穏乃「あれ・・・何だか眠く・・・」
玄「無理はしないで横になったらどうですか穏乃ちゃん」
穏乃「・・・・・・Zzz」クタッ…
玄「穏乃ちゃん・・・?寝ちゃった・・・かな・・・?ふふふ・・・」
やえ「ほんと何もない部屋ね」
灼「文句あるの?」
やえ「べ、別にそういうつもりじゃ・・・」
灼「ところでこうしていつも入り浸ってるけど、部活はいいの?」
やえ「三年だからね。大会で敗退したからもういいのさ」
灼「そう・・・」
やえ「まあそんな顔しなさんな。私には個人戦もあるからな」
灼「じゃあ部活出なきゃダメだよ!」
やえ「ハッハッハ」
灼「まったく」
やえ「まあ、こうしてお前さんと打ってるのも練習になるのさ。奈良の個人戦一位と、団体戦一位の部長とが打ってるんだぞ?」
灼「う・・・で、でも、お喋りとかしてたりしてるだけじゃ・・・」
やえ「ば、バカッ!こ、これは・・・そう、メンタル面での特訓なんだから勘違いするなよ///」
灼「あ、うん。ところで何か飲む?今日は気が回らなくてごめん」
やえ「それでは水を貰おうか」
灼「水?気を使わなくていいのに」
やえ「ち、違うっ!私は水が飲みたい気分なんだ!」
灼「まあ、それでいいなら持ってくるけど・・・」
やえ「んぐっ・・・んぐっ・・・」
灼「いつも思うけど、飲みっぷりいいね」
やえ「ああ、緊張すると喉が渇くものでな」
灼「緊張・・・?」
やえ「い、いや、別にそういう意味ではなく///」
灼「?」
やえ「ほら、知人の家というのは緊張するものだろう?そういうことだ」
灼「知人か・・・。私は友達のつもりだったんだけど」
やえ「ふぇっ・・・///」
灼「何意外そうな顔してるの?」
やえ「い、いや、その・・・」
灼「どうかしたの?」
やえ「・・・私は小三の頃から友達ができたことがない」
灼「・・・そうだったんだ」
やえ「ああ・・・。王者とは孤高だからな」
灼「そういう態度に問題があると思・・・」
やえ「何だと!」
灼「はいはい」ポンポン
やえ「なっ、何を・・・。何頭なんか撫でて・・・」
灼「たまには誰かに甘えてもいいのに・・・」
やえ「ああ・・・、そうだな・・・。ありがとう・・・」
やえ「・・・ところで灼。いつまでそうやって私の頭を撫でているんだ?」
灼「ご、ごめっ・・・///」
やえ「やれやれ。これだから阿知賀の部長は・・・」
灼「むっ・・・。そういうやえさんこそぼっちのくせに」
やえ「ハッハッハ。今は頼りがいのある仲間や、慕ってくれる後輩もいる」
灼「ぐぬぬ・・・」
やえ「それに、あんたもいるから・・・その・・・///」ゴニョゴニョ
灼「えっ、何?」
やえ「うるさいうるさーい!そうだ灼。私にも撫でさせたらどうだ?」
灼「いいよ、別にそんなの・・・。ちょっ、近付かないで」
やえ「ふふふ、まあそういうな。王者の可愛がりというものを見せしよう」ワキワキ
灼「うわ、手の動きがいやらし・・・」
やえ「それそれ、逃げるな灼ー」
憧「灼、上がるわよー・・・って、あんたたちそういう関係だったの・・・」
灼「なっ、これは・・・///」
憧「覆いかぶさられてるし・・・」
やえ「ま、待てこれはだな・・・///」
憧「そんなことより大変なのよ!」
灼「・・・何かあったの?」
やえ「話を聞こうか」
憧「灼も知ってると思うけど、今日の部活にしずが来なかったでしょ?まあ、それは今日学校休んでたからなんだけどさ」
灼「うん」
憧「でも、そうじゃないのよ!しず、昨日から家に帰ってないんだって」
灼「えっ・・・。それ、どういう・・・」
憧「そんなのあたしだってわかんないわよ!しずが無断で外泊するような奴じゃないってのは灼も知ってるでしょ?」
灼「うん。このことは警察には?」
憧「しずの家の人がもう・・・。あたしんちに、あたしが学校行ってる間にしずの家から心当たりがないかって電話があってさ・・・」
やえ「ふむ・・・。それは問題だな」
灼「もしかして山で遭難したんじゃ・・・」
憧「それはあたしも思ったんだけど、しずのお母さんが山には行ってないって言ってた」
やえ「山・・・?彼女は山によく行くのか?」
憧「ええ。しずが出歩くとしたら山くらいしか考えられないってくらいの山好きね」
