勇者「剣とか持った事が無い」(317)

魔法使い「はい?」

僧侶「えーとそれは……」

盗賊「冗談だよな?」

勇者「いや剣とか習った事が無いんだ」

盗賊「まさか路銀がそこそこあるのって……」

勇者「王様から青銅の剣とか貰ったけど使えないから売った」

魔法「た、盾は?」

勇者「売った」

僧侶「それでは勇者様は一体何を装備なさるのですか?!」

勇者「そう大声を出さないでくれよ……剣は習っていないが武道そのものは修めているから」

盗賊「びっくりさせんなよ……で、お前の得意分野って?」

魔法「……素手とかいうオチじゃないでしょうね」

勇者「そんな全裸になると強くなる勇者みたいな……ちゃんと武器を用いる武道だ」

勇者「と言っても、ここら辺じゃ出回っていないから家のものを持ってこなくちゃいけないんだけどさ」

勇者宅前
勇者「ちょっと取ってくるから待っててくれ」

盗賊「あいよ」

僧侶「それにしてもあまり出回っていない武器というのは……」

魔法「……棍棒とか」

盗賊「いやー売っているだろう」

僧侶「東の国のニンジャーたる種族が用いる鎖鎌ですとか!」

盗賊「確かに中々流通しないな」

勇者「お待たせー」
*勇者は杉の棒を装備している*

盗賊「……」

僧侶「ゆ、勇者様?」

魔法「勇者、それは?」

勇者「杉の棒、杉で作られた棍だ」エッヘン

盗賊「本気で言っているのか?」

勇者「当たり前だ! 俺が生まれてこのかた棍術しか習っていない!」

盗賊「勇者が戦力外とか……」パァン

盗賊「え?」ジンジン

魔法「な、なに?」

勇者「……盗賊、構えてみろ」

ッパァン
盗賊「!」カァァン

僧侶「注視していたのに」

魔法「まるで見えなかった……」

盗賊「お、驚いた……俺が反応できないだなんて。しかも構えた短剣だけを狙うとは」

勇者「これが俺の力だ」

僧侶「か、格好いいです……」

魔法「ええ……」

盗賊「だけど今の対人限定じゃないか?」

くぅ~Tired This is in complete!
The acting was talking about when I actually began to Netaresu
I did not really talk seed←
I am willing to challenge the story of fashion I so can not afford to waste your kindness
Please leave a message below our Madoka

Madoka「Thank you for everyone to see Do not worry I've seen some places a little sinister!」

Sayaka「Well thank you! Did my cuteness convey enough?」

Debu「That sounds a little embarrassed, but I'm glad to see me・・・」

Kyouko「So glad to see such!It's true my feelings!

Homura「・・・Thank you」fasa

then

Madoka Sayaka Debu Kyouko Ore「Thank you for everyone!」

End

Madoka Sayaka Debu Kyouko「tte nande orekun ga!?

It really is the end

ヒュヒュンパン ヒュンパパンドッ
*勇者はスライム達を薙ぎ払った!*

勇者「これでどうだ?」

魔法「魔物相手でも引けを取らないなんて」

盗賊「瞬殺だったな……」

僧侶「というよりも勇者様がこの中で誰よりも素早いですね」

勇者「これも長年の功夫の賜物だ」キリッ

盗賊「説得力あるなぁ」

魔法「……感心してるだけだと、立場が怪しいわよ」

盗賊「は!」

勇者「……犬型2、任せる!」パパパパン

魔法「火球魔法!」ボッ

盗賊「よっと」シュバ

魔法「なんだかんだで良いPTかもしれないわね」

勇者「全ての敵を一呼吸で倒せるわけじゃないしな」

僧侶「火力が安定していて私が空気ですね……」

勇者「今はいいが何れは早期決着ができなくなるだろう」

勇者「そうなった時は君が頼りなんだ」

僧侶「勇者様……」

魔法「それにしても勇者の武器が木の棒だなんて……折れたらどうするのよ」

僧侶「木と斧があれば武器調達できますね」

勇者「切って形にするだけじゃ駄目なんだ。木の含水率によって強度が変わったりするからな」

勇者「そこまで調節できれば安泰なんだがなぁ」

魔法「え……ずっと木材で戦うつもり?」

勇者「木材とか言うな」

盗賊(できるだけ早くに剣術を教えないとっ)

勇者「金属製で俺にも合う武器があればいいが……如何せん棍術だけで扱うには不十分だろうからな」

盗賊「次の町に着いたら、俺が教えられる範囲で剣の稽古をつけてやるよ」


盗賊「……」ボッコボコ

勇者「何ていうかすまん」

魔法「剣術の技量は盗賊にあるんでしょうけど、素早さの優位性に勝てるほどじゃないのね」

盗賊(マジ剣士見つけるか道場にぶちこまないとこの先が怖いな)

勇者「まあ、今のところは戦えるし焦る必要は無いさ」

魔法「まあ……そうよね」

僧侶「勇者様は槍等をお使いになられた事は?」

勇者「全くと言う訳ではないが……やはり不慣れかな。基本は突きだけだし、斬る動作もあるし」

魔法「槍って突くだけじゃないの?」

勇者「全部が全部って訳じゃないからなぁ」

勇者「そういえば……宿に泊まるのって初めてだなぁ」

盗賊「俺は元々各地でトレジャーハントをしていたからな」

魔法「私は別の国にいたからこの国に来るまでに何箇所かには泊まったわね」

僧侶「私はずっと町から遠く離れる事が無かったので……」

勇者「そうそう俺も俺も」

魔法「あら……もしかして勇者と僧侶って顔見知り?」

勇者「やー田舎の国と言えど都市だからなぁ。そこまで信心深い訳でもなかったし」

盗賊「まあなんだ。乾杯って事で」カチャン

勇者「はは、やる気の無い乾杯だな」カチャカチャ

魔法「まあいいじゃない。気を張り詰めすぎるのも良くないわ」カチャ

僧侶「それにしても、自分が暮らす土地から勇者様が出るなんて思っていませんでした」

盗賊「勇者の家系がいるってのは知られていなかったのか?」

勇者「初代勇者の家系だぞ。何処かしらで話があってもおかしくない。が、盗賊は聞いた事無いだろ?」

魔法「私もないわね」

勇者「大役を果たした後の煩わしさを嫌い、家系の状況は王家のみが把握する事としたんだ」

勇者「俺も親からその家系である事を聞いたのは数年前だよ」

盗賊「あー食った食った」

勇者「俺ちょっと出かけてくるわ」

盗賊「お、なんだ? 旅立ちそうそう溜まったか?」ニヤニヤ

魔法「下品ねぇ……」

勇者「俺は日課の鍛錬をするだけだよ」

僧侶「棍術ですか?」

勇者「戦えるとはいえ、まだまだ伸び代があるんだから鍛えないとな」

盗賊「俺としては一般的な武芸を学んで欲しいだがなぁ……何れは剣で戦う時が来るだろう」

勇者「機会があればな」

勇者「ふっ! はっ!」ヒュヒュンビュン

勇者「せぃやぁぁ!」ォンッ


僧侶「格好良い……」ポォ

魔法「分かりやす過ぎね」

僧侶「ま、魔法使いさんは何とも思わないんですか?」

魔法「格好良いとは思うけども別に一目惚れはしないわね」

僧侶「うー」

盗賊「というかあんだけ棍術ができる奴もそうはいないだろう? 地元で噂になっていなかったのか?」

僧侶「少しなら噂はありましたが……」

魔法「所詮はマイナーな武術なのね」

勇者「さあ、出発しようか」

盗賊「流石に次の町には二日後くらいになりそうだな」

魔法「ま、焦る必要なんて無いんじゃない?」

僧侶「慢心せず進みましょう!」


*魔物の群れを1ターンKillした!*

僧侶「あたしの存在って何なんでしょう」

魔法「直に活躍もあるって」

盗賊「これなら明日の昼前に町に着くな」

勇者「思った以上に進みがいいな」

僧侶「野宿なんて尚更初めてですね……」

魔法「ま、流石の私もこれは初めてだわ」

盗賊「どうやってここまで来たんだよ……」

魔法「あら? 勇者の同行者の募集で大規模な送迎があったのよ。野宿と言えど常にテントで快適だったわよ」

盗賊「なにその夢見たいな旅生活。初めて聞いた」

勇者「そういえば、先月にキャラバンが来たのはそれに便乗していたものなのか」

盗賊「そうだそうだ。気になっていたんだがこの人選ってどう決まったんだ?」

勇者「能力から考えて最適とされるPTがいくつも提示されてさ」

勇者「それを俺が決めるって形だったんだ」

魔法「何十……いえ何千組とありそうね」

勇者「実際、人が違うだけで似た能力っていう面倒な組み合わせもあったからなぁ」

僧侶「勇者様は何故私達を?」

勇者「盗賊って見た事無いからその組み合わせの中で適当に……」

魔法「他の実力者が聞いたら卒倒する理由ね」

盗賊「まー……候補が何十とあっただけで、吟味なんてできないだろ」

魔法「この中で料理できる人っているの?」

盗賊「簡単なものなら。あと大げさに言えば野戦食だな」

僧侶「私は教会にいましたので一通りの家事はこなせます」

魔法「まあ……私もそこそこには料理できるわね。勇者は?」

勇者「……」ダラダラ

盗賊「実家暮らしだもんな」

勇者「盗賊が料理できると聞いて絶望した」

盗賊「そこまで気にするか?」

魔法「はい、召し上がれ」

勇者「美味い!」ハフハフ

盗賊「なんか俺も料理しなくていい気がする」モグモグ

魔法「負担的にやってもらいたんだけど」

盗賊「いや味の意味でさ。僧侶も俺よか旨いの確実だろうし」

僧侶「そ、そんな事は」

魔法「普段から料理していてそれはないでしょ」

勇者「見張りは俺がやるよ」

僧侶「そ、そんな! 一番働いていない私がやります!」

勇者「何言ってんだ。女の子に見張りなんかやらせられないよ」

盗賊「男としての意地があるわな。って事で俺と勇者で交代制かねぇ」

魔法「あたしとしてはこっちに役が回ってこないのならいーわ。おやすみ」ゴロン

勇者「そういう訳だから僧侶もゆっくりとおやすみ」

僧侶(せ、せめて勇者様と一緒に起きている位は!)


