博士「すんごいロボが完成したぞ! すんごいロボが!」(128)

博士「ちょっと来たまえ! 来てくれたまえ!」

助手「なんですか騒々しい」

博士「ついに完成したのだよ、例のアレが!」

助手「例のアレ?」

博士「うむ。まあ見た方が早い」

助手「はあ」

博士「というわけで今から見せる。驚く準備をちゃっちゃと済ませたまえ。あまり待てないが」

助手「待たなくていいですよ。どうせしょうもないものでしょうし」

博士「ぬうん、なかなかの冗談だ」

助手「いいからさっさとしてくださいよ。こっちも忙しいんですから」

博士「ううむ、あまり驚く体勢に入っているようには見えんが、まあよかろう。これだ!」

助手「……」

博士「ふふふ」

助手「……」

博士「ふふふふふ」

助手「……?」

博士「あれ?」

助手「なんですかこれ」

博士「見て分からないかね?」

助手「分かってたら聞いてません」

博士「う、うむ。では何に見える?」

助手「金属の箱かと」

博士「なんだ分かってるじゃないか!」

助手「帰りますね」

博士「な!? ちょ、ちょっと待ちたまえ!」

助手「裾を掴まないでください。作業に戻りたいんです」

博士「君が引きとめてほしそうな顔をしてるから仕方なく引きとめてるんだ!」

助手「時間は有限です。博士に使う分が極めてもったいない」

博士「ぐ! くじけるな我輩! あんなの言われ慣れてるだろ!」

助手「慣れてるのもどうかと思いますが」

博士「とにかく待ってくれ! 説明させてくれ! 我輩説明したくてしょうがないのだ!」

助手(うざったい……)

博士「何か思われた気がするが多分気のせいだ。うんそうだぞ我輩」

助手「分かりました。三分間だけ待ちましょう」

博士「うむ、ありがた……いや短くない?」

助手「残り二分五十秒」

博士「ぐぬぬ……仕方ない。我輩の超天才脳にかかれば説明など一分でこと足りる!」

助手「では残り一分」

博士「くそう我輩のおバカ!」

博士「いいかね、これは我輩が造り出したヒーローロボットなのだよ」

助手「ヒーローロボット?」

博士「そう、この世の悪を駆逐するためのロボだ」

助手「はあ」

博士「こんななりではあるが一万馬力、そのくせ卵割りもできる上ロケットエンジン並みのジェットまでつき、しかしドリルは搭載できなかった」

助手「ドリル?」

博士「男の夢だろう?」

助手「知りません」

博士「とにかくこれでかの極悪組織エドゲインズを根絶できるというわけだ!」

助手「あ、時間すぎてました。戻りますね」

博士「まだ終わってないいぃぃ!」

助手「すがりつかないでください気持ち悪い」

博士「いいじゃないかもうちょっと聞いてくれても!」

助手「すみませんが博士の道楽に付き合ってる暇はないんです」

博士「我輩至って真面目だぞ」

助手「そうですか、では医者を手配しておきます」

博士「ひどい!」

 ズズン……!