やえ「ほう・・・。だが、山へは行っていないと・・・。誰か知人の家に泊まりに行ったのではないか?」
憧「しずのお母さんがあたしの家をはじめ、しずの知り合いの家にみんなあたってみたけどどこも違うって」
灼「どうしよう・・・」
やえ「何、案ずることはない。近頃の携帯電話にはGPS機能が常備されているという。それを利用すれば居場所くらいすぐに掴めよう」
灼「さすが偏差値70以上の晩成高校・・・」
憧「あたしもそれは考えた。でも、あのバカ、携帯を部屋に置きっぱなしで出かけたみたいなのよ・・・」
やえ「むむ・・・」
灼「普段の様子に変わりはなかった・・・。もし家出や何かだったら穏乃はすぐ顔に出るはず・・・」
憧「うん・・・。もしこれが何か事件に巻き込まれたんだとすると、きっと顔見知りの仕業だと思う・・・」
やえ「彼女が足を運びそうな場所をリストアップしてくれないか?みんなで探そう」
憧「すみません、小走さん・・・。貴女は関係ないのに・・・」
やえ「何、友達の友達は私にとっても関係がないわけじゃない。それに、その子が見つからないと県の代表として団体戦に出てもらえないだろう?それは困る」
灼「ありがとう・・・」
憧「とりあえず、しずが行きそうな場所は」
穏乃「玄さん、どうしてこんなこと・・・。今ならまだ悪戯だったで済みますよ・・・?」
玄「うるさいよ!穏乃ちゃんは!」
宥「玄ちゃん・・・」
玄「穏乃ちゃんが悪いんだ・・・!」
穏乃「そんな・・・。私、何も悪いことなんか・・・」
玄「私がこんなに穏乃ちゃんのこと好きで、好きで、好きで、大好きなのに!それなのに他のみんなにも優しくして!笑って!仲良くなんかするから」
宥「・・・・・・・・・」
穏乃「玄さんが私のことを・・・好き・・・」
玄「何度も言ったじゃない!それなのに、穏乃ちゃんはニコニコわらってありがとう、って・・・。どうしてわかってくれないの!?」
穏乃「だって・・・女の子同士だし・・・。ごめんなさい、玄さん、気付かなくて・・・」
玄「もういいよ。穏乃ちゃんはこれから先ずっと私だけのものなんだから・・・」
穏乃「そんな・・・」
宥「旅館の使われなくなった物置でごめんね、穏乃ちゃん・・・。ここなら旅館の人だって、誰も来たりしないから・・・」
穏乃「宥姉も玄さんの仲間なんですか?こんなこと、よくないですって・・・」
宥「ごめんね・・・。でも、穏乃ちゃんを帰しちゃうと玄ちゃんが警察に捕まっちゃう・・・。私は玄ちゃんのお姉ちゃんだから玄ちゃんを裏切れない・・・」
穏乃「大丈夫です。このことは絶対言いません。家に帰らなかったのは山で迷子になったとかって言いますから」
玄「もう遅いんだよ・・・!とにかく、穏乃ちゃんはここで大人しくしてて・・・。行こう、お姉ちゃん」
宥「あとでご飯持ってきてあげるからね?」
穏乃「どうしてこんなことに・・・」
灼「ここにはいなかった。そっちはどう?」
やえ『もしもし、聞こえてるぞ。ああ、こっちにもいなかった』
灼「リストにあった場所は全部ダメか・・・」
やえ『・・・で、でも、新子さんの方が進展があったかもしれないじゃないか』
灼「玄のとこに一緒に探してもらうように協力を仰ぎに行ったけど、正直・・・。旅館のお仕事の手伝いもあるだろうし、あまりあてにはできな・・・」
やえ『そうか・・・。ま、まあ、まずは合流しようじゃないか』
灼「うん」
憧「そう、知らないならいいわ」
玄「ほっ」
憧「ところで、どうしてそんなの挙動不審なの?」
玄「そ、それは私も穏乃ちゃんのことが心配で・・・」
憧「そう・・・。まあ、不安なら体も震えるわよね」
玄「そうそう」
憧「その汗は?どうして私を真っ直ぐ見れないの?目が泳いでるわよ?」
玄「うぅ・・・」
憧「玄。あんた何か知ってるでしょ?素直に」
玄「お姉ちゃんっ!」
憧「ッ・・・!」バタッ
宥「・・・これでいいの?玄ちゃん。でも、もう・・・」
玄「後戻りはもうできないんだよ、お姉ちゃん・・・」
灼「憧に連絡が付かない・・・」
やえ「松実さんの家で話が長引いているのだろう」
灼「そうだね」
やえ「もう外も薄暗くなってきた。その・・・食事でも・・・どうだ?」