勇者「おーい僧侶。朝食できたぞー」ユサユサ

僧侶「え? はっ!」ガバ

盗賊「簡単に作っただけだけどな」ズズゥ

魔法「ふぅ……暖かい」

勇者「本当に昼前に着いたな」

盗賊「今日はもう休みでもいいのか?」

勇者「そうだな。宿をとったら各自自由行動にするか」

魔法「買い物行って来ようかしら」

盗賊「なんかいい武器でもないかねぇ……」

僧侶「盗賊さんのナイフって結構凄い物の気が……」

勇者「他所の国から来ているとなると、ここらで買い換えられる装備なんてないんだろうなぁ」

魔法「あら……このブーツいいわね」

僧侶「あの杖、魔力が上がるそうですよ」

勇者「……」

盗賊「予備の武器にしてもちっとなぁ……」

魔法「いい加減杖以外もしっかりとした物にしようかしら」

盗賊「今はまだ後衛に攻撃がいく事も無いだろうし、節約してもいいと思うがな」

勇者「……」キュンキュン

魔法「そっちはどう?」

盗賊「俺は何も買って、おい勇者。棒が二本になってるぞ」

勇者「ひ、檜の棒が売っていたんだ」

勇者「杉の棒はいい加減古いしそ、そろそろ買い換えるべきだと思って」

盗賊「違う。結局棍術から離れる気が無い事を言ってんだ」

勇者
右手 杉の棒      サブウェポン
左手 杉の棒         檜の棒
頭 武道家の鉢巻
体 ブレストプレート
足 武道家の靴
装 アームガード

盗賊「とりあえず剣だけでも装備しとけよ。ほら青銅の剣」

*勇者は装備に必要な熟練度が足りません*

勇盗「ええ?!」

町長「おお……貴方様が勇者でございますか」

勇者「え? はい、そうですが貴方は?」

町長「私はこの町長を務めている者です」

盗賊「町長が何故俺達なんかにわざわざ挨拶を?」

町長「それが……勇者様にお願いしたい事がありまして」

魔法「魔物でも暴れているのかしら?」

町長「その通りなのです」

盗賊(兵士に頼めよって言っちゃいけないんだろうなぁ)ヒソヒソ

勇者(そりゃそうだろうな)ヒソ

勇者「場所と規模を教えていただけますか?」

町長「ここから北西の大きな橋に……数は20以上と言われております」

魔法「ここら辺で一番大きな橋ね」

僧侶「最寄の王国への最短ルートですよね?」

盗賊「どの道俺らも通るんだ。ついでに討伐しちまおうぜ」

勇者「まあ端から討伐するつもりだったけどさ」

魔法「その魔物達は明日、討伐致しますのでご安心下さい」

町長「ありがとうございます……本当にありがとうございます」

勇者「あれが魔物の軍団か。こちらには気付いていないな」

盗賊「インプの群れだな。一気に片をつけようぜ」

魔法「流石に早期決着は難しそうね」

僧侶「回復は任せて下さい!」

勇者「頼もしい限りだ。いくぞ!」

*勇者達はインプの群れに襲い掛かった!*

勇者「っせいやぁ!!」ギシィ

盗賊「おい、嫌な音がしたぞ!」シュバッ

魔法「氷柱魔法!」ヒュヒュン

勇者「限界か……ならばこそ! はぁっ!」バキィィン

僧侶「杉の棒が……!」

勇者「檜は杉より堅いという……」ワクワク

勇者「さあインプどもかかってこい!!」ドキドキ

盗賊「くそ、勇者と分断されたか!」シュパッ

インプ「ギギィ!」

魔法「というか勇者の動きが悪い気がするわ!」ガッ

僧侶「きゃあ!」ガッ

盗賊「とにかく出し惜しみはできないな! 全力でいかないと!」

魔法「火炎魔法!」ゴゥ


勇者(孤立し包囲されたか……今までは使い古しの耐久では不安だったが)ヒュヒュンヒュヒュヒュン

勇者「全力で薙ぎ、払う!!」ドッ

盗賊「おお、インプの群れが宙を舞っている……」

勇者「済まない、無事か!」

魔法「なんとかね」

僧侶「勇者様、今回復魔法をかけます!」

勇者「俺はまだいい! 敵の攻撃に備えろ!」

盗賊「一匹も逃がさねえぞ!」バッ

魔法「疾風魔法!」ビュォ

勇者「ふう……なんとかなったな」

盗賊「というか案外楽だったな」

魔法「にしても大群だったわね。こんな田舎でこれって、都会は不味いんじゃないかしら?」

盗賊「その分兵士や冒険者が多いから何とかなっているんじゃないか?」

僧侶「ですが、私達が敵の大群と遭遇する確率が上がるって事ですよね」

魔法「よほど強い敵じゃなければ何とかなりそうだけどもね。これからどうするの? 町に戻る?」

勇者「え? 敵も排除したんだし先に進めるじゃないか」

盗賊「いやまあそうだが……頼まれたんだし報酬とか貰えるんじゃないか?」

勇者「魔物から取れる収集品売り捌けば金になるんだし別にいいだろう。というかここら辺ってそんな裕福じゃないし……」

僧侶「そ、そうですよね……」

盗賊「お前の家も?」

勇者「末裔だろうがなんだろうが、タダで金が入ってくるわけじゃないからな」

魔法「遥か昔と言えど、世界を救った英雄の一族なのに」

勇者「何百年前の話だよ……俺も親も祖父母もただの市民だよ」

僧侶「勇者様以外に他の血筋の方っていらっしゃらないのですか?」

勇者「いるにはいるが……なんか本家とか決めているらしい」

勇者「曾爺さんの代から武道派だったから、今はうちが本家らしいが数代前ははとこの方が本家だったらしいな」

盗賊「状況が違えばお前も勇者じゃなかった、て事か? しかし分家はお役御免ってのも不思議な話だな」

勇者「初代勇者はそうやって本家は勇者としての教養を持たせ、分家は普通に暮らさせようとしたらしい」

勇者「勇者の血筋ってだけで人並みの生き方を奪われるのも、子孫に申し訳ないと思ったみたいだが」

魔法「そもそもそうした教養そのものが廃れていったのね」

勇者「別に両親にしても人格者じゃないしなぁ」

勇者「今日はこの辺で野宿かなぁ……」

僧侶「次の町までどのくらい距離があるのでしょうか?」

盗賊「徒歩だとだいたい後二日ぐらいで着くかねぇ」

魔法「結構掛かるわね……」

勇者「さて、と……料理はできないし、俺は薪でも集めてこようかな」

盗賊「今日はどうするか」

僧侶「それでしたら私が!」

魔法「教会ってあまり贅沢しないのよねぇ……レパートリーとか少なそう」

僧侶「質素ながらもいかに美味しく調理するか。教会の食事とはそこに注力し、磨いてきたのです」エッヘン

盗賊「神に仕えると言っても、そういった所は欲求に忠実なんだな」

盗賊「んじゃあ今日の見張りは俺が先な」

勇者「任せた。おやすみ」ゴロン

魔法「それじゃあお願いね」

僧侶「お、お願いします。おやすみなさい」

盗賊「おーう」


盗賊「皆寝付いたか……暇だ」ボソッ

盗賊「こう……何ていうか……女性陣に悪戯したくなるな」ワキワキ

僧侶(!)ビクッ

勇者「僧侶ー? 朝結構弱いのか?」ユサユサ

僧侶「ふぁっ?!」ガバ

魔法「宿じゃ平気なのにねぇ……」

盗賊「先食っちまうぞー」

勇者「大丈夫か……? 無理をしているなら言ってくれ」

僧侶「だだ大丈夫です! お気遣い無く!」

僧侶(あわわわ盗賊さんが変な事を言うから眠れなかったじゃないですかー!)ギッ

盗賊「え? なに? どうした?」

盗賊「結構大きい町だな」

勇者「うーん、順調過ぎて怖いぐらいだ」

魔法「挫折を味わっておきたい?」