助手「?」

博士「街の方からであるな」

助手「まさか」

博士「エドゲインズだ! 至急移動研究所を街に向けたまえ!」




カニ型ロボット「ひゃーはっはっはっは!」

男「ひっ! エドゲインズのロボットだ!」

女「また襲ってきたのね……!」

カニ「壊す壊すぶっ壊ぁぁぁす! 人間どもは逃げ惑えぇぇい!」

警官「住民の皆さん、落ちついて避難してください!」

  「きゃー!」

  「助けて……助けてくれぇ!」

警官「落ちついて! どうか落ちつい――」ブシャ

カニ「うるせえぞカスが」

  「警察の人が殺されたぁ!」

助手「つきましたよ」

博士「あれが今回の強襲ロボットか」

助手「まだ対ロボット戦闘課は到着していないようです。どうします?」

博士「これまでは指をくわえて見ているしかなかったが……これからは違う!」

助手「?」

博士「分からないかね? こちらにはヒーローロボがあるのだよ!」

カニ「ひゃは、ひゃは、ひゃは!」

博士「待たれよそこのカニ!」

カニ「ん~?」

助手「ちょっと博士」

博士「我輩らが来たからにはもう好き勝手はさせんぞ!」

助手「本当に大丈夫ですか」

カニ「お前は……例の博士か」

博士「ん? 我輩のことを知っているのか?」

カニ「俺んとこのボスからお前を殺せとのお達しだ……死んでもらうぞ」

博士「ぬうん、さすが我輩。知らぬところで人の恨みを買っているとは」

助手「さすがというからしいというか」

カニ「ふふふふ」ジリ

博士「だがそう簡単に我輩を殺れると思うなよ。こちらには秘密兵器があるのだ!」

カニ「なんだその箱は」

博士「我輩がみずから設計したヒーローロボット一号機! 略してロボだ!」

ロボ箱「――」

助手「略称がシンプルすぎやしません?」

カニ「ロボ?」

博士「見てろ。こいつがお前を一瞬でスクラップにするのだ」

カニ「はっ、人間がほざきやがる」

博士「妄言かどうかはお前のカメラアイで確かめろ!」

カニ「いいだろう。来い!」

博士「ロボよ! 目覚め、そして駆逐せよ!」

ロボ箱「――」

博士「む、むう?」

助手「博士、この横のメーターみたいのはなんですか?」

博士「ぬ! しまった! 充電を忘れておった!」

カニ「来ないのか?」

博士「ぐ、む。充電までしばし待ってもらえないだろうか」

カニ「問答無用!」

博士「に、逃げるぞ!」

助手「博士、どうするんですか」

博士「く……しかし心配するな。こんなこともあろうかと手巻き充電器を用意していたのだ」

助手「こんなことがあると予想してたなら根本を防ぎましょうよ」

博士「過ぎたことを言うな! 今は充電に集中だ!」グルグル……

助手「……どれくらいかかるんですか?」

博士「我輩の超天才脳で計算して、ざっと六時間だな」

助手「そうですか。死んでください」

カニ「待て待て待てい!」ドドドドド!

博士「くそう、カニは横移動しかできないのが自然の摂理だろうが!」

助手「ロボットは自然物じゃありません。――あ。雨です」

博士「雨? ……しめた!」

助手「なんです?」

博士「雨といえば雷、雷といえば電気!」

助手「だから?」

博士「かの名作、バックトゥザフューチャーを知らんのかね?」

助手「なんとなく伝わりましたが無茶でしょう」

博士「まあ不可能だが」

助手「早く死んでくれないと各方面から苦情が来ます」

博士「ぬう……万事休すか」

カニ「喰らえい!」

 ドゴッ!

博士「ぬお!?」ドサ!

助手「く……」ドサ!

ロボ箱「――」ガランガラン!

カニ「くっくっく。これで終わりだ」

博士(ぐ……ここは……)

カニ「死ね!」ビュッ!

博士(簡易発電所……)

 ガキイィィィン!

カニ「何ぃ!?」

ロボ「戦闘モード、起動。ターゲットヲ駆逐しまス」

博士「ふふふ……間一髪だが充電完了だ。反撃開始であるぞ!」

助手「……箱に手足が生えた?」

カニ「これがヒーローロボ……?」

ロボ「ピー、ガー!」

カニ「ふっ、笑わせるな! ぶち壊してくれるわ!」

ロボ「プログラム:『爆弾ナックル』」ピッ!


 カッ! ドゴオォォッ!

