな時が近い内に訪れるかもしれない」
マミ「……?」
ほむら「いえ、その言い方は正しくなかった。訂正するわ」
ほむら「そういう日に願わくばあなたが辿り着けますように」
ほむら「さようなら、巴マミ。それと優木沙々。また会いましょう」
スタスタ
沙々(ふー、何もせずに両者が戦闘回避してくれて本当に良かったです)
沙々「暁美さんって人、凄く変な子でしたね?」
沙々「何考えてるのかよくわからないし、相手を突き放す調子があるって言いますか、なんていうか」
マミ「ええ、そうね」
マミ「…………ふぅ」
マミ「ちょっとだけ、疲れちゃったわ」フフッ
沙々「お疲れ様です、マミさん」
沙々(これは後で少し弄って、ぐっすり眠れるようにしてあげた方が良さそうです)
~☆
ー数日後 結界ー
ジャキン ジャキン ジャキン
さやか「嘘だよね、これって……」
まどか「ほむらちゃんっ……!」
ほむら「二人とも、私から離れないで」
ほむら(進路を変えたのに、ちょっと目を離した隙に二人が使い魔の結界に引っかかるなんて)
ほむら(まさかの大失敗ね、取り返しがつくと良いけど)
ほむら「……」ヘンシン
まどか さやか「!?」
ほむら「二人とも、この円状の線内部にいたら安全だから」ギュルッ
ほむら「もっとも出ようと思っても出れないでしょうけど」
さやか「……ほむら、あんたって何者なのさ?」
ほむら「何者――ね」
ほむら「それよりまずはこの場を無事に切り抜ける事が重要だわ、違う?」
さやか「そ、そうだけど――」
ほむら「分かってくれてよかった」
ほむら「行ってくるわ」
ほむら(時間停止はこんな雑魚相手にわざわざ使いたくない)
ほむら(しかし、巴マミ、それと優木沙々とここで鉢合わせるのは避けたい)
ほむら(やはり出し惜しみなどせず――)
ダァン!
ほむら「!」
まどか さやか「!?」
マミ「助太刀するわ」
沙々「右に同じくです」
沙々(とはいえ私がやるべき事なんてほとんど何もないんですけど)
ほむら(ああ、間に合わなかったか……)
沙々「使い魔達!」
沙々「slow!」
沙々(『動きを緩めろ!』)
使い魔「」ビクッ
使い魔「ジャキン… ジャキン…」ノロノロ
沙々「さあっ!マミさん、やっちゃってください!」
マミ「暁美さんも、手伝ってくれるかしら?」
ほむら「……」
ほむら(まあ、こうなってしまえば仕方ないわね)
スチャ
ズガガガガガガガガ
ダァン!ダァン!ダァン!
今日はここまで
微妙に書かなそうな設定
マミさんに洗脳魔法の真髄をあれこれ長期的に深く試しまくった沙々
外伝(本編?)沙々は人間の表層的な所ばかりを短期間ペースで操っていた
おかげで対人間の魔法は外伝の方よりも飛躍的に進歩
基礎的な魔法に関してもマミさんの指導の元結構進歩
ただし使う機会が少なかったので魔女使役の方は外伝に比べるとかなり不得手に
ほぼ間違いなく書かない設定
ほむら 織莉子パパが失脚せずにループを重ねた
外伝ほむらが「ほむら」だとするとこっちは「ほむら´」
この時間軸でもそれは同じで
残念ながらキリカは織莉子に出会わずのまま
沙々にゃんの魔法設定とかも描写はあまりしないだろうけどきちんと考えとかないとね
訂正
>>36 三行目
× マミ「パパとママを交通事故で亡くしてから、唯一私の事を理解してくれた子だった」
○ マミ「両親を交通事故で亡くしてから、唯一私の事を理解してくれた子だった」
今日の更新多分途中で突然中断入ります
~☆
マミ「よろしくね、鹿目さん、美樹さん」
まどか「よ、よろしくお願いします」
さやか「よろしく、マミさん」
沙々「…………」
沙々(こうまじまじと見るとヤバいですね)
沙々(このまどか、とか言う奴の規格外の素質)
沙々(さっさとこいつら放置して帰りたいですよ、マジで)
さやか「それで、お二人――いや、ほむらを含めて三人は何者なんですか?」
マミ「……何者、と言われるとこう答えるしかないわね」
マミ「魔法少女、よ」
さやか「魔法……、少女……?」
マミ「そう、私達はキュゥ――」
ほむら「待って!」
マミ さやか「!」ビクッ
まどか「ほ、ほむらちゃん?」
ほむら「二人に、その情報を教える必要はない」
マミ「……と、いうと?」
ほむら「彼女達は幸せに、今この時を生きている」
ほむら「あなたのしようとしている事は、他人をただ不必要な苦難に引き込むだけ」
ほむら マミ「…………」
沙々(うわぁ、共闘してせっかく穏やかな雰囲気だったのに、また険悪ですよー)
沙々(でも流石にこの二人の前で表だって戦いはしないでしょうし、まだ慌てる必要はなさそうですね)
マミ「暁美さん、そうも言っていられないわ」
マミ「彼女達にその素質があるのは一目瞭然でしょ、特に鹿目さん」
ほむら「ええ、そうね」
マミ「彼女達はこうして日常とは違う世界をその目で見て知ってしまった」
マミ「遅かれ早かれ、キュゥべえが彼女達の前に姿を見せるはずよ」
まどか さやか(きゅぅ、べえ……?)
沙々(マミ、あなたまさかこの二人に、自分の思ってる魔法少女の姿をバカ正直に見せるつもりですか?)
沙々(あなたはこの二人が魔法少女になった場合)
沙々(決して避けられない面倒について理解してないんですか?)
沙々(……いえ、気づいてはいるけど、無理に目をそらしていると捉えるべきか)
マミ「そうなって万が一、まだ何も考えない内に闇雲に契約してしまうよりは」
マミ「今ここで、経験者の立場から先に色々教えてあげるべきだと私は思う」
ほむら「私が、キュゥべえを彼女達に近づけさせないわ」
マミ「四六時中?そんなの不可能よ」
ほむら「私が二十四時間ずっと張り込めば問題はない」
マミ「二人共の家に、絶えず張り込むの?どちらにせよ現実的ではないわね」
ほむら「…………くっ」
ほむら(こうやって、私と巴マミがまどか達の前で、一応敵対せずに対峙するのは珍しいパターン)
ほむら(キュゥべえに関した後ろめたさと巴マミへの恐怖心もあって)
ほむら(ついつい誤魔化そうとするせいで後手に回っちゃうわね)
ほむら(しかし、巴マミの生き様、あるいは死に様)
ほむら(そのどちらもがまどか達の契約を強く誘発するファクターになる)
ほむら(出来れば接触を抑えたい所なのだけれど……)
さやか「ねえ、ほむら」
ほむら「何?」
さやか「私、マミさんの話聞いてみたい」
まどか「わ、私も!」
マミ「……暁美さん、彼女らには知る権利がある。もちろん選択する権利もね」
沙々(あーらら。これ、家にこいつらがやってくるコースまっしぐらじゃないですか)
ほむら「間違った選択を誰かがしようとしているなら、その前にそれを止めてあげる事も必要だわ」
マミ「間違っている、それを決めるのは私達他人の役目じゃない。彼女ら自身の意思であるべきよ」
沙々(まあ、話を聞かせるくらいなら、いいでしょう)
沙々(無知な状態から下手に首を突っ込まれるよりはましです)
ほむら「…………」
ほむら「わかったわ。今日はこちらが引かせて貰う」
マミ「できれば暁美さんも――」
ほむら「いいえ、私からは魔法少女について彼女達に教えたい事は何もない」
ほむら「まどか、そしてさやか」
さやか「な、何さ……」
ほむら「絶対に、魔法少女なんかにはならないで。それはあなた達を不幸にする選択だから」
スタスタ スタスタ
さやか「……ほむらの奴、感じ悪いなぁ」
まどか「ほ、ほむらちゃんはきっと――」
沙々「感じ悪くは、ないと思いますよ?」
さやか「えっ?」
沙々「だって、魔法少女って現実、厳しい世界ですし」
沙々「あれだけ人を寄せ付けない、興味なさそうな人間がわざわざ語気を強めて忠告してくれる」
沙々「それはあなた達の事を、彼女が多少なりとも大事に思ってるからこそじゃないでしょうか」
さやか「そ、そうかなぁ」
沙々(何か他の意図がある可能性ももちろんある)
沙々(けれどこの二人の契約を阻止する要因は、一つでも多く確保しておいた方が良いですからね)
沙々(今、仲違いをされるとこっちが困るんですよ)
マミ「…………」
ほむら(やはり、一人新しく魔法少女が加わっただけあって、この時間軸は特殊ね)
ほむら(私一人で動くには、するべき事、わからない事が時間の少なさに比べて多過ぎる)
ほむら(二人の魔法少女、私にとっては相性最悪な拘束系と、もう片方の魔法はまだ分からない)
ほむら(いくら時間停止が強力とはいえ、そういう意味でも一人で事に臨むのは得策ではない、か)
ほむら(仕方がない)
ほむら(佐倉杏子に協力を頼めるか、これから風見野に行ってみましょう)
~☆
ーマミホームー
さやか「このケーキ、凄くおいしいです、マミさん!」
さやか「だよね、まどか?」
まどか「わ、私も凄い美味しいなって思いました」
マミ「ふふ、ありがとう」
沙々(二人は今、私に対してほとんど何も警戒していない)
沙々(それはマミの人徳のおかげか)
沙々(この家のアットホームな雰囲気のおかげか)
沙々(とにかく、二人の心的表層が明瞭かつ容易に覗けるのは幸いです)
沙々(まずは美樹さやかから)
沙々(明るく活発で、潔癖な面のある恋する年頃の少女)
沙々(こういう浮かれた輩は、ついぶちのめしたくなっちゃいますね)
沙々(掌握は一見簡単そうですが、私にとって優れたと思う所が少ないので洗脳はきつそうです)
沙々(次に鹿目まどか)
沙々(得意な物はこれといってなし。自分の無力さへのコンプレックスあり)
沙々(周囲の皆と仲良く幸せに毎日を過ごしていた事以外は、心理的に契約前の私と良く似ています)
沙々(ただし何故か魔法少女の素質がどう見ても一個人のそれじゃない)
沙々(これだけで妬み、洗脳の材料としてはもう十分)
沙々(問題は得意な物のない人間を操って、いったい何に生かせるのか)
沙々(……うーん、手駒候補としては文句なしの役立たず共です)
マミ「優木さんは、他に何かつけたしたい事あるかしら?」
沙々「えっ、特にないですよ」
マミ「そう、それじゃあ今日はこれで解散して、明日から正式に魔法少女体験ツアー開始よ」
まどか「な、何だか緊張しちゃうなぁ」
さやか「大丈夫、まどかは私が守るから」
まどか「えーと、それだともっと不安かなって」
さやか「ちょっと、それどういう意味よ」
沙々「マミさん」
マミ「何?優木さん」
沙々「二人を家まで送ってきます。もう辺りも暗くなり始めてますから」
さやか「うわっ!ホントだ!」
まどか「連絡もなしにこんな時間に帰ったら、ママ怒るかもなぁ……」
さやか「もう手遅れかもしれないけど、今の内に家に連絡しといたら?」
さやか「少しは怒られる度合いがましになるかもよ」
マミ「それじゃあ私も――」
沙々「後で合流しますからマミさんは先にパトロールをしててください」
沙々「誰かを一人でも多く助けるためには、この時間からパトロールしとかないと」
沙々「いくら私でも、魔法少女の端くれですから、二人を送り届けるくらい一人でも大丈夫です」
マミ「……そう、ね」
マミ「優木さん、二人の事をお願い」
沙々「ええ、ドンと任せてください!」エッヘン
沙々(さて、どうやってこの二人の契約を思い留まらせるべきか)
沙々(まずは素直に、こっちの心中の吐露から始めるのが効果的ですかねぇ)
今日はここまで
お話の展開上一年という歳月の魔法で、沙々のゲス抜きをしてるけど
なるべくいい子にならないように頑張ります なんのこっちゃ
~☆
ー外ー
沙々「お二人は、魔法少女についてどう思ってますか?」
沙々「このまま願い事を叶えてみるつもり、あります?」
まどか「……うーん、まだちょっと、どうしたいか決まってない、かな?」
さやか「私もそんな感じ」
さやか「何でも一つ叶うけど、代わりに対価を支払わなくちゃならないってのは悩むよね」
さやか「それに値する願いが本当に自分にあるのかどうか……」
沙々「……ふむ、そうですか」
沙々「それじゃあわたし個人の、勝手な事情をあえてここで述べさせて貰うとですね」
沙々「あなた達にキュゥべえと契約されると、途轍もなく迷惑です」
さやか「なっ……!?」
まどか「優木さん……?」
沙々「ああ、もちろん勘違いしないで欲しいんですが」
沙々「魔法少女としてあなた達に何か必要な物が欠けてるって事では全くないです」
沙々「ただ、純粋に魔法少女にこれ以上増えられると邪魔なんですよ」
沙々「これを見てください」スッ
さやか「……これは?」
沙々「グリーフシード、魔女の卵です」
まどか「魔女の、卵……」
沙々「どういう事か、一から説明しますね」
沙々「わたし達魔法少女が魔力を使うと、それに応じてソウルジェムが濁ります」
沙々「まあ、普通に生活していても実際は少しずつ濁っちゃうんですけど」
沙々「もちろんソウルジェムが何かついては、ちゃんと理解してますよね?」
さやか「あったりまえだよ。さっきマミさんが教えてくれたばかりだし」
さやか「魔法少女の必須アイテム、でしょ?」
沙々「……まあそんな感じです。じゃあ話を続けますよ」
沙々「これを近づける事によって、ソウルジェムの濁りは取り除けます」
沙々「これは魔女を倒した時に、絶対ではありませんが落とす代物です」
沙々「経験上、人をしっかり喰った魔女なら十中八九落とすといって良いでしょう」
まどか「人をしっかり喰った……」ゴクリ
沙々「つまり普段魔法を自由に使うためには、あるいは蔓延る魔女を倒すためには」
沙々「これをどれくらい保有していられるかが重要な訳です」
まどか さやか「……」
さやか「だから、私達が邪魔者ってわけ?」
沙々「その通り」コクリ
沙々「この街には今現在既に三人の魔法少女がいます」
沙々「ここに四人の魔法少女は多すぎます。五人なんて正気の沙汰ではありません」
沙々「本来この街の治安を維持するには二人だけでもう十分なんです」
沙々「三人でも個人的には、それぞれの取り分が減ってしまってちょっと困るくらい」
沙々「だからもし、どちらかが魔法少女になりたいと思ったら」
沙々「まずは暁美ほむらさんを、魔法少女の座から引きずりおろしてからにしてください」
さやか「……それって具体的には何をすればいいのさ」
沙々「さあ?魔法少女の活動が出来ないように、殺しちゃうのが一番なんじゃないですか?」
さやか「あんた……!」
沙々「覚悟もない、その時の気まぐれでなろうとするのはやめて下さいって事です」
沙々「さもないと、弱い奴から『間引く』必要が出てきちゃいますから」
まどか さやか「……!」
沙々「…………」
沙々(やれやれ、あんな願いで契約したわたしがこれを言ってるんですからね。お笑い草です)
さやか「マミさんはそんな事、一言も言ってなかったけど?」
沙々「マミさんは甘いですからね」
沙々「自分の利益なんか二の次にする人間だから、それはある意味当然です」
沙々「ただわたしがあなた達に決して忘れないで貰いたいのは」
沙々「あなた達の力は今この街を守るのに、これっぽっちも必要ないって事」
沙々「もちろん私とマミさんが死ねば、その席は空く事になりますけど」
さやか「……仮にもしも、どうしても私達に願い事が必要な事情ができたら、どうしたらいいのよ?」
沙々(けっ、あなた達の事情なんて知った事ですか、勝手に野晒しでくたばってしまえ)
沙々(わたしの、グリーフシードが枯渇するかもしれない。それ以外に興味なんてあるものですか)
沙々「そうですね、それは難しい問題です」
沙々「ではそうならないように、今から一つ人生相談でもやってみませんか?」
まどか さやか「「人生相談?」」
沙々「ええ、魔法少女であるわたしの方が、おそらくお二人よりは何かしら問題を解決しやすいでしょう?」
さやか「そんな、私は別に何も……」
沙々「何もない、そう思ってる時も意外と人間、心の底で悩んだりしちゃってる物です」
沙々「そういった小さな悩みは、膨れ上がって顕在化してしまう前に処理した方が良い」
沙々「ちゃちゃっと、魔法で引き出しちゃいますから、何も言わなくても大丈夫ですよ」
沙々「さあ、まずは鹿目さん。力を抜いて、そしてこちらの目をじっと見てください」ガシッ
まどか「ええ……、なんか怖いよ優木さん……」
沙々「大丈夫、痛くも痒くもないですよ。魔法ですからまさに安全そのものですし」
沙々(美樹さやかからは表層的な情報以外中々引き出せそうにない)
沙々(となると鹿目まどかから美樹さやかの分も含め、色々の情報を引き出すのが得策)
沙々「…………」ジー
まどか「…………」アセアセ
沙々(『さあ、わたしに心の中を見せてください』)
~☆
キュゥべえ『――――――』
沙々(……これは、夢?)
沙々(巨大な逆さの魔女、さながら噂に聞いたワルプルギスの夜)
沙々(……あそこに見えるのは、暁美ほむら?)
キュゥべえ『――――――』
まどか『――――――』
沙々(駄目ですね、非常に興味深い夢ではありますけど)
沙々(ぼんやりとしていてこれ以上掴みどころがない)
沙々(次の情報を見ましょう)
~☆
ほむら『ねえ、まどか』
まどか『なあに?ほむらちゃん』
ほむら『あなたにとって、家族や友達、自分の人生って大切なものよね?』
まどか『うん、いきなりどうしたの?』
ほむら『転校してきたばかりでさっき友達になった子にこんな事を言われても、良くわからないでしょうけど』
ほむら『たとえ何が起きたとしても、絶対にそのままのあなたでいて。変わろうだなんて思わないで』
ほむら『さもないと貴女は、全てを失う事になるわ』
まどか『ほむ――』
さやか『おーい!二人とも速く来なよー!私と仁美が待ちくたびれちゃうぞー!』
ほむら『ええ、今行くわ』
ほむら『さあ、行きましょう?まどか』
まどか『う、うん……』
沙々(なるほど、暁美ほむらは本気で鹿目まどかに契約をさせない気でいるようですね)
沙々(もしかしたらある程度、協力関係を結べるかもしれません)
沙々(もう少し、いろいろ見て回っておきましょうか)
~☆
沙々「…………」
まどか「あの、まだですか……?」ソワソワ
沙々「はい、大丈夫です。ちゃんと診断結果は出ました」
さやか「えー、ホント―?。なーんか、うさんくさいんだよねー」
沙々「……じゃあ、わたしが心を覗いていなければ今知り得ないような情報でも言いましょうか?」
さやか「例えば?」
沙々「家族構成はお父さん鹿目知久、お母さん鹿目詢子。弟に鹿目タツヤ君のいる四人家族、合ってますよね?」
さやか「おぉー!やっぱり魔法だぁー!」
まどか「し、知らない内に心の中を見られてるってちょっと怖いかも……」
沙々「大丈夫ですよ、恥ずかしい秘密とかはちゃんと黙っておきますから」
まどか「えぇっ!?」
さやか「おっ?何かあったの?」
沙々「くふふふ。さー?どうでしょうねぇー?秘密ですー」
沙々(まあそんな役に立たなそうな情報引き出してないですが)
まどか「そ、そんなぁ……」
沙々「で、人生相談についてですけどこの際はっきり言っちゃいますね」
沙々「自分に自信がないからって、魔法少女になろうとするのは絶対にやめてください」
さやか まどか「!」
沙々「さっきも言いましたけど、今この街に魔法少女はこれ以上必要ありません」
沙々「そんな状況で考えなしに魔法少女になってもあなたが後悔するだけです」
沙々「私がいなくても、何も変わらなかったんじゃないか……?例えばそんな感じで」
まどか「そんな……」
さやか「ちょっと、その言い方は酷いんじゃないの!?」
沙々「契約しなくても他にも人を助ける方法はあるでしょう?」
沙々「例えばマミさんを支えてあげたりとか」
まどか「マミさん、を……?」
沙々「ええ、彼女ああ見えて寂しがりで、友達を欲しがってますからね」
沙々「魔法少女の事情を知ってる者として友達として接してあげるとか」
沙々「友達なのに接してあげるって表現はちょっとおかしいですけど」
まどか「……でも、私はもっとこう、決定的な――」
沙々「それは色々試してあなたがこれから見つける事です」
沙々「ただしそれは魔法少女になるという道には、少なくとも今の所ないです」
まどか「…………」ズーン
沙々「それじゃあ次は美樹さんの番」
さやか「え゛っ」
さやか「わ、私は遠慮しておこうかなぁー……、なんて……、はは」
さやか(あんなメンタル抉るやり取り見せられてから、ハイそうですかとやる気なんて起きるかって)
沙々「実は情報集めは既に済んじゃってるんですけどね」
さやか「いつの間に!?」
沙々(どうせ覗こうとした所でほとんど覗けないでしょうし)
沙々(表層まで出てきていたという事は、恋は彼女の大きな悩みなはずです)
沙々「美樹さんには、好きな男の子がいますね?」
さやか「!」ビクッ
沙々(よし、ビンゴ)
沙々(後は鹿目まどかから収集した情報から推察すればおそらくは……)
沙々「その男の子の名前は……。か」
さやか「……」ゴクリ
沙々(やはりこれもビンゴ、みたいですね)
沙々「上条恭介。天才ヴァイオリン少年の、あなたにとって幼馴染にあたる人」
沙々「現在は交通事故で入院してリハビリ中」
沙々「魔法ですから、どう言い逃れした所で無駄ですよ」
さやか「……ははは、どうしてわかっちゃったのかなー」
さやか「まどかみたいな事はされてないはずなのに、おかしいなー」
さやか「それで私には、どんなきつい言葉が待ってるわけ?」
沙々「そうですね。まどろっこしいのは嫌いなので今度も直球で言わせて貰います」
沙々「彼の腕を治そうとなんかするよりも先に、あなたにはするべき事があるんじゃないですか?」
さやか「…………何よ、それ」ギリッ
沙々「決まってるじゃないですか、告白ですよ、告白」
さやか「ふぇっ!?」
さやか「い、いきなり何言って――」
沙々「あなたは長い事彼に片思いし続けてきた。違いますか?」
沙々(恋をしているという情報が、私が読み取れるほどに表層に出てきている)
沙々(つまり彼の負傷がその悩みを増幅しているにしても、恋の方が悩みの程度としては深刻)
さやか「そ、それはそうだけど……」
沙々「彼が事故に遭う前、あなたは一度だって告白に踏み切れましたか?」
沙々「これからだってそう、彼の怪我が治ったらあなたは告白に踏み切れますか?」
沙々「ヴァイオリンに没頭してる彼の邪魔をしたくないって、また逃げ出してしまうんじゃないですか?」
沙々「今この時が!あなたが想いをぶつけられる!次あるかわからないチャンスなんですよ!」
沙々「自分の想いに嘘をつき続けるのは、もう終わりにしませんか!」
沙々(というか鹿目まどか、美樹さやかの事情に精通し過ぎでしょう……)
沙々(いくらでも判断材料がおおまかな記憶の中に転がってますよ)
沙々(昔から恋愛相談でもしてたんでしょうか?便利だから助かりますけど)
さやか「でも、恭介は今、自分と闘ってる訳だし、私に告白なんかされたら迷惑――」
沙々「そこをどうにかするのが、わたしの、魔法少女としての役目です!」ガシッ
さやか「!」ビクッ
沙々「告白もせずにずっとくよくよ悩み続けて、それでも彼に何かをしてあげたい!」
沙々「そんなのは都合のいいまやかしです!」
沙々「いいですか?わたしが絶対にあなたが告白できる状況を作り出します!」
沙々「他人の腕をどうするよりも先に、まずは自分の問題を片付けなさい!」
沙々「わかりましたか!?」
さやか「は、はいっ!」
まどか(優木さん、カッコいい……!)
沙々(これは間違いなく、帰ったら布団の中で悶絶するパターンの奴ですね)
沙々「とりあえず数日かけて、手筈が整ったら教えますから待っててください」
さやか「は、はい」
沙々(上条恭介をどうにかする必要があります)
沙々(美樹さやかを彼と恋仲であるという状況に持ち込む)
沙々(彼女にとって最も深刻な悩みが解決された)
沙々(それによって彼の腕が治ってないという根本的な問題から目を無理やり背けさせる)
沙々(もし仮に彼女の告白が失敗した、あるいは腕を治すために契約を決意した)
沙々(その場合にはマミ達との間で、あまり危ない橋は渡りたくないんですが)
沙々(仕方ないのでこっそり美樹さやかを闇討ちして、魔女に喰わせちゃいましょう)
~☆
スッ…
まどか さやか 沙々「!」
キュゥべえ「やあはじめまして、美樹さやか、それに鹿目まどか」
キュゥべえ「沙々も元気そうだね」
さやか「うわっ、何こいつ!ぬいぐるみが動いてる!」
まどか「……もしかして、あなたがキュゥべえ?」
キュゥべえ「そうだよ、ボクの名前はキュゥべえ」
キュゥべえ「キミ達二人にお願いがあって来たんだ」
キュゥべえ「ボクと契約して――」
沙々「やあ、丁度いい所で姿を見せましたね、キュゥべえ」
沙々「ちょっと聞きたい事があるんでこれから付き合って貰ってもいいですか?」
キュゥべえ「それならボクの言いたい事が済んでから――」
沙々「二人とも、今日はここで別れましょう。もう家は近いんですよね?」
まどか「えっ、あっ、うん」
さやか「……まあ、いいや。そいつの事もまた聞かせてね。気になるし」
沙々「こいつについて話す事なんてほとんどありませんよ」
沙々「さしずめ営業マンみたいなものです、これは」
沙々「さあ、行きますよ、キュゥべえ」ヒョイッ
キュゥべえ「やれやれ、チャンスだと思ったんだけど」
キュゥべえ「まあいいや、二人とも、また会おうね」
まどか「う、うん」
沙々「さようならお二人さん」
まどか「バイバイ優木さん」
さやか「じゃあね」
テクテク テクテク
沙々「…………」
ほむら「…………」
ほむら(あの状況で撃つ訳にもいかなかったし、助かったわ)
ほむら(彼女ら二人に警戒されるような行動はなるべく避けたい)
ほむら(もっとも今接触を阻止した所で、もはや効果はあまり見込めないけど)
??「あれがアンタの言ってた、見滝原の新しい魔法少女って奴か」
ほむら「ええ、そうよ」
ほむら「でもこれで彼女には一つちょっとした貸しができた」
ほむら「今日の所は見逃してあげて欲しい」
??「ふんっ」
??「アンタがそう言うなら、今日の所は見逃しておいてやるよ」
~☆
沙々「キュゥべえ、私の邪魔をしないで貰えます?」
キュゥべえ「キミだってさっきボクの邪魔をしたばかりじゃないか」
沙々「だってあの二人に契約されたら困っちゃいますし」
沙々「それより、あなたに聞きたい事があります」
沙々「暁美ほむら、という魔法少女はずばり何者ですか?」
沙々「変な魔力の波長をしてたり謎が多いですけど」
沙々(それと鹿目まどかのあの夢……)
キュゥべえ「さあ、わからないよ」
沙々「わからない?仮にもあなたが契約した相手でしょう?」
キュゥべえ「契約したとも言えるし、そうでないとも言える」
沙々「どういう事です?」
キュゥべえ「彼女は極めつけのイレギュラーというわけさ」
キュゥべえ「もっとも他に何か知っていたとして」
キュゥべえ「ボクからキミに提供する情報には限りがあるだろうけどね」
キュゥべえ「ボクの立場はキミ達のどちらにも属さない中立であるべきだ」
沙々「なるほど、そうですか……」
沙々(キュゥべえすら、実態を把握していない魔法少女)
沙々(うーん、胡散臭いです)
キュゥべえ「ただしそんな未知数の彼女に、何が起きても対抗できる画期的な方法がある」
沙々「なんです?それ」
キュゥべえ「鹿目まどかさ」
キュゥべえ「彼女が『正しい』願いで魔法少女になれば」
キュゥべえ「間違いなくどんな魔法少女にも負けないだろう」
キュゥべえ「なんならキミが操ってしまえば良い」
キュゥべえ「キミにとっても、悪い話じゃないだろう?」
沙々「バカ言ってんじゃねーですよ」
沙々「わたしには丁度巴マミくらいがお似合いなんです」
沙々「いくら、私の能力が優れた者の洗脳だからといって」
沙々「この世の何もかもを無制限に使役できるわけではなありません」
沙々「身の程を弁えて行動するべきです。蛮勇は身を滅ぼします」
沙々「あんな化け物じみた素質の魔法少女を操ろうとして、失敗したら取り返しがつきませんよ」
キュゥべえ「まあ、キミがそう言うならボクには他に言う事はない」
沙々「…………ねえ、キュゥべえ」
沙々「――素質の高い魔法少女と契約すると、あなたにどんなメリットがあるんですか?」
キュゥべえ「魔女がよりスムーズに処理されるようになる。違うかい?」
沙々 QB「…………」
沙々(本当に、いけすかない、ペテン師野郎ですねこいつは……)
沙々(お前らの心の中にそんな事への関心がない事はこっちは百も承知なんですよ)
沙々(そのキュゥべえが見てわかるくらい鹿目まどかに執着している)
沙々(いったいそこに何が……)
今日はここまで
演技派沙々さん熱血ごり押しでさやかに告白を認めさせるの巻
ごり押しだから警戒されまくりかつ心変わりの危険とかいろいろあるけど仕方ないね
ほむらと一緒にいた魔法少女は誰なんだ……(棒)
少し登場早過ぎた気がしないでもない
と、隣町だから……
乙
沙々さん出典より少し慎重ですね
しかも少しずつだけどゲスさが増してきましたな。いい感じだ
純粋に利害で動くタイプみたいだし
ほむらは沙々と手を組んだ方がいいんじゃね?
悪ぶってるだけで、その実は割り切れていない、色んなしがらみある杏子よりかは扱いやすいだろう
全て終わったら見滝原から去る事を交換条件にすればいいんだし
修正ばかりじゃ
修正>>88 九行目
×まどか「し、知らない内に心の中を見られてるってちょっと怖いかも……」
○まどか「み、見られた実感がないせいで、胸の奥に不安なもやもやが……」
修正>>90 二行目
×沙々「魔法少女の事情を知ってる者として友達として接してあげるとか」
○沙々「魔法少女の事情を知ってる仲間、友達として接してあげるとか」
>>103
出典の方だと新米、自分が先輩だからってので嘗めてたりとか色々違うから……
>>104
ほむらも初めて見たとかじゃなくて前の周回とかで知ってたら協力を取り付けに行ったはず
ちゃんと利益さえ提示できればマミさんを絶望しない魔女殺戮マシーンにできるのはでかい
一人だけの場合は弱過ぎて(ry
~☆
ーマミホーム 寝室ー
マミ「今日は色々あって疲れたわね」
マミ「おやすみなさい、優木さん」
沙々「…………」
沙々「あのですね、マミさん」
マミ「なあに?」
沙々「後輩二人、まどかやさやかについて、どう思ってますか?」
マミ「どう思うって?」
沙々「あなた個人の意見として、彼女らが魔法少女になるべきではない、とは思いませんか?」
マミ「随分といきなりの質問ね」
マミ「もちろん、私個人としては、そう思ってるわよ」
沙々「じゃあなんで、魔法少女体験ツアーなんてやるんです?」
マミ「だって、わけもわからないまま誰かに何かを強制されたら、あなただって嫌でしょう?」
マミ「暁美さんにも言ったけど、あの子達にだって話を聞く権利、それに選ぶ権利はあるわ」
マミ「こちらの都合や意見がどうあれ、押さえつけるようにしてはダメよ」
マミ「ちゃんと自分で色々考えて、自分でどうするかを判断させてあげなきゃ」
沙々「でもそれだけじゃ、契約をやめようだなんて考えるはず――」
マミ「そういうのは、あなたがやってくれるでしょ?」
沙々「え?」
マミ「私達両方が意思を無理やり押さえつけるような事をしたら」
マミ「あの子達も意地を張ってしまうかもしれない」
マミ「片方がなるべく優しく受け止める。片方が現実を厳しく告げて歯止めになる」
マミ「そんなやり方のほうが、ずっと効果的だと思わない?」
マミ「だとしたら契約をやめるよう諭すのは、優木さんが適任だと思う」
マミ「プライドや人の顔色を窺うような意識ばかり高くて、物を人に強く言えない」
マミ「私にはそういった性格上の欠点があるもの」
マミ「実際優木さん個人としては、彼女達の契約を直接止める気満々でしょ?」
沙々「……まあ、確かに魔法少女にはならない方が良いって」
沙々「先ほど既に、彼女らを家に送る途中伝えてきましたよ」
マミ「ほら、現状私の予想通り役割分担が上手くいってるじゃない」
沙々「……つまりマミさんは最初から、私が自ら貧乏くじを引くよう動いてたって事ですか?」
マミ「そんな、それは心外だわ優木さん」
マミ「私はただあなたがきっとこういう風に動くだろうなって考えて」
マミ「その上であなたの事を信頼しただけなのに」
沙々「…………ちぇっ、もういいですよ。寝ますから、わたし」
マミ「そう、それじゃ改めてお休みなさい優木さん」
沙々「おやすみなさい」
マミ 沙々「……」
沙々「…………」
沙々「…………っ、」
沙々「――――っ!」モゾモゾ
沙々(んあああああああ!ムカツキますうううう!)
沙々「――――っ!!」ジタバタ
沙々(自分が良いように人を使うのは大好きですけど)
沙々(誰かに手玉に取られるのは本当に我慢ならない!)
沙々「――――!!!」ジタバタ
沙々(うあああああああああああ!悔しいいいいいい!)