勇者「挫折ではないけど圧し折られてばかりの生活だったから別にいいかな」

僧侶「どんな生活ですか?!」

勇者「主に棍術の稽古」

盗賊「親父さんとか? やっぱすっげー強いのか?」

勇者「いつも一回は打ち合いするんだけど一分の間はこっちに合わせてくれる……一分だけは……」

盗賊「その言い方だと一分過ぎた後に瞬殺されていたのか……」

盗賊「勇者達遅いな」

魔法「買出しに行っただけなのにねぇ……」

盗賊「ちょっと奥さん、これはもしやあれでは?」

魔法「おほほほほ、あの娘もやる時はやるのよ?」

勇者「お前ら楽しそうだな」

僧侶「ただいま戻りましたー」

盗賊「おうお帰り。てっきりしっぽりやってんのかと思ったぜ」

勇者「白昼堂々と何言ってんだ。ここから北東に魔物達の砦があるらしいって話を聞いていたんだ」

盗賊「進路からは外れるな」

僧侶「それでも見過ごす訳にはいきませんよ!」

勇者「砦つってもなんか昔の遺跡を利用しているらしいな」

盗賊「北東……あーあそこか」

魔法「既に探索済みかしら?」

盗賊「粗方調べた……つーほどの広さもないんだけどさ」

勇者「じゃあ地下にいる魔物を一網打尽にする方法とかなんかないか? 流石に俺らでも地の利の差は痛いからなぁ」

盗賊「地下?」

勇者「地下っぽい所からわらわらでてきたそうだぞ」

魔法「あら新発見の探索ポイント?」

盗賊「テンション上がってきた」

僧侶「あの……それはいいのですが魔物の対策が」

*盗賊は遺跡に通じる水脈に毒を散布した*


勇者「酷い奴だな……」

魔法「流石に私もドン引きだわ」

僧侶「と、盗賊さん……」

盗賊「おおおぉぉ! 当たりも当たりだ!!」

勇者「これも人の業か」

僧侶「主よ、お許し下さい」

勇者「全く……盗賊ときたら」

魔法「全くね」

僧侶「そ、そうですね」

*盗賊は武器と防具を換装した!*
*魔法使いは武器と防具を換装した!*
*僧侶は武器と防具を換装した!*

勇者「……」

魔法「こ、これは仕方が無かったのよ!」

僧侶「ま、魔王を倒す為にも必要だったのです!」

盗賊「これなんかお前でも使えないか?」

魔法「なにその古そうな短剣」

盗賊「クセも何も無い戦闘用の短剣だ。これなら勇者でも……」

*勇者は装備に必要な熟練度が足りません*

勇者「これすら装備できないのか……」

*魔法使い 装備可能*
*僧侶 装備可能*

勇盗「」

僧侶「ええ?! そ、そんな?!」

魔法「あたしも?! りょ、料理! 包丁使っているから短剣くらいなら使える、みたいな!」

盗賊「遺跡から戻ってくるの、だいぶ楽だったなぁ」

魔法「装備が強化されているからでしょうに」

勇者「戦闘もさくさく進んでいったからな」

僧侶「この後はまた北に?」

勇者「魔王を目指さないといけないからな」

盗賊「とりあえず宿取ろうぜ」

勇者「大した戦闘も無かったじゃないか」

盗賊「休める時に休む。冒険者の鉄則だ」

魔法「……冒険者というとだいぶスケールダウンするわね」

勇者「さあて次はいよいよお隣の国の都市だ」ガタゴト

盗賊「噂じゃ都市近辺で魔物の大軍を見かける事があるらしい」ガタゴト

魔法「あら、じゃあ注意していかなくちゃいけないわね」ゴトゴト

僧侶「ですが……」ゴトゴト

行商A「いやぁー助かるだぁよ」

行商B「用心棒さんが四人もいるとあっちゃぁ、都市まで枕を高くして眠れるだぁ」

勇者「初めての違う国の都市ー!」

魔法「何となく言いたい事は分かるわ」

勇者「見た事の無い食材、加工食品、文化! 今日は遊び倒すぞー!」

僧侶「わーい」

盗賊「僧侶も?」

僧侶「実は他の国に来るの、憧れていたんですよー」

魔法「あたしはいいわ……宿のベッドでゆっくり寝てる」

盗賊「俺もいいかなぁ」


勇者「ただいま!」

僧侶「ただいま戻りました」

盗賊「勇者がまた棒二本装備している件」

魔法「何があったの?」

勇者「いやあ……欅の棍があったんだよ」ホクホク

盗賊「ケヤキねぇ」

魔法「この間のより……えーとこの間買っていたのって」

勇者「檜だな。欅は檜より上質なんだぞぅ!」

僧侶「勇者様は木の話になると活き活きしてらっしゃいますね」

勇者「木、というより棍の話だからなんだけどさ」

勇者「いやあ、早く使いたいなぁ」ビュンビュン

盗賊「物壊す前に止めておけ」

盗賊「あー俺、ちょっと出かけてくるわ」

勇者「今からか? これから晩飯だってのに」

盗賊「ばっか、都市だぞ都市。夜の街に繰り出さないでどうすんだよ」

勇者「飯くらい食べていけばいいのに……まあ頑張れよー」

盗賊「おうよー!」


魔法「は? 盗賊いないの?」

僧侶「ええ? 四人分注文してしまいましたよ」

勇者「俺が頑張るよ……」

勇者「……っぷはー」

魔法「良い飲みっぷりね」

勇者「よく親父に飲まされていたからな」

僧侶「わ、私達の国ではまだ飲酒は……」

勇者「大っぴらに飲まなければバレないからな」

僧侶「勇者様ぁ……」

勇者「しっかし盗賊もなんだがなぁ。花束二つもあるんだからもうちょい」ブツブツ

魔法「何の話よ?」

勇者「大した事じゃないんだが」ブツブツ

僧侶「勇者様酔ってらっしゃいますね……」

勇者「うーんむにゃむにゃ」

魔法「……っていうかなんであたし達の部屋に連れてきたの?!」

僧侶「勇者様達の部屋は二階じゃないですか! 私達二人では運べませんって!」

魔法「あーもーとっとと酔いが覚めて自力で戻ってくれないかしら?」

僧侶「この様子を見る限りでは……」

勇者「棒打ちは止めて……滅多打ちは止めて……」

魔僧「」ゴクリ

僧侶「末恐ろしい寝言は聞かなかった事にしても、ベッドどうしましょうか……」

魔法「勇者をど真ん中に乗せたのは不味かったわね……ダブルだってのに」

僧侶「シングルベッド二つよりダブルベッド一つの部屋のが安いですからね……」

魔法「今から勇者をソファに移す体力ある?」

僧侶「無理ですね、腕が」プルプル

魔法「そうよねぇ」プルプル

僧侶勇者魔法「……」

僧侶「ま、魔法使いさん……これは」

魔法「し、仕方ないじゃない。早く寝なさい」

勇者「すぅ……すぅ……」

魔法(自分で言っといてなんだけど)

僧侶(眠れるわけが無いです!)

勇者「木刀は嫌なんです……木刀は嫌なんです……」ブツブツ

魔法(滅多打ちって)

僧侶(ぼ、木刀で?!)

勇者「ふぁ……よぉく寝た気がす」ピタ

僧魔「すぅ……すぅ……」

勇者「……」

勇者「……」ダラダラダラ

勇者「……」ガタガタブルブル

魔法「ふぁ……」

僧侶「おはよう、ございま……」

勇者「」ガタガタブルブル

僧侶「ち、違います! これは違うのです!」

魔法「そ、そうよ! あんたが悪いんだからね!」

勇者(俺が悪い→俺の記憶が無い→致した)

勇者「うわわわわわ、あばばばばばばばば」

僧侶「それも違います!」カァ

魔法「一度落ち着きなさい!」

盗賊「ただいまー……ってお前らどうしたんだ?」

勇者「い、いや……何でもない」

魔法「そうね、何でも無いわね」

盗賊(やべぇ面白そうな事を見逃した)