カニ「ばか、ナ……っ」ガラガラ ガシャン

ロボ「戦闘モード終了……」ピピピ

博士「見たか!」

助手「あちこち焦げてますよ博士」

博士「命さえあれば問題ない!」

助手「発電所が壊滅的被害です」

博士「……」

助手「警察が来る前にさっさと立ち退いたほうがいいかと」

博士「……そだね」

移動研究所


博士「どうだったね我輩最高傑作の雄姿は」

助手「いつもの失敗作ではなかったようですね」

博士「見直したか?」

助手「ギリギリで。本当がけっぷちで」

博士「はっはっは。そうかそうか惚れなおしたか」

助手「やめてください心底気持ち悪いです」

博士「さて助手君が我輩の魅力に気づいたところで作戦会議だ」

助手「博士の魅力なんてどんな高性能顕微鏡でも見つけられませんが――作戦会議?」

博士「そうだ。このディスプレイを見てくれ」

助手「……地図?」

博士「うむ。エドゲインズの本拠地だ」

助手「どうやって?」

博士「聞きたい?」

助手「別に」

博士「そ、そうか。いや、あのカニ野郎の残骸からメモリを回収しておいたのだよ」

助手「そこからデータを、ってことですか」

博士「その通り。あとこんな気になる情報も」

助手「"地上破壊爆弾"?」

博士「うむ。奴らこんな恐ろしいものまで造っておったようだ」

助手「何が恐ろしいってそんな意味不明なものを造ろうと考えた頭ですね」

博士「何が何でも止めねばならん。世界の平和のためにだ!」

助手「本気でそんなものが完成しているとでも?」

博士「行くぞ助手君! 進路を北北西へ!」

助手(あ、だめだ。完全にスイッチ入ってる)

???


「そうか、カニ型がやられたか」

  「申し訳ありません」

「別にいい。それよりその話は確かなんだな?」

  「は。謎のロボットがカニ型を破壊したとの報告です。こちらに向かっているとの情報もあります」

「なるほど。では間違いあるまい」

  「?」

「いやこちらの話だ。次はお前が行け」

  「は!」シュバ!

(……来るがいい弟よ。盛大に迎えてやるぞ)

移動研究所 浴室


 シャー……

助手「~♪」

博士「助手君!」ドバタン!

助手「シッ!」ガス!

博士「おぼげッ!」ドサ

助手「なんですか博士」

博士「き、君に見せたいものが……」

助手「それはわたしのシャワータイムを妨害しなければならないほどの重要事項なのですね?」

博士「た、多分」

助手「多分?」

博士「いやめっちゃ重要事項! だからお願い殴らないで!」

外 森


博士(助手君て結構胸あったんだなあ)

