━━部室
ことり「うまく飛べないみたいだからつい拾ってきちゃった」
小鳥「ピヨー! ピヨァー!」
穂乃果「わー、可愛いね!」ツンツン
海未「雛には見えませんが…何故飛べないんでしょうか?」
真姫「たまにいるみたいよ? そういう成鳥も」
小鳥「ピー! ピヨおおおお!」
花陽「や、やけによく鳴く鳥さんだね」
希「何かを必死に訴えようとしてるみたいに見えるね」
凛「えー、考え過ぎだよ希ちゃん」
花陽「お、お腹減ってるのかな?」
にこ「それよりなんで部室に鳥なんか連れてくるのよ…」
ことり「だ、だって仲間もいないみたいで寂しそうだったから…」
にこ「だからって連れてきてどうすんのよ?」
ことり「せ、世話とかできないかなぁ…?」
絵里「う、うーん……そうねぇ…」
小鳥「ぴよっしゃおらああぁぁぁ!」
真姫「……うるっさい鳥ね」
穂乃果「真姫ちゃん、そんなこと言っちゃダメだよー」
海未(何だか本当に何かを訴えようと叫んでいるように見えますね……)
小鳥(なに!? 何でこんなことになってるのおぉぉぉ!?)
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━━30分前、765プロ
P「……」カタカタカタ
春香「プロデューサーさん、お疲れ様です。甘~いクッキーをどうぞ」スッ
P「おっ、ありがとう春香。いやー、長いこと事務仕事ばかりしてると甘い物が欲しくなるからありがたいよ。……どれどれ」パクッ
春香「どうですか?」
P「……おう! こりゃあ美味いな!」
春香「そうですか。えへへ、よかったぁ。棚に閉まっておくので食べたくなったらいつでも食べてくださいね」
P「ああ、ありがとう」
P(春香……砂糖と塩間違えたな…後でこっそり食って処理しとかないとな。事務所が悲惨なことに…)ポロポロ
雪歩「ぷ、プロデューサー? なんで泣いてるんですか?」
P「ああ、雪歩……いや春香の優しさが目に染みてさ…」グスッ
雪歩「な、何だかよく分かりませんけど…お茶置いておきますね。甘い物によく合うと思うので」コトッ
P「くぅ…ありがとう……」ホロリ…
律子「幸せ者ですねー、プロデューサーは。現役アイドルの手作りクッキーに淹れたての最高級のお茶ですもんね。至れり尽くせりじゃないですか?」
P「はは、何言ってんだよ律子。まぁ、嬉しいことは否定しないけどさ」ズズ
雪歩「あ、律子さんもどうぞ」コトッ
律子「ありがと、雪歩。…ちょっと聞きたいんだけど、雪歩って男の人苦手だったわよね? プロデューサーは大丈夫なの?」
雪歩「え、えっと…私の場合男の人が隣にいるだけで気絶しそうになるくらい緊張しちゃうんですけど…プロデューサーは何というか、一緒にいると心がぽかぽかするというか……あ、緊張するのは一緒なんですけど……///」
律子「……そう」
P「嬉しいな、雪歩も成長してきてるってことか」
雪歩「そ、そんなことないですよぅ……/// それじゃあ私、レッスンにいってきますね」
P「おう、頑張ってこい」
ガチャ…バタン
P「一緒にいると心がぽかぽか…か。信頼されてるってことかなぁ、律子?」
律子「さあ、好きに解釈したらどうですか」シラッ
P「あれ……なんか急に冷たくなった…?」
律子「自分の胸に聞いてみたらどうですか」
P「何だよまったく……はぁ、次は企画書か。仕事が一つ終われば次がくる…ワンコそばみたいだな」スッ
律子「冗談言う元気があるならまだまだ大丈夫でしょう」
P「それもそうか」カリカリ
律子「…あれ、万年筆変えました?」
P「おお、気づいてくれたか! 日頃の労いを込めて貴音がプレゼントしてくれたんだ。これ使いだしてから手の疲れがだいぶ和らいでな」