僧侶「ほ、本当に何でもないですよ」

魔法「これからどういう進路で向かうのかしら?」

盗賊「一旦北東の都市に向かわないか?」

勇者「魔王城は北西だぞ?」

盗賊「そこに全国でもかなりの手練の剣の使い手がいるらしい」

魔法「あたしも聞いた事があるわね。確か騎士だとかって話よね」

勇者「そこで学んで来いって?」

僧侶「でも、かなりの遠回りになりますよね?」ガサガサ

盗賊「遠回りくらいいいだろ。これで全身甲冑の敵が現れたらどうするんだよ」

*勇者達は魔物を薙ぎ払った!*

勇者「快調だな」

盗賊「流石に攻撃を食らう事が多くなってきたがな」

僧侶「軽傷治癒魔法!」パァ

魔法「で……次の都市まではどのくらいかかりそうなのよ」

盗賊「二十日以上としか言いようが無いな」

魔法「はー……馬車での旅が恋しいわ」

勇者「まあまあ、実戦経験もしっかり積めるんだしいいじゃないか」

盗賊「……経験ねぇ」

勇者 熟練度
 棍 70
 鉾 16
短剣 12
 槍 12
 斧 10
 剣  5
 盾  1

魔法「あたしの知っている勇者像って剣と盾で戦うんだけども」

盗賊「奇遇だな。俺もだ」

僧侶「わ、私も……」

勇者「じゃあ俺の父親に言ってくれよ」

勇者「そんな訳で都市に着いたな」

勇者 熟練度
 棍 75
 槌 21
 槍 19
 斧 18
短剣 13
 剣  7
 盾  1

*勇者は戦闘用槌の装備が可能になった!*

盗賊「道中、他の武具の訓練をさせたのにどうしてこうなった」

魔法「剣よりも斧の伸びがいいわね」

勇者「野営する時、撒割りが俺の仕事だしなぁ」

僧侶「力仕事ばかりすみません……」

勇者「なーに身体も鍛えられるし一石二鳥だ」

盗賊「俺らは買出しとかこの近辺の情報を集めてくるから、お前は騎士を探して稽古をつけてもらっておけよ」

勇者「え、俺一人……? 稽古つけてもらえるかなぁ」

盗賊「仮にも勇者の頼みだ。そのくらいしてもらえるだろ」

魔法「じゃあしっかりとね」

僧侶「勇者様、頑張って下さいね」


盗賊「二日経っても勇者が帰ってこない件」

魔法「連絡一つ無し」

僧侶「ゆ、勇者様……」

更に三日後
勇者「ふ、ただいま戻ったぞ」ボッロボロ

盗賊「なんだその有様」

魔法「一体どうしていたのよ」

勇者「いやー女騎士さんが熱血入っちゃって、帰らしてくれなかったんだ」

盗賊「国一の剣の使い手は女だったのか……にしてもその言い方はエロいな」

勇者「朝から晩まで稽古漬けだった……」プルプル

魔法「で、当然成果はあったのよね」

僧侶「どのくらい上達したのでしょうか?」

勇者 熟練度
 棍 79
 槌 31
 槍 29
 剣 25
 斧 21
短剣 20
 盾 20
*勇者は全ての戦闘用武具の装備が可能になった!*

盗賊「だからなんで長柄武器の熟練度も上がってんだよ……」

勇者「勝ったからさ」

僧侶「え? 何にですか?」

魔法「まさかその女騎士に剣対棒で……」

盗賊「というかそればっかだったんじゃねえか? 大して上達してねえよ」

勇者「これで一先ず安心だな!」

盗賊「悪いが剣は新兵になれる程度だぞ……」

魔法「ちゃんとした武器が装備できるんだし、それで戦うようにすればいいじゃない」

僧侶「そ、そうですよね。普段から使えば自ずと鍛錬になりますし」


*勇者は欅の棒で魔物の群れを薙ぎ払った!*

盗賊「勇者ーーーー!!」

勇者「いやあてへぺろ」

盗賊「良くないが今はいいとしよう……話だとここから西の方にある古城に魔王軍が駐屯しているらしい」

魔法「一週間ほど前にこの国の兵士が討伐に向かったらしいけども」

僧侶「誰一人として帰還していないそうです」

勇者「丁度進路だし、俺達で討伐するか」

盗賊「甘く見るなよ。兵士の一団が迎撃されたんだ。今までの敵とは訳が違うだろう」

魔法「精鋭……あるいは本当に魔王に近しい実力者が率いている、てところかしら」

僧侶「……」ブルル

勇者「ゴブリンの一団か!」ヒュヒュン

盗賊「兵士型だ! 指揮官さえ叩けば士気は落ちるはずだ!」ヒュパン

魔法「猛火魔法!」グォォォ

僧侶「なんて数……それに……」

盗賊「兵士達の死体だな……」シュバ

勇者「大きな扉……!」バン


「ほう……人間にしてはやるようだな」

魔騎士「魔王様直属、この魔騎士がお前達に引導を渡してやろう」

魔騎士「はああああ!」ズゴゴゴ

魔法「なんて魔力なの……!」

盗賊「来るぞ!」

魔騎士「爆撃魔法!!」カッ

魔法「対魔法障壁!」 ッドオォォォン

魔騎士「防いだか……しかし」

勇者「はぁ!」ドッ

盗賊「食らえ!」ヒュン

魔騎士「我が全身を覆う甲冑に傷などつけられまい」ガッキィン

魔騎士「ふん!」ブォ

盗賊「ぐお!」ガキィン

勇者「はあああ!!」ガガガガ ドッ

魔騎士「ぬるい!」ガッ

勇者「うぐ!」ドザ

魔法「凍結魔法!」キィン

魔騎士「むっ……」

魔法「雷撃魔法!」カッ

盗賊「よっしゃあ!」

僧侶「勇者様、盗賊さん! 軽傷治癒魔法!」パァ

魔騎士「」ビシビシ

勇者「な……」

魔騎士「ふん、こんなものか……」バリンパキン

魔法「雷撃が……凍結さえも」

魔騎士「さあどうする! お前達に残された手段は撤退か戦死だけだ!」

盗賊「こりゃあ不味いな」

勇者「……」

勇者「……」ヒョイ

魔騎士「ほう……兵士の屍から槍を拾ってどうする? それで私に傷をつけられるとでも?」

勇者「ふっ……んん!」ガッグググ

盗賊「おい! 矛先を倒れてる柱に差し込んで何やってんだ! 駄目にしちまうんだろ!」

魔騎士「はっはっは! お仲間は乱心か! 矮小な人間が我々魔王軍に楯突くからこうなるのだ!」

勇者「はぁっ!」バキン

魔法「槍の先が……」

僧侶「折れて……」

勇者「……」ガチャガチャ

魔騎士「今度は腕当てを外すか? その木の棒一本で何が出来る。槍より使い物にならないのではないか?」

勇者「……いや」ガチン ドズッ

盗賊「……なんだ今の音。本当にアームガードが落ちた音なのか?」

魔騎士「……」

勇者「確かにその甲冑に対してまともな有効手段を、俺達は持ち合わせていない」ガチャガチ ドズッ

*勇者の防御力がとても下がった!*
*勇者の力と素早さと物凄く上がった!*

勇者「だからこそこの苦肉の策、この一撃でお前に致命傷を与える!」

魔騎士「身軽にした程度でか? 面白い受けてやろう!」

盗賊「二人とも備えろ!」

魔法「え?! あたし達も?」

盗賊「勇者のバックアップに着くんだよ!」

僧侶「何時でもいけます!」

魔騎士「ふ、ふふ。さあ来い人間よ!」

勇者「ふっ!」ドッ

魔騎士「その棒切れで……」ブァ

魔騎士(速い! 避けられない! しかもこれは顔面を……しかし矛先を折り捨てた棒切れ如きで)

魔騎士(折れた……先?)ドッ

勇者「……」バキャァ

魔騎士「……ぐ」

盗賊(どうなった……? 顔面に一撃を当て脳を揺さぶったか?)

魔騎士「ぐあああああああ!!」

勇者「盗賊! 止めを刺すぞ!」

盗賊「お、おう!」バッ

魔騎士「きさ、貴様ぁ! 貴様ぁぁぁ!!」ドズッ

魔騎士「」ドクドク

盗賊「倒、したのか……」

勇者「ああ」

魔法「それにしても一体何が起こったの?」

僧侶「私も全く状況が分かりません」

勇者「こいつの兜……顔面も覆う鉄仮面じゃ槍の矛先さえも大きすぎてしまう」

勇者「だから折った先を全力で叩き込んだんだ」

勇者「勿論、それで深く突き刺さるくらいに割れるとは思っていなかったさ」

盗賊「そうか、砕けた木片が」

勇者「こいつの目を奪う事となった訳だ」

魔法「相手の慢心がなければ……」

盗賊「にしても魔法も物理も効かないとはな……」

魔法「効かないというよりも、魔法がかなり強化された鎧ね」

勇者「だろうな……何度頭部に打撃を与えても何の効果もなかったからな」

勇者「もっと強くならないとだな。魔王はこの程度じゃないんだろうな」

僧侶「私達、本当に魔王を倒せるのでしょうか?」

勇者「月並みの言葉だが、倒すんだよ」

勇者「何としてでも……」

盗賊「だな」

盗賊「やっと元の進行ルートに戻ってこれたな」

僧侶「あれから大軍もなく無事辿り着けましたね」

勇者「疲れたな。今日明日はゆっくり休むか」

魔法「そうね……このまま疲れが出て倒れても困るものね」

勇者「じゃあそういう事で。各自ゆっくり休むように」

盗賊「久々に羽を伸ばすかー」グググ

魔法「そうねぇ……久々に魔法書を読みたいわね」

僧侶「私は教会に行ってきますね」

勇者の休日
勇者「結局今あるのは欅の棍だけか……」ヒュヒュン

勇者「もっとだ……もっと棍術の境地を目指さないと」ブォッ

勇者「甲冑の相手でもダメージを与えられるようにならないと!」ブァッ

勇者「……」スゥ

勇者「ふっ!」ヒュヒュヒュン

勇者「でやあぁぁ!!」ッゴァ

勇者「……」

勇者「まだだ……親父にすら届いていない」

盗賊の休日
盗賊「よう」

鍛冶師「なんじゃ……お主、まだ生きておったか」

盗賊「そう簡単にゃあ死なねえよ。ちょいと頼みがあってきたんだがよ」

鍛冶師「やれやれ、お主が来ると依頼の納期が狂って敵わん」

盗賊「へっへっ悪いね。ある遺跡で見つけたこのインゴットで武器を仕上げちゃくれんか?」

鍛冶師「随分と変わった物を。で、これで一体どんな武器を作れと?」

盗賊「それで作れる数を頼むわ。俺ももうちょい戦力にならんといけなくてね」

鍛冶師「ふん、鼻垂れ小僧が一丁前に。いいだろう、明日中には仕上げてやる」

魔法使いの休日
魔法「……」ペラッペラッ

魔法「……」ペラッペラッ

僧侶「あ、あの……礼拝堂で読むのは止めていただけませんか?」

魔法「広い所の方が落ち着くのよ」

僧侶「礼拝堂の掃除が進まないじゃないですかぁ……」

僧侶の休日
僧侶「ふう……こんなところでしょうか」

僧侶(勇者様は何をなさっているのでしょうか……)

僧侶(ううーつい教会に来てしまいましたが、勇者様にご一緒するという手もあったのでは)

