れんげ「こまちゃんライターでのオ○ニーは危ないからやめるのん」 (315)

蛍「え!?」ガタッ

小鞠「ん?」

蛍(え!?)

蛍(ええええええええええええええええええええええええええええええ?!!!!)

蛍(センパイが! 小鞠センパイがライターでオナ○ー!?)

蛍(ライターを股間から少し離れたとこで火をつけて、股間にジリジリと伝わる熱を楽しんでる!?)

蛍(一歩間違えばやけどスレスレのスリルと、股間を熱くする熱エネルギーがたまんない……みたいな!!?)

蛍(センパイ、さすがにそれはレベル高過ぎますよ……)

蛍(でもそんなオ○ニー上級者のセンパイも……素敵です……)

小鞠「ねえ」

小鞠「○ナニーってなに?」

蛍(!?)

れんげ「それが、ウチもよくわからないのん」

れんげ「なっつんに、そう言えって言われたん」

蛍(ちょっと! 夏海先輩、れんちゃんになに言わせてるんですか!?)

蛍(でもそうだよね、センパイがオ○ニーなんて単語知ってるわけないよね)

蛍(安心したような、少し残念なような……)

ガラッ

れんげ「あ、なっつん帰って来たん」

夏海「ん、どしたー?」

れんげ「なっつん、オ○ニーってなんなのん?」

夏海「それは、ウチの姉ちゃんに聞いたほうがいいんじゃないかな」ニヤニヤ

れんげ「こまちゃんも知らないみたいなのん」

夏海「………………はあ」

夏海「そういえば、コマちゃんが子供なのを忘れてた」

小鞠「コマちゃん言うな! それに子供じゃない!」

夏海「でもオ○ニーも知らない子供なんでしょ?」ニヤニヤ

小鞠「オ○ニーくらい知ってるし! さっきはちょっと……ど忘れしてて……」アセアセ

れんげ「そうなのん?」

小鞠「う、うん」

夏海「またまた~」

夏海「本当は知らないんでしょ? 大人ぶって無理しなくていいよ」

小鞠「知ってるから! オ○ニーくらい知ってるもんね!」

小鞠(ぅぅ……ホントはよく知らないけど、オ○ニーって外国の言葉みたいだし、ルイヴィトンとかシャネルとかプラダとかベンツとかボジョレーヌーヴォーとかマカオとか、そういう感じの意味だよね?)

小鞠(あと、スキニー(最近覚えた)とかマホガニーとかにこにーとかにも響きが似てるかも)

蛍「あのセンパイ……」

小鞠「わたし、オ○ニー博士って呼ばれてもいいくらい詳しいから!」

蛍「ぶっ!」ゴホッゴホ

夏海「ふーん」ニヤニヤ

夏海「でもそうだとしても、どうせ知ってるだけでやったことはないんでしょ?」

小鞠「はあ~? オ○ニーやりまくりなんだけど! わたし大人だから、オ○ニーやりまくりなんだけど!」

蛍「ちょっ! センパイ!」

夏海「はいはい、背伸びしなくていいって」

夏海「確か大人の女性は週に3、4回オ○ニーするらしいけど、どうせ姉ちゃんは週に1回とかでしょ?」

小鞠「は? 毎日オ○ニーしてるもんね! わたし大人だから毎日7回くらいオ○ニーしてるもんね!」

夏海「ぷっ……(だ…駄目だ、まだ笑うな…こらえるんだ…し、しかし……)」プクク

小鞠「わたし大人の女性だから、オ○ニーしまくりだし、オ○ニーマスター小鞠って名乗ってもいいくらいだね」エッヘン

夏海「コポォ!!!!!!!!」

れんげ「おおー、なんかよくわからないけど、こまちゃんかっこいいのん」

小鞠「えへへー、でしょー」ニヘラー

夏海「いやいやー、子供の姉ちゃんにオ○ニーの楽しさはわからないでしょ」

夏海「あの楽しさは、大人の女性しかわからないみたいだし」

小鞠「オ○ニーすごい楽しいんだけど! なんかもうほんっとびっくりするくらいすごい楽しいんだけど」

小鞠「まあ、あの楽しさは、子供の夏海にはわからないかもねー」チラッチラッ

れんげ「おおー、なんかこまちゃんから大人の女性オーラが醸し出されてますな!」

夏海「うん、わかんないわかんない」プククー

小鞠「それと、わたしくらい大人になると、ライターじゃなくて、線香とか冷蔵庫とか使うから」

小鞠「あとイチゴ大福とかCDプレイヤーとかも使うよ」

夏海「うぇっうぇっうぇっうぇ(もう無理もう無理)」

夏海「あははあはあははははははごほごほっ!おほっごほっ!うおっごほっ!」

小鞠「ちょっと夏海!? 大丈夫?」

れんげ「なっつん発作なん? なんか悪い病気なん?」

夏海「いや……あはは、違うよ、ぷぷっ(やばい、笑いすぎてむせてしまった。お腹痛い)」

小鞠「それならいいけど……というかなんで笑ってんの?」

れんげ「で、結局オ○ニーってなんなのん?」

小鞠「えっと……」

小鞠「れんげにはまだ早いかなー……なんて……」

れんげ「むぅー、なっつん、オ○ニーってなんなん?」

夏海「そうそう、れんちょんにはまだ早いって」

れんげ「むむむぅー、二人ともケチンボなん」ムスー

れんげ「教えてくれてもいいのんな」

れんげ「そもそもウチにまだ早いならなんでなっつん言わせたん?」

夏海「いやー、面白いかと思って」

夏海(実際面白かったしねえ)

れんげ「いいのん、ねえねえに聞くのん」

れんげ「あ、でもねえねえは知らなそうだから駄菓子屋に聞くのん」

蛍(先生、頼りにされてない……)

夏海「ちょっ! ちょ! れんちょんそれはやめよう!」

れんげ「ん? どしたん?」

夏海(れんちょんに変な言葉言わせたなんて駄菓子屋に知られたら、ウチ殺されてしまう!!)

夏海「駄菓子屋に聞くのはやめよう」

れんげ「なんでなん? ねえねえは知らなくても、駄菓子屋はきっと知ってるのん」

夏海「えっと……なんていうか、ウチが教えたってバレたらまずいと言いますか……」

夏海「あ、そうだ! れんちょんアメ欲しい?」

れんげ「!? ウチあめ欲しいん! ウチあめ欲しいん!」

夏海「アメ奢ってあげるから、このことは……ね?」

蛍(夏海先輩……アメで買収しようとしてる……)

れんげ「わかったのん、約束するん!」

夏海(ふぅ、なんとかなったか)