律子「へー、よかったですね。…そういえばネクタイもいつもと違うような…」
P「ああ、こっちは美希から貰ってな。『いずれは美希が結んであげるの!』なーんて冗談と一緒にな」ハハハ
律子「さいですか……もしかしてまだ何か?」
P「ああ。革靴は真から、響とやよいからマフラーと手袋、真美から指輪、あと千早から生声の入ったCD貰ったな」
律子「……」
P「プロデューサー冥利に尽きるよなぁ、ホント」ジーン…
律子「夜道には気をつけてくださいね」
P「え、なんで?」
律子「あなたは自分が周りからどう思われているか少しは自覚した方がいいですよ」
P「お、おいおい。どういう意味なんだそれ?」
律子「くれぐれもプロデューサーとアイドルということをお忘れなく」
P「言いたいことがあるならもう少し分かりやすく伝えてくれよ……」
律子「…要するに男女の仲への一線は越えないようにしてくださいということです」
P「何言ってんだ、そんなの当たり前じゃないか」
律子(ここまで言ってまだ伝わりませんか……この朴念仁が…そのうち誰かに刺されなきゃいいけど……)ハァ…
P「ともあれ担当のアイドルに慕われてるってのは嬉しいもんだよな」
律子「ですね」
P「律子も今度のオフに竜宮の三人と出かけるんだって?」
律子「なっ…誰からそれを……」
P「亜美が嬉しそうに話してたぞ。久しぶりにりっちゃんとお出かけだー!…ってな。あんなにいい笑顔の亜美はしばらくぶりだったなぁ、最近忙しかったみたいだし」
律子「そ、そうですか…」
P「おや? 顔が赤くないか律子?」
律子「えっ!?///」ババッ
P「はは、冗談だよ」
律子「……」シュッ
P「いてっ! お、お前な…ボールペン投げるのはナシだろ…」
律子「あなたが変なこと言うのがいけないんですよ」フン
P「……素直に喜べばいいのに」
律子「なにか?」ギロッ
P「いえ、なんも」
小鳥(ぎぎぎ……私の眼前で和気あいあいと話しおってからに……。プロデューサー同士の会話な上に話題が担当アイドルのことでは話に混ざりづらい…)
小鳥(……はぁ、それにしても最近なんだか寂しいわね)
小鳥(アイドルのみんなは人気がでてきて事務所にいることが少なくなったし…それに合わせてプロデューサーさんと律子さんの仕事量も増してこちらもあちこち飛び回るようになってしまった……)
小鳥(喜ぶべきことなんだろうけど、前みたいにみんなでのんびり…ってわけにはいかないのかなぁ……)
小鳥(さらに最も重大な変化が……)
小鳥(私の存在感が薄くなってきている…!)
小鳥(みんなとの絡みが減ったことで事務所での影が薄くなってる気がするのよね……さっきお茶貰えなかった気がするし…今も話を振ってくれる気配がまるでない……)
小鳥(このままでは私の事務所における立ち位置が事務員Aになってしまうわ……!)
小鳥(でもどうしましょう…存在感を出すための策など私には浮かばない……)
小鳥(……んっ!? そうだ、逆転の発想よ小鳥! 存在感が薄くなっているのなら…)
小鳥(仕事してなくてもばれないのでは…!?)
小鳥(こ、これだわ……欠点を利点に変えるこの発想…! ああ、自分が恐ろしいわ…!)
小鳥(よし……そうと決まればさっそく…)カタカタ…
カチッ『μ's PVメドレー』
小鳥(ピヨへへへ…編集してPCにぶっこんだこの動画を楽しませてもらいましょうか!)
~♪ クラリコマッチャーウ!
小鳥(おっひょおおおお! にこまき! にこまき! やはり王道は至高ね、やよいおりに通じる何かをこのカップリングから感じるわ!)