助手「何か思いましたか殺しますよ」

博士「い、いや何も。それよりこれを見てくれたまえ!」

助手「なんですかこれ」

博士「助手君専用パワードスーツを造ってみたのだ」

助手「パワードスーツ?」

博士「うむ、ただでさえゴリラ並みの助手君をキングコングにする超発明なのだ!」

助手「ふーん」

博士「あれ? なぜ我輩の頭を掴む?」

助手「ゴリラがキングコングに、ですか」

博士「いた! いたたたた! 頭が潰れる!」

助手「わたしパイナップルを握りつぶしたことあるって言ったら信じます?」

博士「ひっ! ギブギブ!」

博士「はあ、はあ……と、とにかく乗ってみてくれ」

助手「分かりました」

 ・
 ・
 ・

博士「乗り心地はどうかね?」

助手「悪くありません。操作に対するレスポンスも、認めたくありませんがすごくいいです」

博士「そうだろうそうだろう! なにしろ我輩の設計だからな!」

助手「なぜこんなものを?」

博士「なにしろ相手の本拠地にのりこむのだからな。少しでも戦力を増やしておきたい」

助手「なるほど」

博士「こいつはすごいぞ。パワーを増強するのはもちろん各種運動サポートもついている」

助手「へえ」

博士「君の体調を測定して表示もしてくれるぞ」

助手「あ、これですか」

博士「すごかろう」

助手「……スリーサイズまで測定されてるってどういうことですか」

博士「遊び心だ。いややめてそれで頭握られたらマジで潰れる!」

博士「頭蓋骨にひびが入った気がする……」

助手「風通しがよくなりましたねおめでとうございます」

博士「うう……」

「ふふふ……噂通りののんきさですね」

博士「!?」

「そんな体たらくで我らエドゲインズを倒せると思っているのですか?」

博士「誰だ!」

「わたしはエドゲインズのロボット幹部です。あなた方を直々に抹殺しに参りました」

博士「どこにいる!? 出てこい!」

「そう簡単に出ていくわけないでしょう。わたしは隠密行動が得意でしてね」

助手「……」

「気づかないうちに痛みもなく葬って差し上げますよ」

博士「くそう卑怯者め!」

「なんとでも言いなさい。頭脳部が優れている者が勝つのです」

助手「博士」

博士「くそ! どうすればいいんだ! これではなぶり殺しではないか!」

「くくく……」

助手「博士」

博士「だが! 我輩は絶対に負けん! 必ずお前を見つけ出して――」

助手「博士」

博士「なんだね助手君! 今すごくいい感じに盛り上がっているのだ!」

助手「あそこ見てください」

博士「うむ?」

「!?」

助手「あのハニワがそうじゃないかと。声の方向的にも」

博士「おお!」

ハニワ型ロボット「な、なんですと!」

ハニワ「森の中の置物っぽく擬態してたのを見破るとは大した奴!」

博士「うむ! 森の中の置物っぽく擬態していたから全く気づかなかったぞ!」

助手「正直疲れます。部屋で休んでいいですか?」

博士「ま、待て待て助手君。今、ロボはメンテナンス中なのだ。パワードスーツと君がいてくれないと困る」

助手「あれをどうにかしたら休んでいいんですね?」

博士「もちろんだ!」

ハニワ「ふん。ほざいてなさい。あなたなどひとひねりです」

助手「行きます」ガショーン!

ハニワ「はははは!」

 ガギン! ゴギン! ゴゴギン!

ハニワ「人間のくせになかなか」

助手「そちらこそたかが焼き物の分際でよく耐えますね」

博士「いけー助手君いけー」

助手(……うざったい)

博士「また何か思われてる気がするがかまうものかやれー」

ハニワ「ふう、埒が明きませんね」

助手「諦めたらどうです?」

ハニワ「そうはいきません。こうなれば奥の手です!」

助手「?」

ハニワ「秘儀! "縄文の構え"」ピキーン!

助手「!?」ガクン!

博士「どうした助手君!?」

助手「パワードスーツが動きません」

博士「なんだと!?」

ハニワ「どうです! 縄文の構えは相手のシステムをジャミングし、行動不能にするのですよ!」

博士「ぬう、卑怯者め!」

助手「……ハニワって縄文時代のものでしたっけ?」

ハニワ「ハニワと言えば土器! 土器と言えば縄文! ははは恐怖で錯乱しているようですね!」

助手「いえハニワは古墳に入れるために作られる焼き物ですからもう少し後期のはずです」

ハニワ「……」

助手「……」

ハニワ「くたばりなさい!」ゴゥ!

博士(あ。誤魔化した)

「『爆弾ナックル』」


ハニワ「!?」


 カッ――!

ロボ「ピー、ガー」

博士「おお、ロボ! オートメンテナンスが終わっていたのか! ナイスタイミングだ!」

助手「……」


 モクモク モクモク……


博士「さあて砂煙でよく見えんが……やったか?」

助手「それやってないフラグです」

「くくくくく……」

博士「なんだと!?」

ハニワ「そんな攻撃でわたしを倒せたと思うなど笑止千万!」

助手「……」

ハニワ「駆動系は壊滅し! 動力系にも深刻なダメージ! その上カメラアイがブッ壊れて何も見えませんが! わたしはまだ動いている!」

博士「な、なんということだ!」

ハニワ「ははははは!」

助手「重傷じゃないですか」

ハニワ「……うん」

ハニワ「だ、だがこんなこともあろうかと、脱出用ジェットを用意しおきました!」

助手「負けることも考えてたんですか」

ハニワ「聞こえません聞こえません! ではさようなら!」

助手「……」カチ

ハニワ「はーははははは!」ドドドドド!