ガラッ

一穂「おはよー」

れんげ「あ、ねえねえ来たー」

夏海「かずねえ、また遅刻ぅ」

れんげ「ねえねえにも一応聞いてみるん」

蛍「あ、れんちゃんそれは……」

れんげ「ねえねえ、オ○ニーって知ってるん?」

一穂「えっ…………?」

一穂「えっとれんちょん、その言葉、どこで聞いたのかなー?」

れんげ「なっつんとこまちゃんが言ってたのん」

れんげ「でも二人はウチにはまだ早いって言って教えてくれないのん」

一穂「まあ……そりゃねえ」

れんげ「こまちゃんはオ○ニーマスターらしいのん」

一穂「エ”ッ?」

蛍「ちょっとれんちゃん……」

れんげ「よくわからないけどイカしてるのん」

小鞠「ふふーん、わたしは大人だからねー」エヘヘー

れんげ「しかも毎日7回くらいするらしいのん」

一穂「おおう……それはまた……多いねえ……」

小鞠「まあ、わたしは大人の女性だから」

小鞠「ホントは7回でも少ないくらいかなー」エッヘン

蛍「センパイ……」

れんげ「それでライターや冷蔵庫、iP○d touchとかも使うらしいのん」

一穂「それは……マニアックだねえ」

一穂「まあなんていうかその……」ポンポン

小鞠「?」

一穂「……ほ、ほどほどにね」

小鞠「??」キョトン

蛍「そ、そういえば、夏海先輩は?」

れんげ「なっつんならそこで、笑いながらのたうち回ってるのん」

れんげ「やっぱりなっつん病気なん?」

……


れんげ「アメだアリー、アメだアリー、ただのアメじゃないアリー」

夏海「あんま高いものはダメだからなー」

小鞠「ねえ、夏海はさ、ここを出たいって思ったことある?」

夏海「は? 急にどしたの?」

小鞠「いや、わたしは大人だから一人でも生きていけるけど、夏海はわたしがいないとダメじゃん?」

夏海「いやいやなに言ってんの?」

夏海「ウチは姉ちゃんがいなくても大丈夫だし、むしろ姉ちゃんのほうがウチがいないとダメだよね」

小鞠「えー、そんなことはないでしょ」

れんげ「着いたのん」

駄菓子屋

夏海「駄菓子屋ー、おっすー」

楓「帰れ」

蛍「こんにちわー」

楓「はい、いらっしゃい」

夏海「ちょ! なに今の!? 明らかにおかしいよね! なにその応対の差!?」

夏海「ウチも大事なお客さんだよ!? お客さんは神様なんだよ!?」

楓「おー夏海、タニシ食うかー?」

楓「タニシなら田んぼにいるぞー、田んぼ行け田んぼ」

夏海「だから食わねーつっーの!!」

れんげ「なっつん……タニシなんて食べたらお腹壊すのん」

夏海「だから食わねえって!!」

れんげ「駄菓子屋、オ○ニーって知ってるん?」

楓「ハ?」

夏海(ちょっ! れんちょん約束!?)

楓「れんげ……それをどこで誰から聞いた?」

れんげ「それは言えないのん」

れんげ「ウチ、約束は守るのん」

楓「よし、夏海ー、何もしないからちょっとこっち来い」

楓「軽く背骨の骨折ってやるからこっち来い」

夏海「いやいや! なんでウチ!?」

夏海「ていうか何もしないどころか殺る気満々じゃないっすか!」

夏海「ほんと勘弁してくださいよ」ダッ

小鞠「あ、逃げた」

蛍「逃げましたね」

れんげ「なあなあ、駄菓子屋」

れんげ「それでオ○ニーってなんなん?」

楓「あーっと……それは……」

れんげ「こまちゃんはオ○ニーマスターらしいけど教えてくれないのん」

楓「オ、オナマス……? え……なんだって……?」

れんげ「毎日17回くらいするらしいのん」

楓「じゅ、十七回!?」

れんげ「消化器やトラクターも使うらしいのん」

楓「そ、それは大掛かりだな……」

蛍(あれ……なんか話が壮大になってる……)

楓「最近の中学生はそんなに進んでるのか……」

れんげ「それでオ○ニーって一体なんなのん?」

楓「えっと……それはだな……」

楓「私も、詳しくはわからないなあははは……」

楓「一穂先輩に聞いてみるといいんじゃないかな……?」

れんげ「ねえねえにはもう聞いたのん」

れんげ「しかし駄菓子屋も知らないこと知ってるなんてこまちゃん凄いんなー」

小鞠「えへへー、でしょー?」

小鞠「わたしは大人だからねー」ニヘラー

蛍「センパイ……」

……


……

れんげ「ただいまなのん」

ひかげ「おう、おかえり」

れんげ「……なんでひかねえがいるのん?」

ひかげ「なんだよ~私がいちゃ悪いのかよ~~?」

れんげ「休みは明日からなのん」

れんげ「もしかしてひかねえ、不良になったん?」

ひかげ「チゲーよ」

れんげ「じゃあ不登校なのん?」

ひかげ「ヒキコモリでもねえっつーの!」

れんげ「ひかねえ、友達いなそうなのんな……」

ひかげ「いるよ! 勝手に人を友達をいないキャラ扱いしてんじゃーね!」

れんげ「高校デビューしっぱいしたん?」

れんげ「ひかねえ、最初の自己紹介でちょっと面白いこと言おうとして、滑った空気を作りそうなのん」

ひかげ「急にリアルなこと言うのやめろ!」

ひかげ「前も言ったけど、高校デビュー大成功だよ!」

ひかげ「インディーズデビュー決まって、一年経たずしてメジャーデビュー決まるくらいのレベルだから!」

れんげ「それ、昔からのファンはちゃんとついて来れるん?」

れんげ「急にポップ志向になって、昔からのファンをないがしろにしたらダメなのん」

ひかげ「もうなんの話してたかわかんなくなってきた……」

れんげ「あ、思い出したん!」

れんげ「ひかねえ、オ○ニーって知ってるん?」

ひかげ「はあ?!!」

ひかげ「また変な言葉を覚えてきて……」

れんげ「知らないん?」

ひかげ「知ってる知ってる」

ひかげ「まあ私は、都会の女ってやつだから」

れんげ「おお! ひかねえ凄いのん」

ひかげ「だろー」

れんげ「でもこまちゃんのほうが凄いのん」

れんげ「こまちゃんはオ○ニーマスターなのん」

ひかげ「なん……だと……」

ひかげ「いやいやいやいや」

ひかげ「それ誰が言ったんだよ? どうせ夏海辺りが――」

れんげ「自分で言ってたのん」

ひかげ「Oh……」

れんげ「それにトラクターとか使うらしん」

ひかげ「マイガー……」

れんげ「こまちゃんはやっぱ凄いんな」

ひかげ「いやいやいやいやいや」

ひかげ「私のほうが凄いね」

ひかげ「私は新幹線とか使うから」

れんげ「新幹線!?」

ひかげ「トラクターとか使うのは田舎者だけだよ」ププッ

れんげ「ひかねえもオ○ニーできるん?」

ひかげ「当然」

ひかげ「しかも私のはアクロバットオ○ニーだから」

ひかげ「バク宙しながらオ○ニーするから」

れんげ「…………」ジトー

ひかげ「なんだその目は、信じてないなー?」

れんげ「だってひかねえ、バク宙できないのん」

ひかげ「なんだ、知らないのか?」ニヤニヤ

ひかげ「オ○ニー中は、不思議な力が沸いて来て、普段はできないことができるんだよねー」

れんげ「!?」

れんげ「オ○ニーって凄いのん!」

れんげ「ウチにもオ○ニー教えて欲しいのん」

ひかげ「ダメダメ、れんげにはまだ早い」

れんげ「むぅー、こまちゃん達にも似たようなこと言われたのん」

れんげ「じゃあ、ひかねえ、代わりにここでバク宙オ○ニーやってみるのん」

ひかげ「え”?」

ひかげ「いやいや、オ○ニーは人に見せるもんじゃないからね」

れんげ「……やっぱりバク宙は嘘なんな……」ジトー

ひかげ「ちげえって! 嘘じゃねえし!」

れんげ「じゃあやってみるん」

ひかげ「それは……」

一穂「ただいまー」

れんげ「ねえねえ、帰って来たー」

ひかげ「ふぅー」

一穂「あら、姉ちゃん帰ってたの?」

ひかげ「一昨日、電話で振替休日だから一日早く帰ってくるって言ったよね?」

一穂「そだっけ?」

れんげ「ねえねえもこっち来るん」

一穂「んー」

れんげ「今からひかねえが、バク宙オ○ニーするん」

ひかげ「え”っ」

一穂「それはすごいねえ」

ひかげ「いや、その……」

れんげ「ほらひかねえ、早くオ○ニーするん」

ひかげ「あ、えっと……」

ひかげ「その…………ずみませんでしたあああああああああああああああ!」


……

れんげ「ひかねえのうそは、ウチにはお見通しなのん」

ひかげ「はい……」

れんげ「もうくだらないうそとかついちゃダメなんよ」

ひかげ「うん……」

一穂「あらら」

ひかげ「あー、やっぱしょーもない嘘とかつくもんじゃないね」

ひかげ「ていうか私、なんで小鞠と無駄に張り合ってたんだ?」

れんげ「それウチに聞かれても困るのん」

ひかげ「だよね、あはは」

ひかげ「しっかし、小鞠はあんなちんまいのに、進んでんねー」

……


……
………

このみ「小鞠ちゃん、話ってなあに?」

小鞠「うーんと……それは後でいいかなー」

小鞠「それよりこのみちゃんは、オ○ニーって知ってる?」

このみ「……」

このみ「……うん、一応」

このみ「小鞠ちゃんは?」

小鞠「も、もちろん知ってるよ! もう子供じゃないし!」

このみ「ホントに?」

小鞠「ホントだよ! わたしオ○ニーマスターって呼ばれてるくらいだし!」

このみ「……」

このみ(あー、これはなっちゃんに騙されてるのかなあ?)