マミ「zzzzzzzzz」クー クー
~☆
ーマミホーム 朝ー
ガチャ
マミ「優木さん、いつも通り途中まで一緒に行きましょうか」
沙々「…………」
マミ「学校行く、わよね?」
沙々「……えーっとですね、まあ、それはそうなんですけど」
沙々「その前に一つ、今の内に言っておきたい事があります」
マミ「あら、何かしら?」
沙々「今日の魔法少女体験ツアー、わたしは参加できません」
沙々「ちょっと野暮用があるので」
マミ「どうして?」
沙々「どうしてって、ちょっと野暮用があるからですよ」
マミ 沙々「…………」
沙々「それであの、ちょっと頭触ってもいいですか?」
マミ「えっ?」
マミ「まあ、別に構わないけど」
沙々「ありがとうございます」
沙々「じゃあ、失礼して」ヨシヨシ
沙々『――っ!』グワングワン
沙々「…………ふぅ」ホッ
マミ「事情はよくわからないけど、終わった?」
沙々「ええ、どうにか」
沙々(あ゛ぁ゛ー、頭がクラクラしますよぉ……)
沙々(巴マミの視界をこっそり盗み見る)
沙々(午後、美樹さやかの動きを把握したり、とにかく今は何かと情報が必要です)
沙々(でも、二つの視界を同時に処理するのは、何度やっても慣れませんねぇ)
沙々(ううっ……、気持ち悪っ……)
沙々(できれば会話の盗聴もしたいんですけど)
沙々(これ以上感覚を下手に共有するとよくない)
沙々(今度はこっちの行動そのものに支障が出ちゃいますからね)
沙々(やっぱりやめておきましょう)
沙々「よし、じゃあ行きましょうか」
マミ「ええ」
マミ「晩御飯は要るわよね?」
沙々「ああ、それはもちろん。多分遅くなっちゃうとは思いますけど絶対です」
今日はここまで
杏子「それじゃアタシ達、ゾンビにされたようなもんじゃないか!!」
途中視界ジャックって言葉を使いたくて堪りませんでしたけど一般的な言葉ではないのでやめときました
こんな事が出来るのも魔女じゃなくて人間相手の洗脳魔法を磨いたおかげだよ!
海香 里美 カンナ の良い所を抽出して水で薄めたようなそんな魔法少女
次は 上条さんと沙々面談から
乙
上条さんとも面接するとか、面倒見良すぎですよ沙々さん!
ここまで魔法が偏るならその分魔女はほとんどあやつれないじゃね?
~☆
ー病室前ー
恭介「……どちら様ですか?」
沙々「優木沙々って言います。はじめまして上条さん」
恭介「えっと、どういったご用件ですか?」
恭介「親しい人達の面会以外は今の所全部お断りしてるはずなんだけど」
沙々「美樹さやかって子の事、もちろん知ってますよね?」
恭介「うん。家族ぐるみの付き合いがある僕の幼馴染だよ」
沙々「その子にあなたの事を聞いて、力になれるんじゃないかって思いまして」
恭介「…………」
恭介「ははは、じゃあ君は医術の心得があると言うのかい?」
恭介「でもそれは無駄だと思うよ」
恭介「何しろここの医療技術は――」
沙々「まあ、ある意味では医術と言えるのかもしれませんね」
沙々「ただしわたしはあなたの怪我を治しに来たわけではありません」
沙々「わたしが得意なのは催眠術の類ですし」
恭介「催眠術……?」
沙々「ええ」
沙々(天才ヴァイオリニスト少年上条恭介)
沙々(ちょっとここに来るまでの間に経歴を調べたりもしましたが)
沙々(それがもはや過去の栄光だったとしても、わたしが嫉妬するには十分です)
沙々(加えて爽やかイケメンなのも癪に障りますね)
沙々「こうして病室に籠っているとイライラしたり」
沙々「どうしようもない嫌な気分になったりする事もあると思います」
沙々「だけどそういう気持ちをそのままにしておくといつか爆発してしまいかねない」
沙々「そういう悪い気持ちとなるべく早い段階で向き合えるようにするのが」
沙々「本来の催眠術の役目だと思うんです」
沙々(本音は美樹さやかをどう思ってるかチェックしたいだけですけど)
恭介「いや、せっかくの所悪いんだけど、そういうのは素人がやらない方が……」
恭介「君の催眠術が役に立たないだろうって言ってるわけじゃないよ」
恭介「ただ……」
沙々(……あー、愚痴愚痴まどろっこしくて面倒な人ですねー)
沙々「じゃあ右手を、動かしてみてくれます?」
恭介「?」
沙々「いいから、ほら、はやく。怪我してる方の腕じゃないから大丈夫でしょう?」
恭介「まあ、いいけど。…………あれっ?」
沙々「動かないでしょう?」
沙々「わたしがあなたの気付かない内に、催眠術をかけたからですよ」
恭介「うぐぐぐぐぐぐ……」グググ
恭介「ダメだ、全く動かないや」
沙々「これで少しはわたしの実力、信用してもらえました?」
恭介「へぇ……。面白いんだね、催眠術って」
恭介「どうして……、あー、えーと」
沙々「優木沙々です」
恭介「そう、優木さんは僕の力になろうって思ってくれたの?」
恭介「さやかに僕の事を聞いたってのはさっき言ってたけど」
沙々「そんなの決まってるじゃないですか」
沙々「彼女があなたの事を気にして、落ち込んだりしてたからですよ」
恭介「さやかが……?」
沙々「ええ、彼女にとってあなたはとても大切な人なんでしょうね」
沙々「わたしは最近彼女と知り合ったばかりですが」
沙々「それでも彼女はわたしの大切な友達の一人です」
沙々「そんな友達の悩みのタネを、少しでも解消してあげようとする」
沙々「別に不思議な事じゃないでしょう?」
恭介「そっか。優木さんって、凄く良い人なんだね」
沙々「くふふ、よく言われますよ」
沙々「さて、そろそろ始めましょうか」
~☆
沙々(外見は至極穏やかでしたが、心の内はこんなにも荒れ狂ってたんですねぇ)
沙々(こんな心理状態じゃとても恋愛感情なんて意識できない)
沙々(不本意ですけど真面目に治療しますか)
沙々(…………はぁ)
沙々(それで美樹さやかに対する好感度はというと……?)
沙々(大事な幼馴染。お見舞いにしげく通ってくれる優しい奴)
沙々(でも、その優しさが今の自分の境遇をはっきりさせるからかえって辛い)
沙々(……あっ、全く異性として意識されてませんね、これ)
沙々(今の所、恋愛感情を抱いてる相手が美樹さやかを含め誰もいない)
沙々(けれど年相応と言えるかはわからないけれど、恋愛に対する興味はある)
沙々(状況は絶望的、という程ではどうやらなさそうですね)
沙々(じゃあさっそく、美樹さやかのエロい夢でも見せて、嫌でも意識させてみますか)
~☆
ー病室ー
沙々『はい、それじゃあ目を覚ましてください』
恭介「う、うぅん……」
恭介「ふぁあー……」ゴシゴシ
沙々「体調はどうですか」
恭介「……うん、ばっちりだよ」
恭介「事故に遭ってから感じた覚えのない清々しさだ」
恭介「まさか僕も、自分がこんなに色々抱え込んでいたなんて気付かなかった」
恭介「もっとも、何が解消されたのかいまいち良くわからないのが、唯一もやもやするけど」
沙々(それはまあ、無意識の領域でのことですからね)
沙々(ていうか今、美樹さやかのムフフなイメージで頭が一杯なはずなのに)
沙々(よくもそんな涼やかな顔ができますね)
沙々(もうちょっとどぎついのを見せておくべきだったか)
沙々(今後の課題です)
恭介「この清々しい気分はいつまで続くのかな?」
恭介「きっといつまでも続くと言う物では、ないんだよね?」
沙々「そうですね、定期的に治療は続けた方が良いと思います」
沙々「ですがわたしとしては、あなたに一々会いに来たりするのが正直面倒です」
沙々「結局はこれって、美樹さんのためにやった慈善的行為ですし」
沙々「あなた本人には特別興味ないので」
恭介「はは……、結構きついこと言うんだね」
沙々(何よりも美樹さやかとここで鉢合わせたくない)
沙々(わたしが何かをしたというのを必要以上に意識させるのは好ましくない、面倒臭い)
沙々(あまつさえ、わたしが上条恭介を狙っていると勘違いされる最悪のパターンすらありうる)
沙々(幸い今日は、巴マミの視界に彼女が収まっている間に面会を終わらせる事ができた)
沙々(でもそもそも、体験ツアーを終えてからこんな遅くに面会に来る事は普通ないでしょう)
沙々(……もしかして盗み見る必要は特になかった?)
沙々(いや、魔法少女体験ツアーの雰囲気を遠くからある程度把握できたし、念には念を入れて、ですね)
恭介「だったらどうすればいいんだろう?」
恭介「僕としては普段もこういう精神状態でなるべくありたいんだけど」
恭介「不快感を心に秘めたままじっとしているのは、やはり気持ちの良い物ではないからね」
恭介「誰かにも不快な思いをさせてしまう事が、もしかしたらあるかもしれないし」
沙々「ですからこれを渡しておきます」スッ
恭介「……これは?」
沙々「俗に言うタリスマン、ですね」
沙々「これを絶えず身につけてさえいれば、ある程度心の安定を保っている事ができるはずです」
沙々(元々は巴マミを離れた場所から操る媒介を用途として作った物)
沙々(今となっては魔力のパイプを確立したので、巴マミ相手にはもはや必要ない)
沙々(しかしこれを男に、しかもタダでプレゼントするのは嫌ですねぇ……。作るのも非常に手間ですし)
沙々「これはレンタルですからね」
沙々「必要なくなっただろうと判断したら、返して貰いに来ますから」
沙々「わかりましたか?」
恭介「わ、わかったよ」
恭介(こ、こんな見るからに怪しげな物、本当に効果があるんだろうか?)
恭介(いや、でも彼女の催眠術は信じられないくらい効いた)
恭介(一度騙されたと思って、しばらく付けてみようか)
沙々(こんな感じで彼の心を覗きながら)
沙々(リラックスを与え続けタリスマンを手放なさないようにして)
沙々(眠った時に美樹さやかと夢の中で性的に絡ませる)
沙々(エロい事と恋愛感情は切っても切れない関係にある)
沙々(恋愛感情のような物を次第に彼も感じ始める事でしょう)
沙々(そして頃合いを見て美樹さやかに告白させる)
沙々(うーん、時間も浪費しない実にパーフェクトな計画です)
沙々「もうこんな時間ですし、いい加減お暇させていただきましょうかね」
恭介「あっ、うん、本当にありがとう、優木さん。さようなら」
~☆
ー外ー
沙々(さて、ツアーも終わっちゃったみたいですけど、巴マミと合流でもしますか)
沙々(……おや、あれは?)
仁美「…………」テクテク
沙々(鹿目まどかの記憶を覗いた時に見ました。たしか志筑仁美、でしたか)
沙々(わたしの通う学校にぴったりの、非のつけ所が無いお嬢様ですね)
沙々(いや、むしろわたしの学校の中ですら浮くくらいの純粋のお嬢様って風格です)
沙々(多分今はお稽古帰りなんでしょう)
沙々(疲れていても、それは顔を出さずに優雅に歩みを進める)
沙々(あ゛ー惚れ惚れするくらいの強者の佇まい。腸煮えくりかえりますよー)
沙々(どうせ情報はあればあるだけ良いんです。ちょっとちょっかいかけてみますか)
沙々「あのぅ、すいません、志筑仁美さんですよね?」
仁美「はい?」
沙々「わたし、鹿目さんと美樹さんの新しい友達なんですけどね――」
~☆
沙々「…………」
沙々(いやー、まさかあの女も上条恭介に想いを寄せているとは)
沙々(普通に戦ったらポテンシャルからして、美樹さやかに勝ち目ないじゃないですか)
沙々(ここは幼馴染のアドバンテージを生かしてどうにか……)
??「おい、そこのアンタ」
沙々「はい?」クルリ
杏子「アタシは佐倉杏子。よろしく」
杏子「こっちとはもう知りあってんだろ?」
ほむら「…………」
沙々「は、はい。こんばんは」
沙々(うわぁ……)
沙々(どう見ても同業者、それも格上じゃないですか)
沙々(能力はというと……)
沙々(わたしとは少し違う魔力の波長だけど、おそらく精神系)
沙々(これじゃ普通の手段じゃ大なり小なり洗脳は通らない)
沙々(わ、わたしにとって最悪の相手です)
沙々(暁美ほむら、厄介なのを連れてきやがって……)
沙々(あれ?)
沙々(――佐倉?)
沙々(その名前、どこかで聞き覚えがあるような……?)
沙々「あ、あの、それで一体、何の御用ですか」
杏子「あのさ、ちょっとアンタと話したい事があるんだよ」
杏子「ついてきな。ここだと万が一の場合、人目につく可能性がある」
杏子「嫌だとは、言わせないよ?」ニヤリ
沙々「…………」
沙々(あちゃー、もっと警戒して夜道は歩いとくんでした)
沙々(美樹さやかなんかの心配してる場合じゃなかったみたいですね)
沙々「どこまでですか」
杏子「……」ガシッ
沙々(いたっ!)
杏子「……」テクテク
ほむら「……」テクテク
沙々「……」テクテク
沙々(わたし、五体満足で家に帰して貰えるんでしょうか……?)
今日はここまで
ようやく沙々さんゲスくなってきた気もするけどどちらかというとこすっからい
元の通りのゲスな沙々さんで最初からいくならスレタイはおそらく
沙々「巴マミ、跪いて脚をお舐めなさい」
とかになってただろうけど
話色々変わって多分ここらかもう少し先であっさり死ぬ展開にしそう
それだと使い捨てられたのが無念だったから書き始めたのに意味ないから
こう、外に出せる感じに一年間の禊を経て浄化した沙々さんに泣く泣く設定
>>115
視界ジャックとかはマミさん限定ですけどね、一年かけて編み出しました
大抵(マミさんには)何でもできるけど壊れたら修理は無理なのであまり過激な事はしない
超貴重な玩具への扱いに近い?
沙々さん魔法についての(これの中での)設定は決めてあります、一応
~☆
杏子「よし、ここらで良いだろ」ヘンシン
沙々 ほむら「……」ヘンシン
ほむら「……」スチャッ
沙々「!」ビクッ
沙々(日本の街中で、本物らしき拳銃を向けられる日が来るとは)
沙々(しかもここ、この街で一番人が寄りつかない場所じゃないですか)
沙々(残念ながら、何の気兼ねもなくお話、できちゃいそうです)
沙々(……うん?おかしいですね)
沙々(引っ越してきたばかりの暁美ほむらが、こんな場所を知っているものでしょうか?)
沙々(それに佐倉杏子の街の歩きぶり、どうもここら近辺に慣れ親しんだ感が……)
杏子「それじゃまず、最初の質問だ。質問には全部正直に答えろよ」
杏子「巴マミと組んでから、どれくらいになる?」
沙々「組んでからですか……、大体一年くらいだと思います」
杏子「ふーん……」
杏子「次に、巴マミの使い魔も駆除するやり方については、どう思ってる?」
沙々「どう思ってるって……、今までは特に気にしてませんでしたね」
沙々「ここの魔女は質が良いし量も豊富です」
沙々「使い魔を駆除していても、グリーフシード不足の危険はこれまでありませんでした」
沙々「あなたがここを、これから新しく狩り場にする。という事なら変わってくるでしょうが」
杏子「……あいつのやり方に、完璧に賛同してる訳じゃないのか」
沙々「賛同とかそういう基準でその問題を捉えてはいませんね」
沙々「使い魔を放っておく事で失われる人命の数々」
沙々「正直どうでもいいって考えてます。でもマミさんがここの主ですからね」
沙々「その方針に従っているまでです」
杏子「なんだ、意外と話がわかりそうな奴じゃん」
沙々「……では逆に、こちらからいくつか質問してみても構いませんか?」
杏子「何?言ってみなよ」
沙々「あなたは、この街に何をしに来たんですか?」
沙々「縄張りを奪うのが、目的ですか?」
杏子「……そうだね」
杏子「ほむらにある目的のために雇われて来たっていうのが、アタシがここにいる理由かな」
沙々「雇われた?」
杏子「ああ」
ほむら「…………」
沙々(暁美ほむらは一応自由に、この街を歩き回って良いと言う事になっている)
沙々(あのまま生活していても特に支障はないはずです)
沙々(ほむらの目的はグリーフシードの独占?それとも何か別の目的が?)
沙々「……つまりそれを受けると、あなたにとって何かしらの利益があると」
杏子「当然だね」
沙々「元々は自分の縄張りも持ってるんですか?」
杏子「隣町の風見野を縄張りにしてる」
杏子「それじゃあそろそろ今度はこっち――」
沙々「待ってください」
杏子「何?そろそろこっちに質問の主導権を渡してよ」
沙々「いえ、もう一つだけ伺いたい事があります」
沙々「暁美さんとわたし、あなたが与する側を選ぶ理由はなんですか?」
杏子「理由?」
沙々「だってあなたにとっては、わたしも暁美さんも、両方得体が知れないはずでしょう?」
杏子「そりゃ依頼を受けたのがほむらだったからさ」
沙々「そう、でしょうか……?」
杏子「そうなんだよ。変な所を疑われても困るんだけど」
杏子「じゃあ、今度こそこっちの――」
沙々(うーん、何かがもやっとしてますねー)
沙々(そもそもなんで、こんな形でわたしと接触するんでしょう?)
沙々(銃は向けられていますが、形ばかりで襲おうとする気配が感じられない)
沙々(巴マミとわたしがセットでは、話せない話がある?)
沙々(巴マミとわたしの意見の一致具合を気にしているようでした)
沙々(わたしを仲間に引き入れて、縄張りの乗っ取りをより簡単に行う?)
沙々(いや、何か違う所が頭に引っかかります)
沙々(佐倉、巴マミ、この二つが妙に引っかかるのはどうして……?)
マミ『佐倉さんはね、あなたとこうして知り合う前に魔法少女のコンビを組んでた子なの』
沙々(あっ……!)
杏子「――おい、こっちの話聞いてんのか。黙ってないで質問に早く答えてくれよ」
沙々「……大事な情報をたった今、思い出しました」
杏子「大事な情報?」
沙々「佐倉杏子さん」
沙々「あなた、マミさんと一年くらい前まで、コンビ組んでた事ありますよね?」
ほむら 杏子「!」
沙々「あなたの表向きの目的、きっとそれは色々あるんでしょうけど」
沙々「もしかしたら本心は、マミさんが目的なんじゃないですか?」
沙々「それも自分から見滝原に顔を見せるって事は、できるなら仲直りがしたい」
杏子「なっ……!?」
沙々「だっておかしいじゃないですか」
沙々「既に自分の縄張りがあるのに、今更一年経ってマミさんと争いに来るなんて」
沙々「わたしとこうして話したのは、仲直りの間を取り持ってもらううため?」
沙々「いや、それともマミさんと今組んでるのがどんな魔法少女かを、見たかったんですか?」
杏子「ぐっ……」
沙々()
>>144
13行目は失敗なのでスルーしてください
沙々(反応見た所、幸い図星のようです)
沙々(うーん、この喉の小骨が取れたような感じ、気持ちいいですねー)
沙々(こうして自分より強い相手の弱い所を、ネチネチ責めるのも楽しいです)
杏子「はぁ?何言ってんの?そんな訳ないじゃん」
杏子「あっちの魔女、グリーフシードの量に満足できなくなったんだよ」
沙々 杏子「…………」
杏子「……クソっ、あー、イライラする!」
杏子「こういう大人しいやり方はやっぱり性に合わないわ」
ヒュッ
杏子「やっぱり、魔法少女なら魔法少女らしく、試してやるよ」ブンッ
杏子「ほら、得物を構えな。特別に、優しく遊んでやるから」ニヤリ
沙々「え゛っ」
沙々「はは、あの……、その……」
沙々(あっ、これ完全に藪蛇ですね。調子にのり過ぎました)
ほむら「…………やれやれ」
沙々(そうそう、あなたが彼女を止めてくれればこのまま丸く――)
ほむら「あまり怪我はさせないようにね」
杏子「ああ、わかってるよ」
沙々(止めてくださいよ!そこは止めてくださいよ!)
沙々(ていうかせめてその銃は下ろしてくださいよ!)
杏子「…………」
杏子「武器無しって事で、良いんだな?」
沙々「……あー、ハイハイわかりましたよ、武器だしますよ!」
沙々「どうかお手柔らかに!」
沙々(こうなりゃヤケです)
沙々(適当に戦いの中で隙を見つけて逃げましょう)
沙々(再度捕まってしまった時の事は考えない、考えない……)
沙々「――――」ギリッ
沙々(自分がどん底レベルに弱いって嫌というほど理解しているだけに)
沙々(強い奴に見下されると、我慢できないくらい腹が立ちますね……)
杏子「何さ、少しはやる気になった?」
沙々「わたしが、マミさんの足を引っ張ってるって、どういう意味ですか?」
杏子「どういう意味?言ったまんまの意味だよ」
杏子「あいつの隣にお前みたいな弱い奴の居場所はないって事さ」
沙々「くふふ、まるでマミさんが、完全無欠の超人みたいな言い方ですね」
杏子「……実際そうだろ」
杏子「アイツ以外に、正義の味方をやるのにふさわしい奴なんて、アタシは見た事ない」
沙々(暁美ほむらが佐倉杏子と二人で組んでいるからか、いつもよりも警戒を解いている)
沙々(今だったら――)
沙々「あなた、マミさんの上辺しか見た事がないんですか、空しいですねぇ」
沙々「道理で今更になっておめおめと見滝原に顔を出せる訳ですよ」
杏子「…………なんだと?」
沙々「居場所、なんてちっぽけな概念、私とマミさんの間には必要ありません」
沙々「だってわたしにとってのマミさんは家族」
沙々「言うなれば、お姉ちゃんみたいに思ってますから」
沙々「マミさんとわたしはずっと一緒です」
沙々「彼女を置いて行った、負け犬とは違いますよ」
杏子「…………」ピタッ
沙々(動きが、止まった……?)
杏子「――――」ボソッ
沙々「……?」
杏子「負け犬だと……?」ギリッ
杏子「ふざけんなよてめぇっ!」ダッ!
沙々(ちょ、思ってた以上に挑発効き過ぎ――)
ダァン!
ほむら「!?」
杏子「がっ……!」
杏子「いってぇ……」グラッ
沙々(よし、脇腹に、当たった!)
沙々(ま、間に合ってよかった……)ドキドキ
ダッダッダッダッ
杏子「あっ!待ちやがれ!」ズキッ
杏子「……つぅー」
ほむら「きょ、杏子、大丈夫?」
杏子「おい、一体何のつもりだ!お前が狙うのは優木沙々だろうが!」
杏子「ていうか何で撃った!念のため銃を向けとくだけって話だっただろ!」
ほむら「わ、私じゃないわ」アセアセ
ほむら「う、腕が勝手にあなたの方を向いて、そのまま引き金を指が……」アセアセ
杏子「何をバカな事を言って……」
杏子「!」
ほむら「本当よ、嘘じゃ――」アセアセ
杏子「いいや、前言撤回。ほむらの言う事、信じるよ」
ほむら「えっ……」
杏子「アンタの中から優木沙々の魔力の残滓を感じる」
杏子「どうやらアイツ、アタシとはタイプが違うけど、心に干渉するタイプの魔法少女らしい」
杏子「だからアンタが操られてやったんだってのは、見たらわかるよ」
ほむら「心に干渉……」
ほむら「彼女とこの一年、一緒にいた巴マミは無事なのかしら?」
杏子「さあね、実物を見ない限りどうとも言えない」
ほむら 杏子「…………」
ほむら「……どう?走って沙々を追いかけられそう?」
杏子「ああ、問題ないよ。かすり傷だ」
杏子「――優木沙々」
杏子「あの弱さで、アタシに一矢報いた事だけは認めてやる」
>>147-148 の間 抜けてた
~☆
ブンッ
ガキィン
沙々(無理無理無理無理無理無理)
ダッダッダッ
沙々(逃げる隙なんて、全くないじゃないですか……!)
ブンッ
ガキィン
沙々「ぜえ……、ぜえ……」
杏子「おいおい、こんなワンパターンな槍の突きの対応で息切れかよ」
杏子「いくらなんでも弱過ぎだろ」
杏子「これでいつも巴マミとのコンビが務まってるの?」
杏子「はは、無理無理」
杏子「足を引っ張りまくってんだろうな、どうせその弱さじゃ」
今日はここまで
ふぇぇ……、ミスだらけだよぉ…… orz
乙
>沙々「くふふ、まるでマミさんが、完全無欠の超人みたいな言い方ですね」
>沙々「あなた、マミさんの上辺しか見た事がないんですか、空しいですねぇ」
これをズバッと指摘する人間が誰もいなかったばっかりに
本編もTDSもあの有様だよ
杏子も逆上するくらいだからマミを捨てたも同然って自覚はあるんだな
おまけに自分以外務まらないと勝手に思ってたマミの家族の席には
いつの間にか弱っちそうな別の魔法少女がいたもんだから
ますます気に入らないと
~☆
沙々「ぜぇ……、ぜぇ……、ぜぇ……」ダッダッダッ
沙々(巴マミの視界に接続しておいたのは僥倖でした)
沙々(それを頼りにして、合流さえすればまだ……)
沙々(あと、もう少し――)
ガッ! ガッ! ガッ! ガッ!
沙々「つぁっ!」ビクッ
沙々(く、鎖による結界……!)
沙々(前を塞いでる鎖の赤色と状況からして、結界を張ったのは……)クルリ
杏子「そんな急ぐなよ。もう少し、付き合いな」
ほむら「…………」
沙々(うへぇ……、追いつくの早過ぎますよぉ)
沙々「は、話し合いましょう。そんな頭に血が上ってたら――」
杏子「おらぁ!」ブン
シュルルルルルル
ビシィ!
杏子 ほむら 沙々「!」
沙々(リ、リボンの結界という事は……!)
杏子「ちっ」バッ
マミ「私の後輩に、手を出すのは許さないわよ佐倉さん」
マミ「ここでは人目に付きかねない」
マミ「速やかに優木さんからもっと距離をとって、槍を引いて頂戴」
マミ「そして、優木さんと私の間を隔ててる、この邪魔な結界をどけて」
杏子「………………」
杏子「……おい、優木沙々」ワナワナ
沙々「は、はい?」
杏子「てめぇ!マミさんに何しやがったぁ!」
ダンッ!
マミ 沙々「!」
沙々(尋常じゃない踏み込み、そして殺気)
沙々(これが、佐倉杏子の全力)
沙々(……あっ、これは死にましたね)
沙々(ほぼ間違いなく、巴マミの結界を突き破ってくるでしょう)
マミ「ティロ・――」
カチッ
ほむら「杏子!」ガシッ
沙々 マミ「!?」
沙々(えっ……?)
沙々(今、いったい何が?)
沙々(こちらに猛スピードで接近していた佐倉杏子が)
沙々(踏み込んだ地点よりも更に遠くで、暁美ほむらに羽交い絞めにされている)
沙々(二人の移動は一瞬の出来事でした)
沙々(となるとほむらは、テレポート系の魔法少女……?)
杏子「なっ!?離せ!離せよ暁美ほむら!」
ほむら「いいえ、それはできない相談ね」
ほむら「このまま続けたら間違いなく殺し合いになる」
ほむら「目的は優木沙々との対話、だったはず」
ほむら「彼女の力量試しでは本来ないし、ましてや殺し合いでもない」
ほむら「あなたにとって不利な条件でここに来て貰ったのは私」
ほむら「だから優木沙々への対応は、極力あなたの希望に任せた」
ほむら「しかしあなた一人に任せられる限度を、状況はもはや超えてしまった」
杏子「だけど、マミさんが……」
ほむら「今は、下がりなさい!」
ほむら「さむなくば全て、手遅れになるわよ」
ほむら「今あなたのしたい事、すべきことは何かしら?佐倉杏子」
杏子「…………」ギリッ
杏子「優木沙々」
沙々「なん、ですか……?」
杏子「ちょっと頭に血が上ってやり過ぎた……。悪かったよ」
沙々「い、いえ」
沙々(いやー、死ぬかと思いました)
沙々(というか暁美ほむらが止めてくれなかったら、本当に死んでましたね)
沙々(さっきまでは思っていた以上に、遊ばれてたわけですか)
杏子「…………」クルッ
スタスタ スタスタ
ほむら「…………ふぅ」
マミ「佐倉さんをすぐに追わなくて良いの?暁美さん」
ほむら「構わない。それ程親密な共闘関係を結んでいる訳じゃない」
ほむら マミ「…………」
マミ「今回のあなた達の行為、私達への敵対行為と解釈するべきかしら?」
ほむら「私は、あなたと敵対したいとは考えていない。おそらく杏子も」
マミ「あなた、と?」
ほむら「今日の事に関する非は全てこちらにある。ごめんなさい」
ほむら「それでもあえて一つ忠告させて貰う」
ほむら「巴マミ。優木沙々を信頼し過ぎると、きっと足をすくわれるわよ」
マミ「二度とその口から、優木さんを侮辱するような事を私に聞かせないで」
ほむら「…………」
マミ「私達の前から、今すぐ消えなさい……!」
スタスタ スタスタ
マミ 沙々「…………」
マミ「…………」
マミ「行った、みたいね」
沙々「すっごい、怖かったですぅー!」ビクビク
沙々「どうしてこんなぎりぎりの、ベストタイミングで来れたんですかぁ?」
マミ「そうね……、第六感、かしら?」
マミ「妙な胸騒ぎがして、こっちに何かある気がしたからこっちに来たの」
マミ「そしたら丁度佐倉さんが優木さんに襲い掛かっていて……」
マミ「あっ!佐倉さんっていうのはね――」
沙々「大丈夫です。前にちょっとだけ話を聞きましたから」
マミ「あれ?そうだったっけ?」
沙々「ええ」
マミ「…………ねえ、優木さん」
沙々「なんですか?」
マミ「優木さん、私に何か――」
マミ「ごめん、やっぱりなんでもないわ」
沙々「……そうですか」
沙々「今日は疲れました。私達の家に、はやく帰りましょう、マミさん」
マミ「……!」
マミ「ええ、そうしましょう」ニコリ
沙々(巴マミが、わたしに対してどの程度かはわからないが不信感を抱いている)
沙々(今更そんな事でわたしと彼女の間の魔力のパイプは揺るぎはしない)
沙々(しかし、だからといって、あまりいい兆候とは言えません)
沙々(――さっきの事、巴マミの記憶からいっそ消してしまいましょうか……?)
~☆
杏子「…………」スタスタ
ほむら「杏子」
杏子「…………」スタスタ
ほむら「佐倉杏子!」
杏子「……なんだよ」
ほむら「苛立つのはわかるけど、それを私にぶつけるのはやめて」
ほむら「もっと冷静になりなさい」
杏子「冷静になんて、なれるかよ……!」
杏子「お前はわからないからそんな事を言えるんだ」
杏子「優木沙々は人格改竄が可能なレベルにまで巴マミの精神を掌握してる」
杏子「この違和感、この気持ち悪さは、アタシにしかわからない……!」
ほむら(見ず知らずの他人の精神が掌握されたとして)
ほむら(彼女がこんな興奮した反応を示すはずはない)
ほむら(しかし杏子はそれを、私の前で誤魔化そうともしない)
ほむら(……どうやら興奮し過ぎて)
ほむら(過去を知らないはずの私と喋ってる事を意識してないみたいね)
ほむら(優木沙々、余程彼女の事が気に入らないのか)
ほむら「事態が逼迫しているからこそ、無理にでも冷静になる必要がある」
ほむら「私もあなたを撃つよう彼女に操作された。あなたの言う事が正しいだろうとは思う」
ほむら「でも今この状況で、巴マミに対してそれを証明するのは不可能でしょう?」
ほむら「それともあなたは巴マミを、優木沙々の手から無理やり解き放てるというの?」
杏子「……いいや。もっと早い段階ならアタシにも可能だろうけど、あれは無理だ」
杏子「あそこまで深くに食い込んだのは、かけた本人以外が触るには危険過ぎる」
ほむら「何か、彼女の支配を弱める方法はないの?」
杏子「多分、両者の間に距離をとればとるだけ、影響は小さくなるはず」
杏子「どれくらいの効果が期待できるかはわからないけど」
杏子「ああ、後は本人の抵抗する意思も必要かな」
ほむら「それならすべき事は巴マミの保護ね」
ほむら「でも本人の抵抗する意思も必要なら」
ほむら「やっぱり彼女自身を理詰めで納得させなければならない」
ほむら「そのためには、優木沙々がそういう魔法少女である証拠が必要だわ」
杏子「証拠……」
ほむら「ねえ、杏子」
ほむら「優木沙々を殺せば、その問題は全て丸く解決したりしないの?」
杏子「無理、だろうな」
杏子「何が起きるかについて、正直これだとはっきり言いきる事はできない」
杏子「ただ、あいつの魔力の支配が断たれると、そこには隙間が空くと思う」
ほむら「隙間?」
杏子「他に言い方はわからない」
杏子「隙間が空くと、少なくとも心は不安定になるだろうね」
杏子「優木沙々が死んだらこうするって、魔法が掛けられてる可能性もなくはないし」
杏子「その方法はあまりお勧めできない。最後の手段だろうな」
ほむら「…………そう」
ほむら(ワルプルギスの夜に、精神に干渉するような魔法が通用するとは思えない)
ほむら(杏子との立ち合いを見た限り、はっきり言って足手まとい)
ほむら(殺して済むなら、それでも良かったのだけれど)
ほむら「まあ、いいわ」
ほむら「彼女がここに引っ越してくるまでいた所に、ちょっと行ってみましょう」
杏子「やっぱり引っ越して来たのか。場所は知ってんのかよ?」
ほむら「それくらいの事は既に調べてある」
ほむら(できれば仲間に引き込もうと思ったけれど、それはもう無理ね)
ほむら「杏子もどうせ暇でしょう?」
ほむら「あなたの雇い主は現在私なのだから、ついてきて」
杏子「……ハイハイ、わかったよ」
スタスタ
杏子(……優木沙々)
杏子(悪い奴で良かったと、正直ホッとしてる自分がいる)
杏子(そもそも最初は話し合いしかするつもりはなかったんだ)
杏子(だけど、巴マミの事について色々言われたらカッとなって……)
――わたしとこうして話したのは、仲直りの間を取り持ってもらううため?
――いや、それともマミさんと今組んでるのがどんな魔法少女かを、見たかったんですか?
杏子(アタシは何をしに来たんだろう)
杏子(ワルプルギスの夜を倒すため、その後去るほむらの後釜に座るため)
杏子(放っておいたら風見野まで危ないとか、色々理由は思いつく)
杏子(でも、アタシが一番したい事ってなんだろう……)
――くふふ、まるでマミさんが、完全無欠の超人みたいな言い方ですね
――あなた、マミさんの上辺しか見た事がないんですか、空しいですねぇ
――道理で今更になっておめおめと見滝原に顔を出せる訳ですよ
杏子(マミさんはマミさんだ)
杏子(だけど、誰よりも今、彼女の近くにいる奴にそれを否定されると)
杏子(こっちはそれに言い返す事が出来ない)
杏子(それが無性に腹立たしい)
――だってわたしにとってのマミさんは家族
――彼女を置いて行った、負け犬とは違いますよ
杏子(したり顔で知った風な、こっちの神経逆なでする事ばっか言いやがって……)
杏子(自分にもわけわかんない感情ばかりでイライラする)
杏子(だけど一つだけはっきりしてる事は)
杏子(今のマミを置いて、おめおめと逃げ帰れはしないって事だ)
今日はここまで
沙々三等兵、杏子地雷の爆破解体に失敗 マミ軍曹が救援に駆けつけました
傭兵ほむらは依然杏子地雷の所持を続けテロを企んでいる模様です
展開的にそろそろ中盤にさしかかります
言い忘れてましたけど新約おりこの内容は反映されないと思われます、単行本派なので
(そもそも沙々さんが再登場するかどうかが危ないとか言ってはいけない)
>>157
書いてる方の意図としては、マミさんのイメージを貶された事
コンビ以上って事で沙々さんが選んだ、家族関連の杏子にとって耳の痛い発言
ここらでイラッとしたって感じなのでなんかニュアンスが違う 全然違う
(一年って歳月の長さもそういうのに絡めてるつもり マミさんと杏子のコンビって数ヶ月くらいだと思う)
違ったら困るからあまり大きな声で言えないけど
乙
ここの沙々さんは好感がもてる
マミさんの行動指針が変わってないように見えるから、杏子言う通り人格改竄が可能なようには見えないな
可能ならマミさんもゲスくなってるだろうし
~☆
ーまどかホームー
まどか(そろそろ、寝ようかな)
まどか(……あっ、いつの間にかメール来てた)
まどか(送ってきたのは……、ほむらちゃん!?)