小鳥(……しかしネットサーフィンしててたまたま見つけた動画にここまではまるとはねえ…)
小鳥(スクールアイドルだったかしら? 高校生とは思えないクオリティのpvよねこれ)
小鳥(学校で結成されたアイドルなんて時代を感じるわぁ…私の頃なんてそんなのぜーんぜんなかったのに)
小鳥(…くぅ、高校生に戻りたくなってきたわ。これ以上昔を思い返すのはやめよう……)
小鳥「今はカップリング妄想を楽しませてもらいましょうか!」
~♪
小鳥「やはり定石の型はことほのうみ・りんぱな・えりのぞ・にこまきかしらね。まずことほのうみは幼馴染という関係性に加え鈍感持ちの穂乃果ちゃんをことりちゃんと海未ちゃんが取り合うというシチュエーションが美しい……二人に迫られても選ばれなかった方が傷ついてしまう…幼馴染だからという理由でどちらも選ばずに一人になることを選ぶ穂乃果ちゃん…そして残されたことうみはお互いの失恋の傷を癒すために相手に穂乃果ちゃんを重ねて体を重ね合う。最初は自分に対する嫌悪感と相手への罪悪感しか感じなかった二人も何度もそうするうちに気持ちが変わっていることに気づく。やがて本当の意味で心を通わせることができ、結ばれることうみ…そして残された穂乃果ちゃんはどちらも選ばずに一人になってしまったことを後悔して二人のことを思い自分を慰める……遂には寂しさを埋めるために妹に迫る穂乃果ちゃん……しかし姉と恋に落ちるなんてファンタジー派の妹は穂乃果ちゃんを拒絶する。最後の希望も絶たれ絶望に暮れる穂乃果ちゃん…そこに現れたのは二人一緒によろしくやっていたはずのことうみ。「穂乃果…ごめんなさい。私達は間違っていました」「穂乃果ちゃんなしで二人きりで幸せになんてなれないよ…」「ことりちゃん…海未ちゃん…」穂乃果ちゃんの目から流れ出る涙を優しく拭う幼馴染二人……そして互いに抱擁しあい人肌のぬくもりを感じ合う。そしてその夜は三人で仲良く……(以上小鳥さんの妄想)」ハァ…ハァ…
律子「うるっさいですよ小鳥さん!!」
小鳥「ぴよぉっ!?」
律子「さっきから一人でブツブツブツブツ……」
小鳥「も、もしかして声に出てました…?」
律子「お経読んでるみたいで気味が悪かったですよ…」
小鳥「すいません……」
P「妄想も大概にしてくださいよ小鳥さん……あ、そろそろ出ないと。春香~」
春香「は~い。……きゃあっ!?」
ドンガラガッシャーン
P「……じゃ、いってきますね。留守番よろしくお願いします」
小鳥「あ、はい。あれ? 律子さんも出るんでしたっけ?」
律子「ええ。竜宮のみんなと合流します。……さて、小鳥さん?」
小鳥「は、はい?」ビクッ
律子「社長は今日は日サロに行っていて不在です。アイドルもプロデューサーも全員出払うので事務所にいるのは小鳥さん一人になるわけですね」
小鳥「そ、そうですねぇ…寂しいなぁ」
律子「つまりあなたがサボるのを見張る人は存在しないわけです」チラッ
小鳥「あー…こ、これはですね……」
律子「もし事務の仕事を少しでもサボったら……」キラリ
小鳥「ひぃっ! わ、分かってますよ! 真面目に仕事します!」
律子「……それでは」
ガチャ…バタン
小鳥「うぅ…律子さんは年下とは思えないなぁ……完全にダメな部下を見る上司の目だあれ…」
小鳥「……よし。少しは年上らしいところも見せてあげないと」カタカタ
小鳥「……」カタカタ
小鳥「……」カタ…カタ…
小鳥「……」カ…タ…
小鳥「……」ウトウト…
小鳥「……」スー…
小鳥「……はっ!」ビクンッ
小鳥「あ、危なかった……昨日徹夜で動画編集したからなぁ……いちゃいちゃ(っぽく見える)シーンだけ抜き出したのは頑張りすぎだったわね…」
小鳥「こんなんじゃダメよ小鳥! 気合入れてやらなきゃ!」パンッパンッ
小鳥「……」カタカタカタカタ…
シーン…
小鳥(やっぱり…寂しいな)
小鳥(……アイドルのみんなは私のことどう思ってるんだろ。仕事をちゃんとしないダメな事務員なんて思われてないといいけど…うう、そんなはずないと思ってもこう寂しいとついネガティブになっちゃうわ……いてもいなくても変わらない人なんて思われてたら…)
小鳥(私は、アイドルの子達の力になれてるのかなぁ……)
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