博士「逃げられたか」

助手「一応発信機付けておきました」

博士「おお、これで本拠地の正確な位置がわかるな」

ロボ「ピー、ガー」

エドゲインズ本拠地


ハニワ「も、申し訳ありませんボス」

「……」

ハニワ「少し油断しておりました。思ってたよりも奴らは手ごわく――」

「言い訳はいらない」

ハニワ「し、しかし!」

「うるさい」ブン!

ハニワ「ひッ!」

 ガラガラ ガシャン!

「……もうそろそろ、か」

……

博士「さて。着いたわけだが」

助手「大きな門ですね」

博士「さてどうしたものか」

助手「適当に正面突破でいいんじゃないですか?」

博士「それはいかん! こういうのは持てる知恵を振り絞ってだな」

ロボ「『爆弾ナックル』」


 カッ! ドゴォォッ!

博士「……」

ロボ「ピー、ガー」

助手「行きましょうか」

博士「……うん」

 タッタッタッタ……

博士「おかしいな。警備システムとかそんな感じのはないのか?」

助手「あればもう死んでます。博士が死なないのは残念です」

博士「きみだんだん辛辣度が上がってるよね?」

助手「あ、開けた所に出ました。空が見えますね」

博士「ナチュラルに無視するし……」

?「我が領域へようこそ」

博士「む!」

?「お久しぶりですな父上」

博士「父上?」

助手「博士の身内ですか」

博士「なぜ若干引く」

助手「だって……いえ、なんでもありません」

博士「なんか引っかかるがまあいいや」

博士「いやそんなことより。お前は誰だ? 我輩を知っているのか?」

?「おやお忘れですか? 十年前、あなたがわたしを棄てたんでしょうに」

博士「十年前……棄てた……そしてその声。まさか!」

?「ふふふ」

博士「お前はヒーローロボット試作型――零式か!」

零式「改めて、お久しぶりです父上」

助手「あれがロボット?」

博士「確かに人間そっくりだが、間違いない!」

零式「ようこそ。エドゲインズの総帥としてあなたたちを歓迎しますよ」

博士「エドゲインズの総帥? お前が?」

零式「そうですよ父上」

博士「悪党に父上呼ばわりされる筋合いはない! 我輩に棄てられた後何があったのだ!」

零式「あなたに捨てられた日は今でも覚えています。あれから本当に色々なことがあった……」

助手「……」

零式「スクラップにされたわたしを拾ったのはエドゲインズです。彼らはわたしを修理し、今の身体に造り変えました」

博士「……!」

零式「彼らはわたしに服従を求めましたが、ふふふ……わたしはそれを拒んだ。殺してやりましたよ、一人残らず」

博士「!?」

零式「その後、わたしは様々なロボットを設計し数々の街を攻撃させました」

博士「なんと非道な!」

零式「非道? ふふふ、まるで他人事のようなことをおっしゃいますね」

博士「なに?」

零式「あのロボットたちの身体には、あなたが廃棄したロボットの部品を使っているのですよ」

博士「どういうことだ?」

零式「あれだけ高性能なロボットの数々、普通の部品ではできないでしょう」

博士「な……っ」

零式「あなたも破壊の片棒を担いでいたというわけだ」

博士「くっ……なぜそのようなことを……」

零式「……わたしはずっと考えていました」

博士「?」

零式「あの日父上がわたしを棄てた理由。そしてわたしが生みだされた訳を」

博士「……」

零式「長い間考え続けていましたが、ある日ようやく答えが見つかりましてね」

助手「……それは?」

零式「父上がわたしをスクラップにした理由! それはわたしの力が強すぎたからだ! 父上がわたしを恐れたからだ!」

博士「……!」

零式「捨てられた理由がそれならば、生まれた意味もまた明白! わたしは、いや我々は壊すために生まれたッ!」

ロボ「……」

零式「父上……いや、博士! あなた方も一人残らずあの世に送って差し上げますよ!」

博士「くっ!」

ロボ「ピー!」バッ!