このみ(それか小鞠ちゃんが勝手に勘違いして、自爆してるってことも……)

小鞠「私大人だから、イチゴ大福とかCDプレイヤーとかも使うから……」

このみ「……」

このみ「あのね、小鞠ちゃん」

このみ「オ○ニーっていうのは――」

……


このみ「――――」

このみ「わかった?」

このみ「だから自分でオ○ニーマスターなんて言ったりしたらダメだよ?」

このみ「そんなことしたら、『私は頭のおかしい変態さんです』って名乗っているようなものだから」

小鞠「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ…………」

このみ「そもそもこの言葉自体、女の子はできるだけ使わないほうがいいよね、はしたないし」

小鞠「ぅぅ、ぅぅ…………」

このみ「だから絶対、人前でこんな言葉使っちゃダメだよ」

小鞠「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」ビエーン

このみ「あれ、小鞠ちゃんどうしたの?」

小鞠「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

このみ「あ……もしかして、もう手遅れだったり……?」

小鞠「ぅぅぅぅぅ……終わった……わたし終わった……」シクシク

このみ「大丈夫! みんな、小鞠ちゃんならどうせ意味わからないで使ってるんだなって思ってくれるよ!」

小鞠「うわあああああああああああああああああああああああああ」

このみ「あれー、おっかしいなー」

このみ「もう、泣かないで、小鞠ちゃん」

小鞠「ううあああ……だって、みんなにわたし……うっ……」ヒック

このみ「大丈夫大丈夫、みんなには、私が説明してちゃんと誤解といてあげるから、ね?」

小鞠「ぅぅぅぅぅぅぅ……ひっく……うん……ありがと……」グスッ

……


……

宮内家

このみ「――――」カクカクシカジカ

小鞠「ぅぅ……」

一穂「なるほどねー」

一穂「いやー、そんなことなんじゃないかと思ってたよ」

ひかげ「ふぅ……」

ひかげ「いやー、てっきり小鞠に先を超されたのかと思って焦っちまったね」

このみ「うん?」

……


……

駄菓子屋

このみ「――――」カクカクシカジカ

小鞠「……」

楓「そういうことか……」

小鞠「ぅぅぅ……恥ずかしくて穴があったら埋まりたい……」

このみ「小鞠ちゃん、それ微妙に間違ってるよ」

楓「まあそのなんだ……」

楓「……どんまい」ポン

小鞠「ぅぅ……」

れんげ「つまり、こまちゃんはオ○ニーマスターじゃなかったってことなのん?」

蛍「えっと……そういうことになるね」

れんげ「残念なのん……」

楓「ちょっと夏海を呼んで来い」

楓「今回の悪ふざけはちょっと酷過ぎるぞ」

ひかげ「おう、やったれ駄菓子屋!」

れんげ「ひかねえ、いたのん?」

このみ「そうだねー、悪戯にしてもやりすぎだよ」



夏海「え、なになに駄菓子屋、もしかして駄菓子くれんの?」

楓「よし夏海、何もしないからちょっとこっち来い」

楓「ちょっと首の骨折ってやるからこっち来い」

夏海「うおい、なんでいきなりマジ切れモードなんすか」

夏海「ちょ! なんすか!? なんなんすか!?」ダッ

このみ「逃がさないよ」ガシッ

夏海「このみちゃんまでっ!? なんで!?」

楓「自分の胸に聞いてみな」

……


……

夏海「――――このたびは、姉ちゃんを含む、たくさんの人に迷惑をかけたこと、本当に反省してます……」

夏海「ぅぅ……もう許してください……」

楓「……」ギロッ

このみ「どうする小鞠ちゃん?」

小鞠「うん、もういいよ……」

このみ「え? もう許しちゃうの!?」

小鞠「夏海も悪気があったわけじゃないだろうから……」

小鞠「わたしが知ったかぶりしたのが悪いし……」

このみ「まあ、小鞠ちゃんがそう言うなら良いけどさ」

夏海「だよねだよね! ウチは悪くないね!」

楓「ア?」

あぁ?

夏海「姉ちゃんが勝手に勘違いして自爆したみたいなとこあるしさ」

夏海「ウチもこんなことになるなんて思ってなかったし」

夏海「たしかに、少しは煽ったりしたけど、それはひっかかる姉ちゃんが悪いよね」

楓「そうかそうか、夏海は、詐欺は騙されるほうが悪い、と言いたいわけだな」

夏海「いや……別にそんなことは言ってな――」

楓「そういえばお前、駄菓子食いたいとか言ってたよな」

夏海「え! くれるの」

楓「ああ、やるよ。ほれ、食え食え」ホイッ

夏海「……あの」

夏海「これどっからどう見ても、さっきれんちょんが捕まえてきたタニシなんですけど……」

れんげ「ウチガツカマエテキタンー」エッヘン

楓「おいおい、なに言ってんだよ、駄菓子だろ」ハハッ

楓「夏海は変なこと言うなあ」アハハ

楓「それともアレか? 私が出した駄菓子が食えないと? ああ?」

夏海「いや……だからこれ……タニシ…………」

れんげ「なっつん、タニシ食べるん?」

れんげ「だったらウチ、もっと捕まえてくるん」

楓「もちろん食うよな?」

楓「ほれ、遠慮すんな」

夏海「詐欺というより完全に脅迫なんですがっ!?」

夏海「もう勘弁してください」ダッ

このみ「あ、逃げた」

蛍「逃げましたね」

楓「ったくホントにあいつは」

このみ「ほんとにこれで良かったの?」

小鞠「うん……今回は、わたしにも悪いとこあったし」

小鞠「もうこれからは、無理に背伸びしないようにする……」シュンッ

このみ「そっか」

このみ「でも、そう思えたってことは小鞠ちゃん成長したってことだよ」ナデナデ

このみ「少し大人になったね」

小鞠「え?」

小鞠「わたしってやっぱり大人っぽい?」

このみ「え? 別にそんなこと言っ――」

小鞠「そっかー、そうだよねー」ニコニコ

小鞠「わたしって元から大人っぽいから、別に背伸びする必要なんてなかったんだね」

このみ(あー、だめだこりゃ)

楓「あー、やっぱり姉妹なんだな……」

このみ「あ、そういえば小鞠ちゃん、話って結局なんだったの?」

……

蛍(良かった……センパイの誤解が解けて…………)

蛍(ん? このみさんとセンパイ、あんな真剣な表情で何を話して……?)

小鞠「わ――――出ていこうと――――」

このみ「そっか――――」

蛍(!?)

このみ「――記憶が――」

小鞠「――――トリウムみたいな――――ね?」

蛍(一体何の話をしていて……?)

蛍(出ていくとかNaとか聞こえたような……)

このみ「確かに――――なっちゃんのために――」

蛍(出ていくって……まさかセンパイ、中学を卒業したら都会に……?)