僧侶(でも勇者様のお邪魔になるし……けれども……)モンモン

魔法「恋に悩める乙女かな」ニヤリ

僧侶「ま、魔法使いさん!?」ビク

魔法「教会勤めの貴女がそういうのいいのかしらー」

僧侶「そういう風に言われる事はありますが……それ、だいぶ昔の話ですよ?」

魔法「……随分と緩くなったのね」

……
勇者「それじゃあ」

盗賊「乾杯!」カチャン

僧侶「乾杯」カチャカチャン

魔法「乾杯」カチャ

盗賊「勇者とか今日何してたんだ?」

勇者「鍛錬」

魔法「相変わらずね……」

勇者「やっと衝撃波が出せるようになったがまだまだだな」

僧侶「衝撃波?!」

盗賊「何だよそれ……お前は何処に向かっているんだ」

勇者「魔法のかけられた甲冑相手でも、確実にダメージを与えられるようになりたい」

勇者「少なくとも親父だったら、先日の敵と一騎打ちでも勝利は堅かっただろうな」

僧侶「勇者様も十分お強いですよ……」

勇者「いやいや、まだまだだよ」

盗賊「なあ、その親父さんの棍術はお前から見たらどうなんだ? 棍術なのに異質とか、単純にめっちゃ速いとか」

勇者「うーん……自分の棍術では追いつけない技量としか言いようが無いな」

魔法「……? それってさ、棍術以外の武道が関わっているんじゃないの?」

盗賊「それ俺も思ってたんだわ」

勇者「あるだろうな……母親は槍が達者だったし」

盗賊「お前の家系どうなってんだよ」

盗賊「というかお前の両親出てきたらさくっと終わりそうだな」

勇者「いや無理なんだ」

魔法「無理?」

勇者「……二人の出会いは名の知れた棍使いと槍使いの決闘だったんだ」

僧侶「……えぇー?」

勇者「その時に父親は刺突によって足、母親は打撲によって内臓に傷を負ったんだ」

盗賊「長旅ができない、か」

盗賊「とりあえず……お前の目指す道は他の武道だ。というより剣だ」

僧侶「無理強いは良くないと思いますよ」

勇者「だけど盗賊の言う通りなんだよなぁ」

魔法「明日辺り剣の稽古でもしてみたら?」

勇者「そうするよ……ってまるで俺に関する相談会みたいじゃないか。盗賊はどうだったんだ?」

盗賊「俺は遺跡のお宝で、な」ニヤ

魔法「あら、山分けしたのに何か隠し持っていたの?」

盗賊「ちょっとなぁ」

勇者「二人のほうはどうなんだ?」

僧侶「教会の仕事を手伝っておりました」

魔法「あたしは延々と読書」

僧侶「礼拝堂に篭られましたー……」

盗賊「何やってんだ」

魔法「広い所の方が落ち着くのよ……何時もは図書館で読んでいたから」

勇者「それで占領していたのか」

魔法「失礼ね。そこまで酷い事はしていないわよ」

盗賊「明日も休みだし酒でも飲むかなぁ」

勇魔僧「」ビク

盗賊「どうした?」

勇者「い、いや何でも……」

魔法「あたし達はもう寝るわ」

僧侶「そ、そうですね」

盗賊「お前、何をやらかしたんだ?」

僧侶「な、何もされていませんよ!」

翌々日
勇者「よーし、荷物の方は大丈夫か?」

盗賊「おうよー」

魔法「今日も張り切って行くわよ」

僧侶「ここから先はどういったルートで行くのでしょうか?」

勇者「北の雪原地帯にある魔王城一直線」

勇者「したいが武装とかに不安があるし、ちょっと寄り道をしようかと思う」

盗賊「一番不安があるのはお前だ」

魔法「それにしても寄るって行ってもどこへ?」

勇者「初代勇者とその仲間が使っていた武具が眠る祠があるんだ」

盗賊「国で保管されているって聞くんだが違うのか?」

勇者「宝物庫にあるのはレプリカだよ。祭典で儀礼用にって事なんだ」

魔法「へ~……にしても初代勇者御一行の装備ねぇ。流石にわくわくするわ」

盗賊「だな。聖剣使っていたよな? ますます剣術を高めておかなくちゃだなぁ」チラッ

勇者「う……努力はするさ」

僧侶「その祠と言うのはどちらに?」

勇者「ここから北北西の国の近く、この山脈にその祠があるんだ」ガササ

盗賊「山脈に……」

勇者「崖に横穴ができているらしい」

魔法「洞窟……」

勇者「そこに行った後は魔王陣営直前の国で少し休んだ後」

勇者「魔王撃破に向かおうかと思っている」

盗賊「他にやる事なけりゃそうなるわな」

魔法「それじゃあその祠とやらに向かいましょうよ」

僧侶「それにしても……そんな場所で盗まれていたりしないのでしょうか?」

勇者「一応はね。ある分家が代々管理しているし、血筋の者じゃないと開かない魔法がかけられているんだってさ」

盗賊「その分家が持ち出してたりしてな」

魔法「笑えない冗談ね」

……
勇者「魔王軍と交戦する事三回か」

盗賊「俺らでこれって事は国とかは結構な数の軍隊と交戦してんのかねぇ……」

魔法「あたしらで迎撃できちゃうくらいなんだから大丈夫でしょ」

僧侶「勇者様も剣を使われるようになりましたし」

勇者「ああ、だいぶ扱いになれてきたよ」

勇者 熟練度
 棍 83
 斧 58
 槌 51
 剣 48
 槍 42
 盾 39
短剣 36

盗賊「何処からツッコミを入れて欲しい?」

勇者「いや頑張ってるだろ?」

盗賊「斧を?」

魔法「夜間の奇襲が多かったものね」

勇者「薪割りに使っていた斧で戦う事しばしば」

盗賊「剣を抜け」

僧侶「斧で華麗に敵を倒してましたね」

勇者「意外と使いやすいもんなんだなぁ」

盗賊「だから剣を抜け」

魔法「盗賊が切実に訴えている……」

盗賊「もうオチが見えているからだ」


*勇者は装備に必要な熟練度が足りません*

勇魔僧「……」

盗賊「だから言っただろ」

魔法「聖剣を装備できない勇者とか」

勇者「き、きっと世の中には伝説の棍も……」

僧侶「流石にそれは……」

盗賊「とにかくこれからは剣を使え。剣でしか攻撃するな」

勇者「分かったよ……」

魔法「というか……確かにしっかりした物なんでしょうけども」

僧侶「かなり古いものばかりですね」

盗賊「だろうなぁ……聖剣だけは輝かしいばかりだな」

勇者「なんかこの世界には無い金属だとか、唯一無二の一振りだとか」

勇者
右手 バスタードソード  サブウェポン
左手 白銀の盾        赤樫の棍
頭 騎士の兜
体 チェインメイル
足 サバトン        荷物
装 アームガード        聖剣(装備不可)