まどか(な、なんだろう?中身を見るにもちょっと緊張しちゃうな)
ほむら【こんな夜分遅くにメールなんかしてごめんなさい】
ほむら【でも、起きてたら一つだけ聞かせて欲しい】
ほむら【まどかは、魔法少女についてどう思ってる?】
まどか(ど、どう思ってるって……うーん)ポチポチ
まどか【こんばんは。ほむらちゃん】
まどか【魔法少女については、まだ今の所よくわからないから】
まどか【もっとちゃんと考えてみようと思ってます】
まどか【ほむらちゃんもそうだけど、優木さんからも】
まどか【魔法少女にはならない方が良いって言われちゃったし】
まどか(よし、送信っと)
ピロピロピロ
まどか(返信はやっ!)
ほむら【優木沙々が言った事は正しいわ】
ほむら【魔法少女になんか絶対なるべきではない】
ほむら【まあそれはそれとして、まどかに一つお願いしたい事があるの】
ほむら【私はこんな感じで、なるべく毎日まどかと連絡を取りたいと思ってる】
ほむら【ただ、手段はメールでいいと考えてたけど、これって意外と不便】
ほむら【だから明日から――】
~☆
ー翌日 下校中ー
沙々「おーい、お二人さん。こんにちはー」テクテク
さやか「ゆ、優木さん……!」
まどか「こんにちは、優木さん」ペコリ
さやか「集合場所、ここじゃないですよ」
沙々「そんな事はもちろん知ってますよ」
沙々「あなた達に早く会いに来ただけですし」
さやか「あっ……」
さやか「えっと、その、あの、恭介についての話なんですけど」
さやか「申し訳ないけどあれ、やっぱりなかった事に――」
スタスタ
沙々「……はい?なんですって?」ムギュー
まどか さやか「!?」
さやか「い、いきなり何で抱きつくの!?」アワアワ
沙々「だって必要な事ですから」
沙々(上条恭介に美樹さやかのエロい夢を見せるにあたって)
沙々(生の感覚というのは重要ですからね)
沙々(ここまできてやめるだなんてとんでもない)
沙々(わたしの努力が全部無駄になっちゃうじゃないですか)
沙々「…………」サワサワ
さやか「ちょ、ちょっと、タンマ……!くすぐったいから……!」
沙々(胸、大きい方ですし、色仕掛けの際の結構な武器になるでしょうね)
沙々「…………」モミモミ
さやか「ひゃっ!」
沙々(うーん、前からだとやり辛いです)
沙々(背後をとりましょう)
サッ
ガシッ
さやか(魔法少女の腕力どうなってんのよ……!)
さやか(これじゃ逃げられない……!)
沙々「…………」スッ
さやか「ぎゃー!ど、どこ触ってんのよ!」ゾクッ
沙々「そんな……」
沙々「い、言わせないでくださいよ……、は、恥ずかしい」
さやか「言ったら恥ずかしい所なんかに触るなー!」
まどか(さ、さやかちゃんいつも私にじゃれついてくるけど)
まどか(それの比じゃないくらい、いやしい触り方……)ゴクリ
さやか「離せー!離せ―!」ジタバタ
沙々「ハイハイ落ち着いて、落ち着いて。必要だって言ってるでしょ」
さやか「信用できるかぁー!」ウガー!
沙々(…………)
沙々(何が楽しくて、同い年の女の子にこんな事してるんでしょう、わたし)
沙々(ホント世知辛い人生ですねぇ)
~☆
ー魔女結界ー
沙々「fast!」
マミ「はぁああああ!」ダンッ!
ヒュン ダァン! グギァアアアァ
さやか「凄い!マミさんの動きが速くなった!」
沙々「くふふ、どうですか!これがわたしの魔法です」エッヘン
沙々(まあ、巴マミの無意識的なリミッターを外してるだけですけど)
沙々「使い魔を倒す時にはslowで動きを鈍らせて、マミが楽々倒す」
沙々「魔女を倒す時にはslowが奴らには効かないので」
沙々「マミにfastをかけてマミが倒す」
沙々「どうです、この完璧な役割分担は」
まどか「えっと、優木さんは、戦わないんですか……?」
沙々「戦わないんじゃなくて、弱過ぎて戦えないんです」
沙々「この役割分担でわたしが随分と得をしてる事は否定しませんけど」
さやか「優木さんって、マミさんと最初から組んでたの?」
沙々「いいえ。一人で戦ってた時期もありましたよ」
さやか「じゃあその間はどうやって……」
沙々「色々、ですよ」
さやか「色々、ですか」
沙々「ええ、もう本当に色々……、くふふふふふ」ズーン
まどか さやか(魔法少女って、大変なんだなぁ)
マミ「ティロ・フィナーレ!」
ドォォォォン!
沙々「あっ、終わったみたいですね」
沙々「次行きましょうか、次」
~☆
ー魔法少女体験ツアー終了後 外ー
さやか「それじゃまたねー、優木さん、まどか」
まどか「またねー、さやかちゃん」
沙々「さよなら、美樹さん」
テクテク テクテク
まどか「……ねえ、優木さん」
沙々「なんです?」
まどか「魔女っていったい、なんなのかな?」
沙々「と、言いますと?」
まどか「魔女が次々に生まれる原因って、きっと何かあるはずでしょ?」
まどか「魔女の影響を受けて、苦しんだり死んだりしてしまう人達がいる」
まどか「マミさんや優木さんが魔女をいくら倒しても」
まどか「魔女が出続ける限りそれはずっと続いちゃう」
まどか「じゃあ魔女を全部無くしちゃう事って、できないのかな?」
まどか「人を襲うのを止めて貰う、でもいいけれど」
まどか「魔女っていったい、なんなのかな?」
沙々(魔女がいないと、魔力の回復源がなくて、わたしは困る)
沙々(魔女を全部なくす、魔女を無害な存在にする)
沙々(もし仮にそんな願いで契約でもされたら非常に面倒です)
沙々(今の内に、なんとか思い留まらせましょう)
沙々「わたしにはよくわかりませんね。魔女がいったい何かなんて」
沙々「ただし魔女について、わたしにもわかる事がほんの一部ならあります」
沙々「奴らの頭の中は、基本的に負の感情ばかりだって事です」
まどか「負の、感情……」
沙々「ええ、もちろん個体差はありますけどね」
沙々「何かしら歪んだ一つの想いを抱き続けてる、それは間違いないです」
沙々「例えば周りの全てを、あるいは何かを一心に憎み続ける」
沙々「他の感情や、対象なんて目に入らないくらいに強烈な感情の迸り」
沙々「少なくとも話が通じるような連中ではないですよ」
沙々「魔女の思考に論理性なんて物はありません」
沙々「あるのは普通、恨み、恐怖、怨恨、悔恨……」
沙々「魔女は魔女なりの形で生きている、というのは間違いないでしょうけど」
まどか「そう……、なんだ……」
沙々(人間と違って、一つの感情が全てを支配しているせいで)
沙々(魔女って操るのが難しいし面倒なんですよねぇ)
沙々(正直、流石にあそこまでの強烈な憎悪とかの感情って)
沙々(共有していて気分のいい物ではないですし)
沙々「…………」
沙々「魔女を根絶は確かにできないかもしれませんが」
沙々「それは、この世界から決して不幸がなくならないのと、同じ事じゃないでしょうか?」
沙々「不幸を減らそうとする事、魔女を減らそうとする事」
沙々「それはただそれだけでもって価値を持つ。そうは思いませんか?」
まどか「…………うん」
まどか「でも、そうじゃないの」
まどか「私はそれに対して何もできないから……、だから私は……」
沙々「そう難しく思い悩むのはよくないですよ、鹿目さん」ニコォ
沙々「自分ができる事から、地道にやっていけばいいんです」
沙々「何よりもまず、自分を大事にする。話はそれからです」
沙々「あなたは毎日幸せでしょう?それを投げ出したりしては、絶対にダメです」
まどか 沙々「…………」
沙々「…………」
沙々(本気で信じてもいない事をペラペラペラペラ……)
沙々(正義や奉仕なんて物に本気でのめり込めないのは、自分が一番よくわかってます)
沙々(だけど突き詰めて、誰かや何かを本気で憎んだり否定する事もできない)
沙々(……結局わたしはどん底までに弱いから)
沙々(わたしの何もかも、全て中途半端になってしまうんでしょうね)
沙々「…………」
沙々「う゛がぁ゛ー!」
まどか「!?」ビクッ
沙々「な、なんでもないです、はい」
沙々(いけない、いけない)
沙々(つい、無力な鹿目まどかに感情移入して、余計な事を考えてしまいました)
沙々(そんなつまらないバカな事を考えてないで、しっかりしなくてはなりません)
沙々(今現在、わたしがしなくてはいけない事は、うんざりする程あるんですから)
今日はここまで
自分の利益になるかどうかだけを基準に行動してる
この話の沙々さんの株が上がってるっぽくて困惑
この沙々さんだって、幼女を盾に逃げるくらいは必要ならしますよ……?
>>173
技術的に可能ってのと、実際にやるってのは別だと思われます
別編沙々さんの魔法は例えば認識の上に偽装の「テープ」を貼るような物で
魔法をかけてる間だけ持続、幻覚と同じように魔法を解いたら効果は消えます
(ちょっとしたショックでも洗脳解けちゃうけど)
対して人格改竄で言われてるのは記憶ごと、どころか人格、魂に手を加えて弄るって事です
だからドSマミ、ドMマミ、ど根性マミ、極悪マミとかに簡単に性格を変えられますが
そのレベルの干渉を人、魔法少女の魂に行ってしまうと、長期的にどんな影響が出るかはわからない
魔法をたとえ途中で解いてもやった行為の結果は変わらない
現在沙々さんにとってはマミさんが日々の糧を得る重要な必需品
だからそんな危険な橋は無闇に渡らず大事に扱ってる訳です
※ 以下叛逆の話題注意 ※
映画見てきた あんまり映画の話このスレでするのよくないけど
なぎさの存在が薄過ぎて なぎささ書きたくなった なぎさささやかでも可(なぎ×ささ×さやか)
そして超大雑把な構想だけしてたベルセルククロスと、ある意味で展開が一部被ってた 仕方ないね
むしゃくしたのでこれが終わったら、お蔵入りしようと思ってた
改変後の最終的に仁美とさやかが円環の理で殴り合いの喧嘩する奴をきっと書く
ー優木沙々の強さについての長々とした考察ー ※読まなくても問題ないです
優木沙々という魔法少女は別編においての活躍をざっと見る限り、
新人のキリカに接近戦ではボロクソにされ、
大量の魔女を使役したのに織莉子に全て殲滅された
三流以下の実力しかない超雑魚魔法少女にしか見えない
しかし、私は本当にそう言いきるためには
色々と考慮すべき事があるとここで述べたい
そして願わくば、自分のソウルジェムを握りつぶすなんて
情けない死に方をした彼女の名誉を少しでも挽回したいと考えている
1 キリカについて
「優木沙々一人なら大したことはない、私一人で捻れる」
そんな風に、新人のキリカは沙々を評価していた
しかし、そもそもキリカはベテラン手練の魔法少女巴マミを
撃破とはいかなくともあと一歩の所まで苦しめている
映画(叛逆)での巴マミの立ち回りを見る限り、彼女に攻撃の一手を全く許さないのは
おそらく相当の実力(というよりは遅延の魔法が強力?)が必要だろう
つまりキリカが例外的に強過ぎるのである
優木沙々は一般的な魔法少女に比べ接近戦がそこまで劣っていない可能性がある
しかもキリカを魔女軍団はボコボコな状態にまで持って行った
並の魔法少女なら優木沙々が魔女を使えば瞬殺なのかもしれない
巴マミの時間軸ごとの強さが一定ではない可能性、
(あるいはその時の調子、精神状態もあるかもしれない)
別編ではキリカが魔法少女狩りで得た経験は多分リセットされている
(魔女より魔法少女を倒す方が苦労するとして)
自分を変えたい、そう願った彼女はきっと超早熟型なのではないだろうか(成長限界もはやい)
魔法少女狩りがキリカをメキメキと成長させた
だからあちらでは巴マミにあそこまで互角以上に立ちまわれたのではないか
ここらを考慮すると、むしろ予想以上に優木沙々が弱い可能性がある事も
もちろん忘れてはならない
2 織莉子について
こちらの方が正直問題である
何故なら純粋に織莉子が強過ぎる
予知ができる 相手が遅くなるetc で、四人がかりでも中々倒せない
わからなくはない気がする
しかし、アニメやTDSを見る限り、一人で複数、どころか大量の魔女を一度に倒す
流石にこれは不可能ではないか?
単純な解釈として、優木沙々の視界内にいない魔女は動きが鈍る
でも、これはキリカ「お前もう許されないよ」からの一連の流れで微妙
というかそれ以前になんでほむら達を倒せなかったのかが謎
おそらくは本編?の織莉子と別編の織莉子は別編の方が強いのだろう
本編はまどかを倒さなくてはという目的があったからある意味精神は安定していたようだし
別編のあんなに魔法を思いっきり使える機会は普通に暮らしていたらないはず
(なおかつ普段目立たないようにしていた訳だし)
思いきり魔法を使うのが織莉子真の覚醒には必要?
高火力全力が許されるなら巴マミでもごり押しは可能……かも、しれない
そしてこっちが重要だが、優木沙々は多分弱い魔女しか使役出来ない
何の条件もなしに使役出来るなら
そこらをうろついてる魔女を操作して、グリーフシードに困らないと思われる
それで何か条件があるなら、操れる魔女に限界があってもおかしくない
というか限界がないとバランス(ry
つまり、織莉子に負けたのは彼女が高火力かつ強過ぎたからで、
あるいは沙々の使役する魔女が弱かったからで、
決して単純に優木沙々が弱いわけではない、はず
3 沙々さんの魔法設定(コレの中)について
――魔女使役
強過ぎる魔女は元から操れない 鍛錬で精度は上達(でも基本雑魚)
倒した魔女がグリーフシードになってから魔法をかける
モンス○ーボールにできるかどうかはやらなくても見ればわかる
グリーフシードから孵化させた魔女を使役、一回使ったら一般人を一定量食べさせてあげる
一般人を食べれば食べるだけ強くなるよ!
沙々は織莉子やキリカと戦った頃、つい最近にその方法を構築して大量育成中でした
穢れを限界までためこませて、特別の魔法掛けないとかないと使えないので、普通の穢れ除去には使えない
一般人食わせた後は戻ってきて、自分でグリーフシードになるよう予め放流前に指示しておく
しとくのをうっかり忘れると、逃亡してまた会った時に
最初倒した時よりこいつ強ええ……!って苦戦する羽目になる
でもこのお話の中の沙々さんはこっちの技能弱体化してるので、
よわっちい雑魚の中の雑魚しか操れない。
一度に多くの部隊に言う事聞かせられないし、一回使用したらどんどん弱体化していく
一般人食わせよう作戦実施まではまだしばらく先
方法は考えてたけど魔法の熟練度が足らないので、
やったら事故りそうだったから地道に魔女の使役を練習してた
今は手駒に優秀なマミさんがいるのでやってない
――人間について
従来沙々さんよりも格段に進化
自分より優れているかどうかを一目見ただけで人格、素質、魔法少女としての力量の判断
マミさんを思う存分いじりまくった修業の成果 マミさんに対してならやろうと思えば本当に大抵の事は出来る
でも下手して壊しちゃうと嫌なので大事に扱う
一度強い魔法少女を自由に操れる楽しみを知ってしまうとやみつき
魔女と違ってこっちは理性があるので、より深く操れて凄く楽しい 困った時にはマミさん任せで生きてる
更新できそうにないからこっちを投下
予想以上に長い
~☆
ー数日後 放課後ー
テクテク テクテク
マミ「今日は、暁美さん学校に来た?」
まどか「はい、来ましたよ」
まどか「昨日一昨日、来なかったのが嘘みたいに堂々と」
マミ「大丈夫?何か酷いことされたりしなかった?」
まどか「そ、そんな……、酷いことなんて全くされてないです」
まどか「ほむらちゃんは、悪い子じゃないですもん」
マミ「……そう、かもね」
マミ「だけどごめんなさい。今の私に、あの子を信じることはできないわ」
マミ「だって、何をするか、それに何の目的があるのか、本当に読めないんですもの」
マミ「しかもあなた達の安全を思うとなおさら、ね」
まどか「…………」
沙々(あの夜の、私に対する襲撃が完全に尾を引いてますねぇ……)
沙々(警戒すること自体は別に構いませんが)
沙々(こちらの雰囲気までもがぎくしゃくし始めると、ちょっと困ります)
沙々(……やはり、記憶を消しておくべきだったか?)
沙々(けれど記憶を完全に改竄するリスク、マミへの負担を考えれば――)
マミ まどか「…………」
マミ「いやね、この空気」
マミ「……何か話題を変えましょうか」
マミ「といっても、私に何か話題があるわけじゃないんだけど」
さやか「あっ!私、話題ありますよ!」
さやか「ここ数日のことなんだけどね」
さやか「どうも、恭介の私を見る目が前と違うっていうか」
まどか「……どういうこと?」
さやか「いやー、私の自意識過剰かもしれないけど」
さやか「異性として、意識されてる気がするんだ……」
さやか「前まではちょっと身体が触れたり」
さやか「あるいはお互いの距離が近かったりすることなんて」
さやか「正直全然気にされてなかったんだけど」
さやか「何故か近頃顔を赤らめたり、過剰に反応するっつうか……」
まどか「そうなんだ!良かったね、さやかちゃん!」
マミ「おめでとう、美樹さん」
さやか「ちょっ、何よ、二人ともその反応はっ!」
まどか「えー……、じゃあどういう反応を期待してたの?」
マミ「今更隠そうとしたってどうしようもないわよ、美樹さん」
さやか「ぐぬぬ……」
沙々「……」
沙々(ようやく、上条恭介に望んだ効果が表れてきましたか)
沙々(さっさと仕上げに行ってしまいましょう)
沙々(ぶっちゃけ予想以上に毎日辛かったし、助かりますね)
沙々(上条恭介が寝てる時間、夢に干渉するためにはこっちは極力起きてないといけない)
沙々(……あ゛ー、眠いし体調悪いですよー)
沙々「美樹さん」
さやか「ん?なあに?」
沙々「ついに明日、……作戦を決行しましょう」
さやか まどか「!」
マミ「何?どうしたの?」
まどか「えっと、さやかちゃん、優木さんに手伝って貰ってるんです」
マミ「ふーん、何を?」
まどか「恋について」
マミ「……ええー。うそぉー」
沙々「なんです?その顔。何か文句でもありますか?」
マミ「文句ってわけじゃないけど……、でも、ねぇ」
沙々「マミさんがどう思ってるかは知りませんが」
沙々「こういう心の問題の対処に、わたし以上に最適な人間、世の中にそうはいませんよ?」
マミ「うーん……」
マミ「だけど優木さんと恋愛のイメージが、私の中で全然しっくりこないのよねぇ……」
沙々(うるせえ、余計なお世話です)
さやか「いや、でも、待ってよ。ほら、色々と心の準備が……」
沙々(そしてこっちも、ごちゃごちゃごちゃごちゃ……)
沙々「心の準備に使う時間なら数日あったじゃないですか」
沙々「それでもなお足りないなら、それはあなたが無能ってことです」
沙々「甘えてんじゃねーぞ、コラ」
沙々「あなたの思いは、上条恭介に伝えるのを恥じるような紛い物なんですか?」
さやか「はぁ!?何よその言い方はっ!?」
沙々「違うなら、ぜひそれを示してみせてくださいよ」
沙々「普通なら、そうやってうじうじしてるのも人生経験、とやらになるんでしょうね」
沙々「だけどあなたは今、非日常的な魔法少女の世界に片足を突っ込んでるんです」
沙々「そんな他愛ない逡巡が許される程、魔法少女にかかわることは甘くない」
さやか「…………」
マミ「優木さん」
沙々「なんです?」
マミ「そうやって、無理やり何かをやらせようとするのは……」
沙々(ああっ、もうほんっとうに色々と面倒臭いですねー)
沙々「現実問題、そんな呑気なこと言っていられる状況じゃないでしょうが」
沙々「暁美ほむらの意図の読めない行動、それに――」
~☆
ー翌日 放課後 さやか宅ー
沙々「はい、それでは制服から、わたしの持参したこれに着替えてください」
さやか「私が着るにはちょっと、これ可愛らしすぎない?」
さやか「というかさ、病院行くときにおめかしってどうなの」
沙々「うるさいですねぇ、ほら、早く着替えて」
沙々(わざわざ上条恭介の一番好みな感じのを用意したんですから)
さやか「うー、き、緊張するなぁ」ソワソワ
沙々「……ああ、一つ大事なことを忘れてました」
沙々「あなたが全力を尽くせるよう、今ここでお呪いをかけておきましょう」
さやか「お呪い?」
沙々「ええ、マミさんにかけるような感じのをちょっと」
さやか「……それって、大丈夫なの?」
沙々「感じ、ですから大丈夫ですよ」スッ
沙々「さあ、こちらの目を、全身の力を抜きながらじっと見てください」
さやか「あのさ、優木さん。……いや、沙々さん」
沙々「なんですか?」
さやか「その、ありがとね。後押ししてくれて」
さやか「無理やりにでもやらされなかったら」
さやか「きっと自分でやろうだなんて、いつまでも思わなかっただろうし」
沙々「……ふん、そういうのは告白が成功してから、言ってくださいよ」
沙々(さて、あまり洗脳が効果的に作用するのは期待できないんですけど)
沙々(見るからに青春してる彼女をイメージして、それを嫉妬にどうにか変えて)
沙々(後は足りないところに魔力を注いで、できるだけどうにかしてみましょう)
~☆
ー病室ー
恭介(な、なんか今日は、さやかの服がいつもと違う気がする)
恭介(僕の好みに丁度ドンピシャな感じというか)ゴクリ
さやか「えっと、その、恭介……。どう?」チラッ
さやか(なんか……、頭がぼうっとしてるな……)
恭介「ど、どうって?」
さやか「今日の、私の服……」
恭介「あっ、うん。す、すごく可愛いよ」
さやか 恭介「…………」
沙々(うーん、覗いてるこっちが恥ずかしくなってきますねぇ)コソコソ
沙々(病室のドアを少しだけ開けて中を覗いてるわたしも)
沙々(方向性こそ違いますが傍から見たら相当異質でしょうけど)
さやか「今日はね、恭介に一つ、本気で伝えたいことがあるの」
恭介「伝えたいこと?」
さやか「…………」
さやか「私、恭介のことがずっと好きでした。ううん、今も大好きです」
さやか「幼馴染とかそういうのじゃなくて、一人の男の子、異性として」
さやか「だから…………、私と、付き合ってください!」ペコリ
恭介「………………」
恭介「――ごめん」
さやか「…………っ!」
恭介「今の僕には、君が好きになれるような魅力なんて一つもない」
恭介「君はすごく魅力的だ。妙なことだけど、最近僕はそれに気づいた」
恭介「……でも、ダメだ」
恭介「…………」
恭介「……きっと君は、今の僕に同情、してるだけなんだよ」
さやか「そんなことないっ!」
恭介「…………」
恭介「もう演奏は諦めろって、先生から直々に言われたんだ……」
恭介「奇跡でも起こらない限り、ありえないんだってさ……!」
恭介「ヴァイオリンを弾けない、こんな人生に、いったい何の意味がある」
恭介「ヴァイオリンに全てを捧げてきた!」
恭介「ヴァイオリンを弾けない僕に、いったい何の価値があるっ!」
恭介「こんな僕を誰かが好きになるだなんて、そんなふざけた話があるものか!」
恭介「僕は……!僕はっ……!」
恭介(落ち着け……、落ち着くんだ……)
恭介(このタリスマンのおかげで、アレを宣告されてからも、平静をなるべく保ってこれたじゃないか)
恭介(いくら告白に驚いたからって、全く関係のないイライラが噴出してどうする)
恭介(さやかに八つ当たりするのは、どう考えてもお門違いだ……!)
さやか「…………」
さやか(ああ、ダメだよ……。こんなの……)
さやか(こんな時に何もできないだなんて……)
さやか(どうして神様は、こんな恭介に酷いことをするの……?)
さやか(だったら私は……、それなら私が……)
恭介「あの、さやか、いきなりごめ――」 さやか「恭介、奇跡なら――」
沙々(『上条恭介が反応できないくらい素早く、そして長めのキスをしてください』)
チュッ
さやか 恭介「!?」
さやか 恭介「…………」
恭介「な、何するんだよ急に!」
さやか「ち、違っ……!身体が、勝手に……」
恭介「はぁっ!?ふざけてるのか!?」
さやか「ふざけてなんかないわよ!」
恭介「ファーストキスだったんだぞっ!」
さやか「こっちだってそうよっ!」
さやか 恭介「…………」
さやか 恭介(どうしよう、恥ずかしくて、まともに顔を見れない……)
さやか「……私の気持ちが、同情ってさっき言ってたよね、恭介は」
恭介「えっ、あっ、うん」
さやか「同情なんかじゃ、絶対ないよ」
さやか「だって私、ファーストキス、しちゃったこと後悔してないもん」
さやか「わざとやったことじゃないけど、それでも恭介なら、いい」
さやか「ほかの誰でもない、恭介だから」
さやか「ヴァイオリンを弾いてた時の恭介は確かに輝いてた」
さやか「でも、私にとっての恭介はそれだけなんかじゃない」
さやか「本当に好きだから、だから……、だから……」ウルウル
恭介「あ、あの、その。ごめん。ごめんよさやか」
恭介「………………」
恭介「……本当に、さやかは僕のことが、好きなんだね?」
さやか「うん……、私、恭介のためだったら、命だって惜しくない……」ゴシゴシ
さやか「だから――」
さやか(私が魔法少女になれば、恭介の腕はまた……)
恭介「わかった、信じるよ」
恭介「さやか、顔を上げて、こっちを見てくれるな?」
さやか「?」
グイッ
チュッ
さやか「!?」
さやか「ばっ……」
恭介「さやかは僕なんかのことを、本当に好きだって言ってくれた」
恭介「それに君は大事な幼馴染だから、いい加減なことを言いたくない」
恭介「えっとさ、単刀直入に言うと、正直僕の今の気持ちが恋なのかどうかはわからない」
恭介「だけど、僕なりの本心を言わせてもらえば、さやかのことが、最近凄く気になってる、女の子として」
恭介「それになにより、恥ずかしい話ではあるけど」
恭介「今僕は君ともっとキスしたくてたまらない」
恭介「それこそヴァイオリンのことを一時的にでも忘れられるくらい激しく」
恭介「何度も、何度でも」
さやか「ちょ、ちょっっと、待っ――」
テクテク テクテク
沙々(アホくさっ……)
沙々(後はもう、放っておいて帰りましょう)
沙々(通りかかった看護師にでも見られちまえばいいんですよ)
沙々(……しかし、ひやひやしました)
沙々(ここまでやって、失敗とか空しすぎますからね)
沙々(やっぱり、決定的だったのはわたしのナイスアシストによるキス)
沙々(あの瞬間無意識的に、さやかがマミやわたしに心の中で助けを求めてくれたおかげで)
沙々(上条恭介のタリスマンを仲介にして、彼女を一瞬だけ、操作することができた)
沙々(ここに来るまでは、美樹さやかの精神を高ぶらせるチャーム)
沙々(それくらいがせいぜい限度かなって思ってましたが、案外やってみるものですね)
沙々(…………)
沙々(美樹さやかが、上条恭介にとっての、ヴァイオリンに取って代わることはできない)
沙々(ああいう夢は、ほかの何物をもってしても、代用品になりはしない)
沙々(しかしとはいえ人間は、夢によってのみ生きているわけではない)
沙々(もっと別の場所を埋める何かになら、あるいはなれるかも)
沙々(上条恭介がヴァイオリンを失っているこの状態以外に、おそらくチャンスはないでしょう)
沙々(元々、彼ってのめり込むタイプみたいですからね)
沙々(彼をとことん夢中にさせて、彼にとってかけがえのない何かになることができたなら)
沙々(きっと、美樹さやかにとっての一番の幸せは、そこに見つかるんでしょうね)
沙々(まぁ、そこまで上条恭介のことを彼女が好きなのかまでは知りませんが)
沙々(さすがにわたしには関係のないことです)
さやか「じゃあ、今日はもう帰るね」
恭介「明日も来てくれるよね?」
さやか「ちょっと、いきなりがっつき過ぎ」
さやか「多分、来れたら来るよ。あんま期待しないで」
さやか「……で、それはそうと、ずっと気になってたんだけどさ、それって、なに?」
恭介「これ?これはタリスマンって言うらしいよ」
さやか「タリスマン?何それ?」
恭介「あれ?知らないのかい?君の友達から貸してもらってるんだけど」
さやか「?」
さやか「恭介って、そういうの持つ趣味特にないと思うけど」
さやか「何か効果あるの?それって」
恭介「うん、これを持ってると、イライラした時とか信じられないくらい心が落ち着くんだ」
さやか「んー、ホントー?なんか、うさんくさいなー」
さやか「で?誰なの?その私の友達って」
恭介「ええっと……、優木沙々さん。わかるだろう?」
さやか「………………うん、わかるよ」
さやか「へー、そうなんだ」..
今日はここまで
書いてて非常に恥ずかしかった
今回さやかの魔法少女問題そのものは全く解決せぬまま
さやかちゃんは告白しかするつもりはなかったのだ
ただ、沙々さんの魔術で気分が高翌揚させられてたから
つい付き合ってくださいだなんて言ってしまったのだ
腕を負傷して参ってる人に付き合ってくださいはどうかって気もするが
結果上条君がムラムラして付き合えたからハッピーエンドなのだ
そろそろほむら、マミ両陣営交錯の時が近いです
~☆
ー翌日 放課後ー
沙々「それじゃあ告白に成功したってことですね。おめでとう、美樹さん」
沙々「美樹さんの告白が無事に成功するかどうか」
沙々「わたし昨日一日中、不安で不安で仕方なかったですよー」
沙々(実際は、こっそり一部始終しっかりと見てましたけどね)
さやか「沙々さん、本当にありがとね……!」ウルウル
さやか「沙々さんの手助けがなかったら、絶対こんな幸せ掴めなかったと思う……!」ウルウル
マミ「あらあら、おめでとう美樹さん」
マミ「よかったわね、友人として純粋に私も嬉しいわ」
まどか「さやかちゃん、上条君への想いを、もう有耶無耶に隠そうとしたりはしないんだね」
さやか「へっへっへ、当ったり前ですよっ!」ゴシゴシ
さやか「何しろ私は、もう恭介と付き合ってる、相思相愛の間柄なんですから!」エッヘン
沙々「いつも以上にテンション高いですね……」
沙々「結局、魔法少女についてはどうするつもりなんですか?」
マミ「ちょっと優木さん、それを今言うのは流石にデリカシーって物に欠けるんじゃ……」
沙々「何を言ってるんですか。凄く重要なことでしょうに」
沙々「マミさんもわかってるでしょう?」
マミ「それはまあ、そうだけど、……ね」
沙々「それで?どうなんです?」
さやか「えっと、…………なりたいな、って思ってる」
沙々「つまり、上条君の腕を治したい、ってことですか?」
さやか「うん」
沙々「へー、そうですか」
沙々「…………」イライラ
沙々(こんの、すっとこどっこいがぁ……!)
沙々(私がなんで苦労して御膳立てしてやったのか、理解しろよ……!)
マミ「あのね、美樹さん」
マミ「こういうめでたい時にこんなこと言うのは嫌だけど」
マミ「魔法少女の責務は、恋愛と両立できる程甘いものだと考えるべきじゃないわよ」
さやか「……はい、わかってます」
沙々(よし、いいぞマミぃー!もっと言ってやれぇー!)
沙々「まあまあ、マミさん。美樹さんもそんなことは重々承知してるでしょうし」チラッ
さやか「もちろん今すぐになる気はないよ」
さやか「だけど、恭介を私の力で少しでも笑顔にしてあげたいんだ」
マミ「……酷い言い方で申し訳ないと思うけど、あなたに一つだけ聞きたいことがあるわ」
マミ「誰かの望みを叶える、そんなあなた自身の望みは何?」
マミ「彼に夢を叶えて貰いたいの?それとも彼の夢を叶えた恩人にあなたはなりたいの?」
さやか「…………」
マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」
沙々(くー!やっぱりマミは切れ味が違いますねぇー!)