蛍(そんな…………いや、でも聞き間違いかもしれないし……)

蛍(それにまだ二年あるし……)

蛍(大丈夫だよね……)

……

おいおい、鬱展開はやめてくれよ


……
………

れんげ「ピクニックなのん!!!!!」

蛍「だねっ!!」

夏海「おーおー、れんちょんもほたるんもテンションたかいなー」

夏海「しっかし、こういうこと姉ちゃんが企画するのって珍しいじゃない?」

小鞠「いいじゃん、別に」

小鞠「やりたかったんだから」

夏海「いや、悪いとは言ってないよ」

夏海「むしろよくやったと褒めてつかわすね」

小鞠「なんで上から目線なの……」

れんげ「それでピクニックってなにするん?」

れんげ「田植え祭りなん? 畑仕事の手伝いなのん?」

れんげ「それとも道の掃除するん?」

楓「れんげ……」

夏海「れんちょん……」

卓「」

一穂「えっと……なんでみんなこっち見るかなー?」

蛍「れんちゃん、ピクニックっていうのはね、お弁当食べたり、遊んだりすることなんだよ」

れんげ「知ってるん」

れんげ「ちょっとした小粋な冗談なのん」

夏海「ブラックジョーク過ぎるよ!」

このみ「あはは」

……

れんげ「みんなでこれやるん」ジャーン

夏海「お、竹とんぼか」

れんげ「人数分持って来たん」

れんげ「駄菓子屋もやるん!」

楓「いや、私はいいよ……」

れんげ「やるん!!」

楓「お、おう」

夏海「れんちょんほんとテンションたっかいねー」

楓「えっと、こうして」ヒュルル……ポテッ

夏海「ぷっ」クスクス

楓「笑うな」

れんげ「駄菓子屋、下手クソなんな……」

楓「っかしいなー、昔はもっとこう……」

……


……

れんげ「ウチが一番高く飛んだのん」

小鞠「え~、どう見てもわたしでしょー」

このみ「またやってる……」

蛍「あはは……」

小鞠「れんげは、真下から見てたからわかんなかったんじゃないの?」

小鞠「わたしは横から見てたからハッキリわかったよ、わたしのやつのほうが、20cmくらい、高く飛んでたから」

れんげ「ウチも横から見てたん」

小鞠「えー、じゃあ蛍に聞いてみようか」

小鞠「蛍~」

小鞠「わたしの竹とんぼとれんげの竹とんぼ、どっちが高くまで飛んでた?」

蛍「えっと……同じくらいですか――――」

小鞠「ほらー、蛍もこう言ってる」

蛍「ええ!?」

れんげ「ほたるん、同じくらいって言ってたのん」

れんげ「じゃあもういいのん、今回はこまちゃんの勝ちでいいのん」

夏海「おー、れんちょんは大人だなー」ヨシヨシ

小鞠「ぅぅ……なにこの勝負に勝って試合に負けた感」

蛍(センパイ、それ使い方逆です……)

れんげ「次は負けないのん」

夏海「よし、今度はウチも参加するよ」

蛍(センパイ、頑張ってください)

一穂「はい、麦茶」

蛍「え、あ、いただきます」

一穂「いやー長閑だねー」

一穂「こうやって芝生の上に寝転んで、お日様の陽に当たりながらごろごろするの気持ちいいわー」ゴロゴロ

一穂「ずっとこうしていたくなるよー」

蛍「あはは……」

一穂「ずっとこんな日々が、続くといいねえー」


……

小鞠「蛍、疲れちゃった?」

蛍「はい、ちょっと」

蛍「少しはしゃすぎたみたいです」

小鞠「あはは、でも楽しんでくれてるなら良かった」

蛍「はい、楽しいです」

蛍「やっぱりこういうのもいいですね」

小鞠「そだねー」

小鞠「……」

小鞠「ねえ、蛍はさ、都会に帰りたいって思ったことはある?」

蛍「え?」

蛍「いえ、特にそう思ったことはありませんね」

蛍「毎日が楽しくて、あまりそういうことを考えたことがありませんでした」

小鞠「そう……」

蛍「ここは良い所ですよね」

蛍「ほんのちょっと……不便なとこはありますけど……」

蛍「水や空気が綺麗で、自然は豊かだし、人はやさしいし」

蛍「そしてなにより、小鞠センパイ、夏海先輩、れんちゃんや、みんながいます」

小鞠「うん……本当に、いいところだよ……」

蛍「でも私がここに来てまだ一年も経ってないんですよね」

蛍「なんかもう、みんなと二、三年以上、過ごしたような気になるんですよ」

蛍「えへへ、変ですよね」

小鞠「…………」

小鞠「うううん、わたしもそんな感じがする」

小鞠「きっとみんなもそう思ってるよ」

蛍「だと嬉しいですね」

小鞠「……」

小鞠「わたしはね、蛍がここに来てくれて良かったと思ってる」

小鞠「蛍と出会えて、本当に良かったよ」

蛍「センパイ……」

蛍「嬉しいですっ!! センパイにそう言ってもらえるなんてっ!!!」ガシッ

小鞠「わわっ!」ビクッ

蛍「私もっ! ここに来て、センパイに出会えて本当に良かったです!!!」ギュッ

蛍「私、センパイに出会えて、本当に幸せです!!」

蛍「あ……すみません、急に手を握ったりして……」

蛍「センパイにそう言われたのが嬉しくて」

小鞠「いや、別にいいよ……」

小鞠「ちょっとびっくりしたけど」ボソッ

蛍(ああ、ついセンパイの手を握っちゃった……)

蛍(えへへ、センパイの手、柔らかかったな……)

蛍(ずっと握っていたいな、センパイの手)

ガチレズでシリアスが台無しwwww

蛍(ハッ、今はそんなことじゃなく……)

蛍「センパイはあの……」

小鞠「うん?」

蛍(踏み込んでいいのかな……)

蛍(わからない……)

蛍(この前の、このみさんとの会話で聞こえた、『出ていく』という言葉の意味が気になるけど……)

蛍(もしかすると、私たちには触れて欲しくないことなのかもしれない……)

蛍(けど、私はセンパイのことが、もっと知りたいから……)