灼「うちはお婆ちゃんがいるからおうちで食べるよ」
やえ「そうか・・・」
灼「よかったらうちで食べてく?」
やえ「ま、まあ、どうしてもっていうなら一緒してもいいけど・・・///」
灼「どうしても」
やえ「わ、わかった///」
憧「ここは・・・?」
穏乃「起きた、憧?」
憧「しずっ!?あんた今まで・・・何これ?」
穏乃「動けないように縛られてるみたい・・・。あはは・・・」
憧「そっか・・・。あたしは玄と話してたら後ろから絞め落とされて・・・。ってことは、やっぱり玄にしずは捕まってたわけね。でも、何でしずが・・・」
穏乃「それは・・・」
宥「あの・・・ご飯持ってきたよ・・・」
憧「宥姉!?それに・・・玄・・・!」
穏乃「あの、ご飯持って来てくれたのはありがたいけど、こんなんじゃ食べれないっていうか・・・」
玄「大丈夫、穏乃ちゃんには私が食べさせてあげるから」
憧「玄!これはどういうつもりなの!?何でしずを監禁なんて・・・!」
玄「・・・お姉ちゃん、憧ちゃんうるさいからやっちゃって」
宥「で、でも・・・」
憧「な、何よ、あたしを殺すつもり・・・?でも、残念だったわね。玄、あんたはすぐに捕まるわよ!あたしを殺したって罪が重くなるだけ」
玄「お姉ちゃん!」
宥「・・・ごめんね、憧ちゃん」
憧「宥姉・・・。どうして宥姉までこんな・・・」
やえ「・・・もう夜の八時だ。新子さんから連絡がない以上これ待つのは」
灼「携帯も電源が入ってないみたい。さすがに暗いし、もしかして家に帰ったのかも・・・」
やえ「そうだといいが・・・」
灼「さすがに憧まで失踪はないと思う」
やえ「そうだな。それじゃあ、外も暗いし、私は帰るよ」
灼「待って」
やえ「どうかしたのか?」
灼「その、もう夜遅いし、外も暗い・・・。今日は泊まってったら?」
やえ「とっ、泊まる・・・!?あんた、何言ってるのよ///」
灼「・・・不安なんだ。無理言ってるのはわかる、でも・・・」
やえ「・・・わかった。ふふ、ではお見せしよう。王者の添い寝を!」
灼「いや、お客様様のお布団出すから」
やえ「あ、うん」
穏乃「憧、起きて、憧」
憧「・・・私、また」
穏乃「宥姉が首押さえてちょっとしたら気絶しちゃぬんだもん。最初は死んじゃったかと思った」
憧「そっか・・・。ねえ、しずは知ってるの?宥姉がなんで玄に協力してるのか。それに、玄が何であんたを監禁してるのかも謎・・・」
穏乃「それは・・・」
穏乃(言えない・・・。もし憧に言って全てが露見したら、憧はきっと玄さんたちのことを話す・・・。そうなったら玄さんたちは捕まっちゃう・・・)
穏乃(何とかごまかさないと・・・)
灼「・・・・・・・・・」
やえ「・・・・・・・・・」
灼「・・・・・・・・・」
やえ「・・・・・・・・・」
やえ「ねえ」
灼「ん?」
やえ「まだ夜の九時なんだけど」
灼「だって、することがない」
やえ「ちょっと!この長野個人戦一位の私が来てんのよ?なんで早寝しようとすんのよ!」
灼「わかったから落ち着いて」
やえ「ククク、阿知賀の部長はお泊り会のニワカ。いや、ニワカオブジイヤーだな」
灼「じゃあ怖い話でもする?」
やえ「・・・寝ようか」
灼「これは私の友達の話なんだけど・・・」
やえ「やーめーろー」
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灼「それで、何で私の布団に入って来てるの」
やえ「べ、別に私が怖いとかじゃなくて、あんたが不安だって言ってたから、それでよ。それだけなんだからね!」
灼「うん、ありがと」
やえ「わ、わかればいいのよ・・・///」
灼「うん・・・ありがとう」
やえ「何よ急に?」
灼「ううん。何でもない。それじゃ寝よっか。電気消すよ?」
やえ「ま、待て!」
灼「・・・?」
やえ「一番小さな灯りだけは点けておこう・・・。ほ、ほら、何かあったらいけないだろ?王者たる者、用心も怠らないんだ」
灼「クスッ・・・。うん、わかった」
やえ「お前、今笑ったな」
灼「ううん、笑ってない」
やえ「いーや、笑った」
灼「ふふっ」
やえ「も、もう!これだからニワカは///」