さやか「……どうなんでしょう、ね」
さやか「告白する前なら、私は純粋に彼に夢を叶えて欲しいんだって、言えたかもしれない」
さやか「だけど、今は戦うことが凄く怖い」
さやか「手に入れたものを失うことがひたすら怖い」
さやか「だってこんなに、怖いくらい幸せなんだもん」
さやか「……でも、でも私は、もう一度聞いてみたいんです」
さやか「恭介がその手で奏でる、あの美しい旋律を」
マミ「そう、わかったわ」
マミ「……その怖いって気持ちを大事にして、しっかり考えることね」
さやか「はい、自分ができる限りを尽くして考えたいと思ってます」
まどか「だ、だけどさやかちゃん」
まどか「この街には既に優木さん、マミさん、それにほむらちゃんがいるんだよ?」
沙々(おっ、鹿目まどか。中々鋭い切り口のツッコミをするじゃないですか)
沙々「加えてさらに佐倉杏子も加わる可能性がありますね」
沙々「一つの町に五人の魔法少女は、いくらなんでも承服しかねます」
さやか「わかってる。そんなことはもうわかってるよ」
さやか「だから今すぐには、なるつもりはない」
さやか「とはいえ心が決まって、かつ私にも、歴としたチャンスが巡ってきたなら」
さやか「私は恭介のために契約をして、魔法少女になるよ」
マミ「契約に頼らないで済むような解決策も、ちゃんと模索するのよ?」
さやか「はい、もちろんです」
まどか 沙々「…………」
沙々「…………」
沙々(……言葉にしていることだけが、彼女にとっての真実ではない)
沙々(機会がないだけで、契約の意志そのものはどうやら固いようですね)
沙々(どうもわたしは、美樹さやかについて大きく読み違えていらしい)
沙々(彼女の契約の意志は最初から変わらず、ずっと固かったわけです)
沙々(ただそれが本当にそうなのかと吟味する時間、後は覚悟が必要だっただけで)
沙々(それは恋とは全く別次元の問題であって)
沙々(恋が成就したからといって、どうこう変わるものではない)
沙々(今はまだ、自分の想いがはたして真実かどうか等で揺れているようですが)
沙々(必ずいつか、私の前に障害となって立ち塞がることでしょう)
沙々(――早いこと、事故に見せかけて魔女に喰わせる)
沙々(それがわたしにとっての理想的な選択)
沙々(しかし、それはあくまでも理想。現実との折り合いをつけなくてはならない)
沙々(問題は大きく見て二つ)
沙々(まずは佐倉杏子、暁美ほむら。彼女達の存在)
沙々(今このタイミングでさやかを排除しても、巴マミの目は誤魔化せるでしょう)
沙々(けれどその誤魔化しが、あの二人に通用する可能性は低い)
沙々(その行為が決定的な引き金となって、抗争が勃発する危険性がある)
沙々(……ただし見方を変えれば、どういう選択を選んだとして)
沙々(遅かれ早かれ彼女らとの抗争は多分避けられない)
沙々(そういう風にも考えることはできる)
沙々(もう一つは鹿目まどかの契約を誘発しかねないという問題)
沙々(彼女の心の中には親友である美樹さやかがかなりの面を占めています)
沙々(彼女が契約をそれほど考えないのは、それに見合った願い、目的がまだないから)
沙々(そして魔法少女がこの街には多すぎるから)
沙々(ちょっとでもタイミングや選択を間違えると例えば)
沙々(暁美ほむらと佐倉杏子が見滝原から撤退)
沙々(そして美樹さやかを生き返らせるために鹿目まどかが契約)
沙々(なんてことになりかねない)
沙々(あれほどの素質です。きっと願いは過不足なく行われるでしょう)
沙々(そして万が一、美樹さやかの記憶から、誰が自分を死に追いやったかが表に出れば……)
沙々(やれやれ、よほど上手くやらないといけませんね)
沙々(はたして今、美樹さやかを抹殺するのがわたしにとって最善?それとも――)
~☆
ー数日後 ○○市ー
杏子「おい、ほむら……。これでもまだ足りないのかよ」
杏子「アイツが契約してからの悪行三昧の数々の証拠、もう充分だろ」
杏子「近隣のベテランから得た、優木沙々が魔女を操っていたという証言」
杏子「隠ぺいされ闇へと葬られた洗脳の被害者の声」
杏子「彼女の学友その他共が起こした様々な奇行の客観的な一覧」
杏子「そして不自然な事態の収束と、アイツの転校]
杏子「それ以来ここらでは類似の奇行等は一切起きていない」
杏子「……他にもまだあるけど、これ以上ここを更に探ったとして」
杏子「何か情報は出てくるのか?」
ほむら「これでもまだ足りない、わね」
ほむら「魔女を操っていたというのは予想外だったけど、得られた情報は概ね想定済み」
ほむら「当然これらの情報は私達にとってとても役に立つ」
ほむら「しかしこれだけでは、巴マミの説得には不安定要素がまだ残るわ」
杏子「例えばさ、どんな不安が残るって言うのよ?」
ほむら「一番顕著なのは、優木沙々が改心したと突っぱねる可能性」
ほむら「ここでいくらあくどい事をしていたからといって」
ほむら「見滝原に移ってからそれを続けていたとは言い切れない」
ほむら「あなたの口から巴マミにそれを証拠なしで告げてみる?」
ほむら「巴マミを間違いなく、納得させられるならそれでもいいけど」
杏子「…………」
ほむら「……まあ、証拠がどうしても揃わない場合は、残念ながらそうするしかないわね」
ほむら「とはいえここでこれ以上何かを調べても、もう何も出てこないでしょう」
杏子「じゃあどうするつもりなんだ?」
ほむら「場所と、対象を移すわ」
ほむら「これから話を訊くのは――」
~☆
ー病院 帰り道ー
さやか(はぁ……、今日も魔法少女体験ツアーに顔出せなかったなぁ……)
さやか(この時間から顔を出そうとしても)
さやか(合流とか色々で無駄に手間取らせちゃうだろうし)
さやか(いや、一応私には、行きたいって意思はあるんだよ?)
さやか(ただ恭介が、私を求めて中々離してくれないっていうか……)
さやか(ふへへへへへへ)ニヤニヤ
??「おい、そこのアンタ」
さやか「は、はいっ!?な、なんでしょうかっ!?」ビクッ
??「な、なんだよその反応。び、びっくりさせんなよ……」ビクッ
さやか「あっ、すいません」
さやか「話しかけられると思ってなかったから驚いちゃって」
さやか「……あのー、どちら様、ですか?」
杏子「んーとね、隣の風見野で魔法少女をやってる佐倉杏子だ」
杏子「よろしく」スッ
さやか「これは?」
杏子「お近づきの印。お菓子は嫌いか?」
さやか「いや、全然そんなことないけど」
さやか「えー、何が目的なの?佐倉さんは」
杏子「佐倉さん、じゃなくて杏子でいいよ」
杏子「アタシもさやかって呼ぶから。構わないだろ?」
さやか「うん、オッケー」
杏子「……まどろっこしいのはアタシも嫌いだ。それじゃあ手短に言おう」
杏子「さやかに一つ、お願いがあるんだ」
杏子「――巴マミを、優木沙々の魔の手から救うため、アタシとほむらに協力してくれ」
~☆
杏子「そのまま動くなよー……」
スッ
クイッ
プツン
さやか「!」
杏子「さやかに結び付けられてた優木沙々の魔力の『糸』を切った」
杏子「何か沙々に通じる変なものが自分から取れたって、感じただろ?」
さやか「う、うん……」
さやか「でもさ、それは杏子が私にそういう錯覚を起こさせる魔法をかけたから」
さやか「そんな可能性もあるわけじゃん?」
杏子「まぁアンタからすれば、そうだろうね」
杏子 さやか「…………」
杏子「今現在、さやかがアタシの話をどう考えてるか、聞かせてよ」
さやか「……私としては、杏子のことを最初は信用ならないって思った」
さやか「でも、色々見せてくれた証拠全部を」
さやか「何もかも嘘だと頭ごなしに決めてかかるのは私にはできない」
さやか「似たような沙々さんの魔法を目の前で見たり、かけてもらったりしたし」
さやか「それに何より、薄々感じてたんだ」
さやか「マミさんと沙々さん、どっちもいい人なはずなのに、何かがおかしいなって」
さやか「時々ね、沙々さん凄くぞっとするような目をすることがあるの」
さやか「いい人だとは思う。思いたいんだけど……」
さやか「何か、掌の上で踊らされてるって感じるからなのかな?よくわからない」
さやか「…………」
さやか「――もしかしたら、杏子が欲しがってる確実な証拠、私、知ってるかもしれない」
~☆
ー夜 まどか宅ー
ほむら「ふーん、大変だったのね」
まどか「うん。……早乙女先生可愛いのにちょっと不思議」
ほむら「理想が高すぎるのよ、きっと」
ほむら「どうせ私にはほとんど関係のない話だけど」
まどか「……ほむらちゃん、学校にもっと来ないとだめだよ」
まどか「私、ほむらちゃんとたくさん、学校とかでもお喋りしてみたいな」
ほむら「…………なるべく努力するわ」
まどか ほむら「…………」
まどか「ねえ、ほむらちゃん」
ほむら「なあに?まどか」
まどか「ほむらちゃんはどうして、私をこんなに気にかけてくれるの?」
まどか「学校を休んでまでやらなくちゃいけない用事があるんだよね?」
まどか「なのに夜の時間をほとんど毎日割いて、私とお話しするなんて……」
ほむら「……本当はこうやって、あなたと顔を合わせて色々」
ほむら「魔法少女や日常のことについて話すなんて、すべきではないと思う」
ほむら「もしかしたらそれが、あなたの契約を後押ししてしまうかもしれないから」
ほむら「でも一方的に根掘り葉掘り、私に一日のことを細かく探られるのは、まどかも嫌でしょう?」
ほむら「だから――」
まどか「違うよ、ほむらちゃん」
まどか「私が言ってるのは、どうしてほむらちゃんが私だけをこんなに気にかけてくれるのか」
まどか「ほむらちゃんがなんで私をわざわざ訪ねてくれるのかに限った質問じゃないよ」
ほむら「…………」
ほむら「――とても大切な友達だから、ではダメかしら?」
まどか「…………」
ほむら「ただあえてそこに付け加えるならば」
ほむら「私にとって全く予想外のイレギュラーが発生しているから」
ほむら「そう言えるわね」
まどか「イレギュラー?」
ほむら「ええ。詳しく話すつもりはないけれど」
ほむら「そういった刺激の中で、あなたがどういう反応を示すのかというサンプル収集」
ほむら「それは、今後の対応の正確さを少しでも増すため避けて通るわけにはいかない」
ほむら「もちろんこれで終わりにできれば、それに越したことはないのは確か」
まどか「……?」
ほむら「……そんな考え方は結局のところただの臆病な保険」
ほむら「私はもしかしたらいつも、心のどこかで諦めてしまっているのかもしれない」
ほむら「いつもと違うことは、無視できない危険を孕んだ排除すべきエラー」
ほむら「しかし、この違いにこそ、あるいは私の――」
今日はここまで
次回からいよいよ山場へ突入
どれくらい長いかは書いてみないと分からないですが
500レスくらいまでには終われそうですね
~☆
ー翌日 魔法少女体験ツアー終了後ー
テクテク テクテク
沙々「それで用事ってなんですか?」
さやか「…………ほむら、連れてきたよ」
スッ
沙々「!」
沙々(背後を取られた……!?)
ほむら「動かないで。動く素振りを見せたら撃つ」スチャッ
ほむら「変身もまた、動いたのと同等の行為とみなす」
バターン!
沙々「がっ……!」
ほむら「念のため、手足は拘束して、ソウルジェムは――」
さやか「ほむらっ!」
ほむら「…………何?」
さやか「やめて」
さやか「まだ、沙々さんが悪い奴だって、決まったわけじゃないでしょ?」
ほむら「……あなたが異議を申し立てた所で、この状況で何ができるというの?」
さやか「私は杏子に、マミさんを救うため、協力してくれって言われたんだけど」
さやか「だから自分の意見くらい、当然言うわよ」
さやか「誰が、ここに沙々さんを連れてきてあげたのか、ちゃんと考えてよね」
ほむら「…………」
ほむら「優木沙々、余計な素振りをしたら」
ほむら「すぐにその場から動けなくしてあげるから」
ほむら「私が十分にあなたから離れたら、こちらへ向き直りなさい」
スッ
沙々「…………ふぅ」
沙々(あ゛ー、地面に打ち付けられた所がいってぇー)
沙々(……巴マミを救うため、ってさやかは言ってました)
沙々(つまりいくらかは、わたしの『種』がばれちゃってるんでしょうね)
沙々「えっと、これはいったいどういうことですかぁ?」
沙々「わたしとマミさん、暁美ほむらの間には険悪な空気が流れてるって」
沙々「美樹さんも、もちろんわかってますよねぇ?」
さやか「それは……」
ほむら「優木沙々。質問に答えるべき立場なのはあなたの方よ」
ほむら「色々と、あなたについて調べさせてもらったわ」
ほむら「あなたはここへ引っ越すまで、沢山の人間を洗脳し、自分の思う儘に操った」
ほむら「しかもその対象は人間に限ったことではなく、魔女も含めて」
ほむら「そしてあなたは色々とやり過ぎて、あそこにいられなくなった」
ほむら「何か、私が今述べたことの中に間違いはある?」
ほむら「正直な、返答を期待しているわ」
沙々「…………」
沙々(ふむ、確かに色々調べたようですが)
沙々(はたしてどこまでが憶測ではなく、きちんと証拠づけられているのでしょう?)
沙々(……いや、問題はどの程度客観的な証拠を暁美ほむらが揃えているか、じゃない)
沙々(今、こちらの生殺与奪が彼女に握られていて)
沙々(かつ、握った情報がわたしを尋問するに足ると、彼女が確信できるレベルものであること)
沙々(そして、おそらく殺すという行為を彼女が躊躇ってはくれないこと)
沙々(完全に否認してしまうのは、後々自分の首を絞めることになりかねませんね)
沙々「……確かに、契約してからそういう酷いことをしていた時期はありましたよ」
沙々「なんていうか、調子に乗っちゃってたんですよね」
沙々「周囲の環境はわたしが生きるには過酷すぎて、嫉みばかりが募っていく」
沙々「そんな全てを、引っくり返せる。魔法を簡単に手に入れてしまった」
沙々「わたしのことを止められる人間は、その時周りに誰もいなかった」
沙々「過去の過ち、だったのは確かです。覆しようのないわたしの過去です」
沙々「けれどたった一度の過ちで、未来の全ては閉ざされてしまうのでしょうか?」
沙々「やり直す機会というのは、二度と与えられるべきでないのでしょうか?」
ほむら「…………魔女の使役については、どう考えているの?」
沙々「魔女について、ですか」
沙々「わたしがやったのは、生きていくのに魔女を利用した。たったそれだけのこと」
沙々「精神操作と魔法弾、これだけでどうやって」
沙々「魔女と戦って生きていけばよかったんですか?」
沙々「生きるためには、利用できるものは全て利用しなくてはいけなかった」
沙々「ただ、それだけのことです」
沙々「使い魔を殺さずにグリーフシードを増やそうとする、有象無象の魔法少女と一緒です」
沙々「正しいことではありませんが、非難される筋合いもそこには感じません」
沙々「特定の誰かを襲わせた、とかそういうのがあればまた別でしょうけど」
ほむら「…………」
さやか「あのさ、沙々さん」
さやか「沙々さんは、恭介を洗脳したの……?」
さやか「だから私は、恭介と付き合えたのかな……?」
沙々「洗脳した、という言葉にはいささか語弊がありますね」
沙々「わたしはただ、短期間で効率的に」
沙々「上条君があなたを意識するのを手助けしただけです」
沙々「裸のあなたが出てくるような夢を見せたりしてね」
さやか「なっ……!」
沙々「それに何を感じるかは、あくまで彼の感性の問題」
沙々「なるほど、そういう結果に至るよう意図して、彼にいくらか干渉したのは事実ですが」
沙々「わたしがしたことなんて、彼にあなたが一人の女の子なんだって意識させたくらいですよ」
沙々「あなた一人でも、女の子アピールさえちゃんとすれば、同じ結果になってた」
沙々「もっともあなたが一人で、そんな積極的なアピールができたとは到底思えませんけど」
さやか「…………」
沙々(よし、形勢は少し私の側へと傾きつつ――?)
ほむら「――それなら巴マミについては、どうなのかしら?」
沙々「へっ?」
ほむら「あなたは巴マミに、人格改竄が可能なレベルの精神干渉を行っている」
ほむら「これは冷静に見て、巴マミという人格の権利、尊厳を著しく傷つけているのでは?」
ほむら「はっきり言って、この事実だけであなたは、私にとって排除に値する対象だわ」
沙々(やっぱりこいつ、何か核心的な証拠を握ってるのか……?)
沙々「証拠は?」
沙々「まさか証拠もなしに、そんなことを主張してるわけじゃないでしょう?」
ほむら「杏子の証言と私の体験だけで、私が確信するには既に十分なのだけれど」
ほむら「……あなたが上条恭介に渡したタリスマン、とやら」
沙々「っ!」
ほむら「あれをさやかに回収してもらった」
ほむら「用事があって行けないから、お見舞いに行くついでに返して貰って下さい」
ほむら「そんなことを沙々さんに言われた、なんて言ってもらってね」
ほむら「今、同時に別の場所で、杏子がタリスマンを持って巴マミに真実を告げているところ」
沙々「なっ……!」
沙々(やられたっ……!)
沙々(こいつらの狙いは巴マミの身柄の確保)
沙々(わたしの処分に関する問題は二の次)
沙々(あくまで巴マミが目的っ……!)
バッ
ほむら「動くな」ダァン!
沙々 さやか「!」
ほむら「次は当てる。今のはさやかに配慮しての一発」
ほむら「流血は、みたくないでしょうからね」
ほむら「次は確実にどこかに当てるわ」
ほむら「選びなさい」
ほむら「大人しく巴マミの洗脳を解くことを選ぶか」
ほむら「それとも……」
沙々 ほむら さやか「…………」
沙々「…………」ギリッ
沙々(ふざけるなっ……!)
沙々(こっちがどれだけの手間を、巴マミに費やしたと思ってるんですか……!)
沙々(大体わたしにだって、あれは今更どうにかできる段階を越してるっつうの)
沙々(……とはいえ残念ながら、もうマミのことは諦めるしかないかもしれませんね)
沙々(今から佐倉杏子の元へ行って割り込もうとしても、ほぼ間違いなく間に合わない)
沙々(それより生き延びる、自分の立場の改善。それらを優先するべき)
沙々(考えろ、この状況を切り抜ける方法をどうにか考えるんです)
沙々「暁美ほむらさん」
ほむら「何かしら?」
沙々「あなたの目的は、なんですか?」
ほむら「目的……?」
沙々「ええ、バカみたいにグリーフシードを集めることじゃないでしょう?」
沙々「何かあなたには、特別な目的がある」
沙々(鹿目まどかを覗いた時に見た、夢)
沙々(あれがなんなのかはいまだにわからないですけど)
沙々(多分暁美ほむらの目的は……)
沙々「あなたの目的、それはもしかして」
沙々「――鹿目まどかを契約させないこと、なんじゃないですか?」
ほむら 「!」
沙々「当り前ですよね、あんな素質の子が魔法少女になったら何が起こるわからない」
沙々「万が一敵になる前に、手を打っておくのは合理的な考え方です」
沙々「ただ、あなたと鹿目まどかを結び付けてる、何かが妙ではありますが……」
ほむら「……惜しいわね」
沙々「はい?」
ほむら「それで?そうだとして、あなたは何を言おうとしていたの?」
沙々(食い、ついた……?)
沙々「あの、ですね。わたしなら、鹿目まどかの契約を絶対に食い止められます」
ほむら さやか「――っ!」
ほむら「……だから、巴マミについては不問にしろ、そういうこと?」
沙々「ええ。正直言って、巴マミとの間に繋いだパイプは」
沙々「もうわたしにもどうしようもありません」
沙々「でも、命を助けてさえくれるなら、見逃してくれるなら」
沙々「鹿目まどかの契約を絶対に阻止してみせます」
沙々「あなたにとって、それは悪い取引ではないでしょう……?」
ほむら「まどかの精神を、弄る、そういうこと……?」
沙々(あれ?心持ち殺気が増しているような……)
沙々「ひ、人聞きが悪いですよ。彼女の思想、感情そのものに干渉するわけじゃないのに」
沙々「そう考えたとしても、そういう選択ができないようにロックをかける」
沙々「元からそういう風に考えられなくする」
沙々「お、同じようで全然違うことじゃないですかっ!」
沙々「それすらも嫌だというなら、いつまでも不確定な要素を残したまま」
沙々「あなたは彼女が契約するかどうか、ずっと監視し続けるつもりですか?」
ほむら「…………」
沙々(……このまま行ける、か?)
ほむら「なるほど、冷静に見ればあなたと組むことには、ちゃんとしたメリットがあるわね」
沙々「だったら――」
ほむら「でも、あなたの要求は承服しかねる」
沙々「えっ?」
ほむら「それではあなたの手に、巴マミを操縦する手段が残ることになる」
ほむら「私にとってはあなたのもたらすメリットよりも」
ほむら「巴マミに恩を売れたり、あなたがいないメリットの方が大きく感じられる」
ほむら「佐倉杏子と巴マミの和解も、あなたがいなくなった方が」
ほむら「きっと上手くいくんじゃないかしら」
沙々「なっ!そんな身勝手なっ!」
沙々(……くそっ、せめて美樹さやかは)
沙々(あっ、ダメですね)
沙々(完全にどちらが正しいかを見失って、呆けてます)
沙々(これじゃ役に立ちそうにありません)
ほむら「ただ何よりも、私があなたを認められないのは感情面でのこと」
ほむら「どう背中を預けて共に戦えというの?」
ほむら「――魔法少女の成れの果てを、自分の道具扱いするあなたと」
沙々「…………」
沙々「え?」
沙々「魔法少女の成れの果て?」
沙々「なんの、ことですか?」
ほむら「……知らなかった、の?」
ほむら「本格的な操作をする際には、相手の感情を少なからず共有しているはず」
ほむら「そう、杏子が言っていたものだから、てっきり知っているのだと思っていたけど」
ほむら「魔女を使役する時には、必要ないのかしら?」
ほむら「それとも魔女と魔法少女って、根本的に別のものになっているの?」
沙々「魔女……、魔女……?」ガタガタ
ほむら「グリーフシードとソウルジェムを、今一度見比べてみれば――」
ほむら「……いえ、その様子を見る限り、知らない振りをしていた」
ほむら「そんなところかしらね」
ほむら「本当は、あなたもわかっていたんでしょう?」
ほむら「――私達の、末路」
沙々「――っ!!!!」
~☆
魔女『――――――』
そう、わたしにはわかっていた。
魔女『――――――』
私には動物は操れない。
魔女『――――――』
操れるのは人間、魔法少女。
魔女『――――――』
……そして、魔女。
魔女『――――――』
喜び、楽しみ、悲しみ、恐怖、そんな感情の全てを感じなくなって
記憶をなくし、昨日、今日、明日といった区別もやがて消滅してしまう。
魔女『――――――』
例えば憎しみ、それだけを誰かに倒されるまでの間、ずっと抱き続ける。
人の身であってはとても思えない程に強く、強く。
深く、深く。
魔女『――――――』
知らなければよかった。
知らなければ、耐えられるのかもしれない。
どんなに強い純粋な負の感情を抱くのだとしても
それを前もって意識しなければ。
沙々『――――――』
ただし、それを先に知ってしまったのなら――
~☆
沙々「……魔女になるなんて」ヘンシン
沙々「イヤだァアーッ!」ダッ
ほむら「!」
ダァン!
ほむら「ちっ!」
ほむら(また、腕があらぬ方向に……!)
ほむら「に、逃がす――」
ブワッ
パーン パン
魔女s「――――」
ほむら「魔女が大量に湧いて……!」
ブォォォォン
さやか「ほ、ほむらっ!?こ、これって!?」
さやか「というか魔法少女の成れの果てって――」
ほむら「ちょっと黙ってて!」
ほむら(まさか、この量の魔女を使役できるだなんて)
ほむら(……いや、違う)
ほむら(これは使役してるなんてものじゃないわね)
ほむら(時間差で、魔女を無秩序な状態に、支配から順に開放しただけ)
ほむら(それらの結界が、何重にも重なる形でこの場に展開されている)
ほむら(完全に逃げるための時間稼ぎが目的)
ほむら(厄介なことに、一つ一つ破壊して、その度に時間停止を解除し結界の崩壊を待つ)
ほむら(そうしていかなければこの包囲を私は突破することができそうにない)
ほむら(魔力消費を考えると、癪だけど時間停止は温存して、地道にやるしかなさそうね)
ほむら「さやか!私から絶対に離れないで!」
さやか「い、言われなくてもっ!」
~☆
ダッダッダッ
沙々「はぁ……。はぁ……。はぁ……」
沙々(なんで、わたしは、はしってるんでしょう?)
沙々(こんなとき、なにをしたらいいのか)
沙々(なにもかんがえず、にげだしてきてしまった)
沙々(もういちど、やりなおせないでしょうか?)
沙々(……でも、どこから?)
沙々(………………っ)
沙々(――巴、マミ)
ダッダッダッ
今日はここまで
えらいこっちゃ
さやか魔女の時は結構何とかなるんじゃないかと思えたけど
ほむら魔女の精神世界見たらあれを理解するとか呼びかけて元に戻すとかできるわけないと確信したわ
それこそ円環の女神様のチートパワーの支援でもなければ無理ゲー
沙々はよくあんなもんに触れて正気保ってられたもんだ
今日も更新
>>265
魔女になるのは大変なのよって理由で
沙々さん自殺を説明しようとしてた身としては映画は完全に追い風だった
あんな願いで契約する子ですからね
自分だけは大丈夫っていう根拠のない自信と、根拠のある不安の狭間で本当は色々悩んでたんでしょう、きっと
この話の中で早々に魔女からマミさんに乗り換えたのも、そういう不安から目を背けられるのが結構大きい
殺してないのよって織莉子さん言ってたけど
グリーフシードとソウルジェムの類似だけ示して説明したら
ソウルジェムがなかったら魔女にならないで済むって短絡的に思考するのはしゃーない気が
(肉体派じゃなくても握りつぶせんのかよって問題は別だが)
あの時は魔女になりたくないとしか考えてなかったでしょうけど
ソウルジェムは魔法の力を与えてくれる、その力を使いすぎたら魔女になってしまう
みたいに考えても不思議ではない やっぱり意図的な完全犯罪の可能性が……
~☆
ー少し前 見滝原のはずれー
杏子「これだけ話せばわかっただろ?優木沙々がどんな奴かって」
杏子「証拠として、タリスマンの魔法構成から丁寧に説明したしな」
マミ「……随分とたくさんのことを、調べたのね」
マミ「この資料だけでも既に、結構説得力あると思うわ」
マミ「しかも見覚えのあるアイテムの構造を、こうも鮮やかに見せられては」
マミ「優木さんが私を籠絡してる。そのことに疑問を挟む余地はもはやない」
杏子「ああ。でも、もう心配はいらないよ」
杏子「アンタに繋げられた接続を切るために、今ほむら達が動いてるから」
マミ「……ふふ、馬鹿みたい」クスクス
杏子「?」
杏子「馬鹿みたいって、何が?」
マミ「――そんな簡単なこと、私が知らなかったと思って?」
杏子「…………え?」
マミ「見くびられたものね」
マミ「佐倉さんに魔法の基礎から教えたのは誰?私でしょう?」
マミ「あなたの幻惑の魔法と、優木さんの魔法は様々な面で違う」
マミ「それでも根底にある魔法構成には、かなり共通した所がある」
マミ「一年……、一年間も……。あったのよ?」
マミ「彼女が私に何をしてるかについて、気づかないはずがないじゃない」
杏子「それじゃ、それじゃどうして、アンタは……?」
マミ「彼女と深く繋がるとね、断片的、いくらか抽象的ではあるけど見えるの」
マミ「彼女の記憶、感情、願い、そういった物が切実とね」
マミ「あの体験の中に嘘は一つもないと、私は確信してるわ」
マミ「彼女がどういう人間かだなんて、言われるまでもなく私は一番よく知ってる」
マミ「凄く、酷い人よ」
マミ「自分のために誰かを犠牲にすることに、罪悪感を欠片も感じていない人」
マミ「でも、感情をなくしたロボットというわけでは決してない」
マミ「とても弱い人なの」
マミ「自分に関係のない人に対してはぞっとするほど無関心なのに」
マミ「自分と、自分に関係した人には自然と心揺さぶられずにいられない」
マミ「弱いから、彼女はそういう閉じ籠もった態度を取らざる負えなかった」
マミ「はたして、それが自分から選んだものなのか、選ぶしかなかったのかはわからないけど」
杏子「アンタは……、アイツがどういう奴かを理解した上で……!」
杏子「それをそのまま受け入れてるのか……!?」
マミ「でも実際、そんなに悪いことかしら?」
マミ「そういう無関心さって、程度の差こそあれ、皆持たずにはいられないものじゃない?」
マミ「彼女は自分の真情にひたすら忠実であるだけだわ」
マミ「私が自分の信条に従って、使い魔を倒したり人を助けたりするように」
マミ「魔女を使役したり、誰かを無理やり操ったり、そんなことはもちろん非難されるべき」
マミ「だけどこの街ではそんなこと、私がさせてない」
マミ「優木さんは私という抑止力の元、魔女だけではなく使い魔も倒し、外面よく生きている」
マミ「彼女が唯一、深く精神に干渉してる対象は、それを受け入れている」
マミ「ここに非難されるいわれはないと思うんだけど」
マミ「佐倉さんは、どう思う?」
杏子「…………巴マミ」
杏子「アンタきっと、優木沙々に知らない間に洗脳されてるんだよ」
マミ「どういう意味?」
杏子「アタシの知ってる巴マミは、そんなこと、言う奴じゃなかった」
杏子「アタシの知ってる巴マミはもっと信念に愚直で」
杏子「自分の理念と合わない奴を隣にはべらせておくなんて……」
マミ「あなただって、あの頃とはかなり変わってしまったじゃない」
マミ「優木さんは、自分の利益と衝突しない限り私の方針に従ってくれる」
マミ「この一年、あなたと袂を分かってから、私の孤独を埋めてくれたのは彼女なの」
マミ「彼女の隣には私の居場所がある」
マミ「それ以上は、もう望まない」
マミ「あなたの喪失が、私に教えてくれたことなのよ?」
杏子「――っ!」
マミ「佐倉さんが、何故この街に再び顔を見せたかなんて知らない」
マミ「それに必要以上の文句をつけるつもりもない」
マミ「ただし、優木さんに危害を加えることだけは絶対に許さない」
マミ「何があっても守るって私、決めてるの」
マミ「あの子と、この街の両方を」
杏子「…………」
マミ「だから、この話はこれで――」
マミ「――――」
マミ「――」
マミ「」
ドサッ
杏子「…………!」
杏子「……マミ?」
杏子「おいっ!?」
杏子「突然倒れるなんて何が――!」ガバッ
シュルルルルルル
杏子「っ!?」
杏子(リボン……!?)
バタンッ
杏子(いってえっ!受け身とれるかこんな状態でっ!)
杏子(……くそっ!リボンに全身絡まれて、身動きができねぇ)ジタバタ
杏子(いったいどうなってんのさ……!?)ジタバタ
シュルルルルルル
杏子(落ち着け……、冷静になれ……)
杏子(包んでるリボンを、槍を出して切り開けば……)
マミ『――――――』
杏子(…………?)
マミ『――――――』
杏子(……!)
杏子(ああっ、くそっ、優木沙々の仕業かよ)
杏子(直には通せないからって、マミを仲立ちにして魔法を通してきやがった)
杏子(アタシの一番弱い所を、薄皮を抉って……)
杏子(しかもマミのリボンの中が、一種の増幅機関になってやがる)
マミ『――――――』
杏子(眠い……)
杏子(こちらを傷つける意図はないみたいだが……)
杏子(ここで、マミに追い打ちされたら死ぬな……)
杏子(ああ、ダメだ……、目を開けてらんない……)
杏子「zzzzz」クー クー
スッ
マミ「――――」
マミ「――――」
ダッダッダッ
~☆
ーまどか宅ー
まどか「優木さん、それにマミさん」
まどか「こんな時間に用事って、どうしたの?」
まどか「しかも窓から、私を呼ぶなんて……」
マミ「――――」
まどか「マ、マミさん?」
沙々「…………」
沙々「鹿目さん確か、私には何もできない」
沙々「そんな感じのことを前に言ってましたね」
まどか「……えっ?」
沙々「何もできないのが、嫌なんでしょう?」
沙々「それなら存分に、わたしの役に立って貰おうじゃないですかっ……!」
マミ「――――」
シュルルルルルル
まどか「――っ!?」
~☆
さやか「どう、杏子?目は覚めてきた?」
杏子「……さっきよりはだいぶましになったね」
杏子「まだ本調子どころか半分夢心地だけど」
ほむら「さぁ、それじゃ手早く、今の状況をまとめましょう」
ほむら「私達がここへやってきて見たのは」
ほむら「地面に倒れて爆睡しているあなただけ」
ほむら「巴マミは、どこへ行ったのかしら?」
杏子「ふんっ、逃げられたよ」
杏子「遠くからではあるが優木沙々からの干渉を感じた」
杏子「あいつらの間において、この程度の距離は意味をなさないらしい」
杏子「で、そっちの様子からして、優木沙々にも逃げられたってとこか」
ほむら「ええ、その通りよ」
ほむら「まんまと逃げられたわ」
杏子「……はは、最悪の状況じゃないか」
杏子「まず間違いなく、あいつらはとっくに合流し終えてる」
杏子「それに優木沙々は今現在、自分の保身に必死だろう」
杏子「何をするか全く予想がつかない」
さやか「一応マミさんの家に行ってみたけど、どっちもいなかったよ」
杏子「まあ、そらそうだろうね」
ほむら「外でねぐらを探しているようなことがあれば、見つけられるかもしれない」
ほむら「手分けして、探してみる?」
杏子「なんかあんま気乗りしないね、それ」
さやか「じゃあ、明日にする?」
さやか「それはそれで不安な気がするけど」
杏子「どうすっかねー」
杏子「――まぁなんにせよ、このままで済ますつもりは更々ないけどな」
今日はここまで
大雑把にみると昔の恋人がやってきてよりを戻そうとするけど、
今の彼のほうがいいのって拒絶される、そんな感じの恋愛ドラマを彷彿とさせる泥沼に
見方を変えると宗教に染まった家族を助けようとする杏子の奮闘劇感も
沙々への憤慨は、人の心を惑わせる魔法少女ってので無意識に古傷抉られるのも一因
マミさんが正気で受け入れてるから性質が悪いややこしい
杏子側からはそれが正気かどうかの判断の術はほぼないですし
マミさんは本編やTDSと比べてかなりしぶとくなりました
乙
マミさん気付いていたって事は…
さやかが精神操作されてるのにも、薄々勘付いていたって事だよね?