僧侶「一般的な勇者像になってきましたね」

魔法「これでサブが木の棒って……」

盗賊「ちょっと待て。ケヤキから何時の間にアカガシに」

勇者「いやだって赤樫だぞ。ここら辺の木で最高の堅さを誇るんだぞ」

盗賊「没収はしないが戦闘での使用は禁止な」

勇者「えー」

魔法「魔物の大軍ね」

勇者「よっし、やるか」スラァン

盗賊「剣を抜くのもだいぶ様になってきたな」

僧侶「いつもよりも数が……気をつけて下さい」

勇者「ああ、回復魔法は頼んだ」

僧侶「はい!」

魔法「……」キィィン

盗賊「んじゃあやるか」

勇者「ふー……ふー……」

魔法「ぜぇはぁ……」

僧侶「坂……きつ……」

盗賊「ひー……ちょ、休も」

勇者「ここを登りきったら……都市に着くが」

魔法「まだ……距離、ある」

盗賊「こりゃあ無理だって。休憩だ休憩」

魔法「ふう……それにしても凄い景色がいいわねぇ」ザァァ

僧侶「風も気持ちがいいですねー」

勇者「確か百景に選ばれていたな」

盗賊「俺もここは好きだぜ。遺跡も何も無いから稼ぎが無いのが玉に傷だが」

勇者「そろそろ行こうか。もう一息だ」

盗賊「とっとと宿屋で寝たいが、交易が盛んだから色んなモン売ってるんだよなぁ」

魔法「そういえばそんな話を聞いた事があるわね」

僧侶「到着しましたら皆で巡ってみませんか?」ワクワク

勇者「掘り出し物もあるかもしれないしいいかもな」

勇者「おー流石賑わってるな」

盗賊「最終決戦目前だ。装備を換えておくかぁ」

魔法「あの杖……凄い!」

僧侶「あの法衣……法衣なのに凄い防御力です!」

盗賊「金足りるかなぁ」

勇者「いやー諦める所は諦めないと無理だ、おっと」ドン

商人「こりゃ失敬」

勇者「いえ、こちらこそすみません」

商人「おや、その剣……貴方が勇者様ですか。魔王討伐頑張って下さい。では」

盗賊「……ん? 剣の事を知っている?」

魔法「あら妙ね」

勇者「ちょ、ちょっと待って下さい!」ガシ

商人「はて?」

勇者「何者ですか? この剣は勇者一族しか知らないはずなのに」

商人「……ふーむ、まあいいでしょうかね。立ち話もあれなのでこちらへ」


商人「さて、と。何からお話しましょうかねぇ……」

僧侶「勇者様の聖剣はどちらでご存知に?」

商人「存じるも何も無いですからね。私がえーと初代勇者になりますかね? 貴方のご先祖にお渡ししたのですから」

魔法「渡したって数百年前の事よ?」

商人「私達は時の行商と呼ばれていましてね。こことは別の世界、別の時間を旅しながら物々交換をしているんですよ」

盗賊「別の世界? 大陸とかじゃなくてか?」

商人「全く別の世界です。例えば魔王がいなく人間しかいない世界や、魔物を討つ人間の王を魔王と呼ぶ世界」

商人「数多の世界があり、様々な顛末を向かえ変容していっています」

勇者「変容? 異常が起こっているのか」

商人「良くも悪くもですかね。貴方が魔王を討ち、人間だけの平和な世界を築けばそれは今までの世界から変容したと言えるでしょう」

魔法「なるほどね」

商人「ああ、因みに別の時間とは言いましたが、一度でも訪れた世界はそれ以前の過去にはいけません」

僧侶「なんでもかんでも自由と言うわけではないんですね」

商人「真に自由な事というのは何処にもないでしょうからねぇ」

盗賊「で、初代勇者の時代に来て聖剣を渡し、今の時代にまたこの世界に寄ってみたわけか」

商人「ええ、そんな所です。まあこうしてお話しましたし、これもご縁という事で取引致しましょうか」

僧侶「えぇ? でも私達には特別な物は……勇者様の聖剣くらいしか」

勇者「そうだな……交換できるような財宝はないな」

商人「価値を完全に度外視する訳ではありませんが、珍しい物から一般的な物まで幅広く取引させて頂いていますので」

商人「その剣とて、別世界にのみある鉱石から作った一級品ですが、頂いたのはちょっとした道具ですよ」

魔法「因みにそれは?」

商人「お香ですよ。この世界には傷を癒すお香がありますが、他の世界では珍しいですからね」

盗賊「治療院で使ってるっけ?」

勇者「なるほど……物の在り方が違うのか」

商人「そういう事です」

盗賊「けどそれって利益でてんのか? しかも世界によって物の在り方が違うって事は」

盗賊「わらしべ長者ってのも難しいだろうし」

魔法「あ、自分達の世界で有用な物を求めてる、とかかしら?」

商人「こればっかりは上手く説明ができませんねぇ」

商人「我々が拠点とする場所はこのようなしっかりとした世界じゃないのですよ」

勇者「ううん?」

商人「そして我々は物々交換をしたという事実がその世界を潤していくのです」

魔法「……よくは分からないけども、別の世界における取引する事そのものに意味があるのかしら」

商人「そんなところですね」

盗賊「訳が分からなくなってきたな」

勇者「だなぁ」

商人「あ……よくよく考えれば、今は勇者様方が欲しがりそうな物資はあまり」

勇者「何れにしてもこっちの対価もあまりないからなぁ」

商人「ああ、良い物がありました。こちらです」コト

盗賊「宝石か……?」

魔法「魔力を感じるわね」

商人「これはその聖剣を作った鍛冶師の戦闘経験の魔石化したものです」

僧侶「か、鍛冶師ですよね?」

商人「武芸も秀でていらっしゃる方でしたのでね。様々な武器に精通されてらっしゃるそうですよ」

盗賊「ほーやったな勇者。これで剣が上達するなら嬉しい限りだ」

商人「上達とはちょっと違いますし、なによりこれが効果を発揮するかどうかも」

僧侶「不発がある、という事でしょうか?」

商人「順を追って説明しますか。私達は個人の経験をこうした魔石の形でコピーする事ができます」

商人「が、これが発動しても所詮は上辺の経験。記憶ではなく記録と言ったところでしょうか」

盗賊「うん……?」

商人「簡単に言ってしまえば木刀すら振った事の無い者に、剣豪の剣技の魔石を使ったところで全くの無駄という事です」

勇者「書物みたいだな。得た知識を自分なりに使えるよう理解したりが必要なのか」

商人「そのようなところですね」

魔法「でもなんだかんだで勇者も広く浅く色んな武器に慣れてきている訳だし、かなり期待ができるんじゃないの?」

僧侶「そうですよね……まさか勇者様、人には到達できない境地に!」

勇者「足し算じゃないんだから、少なくともその人の限界を超えたりとかはしないんじゃないかな」

商人「そう簡単にはいきませんが、全く無いという訳ではないですからね」

盗賊「でさっき言っていた不発? だっけか」

商人「基本的にはこの中に詰まる技術を得るには、その者の心と同調する必要があります」

僧侶「また分からない話になってきましたね……」

魔法「難しいわね……」

商人「剣豪の剣技の魔石、剣豪がその剣を振るう意思が守るべき者守る為」

商人「であれば守るべき者の為に剣を振るわずして魔石が反応する事はありません」

勇者「ええと誰だっけ? 鍛冶師か。その人はどういった事で武芸を?」

商人「それが分からないんですよねぇ」

盗賊「おいおい……ノーヒントかよ」

商人「お会いした時は伴侶の方がいましたしやはり守る為……いえそれ以前から達者だと言うし」

魔法「純粋に戦えるようにと武芸を学んでいたとか?」

商人「まー少々変わった方でしたから、運動感覚で武芸を修めていた可能性は否定できないです」

商人「ああでも戦う事はお好きなようでしたから、そういった所もありますかねぇ」

勇者「全く心の内が見えてこないな」

盗賊「この魔石って作る時の相手の気持ちが反映されたりしないのか?」

商人「と言いますと?」

盗賊「この話はするんだろ? だったら今あなたが何を考えてそれを振るうのか、的なのとかさ」

商人「あーそれはあるかもしれませんね」

僧侶「とすると守るべき者の為でしょうか?」

勇者「あー……魔石を受け取る前提だけどこっちは払えるものが」

商人「そちらの木の棒は杖ではなく棍として、ですよね?」

勇者「そうですよ。父親も棍術の使い手だったので、幼少の頃から鍛えられていましたよ」

商人「ではそれで」

盗賊「棍術の経験を、て事か?」

商人「お見受けするに相当なもののようですので」

魔法「でも父親の方が滅法強いのよね?」

勇者「そうなんだよなー」

商人「ですが貴方ほど熟練者もそう見かけませんからね」

盗賊「それはマイナーだからか?」

商人「世界によりけりですね。ある世界では一般的な武道であり、あらゆる武道に繋がる事もあり」

商人「棍を根と為す、という言葉がありますからね」

僧侶「その世界の方々と比べても?」

商人「ええ、かなりの使い手とお見受けします。よろしければどなたかと模擬戦でもして頂ければ私も嬉しいですね」

盗賊「俺しかいないじゃん」

魔法「瞬殺じゃん」

勇者「じゃあ盗賊が一方的に攻撃して俺が捌くとか」

商人「いっその事、私がかかってもよろしいでしょうか?」

僧侶「商人さんがですが?」

商人「これでも剣ならそこそこ腕でして」スチャ

商人「ぜはぁー……ぜはぁー……」グッタリ

盗賊「考えてみれば某国一の剣の使い手に勝っているしなぁ」

勇者「ええと……大丈夫ですか?」

商人「少々、疲れてしまいまして……ですが分かりました」

商人「貴方の棍術は素晴らしい。是非とも先ほどお話した魔石と貴方の棍術から生み出す魔石、交換しては頂けないでしょうか?」

魔法「それって魔石が作られる際、技術者にペナルティとかは無いのよね?」

商人「少々疲れるぐらいですかね」

勇者「こんなんでいいのでしたらこちらこそ喜んで」

商人「商談成立ですな」

勇者「」プーン

盗賊「勇者がぐったりし過ぎで蝿に集られている……」

魔法「少々?」

商人「ここまで疲れられる方は滅多にいないのですがねぇ……」

僧侶「回復魔法をかけても効果がありません……」

盗賊「傷とは訳が違うからなぁ」

商人「それでは私はそろそろ……」

魔法「何にせよ助かりました。ありがとうございます」

商人「いえいえこちらこそ。願わくば皆さんの旅路が無事であらん事を」ペコ

宿屋
勇者「有り難いが酷い目にあった……」

盗賊「そう言うなよ。にしても魔石は全く反応無しだな」

勇者「ちょっとやそっとじゃ駄目なんだろう」

盗賊「じゃあ追い込むか?」

勇者「どうやってだよ……」

盗賊「……」

盗賊「僧侶達が生理的に無理と嫌悪されてみるとか」

勇者「守るべき者何処行った」

盗賊「……難しいな」

盗賊「そもそもお前が棍術を極めたい、強くなりたいってのはどっから来るんだ?」

勇者「勇者の血筋、その本家である使命感。後は父親への憧れ。後は……純粋に男として強くなりたいかなぁ」

盗賊「ほー、モテたいとか無いのか」

勇者「いやーマイナーなのは自分でも分かっているし」

盗賊「そりゃそうか」

勇者「とにかく……倒すじゃなくて守るか」

盗賊「難しいか? 今までだって女の子二人を守ってきたんだぞ」

勇者「守るというより攻め込んで終わらす感覚だった」

盗賊「お前、結構バトルフリークの気があったんだな」

魔法「いよいよ魔王領ね……」

僧侶「緊張しますね」

魔法「というより僧侶は大丈夫なの?」

僧侶「何がです?」

魔法「勇者との好感度、あたしと変わらない気がするわよ」

僧侶「あ……う、だってあまり効果がないんですよ」

魔法「何かしらはしていたのね」

僧侶「二人きりになってお話ししたりしているのですが」

僧侶「なんというか普通に旅の仲間程度の感覚で接せられて……」

魔法「まああの勇者はそんな感じよねぇ」

魔法「まああたしは応援しているから頑張りなさいな」

僧侶「……魔法使いさんはそういうのないんですか?」

魔法「……」

魔法「別にー」ニタ

僧侶「え? 何ですかそれ? え? 盗賊さん?」

魔法「さあてねー」ニタニタ

僧侶「え、ちょ、教えて下さいよー!」

勇者「よし出発するか」

盗賊「こっから先は町が幾つかある程度、その先は魔王領となっている」

勇者「と言っても、既にその町も放棄され無人だからな。実質この先には町がないようなもの」

魔法「過酷な話ね」

僧侶「それでも……行かなくてはなりませんね」

盗賊「そういうこった。体力温存、無理はするな命大事にって事で」

魔法「そういえば例の魔石はどうなったのかしら?」

勇者「今のところ特に反応はしていないよ」

魔法「朽ちていないゴーストタウンっていうのも怖いものね」パチパチ

勇者「まあ、お陰で雨風凌げて暖炉にも当たれるんだからいいじゃないか」

僧侶「けれどベッドの埃があのようですと流石に……」

盗賊「昼間に着いてりゃ掃除して使えたんだがなぁ……まあここの絨毯は綺麗にできたんだ」

魔法「そうねぇ……野営に比べればよっぽどマシよねぇ」

僧侶「何だか屋内で雑魚寝……それも皆でとなると不思議な感じですね」

勇者「全くだな」

盗賊「周りに魔物はいないしゆっくり休めそうだな」

僧侶「あの……勇者様、もうちょっとそちらに寄っても良いでしょうか?」

勇者「野営よりましと言っても少し寒いもんな」ズリズリ

僧侶「え、えへへ」

魔法(可哀想……)

盗賊(飽くまで異性として見られていないよなぁ)