蛍「センパイは…………都会に行きたいんですか?」

小鞠「うーん、そうだねぇ」

小鞠「昔は憧れてたけど……」

小鞠「というか今も少し憧れてるけど」

小鞠「それでも、少し遊びに行ってみたい程度かなあ……」

蛍「そうなんですか……」ホッ

小鞠「わたしは、できることならずっとここにいたいよ」

小鞠「だけどそれは――――」

夏海「あ、姉ちゃんとほたるんいたー!」

夏海「そんなとこで休んでないで、せっかくピクニックに来てるんだからもっと遊ぼうよ!」

れんげ「ほたるんもこまちゃんも一緒に桃太郎ごっこやるん!」

蛍「桃太郎ごっこ?」

小鞠「なにそれ?」

夏海「ウチも説明を要求しまーす!」

れんげ「ふっふ、よくぞ聞いてくれましたん」

れんげ「ルールは簡単」

れんげ「まずじゃんけんで一人、桃太郎を決めるん」

れんげ「それ以外は鬼役をやるん」

れんげ「桃太郎は、鬼を追いかけて、鬼は桃太郎から逃げるん」

小鞠「それって普通の鬼ごっこと同じじゃ……」

れんげ「桃太郎に触られたら、鬼は桃太郎に感染するん」

夏海「感染!?」

小鞠「桃太郎さんは何者なの!?」

れんげ「桃太郎に感染した鬼は、桃太郎になるん」

れんげ「それでオリジナル桃太郎と一緒に、残りの鬼を追いかけるん」

小鞠「こわっ! 桃太郎さんこわっ!」

夏海「絶対この桃太郎は、正義の味方じゃないよ!」

夏海「桃から生まれた、異世界の生物かなにかだよ!」

やってることは普通の遊びなのに、設定がこええwww

れんげ「鬼が全員感染して桃太郎になったら、桃太郎側の勝ちなのん」

小鞠「全員桃太郎さんになったのに、全くハッピーエンドって感じがしないよ!」

蛍「えっと、それじゃあ、鬼の勝利条件は?」

れんげ「鬼が勝つことはないのん」

小鞠「なにそれ酷い!」

れんげ「鬼は、鬼として生まれた時から、退治されることを運命づけられてるん」

れんげ「退治されるのが遅いか早いか、の違いがあるだけなのん」

夏海「鬼せつねえ!!」

小鞠「あ、でも最終的にみんな桃太郎さんになるんだから、全員が勝者ってことになるのかな?」

夏海「おお!」

夏海「すごいよれんちょん! このゲームには敗者がいないんだ!」

れんげ「ふふん、もっと褒めていいのん」エッヘン

蛍「あはは……」


……

楓「段々コツを思い出してきた」

楓「力むとダメなんだな」

楓「こう、平行にして」シュッ

夏海「意外とハマってる……」

れんげ「駄菓子屋独りでなにやってるん?」

このみ「もう帰るよー」

………
……


……
………
学校

蛍「あ、れんちゃんおはよー」

れんげ「にゃんぱすー」

蛍「にゃんぱすー」

蛍(あれ、机が……)

れんげ「そっか……こまちゃんは『答え』を見つけたんな……」

蛍「?」



一穂「あー、夏海はまた遅刻かー」

蛍「あの、小鞠センパイも――」

ガラッ

夏海「セーフ! セーフ! ギリギリセーフ!」

夏海「姉ちゃん、なんで起こしてくれないんだよ!?」

夏海「って姉ちゃんいないし!」

おい…

一穂「全員揃ったみたいね」

蛍「小鞠センパイがまだ……」

夏海「ウチのこまっちゃんがまだ来てませんー」

夏海「ウチを起こさないで先に出たはずなのに、なにやってんだろうね」

一穂「あー、こまちゃんはもういないよ」

蛍「え?」

夏海「はっ?」

れんげ「……」

一穂「都会の学校に転校しちゃったから」

蛍「……」

夏海「……」

れんげ「……」

夏海「いやいや、かずねえ、なに言ってんのさ」

夏海「冗談にしてもそれは酷いって」

夏海「あはは、嘘つくならもっとマシな嘘つこうよ」

一穂「嘘じゃないだけどなあ……」

夏海「いやいや、もういいって」

蛍「あの……センパイが転校したって本当なんですか?」

夏海「嘘に決まってんじゃん、ほたるんかずねえに騙されたらだめだよ」

一穂「本当だよ」

夏海「ちょっとかずねえ、マジ顔でそういうタチの悪い冗談言うのやめてよ」

一穂「だから冗談じゃないだって」

夏海「嘘……でしょ……?」

夏海「マジで言ってるん?」

一穂「うんマジで」

一穂「さすがにウチも、こんな嘘はつかないよ」

夏海「いやいやだっておかしいでしょ?」

夏海「ウチ何も聞いてない!!」

夏海「兄ちゃんは?」

卓「」フルフル

夏海「ほらっ! ウチらが何も聞かされてないのに転校とかおかしいじゃん!」

一穂「そう言われてもねえ……」

夏海「ちょっとウチ、母ちゃんに聞いてくる!」ダッ

一穂「あ、ちょっと夏海」

一穂「あー、行っちゃった」

蛍「あの……」

蛍「本当に小鞠センパイはいないんですか?」

一穂「うん、残念だけど……」

蛍「そんな…………いくらなんでも、急過ぎますよ…………」

れんげ「ほたるん……」

……


……
………
蛍(センパイがいなくなってから、もう一週間か……)

れんげ「最近なっつん元気ないん……」

蛍「センパイが転校して一番ショックだったなのは多分、夏海先輩だから……」

蛍「何も聞かされてなかったみたいだし……」

れんげ「うちもびっくりしたけど、きっとなっつんはもっとびっくりしたん」

蛍「そうだね」

蛍「だから私たちが、元気づけてあげないとだね!」

れんげ「……ほたるんはエラいんな」

れんげ「ほたるんだって、こまちゃんがいなくなって、ショックだったはずなのん」

蛍「私は……」

蛍「夏海先輩ほど、不意打ちじゃなかったから……」

蛍「それでも驚いたし、悲しかったけどね」

蛍「それに、未だにひょっこり帰って来てくれるんじゃないかと思っちゃう……」

蛍「多分、小鞠センパイが転校したってこと、頭ではわかってても、ちゃんと理解できてないんだと思う」

れんげ「ほたるん……」

蛍「でも、センパイも、休みとかになったら遊びに来てくれますよね」

蛍「れんちゃんのお姉さんみたいに」

れんげ「……多分こまちゃんは、もう二度とここには帰って来ないん」ボソッ

蛍「え?」

蛍「れんちゃん、今何て……?」

れんげ「なんげもないん」

れんげ「ほたるんの言う通りなん」

れんげ「ウチらが元気だして、なっつんを元気づけないといかんのです!」

蛍「うん、そうだね……」

パリーン!!