これは言い訳できないぞ、おい
~☆
ー仁美邸 仁美の寝室ー
まどか「仁美ちゃんは、大丈夫なんだよね?」
沙々「ええ、ちゃんと事態が収束すれば無事に解放します」
沙々「彼女に後々悪影響が出るような魔法は、何一つかけていません」
沙々「なんなら、神に誓ってもいいですよ?」クスッ
まどか 沙々「…………」
仁美 マミ「――――」
まどか「ねぇ、優木さん」
沙々「……なんですか?」
まどか「どうして、こんなことを、したんですか?」
沙々「どうしてって、先に喧嘩を吹っかけてきたのはあっちですよ」
沙々「ちょっと今精神的に不安定なせいで、思考がまとまってませんけど」
沙々「佐倉杏子への人質としてマミの確保」
沙々「そして、暁美ほむらへの人質としてあなたの確保」
沙々「生き延びるために最も可能性の高そうな選択をしてるだけです」
まどか「ほむらちゃんへの、人質……?」
沙々「ええ、気づいてなかったんですか?」
沙々「彼女、あなたのことを確実に特別視してますよ」
沙々「まぁ、あなたのその膨大な素質のためだと、私は睨んでますけどね」
まどか「…………」
沙々「でも、冷静に考えると、それだと少しわたしは困っちゃうんですが」
まどか「?」
沙々「だって、魔法少女になってほしくない、ただそれだけで彼女が行動している場合」
沙々「あなたの命、あなたの安全は交渉材料には使えない」
沙々「むしろただ魔法少女になって欲しくないだけなら、あなたを見張るよりもっと簡単な方法がある」
沙々「殺してしまえばいい」
まどか「っ!」
沙々「にもかかわらず彼女はそれをしない」
沙々「純粋に、なるべく人を殺したくない故か、それとも他に事情があるのか」
沙々「私としては後者に賭けるしかない訳です」
沙々「まぁ、わたしを殺そうとすることには躊躇いなんてなかったようですし」
沙々「それほど分の悪い賭けだとは思いません」
まどか「あ、あの、いったい何が起きてるんですか?」
まどか「私の知らないところで、いったい何が……」
沙々「…………」
沙々「どうせですから鹿目さん、一つ忠告しておきます」
沙々「絶対に魔法少女には、なってはいけませんよ」
沙々「魔法少女の結末は、とてもおぞましいモノなんですから」
まどか「おぞましい……、モノ?」
沙々「ええ、そうです」コクリ
沙々「魔法少女はみないずれ……」
沙々「わたし達が見知ったあの化け物」
沙々「魔女になる、そう宿命づけられた存在なんですよ」
まどか「…………ぇ?」キョトン
沙々「……くっくっく、お似合いでしょう?」
沙々「条理を覆す願いをした結末が、それですよ」
沙々「些末な願いか重大な願いかに関わりなく、全て結末は平等に」
沙々「前に話しましたよね?魔女についてわたしの知ってること」
沙々「あんなモノになるよう定められてるんですよ、予め魔法少女は」
沙々「巴マミも、暁美ほむらも、佐倉杏子も、そしてこのわたしも」
沙々「幸運ですねぇ、美樹さやかとあなたは。まだ、やり直せるんですから」
沙々「…………」
まどか「そんな……、そんなのって……」ガタガタ
沙々「嘘だと思いますか……?」
沙々「そう思ってもいいですよ、別に」
沙々「けれどわたしは、それを嘘だと否定するには」
沙々「あまりに魔女について知り過ぎています」
まどか 沙々「…………」
沙々「先ほどわたしはこのことを理解しました」
沙々「当然頭が真っ白になりましたよ、ええ」
沙々「……どうしようもないパニックに陥ってる時」
沙々「――何故か、巴マミの顔が浮かびました」
沙々「そのあと何もかもから逃げ出して、今、ここであなたと会話している」
沙々「ソウルジェムを壊してしまおうかとも、途中考えたりもしました」
沙々「けれど、ちらつく巴マミのイメージがわたしにそれをさせなかった」
沙々「そして、生き残るにはとりあえずまず、あなたを確保しなくてはいけない」
沙々「そう思ってふらふら、あなたの家を目指していたら」
沙々「急にこの状態の巴マミが私の前に姿を見せたんです」
マミ「――――」
沙々「それだけで、少し、冷静な状態に回復しました」
沙々「ああ、これでひとまず安心なんだって……」
沙々「…………」
まどか「優木さん」
まどか「あなたはそこまでマミさんを大切に思ってるのに」
まどか「どうしてマミさんの心を、元に戻してあげないの……?」
マミ「――――」
沙々「大切……?」
沙々「うん、大切といえば確かに大切ですね」
沙々「わたしにとって巴マミは、 手持ちの中で唯一信頼できる、まさに切り札ですから」
沙々「それを手元に置いて安心することに、何も不思議はない」
まどか「…………」
まどか「ううん、嘘だよ、そんなの」
まどか「じゃあなんで、あなたは仁美ちゃんの家を逃避先に選んだの?」
まどか「マミさんを連れて、もっとどこか遠くに行けばよかったんじゃないの?」
まどか「それをしなかったのは、ここ見滝原でのマミさんとの生活に」
まどか「優木さんの中で愛着があるから、なんじゃないかな?」
沙々「…………くふふふふ」
沙々「何を言い出すかと思えばバカらしい」
沙々「そんないきなり遠くへ逃げなくても、ここが即座にバレるとは思えません」
沙々「なんなら志筑仁美の記憶を一時的に消して、普段通り登校させておけばいいんです」
沙々「それに今日はもう疲れました。遠くに行く元気なんてこれっぽっちも残ってない」
仁美「――――」
沙々「他の家人の扱いについては、多少面倒ですけどね」
沙々「後はそういう諸々にかかる魔力のやりくりとか」
沙々「だから長期的に、ここで隠れ続けるのは難しいでしょうね」
沙々「しかしそれとは別に、わたしはこの街から引く訳にはいかないんです」
沙々「いわゆる家庭の事情って奴ですよ」
沙々「たとえどんな種類の問題が起きたとして」
沙々「わたしの居場所はもうこの街にしかない」
沙々「次の失敗は、わたしにとってどれ程高く付くことか」
沙々 まどか「…………」
沙々「……いいえ、最後のは下手な誤魔化しですね」
沙々「魔女になることより、悪い事象がこの世に存在するはずはない」
沙々「その次点で死んでしまうこと」
沙々「マミのことがどうでもいいのなら彼女を置いて」
沙々「何もかも捨てて、どこか遠くでやり直すという選択肢もある」
沙々「しかし、その選択肢を選ぼうとは、わたしにはどうしても思えない」
沙々「加えて見滝原を出ようとも思わない」
沙々「わたしはマミを大切に思ってる」
沙々「もしかしたら、全部あなたの言う通りなのかもしれませんね」
まどか「だったらどうして、マミさんを口の利けない、あんな状態にしてるの?」
まどか「必要としているなら、直接そう言っちゃえばいいんだよ」
マミ「――――」
沙々「……そんなこと、できるわけがないでしょう」
沙々「今更、何を言えというんですか」
沙々「まさかわたしはあなたを洗脳しています、ごめんなさいとでも?」
沙々「バカバカしい」
沙々「それを言うことで、何になるというんですか?」
沙々「わたしにとって損しかないじゃないですか」
沙々「第一わたしはそのことに毛ほどの罪悪感を感じていない」
沙々「そんな嘘の気持ちで謝るだなんて、それこそ申し訳ない話でしょう?」
まどか「…………だとしても、ダメだよ」
まどか「それじゃあ優木さんはこのままマミさんを」
まどか「一生自分の思い通りに動く人形にするつもりなの?」
まどか「いくらマミさんが大切だとしても間違ってるよ、そんなの」
まどか「……絶対に、間違ってるよ」ジッ
沙々「…………」
沙々(……鹿目まどか)
沙々(とても意志の強い目をしています)
沙々(自分じゃ何もできない癖に、何がここまで彼女を支えているんでしょうか?)
沙々(何か一つ、わたしにもこれだけ力強い何かがあればあるいは――)
沙々(…………!)
沙々(……ああ、なるほど)
沙々(わたしは怖かったんですね)
沙々(マミを失ってしまえばわたしが誇れるものは)
沙々(間接的であれ一つもなくなってしまう)
沙々(逆に言えば魔女の真実を知った後に)
沙々(こうして正気を多少なりとも取り戻せたのは――)
沙々「…………ふふっ」クスッ
まどか「……?」
マミ「――――」
沙々「……確かにこんな巴マミといたって、つまらないですね」
マミ「――――」
マミ「―――」
マミ「――」
マミ「―」
マミ「」
今日はここまで
いよいよ抽象的な場面が増えきて書いてる方も悩む悩む
ストックホルムとかって誘拐とかそういう自分じゃ覆せない犯罪に
巻き込まれてる場合に言うんじゃないの……?全く詳しくないけど
メタ的に言えばそういうのではない、つもりです やっぱり外側から判別つかないけど
>>282
さやかの精神干渉ってどのへんでしょう?
杏子が切った『糸』付近のことならあれはわかりにくいと思いますけど
さやかは操りにくかったり、動向を知る必要があるから保険で回路を「繋いでた」だけです
(ほむらとか仁美とかには一度きっかけ作れば、保険がなくても機会さえあればもう繋げる)
さやかが受けたのは気分高翌揚と、精神というよりはキスの際の身体操作だけ
ほむらが銃撃った際に腕の向き返られたとかそんな感じのそれ
それすらもダメなら残念ながら沙々さんは存在自体が邪悪と言わざる負えない
まあなんにせよ、不安には思ってるかもしれないけどマミさんは把握してないです
~☆
マミ「……」パチッ
マミ「ここはどこかしら……?」
沙々「おや、ようやく目が覚めましたか」
沙々「どこって安全な所、ですよ」
マミ 沙々「…………」
マミ「私の記憶の繋がりが不自然だわ」
マミ「私がここにいるのは、優木さんの仕業ね?」
沙々「否定はしません」
沙々「わたしの無意識、もしくはなんらかの意識的な働きが」
沙々「あなたを無理やりわたしの元へ引き寄せる原因となったのは」
沙々「ほぼ疑いようがないことですから」
沙々「けれど、それらについて謝りもしません」
沙々「悪いだなんて、思ってませんし」
沙々「むしろわたしに、ここまで付け入られる隙を見せたあなたが悪い」
沙々「たとえいくらかわたしに非があるとしても」
沙々「どの道もはやあなたは私のモノです」
沙々「そのつま先から髪の毛の一本一本、一挙手一投足まで」
マミ「……それなら、今更私に何が言いたいのかしら?」
マミ「黙って、自分の思い通りに動かせばいいじゃない」
沙々「……それでもいいと、思ってたはずなんですけどね」
沙々「愛着、親近感?」
沙々「ううん?言葉選びに、少し手間取りますね」
マミ「えっと、つまり私と、もっと仲良く一緒にいたいってこと……?」
沙々「あー、多分、大体そんな感じでいいと思いますよ」
沙々「そんなことを思うようになった自分に虫唾が走りますが」
マミ「酷い言われようね」
沙々「でも、これってよくよく考えればそんな不思議なことでもないですよね」
沙々「人間は例えば犬や猫を、家族みたいに思って可愛がったりします」
沙々「同じ道具を使い続ければ、その道具を新しくすることに抵抗を覚えたりします」
沙々「だったら一年も誰かと親密な関係で屋根を共にすれば」
沙々「それ相応の愛着が芽生えるのもまた、至極真っ当な成り行きでしょう?」
マミ「……ほんっとうに、酷い言われよう」
マミ「それで結局、優木さんは私を完全に自分の制御下に置いた上で」
マミ「私には自分からそれを受け入れて欲しいって言いたいのかしら?」
マミ「言っちゃ悪いけど、あなたの言ってることって凄く無茶苦茶だと思うの」
沙々「う、うっさいですねぇ」
沙々「こっちだって、他に何か上手い手が思いつくなら喜んでそうしますよ」
沙々「思いつかないから仕方なくこういう形で、命令じゃなく、お願いをしてるんです」
マミ「なんでお願いしてる側が、微妙に恩着せがましい感じなのよ」
マミ「……でも、あなたにとって好意的な見方をすれば」
マミ「お願いって行為の内に、ぎりぎり誠意のようなものを感じなくはないかもね」
マミ「曲がりなりにも、私にその意思があるかを面と向かって尋ねてるんだもの」
マミ「実は私の思考をこっそり操って、こういうやり取りをやらせてる」
マミ「なんてことはないでしょう?もしそうならとんだ茶番だけど」
沙々「ええ。証明する手段はありませんけど、違います」
沙々「あなたの人格に直接手を加えるような魔法は、リスクの面からなるべく避けるようにしてるので」
沙々「人の心は、何もかも思い通りにするには脆すぎて、不安定要素が多すぎて」
沙々「弄ってそれで壊してしまっては、元も子もないですから」
沙々「小手先の誤魔化しでは魔力消費の観点からみて、長期的に考えれば現実的ではないですし」
マミ「なら私は、それをこう捉えることにするわ」
マミ「あなたは私に対して、他の誰でもない私としての価値を認めてくれている」
マミ「私を一人の人間として、大切にしてくれてるってね」
沙々「…………これまたわたしにとって、相当に都合のいい解釈ですね」
マミ「あなたにとってだけじゃない」
マミ「私にとっても、そうよ」
マミ「いったいどれだけの人が、包み隠さず本当の自分を」
マミ「誰かにさらけ出しているというの?」
マミ「あるいはどれだけの人が、たとえたった一人のことでさえ」
マミ「他人を完全に理解できているというの?」
マミ「いいじゃない、都合のいい所しか見なくたって」
マミ「私は、あなたを失わないで済む」
マミ「それに、自分の好きに正義の味方をやっていられる」
マミ「優木さんは私を自分の利益に生かせる」
マミ「いざという時の操縦手段もある」
マミ「今までだって、それでやってこれた」
マミ「両方にとって得しかないわ。そうでしょう?」
沙々「…………」
マミ「けれど、その代わりに私と約束して」
マミ「――死ぬまでずっと、絶対に私から離れていこうとしないでって」
マミ「約束を証明する手段なんてないけれど、そう明言してくれるだけでいい」
マミ「そしたら私はあなたの言葉を信じるから」
沙々「……いいでしょう」
沙々「私の意思の及ぶ限りにおいては、絶対にそうすると約束します」
沙々「じゃあ、マミさんも私に一つ約束してください」
沙々「わたしが今際の際、自分で始末を付けるのをしくじるようなら」
沙々「なるべく早く、わたしをその手で殺してくれるって」
沙々「あなたなら、わたしをきっちり殺してくれる。そう、信じます」
マミ「…………ねえ、優木さん」
マミ「どうしてそんなことが必要なのか、聞かせてくれるかしら?」
沙々「…………」
沙々「マミさん、わたし達の末路について、知ってますか?」
マミ「私達の末路……?」
沙々「ああ、そうですか。知らないんですね」
沙々「――いずれわたし達は、魔女になってしまうんです」
マミ「え?」
今日はここまで
二人でこのままソウルジェムを壊して一緒に死んだりしそうな心中的気配プンプン
でも恋愛感情とかじゃなくて友情物のつもりです
マミさんのイメージとしてはTDSのさやか魔女化前に
「私だって正義の味方なんてやめてやる」とか言ってた境地が
穏やかに一年かけて沙々さんに色々心を探られたり悩んでる内に実現してるイメージ
精神的に強くなったというよりは手の抜き方を覚えただけのような
ここまでくると沙々さんと決裂すればそれだけで心折れるのに決定的な気がするし
沙々さんはマミさんが自分より先に死ぬなんて無意識ながら露ほども考えてない 冷や冷やしますね
次回更新はやる気と私用の具合を考えるとしばらくかかるかもしれません
ちょっと連日で疲れたし、ここから読み直したりして展開詰め直さないと若干ヤバい
マミ 沙々「…………」
マミ「どうしてそんなことが、わかるの?」
沙々「わたしにそれを語ったのは暁美ほむらでした」
沙々「しかし、わたしがそれを確信する根拠は、わたし自身の魔法とそれに基づく体験です」
沙々「おそらく既に佐倉杏子から聞いたんじゃないかと思いますが」
沙々「わたしは人間、それと魔女を操ることができます」
沙々「そして、誰かの行動を全て自分の思う儘に操縦するには」
沙々「相手の深層をいくらか把握してる必要があるんです」
沙々「マミさんは、誰かのことを本気で憎んだり恨んだりしたことはありますか?」
マミ「……う、うーん?ちょっと、思いつかないわね」
沙々「たとえあったとしても、それは魔女の抱くそれには到底及ばないでしょう」
沙々「他のことは何もかも全て忘れてしまう、感じなくなってしまう」
沙々「それが魔女の憎しみや、恨みです」
沙々「それほどに強く純粋な敵意は、まともな人間ではとても抱けるものじゃありませんから」
沙々「はっきり言って、わたしは多くの人のことが嫌いです」
沙々「特に幸せそうで得意げな面をした奴が妬ましい」
沙々「……でも、それでも、あんなモノとは絶対に違う」
沙々「わたしだって、敵意や嫉妬だけで生きているわけじゃない」
沙々「喜んだり悲しんだり、幸せになろうとしたり、恥ずかしく思ったり、色々とにかく感じます」
沙々「しかし、魔女には執着めいた感情しか残っていない」
沙々「きっとそれは、事前に意識さえしなければ、それほど恐ろしいことではないのでしょう」
沙々「辛いということすら究極的には感じないのですから」
沙々「…………」
沙々「わたしよりも魔女が優れていると、わたしが感じる点はそこです」
沙々「それしか感じないこと。そしてそれの人では及ばぬ激烈さ」
沙々「けれどそれは同時に、わたしが魔女をおぞましく思う理由でもあります」
沙々「結局のところ、どこまでも中途半端なんですよ、わたしって」
沙々「誰かの不幸を嘲笑いはしますが、本気で誰かを憎むほど他人に興味を持てない」
沙々「誰かと心を通わせることに抵抗はあるけど、誰かにすがらなければ生きていけない」
沙々「弱い自分が嫌いなはずなのに、今更何を選り好みしてるんでしょうね?」
マミ「…………」
沙々「えっと、マミさん、どうかしましたか……?」
マミ「……魔女?」
マミ「ま、魔法少女が魔女になる……?」
マミ「ふふ、ハハハ……」ブルッ
マミ「あぁ……。ぁ。ぁぁ……」ガタガタ
沙々「!」
沙々(ああ、しくじりました……!)
沙々(魔法少女の末路を知って、予想以上にショックを受けてます)
沙々(ま、まずい、このままじゃ――)
沙々「マミさん!わたしの目をじっと見て!」ガシッ
マミ「っ!」ビクッ
沙々『魔女という言葉に、心動かされるのをやめろっ!』
マミ「――――」ズキッ
マミ 沙々「…………」
マミ「…………ふぅ」
マミ「優木さん、ありがと」
マミ「おかげでちょっと怖いくらいに、精神的に落ち着いたわ」
マミ「ただ引き換えとして、頭痛と吐き気が酷いけど」
沙々「す、すいません。つい、焦り過ぎました」ペコリ
沙々「やっぱり精神を直接書き換えるようなのは危険過ぎますね」
沙々「次からは、こういうことをやるにしても」
沙々「もっと浅い、簡単にショックで解けるような、一時的なので止めておきます」
マミ「ええ、そうね。そうしてくれると凄く助かる。凄く助かるわ」
マミ「…………」
マミ「ねえ、優木さん」
沙々「なんですか?」
マミ「あなたは魔女になるのを嫌がることに、長々と理由をつけてたけど」
マミ「もっと単純に言っちゃっていいんじゃないかしら?」
沙々「と、言いますと?」
マミ「だって化け物になるのは、誰だって怖いわよ」
マミ「私が今まで殺していたのは同じ魔法少女の成れの果てだった」
マミ「私もまた、いつかはそれの仲間入りをする」
マミ「化け物になりたくないって思うのは、人間として当然の反応でしょ?」
マミ「……ってさっきまでの私ならそう思ったはず」
マミ「今じゃ魔女についてどこまでも冷静で」
マミ「自分の本当の心情がまるで掴めなくて気持ち悪い」
マミ「優木さん、これって、どうやったら治るの……?」
沙々「いや、その、ははは、どうでしょうねー……?」
マミ 沙々「…………」
沙々(い、勢いで書き換えちゃいましたからねー、ついうっかり)
沙々(都合悪いからさっさと話題変えましょう)
沙々(そして後からこっそり、治せるだけ治しましょう)
沙々「にしても魔女について動揺したのは仕方ないとして、マミさん落ち着いてますねぇ」
沙々「普通は自分の心を掌握した相手の前にこうして立ったら」
沙々「もっと激昂や動揺したりすると思うんですが」
マミ「……いきなり知ったなら、佐倉さんにさっき言われるまで何も気づいてなかったら」
マミ「あるいはそうだったかもしれないわね」
マミ「だけど正直、優木さんが私の心に干渉してるって、私、前から知ってたもの」
沙々「えっ?」
沙々「嘘ですよね?それはさすがに」
マミ「嘘なんかじゃないわよ」
マミ「……最も表現として正確とは言い難いかもしれない」
マミ「より詳しく言えば、私はあなたが私の心を探ったり何かしてるのは知ってたけど」
マミ「それがどの程度のものかまでは判別がついてなかった」
マミ「あなたがどんな人間かってことくらいなら、とっくにわかってたわ」
マミ「おそらくあなたが私を深いレベルで自分の思い通りにしようとしたから」
マミ「私もまた、あなたの深淵を少し覗くことになったんじゃないかしら?」
マミ「もっと大胆に予想すれば、優木さんと魔女の場合にも同じことが起こってる」
マミ「それは本来双方向性のものだけど、魔女の場合は、魔女側がそれを気にかけないだけ」
マミ「これが多分一番合理的な事態の解釈だと思う」
沙々「……じゃ、じゃあ、あなたから見るわたしはどんな奴だって言うんですか?」
マミ「ふふふ。とても弱くて寂しい子なのに、僻みっぽくて性格悪い」
マミ「一人でいるのが怖いのに、私以外に頼れる存在がない」
マミ「それが私にとっての優木さんだけど?」
沙々「ふ、ふーん」
沙々(……悔しいけど大体当たってると認めざるおえません)
沙々(なんかこう、自分が隠してたと思ってたことが)
沙々(ずっと前から実は相手に知られてたって恥ずかしいですね)
マミ「でもだからこそ、佐倉さんと久しぶりに再会したあの時から」
マミ「あなたが私に何をしてるのかが不安で仕方なかった」
マミ「あなたは酷い人だから」
マミ「私があなたにとって特別に必要な存在でなかったのなら」
マミ「心を自在に弄ることに何の抵抗も持たないでしょうし」
マミ「用が済んだり使い潰したら簡単に捨てていくはず」
マミ「それが、すごく怖かった」
マミ「私には何かを弄られていても、それを自覚する術はないわけでしょう?」
沙々「今は、怖くないんですか……?」
マミ「ええ。優木さんに襲い掛かかった佐倉さんの形相を見た時には」
マミ「私が弄り回されてると確信してたから、あんなに動揺してたのかなって疑ったけど」
マミ「実際に今日話を訊いてみたら、そこまでは彼女もわかるわけじゃないみたいだったし」
マミ「それとさっきも言ったけど、優木さん、こうして私に意見を尋ねてくれてるじゃない?」
マミ「一緒にいてくれるって言ってくれた」
マミ「私のことがそこまで大切じゃないなら、あなたのことだから」
マミ「とっくに私を捨てるか始末してるはずだと思うの」
マミ「もしただ道具として必要なだけだったら、意見を聞かずに強制してると思う」
マミ「私の意見を聞いてくれた」
マミ「その事実だけで、今は十分だわ」
沙々「今は……、ですか」
マミ「ええ、今のところは、ね」
沙々「……だけど、今から先って本当に必要なんでしょうか?」
マミ「へ?」
沙々「いや、もしかして、もしかしての話ですよ?」
沙々「――ソウルジェムを破壊すれば、こんなふざけたことから、解放されたり……?」
マミ「……なるほど、そうかもしれないわね」
マミ「いつからそのことについて考えてたの?」
沙々「魔法少女の末路が魔女なんだと」
沙々「暁美ほむらのおかげできちんと理解してからずっと、ですね」
マミ「…………」
マミ「あなたの言うことには確かに一理ある」
マミ「それで何もかも完全解決してしまうなら」
マミ「魔女になるって仕組みがあること自体不気味だけど」
マミ「ソウルジェムについて、壊したらどうなるかとかの情報はあるの?」
沙々「いや……、特にないですけど……」
マミ「でも、それで何が起こるにせよ」
マミ「つまりそれって、魔法少女じゃなくなるはずでしょ?」
マミ「私は絶対に、嫌よ」
沙々「どうしてですか?」
マミ「逆に一つ聞かせてくれない?」
マミ「優木さんは、なんでそれを最初この事実を聞かされた時にやらなかったの?」
沙々「…………」
沙々「あなたとの繋がりが、なくなると思ったんですよ」
沙々「あなたを操縦する術、あなたと一緒にいる意味、」
沙々「どちらも魔法少女の中にしか見当たらなかった」
沙々「あなたと一緒にいたいと思うならば」
沙々「魔法少女であることを否定する選択肢は、どんな形であれ選べなかった」
沙々「最初躊躇してしまったのが、わたしの運命を決定づけてしまった」
沙々「わたしがあなたへ縋るには、魔法少女であり続ける道を選ぶしかなかった」
マミ「そう……。なら私も、優木さんと大体似たようなものよ」
マミ「私が魔法少女じゃなくなったからと言って」
マミ「魔女や使い魔と、それらがもたらす災いがなくなるわけじゃない」
マミ「私が生き延びたのは契約のおかげだわ」
マミ「自分にまだ誰かのため力を奮う機会があるのに」
マミ「それから目を背けて、自分のための選択を選ぶなんて、納得できない」
マミ「私が生きる意味を見いだせるのは、縋ることができるのは正しくあること、そこにしかない」
マミ「……まあ、魔女についてあなたのせいで何も感じないから」
マミ「こんな威勢のいいことを現在言えるのかもしれないけど」
沙々「はは、ハハハ……」
沙々(ま、また話がわたしの都合が悪い方向に……)
マミ「結局私達どちらともにも今の所」
マミ「魔法少女をやめて生きていける居場所なんてないのよ」
沙々「……それじゃあ、どうするんですか?」
沙々「暁美ほむら、佐倉杏子、あの二人と敵対するのは得策とは言えない」
沙々「だけど、見滝原からどこかへ出るのは避けたい」
沙々「やはりましなのは見滝原から出る方――?」
マミ「ちょっと早計過ぎない?」
マミ「どっちも嫌なら、もう一つ選択肢があると思うけど?」
沙々「もう一つ?何を言ってるんですか?」
マミ「佐倉さんのあの話ぶりからして、私のことを色々思ってのことだったみたいだし」
マミ「どうせなら両方、追い求めちゃうのも、ありでしょ?」
今日はここまで
しなきゃいけないことあるから
SS書いてる場合じゃないんですけど現実逃避した結果が更新だよ
~☆
ー翌日 夜ー
ほむら「優木沙々、一刻も早くまどかを開放しなさい」
沙々「それはあなたとの話し合いが済んでからです」
沙々「大丈夫、鹿目さんはあなたの知ってる彼女そのまま、健康そのものですよ」
沙々「ご覧の通り、ね」
まどか「……」
沙々「ほら、なんか喋ったらどうですか?」
まどか「ほ、ほむらちゃん!私は大丈夫だから!」
まどか「優木さんと争うのをやめてっ!お願いっ!」
沙々「ち、近くで大きな声いきなり出さないで下さいよぉー」キーン
ほむら 杏子 さやか「…………」
ほむら「杏子、まどかが優木沙々に操られてるかどうか、わかる?」ボソボソ
杏子「アイツなら今、間違いなく操られてないよ」ボソボソ
杏子「自分の意志だけで思考、行動してる。自信を持ってそう保証してやる」ボソボソ
ほむら「……そう、それは良かったわ」ホッ
さやか「ほむら、今度は無駄に沙々さんを刺激したりしないようにね」ボソボソ
ほむら「もちろん。わかってる」ボソボソ
ほむら「…………」
ほむら「優木沙々、じゃあその話し合いとやらをすぐに始めて、手早く終わらせましょう」
ほむら「あなたの要求は?」
沙々「なあに、そんな難しいものじゃありませんよ」
沙々「これから仲良くしていきましょう、ただそれだけのことです」
沙々「争って双方を危険に曝すよりは、互いに共存の道を模索するのがより健全でしょう?」
沙々「マミさんに恩を売りたい、あなたはあの時たしかそう言ってましたね?」
沙々「現時点、マミさんは私側についてくれています」
沙々「恩を売りたいなら、今どういう選択をすべきかは一目瞭然」
沙々「あなたがわたしに行った無礼の数々、特別に目を瞑ってあげます」
沙々「もし感情論でこんな有益な取引をご破算にしたら、はっきり言ってバカ、ですよ?」
ほむら 沙々「…………」
マミ「ねえ、優木さん。なんで相手をちょっと挑発してるのよ」ボソボソ
沙々「奴には一度、こちらから提示した和解を拒絶されましたからね」ボソボソ
沙々「はっきり言って腹に据えかねてるんです……」ボソボソ
マミ「あなたが感情論で交渉をややこしくしてどうするのっ!」ボソボソ
沙々「でも、きっと大丈夫だと思いますよ」ボソボソ
沙々「ここで全てをぶち壊した場合の損得勘定くらいは、彼女もするでしょうから」ボソボソ
ほむら「…………」
ほむら「……そうね、あなたの言うとおりだわ」
沙々「ほら、やっぱり」ボソッ
ほむら「巴マミは事実を知ってもなお、あなたの側につくみたいだし」
ほむら「まどかは争いを望まない。さやかもあなたへの糾弾には消極的」
ほむら「今ここで私が強硬な手段を取っても、私に益は少ない」
沙々「それなら、これまでのあれこれは互いに水に流す。それで構いませんね?」
ほむら「ええ」
沙々「……とはいえ、こっちはこれまで散々迷惑かけられてきましたからねぇ」
沙々「完全にこれまで通りってのも、正直なところ納得しがたいです」
マミ「っ!?」
マミ(な、何言ってるの優木さんは……!)
ほむら「……それはつまり、どういうことかしら?」
沙々「これまでのことは不問にする代わりに」
沙々「そちらの目的をちゃんと明かしてくださいってことです」
沙々「グリーフシードがたくさん欲しい、それがあなたの目的では当然ないんでしょう?」
沙々「今後このような事態を引き起こさないためにも」
沙々「これから私達は、今までよりもっと強い絆で結ばれるべき」
沙々「そのためにはあなた達、暁美さんと佐倉さんの目的」
沙々「それを明かしてもらわないと、話の筋としておかしいと思いませんか?」
沙々 ほむら「…………」
ほむら「……わかったわ。丁度いい機会だし、正直に話しましょう」
ほむら「どういうカラクリかはともかくとして」
ほむら「巴マミは、魔女の真実を乗り切ったみたいだし」
ほむら「あえて黙っている理由は今となってはない」
ほむら「私達、そして私の目的は」
ほむら「――やがてこの街にやってくる、ワルプルギスの夜の討伐よ」
まどか「…………ワルプルギスの、夜?」
沙々(ワルプルギスの夜……、暁美ほむら……)
沙々(それじゃあ鹿目まどかの心を覗いたときに見た、アレはもしや本当に……?)
マミ「どうして、そんなことがわかるの?」
ほむら「信じられない?」
ほむら「でも、それは真実なの」
ほむら「魔法少女が魔女になることが、あなた達にとって隠された真実であったように」
ほむら「私はあの伝説の魔女を倒すため、気が遠くなるほど長いあいだ準備を重ねてきた」
ほむら「証拠、とは言えないかもしれないけれど、信憑性は高めてくれるだろう資料を」
ほむら「私の家に来てくれれば、あなた達に山ほど見せてあげることができるわ」
沙々(私の家……、罠でしょうか?)
沙々(いや、いくらなんでも、そうとは言い切れませんね)
沙々(少なくともわたしが鹿目まどかの中に見たアレが、ワルプルギスの夜なのだとしたら)
沙々(暁美ほむらにはワルプルギスの夜と、何かしら因縁があるのは間違いないでしょう)
沙々(問題は、ぼんやりとしていたとはいえ、あの光景がどうして鹿目まどかの中に――)
ほむら「優木沙々ははっきり言って、あの魔女との戦いにおいて戦力になるとは思えない」
ほむら「しかし巴マミはとても貴重な……」
杏子「――ちょっと待ってよ」
ほむら「……杏子?」
杏子「無事に大団円の方向で話が進んでるなか悪いね」
杏子「アタシは絶対に、このまま優木沙々を認めるつもりはない」
杏子「ほむらは自分の目的、利益のため、認めるつもりみたいだけど」
さやか まどか「っ!」
沙々 マミ「…………」
ほむら「じゃあ、どうするつもり?」
ほむら「巴マミに事のあらましを教えて、目を覚まさせるのには失敗したわよ?」
ほむら「何か他に手だてがあるというの?」
杏子「そんなの決まってるでしょ、最終手段だよ」ヘンシン
ヒュッ
杏子「ぶっ潰しちゃえばいいのさ、こうなった原因を根っこからね」ブンッ
ほむら「それをやったら巴マミの精神が不安定になるだろうって、あなた前に……」
杏子「不安定なら、まだいいじゃないか」
杏子「今まで、優木沙々にマミが何もされてないって、なんで言えるんだよ?」
杏子「アイツがマミの人格を都合よく改竄した可能性」
杏子「少なくともその時間と機会はいくらでもあったはずだ」
杏子「たとえ今まで何もされていなかったとしても」
杏子「そもそもアタシは優木沙々という人間を全く信用できない」
杏子「アタシがわかるのは、アイツが人格を改竄できるレベルでマミを掌握してることだけ」
杏子「もし今まで、何もしてなかったとしても、これからずっと同じ保証はどこにもない」
ほむら「……優木沙々が信用できないと主張したくなる、あなたの気持ちはわからないでもないわ」
ほむら「でも、現実問題私達に何ができるというの?」
ほむら「不必要に巴マミを損なうかもしれないリスクを負うのは――」
杏子「現実、現実、現実……、クソくらえだそんなのは」
杏子「魔女が人間を操る」
杏子「優木沙々が人間を操る」
杏子「本質的な差はそこにはないだろ?」
杏子「だったらこいつの能力なんてのは、本来最初から許されるべきじゃないんだよ」
杏子「あるいは、どんな能力でも使い方さえ正しければ、人のためになる正しい働きをする」
杏子「確かにそうかもしれないね」
杏子「でも、こいつが一度たりとも、自分のしたことを悔いた素振りを見せたか?」
ほむら「…………」
杏子「もちろん、今のアタシなんかがそれを責める権利はない」
杏子「アタシが偉そうに口を出すのは誰が見たって筋が通ってない」
杏子「ああ、わかってるよ」
杏子「……ただ、それでもアタシはマミを助けるって決めたんだ」
杏子「愛だ勇気だなんだって、御大層な言葉を持ち出すつもりはないけれど」
杏子「本当に助けられないのかどうか、それを確かめるまでは諦めたくない」
杏子「このまま黙って、この違和感を残したままなし崩しの形で」
杏子「新しく二人と組んでワルプルギスと戦う、なんてのはアタシには無理だ」
ほむら「……もし、杏子の行為の結果として、巴マミが死んでしまったとしても?」
ほむら「そんなことになったらあなた、絶対後悔することになるわよ?」
杏子「そりゃ、後悔するだろうな」
杏子「……ふん、今更後悔の一つや二つ増えたところで、それがどうだっていうんだ」
杏子「このまま黙って見過ごしてもどうせアタシは後悔する」
杏子「優木沙々が死んで、それでマミまで死んじまうなら、きっとそこまでの人生だったんだろ」
杏子「魔法少女なんて、いつだってそんな割に合わない存在だよ
杏子「ほむらもわかってるだろ?」
ほむら「…………」
杏子「どうなるかなんてやってみないとわからない」
杏子「わかんないからこそ、やるんだよ」
杏子「マミのため?むしろアタシ自身のために、だ」
杏子「アイツの生き方が、アイツの人生が、誰かの手によって歪められるなんて許せない」
杏子「これまでそうしてきたように、アタシはアタシの好きなようにやる」
杏子「本当にマミが何を考えてるかなんて、アタシなんかにわかるわけはないし」
杏子「その前にほむらが立ち塞がるつもりなら、残念だけど同盟はここまでってことになる」
ほむら「……っ!」
ほむら「……お願いだから、やめて頂戴」
ほむら「巴マミが真実を知ってもなお、闘う意志を見せている」
ほむら「私にも信じられないくらいに、とても上手くいってる流れなの」
ほむら「この機会を逃したら、ひょっとしたらもう二度と――」
杏子「そう、それが詰まる所アンタの本心なんでしょ?」
杏子「わかるよ。アンタはただ、自分の本当に守りたい物のために戦ってるだけ」
杏子「ただし暁美ほむらにとっての巴マミは、所詮自分のプランにおける道具の一つなのさ」
杏子「なるべく波風は立てたくないけど、いざとなったら見捨てたり、利用する、そんな存在」
ほむら「……」ギリッ
杏子「アタシとアンタでは、立ってる立場、気持ちの重みが違うんだ」
杏子「アタシに味方しろなんて贅沢は言わない。ただ傍観しててくれればいい」
杏子「たとえ三対一になったって、アタシはやるつもりだけどな」
ほむら「……もう、止まる気はないのね?」
杏子「もう決めたこと、だからな」
ほむら「…………」
ほむら(今ここで、杏子を三人がかりで押さえつけることは難しくないでしょう)
ほむら(私の時間停止、巴マミのリボン)
ほむら(むしろ二人がかり、この状況ならおそらく私一人でだって可能ね)
ほむら(……しかし、それでは杏子が納得しない。必ず関係に亀裂が生じる)
ほむら(ここで遺恨を残したら、間違いなく後に尾を引くわ)
ほむら(魔法少女にとって心のしこりがどれほど危険か、嫌というほど思い知らされてきた)
ほむら(こうなってしまえば、三人がわだかまりを無事解決するのを)
ほむら(半ば部外者の私はもはや祈るしかないか……)
杏子「そろそろ、答えを聞かせてもらえる?」
ほむら「…………」
ほむら「優木沙々、まどかから手を離して」
ほむら「彼女を危険な目にあわせるわけにはいかない」
ほむら「私がまどかとさやかを戦いから保護するから」
沙々「……」
沙々(ここで断っても、話がややこしくなるだけですね)
沙々「話は終わってませんがまあ、いいでしょう。これで貸し一つ、ですよ」パッ
ほむら「ありがとう、恩に着るわ」ヘンシン
カチッ
ほむら「……」
まどか さやか「!」
沙々(相変わらず発動条件とかがよくわからないテレポートですねぇ)
沙々「やれやれ、長い長い打ち合わせ、やっと終わりましたか」ヘンシン
沙々「待ちくたびれちゃいましたよ」
杏子「ああ、ようやくな」
杏子「……ちゃんと待ち時間に、今生の悔い改めは済ませといたか?」ニヤリ
沙々「けっ、バカ言ってんじゃねーよ」
沙々「ここまで漕ぎ付けたのに、あっさり死んでたまるかっての」
マミ「…………」ヘンシン
マミ「佐倉さん、あなたってホント素直じゃないわね」
マミ「こんな形であなたの想い聞きたくなかった」
杏子「へっ、マミ先輩みたく素直なだけじゃ、しぶとく生き残れないからね」
マミ「……私達、またあの頃みたいにやり直せないの?」
杏子「そいつがいる限り、難しいだろうな」
杏子「――まあ、これからアタシと戦って勝てたら、一応は考えてやる」
杏子「優木沙々一人だけじゃ話にならないし、二人がかりで一斉に来なよ」
マミ「……そう、それは朗報ね」スチャッ
まどか「――っ!」
まどか「ほ、ほむらちゃん、魔法少女同士で争うなんて絶対おかしいよっ!」
まどか「だから――」
ほむら「私には無理よ。ああなってしまった杏子は言葉ではもう止まらない」
ほむら「ただ少なくとも巴マミが直接殺されることは、ないと思うわ」
ほむら「……優木沙々の生命の保証は、残念ながらできない」
まどか「そんな……」
さやか「だ、大丈夫だよまどか」
さやか「なんてたってあのマミさん、それにいくら優木さんが弱くても二人がかり」
さやか「どれだけ杏子が強いのか知らないけど」
さやか「さ、さすがに二人が圧勝して、杏子も目を覚ますっしょ!」
ほむら「…………」
ほむら(本当に、そうなるかしら?)