魔法「……ふぅ……ふぅ」ザッザッ

盗賊「……」ザッザッ

勇者「……ふー」ザッ

僧侶「雪、初めて見ましたけど……この中を歩くのって辛いですね」シンシン

盗賊「つーか、これ野営する時がやばくないか?」

勇者「ああ……迂闊だった」

魔法「とりあえず町跡は今日中に着くけど建物残っているかしら?」

僧侶「魔王が現れてすぐに放棄されたんですよね……」

勇者「大きな戦闘は避けられないだろうな」

町跡
勇者「はあああ!」ズババン

盗賊「よっと、そこぉ」シュバヒュン

魔物「ギャアアアア!」ドッ

魔法「爆炎魔法!!」ドォォォ

魔物「ガアアアア!」

勇者「くっ! たあ!」ガッドシュ

僧侶「軽傷治癒魔法!」

勇者「すまない!」シュバ

魔法「何とか寝床を確保できたけども」

盗賊「これから先が思いやられるな……」

僧侶「食料にも限りがありますからね……」

勇者「盗賊は弓とか使えないのか? 探せば野兎くらいは生息しているよな」

盗賊「大抵は罠で何とかしていたんだ……が、悪いな。雪国で生活した事が無くてな」

僧侶「深刻ですね……」

勇者「こりゃあ温存している余裕はなさそうだな」

勇者「……妙だな」ザッザッ

盗賊「だよな」ザッザッ

魔法「え? 何が?」

勇者「極端に魔物との遭遇が減った」

盗賊「昨日は町跡での戦いを除いても、7,8回は戦ったはずだが、今日はたったの2回だ」

僧侶「そう言われてみれば……」

勇者「何が起こっているんだ?」

魔法「もう魔物が殆どいないとか?」

盗賊「だったら残党まとめて魔王が指揮して打って出てくるだろうなぁ」

勇者「まさか……魔王城に戦力を集結とかか?」

盗賊「あー……」

僧侶「そんな……私達に勝ち目はあるのでしょうか?」

魔法「ここまで来たのよ……覚悟を決めるしかないの」

盗賊「そういうこった」

勇者 熟練度
 棍 85
 剣 67
 斧 61
 槌 56
 槍 51
 盾 50
短剣 38

盗賊「ほれ聖剣」

勇者「おう」パシ

*勇者は装備に必要な熟練度が足りていません*

魔法「その聖剣に必要な熟練度っていくつなのかしら?」

僧侶「70? 80?」

勇者「まあ……持っている事はできるけどさぁ」

盗賊「荷物と一緒じゃ格好がつかないよなぁ」ヒュォォォ

僧侶「風、出てきましたね」

勇者「休憩も終わりにしてそろそろ進むか」

盗賊「今日中にどっか過ごせる場所が見つけられりゃあいいんだがな」

ビュオオォォ
勇者「……くそ」ブルブル

盗賊「まさか雪原のど真ん中でビバークする事になるとはな」ブルル

魔法「ね、ねえ……これ、あたし達大丈夫なの?」ガタガタ

僧侶「か、かまくらが……私達の命を繋ぐなんて」ガチガチ

勇者「できる事はやった……後は祈るしかない」ガタガタ

魔法「死にたくない……しかも、こんな凍死なんて……」ブルル

盗賊「死にたくなけりゃあもっと寄れ……いや寄っても駄目かも分からんね、これは」ガタガタ

……
勇者「はっ!」ガバ

勇者「部屋……? ここは? 俺は夢を見て?」パチパチ

勇者「それともまさか今までが……いやそんな、盗賊? おい、起きろ!」

盗賊「んん……? ん? なんだ?!」ガバ

勇者「俺達……吹雪にあってかまくらで凌ごうとしたよな?」

盗賊「ああ、それで間違いないが……こりゃあ一体?」コンコン

侍女「失礼致します、お食事のご用意ができましたのでお運び致しました」ガラガラ

勇者「え、ああ助かる……じゃない! ここは何処だ? 俺達は一体……」

侍女「まずはお食事を。冷めてしまいますよ?」

勇盗「……」グゥー

勇者「ふう……久々にまともな食事だった」

盗賊「全くだな」

侍女「最後の晩餐はお楽しみ頂けたでしょうか?」

勇者「最後……?」ピク

侍女「我が主、魔王様の取り計らいです。せめてもの情けと、万全を期して戦いたいとの事です」

盗賊「それってーと、やっぱ俺らはあのまま凍死しかけていたのか」

侍女「はい」

勇者「魔王に助けられたか……皮肉だな」

魔法「ゆ、勇者、盗賊……」

僧侶「話、聞きましたか?」

勇者「ああ……食後の休憩まで貰えるとは驚きだったよ」

盗賊「一泊一食の恩を仇で返すようで悪いが、一丁やりますかねぇ」ギギィィ


魔王「ふ、よくぞここまで辿り着いた。褒めてつかわそう」

魔王「だがそれもここまでよ……ここがお前達の墓場だ!」

勇者「いいや、墓場を築くのはお前だ、魔王!」

魔王「威勢の良い事……だがこれはどうだ」カッ

鎧「」ズズ

鎧「」ガシャン ガシャン

盗賊「な……装飾用の鎧じゃないのか?!」

僧侶「これが、魔物……?」

魔法「……こいつらの魔力、魔王のものと同じよ!」

勇者「操っているのか……これだけの数を」

勇者(だがわざわざ操る意味は……?)

勇者「魔法使い! 魔王に魔法で攻撃してくれ!」

魔法「え? ええ、業火魔法!」ゴアァァァ

魔王「ふむ」バッ

盗賊「おいおい……あれだけの魔法をマントで防いでやがる!」

勇者「逆だ! 魔王は魔力があるだけで魔法が使えない! だから魔力でこいつらを操作するぐらいしか使い道が無いんだ」

僧侶「魔法が使えないから、攻撃魔法の防御もできない……!」

魔王「だとしてどうする? その少女をアタッカーとして押し立てるか」バサァ

勇者(そうだ……この鎧達はその余裕を削る為の)ガシャン ガシャン

勇者「盗賊と魔法使いは鎧を。俺は魔王を足止めする。僧侶はサポートに回ってくれ!」

盗賊「お前一人でか?!」

勇者「そう思うなら早く助けてくれよ」バッ

魔王「一人でか……面白い!」スラァァ

勇者「ぐぅっ!」ガキィィン

魔王「ほう……我が一撃を受け止めたか。腐っても勇者だな」

勇者「当然、だ!」グググ

魔王「ふはははは! 良いぞ! 我を楽しませろ!!」

魔法「爆裂魔法!!」カッ

盗賊「とりゃ!」シュバッ

鎧「」ヨロ

鎧「」ダンッ

盗賊「おいおい、兜ふっ飛ばしたのに!」

魔法「こいつらに頭部の意味は無いわ! 全身を崩せば復帰はしないわよ!」

盗賊「俺の武器じゃどうにもなんねーじゃねーか!」

鎧剣「」ブォ

盗賊「うぉ! てんめ、ショルダータックル!!」ドッ

鎧剣「」フラッドッ

盗賊「うっぜえええ!」

勇者「うおおおお!!」ギィンガギィン

魔王「ふん!」ギィィィン

勇者「く……」ビリビリ

勇者(一撃が重たすぎる……こんなの何時までも捌いていられないぞ)

魔王「どうした……数太刀打ち合っただけで顔色が悪いぞ」

勇者「くそ……おおおお!!」ヒュォン

魔王「速い、が!」バキィィン

勇者「あ……な……」ィィィン

僧侶「勇者様の剣が!」

盗賊「おらああああ!!」ギィンキィンガキン

*盗賊は鎧剣を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

盗賊「勇者ぁ!」ブン

勇者「盗賊! すまない!」

*勇者はブロードソードを装備した!*

魔王「ほう……しかし、そんな事で何時まで戦えるか」

キィンカキィィンビキィ
勇者「ぐ……」

盗賊「そら! 武器は気にせずぶちかませ!」

*勇者はクレイモアを装備した!*

勇者「うおおおお!!」ブォォ

魔王「ぐ!」ガギィン

勇者(上段からの振り下ろしも受け止められるのか!)グググ

魔王「どうした勇者! この程度で我を倒そうなど片腹痛いわ!」ググググ

*盗賊達は鎧両手剣を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

*勇者はツヴァイハンダーを装備した!*

*盗賊達は鎧戦斧を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

*勇者のツヴァイハンダーは砕け散った!*

*勇者はバトルアックスを装備した!*

*盗賊達は鎧槌鉾を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

*盗賊達は鎧砲丸を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

*勇者のバトルアックスは砕け散った!*

*勇者はメイスを装備した! 勇者のメイスは砕け散った!*

*勇者はフレイルを装備した!*

*盗賊は鎧槍を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

勇者「ぐああ!」ガッビキィ

*勇者のウォーピックは砕け散った!*

僧侶「致命傷治癒魔法!」パァ

勇者「はぁ……はぁ……ありがとう」

盗賊「そら!」

勇者「ふう……ん?」バシ

*勇者は長巻を装備した!*

勇者「これは……」

盗賊「お前の得意分野が集まりだしたぜ! ぶちかませぇ!」

魔王「それがか? 変わった奴だが面白い!」ニヤ

勇者「……」ヒュンヒュヒュン

勇者「……」カッ

魔王(目の色が変わっ)

勇者「はあああ!」ガガガ

魔王「……」ガガガ

勇者「せいっ!」シャァッ

魔王「ぐぅ……」

僧侶「勇者様! やりましたよ! 魔王に一太刀浴びせました!」

魔法「ようやくこちらにも勝運が巡ってきたようね。灼熱魔法!」

盗賊「おっしゃあ! ガンガン倒しておくぜ!」

勇者(やっと……やっと傷をつけた! 僅かだが……勝機が無いわけじゃない!)

魔王「……ぞ」

勇者「……え?」

魔王「良いぞ!! これだ! 我が求めてきたもの! 血沸き肉踊る戦い!! こうでなくては話にならん!!」ゴゴゴゴ

勇者「な……」

勇者(まだ全力でなかったのか……? 魔王自身、まだまだこれからなのか?)

魔王「いくぞ、勇者!!」ゴォァ

勇者(勝てない……)

*勇者の長巻は砕け散った!*

勇者(強さが違いすぎる)

*勇者の菊池槍は砕け散った!*

勇者(それでも……)

*勇者のサーベルは砕け散った!*

勇者(諦めるわけにはいかない)

*勇者の鎌槍は砕け散った!*

勇者(負ける訳にはいかない)

*勇者のシャムシールは砕け散った!*

勇者(俺には……俺達には背負っている命があるんだ!)

*勇者のフランベルジュは砕け散った!*

魔王「ほう……まだ立ち向かうか」

勇者(守るべき人々が……仲間がいるんだ!)カッ

盗賊「なんだ……? この光は」

魔法「まさか……時の行商の」

僧侶「! 致命傷治癒魔法!!」パァ

*勇者の持つ魔石が砕け散り……封じられていた膨大な経験が勇者の中に流れ込む*

勇者(分かる……今の俺なら、これらの経験を自分のものにできる)ギッ


*勇者は聖剣が装備可能になった*

勇者「決着をつけるぞ! 魔王!!」スラァン

魔王「ほう……それは確か初代勇者の」

魔王「ふ、ふふふ、ふははははは! 貴様は何処まで我を楽しませてくれるというのだ!!」

勇者「うおおお!!」ギィィン

魔王「はあああ!!」ガギィィィン

勇者「ふっ!」ギャィン

魔王「くくく! もっとだ! お前の全力を見せてみろ!」グググ

盗賊「僧侶は勇者に集中してくれ!」

魔法「こっちは何とかなりそうだけども……あたしの魔力は心許無いわね」

僧侶「……分かりましたっ」

鎧投擲槍「」ブォ

盗賊「コツさえ掴んだんだ。お前らなんぞ屁でもねえさ!」ガギ

*盗賊は鎧投擲槍を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

盗賊「もう武器はいらなさそうだがなぁ」ニヤ


勇者「うおおお!」ブォ

魔王「ふん!」ガギィィン

魔王「やはり貴様の本分は長柄武器か……その剣が泣いておる」

勇者「なんだと!」ビシ

勇者「え……?」ピキキ

魔王「確かに強力な武器だが……貴様が完全に使いこなすにはまだ無理があったようだ」

魔王「いかに優れた刀剣でも、あのような使い方では……」

*勇者の聖剣は砕け散った*

勇者「」クラッ

僧侶「勇者様!」

盗賊「なんだ? おい……何が起こったんだ?」

魔法「聖剣は何処に?」

勇者「……」ガクッ

勇者(どう足掻いても勝てないのか……?)