蛍「なに……今の音!?」

れんげ「何事なん?」

れんげ「行ってみるん」

蛍「うん」

夏海「あはは、あはは」

夏海「てやー」ブンッ

ぱりーん

れんげ「なっつん! なにやってるん!?」

蛍「夏海先輩!?」

夏海「おー、れんちょんとほたるん」

夏海「ん? なにやってるかって?」

夏海「見りゃわかんじゃん」

夏海「目の前に校舎の窓ガラスがあって、手にバット持ってたらやることは一つだよね」

蛍「夏海先輩……なんで……」

夏海「なんでってそりゃ楽しいからだよ」

夏海「こうやって窓ガラスを叩き割るとさ、イライラも悩みも全部吹き飛ぶんだよ」

夏海「それに、ちょっと青春っぽくない? 窓ガラス割るって」

夏海「ほたるんもやってみる?」

れんげ「なっつん、こんなことやめるん!」

れんげ「今のなっつんをこまちゃんが見たら悲しむんよ!」

夏海「…………あ"?」イラッ

夏海「あの薄情者がなんだって?」

蛍「薄情者だなんて……そんな言い方……」

夏海「ウチらに一言も言わず、勝手にいなくなるヤツのどこが薄情じゃないのさ?」

夏海「確かにさ、相談を受けても、ウチらじゃ頼りにならないのかもしれないけど、別れの言葉すらないってありえないでしょ?」

夏海「しかもウチは……家族なんだよ? 妹なんだよ?」

夏海「そりゃあウチは姉ちゃんにいっぱい迷惑をかけたり悪戯もしたりしたけど」

夏海「それでも言葉には出さないけど、互いを大事に思ってて、信頼して、必要としてるって……そう思ってた」

夏海「でも姉ちゃんは、ウチらのこと、なんとも思ってなかった」

蛍「そんなこと――」

夏海「勝手に勘違いして、ウチってホントバカみたいじゃん?」アハハ

夏海「あーあー、姉ちゃんのこと考えたらまたイライラしてきた」

夏海「スッキリしないとね」

れんげ「なっつん!」

夏海「ほーれっさ!」ヒュンッ

パリーン

蛍「きゃっ!」

れんげ「ほたるん!」

蛍「……ガラスの破片に当たっちゃったみたい……」テヘヘ

れんげ「ほたるん、頬から血が出てるん」

夏海「あ…………ほたるん……ご――」

れんげ「なっつん! ほたるんに謝るん!!」

夏海「……」

夏海「…………ウチは悪くない」

れんげ「なっつん!」

夏海「ほたるんがそんなとこにいたのが悪いんだし」

夏海「夏海ちゃん、なーんも悪くないもーん」

???「僕は悪くない」

れんげ「なっつん! ほたるんに謝るん!!」

夏海「あーもう、うっさいなあ」

夏海「もうウチに構わないでよ…」ダッ

れんげ「あ! なっつん!」

蛍「どうして……こんな……」

れんげ「ウチ……テレビで見たことあるん」

蛍「え?」

れんげ「ガラスには弾性があるから、こっち側から叩いて割っても、破片は全部向こう側に行かず、」

れんげ「叩いた側に飛んでくることもあるんって」

蛍「いや……別にどうして破片がここに飛んで来たか聞いたわけではなく……」

れんげ「それよりほたるん怪我は大丈夫なん?」

れんげ「早く手当するん」

蛍「うん……」

………
……


……

れんげ「」グテー

ひかげ「最近れんげ元気ないなー」

れんげ「別にそんなことないん」

ひかげ「あれだろ? 小鞠がいなくなって寂しいんだ?」

ひかげ「しょうがないなー、ほれ、お姉さんに甘えてみぃ?」

れんげ「……ひかねえ、うざいのんな……」

ひかげ「うざっ!? うざってちょっ!? いやいや、れんげ、それはないっしょー?」

れんげ「そんなことよりウチ、絵描くん」

ひかげ「そんなことよりって……まあいいけど」ワタシウザクナイヨネ

ひかげ「おー、描け描け」

れんげ「ひかねえの似顔絵描くん」

ひかげ「私の似顔絵かー」

ひかげ「美人に描いてくれよー」

ひかげ「まっ、私がモデルなんじゃ、美人以外にはならないか、あはははは」

れんげ「…………」

ひかげ「なんか反応しろよ! ツッコめよ! 恥ずかしいだろ!」

れんげ「自分で言って恥ずかしくなるなら、最初から言わなければいいのん」

ひかげ「いやまあそうだけども……」

れんげ「大丈夫わかってるん。ひかねえはウチを元気づけるためにワザとピエロを演じてるって」

ひかげ「なんか指摘されると余計に恥ずかしいんだけどっ!!」

れんげ「ひかねえ、口は何個がいい?」

ひかげ「あー、普通に一個でいいよ」

れんげ「遠慮しなくてもいいんよ、いっぱい描いてあげるん」カキカキ

ひかげ「ちょっ! マジやめろって!」

れんげ「絵のタイトルは、『苦渋』にするのん」

ひかげ「だから人の似顔絵をそういうテーマで描くのやめようよ……」

れんげ「…………」カキカキ

ひかげ「今なに考えてるか当ててやろうか?」

れんげ「やってみるん……どうせひかねえには、わかりっこないん」

ひかげ「夏海のことだろ?」

れんげ「!?」

れんげ「すごい! ひかねえエスパーだったん!?」

ひかげ「それくれぇわかるって」ヘヘッ

れんげ「……ウチな、なっつんに伝えたいことたくさんあるん」

れんげ「けど、どうすればいいのかわからないん」

ひかげ「そーじゃ……話してみるしかないんじゃないの?」

れんげ「お話しても、伝わらないかもしれないのん」

ひかげ「まあそっかもね」

れんげ「…………ひかねえダメダメなのん」ジトー

ひかげ「ダメダメじゃねえよ」

ひかげ「確かに話しても、伝わらないかもしれないけど、話さなかったら伝わるもんも伝わらねえだろ」

ひかげ「だったら、少しでも可能性のあるほうにかけたほうがいいんでねーの?」

れんげ「……確かにそうなんな」

れんげ「なかなか良いこと言うん、今日のひかねえは変なんな」

ひかげ「ちょっと待て、それはどういう意味だよ?」

れんげ「そのままの意味なのん」

ひかげ「納得いかねー!」クワー

ひかげ「それにな」

ひかげ「一回話して伝わらないんだったら、伝わるまで何度も話せば良いだろ?」

れんげ「そんなごり押しが通るのは、相手がひかねえの時くらいなのん」

ひかげ「いやいや、その言い方だとまるで私がチョロいみたいじゃねーか!」

れんげ「でも少しは参考になったのん」

ひかげ「そりゃあ良かった」

れんげ「ちょっと、ウチ出かけてくるん」

ひかげ「おう、行ってこい行ってこい」

れんげ「じゃあ行ってくるん!」

ひかげ「あ、ちょっと待ってれんげ!」

れんげ「なんなん? 今ウチ、良い感じで出かけようとしてたのに……」

ひかげ「私って、別にウザくないよな?」

れんげ「…………さあ? ウチにはなんとも言えません」

ひかげ「そすんさー!!」クワッ

???「小鞠ちゃんはね「転校」したんだよ
蛍ちゃんも「転校」したら…イヤ、だよ…」

れんげ(なっつんいたん!)

夏海「」ジュボッ

れんげ「なっつん、なにやってるん!?」

夏海「いや、学校を燃やして、焼き芋をやろうと思って」アハハ

れんげ「なっつん! もういい加減にするん!!」

夏海「っ」ビクッ

夏海「なんだよ、大声だして」

れんげ「こまちゃんはきっと、なっつんのためにここを出ていったん」

夏海「はあ? なに言ってんの? そんなわけないだろー」

夏海「姉ちゃんはウチらのことなんてどうでもいいんだよ」

れんげ「なっつん、それ本気で言ってるん?」

夏海「っ!」

夏海「それは……」

れんげ「こまちゃんがなっつんのこと、どうでもいいなんて思うはずないん!」

れんげ「それはなっつんが、一番よくわかってるはずなのん!」

夏海「……うるさいよ」

れんげ「え?」

夏海「うるさいって言ってんだよ!!」ダッ

れんげ「あ! なっつん待つん!」

れんげ(なっつん、泣いてたん……)

れんげ(ウチまた……結局なっつんに何も伝えられなかったん……)

……


蛍(はあ……あれから夏海先輩とちゃんと話せてないし……)

蛍(れんちゃんもあまり元気ないし……)

蛍(私は、どうすればいいんだろう)

夏海「」タッタッ

蛍(あれは夏海先輩!?)

蛍「夏海先輩!!」

夏海「あ、ほたるん……」

蛍「夏海先輩、泣いて……?」

夏海「いや、泣いてないよ」グスッ

夏海「え、なに?」

夏海「ウチが泣いてるように見える?」ヒック

蛍「見えますけど……」

夏海「あはは……」グスッ

夏海「あ、そういえば、この前はごめんね」

蛍「いえ、怪我自体は大したこと無かったので」

夏海「良かった、ホントにごめんね」

蛍(なんだか小鞠センパイがいなくなる前の、夏海先輩に戻ったみたい……)

蛍「あの……」

蛍(これを言うと、夏海先輩は怒るかもしれない……けど)

夏海「うん?」

蛍「小鞠センパイは、ピクニックの時、できるならずっとみんなと居たいって言ってました!」

蛍「だからきっと、夏海先輩のこと、どうでもいいなんて思ったりしてないと思います!」

夏海「そうだよねー、そうなんだよ……」

夏海「あはは、れんちょんにも似たようなこと言われたよ」

夏海「なんか色々ふっきれちゃった」

夏海「まさか小学一年生に説教をされるとは……夏海ちゃんも落ちぶれたものだ」

蛍「元からそんなんだった気もしますけど……」ボソッ

夏海「ん? 何か言った?」

蛍「いえ、何も言ってません」

夏海「れんちょんにも謝らないといけないないなあ……」

夏海「しっかし、よく考えると、小一に正論言われて逆ギレするウチってちょっとヤバくね?」

蛍「えっと……それは……」

夏海「あはは」

夏海「じゃあ、また明日」バイバーイ

蛍「はい、さようなら」

……


夏海(はあ……ウチってホントバカだなあ)

夏海(姉ちゃんはウチがいないとダメだと思ってたけど、逆だったんだ)

夏海(ウチのほうが、姉ちゃんがいないとダメだったんだ)

夏海(これは盲点だったなあ……)

夏海(ウチは今までいっぱい、姉ちゃんに支えられてきたんだ)