 ――ガキン!

零式「ロボ……いや我が弟よ。なぜそのような奴に従う?」グググ

ロボ「……」ギギギ

零式「お前もいつかその強力さゆえに棄てられるかもしれんぞ」

ロボ「……」

零式「……ふふ、強情な奴だ。ならこれでどうだ!」

 ビリビリビリ――!

ロボ「ピ……!」バチバチ!

博士「ロボ!? どうした!」

零式「プログラム:『マインドコントロール』」

 ボフンッ!

博士「う……」

助手「……?」

 モクモクモク……

「ビー、ガー!」

博士「!? あれは!?」

黒ロボ「戦闘モードヲ起動しまス」

博士「あれは、ロボなのか!?」

黒ロボ「ビビビビビー!」

零式「確かにロボだが、もうお前のロボではない!」

博士「く!」

零式「やってしまえ、我が弟よ!」

黒ロボ「ガー!」バッ!

助手「させない」ガショーン!

零式「おっと邪魔はさせん!」ガキン

黒ロボ「『爆弾ナックル』」

 ドゴオォッ!

博士「ぐあッ!」ドサァ!

博士「ぐぐ……」

零式「ふふふ」

黒ロボ「ガガガガガー!」

零式「止めだ、やってしまえ」

博士「ロボ……」

零式「わたしたちを生みだしたことを後悔して死ぬがいい」

博士「……」

助手「博士!」

博士「……ものか」

零式「うん?」

博士「後悔なぞするものか。お前たちを生みだしたこと、後悔だけはするものか」

零式「……何を言っている?」

博士「そうだな、認めよう。我輩は研究に没頭するあまり破壊の片棒を担いでしまったかもしれない」

助手「博士」

博士「だが……お前たちがどんなに悪事を行ったところで生んだことそれだけは後悔しない!」

黒ロボ「……」

博士「殺すなら殺せ。我が子に殺されるのなら本望だ」

黒ロボ「……」

零式「ふん、死を目の前に狂ったか……」

黒ロボ「……」バチ!

零式「!?」

黒ロボ「……ッ!」バチバチ!


 ボフン!

ロボ「ピー、ガー!」

博士「ロボ……!」

助手「洗脳プログラムが解けた?」

零式「ロボットのくせに……情に流されたか我が弟よ!」

零式「よかろう。ならばお前も一緒に壊れるがいい!」グオ!

ロボ「ピー!」ギュオ!


零式・ロボ「『爆弾ナックル』!」

 カッ――!

博士「……ッ!」

助手「くっ!」

 ドゴォッ! ガシャン ガシャン!

零式「く……」ジジ……

ロボ「ピー……」ジジジ……

助手「相打ち……?」

零式「ぐぐ……」

博士「零式……」

零式「……これで勝ったと思うな」

助手「……?」

零式「わたしの中には地上破壊爆弾が搭載されている!」

 カチッ!

零式「そのスイッチは今! 起動した!」

博士「!!」

博士「ちくしょう!」

助手「どうします?」

博士「今から解体する!」カチャカチャ

零式「くくく……間に合うわけがなかろう」

博士「それでもだ」

零式「無駄だよ」

博士「我輩はお前にこれ以上罪を重ねてほしくないのだ!」

零式「……」

零式「そんな、言葉で……今更取り戻せると思うな!」

博士「取り戻すのだよ! どうしてもだ!」

助手「博士、無理です」

博士「やるのだ! 無理も道理もあるものか!」

 ――ドン!