穏乃「そ、そうだ!憧さ、お腹空いてるんじゃない?」
憧「そりゃまあ・・・。何だかんだで晩御飯も何も食べないまま気絶させられて夜を迎えたわけだから・・・」
穏乃「えへへ、私さ、ポケットにクッキー入れてあんだよね。憧にあげるよ」
憧「それはありがたいけど、どうやって・・・」
穏乃「待って。今ポケットから出すから。よっ・・・はっ・・・」ゴロッ グルッ…
憧「ちょっ、見えちゃう!見えちゃうから!あんまり激しく動かないで///」
穏乃「よし、ポケットから出たぞ」
憧「ま、まったくしずは・・・///」
憧「嘘!?それ、カントリーマアムのココア味じゃない!どうしたのよそれ!」
カントリーマアムココア味
それは、一枚当たりの栄養価が若干バニラ味よりも高いために空腹時にはありがたいのだ
温めると焼きたてのような美味しさにもなるし、冷やせばカリッとした食感が楽しめる
オーブンで焼いて良し、レンジで温めても良し、冷蔵庫や冷凍庫で冷やしても良し
それがカントリーマアム
不二家が誇るロングセラーの主戦力商品といっても過言ではないだろう
穏乃「へへっ、私のポケットにはいつも何かしら入れておくんだよね♪」
穏乃「じゃあ、私がこのクッキーの小袋を咥えるから、憧も反対側咥えて引っ張ってよ」
憧「えっ・・・いやいやいや///」
穏乃「クッキーが地面に落ちないように、膝の上に落ちるように・・・。ほら、憧も向かいあって」
憧「あ・・・うん・・・」
穏乃「じゃあ、憧、反対側お願いね?・・・んーっ」グイグイ
憧「あ・・・あぅ・・・///」ドキドキ
憧「そ、それじゃあ・・・」
穏乃「ふーっ・・・ふーっ・・・」
憧(何でしず、息を荒げてんのよ・・・。まあ、物を咥えっぱなしってのも疲れるから仕方ないけど・・・)
憧「んっ・・・」ポトッ
穏乃「ふぅ~・・・。さ、食べていいよ、憧」
憧「ありがと」ムシャムシャ…
宥「玄ちゃん、憧ちゃんの携帯なんだけど、バッテリー抜いて町に捨ててきたよ」
玄「ありがとうお姉ちゃん」
宥「ねえ、憧ちゃんまでいなくなったら、絶対に隠し切れなくなるよ?今日憧ちゃんがここに来たのだって、もしかしたら誰かに言ってから来たのかもしれない・・・」
玄「みんな・・・みんな穏乃ちゃんが悪いんだ・・・。私の気持ちを裏切って、私を・・・私のこと・・・」
宥「玄ちゃん・・・。もう穏乃ちゃんも憧ちゃんも帰してあげよ?ね?」
玄「でもっ!」
宥「大事になる前に・・・。女子高生がこの狭い阿知賀で二人もいなくなれば、マスコミだって動いてくるかもしれない・・・」
玄「・・・・・・・・・」
やえ「ふぁ~・・・よく寝た・・・って、えっ・・・?何これ・・・。何で私と灼が一緒の布団で・・・」
灼「もう忘れたの?昨日のやえさん、とっても激しかったのに・・・」
灼(怖い話をしたら暴れて、結局私の布団にもぐり込んできて)
やえ「え、えぇ~っ!?そ、そんなこと私がしちゃったの!?」
やえ(どうしよう・・・。全く記憶がないのに・・・。で、でも、灼の服も少しはだけてるし、やっぱりそうなのよね・・・)
灼「大丈夫。この事は黙っててあげるから。二人だけの秘密」
やえ「ふ、二人だけの秘密~!?うわわ・・・///」
やえ(い、いや、それは嬉しいけど、王者たる者責任を・・・!よ、よし!)
やえ「お婆さんに挨拶しに行こうか」
灼「は・・・?何を・・・?」
やえ「灼。お前は私が一生幸せにしてみせる!」
灼「ふぇっ・・・、と、突然何を・・・。嬉しいけど///」
やえ「安心しろ灼。私はこう見えてできる女だ。お前も、このボーリング場も、お婆さんも、みんな守ってやりゅ」
灼「噛んでるし・・・」
やえ「う、うるさいうるさい!で、返事はどうなの!?」
灼「うん、ありがとう。私も貴女を幸せにするから・・・///」
やえ「ニワカが・・・。私を幸せにしようだなんて1年早いんだよ・・・///」
結局、女子高生連続失踪事件はギバード桜子をはじめとする阿知賀こども探偵団の手によって穏便に解決された
桜子「めでたしめでたし!」
完
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