ほむら(ループにおける事象のズレ、揺らぎ)
ほむら(その中でも生きてさえいれば、巴マミに師事したか、師事してないかに関係なく)
ほむら(杏子の実力というものはかなり安定している)
ほむら(それに対して巴マミには経験上、大まかに三つほどのパターンがある)
ほむら(一つ目は孤独の中で、自分の生き方を純粋に追求し続ける生き方をしたマミ)
ほむら(理想に殉する覚悟を持ったこの巴マミは、最も強い)
ほむら(ただしその分、魔女の真実がより深刻に彼女に圧し掛かる訳だけど)
ほむら(杏子と師弟関係を結ばなかった場合は、基本的にいつもこのパターン)
ほむら(二つ目は杏子との決別を、乗り越えたマミ)
ほむら(乗り越えたとはいっても、一度仲間のいる生活に慣れてしまった後となっては)
ほむら(戦闘力、精神面において、常時少しだけ不安定な面が出てくる)
ほむら(まどか達を魔法少女に誘うことにもいくらか積極的になる)
ほむら(三つ目は杏子との決別を、乗り越えられなかったマミ)
ほむら(戦闘力に関しては二つ目とさほど変わらないけれど、精神面での弱さが目立つ)
ほむら(まどか達への勧誘も積極的)
ほむら(……しかし、今回の巴マミは、大きくその三パターンから外れている)
ほむら(魔女化の真実に耐えるというイレギュラーではあるけれども)
ほむら(――私がこれまで見てきた巴マミの中では圧倒的に弱い)
ほむら(杏子の実力がいつも通りでいる以上、このままでは……)
~☆
杏子(どうしていつも、こうなってしまうんだろう?)
杏子(どんな奴であれ、マミにできた新しい仲間をアタシは殺そうとしてる)
杏子(アタシは間違ってるのか?それとも正しいことをしてるのか?)
杏子(……ふん、もはやどっちでもいい話か)
杏子(……でも一つだけ、アタシが優木沙々に対して)
杏子(どうしてこんなにも苛立つのかようやくはっきりした)
――全部おまえが生み出した幻じゃないか。
――そうして惑わした人々をお前は手にかけるつもりだったんだろう?
――教会の娘があろうことか悪魔に魂を売るなどと……。
杏子(親父のこと、少しは振り切ったと思ってたけど)
杏子(だけど、実際は全然ダメだったんだ)
――今のお前がやっていることは何だ?
――父親などいなくとも世の中は救えるのだと、
――信仰を踏みにじり、人を惑わし嘲り笑う悪魔の所業ではないか
杏子(優木沙々は、親父がアタシを非難したとき、魔女と呼んだモノと酷似してる)
――それすらの自覚なくして語るお前の姿を……。
――魔女と呼ばずに何と呼ぶんだ。
杏子(人を惑わし嘲り笑う悪魔)
杏子(それがアタシにとって、正義の象徴になってるマミに覆いかぶさってる)
杏子(だから、アタシは――)
今日はここまで
杏子余計なことを……って言われる気がそこはかとなくしますけど
マミさんが魔女化を気にしないように、あっさり沙々さんに前回書き換えられたことも
どうか考慮してあげてください 杏子側からはそれわからないけど
● 三(マ)位一体説(仮)
曖昧に色々並べると大体こんな感じの予定
巴マミ(叛逆) 理想のマミさん一番強い
↑
パターン1
↑ 巴マミ(おりこ) キリカを殺したりすることも容赦しない
パターン2
↑ アニメ本編
↑ TDS さやかとの関係構築失敗でパターン3へ
パターン3
↑
↑
これの中のマミさん 使い魔遅くしたり、リミッター外してもらったり楽してたから仕方ないね
最近今更沙々さん主人公のエタったスレ読んだら
沙々さんとマミさんが仲良くする、それに杏子が感情を昂ぶらせるでこれと似たようなことやってた
こっちはエタらないように気をつけなくては
>>リボンで作った初出の隠し玉の存在、それ単体でほむらを圧倒
リボンで作った偽の体だからそこまで動けたという説もあるけどね。
まあ、存外ベベの存在で精神的に安定していた叛逆だからこそ、そこまで操作できたとかは、
精神状態に左右されまくるマミさんだけにあり得そう。
~☆
ダァン!ダァン!ダァン!
ギィン ギィン ギィン
杏子「おらっ!どうしたマミ先輩っ!」
杏子「アンタの本気はそんなもんなのかよっ!」ブンッ
マミ「くっ……」ガキィン
シュルルルル
杏子「もしかしたら昔よりもリボンの使い方」
杏子「下手になってたりしてな、アンタっ!」ダッ
マミ「っ!」
ドガッ!
杏子「……チッ、外したか」
沙々(うーん、わたしからすればまさに別次元の戦いですねぇ)
沙々(ただし現状、佐倉杏子の方が優勢、実力は拮抗していない)
沙々(唯一幸いなのは、佐倉杏子が巴マミを殺そうとはしていないこと)
沙々(でもだからといって、手加減してくれてるってわけでもないですし)
沙々(こうしてマミの後方でコソコソしてるのにも限界が……)
まどか「ああっ、あわわ……」
さやか「沙々さぁーんっ!なぁにやってんのぉーっ!」
さやか「はやくぅ、マミさんにぃ、加勢してあげてよーっ!」
沙々「そんな無茶わたしに言わないで下さいよっ!」
沙々(というか空いてる距離考えても声でかすぎ)
杏子 マミ「…………」
杏子「これだと決着まで、無駄に手間取りそうだな」
杏子「つい、決め手に躊躇しちゃってる、お互いに」
マミ「ええ、確かにそうね」
マミ「それじゃちょっと、聞いてみましょう」
マミ【ねえ、暁美さん】
まどか さやか「!」
沙々(オープン回線のテレパシーですか)
沙々(様子を見る限り、一般人二人にもわざと聞かせてるみたいですね)
沙々(大方なるべく仲間外れにしないようにってことなんでしょうが)
沙々(どうせ部外者なんですし、そういう公平さは別にいらないような……)
ほむら【何かしら?】
マミ【魔法少女について、あなた詳しいわよね?】
マミ【魔法少女がどこまで肉体の損傷に耐えられるか、わかる?】
ほむら「…………」
ほむら【一応回復魔法が得意かどうかという違いはある】
ほむら【けれど、魔法少女の本体は肉体ではなくソウルジェム】
まどか さやか マミ「……っ!」
杏子「……」ニヤリ
沙々(こ、こっちみんな)
ほむら【理論上はソウルジェムさえ無事なら】
ほむら【どんなケガも時間と魔力さえあれば修復可能よ】
ほむら【逆に言えばソウルジェムが壊れてしまえば――】
マミ「……」
杏子「――余所に注意、向けてる場合?」
ダッ
マミ「――っ!」バッ
ブゥン
ザシュッ!
まどか さやか 沙々「!」
ほむら「……」
マミ「…………迂闊だったわ」ヨロッ
杏子「油断した?」
杏子「はっ、仮にもアンタが戦ってる最中に相手への注意を怠るなんてね」
杏子「手ごたえからして右肩から右足まで結構深く入った」
杏子「これで、少なくともさっきまでの動きはできない」
沙々(……うわぁー、こりゃ非常にまずい)
沙々(マミのリミッターを外す?)
沙々(そんなことしたら余計佐倉杏子がブチ切れて)
沙々(和解の可能性がなくなりますね)
沙々(やれやれ。赤鬼みたいで怖いし、失敗したら殺されちゃうから)
沙々(あまり前に出て戦いたくなかったんですけど……)
沙々(マミが動ける内に、ここで覚悟を決めた方がよさそうです)
沙々【マミさん、一度後ろに下がって】
マミ【えっ?で、でも……】
沙々【そんなケガで、佐倉杏子の攻撃を受け切るなんて、不可能ですよ】
沙々【わたしがこれから前に出るんで、後ろからそのケガ回復しつつ援護してください】
~☆
ブゥン
沙々(『左っ!』)
ドガッ!
杏子「チッ!」
ダァン! ダァン! ダァン!
杏子「ぁあっ!クソうぜぇっ!」バッ
さやか「……な、なんかさっきと比べて、戦い随分地味になったね」
さやか「私にでも、どういう攻防が行われてるのかよくわかるっていうかさ」
ほむら「優木沙々のせいよ」
さやか「えっ?」
ほむら「杏子が攻撃を仕掛ける瞬間、明らかに彼女の意思と異なる余計な動作が見てとれる」
ほむら「精神操作、というよりは、身体の支配権をほんの僅かの時間奪って」
ほむら「それによって攻撃を逸らそうとしているのね」
ほむら「杏子も必死で抵抗しているから、あんな風に動きがぎこちなくなってる」
さやか「沙々さんって、私が思ってたより凄い魔法少女だったんだ」
ほむら「それでも、優木沙々がこれまで避け続けることができたのは」
ほむら「巴マミを後ろに下げてから、最初に上手いこと杖による一撃を杏子に当てたから」
ほむら「そろそろそのダメージから、杏子は回復するはずよ」
まどか「…………」
沙々(それにしてもなんで、佐倉杏子に少しだけとはいえ魔法が通るんでしょう?)
沙々(耐性があるんですから、普通いきなり通るはずないんですが)
沙々(つまり一度は何かしらの形で通したことがあるはず……、うーん?)
沙々(まぁ、とはいえいい加減決められないとヤバそうですね)
沙々(いつまでも誤魔化し続けられるほど、いくらなんでも甘くはない)
杏子「おい、優木沙々」イライラ
杏子「正々堂々、やったらどうだい?この腰抜け」イライラ
沙々「そんなことしたらわたし、死んじゃうじゃないですか」
沙々(マミのリミッター外したりしてない分、遠慮してるわけで)
沙々(むしろこっちは感謝してもらってもいい立場なはずなのに)
杏子「……だから大人しく死んでろって」
杏子「言ってんのさっ!」ダンッ!
ジャラジャラジャラジャラ
マミ(多節棍っ!)
マミ「――優木さん逃げてっ!」
沙々(――やっと、全力で踏み込んで来ましたねっ!)
シュルルルルル
ビシィッ!
杏子「なっ!?」
杏子の身にいったい何が起きたのか 今日はキリがいいからここまで
戦闘シーン台本だと何やってるのかってホントわかりづらい
戦闘書きたいわけではないから……、ないから……。
次回、今更だけど沙々さんの魔法ごり押し独自設定入るから注意ね
>>348
べべは偽りの記憶ですし、マミさんの強さにどこまで影響してたかは少し微妙な気も
改変後は使い魔倒す倒さない、で他の魔法少女と意見違えずに済むようになったの結構でかそう
魔獣は人の感情喰ってグリーフシード落すってPNにありますけど
外からどれくらい食ってるかわかんないでしょうから、まぁ基本みんな倒す方針でしょう
キュゥべえも改変前よりは多少マミさんのメンタルケアするはず
優木沙々のSSへの出し方
1 一人称は「わたし」、私ではなく「わたし」
2 契約時と織莉子と話してる時、多分制服違う?
3 魔女を含めて(自分より優れた)相手を洗脳できる魔法少女
4 単体だとキリカより弱い というか精神的に弱い
5 幼女を躊躇なく盾にしようとしたり杏子を偽悪的だと位置付けると願いその他どう考えても悪な思考回路
さあ大体これだけわかってればきっと書けるから咬ませ犬とかでいいからもっと出演SSを増やすんだ!
今更俺が言うのも何だし多分実際は問題ないというか手遅れだと思うけど
まあこのSS関係ないし、叛逆の核心的なネタバレにつながりかねない話はそこら辺でストップしてくれると嬉しいです
ただアレは観測可能な存在は干渉可能ってことが大事なはずで(映画ほむらの行為含め)
有史以来QBにそれが可能だった時はあの時までないはずですし
あの後何事もなくマミさんや杏子を使ってもほむら一人覚えてた記憶、繋がりがないと厳しいかと
沙々「うらぁぁあああ!」グイッ
ガッ ドサッ
バターン!
杏子「ぅぐっ!」
さやか「……え?」
さやか「ねえ、ほむら」
さやか「杏子が突然バランス崩してよろめいて」
さやか「それから沙々さんが思いっきりタックルして」
さやか「沙々さんが馬乗りになった」
さやか「だよね?状況あってるよね?」
ほむら「ええ、その通りよ」
さやか「……え?どうして?今、完全に杏子優勢だったじゃん」
さやか「なんで杏子バランス崩したの?」
さやか「ねえ――」
ほむら「ちょっと静かにしてて、さやか」
ほむら(あの瞬間、どう見ても優木沙々の手から……?)
まどか「…………」
杏子「降りろっ!アタシの上から降りろっ!」ジタバタ
沙々「げふっ!」バキッ
沙々(こ、こいつ顔殴りやがったなぁ……!)
マミ「ゆ、優木さんっ!」
沙々【マミさん!早く佐倉杏子をリボンで拘束して!】
沙々【わたしが上から体重をかけて、動きを封じるのはこれ以上は無理です!】
さやかが解説役にww
マミ「っ!」
シュルルルルル
ビシィッ!
杏子「――っ」ギリッ
沙々「はぁ……、はぁ……」ゼーゼー
沙々【そうしたら後はそこで距離を取ったまま、静かに待機しててください】
沙々【マミさんが間に入ると話がこじれます】
沙々【佐倉杏子が気に入らないのはわたしの存在そのものです】
沙々【彼女はどう見たって、第三者の説得で納得してくれる性格じゃないでしょう?】
沙々【わたしと彼女の間で、きちんと折り合いをつけなくては何も解決しませんから】
マミ【……わかったわ、優木さんを信じる】
杏子 沙々「…………」
杏子「一体全体、これはどういうカラクリの手品だよ……?」
杏子「アンタの手から、いきなりマミのと同じリボンがアタシの足に伸びて」
杏子「そして今、マミが使うようなデザインの短銃がアタシに向けられてる」
沙々「手品も何も、今まで使わなかったわたしの魔法の応用ってだけですけど?」
杏子「……なるほどね。それがアンタの奥の手ってことか」
沙々「奥の手ってほどでもないです」
沙々「マミさんと繋いだ魔力のパイプから、魔法のコツみたいなのをちょっとばかし引いてるだけ」
沙々「誰かを操る、自分のモノとして従わせることの応用です」
沙々「とはいえ一種の借りものなので、あなたを転ばせたらリボンは勝手に自壊しちゃう程度ですし」
沙々「銃も短銃にしたい、というよりは短銃でしか生成できない」
沙々「しかも威力と安定性に欠ける。この瞬間も維持するのに多大な精神力を要する」プルプル
沙々「マミさんによる芸術的な生成物と比べれば、玩具みたいな物です」
沙々「それでも拘束された相手を、上から圧し掛かって脅すには十分すぎる玩具ですが」カチャッ
杏子「…………そうかい、じゃあ撃ちなよ」
杏子「悔しいけど、誰が見たってアタシの負けだ。失敗した時の覚悟は端からできてる」
沙々「うぅーん、そうですかぁー……」
沙々「それも選択肢としてはありですけどぉ、わたしは優しいですからねぇ」
沙々「条件一つさえ満たせば、特別にこのまま許してあげなくもないですよ」
沙々「これからワルプルギスの夜が来るのなら、お互い仲良くいられるのがベストですし」
杏子「条件?」
沙々「…………」
沙々「弱すぎ、マミさんの足を引っ張りまくってる」
沙々「前にわたしにそんな口きいてくれちゃったこと、ありますよね?覚えてます?」
沙々「でも現在、そんな雑魚にあなたは負けて、こうして頭に短銃突きつけられてるわけですが」
沙々「どうですか?どんなみじめな気持ちですか?ねえ、どんな気持ちですか?」ニヤニヤ
杏子「…………」
沙々「わたしの足元の地面を舐めるくらいに這いつくばって」
沙々「とてもみっともなく謝罪をしてください」
沙々「優木沙々サマァァぁ!とんだ身の程知らずでしタァァぁ!」エグエグ
沙々「ごめんなサィィぃ!バカなアタシが全て悪かったんでスゥゥぅ!」エグエグ
沙々「……」ゴホン
沙々「最低限、これくらいはやってもらいましょうか?」
沙々「謝るだけで何もかも許してあげるんですから、とぉっても優しいですよねぇ?」
杏子「……ふざけんなよ、クズが」
杏子「誰がテメエなんかに頭下げるか」
杏子「どんな条件を出すのかが、ただ気になっただけさ」
杏子「覚悟は端からできてる。殺せばいい」
沙々「殺す?そんなわけないじゃないですか」
沙々「わたしをワルプルギスの夜の戦力として考えるのは無理がある」
沙々「となるとあなたがいないと、マミさんと暁美ほむらだけが計算できる戦力になる」
沙々「あなたは暁美ほむらに雇われいるんでしょう?」
沙々「きちんと仕事してもらわないと、わたしも困っちゃうんですよ」
杏子「それじゃあアタシを、これからどうするつもり?」
沙々「くふふ、そんなの簡単ですよ」
沙々(一応テレパシーは佐倉杏子と暁美ほむらに限定してっと)
沙々(マミに聞かれると面倒ですからね)
沙々【暁美さん】
ほむら【なに?】
沙々【ソウルジェムが無事なら、魔法少女は大丈夫なんですよね?】
沙々【どんなケガもってことなら、頭を銃弾で撃ち抜かれたとしても?】
杏子「……」
ほむら「…………」
まどか「……ほむら、ちゃん?」
ほむら「何でもないわ、大丈夫よ、まどか」
ほむら【ええ、そうね。ソウルジェムが無事ならそれくらいのケガは問題ない】
ほむら【頭を打ち抜かれた程度では、確かに魔法少女が死ぬはずはない】
杏子 沙々「…………」
沙々「これでわたしが何をしようとしてるのか、佐倉さんにもわかりましたよね?」クスクス
沙々「あなたがこれまでどんな悪いことをしてきたかとか知りませんし」
沙々「わたしにそれをどうこう言う筋合いなんて存在しません」
沙々「いい子として生きてきたつもりなんてありませんからね」
沙々「でもそれとは別に、わたしはあなたに殺されかけて、そして争いに打ち勝った」
沙々「あなたがわたしにやろうとしたこと、やったことの落とし前は必要です」
沙々「わたしを満足させる気持ちのいい謝罪か、それとも額にちょっと風穴開けてみるか」ボソッ
沙々【……なんだったら、これから命乞いを誠心誠意マミさんにしてみたらどうですか?】
沙々【たずげでぇー、マ゛ミ゛先輩ぃ゛ー……、なんてね】
沙々【それがもし恥ずかしいということなら、別にみっともなくやらなくたって】
沙々【マミさんならきっと喜んで、あなたをわたしの魔の手から救ってくれますよぉ?】
杏子「うるせえ。、さっさと撃つなら撃てよ」
杏子「アタシはアンタのこと、絶対に認めないし許さないから」
沙々「へー、そうですかぁ、怖いですぅー」ビクビク
沙々(……他にもう特別言いたいことが思いつきませんね)
沙々「それじゃあ、お望み通りに」ダァン!
杏子「――――」ビクン
まどか さやか「えっ?」
ほむら「…………」
マミ「さ、佐倉さん……?」
杏子「」
~☆
――魔女になんかなりたくない。
――魔女になんかなりたくない。
――魔女になんかなりたくない。
杏子(なんだこれ?)
――魔女になるのはイヤだ。
――化け物になんかなりたくない。
――あんな醜いのになるくらいなら、死んだ方がましだ。
――イヤだ、死にたくない。
――死ぬのはイヤだ。
――死にたくない。
杏子(……どうやら優木沙々の深層心理、みたいだな)
杏子(魔力で作った銃弾が媒介になって、脳に入ってきてるのか?)
杏子(抵抗はしたけどさっき魔法も使われてたし、不思議じゃない)
杏子(わけねーな。それっぽいこと考えてみても変なもんは変だ)
――マミさんがいれば、どうにかなるんじゃないか?
――いや、でも。
――マミさんがいれば、どうにかなるはず。
――いや、でも。
――マミさんがいれば、どうにかなる。
――いや、でも……?
杏子(それにしてもこいつの心の底って)
杏子(自分のこととマミのことばっかりなんだな)
杏子(なんだかんだいって、大事には思ってるってことか)
杏子(アタシはマミのことを思って、あれこれやってたのかな?)
杏子(優木沙々のことが単純にどうしても気に入らないから)
杏子(それで理由をつけて排除しようとしてただけじゃないのか?)
杏子(……アタシが本当にしたかったことって、いったいなんなんだろう?)
今日はここまで
戦闘内容よりここの内容の方が先に決まってた
目先のことばかりで割と無計画っぽくてなのにゲスな
原作っぽい沙々さんを初めて出せた気がする
書いてて三流ゲスだなー感凄い
マミさんをその場に押し留めるために言ったことも嘘じゃないけど
どうせなら前から相当根に持ってたのを償わせる気でいたのも本気だから
世渡り上手いようなそうじゃないような微妙な駆け引き具合に
>>366
解説役さやかしかいなかった
戦闘描写したいわけじゃないからこうした
でも露骨な説明ゼリフとさやかって正直結構似合う気がする
~☆
杏子「…………んっ」ビクッ
マミ「あら、やっと目が覚めたのね。佐倉さん」
杏子「……マミ、さん」
マミ「ごめんなさい、優木さんのこと止められなくて」
マミ「あんなことするって予めわかってたら止めに入ったんだけど」
マミ「まさか脅しじゃなくて発砲するなんて思わなくて」
マミ「今言っても白々しいかもしれない。ただ私はあなたと本当に仲直り――」
杏子「いいよ、それは別に」
杏子「アタシが無理やり我儘に付き合ってもらったんだ。何か落とし前は必要だっただろ」
杏子「第一知らなかったんだからしょうがないよ」
杏子「こうしてアタシのケガを親身に治してくれた、それが重要じゃない?」
マミ 杏子「…………」
杏子「で、他の奴らは?」
マミ「もう時間も遅いし鹿目さん、美樹さんの二人を暁美さんに送ってもらってる」
マミ「優木さんなら冷静になった後、自分のやったことが段々怖くなってきたみたいで」
マミ「おどおどそそくさ逃げ出して行ったわ」
マミ「マミさん、彼女が目を覚ましたら上手いこと謝っといてくださいって」
マミ「私の予想だと、多分普通に家にいるんじゃないかと思うけど……」
杏子「小物すぎだろ」
マミ「でも、だからこそ、どこまでも悪くなることはできない子なのよ」
マミ「いい子になるかどうかとはまた別の話だけど」
杏子「…………まあなんであれ、アイツがマミを大事に思ってるのは確かみたいだな」
マミ「……?」
マミ「急にどうしたの?さっきあんなに暴れた子のセリフとはとても思えないわ」
杏子「一部だろうけど見たんだよ、優木沙々の深層心理」
杏子「頭を撃ち抜かれたときにね」
杏子「それとも感じたっていうべきかな?」
杏子「多分だけどそれの原因は二つ」
杏子「一つ目は銃弾がアイツの魔力で構成されてたこと」
杏子「あともう一つは、アイツ主導による魔力のパイプが開通してたこと」
杏子「マミがあの時言ってたことの意味が良くわかった」
杏子「アタシが感じたあの体験の中に嘘はない、そう確信できる」
杏子「こうして二つの目でモノを見ていると感じるように」
杏子「どうして、と聞かれると困る。ただそう感じるからとしか言えない」
杏子「……あるいはもしかしたら、アタシも操られちまったのかもしれないな、アイツに」
マミ「優木さんを害する意思は、もうないのかしら?」
杏子「ふん、アイツのことは気に入らない。気に入らないよ」
杏子「だけどアタシは二人と戦って負けた」
杏子「加えてマミを大事にしてるんだなってことが一応わかって」
杏子「毒気を抜かれたちゃったって感じ」
マミ「だったらまた、昔みたいにやり直せない?」
マミ「優木さんとの問題が曲がりなりにも解決したらしい今」
マミ「あなたさえそのつもりになってくれれば、可能なことだと思うけど」
マミ 杏子「…………」
杏子「マミ……、いや、マミさん」
杏子「ずっと前、まだ二人で組んでた頃に約束したこと、覚えてる?」
杏子「もしかしたらマミさんの中じゃ、約束ってことになってないかもしれないけど」
杏子「だけど、知れば知るほど優木沙々のことがどうしても許せなくなって」
杏子「あまりにも嫌悪感が強すぎて、自分でもどんどんわからなくなった」
杏子「マミさんをアイツの手の内から救い出したいのか」
杏子「それとも単にアイツの存在をとことん否定したいのか」
杏子「自分のことしか、考えてなかったかもしれないんだ」
杏子「…………」
杏子「アンタと決別した時だってそうだ」
杏子「アタシは自分勝手で、マミさんのやさしさに甘えてばっかりで」
杏子「わがままばっかり言って、傷つけて」
杏子「そんなアタシが、今更どの面下げてアンタとまた同じ道を歩けって言うのさ」
マミ「…………」
マミ「いいじゃない、そんなのなかったことにすれば」
マミ「自分が本当は何を考えてたのか、そんなことでくよくよ悩むだなんてバカらしいわ」
マミ「人間の記憶なんて、私たちが思ってるよりずっといい加減なものよ、きっと」
マミ「自分に都合のいいところばっかり抜き出して、自分に都合のいいように作り変えて」
マミ「佐倉さんは、私と一緒にいたいって思ってくれてるんでしょ?」
マミ「だったらそれだけ都合よく抜き出しちゃえばいいの」
マミ「私だって、そうやって自分のやりたいように正義の味方をやってるわ」
杏子「…………なんかマミさん、変わったんだね」
杏子「アタシと一緒に組んでた時より相当図太くなったというか、逞しくなったっていうか」
マミ「ふふふ、だとしたら優木さんのおかげよ」
マミ「たとえ彼女みたいな酷い人とであっても、一緒にいたいって強く思ってしまうんですもの」
マミ「嫌でも普段から、そんな自分の弱くて醜い所に向かい合わざるおえないわ」
マミ 杏子「…………」
マミ「また、新しくやり直しましょう?」
マミ「優木さんと仲良くってのは、いくらなんでも難しい問題かもしれないけれど」
マミ「やってみなくちゃわからないわ」
マミ「もちろん世の中には、二度とやり直せないことが山のように溢れてるけど」
マミ「私たちの間には、やり直すための機会と力があるのだから、また、やり直せるはずよ」
杏子「……そうだね、そうかもしれない」
杏子「でも、それはまた今度ゆっくり考えよう」
杏子「まずはワルプルギスの夜を一緒に倒す。その約束が済んでからだ」
杏子「少なくともそれまではまたよろしくね」
杏子「……マミ先輩」ボソッ
マミ「…………ええ、佐倉さん。おかえりなさい」ニコッ
今日はここまで
これでようやく終盤に入ります 展開のプロットが先日完成しました おせーよ
ワルプルまでイベントはあと4つですが500レスまでにこの話完結しそうにないですね……
ここ一月くらい、なんでキリカは魔女で潰したのに織莉子は洗脳するって方法
沙々さんがとったのか色々考えてるけど
サヨナラ織莉子さんのアレは洗脳人格改竄ビームだったんじゃないかと思えて仕方ない
(そもそもビームなのか?という問題もあるけど)
あと数秒遅かったら、キリカの言うことも心に届かないニュー織莉子さんが誕生してた説
この説どうも三流ゲスの沙々さんっぽくないのが難点
>>385-386
間に1レス抜けてたので修正
マミ「約束?」
杏子「もしいつか本当にワルプルギスの夜がやってくる時が来たら」
杏子「一緒にこの街を守りましょうってやつ」
マミ「……!」
マミ「もちろん、覚えてるわ」
マミ「暁美さんが言ってたワルプルギスの夜が見滝原に来るという話」
マミ「あなたはあの約束を守るため、見滝原に来てくれたの?」
杏子「…………」
杏子「よく、わかんねーんだ。自分が本当はどうしたかったのか」
杏子「ワルプルギスの夜なんて、ホントはどうでもよかったのかもしれない」
杏子「アタシはただマミさんと仲直りして、昔みたいに良い夢を見たかった」
杏子「それだけのために見滝原に来たのかもしれない」
>>390
……メモ帳から直張りしたら普通に行間空いてなかったので再度訂正 すいません
マミ「約束?」
杏子「もしいつか本当にワルプルギスの夜がやってくる時が来たら」
杏子「一緒にこの街を守りましょうってやつ」
マミ「……!」
マミ「もちろん、覚えてるわ」
マミ「暁美さんが言ってたワルプルギスの夜が見滝原に来るという話」
マミ「あなたはあの約束を守るため、見滝原に来てくれたの?」
杏子「…………」
杏子「よく、わかんねーんだ。自分が本当はどうしたかったのか」
杏子「ワルプルギスの夜なんて、ホントはどうでもよかったのかもしれない」
杏子「アタシはただマミさんと仲直りして、昔みたいに良い夢を見たかった」
杏子「それだけのために見滝原に来たのかもしれない」
>>231
名前聞かれてないのに名前呼びをすんなり許すさやかちゃんが
無警戒っつうかアホの子過ぎて違和感バリバリだったので訂正
杏子「んーとね、隣の風見野で魔法少女をやってる佐倉杏子だ」
杏子「よろしく」スッ
さやか「これは?」
杏子「お近づきの印。お菓子は嫌いか?」
さやか「いや、全然そんなことないけど」
さやか「えー、何が目的なの?佐倉さんは」
杏子「佐倉さん、じゃなくて杏子でいいよ」
杏子「アタシもさやかって呼ぶから。構わないだろ?」
さやか(あれ?なんで私の名前知ってんだ?)
さやか(……魔法少女ってことなら、あの三人の誰かから聞いたのかな?)
さやか「うん、オッケー」
杏子「まどろっこしいのはアタシも嫌いだ。それじゃあ手短に言おう」
杏子「一つさやかに、お願いがあるんだ」
杏子「――巴マミを、優木沙々の魔の手から救うため、アタシとほむらに協力してくれ」
久しぶりに全部最初から読み返したら三回心臓が縮み上がった
細かい違和感とかは許容というか諦めるんですけどね
三つめは杏子戦前、マミさんが魔女化の真実を知ったことをほむらが認識、確信してるところ
でも、場面に入る前にそれに言及した話の流れがあったと思えば気にならないから直さない
さっき1レス抜けてるのを見た時には誰も指摘してないし
さやかちゃんアホの子もあったから
読者の存在は俺の頭の中の妄想か誰かのイタズラなんじゃないかと……
我慢できずに訂正しただけなんで続きの投下は早起きできれば明日の朝
でも本文抜け二回目で落ち込んでてやる気ガタ落ちしてるんで早起きは無理かもです
~☆
ー翌日ー
沙々「で、話ってなんですか?」
沙々「まさかまた、わたしを罠にかけるつもりじゃないですよね?」
さやか「違うよ、そういうのじゃなくて、今度こそ凄い個人的な用事」
さやか「なんの話かって言われたら……、前の人生相談の続き、かな?」
沙々(ということは惚気話ですか?)