鎧斧槍「」ガシャン ブォ

盗賊「うおっと! くっそこんな時に!」

魔法「勇者! しっかりして!」

魔王「遂に精も根も尽きたか……」

魔王「よくぞここまで戦った。楽しかったぞ」

勇者「……」

盗賊「うおらっ!」ガギン

*盗賊は鎧斧槍を倒した! 盗賊の周りに武具が散らばった!*

僧侶「勇者様! 危ない!」ガァァン

勇者「……」カァァァンガランガラン

勇者「……」ガラガラガラン

魔王(最早、目の前に飛んできた武器さえ拾わんか……)

勇者(槍……? だが斧のような刃とカギ爪も)

勇者(いや……今更だ。聖剣をもってしてでも勝てなかったんだ)

勇者(棍術が活きたところで……いやこの武器は)

勇者(この武器に覚えが……そうか彼は様々な武器を学びこれに行き着いたのか)

魔王「せめて……一撃で安らかに逝くがよい」スゥ

勇者(……であれば!)ガチッガチンッドズ

僧侶「勇者様!」

魔法「勇者!」

盗賊「勇者ぁ!」

魔王「ふっ!」ブォ

ガギ
勇者「……」ィィィン

魔王「なに?」ググ

*勇者はハルバードを装備した!*

勇者「くっ!」ガギィン

盗賊「おお!」

僧侶「勇者様が押し返しました!」

勇者(重い! だが無意味に重量のある腕当てをしていた訳じゃない!)

勇者「魔王、覚悟!!」

魔王「聖なる武器ですらないそれで勝つつもりか。笑止!」

ガッガッガギィィン
勇者「……」グググ

魔王「く……」ガギィン

魔法「魔王から距離を取った?」

盗賊「そっちばかり気になるのは分かるがこっちも手伝ってくれ!」キィン

魔王(急に勇者の力が? いや、先ほどの腕当てが重りになっていたのか……だがしかしこれは)ブァ

魔王「ぐぬぅ!」ガガンガギン

勇者「まだまだぁ!」ブォ

魔王(ただの薙ぎ払いすら重た過ぎる上に連撃だと!)ガギィンギィィン

勇者「うおおおお!!」ギャィン

魔王「ぐお!」

魔王「この我が地に膝を……!」ビキビキ

僧侶「魔王の剣が!」

魔法「勇者! 一気に畳み掛けろー!」

勇者「はああ!!」ブァ

魔王「おのれ……ここまでか!」ドッ

ォォォン
魔王「……」パラパラ

勇者「……」パラ

盗賊「……んでだ? なんで止めを刺さない!」

勇者「再三に渡って復帰のチャンスを貰っていただろう」

勇者「鎧の方は?」

魔法「全部倒したわ。けど、あたしはもう戦力外よ」

僧侶「私はまだ魔力が残っています」

勇者「魔王、剣を用意しろ」

勇者「これで貸し借り無しだ。それに、今度は俺達全員が相手をする」

魔王「殊勝な事だ……」パシ

盗賊「本当にただの剣じゃねーか」

魔王「我が剣以外に、あれほど強固な剣など無い」

魔王「であれば、どれを使おうとそう変わるものではない」スッ

魔王「来い人間どもよ」

勇盗僧「……」ザッ

魔法「魔力も残っていないしあたしは避難しておこっと」

勇者「つぁっ!」ブォ

魔王「……」ヒラ

勇者「せいっ!」ドッ

魔王「……」ヒョイ

盗賊「こいつ……避け始めやがった!」

魔王「確かに速度、威力共に脅威だが見切れんものではない! こちらからもいくぞ!」

勇者「くそ!」ギィィンギィン

盗賊(これじゃあ、おいそれと手が出せないな……)

盗賊(しかし不味いな……一度守りに入ると魔王の速さが勇者の攻撃力の優位性を上回っちまう)

勇者「そこだぁ!!」ブォ

魔王「っく!」キィン

僧侶「避けながら受け流した!?」

盗賊「勇者、気をつけろ! 奴は正面からの打ち合いを徹底的に避けて、一瞬の隙を狙っていやがる」

勇者「それぐらい俺だって分かっているさ」

勇者(分かっているが……突破口が見えない)ギリ

勇者「うおお!」ガッ

魔王「ぐぬぅ!」フラ

勇者「もらったぁ!」ブォ

魔王「!」

魔法(上段からの振り下ろし……体勢を崩した今なら……だけど)

魔王「……」ニヤ

魔王「ふっ!」ギィィィドッ

勇者「受け流……!?」ォォォン

僧侶「勇者様!」

魔王「勝ちを焦ったな」ドシュッ

魔王「な……」ポタポタ

盗賊「悪いね……切り札はとっておくもんでね」シャン

盗賊「古代インゴット……一度血を浴びるとすぐに錆びるがたったの一撃は、投げナイフでも鎧を裂く!」ヒュヒュン

魔王「おのれぇ!」キキィン

勇者「……盗賊、助かる」ズォ

魔王(避ける? 防ぐ? 迎撃? この体勢では……!)

勇者「うおおお!」ブォン

魔王「ぐおおお!」ブン

勇者「……」

魔王「……」

魔王「くはっ……」ビチャビチャ

魔王「く、くく……よもや人間に、敗れるとは」ドクドク

魔法「勝った、の……?」

僧侶「勇者様! お怪我は?!」

勇者「いや、大丈夫だ」

盗賊「勇者、止めを」

勇者「……ああ」スッ

魔王「躊躇など、要らぬ……我とて多くの、人間を屠ったのだ」ハァハァ

魔王「やり辛い、というのであれば……我の部下を呼んできてやろうか?」ニヤ

勇者「……嫌な気遣いだな。お前とはもっと違う形で会いたかったよ」ブォン

……
国王「勇者達よ! よくぞ魔王を討ち取った!」

国王「これでこの世界は……」


勇者「これから先はしばらく引っ張りダコだな」

盗賊「嫌な話だ」

魔法「まあ、それなりの報酬も貰えるしあたしは気にならないわね」

僧侶「皆さんはこれから……どうなさるんですか?」

勇者「……そうか。こうして旅をするのも終わりか」

盗賊「寂しくなるが今生の別れじゃないからな」

魔法「あたしは故郷に帰ってまた魔法の研究かしらねー」

盗賊「俺はまたトレジャーハントでもしにあちこち回るわ。ま、慎ましく暮らす分には、当分働かなくていいぐらいだが」

僧侶「私は教会に戻る事になります……勇者様は?」

勇者「うーん、特には何も考えていないなぁ。特別継ぐべき家業がある訳でもないし」

勇者「ま、どの道しばらくは勇者として自由にはいかないだろうから、そこら辺でのんびり考えればいいかな?」

魔法「あたし達は散り散りになるわね」

盗賊「んじゃあ、毎年この日に集まるか?」

勇者「お、いいなそれ」

僧侶「あ、あの……勇者様……その」ゴニョゴニョ

魔法(頑張って僧侶)

盗賊(ここがルートの分かれ道だぞ)

勇者「どうした僧侶?」

女騎士「やっほ」

勇者「うお! なんだ、お前か」

盗賊(誰だ? まさか剣の稽古の?)

魔法(国が全く違うじゃない、この国の騎士でしょ)

女騎士「いやあ、本当に君が魔王を倒しちゃうだなんて驚きだよ」

勇者「よく言うよ。『もし魔王が現れたら一緒に旅に行こうね』とか言っておいて」

女騎士「いやーははは……本当にごめん。まさか本当に魔王が現れるだなんて思わなくて就職しちゃったからさ」

勇者「だからこそ、俺は安心して旅立つことができたんだけどな」

女騎士「勇者……はは、ありがとう」

魔法(おっと?)

盗賊(こいつぁ……)

僧侶「!? !?」パクパク

女騎士「強くなったんだろ? 久々に手合わせしようよ」

勇者「いや、嫌だ! お前との剣の稽古はトラウマだ!」

盗賊「え? お前、剣使うの消極的だったのって」

勇者「子供の頃稽古という名目で木刀で滅多打ちにされたんだ!」

盗賊(虐待……)

魔法(まさかあの寝言は……)

僧侶「!? !?」オロオロ

勇者「こいつの母親が剣の使い手で、俺の家系がなかったら彼女が本家勇者だったんだよ」

魔法「え? 何それ本当?」

女騎士「そりゃあ腕がなければこの年で騎士なんて務まらないからね」

僧侶「……」ダラダラダラ

盗賊「……お前ら幼馴染か?」

勇者「幼少の頃から稽古していたからな」

女騎士「と言っても稽古する武器は違ったけどねー」

女騎士「まー何にせよ。勇者はこのままここに住むの?」

勇者「今の所は他にやりたい事も無いしな」

女騎士「じゃあ……また一緒に居られるね」モジモジ

勇者「ああ、そうだな」ニコ

僧侶「」

魔法(あー)

盗賊(だから異性として親密にならなかったのかぁ)


その後、世界は平和に健やかなる時を刻んだ。
がある時、邪神を崇拝する信仰が立ち上がったという。
その後、一悶着を起こすその宗教の司教が若い女性だという話はあまり知られていない。

      勇者「剣とか持った事が無い」 完

久方ぶりに腹抱えて笑ったけど
頭抱えて凹んだわ

枕濡らしながら寝るわ

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