夏海(次姉ちゃんに会うときまでには、今度こそ本当に、)

夏海(姉ちゃんを助けて支えて守れるような、そんな人間になりたいなあ……)

夏海(でも次会ったら、文句の一つや二つは言ってやらないと……)

夏海(今は自分自身のことさえ、満足にこなせてないから、先は長そうだけど)

……


……

学校

蛍「あれ……?」

蛍「また机が……」

蛍「まさか……」

れんげ「……」

れんげ「良かった……なっつんも『答え』を見つけたんな……」

卓「」

一穂「よ~し、みんな揃ってるなあ」

蛍「あの……夏海先輩がまだ来てません……」

一穂「あー、夏海は都会の学校に転校したよ」

蛍「…………」

蛍「そんな……また……ですか……」

れんげ「ほたるん……」

蛍(せっかく夏海先輩とまた仲良くできると思ったのに……)

蛍(でもおかしいよね、やっぱり……)

蛍(小鞠センパイも夏海先輩も急に転校するなんて……)

……



蛍「センパイも夏海先輩もいなくなっちゃったね」

れんげ「二人きりなのん」

蛍「昨日、センパイの家に行ってみたんだけど、なくなっちゃってた」

蛍「元から何も無かったみたいに、家があった場所が、空き地になってたよ……」

蛍「ねえ……れんちゃんは何か知ってるんじゃないの?」

れんげ「ウチは……」

蛍「ごめんね……なんかれんちゃんを責めるような言い方になっちゃった……」

蛍「れんちゃんが言いたくないなら、言わなくてもいいから」

蛍「でもお願いだから……お願いだから……れんちゃんまでいなくならないで……」ギュッ

蛍「れんちゃんまでいなくなったら私……」グスッ

れんげ「大丈夫なん、ウチはずっといるん」

れんげ「ずっとここにいるん……」

……


……

蛍「ごめんね、年上なのに取り乱したりして」ヒック

れんげ「……ほたるんが望むなら、ここの秘密を教えてあげてもいいのん」

蛍「ここの、秘密……」

れんげ「でもそれを知ったら、ほたるんはショックを受けるかもなのん」

蛍「うん、それでもいいよ」

蛍「それでも私は、真実が知りたい」

れんげ「……」

れんげ「……わかったのん」

れんげ「ここでは人に聞かれるかもしれないから、ちょっとついてくるん」

蛍「うん」

卓「」

……


……

蛍「ここは……みんなで桜を見ながら、桜餅を食べた場所だね」

蛍「あの頃はみんないて……」

蛍「懐かしい……あれから一年も経ってないはずなのに、もう何年も前のことみたい」

れんげ「その感覚はあながち間違ってないのん」

れんげ「ここは、時間の流れが適当だから……」

蛍「そうなの?」

れんげ「ここはそういう場所なのん」

蛍「あー、時々、夏から冬に飛んだり、春から夏になって、また春に戻ったりするから、前々から少しおかしいなあ、とは思ってたんだけど、田舎だからなのかなって」

れんげ「ここは外の世界と違って悪意がなく、やさしい場所なのん」

蛍「え?」

れんげ「ほたるん、ここにいる人って、ウチも含め、変わった人が多いと思ったことはないん?」

蛍「それは……少しだけ……」

ほたるん、田舎バカにしすぎだろwww

れんげ「……」

れんげ「ここはな、正常から逸脱した人達を、世界から隔絶する場所なのん」

蛍「え……?」

蛍「れんちゃん、それはおかしいよ」

蛍「だって私はお父さんの仕事の都合でここに引っ越して来ただけで……」

れんげ「ほたるんの、お父さんはなんのお仕事してるん?」

蛍「それは、えっと…………」

蛍「あれ……? 思い、だせない……」

蛍「この前までは、覚えてたはずなのに……」

れんげ「それはほたるんの偽りの記憶が剥がれて来たってことなのん」

れんげ「ほたるんもここを出る時が近いんな……」

蛍「え? 私には、なにがなんだか……」

れんげ「ここに仕事なんてあるわけないのん」

れんげ「ほたるんは、なんでここに引っ越して来たのん?」

蛍「だからそれは、お父さんの仕事の都合で……」

蛍「いや……あれ……私、前の学校で……友達に……」

蛍「え……嘘……、なんなの……この記憶……?」

れんげ「本来の記憶が戻りかけてるんな、やっぱりここを出る時が近いん」

蛍「……ちがっ……私そんなこと……」

れんげ「それはきっと、ここに来る前のほたるんの本当の記憶なん」

蛍「そんな……嘘……」

蛍「だって私は普通だよ! 人より少し、可愛いものが好きなだけで、隔離されるような異常なんて持ち合わせてないよ!」

れんげ「ほたるん、こまちゃんのぬいぐるみ、作ってたんな?」

蛍「こまぐるみのこと?」

れんげ「あれそういう名前なんな……」

れんげ「そのぬいぐるみは、何個くらい作ったん?」

蛍「2374個だね」

れんげ「おうふっ…………」

れんげ「つい変な声が漏れてしまいました……」

蛍「でも今は586個しかないよ」

れんげ「……残りの1788個はどこに行ったん?」

蛍「食べちゃった」

れんげ「え……? 今なんて言ったんのん?」

蛍「だから食――」

れんげ「ストップ!」

れんげ「やっぱ言わなくていいのん」

れんげ「今のは聞かなかったことにするん……」

蛍「?」

ほたるん完全に頭おかしいんですけどwwwww

蛍「でもやっぱりおかしいよ」

蛍「確かに、時々昼間なのに影が消えたり、地形が変わったりすることがあって少しおかしいなとは思ってたけど……」

れんげ「……」

蛍「それに、センパイが夏海先輩より先に出ていった理由もわからないし……」

れんげ「こまちゃんはな、けっこう前からここのことに気付いていて、出ようと思えばいつでも出られたん」

れんげ「けど、なっつんを置いていけないってずっと留まってたん」

蛍「なら……」

れんげ「でも、こまちゃんがなっつんを甘やかすせいで、二人は、共依存のような関係になってしまったん」

蛍「共依存……?」

れんげ「末期のなっつんは怠けて、こまちゃんになんでもやらせようとしてたらしいのん」

れんげ「家の手伝いはもちろん、お茶を注ぐのもこまちゃんにやらせてたのん」

れんげ「終いには『歯磨くのメンドクサーイ。代わりに姉ちゃん磨いてよ』とか言い出してたらしいのん」

蛍「そんな……ずるい……」

蛍「私もセンパイに歯を磨いて欲しい!」

れんげ「……」

蛍「じょ、冗談だよ!」

蛍「でも仮に、ここがれんちゃんの言うような場所だとしても」

蛍「そこまでわかってるなら、れんちゃんも私も、ここから出られるよね?」

蛍「それなら、一緒にセンパイ達に会いに行こうよ!」

れんげ「それは無理なん……」

れんげ「ほたるんは出られても、ウチはこっから出ることができないん」

蛍「え、どうして?」

エロゲって話こんなにぶっとんでんのかwww

れんげ「ウチは生まれた時からここにいるん」

蛍「うん? それはセンパイ達も同じでしょ?」

れんげ「本当は違うん、こまちゃんとなっつんは、後からここにやってきたん」

蛍「そんな……嘘?」

れんげ「ウチはさっき、ここにいる人達はみんな変わってるって言ったけど」

れんげ「ほたるんは、ここの人達と比べても特にウチのこと、変わってると思ったことはないん?」

蛍「え……それは……」

れんげ「ウチは異質の中にいてもやっぱり異質だったん」

れんげ「ウチは生まれながらにして、世界から異物だと判断されたん」

れんげ「変わり者の中ですら、誰にも理解されないん」

蛍「れんちゃん……そんな悲しいこと言わないで……」

れんげ「勘違いして欲しくないんけど、ウチはみんなといれて楽しかったのん、幸せだったのん」

れんげ「だから大丈夫なのん」

れんげ「ほたるんは、ウチと違ってここから出れるん」

れんげ「だからここを出て、みんなに会いに行くといいん」

蛍「そんな……そしたら、れんちゃんが一人になっちゃう……」

れんげ「ウチは一人でも大丈夫なん」

れんげ「ほたるんはここから卒業する資格があるん」

れんげ「きっともうほたるんは、外の世界でも、上手くやっていけるん」

………
……


蛍(私は…………どうすべきなんだろ……)