沙々(ちょっとそういうのは勘弁して欲しいんですが)
沙々「わたしよりマミさんとか、他に頼りになりそうな人たくさんいません?」
さやか「まぁそれは……、そうなんだけどさ」
さやか「私が恭介と付き合えたのって沙々さんのおかげだし」
さやか「だから今度も、できるなら沙々さんに相談したいなって思って」
沙々「……ふーん、そうですか。わかりました」
沙々「乗り掛かった船です、そこまで言うなら最後まで引き受けましょう」
沙々「それで肝心の相談内容は?」
さやか「…………」
さやか「魔法少女の本体は肉体じゃなくてソウルジェム」
さやか「しかも最終的には魔女になるって知っちゃったせいで」
さやか「魔法少女になることが、どうしようもなく怖くなっちゃった」
沙々 さやか「…………」
沙々(ワルプルギスの夜のことだけを考えると、美樹さやかが癒しの祈りで契約)
沙々(戦闘に回復役として参加、そして戦死するか勝利後にソウルジェムを砕く)
沙々(こんな形が理想ですけど、言ってもわたしの立場が悪くなるばかりですからね)
沙々(さすがに口に出すのはやめておきましょう)
沙々「よかったじゃないですか。まだ間に合う段階で知れて」
沙々「契約した後にそれを知っても後悔先に立たず、ですよ?」
さやか「……違う、そういうことじゃないんだよ」
さやか「私の弱い心のありようが問題なの」
さやか「恭介のことを本気で思ってるなら、そんなのは些細なことであるべき」
さやか「今、私に契約の機会がないことはわかってる」
さやか「優木さんたちに迷惑をかけるつもりはない」
さやか「でも、仮にその機会が訪れたとして、私は勇気をだして契約できるのかな?」
さやか「恭介の腕を治せる手段と機会があって、なのに契約しないんだとしたら」
さやか「それってつまりは自分が可愛いからだよね?」
さやか「恭介のことよりも、自分のことの方が大事」
さやか「そんな私に、恭介の恋人でいる価値ってあるのかな?」
さやか「……だけど当然、魔法少女になったら、みんなを真剣に守らなきゃいけなくなる」
さやか「しかも恭介はヴァイオリンに一途だから、腕が治ったらどうなるかは目に見えてる」
さやか「二人で会う時間をろくに取れなくなる」
さやか「どうしても投げ出さなきゃいけない幸せの尊さと」
さやか「立ち向かわなきゃいけない不幸や困難の大きさが」
さやか「私の足をどうしようもないくらい竦ませるの」
さやか「契約ができるか、できないかの状況が問題じゃないの」
さやか「私って、本当にこれでいいのかな……?もっと、もっと何か……?」
沙々「…………」
沙々「そんな堅苦しく考えなくてもいんじゃないですか?」
沙々「自分が大事って、わたしも含めてわたしの知ってる人全員そうですよ」
沙々「美樹さんは契約をするのが怖い、つまり嫌なんでしょう?」
沙々「それでも契約しなくちゃって思うなら、まず上条君に直接聞いてみればいい」
沙々「私の命と、あなたの左腕、どっちが大事ですか?って」
沙々「真剣に尋ねた結果、君の命よりも僕の左腕の方が大事だって答えが返ってくるようなら」
沙々「そんな奴に命を懸けてやる価値なんてないですから、跳び膝蹴りでもしてやればいい」
沙々「君の命の方が大事だって言われたなら、そう言われた通りに生きればいい」
沙々「あなたにとって損がない、まさにハッピーエンドじゃないですか」
さやか「…………」
さやか「嫌だよ、そんな……」
さやか「恭介に私の醜いところ、知られたくないんだ……」
沙々「…………」
沙々「別に事情を全部明かせって言ってる訳じゃないんですけど、それでもダメですか?」
沙々「……というかそれとは別に、そもそも上条君本人にとって」
沙々「勝手に陰であなたに知らず知らず命を賭けられるのは」
沙々「はたして親切かつ適切なことなんでしょうか?」
沙々「親切に何か見返りを求めないのが美徳、って考えてるのかもしれませんけど」
沙々「メリットデメリットをちゃんと事前に知らされていない契約の恐ろしさは」
沙々「魔法少女のおかげで嫌というほどわかったでしょう?」
沙々「いや、上条君とあなたとの間に生じる関係は、契約とすら呼べませんね」
沙々「上条君は左腕を治すかどうかの決定に全く携わることができないんですから」
沙々「相手に黙ってやる親切ってのは、もちろん気持ちのいいものでしょう」
沙々「ですが、その問題が深刻になればなるだけ」
沙々「先に相手の確認を取ってからやるべきだとわたしは思いますよ」
沙々「今回の場合、あなたはあまり気が進まないって考えてるんでしょう?」
沙々「だったらなおさら、無理な親切の押し売りにならないよう相手の意思を尋ねるべきです」
沙々「もしも上条君が左腕の回復を他の何よりも望んでいて」
沙々「そしてあなた自身も、それを全てに優先して望むのだとしたら」
沙々「だったらもう好きにしたらいいです。ただし、わたしが関係しないところでね」
沙々「取り返しがつかなくなる前に踏みとどまることを、わたしはオススメしますが」
沙々 さやか「…………」
沙々「私個人の意見としてはざっとこんなところですけど、何か参考になるところ、ありました?」
さやか「…………なんかありがと」
さやか「話したりそれに答えてもらったりして、ちょっとスッキリした」
さやか「沙々さんが言ったことも十分参考にして」
さやか「自分が何をしたいのか、何をするべきなのか」
さやか「時間をじっくりかけて、これからもっと深く考えてみるよ」
沙々「まあ、ほどほどに頑張ってくださいね」
~☆
ー数日後 夜ー
テクテク テクテク
まどか「…………」
テクテク テクテク
まどか(こんな時間に一人で出歩いて、私、何してるんだろう?)
まどか(魔法少女でもないのに、何してるんだろう?)
まどか(魔法少女の皆は、ワルプルギスの夜と戦う準備に忙しくて)
まどか(なのに私は、何もできない)
まどか(…………)
仁美「…………」トコトコ
まどか(あっ、仁美ちゃんだ)
テクテク
まどか「仁美ちゃーん!今日は御稽古ごと――」
仁美「…………」トコトコ
まどか「……?」
仁美「…………」トコトコ
まどか「っ!?」
まどか(あれって、もしかして……!)
まどか「仁美ちゃん!ねえ、仁美ちゃんってば!」ユサユサ
仁美「あら、鹿目さん、ごきげんよう」
まどか「ど、どうしちゃったの?ねえ、どこに行こうとしてたの?」
仁美「どこって、それは……」
仁美「ここよりもずっといい場所、ですわ」ニコォ
まどか「仁美ちゃん……」
仁美「ああ、そうだ。鹿目さんもぜひご一緒に」
仁美「ええ、そうですわ……。それが素晴らしいですわ……」
まどか(どうしよう、これってやっぱり、そうだよね)
まどか(……あっ!ほむらちゃんかマミさんに連絡すればいいんだ!)
まどか「えっと、よし、じゃあ――」スッ
まどか(まずはほむらちゃんに――)
仁美「ダメですわ、鹿目さん」パシッ
まどか「あっ!か、返してっ!仁美ちゃんっ!」
まどか(け、携帯がないとメールも電話もできない……)
仁美「ダメですわ、鹿目さん」
仁美「私たちがこれから向かうのは、とても素晴らしい場所」
仁美「そこを目指す儀式に、俗世の穢れを持ち込んではならないんですの」
仁美「鹿目さんは私の大切な友人として、今回特別にそこにお招きしますが」
仁美「だからといって、他の選ばれていない方々をお呼びになるのは、ダメですわ」
まどか(……ひ、仁美ちゃんから無理にでも携帯を取り返す?)
まどか(いやいや無理だよ、だって仁美ちゃん護身術も習ってるんだもん)
まどか(仁美ちゃんをひとまずおいて、公衆電話を探すか、通りすがりの誰かから携帯を借りる?)
まどか(ああ、ダメだ……。携帯の番号とかメールアドレス、あの携帯がないとわかんないや……)
~☆
工場主「そうだよ……、俺、ダメなんだ……」
工場主「こんな小さな工場一つ、満足に切り盛りできなかった……」
工場主「今みたいな時代にさ、俺の居場所なんて、あるわけねぇんだ……」
コポコポコポ
まどか(洗、剤……?)
まどか(ママが言ってた、ああいう洗剤は扱いを間違えると)
まどか(とんでもないことになる、家族みんなあの世行きだって……)
まどか「――っ!」
まどか「ダ、ダメ……、それはダメっ!」ダッ
仁美「……」ドンッ
仁美「邪魔をしてはいけません。あれは神聖な儀式ですのよ?」
まどか「だって、あ、あれ、危ないんだよ!?ここにいる人たち、みんな死んじゃうよっ!?」
仁美「そう、私たちはこれからみんなで、素晴らしい世界に旅に出ますの」
まどか(……どうしよう、どうしよう)
まどか(ここには、ほむらちゃんやマミさんはいない)
仁美「それがどんなに素敵なことかわかりませんか?」
まどか(……私が、私がやらなくちゃ)
仁美「生きてる身体なんて邪魔なだけですわ」
まどか(私が……、私が……!)
仁美「鹿目さん、あなたもすぐに――」
仁美「――――」
まどか「……?」
ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ
まどか「!?」
まどか(み、みんな倒れてく……!?)
まどか(毒、毒……?)
まどか(でも……、仁美ちゃんはまだ立ってる)
まどか(それに私はなんとも――)
仁美「――――」
テクテク テクテク
沙々「――こんばんは、鹿目さん」
まどか「ゆ、優木さん!?」
沙々「やれやれ、実に大仕事でした」
沙々「全員を眠らせる魔法には、さすがに苦労しましたよ」
沙々「魔女の支配下にある人間にはわたしも干渉しやすい」
沙々「とはいえ一度にこの人数となると、成功させた自分を、全く褒めちぎってやりたいです」
まどか「間に合ってくれて本当によかった……!」
まどか「誰も間に合わなかったら、私、どうしようかと……!」
沙々「こっちこそどうしようかと思いましたっての」
沙々「志筑仁美が魔女の口づけを受けたことをはるばる感知して」
沙々「仕方ないから助けようと走ってここまで駆けつけてみれば、そこにあなたまでいるんですから」
沙々「本当に、無事な状態であなたを確保できてよかった」
沙々「さあ、鹿目さん。志筑さんを連れて、あの出口から帰りましょう」
沙々「時間もだいぶ遅いですし、これも縁です。家まで送りますよ」
まどか「…………えっ?」
沙々「?」
沙々「どうかしました?急ぎましょう、私の魔法が解ける前にここを出ないと」
沙々「この規模で急ごしらえだと、そんなに長い効果は保証できません」
まどか「…………」
まどか「だけど、だけど魔女を倒さなくちゃ……」
まどか「優木さんは、そのためにここに来たんでしょ……?」
沙々「何寝ぼけたこと言ってるんです。わたし一人で、無理に決まってるでしょう」
沙々「わたし個人の戦闘力は、使役する魔女がいなかったら酷いものですよ?」
沙々「使役するためのグリーフシードには、特殊な魔法をかける必要があるんです」
沙々「今、そんなグリーフシードを持ってたら、自分の立場を悪くするだけじゃないですか」
沙々「それにマミさんと一緒に手に入れたグリーフシードの管理は、基本あちらに任せてます」
沙々「あくまでわたしは、ここに志筑さんを助けに来ただけです」
沙々「起きると面倒ですから、この人たちが目を覚まさぬ内に、この場からさっさと離れなくては」
まどか「……じゃあ、私たちがいなくなったらここで倒れて眠っている人たちは」
まどか「ここにこのまま取り残される人たちは、いったい、どうなるっていうの……?」
沙々「…………」
沙々「どうなる?そんなの決まってるじゃないですか」
沙々「当然みんな、次に目を覚ましたら自殺します」
沙々「魔女に魅入られたのが運のツキ、ただそれだけの話です」
今日はここまで
何かの言葉でさやかが安直に契約やめるのは納得いかないので
機会がない中自分で色々考えて次第に納得してもらうって形に
文字数の割に話が進まない
シャルロッテ戦はあっけなくカットしましたけど
沙々さん主人公の話でエリーを真面目にやらない訳にはいかないということで今回 そして次回
エリー戦で自殺しようとしてる人たちを見捨てろって展開
SS色々あるけど魔法少女がまどかにそう迫る話を他に見た記憶がない
それもこれも沙々さんが規格外に弱いからできる展開なのだ ビバ沙々さん
切り捨てに全く躊躇ないけど幼女ですら盾にするからそんなもんです
仁美から携帯取り返してマミかほむら呼べばいいんじゃ?
>>411
一見そういう感じで突っ込めるところいくつか用意してありますが
連絡手段等もあるだろうに沙々さんがマミさんと一緒じゃなくて一人で来た
という辺りで事態はもう少し深刻なんだなーって思っていただければ
まだ何も書いてませんけど突っ込みどころは多分三つくらいかな?
まどか「ダ、ダメだよ!そんなの絶対おかしいよ!」
まどか「みんな、助けなくちゃ!」
まどか「私たちだけが逃げるなんて、間違ってるよ!」
沙々「そんなこと言われても、わたしの実力からして無理なものは無理ですよ」
沙々「助けようとして巻き込まれて、結局は力及ばずにどっちも死ぬ」
沙々「仮にそれが誰かの耳に伝われば、生前の美談にでもなるのかもしれませんね」
沙々「ですが、わたしにとって死んでからが一体何になると言うんです?」
沙々「死んでから後も生かせる美談なんて、この世に存在しません」
まどか「……」
まどか「なんで優木さんだけが、ここへ来たの?」
まどか「マミさんさえいてくれたら、きっとどうにかしてくれるはずなのに……」
沙々「あいにくマミさんは、グリーフシードを工面しようと知り合いの元へ遠出中です」
沙々「マミさんって、魔法少女の間で結構顔広いらしいですからね」
沙々「どうも魔女の口づけを受けた一般人がいるみたい。だから早く帰ってきて」
沙々「ここに来る前に、そうメールしときましたけど、この状況では間に合わないでしょう」
沙々「いくら全力で帰ってくるにしても、ある程度人目もありますし、あと数時間はかかるかと」
沙々「おそらく今頃リボンで、上空飛び立たんばかりに必死で建物を伝ってるんじゃないですか?」
まどか「……」
まどか「だったらほむらちゃんなら――」
沙々「彼女の電話番号なんてわたし知りませんよ」
沙々「じゃあ佐倉さんとなると、そもそも持ってるかどうかが怪しい」
まどか「……っ!」
まどか「でも、私!ほむらちゃんの携帯の番号とメールアドレス知ってるよ!」
まどか「仁美ちゃんに盗られちゃってたけど、その携帯に――」
沙々「あー、知ってるんですか。じゃあここから出たら連絡とってみましょう」
沙々「ただ彼女の魔法がどんなものか詳しく知りませんし」
沙々「今どこにいるのかも定かじゃありませんが」
沙々「この切羽詰まった状況にはたして間に合うと思います?」
沙々「人々の自殺を防ぐには、いくら彼女が凄腕でもその場にいなくては……、ねえ」
沙々「テレポート系の能力の持ち主みたいですし、一応連絡しておく価値はあるでしょうけど」
まどか「……」
まどか「じゃ、じゃあ私たちが頑張って時間を稼げば――」
沙々「あっ、ちょっと待ってください」
沙々「さっきかけた魔法がもう解けそうなんで、ちょっと強めにかけ直します」
沙々「思ってたよりは早いですが、まぁこんなものでしょう」
沙々「さっさとこの場から離れとけばかけ直す必要なかったんですけど……」
沙々「集中しなきゃいけないんで静かにしててくださいね」
まどか 沙々「……………………」
沙々「はい、終わりました」
沙々「言っときますけど、さっきよりも状況悪くなってるんですよ、これ」
沙々「この魔女の結界が及びうる範囲は、工場一帯をあますことなく包み込んでいます」
沙々「では、なぜわたしたちは結界に巻き込まれずにいられるのか?」
沙々「魔女には、自分の結界の中に誰かが入り込むのを好まないモノが多い」
沙々「だから工場の中という現実の領域で、こうして集団自殺が行われようとしてるんです」
沙々「……とはいえそれは、何事もない場合の話にすぎません」
沙々「何か邪魔をされたと感じたなら、普通は本腰を上げて相手を潰そうと動き始める」
沙々「わたしが人々を眠らせたことも、かなりギリギリの線を渡っています」
沙々「それがどういう手順でかの説明は省きますが、魔女を刺激しているのは間違いない」
沙々「これ以上何か邪魔をしては、確実に敵とみなされます」
沙々「そうすれば間違いなくわたしたちは結界に取り込まれて、わたしは魔女と戦う羽目になる」
沙々「時間稼ぎ?いいえ、そんな余裕はありません」
沙々「一刻も早くこの場を逃れることが最善手です」
まどか「…………」
まどか「たとえそうだとしても、ダメだよ」
まどか「私はここから、逃げ出したくない」
沙々「……あ゛ー、もう、まどろっこしいですねぇっ!」イライラ
沙々「どうしてわたしが、鹿目さんを強制してこの場から連れ出そうとせずに」
沙々「ここまで丁寧に説得しようとしてるのかわかりますか?」
沙々「わたしに対する感謝を、あなたに心底アピールして貰いたいからです」
沙々「あなたをなんの怪我もなく魔女から救い出した」
沙々「そう暁美ほむらに恩を売るため、あなたにはここで納得してもらわないと困る」
沙々「優木さんが私をあの場から無理やり引きはがした」
沙々「もしかしたら他の人たちを助けられたかもしれないのに」
沙々「後になってから万が一そんなようなことを言われてしまっては」
沙々「せっかくあなたを助けたうまみが少なくなってしまう」
沙々「現状、わたしたちが生き延びるにはこうすべきなんです。わかるでしょう?」
まどか「…………」
まどか「優木さん、前に私に言ったよね」
まどか「自分に自信がないって理由で、魔法少女になるのはやめろって」
まどか「あれから私なりに色々考えてみたの」
まどか「そもそも、私に自信がないのはどうしてなんだろうって?」
まどか「最初は、自分に何も才能がないからだと思った」
まどか「だけど本当は違った」
まどか「自分から何もしようとしなかったからだったんだ」
沙々「…………」
まどか「魔法少女になって、こんな自分を変えたいなって」
まどか「奇跡の助けがあれば、私でもきっと最初の一歩を踏み出せる」
まどか「そうすれば後はトントン拍子で、新しい私が開けてくるはず」
まどか「そんな風に魔法少女のことを知って、浮かれてる気持ちもあったんだと思う」
まどか「だけど知れば知るほど、その道は踏み入れたらいけない道だった」
まどか「私は、自分の力で私を変えていかなきゃならない」
まどか 沙々「…………」
まどか「実際魔法少女になるかどうか、そんなことは全部二の次なの」
まどか「大事なのは、私が魔法少女になるに値する人間かどうか」
まどか「でも、私には誰かに誇れるような才能は何もない」
まどか「才能がないから、いつか変わるためには、私はここで引いちゃダメなの」
まどか「今、誰かが取り返しのつかない理不尽な不幸を背負わされようとしてる」
まどか「それを私は、この両目でひしと見据えてる、知ってる」
まどか「ここで自分を誤魔化すなんて、そんなの絶対おかしい」
まどか「私は魔法少女じゃなくて、何もできない無力な存在だけど」
まどか「ここで自分だけ助かろうとするのは、間違ったことだって信じてるから」
まどか「優木さんにだったらこの気持ち、きっとわかってもらえると思うんだけど……?」
沙々「…………」
まどか「…………っ」ブルッ
まどか「だから、だから、ごめんなさいっ!」ダッ
沙々「っ!」
パシッ
タッタッタッ
ガシャーン!
沙々(あっ、終わった……)
沙々(魔女が活発に動き始めた気配がひしひしとここまで……)
タッタッタッ
沙々(なんともまぁ、元気よく走って行っちゃって……)
沙々(液体の入ったバケツを投げるとは、結構ガッツあるんですね)
仁美「――――」
沙々(鹿目まどかのことは、残念ながら見捨てるのが正解でしょう)
沙々「…………」
沙々(――自分から何もしようとしなかったから、ですか)
沙々「…………やれやれ」
沙々(彼女とあまり関わらなければよかった)
~☆
使い魔「~~~~!」
まどか「…………」
まどか(なんで、こんなことしちゃったんだろ……)
まどか(死にたく、ないな)
使い魔「~~~~!」
まどか(罰なのかな……?)
あどか(私が無駄に意地張って……)
まどか(優木さんの言うことを聞かなかったから……)
まどか(だから、私はその報いを――)
使い魔「――――」
まどか(……?)
使い魔「――――」
沙々「……」ヘンシン
沙々【こうして顔を合わせてみてわかりました】
沙々【朗報ですよ、鹿目さん】
まどか(優木さん、どうして……!?)
沙々【元々あの人数が操られてるってことに違和感はあったんです】
沙々【今日の見回り担当は佐倉杏子】
沙々【彼女は風見野と見滝原の両方を見回っていたんだと思います】
沙々【あちらで魔女との戦闘があったと考えれば、こちらに魔女の取りこぼしがあってもおかしくない】
沙々【……しかしそれにしたって、事の規模に比べて進行があまりに急すぎる】
沙々【その原因は、この魔女が精神操作に特化した能力の持ち主だったから】
沙々【わたしと同じく、直接戦闘に割く力はほとんど持たない】
沙々【わたしでも、むしろわたしだからこそ、奴に対抗できます】
沙々【精神系の固有魔法の持ち主は、互いに影響を与え辛い】
沙々【魔女になっていてもその法則は変わらない】
まどか(じゃあ、優木さんでもこの魔女を倒せるってこと……?)
沙々【わたしがまともに一人で戦って倒せるかとなると】
沙々【あなたを守りながらですし、ちょっと微妙、というか多分無理です】
沙々【グリーフシードの手持ちがないのが不安ですが、マミさんが来るまで、時間を稼ぎます】
沙々【使い魔ならある程度の数は使役したり無効化できるはず】
沙々【私の後ろで目を閉じて、ひっそりと神様にお祈りでもしててください】
まどか(どうして、私を助けに来てくれたの……?)
まどか(優木さん、この魔女がどんな魔女か見るまで知らなかったんだよね……)
まどか(だったら……)
沙々【さあね、知りませんよそんなこと】
沙々【それよりもまず、この場を生き残ることを考えなくてはいけません】
沙々【こんなつまらない死に方で死んでなるものですかっ……!】
~☆
ー翌日 マミホームー
沙々「それで鹿目さん。なんの用ですか?」
まどか「……謝りに来たの」
沙々「謝りに?いったい何に対してですか?」
まどか「優木さんを私の我儘に巻き込んじゃったこと」
まどか「マミさんが来るのが速かったからよかったけど」
まどか「あの時でさえ優木さん、限界寸前だったし」
まどか「本当だったら、あのまま魔力が尽きて魔女に――」
沙々「本当なのは、わたしたちが生き延びたことだけですよ」
沙々「あなたに頭を下げられてもわたし、何も嬉しくないんですけど」
沙々「誠意があるということなら、あなたがわたしの献身に対して」
沙々「何か報いとしてできることはあるんですか?」
まどか「…………」
沙々「くふふ、そんな辛そうな顔をしなくても大丈夫です」クスッ
沙々「もう、見返りはこっちで勝手に貰ってますから」
沙々「わたしがあなた自身に要求するのはあと一つだけです」
まどか「えっ……?」
沙々「自分の命を投げ出してまで、一般人と鹿目さんの盾となり魔女と対峙した」
沙々「わたしのソウルジェムの穢れ除去とケガの治療が一通り済んでからの」
沙々「マミさんのあの感激した素振り。中々に気分が良かったですよ」
沙々「それにその様子を隣で見てる、佐倉杏子のあの苦虫を噛み潰したような顔」
沙々「いやー、あそこに彼女が居合わせてくれてよかった。あの顔は最高でしたね」
沙々「暁美さんがあなたを家に送っていたせいで、あの顔を見せられなかったのは残念です」
沙々「……そう、それとあなたと無事に再会して抱き着いたときの暁美さんの様子」
沙々「どう見ても彼女の本心が出ていましたね」
沙々「おかげでどう関係していけばいいのか、かなり行動指針を決めやすくなった」ニヤァ
まどか(優木さん、すごい悪い顔してるなぁ……)
沙々「暁美さんの中でのわたしの信頼度も、多少は上がったでしょう」
沙々「わたしが望むのは、あれをあなたが皆を守ろうとした結果だと主張しないこと」
沙々「真実を心の底にしまっておくのは、あなたにとって別に不利益ではないはずです」
まどか「……私が守ろうとしたからじゃないよ」
まどか「結局、私は見てるだけで何もできなかった」
まどか「みんなを守ったのは、やっぱり優木さんだよ」
沙々「それはただの結果ですね」
沙々「あの魔女が戦闘能力をあともう少しでも備えていれば、二人とも死んでいた」
沙々「しかし、私たちは生きている」
沙々「それと同じで、あなたが無茶をしなければあの一般人たちは皆死んでいた」
沙々「暁美ほむらは、武器収集のため奔走していたとあなたに言い訳していました」
沙々「結界の外で連絡してもおそらく間に合わなかったでしょう」
沙々「それにわたしは、あなたと仁美さんを連れて撤退する気満々でしたからね」
沙々「けれど現実は、わたしの妨害もその一端ではありますが」
沙々「魔女がわたしたちにばかり注意を向けていたおかげで、集団自殺は行われなかった」
沙々「全く幸運としか言いようがありませんが」
沙々「どれほど非合理な選択から生じたものだとしても、この結果はあなたの行動が原因です」
沙々「誰かに誇れるものではないかもしれませんが、あなたが、人々の命を救ったんですよ」
まどか「……優木さんって、優しいんだね」
沙々「ええ、まあよく言われます」
沙々「これで用事は全て済みましたか?」
沙々「マミさんに今日は念のため、一日家で休んでなさいって言われたので」
沙々「そろそろその言葉通り、ダラダラ布団の中で眠っていたいんですが」
まどか「……うん、じゃあ最後に一つ、優木さんに気になること聞いたら私帰るね」
まどか「――あの時、仁美ちゃんが魔女の口づけを受けたこと、なんではるばる感知できたのかな?」
まどか「魔女の口づけを受けたのが仁美ちゃんだって、初めからわかってた言い方だったよね?」
沙々「…………」
沙々「これまた中々痛いところに気付きましたね」
沙々「……彼女に何か危険があったら反応するようなのを、念のためかけておいたんですよ」
沙々「あなたの大切な友人でしょう?」
沙々「ぶっちゃけた話、彼女に何か万が一があった場合」
沙々「間接的な恩を暁美ほむらへ売れるようにね」
沙々「優木さんが仁美ちゃんのこと助けてくれたの」
沙々「あなたがそう言えば、多少好感度、信頼度は上がるはずと考えて」
まどか「優木さん、仁美ちゃんを無事に解放するって言ってたじゃないっ!」
沙々「無事には解放したじゃないですか。あの時かかってた魔法は全部解きましたし」
沙々「ただ、新しくて安心なのを、彼女の安全のため、保険に新しくかけただけ」
沙々「嘘はついてませんよ。それでも不安なら、後で佐倉杏子にチェックさせてみればいい」
沙々「結果として、颯爽とピンチの場に駆けつけることができた」
沙々「それで今はいいじゃないですか?ね?」
まどか 沙々「…………」
今日はここまで
このまどかは詢子さんに間違えてもいいんだよと言われてないに違いない
沙々さん別編から素直に読み取れる情報よりはかなり優秀だけど(主人公補正)
良い子になりましたーとかは絶対やりたくないですね
まどポはやったことないからよくわからないです
設定としてももちろん採用もしてませんのでご了承を
利害が一致する範囲ならできることはする、無理なことはやらない
これで戦闘能力がしょぼくなければほむらとしては一番組みやすいだろうに
爆弾抱えてる杏子よりよっぽど信用できるぞ
~☆
ー1週間後ー
QB「優木沙々、わざわざキミからボクに接触を図るなんて、珍しいこともあったものだ」
QB「何か、解決に困るような問題でもあったのかい?」
沙々「どうでしょう?もしかしたら自力でも解決できるのかもしれません」
沙々「ですがどちらにせよ、あなたに聞いてみたほうが早いし多分確実です」
沙々「あなたがわたしを、魔法少女の契約において手酷く引っ掛けた」
沙々「それを許すつもりなんて毛頭ありませんけど」
QB「ボクがキミを引っ掛けただって?」
QB「いったい何について言ってるのか、まるで心当たりがないよ」
沙々「……心当たりがない?」
沙々「ふーん、そこまで言うなら、なんのことか言ってやりますよ」
沙々「暁美ほむらから全部聞きました」
沙々「魔法少女の本体は肉体じゃなくてソウルジェム」
沙々「そして、魔法少女は魔女になる末路を背負わされているんだとね」
沙々「これらとを知らされなかったことについて、わたしは引っ掛けられたと言ってるんです」
沙々「事前に知っていたら、あんなバカな願い事で契約なんて考えませんよ」
QB「…………」
QB「ふむ、一つ聞きたいんだけどいいかな?」
沙々「いいですよ、なんですか?」
QB「暁美ほむらの発言に、キミはどれほどの信憑性があると考えているんだい?」
QB「それが本当かどうかを、直接何かの手段で確認したわけじゃないんだろう?」
QB「以前のキミなら、言葉だけの浮説とも捉えうる話をそう簡単には信用しなかったはずだ」
QB「いわゆる心境の変化ってのが原因なのかな?」
QB「どうも暁美ほむらや杏子とだいぶ親交を深めているようだし」
沙々「確証が言葉だけなら、もちろんそれを信じはしないでしょうね」
沙々「しかし本体がソウルジェムだという実感こそありませんが」
沙々「魔法少女が魔女になる、これについては彼女の発言よりもっと、信頼に足る確証があります」
沙々「それはわたしが魔女や人間、魔法少女を使役してきた、その経験です」
沙々「魔法少女と魔女は元は同質のものだった」
沙々「あなたが違うと言ったとしても、それは嘘だと言い張れるくらいには確信しています」
QB「…………なるほど、魔法少女と魔女の内面深くへ接続するという経験があれば」
QB「比較から、その二つを結びつける判断を肯定するのは自然なことなのかもしれないね」
QB「これまでは、その可能性を意識的か無意識かは別として、考えようとしなかっただけということか」
沙々「わかっていただけましたか?」
沙々「さあ、それじゃあわたしを契約の際に引っ掛けていことについて」
沙々「そして心当たりがないなんて言った嘘を、今ここで謝罪してもらいましょうか」
QB「謝罪して、と言われても困るんだけどね」
QB「嘘なんて、ボクは一度もキミについていないんだから」
沙々「はぁっ?これでもまだ言いやがりますか」
QB「だって、キミや他の人々が普通嘘や引っ掛けたって言葉に込めている意味は」
QB「事実とは違うことを、事実だと相手に伝えるということだろう?」
QB「ボクがそんなことをキミに対し行ったという事実は、一度たりとも存在しない」
QB「魔法少女がどういうものかという説明は一部省略したけれど」
QB「ボクは願いを一つだけ叶える。そしてその代わりにキミは魔法少女に、なる」
QB「この二つの事柄に嘘偽りは一切ない、違うかい?」
QB「なんならそれに魔女と戦うを付け加えてもいい」
QB「普段から常に、ボクはキミに嘘なんてついていなかったはずだ」
QB「ただし聞かれなければ、そのまま双方に不都合が出ない形で話を進めるけれどね」
沙々「…………」ギリッ
沙々「なんでキュゥべえは、いつか魔女になる魔法少女という存在を」
沙々「わざわざ奇跡という願いで釣り上げてまで産み出すんですか?」
沙々「あなたの奇跡だって、きっとタダではないんでしょう?」
QB「キミたちが自身の魂を揺さぶる願望を、現実の形にすることを目指すように」
QB「もちろんボクにはボクとしての崇高な目的、理念がある」
QB「それはね、キミたちの感情からこの宇宙全体を救うエネルギーを創出することなんだよ」
沙々「は?」
QB「沙々はエントロピーという言葉を知ってるかい?」
QB「簡単に言うと――」
沙々「あー、そこら辺のこまごまとした話はいいです、面倒です」
沙々「どうせ大して興味もないのに聞いたこっちがバカでした」
沙々「キュゥべえと今更敵対しても、わたしに得がない以上そうする気もないですし」
沙々「あなたたちが魔法少女の契約を仮に止めて、魔女が産まれなくなれば困るのはわたし」
沙々「魔女にはなりたくありませんが、だからといって早々と死にたいわけでもない」
沙々「契約内容が不満ではありますが、どうせやり直しが可能なものじゃないんでしょう?」
QB「うん、そうだよ」
QB「キミたちの魂をソウルジェムに変換するという行為は、ボクの知る限り不可逆だ」
QB「新たな願い、奇跡の力を借りるならばまた話は別だけど」
QB「誤解しないで欲しいのは――」
沙々「はいはい、もういいです」
沙々「いい加減相談に話を戻します。構いませんよね?」
QB「ボクは構わないよ。それじゃあ話を聞くとしよう」
QB「解決の役に立つような助言を、キミに与えられるかどうかはまた別だけどね」
沙々「…………」
沙々(こういうことに一番詳しいだろうって理由で)
沙々(まずこいつを相談相手に選んだのは失敗だったかもしれませんね)
沙々(どうも思ってた以上に胡散臭いです、こいつ)
QB「どうしたんだい?さあ、話してごらんよ」
QB「話を聞かなくては何もわからないし、何も言うことはできないじゃないか」
沙々「……あー、あのですね。あれです。わたしの魔法が、以前と比べておかしいんです」
沙々「この頃どうしてなのか、魔女を操作することが急激に下手になってきています」
沙々「魔法が新しく使えるようになっていくことはこれまで数々ありましたが」
沙々「魔法が使えなくなっていくなんてことは、これが初めてで……」
沙々「魔法少女と契約を結んできたあなたなら、こういうことにも詳しいんじゃないかなって思って」
沙々「何か原因について、推測でもいいから思いつきませんか?」
QB「……魔法が使えなくなる原因、か」
QB「例えば使えなくなる原因として、自分の願いを心の底で拒絶してしまったというものがある」
沙々「願いを、拒絶?」
QB「魔法少女の固有魔法は願いとかなり密接な関係を結んでいる」
QB「それがどういう固有魔法かにもよるけれど、潜在意識の働きというものは存外大きい」
QB「願いの否定を原因として、自分の魔法の使用範囲を限定してしまった子はこれまでに数多くいた」
QB「しかし、キミにそれは当て嵌まらないはずだ」
QB「ボクの目から見ても、今のキミの精神状態はいたって健康に見える」
沙々「ええ、いたって心身ともに健康ですよ」
QB「キミは願いを否定しているわけじゃない。なおかつ君の願いは固有魔法に人一倍強く繋がっている」
QB「となるとキミの変化は、何かしら願いに沿ったものだと考えるのがまともな筋だろう」
QB「それが成長という正常な反応ならともかく、劣化しているんだからなおさらね」