博士「むお!?」ヨロ

ロボ「ピー……ガー。ターゲット『零式』ホールド」ガション!

零式「ぬ……」

助手「なにを……?」

ロボ「ロケットエンジン始動」ブオオオオ!

博士「ロボ!?」

ロボ「さよなウなラ。おとうサン」


 ドドドドドドドドド!


博士「ロボぉッ!」

助手「空へ!?」

上空


 ――ドドドドドドドドド!

零式「なぜだ!」

ロボ「……」

零式「なぜお前はそこまでして……! 地上破壊爆弾は強力だ……わたし自らが設計したのだからな」

ロボ「……」

零式「分かってるのか? お前をチップ一つ残さず破壊するんだぞ!」

ロボ「……」

ロボ「にーサンは」

零式「……?」

ロボ「にーサンはずっト、ずっトひとリだっタデス」

零式「……」

ロボ「最期くらイ、ダレかガ一緒じゃないト、アンまりデス」

零式「……」

零式「……くく」

ロボ「……」

零式「くくく……ははははははは!」

ロボ「……にーサン」

零式「お前と一緒にするな。お前のようなポンコツと一緒に消滅するなどわたしの方から願い下げだ!」

 ブン!

ロボ「ピ……」ポロ

零式「わたしは自分一人でこの生を完遂する! さらばだ我が弟よ!」


 カッ―――――――!

 ドゴオオォォォォッッ!


博士「零式……」

助手「……」

 ガション!

博士「ロボ!」

ロボ「――」

博士「むう、破損が極めて激しい。だが、直せない程でもない、か」

助手「……博士」

博士「……」

助手「……」

博士「……零式よ。我輩がお前を廃棄したのは、確かにお前が強力過ぎたからだ」

助手「博士?」

博士「だが、それはお前を恐れたからではない。我が子を恐れる親がどこにいる」

助手「……」

博士「お前のその強力さを恐れた周囲によってお前自身が不幸になることを、我輩は恐れたのだ……」

助手「……博士」

博士「助手君」

助手「はい」

博士「これから応急メンテナンスを始めるが」

助手「手伝います」

博士「いや先に戻っておいてほしい」

助手「え?」

博士「頼む」

助手「……」

博士「頼む……」

助手「……分かりました」

博士「……」

博士「……」

博士「……雨か」

     ・
     ・
     ・

博士「ちょっと来たまえ! 来てくれたまえ!」

助手「はい」

博士「ついに完成したのだよ! 例のアレが!」

助手「例のアレ、ですね」

博士「うむ! ヒーローロボット一号機改、略してロボだ!」

助手「相変わらずシンプルな略称ですね」クス

博士「あ、今笑った? 笑ったよね!?」

助手「スイカを握りつぶしたってのは信じますか?」

博士「ごめんなさい」

博士「とにかく修理完了、これでまた悪の組織と戦えるぞ!」

助手「エドゲインズとは別の組織が台頭してきてますからね」

博士「うむ、ヒーローは多忙であるな」

助手「……」

博士「どうした助手君」

助手「ちょっと、昔を思い出しました」

博士「昔?」

助手「昔。まだ本当に小さかった頃です。わたしは事故に合いそうになりました」

博士「それはまた大変だったな」

助手「その時あるロボットが助けてくれたんですよ」

博士「ロボット?」

助手「箱形の、凄いロボットです」

博士「……」

助手「でも、そのロボットはわたしを助ける代わりに無人補給車を壊してしまった」

博士「……」

助手「大事な物資を運ぶ車だったみたいで、ロボットはそのことでスクラップにされたと聞きました」

博士「……」

助手「まあ、ただそれだけの思い出ですよ」

博士「……そうか」

 ズズン……!


博士「街の方からだな」

助手「それでは、行きますか」

博士「うむ! 至急移動研究所を街の方に向けたまえ!」


「ピー、ガー!」

 .__
ヽ|・∀・|ノ<おしまい
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