蛍(どうしたいんだろ……)

蛍(センパイや夏海先輩には会いたいし……)

蛍(もしここがれんちゃんの言うように外界から隔絶された場所だというなら)

蛍(本当の世界を見てみたい……)

蛍(でもれんちゃんを一人にはしたくない……)

蛍(私は………………)

……

れんげ「あ、ほたるん」

蛍「れんちゃん、私決めたよ」

蛍「私は外の世界が見てみたいし、小鞠センパイと夏海先輩に会いたい」

蛍「だから私はここを出たいよ!」

れんげ「そっか……決めたんな……」

蛍「でも私、れんちゃんともう会えないなんて嫌」

蛍「だから、れんちゃんも、ここを出ることを諦めないで」

れんげ「それは無理なん……」

れんげ「ウチは、外の世界には適合できないん……」

れんげ「きっとどれだけ時間が経っても、ウチは変わることは出来ないのん」

蛍「うううん、れんちゃんは変わる必要なんてないよ」

蛍「私はね、ここに来て、変わったと思う……多分良いほうに」

蛍「自分ではあまりわからないけど、お母さんに、前より明るくなった、よく笑うようになったって言われた」

蛍「それはきっと、みんなのやさしさや、温かさに触れたから」

蛍「だからここを卒業する資格を得たのかなって」

蛍「でも私、れんちゃんはそのままでいいんだと思う」

蛍「誰かに合わせる必要なんてないし、世界に合わせる必要なんてない」

蛍「れんちゃんはれんちゃんのままで、ここを出れば良い」

蛍「もし世界がれんちゃんを否定するなら、私がそんな世界を否定する」

蛍「違いや異質を排除しようとする世界なら、私がそんな世界変えてみせる」

れんげ「……なんかほたるん、世界を壊そうとする、悪役みたいなこと言ってるん」

蛍「ちょっとれんちゃん! 茶化さないでよっ!」

蛍「急に恥ずかしくなっちゃうから……///」

れんげ「でもそれが……ほたるんの『答え』なんな」

れんげ「……」

れんげ「ウチ……時々変なこと言ったりするけど、それでもいいん?」

蛍「うん」

れんげ「ウチ、変な遊び考えたり、変なことしたりするけど、そのままでもいいのん?」

蛍「うん!」

スタッフみたいなもんじゃね、知らんけど

れんげ「……」

れんげ「それなら、ウチ、ちょっと頑張ってみるん」

れんげ「ウチがウチのままで、外の世界に出られるように……」

蛍「うん!」

蛍「だかられんちゃん、外の世界で、また会おう!」

蛍「私は、先に行って待ってるから」

れんげ「じゃあ、また一緒に遊ぶん!」

蛍「うん、じゃあまた!」



れんげ「ごめんなほたるん……」

れんげ「ウチ嘘ついたん」

れんげ「ここ出ると、ここでの記憶は消えてしまうん」

れんげ「だからもし仮にウチがここを出られたとしても、ほたるんはウチのこと覚えてないん」

れんげ「だけど……ほたるんの言葉、とっても嬉しかったん……」

れんげ「さよなら、ほたるん…………元の世界でも元気で」

れんちょん……(´;ω;`)ブワッ


……
………

蛍(ふう、この大学の雰囲気、やっぱりいいなー)

蛍(周りにも、構内にも、自然がたくさんあって……なんだかとっても落ち着く……)

蛍(うん、やっぱりここにしよう)

蛍(来年からここに通えるように、頑張らないと!)

蛍(でも不思議……こんな自然をなんだか懐かしいと感じてしまうのは……)

蛍(私ずっと、東京暮らしなはずなのに……)

??「誰かー! 助けてー!」

蛍(!? 誰かが困ってるみたい!)

蛍(それにこの声、絶対に助けないといけない気分にさせる……)



小鞠「あ、そこのお姉さん、少し手を貸してもらえませんか?」

蛍「はい」

小鞠「少し、溝にハマってしまって……」



小鞠「いやー助かりました」

小鞠「大学内にこんな溝があるっておかしいですよね!」

蛍「あはは……そうですね……」

小鞠「あ、私小鞠って言います」

小鞠「お姉さんは、どこの学部の人ですか?」

蛍「いえ、私はまだ高校生で、見学に来てるだけで……」

小鞠「高校生! 私より年下!?」

夏海「あ、姉ちゃんいたいた!」

夏海「もうなにやってんのさー」

小鞠「あの……さっきのことは、内緒で……」ヒソヒソ

蛍「あ、はい」

夏海「お、美人さん」

小鞠「さっき溝にハマってるところを助けてもらって……」

小鞠「って自分でバラしちゃった!!?」

こまちゃんアホ過ぎwww

夏海「あはは、ホントなにやってんだか、こまちゃんは!」

小鞠「こまちゃん言うな!!」ブーブー

小鞠「あ、こっちはわたしの妹の夏海」

夏海「よろしくねー」

蛍「私は一条蛍って言います」

夏海「ほたる……ほたるん」

蛍「え?」

小鞠「これこれ、初対面の人にいきなりあだ名つけない」

小鞠「えっと、初対面だよね?」

蛍「はい、そのはずですが」

蛍「でも『ほたるん』って、なんだかとっても懐かしい響きです」

夏海「そうそう、ウチもほたるん見たとき、なんか『久しぶり』って言いそうになったよ」

小鞠「もうあだ名使ってるし……」

小鞠「でも私もなんか懐かしいって気がしたんだよねー」

蛍「不思議ですね、私もです」

小鞠「あ、もしかして私たちどっかで会ったことあるとか?」

夏海「え、なになに? 姉ちゃんナンパ?」

小鞠「違うよ!」

小鞠「あ、そうだ蛍」

小鞠「私たち昼ご飯食べるとこなんだけど、一緒にどう?」

夏海「やっぱりナンパじゃん」

小鞠「だから違うって!」

蛍「あ、じゃあ喜んで」

小鞠「丁度お弁当も作って来たんだよねー」

夏海「げっ! 姉ちゃんあの産業廃棄物をほたるんに食べさせる気なの?」

小鞠「人の弁当を危険物扱いすんな!」

小鞠「ちょっと焦がしちゃっただけだし……」

夏海「ちょっとぉ?」

蛍「あ、私ちょうど、手作り弁当が食べたい気分だったんです!!」

小鞠「本当!?」

夏海「やめといたほうが良いよ」

夏海「三日三晩、悪夢にうなされるから」

小鞠「そんなわけないじゃん!」

小鞠「もう、夏海なんてほっといて、蛍行こっ」

夏海「そんな怒んないでよー」

???「ふひもひくん」ヒュコヒュコー

夏海「わっ! どっから沸いた!? この子?」

蛍「制服……」

小鞠「付属中学の制服だね」

蛍「リコーダー吹いてますね」

夏海「そしてあんまり上手くない……」

???「ひゃんはすー」ヒュコヒュコー

夏海「え? なんだって?」

小鞠「リコーダーくわえてたら、なに言ってるのかわからないよ」

夏海「はいはーい、夏海ちゃんからの提案!」

夏海「リコーダーを、口から離して喋ればいいと思いまーす」

???「にゃんぱすー」

夏海「どっちにしろわかんねえ!!!」




今日はここまでーー

けっきょくほたるんが聞いたNaってなんだったのん?

おとさねえ

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