QB「そしてキミの願いは、自分より優れた者を従わせたい」
QB「明らかな証拠があるわけじゃもちろんない。これはボクが導き出した推論に過ぎない」
QB「しかしおそらくは、こういうことなんじゃないか?」
QB「キミにとって、優れていると思うものが変わってきている」
沙々「……つまりわたしが、前と比べて魔女を優れていると感じなくなっていると?」
QB「そう考えるのが最も合理的だろう」
QB「人間の価値評価の基準はきっかけさえあれば容易く変動するものだ」
QB「もっとも原因がわかったところで簡単に治せるものでもないだろうし」
QB「治す必要があるかどうかも確かじゃない」
QB「価値評価とは相対的なものだからね」
QB「キミの願いが正常に機能している以上、下手になった魔法があれば」
QB「同時に目に見えて上達した魔法もまたあるはずだ」
QB「ボクの推測が正しければ、心当たりは既にキミの内にあるはずだよ?」
沙々「…………」
~☆
ー数日後 マミホームー
杏子「それでここまで呼びつけていったいなに?」
杏子「まさかつまんない用事なんかじゃないよねぇ……?」
沙々(こ、こえぇぇ……)
沙々「いやいや万に一つもそんなはずないじゃないですかやだなー佐倉さんったら!」ハッハッハッ
沙々 杏子「…………」
マミ「佐倉さん、優木さんが怖がってるわ。怖い顔をするのはやめて」
杏子「……チッ」
ほむら「続けてくれる?」
沙々「あっ、はい」
沙々「ずばりですね、ワルプルギスの夜との戦いにわたしも加えて欲しいんです」
ほむら 杏子 マミ「…………」
杏子「アンタ、正気で言ってんの?」
沙々「いきなり人を狂人扱いしないでくださいよ」
杏子「いや、でも、ぶっちゃけ沙々がまともに戦いに加わっても犬死にするだけだよ」
マミ「ちょっと佐倉さん!?」
杏子「だってホントのことじゃんか。むしろ本人が一番よくわかってるはずでしょ」
沙々「誰がまともに、戦いに加わると言いましたか」
沙々「どうですか?練習してみて三人の連携はうまくいってますか?」
ほむら「まずまず、想定していたレベルには達しているわね」
杏子「あったりまでしょ、アタシとマミさんは前にコンビ組んでたんだし」
杏子「コンビ勘さえ思い出せれば楽勝、楽勝」
沙々「佐倉さんはそれで十分だと、本気で思ってるんですか?」
杏子「……何が言いたいのさ?」
沙々「相手はあのワルプルギスの夜ですよ?」
沙々「どうです?マミさんと一緒に戦ってみて」
沙々「思ってたより強くないな、とか思ったりしません?」
杏子「……っ!」ギリッ
マミ「…………」
沙々「所詮雑魚のわたしには本当のところはわかりませんよ?」
沙々「ただ両者争ってた時とかを見る限りは、今はあなたの方が強そうだなって」
杏子「それは――!」
マミ「確かに、私の目から見ても佐倉さんの方が強いわ」
マミ「魔法のバリエーションはあるけど、一番この三人で弱いのは私よ」
杏子「…………」
沙々「マミさんを超えるほどにあなたが強くなったのは、とても喜ばしいことでしょうけど」
沙々「チームとして考えた時、あなたが隣にいなかった歳月は今埋めるにはあまりに大きすぎる」
沙々「暁美さんは、これでワルプルギスの夜と戦っても間違いないって思いますか?」
ほむら「間違いない、なんてことはアイツとの戦いに臨む中でありえないわ」
ほむら「どれほど準備をしたところで、満足できる妥協点なんて見つかるとは到底思えない」
ほむら「……だからこそ勝率を少しでも上げる方法があるというのなら、見過ごすわけにはいかないわね」
沙々「ワルプルギスの夜との勝率を少しでも上げる、あるいは安定させたいと思うなら」
沙々「互いの呼吸を絶えず嗅ぎ分けられるようなコンビネーションを目指すべきです」
沙々「優れた魔法少女であるあなたたちなら、きっと基礎的な動きの中での連携は完成しつつあるんでしょう」
沙々「しかしそれは年季の入った、心の底から通じ合ったものとは違う」
沙々「ワルプルギスの夜のありとあらゆる攻撃パターンに対処できるとは思えない」
沙々「どんな時であれ、一人で挑むような状況を作ってはならない」
沙々「一人でダメでも二人なら、二人でダメでも三人なら、そうでしょう?」
ほむら「ええ。理想では、確かにそうね」
ほむら「でもそれとあなたがどう関係するというの?」
ほむら「あなたが輪に加わっても、かえって精一杯の調和を乱してしまうだけに感じるけど」
沙々「前線に出て戦うということならそうでしょうね」
沙々「言うなればわたしが、三人の輪を繋げる鎖になります」
沙々「マミさんを主軸にして、佐倉さん、暁美さんに感覚その他を繋げる」
沙々「テレパシーとは全く別物の、感覚を伴った距離を無視した共感」
沙々「理想に足らない経験値は、魔法を使えば埋められます」
沙々「わたしが間に入りさえすれば、連携は見違えたものになるはずです」
杏子「……おい」
杏子「待てよ、それって――」
沙々「そうです。言い方をマイルドにしてはいますが」
沙々「わたしが三人全員をどういう形であれ一度に掌握するってことです」
沙々「デメリットは、その接続を実際に行うとすれば」
沙々「マミさんに対するほどではなくても洗脳が可能なレベルにまで」
沙々「あなた方二人の精神にも潜る必要があること」
沙々「潜ってしまえばその間、佐倉さんはそうはいかないでしょうが」
沙々「暁美さんはわたしが支配しようと考えればそれに抗うことはできない」
沙々「更にそこまで深く潜る以上、あなた方の記憶にいくらか触れることを避けるのは不可能です」
沙々「深層心理にこっそりとしまっているようなことまで」
沙々「わたしに全てではないにしても把握されてしまうことになる」
ほむら「…………」
~☆
ー夜 外ー
沙々「いやぁー、さっきは佐倉さんを説得してくれて助かりましたよぉー」
沙々「ワルプルギスの夜がどれほどの化け物か」
沙々「おかげでイメージがより鮮明になって、気分が重いですが」
ほむら「優木さんは前線に出て戦う訳じゃないでしょう?」
沙々「結局は、あなたたちがワルプルギスの夜に負ければわたしもそれでお終いですよ」
沙々「自分で戦う術さえあれば、負けた場合の未来を考えることもできる」
沙々「しかしそんな未来は現実的じゃない。わたしもまた、命を懸けているというわけです」
沙々「……で、二人きりになってまで、言いたいことってなんですか?」
沙々「わたしのプランに不満があるわけではないようですが」
ほむら「…………」
ほむら「私の記憶を一部覗くことになる、そう言っていたわね」
ほむら「私の過去にたとえ何を見たとしても、誰にもそれを漏らさないで欲しい」
沙々「……誰にも、ってこうして念押しするということは、何かよほど後ろめたいものがあるんですか?」
ほむら「誰にも、とは言ったけど、本当に知られたら困るのはまどかに対してよ」
ほむら「しかし情報は握るものが増えれば増えるだけ漏洩のリスクが高まる」
ほむら「だから漏らさないで欲しいと言っているの」
ほむら「どんな些細な取っ掛かりであれ、知ってしまえば興味が湧いてくるのが人の性」
ほむら「私はあの子をずっとそばで守ってあげられるわけじゃない」
ほむら「これ以上、足枷のようなものになりたくないの」
ほむら「今はあなたの魔法でまどかの契約を阻止している」
ほむら「魔法少女の素質というものが曖昧である以上、いつまで続ければいいか定かじゃないけど」
ほむら「それだって、いつまでも続けられるものではないでしょう?」
沙々(もっと色々弄ったり触らせてもらえれば、わたしが死んだ後も解けない魔法は可能ですが)
沙々(あまり鹿目さんの心に干渉されることを好まないのはわかりきっています)
沙々(下手に話がややこしくなると嫌ですからここは黙っておきましょう)
沙々(例えばキュゥべえが、わたしの死後に何か干渉した場合とかまで保証することは無理ですし)
ほむら「彼女には自らの足で、前を見て歩いて行ってもらわないといけない」
沙々「……えー、細かい話は今のところいいんですけど」
沙々「それを受けることによって、わたしにどんなメリットがありますか?」
沙々 ほむら「…………」
ほむら「ワルプルギスの夜を討伐後、残った銃火器を贈呈するわ」
沙々「グリーフシードは?」
ほむら「余ったグリーフシードは既に佐倉杏子との間で話がついてるの、ごめんなさい」
沙々「だけど魔法の代物貰ってもわたし困りますよ。消えちゃいますし」
ほむら「魔法で作ったものじゃなくて正真正銘本物よ」
ほむら「私が色々な所から武器を収集しているのは知ってるでしょう?」
沙々「いやいやいやいや!そんなの貰っても、日々警察に怯えなきゃいけなくなるだけじゃないですか!」
沙々「武器にしたいと仮に思ったとしても、わたしじゃ結界の中に持っていけませんって」
ほむら「でも、それ以外に私があげられる物って……」
沙々 ほむら「…………」
沙々「うーん、じゃあ仕方ないので、ワルプルギスの夜を無事に越えてから、そういうことは考えましょうか」
沙々「秘密の内容によっても考えますが、一応大きな貸し一つってことで」
~☆
ーワルプルギスの夜襲来 前夜 マミホームー
マミ「暁美さんの言っていたことが正しければ、明日はいよいよ決戦の日ね」
沙々「暁美さんの予測、間違ってる可能性が僅かでもあると思いますか?」
マミ「そうだったら涙が出るほど嬉しいんだけど、間違ってるとは思わないわ」
マミ「本当に明日来るんでしょう」
マミ「長年の経験って言うのかしら、嫌な予感がするもの」
沙々「そういえばキュゥべえに聞いたら言ってましたよ」
沙々「ワルプルギスの夜は確かに近い内に来るって」
沙々「具体的な日にちがいつなのかまではわからなかったようですけど」
沙々「暁美さんの情報の根拠を強化してくれますね」
マミ「……優木さん、いまだにキュゥべえと普通に接するわよね」
マミ「その心の持ちようが、少し羨ましいわ」
沙々「自分から探しに行くようなことは極力しませんけど、だってあいつ便利ですし」
マミ「あなたのそういうところ、本当に変わらないわね」クスッ
マミ「あなたと出会ってから、本当に色々あった」
マミ「……ふふ。私ね、ずっと考えてたことがあるの」
マミ「あなたのことを色々知ることができた今、心にようやく決まったことがあるの」
マミ「聞いてくれる?」
沙々「もちろんですよ。聞かない理由がないじゃないですか」
沙々「大事な話、なんですか?」
マミ「ええ、とっても大事な話」
マミ「――レクス・ネモレンシス(森の王)」
沙々「えっ?」
沙々「……今、なんて言いました?」
マミ「色々探して、良さそうなのを見つけるのにだいぶ苦労したのよ」
マミ「あなたの他人を操る魔法、その神髄、奥義」
マミ「複数の人間を繋ぎ合わせ、自分と他者を同一の目的の元に収斂する」
マミ「あなたは一本だけでは立ち続けるのも難しい弱々しい灌木」
マミ「だけど一人でダメでも二人なら、二人でダメでも三人ならば」
マミ「木々の集まりが森を形成するように、いくらでも強くなれる」
マミ「優木さん、あなたは特別な聖なる木なの」
マミ「魔法少女という木々が育つ地中に根を深く伸ばし、輪の中心となって相互に伝達、全体を統率する」
マミ「その有り様はまさに、森の王と呼ぶにふさわしい」
マミ「って、設定を考えておいたけど、どう?」
沙々「えっ?どうと言われても戸惑うばかりなんですが」
沙々「なんでしたっけ、レク、レク……?」
マミ「レクス・ネモレンシス、森の王という意味らしいわ」
沙々「あー、はいはい、レクス・ネモレンシス、レクス・ネモレンシス」
沙々「…………」
沙々「あなたのこういうところも、本当に変わりませんね」
マミ「こういうのは心意気が大事だっていつも言ってるでしょう?」
マミ「……明日は頑張って、生きてワルプルギスの夜を倒しましょうね。優木さん」
沙々「言われなくても、私は裏方支援の類ですから大丈夫だと思いますよ」
マミ「もう、そういうことは言わないのっ!心意気が大事なんだからっ!」
沙々「軽い冗談ですよ、冗談」
沙々(それにしても見たところ、相当気を張っていますね)
沙々(彼女だって、さすがにワルプルギスの夜と戦うのは恐ろしい)
沙々(わたしの必殺技の名前調べて考えて、はやる気を紛らわせたりしてたんでしょう)
沙々(……必殺技を叫ぶ機会がなさそうなだけ、だいぶましか)
沙々(大体どうしてわたしだけ――)
沙々(うん?待てよ?)
沙々「ねぇ、マミさん」
マミ「何かしら?」
沙々「佐倉さんもあなたの弟子だったということは、既に何か必殺技があったりするんですか?」
マミ「佐倉さん?佐倉さんはね――」
今日はここまで
必殺技は名前だけでも必要ですよね
確実に次回か次々回最終回です 500で収まるか?
えー、レクス・ネモレンシスはイタリア語じゃなくてラテン語のようです
しかもぶっちゃけ『金枝篇』から森の王含めそのままもってきただけなので(内容はあまり関係ない面白いけど)
単純に訳すと森の王にはならないのだと思われます(ネミ湖畔の森の王とか?無学なのでわかりません)
しかし、語呂がカッコイイ、沙々でなんか書くときにはこれを必殺技にしようと思ってたのでお許しください
レクス・ネモレンシスでネット検索しても森の王出てきますし許してください
ピュエラマギ・ホーリークインテットよりは命名の統一感あると思うので許してください
>>434
沙々さん弱いからこの境遇に甘んじてただけで
強かったら最初マミさんと遭遇した時に倒すかその後使い捨て
ほむらと交渉の結果、傀儡にしてもて遊ぶとかやりそうですし多分これがベストだと思います
力を与えて調子に乗せちゃいけないタイプ
そもそも何か才能があったりした場合、ここまで歪まなかった可能性も大でしょうけど
今日で最後です お付き合いください
かれこれ二か月以上かかったか、そうか
予定した展開(忘れて)順番変えたり削ったりもしましたけど
書きたいこと、沙々さんでやれるだろうなって思ったことは全部書けたと思います
~☆
ーワルプルギスの夜 当日 避難所ー
沙々「前に試した時は大丈夫だったんですが、万が一ということもあります」
沙々「例えば長時間意識が離れていたせいで、呼吸などの生命活動が停止するとか」
沙々「つまり死体と変わらない状態になる、なんてことが起こったとしても」
沙々「暁美さん曰くソウルジェムさえ身体から離さなければ大丈夫だそうです」
沙々「だからそうなっても慌てずに、ただし周りの目は気にしておいてください」
まどか「うん、わかった」
沙々「それじゃわたしの身体とソウルジェムのこと、よろしくお願いしますね」
まどか「うん」
沙々「よし、これでもう事前にやり残したことは……」
沙々「……あ」ビクッ
沙々「そう言えば一つ、大事なこと忘れてましたよ」ゴソゴソ
まどか「?」
沙々「これを、わたしの身体に絶えずくっつけておくようにしてください」スッ
まどか「これは?」
沙々「タリスマン、と呼ばれる物です」
沙々「これって作るの大変だったんですよ」
沙々「マミさんが魔法のリボンから手軽に何かを生み出すのと違って、正真正銘手作りですから」
沙々「おかげで呪術的というか、一風変わったアイテムとして様々な用途に長く使えますけど」
沙々「今回はわたしの意識が帰って来られるようにという目印ですね」
沙々「何度か三人とシミュレーションを繰り返す内に、そうした方がいいという結論に至りました」
まどか「……優木さんは、怖くないの?」
沙々「怖いって?」
まどか「だって、こんな自然現象を引き起こす魔女とこれから戦うんだよ」
まどか「普通誰だって怖いはずだよ」
沙々「どうなんでしょうね」
沙々「えー、実物もまだ見てないし、どうも実感が湧かないと言いますか」
沙々「それに実物がどうあれ、少なくともここでわたしの肉体は守られている」
沙々「鹿目さんに任せれば安心だとわたし、信じてますから」ニコォ
まどか「……やめてよ」ボソッ
まどか「そんな風に無理やり、私もみんなの輪に加えてくれるような言い方」
まどか「そんなの、私がいなくたってどうにかなるよ」
まどか「優木さんだって、面と向かっては戦えないなりに、ワルプルギスの夜を倒そうとしてる」
まどか「でも私ができることって、こうして避難所で震えて皆が無事に帰ってくるのをただ待つだけ」
まどか「今更だけどつくづく私って、本当に何もできないんだね……」
沙々「…………」
沙々「いいえ、決してそんなことはないです」
沙々「戦うことに囚われすぎているからそういう発想になるんです」
沙々「戦える人間が戦うのは当然のこと。そして戦うことだけが何も全てじゃない」
沙々「できることをできる人間がやればいいんです」
沙々「あなたが戦ってしまえば、下手をすればこの世界が終わってしまうかもしれない」
沙々「そんなの嫌でしょう?」
沙々「というか第一、この戦いが終わったらすぐ」
沙々「あなたにしかできないとても大切な仕事が一つ、待ってますけどね」
まどか「……えっ?」
沙々「暁美ほむら。生還した彼女を親身に労ってあげるのがあなたの大仕事です」
沙々「今までよく頑張ったねって暁美さんを褒めてあげてください」
沙々「わたしのことを守ってくれてありがとう。助けてくれてありがとう」
沙々「その言葉だけで、きっと彼女の人生は救われたものになるでしょうから」
~☆
空中に逆さの状態で浮ぶ巨大な魔女、ワルプルギスの夜。
それに決死の覚悟で命を削り挑む、三人の魔法少女。
三人分の情報を迅速に、適切な形に組み換えて、それぞれへと伝達し直す。
その感覚たちはどこまでもリアルで、にもかかわらず、自分自身はその場のどこにも存在しない。
白昼夢さながらの光景と体験。攻撃を避けて、攻撃を加える。
わたしの魔法の手助けがあっても、処理速度ギリギリで行われるそれらの繰り返し。
戦いのこと以外を考える余裕は微塵もない、そんな時間が刻々と流れていく。
徐々に、最も心の奥深く繋がった巴マミの中へと、自分が埋没していく。
まるで自分が巴マミであるような錯覚を抱き始めていた。
躍動する手足。極限まで思考は冷徹に研ぎ澄まされ、躊躇いなく銃の引き金を引く。
リボンが伸びやかな様で自在に宙を舞っている。
どうしようもない規格外の怪物が目の前にいるというのに、恐怖は感じない。
一つの身体に存在する全く別の二つの人格、一人ではないから?
それともやはり、その場に自分の本当の身体がない、それが傍観者のような平静さを生み出している?
元の身体のままでは想像することも許されないような、壮絶な戦いに身を投じているこの瞬間の自分。
わたしが巴マミを動かしているわけじゃない。ただその場に繋がりとして居合わせただけ。
なのに、奇妙な満足感と全能感が、そこにはあった。
~☆
ー数か月後 見滝原ー
沙々「あのですね、キュゥべえ」
沙々「佐倉さんと仲良くなる方法って何かありません?」
QB「これまた急な相談だね。何か新しい問題でも?」
沙々「だって、いくらなんでも彼女とわたしの関係って、悪すぎると思うんですよ」
沙々「もう出会ってだいぶ経ちますよ?少しくらい、そろそろ改善されてもいいでしょうに」
QB「……それは正直難しいと思うよ」
QB「キミたちの不和は、人間的な相性だけが問題のモノじゃないし」
沙々「どういう意味ですか、それ?」
QB「どういう意味ってそのままの意味さ。杏子がキミを受け入れられないのは当然だよ」
QB「何しろ彼女は、いまだに潜在的に自分の願いを拒絶し続けたままなのだから」
沙々「…………」
沙々「えーと、願いの拒絶がどうわたしと関係してるんですか?」
QB「キミには前も似たようなことを話したと思うけど」
QB「願いの否定というのは固有魔法の否定も含み込むものだ」
QB「彼女の固有魔法は幻覚、つまりは精神に作用する魔法」
QB「彼女はそれを心のどこかで願いと共に拒絶せずにはいられない」
QB「杏子がキミを嫌うのは、キミの人格や行為が気に入らないからだけじゃない」
QB「自分の中にある醜いモノを君の中にも重ねる、無意識に投影せずにはいられないんだ」
沙々 QB「…………」
沙々「それだと例えば、もしわたしが完璧な人間で」
沙々「欠点の何一つない人間だったとしても――」
QB「杏子はキミを、何故か気に入らないと考えることだろうね」
沙々「…………はぁ」グッタリ
QB「杏子が自身の願いを改めて受け入れること、つまり願いを必要だと実感すること」
QB「それがキミと杏子が歩み寄る、親しくなるには必要不可欠だろう」
QB「だけど、これはあくまでボクの推論の域を出ない話であって――」
沙々「いいです。凄い納得しましたから」
沙々「じゃあ、もう一つ聞きたいことを」
QB「なんだい?」
沙々「あなた、最近鹿目さんの前に姿を見せてないそうですね」
沙々「いったい何を企んでるんですか?」
QB「特に何も企んでなんていないよ?」
QB「どうしてそんなことを?」
沙々「あなたを信用してないってことですよ」
沙々「なんで、鹿目さんに接触しようとしないんですか?」
QB「だってキミが、まどかの契約という選択を禁じる魔法をかけているからね」
QB「いくら彼女をその気にさせたとしても」
QB「無意識の領域でその行動が否定されていたら意味がない」
QB「全く、厄介なことをしてくれたものだ」
沙々「……それで諦めるような、あなたですか?」
沙々「どうにも話がきな臭いんですよねぇ」
QB「それは考えすぎだよ」
QB「元々ボクのプランとしてはまどかとの契約を」
QB「ワルプルギスの夜が過ぎるまでに済ませるはずだったんだ」
QB「普段の彼女にはこれといった強い欲望がない」
QB「契約には強い感情があればあるだけ好ましいというのに」
QB「そんな彼女を強く揺さぶる数少ないものの一つ、それは他者の不幸、不条理だ」
QB「だからボクは適度な干渉を行いながら待つことにした」
QB「まどかの契約を阻害する動きもあったからね」
QB「契約せざるを得ない状況でもちかけるのがベスト」
QB「見滝原に存在する四人の魔法少女。やってくるだろうワルプルギスの夜。問題は山積みだ」
QB「キミたちの脱落、それを覆そうとするなんらかの契約が最も理想的だと判断した」
QB「それがまさか最後まで、無傷で誰も欠けることなくワルプルギスの夜を退けるなんてね」
沙々「満身創痍ギリギリのところで、追っ払っただけですけどね」
QB「それだって予想外の快挙さ」
QB「これでワルプルギスの夜は数百年、自分の結界の中で力を蓄えるだろう」
QB「キミたちにとっては事実上倒したこととほぼ同義だ」
QB「ワルプルギスの夜がここまで攻めあぐねるなんてね」
QB「運が良かったのか、それともほかに何か普通じゃない要因があったのか……」
沙々「それで?なんで鹿目さんに接触しようとしてないのか」
沙々「その理由についてはどうもまだ少し足りない気がしますが」
QB「いつもなら、魔法少女になる子の願いを考慮する必要なんてない」
QB「素質に応じて叶えられる結果には契約の範囲内でセーブがかかる」
QB「でも鹿目まどかは文字通り、何でも、叶えることができるからね」
QB「彼女の願いを叶えるための歪みで、宇宙が崩壊することすら考えられるんだ」
QB「最初に気軽な気持ちのまま契約を取り結べなかった以上」
QB「キミたちのため、といったわかりやすい動機がなくてはかなりリスクがあるんだよ」
QB「しかも無事に魔女化してもらえるかどうかもわからない」
QB「だからワルプルギスの夜を倒すため」
QB「もしくはキミたちを甦らせる等の願いで契約してもらおうとした」
QB「それらに失敗した今、まどかに対して積極的に動いてもボクにとって確実な利が少ない」
沙々「それが、あなたたちが鹿目さんに接触しない理由ですか?」
QB「本当に必要なら、あるいは契約に何も障害がなければ、やるだろうね」
QB「だけど魔法少女というシステムがきちんと機能してる以上、なくても困らないのさ」
QB「一度に回収できるか、時間をかけて細かく回収するかの違いでしかない」
QB「エネルギー回収のノルマが達成されるまでの間」
QB「キミたちの文明が続くかというリスクの微妙な天秤だと言い換えてもいい」
QB「勘違いしないでほしいのは、ボクはキミたち人類に」
QB「別に悪意を持っているわけじゃないんだ」
QB「契約には自由意志が必要なのもあるけど」
QB「ボクは努めてキミたちへの干渉を平等に、かつ最小限に留めている」
QB「五人目の魔法少女にするため、さやかと契約しようと無理やり画策したり」
QB「関係をかき乱すため、勝手にキミの本性や来歴を」
QB「マミや暁美ほむら、杏子に伝えたりはしなかっただろう?」
QB「その代わり善意でやってるわけでもないから」
QB「聞かれなければそのまま言わないことも多いけど」
沙々「……ふん」
沙々「ではあなたの目から見て、人類の未来は明るそうですか?」
QB「どうだろう。技術というものは発展の途上にある内は」
QB「それが進むにつれ力の制御を失って」
QB「再建不可能の失敗をしてしまうリスクも高まる」
QB「ただ社会が肥大化していけば、価値観の相対的な関係から」
QB「より大きな幸福と不幸がそこに生まれることだろう」
QB「人は自分と他者を見比べて、幸福を判断する生き物だからね」
QB「人類の、というよりエネルギー回収の未来は明るいと言える」
沙々「……やれやれ。キュゥべえの話をずっと聞いてると、嫌な気疲れがしてきますよ」
沙々(こいつが見ているのはわたしが死んだ後の話)
沙々(スケールデカすぎてとても手に負えません)
沙々(わたしが死んだ後のことなんて気にしたってしょうがない)
沙々(やっぱり未来の誰かに丸投げしときましょう)
沙々(できる人に、そういうのはやらせとけばいい)
~☆
ーほむらホームー
沙々「どうですか?魔法の調子は?」
ほむら「ええ、何も問題なく機能してる」ガチャガチャ
沙々「絶対忘れないで下さいよ」
沙々「盾の収納魔法くらいしか残ってなかったあなたが生き延びていられるのは」
沙々「全部わたしのおかげなんですから」
ほむら「巴マミと杏子の二人から寂しくあぶれても」
ほむら「あなたが魔女と戦えるのは私のおかげでしょ」ガチャガチャ
沙々 ほむら「…………」
沙々「はっ、何を言い出すかと思えばくだらない」
沙々「佐倉さんには譲ってあげてるんです」
沙々「その気になって強気で談判さえすれば」
沙々「あっという間に元の立ち位置に復帰できますよ」
ほむら「その気になる日なんて、くるのかしら?」
ほむら「争うあなたたちを見る時の巴マミの悲しそうな顔」
ほむら「それが嫌で、杏子が打ち解ける様子を見せるまで」
ほむら「私と二人で組むなんて提案したんでしょ?」
ほむら「杏子はそう簡単には態度を軟化させないでしょうね」
ほむら「おそらくあなたと組むくらいなら風見野に閉じ籠もってしまうくらいに」
ほむら「私がいないと困るのはあなたも同じ。これは対等な契約よ」
ほむら「大体、放っておいてくれてれば私は黙って生命を絶っていたわ」
ほむら「それを助けただの恩着せがましく蒸し返されるのは気に食わない」
沙々 ほむら「…………」
沙々「だって、それにしたってハードじゃないですか」
沙々「銃火器の弾丸等を生成して装填し、それを盾に収納する」
沙々「消滅せずに貯められるのはいいですけど、下準備に魔力がかかり過ぎる」
沙々「これじゃ余分なグリーフシードを全然確保できない」
沙々「恩にでも着せとかないととてもやってられません」
ほむら「仕方ないわ。それが私とあなたの魔法の限界なのだから」
ほむら「優木さんは、わざわざ私に巴マミの魔法の要領を横流ししてくれている」
ほむら「それは自分が使っても、あまり上手くいかないからそうしてるんでしょう?」
ほむら「誰かを操る、というところにあなたの魔法の本質はあるのだから」
ほむら「その面倒なひと手間を加えているのに」
ほむら「あの人の魔法と全く同じようにとはいかないのは残念だけど」
沙々「わたしが悪いって言うんですか?」
ほむら「いいえ、私の才能がないせいよ。あなたのせいじゃない」
沙々(……その才能のない魔法少女と、なんでわたしはここまで戦闘力に差がつくのか)
沙々(深く考えるのはやめましょう)
沙々(ほぼ期間限定とはいえ、時間を巻き戻せる奴だっておかしいんです)
沙々 ほむら「…………」
沙々「最近わたしたちが風見野を見回ってること多いと思うんですけど、おかしくないですか?」
ほむら「どうでもいい。魔女がいて、グリーフシードが手に入れば」
ほむら「それよりも最近、あなたを盗られた巴マミが時々」
ほむら「嫉妬の目つきで私を見つめてくる方が余程困る」
沙々「……よくわからないけど大変そうですね」
沙々「わたしだって、マミさんと組めた方が気楽ですよ」
沙々「どうにかあなたから佐倉さんを説得して」
沙々「わたしと一緒に戦うことを認めさせてくれません?」
ほむら「それができるならとっくにやってる」
ほむら「巴マミだって現在進行形でやってるだろうし」
沙々 ほむら「…………はぁ」
~☆
ー ゲームセンター ー
仁美「優木さんはゲームセンターに来たことはありますか?」
沙々「ええ、まあ、一応」コクッ
仁美「私、こう見えてこういうゲームに結構強いんですのよ」
仁美「さやかさんに散々鍛えられましたから」
沙々「へー、そうなんですか」
沙々「鹿目さんは?」
まどか「ふ、普通かな?」
沙々(改めて、なんで三人でゲームセンターなんて来てるんでしょう?)
沙々(これじゃあ本当に友達みたいじゃないですか)
沙々(でも……、家柄のいい子と繋がりを持っておくのは有利ですし……)
沙々(まぁ、いいか)
沙々「まず何をします?志筑さんの好きなのからでいいですよ?」
仁美「ではまずは、私の最も得意なパンチングマシーンから」
仁美「私の実力をこれでもかとお見せしますわ」
仁美「目をしっかり見開いて見ていて下さいね?」
沙々「あー、はいはい」
沙々(お嬢様ですし、どうせへにゃへにゃの……)
仁美「――っ!」スッ
ボコォッ!
沙々「!?」
沙々(えっ、これが女子中学生のパンチ……!?)
まどか(みんな最初はそうなるよね、うん)
~☆
ーマミホーム 夜ー
マミ「どう?最近楽しい?」
沙々「ぼちぼち、ですね」
マミ「面白い話でもあった?」
沙々「面白い話というか……」
沙々「前に話した仁美って子、パンチも凄かったです」
マミ「パンチ?」
沙々「本当のお嬢様って格闘も求められるんですね、わたし知りませんでした」
マミ(流石にそんなことはないと思うけど……)
マミ「なんだか随分面白そうな人ね、私もいつか会ってみたいわ」
沙々「じゃあいつか紹介しますよ」
沙々「……それはそれとして、佐倉さんとそろそろ少しは打ち解けたいんですけど」
沙々「何か方法ありません?」
マミ「頑張って説得してるけど、無理ね」
沙々「やっぱり……、ですか」
マミ「でも、少しは打ち解けてきたんじゃないかしら?」
沙々「え?」
マミ「こうして私とあなたが、二人同じ屋根の下で暮らしてることを認めてるのよ」
マミ「一緒に戦ったり顔を見たりするのは本気で嫌がってるみたいだけど]
マミ「最初のアレからは考えもつかないような進歩だわ」
沙々「ポジティブですね……」
マミ「いいじゃない、生きてさえいればまだまだ時間はあるんだし」
マミ「暁美さんと一緒に二人で戦うのだっていい経験でしょう?」
マミ「暁美さんほどの凄腕になら優木さんを任せられる」
沙々(マミさんは暁美さんが時間停止使えなくなってるの知りませんからねぇ)
沙々(それはそうですよね、時間停止が暁美さんの能力だということをまず知らない)
沙々(でも口止めされてるからわたしからそれをばらすわけにもいきませんし……)
沙々「え、ええ、そうなんじゃ、ないですか?」
マミ「私は今佐倉さんに鍛え直してもらってるところよ」
マミ「結構強くなったんだから」
マミ「佐倉さんだってやっぱりマミさんは筋がいいねってニコニコ言ってくれてるし」
マミ「ああ見えて、私と二人きりの時はかなりくつろいだ様子なのよ、最近のあの子」
マミ「できのいい妹が新しくできた気分ね」
沙々「……もしかして佐倉さん、二人きりの時は甘えてきたりします?」
マミ「ふふ、それは秘密」クスッ
マミ「生きてれば、焦る必要なんてないわよ」
マミ「きっと四人で肩を並べて戦えるようになるはずだわ」
マミ「だって優木さんは、私とずっと一緒にいてくれるんでしょう?」
沙々「ええ、それはまあ前に約束しましたから」
沙々「――それにわたしは、マミさんの弟子、ですからね」
終わり
ほむらの過去について一部でも知ってるのは沙々さんだけ
ハッピーエンドっぽく締めました
凄いありがちだけどソウルジェム握りつぶすよりはよほどいい
沙々さんがなるべく幸せになる話を書きたい
マミさんが魔法少女の真実を受け止めるイメージが普通浮かばない→洗脳すればいけるな!
で書き始めたわけですが最初は200~300で終わるはずだったのにどうしてこうなった
最後ワルプル含めかっとばし駆け足でしたし質問等ありましたら受け付けます
仁美、まどか、沙々の絡みとか色々書こうと思えば書けるでしょうけど要らんな、でバッサリ
乙
焦点は沙々にゃんが間にいることでの関係の変化なんだから
ワルプルバッサリなのは逆によかったと思う
もしかしてマミさんの深層意識と強く繋がったせいで沙々も杏子も影響された?
ほむ沙々は弱っちい同士で結構いいコンビそうだし
杏子とも反発しつつ仲はそう悪くもなさそう
自分がこうなることを計算に入れて作戦を提案してたんだとしたら
沙々にゃんマジ策士だな
沙々SSでこんな良作読めるとは思わなかったわ、乙でした
Wikiってどれの話なんだろうと思いながら
とりあえずこれ目についてしかも編集簡単な>>1のSSWiki自分で適当に編集しときました
(これ本当にいるのか……?)と思いながらではありますけど
>>488
杏子とマミさんが僅かだとしても混じることはないです
沙々が影響受けたのはマミさんよりむしろまどか
沙々がワルプルと戦うやる気出したり、ほむらを助ける理由の密かな一端になったり
何もできないって悩むまどかの立場は、沙々の契約前の立場とよく似ていて
>>419辺りのまどかの演説、自分から何もしようとしなかったからとかに影響を受けて云々
契約しなくてもこんなバラ色の未来があったんじゃないか?
みたいなのを将来のまどかに期待してるというか、それを自覚してるかどうかは別ですけど
作戦は何かでっかいことするぞー!でQBの助言も加え色々考えたってだけですし
杏子との仲は本気で悪いけど杏子側が歩み寄れるようになれば
そっちの方が便利だから沙々さんもあっさり受け入れると思う
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